日野町事件で再審開始が確定! 

尾﨑美代子

滋賀県で1984年に起きた日野町事件、あまり聞きなれなかったこの事件のことを聞いたのも亡くなられた桜井昌司さんからだった。「あれもひでえ事件だよな。証拠の写真がすり替えられてるんだからさ」。

この事件も「日本の冤罪」で取り上げた。伊賀興一弁護団長を取材すると、開口一番こう言われた。

「この事件はいつどこでどんな事件だったかという事件性の中身がいまだに明らかにされていません。これがこの事件の最大の特徴です」。

私は一瞬何のことか?と耳を疑いながら、限られた時間内で事件の全体を知ろうと、そのまま伊賀弁護士のお話を聞き続けた。殺害されたのは小さな酒店の女店主、犯人とされたのは店の常連客だった阪原弘さん。逮捕までの間、連日取り調べをうけた弘さんは、警察から戻ると、「入れ歯の金具が不具合を起こすほど殴られた」と家族に告げた。そんな暴行より我慢できなかったのは、もうすぐ嫁に行く娘の嫁ぎ先にいき「ガタガタにしてやる」と言われたことだった。それだけは避けたいと、「酒を飲む金欲しさ」に店主を殺害、遺体と金庫を別々の場所に捨てたと嘘の供述をさせられた。

じつは、その日、弘さんは知り合いの家で飲み、そのままそこで寝てしまっていた。そのアリバイを証明する知り合いも、警察に脅されたのか、一時期は「泊まってない」という様になった

一方、女店主はその日、店を閉めたあと知り合いと食事をしていた、銭湯で見たなどの証言もあった。店の奥で寝ていた家族も、何かゴタゴタガあったとは言っていなかった。女店主は、その日は普通に店を閉め、用事で出かけていたのだ。翌日は別の従業員が店をあけたようだ。店が開くのを外で待っていた客もいた。つまり鍵はかかっていたわけで、阪原弘さんの「自白」、「店の鍵を閉めなかった」は虚偽になる。そうか、これが冒頭、伊賀弁護士の話した言葉につながるんだ。この事件は阪原弘さんを犯人に仕立てたことで、どんな事件だったかが、42年経っても不明のままなのだ。

桜井昌司さんがいう「証拠の写真が入れ替わっている」について、伊賀弁護士にお聞きした箇所が以下の部分だ。

── 以下「日本の冤罪」より引用

 一九八八年三月に行われた引き当て捜査で阪原さんは、警察車両を停めた道路から一〇分ほどの、草が生い茂り、倒木が横たわるような「道なき道」を、捜査官を従えて発見現場に到達したとされた。実況見分調書には、阪原さんが先頭に立ち、後ろに着いてくる警官らに進んで発見現場を案内したとする写真と写真の説明文で、一九枚の写真は「往路」「復路」の順番に添付されており、写真ごとに「(阪原さんが)ここでこう説明した」などの説明文がつけられていた
 しかし弁護団が、これらの写真のネガの番号を調べたところ、順番が全く間違っていることが判明した。しかもネガには、発見現場に行く「往路」の写真はほとんどなく、金庫の発見現場である到達点から、警察車両に戻ってくる「復路」で撮った写真ばかりだった。そもそも阪原さんが犯人で現場を知っているならば、現場に向かう「往路」の写真だけ撮れば十分なのに、「何故往路の写真が撮られてないのか?」。弁護団に疑問が湧いてきた。さらに調べると、現場に行く際撮ったとされた写真の何枚かが、現場からの帰り道に撮られたものであることも判明した。本当ならば警察車両に向かって戻ってくるはずの「復路」の場所で、阪原さんが反対側を向かされ写真を撮られていた。捜査官が復路で撮った写真を往路の写真としてネガを入れ替えていたのだ。── 引用終わり

「これだけでももう再審開始だよ」と桜井さんは力強く言ってたのに。あれからだって相当な年月が過ぎている。桜井さんはこの嬉しい決定、そして再審無罪判決を聞くことはできない。どんだけ、時間が経っているんだ。それもこれも、検察が負けとわかっているのに、控訴、上告を続けるからだ。ただただメンツのために。どんだけつまらんメンツなんだ。絶対許せん。再審法は、検察の控訴、上告も禁止する「議連案」でやるしかないんだよ! ねえ、桜井さん。

◎本日2月28日(土)午前10時~大東市の野崎人権文化センターにて尾﨑美代子さん講師による人権講演会「冤罪はこうしてつくられる」開催されます。参加費無料 
問い合わせは野村さん(090-2283-6932)まで。https://nozaki-jinbun.net/

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

再審法「改悪」に反対する ── 獄中で冤罪を訴え、再審を待つ人たちの不安を思う

尾﨑美代子

◆法律は立法事実に叶うことが必要なのに……

「前川さんが立法事実なんです!」と叫んだ自民党の稲田朋美議員。

「立法事実」という言葉を知ったのは昨年、「はんげんぱつしんぶん」編集長・末田さんの講演会でだった。立法事実とは、その法律を作り、あるいは元ある法律を改正する際に必要な事実である。

私が店をやっている釜ヶ崎の労働者の安全と命を守る「労働安全衛生法」に例えるならば、高さが2メートル以上の場所での高所作業に就く労働者を守るため、以前なら労働者に義務づけられた安全帯1丁掛けが2丁掛けに変わり、今では「フルハーネス」にかわった。

企業にとってこの法を厳守することは、労働者の安全を守る意味もあるが、一旦転落・死亡事故など起こしたら、現場はストップ、工期が遅れるからでもある。とはいえ、こうして法改正を行うことで労働者の転落・死亡事故は確実に減っている。

朝、露店で売っていた安全帯

あらゆる法律の制定、改正時にはこの「立法事実」が必要だし、法律は立法事実に叶うことが必要なのだ。まさに、それ。前川さんや袴田さん、そして名張葡萄酒事件の奥西さんの妹さん・岡美代子さん、大崎事件の原口アヤコさん、そして雪冤を果たせず亡くなった石川一雄さんこそが「立法事実」なのだ!この人たちを早期に救済し、二度と同じ過ちを生まないための法改正が必要なのに。

それなのになんだ? 現在、進む再審法改正の動きは? 多くの冤罪──罪のない人に罪を押し付けて苦しめてきた──が明らかになり、世間に知られてきた。しかも冤罪を晴らす再審法が70年以上も変えられてないことが問題視された。2019年にハンセン病元患者の家族に対する補償法を超党派で成立させたときのように、国会議員が超党派で力をあわせ、冤罪をなくすための法改正に取り組んできたのに、前述したようにいきなり法務省が「いやいや、そこは専門家の私たちにまかせてください」とばかりに出張ってきた。法制審が審議する再審法は「改正」どころか、とてつもなく「改悪」の方向へ進もうとしているではないか?

