屁世滑稽新聞(屁世27年3月5日)

屁世滑稽新聞(屁世27年3月5日)

アベッチサンの鬼退治……の巻

犬腰犬介アナ 「こんばんワ! イヌエッチケー“ニュースセンター9”。キャスターの犬腰犬介(いぬこし・けんすけ)です。」
犬飢ゆうひアナ 「同じくキャスターの犬飢ゆうひ(いぬうえ・ゆうひ)です。」
犬腰犬介アナ 「まずお約束の、いつものシュプレヒコールから始めましょう。……アベッチサン!万歳(マンセー)!」
犬飢ゆうひアナ 「アベッチサン!マンセー!」


犬腰犬介アナ 「最初のニュースです。……偉大なるイヌエッチケー会長さまであられる揉威斬人(もみい・かっと)将軍さまのご命令で、この番組では毎週『勝利の記録』コーナーを放送しております。」
犬飢ゆうひアナ 「『勝利の記録』は、前の週に放送された大本営の戦果発表や現地での実況録音などをまとめて、毎週月曜日のこの番組内で放送されており、国民戦意を高揚に貢献しております。」
犬腰犬介アナ 「本日の『勝利の記録』は、あの憎むべき鬼畜米英の首魁であるエゲレス王族の、ウィリアム王子を日本に呼びつけて、思いっきり放射能に汚染させ、さらに子供たちの“鬼畜一投一殺”ボール投げの標的にしたという、帝国臣民にとってはまことに痛快な快挙のご報告であります。」
犬飢ゆうひアナ 「これほどの快挙を実行しえたのは、まさに大将軍アベッチさまの威徳でありますワネ。」
犬腰犬介アナ 「ふたたび大将軍アベッチさまを讃えて万歳三唱いたしましょう!」
犬飢ゆうひアナ 「よっしゃ! アベッチサン!マンセー! マンセー! マンセー!」


犬腰犬介アナ 「では、きょうの『勝利の記録』です。」
犬飢ゆうひアナ 「ちょっとその前に……」
犬腰犬介アナ 「なんですか? 台本にないですけど?」
犬飢ゆうひアナ 「今回もあんたの手が邪魔ですけど……」
犬腰犬介アナ 「ケンチャナヨ~っ! 将軍さまからの御指示でないから今回も無視ね。……さて『勝利の記録』に行きましょう。八百田嘘記(やおた・うそき)記者に伝えていただきます。八百田さんどうぞ!」

★          ★          ★

八百田記者 「ハイ!八百田でんがな! ハイハイハイ! ちょうど……あっ! ちょうど今、今週の『勝利の記録』の“完パケ”が入りましたで~! ほな行こか~!」
犬腰犬介アナ 「……えっ? 完ハゲがどうしたって? ……えっ、ちがうの? ……えっ、なんだおい! 今までパッケージ作ってたのかよ、ホントにイヌエッイケーエンタプライズは能なしぞろいだな~おい! 定年退職したジジババばかり飼ってる利権企業だから、うちら神南本店の足ばかり引っぱりやがって!」
ディレクターの怒声カットせずに入る 「イヌスケこの馬鹿ヤロー! マイク入ってんだよ馬鹿! 会社の悪口いうな馬鹿!」
犬腰犬介アナ 「あっ! ……では今週の『勝利の記録』、ごらん下さい。(涙声)」

★          ★          ★

糸居九郎ナレーター 「ゴーゴーゴー、糸居九郎! 満州の新京(シンキン)・ハルビン股にかけ、京都放送、それでまたニッポン放送と、あっちこっちで苦労を積んできたニッポン初の本格DJ・糸居九郎がお送りする、ほとんどライブの戦争宣伝番組、『勝利の記録』っ! いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン! (BGMは軍艦マーチ) ……さて今回はわれらが大将軍さま、アベッチサンが、ブリテン王子のウィリアムズを、われらが絶対防衛圏である本土に誘い込み、ボッコボコに叩きのめしたという痛快な戦いの報告であります! その報告に入るまえに、帝國(ていこく)臣民のリスナー諸君に一曲きいて頂こう! 鬼畜米英は、かように堕落した音曲(おんぎょく)に酔い痴れているから、わが帝國との戦争で負けるのである! その曲とは、ビートルズの『エイトデイズ・ア・ウィーク』、邦訳すれば“月月火水木金金”という英国の鬼畜どもの勤労歌なんだから、日英かくも真剣さが違うのかとビックリであります!」

英國の「ゴキブリ連中」などと自称する「The Beatles」なる不良どもが
連中の言葉で『月月火水木金金』を唄うと、かくもふざけた作品となる。
これは最早クラシツクのやうな洗練された音楽とは到底言へない。
かういふことだから英國は今回の世界大戦で大日本帝国に負ける運命にあるのだ。

糸居九郎ナレーター 「さて本題に戻りましょう。このたび、わが國(くに)と交戦中の“連合国”の一端をなす大英帝国の、なんとウィリアム王子がじきじきに、わが帝國を訪問したいと言ってきたのであります。ウィリアム王子は王立英國軍の兵士に志願した男であります。かの國ではこんなふうに貴族が兵隊に志願するのを“ノブレス・オブリージュ”と言うそうで、大昔に野蛮な戦いで勝ってそれで貴族になれたのだから、戦争がおきたら貴族の息子が兵役に就くのは当然だとかいう、なんともトチ狂った発想であります。そんなことしたら、せっかく築いた巨万の富を継いでくれる跡継ぎが戦死して居なくなってしまうのに、毛唐はそんなことすら思い至らないのであります。その点、わがニッポン帝国はエラい! 貴族皇族の皆さまもたしかに兵役にはお就きになるが、それは名目だけのもので、危険な前線には決して出ていかない。前線は、百姓とか、都会の魔窟で低賃金労働に甘んじている賃労働家庭の若者とか、世間じゃ使い物にならない大学生の青臭い若者とか、そういう連中に戦わせてきた。それがニッポン帝国の英知でありまして、この点は明治維新の時からカネ儲けの仕方を学んできたアメリカ合衆国の支配層の生活信条を、しっかりと踏襲しておるのであります。
さてここで、帝国臣民のリスナー諸君に一曲きいて頂きましょう! 鬼畜米英はかように堕落した音曲に酔い痴れているから、わが帝国との戦争で負けるのである! その曲とは、ランナウェイズの『チェリーボム』、邦訳すれば“同期の桜”という米国の鬼畜どもの同窓歌なのであるから、日米かくも真剣さが違うのかと驚嘆せざるを得ないのであります!」

米國の「脱走者ども」などと自称する「The Runaways」なる不良女子どもが
連中の言葉でいう『同期の桜』を唄うと、かくもふざけた作品となる。
これは最早クラシツクのやうな洗練された音楽とは到底言へない。
そもそも新興国のアメリカ合衆國にはクラシツクすら存在せぬのである。
かういふことだから米國は今回の世界大戦で大日本帝国に負ける運命にあるのだ。

糸居九郎ナレーター 「さて本題に戻りましょう。イギリス政府からウィリアム王子の訪日希望の連絡をうけた我らがアベッチサン政府は、アベッチサン大将軍じきじきにウィリアム王子と会見し、その場で『もし福島訪問を望むのなら、現地でピカを食え! その気がないのなら偽善の見世物などまっぴらだから日本に来なくてヨロシイ! イエスか? それともノーか?』と厳しい態度で腑抜けた王子に決断を迫ったのであります。 この真剣勝負のような会見は、まさに今からちょうど73年まえ、真珠湾奇襲の成功から3ヶ月たった昭和17年、すなわち1942年の2月15日に、帝国陸軍の山下奉文(ともゆき)大将が、シンガポール攻略に成功して宿敵連合軍の英國軍司令官・アーサー・パーシバル中将と会見を行ない、『イエスかノーか』と降伏を迫った逸話を彷彿(ほうふつ)とさせるのであります。」

日本を訪れたウヰリアム王子の一行に対して、
我らがアベツチサン大将軍は「福島に行くならピカを食え!
イエスかノオか!」と迫り、ちやうど今から七三年前の戦時下、
山下パアシバル会談で見せた日本の破竹の強さを、いま再び
英國に示したのであります。

糸居九郎ナレーター 「事前の会見でウィリアム王子にピカを食うことを確約させたアベッチサン大将軍さまは、その後、東京から福島までウィリアム王子の訪日団を徒歩で行進させたのであります。ウィリアム王子もこの試練によく耐えた! 敵ながらあっぱれであります。ここでまた一曲聴いていただきましょう、今度はトルコの軍楽隊の行進曲であります。イギリス王子も、楽器のひとつでも持参しておれば、悲惨な行進をせずに済んだでありましょうに……。こういうところに、おのおのの文明が育んできた文化の奥行きや深さの違いが現れるのであります。じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」


英国皇族の御一行も、このトルコの軍楽隊のやうに何か楽器のひとつでも
持っておれば、福島までの惨めな旅程を歩まずに済んだであろう。

アベツチサン大将軍さまの命令一下、徒歩で福島に向かう
英國ウヰリアム王子とその部下たち。王子らが履く粗悪な
英国製短靴はすぐに壊れて使い物にならなくなつたが、
「セカセカ歩け!」の叱咤を受けてなんとか福島に辿り着いた
英國皇族だつたのであります。

糸居九郎ナレーター 「さて、福島に到着したウィリアム王子ら御一行は、例によって幼い子供たちが遊んでいる場所を慰問したのであります。マスコミ報道に乗っけて庶民の安心やら賛同やらをとりつける“戦略的メディアイベント”の実施においては、子供とか動物のような“なごみキャラクター”を用いた見世物が絶対的に有効であり、必要なのであります。なにしろこれは、ナチスドイツがユダヤ人強制収容所を正当化するために利用した宣伝手法ですからねぇ。……そんなわけでアベッチサン大将軍さまとウィリアム王子は広告代理店の定石を踏まえて、チビッコたちが遊んでいるスポットを訪問したのでありますが、ここでハプニングがありました。……なんと、チビッコたちは、子供らに愛想よく接近したウィリアム王子を警戒して、その場にあったボールを投げつけたのであります。節分からほぼ一か月たった後のことではあったけど、福島の賢明なチビッコたちは、いみじくも鬼畜の親玉に、ボールを投げつけて撃退の意思を示したのであります。さすが日本の子供たち! あっぱれであります! しかもこの子供たちは、敵国イギリスの王子に、金魚の糞のようにくっついてヘラヘラとお愛想わらいをしていたアベッチサン大将軍さまにも、抗議のボールを投げつけたのでした。……独裁者の本性を、その場で直感的に見抜いてボールを投げつけて撃退した子供たちの感性の鋭さ! これこそが日本の宝であります。
……ここでまた一曲、聞いてもらいましょう! 大英帝国に乗っ取られて尻の毛まで抜かれてきたけれど、独立して独自の文化を育んでいるカリブ海の島国・ジャマイカのポップスター、ボブ・マーリーの大ヒット曲『アイ・ショット・ザ・シェリフ』です。直訳すると『オレが撃ったのは警官だよ』ってことです。……これは、ニッポンでいえば岡っ引きのような下っ端の警官を正当防衛で撃ち殺してしまったけれど『警察署長を射殺した』などと大げさにデッチ上げられて重罪にされた男が、我が身にふりかかった冤罪を訴えた歌であります。……でもまあ、お役人だというだけで無茶苦茶に権力を乱用する奴らには、鉛のボールでも撃ち込んでやったほうが世のためになるというのは、世界普遍の真理であり、小学校に上がるか上がらないかの幼児でさえ知っている自然の法理なのであります。……これを教えてくれたウィリアム王子の訪日は、まことに有益だったと言えましょう。……じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」

大英帝国の植民地だったジャマイカの、大衆歌謡の王子であった
ボブ・マーリーの『アイ・ショット・ザ・シェリフ』。自分を殺そうとした
警察の下っ端をやむなく成敗したけど、エライ人には手を出してないぞ、
と冤罪を主張する正義の歌であります。

第二次大戦時に獨逸のヒトラア閣下が宣伝相ゲツベルスに
作らせた宣伝映画のように、今回の英國皇族の福島訪問でも
我らがアベツチサン大将軍は幼気な子供たちが愉しく遊ぶ様子を
ウヰリアム王子らに見せつけたのであります。子供たちは
「鬼畜米英」の実物を目の前にして、手にした軟球を「鬼畜」
に投げつけて愛国心旺盛な闘志を自ら示したのであります。
更に子供の天才的嗅覚は邪悪な偽善者をも見事に嗅ぎつけて
ボオルを投げて排撃したのであります。

糸居九郎ナレーター 「アベッチサン大将軍さまは、ウィリアム王子が福島県訪問を終えた直後に、記者たちの前でこう語りました――『殿下の福島訪問は東北の被災者に勇気を与えていただいた。福島のおいしい食材を堪能(たんのう)していただきたい。風評被害を払拭(ふっしょく)する上で大きな力になる』。……これで明らかなように、アベッチサン大将軍さまは福島県の食材の放射能汚染という、もはや隠しようのない現実に、『風評被害』という奇妙な呼び名をつけて、それを払い拭(ぬぐ)うための道具として、英國の王子を利用したのでした。自国の恥ずべき現実をごまかすための“煙幕”やら“道化役”として、よその国家の皇族とか王子とかを利用した国が、これまでどこにあったでしょうか? アベッチサン大将軍さまは、あえて未曾有の蛮勇に踏み出し、それまで世界の歴史で類例のなかった“他国の皇族を汚名ぬぐいの雑巾(ぞうきん)”として使うという勇気ある行動を実行したのです。……なんと勇猛果敢な行為でありましょうか!」

鬼畜英國の皇族が這々(ほうほう)の体(てい)で退散した後、
我らがアベツチサン大将軍は今回の歓迎行事を勝利的に総括する
声明を発表したのであります。
それによれば「我が帝国の名誉を汚す風評被害を払拭するボロ雑巾として、
英國の王子を掃除の道具に使ってやつたワイ、あゝ愉快愉快!」という
痛快なものだつたのであります。我らが大将軍アベツチサン万歳!
神よアベツチサンに御加護を授けよ!

糸居九郎ナレーター 「……以上が本日の『勝利の記録』であります。英國のウィリアム王子をボロ雑巾のように利用したアベッチサン大将軍さまが、大英帝国を滅ぼす日はきっと遠からずやってくるでありましょう。だって一国の皇族をゾウキン扱いにしたのですからね。これほど痛快な外交があるでしょうか? ……ではリスナーの諸君、最後にウィリアム王子のおバアちゃんのことを唄ったビートルズの曲を聴いていただこう。……『女王様はかわいいお嬢ちゃんだぜ、めったにしゃべらないスケだけど。女王様はかわいい娘さ、毎日コロコロ気分が変わるけど。愛してるって言いたいとこだが、ワインをガブ飲みしなきゃ言えないな。女王様はかわいい娘、いつかオレのものにする、オレのものにするぞ』。……これ、ザ・ビートルズの『ハー・マジェスティー』です。彼らの最終アルバム『アビーロード』の、最後にポツンと張りつけられていた“しょうもない曲”ですよ。われらがニッポンであれば、こんな唄は不敬罪で登場しえなかったでありましょう。たとえ“不敬罪”という法律が廃止になっていても、死のぞこないのゾンビどもが死滅した法律を掲げて生者に嫌がらせをしているのが、われらが黄泉(よみ)の国・ニッポンなのですから。……まぁ、ゾンビどもは世の終わりが来なきゃ始末がつかんわけですし、困ったもんですワ。……じゃあ曲いってみよう! ゴーゴーゴー! ゴーズオン!」

★          ★          ★
八百田記者 「……ということで、今週の『勝利の記録』。おもろかったな! じゃあ犬腰キャスター、まとめ頼むで!」
犬腰犬介アナ 「バカヤロー! 今日もあと30秒で番組終了じゃねえか! 完パケが長すぎるだろ、イヌエッチケースペシャルじゃねえんだぞ!」
ディレクター(怒鳴り散らす声がそのまま番組に入る) 「犬介てめえキャスターのくせに何やってんだ! てめえやっぱし今日かぎりでクビだわ! 地方局に飛ばされて一生ローカルニュース読んでろバカ!」
犬飢ゆうひアナ 「きょうもニュースが一本しかお伝えできませんでしたが、そもそも数万人の職員を抱えているイヌエッチケーが日々カネをかけて製作しているニュースを、一時間のうちに何本も見たいのなら、受信料が月々数千円というのは安すぎます。テレビからもラジオからもインターネットからも、さらにありとあらゆる情報端末機器から、何重にも受信料をいただかなくては、とってもやる気になりません。視聴者の皆さまは、この時間帯に一本でも価値あるニュースを見れただけで、われわれを感謝せねばなりません。……皆さまのテレビ生活は受信料で支えられています。イヌエッチケー東京放送。……《ニュースセンター9》、明日もお楽しみに……」

 
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(この物語はフィクションであり登場人物その他はすべて架空のものです。
屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ご使用の際は《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6831)から引用》と明記して下さい。)

 

屁世滑稽新聞(屁世27年2月28日)

皇居を核最終処分場にする話……の巻

 

犬腰犬介アナ 「こんばんワ! イヌエッチケー“ニュースセンター9”。キャスターの犬腰犬介(いぬこし・けんすけ)です。」
犬飢ゆうひアナ 「同じくキャスターの犬飢ゆうひ(いぬうえ・ゆうひ)です。」
犬腰犬介アナ 「まずお約束の、いつものシュプレヒコールから始めましょう。……アベッチサン!万歳(マンセー)!」
犬飢ゆうひアナ 「アベッチサン!マンセー!」


犬腰犬介アナ 「では最初のニュースです。」
犬飢ゆうひアナ 「ちょっとその前に……」
犬腰犬介アナ 「なんですか? 台本にないですけど?」
犬飢ゆうひアナ 「あんたの手が邪魔です。」
犬腰犬介アナ 「ケンチャナヨ! 将軍さまからの御指示でないから無視します。……さて最初のニュースです。いぬうえキャスター、お願いします。」
犬飢ゆうひアナ 「……ハイ、特報です! 偉大なるアベッチさまのご指示で経務省に発足した、総理大臣さまの私的諮問機関《核廃棄物最終処分場検討会》の初会合が開かれ、皇居の地下ふかくに最終処分場を設置する案が、全会一致で決まりました。」
犬腰犬介アナ 「それはアッパレ! さすが偉大なるアベッチさまですね。ではこの喜ばしきニュースを、経務省担当の長谷川記者から伝えてもらいます。長谷川さん、おねがいします。」

つねに国民の幸福を願って善政をおこなう
われら「キノコぐも栽培強国」の偉大な政治指導者アベッチさま

★          ★          ★

長谷川記者 「はい、昨年まで経営委員だった経務省担当の長谷川無知子記者で~す。同僚だった八百田嘘記(やおた・うそき)さんも、いま経務所でがんばっておりますよ~。……さて経務省からの特報ですよ~。総理大臣様の私的諮問機関《核廃棄物最終処分場検討会》の初会合が開かれ、皇居の地下ふかくに最終処分場を設置する案が、全会一致で決まりました~。」
犬腰犬介アナ 「それ、さっき私がいったママじゃん……」
長谷川記者 「アベッチ将軍さまからそれ以上のご指示を頂いてないので、残念ですが私個人がレポートすることはできないのよ。そんなことをすれば秘密保護法違反になってしまいますもん……。だもんで、ここは《検討会》の議事録を棒読みするのみでお許しい下さいナ。」
犬腰犬介アナ 「アベッチ将軍さまのご意向なら……ケンチャナヨ!」
長谷川記者 「ではこれから《検討会》議事録の棒読みにて、現場レポートに代(か)えさせて頂きます。……なおこの議事録は、下記でダウンロードできるようにしておきましたので、インターネットをご利用のかたは各自でお読みください。

(議事録入手先: http://www.rokusaisha.com/pdf/核廃棄物最終処分場検討会第1回会合議事録.pdf

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核廃棄物最終処分場検討会
第1回会合・議事録
(屁生27年2月吉日)

経務省エネルギー局長 「本日は皆さん、ご多忙のところをご出席いただき、ありがとうございます。《核廃棄物最終処分場検討会》の第1回を開催いたします。開催に先立ちまして、偉大なる総理大臣アベッチ将軍さまを讃(たた)えて、皆さまとともに万歳三唱を行ないます。皆さまご起立ください。」
(全員その場で起立)
経務省エネルギー局長 「偉大なるアベッチ将軍さまの威徳を讃えて! マンセー! マンセー! マンセー!」
(全員その場でマンセー三唱)
経務省エネルギー局長 「では議事に入ります。本日は初回から核心に入りますが、高レベル核廃棄物の最終処分地をどこに設置するか、本省にて長年の調査検討をしてまいりました結果、東京都千代田区千代田1の1の1、郵便番号で申せば“100の8111”、すなわち皇居の地下に設置するのが最も適切だな~、という結論に至りましたので、ご報告申し上げる次第であります。

かような結論に至りました理由を、関連省庁および各界有識者のかたがたからご報告いただき、この構想を煮つめていきたいな~、と……このように考えておる次第です。ではまず文部科学省からご報告ねがいます。」

文部科学省・学術振興局長 「モンカ省といたしましては、高レベル核廃棄物の永久保管施設の設置にさいして最も懸念しておりますのは、たとえば原子力発電の結果生じる半減期の長い『長寿命核種』のネプツニウムや、アメリシウムや、キュリウムのように、半減期が数万年に及ぶものもございますし、原子力発電にともなう代表的な放射性核種といたしましてはプルトニウム239の場合はおよそ2万4000年、ウラン238の場合はおよそ44億6800万年の半減期を有しておるわけでございます。ウラン235は半減期が7億380万年ほどでございますが、これは原子爆弾に転用できるので、廃棄物としての保管はまったく必要ない、むしろこっそり使ってしまえ、というのが政府の共通認識でございます。……で、核廃棄物の扱いについてでございますが、かように人類の想像をはるかに超えた長期間にわたって保管するとなりますと、はたして現在の日本語で『立ち入り禁止』と表示しても、未来の日本人にそれが理解できるか、はなはだ不安なのでございます。」
神社本庁・宗務局長 「しかし、日本人のこころは万葉集の時代から不変でありますし、言霊(ことだま)は時代によってたやすく変わるわけじゃないですから、モンカ省の指摘は杞憂(きゆう)じゃございませんか? 考えすぎ、心配しすぎですよ! 日本国民の魂を信用しなさい!」
文科省・学術振興局長いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ……
神社本庁・宗務局長 「おいモンカ省の高級官僚! いくらオマエが東大出身で、オレが蝗学館大学しか出てないとしても、こっちの業界じゃ蝗学館こそが神官養成のトップエリート大学なんだから、テメエの受験知識をひけらかしても意味ねえんだよ、イケズ野郎! そんな高校古文をここで出してくるなよ! 意味がわからねえことを言って、人を煙に巻くんじゃねえよ、木っ端役人がっ!」
文科省・学術振興局長 「あのぉ……、いま申し上げたセリフは、『源氏物語』の『若紫』に出てくる、あまりにも有名な一節なんすけどネェ……。《いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ》って、『とても幼なくていらっしゃるのが、どうしようもなく悲しく先が気がかりです』っていう意味で、『源氏物語』ってちょうど1000年まえに書かれたものなんすけどネェ……。たった1000年ですよ。なのに《日本人のコトダマ》とかおっしゃっている神社本庁の局長さんが、これを理解できない……。これってアンタのことを言った文章なんだけどねえ……。まあ、そういうことですわ。」
神社本庁・宗務局長 「インチキ万能細胞で小便くさいおネエちゃんにコロリとだまされたモンカ省の白痴はすっこんでろ! 高校古文を引き合いに出すなよ! 高校時代のオレはワルガキで、神社の賽銭(さいせん)をかっぱらってゲーセンで遊んでたんだから、古文なんてわかるわけネエだろ! 受験知識を出すのは反則だぞこの野郎! 日本人のコトダマは永久に不滅なんだよ! たとえ古文がわからなくてもなっ!」
文科省・学術振興局長 「……というわけで、鳥居のダンナが思わぬ暴発事故を起こしたわけですが、マァ、これは無視するとして、たった1000年まえの日本語さえ通用しない現実において、10万年後の日本人に『高レベル放射性廃棄物の保管地域!立ち入り禁止!』と標識を示しても、その時代からすれば“太古の昔”である屁世現代の日本語なんかわかるわけないですから、さ~てどうすりゃイイのかとアレコレ思案いたしたわけでございます。このあたりの事情につきまして、日本を代表する国語学者の金玉一腫彦センセイから、補足説明をしていただきます。
国語学者・金玉一腫彦 「国語学者の金玉一でございます。いま局長さんからご説明いただきましたように、千年とか万年のオーダーで、未来の日本人に理解できるメッセージを記す方法は、まず無いといってよいのでございます。」
神社本庁・宗務局長 「だ~けど~、日本民族の言霊は永遠不滅なのだから、10万年後の日本国民に、現代の国語を理解させる方法はあるはずです。それを考えるのが国語学者のあんたの仕事じゃないですか!」
金玉一腫彦 「唯一あるとすれば、日本国民が用いている現時点の国語を、古典ラテン語のように、ここで無理矢理ホルマリン漬けにしてしまうことでしょうね。」
神社本庁・宗務局長 「ラテン語といえばカトリックの総本山バチカンが今でも使っていますね。現代日本語をラテン語みたいにできれば素晴らしい! 未来永劫(えいごう)にいまの日本語が、歴史と地域をこえて普遍的に使われるようになるんですね! それは名案だ! ……で、どうすれば実現できますか?」
金玉一腫彦 「日本も、古代ローマ帝国と同じことになれば、現代日本語を、ローマ帝国の言語だった古典ラテン語のような境遇に置くことができるんじゃないでしょうか。」
経務省エネルギー局長 「つまり古代ローマ帝国のように贅沢(せいたく)をしたあげくに滅亡すればいいんですね……。そりゃ簡単ですわ。」
神社本庁・宗務局長 「いや。あんたみたいな高給取りは、いまの日本が経済の絶頂にあるみたいな錯覚もしてるでしょうけど、もはや日本経済は最盛期をすぎて思秋期ですからねえ。経務省の高給取りは知らんだろうけど、最近じゃ日本の神社で大盤振る舞いしてるのは中国人の観光客ですぜ。賽銭箱を開ければ中国のお札ばかりなんだから! もう『贅沢(ぜいたく)をしたあげく』ってのは望んでも手に入らぬ昔の話……、いま可能なのは、貧乏なままどん底まで落ちて滅亡するのみ……」
経務省エネルギー局長 「あんた、そんなことアベノミックスの黒魔術で日本経済復活を企てているアベッチサンの耳に入ったら、家族が住んでるマンションごと“倒壊事故”が起きて呪い殺されますよ。」
神社本庁・宗務局長 「ヤバイっ! いまの私の発言は議事録からカットしておいてね。」
金玉一腫彦 「……マアとにかく、あれこれ検討はしたんですが、言語的手段であれ、イラストを用いたサインであれ、数万年後の人類に『危険!立ち入り禁止!』というメッセージを伝える手段はあらへんことがわかったんですワ。」
経務省エネルギー局長 「金玉一センセイ、数万年後に人類が生存してる可能性なんてほとんどないんですから、そんな面倒なこと、考えるだけヤボですよ。あんた政府にこづかいもらってお使いしてるだけなんだから、テキトーなことを答弁してりゃイイんです。まじめに仕事するだけムダなんすから。(笑)」
金玉一腫彦 「経務省トップのお役人からそう言われちゃ、あれこれ考えて損した感じがしますが……マァとにかく思案のすえに出たベストの結論は、超危険物質の永久保管場ならば、皇居に併設するほかない……ということです。なぜなら、ここが日本であるかぎり、日本という国が続くかぎりは、天皇陛下が千代に八千代に、サザレ~石が~、巨岩(いわお)にな~りて~、コケが生(む)すまで、ずぅ~っと皇居にお住まいになられるはずだからであります。どんなに世の中が変わってしまったとしても、天皇陛下がいらっしゃるかぎりは、少なくとも天皇陛下だけは、まともな日本語をお使いになられることでしょう。ですから、たとえば3000世代先の未来に人類が生存していたとして、日本という国がまだ存在していたとするなら、そこには依然として、その時代の天皇が御座(おわ)しまして、大昔の、つまり屁世の現代の日本語なども理解できる状態が維持されていると考えてよいでしょう。その時代には日本国の一般庶民は遺伝的に劣化してサル以下の畜獣になっているかもしれません。栄養失調や放射能汚染で脳みそがピーナッツなみに萎縮しているなんてことも、じゅうぶんにありえます。そういうことを考えたら、たとえば東北とか北海道とかの僻地に核のゴミの永久処分場なんて作るのは大変に危険です。無知なケダモノ人間が墓あばきをする危険性はたぶんにあります。だからこそ、もっとも高貴で安全な天皇陛下のお住まいに、そうした保管施設を併設せねばならないのです。……これが最も理にかなった処置なのです。」
経務省エネルギー局長 「日本を代表する国語学者、金玉一センセイの、大変にわかりやすいご説明、ありがとうございました。ところで高レベル核廃棄物の永久保管場をつくるとすれば、地震対策は必須となるわけでございます。そこで、つぎは気象庁から、永久処分場を皇居に併設するメリットを説明していただきます。」

★          ★          ★

気象庁・地震局長 「ご指名をいただきました、気象庁の地震局でございます。究極の危険物質であるプルトニウムその他の高レベル放射性廃棄物の永久保管場を、東京都千代田区の皇居の地下に設置するという構想につきましては、関東ローム層である東京の地下にそうしたものを置くことについて懸念を抱くかたもいらっしゃるかと思いますので、むしろ非常に有意義であるということを、本庁の地震対策会議の議長であられる地震学者の田所雄介博士からご説明いただきます。」
地震学者・田所雄介 「田所でございます。じつは私、先日来、日本が沈没しつつあることを示す地球物理学的な兆候を観測しておりまして、その分析を大至急せにゃならんのに、こういう馬鹿げた会合に引っぱりだされて大変に迷惑しております。……おい君たち! ニッポン列島が沈没したら、核廃棄物の処理なんて意味ないんだぞっ!」
経務省エネルギー局長 「先生っ! それ初耳ですけど、ホントなんですか?」
田所雄介 「……あっ! いっけねえ! うっかりしゃべっちゃった。……皆さん、今のはわたしの寝言です。忘れてください。(笑)」
経務省エネルギー局長 「田所センセイは物騒な夢を見てたんですね(笑)。お願いしてあった最終処分場の件を説明してくださいよ。」
田所雄介 「ご存じのように東京23区のほぼ南半分は、近世まで海岸であり、埋め立てで作られた地域であります。皇居がある千代田区も、そこから遠くない場所に存在しています。つまり東京自体が、すでに地質学的にみれば地震の物理的ダメージを非常に受けやすい地盤構造の上に作られた都市なのであります。江戸時代だけでなく、時代がうつって大正の関東大震災の頃になってからも、東京周辺で多発する地震の原因として“なまず”を想定する民間信仰がありましたが、これは地質学的な脆弱性を考えればそれ相応の合理性を有した民間信仰だったのであります。

江戸時代から日本では「地面に下に潜んでいる
大ナマズが暴れて地震が起きる」と信じられてきた。


もちろん現在では、地震の原因はナマズでないことは誰もがご存じでありましょう。ところで民間伝承においては、ナマズが地震を起こすと考えられていたわけですが、それと正反対の“土地を安定させる地震除け”だと考えられていたのが要石(かなめいし)なのであります。

茨城県・鹿島神宮と、千葉県・香取神宮にある「要石」は
それぞれ大ナマズの頭と尾をおさえこんで、地震を抑止
していると信じられてきた。

現代に生きる我々は、地震の原因がナマズでないことも、要石が地震を抑止しているわけでないことも、もはや周知の事実でありますが、しかしたとえば、不安定な東京都心の地盤に、大量に超高比重の重金属を埋設すれば、たとえ大地震が起きても液状化を抑止できるであろうことは容易に予測できるのであります。いま現在の予測では、千代田区内の皇居から東の地域は、大地震が起きれば大部分が液状化すると考えられているわけですが、皇居の地下に広範囲にわたって大規模に核廃棄物の重金属を、すなわちウランやプルトニウムを世界じゅうから引き取って保管すれば、それは巨大な“要石”の役目を果たすでしょうから、大地震でこの地域がいたずらに大揺れしたり液状化で地盤構造がめちゃくちゃになることを抑止できるでしょう。そうした理由で、もしこれからも東京を日本の首都にしておきたいのなら、そして首都東京を大地震の衝撃から守りたいのなら、皇居の地下深くに大量の劣化ウランやプルトニウムを敷きつめるしか、首都の防衛策はないのであります。」
経務省エネルギー局長 「大変に説得力のあるお話しをいただき、ありがとうござました。田所先生、これであなたのお仕事は片付きましたから、日本沈没の研究にお戻りくださいませ。」
田所雄介 「さっきも言ったけど、もし遠からず日本列島が沈没することになったら、あんたらの構想は海の藻屑(もくず)になって終わるぞ。……マァその時は、俺も海中で骸骨(がいこつ)になってるだろうけどな、ガッハッハ!」(田所博士、そう言い残して退席。)

★          ★          ★

経務省エネルギー局長 「田所先生が急用でお帰りになられたので、つぎは大蔵省財務政策局からご意見をいただきます。」
大蔵省・財務政策局長 「大蔵省といたしましては、皇室が核廃棄物永久保管場の経営を担うことによる財政健全化のメリットを、なによりも強調したいと思います。これにつきましては今世紀の初めから自罠党政府の財政担当大臣などをお務めになられてきた竹下屁臓センセイにご説明いただきます。」
大蔵省顧問・竹下屁臓 「テレビ南京の『ワールドビジネスサテライト』でおなじみの竹下屁臓でございます。わたしが小舅政権の大蔵大臣時代に全身全霊をかけて取り組んだのは、財政から無駄なぜい肉をそぎ落とす作業でした。国家存続にとって必要のない国民福祉を削減し、生涯雇用で社畜を丸抱えして、まるで社会福祉施設のようになっていた日本の労働市場を、派遣労働者が中心のパート雇用制度へと大改造して、人材派遣ビジネスを活性化してきたわけであります。おかげさまで私が経営してる人足手配会社も大繁盛ですわ、エッヘッヘ。……とはいえ、まだまだニッポンは財政的な無駄をたくさん抱えています。これから必要なのは、中央政府および地方自治体政府をすべて民間企業に委託し、警察・消防および軍隊も民間企業に委託することです。日本の青年がフランスの外人部隊やイスラム国の戦闘部隊に入隊して世界で活躍していますが、それは自衛隊の民営移管を視野に入れて考えると、とても素晴らしい快挙でありますネ。こうして海外のお雇い軍隊で経験をつんだ青年たちこそが、これからの民営化時代の日本軍を担っていくのでありますから……。」
経務省エネルギー局長 「竹下屁臓センセイ……。それと今回の話がどうつながるんですか?」
竹下屁臓 「……オッと忘れるとこだった。……さて、私が大蔵大臣などを務めて政府にご奉公していたときは、政府の無駄なぜい肉をかなり削ることができたと思いますが、最後の聖域にはついに手をつけることができませんでした。経務省局長さん、それって何だと思いますか?」
経務省エネルギー局長 「大奥のことでしょ? 永田町にある酒池肉林の……。あたしは話に聞いただけで、いまだご相伴にあずかったことはネエですが……」
竹下屁臓 「少女買春の地下組織につきましては警視庁の所轄ですから私の知ったことではありません。大奥ではなく、最大の無駄は、国家財源で飼っている“国民の象徴”であります。」
経務省エネルギー局長 「竹下センセイ、それはタブーだっ! 言っちゃいけねえ!」
竹下屁臓 「聞きたくないなら耳栓をしておればよい。」
経務省エネルギー局長 「ヘイっ! おい次長、タンポンもってこい! ……ハイ、先生。耳栓つめました。あとはご勝手に。」
竹下屁臓 「では話を続けます。……現行憲法で『日本国家および国民の象徴』と定められた、ヤンゴトなきお方とそのご一族には、莫大な国家財源が投入されております。もっともこれは、ご皇族の存在意義とご公務を考えれば、正当な負担であろうと思うのですが、それにしてもこの財源を大ナタで切り落としたい、と私はつねづね考えておりました。」
大蔵省・財務政策局長 「先生! それは大蔵省でもタブーですよ。皇族予算については黙っていて下さい。それ以上語ると我々がヤバイ!」
竹下屁臓 「だったら耳栓してなさい。」
大蔵省・財務政策局長 「 おい次長、アンネタンポンもってこい! ……ハイ、先生。耳栓つめました。あとはご勝手に。」
竹下屁臓 「私の提案はしごく単純です。皇族の運営も民営化すればよい。つまり皇族もビジネスを行なって、独自に稼げば、政府が維持費を負担する必要はなくなる。」
大蔵省・財務政策局長 「どんなビジネスですか? 天皇陛下とかのキャラクターまんじゅうを作って売るとか?」
竹下屁臓 「なんだアンタ、聞いてたのかよ(笑)。キャラクター商品よりも付加価値が高いものがいい。米国CIAがマネーローンダリングのために行なってきた秘密ビジネスなんかが参考になります。たとえばコカインや大麻の栽培と精製とか……」
大蔵省・財務政策局長 「竹下先生、そりゃマズイわ。麻薬規制はうちの仕事ですぜ。あんた我々が天皇にワッパをかけることを望んでるの?」
竹下屁臓 「いやいや、現状では日本で大麻やコカインのビジネスをするのは無理ですからなあ。……あと付加価値が高いビジネスとしてはカジノとか売春なんてのもあるけど。」
大蔵省・財務政策局長 「あんた、どういう境遇で育ってきたの? 犯罪の百貨店みたいなところで育ったの?」
竹下屁臓 「うるせえよ! どんな境遇で生まれ育っても憲法じゃ“法の下の平等”って決まってんだろ! 憲法を守れよ木っ端(こっぱ)役人が!」
経務省エネルギー局長 「あのね、竹下センセイ……。それと今回の話がどうつながるの?」
竹下屁臓 「……オッと、ま~た忘れるとこだった。……つまり結論から申せば、皇族の皆さまにおかれましては、皇居に全世界から核廃棄物を受け入れるという一種の廃品回収業を行なっていただき、それで得られるはずの莫大な収益で、国庫からの財源注入を必要としない皇室財政の自立に努めていただきたい。」
大蔵省・財務政策局長 「なるほど……。皇族の皆さまに、究極の廃品回収業で頑張っていただき、経済的自立を成し遂げてもらうというわけですね。それは素晴らしい! もうすぐ2700年に達せんとする皇族の歴史において、ビジネスで経済的自立を実現するというのは初めてのことです。まさに画期的! 素晴らしい! さすが世界に冠たる経済学者の竹下先生ですね! ……だけど本当に、核のゴミの引き受けだけで皇族の経済的自立は果たされるのでしょうか?」
竹下屁臓 「私の試算では、全世界から核のゴミを引き受ければ皇室は経済的自立をはるかに上回る利益を得られるはずです。こうして得た収益の一部は、日本政府に貸してもよいし、外国に融資してもよいでしょう。皇室が経済的に富裕になるわけですから、バチカン市国のように日本国内で独立国家となることだって可能でしょう。」
大蔵省・財務政策局長 「それは素晴らしいアイデアだ! 三島由紀夫も天国で感涙にむせんでいるに違いありません。」
経務省エネルギー局長「皇室が核のゴミで廃品回収ビジネスをするというのなら、私にもアイデアがあります。恩寵タバコで国民に愛されている天皇のご紋章、すなわち菊花紋章を、『放射能危険』のハザードマークにアレンジしてみてはどうでしょうか。菊花紋章がついた廃棄物ドラムカンは、もうそれだけで格段に付加価値がつきますから、世界じゅうのマニアの連中に高く売りつけることができるはずです。」

核廃棄物をつめたドラム缶に表示される「放射能危険」の
ハザードマークを天皇陛下の菊花のご紋章にアレンジすれば、
このドラム缶はプレミア付きで世界のマニアたちに売れるはず……?

