◆原発を運転すれば、危険で、行き場のない使用済み核燃料が発生します
燃料プールは、原発より地震に脆弱で、新しい使用済み核燃料を保管する燃料プールが崩壊すれば大惨事に至ります
原発を運転すると、核燃料中に、運転に不都合な各種の核分裂生成物(死の灰)、マイナーアクチニド(プルトニウムより重い元素)などが生成し、原発の制御が困難になります。一方、燃料被覆管に腐食や変形が生じます。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間(3~5年)燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなり、使用済み核燃料が発生します。
使用済み核燃料は、発生直後には膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールに水冷保管して、放射線と発熱の減少を待たなければなりません。
そのプールが満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した(例えば、10年以上水冷保管した後の)使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。
出来た空間には、高放射線量、高発熱量の新しい使用済み核燃料を入れますが、その燃料プールが、地震などで崩壊すれば、大惨事に至ります。なお、燃料プールは、原発本体とは比較にならないほど脆弱で、「むき出しの原子炉」とも呼ばれています。
電力会社は、使用済み核燃料の搬出先として、再処理工場(青森県)の稼働を願望していましたが、去る8月23日、日本原燃は27回目の再処理工場の完成延期を発表しました。乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場はありません。
使用済み核燃料の発生源・原発を全廃しましょう!
◆使用済み核燃料に関して約束反古を繰り返す関電
関電は1997年に「使用済み核燃料は福井県外に搬出する」と、当時の福井県知事に約束しました。核燃料再処理工場が稼働すれば、青森県に搬出できると楽観しての約束でした。しかし、1997年に予定されていた再処理工場の稼働は、延期を重ね、未だに稼働の見込みはありません。そのため、関電も、「福井県外搬出」の約束を繰り返し反古にしています。
関電は2021年にも、福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」と約束しましたが、未だに候補地を見出すことはできていません。老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働への福井県知事の承認を得るための空約束でした。
関電は、約束期限が迫った2023年6月、保管する使用済み核燃料のわずか5%程度をフランスに持ち出す計画を示し、「県外搬出という意味で、中間貯蔵と同等」としました。また、8月、唐突に上関町に中間貯蔵地建設のための調査を申し入れ、約束不履行を取り繕おうとしました。
さらに、10月には、再処理工場の活用、中間貯蔵施設確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけた「使用済み核燃料に関するロードマップ」を発表しました。老朽原発の運転を継続するための詭弁で、実現性が全くない「絵に描いた餅」です。
◆関電、使用済み核燃料の原発敷地内での乾式貯蔵に布石
ロードマップで、関電は「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵に向けての布石を打ちました。関電の燃料プールはもうすぐ満杯になり、原発を停止せざるを得なくなるため、プールに空きを作ろうとする策略です。
乾式貯蔵を許せば、永久貯蔵になりかねません。
◆再処理工場の27回目の完成延期で、ロードマップは破綻
関電がロードマップで示した願望は、昨年8月、日本原燃が27回目の再処理工場の完成延期(約2年半)を表明したことによって破綻しました。
それでも、関電は開き直って、「ロードマップを本年度末までに見直す。実効性のある見直しができなければ、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」としました。しかし、その場しのぎの空約束と約束反古を繰り返してきた関電の言動は、信用できるものではありません。
今回も、「使用済み核燃料のフランスへの搬出量を倍増させる(合計:ウラン使用済み燃料380トン、MOX使用済み燃料20トン)」などの小手先の奇策、稼働延期を繰り返し稼働の見込みが極めて薄い再処理工場(青森県)への2028年度からの搬出(198トン)などの詭弁を弄して、誤魔化そうとしています。許してなりません。
なお、関電の3原発の使用済み燃料プールには、全容量4450トンのうち87%に当たる3850トンが保管されています(2024年12月)。したがって、フランスや青森県への搬出が、関電の思惑通りに進んだとしても、搬出量は、全使用済み核燃料のごく一部に過ぎません(15%程度)。
また、関電の使用済み核燃料の多くは高燃焼度燃料であり、MOX燃料も増え続けていますが、これらの核燃料の再処理は極めて困難です(硝酸での溶解が困難な白金族などの成分が多く含まれ、発熱量も大きい)。
以上を勘案すると、今回の関電の奇策、詭弁は、約束履行に見せかけて、老朽原発の運転継続を狙うだけでなく、近々満杯になる使用済み核燃料プールに空きを作って、全ての原発の運転継続を可能にするための謀略であると言えます。
使用済み核燃料の行き場はありません。関電に約束通り老朽原発の停止を実行させ、使用済み核燃料の発生源・原発の全廃への突破口としましょう!
