《零和滑稽新聞創刊01号》パンパンというよりパンバカパ~ン! 嘘つきサーニャの今週のハイライト!

(『紙の爆弾』2026年7月号掲載記事を再編集しました)

【図1】JiB漫画トリオのパンパカパ~ん!今週のハイライト!

5月11日の文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」でゲストのジャーナリスト・適菜収(てきな・おさむ)氏が、高市早苗が政治家としての最初の一歩からウソと駄ボラを重ねてきた過去を暴露した。たとえば彼女は「元アメリカ連邦議会立法調査官」という肩書きでマスコミデビューを果たし、世間に大いに名を売ったわけだが――自著にも(図2)、テレビ出演時にも(図3)そういう肩書きを堂々と掲げてきた――実際にはこの肩書きは虚偽であり、単に米国民主党のパトリシア・シュローダー下院議員の事務所でほんの一年ばかり“研修生(インターン)”をしていたに過ぎなかった。

(この「インターン疑惑」については、その後2か月もたってから、7月6日の国会参議院決算委員会での立憲民主党・羽田次郎議員の追及に対して、高市首相は自分の公式ホームページ等で紹介している米連邦議会の「コングレッショナル・フェロー(CF)」という経歴に「間違いはない。インターンとは全く異なる」と反論した。彼女は、たしかに渡米後の最初の2カ月間は受入先の下院議員事務所で「インターン」の立場であったと認めたが、3カ月目から正式にフェローとしての要件を満たし名刺やデスクが与えられたと釈明したのである。……しかしシュローダー議員はすでに〔米国を生涯をすごし、今はすでに亡きアメリカ人に、こういう古代中国由来で日本に定着している民間信仰用語を使ってよいのかどうかは微妙だけれども……〕「鬼籍」に入って久しい。

「死人に口なし」なのである。伊東市の前市長や、小池百合子東京都知事などの学歴詐称疑惑と同様、疑惑の主のご本人が言いたい放題放言にしている言動を、外野がひたすら信じているかぎり、真相はわからない。

容疑者本人の発言を信じるだけで容疑の有無が決まるなら、警察や検察の「捜査」なんてまったく不要なのだから、そんな組織はさっさと解体するしかない……という理屈になる。あるいはまた、容疑者本人の発言だけしか“頼るべき根拠”がないとするなら、「容疑者の口を割らせる」ために拷問も許される、という理屈も成り立つであろう。……とにかく高市首相の米国議会関係の職歴詐称疑惑については、雇い主のシュローダー議員はすでに死去してこの世にいないわけだし、高市本人が巧言令色・美辞麗句でいくら調子のいい釈明をしようとも、明白で客観的な証拠〔エヴィデンス〕が示されぬかぎりは、信用できないのである。……なにしろ自分の嘘つきぶりを、かつては自慢していた政治家なのであるから。)

この日の放送で、適菜氏は、高市早苗ご本人が公言した(それゆえ大宅文庫に“記録”として残されている)資料を、大竹氏に朗読させた――「シュローダー議員へのアプローチは?って聞かれて高市さんは、私を雇ってくれって履歴書とか色々書いたんだけど、私の英語力って大したことなかったから、その頃付き合ってた男がすっごく英語ができる男だったんで、ずいぶん添削してもらった。だいたい私、自分は日本の軍事問題の権威だってウソかいたの」。……まさにウソにウソを重ねてのし上がってきたのが高市早苗のいう政治家なのである。

高市早苗は「元アメリカ連邦議会立法調査官」だと詐称して世間に名を広めた。

【図2】1990年3月ソニーからカセットブックとして発売された『政治ギャル、永田町を叱る:怒れ!納税者!!』
【図2】1990年3月ソニーからカセットブックとして発売された『政治ギャル、永田町を叱る:怒れ!納税者!!』
【図3】マスコミ売りだし時代の高市早苗のテレビ出演
【図3】マスコミ売りだし時代の高市早苗のテレビ出演

パット・シュローダー(生1940~没2023年)は日本で言えば福島瑞穂みたいな立ち位置で「保守」とはほど遠く、「リベラル・フェミニスト」とか「過激なリベラリスト」などと呼ばれてきた政治家だった。だから高市早苗が松下整形塾、もとい、政経塾で学んで「保守政治家」をめざしていたならば、民主党の「(当時としては)極左」議員のもとでの“修業”なんぞあり得ぬ話であって、共和党政権時代だったから当然“研修”先は共和党議員の事務所を選んだはずであるが、共和党は当時は政権党だから(小泉進次郎みたいな“親の七光り”が使えれば別だけど)生半可な知識では採用されまい。だから政治的なド素人が「軍事問題の権威」などと詐称してもそれを見抜けぬほどズサンな、これまたシロウト議員(?)をカモにしたのだとも推測できる。
(この推測に無理があるなら、やはり高市早苗は当時の日本において“リベラル・フェミニストの女性代議士”の立ち位置を狙っていたのであろう。)

高市早苗が「平気でウソをつく」政治家だということは、アベ政権の総務大臣時代にやらかした“放送免許恫喝(どうかつ)”騒動の時からさんざん見せつけられてきたから、そのこと自体はもはや(我ながら情けないけど)慣れっこになっていた。……が、米国の議員事務所での研修採用のときからウソをついて相手を騙(だま)してきたことを知って、さすがに私は驚愕した。(ハッキリいってゾッとした。)

今回の記事のタイトルを「嘘つきサーニャ」としたのは、すぐれた作家・ロシア語通訳者だったがこの5月末に没後20年を迎えた米原万里さんの、代表作『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(2001年)に肖(あやか)ったわけである。本稿の「サーニャ」が誰を指すかは説明不要であろう。

さらに記事タイトルに用いた「パンパカパ~ン!今週のハイライト!」というのは、1960年安保闘争「敗退」直後(同年11月)にデビューした漫才コンビ《漫画トリオ》の“決めネタ”であった。前髪を「J」の字にまとめて広い額にたらしてタコ踊りで笑いを取る横山ノック(のちに国会議員や大阪府知事を歴任した山田勇)がボケて、両端の横山パンチ(上岡隆太郎)と横山フック(轟〔とどろき〕盛次)がツッコミをいれる「ニュース漫才(コント)」で、「今週のハイライト」を話題にしながら時事風刺を行なったのである。《漫画トリオ》はこのネタを演(や)るときには、図1のような(“3人そろって日章旗”のような)ポーズを決めた。

【図1-2】本家、漫画トリオの「ぱんぱかぱ~ん、今週のハイライト!」
【図1-2】本家、漫画トリオの「ぱんぱかぱ~ん、今週のハイライト!」

「パンパン」を差別してきたのは誰か?

大竹まこと氏のラジオ番組のなかで、適菜氏が高市早苗をことを「令和のパンパン」と表現したことから、女性差別であるとか職業蔑視であるとかいう“クレームの嵐”がSNS界隈の“名無しの権兵衛(ケンペー)”たちのあいだで俄(にわ)かに沸(わ)きだして、文化放送の社長が謝罪するなど事態は例によって「言葉狩り」「言論封殺」の方向に動いているが、終戦直後に占領軍のヤンキー将兵にぶらさがらざるを得ず、それをやっかむ敗戦国民の“名無しの権兵衛”たちから「パンパン」と呼ばれて社会的に疎外された女性たちの人生をの悲惨を思えば、安直に「差別語」扱いして封殺するのはセカンドレイプのような虐待であることが容易にわかるはずだ。

当時の「パンパン」女性たちの心情を嘆いた「星の流れに」という歌がある。こんな歌詞だ――

星の流れに身を占って、何処(どこ)をねぐらの今日の宿。
荒(すさ)む心でいるのじゃないが、泣けて涙も涸(か)れ果てた。
こんな女に誰がした?

煙草ふかして口笛ふいて、あてもない夜のさすらいに、
人は見返る、我が身は細る。
町の灯影の侘(わ)びしさよ。こんな女に誰がした?

飢えて今頃、妹はどこに。一目逢いたい、お母さん。
唇紅(ルージュ)哀(かな)しや、唇かめば、
闇の夜風も泣いて吹く。こんな女に誰がした?