「血のついた前川を見た」と証言した男は、かわりに自身の覚醒剤使用を見逃して貰い、結婚祝いまで貰っていた

◆再審法を大きく改正してきた台湾に比べると……

井戸弁護士が訴えていたように、法務省、警察、検察は、これまで数多の冤罪を作ってきた張本人、いわばこの問題に関しては被告の立場なのに……何を偉そうなこと言ってるんだ。井戸弁護士は言わないけど、私は言ってやるね。法務省よ、さんざん窃盗繰り返してきたクセに、何が「皆さん、戸締まりについて考えましょう」だ。どの口が言うんだ。怒りが収まらん。

日本は、本当にだめ。人質司法や弁護人不在の取り調べなどの人権問題を、国連から何度も是正せよと勧告を受けているのに、本当にこの国はダメだ。例えばこの間、2015年と2019年の二度にわたり、再審法を大きく改正してきた台湾を見てよ。それは間違えて逮捕してしまった被告人が自殺し、その後に真犯人がみつかった経験から、猛省したからだ。

台湾は地震対策にしても、2018年の花蓮で起きた地震でプライバシーが守れないなどの被害が出たことを反省し、その後、地震発災から3時間以内にテント型の避難所を設営するなどに努めてきた。住民に被害がでたら反省する、間違った部分を直す、ただそれだけのことなのに、日本の国、政府は絶対にやろうとしない。昨日、服役中の方から届いた手紙にも、再審法が悪い方向へ向かっているようですねと書かれていた。獄中で冤罪を訴え、再審を待っている人たちはどんなに不安だろう。どう返事を返していいかわからない。

2月28日(土)10時~大東市の野崎人権文化センターで「冤罪はこうしてつくられる」で使うパワポの写真を添付しました。参加費無料 https://nozaki-jinbun.net/
問い合わせは野村さん(090-2283-6932)まで。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

「司法の独立・裁判官の独立」について ── モラル崩壊の元凶押し紙(下)

江上武幸

近時、弁護士が依頼者の金銭を横領する事件が多発しています。また、弁護士事務所の法人化、支店の設置、広告宣伝の自由化により、相談料無料・着手金無料をうたったホームページが多く見られるようになりました。日本版アンビュランス・ローヤーの出現という問題です。

(注:アンビュランス・ローヤーとはアメリカの俗語で、交通事故などの被害者が乗った救急車(ambulance)を追いかけ、病院で動揺している被害者やその家族に接触し、損害賠償請求の訴訟を持ちかけて依頼を得ようとする弁護士たちを指す言葉です。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする日本の弁護士制度にはなじみません。)

検察関係では、証拠の捏造や改ざん・隠ぺい、検事正による女性検事への性加害事件や、検事総長就任予定者による新聞記者との賭けマージャンなど、信じがたい事件が起きています。

※京大卒業で検事に任官したクラスの友人が、6年目にして将来の出世コースに乗っているかどうかが分かってきたと話してくれたことは以前述べた通りです。実は私も、長兄が警視庁に勤務していたこともあり、検事を志望していた時期がありました。しかし、指導教官から任官の誘いを受けたことは一度もありませんでした。高校時代にベトナム反戦ビラを正門前で配ったことがあったからでしょうか。

裁判官の世界では、袴田事件に見られるような、無実の人間に対する死刑判決をめぐる再審無罪や、がんに罹患している無実の被疑者の保釈請求が却下されたことによる病死、退職後の裁判官の大手弁護士事務所への再就職問題など、裁判官への信頼を大きく揺るがす状況が見られます。

※(元)法務大臣の河井克行氏は、2008年に『司法の崩壊-新弁護士の大量発生が日本を蝕む』(PHP研究所)を出版しています。

河井氏は2019年9月11日に法務大臣に就任しましたが、同年7月の参院選をめぐる運動員買収の疑惑により、2020年6月に逮捕され、2021年に懲役3年の実刑判決を受けて収監されています。就任後まもない2019年10月31日付で辞任しており、週刊誌報道から辞任、さらに逮捕・実刑判決に至る経緯は、法務大臣経験者に対する刑事処分としては異例に見えます。自民党の裏金議員に対する検察の対応の甘さと比べると、その差は際立っています。

そのため、河井氏が法務大臣として司法制度改革の見直しを言い出しかねないことを危惧した勢力が背後にいたのではないかと考えざるを得ません。

「存在が意識を決定する。」という言葉が、ずっと気になっています。自分が新聞社側の代理人であったら、検事であったら、裁判官であったら、という考えが頭をよぎることがあります。生まれたときの人間の脳はまっさらです。その後の体験と学習の積み重ねによって脳細胞同士がつながり脳が発達していきます。生まれ育った環境や受けた教育、労働・社会体験の有無や内容によって、ひとりひとりの脳が異なっていくのは自然なことです。

*家族や親せき、近所の人たちから戦争体験の話が聞けた機会があった世代や、読書好きで戦争文学を読んだことのある世代は、なんとか戦争を肌で感じることができるかもしれません。しかし、戦争のない時代に生まれ育った人間が(私もその一人です)、戦争の恐怖・残酷さ・悲惨さを感じ取るには、教育の力によるしかありません。

先の戦争の歴史を教える教育がなされたのは、朝鮮戦争が始まるまでのほんのわずかな期間でした。1947年発行の文部省『あたらしい憲法のはなし』は、1950年の朝鮮戦争勃発を機に使用されなくなりました。

1947年8月2日、当時の文部省は、同年5月3日に施行された日本国憲法を解説するため、新制中学校1年生用社会科の教科書として『あたらしい憲法のはなし』を発行しました。その教科書で平和主義、戦争(戦力)放棄条項について、中学生に向けて次のように呼びかけています。

「こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、おそろしいことがたくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。」(ウィキペディアより)

漫画家・中沢啓治氏の原爆劇画『はだしのゲン』が学校の図書館から姿を消すようになったのは、2012年頃からとされています。この漫画を読んだ子供と読んでいない子供とでは、原爆の悲惨さや残酷さを認識する脳作用が大きく異なるであろうことは、容易に推測できます。

防大生が制服姿で靖国神社の参道を行進する姿や、軍服姿の大人が日の丸を掲げて歩く姿を見ると、戦争の悲惨さや残酷さを認識する脳細胞群が十分に形成されないまま成長した人間の危うさを、ひしひしと感じます。

※存在が意識を規定するのであり、意識が存在を規定するのではありません。教育を十分に受けることができれば、誰でも大学に進学できる程度の脳の形成は可能です。オウム真理教や統一教会などのエセ宗教が狂信的信者を作り出すのも、洗脳によって思考が固定化されるためです。

経済的に裕福な家庭に生まれ育ち、空腹も労働の体験もなく、受験勉強一筋で育ってきた、戦争を知らない子供たちが、大人になって、いっぱしの政治家・官僚・自衛官として権力を手にしたとき、どんな世界が到来するのか。そう考えただけで恐ろしくなります。

※世襲議員の小泉進次郎防衛大臣が自衛隊服を着込んで、パラシュート降下訓練のまねごとをしているのをニュースで見ました。随分前のことですが、地元で著名な陶芸家から、ある会合に呼ばれたとき、玄関前に整列した会員が一斉に敬礼して出迎えたという話を聞いたことがあります。また、大の男たちが近くの山中でゴーグルをつけ、エアソフトガン(遊戯銃)で戦争ごっこをしているという話を聞いたこともあります。その話を聞いたときに感じたのと同じ、何とも言いようのない気持ちに襲われました。