警視庁・警備局長 「ビジネスの話なら、われわれ警察も興味がありますよ。皇居に高レベル核廃棄物の永久保管施設をつくるとなれば、当然、警備も厳重にせねばなりません。過去の『2.26事件』や、天皇の終戦詔勅(しょうちょく)の前夜、すなわち昭和20年8月14日に起きた『皇居クーデタ未遂事件』で周知のように、皇居の警備を軍隊にまかせるわけには行きません。軍の連中はアタマに血がのぼると何をしでかすか、わかったもんじゃない! 全く信用できません。」
防衛省・企画調整局長 「オイ警棒野郎! きさま、オマワリの分際でわが国軍を侮辱するのか? つぎに有事があったら、きさまなんぞ真っ先に重営倉にぶちこんでやるからな! そもそも、な~にが『皇居クーデタ未遂事件』だよ! 昭和23年の6月末日まで、陛下のお住まい処は『宮城』と呼ばれておったのだ。同年のナナ月イッピからであるぞ、『皇居』と呼び習わすようになったのは。……これだから地方警察の下級公務員はダメなんだよ!」
警視庁・警備局長 「バカモノ!忍者部隊月光は富士山の裾野で忍者ゴッコでもやってろ! おまえら六本木族の出る幕はないわ。宮城の警察業務はミヤギ県警がちゃんとやっておるワイ! われら大東京の警視庁は、東北の警察業務なんて所轄外なんだよ、この用なし国家公務員野郎が! ……まあとにかく、われら警視庁としては、皇居に核廃棄保管施設をつくることになれば、多量の武装警察官を張りつけて核物質泥棒などを徹底的に抑止しするのでアリマス!」
経務省エネルギー局長 「皇居の内外にビッシリと警官を張りつける必要がありますな。」
警視庁・警備局長 「そのとおり。概算では皇居内だけでも5000人ほど、武装警官を配置します。」
経務省エネルギー局長 「いくらなんでも多すぎやしませんか?」
警視庁・警備局長 「いやいや。人件費は皇室に負担してもらえばよい。なにせ核物質の預かり賃をガッポリ稼いでくれるんですから。我々としては“自宅警備員”の連中、つまり職業技能をもたぬ“ひきこもり”のような青年たちを大量に雇い入れて、皇居の警備に張りつけます。これは雇用対策にもなるし、ニッポン警察の凄さを世界に宣伝することで、世界じゅうに我らが警官隊を売りつけることも視野に入れております。」
大蔵省顧問・竹下屁臓 「なるほど、警察業務も民営移管するという世界的動向を、ちゃんと視野にいれてのビジネスプランですね。あっぱれな構想ですね。」

皇居に核廃棄物の永久保管所を作れば、皇居内は数千人の
警官隊で守られることになる。写真は皇居・東御苑の大手門
付近を警備する武装警官隊。

★          ★          ★

経務省エネルギー局長 「最後にもう一点。皇居に核廃棄物の永久保管施設を設置すると、よそでは期待できないスピリチュアルな利点があります。これにつきまして、精神世界にお詳しい粗野綾子センセイにご説明いただきます。」
粗野綾子委員 「みなさま、粗野綾子でございます。みなさまご存じのように、わたしはカトリック巨魁に所属している迷える子羊でありますが、中学校で教わる二次方程式なんてぜんぜんわかんないし、そんなもん教えられても人生でなんの役にも立たないから学校で教えるのをやめさせろ、と夫の三裏邪宗門に言いつけて、文科省の教育課程審議会で“二次方程式の解の公式”をブッつぶした武勇伝をもっておりまして……」
神社本庁・宗務局長 「なんだオイ! 伴天連のバアさんが自分の馬鹿ぶりを自慢したり、偉いダンナを動かして日本の教育を破壊して白痴化の推進に成功しましたなんてドヤ顔で吹聴してやがるぜ。おい経務省のエラい人! こんな痴呆老人に発言させるんじゃねえよ! こんな婆さんにだって日当払ってんだろ。いつから経務省は痴呆老人の介護施設になったんだよ。」
経務省エネルギー局長 「そ…、粗野センセイ! いくら文学者でも、ワケのわからないシュールな自己紹介はかんべん願います。日本の学童を白痴化したとか、そういうテロ自慢のお話しが、今回の皇居への核廃棄物保管場の設置構想と、どう関係するんですか? ひょっとしてアンタ、なんでもブチ壊して喜んでるだけのテロリストなんじゃないの? 警視庁さん、この人アヤシイから監視してくださいね。」
粗野綾子委員 「あんたら! わたしに失礼を働いたら天罰が下るわよ。キリストは言いました。『右頬をぶたれたらピストルでそいつを撃て』と……。これが皆さんご存じの、新約聖書のハイライトでもある“戦場の垂訓”なのですよ! わたしにとって、神のことばは絶対です。わたしを脅かすなら、ピストルで天罰を喰らわしますから、そのおつもりでいらっしゃいませ!」
警視庁・警備局長 「現認しました。テロリストとして監視しなきゃなりませんな……」
経務省エネルギー局長 「粗野センセイ、恫喝(どうかつ)はもうそれくらいで、よろしいでしょ? あなたはこの会合で何を発表したかったんですか? あなたが常々、自己主張しておられたカトリック信者だというお立場から、皇居への核廃棄物永久処分場の併設をなぜ絶賛しうるのか、それを説明していただけませんか?」
粗野綾子委員 「わたしは80歳をすぎて、ますます精神世界に近づいております。今はそうねえ……一日の22時間くらいは俗世を離れて夢うつつの神様世界で遊んでおりますわよオホホホホホ! 今この瞬間も、あんたがた俗世の下衆(げす)には、私の美しい肉体しか見えていないでしょうが、それは下界の仮の姿であって、脳のほうは“あの世”で美酒に酔いしれておりますのよ。」
警視庁・警備局長 「“美しい肉体”などどこにも見えませんが……。この人は詐欺師ですか? うちの生活安全課にも監視を命じなきゃならんのか……」
経務省エネルギー局長 「おまわりさん、バアさんがちゃんとこう言ってますぜ。『脳のほうは“あの世”で美酒に酔いしれておる』と……。まあ、ヨイヨイになってるってことでしょうな、まともに相手にしなさんな。」
粗野綾子委員 「いまや日常の大部分を、俗世を超越した精神世界に住むようになったワタクシが、この歳になって確信しておりますことは、“祈り”のパワーです。この世の中では、なんでも祈れば願望が実現するのです。わたしもお祈りのパワーでボートレースではガバガバ儲けさせていただきました。」
警視庁・警備局長 「競艇で八百長レースを主催してきた……ということでしょうかね。うちの暴対班も動員しなきゃならないのかなぁ。とんでもない組織犯罪に付き合うことになりそうだわい。」
経務省エネルギー局長「粗野センセイ、あんたの競艇賭博の自慢話はどうでもいから、はやく皇居に核廃棄物処分場を併設する話に行ってほしいんですが……」
粗野綾子委員 「あんたら異教の蛮族どもは、わたしの垂訓の意味さえ理解できないケダモノなのね! そんなことだからアメリカ様に原爆を落とされて地獄の業火で焼かれたのよ。あんたら異教徒は学習能力がない蝦夷(エミシ)、土蜘蛛、豚犬なんだから、ホントに軽蔑するしかないわね!」
警視庁・警備局長 「でましたヘイトスピーチ! これは警視庁の手には負えないので国連機関の手に委ねるしかありまへん!」
経務省エネルギー局長 「……で、粗野センセイ、皇居に核ゴミ埋設施設の話はどこに行ったんですか?」
粗野綾子委員 「えっ? そんな話するんでしたっけ? わたしが事前に聞いていたのは侵腸社から出版される新刊の宣伝ってことだったけど……」
警視庁・警備局長 「バアさん、そんなことで政府から日当もらってたんじゃ、官費の不正受給ってことで現行犯逮捕ですぜ。……おい次長、いまワッパ持ってっか? 逮捕状もらってこい!」
粗野綾子委員 「……おっとっと! 今わたくし精神世界から戻ってまいりました。これまでの戯(ざ)れ言は、今のわたくしとは全然関係のない邪悪な別人格によるものですから無視して下さいね。あれは認知症患者にありがちなつまらない症状ですから、お忘れくださいませ! ここからわたくし、正気ですから。」
警視庁・警備局長 「おい次長、逮捕状とる必要なくなったぞ。会議続行だ。」
神社本庁・宗務局長 「なんだコイツ? 『エクソシスト』に出てくる“悪魔に憑かれた女”そのものじゃないか。伴天連の世界はややこしいわ。その点、神道はせいぜいキツネ憑きくらいで、こんなひどくないからラクだわ。」
粗野綾子委員 「まず選ばれし正統カトリック教徒の模範とも申すべきわたくしから見れば、核技術とニッポンの皇族は共通点があるのです。」
経務省エネルギー局長 「……はて? 駄洒落で話をおとして逃げる気かこいつ?……」
粗野綾子委員 「いやいや、笑点じゃないからそういう展開にはしません。結論から申しますと、どっちも日本の生命線というべき、至高の存在だということです。」
神社本庁・宗務局長 「たしかにそれは否定できませんな。」
粗野綾子委員 「三種の神器とはなにか?」

経務省エネルギー局長 「カー、クーラー、カラーテレビですね。うちの所轄だわそれ。」
警視庁・警備局長 「それは昭和元禄時代の“3C”って奴でしょ。あんたも古いねえ(笑)。三種の神器とは……森昌子、桜田淳子、山口百恵にキマってるでしょ。とりわけ顔立ちからいえば桜田淳子は名器だって、五味康祐センセイの『女体の秘奥は顔で分かる』に書いてありましたぞ。」
神社本庁・宗務局長 「あんたそれホントですか?」
警視庁・警備局長 「美人を逮捕したときは取調室で丸裸にして、机のうえでしゃがませて、穴という穴をぜんぶ詳しく調べますから、五味センセイの女体占いはかなりの的中することが実証ずみです。人気女優・愛染京子の実況検分のときは、小生自身、ずいぶん感心して、奮い立ったムスコをなだめるのに苦労したものでした……」
粗野綾子委員 「慶良間(けらま)ケラケラ、阿嘉(あっか)んべ~! 座間味(ザマ~み)やがれ、ま渡嘉敷(とかしき~)!」
警視庁・警備局長 「うわっ! 悪魔つきのバアさんが泡を吹いてなんか叫んでるぞ! おい神主! 悪魔ばらいしろ!」
神社本庁・宗務局長 「無理ですよ~! こちとら伴天連じゃないからねぇ……。バアさん、あんた何を叫んでるの?」
粗野綾子委員 「あたしが考案した“滅びの呪文”よ! ロクでもないこと言ってる奴らは天罰が当たって滅びりゃイイんだわ!」
警視庁・警備局長 「あんたそれ立派な脅迫ですよ。……おい次長! ワッパ持ってきたか? あと逮捕状もらってこい!」
粗野綾子委員 「……あらエッサッサっと! 今ふたたびわたくし、精神世界から戻ってまいりました。呪文みたいのは私のなかの悪魔が叫んだものですから無視して下さいね。……ここからわたくし、正気ですから。」
警視庁・警備局長 「おい次長、ま~た逮捕状とる必要なくなったぞ。ふたたび会議続行だ。」

★          ★          ★

粗野綾子委員 「どこまで話しましたっけ?」
経務省エネルギー局長 「三種の神器で愛染は名器。」
粗野綾子委員 「うしろ半分は関係ない! ……で、神器の話でしたね。そう神器。……天皇陛下は“陛下”という呼び名でいみじくも表しているように、天上の神様のお使いとして地上に御座(おわ)します存在でありまして、ご存じのとおり“鏡”と、“剣”と、“勾玉(まがたま)”がその三種の神器です。これらのアイテムは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命令をうけた天上の若い神様・邇邇芸命(ニニギのミコト)が、葦原中国(アシハラのナカつクニ)すなわちニッポンを統治するために高天原(タカマがハラ)に降り立った際に、天照大御神からもらって地上に持ち込んだ“統治のための魔法の道具”だったわけです。」
警視庁・警備局長 「えっ? そんなファンタジー初めて聞いたわ。『指輪物語』……ですか? それともジブリの新作アニメ?」
神社本庁・宗務局長 「バカヤロー! これだから低学歴は困るわ! おまえ義務教育でニッポン神話を習わなかったのか? 天孫降臨の神話なんて基本中の基本だぞ!」
警視庁・警備局長 「うるせぇよ、賽銭ドロボー。蝗学館を出たくらいで威張るんじゃねえよ!」
経務省エネルギー局長 「諸君! 地上10センチレベルの昆虫世界の学歴争いはやめたまえ! 粗野センセイの話をさえぎるな! ……ところで先生、アマテラスオオミカミってのは誰のことで、高天原ってのはどこにあるんですか?」
粗野綾子委員 「あんた日本人のくせにそんなことも知らないの? アーマーテラスのオオカミってのはマッカーサー元帥のことで、高天原ってのは厚木航空基地なのは常識でしょ? あんた東大出たくせにそんなことも知らないんだ。(笑)」
経務省エネルギー局長 「お言葉ですが受験科目は日本史じゃなくて倫理社会でしたから……」
粗野綾子委員 「なんだ倫社か(笑)。ゆとり受験生のハシリね。うちの亭主が文科省の審議会で実現しようとしていた“期待される人間像”ってのが、あんたみたいな“ゆとり”だったのよ。ここで出会えてよかったわ(笑)。……で、三種の神器の話に戻りますが、このように神器の正体は、サルかヒトかも判然としない類人猿やら蛮族だとか、ありとあらゆるモノノケが跋扈(ばっこ)する地上の世界、つまり神世の天上世界からみれば最底辺の地獄に派兵されたニニギノミコトが、そうした“言うことをきかないケダモノ”どもを成敗するための兵器だったと言えるわけです。現代の核技術に目をむけてみますと、三種の神器はなんといっても原子爆弾・水素爆弾・中性子爆弾ですわね。アメリカのマッカーサーだって、こういう核爆弾のおかげで日本に天孫降臨して、アーマーテラスのオオカミとして君臨できたわけですもの。」
経務省エネルギー局長 「核兵器が現代の神器として大切だということはわかりました。……けれど、だからといって皇居に核廃棄物の永久ゴミ捨て場を作るというのは、どういう理屈なのですか?」
神社本庁・宗務局長 「おい、バアさん! あんた天皇陛下が“人間原爆”だって言いたいのか? たしかに帝国海軍は“人間魚雷”を使ったけど、ここはイスラム国じゃないんだから天皇陛下のお腹に原爆をくくりつけて特攻するなんて、想像すらできないことだぞ! 文学者のあんたは淫らな想像力で、天皇陛下を特攻兵器にするつもりか? 世が世なら不敬罪だぞ、このバテレン野郎!」
粗野綾子委員 「これだから神道はダメなのよ。八百万もの有象無象の『神』とやらを拝んでいるから、こういうロクでもない奴が神官を名乗るようになるのね。神道にいま必要なのは神さまをリストラすることだわ。最終的には唯一神、ヤハヴェさまだけを残して、あとはぜんぶクビにすべきです。」
竹下屁臓 「おっしゃるとおり。シントー業界は無駄が多すぎる。船頭が多すぎて船が先に進まない。思いきって神さまをどんどんリストラすべきですな。うちの会社をご指名くだされば、不要な顔ぶれはバッタバッタと首切りにしますから、どうぞご用命を。」
神社本庁・宗務局長 「屁臓さん、あんた首切りばかりしてると天罰くらうぞ。」
経務省エネルギー局長 「ま~た話が紛糾しましたワイ。宗教がらみだとすぐ紛糾する。こんな調子だと宗教法人税を徹底強化しなくちゃなりませんな。宗教団体って心の平成のために存在するんでしょ? なのに内ゲバばかりしてるんなら破防法を適用せにゃなりませんな。」
警視庁・警備局長 「破防法ですか……。永田町番外地とか言われている窓際族部落の公安調査庁が、能なしのせいで我々の仕事ばかり増やしてくれるから、ハボーホーって言葉さえ耳にしたくないですけど。(苦笑)」
粗野綾子委員 「あんたたち小役人どもは、わたくしの話の腰を折るのが仕事なんですね。それで俸給をもらってんだから、税金ドロボーって言われても仕方ないわね。」
経務省エネルギー局長 「こりゃ一本とられましたな。どうぞ珍説をお続けくださいませ。(苦笑)」
粗野綾子委員 「もう、おバアちゃん眠くなっちゃったから、結論を言いますわね。……天皇皇后両陛下のおつとめは、日々、平和をお祈りすることですわね。祈り屋さんなんですから、どうせ祈ってもらうんなら、自分たちのお住まいの地下に保管された大量の核のゴミが、どうか安寧のまま千代に八千代に、さざれ石が大岩になってコケが生えるまで、ずっと未来永劫、つつがなく保管されますようにと、毎日毎日、お祈りしていただくのがベストだと思うのです。……ねえ皆さん、そんなにまめにお祈りしてる人がほかに日本にいますか? 天皇陛下はお祈りのプロなんですから、ここは核のゴミの永久の安寧を、陛下のお祈りに託すのが最善の策だと思うのですよ。」
神社本庁・宗務局長 「粗野センセイ、おコトバですが、神に祈るのという仕事なら、われわれ神官だってプロフェッショナルですよ! さらにいえばイスラム教徒なんて一日に5回も神に祈ってます。あんた、そんなことも知らないの?」
粗野綾子委員 「だったら出雲大社とか伊勢神宮の地下に、核廃棄物の永久保管場を作るべきだ……と、そういう理屈になりますわね。」
社本庁・宗務局長 「……えっ? やっぱり天皇さまの祈りのパワーにはかないませんわ。皇居……皇居に決定ですな。」
経務省エネルギー局長 「会場貸し出しのタイムリミットが来ましたので、ここで検討会を終了いたします。……なんせこの部屋、つぎは結婚式の控え室になるんで、我々はやく退出しなきゃならないもんで……。ハイ!きょうの結論。 皇居の地下に高レベル核廃棄物の永久保管施設を設置することにいたします。そして天皇皇后両陛下には、毎日、廃棄物の永久の安寧をお祈りしていただきます。……皆さま長時間のご検討、ありがとうございました。お帰りはタクシーを用意しておりますので、受付にてタクシーチケットをご用命くださいませ。」

(ここで会議終了)
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★          ★          ★

長谷川記者 「……ということで、議事録を棒読みすることになってしまいましたが……」
犬腰犬介アナ 「バカヤロー! あと10秒で番組終了じゃねえか! 全文読んでどうすんだ、ラジオ第2放送の『朗読の時間』じゃねえんだぞ!」
ディレクター(怒鳴り散らす声がそのまま番組に入る) 「犬介てめえキャスターのくせに何やってんだ! てめえ今日かぎりでクビだ! 地方局に飛ばされて一生ローカルニュース読んでろバカ!」
犬飢ゆうひアナ 「きょうはニュースが一本しかお伝えできませんでしたが、最後に、先ほどの検討会でも大活躍だった粗野センセイのご尊顔をごらんください。《ニュースセンター9》、明日もお楽しみに……」

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(この物語はフィクションであり登場人物その他はすべて架空のものです。
屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ご使用の際は《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6757)から引用》と明記して下さい。)

「福島の叫び」を要にさらなる百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号発売中!

 

屁世滑稽新聞(屁世27年2月16日)

淀長の映画専科・『猿の惑政』……の巻

ハイ! 皆さんコンニチわ!
大変ごぶさたしておりました。淀川長冶でございます。
親友の大監督・黒沢明クンが夢の国に引っ越したので、ワタシも彼を追って
夢の国におうちを移し、いまはそこで楽しい日々を送っております。

でもワタシ、わが人生の信条として、
1.「私は未だかつて嫌いな人にあったことはない!」
2.「苦労歓迎!」
3.「他人歓迎!」
の三か条をモットーにしていたほどですから、根っからの苦労性なんですわ。
だから天国での楽ちん生活は、しばらく居(お)ったら退屈してしまいました、ハイ!
それで時々こうやって俗世に降りてきて、皆さんとハイ! 映画のお話しをしたいと思います。

ハイ! それではお話しをはじめますが、さて皆さん、
20世紀は、何の時代だったでしょう?
ハイ、20世紀は映画の時代でございました。ハリウッドでは、名作が、毎日毎日
つぎつぎと作られておりました。 ワタシ、その時代に生きてこれて
本当にシアワセだったと今さらながら思います、ハイ!

で、20世紀に名作をつくった映画監督やら、スターのかたがたが、
今ではワタシが住んでいる夢の国に、マア!次から次へと引っ越してきて、
大にぎわいです。スゴイですねぇ。うれしいですねえ。
ワタシ、ほんとに死んだ甲斐がありましたよ、ハイ!

そうした名監督、往年の名スターたちと、あの世で日々、
茶飲み話をしてるんですねえ。 そうしますとカレら、
「いまもまだ俗世に生きていたなら、ワシはこんな映画を作りたい」
「アタシはこんな映画に出たいワ」といったお話しを、ギョウサンするんですわ。
それでワタシ、せっかくこの世に降りてきたついでだから、ハイ!そういう
天国で聞いた映画裏話などを、まだ昇天できない俗世の皆さんにお話ししたいと思います。

さあ!淀川長冶の映画専科の始まり始まりぃ!

★          ★          ★

第1回のきょうは、1968年のアメリカ映画『猿の惑星』についてのお話しです。
原作は『戦場にかける橋』でおなじみのフランス人作家ピエール・ブール。
監督はフランクリン・シャフナー。そして主演はチャールトン・ヘストンの大作でした。

じつはこれホンマの話ですけど、この映画の原作を書いたピエール・ブールさん、
どうも戦争中に日本軍に捕虜としてつかまって、そのときの悪夢のような体験が
『猿の惑星』を生み出すことになったようなんですわ。 ……そう考えると、コワイ
ですねぇ。 あの凶暴なサル軍団って、どうやら日本軍を描いたらしいんですわ。

第二次大戦が始まった頃、日本人は欧米では“凶暴なサルの群れ”だと言われて
おりました。ヒドイですねぇ。 まあニッポンだって、敵国のことを「鬼畜米英」って
ゆうとったんですから、マア、これお互いさまですわ。

それにしても、第二次大戦が始まった当初は、欧米の戦争扇動者たちは、
ニッポン人を「小さいサル」いうて馬鹿にしとったんですねぇ。

ところが戦争が長びいてニッポンが簡単に倒れない敵だと知るにつれて、何とマア、
今度は獰猛(どうもう)な大ザルにたとえて、海の向こうの一般庶民を怖がらせた
んですねぇ。コワイですねえ。ヒドイですねぇ。

第二次世界大戦の当時、欧米「連合国」では敵国ニッポンの
脅威をサルになぞらえて宣伝した。

「諸君おしゃべりを続けたまえ。ぜんぶ盗み聞きしてやるぜ」


世界の学者たちを悩ます新たな難問の出現。
「ニッポン人って一体何を考えてんだ?」

「文明の威力で抹殺せよ」

「なんでなかなかクタばらないんだ、ニッポン人ども?!」

さてこの『猿の惑星』の原作者、ピエール・ブールさんのお話しでした。
この人、1912年に南フランスのアヴィニョンに生まれました。第二次世界大戦の
ときには仏領インドシナに居(お)ったんですねぇ。仏領インドシナといえば真っ先に
ベトナムが思い浮かぶわけですが、ハイ! 現在のラオスとカンボジアも、
仏領インドシナに含まれていたわけでした。 ワタシらこの時代を生きてきた
現役世代は、「フランス領インドシナ」なんて長ったらしい言い方はせずに、
単に「仏印(ふついん)」って、呼んでました、ハイ!

……で、ピエール・ブールさんは、フランスでは理工系の最高学府である
エコール・スペリュール・デレクトリシテ……すなわち「高等電気学校」で
電気技師としての学位を得ました。 その後、二十代なかばに、「英領マラヤ」の
ゴム園で、監督者として働いておったんですねぇ。 植民地共和国フランスの
前途有望な若者だったわけであります。

「英領マラヤ」いうても、今の皆さんはご存じありません。 第二次大戦前はこれ、
イギリス領のマレー半島とシンガポールを指しておりました。 ハイ! 感慨深い
ですねぇ。 ワタシ、たまたま今になって俗世に降りて参りましたが、なんと今年は
敗戦からちょうど70年でございます。 あの太平洋戦争が始まるまで、アジアの国々は
ヨーロッパに乗っ取られておったんですねぇ。 コワイですねぇ……。これは歴史の
現実ですから、皆さんも、忘れないでほしい思いますよ、ハイ!

ブールさんが英領マラヤの植民地農園で管理人をしていたときに、ハイ!
第二次世界大戦が起きました。 彼はフランス人ですから、海外フランス人
として、兵役に就きました。 皆さんも、もしふたたびニッポンが戦争に
なったら、若ければ、国内におったら確実に徴兵されるわけですが、
海外に居っても、日本人である以上は、かならず兵役に就くことになると
考えとったほうがええです。 ワタシの経験から言うと、戦争になったら
逃げ場はないです。……コワイですねえ。ほんとにアカンことですわ。
皆さん、覚悟はできておりますか?

……で、ブールさん、第二次世界大戦が始まるや、本国から遠くはなれた
東南アジアでフランス兵になったんですが、ヨーロッパではなんとマア!
ナチスドイツがたちまちパリを占領し、フランス本国はドイツに屈してしまいました。
時は昭和15年で、ちょうどそんときニッポンは「紀元二千六百年」を、国を
あげて祝っておったわけです。 同盟国のナチスドイツは、あのヨーロッパの
花の都パリをあっというまに占領したんですから、当時のニッポン人としては
同盟国の勇者たちの大手柄に、喝采をさけんでおったんですわ。
いま生きてる皆さんには想像もできんでしょうけど、マア、そんな時代でした。

さてブールさんですが、この人はフランス兵になったのに、お国がたちまち
ナチスドイツに負けてしまいました。 これは困ったことになりましたねぇ……。
ナチスに降伏したフランスは、お国の、ど真ん中の、温泉保養地ヴィシーに
首都を移して「フランス国」を立ち上げ、とりあえずヒトラーに忠誠を示した
ペタン元帥を、首相に据えることになったんです。 ペタン元帥は第一次大戦
の功績から政界で出世した軍人でしたから、心の底からナチスドイツを崇拝
していたわけではなかったようです。 じっさい、オモテづらではドイツに服従
するポーズをとりながら、ウラでは反ナチの抵抗運動を支援していたわけで、
とにかくフランスという国が完全に滅んでしまうのを恐れて、侵略者のナチス
ドイツに上っ面で服従するふりをしていたのでしょう。

ところがマア! ナチスに服従をみせるペタン首相の「フランス国」に、我慢が
できなかった人がおりました。彼の腹心の部下だったドゴール准将です。
ドゴールはイギリスに逃げ出して、ロンドンで自称「自由フランス」と名乗って
亡命政府を立ち上げたんですねぇ。 そしてドーバー海峡をへだてた敵国の
イギリスから、祖国フランスにむけて反乱を呼びかけました。 この展開、スゴイですねえ。

ワタシらのニッポンは、こういう経験がないから、こんな劇的な展開は皆さんも
想像できないでしょうね。 まるで映画のなかの世界やからね。
でもこれって、いまの「イスラム国」と同じなんですねぇ。 あれも10年ばかり前の
戦争で負けてアメリカに占領されちゃった中東のイラクで、占領にけっして屈服しない
イラクの軍人とか役人の連中が、首都バクダードからサダム・フセインの
故郷だった北部の奥地に逃げ込んで、そこで態勢をたてなおし、「イスラム国」
という旗をかかげて、反乱勢力として逆襲してきてるんやからね。 ハイ!

歴史は繰り返します。 そしてそれが、映画の基本的なモチーフになってきました。
映画というのは、現実の世界を鏡にうつした映像なんですねぇ。ワタシ、映画の
仕事ができてホントに幸せだったと思います。

あらマア! ま~た話が脇道にそれてしまいました。 『猿の惑星』の原作者
ピエール・ブールのお話でございました。 ……第二次世界大戦がはじまって
フランスの兵士になったブールさん。 かんじんの祖国が、ナチスに迎合する
「フランス国」を名乗りだし、そこから逃げ出した連中が「自由フランス」を名乗って
自称の「政府」をを勝手に立ち上げました。 フランス人としては、どっちにつくかが大問題ですわ。

ブールさんの場合は、ドゴール准将がロンドンで旗揚げした「自由フランス」と
称する亡命政府に加勢することを決めました。……つまりナチスとか日独伊の
三国同盟を宿敵とする反乱勢力、パルチザンに身を置くことを選んだんですねぇ。

いまワタシらは、第二次世界大戦で最終的にアメリカ・イギリス・ソ連を中心と
する連合国が勝ち、日独伊三国同盟やらそれに同調する国々が負けたことを、
すでにあった事実としてあたりまえのように受け止めておるわけですが、
こうやって過去の歴史になりはてたことを、未来の時点から「正しい」とか
「間違ってる」とか決めつけるのは、お馬鹿なナマケものが気楽に参加できる
道楽でしかありませんワ。 むかしの事実をしらない血気盛んな坊やとかアンちゃん
なら、若気のいたりで苦笑いして済ませることもできるんやけどね……。
大切なのは、現代から過去を裁くことじゃなくて、歴史的な事件に直面したときに
アンタならどうするんや、という問いかけを、つねに自分に発することなんですわ。
それこそが歴史映画の価値なんですねぇ……。ハイ!余計なことを申し上げました。
でもコレ、ほ~んとに大事なことやからね。

さて「自由フランス」は、本家「フランス国」の転覆をたくらむ武装反乱勢力です。
一方、ナチスドイツに命乞いをして延命が決まった昔ながらの「フランス国」は、
パリを占領されてナチスドイツの部下みたいな国になったので、日独伊
三国同盟の仲間です。……つまりアジアでは大日本帝国の友好国、という
位置づけだったわけです。 その大日本帝国と戦っていたのは、当時の中国、
つまり中華民国でした。

だから「自由フランス」の“聖戦士”に志願したピエール・ブールさんは、
中華民国の国民軍とも接触してゲリラ活動をしていたんですねぇ。
一説によれば、ピエールさんは「ピーター・ジョン・ルール」っていう英語の偽名
を使って、「自由フランス」組織の秘密諜報員をつとめていた、とも伝えられてまっせ。

フランス領インドシナは、宗主国のフランスがナチスドイツに負けて「フランス国」
になったせいで、日独伊三国同盟の仲間に加わりました。 そんなわけで、
大日本帝国の軍勢が仏領インドシナに駐留も、すんなりとうまくいったのです。
なにしろ植民地政府は日本軍の進駐を歓迎したんやからね。

一方、ピエール・ブールさんは、パルチザン兵士として、親ナチスの「フランス国」
ヴィシー政権を転覆しようと、祖国からはるか彼方の熱帯アジアの密林地帯で、
仏領インドシナや、それを支える大日本帝国軍を相手に、ゲリラ戦を行なって
いたわけです。……ところが1943年のある日、船でメコン川をわたっていた時に、
仏領インドシナの植民地政府軍に捕まってしまいました。 捕まえた側からすれば
ブール氏はただの「反政府ゲリラ」です。反乱軍のテロリストにすぎなかったわけや。

なお、彼を捕まえたのは、仏領インドシナの植民地政府軍ではなく、そこに駐留していた
日本軍だった、という説も伝えられとります。 日本軍兵士が不審者をつかまえたら
フランス人やったんで、現地の植民地政府に引き渡したらしいのです。

けっきょく逮捕された“武装テロリスト”のブールさんは、仏領インドシナの捕虜収容所に
入れられて、強制労働の刑に服しました。 しかし翌年、あの「Dデイ」、ノルマンディー
上陸作戦が大成功して、連合軍がノルマンディーの海岸からナチス占領下のフランスに
進撃し、ついにパリを奪い返しました。 このあたりのことは、ルネ・クレマン監督の
1966年の米仏合作映画『パリは燃えているか』など、ぎょうさん名作が出ておりますから、
ハイ、皆さん、ぎょうさん映画を見ましょうね!

