コロナ禍を挟んで2年ぶりの開催、第90回全日本学生キックボクシング選手権! 國學院大が18年ぶりの団体優勝! 個人戦も三階級とも制覇! 堀田春樹

全日本学生キックボクシング連盟は1972年(昭和47年)10月設立。来年には満50周年を迎えるアマチュアキックボクシング界の元祖として、現存する中では世界最古のキックボクシング組織となります。

昨年はコロナ禍の影響で、春からの大学交流戦が全て中止され、今年も夏まで大会数の減少や無観客大会など制限の中で開催。現在も部活動が制限され、練習再開の目途が立たない大学もあると言い、今年は5つの大学による大会となりました。

國學院大學が18年ぶりの団体優勝。個人戦も三階級とも國學院が制覇。

優勝=國學院大學
準優勝=中央大学
第3位=創価大学
技能賞=境田建志郎(國學院3年)
喜多川賞=青木幹太(國學院2年)
ベストバウト賞=菅原佑斗(國學院4年)、高岡大(國學院2年)
最優秀選手賞=安河内大樹(中央3年)

2021年度、団体優勝は18年ぶりの國學院大學

2021年度University Kickboxing Federationトーナメント決勝戦

ライト級チャンピオン 菅原佑斗(國學院4年)
フェザー級チャンピオン 青木幹太(國學院2年)
バンタム級チャンピオン 松長雄飛(國學院3年)

2021年度、三階級のチャンピオン
2021年度、個人戦の受賞者

◎第90回全日本学生キックボクシング選手権大会 / 11月27日(土)後楽園ホール10:00~13:47
主催:全日本学生キックボクシング連盟

U-1=3R、防具無し、一定の階級毎グローブ分け有(8・10・12オンス)
U-2=2R、ヘッドギアー、レガース、膝パット着用。全階級14オンスグローブ。

2021年度UKFチャンピオントーナメント決勝戦

◆第8試合 UKFライト級トーナメント決勝 3回戦 U-1

菅原佑斗(國學院4年)vs 高岡大(國學院2年)
引分け 0-0 / 主審:長谷川隆二
副審:古居30-30. 河野30-30. 千代田30-30(三者とも菅原佑斗を優勢支持)

蹴りからパンチの攻防。差が出ない展開も、菅原のハイキックが優勢を導く流れ。菅原佑斗が勝者扱いで優勝。公式記録は引分け。

◆第7試合 UKFフェザー級トーナメント決勝 3回戦 U-1

青木幹太(國學院2年)vs 堀雄太(中央2年)
勝者:青木幹太 / KO(RSC)3R 2:51 / 主審:小林利典

堀のパンチを受けて鼻血を流す青木は打ち返していくと、堀は次第にスタミナ切れか、組み合うと体勢悪く、ヒザ蹴りを受けてノックダウンを喫する。パンチと蹴りの攻防は続くが、青木が勢いに乗り、更に組み合った際、青木のヒザ蹴りを受け続けた堀はレフェリーに止められた。

[左]ライト級決勝 菅原佑斗vs 高岡大は互角の攻防 [右]フェザー級決勝 青木幹太がヒザ蹴りで圧勝

◆第6試合 UKFバンタム級トーナメント決勝

松長雄飛(國學院3年)が計量・検診をパスし、不戦勝優勝。
10月24日準決勝、寺西勇弥(東海1年)vs 大塚豊(創価2年)は寺西が棄権、大塚が計量失格で両者脱落

◆エキシビションマッチ2回戦

松長雄飛ex大塚豊
RSC 1R 2:35 /

決勝戦で対戦していたかもしれない両者は倒しに行く本気モードで、松長雄飛のパンチで大塚豊が2度のノックダウンで終了。

バンタム級制した松長雄飛がエキシビションマッチで大塚豊を倒す

◆OBエキシビションマッチ 2回戦(2分制)

RISEライト級1位.秀樹(創価大学出身)
2012年UKFフェザー級王者、2013年UKFライト級王者、
K-1 REVOLUTION FINAL -65㎏級世界王者
EX
RISEスーパーフェザー級6位.常陸飛雄馬(東海大学出身)
2016年UKFフェザー級王者、2017年UKFフェザー級王者、
2018年 第1回世界大学ムエタイ選手権大会日本代表

プロらしさが見られたテクニックと重みある蹴りとパンチの交錯。

恒例のOBによるエキシビションマッチはRISEで活躍する佐々木秀樹と常陸飛雄馬
最優秀選手賞の安河内大樹は右ストレートで圧勝

以下、大学交流戦

◆第5試合 ウェルター級 2回戦 U-2

安河内大樹(中央3年)vs 田中良弥(拓殖2年)
勝者:安河内大樹 / TKO(RSC) 1R 0:17 /

開始早々、蹴りから接近し打ち合う中、連打から左フックヒット

◆第4試合 ライト級 2回戦 U-2

田中冴樹(創価3年)vs 川島京太郎(拓殖3年)
引分け 0-1 (18-20. 20-20. 20-20)

◆第3試合 ライト級 2回戦 U-2

三須脩平(國學院2年)vs 相原寛人(拓殖2年)
勝者:三須脩平 / 判定2-1 (20-19. 20-19. 19-20)

◆第2試合 ミドル級 2回戦 U-2 

境田建志郎(國學院3年)vs 清太陽(東海1年)
勝者:境田健志郎 / 判定3-0 (20-17. 20-17. 20-17)

◆第1試合 バンタム級 2回戦 U-2

大畑寛太(創価1年)vs 福島智洋(拓殖1年)
勝者:大畑寛太 / 判定2-0 (20-19. 19-19. 20-19)

「K-1 FIT FIGHT」拓殖大学フィットネスチームによるデモンストレーション

《取材戦記》

OBによるエキシビションマッチ出場した佐々木秀樹のセコンドは、赤ちゃんを背負った奥様が付き、ドラマになりそうな珍しい光景だった模様。それに気付かなかった私は撮っていなかった。観察力不足であった。

学生キックでは大方は4年間で終わってしまう大学生活で、4年生は卒業と就職に向けた活動に入る為、3年生でキックボクシングを辞める選手が多いようですが、早々に就職などの進路が決まると、4年生になっても続ける選手も居るようです。

試合出場した選手の一人に、卒業したらプロに行く気はあるか聞いたところ、「勿論就職です。プロには行きません。」という回答。当たり前ながら就職後は「キックは大学生活の想い出」で終わるのが普通なのでしょう。

たまに卒業後、数年経ってからプロデビューする者もいるらしく、やっぱり忘れられないキックボクシングの魅力に導かれる選手もいるようです。

昭和50年代はプロ興行のリングサイドに黒制服を着たパンチパーマの学生キックボクサーが集団で座っていたのを見たことありますが、見た目は怖かった思い出。今やこちらが歳取った上、皆優しい大学生なので、親しみ易さがあります。

大会役員にはオヤジファイトのキック版「ナイスミドル」代表の大森敏範氏や、62歳でナイスミドルに出場している元・日本ライト級チャンピオン飛鳥信也が運営を担っています。皆、キックボクシングに関りが深い人生。その飛鳥氏のお誘いを受け、些細ながら取材している次第でした。

来年は従来通り、大学交流戦を経て第91回選手権大会が開かれるようコロナの収束を願いたいものです。

ラウンドガールを務めた学生2名もリングを飾った

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

12月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年1月号!

コロナ禍からの脱却へ、11年目のKICK Insist! 堀田春樹

観衆はまだ50パーセントの入場制限中ながら、観衆の声援に活気が増した会場。

瀧澤博人は見せ場を作ったヒジ打ちと左フックでノックダウンを奪うインパクトを残した判定勝利。

永澤サムエル聖光は自信を持ったパンチで出て、一発で仕留めるインパクトを残して本日のMVP賞。

今野顕彰はベテランムエタイ戦士を攻略出来ず。

前座で若い選手を起用したマッチメイクは、他団体選手に勝利を持って行かれる結果も好ファイトが展開されました。

◎KICK Insist.11 / 11月21日(日)後楽園ホール17:30~20:46
主催:ビクトリージム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第10試合 メインイベント 56.5kg契約3回戦

接近戦で右ヒジ打ちをヒット、ウィサンレックの唇下をカットさせた

瀧澤博人(ビクトリー/1991年2月20日埼玉県越谷市出身/30歳/56.5kg)
     vs
ウィサンレック・MEIBUKAI(1982.2.24タイ出身/56.2kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:桜井30-27. 仲30-28. 松田30-28

瀧澤博人はWMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン。ウィサンレックは元・タイ国ルンピニー系フライ級、バンタム級チャンピオン。ウィサンレックはトレーナーとして来日後、日本人戦を8戦ほど経験。国内トップクラスには負け越しているが、日本人の壁となる存在。

長身の瀧澤博人が自分の距離を保った蹴りとパンチ、前進するウィサンレックに離れた距離からの左ジャブが伸びる。組み合えばウィサンレックの技量発揮だが、その展開は短く、終盤にウィサンレックが接近するタイミング合わせて瀧澤の右ヒジ打ちで唇下辺りをカットする。傷幅は小さいが深さはありそうな鮮血が流れた。

残り時間少ない中、出て来るウィラサクレックと相打ち気味の左フックでノックダウンを奪うが、再開の時間は無く試合終了。「出て来るのが分かっていた」というチャンスを逃さなかった瀧澤博人の存在感アピールとなった試合。

瀧澤博人は33戦21勝(12KO)8敗4分。

瀧澤博人の左ジャブが主導権を奪う
相打ち気味の左フックでウィサンレックを倒した瀧澤博人

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

永澤サムエル聖光(ビクトリー/1989年11月10日埼玉県吉見町出身/61.8kg)
     vs
トーンミーチャイ・FELLOW GYM(タイ/26歳/61.85kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / KO 2R 1:50 / 主審:少白竜 

永澤サムエル聖光はWBCムエタイ日本ライト級チャンピオン。トーンミーチャイは元・タイ国東北部バンタム級チャンピオンで、FELLOWジムでトレーナーを務める在日タイ選手。

永澤サムエル聖光は蹴りからパンチへ相手との距離を計って打ち込むチャンスを狙う。第2ラウンド、永澤はトーンミーチャイの圧力に下がらず、左フック一発でノックダウンを奪うと、辛うじて立ち上がるトーンミーチャイは足元がフラついたところでレフェリーがテンカウントを数え終えた。

