《本間龍03》 電通不正請求問題──2つの重要な視点

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

電通不正請求問題は9月23日夕に同社が記者会見した模様を新聞社や通信社が24日に報じて以来、広報やデジタルネタを扱うネットサイトではいくつか検証ページが立ち上がったものの、大手メディアはこの事件を全く報道していない。

雑誌メディアは発売日の関係でどうしてもタイムラグが生じるが、この問題の発生は約2ヶ月前のトヨタから電通への通報から始まっており、その間に多少情報は漏れていたから、取材時間は十分にあったはずなのに動きがないのだ。

そもそもトヨタが電通の不正を同社に糺し、被害が燎原の火のように広がっていった事実のリークは当初国内メディアに持ち込まれたが、どこも取り合わなかったので海外メディアに流れたと言われている。

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

つまりその時点で大手メディアはこの事実を掴んでいたのであり、それを承知で報道を控えていたその体質に問題がある。

◆100社以上のスポンサーに不正請求を行っていたという事実

この電通問題には大きく分けて2つの重要な視点がある。まず一つは、国内最大手の広告代理店が100社以上のスポンサーに不正請求を行っていたという事実だ。この「不正請求」とは実態のない請求も含まれるから、そこに金銭のやり取りがあれば、それは「詐欺」を働いていたということになる。これは立派な犯罪行為で、刑法罰が科せられてもおかしくない事態だということだ。

発端となったトヨタは4~5年前まで遡って調査したとのことだから、他のスポンサーにもそれと同様の不正を働いていた可能性がある。

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

それだけでもとんでもないことだが、さらに重大なのは、同社がそれをトヨタに指摘されるまで、そのままにしていたことだ。不正行為によって水増し請求をすることは詐欺と同義であり、同社は得意先に指摘されるまで詐欺行為を止めなかった、ということになる。

◆社員個人ではなく「会社ぐるみ」であったという事実

さらに悪質なのは、長期にわたって100社以上のスポンサーに不正請求を行っていたのは、一部社員の仕業ではないといういうことだ。そこまで広範囲のスポンサーが対象ということは、担当する複数の営業部門と、実際に請求書を発行する経理部門までがグルになっていなければ到底不可能だからだ。

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

だからこそこの犯罪は「会社ぐるみ」であったと言うべきなのであり、その全社的な遵法精神と自浄能力の欠如は強く指弾されなければならない。しかし、記者会見における同社幹部の言動は、とてもこの「犯罪行為」を重く受け止めているようには見えなかった。もしその重さを自覚しているのなら、「不適切請求と言いましたが、まあ不正です」などという脳天気な発言など有り得ないだろう。

2つ目の視点は、上記のようにこの問題の重要性を一向に報じない、大手メディアの体質だ。メディアが電通に対し異常なまでの自主規制をする構造については前回までに指摘した通りだが、この事件に関しても各社は記者会見を報じただけで、本日(この稿を執筆中の10月3日まで)独自取材による調査発表を行なっていない。

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

記者会見ではトヨタ以外のスポンサー名は一切不明、その不正内容や請求期間も曖昧なままなのに、どこもこれを後追い取材しないというのは、極めて異常な事態である。いうなれば、9月24日の報道は23日の記者会見とそこで配られたペーパーを鵜呑みにした、「大本営発表」のようなものなのに、どこも詳細を調査しようとしないのだ。

フィナンシャルタイムズ2016年10月3日付記事

◆沈黙する国内メディア、気を吐く海外メディア

しかし、このように国内メディアが揃って沈黙を守る中、気を吐いているのが海外勢だ。中でもフィナンシャルタイムズは10月3日、自社のHPで大きく「電通、日本における表現の支配者」という強烈な見出しの記事を掲載した。正月の電通賀詞交換会に日本のトップ企業が参集する異様さから、ライバルの博報堂の2倍以上もある規模の大きさ、オリンピック開催まで請け負う実施力、国内メディアに対する発言力などについて、私を含め数人の広告関係者からオンレコの証言を紹介、批判的な記事を発表している。

FTは世界でよく知られた経済専門紙であり、各国の経済に大きな影響があると判断したニュースを全世界の読者に配信している。つまり、この電通という会社の特異性が日本の経済社会に負の影響を与え、ひいては広告分野での日本市場の閉鎖性を招いているという実態を世界に向けて紹介しているのだ。これは海外での取扱高が50%を超えている電通に「アンフェアな、何かおかしな企業」というレッテルを貼り付けるから、株価や今後の海外展開などで相当な痛手となるのではないか。

そしてFTが示したとおり、海外メディアは電通に全く遠慮しないので、これからも痛烈な記事を発表することが予想される。それはそれで大変結構だが、そのたびに、何も報じない国内メディアの異常さが鮮明になっていくという図式は本当に情けない。一企業の犯罪行為を報道できないメディアに、存在価値などあるのだろうか。この事件に関しては、今後も情報収集し、積極的に発言していきたい。

▼本間龍(ほんま・りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

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真夏のようだった熊本「琉球の風2016~島から島へ」こんな時だからこそ元気を!

「琉球の風2016~島から島へ」が、10月2日(日)、熊本市北区のフードパル熊本で行われた。数日前までは熊本地方も温度が下がり、曇天がちだったそうだが、2日は午前中から強烈な太陽が照り付け、熱中症が懸念されるほどの「熱さ」の中、約2000人の聴衆を迎えて13:00から「さらに熱い」祭りが始まった。この日は沖縄から100名もツアーを組んで駆け付け、コンサート開催に先立ち義援金が熊本県に渡された。

今年の開催は当初5月15日が予定されていたが、4月14日に発生した熊本地震により、一時は中止せざるをえないのではないかと実行委員会でも判断に迷ったという。しかし「こんな時だからこそ元気を!」と前向きな延期が決まり10月2日を迎えることになった。

沖縄音楽の大御所、知名定男さんがプロデュースし、宇崎竜童さん、南こうせつさん、夏川りみさん、内田勘太郎(元・憂歌団)さん、かりゆし58、ネーネーズ、など16名(グループ)のミュージシャンが例年にも増して、熊本へ思いを託すステージを披露した。

知名定男さん

開演前に参加アーティストにお話を伺った。

◆「まず、中止にならなくてよかった」知名定男さん

――今年は地震があって延期になりました。でも、きょうはこんないい天気ですね。プロデューサーとして今のお気持ちを。

「まず、中止にならなくてよかったです。開催できることに対する感謝と喜びですよね。出演者も当初の出演者とスケジュールの都合で若干変わっていますが、南こうせつが出て来たリ、当初の予定と見劣りしないメンバーが揃いました。私も少しズルい呼びかけをしたので、『ギャラはでないよ』と(笑)。

夏川りみさん

震災後のイベントですからお客さんが入るかどうかも分からない。熊本支援のためと言葉では謳っていませんが、そういう気持ちで出演者には呼びかけました。開催にこぎつけられた、しかもこんな晴天でしょ。あとはステージ頑張るだけです」

◆「音楽で元気を伝えられたら」夏川りみさん

――5月開催の予定時から出演のご予定でしたが、地震があって中止か延期かという中できょう開催になりました。きょう、これから歌われるのを前にどのようなお気持ちですか。

「大変なことがあったからこそ音楽で皆さんに元気を伝えられたらいいなという気持ちは、たぶんここにいる皆さん同じだと思います。あと、できることになったと聞いた時に凄くうれしかったですね」

