堀田春樹
メインイベンターはジョニー・オリベイラ。期待の新星、西田蓮斗はカーフキックで勝利。
前日計量は25日、14時より伊原ジムにて行われ、3名を除いて一回でパス。
山浦俊一は1時間遅れの来場後、3.4kgオーバーで再計量無く計量失格。
伊達は航空便遅延で計量も遅延。ウェジー・チョルは30分後に2回目でパス。
(※記事タイトルはプログラムからそのまま転載です。)
◎TITANS NEOS 37 / 10月26日(日)後楽園ホール17:15~21:27
主催:伊原プロモーション
認定:Woman Muaythai Association、新日本キックボクシング協会
WMA世界戦2試合のスーパーバイザーはアティコム・ポーター(タイ)
戦績経歴は当日プログラム、公式記録、過去データを参照しています。
◆第15試合 62.0kg契約3回戦
ジョニー・オリベイラ(前・日本Fe級Champ/トーエル/ブラジル出身47歳/ 61.8kg)
67戦16勝(1KO)32敗19分
VS
NJKFライト級1位.山浦俊一(新興ムエタイ/神奈川県出身28歳/ 65.4kg)+3.4kg、計量失格
36戦18勝(3KO)16敗2分
勝者:山浦俊一 / TKO 1ラウンド 2分30秒
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
両者のローキックの交錯から山浦俊一の右カーフキックが襲うとジョニーはバランスを崩し、更にカーフキックを貰うとノックダウンしてしまった。ジョニーの左脹脛はすでに蹴られたところが真っ赤。更に蹴りの攻防から山浦のカーフキックを受けたジョニーは2度目のノックダウンを喫し、カウント中にレフェリーがストップした。
ジョニーの蹴り足を掴み、足払いで引っくり返す山浦俊一のテクニック
ジョニーは過去、木下竜輔には2度失神ノックアウト負けしているが、今回は意識がハッキリある中での倒されたTKO負け。悔しい負け方だっただろう。
山浦俊一のカーフキックを受けてバランス崩したジョニー・オリベイラ
◆第14試合 ライト級3回戦
NJKFライト級2位.岩橋伸太郎(エス/1987.6.4神奈川県出身/ 61.1kg)28戦10勝14敗4分
VS
岡田彬宏(クボジム・リレイズ東京/1994.7.15東京都出身/ 61.9kg)12戦5勝(1KO)7敗
勝者:岩橋伸太郎 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:宮沢30-29. ランボー30-29. ノッパデーソン29-28
初回から蹴りからパンチ、組み合うとヒザ蹴りと互角の攻防が続いた。両者ともパンチの交錯で顔面ヒットするも大きな差は無い。どちらがよりインパクトあるヒットを見せるかの鬩ぎ合いは第3ラウンドに岩橋の勢いが優り、岡田が下がり手数が減った流れで終了。
岩橋伸太郎は試合後、「取り敢えずホッとしています。最近ドローとか判定負けとか微妙な結果が続いていたので、今日はノックダウンは取って無いですけど、さすがにポイント取ったという感触はあったので勝てて良かったです。」とコメント。
徐々に岩橋伸太郎の圧力が優っていった攻防
◆第13試合 WMA世界女子スーパーフライ級王座決定戦 5回戦(2分制)
ミネルヴァ・スーパーフライ級チャンピオン.NANA(エス/1990.6.10北海道出身/ 52.0kg)
26戦17勝7敗2分
VS
ジェンディー・モー・ラッソパコーラ(タイ/ 52.05kg)27戦9勝15敗3分
勝者:NANA / 判定3-0
主審:スイット・サエリム・ランボー(タイ)
副審:宮沢49-47. 中山49-46. ノッパデーソン(タイ)49-48
両者の蹴りの攻防はNANAがジェンディーの蹴り足を掴まえたり蹴り終わりを攻めたりと先読みする攻めが優った。ジェンディーは組み合った際のヒザ蹴りはバランス良く上手い攻め。パンチの攻防はNANAが優った。
第2ラウンド終了した時点でNANAが主導権支配した流れを掴んでいた。NANAはジェンディーのムエタイスタイルを殺してしまう勢いがあり、組まれても負けない体勢を作った。ジェンディーは諦めず蹴り返し組み合うとヒザ蹴りは出して来るがNANAを後退させるには至らない。ラストラウンド終了間際にはジェンディーの右ミドルキックにNANAが右ストレートカウンターヒットさせ終了。
