2017年キックボクシングの展望と数々の年始め興行!

タイでの試合とボランティア活動が多い志朗。2017年も両面で期待される
志朗に続く治政館ジムの期待の麗也もタイでの試合を意欲的にこなす

2016年から続く過酷な試練がムエタイ殿堂チャンピオン達には待ち受けています。T-98(今村卓也)と梅野源治はムエタイチャンピオンのまま1年を過ごせるか。

T-98は昨年6月に王座奪取し、10月に現地ラジャダムナンスタジアムで初防衛を果たす、日本人では初の快挙でした。これはT-98自身が目指したことでしたが、観衆は少ない中での防衛戦で、層の薄い重量級で今後、高評価を残すには、今考えられる大物と現地で防衛戦を積み重ねることで克服していくことでしょう。

梅野源治は今年、「KNOCK OUT」の常連メインイベンターで毎度の出場が予定されています。年間6度の興行予定がある中、更にこの合間を縫って半年とされる4月23日に防衛戦期限を迎えるラジャダムナン王座防衛戦を行なわなければなりません。
どちらも強豪が待ち構えるイベントで、強い梅野がどこまで短い試合間隔で激戦を続けられるか注目されます。タイ同級ランカーにも梅野という難敵は研究されるほどなので、群集が押し寄せる現地スタジアムで防衛を果たすことも陣営の計画にはあるでしょう。

◆ムエタイ二大殿堂王座に何人の日本人選手が挑戦するか?

更にこれらの最高峰とされるムエタイ二大殿堂王座に、今年の暮れまでに日本人選手が何人挑戦し、何人チャンピオンが誕生しているかも話題のひとつですが、「藤原敏男氏が獲った時代から比べれば、ずいぶんムエタイ王座挑戦への道が楽になったものだ」と語った当時を知るベテラン記者がいました。獲るだけでなく伝説を作る名チャンピオン誕生を、その兆しを作って欲しい数々のビッグイベントに期待が掛かる2017年であります。

◆1月6日(金)23時からTOKYO MXTVで「KNOCK OUT」がレギュラー放送に!

12月5日に初回興行をKO続出の大成功で終らせたイベント「KNOCK OUT」は今後も好カードでTOKYO MXTVで1月6日(金)23:00より、平成期以降は初となる毎週の地上波レギュラー放送が始まります。

1月8日に開催される新日本キック治政館ジム興行「WINNERS 2017.1st」のポスター

◆新年は1月8日(日)新日本キック「WINNERS2017.1st」で幕開け

年初めの国内興行では1月8日(日)後楽園ホールでの新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS2017.1st」で、ISKAムエタイ世界バンタム級チャンピオン(55kg級).志朗(松本志朗/治政館)が出場。2016年1月に滝澤博人(ビクトリー)を圧倒し5R・TKOで倒したバカイペット・ニッティサムイ(タイ)と、56.0kg契約5回戦で、勝者がファイトマネーを総取りするというタイではよく行なわれる両陣営納得の条件で賞金マッチを戦います。観衆は観ているだけですが、お金が懸かるとより試合が熱く、注目と緊張が高まります。

麗也選手は昨年、日本フライ級王座を返上し、世界タイトルを目指し歩みはじめており、2017年は世界タイトルに繋がる闘いを続け、目先の目標はISKA世界王座になるでしょうが、更なるその先のムエタイ二大殿堂王座を見据えての通過点となるでしょう。その今年の初戦は元・ルンピニー系スーパーフライ級2位.グッサコンノーイ・ラチャノン(タイ)と対戦します(当初対戦予定の鈴木真彦は負傷欠場です)。

◆1月22日(日)はREBELSとJKI合同でチャンピオンカーニバル

1月22日にはディファ有明にてREBELSと日本キックボクシングイノベーション(JKI)との合同興行でチャンピオンカーニバルとして豪華開催。ノンタイトル戦を含め、両団体王座やWPMF、WBCムエタイなどの日本タイトルなどの複雑な国内王座が絡むロングタイム興行となります。

NKB傘下の日本キックボクシング連盟興行ポスター、進化が感じられる団体

◆2月5日(日)は日本キックボクシング連盟・神風シリーズvol.1

2月5日(日)にはNKB傘下の日本キックボクシング連盟・神風シリーズvol.1が開催。NKBミドル級王座決定戦、1位.田村聖(拳心館)vs 2位.西村清吾(TEAM-KOK)の10月2日に引分けた決着戦として行なわれます。高橋三兄弟は長男と次男出場、長男・一眞はNKBライト級ランカーの洋介(渡辺)と対戦。3連敗からの巻き返しに力を注ぎます。

次男の現NKBバンタム級チャンピオン.亮は元・WBCムエタイ日本バンタム級チャンピオンの知花デビット(エイワスポーツ)とチャンピオン経験あるもの同士の対決に挑みます。KNOCK OUTを意識したアピールが多いNKBだけに昨年からより活気ある興行が増えています。

そして2月12日(日) 大田区総合体育館で開催される注目の「KNOCK OUTvol.1」に繋がります。このイベントに相応しいと人選された3試合が決定しています(12月28日現在)。

梅野源治と対戦するのは、タイで10年近い選手生活で、国際的イベントに成長した「MAX MUAYTHAI」で昨年9戦6勝3分の戦績を残し、巧みな首相撲とヒジ打ちが得意で、前進するのみのファイタータイプ、ワンマリオ・ゲーオサムリット(スペイン)が選ばれました。

互いのぶつかり合いで一瞬の打ち合いで終る衝撃的結末を予感させますが、梅野は12月28日のカード発表記者会見で「心を折る、この時点でKO以上の価値があり、KOでなくても技術戦で相手の心を折れる試合がしたい」と語り、12月5日の初戦判定勝利もシリモンコンが心折れていた終盤が思い起こされます。

「守りに入った相手をどうすればKOできるかもトレーナーと研究中」と言い、「欧米系はパワーがあるとか体幹が凄いとか言われますが、それを感じたことは一回も無く、弱くてテクニックも無く単純にやり易く、タイ人とやる方がいちばん難しい」と言う、なかなか的を得た、欧米系のレベルも感じ取れる梅野源治の発言でした。

「KNOCK OUT vol.1」メインイベント、“king”梅野源治 vs “アバンサール”ワンマリオ・ゲーオサムリット

◆61.5kg契約 5回戦

ラジャダムナン・ライト級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX)
vs
ワンマリオ・ゲーオサムリット(元・WPMF世界ライト級C/スペイン)

“WONDER BIRD”不可思 vs“クレイジーピエロ”山口裕人

◆64.0kg契約 5回戦

WPMF日本スーパーライト級チャンピオン.不可思(クロスポイント吉祥寺)
         vs
WBCムエタイ日本スーパーライト級チャンピオン.山口裕人(山口)

“RIZING BOM”引藤伸哉 vs “褐色のナルシスト”健太

◆67.0kg契約 5回戦

WPMF日本ウェルター級チャンピオン.引藤伸哉(ONE’S GOAL)
         vs
WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E・S・G)

一般の方には何か不可解と思われる同級チャンピオン対決ですが、上記予定文面にも出ているように、これが階級によっては10人も国内同級チャンピオンが居る不可解なキック系業界の王座乱立になっています。

これらの選手は複数王座を持っている選手も居て、まだしばらく改善はされないでしょうが、今年の「KNOCK OUT」の影響で、多くの国内王座より、名のある選手同士のビッグマッチが注目される時代に突入となり、多くの団体や興行が「KNOCK OUT」の出場を意識し、またはここに勝るイベントを目指す団体も出てくるほどキック業界が上昇志向となるでしょう。

「KNOCK OUT」が活動1年を迎える年末に、世間に与える影響はどれほどか、楽しみな1年となるでしょう。

「KNOCK OUT」を表と裏で牽引する小野寺力プロデューサーと梅野源治チャンピオン

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

7日発売!タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年2月号!
『NO NUKES voice』第10号[特集]基地・原発・震災・闘いの現場

2016年のキックボクシング界──10大ニュースで振り返る

止まることなく突き進む那須川天心18歳

  
今年のキックボクシング界も一年を振り返ると大きなことから小さなことまで、いろいろありました。
大きな出来事では、
《1》T-98(タクヤ/今村卓也)と梅野源治がムエタイ殿堂ラジャダムナンスタジアム王座を奪取
《2》ムエタイチャンピオンを倒すまで止まることなく突き進む18歳・那須川天心の躍進
《3》「NO KICK NO LIFE」から「KNOCK OUT」へ、小野寺力のイベント発進
これら3つのニュースは他の出来事が霞んでしまうほど業界に大きなインパクトを与えました。さらに、
《4》もう一人のムエタイチャンピオン、初防衛成功の福田海斗
《5》最軽量級ながら15歳で世界に挑んだ高校一年生、吉成名高
《6》激闘を繰り返した蘇我英樹とルンピニー王座に2度挑戦した一戸総太の引退
《7》ムエタイ日本王座認定組織がさらに二つ発進
《8》NKB傘下ではデビューから7連敗して初勝利を挙げた岩田行央の小さな物語
《9》高橋三兄弟は試練を受入れ、前向きに踏ん張る現在
《10》キックボクシング創始者・野口修さん永眠
といった7つの出来事を加えた10大ニュースで2016年のキックボクシング界を振り返ってみましょう。

◆《1》T-98と梅野源治がムエタイ殿堂ラジャダムナンスタジアム王座を奪取!