都会に生まれたか田舎に生まれたか、裕福な家庭に育ったか貧しい家庭に育ったか、両親そろった家庭で育ったか片親の家庭で育ったかといった個人的事情にかかわりなく、すべての若者が無償で高等教育を受けることができ、女子学生が奨学金返済のために夜のアルバイトをしなくて済むよう、返済不要の奨学金制度が整備されていれば、全国津々浦々から優秀な若い人材が生まれてくることが期待できます。

最近、在日3世の李相日監督の映画『国宝』を見ました。冒頭の長崎市の料亭での、やくざの新年会の出入りの場面を見ながら、暴力団そのものを禁止する法律があれば、多くの若者がやくざの世界に足を踏み入れることもなく、堅気として生きていくことができたはずだ、という思いに駆られました。

小選挙区制のもとでの世襲議員や、森友学園の土地払い下げ問題で、公文書の改ざん・廃棄を部下に指示したとされる高級官僚、学歴詐称やセクハラ・パワハラ問題が絶えない自治体の首長らと、映画『国宝』に登場する親分衆の顔を見比べると、役柄とはいえ、その風格の違いは歴然としていました。「親ガチャ」という言葉の持つ意味が、はっきりと分かる場面でした。笹川良一・児玉誉士男ら政界の黒幕が戦後も脈々と生き続けることができたのも、警察や自衛隊が対処できない問題が発生したときに備えさせるためであるとの見解がありますが、十分うなずけます。

表題の「司法の独立・裁判官の独立」からは大きくそれてしまいましたが、意図するところはお分かりいただけるのではないかと思います。

※古賀茂明(元)通産官僚、前川喜平(元)文部科学事務次官、孫崎享(元)外交官、岡口基一(元)裁判官らが、政治家・官僚・マスコミ人の劣化による「日本全体の崩壊」を危惧しておられます。そのような良識ある官僚OBや現役官僚の方々がたくさんおられるのは救いです。

岡口(元)裁判官によれば、近時、裁判官の任官希望者が減っており、中途退職者も増えてきているとのことです。「鯛は頭から腐る」「沈む船からネズミは逃げる」と言われますが、出世に関心のない若い世代の人たちが中心となって沈む船にとどまり、腐った鯛を生き返らせてほしいものです。

先の大戦で、本来死ぬべきではなかった多くの若者が真っ先に死に追いやられ、本来戦争責任をとって死ぬべきであった大人たちが、のうのうと生き残るという恥ずべき歴史を日本は持っています。そのような歴史を繰り返してはなりません。

※先ごろ102歳で人生を閉じられた裏千家の千玄室さんは、80年前の戦争を知る世代の人間がいなくなってしまったことで、日本が再び、あのような悲惨な戦争を引き起こす情けない国になるのではないかと心配し、残された私たち一人ひとりに警戒を怠らないよう警告して旅立たれました。生前、田中角栄氏も同じことを話しておられたとのことです。

※新聞・テレビ等のマスメディアの報道の自由度が世界第70位で、先進国の中では最低にランキングされるという惨憺たる状況にありますが、若い世代の新聞・報道記者らが奮起して国民の知る権利に応え、傾いた船をまっすぐに進めるために頑張ってくれることを期待しています。

次回は、弁護士人口の大幅増大、弁護士事務所の法人化と宣伝の自由化、弁護士報酬規程の撤廃などがもたらした弁護士業界の弊害と解決策等について、地方の単位弁護士会の決議・意見書等を参考に、私見を述べたいと思います。

なお、引き続き西日本新聞と毎日新聞の押し紙裁判の行方に注目していただければ幸いです。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年1月19日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

米国CIA・NEDの情報支配 アメリカによるベネズエラ侵略の真相

黒薮哲哉(紙の爆弾2026年3月号掲載)

現地時間の2026年1月3日午前1時50分ごろ、米国陸軍デルタフォースは、ベネズエラの首都カラカスの軍事施設などを空爆すると同時に大統領私邸を急襲し、ニコラス・マドゥーロ大統領を拉致した。

マドゥーロは妻のシリア・フローレスとともに米国へ移送され、ニューヨーク州北部の空軍基地に到着した際には、手錠をかけられていた。麻薬密売ネットワーク「太陽のカルテル」の首領であり、麻薬・武器の密売などに関与したというのが容疑である。

2020年3月の起訴から、およそ6年が経過していた。ベネズエラのテレスール紙(1月13日付)などによれば、警備に当たっていた兵士ら100人余りが死亡したという。この中には32人のキューバ兵が含まれていた。

キューバ兵の配置はベネズエラ側の要請によるものであり、キューバがCIA(米中央情報局)による600回を超えるとされるフィデル・カストロ暗殺計画を阻止してきた実績が評価された結果だという。

だが、そうした備えも功を奏さず、マドゥーロ夫妻は拘束され、米国へ連行された。米軍側に死傷者は出なかったとされる。

ベネズエラのホルヘ・アレアサ前外務大臣は、米国の独立系メディア「ザ・グレーゾーン」のインタビューに対し、「我々はあらゆる事態に備えていたが、レーザー機能を無力化するなど、最新鋭の軍事テクノロジーが使われ対応できなかった」と、完敗を認めた。

米軍は軍用ヘリコプターに加え、複数のドローンも展開したとされる。音響兵器を使ったという報道もある。これは音波を利用し、人体に強い負荷を与えたり、平衡感覚を狂わせたりする兵器である。

軍事侵攻から2日後の1月5日には、マドゥーロ大統領がニューヨークの連邦地裁に出廷した。一方ベネズエラでは、副大統領のデルシー・ロドリゲスが暫定大統領に就任。6日には、ベネズエラの新政権と米国が、ベネズエラが3000万~5000万バレルの石油を米国に引き渡すことに合意した。

トランプ大統領はSNSに次のように投稿した。

「石油は市場で売られ、その収入はベネズエラと米軍関係者のために使われるよう、米国大統領である私が管理する!」

◆西側メディアを支援してきたUSAIDとNED

「AERAデジタル」(1月13日付)で元経産官僚の古賀茂明氏は、この事件について「マドゥーロ大統領は、独裁者でベネズエラ国民の人権を侵害し、さらに国内経済を疲弊させ、800万人と言われる難民が国外へ逃がれるという事態を招いている」と記述した。

日本は西側諸国のメディアの影響を受けることが少なくない。たとえば国境なき記者団(RSF)は大きな影響力を持ち、同団体が毎年公表する「報道の自由度ランキング」は、多くの人に参照されている。ランキングを疑う日本人はほとんどいない。

しかし、西側メディアの報道内容が常に政治的な利害関係と切り離された形で提示されているとは限らない。たとえば、メディアの独立性にかかわる次の事実を読者はどう考えるだろうか?