(作詞・清水みのる、作曲・利根一郎、歌・菊池章子)

従軍看護婦として満洲(奉天)に赴任していた女性が、戦争が終わって東京に帰ってみると、あたり一面焼け野原で、家族もすべて失われ、まったく寄辺(よるべ)がないので「娼婦」として生きるしかなくなり、その悲しみを手記にまとめた。これを新聞で読んだ清水みのるが“戦争への呪詛(じゅそ)”の歌として徹夜で詞を書き上げ、利根一郎も戦災孤児や「パンパン」が屯(たむろ)する上野駅の地下道や公園などで悲惨な現実を見ながら曲を作ったという。(ちなみにこの歌の原題は「こんな女に誰がした」であったが、GHQから「反米感情を煽(あお)る」とクレームがついて無難(ぶなん)な「星の流れに」に変更したという。占領米軍当局は天皇や帝国陸海軍のボスたちは容易に飼い慣らしたが、容易に懐柔できぬ日本国民には恐怖を抱いていたようだ。)

80年前、終戦直後の国民は、それこそ「パンパン」に“身を落とし”たり、「闇市」で政府いうところの「経済犯罪」となる「ヤミ売買」に頼らなければ生命維持すら困難だったのだ。つまり「パンパン」は大日本帝国の失政の悲惨な「産物」である。しかも8月15日の「玉音放送」の直後に、日本政府は早くも「上陸してくる占領軍から帝国婦女子の貞操を守るため」と称して、国立の性的慰安体制(「特殊慰安施設教会」のちに「RAA(Recreationand Amusaement Association)」と改称)を設置し、若い女性たちを大量に雇い入れて(占領軍の)性的従軍慰安婦として働かせ、ヤンキー将兵の大群に“人身御供”として提供した。それこそ「国定パンパン」「国立パンパン」を、日本政府が率先して“生産”して国家規模の管理売春をしていたのだ(詳しくはドウス昌代著『マッカーサーの二つの帽子(特殊慰安施設RAAをめぐる占領史の側面)』を参照)。

「パンパン」女性たちは身を売った。そして日本を「敗戦」に追い込んだ国陸海軍の高級司令官(天皇を含む)や参謀格は、GHQに媚(こ)びを売って(まさに「國家(くに)」を売って)命乞(いのちご)いを行なった。

731細菌戦部隊の総元締めだった石井四郎軍医中将はアメリカ占領軍の幹部と“ボス交渉”して、アジア地域の各地で展開した生物戦争のノウハウを米軍に提供することで「戦犯」訴追を免(まぬが)れた。参謀たちはGHQに媚びを売り、ネンゴロな説得を続けることで「日本再軍備」を追求しつづけ、朝鮮戦争をきっかけにこの“願望”が果たされて、それでいまの「自衛隊」がある。ついでにいえば昨今の世界をにわかに騒がせているハンタウイルス感染症だって、そもそもは石井731部隊が「朝鮮出血熱」として着目し、兵器化の研究を進めた病原体である。このウイルスの研究データが米軍に渡って以後の詳細な展開は不明だが、近年になってハンタウイルスに(新型コロナウイルスと同様に)遺伝子操作による「機能獲得研究」を施し感染力を格段に強めたウイルス株が作出されたことまでは判(わか)っている。米国が中南米を“実験場”として感染実験を企てた可能性は否定できないし、日本でだって石井四郎の母校で731部隊の“人材の草刈り場”であった京都大学に近すぎず遠すぎもしない大阪で、戦後1960年代まで「梅田奇病」などと呼ばれるハンタウイルス感染症がたびたび発生していたのだ。

敗戦によって国家存亡の危機に追い込まれた日本で、米兵相手に「からだ」を売った女たちがいたからこそ、この国は存続できたのだ……とさえ言える。もしも本土決戦になったり、敗戦直後にあまりの苦しさに堪(た)えられず悲観した女たちが次々と自殺していたなら、この国は今頃は、文字どおり亡びていただろう。

その意味で「パンパン」はまさに「畏(おそ)れ多くも賢い」国民の典型なのであった。彼女たちの「生存への執着」がこの国を救ったのだ。……それに比べて、ウソにウソを重ねて政界を渡り歩いてきた高市早苗はどうだろう? よほど下劣な生き方ではないか?戦後の「平和」と「繁栄」を享受(きょうじゅ)してきた我々は、「パンパン」を讃(たた)えて顕彰(けんしょう)すべきである。彼女たちの多くは、結局、病気などで不本意な一生を終えたにちがいないし、なによりも一般国民の蔑視を浴びながら寂しい生涯を送ったであろう。

「パンパン」を差別してきたのは戦後にのうのうと生きてきた我々自身である。

「紫」の意味をしらぬ“蓮っ葉むすめ”が
皇室を汚して「ポルノクラシー」をやらかす

4月10日に英国のハードロックバンド《ディープパープル》が来日し、東京に着くやただちに首相官邸を訪問した。サナエ総理は中学生時代からの「憧(あこが)れのバンド」と面会して大感激し、「夫とケンカした時は『バーン』を(ドラムで)叩いて呪いをかけています」と冗句を言ってサービスしたそうだ。バンドの公式インスタグラム(deeppurple_official)には面会時の記念写真が載っているが、なんと首相官邸内でサナエ総理もいっしょに日本公演をポスターを広げて宣伝している。首相官邸がこういう宣伝に利用され、家主の総理みづから嬉々(きき)としてチンドン屋の役割を演じているのだから、ロックを聴いて“ギャル発作”を起こすような蓮(ハス)っ葉(パ)な奴がこの先も総理大臣になるのであれば、こういう“表敬訪問”は増えるだろうな。

【図4】ディープパープルの公式インスタグラムに載った首相官邸での記念写真(4月10日)
【図4】ディープパープルの公式インスタグラムに載った首相官邸での記念写真(4月10日)

「バーン(BURN)」(邦題「紫の炎」)はディープパープルが“燃え尽きる”直前の、まさに“風前の灯火”のような楽曲だった。サナエ総理が小学生の頃に買ったというLP『マシンヘッド』収録の「ハイウェイスター」はギターの早弾き奏法をいわば“曲芸”に変えた作品であり、その意味ではロックギターの歴史に画期を成した名作だった。ギタリストのリッチー・ブラックモアはそれまでは「一曲ごとに演奏スタイルを変える」と豪語して極めて独創的な演奏スタイルを追求し続けた稀有のアーティストだったのだが、しかし「ハイウェイスター」の成功でその後は“曲芸弾き”を強いられるようになり、このバンドでの活動に飽きが来たのである。「バーン」のレコードジャケットは、メンバー全員の頭が蝋燭(ろうそく)になって、不気味な炎が灯(とも)っている(日本版の「紫の炎」も同じデザイン)。これは皮肉にも当時のバンドの気分を象徴している。この曲を出してまもなくバンドは空中分解したのだ。

ディープパープル(DeepPurple)の『紫の炎(BURN)』シングル盤レコードの、オリジナル(左)と日本版(右)のカバー写真
ディープパープル(DeepPurple)の『紫の炎(BURN)』シングル盤レコードの、オリジナル(左)と日本版(右)のカバー写真

自民党は五月二一日に《国力研究会》(英名「Japan is Back」、略称JiB)という、発起人たち自身にとっても予想外に大所帯の“(税金)盗賊団(バンド)”を発足させたが、ディープパープルの「紫の炎」に倣(なら)って「JiB」を“聖像(イコン)”に描くなら、図5のような“風前の灯火”の絵になるであろう。(サナエ総理の前髪は“横山ノック”のタコ頭ではなく、ジャパンのJである。)

【図5】《国力研究会》ことサナエ応援団の、風前の灯火の「紫の炎」
【図5】《国力研究会》ことサナエ応援団の、風前の灯火の「紫の炎」

ついでにいえば、ディープパープルは『マシンヘッド』を出した後に「ウーマン・フロム・トーキョー(Woman from Tokyo)」という楽曲を出した。このシングルレコードのジャケットは、梶芽衣子(めいこ)の「女囚さそり」を連想させるような(半世紀前の西洋人の、日本女性に対する、オリエンタリズムが混じった尖(とんが)ったイメージの)女性が写っているのだが、この曲はボーカルのイアン・ギランが来日公演で日本を“体験”して日本女性をたいそう気に入ったことで生まれたという。ディープパープルの「女」そのものをメインテーマに歌った数少ない楽曲で、オリエンタリズムへの過剰な憧(あこが)れが歌われている。

「紫の炎」と同様に、これもオリジナルのレコードジャケットはネットなどでご覧頂きたいが、サナエ・タカイチに関していえば、パット・シュローダー事務所に採用された彼女は、(彼女自身の発言がウソでないのなら)「コンウーマン・フロム・トーキョー(ConWoman from Tokyo)」だったということになる。

「コンウーマン」は「女詐欺師」を指すことばで、「コン(confidence)」すなわち「信頼」を裏切って詐偽を働く奴を「コンアーティスト(con-artist)」といい、男の詐欺師は「コンマン(con-man)」、女の詐欺師は「コンウーマン(con-woman)」という。

【図6】コンウーマン・フロム・トーキョー(左)とオリジナルの『ウーマン・フロム・トーキョー』(右)
【図6】コンウーマン・フロム・トーキョー(左)とオリジナルの『ウーマン・フロム・トーキョー』(右)

ハスッパ娘の癖(くせ)が抜けない“ロックおばさん”には想像もできないことなのだろうが、「ディープパープル(濃紫)」は、日本においては古来、皇室のもっとも高貴な格式を示す色彩であった。首相官邸で「濃紫」と称する“毛唐”の男たちの宣伝を、嬉々(きき)としてやらかす総理などというのは、明治維新期の“尊皇攘夷”勢力がもし今も存在していれば(きっともはや絶滅したであろうが)斬り捨てられるべき対象であったに違いない。