前年、ムエタイ王座に挑戦したのは7人で全敗、今年はT-98と梅野源治の二人のみでしたが、二人とも奪取成功。T-98は初防衛戦を現地ラジャダムナンスタジアムでKO勝利し、日本人初の現地防衛を果たしました。

第三のムエタイ殿堂王座となるタイ政府公認下にあるタイ国ムエスポーツ協会フライ級王座を2015年12月に奪取した福田海斗(18歳/キングムエ)は、7月にディファ有明で不利な展開を見せつつポイント有利に進め初防衛に成功。実力は充分あることを見せてくれた試合でした。減量苦もあってその後王座返上していますが、タイ現地で活躍を続けています。

獲っただけでは伝説に成り難い重量級の宿命。今後の冒険が期待されるT-98[写真左]。ついに獲ったラジャダムナン王座、同ライト級、藤原敏男を超える快挙に期待したい梅野源治[写真右]
KNOCK OUTプロデューサー小野寺力氏にも注目が集まる2017年

◆《2》那須川天心の躍進──ムエタイチャンピオンを倒すまで止まることなく突き進む18歳

幼少期からジュニアキックで経験を積んだ若年層では、大きく差を付けている感のある存在が那須川天心で、数々の王座を獲っている宮元啓介(橋本)とルンピニー系スーパーフライ級チャンピオンのワンチャローン・PKセンチャイジム(タイ)を大技でKOした試合は驚かされる結果でした。やがて壁にブチ当たると言われつつ、未知数の才能に注目されています。

◆《3》「NO KICK NO LIFE」から「KNOCK OUT」へ、小野寺力のイベント発進

キックボクシング創設“満50周年”を迎えた今年、「NO KICK NO LIFE」から新たな展開に船出したイベント「KNOCK OUT」が12月5日に開催されました。タイトルどおりの好カードを目指したマッチメイクからKO決着が続出する展開。

「KNOCK OUT」の代表、小野寺力氏は老舗・目黒ジム所属で日本フェザー級王座に就いた名チャンピオン。老舗で学んだキックボクシングから本来のノックアウトの醍醐味を魅せる興行を目指していました。ここへの出場を意識し「キックボクシング界は面白くなっていきます」とマイクで発言する選手が多い中、「そうは上手くいかないよ」という声があるのも事実。これがキック50周年を区切りに新しい時代を築けるか、(株)ブシロードという大きな後ろ盾が力強い存在ですが、キックボクシング業界全体がどう動いていくか、2017年の大きな注目でしょう。

◆《4》17歳のムエタイチャンピオン福田海斗と《5》WMC世界王座に15歳で挑んだ吉成名高

タイが主戦場となり、賭けの対象となる実力もある福田海斗(17歳)や石井一成(18歳)もまだ高校生の十代。

15歳でWMCの世界王座に挑んで敗れた吉成名高もまだ背の伸びる身体の成長期。タイが主戦場では選手層が厚く、接戦で勝ったり負けたりでも今後、サバイバルに勝ち上がる期待が持てる現在です。

タイが主戦場で激しいランキング戦を戦う福田海斗。三大から二大殿堂へ、真の最高峰を目指す[写真左]。プロとして若過ぎるほど、あどけない吉成名高は15歳。才能を発揮するのはこれから[写真右]

◆《6》激闘を繰り返した蘇我英樹とルンピニー王座に2度挑戦した一戸総太の引退

激闘を繰り返してきた蘇我英樹が地元の市原臨海体育館で、爆腕・大月晴明を相手に引退試合。前年5月にも激闘の末、判定で敗れている蘇我でしたが、最終試合を華やかに飾る意図は全く無く、激闘のKO負けで締め括る後、引退式を行ないました。

WPMF世界王座で2階級制覇、タイ国ルンピニー王座挑戦は奪取成らずも2度挑戦経験を持つ一戸総太も最終試合を判定勝利後、引退式を行ないリングを去りました。

激闘を繰り返した蘇我英樹も第二の人生を歩み始めた[写真左]。ルンピニー王座には届かなかったが、悔いの無いキック人生だった一戸総太[写真右]
ラジャダムナン王座初挑戦から3年、後が無い中、来年に懸ける江幡ツインズ

◆《7》ムエタイ日本王座認定組織がさらに二つ発進

乱立する国内王座のキックボクシング界に於いて、2009年以降、ムエタイという分野の王座はWBCムエタイと、WPMF傘下の日本王座が誕生し、今年更に二つ誕生したのがWMC日本王座と、前年8月に発表のあったルンピニー・ボクシング・スタジアム・オブ・ジャパン(LBSJ)の日本王座でした。いずれも大きなムエタイ組織の傘下にありますが、さすがにここも増え過ぎではあります。活性化していくことが大事ですが、いずれその差は出てくるでしょう。

今年、ムエタイ王座再挑戦があるかと思われた江幡ツインズは更に経験を積みながら、現地、ラジャダムナンスタジアムでの試合も経験、5月に敗れた江幡塁と重森陽太は日本で雪辱に成功。7月に出場した江幡睦は現地でKO勝利を飾り、昨年3月のラジャダムナン王座挑戦失敗から今年12月までで6連勝中。また逃すことは許されない中、来年こその再挑戦を待つ日々。

たまたま拾われた話題から注目を浴びる岩田行央、続編に期待してます

◆《8》36歳二児の父・岩田行央の挑戦──“7連敗からの初勝利”

ひとつ指摘されなければ気がつかない話題で、元・NKBウェルター級チャンピオン.竹村哲氏が試合パンフレットの「PICKUP NKB」で披露した記事からですが、NKB傘下の日本キック連盟で2009年7月のデビューから7連敗し、今年4月にデビュー戦の藤田洋道(35歳/ケーアクティブ)に1R・KOで初勝利を挙げた岩田行央(36歳/大塚)がいます。

岩田は二人の子供が居る上にデビュー戦後に離婚。シングルファーザーとなってブランクを作りつつも、子供の後押しもあって再起するも更に連敗し、周囲の引退の勧めにも笑って受け流し、とにかく1勝すること心に誓い、ようやく初勝利した瞬間は格別な想いだったでしょう。12月の再戦では1ラウンドに2度ダウンを奪いながら2ラウンド目に逆転されるダウンを奪われるも激しい攻防の末引き分け。初勝利より場内を沸かす熱い試合を展開しました。こんな新鋭3回戦クラスで将来性も無くても、選手ひとりずつ拾えばそれぞれの物語が存在するものですが、“7連敗からの初勝利”が導いた物語となりました。

日本キック連盟内で期待のエース、高橋三兄弟。それぞれ課題もあるが話題もある。倒すことに焦らず、前進あるのみ
32歳でキックボクシングを立ち上げ、第一線級を退いても82歳までキック界を見守った野口修氏

◆《9》高橋三兄弟は試練を受入れ、前向きに踏ん張る現在

同じ日本キック連盟内で期待のエース、高橋三兄弟も長男・一眞は他団体進出では苦戦が続きますが、KO狙いとスター性から「KNOCK OUT発表記者会見」での初戦ビッグマッチに起用された経緯がありました。次男・亮は話題の佐々木雄汰(尚武会)に判定勝利も、他団体興行で敗戦を味わい、三男・聖人はまだ3回戦。行く先の試練はあっても経験値を増やし、焦らず乗り越えて欲しい次期エース格の三兄弟です。

◆《10》キックボクシング創始者・野口修氏永眠

昭和41年に日本でキックボクシングを作り、ブームを興した野口修氏が今年3月に永眠されました。ここ数年は会場に足を運ぶのもやっとの状態で、7~8年ほど前から体調を崩し、手術で入退院を繰り返す事情もありました。2014年8月の新日本キックボクシング協会代表・伊原信一氏主催の「キックボクシング創設50周年パーティー」にはしっかりした足取りで来場していたものの、その後、会場に姿を現すことは極端に少なくなっていました。このように成長した現在のキックボクシング界、または御自身の理想から外れたキック界を見てどう想うか、その聞き難い本音を聞きたいところではありました。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』第10号[特集]原発・基地・震災・闘いの現場
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!

昭和のキック、絶対王者への道! 武士シリーズ vol.5 とSOUL IN THE RING 14

チャンピオンたちがそれぞれ先を目指した中での意地の勝利。村田裕俊(八王子FSG)はタイ修行成果でライバル・高橋一眞(真門)を破って王座戴冠した自信と次なるメジャーリングへの野望。勝次(藤本)は歴代先輩チャンピオン記録に迫り、追い抜く目標と共にラジャダムナン王座を目指す。

村田裕俊vs優介。村田の得意の組んでのヒザ蹴りが主導権を奪った(2016年12月10日)
村田裕俊vs優介。ヒジで切られた優介だが、反撃及ばず村田に屈す(2016年12月10日)

◎武士シリーズ vol.5
12月10日(土)後楽園ホール17:30~
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆NKBフェザー級タイトルマッチ 5回戦(過去3戦して1勝1敗1分)

チャンピオン.村田裕俊(八王子FSG/56.9kg)vs 同級2位.優介(真門/56.9kg)

勝者:村田裕俊 / KO 5R 2:36 / カウント中のタオル投入
主審:前田仁

村田は長身を利したヒザ蹴りで優位に立ち、優介が懸命に攻めてもその踏ん張りを許さず、村田は以前より自分の距離に持っていくのが上手く、ヒジで切ってパンチでダウンを奪い、優介陣営の棄権を誘い込むTKO勝利。

安田一平vsSEIITSU。SEIITSUも8年前に王座挑戦の経験を持つベテラン。安田も気を抜けなかった中、パンチで何とか勝る(2016年12月10日)

◆67.0kg契約5回戦

NKBウェルター級チャンピオン.安田一平(SQUARE-UP/67.0kg)vs 同級6位.SEIITSU(八王子FSG/66.55 kg)

