勝次は老舗WKBA世界獲得成らず!

ノラシンの前蹴りは初回から厄介な存在だった
ダウンに結びついた勝次の連打

リング周りの本部席の顔触れがやや寂しくなった興行。今回のメインイベントは勝次がWKBA世界挑戦。他、原点が名門目黒ジムだった伊原ジム、藤本ジムを中心に、フリーのジムからの選手とタイ国からの選手を迎え撃った。

◎MAGNUM.49 / 2019年3月3日(日)後楽園ホール 17:00~20:10
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

◆WKBA世界ライト級王座決定戦 5回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/61.0kg)
   vs
ノラシン・シットムアンシー(元・パタヤ地区テーププラシットスタジアム60kg級C/タイ/60.75kg)
5R判定引分け / 副審:桜井48-48. 仲48-48. 少白竜49-48

第6ラウンド(延長戦)三者共9-10で公式記録上、ノラシンが勝者となり王座獲得。
主審:椎名利一

パンチを打ってもヒットを許さないノラシン

初回でのけん制し合った蹴り合いで、勝次の出方を見極めたノラシンは笑みを浮かべ、強いミドルキックと、前蹴りはジャブのように突き刺して来る。ノラシンの前蹴りは鬱陶しく、次第に勝次の出鼻を挫く勢いを増していく。

第3ラウンドには勝次は接近したパンチ連打がタイミングよく当たりノックダウンを奪うが、ノラシンのダメージは浅く、笑みを浮かべてすぐ立ち上がり、続くパンチの応酬ではKO必至かと盛り上がるが、ノラシンは同じ轍を踏まず、第4ラウンド以降もしつこい前蹴りと強いミドルキックで巻き返し、引分けに持ち込んだ。

延長戦も蹴りを当てつつノラリクラリと勝次のパンチをかわし空回りさせ、優勢を保ったノラシンがキック老舗の世界王座を捥ぎ取った。

「相手の技で効いたものは無かったが、前蹴りが厄介でなかなか入って行けなかった。」と語る勝次。相手が出て来るタイプで噛み合う展開だったが、倒すチャンスを手繰り寄せることは出来なかった。

ノラシンの右ハイキックを浅かったが貰ってしまった勝次
江幡塁が勢いあまってロープを飛び越えてしまう

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.85kg)
vs
アナージャック・シットゲーオプラユーン(元・タイ南部2階級制覇C/タイ/55.4kg)
勝者:江幡塁 / 判定3-0 / 主審:秋谷益朗
副審:椎名49-47. 仲50-46. 少白竜49-47

江幡塁はパンチとローキックを基本にスピードある様子見。いつもながらの技を試しながらKOパターンを練っていく。アナージャックは打撃をモロに受けず、芯をずらす柔軟さがあるのか、江幡のパンチを貰ってもダメージを負った表情にはならない。江幡塁は蹴りからパンチへ繋いだり、アナージャックの蹴りに合わせたパンチを狙うが、倒すに至らぬ展開が続くも大差となる判定勝利を掴む。

アナージャックのハイキックを間一髪かわす江幡塁
KO狙ってヒジ打ち繰り出す江幡塁
パワーとスピードで圧倒した江幡塁だったが、KOに至らなかった
蹴りに合わせた江幡塁の左ストレート

◆73.0kg契約 5回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.0kg)
   vs
プーパンレック・クラミツムエタイジム(タイ/72.15kg)
引分け0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲29-29. 秋谷29-30

ロープ際まで下がって距離を保ち、追い詰めればクリンチして動きを止め、時間稼ぎするタイ選手は、やり難く決め手を欠く引分け。

下がるプーパンレックに斗吾が追って攻める
一段と逞しくなったリカルド・ブラボが圧倒する

◆67.5kg契約 5回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/67.2kg)
   vs
デンノンセン・エイワスポーツ(タイ/66.6kg)
勝者:リカルド・ブラボ / KO 2R 1:47 / テンカウント / 主審:少白竜

昨年10月、初黒星が付いてからタイ遠征を経て、より成長したリカルド・ブラボ、デンノンセンを圧倒。

◆女子51.0kg契約3回戦(2分制)

栞夏(トーエル/50.4kg)vs 高橋アリス(伊原/50.65kg)
勝者:高橋アリス / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:秋谷29-30. 桜井28-30. 少白竜29-30

Seventeenの専属モデルである高橋アリス選手がデビュー戦を判定勝利。

アリスの右ハイキックが栞夏にヒット
モデルのアリスさん、デビュー戦を飾る

◆71.0kg契約 5回戦

喜多村誠(元・日本ミドル級C/伊原新潟/70.6kg)vs 中川達彦(花鳥風月/70.1kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 1R 2:53 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級1位.内田雅之(藤本/61.45kg)vs 拓也(チャクリキ武湧会/61.6kg)
勝者:内田雅之 / KO 2R 1:54 / 3ノックダウン / 主審:秋谷益朗

◆61.5kg契約3回戦

WPMF日本ライト級チャンピオン.長谷川健(RIKIX/61.25kg)
   vs
高橋亨汰(伊原/61.35kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 2R 2:10 / ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:桜井一秀

◆ライト級3回戦

渡邉涼介(伊原新潟/61.0kg)vs 北川哲也(スタージス新宿/60.55kg)
勝者:渡邉涼介 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆フライ級2回戦

小野拳太(藤本/50.6kg)vs 石渡悠真(P.K.センチャイ/50.5kg)
勝者:石渡悠真 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

ノラシンがWKBAのベルトを巻かれてしまった

《取材戦記》

勝次は乗り越えなければならなかったWKBA世界戦の壁。1981年1月7日の老舗世界王座誕生の当初から、王座挑戦のチャンスを与えられながら敗れ去った日本人選手は多い。1996年に新妻聡(目黒)がヘクター・ペーナ(米国)に敗れ、雪辱を果たしてWKBA世界スーパーライト級チャンピオンとなったように、ノラシンに雪辱を果たして欲しい勝次である。

この試合のように王座決定戦やトーナメント戦、かつての昭和の時代の公式ルールでは、延長戦は上位進出を決めるもので、公式記録は“引分け”でした。延長戦で優勢を取った者が“勝者扱い”となります。しかし時代の流れとともに、「規定のラウンドと延長戦を含む公式戦」という考え方が定着してきたようです。

“勝者扱い”の言葉もややこしいかと思いますが、現在のプロボクシングの新人王トーナメント(4回戦)でも長年使われている用語です。JBCルールでは、規定のラウンドを超える延長戦は認められていないので、引分け(0-0、1-0、三者三様)と裁定したジャッジは優勢と見た選手を支持し、上位進出者を決めます。これが“勝者扱い”であって、公式記録は引分けとなります。

キックボクシングではイベント優先で、競技システムが軽視され、昔からある規定を知らない運営関係者が増え、延長戦を含む勝敗結果が公式記録となる団体がほとんどとなった現在です。

M-ONEなどでのWPMF日本王座決定戦の場合は、規定の5回戦で引分けだった場合、延長戦は無く、王座は空位のまま。次期再戦か、改めて別カードで王座決定戦が行なわれることになります。これは母体となるWPMFの管轄下にある為、規定のルールに従っているということでしょう。とにかく老舗のWKBAは権威を保たねばならない。発足当初の世界戦は10回戦でした。タイトル戦を見て、実際これはかなり無理があると思いましたが、飛鳥信也氏、新妻聡氏が挑戦した1990年代は7回戦でした。こういうチャンピオンシップラウンドがあってもいい世界レベルと思います。

新日本キックボクシング協会、次回興行は4月19日(日)に後楽園ホールに於いてTITANS NEOS.25が開催されます。WKBA世界スーパーウェルター級王座決定戦(5回戦)に、緑川創(藤本)が出場します。斗吾、喜多村誠、リカルド・ブラボも目指すWKBA世界タイトル、それは老舗の意地で簡単には獲らせてくれない試練の場を与えられます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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新体制のNJKFで二つの王座交代劇!

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)は、本年より連盟役員が新体制となり、リング上で斉藤京二前理事長と坂上顕二新理事長の交代の御挨拶がありました。

1996年8月のNJKF設立時から10年務められた藤田真理事長の後を継ぎ、2007年から斉藤京二氏が12年間務められました。ここで斉藤氏は「若い力のある会長達に後を託し、更なるキック界の発展に力を注いで頂きたい」と、坂上顕二氏に第3代理事長として受け継がれています。

坂上顕二新理事長の御挨拶、左後方は斉藤京二前理事長

「NJKFの伝統を汚さぬ様、頑張って参ります」と応えられた坂上顕二理事長は、当初の就任発表でも「新しい時代の流れに取り残されないよう私を筆頭に、新執行部において頑張っていく所存です。新執行部においては、他団体のトーナメントをはじめ、タイトルマッチ等、連盟にプラスになる事はどんどん取り入れて、選手達の選択肢を連盟の規定に照らし合わせながら増やしていきたいと思っています。

また、藤田真理事長勇退以来実現していない連盟興行での賞金マッチなどの趣向を、新体制の執行部で考え、選手や連盟の試合を楽しみにして下さっているキックファンの皆様の為に実現していきたいと思っています。」と述べられています。

NJKFは他団体興行出場に寛大な団体で、選手にとって多様なイベント出場の機会が増えていました。今後も団体枠を越えた好カードが実現していくことでしょう。

プレゼンターとして葵拳士郎選手に勝利者トロフィーを授与したのはケニー・ベイレス(米国)さん。この日の立会人ではなく、26日に後楽園ホールで開催されるWBO世界ミニマム級タイトルマッチのレフェリーとして来日されていました。ラスベガスでのビッグマッチを裁く名レフェリーの一人です。

◎NJKF 2019. 1st / 2月24日(日)後楽園ホール 17:00~21:25
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆第12試合 WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

