福井県高浜町の元助役・森山栄治氏の死去により明らかになった関電の原発マネー不正還流事件。2019年12月13日に八木誠前会長、岩根茂樹前社長ら元役員ら12人を金品受領・報酬補填などの問題で、特別背任罪(会社法960条1項)、背任罪(刑法247条)、贈収賄罪(会社法967条1項)、所得税法違反(238条1項、120条1項)の疑いがあるとして、3272人が9月6日、告発状を大阪地検に提出した。2020年10月5日、「関電原発マネー不正還流を告発する会」(以下、告発する会)は、被告発人を森元会長ら9名に絞った告発状を大阪地検に提出、正式に受理された。

しかし、昨年11月19日、大阪地検は、強制捜査等行われないまま、嫌疑不十分として全員を「不起訴処分」にしてしまった。大阪地検OBには、多数の関電役員が天下りしているが、不都合な真実を隠ぺいするため「忖度」した結果であろう。告発する会は、すぐに「検察審議会」に申し立てることを決め申立人を募集、今年1月7日、検察審査会に申し立て、その後4回にわたり「補充書」を提出、追訴相当の議決がでるよう働きかけてきた。

そんななか、4月20日、関電内に設置されたコンプライアンス委員会が、調査報告書を関電に提出、公表された。それによれば、関電の土砂処分、土地の賃貸借及び倉庫の賃貸借でコンプライアンス違反があったことが認定されていることがわかった。

告発状を提出した大阪地検前で抗議の声をあげる市民たち(写真提供=末田一秀さん)

1つ目の、土地処分案件では、亡くなった森山元高浜町助役の関連会社「吉田開発」が、土砂の崩壊事故を起こして評判が悪いにもかかかわらず、元請けゼネコンが決まる前から吉田開発に下請けさせ、吉田開発は孫請けに仕事を出す一方で、自らは何もせずに「中抜き」で儲けるスキームを作っていたことが明らかになった。

報告書は、関電の当時の原子力事業本部の豊中秀己本部長(特別背任)、森中郁雄本部長代理(背任)、鈴木聡副事業本部長(背任)が関与していたと実名が挙げており、金沢国税局は、14件の工事について、差額は森山元助役に渡ったのではないかと指摘した。

2つ目の土地賃借案件では、吉田開発と同じ経営者の吉田関連X社や柳田産業が持っている土地を、森山元助役の求めにより、「適正賃料」よりもはるかに高額で関電が借りていたことがわかった。これに関しては、豊松氏に了承を得ていたと推認されるなどと書かれている。

関電は、事件が発覚後、株主が提訴した損害賠償請求の裁判などで、「発注額は適正であった」と主張し続けており、当時の大阪地検検事も不起訴理由説明会で「関連する発注の捜査を尽くしたが、府政発注などとは認められなかった」と述べていた。

ところが、4月のコンプライアンス委員会報告書は、吉田開発などに不当利益を与えるために高額での不正発注があったことなどを、根拠となるメール題名を記載しながら、詳細な数字を出して明らかにした。

土地賃借案件は、関電の役職員らが、森山元助役の要求に応じて土地A(高浜町内)の賃借を決定し、吉田開発の要求(賃料200万円/月)をうけて、社内規定に違反して賃借の算定をおこない、不相当に過大な賃料を、吉田関連X社へ支払っていたというものだ。

2015年3月、鈴木副事業本部長は、森山から「土地A」を駐車場用地などとして賃借して欲しいと要請された。これを受けて関電原子力事業本部では、「土地A」を月額50万円で賃借するとして、交渉していた。しかし、吉田開発が月額200万円を譲らなかったため、関電側は月120万円に加えて、B倉庫管理業務月額30万円、アクセス道路の巡視業身利益ベースで月額50万円を、吉田開発に発注していた。

土地Aの賃貸契約は、2016年7月5日に締結され、2021年3月に解約されるまでの間、適正賃料(17万5000円)と、実際の賃料(120万)の差額の総額は、1億2000万円超に上ると考えられている。

なお、新たな疑惑の「倉庫案件」は、毎日新聞が2012年2月23日に報じたものの、関電第三者委員会報告書には書かれていなかった問題だ。原発推進の高浜町議が、事業に失敗し面倒みてくれと依頼、高浜町幹部が関電にもちかけ、町議が経営する工場を、関電が2008年から倉庫として借り上げたものだ。相場が年1600万円のところ、5520万円。2013年10月、国税局に問題を指摘され、4860万円に減額し、2018年度に1620万円にするまで間、町議が得た不当利益は、3億5174億円と計算されている。    

前述したように関電は、これまで株主が提訴した損害賠償請求の裁判などで、「発注額は適正であった」と主張し続け、大阪地検も不起訴理由説明会で、「関連する発注の捜査を尽くしたが、不正発注などとは認められなかった」と述べていた。

ところが、4月のコンプライアンス委員会報告書は、吉田開発などに不当利益を与えるために高額での不正発注があったことを具体的な数字で明らかにした。

告発する会は、4月28日、大阪地検に対して、再捜査を求める申し入れ書を提出するとともに、検査を行う検察審議会へに対して、起訴相当の議決を行うよう補充書を提出していた。

そして、9月6日(火曜日)午後1時より、大阪地検と最高検察庁に告発状を新たに提出した。その後、会場を移動し、弁護団の報告会が開催された。河合弁護士、海渡弁護士、川上弁護士らがオンラインで記者会見し、多くのマスコミの質問に応じた。

海渡弁護士

海渡弁護士「前回、検察審査会の内容は、報酬補填の部分は起訴相当だったが、不適正発注については、不起訴不当にしかならなかった。それは証拠が不十分だったからでしたが、今回のコンプライアンス委員会の調査で分かったことは、それらの氷山の一角です。しかし、ここでは非常にはっきりした形で、全部の証拠が集まっているので、今回の検察審査会の見解からすれば「起訴しなくてはいけない」と考えるべきと思います。大阪地検は、とうぜん起訴しなくていけないと判断してくださると考えますが、大阪地検は競うべき事件を不起訴にしてきた前科があるので信用できないとして、今回は最高検察庁も入れてやろうとしました。双方が協力して起訴して貰えば問題はないわけです。最後に私からひとこと『大阪地検は、この件でかならず起訴して欲しい。仮に大阪地検が不起訴にしてしまっても、最高検察庁がかならず起訴相当にするに至るだろう』と考えている。再捜査の中で、この問題がでてきたので、これを調べればいいのです」。

河合弁護士「大阪地検と最高検察庁の両方に訴えるということは異例のことです。我々はこの事件を取り組むなかで、大阪地検のなかに、関電幹部が多数天下り、しかもそれなりの要職に就いていること。だから不起訴にしたのではないかと考え、その不信感の表れが、最高検察庁にも訴えたということに現れたと考えています。大阪地検は信頼できない。最高検察庁は、大阪地検をきちんと指導してほしい。そうして市民の信頼を取り戻してほしい」と訴えた。

9月6日は、4月20日付けの関電のコンプライアンス委員会・調査報告で明らかになったうち、土砂処分問題、土地賃借問題の2件を告発した。新らに分かった3つめの倉庫問題については、弁護団が多忙で告発状が間に合わなかったため、9月30日に改めて告発する。なお、告発人の募集は9月20日まで行われている。

「関電の原発マネー不正還流を告発する会」
 事務局:〒910‐0859 福井県福井市日之出3-9-3
    「原子力に反対する福井県民会議」気付 
 mail:fukuiheiwa@major.ocn.ne.jp

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

〈原発なき社会〉を求めて集う不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2022年秋号
NO NUKES voice 改題 通巻33号
紙の爆弾 2022年10月号増刊
2022年9月11日発行 
A5判/132ページ(巻頭グラビア4ページ+本文128ページ)
定価:770円(本体700円)