勝者:安田一平 / 判定3-0 / 主審 川上伸
(副審 佐藤友章48-47. 亀川48-46. 前田48-46)

強いパンチを持つ安田が積極的に攻め、3ラウンドには左フックとパンチ連打での2度のダウンを奪い、試合ストップかと思わせるほどだったが、4ラウンドにはSEIITSUの左ハイキックを貰ってしまい、5ラウンドへ引きずって更にハイキックを貰ってダウンする安田。勿体無い逆転を許すも前半の稼ぎで何とか判定勝利。

◆ウェルター級 3回戦

NKBウェルター級2位.岡田拳(大塚/66.2kg) vs 3位.塚野真一(拳心館/69.35kg)
勝者:岡田拳 / KO 3R 2:10 / 3ノックダウン
主審:鈴木義和

次期挑戦権を持つ約7年前のチャンピオンの岡田が序盤はやや苦戦も3ラウンドにパンチとローキックで3度のダウンを奪う圧勝で前哨戦を飾る。

◆ウェルター級 3回戦

NKBウェルター級8位.野口大輔(テツ/66.0kg) vs 9位.上温湯航(渡辺/66.2 kg)
勝者:上温湯航 / 判定1-2 / 主審:佐藤友章
(副審:川上29-29. 佐藤彰彦29-30. 前田29-30)

◆ライト級3回戦

NKBウェルター級5位.マサ・オオヤ(八王子FSG/62.5kg) vs NKBライト級8位.洋介(渡辺/62.3kg)
勝者:洋介 / TKO 1R 2:02 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

他、7試合を割愛しています。

岡田拳vs塚野真一。岡田、7年前のチャンピオンのパンチ復活!(2016年12月10日)
江幡睦vsクルンシン。すべてがキレる技、ハイキックも打倒ムエタイへ自信あり(2016年12月11日)

◎SOUL IN THE RING14
12月11日(日)後楽園ホール17:00~
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/53.75kg) vs クルンシン・ペップームムエタイ(タイ/52.3kg)
勝者:江幡睦 / KO 2R 2:43 / カウント中のタオル投入
主審:仲俊光

いよいよ煮詰まってきた最高峰へ再構想を描く江幡ツインズ。この日の睦も圧勝で昨年3月のラジャダムナン王座挑戦失敗から6連勝。以前からアピールするとおり、来年の最高峰再挑戦の計画が進んでいるところでしょう。パンチとローキックの冴えは抜群の技。少々の被弾もまともには喰わない。隙を見つけ、ボディブローによる2度のダウンで勝利を掴む。

江幡睦vsクルンシン。先手必勝、パンチも当て勘抜群(2016年12月11日)
勝次vsジョニー・オリベイラ。沢村忠のような形相でハイキックを繰り出す勝次、似ている!(2016年12月11日)

◆日本ライト級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.勝次(藤本/61.23kg) vs 日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.8kg)
勝者:勝次 / KO 2R 1:54 / テンカウント
主審:椎名利一

メインイベントは江幡睦でも、注目となったのは勝次の防衛戦。勝次は半年に一度のペースで防衛を重ねるキック本来の道を進む老舗の拘り。過去4戦3勝1分の相手だが、諦めない積極ファイトを展開するジョニー・オリベイラに、勝次が更に積極性で上回った。

第1ラウンドにパンチからヒザ蹴り、更に飛びヒザ蹴りでダウンを奪い、2ラウンド目には威嚇して顔面ガード空いたところに右ヒジ打ちでテンカウントを聞かせる圧倒勝利。防衛ごとに踏み込む勢いが増してきた勝次。目黒ジムを継承する藤本ジムでは過去、ライト級で石井宏樹が8度、ミドル級で松本哉朗が6度防衛した記録が新日本キックには残ります。

このまま防衛記録を伸ばすにしてもラジャダムナン王座に挑むにしても、注目を集める存在の勝次。ラジャダムナン・ライト級チャンピオンは梅野源治(PHOENIX)が居て、日本人的には好カード。しかし、タイ現地でやるべきタイトルであり、挑戦権争いでも狭き門の殿堂王座であります。

勝次vsジョニー・オリベイラ。初回早々から飛ばした勝次の前蹴り命中(2016年12月11日)
緑川創vsイッキュウサン。蹴られても攻める意欲は緑川の力(2016年12月11日)
緑川創vsイッキュウサン。我慢比べで優った緑川の攻勢(2016年12月11日)

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(元・日本W級C/藤本/70.0kg) vs イッキュウサン・ペップームムエタイ(タイ/69.15kg)
勝者:緑川創 / TKO 5R 2:10 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

初回から様子見のパンチとローキックで攻める緑川だが、重たくしぶといタイ選手の手数も減らず、3ラウンドにはヒジ打ちを貰って額を切られる瞬間もあるも、緑川はやや攻勢が増し、4ラウンドに更に勢いづいた緑川が第5ラウンドに左ボディブローから左ヒザ蹴りでようやく沈める。

◆68.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城68.0kg) vs レック・エイワジム(エイワスポーツ/68.0kg)
引分け / 0-1 (29-29. 29-30. 29-29)

◆73.0kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.0kg) vs コーンリーチ・エスジム(カンボジア/72.7kg)
引分け / 0-1 (29-29. 29-29. 29-30)

他、6試合を割愛しています。

◆取材戦記

12月5日のKNOCK OUT興行が終ってのふたつの興行でした。特に日本キック連盟興行では「KNOCK OUT」を意識した、マイクによる発言で目指す先が見えてきて、「そこに出るんだ」といった意識を感じます。新日本キック協会ではその類いの発言は無いものの、最高峰への意欲は以前より増しています。

緑川創と対戦した“イッキュウサン”は同名のタイ選手が存在するそうで、最近、ややこしいタイ選手名が増えています。第2試合に出場し、皆川裕哉(藤本)に判定で敗れたラジャサクレック(タイ)も同名のラジャサクレック・ソー・ワラピン(タイ)が居て、うっかりすると扱いに困ります。外国人選手名は通常使われるリングネームが当然としても、すべてパスポートから分かる本名も付随して欲しいものです。

私(堀田)は最近でも在日タイ人元選手で、レフェリーを務めるソンマーイ・ケーウセーン氏をチャンデー・ソー・パランタレー氏と顔が似ていて間違えていたことがありましたが、最近のタイ選手名には戦歴経歴にも気をつけなければならないマスコミ陣であり、直接選手に聞く事が確実で、キック取材に於いては英語とタイ語は学んでおいた方が良さそうなこの頃であります。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』第10号[特集]原発・基地・震災・闘いの現場
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

KNOCK OUT興行開催! ついにこの日がやってきた!

飛び蹴り、後ろ蹴り、躊躇うことなく繰り出す那須川天心の天才的な技

テレビ解説の元ムエタイチャンピオン.石井宏樹の言葉だったかと思いますが、「ついにこの日がやってきた」とは、正にそんな日でした。こんなキャッチフレーズは過去に何度も使われましたが、日本で大手企業がバックアップし、やがて地上波で放送予定にあるイベントとしてはキックボクシング満50周年に新たな歴史の一歩を踏み出したと言える日かもしれません。

6試合中、メインイベント以外はすべてKO、大月晴明(43歳)と那須川天心(18歳)は常識を超えた天才か。それぞれの歳でこんな難敵を豪快に倒すとは驚きの現実を見せ付けてくれました。

見事、顎に命中、どこまで突き進むか那須川の偉業
立てないワンチャローン、悶絶KO

大月は開始早々からボディブローを引き金に顔面への爆腕パンチラッシュで一気に倒し、那須川天心は初のヒジ打ち有効ルールも恐れず攻め、ムエタイ現役チャンピオンに左後ろ蹴りを顎に炸裂させて悶絶KOする動体視力と当て勘の良さ。
T-98は長島のヒジ打ち貰って顔面切られる不覚も、10月のラジャダムナンスタジアムでの初防衛戦で見せた打ち負けない圧力で重いローキックと右ストレートで倒す貫禄。

森井洋介はヒジで切られつつ、右縦ヒジカウンターで打ち倒し、9月のKNOCK OUT発表会見試合で高橋一眞を1R・KOした試合を含め2連勝。勝ち数では一歩先行く立場。
小笠原瑛作は以前より勢い増したしなやかさとスピードで宮元から一歩も引かない攻撃力でバックヒジ打ち、左ヒジカウンター、左ハイキックで3度ダウン奪って快勝。

梅野源治は本来の技術で優る展開を見せ、元ラジャダムナン・フェザー級、スーパーフェザー級2階級制覇チャンピオンに大差に近い判定勝利。終盤、シリモンコンが諦めの表情を見せるような梅野の実力が光りました。今年の梅野は激闘で怪我が多かった中でも、ラジャダムナン・ライト級王座を奪取しこの日を迎え、体調万全ではないことも試合に表さない強さを見せました。

◎KNOCK OUT Vol.0 / 12月5日(月) TDCホール19:00~21:25
主催:(株)キックスロード / 放送:FIGHTING TVサムライ、スポナビライブ

◆メインイベント 第6試合 61.5kg 5回戦

ラジャダムナン系ライト級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/61.3kg)
         VS
シリモンコン・PKセンチャイジム(元・ラジャダムナン・SB級、Fe級C/タイ/61.1kg)
勝者:梅野源治 / 判定3-0
主審 大成敦 / 副審 大村50-46. 北尻49-46. 小川49-47

しなりある梅野のハイキックに近い右ミドルキック、徐々に梅野ペースへ引き込まれる
左ミドルキックで攻める梅野。シリモンコンに活路は無かった
ムエタイチャンピオンの貫禄が増したT-98は長島を圧倒するも、ヒジ打ちで右頬を切られる不覚
森井もパンチから最後はヒジで決める難度の技でKO