MVP賞を獲得した永澤サムエル聖光は33戦21勝(9KO)9敗3分。

永澤サムエル聖光が優るパンチでトーンミーチャイを追い詰めていく
左フックでボディーブローをヒットさせる永澤

◆第8試合 73.0kg契約3回戦

今野顕彰(市原/千葉県出身/38歳/72.8kg)vs ボーイOZ GYM(タイ/29歳/72.8kg)
勝者:ボーイOZ GYM / 判定0-3
主審:桜井一秀
副審:椎名29-30. 少白竜28-30. 松田28-30

今野顕彰はジャパンキックボクシング協会ミドル級チャンピオン。ベテランのオーラが漂うボーイだが、ふっくらした体格は第一線級から退いて年月が経った印象を受けるが技量は侮れない。そのボーイの蹴りで今野の脇腹を赤く染める。

組み合えばムエタイ技発揮で上手さが光るボーイだが、今野を圧倒するには至らない。今野のパンチも急所を外すディフェンスが上手いボーイは蹴り返し、ポイントを失わない巧みさには今野も攻め倦み、判定に縺れ込んだ。

今野顕彰は42戦22勝(14KKO)16敗4分。

ボーイの巧みな駆け引きに掴まえきれなかった今野顕彰

◆第7試合 51.0kg契約3回戦

細田昇吾(ビクトリー/1997年 6月 4日埼玉県出身/51.0kg)
     vs
阿部晴翔(チーム・タイガーホーク/宮城県仙台市出身/22歳/50.9kg)
勝者:阿部晴翔 / TKO 2R 0:53 / 主審:仲俊光

蹴りとパンチの攻防は、阿部がペースを掴んだ打ち合いの中、右ヒジ打ちで細田をグラつかせ、赤コーナー近くで右ストレートでノックダウンを奪う阿部。第2ラウンドに入ってもダメージ残る細田に右ストレートで倒すとカウント中にレフェリーが試合を止めると同時にタオルが投入。

細田昇吾は15戦9勝(2KO)5敗1分。阿部晴翔は18戦6勝(5KO)12敗。

阿部晴翔の右ストレートで仰け反る細田昇吾

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

興之介(治政館/東京都出身/32歳/62.0kg)
     vs
吉田凛汰朗(VERTEX/栃木県出身/21歳/61.8kg)
勝者:吉田凛汰朗 / TKO 3R 1:13 / 主審:松田利彦

興之介はこの団体、ジャパンキックボクシング協会ライト級4位。吉田凛太朗はニュージャパンキックボクシング連盟から出場したNJKFライト級1位。

序盤の様子見から徐々に積極的に打って出た吉田凛太朗が第2ラウンド、右ストレートでノックダウンを奪うと、飛びヒザ蹴りからパンチ連打し、ニュートラルコーナーに下がった興之介に右ストレートで2度目のノックダウンを奪う。第3ラウンドには蹴りで出て来る興之介に右ストレートでノックダウンを奪うとレフェリーがほぼノーカウントで試合を止めた。

興之介は20戦11勝(3KO)8敗1分。吉田凛太朗は17戦8勝(2KO)7敗2分。

吉田凛太朗の右ストレートで劣勢に陥る興之介

◆第5試合 スーパーバンタム級3回戦

西原茉生(治政館/埼玉県出身/18歳/55.34kg)vs 拳大(OGUNI/東京都出身/20歳/53.25kg)
勝者:拳大 / 判定0-3 (28-29. 27-30. 27-29)

序盤、拳大がパンチラッシュで西原を追い詰めると鼻血流す西原。拳大が更に左フックで西原はノックダウン。西原は鼻血が止まらない様子も蹴りで出て態勢を整える。蹴り中心になりがちな流れもパンチの交錯でノックアウト狙うアグレッシブさが伺えるが、ヒットは無く判定まで縺れ込んだ。

西原茉生は5戦2勝(1KO)3敗。拳大は3戦2勝1分。

◆第4試合 ウェルター級3回戦

正哉(誠真/18歳/65.9kg)vs 鈴木凱斗(KICK BOX/24歳/66.5kg)
勝者:鈴木凱斗 / 判定0-3 (29-30. 28-29. 28-29)

蹴り中心の様子見から鈴木凱斗が右ストレートで青コーナーに詰めて連打。凌いだ正哉は蹴りからパンチで巻き返した第1ラウンド。第2ラウンドも互いに倒しに行く姿勢も見られたが、ノックダウンには繋がらず鈴木が僅差判定勝利。

正哉は3戦2勝1敗。鈴木凱斗2戦1勝1敗。

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

ピン級6位.藤原乃愛(ROCK ON/17歳/46.0kg)
     vs
アトム級5位.ほのか(KANALOA/22歳/46.26kg)
勝者:藤原乃愛 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-28)

藤原乃愛はスピーディーで的確に蹴るテクニックを持ち、左ハイキックで何度か軽々ほのかの頭部をヒットする巧みさが目立った大差判定勝利。

藤原乃愛は今年5月29日にデビューし3戦3勝。ほのか12戦4勝7敗1分。

高校2年生の藤原乃愛の鋭いハイキックが、ほのかを追い詰める

◆第2試合 53.0kg契約3回戦

花澤一成(市原/17歳/52.0kg)vs 笠原秋澄(ワンサイド/29歳/53.0kg)
勝者:笠原秋澄 / TD (テクニカルデジション) 2R 0:49
負傷判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

股間ローブローによる試合続行不可能となった花澤一成。そのラウンドも含めた負傷判定となった。

花澤一成は2戦1勝1敗。笠原秋澄は1戦1勝

◆第1試合 58.0kg契約3回戦(デビュー戦同士)

大武ジュン(治政館/29歳/57.6kg)vs 布施有弥(KIX/25歳/58.0kg)
引分け 1-0 (29-29. 29-29. 29-28)

《取材戦記》

コロナ禍で、現役バリバリのタイ選手は呼べない中、在日タイ選手が頑張ってくれました。

第7試合、阿部晴翔が勝利した途端、「やっと勝った!」と声を漏らした船木鷹虎会長。詳しくは聞けませんでしたが、仙台から出陣しての阿部の勝利は苦労があったかもしれません。チーム・タイガーホークは鷹虎ジムが母体で、船木氏が会長。古くはヤンガー舟木として名を馳せたチャンピオンです。

第2試合は偶然のアクシデント、故意ではない股間への蹴りで、花澤一成が立ち上がれないほどのダメージとは珍しい負傷判定でした。プロボクシングでは最大5分間のインターバルを与えられ、続行不能であればTKO負けとなります。

またよく「ノーファールカップの装着が下手なのではないか。しっかり縛ってないからズレるんだ」という意見も聞かれます。

ムエタイのノーファールカップは一人で装着できるものではなく、熟練したタイのトレーナーなどからしっかり縛り方を学ばないと、たかがノーファールカップでも大怪我に繋がる大事な部分でしょう。これはまたしっかり学んで記事で公開したい事案でもあります。
ジャパンキックボクシング協会2022年新春興行は1月9日(日)、後楽園ホールに於いて治政館ジム主催「Challenger.4」が開催されます。

JKAバンタム級1位.麗也JSK(治政館)vs NJKFスーパーバンタム級チャンピオン日下滉大(OGUNI)戦の他、馬渡亮太(治政館)、モトヤスック(治政館)、渡辺航己(JMN)の出場が予定されています。

MVP賞を獲得した永澤サムエル聖光。左は授与したアジアグループ会長の新沼光氏

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

なかなか闇の深いムエタイの八百長問題 堀田春樹

◆問題発覚

タイ国に於いては、もうどれくらい長い間、八百長問題でムエタイ業界を騒がせているだろう。他国の問題ながら、日本が目指してきたムエタイ越えとしては軽視できない問題である。

コロナ禍の規制の中で、やっと無観客試合の形で再開することができたタイ国内のムエタイ興行。地域によっては規制も緩み、再開から1ヶ月も経たない10月8日に、ブリラム県で開催された興行で八百長問題発覚。

過去にも発覚する事案は幾らかあるが、闇は深いと言われる八百長問題。業界の自浄能力はどれぐらいあるだろうか︎。

今回の問題を起こした選手の業界内での噂は、過去には麻薬に手を出すなど、今までの行動にも問題が多かっただけに、今後の復帰への機会は難しいと言われています。

悪名高き存在となってしまったファーワンマイ・チョー・タイセー

◆当事者の供述

10月8日のライブ中継されていたミニフライ級の、ラーンヤーモー・ウォー・ワッタナvsファーワンマイ・チョー・タイセー戦で、ファーワンマイ優勢で第4ラウンドに入ると、ラーンヤーモーの右縦ヒジ打ちでファーワンマイが倒れTKO負け。ノックダウン後のアクションがオーバーだったことでギャンブラーが騒ぎ、八百長と疑われました。

ファーワンマイは試合直後は認めずも、後日の興行役員、関係者の追及に八百長だったことを認めました。ファーワンマイは63戦44勝17敗2分。ナコンサワン出身の19歳の選手。

「今までのキャリアの中で、今回の試合を含めて4回の八百長試合をしてきた」と言う。

ファーワンマイは後日、八百長を依頼してきたという元ムエタイジム会長を管轄の警察署に告発。スポーツ庁ムエスポーツ委員会からも呼び出しを受けて事情聴取を受けました。

10月13日にはタイ民放局3chの番組生放送に出演を促され、一連の流れを説明。

ファーワンマイの供述によると、個人で販売していたナムプリック(chilidip唐辛子)5kgを販売額より高い金額で買い取ってくれた客が居て、2回目の購入時、「近くに来たので発送費が勿体ないだろうから直接取りに行く」との連絡があり、直接手渡すことになったが、その際に次の試合の八百長案を持ちかけられてしまい、「自宅場所も分かったから口外したり八百長を受けなかったら危険な目に遭うぞ!」と脅され、50万バーツ(約170万円)を提示された内、前金として3万バーツを受け取った。

KO負けするラウンドまで指定されたとおりの、第4ラウンドでKO負けしたが、試合後に問題が表沙汰になると、その依頼者という元ムエタイジム会長とは連絡が取れなくなった模様(ファーワンマイ本人の供述の為、どこまで真実かは不透明)。

プロモーターのスィアボート氏

同席した興行の主催者であるペットインディープロモーション、プロモーターのスィアボート氏(先代スィアナオ・ペットインディー氏の子息)は、「いろいろ経歴に傷のある選手だが、将来有望だったのでチャンスを与えて助けてきたが、こんな形で裏切られてしまい、怒りと悲しみで残念だ。」と心情を話しました。

スィアボート氏の説明では、ファーワンマイは以前、ランシットスタジアムで観戦中、お金を持っていないのにギャンブラーらとの賭けに参加していたが、負けて賭け金が支払えず、スタジアム内でギャンブラーらに取り囲まれ騒動となって問題化されてしまった。