ローキックの後、右ストレートをヒットさせたT-98
前へ出る圧力が凄かったT-98のローキック

チャンピオン.YETI達朗(キング/69.7kg)
   VS
挑戦者.T-98(=今村卓也/元・ラジャダムナン系同級C/クロスポイント吉祥寺/69.75kg)
勝者:T-98が第5代チャンピオン / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷48-50. 中山47-50. 和田47-50

YETI達朗は2018年2月25日、白神武央から判定2-0で王座奪取、同年12月2日、匡志YAMATOを1ラウンドTKOで下し初防衛。

2度目の防衛は成らずも、3ヶ月足らずでのT-98との防衛戦を迎えたと今回は興味深い戦いとなりました。

T-98が攻勢を続けた中の右ハイキック
WBCムエタイ実行委員の山根千抄氏と斉藤京二氏から認定されたT-98

YETI達朗の右ストレートやT-98のローキックが勝負の決め手となりそうな主導権争いの打ち合いは見られるも、KOに結びつく強烈なヒットは無く試合が進む。T-98は相手の持ち味を殺してしまう距離を詰めて出る圧力があり、徐々に勢い付いたT-98が第4ラウンドにはローキックから右ストレートをヒット、連打続けて攻勢を維持する。

終盤に首相撲になるとより苦しい表情を見せるYETI達朗。時折の右ストレートやヒジ打ちのヒットを見せるが、T-98は怯まず、リズムを崩さない安定した展開を見せた。

日本のトップクラスとの戦いが多く、ラジャダムナン王座にも就いた経験を持つT-98との経験値の差を見せ付けられたYETI達朗は「完敗です」と漏らした。T-98はWBCムエタイ日本タイトルに於いて2階級制覇。更なる上位、世界王座と二大殿堂制覇へ、ルンピニースタジアム王座も目指す。

「下がれ」と言っても圧力あるT-98を押さえるのは大変だった多賀谷レフェリー

◆第11試合 WBCムエタイ日本スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

ケニー・ベイレス氏、と宮川拳吾会長に囲まれて

チャンピオン.琢磨(東京町田金子/58.65kg)
   VS
挑戦者JKI同級C.葵拳士郎(マイウェイ/58.55kg)
勝者:葵拳士郎が第7代チャンピオン / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:神谷47-49. 多賀谷48-50. 和田48-50

琢磨は2017年11月26日、王座決定戦で浅川大立(東京町田金子)と対戦し獲得。
パンチとローキック主体のテンポの速い攻防が続く。中盤からやや前進気味の葵がヒットを増やしていく印象。大技となったバックハンドブローや飛び後ろ蹴りはブロックされるも、勢いある葵が判定勝利。

昨年、膝の靭帯と半月板を負傷した琢磨はその影響があるのか、攻め続ける圧力が足りなかった。

後ろ蹴りを見せた葵拳士郎、ブロックする琢磨
最終ラウンド終了間際に見せた葵拳士郎の飛び技
高橋亮もローキックを強く返す

◆第10試合 57.0㎏契約3回戦

NKBバンタム級チャンピオン.高橋亮(真門/56.95kg)
   VS
NJKFバンタム1位.大田拓真(新興ムエタイ/56.8kg)
勝者:大田拓真 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:中山28-30. 多賀谷29-30. 和田29-30

パンチ主体に出て行く高橋亮。大田はミドルキックで返し、ハイキックでもブロックする亮の腕を殺していく。

高橋の蹴り返し、ボディーブローも効果的ながら、大田は首相撲からヒザ蹴りでも連打で調子を上げ、技の柔軟さで多彩に攻め主導権を握った大田が判定勝利。

速い展開の中、大田拓真のローキックがヒット
戦い終えた直後、勝った確信でホッとした表情を見せる大田拓真

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA/56.0kg)
     VS
ラット・ウォー・ウィッシェン(元・ラジャダムナン系バンタム級3位/タイ/57.4→57.2kg) 
勝者:波賀宙也 / KO 2R 1:06 / カウント中のタオル投入 / 主審:神谷友和
ラットが1.2kg超過により減点1

第1ラウンドの蹴り中心の攻防は互角ながら、落ち着いた表情で応戦した波賀宙也。第2ラウンドには早々に勝負に出てパンチで追い詰めラットからダウンを奪い、再開後もすぐ攻めに出て、ヒジ打ちをアゴにヒットさせて倒すと、ラットは足下をふらつかせながら立つも、カウント中にタオルが投げられセコンドが介入し、波賀のKO勝利となった。

◆第8試合 56.0kg契約3回戦

大田原友亮(B-FAMILY NEO/56.0kg)
   VS
ペットワット・ヤバチョウベース(タイ/55.95kg)
引分け1-0 / 主審:和田良覚 / 副審:中山30-29. 神谷29-29. 竹村29-29

◆第7試合 バンタム級3回戦

NJKFフライ級2位.一航(新興ムエタイ/53.1kg)VS 松岡宏宜(闘神塾/53.35kg)
勝者:一航 / 判定3-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:和田30-28. 神谷30-28. 竹村30-28

◆第6試合 63.5kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級2位.真吾YAMATO(大和/63.35kg)
   VS
NJKFライト級6位.野津良太(E.S.G/63.7→62.7kg)
勝者:真吾YAMATO / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:和田30-27. 神谷30-28. 多賀谷30-27

◆第5試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級3位.日下滉大(OGUNI/53.5kg)
   VS
同級4位.清志(新興ムエタイ/53.45kg)
勝者:日下滉大 / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:和田30-28. 中山30-29. 多賀谷30-29

◆第4試合 58.5kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級9位.吉田凛汰朗(VERTEX/58.33kg)VS 獠太朗(DTS/58.35kg) 
勝者:獠太朗 / 判定0-2 / 主審:神谷友和
副審:竹村29-29. 中山29-30. 多賀谷29-30

◆第3試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級10位.誓(ZERO/50.6kg)VS EIJI (E.S.G/50.5kg) 
勝者:誓 / KO 1R 2:56 / 3ノックダウン / 主審:和田良覚

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

優希YAMATO(大和/59.97kg)VS 羅向(ZERO)/59.85kg)
勝者:羅向 / 判定0-3 (28-29. 28-30. 28-30)

第1試合 女子アトム級3回戦(2分制

祥子(JSK/45.6kg)VS 須藤可純(笹羅/45.3kg)
勝者:祥子 / 判定3-0 (30-28. 29-28. 30-28)

ケニー・ベイレス氏に振り返って貰って頂いた一枚

《取材戦記》

坂上顕二氏は1968年生まれで、今年51歳。若いと言っても、これまでのNJKF若武者会は40歳代の会長が中心。昭和のキックボクシングで最初の分裂騒動が起きた1981年頃は現役引退した30歳代の会長達が多く、当時の私からみれば皆、偉大さとかなりの年輩者に見え、ジムを興したその中には、渡辺ジム・渡辺信久会長、西川ジム・西川純会長、市原ジム・玉村哲勇会長、習志野ジム・樫村謙次会長、当時目黒ジムトレーナーの藤本勲(現会長)氏も含まれ、あの頃はまだキックの歴史が20年足らずだったことが思い起こされます。

そして現在40歳代の会長達が若く見えても、その昭和時代の会長達より歳を超えていることに、時代の流れを錯覚してしまいます。

坂上顕二新体制のNJKFは、就任発表で延べられているとおり、あらゆる企画に挑戦されることでしょう。順風満帆とはいかないのがキックボクシング界。何が起こるか、どう乗り越えるか、応援していきたいものです。

NJKF次回興行は4月21日(日)に若武者会のVERTEXジム、ZEROジムによる「DUEL.17」をニューサンピア栃木にて開催。5月19日(日)は坂上氏の新興ムエタイジム主催の「DUEL.18」が神奈川県レンブラントホテル厚木にて開催。
連盟本興行「NJKF 2019.2nd」は6月2日(日)後楽園ホール開催となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

NKB出陣、高橋聖人は長丁場を制する判定勝ち!

トーエルジム、RIKIXジム、鷹虎ジム、新興ムエタイジム。フリーや他団体主力ジムの参加があった今回の興行。また逆にフリーや他団体の興行に出場する日本キック連盟(NKB)の選手もいます。2月は高橋三兄弟それぞれの試合があり、試練の勝負が続く。

◎出陣シリーズvol.1 / 2月9日(土)後楽園ホール17:15~21:05
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

接近戦でヒザ蹴りを繰り出す高橋聖人、ブロックするシーンが増える山浦俊一
高橋聖人の蹴りが山浦俊一を追い込んでいく

◆第12試合 メインイベント 59.5kg契約 5回戦

NKBフェザー級チャンピオン.髙橋聖人(真門/59.35kg)
   VS
NJKFスーパーフェザー級3位.山浦俊一(新興ムエタイ/59.3kg)
勝者:髙橋聖人 / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:亀川50-46. 馳50-46. 川上50-46

高橋聖人は最終ラウンドに2度のダウンを奪って判定勝ち。前半から多彩な技で突破口を探り合う両者。その駆け引きが長く続く。第4ラウンドに入って見映えいいローキックを見せた聖人、最終ラウンドにラッシュを掛け、ヒザ蹴りでボディを効かせると右ストレート、左ローキックでノックダウンを奪い、更に連打から右ローキックで再度ノックダウンを奪う。山浦も諦めず2度ダウン後も反撃に転じる粘りを見せる好ファイトとなった。高橋聖人は倒し切れぬも最終ラウンドの見せ場で、本来の5回戦の最高潮を作り上げるチャンピオンの貫禄を見せた。

ボディーブローからローキックでダウンを立て続けに奪う高橋聖人
パンチへ繋ぐローキックでけん制する田村聖

◆第11試合 ミドル級 5回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館/72.3kg)
   VS
J-NETWORKスーパーウェルター級3位.森本一陽(NEXT LEVEL渋谷/72.25kg)
勝者:田村聖 / TKO 1R 2:21 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

4月からのミドル級トーナメントに出場する田村聖はパンチに磨きが掛かった威圧感がKOを予感させる流れとなった中、右ストレートヒットでコーナーに詰め連打とヒザ蹴りでノックダウンを奪い、森本は立ち上がるも足がもつれ、レフェリーが止めるTKOとなった。