◆第5試合 55.0kg契約 5回戦

那須川天心(TARGET/55.0kg)
         VS
ルンピニー系スーパーフライ級チャンピオン
ワンチャローン・PKセンチャイジム(タイ/54.9kg)
勝者:那須川天心 / TKO 1R 2:23
カウント中のレフェリーストップ / 主審 岡林章

◆第4試合 70.0kg契約 5回戦

ラジャダムナン系Sウェルター級チャンピオン.T-98(=タクヤ/クロスポイント吉祥寺/69.95kg)
        VS
長島自演乙雄一郎(魁塾/70.0kg)
勝者:T-98
TKO 2R 2:50 / カウント中のレフェリーストップ゚ / 主審 大村勝巳

◆第3試合 60.5kg契約 5回戦

森井洋介(GOLDEN GLOBE/60.5kg)
VS
ヨードワンディー・ソー・チャナティップ(BBTVライト級10位/タイ/60.5kg)
勝者:森井洋介
TKO 3R 1:56 / カウント中のレフェリーストップ゚ / 主審 北尻俊介

最後は相打ちカウンターの右縦ヒジで顎を打ち抜き、ヨードワンディーは起きれず
小笠原の先手打つ攻めは宮元のスピードを上回った

◆第2試合 55.4kg契約 5回戦

WPMF世界スーパーバンタム級チャンピオン.宮元啓介(橋本/55.3kg)
          VS
小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺/55.4kg)
勝者:小笠原瑛作
KO 3R 2:53 / 3ノックダウン / 主審 小川実

◆第1試合 61.5kg契約3回戦

大月晴明(元・全日本ライト級C/マスクマンズ/61.5kg)
VS
スターボーイ・クワイトーンジム(元・WPMF世界Fe級、SFe級C/タイ/60.8kg)
勝者:大月晴明
KO 1R 0:45 / テンカウント / 主審 北尻俊介

大月晴明(右)の爆腕ラッシュはいつも以上に威力があった

◆取材戦記

日本人全選手、興行名に恥じない展開を目指した、そんな勢いを感じました。KNOCK OUT初回本興行としては大成功と言える内容でしょう。しかし「ノックアウトに重点を置く興行」とタイ選手に伝えても、そう簡単にムエタイリズムを変えられるものではなかったかもしれません。そういう意味では今後のタイ側の名誉挽回に本気モードがやってくるでしょう。それは次なる展開に繋がり、より話題が盛り上がります。

今回の出場チャンピオンたちの契約ウェイトの幅の狭さにちょっと驚きました。梅野の場合、ゆとりを持って62.0kg契約でもよかったのではと思います。「ラジャダムナンスタジアムは寛大な対応をしつつ、突然厳格なことを言ってくる場合もあるので気をつけた方がいい」とは現地マスコミの意見。両者ライト級61.23kgを超えていないとチャンピオンの“負ければ剥奪”の義務が生じるということです。

東京ドームシティーホールは2008年春に開業しました。私個人としてはこれまで縁無く、初めて入場しましたが、どの階からも近く見易い印象がありました。コンサート・ライブに向いた会場と思いますが、リングを使う格闘技興行としては以前と変わらず、使用設備の問題で後楽園ホールが主流なのも分かります。いずれにしても格闘技興行は見易さ重視で、広くても大田区総合体育館まででいいという一般的意見でもあります。

来年のスケジュールは2月12日から4回の予定が決定しています。それ以降は調整中。出場を予定される選手、希望する選手、ファンが望むカードなどありますが、どこまで実現出来るかが今後への期待となるでしょう。他団体でも「KNOCK OUT」を意識した発言が聞かれます。

KNOCK OUT の第2回興行となる「KNOCK OUT vol.1」は、2月12日、梅野源治、那須川天心の連続出場の他、個性豊かなチャンピオンたち、町田光、前口太尊、引藤伸哉が初出場します。

2月12日(日) 大田区総合体育館
4月 1日 (土) 大田区総合体育館
6月17日(土) TOKYO DOME CITY
8月20日(日) 大田区総合体育館

恒例となる全試合を終えて集合写真。負傷選手は上がっていませんが、この場に残るのも価値ある瞬間

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

基地・原発・震災・闘いの現場『NO NUKES voice』10号
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

ムエタイ“上位王座”の厚い壁──撥ね返された三人の挑戦者たち

ジュニアキックで経験を積んだ15歳の少年が世界王座に挑んだのはWMCの最軽量級ながら今後の成長に繋がる節目の挑戦でした。

◎ムエローク 2016.4th
11月13日(日) 新宿フェイス17:30~20:40  主催:尚武会 / 認定:WMC

◆WMC世界ピン級タイトルマッチ 5回戦(100LBS=45.359kg)

前チャンピオン.シューサップ・トー・イッティポーン(17歳/タイ/47.1→46.7kg)
VS
挑戦者.吉成名高(エイワスポーツ/アマチュア17冠王/45.1kg)
勝者:シューサップ / 判定3-0
主審:チャンデー・ソー・パランタレー 副審:シンカーオ50-47. ノッパデーソン50-47. ナルンチョン50-47

シューサップは計量失格でこの時点で“前チャンピオン”となります。こういう事態がここ数年増えたのは、「日本での試合を軽く見ている」という意見をよく聞きます。あえて擁護するなら、17歳という若さで外国に出向き、体の成長や気候の変化に対応できなかったこともあるかと思いますが、それでも1.3kgオーバーはデカ過ぎですね。この辺の対処はプロボクシングと同じ、吉成名高には挑戦者として、勝利した場合のみチャンピオンとなり、シューサップが勝っても王座は空位となります。

15歳での世界戦は力大きく及ばずで、ジュニアキックで力を付けていても、やはり人生経験がまだ15年というところも成人との認識の違いがあったでしょう。シューサップも17歳で若さで似たところあれど、ムエタイそのものの経験は豊富。やはり後半にピッチを上げてきたシューサップは後半、首相撲技で繋ぐ膝蹴りや崩しで見た目にも大差が付いた印象がありました。吉成はアマチュアといえど数々の王座制覇してきた自信で、試合終了まで視線はしっかり強気な表情は変わらず、崩されても立ち上がる諦めない挑戦でした。

吉成名高vsシューサップ。吉成のジュニアキック出身の技量はしっかり披露。今後に期待

◆セミファイナル 63.0kg契約 5回戦

DAIJU(尚武会/62.9kg)vsNKBライト級チャンピオン.大和知也(SQUEA-UP/63.0kg)
勝者:DAIJU / TKO 4R 1:40 / タオル投入による棄権
主審:ナルンチョン・ギャットニワット

NKBから大和知也が出場。戦う相手の範囲が広まった中で、より活きのいい試合を続けているのも明るい事実です。

DAIJI(だいじゅ)は大和知也からハイキックでダウンを奪って攻勢を続けTKO勝利。大和は第4ラウンド途中から古傷の左腕が動かしにくい状態で劣勢の中、タオルが投入。6月の試合での負傷箇所を再び傷めた様子。序盤はスピーディーなパンチとローキックで優勢気味だった大和知也にとっては悔しい負傷。来年の奮起に期待したいところです。

大和知也(右)の得意の右ストレートがDAIJUを捉えるが、逆転は難しい段階だった

  
◎M-ONE 2016 4th(FINAL)
11月23日(祝・水)ディファ有明16:00~20:30  主催:ウィラサクレック・フェアテックス / 認定:WPMF

会場前には建物上部からの、10月13日に崩御されたプミポン国王画の肖像画と、館内にも肖像画と記帳スペース、喪に服す黒の正装のタイ人関係者が目立ち、セレモニーでは王室唱歌と98秒間の黙祷も捧げられ、タイの国民性が現れたセレモニーでした。

石井達也は日本タイトル返上後、なかなかビッグマッチのチャンスが回って来ない中、今回M-ONEからWPMF世界戦出場のチャンスが舞い込むも、ゴンナパーは在日選手として日本人の前に立ちはだかる壁は健在でした。

◆WPMF世界スーパーライト級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.ゴンナパー・ウィラサクレック(タイ/63.5kg)
VS
石井達也(元・日本ライト級C/藤本/63.5kg)
勝者:ゴンナパー / TKO 4R 1:39 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:チャンデー・ソー・パランタレー

毎度のことながらゴンナパーの上下へのパンチとキックの使い分け、その蹴りが重く鋭い。石井の強打が遅れがちになり、その差が大きく見えてしまうが応戦する石井も強い蹴りとパンチを返す中、熟練ゴンナパーのヒジ打ちで切られた額のドクターチェックを3回受けた後、レフェリーストップ。敗北より最後まで戦いたかった表情の悔しい敗戦となりました。

どこを狙うか分からないゴンナパー(左)の蹴りは“ハイ”だった瞬間
切られ、蹴られ、ゴンナパーの上手さが続く中、劣勢の石井はこれでも諦めてはいなかった
高橋一眞(左)と鷹大の強打者の攻防。この後、戦略勝ちの鷹大の攻めが勝る

◆59.0kg契約3回戦(アンダーカードから抜粋)

鷹大(元・WMC世界&WPMF日本SB級C/WSR・F西川口/59.0kg)
VS
NKBフェザー級1位.高橋一眞(真門/58.95kg)
勝者:鷹大 / TKO 3R 2:40 / カウント中のレフェリーストップ
主審:ヌンポントーン・バンコクストアー(現役時名)

