基地・原発・震災を問う『NO NUKES voice』第10号明日15日発売!

『NO NUKES voice』第10号が明日15日発売日を迎える。反(脱)原発に主軸を置く季刊誌としては、意外にも日本初の境地に踏み込んだ本誌が、読者の皆様のご支持の賜物で10号まで発刊を続けることができた。

◆原発マフィアに怒涛の勢いで反転攻勢をかける

怒涛の勢いで反転攻勢をかける、原発マフィアに対して、街頭から、市民からは次第に「反(脱)原発」の声が薄められ、先細りになってゆくかのような印象操作が総力を挙げて取り組まれている。東京オリンピック、リニアモーターカー、TPP、果ては改憲と矢継ぎ早に飛んでくる反動の矢の数々に対応するだけで、「反(脱)原発」陣営も消耗戦に追い込まれている部分は確かにある。

だからこそ、この惨憺極まりない《今》の窮地を、止揚し、力関係を真逆にするための媒体としての使命が『NO NUKES voice』には課されている。鹿砦社はまだまだ成長過程にある『NO NUKES voice』の編纂に今号も全力で取り組んだ。誌面に登場していただいた方々の顔ぶれからは「未来への光」が見える。

◆原発・基地・震災──沖縄、福島、熊本、泊、釜ヶ崎での〈闘いの現場〉特集

『NO NUKES voice』第10号の特集は、「基地・原発・震災・闘いの現場 沖縄、福島、熊本、泊、釜ヶ崎」だ。これまでもそうであったが、反(脱)原発は、他の社会問題と切り離して単独で論じることはできない。原発と基地、福島と沖縄、福島と釜ヶ崎、原発と震災などはいずれも不可分なテーマだ。第10号は福島、沖縄、熊本、泊へ取材陣を派遣し各地からの報告とインタビューにより、原発をはじめとするこの社会を構成する問題構造を有機的に浮き上がらせようと挑戦した。

神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)

何よりも喜ばしいことは、世代交代を委ねられる若手のライターの活躍だ。腰の据わった反(脱)原発運動の現場では、どこも高齢化(失礼!)が深刻な課題である。戦線の先頭に立つ方々の平均年齢が65歳以上という場面は決して珍しくはない。その継続的な闘いに深い敬意を示しながらも、世代を超える困難さを多くの方が感じておられる。「どうして将来のある、被害当事者の若者に気が付いてもらえないのか」とのジレンマは各地の運動で、本音として頻繁に耳にする共通課題だ。

本号では既にこれまでも健筆を奮ってくれた大宮浩平氏に加え、井田敬氏(ともに1980年以降の生まれ)が大活躍をしている。第10号発刊にあたり、編集部としては戦線に気鋭の実力充分な心強い若者が加わってくれたことを読者とともに喜びたい。もちろん若ければよい、というお気楽な気分で彼らを持ち上げているのではない。両氏とも論壇の最先端で活躍できる能力、取材力、文才と行動力を兼ね備えている。彼らの活躍にまずはご注目いただきたい。

「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」と語る沖縄平和運動センター議長の山城博治さん

◆神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)による福島怒りの対談

そして、特集にある通り対談やインタビュー、報告記事も本誌をおいて他のメディアではまず不可能であろうラインナップが並ぶ。巻頭は神田香織さん(講談師)と高橋哲哉さん(哲学者)の対談「福島の人は沖縄の闘いから学ぼうと思い始めた」で幕を開ける。福島県出身者として、3・11後あらん限りの力を尽くして活動を続ける神田さんと靖国神社問題をはじめ、原発についても「犠牲」の観点から鋭い論考を続ける高橋さんの対談は穏やかな言葉で激烈極まる状況への指弾が繰り広げられる。

唯一無二のギタリスト、内田勘太郎さん(2016年10月2日熊本・琉球の風にて)

◆憂歌団ギタリストの内田勘太郎さんが奏でる〈憂歌と憂国〉

本号で見逃せないのが沖縄平和運動センター議長の山城博治さんへのインタビュー「差別と犠牲を強要する流れは沖縄だけに限らない」と同センター事務局長大城悟さんの「前線での闘い、生の声──沖縄に基地は全く不要」だ。現在不当逮捕によりいまだに勾留されている山城氏と、山城氏不在の中、連日高江の現場で運動の指揮を執る大城氏のインタビューは闘争の現場で取材されたものである。全国が注目する沖縄の闘いの根源をお二人の言葉から直接お届けする。

さらに、元憂歌団メンバーで日本を代表するギタリスト内田勘太郎さんが語る「憂歌と憂国──沖縄・原発・一陣の風」は内田氏の人格が伝わる「優しい」語り口だ。しかし優しい語りに込められた思いの強さは、必ず読者の心を揺さぶるであろう。カルピスの瓶を指にはめたあの奏法のオリジナリティーは語りでも冴えわたる。

まだまだ特集は続く──。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

12月15日『NO NUKES voice』第10号発売
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東電は「改革」でなく「解体」を──そこから初めてはじまる廃炉支援

10月8日の京都新聞朝刊一面は、ある意味壮観であった。トップに「東電再建 他電力と提携―改革委初会合 廃炉支援へ検討―」の見出し。リードでは「経済産業省は5日、東京電力ホールディングスの経営問題の決着を目指す有識者による『東電改革・1F(福島第一原発)問題委員会』の初会合を開き、経営改革と福島第一原発の廃炉費用支援の本格的検討に着手した。再建には原発や送配電事業で他の地域の大手電力との提携が不可欠との方向性を示し、収益改善には柏崎刈羽原発の再稼働が焦点になるとした。支援費用が増大して電気料金に上乗せさせられ、国民負担となる懸念がある」そうだ。