◆福井県議会議長に、陳情書を提出しました!
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、関電の使用済み核燃料搬出問題が議事となる福井県議会(2月17日開会)での慎重かつ公正な審議を求めて、県議会議長に、2月12日、下記の陳情書を提出しました。同様な陳述書は、「オール福井反原発連絡会」からも提出されました。
陳情書 福井県議会議長 宮本俊様
老朽原発うごかすな!実行委員会「使用済み核燃料の県外搬出に関するロードマップ」の実効性のある見直しができない関西電力(関電)に、危険極まりない老朽原発の廃炉を実行するよう求めて下さい
県議会議長、県議会議員の皆様には、弛まぬ福井県政へのご尽力に、敬意を表します。
さて、関電は、一昨年10月10日、使用済み核燃料の福井県外搬出に関するロードマップを発表し、杉本達治福井県知事は、わずか3日後にこれを容認しています。関電は、このロードマップの中に、青森県の核燃料再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけています。
しかし、このロードマップは、日本原燃が、昨年8月23日、「核燃料再処理工場の完成目標を2026年度内に変更する」と、27回目の完成延期(約2年半)を表明したことによって破綻しました。
それでも、関電の森望社長は開き直って、9月5日、杉本福井県知事と面談し、使用済み核燃料の県外搬出に向けた「ロードマップ」を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べています。
しかし、現在までに、「使用済み核燃料の行き場」に関して、その場しのぎの空約束と約束反古を繰り返してきた関電の言動は、信用できるものではありません。今回も「使用済み核燃料のフランスへの搬出を若干上乗せする」などの小手先の奇策で誤魔化すと危惧されます。
なお、再処理工場の稼働は極めて困難であること、例え稼働したとしても過酷事故の確率が高いことは、多くが指摘するところです。また、関電は、再処理できない高燃焼度の使用済み核燃料および使用済みMOX燃料も抱えています(これらは、今後増大します)。
したがって、使用済み核燃料の行き場はなく、福井県内に永久あるいは長期保管される可能性は大と言わざるを得ません。関電は、約束通り老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の廃炉を実行し、使用済み核燃料の発生源・原発の全廃に向かうべきです。
このような状況に鑑み、福井県議会に以下を陳情いたします。
陳情項目
[1]関電に、「本年度末までに、ロードマップの実効性のある見直しができない場合、高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」との約束を即時履行させてください。このとき、「実効性のある見直し」とは、「関電の保有する、あるいは今後発生させる使用済み核燃料の全ての県外搬出が見通せるもの」であることです。
[2]関電は、「使用済み核燃料の搬出の円滑化」を口実に「乾式貯蔵施設」を建設しようとしています。しかし、今までの搬出の実績からして、「乾式貯蔵施設」はなくても、使用済み核燃料は搬出できます。「乾式貯蔵施設」の建設は、永久あるいは長期福井県内貯蔵への道を開くことになりかねません。「乾式貯蔵施設」の建設を認めないでください。
[3]高浜原発1号機は運転開始後すでに50年を超え、高浜2号機、美浜3号機も、もうすぐ50年超えの「超老朽原発」です。老朽原発では、圧力容器の脆化、配管の腐食、減肉、電源ケーブルの劣化が進んでいます。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数ありますが、全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物の中で交換不可能なもの(圧力容器など)があります。関電に、危険極まりない「超老朽原発」の即時廃炉を求めて下さい。
[4]私たち「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、福井県内だけでなく、関西、中部など全国の会員で成り立っています。そこで、福井県外の住民の立場から、福井県議会に以下をお願いいたします。