◆「自分がガッツを入れてこようと思って行ったら、逆にガッツ頂いてきた」宇崎竜童さん

宇崎竜童さん

――毎回特別出演でステージに上がられていますが、今年は大きな地震があって延期になりましたが、幸い晴天の下今日開催されます。今のお気持ちを。

「いつも知名が酔っ払って電話をしてくるんですよ。何を言っているのか趣旨がよくわかんない(笑)。呂律は回ってるんですけどね(笑)。延期にはなりましたが前回も呼ばれているし、熊本には沖縄の人がたくさん移り住んでるという事情も聴いていて、声が掛かったら無条件で知名プロデュースの仕事は出かけていくと決めているんです。地震のあとまた知名から電話があって、『中止にしようか延期にしようか無理矢理やるか、今考えているところだ』という話があって、きょうなんですね。でも、きょう歌う前に一度、阿木燿子と二人で被災地を訪問しようと思って、3カ所の公民館など被災されている方おられるところで40分くらい歌ってきたんです。そしたらなんか、みんなめっちゃ元気なんですよ。皆さん沈んでないんです。とても明るかったし普通にコンサートやった感じだったんです。自分がガッツを入れてこようと思って行ったら、逆にガッツ頂いてきたので、きょうはそのお返しのつもりでステージをやらせて頂きます」

◆「本土復帰した次の年にコザへ行ったのが最初だった」南こうせつさん

南こうせつさん

――今回5月であれば出演のご予定はなかったのですが、延期によりご参加頂けたことに特別の思いはおありになりましたか。

「知名さんから電話を頂いて『こういう変更になったんだけど』と聞いてその日なら行けると思って。昨日茨城でコンサートだったんですが飛んできました。前にも出たことはありますし、沖縄は定期的にコンサートに行っていますし、そういう関係ですね。本土復帰した次の年にコザ、今の沖縄市ですね、そこへ行ったのが最初だったんです。来月も沖縄でコンサートの予定があります。沖縄は戦後70年経って戦争体験者が段々亡くなっていって、それを引き継ぐ世代の我々がどういう位置づけをするのか、という重い課題を負っていますね」

宮沢和史さん

次いで敗戦から本土復帰、現在までの南さんによる「沖縄観」を力強く語って頂いたが、それはまた別の機会に紹介しよう。

◆「僕の方から実行委員会に『どんな形でもいいから歌わしてくれ』と」宮沢和史さん

――公式には休養でいらっしゃいますよね。去年は相当体がお辛そうでしたが。

「去年はきつかったですが今は元気ですよ。休養というか歌手活動はしないということですね。きょうは皆が元気になってくれればいいと思って、僕の方から実行委員会に、『どんな形でもいいから歌わしてくれ』とお願いしました」

◆「きょう歌えるありがたみ」かりゆし58

前川真悟さん(かりゆし58)

――今年は地震で開催時期がずれて、きょうを迎えましたが、きょうステージに立たれるにあたって去年とお気持ちに違いはありますか。

「毎回毎回ステージは違うんですけど、一回延期を決めた時に気が付いたんです。『あ、音楽は聴いてくれる人がいないと成り立たないんだ』って。きょう歌えるありがたみが前回とはちょっと違いますね」

◆宮沢和史さんの「島唄」で会場は最高潮に

このように例年にもまして各ミュージシャンの熱い思を胸に歌い上げた楽曲は、ステージで炸裂した。休養中の宮沢和史さんの登場にはひときわ大きな声援が上がり、知名定男さんが「絶対に歌わせますよ!」と煽ると会場は最高潮に盛り上がり、まさに絶唱「島唄」が披露された。

真夏並みの暑さであった空も夕方には涼しさが増し、「琉球の風2016」は爽やかに幕を閉じた。「琉球の風2016」に来られた熊本の被災者の方々にとっては必ずや元気と勇気を持ち帰って頂くイベントになったことだろう。

 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《本間龍02》 電通不祥事の「続報」が生まれない日本の広告業界の特異構造

電通に関する悪事が露見する度に、非常に面白い現象が起こる。同社に関する第一報が報じられた後、いわゆる「後追い取材」が殆どないのだ。通常、業界トップ企業の不祥事はニュースバリューがあるので、独自取材をして続報を流す場合が多いのだが、電通と博報堂、とりわけ電通の場合は追跡取材が本当に少ない。

◆記者会見は週末に設定する──危機管理広報の裏ワザ

ファイナンシャル・タイムズ2016年9月27日付記事

電通が記者会見を開いた9月23日、さすがに日本最大の広告代理店の不祥事だけあって、その日はTV各社とも会見の様子を報じていた。ただ、記者会見は金曜の夕方であり、週末は特に影響力が強いテレビの報道番組やワイドショーが殆どないので、その影響は非常に限定的だった。緊急性がない限り、朝刊掲載を避けるために記者会見は可能な限り遅い時間に、しかも週末に開催するのは危機管理広報の裏テクニックであり、様々な企業の危機管理を扱ってきた電通は、自社にもその法則を適用したのだ。

そしてその戦略は見事に当たり、週明けのワイドショーで電通問題を取り上げたところは一つもなかった。また、各新聞社も社説や特報面で扱ったところは(筆者の見たところ)1社もない。形だけ第一報は報道するが、後追い取材はしない、という各社の電通に対する姿勢が見事に現れている。

しかし、この事件は第一報だけ報じれば良いという性質では決してない。同社が認めている通り、不正請求は110社以上の得意先に拡がり、しかも未だに調査途上だからだ。

もちろんあり得ないが、例えばこれがトヨタ1社だけへの不正であったなら、ことは電通のトヨタ担当チームだけの問題で片付けられた。しかし、現状だけでも110社に被害が広がっているということになると、これは営業から経理を巻き込んだ、完全に全社的な詐欺行為ということになり、関係部門の数百人が関係していたことになる。被害はまだまだ拡大するだろう。

電通の株式分布と主要株主(電通統合レポート2016年)

◆「一人バブル」を謳歌し続ける電通

会見では、デジタル関係業務の高度さや複雑さに対し、恒常的な人手不足がこの事件の原因だとされたが、これは確かに納得できる。ネット広告はその細かさや安価が売りである分、作業が非常に煩雑で儲からない。だから十分な人材を配置できず、結果的に無理な体勢で怒涛のような発注に対応するようになってしまっているのだ。

電通は、今でも一人バブルを体現しているような企業である。そしてその収益の根幹は、未だにテレビのタイムやスポットCMである。その収益力は非常に高く、例えば全国ネットのCM一本(1回)が300万円だとすると、その20-25%が電通の収益となる。この収益率は、戦後テレビ業界の黎明から発展期を一手に担った電通が自ら設定したものであり、その構造が未だに同社の屋台骨を支えているのだ。

しかし、これがネットのバナー広告だと1本が数千円、収益も数パーセントに過ぎない。つまり、ネット上で莫大な量の広告を打っても、収益率はCMにはるかに及ばないのだ。ところが電通内部の社内評価は、相変わらずテレビやプロモーション関連で稼ぐ高収益モデルが当然とされているので、その尺度で人員を配置する。その結果、収益の低いデジタル関連は常に人手不足になるのだ。

◆他の代理店でも一斉社内調査始動

そうはいっても現在の広告業界で売り上げが伸びているのはネット関連分野だけだから、電通もここに注力せざるを得ない。だがテレビCM草創期とは異なり自社で全てのルールを決めるわけにいかず、初期段階で高収益を確保する仕組みを構築することが出来なかった。そして大小の代理店が参入した結果、競争は激化し収益率は低いままだから、十分な人材を配置できず、結果的に「儲けのない繁忙」状態を続けざるを得ない。これが今回の事件の背景であり、第一線で業務に従事している社員の苦労は理解できる。

