◆試合の必需品、ノーファールカップとは?

キックボクシングにおいて、必要不可欠となるものがマウスピースとノーファールカップでしょう。

ムエタイのノーファールカップ、長年愛用される必需品

ローキックやヒザ蹴りが繰り出される中、股間への蹴りは偶然にしても故意であっても、脛ブロックやバックステップで全てを防御しきれるものではなく、自分自身の為、ノーファールカップはしっかりと装着しなければならない、ルールに定められた防具でもあります。

ムエタイのノーファールカップは金属製(ジュラルミンが多い)で、肌に当たる淵部分はゴムやスポンジなどの柔軟な素材で保護されていますが、昔は保護部分が無い、金属が直に股間辺りに食い込んで痛かったというものでした。更にズレないように紐で強く締め上げるので、保護面があっても股間と腰に食い込む紐などによる痛さはある程度は仕方無いところです。

◆防具していても苦しいダメージ

現在でのムエタイでは、股間を強く蹴られた場合、中断や反則裁定を取る傾向がありますが、昔は「ノーファールカップしているんだから大丈夫だろ!」と当たり前のように強烈なヒザ蹴りを喰らっても、「蹴られる方が悪い」と言わんばかりにレフェリーは試合続行し、股間ローブローで倒れてもノックダウン扱いでした。

更に股間を蹴られて割れた金属カップが睾丸を覆う陰嚢に突き刺さる悲惨な負傷もありましたが、あるジム関係者に聞くと、そんな事態に備えてカップの内側にバンテージテープを厚めに貼り付けておくと言います。割れても急所に突き刺さらないよう最悪の事態を想定した工夫のようです。

1988年のタイにて。試合前のノーファールカップ装着する姿

日本での試合中に破損した場合は取り換えに控室に戻る事態をたまに見かけます。昭和時代にはリング上の自軍のコーナーでセコンド陣が選手の下半身をタオルで覆って、その場で取り換える光景もテレビに映っていましたが、大体は観衆の目に入らないリングから離れた位置に移動します。最近は不正を防止する為、非番審判が立ち会うことが多く、その監視役が居ないと水分を摂ったり、ダメージ回復に加療する時間となるので改善が必要とされていました。

以前、再三の股間ローブローを受けながらも続行した試合があって、何度も受ければ数分休んだぐらいでは激痛が和らぐものでなく、アグレッシブさが激減。ノーファールカップで保護されているとはいえ、ヘルメットのように衝撃を軽減する防具であって、ある程度はダメージに繋がります。

プロボクシングでは故意のローブローによる試合続行不可能となれば、打った側の失格負けで、故意ではない偶然と認められれば、打たれた側は最大5分のインターバルを与えられ、試合続行不可能となればTKO負けとなります。それはリング上では患部を確認できない為、効いたフリをして勝利を拾う為の演技の防止でもあります。

キックボクシングでは各団体、興行によって対処は違いますが、最近では偶然のアクシデントとして負傷判定が採用されたり、プロボクシングに準ずる適切なルールが無いが為の無効試合になる場合が多い感じがします。

最近の前日計量において、「股間ローブローはノーファールカップで守られているから“ノーファール、つまりファールとしない”という意味で、少々のヒットでは止めません」というルール説明される場合があります。流れの中で当たってしまうことはよく起こりますが、極力試合を中断しない、観衆を白けさせない配慮があります。

アラビアンにやられたらやり返したソムチャーイ高津、衝撃は倍返しだった(1998年頃)

以前には「相手が明らかにワザと蹴って来たから股間蹴り上げてやった」という、やられたらやり返す展開もあり、推奨できないものの偶然を装うテクニックも必要な競技かもしれません。

◆起こり得るのはジムワーク

股間ローブローによる負傷は公式試合より、ジムでのスパーリングが多いようです。それはジムメイトに故意に狙われることはないという安心感で、ノーファールカップを自分で装着するが為の強く縛れない緩めの装着や、練習用のアンダーウェア型簡易防具、或いは全く装着しないスパーリングなどが多いでしょう。思いがけない強い蹴りを受け、カップが緩い為にズレて隙間に睾丸を挟んでしまい、そこを蹴られてモガキ苦しむ姿も見受けられます。ある元・選手は睾丸がテニスボールぐらいに腫れ上がって、会長に病院に連れて行って貰ったという事態もありました。

「昭和時代や平成初期までは、脛当てパットもノーファールカップも着けないでスパーリングしていました!」という話は特別なことでなく、過去には多くのジムで起きているアクシデントのようです。

「蹴られてキンタマ一個無くした奴、あのジムのあいつもそう、こいつもそう、昔の選手ではこの選手もそう!」といった話を聞くと、過去のキックボクシングの歴史の中で探せば結構居そうな片玉キックボクサー。

因みに睾丸二個とも無くなれば男性生殖機能は消滅し、外見の男らしさも低下するでしょう。現在は練習においても各自ノーファールカップを持たせ、持って来るのを忘れた奴にはスパーリング禁止と諭しているジムは多いようです。

股間ローブローを受けて悶絶の姿、佐藤勇士vs義由亜戦(2022年1月9日)

インターバルを与えられる時間は少ない中、呼吸を整える(2022年1月9日)

◆後悔無きよう!