それに救いの手を出して、復活の手助けをしたのがスィアボート氏で、復帰からわずか4戦目での恩を仇で返す裏切り行為だった。

ムエタイに於いての八百長に対する罰則は、1999年に制定されたムエスポーツ法に明確に定められており、八百長依頼者、実行した選手共に5年以下の禁固刑または10万バーツ以下の罰金、もしくはその両方と定められています。

但し、今までに厳格に執行された例が少なく、”紙上だけの法律”と揶揄されてしまっていることから、スィアボート氏は番組の中で、「法律がありながら、厳格な刑の執行を実施していかないと同じことの繰り返しとなり、ムエタイ界が発展していかない。」と警鐘を鳴らし、ムエタイ界の更なるクリーン化を主張しました。

古い話だが、ランシットスタジアムでドーンライされた赤いトランクスの選手(真相は不明)(1989年1月23日)

◆闇の深さ

ムエタイではほぼ実力拮抗した者同士がマッチメイクされ、多彩な技と駆け引きの中、勝負の読めない展開から賭けが成立。しかし、真剣に激しく戦えばノックアウトも負傷も起こり、スタミナ切れしたり、薬を仕込まれていて失速する場合もあるといいます。

毎月定期的に試合が続く選手は、体調不良で戦えば劣勢を招くことは明確で、それを八百長の疑いを掛けられ、試合途中でドーンライ(追放)となって仮に6ヶ月間出場停止となったら大変な減収となる為、体調不良が理由の試合キャンセルはよくある回避手段でしょう。

しかしこれではプロモーターに迷惑をかけるのは確かなので、会長やトレーナーは選手の体調管理にはかなり気を遣うと言います。メインスタジアムに出る一流選手は常に、“強さ、上手さ、頑丈さ”を求められるので、弱気な素振りやスタミナ切れのアクションは見せられません。

過去には、八百長だったのに発覚していない場合もあれば、八百長ではないのに試合前に噂が広まって、動きがおかしいとギャンブラーたちが騒ぎ始めてドーンライを促されるケースがあり、これらはプロモーター、ジム会長、トレーナー等側近が複雑に関わってるケースもある中、ややこしい闇の深さがあります。

◆ムエタイのリーダーとして

これまで述べた八百長とは、一方の選手のみが実行する“片八百長”という意味になります。

ドーンライされるそのリング上では、厳密に言えば八百長と決めつけた裁定ではなく、“ム
エタイ戦士としての威信にそぐわない試合”という意味で、“マイソムサクシー”と呼ばれます。

両者がそれぞれ全く違う人物から片八百長を持ち掛けられ、自分だけと思って片八百長をやりながら、実際は両者がやっていたことは稀にでも有るようです。

互いが手を抜き始めてダラダラした試合は、傍から見ればドッキリ企画のような笑うに笑えない展開も、明らかに威信にそぐわない試合で、両選手ともドーンライとなるようです。

元々から賭博禁止であればこんな問題も起きなかったと考えられますが、ムエタイ公式スタジアムでは法的に賭博の認可を受けており、2階席から後方まで有料観客による賭けは許されています。

このギャンブラーが居なければ大半の集客が見込めないのも事実で、賭博禁止とは言い切れない業界の存続が掛かってきます(一部改革案も有り)。

しかしここでは個人間の賭けなので全て自己責任。「賭けただろ、賭けてない!」のトラブルから客席後方で喧嘩が起こることも珍しくはありません。

10月19日にはタイ国ムエスポーツ(プロムエタイ)協会主導で役員など50名程集められ、解決策などの会議も行われた模様で、世間からは「“改善策を議論してますよ”といったアピールだけだろ!」と揶揄されながらも、社会的問題になり、改善策が議論されるだけムエタイ業界の歴史、伝統が偉大であることの証でもあり、八百長がやり難い環境に努めて世間にアピールしていくことは重要でしょう。

世界に広まったタイ国技ムエタイとしてのリーダーシップを持って進んで欲しいところです。

殿堂旧・ルンピニースタジアム(通常)。ここでもドーンライとなった試合は少なくない(1990年7月)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

濱田美栄コーチを「モラハラ提訴」した織田信成氏、新潮社と朝毎読産経の4紙に「訴訟告知」 片岡 健

フィギュアスケート元五輪代表の織田信成氏(34)が一昨年(2019年)11月、「モラルハラスメントを受けた」などと主張し、関西大学アイススケート部の濱田美栄コーチ(61)を相手に1000万円の損害賠償などを求めて大阪地裁に起こしていた訴訟で、気になる動きがあった。

織田氏がこの紛争に関する自身の主張を伝えるなどした出版社1社と新聞社4社に対し、「訴訟告知」を行ったのだ。あまり報道されていない話のようなので、ここで紹介したい。

織田の主張を伝えた週刊新潮2019年10月31日号 ※修正は筆者による

◆濱田コーチも反訴して反撃

まず、この訴訟の経緯を簡単にまとめておく。

織田氏は日本を代表するフィギュアスケーターの1人だが、かたや濱田コーチも宮原知子選手や紀平梨花選手ら多くのトップフィギュアスケーターを育てた有名な指導者だ。織田氏がこの濱田氏からモラルハラスメントを受けたと主張しているのは、2017年4月から2019年9月まで母校の関大でアイススケート部監督を務めた時期のことだ。

織田氏の主張によると、当時、濱田コーチは自分の指導に意見した織田氏に対し、「あなたの考えは間違っている!と激怒し、それ以来、織田氏を無視するようになった。さらに「監督に就任して偉そうになった」「勝手に物事を決める」などと真実と異なる噂を流布するように。織田氏はそのせいで40度を超える熱が出て、動悸、目眩、吐き気などの体調不良に陥ったため、選手を指導できなくなり、監督を辞任せざるをえなかったという。

一方、訴訟が始まると、濱田コーチが「織田氏へのモラハラは事実無根だ」と主張。そのうえで、織田氏がブログや週刊誌のインタビュー、提訴時の会見でモラハラを受けたと主張したせいで名誉を棄損されたとして、織田氏に対して330万円の損害賠償を求め、反訴したのだ。

そんな訴訟は今年3月、デイリースポーツで「双方が和解に向かっている」と報じられた。しかし、濱田コーチが「自分が織田氏にモラハラや嫌がらせをしたことは証拠上明らかになっていない」と謝罪を拒否。そのうえで、「自分は織田氏のせいでマスコミに追われ、街中でも後ろ指を指されるなどした」と主張し、和解の条件として織田氏が自分に謝罪することを求めた。そのため、和解は成立しなかったのだ。

◆「訴訟告知」は敗訴した場合に備えた措置

こうして訴訟が続く中、織田氏の代理人弁護士が講じた措置が出版社1社と新聞社4社への「訴訟告知」だった。モラハラ被害に関する織田氏の主張を伝えた週刊新潮、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞の発行元各社に対し、書面で次のような告知を行ったのだ。

「週刊誌や新聞の記事については、編集、発行を担った出版社、新聞社が不法行為責任を負うべきだ。織田氏の主張を伝えた週刊誌や新聞の記事により、織田氏が濱田コーチへの損害賠償を強いられた場合、織田氏は発行元の出版社と新聞社に対し、訴訟を提起せざるをえない」(告知内容の要旨)

つまり、織田氏が敗訴した場合、今度は織田氏が出版社や新聞社相手に訴訟を起こすことになる可能性を伝えたというわけだ。

もっとも、新聞各紙は織田氏が提訴時に会見で主張したことを伝えただけで、織田氏から責任を追及される筋合いがあるかは疑問だ。一方、織田氏の代理人弁護士によると、週刊新潮は織田氏が濱田コーチのことを「関大の女帝」と呼んでいるかのように書くなど、記事中に編集部が創作した表現を数多く使用していたという。それが事実なら、織田氏が「あの記事の内容について、自分に責任はない」と主張したくなる気持ちもわからないでもない。

訴訟告知を受けた各社はどのように対応しているのか。織田氏の代理人弁護士はこう説明した。

「訴訟告知に対し、何か対応してきた社はありません。それぞれ検討されたうえでのことと思うので、各社のことを無責任だと思うことはありません。我々は、粛々と裁判を進めるだけです」

フィギュアスケート界の有名人同士の訴訟は、はた目には不毛な争いが続いているように見える。早く解決して欲しいと他人事ながら思う。

▼片岡 健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史、発行元・リミアンドテッド)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

NJKF設立25周年! 来年へ繋ぐ注目の好カード! 堀田春樹

山浦俊一は昨年12月27日に葵拳士郎(マイウェイ)に判定勝利し王座奪取。今回、初防衛を果たし、次のステップに進みたいことを宣言。

波賀宙也は防衛戦に向けての前哨戦は引分けるも、タイ選手のテクニシャン対策にはなった試合。

ルイはS-1レディースジャパン王座獲得。段階的に言えば次はS-1ワールドトーナメント出場。

真吾YAMATOは4度目のNJKF王座挑戦で、暫定ながら王座獲得。

◎NJKF 2021.4th / 11月7日(日)後楽園ホール17:30~21:10
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:WBCムエタイ日本協会、NJKF

◆第10試合 WBCムエタイ日本スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.山浦俊一(新興ムエタイ/1995.10.5神奈川県出身/58.85kg)
      VS
1位.久井淳平(多田/1987.12.3大阪府出身/58.8kg) 
勝者:山浦俊一 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:多賀谷50-46. 少白竜50-47. 椎名50-47

山浦俊一の首相撲からの崩しで10回ほど久井淳平がひっくり返された。その試合は山浦が蹴りやパンチの的確さで主導権を奪っての展開。

手足長い久井の前蹴りや右ストレートは山浦のディフェンスに阻まれヒットし難い。地味な戦いだが、山浦の多彩な技で圧力掛け続け、大差判定勝利に繋がった。

山浦俊一は27戦15勝(3KO)10敗2分。久井淳平は34戦20勝(6KO)13敗1分。

山浦俊一の崩し技で久井淳平は何度も転ばされた
ジワジワ攻めて追い込んだ山浦俊一のハイキック

◆第9試合 57.0kg契約3回戦

波賀宙也(立川KBA/1989.11.20東京都出身/56.9kg)
     VS
クン・ナムイサン・ショウブカイ(1990.11.21タイ出身/56.8kg)
引分け 三者三様
主審:少白竜
副審:中山30-29. 多賀谷29-29. 宮本28-29

波賀宙也は2019年9月23日、IBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王座獲得。コロナ禍に於いて防衛戦が延期された1年半のブランクを経ての9月19日は大田拓真(新興ムエタイ)に判定負け。今回がやがて予定される防衛戦への前哨戦となる。