ジェンディーに打ち負けない圧力を掛け続けたNANA
NANAは第2ラウンドに転ばされた際、マットに後頭部打ち付けて、そこから展開はあまり覚えていないという。更にヒジ打ち合わせて行ったらバッティングが起こり、左瞼が腫れていった様子。リング下りるまではちょっと腫れていた程度だったが、帰り際は青く充血し腫れ上がっていた。後楽園ホールのエレベーターを下りる際、チャンピオンベルトを指し、「カッコイイです!」と語ったNANAだった。
NANAが終盤には右ストレートでジェンディーを仰け反らせて圧倒の印象を残した
◆第12試合 WMA女子世界ライトフライ級王座決定戦 5回戦(2分制)
佐藤“魔王”応紀(PCK連闘会/1979.1.24宮城県出身/ 48.5kg)26戦14勝(7KO)10敗2分
VS
マフィアペット・モンコンディー(タイ/ 48.05kg)19戦6勝12敗1分
勝者:マフィアペット・モンコンディー / 判定0-3
主審:ノッパデーソン・チューワタナ(タイ)
副審:宮沢47-49. 中山46-49. ランボー(タイ)46-50
初回の攻防から、マフィアペットの蹴りの間合いと首相撲でのウェイトの掛け方がバランス良い流れを汲む動き。佐藤はマフィアペットに蹴られても強く返せないのが主導権を奪えない印象。
第4ラウンドには前に出る佐藤にマフィアペットの前蹴りが顔面にヒット。調子付いたマフィアペットのリズムが増し、ラストラウンドもマフィアペットの前蹴りが突き刺すようにヒットし調子付かせてしまった。マフィアペットが圧倒の判定勝利で新チャンピオンとなった。
佐藤“魔王”応紀はマフィアペットの前蹴りで仰け反らされてしまった
勝利したマフアペットと無念の佐藤“魔王”応紀の明暗
◆第11試合 75.0kg契約3回戦
マルコ(伊原/イタリア出身34歳/ 74.9kg)14戦8勝(3KO)3敗3分
VS
白岩昭人(GRABS/埼玉県出身19歳/ 74.9kg)7戦3勝(2KO)4敗
勝者:マルコ / KO 1ラウンド 2分33秒
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
白岩昭人の蹴りに対し、パンチで前進するマルコ。対抗した白岩だがパンチではマルコが圧力で優った。蹴り合いから接近する中、マルコが右ストレートでノックダウンを奪い、更にマルコが組み合った中でのヒジ打ちを連打すると、ノックダウンとなった白岩にカウント中のタオル投入による棄権で、マルコのノックアウト勝利となった。
◆第10試合 女子ミネルヴァ・ペーパー級(95LBS)王座決定戦3回戦
2位.Uver-miyU(=高橋美結/T-KIX/静岡県出身25歳/ 43.05kg)20戦7勝12敗1分
VS
3位.AIKO(=深田愛子/AX/1987.2.10埼玉県出身/ 42.95kg)22戦10勝11敗1分
勝者:Uver-miyU / 判定2-1
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:椎名28-29. 中山29-28. 宮沢30-28
両者の懸命の激しい攻防だが、強いヒットは無く、どちらが優勢とは言い難い展開が続いた。パンチ中心から蹴り、首相撲でのヒザ蹴りの鬩ぎ合いが続く。AIKOは攻め倦んでいるのか、インターバルでは険しい表情。ウーバーは打たれても前進する圧力が感じられた。
第3ラウンドはより激しさ増し、AIKOのパンチや前蹴り顔面ヒットもあるが、ウーバーの蹴り返しもしっかりあり、一つのラウンドでもスプリット採点となる見極め難しい展開となった末、Uver-miyUが2-1判定勝利で新チャンピオンとなった。
差は付き難い展開だったが、僅かに優ったUver-miyUの蹴りと前進力
認定証を受けるUver-miyUと泣き崩れるAIKO
◆第9試合 女子ミネルヴァ・ピン級(100LBS)王座決定戦3回戦
1位.上真(ROAD MMA/ 1985.10.16石川県出身/ 44.4kg)20戦6勝12敗2分
VS
3位.杉田風夏(谷山・小田原/神奈川県出身29歳/ 45.1kg)7戦5勝(1KO)1敗1分
勝者:杉田風夏 / 判定0-3
主審:スイット・サエリム・ランボー
副審:椎名27-30. 中山27-30. 宮沢27-30
