4月6日付で反原連の代理人神原元弁護士から鹿砦社代理人弁護士へ下記の「回答書」が届いた(4月8日受領)。血の通ったものではなく、ハッキリ言ってゼロ回答で遺憾である。

鹿砦社は反原連HPに掲載されている実質上の絶縁状である 【鹿砦社発行 「NO NUKES VOICE」に関する見解と広告掲載中止などについて】 が名誉棄損にあたるとして削除を要請したが「広告掲載を中止した経緯について事実関係を説明し、一定の論評をくわえたものに過ぎず、そもそも同社の社会的評価を低下させるとは考えられません。よって、当該ステートメントが名誉棄損に該当するとのご指摘には賛同できないことから、削除のご要請に応じることはできません。」との回答である。

上等じゃないか。事実関係の曲解の証拠は幾らでもあるから、場所を変えて争わざるを得ないだろう。

同時に要請した「会計報告」については「 首都圏反原発連合としては、ご指摘を受けるまでもなく、本年4月末頃までに然るべき会計報告をすべく準備していました。ただし、鹿砦社は首都圏反原発連合に『会計報告』を要求する立場にないことを付言しておきます。」とは喧嘩を売っているとしか思えない挑発だ。最大の資金援助者が「会計報告」を要求するのは筋違いか?

さらに看過できないのは「本回答書に対する意見、反論、お問い合わせは全て当職を通して頂きたく、通知人らに対し、直接又は間接に反論すること(インターネットや雑誌記事での反論を含む)はお止め頂きたくお願い致します。」には仰天した。12月2日いきなりHPに絶縁宣言を掲載したのは「反原連」ではないか。鹿砦社だけに「反論は代理人を通せ、インターネットや雑誌で記事にするな」と実質上、言論圧殺を求めている。こんなものがのめるか! 出版社が言論活動を放棄したら社会的生命は無きものに等しい。

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回 答 書

冠省
 当職は、首都圏反原発連合及び篠藤操氏(以下、通知人らといいます)の代理人として、貴職作成2016年3月23日付け「ご通知」と題する書簡(以下、書簡といいます。)に対し、下記のとおり、ご回答致します。


 書簡は、2015年12月2日付け首都圏反原発連合ステートメント【鹿砦社発行「NO NUKES VOICE」に関する見解と広告掲載中止などについて】が鹿砦社の名誉を毀損するものであると主張し、削除を要請されています。しかし、当該ステートメントは、公衆に対して、通知人らが「NO NUKES VOICE」への広告掲載を中止した経緯について事実関係を説明し、一定の論評をくわえたものに過ぎず、そもそも同社の社会的評価を低下させるとは考えられません。よって、当該ステートメントが名誉毀損に該当するとのご指摘には賛同できないことから、削除のご要請に応じることはできません。
 また、書簡は、首都圏反原発連合に「会計報告」を要望しています。首都圏反原発連合としては、ご指摘を受けるまでもなく、本年4月末頃までに然るべき会計報告をすべく準備していました。ただし、鹿砦社は、首都圏反原発連合に「会計報告」を要求する立場にないことを付言しておきます。
 当職は、本件について通知人から依頼されましたので、本回答書に対する意見、反論、お問い合わせは全て当職を通して頂きたく、通知人らに対し、直接又は間接に反論すること(インターネットや雑誌記事での反論を含む)はお止め頂きたくお願い致します。
以上

2016年4月6日
通知人ら 首都圏反原発連合 篠藤操
通知人ら代理人 弁護士 神原元

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一方的な「言論活動圧殺要請」と好対照に「反原連」の野間易通は4月7日、自身のツイッターで、
「鹿砦社:首都圏反原発連合(略称・反原連)に通告書を送付!
http://www.rokusaisha.com/topics.html?group=ichi&bookid=000423 …《しかし、反原連の背後にいる「しばき隊」の暴力を恐れ面と向かって声を挙げれないのが実情です》エスエル出版会の分際で何を言う(笑)」

と、ふざけた書き込みをしている。野間は反原連の主要メンバーであることが判明しているが、彼らの一方的な発信は放置しておいて、鹿砦社だけに発言を「するな」というのは全く理屈が通らない。神原弁護士の法的支援を受けて野間ら「しばき隊」が、作家・辺見庸や、韓国人研修生らにネット上で行った人権侵害行為は棚に上げて、なにをかいわんや、である。

呆れてしまうが、この人たちは最初からそういう輩だったことを再度思い返す。

(佐野 宇)

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

『紙の爆弾』5月号本日発売!タブーなきスキャンダルマガジン!