……そんなわけで、ブールさんはサイゴンの捕虜収容所に1年ばかりおったんやけど、
1944年、昭和19年になって、収容所の看守の手引きで脱走しました。
そしてイギリス軍の水上飛行機でインドシナを脱出し、インドのカルカッタにあった
イギリス軍の軍事諜報機関「特殊作戦執行部」に志願入りして、連合軍の秘密工作員
として終戦を迎えたわけであります。

終戦後もブールさんはしばらくマレーシアで農園経営を続けておったんですが、
やがてパリに帰って、戦争中の体験を元にした日記や小説を発表し、職業作家に
転身しました。 代表作はこの『猿の惑星』と、『戦場にかける橋』です。
マア! あの有名な「クワイ川マーチ」でおなじみの、アカデミー賞受賞の名作映画も、
このブールさんが原作者だったんですねぇ。 それだけ彼の仏印での戦争体験と
戦火のなかでの冒険は、劇的だったということですわ、……つまり『猿の惑星』は
われわれは単なるSF活劇だととらえがちやけど、物語の土台にあるのは、
熱帯のジャングルで武装ゲリラ戦士として戦ったピエール・ブールさん自身の、
敵国ニッポン軍との死闘の体験だったってことやね。

そう考えると、『猿の惑星』ってコワイ映画ですねぇ。
ワタシらは、あの映画のポスターに出てくる凶暴な猿、チャールトン・ヘストンら
アメリカ人の主人公にとっては、何を考えているのか得体の知れない不気味な
類人猿が、ニッポン人とダブっていることを、ちょっとは自覚する必要があるわけやね。

1968年に公開された『猿の惑星』第1作のポスター

昨(2014)年公開の『猿の惑星:新世紀』に向けて
英国のイラストレーター、マット・ファーガソン氏が描いたポスター
http://blurppy.com/2014/05/21/members-of-the-poster-posse-rise-up-with-some-dawn-of-the-planet-of-the-apes-inspiration/

★          ★          ★

いま映画版『猿の惑星』のポスターを見てもらいましたが、
このシリーズの最高傑作である第一作は、1970年アカデミー賞受賞作の
『パットン大戦車軍団』や、73年の大脱獄活劇『パピヨン』を監督した
フランクリン・シャフナーの作品であります。
そしてマア! シャフナー監督も、ニッポンとは特別な縁(えにし)をもつ人やったんですねぇ。

シャフナー監督は1920年、大正9年に、宣教師の息子として東京に
生まれておるんですわ。16歳まで日本におったということですから、
関東大震災も体験しておったんでしょう。 日中戦争が起きたころに
お父さんが亡くなって、シャフナー一家はアメリカに戻りました。
フランクリン青年はニューヨークのコロンビア大学で法律を学んでおったんですが、
第2次大戦が勃発して海軍に入隊し、ヨーロッパや北アフリカの戦線を
転々とします。やがて戦争の終盤になると米軍の特務機関OSS、
これCIAの前身の特務機関だったんやけど、この戦略諜報部に配属
されて、太平洋極東地域で従軍しておったそうです。

終戦後にハリウッドでドラマ製作の仕事に就き、それで大成功して
『猿の惑星』の監督を手がけたわけであります。 しかしシャフナーさん監督の
第一作は大成功やったけど、ハリウッドの連中はこれに気をよくして、
二作目からは別の監督で低予算のSF映画シリーズを次々と粗製濫造(そせい
らんぞう)したんやね。……で結局、『猿の惑星』は陳腐なSFシリーズとして、
スクリーンから姿を消すことになりました。

『猿の惑星』が公開された1968年は、SF作家のアーサー・クラークが脚本を
書いて、鬼才スタンリー・キューブリックが監督した『2001年宇宙の旅』が
公開された年でもあり、SF映画が“映画幼年期の終わり”を迎えた年やったのね。
これはハリウッドの映画産業の雰囲気をガラッと変えることになった重大事件
やったのね。その翌年にピーター・フォンダ製作主演、デニス・ホッパー監督主演
の『イージーライダー』が登場して、これはもうハリウッドの古くさい映画帝国が
ガラガラと音を立てて崩れ去ることになるんやけどね。

ピエール・ブールさんにとって、ニッポンはナチスドイツの盟友であり、
仏領インドシナに図々しく侵入してきた蛮族であり、倒すべき“凶暴な猿”
だったのかも知れません。 そやけどフランクリン・シャフナー監督にとっては
生まれ故郷の、幼なじみであり、こころの古里の人々であったでしょう。
ただし少年期のシャフナー君の目には、中国に攻め込んで勝ち鬨(どき)をあげている
集団的狂気をはらんだ“モンゴロイド”という、それまでと違う日本人の姿が
映っていたかも知れないけどね。……そういう愛憎入り混じった感情を抱えながら
『猿の惑星』を撮ったのかも知れへんな。 だからこそ、自分たちとは似ているけど
まったく異質な文明をもつ「類人猿」との、緊張感あふれるファーストコンタクトと
葛藤や交流が、うまく描けたのかも知れへんね。

★          ★          ★

……というわけで、第一回の淀長の映画専科は『猿の惑星』でした。
皆さん、ご堪能いただけました? でもここで終わりやないんですわ。
なぜってワタシ、天国でピエール・ブールさんにガッチリ嫌味を言われて
きたからです。 ハイ! 彼はこう言ったんですねぇ。

「ヨドチョーさん、俺の見立ては正しかった。
あんたの国はやっぱり『猿の惑星』じゃないか!」

マア! 驚きましたねえ!
ワタシ、なんてことを言うのかってビックリしました。
そして彼にむかってこう言ったんですわ。

「なあピエールはん、アンタちょっと失礼ちゃいまっか?
天国まできたんだから、もう下界の“おフランス帝国主義”はやめなはれ!
日本のどこが『猿の惑星』なんですか? 人種差別は許しまへんで!」

するとブールさん、こう言ったんですよ。 スゴイですねえ。

ピエール氏 「ヨドチョーさん、あんた、自分の国の政界が、凶暴な猿に乗っ取られて
しまったのをご存じないのか? もし今、俺が日活あたりからカネをもらって
映画が撮れるなら、『猿の惑政』ってのを作るだろうな。
日活なんて怪獣映画は『大巨獣ガッパ』しか作れなかったから、俺の作品は
大ヒットすると思うぜ。 もうストーリーラインも考えてあるんだ。」
淀長さん 「ピエールはん、どんなあらすじでっか?」
ピエール氏 「主人公は日本人のワタミという青年宇宙飛行士。彼は宇宙ステーションISISの整備工として宇宙に長期滞在していたが、とつぜん予算が打ち切られて食糧補給用
のスペースシャトルが来なくなり、仲間の宇宙飛行士たちが餓死するなかで、決死の
覚悟で地上に帰還した。 ……地球にもどってみると、何だか様子がちがう。
国会で歓迎会をするというので議事堂にいくと、なんと内閣が全員サルになっていた。」
淀長さん 「プラネット・オブ・エイプス(猿の惑星)でなくて、キャビネット・オブ・エイプス(猿の内閣)になっていたわけか?」
ピエール氏 「ウィ! 『猿の惑星』では地球が猿に乗っ取られた未来世界を描いたが、
この『猿の惑政』では、政治が猿に乗っ取られた現代日本を描いたのさ。
ほら、ポスターだって試作品ができてるぜ。」

天国のピエール・ブール氏が見せてくれた
『猿の惑政』(Cabinet of the Apes)のポスター試作品。
「Prime Minister(首相)」ではなく、「Primer(爆弾の導火線)」の
「Minion(権力者の愛玩動物)」の「シンゾー猿(Ape Shinzo)」
が、この怪獣映画のメインキャラクターだ。

『猿の惑政:新世紀』のポスター試作品。

 

淀長さん 「ピエールはん、このポスターに描かれているエイプですけど、
これじゃお猿さんそのものやないですか! あんた日本の政治を
何と思うてはるんや? これ人種差別でっせ!」
ピエール氏 「ヨドチョーさん、俺はそんなつもりはないんだけどな。
じゃあもうちょっと、人間みたいな表情を出してみようか。
どっちにしても日本の政治をハイジャックしたのは人でなくて猿、
ヒト似ザルだってことは変わらないんだけどな。 ほらよ、ちょっと
進化した『猿の惑政』のポスターがこれだ!」

ちょっと進化した『猿の惑政』

淀長さん 「ピエールはん、まことに残念なんやけど、日活はもうほとんど映画を
作ってないんや。こういう映画を作れるのは、おそらく今のニッポンでは
壇蜜の主演で『地球防衛未亡人』を作った河崎実監督くらいしかおらへんで。
どうしても日本での映像製作を望むんなら、もはや裏ビデオくらいしか
ないかも知れんわ。……まあ、裏ビデオなら瞬時に全世界に広まるというメリットもありますけどな。」
ピエール氏 「ノンノンノン! ヨドチョーさん、さすがの俺でも、凶暴なサルが出てくる
ポルノなんてゴメンですわ。 猿どもの乱交なんて、ワイセツすぎて見る気もしないわ。
猿の交尾のドキュメンタリーなんざ、デヴィッド・アッテンボロー君の仕事の領分だぜ。」
淀長さん 「ピエールはん、あんたエエなあ。 ワタシら日本人は、国会中継で
日がな一日じゅう、猿どもの乱交を見せられてんのや。 公共放送がポルノを
垂れ流しにしてるんやで。」
ピエール氏 「セ・シュペール! 素晴らしい! それこそ自由・平等・博愛ですな。
フランス革命の理想が、極東の島国で実現してしまったのか……。」
淀長さん 「……だとしたら、ピエール・ブールはん。あんたが命がけで守った
“自由フランス”ってのは、猿どもに政治権力を与える栄養剤だったってことですかね?」
ピエール氏 「だけどヨドチョーさん、うちの国の極右『国民戦線』のマリーヌ・ルペン党首は、最近、あんたのところの“民衆パワーでやりほうだい党”こそが、『国民戦線』の目標であると公言してるぜ。」
淀長さん 「“民衆パワーでやりほうだい党”って……そんな政党ニッポンにはおらへんで!」
ピエール氏 「PLDのことだよ。パルティ・リベラル・デモクラット(Parti lib?ral-d?mocrate)。あんた日本人だったんだろ?
知らないの?」
淀長さん 「それって自由民主党のことやがな。“民衆パワーでやりほうだい党”って名前やないで!」
ピエール氏 「俺はシナ文字のことはよくわからないけど、フランス語でいえば『民衆パワーでやりほうだい党』ってことだぜ。
ニッポン人は「リベラル」とか「デモクラット」の意味をぜんぜん理解せぬままに、こういう外来語を乱用してるんだろ。後進国の土人社会にはありがちなことだけどな。」
淀長さん 「なあピエールはん、ワタシの知るかぎり、自由民主党のイデオロギーは『自由主義』でも『民主主義』でもないよ。
自由民主党の連中が自分で言っているから間違いないんだろうけど、彼らのイデオロギーは
『自由民主主義』だからね。」
ピエール氏 「そういうのを、サル知恵っていうのさ。」
淀長さん 「やっぱり“サルの惑政”だったか……。」

★          ★          ★

……というわけでハイ! ブールさんとの天国での会話は、なんだか気まずい雰囲気で
終わってしまいました。マア!悔しいですねえ。残念ですねえ。 永田町のサル山の
お猿さんたちには、せめて「反省!」してほしいですねぇ。 日光サル軍団はりっぱに
「反省!」できたんですから……。 では次回まで、サヨナラ!サヨナラ!サヨナラ!

 

 

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(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6644)から引用》と明記して下さい。)

屁世滑稽新聞(屁世27年2月7日)

既知害国会の“ハンザイ三唱”は何だったのか……の巻
(ヤン・デンネン特派員の大江戸情報)

【東京発】 当然のことだが我々ニッポンで活躍する外国人記者たちは、独自の記者ネットワークを有している。それは畜獣のクソにしがみついて自分のエサ場に転がしていく習性しかもたない“フンコロガシ”のような、ニッポンマスコミの社畜記者たちには想像もできないだろう。もちろん“社会性昆虫”にすぎないニッポンの社畜記者たちなど、我々の情報ネットワークから完全にシャットアウトしている。なぜなら連中は、役所の一室にあてがわれた「記者クラブ室」なる“特殊権益の小部屋”にご丁寧に置かれた、ゲタ箱のような報道各社むけの“お手紙受け”に日々投げ込まれる報道資料とか、大企業の広報担当のおネエちゃんがご丁寧に配達してくれる発表レジュメを、そのままペラの原稿用紙になぞりがきしていれば、もうそれだけでお仕事が完了するからだ。ニッポンの記者クラブでお仕事をしている社畜ジャーナリストというのは、餌付けされた伝書鳩にひとしい。

我々外人記者はそんな呑気な伝書鳩とはちがう。政府や企業の不都合な秘密をあばく“真実の狩人”なのだ。

ジャーナリストとしての見識も情報収集能力も、ドン臭い日本の社畜ジャーナリストなど及びもつかぬ我らトーキョー特派員が、年に一度の楽しみにしており、同時にまた他社のジャーナリストたちとの重要な情報交換の場にしてきたのが、年末恒例の忘年会にほかならない。

ところが昨年すなわち2014年の忘年会が、なぜか今年の2月上旬になってしまった。日本の旧暦の大晦日に行なう“豆まき”が終わった頃に、我々は去年の忘年会をようやく構えるという体たらくなのであった……。どうしてそんなに遅れてしまったのか? それは幹事がフランス野郎だったからだ。このリード記事は“ムッシュー幹事氏”が見ていないから、わたくしヤン・デンネンの本音をブッチャケて申し上げるが、フランス人が無能なくせに独善的だというのは数百年来の世界の常識なのである。

なにせフランスという国は、200年ばかりまえにナマイキな小ブルジョワどもが勝手に騒動を起こして王家を首狩りで惨殺したばかりか、コルシカ島出身の小男(ナポレオンのことだ!)がヨーロッパ大陸全域を武力侵攻して周辺諸国に多大な惨害を及ぼし、それで終わらずに現代でもなお、勘違いな「革命家」どものアジトになっている。中国の周恩来も、カンボジアのポルポトも、イランのホメイニも、みんなパリで不穏な革命思想を培ってきたのである。

第二次大戦当時だってフランスの無能と独善は連合国をあきれさせた。戦争が始まるやフランスはあっという間にナチスドイツに占領され、パリは何年も“ナチスの花の都”だったわけだが、ドゴール将軍はイギリスにさっさと逃亡し、霧の都ロンドンで勝手に「自由フランス」と称する疑似国家の誕生を宣言した。連合国はもちろんそんなものは正式な「政府」とは認めなかったのだが、やがてドゴールの自称「自由フランス」武装組織は従来のフランスが海外に拡げてきた植民地での支配権を、ナチス傀儡政権になりはてた本家フランスから横取りし、北アフリカ植民地のアルジェに自称「フランス共和国臨時政府」を設置した。こうしてフランス植民地の新たな宗主になったドゴールの武装組織を、連合国もしぶしぶ認めることになったわけである。そしてノルマンディーのあの過酷な上陸作戦が敢行され、西から攻め上った米軍主導の連合軍はナチスの手からパリを奪還し、一方、ソ連軍は東から進撃してついにベルリンを陥落させた。こうして連合軍が四苦八苦のすえにフランスをナチスの手から奪還するや、自称「フランス共和国臨時政府」のドゴールがすでに安全になっていたパリでちゃっかりと「凱旋」を飾り、かつてのナポレオン皇帝のように、自分が共和国の新たな主だと僭称しはじめた。……多大な犠牲を払ってフランスを解放したのはアメリカとかソ連の連合軍である。だから連合国の指導者たちは逃亡将軍ドゴールのこの“手柄の横取り”をまことに苦々しくとらえていたのである。

……70年ほどまえのこの話が、なにかに似てると気づいた諸氏は賢明である。いまの自称「イスラム国」がまさにこれの二番煎じなのだ。逆にいうと、第二次世界大戦の最中には、逃亡将軍ドゴールの武装組織なんて、いまの「イスラム国」みたいなものと見られていたわけである。

……あ~あ、愚痴が長くなっちゃった。わたくしの祖国オランダも、フランスの田舎者どもには散々迷惑をかけられたから、どうもこの連中を信頼できない。それはともかくトーキョー特派員秘密クラブの、昨年の忘年会幹事に当たっていたフランス人記者の話であるが、なんと滑稽なことにご存じ『シャルリ・エブド』の特派員だという。ところが彼が送った記事が、あのタブロイド新聞に載ったためしがないのだ。聞いた話では、この特派員ジャンピエール氏は、パリ『シャリリ・エブド』本社の地下に秘匿されていたハシッシュを不良外国人などに勝手に横流しして、それがバレて極東に島流しになったという。日本風の表現でいえば「窓際族」ってことだ。……ちなみにハシッシュとは精製大麻のことだが、ナポレオン将軍のエジプト遠征のときにヨーロッパに持ち込まれた「麻薬」なのである。フランス万歳!(ヴィヴラ・フランス!)……ってか。(笑)

前置きはこれぐらいにして、先日都内の某居酒屋で我々がひらいた忘年会での会話を、公開可能な範囲でここに紹介したいと思う。これを読めば、我々トーキョー特派員のジャーナリストとしての能力が、日本の報道機関の社畜どもとは格段にちがうことを理解してもらえるだろう……。

 

トーキョー特派員たちの「忘年会」での会話(2月上旬の某日、都内某居酒屋にて)

フランス特派員(ジャンピエール) 「お待たせしました。では2014年の忘年会を始めます。じゃあイタリア病から帰還した脳梅毒のジョバンニ君に、乾杯の音頭をとってもらいましょう!」
イタリア特派員(ジョバンニ) 「では諸君! 世界一おいしいイタリアワインをマンマンと満たしたワイングラスを手に持って! ハイっ!チンチン!」
オランダ特派員(ヤン・デンネン) 「プロースト!」
ポルトガル特派員 「サウーヂ!」
スウェーデン特派員 「スコール!」
フランス特派員(ジャンピエール) 「アヴォトルサンテ!」
(以下略)

オランダ特派員 「ところで幹事、なんで2月になってから去年の忘年会をやるのさ? もう“締切”がとっくに過ぎてるぞ!」
フランス特派員 「オランダ人は船乗りの子孫なんだから、世界事情をちょっとは知ったらどうよ? 太陰暦では2014年は、西暦2014年の1月31日に始まり、15年の2月18日に終わるんだよ。だからまだ太陰暦では2014年12月ってことだ。それくらい知っておけ。唐変木(とうへんぼく)が!」
スウェーデン特派員 「おいジャンピエール、いつから君の国は旧暦になったんだ? ま~たクソみたいな革命やらかして暦を変えたのか?(笑)」
フランス特派員 「腐ったニシンの缶詰くらいしかグルメ料理がない貧乏漁労民の国のくせに、自由の国フランスに喧嘩売ろうってのか? 本業が忙しすぎて忘年会の幹事のヒマ仕事なんて翌年まわしにしてたダケさ!」
ドイツ特派員 「やっぱりフランス人は嘘つきだな(笑)。本業って、おまえ『シャルリ・エブド』に記事を何も書いてないくせによく言うぜ。」
フランス特派員 「だまれナチの鉄兜みたいなハゲ野郎! ちゃんと書きましたよ! なんならここで原稿みせようか! ほれ! フランス語版と英語版のために二つも記事を書いたんだぜ!」

「ab?tissant(アベッチサン)」は「馬鹿」という意味。 「JE SUIS AB?ETISSANT(ジュ・スィ・アベッチサン)」は フランス語で「わたしは馬鹿」。

「ab?tissant(アベッチサン)」は「馬鹿」という意味。
「JE SUIS AB?ETISSANT(ジュ・スィ・アベッチサン)」はフランス語で「わたしは馬鹿」。

「ape」は「テナガザル,オランウータン,チンパンジー,ゴリラなどの類人猿」、
早い話が「ヒト似ザル」。
「I AM APE」は英語で「わたしはサルです」。

ドイツ特派員 「なんだよこれ? こんなの、おまえのところのクズ新聞に全然載らなかったじゃないか。」
フランス特派員 「ああそうだよ。バカ編集長が、ニホンザルなんか載せてもインパクトがないから、モハメットを表紙にして『おらはシャルリだ』って言わせたのさ。だから俺の記事はボツになったけど、パリの奴ら、モハメットをまたおちょくったから、ま~た死人がでるぞ。まあ俺の知ったこっちゃないけどな。」
オランダ特派員 「おまえ自分の会社のことなのに、ずいぶん冷淡じゃねえか?」
フランス特派員 「だってコチトラ、左遷の身ですからね。フランス領インドシナにでも左遷してくれれば、南国でおネエちゃんを抱き放題だったんだけどな(笑)。」
イタリア特派員 「おいフニャチン野郎、ベトナムはもう“フランス領インドシナ”じゃねえぞ! いつまで植民地の夢を見てるんだよ唐変木! ハッタリかましてると、ここでスクープを発表するぞこの野郎!」
フランス特派員 「イタリア病の脳梅毒の分際で、スクープとはチャンチャラ可笑しいワイ! できるもんならやってみな!」
イタリア特派員 「おおやったろじゃねえか、フニャチン野郎! おまえ去年は11月からずっとバカンスをとってタイで少女買春してただろ。映画の『ラマン』のようには行かねえんだよ、半勃(はんだ)ちのおまえじゃな。むこうで少女を抱きながら年越しして、1月中旬に日本の成人式を見物するためにようやく帰ってきた好色変態が! だ~から忘年会幹事の重職をほっぽり投げてたくせに、屁理屈こねてんじゃねえよ!」
フランス特派員 「言ったなこと野郎! わが世界最強のナポレオン国民軍がアルプス山脈をこえて半島の農奴どもをコテンパンにしてやるぞ、この野郎! ……ハイハイ、たしかに行きましたよ。タイに少女を買いにね。でもそれはあくまでも自由恋愛だぜ。バチカンの金魚の糞みたいなオマエらイタリアの分際で、2000年まえからの腐った倫理に縛られている、ロンバルジア平原の類人猿のお説教なんて聞きたくないぜ!」

(ここで店員がやってきて「お客様たち、店内でワイセツな言葉づかいでケンカするのはやめて下さい」と厳重注意され、興奮状態の特派員たちはシュンとなった、)

オランダ記者(ヤン・デンネン) 「ところで諸君、遅すぎた開催ではあるが、いちおう忘年会なのだから、恒例の年末回顧を語ろうじゃないか。」
イタリア特派員 「やっぱり年末の国会解散にはビックリしたよな。こちとらクリスマス休暇のお楽しみをいろいろと予定していたのにブチこわしにされた。迷惑きわまる話だったぜ。」
フランス特派員 「まあアベッチサンは文字どおりの馬鹿で、うちの国じゃ規制対象になっている既知害カルト、ムーニー教団ともネンゴロな関係だもんな。それに慢性下痢の治療でステロイド剤を投与されていて、これは精神が不安定になる副作用があるからなあ……」
スウェーデン特派員 「その件についてだが、うちの国はご存じのとおり、生物分類学の始祖・リンネの出身国だ。わたしも便所虫の分類学についてはちょっと詳しいわけだが、最近、注目すべき人類学的研究が出たのを知っているか?」
ポルトガル特派員 「ニッポン民族がホビットの末裔であるとか、そういうたぐいの話か?」
スウェーデン特派員 「いや。類人猿が進化の方向をまちがえて、月のような天体へと変態しつつある、という観察報告だ。まさに月のように、つまりルナティックに変化しつつある変異種がいるのだとさ。」


フランス特派員 「おやまあ! アベッチサンの顔がどんどん膨張しているのは、故なきことではなかったんだな。」
ポルトガル特派員 「人が“月”に変質しつつあるというのは、我々の想像をこえる進化路線だな。人間が“月”に変わっていったら、一体どうなってしまうんだろうか?」
スウェーデン特派員 「確実に言えるのは、昇天するってことだろうね。」
イタリア特派員 「ルナティックゆえに年末のいちばん忙しい時期に、独断で国会解散なんてやらかしたのか……。お月さまに総理大臣をやらせるなんて、恐ろしい話だよな。かぐや姫みたいにさっさと昇天すればいのに……」

ドイツ特派員 「国会解散のときに、天皇の詔書(しょうしょ)が議長のもとに運ばれただろ。記者席で見てたんだけど、あれを議長に渡した衆院事務総長の手がブルブル震えていて、そりゃスゴイものだったぜ。」
スウェーデン特派員 「だって議長が解散詔書を朗読して、それで議会が解散したら、その瞬間に国会議員は一斉解雇だもんな。“おまえら全員クビ!”って言い渡すのは、そりゃ気が重いだろうさ。心理的なストレスでブルブル震えもくるわさ。」
ドイツ特派員 「心霊家スウェーデンボルグの国のキミなら直感的にわかるかも知れないが、じつはロシアの特派員がオカルトに凝っていて、キルリアン写真術を研究して心霊カメラを自作したんだ。そのカメラで国会解散式の一部始終を撮影していたんだが、奇妙なものが写っていた。」
スウェーデン特派員 「地獄の閻魔大王でも写っていたのか?」
ドイツ特派員 「いや。なんとスターリンの首が写っていた。ソ連時代に大粛清をやらかしたスターリンがニッポンの国会議事堂内でちゃっかり写っているのを見て、このロシア人記者は腰を抜かした。」

昨(2014)年11月21日、安倍総理が衆議院をいきなり解散した。
天皇が発した解散の詔書(しょうしょ)を、衆院議会の事務総長が、
伊吹議長のもとに持っていく。キルリアン写真の心霊カメラで
撮影したら、解散詔書にはベッタリと、スターリンの亡霊が張り
ついていた。

解散詔書を議長席にひろげた事務総長の手が、
不気味に震えているのをカメラは見逃しはしなかった!
衆院議員全員が、この一枚の詔書で、その場でクビになるのだから、
議会の重さと国民への責任を自覚している者であれば、
戦慄のあまり手が震えて当然であろう……。

ブルブル震えながら解散詔書を準備する衆院事務局長の狼狽(ろうばい)ぶりを、
ニヤニヤと笑って見ているのは衆院議長の伊吹文明であった。
「非文明」を体現したようなこの男は、国会の解散が
どれほどの重みを持っているか理解できず、
ヘラヘラ顔で「衆院最後の瞬間」に臨んだのである。

国会がいきなり解散するのは、国会議員にとっては文字どおり
「議員生命」にかかわること死活問題だ。
伊吹「非文明」さんは、人の死に冷淡な人物であることが知られている。
2007年5月の末、第1次安倍政権の松岡利勝・農林水産大臣が
衆議院議員宿舎で首吊り状態で「変死」した。
当時の文部大臣だった伊吹は、親しき閣僚の変死に対して
「死人に口なし」だと言い放った。

スウェーデン特派員 「日本の国会にスターリンの亡霊が現れる必然性なんて、ぜんぜん思いつかないんだけど、一体どうしてオバケが出たのかなぁ?」
ドイツ特派員 「イタコ稼業の大川隆法にでも口寄せしたもらえばいいさ(笑)。外人から口寄せを頼まれたら、奴のことだから尻尾ふってやるだろうよ。……まあ、ロシア語のままスターリンの霊言が出てくることは、奴の能力から考えてゼッタイ無理だけどな(笑)。」
イタリア特派員 「うちの国もムッソリーニという妖怪に荒らされた過去があったわけだが、そんな国で生まれ育ったオレの感覚から言わせてもらえば、スターリンの亡霊をわざわざ地獄から引き寄せるほどの、政治陰謀とか血の臭いが、このときニッポン国会の議事堂のなかに充満してたんじゃないの?」
フランス特派員 「それって、夜食のチーズを寝室に持っていったら、寝ていたナポレオン皇帝が『ジョセフィーヌ! 今夜は勘弁してくれ!」と叫んでガバっと目ざめた、という逸話を連想させるわな(笑)。スターリンの場合は血なまぐさい政治陰謀の臭いがすると地獄から呼ばれて来るのかもな。」
ポルトガル特派員 「つまりミイラみたいな顔をした衆議院の議長どのが、スターリンの亡霊を呼び寄せたってわけか?」
フランス特派員 「ノンノン! あんな生気のないミイラに、スターリンの荒ぶる怨霊を呼び寄せるなんて無理ムリ。人間の理解をこえた凶暴な妖獣の雄叫(おたけ)びを聞いて、地獄から嬉々として現れたのでしょうな。」
ポルトガル特派員 「凶暴な妖獣といったら、最近、冬の福島に出現したあの化け物しかありえないわけだが……。」
ドイツ特派員 「まさにそのとおり。日本の妖怪は墓場鬼太郎がたいてい成敗してきたから、いまだに生き残っているのは“昭和の妖怪”岸信介の末裔(まつえい)の、悲惨な妖怪くらいなもんだろうな。」

昭和の妖怪”岸信介の末裔の、悲惨な妖怪。

★          ★          ★

オランダ特派員(ヤンデンネン) 「ところで諸君。国会の議長が解散宣言を発したとたんに、議員たちが、なんかワケもわからないハシャギぶりだったよね。」
イタリア特派員 「あれはニッポンの古都であるキョートの、伝統的な家庭料理を讃美する雄叫びだったんだぜ。京都では夕食の家庭料理を“晩材(ばんざい)”というのだが、国会が解散したら、議員たちはすぐにマンマ・ミーア〔=おふくろさん〕のところに駆けつけて、家庭料理を食べるわけだろ。なにせ奴らは、議会にいるときだって食いもののことしか頭にないからな(笑)。」

フランス特派員 「…ったくイタリア人ってのは食いもののことしか頭にないのかよ! 70年代にイタリアでさかんに作られたソフトポルノ映画『青い~』シリーズに必ず出てくる”食いしん坊のデブ神父”が、おまえら半島国の国民性なのか?(笑) ジャポネ国会が解散したときに議員たちが叫んでいたのは『オバンザーイ!』じゃなく、『バンダーイ!』だったんだぜ。イタリア人は植民地が少ないから外国語もまともに聞き取れないのな(笑)。」


ポルトガル特派員 「やっぱりフランス野郎は頭のなかにワイセツな妄想が渦巻いてるんだな(笑)。なんで国会議事堂に女湯が出現するんだよ! ジャンピエール君、おまえは変質者だから、かつてオマエの国の植民地だったモロッコにでも行って、キンタマを切りとってもらったほうが世のため人のためだぞ。オマエのようなフランス人が男性のまま存在していること、それ自体が、世界の脅威なんだからな(笑)。」
フランス特派員 「ヨーロッパの果ての没落国家のくせして、ナマイキ言うんじゃねえや! じゃああの国会議員どもは、一体なんて叫んでいたんだよ?」
ポルトガル特派員 「あれは『ザンパーイ! ザンパーイ!』と叫んでいたんだ。国会解散の宣言は、議員たちにとっては死刑宣告だからな。ミイラみたいなあのボケ議長に『惨敗したらどうするんだコノヤロー!』って抗議してたわけさ。」

ドイツ特派員 「ポルトガル人は劣悪なワインを飲み過ぎて耳が腐ってるんじゃないか? あれがどうして『ザンパ~イ!』に聞こえるんだ? そんなふうにインチキな感覚だから、500年まえにオマエの国が発見した世界じゅうの秘境が、フランスとかイギリスとかオランダみたいに小ずるい国々に横取りされたんだぞ(笑)。」
ポルトガル特派員 「うるせえよ、鉄兜ハゲ! あれは『惨敗~!』って怒鳴ってたに決まってるじゃねえか! ヨーロッパの負け組ポルトガルの出身者がそういうのだから、これは確かな感覚だぜ!」
ドイツ特派員 「ちがうね! あれは『ハンザーイ! ハンザーイ!』と叫んでいたんだ。だって、なんにも解散する理由のない国会がいきなり解散したんだぜ。それでクビ切りされる議員たちにとっては、こりゃイスラム国の野蛮人なみの犯罪行為じゃないか。」
フランス特派員 「でも、その犯罪者ってのは一体だれなのさ?」
ドイツ特派員 「そりゃキミ、昭和の妖怪の末裔にきまってるじゃないか。」
フランス特派員 「けっきょく、世が世であれば、その妖怪も打ち首で処刑されてたってことか。」
ドイツ特派員 「真のニッポン男子なら切腹してるはずだが、“ウチュクしい国”とかホザきながら屁理屈をこねてる屁たれ野郎だから、切腹しきれずに介錯されるのがオチだろうよ(笑)。」


スウェーデン特派員 「ところで皆さんに聞きたいのだが、ニッポンの国会ってのはゾンビに支配されているのかね?」
ドイツ特派員 「キミは『ワールドウォーZ』とかのゾンビ映画を見すぎたんじゃないの? なんでそんな突拍子もないことを聞くのさ?」
スウェーデン特派員 「ミイラ男のイブーキ議長が国会解散の宣言を口にしたとたん、一部のゾンビが反射的に両手を挙げたのを、キミは見ていなかったのか?」

オランダ特派員 「なるほど北欧出身だけあって、頭脳がクールだな。記録写真をみると“Mr.Asshole”(ミスター・アソー)などは、ハッキリとゾンビの兆候を示しているな。こうやって日本の政治拠点を、死霊が人知れず占拠しつつあるのだな。これは貴重なドキュメントだ。」
イタリア特派員 「とりあえず“ケツの穴”野郎と会うときは、ニンニクと十字架は必須のお守りってことだな。」
フランス特派員 「俺もひとつ質問していいかい? なんで日本の国会議員どもは、『バンダ~イ!』って叫びながら降参のポーズを取るのかな? コイツらって心の底から敗北主義者なのか?(笑)」

オランダ特派員(ヤン・デンネン) 「これについては俺も『週刊侵腸』にレギュラー執筆していたときから、ずっと訝(いぶか)しく思っていたよ。……で、調べたんだが、大日本帝国時代にニッポンが初めて近代憲法を発布したとき、その発表会に出席した明治天皇を讃えるために、当時の維新政府の連中が、『バンザ~イ!』って叫んで手を挙げるポーズを考え出したそうだ。考え出したといっても、実際はシナの王朝で昔から行なわれてきた皇帝礼賛の儀式の、もろパクリだったんだけどね(笑)。……で、大日本帝国憲法の発布の当日なんだけど、実際に天皇を乗せた馬車がやってきて、烏合(うごう)の衆どもがこれをやらかしたら、馬車を引いていた馬がビックリして、立ち止まってしまったとさ(笑)。……つまり『バンザーイ!』ってのは、最初から、天皇の権威を挫(くじ)く呪文だったってわけさ。」
フランス特派員 「……だけど、その『バンザ~イ!』ってのを、太平洋戦争のときには、日本兵たちがアメリカ軍に対して行なってきたんだろ?」
オランダ特派員 「まあ結局、日本はアメリカ連合軍に負けて、天皇よりもアメリカ様を拝むようになったからな。戦場の兵士は本能的に、アメリカに対して“バンザ~イ!”したんだろうね。現代の日本人にそんなことを話せば、おそらく火病をおこして卒倒するだろうさ(笑)。だけど今の日本の現実を見てごらん。完全にアメリカ様にバンザイしてる国だからなぁ……」

