コロナ禍で2020年から休眠に入ったムエタイオープンがようやくここに来て再開。
全試合通じてノックアウト決着は一つも無く、ノックダウンも一つも無かったが、判定はユナニマスデジションで、それぞれの試合は要所要所でテクニックが見られる飽きない展開の試合が続きました。壱センチャイジムは攻勢を維持した流れで、より一層の成長が見られる勝利。
蒔センチャイジムは石川直樹の老獪なテクニックに翻弄される敗戦。
石川直樹は若手に立ちはだかる存在となったこの頃である。
◎MuayThaiOpen 48 / 8月24日(土)ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)17:00~20:40
主催:センチャイムエタイジム /
◆第9試合 56.0kg契約3回戦
KNOCK OUT(RED)スーパーバンタム級チャンピオン.壱・センチャイジム(=与那覇壱世/1997.8.15沖縄県出身/センチャイ/ 55.95kg)38戦28勝9敗1分
VS
ファーモンコン・ソー・ウティトラム(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/1994.6.24タイ国出身/ 55.7kg)121戦90勝26敗5分
勝者:壱・センチャイジム / 判定3-0
主審:ヨンサック・ナ・ソンクラー(タイ)
副審:少白竜30-28. 大澤29-28. 和田30-28
壱世は初回から左ミドルキックで圧力を掛け、ファーモンコンをロープ際へ下がらせる展開。ファーモンコンが蹴って来ても冷静に巧みに躱すディフェンスも見せる。
ファーモンコンは前進せず、テクニックは有りながら倒す気の無い、倒されないだけの動きしかしない在日タイ選手に有りがちな省エネパターンだが、テクニックでは壱世が完全に上回った展開で完勝。残り30秒ほどでセンチャイ会長から「勝ってるからもういいよ」と攻めなくていいという指示。それに応じて距離を取って終了を待つ。壱世が圧倒した判定勝利。
壱世「ファーモンコンは凄いテクニックある選手でしたが、打ち合いに持ち込もうとしても付き合ってくれないし、ミドルキックの蹴り合いで勝つしかなかったです。前に出てくれない凄い難しい選手でした。」
リングサイドで応援団に囲まれ、なかなか控室に戻れない壱世。というより楽しそうに勝利の会話が弾んでいました。
◆第8試合 55.0kg契約3回戦
蒔センチャイジム(=佐藤蒔音/センチャイ/2003.7.8東京都出身/ 54.8kg) 5戦3勝2敗
VS
石川直樹(元・日本フライ級Champ/Kickful/1986.8.18埼玉県出身/ 54.8kg)
49戦31勝(14KO)10敗8分
勝者:石川直樹 / 判定0-3
主審:谷本弘行
副審:少白竜28-29. 大澤27-30. 和田27-30
蒔音“まくと”は昨年12月10日のデビューで、まだ1年足らずで石川直樹と対戦。ヒザ蹴り地獄に巻き込まれるかと予想される中、ミドルキックからハイキックで果敢に攻める。更に右ストレートも打ち込むが石川直樹は簡単には喰わない。
石川直樹はカーフキックも多様し、蒔音の動きを鈍らせた。終盤にはヒジ打ちで蒔音の頬にヒット。手数とパワフルに出るのは蒔音だが、その技を殺して蹴り返すのはベテランの技が上手かった石川直樹。
首相撲からヒザ蹴り地獄に追い込むには至らなかったが、多様な技で蒔音を翻弄した。
蒔音=「石川さんメッチャクチャ強くて、上手さはありましたね。全部経験の差で持っていかれたなあという感じで、まあ経験不足ですね。悔しいんで石川さんとはもっとレベルアップしてからもう一回やりたいですね。次もしやる機会があるとしたら、カーフキックは絶対貰わないようにします。最初にかなり効いちゃって。今度は蹴り返しますよ。思いっ切りカーフ以上のものを。左頬にヒジ打ち貰ってしまったのもダメでしたね。」と結構、明るく丁寧に応えてくれました。左頬は少し腫れていましたが、斬られるほどではなかった。
◆第7試合 女子55.0kg契約3回戦
ルイKMG(元・S-1女子日本S・FLY級Champ/クラミツ/1997.2.19/神奈川県出身/ 54.9kg)
16戦11勝5敗
VS
ホントン・コー・プラサートジム(1996.9.6タイ国出身/ 55.0kg) 51戦34勝16敗1分
勝者:ルイKMG / 判定3-0
主審:ヨンサック・ナ・ソンクラー(タイ)
副審:谷本29-28. 大澤29-28. 和田29-28
ホントンはミドルキックの勢いはあるが、ルイがブロックし、凌げると確信すると前進するのみ。ロープ際へホントンを追い込む主導権支配に至る。終盤にはルイがより勢いを増し、ホントンをより下がらせる展開。首相撲もルイが組み負けずヒザ蹴りに繋げ優った。
◆第6試合 65.0kg契約3回戦
弘センチャイジム(=大森弘太/センチャイ/2001.11.14東京都出身/ 64.95kg) 9戦5勝4敗
VS
コムキョウ・ノー・ナクシン(2002.6.30タイ国出身/ 64.7kg) 79戦56勝21敗2分
勝者:コムキョウ・ノー・ナクシン / 判定0-3
主審:神谷友和
副審:谷本28-30. 大澤28-30. 和田28-30
コムキョウは“Komkeaw Nor Naksin”という綴り。カタカナで書くとどうもタイ語の響きは感じず、タイ語発音によりますが、“コムケーウ”が正しいでしょう。
