『紙の爆弾』7月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

「高市早苗首相のウソ」がにわかに話題となっています。その大きなきっかけとなったのが、ラジオ番組での適菜収氏による指摘だったわけですが、同番組で適菜氏は、「高市のウソ」を調べたきっかけとして、「なんで(電波停止発言や旧統一教会関連疑惑など問題ばかりの)こんな人間が政治家になって、ついには総理大臣になってしまったわけですよね。これがちょっと不思議で」と最初に話しています。この問い自体が重要で、本誌で特集した「ガーベラの風」イベント(5月16日)に登壇した孫崎享氏も、同じ問いを投げかけています。その答えが孫崎氏の記事にあります。

5月22日、ロシアが掌握するドンバス地方のルハンシク州スタロビルスクにある大学寮をウクライナ軍のドローンが攻撃。ロシア側の発表によれば21人が死亡、負傷者も多数。現場でロシア人権担当委員が英BBCや米CNNに加え、日本の記者が取材しないことを指摘し、ザハロワ報道官は「日ロ関係」を質問したNHK記者に「スタロビルスクをなぜ取材しないのか」と“逆質問”。記者が「上司から『取材をするな』といった命令があったわけではない」「単に時間がなかった」と弁明するシーンがSNSで注目を集めています。以前から報道官は、「日本の記者はモスクワで何をしているのか?」とたびたび問いかけていました。加えていえば、プーチン大統領は「我々はウクライナの背後にいるアメリカやヨーロッパとは対立しても、日本と対立しているような覚えはない」といった主旨を発言しています。なぜ無関係の日本がやたらと反ロシアにこだわるのか、という疑問が報道官の“逆質問”の背景にあるのでしょう。

西側諸国に従い人命・人権に関わる戦争の現場を取材せず、隣国ロシアとあえて対立することで、日本にどのようなメリットがあるのか、首を傾げるほかありません。そして、このことは、今月号の巻頭記事「高市首相の最大の嘘」とも関わります。「最大の嘘」が何であるかはぜひ本誌をお読みいただくとして、高市首相が「ナフサは足りている」と言わざるをえないことには理由が存在します。そして、冒頭の適菜氏の「なんでこんな人間が総理大臣になったのか」にもつながります。

ほか7月号では、2月総選挙における中道改革連合の敗北をはじめ日本政治を語った鳩山友紀夫元首相の講演を収録。政治経済学者の植草一秀氏が高市内閣の「究極の売国経済政策」を解説。「新・新党」も取り沙汰される中道については小川敏夫・元立憲民主党参院議員の“直言”も掲載しました。さらに、南極行きのクルーズ船で“集団感染”が報じられたハンタウイルスと旧日本陸軍731部隊の関係、「保守派」が「男系」にこだわる理由、国家情報会議やスパイ防止法の実態、高市首相が関与を否定した「サナエトークン」の本来の目的など、今月号も独自の視点からのレポートをお届けします。

『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年7月号
A5判 130頁 定価880円(税込み)
2026年6月7日発売

「現実」が高市政権を終わらせる 高市首相の最大の嘘 孫崎享
日本政治の対米隷属を打破するために 鳩山友紀夫
高市内閣デタラメノミクス 究極の売国政策 植草一秀
制約なき国家諜報体制「国家情報局」の実態 足立昌勝
スマホの中で起きている新しい戦争 デジタル主権戦争 昼間たかし
元自民党議員秘書が明かした「中傷動画」と「サナエトークン」の本当の目的 片岡亮
「保守派」が強調する「歴史と伝統」の欺瞞 皇室典範改正めぐる策謀 宮古諄三郎
成年後見制度改正 法制審議会にもの申す 鈴木慎哉
「中道改革連合」はどこに向かうのか 参院立憲の「中道」合流はない 小川敏夫
WHO総会直前の「集団感染」ハンタウイルス騒動と「パンデミック」の正体 早見慶子
日本よ自主外交を取り戻せ ロシア暴言王の遺訓 木村三浩
LGBT問題の現在 リベラルという陶酔 西園寺あかり
沖縄をなめるな!「最強の沖縄」に続く第三の道 下地幹郎
嘘つきサーニャの今週のハイライト! 佐藤雅彦

〈連載〉
例の現場
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

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なぜ、浅野健一さんの異常な言動を諫めないのか? 出版差し止めを司法権力の手を借りてやることが「ジャーナリスト」として自殺行為であり、出版界に悪弊を残すことを、なぜ気づかないのか?

鹿砦社代表 松岡利康

周知のように浅野健一さんが、あけび書房から出版予定だった山上徹也公判記録本をめぐって、意見の齟齬で あけびはあけびで、浅野さんは三一書房から各々出版されることになりました。これはこれで、二つの本が出ることになり、内容で勝負すればいいだけの話で、読者にとっても一つの事件で二つの見方、考え方の本が出ることは選択肢が広がっていいことだと思います。日本国憲法は言論・出版の自由を高らかに謳っているわけですから。

しかし、浅野さんは一方のあけび書房本に対し出版差し止め(浅野さんの言葉では「出版禁止」)の仮処分を申し立て、続いて本訴も準備されているとのことです。仮処分は去る4月16日に申し立て、本訴は当初5月のGW明け、延びて5月じゅうに提訴するということでした。仮処分は申し立てながらも、いまだにあけび側には裁判所からの特別送達が届かず、また本訴も同様のようです。

私はシンプルに、みずからが過去5度出版差し止めを食らい、この経験からも、これは今後出版界に悪弊を及ぼすので即刻取り下げるべきだと再三訴えてきました。

私事ながら、4月13日に同居してきた高齢の母親が急逝し、自覚するしないに関わらず精神的に動揺、疲弊しつつも、この問題には関心を持って見てきました。この過程で、本来ならば喪に服すべきところ、ことは出版差し止め、双方の主張に注目してきました。