ドイツ特派員 「なんだかニッポンが哀れに思えてきた。俺らのドイツも、ニッポンといっしょに負けた側なんだけど、これほど惨めじゃないからなぁ……。楽しい酒が飲めると思って忘年会にきたのに、悲しい酒になっちゃったよ。」
オランダ特派員 「おい鉄兜ハゲ。だったらニッポンのお座敷芸の、ドドイツを一曲おしえてやるから、これを口ずさんでりゃ気も楽になるだろう。」
ドイツ特派員 「なんだオイ! ケツの穴野郎が歌うドドイツかよ! 屁みたいなもんだな(笑)。」

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6484)から引用》と明記して下さい。
なお、ヤン・デンネン記者たち外国人特派員の秘密忘年会の模様は、本紙記者が都内の某ブラック企業系居酒屋で一人酒していたときに、たまたまそばの席で行なわれていたのが、聞くとはなしに聞こえてきたのを速記したものですから、当然、速記にともなう誤記などがたくさん含まれていると思います。登場人物の名前も悪酔いしながら書きとめたものですので、賢明な読者諸氏におかれましては、お迷いのないよう……)

 


屁世滑稽新聞(屁世26年11月20日)

おしゃべり委員長サツキちゃん……の巻

全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

さて、この屁世26年も狂おしいほどに慌(あわ)ただしい日々が
続いておりまして、とくに東京永田町の国会動物園の界隈(かいわい)
では、もうほんとうに昭和20年、終戦直前の東京を連想させるかのような
慌ただしさです。まるで自滅の直前に、すっかり自暴自棄になって、
パニック状態を起こして死に果ててしまう重症の麻薬患者の末期みたいで、
声もでませんわ……。

それはともかく、国会動物園を占拠していたハイジャッカーたちが
政権を投げ出し、だれも予想していなかったような年末総選挙が
いきなり浮上してきた昨今でございますが、肝心のわれらがニッポンは、
どうやら男女差別という観点からみると世界的に底辺のちかくで
さまよい続けている“劣等生”グループだということでして、
100年前から日本の子供たちの精神と情操のすこやかな発達を願いながら
教育の仕事をしてきたわたくし花子先生といたしましては、とっても
悲しく感じておりますのよ。

世界じゅうの政界・経済界・産業界・学者知識人・ジャーナリストなど、
文字どおり“明日の世界”を決めていくようなトップリーダーたち2500名
が結集した“世界経済フォーラム”という民間国際団体がありまして、
彼らの年次総会である「ダボス会議」は、それに参加できるというだけで、
みごとに立身出世をやりとげたニッポンの“成り上がり”の皆さまにとっては
ヨダレがだらだら、まさに垂涎(すいぜん)の的なのですけれども、この世界経済
フォーラムが2006年から毎年、『グローバル・ジェンダー・ギャップ・
レポート(Global Gender Gap Report)』というものを発表しております。
日本語に直訳しますと『世界の男女格差の報告書』ということになりますね。

この報告書は、政治・経済活動・教育・健康の4分野において、
男女の差別がどのくらい残っているかを、さまざまな国際機関の
公式な統計数字にもとづいて調べた結果をのせております。

すなわち、政治分野なら国会議員や閣僚の男女比率や、国家元首の
在任年数の男女比率。
経済分野については、雇用機会や賃金の男女格差とか、管理職や
専門職の男女比率。
教育分野では、識字率の男女比や、初等・中等・高等教育に
就学している男女の比率。
健康分野では、無事に出生できた子供たちの男女比率と、
平均寿命の男女比率です。
……つまり、日々の生活と、究極的な生存の場面での“機会均等”と、
その結果について、世界の国々の男女差別の現実を客観的に
調べ上げたデータブックなのです。

この『世界の男女格差の報告書』で注目すべきなのは、毎年
発表される「世界の男女格差ランキング」です。いまのべた
さまざまな男女比率から、「男女格差指数(Gender Gap Index)」
という数字を導き出し、その数字の大小から、世界じゅうの国々を
男女格差が劣悪な順番にズラリと並べたものが、「世界の男女格差
ランキング」にほかなりません。

ちなみに、この“男女格差指数”は、男女格差がない理想的な
男女平等社会では「1」になり、逆にもっとも男女格差が劣悪な
男女絶対差別社会では「0」になるように調整されており、
現実社会のすべての国は、この「0」から「1」のあいだに
一列に並んでいるわけです。

……で、われらがニッポンは、この「世界の男女格差ランキング」
でどのあたりに居るかというと、最初にこれが発表された2006年には
80位(115ヵ国中)でしたが、その後はどんどん墜落していき、
2007年は91位(128ヵ国中)、08年は98位(130ヵ国中)、09年には
101位(134ヵ国中)と、100位圏外まで落ち続けたのです。
2010年に94位(134ヵ国中)までちょっと這(は)い上がりましたが、
翌11年は98位(135ヵ国中)と、またまたズリ落ち、2012年には
101位(135ヵ国中)とふたたび100位圏外に転落し、昨2013年には
105位(136ヵ国中)とますます速度をあげて墜落が続いておりました。
そして最近発表された2014年版のランキングでは、142ヵ国中の104位に
なっています。
(出典:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2014/economies/#economy=JPN

この「世界男女格差ランキング」は、こんなふうに見るとわかりやすいワ。

今年の場合はぜんぶで142ヵ国が参加しているのだから、女性のからだを
142等分にして、目盛りを当ててみるのよ。理想的な男女平等社会に近い国
は「男女格差指数」が「1」にちかい“頭のてっぺん”、そして逆に絶対的
な男女差別に近い国はこの指数が「0」にちかいので“足の裏の土踏まず”に
あると想定して、どの国がどのあたりにあるのか図に描いてみたのです。
こうして描いたものは、男女平等国家が上にきて、男女差別国家が下にある
から、「世界男女差別ランキング」ということになるわネ。
……さて、世界経済フォーラムが発表したランキングで、われらがニッポンの
位置をみると、ちょうど“膝(ひざ)の裏”あたりをさまよっていることが
一目みてハッキリわかるわけです。
(出典:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2014/rankings

世界経済フォーラムは「世界男女平等ランキング」を
2006年から毎年発表しているが、日本は世界の約140の
国々なかで、つねに100位以下の低い順位に甘んじている。
2014年版ランキングでは142ヵ国中、104位である。
(出典:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2014/rankings

ひざの裏の“くぼみ”には、「膕(ひかがみ)」という名前がついて
います。あまり聞いたことがない日本古来の言葉ですが、「ひかがみ」
という呼び名は、「ひきかがみ(隠曲)」に由来します。
「ひきかがみ(隠曲)」というのは、読んで字のごとく、ひざを曲げて
屈(かが)むときに“ひっこむ”部分を指しています。
……で、現在のニッポンは、その自己主張ができない性分にふさわしく、
“男女が同等の機会にめぐまれて公正かつ幸福に暮らせる”社会条件
という観点から見たときに、まるで“ひざの裏”の「ひきかがみ(隠曲)」
みたいに、世界のなかでは“ひきこもって”いるということね。

★          ★          ★

「世界男女平等ランキング」で100位圏外をさまよい続ける日本では
ありますが、分野によってはすごく良好な、世界の優等生のような
場面もありました。唯一ですが、健康分野では2006年、10年、11年に
堂々の全世界1位に輝いておりました。ところがそれ以外の年には
いきなり30位以下に落ちてしまい、2014年版では37位です。
(参考:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2014/economies/#economy=JPN

わたしたちは犬HKニッポン放送協会などの強要番組……もとい、教養番組
や政府公報などにだまされて、自分たちの国が「世界一しあわせな長寿国」
であると錯覚しているようですが、世界ランキング1位がいきなり30位以下
に落ちるというのは、どういうことなのでしょうか?
平均寿命とか出生児の男女比率というのは戦争や饑饉(ききん)などの突発で
いきなり大きく変わりうるものですし、世界にはそういう不幸にいきなり
襲われる国も多いわけですから、世界ランキングを作れば健康分野の順位
に激変がおきても不思議じゃないわけですが、まがりなりにも全世界1位
だった栄誉が、いきなり30位以下に落ちて、そのあたりをさまよっている
のは、ふつうに考えてものすごく心配なことですわよね。

それはともかくとして、とにかく総合ランキングで2014年現在は
142ヵ国中の104位に甘んじているニッポンではありますが、こと
健康分野については現在37位と、なかなか健闘しているわけです。
さっきのランキング図で37位がどのあたりかというと、ちょうど
オッパイのあたりです。頭のてっぺんからオッパイまで日本の
ランクがズリ落ちたわけですが、これからどこに向かうのかしら?

★          ★          ★

健康分野では37位で健闘しているのに、なぜニッポンは、総合成績で
104位に甘んじているのか? ……答えは簡単。他の分野で男女差別が
ひどくて、それが足を引っぱっているから。

とくに男女差別がひどいのは政治分野だということがハッキリしています。
2006年には115ヵ国のうちで83位だった「政治参加での男女機会平等」の
ランクが、それからどんどん墜落をつづけ、第1次安倍政権のころには
110位まで落ちました。その後の民主党政権のときに101位まで盛り返し
ましたが、第2次安倍政権になるや、いきなり110位に落ちて、それから
は落ちるいっぽうで、昨2013年は118位(135ヵ国中)、2014年現在は
129位(142ヵ国中)にまで転落しました。これは女体に見たてれば、
ほとんど“足首”のところまで落ちたということです。
(参考:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2014/economies/#economy=JPN

そんなわけですから、安倍総理が、能力や資質の有無なんてろくすっぽ
考えもせずに、この9月の内閣改造で大あわてで手近な女性議員を5人、
自分の内閣に強引に引き入れたのは、世界にむけての体裁の悪さを改める
小手先の便法として、どうしても必要だったわけです。

アタマが悪い人ほど、こういうどうしようもない小手先の取りつくろいを
するんですよネェ……。
まあ、アベッチサンだからしょうがないわね、フランス語で、そのまんま
「馬鹿野郎(Ab?tissant)」ですから。(笑)

……これら5人の女性閣僚が、揃いもそろってロクでなしだったことは
改造内閣が発足したとたんに誰の目にも明らかになりました。政治資金を
あらぬ方面に使い込んでいたのに、自分は正しいと開き直った“エリマキ
トカゲの法務大臣”とか、多額の公金を不正な用途に使い込んでいたこと
がバレた“田舎の親の七光りの経産大臣”とか……。司法のトップにいる
法務大臣や、産業行政のトップにいる経産大臣が、使い込みをしていた
ことがバレて、なおかつ開き直ったりしていたのですから、ヒドイものです。

もちろん、女だからというだけでこういうロクでなしどもを閣僚に引き入れた
主犯……もとい、首班は、やっぱり総理大臣としての能力も資質も、もとより
ない人だったのですから、アレがコウしてコウなったのは当然の成り行きでした。

★          ★          ★

このように、日本の政界における女性の政治参加の現状は、いろいろな
意味で、目も当てられないほどヒドイのですのよ。
……だけど、わたくしは、そんなヒドイ日本の政界のなかで、ひときわ
光っている女性政治家に注目しておりますの。

その政治家とは、かつて10年前のいまごろは、大蔵省および現在の財務省が
はじまって以来の「女性主計官」として大活躍していた片山さつきさんです。

残念なことに、このかたは2005年9月の総選挙の直前に、財務省をやめて
“小泉ファミリー”の一員として、郵政民営化に反対する現職候補の
城内実さんを潰す刺客(しきゃく)の役目をおびて静岡の選挙区から
立候補し、僅差(きんさ)で勝って国会議員になりました。
……将来を期待されていた有能なお役人だったのに、人気者の総理大臣
から“お声”がかかったくらいで簡単にキャリアを投げ出して、刺客
の鉄砲玉になった人ですから、よっぽど冒険好きだったのでしょう。

永田町界隈の政界ダヌキ租界はべつとして、ふつうの地域であれば
ヤクザの親分に諭(さと)されて敵方のヤクザを刺す役目なんて、
暴力団末端の若いチンピラがやることですからね。(笑)
キャリア官僚の出世コースを投げ出してまで、そういう“刺客”を
やった片山さつきさんは、絶対に、極道にあこがれる冒険好きだったに
ちがいありませんわ!

……そうよ、たしかに冒険好きだったのでしょうね。
だってまだ頭髪がフサフサで、博多っ子純情みたいな“ご当地のヤンチャ気”
を売りものに、抑えきれぬリビドーを丸出しにしていた頃の、今では
都知事に成り上がった某東大教員と簡単に結婚して、いろいろと言葉に
できないような「家庭内暴力」をふるわれたあげくに、離婚したという
悲惨な“キャリア”まであるのですから。

まあ、それはともかく、もともと“お勉強秀才”で、官僚のデスクワークは
きわめて有能にこなしてきた片山さつきさんを、わたしはニッポン女性
のエリートの在り方として、一目おいてきましたから、ここでは
愛着をこめて「サツキちゃん」と呼ばせていただきますわネ。

★          ★          ★

サツキちゃんは“小泉チルドレン”の有力な一員でした。
あの時代に一世を風靡(ふうび)した「なんとかチルドレン」といえば
わたくしなどは、小室哲也さんを中心に回っていた「小室ファミリー」
を連想しますのよ。

「小室ファミリー」といえば、わたくしは、悲劇のヒロインとして
華原朋美(かはら・ともみ)ちゃんを連想します。朋美ちゃんは
乗馬や将棋でものすごい才能をもっている女性ですが、芸能界入り
してからは、しばらくのあいだ、下品なバラエティ番組に繰り出されて
いたのです。ご本人としては、さぞや不本意なことだったでしょう。
しかし、そうやって中途半端なアイドルとして下積みをしているうちに、
当時絶好調だった小室哲也さんに見初(みそ)められたのでした。
じつは小室さんって、もともとロリコンの人でしたから、ロリータ風の
朋美ちゃんに目をつけて、それで彼女を“小室チルドレン”として
売り出したのでしょうね。じっさい小室さんは当時、週刊誌の記者に
こう語っていたそうですのよ――「アーティストに手をつけたのではない。
恋人に曲を書いてデビューさせただけだ」。

こうして今から20年ほど前、阪神大震災の直後で、オウム真理教騒動で
ニッポンじゅうが大揺れしていたさなかに、華原朋美ちゃんは小室哲也と
同じイニシャルの「T・K」で音楽界に華麗なデビューを果たし、1995年
から98年までは文字どおりの歌姫として一世を風靡したわけですが、
世紀末が迫ったころに小室さんとの恋人関係が破局を迎え、ここから
つらく苦しい日々を暮らすことになりました。

『平家物語』はのっけから「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声ぇ~♪、
諸行無常の響きありぃ~、沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色~、盛者必衰の理
(ことわり)をあらわすぅ~♪」と唄っていましたが、20世紀末に沙羅双樹の
花のように咲き乱れた“小室ファミリー”旋風も、ほどなく終わりを告げ、
小室さんは“小室ファミリー”の一員だった奥様と、今ではかつての栄華など
想像すらできない暮らしをしています。

華原朋美ちゃんは、小室ブームが廃(すた)れた今、みごとな復活をとげました。
わたくしは、過去のしがらみから吹っ切れた彼女の、これからの活躍を
願ってやみません。

★          ★          ★

……あゝ、片山サツキちゃんのお話でしたわね。
すっかり脇道にそれてしまいました。
これを聴いていらっしゃる、お小さい方々。どうもすみません。

片山サツキちゃんも、“小室哲也ファミリー”のなかの
華原朋美ちゃんみたいに、長いあいだ、幸うすい境遇にいたかたなのです。

なにしろ“小泉チルドレン”一派に所属する「刺客」として政界デビュー
してからも、ずっと大臣に抜擢(ばってき)されずに、「大臣政務官」という
最近になって新たに設置された、大臣に仕える“家政婦”役に甘んじてきた
わけですから。

でも、わたくしは断固として、サツキちゃんを応援しておりますのよ。
なぜかって?
それはね、サツキちゃんは「日韓議員連盟」や「日本の領土を守るため
行動する議員連盟」のメンバーであるばかりでなく、なによりも
「日本エレキテル連合」の国会支部長として活躍しておられるからです。

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日本エレキテル連合 「未亡人 朱美ちゃん」


日本エレキテル連合 朱美ちゃん(きゃりーぱみゅぱみゅバージョン)


日本エレキテル連合 田所先生

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サツキちゃんは参議院外交防衛委員会の委員長として、
先日、みごとなパフォーマンスを見せてくれました。
そのときの活躍ぶりを、あらためて見てみましょうね!

第187回国会 参議院外交防衛委員会
議事録(屁世26年10月21日)

○委員長(片山サツキちゃん) 「ただいまから外交防衛委員会を開会します。外交防衛等に関する調査を議題といたします。質疑のある方は順次ご発言ねがいます」
★理事(追野守尋クン) 「委員長っ!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「追野守尋(おうのもりひろ)クン!」
★理事(追野守尋クン) 「今日は、外交防衛委員会に一年ぶりで戻って参りました。さらに、委員会運営の責任の一端を担う理事として初めて質問に立ちますので、委員長に対して、まずは一言申し上げたいと思っております。すなわち、御嶽山の噴火に際して、委員長は御自身のツイッターで全く根拠のない野党批判をされたわけです。こういうウソの主張は極めて醜(みにく)いものですが、それ以上に、生存者を必死に捜索しているさなかにそれを特定政党の罵倒につかうような発言をされたというのは、この罪は重いと思っています。しかし我が党としては、あのような事態に対して、我々まであなたのレベルに降りていって低俗な政局にしてしまうというのは、これは低劣きわまる愚行ですから、ここであえて委員長の公正・公平さを期待することにして、今後も審議に応じることに致しました。ですから今後の委員会運営を公平・公正・中立になさるよう、委員長に対しては求めておきたいと思います」
○委員長(片山サツキちゃん) 「それはどうもイカんの金玉でございました。あのときは便秘が続いていてカンシャクが爆発し、あらぬことをツイッターで口走ったのでございます。腹のなかで暴れていた疳(カン)の虫のせいですから、あたしには責任はございません。けれどもご指摘がありましたから、さよう心得て、公平・公正に進めたいと思います」
★理事(追野守尋クン) 「続けて、防衛大臣にお伺(うかが)いをさせていただきたいと思います。防衛大臣が不適切な処理を行ったとされる案件についてお伺いをさせていただきます」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「ゲゲっ!!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ちょっちょちょっ! 追野クンっ! 申しわけないですが、議事資料をトイレに忘れてきました。いま秘書にとりに行かせますから、ここでいったん委員会を中断します」
★理事(追野守尋クン) 「そんなバカなことがありますか? そんなことで議事を中断していたら会期がいくらあっても審議できないでしょ!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ハイ! コマーシャル行ってみよう! はい一旦CM!」
★理事(追野守尋クン) 「あんた、いかりや長介ですかっ? 国会は『8時だよ!全員集合』じゃないっての!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「いいこと思いついたっ! ここで急きょ、委員会幹事の立川談志クンに、長生きする健康法について説明をしていただきます。国を守るまえに国会議員はテメエを守らなきゃなりません。なにせカラダが資本ですからね!」
★理事(追野守尋クン) 「委員長っ! 談志センセイはとっくに死んでますけど、なに血迷ったこと言ってるんですか?!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「まあとにかく、ここは立川談志クンを召喚します! エロイムエッサイム! エロイムエッサイム! われは求め訴えたり!」
★理事(追野守尋クン) 「じぇじぇっ! それは悪魔くんが魔王メフィストを召喚するときの呪文……!」

ここで委員会室中央の床のモザイク模様がとつぜん回転しはじめ
ものすごい雷鳴と猛烈な悪臭のけむりが床から噴き出して
煙のなかから紋付き姿の人影が現れた

●委員会幹事(立川談志クン) 「てめえ馬鹿野郎っ! 冥土で朝寝してたらとつぜん呼び出しやがって! 俺はコールガールじゃねえんだぞ馬鹿野郎!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「談志センセイ、ご無沙汰しておりました。片山サツキでございます。本日おこしいただいたのは……」
★理事(追野守尋クン) 「オコシいただいたジャねえよコノヤロー! こっちはオコサれたんだぜ迷惑千万だっての! さつきだかサクラだか知らねえが五月祭とか気どってる歳じゃねえだろ、あんたも……」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「談志センセイ、初めまして。防衛大臣の餌渡(えわたり)でございます。本日は天国からわざわざお越しいただき……」
●委員会幹事(立川談志クン) 「エワタリだか不渡りだか知らねえが、ふざけんじゃねえよ! だいたい俺が天国に行ったんなら、こんな簡単に戻ってこれるかっての! どこかのババアが悪魔召喚の呪文を唱えたせいで、おらぁ地獄から引きずり戻されたんだバカヤロー!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「談志センセイ、本日国会にお招きしたのは、センセイのお話しで間(ま)を持たせて頂きたいと思いまして……」
●委員会幹事(立川談志クン) 「間を持たせるだって? 俺は幇間(たいこもち)じゃねえぞバカヤロー! だいたい国会は新宿末広亭とか上野の鈴本演芸場じゃねえだろ、このバカ何いってんだ?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ですから、ちょっとのあいだ、小咄(こばなし)でもして間を持たせて欲しいんです」
●委員会幹事(立川談志クン) 「ふざけんな、この野郎! だいたい国会議員だった俺を沖縄開発政務次官にしておいて、おまえら自民党の犬どもが俺の足を引っぱって辞めさせたじゃねえか! 39年前の屈辱をおれは忘れてネエぞこの野郎!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「そんな昔の話は、あたしは知ったこっちゃないわ! 談志さんが酔っぱらって政務次官をやめさせられた頃は、あたしは東京教育大付属で東大めざしてガリ勉していましたから」
●委員会幹事(立川談志クン) 「験勉(けんべん)してる? ウン!親指大ね! ……って、東大一直線かよテメエは! それで税金に寄生して賤業(せんぎょう)やってんだからテメエらなんてサナダムシと変わらねえじゃねえか!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「国会議員は賤業じゃございません! それに職業に貴賎なんてないんですっ!」
●委員会幹事(立川談志クン) 「ウソつくなよ、コノヤロー! あんたの前の亭主、あのハゲオヤジが、『賤業としての政治家』っていう本を堂々と出してたのを、知らねえワケじゃねえだろ?」

政治学者だった舛添要一センセイは、田原総一朗司会のテレビ朝日
『朝まで生テレビ!』で顔を売り、テレビタレントとして全国に
知られる存在になった。タレント人気絶頂期の1989年7月20日に
『賤業としての政治家』(飛鳥新社刊)を出し、政治家の実態と理想
を語っている。その10年後の1999年4月、青島幸夫知事の後任をきめる
東京都知事選に立候補して実際に政治家を志したが、石原慎太郎が圧勝
した。今やその石原が「老兵」ならぬ、政界に悪臭を吐き散らすだけの
「陋弊(ろうへい)」と化し、彼が独断で都政に引き入れた猪瀬直樹も
公職選挙法・政治資金規正法違反の収賄疑惑で都知事のイスから逃げ出して、
いまや念願の都知事のイスを手に入れた。

○委員長(片山サツキちゃん) 「談志センセイ、あたしのまえで、あいつの話をするのはやめてっ! その話題を出すだけでもハラスメントですからねっ!」
●委員会幹事(立川談志クン) 「何いってんだコノヤロー! そもそもオマエら国会議員なんぞ、憲法違反の選挙もどきで票を手に入れて国会の赤ジュータンを踏んでるだけの盗賊だってことを、忘れんじゃねえぞ! オマエら法律違反の税金ドロボーでしかねえんだぞ! ……とマァ、ひととおり毒舌を吐いたら、ちったぁ滑舌もよくなったんで、ここで一席バカ咄(ばなし)でもして帰ろうか」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「よっ! 待ってました大将!」
●委員会幹事(立川談志クン) 「バ~カ! てめえ防衛大臣だろ。テメエんとこの自衛隊は、市ヶ谷の幕僚監部で寄席でもやってんのか? 幕僚監部にいるヤツらは“三ばか大将”なのかよ!」

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元祖「三ばか大将」
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○委員長(片山サツキちゃん) 「こりゃまた一本とられました。エワタリくん、談志センセイに座布団やって!」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「ハイハイ、承知いたしました」
●委員会幹事(立川談志クン) 「バカ野郎! てめえオレがむかし笑点で司会してたのを知らねえのかよ?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「談志センセイ、悪態ついてばかりいないで、小咄でもひとつ聞かせてくださいな」
●委員会幹事(立川談志クン) 「まあキャンキャンとかいう犬っころみたいに無駄に吠えまくるギャル雑誌で、大昔に“ミス東大”とか呼ばれて絶賛されたおネエちゃんにお願いされたんだから、浮き世に化けてでたお土産として、ここで一席しゃべってもイイぜ」
○委員長(片山サツキちゃん) 「では元沖縄開発政務次官・立川談志クンのお話しをここでお聞きいたします」

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●委員会幹事(立川談志クン) 金玉医者について26分にわたる説明
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○委員長(片山サツキちゃん) 「談志センセイからキンタマ医者の貴重なお話をうかがいましたが、お話がおわるや、たちまち消えてしまいましたので、ここで審議を再開します」
★理事(追野守尋クン) 「委員長!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「オウノくん」
★理事(追野守尋クン) 「トイレに忘れてきた議事進行の資料は、もうお手元にあるのですか?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ご心配なく。汚物入れに捨てられていたそうですが、無事に取り返しました。ではオウノ理事、質問を再開してください」
★理事(追野守尋クン) 「質問を再開します。餌渡防衛大臣の政治資金の処理にかかわる問題でございますが……」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ダメよ~! ダメ!ダメ!」
★理事(追野守尋クン) 「委員長? どうされたんですか?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ダメよ~!
ダメダメ!」
★理事(追野守尋クン) 「質問をつづけます。餌渡大臣は自分の後援団体をトンネルに用いて政治資金を不正に着服し……」
○委員長(片山サツキちゃん) 「ダメよ~!
ダメダメ! ダメよ~! ダメダメ! ダメよ~! ダメダメ!!」

★理事(追野守尋クン) 「委員長? こわれたんですか?」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「委員長がダメだって言ってっぺよ! やめろその質問!」
★理事(追野守尋クン) 「委員長! 被疑者の餌渡大臣があんなヤジを飛ばしてますが、いいんですか! これで?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「イクイクイク~! いっちゃういっちゃう~!」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「おい!オウノ! てめえの質問は的はずれなんだよ! “外交防衛等に関する調査”が議題だって、最初にババアが宣言したじゃねえか? 耳がきこえねえのかテメエは?」
★理事(追野守尋クン) 「委員長! 大臣があんなこと言ってますよ! 許しておくんですか? “外交防衛等に関する調査”を論じる以前に、防衛大臣のネコババ問題を論じるのが先でしょ?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「そっちじゃない! こっち~!」
★理事(追野守尋クン) 「こっち~って、“外交防衛等に関する調査”ってことですか?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「そこそこ、そこよ~! イクイク! いっちゃう~!」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「ほらオウノ! 委員長がヨガってっぺよ! もっと委員長をイカセてやれや兄(あん)ちゃん!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「イクイク~! いっちゃう~!」
★理事(追野守尋クン) 「そんなことやってて、いいんですか? 委員長、あと5分で昼休みですよっ! やる気あるんですか?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「……ではここで一旦休憩します。再開は13時からです」
★理事(追野守尋クン) 「……信じられない。狂ってる……。」
◎国務大臣(餌渡恥得クン) 「おらオウノ、わしが寿司おごってやるから、さっさと昼飯食いに行こうぜ」
★理事(追野守尋クン) 「ありゃ? 委員長、あなたの議事進行の資料ですけど、そのハンコがついてるのは何ですか?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「見ちゃダメよ~! ダメダメ!」


サツキちゃん万事休す!
国会想定問答どおりに議事進行していたことが発覚!

〔午後になり審議再開〕

○委員長(片山サツキちゃん) 「ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。ただいま追野理事の方から、政府側の答弁要領につきまして、あたしがそれを所持しておりましたことにつきまして、クレームが付きましたので、御注意がございましたので、今、理事会を再開し、暫時これから休憩して国対に持ち帰るということで……」
★理事(追野守尋クン) 「委員長!委員長!」
○委員長(片山サツキちゃん) 「なんだよ?」
★理事(追野守尋クン) 「委員長、まず自分がやったことを認めて下さいよ! 認めなきゃ、指摘あったじゃなくて、あなた、そうだったというふうに言ってくれないと持ち帰れないでしょ?」
○委員長(片山サツキちゃん) 「はぁ?(ヤジ多数あり) ええ~っと、たしかにあたしは~本日の答弁要領を持っておりましたぁ~。はいはい。それはどうもスンマセンでした。うるさいぞ外野! 委員長発言中だぞおい! ……収拾がつかないので、ここで一旦休憩します。 ハイここで休憩~!」

〔休憩後開会に至らなかった……〕

……お話のおばさんです。
このようにサツキちゃんは、国会のなかで日本エレキテル連合もビックリ
するような大活躍をして、おもしろみのない国会議事堂を、浅草の演芸場
なみに変えてくれたのでした。

立川談志師匠までも地獄から呼び出して、秋の演芸祭みたいなお祭りを
演出してくれたサツキちゃんには大いなる拍手を送りたいと思います。
……が、そのサツキちゃんが頼りにしてきた安倍政権が、いきなり
衆議院の解散と総選挙を宣言しました。

改造内閣の顔ぶれが犯罪者ばかりで外交も失敗つづき……。

こういうやり方で遁走(とんそう)するなんてネェ……(苦笑)
下痢を理由に総理をやめた第一次安倍政権のときと同じ手口で、
バカな犯罪者はおなじ手口を繰り返すって言いますけど、
まったくその通りですわね。(笑)

さて、そのアベッチさんですが、解散総選挙を決断してから
サツキちゃんをこんな具合に口説いているとか……

アベッチサン 「ねえ~サツキちゃ~ん。いいじゃ~ないの~? この際だからさぁ~、参院から衆院に乗りかえてさぁ~、いま選挙に出ない~?」
サツキちゃん 「ダメよ~! ダメダメ!」
アベッチサン 「そう言わないでさぁ~。衆院に乗り替えたらさ~、今度ワネ、大臣にしてあげるからさぁ~。だから~、いいじゃ~ないの?」
サツキちゃん 「ダメよ~! ダメダメ!」
アベッチサン 「そんなこと言わないでさぁ~。あっ、そうだ。サツキちゃん、朝鮮旅行は好き? 選挙が終わったあとの内閣では、サツキちゃんを拉致対策担当の大臣にするからさぁ~。……ボクは飛行機はほんとは苦手でね。だってトイレが狭いから、下痢するとウンコがお尻に跳ね返ってくるんだもん。だからさぁ~。ここにフエ~リーの、フエ~リーの切符があるんだけどさぁ~。二人でフエ~リーのマンギョンボン号に乗って北朝鮮に行こうよ? ねえ、いいじゃ~ないの?」
サツキちゃん 「ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ!」
アベッチサン 「…………」
サツキちゃん 「ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ!」
アベッチサン 「(ため息) ……モシモシ、わたし総理大臣のアベッチサンですけど。読売グループのナベツネさんですか? はいはい……。今ねぇ、サツキちゃんに次の朝鮮担当大臣はどうかって口説いているんですけど、ダメダメばかり言ってるんですよ」
サツキちゃん 「ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ! ダメよ~!ダメダメ!」


アベッチサン 「ナベツネさん、もうサツキちゃん壊れちゃったみたいだから、今度はオシャブリ人形レンホーちゃんに取り替えてくれませんかね?」
サツキちゃん 「ダメよ~っ! ダメっダメぇ~~っ!」

*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*

きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5757)から引用》と明記して下さい)

 

屁世滑稽新聞(屁世26年11月8日)

あなたにも簡単に作れる小渕ワイン……の巻


全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

きょうは、犬HKの朝の連続ドラマ『マッサン』で皆さまもご存じの
おかたと、対談したいと思います。あたくしの『花子とアン』の
“あとガマ”として始まったあのドラマは、主人公「亀山政春(かめやま
まさはる)」として登場し、現実にはニッカウヰスキーの創業者となった
竹鶴政孝(たけつる・まさたか)さんと、彼のワイフでドラマでは「亀山
エリー」として登場しますが、実際には竹鶴政孝さんがスコットランド
から連れて帰ってきた奥様であるリタさんの、国境をこえたステキな
夫婦の愛の物語になっています。

そして、この愛のドラマで、国産ウイスキー実現の“お産婆さん”役と
して大きな存在感をみせているのが、ドラマのなかでは「鴨居(かもい)
商店社長の鴨居欣次郎(かもい・きんじろう)」として登場しますが、
実際には日本でのウイスキーづくりがままならず失望していた竹鶴さんを
自社に迎え入れて応援し、国産初のウイスキー誕生の後ろ盾となった、
サントリー創業者の鳥井信治郎(とりい・しんじろう)さんなのです。

『マッサン』で、玉山鉄二さんが演じる主人公「亀山政春」を励まして、
ウイスキー作りを後押しする「鴨居欣次郎」の役を演じているのは、映画
『ALWAYS(オールウェイズ) 三丁目の夕日』シリーズや『舞妓Haaaan
(ハ~~ン)!!!』などで、パワフルな演技を見せてきた堤真一さんです。
その堤さんが演じる「鴨居」社長は、ドラマのなかで「やってみなはれ!」
と亀山クンを勇気づけていますが、これは架空のセリフではなく、実際に
鳥居信治郎さんが残した名言でした。鳥井さんは「やってみなはれ。
やらなぁ~わからしまへんで!」と仲間を励まし、大胆かつ緻密(ちみつ)な
チームワークで、酒造業界において快進撃を遂げてきたのでした。

鳥井さんの「やってみなはれ!」精神は、サントリーの社訓ともいうべき
朗(ほが)らかで前向きな、チャレンジ・スピリットの言葉なのです。

わたくしは、皆さまご存じのように山梨の農家で生まれ育ったので、
ぶどうの果汁とか、ぶどう酒は大好きです。
お酒は大人の飲みものですから、子供のうちからお酒を飲みつけるのは
習慣になっちゃ困るからダメなのですけれど、子供の皆さんだって、
たとえばクリスマスのお祝いの夜に、ほんのひとくち、ぶどう酒を
なめさせてもらうことくらいはあるでしょうし、お年賀の挨拶(あいさつ)で
お爺さまお婆さまのお家(うち)を訪れたときなどは、すでに酔っぱらって
赤ら顔のお爺さまから、お屠蘇(とそ)をチョッピリ飲ませてもらう
ことだってあるでしょう。

子供のお口には、日本酒なんて“酸(す)っぱくて変なにおいのマズい水”
としか感じられないでしょうし、ましてビールとかウイスキーなんて
ニガくて臭いだけで受け付けないでしょうけれども、人間っていうのは、
長く生きつづけていくうちに、変にひねくれた味の、くさい食べ物とか
飲みものを、美味しく感じるようにもなるのです。……それはきっと、
大人のかなしい性癖(さが)なのでしょうけどね。まぁここでは、
子供にはわからない不思議なことだ、と申し上げておきましょう。

……まあとにかく、今回は『マッサン』でワインの話題が出てきたことも
ありますし、これからの寒い季節には、ワインを熱燗(あつかん)で飲むと
風邪の予防や滋養強精(じようきょうせい)にもってこいでもありますので、
サントリー創業者の鳥井信治郎さんをゲストにお迎えして、ワインのお話し
などをうかがいたいと思いますのよ。