初回は蹴りから首相撲。接近戦で時折、コムキョウのヒジ打ちが繰り出される中、弘太の額を斬ることに成功。離れて戦えば弘太の前進で蹴りからパンチで追うが、コムキョウは難なく躱して接近戦に持ち込み、上手さで優っていくが、弘太を下がらせるほどの勢いは無いまま終了。
◆第5試合 58.0kg契約3回戦
山下明涼真(TSK japan/2003.1.24神奈川県出身/ 57.35kg) 3戦3勝
VS
森本直哉(無所属/1991.7.23沖縄県出身/ 57.9kg) 24戦10勝14敗
勝者:山下明涼真 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:和田30-27. 大澤30-28. 神谷30-29
初回からパンチと蹴りの攻防から山下明涼真のヒザ蹴りを加えた攻撃力が優っていき、流れ的には大差となって判定勝利。
◆第4試合 女子45.0kg契約3回戦(2分制)
ロウ・イツブン(1995.5.26中国出身/ 44.95kg) 4戦1勝3敗
VS
友菜(Team ImmortaL/2000.2.16秋田県出身/ 45.0kg) 9戦1勝4敗4分
勝者:ロウ・イツブン / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)
首相撲からのヒザ蹴りになる流れが多く、離れるとロウ・イツブンの前蹴りが友菜のアゴや顔面をヒットする攻勢の流れを続けて判定勝利。
◆第3試合 57.5kg契約3回戦
光センチャイジム(センチャイムエタイ錦糸町/2003.10.12東京都出身/ 57.25kg)1戦1敗
VS
富田エレデネ(クロスポイント吉祥寺/2002.10.15東京都出身/57.4kg) 2戦1勝1敗
勝者:富田エレデネ / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)
蹴りとパンチの互角の攻防から富田エレデネが徐々に調子を上げ、第3ラウンドには圧倒する流れで終了。
◆第2試合 女子49.0kg契約3回戦(2分制)
戸田史(バンゲリングベイ/1997.11.4東京都出身/ 48.65kg)1戦1敗
VS
山崎希恵(クロスポイント吉祥寺/1997.5.17東京都出身/48.75kg)2戦2勝
勝者:山崎希恵 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)
手数とヒット数で優った山崎希恵。先に当て圧倒する気力が勝利を導いた。
◆プロ第1試合 フライ級3回戦(2分制)
はると(岡山/2007.1.15岡山県出身/ 48.25kg)3戦3敗
VS
真虎(Kick Life/2002.6.28埼玉県出身/ 50.65kg)13戦1勝10敗2分
勝者:真虎 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)
ローキック中心に真虎が攻勢を維持。はるとはパンチで攻め返すが、真虎がローキックで主導権支配した展開で勝利を導いた。
◆オープニングファイト アマチュア43.0kg契約3回戦(2分制)
大久保海成(橋本道場/2010.8.10東京都出身/ 42.7kg)
VS
ハルク・チャロンチャイ(team kuntap/2010.8.12千葉県出身/ 42.55kg)
勝者:大久保海成 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)
スーパーバイザー 元・BBTV審判部代表 ランシットスタジアム審判部長
ヨンサック・ナ・ソンクラー(Yongsak Na Songkhla)
《取材戦記》
スーパーバイザーとして、タイ国ランシットスタジアム審判部長、ヨンサック・ナ・ソンクラー氏を招聘したことはセンチャイさんらしさある箔が着く興行でした。
プロモーターのセンチャイ氏は、
「今回の興行はまあ上手くいったと思います。壱世はアグレッシブに良い試合してくれて、相手も凄いベテランで注目して観ていました。残り30秒ぐらいで壱世に「勝ってるからもういいよ」と言ったのは、ファーモンコンは負けてるのに攻撃して来ない。ならもういいや、盛り上げないのは勿体無いなあと。すぐ下がろうばっかりでファイトマネーだけ持って行って試合見せてくれない。本当にズルイです。
蒔音は経験値で敵わなかったですけど、負けても内容は悪くないですね。逆に上手くなって行けますし。」とリング周りを片付けている合間に応えてくれました。
11月10日にはNJKF興行にて開催されるKICKBOXING JAPAN CUP 55kg級トーナメント初戦で、嵐(キング)と対戦が予定されている壱世。好調な二人の対戦が期待されています。
ワイクルーショーはKAYOKOさんとAKEMIさんの二人の舞いと、リカ・トーングライセーンさん一人の舞いが披露されました。以前より柔らかい動きになった感じもしますが、男子の舞いとは違う美しい躍動感でした。
ムエタイオープンは年内にも予定されており、来年以降は通常の年4回ほどの開催を予定されている模様です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
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