『NO NUKES voice』第6号発刊後、昨年12月2日「反原連」は下記のように鹿砦社との「絶縁声明」をネット上に掲載した。この内容は事実を一方的に解釈し鹿砦社を著しく名誉棄損することから、鹿砦社は「ご通告」の内容証明郵便を代理人を通し「反原連」並びにその実質的代表者のMisao Readwolf氏に対し3月23日送付した。それに至る経緯と内容は下記の通りだ。

首都圏反原発連合(略称・反原連)に通告書を送付!
http://www.rokusaisha.com/topics.html

鹿砦社オフィシャルサイトより

私たち鹿砦社は、反原連と、この実質的代表者のMisao Readwolf氏に対し、代理人弁護士を通して、(1)反原連ホームページ上に長期間アップされているステイトメントが鹿砦社の名誉を毀損しているので削除すること、(2)このかん滞っている会計報告を行うことの2点について4月8日までに履行することを求める通告書を送付しました(別掲の通り)。

反原連に対し私たちは雑誌『NO NUKES voice』創刊以来友好関係にあり、また昨年1年間に300万円余りの経済的支援も実行してまいりました。

ところが突如、反原連は昨年11月25日の同誌6号発行直後の11月30日にMisao氏が鹿砦社代表・松岡に対し「内容に関し許容範囲を超えること、経緯について信義則を反故にされたこと」「内政干渉」等々の理由でメールで絶縁を通告、そして12月2日付けで絶縁声明をホームページ上にアップしツィッター等で各方面に拡散させました。

これに対する反論は、『NO NUKES voice』7号に掲載していますのでご一読ください。

反原連による手前勝手な言動に対しては、多くの方々が批判し、また私たちへの賛同の声が多く寄せられています。しかし、反原連の背後にいる「しばき隊」の暴力を恐れ面と向かって声を挙げれないのが実情です。

私たちは、理不尽な反原連による言動に対しては断固として抗議し堂々と批判していく所存です。多くの皆様方のご理解、ご賛同をお願い申し上げます。

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ご通告
                              2016年3月23日

冠省 失礼いたします。

当職は、株式会社鹿砦社(代表者代表取締役 松岡利康。以下、「当社」)の代理人として「首都圏反原発連合」(以下「反原連」とします)と、その実質的代表者であるMisao Readwolfこと篠藤操氏に対し次の通りご通告いたします。

一 名誉棄損行為

反原連は、昨2015年12月2日以来、当社が発行する雑誌「NO NUKES voice」に関する見解と、広告掲載の中止などについて、そのホームページ上にステイトメントをアップしておられます。

同ステイトメントは当社の名誉を毀損するものであり、刑法230条に該当します。遺憾ながら、かかる名誉毀損行為はすでに4か月近くにもわたっております。つきましては、ただちに削除頂きたく本書面を差し上げます。

二 会計報告の懈怠

ご承知のように、当社は昨2015年の一年間にわたり、「広告代」、「イベント協賛金」、「原稿料」などの名目で300万円余りを反原連名義の口座(城南信用金庫、ゆうちょ振替口座)に振り込んで参りましたが、会計報告を頂いたことがありません。反原連のホームページ上では、2014年7月までの収支報告がアップされてはいるものの、それ以後はありません。当社をはじめ、多くの方々からの浄財を集めていながら、会計報告がなされていないというのは、無責任かつ重大な背信行為であると言わざるを得ません。
よって、当社が入金した昨2015年1月から12月の間につきましても、会計報告をお願い致します。

 以上につきまして、本年4月8日までにご履行頂きますようお願い致します。ご履行頂けない場合は、その理由を書面にてご回答下さい。
なお当社としましては、各種法的手段を執る準備をしておりますので、その旨申し添えます。

草々

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ちなみに反原連が現在も掲載している「絶縁状」は下記URLである。
http://coalitionagainstnukes.jp/?p=7656

多額の資金援助を受けておきながらよくも、見事な罵倒ができたものだと感心するばかりだが、読者にもご一読頂きたい。鹿砦社は本気だ。この10年間は、意識的におとなしくしていたが、怒った鹿砦社はこれまで対ジャニーズ事務所、タカラヅカ、バーニング、また警察癒着企業でパチンコ業界大手アルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)をはじめとする巨大勢力を含め、返り血を浴びながらも幾多の死闘、法廷闘争を闘った経験がある。当該HPの削除及び会計報告を求めている期限は4月8日だ。

「反原連」においては賢明な判断がなされることを期待するが、万が一判断を誤った場合は「それなりの覚悟あり」と鹿砦社も受け止める。読者諸氏にもご注目頂きたい。

繰り返す。期限は4月8日だ。

(佐野 宇)

『紙の爆弾』5月号本日発売!タブーなきスキャンダルマガジン!