しかし、浅野さんによるあけび本著者・辻井彩子さんに対する、決裂以前からのハラスメントが在り続けていることを知り(その一端は浅野さんのFBを溯って見ていくだけでも解ります)、ここまでして意見の対立するに至った相手方を、まさにネットリンチと言っても過言ではないほど攻撃し、出版を阻止する必要があるのか、素朴に疑問に感じました。これまでさんざん訴訟を争ってきた私たちでも裁判所の封筒で特別送達が届けばビクッとするものです。まだ裁判所からの書類が届いていないとはいえ、「訴訟するぞ訴訟するぞ」と威嚇され続けば、「素人」(浅野言)の、娘さんを育てながら一所懸命に生きる市井の生活人の辻井さんは、日々ナーバスになってきたはずです。これだけでも、俗に「人権派」などといわれている浅野さんに、他人に対する人権意識などないことが解ります。ヤクザでも「素人衆には手を出すな」と言うそうですが、素人を徹底的にイジメる浅野さんはヤクザ以下といえるでしょう。

こうしたケースに遭遇したら私は、事案の内容にかかわらず基本は弱者の側に立つことを信条としています。今回は、浅野さんによる辻井さんへの連日の威嚇、ネットリンチ攻撃が続く限り辻井さんを支援します。まさか威嚇やネットリンチ攻撃をする者を支援するわけにはいかないでしょう。

また、当初は浅野さんに事実確認のやり取りを行ったにすぎない黒薮哲哉さんに対して、(これは今になっては明らかにしていいと思いますが)私との関係回復の仲介を依頼し不調に終わるや一転、攻撃に回りました(他にも仲介を依頼されていますが、こちらも不調に終わっています)。

浅野さんによる攻撃は日に日にエスカレートし、あけび書房・岡林信一代表、著者・辻井さん、帯を書いた鈴木エイトさん、そして黒薮さん、私松岡、これを最近では「5人組」と称して、相次いで訴訟を起こすと宣言されています。まさに訴権の濫用! いやしくも「ジャーナリスト」を自認し、実際に長年ジャーナリズムの現場、研究の場で一筋に歩んで来たみずからの軌跡を否定するような有様です。「ジャーナリスト」は、司法の場ではなく、原則は言論で勝負すべきではないのか!?

皆様、私の言っていることは間違っていますか? そうした浅野さんの異常な言動を、浅野さんの取り巻きの方々はなぜ諫めないのでしょうか? 大いに疑問です。

◆浅野さんに「なぜ取材しないのか」だって!?

浅野さんは、みずからに「取材」しないことについて私を詰られています。普通ならそうでしょうが、今の浅野さは到底取材できる状態ではありません。その理由は、 ──
 1に浅野さんが私に対し異常な敵意を持っていること、2に浅野さんの最近の精神状態、言動の異常性、3に複数の方に関係修復の「仲介」を依頼していることから、「取材」をそのきっかけにしたいという意図が感じられることなどです。お会いするには、まずは出版差し止め(出版禁止)仮処分を取り下げ、本訴も取り止め、さらには私にとって恩人の故・山口正紀さん(浅野さんにとっても恩人のはずですが。文春のセクハラ報道直後、絶望的情況の浅野さんを、浅野さんの自宅に何日も泊まり慰め激励したことを忘れましたか?)に対する生前の数々の暴言、誹謗中傷を反省、謝罪することなどが前提になります。

そんなに、「取材しろ、取材しろ」と言うのなら、わかりました、かつてよくやった「自宅へのアポなし直撃取材」をやらせていただきましょうか? 

◆ちょっとしたコメントにまで針小棒大に非難する異常さ

過日(6月2日)の浅野さんのFBにて、またしても浅野さんによる私への誹謗中傷が記されています。

浅野さんが自分の「自宅住所、電話番号をSNSで晒した」とあけび書房・岡林代表を激しく詰り、三一書房の小番代表もこれに付和雷同 ── どんなことやらと調べたところ、先の浅野さんの沖縄での講演会の案内の「問い合わせ先」に宮川元一さんという方の住所・電話番号などが記され、これに抗議の電話ががんがん掛かってきて迷惑を被った宮川さんは当然浅野さんに抗議しますよね。それを「さくらフィナンシャルニュース」というメディアが報じ、この際、人権と報道・連絡会の連絡先(宮川さんから聞いたのかどなたから聞いたのか)に浅野さんの自宅住所・電話番号を記載し、これを岡林さんがそのままリポストしたわけですが、これをあたかも針小棒大に喧伝してはいませんか? 岡林さんはすぐに消去したそうですが、なんでもかんでも岡林さんのせいにする浅野さんと、これに追従する人たちに、私もささやかに異議を言うためにちょっとコメントした次第です。これも浅野さんらは針小棒大に喧伝、ここまで来ると阿呆としか言いようがありません。

以下に、くだんの人権と報道・連絡会のチラシと私のコメントを再録しておきます。どういう経緯で、浅野さんを代表世話人とする人権と報道・連絡会のチラシに宮川元一さんの住所・電話番号などを掲載するに至ったのか判りませんが、きちんとした連絡先を記載しないので、掲載された宮川さん本人が迷惑を被ったわけですから、この責任は、常識的に言えば、人権と報道・連絡会の代表世話人の浅野さんにあるのではないでしょうか? 浅野さんは被害者意識が強く、全部自分が被害を被ったと言わんばかりに他人のせいにするのはやめるべきでしょう。

私のコメントは、次の通りです。

「Toshiyasu Matsuoka
中尾進さんに非難されている鹿砦社・松岡です。コレ、もともと人権と報道・連絡会の案内に宮川元一氏の住所が連絡先として記載され、宮川氏が迷惑を被り、人権と報道・連絡会と浅野さんに抗議し、それをさくらフィナンシャルニュースが、以前に人権と報道・連絡会の連絡先とされていたのを、変更されたものと気づかず浅野さんの自宅住所を記載し、それを岡林さんがそのままリポストしたにすぎないわけでしょう。浅野さんが代表の人権と報道・連絡会が当初から宮川さんの住所を連絡先に記載しなければよかったわけでしょう? なにか責任を、なんでもかんでも岡林さんが悪いと岡林さんに責任転嫁してはいませんか?」