公式試合においてノーファールカップをしっかり縛れるセコンド陣営が居ない場合、他のジムトレーナーに依頼することも必要でしょう。緩い装着で試合中にズレた上に蹴りを貰ったら、観衆の前で上記のような悲惨な事態になりかねません。

トレーナーからすれば、選手のバンテージ巻くのとノーファールカップ装着を完璧にやらねばならない責任が大きいものの、自らも痛い経験があるだけに数多くこなしてきた紐を縛り上げる装着は上手く、特にタイ人ベテラントレーナーに委ねられる場合が多いようです。

試合に於いてはマウスピースとノーファールカップは必需品。無かったら試合に出られません。ジムにおいてはあのような痛い想いは二度としないよう、古い時代の先輩に「俺らの時代は何も着けずにスパーリングしたんだ、無くてもいいだろ、早くスパーリング始めろ!」とせかされても後悔しないように、昨年のテーマで拾ったマウスピースとノーファールカップの準備は万全な態勢で掛かりましょう。

試合続行不可能となった大場一翔vs小林亜維二戦、この時は負傷判定による引分け(2022年3月13日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランスとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家した。

髙橋亨汰は対戦相手のピューポン・ゲッソンリットが欠場によりメインイベントが消えた。
トリを務めた木下竜輔は流血の激戦の末、沖縄の下地奏人に判定負け。

◎TITANS NEOS.32 / 4月23日(日)後楽園ホール17:30~20:00
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

※試合レポートは岩上哲明記者(一部編集)

63.0kg契約3回戦 ピューポンの怪我により中止
髙橋亨汰(WKBA62kg級Champ/伊原)vsピューポン・ゲッソンリット(タイ)

◆第8試合 フェザー級3回戦

木下竜輔(伊原/26歳/ 56.95kg)9戦4勝(2KO)5敗
      VS
下地奏人(RIOT/18歳/ 57.2→57.15kg)7戦7勝(1KO)
勝者:下地奏人 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本26-30. 桜井26-30. 仲26-30

陽気さと余裕感が出ている下地奏人に対し、右肩にテーピング、左太腿にサポーター、両足首にテーピングをしている悲愴感を漂わせる木下竜輔。

開始早々から打ち合いになったが、下地はミドルキックをキャッチされても構わず木下にパンチを打つテクニックを披露。そして、木下に左フックをヒットさせノックダウンを奪う。

木下竜輔の強打、右ストレートはヒットせず

第2ラウンド、下地の攻勢は続き、右の縦ヒジ打ちで木下の眉間がカットされ、追撃の左縦ヒジ打ちで傷口が広がり、ドクターチェックが入るも続行。その後も下地のヒジやパンチがヒットするが、木下の大振りのパンチがヒットすると会場は盛り上がった。

第3ラウンド、木下は下地のパンチ連打でコーナーに追い込まれ、カウンターで右フックをクリーンヒットさせるが劣勢を覆すには至らず。下地は最後まで手数を減らすことなく攻勢を維持し判定勝利。

試合後、下地奏人はKO勝ちが出来なかったことをセコンド陣と一緒に反省していたが、「次回、呼ばれたらしっかりKO勝ちをします。」とこの日の試合を今後に活かしたい決意が現れていた。

多彩に柔軟に攻めた下地奏人の前蹴りが木下竜輔のアゴにヒット

沖縄から乗り込んだ下地奏人が判定勝利を飾った

◆第7試合 スーパーフェザー級3回戦

小林勇人(伊原/26歳/ 58.85kg)2戦2勝(1KO)
      VS
渋谷昴治(東京町田金子/ 57.9kg)9戦5勝(2KO)3敗1分
勝者:小林勇人 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名30-29. 勝本30-28. 仲30-29

2月19日の仁琉丸との試合で、右ストレート一発で豪快なTKO勝利をした小林勇人は「今回もKO勝ちします。」という意気込みで試合に臨んだ。

第1ラウンド、渋谷昴治は微妙に距離を作り、小林勇人のパンチを軽減しながら、隙を見てパンチのコンビネーションを仕掛けていく。小林の重いパンチがヒットするも渋谷も対抗していく。

第2ラウンド、渋谷は自ら攻めに入り、ローキックがキレイに決まる。小林はパンチで出るが、渋谷のタフさと決定的なダメージを貰わない距離感でクリーンヒット出来ず。

第3ラウンド、両者の打ち合いで会場は盛り上がる中、渋谷は隙を突いてパンチの連打を決めていくが、小林も蹴りを混ぜながら連打で返す。勝負は微妙な流れだったが、小林が判定勝利となった。