だが、「儲けのない繁忙」はどの業界にも存在し、だからと言って不正が許されるはずがない。ましてや業界トップに君臨し、高い信用を盾に仕事を受けている企業がこのような不正を働いては、同業他社にも計り知れない悪影響を与える。「業界トップが不正をしていたのだから」という理由で、博報堂以下の代理店でも一斉社内調査が始まっており、他社からはとんだとばっちりだと怨嗟の声も聞こえてくる。
 
◆電通の驕りを是正できない日本の広告業界構造

では、この問題が電通からのスポンサー離反に繋がるかというと、ことはそう簡単ではない。この問題の発端となったトヨタは、年間数百億円にのぼるデジタル関係領域の殆どを電通に任せていたと伝えられている。事件の発覚でトヨタ首脳部の怒りは相当なものだったらしいが、だからといってぺネルティとして全ての扱いを電通から博報堂に移したわけではない。

博報堂はライバル会社の日産の専任代理店となっているから、トヨタとしても全ての業務を任せにくいし、博報堂としても、突然年間数百億円分の業務を移されても、それをつつがなく進行できるマンパワーが足りないからだ。ましてや不正請求が確認された100社以上が一斉に扱いを移したら、今度は博報堂の現場がパニックを起こすだろう。そして博報堂が無理なら、業界3位のADKにも不可能だ。

つまり、電通が突然機能を停止しても、瞬時にその代りが出来る代理店は存在しない。それほど電通は巨大化し、他社との差は広がってしまっている。そして電通幹部はそれを十分承知していて、FTの取材に対し「(不祥事があっても)日本の企業はそう簡単に広告代理店(電通)を切ることはない」などと嘯いていられるのだ。この電通の驕りを是正できない現状こそ、日本の広告業界最大の問題なのだ。

▼本間龍(ほんま・りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

  『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」

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 投稿日: カテゴリー メディアと広告, 本間龍

梅野源治、NJKFに再来!

リングに登場するとムードが変わる梅野源治の存在感は格別

9月14日のKNOCK OUT記者会見で、試合を3日後に控えたキツい減量中の中、公開ミット蹴りを行なった梅野源治が9月17日、WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座防衛戦を行ないました。これを前哨戦として10月23日(日)にREBELS興行でタイ・ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦が決定しており、更に12月5日のKNOCK OUT設立興行へ、予想されるビッグマッチが続きます。

過去、梅野のムエタイ最高峰王座挑戦は、2015年4月19日にREBELS興行でルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級王座に挑戦し、チャンピオン.ペットモラコット・ウォー・サンプラパイ(タイ)に逆転の判定負けでした。今度の最高峰王座はこれに続く2度目の挑戦となります。

WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座は2014年11月15日にNJKF興行でジョムピチット・チューワタナ(タイ)との王座決定戦で判定勝利し、王座奪取しています。

◎NJKF 2016.6th / 9月17日(土)後楽園ホール17:00~21:15
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ・タイ国実行本部、NJKF

ローキックの鋭さだけで技量の差が現れた初回

◆WBCムエタイ世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/58.97kg)
.VS
キース・マクラクマン(イギリス/59.6→58.42kg)
勝者:梅野源治 / TKO 2R 0:36
カウント中のレフェリーストップ / 主審 篠原弘樹

挑戦者キース・マクラクマンはWBCムエタイ・インターナショナル同級チャンピオンで、前日計量で630グラムのオーバーから落として再計量でパス。梅野はこの階級で減量がかなり苦しくなってきたと言われるもリミット一杯のパス。梅野は、楽勝と予想されたとおり、1Rの様子見でキース・マクラクマンの技量を見極めると攻撃力で差を付け、ロープ際でのパンチ、ヒザ蹴り、ヒジ打ちなど連打しスタンディングダウンを奪い、カウント中そのままストップされ、防衛に成功。

ロープ際で滅多打ち、ダメージを与え、戦意も喪失させた梅野源治
マッチョな勝利ポーズは毎度のアピール

◆66.5kg契約 5回戦

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(ESG/66.45kg)
.VS
アローン・ゴンザレス(カンボジア/66.05kg)
勝者:健太 / 判定3-0
(主審 山根正美 / 副審 小林 30-28. 篠原 30-28. 和田 29-28)

梅野源治以上に試合頻度が高い健太は、昨年9月27日から10戦9勝(2KO)1分と引分けを挟んで9連勝中。WBCムエタイを頂点に活動が続くニュージャパンキックボクシング連盟の中で、11月27日(日)にインターナショナル・ウェルター級王座挑戦を予定しています。来年にはWBCムエタイ世界王座を視野に入れている様子の健太が、その前哨戦で攻撃力だけはゴンザレスの派手さが目立つも、ヒジ打ちと乱打戦の強さを見せアローン・ゴンザレスに判定勝利。

健太はベテランの落ち着いた攻めで勝機を見出す
傷だらけになっても攻め返して勝利に導いた鈴木翔也

◆60.0kg契約5回戦

NJKFスーパーフェザー級チャンピオン.鈴木翔也(OGUNI/60.0kg)
,VS
J-NETWORK同級チャンピオン.鷲尾亮次(レグルス池袋/60.0kg)
勝者:鈴木翔也 / 判定2-1
(主審 宮本和俊 / 副審 小林 49-48. 篠原 49-48. 山根 48-49)

WBCムエタイ日本スーパーフェザー級挑戦者決定戦と謳われた契約ウェイトの5回戦。チャンピオン.悠矢(大和)にノンタイトルで対戦予定が、悠矢の負傷欠場により、鈴木翔也との挑戦者決定戦となりました。2月に互いが各団体の同級チャンピオンになり、5月に互いが対戦し、ヒジによるTKOで鷲尾亮次が勝利していますが、今回は僅差で鈴木翔也が勝利、挑戦権を掴みました。

大和侑也が最初のダウンを奪った相打ち気味の左フック

◆67.0kg契約3回戦

大和侑也(大和/66.82kg)vs山崎遼太(OGUNI/67.7kg)
勝者:大和侑也 / TKO 3R 0:42
カウント中のレフェリーストップ / 主審 和田良覚

700グラムオーバーの山崎でしたが、第2Rに大和侑也が相打ち気味の左フックを当てダウンを奪った後、前蹴り気味の蹴りがボディにヒットし2度のダウンを奪い、第3Rにはボディへ左フックを決めウェイト差に問題なく悶絶のノックアウト。

◆NJKF女子(MINERVA)スーパーバンタム級王座決定戦3回戦

小田巻洋子(WSR池袋/55.13kg)vs杉貴美子(Ten clover/55.23kg)
勝者:杉貴美子 / 判定0-3
(主審 篠原弘樹 / 副審 宮本 28-30. 小林 28-30. 和田 28-30)

杉貴美子が接近戦でパンチをコツコツ当てペースを掴み、小田巻の蹴りの距離を潰し判定勝利して王座奪取。階級をひとつ下げ、バンタム級も狙いたいとアピール。
※他、6試合(割愛します)

接近戦でパンチをヒットさせ小田リズムを狂わせた杉貴美子

◆梅野源治はキックボクシングを新たな進化に導く第一人者となる?