◆他人の会社の人事にも口を出す浅野さん

同日の浅野さんのFBでは、「『あまりにもエキセントリックな理由』(中川志大編集長)で、昨年4月、業務命令で私(浅野さん)を排除」だって!? 昨年4月発行の『紙の爆弾』で浅野さんが書いた記事に強い抗議が相手側弁護士から抗議があり、浅野さんはこれに対してきちんとした態度を取らず逃げましたよね? 私と中川は相手側弁護士とやり取りし、次号で反論を掲載するというメディアとしての原則的態度で対応しました。浅野さんはいまだに相手側に対応してませんよね? いい加減なことを言わないでいただきたい。『紙の爆弾』は、基本的に別会社の編集・制作で創刊号から中川を編集長に据え、さほど私が口出すことはありませんが、こういう法的な問題や訴訟沙汰になった場合は私の出番となります。

ついでながら申し述べると、山口正紀さんへの浅野さんの誹謗中傷攻撃が増し、その後しばらくして山口さんが無念の死を遂げられました。この時点で、さすがに「浅野を切れ」という声が、従前から浅野さんと付き合いのある方々から私にありました。以前にも述べましたが、それでも私は「中川にも考えがあって浅野さんの原稿を掲載しているので、もうしばらく様子を見てやってください」と浅野さんの寄稿を黙認してきました。本当は、死の直前まで、裁判の準備書面や陳述書の案文をじっくり読まれ、添削、加筆してくれた大恩ある方、そしてこの方に対して誹謗中傷を繰り返す方……そんな私も昨年4月の件では怒り心頭になりました。それを中川が「エキセントリック」と言ったかどうか、彼も記憶にないそうですが、皆様、私の気持ちをお察しください。私が「エキセントリック」なら浅野さんはファナティックといえましょう。山口さんは、弱者にやさしく、温厚な中にも内に激しい権力への怒りを秘められた方でした。山口さんの最期の大仕事は、黒薮さんも書籍にまとめられた滋賀医科大学教授の去就問題(『名医の追放: 滋賀医科大病院事件の記録』緑風出版刊)でした。山口さんは末期がんの身を押して再三現地を訪れ患者さんらと共に闘われました。

さらに同日の浅野さんのFBでは、なんと株主でもなんでもないのに他人の会社の人事にまで口を出しています。

「読者のことを考えず、雑誌を私物化する松岡社長は今すぐ退任し、『紙の爆弾』の中川志大編集長が社長になるべきです。」

鹿砦社の資本金は2400万円、全額私が持っています。この金額を集めるのにどれだけ苦労したか ── 浅野さんは1株も持っていません。株主でもないのに他人の会社の人事に口を出すな! 私が鹿砦社の代表に就いて40年ほどになります。自分で言うのも僭越ですが、人一倍に山あり谷あり、天国も地獄も味わいました。私が今「退任」して会社がやっていけるのであればすぐにでも「退任」しますが、そうもいかないのが会社というものです。浅野さんは会社経営などやったことがないので現実を知らず、簡単に仰いますが、小なりと雖も、人知れず苦労は大変なものです。今回の当事者、一人出版社のあけび書房も、個人企業の辻井さんの会社も、また激しい労働争議を潜り抜けた三一書房も、経営者は日々、資金繰りや運営に苦慮しているはずです。

◆今、出版社同士、また社会運動に関わる者同士、潰し合いをやっている場合ではない!

出版界は従前から構造不況業種で、このかんのコロナ禍で更に不況の深度は深まっています。また、社会運動も、長らく〈冬の時代〉が続いています。

こうした中で、例えば岡林さんが神戸時代から20年余りもやっておられる「市民社会フォーラム」は、リベラル系の市民運動を中心として、新左翼系や共産党離脱組も含め、今では全国の社会運動のセンターの役割を担っている感があります。これに参集する方々も、今回の騒動を注目しています。私の思い込みかもしれませんが、おそらくほとんどがあけび書房と辻井さんを支持していると思われます。いくらなんでも司法権力の手を借りての出版差し止め(出版禁止)などを企てる人を支持する人はいないでしょうから。

尊敬する大口昭彦弁護士が、出版界に今後悪弊になる出版差し止めに手を貸さないことを願います。私たちは、全国の刑務所・少年院を回り500回以上も獄内ライブを行ってきた女性デュオ「Paix2」(ぺぺ)の活動を長年支援してきましたが、大口弁護士が代表弁護士を務められる「救援連絡センター」は、数年前の総会で予定されていた、そのライブをドタキャンし、私は抗議の意味で長年出して来た広告を取り止め、一歩距離を置いてきました。センターの機関紙『救援』に浅野さんは連載を持たれていますが、彼らによって出版差し止めや濫訴がなされたならば、遺憾ながら私たちはさらにもう一歩距離を置かざるをえなくなります。

繰り返しますが、「ジャーナリスト」として自殺行為になり、出版界に悪弊となる出版差し止め(出版禁止)は、仮処分も本訴も直ちに取りやめるべきです。 (2026年6月4日記)

山上徹也公判記録書籍問題 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=137

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2026年3月度のABC部数 新聞部数の減少止まらず――読売は1年で38万部減、「押し紙」問題の構造的課題も浮き彫りに

黒薮哲哉

2026年3月度のABC部数が明らかになった。読売新聞と毎日新聞の下落幅は依然として大きく、この1年間で読売新聞は38万部減、毎日新聞は20万部減となった。販売店関係者によると、残紙の整理や高齢読者の購読中止が主な要因とみられる。

ただし、残紙を減らしても、購読中止が進むことで新たな残紙が発生するため、「押し紙」問題の根本的な解決には至っていない。

中央紙の部数内訳は次の通りである。

朝日新聞:3,100,261(-167,587)
毎日新聞:1,083,632(-202,418)
読売新聞:5,183,600(-380,374)
日経新聞:1,196,749(-128,389)
産経新聞: 750,736(-60,607)

※括弧内は前年同月比の減少部数。

「押し紙」が新聞ジャーナリズムに及ぼす負の影響については、次の記事で詳しく論じられている。

【参考記事】「真村訴訟が暴いた新聞業界の『押し紙』構造――不正な利益は400億円超、公権力によるメディアコントロールの温床に」

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年5月23日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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〝保護〞の名の下に同意なき親子分離 子どもたちが語った「児童相談所」の人権侵害