小林勇人が右ストレートで渋谷昂治にヒット、僅差ながら攻勢に転じる

◆第6試合 57.0kg契約2回戦

中村哲生(伊原/57歳/ 56.85kg)5戦5敗
      VS
長友亮二(キング/ 56.4kg)1戦1勝(1KO)
勝者:長友亮二 / TKO 1R 0:53 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:桜井一秀

長友亮二はアマチュアキック版オヤジファイト、「ナイスミドル」で活躍し、今回がプロデビュー戦。「自分なりのケジメをつける戦いになると思います。」と決意を語っていた。

開始早々、長友亮二は右ストレートを決め、中村哲生は出鼻を挫かれ反撃をさせて貰えず、ローキックの連打で動きを止められ、ガードが下がったところに長友の右ストレートが顔面に炸裂。そのままレフェリーストップされ、長友亮二のTKO勝利。

短い時間の中、パンチと蹴りで上回った長友亮二が圧倒してTKO勝利

◆第5試合 76.0kg契約3回戦

マルコ(伊原/34歳/ 75.15kg)5戦3勝(1KO)2敗
      VS
鈴木健太郎(E.S.G/32歳/ 75.85kg)5戦4勝1敗
勝者:マルコ / TKO 1R 3:00(アナウンス発表) 、 1R 3:06辺り(レフェリーストップされたおおよそのタイム、カメラデータによる)
主審:勝本剛司

前日計量でマルコは「少し落とし過ぎたかな。1ラウンド、いや1分でKOします。」とコメント。表情はリラックスしていた。

開始後、両者は探り合いのような形で始まるが、鈴木健太郎のローキックに対し、マルコもローキックで返していき、パンチで攻勢に出ると会場から声が挙がる。ラウンド終了近くにマルコはローキックで動きを止め、右フックでノックダウンを奪う。鈴木は立ち上がろうとするが効いて足が縺れてレフェリーストップ。マルコのTKO勝利。

試合後 控室に戻っていたマルコ選手は「1分ではKOできなかったけど、1ラウンドKOが出来たのは嬉しい。」と英語で陽気にコメントしていた。

マルコが右ストレートで攻勢に転じ、宣言どおりのノックアウト(TKO)に繋ぐ

◆第4試合 女子アマチュア35.0kg契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原/11歳/34.7kg)vs岩本心(FACT MMA/ 33.8kg)
勝者:西田永愛 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-19)
主審:椎名利一
副審:桜井20-18. 仲20-28. 勝本20-19

まだ小学生と見られる両者は共に家族と一緒に会場入り。

西田永愛はバックスピンキックで会場を盛り上げ、岩田心も負けじとパンチを中心に反撃をする。西田の蹴りを中心にし、技を正確に魅せるように決めていく攻撃に、怯むことなく攻めていく岩本だったが、西田が判定勝利となった。

アマチュア試合。11歳にして柔軟な技を魅せた西田永愛

◆第3試合 女子50.5kg契約3回戦(2分制)

オンドラム(伊原/ 50.45kg)7戦2勝5敗
      VS
高橋友菜(Team lmmortaL/ 48.05kg)1戦1敗
勝者:オンドラム / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名30-29. 桜井30-28. 仲30-29

計量規定内とはいえ、2.4kg差は大きかったかもしれない。しかし、デビュー戦らしく、オンドラムとの体格差をカバーするように前へ前へとパンチを連打しながら攻めていく高橋友菜。オンドラムは慌てず冷静に打ち合いに応じながらも体格差を活かし、高橋の連打を最小限に抑える。第2ラウンドに入ると、高橋のスタミナが少しずつ切れてきた。オンドラムは自分のペースに持ち込み、第3ラウンドは打ち合いになるも優勢のまま判定勝利を得る。

オンドラムが体格差を活かして攻勢を維持して判定勝利を導く

◆第2試合 58.0kg契約2回戦

吴嘉浩(中国留学生24歳/伊原/ 57.6kg)2戦1勝1敗
      VS
聖那(ANCHORAGE/21歳/ 58.6→58.1kg)2戦1勝1敗
勝者:聖那 / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:少白竜18-20. 桜井18-19. 仲18-20

初回、?嘉浩はパンチ中心に手数多く時折ワンツーを決めていく。聖那は劣勢かと見えたが、パンチに合わせたローキックで返し、ラウンド後半になると確実に?嘉浩にダメージを与えていった。

第2ラウンド開始早々の打ち合いから聖那の右ストレートが決まったのを切っ掛けに、?嘉浩は劣勢になり始める。聖那はハイキック、アッパーからボディへのパンチ、右ミドルキックで?嘉浩はスタンディングダウンを喫し、聖那が判定勝利。

◆第1試合 女子フライ級3回戦(2分制/ミネルヴァ推薦試合)

青木繭(SHINE沖縄/32歳/ 50.4kg)4戦3勝(1KO)1敗
      VS
片岡真秀(チーム・タイガーホーク/17歳/ 50.35kg)5戦4勝(1KO)1分
勝者:片岡真秀 / 判定0-2
主審:椎名利一
副審:少白竜28-30. 勝本29-29. 仲29-30