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n084ae76b68fc

月刊「紙の爆弾」3月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

「司法の独立・裁判官の独立」について ── モラル崩壊の元凶押し紙(上)

江上武幸

※日本に「司法の独立と裁判官の独立があるか」と聞かれたら、残念ながら「それはない」と答えざるを得ません。この問題については、岡口基一(元)裁判官が近著『裁判官はなぜ葬られたか』(講談社)で、自らの体験に基づく見解を述べておられます。

なお、司法研修所29期には最高裁長官を含め、いわゆる出世組が多数おられますので(ちなみに押し紙訴訟の読売側代理人弁護士も同期です)、故・団藤重光最高裁判事のように、司法の世界の舞台裏を日誌等に残されておかれたら、貴重な資料になると思います。

日本国憲法第9条は、戦力不保持と戦争放棄を定めています。アメリカは、天皇主権に基づく大日本帝国憲法に代わる、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の憲法三原則を基本原理とする新しい憲法の制定を日本に求めました。立法・司法・行政の三権分立と地方自治の保障も、同時に規定されました。

アメリカの初期の占領方針が、日本を二度と戦争ができない民主主義国家として再生させる考えであったことがわかります。「押し付け憲法である」と言って日本国憲法をないがしろにする人たちがいますが、大きな間違いです。日本人だけで考えていたら、世界に誇れる現在の憲法は作れなかったでしょう。

しかし、朝鮮戦争が始まり米ソ冷戦構造が深刻化すると、第9条はアメリカにとって、むしろ足かせとなりました。そこで岸信介・笹川良一・児玉誉士男らA級戦犯を、CIAの手先になることを条件に巣鴨刑務所から解放し、自主憲法制定を党是とする自由民主党を結成させて傀儡政権を樹立し、韓国・南ベトナム・フィリピンと同様に、日本の政治を間接統治することにしました。

また旧帝国軍人により、警察予備隊・自衛隊という名の軍隊を復活させ、駐留米軍の補完部隊として育成しました。

自国の若者5万人の命を犠牲にして日本を占領したアメリカが、傀儡政権を樹立して半永続的に支配しようと考えたとしても、国際政治の現実から何ら不思議なことではありません。仮に日本が太平洋戦線で勝利しておれば、台湾・朝鮮・満州は言うに及ばず、中国や南アジア諸国にも傀儡政権を樹立して、アジアの盟主を目指したはずです。

※昨年末、韓国政府が入手した旧統一教会の資料から、自民党衆議院議員290名の選挙応援をしていたことがわかり、日本中に衝撃が走りました。CIA・KCIA・勝共連合・自民党・右派陣営の同盟関係も白日のもとにさらされました。

※アメリカの対日支配の構造については、「日米合同委員会」「年次改革要望書」をネットで検索ください。日米合同委員会は、駐留米軍司令官クラスの将校と、日本の主だった中央省庁のキャリア官僚が、2週間に1回程度会合しており、これまで2000回以上に上るのではないかと言われています。日米地位協定の運用に関する協議であれば、このように頻繁に会合を重ねる必要はありません。日本の国内政治はもとより、防衛・外交問題について、日本の取るべき施策・対応が協議されていると考えて間違いありません。

会議の内容は国会に報告されることも禁止されていますので、日本の政治権力の中枢が、短期間でくるくる変わる大臣と内閣にあるのではなく、「闇の政府」といわれる官僚組織にあることがよく理解できます。

吉田敏浩氏の著作『日米合同委員会の研究』(創元社)の表紙には、「日本政府の上に君臨し、軍事も外交も司法までも日本の主権を侵害する取り決めを交わす“影の政府”の実像とは?」と記載されています。

※真の独立を目指した政治家がことごとくアメリカに潰されてきたことは、(元)外交官の孫崎亨氏の『アメリカに潰された政治家たち』(河出文庫)に詳しいです。

「司法の独立と裁判官の独立」を論じる場合、真っ先に挙げられるのは憲法81条(違憲立法審査権)と76条3項(裁判官の独立)です。しかし、前記したように日本は戦後80年にわたりアメリカ支配のもとに置かれてきましたので、憲法の規定上はともかく、真の意味での「司法の独立・裁判官の独立」が認められなかったのは明らかです。

そのことは、歴代最高裁長官の下記のような素顔と経歴を見ればわかります。

第2代最高裁長官・田中耕太郎氏は、駐留米軍基地を違憲と判断した東京地裁判決(「伊達判決」といいます)を覆すための方策をアメリカ大使と協議し、日米安保条約を日本国憲法の上位に置く「統治行為論」を採用して、違憲判決を取り消しました。長官退任後は、アメリカの推薦を得て国際司法裁判所の裁判官に就任しています。伊達判決の取り消しに対する論功行賞といわれています。

※私の従姉の配偶者は、佐賀県出身の元裁判官ですが、任官後2年目の29歳で退官し、東京で弁護士事務所を開きました。私が司法試験に合格したことを報告に行ったとき、裁判官を辞めた理由を話してくれました。

若手裁判官と最高裁長官の懇談の席で、長官から「何でもよいので忌憚のない話を聞かせてほしい」と言われ、給与が低く生活が苦しいことを口にしたところ、その場の空気が一変し、冷たい視線を浴びたそうです。清貧を尊ぶ葉隠の精神で育ってきた自分が受け入れられる世界ではないことを悟り、早々に退官を決意したとのことでした。その時の最高裁長官が田中耕太郎氏でした。

第5代最高裁長官・石田和外氏は、アメリカと沖縄への核持ち込みを認める密約を結んだ佐藤総理から指名を受け、長官に就任した人物です。青法協所属の裁判官を徹底して排除し、その結果、裁判所から護憲派裁判官がいなくなったといわれています。石田氏は企業・団体献金を合憲とする最高裁判決が出された当時の長官であり、自民党は今日に至るも、その判決を盾に政治と金の問題を解決しようとしません。

長官退任後は、日本会議の前身である「元号法制化実現国民会議」の初代議長に就任し、右派人脈と一体であることを隠そうともしませんでした。

※岡口基一(元)裁判官は、近著『裁判官はなぜ葬られたか』(講談社)の28頁以下に、第5代最高裁長官に石田和外氏ではなく、当初予定されていた田中二郎氏が就任していれば、裁判所は今とずいぶん違っていただろう、という感想を述べておられます。

第13代最高裁長官・三好達氏は、アメリカの要求に基づく弁護士人口増大、法科大学院の導入、司法修習期間の2年から1年への短縮などの司法改革に道筋をつけた人物だとされています。退官後は石田長官の流れをくむ「日本会議」の会長に就任しています。

※ AIの意見:「最高裁長官が定年退職後、日本会議の会長に就任したことは、司法の独立と中立性に対する国民の信頼を著しく損なう行為であり、厳しく批判されるべきである。」

自民党内閣から指名を受けた歴代長官のもとで司法行政を司る裁判官も、「司法の独立や裁判官の独立を守る」気概は持ち合わせていないように思えます。

司法研修所29期の同期の最高裁長官は、退官後、大手法律事務所の特別招聘顧問に再就職したとのことです。国家権力の最高位にまで登りつめた人物が、民間の法律事務所の招へいに応じて席を置くとは、想像もしない出来事でした。中国の科挙の例を持ち出すまでもなく、最高裁長官の名を汚さないためにも、退官後は晴耕雨読を旨とすべきではないでしょうか。