開始から杉田風夏がプレッシャーを与えた展開。杉田の前蹴りが上真の顔面ヒット。首相撲からヒザ蹴りの展開になっても常に杉田の圧力が優った流れでも、ポイント引き寄せる大きな攻防は無いが、微妙ながら各ラウンドを抑えた杉田がフルマークの判定勝利で新チャンピオンとなった。
主導権支配した杉田風夏の攻めの中、前蹴りが上真の顔面にヒット
◆第8試合 68.0kg契約3回戦
ヴェジー・チョル(伊原/中国出身21歳/ 68.15→67.85kg)8戦3勝3敗2分
VS
風成(エス/東京都出身28歳/ 67.55kg)6戦3勝(1KO)1敗1分1NC
勝者:風成 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:椎名26-30. 中山27-30. ノッパデーソン27-29
初回、蹴りの攻防の中、前進していたヴェジー・チョルに風成が右ストレートでノックダウンを奪った。ダメージ少ないヴェジーは構わず打ち合いに臨むが、風成も打ち合いに応じて打って出た。ヴェジーのアグレッシブなパンチの前進は続くが、風成が蹴りを加えた返しで凌ぎ切った。勝利した風成は号泣してリングを下りた。
◆第7試合 59.0kg契約3回戦
アルナウ・コルドバ(スペイン、ナショナルK-1Champ/スペイン出身24歳/ 58.55kg)
12戦11勝1敗
VS
伊達(GRABS/北海道出身22歳/ 58.25kg)5戦4勝(2KO)1敗
勝者:アルナウ・コルドバ / TKO 1ラウンド 1分51秒
主審:中山宏美
パンチから蹴りの攻防。アルナウ・コルドバのパワフルな蹴りが伊達を襲ったが、伊達の蹴り返しも強くヒット。コルドバが伊達をロープ際に詰めたところでパンチ連打し、ノックダウンを奪い、更に蹴りの攻防からバランス崩した伊達のボディーに右ミドルキックがヒットしカウント中のレフェリーストップとなった。
◆第6試合 60.0kg契約3回戦
オスカル・カサド(スペイン出身17歳/ 59.3kg)14戦8勝6敗
VS
篤志(バトルフィールドチームJSA/千葉県出身16歳/59.45kg)5戦3勝2敗
勝者:篤志 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:宮沢29-30. 中山28-29. ランボー28-30
両者アグレッシブな攻防の中、オスカル・カサドの飛び蹴りや右ストレートヒットがインパクトを与えたが、篤志も徐々に打ち優っていく中で僅差判定勝利を導いた。
◆第5試合 フライ級3回戦
西田蓮斗(現・タイ国南部3冠王者/伊原越谷/東京都出身15歳/ 50.8kg)
タイ3戦3勝(1KO)、日本1戦1勝(1KO)
VS
RIKIYA T-KIX(T-KIX/静岡県出身28歳/ 50.6kg)2戦1敗1分
勝者:西田蓮斗 / KO 2ラウンド 2分30秒
主審:宮沢誠
西田蓮斗は日本デビュー戦ながら、アマチュアで五つの王座を獲得し、タイでプロ3連勝の経験が試合運びに表れた流れ。初回、RIKIYAにプレッシャーを与えカーフローキックで2度ノックダウンを奪い、第2ラウンドにもカーフキックでノックダウンを奪うとRIKIYA陣営からカウント中のタオル投入による棄権となって西田がノックアウト勝利となった。
来月、スペインで行われるWKN(World Kickboxing Network)タイトル挑戦の宣言。勝利を誓った。
◆第4試合 女子アマチュア45.0kg契約2回戦(2分制)
西田結菜(伊原越谷/13歳/ 43.5kg)vs工藤優菜(GRABS/13歳/ 44.75kg)
引分け 1-0
主審:中山宏美
副審:椎名19-19. 宮沢20-19. ノッパデーソン20-20
◆第3試合 女子ミネルヴァ・スーパーフライ級3回戦(2分制)
スーパーフライ級6位.紗耶香(/格闘技スタジオBLOOM/静岡県出身/ 51.9kg)
20戦8勝(1KO)11敗1分
VS
スーパーフライ級10位.松藤麻衣(クロスポイント吉祥寺/長崎県出身/ 51.8kg)9戦3勝6敗
勝者:紗耶香 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:中山30-29. 宮沢30-29. ノッパデーソン29-28
◆第2試合 女子ミネルヴァ55.0kg契約3回戦(2分制)
MEGU(KICK-SPARK/大阪府出身45歳/ 54.9kg)11戦2勝9敗
VS