「国力研究会」という名のハレンチ

文化放送の「大竹まことゴールデンラジオ」で「サナエ令和パンパン説」が噴出した10日後に、自民党は、麻生太郎の号令で、来年以降も“サナエ総裁体制”を支え続ける拠点づくりとして、《国力研究会》という“派閥もどき”を発足させた。

「国力」とは何だろうか、と先ずもって疑問に思うわけだが、そういうマジメな疑問はどうやら無意味なようだ。なにしろ《国力研究会》の英語名は、主催者によれば「ジャパン・イズ・バック(Japan is Back)」で、略称もそれをそのまま約(つづ)めた「JiB」なのだそうだ。

「ジャパン・イズ・バック」は中学英語のレベルで訳せば「日本は帰ってきた」となるが、ならば一体いつ、日本は姿を消し、どこに帰ってきたのか? かつて安部晋三は「日本を取り戻(モロ)す!」をスローガンに唱えたが、これは米帝(ベ~て~)支配の「日本が米国に従属する“敗戦国”体制(レヂーム)」からの脱出をハッキリと意味していた。

ならばサナエ総理が唱える「帰ってきた」とは何か? 日本は国連体制に「帰って」きて(1956年12月13日)もうすぐ70年になるし、ほかに“失踪(しっそう)”していたこともない。要するに「ジャパン・イズ・バック」を言挙(ことあ)げしている連中は、無用な劣等感で身を焦(こ)がす“中2病”のガキンチョのようなものだ。

一国の与党の政治家たちが「JiB」などという結社に押しかけたわけだが、ならば「JiB」とは何かと英和辞書を引くと、「jib」の第一義は「【名詞】尻込みする動物(馬など)、【動詞】尻込みする、怯(ひる)んで立ち止まる」であるという。これはまさに自民党の議員たちの憶病(おくびょう)ぶりを示す言葉だ。

しかも「jib」の第二義は「CIAの工作員が用いる替え玉人形(Jack In the Box dummy)」の略称なのだという。これもまさに、米国のスパイ組織であり続けた自民党の本質を喝破(かっぱ)する言葉である。

ところで「こくりょく研究会」を英語でいうと、どういう意味になるのか? 日本語の発音にいちばん近い英単語を探すと、「こくりょく」は「Cock-Lick」になるが、これは「陰茎(コック)を舐め回す(リック)」という意味になる。フェラチオである。『紙の爆弾』5月号でアベ政権の(そしてサナエ政権も)悪弊(あくへい)は「悪友内輪(ワルダチ)政治(フェラクラシー)」(fellaは「友だち(fellow)」の口語表現)であると指摘したが、こんなところで自民党の「おフェラ」が復活するとは思っていなかった……。

「香害」と電磁波 ── 科学的根拠と疑似科学の境界線

黒薮哲哉

「香害」に科学的な根拠はあるのか、それとも疑似科学なのか? この問いと並行して語られるテーマに、電磁波による人体への影響をめぐる議論がある。電磁波による人体への影響に科学的根拠があるのか、それとも疑似科学なのかという問いは、「香害」と同様に重要なテーマである。

2005年から、わたしは電磁波問題を取材してきた。そもそもの動機は、自宅がある集合住宅の屋上に携帯電話の基地局を設置したいという打診がNTTドコモとKDDIからあり、マンションの管理組合で話し合うことになったことである。しかも、基地局は、わたしの書斎の天井を隔てた真上に設置する計画だった。幸い、管理組合が「NO」の判断をし、計画は中止になった。

携帯電話の基地局からは、マイクロ波(電子レンジにも使われている電磁波)が放出される。わたしは電磁波関連の書籍や記事を参考にして、人体に有害であるという結論に達した。わたしが参照した資料によると、基地局の周辺で、目まい、吐き気、耳鳴り、食欲不振、不眠、精神不安などが多発しているという。アンケートなどを根拠に、電磁波は「有害」という結論を出している論考が目立った。

さらに、基地局周辺では、癌の発症率が高いとするデータも紹介されていた。

わたしはこれら情報を信頼していた。事実、電磁波の取材を始めたころに執筆した二冊の書籍、『あぶない!あなたのそばの携帯基地局』(花伝社)、『電磁波で苦しむ人々』(花伝社)には、市民運動体が実施したアンケートを根拠に、携帯電話基地局の周辺で健康被害が多発していると記した。

しかし、その後、検証を重ねるにつれて、奇妙なことに気付いた。日本全国には数え切れないほどの基地局が設置されているが、その99%からは健康被害の報告がないという事実である。一方、市民運動団体が撤去を求めている基地局に限って、健康被害の存在が主張されている。しかも、その「事実」の裏付けとなっているのは、おもに市民運動団体が住民を対象に実施したアンケートである。

アンケートの結果は、実施者の設問や説明の仕方によって大きく左右される可能性がある。アンケートを実施する前に、「基地局の周辺で健康被害が相次いでいますが、あなたは何か体調の異変を感じませんか?」というような説明をされると、回答が誘導される可能性が高い。というのも、目まい、吐き気、耳鳴り、食欲不振、不眠、精神不安といった症状は、電磁波の有無とは無関係に生じることがあるからだ。設問の立て方によっては、体調不良をすべて電磁波に結び付けることになりかねない。

こうした検証結果から、わたしは電磁波についての見解を変えた。残念なら、『あぶない!あなたのそばの携帯基地局』と『電磁波で苦しむ人々』の内容は解釈の一部に誤りがある。

◆「携帯電話基地局の周辺で癌が多発」は事実

しかし、それが「電磁波は安全である」という結論を導くものではない。というのも、携帯電話基地局の周辺で癌が多発していることを示唆する科学的、かつ客観的な疫学調査が複数存在するからだ。

たとえば、ブラジルの大学が実施した調査では、癌で死亡した人の自宅と、最も近い基地局との距離を測定した。この方法で7000件余りのケースを調査したところ、発癌と基地局との関係が示された。ドイツやイスラエルの調査でも、類似した方法論で導かれたデータが報告されている。

となれば、やはり基地局を無制限に設置することには問題がある。

【参考記事】地局の周辺ほど癌が多いことを示すブラジルの疫学調査、癌による死亡7191例と基地局の距離の関係を検証 疫学調査①

わたしも含め、情報は十分な検証を経て拡散すべきだろう。あくまで科学的な根拠に基づいたデータが必要だ。もちろん、予防原則を重視し、少しでも健康被害の可能性があれば対策を取る必要はある。しかし、「香害」と同様、少なくとも主観で左右されるアンケートのデータを過信することには問題がある。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年9月2日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

ロシアのアジア問題第一人者、プーチン大統領の択捉島訪問を建設的に批判

アンドリュー・コリブコ

プーチン大統領の択捉島訪問をめぐり、ロシアのアジア専門家トロラヤ氏は、日米との緊張を高め、ロシアの外交的選択肢を狭める可能性を指摘した。背景には、米英豪の安全保障枠組みAUKUSと日本などの協力拡大があり、米日韓と露中朝という二つの陣営への分断が進む可能性がある。

ロシアのアジア専門家トロラヤ氏
ロシアのアジア専門家ゲオルギー・トロラヤ氏

※   ※   ※   ※

ロシア国内で、ロシアの外交政策に対する建設的な批判が表に出ることは極めて珍しい。ましてや、その分野の第一人者であるトロラヤ氏のような専門家から批判が出ることは、なおさらである。

ゲオルギー・トロラヤ氏を「ロシアを代表するアジア問題の専門家」と呼んでも、決して大げさではない。同氏は数々の肩書や実績を持ち、その一つが、ロシア科学アカデミー経済研究所の「アジアにおけるロシア戦略センター」所長である。

だからこそ、ロシアの有力シンクタンク「ヴァルダイ・クラブ」に寄稿した最新の分析で、トロラヤ氏が最近の日露間の緊張について建設的な批判を行ったことには、大きな意味がある。

この緊張は、プーチン大統領が前例のない択捉島訪問を行った後に高まった。択捉島は、日本政府が自国領であると主張する北方四島の一つである。トロラヤ氏はまず、かなり大胆な予測を示した。

「将来の歴史家が、アジアにおける新たな地政学的構図の出現を、この出来事から始まったと位置づける可能性は十分にある」

そして、次のように説明している。

「もしワシントンが、ロシアの対日姿勢の変化を単発的な出来事としてではなく、モスクワが『太平洋の大国』としての地位を確立しようとしている証拠だと受け止めるなら、米国はまさにその次元で、この挑戦に対抗する可能性がある」

