2018年7月12日付け日刊スポーツ

◆本質とまるで正反対な2020年「復興五輪」

〈2020年東京五輪・パラリンピック調整会議が12日午前、都内で行われ、東京五輪聖火リレーの出発地点を福島とし、開始日は20年3月26日と決定した。大会組織委員会の森喜朗会長が提案し、小池百合子都知事、鈴木俊一五輪相ら関係団体のトップが集まる同会議で了承された。〉(2018年7月12日付け日刊スポーツ)

そうだ。こう来るだろうと予想した通りだ。2020年東京五輪はその本質と正反対に「復興五輪」と、まったく虚偽の謳い文句で持ち上げられている。7月12日の新聞各紙の見出しには「トリチウム汚染水海へ」の文字がある。(2018年7月12日付けNHK)

 

2018年7月12日付けNHK

福島第一原発敷地内に溜まりにたまった汚染水の処分方法がないから、「希釈して海に流す」と東京電力はいよいよ本格的に準備をはじめるようだ。希釈したって毒物には変わりはない。希釈したら毒性が問題なくなるようなレベルの汚染水だったら、わざわざ山ほどの貯蔵タンクを敷地内に無計画にどんどん建てて、保管する必要はなかったではないか。

世界初の原発4機爆発を引き起こした「東京電力」でさえ、「汚染水は海には流せない」と判断したから貯蔵タンクに保管していたのだろうが。危険物質は既に膨大な量が海や地下水に流れ出している。貯蔵タンクに保管されている汚染水よりもその総量は多いかもしれない(正確に測定で出来ないので断言はできないが)。行政が測定するとほとんど「基準値以下」か「検出基準以下」の値しか出てこない。そんな馬鹿なことがあるか。

原発4基が爆発して、そこから放出された放射性核種の量が、「健康に問題ない」のであれば、どうして病院のレントゲン撮影室の前には「妊娠の可能性のある方は申し出てください」と書かれているのだろうか。甲状腺がんは通常、100万人あたり1~3人が発症の割合とされるが、福島県を中心に既に200人以上の発症が確認されている。誰が見たって、事故との因果関係は明らかであるが、一部の科学者や専門家に言わせると「スクリーニングを丁寧に行ったからだ」(普通行わないほど多くの子供の検査を行ったから発症がわかった)と、素人が呆れるような稚拙な嘘を平然と口にする。「福島県内の医療機関はすべて福島県立医大の支配下にあり、自由に診断もできない」と多くの医療関係者が嘆いている。医師が抑圧されていたら、まともな診察や治療が行えないじゃないか。

残念で残酷至極だが、福島を中心とした汚染はいまだに「すぐ逃げなければならない」レベルから下がってはいない。そこに汚染水の海への放出が加わればさらに環境は汚れる。

◆猛暑の中、汚泥をスコップですくい上げる時の重さ

なにも解決も改善もしていないじゃないか。西日本を襲った豪雨の被害は目に見えやすいので、その惨状が一葉の写真であれ、映像であれ目にすれば容易に被害の深刻さが理解される。あの惨状を目にして「直ちに健康に影響はない」という人はさすがに居ないだろう。

西日本の豪雨による被災者の皆さんは、猛暑の中激烈な日々を過ごしておられる。スコップで水を含んだドロをすくい上げるときの重さは、経験したことのある人には、簡単に理解されるだろう。その作業を避難所で寝起きしながら、猛暑の下続ける負荷はいかばかりか。

かたや、福島を中心とする放射性核種による汚染地域では、その汚れや危険性が目に見えない。目に見えないだけではなく、危険性を知らせようとしない(隠蔽しよう)とする巨大な力が、国ぐるみで綿密に準備され、即実行されている。その最大の隠蔽工作が「2020東京五輪」である。「オリンピックが政治そのもの」であることは、冬に開催された平昌五輪で朝鮮が参加を表明し、女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成され、その後に南北首脳会談が板門店で実現、さらに電光石火で6月にはシンガポールで米朝首脳会談まで実現させた、ダイナミズムが記憶には新しい。

行く末は明瞭ではないが、ほとんどの人が予想さえしなかった米朝首脳会談の実現は、歓迎すべき出来事であり、それが「オリンピックの政治性」によって誘引されたのだとしたら、オリンピックの政治性は評価に値する。しかし多くの場合、オリンピックの政治性は「和平」や「融和」ではなく、国威発揚や国内問題の封印のために力を発する。1969年の東京五輪、モスクワ五輪やロスアンジェルス五輪、北京五輪には濃厚にその側面が表出していたし、古いところではミュンヘン五輪では選手が政治的文脈で殺される事件も起きている。

「2020東京五輪」は資本主義最終末期・人口減にあえぐ、日本の権力中枢が、国家破綻の引き金にもなりかねない「福島第一原発事故」隠蔽と、嘘っぱちに紛れた虚飾の美辞麗句で一儲けを企む金の亡者との結託により開催が目論まれる、反人民的、打史上比類ない悪意に基づく悪行集合体である。

東京でオリンピックを開催したら、それがどうして「復興」と関係があるのか。まずはこんな単純極まりない問いを、少し頭を冷やして考えれば、その欺瞞性は理性ある人には理解できるはずだ。聖火リレーの出発点か通過点か知らないけれども、そんなことを画策する者どもは、福島の人々の本質的被害から目を逸らさせようとする極悪人ばかりである、と私は断じる。

「2020東京五輪」は人倫的犯罪である。私は断固反対するし、「2020東京五輪」のスポンサー、待ちのぞむマスコミ、何気なく乗せられる庶民に対して、明確に異議を明らかにする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』8月号!

『NO NUKES voice Vol.16』明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

 

M君リンチ事件〈爆弾〉第5弾『真実と暴力の隠蔽』

『真実と暴力の隠蔽』――M君リンチ事件関連出版物第5弾にして、最大級の衝撃を巻き起こしたことは間違いないだろう。発売から1カ月を経るも、いまだに松岡や取材班への電話での問い合わせはひきも切らず、新たな“タレコミ”や“暴露”情報も相次いでいる。その中には『真実と暴力の隠蔽』で放った各種兵器の破壊力を凌駕する情報も含まれ、「取り扱い注意」情報がまたしても取材班に蓄積することになった。

そもそもM君リンチ事件関連の出版は、あくまで「事実解明」、「真実の追及」を目指し、手探りの中で始まった。出版物には掲載されなかった「空振り」や、思わぬ「落とし穴」、あるいは度重なる「背信行為」に取材班は相当数直面してきた。しかしそれらは、一時的に取材班を落胆させ、意欲の低下を招くことはあっても、根本的な動機の低下には繋がらなかった。なぜか? 今だから自己解析できるのだが、それはトップの松岡に漲(みなぎ)るエネルギーに起因していたのではないかと思われる。

松岡はM君リンチ事件について、原則的な立場からM君の支援を行うとともに、取材班全体の指揮を執っている。

「Aさん。岸政彦に突撃お願いします」

松岡の指示は必ずすべてが敬語だ。しかし敬語だからと言って内容が穏やかであるとは限らない。取材班は松岡から指示を受ければ「社長それはちょっと……」と断ることはできない。松岡の物言いが威圧的なのではない。逆に穏やかな物言いに知らず知らずのうちに現場へと足を向けるのであった。東京で、関西で、沖縄で……。直撃に当たった取材班は現場では松岡の本性に触れることになる。たとえば沖縄で取材班が香山リカと安田浩一の2ショットを抑えたとき、電話で松岡に報告を入れると、「野間もいるらしいじゃないですか。香山、安田、野間の3ショットもお願いします」とまたしても穏やかな敬語で、しかし厳しい指令が下る(この時はあいにく3ショットを収められなかった)。東京で数日にわたり有田芳生参議院議員に張り付き、失敗したときは、「なにやってるんだ!」と珍しくイラついた声が浴びせられた。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