◆黒字決算で政府に12兆円支援を要請する犯罪企業・東京電力

まず指摘したい。何故に犯罪企業「東京電力」の経営改善を経産省が慮ってやらなければならないのだ。経営などという話をしている場合か。国は廃炉と除染で東電支援に約9兆円援助の枠組みを既に作っているが(時事通信2016年7月28日付)、それでは足らずに「さらに3兆余分に援助してくれ」と駄々をこねているのが東電だ。

しかも、東電は単年度では黒字決算を出しているというのだから、この収支はどう考えればいいのだ。複雑に考える必要はない。「東電の経営改善」などと誤った目標を設定するから議論が間違うのだ。東電の総資産を処分し、それでも足りない分は現役・退職した元役員から私有財産を没収し、さらに不足すれば歴代の経済産業大臣、文部科学大臣さらには、旧科学技術庁長官とそれぞれ省庁の事務次官経験者の資材も没収するのだ。

なにゆえ、被害者である国民が犯罪企業の再建に頭をひねり、血税をつぎ込む必要があるのだ。税金を払っている人の属性は、東電と関係がある、無しに関わらず、またどの地域に居住しているかも関係ない。法人税からか、所得税からか、消費税から捻出されるのか内訳なんか分かりはしない(もっとも最近の国家予算の構成を鑑みればその大半は国債に依拠していると考えるのが妥当だろう)。

◆「東電改革は福島復興の基礎」ではない

それにしても原発を4機爆発させておいて、どうして国から9兆円も援助がもらえるのか。非常に単純だがこんな例が他にあるだろうか。改革委の委員長伊藤邦雄一橋大学大学院特任教授は「東電改革は福島復興の基礎であり、電力改革のさきがけとなる」と述べたそうだ。何をとぼけたことを言っているのだ。東電は精算させるべきだ。そしてその資産を全て被災者の保障に宛て、東電社員は全員福島に移住させ、現場で作業員として、基準線量ギリギリまで廃炉作業に従事させるべきだ。

この日の会合のポイントとして、
・原子力や送配部門での大手電力との提携
・再稼働を目指している柏崎刈羽原発(新潟県)の運営の在り方の見直し
・電気料金に廃炉費用を上乗せし国民が負担する案を検討

とまとめがある。一々反論するのも馬鹿らしくなるが、「有識者」どもは本気でこんなことを議論している。「有識者」、「知識人」、「専門家」という肩書は全て疑ってかからなければない。悲しくも言葉が内容を裏切る時代を象徴した、笑うに笑えない悲喜劇だ。そしてこの会合にはオブザーバーとして東電の広瀬社長も出席している。面の皮が鋼鉄のようでなければ東電の社長は勤まらないようだが、広瀬の頭の中はどうなっているのだろう。

冷静に計算しても、東電がこれから存続し続ける可能性はない。何故ならば今議論されているのは当面必要な(それにしても途方もなく巨額だ)金の算段だけだが、廃炉作業はこの先人類的な尺度で言えばほぼ「永遠」に続くからだ。その前に国債を擦りまくり、残高が遂に1千兆円を超え(赤ちゃんからお年寄りまで一人当たり826万円)たこの国の財政は早晩破綻する。デフォルトは間もなくやってくる。そうなれば「国」の形は今のままで残りはしない。「有識者」と呼ばれる愚者どもの議論に騙されてはならない。

◆行政は「事故が起きたら」という犯罪的前提に何故こだわるのか?

その記事の横には「『美浜事故』ならセシウム汚染は──県予測 琵琶湖の魚基準値1.65倍」と地方らしい視点からの視野の狭い報告が掲載されている。再稼働させてはならない老朽原発「美浜原発」が事故を起こしたら琵琶湖はどの位汚染されるか。その設問自体、思考が劣化し尽した役人の愚にもつかない馬鹿げた作業だという認識がこの試算を伝える京都新聞の記者にはないようだ。

行政は「事故が起きたら」という犯罪的前提に何故こだわるのだろうか。この記事の下には図ったように「美浜3号機審査合格 稼働は相当先 規制委員長見通し」の記事が下支えをしている。紙面構成を考えた上でのことであろうが、この日の京都新聞一面がトータルで伝えてくれるのは、「こと原発問題に関する限り、この国のエスタブリッシュメントや、行政、報道に知性はない」という現実だ。

どれほどの破綻に直面しようと、確実な破局が目の前にあろうと、少し賢い小学生なら騙せない程度の虚構で突っ走ろうとする。その姿は第二次大戦中から敗戦に至るまで、全く理性を失い「神国日本」を信じ(信じさせられ)た、あの光景と二重写しのように思える。

理性無き時代、知性無き時代は益々加速している。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

  『NO NUKES voice』第9号 好評連載!本間龍さん「原発プロパガンダとは何か?」
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原発推進インチキ・メディアを斬る!《6》もんじゅ利権の具『週刊新潮』座談会再び

これこそ世紀の「くだらない座談会」として、ギネスにでも遺すべきだろう。なんと週刊新潮の8月11・19日合併号では「特別読物 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて」シリーズで、「反原発」に「反対」する学者たちの座談会が開かれているが、テーマは「もんじゅ」でタイトルは『なぜ「もんじゅ」が日本の平和と環境に資するのか!』というタイトルが打たれている。

参加しているのは高木直行教授(東京俊大学大学院)、澤田哲生助教授(東京工業大学)、奈良林直教授(北海道大学大学院)、河田東海夫(原子力発電環境整備機構=MONO元理事)の4人が「もんじゅ」こそが環境と平和に資すると平気でのたまう。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

記事を抜粋する。記事はまずこんな前文から始まる。

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「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

