ルラ氏、事前の予想を覆して勝利し、ラテンアメリカの左派に希望を取り戻す

セサル・ゴメス・チャコン

ついに、予想されていたことが現実となった……。

ブラジルで日曜日に行われた選挙で、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏が勝利した。この勝利は、困難に負けずに努力を続けてきたことの成果であり、保守派の政治的な動きに対して国民の意思が勝ったことを意味する。また、ブラジルの選挙結果は、ラテンアメリカの左派勢力が、再び希望を持つ根拠となった。

間もなく81歳になる労働運動出身のルラ氏は、歴史的な逆転勝利を果たした。第1回投票では相手候補に後れを取ったものの、ブラジルの極右勢力の政治的な後継者であるフラビオ・ボルソナロ氏を破り、4期目の大統領の座を勝ち取った。ルラ氏の歩みは、国民が自らの将来を選ぶ力を持ち続ける限り、選挙の結果は事前に決まっているわけではないことを改めて示している。

今回の選挙結果は、米国政府からの圧力や保守勢力の台頭に直面しているラテンアメリカにおいて、特に大きな政治的意味を持っている。ルラ氏は、米国が覇権を広げようとする動きに対し、ブラジルの独立と自主性を強く守ってきた。最近、国連で述べた「ブラジルは、どの国の裏庭にも収まるような国ではない」という発言には、ラテンアメリカにとって重要な信念が表れている。それは、他国からどのような圧力を受けても、自国のことは自国で決めるという姿勢を貫くべきだという考え方だ。

◆キューバも今回の勝利を特に歓迎している

ルラ氏とキューバ革命とのつながり、そしてフィデル・カストロ最高司令官との個人的な関係には、社会正義やラテンアメリカの統合をめぐって交流を重ね、互いに尊重し、考えを共有してきた歴史がある。フィデル氏は、労働者の闘いの中から生まれた指導者としてルラ氏を評価していた。また、貧しい家庭に生まれた経験を、社会を変えるための政治的な力へと転換できる人物だと認めていた。

2003年にルラ氏がブラジル大統領に就任すると、キューバとブラジルの間で緊密な協力関係が始まった。両国は協力を強化するとともに、より公正な国際秩序の必要性を訴えるため、さまざまな分野で連携した。その目標は、グローバルサウスの国々が外部からの押し付けを受けず、自らの将来を決められるようにすることだった。

このため、ルラ氏の勝利は、単に右派勢力が選挙で敗北したことだけを意味するものではない。国民の利益を重視する政治勢力が、不利な選挙運動に直面しても持ちこたえ、市民の信頼を取り戻すことができるということも示している。

ルラ氏の人生は、貧困、労働組合での活動、投獄、そして政権への復帰によって形づくられてきた。その歩みは、困難に直面しても簡単には屈しない政治的な意志の強さを示している。

今回、選挙で4度目の勝利を収めたことで、ルラ氏が歴史に名を残すことは確実となった。そして、今回も改めて明らかになったことがある。それは、事前の予想や外部からの圧力がどうであろうと、最後に決定を下すのは国民だということだ。

セサル・ゴメス・チャコン(César Gómez Chacón)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年10月28日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼セサル・ゴメス・チャコン (César Gómez Chacón)
キューバのジャーナリスト、代表作にアンゴラ内戦を取材した『Cuito Cuanavale. Viaje al centro de los héroes(クイト・クアナバレ――英雄たちのただ中へ)』

Fuente:
https://www.cvi.icrt.cu/lula-derrota-los-pronosticos-y-devuelve-la-esperanza-a-la-izquierda-latinoamericana/

11・1同志社大学ホームカミングデー高橋博子さん講演会 矢谷暢一郎(ニューヨーク州立大学心理学名誉教授)さんから熱い連帯のメッセージが届きました!

松岡利康

11・1同志社大学ホームカミングデー高橋博子さん講演会に、激動の1960年代後半、ヴェトナム反戦運動が世界的に盛り上がる中、「伝説の学友会委員長」といわれ先頭で闘った、アメリカ在住の先輩・矢谷暢一郎(ニューヨーク州立大学心理学名誉教授)さんから熱い連帯のメッセージが届きました!

全関西の労働者、学生、市民のみなさん! 11・1には同大京田辺キャンパスに圧倒的に結集し、今こそ反戦、反核、反原発の声を拡げていこうではありませんか! 同志社大学キャンパス内での講演会ですが、同志社OB・関係者でなくても、他大学OBでもどなたでも自由に参加できます。

以下、矢谷さんからのメッセージを掲載いたします。(松岡)

◇     ◇     ◇     ◇

60年前同志社大学学友会の反戦・反核運動と今日の挑戦

矢谷暢一郎
Professor Emeritus of Psychology at Alfred State College

奈良大学・高橋博子先生を招いて行われる2026.11.1 同志社大学ホームカミングデー講演会に、ニューヨークの片田舎アルフレッドより連帯のメッセージを送ります。

高橋教授(文化史学博士)は1969年生まれ、同志社大学文学部卒業とあります。それよりも23年前1946年生まれの私は、1965年に同志社の英文科に入学しました。第二次世界大戦・太平洋戦争直後に生れた日本人はアメリカ民主主義の第一世代と言われます。1945年の夏、広島・長崎に落とされた世界で初めての原子爆弾で、21万人以上の(1945年12月末までに)犠牲者たちの死の上にもたらせた民主主義と平和憲法でした。自治と民主主義、平和は日本だけではなく世界共通の国際主義が要求されるとは、アメリカ民主主義第一世代が突き付けられた1960年代の教訓でもありました。

大戦中、浜松航空隊の「特攻隊候補生」だった父親は7月幸いにも(!?)大病に見舞われて、死の突撃の前に矢谷家の跡取りを産むために日本海の漁村の田舎に一時帰省が許され、娶った母親に私を産ませて浜松航空隊に戻る直前に民主主義国家アメリカの原子爆弾で「生き長られる羽目になりました」。(10年ほど前、生前の母親に、「原爆が落とされず、浜松に戻った親父が太平洋でゼロ戦で爆死して後、ボクを妊娠していなかったとわかったら、お母さんどうなっていた?」と訊いたら、そげなこと誰にもわからへんかった。同じような境遇の女の人は私ひとりじゃなかったんだよ…」と応えた。)

1965年に隠岐の島出身の私が入学した京都の同志社は、ヴェトナム反戦運動が盛り上がり、あっちこっちに、学術団、文連、新聞局、学生放送局、各自治会などを総括する全学自治組織「学友会」の反戦の看板が立ち並び、先生方、生協の組合員たちも一緒になって、同志社は全体としてアメリカのヴェトナム戦争反対、「非核三原則」を支持し、戦争放棄した日本国憲法を守る運動、「護憲運動」を繰り広げていました。1968年1月17日~21日、原子空母エンタープライズがヴェトナム北爆に参加した戦闘機を搭載していたことから、この空母が日本初の佐世保寄港をすることがわかり、日本がヴェトナム戦争の出撃基地になることへの不安、反発、そしてエンタープライズの寄港が日本への核兵器の持ち込みと放射能汚染の懸念が広まり、日本全国から原子力空母寄港反対派の労働組合員や新左翼系の学生たち(三派全学連など)が佐世保に結集し、「エンプラ反対」の激しい運動を繰り広げました(当時の詳細や映像はNHKアーカイブスや佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争 – Wikipedia参照)

同志社英文科の新入生となった私は、1967年の2回生で文学部英文科自治委員3人の1人に選出され、1月の「エンプラ反対」に他の自治会委員・学友会執行部委員たちと京都から鉄道深夜便で佐世保に入り、エンプラ寄港反対運動に参加しました。全国から集まった若い労働組合員たち、そしてたくさんの佐世保市民たちと4日間にわたる、あのような大きい反戦・反核・護憲運動を体験したことはありません。