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

出張先の東京で年度変わりを迎えた。3月31日は年度最終日で多くの方が激務に追われていたことだろう。

この日をもって「報道ステーション」(テレビ朝日)、「NEWS23」(TBS)、「クローズアップ現代」(NHK)のキャスター(報道者)が同時に交替することが話題になっている。自宅にテレビを持たない生活者は外出先でしかテレビ放送を目にすることがない。稀に鑑賞したい番組がある時は、知人宅へ出かけるという前世紀的生活が身について長い私だが、久しぶりに自分から進んで報道ステーションを観た。

◆「キャスターは孤独です」

古舘伊知郎氏がニュース番組を長く続けることになろうとは、あの「新日本プロレス」中継での猛烈かつ講談にも似た卓越した話芸が印象に残る者としては、甚だ遅すぎる感想ではあるけれども意外であった。そういえば報道ステーションに先立つ「ニュースステーション」に「ピッタシカンカン」でのマシンガントーク、久米宏氏がメインキャスターとして起用された時にも同様の驚きはあった。

ニュースステーションの初回放送と最終回、そして報道ステーションの初回放送と古舘氏降板の最終日を観ていたことに気が付いた。報道への政府から露骨な圧力が顕在化していることは周知の事実だからこの日の番組には相当の注目が集まっていたようで、1日の東京新聞は社会面で古舘氏が番組最後に語ったコメントを掲載している。

報道ステーション、NEWS23、クローズアップ現代という3番組のキャスター(報道者)同時交代事件については多数議論や分析があるだろうから、私ごときが浅い感想を述べることは控える。

古舘氏担当最終日放送の中で、私が最も印象に残ったのは番組最後の古舘氏のコメントではない。古舘氏のコメントは予想していた範囲のもので特に意外性はなかった。観ていて少し驚いたのは、久米宏氏がニュースステーションの最終回で語った内容とかなり重なる内容が多かったことだ。両氏とも「視聴者から賛同、批判様々な声が寄せられ、それによって育てられた、批判者も含めて感謝している」旨の謝辞を語っている。久米宏氏は「小学校の時教師に『長続きしない』性格だといわれたがこれだけ長く続けられた自分を今日だけは褒めたい」と言い、缶ビールを飲んで番組の最後を結んだ。古舘氏は「キャスターは孤独です」と語った。テレビを視聴しない私にも彼らにのしかかる重圧は想像に難くない。

◆凍土壁「セレモニー」の異様な光景

それは横に置く。この日の番組の中で顎が外れそうになるほど呆れたのは番組冒頭に取り上げられた女子中学生誘拐監禁(軟禁?)事件でも、インドでの建設中の高架道路崩落事件でもない。驚愕は福島第一原発で汚染水漏れ対策として凍土壁工事が始まる「セレモニー」の異様な光景だ。技術的に不安視され、規制委員会の田中俊一委員長からすらその効果が疑問視されているこの愚策開始の光景は、あたかもロケット発射慶賀場面のように準備されていた。

ヘルメットを被った東電社員と思しき集団の中心人物が「3,2,1」とのカウントダウンに沿って壁のスイッチを押す。すると周りの人間たちが一斉に拍手を始めたのだ。どうなっているんだ!こいつらの神経は。

建物の竣工式や地鎮祭ではあるまいに、連中の「拍手」は何を目出度がっているのだ。汚染水対策は過酷事故を収束させる直接の対処ではなく、悪影響を抑える目的の副次的作業じゃないのか。人間に例えれば葬式が行われようとして段取りをしている一プロセス、しかも的外れに遺族に迷惑かつ無駄な出費を強いる、無配慮な参列者のはた迷惑などんちゃん騒ぎのようなことじゃないのか。

長く長く続く原発の葬式はまだ始まってはいない。遺体はそこにあるけれども葬式の段取りをどうするかは遺族の思惑が交錯して、どの坊さんに読経してもらうのか、密葬にするのか、社葬にするのか、香典は受け取るのか、お断りするのか、戒名にはいくらかけるのか意見の集約の見込みが立っていない。

亡くなった遺体が関知しないところで諍いは続くが、香典を受け取らないことだけは一応の合意をみた。その時に「拍手」する遺族がいるか。

あの「拍手」は原発の葬式、半永久的に続く拷問にも等しい葬式への参列を強要された人達にさらなる忍従を迫る「暴虐の図」だ。その場面を準備してテレビ画像から流させる東電の底抜けの無神経と犯罪性に顎が外れそうになった。

でも少し不安になる。あの場面テレビ画像を通して目にしていた人で、私と同じように怒り心頭に激怒した方々がどのくらいいるだろうか。テレビを通じた「日常」は私の感性からはるか遠い。だから気の短い私は少しでも不要なストレスから離れるためにテレビから離れた。でもあの「暴虐の図」すらテレビ的にはさしたる例外ではないのではないか。

また当分テレビ画面と向き合うことはない日々に戻る偏屈者の2016年度が始まった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

2011年3月11日まで、80の駅を総距離343.1kmで繋いでいたJR常磐線はその後5年が過ぎたいまも、竜田駅─原ノ町駅間および相馬駅─浜吉田駅間が運行休止となったままでいる。今年1月、水戸・いわき方面からの下り終着駅「竜田駅」とその周辺を歩いてみた。地震と原発事故で分断された鉄路の景色──。最終回の今回も、写真とともに周辺の様子を眺め歩こう。
 

この辺りは、車の音さえ聞こえずとても静かだ。しかし、この福島県道391号線の道路脇には、たくさんの原発事故関連施設が存在する。そういった施設さえ目に入らなければ平穏な様子なのだが。
 