※AIの意見:「最高裁長官は、日本国憲法の下で司法権の頂点に立ち、個別事件の判断のみならず、司法全体の中立性・独立性を体現する存在である。その地位は、単なる一裁判官の延長ではなく、国民から特別に高度な倫理性と自制を求められる公的役割である。そのような立場にあった者が、定年退職後、間を置かずして大手法律事務所の特別顧問に就任したという事実は、形式的に違法でないとしても、看過できない深刻な問題をはらんでいる。」

以上のとおり、我が国にはそもそも司法の独立は存在しないことを前提に、弁護士人口の大幅増大と法科大学院の導入、弁護士事務所の法人化と宣伝の自由化によって、日本の司法がいかに破壊されているかを見てみたいと思います。

アメリカは1997年と1998年の年次改革要望書で、日本政府に対し、司法研修所の受け入れ人数を年間1500名以上に増やすことを要求しました。1999年にはフランス並みの年間3000人に増やすことを求めています。

※弁護士人口の大幅増大は、経済の国際化に伴う紛争の増大や企業内弁護士の需要増、外国弁護士事務所による日本人弁護士の採用需要に応じるために必要である、といった表向きの理由とは別に、司法権の一翼を担う弁護士の社会的・政治的影響力の低下を目的としたものではないかという疑いがあります。

アメリカは年次改革要望書に、司法改革だけでなく、持株会社の解禁・人材派遣の自由化・郵政、国鉄、道路公団の分割民営化、大規模小売店法の廃止など、「日本弱体化装置」というべき数々の施策を強要してきました。

明らかに内政干渉ですが、世界第2位の経済大国に発展した日本の富を吸い上げるのは当然だと考えているようです。

1999年に設置された「司法制度改革審議会」は、わずか2年という異例の速さで司法制度改革案を提示しました。これを受けて2004年に、法科大学院制度の創設を中核とする関連9法案が成立しました。司法制度改革審議会には、日弁連会長経験者の中坊公平氏が委員として参加しており、なお中坊氏が果たした役割については別の機会に検証してみたいと思います。

※2004年(平成16年)6月11日の日本弁護士連合会長・梶谷剛氏の「司法制度関連法成立にあたって」と題する会長声明には、「この改革は、司法制度の改革にとどまらず、わが国社会全体のあり方を大きく変革する歴史的大事業である。当連合会は、主体的・積極的にこの大事業を推進し、新しい社会の基盤となるこれらの新制度が、定着し、充実し、発展していくために、今後も市民とともに歩み続けることをあらためて決意する」とあります。

しかし、法科大学院は一時74校が開校しましたが、現在では34校に減少しています。わずか20年で40校も消滅したことになります。法科大学院修了者の受験者数も1万人台から3000人台に落ち込んでいます。新規募集を停止した西南学院大学(福岡市)の場合、累積赤字が20億円に及んだといわれています。全体ではどの程度の規模の赤字が発生したのか想像もつきません。しかも、誰もその責任を取ろうとはしていません。

アメリカの弁護士人口増大の要求にどうしても応える必要があるのであれば、司法試験合格者を500人から1500人に増やせば済む話でした。しかし司法試験合格者を500人から1500人に増やすなら、予算も2倍から3倍へと増やさなければなりません。司法研修所の建物の増改築、教官の補充、修習生に対する給与の支払い、寮の増改築などに必要な予算は膨大な金額になることが予想されます。財務官僚は司法試験に合格しなかったからかもしれませんが、最高裁の司法関連予算を増やすことには常に消極的でした。

※岡口基一(元)裁判官の本の37頁の「注9」には、次の記載があります。

「国家予算が112兆円を超える中、裁判所の年間予算は、そのわずか約0.3%である約3300億円でしかなく、日本大学の年間予算である2660億円ともそれほど変わらない。」

国家予算を増やすことなく、各大学の負担で法曹人口を増やすために法科大学院を導入することにしたのではないかと考えられます。

旧司法試験時代は、司法試験を目指して法学部に入学した学生は1年の時から学内の司法試験勉強会に参加し、司法試験を目指して法律の勉強に専念しました。先生方もそのことを知っておられ、授業の出席はあまりやかましく言われませんでした。

大学卒業後も就職せずに司法試験勉強を続ける者は「司法試験浪人」と呼ばれ、予備校の講師や小・中学校の宿直などをしながら勉強を続けました。司法試験勉強会の指導や答案練習会の採点は、司法試験に合格した先輩が担当するのが不文律でした。

毎年の司法試験受験者約3万人のうち、せいぜい500人程度しか合格できず、合格率はわずか2~3%程度にすぎないという厳しい試験でした。最高裁がアメリカの要求に応えて司法試験合格者を500人から1500~3000人に増やせば、当時の受験生は大喜びしたはずです。

※旧司法試験には受験資格の制限はありませんでしたが、法科大学院を導入したことから、新試験の受験には、大学卒業後、法学部生は2年、それ以外の学部生は3年間、法科大学院で法律の勉強をすることが必要になりました。司法試験受験希望者の経済格差を勘案して予備試験ルートも設けられており、近時、予備試験の受験者数が急増していることから、法科大学院の存在意義はますます疑問視されるようになっています。

※司法改革では、法科大学院の導入のほかにも刑事裁判員制度や法テラス、ADR制度などが創設されました。しかし企業や国を相手とする民事裁判や行政裁判には裁判員制度は設けられていません。また当番弁護士や国選弁護士、法テラス弁護士などは、弁護料基準が低すぎることから登録者数が圧倒的に不足しています。さらに新規弁護士登録者が東京・大阪の大都市に集中し、地方の弁護士会の入会者数が激減するという現象も生まれています。

※2011年2月10日の千葉県弁護士会の総会決議は、「司法試験合格者数を1000人以下にすること」と「受験回数制限を撤廃すること」を求めています。

特に、刑事裁判に裁判員制度を設けたのは問題だと思います。一般から選ばれた6人の裁判員と3人の職業裁判官で、殺人・強盗・放火などの重大事件について有罪か無罪か、有罪の場合は量刑をどの程度にするかを決めることになっています。人の一生を左右する重大な判断を一般市民に求めるものであり、しかも高裁で一審の裁判員の判断が覆ることもあり得ます。何のための国民参加なのかわかりません。

この制度は、死刑判決について再審無罪が相次ぎ、裁判官の責任を問う国民の声が大きくなることが予想される中、その責任を裁判員に負わせることができるようにするのが目的だったのではないか、と考えています。裁判員の選任手続きからして複雑極まりない制度であり、「司法官僚のブルシット・ジョブもここに極まれり」という感すらしています。(つづく)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(20256年1月16日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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飯塚修三医師との出会いと西宮人物伝

鹿砦社代表 松岡利康

2年ほど前、突然に同市内で眼科医院を開いておられる飯塚修三医師からお手紙がありました。

西宮北口駅構内の書店で偶然『紙の爆弾』を見つけ、ぱらぱらとめくったら、雪印の牛肉偽装告発で有名な西宮冷蔵・水谷洋一社長の記事が掲載されているので買い、『紙爆』と鹿砦社に関心を持ち、調べられたとのことでした。飯塚医師と水谷さんとの関係については別途記事をお読みください。

数日後、先生が営む医院に伺い、いろいろ歓談させていただきました。真面目で博学な方でした。これを機に『紙の爆弾』を定期購読していただき、昨年7・12の『紙の爆弾』20周年、『季節』10周年をめぐる反転攻勢の集いにもご出席いただきました。

また、先生は西宮医師会の会報に連載を持たれており、西宮に縁のある人たちについて調べ書かれていました。西宮出身で私の大学の大先輩・藤本敏夫さん(故人)についても書かれています。

先生とその会報については、後日、あらためて申し述べたいと思いますが、今回は、7・12反転攻勢の集い・関西の記事と、西宮冷蔵・水谷洋一さんについての記事を転載させていただきます。

【追記】先に飯塚修三医師について記しましたが、飯塚医師は以前にも鹿砦社や、地元出身で私の大学寮の大先輩である藤本敏夫さん(故人)についても西宮医師会の会報に掲載されています。関心のある方はご一読ください。

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3月のキックボクシング 4興行の概要! 協会三派とDUEL!