原子力規制委員会が引導を渡したのは昨年11月のことだった。高速増殖炉「もんじゅ」について、機器の点検漏れが数多く発覚したことなどを理由に、今の原子力研究開発機構(JAEA)は信用できないので、それに代わる新しい運営主体を探すよう、文部科学大臣に勧告したのだ。もんじゅはプルトニウムとウランの混合酸化物、MOX燃料を使い、発電に使ったプルトニウム以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」を実用化すべく建設されたもの。日本の核燃料サイクル戦略の中核に位置づけられていたが、それが存続の危機に追い込まれたのだ。規制委員会が突きつけた回答期限のメドは「半年」。すでに半年を超え、8ヶ月が経過したが、新しい受け皿の具体案は示されない。「もんじゅ」は消滅するのか。もはや必要ないのか。澤田哲生氏を進行役に、専門学者たちが議論を交わした。

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「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この馬鹿野郎たちの議論の前に解説すると、「もんじゅ」について原子力規制委員会が「運営母体を変えろ」と勧告したのに続いて、今年1月にIAEA(国際原子力機関)が実施するIRRS(総合規制評価サービス)の監査が入ったと澤田氏が指摘している。そう、まずはIRRSの監査の基準がなっていないという議論から始まる。規制委員会の田中俊一委員長が「核燃料サイクルや高速増殖炉開発の意義を十分に納得していない」と高木氏は吠える。

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

そして議論は「もんじゅを再稼働するのには、電力会社の協力が必要だ」という最悪の論調に走っていく。

奈良林氏の言葉を抜粋する。
『今、電力会社は自分の発電所の再稼働問題で手一杯。再稼働が進めば余力もできるでしょうが、今がタイミング的に一番まずい。再稼働がなかなか進まない点は、IRRSがいみじくも言っています。今の原子力規制庁と規制委員会は、新規則基準を作るまではよかったが、規制の運用が〝初期段階〟だと。日本の規制は世界から見ると小学生だというのです。だから、もんじゅを安全にする指導もできず、無駄な書類ばかり作らせている。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

この国はもんじゅの再稼働に141億円をつぎ込もうとしている。これだけの金があれば、いくつ被災者住宅が建つというのか。

もんじゅは、1995年にナトリウム漏れ事故を起こしている。
直近では、7月下旬に、点検漏れが新たにあったとして報道された。もんじゅは今や「瑕疵つき物件」なのだ。

あいた口がふさがらないことに、河田はこんな発言をしている。

『高速増殖炉は軽水炉とはまったく体系がちがいます。それに、もんじゅは研究開発のための原子炉ですから、一生懸命に稼働率を稼ぐ必要はなく、保全計画が適正であるのを検証しつつ、一歩ずつ前に進めばいい。ミスが全然ないように学びながら作りあげていくものです。だから規制庁による点検漏れだ、違反だという指摘は、基本的にはフィロソフィーが違うのかなと。規制のあり方を一度ゼロベースに戻すべきです。また、もんじゅに関わっていた人は「運転する自信はじゅうぶんある」と言います。ですから、きちんと実働しながら、それを紙の体系とすり合わせていくことが大切だと思います。』

「週刊新潮」2016年8月11・18日号より

おいおい、何度も事故を起こした車の運転手が「自信が十分にある」「学びながら運転します」といえばあんたたちはその車に乗るのか。

ナトリウムが漏れたということは、拡大すれば端的にいえば体のタンパク質がとけていくかもしれないということで内蔵疾患の原因にもなりかねない。

座談会の学者たちよ! そして「週刊新潮」の人間たちよ!
福島の被災者住宅のど真ん中で座談会をやってみよ。
それができないなら、すぐにお詫びと訂正記事を出せ。

(渋谷三七十)

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原発推進インチキ・メディアを斬る!《5》『週刊新潮』の呆れたもんじゅ座談会

『週刊新潮』(2016年1月28日号)特別読物原子力の専門学者座談会第12弾「御用学者と呼ばれて」

ずいぶん以前の話だが、「反・反原発」路線で売っている『週刊新潮』の1月28日号で、「特別読物 第12弾 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて」の連載で「高速増殖炉もんじゅと日本の核燃料サイクル」と題して、東京工業大学・澤田哲生助教授、東京都市大学大学院・高木直行教授、東京大学大学院・岡本孝司助教授、北海道大学大学院・奈良林直教授らが「もんじゅ」をテーマに語っていた。
なんてことはない。掲載当時は「もんじゅ」の運営を原子力規制委員会が、日本原子力研究開発機構(JAEA)にかわる主体にゆだねるように馳浩文部科学大臣に勧告した頃だ。要するに、「もんじゅが必要」という論調にもっていきたいのが見え見えの呆れた座談会だ。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を再稼働させると、少なくとも5800億円の費用がかかると文部科学省が試算していることがアナウンスされている。冗談も休み休み言ってくれよ、週刊新潮! 吐き気すらするこの記事を抜粋しよう。

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澤田 仮に、今回の勧告でもんじゅが廃炉に向かうとしたら、日本のエネルギー政策、原子力政策にどんな影響が及ぶでしょうか。核燃料サイクルはフランスのアストリッドと協力してやる話もあるようですが、国内の六カ所村などの再処理施設はどうなるのか。エネルギー小国の日本がもんじゅを捨てるのは、あまりにもったいないと思います。
岡本 エネルギーを司る役所は経産省と文科省に分かれますが、今回の勧告に監視、経産大臣は「もんじゅは文科省の所管です」とにべもなく語っている。経産省は、核燃料サイクルを推進しているはずですが、地震が多い日本では使えないフランスのアストリッドに期待しているのか。そもそも、もんじゅがつぶれたらアストリッドもありません。
高木 経産省はもんじゅに見切りをつけ、アストリッドとの協力で核燃料サイクルを進めるというのでしょうか。でも、もんじゅをやめた時点で多くの人は、日本が高速増殖炉開発をやめたと思いますよ。
奈良橋 もんじゅをやめてしまうと、日本では二度と高速炉を建設できないと思います。ナトリウムを流して高速炉を運転するのは特殊な技術で、日本は30年かけてナトリウムを使える人を育ててきた。それを絶やしてしまえば、アストリッドと協力しても、日本側から適切なアドバイスをする人がいなくなってしまう。(『週刊新潮』2016年1月28日号)
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おいおい「週刊新潮」よ、いや新潮社の諸兄よ! チェルノブイリの被害を描いてノーベル文学賞をとったベラルーシの女性作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の『チェルノブイリの祈り――未来の物語 』(岩波現代文庫)を読んで感想文を書け。そして福島の被災者住宅に個別配付し、悔い改めよ! もしくは、「もんじゅ」の再稼働を署名で止めろ!