右ストレートヒットでコーナーに釘付けから連打する田村聖
ひろあきが得意の強打で圧力をかけていく

◆第10試合 58.5kg契約 3回戦

NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/プラスα/58.5kg)
   VS
KEIGO(FLAT UP/58.1kg)
勝者:ひろあき / 判定3-0 / 主審:亀川明史
副審:佐藤友章30-28. 佐藤彰彦30-29. 馳30-28

ひろあき(=安田浩昭)もパンチを得意とする選手。序盤、KEIGOの蹴りが優勢を保つ中、パンチで追っていくひろあき。徐々に自分の強打を当てる距離を詰めていき、右ストレートを威圧的に繰り出していく。倒すに至らなかったが、ひろあきの圧力が目立つ展開となった。

更なる右ストレートが度々ヒットし、KO狙うひろあき
ガムシャラファイトでも好感持てる踏ん張りで勝利を掴んだ藤野伸哉

◆第9試合 ライト級3回戦

LBSJスーパーフェザー級1位.角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/60.95kg)
   VS
WMC日本フェザー級4位.藤野伸哉(RIKIX/60.95kg)
勝者:藤野伸哉 / 判定0-3 / 主審:川上伸
副審:前田29-30. 鈴木29-30. 佐藤友章28-30

フリーから出場した者同士となった角谷祐介対藤野伸哉戦は、両者ともに多彩な技を繰り出すスピードでガムシャラに出て、互いにバッティングで額が切れるも、若さで優る藤野がハイキックも見映えよくヒットさせ、手数で打ち勝った。藤野伸哉はRIKIXジム期待の選手で、今後も経験値を積めばフリー参加可能な国内タイトルには挑戦に至るであろう逸材である。

◆第8試合 65.0kg契約3回戦
 
洋介(渡邉/64.6kg)vs勝斬 平(=かつき・たいら/Team S.A.C/64.7kg)
勝者:洋介 / 判定3-0 / 主審:馳大輔
副審:亀川30-28. 佐藤彰彦30-28. 前田30-27

ウェイトオーバーが有利に展開したか、蹴りで優ったリョウタ

◆第7試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/56.9kg/6オンス)
   VS
J-NETWORKスーパーバンタム級5位.リョウタ(鷹虎/60.65kg/8オンス)
勝者:リョウタ / 判定0-2 / 主審:川上伸
副審:亀川29-30. 佐藤友章29-30. 鈴木30-30
リョウタが3.5kgオーバーによりグローブハンディ有り

仙台の船木鷹虎氏の鷹虎ジムから出場したリョウタは再々計量でも3.5kgオーバー。それでも出場が認められたが、蹴りを多発する勢いで僅差ながら勝利を掴む。

◆第6試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/66.5kg)vsゼットン(NK/66.4kg)
勝者:稲葉裕哉 / 判定3-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:馳30-27. 鈴木30-28. 前田30-27

◆第5試合 60.0kg契約 3回戦

KAZUYA(JKKG/59.55kg)vsウルフ・タツロウ(アント/59.95kg)
勝者:ウルフ・タツロウ / 判定1-2 / 主審:佐藤友章
副審:馳29-30. 川上30-29. 亀川28-30

◆第4試合 ウェルター級3回戦

火人(TEAM KOK/66.45kg)vsちさとkiss Me!(安曇野キックの会/66.3kg)
勝者:火人 / 判定2-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:川上30-28. 前田30-29. 亀川30-30

◆第3試合 フライ級3回戦

則武(テツ/50.8kg)vs阿部秀虎(鷹虎/50.3kg)
勝者:則武 / 判定3-0 / 主審:馳大輔
副審:鈴木30-27. 前田30-27. 佐藤友章30-28

◆第2試合 フェザー級3回戦

平塚一郎(トーエル/56.75kg)vs山本太一(ケーアクティブ/56.95kg)
引分け 三者三様/ 主審:亀川明史
副審:川上29-30. 馳30-29. 佐藤友章29-29

◆第1試合 バンタム級3回戦

裕亮(光/53.35kg)vs會町(テツ/52.5kg)
勝者:會町 / 判定0-3 / 主審:鈴木義和
副審:川上29-30. 馳29-30. 佐藤友章29-30

◆4月よりPRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント開催!

NKB(日本キックボクシング連盟、K-U)では、「PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント」を4月13日(土)後楽園ホールから開催。

国内トップクラスのミドル級選手8名が集まり、初戦(準々決勝)4月13日、準決勝6月15日、決勝10月12日までのトーナメントで優勝を争います。

純金ジュエリーブランド「PRIMA GOLD」の提供により開催されるこのトーナメント、優勝者には副賞として30万円が授与されます。(PRIMA GOLD販売サイト https://www.rakuten.ne.jp/gold/24k-shop/

初戦(準々決勝)、準決勝は3回戦、決勝は5回戦で行なわれます。 
(引分けの場合、いずれも延長1R有)

PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント準々決勝3回戦 4試合

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK/40歳/13戦9勝《2KO》2敗2分)  
        VS
J-NETWORKミドル級3位.小原俊之(キングムエ/ 33歳/12戦7勝《3KO》4敗1分)

清水武(元・WPMF日本スーパーウェルター級C/sbm TVT KICK LAB../ 31歳/31戦16勝《6KO》14敗1分)
        VS
郷野聡寛(第4代全日本ヘビー級C/GRABAKA/44歳/16戦9勝7敗)

日本ミドル級1位.今野明(市原/35歳/32戦16勝《15KO》13敗3分)
    VS
井原浩之(前・MA日本ミドル級C/ Studio-K/33歳/19戦12勝《4KO》5敗2分)

NKBミドル級 1位.田村聖(前・C/拳心館/30歳/14戦8勝《5KO》5敗1分)
       VS
J-NETWORKミドル級 1位.吉野健太郎(前・C/TEAM COMRADE/43歳/14戦6勝《4KO》4敗4分)

PRIMA GOLD杯トーナメント

《取材戦記》

久しぶりに船木鷹虎氏と対面。鷹虎ジムとしては初めて出場の日本キックボクシング連盟興行だそうで、鷹虎ジムから2名出場しました。昔、団体を転々とした気まぐれ瀬戸幸一会長の仙台青葉ジムに所属していた船木さんは、この団体でも活躍しました。“ヤンガー舟木”というリングネームで戦い、後に日本ムエタイ連盟と全日本キックボクシング連盟でチャンピオンに君臨。この団体興行では久々の顔見せとなりました。

トーナメント戦はキック界に於いて、過去にも幾つも行なわれてきた優勝や賞金を争う戦いでした。

PRIMA GPLD杯ミドル級トーナメントについては、常識どおりのミドル級リミット(72.57kg以下)で行なうこと。勝ち上がり、一定期間を置きながらコンディションを整えた試合となります。チャンピオンクラスが出場なので、できればすべて5回戦であるべきと思うところですが、今時の習慣に寄るものと各興行の全ラウンド数の兼ね合いもあって準決勝までは3回戦となる模様。これで真の国内ミドル級覇者が決まるものではなく、まだ中間点。更なる終わり無きトーナメントに期待が向きます。

3.5kgオーバーで出場したリョウタは勝ちましたが、この日は従来どおりのグローブハンディーのみ。そのグローブハンディーは「ハンディーになっていない」という意見を聴くことがあります。「2オンス重い分、逆に有利ではないか」、「グローブが大きい分、ブロックが楽ではないか」、「蹴りにはハンディーが付いていない」という意見。ならばグローブハンディーはせず、オーバーウェイト側に、そのウェイト差に応じ減点させる制度も近年採用され始めました(500グラム以内で1点とか)。これも減点が正しい手段か難しいところですが、議論が増えるに従い、進化していく競技でもあるでしょう。プロボクシングルールは参考に成る教科書。大いに活用すればいいと思うところです。

日本キックボクシング連盟・出陣シリーズvol.2は4月13日、上記どおりの主要カードが組まれています。

戦い終わってツーショット、山浦俊一と高橋聖人

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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大坂なおみ、張本智和、ケンブリッジ飛鳥、サニブラウン…… 多様な出自のアスリートたちが〈ニホンジン〉を変えていく

女子テニス全豪オープンで大坂なおみ選手が優勝した。昨年の全米オープンでは日本人として●●●●●●初めて優勝したのに続き四大大会二連勝で、世界ランキング1位に昇りつめた(大坂選手のお父さんはハイチ出身の方で、ハイチでも「ハイチ系日本国籍の大坂選手が優勝して豪州でのハイチの認知が広まるのではないか」と報道されている)。卓球の張本智和選手は若干15歳で世界的な活躍を見せている。陸上短距離ではケンブリッジ飛鳥、サニブラウン両選手が400mリレーのメンバーで活躍し、野球界もカタカナの名前を目にすることは珍しくはなくなった。

なにが言いたいかといえば、「日本人」という概念が確実に変化を見せているということである。かつて大相撲で高見山が活躍していた時代に「高見山は髪が黒いからいいけど白人や欧米人が入ってきたらどうするんだ」とテレビ放送で言い放った解説者がいた。大相撲も一応の「外国人枠」を設けているが、番付表を見ればわかる通り、外国出身力士なしには上位の取り組みは組めない。国技だのなんだのといっても、実体的な国際化はすでに目の前で進行している。


◎[参考動画]カップヌードルCM 「謹賀新年 金がほしいねん 篇」/ 錦織圭・大坂なおみ(日清食品グループ 2018/12/31公開)

◆カタカナ姓名のアスリートたち

日本代表として、カタカナの姓名を持つ褐色の肌をしたアスリートが、競技後のインタビューに流暢な日本語で(あるいは英語で)答える様子を目にすると、気持ちが楽になる。日本国内にいながら「日本」から解放されたような気分になる。彼や彼女が関西弁であったらば、余計にうれしくなる。どう見てもネイティブアフリカンのアスリートが「日本代表」として活躍する。