道路脇の線量計。「0.157μSv/h」を示している。都市では騒音をデシベルで示す電光掲示板を目にするが、同じように空間線量を掲示している現状がここにある。
 

竜田駅を出発してから、ゆっくりと1時間半ほど歩いただろうか。海沿いに到着した。ここでは複数の重機が整地と思われる作業を行っている。
看板が示している通り、海岸を補修しているようだ。右手に見えるテトラポットの奥には太平洋が広がっている。左奥に見えるのは、現在運転を停止している東京電力福島第二原子力発電所だ。その裏手には常磐線富岡駅が位置していたのだが、津波に流されてしまった。どうやらこれより先に進むのは難しいようだ。駅まで引き返し、線路の反対側を歩くことにしよう。

竜田駅から15分ほど西へ行くと楢葉町役場がある。そのとなりに食堂があるということを駅務員の大須賀さんから教えてもらっていたので、そこで昼食をとることにした。

食堂に入ると「ごめんなさい、ご飯が無くなったのでラーメンで良ければ!」と声をかけられた。やや昼時を過ぎているが、作業服を着た客が3組と夫婦客が1組。繁盛している様子だ。声をかけてきた女性店員に「忙しそうですね」と答える。
店員は「今日は休日だから、このへんでやってるのウチだけなんですよ」「ここから先にはお店ありませんし」と言う。この食堂は国道6号(福島県浜通りを南北に貫く道)に面しており、第一原発からは直線距離にして15km以上離れている。避難指示を解除されたとはいえ、平常とは言い難い現状だ。
 

楢葉町立楢葉中学校の校舎。現在は使用されていない。同校はいわき市中央台の仮設校舎にて教育活動を行っている。
 
そろそろ帰らなければいけない。竜田駅に戻り、ひとつ残されたホームに到着する車両を待つ。降りてきたのは2人。乗車するのも2人。避難指示が解除され、営業を再開した竜田駅。2019年には全線を開通させるという常磐線。これらをもって「復興」というが、その言葉は浮き足立っている。歩かなければいけないが、歩きすぎてはいけない。時に足を止めなければ、路傍の草花は色を喪うのだ。
 
いわきへ向かう常磐線上り列車の車窓から太平洋側を望む。
所々にフレコンが置かれている。
空が広い。
 

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
個展情報 : 大宮浩平写真展「態度」 / 新宿眼科画廊 /
2016年4月15日~2016年4月20日 12:00~20:00(最終日のみ12:00~17:00)/ 入場無料
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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』!

2011年3月11日まで、80の駅を総距離343.1kmで繋いでいたJR常磐線はその後5年が過ぎたいまも、竜田駅─原ノ町駅間および相馬駅─浜吉田駅間が運行休止のままでいる。今年1月、水戸・いわき方面からの下り終着駅「竜田駅」とその周辺を歩いてみた。地震と原発で分断された鉄路の景色を3回連載で紹介する。前回は駅構内を見回した。今回は少し外に出てみよう。


駅舎の外にあるバス乗り場からは、常磐線の代行バスが発着している。
1時間15分をかけて福島県南相馬市に位置する原ノ町駅へ向かうのだが、途中に所在する常磐線の駅には停車しない。
 


福島第一原発付近を通過するため、放射線被曝に関する注意事項等が記されている。
 


駅正面の学習塾は荒廃しており、明らかに無人だ。
駅付近にとどまっていた半時間に見かけた人は、駅務員と乗客それぞれ1人づつ。
バスが発着する駅前広場と小ぶりながら設備の整った駅舎からは、もっと多くの人々に利用されていただろう印象を受ける。
 


線路上を歩いて北上しよう。と考えたのだが、それは叶わなかった。
下り方面の線路が枯草に覆われており、こんな具合だからだ。
佇む黒猫は、左奥に見える鎮守の森から抜け出してきたのだろうか。
 


駅のすぐ近くを走る福島県道244号線に入る。同線を1kmほど北上すると、北東に伸びる県道391号線に入ることができる。同391号線を500mほど歩いたところに「環境省波倉仮置場現場」を指示する表示を見つけた。陽光を受けた真新しい看板は違和を感じさせる。
 


391号線を歩いていると、右手に仮設住宅風の建物を発見した。用途を知る手がかりとなるような表示は見当たらない。中央のバンは沖縄ナンバー。岩手やいわきに加え、横浜ナンバーの乗用車も停まっていた。
写真左奥の長屋風建物にある、窓口を兼ねていると思われる小部屋には20代半ばの男性。どんな施設なのかと訊ねると「いろんな企業の方が泊まる所です」と受付窓を空けずに回答された。
「どのような業種の方が泊まるんでしょうか」
「いろいろです」
「除染作業員の方でしょうか」
「まあ、そういうことですね」
「この先で除染作業を行っているのですか」
「行ったことがないので分かりません」
ぶっきらぼうではあるが、敵意なく答えてくれた。先へ歩いてみよう。
 


「ストックヤード」とある。画面奥に見えるフレコンバッグと合わせ、除去された汚染土壌の一時保管場所だろうと推察される。391号線沿いにはこのような施設がいくつも存在した。
 