まだ20世紀の最終盤、世間では「2000年問題」(1999年から2000年に年号が変わることにより、コンピューターが大規模な誤作動を起こさないか、という懸念)が、賑やかに語られるようになったころ、鹿砦社は天下に名の知れた「暴露本出版社」であった。ジャニーズ事務所、宝塚歌劇団など大きな相手に、たかが数人の出版社が、挑んでいた。背後にスポンサーや政治家の力があるわけでもなく、時代に逆行するかのように、ひたすら“突撃”あるのみで、巨大な勢力の闇にぶつかっていた。そこで生み出された手法が、鹿砦社の伝統となる「暴露」魂である。

ジャニーズ事務所に卑怯な手を取られたことに怒った松岡は、あろうことか「芸能人にプライバシーはない!」と豪語し、なんとジャニーズタレントのかなり多数の自宅を調べ上げ、その住所(町名まで)、自宅写真と自宅地図をまとめて『ジャニーズおっかけマップ』として出版し、世間を驚かせたことは有名な話だ。

週刊現代5月5日・12日合併号(4月23日発売)より

さらに3.11以降、東電幹部や原発信奉学者らに対しても同様なことをやっている。松岡という男は、見るからに好々爺然としているが、ここまでやる男だ。今でも時に松岡は「私はジャーナリストではありません。所詮“暴露本屋”の親父ですから」とみずからを自嘲気味に語ることがある。取材班の数名は、M君リンチ事件解明の取材にあたるなかで、当初この言葉にやや違和感を覚えていた。「暴露本ちゃうやろ。これはルポやで、少なくとも」そう仲間内で語る記者もいた。

『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』(2012年9月25日刊)では福島第一原発事故当時の東電会長、勝俣恒久を直撃インタビュー!

『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』(2012年9月25日刊)P.100より


『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』鹿砦社

たしかに「生き馬の目を抜く」といわれる芸能界や、警察癒着と闇世界が隣り合うパチンコ業界相手のかつての「全面戦争」に比べれば、清義明氏がくだんの座談会でいみじくも言うように「相手は小さい」かもしれない。しかし、時代が違う。取材班も痛感することとなる、マスメディアの凋落の激しさと、“隠蔽工作”に関わる弁護士、知識人、学者らの結託。これらを打ち破るには、今日常識的な取材や出版を行っていても、社会に訴求しないことを思い知らされた。つまり何らかの“爆弾”を搭載した出版でない限り、このような問題に、社会は興味を持たない時代であることを!

そして次第に、取材班は“隠蔽”との闘いがすなわち“暴露”でしかありえないことを体感することとなった。偽善、欺瞞に満ちた唾棄すべき“隠蔽”工作関係者に事実を突きつけて「あんたはどうなんだ?」と問い質す。この手法を「踏み絵を踏ますようだ」と批判された方がいる。そうだ。その通りである。明らかな事件隠蔽の事実を示して「どう思うか」は人間としての良心があるのかないのか、“隠蔽”に加担しているのか、していないのかを確かめる行為に他ならない。

注視されるべきは、そこまで事実を突きつけても、「知らない」、「なんとも思わない」とシラを切り続ける冷血漢が少なくないことである。否、われわれの取材に真摯な回答を返して下さった方は、例外的少数でしかない。その例外的少数の中に木下ちがや氏も含まれるはずであった。しかしどうしたことであろうか。松岡が隠密裏に実行した清義明氏との座談会では、あれほど多弁で(『真実と暴力の隠蔽』に掲載したのは全座談会の3分の1にも満たない。木下氏は終始一貫同様の内容を語っている)あったにもかかわらず、「査問」を受けたのか、脅されたのか?今日木下氏は掌を返し、あたかも鹿砦社が、悪徳出版社であるかのような断定をしている。いいかげんにせんとあかんわ。木下氏は、事前ゲラチェックを求められなかったとはいえ、自分の発言には責任を持たないといけない。まだ間に合う。もういちど掌を返し直していただきたい。

「なめたらあかんぞ!」と木下氏には再度忠告しておくが、それでも取材に応じてくださった恩義もある。今回取材班は木下氏を斬らない。しかし、松岡が木下氏、清氏との座談会を終え、帰社した時点で木下氏の運命は決していたということであろうか。断っておくが松岡は一切誘導質問や無理やり論旨を曲げてはいない。木下氏は誰に促されることもなく、みずから能弁に語り、みずからの論を展開しているだけである。しかし、その発言は編集段階から木下氏の今日の運命を、予想させるに十分であった。

われわれは木下氏の発言を1文字も曲げずに出版した。われわれが木下氏を批判、糾弾するはずがない。しかし”連中“は、黙ってはいないであろう。M君が金銭疑惑を語った行為への返答が「半殺しの報い」であれば、木下氏へも相当な攻撃が行われるであろうことは、“連中”の行動を観察していれば、予想できた。それは、木下氏自身が最もよく知っているだろう。そして内々からのリアクションの厳しさも――。真の<知識人>とは、それでも自らの意見を貫く人のことをいうのではないのか!?

座談会当日の木下ちがや氏(右)と清義明氏(左)(『真実と暴力の隠蔽』P.153より)

「鹿砦社は木下氏に冷たくないか?」との疑問が聞こえてきそうだ。違う。木下氏は嘘も張ったりも語っていない。木下氏が考える視点は極めて示唆に富み的を射ている。その着眼点は、取材班のものではなく、木下氏のものだ。そしてなにより、木下氏の主張は「真っ当」なのだ。こういう意見を汲まないと問題は解決しない。木下氏の意見に、「やっこさんもやるじゃないか」――われわれは本件リンチ事件解決への光明を見たと言っても過言ではない。だが、木下氏が掌を返し屈したことで問題解決への途からまた後退した。

真っ当な主張をして、その意見が踏みつぶされ、口を封じられるのであれば、それはどんな社会だろうか。学者として木下氏にはその「現実」に直目したとき、「屈する」道を選んだ。松岡には悪いが、実は木下氏のこれまでの主張からすれば、そうなるであろうことも取材班には予感があった。残念ながら予感は的中した。声を荒げるでも、激論を交わすでもなく、「好々爺」松岡(合田夏樹氏の評)が、これまで培った感性で実現した座談会。「棺桶に片足突っ込んだ爺さん」(元鹿砦社社員藤井正美の評)は、真実を追おうとする中で、図らずも木下氏が持論を展開した。結果的にはそれが重大事実の“暴露”となったのが皮肉な帰結である。歴史はアイロニカルで時に非情である。

鹿砦社代表・松岡利康

鹿砦社特別取材班

 

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

タブーなき『紙の爆弾』2018年7月号

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

 

2018年6月24日付け読売新聞

〈政府は、北朝鮮の非核化工程で人的な貢献をする方向で検討を始めた。複数の政府関係者が明らかにした。原子炉の廃炉に関わる民間の技術者や専門家らの派遣を想定している。東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい考えだ。〉(2018年6月24日付け読売新聞

だそうだ。「制裁!」、「制裁!」ばかり叫んでいて、まさか本当に米朝首脳会談が行われるなどと、予想も予見も、さらに言えば独自ルートでの情報収集もできなかったのがこの島国の政府と、その外交能力である。トランプには電話で「拉致問題を話題にしてくれ」と頼み、何の証拠もないのに「拉致についての言及があった」と一人よがりしているのが、安倍晋三という男であり、その恥ずかしい姿を頂くのに痛痒を感じないのが、外務官僚の低能ぶりだ。