1968年、2万人を擁する同志社の学友会中央委員長に選ばれた私は、10月21日の国際反戦闘争に全学ストライキで参加しました。フランスでは5月革命・5月危機と言われたパリのカルチェ・ラタン闘争に続き、アメリカ、ドイツとヨーロッパ各地で起こったヴェトナム反戦の学生運動は文字通りのinternational anti-war dayと世界的な規模となりました。

この年の2年前、英文科助教授として就任したばかりの矢内原伊作の招待で同志社にやって来たジャン=ポール・サルトルとシモーヌ・ド・ボ―ヴォワールが、実存主義をベースに「人間は社会に対してどのように主体的に関わるべきか(政治参加すべきか)」を強く説いた講演をしましたが、後の日本の学生運動や大学闘争の思想的背景に大きな刺激を与えた実例としても語られるべき60年代の同志社の社会政治的態度、行動の表明でした。

一国の良心として育成される同志社の教育精神は受け継いだものの、私は同志社を卒業していません。60年代の反戦学生運動が三派全学連内の「日本革命運動を巡る党派・党内闘争」の結果に責任が負えず、同志社を中退、2、3年のサラリーマン生活にも満足できず、1977年アメリカに渡りました。

ユタ州の大学で学士、オレゴン州の大学院で修士、そしてニューヨーク州のストニー・ブルック大学院で心理学の博士号を取りつつあった1986年、オランダであった国際政治心理学会での論文発表後、帰国したニューヨークのジョン・F・ケネデイー空港で逮捕され、アメリカ連邦拘置所に44日間拘留。学生ヴィサも取り消され、国外追放の危機に見舞われました。

拘留・追放の容疑・罪状は「日本でのアメリカのヴェトナム反戦活動、共産主義団体のメンバーもしくはそれに関係ある組織の反米活動に従事、アメリカ人とアメリカ国家に不利益な、undesirable alienとしてMcCarran-Walter Act(1952)のブラック・リストに載せられ、国外追放の処罰」。国際学会の研究発表は、アメリカの「反核態度と反核運動の不一致:不一致を正当化する心理的詭弁としてのアメリカ国家主義と個人主義」。国外追放の直前、私を「救出」したのは、日本のパスポートを発給した日本政府ではなく、アメリカの大学・法曹界・人権団体・新聞テレビラジオのマス・メディア、ワシントンDCの議員たちのアメリカ政府批判などで、名もしれぬ多くのアメリカ人の抗議によって、レーガン・アメリカ政府は国外追放を諦め、私は妻とアメリカ生まれの二人の息子たちのアメリカの土地に戻されました。

家に帰った後博士号学位を取りましたが、アメリカ政府のブラックリストに載せられた私のアメリカでの就職探しはなかなか大変でした。それでもニューヨークの片田舎で、30年間ニューヨーク州立大学のアルフレッド工科大学で教授職に携わり、現在心理学名誉教授としてアルフレッドで田舎暮らしをしています。

来年6月,University of Split in Croatiaの“Archipelagos of Meaning”をテーマとした人文科学国際学会で、“Living in the Kafkaesque:An Undesirable Alien in America”と題して、「ヤタニ・ケース」の発表を行う予定です。

アメリカ帰りの新島譲は同志社の創設精神として、一国の良心たらんと若い学生たちを鼓舞しました。今年80歳になった私はアメリカに在って、夢を託した未来を「明日があるさ」と期待しましたが、「明日」は早く来すぎてしまい「明日の明日」を期待しなければならないスーパーパワーの混乱を見る今日です。

米国政府もロシア政府も、外国人排斥政策と不必要な戦争で自らの失策を覆い隠そうと躍起です。グローバル化した世界にあって、日本政府も外国人排斥に戦争と繁栄の道を求めていませんか?

仕組まれていた大阪関西万博未払い問題

西谷文和(紙の爆弾2026年11・12月号掲載)

昨年10月13日に大阪関西万博が閉幕して、まもなく1年が経過する。開催中「万博の華」といわれていたのが外国のパビリオンだ。しかしいまだにアンゴラ・アメリカ・中国・マルタ・ルーマニア・セルビア・ドイツ・ネパール・インド・ポーランド・ウズベキスタンの11カ国の工事を請け負った下請け業者が、総額10億円を超える工事費の未払いに苦しんでいる。

ちなみに「愛・地球博2005」は、未払いゼロ(当たり前だが)。電通と業者の間でワイロの授受があり、関係者が塀の内側に落ちてしまった「東京オリンピック2020」でも未払いはゼロ。なぜ「大阪・関西万博2025」だけに多くの未払い問題が生じたのか?

その答えは、無謀なタイムスケジュールと、夢洲という最悪の会場設定だった。

まずは日程問題から振り返ろう。前回の「ドバイ万博2020」がコロナ禍で1年延期され、そもそも準備期間が4年に短縮されていたことが、第1の原因だ。この4年のうちにウクライナ戦争が勃発し、資材が高騰。さらに人材不足と建設業界の働き方改革による残業規制など、そもそも遅れる原因が複雑に絡み合っていた。2022年秋には宮本洋一・日本建設業界会長(清水建設会長)が「このままでは間に合わない」と警鐘を鳴らしていた。

さらに1年が経過した2023年夏、大手ゼネコンがいっせいに工事から撤退を始めた。外国政府が独自に建てる〈パビリオンAタイプ〉はデザインが複雑で、その国の意向を取り入れながら建設していくため、追加工事や設計変更などで遅れが生じやすい。そうなれば追加資金が必要になるが、外国政府は支払わないだろうと予測したのだ。

大手ゼネコンは「資金が回収できない」とAタイプから逃げた。ゼネコン関係者は匿名で「このまま請け負えばやけどする」と語っている。当然、万博協会も国も大阪府もこの事実を知っている。

その結果、2023年8月の時点で、Aタイプで工事を開始した国はゼロ。このままでは間に合わないと焦った万博協会と吉村洋文大阪府知事は説明会を開催。関西の中小建設業者・設備業者を集めて、異例の協力要請を行なった。この時、吉村知事は「大手だけでできるものではない、中小業者のみなさんのご協力をお願いしたい」と頭を下げた。

今年6月、国会で日本共産党の大門みきし参院議員がこの説明会について質問した。なんと万博協会と大阪府知事は「大手ゼネコンは資本回収リスクがあるから撤退した」事実を隠した上で、協力だけを要請していたのだ。

そうこうするうちに2024年1月、能登半島地震が起きて多大な犠牲が出た。この時せめて「震災のため1年延期」と工事期間を延ばしておけば、未払い問題は回避できただろう。建設業者を急がせて2025年4月開催に突き進んだ吉村知事と万博協会の罪は大きい。

その結果、宮本会長が危惧した通り多額の未払いが発生、少なくとも38社の下請け企業が10億円を超える被害を受けた。38社の下には孫請け、ひ孫請け、1人親方たちがいて、おそらく1000人を超える人々が今も泣き寝入り状態で放置されている。

◆手のひらを返した吉村知事と万博協会

次に夢洲という会場の問題について振り返ろう。夢洲はゴミの処分場として大阪湾に埋め立てられた無人島で、工事期間中はまだアクセス用の地下鉄が開通しておらず、路線バスもなし。職人さんたちは重い工具を持って自家用車に相乗りし、駐車場からかなりの距離を歩いて現場に入っていた。

Aタイプは全て円形大屋根リングの内側に建つ。大屋根リングは日本の税金で作っていたので「資本回収リスク」はない。だから大手ゼネコンが予定通り作ってしまった。リングが先にできたので、工事用のトラックが入りにくくなった。笑い話のようなアホ状況の中、急ピッチで外国パビリオン工事を進めざるを得なかった。

さらに夢洲の地盤はN値5。これは「保育園の砂場レベル」のゆるさで、通常の2階建て家屋はN値20以上ないと建たない。マンションはN値50が必要だ。つまり、デザインに趣向を凝らした上で、高い建物を建てようとすれば、杭を打たねばならない。おそらく外国の担当者は夢洲がそんな地盤であることを知らずに、工事計画を練っていたのだろう。だから余計に設計変更・追加工事が多発し工事予算は膨らんでいく。