NJKF興行ながら、WBCムエタイ世界チャンピオンとして出場している梅野源治の存在が注目されるこの秋から来年にかけてのイベントです。梅野源治の強さの魅力は、所属ジムがフリー(特定の団体に加盟しない)であるが為、昔と違い、同様のフリーのジム・プロモーションも多く、日本のトップクラスやタイのランカーとも交流が盛んで実力が測れ、タイでのトップクラスにもマークされるなど、存在感が証明がされてます。

来月のラジャダムナン王座挑戦も、昨年12月現地でヨードレックペット・ソー・ピティサックにヒジによるKOで敗れている相手ですが、今度の勝算はやや高いように思います。ただ、二大殿堂タイトルが懸かると本気モードになるタイ選手の底力は、過去にもあるように、勝ちに徹するしぶとさが倍返しとなってくるので要注意でしょう。

梅野の昨年は7戦4勝(2KO)3敗、今年はこれで5戦3勝(2KO)2分。8月のヤスユキ戦では偶然のバッティングによる顔面の負傷をしつつ、驚異的回復で今回の試合をこなし、あと2戦は予定されるので、怪我やタイトルマッチがあってもかなり速いペースです。12月から始まるKNOCK OUT興行でのテレビ放映でも梅野源治がエース格として登場の可能性高く、昭和のキックのテレビ全盛期には及びませんが、マイナーイメージのキックボクシングから新たな進化に導く第一人者となりそうです。

NJKF次回興行は10月30日(日)、ディファ有明で、若手会長の若武者会主催のDUELが開催。NJKF 2016 7thは、11月27日(日)後楽園ホールで行なわれます。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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エイベックスが西内まりやのミニライブを動画撮影解禁にした理由

歌手の西内まりやが9月21日、映画「CUTIE HONEY-TEARS-」(10月1日公開)、ならびに主題歌のPRを兼ねて池袋のサンシャイン噴水広場で16時、18時から2回連続でミニライブを行った。映画の予告編公開と同時に、主題歌「BELIEVE」を披露して集まった2千人を喜ばせた。

ふだんからこうしたイベントで撮影規制がかかるエイベックスが太っ腹にも「動画・撮影OK」とした戦略は、裏返せば「この映画がそんなに前評判がよくない」という焦りの裏返しでもある。

「このところ邦画の評判がとてもいい。大ヒットして100億円を超える興業収入をマークした『シン・ゴジラ』や賞を総なめにした『悪人』の映画スタッフが再結集した渡辺謙主演、妻夫木聡、綾野剛らが共演する『怒り』や福山雅治の『SCOOP!』や人気コンテンツ『デスノート Light up the NEW world』などなど群雄割拠している。その中で勝負するには、『CUTIE HONEY-TEARS-』は観客の動員が厳しいという代理店のマーケティングリサーチ結果が出ている。さらにタイミングが悪いことに、8月に週刊誌でスクープされたファッションモデルの呂敏との熱愛で男性ファンが離れつつある。だから西内ファンを少しでもかき集めて、会場で流す映画の予告映像とともに、西内の主題歌を広めようと、ファンたちのツイッターやフェイスブックでの『映画の予告映像とライブ映像の拡散』を狙っていたのです」(映画ライター)

この映画の試写会に行った映画ライターは「途中で帰りたくなるほど西内の演技は一本調子だった」とした。またネットでも「バトルスーツの露出が少なく、04年の佐藤江梨子主演のほうがまだセクシーだった」と書き込まれる始末。

だがそうしたネガティブ情報を差し引いても西内で動員が計画できるから映画製作に踏み切ったのだろう。ライブでは、西内は主題歌「BELIEVE」を含んで3曲を披露。業界人から見ると世知辛い「素人に映像を拡散させる」という戦略のわりには見えやすいセンターの位置を4台のムービーカメラが独占。西内はカメラマンの間からかろうじて顔が見える程度で「見えねーよ。カメラマンどけよ」とガラが悪いファンの怒号も飛ぶ。

「西内まりやについては、2014年デビュー当初は『ファッションモデルでありながら演技も作曲もできるアーティスト』ということで注目を浴びていましたが、5曲目までなんとか10位に食い込むべくがんばったのですが結果は惨敗。通常、これまで出したシングルはどれも20位までにランクされており、普通なら成功なのですが、西内の場合は宣伝に数億円かけており、回収しきれていない。5月に出したシングル『Chu Chu / HellO』も数億円の宣伝を展開したのに最高位18位となり、これも利益薄です。どうしてもミリオンセラーを狙いたいエイベックスとしては、映画に主演させてテーマ曲のCDも同時に売るという戦略に切り替えざるを得なかった」(同)

こうした戦略を立てざるを得なかった裏には、浜崎あゆみや安室奈美恵がじりじりと売り上げを落としてきている中、ノルマが求められるエイベックスの苦しい状況を象徴している。浜崎や安室の曲は、固定ファンは多いが、1曲につきCDや曲のダウンロード数の売り上げは厳しいのでライブで回収せざるを得ないし、新規ファンの拡大は難しい。10位にランクするのは至難の技だとの声も。

その点、まだまだ認知度は低いが高校生から老年までファン層が広い西内にはまだまだ伸びしろが期待できるというわけだ。女子高生に聞いてみると「ファッションの参考にしているが、西内さん自体には興味がありません」とのこと。このミニライブは、事前予約がないマスコミをすべて排除した。

とても「開かれた」宣伝戦略とはいえない仕切りだった。映画にも曲にも興味がない層をどう取り込むのか。西内を売る戦略が試されている。

(伊東北斗)

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ろくでなし子さんアムネスティ講演会中止未遂事件としばき隊ファシズム

アムネスティ・インターナショナル日本の主催で9月30日開催される予定の講演会「ろくでなし子@AMNESTY~表現の自由と人権をろくでなし子裁判から考える~」が「急遽中止になった」との報に28日接した。アムネスティと言えば「人権」を何より大切にするはずのNGO団体と思っていたが、何があったのだろうか。「表現の自由」をテーマにした講演会が中止に追い込まれるのは尋常な事態ではない。

9月28日、アムネスティ日本本部に電話取材した。以下はその時のやり取りだ。

◆アムネスティ日本本部との一問一答(9月28日)

── ろくでなし子さんの講演会が中止になった様ですが、これはどのような理由でしょうか?

アムネスティ 当初このイベントは『表現の自由』についてアムネスティの人間とろくでなし子さんとお話をさせて頂くという主旨で企画をしていたのですが、色々なご意見がありまして、当初目指していた議論と違う方法になってしまう可能性が出て来ましたので、今回リスクを鑑みまして、中止と決定しました。

── 色々な意見は当然あるでしょうが、企画を中止しなければならないほどの深刻な、例えば、脅しとかがあったということでしょうか?

アムネスティ 具体的にはお伝えは出来ないんですけれど、当方で中止と判断するだけの理由があったと……。

── アムネスティは昔から『人権』についてはリスクを冒しても色々な活動を行って来られたと理解していますが、そのアムネスティが講演会を一方的に中止するのは穏便ならざることだと受け止めています。説明が曖昧過ぎます。もう少し具体的に中止に至った理由をお話頂かないと、言論の自由を自ら放棄する行為だとしか理解できません。

アムネスティ そうですね。矛盾が生まれることは勿論承知の上で対応しております。

── しかもHPで消されていますよね?

アムネスティ イベントの案内をですね。

── これは元々参加しようとしていた人もいるわけですから、中止理由のステートメントを出されるべきではないですか。相当な圧力がかかってきたとしか私たちは理解できないのです。そういうことがあったわけですね?