主要目次
[コラム]樋口英明(元裁判官)
株主代表訴訟東京地裁判決と国家賠償訴訟最高裁判決
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
[報告]原発が原爆になる
[コラム]戦争に落ちていこうとするこの国
[講演]3・11福島原発事故から11年
脱炭素・原発再稼働・小型原発を問う
[講演]広瀬隆(作家)
二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈中編〉
[講演]小山美砂(毎日新聞大阪社会部記者)
疑わしきは救済する──「黒い雨」訴訟と核被害への視座
[インタビュー]井戸謙一(311子ども甲状腺がん裁判弁護団長)
福島第一原発事故と甲状腺がんの因果関係を証明する
[報告]漆原牧久(「脱被ばく実現ネット」ボランティア)
311子ども甲状腺がん裁判を傍聴して
山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表、東電株主代表訴訟原告)
[報告①]東京地裁で東電元経営陣に一三兆円余の賠償金を命じる判決
原発を動かし続ける電力会社経営陣への警告
[報告②]電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点
[報告]鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
そこに民主主義はない
福島第一原発「汚染水」海洋放出強行
[報告]森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
原発事故避難者に国連「指導原則」に則った人権保護を!
[報告]伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「原発事故避難者」はどこにいるのか?
[映画評]細谷修平(メディア研究者)
シュウくんの反核・反戦映画日誌〈2〉
原子爆弾と夢想の力──『太陽を盗んだ男』を観る
[報告]板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら重信房子なのか?
[報告]山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈17〉今日における日本人の原罪
[報告]三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
とめどなく出てくる統一教会汚染と国葬
[報告]佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
原爆・原発・統一教会~天網恢々、疎にして漏らさず!~
[書評]大今 歩(高校講師・農業)
福島の小児甲状腺がん検査は本当に「過剰診断」なのか
『福島の甲状腺検査と過剰診断』(あけび書房)
[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
虚構の「電力逼迫」発表にまどわされない!
本命の原発再稼働に反対し、言論と大衆行動で闘う
《全国》柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
「原発の過酷事故は我が国の存立を危うくする」=東電株主代表訴訟判決文
《六ヶ所村》山田清彦(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
高レベル放射性廃液の冷却不能トラブル
《福島》けしば誠一(杉並区議会議員/反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
福島の実態を全国に配信し 原発を止める闘いを強めます
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店前合同抗議実行委員会)
電力危機を煽る岸田政権・原発推進派に抗して、原発再稼働の動きを阻止しよう
《東海第二》志田文広(東海第二原発いらない!首都圏ネットワーク)
東海第二原発いらない!-茨城県知事へ要望書、日本原電へ申入書を提出
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
老朽原発・美浜3号機を廃炉に! 過酷事故が起こる前に 電気は足りている
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
私たちは「原発いらん!」と叫び続ける
伊方原発3号機再稼働絶対反対!
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
一二〇〇件のパブコメ反対意見を無視して海洋投棄認可、規制委緊急抗議行動
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
日野行介『調査報道記者 ── 国策の闇を暴く仕事』
[反原発川柳]乱鬼龍

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCVQ2G6G/

9月に入りました。酷暑と新型コロナ禍再爆発で大変だった今夏も、まだ暑さは残るとはいえ少しは秋の訪れを感じさせる季節となりました。

岸田政権は、安倍前首相暗殺後の混乱に乗じ原発再稼働、さらには原発新規建設まで口に出し始めました。とんでもない話で、断固粉砕しなければなりません。

さて、本年より『NO NUKES voice』を改題、全面リニューアルし『季節』として再出発いたしました。今号で3号目となりますが、多くの皆様方にご支援いただき、まずまずの船出でした。ありがとうございました。

本誌は(2014年8月の旧『NO NUKES voice』)創刊から8年が経ちました。同時に2011年3・11から11年余りが経ちました。

創刊したのはいいとしても、以後1号たりとも黒字にならず赤字を重ね、鹿砦社の他の分野の書籍の利益を回すことで継続してきました。しかし、昨今の新型コロナ禍による打撃は想定以上に大きく、会社も急激な業績悪化で、昨年末には休刊の危機に追い込まれました。そうした情況下、小出裕章さん、樋口英明さん、井戸謙一さんはじめ多くの先生方、読者の皆様の物心両面にわたるご支援と叱咤激励は、私たちに勇気を与え奮起せざるをえない闘志を惹起させました。また、苦渋の想いで部数を減らしたり工夫に努め今号もお届けすることができました。次号以降も、多くの皆様方に支えられ必ず継続していくことを決意しお約束いたします。
 
改題・リニューアルした『季節』の前途は荒海です。しかし私たちは、被災された方々、故郷を追われた皆様方に寄り添い(皆様のご苦労に比べればなんのことはありません)、なにがなんでも寄稿者や読者の皆様方と共に乗り切ってまいります! あらためて、今後ともよろしくご支援お願い申し上げます。チラシを同封させていただきましたので、知人・友人の方へ本誌の販促、定期購読(新規、前倒し更新、複数年申し込み)、書籍や本誌バックナンバーなどの直販などをお勧めください。

末筆ながら、コロナ禍長期化と、急激な物価高など社会情勢の悪化の中、皆様方のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年9月
季節編集委員会代表兼編集長 小島 卓
株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

〈原発なき社会〉を求めて集う不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2022年秋号
NO NUKES voice 改題 通巻33号
紙の爆弾 2022年10月号増刊
2022年9月11日発行 
A5判/132ページ(巻頭グラビア4ページ+本文128ページ)
定価:770円(本体700円)

主要目次
[コラム]樋口英明(元裁判官)
株主代表訴訟東京地裁判決と国家賠償訴訟最高裁判決
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
[報告]原発が原爆になる
[コラム]戦争に落ちていこうとするこの国
[講演]3・11福島原発事故から11年
脱炭素・原発再稼働・小型原発を問う
[講演]広瀬隆(作家)
二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈中編〉
[講演]小山美砂(毎日新聞大阪社会部記者)
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四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めている広島での裁判は6月8日、第28回口頭弁論がありました。

この口頭弁論を前に、「黒い雨」裁判原告の高東征二さんら6人が新たに提訴しました(裁判所に提訴しに入場する高東さんらの後ろ姿)。
これで本裁判の原告は367人となりました。

この日の口頭弁論では、被告の四国電力が、前回、水蒸気爆発の危険性を否定したのに対して、原告側が福島でも水蒸気爆発があった可能性を指摘して反論しました。次回の法廷は9月14日水曜日14時からです。

◆「政府の内部被曝無視を許さない」

法廷後の報告集会で高東さん(写真左から二人目)から決意表明がありました。
高東さんは、今回、伊方原発運転差し止めの原告になった理由として、内部被曝をしているという面で「黒い雨の被害者は原発の被害者と同じだから」と訴えます。

ご承知のとおり、「黒い雨」裁判は、当時の菅義偉政権が広島高裁の判決を受け入れました。しかし、当時の菅政権の談話は内部被曝については、「容認できない」としました。判決をもとにした救済策は長崎の被害者や黒い雨に濡れた11疾病以外の人は対象外で、判決で確定したことを実施していません。

高東さんは、こうした政府の対応について、「黒い雨の被害者が病気で苦しみどんな生活をしているか見にもこないし調査もしない。」と強く批判しました。

高東さんは、1945年8月6日を4歳6ヶ月のとき、現在の広島市佐伯区で体験しました。「空は暗くなり、ホコリやゴミがただよい、焼け焦げた紙や板が落ちてきた。」「大粒の雨が降り出したが濡れた記憶はない」と証言しました。しかし、「濡れたかどうかではなく、放射性微粒子が身体に入り込む事情があったかどうかが問題だ」と「黒い雨裁判」で高東さんは、主張したそうです。

高東さんは、小1、小2のころは体がよわく、できものや鼻血に悩まされたそうです。小3でリンパ腺がはれて切開をしたあとは元気でしたので被爆しているとは思っていなかったそうです。そして、黒い雨裁判の原告になるのも躊躇されたそうです。
しかし、地裁での勝訴判決を受けたころから脳梗塞や不整脈など多くの病気に悩まされました。「黒い雨の被害者」は病気だらけの人生でも国を訴えずにひっそりなくなった方が多い、と高東さんは、憤ります。