たかさん

◆千葉中央児相が強制した「婦人科検査」と親子分離

2025年8月6日、千葉県庁の記者会見室で、千葉中央児童相談所による「一時保護」を経験した3人の子どもたち(いずれも少女)が、自ら書いた原稿を手に持ち、報道陣に向かって1行ずつ読み上げていった。「児相と親子の架け橋千葉の会」が主催した会見の様子はユーチューブで観ることができるが、新聞やテレビなど主要メディアがこの証言を報じた形跡は、私が確認した限り見当たらない。

「同意なき親子分離」を経験した3人が共通して訴えたのは、単純な「親を庇いたい」という話ではない。児童相談所による突然の一時保護で、学校にも行けず友だちとも家族とも連絡が絶たれる、何も悪いことをしていないのに人生の重大な決定を他人に勝手に決められる、「子どもの安心・安全」の名の下に子どもの尊厳と未来が削られているという、制度そのものへの深い違和感だった。

まず、それぞれの事例を簡単に整理しておきたい。

①小学1年生のとき、父親に叩かれたことを学校で話した結果、「今日だけお泊まり」と言われて一時保護となり、家族と話せない生活を強いられ、解除条件として「両親の離婚」「父に知られない転居」「ランドセル以外の思い出の品の処分」を求められた。「見ず知らずの大人が表面的なことから勝手に虐待家庭と想像して話を進められた」というのが彼女の目に映る児相の対応で、「使い古しの下着を渡された」「勉強はドリルを渡され、職員から勉強を教えてもらうことはなかった」と、辛い想いを口にした。兄は転校先でいじめに遭い自殺未遂に追い込まれたという。

②小学4年生のとき、ゲームに興じていると、構ってほしがった父親が後ろから抱きつき胸に触れてしまったことを学校で話した。それが「性的虐待」とみなされ、一時保護・父子分離にされた。保護解除後も「父と2人きりにならない」「父に触れない」「必ず腕1本分の距離を空ける」などの条件が課された。彼女は「保護してくれてありがとうと思ったことは1度もない」と言い切った。

③小学6年生のとき、養護教諭への相談をきっかけに「性的虐待の疑い」とされ、「数日お泊まり」と説明されながら約70日の身柄拘束と、産婦人科での検査。「お父さんと暮らしたい」と訴えるも、父との別居・通信制限を一時保護の解除条件とされた。

3人は連名の要望書で、次のようなことを千葉県に求めた。

1 一時保護で子どもたちがどのような扱いを受けているのか国民に正確に知らせ、制度を根本から見直すこと。

2 一時保護所で家族との面会・勉強・自分の服・運動や趣味など人間として当たり前の生活を保障すること。

3 児相職員・親・子どもが「同じ場」で話し合い、子どもの意見を反映できる仕組みをつくること。

どれも「本来なら最初から備わっているべき最低ライン」と言っていい。

本稿では3人のうち、小学6年生のときに千葉中央児童相談所に一時保護された前記③の少女(以下、Aさん)のケースについて詳述する。もはや「相談所」の看板がふさわしいとはいえない現実が、そこにはあった。

◆「相談」と「疑い」がきっかけだった

Aさんが千葉中央児童相談所に一時保護されたのは、2024年4月15日。小学6年生だった。会見で語った保護のきっかけは、こうだ。

Aさんが「お父さんがふざけて胸を触ってくるのが嫌」だと、学校の養護教諭に相談すると、学校から「性的虐待の疑い」として児童相談所に通告がなされた。児相の職員から「数日お泊まりするがいいか?」と聞かれ、「数日ならいいかと思って『わかりました』と答えた」。すると、そのまま車に乗せられ、一時保護所での生活が始まった。

同日に始まった一時保護が解除されたのは6月26日。「数日お泊まり」といわれて連れて行かれたAさんは、実際には2カ月以上、約70日間、家に戻れなかった。児相は最初の一言から、すでに子どもとの信頼関係を裏切っている。Aさんにとって、この制度との出会いは「保護」ではなく「ウソ」として刻まれた。

刑事手続きの世界なら、人の身柄を数日以上拘束するには、勾留請求・裁判官の審査・弁護人の関与という厳格なステップが必要だ。

児相の一時保護は、「数日」という柔らかい言葉を入り口にしながら、現実には裁判官の顔が見えないまま、長期拘束へと姿を変えていく。

◆婦人科検査という「二次被害」

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nf2b48731cf8f

月刊「紙の爆弾」4月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

SNS炎上から法的対立へ、三一書房があけび書房側に謝罪要求

黒薮哲哉

三一書房が、あけび書房の岡林信一社長に対し、5月19日付で内容証明郵便を送付していたことが分かった。内容は、岡林氏が投稿した複数のSNS投稿の削除と謝罪、さらに三一書房が「盗作本」と主張する『石ころの慟哭』(辻井彩子著、あけび書房)の出版中止と市場からの回収作業開始を求めるものである。

既報の通り、この問題は、ジャーナリストで同志社大学元教授、メディア研究者の浅野健一氏が、『石ころの慟哭』の著者である辻井氏に異議を申し立てたことに端を発する。浅野氏は、山上徹也被告の裁判を傍聴し、その内容を扱った書籍を、当初はあけび書房から出版する予定だった。しかし、ゲラ段階で急遽、版元をあけび書房から三一書房へ変更し、『石ころを石礫に』を出版した。

「浅野本」の制作には、辻井氏のほか、別の編集者も関わっていた。

浅野氏が版元を変更した後、辻井氏は自身が収集していたデータを用いて『石ころの慟哭』を執筆し、あけび書房から出版した。これに対し浅野氏は、「辻井本」には内容が盗用されているとして、裁判所に出版差し止めを申し立てた。さらに、フェイスブックなどのSNSで自身の主張を展開し、SNS上では炎上状態となった。

こうした流れの中で、浅野氏は、あけび書房の岡林社長と辻井氏のほか、鹿砦社の松岡利康社長、ジャーナリストの鈴木エイト氏、さらに黒薮に対しても法的責任を追及する考えを表明した。