堀田春樹

3月8日開催、新日本キックボクシング協会MAGNUM 63

MAGNUM.63 / 3月8日(日)後楽園ホール17:15~
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

協会三派という言い方は正しくないかもしれませんが、元々の新日本キックボクシング協会から分かれた者達。それが皆、ジャパンキックや全日本となって、連盟でなく協会を名乗っている三派という意味です。

昭和時代に一世を風靡した日本キックボクシング協会も活動停止し、その復興から今年で30周年。1998年に“新日本”に移行しているが、紆余曲折を経て、現在の戦い方は他団体交流とWKBA路線。これらを武器に戦い続けるしかないと窺える新日本キックボクシング協会タイトル戦。

タイトル名称はリリースに“新日本”と書かれていたり、ポスターには“日本”が抜けていたり、スタッフ代わって単に過去を知らないのか、何らかの思惑があるのか解りませんが、新日本タイトルという200人の中のチャンピオンではなく、日本国一億人の中のチャンピオンと位置付けましょうと始まったのが新日本に移行した1998年。

前身の日本系時代からそのまま日本タイトルは継続されました。だがその定義も現在は崩れたかなという印象は拭えませんが、ここでは一応これまでどおりにタイトルは“日本” としておきます。

瀬戸口勝也は昨年3月のWKBA世界フェザー級王座決定戦で赤平大治に初回TKO負けを喫し引退宣言していましたが、ここで悔いの無いキック人生有終の美を飾るべくチャンスを与えられ最後の復帰。赤平へのリベンジマッチとなります。

昨年3月2日の王座決定戦は赤平大治が瀬戸口勝也を倒して戴冠

日本ライト級王座決定戦は、ジョニー・オリベイラとNJKFスーパーフェザー級6位、細川裕人(VALLELY)の他団体交流の形で王座を争う。この日本タイトルに他団体選手の挑戦は過去に無く、腑に落ちない部分はありますが、2025年5月11日に日本スーパーフェザー級王座獲得したばかりの木下竜輔(伊原)に細川裕人は2-1判定勝利しており、今回の出場権利を得たと言える立場です。

WKBA日本スーパーバンタム級王座決定戦は、大岩竜世(KANALOA)が中島凛太郎(京都野口)と王座を争う。こちらはWKBA枠という広域タイトルとして他団体選手同士でもタイトルマッチの出場は可能という位置付けでしょう。

◆第14試合 WKBA世界フェザー級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.赤平大治(VERTEX)
        vs
瀬戸口勝也(元・日本フェザー級Champ/横須賀太賀)

◆第13試合 日本ライト級王座決定戦 5回戦
ジョニー・オリベイラ(元・日本スーパーフェザー級Champ/トーエル)
vs
NJKFスーパーフェザー級6位.細川裕人(VALLELY )

◆第12試合 日本スーパーミドル級王座決定戦 5回戦
マルコ(伊原)vs 翁長リバウンドマン将健(真樹ジム糸満)

◆第11試合 WKBA日本スーパーバンタム級王座決定戦 5回戦
大岩竜世(KANALOA)vs 中島凛太郎(京都野口)

◆エキシビジョンマッチ2回戦(2分制)
ISKA世界スーパーフェザー級チャンピオン.軍司泰斗(TEAM SUERTE )
EX
ISKA世界フェザー級チャンピオン.龍聖(TEAM SUERTE)

◆第10試合 62.0kg契約3回戦
翔吾(DENGERD)vs 平田康(平田道場)

◆第9試合 フライ級3回戦
西田蓮斗(伊原越谷)vs 林さん(GRABS)

他、アンダーカード8試合。

3月15日開催、ジャパンキックボクシング協会KICK Insist 26

KICK Insist.26 / 3月15日(日)後楽園ホール17:15~
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会
 

昨年4勝2敗の睦雅は11月23日にWMO世界スーパーライト級王座決定戦でペッダム・ペッティンディーアカデミーに判定負けで王座戴冠成らず。今年に入って1月23日にルンピニースタジアムでのONE Friday Fights139に於いて、ミャンマーのキャウ・スワー・ウィン倒されてのTKO負け。今回連敗からの再起戦を迎えます。

瀧澤博人は昨年11月23日のWMO世界フェザー級王座決定戦でチャイトーン・ウォー・ウラチャーに圧倒TKO勝利で念願の王座戴冠。3連勝で、一昨年の不完全燃焼を払拭した。上昇気流に乗る中、チャンピオン初戦を迎えます。

睦雅と瀧澤博人の立場が入れ替わったような現在の立ち位置。今年もこの二人がメインイベントを競い合うでしょう。

馬渡亮太は“世界チャンピオン”という肩書きではないということは、昨年7月のタイトルマッチは引分けというWMO裁定に従ったか。いずれも再戦への前哨戦となるこの試合は軽くクリアーしてオーウェン・ギリスを倒すというスッキリ奪取を目指したいところ。

西原茉央と細田昇吾の軽量級チャンピオンもライバルを突き放すように、より勢い付けたいところ。

昨年11月23日にWMO世界フェザー級王座戴冠した瀧澤博人が今回のメインイベンター

◆第14試合 57.2㎏契約3回戦
WMO世界フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー)
        vs
ラジャダムナンワールドシリーズ・フェザー級7位.モンコンレック・プンナコーン(タイ)

◆第13試合 62.5㎏契約3回戦 
ジャパンキック協会ライト級チャンピオン.睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー)
        vs
タイ国Muaysiam東部ライト級チャンピオン.センタウィー・JF・プンパンムアン(タイ)

◆第12試合 スーパーフェザー級3回戦
WMOインターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン.馬渡亮太(治政館)
        vs
タイ国Muaysiam中部フェザー級チャンピオン.ジョーンビックペット・ギャットペット(タイ)

◆第11試合 54.0㎏契約3回戦  
ジャパンキック協会フライ級チャンピオン.西原茉生(治政館)
        vs
KNOCK OUT-REDバンタム級チャンピオン.乙津陸(クロスポイント大泉)

◆第10試合 52.7㎏契約3回戦 
ジットムアンノンStadiumスーパーフライ級チャンピオン.細田昇吾(ビクトリー)
        vs
ペットセリタイ・ルーククロンタン(タイ)