こちらの施設看板には「鹿島」「環境省」「廃棄物処理」の文字が見える。(つづく)
 

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
個展情報 : 大宮浩平写真展「態度」 / 新宿眼科画廊 /
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東京荒川の日暮里駅から千葉、茨城、福島の太平洋側を経由して宮城の岩沼駅までを結ぶJR常磐線──。
2011年3月11日まで、80の駅を総距離343.1kmで繋いでいたこの路線はその後5年が過ぎたいまも、竜田駅─原ノ町駅間および相馬駅─浜吉田駅間が運行休止となったままでいる。

今年1月、水戸・いわき方面からの下り終着駅「竜田駅」とその周辺を歩いてみた。
地震と原発で分断された鉄路の景色を3回連載で紹介する。


いわき駅から常磐線に乗車し、30分ほどで「竜田駅」に着いた。同駅は1909年(明治42年)、貨物駅として開業し、1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化に伴い東日本旅客鉄道(JR東日本)の駅となった。2011年(平成25年)、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け休業したものの、2014年(平成26年)には営業を再開。当時、同駅が所在する福島県双葉郡楢葉町はその全域が避難指示解除準備区域に指定されており、避難区域内の鉄道路線としては初の営業再開だった。2016年(平成28年)3月現在、水戸・いわき方面からの下り終着駅である。
 


駅務員の大須賀さんにお話を伺ってみた。
「以前は駅周辺に7000人ほどが暮らしていました。現在は500人くらいだと聞いています。お年寄りが多いですから、ほとんどの方は避難先で暮らしているのでしょう。」
1日の利用者数は(乗降者合わせて)約70人。事故前と比べると半分以下だそうだ。
 


終着駅になったこと、利用者数が減ったことなどにより、3つの線路のうち2つはいまも使用停止中。
残された3番線に到着するのがいわき方面への下り列車だ。(つづく)

▼大宮浩平(写真家)
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東日本大震災・東京電力第一原子力発電所の事故から5年。2016年3月11日(金)、福島県郡山市で催された集会「3・11 反原発福島行動」の現場に足を運んだ。

10:30。開会を前にJR郡山駅前にてプレイベントとしての演説が行われていた。横断幕を背に力強く声を張る女性。地面に置かれた拡声器から響く声は、広々とした駅前広場のどこからでも聞くことができる。これを耳にした人々の反応はどうか。と、辺りを見渡すも、立ち止まる人の数は極めて少ない。写真を見ていただければ一目瞭然、この様子だ。

郡山駅は利用者の多い駅であるにもかかわらず、である。原発事故後の福島県は異常であり、その異常性は現地に住まう人間であれば必ず感じ知ることのできるものだ(と信じている)。であるならば、無関心の表れとして片付けるには極端にすぎる風景である。これはなにか、現地だからこその結果なのではないか。現地であるがために生じる反対運動の困難というものがあるのではないか。そんな思いと共に眺めていた。

12:20。「3・11 反原発福島行動」のメイン会場である開成山公園野外音楽堂に到着。立派な会場に集まった多くの人々と幾種もの赤色旗が、「戦い」の様相を演出している。駅前とは打って変わった賑やかさだ。

ギターの弾き語りやアルトサックスの演奏を経て、演説者が順にステージでマイクを握る。驚いたのは、演説への相槌だ。「ナンセンス!」とか「(短く)そうだッ」といった掛け声を、ステージからの言葉の間に差し挟む。会場に集まる人々を眺めると、なるほど若年層にくらべ圧倒的に老年層が多い。そして赤色旗のほとんどが労働組合のものだ。チラシを見てフラッと足を運んだ一般人というのは少ないのではないか、という印象である。

同じ思いを抱いた仲間が集まり、交流の中でその思いを固め、より強くしてゆく。これは素晴らしいことだし、非難するには当たらない。しかし、社会を変革するには数の力が必要だ。だとすれば、国策に圧殺されつつある反原発の主張は、意を異にする相手にこそ伝えるべきものではないだろうか。この点では残念ながら、郡山市の「3・11 反原発福島行動」から、やや閉塞的な感を得たのも事実である。

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

3・11から5年。正直あの災禍に見舞われながら、一体この島国の為政者は何を学んだのだろう、と無力感に打ちひしがれた5年間であった。なにが「花は咲く」だ。あんな空疎な歌詞とメロディーで被災者や原発事故の被害者の心が癒されるとでも皆さんは本気で思っているだろうか。私はあの歌は権力者による「震災」被害隠し以外の何物でもないように感じる。抗うことなしに「花」など咲きはしない。

高台への移住を前提とした東北の復興は予想を超える困難の前に、移住を諦め、他の地域への人口流出が進んでいる。津波被害地各地、とりわけ女川町ではその傾向が顕著である。