アムネスティ ちょっと詳しいことはお答えできかねるのですが……。

── なぜですか? 人権を守るために、表現の自由を守るために活動するアムネスティが、このように委縮され出したら、日本は終わりですよ。

アムネスティ そうですね。ご指摘はごもっともです。

── 何を懸念なさっているのですか? 例えば暴力団とかそれに類する人たちから大量の意見があったということなのでしょうか?

アムネスティ お答えできる範囲が限られてくるのですが……。

── なぜ限られるのです? アムネスティは行政機関じゃないじゃないですか? 人権についての活動を長年担ってきておられる大変貴重な組織ですよね。日本の中でも。そのアムネスティが隠蔽なさるということは、日本政府がどんなことをしても文句言えなくなる状態になりますよ!

アムネスティ そうですね、はい。

── その先兵に立たれる訳ですか? アムネスティは?

アムネスティ そういう意図は全くないんですが……。

── 意図がなくともなさっていることは、そのようなことではないですか?

アムネスティ そうですね……。

── 私に中止の理由を教えて頂いて、アムネスティが困ることは何もないでしょ? 中止に追い込まれなければならないほどの深刻な理由があった訳でしょ? それは何なんですか? 何を忖度なさって、何を気になさっているのか分からないと気持ちが悪いですよ。

アムネスティ HPの方でもう少し詳しく述べるように検討します。

── いや、今教えてください。でなければ『人権蹂躙団体』と見方を変えざるを得ませんよ。軽微ならざる重大な言論弾圧事件ですよ!

アムネスティ ご指摘はごもっともだと思います。

── ごもっともと思われるのであれば、中止の理由を教えてください。あなたの身に危険が及びうるということなんですか?

アムネスティ そういうことがあり得る、ということで事務局長が判断したという事です。

── アムネスティの方々に物理的な危害が及ぶ可能性が懸念される、つまり脅しをかけてきた人間がいたということですね?

アムネスティ そうですね。

── それは、かなりの数なのでしょうか?

アムネスティ SNSについてはかなりの数の書き込みがありまして、あとは個別にご意見とか色々連絡が入っている状況です。

── 連絡というより、それは『脅迫』ですね?

アムネスティ こちらで危険性があると判断できるほどのご意見が来ているということです。

── ある種の『脅迫』ですよね。例えばどのようなことを言ってきているのですか? 誰がという事は結構ですから、その例を教えてください。

アムネスティ 例えばですね、ゲストとしてお招きするろくでなし子さんに対して危害が及ぶような可能性なりがあるな、という判断はできます。

── 彼女をどのように評価というか、書いているのですか?

アムネスティ 『レイシスト』であるとか『アムネスティが付き合う相手ではない』とかいう声はあります。

── 『レイシスト』なんですね。発信している人間は特定なさっているのでしょうか?

アムネスティ あくまでSNSですので個人の特定はできませんがハンドルネームは確認し、記録しています。

── 『レイシストだから攻撃するぞ』という脅しがあるわけですね。では、彼女が被害を受けないような防御態勢を準備して講演会を開けば良いのではないですか。彼女は普通に日常生活を送っていますよ。他の場所で個展をやったり、普通に生活していますよ。アムネスティで彼女が講演することを妨害したいが故に、そういう人たちが寄ってたかって言い募っているだけのことですよ。

アムネスティ そうですね。そうとも考えられますね。

── それくらいの雑音と闘えなかったら、アムネスティの存在意義はどこにあるんですか!

アムネスティ はい。

── ハンドルネームも解るわけですね? 無言電話ではないのですね? それなら予定通り講演会は実行されるべきです。そんな書き込みが沢山あるから講演会を止めると言っていたら、日本で講演会なんか開けなくなりますよ。

アムネスティ そうなんですよね。

── 『そうなんですよね』じゃなくて、そうなさっているのがアムネスティでしょ。しっかりしてくださいよ! 今からでも、もう一度、元通り開催をなさってください!

アムネスティ また、検討が必要になるんですけども……。

── いや、元に戻すだけでいいんですよ。私のように『中止はおかしい』という電話はありませんか?

アムネスティ あります。

── SNSの書き込みがあったから講演会が中止に追い込まれた、などとなれば、日本で講演会は出来なくなりますよ。とりわけアムネスティがそのような判断をしていたら世も末です。あなたは職員の方ですね? であればアムネスティのお仕事に就かれるにあたって、それなりの動機や覚悟をもってアムネスティにお入りになったわけですよね? この『中止事件』どうお考えになりますか? アムネスティの自己否定じゃないですか?

アムネスティ そうですね……。

── そう思われますでしょ。であれば、あなたは講演会実現のために闘われるべきではないですか?

アムネスティ はい……。

── 何のためにあなたがアムネスティに入ったかをもう一度思い出していただいたら、隠蔽やいい訳をしている自分の姿がみっともないと思われませんか?

アムネスティ それは、はい……。

── そんなことしなくていいんです。攻撃して来そうな人がいてもその中で対処しながらイベントを行うというのがアムネスティの存在意義ではないですか? 私は批判をしているように聞こえるかもしれませんが、応援しているんですよ!

(ここで担当者受話器を外して小声で泣き始める)

アムネスティ はい、はい、聞いております……。

── こういう時こそ踏んばって、上がだらしない判断をするのだったら、あなたが『こんなことをしていたらアムネスティの存在意義が地に落ちる』と主張されたらいかがですか?

アムネスティ そうですよね。そうですよね。

── あなたは闘っていただけますか?

アムネスティ 努力はします……。

◆「中止未遂劇」の主犯はまたしても「しばき隊」

翌29日、ろくでなし子さんとアムネスティ日本の直接交渉が行われ、講演会は予定通り行われることが決定した。今回の「中止未遂劇」の主犯は誰だろうか?

主犯は「しばき隊」である。中でも過去に「ぱよぱよちーん」とツイッターで呟き、それをろくでなし子さんに「ぱよちん」と書かれた怨みを持つ久保田直己(元エフセキュア株式会社社員)が、またしても関わっている。

その他確認できるだけでも古参のしばき隊が多数批判の書き込みをしている。29日ろくでなし子さんのツイッターで講演会開催決定を知ったので、再度アムネスティ日本に電話取材した。ここには書けない驚くべき事実もあったが、アムネスティは「しばき隊」についての知識が希薄で、過剰反応をしたと推認される。

しかし、この程度の圧力で「開催取りやめ」を一時的であれ判断してしまったことはアムネスティ日本だけでなく、日本社会全体に大きな禍根を残すことになろう。卑怯な手合いをある程度喜ばせてしまったのであるから。

政治権力や行政権力ではなく、「下からのファシズム」で自らの意に沿わない人間は潰そうとする。そのような手合いは言論界に口をはさむ資格はない。

【本日開催!】
ろくでなし子@AMNESTY~表現の自由と人権をろくでなし子裁判から考える~

日時 2016年9月30日(金)19:00~21:00
会場 アムネスティ・インターナショナル日本 東京事務所
   東京都千代田区神田小川町2-12-14 晴花ビル 7F
   TEL : 03-3518-6777 FAX : 03-3518-6778 (代表)
プログラム
報告(19:00~19:30)ろくでなし子氏
対談(19:30~20:30)ろくでなし子氏×若林秀樹(アムネスティ日本 事務局長)※他対談者は調整中
質疑応答(20:30~21:00)
司会・進行:稲野茂正(アムネスティ日本 町田グループ会員)
参加費 500円
主催 表現の自由と人権を考えるアムネスティインターナショナル日本有志実行委員会