まだまだ腐った「原発推進メディア」はたくさんある。ひとつとして許すことはできない。機会があれば、紹介しよう。

(渋谷三七十)

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原発推進インチキ・メディアを斬る!《4》反原発異論で晩節を汚した吉本隆明

膨大な知識量には感嘆するものの、「知の巨人」だとしても言説は斬るべき。間違いは間違いだ。『「反原発」異論』(論創社2015年1月)で吉本隆明は、こう綴る。故人を攻撃しているわけでもなんでもなく「間違いを正して原発を廃止する」ための方策で取り上げるので、けして吉本の人格を斬るわけでない。
吉本は「反原発で猿になる」というタイトルでこう書いている。

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 僕は以前から反核・反原発を掲げる人たちに対して厳しく批判をしてきました。それは、今でも変わりません。実際、福島第一原発の事故では被害が出ているし、何人かの人は放射能によって身体的な傷害が生じるかもしれない。そのために〝原発はもう廃止したほうがいい〟という声が高まっているのですが、それはあまりに乱暴な素人の意見です。今回、改めて根底から問われなくてはいけないのは、人類が積み上げてきた科学の成果を一度の事故で放棄していいのか、ということなんです。考えてもみてください。自動車だって事故で亡くなる人が大勢いますが、だからといって車を無くしてしまえという話にはならないでしょう。ある技術があって、そのために損害が出たからといって廃止するのは、人間が進歩することによって文明を築いてきたという近代の考え方を否定するものです。そして技術の側にも問題がある。専門家は原発事故に対して被害を出さないやり方を徹底して研究し、どう実行するべきなのか、今だからこそ議論を始めなくてはならないのに、その問題に回答することなしに沈黙してしまったり、中には反対論に同調する人たちがいる。専門家である彼らまで〝危ない〟と言い出して素人の論理に同調するのは「悪」だとさえ思えます。(中略)一方、その原子力に対して人間は異常なまでの恐怖心を抱いている。それは、核物質から出る放射線というものが、人間の体を素通りして内蔵を傷付けてしまうと知っているからでしょう。防御策が完全でないから恐怖心はさらに強まる。もちろん放射能が安全だとは言いません。でも、レントゲン写真なんて生まれてから死ぬまで何回も撮る。普通に暮らしていても放射能は浴びるのです。それでも、大体九十歳までは生きられるところまで人類は来ているわけです。そもそも太陽の光や熱は核融合でできたものであって、日々の暮らしの中でありふれたもの。この世のエネルギーの源は元をただせばすべて原始やその核の力なのに、それを異常に恐れるのはおかしい。(吉本隆明『「反原発」異論』論創社)
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おいおい吉本大先生よ、核が「ありふれたもの」だって? バカも休み休み言っていただきたい。すると北朝鮮で金正恩が核開発しているのも「日常のひとコマ」ってわけだ。天国で福島原発事故の際に亡くなった人の怒号を聞け!

(渋谷三七十)

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「非経済的」で「非人道的」な原発に真っ当な憤激を!『NO NUKES voice』第9号

◆「もんじゅ」も福島も国民負担──いつまでもなにを眠たいこと言うとんねん!

福井県小浜市明通寺の中嶌哲演住職。滲む憤りや悲しみの情感に、胸が痛む(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

「管理上の相次ぐミスで停止中の高速増殖原型炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)について、現行計画に基づいて今後10年間運転する場合、国費約6000億円の追加支出が必要になると政府が試算していることが8月28日、分かった。既に約1兆2000億円をつぎ込みながら稼働実績がほとんどなく、政府は菅義偉官房長官の下のチームで、廃炉も選択肢に含めて今後のあり方を慎重に検討している」そうだ。

また、「東京電力福島第1原発事故で掛かる除染や廃炉、損害賠償などの費用のうち、国民の負担額が2015年度末までに4兆2660億円を超えたことが8月28日、分かった。日本の人口で割ると、1人3万3000円余り。東電は政府にさらなる支援を求めており、今後も拡大する見通しだ」らしい。

ちょっときつめの関西弁で表現すれば、「いつまでもなにを眠たいこと言うとんねん!」とでも唾棄されるだろうこのようなニュースを前に、私たち『NO NUKES voice』編集部は改めて、原発が避けがたく有する「非経済性」のみならず「非人道性」に憤激を抑えることができない。

“原発いらない福島の女たち”の黒田節子さん(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

◆正邪、善悪、犯人と被害者がひっくり返った現状が許せるか?