そして福島についても、国は「黒い雨」と同じ手法、すなわち内部被曝を隠蔽してごまかそうとしている、と怒ります。高東さんらは、最初は地域でも冷たい対応をされるなど署名運動に苦労されました。しかし、秋葉市長の時代に広島市による詳細な調査を勝ち取ります。ところが、民主党政権時代の2010年12月にやっと立ち上がった厚労省の「黒い雨検討会」に広島市の独自調査の結果は、蹴られてしまいます。

そこで、放射線影響研究所の理事長と話し合ったところ、同研究所には「爆心地から2km以遠での被曝や内部被曝のデータはない。」と言われて、びっくりしたそうです。

この放射線影響研究所の指標が国際基準にもなり、福島原発の問題も核心には触れずに進められているのです。

高東さんは、「原発の恐ろしさをしらないふりをして進めている」と国を批判し「核のない地球をめざし、命尽きるまでともにがんばりましょう」と呼びかけました。

法廷後の報告集会の様子。写真左から二人目が「黒い雨」裁判原告の高東征二さん

◆「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にしない条例を」

また、裁判原告団の事務局もつとめる筆者からは青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にしないよう求める条例制定を求める署名への協力を呼び掛けさせていただきました。

なぜ、本裁判原告団でこの問題に取り組むのでしょうか? 今回の署名運動は、高レベル放射性廃棄物の最終処分をどうするか、とは切りはなして、青森県に死の灰を押し付けることに反対するという社会正義の観点からおこなうものです。青森県のこころある人たちは、青森県が六ヶ所村の再処理工場がけっきょく死の灰の最終処分場になってしまう、という危惧を抱いています。

三村知事は青森県を最終処分場にしないという口約束は国から引き出していますが、あくまで口約束です。したがって条例にする必要があります。

六ヶ所村のすぐちかくでは政府がM9.3の海溝型超巨大地震の発生の可能性が高いと認めています。もし、実際におきれば、六ヶ所村も震度6強で830-1500ガルに達します。再処理工場の耐震基準は700ガルですから耐えられません。なお、アクティブ試験で再処理工場の設備は放射能汚染されていますので、いまさら耐震補強もできません。

また、わずか60kmの地点には過去にレベル6の巨大な噴火を起こした十和田湖があります。十和田湖の地下には過去に巨大噴火した当時と同じくらいのマグマが溜まっているおそれがあるということです。

このように、自然災害の危険が高いところに、死の灰を一極集中させることの危険性を今回の署名運動でわたしたちは訴えていきます。ご協力よろしくお願いいたします。

なお、12日執行で村長選が六ヶ所村であります。村長選は、毎回、核燃料サイクル賛成派の現職が圧勝しまくりで、前回は反対派新人が供託金没収となっています。筆者は昨年の自身の参院選で供託金没収となったことに言及して笑いをとりつつ「今回は新人が供託金は奪還できるよう応援しよう」と呼びかけました。

署名を呼びかけている大元の連絡先は以下です。ネット署名もできます。期限は8月末です。伏してご協力よろしくお願いいたします。

子どもたちに負の遺産を残さない「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地としない条例」制定を求める県民の会
〒039-1166 八戸市根城9-19-9 浅石法律事務所内  http://www.kenminnokai.shop/
インターネット署名 (form-mailer.jp) https://ssl.form-mailer.jp/fms/ad5b6e88679317

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号(NO NUKES voice改題 通巻32号)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0B2HS794W/

6月に入りました。もうじき暑い季節がやって来ます。

被災された方々、意に反し故郷を離れざるを得なかった方々、また脱(反)原発運動に関わる皆様には大変な季節です。

さて、前号より『NO NUKES voice』を改題、全面リニューアルし『季節』として再出発いたしました。多くの皆様方にご支援いただき、まずまずの船出でした。ありがとうございました。

本誌は(2014年8月の旧『NO NUKES voice』)創刊から8年近くが経ちました。同時に2011年3・11から11年余りが経ちました。

前号でも触れ繰り返しになりますが、2014年の創刊のころ鹿砦社はイケイケの時で、本誌の前身『NO NUKES voice』も、僭越な言い方ですが、いわば勢いで創刊いたしました。

しかし、創刊したのはいいとしても、以後1号たりとも黒字にならず赤字を重ね、加えて昨今の新型コロナ禍による打撃は想定以上に大きく昨年末には廃刊の危機に追い込まれました。そうした情況下、小出裕章さん、樋口英明さん、井戸謙一さんらの物心両面にわたるご支援と叱咤激励は、私たちに勇気を与え奮起せざるをえない闘志を惹起させました。
 
改題・リニューアルした『季節』の前途は荒海です。しかし私たちは、被災された方々、故郷を追われた皆様方に寄り添い(皆様のご苦労に比べればなんのことはありません)、なにがなんでも寄稿者や読者の皆様方と共に乗り切ってまいります! あらためて、今後ともよろしくお願い申し上げます。定期購読(前倒し更新、複数年)、書籍や本誌バックナンバーなどの直販、取材活動を支える賛助会員などでご支援ください。

一時は弱気になっていましたが、あらためて本誌を継続させる決意を表明させていただきます。

末筆ながら、コロナ禍長期化と、予想される猛暑、皆様方のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年6月
季節編集委員会代表兼編集長 小島 卓
株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号(NO NUKES voice改題 通巻32号)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

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5月31日、北海道電力・泊原発(北海道泊村)の周辺住民1200人が、泊原発に地震や津波に対する安全性が不十分だとして、1号機から3号機の運転差し止めや廃炉などを求めていた裁判で、札幌地裁・谷口哲也裁判長は、「現在ある防潮堤は津波に対する安全性の基準を満たしていない」などとして、運転を認めない判決を言い渡した。

一方、廃炉の請求は「具体的な必要性がない」として認められなかった。提訴から10年、泊原発は再稼働に向けた原子力規制委の審査中であった。にも関わらず、「安全性に問題がある」と運転を認めない判決が下された背景には、多くの論点について北電が主張を先延ばししてきたこともある。そのため判決は「提訴から10年以上経っても(北電側が)主張を終える見通しが立っておらず、審理を継続するのは相当ではないと判断した」とされた。


◎[参考動画]”泊原発「運転認めない」判決 廃炉請求は棄却(2022年5月31日)

この大きな判決に先立つ5月29日、大阪市内の靭公園で「老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」が開催された。真夏のような猛暑のなか、全国から反原発、老朽原発廃炉を訴える人たちが2100人も結集した。

若狭の僧侶、中嶌哲演さんは、主催者あいさつで「戦争も原発もそれを推進する元凶は、もっともらしいプロパガンダで本質を覆い隠し、それに抵抗・反対する人たちを弾圧している。しかし、今や戦争に反対し、老朽炉稼働に反対する潜在的な世論は、絶対過半数を超えているはずだ。その不同意・不服従する意志を非暴力的に表明するチャンスは、6月の参議院選挙だが、その潜在的世論をどう高めていくか、本日の集会で共に考え、共に声をあげていきましょう」と訴えられた。

僧侶の中嶌哲演さん(前列中央)

以下、集会での発言者の報告を要約紹介する。

◆美浜3号機運転差止裁判と5月26日東京地裁で第1回期日が始まった「311子ども甲状腺がん裁判」について 井戸謙一さん(弁護士)

老朽美浜3号機の運転差止仮処分は、昨年5月に提訴されました。その後、6月23日に再稼働した美浜3号機は、テロ対策施設の未完のため、一旦停止、今年の10月テロ対策施設が完成したら再稼働の予定です。先日5月23日、第4回の審尋が行われ、関電はなんとかひきのばそうとしましたが、裁判所はそれを許さず、次回7月4日の審尋で期日は終わり、10月の再稼働までには判決が出そうです。関電はまともに反論出来ていないので、勝てると考えております。40年超の老朽原発を止める闘いは、非常に重要な闘いです。ぜひ、ご注目ください。