悪いことではない。1936年のベルリン五輪マラソンで優勝した孫基禎選手と3位になった南昇竜選手はいずれも、日本帝国主義植民地時代の朝鮮半島の選手である。今でも記録のうえでは「日本人メダリスト」として刻まれている痛ましさと、本格的に「多民族化」してきた「日本人」のありようは極めて対照的だ。

世界には200ほどの国があるのに、近隣諸国との友好関係も築けない外交無能な政府とは異なり、「日本人」のかたちは変化する。都市部へ出かけると制服を着た中高生の顔の中に、アジア系ではない多彩なルーツを簡単に見つけることができる。タガログ語を話す団地住民の姿は、もうまったくこの国で違和感がなくなった。


◎[参考動画]グランドファイナル2018 男子シングルス 決勝 張本智和vs林高遠(テレビ東京 2018/12/16公開)

◆アフリカ系、中東系、アジア系の日本人がますます増える

彼ら・彼女らのお父さん・お母さんがどうして日本へやってきたのかについてまで、思いを巡らせれば、必ずしも幸せな理由ばかりではない。まだ日本が経済大国だった頃の「日本」を目指してやってきた方がほとんどであろう。しかし、いまやアフリカ系、中東系、アジア系の日本人がますます増える。「日本書紀」の神話や天皇制、君が代、日の丸と大坂なおみ選手や張本智和選手(両親は中国出身)は、どう無理をしても釣りあわない。国威発揚や「大和魂」の復権に利用されるスポーツの世界で「日本語を話せない日本人」や「褐色のアスリート」の活躍は、当人の意識にかかわらず、スポーツが纏わされる宿命の政治性を否が応でも粉砕してしまう。

「どんな脳みそをしているのか」覗いてみたい衝動に駆られる、ファナティックな国粋主義一色の月刊誌の平積みを書店で目にするにつけ、世界を見ず内向きな自慰行為的言論の横行にげんなりさせられるたびに、そうはいっても大坂なおみ選手や張本智和選手、サニブラウンやケンブリッジ飛鳥選手の存在をありがたく思う。思考が前には決して進まない国粋主義者たちは彼らの存在・活躍をどう感じるだろうか。多様な出自のアスリートにはしかしながら、政治的ななにものも背負ってくれというつもりはない。自由に発言し、思うとおりに活躍をしてくれればよいだけだ。


◎[参考動画]日本を代表するスプリンター!ケンブリッジ飛鳥(TBS Yeahhh!2019/01/22公開)

◆外的要因が「くにのかたち」を変えていく

芸能界(言論界にも)には外国出身者なのに、ほどほどの日本人以上に「日本好き」を演じて稼いでいる連中がいるらしい。それも自由といえば自由ではあるが、一部庶民のレベルの低いファシズム感情に上乗りし、稼ぐという節操のなさは、状況が変わればたちまち、己の身にブーメランとなって返ってくるだろう。親日家は否定しないし、するつもりもないが月刊『Hanada』や『Will』に登場する人物は、出身の如何を問わず信用ならない人物である。

日帝本国人(普通の日本人)は、なかなか自らの力と思想で悪しき「日本人」を解体することができずにいたが、やはりここでも「くにのかたち」を変えるのは外的要因ということであろうか。まことになさけのないない話ではあるが、ありがたい変化はすでに目の前で躍動している。


◎[参考動画]【日本陸上選手権】男子200m決勝 サニブラウン2冠達成(NHK 2017/06/2公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)
月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

会見で何も語らなかった竹田JOC会長の贈賄疑惑が日仏外交問題に発展する日

◆不正や虚偽を糺せない国

日本という国は、不正や虚偽を糺せないようになってしまったかのようだ。官僚によるデータ改ざんや公文書の廃棄など、中枢において腐食が絶えなくなっている。それは日本オリンピック委員会(JOC)においても同様であった。フランスの司法当局が予審に入ったJOC竹田恒和会長の贈賄疑惑である。すなわちシンガポールのコンサルティング会社(ブラックタイディングス社)に支払った2億3000万円の一部が、国際オリンピック委員会の関係者に流れた問題である。同社の代表の親友の父親が、IOCの選考委員だったことによる疑惑だ。これが事実なら、東京のオリンピック・パラリンピック招致は不正行為によるものだったということになる。

フランス当局の捜査は、元日産会長ゴーン氏逮捕への「報復」とも取れるものがあるにしても、問題なのは2016年にこの問題が発覚したさいに、JOCのおざなりな身内調査で事件の真相が隠蔽されてきたことだ。いや、雇われ弁護士による「違法性はない」とのお墨付きで、疑惑を不問にしてきたことである。

◆何も語らない会見

1月15日、岸記念体育館で行われた会見で、竹田会長は「わたし自身はブラックタイディングス社との契約に関して、いかなる意思決定にプロセスにも参加していない」と、責任者であることを否定し「日本の法には違反していない」と、メモを読み上げるだけで終了した。疑惑を招いたことへの遺憾の意も表明することなく、疑惑を晴らすとも言明しなかったのである。記者の質問も受け付けなかった。そもそも契約書にはJOCの責任者たる竹田会長の印判が押されているにもかかわらず、知らぬ存ぜぬと言い放つ。いや、単にメモを読み上げたのだった。こういうトップをいただく組織に、われわれは国民は血税を使わせているのだ。竹田恒和会長とは、そもそもどんな人物なのであろうか。


◎[参考動画]JOC竹田会長が会見、汚職疑惑改めて否定(日本経済新聞2019/01/15公開)

◆わが国の特権階級

竹田恒和会長は明治天皇のひ孫で、平成天皇とはハトコにあたる。いわば皇族につらなる血縁でスポーツ界に君臨しているのだ。というのも、若いころ馬術選手であった竹田会長は、自動車事故で若い女性をひき殺したことがあるのだ。事故は国体に出るために、会場に向かっていた時のことだった。この事故で竹田氏が所属していた東京都チームは、馬術競技の全種目の出場を辞退している。事故の原因は対向車のライトに目がくらんだ、竹田氏の過失責任であった。

事故は40年前の出来事だが、その本人がオリンピック委員会の会長職にあることに驚きを感じないわけにはいかない。死亡事故を起こした竹田氏は、事故から2年後に馬術競技に復帰(モントリオール大会に出場)していたのだ。そして1984年のロサンゼルスオリンピックではコーチングスタッフで参加し、バルセロナオリンピックでは選手団の代表監督を務めるなど、JOC内部で出世の道を歩んできた。そこに「宮家」の威光が働いていたとみるのが普通であろう。したがって、今回の贈賄疑惑事件の実相はこうである。生徒会の不正支出疑惑を問いただされた生徒会長が「ぼく、この問題には関わっていませんからね」と責任回避の言い訳をしているのだ。お前が責任者だ!

昨年は日大アメフト部、女子レスリング、体操女子、柔道と、アマチュアスポーツ界の組織的な腐敗や暴力問題があぶり出されてきた。東京オリンピックへの「国を挙げて」の準備過程がまさに、組織の問題点を暴露しているかのようだ。その意味では、高額な会場建設費問題などで批判の絶えない東京オリンピックも、あながち積極的な意味がないとは言えないのかもしれない。

◆出処進退をわきまえよ

いっぽう、このままフランス当局がこの贈賄事件での司法手続きを続けるとしたら、日仏間に犯罪容疑者の身柄引き渡し協定がないことから、外交問題に発展する怖れがある。あるいは身柄の引き渡しがない場合には「国際手配」されることになる。ときあたかも、フランス政府(ルノーの大株主)によるルノーと日産の統合が要望されているさなかだ。国益を考えろとは言わないが、わずかでも日本人らしい(?)恥やプライドがあるならば、即刻辞任するべきであろう。


◎[参考動画]2013年9月8日の竹田恒和招致委員会理事長のプレゼンテーション(ANNnewsCH 2013/09/07公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか
横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

今年のWINNERS、新たなスター出現なるか!

石原將伍が倒すパターンを掴み左ジャブから入っていく

おとそ気分が抜けないうちの新春興行ではあったが、正月の華やかさが感じられない興行で、試合でのインパクトを残したのは石原將伍と馬渡亮太の1ラウンドで倒し切った勝利。今年のWINNERS興行を盛り上げるのは、この2人が中心になるかもしれません。

◎WINNERS 2019.1st / 2019年1月6日(日)後楽園ホール16:55~20:15
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

馬渡亮太の右フックから左フックに移ってKOに繋げた

◆59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/59.0kg)
   VS
ペッテェー・ムエタイファイタージム(タイ/57.15kg)
勝者:石原將伍 / TKO 1R 2:45 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:少白竜

相手情報が無いまま向かい合った石原の相手、ペッテェーに対し、軽い蹴りからパンチで様子見の石原。ペッテェーは離れた距離から前蹴りやハイキックが伸び、石原はパンチで追うと組み付いて来る展開が繰り返された後、再び接近戦に入ったところで右縦ヒジ打ちでアゴを突き上げると効いたペッテェーは倒れ込み、カウント中にレフェリーが止め、石原のTKO勝利となった。

◆55.0kg契約 5回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/54.9kg)
   VS
ヌンナコン・ペットナムナック(タイ/54.8kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 1R 1:30 / テンカウント / 主審:椎名利一

馬渡が上下に分けたしなりある蹴りがヌンナコンを上回る展開。まだまだ序盤の様子見段階だったが、前蹴りから左ヒザ蹴りが高くヌンナコンのアゴまで届かせるヒットから続けて左右のフックをアゴにヒットさせると、呆気なくヌンナコンが倒れ、テンカウントアウトされた。

馬渡亮太のハイキックがヒット、倒すパターンを描いていく
勝利は掴めぬもKOが多かったパンチで攻めた今野顕彰

◆73.0kg契約3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.85kg)vs 李至訓(韓国/72.5kg)
引分け1-0 / 主審:宮沢誠 / 副審:椎名29-28. 少白竜29-29. 仲29-29