◆動かないはずのものが動き出した──高浜原発「仮処分決定」の福音

ああ、何もできずに、何も前に進まずに5年を迎えるのか、と明るい気分になれずに悶々としていたら、福音が飛び込んできた。3月9日大津地裁(山本善彦裁判長)は高浜原発3、4号機の運転停止を言い渡す仮処分の決定を言い渡した。稼働中原発の運転停止命令は史上初であるし、仮処分の中では「原子力規制委員会」が設けた「新規制基準」が合理的なものではないとする趣旨の言及もある。

福井地裁で同様の運転差し止め仮処分の判断を下した樋口裁判長の書いた差し止め理由は、我々を良い意味で大いに驚愕させてくれたが、大津地裁山本裁判長が指摘した、「新規制基準」への疑義、稼働中原発停止の判断、はこれまでの司法判断を大きく凌駕するものであり、極めて高い評価に値する。動かないはずのものが動き出した。

◆「諦めない」活動が地殻変動を起こす

私自身、現地に数回通い、目の前で(その時は知らされなかったけれども)事故が発生していた高浜原発(4号機)をこのまま運転し続ければ、高い確率で「破局的事故」が起こっていただろう。関西電力は懲りもせず、さらに古い1、2号機の40年超えの再稼働まで目論んでいるが、頼む。頼むから日本を終わらせないでくれ!

司法は所詮、国家の一機関だ。マスコミは所詮スポンサーの言いなりだ。でも意志を持った個人や集団は違う。「若狭の原発を考える会」(木原莊林会長)はこの2年間で70回以上高浜町へ関西から通って、地道なチラシ配りを中心とする様々な取り組みを行なってきた。京都から片道2時間弱を自らハンドルを握り(多くは70歳前後の方々)は、最初誰にも相手にされない中で、罵声を浴びせられながらも「アメーバデモ」と称した数人によるチラシ配布や、地元住民との対話を続けてきた。

開始から2年、高浜町では住民の反応は全く変わっている木原代表も「楽しくないとこういう運動は続きませんから」と笑顔で手ごたえを語る。

9日大津地裁の仮処分決定は、司法判断である。しかしそれを導く筋道を作ってきたのは、このような地道な活動を諦めずに続ける人たちの活動があったからではないだろうか。一見関係なさそうでその両者はどこかで確実に結びついているように感じられてならない。全国各地で様々な運動や原発立地で闘う人たち執念の賜物だ。

相次ぐ再稼働申請、原発輸出など愕然とするような事実の前にも、全く別な地殻変動は確実に起きている。私たちはまだ負けていない。

福島および周辺の被害者のみなさんに寄り添いながら、私たちは原発全機廃炉を勝ち取るまで、絶対に諦めない。ほらここに光明があるよと示してくれた大津地裁の判断とそれを導いた多くの方々の地道な活動に深い敬意の念を示したい。追悼と哀悼をささげるべき日に、私たちは同時に「脱原発闘争」を最後まで戦い抜く決意を新たにする。

私たちは負けはしない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

いつからこの言葉が使われるようになったのだろうか。社会運動が総体として弱体化し、共有できる根本概念を失ったことの自白として「シングルイシュー」は登場してきたような印象がある。

私は偏屈だ。偏屈だから「共有できる根本概念」を有しない運動や団体とは共同行動することを好まない。「シングルイシュー」は私のような「偏屈者」の居場所を狭める効果があるように感じる。

私は天皇制や「日の丸」、「君が代」を絶対に拒否する。無理矢理「君が代」斉唱を強いられる場所に居なければならないことを強制された時には、敢えて起立し一人で「インターナショナル」を歌う。誰も仲間はいない。数百人の中で私一人が「インターナショナル」を歌う。滑稽といえば滑稽極まりない。

◆「ノリノリ」コールが「本気で止める」力になるのか?

『NO NUKES voice』は「脱(反)原発」を基軸に据えた一見「シングルイシュー」雑誌のように思われるかもしれないが、そうではない。「脱(反)原発」を目指す闘いには「反戦」の闘いや「反安保」、「改憲反対」、「反差別」等と必ず繋がる根本概念(思想)がある。私(たち)はそのことが重要だと考える。そして長く社会問題を闘ってきた人々の間では、いちいち確認をしなくてもそれは黙約として確実に成立する。だから誌面には時として一見「原発」とは直接関係ないのではないかと思われる記事も掲載される。

長く闘っていない若者の中にも、エッセンスを共有してくれる頼もしい人々がいることを私(たち)は知っている。ただし彼らはその世代にあって圧倒的に少数だ。だからよけいに貴重な存在であり連帯したいと思う。

他方、私個人はSEALDsあるいは彼らを取り巻く大人を嫌悪する。私は『NO NUKES voice』発行人の松岡氏と異なりSEALDsあるいは彼らを取り巻く大人を1ミリも評価しない。その理由はSEALDsが明確に「憲法9条改憲」を掲げているからだ。「安倍を倒せ」と言いながら「9条改憲」を主張するSEALDs。参加している学生諸君全員の総意ではもちろんないだろ。だが『民主主義ってなんだ?』の中で交わされている牛田悦正氏と高橋源一郎氏の会話でこの2名は明確に「9条改憲」主張している。いいのか? SEALDsの学生諸君?「戦争反対」を標榜するものが、戦争肯定を準備する改憲に賛同する。これは矛盾ではないのか?