2月19日興行でオン・ドラムに判定勝利した青木繭。「前回KO勝ちが出来なかったので今度こそはKO勝ちします。」と語り、ゆくゆくはミネルヴァのタイトルも狙っていくと力強いコメント。一方の片岡真秀は冷静に「心を折られず、心を折りにいく」とコメント。

青木繭は体格差を気にせず攻めていくが、片岡真秀のハイキック、ミドルキックが的確に決まる。青木はもろに何発も受けるがタフネスぶりを発揮し、パンチを打ち返す展開。青木のタフネスぶりは発揮されたが、片岡が技の的確さで判定勝利。

《岩上哲明取材観戦記》

今回の興行はメインイベントが無くなったことで盛り上がりに欠けると懸念していましたが、それをチャンスと捉えた下地選手とセコンド陣、そして、前回のKO負けを反省し、意地を貫いた木下選手の攻防が見事にスイングしてトリを締め、コンパクト感は感じたものの良い興行になりました。

興行は初め、中間、最後の3場面で盛り上がるかどうかのポイントになると思いますが、この3場面を選手達は盛り上げてくれました。また、今回の興行でデビュー戦を飾った二人の選手は対照的なものでしたが、次回への期待を沸かせるような試合ぶりでした。

興行を理解して試合出場している選手達が、多くの機会に恵まれるように団体運営陣、マスコミは応援しなくてはならないでしょう。

《堀田春樹取材戦記》

“メインイベントが消えた”意味は二つあり、この日の高橋亨汰の対戦相手のピューポンが欠場と、いつものメインイベンター重森陽太、勝次ら不在の現象がありました。勝次は近々、他興行出場予定があり、重森陽太はは2月の試合での脛の怪我の影響や、所属ジムの方針があったかと思いますが、かつての隆盛が感じられないメインイベンター不在でもありました。高橋亨汰はヤル気満々だった様子で、次なるメインイベンターとして、しっかり役割を果たすことでしょう。

今回の興行ではセミファイナルの木下竜輔vs下地奏人戦が最終試合となりましたが、昨年5月15日に木下竜輔が、KO負けの少ないジョニー・オリベイラを右ストレート一発で失神TKO勝利して強烈な存在感を示し、順調だったデビュー後も、今や負け越してしまう苦しい立場だが、髙橋亨汰に続くエース格に期待が掛かっているので踏ん張って欲しいところです。

第1試合で片岡真秀のセコンドに着いた船木鷹虎さん。仙台青葉ジムから独立し、2002年に鷹虎ジムを開設。現在はプロ部門をチーム・タイガーホークとして活動中である。そんな鷹虎さんの現役時代を片岡真秀はどれ程知っているだろうか。試合中、そんな想いが過りましたが、ミドルやハイキックは直伝の当て勘と上手さを感じました。

先週のNJKF興行で 、東京町田金子ジム閉鎖の発表がありましたが、この日、小林勇人(伊原)と対戦した渋谷昴治の敗れた試合が、東京町田金子ジム最後の試合だったかもしれません。所属選手はフリーとなって、今後の活動は移籍など自由となるようです。

次回の新日本キックボクシング協会興行は7月9日(日)に後楽園ホールに於いて「MAGNUM.58」が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

岩浪悠弥が志賀将大を倒してフライ級、スーパーバンタム級に次ぐ三階級目を制覇。
IBFムエタイ世界王座奪還目指す波賀宙也は、不運なダメージで判定負け。
前田浩喜があっけなく倒される誤算。勝者・鎌田政興はNKBの存在感を示した。
東京町田金子ジムが閉鎖で金子修会長に功労顕彰の表彰。昭和から続いた名門がまた一つ消える。

◎NJKF 2023 2nd / 4月16日(日)後楽園ホール17:30~20:15
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / NJKF、WBCムエタイ日本協会

※試合レポートは岩上哲明記者

◆第8試合 第8代WBCムエタイ日本バンタム級王座決定戦 5回戦

志賀将大(エス/53.35kg/1993.2.20福島県出身)19戦14勝(4KO)4敗1分
         VS
岩浪悠弥(橋本/ 53.5kg/1998.1.6東京都出身)34戦22勝(4KO)10敗2分
勝者:岩浪悠弥(王座獲得) / KO 2R 2:59
主審:竹村光一 / チェアマン:中山宏美

(志賀将大はNJKFバンタム級とWKBA日本バンタム級チャンピオン)
(岩浪悠弥は元・WBCムエタイ日本フライ級とスーパーバンタム級二階級制覇)

前日計量で志賀将大選手から「2月のタイトルマッチ(WKBA日本)は相手がノラリクラリ躱(かわ)したこともあり不完全燃焼だった。今回は下馬評では橋本選手と言われているようですが団体の対抗戦ということもありスッキリ勝ちたい。」とコメント。