朱乃(CORE/ 54.7kg)3戦2勝1敗
勝者:朱乃 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:椎名27-30. 中山27-30. ランボー27-30
◆第1試合 アマチュア49.0kg契約2回戦(2分制)
ツカサ(伊原越谷/15歳/ 49.1kg)
VS
ディエゴ・アンビテ(スペイン/14歳/ 48.9kg)
勝者:ツカサ / TKO 2ラウンド 1分14秒
主審:中山宏美
《取材戦記》
今回から登場したWMAは“ワールドムエタイ”ではなく、“ウーマンムエタイ” である。Battle of MuayThaiイベントから始まったという女子のタイトル認定団体の模様。
WMA世界女子スーパーフライ級王座決定戦に出場したジェンディーはトランクスに縫い取りされている名前が正式なリングネーム。ローマ字発音で言うと“Yenlii(เยลลี่)”。YはJに近い発音になるので“ジェンリー”が最も近い発音と表記になります。
前日計量でスーパーバイザーのアティコム・ポーター氏とLINE交換をしたところに女性がやって来て「私も撮らせて!」とQRコードを撮られてしまった。試合後連絡が来たが、マフィアペットかジェンディーが解らなかった。
「あなた誰?」と返したら「私の名前はゼリーです!」と来た。この子のLINEプロフィールと試合画像を確認して解った。Yenliiである。“ゼリー”は自動翻訳が出した文字だろう。
私が何が言いたいかは、プログラムに書かれるタイ人の名前やタイトルは、タイ文字から読み取って欲しいのである。今時はタイ語を勉強した選手やコーチ、スタッフ等は多いのですから。
以前あった“ムエタイワリア(Warriors)”や“パーカン(Park・klang)”もタイ人が言った言葉をそのままカタカナ書きしているから誤った文言になっているのである。
山浦はお子さんから移ったというインフルエンザに罹った為のコンディション調整が間に合わず、大幅ウェイトオーバーとなってしまった。今回の契約上のペナルティーは規約や両陣営と協会の協議によるが、試合ペナルティーは減点2点のみだった。
プロボクシングルールを参照すれば、超過3%以上は試合中止となるが(3%未満は契約ウェイトから超過8%以内での当日再計量を経ての試合は可能。いずれも一定期間ライセンス停止)、キックボクシングは興行の都合が優先される場合が多く試合は強行された。
ジョニーは試合後、控室では陣営に謝っていたという。セコンド陣営は「ジョニーはスーパーフェザー級の時も結構カーフキックは貰っていたけど大丈夫だった。山浦はいい狙い目見てるんで、最初の一発で効いてしまった感じ。山浦はスタミナ無いと聞いていたので、プレッシャーを掛けて行こうと思ったけど、その前にカーフ貰って効いてしまいましたね。左脹脛の横、一番筋肉の薄い辺り、一番痛いところ!」という。
山浦のウェイトオーバーについては何も問題視しなかったジョニー。カーフキックもウェイトの影響より、山浦のピンポイントのヒットが大きかったという。
山浦俊一が大幅ウェイトオーバーしたことについて、新興ムエタイジム坂上顕二会長(NJKF代表)は試合前、今回の事態に申し訳なさそうな立ち回りだった、
「山浦はコンディション調整不足でスタミナは無いから一層のこと、ジョニー・オリベイラが山浦を倒してくれれば、その方がスッキリしますけどね。」と本音を漏らしていた。
7月27日興行で、木下竜輔(伊原)がガン・エスジム(タイ)との試合を欠場した為、代打出場となった山浦俊一だったが、鳶職の現場での足場転落事故で大事には至らなかったが負傷し欠場となった。その為今回も欠場とはいかない責任を感じ強行出場したが、コンディション調整成らなかった山浦俊一だった。
「こんな事態の末にセコイ勝ち方ですみません。」とは試合後、ジョニー陣営に申し訳なさそうに語っていた坂上顕二会長だった。
新日本キックボクシング協会は2026年も後楽園ホールで4回の興行を予定。3月8日、5月10日、7月19日、10月18日のいずれも日曜日に開催です。
木下竜輔は3月に復活出場予定。期待の新星・西田蓮斗は来年はどのような活躍を見せるか。低迷する新日本キックを救うのはこの二人だろう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」