一方、あけび書房側も、「浅野本」には、辻井氏が提供した原稿の盗用があると主張している。浅野氏は4月16日、自著の出版記念講演の中で、「5月中に裁判を起こす」と公言した。その数日後、「浅野本」の版元である三一書房があけび書房へ内容証明を送付したことで、訴訟への発展はほぼ避けられない情勢となった。内容証明の全文は次の通りである。

◎内容証明郵便の全文 https://31shobo.com/topics/

◆4つの着目点

私は、次の点に着目している。

① 原告と被告の間に、それぞれ盗用はあったのか。
② 辻井氏が制作したデータ原稿の著作者人格権は誰にあるのか。
③ 本を制作する際、浅野しは協力者はどのように扱っていたのか。
④ 浅野氏は大学の時代にも、「盗用」をめぐり大学院生と係争を起こしているが、過去の事例との類似性はあるのか。 

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年5月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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《6月のことば》それがどうした

鹿砦社代表 松岡利康

《6月のことば》それがどうした(鹿砦社カレンダー2026より。龍一郎揮毫)

6月になりました。今月が過ぎれば、今年も半分が過ぎたことになります。

6月と言えば、梅雨のじめじめしたイメージがありますが、今年は所によれば30度を越し真夏の気配さえ感じさせる昨今です。

コロナ以降、いやそれ以前から時に地獄に堕とされることが度々ありました。

その都度のたうち回ったり、おろおろしたりしてきましたが、さすがに龍一郎、「ゲルニカ事件」で鍛えた強靭な精神は、「それがどうした」と胆力が違います。見習いたいものです。

コロナで、これまで出版の中心としてきたものが崩壊し、新たな出版の柱となるものを模索してきましたが、ことごとくうまくいきませんでした。

私のような凡人はここでおろおろするばかりで、これまでそうでした。

この書を揮毫した龍一郎は今、肺がんと闘っています。

「それがどうした」と、彼は病魔と治療の辛さにも打ち勝って頑張っています。

私も後輩・龍一郎に負けず、何としても勝機を掴んでいきたいと思っています。

6月のキックボクシング、上半期を締め括る三つの興行!

堀田春樹


SAMURAI WARRIORS 広翔がメインイベンター

全日本キックボクシング協会 SAMURAI WARRIORS.6th
6月7日(日)後楽園ホール(開場17:00/開始17:30)

他の団体とは方向性がやや違う全日本の続く日韓友好親善試合。韓国HEROの日本版が開催。二階級で4名の勝ち抜き戦で王座を目指す戦い。全日本王座がスーパーフェザー級以外、決定していない中で、HERO JAPANの価値をどう位置付けられるかは微妙だが、今後のイベントを慎重に見守りたいものです。

◆第11試合 スーパーバンタム級3回戦
全日本バンタム級1位.広翔(=北川広翔/稲城)8戦5勝(1KO)3敗
        VS
オン・ジャンフン(韓国)6戦2勝3敗1分

広翔は3月に韓国のHEROイベントに出場。敗れはしたが長丁場を戦う経験を積んだ模様。広翔はエース格争いで野竹兄弟をライバル視する戦いにも勝たねばならない。

メインイベンターの広翔。背負う期待は大きい

◆第10試合 フェザー級3回戦
全日本フェザー級7位.KAI・AKG(A-BLAZE-KICK)6戦5勝1敗
        VS
孫旼燦(=ソン・ミンチャン/韓国)1戦1勝

前回、金兑耿にTKO勝利してランキング入りしたKAI。

セミファイナル出場のKAIも主要選手に成長

◆第9試合 HERO JAPAN スーパーライト級準決勝3回戦
全日本ライト級7位.野竹生太郎(ウルブズスクワッド)5戦4勝1敗
        VS
清宮拓(GOD SIDE)11戦3勝7敗1分

右ハイキックが強く鋭い野竹。攻撃力は有るが攻め倦む展開もあり進化を見極める試合。

野竹生太郎も兄・勇生と並ぶ注目株

◆第8試合 HERO JAPAN スーパーライト級準決勝3回戦
KATSUYA Norasing Family(Norasing Family)7戦5勝2敗
        VS
全日本ライト級4位.チョ・サンヒョン(韓国)17戦14勝3敗

◆第7試合 HERO JAPAN スーパーフライ級準決勝3回戦
全日本スーパーフライ級8位.横尾空(稲城)6戦5勝1敗
        VS
内山朋紀(TEAM ONE STEP)8戦3勝(1KO)5敗

広翔と同時にデビュー後、やや伸び悩んでいる横尾空の成長を見極める試合。

◆第6試合 HERO JAPAN スーパーフライ級準決勝3回戦
全日本スーパーフライ級9位.HIROKI(Ts AKIRACOMBAT TEAM)12戦7勝(1KO)5敗
        VS
福僚太(龍成會)7戦4勝2敗1分

他、5試合

NJKF 2026.1stとなる原点回帰

ニュージャパンキックボクシング連盟“NJKF 2026.1st”
6月14日(日)後楽園ホール(開場17:00/開始17:15)

今回は“CHALLENGER”ではなく“NJKF 2026.1st”へ復活。6月にして1st。 吉田凛汰朗と亜維二、新エース格揃って出場。

興行タイトル代わって“何かあったな!?”と察するところ、大きな問題は無く、円満に事は運び今後、武田幸三氏のCHALLENGERシリーズとは分けられて開催される模様。

◆第11試合 64.0kg契約3回戦
Road to Muaythaiスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX)
VS
KTKライト級チャンピオン.ジョン・ヒョクジン(韓国)

メインイベンター吉田凜汰朗はこれまでとタイプの違う韓国戦士と対戦。負けることは考え難いが、我武者羅に向かって来る韓国ファイターに苦戦する可能性もあり。いかに格の違いを見せ付けられるか。

今や大田拓真に次ぐメインイベンターの吉田凛汰朗

◆第10試合 NJKFウェルター級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ)vs挑戦者3位.璃久(GRABS