★          ★          ★

ところでサントリーの創業者である鳥井信治郎さんは、今から135年も
前の1879年、つまり明治12年に生まれて、1962年すなわち昭和37年に
83歳でお亡くなりになりました。

そういうわけで、鳥井さんはすでに半世紀以上もまえに冥土の人になって
いますので、このままではお話しをうかがうことができません。

そこできょうは特別な趣向として、霊界の亡霊をこの世に降ろして話を
聞くという“口寄せ”稼業、つまり霊媒ビジネスの業界で、日本で一番
成功した“口寄せ師”の大韓流呆(おおから・りゅうほう)先生にお手伝い
いただき、大韓先生のおクチを媒介にして、霊界の鳥井信治郎さんと
お話しをしたいと思います。

大韓流呆(おおから・りゅうほう)先生は、至高神「エラ・アカンタレ」と
名乗っておられ、お釈迦(しゃか)さまやキリスト様だけでなく、昨今の俗人が
誰もが知っているタレントや話題の人物たちの“背後霊”なんぞも
勝手に降ろして対談本を乱発して、お金を稼いでいらっしゃるお方ですのよ。

大韓(おおから)先生に勝手に“背後霊”を降ろされた有名人のかたがたは、
もう枚挙のいとまがないほど沢山いらっしゃいます。最近の例だけでも、
たとえば村上春樹さん、宮﨑駿さん、秋元康さん、本田圭佑さん、池上彰さん、
膳場貴子さん、小保方晴子さんや、さらにはジャニーズ事務所の木村拓哉さん
や岡田准一さんまで、いつのまにやら“背後霊”が大韓(おおから)先生に
勝手に現世にひきずり降ろされて、むりやり“霊界対談”をさせられて
いらっしゃいますのよ。この強引なやりかたは、一種の「霊的レイプ」と
言ってもよいでしょう。この見さかいのなさときたら、昔なつかし東映映画の
“不良番長”の美女“千人斬り”を思い起こすほどですワ。

……前置きが長くなりました。さっそく「エラ・アカンタレ」こと大韓流呆
(おおから・りゅうほう)先生をお迎えして、先生に“口寄せ”していただいて、
霊界の鳥井信治郎さんと対談したいと思います。
それでは大韓先生、おねがいします。

自称の芸名「エラ・アカンタレ」を名乗る口寄せ名人
大韓流呆(おおから・りゅうほう)師を媒介にした、
赤玉ワイン創業者・鳥居氏と花子先生の対談

エラ・アカンタレ 「花子さん、きょウはヨロスク」
花子先生 「流呆(りゅうほう)先生、こちらこそ宜しくお願いします」
エラ・アカンタレ 「アナタに霊言を与えるまえに、言っておきたいことがある」
花子先生 「何でしょうか?」
エラ・アカンタレ 「アナタ、わたしが有名人のシュゴレーと対談してきたのを、“霊的レイプ”とか“千人斬り”とか言ったね! 許せないニダ! 謝罪を求めるニダ!」
花子先生 「流呆(りゅうほう)先生、お顔が真っ赤ですわよ。それに息がものすごく唐辛子くさいですわ。あまり興奮すると、血圧が上がって脳溢血(のういっけつ)を起こしますわよ。もうすこし冷静になって下さいませ」
エラ・アカンタレ 「ケンチャナ~! 仕事に入るまえに、わが教団を侮辱するようなあなたの言辞を糾弾(きゅうだん)せねば気が済まないニダ!」
花子先生 「教団ですって? 流呆(りゅうほう)先生、わたしはあなたの“教団”に物言うつもりは、更々ありませんわ。ただあなたの“お口寄せ”のお仕事のやりかたが、日本人の謙譲(けんじょう)の美徳を踏みにじるワイセツで強引なものだと、批評しただけですのよ。ここは日本なのですから、言論の自由がありますのよ。お隣の半島ではないのですから」
エラ・アカンタレ 「わが“光復の科学”を貶(おとし)めたのだから、ここで謝罪ハセヨ!」
花子先生 「まあ……流呆(りゅうほう)先生、お顔が燃えるように真っ赤ですわよ。あなたや、あなたのお取り巻きのかたがたが常々行なっているような、強引で反社会的なやりかたというのは、けっして日本人の発想ではありませんわよ」
エラ・アカンタレ 「もうすぐ“光復の科学大学”を発足させて、ワレワレの仲間の元イルボンジエ軍大将・駄藻紙(だもがみ)ソンセンニムなどを教授に迎える予定だけれど、アンタはぜったい光復の科学大学に呼ばないから、覚悟してオケヨ!」
花子先生 「はいはい(笑)。流呆(りゅうほう)先生、ここで悪態をついていないで、あなたのお得意な“口寄せ”をお願いいたしますね」
エラ・アカンタレ 「謝罪と賠償を…… アイゴ~! 死霊が下りてきた~!」(……と叫びながらぶっ倒れ、全然ちがう形相になって徐[おもむ]に起き上がる……)

★          ★          ★

鳥井信治郎 「……花子先生、ワシを呼んでくれてオオキにな!」
花子先生 「まぁ! 鳥井会長、はじめまして! 俗世に帰ってきたのですね」
鳥井信治郎 「天国でほろ酔い気分で散歩しとったら、エラが張ったアヤシイあんちゃんに呼びとめられてな。そのあんちゃん、ワシの御居処(おいど)をいきなり触ったんじゃ。そのとたんに足もとがガラガラと崩れてのォ。気がついたら成仏するまえの、俗世に逆戻りやわ(笑)」
花子先生 「まぁ! それは大変に申しわけございません。無事に成仏したホトケさまを、あの霊媒がそんなふうにして“この世”に引き戻しているだなんて、ぜんぜん知りませんでした。ご迷惑をおかけして、俗世の一堂を代表して、お詫び申し上げます」
鳥井信治郎 「いまさら謝られても、俗界に引き戻されたんやから、しょうもないわ」
花子先生 「せっかく俗界にお帰りになられたのですから、しばし私と、ワインのお話しをいたしませんか?」
鳥井信治郎 「ワインかいな? ええのぉ! なつかしいのぉ!」

★          ★          ★

花子先生 「まず鳥井会長の生い立ちから、お聞かせ願えませんか?」
鳥井信治郎 「ええよ。ワシは明治12年の1月の末に、大阪で生まれたんや。ええと……今はいつや?」
花子先生 「屁世26年、西暦ですと2014年です」
鳥井信治郎 「なんや! とんでもない未来に来てしもうたな! え~パチパチパチと……、えっ? ワシいま生きとったら135歳になってるやんか!」
花子先生 「パチパチパチっておっしゃってましたが、どういたしましたの?」
鳥井信治郎 「いやぁなに、頭のなかのソロバンを弾いとっただけや。実家が両替商と米穀商でっしゃろ。んで、ワシも物心ついたころから商人(あきんど)の技能や才覚を叩きこまれたわけや」
花子先生 「ご長男だったんですか?」
鳥井信治郎 「いや、次男や。13歳のときに薬種問屋の小西儀助商店に丁稚奉公(でっちぼうこう)に入った。あんた“ボンド”って知らんか? ボンド!」
花子先生 「合成接着剤のボンドですか?」
鳥井信治郎 「ああ! そうや! 小西儀助商店はそれで日本有数の業者に出世したわけや。のちに社名をカタカナの“コニシ”に変えて、接着剤を手広く扱う専門会社になったけどな。でもワシが奉公していた頃は、洋酒もやってたで。たとえば“アサヒ印ビール”とか……」
花子先生 「それって現在のアサヒビールかしら?」
鳥井信治郎 「おネエちゃんご名答! ……で、丁稚奉公の時代にワシは酒を商いを学んだわけや」
花子先生 「お酒の商いは、運命的なものだったのですね?」
鳥井信治郎 「そういう言い方もできるが、ワシは日本人や。だから何よりも日本人の舌にあう味覚の洋酒を売りたいと思ったし、その夢を実現するために邁進(まいしん)したんや」
花子先生 「丁稚奉公の子ども時代が終わって、どうされたんですか?」
鳥井信治郎 「二十歳のときに独立して、鳥井商店を立ち上げて、スペインからぶどう酒を輸入して売り出したんやけど、それで味噌(みそ)がついてしもうた……」
花子先生 「まあ! ワインに味噌をまぜて売ったんですの?」
鳥井信治郎 「いやいやいや。ちゃうちゃう。失敗したんやわ。なにせ舶来のぶどう酒は酸っぱすぎて、辛すぎてのお。これがちぃとも売れんかった」
花子先生 「……で、どうしましたの?」
鳥井信治郎 「そこからがワシの武勇伝の始まりや! ワシはのぉ……(と言いかけると突然形相がかわり声色が大韓流呆に戻った……)」
エラ・アカンタレ 「ウッゲゲ、ギャア~! 電池が切れた! キムチとマッコリ! キムチとマッコリ! キムチとマッコリを今すぐカッタチュセヨ!」
花子先生 「あらまあ! 霊媒がまぎれこんで来ちゃったわ! いますぐ買ってきますから、ちょっと待っててね!」

(ここで花子先生はキムチとマッコリを買いに出かけたので、
鳥井氏との“霊界対談”は一時中断を余儀なくされた。その後
霊媒のエラ・アカンタレ氏がキムチ5キログラムとマッコリ8本を
貪るように食べて充電を終えたのち、ようやく“霊界対談”が再開。
このかん2時間が無駄になった。)

花子先生 「鳥井カイチョウ! 鳥井カイチョウ! 聞こえますか、どうぞ?」
鳥井信治郎 「ハイハイ、こちら鳥井ですドウゾ……って、なんや少年探偵団みたいやな。なんちゅう出来の悪い“霊媒”やろか」
エラ・アカンタレ 「トリイさん、霊媒のワタシに何ってこと言うんだ? 謝罪と賠償を要求する! 世界一うまい“竹鶴17年ピュアモルト”を1カートンよこすニダ!」
鳥井信治郎 「そりゃ宿敵ニッカウヰスキーの商品やで、アホンダラ!」
花子先生 「流呆センセイは、口を出さずに、まじめに口寄せだけおやりになって下さいませ! 霊媒が亡霊と掛け合いをやるなんて、そんな腹話術みたいな降霊術は初めて見ましたわ! インチキじゃないんですの?」
鳥井信治郎 「……いやいやいやいや。お騒がせしたニダ(笑) 対談をつづけようやおネエちゃん!」
花子先生 「……?」
鳥井信治郎 「で、ワイン商売の話やったな」
花子先生 「あゝ、そうでした」
鳥井信治郎 「舶来の輸入酒をそのまま売っても、日本人の舌がそれを受け付けない……となると、日本人の味覚にかなったぶどう酒を作るしかない」
花子先生 「たとえばどういうお酒?」
鳥井信治郎 「まず酸味や辛みをおさえて、甘みをつける。ぶどうの果汁のように香ばしくて、なおかつ異国情緒あふれる精妙なる薬味が効いていて、のむとホンノリ酔ってきて、からだがポッポと熱くなり、心は天使の羽がはえたみたいにスゥ~っと軽くなる葡萄(ぶどう)酒や!」
花子先生 「聞いているだけで、気持ちよく酔ってきちゃうワ」
鳥井信治郎 「あっはっは、なにせワシは若い頃、“しゃべる媚酒(びしゅ)”って呼ばれてたヨッテに。」
花子先生 「それがあの有名な“赤玉ポートワイン”ですか?」
鳥井信治郎 「ご名答! これを完成させて売り出したのは明治40年の春のことや。え~と、おネエちゃんわからんやろうから……パチパチパチと……西暦では1907年、いまから……パチパチパチと……107年まえの春やな。ワシが28歳のときじゃ!」
花子先生 「犬HKの朝ドラでは、“鴨居欣次郎”がワイン売り込みの秘密兵器として、日本初のセミヌードポスターを作りますよね?」
鳥井信治郎 「まあ、あれはドラマ。作りもんの虚構やからショウもないわ。実際にはあのポスターを世に出したのは、もっとずっと後のことや。ワシは“赤玉ポートワイン”を売り込むために、いろいろやりましたでぇ。ポートワインの名前を染め抜いた行灯(あんどん)をギョウサンこしらえて、店のまわりにずらァ~りと並べるとか、赤玉を描いた法被(ハッピ)を社員に着せて、明るく景気よく振る舞わせるとかネ。もっとすごいのは、歌劇団もつくったでぇ!」
花子先生 「まあ! 歌劇団ですか? 宝塚歌劇団とか松竹歌劇団みたいなものですか?」
鳥井信治郎 「ハイな。赤玉ポートワインを出した頃ちゅうのんは、ちょうど明治が終わる頃やったんやけど、歌舞音曲(かぶおんぎょく)もそのころ大きく様変わりしましてなァ……」
花子先生 「……とおっしゃいますと?」
鳥井信治郎 「明治のはじめに文明開化で西洋の音楽がドッと入ってきたんヤけど、その影響をまっさきに受けたのは維新政府の軍楽隊でナァ、つぎに政府が始めた義務教育の学校で、こどもに唄わせる唱歌だったんや」
花子先生 「犬HKの『マッサン』でもスコットランドの民謡が小学唱歌になったことを紹介してましたわね」


(参考:京都楽友合唱団による、日本でおなじみのスコットランド民謡
https://www.youtube.com/watch?v=9oLeqHVZAI4

鳥井信治郎 「で、明治政府は日清戦争や日露戦争を続けざまにやらかしたわけやけど、軍楽調の音曲はだんだんマンネリになってのぅ……明治の終わりには、民間音曲の世界でも“ご維新”が始まったわけや」
花子先生 「……とおしゃいますと? “ご維新”というからには、明治初期の西南戦争のときには西郷どんを討伐するとか、ずいぶんと勇ましい歌も唄われましたが、そんな血なまぐさいのがリバイバルしたんですの?」

(参考:明治10年に勃発した西南戦争のおり、維新政府軍が、
西郷隆盛が率いる薩摩軍を討伐に向かう際に唄われた軍歌『抜刀隊』。
日本の内戦で“反乱軍”を鎮圧したときのこの歌が、なぜかその後、
大日本帝国陸軍の行進曲になり、現在でも自衛隊の分列行進で
使われている。https://www.youtube.com/watch?v=MEYBMpk4ZUM


鳥井信治郎 「いやいやいや、ちゃうちゃう、ちゃうがナ。日本には古来から娘義太夫(むすめぎだゆう)みたいな民間芸能の伝統がある。小娘がオペレッタを演(や)るような、和洋折衷(わようせっちゅう)の新芸能が、雨後の竹の子のようにワッと出てきたんや。つまり少女歌劇団でっせ」
花子先生 「そのブームのなかで、会長さんの鳥井商店も歌劇団を作ったってことね?」
鳥井信治郎 「ネエちゃんご名答やで! 商業広告というか、企業PRの文化事業としての少年少女歌劇団の“走り”は、明治43年の三越少年音楽隊かナ。翌年には白木屋少女音楽隊ってのも生まれた。どっちも当時最先端の都市型百貨店、デパートメントストアや」
花子先生 「デパートの文化戦略っていうと、あたくしなどは西武百貨店・パルコが1970年代から80年代に展開した“とんがり文化の全国発信”を連想しますわ。読者参加型で冗談とかパロディを競い合う『ビックリハウス』なんて雑誌を出したり、フラメンコギターのパコ・デルシアとか、メンバー全員が鬼太郎に出てくる“目玉のお父さん”みたいな目玉のかぶりもので変装して前衛ロックを演奏するアメリカのレジデンツみたいな、本当の趣味人だけ楽しめばいい……って感じの音楽家をどんどん招いてこっそりコンサートをしたり、石岡瑛子さんに百貨店のアートディレクションを任せて、100年前のポーランドの“迷宮の画家”タマラ・ド・レンピッカとか、メキシコ革命時代の激動を生きたフリーダ・カーロのような、すごい女流芸術家をどんどん日本に紹介していたパルコ……。それよりもずっと前に、日本のデパートは文化戦略を仕掛けていたんですね」
(パコ・デ・ルシア https://www.youtube.com/watch?v=0o8vszqVL2U
レジデンツ https://www.youtube.com/watch?v=dkcZp-ofXEE
タマラ・ド・レンピッカ https://www.youtube.com/watch?v=6ir71H8-pno
フリーダ・カーロ https://www.youtube.com/watch?v=bBrbwHJNJLQ

鳥井信治郎 「西武百貨店も大した仕事をしたけど、あれは阪急電鉄の猿マネやで。線路沿いに都市開発を行ない、鉄道交通の結節点であり娯楽の殿堂でもある百貨店やら宝塚歌劇団を作ったのは、阪急サンやからなあぁ。東京では東急がまずそれをやった。で、さらに堤ファミリーの西武鉄道と西武百貨店が、それをさらに真似たんやワ」
花子先生 「近代日本の商いの歴史って、奥が深いのですね」
鳥井信治郎 「あったりまえやんけ! ……で、歌劇団の話な。いま言うたように、百貨店が先鞭(せんべん)をつけた。そしてワシが“赤玉楽劇団”を作ったのが、その白木屋少女歌劇団とおなじ明治44年のことや。白木屋サンのやつは“日本最初の少女歌劇団”と呼ばれるようになった。ワシらの“赤玉楽劇団”も、ここで日本最初だったと呼ばせてもらうで!」
花子先生 「我々が知ってる宝塚とか松竹の歌劇団はそのときはまだ……」
鳥井信治郎 「ハイそうだす。まだ出てくる前や。電鉄さんが宝塚新温泉の余興で少女唱歌隊を始めたのが、ワシらの二年あと、大正三年のことや。それがえらい受けてなぁ、翌年には本格的な少女歌劇に発展して、それがいまの宝塚歌劇団になったワケや。それからさらに何年もたって、大正11年には松竹がまず“松竹楽劇部”をつくり、これが昭和になって大阪松竹少女歌劇団に発展し、東京にも松竹少女歌劇団が生まれたんや」
花子先生 「お詳しいですのね」
鳥井信治郎 「そりゃワシ、少女歌劇が好きでっさかい……(笑)」
花子先生 「明治末期から大正はじめにかけての少女歌劇団ブームのことは、なんとなくわかりましたが、なにしろ西暦じゃないとピンときませんわね。元号がコロコロ変わっていたから……」
鳥井信治郎 「じゃあ西暦で言い直すよってに、ちょっと待ってや。……えぇと、はいパチパチパチのパチ。……ええか? 1910年・明治43年に三越少年音楽隊が誕生。翌1911年・明治44年に白木屋少女音楽隊と、ワシらの“赤玉楽劇隊”が誕生。翌1912年・明治45年の7月30日に睦仁(むつひと)天皇はんがお隠れになって、この日に元号が明治から大正になっとる。……で、兵庫県小浜村の宝塚新温泉で宝塚唱歌隊が歌い始めたのが、翌1913年・大正2年。これがさらに翌年の4月1日から、宝塚少女歌劇団として本格的な興行を始めることになる。1922年・大正11年の4月には松竹楽劇部が発足し、これが試行錯誤のはてに興行的な成功を収めて、大阪松竹少女歌劇団に名を変えたのが1934年・昭和9年。東京では1938年・昭和3年に東京松竹楽劇部が生まれて、これが松竹歌劇団に成長していく……。こういう歴史があったわけや。これでお分かりのように、ワシらの赤玉楽劇団は、ホンマに時代の先頭を走っていたんやで!」
花子先生 「赤玉楽劇団はどんな活動をしたんですか?」
鳥井信治郎 「全国を巡回公演して、それぞれの地域で、販売店の店主はんとお客はんを、われらがレビューに無料招待して、大いに楽しんでもらいました。どうや? 今の世知がらい商売よりも、販売店はんも顧客のかたがたも、ずっと楽しめたんやで。エエやろ?」
花子先生 「当世のビジネスよりも、はるかに人情とエンターテインメントがあふれていたのね」
鳥井信治郎 「どや?エエやろ。ステキやろ! ……で、この楽劇団から、日本初の裸体ポスターが生まれたってワケや」
花子先生 「まあ! そうでしたの?」

戦前に数々の傑作広告を生んだ“広告作家(アドライター)”片岡敏郎
たちが1922(大正11)年に作った『赤玉ポートワイン』の宣伝ポスターは
日本初のヌードポスターとなった。モデルは“赤玉楽劇団”のトップスター
松島栄美子である。


鳥井信治郎 「赤玉楽劇団のプリマドンナの松島栄美子に、モデルになってもろぅて、思いきってヌード写真にしたわけや。もちろん日本初やで。革命的なデザインやったから、発表当時は天地をひっくり返すような衝撃力で、これでおおいにワインを売らせてもろぅたわ!」
花子先生 「会長さんはホントにアイデアマンだったのね」
鳥井信治郎 「あたりまえやんケ! ワシらは絶対に自信があるものを作っとった。ひとりでも多くの人に買ってほしい。だからそのためには、ものすごぅ奮闘したんや。商売人の本懐やで!」

★          ★          ★

花子先生 「今や、赤玉ポートワインの発売から107年が経ちました。生きておられればすでに135歳になっていらっしゃる今年、2014年に、あえて会長さんを霊界からお招きしたのは、日本の食文化のなかで、ワインについて何だかトンデモない勘違いをしている事例が、昨今まま見られるからなのです。それで会長さんのご意見をうかがいたいナと思いまして……」
鳥井信治郎 「ワシに言わせれば、お酒は“百薬の長”でっせ。その基本を踏みあやまると、酒は毒にも麻薬にもなる。ワシはサントリーを日本有数の会社に育てましたけど、会社ってのは矢鱈(やたら)に大きくなると、安定を望むだけの怠け者の雑魚(ざこ)ばかり寄ってきて、組織が腐ってしまう。けっきょくはこういうコトやね。……権力者のまわりには、小賢(こざか)しい欲たかりの小人物たちが集まるワイな。こいつらは世間体を気にして、小賢(こざか)しく、せせこましく、常識的に振る舞うわけや。そういう木っ端(こっぱ)役人みたいのが、吹きだまりみたいに集まった組織はどうなるか? 花子先生、どうなると思う?」
花子先生 「ソニーみたいになるんでしょ?」
鳥井信治郎 「イエス! あるいはお台場に移転後のフジテレビみたいに、こざかしいばかりの烏合(うごう)の衆の集まりになって、まさにオ~!ダイバ~!……ってことになるわけヤがな(笑)」
花子先生 「盛者必衰の法則ですわね」
鳥井信治郎 「仏教思想の真髄に触れるわけですワ。これは深いでぇ!」
花子先生 「……で鳥井会長さん、今どきのサントリー社員に、言いたいことはありますか?」
鳥井信治郎 「あるあるある! ワシは日本人の舌に合う革新的な洋酒を作って売り出したという自負があります。絶対的に自信があった商品やし、それを日本の国民に受け入れてもらいたかったから、広告だって、もう命がけで創意工夫したもんダス。ところがな、そういう奮闘努力の結果、会社がエろぅ大きくなったんやけど、そうなると安泰をのぞむなまけ者ばかりが吹き溜まるようになったんや。いまのサントリーを見てみい。ひどいもんや。ワシは死んでも死に切れん悔しさがある、と言いたいくらいや。まあ俗世から昇天してずいぶん経(た)ってるさかい、若いもんにやらせるしかないと思うとるけどな」

★          ★          ★

花子先生 「鳥井会長さんのご奮闘のおかげで、いまや日本でも、ワインがすっかり定着いたしましたのよ」
鳥井信治郎 「さよか、それはうれしいワ」
花子先生 「わたしの故郷の山梨もワインの名産地になりました。内陸のやま国は、ブドウ栽培に適しているので、ワインを特産品としている地域もたくさんありますのよ」
鳥井信治郎 「さよか。ワシが葡萄酒を商(あきな)い始めた頃は、あんな酸っぱ辛い洋酒はなかなか受け入れてもらえなかった。やっぱり隔世の感がありますナ」
花子先生 「ところで会長さん。昨今ではワインを“名刺代わり”に使ってる政治家もいるらしいのですが」
鳥井信治郎 「あのなぁ花子はん、酒というのは百薬の長にもなるし麻薬にもなる。いい酒は風味で人を酔わせる。ワシらはポートワインで大成功したのち、ウイスキーの製造販売に乗り出して、それもうまく行った。ワシらはウイスキーの商品名をもとに、社名を“サントリー”に変えたほどやった。……だけどな、ほんとに大切なのは看板じゃないデ。お酒そのものの品質なんやで! 酒を“名刺”に使(つこう)てる政治家なんて最低の俗物やし、そういう奴に“名刺がわり”に使われている酒は、ほんまカワイソウやと思うわ。名刺がわりに使われることを知りながら、酒を提供している蔵もとがあるとすれば、それはもう外道やで。そんな酒蔵はワイン酵母に恨(うら)まれて、祟(たた)られて亡びるのが関の山やな(笑)」
花子先生 「冥土にいらっしゃる会長さんは、ご存じないかもしれませんが、群馬県出身の政治家が、地ワインに自分のラベルを貼って選挙民にプレゼントしていた騒動がありました」

それぞれのワインのラベルには、こう書いてある。
白ワイン:「優しさ輝く日本の未来 おぶち優子 OBUCHI YUKO」
赤ワイン:「おぶち優子 伝えたいふる里の心 OBUCHI YUKO」

鳥井信治郎 「ワシらの霊界にも、生前に新聞屋(ぶんや)をしていて早耳だけがとりえの亡者とかが沢山いてな、そういう連中は“珍奇な見聞をよそから持ってきて吹聴する”という習慣が、死んでも抜けないんやわ(笑)。そういう連中から聞かされとったから、アンタの話はワシも知っとる。群馬の小渕優子はんの騒動やろ?」
花子先生 「ご名答です! 冥土にお暮らしなのに、よくご存じで……」
鳥井信治郎 「そりゃそうヤで。ワシらのほうが次元が上やから。アンタらの世界は、ワシらからみたら小さな培養皿のなかで増えたり減ったりしている雑菌みたいなもんやわ(笑)」
花子先生 「まあっ! そんなもんですの、冥土からみた私たちって?」
鳥井信治郎 「ハイな! ……で“小渕ワイン”の件やけど、ワシにはとっても気になることがある」
花子先生 「……とおっしゃりますと?」
鳥井信治郎 「小渕ワインは、群馬の榛名山(はるなさん)のふもとで製造してるらしいナ。冥土に伝わってくる話では“群馬県吾妻郡中之条町”の国道沿いの店らしいけど」
花子先生 「よくご存じで……」
鳥井信治郎 「あたりまえや。冥土の情報力からみれば、俗世なんて便所虫の世界やで。アンタもいっぺん死んでみなはれ(笑)」

「小渕ワイン」の製造元は、群馬県中之条町市城1384で
「群馬の地ワイン」を作っている「■■農園」だという
(気の毒なので、あえて名を伏した)。椎名山のふもと
にあり、フルーツワインなど各種のワインを製造する
有名酒蔵だ。

花子先生 「鳥井会長さん、“死後の世界”のことなんて、お釈迦様さえ語らずに済ませたのに、あなたはブッダを超越していらっしゃいますワね。……でも、あなたのお話しは、俗世の霊媒芸人さんのお口をつうじて語られていますから、話半分に聞いておきますワ」
鳥井信治郎 「そりゃ寂(さび)しいのぅ。まあ、口寄せなんぞという貧乏くさい商売が、俗物世界にはびこっているから、しょうもないけどな(笑)」
花子先生 「ところで、会長さんが気になっておられることって何ですの?」
鳥井信治郎 「そやそや、忘れるとこだったわ。アノなぁ、群馬の榛名山のふもとっていうのは、福島原発の爆発で、ごっつぅ死の灰をかぶったところなんや」
花子先生 「まぁ! 鳥井会長も俗世の放射能汚染を気にしておられるの?」
鳥井信治郎 「あったりまえや! 最近、ぶらぶら病でこっちに来る連中がゴッツ増えてな。ワシらは豪快に昇天したから、辛気(しんき)くさいホトケさんが続々とやってくるのには閉口しとるで」
花子先生 「俗世のあたしたちには想像もつかない事情がおありですのね」
鳥井信治郎 「……でなぁ、花子先生。2011年に福島原発が爆発して、“死の灰”が関東一帯に降りましたやろ。もちろん群馬県にも、ぎょうさん降ったわけや。その直後から、関東周辺が放射能でどない汚れたかは、当時の政府でさえ、ちゃんと測定しとった」

小渕ワイン製造所周辺の放射能汚染の推移。福島原発の爆発事故以降、
文部科学省が進めてきた、全国的な放射能汚染の実態を、時系列順に
示した。この分布図で示したのは原発事故から半年後の2011年9月から、
翌2012年末までの代表的な放射性セシウム(Cs134とCs137)による
汚染状況である。セシウムは少なくとも39種類の同位体があり、その
うちのセシウム133以外は、すべて放射性同位体である。あまりにも
種類が多いので、政府はこれら全部を測定したわけではない。
半減期が2年のセシウム134と、使用済み核燃料から発生する放射能の
大部分を占めるセシウム137(半減期30.17年)だけを測定したわけだ。
もちろん原発の爆発で野外環境に放出されたのはセシウムだけでない。
だからこの分布図は、福島原発による放射能汚染のほんの一部を示した
にすぎない。“小渕ワイン”の製造元も残念ながら、福島原発災害が
もたらした放射能汚染の“ホットスポット”に位置していることが、
この分布図から見てとれる。時が経つにつれて、本当にゆっくりと
ではあるが、放射性セシウムの放射線量は減衰している。主な測定対象
のセシウム137の半減期がわずか30年だから、こうした傾向が見られる
のは当然だ。しかし福島原発公害による放射能汚染はセシウムだけでは
ない。もっと長寿命の放射性元素による汚染も当然起きているが、測定
してないから「見えてこない」だけだ。
(出典:放射線量等分布マップ拡大サイト/電子国土

花子先生 「鳥井会長、福島原発事故のときの政府は民主党政権で、国民に対して『放射能汚染はただちに影響はない』とか、ずいぶんと気休めやウソを言ってたんですのよ。そんな政府を信用できませんわ」
鳥井信治郎 「そりゃアンタの言うことは正しいデ。だけど、そのあとに出てきた安倍はんの盗賊内閣よりもずいぶんマシやないか(笑)。政府なんてのは基本的に盗賊やワ、税金ドロボーの盗賊にはチガイない。……でも原発事故の直後には、政府はちゃんと放射能汚染を計っていたんだから、それさえもゴマカしている安倍はんのドロボー内閣よりは、すこしはマシやろな(笑)」
花子先生 「群馬ワインと放射能汚染のつながりなんて、考えたこともありませんでしたわ」
鳥井信治郎 「政府の測定結果をみるかぎり、小渕ワインの製造所のあたりは、可哀想なことやけど放射能汚染の“ホットスポット”になっていたんやワ。……もちろん、放射能というのは時間の経過とともに減衰する。物理学者はんの言い方を借りれば“半減期”って奴があるからな。でも現実はどうや? 福島原発からは今もとめどなく放射能がもれてるんやで」
花子先生 「日本もトンデモないことになってしまいましたわね」

★          ★          ★

鳥井信治郎 「あのなぁ、花子先生。ワシが赤玉ポートワインの宣伝ポスターを作ったときの同志が、“広告作家(アドライター)”の片岡敏郎クンやったんやけど……」
花子先生 「あの日本初のヌードポスターを作った、世人の心を喚起する天才的な作家さんですわね?」
鳥井信治郎 「そのと~り! その片岡くんが、小渕優子ワインのラベルとポスターを考案してくれたんやわ」
花子先生 「まあ! それはありがたいことですワね。あの世とこの世の共同制作(コラボレーション)ですわ!」
鳥井信治郎 「まず、こっちの世界で悠々自適の片岡クンが、デザインしてくれた小渕ワインのラベルがこれや……」

おぶち憂子・白ワインのラベル

おぶち憂子・赤ワインのラベル

花子先生 「まぁステキ! このラベルを印刷して切りとって、市販のワインボトルに貼れば、だれでもあの憧(あこが)れの“小渕ワイン”を楽しめますワね!」
鳥井信治郎 「さよう。そういう意味では使い勝手のあるラベルやでぇ、これは」
花子先生 「……で、鳥井会長さん。ポスターというのは?」
鳥井信治郎 「ハイな、これや!」

赤玉ポートワインの宣伝ポスターが登場したのは1922(大正11)年、
関東大震災の前年のことである。裸体を写した日本最初の宣伝広告
である。それから92年を経た今、小渕優子議員が、赤恥ワインの
広告塔をつとめることになった。


花子先生 「まぁ! 素敵なポスターですこと。小渕さんの魅力がぞんぶんに描かれた宣伝ポスターですわ」
鳥井信治郎 「そうやろ? 親の七光りで国会議員になっただけのアホ娘かも知れないが、まだこの人には未来がある。がんばってほしいと思うとるワ。最近、優子はんはスキャンダルまみれで経産大臣をやめたけどな……」
花子先生 「だけど優子さんは経産婦ですから、経産大臣になる資格はあるでしょ?」
鳥井信治郎 「あると思うよ。しょせん日本の大臣なんぞ、アメリカさまのご用聞きやさかい、馬鹿でもできる賤業(せんぎょう)でっせ。そやから誰でもできる仕事だす。アホな優子ちゃんにも十分にできる仕事だったはずや」

花子先生 「政治資金をネコババしたくらいで大臣を辞めさせられたのは、可哀想なことですワね」
鳥井信治郎 「……まあ、公金のネコババなんて村会から国会にいたるまで、議員ならたいていはやってることでっしゃろからな(笑)」
花子先生 「けっきょく、“カカア殿下にからっ風”という群馬の風土で、小渕優子さんは、政治上のライバルに刺されたのかも知れませんわね」
鳥井信治郎 「あそこには金玉タヌキがおるからのぅ(笑)」


群馬県出身の自民党議員といえば1980年代に首相をつとめた
中曽根康弘が代表格だ。……だけどこの人はけっきょく
アメリカの対日占領支配の“現地マネージャー”として
日本の対米“売国政策”を、タヌキのキンタマ袋のように
拡げただけだった

 

きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5593)から引用》
と明記して下さい)

福島第一原発「泥沼化」の現実など話題満載『紙の爆弾』12月号発売中!