もう1つ、5月26日東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回期日がありました。沢山の方が集まり、27席しかない傍聴席の抽選に226人の方が並んでくれました。裁判は、まず弁護団が内容を説明したあと、原告6人のうち1人の女性の意見陳述がありました。原告は、この間の辛かったことを思い出して言葉にしており、水をうったように静まり返った法廷のあちこちですすり泣く声が聞こえ、本人も涙を流しながら、最後までしっかり陳述しました。裁判官も身を乗りだして聞いていましたが、その目は赤かったと私には見えました。

その後、私たちは裁判所に、残り5人の原告の意見陳述もさせて欲しいと訴えました。関電代理人は、事前の進行協議では反対していましたが、さすがに反対とは言えず「裁判所に任せます」と言わざるをえませんでした。それだけの力があった意見陳述でした。

裁判後の記者会見には、入りきれないほど大勢のメディアが来ていました。先日、TBSの報道特集がこの問題を取り上げており、その後「被ばくで甲状腺がんが増えるんはデマ」という激しいバッシングが起こっていました。しかし、福島で甲状腺がんになった被害者が初めて声をあげた歴史的な日だと思います。これを報道できないメディアは駄目ですが、そうならば、私たちは、口コミでこの話を伝えていかなくてはならないと考えます。この裁判を絶対勝たせるために、ぜひ強力なご支援をお願い致します。

弁護士の井戸謙一さん

◆福井県の敦賀市から駆け付けた元原発技術者・山本雅彦さん
 
電力会社と立地自治体は、この間、共同で巻き返しをはかっています。政府のカーボンユートラル政策、ウクライナ情勢に便乗し、エネルギー安定供給には原発が必要だと、政府のクリーンエネルギー政策に沿って、日本原電の3、4号機の新増設、廃炉のもんじゅ敷地内に新型原子炉の建設、更には美浜、1、2号機をリプレイスをさせようとしています。また首長は口を揃えて、原発をテロや戦争の攻撃から守るために自衛隊の誘致しようとまで言い始めています。

昨年秋、福井農業高校の生徒さんたちが、原発を題材にした「明日のハナコ」を上演したが、ケーブルテレビで放送除外となり問題となりました。劇中で、元敦賀市長が石川県で原発を誘致する際「原発は金になる木で、50年後100年後に産まれた子供が『カタワ』(脚本ではカタカナ表記)になるかもいれないが、今は原発をやったほうがいい」という台詞があり、それが差別発言に当たるからだと言われました。

福井県、財団から金がでていることから、彼らに忖度したのでもないかといわれています。こうした報告を聞くと、原子力ムラのやりたい放題ではないかと思われるかもしれない。しかし、昨年6月に私たちが実施した美浜町全戸でのアンケートでは、原発不必要の方が54%、反対が61% 再稼働に不安と考えている方が71%もおられた。今年4月講演会を行った際にも、皆さんは「避難先がおおい町では近すぎて不安だ」「避難ができたとして本当に故郷に戻れるのか」などの悲痛な声がでました。

私たちの運動によって、こうした声を圧倒的多数にすれば、原子力ムラの画策を止めることができるのではと確信しています。共に頑張りましょう。

◆「東海第二原発の再稼働を止める会」副代表の佐藤勝十郎さん

老朽原発の1つで、3・11の被災原発である茨城県東海第二原発のある茨城県からかけつけました。東海第二では、昨年3月、日本原電を相手とした裁判で、運転を禁止するという勝訴判決がだされました。その後、原告・被告とも控訴、現在東京高裁で控訴審に入っていますが、控訴審も一審勝訴を確定させたいと思っています。

この間、380頁にも及ぶ控訴理由書を提出し、再来月進行協議が始まる予定です。何故勝てたのか? 規制委は「深層防護」の1層~4層までは合格とし、第5層の住民避難については規制委の審査はないが、裁判所は不十分と判断しました。今後は、この問題を深堀し、事実として東京高裁に認めさせていきたいと考えています。

◆木原壯林さん(実行委員会)が読み上げた「集会アピール」(案)

ほかにも、青森県、島根県、愛媛県、鹿児島など全国の反原発を闘う皆さんが発言したり、アピールを寄せてくれた。最後に実行委員会の木原壯林さんが「集会アピール」(案)を読み上げた。

「老朽原発動かすな!の闘いは、国内だけではなく、韓国はじめ世界の脱原発運動から注目されている。現在、川内原発1、2号機、高浜3、4号機が運転開始後36年を超えており、韓国の原発5基も35年を超え、2機は来年40年を迎える。もし、高浜1、2、美浜3号機の再稼働を許せば、国内だけでなく、世界の原発の40年超運転の前例にされてしまう。
 一方、老朽原発の運転と原発新設を阻止すれば、最悪でも2033年に若狭から、2049年に存国から稼働する原発がなくなり、世界の脱原発の動きを先導できる。老朽原発完全廃炉に向けてやれることは全て実行しよう。
 とりわけ6月参議院選挙には『老朽原発動かすな!』を争点にし、核依存、原発推進の岸田政権にノーをつきつけよう!」

アピール(案)は、満場からの大きな拍手で確認された。

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

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5月26日、東京地裁で、311子ども甲状腺がん裁判の第1回口頭弁論が行われた。この裁判は、福島原発事故当時、福島県内に居住していた6才から16才だった男女6名が、東電に対し、事故に伴う放射線被ばくにより甲状腺がんを発症したとして、損害賠償を求める裁判だ。

6名はいずれも甲状腺がんの手術を受け、うち4名は再発に伴う手術で甲状腺を全摘、甲状腺がんの発症や、それに伴う手術、薬の服用などで進学・就職などにも大きな被害が生じている。

裁判では、原発事故と、6名の原告の甲状腺がんの因果関係や原告が受けた損害の評価が実質的な争点となる。午後2時からの第1回期日では、5名の弁護士が弁論を行ったのち、原告2さんが意見陳述を行った。

その後の報告集会の冒頭、井戸謙一弁護団長は、「今日の法廷の印象は、5人の弁護団が手分けしてそれぞれの弁論をしましたが、それは前座で、本番は原告の女性の素晴らしい意見陳述でした」と話されたあと、期日の成果を以下のように述べられた。期日前の進行協議では、毎回意見陳述を認めるかどうかが話しあわれていた。被告・東電は、毎回やることに反対し、裁判所も消極的な感じだった。しかし、今日原告の意見陳述を聞いたあと、再びその話題になり、裁判長が被告代理人に意見を求めた。被告代理人は、建前的には大事なのは争点整理で、それを優先すべきと主張していたが、原告の意見陳述を認めるか否かについて反対とは言えず「最終的に裁判所に委ねます」と述べた。

裁判所も「もう一度考えます」と態度を変えた。被告代理人が反対できなかったのは、原告女性の意見陳述が、彼らの胸にも響いたからだと思う。当時の子どもたちをどう救済していくかで一番大事なのは、原告がどう苦しんできたかを裁判所に理解させる、そのことによって真っ当な判決に導いていくことだ。

先日TBSで報道された「報道特集」について、中身も知らずに「デマだ」とバッシングする輩が大勢いるが、そうではないということを発信して頂きたい。このようにバッシングする社会の風潮を変え、被害者の原告を支援していく社会的風潮をつくっていくということが、この裁判で真っ当な判決を出させる大きな力になると思います。

原告2さんの意見陳述作成を担当した柳原敏夫弁護士から、それまでの経緯が話された。

「彼女は自分から第1回目に陳述すると言ってくれた。そのとき、私が偉そうに彼女に言ったのは、裁判官に届く言葉、あなたにしか言えない言葉を言って下さいとお願いした。人間として扱われなかった治療や手術のことは思い出したくないだろうが、あなたしか言えないのだから。本人も悩んだようだが、連休明け、それまで書いた文章に、本人も思い出したくないアイソトープ治療について2000字を書き足してきました。それが今日のメインテーマでした。書いただけで精魂尽き果てただろうに、今日法廷でもう一度読むのも大変だったろうが、今日は最善の意見陳述をしてくれました。ここには来れませんが、皆さん、彼女に拍手をお願いします」。