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 『ヘイトと暴力の連鎖』!
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《本間龍01》 電通スキャンダル──海外・国内メディアの露骨すぎる温度差

電通2016年9月23日プレスリリース

今回からこちらのデジ鹿通信で主に原発とメディア、広告代理店とメディアの関係について記事を書かせて頂くことになった。本来なら一回目は原発広告の現状について書こうと思っていたのだが、原発プロパガンダと非常に密接な繋がりを持っている広告代理店、電通の不祥事が発覚したので、今回はそちらについて書いてみたい。

ウォールストリートジャーナル2016年9月21日付

9月23日、電通は記者会見を開き、デジタル関係業務で不正請求が発覚し、対象企業は110社、不正に請求した金額は2億3千万円に上ることを明らかにした。

実はこの事件は先週あたりから海外のメディア(ウォールストリートジャーナルフィナンシャルタイムズ)などがWEBページに掲載し、業界関係者の間では話題になっていた。電通に頭が上がらない国内メディアはこれを黙殺していたが、遂に日経が書くに及んで(日経はFTを買収している)、急遽金曜の夕方に記者会見を開いたのだった。

さすがに会見の内容は大手メディアが報じているからそちらをご覧頂きたいが、驚くべきは、各社のタイトルであった。「電通、不適切請求(NHK)」「電通が不適切取引(朝日)」「不適切業務(産経)」「業界トップでなぜ不適切請求(毎日)」「電通、ネット広告対応で不備 不適切請求2.3億円(日経)」など、揃いも揃って「不正」という表現ではなく「不適切」という曖昧な表現に終始していたのだ。

朝日新聞2016年9月23日付

◆「不正」と「不適切」では印象が全く違う

当然のことだが、不正と不適切では読者に与える印象が全く違う。不正は明らかに悪事だが、不適切ではまるでミスか何かのような印象を読者に与えてしまう。電通に広告費を握られている大手メディアの腰の引けっぷりには毎度のことだから驚かないが、実は記者会見場では記者たちが厳しく追及しており、電通の副社長が今回の事案を「発表では不適切としているが、不正といえば不正ですね」と自ら認めているのである。

ここで問題なのは、例えば毎日新聞は、金曜夜の配信では「電通、ネット広告不正 2.3億過大請求」としていたのに、翌日の朝刊紙面では「不適切請求」とトーンが落ちていた。

速報では正しいタイトルをつけるのに、一晩置くとほとんどが「不適切」とトーンを下げて表現してしまうところに、日本のメディアが抱える大きな問題が潜んでいる。つまり、速報は上層部のチェックが少ないのでそのものズバリで書けるが、翌日の朝刊紙面となると様々な角度(役員や部署)のチェックが入り、表現が弱くなってしまうということだ。

毎日新聞2016年9月24日付

◆東芝巨額粉飾事件報道との類似点

そういえばこれによく似たことが、昨年大騒ぎとなった東芝の巨額粉飾事件でも起きた。明らかに売り上げをごまかし、株主に損害を与えていた粉飾事件を、大手メディアは「不適切会計」などと報じたのだ。その頃、朝日・毎日が「不正会計(決算)」、読売・日経が「不適切会計」、産経が「利益水増し問題」などと報じていたのはいまだ記憶に新しい。それぞれの社が色々と言い訳をしていたが、これなどは東芝の莫大な広告費欲しさに記事の表現を自粛しているとしか思えない事例だった。

さすがに殺人や大規模事故クラスのアクシデントでは手加減出来ないが、一般消費者に直接的な被害をもたらさないレベルのものなら、広告費の多寡がメディアの追及の尺度を決めるのは事実だ。東芝は年間で数百億円を広告に使う大スポンサーであり、この粉飾事件で痛手を被って一時的に広告が減っても、必ず立ち直れる。

メディア各社はそう考え、東芝追及の表現を弱めた。そしてそのようにメディアに入れ知恵したのが、電通や博報堂の巨大広告代理店だったのだ。通常はそうやって企業不祥事の火消しにまわる電通自身が謝罪会見を開く羽目になったのだから、強烈な皮肉である。

「権力より、愛だね。」(2012年トヨタ自動車クラウン広告)

◆トヨタでなければ電通は無視か誤魔化していた

このデジ鹿通信を読まれている方は殆どご存知だと思うが、中でも電通のメディアに対する統制力は強大であり、今回の報道でもその力が遺憾なく発揮されている。海外メディアでは、事件の発覚はトヨタが電通の請求に対し疑念を持ち、過去5年分の取引を精査して不正請求を見破ったことにある、とはっきり書いているが、そのことまで記事で言及したのは朝日と日経だけであった。

しかも記者会見でそのことを糾された電通の副社長は、「確かにその通りだが、できればそのことは書いて欲しくない」などと各社に対し「配慮を要求」、結果的に多くの社がそれに従う形となった。そういう要望を口にする電通の傲慢さも許し難いが、それに「配慮」し結果的に言うことを聞いてしまうメディアも心底情けない。

トヨタは常に日本の広告費ナンバーワンを争う超巨大スポンサーであり、さすがに電通といえどもその指摘を無視できなかった。これがトヨタ以外、例えば日本の広告費ベスト20位くらいに入るような大スポンサーでなければ、電通は指摘を完全に無視か誤魔化していただろう。日本最大の広告代理店の不祥事と、それを巡るメディアの姿勢はこの国の情報のあり方を考える上で非常に重要な要素をはらんでいるので、次回もこの事件について意見を述べてみたい。

▼本間龍(ほんま・りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)、『原発広告』(亜紀書房2013年)、『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

  『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」
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大橋巨泉さんの死因をめぐる「モルヒネ系薬の誤投与」騒動

7月12日に急性呼吸不全のため亡くなった大橋巨泉さんの妻、寿々子さんが「薬の誤投与」、つまりモルヒネ系の薬の過剰投与が原因で亡くなったのは残念だという趣旨の発言をして物議をかもしているという。

以下、寿々子さんが出したコメントの一部である。

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「どうぞ大橋巨泉の闘病生活に『アッパレ!』をあげて下さい」
皆様方も良くご存知のように夫は自他共に許す“わがまま”と言われ、痛い事やつらい事、待つ事、自分の意に染まない事は“避けて通る”というわがままでした。

そんな夫が2005年に胃がんを手術、2013年には第4期の中咽頭がんで3度の手術と4回の放射線治療、昨秋には2度の腸閉塞と手術を、そして4月の在宅介護の鎮痛剤の誤投与と続いても、12日までの約11年間の闘病生活を勇敢に戦って来ました。特に4月からの3ヶ月間は死を覚悟し、全てを受け入れ、一言の文句も言わず、痛みも訴えずに、じっと我慢をしてくれました。

先生からは「死因は“急性呼吸不全”ですが、その原因には、中咽頭がん以来の手術や放射線などの影響も含まれますが、最後に受けたモルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与による影響も大きい」と伺いました。もし、一つ愚痴をお許しいただければ、最後の在宅介護の痛み止めの誤投与が無ければと許せない気持ちです。

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大橋巨泉『ゲバゲバ70年! 大橋巨泉自伝』(2004年講談社)

大橋巨泉さんは約11年間の闘病生活を勇敢に戦っていた。4月以降は死を覚悟して穏やかだったという。だが死後にこのような騒ぎを予測しただろうか。

その後、週刊現代8月6日号でも医者に対する無念と悔恨のコメントを出している。

この件では、筆者は経営していた編集プロダクションで亡くなった2011年に元社員を思い出す(亡くなってから1年後に知る)。その年の年賀状には「娘が生前お世話になりました」といきなり出だしから書いてあった。なんの飾り気もない普通ハガキはただでさえ元旦のポストに不似合いだったので嫌な予感はした。