今野は蹴りから組み付いて来る李至訓に劣らぬ応戦、足払いで崩す技も光る。なおもガムチャラにパンチとヒザ蹴りで前に出て来る李至訓に常にパンチと蹴りで迎え撃った今野だったが、ヒットが少なくポイントに繋がり難い展開でドローとなってしまった。

過去3度、日本ミドル級王座挑戦し撥ね返されている今野は再度の挑戦を狙っているが、王座奪取へ繋げることが出来るか。

勝ちに徹する今野顕彰、髪が邪魔
政斗の負けられない執念で攻める

◆68.0kg契約3回戦

日本ウェルター級1位.政斗(治政館/67.8kg)
   VS
笹谷淳(元・J-NETWORKウェルター級Champ/TEAM COMRADE/67.9kg)
勝者:笹谷淳 / 判定0-2 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-28. 少白竜28-29. 宮沢28-29)

初回に笹谷の左ストレートでダウンを奪われてしまった政斗。勢いを戻し、積極的に出るが挽回に至らず、判定負け。

昨年5月、日本ウェルター級王座決定戦で、リカルド・ブラボ(伊原)に敗れて以来、雪辱と王座奪取を誓う政斗だったが、痛い黒星となってしまった。

ダウンの巻き返しに、果敢に攻める政斗

◆53.6kg契約3回戦

日本バンタム級3位.幸太(ビクトリー/53.1kg)vs ガイルン・サシプラパー(タイ/53.3kg)
勝者:ガイルン・サシプラパー / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-30. 桜井28-30. 宮沢28-30

昨年、日本フライ級王座挑戦の経験がある幸太だが、ガイルンの牙城を崩せず、王座は遠のくばかりか。

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級3位.直闘(治政館/61.9kg)
   VS
J-NETWORKライト級チャンピオン.まさきラジャサクレック(ラジャサクレック/61.9kg)
引分け1-0 / 主審:少白竜 / 副審:仲29-29. 桜井29-28. 宮沢29-29

◆58.0kg契約3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/57.7kg)vs 同級3位.皆川裕哉(藤本/58.0kg)
勝者:瀬戸口勝也 / KO 1R 1:09 / テンカウント / 主審:椎名利一

若さの勢いで開始早々からパンチで飛ばし気味の皆川の右フックで瀬戸口がダウン。かなり効いている様子で足がふらついたが何とか続行されると、倒しに来た皆川とパンチに自信がある瀬戸口の右フック相打ちでダブルノックダウンが起こり、2度目のダウンに当たる瀬戸口の方がダメージは浅く立ち上がった後、皆川の方がダメージが深くテンカウントを聞いてしまった。ここで逆転を許してしまう不覚は過去の先人にも見られた現象。皆川はこれで学ぶこと多き試合だったでしょう。

右フックの相打ち直後、崩れ落ちていく瀬戸口勝也と皆川裕哉
ダブルノックダウンとなった瀬戸口勝也と皆川裕哉

◆55.0kg契約3回戦

日本バンタム級4位.阿部泰彦(JMN/54.85kg)vs 同級6位.田中亮平(市原/54.95kg)
勝者:田中亮平 / TKO 2 R 0:50 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級9位.興之介(治政館/61.9kg)vs 増田侑也(マイウェイ/61.75kg)
勝者:興之介 / TKO 2R 0:49 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

◆58.5kg契約3回戦

日本フェザー級6位.渡辺航己(JMN/58.5kg)vs 瀬川琉(伊原稲城/58.25kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-28. 宮沢30-28. 桜井29-28

◆ウェルター級2回戦

モトヤスック(治政館/66.25kg)vs ヴィラデット・シットジャメックス(タイ/65.1kg)
引分け0-1 (19-19. 18-20. 20-20)

◆55.0kg契約2回戦

翼(ビクトリー/54.8kg)vs 加藤和也(シャカリキ/54.9kg)
勝者:翼 / KO 1R 2:52 / テンカウント

◆60.0kg契約2回戦

睦雅(ビクトリー/59.25kg)vs 小澤孝文(揚心/58.95kg)
勝者:睦雅 / KO 1R 1:52 / 3ノックダウン

◆フェザー級2回戦

平塚一郎(トーエル/57.15kg)vs 又吉淳哉(市原/57.0kg)
勝者:又吉淳哉 / TKO 2R 1:07 / 続行中のタオル投入

◆女子52.0kg契約2回戦

栞夏(トーエル/51.7kg)vs RAN(MONKEY・MAGIC/52.0kg)
勝者:RAN / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

《取材戦記》

馬渡亮太が試合後、マイクアピールで、「日本バンタム級タイトルマッチがしたい」という表現を使った。「王座に挑戦したい」だけではない、何か深い意味があるような言い回しに聞こえたが、馬渡が新たなスターの地位に登り詰めつつある今、このタイトルは欲しいところだろう。

日本バンタム級チャンピオンはHIROYUKI(=茂木宏幸/藤本)、 1位は瀧澤博人(ビクトリー)で、馬渡は現在2位。実現に繋がれば好カードとなるが、今年中に実現するだろうか。

昨年、新日本キックボクシング協会興行に於いて、2度しか行なわれていない日本タイトルマッチ(フライ級とウェルター級)。もっと活性化させなければならないところ。ここから新しいスターを生まねばならない。

新日本キックボクシング協会興行は3月3日(日)後楽園ホールに於いて17時より伊原プロモーション主催のMAGNUM.49が開催予定。江幡塁(伊原)、勝次(藤本)、斗吾、リカルド・ブラボ、喜多村誠(伊原新潟)が出場予定です。

武田幸三賞(MVP)は2回連続で馬渡亮太が受賞

かつて、新日本キックボクシング協会で活躍した志朗(=松本志朗/BEWELL)の1月6日、タイで行われた試合は、会場、対戦相手が変更されるも、判定勝利でまた険しいムエタイロードを一歩前進しました。

ノンタブリー県、オー・トー・コー3スタジアム(O・T・K=Onkarn TaladPhua Kasetkorn /タイ農業協同組合市場)
志朗(=松本志朗/Bewell)vs ペットサムレット・オーボートーノンヤントイ
勝者:志朗 / 判定3-0

当初の対戦相手のBBTV(タイ7ch)チャンピオンのローグン・ダープランサーラカームは怪我で欠場し、急遽ペットサムレット・オーボートーノンヤントイへ変更。
ペットサムレットは、昨年9月29日に志朗に判定勝利したペットアサウィンにKO勝利しています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私のキックボクシング 2018年の振り返り!

◆今年のムエタイ殿堂王座挑戦!

二大殿堂王座は4名が挑戦。2018年2月18日、後楽園ホールでのREBELS興行で、ルンピニースタジアム・ライト級王座に挑んだ梅野源治(PHOENIX/29歳)は4ラウンドKO負けでラジャダムナンスタジアムに続く制覇は成らず。6月15日、現地でルンピニー・フライ級王座に挑んだ大崎一貴(OISHI/22歳)は判定負けで奪取成らず。6月27日、現地でラジャダムナン・スーパーウェルター級王座に挑んだ緑川創(藤本/31歳)は判定負けで奪取成らず。12月9日、横浜大さん橋ホールでのBOM興行で、ラジャダムナン・ミニフライ級王座に挑んだ世界2団体同時制覇中の吉成名高(エイワスポーツ/17歳)は判定勝利で王座奪取に成功。同スタジアム外国人10人目(日本人7人目)の快挙。

念願のラジャダムナンスタジアム王座挑戦も失敗に終わった緑川創
2016年の吉成名高。十代半ばではあどけなさが残る2年前

吉成名高は2017年4月のWMC世界ピン級(-45.359kg/後に返上)を奪取、2018年4月にWBCムエタイ世界ミニフライ級王座(-47.627kg)を奪取に続く9月にIBFムエタイ世界ミニフライ級王座奪取の世界3団体を制覇した中で、伝統のラジャダムナンスタジアム王座を奪取したことは、すでに獲った世界王座の評価も上げることになったでしょう。

更に外国人にとって前人未到の二大殿堂制覇、ルンピニースタジアム王座も近くに狙っているという、この勢いでは達成の可能性も高いでしょう。

その一方、現在も二大殿堂王座を獲ることは凄く難しいものの、昔から比べて、そこまでの道程が比較的近道になって来ているのが現在の二大殿堂です。昔はランキング入りさえ難しく、ランクインしてもなかなか挑戦のチャンスが回って来なかった挑戦権争いの道でした。そこに至るまでにピークを過ぎてしまう選手はタイ選手でも多く居たものでした。

2011年以降の二大殿堂外国人チャンピオンはこれで9人に上ります(1978年以降2010年までは4人)。しかし、幼い頃からムエタイ競技に勤しむ環境が整ってきたアマチュア経験値で、プロ転向後の出世に大きく影響していく選手も多く、吉成名高の快挙も期待大きいものでした。

反して本場タイ国は、経済の発展でハングリーなボクサーが激減した影響で、レベル低下の影響も見られ、「昔のような伝説のチャンピオンがいなくなった」という声も多いところです。日本や他国が50年掛けて挑戦してきた打倒ムエタイの、個人レベルや競技レベルの戦いは、ムエタイの歴史が変化していく最中かもしれません。

◆交流戦の充実!

団体交流やフリーのプロモーションの他興行交流は以前からありますが、かつての袂から決裂した者が率いる団体との交流が実現したのが、NKBグループの日本キックボクシング連盟が、新日本キックボクシング協会の交流戦と、かつて同じNKBグループだったニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)との交流戦が実現したことは注目を浴びる存在になりました。

またルンピニージャパンを率いるセンチャイプロモーションとジャパンキックイノベーションの交流も発表されました。これらの交流に至った経緯には何らかの策略があるもの。それがどう現れるか、2019年の交流戦に注目であります。

西村清吾vs政斗。交流戦の激闘が始まったNKBの挑戦
堂々たる日本のメインイベンターとなった高橋一眞

◆高橋三兄弟の飛躍!