一方の岩浪悠弥選手は「三階級制覇が懸っており気合いが入っています。団体(JKイノベーション)の代表選手ということもあり、勝ちに拘ります。」とコメント。

初回は両者ともローキック中心の牽制で探り合いの展開。

第2ラウンド、志賀将大は前に出ながら蹴りから首相撲を仕掛ける。岩波悠弥も応戦し互角の展開で進んだところ、岩波悠弥の左ハイキックが志賀の顎にヒットし、志賀は動きが止まってしまう。そのダメージから回復させないように岩波はパンチ連打し、右フックでノックダウンを奪う。

勝負の運命を分けた岩浪悠弥の左ハイキックが志賀将大の顎にヒット

志賀は立ち上がるも、岩波のパンチ連打にロープ際に追い込まれ、腰が落ちたところに岩浪の右ミドルキックを顔面に貰い2度目のノックダウン。懸命に立ち上がろうとするも、カウント中にファイティングポーズがとれず、岩波悠弥のKO勝利となった。

ダメージ大きい志賀将大を追って攻める岩浪悠弥

試合後、岩浪悠弥選手は三階級制覇達成の興奮のせいか試合中の緊張感を残したまま、祝福の声に「有難うございます。」とコメント。敗れた志賀選手はセコンド陣と話をしながら、「纏まりが無く雑になった。ダウンを取られるとは思わなかった。」とコメントしながらも敗戦を分析し、「次回に繋げます。」と前向きなコメントだった。

三階級制覇した岩浪悠弥が挨拶、陣営が見守る

◆第7試合 57.0kg契約3回戦

波賀宙也(立川KBA/ 57.05→57.0kg/1989.11.20東京都出身)45戦27勝(4KO)14敗4分
      VS
コンコム・レンジャージム(タイ/ 56.9kg/1988.6.29イサーン地方出身)
勝者:コンコム・レンジャージム / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名27-29. 竹村27-29. 多賀谷28-29

(波賀宙也は前・IBFムエタイ世界Jrフェザー級チャンピオン)

初回、波賀宙也はミドルキック主体でペースを掴もうとするが、コンコムは組むことで体格差を無くしながら躱(かわ)していく展開。

第2ラウンド、波賀はローキックを中心に切り替えていくが、コンコムは首相撲に持ち込み、上手く波賀の攻撃を躱していく。会場から「上手いなあ!」とコンコムの躱す技術を褒める声が上がった。波賀は逃れようと右ボディーにパンチを決めるが続かず、逆に転ばされてしまう。

第3ラウンド、コンコムの上手さに翻弄されている波賀はカウンターのヒジ打ちを決めるも単発で終わる。流れで組んでしまった際に、コンコムはブレイクしようと半ば投げ捨てるように離したが、波賀はマットで頭を打ち、立ち上がるも足が痙攣していた。コンコムは逃さず右ストレートを決めノックダウンを奪う。波賀は立ち上がり反撃をするも試合終了。コンコムが判定勝利を飾った。

試合後、波賀宙也選手は「サイズは関係ないですし、カードが決まる期間が短かったのは相手も一緒です。最後の第3ラウンドだけでしたね。そのラウンドだけは忘れてください。次回に繋げて頑張ります。」と前向きなコメントをしていた。

首相撲からの崩しで転ばされた波賀宙也は立ち上がるにも足がふらつく

ダメージ負った波賀宙也に攻勢に出るコンコム、惜しいラウンドとなった

◆第6試合 57.5kg契約3回戦

NJKFフェザー級チャンピオン.前田浩喜(CORE/57.45kg/1981.3.21東京都出身)
48戦29勝(17KO)16敗3分
        VS
NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/57.3kg/1990.5.6香川県出身)
18戦8勝(3KO)8敗2分
勝者:鎌田政興 / TKO 1R 2:04
主審:中山宏美

試合前、前田浩喜選手から「王者としてNJKFを盛り上げる為に熱い試合をした上で勝ちます。」とコメントがあった。それ以外にも、入場時や大会場での開催など、NJKFを試合以外で盛り上げたいと熱く語っていた。一方の鎌田政興選手は「団体(NKB)の代表選手として、そしてフェザー級を盛り上げるために勝ちにいきます。」と緊張気味にコメントをしていた。

試合当日もリラックスをして談笑していた前田浩喜だったが、開始早々、鎌田政興の左右のストレートを貰い動きが止まる。その後、自分のペースに持ち込もうと首相撲などで攻めていくが、鎌田はパンチを中心にコーナーに前田を追い込み、左右のストレートを決め、ノックダウンを奪う。前田はすぐに立ち上がれず、目の焦点が合わないことでレフェリーはストップをかけ鎌田政興がTKO勝利。

鎌田政興の連打で劣勢に追い込まれた前田浩喜、この後、連打で倒される

◆第5試合 64.0kg契約3回戦

健太(E.S.G/ 63.6kg/1987.6.26群馬県出身)109戦63勝(17KO)39敗7分 
        VS
NJKFスーパーライト級2位.吉田凛汰朗(VERTEX/63.9kg/2000.1.31栃木県出身)
21戦9勝8敗4分 
勝者:健太 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜30-28. 竹村30-28. 中山30-28