福島の事故現地に住む、あるいは避難した人びとが、相応に救済されるのであれば「1人3万3000円余り」の税金投入に異議を唱える気はない。でも全くそのようにはならず、被害者は切り捨て、復旧作業に携わる労働者からは多重請負による苛烈な搾取。

そしてあろうことか、事故を起こした東京電力が「黒字」を計上し、社員には高額なボーナスまで支給されている。どういうことなんだ。正邪、善悪、犯人と被害者がまるっきりひっくり返ったこの状態をあたかも、当然の図を見るように眺める為政者や東京電力の眼差しが、奇異でならない、許せないのだ。

座り込みを続ける斉間淳子さん。亡夫・斉間満さんは“原発の来た町”の著者として知られる(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

◆権利や命は闘い取るもの、「果報は寝て待て」では勝てはしない

事故が起きて原発の危険性が認識されたと思ったら「世界一厳しい規制基準」で「福島原発の汚染水は完全に湾内でコントロールされており、健康被害は、過去も、現在も、未来も起こらない」と言い放った、あの安倍首相の歴史的とも言える仰天演説は歴史によって裁かれることになるのだろうか。

いや、そんな時代を黙して待っている訳にはいかない。権利や命は闘い取るものであり、「果報は寝て待て」では勝てはしない。

◆「被曝を無視する(反)脱原発運動は、認識が不十分である」

『NO NUKES voice』第9号の特集は「いのちの闘い 再稼働・裁判・被曝の最前線」だ。私は多くの識者を取材する中で学んだことがある。それは「被曝を無視する(反)脱原発運動は、認識が不十分である」ということだ。本号でも小野俊一医師や井戸謙一弁護士、アイリーン・美緒子・スミスさんや全国の運動報告で指摘されている通りだ。

そこで冒頭の報道である。東電は4兆2660億円の国から(つまり我々の税金から)援助を得ておいて、「まだ足らない、もっとよこせ」と言っている。一民間企業である東電がなぜ倒産しないのか。健康被害の調査や対応にしっかり体制を整えているか。民間の例外的な診療所を覗いては皆無じゃないか。140人を超える若者が甲状腺癌手術を受けても「放射能との関係はありません」と。これが政府であり福島県の正式な声明だ。

日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した裁判官だった井戸謙一弁護士

◆多数の人々を殺し、追い込み、住む場を奪った東電が存続できる社会は公正か?

たとえば鹿砦社が資金繰りに困ったら国は無担保で金を「援助」してくれるだろうか。そんなことはありえないじゃないか。だから中小企業の経営者は月末、年度末に資金繰りに奔走するのだ。なぜ東電だけ特別扱いなのだ。多数の人を殺し、生活苦に追い込み、住む場所を奪った東電がどうして「特別扱い」を享受できるのだろう。私にはさっぱり理屈が解らない。

が、そのからくりを理解する鍵は『NO NUKES voice』第9号に織り込まれている。結構なページ数なので全てをお読みいただくのは少々骨が折れるかもしれないが、読者の皆さんには「ああなるほど」と首肯して頂けるに違いない。

まず知らなければ判断のしようもないし、自分の意見を持つことも出来ない。その一助になればと本誌を世に送り出した。私たちは何度も何度も同じことを伝え続けなければならないだろう。それほど簡単に世が激変するものではないことを知っている。先人たちも後ろ指をさされながら、多くの人びとに無視されながらも論を曲げず、数え切れないほど同じ話を繰り返してきた。その精神に真摯に学ぼうと思う。是非お手に取ってお読み頂きたい。

マイクを握る“伊方の家”の八木健彦さん。伊方反原発の中心的人物だ(2016年7月伊方にて大宮浩平撮影)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号 8月29日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

3週間足らずで終わる五輪でなく100年続く原発事故を考える『NO NUKES voice』

 
本日発売開始!〈いのちの闘い〉『NO NUKES voice』第9号!

いよいよ今日!『NO NUKES voice』第9号が発売になります。今号も内容は盛りだくさんですよ。「被災地福島を忘れない」を合言葉にライター、編集部一同頑張りました!

◆唯一無二の脱原発雑誌へ

結局、予想以上の内容てんこ盛りになりました。有名な方だけでもアイリーン・美緒子・スミスさん、菅直人さん、吉岡斉さん、井戸謙一さん、小野俊一さん。自慢じゃないですがこれだけ幅広い人が一堂に反(脱)原発に集っていただける雑誌は『NO NUKES voice』だけじゃないでしょうか。2011年から2012年にかけては別冊宝島なんかも、結構一生懸命に原発関連のムックなどを出していましたが、その後さっぱりですよね。嫌韓の本にシフトしたりして、節操ないなーと思います。

でも『NO NUKES voice』はぶれません。巻頭を飾る報告がつい最近撤去されてしまった「経産省前テント広場」からの報告なんですから。夜の3時に強制撤去を行った行政権力は、昼間人々が行き交う時間に霞が関で暴力性を目撃されることを恐れたのでしょう。まさに、「寝込みを襲う」強制撤去でした。

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

原発事故からもうすぐ5年半です。詳しい技術者が口を揃えて「無理だ」と予想していた「凍土壁」は予想通り、凍りませんでした。「凍土壁案」は破綻しました。でもこれって、ゼネコンにお金を落とすために失敗することが分かっている工法をわざと採用したんじゃないでしょうか?

◆「福島のすがた」を撮り続ける飛田晋秀さん

今号では福島在住の写真家、飛田晋秀さんから「福島のすがた」を寄せて頂きました。任意の団体が発行する機関誌や会員誌以外に反(脱)原発を継続的に取り上げる媒体が見られなくなりました。

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

みんな忘れてしまったのでしょうか? リオのオリンピックで日本選手団は大活躍でした。見ていて楽しかったし感動しました。でも若い選手が「東京では是非金メダルを取りたい」というインタビューを聞くと何故か急に不安というか「さわさわ」した気分になりました。東京オリンピック……。
 
◆東京のインフラよりも福島の原発を!

できるんでしょうか? 東京オリンピック? 
やっていいんでしょうか? 東京オリンピック?
東北地方での競技開催も計画されていますが、それって事故隠しに利用されるってことじゃないですか?

巻頭グラビア「福島のすがた」より(飛田晋秀さん撮影)

何人の人達が現地で苦しい生活をしているのか。避難した人達への支援は来年の春で打ち切られようとしていますが、どうして勝手に加害者の東電や、国が決めるんですか?