また、彼らとしては真剣なんだろうけども、お祭りかコンサートのような動きが気持ち悪い。『NO NUKES voice』6号で女帝様は「市民運動に対する感覚が共産党の人の中でも変わってきているとは感じています(中略)例えばSEALDsがコールすると、共産党系の人たちは結構ノリノリで参加する」と語っている。この姿が気持ち悪く胸糞悪いのだ。やたら丁寧に作られた(なぜか必要以上に英語の多い)プラカードを掲げた若者たち。「赤旗祭り」にSEALDsが呼ばれて、舞台に上り余興でもやったのなら解らなくはないけども、現場は「安保法制」(戦争推進法案)反対の集会だろ。何が「ノリノリ」だ。怒(いか)りはないのか? 高揚感があればそれが「本気で止める」力にでもなると本気で思っているのか。

「ノリノリ」はコンサートやライブでやって下さい。命を懸けた(本当に戦地に連れて行かれるのは私たちのような年寄りじゃない。若者なんだ)闘いだと思ってその場に参加した人の中には底抜けの絶望を味わった人だっていただろう。実際実力で止めたいとの思いを抑え切れず行動を起こした若者がいたことも事実だ。

◆激しい論戦や議論が疎まれる世情に挑戦する『NO NUKES voice』という起爆剤

『NO NUKES voice』の役割は「脱(反)原発」実現のため、そして「戦争を阻止」し「憲法改正」をさせないために様々な方に登場頂き、何の制約もなく語って頂く。それにより更に広い議論を喚起することにある。換言すれば激しい論戦や議論が疎まれる世情に挑戦するのが役割だと心得ている。しかし、多彩な議論は「あらゆる意見を我々が肯定する」ことを意味するわけではない。

誌上には様々な方々にご登場頂くが、その方々の見解に異議があれば私(たち)は遠慮なく反論をぶつける。時には熾烈な批判だって紙面で展開するだろう。それに対する妥当な内容であれば「反論」の機会も設ける。それが議論の世界における最低限の約束だ。私たちはそう思う。

編集に関わる人間の意見だって統一されている訳ではない。私は当初より反原連の孕む問題に懸念を抱いてきたが、松岡前編集長は反原連に一時強い興味を表明し具体的に支援もしていたようだ。見解の相違は我々の内部にだって存在する。

だからと言って私たちは編集に関わるライターや写真家を「見解の相違」でご遠慮頂いたり、まして「排除」したことなど一度もない。しかし「見解の相違」とは全く次元の異なる「裏切り行為」を働いていた姑息な人間が存在し、自ら『NO NUKES voice』を去っていった事実はある。利己主義者との対話は成立しない。裏切り行為を私たちはことさら攻め立てはしないけれども、どこかで私たちに対する誹謗でも始めれば、私たちは言論において容赦ない総攻撃に出るであろうことを予告しておく。

『NO NUKES voice』7号は6号よりさらに精鋭化した議論満載だ。真面目に長年「脱(反)原発」運動に関わってきた人々を軽々に扱う「反原連」への徹底的な批判が展開される。だが、単視眼ではバランスを欠くので不当逮捕のご経験がある阪南大学下地真樹准教授に、社会運動への俯瞰的ご意見を伺っている。

どう贔屓目に見ても「脱(反)原発」運動は一時の勢いを失いかけている。私たちはだから起爆剤を投入する。闊達な議論と運動の持続、そして原発全廃のために。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』7日発売!

福島原発事故5年の現実と社会運動の行方を総力特集『NO NUKES voice』Vol.7!

昨年10月25日に行われた報告会「玄海原発再稼働をSTOP!させるには」(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)では、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の代表・原告団長である石丸初美さんがはつらつと活動報告した。前回に続いてその内容抜粋の後編を紹介する。なお石丸さんたちの闘いの詳細については2月25日発売の『NO NUKES voice』7号にインタビュー記事が掲載されたので一読していただけると幸いだ。

「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」代表・原告団長の石丸初美さん

◆裁判所にさえ「企業秘密」として情報を出さない九電

今日、お配りした真っ黒塗りの資料にありますが、九電は私たちが情報公開を求めても、「企業秘密」として裁判所にさえ情報を出しません。九電は川内原発再稼働に集中させていた社員を玄海シフトという言い方で230人を玄海によこしています。

3・11前から原爆も原発も同じだということを聞いておりましたが、事故が起きればどうなるだろうかという心配しかありませんでした。しかし原発事故は、3・11の被害は想像をはるかに超え、その被害の甚大さを知り、今も信じられないという思いです。二度と地球上に原発事故を繰り返してはならないと思います。

岸本町長は原発を早く動かしてほしい、早く早くと、本当に金の亡者のようにほかの言葉を知らないのかと思うような言葉しか発しません。田中俊一原子力規制委員長も自ら「安全とは言わない。原発事故は起きますよ」と何度も私たちは聞かされていると思います。