未払い被害者たちは「何度も設計変更があって、ほぼ眠らずに凍えながら現場に泊まり込んで作業した」と証言している。工事最終盤は2025年1月から3月、「労働者が逃げ出すのではないか」と考えたのか、現場に監視カメラが設置された中での突貫工事だった。

彼らは「万博を支えた影の英雄」である。吉村知事と万博協会は、工事前は頭を下げたものの、工事後は手のひら返し。「民・民の問題だ」と彼らを切り捨て、救済に動かない。

先の大門議員は「資金回収リスクがあることを事前に知らせなかったのは、国や協会の重要事項説明義務違反である」と追及している。万博協会・国・大阪府は道義的責任どころか、法的責任を問われる立場でもあるのだ。

ここから先は https://note.com/famous_ruff900/n/ndf1f4449f460

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「日本ユネスコ運動全国大会 in 久留米」に参加して

江上武幸(弁護士 福岡・佐賀押し紙弁護団)

戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に「平和のとりで」を築かなければならない。(UNESCO憲章前文より)

去る10月3日、福岡県久留米市の石橋文化センターで「第82回日本ユネスコ運動全国大会 in 久留米」が開催されました。民間ユネスコ運動は市民の力で国際理解と平和の心を育むことを目的に日本から始まった草の根ボランティア活動です。

1947年7月に最初の国内民間ユネスコ団体「仙台ユネスコ協会」が設立されています。日本がユネスコに加盟したのはそれから4年後の1951年7月です。民間ユネスコは政府機関とは独立した非政府組織(NGO)として活動しており、世界93の国と地域で約5300の団体・組織が設立されています。日本には268の民間ユネスコが存在します。

今回、全国から200名を超える会員が久留米市に集い、第82回全国大会と懇親会が開かれました。久留米ユネスコは福岡県で最初に設立されたユネスコです。東京でユネスコ活動をしておられた中村静雄氏が故郷久留米に戻られてから親族に声をかけて1982年に結成され、今年で44年になります。(執筆者:弁護士)

私はユネスコの何たるかも知らずに誘われるまま入会し、毎年1月に久留米市役所の2階で開かれる小・中学生の「わたしの町のたからもの絵画展」の優秀作品に額縁をプレゼントする活動に協力するだけでした。今回、全国大会の成功のために2年間準備に専念してこられた白石会長(元久留米市長)が怪我のため急に参加されなくなり、懇親会の乾杯の挨拶を頼まれることになりました。

全体会は久留米市発祥のブリヂストンタイヤ(BS)の創業者石橋正二郎氏がスポーツ・文化・芸術の振興と市民の憩いの場として寄贈された石橋文化センターの一角にある音楽ホールで開かれました。

外務省・文部科学省、福岡県、久留米市、福岡県教育委員会、久留米市教育委員会、久留米大学等の後援を受けて開催された今大会は、善導寺の僧・賢順(けんじゅん)を祖とする箏曲の演奏と、地元出身のシンガーソングライター野田かつひこさんのオリジナル曲のギター演奏で幕を開けました。

大会のメイン行事は「わたしにとっての平和とは」と題する女性5名によるリレートークでした。92歳になる元秋月中学校長(日本遺族会女性部長)の戦争遺児としての体験、福岡市在住のウクライナ人女性の母国からの避難民受け入れの話、沖縄県在住の女性平和教育ファシリテーターの活動報告、ジュネーブの国連欧州本部に反核署名を届けた女子高校生の署名運動、それと「お義父さん、戦争ってどげんやった?」(竹書房・コミックエッセイ大賞受賞)で漫画デビューした地元作家の制作秘話など、それぞれの体験に基づき心の中に築いた平和への思いを話されました。

私は「心の中に『平和の砦』を築かねばならない」というユネスコ憲章の意味するところを今ひとつ実感できないまま漫然と過ごしてきましたが、リレートークを聞きながら自分の心の中に少しずつ「平和の砦」が築かれていく気がしました。

外務省キャリア官僚として長年中東の和平構築に携わってこられた久留米市出身の元久留米大学教授の宮原信孝氏から「一人ひとりにそれぞれの人生があり、一人ひとりの命と生活こそが、かけがえのない最も大切にするべきものであることを皆さんに伝えてもらいました。本日のこのような話を大会参加者個々人のネットワークを通じて世界の市民に伝えていくことを提案します。」との総括の言葉があり大会を終了しました。

私がこの投稿をしようと思ったのは、民間ユネスコの活動の一端を知ってもらいたいと考えたのと、シンガーソングライター野田かつひこさんの「大和桜」という歌と、ゆる山まげよさんの漫画本「お義父さん、戦争ってどげんやった?」を是非とも紹介したいと思ったからです。

「大和桜」の歌は、太平洋戦争の末期に戦艦大和を指揮して沖縄に出撃を命じられた艦隊司令官伊藤整一海軍中将(死後、海軍大将に昇進)の子孫の方たちが野田かつひこさんに頼んで作詞・作曲してもらった曲です。伊藤整一は部下に下船を命じて部下の命を助け自らは戦艦大和と運命をともにした福岡県三池郡高田町(現・みやま市)出身の軍人です。伊藤整一の生家の桜の木が枯れたあとに芽生えた若木が大きくなり、満開の花を咲かせるようになったことから子孫の方たちが伊藤整一の思いを曲にしてほしいと頼んだそうです。

伊藤整一には、毎日、片道3時間以上かけて柳川市にある旧制柳川中学校に通学し、行き帰りに歩きながら勉強したという逸話が残っています。その後、海軍兵学校・海軍大学、そしてアメリカのイェール大学に学び、アメリカと日本の圧倒的な国力の差を目にして帰国し、連合艦隊司令長官山本五十六らとともに日米開戦を避けるため懸命の努力をした軍人として知られています。

私は「大和桜」の歌を聞いて伊藤整一海軍中将のことを初めて知り、同時に軍人であった伊藤整一を偲ぶ「大和桜」が、世界平和を誓うユネスコの全国大会の舞台で歌われたことに深い感銘を受けました。

※ネットで「伊藤整一」を検索したからだと思われますが、最近、部下を助け、あるいは部下と運命をともにした海軍の高級将校らの情報が次々と出てくるようになりました。特攻隊を指揮した大西瀧治郎中将が終戦の翌日に割腹自決したことや、宇垣纏中将が終戦の日に自らの特攻機に乗って出撃したことなど知らない話を知ることができます。

それとは反対に、戦後、航空幕僚長から自民党参議院議員として84歳まで生き延びた源田実氏が特攻隊とのかかわりを徹底して隠しつづけたことや、統一教会や勝共連合と深い関係をもっていたこと、また、前記大西中将の自決を受けてあとに続くのではないかとみられていた中澤佑少将が幕僚たちを前にして「俺は死ぬ係じゃないから」と言い放って生き延び、その後、米海軍横須賀基地に勤めて83歳の長寿を全うした話なども知ることができます。

以前、「甲斐弦『GHQ検閲官』の読後感」や「裏千家玄室大宗匠お別れ会に参加して」の投稿でも触れましたが、死ぬべきでない人間が死に、死ぬべき人間がのうのうと生き残ってきてできたのが今の日本です。防衛大学生が制服姿で靖国神社に集団参拝している姿をネットで見るたびに、特攻で死んでいった10代後半から20代の戦中の若者たちのように、卑怯な大人たちに騙される自衛官がでないことを祈るばかりです。

大会終了後、ユネスコ活動の支援企業のホテルマリターレ創世に会場を移して懇親会が開かれました。偶然、隣りあわせになった「ゆる山まげよ」さんから「お義父さん、戦争ってどげんやった?」の漫画を頂戴しました。

年上のご主人と結婚した若いお嫁さんが義父から幼い頃の戦争の思い出話を聞き出しそれを素材にして描いた戦争漫画です。義父の父親は徴兵検査に合格したものの運よく軍用木材の切り出しと運搬の仕事を命ぜられたことから戦地に行くことも戦闘に巻き込まれることもなく生き延びることができました。