その場合、地域の安全保障環境を大きく変えるような、段階的なエスカレーションが起こる可能性があるという。トロラヤ氏は、その流れを次のように説明している。

  1. 外交的な抗議
  2. 新たな制裁
  3. 千島列島周辺での偵察活動の強化
  4. 北海道での日本の軍事演習
  5. 日米共同軍事演習
  6. 米海軍のプレゼンス拡大
  7. 日本による新たな長距離ミサイルの配備
  8. 米国の攻撃システムの一時的な配備
  9. 米国のミサイルの恒久的な配備

原文ではこの後の記述がやや不明瞭になっているが、最後の段階として、日本が核武装へ向かう可能性を示唆している。まさに「アジアにおけるロシア戦略」を専門とするトロラヤ氏は、さらに次のように結論づけている。

「ロシアのアジア太平洋政策全体という観点から見ると、従来の『多極型』モデルは、今や決定的に崩壊した。このモデルでは、ロシアは日本や韓国など、他の有力国との関係を利用することで、中国への依存を『バランスさせる』という選択肢を持っていた」

つまり、これまでのロシアには、中国との関係を深めながらも、日本や韓国とも関係を維持し、中国への過度な依存を避ける余地があった。しかし今回の展開によって、その外交的な選択肢が失われたという見方である。トロラヤ氏はさらに、この動きによって、「米国・日本・韓国」と「ロシア・中国・北朝鮮」という二つの陣営の形成が加速する可能性があると予測している。最後にトロラヤ氏は、次のように述べた。

「ロシアはアジア太平洋地域で戦略的な存在感を高める一方、外交的に動ける余地を失う可能性がある。現在の世界的対立の段階では、このような『交換条件』は正当化できるように見えるかもしれない。しかし、アジア外交ははるかに長い時間軸で物事を考えることに慣れている。
 ロシアの選択肢が狭まっているという印象を与えないことが重要であり、長期的に信頼でき、予測可能なパートナーであるというロシアの評価を維持し続ける必要がある」

ロシア国内では、ロシアの外交政策に対する建設的な批判が公に示されることは極めて珍しい。特にトロラヤ氏のような、その分野を代表する専門家の場合はなおさらだ。

そのため、この分析の行間を読むならば、トロラヤ氏は、プーチン大統領の択捉島訪問が長期的かつ重大な戦略的影響をもたらすと考え、その訪問を残念に思っている、と解釈することもできる。ただし、トロラヤ氏の業績に敬意を表しつつも、彼の分析では一つの可能性が十分に考慮されていない。

それは、プーチン大統領自身が、こうした一連の動きはいずれにせよ避けられないと考えている可能性である。米国がアジアで進めている計画を考えれば、そのような判断にも一定の合理性がある。

その米国の計画は、簡単に言えば、NATOに似た軍事ネットワークをアジアに構築することだと説明できる。この記事では、それを「AUKUS+」と呼んでいる。詳しくは原文でリンクされている別の記事で説明されている。

【黒薮注】AUKUS+:「AUKUS+」とは、米英豪3カ国の安全保障枠組みとして、それを日本、韓国、カナダ、ニュージーランドなど他の同盟・友好国との協力へ広げていく構想。インド太平洋における、より広い軍事・技術協力ネットワークの構想。日本政府にとって、憲法9条がこの構想の障害になっている可能性が高い。

また、この構想は、米国のエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)が、プーチン大統領の訪問に先立つ8月初めに語った内容ともつながっている。したがって、プーチン大統領がロシア極東への訪問予定の一環として択捉島を訪れたのは、

「米国がアジアで何を計画しているのか、ロシア側は把握している。そして、それに先手を打って対応する」

というメッセージを送るためだった可能性もある。

アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年9月7日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source:https://korybko.substack.com/p/russias-top-expert-on-asia-constructively?utm_campaign=post&utm_medium=web

ミニシアター不在の西宮にシネマカフェ開業のクラウドファンディングにご支援を!

鹿砦社代表 松岡利康

長年西宮ゼミはじめいろいろなイベントでお世話になって来たカフェ・インティライミ(昨年7・12『紙の爆弾』創刊20周年 鹿砦社反転攻勢の集いでも使わせていただきました)にシネマカフェを併設するということです。

ご支援の方法は「ピッコロエビス」で検索してください
https://camp-fire.jp/projects/971918/view

クラファンをやるとは聞いていましたが、すでに開始されていて、9月27日が締め切りということです。うっかりしていましたが、何卒1口乗ってください! 私も支援し、いろいろ企画したいと思っています。硬軟織り交ぜ上映したい映画が多数あります。

学生の頃は、太秦にエキストラのバイトにも何度もいきましたし、学館や京一会館(廃館)でさんざん好きな映画を観ました。そんな懐かしい映画上映を企画したいと思っています。私が企画するので、どんな作品か、皆様方には大体想像がつくと思います(苦笑)。

ちなみに、インティライミオーナーの近兼拓史さんは、かつて阪神大震災後、地域FМをやっていて、鹿砦社から『FMラルース999日の奇跡~ボランティアが作ったラジオ局』を刊行、現在は丹波市でヤクザの事務所の跡地に行政の協力を得てミニシアターを営業されています。そのノウハウをインティライミにシネマカフェを併設するというプロジェクトです。

米政府が保有する「首相のカルテ」高市経歴詐称問題とアメリカ追従

浜田和幸(紙の爆弾2026年9月号掲載)

高市早苗首相が1980年代後半に米国の首都・ワシントンに滞在していた当時の肩書「立法調査官」や「コングレッショナル・フェロー」が、「経歴詐称では?」と話題になっています。

この〝疑惑〞が単なる「スキャンダルのネタ」にとどまらないのは、「米情報機関の監視の目」が事態の行方に注目しているからです。そのことは、今日の日米関係の実態を知る上でも欠かせない要素となっています。

◆「段ボールを敷いて寝ていた」苦労話の真相

実は、就任後の高市首相を揺るがす「経歴詐称疑惑」と彼女が提唱する「和製CIA創設」とは、切っても切れない結びつきがあります。

若き日の高市氏が「スパイのような諜報活動」をしていたため監視されたという話ではありません。「米国での活動を日本国内でどう誇張したか」という政治的スキャンダルと、「最高権力者となった現在の高市氏を米国インテリジェンスがどうマークしているか」の2つの要素が混ざり合っているのです。

高市首相は松下政経塾(5期生)を卒業後の1987年から約9カ月間、米民主党のパトリシア・シュローダー下院議員の事務所に籍を置いていました。私もちょうど同年からワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で主任研究員を務めましたが、この時期の高市氏の経歴の表記が、現在、各方面から激しい追及を受けています。

彼女は長年、テレビ出演時や選挙広報で「米連邦議会 立法調査官」と名乗ってきました。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の報道にあるように、「実態は無給のインターンで、電話番やお茶くみ、コピー取り、有権者への手紙の下書きが主だった」ので、米議会の正式な職員ではありませんでした。

高市氏が、自身の保守的な思想とは真逆なリベラル・フェミニストのシュローダー議員を選んだ理由に思想的な背景はなく、「アメリカの権力中枢で堂々と渡り合う力強い女性政治家」としての姿に憧れを抱いたからです。

彼女がシュローダー氏を知ったのは渡米直前。民主党の米大統領選予備選への出馬を検討し、演説しているのを日本のテレビニュースで観たことでした。高市氏は自著で、「ファッションセンスが抜群で、非常にセクシーで見事な女性が、軍事問題を力強く演説している姿に目が釘付けになった」(『30歳のバースディ その朝、おんなの何かが変わる』大和出版)と書き残しています。

シュローダー氏はリベラル派でしたが、同時に女性として初めて下院軍事委員会の主要メンバーとなった人物。当時、防衛や安全保障への関心を高めていた高市氏にとって、リベラル派というイデオロギーの違いを超えて、「軍事を語れる強い女性」というキャラクターそのものが、理想のトップリーダー像として映ったのでしょう。

なお、ワシントン時代の高市氏が「ベッドも買えず、段ボールを敷いて寝ていた」というのは、前述の著書に記されている有名なエピソードですが、これも彼女の得意な誇大広告にほかなりません。なぜなら、当時、高市氏は松下政経塾の海外研修生という身分で、塾から毎月15万5000円の研究滞在費が支給されていたからです。

確かに、15万円強の資金は決して余裕があるものではなく、米議会でのインターンやフェローといっても活動は完全な無給。そのため、家賃を払うだけで生活費が消えてしまい、家具を買う余裕が一切なかったために、段ボールを敷いての「極貧生活」だったというのが彼女なりの「苦労話」です。

一方で当時、ワシントンに駐在していた日本メディアの特派員、日銀や大手銀行、商社の駐在員、官僚などのエリート層との交流を、高市氏は自慢しています。20代の女性が単身無給で議会に飛び込み、困窮している姿を見かねた日本人駐在員たちが「食事をご馳走する」「生活の相談に乗る」といった形で日常的に援助をしていたケースは多かったようです。〝封印〞されていますが、駐在員の家庭崩壊に繋がったスキャンダルもありました。

