永澤サムエル聖光と睦雅は倒し切るTKO勝利。
瀧澤博人はテクニックで圧勝。
この先のビッグマッチに向け快進撃が続いた。
大地・フォージャーもチャンピオンの自覚が現れた劇的TKO勝利。
◎KICK Insist16 / 7月16日(日)新宿フェース
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
KICK Insist.16 第2部 18:00~20:00
◆第7試合 62.0kg契約5回戦
永澤サムエル聖光(ビクトリー/ 62.0kg)41戦28勝(12KO)10敗3分
VS
ケンナコーン・ダブランサラカム(タイ/ 62.0kg)70戦49勝18敗3分
勝者:永澤サムエル聖光 / TKO 2R 2:22
永澤サムエル聖光はWMOインターナショナル・ライト級チャンピオン、WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン(防衛1度)。ケンナコーンはTrue4U(タイのテレビチャンネル)ライト級7位
開始後、永澤サムエル聖光は牽制のローキック中心に攻める。ケンナコーンはアグレッシブに応戦し、永澤の左ボディーブロー受けてもニヤッと「効いていない」とアピール。永澤はストレートパンチとローキックを強め、隙を突いて上下打ち分け、主導権を奪った流れ。
第2ラウンドも永澤は左ローキックで右太腿を狙って蹴る強さを増し、ノックダウンを奪う。弱気になったケンナコーンを更に左ローキックで苦しめ、パンチから左ローキックヒットで倒し、ノーカウントでレフェリーがストップを掛けた。
永澤サムエル聖光の牽制のローキックから切り崩しに掛かる
KOへの布石となる永澤サムエル聖光の右ストレート、上下打ち分け
◆第6試合 62.0kg契約5回戦
JKAライト級チャンピオン.睦雅(=むが/ビクトリー/ 61.4kg)18戦12勝(6KO)4敗2分
VS
ペットルン・ルークスアン(元・KruDamトーナメント60㎏級覇者/タイ/ 61.3kg)
51戦31勝19敗1分
勝者:睦雅 / TKO 1R 1:10
主審:松田利彦
ローキック中心に様子見の両者、睦雅はパンチとローキックで圧力掛けて行く中、前蹴りで突いて左ボディーブローをヒットさせた途端、あっけなく倒れ込むペットルン。カウントは8で止められレフェリーストップ。睦雅の圧勝となった。
睦雅の右ローキック、これもKOへの布石
位置の都合で撮れていないが、睦雅の左ボディブローヒット後、悶絶のペットルン
◆第5試合 52.5kg契約3回戦
JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/ 52.0kg)18戦11勝(1KO)5敗2分
VS
WMC日本バンタム級2位.奥脇一哉(エイワスポーツ/ 52.5kg)35戦12勝(2KO)18敗5分
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:松田28-29. 勝本29-29. 少白竜30-29
初回、パンチとローキックの攻防から細田昇吾が強めにローキックを積極的に蹴り、奥脇一哉がやや出難い流れ。第2ラウンドには奥脇が手数増やして来ると、細田は応戦するも互角の展開。更に組み合うシーンが増えて奥脇のムエタイスタイルが引き立つ流れ。やや巻き返された印象の細田にとっては惜しい試合。
序盤は細田昇吾のローキックが攻勢気味だった
◆第4試合 フライ級3回戦
JKAフライ級2位.西原茉生(治政館/ 50.8kg)9戦5勝(2KO)3敗1分
VS
花澤一成(市原/ 50.7kg)5戦1勝(1KO)2敗2分
勝者:西原茉生 / TKO 1R 1:09
3月19日の初対決では開始早々打ち合いになり、西原茉生の右ストレートカウンターで花澤一成がノックダウンと見えたが、ここでのTKO裁定は審議の上、偶然のバッティングと訂正され負傷引分けとなっていた。
5月21日の市原ジム興行で組まれた再戦では、前日計量を両者パスしながら、花澤一成が急な発熱による体調不良の為、検診時のドクターストップで中止。