終戦に近い頃、B29が近くに墜落し一人の若い米兵が空腹に耐えかねて投降してきた時の話です。村人につかまえられ、木にくくりつけられた米兵に向かって息子を戦地で殺された父親が鎌を振りかざして襲いかかろうとしますが皆にとめられます。

B29爆撃機の編隊が日本上空に現れるようになってから、各地で撃墜された乗員がパラシュートで落下し住人に捕獲されるという事件が発生しています。中にはパラシュートで脱出した米兵に食べものを与えたり怪我の手当をした事例もあるようです。

戦後、墜落したB29の残骸の回収のために義父の村に進駐軍がやってきます。物珍しさに子供たちが近づくと米兵は角砂糖やガム・チョコレートなどをくれます。大人たちには温めたコーヒーを飲めと言います。それを見た義父の父親は軒先に縄でつるした干し柿をとって米兵に与えます。うまそうにほおばるのを見て残りの干し柿を縄ごと首にかけて渡します。作者は義父に「お爺さんは敵の兵隊さんになぜ干し柿をあげたりしたの。干し柿一個でも食糧難の時で大切な食べ物だったはずなのに。」と聞きます。すると、義父は「ただ、お返ししたかっただけじゃろ」と答えます。そこには、敵とか味方とかいう考えが入り込む余地はありません。戦争を無事に生き延びた人間同士が目の前にいるだけで十分ではないかと言いたげです。

作者は義父の答えを聞いて「人の『本質』は敵味方の枠を超えうるとてもシンプルなものかもしれない……」という思いに至ります。

この漫画はゆる山まげよさんの処女作ですがネット上では早くも高い評価を得ています。原爆漫画「はだしのゲン」(中沢啓治作)と同じように世代と国を超えて読み続けられてほしい作品です。

徴兵制という言葉が普通に聞かれるようになりました。ハガキ一枚で戦争に駆り出された「赤紙」の時代が昔語りといえなくなるような予感がします。しかし、歴史は確実に進歩しています。戦前と違い国の主権者は国民です。政治家も官僚も裁判官も自衛官も警察官も、また皇族も一人の国民であり他の国民の命や生活を奪うことはできません。国がなくとも人は友人・知人さえいれば世界のどこに行っても生きていける逞しさをもっていることが「ポツンと一軒家」や「YOUは何しに日本へ?」といったテレビ番組でわかります。

憲法で最初に学ぶのは条文ではなく憲法制定前から存在する自然権についてです。自然権は誰かから与えられるものでもなく人間として生まれた時から持っている権利です。他人に譲渡したり国家によって奪われたりすることのない権利です。この考えは、フランス人権宣言・アメリカ独立宣言以来、各国憲法に受け継がれて今日に伝わっています。

自然権の次に学ぶのは「抵抗権」です。抵抗権は国家や政府が不当に国民の権利・自由を侵害し、憲法や法の秩序を乱した場合には人民がそれに反抗することができる権利です。インドのガンジーや南アフリカのネルソン・マンデラが独立運動で指導した「市民的不服従」と異なり力をもってこれを打倒することをも認める権利です。

大日本帝国憲法には、「自然権」・「抵抗権」といった考えはありませんでした。国民は「臣民」と呼ばれており臣民の権利は天皇が与えたものでした。そのため天皇はいつでも法律で臣民の権利を制限することができました。治安維持法で死刑をもって思想・信条の自由を制限したのはその一例です。

日本国憲法はアメリカを中心とする連合国が人類の英知を結集して日本にその制定を求めた世界に誇るべき憲法です。自然権・抵抗権の権利も条文に定めがなくとも当然に含まれています。戦争に行って人を殺したり殺されたりするのが嫌な国民は法律がどうであれ自然権・抵抗権に基づいて戦争に行くのを拒否することができます。自衛官・警察官、その他の公務員であっても変わりはありません。

田中角栄元首相は人は「人相」で判断できるという考えをもっていたと言われています。新潟の農村出身であり高等小学校の学歴しか持たない首相の慧眼だと感服します。「人相見」は、古代中国や古代ギリシャ時代から伝わっている世俗の知恵です。テレビであまりにも酷い顔つきの政治家や官僚、時事評論家等の顔を見るたびに、誰か人相見ができる占い師はいないかと思ってしまいます。

宇宙から地球を眺めることができる神の目を持ちえた人類が21世紀を迎えてもなお戦争を続けていることの不思議さをつくづく感じます。むしろ、人間よりAIの方が戦争を防ぐ知恵を出してくれるかもしれません。アメリカでは日本の国家予算122兆円を軽く上回る166兆円の資産を一人の人物で所有しているそうです。完全に狂っているとしかいいようがない世界が出現しています。

核ミサイルや原子力発電もそうですがAIも人類を滅亡させかねないと言われています。これらの化け物と化した人類の科学の発展や社会構造を人間が理性によってコントロールできるかどうかが問われる時代に突入したように思います。広島・長崎の原爆被害と福島第一原子力発電所の事故を経験した日本がその役割の一端を担うことができれば良いのですが。

※ユーチューバーの金子吉友さんの「反DSあつまれニュースの森」の「郵政民営化の嘘 笹川財団、満州人脈、清和会、日本維新の会、ダボス、竹中平蔵すべてが裏でつながる」の番組は必見だと思います。参考まで。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年10月14日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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物価高騰の写真にだまされた ── 氾濫するAIによる偽造写真

黒薮哲哉

本稿の右側に掲載した写真は、フェイスブックに投稿されたものである。転載機能や写真のコピーによって、かなり広範囲に拡散されているため、最初の投稿者を特定することは難しい。わたしも写真の内容を事実だと思い、拡散した。

写真は、同じ系列のスーパーマーケットにおける商品の販売価格を、2002年と2026年で比較したものである。たとえば、「コシヒカリ5キロ」は980円から4200円に値上がりしている。「牛乳1リットル」は98円から260円に、「たまご10個」は78円から310円に、「食パン1斤」は68円から210円に、さらに「キャベツ1玉」は58円から230円になっている。

ところが、わたしが転載した画面に、「これはさすがにウソ」というコメントが書き込まれた。そこで、AIを使って2002年当時の推定価格を調べてみると、次のような数字が提示された。

「コシヒカリ5キロ」195円
「牛乳1リットル」201円
「たまご10個」204円
「食パン1斤」144円
「キャベツ1玉」170円

冒頭の給食の国際比較も事実ではない。あるいは日本の全体像ではない。

インターネット、特にSNSには、ウソの情報が多いことを物語っている。ネット上の情報は、公表した後でも削除や修正が簡単にできるため、裏付けのない情報が出回っているのだろう。車の運転免許を持たない人が車を運転し、周囲に迷惑をかけているのと同じような状況が生まれている。

余談になるが、先のブラジル大統領選挙(第1回投票)では、米IT大手のメタ(Meta Platforms)が介入し、極右候補を応援していたとの指摘がある。同社は、Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営している。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年10月16日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

全日本キックの前進する韓国路線 新スターの飛躍と低迷!