その後、前日意見陳述を練習した際の原稿2さんの声が、会場に流れた。「意見陳述要旨」から、その一部を紹介する。

「あの日は中学校の卒業式でした。友達と「これで最後なんだね」と何気ない会話をして、部活の後輩や友達とデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします」

3月16日、放射線量が高かったことを知らない彼女は地震の影響で電車が止まっていたため、歩いて学校に行き、外で友達と話し、歩いて帰ってきた。県民健康調査で甲状腺がんがみつかり、精密検査を受けた。結果は甲状腺がんだったが、医師はそうは言わず「手術が必要です」と説明した。

「手術しないと23才までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません」

病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学、しかし、その大学にも長くは通えなかった。甲状腺がんが再発したためだ。

……………………………………………………………………………………………

「治っていなかったんだ」「しかも肺に転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいのかわかりませんでした。「今度こそあまり長くは生きられないかもしれない」そう思いました。……

「手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療を受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被ばくさせる治療です。

1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。

3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至るところに黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。

病室には、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。

薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。

薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。

医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。

飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるよう指示されます。

すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。

食事はテレビモニターを通じて見せられ、残さず食べられるか確認し、汚染するものが増えないように食べられる分しか入れてもらえません。

その夜中、それまでは何ともなかったのに、急に吐き気が襲ってきました。すごく気持ち悪い。なかなか治らず、焦って、ナースコールを押しましたが、看護師は来てくれません。ここで吐いたらいけないと思い、必死でトイレへ向かいました。吐いたことをナースコールで伝えても吐き気止めが処方されるだけでした。時計は夜中の2時過ぎを回り、よく眠れませんでした。

次の日から、食欲は完全に無くなり、食事ではなく、薬だけ病室に入れてもらうことのほうが多かったです。2日目も1,2回吐いてしまいました。

私はそれまでほとんど吐いたことがなく、吐くのが下手だったため、眼圧がかかり、片方の目の血管が切れ、目が真っ赤になってしまいました。扉越しに、看護師が目の状態を確認し、目薬を処方してもらいました。

病室から出られるまでの間は、気分が悪く、ただただ時間が過ぎるのを待っていました。

病室には、クーラーのような四角い形をした放射能測定装置が、壁の添乗近くにありました。その装置の表面の右下には数値を示す表示窓があり、私が近づくと数値がすごく上がり、離れるとまた数値が下がりました。

こんなふうに3日間過ごし、ついに病室から出られる時がきました。パジャマなど身に着けていたものはすべて鉛のごみ箱に捨て、ロッカーにしまっていた服に着替えて、鉛の扉を開け、看護師と一緒に長い廊下といくつもの扉を通って、外に出ました。……こんなつらい思いをしたのに、治療はうまくいきませんでした。治療効果がでなかったことは、とてもつらく、その時間が無駄になってしまったと感じました。以前は、治るために治療を頑張ろうと思っていましたが、今は「少しでも病気が進行しなければいいな」と思うようになりました。……通院のたび、腫瘍マーカーの「数値があがってないといいな」と思いながら病院に行きます。でも最近は毎回、数値が上がっているので、「何が悪かったのか」「なぜ上がったのか」とやるせない気持ちになります。……自分が病気のせいで、家族にどれだけ心配や迷惑をかけて来たかと思うととても申し訳ない気持ちです。もう自分のせいで家族に悲しい思いはさせたくありません。もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。

……………………………………………………………………………………………

裁判の傍聴希望者は約200名、うち傍聴出来たのは27名、期日後の記者会見でも多くのメディアから質問があったとお聞きした。甲状腺がんなど原発事故の放射能による健康被害に関心が高まっている。被害者に対する支援の輪を、今後さらに広めていかなくてはならない。

311子ども甲状腺がん支援ネットワーク 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

「あれ?ない……」
13日午後、福島駅前のホテルで開かれた第44回「県民健康調査」検討委員会。配布資料をめくると、筆者はすぐに〝異変〟に気付いた。委員名簿にあるはずの名前がなかったのだ。記者席で思わず声を出してしまったほど驚いた。

7カ月前の昨年10月に開かれた前回委員会で座長に再任されたばかりの星北斗氏(福島県医師会副会長)の名前も、座長代行になったばかりの稲葉俊哉氏(広島大学 原爆放射線医科学研究所教授)の名前もない。さらに2人を加え、計4人の委員が「一身上の都合」で辞めていたのだ。2年の任期が始まったばかりだというのに……。

「『県民健康調査』検討委員会設置要綱」第3条7項で「座長に事故があるとき又は座長が欠けたときは、座長代行が、その職務を代理する」と定められている。座長に選ばれたばかりの星氏が夏の参院選に自民党公認で立候補することから、次の座長は当然、稲葉代行が務めるものと考えていた。

開会までまだ時間があるので、旧知のフリーランス記者とその事で立ち話をしていると、会場に1人の委員が入って来たのが目に留まった。高村昇氏(長崎大学 原爆後障害医療研究所教授)だった。高村氏は前回委員会を欠席。それ以前もコロナ禍でリモート形式での開催が続いたので、会場に姿を現すのは実に2年ぶりのことになる。

「まさか…」
物書きとして冷静でいなければいけないことは分かっていたが、徐々に鼓動が激しくなっていった。もし高村氏が新しい座長に選ばれれば、「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます」(2011年3月21日、福島県福島市での講演会)と言い放った山下俊一氏(初代座長)とともに福島県内各地で〝安全講演〟をした人物が座長に就任することになるからだ。


◎[参考動画]3.11直後の山下俊一発言

果たして、その「まさか」が的中した。
「福島県復興のためにご尽力されている。高村先生以外にはいない」、「やっぱりここは高村先生しかいらっしゃらない」などと称賛を受けての選出だった。高村氏は2020年4月から「東日本大震災・原子力災害伝承館」の初代館長(非常勤、任期5年)も務めており、検討委員会も〝牛耳る〟ことになったのだった。

高村氏の問題点については、これまで何度も「民の声新聞」で指摘してきた。
福島県の担当者は「伝承館」の館長に選出した理由について①考え方に偏りが無い、人格的に温厚で高潔②福島県の復興、避難地域等の支援に関わってきた③「伝承館」の運営に必要な能力を持っている─の3点を挙げた。しかし、高村氏は「考え方に偏りが無い」と言えるだろうか。

「伝承館」初代館長就任にあたり内堀雅雄知事を表敬訪問した高村氏。山下俊一氏の影響下にある高村氏が検討委員会も〝牛耳る〟ことになり、検討委の中立性が揺らいでいる=2020年撮影

高村氏は1993年に長崎大学医学部を卒業。2013年度からは同大原爆後障害医療研究所の教授を務めている。原発事故直後の2011年3月19日には、山下俊一氏とともに福島県の「放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任。県内各地で行った講演会では「放射性セシウムはろ過されやすいので水道水には出てこない」、「放射性セシウムセシウム 137 が体に入った場合の半減期は30年では無い。子どもであれば2カ月、大人でも3カ月程度で半分になる」などと発言したほか、子どもたちの鼻血についても「放射線の影響ではない」と断言していた。

飯舘村では震災発生から2週間後の2011年3月25日に県と村の共催で高村氏の講演会が行われている。その場で「マスク着用や手洗いなどをすれば、健康に害なく村内で生活できる」という趣旨の発言をしているが、実はこの講演会、そもそもの目的が「村民に安心してもらうため」だったのだ。当時の菅野典雄村長が著書「美しい村に放射能が降った」のなかで「私も安心した」と明かしているほどだ。

復興庁が2018年3月に発行した冊子「放射線のホント~知るという復興支援があります。」は「原発事故の放射線で健康に影響が出たとは証明されていません」と書いているが、「作成にあたり、お話を聞いた先生」に名を連ねているのも高村氏。
伝承館館長就任にあたって「一番の主眼は、復興のプロセスを保存して情報発信すること」、「ぜひイノベーションコースト構想の一翼を担いたい」と語って内堀雅雄知事を満足させたのも高村氏。