両者はパンチとローキックで様子見。柔軟な体幹を持つタイボクサーのクン・ナムイサンは慌てることなく、首相撲で勝負するなどベテランの余裕があるが、互いに攻勢を決定付ける強いヒットも無く終了。波賀はタイトル防衛戦に向けたムエタイ対策には役立った試合かもしれない。波賀宙也は42戦26勝(4KO)12敗4分。

攻略は出来なかったが、防衛戦に向けたムエタイ対策になった波賀宙也

◆第8試合 60.0kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級チャンピオン.梅沢武彦(東京町田金子/1993.8.12東京都出身/59.9kg)
     VS
JKIスーパーフェザー級チャンピオン.櫻井健(Hard worker/1981.2.20千葉県出身/59.45kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜30-26. 多賀谷30-26. 宮本30-26

梅沢は蹴りとパンチの様子見から自分のリズム掴み、多彩に蹴って勢い増していく。ハイキックは何度か顔面をかすめる圧倒。

桜井も打って出て来た最終ラウンド終盤には、倒しに掛かる勢いで右ストレートでノックダウン奪い、最後の残り時間で飛びヒザ蹴り見せた梅沢。ノックアウトは出来なかったがインパクト与える余裕の判定勝利。

梅沢武彦は27戦17勝(8KO)7敗3分。櫻井健は32戦13勝(3KO)15敗4分。
 

技と駆引きで優った梅沢武彦のハイキック

◆第7試合 S-1レディースジャパン2021スーパーフライ級王座決定戦 5回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級1位.ルイ(クラミツ/1991.2.19香港出身/52.15kg)
     VS
KOKOZ (=ココゼット/TRY HARD/2001.10.24神奈川県出身/51.9kg)
勝者:ルイ / 判定3-0
主審:宮本和俊
副審:中山48-47. 椎名48-47. 少白竜49-48

序盤はKOKOZのパンチと蹴りのリズムで距離感保ち、的確さで上回った。3ラウンドからルイが首相撲に持ち込みヒザ蹴りに入ると、KOKOZは持ち味を殺されたように動きが減ってしまう展開が続き、後半ポイントを失った形のKOKOZは惜しい敗戦。ルイは9戦8勝(3KO)1敗。KOKOZは10戦6勝4敗。

首相撲となればルイがヒザ蹴りで優って逆転に導いた
陣営に祝福されたルイ

◆第6試合 女子ミネルヴァ・ライトフライ級王座決定戦3回戦

1位.真美(team lmmortaL/1990.2.19神奈川県出身/48.85kg)
     VS
2位.ERIKO(ファイティングラボ高田馬場/1987.4.22千葉県出身/48.65kg)
勝者: 真美 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:中山30-27. 椎名30-27. 宮本30-28

初回から蹴りから組み合えばヒザ蹴り、更にパンチの手数が増える展開で、ERIKOの勢いはあるが、組み合えばヒザ蹴りで優っていく真美が攻勢を保ち判定勝利。

真美は12戦8勝(2KO)4敗。ERIKOは10戦6勝(2KO)4敗。

真美も首相撲からヒザ蹴りで勝利を導いた
陣営に祝福された真美

◆第5試合 NJKFスーパーライト級暫定王座決定戦 5回戦

真吾YAMATOの徹底したヒジ打ちでマリモーを倒した

1位真吾YAMATO(大和/1996.1.3東京都出身/63.15kg)
     VS
3位.マリモー(キング/1985.3.8東京都出身/63.2kg)
勝者:真吾YAMATO / KO 1R 1:27 / テンカウント
主審:少白竜 

開始から長身の真吾がタイミング狙ってヒザ蹴りを入れ、マリモーをロープ際へ圧し、コーナーに追い込むと左ヒジ打ちでマリモーの右目瞼を斬り、更に左ヒジ打ちでアゴを捉えダメージを与えてのノックアウト。

マリモーのスタミナと根性でのしぶとさを発揮させずに仕留めた真吾。

真吾YAMATOは31戦22勝(11KO)7敗2分。マリモーは33戦13勝(6KO)19敗1分。

◆第4試合  NJKFバンタム級挑戦者決定戦3回戦

1位.志賀将大(エス/1993.2.20福島県出身/53.0kg)
     VS
2位.池上侑李(岩崎/2000.7.17東京都出身53.4kg)
勝者:志賀将大 / 判定3-0
主審:椎名利一        
副審:中山30-29. 少白竜30-28. 多賀谷30-29

蹴りの攻防は互角ながら、第2ラウンド半ばから池上のパンチで鼻血を流す志賀は息苦しさが感じられたが、首相撲でのヒザ蹴りで攻勢を保ち判定勝利。

志賀将大は15戦11勝(4KO)3敗1分。池上侑李は14戦8勝(2KO)6敗。

◆第3試合 65.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級2位.野津良太(E.S.G/64.6kg)
     VS
NJKFスーパーライト級8位.ナカノ・ルークサラシット(エス/64.6kg)
勝者:野津良太 / 判定2-0
主審:宮本和俊
副審:椎名30-29. 少白竜30-29. 多賀谷29-29

しぶとさ発揮の野津良太が、差は付き難いが多彩な攻めで主導権奪って判定勝利。
野津良太は19戦11勝(3KO)7敗1分。ナカノ・ルークサラシットは62戦40勝(20KO)22敗。

◆第2試合 女子(ミネルヴァ) 56.0kg契約3回戦(2分制)

スーパーバンタム級2位.KAEDE(LEGEND/56.0kg)vs水野志保(名古屋JKF/55.9kg)
勝者:KAEDE / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-27. 少白竜30-28. 宮本29-28

KAEDEは8戦6勝1敗1分。水野志保は37戦23勝12敗2分。

◆第1試合 フライ級3回戦

吏亜夢(ZERO/50.6kg)vs玉城海優(RKA糸満/49.9kg)
勝者:吏亜夢 / TKO 2R 0:33 / カウント中のレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

吏亜夢は7戦4勝(3KO)2敗1分。玉城海優は12戦3勝(1KO)9敗。

暫定ながら王座獲得、真吾YAMATO

《取材戦記》

山浦俊一の次のステップに進む希望はインターナショナル王座か他のタイトルになるか。選択肢は多くあるが、希望通りのイベントや対戦相手に臨める訳ではないから、このままWBCムエタイ路線で行くのは一番可能性が高いでしょう。

NJKFスーパーライト級挑戦者決定戦は暫定王座決定戦に変更。安易にチャンピオン誕生は好ましくないが、早めの統一戦とタイトルマッチ活性化を期待したい。

「活性化を期待したい」といったような文言は、何度も記事の無難な纏め言葉に使ってきたが、なかなかそうは進んでくれないのが多くのタイトルの存在なのである。

ニュージャパンキックボクシング連盟は何気に25周年。正確なデータは分かりませんが、名古屋JKファクトリージムから、おそらく20年ぶりの選手出場。懐かしい小森二郎会長の姿がありました。

1996年設立から暫くは大和北ジム(後に名古屋JKFへ名称変更)から鈴木秀明や佐藤孝也が出場し、ニュージャパンキックボクシング連盟を支えたエース格の一角でした。

そんなNJKFの黎明期には仙台青葉の瀬戸幸一会長とSVGシンサック会長がリング上での口論も懐かしい対峙でした。脱退していった当時の古きジムも多かったものです。

2022年のNJKF本興行は後楽園ホールに於いての夜興行で、2月12日(土)、6月5日(日)、9月25日(日)、11月13日(日)の4回。他、大阪など地方興行も予定される様子です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

チャンピオンベルトへのステップアップ! Dynamic Ultimate Exciting Live(DUEL)! 堀田春樹

2015年4月29日、新宿FACEから始まったNJKFから発祥のDUELシリーズ。当時、30代~40代の若手会長により結成されたNJKF若武者会が、新人戦からWBCムエタイ世界王座まで段階的にステップアップする機会を与える為の始動でした。そのDUELが第22回を迎えた10月31日、コロナ禍を引きずった時期で、二部制に於いて行われました(第一部と第二部は入れ替え制)。

◎DUEL.22 / 10月31日(日)ゴールドジムサウス東京ANNEX
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF / 前日計量30日12:00

第一部(18:08~19:06)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

左ミドルキックが冴えていた祥子。終始リズムを保った

アトム級3位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/46.4→46.25kg)
vs
久遠(=ひさえ/ZERO/1980.10.21栃木県出身/46.25kg)
勝者:祥子JSK / 判定3-0
主審:宮本和俊
副審:和田29-28. 中山30-28. 少白竜30-29

祥子はアマチュアで試合を重ね、2012年6月にプロデビュー。出産から約6年間のブランクを経て、2019年1月に再起。これまで国内王座挑戦経験も多い。

久遠(=ひさえ)は2002年4月にMMAでデビューし、シュートボクシングでRENAとの対戦や2016年迄にはキックボクシング戦を経て、以後出産育児のためリングを離れ、今回約5年ぶりの再起となった。

祥子は少しずつ前進しローキック、ミドルキックで様子見のけん制。久遠は下がり気味でロープ、コーナーに詰まり気味。レフェリーが一旦、攻めが少ない両者に積極的ファイトを促す。祥子は次第に前蹴り、左ミドルキックが冴えていく。下がり気味で手数が少ないままの久遠は徐々にパンチ連打で出るが流れを変えられない。組み合う場面も出てきたが祥子が優勢。第3ラウンドにはようやく前に出てきてパンチが増えた久遠。ラスト30秒からパンチで手数増やしてきたが祥子のリズムを崩すに至らず終わる。

祥子は「相手が前に出てこないのでどういう展開になるのかな、と思ってた。」と言い、戦歴豊富な久遠に気を抜けなかったが、落ち着いて徹底して左ミドルキック、前蹴りで主導権支配した祥子JSK。練習してきたと言うミドルキックの成果が表れていた。「応援してくれる人もたくさん居て、凄くお待たせしているので必ずチャンピオンになります」と応えた。

祥子JSKは19戦6勝12敗1分。久遠はキック系14戦9勝(2KO)4敗1NC。

手数少ない久遠に祥子のパンチも攻勢に導く

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制)

スーパーフライ級2位.IMARI(LEGEND/51.75kg)vs 同級5位.NANA(エス/52.1kg)
引分け 三者三様
主審:竹村光一
副審:和田29-29. 中山29-30. 宮本30-29