堀田春樹

メインイベンター広翔はKO出来ぬ課題残るも大差の圧勝。
福僚太、近藤祐一がノックアウト勝利で注目株に浮上。
対する横尾空、KAI・AKGは無念の敗北。

◎SAMURAI WARRIORS 7th / 10月11日(日)後楽園ホール17:20~21:00
主催・認定:全日本キックボクシング協会 / 協力:全日本キック韓国支部、HERO

◆第13試合 56.0kg契約3回戦

全日本バンタム級3位.広翔(=北川広翔/稲城/神奈川県出身20歳/ 55.95kg)
10戦7勝(1KO)3敗
        VS
李閏宰(イ・ユンジュ/韓国/ 56.0kg)19戦10勝9敗
勝者:広翔 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:勝本30-27. 竜矢30-27. 少白竜30-27

蹴りの牽制での両者の攻防は前進するのは李閏宰だが、広翔が距離に合わせて先読みする蹴りのヒット、三日月蹴りも的確な上手さで優る。パンチと若干の首相撲に移っても広翔の攻めが優った流れで倒すに至らない展開でもフルマークの大差判定勝利となった。

広翔の左ハイキック。狙いは良いが当たりは浅い
広翔の左ハイキック。狙いは良いが当たりは浅い

広翔は試合後「倒せると思ってましたけど疲れてしまって。作戦の10割の内の6で終ってしまって、最後まで作戦を追行していたらKO出来たかなと思います。」
作戦とは上下の打ち分けとか細かな戦略はあった様子だが、考えどおりに行かないのが相手あっての試合なのだろう。

広翔のヒザ蹴り。離れても接近戦でも主導権支配した
広翔のヒザ蹴り。離れても接近戦でも主導権支配した

◆第12試合 HERO JAPAN スーパーフライ級王座決定戦 5回戦

全日本スーパーフライ級6位.横尾空(稲城/神奈川県出身18歳/ 51.85kg)8戦6勝2敗
            VS
同級7位.福僚太(健成會/東京都出身22歳/ 51.95kg)10戦7勝(1KO)2敗1分
勝者:福僚太 / KO 2ラウンド 2分22秒
主審:勝本剛司

蹴りの攻防では互角の展開も福僚太がやや前進。タイミングが合って来た福僚太の得意とするパンチが当たりだし、横尾空の左ミドルキックに合わせた左ストレートがヒットし、横尾空は崩れるがスリップ裁定。更に攻勢に出た福僚太の右ストレートで連続して3ノックダウンに繋げた。横尾空も立ち上がる度に打ち合いに出る勝負に出たが、ダメージが残っては福僚太の的確差に圧され崩れ落ちた。福僚太は来年3月に韓国でHERO王座統一戦の出場決定。

福僚太と横尾空の攻防。福僚太のパンチ攻勢が増えていった
福僚太と横尾空の攻防。福僚太のパンチ攻勢が増えていった
福僚太が連打から右ストレートで最初のノックダウンを奪った
福僚太が連打から右ストレートで最初のノックダウンを奪った
HERO JAPAN王座獲得した福僚太。次、韓国で勝って統一したい
HERO JAPAN王座獲得した福僚太。次、韓国で勝って統一したい

◆65.0kg契約3回戦 勇生体調不良による欠場で前日中止

勇生(=野竹勇生/ウルブズスクワッド)vs柳權(リュウ・グオン/韓国/ 64.3kg)

◆第11試合 58.0kg契約3回戦

全日本フェザー級6位.KAI×AKG(A-BLAZE×KICK/静岡県出身26歳/ 57.85kg)
9戦6勝2敗1分
        VS
近藤祐一(デポルターレ/ 57.85kg)6戦5勝(1KO)1敗
勝者:近藤祐一 / TKO 1ラウンド 0:12秒
主審:少白竜

数発の蹴りの交錯からKAIが前進した瞬間の近藤祐一の左フック一発でKAIはうつ伏せに倒れ、レフェリーはカウントに入るかと見えたところで直ぐにストップ。僅か12秒で終った。担架で運ばれたKAIだったが、控室では回復し歩いて帰れる模様。勝率高く、今後が期待されている両者の攻防展開は、僅か数秒であっけなく終わったが、初回早々の様子見でもチャンスを逃さない、油断ならない間合いだった。

不覚にも近藤祐一の左フックを貰ってしまったKAI×AKG。時間は戻らない
不覚にも近藤祐一の左フックを貰ってしまったKAI×AKG。時間は戻らない

◆第10試合 ライト級3回戦

全日本ライト級9位.山田旬(アウルスポーツ/ 61.1kg)8戦4勝3敗1分
        VS
權正晧(クオン・ジョンホ/韓国出身30歳/ 60.7kg)3戦2勝1敗
勝者:權正晧 / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:少白竜25-30. 伊東マサル25-30. 椎名25-30

初回、蹴りとパンチの攻防は、權正晧が勢い付いていくと右ストレートで山田旬はノックダウン。第2ラウンドは山田旬が蹴りでリズム掴んでいくも、權正晧のパンチで圧され気味。ラウンド終盤は權正晧のパンチラッシュに圧されてしまう。ラストラウンドも勢い付いた權正晧の飛びヒザ蹴りでノックダウンを喫した山田旬大差判定負け。權正晧が圧倒の展開を制した。

山田旬は權正晧のこの右ストレートでノックダウン。主導権は權正晧のままとなった
山田旬は權正晧のこの右ストレートでノックダウン。主導権は權正晧のままとなった

◆第9試合 78.0kg契約3回戦

菊池圭治(GOD SIDE/神奈川県出身44歳/ 77.4kg)15戦11勝(1KO)3敗1分
        VS
崔薫(チェ・フン/韓国/ 77.5kg)33戦12勝(7KO)21敗
勝者:菊池圭治 / KO 3ラウンド 0:54秒
主審:竜矢

菊池圭治は意識的に脇見しながら右ストレートをヒットし、ローキックで崔薫のバランスを崩す余裕の攻め。第2ラウンドも飛びヒザ蹴りに入った体勢でヒジ打ちを落とし込む牽制技。崔薫はこれで頭部を斬ったか、ラウンド終盤には菊池が打ち合いに持ち込み左フックでノックダウンを奪った。ラストラウンドも菊池の左ヒジ打ちで崔薫の右目尻を斬り、右目が腫れて来たところでドクターチェック後、再開するもすぐにタオルが投入され、レフェリーが受け入れ菊池のTKO勝利となった。

菊池圭治は格差見せ付けるヒットを続けた。左フックが崔薫にヒット
菊池圭治は格差見せ付けるヒットを続けた。左フックが崔薫にヒット

◆第8試合 女子55.0kg契約3回戦

山本ほのか(チーム彩/ 54.95kg)2戦2勝(1KO)
        VS
張智雲(チャン・ジウン/韓国/ 54.3kg)4戦1勝3敗
勝者:山本ほのか / KO 1ラウンド 1分16秒
主審:椎名利一

蹴りとパンチの攻防は山本ほのかが強いヒットで圧力を掛け、右ストレートヒット。これが張智雲の左目に当たったか、ノックダウンして諦めたようにテンカウントを聞いた。山本ほのかのノックアウト勝利。

山本ほのかの右ストレートヒットで力強さを見せ付ける結果に繋げた
山本ほのかの右ストレートヒットで力強さを見せ付ける結果に繋げた

◆第7試合 67.0kg契約3回戦

NAOKI(WSR三ノ輪/埼玉県出身34歳/ 66.8kg)6戦3勝(1KO)3敗
        VS
浅井和也(KRONOS/ 65.95kg)6戦2勝(2KO)4敗
勝者:NAOKI / KO 3ラウンド 1分52秒
主審:勝本剛司

パンチと蹴りの攻防はややNAOKI攻勢も浅井和也が逆襲する展開も見せ、一進一退の展開から、NAOKIがヒザ蹴りで強い攻めを見せ、パンチ連打でノックダウンを奪った。NAOKIは更にパンチとヒザ蹴りで2度目のノックダウンを奪い、浅井をコーナーに詰めてのパンチ連打とヒザ蹴り入れたところでレフェリーが割って入り、3ノックダウンによるNAOKIのノックアウト勝利となった。

NAOKIのヒザ蹴りがヒット。ボディー攻めが勝利を導いた
NAOKIのヒザ蹴りがヒット。ボディー攻めが勝利を導いた

◆第6試合 57.0kg契約3回戦

中村健甚(稲城/ 56.9kg)6戦2勝2敗2分
        VS
南暻旻(ナム・ギョンミン/韓国/ 56.45kg)3戦2勝1敗
勝者:中村健甚 / 判定2-0
主審:少白竜
副審:伊東マサル28-27. 椎名29-28. 勝本28-28