6月16日、高橋三男の聖人(真門)が安田浩昭(SQUARE-UP)を倒し、NKBフェザー級王座を獲得し、三兄弟同時NKB王座制覇を達成。以前の狭い団体体制で、ここだけで終われば世間の評価は低いまま。

しかし2014年以降のNKBは小野瀬邦英体制から変化をもたらした交流戦開始で、徐々に実力が測れる対戦が増え、NKB加盟ジム選手の活躍が活性化し、高橋三兄弟に於いては良い時代に突入し、他団体トップクラスとの対戦が増えました。

高橋長男・一眞は2016年に3連敗し、日本トップクラスの厳しさを味わった中、2017年6月、NKBライト級王座獲得。初防衛の激戦を経て今年2月12日、すでに「KNOCK OUT」で実績を残す町田光(橋本)に判定勝利し、大きな存在感を示しました。8月19日、森井洋介を倒したヨードレックペット・オー・ピティサック(タイ)戦は勇敢な攻めでの判定負けもレベルアップに繋がり、12月8日の棚橋賢二郎(拳心館)戦では圧倒のKO勝利で2度目の防衛。

次男・亮は小笠原瑛作(クロスポイント)と1敗1分とはなるも、宮元啓介(橋本)、瀧澤博人(ビクトリー)に判定勝利し、日本トップクラスの証明を果たしました。

三男・聖人は昨年倒された、ひろあきに雪辱した後、駿太(谷山)に判定で敗れるも12月16日にはワンデートーナメント戦の一部ながら元・WBA世界スーパーフライ級チャンピオンのテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)と対戦し判定勝利。NKB高橋三兄弟の株を上げた1年でした。

高橋三兄弟を育てた若生浩次氏とともにフォーショット

◆「高橋」はもう一人、勝次の飛躍とその他の選手!

伝統の真空飛びヒザ蹴りを継承する勝次

2017年の「KNOCK OUT」で森井洋介(GOLDEN GLOBE)にKOで破れ、トーナメント制覇は成らなかった勝次(=高橋勝治/藤本)は、打ち合う連戦のダメージを抜いた今年後半、ホームリングとなる新日本キックボクシング興行で4連勝(3KO)。真空飛びヒザ蹴りの必殺技を磨いた成長を見せ、「KNOCK OUT」での雪辱、老舗のWKBA世界王座、更にはムエタイ最高峰を目指すなど、来年の飛躍を誓っています。

同じく新日本キックで活躍する石原將伍(ビクトリー)も2017年10月、日本フェザー級チャンピオンとなってから常に強いタイ一流選手との対戦に臨み、2勝(2KO)1敗1分ながらも存在感を示し、新たなエース格に上り詰めた選手達の飛躍が注目される2019年です。

タイに拠点を移した志朗(=松本志朗/キックリボリューション)も飛躍を続ける一人で、層の厚いタイで、負ければ干される運命と隣り合わせの厳しい生き残りの中、戦い続けています。

2019年1月6日にもルンピニースタジアムでのテレビマッチに出場予定で、ローグン・ダープランサーラカームと対戦予定。

ローグンは2017年度、BBTV(タイ7チャンネル)トーナメント覇者で、その年の年間KO賞も受賞。強打を武器にしている現役BBTVランカーです。

試合は、日本時間の20時20分~22時10分を予定。志朗の出場は第2試合目となり、日本時間の20時40分頃になると思われます。

◎日本からはインターネットで視聴が可能。
 http://www.amarintv.com/live-tv/
 https://www.adintrend.com/hd/m/ch26

◎ローグン・ダープランサーラカームのハイキックによる過去の勝利映像
 https://youtu.be/Vj0IKWVuQwo

1月6日、新春興行のメインイベンター石原將伍も今年が勝負の年[写真左]。同じく1月6日、タイでは志朗がルンピニースタジアムのテレビマッチに立つ[写真右]

◆シリモンコン・ルークシリパットさん急逝!

時代が流れるムエタイとキックボクシングの歴史の中、伝説の英雄、シリモンコンさんが8月18日、肺水腫により逝去されました。

1976年3月に現地で藤原敏男氏と激戦を戦い抜いたことも歴史の1ページとなって語られる現在です。獲得したタイトルは1970年3月にルンピニースタジアム・フェザー級王座。1974年にルンピニースタジアム・ライト級王座 。1973年にアマチュアボクシング キングスカップ金メダル。同年9月18日、タイ国王(ラマ9世)から直々にタイ国最優秀選手賞のトロフィーを受賞と、偉大な功績はタイ国でも評価が高い選手でした。

こういう伝説に残るチャンピオンが存在し難い現在、シリモンコン氏の優しい人柄や功績がタイでも多くのファンに語り続けられています。

シリモンコンさんの功績。プミポン国王から授けられる栄誉賞を含む写真

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独断と偏見で我がままな、昭和のキックボクシングから繋がる団体中心に、2019年もキック業界を見つめたいと思います。

2019年新春最初の興行は1月6日に後楽園ホールに於いて17時より、新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS 2019.1st」が行なわれます。石原將伍(ビクトリー)がメインイベントに出場。2019年は何が起こるか新展開を見届けたいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

1月7日発売!月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか
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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

平成最後の目黒キックの祭典!

新年号時代に向けて、老舗の目黒ジム継承者達の戦い。
勝次は真空飛びヒザ蹴りでの勝利。
緑川創の「KNOCK OUT」出場を控える中でのヒジ打ち一発TKO勝利。
HIROOYUKIの元気いっぱいの、倒せずも大差の判定勝利。
内田雅之の2階級制覇を目指すパンチで圧倒のTKO勝利。
江幡塁(伊原)の来年こそ行くぞ、とラジャダムナン王座に懸ける執念のKO勝利。

◎SOUL IN THE RING.16
12月9日(日)後楽園ホール17:00~19:55
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

江幡塁がちょっとした被弾のタイミング、無傷で終われる訳ではない難しさ
徐々に追い詰める江幡塁の左ストレート

◆56.0㎏契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
   VS
サームエー・ペットムアンタラ-ト(元・タイ南部スーパーフライ級C/タイ/55.6kg)
勝者:江幡塁 / KO 3R 0:45 / カウント中のタオル投入
主審:椎名利一

江幡ツインズのムエタイ・ラジャダムナン王座挑戦に向けての長い前哨戦、攻略し難い相手が続く。勝利に導く技のひとつ、威力が増したローキックで出ると、サームエーもケロリとした表情で蹴り返してくる。

いろいろな技を試すが、そのリズムを壊すようにサームエーも前進。突破口が開き難いと見える中、第2ラウンド終了近くなったところで、江幡塁が右フックをヒットさせ連打に繋ぐ。

第3ラウンド、ややダメージ残るサームエーにパンチとローキックで顔面が空いたところへ左ハイキックを命中させ、前のめりに倒れるとカウント中にセコンドからタオルが投げられる棄権でノックアウト勝利を得た。

パンチ、ローキックから左ハイキックをKOへ結びつけた江幡塁
パンチ勝負で距離を詰める緑川創
緑川のカウンター右ヒジ打ちがヒット
左眉上を斬られたサリムの顔面から鮮血が滴り落ちる

◆70.0㎏契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vs サリム・バントーン(カンボジア/69.5kg)
勝者:緑川創 / TKO 3R 0:27 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

ドッシリ構えた体型のサリムが単発気味だがパンチとローキック中心に多彩に前進してくる。緑川も応戦して圧力掛ける互角の展開。第2ラウンドには手数が増え、距離が近なっていく。
第3ラウンドにはパンチを打って誘ってサリムが出てくるところへカウンターの右ヒジを額に打ち込むと、サリムは跪くようにマットに手を付き、ヒットした傷は深そうですぐレフェリーに止められた。

◆62.5㎏契約 5回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(=高橋勝治/藤本/62.5kg)
   VS
デンラグー・ペットパークブーム(元・南部スーパーバンタム級チャンピオン/タイ/62.0kg)
勝者:勝次 / KO 4R 1:25 / カウント中のタオル投入
主審:少白竜

第1ラウンド、ローキック、ミドルキックの蹴り合いから勝次の勢いに押され、デンラグーが下がり始める。第2ラウンドも下がりながらも蹴りは多彩に上下蹴ってくるデンラグーにパンチ打ち込む勝次。

第3ラウンドも下がる一方のデンラグーに攻め倦む中、更にパンチから飛びヒザ蹴りを当てるとノックダウンとなるが、ヒットは軽かったかデンラグーはすぐ立ち上がる。第4ラウンドもパンチで出る勝次がロープ際で右ストレートをヒットさせ、スタンディングダウンをとる。

更にパンチから再度の飛びヒザ蹴りをヒットさせダウンした後、デンラグーはまたも立ち上がるが、タオルが投入されると、それまで相当苦しかったか力尽きたように倒れ込んでしまった。勝次はKO勝利を掴んだ。

今回も出た勝次の真空飛びヒザ蹴り
勝次の右ストレートヒット、徐々にKOパターンに繋げる
コンビネーションで左ハイキックを狙ったHIROYUKI

◆54.0㎏契約3回戦

日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本/54.0kg)
   VS
ピンポンパン・エスジム(タイ/54.0kg)
勝者:HIROYUKI / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-26. 宮沢30-26. 少白竜30-26

初回のローキック中心の攻めで様子見後、相手のリズムを読めたか、飛びヒザ蹴り2回目でダウンを奪う。更に飛びヒジ打ち落とし、飛び前蹴りと調子を上げていく。2ラウンド以降も終始先手を打って主導権を握ったHIROYUKIの当てるタイミング。怖いのは相手のヒジ打ちだが、何度か狙われつつも貰わない余裕の展開を見せた。

2度目の飛びヒザ蹴りでダウンを奪うHIROYUKI
調子付けば飛び蹴り多発させるHIROYUKI
クリスマスバージョンのラウンドガールとスリーショットに収まるHIROYUKI

◆65.0㎏契約3回戦

石井達也(藤本/64.5kg)vs リットアルン・エスジム(カンボジア/63.9kg)
勝者:リットアルン / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-30. 宮沢29-30. 少白竜29-30