原発とは関係ないけど、熊本地震の復旧も遅々として進んでいないじゃないですか?

「福島のすがた」を撮り続ける飛田晋秀さん

そんな中で「やったー! 内村団体も個人総合も金だ!」と私も喜んでいましたが、もう4年後が東京だと思うととても複雑な気持ちになりました。

そのことを今号で指摘して下さっている方がいます。どなたで、どのような内容かは本屋さんでお買い求めになってからページをめくってご確認してくださいね。

今号もかなりのボリュームですよ。岩波の「世界」や「文藝春秋」に重さは近づいてきました。内容? 絶対の自信ありです。夏休みの自由研究がまだ終わっていないお子さんがいらっしゃれば早速お求め頂いて、「原発の危険性」を保護者の方と一緒にあと2日で完成させてはいかがでしょうか。何よりも被曝の被害に敏感なのは若い人たちです。学校の先生も詳しく知っている人は少ないから、きっと注目浴びる事マチガイナシですよ!

さあ、お父さん、お母さん、御爺ちゃん、御婆ちゃん!
どなたでも結構ですから台風の風が強まる前に書店へ急ぎましょう!

(伊藤太郎)


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号本日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

『NO NUKES voice』第9号〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線!

8月5日の経産省前テント広場

連日最高気温が35度を超える「猛暑日」が続く今年の夏。3・11から5年が経過しても反(脱)原発運動の攻防は絶えることなく続いている。明日29日いよいよ『NO NUKES voice』第9号が発売になる。

◆持久戦を闘う──「経産省前テント広場」からの報告

猛暑に負けない「熱い」メッセージがこれでもか、これでもかと込められている。巻頭グラビアに次いで登場するのは、8月21日午前3時に突如「強制撤去」を余儀なくされた「経産省前テント広場」からの報告だ。

アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)

三上治さんの「持久戦を闘うテントから」は、「強制撤去」直前に寄稿された。最高裁判決を受け何時「強制執行」があっても不思議ではない状況で、「テント」を守り、闘い続けてきた方々の思想の奥行に触れることが出来る。テントが撤去されても闘いは終わらないことを強く印象づけられる、必読のレポートだ。

◆脱原発のための戦略──アイリーン・スミスさん、菅直人さん、吉岡斉さん

次いで登場するアイリーン・美緒子・スミスさんは水俣病に関わって以来、国内外で広く市民活動を担ってきた。米国スリーマイル島原発事故の後現地に入り、健康状態調査を行ったり、日本の原発についても長年反対運動に取り組んできた。彼女からは意外な視点が提供される。インタビューの表題「毎日の分岐点が勝負」にある通り、決して絶望しない、アイリーンさんの魂の強さを解き明かす鍵が語られる。また反原連と鹿砦社の問題について、第三者の立場から冷静な分析もなされている。

菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)

次いで菅直人元首相が本誌へ2度目の登場だ。6月に行われた菅氏の講演録が、「脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の集結を!」と力強い言葉で報告されている。事故当時の検証をいまだに続ける菅元首相は脱原発に向けた視野を欧州にも広げ、長期的に見れば「脱原発の戦いに負けはない」と断言する。その詳細は本誌で読者諸氏に直接触れて頂きたい。

九州大学教授吉岡斉さんは政府系の調査委員会などを数多く歴任した立場から、構造的にこの国の原子力行政が包含する問題点について俯瞰的なお話を伺うことができた。現時点日本における行政・電力会社を中心とした「原発社会」がどのように成り立っているかを理解するのに格好のテキストだ。

吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

◆日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した元裁判官・井戸謙一さん

そして日本で唯一稼働中の原発に運転差し止め判決を出した元裁判官で現在は弁護士である井戸謙一氏の登場だ。井戸氏からは原発問題は当然のことながら「裁判官の日常」や「司法改革」についての見解なども伺うことができた。

定年退官を待たずに弁護士へと転じ、物静かながら社会の矛盾を撃つ井戸弁護士の鋭利さは酷暑の中、心地よい知的清涼剤となろう。

◆福島と被曝の実態を暴くonodekitaさんこと小野俊一医師が本誌に登場!

ネットで絶大な人気を得ている医師小野俊一さんは個性的な発言が爆発。「ウソがどれほどばら撒かれても被曝の事実は変わらない」では、被爆の問題を中心に小野医師の最近の活動も報告される。

元東電社員から医師に転じた稀有な経歴の小野医師。菅元首相や東電の武藤・武黒(事故当時東電フェロー)への人物評価も容赦ない。そしてインタビューの最後は実に衝撃的な言葉で結ばれる。誰もが「そうなるのではないか」と頭をよぎったであろう、あの事態を小野医師は断言する。衝撃の結語も見逃すことはできない。

小野俊一さん(医師、元東電社員)

「原発作業とヤクザたち 手配師たちに聞く山口組分裂後の福島」はこの界隈の取材では定評のある渋谷三七十氏のレポートだ。他の寄稿とやや趣を異にした、しかしながらディープな現実の報告は「ヤクザ=悪」という固定化した観念で原発事故現場は動いてこなかったことを伝えてくれる。

写真家大宮浩平氏の「『原発の来た町』伊方で再稼働に抗する人達」が続く。8月12日に再稼働されてしまった伊方原発は避難計画の杜撰さや、熊本地震以降震源が中央構造線に移動しており、素人目にも「破局を招く」再稼働であることは明らかだ。

大宮氏は7月24日に現地で行われた再稼働反対集会に参加し、現地や全国から駆け付けた多くの人びとと邂逅し多くを学ぶ。大宮氏の真摯な姿が印象的な報告だ。

◆反原連としばき隊の欺瞞──松岡発行人が「みたび反原連に問う」!