初回に中村健甚が右ストレートでノックダウンを奪うが、南暻旻が徐々に盛り返し、中村はタイミングが合わなくなったか、ヒットに繋げられない展開で、打ち合っても南暻旻がややリズム掴んだ前進が目立ち、第2~3ラウンドのポイントの流れが運命を分ける中、僅差で中村が判定勝利。

◆第5試合 ライト級3回戦

清宮拓(GOD SIDE/神奈川県出身39歳/ 61.15kg)13戦4勝8敗1分
        VS
YOSHINORI(健成會/ 61.15kg)8戦2勝6敗
勝者:清宮拓 / 判定3-0
主審:竜矢
副審:伊東マサル30-25. 少白竜30-26. 勝本29-26

パンチと蹴りの手数多いのはYOSHINORIだが、パンチでやや前進の勢いは清宮拓の方。初回は三者三様の採点。第2ラウンドにはYOSHINORIの攻めを貰わず、パンチとローキックでジワジワ出て来た清宮拓が調子を上げて来た。ラストラウンドも清宮拓がパンチで攻勢を強め、ボディーブローで2度のノックダウンを奪い、追い詰めるが終了のゴング。清宮拓が大差判定勝利した。

◆第4試合 スーパーミドル級3回戦

オマル・ファーレス(稲城/ 75.8kg)5戦2勝3敗
        VS
清水日陽(J-KRANG/ 75.9kg)1戦1勝(1KO)
勝者:清水日陽 / KO 1ラウンド 1分54秒
主審:椎名利一

パンチとローキックが交錯する中、清水日陽が左ボディブローから左フックでノックダウンを奪うと、連打で2度スタンディングダウンに繋げ、3ノックダウンでノックアウト勝利した。

◆第3試合 ウェルター級3回戦

小玉倭夢(Norasing Family/ 66.5kg)5戦3勝2敗
        VS
堀江竣太(チーム彩/東京都出身31歳/ 66.4kg)2戦2敗
勝者:小玉倭夢 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-26)
主審:勝本剛司

選手コール時に威嚇する堀江竣太だが、ゴングが鳴るとパンチ蹴りともリズム掴んで行くのは小玉倭夢。第2ラウンドには小玉の勢い増し、パンチからヒザ蹴りも攻勢を強め、ノックダウンに近いクリーンヒットを見せた。ラストラウンドも小玉が圧倒。打たれた堀江はフラ付きながらコーナーに戻った。小玉は大差判定勝利した。

◆第2試合 56.0kg契約3回戦

渡邉獅生(JTクラブ/ 55.85kg)5戦3勝(1KO)2敗
        VS
小原澤友樹(亀田同志会/ 55.05kg)2戦1勝1敗
勝者:渡邉獅生 / KO 1ラウンド 2分10秒
主審:竜矢

パンチと蹴りの交錯から渡邉獅生の右ストレートでノックダウンを奪い、連打から右ストレートで続けて2度ノックダウンに繋げ、3ノックダウンによるノックアウト勝利となった。

◆第1試合 フライ級3回戦

YUSEI Norasing Family(Norasing Family/ 50.8kg)2戦2敗
        VS
小倉大夢(REX/ 50.4kg)1戦1勝
勝者:小倉大夢 / 判定1-2 (29-28. 28-30. 28-30)
主審:少白竜

アグレッシブな両者の攻防は初回は小倉大夢の攻勢ポイントが付いたが、第2ラウンド以降はどちらが攻勢とも付け難い展開で採点が分かれる結果となって小倉大夢がスプリットデジションの判定勝利。

《取材戦記》

韓国との交流と対抗戦は、世間にはまだまだ浸透しない小さな世界に見られがちも、全日本キックボクシング協会としては存在感増して来たこの2年あまり。来年3月には韓国で二階級の、韓国発祥HEROと日本側HEROとの統一戦が行なわれます。

KAI・AKGが近藤祐一に倒された僅か12秒のTKOタイムは、キックボクシング界における最短記録となるかは、全ての記録は調べきれないので解りませんが、令和の全日本キックボクシング協会では最短。昭和のテレビ隆盛期では、代表的なものに木村保彦(目黒)がタイ選手に速攻のパンチで倒され、開始15秒でテンカウントされた敗戦や、富山勝治(目黒)の17秒ノックアウト勝利があります。

プロボクシングにおいては、海外ではノーカウントでの5秒。テンカウントでの10.5秒。国内ではノーカウントで10秒。テンカウントで13秒があります。

テンカウント、ノーカウント、カウント中のレフェリーストップなどで振り分けるのは、KO(TKO)タイムはカウントの有無で差が出るのは当然で、そのKOに至るノックダウンまでの短さが戦った跡でしょう。

過去に失神KO負けでも将来、名チャンピオンになった選手も居るので、KAI・AKGは休息を経ての今後は見守りたいものです。

近藤祐一の一発TKOに対し、清宮拓のような判定勝利ながらジワジワ追い詰めてノックダウンを奪った展開も熱がこもる試合でした。

欠場した勇生は、このところ試合から遠ざかり、韓国遠征を含めた連続しての欠場となりました。パンフレットに記載されていたところによれば、前回の欠場は「パニック障害」の影響がある模様。今回の事情は正確には解りませんが、期待が掛かる選手だけに心配なところである。

全日本キックボクシング協会 次回興行は12月27日(日)に後楽園ホールで開催。
HERO JAPANスーパーライト級王座決定戦、野竹生太郎 vs KATSUYAが行われる予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

裁判官ガチャ? 「餃子の王将」社長殺人事件裁判での無罪判決を考える

尾﨑美代子

京都の「餃子の王将」社長殺人事件の裁判で無罪判決がでた。この裁判には、私がこれまで取材してきた事件と非常に共通する問題がある。

1つは平野母子殺害事件(「紙の爆弾」2026年3月号掲載)、被告に一審で無期懲役、二審で死刑判決が下された、その後最高裁が1審に差し戻して、無罪となった事件だ。大阪の平野区で若い女性Aとその子供が殺害された。この事件の決め手も現場に残された煙草の吸殻だった。

犯人とされたのは、彼女の義理の父親Mだった。彼女が結婚した男性の母親の再婚相手という複雑な関係だ。殺害現場のマンションの踊り場の灰皿からMの唾液が付着した煙草の吸い殻がみつかった。逮捕されたMは一貫して容疑を否認。一方、当日マンション付近にいたことは素直に認めていた。というのも、A夫妻はあちこちで借金を重ねていたが、一部はMが保証人となっており、Mへの取り立てがきつくなっていたのだ。

A夫婦は、そんなM夫婦から逃げるように転居し,居場所を隠していた。その後MはA夫婦が平野の某スーパー周辺に住んでいると知り、ある地域ときいて、当日Mはその周辺を探していたという訳だ。

裁判で問題になった吸い殻は他の吸い殻と違ってかなり古いものに思われた。弁護団は、かつてAらがM夫婦と同居していた際、Mの携帯灰皿をAに何個も貸していた。実際Aの部屋からMが持っていた別の携帯灰皿も見つかっている。弁護団はAらが転居する際、その携帯灰皿を持っていき、あるとき、その中身を踊り場灰皿に廃棄したものだと主張した。踊り場灰皿には実はほかの吸い殻も沢山入っており、その中にはAが吸っていた銘柄の吸い殻もあった。

一審に差し戻した最高裁は、Aが吸っていた銘柄の吸い殻からAのDNA型唾液が検出されたならば、AがM宅からもっていった携帯灰皿の中身を踊り場灰皿に廃棄した可能性が高いと考え、検察にその鑑定を促した。すると驚くべき事実が判明した。なんとなんと、警察、検察は、非常に重要な踊り場灰皿内の吸い殻を入れた箱を廃棄してしまっていたのだ。なんということか! Mに無期懲役、死刑判決を言い渡すほどの重大事件の、しかも最も重要で、Mを犯人と決めつけた唯一の証拠ではないか! これでAの吸っていた煙草の銘柄の吸い殻から、果たしてAのDNAが検出するかどうかの鑑定は不可能となった。