屁世滑稽新聞(屁世〔へいせい〕26年11月3日)

火山の近所の原発再稼動で「地方早世」……の巻

情報ライブ「ミエネ屋」オープニング
https://www.youtube.com/watch?v=pxCRKPP8FCg

ミエネ 「こんにちワ。情報ライブ“ミエネ屋”です。きょうは冒頭からトンデモない事件がとびこんできました。さっそく藤邑(ふじむら)レポーターから伝えてもらいましょう。藤邑さん、藤邑さん!」
藤邑レポーター 「はい!藤邑です。わたしは今、じつは福岡県庁に設置された“桜島大噴火臨時対策本部”の前におります。けさ午前3時まえに突然おきた桜島の大噴火は、観測史上かつてない規模のものでして、我々は鹿児島の現地に近づくことができません。対策本部もこのように九州北端の福岡県庁に置くしかないという、とてもきびしい状況です」
ミエネ 「……で藤邑さん、鹿児島の現地どうなってるかわかります? いちばん気がかりなのは川内(せんだい)原発でっせ。このあいだ地元の議会やら役場が原発の再稼動を認めて、九州電力も政府も大喜びしたばかりだったやないの。その原発、今朝からの噴火でドナイなってんの?」
藤邑レポーター 「ミエネさん、まず川内原発の様子ですけど、この写真みてください。原発がずっと運転を止めていたんで、その間はこんなふうに、風光明媚でのんびりした景色が広がっていたんですよ」

九州電力が運転休止していた当時の川内原発。
地平線のかなたに桜島がみえる。(薩摩川内市
の川内川河口をのぞむ海上から航空撮影)

ミエネ 「ホンマに絶景やんか! デッカイお便所みたいなもんが、手前の海辺に立っていなければ、美しい海と山にめぐまれた自然の楽園なんやけど、今となっては残念なことしたナア……」
藤邑レポーター 「次にこの写真ですが、これは先日の地元の再稼動容認をとりつけて、浮かれていたときの川内原発の様子です」 

 

再稼動決定を祝う川内原発。右から1号機と2号機。
九州電力では原発に紅白水引幕をたらし、くす玉で
飾り立てて、再稼動の決定を歓迎した。

ミエネ 「なんやの? これ? 河内の盆踊りのやぐらみたいやんか。電力会社や政府にしても、原発を受け入れた地元の自治体にしても、ひょっとして原発を“大仏さん”とか“七福神”みたいに思うてヘンか? なんや科学技術というよりも、ご利益をくださる舶来の神さまみたいに思うてんとチャウ?」
藤邑レポーター 「ミエネさん、私もじつは同じことを感じておりました。大都市から離れた辺鄙(へんぴ)な場所で、地元の政治家とか有力者のホッペタを札束で叩いて飼い慣らして、それでこういう大きな迷惑施設を建てさえすれば、地元も潤(うる)おうからケッコウなことであると……なんだかそういう欲ったかりのスケベ心が、この川内原発にはあからさまに見えるのですよ。在来仏教の権勢だけでなく、その時代時代のパトロンの権勢をも世間に見せせつけるウラ心があって、古来から日本のあちこちに建てられきた大寺院などを、この原発の間の抜けた風体から連想してしまいます……」
ミエネ 「ナア藤邑はん、あんたテレビ本番でそんなこというて大丈夫なんか?」
藤邑レポーター 「ミエネさん。この番組はなんていう題名でしたっけ? ミエネ屋ですよ、みえねヤ! スポンサーとか東京のナベツネに因縁つけられたら『そらスンマヘン、なんも見えね~や(笑)』ってシャレてゴマカしゃいいんですよ」
ミエネ 「藤邑はん、アンタ日本でいちばん勇敢なレポーターやワ。僕が保証したる。……ところで今、川内原発はどないなってんの?」
藤邑レポーター 「我々は現地に近づくことができないので、この目で川内原発の現状をみるのは不可能です。しかしここに、川内原発の被災後の姿を米軍が無人偵察機グローバルホークで高々度から撮影した写真があります。先ほど政府の福岡対策本部で発表されたばかりのものです」

桜島の大噴火で、川内原発も大量の火山灰や火山弾に襲われ、
長年の不安が現実のものとなった。川内原発はたちまち制御
不能におちいり、1号機・2号機ともに爆発炎上を起こした。

ミエネ 「……これはひどい。九州の南部一帯に噴火の被害が及んでいることが、一目みてわかります。……そして藤邑さん、我々が恐れていたことが、ついに起きてしまいましたね」
藤邑レポーター 「……ええ。そのうち大噴火が起きてトンデモないことになるって、みんながあれほど反対したのに。一部のバカ野郎のせいで、国って簡単に亡びていくものなのかもしれませんね」
ミエネ 「フクシマの二の舞になった感があります。今回は原発から噴き出した“死の灰”が、どんなふうに飛散していくかを予測する“緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム”のSPEEDI(スピーディ)が動いていませんから、もうこんな写真みちゃうと絶望的な気分ですね」
藤邑レポーター 「ごらんのように、すでに川内原発は1号機も2号機も爆発炎上を起こしているので、被曝の危険性が高いから人間が操縦する偵察機で接近することはできません。そしてそもそも、桜島から噴出した非常に粒のこまかい火山灰が、大気中に高濃度で漂っているので、航空機が近づくこと自体、非常に危険です。……ですから無人偵察機で、非常にたかい高度から、望遠写真で眺めるしか手がありません」
ミエネ 「そういえば2011年の東日本大震災で福島原発が爆発炎上したときも、米軍のグローバルホークは事故翌日から原発の上空を飛んで監視していました(https://www.youtube.com/watch?v=AC8ORgWDelw )。ところで藤邑さん、対策本部はなんでアメリカ軍の航空写真をあっさり公開したんやろか? 日本政府ってふつうそういうの隠すでしょ?」
藤邑レポーター 「今回は隠しきれないと観念したんじゃないですか?(笑)」
ミエネ 「さよか(笑)。災いが大きすぎて、小手先のウソは通じないと踏んだかな……。で、藤邑さん、福岡の対策本部でほかに発表されてることありますか?」
藤邑レポーター 「鹿児島現地や原発との通信も途絶していますし、避難の状況もまだつかめていません。今回の大噴火は、自然災害が我々の“想定”をやすやすと超えてしまうことを、こんなかたちで教えてくれました。」
ミエネ 「わかりました藤邑さん、また何か動きがあったら教えてください。藤邑さん、くれぐれもからだに気いつけてぇヤ! そして被災者の皆さまのご無事を祈りましょう。……コマーシャルのあとは次のコーナーです」 

★CM(あいさつの魔法、ACジャパンhttps://www.youtube.com/watch?v=zBqekh3glxA
★CM(瀬戸内寂聴 ACジャパンhttps://www.youtube.com/watch?v=0jjlf2KXa1E

 

ミエネ 「では次のコーナーに行きます。ホントは今日なにもなければ、これが冒頭やったんやけど。予期せぬ災害が起きてしまったんで……。スタンバイしてはった餅ヶ瀬(もちがせ)さん、エライ待たせてすまんナァ。どうぞ思う存分レポートたのんますワ!」
餅ヶ瀬レポーター 「ハイ! ミエネさんに過大な期待をかけられてしまいましたが、芸能畑ひとすじのワタクシ餅ヶ瀬が、きょうお伝えするのは永田町のエライ人たちの“知能検査”……ということになってしまいました(笑)」
ミエネ 「餅ヶ瀬チャン、IQテストを持って議員会館へ行ったんか?」
餅ヶ瀬レポーター 「いえいえ、ミエネさん、ちがうんですよ。『ちほうそうせい』が何を意味するのか、安倍政権の大臣たちに単純に聞いてまわっただけなんですが、わたくしの想定外の答えがつぎつぎと返ってきたので、急きょ“お笑い企画”に変更したんです」
ミエネ 「ホンマでっか? それではイントロ映像から行ってミヨっ!」 

 安倍晋三首相は「ちほうそうせい」を行政の柱にすえ、
石破茂を「ちほうそうせい」大臣に据えたが、この2人は
いったいどこまで言葉の意味をわかっているのだろう?

 

餅ヶ瀬レポーター 「え~、わたくしは安倍政権が売りものしている『ちほ~そうせい』というスローガンが、いったい何を意味しているのか知りたくて、安倍政権の幹部のかたがたに、その意味をたずねて回りました。その結果は、わが目を疑うものでした。まず副総理の麻生太郎さんに聞きました。『麻生副総理!“ちほ~そうせい”ってどういう意味ですか、この色紙に書いていただきたいのですが?』……」
ミエネ 「……で、麻生さん、書いてくれたの?」
餅ヶ瀬レポーター 「ハイ。評判の高い、あの立派な筆づかいで書いてくれたのですが……ガッカリでした……(笑)」

麻生太郎副総理に「ちほうそうせい」と書いて下さいと
頼んだのだが……


ミエネ 「これは重症やナァ。麻生さん、すでにボケてるんとチャウか?」
餅ヶ瀬レポーター 「サア? わたしは医者じゃないので、そこまでの判断はつきません。麻生さん一流のボケかもしれませんし……」
ミエネ 「やっぱりボケやないか(笑)。こんなボケが出せるの、昨今はお笑い芸人でもなかなかオラへんで(笑)」
餅ヶ瀬レポーター 「ミエネさん、つぎは辞任するまえの、経済産業大臣になったばかりの小渕優子さんをたずねました。これがまた大変な結果になったんです。この写真をみて下さい……」


政治資金不正流用スキャンダルが出てくるまえ、経産大臣
(辞任前)の小渕優子氏に「ちほうそうせい」と書いて
下さいと頼んだら、全然関係ないことを書いたから
ビックリした。それを撮ったら心霊写真になってたから
2度ビックリした。

 

ミエネ 「うわぁっ! お父さんの幽霊が写ってるやんか! そうか……小渕恵三さんも、娘さんを案じて成仏できへんのか。優子ちゃんはもっとシッカリせんとアカンな。おトウちゃんが死んでも心配かけてることを、この写真をみて自覚せにゃアカンわ」
餅ヶ瀬レポーター 「しかも誤字ですし……」
ミエネ 「優子ちゃんも、新米の経産大臣で張り切っていたんだとしても『稼動』を『嫁動』なんて書いちゃイカンよなぁ……。だいたい優子ちゃんのところは、前の職場の同僚だったTBSプロデューサーの瀬戸口くんが、小渕家にムコ入りして、夫のほうから苗字を変えたんだから『嫁動』すらしてへんで。早稲田はレベル低いなぁ……」
餅ヶ瀬レポーター 「つぎは政界とは違いますが、たまたま局内で上方漫才の大木こだま・ひびき師匠と出会ったので、『ちほ~そうせい』について聞いてみました」
ミエネ 「餅ヶ瀬さんもムチャしますなぁ(笑)」
餅ヶ瀬レポーター 「でもさすがベテラン芸人さんでした」


ついでに、上方漫才の大木こだま・ひびき両師匠に
「ちほうそうせい」についてコメントをうかがった
ところ、「チッチキチー!」とツッコミを入れられて、
「チー放送せえ!」と迫られた。 

 

ミエネ 「こだま師匠は“チッチキチーシール”をまだ売ってたんかいな?」
餅ヶ瀬レポーター 「大阪なんばグランド花月の地下にある“吉本笑店街”で、売られているという話を聞いたことはありますが、いまも売っているのかどうかは、ごめんなさい、わかりません。……そして最後は“ちほ~そうせい大臣”の石破さんに、『“ちほ~そうせい”ってどういう意味ですか?』って聞いてみたんですが……。散々でした(笑)」

さてどんじりに控えしは、「ちほうそうせい」担当大臣の
石破茂氏であるが、その意味を書いてもらったところ
彼はトンデモない思いちがいをしていることがわかった。 

 

ミエネ 「石破さん、なんかトンデモない誤解をしてへんか? 『早世』って“早死”するという意味なんだけど、石破さんはひょっとして“若くして出世する”ことだと勘違いしてへんか?」
餅ヶ瀬レポーター 「……それなんですけど、石破さん、かなり危ないかもしれません」 

 

藤邑レポーター 「ミエネさん、ミエネさん! 藤邑ですが、いましがた福岡県庁の桜島大噴火臨時対策本部で石破大臣が記者会見をしましたので、その様子をお送りします」


石破「地方早世」大臣、桜島の大噴火に、指を立てて
風向きを見ながら曰く…… 。・゚・(ノД`)・゚・。

 

ミエネ 「藤邑さん、ごくろうさまです。石破大臣は人差し指をたてて、風向きをみて、“人間スピーディ”を演じたわけですね? 器用やナァ、この人(笑)」
藤邑レポーター 「ミエネさん、石破大臣の“人間スピーディ”は親の七光りで東京電力に就職した娘さんから教わったそうです。指一本で“死の灰”が流れていく先を予測できるなら、たしかにスーパーコンピューターなんて必要ないですよね」
ミエネ 「人差し指一本で放射性物質の拡散を予測できる石破さんは、髪の毛をピンとたてて“妖気”を計るゲゲゲの鬼太郎みたいですね」
藤邑レポーター 「水木しげる先生の劇画ですか。石破さんが鬼太郎なら、安倍総理はヒットラーってことになりますね」

水木しげる著『劇画ヒットラー』

ミエネ 「それ言うたら、小泉政権で経済方面の大臣として重用されて、いまも安倍政権のアベノミクスの知恵袋として暗躍している竹中平蔵さんなんか、『墓場の鬼太郎』に出てくる“吸血鬼エリート”やんか」

 

水木しげる著『墓場の鬼太郎』の吸血鬼エリート

藤邑レポーター 「つまり安倍政権は百鬼夜行の化け物集団だってことですか……」
ミエネ 「藤邑くん、この企画は真夏にやっておきたかったよナァ。“安倍政権は人の生き血を吸う妖怪集団”だってことでゴッツおもろい企画になっただろうに。タイミングはずしたワ(笑)」
藤邑レポーター 「ミエネさん、諦(あき)めるのはまだ早いですよ。これからまた消費税の増税が行なわれて、やつら国民の生き血をチューチュー吸いよるからね」
ミエネ 「それ行こっ! 納涼企画で行くでぇ!……って、増税がきまるの真冬やんか! どこまでも人でなしの政権やなぁ……」
藤邑レポーター 「吸血鬼ですから、そりゃ“人でなし”ですよ(笑)」
ミエネ 「スタジオの外じゃ火山が大噴火して原発も爆発してるのに、エエんかいな、こんなことしていて?……」

(ここでCMが入る。以下略のまま終了)

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5279》と明記して下さい。)

屁世滑稽新聞(屁世〔へいせい〕26年11月1日)

腐ったトカゲの尻尾を切ったら、

腐った尻尾が生えてきた……の巻


全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

きょうは、とっても珍しい動物のお話しをしましょうね。
特別ゲストとして、「ミツゴロウ先生」として皆さんおなじみの、
動物研究家の旗又憲(はたまたのり)さんをお招きしました。

ミツゴロウ先生と花子先生の珍獣談義

花子先生 「ミツゴロウ先生、ごぶさたおりました」
ミツゴロウ先生 「おや? 花子先生、ぼくは初対面だとばかり思っていたけどね……」
花子先生 「いえいえ。先生がかつて北海道で“ミツゴロウの動物王国”をおやりになっていた時に、夏休みにお世話になったことがあったんですの」
ミツゴロウ先生 「おおっ! そうでしたか! 北海道の動物王国には、東京あたりからもずいぶん若者がやってきたからねぇ……。そういえば20年ほど前に『月刊ザ・天命』というグラビア雑誌を出して、ワイセツだとか文句を付けられて官憲に逮捕された写真家の可能天命クンも、若いころ動物王国のメンバーだったんじゃよ」
花子先生 「テンメイさんとは、あそこで他人以上の関係でしたから、彼のことは何からナニまで存じておりますわ」
ミツゴロウ先生 「おお!そうか! テンメイくんは、ぼくの“ナチュラリストの思想”を一番よく理解して自分のやりかたで実践してきた立派なヤツだよ。彼とイイ仲になってよかったじゃないか!」
花子先生 「まあ! お誉めいただいて恐縮ですわ。でも大昔のことですけどね(笑)」
ミツゴロウ先生 「ミノムシや、ヤドカリみたいに、例外的なものもあるけれど、ほとんどすべての動物はすっぱだかのまま生きている。個体どうしが、ハダカとハダカの、なんの隠し立てもない姿で、堂々と生きているんだ! ぼくも動物と面と向かうときは“心の着物”をぜんぶ脱ぎ捨てて、心がすっぱだかの状態で、真剣に動物に語りかけるんだ。そうしないと動物たちは心を開いてくれないからね」
花子先生 「おっしゃるとおりですわ」
ミツゴロウ先生 「テンメイくんは全裸専門の写真家になったが、それは動物王国で“はだかの大切さ”を学んだからなんだ!」
花子先生 「……ということになると、私も彼の教師だった……ということになるかも」
ミツゴロウ先生 「花子先生? デズモンド・モリスっていう動物行動学者をご存じか? 彼は、1973年にノーベル賞を受けた動物行動学の革命児ニコ・ティンバーゲンのもとで、動物の行動をどう考えるかについて学んだ。西洋じゃキリスト教の悪しき伝統のせいで、昔から『心をもつのは人間だけで、動物に心なんてあるワケない。動物は目の前の刺激に単純に反応しているだけの“機械人形”なんだから、人間みたいに思考をするとか社会をつくるなんてあるワケがない!』と頑固に信じてきたんじゃよ。だけどニコさんは、人間だけでなくチンパンジーにも犬や猫にも、さらには鳥にだって、それなりに“心”はあるし、ちゃんと社会生活をしている、と考えて、観察を通してそれを実証した。だから動物行動学の革命児だし、ノーベル賞ももらえたワケじゃよ」
花子先生 「先生……、デズモンド・モリスって『裸のサル』っていう本を書いた人ですよね?』
ミツゴロウ先生 「ご名答! ニコ・ティンバーゲンのもとで動物行動学を学んだのち、最初はロンドン動物園で鳥の行動を研究していた。それから犬や猫やチンパンジーにも人間のような感情や心や社会生活があることを見いだして、世間に啓蒙したんじゃ。『動物に心なんてあるハズない』と信じていた西洋人をビックリさせたんじゃ」
花子先生 「だけど……わたしは『裸のサル』を読んだときは腰が抜けましたワ。だって下手なポルノよりもずっとポルノチックでしたもの」
ミツゴロウ先生 「モリスさんは、身のまわりの動物たちの“人間的”な真実の姿を解明して世間に伝えたのち、こんどは人間の“動物的”な真実の究明に乗り出した。オッパイやお尻はなぜセクシーなのか? なぜ人間だけオッパイがデカいのか? 性器のまわりに毛が生えているのは何故なのか? ……そうしたことは進化論とか動物行動学の視点で、それまで真剣に検討されたことはなかった。なにせ人間のセックスを扱うのは、それまでは学者世界のタブーだったからね。ご存じのとおり『裸のサル』とは、全身の体毛をほとんど失うかたちで進化をとげた我々人類のことだけど、その人類の動物としての真実の姿、人間のからだや社会にかかわるセクシーな森羅万象を、具体的な写真つきで解説した本だったんで、半世紀ほどまえに出版されたときは大センセーションを巻き起こしたんだよ。愚昧(ぐまい)な連中がショックを受けたのは当然だったわけだけれども」
花子先生 「なるほど……。人間を“ハダカのサル”ととらえて、ヒトと他の動物とを、同じ次元で理解しようとしたわけですね。それはヒトとそれ以外の生物との間に迷信的な壁を築いてきたキリスト教二千年の伝統をぶちこわす試みなわけで、まったく革命的だったわけですわね」
ミツゴロウ先生 「さよう。そしてモリスさんはそれ以後も、人間のもっとも大切な感情である“愛”の正体を、動物行動学の視点から解明しつづけている。『ふれあい:愛のコミュニケーション』とか『赤ん坊はなぜかわいい?:ベイビー・ウォッチング12か月』とか、きわめつけは『セックスウォッチング:男と女の自然史』とかね」
花子先生 「なんだか先生のお話を聞いただけで、わたし胸がドキドキしてきたわ」
ミツゴロウ先生 「アハハ! ぼくは“しゃべる媚薬”ですからね」

★          ★          ★

花子先生 「あらまあ! 高尚な猥談だけで番組が終わってしまうところでしたわ(笑) ……本題に参りましょう。珍獣談義(笑)」
ミツゴロウ先生 「おっとそうでしたね(笑) きょうは、きわめて珍しいトカゲの話をしましょう」
花子先生 「あら! わたし爬虫類とか両生類って、ちょっと苦手なんですが」
ミツゴロウ先生 「いやいや、それは嫌いだという先入観があるせいですよ。きょうはコモドオオトカゲの話ですが、ゾウガメでもコモドオオトカゲでも、あのノンビリした顔をみていると可愛くてカワイくて……。なんで~こん~な~に♪ カワイイの~かよ~♪ トカゲという名の~たからもの~♪(https://www.youtube.com/watch?v=Is5r1DPLX8s)」
花子先生 「先生、そこはトカゲでなく馬子ですわよ。馬子にも衣装で、着るものしだいで可愛くもなりますわ」
ミツゴロウ先生 「ちゃう!ちゃう! アンタま~だ着るものに執着もってるだろ。とかく人間は煩悩やら“こだわり”やらに毒されて、心がガチガチになりがちだ。スッポンポンの素っ裸になって、毛なんかも全部剃って、そういう装いへのこだわりを捨てないと解放されないよ!」
花子先生 「先生、そんなことお坊さんだって無理ですわ(笑)」

★          ★          ★

花子先生 「……で先生、コドモドラゴンのお話しでしたわね」
ミツゴロウ先生 「おっとそうそう、また忘れるところだった(笑)。だけど花子さん、“コドモ”ドラゴンじゃないよ。“コモド”ドラゴンじゃよ。インドネシアのコモド島に生息しているから“コモド”ドラゴンなんです」
花子先生 「それで先生、きょうはどんなお話しを?」
ミツゴロウ先生 「人の顔をしたオオトカゲの話です」
花子先生 「まあっ! それって化け物じゃないですか」
ミツゴロウ先生 「自然界には、ごくたまに、そういう神様のイタズラとしか思えない化け物が生じることもあるんですナ、これが……」
花子先生 「それで、その人面トカゲって、どんなものですの?」
ミツゴロウ先生 「コモド島で、珍獣ハンターのイモトアヤコさんが発見した、日本人の顔をしたケダモノです。これがその写真なのですが……」

 

タレントの「珍獣ハンター・イモト」さんがインドネシアの
コモド島でロケ中に、コモドオオトカゲ(通称・コモド
ドラゴン)の突然変異種を発見しました。この変異個体は
研究と観察のため日本の国会動物園で飼育され「コモド
オオトカゲ・アベ変種」という学名が付けられました。


花子先生 「あらまあ! そういえば、むかし昭和時代にこんな顔をした政治家がいたような……」
ミツゴロウ先生 「さよう。人面トカゲなんて珍獣中の珍獣ですから、特別な計らいを得て日本の国会動物園に運んで、飼育していたのですよ。そして、そっくりな顔の政治家さんにちなんだ学名が付けられました、『コモドオオトカゲ・アベ変種』とね」
花子先生 「そうそう、それだわ! 総理大臣になれずじまいで終わった安倍晋太郎さんよね、この顔はどうみても……。だけど私はこの写真をみた瞬間に、十年くらい前にインターネットの世界でみんなに愛されていた“文字絵”を連想しましたワ」

コモドオオトカゲ・アベ変種は、よくみると、ネット掲示板
「2ちゃんねる」でかつて人気だった「シラネーヨ」という
絵文字とよく似ていますね。


ミツゴロウ先生 「なるほど(笑) 偶然の一致でしょうな」
花子先生 「それにしても、どうして人面トカゲなんて生まれたのかしら?」
ミツゴロウ先生 「神のみぞ知る……でしょうが、19世紀の末にイギリスの作家ジョージ・ウェルズが書いた『モロー博士の島』みたいに、ひょっとするとコモド島あたりにケシカラン科学者がひっそりと住んでいて、遺伝子操作かなにかでこういう化け物を作ったのかも知れませんな」
花子先生 「まあ、こわい! 楳図かずおさんの恐怖漫画にそういうのがありましたわね、題名わすれたけど」
ミツゴロウ先生 「……あるいは、ひょっとすると成仏できずに南方の島をさまよっていた安倍晋太郎さんの怨霊が、現地のオオトカゲに何らかの作用をして、それでこんな突然変異が起きたのかもしれない……」
花子先生 「それはもっとこわいわ! やっぱりそんな話も楳図かずおさんの漫画にあったような気がするけど……題名わすれたけど」
ミツゴロウ先生 「もし後者のような事情でこんな化け物が生じたのだとすると、南方で戦死した英霊たちの遺骨をちゃんと回収もせずに、上っ面ばかりの“愛国もどき”のスタンドプレイを続けている不肖の息子に対する、なんらかの怒りのメッセージかも知れませんナ。霊界からの……」
花子先生 「手厳しいご指摘ですが、当たっているかもしれませんわネ。死んでしまった英霊たちを弔うポーズばかりで、南方の遺骨収集は民間まかせ。厚労省や外務省はむしろ民間の遺骨収集活動の足さえ引っぱってきた、と聞いておりますわ」
ミツゴロウ先生 「ならばなおさらのことですが、外務大臣で終わった安倍晋太郎さんは、南方で絶命し、そのまま放置されている英霊たちの怒りを受けたという可能性も考えられる。国のために命を捧げた人たちをねんごろに弔わずして“愛国”なんぞと叫ぶのは嘘っぱちですからね」
花子先生 「ミツゴロウ先生、お怒りですね」
ミツゴロウ先生 「そりゃ偽善者や嘘つきは、 ぼくは大嫌いだからね。かつて徹夜マージャンの雀卓を囲んでいた自民党の幹部が、ぼくに向かってこんな冗談を言ったんですよ。『おい又憲(またのり)クン、おまえの憲って文字、それ変えちまえ、改憲だ改憲!』ってね」
花子先生 「まあ! 乱暴な話ね。冗談にしても不粋すぎるわ」
ミツゴロウ先生 「だからその場でぶん殴りましたけどね、『ふざけんな!』と言って、そいつを(笑)」

★          ★          ★

花子先生 「安倍晋太郎さんにそっくりの人面トカゲは、その後どうなったのですか?」
ミツゴロウ先生 「国会動物園のなかで、動物なりにいろいろとストレスがあったのでしょうな。残念ながら病気で死んでしまったのですよ」
花子先生 「まあ! それは残念! 後にも先にも、この世にたった一匹しか現れないような、世界で最もめずらしい珍獣だったのでしょうに……」
ミツゴロウ先生 「ところが驚くべきことに、奇跡は繰り返されたのです」
花子先生 「……とおっしゃると?」
ミツゴロウ先生 「ある朝、飼育員がオリのなかでコモドオオトカゲ・アベ変種が事切れているのを見つけたのですが、その遺体を持ち上げたら、下に小さなイモリみたいなものがへばりついていて、よく見たらそれも人面トカゲだった……」
花子先生 「アベ変種がこどもを産んで事切れた、ということですか?」
ミツゴロウ先生 「産んでいるところを誰も見ていないのだから、何とも言えないんですが、DNA鑑定をしたら遺伝的な血縁関係があることが判明した。だから一応、アベ変種の子供だと考えてよい」
花子先生 「そのイモリみたいな人面トカゲ2世は、順調に育ったのですか?」
ミツゴロウ先生 「ええ。急速に巨大化しましたよ。ところが最近、いきなり尻尾に奇妙な腫瘍がたくさん現れたのです。……それがこの写真です」


イモトさんがコモド島で発見したアベ変種は、国会動物園に収容中に
子供を作りましたが、これがまたトンデもない突然変異種だったことが、
のちに判明しました。本来はコモドドラゴンは、小さなトカゲみたいに
自分で尻尾を切ることはありません。しかしこの「コドモオオトカゲ・
アベッチ変異種」は、なんと腐った尻尾を自分で切断したのです。
それにしてもアベッチ変異種の尻尾が腐り果てて、オブチ人面瘡や
ミドリ人面瘡やワインの瓶やウチワに似た腫瘍が出来て真っ赤に腫れて
おり、いかにも痛そうです。


花子先生 「うわぁっ! なんてグロテスクな動物なの! 地球のものとは思えない。『惑星からの物体X』に出てくる、あらゆる生き物が溶け合わさって出来た宇宙生物みたい……」
ミツゴロウ先生 「顔は安倍晋太郎の息子によく似ているでしょ? でも花子先生が正しくご指摘されたように、これはもはやコモドオオトカゲとは言えません。別種の珍生物というしかない」
花子先生 「なぜですの?」
ミツゴロウ先生 「ごらんのように尻尾が真っ赤に腫れ上がっていますが、よく見ると人面瘡というべき巨大な腫れ物が2個出来ている。尻尾のつけねの腫瘍は先日やめた経産大臣のようでもあり、先っぽの腫瘍は同じ日にやめた法務大臣のようでもある。それに興味ぶかいことですが、赤ワインのビンと、団扇(うちわ)にそっくりの腫瘍も出来ている」
花子先生 「ひょっとして『惑星からの物体X』の宇宙生物みたいに、本当にビンとか団扇をとりこんでしまったのでは?」
ミツゴロウ先生 「何とも言えませんな。……まあ、しかし病巣が腫れて、このトカゲは本当に苦しそうだ」
花子先生 「……で、これが新型生物だとおっしゃる理由は何ですの?」
ミツゴロウ先生 「小さなトカゲとか、カナヘビのような動物は、敵に襲われそうになると自分で尻尾を切って逃走する場合があります。敵の動物が、そのちぎれたシッポをミミズか何かと勘違いして捕食しようとしているスキに、逃げてしまうわけです。これが、いわゆる“トカゲの尻尾切り”ですが、専門用語では“自切(じせつ)”と言います。自切ができる動物は、尻尾がちぎれやすい構造になっていて、ちぎれても血管がすぐに閉じて出血も少ないし、外見上は自切する前のものとよく似た“尻尾”がまた生えてきます。いっぽう、図体の大きなコモドオオトカゲは、自切が行なえません」
花子先生 「トカゲやヘビはすべて“尻尾切り”で逃げられる動物だと思っていましたが、ちがうんですね」
ミツゴロウ先生 「ところが、この安倍ジュニアに顔が似ている“子供トカゲ”の場合は、自切をやらかして、腐った尻尾を自分で切ってしまいました」
花子先生 「じゃあコモドオオトカゲとは別種の動物だってことね?」
ミツゴロウ先生 「けれども、すでに知られている動物のなかにはこういう奇妙なものはないので、国立科学博物館が新しい学名を付けたんです」
花子先生 「なんていう名前?」
ミツゴロウ先生 「“コドモオオトカゲ・アベッチ変異種”に決まりました」
花子先生 「……で、トカゲの種類そのものが“コモド”から“コドモ”に変わったわけですね」
ミツゴロウ先生 「名前は似ていても全然別種です」
花子先生 「それで自分で尻尾を切ったはイイけど、新しいのは生えてきたのですか?」
ミツゴロウ先生 「新しい尻尾が生えたことは生えたんですが……。これをごらんなさい」

コドモオオトカゲ・アベッチ変異種は、腫瘍だらけで真っ赤に腐った
尻尾を自分で切り捨てました。通常のコモドドラゴンは尻尾が再生
することはないのですが、アベッチ変異種の場合はすぐに新しい尻尾
が生えてきました。ところが新しい尻尾は、腐った状態で生えてきた
のです。カワカミヨ~コ人面種のそばには呪いの文字が、まるで
“耳なし芳一”の経文のように浮き出ていますが、それは「全国
サラ金政治連盟パー券ご購入35万円也」と読めますね。おそろしい
悪業の因果が現れたのですわ。尻尾の末端にはミヤザワ人面種が
現れていますが、口からSM調教プレイの鞭のような真っ黒い舌が
おどり出ていますわ。ミヤザワ人面種の首のつけねに「Clubマザン」
という看板のような瘢痕が浮き出ていて、そのうえにはSMプレイで
責められているM字開脚女性のような腫瘍まで出来ているわよ。
……因果というのは恐ろしいものですわ。アベッチ変異種が背負った
悪業の毒のせいで、こうした腐った尻尾が生えてきたのでしょうね。
瀕死の表情のコドモドラゴンが不憫(ふびん)でしかたがありません。


花子先生 「うわっ! まさに『惑星からの物体X』じゃないの! グロテスクな写真ですねえ」
ミツゴロウ先生 「新しく生えてきた尻尾は、最初から腐っていたのですよ。よくみると尻尾のつけねには、先日クビがすげ替わったばかりの法務大臣とよく似た大きな人面瘡……というか固形腫瘍がぶらさがってます。そのすぐ上には、黄色い文字のようなオデキが浮き上がってますね。『全国サラ金政治連盟パー券ご購入35万円也』って、領収書みたいな文言に読める」
花子先生 「こんな文様がからだに浮かび上がってくるなんて、なんとも不気味ですねえ。呪われているとしか思えない……」
ミツゴロウ先生 「それだけじゃないですぞ。領収書みたいな文様のとなりには、『Club マザン』と読めるバーの看板みたいな文様まで浮かんでいる」
花子先生 「その上に乗ってるのは、オタクのお兄さんたちが大好きなエッチなお人形かしら?」
ミツゴロウ先生 「半裸でSM緊縛されてM字開脚している若い女性にも、見えないではない。なんとも業の深いオデキですな(笑)」
花子先生 「尻尾の先っぽに大きな人頭形の固形腫瘍ができていますね。その口先みたいなところから真っ黒いエクトプラズムみたいなものが出ていて気味が悪いわ!」
ミツゴロウ先生 「ザトウグモの足のようにも見えるけど、SMプレイの責め具のムチのようでもある。あまりにも業が深い病巣ですな」
花子先生 「こんなややこしいオデキで尻尾が腐っていては、このトカゲさんも苦しいでしょうに……。今も生きているんですか、このトカゲは?」
ミツゴロウ先生 「なんとか生きてますよ、尻尾が腐ったままで。……だけど、もはや顔からも生気が失せていて、まともじゃないことがわかるでしょ?」
花子先生 「ええ……昇天しちゃったような顔ですものね。みるからに断末魔で、哀れになってなってきますわ。からだの色だって、あちこちが赤銅色とか青銅色とかに変色してしまっているし……。ねえ先生、この体表の病的なテカり具合ですけど、これはトカゲにありがちな保護色なのですか?」
ミツゴロウ先生 「いいえ。親の七光りです」
花子先生 「まあ! さすがはコドモドラゴンね」

 
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きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5264)から引用》
と明記して下さい)

 

もうひとつの憲法読本!

 

(屁世〔へいせい〕26年10月26日)

「ねんごろ」なんて方言は使うな!