(健太は元・WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン)

10ヶ月ぶりのホームリングでの試合になる健太選手。「大会場で何度も試合をしていますが、久しぶりの後楽園ホールで勝利を得ます。」とコメント。

初回、健太はオーソドックスなローキックを中心に隙を突いてパンチを入れていく。吉田凛汰朗はミドルキックからパンチを決めていくが、健太の距離で戦ってしまい攻めきれない。第2ラウンド、健太の圧力が大きくなり、吉田は前に行けず手数が少なくなる。健太は的確にパンチやキックを決めていき優勢になった。
第3ラウンド、吉田は終盤にバックハンドブローを仕掛けるも健太のガードで決まらず。優勢を維持している健太はパンチを中心に自分の距離で戦い、吉田の勢いを潰しながらパンチを決めていった。吉田は力を出し切れなかったようで、健太が判定勝利となった。

109戦目の健太は試合運びの上手さで攻勢を維持して判定勝利

◆第4試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級2位.悠斗(東京町田金子/50.8kg/1993.2.24東京都出身)
37戦20勝(9KO)13敗4分
      VS
同級3位.TOMO(K-CRONY/50.7kg/1982.10.30茨城県出身)21戦7勝(5KO)12敗2分
勝者:悠斗 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜30-29. 竹村30-29. 中山30-29

所属ジムの金子修会長がジム閉鎖の決意と創設51周年の功労顕彰賞を授与されたことを受け、負けられない状況になった悠斗。初回、ローキックから隙をついて重いパンチを決めていく。TOMOはミドルキックと左右のパンチで対抗。

第2ラウンド、悠斗の重いパンチは衰えることなく、的確にTOMOにヒットしていく。TOMOも反撃するが悠斗の圧力が強く、TOMOの勢いを削っていく。

第3ラウンド、悠斗のパンチ中心の攻撃にTOMOは耐えていき、起死回生のバックハンドブローを決めるが、ガードの上でダメージを与えることが出来ず、悠斗のジャブのヒットを許してしまう。最後は打ち合いになるがそのまま終了し、悠斗が判定勝利。

悠斗が重いパンチで主導権を奪った展開の中、ハイキックも繰り出していく

◆第3試合 スーパーライト級(当初)3回戦

NJKFスーパーライト級4位.宗方888(キング)欠場によりTAKUYA戦は中止。

ガン・エスジム(タイ)が代打出場
      VS
NJKF ライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/63.3kg/1993.12.31茨城県出身)
13戦7勝5敗1分
勝者:ガン・エスジム
主審:椎名利一
副審:少白竜29-28. 竹村30-28. 中山29-28

出場予定だった宗方888が減量失敗で脱水状態になり、救急車で運ばれる事態だった様子で前日計量には現れず。電話では謝罪を述べていた様子。

TAKUYA選手は「今回はキレイに勝ちますよ。」と意気込みを語っていたが、代打出場となったガンエスジムとの対戦が決まった。

初回、TAKUYAがガン・エスジムに仕掛けるが、ガンのパンチや的確な右ヒジ打ちが入り、一瞬ぐらつく。ガンは右フックを初め的確で手数多いパンチを繰り出し、TAKUYAはローキックで反撃をする。

第2ラウンド、TAKUYAは右ストレートをヒットさせるも、ガンが前に出て来て組みながらのヒジ攻撃にペースが掴めず苦戦する。ガン選手は急遽試合が決まったとは言え、果敢に攻めていく姿勢は変わらず。

第3ラウンド、TAKUYAはセコンドからの「ヒジで行け!」との指示でヒジ打ちを決めていくが、ガンはポイントで優勢になっていることを意識し、付き合わずに躱したり組んだりして時間を稼いでいるようだった。TAKUYAは攻めきれず終了。ガン・エスジムの判定勝利。

試合後、TAKUYA選手は「すみませんでした」と悔しそうにコメント。「次に繋げましょう。」という声に「有難うございます。頑張ります。」と前向きな返事だった。

急遽決まったムエタイ実力者との対戦、TAKUYAは苦戦を強いられた

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級10位.コウキ・バーテックス(VERTEX/58.8kg/1997.9.20栃木県出身)9戦4勝4敗1分
      VS
颯也(新興ムエタイ/58.8kg/2002.5.4神奈川県出身)6戦2勝4敗
勝者:颯也 / TKO 3R 1:51 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

◆プロ第1試合 ヘビー級3回戦

レオ(K-CRONY/100kg超・秤の都合/1998.9.3ブラジル出身)1戦1勝(1KO)
      VS
長里清(サンライズ/93.7kg/1969.7.29埼玉県出身)1戦1敗
勝者:レオ / TKO 1R 2:04

◆アマチュア第2試合 (over40) 68.0kg契約2回戦(90秒制)

河野友信(A-sk/ 67.2kg)vsカズshooter(テツ/ 66.2kg)
勝者:河野友信 / 判定3-0 (19-18. 19-18. 19-18)