5年ぶりに連絡がきたと思いきや、年始から訃報である。翌日、驚いて履歴書をひっくり返し、彼女の連絡先をひっぱりだして九州の実家に電話してみると「娘は胃痛を訴えていました。上京して緊急入院したのですが、入院させてつぎの日の朝、娘のアパートで寝ていると、病院から『娘は亡くなりました』と連絡がありました」と母親は娘そっくりの声でたんたんと語った。結局、医者や看護婦に「なぜ死んだのか」と問うてもはっきりした原因はわからず、裁判しようとして弁護士に相談しても「医療ミスは立証が難しい」として訴訟をあきらめたという。

私たち患者は医者を“選ぶ”ことしかできない。選ぶ以上、運命をたくす『覚悟』が患者にも求められると思う。

6月、歌舞伎役者の市川海老蔵が「妻の麻央が乳ガンです」と記者会見で告白して話題となった。このように病状を「公開」した彼には、医者とともに病と闘う覚悟がみてとれる。また、古くは元フジテレビのアナウンサーの逸見政孝氏が93年9月に、テレビカメラの前で「私が今、侵されている病気の名前、病名は……がんです」と自ら進行胃がんであると告白、これからの闘病を決意した顔にも医者への信頼がみてとれた。逸見氏とはよく出張中の列車でいっしょになる機会があり、当時テレビ局のかけだしADだった筆者にも声をかけてくれるやさしい人だったので、その「覚悟」の強さを語気から感じて強さを感じたし、よほど信頼できる医者がついているのだな、とうらやまさしささえ感じた。

こうした「闘病」の覚悟を決めるまでにはたいへん重く、それでいて執拗な生命への執着があるにちがいない。そしてその対局に(悲しいことではあるが)病院が保身のために行う「医療ミス」の隠蔽などがあると思う。

たとえば東京女子医大では、2001年3月2日、患者の心臓手術中に人工心肺装置の事故が起こり、患者は2日後の3月4日に死亡。遺族は医療ミスだという告発文書を受けて大学に調査を申し出た。内部報告書では「助手が吸引ポンプの回転を上昇させたことが原因である」としてあるため警察が捜査に踏み切ったが、カルテは大学側に改ざんされていた。

言葉は悪いが藪医者だろうと名医だろうと医者は私たちの運命を握る。
つまり、大橋巨泉さんの薬投与の件から私たちが学ばなくてはならないのは、患者が「医者に身をゆだねる」=「死をも含めてゆだねる」という覚悟に立って治療にのぞめるかどうではないだろうか。

その点で多くの人が見逃しているが「かかりつけ」の医者の役割は大きいと思う。案外「最初のチェックゲート」として「かかりつけ医」の重要性について日本では過少に、あるいは軽く語られているのが残念だ。

かかりつけ医ではデンマークが先端をいっている。デンマークでは、税で医療費をまかなう。医療は2つの階層に別れており、「かかりつけ医」と「病院医療」とにわけられる。患者はまずゲートキーパーであるかかりつけ医に登録し、そこを通過しないと専門医療を受診できない。かかりつけ医はグループ開業が多く7割をしめる。かかりつけ医は、ヨーロッパのなかでは比較的高収入で、1万デンマーククローネ(経費支払い後の年収税引き前で1400万円)ほどだそうだ。眼科や耳鼻科についてはかかりつけ医を通さずに受診でき、柔軟に適用されている。

保険制度上、患者にとって2種類の仕組みがある。98.4%の患者は、ひとりのかかりつけ医に登録している。この場合、受診のつどの追加料金は払わなくてすむ。残りの1.6%の人は、追加料金はかかるが、かかりつけ医を固定せずに病院に所属しない専門医を受診できる制度を利用している。

かかりつけ医は、今後、日本が患者が高齢化を進めて嫌でも向き合う「介護」の問題と密接に連携している点でも重要だ。

果たして大橋巨泉さんのかかりつけ医はどうだったであろうかと思う。もしきちんと大橋さんの面倒を見ていたらとしたら人生としてはおそらく幸福だ。そしてもうひとり、末期を看取った専門医が誰の紹介にせよ、全力を尽くしたと思いたい。

大橋さんの人生を多く知るかかりつけ医もしいたら今回の騒動をどう見るだろうか。案外、当事者だけではく、私たちが見逃している点について鋭い見解を述べるかもしれないと想像する。つまり、大橋さんの死ぬ間際、誤投与があったかどうか判断するには、仮にかかりつけ医がいなかったとしても、大橋さんの人生に関わってきた医者の全員の見解が必要だと筆者は思う。このくらい、この問題は重く、亡くなる間際の治療機関だけ区切って議論すべきではないと思える。

実は筆者は09年に「具合が悪くなるととりあえず診察してもらう」筆者のかかりつけ医のT先生が亡くなり、途方に暮れた。逆流性食道炎や過敏性腸炎の治療履歴が10年にわたり記載されたカルテは『特別な事情がないかぎり』当然もらえず、病院は閉鎖。別な病院でいちから病状を説明するはめになり、めんどうくさいというよりも「きちんと理解してもらえるのか」という恐怖すら覚えた。

胃腸に関してT先生は、「名医」ということで地元のさいたま市では通っている内科胃腸科の先生であり、けっきょく僕は過敏性腸炎についてのかかりつけ医で信頼できる人にはいまだに当たっていない。今、不眠症であることすら、通っている内科胃腸科医には伝えていない。

さて、このところ原稿を書いている版元からやたらマイナンバーの提出を求められるようになったが、(この制度は政府に個人情報を監視されているようで好きではないが)唯一、このマイナンバー政策の延長にある「カルテ(医療情報)の共有」には賛同できる。端末からマイナンバーから引っ張るカルテの番号を全国の病院で共有できれるなら、全国どこの医者にかかろうと病歴から薬の投与歴からすべて出る。転院しても患者は病状をゼロから説明しなくてすむのだ。このようなプロセスで考え、かかりつけ医の重要性を、大橋さんの死と薬の誤投与から一気に思いおこした。

大橋さんが亡くなった瞬間に思いを寄せれば「あの先生にまかせたのだから、どうなろうとあとは天命だ」と大橋さんの立場となったら、『覚悟』は決まっただろうか。もしもかかりつけ医の紹介ではなく、たとえばことわりづらい上司からの紹介の医者に診てもらって、医療ミスでもし筆者が死ぬのなら、そんなつらいことはないはずである。

大橋巨泉さんの死を改めて悼む。投与すべき薬の種類や分量は、医学的な範疇なのでそこは触れない。ただ、果たして最後の最後、大橋夫妻は本当に覚悟を決めて治療をのぞめる医者と出会えたのか。市川海老蔵、逸見政孝らの顔を思い浮かべて、そこを心配してしまう。

幸いにも、大病をしたことがない私は、しかし油断がすぎてこのところメタボで糖尿病寸前だ。「いい死に方」をするために「信頼できるかかりつけ医」を今日もまた探す毎日である。

(伊東北斗)

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 投稿日: カテゴリー 伊東北斗, 芸能

神戸・長田小1女児殺害事件 発生から2年が過ぎても生々しい現場の傷跡

2014年に神戸市長田区で小1の女児が失踪し、バラバラの遺体となって見つかった猟奇的殺人事件が起きてから9月23日(=遺体が見つかった日)で2年が過ぎた。殺人や死体遺棄などの罪に問われた君野康弘被告(49)は今年3月18日、神戸地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けたが、年月が過ぎても事件の現場に刻まれた傷跡は生々しいままだ。