パンチとローキック主体の互角の攻防が続くがヒットが軽く、パンチが顔面に入っても怯まず、互いに下がらない攻防は差が付き難い流れで終わる。

被弾しても下がらず打ち合ったIMARIとNANA

◆第2試合 58.0kg契約3回戦

パヤヤーム浜田(キング/57.7kg)vs 渡部瞬弥(エス/57.7kg)
勝者:パヤヤーム浜田 / KO 3R 1:25 / テンカウント
主審:少白竜

渡部瞬弥が蹴り中心に主導権を奪う試合運びも、浜田はパンチしか突破口が無い中、最終ラウンドに浜田がボディーブロー狙い、パンチが顔面にヒットしたか、連打からロープ際で首相撲となったところで渡部が崩れ落ちた。

勝率は低い浜田が逆転ノックアウトするインパクトある勝利を飾った。浜田はプログラム上は前戦まで1勝12敗。この日に2勝目を挙げたここからどこまで上昇気流に乗れるか注目である。

パヤヤーム浜田「渡部選手は蹴りが上手くて、自分の蹴りは逆に当たらなくて2ラウンドまでの採点で全部取られていて、やばいなと思ったけど、パンチが意外と当たる感じになったので、最後まで諦めずにやった結果だと思います。一戦一戦大事にして勝って行って、僕みたいな負けっぱなしの戦績の人間が偉そうに言えないですけど、チャンピオンベルト狙っていきたいと思います。」

逆転KOで感情溢れた“パヤヤーム”浜田。名の通り“努力”が実った

◆第1試合 スーパーフライ級3回戦

佐々木良樹(GRABS/52.1kg)vs 愛輝(ZERO/51.5kg)
勝者:愛輝 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜28-30. 竹村28-30. 宮本28-30

愛輝は「緊張しちゃって思うように動けなかった。」という流れも、飛びバック蹴りを見せる積極的な攻勢が目立った。

愛輝「プロになって初めて勝てて嬉しいです。もっともっと練習して強くなりたいです。」

徐々にリズムを掴み、飛びバック蹴りをみせた愛輝

第二部(19:20~20:13)

ヒジ打ちで獠太郎を追い込む財辺恭輔

◆第4試合 フェザー級3回戦

獠太郎(DTS/1990.6.17生/57.1kg)
     vs
財辺恭輔(REON/2002.11.8生/56.95kg)
勝者:財辺恭輔 / 判定0-3
主審:竹村光一
副審:和田28-30. 中山28-30. 宮本28-29

獠太郎は過去、日下滉大(現NJKFスーパーバンタム級チャンピオン)には判定負けも、NJKFライト級王座挑戦経験のある吉田凛汰朗には判定勝利しているなど、上位陣との対戦経験で上回る。

獠太郎はパンチ蹴りの正攻法な攻め。経験値ある獠太郎の当て勘にやや圧される流れに対し、財辺恭輔はパンチで追う圧力と首相撲でのヒザ蹴り、ヒジ打ちでも圧していく多彩さで好印象を残して判定勝利。財辺にとってはまだ2勝目だが、獠太郎越えは上位陣との対戦に繋がるステップアップとなった。

財辺「相手がベテランだから第1ラウンドは様子見ようと思ってたけど、上手くいかなくて、久しぶりの試合、初めてのメイン、プレッシャーがあったけど、何とか勝ってよかった。もっと戦ってタイトル目指せるよう頑張りたいと思います」

獠太郎は14戦6勝8敗2分。財辺恭輔は4戦2勝1敗1分。

財辺恭輔が若い勢いで優っていった

◆第3試合 57.5kg契約3回戦

渋谷昂治(東京町田金子/57.0kg)vs 大稚YAMATO(大和/57.45kg)
勝者:大稚YAMATO / 判定0-3
主審:宮本和俊
副審:竹村28-30. 少白竜28-30. 中山27-30

大稚YAMATOが渋谷昂治をロープに詰めてボディーブロー、ヒザ蹴りで主導権を握り、徹底して手数で圧力かけて出る。終盤は勢いは弱まるも、打ち負けない根性で耐えきった。

大稚YAMATO「相手が気持ち強くて打たれ強くて疲れて体力消耗したけど、強い相手とやれてよかった。負けずに一戦一戦全力で勝っていきたい。」

前進と圧力で上回った大稚YAMATO

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

史門(東京町田金子/58.9kg)vs 細川裕人(VALLELY/58.7kg)
勝者:史門 / KO 2R 1:42 / 3ノックダウン
主審:和田良覚

パンチによる3ノックダウンで史門が勝利。最初のストレートパンチでノックダウン奪ってから一気に仕留めに掛かった史門。右ストレートで2度目、コーナーに詰め連打で3度目のダウンとなった。

史門「これで2戦2勝(2KO)、将来的にはチャンピオンベルト巻けるように頑張ります。」

圧力掛けた史門が細川裕人を追い詰めていく

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)ピン級3回戦(2分制)

ピン級7位.斎藤千種(白山/45.3kg)vs 撫子(GRABS/44.7kg)
勝者:撫子 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:和田27-30. 少白竜27-30. 宮本27-30

パンチとローキックの様子見から徐々に動きがスピーディーになり、撫子は鼻血を流しながらも、蹴って来た斎藤にタイミング合わせてストレートパンチでダウン奪う。終盤も撫子はアゴが上がるパンチを貰いながら怯まず攻防を制した。

撫子「相手がサウスポーでパンチの上手い選手で、試合決まった時から会長(佐藤友則)と対策してきて自分の良さも活かせたと思います。会長のもとで更に強くなってランカーと対戦してピン級のチャンピオン目指します。」

互いが被弾する中でのパンチによるノックダウンに繋げた撫子

《取材戦記》

世間からは注目され難い小規模興行。新人が経験を積むには必要な機会であるが、その中にもドラマってあるもの。そんな一つを拾ってみたDUEL興行でした。

第一部の最終試合、祥子JSKvs 久遠戦と第二部の最終試合、獠太郎vs 財辺恭輔戦は、過去の経歴の話題性で、祥子JSK vs 久遠戦の方が注目度は高いようでした。

スタッフによる試合後の全勝利者へのインタビューに於いて、将来的に「チャンピオンを目指す!」と言う発言が多かった中、世界王座とかムエタイ王座とか最高峰の名称が出てこなかった。「まずは目先の段階で、国内の複数ある中の王座から」というのが本音だろうか。或いは言いたいけど、おこがましくて言えなかっただろうか。言うだけなら遠慮なく、RIZINでもKNOCK OUTでもラジャダムナンスタジアムでも、その先の多くのメディアに登場できる上位を目指して頑張って貰いたい。

NJKF興行は11月7日が後楽園ホールで本興行年内最終興行。

他、11月21日(日)には岡山県倉敷市、マービーふれあいセンターに於いて「拳之会主催興行17th ~NJKF 2021 west 4th~」

12月5日(日)には京都KBSホールでの「NJKF 2021 west 京都〜ワイルドウエスト〜」が開催予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

大トリは重森陽太、老舗のリングを彩るチャンピオン集結! 堀田春樹

今回のメインイベンター(大トリ)は重森陽太。蹴り技で優ってREITOの技を封じ、判定勝利で大役を果たす。

勝次は頑丈なNOBUに圧される展開に苦戦の引分け。次なるステージへのアピールは出来ず。

リカルド・ブラボは鮮やかに大技からヒザ蹴りを見せてTKO勝利。

泰史はWKBA JAPANの2度目の挑戦も倒しに掛かるパワー不足でタイトルを逃がす。

終了間際の数秒で圧力掛けた重森陽太のフルスイングのヒジ打ち

伊原信一代表は一箇月程前から体調不良の為入院。御自身で病院に向かった模様で、「重篤な状態ではありませんので、御心配には及びません。」という栗芝貴協会代表代行のリング上での発表。

◎TITANS NEOS.29 / 10月17日(日)後楽園ホール17:30~20:40
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆11 メインイベント 62.0kg契約3回戦

WKBA世界ライト級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/1995.6.11東京都出身/61.75kg)
      VS
KOSスーパーフェザー級チャンピオン.REITO BRAVELY(BRAVELY/2000.6.29大分県出身/61.75kg)

勝者:重森陽太 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:仲30-29. 宮沢30-27. 桜井30-28

序盤は距離を測るような蹴りの軽い応酬。REITOの右脚を何度かストッピングする重森陽太。ローキックでREITOの動きを鈍らせ、ミドルキックも蹴りの強さは重森が上回り、

盛り上がりには欠けるが、テクニックで優って危なげなく判定勝利を掴んだ重森陽太。倒す見せ場を作るには時間が足りなかった。

(KOS=KING OF STRIKERSは福岡発祥の格闘技イベントです。)

REITOの右脚をストッピングする重森陽太。細かい技も効果的に使う
互いに笑顔で健闘称え合う清々しい両者
今回も軽くだが、飛びヒザ蹴りを見せた勝次。倒したかった技だろう

◆10 64.0kg契約3回戦

WKBA世界スーパーライト級チャンピオン.勝次(藤本/1987.3.1兵庫県出身/63.95kg)
      VS
KOSスーパーライト級チャンピオン.NOBU BRAVELY
(BRAVELY/1982.10.16大分県出身/63.75kg)

引分け 0-1
主審:少白竜
副審:椎名29-29. 仲29-30. 桜井29-29

開始早々は勢いよく飛び気味の左回し蹴りの勝次。

パンチもローキックも勝次の勢いがあるが、NOBUは圧されずに蹴り返し、

効いていないかのような前進を続ける。

無理に打ち合わない勝次は下がりっぱなしで印象は悪い展開でも、軽く飛びヒザ蹴りを見せるなど劣勢を許さず辛うじて引分けた。

打ち合うのは危険だが、テクニックで圧し切るのも難しいNOBUの頑丈さだった。

NOBUの前進に圧された勝次

◆9 74.0kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.75kg)
     VS
NJKFスーパーウェルター級2位.佐野克海(拳之会/73.5kg)
引分け 0-1
主審:宮沢誠
副審:椎名29-29. 仲29-29. 少白竜29-30

序盤は佐野克海にパンチで打たれて下がるシーンをみせてしまう斗吾。打ち返しは勢い有る斗吾で、佐野も貰うと勢い弱まる見映え。どちらに形勢が傾くかは互いの有効打次第も、ヒットは無く倒すに至らないもどかしさが残る引分け。

重量級の打ち合いでの攻防、佐野克海と斗吾
蹴りで主導権奪ってから大技繰り出すリカルド・ブラボ。バックヒジ打ちを見せる

◆8 70.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/アルゼンチン出身/69.85kg)
      VS
チャンスック・バーテックス(1997.10.5タイ出身/69.35kg)
勝者:リカルド・ブラボ / TKO 3R 2:11 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