◆アマチュア第1試合 (over40) 60.0kg契約2回戦(90秒制)
シュンスケ・ムアンチャイ・ピラーノ(ゼウス西船橋/ 59.9kg)
      VS
まさる(Labore spes/ 59.55kg)
引分け 1-0 (19-19. 20-19. 19-19)

《取材観戦記》(岩上哲明)

キックボクシングで観客が満足できる興行は、やはり“KO決着が多い興行”でしょう。今回のNJKFの興行ではKO決着が半分あり、それぞれ内容が違うもので、観衆にとって満足したものと思います。判定決着になった試合も勝者のテクニックの巧さに満足出来たことでしょう。そして、最初のアマチュア2試合が会場を盛り上げる為にいい仕事をしてくれたと思います。

メインイベントは「三階級制覇」と「三団体制覇」や「WBCムエタイとWKBA」といった隠れたテーマがあり、それを事前に知ることでより試合の楽しみ方のレベルが上がると思います。NJKFの今後の課題としては、キックボクシングに無縁、無関心な人を振り向かせること。これはキックボクシングに関わる人達共通の課題にもなるでしょう。

《取材戦記》(堀田春樹)

東京町田金子ジム閉鎖と創設51周年セレモニーが第2試合後に行われ、NJKFより金子修会長には長年の功労を顕彰する表彰をされました。金子修氏の御挨拶の中では観衆に対し、「今後もNJKFに足を運んでくださいますように、そして赤コーナーや青コーナーへ声援合戦をお願いします!」と観衆にメッセージを残されました。これもキックボクシングを大いに盛り上げたい表れの、ファンへのお願いだったでしょう。

東京町田金子ジムの前身は昭和のキックボクシング隆盛期に創設された萩原ジム。ここからデビューした現・レフェリーの少白竜氏も花束贈呈に並びました。金子修氏も早々にジムを引き継いだ元・所属選手で数戦しているようです。細かくはジムの歴史を改めて聞いてみたいものです。

次回興行は5月7日(日)にGENスポーツパレスにて「DUEL.28」が開催予定。6月4日(日)には後楽園ホールで本興行「NJKF 2023.3rd」が開催予定です。

東京町田金子ジム閉鎖する金子修会長がファンにキックへの想いを熱く語る

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

月刊『紙の爆弾』2023年5月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B00BZ6IWE4/

片島聡志が海老原竜二を多彩に攻めて圧倒、フリーから参加の存在感を示す。
小清水涼太も連続出場で、棚橋賢二郎の強打を封じて判定勝利。
チャンピオンの真価問われる剱田昌弘は、積極性見せるも決め手に欠ける引分け。
喜多村美紀はミネルヴァ王座挑戦に繋げ、僅差ながら手数上回った判定勝利。
笹谷淳が引退、テンカウントゴングに送られる。

◎野獣シリーズvol.2 / 4月15日(土)後楽園ホール17:30~21:00
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第12試合 55.0kg契約 5回戦

NKBバンタム級1位.海老原竜二(神武館/1991.3.6埼玉県出身/ 54.6kg)
26戦14勝(6KO)12敗
      VS
片島聡志(元・WPMF世界スーパーフライ級C/KickLife/1990.10.19大分県出身/ 54.85kg)
53戦28勝(2KO)20敗5分
勝者:片島聡志 / TKO 4R 2:11
主審:前田仁

開始から両者のパンチ、ローキック、前蹴りで探り合いの中、海老原竜二はパンチ中心に出るも片島聡志にやや圧され気味。片島はオールラウンドプレーヤーでパンチ、ヒジ打ちでもタイミングがいいヒット。第3ラウンドには片島の右ヒジ打ちで海老原は右目尻辺りをカット。更に片島がパンチ連打で追ってヒザ蹴りでスタンディングダウンを奪った。

第4ラウンドには劣勢の海老原を追って、組んでヒザ蹴りボディー攻めでスタンディングダウンを奪い、更に攻勢を続けてローキックで初めてマットに転ばすノックダウン奪うと海老原は呼吸整えて立ち上がるも、これまでのダメージを見たレフェリーがカウント中にストップをかけて試合終了となった。

試合後、海老原の強さしぶとさについて片島聡志は、
「噂には聞いていましたけど、気持ちが強いですね。」
さらに「ヒジ打ち期待していると周囲に言われたので調子に乗ってやっちゃいました。」と語った。技の多彩さ、戦略的に優ったことは、いろいろなテクニシャンと戦ってWPMF世界戦までの経験値があった結果だろう。

徐々にペースを掴み、攻勢を続けた片島聡志の右ストレート

片島聡志が終盤のヒザ蹴り猛攻で海老原竜二はグロッギー状態

◆第11試合 ライト級3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/1987.11.2新潟県出身/ 60.95kg)
20戦10勝(7KO)9敗1分
VS
小清水涼太(KINGLEO/1999.3.30富山県出身/ 61.0kg)
5戦4勝(2KO)1敗
勝者:小清水涼太 / 判定0-3
主審:亀川明史
副審:加賀見27-29. 鈴木28-29. 前田27-29