金網で囲まれた遺体遺棄現場の雑木林。花が供えられていた

◆金網が醸し出すワケアリ感

私が事件の現場を歩いたのは、君野被告に死刑判決が宣告されてからちょうど一週間後の今年3月25日のことだった。判決によると、君野被告は2014年9月11日、自宅アパート近くの路上で被害女児に対し、わいせつ行為をするために「絵のモデルになって」と声をかけて自室に誘い込んだ。そして女児の首をビニールロープで絞めたうえ、首を包丁で少なくとも4回刺して殺害。遺体を切断し、複数のビニール袋に入れて、近くの雑木林などに遺棄した――とされている。

現地を訪ね、まず何より痛ましく感じたのは、女児の遺体が遺棄された雑木林が金網のフェンスで囲まれていたことだった。この近くに住んでいる男性によると、「事件後に神戸市が土地を買い取って、誰も中に入れない状態にしたんです」とのことだが、金網のフェンスで囲まれた雑木林には、なんともいえないワケアリ感が漂っていた。このまま雑木林が放置されたら、周辺の住民はいつまでも事件の痛ましい記憶を消し去ることができないだろう。

金網で囲まれた遺体遺棄現場はワケアリ感が漂っている

◆被告の自宅アパートには大量のツタが……

しかし現地には、それ以上に生々しく事件を思い出させる場所があった。それは、君野被告が暮らしていた殺害現場のアパートである。ゆうに築30年は経っていそうな古びた建物の外壁には、生い茂ったツタが張りついていて、なんとも不気味な様相を呈していた。とりわけ君野被告が住んでいた部屋やその広々としたベランダには、大量のツタがまるで意思を持っているかのようにまとわりついていた。大家が手入れをせず、放置しているのだと思われるが、これでは次の借り手は到底見つからないだろう。

外から様子を窺ったところ、アパートにはまだ一室、住人がいる気配のある部屋もあったが、それ以外は空き部屋のようだった。私には、このアパートの大家も事件の被害者であるように思えた。

君野被告の住んでいた部屋とベランダは大量のツタがまとわりついていた…

◆事件に残された疑問

一方、君野被告は裁判員裁判の死刑判決を不服とし、現在は大阪高裁に上告中である。君野被告は公判で自分が犯人であることを認めつつ、誘拐の動機については、わいせつ目的だったことを否定し、「女児と話をしたかっただけ」と主張しており、控訴審でもこの主張を維持するとみられる。実際問題、君野被告は犯行前にアダルトサイトをかなり熱心に観ていたとされ、性的に興奮していたと考えられる一方、女児にわいせつ行為をしたという事実はないようなので、事件の真相がすべて解明されたかというと疑問も残る。この事件については、今後も折をみて、取材結果を報告したい。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

 「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
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原発推進インチキ・メディアを斬る!《6》もんじゅ利権の具『週刊新潮』座談会再び

これこそ世紀の「くだらない座談会」として、ギネスにでも遺すべきだろう。なんと週刊新潮の8月11・19日合併号では「特別読物 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて」シリーズで、「反原発」に「反対」する学者たちの座談会が開かれているが、テーマは「もんじゅ」でタイトルは『なぜ「もんじゅ」が日本の平和と環境に資するのか!』というタイトルが打たれている。

参加しているのは高木直行教授(東京俊大学大学院)、澤田哲生助教授(東京工業大学)、奈良林直教授(北海道大学大学院)、河田東海夫(原子力発電環境整備機構=MONO元理事)の4人が「もんじゅ」こそが環境と平和に資すると平気でのたまう。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

記事を抜粋する。記事はまずこんな前文から始まる。

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「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

原子力規制委員会が引導を渡したのは昨年11月のことだった。高速増殖炉「もんじゅ」について、機器の点検漏れが数多く発覚したことなどを理由に、今の原子力研究開発機構(JAEA)は信用できないので、それに代わる新しい運営主体を探すよう、文部科学大臣に勧告したのだ。もんじゅはプルトニウムとウランの混合酸化物、MOX燃料を使い、発電に使ったプルトニウム以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」を実用化すべく建設されたもの。日本の核燃料サイクル戦略の中核に位置づけられていたが、それが存続の危機に追い込まれたのだ。規制委員会が突きつけた回答期限のメドは「半年」。すでに半年を超え、8ヶ月が経過したが、新しい受け皿の具体案は示されない。「もんじゅ」は消滅するのか。もはや必要ないのか。澤田哲生氏を進行役に、専門学者たちが議論を交わした。

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「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この馬鹿野郎たちの議論の前に解説すると、「もんじゅ」について原子力規制委員会が「運営母体を変えろ」と勧告したのに続いて、今年1月にIAEA(国際原子力機関)が実施するIRRS(総合規制評価サービス)の監査が入ったと澤田氏が指摘している。そう、まずはIRRSの監査の基準がなっていないという議論から始まる。規制委員会の田中俊一委員長が「核燃料サイクルや高速増殖炉開発の意義を十分に納得していない」と高木氏は吠える。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

そして議論は「もんじゅを再稼働するのには、電力会社の協力が必要だ」という最悪の論調に走っていく。

奈良林氏の言葉を抜粋する。
『今、電力会社は自分の発電所の再稼働問題で手一杯。再稼働が進めば余力もできるでしょうが、今がタイミング的に一番まずい。再稼働がなかなか進まない点は、IRRSがいみじくも言っています。今の原子力規制庁と規制委員会は、新規則基準を作るまではよかったが、規制の運用が〝初期段階〟だと。日本の規制は世界から見ると小学生だというのです。だから、もんじゅを安全にする指導もできず、無駄な書類ばかり作らせている。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この国はもんじゅの再稼働に141億円をつぎ込もうとしている。これだけの金があれば、いくつ被災者住宅が建つというのか。

もんじゅは、1995年にナトリウム漏れ事故を起こしている。
直近では、7月下旬に、点検漏れが新たにあったとして報道された。もんじゅは今や「瑕疵つき物件」なのだ。

あいた口がふさがらないことに、河田はこんな発言をしている。

『高速増殖炉は軽水炉とはまったく体系がちがいます。それに、もんじゅは研究開発のための原子炉ですから、一生懸命に稼働率を稼ぐ必要はなく、保全計画が適正であるのを検証しつつ、一歩ずつ前に進めばいい。ミスが全然ないように学びながら作りあげていくものです。だから規制庁による点検漏れだ、違反だという指摘は、基本的にはフィロソフィーが違うのかなと。規制のあり方を一度ゼロベースに戻すべきです。また、もんじゅに関わっていた人は「運転する自信はじゅうぶんある」と言います。ですから、きちんと実働しながら、それを紙の体系とすり合わせていくことが大切だと思います。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

おいおい、何度も事故を起こした車の運転手が「自信が十分にある」「学びながら運転します」といえばあんたたちはその車に乗るのか。

ナトリウムが漏れたということは、拡大すれば端的にいえば体のタンパク質がとけていくかもしれないということで内蔵疾患の原因にもなりかねない。

座談会の学者たちよ! そして「週刊新潮」の人間たちよ!
福島の被災者住宅のど真ん中で座談会をやってみよ。
それができないなら、すぐにお詫びと訂正記事を出せ。

(渋谷三七十)

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