米国にとっては「どーでもいい」日本の拉致問題をたった40数分の会談の中でトランプと金正恩が議論した、などと信じている人はまずいまい。初対面の休戦国(米国と朝鮮はいまだに「戦争状態」であり「休戦」が続いているに過ぎない)首脳同士の会談で、他国の問題を議論する余地などあるはずがないだろう。

米朝首脳会談前に、この島国ではことさら「拉致問題」を新聞は大きく取り上げ、さらには「北朝鮮への制裁足並みに乱れはでないか?」と底意地が悪く、恥ずかしいほど的はずれで、短射程のコメントが飛び交った。それらをのうのうと口にした「識者」は今でも同様のだらしないコメントを垂れ流しているけれども、状況は世界屈指の外交音痴の安倍ですらが、冒頭紹介したように「朝鮮非核化に人的貢献を検討する」と発言せざるを得ないところまで来ているのだ。

6月21日朝日新聞は、
〈政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定して今年度中に全国各地で予定していた住民避難訓練を中止する方針を固めた。米朝首脳会談が開かれるなど対話ムードが高まる中、北朝鮮によるミサイル発射の可能性は低いと判断した。21日、政府関係者が明らかにした。政府関係者によると、訓練を中止するのは宮城、栃木、新潟、富山、石川、奈良、徳島、香川、熊本の9県。総務省が近く通知を出し、正式に伝える方向だ。
 訓練は政府や自治体が主催し、ミサイル発射を全国瞬時警報システム(Jアラート)や防災行政無線で伝え、住民らが学校や公共施設に避難するもの。昨年3月以降、25都道県で計29回行い、12日の米朝首脳会談の直前にも群馬と福岡の各県で実施した。〉と報じた。(2018年6月21日付け朝日新聞

国民の危機意識を扇動し、「北朝鮮憎し」の世論を高め、軍事膨張の隠れ蓑に利用していた「まったく意味のない訓練」を中止すると発表した。この訓練のバカさ加減を証明するのには多言を要しない。例えば朝日新聞に掲載された下の写真だ。

東京都23区内の多くの小学校の防災(主として地震)訓練では、ヘルメットや防空頭巾が登場する。2011年3月11日、東日本大震災の日にも集団下校する小学生は、防空頭巾をかぶっていた。私は本物の防空頭巾を目にするのは初めてで、小学生の姿に驚いたが、地震後の集団下校にはふさわしい防御具だと言えるので、その準備の良さに感心した記憶がある。

 

2018年6月21日付け朝日新聞

それに対してこの写真である。こんな無意味な訓練をさせる行政や、何の問題も感じずに記事化する朝日新聞のトボけた感覚には、もうあらゆる論評をする気力も失せかける。それにしても仮に「ミサイル」が飛来したときに「倉庫の中で頭を守る」行為がなにを意味するか、誰か思案する人はいないのだろうか。

「ミサイル」は通常火薬や爆発物質(時には核爆弾)を搭載して攻撃に利用する。それに対して「倉庫の中で頭に手をのせたら」何らかの防御になると、考えている人がいるのであれば、私にその根拠を教えて頂きたい。メールアドレスは本文の下に明記してある。

ガラスの破片や屋根瓦の落下を頭部に受ければ、深刻は怪我が予想される。だから集団下校する小学生が、防空頭巾をかぶっていたのは理にかなった防御策だといえる。他方直撃を受ければ、建物そのものが破壊(消えてしまう)される「ミサイル」飛来に対して、この姿は何を意味するか。

そもそも朝鮮の危機を煽るだけでなく、「対話と圧力」と言っていたはずの姿勢が、一方的に「制裁!」、「制裁!」と狂信的にエスカレートし、「世界で一番悪い国」のように政府が国民を洗脳し、また外交政策上も各国にそのような方向を牽引する方向でのみにあくせくしていたから、緊張が高まったのではないのか。そして誰にでもわかるが、今回の米朝首脳会談実現に、日本政府は「まったく」寄与していない。むしろ婉曲な妨害を画策していたのではないと、思われるほど「意地悪」を貫徹していたし、今でもそうである。

まったくの「他力」で実現した結果としての緊張緩和によって、無意味な「訓練」が中止になったのは結構なことであるが、もうこの島国の国民は、こんなにも無意味で、害悪でしかない「国民総動員」を企図する訓練に参加することを、なんとも思わなくなっていることに薄気味悪さを感じる。

そして、冒頭の「朝鮮非核化への人的貢献」である。私は日本にその資格はないと考える。その理由は記事中にもある通り、「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい」が理由とされているからだ。

通常の原子炉の廃炉作業は多くの、原発保有国に経験がある。この国にもある。しかし「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見」とはなんだ。原子炉冷却のため、ひたすら水を入れ続け、汚染水が溜まり続けたら「希釈して海に流す」という。こんな知識を「知見」と呼べるか? 世界初の原子炉4機連続爆発を防げなかった国に、どうしてわざわざ核関連施設の解体作業を依頼する理由があるのだ?

最近の出来事を目にするたびに、「私の頭はずいぶん狂っている」ような気がする。でもひょっとしたら、私以上に政府や社会がとんでもないのかもしれないとも穿っている。どなたか教えて下さらないものであろうか?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

18日午前8時前。机上に置いた携帯電話が、警戒音を鳴らしだしたのは、揺れが起きて数秒後だった。ということは、震源が近いはずだ。小刻みな横揺れは安普請をきしませ、大きな音を立てたが、揺れ自体の長さは10数秒であっただろう。


◎[参考動画]【速報】大阪府北部で震度6弱(ANNnewsCH 18/06/18)

関西は「阪神淡路大震災」を例に出すまでもなく、活断層がいくつも確認されている。18日の地震は高槻市、茨木市に大きな被害をもたらした。この地域では震度1から2の地震が比較的頻繁に起こる地帯で、「有馬-高槻断層帯」のほぼ真上にあたるが、ここ数百年「有馬-高槻断層帯」での大きな地震の記録はない。

有馬-高槻断層帯

しかし一昨年の熊本地震の例が示す通り、内陸の断層による地震は、近隣の断層を刺激する。不幸にも震度7を2回経験した熊本地震発生の際に、私は最初の地震が「これが前震にならなければよいが」と書いた。気になる予感は的中してしまった。2016年4月14日の震度7に続き、2日後の16日にも再び震度7の揺れに熊本は襲われた。

気象庁は「今後1週間おなじ程度の揺れに注意するように」と、紋切り型の注意勧告を行っているようだ。そんなことは素人にでもわかる。行政による「地震予知」は現実に、何の役にも立たないことを、私たちはここ20年ほどのあいだに何度も学んだ。また、時々こっそりと(具合が悪いからだろうか)発表される情報の総体は「日本列島に地震を心配しなくてもよい場所はない」ことを結果的に示している。近いところでは千葉県周辺での「スロースリップ」現象(通常よりもプレートが早く動く現象)が発表され、実際に千葉県や群馬県では小さな規模の地震が頻繁に起きている。幸いこの地域での内陸直下型大地震はいまのとこと起きてはいない。

しかし、当該地域に住まい、お勤めの方々には充分に警戒されることをお勧めする。18日朝、大阪で発生した地震のマグニチュードは5.9だ。「阪神淡路大震災」は7.3、「東日本大震災」は、9.0、「熊本地震」は7.3だ。

地震の総体を理解するためには、マグニチュードが大きな意味を持つが、被害や災害を理解するためには、マグニチュード(地震のエネルギー)よりも、実際にどれほど「揺れたか」(震度)が重要である。津波が来なければ、海底を震源とする、マグニチュード8や9の地震でも、生活に何の影響も支障もない。逆に直下の浅い震源では、マグニチュード6以下の地震でも、今回のように被害が出る。なによりも避けがたく不具合なことは、人口密集地での地震は、そうでない地域に比べて甚大な被害を出すという事実だ。