序盤の蹴りの動きで石井達也の出方を読んだリットルアンは組み技中心に移る。離れると石井のパンチと蹴りが有利な展開になりそうだが、それを封じてしまうリットルアンの距離の詰め方は速くヒザ蹴りを加えた厄介なムエタイ技で石井を苦しめた。

◆62.0㎏契約3回戦

日本ライト級1位.内田雅之(藤本/61.65kg)
   VS
日本ライト級10位.千久(伊原/62.0kg)
勝者:内田雅之 / TKO 2R 0:29 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

序盤から蹴りの探り合いから第2ラウンド早々にはベテラン内田がパンチ連打に繋いで倒し、蹴りをフォローするTKO勝利。ライト級に上げ、次第に調子を上げている内田の2階級制覇は成るか。同門の勝次の存在が今後の方向を左右する。

内田雅之の前蹴りで千久を突き放す
パンチ連打でダウンするところへ蹴りをフォローする内田雅之

◆62.0㎏契約3回戦

高橋亨汰(伊原/62.0kg)vs ジョム・ポー・タワッチャイ(タイ)
勝者:高橋亨汰 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 宮沢30-28. 桜井30-27

◆52.0㎏契約3回戦

日本フライ級2位.空龍(伊原/51.7kg)
   VS
日本バンタム級4位.古岡大八(藤本/51.7kg)
勝者:空龍 / TKO 1R 1:37 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.0kg)
   VS
日本ライト級6位.大月慎也(治政館/61.0kg)
引分け1-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-29. 少白竜30-29. 仲29-29

◆ライト級2回戦

鈴木裕也(治政館/61.15kg)vs 金剛駿(Kick-Sty/60.6kg)
勝者:金剛駿 / TKO 1R 1:49 / カウント中のレフェリーストップ

◆60.5㎏契約2回戦

中田憲四朗(藤本/60.0kg)vs 井上昇吾(白山/60.15kg)
勝者:井上昇吾 / 判定0-3 (18-20. 17-20. 18-20)

《取材戦記》

平成期最後の老舗目黒ジム継承の藤本ジム興行となったこの日、昭和のキックはかなり昔の時代となってしまいました。

その昭和の時代にキック創始者、野口修氏によって発祥した老舗のWKBA世界タイトルを目指す勝次。千葉昌要、富山勝治、向山鉄也、飛鳥信也、武田幸三が獲れなかったWKBA世界タイトル。獲ったのは新妻聡、江幡睦、江幡塁の3名。更に勝次(=高橋勝治)が4人目なるか。といったマニアックな話は今の時代にはウケないが、次の新年号の時代へも注目されるように価値を上げて欲しいところです。

藤本ジムにはまだ上を狙う選手が犇めき合っている状態でもあります。緑川創も今年、現地でのラジャダムナン王座挑戦に敗れるも、再挑戦を目指し、石井達也も復活して他団体興行でWMC下部のエリアタイトル奪取し、更なる上位を目指しています。

「KNOCK OUT」に出場することも重要でしょうが、その先を見据えた戦いを2019年には見せて貰いたいところです。

新日本キックボクシング協会2019年新春興行は1月6日(日/17:00)後楽園ホールに於いて、治政館ジム主催WINNERS 2019.1stが開催。

こちらも主力選手が揃う、日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)をメインイベントに、日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館)、日本ミドル級1位.今野顕彰(市原)、日本ウェルター級1位.政斗(治政館)が出場予定となっています。日本王座と本場ムエタイ王座を目指す戦いに挑んでいきます。

伊原代表と並んで勝利ポーズの江幡塁、ラジャダムナンのベルトはいつか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

NKBの存在感見せる、高橋一眞の戦い!

高橋一眞の右ストレートがヒット

新日本キックボクシング協会との交流戦開始に続き、NJKFとの14年ぶりという交流戦も実現。実力測れる対戦が増え、新たな世代の選手が育って来たNKBの現在、更に活動の枠が広がれば面白くなるNKBであり、国内活性化でもあります。

◎闘魂シリーズFINAL(vol.6)
12月8日(土)後楽園ホール17:15~20:30
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

続けて高橋の右ストレートがカウンターでヒット
右ストレートを浴びた棚橋は2度目のダウンとなった

◆メインイベント NKBライト級タイトルマッチ5回戦

チャンピオン.高橋一眞(真門/61.1kg)vs 同級1位.棚橋賢二郎(拳心館/59.95kg)
勝者:高橋一眞 / KO 3R 1:50 / 3ノックダウン / 主審:前田仁

上手さ目立った高橋一眞の戦い。ディフェンス技術が向上し、棚橋賢二郎に何もさせなかった印象が残る。

1ラウンドから一眞の先手ローキック、ミドルキックをヒットさせていく。棚橋の強打がいつ炸裂するのか、そんな怖さがありつつ、勢いが増すままパンチを当てていった一眞。3ラウンドにヒジ打ちをアゴにヒットさせて効かせたところへヒザ蹴り追撃でスタンディングダウンを奪う。

これも高橋一眞のヒジ打ちカウンターで最後のダウンに繋げた
ヒジ打ち喰らって縺れた後、そのまま倒れ行く棚橋をレフェリーが止める

更に右ストレートでノックダウンを奪い、最後は右ヒジ打ちカウンターさせ、棚橋は効きながらも縺れ合い倒れ行く中、レフェリーが止め、3ノックダウンとなるKO勝利となった。高橋一眞が2度目の防衛成る。

◆セミファイナル 57.0kg契約 5回戦

NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/SQUARE UP/57.0kg)
   VS
NJKFスーパーバンタム級1位.久保田雄太(新興ムエタイ/57.0kg)
勝者:久保田雄太 / TKO 2R 1:09 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

序盤はひろあきがローキックで様子見から徐々にパンチで出ると、久保田は得意の強い蹴りで応戦しつつも下がり気味。接近戦でひろあきはヒザ蹴りも見せて圧力を掛ける。2ラウンドに入っても流れは変わらず、パンチで出て来るひろあきに久保田の右ストレートのカウンター一発でダウンを奪うと、ひろあきはフラつきながら立ち上がるもレフェリーに止められ、久保田の逆転TKO勝利となった。

ひろあきの突進を止める久保田雄太の右ミドルキック
久保田の右ストレートカウンターでひろあきを倒した

◆59.0kg契約 3回戦

野村怜央(Team KOK/58.8kg)vs KEIGO(FLAT UP/58.7kg)
勝者:KEIGO / 判定0-2 / 主審:川上伸
副審:前田30-30. 佐藤友章29-30. 佐藤彰彦28-30

◆56.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級5位.大脇武(GET OVER/55.0kg)
   VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/55.7kg)
勝者:大脇武 / TKO 2R 2:08 / カウント中のレフェリーストップ
主審:亀川明史

第2代NJKFフェザー級チャンピオンの中島稔倫の愛弟子である大脇武がダウンを奪われながら左ストレートで逆転して倒し、レフェリーが止めるTKO勝利を収めた。

ひろあきを倒し、喜びが現れる久保田雄太

◆63.0kg契約3回戦

NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/62.7kg)
   VS
ちさとkiss Me(安曇野キックの会/62.9kg)
引分け1-0 / 主審:佐藤友章
副審:鈴木30-30. 亀川30-30. 川上30-29

◆ウェルター級3回戦

蛇鬼将矢(テツ/66.4kg)vs 雅喜(ReBORN経堂/66.6kg)
勝者:蛇鬼将矢 / TKO 3R 1:52 / 主審:佐藤彰彦

◆フェザー級3回戦

鎌田政興(ケーアクティブ/56.95kg)vs KAZUYA(JKKG/56.95kg)
勝者:鎌田政興 / 判定2-0 / 主審:鈴木義和
副審:佐藤友章28-27. 亀川28-27. 川上28-28

◆ミドル級3回戦

剱田昌弘(テツ/72.05kg)vs 田中STRIKE雄基(BFA-SEED/72.4kg)
勝者:田中STRIKE雄基 / 判定0-3 / 主審:佐藤彰彦
副審:亀川27-30. 鈴木27-30. 前田27-30

◆フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ/57.0 kg)vs 森田勇志(真門/56.45kg)
勝者:森田勇志 / 判定0-2 / 主審:川上伸
副審:亀川29-30. 前田29-30. 佐藤彰彦29-29

◆バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.45kg)vs 志門(テツ/53.4kg)
勝者:志門 / TKO 2R 1:54 / カウント中のレフェリーストップ
主審:佐藤友章

◆ウェルター級3回戦

元長(アルン/66.68kg)vs DAIKI(渡邉/65.5kg)
勝者:DAIKI / TKO 1R 1:58 / 主審:亀川明史

◆ライト級3回戦

神田拳児(Team S.A.C/60.5kg)vs ISSAY(テツ/60.5kg)
勝者:神田拳児 / KO 2R 2:19 / 3ノックダウン
主審:前田仁

2度目の防衛で、渡辺信久代表より認定証を受ける高橋一眞

《取材戦記》

棚橋賢二郎や安田浩昭はダウンした後、本能的に立ち上がってしまうであろう闘争本能が感じられました。他のノックアウトに於いても同様ですが、軽い脳震盪の状態で、意識朦朧の中では、「倒されると分かっていても本能的に立ち上がってしまうんだよ」と昔の選手から聞いたことがあります。完全に打ち抜かれた脳震盪の場合は眠らされ、戦いたくても意識が無い。

ボディーブローで倒された時は、腹全体が鈍痛で、息苦しくて立てたものではない。ローキックで倒された時は、脚が麻痺してしまって立ち上がろうにも立ち上がれない。意識も闘争心もあるのに立ち上がれない。悔しい負け方のようです。