チャンスックのヒジ打ちを警戒か、序盤は接近にはいかないリカルド・ブラボは蹴り中心の様子見。

徐々にハイキックを繰り出し、更にパンチの打ち合う距離へ縮まって次第にブラボが優位に立っていく。警戒したヒジ打ちも貰うことなく、ボディーブローからロープ際でヒザ蹴りでチャンスックを倒した。

◆7 63.5kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.高橋亨汰(伊原/63.4kg)
     VS
TENKAICHIスーパーライト級1位.剣夜(前・Champ/SHINE沖縄/63.0kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 2R 1:20 /
主審:仲俊光

連打で圧力かけてコーナーに追い詰め、蹴り、パンチ、ヒジで攻める高橋亨汰。しつこく接近して攻めていく中、ヒジで顔面カットし、流血がひどくなったところでドクターの勧告を受け、レフェリーストップとなった。

剣夜を翻弄していく高橋亨汰のハイキック

◆6 WKBA JAPAN(日本)バンタム級王座決定戦 5回戦

日本バンタム級1位.泰史(伊原/53.5kg)
     VS
WMC日本バンタム級6位.佐野佑馬(創心會/53.15kg)
勝者:佐野佑馬 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:宮沢48-49. 桜井48-49. 仲47-48

蹴りの様子見から勢い増してきた佐野佑馬。スロースターターの泰史は圧され気味。徐々に積極的に攻める泰史は佐野をコーナーに詰めてパンチでラッシュするが倒すに至らない。第3ラウンド中盤から佐野が盛り返し、泰史を追う流れに変わる。泰史も結構打たれ、頬が腫れだす。コーナーには詰める泰史も失速し圧し続けられない。互いの強い決定打が無いまま僅差で負けた泰史はスーパーフライ級に続く二度目のWKBA JAPANタイトルも逃す結果となった。

攻勢にも劣勢にも立ちながら顔を腫らせて戦う泰史の踏ん張り(右)
チャンピオンベルトを巻いてリングを下りる佐野佑馬。陣営の前では感情溢れる姿

◆5 56.0kg契約2回戦

中村哲生(伊原/56歳/55.85kg) vs ケント(ツルザップ/23歳/55.2kg)
勝者:ケント / TKO 1R 2:16 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

昨年55歳デビューした中村哲生は毎度連打で倒されるも、打たれてから強い蹴りを返す展開に会場の拍手が響いた。打ち抜かれての3戦3敗ながら、踏ん張る力が付いた中村哲生。毎度元気に会場入りする度胸と根性持ったビジネスマンである。

◆4 フェザー級3回戦

瀬川琉(伊原/57.05kg) vs NJKFフェザー級5位.松永尚恭(東京町田金子/56.6kg)
勝者:瀬川琉 / 反則 2R 0:38 / 主審:宮沢誠

クリンチでレフェリーによるブレイク後に松永のヒジ打ちが瀬川のアゴにヒット。すでにヒジ打ちで目尻付近を斬っていた負傷と共にドクターがダメージを診ようとしたところで、足元おぼつかず崩れ落ちた瀬川琉は試合続行不可能。松永尚恭の失格負け。

◆3 59.0kg契約3回戦

ジョニー・オリベイラ(トーエル/58.9kg) vs 祐輝(OU-BU/58.7kg)
引分け 1-0
主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 少白竜29-29. 宮沢30-29

◆2 女子49.5kg契約3回戦(2分制)

オン・ドラム(伊原/49.4kg) vs YUKA(SHINE沖縄/49.1kg)
勝者:YUKA / 判定0-2
主審:椎名利一
副審:宮沢29-29. 仲29-30. 桜井29-30

◆1 ウェルター級2回戦

大場一翔(伊原/66.5kg) vs 悠YAMATO(大和/66.6kg)
勝者:悠YAMATO / TKO 2R 0:37 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

第1ラウンド、大場による股間ローブローにより、悠YAMATOが数分立ち上がれないダメージを負い、負傷裁定に移るかと思われたところがギリギリ続行可能へ移った。ダメージで劣勢に移るも第2ラウンドには一瞬の隙を突いたパンチ連打で逆転ノックアウトに成功した悠YAMATO。

《取材戦記》

前日計量では入院中の伊原信一代表から選手やジムスタッフに何度も電話が掛かって来て、計量を終えた選手全員にもスマホスピーカーから激励を送っていた。医師が許せば今回の興行にも現れるのではとさえ思えたほどだが来場までは許されなかった。来年3月に予定される興行まで時間は充分あるので静養されて元気に戻って来られるでしょう。

もっと蹴っていれば勝利も導いていたかもしれない勝次は、快勝していたらいつものマイクアピールで言いたいことはあったようだが、引分けではその立場を無くしてしまった。毎度のことながら、存在感を示すには今後も日本人相手に引分けを含め、取りこぼしは許されない。

2022年の新日本キックボクシング協会興行は、今年より1回増えて、3月13日(日)、5月15日(日)、7月24日(日)、10月23日(日)の4回が後楽園ホールに於いて開催が予定されています。

昨年は政府による新型コロナウィルス蔓延の防止策で、春から夏にかけて4度の興行中止に陥り、開催は3度のみ。今年はコロナの影響や、一昨年から続く脱退ジムによる影響もあって4月、6月、10月の3度のみ。

来年は新日本キックボクシング協会が、どういう存在感を示すか。他のビッグイベント出場を目指すのではなく、他団体やフリー関係が新日本キックボクシング協会出場を目指してくるよう威信を取り戻さねばならないだろう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』11月号!

代打カードで他団体から出場、存在感示した内田雅之! 堀田春樹

NKBライト級タイトルマッチはチャンピオン、高橋一眞が新型コロナウィルスの影響で延期となり、代打カードとなったメインイベントの交流戦62.0kg契約5回戦はジャパンキックボクシング協会(JKA)から出場の内田雅之が、ベテランのテクニックで野村怜央を上回り判定勝利を飾った。

長らく空位だったNKBバンタム級王座は、2015年12月12日に高橋亮(真門)が王座決定戦で松永亮(拳心館)を下して以来の争奪戦となり、この日、準決勝を勝ち上がった海老原竜二(神武館)vs 龍太郎(真門)戦で12月11日興行にて行われます。

NKBバンタム級チャンピオンベルトを掲げる渡邉信久代表と王座争う4名の選手

◎NKB 2021 必勝シリーズ vol.6th / 10月16日(土)後楽園ホール 17:30~20:00
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第10試合 62.0kg契約 5回戦

JKAライト級2位.内田雅之(KickBox/1977.12.26神奈川県出身/61.85kg)
     vs
NKBライト級3位.野村怜央(TEAM KOK/1990.3.27東京都出身/62.0kg)
勝者:内田雅之 / 判定3-0
主審:前田仁
副審:川上50-47. 仲50-45. 加賀美50-46

不意を突く内田雅之の前蹴りが野村怜央の顎にヒット

序盤の野村怜央の蹴りとパンチの前進に、内田雅之はやや下がり気味でも野村の出方を読んで慌てる様子は無い。様子見の後は、内田のローキック、右ロングフック、右バックヒジ打ち、顔面前蹴りなどインパクトあるヒットを繰り出し、主導権を奪った展開が続いていく。

内田が奥脚狙ったローキックで倒しに掛かれそうだが、野村はダメージを感じさせない蹴り返しを見せる。内田にややスタミナ切れも野村の巻き返しを許さず、第5ラウンドには

内田がヒザ蹴り連打で野村をロープ際に圧したところでレフェリーがスタンディングダウンを宣した。内田の余裕の展開ながら倒し切れないもどかしさが残る。

上下蹴り分けるフェイントから内田雅之のハイキックがヒット
二人のお子さんも大きくなった、勝利のスリーショットの内田雅之

◆第9試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級3位.笹谷淳(team COMRADE/1975.3.17東京都出身/66.68kg)
     vs
ACCELライト級チャンピオン.どん冷え貴哉(Maynish/1988.10.15滋賀県出身/66.4kg)
勝者:どん冷え貴哉 / 判定0-3
主審:仲俊光
副審:川上29-30. 鈴木29-30. 前田29-30

序盤から笹谷が積極的に先手を打って出るが、どん冷え貴哉の柔軟なパンチから蹴り返しで互角の展開。第2ラウンド後半には、どん冷えがややラッシュ気味にパンチ連打して、笹谷はロープ際からコーナーに詰められ、打たれるもサッと抜け出しピンチを切り抜けダメージは無さそうだが連打を受けた印象は悪い。

第3ラウンドも貴哉のペースは変わらずも笹谷も打って出る。ジャッジ三者の採点は第2ラウンドだけ、どん冷え貴哉に流れる僅差だが、内容的にはどん冷え貴哉が主導権奪った流れを印象付けて終了。笹谷淳はJ-NETWORKで二階級制覇した実績有り。

どん冷え貴哉が保持するACCELタイトルは、2004年に神戸で発祥の打撃系中心の格闘技イベントより制定された王座の様子。

笹谷淳にどん冷え貴哉のミドルキックがヒット、両者アグレッシブな攻防
柔軟さが優ったどん冷え貴哉のミドルキック炸裂

◆第8試合 NKBバンタム級王座決定4人トーナメント(準決勝)3回戦

1位.高嶺幸良(真門1973.12.4兵庫県出身/53.2kg)
     vs
2位.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/53.2kg)
勝者:海老原竜二 / 判定0-3
主審:加賀美淳
副審:川上29-30. 前田28-30. 仲29-30

蹴りの攻防は海老原がやや上回り、リズム掴んだ海老原。高嶺は次第に手数が減る流れ。

海老原はパンチ、ローキックで連打を強め、高嶺はパンチしか逆転のチャンスが無い流れも逆転に導けず、海老原が僅差ながら順当な判定勝利。

海老原竜二のローキックが高嶺幸良にヒット
互いに「チャンピオンベルトを巻く!」と宣言した海老原竜二と龍太郎

◆第7試合 NKBバンタム級王座決定4人トーナメント(準決勝)3回戦

3位.則武知宏(テツ/1995.12.5岡山県出身/53.52kg)
     vs
5位.龍太郎(真門/2000.12.25大阪府出身/53.3kg)
勝者:龍太郎 / 判定0-3
主審:鈴木義和
副審:前田28-30. 加賀美28-30. 仲28-30

様子見の攻防から主導権争いへ強いパンチで打って出て、倒せなくてもノックダウンを奪って決定的な差を付けたい両者。龍太郎の前進増し、則武知宏は打ち遅れてリズムが狂っていく。龍太郎がボディーブローで好印象を残し、則武の疲れた様子も見受けられる中、龍太郎が大差を付けた流れで終わる。