事故発生直後から被曝リスクを全否定し、住民を線源から遠ざけるどころか逃げないように〝安心〟させ、国や福島県が画策する原発事故被害の矮小化と復興PRに加担するような人物を座長に選んで本当に良いのだろうか。筆者は委員会後の記者会見で質問した。高村座長は苦笑していたが、どの委員も質問に答えなかった。答えないも何もない。司会役の県職員が全力で質問をブロックしたのだった。

「申し訳ありませんけれども、本日の議事議題に関係ありませんので、お答えを控えさせていただきます」

原発事故後に神奈川県に区域外避難、現在は避難元の郡山市と行き来している松本徳子さんは、今回の検討委員会や記者会見を動画で観て福島県の県民健康調査課に電話をかけた。「子どもが健康調査を受けている親として、県民健康調査検討委員会の場で傍聴や質問をする権利を与えてもらえませんか?」と申し入れたが、けんもほろろに断られたという。

「県民健康調査課と私との意見交換の場を設けてもらえませんか?とも言いましたが、『それもできません』とのことでした。どれだけ詰め寄っても『それは松本さんの見解なので仕方ありません。これ以上お話しても意味がありません』と電話を切られてしまいました」

検討委員会後の記者会見に臨む当時の星北斗座長(左)と高村昇委員。自民党公認で参院選に出馬する星氏の後継座長に高村氏が選ばれた=2017年撮影

高村氏は昨年2月、原子力産業新聞のインタビューで次のように語っている。

「もちろん、今後もいろんな調査研究を進めていく必要があるが、因果関係を調べた結果、10年経った現時点では、福島で見つかる甲状腺がんは被ばくの影響とは考えにくいという結論に至っている」

「福島では、これまで甲状腺検査をしてこなかったから見つからなかったものが検査をすることにより見つかるようになった」

これではもはや、検討委員会の方向性は見えている。

そもそも、初代座長が「子ども脱被ばく裁判」の一審証人尋問で厳しく追及され、二代目座長は原発再稼働に躍起になっている自民党の公認候補として参院選出馬。その路線を継承するのが〝山下チルドレン〟の三代目座長。そんな委員会が説得力を持ち得るのだろうか。

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

厳しかった冬の終わりがようやく見え始め、暖かい陽射しが降り注いだ3月。横浜・みなとみらい地区の一角では、キッチンカーに長い行列ができていた。「発見!ふくしまお魚まつり」と銘打たれたイベントは、原発事故による福島県産水産物の〝風評払拭〟が目的で復興庁や福島県が後援。海鮮丼などを食べてもらうことで福島県沖で獲れる「常磐もの」をPRするのが狙いだ。ホームページには「ぜひこの機会に、『常磐もの』を食べて、福島を応援してください」と書かれている。

筆者もカップルや家族連れなどの列に加わり、奮発して一番高い2000円の「全部乗せ」を食べた。サーモンやアナゴ、マグロなど確かに美味しい。原発事故による影響など考える必要がなければどれだけ良かっただろうと思う。しかし、現実には原発事故後にたまり続ける「汚染水」(国や東電は〝ALPS処理水〟と呼称)の海洋放出計画が着々と進められているのだ。しかも、福島県などの「事前了解」はまだ得ていない。福島だけの問題ではないとはいえ、県民の賛同さえ得られていない。それなのに海底トンネル設置の工事だけが粛々と進められ、この種の〝風評払拭イベント〟が行われる。

横浜・みなとみらい地区で行われた〝常磐もの〟のPRイベントには長い行列ができた(2022年3月5日)

キッチンカーの周囲では、当然ながら汚染水海洋放出計画への言及などない。では、〝常磐もの〟を堪能する人々は反対の声を無視して進められている計画をそもそも知っているのだろうか。時に激しく怒られながら声をかけただけでも、ほとんどの人の答えが「知らない」だった。

「全然知りません。そういう情報は入ってこないですね」(都内在住の男性)
「聞いたことないです」(横浜在住の男性)
「知りません」(横浜在住の女性)

もちろん、海洋放出計画を知っている人もいた。だが、単なる偶然なのか、ともに「福島出身」の人だった。

「知っていますよ。トリチウムのキャラクターで騒いでいましたね。ちゃんと検査をしているのは知っているので、海洋放出したとしても食べるか食べないかには影響しません。実家が農家で、桃や野菜を幅広く生産しているのでそういうことはよく分かっていますよ」(中通り出身の女性)

「実家がいわき市なので知っています。致し方ないのかな。地元としては反対しているけれどどんどん溜まっていく一方だし…。一方で漁師の方々は苦労していますよね。難しい…」(横浜在住の男性)

こんな声もあった。

「海に流すというのは聞いたことがあります。流したとしても食いますよ。関心ないわけではないけど、国に『安心ですよ』って言われたら面倒くさいから食べますね」(都内在住の男性)

出店者の1人、大川魚店の大川勝正社長が現場で取材に応じた。大川社長は、自民党に移った細野豪志代議士(元環境大臣)が昨年2月に出版した「東電福島原発事故 自己調査報告」(徳間書店)で細野氏と対談するなど、海洋放出計画そのものには賛成している。

「2012年くらいから水をどうするんだというのは言われていた話で、どうするのかいつまでも決めねぇなとずっと思っていました。突然決めたというか、時間はあったわけだからもっと合意形成をちゃんとすれば良かったんですけど、何もしないで急にパンとやった。下手だなあって感じです。どういう結論になってもあれなんですけど、もうちょっとやり方があったでしょって感じがします」

調理の手を止め、こちらの質問にも嫌な顔ひとつせずに答える姿には誠実さを感じた。一方、廃炉完了のためには海洋放出が必要だという考えはブレなかった。

「海に流すというか、僕は廃炉がスムーズに進むことを一番望んでいるので、廃炉がスムーズに進めば良いなという視点です。僕が住んでいるところ(いわき市四倉)は原発に近いし、双葉郡には親戚が住んでいます。子どもの頃から慣れ親しんだ街なので、早く何もなくなってくれれば良いなと思っているんです」

「水の問題も以前、経産省の方(木野氏や奥田氏)と話す機会があって、素朴な質問として『あの水どうするんですか?』と尋ねたら『普通の原発は(海に)流すんですけど、とりあえずタンクに溜めておく。でも、いつかは流さなければいけない』と、5つくらい処分方法案を口にしていました。その後、年に1回くらいは水をどうするかという話はあったんですけど、それ以上話は進まなくて、なんだかなあと。で、実際にキャパオーバーだから、なんというグダグダぶりなんだろうと思います。グダグダすぎる……」

来年にも汚染水の海洋放出が強行されようとしているが、そもそも海洋放出計画を知らない人も多い。何も知らないまま「美味い美味い」と喰うだけで良いのだろうか

なぜ海洋放出計画に反対しないのか。

「僕の場合は物理的な問題ですね。キャパがない。土地がない」

「みんな反対って言っていますけど、トリチウム水のことを学べば学ぶほど、あんまり問題じゃねえなと(笑) あとは反対の声をあげる方が処理水を流したときの風評被害が『地元の人たちも反対しているのになぜ流すんだ』となって話が大きくなっちゃう。東電に文句ばかり言っていても福島の応援にはならないことを、みんな肌感覚で分かっているんですよ」

「自宅の近くにごみ処理場ができるような話ですよね。まあ嫌だけど、みんなのためには必要だと。安全に運営してくれるんだったらって感じですかね。世界の原発でもやっている?そうですね。懸念を口にしている専門家もいる?うーん……」

大川社長が指摘したのは「合意形成のまずさ」だった。

「時間はあったのに、何でちゃんとやらなかったのか。合意形成をね。反対する人がいたとしても、もうちょっと容認する人を増やしてバランス良くできなかったのか…」

福島民友新聞は4月27日付の1面トップで「処理水放出方針 国内6割知らず」と復興庁の調査結果を報じた。しかし「情報発信不十分」との見出しは立てるが、会報放出そのものの是非は論じない。時間をかけて反対意見に耳を傾けるのが民主主義の基本だろう。まずは立ち止まり、代替案をていねいに議論するのが「合意形成」ではないのか。