◆再稼働の説明会はこれからもするつもりはないと断言した九電瓜生社長

事故が起きる前提の川内原発再稼働は犯罪行為だと思っております。もし玄海原発で事故が起きたらどうするという避難計画こそ、被害を受ける私たち住民に事前に説明があるのが当然で、そのことは重要だと思っております。私たち佐賀県民も、福岡県民の皆さんも地震が起きて原発が暴発すれば、全部被害者になるわけです。
しかし「住民にはなるだけ知らせないでおこう」としているのが今の避難計画です。九電の瓜生道明社長は、住民への説明会について、「大上段に構えて説明するより、顔と顔をつき合わせて、フェイストゥフェイスで住民の方々を解きほぐしながら話すほうが理解が高まる」として玄海原発の再稼働の説明会はこれからもするつもりはないと断言しております。

九州電力の原発事業は国が保証人です。こんな会社はどこにもありません。企業が起こした事故ならその企業が全面的に責任をとるのが当然です。しかし電力会社だけは極めて特別扱いで、法律が守ってくれます。事故の賠償は国民が払ってくれます。マスコミはこのことを伝えません。この理不尽な政治状況を私たちが伝えるしかないと私は思っております。

◆原子力事業者の責任記述は70頁の災害対策指針の中でたった5行

70ページ近くの『原子力災害対策指針』というものがありまして、何度も何度も都合のいいように、私たちにとっては都合の悪いように改定されている原子力災害対策指針の2ページに『原子力災害及び原子力事業者の責任』ということがたった5行あります。5行の最後の2行を読みます。

「原子力事業者が、災害の原因である事故等の収束に一義的な責任を有すること及び原子力災害対策について大きな責務を有していることを認識する必要がある。」
認識するだけでいいと書いてあるのです。私たちは、避難計画は加害者である九電に対して、「あなたたちは加害者であるのにどうされるのですか?」聞きました。そうしたら「支援します」と。「当事者が支援ということじゃ間違っているじゃないですか」とと問いただすと「あっ、それはごめんなさい」と。じゃあほかの言葉で回答してくださいといったところ、回答はまだです。都合のいい言葉が見つからないようで、返ってきておりません。

◆事故時の食べ物の基準は2000ベクレル/Kg

私たちは2014年から、全国の皆さんと連携して原発災害の避難計画などを中心に国、県、市町村を回って「福島の事故を学び国民の生活を守ってほしい」と交渉をやってきました。現在、進められている今の原子力避難計画は、責任を国がとらない。地方自治体や学校や幼稚園、保育園、病院の管理者等々に押し付け、日常生活では考えられないような500マイクロシーベルト毎時いくつという、そういう過酷な環境の中に「屋内退避してください、国が命令するまでそこにおってください」という、国民を被ばくさせる計画となっております。原子力対策指針にはなんと書いてあるか。

「事故時の食べ物の基準は2000ベクレルパーキログラム」となっております。この世の中にないプルトニウムまで記載されております。私はこれをみてとてもひどいと思って、環境省の原子力規制庁に電話をしました。「これは本当ですか」と。そうしたら回答は「その通りです、書いてある通りです」と。

「じゃあ私たちにその2000ベクレルの根拠を教えてください」と言ったら、15分くらい保留されたまま「あと2時間待ってください。即答できませんから」とのことで2時間後に電話しました。そうしたら回答はないですよ。ここに書いてある通りですよ、「みなさんを被ばくさせますが、本当のことですから」ということでしょう。向こうは弁解ばかりです。「1日中食べているわけではないから、そんなに心配する必要はないと思います」という言い方です。「なるだけ外に出さないように頑張って、フィルタベントでしますから」と。

「なんでプルトニウム食わにゃならんのですか」というのにそういう回答にもならないことを繰り返す。国民は不在です。ぜひ皆さんも、そこに規制庁の番号が書いてありますので、電話をしてください。

玄海原発や川内原発が事故を起こしたとき、2000ベクレルを、そういうおにぎりを食べにゃいかんのですか、電気のためになんで私たちが被ばくしなければならないのですか。私は本当に腹立っているのです。マスコミは伝えない、政治も命を守ってくれない市民の私たちが広報するしかありません。

今、ご説明した主張を一人でも伝えられると思って200回くらい原発の悲惨さを伝える市民レベルの座談会をしてきました。非核三原則なんてまったくのウソです。世界一厳しい規制基準なんてとんでもない。議会制民主主義なんてまったく機能していない、三権分立など表向きだけで。私はまだまだ、一部しか、このひどい国のことをわかっていないと思います。自分で知ろうとすること、わからなければ聞く。そしてわかったら一人でも伝える、そういう運動を今からでもやっていこうと思っております。(了)

★玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会HP http://saga-genkai.jimdo.com/

(小林俊之)

『NO NUKES voice』第7号!総力特集3.11福島原発事故から5年─その現実と社会運動の行方

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