18日の地震でブロック塀の倒壊や電柱の傾き、数件の火災、エレベータ内の閉じ込めや電車の停止は報じられているが、大規模な家屋倒壊は、いまのところ報告されていない。しかし既に複数の犠牲者が出ている。そしてインターネットではテレビ映像が視聴可能となり、繰り返し被害状況や交通機関の運行状態を伝える。その報道順位に、日ごろテレビを見ない私は、発見があった。テレビ映像はまず、地震による被害と交通機関の運行状況をつたえあと、「原子力発電所の状況」を繰り返し報じている。今回の地震による福井県の震度は3程度だ。にもかかわらず、優先順位の第一に「原子力発電所の状況」を繰り返し伝えるのは、テレビ局も「原発が地震に弱い」ことを自覚していることの証拠だろう。

活断層が縦横に走り、海底には巨大な地震と津波を引き起こすプレート境界が横たわる日本で原発を動かす条件は存在しない(2013年1月4日付赤旗より)

ただし、大都市で電車が止まり、停電が起き、水道管が破裂すればテレビは競って、その情報を映像付きで放送するが、「原子力発電所の状況」に、異常が起きたときにはどうだろうか。解説は不要だ。7年前を思い起こせばいい。「手遅れ」になっても「大丈夫」、「ただちに健康に影響のでるものではない」と、たった7年前に「騙した」台詞を、何の痛痒も感じずに垂れ流すに違いない。

地震は予防できない。そして、18日の地震がまたしても不幸にして「前震」であったとしても、「本震」を止めることはできない。万が一そうであれば、大阪を中心とする、関西在住の住民の皆さんはどうすればよいのか? それこそを政府は指し示すべき出だろう?「1週間程度はおなじ程度の揺れに気をつけろ」と言われても、古い家屋に住んでいる人はどのように「注意」すればよいというのだ?

首相官邸に「対策室」ができようと、自衛隊が災害派遣されようと、地震の被害を減ずる程度の予想を立てる力と智慧を人間は持たない。その前提ですべての取りうる対策は前提を立てるべきではないのか。素人でも発案可能なことはある。最悪の終末を相当高い確率で生じせしめる、全国の「原子力発電所」を即時停止、廃炉にすること。震度5以上の揺れが大都市で発生したら、その後数日間は個人の判断で「防災休暇」をとることができる制度を創設すること。暫時人口密集地域を解消すること…。

実現可能性よりも、「生き残るための必要条件」を優先するべきだ。と私は考える。

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

昨晩開票された新潟県知事選は脱原発をめぐる候補者の姿勢があいまいにされたことで残念な結果となったが、昨日に続き本日発売の脱原発雑誌『NO NUKES voice』16号の怒涛の内容を紹介する。

特集は「明治一五〇年と東京五輪が福島を殺す」である(その内容は昨日の本通信でお伝えした)。読者諸氏の目にはやや物騒にうつるかもしれないが、私たちは「当たり障り」のない雑誌を創ろうとは、微塵も考えていない。事実が、真実が悪意に基づくものであれば、それを「悪意」と言うことに躊躇はない。

◆二木啓孝さんが語る三里塚闘争と3・11以後の生き方

真実は幾重もの事実により構築される。今号も多様な方面の方々にご登場いただいた。90年代のオウム真理教事件報道の際、流行語「ああいえば上祐」の発案者とされるジャーナリストの二木啓孝さんに3・11の衝撃と共に「三里塚闘争とメディアの現場」を回顧していただいた。大学入学から、学生運動、わけても三里塚闘争の中で目覚めた二木さんは、メディアの現場に転身し、現在は千葉県の鴨川で農業に従事されている。その二木さんが3・11で受けた衝撃や反原発への見通しを語っている。楽観に陥らない視点は、さすが元・日刊ゲンダイニュース編集部長らしい。

◆尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」

 

尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」より

尾崎美代子さんは、飯舘村に昨年に続き足を運び、詳しいレポートを寄せてくださっている。「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」である。尾崎さんは普段、大阪市西成区で「集い処はな」の店主で、美味しく安い食事を提供するのにお忙しいが、そのお仕事の間を縫っての飯舘村からの詳細なレポートは、「一割にも満たない帰還率」、「菅野村長の『ハコモノ』の目的」、「放射線管理区域レベルの地域に子どもたちを通わせていいの?」、「放射線セシウムを組み込んだ村の自然循環サイクル」、「高齢者だからと、放射線を吸い込ませ、営農させていいのか?」、「期間困難区域・長沼地区で進む仰天計画 旗振り役は田中俊一前原子力規制委員長?」、「和解案を拒否する東電」。中見出しを列挙しただけでも飯舘村に襲い掛かっている理不尽と謀略が明らかになるが、本文ではさらに詳しい事実や数字が紹介されている。

◆槇田きこりさんが語る88年8月8日八ヶ岳〈いのちの祭り〉から30年の物語

「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三十年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」は『NO NUKES voice』でのこれまでの記事とは少し趣の異なる「楽しい思い出」の記憶と言っても差し支えないだろう。1988年に行われた『NO NUKES ONE LOVE いのちの祭り』を槇田きこりさんが回顧する。

いくつもの詩(うた)が紹介されて、まだ目にすることができた「ヒッピー文化」がエッセンスとなり花開いたイベント。たしか本誌編集長もあの場所にいたはずだ。80年代はどうしようもない時代だったけれども、それでも、こんなイベントに若者が集まっていたと思い返すと、隔世の感がある。

槇田きこりさん「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」より

◆大西ゆみさんの「3・11福島を忘れないロンドン集会」報告

英国暮らしが長かった大西ゆみさんには「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国―3・11福島を忘れないロンドン集会」を報告していただいた。

大西ゆみさん「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 3・11福島を忘れないロンドン集会」より

◆巨石巡礼写真家・須田郡司さんによる飯舘村・山津見神社周辺「聖地と巨石と放射能」

グラビアを担当していただいた須田郡司さんは「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」では被写体に向かう道すがら須田さんが考えたこと、感じたことが述べられる。無言の写真に息を吹きこむ、短文ながら重たい内容である。

須田郡司さん「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」より

◆大学生・川村里子さんの報告「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」

 

川村里子さん「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」より

「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」は下北半島に同行した大学生、川村里子さんによるレポートだ。中道雅史さんの案内で原発や再処理工場、新たな原発建設予定地のひしめく下北半島をめぐりながら、川村さんが中嶌さんや中道さんに質問を投げかける。下北半島よりもさらに原発の密集する「若狭」に住む中嶌さんの目に、下北半島の様子はどのように映ったのであろうか。若狭との相違と相似から、原発立地地域への実態が、また浮き彫りになる。

◆山田悦子さんのインタビュー「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」

「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」は、『NO NUKES voice』15号に「『人間の尊厳』としての脱原発」を寄稿していただいた、甲山事件冤罪被害者の山田悦子さんに編集部がお話を伺った。

いっけん原発問題とあまり関係なさそうなテーマのように思われるかもしれないが、山田さんのお話の中には、原発問題に向けた貴重な示唆と指針が示されている。国(司法)と20年以上闘ってこられた経験は、脱原発で私たちが国や大資本と闘う際に、是非参考とさせていただくべきエッセンスに満ちている。

◆山口正紀さんの論考「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」

「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」は元読売新聞記記者でジャーナリスト、山口正紀さんの論考だ。急展開から紆余曲折(外交上双方の牽制)がありながらもどうやら実現しそうな「米朝首脳会談」。しかし、その結果の如何を問わず、日本では〈壊憲〉策動が止まらない。公文書の偽造、虚偽答弁など、すでに内閣がいくつも吹っ飛んでいなければおかしい状況でも、なお胡坐をかき続る安倍政権。その本質的な危険性〈壊憲〉=〈改憲〉の目論見を山口さんは、余すところなく明らかにし、糾合する。脱原発と〈壊憲〉=〈改憲〉策動は切り離すことのできない重大課題だ。