汚染水を海に流しながら〝常磐もの〟を宣伝するという矛盾した取り組みが、来年にも始まろうとしている。「知らなかった」では済まされない。

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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薬害エイズ訴訟や薬害肝炎訴訟など、医療現場での人権侵害に取り組んで来た鈴木利廣弁護士が4月22日、「浪江原発訴訟」の報告集会で講演した。同訴訟は事実上の現地検証に続き、原告本人尋問が始まる。なぜ裁判官に現場を見せ、原告の想いを聞かせることが大事なのか。鈴木弁護士の言葉からは被害当事者が直接、語りかけることの重要性が伝わってくる一方、被害者がそこまでしなければ被害救済につながらない「原発事故」の罪深さを改めて考えさせられる。

「浪江原発訴訟」では今月26日、小川裁判長など3人の裁判官が実際に浪江町を訪れる「現地進行協議」(事実上の現地検証)が実施される。裁判官が現場を見たり、原告の説明を聴いたりすることでどういう印象を受けているのか。心証形成にどのような影響を及ぼすのか。鈴木弁護士は2000年3月に「ハンセン病国家賠償請求訴訟(東日本訴訟)」で行われた現地検証での経験を例に挙げた。

「群馬県草津町の国立ハンセン病療養所『栗生楽泉園』を訪問。全ての説明を原告自ら行いました。そして、吉川裁判長が正門前で,園を離れるに際して参加者全員にこう語りかけたのです。
『今,私はここを去りがたい思いでいます。このことは私も忘れることはありません』
私は、裁判長の感極まった様子を目の前で見ていました。彼の言葉を聞き、やはり現場を見るというのは大事なことなのだと思いました」

「浪江原発訴訟」の報告集会で講演した鈴木利廣弁護士。裁判官による現地検証や原告本人尋問の重要性を語った

次回6月22日の期日からは、原告本人尋問が始まる。12月の期日まで4回にわたって実施される予定だが、原告代理人弁護士が質問する主尋問でも緊張で思ったように答えられないうえに、被告国や東電の代理人が行う反対尋問では、原告を圧迫するような意地悪な質問が矢玉のように飛んでくる。そこまでしてでも被害者は法廷に立たなければならないのか。鈴木弁護士は「裁判官の目を潤ませられるか否かで勝敗が決まる」という言葉を口にした。

「なかなかそのようには感じられないかもしれませんが、裁判官も人間なんです。法廷で目頭が潤んでしまい、まばたきをすると涙がこぼれてしまいそうになったので鉛筆を故意に落とした裁判官がいました。鉛筆を拾うときに法服で目を拭ったそうです」

たしかに、原発事故後の裁判では、原告の言葉に目を潤ませたように見えた裁判官は複数いる。そこまで心に訴えかけることができれば判決にも好影響しそうだが、それには相当の苦痛が伴う。仙台高裁判決が確定した「中通りに生きる会」の損害賠償請求訴訟(被告は東電のみ)でも、多くの原告が涙を流しながら陳述書を書き上げた。封印していたはずの被曝不安や怒りに再び直面しなければならないからだ。鈴木弁護士は「つらい経験を忘れたいと考えるのは人間として当然のこと」としたうえで、「弁護士もつらい」と語った。

「本人尋問では、かさぶたを強引に引きはがして傷口をもう一度さらけ出し、そこに塩をまいてタワシでこするというような悲痛なことを代理人弁護士はやっています。しかし、本人尋問の重要性は『裁判官に原告の被害体験を聴かせて、救済しなければならないという意識を持たせる』ことです。被告の主張に裁判官が引きつけられるのか、原告の被害実態に引きつけられるのかが勝負。かさぶたをはがしてでも被害の実相を裁判所に伝えなければならない。弁護士もつらいのです」

一方、本人尋問を経て原告が強くなるという。

「原告自身が被害体験を思い起こし、改めて自認する。この作業には覚悟と学習が必要です。でも、被害救済への共感を拡げるための闘いのエネルギーは、本人尋問手続を経て初めて本物になると言えます。薬害エイズ訴訟では苦しい本人尋問を耐えて耐えて、ようやく終わったら『もう怖いものはなくなった』と口にした原告がいました。その人は実名を出して街頭で被害の実態を語るようになりました」

いくら代理人弁護士や支援者が努力をしても、最後は当事者が声をあげなければ、当事者が訴えなければ世論を喚起することはできない。

1995年に来日したアメリカの人権派弁護士アーサー・キノイ氏は、こう述べたという。

「誤解を恐れずに言えば、裁判に勝つことよりも民衆の怒りに火をつけることの方が重要だ」

「裁判なんかどうでも良いと言っているのではありません。仮に敗訴したとしても、民衆の怒りに火がつけば紛争は解決すると。勝訴したとしても民衆の怒りに火がつかなければ金だけで終わって紛争は解決しないということを意味しています」(鈴木弁護士)

「浪江原発訴訟」は今月26日に事実上の現地検証を実施。次回6月の弁論期日から原告本人尋問が始まる

民衆の怒りに火をつけるには、裁判官に現場を見せることに加え、原告が改めて被害に向き合い、想いを語るつらい作業は避けられない。それが鈴木弁護士の言う「覚悟」ということだ。そして、最後に勝利をたぐり寄せるのは原告だと強調した。

「闘いの序盤には、勝利は原告団の手の届かないところにあります。原告団だけでは勝利は難しい。到底無理です。それを手の届くところに近づけるのが弁護団の役割。しかし、手の届くところに近づいてきたとき、それをつかみとれるのは原告団だけです。原告団でなければつかみとれない。弁護士がつかみとろうとしても逃げられてしまうのです」

勝訴をつかみ取るのは原告本人。他方、そこまでしなければ真の被害救済につながらないのもまた、原発事故。国や東電には被害者に真摯に向き合う姿勢が改めて求められる。

鈴木利廣弁護士は1947年、東京生まれ。1976年に弁護士登録をし、1989年からは「東京HIV訴訟」(薬害エイズ訴訟)弁護団の事務局長。2002年提訴の「薬害肝炎訴訟」では弁護団代表に就任。「薬害オンブズパースン会議」の代表も務めており、プロフィールには「弁護士人生の約2/3を『医療と人権』の課題に取り組んできた」と書くほど、20年にわたり医療問題に取り組んで来た。2004年からは明治大学法科大学院教授として後進の育成に力を注いでいる。

【浪江原発訴訟】2018年11月27日、福島地裁に提訴。原発事故による損害賠償として「コミュニティ破壊慰謝料」、「避難慰謝料」、「被曝不安慰謝料」を合わせた1100万円、集団ADRの和解案を東電が違法に拒否したことによる精神的損害として110万円の計1210万円を一律に支払うよう請求している。浪江町民は2013年5月29日、精神的損害に関する賠償の増額などを求め集団ADRを申し立てた。しかし、東電は原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)の再三の勧告にもかかわらず6度にわたって和解案の受諾を拒否。2018年4月5日をもって打ち切られていた。訴訟の狙いは、①国と東電の原発事故における責任を明らかにする、②浪江町民の一律解決、③浪江町民の被害の甚大さを広く訴え、慰謝料に反映させる、④東電のADR和解案拒否に対する追及─の4点。

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
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4月26日はチェルノブイリ(現・チェルノービリ)原発の大事故から36年です。筆者はこの日、島根原発の再稼働問題で揺れる広島県北部に街宣や挨拶回りにうかがいました。広島県北部はこのほか、直近ではJR芸備線の存廃問題で揺れています。JR西日本は先日、芸備線をふくむ地方路線のコストパフォーマンスを発表。芸備線も区間による程度の差はあれ、大赤字と公表されています。こうした中で筆者は芸備線始発で自宅最寄りの矢賀駅(広島市東区)から三次駅まで移動しました。

始発列車は気動車の2両編成。5時43分、矢賀駅を出発しました。当初は、始発とあって、筆者以外にはあまり人が乗っていませんでした。

 