こちらもNKBで活躍する高橋三兄弟の長男・一眞の登場。9月14日にKNOCK OUT発表記者会見試合で、森井洋介にパンチで倒されたばかりながら、前回よりは冷静に試合を進め、攻勢もあったものの、再びパンチで2度のダウンを喫してKO負け。鷹大もチャンピオン経験を持つ強者。高橋は経験値上回る相手との試合が続きますが、他団体出場に恵まれた現在、この試練を乗り越えて欲しいところ。短期でのノックアウトの連敗は心身ともに休養も必要です。

日本のトップを争う、終り無きトーナメントが続く中、一歩前進の鷹大の勝利

  
◎NJKF 20周年記念スペシャルマッチ開催!NJKF 2016 7th
11月27日(日)後楽園ホール17:00~21:35
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、WBCムエタイ日本実行委員会

国内下部王座から段階的に上位を目指さなければならないシステムからWBCムエタイのインターナショナル王座決定戦に挑んだのは同組織日本王座を持つ健太。スウェーデンの強豪、サモン・デッカーは頑丈な体格で怯まず前進する圧力があり、これを崩せずに終る。

◆WBCムエタイ・インターナショナル・ウェルター級王座決定戦 5回戦

健太のハイキックにもたじろがなかったサモン・デッカー

世界12位 健太(日本同組織同級C/29歳/E.S.G/66.68kg)
VS
世界13位 サモン・デッカー(24歳/スウェーデン/66.6kg)
勝者:サモン・デッカー / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗  副審:大沢47-49. 水谷48-49. 少白竜48-49

サモン・デッカーはかつてのラモン・デッカー(オランダ)の再来と言われる存在で、ムエタイ修行経験も豊富なファイタータイプの選手。とにかく頑丈な体格で蹴りの威力あり、下がらない圧力に健太は主導権を握れないまま、5ラウンドにはヒジで切られる劣勢が響きました。今後、タイ選手以外の強豪が日本人の前に立ちはだかるのも面白い展開でしょう。

両者ガッチリした体格ながらサモン・デッカーのハイキックに圧力を感じる攻防

◆セミファイナル 62.0kg契約3回戦

宮越慶二郎のハイキックを避ける羅紗陀。この日は宮越の動きが機敏だった

WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級チャンピオン.宮越慶二郎(拳粋会/62.0kg)
VS
羅紗陀(元・WBCムエタイ日本SFe級、L級C/キング/61.8kg)
勝者:宮越慶二郎 / 判定3-0
主審:竹村光一  副審:多賀谷30-26. 水谷30-26. 少白竜30-26

NJKF20周記念スペシャルマッチとして組まれたカードでした。羅紗陀は右足腓骨骨折の負傷から5月に2年3ヵ月ぶりに復活。しかし後に腰の状態を悪化させ7月興行は欠場に。今回の半年ぶりとなる復帰第2戦で宮越慶二郎との対戦が実現となりました。

父親が昭和の新格闘術連盟で活躍した内藤武である宮越は、その父譲りの変則気味の動きが活かされた展開。羅紗陀は父親が元・日本ウェルター級チャンピオン.向山鉄也で、その父親譲りの激闘威力が少なかった印象。第1ラウンドにスリップ気味のダウンに加え、第3ラウンドはまともに右ストレートによるダウンを奪った宮越が大差判定で勝利。怪我やブランクの影響がまだ続いている感じもあり、完全復活にはもう少し時間が掛かりそう。宮越はマッチメイクに難航し、来年2月に延期された王座防衛戦を目指します。

逆転を狙う羅紗陀のヒジ打ちは空振りだが、迫力ある攻防

◆取材戦記

三つの興行をまとめると、アンダーカードをほとんど割愛しなくてはならない事態となってしまいました。ひとつずつ興行を拾うとかなり先延ばしになってしまうので、ちょっと纏めることも出てきた最近ですが、格闘技専門サイトでもないので、本来アンダーカードまで拾う必要もないかもしれませんが、融通利く限りは少しでも選手の活躍を、試合結果だけでも世間に出してあげようと思う次第です。

その試合結果も絶対に間違えてはいけないプレッシャーもあります。自分の書き留めた記録だけで判断しないことで勝者敗者を間違えないこと、その為にも公式記録の開示を各興行ごとにお願いしている場合があります。この点もまたひとつのテーマとして今後、書き上げたいと思います。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』

女子キックボクシング闘魂史──熊谷直子からRENA、リトルタイガーまで

「女がキックなんかやるもんじゃねえ!」そんな声が聞こえた昭和の時代。マスコミの中にも一部そんな偏見を持つ者もいました。

その後、女子の可能性に閃いたプロモーターによって試合が増え、女子の世界タイトルマッチまで到達しても、そのマイナー競技の層の薄さに、そこに注目するファンも少なかった時代が続きました。

そんな邪道とされた女子キックも、次第にスポーツ全般の女子選手の活躍に負けない活動が注目され始め、近年の少年(少女)育成のジュニアキック卒業後の高度成長からも女子キックを、決して侮れない時代になりました。

市販のランニングパンツで試合する、まだ女子キックも確率していない頃のエキシビジョンマッチ(1984年1月5日)

◆70年代──女性選手がやり難い時代

キックボクシングが1970年代の隆盛期を迎えた時代にもすでに女子キック団体は存在しており、しかしその存在は非常に小さく、低い技術の試合より、色気に目がいった観衆の異様な視線に、キックをやりたいと思う女性がいてもその環境は程遠く、やり難い時代だったかもしれません。

◆80年代の開花──WKA世界王座を勝ち取った熊谷直子

そしてこの女子の存在に本格的に力を注ぐ兆しとなったのは、女子プロレスのブームもそのひとつだったでしょう。1980年代のクラッシュギャルズ中心の“善玉悪玉の戦い”は競技性よりも、観衆に、特に女性から注目を浴びる輝いたリングでした。

キックボクシングそのものが低迷し、復興に力を注いでいたこの時代、女子の試合は重要視されない環境でも、実力ある選手が台頭してきたのは、新しい競技のシュートボクシングにおける若菜などの活躍、全日本キックボクシング連盟ではWKA世界王座まで到達した熊谷直子がスター的な立場となりました。後には熊谷の後輩となる三井綾、中沢夏美や、他団体にシュガーみゆき、神風杏子なども存在し、比較的軽量級では選手層が充実していた時代でした。

その熊谷が目指したもの、女子選手だけによる興行を実現させたのが1994年10月でした。後の通常の興行でも女子がメインイベント3試合を飾ることも実現させるなど、過去に無い女子キックボクサーの存在感をアピールするも、後の世代まで継続させるほどの勢いは無く、女子キック存在の厳しさは続きました。

[左写真]女子キックのレジェンド、WKA女子世界ムエタイ・フライ級、バンタム級チャンピオン熊谷直子。[右写真]神風杏子(左)vs熊谷直子(右)(1998年に2度対戦)
[左写真]JBCの女子公認前にエキシビジョンマッチで、プロボクシングのリングに上がったことがあるシュガーみゆき。[右写真]2000年代に入ってボクシングとキックで活躍した柴田早千予

◆タイ人オカマボクサー、パリンヤー・ギャップサバーの新風

その頃、異色の新風を起こしたのはタイ人オカマボクサー、パリンヤー・ギャップサバーの出現とタイでのブーム。これが話題中心に作られたものでなく、男子ムエタイボクサーとして実力が伴なったものでした。それが日本にもやって来るほど、“男性”ではある為、男子キックで戦い、その後、女子プロレスラー・井上京子との異種格闘技戦は話題を呼びました。こうしたオカマボクサーが強かったが為、男女とも刺激を受けた時期でした。

[左写真]一世風靡した“オカマムエタイ?”のエース、パリンヤー(1998年頃)。[右写真]ワイクーも女らしさを出したパリンヤーの戦いの舞
女子ムエタイのベテランエース、Littele Tiger(2016年9月25日)
女子シュートボクシングのエース、RENA(2015年2月11日)

◆99年協会設立を経て00年代女子「覚醒の時代」へ

一連の女子の活躍からひとつ世代が変わり、2000年代前半は徐々に各競技でも女子選手が増えた時代でした。特に女子プロボクシングの台頭は大きく、MA日本キックボクシング連盟の山木敏弘代表がキック興行の中に女子ボクシングを組み込む経緯を経た1999年4月、日本女子ボクシング協会を設立しました。

当時は女子キックボクサーのボクシングとの両立が中心でしたが、2005年11月に菊地奈々子が日本人女子として初のメジャー団体王座、WBC女子世界ストロー級チャンピオンになったことで世間に名を轟かすひとつとなり、一般女性にもボクササイズとしてのボクシングに触れる機会が増え、「蹴りがあるほうが楽しい」といった感覚でキックに目覚める女性もいたでしょう。

2008年春には女子プロボクシングがJBC管轄下の日本プロボクシング協会に吸収された“メジャー昇格”で、後には主要4団体の世界戦実現に至りました。

日本でのプロボクシングの伝統・格式の違いから、他競技との壁は出来たものの、競技性の面白さでは女子キックボクシング系競技も上昇気流に乗り、2000年代後半にはリトルタイガーやRENAのデビュー。幼少期からの育成時代に入ると、伊藤紗弥が4歳から男子に混じっての練習で力を付け、2015年には16歳で32歳のリトルタイガーから世界王座を奪う成長ぶりでした。

◆世界フライ級チャンピオンRENAが切り開く“ツヨカワイイ”の時代

男女に関わらず、タイ国同様に幼少期から鍛えれば本当に強くなるという現実があり、「女がキックなんか……」と言われた偏見が完全に崩れた現在、今後のこの競技の在り方次第で、女子キックもより選手層充実に繋がるでしょう。キックボクシング系競技で現在そのトップにいるのはシュートボクシングの世界フライ級チャンピオンRENAで、メディアに取り上げられるのも“ツヨカワイイ”のが武器であります。

厳密な経緯には程遠く語弊もあるかもしれませんが、大雑把に歴史を追った女子キックの発展経緯でした。当初、マスコミの中にいちばん女子キックに偏見を持っていたのは、実は私自身であり、全日本キック時代、女子がメインイベントを張ったラスト3試合を取材せずに帰ったのはマスコミで私一人だったでしょう。

「大人げないことするなよ!」と元・日本フェザー級チャンピオンの葛城昇氏に窘められた次第ですが、後に知人のカメラマン菊地奈々子や、キックをやるとは思えなかった知り合いの一般女性が鍛え、プロ出場した影響や、過去記事にあるように、男女どんな選手もスタッフも、生涯で公式リングに立っていられる時間というものを貴重に思い、そこで悔いの無い実力を発揮出来るよう、反省を込めて願うこの頃であります。

女子ムエタイの新スター、伊藤紗弥(2016年3月21日)

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』
 
商業出版の限界を超えた問題作!
タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

NJKF DUEL.8とKICK Insist6 ──勇気を持って強豪に立ち向かった二つの興行!