龍太郎の右ボディーブローが則武知宏にヒット

◆第6試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級3位.谷津晴之(新興ムエタイ/50.5kg)vs 杉山空(HEAT/50.5kg)
引分け 0-1
主審:川上伸
副審:前田29-29. 加賀美29-30. 鈴木30-30

◆第5試合  63.0kg契約3回戦

NJKFライト級6位.梅津直輝(エス/62.8kg)vs YASU(NK/62.7kg)
勝者:梅津直輝 / TKO 1R 1:16 /
主審:仲俊光

梅津直輝のヒジ゙打ちによるYASUの額の裂傷、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ

◆第4試合  フェザー級3回戦

半澤信也(トイカツ/57.15kg)vs 山本太一(ケーアクティブ/57.1kg)
勝者:半澤信也 / 判定3-0
主審:鈴木義和
副審:加賀美30-29. 前田30-29. 仲30-28

採点は僅差だが、第1ラウンドは両者とも一度ずつのノックダウン有り。パンチを受けてバランスを崩したようなダメージは少なそうなその後の攻防は決め手無い展開が続く。

◆第3試合  フェザー級3回戦

矢吹翔太(team BRAVE FIST/57.0kg)vs 杉山茅尋(HEAT/57.0kg)
勝者:矢吹翔太 / 判定2-0
主審:川上伸
副審:仲30-28. 前田30-28. 鈴木29-29

◆第2試合 58.0kg契約3回戦 デビュー戦

田中佑樹(TEAM TMT/57.5kg)vs 合田努(TOKYO KICK WORKS/57.8kg)
勝者:田中佑樹 / 判定2-1 (30-29. 29-30. 30-29)

◆第1試合  バンタム級3回戦 デビュー戦

明夢(新興ムエタイ/52.7kg)vs 蒔田亮(TOKYO KICK WORKS/53.2kg)
勝者:蒔田亮 / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

《取材戦記》

内田雅之が日本キックボクシング連盟興行に出場とは、本来予定されたメインカードに劣らぬ存在感を示した。そのネームバリューは元・日本フェザー級チャンピオンという肩書だけではない多くの名のある対戦者との戦歴が物語っていた。

交流戦は珍しくはなくなった時代だが、今後の時代に於いては、徐々に各団体の垣根も無くなっていくのかもしれない。そんな分裂などの昭和から引きずった柵(しがらみ)など知らない世代に移りつつある現在である。

内田雅之は野村怜央のカーフキックを受け、効くほどではないが「ちょっと貰うのイヤだなあ」といった心理的にイヤな感じだったと言う。内田のローキックで野村の左太腿も腫れていたが、強い蹴りに耐えた両者である。

本来のメインイベンターだった高橋一眞とのツーショットには対戦の期待高まる両雄となった(たまたま控室での対面。今のところ対戦予定はありません!)。

緊急事態宣言は解除されたものの、全てが元に戻ったと勘違いする人も居て、酒類持ち込み客が注意を受け、ビールの空き缶が幾つか集められていました。イベントの規制はまだ完全には緩まず、酒類の販売は無く酒類持ち込みも禁止。客席使用は50パーセントのままでした。

キックボクシング関係者の過去の新型コロナ感染者も、ある程度は名の知れた人らがそこそこ居て、軽症でも罹ってみて初めて解る苦しさを味わった人も居たようです。また無症状の人でも自宅待機の必要が生じて不便な思いもあったようで、予防接種は受けておいた方が良いという意見は多いのは当然でしょう。「俺は接種しない」と拒否派も存在しますが、格闘家でも一般人でも罹る時は罹るので予防接種は受けた方がいいでしょう。

日本キックボクシング連盟興行「必勝シリーズvol.7」は12月11日(土)に後楽園ホールに於いて17:30より開催予定です。

本来のメインイベンター高橋一眞と内田雅之のツーショット、二人が戦う日は来るか!?

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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格闘群雄伝〈24〉小林利典 ── 特攻精神持った癒し系キックボクサー 堀田春樹

◆立嶋篤史の側近

小林利典(1967年3月、千葉県船橋市出身)は、目立った戦歴は無いが、スロースターターで、圧倒的に押されながら巻き返し、粘り強さで逆転KOに導いた試合もある、長丁場で実力を発揮するタイプのフライ級からバンタム級で戦ったキックボクサーだった。

立嶋篤史のセコンドに着く小林利典(右)(1991年10月26日)

また立嶋篤史のセコンドとして静かな注目を浴び、引退後はレフェリーを長く務めている。

習志野ジムで小林利典の後輩だった立嶋篤史は1990年代のカリスマで、余暇と試合に向けたトレーニングに入った時のメリハリが強く、部外者が接することはなかなか難しい空気が漂った。控室などは特にそんな空気が凍り付く場である。そこに常に居たのが小林利典やタイから来たトレーナーのアルンサック達だった。

ビザ期限が迫った際のアルンサックからは「俺が居ないときはお前がアツシを支えろよ!」と言われていたという小林利典はプレッシャーもあっただろう。

しかしその反面、立嶋篤史が、「セコンドの小林さんの方がモテて、ファンレターとか来るんですよ!」と言うようなホッコリする話題も多い。

◆目立たぬ新人時代

小林利典は1983年(昭和58年)秋、習志野ジム入門。閑散とした選手層の薄い時代に、このジムに居たのはベテランの弾正勝、葛城昇。他、記憶に残るほどの練習生は居なかったという。

デビュー戦は早く1984年3月31日、千葉公園体育館で村田史郎(千葉)に判定負け。

同年8月19日には、全日本マーシャルアーツ連盟興行でのプロ空手ルールで佐伯一馬(AKI)に判定負け。現在の活気ある時代とは事情が違うが、ややルールの違う競技に赴いてでも試合の機会を増やしたい時代であった。

閑散とした時代のデビュー戦同士は判定負け(1984年3月31日)

やがてキックボクシング界は最低迷期を脱し、定期興行が安定する時代に移ったが、それでも試合出場チャンスは少なく、先輩のチャンピオン、葛城昇氏から「タイは若いうちに行け!」と言われたことは、多くの選手が言われた“本場修行の勧め”であった。

1989年(平成元年)4月、初のタイ修行に向かった先は、日本と馴染み深いチャイバダンジム。日本人にとって比較的過ごし易いジムだが、日本では味わえない雑魚寝の宿舎では度々争いごとにも遭遇。でも競技人口多いタイでは試合はすぐに組まれ、日々の練習と共に不便な環境でも充実した経験に繋がっていた。

タイで最初の試合はランシットスタジアムで判定負け(1989年4月 提供:小林利典)

◆大抜擢は貴重な経験

周囲から見て小林利典の戦歴で印象的なのは1994年10月18日、東北部のメコン河に近いノンカイで行われた国際的ビッグマッチ。日本からは伊達秀騎(格闘群雄伝No.11)と、小林利典が出場。前夜にバンコクからバスでノンカイに向かい、朝9時に到着したホテルのレストランでは隣のテーブルに対戦相手のソムデート・M16が居た。小林は小声で「殺さないでね!」とは冗談で笑わせていたが、内心は本音でもあっただろう。

この経緯は、我々と馴染み深いゲオサムリットジムのアナン会長が試合10日程前に、当時はジッティージムで練習していた小林利典を訪ね、ビッグマッチ出場を依頼。日本vsタイ戦として予定していた日本選手が出られなくなり、どうしても日本人が必要で、断り切れずに受けて立った小林利典。後々アナン氏のジムに居たソムチャーイ高津(格闘群雄伝No.7)から、相手がソムデートだと知ることになる。

当時、ルンピニースタジアム・フライ級2位で、倒しに掛かる強さだけでなく、派手なパフォーマンスで賑わせていた人気者だった。実質、日本の3回戦vsムエタイランカーの試合。

小林利典が対戦相手を知ったことを察したアナン氏は「逃げないでね!」と念を押すが、小林は“やってやろう”という特攻精神が強く働き、置かれた日本代表の立場から逃げる気など全く無かった。

ソムデートに終始攻められたが、貴重な経験となった(1994年10月18日)
国歌斉唱は選手二人で歌った異例の事態(1994年10月18日)

しかし、戦ってみれば全く格の違いを見せつけられた展開。ソムデートはアグレッシブな態勢で蹴り合えばスピードも違った。脇を広げ、ワザと蹴らせる余裕も見せたソムデート。インターバルでは「オーレー・オレオレオレ~♪」と観客に向かって歌い出す余裕のパフォーマンス。

完全に翻弄され続けるも、アナン氏は心折れない小林を、第3ラウンドも「よし行け!」と尻を叩いて行かせた。結果はパンチで防戦一方となったところでレフェリーストップ。惨敗ではあったが持つ技全て出し切り勇敢に戦い、多くの観衆が小林を拍手で称えていた。

「ソムデートはローキックが重く、絶対的な差を感じました。試合で怖いと思ったことはなかったですが、ソムデート戦は初めて怖いと思いました!」という感想。
この試合はタイ全土に生中継された一つで、IMF世界タイトルマッチだったが、それを知らされないままノンカイに向かう途中のバスの中で、日本国歌独唱を命ぜられてしまい、伊達秀騎と二人で斉唱となった。「小林さんの歌の上手さに驚きました!」という伊達秀騎。

小林は「高校の頃、校訓に“国を愛し、郷土を愛し、親を敬う”とあった為、国歌と校歌はしっかり歌わされてたので緊張はなかったです!」と、ソムデート戦を前に群衆の前で歌うことなど全く苦ではなかっただろう。

翌日のビエンチャン観光、ソムデートとツーショット(1994年10月19日)
タイでの試合も風格が増してきた小林利典(1995年3月24日)

◆キックからは離れられない人生

小林利典はタイでは10戦程経験し、1995年5月18日、タイ・ローイエット県での試合をしぶとさ発揮で判定勝利し現役引退したが、その後トレーナーとなることはなかった。

性格的に優しく、強い言葉で檄を飛ばすタイプではないが、選手に掛けるアドバイスは情熱が厚い。そこに信頼関係が生まれることは他のジムの選手に対しても多かっただろう。

日本では他所のジム同士であっても、タイではチームとなって行動することが多かった国際戦シリーズ。

「一緒に出場した戦友のような感じ、小林さんは漢気ある人です!」と言う伊達秀騎。

同時期にタイでも活躍した、ソムチャーイ高津にとっては小林さんによって選手生命を延ばしてくれた恩人だという。

自身がヒジ打ちを貰い大流血した試合で、同じ箇所に肘打ちを貰ったら命が危ないと直感し棄権TKO負け。セコンドに着いて貰った小林さんに、引退することを話したところが、