さらに板坂剛さんの「三宅洋平に“感じた”」、そして近刊ですっかり『NO NUKES voice』名物となった感のある松岡発行人による「みたび反原連に問う」が続く。

鹿砦社vs反原連を含むしばき隊はもはや周知の事実だが、反原連HPに掲載された鹿砦社に対する名誉棄損書き込み削除に反原連は一向に応じる気配がないことから、またもや「松岡砲」出撃と相成った。願わくば原発同様、反原連の横暴も一刻も早く消えて欲しいものである。

原発事故被害による避難者「私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます」は原発賠償関西訴訟の原告でもある武石和美さんからの訴えだ。

岩波新書の衝撃作『原発プロパガンダ』著者・本間龍さんの連載では80年代の福島民報を大検証!

全国で原発賠償訴訟の原告は1万人を超えているという。大新聞やテレビはこの深刻な事態をしっかり報道しているだろうか。避難の困難さは避難者の数と同数存在し、どれもが同じではない。私たちもその事を決して忘れてはならないと胸に刻ませてくれる訴えだ。

◆衝撃作『原発プロパガンダ』著者・本間龍さんの好評連載は80年代の福島民報を大検証!

本誌ではおなじみ、元博報堂社員にして、「原発プロパガンダ」(岩波新書)の著者である本間龍さんは「原発プロパガンダとは何か」で福島民報の80年代を解析。

納谷正基さんは「どう考えても今のこの国はおかしいでしょう」とストレートな題で、高校生にラジオで語りかける優しさを備えながらきびしく現状を憂い、病巣にメスを入れる。納谷さんは冷静に怒っている。

引き続き常連の佐藤雅彦さん「うたの広場」。今回は「ヘイ9条」だ。新しい着想の「デモ楽-デモを楽しくするプロジェクト」でも佐藤氏の類い稀なる個性が爆発する。詳細は本誌をご覧頂きたい。

その他全国各地の運動情報も漏らすことなく満載だ。

締切りギリギリまで編集部が奔走し「多様性」確保を心掛けた、本号はこれまでよりもさらに、内容充実をお約束する。
発売は明日29日だ。迷わずお近くの書店へ!

40年以上にわたり伊方原発反対運動を続けて来た「八西連絡協議会」の横断幕(2016年7月24日大宮浩平撮影)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。


◎『NO NUKES voice』第9号・主な内容◎
《グラビア》
〈緊急報告〉最高裁が上告棄却! 経産省前「脱原発」テントひろばを守れ!
福島のすがた──双葉町・2016年夏の景色 飛田晋秀さん(福島在住写真家)
原発のある町と抗いの声たち 現場至上視点(3)大宮浩平さん(写真家)

《報告》持久戦を闘うテントから
三上治さん(経産省前テントひろばスタッフ)
《インタビュー》毎日の「分岐点」が勝負──脱原発への長年の歩み
アイリーン・美緒子・スミスさん(グリーン・アクション代表)
《インタビュー》脱原発の戦いに負けはない せめぎ合いに勝てる市民の力の結集を!
菅直人さん(衆議院議員、元内閣総理大臣)
《インタビュー》復活する原子力推進勢力 この国のかたち
吉岡斉さん(九州大学教授、原子力市民委員会座長)

特集:いのちの闘い―再稼働・裁判・被曝の最前線

《インタビュー》稼働中原発に停止命令を出した唯一の裁判官 弁護士に転身しても大活躍
井戸謙一さん(弁護士)
《インタビュー》帰れない福島──帰還の無理、被曝の有理
飛田晋秀さん(福島在住写真家)
《インタビュー》ウソがどれほどばらまかれても被曝の事実は変わらない
小野俊一さん(医師、元東電社員)
《報告》原発作業とヤクザたち──手配師たちに聞く山口組分裂後の福島
渋谷三七十さん(ライター)
《報告》「原発の来た町」伊方で再稼働に抗する人たち──現場至上視点撮影後記
大宮浩平さん(写真家)
《報告》三宅洋平に〝感じた〟──参院選断想
板坂剛さん(作家・舞踊家)
《報告》みたび反原連に問う!
松岡利康(本誌発行人)
《報告》私たちそれぞれが考え抜いた選択を尊重し、認めてほしいと訴えます
武石和美さん(原発避難者)
《報告》原発プロパガンダとは何か?(第7回) プロパガンダ発展期としての八〇年代と福島民報
本間龍さん(元博報堂社員、作家)
《報告》反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(8)
どう考えても、今のこの国はおかしいでしょう?
納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
《報告》原発映画のマスターピース 『一〇〇〇〇〇年後の安全』と『希望の国』
小林俊之さん(ジャーナリスト)
《提案》うたの広場 「ヘイ! 九条」
佐藤雅彦さん(翻訳家)
《提案》デモ楽――デモを楽しくするプロジェクト
佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
《報告》再稼働阻止全国ネットワーク 
原発再稼働を遅らせてきた世論と原発反対運動五年余 
熊本大地震の脅威+中央構造線が動いた+南海トラフ地震も心配

  『NO NUKES voice』第9号 8月29日発売! 特集〈いのちの闘い〉再稼働・裁判・被曝の最前線

原発推進インチキ・メディアを斬る!《3》外交評論家=金子熊夫の能天気

JR東海傘下の『WEDGE(ウェッジ)』は原発推進団体からよほど金が流れているのか、摩訶不思議な雑誌だ。外交評論家の金子熊夫の原稿で、タイトルは「日印原子力協定は日本の非核主義と両立する」という脱力するようなものだ。

驚くべきことに「日本とインドの原子力協定を後押しする」というコンセプトのもとで、以下の残念な内容が展開されている。つまり金子は「インドが核実験をする」ということと、「日本が原発技術をインドに提供する」ことは別物だと言いたいのだ。