まだ日本の頂点ではない現段階、今後の挑戦が能登龍也の真のチャンピオンロード

NJKF若武者会は、30代~40代の若い世代のNJKF加盟ジム会長で組織される「DUEL」という興行名で昨年の4月から開始し、今回で8回目。ディファ有明は初進出。会場規模もマッチメイクも一層向上してきました。

新日本キックボクシング協会のビクトリージムも年々マッチメイクが向上している「KICK Insist」を開催しています。東日本大震災復興チャリティーイベント として2011年から開催し、11月6日は熊本地震チャリティーとして、15試合中3試合が日本vsタイ国際戦、10試合が他団体かフリージムとの交流戦と、共催ながらビクトリージムならではの興行体制でした。

◎NJKF DUEL.8 /
10月30日(日)ディファ有明16:00~21:00
主催:NJKF若武者会 /
認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

元・WBCムエタイ世界スーパーライト級チャンピオンの大和哲也(大和)は昨年5月に敗れた相手へのリベンジマッチの予定でしたが、怪我で欠場となり、後輩の真吾YAMATOが代打で出場。

1996年1月生まれの20歳で、10戦7勝(3KO)2敗1分の戦績で元ムエタイチャンピオンに挑みましたが、第2ラウンドにゴーンサックにパンチで2度ダウンを奪われ、最後は第4ラウンドに左ハイキック一発で倒される、荷が重い内容でしたが、勇敢に向かった試合でした。

ローキックで攻め立てる波賀宙也

波賀宙也はバランスいい元ムエタイチャンプにローキックでたじろがせる圧倒を見せ判定勝利。日本人選手がかつてやられたパターンで、こんな逆転した展開を見せる時代になったことを実感させられる試合でした。

NJKFフライ級王座はパンチでダウン奪った能登が形成逆転、大田のヒジ、ヒザのムエタイ技での優勢は一気に空気が変わり、後半も能登のパンチが活き僅差ながら判定勝利で第10代チャンピオンとなりました。

《主要4試合》

◆64.5kg契約 5回戦

NJKFスーパーライト級2位.真吾YAMATO(大和)
    VS
ゴーンサック・シップンミー(タイ)=元ルンピニー系フェザー級、スーパーフェザー級チャンピオン
勝者:ゴーンサック / TKO 4R 0:48 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審 山根正美

◆56.0kg契約 5回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA) 

ゴーンサックの左ミドルキックは重かった
左ハイキックで倒された真吾

    VS
クワンペット・ソー・スワンパッディー(タイ)=元ルンピニー系バンタム級チャンピオン
勝者:波賀宙也 / 判定3-0
主審 多賀谷敏朗 / 副審 西村50-47. 竹村50-47. 山根50-47

◆NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

1位.大田拓真(新興ムエタイ)vs2位.能登龍也(VALLELY) 
勝者:能登龍也 / 判定0-2
主審 松田利彦 / 副審 西村48-48. 多賀谷48-49. 山根47-48

◆NJKF女子(ミネルヴァ)アトム級(102LBS)王座決定戦3回戦 

佐藤怜南(team AKATSUKI)
    VS
C-CHAN(T-GYM)
引分け 三者三様(公式記録) / 主審 多賀谷敏朗
副審 竹村30-29(9-10). 西村28-29(9-10). 山根29-29(9-10)
延長戦0-3(三者とも9-10)による“勝者扱い”でC-CHANが新チャンピオン

◎KICK Insist6
11月6日(日) ディファ有明16:00~20:45
主催:ビクトリージム、治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

C-CHANがデビュー1年でチャンピオンへ

やっぱり厚かったムエタイの壁、瀧澤博人は念願の“現役”ムエタイチャンピオンとの対戦も、内容的に大差を付けられる完敗。蹴りもパンチも単発では崩せないが、次に繋げさせないカオタムの距離とバランス。ラウンドが進むにつれ、瀧澤のパターンが読まれると組まれてヒザ蹴りのカオタムのペースに巻き込まれる経験値の差がありました。これで奮起するのが瀧澤博人、次の国内防衛戦を通過点として、またムエタイ第一線級戦士に向かっていくでしょう。

山田航暉は元・タイ東北スラナリースタジアム・ミニフライ級チャンピオンのラチャシーに、ローキックで勝機を掴み、2度目のダウンになるローキック後、崩れ行くところを顔面にキック、そのままノーカウントのレフェリーストップ勝ち。

石原將伍は元・タイ国ムエスポーツ協会ランカーのゴーンポンレックに強打が通じず、戦法読まれて攻め倦む判定負け。

大田原友亮はムエタイ技の基礎が出来ている選手ですが、キックボクシングのリズムが噛み合わず凡戦が多くまたも引分け。

日本ヘビー級チャンピオン初戦の柴田春樹は、総合格闘家の酒井リョウとキックの試合には成り難いリズムが狂った展開でも、ダウンと酒井の反則減点で大差判定勝利。

《主要5試合》

蹴る威力が増し、元ムエタイ地方チャンピオンを圧倒した山田航暉

◆55.6kg契約 5回戦

日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/55.55kg)
VS
タイ国ラジャダムナン系スーパーバンタム級チャンピオン
カオタム・ルークプラパーツ(タイ/55.1kg)
勝者:カオタム・ルークプラパーツ / 判定0-3
主審:椎名利一 / 副審:桜井48-50. 少白竜47-50. 仲47-50

パンチの距離を狂わされた石原將伍

◆51.5kg契約 5回戦

WMC日本スーパーフライ級チャンピオン.山田航暉(キングムエ/51.3kg)
VS
ラチャシー・ギャットアノン(タイ/50.9kg)
勝者:山田航暉 / TKO 3R 1:28 / 主審:仲俊光

◆59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級1位.石原將伍(ビクトリー/58.9kg)
VS
ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン(タイ/58.3kg)
勝者:ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン / 判定0-3
主審:少白竜 / 副審:桜井47-49. 仲47-49. 椎名47-49

アトム山田と大田原友亮はドロー

◆58.0kg契約3回戦

ユウ・ウォーワンチャイ(=大田原友亮/ウォーワンチャイ/57.65kg)
VS
JKIフェザー級1位.アトム山田(武勇会/57.7kg)
引分け 0-1 (29-30. 29-29. 29-29)

◆ヘビー級3回戦

日本ヘビー級チャンピオン.柴田春樹(ビクトリー/92.65kg)
VS
酒井リョウ(バラエストラ松戸)
勝者:柴田春樹 / 判定3-0 (三者とも30-26)

◆取材戦記

蹴り合いは少なかったが、立ち技の経験値で勝利を導いた柴田春樹

NJKF興行では女子の試合は「ミネルヴァ」と表現しています。ローマ神話の女神に名称を由来すると言われおり、カッコいい名称ですが、一般の方が見た場合、何の試合か分かるでしょうか。最近、NJKF関係者に「ミネルヴァと書いてください」と言われたこともありました。しかしそこは「女子キック」と表現しなければ一般の方には分からないでしょう。

今回のDUELでは各選手のウェイトが発表されませんでしたが、全選手リミット内であったようです。ウェイト競技たるもの、計量記録も大事な試合の内と思います。前日公開計量のある興行では、選手の調整具合がしっかり読めてくることあるので、こういう機会は増やして欲しいと思います。

次回NJKF興行は11月27日(日)後楽園ホールでの「NJKF 2016.7th」に於いてWBCムエタイ・タイトルマッチ5試合が主要試合として行なわれます。

新日本キックボクシング協会の藤本ジム主催興行は12月11日(日)に後楽園ホールに於いて「SOUL IN THE RING.16」が行なわれます。

過去の敗戦を糧に強くなった瀧澤博人、更なる奮起に期待

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)
タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!