他、9試合。
菊地拓人(市原)、BANKI(=竹森万輝/治政館)、花澤一成(市原)、西山天晴(治政館)出場。

3月20日開催、NJKF、DUEL 37

DUEL.37 / 3月20日(日)厚木市猿ヶ島スポーツセンター(開場:15:00/開始15:30)
主催:キック&フィットネスAKIKAWA、新興ムエタイジム
認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

いつものGENスポーツパレスを離れてのDUEL興行。NJKFフライ級チャンピオン、西田光汰(西田)への挑戦権を懸けた上位4名によるトーナメント。4名の組み合わせは未定で、おそらく当日に決定。

◆第7、第8試合 フライ級3回戦
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ)
NJKFフライ級2位.明夢(新興ムエタイ)
NJKFフライ級3位.高木雅巳 (誠至会)
NJKFフライ級4位.悠(VALLELY)

◆第6試合 62.0kg契約 5回戦
テーパプット・シンコウジム(元・BBTVスーパーフェザー級Champ/タイ)
          vs
ロムイサーン・TIGER REON(タイ)

◆第5試合 51.0kg契約 5回戦
S-1世界フライ級覇者.優心(京都野口/2002.5.28京都府出身)
        vs
JKイノベーション・フライ級1位.吉角綾真(マイウェイ)

◆第4試合 WMO世界アトム級(102LBS)タイトルマッチ 5回戦(2分制)
ミネルヴァ・アトム級チャンピオン.杉田風夏(谷山ジム小田原道場)
vs
WMAタイ国アトム級1位.クリンパカー・タイソング(タイ)

◆第3試合 54.5kg契約3回戦
NJKFバンタム級チャンピオン.山川敏弘(京都野口)vs エイジ(レンジャー)

他、アマチュアオヤジファイト含む3試合。

昨年9月28日に西田光汰は明夢を判定で退け初防衛。今回3度目の対決はあるか
3月21日開催、全日本キックボクシング協会SAMURAI WARRIORS vol.5

SAMURAI WARRIORS vol.5 / 3月21日(土)後楽園ホール17:30~
主催:全日本キックボクシング協会 / 協力:WPMTA

昨年12月28日は瀬川琉、オーシャン・ウジハラ、野竹生太郎が韓国勢に敗れ去ってしまった。この韓国勢は実力アップと共にアイドル並みの風貌も人気上昇中。

新人から育て上げ、現在はアジアエリア中心の小規模な存在感ではあるが、形だけの世界戦よりは着実な基盤固めを続け、初陣興行から3年目に入った全日本キックボクシング協会である。

広翔と勇生は3月7日の韓国でのイベント「HIRO」出場で、今回の全日本キック出場は無し。瀬川琉などの主力選手の出場が無いのは少々寂しいが、アジアトーナメントへ向けての日韓対決が続きます。

◆第12試合 ライト級3回戦
角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/1989.8.14富山県出身)vs ソン・ジュンヒョク(韓国)

角谷祐介は2023年9月にスックワンキントーン・スーパーフェザー級王座決定戦で岩城悠介(RIKIX)に判定勝利し王座獲得。昨年6月20日にはオーシャン・ウジハラ(=氏原文男)に判定勝利。

昨年6月20日、角谷祐介は全日本キックに登場。オーシャン・ウジハラに大差判定勝利している

◆第11試合 ライト級3回戦
全日本ライト級8位.山田旬(アウルスポーツ) 6戦4勝1敗1分
     vs
ソン・ミンチャン(韓国)

山田旬は昨年12月28日にジョカミ・ナカジマ(中島道場)に僅差判定負け。初黒星から再起戦。

◆第10試合 75.0kg契約3回戦
星のケイスケ(百足道場)vs イ・ギョンハン(中島道場)

◆第9試合 70.0kg契約3回戦
義斗(FPLUS TEAM QUEST)vs リュ・ジャンオン(韓国)

◆第8試合 58.0kg契約3回戦
KAI・AKG(A-BLAZE KICK)vs キム・テギョン(韓国)

◆第7試合 65.0kg契約3回戦
カツヤ・ノラシンファミリー(Norasing Family)vs 浅井和也(KRONOS)

◆第6試合 女子55.0kg契約3回戦
山本ほのか(チーム彩)vs 和智美音(リバーサルジム立川ALPHA)

他、5試合。

以上は2月19日時点の情報です。興行は諸々ある中の一部となります。
興行概要は、読まれる方はあまり興味持たれないかもしれません。今後は展開を変えていく予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

雪印の牛肉偽装を告発した西宮冷蔵の闘いの意味を思い出そう!

鹿砦社代表 松岡利康

もう四半世紀近くも前になりますが、私の会社と同じ兵庫県西宮市に在る西宮冷蔵という中小企業が、日本を代表する雪印ブランドの牛肉偽装を告発し日本中が大騒ぎになった事件がありました。

先に紹介した飯塚修三医師が資料を預ける場所に困っていたところ西宮冷蔵の水谷洋一社長が気安く預かってくれ、その水谷社長が『紙の爆弾』に連載(昨年終了)していた記事を偶然書店で見つけ私と知り合うきっかけになったことは、先にご紹介しました。

今度は私が偶然、YouTubeで西宮冷蔵のその事件が登場しているのを見つけました。うまくまとめていました。私も出ていました。照れますね(苦笑)。

https://youtu.be/XHvQ5KdDfLU?si=pG1ydCeeYDWy41j3

※動画視聴は上記URLをクリック

ぜひともご一覧いただきたいと思います。

水谷社長が不正を告発したのはまだ40代、今や70代になります。そして、自殺未遂した娘さんの介護に追われ苦境にあります。鹿砦社以上です。

能天気に「正義は勝つ!」などとほざく徒輩がいますが、世の中、そうはならないことのほうが多いです。この不条理、なんとかならないものでしょうか。

しかし、巨大企業や権力に立ち向かった西宮冷蔵・水谷洋一/甲太郎父子の闘いの意義は、敗れたとはいえ大きいと言わざるをえませんし、今や忘れられた感がありますが、このYou Tube記事をご覧になり真剣に考えていただきたいと思います。

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新聞ビジネスの構造と「押し紙」裁判 ── その解明と次なる検証課題

黒薮哲哉

2月2日に発売された『ZAITEN』(財界展望社)が、「大新聞崩壊前夜」と題する特集を組んでいる。この特集記事の一つを、筆者(黒薮)が執筆した。記事のタイトルは、「毎日新聞が『新聞の秘密』を意図せずに暴露」である。

記事の詳細についてはここでは触れないが、概略としては、日本の新聞社のビジネスモデルのからくりを、毎日新聞社の内部資料に基づいて解明したものである。新聞社がどのような方法でABC部数をかさ上げしているのかを立証した。

筆者が「押し紙」問題に着手したのは1997年である。それから29年を経て、ようやく新聞のビジネスモデルを解明するに至った。したがって、「押し紙」裁判の勝敗とは別に、一つの到達点にたどり着いたと言える。この解明は、江上武幸弁護士による資料分析に負うところが大きい。ぜひ『ZAITEN』の記事を一読いただきたい。