高市氏は当時から自己宣伝志向が強く、駐在員コミュニティに対しても「自分は米議会で重要な仕事に関わっている」と熱心に売り込んでいました。米軍関係者との繋がりも、彼女の政治的関心に基づいた人脈作りの一環でした。しかし、事あるごとに、米軍の関係者と親しげに出歩く姿は日本人社会でも憶測を呼んでいたものです。

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nc3e36de0d735

月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾?ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

ライプツィヒ事件には「偽旗作戦」の特徴がそろっている

アンドリュー・コリブコ

ドイツ・ライプツィヒで、ウクライナの貨物機付近から爆発物を積んだドローンなどが相次いで発見され、ドイツ側はロシアの関与を指摘した。しかしプーチン大統領はこれを「偽旗作戦」だと反論している。本稿では、事件をめぐる不自然な点や過去の類似事例、ドイツの急速な再軍備という背景を踏まえ、この事件が戦時体制への移行や今後の対ロシア政策のエスカレーションを正当化するために利用されている可能性を考察する。

※   ※   ※   ※

この事件は、ドイツ経済を戦時体制へ移行させることを正当化し、それによって生じる問題から国民の目をそらし、さらに将来ロシアに対して大規模なエスカレーション(対立の激化)に踏み切ることを正当化するために行われたものだ、というのが私の見方である。

ドイツは、先月ライプツィヒで起きた事件についてロシアを非難した。この事件では、爆発物を積んだドローン1機が、ウクライナの貨物機の近くにある滑走路上で発見された。また別のドローンは、着陸しようとしていた別の貨物機に衝突したものの、爆発しなかったと報じられている。さらにその後、3機目のドローンが空港施設の近くで発見された。

プーチンは、ロシアの仕業だとするドイツ側の主張を非難した。そして、証拠が意図的に仕込まれていることから、自分はこれを「偽旗作戦」だと考えていると述べた。また、その目的について、ロシアへの恐怖をあおることでドイツ国内の問題から国民の目をそらすことではないかと推測した。

こうした見方に懐疑的な人は、ばかばかしいと思うかもしれない。しかし私が見る限り、ライプツィヒ事件には偽旗作戦を疑わせる特徴がそろっている。

まず、ドイツ側の説明に従えば、ロシアはまるで漫画に出てくるような、とんでもない失態を犯したことになる。世界でも屈指の技術を持つとされるロシアのドローン操縦部隊が、もし本当にNATOに対する史上最も衝撃的な「ハイブリッド戦争」の攻撃を命じられていたのだとすれば、ドローン1機を滑走路に放置し、もう1機は着陸中の貨物機に衝突したのに運悪く爆発せず、さらに別の1機まで近くに残していったことになる。これは信じがたい話である。

【黒薮注】ハイブリッド戦争:ハイブリッド戦争(Hybrid Warfare)とは、通常の軍事攻撃だけでなく、サイバー攻撃、情報操作、経済的圧力、破壊工作など、さまざまな手段を組み合わせて相手国を弱体化させる戦い方のこと。

プーチンの「偽旗作戦」説を支持する2つ目の理由として挙げたいのが、昨年秋に起きた似たような出来事だ。当時、正体不明のドローンによって、スカンジナビアの主要空港が一時的に全便の運航を停止する事態となった。

ゼレンスキーは、予想どおりロシアを非難し、ロシア船舶に対してデンマーク海峡を封鎖するよう求めた。ライプツィヒ事件と同じく、その主張を裏付ける証拠は公表されなかった。しかし私は、この出来事によって、ヨーロッパで正体不明のドローン事件が起きた際にロシアの責任だとし、それを根拠に対ロシア政策をさらにエスカレートさせる、という前例が作られたと考えている。

そして3つ目の点として、ゼレンスキーが当時提案した対ロシア措置は結局実現しなかったものの(おそらくNATOとロシアの直接戦争を避けるためだったのだろう)、今回のライプツィヒ事件をきっかけに、何らかのエスカレーションが起こる可能性がある。

私は8月下旬の記事で、ロシアとの対立を大幅に激化させた場合、ロシア側よりもNATO側のほうが得るものが多いだろうと論じた。その具体的な形として考えられるのが、この夏に失敗した対ロシア・ドローン攻撃を大規模かつ長期的に再開し、ロシアの「脱工業化」と「非軍事化」を狙うというものだ。これが来年試みられる可能性もある。

ここで忘れてはならないのは、現在ドイツが、アメリカに次いでウクライナにとって2番目に重要な軍事支援国となっていることだ。ドイツは今年春、ウクライナの長距離攻撃能力を発展させることで合意している。

またドイツは急速に再軍備を進めており、その経済も戦時体制へと移行しつつある。その背景には、2030年ごろにロシアとの戦争が起こる可能性があるというEUの予測を踏まえ、それまでにヨーロッパ最大の陸軍を持つというドイツの目標がある。

しかし、こうした政策は有権者の間で不人気となっている。そのため私は、ライプツィヒ事件を利用して、この政策を正当化する必要があるのだと考えている。

ここまで述べてきたプーチンの「偽旗作戦」説に関する私の見方をまとめると、次のようになる。

昨年秋、スカンジナビアで「ロシアのドローン」に対する恐怖が広がったことで、その後ヨーロッパで同様の事件が起きた際、証拠がなくてもロシア政府の責任だと非難するための下地が作られた。そして今回、ドイツはライプツィヒ事件について実際にそれを行った、というわけだ。

一方で、ロシアのドローン操縦部隊がこれほど無能だったという説明は信じがたい。それにもかかわらず、その説明が広められているのは、ドイツ経済の戦時体制への移行を正当化し、それに伴って生じる国内問題から人々の目をそらし、さらに将来ロシアに対して大規模なエスカレーションを行うことを正当化するためだ、というのが私の見方である。

先ほど述べたように、そのエスカレーションとは、この夏に失敗した対ロシア・ドローン攻撃を大規模かつ長期的に再開し、ロシアの「脱工業化」と「非軍事化」を狙うという形になる可能性がある。

しかし、それを実行すれば、改定されたロシアの核ドクトリンに照らして、ロシアが核兵器使用を検討する一線、いわゆる「核の敷居」を越えてしまう危険性がある。

少なくともプーチンは、ウクライナに対して再び限定的な形で「事態を沈静化させるために、あえてエスカレートさせる(escalate to de-escalate)」という対応を取るだろう。しかし、そこから事態が制御不能に陥る可能性も常に存在する。

したがって私は、最終的にスカンジナビア諸国がそうしたように、ドイツも対立をさらに激化させることは避けるべきだと考えている。

アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年9月3日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source: https://korybko.substack.com/p/the-leipzig-incident-has-all-the

正々堂々、殴り合ったCHALLENGERたち!

堀田春樹

基康、新天地3戦目で王座獲得。新超合筋の実力発揮。
佐々木勝海、庄司翔依斗、赤土剛琉はチャンピオンの底力見せられず。
優心、中島凜太郎はチャンピオンの意地見せる勝利。
興行MVPは2週間前に足の小指骨折しながら出場し判定勝利した竹田奏音。

◎NJKF CHALLENGER 14 / 9月6日(日)後楽園ホール17:15~21:50
主催:オフィス超合金 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)
放送:U-NEXT

◆第9試合 第6代 NJKFスーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.岩本光太郎(誠至会/2003.1.22大阪府出身/ 69.35kg)13戦8勝(1KO)5敗
        VS
2位.基康(岡本基康/TAKEDA/2001.9.22千葉県出身/猶予時間以内で69.85kg)
32戦22勝(11KO)9敗1分
勝者:基康 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:児島42-50. 宮沢43-50. ノッパデーソン43-50

岩本光太郎はヒジ打ち狙いと蹴りでアグレッシブに攻めるが、よりパワフルにパンチと蹴りで的確に攻めたのは基康。初回からコツコツ当てて来た右ローキックが第4ラウンドにはより強力に狙い定めてヒットが増して行った。

基康が強烈なローキックで岩本光太郎を苦しめた

ラストラウンドには基康の強烈なローキックで岩本も体幹保てずバランス崩すようにノックダウン。更にローキックで縺れ合った中でスリップダウンして立ち上がりが遅い岩本はノックダウン扱いされてしまうが、最後まで攻める姿勢を見せた岩本光太郎。基康の大差判定勝利となったが、熱がこもる5ラウンドだった。

基康のローキックでバランス保てない岩本光太郎

岩本光太郎は試合後、「良いところもダメなところも、見返せばあると思うので、それをもう一回修正していきたいです。次に向けて頑張ります。」と語り、こちらの質問が大雑把なので、応え難かったかもしれないが、まだまだ反省点はありそうでも、次に向けて気持ちを切り替える様子だった。

新時代の超合筋。基康が武田幸三イズムを担う

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.佐々木勝海(エス/神奈川県出身27歳/ 63.9kg)
16戦11勝(2KO)3敗2分
VS
SB日本ライト級3位.基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/2001.12.24兵庫県出身/ 63.9kg)27戦16勝(2KO)10敗1分
勝者:基山幹太 / 判定0-3
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:児島27-30. 宮沢28-29. 中山27-30