キックボクシングに人の歴史あり──名選手たちの同窓会のようなトークショー

酒を酌み交わす仲、そこはかつて殴る蹴るの試合で戦った者の集まり。

キックボクシング創設50周年、シュートボクシング創設30周年、これらの競技がここまで永く発展、継続され、名選手が生まれてきた歴史に学ぶことは、今後も完全には廃れることなく、また隆盛も迎えつつ次の世代へ繋がっていくのだろうと考えられます。

◆キックボクシング取材の先駆者、舟木昭太郎さん主催の貴重なトークショー

舟木昭太郎氏(左)、バズーカ岸浪氏(中央)、増沢潔氏(右)。岸浪氏が増沢氏から全日本ウェルター級王座を奪ったのが1972年(昭和47年)1月でした

継続されてきたのは名選手だけではない、興行団体や裏方のスタッフやマスコミの存在もありました。現在は現場に足を運ばれることは少なくなっても、キックボクシングの創生期から隆盛期、低迷期、また復興期からシュートボクシングの創設と発展までしっかり現場を見て来られたのがキックボクシング取材の先駆者、舟木昭太郎さんでした。

舟木さんは「プロレス ボクシング キック」と銘打たれた月刊ゴング誌の編集長を永く務められた、多種プロ格闘技に渡り取材経験豊富な方で、沢村忠も藤原敏男も具志堅用高も前田明にも、その時代のカリスマ的存在に、同時期の第一線級記者として取材した、まだ月刊雑誌が待ち遠しいほど貴重だった時代に取材し、全国のファンに情報を伝えていたというだけでも、我若輩者は圧倒される想いがあります。
こういう人だからこそ参加者が大勢いて出来た、舟木昭太郎さん主催のトークショーが今年10月までに2回開催されています。

左から増沢潔氏、藤原敏男氏、竹下氏、バズーカ岸浪氏、佐藤正信氏
足を骨折していても、この前日もムエタイ観戦していた元気な藤原敏男氏。乾杯の音頭を取るものこの人ならでは
若き頃のやんちゃな話題を語る仙台青葉ジム、瀬戸幸一会長

◆戦った者同士が酒を酌み交わす親交空間

7月30日には「黄金時代を熱く語るキックボクシングデー!」と銘打ったテーマで渋谷区富ヶ谷の台湾料理「麗郷富ヶ谷店」で行われ、10月22日には同所で「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」というテーマで行なわれました。

いずれも集まるメンバーに、懐かしい顔が見られ、黄金時代を熱く語るキックボクシングデーでは藤原敏男さん、竹山晴友さんをはじめとするお酒好きの名選手、名チャンピオンが来場されていました。

皆、年輪を重ねた顔を見せつつ、大きい声は出すは、笑い声が元気な元チャンピオン・ランカー達の、かつて戦った者同士が酒を酌み交わしながらの会話は、見ていて羨ましいほどの親交深まる空間がありました。

◆歴代チャンピオンたちの存在感

その中でも藤原敏男さんの存在感はやっぱり偉大で、外国人(日本人)初のラジャダムナンスタジアム認定チャンピオンの英雄と一緒に写真に収まろうとする人々の光景は子供のようでもありました。

仙台青葉ジム会長の瀬戸幸一氏も83歳となられても益々元気に、「空手がいちばん強いと思っていた時代に仙台からわざわざキックの目黒ジムに殴り込みをかけた」と語る血気盛んな裏話や、元・全日本ウェルター級チャンピオンの増沢潔さんが披露してくれたのはNETテレビ(現テレビ朝日)が放映していた昭和45年当時のチャンピオンベルト(全日本キック王座が出来る前)。

わずか1年未満の活動でしたが、振り返れば創生期のキックブームの裏にいろいろなことがあったんだなと再認識させられる話題も多だあり、かつてのキックボクサーが互いに当時の想いを語り合うこの集いに存在意義があるのでした。

シュートボクシング創始者シーザー武志氏、その経緯を語る
元・極真からキック転向し、話題を振り撒いた竹山晴友氏、話題では藤原氏に次ぐ存在

◆「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」の主役シーザー武志さん

10月22日の「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」ではシーザー武志(本名=村田友文)さんが主役。45年になるお付き合いから「こんな会を開きたいと申し出たら快く受けて頂きました」と語った舟木氏でした。そんな紹介の中、蹴る殴るの格闘技をやるとは思えぬSB女子世界フライ級チャンピオンのRENAさんの存在が光っていましたが、そんな時代の流れを感じる世代を越えた顔ぶれもありました。

シーザー武志氏がキックボクサーとしてデビューした1972年(昭和47年)頃は、「舟木さんのゴング誌に書いて貰うのが夢でした」という素朴な夢や、デビューから3連敗しても負けた悔しさをバネにして4戦目で3戦3勝の相手に勝ったことや、「キック団体がついたり離れたりして纏まらず、選手がかわいそうだった。それだったらキック団体でなく、ひとつの競技を作り上げてしまおう」という発想から、シュートボクシングを創設するに至る経緯を振り返り、UWFを立ち上げた佐山聡氏と知人を通じて知り合い、前田明や高田信彦、山崎一夫といった選手に蹴りを教える縁に繋がり、その後、佐山聡氏がシューティング(現在の修斗)を創設したことから真似て、“シューティングボクシング”を立ち上げようとしましたが、佐山氏に「“ING”が二つ付いたら駄目ですよ」と助言を受け「“シュートボクシング”に定着しました」という設立の裏話もされていました。

NETテレビ時代の貴重なチャンピオンベルトを持つ増沢潔氏
右側が比較的最近の選手といっても8年前まで現役のSB日本スーパーウェルター級チャンピオンの緒方健一氏。かなりふっくらしました

◆RENAさんが切り開いたMIO選手たちの強くて可愛い連鎖の時代

試合用スパッツに関しては、今までに無いものを作り出したい想いと、知人から指摘された“脚の筋肉のラインをキラッと見せる華やかな発想”から作り出した経緯のようでしたが、腹に脂肪があっては逆効果もあり、身体の身だしなみも強制的に躾けられるスパッツであるようです。

昭和のキックボクシングがテレビによって隆盛期を迎え、その後テレビが離れると、定期興行が打てない閑散とした低迷期に突入し、何とか各所で支援者に恵まれたキック業界は復興に至りました。隆盛期から復興期まで時代を跨って活躍した中にはシーザー武志氏もいた訳です。団体を作るより、競技を創設する苦労は、このシュートボクシングを世界に支部を作り定着させなければならない活動が続きました。現在は女子選手が実力を付け、RENA選手がメインイベントを務める時代とまでになりました。強く可愛い連鎖で後輩のMIO選手も力を付けています。

オークションでサイン色紙をゲットしたセントポールズサロン銀座(次回開催地)の森和夫社長がシーザー武志氏とRENAさんに囲まれる

◆11月26日開催のPART3は「藤原敏男の炎のキックボクシング講座」

現役を引退した選手らは、この業界にはわずかしか残れない中でも、赤字を覚悟したジム運営や興行に汗を流す日々となり、そんな業界であっても、かつて戦った者同士の、あの時代を語る集いは、年取った者が懐かしむだけかもしれませんが、今現役の選手も、この時代を取り巻くファンもやがて同じ集いを行ない、現在、喧々囂々やりあっている現役選手も30年もすればこんなテーブルに付くのだろうと想像してしまいます。

以上はパーティーで印象に残った話をマニアックに簡潔に拾ったものを披露したものですが、今の若い記者個人では出来難い、舟木氏のベテラン記者としての人脈がありました。キックボクシングの取材現場には一部を除き、長く務める顔ぶれは少ないものですが、マスコミとしても培っていかねばならない継続力を学ばせて頂いたパーティーでした。

11月26日(土)には中央区銀座の「セントポールズサロン銀座」に於いて13時より舟木昭太郎氏主催のトークショーPART.3として「藤原敏男の炎のキックボクシング講座」が開かれ、藤原氏をメインに現役時代のラジャダムナン戦などの映像を観ながらのトークのようです。現在に繋がる基盤を作り上げた諸先輩方の集いは今後も続いていくことでしょう。

※イベント詳細は舟木昭太郎さんのブログ「日々つれづれ」をご参照ください。

今、最も旬な二人、RENA選手、MIO選手

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)
タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
 
商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!

MAGNUM.42 一心に王道を突き進むのみ、三つのリベンジ戦!

ローキックで強く攻める江幡塁の戦略。セーンピチットも必死になる
次第に効いてきたローキック、ブロックも追いつかなくなる
効いてしまうと心折れる訳でなく、麻痺して立てなくなるのがローキック

江幡塁と重森陽太の二人は、5月29日、タイのラジャダムナンスタジアムで現地常連選手に判定負けを喫しています。そのリベンジ戦、江幡塁はバットを圧し折るような左ローキックでセーンピチットを担架で運ばれる事態に追い込む圧勝。

重森陽太は様子見の手数少ない序盤から次第にしなりある蹴りで攻勢に立ち、後半にパンチでラッシュし、試合をコントロールした勢いで判定勝利。

3月13日、石川直樹と王座決定戦で引分け(公式記録)、延長戦での“勝者扱い”で王座奪取となった泰史の初防衛戦は再び石川直樹と対戦。ヒジ打ちで眉間をカット成功した石川直樹は反撃に出る泰史を首相撲からのヒザ蹴り中心に優勢を守り、泰史はドクターチェックを2度受けた後、続行中にレフェリー判断で試合をストップ。石川直樹は王座を?ぎ取るリベンジで第9代日本フライ級チャンピオンとなりました(新日本キック制定)

緑川創は右足の指を骨折する中で苦戦の引分け。ラジャダムナン・ランカー相手に打ち負けない展開は実力を証明した内容。

勝次は元・タイ南部ライト級チャンピオンのトックタックに様子見に時間が掛かるもパンチで前に出て勢いに乗り、KO出来なかったが安定した試合運びで判定勝利。
喜多村誠はジャントーンのパンチに攻め難さがあったが、右ハイキックでダウンを奪い、右ストレートで仕留めるTKO勝利。

◎MAGNUM.42
10月23日 後楽園ホール 17:00~20:50
主催:伊原プロモーション
認定:新日本キックボクシング協会

《主要6試合》

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
 VS 
セーンピチット・STDトランスポート(タイ55.6kg)
勝者:江幡塁 / TKO 4R 0:51 / カウント中のレフェリーストップ