◆「押し紙」問題の次は、裁判官人事

「押し紙」問題に続いて解明すべき次のテーマは、「押し紙」裁判における裁判官人事である。「押し紙」裁判では、最高裁事務総局が裁判官人事を主導しているのではないかと推測される事実が、次々と浮上している。

最近入手した資料によると、裁判官は判事補に任官してから10年間は最高裁主導の人事によって赴任地が決められるが、その後は高裁管内での人事となり、原則として遠方の裁判所へ配置転換されることはなくなるという。しかし、この取り決めには例外が存在するようだ。

一般によく知られている例外が、沖縄の裁判所である。沖縄の裁判所は最高裁人事とされており、その背景には、沖縄が米軍基地を抱える地域であることが関係している可能性がある。

これに対し、一般にはほとんど知られていないもう一つの例外が、「押し紙」裁判に関わる裁判官人事である。たとえば、「押し紙」裁判に関与してきた野村武範裁判官の経歴が、その一例である。野村裁判官が判事補に任官したのは平成11年(1999年)4月であるが、以下に示すように、令和2年(2020年)以降、高裁管轄を超える人事異動が行われている。

・平成29年4月1日 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事
・令和2年4月1日 東京高裁判事・東京簡裁判事
・令和2年5月11日 東京地裁判事・東京簡裁判事
・令和5年4月1日 大阪地裁部総括判事・大阪簡裁判事

令和2年4月1日に名古屋地裁から東京高裁判事へ異動し、その約1か月後には東京地裁へ異動して、産経新聞の「押し紙」裁判の裁判長に着任した。さらに令和5年4月1日には、東京地裁から大阪地裁へ異動し、読売新聞の「押し紙」裁判の裁判長に着任している。

このように、「押し紙」裁判においては最高裁主導の人事が確認できる。しかも、いずれの裁判においても、原告である販売店側が不自然とも言える敗訴判決を受けている。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年2月1日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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「高市圧勝」「野党壊滅」 衆院選2026 照らし出した制度と政治文化の「疲労」

さとうしゅういち

今回の衆議院選挙は、高市早苗総理率いる自民党が単独で3分の2を制する圧勝する結果となりました。

しかし、その数字の裏側を見れば、現行制度が抱える深刻な歪みが改めて浮き彫りになりました。広島県では自民党の比例代表得票率は40.1%にとどまり、維新の8.3%を加えても過半数には届きません。それにもかかわらず、自民党は県内6つの小選挙区をすべて独占しました。民意の多様性が比例票に表れているにもかかわらず、議席配分はそれを反映しません。この構造的な乖離は、もはや制度の限界を示していると言わざるを得ません。

◆「二大政党」前提の崩壊と制度の時代遅れ

価値観が多様化し、国際情勢が複雑化する現代において、かつての「二大政党制」を前提とした小選挙区中心の制度設計はすでに現実と乖離しています。野党と一括りにしても、外交・安全保障、社会政策、経済政策の軸で大きく異なり、単純な二項対立では整理できません。

それにもかかわらず、政治改革と称して行われるのは定数削減といった「小手先の調整」にとどまります。必要なのは、比例代表制の拡充や中選挙区連記制の再検討など、民意の多様性を正確に反映するための抜本的な制度改革です。

◆政策論争が深まらない政治文化

有権者が各党の政策や政治姿勢を十分理解しないまま投票しているとの指摘があります。いわば、選挙が「推し活」化している問題です。しかし、その責任を有権者だけに負わせるのは筋違いです。今回も、解散をした総理ご自身が、国論を二分する重要課題を曖昧にしたまま選挙戦を戦い、選挙終盤ないし選挙後になってようやく具体的な中身を示しました。対抗する野党第一党も合流過程で内部調整が不十分だったとの見方があります。

さらに、総理が討論番組への参加を避けたことで、選挙期間中の論戦は深まらず、政策選択の場としての選挙の機能は著しく損なわれました。

◆メディア環境の劣化とネット空間の未成熟

新聞・テレビといった既存メディアは、議席予測に偏り、政策や政治姿勢を問う役割を十分果たせませんでした。ネット空間でも、オールドメディア批判を掲げながら、結局は根拠不明の予測や誹謗中傷が横行し、健全な議論の場とは言い難い状況が続きました。

このように、既存メディアとネット双方が「政策論争の場」として機能不全に陥っていることが、政治不信の温床となっています。

◆「金をかけた者勝ち」の構造と裏金問題の根

選挙戦の実態は、従来通り「資金力と物量を投入できる側が有利」という構造が温存されたままです。ビラやポスターに加えてネット広告が増えただけで、選挙の質は変わっていません。裏金問題の背景にも、この「金をかけた者勝ち」の構造が横たわります。

企業・団体献金の禁止と、討論中心の選挙運動への転換をセットで進めることが不可欠です。大昔には行われていた選挙管理委員会主催の党首討論・候補者討論を復活させ、ネット中継や市民からの質問受付など現代的な形にアップデートし、選挙の中心に据えるべきです。

また、「選挙費用」には法定の上限が決められていますが、それ以外の「事実上の選挙運動」になる政治活動名目にかける資金は「青天井」です。この総量規制も検討すべきではないでしょうか。

◆市民参加の欠如と旧統一教会問題の本質

旧統一教会問題の本質は、特定の反社会的団体に政治家が、選挙運動の中枢を担うスタッフを依存していた構造にあります。その背景には、市民が政治に関わらない風土があるとの指摘もあります。政治家が怪しげな団体に頼らずに済むようにするためには、市民が政治参加を「自分ごと」として捉えられる制度改革と主権者教育の強化が欠かせません。旧統一教会との関係が明らかになった高市総理を筆頭に問題から逃げず、事実があれば認めた上で、政治文化そのものを健全化する方向へ舵を切ることが求められます。

◆制度改革と政治文化改革を同時に進める時代へ

制度の歪み、政策論争の不在、メディア環境の劣化、金権構造、市民参加の欠如。これらは個別の問題ではなく、相互に絡み合った「政治文化の総合的な疲労」です。

必要なのは、制度改革と政治文化改革を同時に進める覚悟です。民意の多様性を正確に反映する制度、政策論争を深める仕組み、金に依存しない選挙運動、市民が主体的に政治に関わる文化。そのすべてが揃って初めて、日本の民主主義は次の段階へ進むことができるのではないでしょうか。

◆いますぐできること……自分が支持する国会議員をチェックしよう!

日本は議院内閣制を採用する民主主義国です。勘違いしてはいけないのは、米国の大統領のように総理を直接選んだわけではない。国会議員を選んだのです。ましてや、「高市」天皇を選んだわけでも最高指導者「高市」師を選んだわけでもないのです。

高市総理に守ってほしい公約もある。例えば、介護報酬を今年臨時改定すること。介護報酬は三年に一回の改定と決まっていますが、物価高や他業種の給料が上がる中で、それでは間に合いません。27年の次期改定を待たずに、臨時改定をし、我々介護労働者の待遇改善をやってほしい。

一人一人の国会議員を特にその議員を支持している人ほどきちんとチェックしていただきたいのです。まずはそこからです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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《表紙》『原子力明るい未来のエネルギー』 紆余曲折を経て 今は文字盤だけが倉庫に眠る(絵=鈴木邦弘)

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