国会で「邪馬台国」処分発動!方言札が復活……の巻

全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

きょうは国語学者の金玉一腫彦(はれひこ)先生をお迎えして、このごろの
言葉づかいの問題について、お話しをうかがいたいと思います。

国語学者・金玉一腫彦先生と
児童文学翻訳家・花子先生との会話

花子おばさん 「いらっしゃいませ、金玉一先生。お会いできてまことに光栄です。」
金玉一先生 「ごきげんよう、お話しのおばさん。こちらこそ、よろしくお願いします。……この“ごきげんよう”という挨拶(あいさつ)の言葉は、相手への思いやりと、温かくてこまやかな心づかいが感じられて、とても素敵な日本語ですよね」
花子おばさん 「わたしの“お株”をとられちゃいましたが、まったく先生のおっしゃるとおりですの。わたくしは女学校でこの挨拶を、文字どおり“身につけた”のですが、すばらしい教育と礼儀の心に出会うことができて、学校にも親にも、そして学友たちにも感謝しておりますわ」
金玉一先生 「ことばは心のかがみです。心が乱れておると、おのずから言葉が乱れます。逆もまた真ナリで、乱れた言葉づかいをしていると、心が自然と荒(すさ)んでしまいます」
花子おばさん 「おっしゃるとおりです。わたくし、子供のための読み物を書いてきたものですから、昨今の大人の社会の言葉の乱れが、子供の言葉と心を乱してしまい、これからの日本が恐ろしい退廃と混乱に向かうのではないかと、本当に心配しておりますのよ」
金玉一先生 「きょうお話ししたいのは、まさにそういう、大人の社会の、言葉の乱れの問題です」
花子おばさん 「では先生、お願いいたします」

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金玉一先生 「花子先生、ご出身は山梨県でしたよね? お国ことばには……“方言”とも申しますが……通じていらっしゃるでしょう?」
花子おばさん 「あたりまえジャンか! もしも方言がなかったら世の中のことばも人情も、ずいぶんと寂(さび)しいものになるズラ。国語学者の金玉一先生なら、この気持ち、理解してクンロ!」
金玉一先生 「ワレも方言の大切さはガギ(=子供)のころから知っとったっタ。そんなわけで還暦すぎた今になっても全国の方言の勉強しとっケ。はぁ~どんどはれ! ところで花子センセイ、昼メシいっしょにアベっ!」」
花子おばさん 「あたし先生のこと、江戸っ子だと思っていましたが、かなりハードな方言をお使いになるのね」
金玉一先生 「は~ぁ、ワレの祖父は盛岡人だったッタから、岩手のお国言葉になじんできたっケ」
花子おばさん 「まあ!そうでしたの。ところで“いっしょにアベっ!”って何ですの? 安倍総理を詣(もう)でる義理なんか、あたしには無くってよ」
金玉一先生 「ええっと、標準語に戻って説明しますと、“アベ”ってのは“行こう”という意味です」
花子おばさん 「あらまぁ、そうなんですか? だったら自民党の選挙演説会なんかで、安倍さんのファンが当選を記念して『行け行けガンバレ!』ってな意味で『アベっ!アベっ!』なんて方言丸出しで叫んだら、単に罵倒(ばとう)しているみたいに誤解されて、お巡(まわ)りさんにつまみ出されちゃうワね(笑)」
金玉一先生 「とかく方言は誤解をうけやすい。標準語は、さまざまなお国言葉が入り交じる都会では、“共通語”として使うのに、たしかに都合がいいわけです。都会に流れてきた人々がそれぞれに使うお国言葉の多様性を切り捨てて、単純化できるわけですから。ちょうど江戸時代に新吉原の遊廓(ゆうかく)で使われていた“廓(くるわ)ことば”のようにね。全国各地から売られてきた遊女の、生まれ育った土地で身につけた“お国言葉”を消毒して、遊廓のなかだけで通用する“標準語”を女の子たちに使わせた。標準語というのは、そういうたぐいの、一種の経済的な必要性から発展してきたわけです」
花子おばさん 「いわゆる“花魁(おいらん)ことば”のことですね? “アリンスことば”とも呼ばれていますよね」
金玉一先生 「さようでありんす」

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花子おばさん 「ところで地方の方言のなかには、大昔に首都でつかわれていた主流言語が、ほとんどそのまま廃(すた)れずに保存されたような言葉もありますわよね?」
金玉一先生 「これは私の持論なのですが『言葉は時代とともに絶えず動いて変化する』のですよ。そしてあちこちの田舎から多くの人が集まってくる都市ほど、それも大都市ほど、そこで使われる言葉は移り変わりが激しいわけでして……。そういうわけで、中央政権から離れたいわゆる“辺鄙(へんぴ)”な地方ほど、かつて中央の都会で使われていた言葉が、あまり損(そこ)なわれずに今もずっと残っていたりするわけです」
花子おばさん 「そのお話から私がいま連想したのは、中国から伝来して日本文化の基礎をかたちづくることになった、仏教思想とか漢字のことですのよ。仏教はインドで起こって仏典も“梵語(ぼんご)”すなわちサンスクリットで書かれていたけれど、それが中国に伝わって、中国では梵語から漢文に翻訳されて、こんどはその漢訳の仏典が、日本に伝来しました。そして今や仏教の教えや考え方は、日本人の精神文化の土台になっているわけですけど、その中国では千数百年があいだにあまりにも激しく社会が変わりつづけたから、漢訳仏教の真髄がほとんど残っていませんものね。それらを損なわずに保存してきたのは、地理的には東アジアのどん詰まりで、しかも四方を海に囲まれている島国ニッポンの、お寺である場合が多い……」
金玉一先生 「おっしゃるとおりですね」
花子おばさん 「漢字だってそうですワ。たとえば現代日本では、『明』という漢字の音読みには、呉(ご)音の『ミョウ』と、漢音の『メイ』と、唐(とう)音の『ミン』の三種類がありますもの」
金玉一先生 「あらためて復習しておきましょう。
“漢音”は7~8世紀に遣唐使や留学僧らがシナから持ちこんだ唐の首都・長安の発音でした。“呉音”は“漢音”が導入される以前に日本に定着していた発音でして、大陸シナの南方から直接に、あるいは朝鮮半島の百済(くだら)を経由して日本に伝わったというのが通説になっています。いっぽう“唐音”は、鎌倉時代以降に、禅宗の留学僧や貿易商人らが日本に持ち込んだ“漢字の読み方”なのです。……これらは日本に持ち込まれた結果、現地の正確な発音でなく、使い手の日本人による“訛(なまり)”を帯びることになりましたから、『当時のシナ現地の発音を音声学的に正確に再現している』とまでは言えないでしょう。とはいえ、もちろん現代中国ではこんな大昔の言葉は使われていないわけですから、シナのむかしの言葉が“絶海の島国”ニッポンでみごとに保存されてきた、と言えるわけです」
花子おばさん 「アジア大陸のシナ文明でかつて使われていた言語が、アジアの辺境の、絶海の日本列島で現在まで保存されていた……というのは、なんだかロマンあふれるお話しですわね。この構図を日本に当てはめてみると、たとえばニッポン本土と、沖縄に代表される琉球列島の関係になりますわね」
金玉一先生 「さすが花子センセイ、ズバリそのとおりです。現代の琉球方言には、千年前のむかしの日本の政都で用いられていた言語が、そのまま“凍結保存”されているといってもよいのです。このあたりの詳しい研究成果は、先年逝去(せいきょ)された沖縄の言語学者である外間守善(ほかま・しゅぜん)さんが数多くの書物をのこしておられるので、たとえば中公文庫の『沖縄の言葉と歴史』あたりからお勉強されるとよいと思います」
花子おばさん 「沖縄といえば“めんそーれ沖縄”ですよね?」
金玉一先生 「まさに、この沖縄方言として一番よく知られた挨拶の言葉が、じつに日本の古語の“凍結保存”だと考えられています。“めんそーれ”というのは“いらっしゃいませ”という意味ですが、“いらっしゃいませ”という意味の日本の古語である“参(まい)り候(そうら)え”が凍結保存されたものだと考えられているのですよ。現代にいたって少しばかり言い方は変わったけれども、“マイリソーラエ”が“メンソーレ”になったというわけ」
花子おばさん 「ニッポン本土の大昔のみやこで使われていた古語が、沖縄に伝わり、かの地で“凍結保存”されて、現代でも方言として残っているわけですね。“めんそーれ”の他に、どんなものがありますか?」
金玉一先生 「たとえば沖縄方言で、昆虫の“とんぼ”のことを『あけじゅ』といいますが、これは万葉集や日本書紀の時代に“とんぼ”を指す言葉として使われていた『阿岐豆・秋津羽(あきづ)』という古語が、現代にそのまま生きのびた言葉です。“愛(いと)おしい”という感情を沖縄方言で『かなさん』といいますが、これも“いとおしい”を意味する日本の古語『かなし』が、ほぼそのまんまの形で現代に生きのびたものです。こういう事例はざらにあるのですよ」
花子おばさん 「ニッポン本土に住んでいる我々は、沖縄を“日本文化からかけ離れた異郷”のように考えがちですけど、じつはそれは大まちがいで、現実には古来の日本がもっていた豊かな精神文化をそのまま保存している“日本のふるさと”みたいな存在になっている、ということですね」
金玉一先生 「おっしゃるとおり。非常に興味ぶかいことですが、当世では、ニッポン本土よりも古来の日本の伝統を忠実に受け継いできたのが、沖縄のような琉球の島々だということになります」
花子おばさん 「東京に住んでいる私たちこそ“ニッポン”の代表格だ、という世間常識が、ガラガラと音をたてて崩れていく感じがしますわ」
金玉一先生 「歴史を長い目でみた場合、現在の“東京首都圏”すなわち武蔵国(むさしのくに)が日本の中心だ、という現代人の通念なんて、ホントに例外的で一時的なものにすぎないでしょう。そういう考えはチッポケだってことですよ。福島原発災害のせいで首都圏一帯が本来なら居住不能な放射能汚染地域に成りはてた……という特殊な事情もありますけれども、この先いつまでも日本の首都が“江戸”東京にあり続けるわけじゃないでしょうからね。首都が数百年ごとに大きく変わってきたのは、日本の歴史上の、動かしがたい事実なのですから」
花子おばさん 「たしかに、このままじゃ済まない、という危機感はひしひしと感じておりますわ」
金玉一先生 「言葉についていえば、日本のハシッコの異郷だと思われてきた琉球の国ぐにこそが、古来の日本の言語文化を忠実に保存してきて、“日本文化のひな型”になっているのです。これは現在の日本の首都東京にすむ我々にとっては、まったく予想外の“逆転の発想”……ということになるでしょうが、しかしこの逆転現象は沖縄だけではないのです」
花子おばさん 「日本の伝統的な言葉づかいが、首都圏からむしろ離れた場所で、生き続けているということですね?」
金玉一先生 「さようでありんす」
花子おばさん 「先生いつから遊女になったの?」
金玉一先生 「いやいや、ほんの冗談(笑)」

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花子おばさん 「金玉一先生がこのところ憤慨しておられる事柄というのは、いまうかがったお話しと関係があるのですね?」
金玉一先生 「さようでありんす(笑)。先日、最暗黒の東京は永田町の国会議事堂内で起きた『ねんごろな関係』という表現をめぐる“方言札”事件に、わたしは心の底から怒りを覚えておるのですよ」
花子おばさん 「国会動物園のことですね? わたくしは児童文学がらみで、アソコで吠(ほ)えている奇妙な動物たちの様子にしか目をむけてこなかったので、『ねんごろ』事件については疎(うと)いのですが……。チョックラご説明してクンロ(笑)」
金玉一先生 「ご存じのように、9月はじめの“第二次大戦降伏記念日”の翌日に、安倍改造内閣が発足して5人の女性議員が大臣になりました。……が、ほどなく、そのうちの何人かが、国際的には決して容認されないネオナチ党とか“在特会”と称して排外主義の実力行使を行なっているならずもの集団と、親密な関係であることが世に知れわたりました」
花子おばさん 「それって日本の報道機関、ジャーナリズムが“調査報道”を行なった成果ですよね?」
金玉一先生 「ウウン、そうじゃネェじぇ! 実際はそうはイガネガッタノス。実際はネオナチ党の党首やら在特会の幹部やらが、議員と会ったことをインターネットの自分のブログで宣伝して、得意満面になっていたわけでした。つまりネオナチやら排外主義団体が、ときの政権との“ねんごろ”ぶりを自(みづか)ら公然と発表してきたわけで、そういう不特定多数の世界の人々にむけて、何年も前から公表されてきたものが、ネットの世界で“くちコミ”で知れわたり、マスコミが今ごろになって、それに飛びついたにすぎません」
花子おばさん 「マスコミの長所は“速報性”だって宣伝されてきたけど、現実は大ちがいなのね?」
金玉一先生 「さようでありんす(笑)。今や現実には、ネットで無数の“名無しさん”が何処(どこ)かからスクープ情報を見つけてきて、それを“2ちゃんねる”掲示板なんかに晒(さら)して、まずは雑食性ハイエナの週刊新潮とか週刊文春のような低俗週刊誌がそれをそのまんま使って記事にして、それで騒ぎが大きくなると大新聞がようやく書き立て始め、テレビのワイドショーが騒ぎ出し、そうやって世間で大騒ぎになったことを最終認知するかたちで、ようやく民放テレビのニュース報道になり、それを見計らってNHKもニュースで報じる……という仕組みになっておるのです」
花子おばさん 「まあひどい! それじゃマスコミの“速報性”なんて大嘘だわね。正しくいうと“遅報性”ってことね」
金玉一先生 「さよう。もぅひとつ言えば“痴呆性”でもありんす(笑)」
花子おばさん 「漫然と新聞なんか読んでたら、文字どおり“知恵おくれ”になっちゃうわ」
金玉一先生 「しんぶんや てれびを頼れば 馬鹿になる。罵笑……(笑)」

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花子おばさん 「で……“ねんごろ騒動”の話ですけど……」
金玉一先生 「あんれ!忘れるとこだっケ! ときは先般十月七日、ところは国会議事堂で、ハァ~ベンベン!」
花子おばさん 「おやまあ! 浄瑠璃(じょうるり)の義太夫節みたいになってきましたわ。さすが当世随一の国語学者の先生ですわネ。伝統的な大衆芸能にふかい造詣(ぞうけい)をお持ちでいらっしゃる……」
金玉一先生 「いいえ……ちょっと囓(かじ)ってるだけですから(笑)」
花子おばさん 「おぉっと! “ミカンのようで~ミカンでないベンベン、ダイダイのようで~ダイダイでないベンベン♪”で有名な落語『豊竹屋』のオチがいきなりキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」(https://www.youtube.com/watch?v=w17YjaZ0EIU
金玉一先生 「某巨大ネット掲示板みたいなご反応に、ワレびっくりこいたっケ~!。とにかく話を進めますが……(笑)。10月7日の参議院予算委員会で、民主党の小川敏夫議員が、山谷えり子国家公安委員長を相手に、“在日特権を許さない市民の会”通称『在特会』の連中と写真撮影したほどの親密ぶりを追及していたわけです。5年まえ、すでに山谷えり子は、国会議員として“在特会”の活動を支援していましたが、“竹島の日”に現地で講演をするため松山市を訪れた際、“在特会”関西支部の増木重夫支部長らが山谷議員の宿泊先のホテルを訪れて、増木支部長の日記によれば『少々遅い“夜明けのコーヒー”を飲みながら午前中を過ごした』のだそうです」
花子おばさん 「いかにも中途半端に年配の人が書きそうな文章ですわね。『夜明けのコーヒー』というのは1968年に大ヒットしたピンキーとキラーズの『恋の季節』のなかの有名なフレーズだわ。“夜明けのコォヒィ~♪ ふ~たりで飲もうと~♪ あ~の人が言ったぁ~♪ こぉ~いのきせ~つよ~♪”(http://www.youtube.com/watch?v=fr3VNZmO8dY) 作詞家・岩谷時子先生の、当時とすればとってもホットな歌詞でした」
金玉一先生 「この当時は“夜明け”という言葉には今とちがって特別な思い入れがありましたからねえ……」
花子おばさん 「そういえば岸洋子さんも、あの頃、“夜明けのうた”(http://www.youtube.com/watch?v=7LL-Atpsuec )という名曲を歌っていたわ。日が昇る前後の“夜明け”というのは、澄みきった涼しい外気に包まれながら、お天道さまの登場を迎えるという、なんとも厳粛な瞬間ですよね」
金玉一先生 「岸洋子さんの“夜明けのうた”はちょうど今から50年前の、1964年の秋に発表された歌なんですよ。これも作詞岩谷時子・作曲はいずみたくという、ピンキラの“恋の季節”と同じコンビが作った歌で、9月に岸洋子さんがSPレコードが出て、
翌10月に坂本九ちゃんが歌ったやつが出たんです」
花子おばさん 「まあ!ずいぶんとお詳しいのね」
金玉一先生 「わたしが流行歌ずきの学生の時分でしたから。それにちょうど東京オリンピックの開催時期と重なっていたんですよ。……これは私の邪推なんですけどね、東京オリンピックには、戦争で徹底的にぶちのめされて奈落の底に転落したニッポンが庶民社会のレベルで国際的に再浮上して“完全復興のお披露目”を行なう、という重大な意味がありました。だから“日がまた昇る”ことへの厳粛な期待感をうたった歌だったんじゃないかと、私には思えるのです」
花子おばさん 「つまり50年まえの日本では、“夜明け”というのは“日の本の国ニッポン”がふたたび世の中に顔を出す、という、国民を元気にするような隠れた意味があった、ということですか。聖徳太子が1400年まえに中国の“隋”帝国皇帝に送った外交挨拶状の『日出(いづ)る処の天子、書を日没する処の天子に致す』を、思い起こすご指摘ですわね」
金玉一先生 「繰り返しで恐縮ながら……さようでありんす(笑)。1960年代、わたしが青年だったころは『夜明け』というのは、人であれ、われらが日本という国家であれ、親に庇護(ひご)されてきた子供の時代を脱して、広く大きな社会に登場する直前の、身が引き締まるような緊張感と期待感、夢と希望、厳粛な気持ちを、象徴するものだったんですよ。たとえば東京オリンピックから2年後の1966年、昭和41年には、フジテレビが『若者たち』という連続ドラマの放映を始めたのですが、青春ドラマの先駆けというべきこの番組の主題歌『若者たち』は、黒澤明監督の息子さんの黒澤久雄が中心となって結成されたフォークグループ“ザ・ブロードサイド・フォー”が歌っていました」
花子おばさん 「お詳しいのね。あなたの青春だったのね……」
金玉一先生 「黒澤ジュニアは、当時は“黒パン”なんて呼ばれて、流行の最先端をいく“ナウなヤング”でした(笑)」
花子おばさん 「いまの若い人たちには到底理解できないことよ。ぜんぜん感覚が違いますもの。“黒パン”って、当時インテリのかたがたがカブレていたソ連の主食のライ麦パンのことでしょ?」
金玉一先生 「なるほどねぇ……。でもそうじゃない。黒澤久雄は昭和20年、戦争が終わった年に生まれたんですよ。ちなみに吉永小百合さんや、おすぎとピーコさん、サックス奏者の坂田明さん、ロックの世界ではエリック・クラプトンや絶叫ボーカルの時代を切りひらいたディープパープルのイアン・ギラン、それにタモリさんなんかが、この年に生まれています」
花子おばさん 「あゝそうですか。だ~からタモリは、坂田明や3ヶ年上の山下洋輔なんかとツルんで“全日本冷やし中華愛好連盟”の結党とか、“ソバヤソバ~ヤ♪”(https://www.youtube.com/watch?v=Xx8mNJLIwbU )みたいなワールドミュージックを作るなどの華々しいご活躍ができたのね。戦後日本の文化をいろどりを与えたあのかたがたが、同年代だったというのは興味ぶかいわ」
金玉一先生 「“黒パン”の話に戻りますが、黒澤久雄さんにそんなアダ名がついたのは、ロシアとは関係なかったみたいですよ。終戦直後の物資欠乏の混乱した時代に、幼い久雄ちゃんだけは、洋風の白いブリーフをはいていたので、友だちから『や~い! 男のくせに女の子のパンツはいてるぞ~! 黒澤のパンツや~い! 黒パン黒パン!』と冷やかされて、それがあだ名の由来だそうです」
花子おばさん 「ご家庭がわりあいに裕福でモダンだったということね。お父さまが当時絶頂のエンターテインメント産業にいたおかげだったのね」

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金玉一先生 「なんだか話が大脱線してしまいましたが、“在特会”関西支部長が山谷えり子の宿泊先をたずねて『少々遅い“夜明けのコーヒー”を飲みながら午前中を過ごした』という話でしたね。話をそこに戻しましょう」
花子おばさん 「それは秘密の逢い引きじゃなかったんでしょ?」
金玉一先生 「もちろん。だって在特会の増木支部長が自分のウェブサイトで得意げに公表していたのですから。こんなふうに、ほら!」

今やあまりにも有名な「山谷えり子議員と関西“在特会”連中との
記念写真。平成21(2009)年2月21日、当時の「在特会」関西支部長
(同年4月、兵庫県西宮の小学校長を脅し暴力行為法違反で逮捕され
支部長を解任された)増木重夫ら在特会一行が「竹島の日」講演会
のため松江を訪れた山谷えり子を、宿泊先のホテルに「押しかけ」、
「少々遅い『夜明けのコーヒー』」を飲みながら午前中を過ごした、と
増木自身がブログで報告している。


「在特会」関西支部長として山谷えり子の宿泊先ホテルに「押しかけた」
増木重夫の報告(下記の彼のブログから、引用者が日記部分を画像コピー
し、動画部分を《中略》して該当箇所のみ黄色でマーキングした。
http://mid.parfe.jp/gyouji/H21/2-21-hirosima-matue/top.htm
……野田国義議員が国会で追及したのは、すでに公表されている
山谷議員と在特会との、この親密な関係についてだったのだが、
安倍総理はじめ自民党の幹部連中は血相を変えて野田氏の「懇ろな
関係」発言を、あたかも性的関係のように歪曲宣伝して反撃した。
なぜか? 写真にあるように、安倍総理自身も在特会と「懇意の仲」
だったからだ。

花子おばさん 「ここまであからさまに公表していたら、否定しようがないですわね」
金玉一先生 「ところが自民党としては、いまや国際的に悪名が高い排外主義団体と、安倍現政権の国家公安委員長である山谷えり子が、長年親密な関係を続けてきたことが世間にバレると本当にヤバい、と恐れを成したのでしょう。この追及問答のさなかに外野席の議員が『宿泊先まで知っているというのは懇(ねんご)ろの関係じゃないのか?』とヤジを飛ばすや、すぐにそっちに矛先(ほこさき)を変えて反撃に転じた」
花子おばさん 「“話の腰を折った”わけですね」
金玉一先生 「そのとおり。自民党は自分らへの追及をかわすために、ヤジをはさんだ第三者にタックルをかけて、この無関係なヤジ男を新しい攻撃標的に仕立てて逃げたわけです。ちなみにこうやって図々しく批判の矛先を変えて、論争の被告席から逃げ果(おお)せるという手口を、アメリカなどの政界用語で『スピン(spin)』と言います」
花子おばさん 「スピンって“回転させる”って意味でしょ?」
金玉一先生 「元々はテニス試合あたりから転用された言葉らしいですよ。つまり相手が強烈な決めダマで攻めてきたときに、ラケットでボールに回転を与えて打ち返すと、返球は相手が想定外の場所に飛んでいくから、形勢不利を一転して優勢に変えることが出来る。自民党はそのテクニックを使って逃げ果(おお)せたわけです」
花子おばさん 「児童文学ばかりやってきたから、さすがの私も、そういう種類の英語には疎くなっておりました。……ということは、『ねんごろな関係じゃないか?』とヤジった議員が、哀(あわ)れ自民党のラケットでぶん殴られて、回転しながら民主党席に飛んでいった……ということになりますわね」

国家公安委員長・山谷えり子が、国際的に悪名高い人種差別団体「在特会」
(正式名称・在日外国人の特権を許さない市民の会)と昵懇(じっこん)の関係
であるという問題を、10月7日の参院予算委員会で民主党の小川敏夫議員が
追及していたが、その質疑応答中に、「宿泊先まで知っているというのは
懇(ねんご)ろの関係じゃないのか」とヤジが起きた。するとたちまち自民党
からは、自民党副総裁の高村正彦などが「女性閣僚に対して極めて下品な
ヤジが飛んだのは大変残念なことです」などと、あたかも山谷えり子が
在特会関係者と肉体関係があるかのように“曲解(スピン)宣伝”されて、
この問題はウヤムヤにされてしまった。
【参考動画】
●「名乗り出よ」山谷大臣へのヤジ問題で高村副総裁(14/10/08)
https://www.youtube.com/watch?v=1LESrFPUGjo
●「懇ろ関係じゃないのか」やじで議員名乗り出る(14/10/08)
https://www.youtube.com/watch?v=axZ3N4o-sgc

金玉一先生 「さようでありんす(笑)。その不運なボール役に選ばれたのが、あのタイミングでヤジを飛ばした民主党の野田国義議員だったというわけです」
花子おばさん 「まるで強盗犯が警察から追われて街なかで大捕物が行なわれているときに、自転車に乗った小学生がとつぜん路地から飛び出してきて、それを見つけた強盗犯が小学生をその場で人質にとって、警官が人質に気を取られているすきにまんまと逃げおおせた……という展開ですね」
金玉一先生 「先般の国会や地方議会で、自民党議員のセクハラ野次が大問題になったんで、自民党も政敵からのヤジに噛みついて反撃しようと、虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたんでしょう。そんな殺気立った場所でうかつにヤジを飛ばした野田という議員に、ハイエナどもが飛びついた……という構図です」
花子おばさん 「金玉一先生、ずいぶんと野田議員に同情的なのね?」
金玉一先生 「そんなことは全然ないのですよ。第一、わたしは野田国義っていう議員をまったく知らなかった。ニュースで『野田議員』という名前を聞いて、野田聖子かな? そうじゃなきゃ、いつのまにやら勝手に民主党時代の総理大臣になった野田さんかな?……って思ったくらいですから。選挙もしないで総理になった野田さんのほうは、私はいまだに苗字だけしか知りませんし(笑)。……しかし自民党のスピン工作の手口があまりに卑劣だったし、なによりも方言を猥褻だと貶(おと)める悪意と、日本語に対する無知がひどすぎるので、それで職業柄、この事件に注目するはめになったのです」
花子おばさん 「自民党は血相をかえて、野田議員を悪者に仕立てましたが、それほど無茶苦茶にあせる理由なんてあったのかなぁ?」
金玉一先生 「ヒントは“在特会”関西支部長の自慢げなブログに見いだすことができるでしょうね。5年まえの2009年、2月下旬に増木支部長は山谷えり子の松江宿泊中のホテルを訪れた。その時の日記も写真もずっと公表していた。その2ヵ月後に兵庫県西宮市の学校を襲ったことで逮捕され、在特会の支部長を解任されています。しかし支部長職を解かれたとはいえ、その後もますます盛んに在特会の運動をやりつづけ、同年8月には大阪での自民党候補の選挙運動を“勝手連”と名乗っていました。このときに東京から安倍晋三を呼んで会ってるんです。安倍さんはすでに下痢で総理のポストを投げ出し、当時は議員だったけれど“浪人中”でした。その安倍晋三とのツーショット写真も、増木氏は自分のブログで得意げに公表していたんです。その写真には『マスキクンのことを覚えてくれてました』などと自慢げな添え書きまで付けてあったんですよ。……ところが最近、その写真だけ除去してしまった……」


「在特会」の増木重夫関西支部長らが平成21(2009)年8月17日に
大阪7区の自民党候補(とかしきなおみ)を勝手連で応援した際に
安倍晋三(当時は官邸から逃げ出して「総理浪人」だった)を呼んだ。
その時の街宣報告が増木氏のブログで出ているが、注目すべきは
安倍とのツーショット写真に「マスキクンのこと覚えてくれてました」
のコメントが添えてあることだ。なお、安倍と在特会の「ねんごろな
関係」が世間に知られるのを恐れてか、このブログは現在では
安倍と増木のツーショットだけ消されている。自分の都合の悪い
画像を消すなんて、北朝鮮とか中国の独裁政権のやることだ(笑)。

(引用元:【1】増木サイト(いまは不都合写真を削除済み)
http://mid.parfe.jp/gyouji/H21/8-17-abe/top.htm
【2】不都合なツーショットが消されるまえのオリジナルがこれ。
http://megalodon.jp/2014-0919-1405-51/mid.parfe.jp/gyouji/H21/8-17-abe/top.htm


花子おばさん 「排外主義を信条にしていて『在日特権を許さない』増木さんなのですから、“在日特権”の権化みたいな安倍晋三を排除したってことでしょ?」
金玉一先生 「ウウン……と、そうじゃネェじぇ。世界から注目を浴びている“在特会”が、安倍政権の閣僚のうちの、あまり重要じゃないメンバーと“ねんごろ”だとバレたくらいなら、トカゲの尻尾切りでなんとでもゴマカせる。けれども安倍総理本人と“ねんごろ”だったなんてバレたら、自民党はバカな国民は騙(だま)せても、世界の国々から相手にされなくなりますからね。だから安倍さん自身に追及がおよぶまえに、自民党への追及の矛先をかわしてスキャンダルつぶしをする必要があった……ということでしょうな」

★          ★          ★

花子おばさん 「先生さきほど、今回の騒動では自民党の、方言を猥褻だと貶(おと)める悪意と日本語に対する無知がひどすぎる、と憤慨しておられましたが、どういうことですの?」
金玉一先生 「野田議員がヤジって、自民党が即座に問題視したのは、『ねんごろな関係』という言い回しでした。自民党の連中、たとえば副総裁の高村正彦なんて、『女性閣僚に対して極めて下品なヤジが飛んだのは大変残念なことです』なんて公言しとるわけですよ。……それをみて私は、『あゝ、自民党の奴らって、日本古来のことばを猥褻な意味にしかとらえることができない、日本語しらずの卑猥(ワイセツ)な連中だなあ』と痛感したのです」
花子おばさん 「たしかに『ねんごろ』という言葉は元来、猥褻とはほど遠いですよね。『ねんごろ』は漢字で書けば“懇親会の懇”という字ですし。懇親会って猥褻な乱交パーティーじゃないわけですから」
金玉一先生 「おっしゃるとおり。そもそも『ねんごろ』という言葉がどういう起源から生まれ、大昔から現在にいたるまでどんな意味で使われてきたか? それを簡単にまとめたメモ書きを、今回のお話しのために用意してきたんですが、棒読みしても味気ないものなので、この対話の末尾に掲載することにいたしましょう。それをご覧になればただちにわかることですが、『ねんごろ』という言葉に猥褻な意味ばかり見いだす態度こそが異常であるし、そうした態度こそが猥褻なのですよ。じっさい学校なんてPTAの懇親会がざらにあるわけですが、乱交とかセックスなんて無関係な場所ですから(笑)」
花子おばさん 「ところが自民党のエラい先生たちは『ねんごろな関係』をそういう意味でしか理解できないみたいだわ。そういう“ワイセツ脳”ならば、教師が『PTA懇親会』で生徒の親たちと乱交してるにちがいない……て思い込むのでしょう。あのようなかたがたが、いまだに日教組を攻撃しているのは、そういう有らぬ妄想から生じた嫉妬(しっと)心のせいかもしれないわね(笑)」
金玉一先生 「山谷大臣にむかって『ねんごろな関係じゃないか?』というヤジが出て、自民党がケシカランと怒りだし、ヤジの犯人さがしが始まって、おかげで山谷えり子と在特会の“ねんごろな関係”の追及が吹き飛んでしまった。これで審議が中断し、自民党の憤慨ぶりに恐れをなして、野党側の筆頭理事の蓮舫(れんほう)が、ヤジを飛ばしたのは『明らかに我々の側だった』といってすぐに予算委員長に謝罪したんです。蓮舫が謝罪した瞬間に、野田議員の『ねんごろな関係じゃないのか?』という追及の矛先そのものが“謝罪すべき非行”だと断罪されて、民主党みずからの手でポッキリと折られてしまった……。自民党の連中は日本語知らずの破廉恥(ハレンチ)野郎だけれども、台湾生まれとはいえ幼少時からずっと日本で育ってきた蓮舫さんも、やはり日本語についての理解が浅かったことが、暴(あば)き出されたといえるでしょう」
花子おばさん 「そうやってヤジが大騒動に発展したのは野田議員の本意ではなかったでしょうね。野田さんはすぐに名乗り出て、『誤解を与えたことは反省するけれど、自分が言ったのは思想的な“ねんごろ”という意味で、男女関係の意味ではない』と釈明もしましたが、マスコミも自民党に同調して、彼が騒ぎの元凶だという扱いで一件落着して、ついに在特会と山谷国家公安委員長との“腐れ縁”についての追及はあいまいになっちゃった……」
金玉一先生 「野田議員は、単に“親しい”という意味で“ねんごろ”という言葉を『九州じゃあ、よく使うんよ』と言いました。九州どころか、通常はまさに彼がいう意味で“ねんごろ”は全国的に使われているわけです。……ところが麻生太郎が即座にこれを否定した。九州じゃそんな言葉は使わないぞ、とね。麻生太郎はもともと日本語をあまりよく知らない人ですから、そういう日本語知らずが“九州人の代表格”みたいな顔をして、曲がった口先で曲がったことを言うのは、国語学者としてちょっと許しがたいわけですワ(笑)」
花子おばさん 「でも結局、野田議員のその釈明は、つぶされてしまいましたよね」
金玉一先生 「野田氏が『九州じゃあ、よく使うんよ』と釈明したら、ネットでは『ボクはワタシは九州人だけどそんな言葉は使いません』という書き込みが殺到したんです。ふつうに生活している人たちは、わざわざそんなことを書き込んだりしませんよ。ヒマにまかせてネット掲示板に張り付いている所謂(いわゆる)“ネトウヨ”のゴロツキ連中とか、自民党がインターネット世論対策で組織した、会員数公表1万人の“自民党ネットサポーターズクラブ”の連中でしょうね。……ちなみに私はこの連中を“自民党サポチン”と呼んでおります。なにしろ奴ら、座敷犬の狆(ちん)みたいに卑屈で小うるさく吠える。このサポチン連中のせいで、日本のインターネットは全体的に生産性の低い、劣悪な内容に成り果ててしまった……。ネットでウジウジと落書きをしているだけの、インポテンツなサポチンどもですわ(笑)」
花子おばさん 「……わたしは女ですからサポチンは着けませんけど、おっしゃることはよくわかりますわ。自民サポチンのほかに、インターネットを使って政治活動をしている右翼勢力といえば、問題の在特会や、カルト集団の統一教会とか“降伏の科学”もありますよね。そういう連中も暗躍したのかも……」
金玉一先生 「いま“降伏の科学”とおっしゃたが、ひょっとして“幸福の科学”の間違いでは? まあとにかく、片っ端から相手をかえてイタコもどきを行なってる下品なカルト団体には相違ない。津軽の恐山で口寄せをしている本業のイタコのかたがたが、あのカルト集団のサーカスまがいの演芸を鼻で嗤(わら)っていますからね。……それはともかく、この騒動の結果、野田議員は“口枷(くちかせ)”をはめられてしまった。もう大臣閣僚の連中と、在特会との“ねんごろな関係”について国会で語ることはできなくなった。いわば野田議員の首に“方言札(ほうげんふだ)”が掛けられてしまったわけです」


「ねんごろ」は殊更に性的な愛情関係を指す言葉ではない。
むしろ「心が通い合って懇意になる」意味で日本の社会一般
で使われている。なのに野田議員がその趣旨を述べて「九州
では普通の意味で使っている」と釈明するや、福岡生まれの
“江戸っ子”麻生太郎から「そんな方言はない!」と頭ごなし
に否定され、九州方言そのものへの攻撃へとすり替えられた。
あげくのはてに野田議員が一方的に謝罪するはめになり、まるで
彼が「九州方言を乱用してセクハラ発言」をした、みたいな
印象で終わってしまった。一般常識的な用法であり、もちろん
九州でも普通に使われている「ねんごろ=懇意」という意味
での「ねんごろ」の使用を、野田議員は国会与党の圧力で禁じ
られてしまった。かつて沖縄などで強制された「方言札」が
国会で復活したのであった……。