今回の因縁の再戦は、互いに早々の打ち合いは避け、パンチとローキックの様子見の攻防から、西原の右ローキックで花澤一成がパンチで出て来るところ、西原の右フックが花澤のアゴにヒットしノックダウン。立ち上がるがダメージが深くては巻き返しは難しいところ、花澤の前蹴り躱した西原が左ストレートヒットさせ、2度目のノックダウンで、花澤一成は立ち上がるも足が効いていてフラつき、レフェリーに止められてしまった。悔しがる花澤一成だった。
3月の試合後、西原は「KO勝ちのイメージが出来たのは収穫です。再試合が組まれれば倒します。」と応えていたとおりの速攻勝利となった。
因縁の対決は西原茉生が速攻で2度のノックダウンを奪って圧勝
◆第3試合 フェザー級3回戦
勇成(Formed/ 57.0kg)vs颯也(新興ムエタイ/ 57.15kg)
勝者:勇成 / TKO 1R 1:15
勇成の右ストレートヒット、2度目のノックダウンでノーカウントのレフェリーストップ。
◆第2試合 ライト級3回戦
岡田彬宏(ラジャサクレック/ 61.0kg)vs長谷川欣毅(エイワスポーツ/ 60.6kg)
勝者:岡田彬宏 / 判定3-0 (30-29. 30-28. 29-28)
◆第1試合 フェザー級3回戦
隼也JSK(治政館/ 56.8kg)vs遠山哲也(エス/ 57.0kg)
引分け 1-0 (29-29. 29-28. 29-29)
KICK Insist.16 第1部 14:00~16:00
◆第6試合 57.5㎏契約3回戦
WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/ 57.4kg)
37戦25勝(13KO)8敗4分
VS
コンコム・レンジャージム(タイ/ 57.4kg)82戦66勝11敗5分
勝者:瀧澤博人 / 判定2-0
主審:椎名利一
副審:勝本29-29. 中山29-28. 松田29-28
瀧澤博人はローキックから左ジャブで主導権を支配し、更に前蹴りを顔面にヒットさせるインパクトある展開を見せた。
ヒザ蹴りも含めて多彩に蹴り分け、コンコムも余裕無い表情ながら、アグレッシブにボディーブローを狙ったり組み合って崩しに掛かるも、瀧澤は上背で上回ってヒザ蹴り。ロープに押し付けてヒザ蹴り。ウェイト掛けて疲れさせた上でヒジ打ち叩き込んだか、コンコムの右眉から出血。瀧澤が完全にペースを掴んだ流れ。
我武者羅にコンコムが出て来るが、応戦してヒジ打ちも返し優った展開で終了。採点は僅差の微妙さを残したが、内容的には主導権を奪った高度な戦いを見せた。
適材適所、打って出た瀧澤博人、ヒジ打ちの攻防
左ジャブは最後まで活きた瀧澤博人
◆第5試合 67.0㎏契約3回戦
JKAウェルター級チャンピオン.大地・フォージャー(誠真/ 67.0kg)18戦8勝(6KO)9敗1分
VS
土屋忍(元・WPMF日本スーパーライト級8位/KUNISNIPE旭/ 66.8kg)
17戦8勝(1KO)7敗2分
勝者:大地・フォージャー / TKO 3R 1:25
主審:少白竜
初回からローキック、ミドル、ハイキックとパンチでのプレッシャーの掛け合いから大地フォージャーが手応え掴んで圧力増し、主導権を奪った流れで攻勢を維持。土屋忍は出難い展開で余裕無くなり攻め倦む。
第2ラウンドに大地はニュートラルコーナーでヒジ打ちもヒットか、土屋の左眉もカット。
第3ラウンド、大地は右ハイキックからパンチ連打し、ロープ際でヒザ蹴りで圧倒。大地は左フックか、土屋をノックダウンさせ、更にパンチで追ってヒザ蹴りで攻め、打ち返して来る土屋に、右ストレートで止めを刺すノーカウントのレフェリーストップとなった。
大地フォージャーが仕留めた右ストレート、土屋忍を倒す
◆第4試合 73.0㎏契約3回戦
バス・レンジャージム(タイ/ 72.8kg)おおよそ190戦
VS
KONZISI BADBOY(KUNISNIPE旭/ 72.7kg)10戦7勝(3KO)3敗
勝者:バス・レンジャージム / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名29-28. 中山29-28. 少白竜30-28