◆日本フライ級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.泰史(伊原/50.8kg)vs1位.石川直樹(治政館/50.8kg)
勝者:石川直樹 / TKO 4R 1:18 / レフェリーストップ

ヒジで切った後は攻められても冷静に試合をコントロールした石川直樹
レフェリーが傷を見てストップ、石川直樹に苦労の裏返しとなった笑顔が浮かぶ
怪我が多かった今年、それでも負ける訳にはいかない緑川創
油断ならないシップムーンの荒技、バックエルボーの脅威

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(前・日本W級C/藤本/70.0kg)
VS
タイ国ラジャダムナン系ウェルター級2位
シップムーン・シットシェフブーンタム(タイ/69.4kg)
引分け / 三者三様(49-48. 48-49. 49-49)

柔軟な蹴りを持つ重森陽太はターレーグンにリベンジ成功

◆57.5kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/57.5kg)
 VS
ターレーグン・ポー・アーウタレーバーンサレー(タイ/57.3kg)
勝者:重森陽太 / 判定2-0 (50-48. 49-47. 49-49)

◆63.0kg契約 3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/63.0kg)
 VS 
トックタック・トップキング(タイ/62.7kg)
勝者:勝次 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

◆70.0kg契約3回戦 

日本ミドル級チャンピオン.喜多村誠(伊原新潟/69.5kg)
 VS
ジャントーン・エスジム(カンボジア/70.0kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 3R 2:18 / カウント中のレフェリーストップ

アンダーカード5試合は割愛します。

《取材戦記》

江幡塁は試合後、25歳となった今年、「今だったら3年前と違います」と、ラジャダムナン王座に挑戦してKOで敗れ去った頃を意識しての発言。来年には再度ラジャダムナン王座に挑戦し、奪取する意気込みを感じられました。

新日本キックボクシング協会所属以外でタイ・ラジャダムナン王座奪取が続く今年、その中の一人、T-98(タクヤ)に3年前、判定勝利したことがある緑川創は、もう一度、この高校野球部時代の先輩と対戦する舞台に立ちたいところでしょう。パンチで倒してTKO勝利した喜多村誠も同じく、T-98に挑戦の意思を示し、チャンスを待つ者の一人です。

喜多村誠のハイキック、ラジャダムナン王座再挑戦へ向けて勢いが増す

日本人選手ではないですが、ラジャダムナン・ミドル級チャンピオンに就いたユセフ・ボーネン(フランス/ベルギー)は5月27日にコムペットレック・ルークプラバート(タイ)との王座決定戦で2ラウンドにユセフが股間へのヒザ蹴りでコムペットレックが悶絶。ユセフの失格負けとなり、コムペットレックが新チャンピオンになり、その初防衛戦が8月31日のユセフとのダイレクト再戦でした。

そしてユセフが第4ラウンドに左ボディブローで倒して王座奪取。意外にもタイの専門誌記者の間では、”外国人ムエタイ選手の中で一番強い”と評価されているようです。

ラジャダムナンスタジアム王座は、スーパーウェルター級チャンピオンがT-98、ミドル級チャンピオンがユセフ・ボーネン、ライト級チャンピオンが梅野源治。タイ側から見れば軽量級境界線のライト級を除き、あまり評価が高くない領域となりますが、昔は重量級でも強いチャンピオンがいたムエタイ王座です。日本人でも挑戦資格を獲れる実力を持った選手が多いので、タイ側を慌てさせるよう掻き回して欲しいものです。

勝次も目指すものが見えている中での勝利

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
  商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!

日本キック連盟の巻き返し──天下布武・武士シリーズ!

豪快なKO勝利もあり、存在感大きかった34歳桃井浩

◎武士シリーズ vol.4
10月2日(日)後楽園ホール17:30~21:15
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

《ハイライト》

◎今年2月、ゴンナパーに判定負け、6月、翔センチャイジムに負傷による棄権TKO負けと白星が無い大和知也が中尾満を圧倒し、エース格の面目躍如。

◎高橋一眞に雪辱果たして王座に就いた村田裕俊が複数団体同級チャンピオンの久世に判定勝利。

◎興味深かった高橋三兄弟次男・亮21歳と佐々木雄汰16歳のルーキー対決。互いに持ち味出した戦いで高橋亮が判定勝利。

◎桃井浩が劣勢の判定負けながら力出し切ったラストファイト。

主要6試合

◆64.0kg契約5回戦

NKBライト級チャンピオン.大和知也(SQUARE-UP/63.75kg)
VS
中尾満(エイワスポーツ/63.85kg)
勝者:大和知也 / KO 1R 2:45 / 3ノックダウン

ローキックのけん制からボディへ右ストレート、更にコーナーに詰め連打でダウンを奪い、巻き返しに出てくる中尾と打ち合いの中、連打で2度目のダウンを奪い、効いていない様子の中尾だったが、仕留めに掛かる大和は連打の中、右ストレートで3度目のダウンを奪い久々の圧倒KOでの完勝。

距離を詰めるにも勢いがあった大和知也のボディブロー
他団体チャンピオン下し、更なる上位を目指す村田裕俊

◆58.0kg契約5回戦

NKBフェザー級チャンピオン.村田裕俊(八王子FSG/58.0kg)
VS
WMC日本フェザー級チャンピオン.久世秀樹(レンジャー/57.8kg)
勝者:村田裕俊 / 判定3-0 / 主審 馳大輔
副審 前田49-47. 川上49-48. 佐藤友章49-48

序盤は久世がムエタイ技で積極的に出てヒジ打ちで村田の額を切ることに成功。後半は村田がローキック主体にジワジワ巻き返し、久世の勢いが衰えるがまま、村田の判定勝利。

勢いの違いが出始めた後半の高橋亮のミドルキック

◆53.7kg契約5回戦

NKBバンタム級チャンピオン.高橋亮(真門/53.6kg)
VS
WPMF日本スーパーフライ級チャンピオン.佐々木雄汰(尚武会/53.6kg)
勝者:高橋亮 / 判定3-0 / 主審 鈴木義和
副審 前田50-49. 川上49-48. 馳50-48

高橋亮は三兄弟の中で最初に王座に就いたNKBとしても有望な存在。佐々木雄汰は16歳でWPMF日本スーパーフライ級王座に就いたスーパールーキー。ムエタイ技で佐々木が上回り、素早さ、ヒジ打ち、転ばしも上手いが高橋は冷静に様子見。3Rには佐々木を空回りさせるキックスタイルの高橋のパンチで佐々木は鼻血を出す。後半に得意とする戦法を活かした高橋が勢いを増した展開で判定勝利。再戦すればまた向上した面白い戦いになりそう。

キックボクシングスタイルの高橋亮が優ったボディブロー
凡戦となったが、一発の破壊力はKOのチャンスもあった田村と西村

◆NKBミドル級5回戦

1位.田村聖(拳心館/72.15kg)vs6位.西村清吾(TEAM-KOK/72.45kg)
引分け 1-0 / 主審 佐藤友章
副審 川上49-49. 馳49-49. 前田50-49

決定打が少ない中、パンチのクリーンヒットが当たると勢い増すかと見入っても、スタミナ切れのパッとしない中、KOを期待した観る側は長い5ラウンドとなった展開。

劣勢が続くもラストファイトを悔いなく戦った桃井浩

◆ライト3回戦

NKBライト級2位.桃井浩(神武館/61.0kg)vs増倉敦(TRY-EX/61.1kg)
勝者:増倉敦 / 判定0-3 / 主審 鈴木義和
副審 馳28-30. 佐藤友章28-30. 前田28-30

桃井浩のラストマッチは増倉に攻められっぱなし。2Rにはちょっと逆転は無理かと思うほど手数が減り、3Rは踏ん張って反撃もスタミナ切れ。しかしラストマッチとしての力を出し切る意地を見せた感動も残りました。

◆NKBフェザー級3回戦

4位.高橋聖人(真門/57.0kg)vs6位.安田浩昭(SQUARE-UP/57.05kg)
勝者:高橋聖人 / 判定3-0 / 主審 川上伸
副審 前田30-27. 佐藤彰彦30-28. 馳30-27

技が多彩な高橋聖人がしだいに圧倒。安田はパンチで出るしかない劣勢に。やや見過ぎで勢い弱まる高橋も攻勢を維持し判定勝利。

※他、5試合は割愛します。

技の多彩さで安田を圧倒した高橋聖人
他団体チャンピオンを意識したアピールの大和知也

取材戦記

「キックボクシング業界がこれから盛り上がっていきますので、いろんな大会に出れるよう頑張ります。他の団体とか他のチャンピオン倒しますので宜しくお願いします。」(大和知也の勝利者インタビュー)

「NKBの盾になって他団体のチャンピオンをバタバタ倒していくので応援お願いします。」(村田裕俊)

 こうした発言が出てきたのは、NKB自体が「KNOCK OUTイベント」を意識したり、交流戦が出来るようになってきたゆえだと思います。この団体の選手にも新たな目標が出来ることで活気が出て来た証しともいえそうです。

「KNOCK OUT」による波紋は団体によって違った形で出ていると思いますが、NKBにおいてもこのように他の選手にとっても同様の意識があるでしょう。初戦は敗れた高橋一眞も再度出場を狙っていることでしょうし、売り出し中の高橋三兄弟の飛躍に期待が掛かります。

武士シリーズVol.5は12月10日(土)17:30より後楽園ホールにて、NKBフェザー級タイトルマッチ.チャンピオン村田裕俊が同級2位.優介(真門)を迎え初防衛戦を行ないます。他団体交流戦を目指す村田が上昇気流に乗った勢いで初防衛を果たせるか期待のかかる防衛戦です。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

 7日発売!タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
  商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!