———————————————————————

外交評論家の金子熊夫

 2015年12月半ばに訪印した安倍晋三首相とナレンドラ・モディ印首相との間で、日印の民生用原子力協定を可能にするための二国間原子力協力に関する「原則合意」が成立した。長年この協定の重要性を唱えてきた者として、大変喜ばしいことである。しかし、日本国内では対印協力に対する懸念が繰り返し報道されてきた。世論への配慮からか、政府の締結に向けての歩みは決して早くない。日印原子力協定は、原子力の問題ではない。日本の安全保障、アジア全体の安全保障という、もっとも大きな文脈で捉えられるべき問題であり、細かい技術論で大局的な政治判断が損なわれることがあってはならない。残念ながら、日本人はインドに対する理解が浅い。日本が唯一の戦争被爆国としての立場ばかりを主張するなら、愛想を尽かすのはインドの方だ。日印の協定交渉は、民主党政権時代に始まってから間もなく6年になるが、この間もっとも双方が対立してきたのは、核実験再開時の扱いだった。日本国内では、インドが核実験を行ったら、直ちに対印協力を停止することを協定に明記すべきとの意見が根強い。(中略)
 日本としては、今回安倍首相がニューデリーでの首脳会談で、はっきり「インドが核実験を再び行った場合には、日本からの協力を停止する」と伝えているのであるから、これで十分ではないか。日印協定案を国会が承認する歳に衆参両院が付帯決議を採択して日本の立場を宣明するのも一案だろう。そもそも、インドが核実験を行った場合にどう対応するかというようなことは、協定や条約には本質的になじまない。そのような場合には何よりも必要なのは、日印両国政府が急遽協議することだ。協定や条約の運用について締約国同士が随時緊密に協議することは当然のことで、そのことを原子力協定に明記しておけばよく、それで十分だと筆者は考える。(『WEDGE』2016年4月号)
◎金子熊夫の略歴紹介HP http://www.eeecom.org/old/KKprofile.htm

———————————————————————

おいおい、金子よ! 正気か? 同じことを広島の原爆ドーム前で拡声器を使って真顔で言えるのか。インドが核実験を行う場合、その原子力のメカニズムは、日本からの原発技術供与と関係ないと誰が言えるのか。原発技術と核実験が密接に関係しているのは、小学生でももはや知っている事実である。

(渋谷三七十)

衝撃出版!在庫僅少!『紙の爆弾』増刊『ヘイトと暴力の連鎖』!
 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』

原発推進インチキ・メディアを斬る!《2》澤昭裕の遺言

あいかわらず無反省の経団連御用達マガジン 『WEDGE(ウェッジ)』3月号に国際環境経済研究所前所長の澤昭裕が病床から書いたというコラムであり、遺稿となった「戦略なき脱原発へ漂流する日本の未来を憂う」を斬ってみる。澤の言論は、あくまで「原発推進」を軸にして進む。澤は原子力事業を一社か二社かに再編した上で、火力や水力も含む包括的合併を提唱する。

———————————————————————

 東芝や日立といった原子力メーカーが進めてきたような、海外電力事業者との連携を契機とした再編も選択肢の一つだ。電力会社と例えば米国電力事業者との間でアライアンスが実現すれば、安全保障上の連携効果も高まる上、閉鎖的な我が国の原発オペレーション能力を海外に効果的に発信していく契機ともなる。若手技術者が「直営技術力」を高めていく絶好の機会ともなろう。(中略)
 海外事業者とファンドを組成して国内の原発資産を購入していくことも考えられるし、先に上記のような「原子力地域連合」を作り、ファンドが出資することも一案だ。こうした再編を進めた場合、特に経営規模の小さい会社にとっては、投資体力や技術人材プールの充実、発電ポートフォリオ拡大による不稼働リスク分散等の効果が期待できる。ただし、原子力の場合、既に地理的な分散やアウトソースが進んでおり、「重複・過剰設備の廃棄による効率化」や「研究開発や人件費等の固定費縮減」までは期待できない。
 また、「全電源停止」が生じリスク分散の意味はない、したがって、「再編はリスクの大きな電源の寄せ集めになる」との指摘もある。また、電力事業の歴史的経緯を考えると、他業種の再編事例をそのまま当てはめることは現実的とは言えない。各社は「政府及び他社に対する経営の自主・独立性」に強い自負を持ち、「地元密着で建設・稼働を進めてきた実績」をレゾンデトールとしてきた。今は苦境にあるとはいえ、送配電の「地域密着の安定収益基盤」を有していることもあり、従来の路線を変えてまで再編に踏み切るほどの危機感を持つ会社は未だ多くはないのではないか。このように各社・単独の能力・体力では状況の打開が難しいことが明らかな一方で、すぐに事業再編が進む地合いも整っていない。「事業者間協力」のあり方としては、会社再編に限らず様々なバリエーションを想定する必要があるし、協力の促進に向けては、漸新的・現実的なアプローチが必要であろう。(戦略なき脱原発へ漂流する日本の未来を憂う『WEDGE』2016年3月号
———————————————————————

故人が病床で書いた遺稿にケチをつけるのはやや気が引けるが、それでも間違いは間違いである。「原発推進のための電力事業の大同団結」などクソ喰らえである。もしも包括的に事業を統合するなら「脱原発のための電力再編」であるべきなのは、当然だ。

真剣に電力のありかたについて考え、病床で新しい電力事業のスタイルについて書いたことは認めよう。しかし澤よ、天国で今一度、電力について考えていただきたい。

(渋谷三七十)

タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
『NO NUKES voice』08号【特集】分断される福島──権利のための闘争
「世に倦む日日」田中宏和『SEALDsの真実――SEALDsとしばき隊の分析と解剖』