亜維二は二度目の防衛戦。当初は認定チャンピオン。昨年9月28日に宗方888を初回TKOに下して初防衛したことでチャンピオンたる責任は果たしたが、ここで負けるわけにはいかない” 正規”チャンピオンとしての評価が分かれる重要な防衛戦。

吉田凛汰朗に続くのは小林亜維二

◆第9試合 NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦
3位.藤井昴(KING/20歳)vs5位.中島凛太郎(京都野口/兵庫県出身26歳)

昨年6月8日の王座決定戦で.繁那(R.S)に初回TKO負けを喫した藤井昴は2度目の挑戦。戦歴もまだ浅いが、同門の嵐を超えて欲しいチャンピオンへの道。

◆第8試合 女子ミネルヴァ53.0kg契約3回戦(2分制)
WMA世界スーパーフライ級チャンピオン.NANA(エス)vsファン・スンハ(韓国)

◆第7試合 NJKFバンタム級次期挑戦者決定戦 3分3R (EX1)
NJKFバンタム級3位.中島隆徳(GETOVER)vs同級4位.永井雷智(VALLELY)

◆第6試合 NJKFフライ級挑戦者決定戦3回戦
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ)vs同級2位.悠(VALLELY)

◆第5試合 NJKFスーパーフェザー級挑戦者決定戦3回戦
NJKFスーパーフェザー級3位.豪(大和)vs同級4位.細川裕人(VALLELY)

他、4試合

NKBの後楽園ジャンブル出場権争いはリョウヤ・ハリケーンと利根川仁

日本キックボクシング連盟“鐵人シリーズvol.3”
6月20日(土)後楽園ホール(開場17:00/開始17:15)

◆第12試合 59.0kg契約 5回戦
NKBライト級チャンピオン.山本太一(ケーアクティブ)vs安河内秀哉(RIKIX)

2月21日興行のNKBライト級王座決定戦で棚橋賢二郎に1ラウンドKO勝利した山本太一(ケーアクティブ)が戴冠初戦で安河内秀哉(RIKIX)を迎え討つ。体格的にはフェザー級でも戦えるという山本太一。NKBフェザー級チャンピオン勇志との対戦も視野に成り行きを見守りたい。

安河内は昨年12月にはホワッチャイ・スガ・スターライトジム(タイ)に判定勝利。安河内としては現役チャンピオン撃破を狙う。

チャンピオンとして真価が問われる山本太一。負けられない一戦
山本太一に挑む安河内秀哉

◆第11試合 KORAKUEN JAMBULL 60kg級出場者決定戦3回戦
NKBライト級5位.リョウヤ・ハリケーン(テツ) 6戦4勝(2KO)2分
        VS
利根川仁(TOKYO KICK WORKS) 9戦8勝(2KO)1敗

9月27日に開催される後楽園ジャンブル出場者決定戦は、リョウヤ・ハリケーン(テツ)と利根川仁(TOKYO KICK WORKS)が争う。

リョウヤは4月18日興行でKEIGOに判定勝利を収めて、NKBライト級5位にランクイン。
利根川は去年TOKYO KICK WORKSに移籍。4月18日に村上祐馬に判定勝利。両者にとって後楽園ジャンブル出場しても存在感アピールとNKBライト級王座挑戦を決定付けたいところ。

◆第10試合 フェザー級3回戦
NKBフェザー級3位.鎌田政興(ケーアクティブ)
        VS
NKBバンタム級4位.香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身)

昭和から令和まで厳しさも変化した渡邊ジムの中で成長する香村一吹も期待の存在。昨年6月には計量失格の失態から現在はフェザー級を適正階級としている模様。2月21日にはNJKFの元・バンタム級チャンピオン志賀将大に判定で敗れたが、いい経験を積んでこちらもNKBのベテラン鎌田政興に挑む。

◆第9試合 ミドル級3回戦
福舘正(CHEERFUL)vs土屋忍(KUNISNIPE旭)

◆第8試合 フェザー級3回戦
NKBフェザー級4位.堀井幸輝(ケーアクティブ)vs加藤宙(神武館)

◆第7試合 フェザー級3回戦
NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身)
      VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身)

45歳vs53歳対決。打たれ脆さはあるベテラン半澤信也と、防戦一方でも凌ぎ切る鈴木ゲンの戦いも面白味はあるが、あまり戦わせたくない高齢マッチメイク。

他、アマチュア3試合含む計9試合。

ここまでの興行が終了すれば今年の折り返し地点となります。時の流れがより早く感じています。下半期は後楽園ジャンブルが始動。成り行きを見守りながら、選手らの新たな目標となれば良いでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

ロシアとインドの石油・天然ガスの貿易――「約96%が自国通貨で行われている」とロシアのシンクタンクが明かす。米国によるベネズエラとイランへの軍事介入の背景に、ドル建て取引の危機

黒薮哲哉

西側メディアはほとんど報じていないが、石油取引をドル以外の通貨で行う取引が急浮上している。石油の取引は伝統的にドルで行われてきた。この慣行は「ペトロダラー体制」と呼ばれ、1970年代にアメリカとサウジアラビアの間で成立した、安全保障と石油取引に関する合意を背景に形成されたとされる。米国が軍事支援を行う見返りに、石油のドル建て決済を採用するという合意である。

石油は全世界で使用されるうえ、石油によって生まれた利益がドル建てで投資などに回される事情もあり、米国経済に大きな影響を及ぼしてきた。ところが最近、非西側諸国において、ドル以外の通貨による石油取引が徐々に広がっている。

たとえば、ロシアのシンクタンク系メディア「Russian Pivot」は、インドの状況について次のように報告している。石油や液化天然ガス(LNG)の取引の「約96%が自国通貨で行われている」というのだ。重要部分を引用しておこう。

「2026年3月、インドによるロシア産原油の輸入は日量約206万バレルに急増し、前月比でほぼ倍増、過去最高水準に迫った。この増加は、インド全体の原油輸入が減少する中で起きており、中東での供給ショックによる意図的な代替が進んでいることを示している。