◆河井事件の「余震」おさまらぬ安佐北区

列車は矢賀を出ると、戸坂(へさか)、そして、先日補欠選挙があった安芸矢口へと進みます。安芸矢口からは安佐北区です。安芸矢口駅は西日本大水害2018で壊滅的な被害にあった地域です。筆者はこの地域でボランティア活動に従事。熱中症でぶっ倒れ、伊藤昭善市議に手厚くお世話をしていただきました。その伊藤市議が河井夫妻からお金をもらい、現在も裁判で争っておられます。この状況に筆者は、筆舌に尽くしがたいほど困惑しています。

補選のほうは、筆者が支援した原田よしこさんは、健闘したものの4位。当選は保守系無所属のお二人、という結果になりました。支持者同士の人脈がかさなる共産党候補と合わせればトップ当選になる状況でもあり、ちょっと悔やまれます。

▼安佐北区補選開票結果 2022年4月24日執行
山下 まさひろ 6335 保守系無所属 立憲森本参院議員支援
三宅 あきみつ 4322 保守系無所属 自民主流・一部立憲市議支援
清水 てい子  3996 日本共産党
原田 よしこ  3737 市民派無所属 一部立憲衆院候補・筆者(れいわ)支援
正木 あつし  1657 無所属 元リコールされた県議
かとう万蔵   1205 無所属元職  
大田 清     587 無所属 安芸区でも立候補

さて、芸備線は単線ですので、結構すれ違いで時間を消費します。

広島方面下り列車とすれ違っている様子です。芸備線は広島方面が下り、三次・新見方面が上りです。大都市の広島から山岳地帯に向かうのに上り列車というのも変な感じはうけますが、東京にちかいほうが上り、と決まっているのだから仕方がありません。

◆安佐北区北部は農村地帯

安佐北区北部はもう、大都市とは思えないような農村地帯です。太田川の支流の三篠川流域にあたります。このあたりも西日本大水害2018では鉄橋が流されるなど大きな被害を受けました。

このあたりでは、県の北部の高校に通う制服姿の若い方がパラパラと乗車してこられますがやはり、まだまだ早い時間帯とあって、乗客は少なめです。

広島県は実をいうと、伝統的には、北へいけばいくほど米所です。古代は北部のほうに、出雲と連動するような形で文明が栄えたといわれています。

◆安芸高田市からは江の川流域に

列車は井原市を過ぎると安芸高田市に入ります。ここからは広島県北部。日本海に注ぐ江の川流域にはいります。西日本大水害2018では江の川上流の広島県に降った大雨は時間が経ってから島根県を直撃。大被害をもたらしました。ここからも、水田が続きます。

 

◆毛利元就ゆかりの「吉田口」からは女子高校生多数乗車

 

そして安芸高田市の中心部に近い吉田口駅は25年前の大河ドラマの主人公「毛利元就」の本拠地のすぐ近くです。またJ1のサンフレッチェ広島の練習場もこの安芸高田市にあります。

この吉田口駅では女子高校生多数が乗車してこられました。三次市内の県立高校の制服です。このあたりから、芸備線で通学されている方も多いようです。この区間は100円を稼ぐのに600円近くかかると、JR西日本は試算しています。

しかし、通学手段ということを考えればこの区間を廃止するのは暴論もいいところでしょう。そもそも、移動の権利を保障するということであれば、赤字だから廃止する、というのはおかしい。さりとて、現にJRという民間会社が運営している。

そうであるならば、欧州でやっているような線路など「下」は国や県が保有し、列車の運行など運営をJRがやる「上下分離方式」で存続を図るのがおとしどころではないかと思いました。そして、行き先の地域ではそういう内容も演説に含めよう、と高校生の姿を拝見して考えました。

ちなみに、この安芸高田市もご多分に漏れず、高田郡全ての町を合併してできた市です。具体的には吉田町、八千代町、高宮町、美登里町、甲田町、向原町です。
安芸高田市では当時は県議だった児玉市長が克行受刑者からお金をもらったとして辞職。その後、若い石丸市長が出直し選挙で当選していますが、議会多数派との対立で苦労しておられます。

◆三次駅前はきれいになったが閑散

列車は安芸高田市から三次市へと入ります。やはり、水田が続きます。途中の駅でも続々と高校生が乗ってこられました。そして、7時半ころ、列車は終点の三次駅に到着しました。

三次駅前は筆者が県庁マンとしてこの地に勤務していた2002―2005年度ころにくらべると再開発でこぎれいな感じになっていました。しかし、人通り、車通りとも閑散としていました。三次市の人口も合併された地域を中心に大きく減少していたこと影響は明らかです。

 

わたしは、この日は、まず、三次市役所前で街頭演説。「合併で職員を減らした上に、さらに国や都道府県の仕事を丸投げした地方分権」の弊害を指摘。
「職員の皆様が市民のために安心して仕事ができるよう、減らしすぎた公務員は非正規を正規にするなども含めてふやしていく」
「公務員という形で増えれば地域に若者もやってきて活気が出る」
「食料の安全保障のため、農業だけでなく畜産業など食料を生産する人に所得とコストの保障をがつんと財政出動でおこなう。」
「地方に手厚い政策は、全ての政党の中でれいわ新選組こそ一番、参院選広島にエントリーを検討している人の中ではさとうしゅういちこそ一番だと確信している。」
などと力をこめながら登庁してこられる職員の皆様にビラをお渡ししました。

一方で「介護や保育などの給料が仕事のわりにひくすぎることに気づいたのはこの地で介護保険行政に携わっていた時代のこと。職員の皆様にもぜひ、介護、保育現場の公務員並への給料アップにご協力を」などと懇願しました。


◎[参考動画]さとうしゅういち 介護福祉士・元県庁マンIN三次市役所前 ガツンと財政出動で公務員が安心して市民のために仕事ができる政治/チェルノブイリ(チェルノービリ)原発事故から36年

幹部職員の方からも「がんばってください」と激励をいただきました。また、この日はチェルノブイリデーでした。この三次市は脱原発をはじめて広島の運動に本格的に採用した森瀧市郎先生の故郷でもあります。

筆者はそのことも紹介しつつ、「ロシアのウクライナ侵攻で原発こそ人類の安全保障の弱点とわかった。原発は廃止を。」「中国電力は先週の日曜日=17日に太陽光発電の電気が余って却って停電をおこすおそれがあるとして出力調整をした。」ことに言及。「やるべきことは、島根原発2号機の再稼働ではない。スマートグリッドや蓄電池の整備などに投資をすること。廃炉を世界に先んじてビジネスとして確立することだ。」などと力をこめました。

三次駅前では芸備線の存廃問題に言及。「上下分離方式」で存続を図るべきだということ。そもそも、地方を衰退させるようなこの20―30年の政策を改めるべきだ、などとボルテージを上げました。

この日はまるで天佑のように市役所前と駅前での演説中は雨が気にならない程度に弱まっていました。しかし、その後は再び大雨になりました。それでも予告していた場所での演説は決行。

◆庄原へは芸備線の本数が少ないためクルマで移動

 

隣の庄原市も含めて、旧知の自営業者や地方議員などへの挨拶回りも行いました。なお、庄原市への移動は支持者の方の車でさせていただきました。三次から先は芸備線の本数が少ないからです。やはり、この区間では本数が少ないから利用者が少ない、という悪循環も感じます。上下分離方式で備後庄原までは最悪でも維持していただきたいものです。

この庄原市議会は、3月議会では島根原発2号機再稼働反対の決議を出しています。他方で、前市長がバイオマス事業で市に大損を与えた問題では、住民が市長に対して市が損害賠償請求するよう市にもとめた裁判で勝訴しました。にもかかわらず、控訴する議案を市議会がわたしの来訪の前日に可決するという信じられない事件も起きています。いつまで、前市長を議会の多数派はかばいつづけるのでしょうか?島根原発の再稼働反対の決議のことで庄原市議会を街頭演説で褒めたわたしは、ちょっと裏切られた気分でした。

大雨で交通が乱れるおそれが出てきた15時に今度はバスでこの地から引き上げました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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