今年の高橋三兄弟は6月に三男・聖人がフェザー級王座戴冠し、長男・一眞が2度目の防衛成功。しかし鎖国された団体内でチャンピオンになっても日本国内全体ではどうなのか、そんな疑問符が付いて回った昨年までのNKB。それが「KNOCK OUT」というリングで、または交流戦でその結果を残していることに喜ぶファンも多いでしょう。名選手に勝利し、名勝負を生み、負けることはあっても惨敗ではない。来年のNKBと高橋三兄弟に更に期待が持てる今年の活躍でした。

2019年第一弾興行は2月9日(土)後楽園ホールに於いて、出陣シリーズvol.1が開催されます。

この後のNKB年間興行は、4月13日(土) 後楽園ホール、4月28日(日)城東区民センター(NKジム主催)、6月15日(土) 後楽園ホール、10月12日(土) 後楽園ホール、12月14日(土)後楽園ホールの6回が開催予定となっています。

「KNOCK OUT」イベント出場を含め、活躍が目立った今年の高橋三兄弟

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

熱狂MAXのヤバい野獣たち! NJKF

YETI達朗の自信を持った右ストレートがクリーンヒット
YETI達朗の右ストレートでダウンした匡志YAMATO

YETI達朗の豪快KOが印象的な今年の活躍。白神武央(拳之会)から王座奪取した2月は僅差だったが、6月のクンタップ戦から続いて、いずれも左フックが決め手の2連続1ラウンドKOとなった。そこにはプロボクシングH’s STYLE ジムに出向いて吉野弘幸会長から指導を受けたパンチの強化があり、日本重量級での存在感が増してきた今、他団体交流戦があれば更なる飛躍が期待できそうなYETI達朗である。マイクアピールでは「NJKFはヤバい選手がいっぱい居るヤバい団体」と褒め言葉で持ち上げた。

フライ級ではデビュー8ヶ月の16歳でチャンピオンとなった松谷桐がアグレッシブな打ち合いに出る存在も目立つ。こちらも今後、他団体チャンピオンやムエタイ第一線級選手と戦ってどう試練を乗り越えていくか、来年の興行主役の期待が掛かります。

“頑張ったよ、ママ!”と勝利者インタビューで、応援してくれる高校生の息子に応えた伊織。家庭の空気が読めるような微笑ましいムードが流れる場内。キック界の流行語になりそうな一言だった。昔の殺伐としたリング上から比べて、時代が大きく変化したものである。

◎NJKF 2018.4th / 12月2日(日)後楽園ホール 17:00~20:50
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ日本実行委員会、NJKF

◆第11試合 WBCムエタイ日本スーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

第4代チャンピオン.YETI達朗(キング/69.55kg)
    VS
挑戦者NJKF同級チャンピオン.匡志YAMATO(大和/69.8kg)
勝者:YETI達朗が初防衛 / TKO 1R 2:13 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:竹村光一

開始から両者の蹴りでのやや様子見の後、パンチの交錯に移り、YETI達朗の重そうなパンチが当たり出す。タイミングを計ったところで、強いロングフック気味の右ストレートをヒットさせると匡志YAMATOがダウン。更に勢い付けてロープに詰めての接近戦で左右フックを連打し、右フックで2度目のダウンを奪ったところでレフェリーがストップするYETI達朗の豪快なTKO勝利となった。

更なる右ストレートで倒し切ったYETI達朗
「NJKFはヤバい団体」とアピールするYETI達朗

◆第10試合 58.0kg契約3回戦

WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(ESG/57.9kg)
   VS
NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.95kg)
引分け 三者三様 / 主審:宮本和俊
副審:神谷29-30. 和田29-29. 竹村30-29

三者三様となる見極めの難しい展開となった。両者の手数足数多く、互いのパンチのヒットも多かったが強烈にヒットは少なく、一進一退の攻防に見解が分かれた結果。パンチで出る勢いはNOWAYにあったが、新人は下がり気味でもヒットが目立ち持ち堪えた。

互角の展開ながらパンチの攻勢が目立ったNOWAY
僅差ながら積極性で優った波賀宙也

◆第9試合 56,5kg契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA/56.5kg)
   VS
ペットワット・ヤバ・チョーベース(タイ/56.05kg)
勝者:波賀宙也 / 判定2-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本29-28. 和田29-29. 竹村29-28

離れた距離での蹴り合いから、首相撲からヒザ蹴りが主体の攻防が長く続く。ヒジ打ちも加え、次第に先手を打って圧力掛けて出た波賀が判定勝利を掴む。

◆第8試合 NJKFフライ級タイトルマッチ 5回戦

第11代チャンピオン.松谷桐(VALLELY/51.0→50.8kg)
   VS
挑戦者同級4位.池上侑季(岩崎/50.7kg)
勝者:松谷桐が初防衛 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:宮本49-47. 多賀谷49-47. 竹村49-48

ローキックの様子見からパンチ、ハイキック、前蹴りを織り交ぜていく両者。両者パンチの被弾も恐れずスタミナ切れない攻防が続いていく。ハイキックや前蹴りのヒットが多く、更にパンチや蹴りで圧した後、手を止めずに打っていく勢いがあったのは松谷で、踏ん張る池上を突き放した。

松谷桐が優った突進ハイキック

◆第7試合 64.5kg契約3回戦

ISKA・M・IC・ライトウェルター級チャンピオン.宮島教晋(誠至会/64.2kg)
   VS
NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/63.9kg)
勝者:畠山隼人 / 判定0-2 / 主審:和田良覚
副審:宮本29-29. 多賀谷28-30. 神谷28-30

宮島は左ミドルキックを多発し、畠山は左右パンチの連打で出る。宮島の蹴りを上回る畠山のパンチが徐々にクリーンヒットが増やし、判定勝利を掴む。

大田原友亮の格差を見せ付ける重いハイキック

◆第6試合 57.0kg契約3回戦

HIRO YAMATO(大和/56.6kg)vs大田原友亮(B-FAMILY NEO/56.5kg)
勝者:大田原友亮 / TKO 2R 2:31 / ヒジによるカットで悪化によるレフェリーストップ
主審:竹村光一

ムエタイスタイルの両者だが、本場タイでの経験値が大きい大田原が経験値でタイミングを見極め、左ハイキックや前蹴りで突き飛ばす。HIROのパンチと蹴りにやや下がる大田原だが、しっかりHIROの動きを見ており、カウンターのヒジ打ちが見事にヒットするとHIROの額のカットに成功。ドクターチェック後、パンチで出て来るHIROを組んで転ばせ、応戦している間に流血が酷くなり、2度目のドクターチェックを受け、続行可能かと見えたがレフェリーが止めて試合は終了。大田原のTKO勝利となった。

◆第5試合 NJKF女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級タイトルマッチ 3回戦(2分制)

チャンピオン.伊織(T-KIX/51.3kg)vs同級1位.三宅芳美(OGUNI/52.0kg)
勝者:伊織 / KO 1R 1:44 / 2ノックダウン制によるKO / 主審:宮本和俊

長い手足で芳美の顔面に前蹴りを入れた序盤からヒザ蹴りに持ち込むと、ボディーをカバーし、効いた様子の芳美に更にヒザで攻めると、コーナーに詰まった芳美はスタンディングダウンを取られる。続けてボディーに狙いを定めた伊織がヒザ蹴りで攻めるとレフェリーがストップした。伊織は息子さんが高校3年生で、「頑張ったよ、ママ!」とメッセージを送った。

伊織が開始早々からボディーに狙いを定めた
「頑張ったよ、ママ!」とアピールする伊織

◆第4試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級5位.鰤鰤左衛門(CORE/53.2kg)
    VS
NJKFバンタム級7位.清志(新興ムエタイ/53.35kg)
勝者:清志> / TKO 3R 1:02 / ハイキックによるダウンでレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

◆第3試合 61.0kg契約3回戦

NJKFライト級6位.野津良太(ESG/60.8kg)
    VS
NJKFスーパーフェザー級4位.梅沢武彦(東京町田金子/60.9kg)
勝者:梅沢武彦 / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷28-30. 竹村27-30. 宮本27-29

◆第2試合 スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級6位.木村弘志(OGUNI/63.3kg)
    VS
MA日本スーパーライト級4位.増井侑輝(真樹AICHI/63.5kg)
勝者:増井侑輝 / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:多賀谷28-30. 神谷29-30. 宮本28-29

◆第1試合 バンタム級3回戦

雨宮洸太(キング/53.25kg)vs翔YAMATO(大和/53.0kg)
勝者:翔YAMATO / TKO 2R 2:21 /
有効打によるカットの悪化でレフェリーストップ

王座初防衛を振り返る松谷桐

《取材戦記》

宮島教晋の持つ王座は“ISKAのムエタイルールのインターコンチネンタル王座”。文字数が長くなるので、別枠記載としました。

伊織がヒザ蹴りで三宅芳美をグロッギーに追い込む中、レフェリーが「1回目のスタンディングダウンで止めようかと思った」と言うほど強烈にヒットし、腹を押さえる行為に出た芳美。どこまでやらせるかはレフェリーの判断ですが、追撃を受けたところで止めに入ったタイミングは順当なところでした。

先日の立嶋篤史の試合など、ダメージはあるが、なるべく長く戦わせてやろうというレフェリーの判断、配慮を感じる時があります。一方で「早いよ、何で止めるんだ!」と言うセコンドの抗議があるのも事実。

先日10月7日の舟木昭太郎さんトークショー内の「増沢潔、サミー中村両氏を称える会」での参加したレフェリーの意見では、こういう抗議には、「危ないから止めるんです」と率直に応えると言う主張もありました。最近はレフェリー判断を尊重される傾向にありますが、ルールでの明記の難しい境界線での判断は、延々と語られる終わりなきテーマなのかもしれません。

12月9日はNJKF若武者会主催のDUEL16が大森ゴールドジムで16時30分より開催。来年も連盟主催興行は4回と少ないが、若武者会などやジム主催興行が増え、年間でプロ興行は12回。現在に於いては少なくはない。2019年最初のNJKF連盟主催興行は2月24日(日)後楽園ホールで開催されます。

加藤愛香さん。2年務めたマスコットガールを卒業、最後の登壇

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!