インドの原油輸入のほぼ半分が通過するホルムズ海峡を経由する供給の混乱は、ニューデリーに迅速な戦略見直しを迫った。従来日量約100万バレルを供給していたイラクからの供給は途絶し、サウジアラビアやクウェートからの供給も大幅に減少した。インドの精製設備に適合するロシアのウラル原油は、最も効率的な代替として浮上した。

原油以外でも、ロシアからインドへの液化天然ガス(LNG)の直接輸出再開に向けた協議が進んでおり、エネルギー面での相互依存はさらに深まっている。ロイターによれば、最終承認を経て数週間以内に合意が成立する可能性があり、ウクライナ紛争以降初めて直接的なLNG輸入が再開される見通しである。

特筆すべきは、すでにこの貿易の約96%が自国通貨で行われている点であり、ドルに依存しない金融メカニズムへの構造的な移行が進んでいることを示している。」

最近、SNS上には石油取引の決済通貨が、ドル以外に移行しはじめているという情報がかなりあるが、一応の裏付けはある。BRICsが独自の通貨を摸索していることは、西側メディアも報じている。

米国がベネズエラやイランといったロシアや中国に近い産油国に軍事介入した背景にも、これらの国の石油をドル建ての取り引きに留めたいという思惑があった可能性が高い。高市首相が将来的に米国から石油を買うと明言したことも整合する。

ベネズエラとイランへの軍事進攻は、トランプ大統領個人の思想や信条が招いたものではない。米国財界の要望である。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年4月7日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

警察・検察・裁判所、そして法制審 「再審制度見直し」に表れた冤罪構造の深層

足立昌勝(紙の爆弾2026年6月号掲載)

昨年5月30日に開催された法制審議会刑事法(再審関係)部会で行なわれた犯罪被害者へのヒアリングで、静岡県旧清水市こがね味噌一家殺人放火事件(以下、旧清水市事件。本稿では、無実が明らかになった袴田巖さんの名誉を守るため、個人の名を冠した事件名ではなくこう表記する)で死刑が確定するも、その後の再審裁判で無罪が確定した袴田巖さんの姉・ひで子さんが、冤罪被害者をなくすために切実な思いを語っている。

「幸い再審が始まりました。今は、晴れて無罪放免となりました。58年闘ってまいりました。長い、見えない権力との戦いでした。誰といつまで闘うのかまるで見えていない、それは苦しい年月でございました。それでも私は自由に生きてこられました。
巖が釈放されて11年目になります。いまだ後遺症は癒えておりません。まともな会話もできないのです。1人の人間をこんなひどい目に遭わせて、弟は30歳で逮捕され、一生涯を台無しにされました。この間、国は何をしていたのでしょう。
 巖の再審開始のきっかけに証拠開示がありました。死刑判決の確定から30年もかかってしまったのです。もっと早く開示されていれば、巖の苦しみも短くてすんだと思います。もちろん今苦しんでいる皆さんも。やはり、そこにあるものを隠すということはあってはならないのです。ましてや人の命に関わることです。法に不備があるのですから、一刻も早く改めていただきたいと思います。
 村山(浩昭・静岡地裁)裁判長さんのおかげで巖に自由がやってきました。しかし、検察官の抗告により、真の自由を得るまでにはなりません。さらに10年かかりました。もしかしたら拘置所に戻されるかもしれないと、周りは大いに気を病んでおりました。私自身は『再収監できるものならやってみろ、私が代わりに入る。監獄なんて1度も入ったことはないから冥土の土産にちょうどいい』と思って、そのぐらいの覚悟でおりました。
 長い時間でした。巖も衰えました。再審を待たずに亡くなった方、不運にも獄中死してしまった方、そのことなどを考えますと、速やかに再審を行なうべきです。証拠の問題と併せて法の改正が必要です」

◆自民党内からも出た批判 その覚悟を問う

このようなひで子さんの声が通じたのであろうか。

再審制度見直しのための刑事訴訟法改正案について、事前審査を行なった自民党内で、政府原案への批判が続出した。特に、4月6日に行なわれた自民党法務部会と司法制度調査会の合同会議では、弁護士でもある稲田朋美元防衛大臣が、ひで子さんも言及した裁判所の再審開始決定に対する検察の抗告を維持する内容をこう批判した。

「マスコミが退出するまでに私、1言、言わせてもらいたい。私たちが言うことを、何も1ミリも聞かないじゃないですか。抗告の禁止、ここで発言した議員のほとんど全てが抗告禁止じゃないですか。それを、全く無視している」

翌7日には、自民党司法制度調査会の鈴木馨祐会長(前法相)が、法務省幹部らに「これまでの議論を踏まえてどういうことができるか、修正も含めて検討してほしい」と指示したといわれている。

昨年6月国会で、再審議員連盟(えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟)が①証拠開示の規定②検察官の不服申立ての禁止③裁判官の除斥・忌避④再審請求審の期日の指定など事務的な手続きを定める法案を提出していた。しかしこれは廃案となり、日の目を見なかった。

議員連盟には自民党からも多くの議員が参加しているだけに、「このまま黙って法務省案を承認したら、冤罪被害者をはじめとして有権者にどうみられるのか」との意識が働いたのではないか。党内から政府原案への異論が百出したのは、当然の帰結であった。

しかし、法務省は、そんなに単純に落ちる組織ではない。最小限の手直しですませようとするだろう。その時に彼らは、我慢し、矛を収めてしまうのであろうか。

いま、稲田議員らへの評価が高まっているが、彼らの覚悟が問われるのはこれからである。自分たちの主張は、冤罪被害者の人たち、国民の声を反映したものだとの意識があれば、さらに闘わざるをえないはずだ。

◆法制審答申に対する批判

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nd851b39bf992

月刊「紙の爆弾」6月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」、キューバのプレンサ・ラティナ紙

黒薮哲哉

イランのメディアが、「出光興産」傘下の大型原油タンカー「IDEMITSU MARU(出光丸)」が、人民元で通行料を支払いホルムズ海峡を通過したと報じた。ホルムズ海峡を通過する条件として人民元決済が求められるのではないかという見方は、以前から指摘されていた。たとえば3月14日付の米CNNは、「イラン、一部石油タンカーのホルムズ海峡通過を認める案検討 人民元での決済が条件」と報じている