三上治さんは「『セクハラ罪はない』という罪はある」とわかりやすいタイトルだが、シモーヌ・ヴェイユとM・フーコーを援用して状況を撃つ。

山崎久隆さんの報告「株主総会と原発輸出―原子力企業に今求められるものは何か」、温品惇一さんの報告「福島でパンフレット『受けてください甲状腺検査』四千部配りました」、佐藤雅彦さんの「三屠物語―民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末」、そしてお堅い本誌にありながら、毎号読者ならず編集者も楽しませてくれる板坂剛さんの「月刊雑誌『WiLLs』5月号を糺(ただ)す」。心配なのは毎回対象雑誌を変えて頂いているが、その源泉が尽きないか……である。今号も絶好調だ。

その他全国からの活動報告も、さらに充実。より精鋭化し、かつウイングを広げる『NO NUKES voice』16号、自信を持ってお勧めする。

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

明日11日『NO NUKES voice』第16号が発売になる。特集は「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」だ。

50代以上の読者にとって「明治」は必ずしも「歴史」ではなかったのではないだろうか。戦争帰りの祖父や叔父の中に、まだ「明治生まれ」の人々が居たし、明治生まれの女性からは、「大正デモクラシー」を経験した自由さよりも、戦時の厳しい生活を潜り抜けた話を、たくさん聞かされた記憶がある。

今年は「明治一五〇周年」だそうだ。私たちが、辛うじて知っていた「明治生まれ」の人たちは、その青年期に大正デモクラシーを経験していたはずだが、私の限られた経験からは、明治生まれ=「頑迷」、「真面目」、「禁欲的」、「保守的」とのイメージがある。

◆日高六郎さんが亡くなった

そういえば、先日社会学者の日高六郎さんが亡くなった。日高さんには生前一度だけお手紙を差し上げ、お返事を頂いた(まだ私が高校生の頃だった)。その日高さんと後年一時的とはいえ、同じ職場に勤務することになろうとは想像しなかった。

日高さんとお話していると、戦中の著名人と極めて親交が深かったことに驚かされた。破格に博識で、人格も素晴らしい偉人だった。そして日高さんの肩のあたりには「自由の風」が吹いているように感じられた。日高さんは1917年、大正6年のお生れだった。

◆「明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ」(広瀬隆さん)

 

『NO NUKES voice』16号より

私たちは明治維新後に成立した「大日本帝国憲法」により、「臣民」となり、「日本国憲法」によって「市民」となった。この2つの憲法が成立する前の日本については、ずいぶん昔のように感じてしまい、「江戸時代」はあたかも「蛮族」が支配していた暗黒時代のように(例えば、サムライは立腹すると、すぐに時代劇のように「斬り捨て御免」で大立ち回りを連日演じているようなイメージ)刷り込みをされている部分がある。

「斬り捨て御免」は事実だが、連日の「大立ち回り」は後々「時代劇」が観客の目を、楽しませるために用意した演出に過ぎず、あんなことは実際には不可能だ(人を斬ると骨により日本刀の刃は欠けるし、まとわりつく、筋肉や血液でドロドロになり、「時代劇」で演じられるような、10人以上も「斬り捨てる」ことはよほどの名刀で、剣の名手でも不可能だと言われている)。

また、事実江戸時代には何度もの飢饉が起こり、農村では子女の身売りが多発したが、同様の悲劇は明治維新以降に何度も起きている。

つまり、私たちは、疑うことなく「明治以前の日本」が文明の遅れた国で、明治以降、日本は飛躍的に「進歩」したと、信じているがそれは本当なのだろうか? 政府をはじめ、各団体が主催して「明治150周年記念」行事が行われるようであるけれども、「明治」(明治維新)とはそれほど、素晴らしい時代だったのか? 今回はこの大テーマを、広瀬隆さんが詳しく解き明かしてくださる。題して「明治150年の驕慢(きょうまん)と原自連のウソ」だ。

史的観点の持ち方、事実を明示して、明治(明治維新)がなんとなく、想起されているものと大いに異なる史実を示したうえで、今日的な原発の問題へ論を落とし込んでゆく。権力や金脈を系図によって炙り出す「広瀬式」分析はロスチャイルドを描いた『赤い盾』などで有名である。本論文の中には、実際の系図は登場しないが、読者は広瀬氏の指摘に、これまで気が付くことのなかった、新たな発見をされるに違いない。

◆「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」(本間龍さん)

 

『NO NUKES voice』16号より

150年前の称揚が盛んであるのであれば、2年後の「災禍」を無視するわけにはゆくまい。毎号広告の問題を玄人の目から眺める本間龍さんは「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」、わたしは「原発事故隠しの『東京五輪』に断固反対する」を掲載した。本間さんと私は原稿を書く段階で、まったく打ち合わせを行っていない。にもかかわらず、本間さんと私の感じる問題点は、極めて近く、その危機意識も同様である。

原発の問題は「運動」として、「思想」として、「文明論」として『NO NUKES voice』は多角的な方向性と、行動により核心に近づくことができうることを、15号までを世に出す中で学んできた。本号の特集「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」は、過去から将来へと国家が奏でる欺瞞を、歴史軸を用いて串刺しにした。しかしもちろんそれだけではない。原発に直結する、また、一見直結しないように思われるが、大いに関連のある話題や論文を満載している。その詳細は明日ご紹介しよう。

『NO NUKES voice』16号より

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

前回、2018年3月11日に東京電力本店前で催された抗議行動『東電は原発事故の責任をとれ─第54回東京電力本店合同抗議行動─東電解体!汚染水止めろ!柏崎刈羽原発再稼働するな!』の様子として東京電力株主代表訴訟事務局長・木村結さんの言葉を掲載した。

今回は元東海村村長・村上達也さんのスピーチを紹介する。村上さんは1997年に東海第二発電所が立地する東海村の村長に就任。1999年に発生した東海村JCO臨界事故では独断で村民を避難させた。辞職や損害賠償を覚悟の上、人命を尊重して行ったものだという。スピーチは、主に昨年末に運転延長申請がなされた東海第二原発に関する内容だ。

茨城県東海村・元村長の村上達也さん

◆東電が借り入れ保証をして、倒産企業の日本原電が金を借りるという背任行為

東海村で前の村長をやっておりました村上と申します。たんぽぽ舎の柳田さんにお呼びいただいて参加することに致しました。来て本当によかったと思っております。こんなに素晴らしい会があるんですね。東京電力に対して抗議されてる姿に感動しながら聞いておりました。

東海第二発電所は、ここ(東京)からちょうど120kmのところにあります。昨年の11月28日には、運転を始めてから39年が経ちまして、20年延長の申請書が規制委員会に提出されています。そして、この3月にはOKが出てしまうんじゃないかという話があります。とんでもないことです。きょうは3月11日、慰霊の日、鎮魂の日です。それなのに我々がこういうところまで出てきて東京電力に抗議しなければならない。東海第二を動かすんじゃないということを。

いま東海第二を動かすためには、なんと1740億円もかかるんです。しかし日本原電(日本原子力発電株式会社)にはその1740億円を払う力がありません。そんな金は持っていません。廃炉準備金として持っておかなければいけない金を、敦賀の3号機と4号機に投じ、使い切ってしまっている。

実質、日本原電は完全なる赤字会社です。その赤字会社が1740億円という金を投じて東海第二原発の稼働を20年延長したいと言っているわけです。そこで、東京電力が借り入れの保証をすると言っているんです。そんな馬鹿なことがあっていいはずがない。倒産企業が金を借りる。このことを保証するというのは背任行為だと思います。こんなことが許されてはならないと思っております。