この時の最高裁の有名な判例が「間接事実に合理的な不条理(被告人が犯人でなければ説明がつかないほどの確実性)がない限り、怪しいと思う事実をいくら積み重ねても有罪にできない」として、男性に無罪判決を言い渡した。

王将事件では 王将社長の殺害現場に犯人とされたTさんのDNA型が検出された煙草の吸殻が残されていた。現場を下見に来た際、落としたものとされた。吸い殻について、弁護団はTさんを犯人にしたい第三者が残したものと反論した。

ほかにもいろいろあったが、判決日ワイドショーに出演した亀井弁護士の解説が興味深かった。Tは確かに一般人を襲撃するヒットマンではあり、当時も別の件で服役中だった。しかし、王将社長は日所に至近距離で一発も玉を外さず命中させていた、プロ中のプロのヒットマンだ。しかし、Tはそこまでプロのヒットマンではないはずだ、というものだ。

もう一つの事件は、昨年高裁でも懲役16年の有罪判決がくだされ、現在最高裁に上告中の「羽曳野路上殺人事件」だ。スーパー勤務の山本さんが逮捕された。羽曳野の路上で駐車場に車を止めた男性が、駐車場から愛人宅に行こうとする路上で、何者かに刺殺された。

偶然だが、殺害された男性の愛人宅と、犯人とされた山本さんの家は隣同士で、しかもちょっとしたトラブルを抱えていた。とはいうものの、植木鉢を巡ったり、男性が山本さん宅に煙草を投げたりしているのではないかというレベルの話だった。

山本さんは、男性が愛人を先に家に下ろし、駐車場に車を止め家に戻る間、玄関に出て駐車場を見たりしていた。その日は、男性がなかなか車から降りてこないこともあり、寒いのですぐに家に入り、娘とテレビみたり、お酒を飲んでのんびりしていた。その時、男性が路上で刺殺されていたのだった。パトカーがかけつけ騒ぎになり、山本さんは事件を知った。

車を止めた男性が愛人宅に向かって男性が路上を歩いていると、前から来た男性Bが男性の顔を覗き込み、顔を確認するようなしぐさをおこなったのち、男性の後方に回り、背中からナイフを骨と骨の間に差し入れ、心臓を一突きし、殺害。男性は倒れた直後「おい、まて!」と犯人に怒鳴っていた。山本さんが前方から来たというなら、男性は山本さんを見ているではないか、ならば「おい、山本!」と怒鳴るはずではないか、と弁護団に聞いたら、男性は歩きながら携帯をみていたという。犯人はその後も慌てふためく様子もなく、ルンルンルンと遠くへかけていく姿が防犯カメラやドライブレコーダーに映っていた。これこそプロの殺し屋ではないか。長くスーパーに勤務し、家に戻って娘とだべったり、酒をたらたら飲むのが好きな山本さんにそんなことが出来ようか?

手紙を書けば「早くビールが飲みたいです」。「娘たちと会いたいです」と呑気(失礼!自分が犯人ではないので、まさか有罪で刑務所に服役する可能性があるとは全く思ってないようで、どなたへの手紙にもこう書いていた)に書いてくる山本さんのどこに、「ニヒルで孤独なプロの殺し屋」の影が見えるだろうか。

本当にこれこそ「裁判官ガチャ」やね。しかし、そんなことがあってはならない。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

米国の目標は「日本の消費量の半分」病害虫と残留農薬を運ぶ米国産生ジャガイモ輸入

八田純人(農民連食品分析センター所長)

米国が日本に対して生鮮ジャガイモの輸入解禁を求めている。もしも輸入解禁されたならば、日本のジャガイモ生産にどんな影響が出て、病害虫や残留農薬など、私たちの食の安全にどんな問題が生じるのか。

生協・市民団体・流通分野等からの募金を基に活動し、独立した分析機関として知られる「一般社団法人 農民連食品分析センター」の八田純人所長が解説する。(文責・編集部)

◆ジャガイモ輸入解禁の経緯

私は「検査」が現場の人間です。そうした立場で仕事をしていると、様々な検査のデータを見たり、それに関わる新たな制度作りや基準値の変更といった局面に立ち会ったりします。そこでしみじみ感じるのは、経済合理性の中でかなりの無茶を進めているケースがままあること。しかも、昨今はそんな事例が増えてきたように思います。

そのひとつが、米国産ジャガイモの輸入解禁問題で、生食用ジャガイモ(一般流通用の生鮮ジャガイモ)の輸入を全面解禁しようという流れが農林水産省の中で進められており、調べれば調べるほど侮れない局面に来ていて、ハラハラ感を覚えています。

令和8年(2026年)8月28日、農水省が「米国産一般流通用生鮮ばれいしょ輸入検疫協議」という名で関連資料を公開しました。この資料によれば、米国産ジャガイモの輸入解禁をめぐっては「リスク管理措置に関する協議が必要な病害虫を特定して、害虫が何なのか特定までは終了しました」というステージ2(病害虫リスク評価)の段階にあると記されています。要は輸入に伴い日本に入ってくるかもしれない病害虫の特性と特徴を特定したという段階です。

このステージ2が終わると、実際に輸入することを前提とした場合、どんな管理が必要になるのかというステージ3(病害虫リスク管理)の段階に入ります。この流れの中で進んでいけば、米国産の生食用ジャガイモが日本のスーパーに並んで食卓に上る日が、かなりシリアスな状態で現実味を帯びてきたといえます。

そもそも日本は長らく米国産の生食用ジャガイモを輸入禁止してきました。一方で、ポテトフレークなどの冷凍製品で、加熱処理すればそのまま食べられるフライドポテトのような製品は各国からの輸入を認めています。こうした製品は、たとえ病害虫などがついていても調理加工によって確実に殺菌できる。だから輸入を認めていたのですが、生のジャガイモとなると話は違う。米国産の生のジャガイモには、「ジャガイモシロシストセンチュウ」など厄介な病害虫のリスクがあるからです。

ジャガイモシロシストセンチュウがどんな恐ろしい生き物なのかというと、根などに寄生してジャガイモの成長を阻害する、ジャガイモが収穫できなくなってしまう、収量がガタ落ちする上に、駆逐しようと思っても卵が15年以上も潜んで休眠することができるので、一度侵入を許して拡散すると、駆除も防護も極めて難しい。こんな病害虫が日本の圃場に入り込んでしまったら、どえらいことが起きるからです。

そうしたことが起こらぬよう日本の生産者や農協・防疫機関・行政機構・研究者などが連携して、徹底的にこうした外来の病害虫が日本に蔓延らないように取り組んできた歴史がありました。そんな流れの中で日本のジャガイモの生産は守られてきたのですが、そこに横槍を入れてきたのが米国産ジャガイモの輸入解禁問題です。

最初は2006年、米国側の要求に日本政府が一応折れるという形で、ポテトチップス用に限り、2月から6月までの間、輸入を認める緩和をしてしまいます。

ポテトチップス業者にとってみると、ちょうど2月から6月というのは、国産ジャガイモが足りなくなる時期です。そのタイミングで輸入ジャガイモを使えるようにするということで、ポテトチップスならば、油で揚げることで十分な処理ができるのではないかという条件のもと、輸入を認めてしまったわけです。

その後の2016年には北海道産ジャガイモが不作となり、大手のカルビーや湖池屋でポテトチップス販売休止事件が起きました。この流れを美味しく使うような形で、2020年2月には「2月から6月まで」としていた期間制限を取っ払って、通年輸入を認める規制緩和を、米国政府の要求を呑む形で日本政府は認めていきました。

◆米国の長期戦略とカルビーの対応

ポテトチップスの生産にはいくつかのパターンがあります。ジャガイモをスライスして揚げたタイプのポテトチップスは、生のジャガイモを使うのが一般的です。生ジャガイモの入手ができなければ作れません。