「俺はまだまだ、高津くんの試合を観たいと思ってるよ。まだまだこれからの選手だから高津くんは成長すると思うよ!」と励まされ、「この言葉を掛けられなければ、タイで勝つことも、この先の充実した現役生活も無かったと思う!」と語る。

バイヨークタワー脇の路地での興行だが、プロモーターは金持ちです(1995年3月24日)
ローキックで仕留めた、タイでの鮮やかKO勝利(1995年3月24日)

引退した翌年、MA日本キックボクシング連盟で審判員が人手不足となり、小林は先輩方に依頼されて、ジャッジ担当で一度だけの協力をしたつもりが、毎度声を掛けられてしまう。そして断り切れずに続けるうち経験値が増してベテラン域に達した。レフェリーとして25年経過。これまでの多くの経験値から、消え去るのは勿体無いと、キックボクシング界に携わるよう導びかれたような因果応報である。

プロボクシングではレフェリーは立場上、ジム関係者と親密になれない厳しさが常識的だが、コミッションの無いキックボクシング界は、昔から緩やかな傾向がある。それでも試合裁定に影響がないようにジム側と接触を避ける必要も生じ、自然と疎遠となる関係者も居たという。ソムチャーイ高津もその一人で、引退後OGUNIジムのトレーナーとなったが、現在はトレーナー業を離れて長い年月を経た高津氏。現在は小林氏とは度々親しく飲み会に誘うとか。

私(堀田)もタイで高熱を出して入院した時もたまたま小林氏が近くに居て、大阪から来た選手がタイの田舎でデビュー戦を行なう時もセコンドを買って出て、小林氏の声が耳に残るほど何かと手助けを受けたり、他の選手へのその姿を見る縁は深い。良い腐れ縁が続くのもこの業界の傾向。多くの古き関係者も、小林利典氏とは現役時代を語ること多き晩年となるだろう。

ベテランレフェリーとなって試合を裁く小林利典(2016年7月23日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』11月号!

キックボクシングの国内タイトルは、なぜ複雑な名称なのか? 堀田春樹

◆頭字語タイトル

最近のキックボクサーの肩書きに付くタイトル(王座)やランキングには、リリースされる対戦カードを見る度、長い名称や頭字語が付くタイトルが多くなったと感じます。

プロボクシングでは存在しない、キックボクシングでの聞き慣れないタイトル全てを、一般の方々から見た場合、どう捉えるでしょうか。そんな選手の経歴はどんな位置付けにあるものか、今後も出て来る選手の所属する団体やタイトルを少々解説しておきたいところです。

キックボクシング雑論を書き始めの最初が2015年10月31日掲載の「群雄割拠? 大同小異? 日本のキックボクシング系競技に『王座』が乱立した理由」でしたが、早いものでやがて満6年となります。団体やタイトルに関わる似た文言は何度も出てきた部分もあるかと思いますが、再度振り返りと今回はタイトル名称の在り方で進めたいと思います。

ISKAに日本タイトルは無いが、存在感は大きい

◆古くからの団体制

プロボクサーなら日本○○級チャンピオン、東洋太平洋〇〇級チャンピオン、WBA世界○○級チャンピオンと形式上は段階的に上がり、世界は主要4団体となってアジアエリアも変化がありましたが、昔からの存在に於いてはその地位や価値が分かり易い。

キックボクサーの場合、国内に於いては、日本○○級チャンピオン、全日本○○級チャンピオン。そして10位までのランキング。2団体制の時代までは分かり易かったところ、新団体設立毎に“日本”に複合的な名称が付いたり、“日本”は出尽くして、“ジャパン”と名の付く団体や、フリーのプロモーターが主催する興行コンセプトといった名称のタイトルが増え、一つ一つの王座の価値が曖昧な存在となってしまった現在です。

新日本キックボクシング協会での選手の肩書きには“新日本”ではなく、日本○○級チャンピオンや、日本○○級1位といった“日本”を名乗る、その老舗からの由来がありました。

ジャパンキックボクシング協会は2019年3月に設立。ジャパンキック○○級チャンピオンという表記が多いが、もうひとつジャパンキックボクシングイノベーションという団体が存在するので、頭字語は“JKA”とも表記されています。

[写真左]UMAは2019年12月にルンピニージャパン・ウェルター級王座獲得(2019年12月1日)、[写真右]馬渡亮太は2019年8月、JKAバンタム級王座獲得。後に上位目指し返上(2019年8月4日)

ニュージャパンキックボクシング連盟は1996年8月の設立当初は“新日本”を名乗っていましたが、先に新日本キックボクシング協会(当時は休会)が存在していた経緯があり、“ニュージャパン”に変更も、文字数が長くなるので頭字語を中心にNJKFに落ち着いた流れで、“NJKF○○級チャンピオン” のような表記になります。

J-NETWORKは1997年の設立団体で、そのまんまJ-NETWORKと表記。

その1年後にキックボクシングユニオンが設立しましたが、習志野ジムの樫村謙次会長がK-1に倣って名付けたと言われ、当初からK-Uと簡略化されています。

古き時代のアジアモエジップン連盟は1983年設立。日本とタイの懸け橋と謡った設立も、1年後にはアジア太平洋キックボクシング連盟に改名。頭字語はAMFからAPF、時代を経てAPKFに移っています。

10月16日に3度目の防衛戦を行なうNKBライト級チャンピオン高橋一眞(2017年12月16日)

毎度登場の日本キックボクシング連盟は1984年(昭和59年)11月に統合団体として設立。後の2000年頃、NJKF、K-U、APKFと共に団体統合はせず、4団体でNKBを発足して統一王座トーナメントを経て2002年に各階級で王座決定戦開催。現在は日本キックボクシング連盟とK-Uだけで継続されています。NKBは“日本キックボクシング”から来る頭字語です。NKBライト級チャンピオン.髙橋一眞といった表記になっています。

マーシャルアーツ(MA)日本キックボクシング連盟は当初の日本キックボクシング連盟と枝分かれした団体で、呼び名を “マーシャルアーツ”と単独で呼んで、競技名のややこしさを残しましたが、肩書きはMA日本○○級チャンピオンという有るがままの呼び方になっていきました。

ジャパンキックボクシング・イノベーションは2013年に設立。通常はイノベーションと呼ばれること多く、INNOVATION○○級といった表記。団体名頭字語はJKI。ここまではジムが加盟して出来た協会や連盟といった団体図式です。

◆フリーの存在

昔は既存の団体の縛りが厳しく、どこにも所属しないで興行開催など考えられなかったところ、1992年にK-1の出現以降、団体の縛りの無いフリーのジムやプロモーターが徐々に増え出し、単独興行が成り立つ時代となりました。そしてそのイベント単位でタイトル(王座認定)化したものが多くなりました。

その中ではテレビを通じて世間一般に浸透したK-1や、PRIDEが原点のRIZIN は現在も存在感は大きい。2016年発祥のKNOCK OUTは代表者が代わり、方針も変わりながらビッグマッチを行なうイベントとしては有名です。10年続いたREBELSは今年3月より、KNOCKOUTに吸収される形で統合されました。

NJKFで興行を開催されてきたムエタイオープン興行は2014年に独立後、独自の興行名をタイトル化し、ブランド効果高いルンピニー・ボクシング・スタジアム・ジャパンタイトルも立ち上げました。頭字語はLBSJとなるところが、一般的にはルンピニージャパンと簡略して呼ばれ、LPNJと表記されています。

本場タイにある世界プロムエタイ連盟(WPMF)の日本タイトルは主にM-One興行で開催されていましたが、日本支局消滅により現在は休眠状態。他にも1995年にタイ発祥のWMC(世界ムエタイ評議会)の日本タイトルがあり、主にBOM(=Battle of MuayThai)興行で開催。WBCムエタイはプロボクシングのWBC(世界ボクシング評議会)が活動を広めた世界機構で、下部にインターナショナル、日本タイトルが存在し、主にNJKFとJKイノベーション興行で開催されています。

[写真左]2016年6月にWBCムエタイ日本王座制し、NJKFと二つの獲得となった白神武央(2016年6月)、[写真右]翔センチャイは2017年8月にWMC日本ライト級王座獲得(2017年8月11日)
小野瀬邦英の引退式で贈られたチャンピオンベルトは古き時代のもの(2002年12月14日)

◆ローカルタイトルの役割

国内で発祥のRISE、蹴拳、Krush、DEEP☆KICK、ビッグバン、聖域、KOS(=King of Strikers)、沖縄発祥のTENKAICHI、神戸発祥のACCEL等(他、地方発祥在り)もタイトル制定があり、これらの団体や興行のタイトルはプロボクシングの一国一コミッションが基の唯一の日本タイトルではなく、いつまでも続く保証は無い私的団体だが、乱立細分化はマイナス要因ばかりではなく、選手にとっては最初の目標となるステータスとなって競技人口が増えている現象もあります。

キックボクシングの真の日本統一タイトルは存在しないものの、パンフレット、対戦カード等に聞き慣れない選手の肩書きがあったら、その地位は低くとも、チャンピオンロードの始まりの世界最高峰への第一歩として、何となくでも理解して頂ければと思う次第です。

以下は従来どおりタイトル名や出場選手の肩書きが付いている、10月16日(土)後楽園ホールにて開催予定の「NKB 2021 必勝シリーズ 6th」の主要6試合の対戦カードです。(主催:日本キックボクシング連盟 / 認定;NKB実行委員会)

NKBライト級タイトルマッチ 5回戦
NKBライト級チャンピオン.髙橋一眞(真門)vs 挑戦者同級1位.棚橋賢二郎(拳心館)

ウェルター級ノンタイトル3回戦
NKBウェルター級3位.笹谷淳(team COMRADE)
     vs
ACCELライト級チャンピオン.どん冷え貴哉(Maynish)

第9代NKBバンタム級王座決定4人トーナメント(準決勝)3回戦2試合
出場4名によるトーナメントは抽選による対戦カード決定。決勝戦は12月11日。
1位.高嶺幸良(真門)
2位.海老原竜二(神武館)
3位.則武知宏(テツ)
5位.龍太郎(真門)

フライ級3回戦
NJKFフライ級3位.谷津晴之(新興ムエタイ)vs 杉山空(HEAT)

63.0kg契約3回戦
NJKFライト級6位.梅津直輝(エス)vs YASU(NK)

他の他団体興行スケジュールも発表されていますが、ここでは一例を掲載致しました。

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※高橋一眞(真門)vs棚橋賢二郎(拳心館)のNKBライト級タイトルマッチは高橋一眞の欠場により、メインイベントは以下に変更になりました。

ジャパンキックボクシング協会ライト級2位.内田雅之(KickBox)
     VS
NKBライト級3位.野村怜央(TEAM KOK)
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▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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