花子おばさん 「方言札ですか……。琉球国が日本の統治下に入って以来、沖縄など南西諸島の学校でさかんに行なわれた“ことばの体罰”でしたよね」
金玉一先生 「古来、琉球国は独自の文化をもった島国だったわけですが、明治政府がクーデタで幕藩体制をひっくり返して西洋流の“近代国家”を作ろうとし始めたときに、南西諸島にひろがる琉球国を吸収しようとして、焦(あせ)って事を進めたわけです。そして強引に琉球国ならではの文化的な独自性(アイデンティティー)を消し去って、ニッポン本土による行政的・文化的な統治にむりやり適応させるために、琉球住民の方言を禁じて、標準語を使わせようとしたのでした。琉球国の伝統的な社会のしくみや文化を、ニッポン本土の明治政府の革命政策に会わせるために強引に歪めた政策は、『琉球処分』という行政用語で呼ばれていたわけですが、方言札は“琉球人のことばを滅ぼす”ための決定打だったのですよ。しかもこの“方言札”という精神的体罰は、南西諸島だけでなく、九州や東北でも、標準語を教え込む手段としてさかんに使われていたのです」
花子おばさん 「ところで野田国義議員はどこの出身でしたっけ?」
金玉一先生 「九州は福岡県の南の奥にある八女(やめ)市で生まれ育った人ですが、興味ぶかいことに八女市は古代遺跡の宝庫で、邪馬台国があったといわれる有力な候補地なのです。そういう場所で生まれ育ち、上京して大学にかよい卒業後しばらく政治家秘書をしていた“書生時代”は別として、あとはずっと地元で市長をしていた人ですから、そのような“邪馬台国”有力候補地の現場に密着して生きてきた人の言語感覚を、国会の場で封殺したというのは、あえて言うなら『邪馬台国処分』とさえ言えそうですな」
花子おばさん 「でも野田国義さんが釈明のなかで主張していたのは、『ねんごろ』のごく常識的な用法でしたわよ。むしろそれを一方的にセックスとか淫行と結びつけるほうが可笑しいじゃないの。東京永田町の国会議事堂という場所こそが、日本全土の常識的な言語感覚からかけ離れた、淫猥で邪悪な文化風土だってことでしょう?」
金玉一先生 「そういう意味では、自民党の日本語しらずの連中や、それに安易に迎合した野党民主党の日本語しらずの連中こそが、野田議員に“方言札”をかけたことによって、むしろ自(みづか)らの言語感覚の異常性・変態性を立証してしまった……ということになりますな(笑)」
花子おばさん 「おそるべきは国会方言ってことになりますね(笑)」
金玉一先生 「さようでありんす(笑)。なにせ国会は“猥褻脳”の吹きだまりですからね(笑)」

★          ★          ★

花子おばさん 「自民党の人たち、『ねんごろな関係』発言に異常に興奮して、ケシカランなんて言ってますけど、その自民党だってけっこう懇親会とかやっているんでしょ?」
金玉一先生 「彼らは『懇ろ』がケシカランと怒りまくってるわけですから、彼ら自身の懇親会も、じつは世間に公開できないような猥褻なものかもしれませんよ」
花子おばさん 「にわかには考えがたいことだわ」
金玉一先生 「ここに2枚の写真がありますが、私もにわかには信じられないようなものが写っているんですよ。ごらんあれ……」


自民党の定義によれば「懇ろ」は「性的な関係」を意味する
のだという。その自民党が全国のあちこちで「懇親会」を
開いているが、それは乱交パーティーのようなものだ、と
みずから認めたことになる。たとえばこの「自民党懇親会」
では、安倍総理と影武者そっくり軍団たちが仲間内に裸踊り
を披露しているが、たぶんこういうことをしているのだろう。



今回の「山谷えり子と在特会の“懇ろな関係”騒動」を
通じて、自民党の大臣閣僚たちは「懇ろ=性的関係」だと
断定した。すると自民党の「新年懇親会」はこういうもの
なのだろうな……。現行ちんぽうに不満な自民党は「かえせぃ」
を党是としているから、女子党員たちがチンポコ御輿をかつぐ
のは祈願成就の儀式なのであろう。この光景がいつのものか
時期不明だが、おそらく“かなまら”さんが政界のドンだった
頃の懇親会だろう。


花子おばさん 「まあ! すごい!」
金玉一先生 「1枚目の写真なんて、安倍さんの影武者まで総出で裸踊りをおどっていますからね(笑)」
花子おばさん 「2枚目の写真はまるでお祭りみたいだわ。日本中のエッチなお祭りをぜんぶもってきたような乱痴気騒ぎだわね(笑)」
★          ★          ★

金玉一先生 「今回、自民党のおエラがたは『ねんごろ』という言葉は猥褻だからケシカランと騒いだわけですが、全国各地には、標準語で言ったらワイセツだと決めつけられてしまうような言葉がかならず存在するわけです」
花子おばさん 「具体的にはどんなものですか?」
金玉一先生 「どんな社会でも子供を産み育てていかねば存続できません。だから生殖にかかわる言葉はかならずある。それをワイセツかどうか決めつけるのは、木っ端役人の卑劣な精神だけなのですよ」
花子おばさん 「つまり生殖器の呼び名……とかですか?」
金玉一先生 「そのとおり。たとえば女性器ですが、地域によって呼び名がはっきりとちがう(http://www.geocities.co.jp/Bookend/3317/onna.html )。関東一円では『おまんこ』ですが、北海道の小樽では『よしこ』、津軽弁では『えべ』、横浜では『あびちょん』、石川県七尾市では『ちゃん』、宮崎県や鹿児島県では『まんじゅう』と呼んできたのです。男性器の呼び名は、女性器よりもはるかに単調で、全国の大部分で『チンコ』とか『ちんぽ』とか呼ばれていますが、それでも青森県の『ハド』、沖縄県の『タニ』など、独特の呼び方をする地域が存在しています(http://c.m-space.jp/child.php?ID=041104&serial=93491 )」
花子おばさん 「国会の議場で、あからさまに生殖器の名前を呼べないのであれば、桜井よしこさんはこの先、参考人として国会証言するのは無理でしょうし、将来国会議員になるなんて望むべくもないですわね」
金玉一先生 「作家とかジャーナリストってのは、ものが書けなくなると政治家になって権力に近づきたくなるという、街灯にあつまる虫みたいな習性がありますが、たしかに改名でもしなきゃ難しいでしょうな(笑)」
花子おばさん 「安倍総理も『エベちゃん!』とか『アビちょん!』なんて呼ばれたら国会にはいられませんね(笑)」
金玉一先生 「自民党幹事長の谷垣さんも、沖縄で仕事をするときは名前を変える必要があるでしょうな。『皆さまこんにちわ!タニガキでございます!』って挨拶しても、『チンコ坊やでございます!』って言ってるようなもんですから(笑)」
花子おばさん 「九州南部じゃ女性器のことを『まんじゅう』って言うのですね……」
金玉一先生 「小泉総理以来、その時々の政権党の顔役たちをマンガ似顔絵にして饅頭にして売ってきた、西日暮里の大藤っていうお菓子屋さんがあるのですが、そこの一番のヒット商品が安倍晋三をメインキャラクターにすえた“晋ちゃんまんじゅう”シリーズなのですよ。これは議員会館や靖国神社で販売されてるのですが、自民党が今回、国会で言葉狩りを始めましたから、もう議員会館では販売できないかもしれませんな。なにせ自民党の物差しで判断したら“晋ちゃんまんじゅう”は猥褻物になってしまいますから(笑)」


西日暮里のお菓子屋さん(株)大藤は、2001年に「ガンバレ純ちゃんの
好景気まんじゅう」を発売して以来、その時々の有名政治家キャラの
まんじゅうを売り出して人気を博している(http://www.omiyage-daito.com/)。
2009年に自民党が選挙で惨敗して下野した時は、谷垣禎一(さだかず)総裁
をメインキャラに立てた「よみがえれ!自民闘栗まんじゅう」で谷垣自民党
を応援した。当時“首相になれない総裁”の苦境に耐えていた谷垣氏にとって、
これはありがたい応援だったにちがいない。……しかし国会が「ねんごろ」を
猥褻方言として禁じた今、九州南部で「女陰」を意味する「まんじゅう」は
もはや禁制語である。大藤の政治家まんじゅうは議員会館や靖国神社で
売っているが、もう「まんじゅう」の名前では議員会館に置けないかも
知れない。


民主党が2012年暮れの選挙で惨敗し安倍自民党が政権を奪還して以来、
大藤さんは安倍政権を応援する「まんじゅう」を次々と発売してきた。
「晋ちゃんまんじゅう」シリーズは首相就任の2007年発売以来、55万個
も売ってきた大藤さんの“稼ぎがしら”なのだ。だが「まんじゅう」は
九州じゃ「女陰」を意味する“猥褻方言”ゆえ、自民党が党首や閣僚を
キャラクターに立てて“猥褻物”を売るのは、今後は難しくなりそうだ。
(写真はいずれも市販品「晋ちゃんまんじゅう」包装紙だが、「まん
じゅう」の文字が墨塗りで消されて禁制印が押されている)


花子おばさん 「“まんじゅう”がダメでも餡(あん)パンがありますよ。『晋ちゃんアンパン』シリーズでも売り出せば、アンパンが大好きな暴走族の皆さんが買うんじゃないかしら?」
金玉一先生 「そっちのアンパンは、パン生地で餡を包んだものじゃないですよ。ポリ袋にシンナーを入れたものですから(笑)」
花子おばさん 「でもそういう『晋ちゃんアンパン』を吸ってれば、浮き世を忘れて“美しい日本のわたし”をトリモロスこともできるでしょうね」
金玉一先生 「コレコレ! 子供が聞いている番組で、シンナー吸引を推奨するような発言はおやめなさい!」
花子おばさん 「こりゃまった~失礼い・た・し・ま・し・たっ! ドン!」

*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*


「ねんごろ」の意味と語源

PDF文書版の上記資料をダウンロードできます
http://www.rokusaisha.com/wp/wp-content/uploads/2014/10/74d75f542c55c164154113ce6ef20e771.pdf


きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

 

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5228から引用》
と明記して下さい。)

屁世滑稽新聞(屁世26年10月18日)

マッサンはウイスキーを作ったけど

アベッチサンは何をしたの……の巻

(ヤン・デンネン特派員の大江戸情報)

【東京発】 昔の特派員仲間で、今はロシア内務省のアナリストをしている友人から、
日本政府の朝鮮対策について知りたいと電話があって、狸穴のスナックで久々に会った。
この男は――仮に名前をレヴィチンコとしておくが――滞日中は山渓新聞の編集局長など
をスパイとして利用したことで名を売り、ソ連解体後もロシア政府の有力者なのである。
ちなみに彼がソ連スパイとして用いた山渓新聞の編集局長は、暗号名が「カント(CUNT)」
だった。言うまでもなく「女陰」を指す。「左折れの男根」を暗示するような名前のソ連
外交官が、日本のマスコミ要人を「女陰」と呼んで利用していたことが何を意味するかは、
賢明な読者なら察しがつくだろう。

それはさておき、古い友人からのたっての頼みである。私ヤン・デンネンも一肌脱ごうと
いうことになり、いろいろな意味で朝鮮事情に通じているサンヤ李恵子にアプローチを
かけた。焼け跡世代の例にもれず、彼女もゴディバのチョコレートなどを差し出せば尻尾
を振って何でも喋ってくれるわけである。アポをとりつけて議員会館に向かった。勿論、
ゴディバチョコレートの詰め合わせを小脇に抱えて……。

私が彼女から聴き出した朝鮮事情や南北朝鮮への日本政府の秘策については、コンフィデ
ンシャルな事項だからここには書かない。だがこのときに交わした冗談くらいは、ここに
書いてもバチは当たるまい。以下はそのやりとりの一部である――

ヤン・デンネン特派員とサンヤ李恵子氏との会話(某日、議員会館にて)

ヤン 「やあ、こんにちワ! お忙しいところスミマセン」
李恵子 「初めまして。あなたのコラムは週刊侵腸で毎回拝読してますわ。おかげで腸をすっかりやられて下痢が止まりませんから(笑)」
ヤン 「それはソーリー、アベソーリー。いやいや申しワケない。ところで李恵子さん、ワタシあなたと初対面じゃないデス。あなたが幼い頃に、あなたの故郷の北陸でたびたび会ってましたよ」
李恵子 「あら!そうでした?」
ヤン 「朝鮮戦争のときにワタシ、北陸に張り付いて特派員やってマシタ」
李恵子 「えっ? 60年以上前のことですよ。そのころから現役の記者さんだったの?」
ヤン 「ハイ。終戦直後から記者稼業ひとすじでして……」
李恵子 「信じられない。どうみても50代にしか見えない! だわ。あなた老化しないの? もしそうなら秘訣を知りたいわ!」
ヤン 「ハイ。ワタシ、毛沢東からじきじきに教わった、中国歴代皇帝が愛用していた回春法をやってマス」
李恵子 「それはすごい! ぜひ教えてほしいワ!」
ヤン 「ザンネンながら殿方専用なのです。それに最近はクスリのほうで貞操観念が薄れてきて、梅毒とかヘルペスになるリスクも上がってきたので、回春どころじゃなくなってマスよ、ハハハ」
李恵子 「えっ? それって回春とかおっしゃってるけど、ひょっとして買春?」
ヤン 「オー!ミステイク! バレてしまった! ニッポンでは、そうも言うそうですね、イエス!」
李恵子 「とんでもないご老人ね。それはともかく、じゃあ父のことはよくご存じでは?」
ヤン 「モチロン! 朝鮮事情に通じた方でしたから。しかも地方新聞社の要職に就いてカツヤクしておられた」
李恵子 「朝鮮戦争のころから、その後に始まった在日北朝鮮人の帰国事業のことなど、父はずっと取材していましたから」
ヤン 「そのあとイロイロあって、郷里で選挙に立候補したけどお負けになって、それでアナタを連れて東京にお引っ越しになり、東京でもマスコミの寵児になりましたよね」
李恵子 「ええ、宇治山渓グループの放送局に職を得まして、ラジオパーソナリティの先駆けとして伝説的な活躍をしました」
ヤン 「存じ上げております。民族のキズナって強いものだなあ……と、そのたびごとに感心しておりました」
李恵子 「あらそうですの?」
ヤン 「クニが違えど同じ民族なのですから内輪もめはイケナイ。就職でも何でも仲間うちで融通しあって助けあう。そういう国際的にも通じる教訓を、お父様からも、あなたの生き方からも、ワタシ学んできたのデス」
李恵子 「あらまあ……。ところでヤンさん、あなた朝鮮戦争のときは戦地で取材したの?」
ヤン 「イイエ、日本の兵站拠点でもっぱら取材してマシタ。でもワタシ、その後、中国とソ連との国境紛争は、第三国人という立場を利用して、双方の“記者席”から戦闘を眺めておりマシタ」
李恵子 「それは興味ぶかい話ね。日本も周辺諸国と国境がらみの諍(いさか)いが激化してきたから、ぜひ中ソ国境紛争のことは聞いておきたいワ」

★          ★          ★

ヤン 「月日の経つのは早いものデス。もう45年も前のことデスが、きのうの出来事のように鮮明に覚えていますヨ。事件はアムール川の支流、ウスリー川に浮かぶ一つの小島で起きました」
李恵子 「竹島みたいに海にうかぶ孤島ではなかったのね」
ヤン 「大陸の二大国家ですから、大きな川が国境線になって、川のなかの島の所有権をめぐって紛争が起きたりするのデス。……で、この島を中国は“珍宝島”と呼び、一方のソ連は“ダマンスキー島”と呼んでいた」
李恵子 「まあ…………」
ヤン 「中国政府は『チンポー!』と叫び、ソ連政府は『ダマンスキ~!』と叫ぶ。それはもう大変なことになってマシタ」
李恵子 「…………(赤面して声も出ず)」
ヤン 「どうしました?」
李恵子 「あなた、私にセクハラしてるでしょ? 中国が『チンポ~!』と叫び、ソ連が『駄マン好き~!』と叫ぶなんて、そんな出来すぎたジョークあるわけないじゃない? それじゃ“男根vs女陰”のおかめ・ひょっとこ対決じゃないの(笑)」
ヤン 「ハァ? サンヤ先生なにか勘違いしてオラレル。珍宝島事件は歴史的な事実デ~ス! それに現地の人は、そういう名前を聞いてもそんなことは連想しませんよ。『チンポ』とか『駄マン好き』とか、それは日本語だから日本でしか通用しません」
李恵子 「あら。そうですの……(ひたすら赤面)」
ヤン 「ワタシの祖国のオランダにも、似たようなことがありますヨ。たとえばワタシはスケベニンゲンの出身なのデスが……」
李恵子 「スケベだなんて自己紹介したら人間終わりですわよ」
ヤン 「イヤイヤ、だか~らチガイマス! オランダの、北海に面したリゾート地ですよ。サカナがめっちゃウマイとこデンネン!」
李恵子 「まあ……。記者歴が長いと駄ジャレで自己紹介するようになるのね。それにしてもスケベな地名よね」
ヤン 「だ~から~、そう感じるのは日本語の“助平”と発音が似ているからで、日本人だけだってバ! だいたい東京にも“銀座スケベニンゲン”という、スケベニンゲン市長から正式に命名許可をもらったレストランがあるんですケド、ご存じ?」
李恵子 「いいえ。外食はもっぱら新大久保なので……」
ヤン 「銀座スケベニンゲンのパスタは絶品ですよ。ワタシ的には“チンチンコース3980円”がおすすめですケド」
李恵子 「え? チンチン食べちゃうの? あたし、なんだかワクワクしてきた……」
ヤン 「だ~から~チガウです、それ! チンチン(Cincin!)はイタリア語で“乾杯!”って意味ですよ。イタリアン酒場で“チンチン”って名前の店はザラにありますから」
李恵子 「そうでしたの? 外国語って、日本人が聞くとイヤラシイのが多いわね。やはり日本では欧米語よりもハングルを教えるべきよ!」
ヤン 「そうおっしゃりますケド、日本のことばだって、外国人が聞くとスケベ~な連想したりするものがアリマスヨ」
李恵子 「うそでしょ? 日本語は世界一美しい言葉なのですよ。言の葉というくらいですからね」
ヤン 「すべての言語はみな美しいし、みな立派で優れているんですよ。ワシらの言語がいちばん美しい、とか、優れている、とか自慢したり優越感を持つのは、世界の広さをしらないイナカ国家の三等国民くらいなもんですよ」
李恵子 「……美しい日本のわたし。」
ヤン 「60年以上の特派員経験があるワタシのお説教を、受け入れられないようデスから、じゃあ実例をすこし示しマスネ」

★          ★          ★

ヤン 「まず日本では電話で話しだすときに必ず用いる“もしもし”って言葉。あれドイツ人が初めて聞いたら驚愕シマス」
李恵子 「あんなの世界共通のあいさつでしょ?」
ヤン 「レディの前では口にするのも憚(はばか)られることなのですケド……。日本語でいう“お●んこ”は、ドイツ語だは“ムッシ(Muschi)”なんですヨ。元々“ムッシ”は子猫を指す言葉ですけどね。ちょうど英語で子猫を意味する“プッシー(pussy)”が“お●んこ”を指すようになったのと同じ事情でしょう」
李恵子 「えっ? じゃあ“モシモシ”って言ったら……」
ヤン 「オメコオメコって言ってるようなもんデス。相手はビックリします。次はニッポンの“サザエさん”に出てくるあのイガグリ坊やですケド……」
李恵子 「磯野カツオ……ね」
ヤン 「イタリア語では“私”が“イオ(io)”で、“私は何とかです”っていうのは“イオ・ソノ何とか”と言いマス。……で“おちんちん”は“カッツォ(cazzo)”なんですワ。だから“私はオチンチンです”ってイタリア語で言うと……」
李恵子 「イオ・ソノ・カッツォ……ですか?」
ヤン 「イエス! ふつうの速さで言えば“イソノカツオ”になってしまうんですワ。こういう、日本語を知らない外国人に要らぬ誤解を与えるコトバというのは、けっこうありマス」
李恵子 「それが人名だったら悲惨ですね」
ヤン 「イエス! たとえばワタシが好きなAV女優に麻生舞という人がいました」
李恵子 「駄マン好き~……ですか?」
ヤン 「ノゥッ! 名器です。ワタシ名器スキです。……それはともかく、ニッポンの皆さんは“麻生”をふだんどう発音してます?」
李恵子 「あそー……でしょ?」
ヤン 「ふつうに“アソー”と言うと、英語圏では“尻の穴(asshole)”と聞こえるんですよ。発音してみましょうか(http://ja.forvo.com/word/asshole/)」
李恵子 「あっ! 本当だ!」
ヤン 「昭和天皇がご存命のころ、軽く受け流すお答えの常套句として、“あっ、そう”をご愛用していましたが、あれも今考えれば冷や汗ものだったわけです」
李恵子 「世界の広さ、文化のギャップを感じますねえ……」
ヤン 「……で、麻生舞チャンですが、彼女が外国人の前で“マイ・ネーム・イズ・舞・麻生”と言ったら、どう受け取られるか……デスネ」
李恵子 「私のなまえは“私のお尻の穴”です……となってしまう。スゴイですねえ」
ヤン 「そんなこともあったせいか……彼女、その後、“沢口りな”の名前で仕事をするようになったのデス」
李恵子 「お詳しいですわね」
ヤン 「ファンでしたから(笑)」

★          ★          ★

李恵子 「麻生が“お尻の穴”に聞こえるとなると、麻生副総理が心配だわ」
ヤン 「麻生太郎さんの場合は、苗字だけじゃナイからネ」
李恵子 「……とおっしゃると?」
ヤン 「ニッポン人がふつうに喋るように曖昧な発音で“アソータロー”って言ったら、英語圏の人間には“尻の穴のテロ(asshole terror)”に聞こえるでショーね」
李恵子 「想像するだけで背筋が凍りますワ」
ヤン 「たしかに“私はケツの穴のテロです”なんて自己紹介されたら、お尻を押さえて逃げますよ(笑)」

「アソウ・タロウ」とハッキリ発音しないと
「Asshole terror」に聞こえてしまい、
あらぬ誤解を持たれることになる。

李恵子 「とくに麻生さんの場合は、訪米の際などは、はっきり正しく日本語を発音しないと命にかかわりますね」
ヤン 「テロリストと間違われてしまう恐れもアリマス。デカい図体のポリスメンが駆けつけて、あせった麻生さんが“ちょっと待ってくれ!”などと言いながら名刺を出そうと背広に手でも突っ込めば、その場で射殺されるかも知れません」
李恵子 「おお~こわい! プルアンハグナァ……」
ヤン 「ソレ、ニッポンのおまじないですか?」
李恵子 「アニョ、わたしの心のなかの叫びです。心配だなぁ……って呟(つぶや)いただけです」
ヤン 「まあ……しかし、犬のお尻から顔がでてきても、悪いことばかりじゃないかも知れませんよ。2006年にロサンゼルスのジェシカ・ホワイトさんが飼っていたテリア犬のお尻に、キリスト様が降臨して、世界じゅうで騒動になったことがありますから」

犬の尻の穴(asshole)には神が下りることもある……らしい。
(2006年に米国LAのジェシカ・ホワイトさんが撮影。ちなみに
愛犬の名は「アンガス・マクドゥーガル」、三歳の雑種テリア)

李恵子 「ほかに日本の政治家で、こういう要注意の名前の人っているんですか?」
ヤン 「イエス! レディの前で口に出すのも憚られるのですが……。あっ、これさっきも言いましたネ。……とにかく“キンタマ”のことを英語で“ナッカー(knacker)”といいます。これは物と物とが当たって出るコンコンッという音が由来の擬声語らしいのですが、2個の小さな丸い木片をヒモで結びつけて、コンコンッと音を出すカスタネットのような打楽器とか、それに似たキンタマを指す俗語です」
李恵子 「名前のなかに“ナカ”が入る人名ってたくさんあるわよ。中曽根康弘さんとか、竹中平蔵さんとか」
ヤン 「そのお二人がまさに問題なのデス。息子のことを英語で“ソン(son)”といいますが、俗語だと“そこの兄(あん)ちゃん”という卑近なニュアンスになります。さらにこれが“野郎・くそったれ・タコ・ぼけなす”などの罵倒の意味ももつわけデス。だから自己紹介なり他人からの紹介のときに“なかそね”と日本語でハッキリ発音すれば問題はないのですが、変に卑屈な日本人が外国人のまえでよくやるように、西洋人をまねた奇妙なアクセントや発音で“ナッカソーネ”なんて言ったら、聞く人がきけば“キンタマ野郎”と聞こえてしまうのです」
李恵子 「中曽根さんは総理大臣時代、訪米先の記者会見でいわゆる“不沈空母”発言をして世を騒がせたけど、“キンタマ野郎”が“不チン空母”発言なんかしたらシャレになりませんわ(笑)」
ヤン 「そのダジャレも、日本でしか通用しませんから(笑)」


「knacker」「son」はいずれも英語の俗語で、それぞれ
「キンタマ」「野郎」という意味だ。「なーかーそーね」と
母音をちゃんと伸ばして発音せずに、「ナッカソネ」などと
英語っぽく発音すると、「威勢よく突っ張ったキンタマ野郎」
と思われるので注意が必要だ。日本人の名前は、外人の前でも
ちゃんと正しい日本語で発音すべきである。

李恵子 「竹中さんはどうなんです?」
ヤン 「サンヤ先生、“ヘイズ(haze)”っていう英単語はご存じですか?」
李恵子 「煙……よね。あたしの好きな坂本冬美チャンが“パープルヘイズ音頭”っていうのを唄ってるのよ。パ~ヘイズ紫の~♪ けむ~り~がモクモク~♪」(→ https://www.youtube.com/watch?v=Dt4YxGCmO0Q
ヤン 「お歌がお好きでケッコウなことデシタ(笑)。“ヘイズ”って言葉は、モヤっとした煙や霞(かすみ)という意味があり、それが一番ふつうの用例なのですが、ほかにもいくつか意味があるんです」
李恵子 「煙だけじゃないんだ?」
ヤン 「ニホンゴでいえば“神”と“髪”と“紙”とか、“橋”と“箸”と“端”とかネ。由来はちがっても現代では同じ音になっていて、漢字で書かないと違いがわからない言葉はこの国にもけっこうあるでショ?」
李恵子 「たしかに。フジといっても“富士”も“不二”も“不治”もあるわね。富士テレビジョンとして発足したフジテレビも、今じゃ“不治テレビ”になっちゃたし」
ヤン 「オーダイバー合衆国とか、オ-ダイバー新大陸とか、新社屋の所在地のオーダイバーを冠につけたイベントだって、われわれ特派員仲間は“ダイジョブかいな~?”と苦笑しながら眺めているわけですヨ。“不治テレビ”に似つかわしく、“ダイバー! ダイバー!”と叫びながら凄い勢いで急降下(dive)しているわけですから、あの会社は(笑)」
李恵子 「……それで煙の話ですけど?」
ヤン 「そうそう、忘れるところデシタ(笑)。煙という意味のヘイズ(haze)は、元をたどると1000年くらい前の、大昔のイギリスで使われていた“どんよりと薄暗く曇った”という意味の“ハズ(hasu)”という古語が由来らしいです。だけどもうひとつ、中世フランスの“嫌がらせをする・いじめる”という意味の“ハゼール(hazer)”という言葉がイギリスに伝わって、現在はヘイズ(haze)という形で使われている言葉もあるんですワ」
李恵子 「言語学のややこしい講釈、ゴクローさんです(笑)」
ヤン 「長くなってスンマセン。……で、こっちの意味の“ヘイズ”なんですけど、“ヘイズする人”つまり“いじめる人”のことを今でも普通に“ヘイザー(hazer)”というんですヨ」
李恵子 「学校のいじめっ子……とかですか?」
ヤン 「いや。むしろ、寄宿制の学校の“新入生歓迎”儀式で新入生をいじめる上級生とか、新兵をいじめる先輩の下級兵士とか、さらに意味がひろがって、使いものにならない家畜をころす屠殺業者、廃屋や廃船を解体する業者なんかも、みんな“ヘイザー”って呼ばれています」
李恵子 「……で、それと竹中さんは関係あるんですか?」
ヤン 「中途半端に西洋人ぶって、“ヘイゾ~・タ~ケナ~カ”などと自己紹介しようものなら、ネイティブの英語つかいには、こんなふうに聞こえてしまうかもしれませんね。“いじめ野郎! キンタマとっちまえ!(Hazer! Take knacker!)”」


先輩による新入生や新兵イジメとか、「ホモ嫌い」による
同性愛者へのイジメや嫌がらせを、英語では「haze(ヘイズ)」
といい、そういうイジメ野郎を「hazer(ヘイザー)」という。
「knacker」には「金玉」のほかに「家畜屠殺屋」「廃屋解体屋」
「屠殺する」「ダメにする」とか「役立たずになった家畜・廃馬」
という意味もある。他人にむかって「Take knacker, hazer!」など
と言ってはいけない。

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李恵子 「安倍総理はどうなんでしょうね? アベ・マリアっていう歌があるくらいだから、悪いイメージはないでしょ?」
ヤン 「ノゥ……。そんなことないデス。世界のコトバは英語だけじゃナ~イ」
李恵子 「ということはフランス語とか?」
ヤン 「ピンポ~ン! フランス人のまえで安倍総理のことを“あべっちさん”などとニックネームで呼ぶと、ヤバイです(笑)」
李恵子 「どういうこと?」
ヤン 「フランス語で“白痴化する”ことを“アベチル(Ab?tir)”というんですが、ここから生まれた言葉で“馬鹿”のことを“アベッチサン(Ab?tissant)”っていうんですヨ」

アベッチサン(ab?tissant)はフランス語で
「白痴」「バカ」という意味である。だが歴史上、
洋の東西を問わず「バカ(fool)」は、権力者を
おだてる「道化(fool)」としての特権を得てきた。
トランプカードの「ジョーカー(joker=おどけ者)」
もそうした道化師にほかならない。

李恵子 「安倍さんはフランスでは馬鹿の代表みたいになっちゃうのね……」
ヤン 「悲しがることはないデス。なぜなら、世知がらい世間常識などハナから無視して馬鹿なことを言ったり行なったりする本格的なバカは、昔から、それなりに一目置かれていたからです」
李恵子 「まさに安倍総理のことじゃないの」
ヤン 「イエス。そして馬鹿や狂人を、天の声の代弁者として崇拝する習慣というのは、昔から洋の東西を問わず、存在してきマシタ」
李恵子 「すばらしいわ!」
ヤン 「馬鹿、すなわち“アベッチサン”は、西洋では古来、王様や貴族が“宮廷道化師”として重用してきたのですよ。ちなみに英語の“フール(fool)”という言葉がありますが……」
李恵子 「馬鹿のことでしょ?」
ヤン 「“馬鹿”のほかに“道化師”という意味もあるのデス」
李恵子 「知らなかったわ。馬鹿も使いようなのね」


かつては「バカは天与の資質」として神聖視され、常識人が
けっして口に出来ない権力批判も「バカだから仕方ない」と
大目に見られていた。宮廷道化師は王や貴族を笑わせるだけ
でなく、常識人たる側近臣下たちが言えないような辛辣な
批判や、悲しい知らせなどを、権力者に伝える貴重な役目も
果たしてきた。

ヤン 「現在だってまったく変わってないのですが、権力者のまわりには、小賢(こざか)しい欲たかりの小人物たちが集まります。こいつらは世間体を気にして、小賢しく、せせこましく、常識的に振る舞うわけです。そういう木っ端(こっぱ)役人みたいのが、吹きだまりみたいに集まった組織はどうなるか?」
李恵子 「ソニーみたいになるんでしょ?」
ヤン 「イエス! あるいはお台場に移転後の宇治テレビみたいに、こざかしいばかりの烏合の衆の集まりになって、まさにオ~!ダイビング!……するわけです」
李恵子 「おお~ダイバ~ってことね?」
ヤン 「イエス。むかしの王室なども、そうした危険性を経験のなかで学んだのでしょうね。常識ぶる臆病な木っ端役人ばかりで王室が窒息しないようにするため、わざわざ世間知らずのバカを“道化師”として雇っていた、というわけ」
李恵子 「現代の日本では考えられないわ……」
ヤン 「いや、サンヤ先生。あなたみたいな議員には想像できないだろうが、国会制度そのものが、じつは国民的娯楽を提供する“愚者の殿堂”であり、馬鹿どもが騒ぎまわる“道化の劇場”なのですよ。少なくともわれわれ海外特派員は、そういう視線で国会を楽しませてもらってますから(笑)」
李恵子 「まあ…………(ため息)。で、バカ代表のアベッチさんは、どんな存在意義があるっていうの?」
ヤン 「古来から、バカが売りものの宮廷道化師は、常識的な臣下や側近ができないような言動を、担ってきたわけです」
李恵子 「馬鹿にそんなことができるの?」
ヤン 「イエス! まず太鼓持ちの仕事があります。日本語でいえば“幇間(ほうかん)”です。……ところでサンヤ先生、幇間ってどういう意味だと思います?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「あの? それは何のおまじないですか?」
李恵子 「ただの郷里の方言ですよ。“知りません”って意味ですから」
ヤン 「はぁ、そうですか。……で、幇間ですが“幇”ってのは“脇から手を出して助ける”という意味です。犯罪者を支援することを“幇助(ほうじょ)”っていうでしょ? ……まあそういう意味です」
李恵子 「勉強になるわね」
ヤン 「……で、幇間というのは“間をたすける”わけで、酒席などで、間が空くと“間抜け”になっちゃうので、冗談をいったり芸をみせたりして“間を持たせる”わけです。この“間を持たせる人”のことを、そのまま直訳したような英語の言葉があるのですが、ご存じですか?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「答えを言いますと、そのものズバリの“エンターテイナー”です。“エンター”は“間”、“テイナー”は“持たせる者”という意味です」
李恵子 「……で、それと安倍総理はどう関係あるの?」
ヤン 「宮廷道化師のたいせつな仕事は、まず馬鹿をしてみせてご主人の笑いをとる太鼓持ちってことです。そしてもう一つ、これも“馬鹿”しか許されない重大な任務なのですが……」
李恵子 「それは何?」
ヤン 「常識的な木っ端役人の臣下たちには、畏(おそ)れ多くて王様や権力者のまえでけっして口外できないような不埒(ふらち)なことを、権力の主にむかってズケズケと言う任務です」
李恵子 「王様に面とむかって悪口を言うってこと?」
ヤン 「ノゥ! 悪口というよりも批判ですね。それから国や王室の存亡にかかわる不吉なニュースを、王様に伝える仕事とか……」
李恵子 「アベッチサンの安倍総理が“現代の宮廷道化師”だなんて、そんな言い分は通用しないでしょ? ここは民主国家の日本ですよ? 絶対王政時代のフランスやイギリスじゃないんだから」
ヤン 「ノゥっ! よく考えてごらんなさい。われわれ外国人の特派員にはわかることなのですが、日本人には難しいかもね。文化を比較できるだけの広い視野も経験もないですから、日本には……」
李恵子 「そうまで言われたら無理矢理でも考えますワヨ! 腐ってもワタシ、ニポン人ですから!」
ヤン 「……アベッチサンは現代の宮廷道化師だと思いませんか?」
李恵子 「でもべつに王様……というか、天皇陛下を笑わせるような馬鹿な芸をするわけでもなし……。ああ!わかった! いまだに天皇ご一家を汚染のホットスポットに閉じ込めて、京都のご自宅に帰れないようにしているワ。そういう不敬なことは常識的な臣下なら誰ひとりできるはずがない! 天皇陛下にキツく当たっている、という意味では、アベッチサンは立派な宮廷道化師だわね」
ヤン 「たしかに。でも日本は絶対王政でしたっけ?」
李恵子 「天皇陛下は国家と、主権者たる国民の象徴じゃないの! このあたりのことは、あたしらの党の改憲案でじきにぶち壊す予定ですけどね。……まあとにかく、たとえ現在の憲法で“主権者は国民”と書かれていても、安倍総理はその国民にだって大笑いの芸を見せたり、おそろしい罵声を吐いて、じゅうぶんに宮廷道化師の役割を果たしているわよ!」
ヤン 「日本は立派な宮廷道化師を維持していて、まことにうらやましいデス。歴史的伝統を尊重する保守政党の醍醐味(だいごみ)ですね!」
李恵子 「お誉めいただいて光栄です。これからも立派な宮廷道化師を持ち続けるよう、自民党はがんばっていきます!」

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5088)から引用》と明記して下さい。
なお、ヤン・デンネン記者とサンヤ議員の会話は、本紙記者が銀座の酒場で
一人酒していたときに、たまたまそばの席にいた外人特派員どうしの自慢合戦
の、聞くとはなしに聞こえてきた話の内容にヒントを得たフィクションです。
登場人物も勿論虚構ですので、お迷いのないよう……)

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