現在、米国産の生ジャガイモ輸入を受け入れる形で、ポテトチップスの製造が認められているのは、カルビー1社のみです。その際、同社は鹿児島港と広島港にある工場でのみ輸入ジャガイモを受け入れ、生産を行なっています。輸入した生鮮ジャガイモは港湾内で加熱処理され、生のイモの状態では港湾外に出さないようにしています。ジャガイモを洗った後の皮などはどうしているのか疑問も残りますが、そのあたりは私もよくわかりません。

こうした実態は日本の消費者にあまり知られていないようですが、米国政府、そして米国のジャガイモに関わる団体は、1コマ、1コマと着実にコマを進める形で日本の市場開放を戦略的に進めてきました。

たとえば、米国農務省(USDA)のホームページにはこんな情報が載っています。2011年付の「米国産農産物貿易の殿堂」というページでUSDAの海外農業局と米国大使館が、米国産農産物の日本市場での開拓活動に多大な貢献をした企業や団体を称え、殿堂入りした会社を紹介しています。カルビーについての文面はこんな感じです。

「カルビー社は米国産ジャガイモ輸入のパイオニアとしてポテトチップ生産用ジャガイモ輸入解禁のために、国内関係で協力しながら米国ポテト産業界、そして米国農務省とともに長年にわたりご尽力されてまいりました。自社の国産品ジャガイモ使用量を減らすことなく、米国農産物の利用に貢献されています」

ここから先は https://note.com/famous_ruff900/n/n8590599d30c7

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ロシアで動員が行われるとすれば、どのような状況か。また、EUはどう対応するか

アンドリュー・コリブコ

ロシアがウクライナ軍の防衛線を突破できる見通しが立てば、攻勢を強めるために予備役の部分動員に踏み切る可能性がある。一方、欧州のNATO加盟国は、こうした動きを欧州への侵攻準備だと受け止めるよう世論を誘導し、軍備増強やEUの権限強化を進める口実にするかもしれない。さらに、ロシアの脅威を強調するため、偽旗作戦が行われる可能性もあるという。ロシアの動員が、欧州との軍事的な緊張を一段と高める事態につながる恐れもある。

※   ※   ※   ※

ロシアが動員に踏み切るとすれば、前線でウクライナ軍の防衛線を突破できる見通しが立ち、その機会を生かして攻勢を強めようとする場合である可能性が最も高い。しかし、EUは、ロシアが動員に踏み切れば、それを「ロシアが欧州への攻撃を準備している」と受け止めるよう世論を誘導し、EU指導部にとって都合のよい政策を進めようとするとみられる。

英紙テレグラフは最近、プーチン大統領が「秘密裏の動員」を準備していると報じた。それによると、プーチン氏が動員を決定した場合に備えて、行政上の準備が進められているという。

ただし、こうした話は以前から出ている。プーチン氏は9月初め、これについて次のように述べた。

「現時点で動員が必要になるような状況はない。これは国家院(下院)選挙を前に、選挙結果に影響を与えようとする敵側の情報攻撃だ」

プーチン氏の発言は、どちらの点についても正しい。ただし、今後、状況が変わる可能性は否定できない。そのため、ロシアがどのような場合に動員を行う可能性があり、EUがそれにどう対応するのかを考えてみる価値はある。

以前の記事「ロシアの機関車攻撃、ウクライナ軍の兵站をまひさせる恐れ」で指摘したように、ロシアが今後、冬にかけて機関車への攻撃を継続的に行い、さらにガソリンスタンドや港湾、発電所などのインフラも組織的に攻撃すれば、ウクライナ軍の物資や兵員の輸送能力に深刻な打撃を与える可能性がある。

ロシア軍の作戦立案者が、こうした攻撃によってウクライナ軍の防衛線を突破できると判断すれば、プーチン氏に対して、少なくとも4年前と同じように部分動員を行うよう進言するかもしれない。軍務経験のある予備役を招集し、防衛線を突破した後の攻勢をさらに強めるためだ。

その狙いは、ロシア軍にとって有利な状況を生かして投入する兵力を増やし、ウクライナに対する軍事的圧力を強めることにある。そして、戦争を終わらせる条件として、ロシア側の要求をすべて、あるいは可能な限り多く受け入れるようウクライナに迫り、ロシアの勝利という形で戦争を終結させようとするのである。

このように、ロシアが少なくとも部分動員に踏み切ることは、十分に考えられるシナリオだ。

欧州のNATO加盟国(E-NATO)は、すでにこうした事態を想定し、準備を進めているとも考えられる。その表れともいえるのが、最近、欧州のNATO加盟国の一部に対するロシアの攻撃が差し迫っているとして、危機感を過度にあおる動きが広がっていることだ。

ロシアがウクライナのインフラなどに対する組織的な攻撃を続け、戦況が急速に変化していることを考えると、こうした動きは、ロシアが動員に踏み切った場合に備え、欧州の人々がそれを脅威と受け止めるよう、あらかじめ世論を誘導するものだったと解釈できる。

つまり、ロシアが部分動員を行った場合、それを「バルト三国やポーランドへの侵攻準備だ」と一般市民に思わせようとしているということだ。

しかし、プーチン氏は、こうした国々への侵攻には関心がないと述べている。また、ロシアに敵対的な住民が暮らす地域を占領するために、第三次世界大戦を引き起こす危険を冒すことは、ロシアにとって合理的な選択とはいえない。

それでも、欧州のNATO加盟国が、こうした世論誘導に加えて、偽旗作戦を行う可能性はある。例えば、ポーランドで何らかの事件を起こし、それをロシアの仕業に見せかけるといったことだ。

そうすれば、ロシアに対する軍事的な対抗措置を強める口実にできる。また、EUの軍事・政治面での権限を中央に集中させ、EU全体としての統制を強める動きを加速させることもできる。

欧州のNATO加盟国では現在、政権を握るリベラル派の指導層が、保守派の野党勢力からかつてないほど強い圧力を受けている。

その背景には、燃料価格の高騰による経済の悪化がある。燃料価格が上昇しているのは、対ロシア制裁に加え、第三次湾岸戦争によって世界のエネルギー市場が混乱しているためだ。

こうした状況で、欧州の政権指導層には、ロシアの脅威をできる限り強調し、人々の不安をあおろうとする動機がある。

そうすることで、少なくとも有権者の支持を自分たちの側に集めることができる。また、ロシアの脅威への対応を理由に、EUの権限を中央に集中させる政策も進めやすくなる。

それでも政権への支持を回復できなければ、最も極端な場合には、ロシアに対する軍事的な対抗措置をさらに強め、危険な事態を招く可能性さえある。

以上をまとめると、ロシアが動員に踏み切るとすれば、ウクライナ軍の防衛線を突破できる見通しが立ち、その機会を生かして攻勢を強めようとする場合である可能性が最も高い。

しかし、欧州のNATO加盟国は、ロシアの動員を「欧州への攻撃が差し迫っている証拠」であるかのように説明し、政権指導層にとって都合のよい政策を進めるために利用するとみられる。その説明に信ぴょう性を持たせるため、偽旗作戦が行われる可能性さえある。

ただし、欧州のNATO加盟国は、そうした事件を口実にロシアへの軍事的な対抗措置を強める前に、ラブロフ外相の発言を思い起こすべきだろう。ラブロフ氏は、ロシアと欧州のNATO加盟国の間で戦争が起きれば、「非常に短期間で終わる」と述べている。これは、ロシアが自衛のために欧州のNATO加盟国に対して核兵器を使用する可能性を示唆した発言である。

アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

Source https://korybko.substack.com/p/in-what-scenario-might-mobilization

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年10月13日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

あらためて鹿砦社代表退任にあたって ──

株式会社 鹿砦社 現代表取締役(10月31日まで)
松岡利康

1988年以来長いか、年務めてまいりました鹿砦社代表ですが、いよいよあと10日ほどになりました。

以下は、これまで書き連ねてきたことと一部重複いたしますが、現在の私の想いを申し述べます。

これは、去る16日に会員さんらコアな支持・支援の方々に送ったものに加筆したものです。

鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/