初回、両者のハイキックが目立つ攻防からパンチと蹴りで圧力掛ける基山幹太が距離感、タイミング掴んで攻勢を強め、佐々木勝海をロープ際に追い詰める。

基山幹太が適材適所蹴り込んでいく

佐々木は蹴って出てもヒットは少ない。基山はリズム崩さずラストラウンドもより勢い増して攻め、佐々木はズルズル基山のペースに嵌ってもどかしい展開で大きな見せ場を作れず終了。採点は初回だけ分かれたが、基山が第2,3ラウンドは完全に抑えて判定勝利。

基山幹太が勢い増して行く中での左ハイキック

◆第7試合 フェザー級3回戦

NJKFスーパーバンタム級暫定チャンピオン.中島凛太郎(京都野口/兵庫県出身27歳/ 56.85kg)14戦8勝4敗1分1NC
      VS
安河内秀哉(RIKIX/2003.10.7東京都出身/ 57.1kg)19戦12勝(6KO)6敗1分
勝者:中島凛太郎 / 判定2-1
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:児島28-29. ランボー30-27. 宮沢29-28

中島凜太郎は下がりながらも安河内秀哉の出方を窺って、パンチ、蹴りで攻めどころをしっかり見極めていく。組み付けばヒザ蹴りで中島ペースは変わらずも第2ラウンドには攻め倦む安河内秀哉がヒジ打ちを放ったか、中島の右瞼がやや切れていた。

中島凜太郎の首相撲でのヒザ蹴りに足払いを掛けた安河内秀哉

第3ラウンド早々、組み付いてヒザ蹴りに入った中島に足払いを掛けてしまう安河内秀哉。転ばせた後、圧し掛かることで中島は後頭部を打ってしまう。軽い脳震盪を起こした感じでインターバルを与えられたが、最大5分までとされる中、早々に切り上げた中島が攻め優った流れも、安河内も前進して蹴っていたことが評価分かれる採点となったが、内容的には中島が主導権支配した展開で僅差ながら判定勝利した。

中島凜太郎と安河内秀哉の打ち合う攻防。安河内秀哉もよく攻めた

◆第6試合 52.0kg契約3回戦

S-1世界フライ級チャンピオン.優心(京都野口/ 2002.5.28京都府出身/ 51.9kg)
22戦11勝(1KO)8敗3分
        VS
NJKFフライ級6位.愁斗(Bombo Freely/2001.11.24茨城県出身/ 51.95kg)
15戦8勝(3KO)4敗3分
勝者:優心 / 判定3-0
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:児島30-26. ランボー30-26. 中山30-26

初回は愁斗がスピーディーにパンチと蹴りで攻めるが、その動きを読んで徐々に巻き返す上手さ目立った優心。第2ラウンドにはロープ際に詰めたところで右のパンチかヒジ打ちでノックダウンを奪い、流れを完全に支配し、ラストラウンド終盤にはまたも右ヒジ打ちで愁斗の額をカット。大差を付けてチャンピオンの風格を見せ付けて判定勝利。

優心の右ハイキックがヒット。愁斗は動きを読まれて為す術が無かった

◆第5試合 フライ級3回戦

S-1世界ミニマム級チャンピオン.庄司翔依斗(拳之会/2007.12.19岡山県出身/ 50.4kg)
8戦7勝(2KO)1敗
      VS
竹田奏音(TAKEDA/埼玉県出身17歳/ 50.5kg)4戦4勝(1KO)
勝者:竹田奏音 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:ノッパデーソン28-29. ランボー27-30. 中山27-30

初回は両者スピーディーな蹴りや組み合っての攻防も竹田奏音が体勢を上手く使った展開を導いた。庄司翔依斗はリズムを作れず惜敗。

MVP獲得した竹田奏音が庄司翔依斗を抑えて勝利。今後も続くだろう若い戦い

◆第4試合 バンタム級3回戦

スック・ワンキントーン・スーパーフライ級チャンピオン.赤土剛琉(D-BLAZE/2007.3.13東京都出身/ 53.45kg)9戦5勝(2KO)4敗
      VS
神田大翔(TOP GUN/大阪府出身20歳/ 53.0kg)7戦4勝(1KO)3敗
勝者:神田大翔 / 判定0-3
主審:児島真人
副審:ノッパデーソン26-29. 宮沢26-29. 中山26-29

初回、組み合うと赤土剛琉のヒザ蹴りが上手いが、パンチと蹴りは神田大翔が勢い有る攻め。第2ラウンドには打ち合いになると神田の連打で赤土からノックダウンを奪った。打ち合わない方がいい赤土だが、巻き返したい心理か、スリリングな接近戦の展開に移る。第3ラウンドは赤土の攻勢に出るヒザ蹴りとヒジ打ちもあったが、神田がパンチでまたもノックダウンを奪って大差判定で勝利。

パンチで来る神田大翔にヒジ打ち合わせる赤土剛琉。打ち合いでは神田が優った

◆第3試合 58.5kg契約3回戦(EX1)

中島大河(GET OVER/愛知県出身18歳/ 58.5kg)10戦4勝(2KO)3敗3分
        VS
陽平(TAKEDA/埼玉県出身17歳/ 58.5kg)5戦2勝(1KO)3敗
勝者:中島大河 / 判定3-0 (30-26. 29-27. 30-26)

中島大河の前蹴りで陽平のアゴを捉えノックダウン奪うとアゴのカットもして流血し、大差判定勝利。

◆第2試合 女子(ミネルヴァ)ペーパー級(95LBS)3回戦(2分制)

琴弥(TAKEDA/埼玉県出身17歳/ 42.95kg)2戦2勝
        VS
岩切菜々美(POLARGYM MIYAZAKI/宮崎県出身18歳/ 42.9kg)3戦2敗1分
勝者:琴弥 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

琴弥のシャープな蹴りでリードし、岩切菜々美も劣勢ながら諦めない姿勢で後ろ蹴りも見せたが琴弥が主導権支配し大差判定勝利。倒せないことを悔しがった。

◆第1試合 フェザー級3回戦(EX1)

宰川桂人(安廣道場/東京都出身20歳/ 56.65kg)2戦1勝1敗
        VS
優琉(TAKEDA/福島県出身20歳/ 56.6kg)1戦1敗
勝者: 宰川桂人 / 判定2-0 (29-27. 28-28. 29-27)

宰川桂人がラストラウンドに軽いタイミングながらパンチでノックダウン奪って判定勝利。

※他、中盤に組まれたアマチュア3試合は割愛します。

《取材戦記》

メインイベント、基康vs岩本光太郎戦はラストラウンドの基康の怒涛のローキックはKOするか、岩本が耐え切るかの鬩ぎ合い。富山勝治がサミー・モントゴメリーを追い込んだラストラウンドが頭を過った(解る人には解る話)。岩本はノックダウンを喫したが、心折れたものではなく、脚が麻痺したら意志に関係無く立って居られないもの。岩本にとっては悔しかっただろう。

基康は第6代NJKFスーパーウェルター級チャンピオン。歴代は長島自演乙雄一郎、健太、TOMONORI、YETI達朗、白神武央と続いたが、今回10年ぶりのタイトル戦復活であった。

基康は新世代の“超合金” としてCHALLENGERシリーズを担っていくだろう。“治政館色濃いなあ” という印象は拭えないが、長江国政と武田幸三のキックボクシング遺伝子を持ってNJKFで先輩二人を超えて行って欲しいものである。

中島凜太郎と優心はチャンピオンの風格を見せたが、赤土剛琉、庄司翔依斗、佐々木勝海は劣勢のまま敗退。契約ウェイトとは言え、チャンピオンたる者は負け方にも見せ場を作らねばならない。新妻聡のような、タダでは終わらぬ一発当てる見せ場が欲しかった。

今回のCHALLENGER 14はノックアウト決着は無かったが、激しい攻防続いた興行でした。

NJKF CHALLENGER 15は11月1日(日)に後楽園ホールに於いて開催。基康がWBC日本タイトル挑戦の模様です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

『季節』2026年秋号巻頭言 第二次熊本地震、千葉大水害が教える原発の危険性に気づき、さらに反(脱)原発の声を高らかに挙げよう!