◆福島・白河で話をした時に気がついた東海第二再稼働の理由

福島県の白河で話をした時に気がつきました。どうして東海第二を動かしたいのかと。結論から申し上げますと、東京電力は福島第二原発を動かしたいということなんですね。福島第二原発はBWR、つまり沸騰水型110万KW。この型を採用したのは、東海村が第1号なんですね。東海村の沸騰水型110万KWを動かせば、福島第二も動かせると考えているんですね。茨城には、東海第二を動かすなという団体が50もあります。そして約20の市町村の議会では東海第二再稼働反対の請願を採択しております。しかし、なかなかまとまらない。首都圏との連携をとるということが大切だと思っております。自民党や日立製作所の力が大きく四苦八苦しておりますが、茨城県もがんばりますので、どうかこれからもよろしくお願い致します。

第54回東京電力本店合同抗議行動(2018年3月11日千代田区内幸町)

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい) [撮影・文]
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

第54回東京電力本店合同抗議行動(2018年3月11日千代田区内幸町)

2011年3月11日に発生した大震災は歴史の中にすでに確固とした座を占めている。ナショナル・ジオグラフォックが2012年に発行した『ビジュアル 1001の出来事でわかる世界史』でも、古代から続く人類の歴史で3・11が最新の1ページに記されているほどだ。

でも、福島第一原発事故はすでに歴史になったのか? 地震と津波が発生したのは7年前の3月11日で間違いない。けれど、そもそも福島第一原発の事故とはメルトダウンしたことなのか? それとも放射性物質の拡散? あるいは風評被害を与える言説も事故なのか? あれ、そもそも福島第一原発はいまだに“事故ってる”んじゃないのか!? だとしたら、歴史に刻まれる前にやらなければいけないことがあるはずだ。

第54回東京電力本店合同抗議行動(2018年3月11日千代田区内幸町)

2018年3月11日千代田区内幸町にて

2018年3月11日に東京電力本店前(東京都千代田区内幸町)で催された抗議行動『東電は原発事故の責任をとれ-第54回東京電力本店合同抗議行動-東電解体!汚染水止めろ!柏崎刈羽原発再稼働するな!』には前年の500人をはるかに上回る900人が参加し、現況を共有。東電に対する抗議と申し入れを行った。

集会では作家の落合恵子さん、ルポライターの鎌田慧さん、東海村(茨城)の元村長の村上達也さんなど多数のスピーカーが脱原発のスピーチを行った。今回は、当日の様子と共に、東京電力株主代表訴訟事務局長で「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)事務局次長を務めている木村結さんのスピーチを紹介する。

第54回東京電力本店合同抗議行動(2018年3月11日千代田区内幸町)

◆6月の東電株主総会では株主65万人に私たちの提案を届ける

「原自連」事務局次長の木村結さん

木村結さん

こんにちは。木村結でございます。私たちは30年も前から、東京電力に対して「原発をやめよう」という株主提案を続けてまいりました。いま、6月の株主総会に向けて提案を10件ほど準備しております。法務省は、10件は多すぎるから5件にしろとかですね、そういう具体的な数字で締め付けをしてきております。現在は3万株で提案できるのですが、そのハードルを上げるというようなことも言ってきております。

全国には東京電力の株主が65万人もいるんです。その65万人の株主に私たちの提案を届けることができるという、かなり壮大な運動なんですね。「原発を動かしてもいいじゃないか」っていう人たちにも声を届けることが出来るんです。

◆今がチャンスの〈原発ゼロ〉実現

もうひとつ、去年の4月に原自連というものを立ち上げました。『原発ゼロ自然エネルギー推進連盟』と名前が長いんですけれども、これは電自連(電気事業連合会)の向こうを張って原自連というふうにいいます。脱原発大賞というのを3月7日に発表したのですが、今日もこれから挨拶をします『さようなら柏崎刈羽プロジェクト』が金賞を獲りました。そして銀賞は『反原発議員市民連盟』です。審査員賞に『再稼働阻止ネット』も入りました。賞金も出ますので是非ご応募していただければと思います。

そしてですね、今皆さん気になってらっしゃるのが、立憲民主党、希望の党、そして共産党、社民党が共同して出している『原発ゼロ法案』です。1月10日に、私たち原自連も原発ゼロ法案を出しました。私たちのものは即時ゼロ。非常に明快な法案でございます。しかし、議員でない私たちには提案権がございません。そこで、全ての野党を回って「是非法案を出して欲しい」という呼びかけや意見交換会を重ねてきました。そうしましたら、立憲民主党、希望の党の心に響いたようで、ようやく法案を出すことができました。原自連は、普段声が届かない人たちに声を届けたいと考えております。あいつは嫌いだから手を組まないとか、あの時あんなことを言ったから許さないとか、そんなことを言っていたら脱原発はいつまでたってもできません。今がチャンスなんです! みんなで手を繋いで前に行きましょう! 進みましょう!

木村結さん

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい) [撮影・文]
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

伊方原発のゲート前にて、原発に向かって声を張り上げる斉間淳子さん

 

伊方原発3号機の運転差し止め決定を下した広島高裁の野々上友之裁判長を賞賛して「ありがとう野々上裁判長」と書かれた手作りの旗を掲げる

四国電力が本日(3月27日)にも伊方原発2号機の廃炉を正式決定する。1号機に次ぐ廃炉決定で、伊方で再稼働可能な原発は3号機のみとなり、少なくとも四国では〈原発ゼロ〉が遠からず現実味を帯びてきた。

伊方では昨年12月13日、広島高裁抗告審決定で九州・阿蘇山の「噴火リスク」がまっとうに強調され、再稼働が差し止められた。とはいえ、この司法の快挙に喜んでばかりはいられないと現地では1月20日、21日の二日間、廃炉を求める集会が開かれた。以下、その現地レポートを『NO NUKES voice』15号から一部加筆転載する。

      ※   ※   ※  

伊方原発3号機は2015年7月、原子力規制委員会が東日本大震災後に策定した新規制基準による安全審査に合格し、2016年8月に再稼働した。住民側は、四国電力の安全対策は不十分で、事故で住民の生命や生活に深刻な被害が起きるなどとして広島地裁に仮処分を申請したが、広島地裁はこの申し立てを却下。住民側は即時抗告していた。そして昨年12月13日、伊方原発3号機をめぐっての抗告審が開かれた。広島高裁は、伊方原発から130キロ離れた阿蘇山の巨大噴火を挙げ、9万年前の破局的噴火の規模なら火砕流到達の可能性は否定できないとして広島地裁の決定を覆し運転停止を命じた。

原発の運転を差し止めた司法判断は高裁では初めてだ。伊方原発は愛媛県の伊方町に建てられている四国唯一の原子力発電所で、福島第一原発事故後の2012年に全三基が停止。その後1号機は廃炉されることになり、また2号機は再稼働に必要な審査を受けるための申請がされておらず、運転を停止したままだ(※3月27日にも四国電力は2号機廃炉を正式決定)。残る3号機は2016年8月に再稼働するも昨年10月からは定期検査のために運転を停止。この司法決定で伊方原発は2018年9月30日までは運転を再開することができない。

こうした状況にある伊方原発だが、立地する伊方町では引き続き抗議活動が行われている。1月20日に催された集会には現地の方のみならず全国各地から参加者が集まり、その数約250人。近くに駅も無いのによく集まるものだと思う。

◆沖縄から山城博治さんがやってきた!