KONZISIが積極的に蹴りからパンチで攻めると応戦したバス。3ラウンド終了までにスタミナ使い果たしたような獰猛な蹴りとパンチの打ち合いの中、ヘロヘロになりながら最後まで蹴りの出た両者。KONZISIもアグレッシブな勝ちに行く姿勢を見せ前進、バスを疲れさせたが、的確差で上手さを見せたバスが判定勝利。
3ラウンドのスタミナ使い果たす激しい攻防、バスとバックヒジ打ちのKONZISI
※ライト級3回戦はJKAライト級4位.林瑞紀(治政館)が左膝蓋前滑液包炎により欠場。同級5位.古河拓実(KICK BOX)との試合は中止。
◆第3試合 ウェルター級3回戦
JKAウェルター級3位.我謝真人(E.D.O/ 66.5kg)12戦3勝(1KO)8敗1分
VS
山内ユウ(ROCK ON/ 66.3kg)7戦3勝(1KO)4敗
勝者:山内ユウ / 判定0-3 (28-29. 28-29. 27-30)
初回からローキック中心の攻防でパンチを含む主導権争い。技が多彩になっていく山内。特にヒザ蹴りがインパクトを与える。
第2ラウンド以降も我謝真人はパンチとローキックを返すが、山内のヒザ蹴りが増えて流れを変えられず、山内が総合力で優った。
◆第2試合 バンタム級3回戦
小野拳大(KICK BOX/ 53.0kg)vs永井洋志(E.D.O/ 53.2kg)
勝者:永井洋志 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 28-29)
◆第1試合 54.0㎏契約3回戦
ストロベリー稲田(治政館/ 53.8kg)vs来輝(BOM SPORTS沖縄/ 53.8kg)
勝者:来輝 / 判定0-3 (28-29. 28-30. 28-29)
《取材戦記》
永澤サムエル聖光は勝者としてリング上で、「ビクトリージムの新エースに睦雅が上がって来ましたが、僕もまだまだ譲らんぞという気持ちです。」とのアピールはインパクトある発言だった。
後輩に抜かれることなく最高峰を目指すことで、直接的に睦雅を叩き落す意味ではないだろうが、本来、選手とはこういう生き残りと勝ち上がる本能を持つものなのだろう。後輩に道を譲る為の王座返上が目立った過去の業界内でも、選手の本音は違ったものと思います。
永澤は、「今日はやりたいことは出来たので、はっきりとは決まっていませんが、またタイのラジャダムナンスタジアムで試合して、まず1勝したいです。」と語った。
今年2月2日のラジャダムナンスタジアムでの試合は判定負けではあったが、試合前の煽りVTRでは「ラジャダムナンでは凄く学べた。タイの選手はとにかくリングの広さを上手く使うことだったり、動き一つ一つに無駄が無い。ラジャダムナンのチャンピオンは倒さないと僕の中では満足できないので倒します。」と近い将来の展望を語っていた。
睦雅は「サンドバッグ並みに打ち込みました。」と語り、ボディーブローは会心の一撃だった様子。第二部のMVPも獲得した。3月に王座を獲ったばかりで先輩方より発言は控えめだったが、更に強くなって先の展開に備える自覚を見せた。
瀧澤博人は第一部のMVPを獲得し、「11月のKICK Insistはラジャダムナンスタジアムのタイトル挑戦の足掛かりとなる強い選手と戦いたいですね。リング上で希望を勝手に言いましたが、まだ何も決まっていません。」と語り、強い相手とのマッチメイクが決まるよう公開アピールした形だった。
この日は、「ローキックで脚狙って流れを組み立てる計画も、思ったよりローキックが当たらなくて、作戦は変更した流れはありました。」と語り、臨機応変に動く体勢は出来上がっている様子。
「今年は勝負に向けた準備の年だと思っています。もう一度、タイのトップと戦う為に自分の力を証明していきます。」と語っていたとおりの11月の勝負に期待です。
いずれにしても永澤サムエル聖光と瀧澤博人の近い将来は、本場のリングで存在感を示すことが出来るかが、いずれ実現すればそこが本当の勝負となり、現地のギャンブラーから支持されればより存在感も増すことに繋がるでしょう。
次回、ジャパンキックボクシング協会興行は10月8日(日)が当初の年間予定の中で予定されています。ビクトリージム(VICTORY SPIRITS)主催KICK Insist.17は11月26日(日)となります。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」