季節編集委員会

かくもこの世には人間に止めることのできない自然災害が多いのか──。

この夏、私たちを震撼させたのは、まず十年の時を越えて再び襲った第二次熊本地震、そしてこの後に起きた千葉大水害でした。

まずは、亡くなられた皆様にお悔やみ申し上げ、また被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

一見原発とは関係ないように思えますが、よくよく考えると、これらが原発関連施設のある地域で起きたら、もっと大変な事態になっていたでしょう。熊本地震でのイオンや製紙工場での出来事が原発立地地域で起き、さらに原発関連施設で起きていたら、福島で起きたことが再来したでしょう。あまり大きく報じられていませんが、千葉水害でも、放射性物質が流出したとのこと、この影響はないのでしょうか。

実は被災地・熊本は筆者の故郷です。十年前、そして今回と、知人、友人、縁者らの安否確認に追われました。それでも、いささか不謹慎な物言いでしょうが、原発がなかったことによる、正直どこか「安心感」がありました。これが、原発関連施設がある地域だったらどうでしょうか? 二度も大地震が襲った熊本に原発がなかっただけでも不幸中の幸いでした。有明海や不知火海に原発がなかっただけでも後片付けや復旧作業に専念できます。福島の場合、放射能への防御服を着ないと作業はできませんでした。この猛暑のさなか、それがどれほどの後片付けや復旧作業にとって「重荷」になるかは言うまでもありません。

日本は、ひと際自然災害が多い国です。自然の猛威は、ある日突然やってきます。人間に、これを予想し、抗う力はありません。予想でき抗う力があったなら、犠牲者は出なかったはずです。

であるならば、単純な話です、原発再稼働、特に老朽原発の再稼働を断固阻止し、即時廃炉へ向かうべきです。新規原発建設など論外です。

お陰様で本誌は創刊12年を迎えました。毎号発行に伴う財政的やり繰りは大変です。しかし、本誌が持つ〈大義〉はあるはずです。唯一の反(脱)原発情報誌であり、反(脱)原発に微力ながら声を挙げ続ける本誌の発行継続に皆様の力をお貸しください。

2026年猛暑、悲嘆に暮れながら──

季節編集委員会

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉情報誌
季節2026年秋号
『NO NUKES voice』改題 通巻47号
紙の爆弾2026年10月増刊
2026年9月11日発行
A5判 132頁 定価880円(税込み)

《グラビア》原発マフィアに抗うアジアの人々
佐藤大介=ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン)

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 AIと原発

《特集》ファシズムと原発は一体で進む

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 改めて『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』

《報告》七沢 潔(ジャーナリスト)
 原発とサッカーと「苔の一念」 珠洲原発の歴史に学ぶ 

《講演》井戸謙一(弁護士)
 浜岡原発不正問題と原発訴訟

《対談》樋口英明(元福井地裁裁判長)×井戸謙一(元金沢地裁裁判長)
 原発を止めた二人の裁判長が語る 人生・司法・原発訴訟[前編]

《講演》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
 「子ども脱被ばく裁判」の10年
 子どもたちを被ばくから守るために

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 「原発は滅び行く恐竜である」
 熊本地震と浜岡耐震データ偽装からみた原子力産業の現状

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 反省なき原子力拡大路線の構造分析
「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を批判する

《報告》佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局)
 アジアの原発と民衆の闘い
 韓国・台湾・インド・フィリピン


《報告》木村英昭(ジャーナリスト)
[新連載]原発タイムライン〈1〉
 欧州で原発活用の動きが鮮明に

《報告》高野 聡(原子力資料情報室研究員)
 南鳥島での地層処分に潜む問題と植民地主義

《報告》小坂勝弥(核のごみキャンペーン関西)
 「核のごみ」処分地選定のその前に

《報告》山崎隆敏(元越前市議)
 使用済み核燃料をめぐる矛盾と桎梏

《報告》中野(弁護士)
 シン・安全神話
 原発再稼働のために裁判所が生み出した三種の神器

《報告》福島敦子(大飯原発差止京都訴訟原告・世話人)
 3・11 私の15年
 奪われた故郷と、子どもの未来を守り抜く連帯の記録

《インタビュー》河野康弘(ジャズピアニスト)
 3・11 私の15年
 原発はすぐに中止できます!!

《対談》二木啓孝(元日刊ゲンダイ編集長)×板坂 剛(作家/舞踊家)
 大衆心理の不確かな実態[前編]

《報告》原田弘三(翻訳者)
「脱炭素伝道師」江守正多氏の低劣な原発擁護論

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
「全国交流会」で再稼働阻止の議論
《全国交流会》青山晴江(再稼働阻止全国ネットワーク)
《北海道》佐藤英行(岩内原発問題研究会)
《福島》黒田節子(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会)
《福島》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
《東海第二》披田信一郎(東海第二の再稼働を止める会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《中国電力》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《四国電力》名出真一(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会会長)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《本の発掘⑤》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

《反原発川柳》乱鬼龍

amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0HBWF57W7/

『季節』2026年秋号をお届けするにあたって ―― 総力で本誌『季節』発行を継続し、一貫して続く政府による棄民政策、東電の開き直り、なしくずし的に忘れ去られている福島の現状に抗って行きましょう! 

『季節』編集長 小島卓
株式会社鹿砦社代表取締役 松岡利康

わが国唯一の反(脱)原発情報誌『季節』を支持・支援されるすべての皆様! いつも『季節』に特段のご協力、ご支援、有り難うございます。

本誌『季節』2026秋号をお届けいたします。今号も、多くの方々にご寄稿、ご協力を賜り無事発行できました。有り難うございました。

◆12年前の本誌創刊当時の暑い夏を思い出す

本誌今号は、創刊から12年になります。『紙の爆弾』が21年ですから、まだまだですが、思い返せば、まだ福島原発事故の衝撃の余韻が残り国会や官邸前などでも多くの人々が抗議の声を挙げていた2014年8月、本誌(当時の誌名『NO NUKES voice』)は産声を挙げました。以来、12年発行を継続してまいりました。創刊時の編集長は松岡、発行人を兼任していました。当初編集長を予定していた人物は直前で意見の対立が生じ降りました。「もうアカンかな」と思っていた矢先、創刊を相談していた「たんぽぽ舎」共同代表の柳田真さんから突然松岡に電話があり「こういう雑誌はないので、協力するからぜひやって欲しい」ということで創刊に至りました。当時は資金的にも余裕があり、他に類似の雑誌はないので1年以内に黒字になるだろうという甘い見通しでした(80年代、小島が神戸時代から知っている松岡の人生、いつも見通しが甘いものでした)。国会や官邸前から人が去り、また政府や東電も棄民政策を採り、年々、福島の現状は忘れ去られていきました。

これまで続けて来れたのは、松岡の福島原発事故に対する怒り、近い将来同種の事故が起きることへの危機感がありました。そして、松岡のこの想いを理解してくれ創刊1年後から編集長を務めてくれている小島卓、また創刊号より寄稿されている小出裕章さん(創刊号には小出さんのほか今中哲二さん、神田香織さんらの名があります)はじめ寄稿者の皆様方、読者、会員、社債引受者の皆様方らのご支援、サポートによることは言うまでもありません。

◆本誌に関わってくださる小出裕章さんらの熱い心をわがものとし、本誌の貴重な存在意義を忘れずに、更に拡販して行きましょう!

本誌は、小出裕章さんのように創刊号から関わってくださっている方はますます筆致が鋭くなり、号を重ねるごとに新たな書き手も増え、内容も充実してきており、わが国唯一の反(脱)原発雑誌として在り続けています。手前味噌ながら貴重な存在だと自負します。

本誌は、12年前に松岡の発意で創刊しましたが、特段強い決意があったわけでもなく、他分野でヒットが続き資金的にも余裕があり、原発事故への怒りと共に、原発問題に多くの人が関心を持つのに定期刊行物がないのはおかしいではないかという素朴な発想からで、上記したように、1年以内に黒字化し、ゆくゆくは隔月刊にしたいとさえ甘く見通していました。

以来12年、1年以内に黒字化など夢のまた夢で、ずっと赤字でした。それでも他分野で稼げれば、この利益を注ぎ込めるわけですが、これを壊したのは新型コロナでした。出版業界でも、多くの書店が閉店し、本社の近くのショッピングモールに在ったA書店は、かつてライバルだったK書店に看板替えしました。

では、ネット書店や電子書籍はどうか? これらもコロナ前と変わりはなく苦戦しています。営業的に、もっとやり方はあるのかもしれませんが……。

それでも、愚直に続けていれば、多くの助け舟が現われ、想定外の幸運もあるものですが、こうした厚意や幸運を活かし切れていないのも大いなる反省点です。

また、寄稿される皆様方、本誌を支持・支援される皆様方にも拡販をお願いする次第です。隠れた読者は絶対にいるはずです。ぜひぜひ、友人、知人などへの拡販をよろしくお願い申し上げます。

発行している期間が『紙の爆弾』より短いですが、『季節』の定期購読は『紙の爆弾』の3分の1にも及びません。何としても『紙の爆弾』ぐらいには拡販したいものです。よくありますが、グループや組織内での回し読みは絶対にやめていただき、1人=1冊、身銭をきって購読することが基本です。この点、よろしくご理解お願いいたします。今すぐ書店に走ろう! あるいはパソコンに向かいネット書店に注文しよう! 
 