開会直前に現場に到着した沖縄平和運動センター議長・山城博治氏に注目が集まる。愛媛新聞の記者やローカルテレビ局が取材のタイミングを見計らうなか、経験は浅いが決断と短距離走がやたらに早い私はまっさきに山城氏の元に駆けつけ、登壇するので解放してくれという付き添いの声が聞こえるまでの7分間だけ、直接インタビューを行うことができた。

壇上から連帯を呼びかける沖縄平和運動センター議長・山城博治さん。スピーカーが弾けてしまうような張りのある声で集会に熱を加えた

伊方でも叫び、歌い、踊りだす山城博治さん

沖縄平和運動センター議長・山城博治さん

1月20日(土)に催された集会場の様子

 

四国電力の用地買収に対して「原発反対、プルサーマル反対」を生涯貫き農地を売らなかった地主農家の広野房一さん(2005年、92歳逝去)の碑

◆ここには怒りが備わっている

伊方原発への反対運動には怒りが備わっている。人間そのものが発する怒りが備わっている。他方、首都圏の運動に欠けているのは、この怒りだ。たとえば国会前での抗議活動はまさにその典型。ふざけるな。よし殴る。今スグぶち壊してやろう。といったフィジカルな気迫はどこからも感じられない。それは結局のところ、当人たちが苦しんでいないからではないだろうか。社会に不満があるとはいいつつも、その中でそこそこの安寧を得ており、だからこその腑抜けた態度が身について、その取り組みがポーズだということにも気がつかない。彼らは既に漂白されている。

ところが伊方ではどうだろう。この伊方町に暮らす人々は、原発が誘致されたことによりおよそ非倫理的とも言える苦しみのなかに蹴落とされた。南海日日新聞社の斉間満さんが著した『原発の来た町』には、その事実と怒りが淀みなく記されている。魚を殺し職を奪い、暴力的に金をばら撒き人間とその生活を引き裂く。

これが原発だ。許せるはずがない。「もし事故が起きたら被曝して苦しい思いをするかもしれないからイヤだ」などという思いから発せられる行動とはまるで違う。事故を起こした福島第一原発と同じように、既に、そして常に暴力を振るい被害を生んでいるのだ。

◆福島からは大熊町議の木幡ますみさん

大熊町議会議員・木幡ますみさん。たんぽぽ舎代表・柳田真さんや大間原発反対現地集会実行委員会・中道雅史さんの姿が見える

大熊町議会議員・木幡ますみさん

壇上でマイクを握る木幡ますみさん

夜は八幡浜の公民館にて大熊町議会議員・木幡ますみさんの講演会が行われた。講演が始まって一時間もすると、日中の疲れのためか、ウトウトとしている人がチラホラ。そんな時、前に出て休憩の提案をしたのは愛媛有機農産生協理事の秦左子さんだ。

現場ではリーダーとして常に笑顔で動き回りとてつもないエネルギーを周囲に振りまく。2016年の夏に伊方を訪れたときには「市民運動というのは、思想とか哲学から始まっているものが多かったんです。現地の人たちは命の戦いをしているのに、私たちは思想や哲学で原発反対と言ってきた。そこには大きな距離がある。」という話を聞かせてくれ、私はそのことについて時間をかけて熟慮したのを覚えている。『原発の来た町』をプレゼントしてくれたのも秦さんだ。

そんな秦さんが、集会の終わりにチラッと声に出した「原則として原発に反対しています!」という言葉は、伊方の反原発運動の特徴をバシっと表現しているのではないだろうか。放射能は子供達の未来を……、差別被差別の構造が……、事故の起こる可能性がゼロでないのなら……等々の理由を飛び越え、とにかく原発には反対なんだ。もう検討の余地などない。償って償いきれるものではない。誰がなんと言おうと絶対に認めない。そんな本当の信念を、希望や期待では無く信念を、特別な意図なく発したであろう「原則」という言葉からはっきりと感じ取ることができた。

現場で誰よりも明るく大きな声で動き回る秦左子さん。斉間淳子さんと共に活動を続けるリーダー的存在だ

愛媛新聞の記者からインタビューを受ける二木洋子さん。40年以上前から伊方原発反対運動に参加している

集会を盛り上げる原発さよなら楽団、通称“原さよ楽団”のメンバー

◆ふるさとは原発を許さない

翌朝は8時45分に伊方原発のゲート前に到着した。天気は晴れ。怒声あり。警察とデモ参加者あわせて10人ほどで早速揉み合っている。さてさて、とカメラと共に駆け寄る。「せめて確認しろよ!勝手に何やってるんだ!」「車を止めることを認めていないんだから!」「メモした紙を破れ!いますぐここで破りなさい!」不承不承その通りにするリーダーらしき警察官。

到着したころには少なかった警察官の数がいつの間にか倍増していた。

「彼らが守っているのは原発です! 私たちを監視するためにここに来ている! まず君達が一番最初に守らなければならないのは憲法だ! そのことを忘れてここにいる資格はない! 原発ではなく国民を守るのが君たちの仕事だ!」

伊方原発を背に反対運動参加者を無表情に見つめる警察官の隊列。ゲート前近くから望む四国電力伊方発電所。中央に見えるのが1号機、右が2号機、そして左に見えるのが、昨年12月に広島高裁が運転差し止めの決定を下した3号機

原発に背を向け抗議行動を監視する警察官。全員がマスクをしており匿名性が保たれている

反対運動参加者に対峙する警察官の隊列。数がどんどん増えていく

1月21日の朝、伊方原発ゲート前に到着すると怒声が聞こえた。警察の対応への抗議の声だ。警察も簡単には引き下がらない

伊方原発に向かって抗議の声をあげる参加者たち

「伊方原発、廃炉! 伊方原発、廃炉!」と始まりの挨拶があるわけでもなく徐々に抗議活動は熱を帯びてきた。「西日本で事故が起これば日本には住むところがなくなるんだ!」

「我々は微力だが無力ではないことを証明し、原発を廃炉にしよう!」
「この故郷には誇ることのできないものがひとつある!」

集会の最後には『ふるさとは原発を許さない』が歌われた。

国道197号沿いに設えられたステージにあがりマイクを握る、伊方の家主宰・八木健彦さん

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい) [写真・文]
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
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※伊方集会の詳細は木幡ますみさん、山城博治さんのインタビュー等を掲載した『NO NUKES voice』15号をご購読ください。

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多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

中嶌哲演さん

関電本店前にて(2018年3月13日)

子ども脱被ばく裁判の会共同代表の水戸喜世子さんと松岡利康・鹿砦社代表

関西電力は3月14日、大飯原発3号機の運転(再稼働)をはじめた。これに抗議する市民は、大飯原発現地をはじめ、全国各地で抗議行動を行った。なかでも関西電力本店ビル前で3月12日から14日にかけて、若狭地域の脱原発リーダーのひとりである明通寺(福井県小浜市)住職、中嶌哲演さんが「ハンスト(ハンガーストライキ)」に決起したので、激励と取材に13日関電本店を松岡社長とともに訪れた。

関西電力本店前には中嶌さんのハンストを、支援する人びとが30名ほどあつまり、希望する人が順次発言をおこなっていた。水戸喜世子さんの姿もある。ご挨拶をすると「これ読んでください。福島で田中俊一がとんでもないことを言い出しているんです」とご自身が作成されたビラを手渡してくださった。飯館村に移住した元原子力規制委員会委員長田中俊一の「罪」は後日じっくり追及する。

参加による発言に続いて、中嶌さんが次のようにお話された。

中嶌哲演さん

◆若狭をこれ以上いじめないでください

どうも皆さんいろいろな貴重なご意見や励まし、ありがとうございます。
実はきょうお昼の時間、社員が昼食に出掛ける時間帯に、社員の出入りする前のところでお付き合いをしまして、私なりにスローガンというのではないんですけれどもね、こういうことを訴えました。
「若狭をこれ以上もういじめないでください。美しい若狭をもうこれ以上汚さないでください。ぜひ再稼働をやめてください」