米軍によるベネズエラへの侵攻とイランへの空爆の背景には、石油決済をドルから人民元へ移行させる動きを阻止する目的があった――というのが筆者(黒薮)の見解である。しかし、ホルムズ海峡の通行料を人民元とする流れが以前にも増して鮮明になってきたことは、米国がその目的を達成できなかった可能性を示している。米国とイランの停戦交渉で主導権を握っているのは、おそらくイランである。

◆サウジアラビアも人民元へ

実はサウジアラビアでも、石油決済をドルから人民元へ移行する案が浮上し始めている。依然として高いハードルはあるものの、米国にとってはイランでの影響力低下以上に大きな打撃となる可能性がある。

「1974年にサウジアラビアと米国の間で結ばれた『石油の米ドル建て決済と米債券への利益還流(ペトロダラー)』の約50年にわたる協定は、2024年6月に満期を迎え、更新されず実質的に終了したと報じられました。密約とされるため実態は不明ですが、少なくともサウジアラビアは人民元・ユーロ・円・ルピーなど、ドル以外での決済を受け入れる姿勢を示しています。」(マネクリ)

米国とサウジアラビアの間のペトロダラー体制は、1974年に成立したとされる。石油取引をドル建てとすることを条件に、米国がサウジアラビアに軍事支援を行う枠組みである。この協定が満期を迎えた2024年6月以降、ドル以外の通貨を導入する動きが活発化している。ロシアのルーブル、中国の人民元、さらにBRICSが検討する新通貨などが挙げられる。

産油国であるベネズエラとイランへの軍事行動は、こうした状況の中で行われた。米国としては石油のドル決済体制を維持することが重要な目的だったと推測される。

しかし現在、米国にとって最も重要なパートナーの一つであるサウジアラビアが、ドル以外の決済手段の検討を進めている。

謀略論との批判を承知で言えば、米国の空爆に対抗してイランがサウジアラビア国内の米軍基地を攻撃したことを、サウジアラビアはむしろ歓迎したのではないか。

4月29日付のキューバのプレンサ・ラティナは、ドル決済から人民元など他通貨への移行について解説している。世界規模で急速な変化が進んでいると指摘し、記事のタイトルは「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」(※出典)となっている。

◆「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」

静かではあるものの極めて大きな変化が、世界の通貨バランスを再定義している。実際、BRICSを主導役として90カ国以上が国際貿易においてドルを離れつつある。その代わりに、人民元、ルーブル、ルピーが徐々に主流になりつつある。

この戦略的な再編は、単なる技術的調整ではなく、戦後以来アメリカを中心に構築されてきた金融秩序に挑戦するものだ。この動きの根底には、経済的主権を確立しようとする明確な意思と、世界の資金の流れにおけるアメリカの覇権への直接的な挑戦がある。

2025年初頭以降、BRICS加盟国は現地通貨への移行など具体的な行動を通じて「脱ドル化」戦略を強化してきた。この流れは、国際取引における通貨主権を取り戻したいという共通の願いに基づいている。

イラン中央銀行総裁モハンマド・レザ・ファルジンは次のように述べている。「我々はロシアと通貨協定を締結し、米ドルを完全に排除した。現在はルーブルとリヤルのみで取引している。」

同様に、インドとロシアの貿易はルピー決済の採用により130億ドルから270億ドルへと増加した。ブラジルは中国との間でレアルと人民元による直接取引を確立し、中国の決済システムをブラジルの銀行に統合することでこれを支えている。

二国間協定にとどまらず、BRICSは西側のシステムに対抗可能な専用の金融インフラも構築している。この戦略を体現する具体的な仕組みには以下がある:

BRICS Pay:現地通貨による越境決済システムで、すでに50カ国以上がSWIFTを回避可能

独立国家共同体(CIS):BRICSと連携し、越境取引の85%を自国通貨で実施

新開発銀行(NDB):ブラジル(10億4100万レアル)やロシア(6880万ドル)などでインフラを現地通貨建てで融資

ルーブル:ロシア輸出に占める割合が10%から40%以上へ上昇(ウクライナ紛争関連制裁以降)

これらは、脱ドル化が単なる政治的スローガンではなく、具体的なツールと政策判断、そして地域間の連携によって国際経済の仕組みに深く組み込まれていることを示している。

この動きはBRICSの枠を超え、アフリカ、アジア、旧ソ連圏へと広がっている。独立国家共同体(CIS)(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンなど)は、越境取引の85%以上を現地通貨で行っている。

アフリカでも同様の動きが見られる。例えばタンザニアは特定の取引でドルを公式に禁止し、ケニアやナイジェリアも自国通貨決済モデルの導入に向けて進んでいる。ASEANもまた、現地通貨決済の地域的枠組みを積極的に推進している。

この変化が特に顕著なのがエネルギー分野である。サウジアラビアはBRICSに歩調を合わせ、石油販売で人民元を受け入れており、インドもロシアからの輸入をルピーで支払い、ドルを回避している。

ガーナは原油輸入に金を使用することを選択した。これらの動きはしばしば、ドルの政治的利用への対応と解釈される。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は次のように述べている。「ドルは武器として使われている。実際にそうなっているのを我々は目にしている。これは重大な誤りだ。」

この流れに対し、アメリカの対応は迅速だった。ドナルド・トランプは、通貨の代替手段を構築する国々に対して100%の関税を課すと警告した。これらの圧力はすでに政治的影響を及ぼしている。

ブラジルでは、ルラ大統領が今年のBRICS議長国としての議題から共通通貨構想を外した。一方で彼は「一方的主義は国際秩序を損なう。分断が進む中、多国間主義の一貫した擁護こそが唯一の道だ」と述べ、バランスの取れた姿勢を示した。

しかし、この流れはすでに確固たるものとなっているようだ。脱ドル化はもはや抗議ではなく、ドル依存を減らす数々の取り組みによって示されるグローバルな戦略転換となっている。この通貨変革が、経済力の持続的な再均衡をもたらすのか、それとも既に進行している地政学的分断をさらに強めるだけなのかは、今後の焦点となるだろう。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年4月30日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
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