今夏は熊本地震、千葉、北陸、そしてつい最近は名古屋などでの洪水といった大きな自然災害に襲われました。末筆になりますが、被害に遭われた皆様には衷心よりお見舞い申し上げます。

残暑厳しき折り、くれぐれもご自愛ください。

2026年9月11日

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉情報誌
季節2026年秋号
『NO NUKES voice』改題 通巻47号
紙の爆弾2026年10月増刊
2026年9月11日発行
A5判 132頁 定価880円(税込み)

《グラビア》原発マフィアに抗うアジアの人々
佐藤大介=ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン)

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 AIと原発

《特集》ファシズムと原発は一体で進む

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 改めて『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』

《報告》七沢 潔(ジャーナリスト)
 原発とサッカーと「苔の一念」 珠洲原発の歴史に学ぶ 

《講演》井戸謙一(弁護士)
 浜岡原発不正問題と原発訴訟

《対談》樋口英明(元福井地裁裁判長)×井戸謙一(元金沢地裁裁判長)
 原発を止めた二人の裁判長が語る 人生・司法・原発訴訟[前編]

《講演》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
 「子ども脱被ばく裁判」の10年
 子どもたちを被ばくから守るために

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 「原発は滅び行く恐竜である」
 熊本地震と浜岡耐震データ偽装からみた原子力産業の現状

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 反省なき原子力拡大路線の構造分析
「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を批判する

《報告》佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局)
 アジアの原発と民衆の闘い
 韓国・台湾・インド・フィリピン


《報告》木村英昭(ジャーナリスト)
[新連載]原発タイムライン〈1〉
 欧州で原発活用の動きが鮮明に

《報告》高野 聡(原子力資料情報室研究員)
 南鳥島での地層処分に潜む問題と植民地主義

《報告》小坂勝弥(核のごみキャンペーン関西)
 「核のごみ」処分地選定のその前に

《報告》山崎隆敏(元越前市議)
 使用済み核燃料をめぐる矛盾と桎梏

《報告》中野宏典(弁護士)
 シン・安全神話
 原発再稼働のために裁判所が生み出した三種の神器

《報告》福島敦子(大飯原発差止京都訴訟原告・世話人)
 3・11 私の15年
 奪われた故郷と、子どもの未来を守り抜く連帯の記録

《インタビュー》河野康弘(ジャズピアニスト)
 3・11 私の15年
 原発はすぐに中止できます!!

《対談》二木啓孝(元日刊ゲンダイ編集長)×板坂 剛(作家/舞踊家)
 大衆心理の不確かな実態[前編]

《報告》原田弘三(翻訳者)
「脱炭素伝道師」江守正多氏の低劣な原発擁護論

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
「全国交流会」で再稼働阻止の議論
《全国交流会》青山晴江(再稼働阻止全国ネットワーク)
《北海道》佐藤英行(岩内原発問題研究会)
《福島》黒田節子(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会)
《福島》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
《東海第二》披田信一郎(東海第二の再稼働を止める会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《中国電力》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《四国電力》名出真一(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会会長)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《本の発掘⑤》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

《反原発川柳》乱鬼龍

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yodobashi.com https://www.yodobashi.com/product/100000009004287904/

違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか

村岡啓一(紙の爆弾2026年9月号掲載)

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、否認を続けたために、持病悪化による命の危機を訴える中で226日にわたる勾留を受けた角川歴彦・KADOKAWA元会長。「人質司法」の典型として、角川氏は違憲訴訟を闘っている。7月15日、第8回口頭弁論後に弁護士会館で開催された勉強会で、「なぜ、『人質司法』があるのか」をテーマに行なわれた村岡啓一弁護士の講演を編集部でまとめた。

◆「無罪推定」のはずがなぜ「未決拘禁」されるのか

「人質司法」という言葉をご存知でしょうか。国際社会で「ホステージ・ジャスティス(Hostage Justice)」として問題視されてきたものです。

日本の刑事実務では、被疑者が逮捕されると、国家機関(検察官と裁判官)の権限により身体を拘束された状態で、捜査機関の取調べが行なわれます。「身柄を解放されたければ自白せよ」というように、身柄拘束と自白とが対価関係になっています。それゆえ「人質司法」と呼ばれています。

法務省は「日本に人質司法はない」と存在を否定していますが、様々な冤罪事件で知られるように、「人質司法」により被疑者が虚偽自白を迫られた事例には、枚挙の暇がありません。

大正時代の1918年に、京都府知事が府議会議員とともに贈収賄容疑で逮捕される事件(京都豚箱事件)が起きました。当時の訴訟記録によれば、最終的に知事が受けた判決は無罪でしたが、知事らは100日を超える長期の身柄拘束によって自白を迫られました。「人質司法」の実態は、100年以上も前から今に至るまで全く変わらず続いているのです。

さて、日本では、逮捕された被疑者は手錠・腰縄で拘束されます。まだ有罪と決まっていないので「未決拘禁」といいます。でも、どうして無罪が推定されている人間なのに、手錠・腰縄をされるのか? 何かおかしくないですか?

法務省はこの問いにこう答えます。「無罪推定は証拠法上の立証責任を示す原則である。被告人は無罪と推定されるから、国家の側が有罪を証明する責任を負うことを示しているにすぎない」。つまり、法務省は非常に限定した説明をしているのです。

国際的な理解は大きく違い、「国家刑罰権の対象とされた人は裁判所によって有罪とされない限り、刑事手続のどの段階でも制約のない市民的自由が保障されなければならない」です。

また日本では、検察官が取調室で被疑者に対し威圧的な尋問を行なっています。これもおかしくないですか? 被疑者はなぜ一方的に取調べを受忍しなければならないのでしょうか?

これは黙秘権と関係します。黙秘権は憲法38条1項にはっきりと書かれている憲法上の権利です。被疑者が「黙秘します」「これ以上話すことはありませんから、私は房に帰ります」と言って退去してよいはずなのです。ところが実際には、被疑者は取調室で延々と取調官の尋問に晒されます。

これを日本の捜査機関は、次のように合理化します。「捜査機関には被疑者を取り調べる権限があるから、逮捕・勾留された被疑者を取調室にとどめおいて取調べることは許される。被疑者に取調べを受忍する義務があるとしても、黙秘することはできるから、黙秘権を侵害していない」。

その結果、検察官が一方的に尋問し、被疑者は沈黙を続けるという奇妙な闘いが、どちらかが諦めるまで延々と続くのです。そして、時に「検察をなめるな!」と検察官が被疑者を恫喝する事態となるわけです。

カルロス・ゴーン元日産会長の弁護人だった高野隆弁護士の著書『人質司法』(角川新書)の帯文は「逃亡は必然だった」です。ゴーン氏の「日本の刑事司法は中世のままだ!」という叫びには、後述するように明確な理由があります。最近では、ほかにも大川原化工機冤罪事件など人質司法をめぐる国賠訴訟が起こされていますが、角川氏の訴訟は、まさに人質司法の違憲性を正面から問う憲法訴訟なのです。

◆日本国憲法と英文憲法

本題に入り、日本の「人質司法」はなぜ問題なのか、他の国ではこういった問題はないのか、という疑問に答えていきます。憲法・刑事訴訟法・国際人権規約といった法律の解釈について、国際社会の常識と、日本の検察官や裁判官の理解にはズレがあります。このズレについて説明します。

関係する法令は「人身の自由」を定めた憲法34条、身体拘束の要件である「罪証隠滅」を規定した刑事訴訟法60条、国際的な「未決拘禁」のあり方を述べた国際人権規約9条3項です。

まず、憲法から始めましょう。

皆さんは1946年11月3日、日本国憲法とともに「もうひとつの憲法」英文憲法(Constitution of Japan)が公布されたことをご存知でしょうか。国際的な場では、この英文憲法が「日本」の「憲法」として通用しています。英文憲法は日本国憲法を英訳したものではありません。

日本国憲法は形式上、明治憲法(大日本帝国憲法)を改正したものですが、実質的にはGHQが英語で草案をつくり、それに基づき日本で議論がなされました。今日、改憲論議が起きていますが、そこでよく言われる「日本国憲法はGHQに押し付けられた」という主張は、このことを指しています。

では、日本はGHQに押し付けられた憲法を嫌々認めたのかといえば、実態は全く異なります。帝国議会の衆議院と貴族院で、実に丁寧な、逐条的な審議を経て承認したものです。

しかも、草案にはなかった条文まで付け加えています。それが「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」という日本国憲法40条(刑事補償)です。この規定に基づき、不当な身体拘束を受けた冤罪被害者が刑事補償法によって国から金銭的な補償を受けられるようになりました。

GHQはそんなことを考えていませんでした。むしろ、日本の公務員のありようからいって、そんな規定を設ければ、国家の補償を避けるために、かえって被疑者への暴虐行為に走るだろうと考えて反対しました。しかし議員たちは、国家が冤罪を起こせば補償するのが国の当然の責任だと考えて憲法40条をつくったのです。この経過を見れば、日本国憲法は「押し付け憲法」とはいえません。

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nf7067dde44f9

月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

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◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/