それともう一つ、
「もしあなた方が14日に強行突破されれば、そうでなくても関電の顧客が離れていっている中でますます顧客離れが起こりますよ」とこういうことを言ったんです。「もしあなた方がこの再稼働を中止断念し脱原発の方へ方向転換されるならば、多くの市民が共感し、今迷っている人たちが踏みとどまって関西電力をむしろ支持するようになるでしょう」

そういうことをちょっと訴えたんですね。皆さんは「若狭をいじめないでください」というイメージがもう一つピンと来ないかもしれませんが、昨日お配りした断食宣言の添付資料の中にあるんですけれども、若狭には関西電力の原発11基、出力にすると977万キロワット、この若狭の11基は3カ所に集まっています。美浜町、大飯町、高浜町のこの三町ですね。ところが右側を見ていただきますとわかるんですけれども、関西の兵庫、大阪、和歌山県の沿岸部には火力発電所が12カ所37基出力にして1636万キロワット、こういうふうになってるわけです。

現実です。これは何人も否定できない客観的な事実ですね。関西電力は原発は必要で安全だということを言い通してきたわけですけれども、若狭のこの11基の原発は若狭の住民も福井県民も全然使っていません。全部超高圧電線でたくさんの鉄塔を伝わって関西2府4県に送られてるということなんです。これが客観的な事実。とすると、原発が必要で安全ならね、なぜ火力発電所同様関西の沿岸部に造れないんですかというのは、反対してきた若狭の住民や福井県民の本当の気持ちなんですね。だからそのことに照らして私がなぜきょう関電に向かって、「もうこれ以上若狭をいじめないでください、若狭を汚さないでください」と申し上げたかということをご理解いただきたいと思うわけです。申し上げた今回の第一はこのことなんです。

この事態を作り出したのは関西電力だけでしょうか。極悪の関西電力だけでしょうか。こういう事態になるまで若狭の原発の電気を享受してこられた関西の市民の皆さんにも、「いやあれは関電がやったことだから我々には責任なにもないですよ、0%ですよ」と皆さんはみなされるでしょうか。あとで対話をさせていただければと思います。だからこの関電の無謀な暴力的な若狭に対する再稼働を認めない、ストップをかけるためにはですね、若狭の地元の住民は麻薬的なお金をばら撒かれて麻薬患者になってしまっているんです。末期患者になっているんですよ。だからそういう人たちに、止める行動に立ち上がれと言われても、お尻をたたかれても難しいところがあります。それで関西の皆様にこの「断食宣言」で申し上げましたように、三番目をもう一度読ませていただきます。

中嶌哲演さん

◆なぜ私はこの断食に入ってるか?

なぜ私はこの断食に入ってるか、もともと宗教的な断食は第一の欲望の食欲を、自らの心身の浄化を内密に図ることを見せびらかしたり、対外的にそのことを知らせる必要はないんです。宗教的な場合はね。そういうことを顧みます時に、対外的な抗議や要求を掲げて断食することは慙愧の念に堪えません。宗教的に言えばむしろ邪道かもしれない。でも私は現代的な宗教者の断食としていま行ってるわけですが、しかし私個人だけでなく多くの市民の皆さんが、たとえ一食、一日断食でも試み、原発ゼロ社会を目指す運動の共通口座を作り、その食費をそれに振り込むというような、いつでもどこでも誰でもできるアイディアが実現できないものでしょうか、という訴えをしているわけです。

ここにもこれまで私はさんざん訴えてきたんですけれども、なかなか具体化しませんでしたが、さいわい福井から原発を止める裁判の際の皆さんが私のアピール受け止めてくれて、「反原発断食一食分募金」というのを裁判の費用とは別枠で取り扱ってくれるようになりました。断片的に言い出しっぺの福井県からこの運動を広めていこうということなんですが、私はもっと全国版の運動が展開できればいいなと。反対運動のマイナーな勢力だけでやっているのではなしに、広汎多数の市民、なにもここに来てもらう必要はありません。自分の家庭であるいは職場で一食抜いてみようかと、その一食抜いた食費を反原発、脱原発の運動にカンパしようと。これは我々の反対運動体の枠を乗り超えるものすごく大きなの不特定多数の市民に対しての呼びかけになるわけです。

中嶌哲演さん

◆命を革める〈革命〉 これまでの生活や価値観に問い直してもらう

そしてその中で、皆さんが少しでも断食をし、カンパをしてもらえば、そのことをさっき坂本さんは「革命」という言葉を従来のイメージで革命はどうだろうということであったんですけれども、私の考えている革命というのは宗教的な面からいうと「命を革める」という文字なんです。

何もラディカルな軍事的なこと暴力革命を起こすというようなそういうイメージではなくて一人一人のまず命を革めていくという、これまでの生活や価値観に問い直してもらうそういう意味合いの、例えば一例として一食断食、その食費を反原発運動にカンパするというようなこと、これがどんどん集まってくれば不特定多数の皆さんと共に関電にブレーキをかけることができるという、そういう非暴力・不服従の静かな革命を、いつでもどこでも誰でもできることを私は訴えたいと思っています。

宗教者が非暴力ということをいうと、「とにかくおとなしくしていて何もしない、抵抗しない、権力、力のあるものがどんどん事を進めてもそれを傍観してる」というふうに、非暴力という言葉がややもすると受け止められて来たんですが、ところが非暴力、これはガンディーの言葉です。この精神でもって「権力なんかのやることに絶対服従はしないけれどもそれに対して抗議するのは暴力的なことはやらない」、非暴力平和的な手段を講じていく、ガンディーはインドの大英帝国の植民地からの解放を最終的に勝ち取ったわけですね。そういうことを私としては革命の中に意義を含ませたつもり。

今回の再稼働3号に対して、私たちは確かに興趣傍観しています。関電はこういう理不尽な暴力的なことをやってもスイスイ通っていくんだということをやっぱりそれは反省してほしいという願いを込めて私来ています。先程言いましたように、顧客は毎月毎月6万人離れていってるんですけれども、今回この3号の再稼働に抗議の声、力が強まれば強まるほど、この顧客離れが強行突破すれば増えると思ってます。それが4号機を食い止めていく上での、滅多に4号機を安易に動かせないというそういう空気を作っていくことにも繋がっていると思いますので、今日明日最大限なんとかここで皆様と共に声を上げたいと思っております。ありがとうございました。

関電本店前にて(2018年3月13日)

◆非暴力・不服従の静かな革命を

この日は中日新聞が取材に訪れ、中嶌さんに詳しい話を取材していた。翌日には共同通信の取材も予定されているとのことであった。しかしどうして中嶌さんが「ハンスト」に立ち上がられたのか。その詳細までを報じることは出来ないであろう。大飯原発3号機は3月14日に再稼働されてしまったけれども、「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」の全文を以下掲載する。

中嶌哲演さんの断食宣言「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」(1/2)

中嶌哲演さんの断食宣言「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」(1/2)

この日は松岡と私が関電本店前を訪れ、ご挨拶と激励、さらに松岡が脱原発への決意と『NO NUKES voice』のご紹介をした。無料で差し上げようと4冊を持参したが、皆さんから「せっかくですから買わせてください」と貴重なお申し出を頂き、4冊が読者の手元にわたることとなった。

何度でもひるむことなく声をあげ、行動しよう。私たちは決して劣勢ではない。彼らは再稼働するのに全力を傾注するだけで精一杯だ。大飯原発3号機は再稼働されてしまったが、反(脱)原発に向けた市民の意思に揺らぎはない。

中嶌哲演さんと松岡利康・鹿砦社代表

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

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