原発および使用済み核燃料保管施設が過酷事故を起こせば、その被害は、福井県内だけでなく、広く関西、中部などにおよぶことは、福島原発事故の教訓から容易に推測されます。例えば、京都府や滋賀県の大部分は若狭の原発から70km以内にあり、高浜原発、大飯原発は福井県庁のある福井市より近距離にあるのみならず、特に冬場は、若狭の風下になります。
したがって、福井県議会や福井県知事の決断は、福井県外の多くの住民の命と生活に関わります。福井県議会は、周辺府県の住民の「原発のない、自然エネルギーのみで成り立つ社会」を求める声にも十分に耳をお貸し下さい。
2025年2月12日記
◆お願い
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、若狭での「脱原発・反原発」の声の拡大を目指して、また、「関電の約束違反を糾弾し、老朽原発の廃炉」を求めて、以下の行動と集会を企画しています。ご支援、ご参加をお願いします。
■3.22(土)~23(日) 若狭一斉チラシ配り(愛称:拡大アメーバデモ)
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、長期にわたって若狭や周辺地域で、チラシの各戸配布(愛称「アメーバデモ」)を繰り返し、住民との対話を重ねてきました。その中で、多くの住民が「原発は無い方がよい」と考え、圧倒的多数が「老朽原発稼働反対」であることを知りました。
昨年の能登半島地震以降は、原発推進の声はほぼ皆無です。能登半島地震によって、原発は地震に脆弱で、地震と原発過酷事故が重なれば、避難も、屋内退避も困難を極めることを実感されたのでしょう。
3月22、23日、あなたも参加してみませんか? 関西、福井などから配車の予定です。
■3.31(月) 使用済み核燃料の行き場はないぞ 関電は約束守れ!美浜集会 とき:3月31日(月)13時より ところ:関電原子力事業本部前(JR美浜駅より徒歩3分) 集会後町内デモを行います 関電の「使用済み核燃料搬出先に関する実効性のあるロードマップ」の提出期限である3月31日、関電原子力事業本部前(美浜町)で、関電の約束違反を糾弾し、老朽原発停止の実行を求めます。
▼木原壯林(きはら・そうりん) 老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2025年春号(NO NUKES voice 改題 通巻42号) 紙の爆弾 2025年4月号増刊 A5判 132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ) 定価770円(税込み) 2025年3月21日発売
《特集》原発被曝を問い直す 福島十四年後の実相
[グラビア]原発事故の後始末 汚染土2兆2000億円の現場(写真・文=山川剛史 )
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教) [報告]福島原発事故被害者の被曝と原子力ギャング
今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員) [講演]飯舘村の放射能汚染のこれまでとこれから
山川剛史(東京新聞編集委員) [報告]迫る汚染土の再利用 解決の道はあるのか
伊藤延由(飯舘村 元「いいたてふぁーむ」管理人) [報告]「被ばくの実態」調査から原発事故の実像を測る
尾﨑美代子(本誌編集委員/西成「集い処はな」店主) [報告]自宅の放射線測定記録に疑惑あり いのちにかかわるデータは捏造されたのか?
子ども脱被ばく裁判の会 [報告]呆れ果てても、諦めない! 子ども脱被ばく裁判で明らかになったこと
片岡輝美(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表) 十年間の闘いを経て水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表) 裁判によって知らない事実が明らかになった井戸謙一(「子ども脱被ばく裁判の会」弁護団共同代表) この裁判が生み出したいくつかの成果樋口英明(元福井地裁裁判長) 真実はこれを求める人にのみ与えられる
和田央子(放射能拡散に反対する会) [報告]原子力マフィアが主導する福島汚染土再生利用
後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者) [報告]《検証》もしも柏崎刈羽原発が攻撃されたら……
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