小清水涼太は前回2月出場で蘭賀大介を右フック気味のパンチ一撃でインパクトあるTKO勝利しての連続出場。

ローキック中心に牽制し合う両者。小清水涼太の長身を利した前蹴りとヒザ蹴り、パンチがやや目立つ展開。棚橋賢二郎は強打を温存している感じ。小清水は飛びヒザ蹴りも見せる。主導権奪った小清水の左ストレートがヒットすると棚橋は腰が落ちかけスタンディングダウンを取られる。ここから棚橋もパンチ勝負に出るも小清水は蹴りで凌ぎ、パンチも打ち返して見せる。

第3ラウンド、棚橋がパンチで出るも縺れて倒れる際、偶然のバッティングから小清水がマットに後頭部を打ったか脳震盪を起こす。インターバルを与えて再開するもダメージが響いて棚橋の攻勢に転じてしまうが、何とか打ち返し凌いで逃げ切り、小清水が判定勝利。

長身を利した展開で棚橋賢二郎にハイキックで攻める小清水涼太

終盤、偶然のバッティングで苦戦したが、内容的には完勝の小清水涼太

◆第10試合 73.5kg契約 5回戦

NKBミドル級チャンピオン.釼田昌弘(テツ/1989.10.31鹿児島県出身/ 73.3kg)
21戦6勝(1KO)11敗4分
VS
土屋忍(kunisnipe旭/1986.12.11千葉県出身/ 72.35kg)
17戦9勝6敗2分
引分け 1-0
主審:高谷秀幸
副審:前田30-28. 鈴木29-29. 加賀見29-29

初回は離れた距離からパンチとローキック中心の攻防。第2ラウンドには釼田昌弘は積極的にパンチや蹴りから組み付いてヒザ蹴りに出て転ばす展開も見せる。土屋もローキックやミドルキックで優勢に立つチャンスはあっただろうが、剱田昌弘のしつこい接近戦にリズムを狂わされる。しかし剱田昌弘は土屋を弱らせるに至らない決め手の無い展開で終了。

インパクトある展開を見せたい剱田昌弘は攻め切れずドロー

◆第9試合 60.0kg契約3回戦

半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/ 60.0kg)
26戦9勝(4KO)14敗3分
VS
蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 59.9kg)
6戦4勝(3KO)1敗1分
勝者:蘭賀大介 / 判定0-3
主審:加賀見淳
副審:高谷26-30. 前田26-30. 亀川26-30

初回はパンチと蹴りの互角の流れの中、第2ラウンドに蘭賀大介が左ストレートでノックダウンを奪い、第3ラウンドには蘭賀が右ストレートから連打で半澤信也の上半身をロープの外に押し出すとノックダウンとなってポイント的には蘭賀が大差判定勝利となった。

パンチと蹴りのコンビネーションで優った蘭賀大介

◆第8試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制/ミネルヴァ推薦試合)

ミネルヴァ・ライトフライ級1位.喜多村美紀(テツ/1986.6.27広島県出身/ 48.3kg)
27戦12勝11敗4分
VS
同級5位.Yuka☆(SHINE沖縄/1984.7.3沖縄県出身/ 48.65kg)8戦4勝4敗
勝者:喜多村美紀 / 判定2-1
主審:鈴木義和          
副審:高谷30-29. 前田30-28. 加賀見29-30

初回、パンチとローキック中心に積極的な打ち合いに出る両者。
第2ラウンドには喜多村美紀のパンチヒットも、パワーの無さで差が出難い展開が続き、判定は2-1に分かれるも喜多村美紀の前進したヒットがやや優勢点を奪った。

僅差ながら的確なパンチと蹴りが勝利を導いた喜多村美紀

◆第7試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

Mickey(ピリカTP/1992.12.11福岡県出身/ 53.3kg)5戦5勝(2KO)
VS
MEGUMI KICK SPARK(KICK SPARK/1979.12.4大阪府出身/ 53.25kg)3戦3敗
勝者:Mickey / TKO 1R 1:53
主審:前田仁

離れた距離でパンチと蹴りの様子見の攻防から、Mickeyがコーナーに詰めてパンチ連打からヒザ蹴り。組み合ってヒザ蹴りからやや離れたところでの右ストレートヒットでMEGUMIが倒れるとダメージ深いと見た様子でノーカウントのレフェリーストップとなった。

5戦全勝となったMickey、女子として倒す力も付いてきた今後のKOに期待

◆NKBウェルター級1位、笹谷淳引退セレモニー

笹谷淳は1975年3月17日、東京都出身。2002年11月デビュー。2010年10月、J-NETWORKウェルター級王座に就いた。

今年2月18日にはNKBウェルター級王座決定戦で、カズ・ジャンジラに判定負けがラストファイトとなった。

連盟渡邉信久代表やジム・後援関係などからの記念品授与の後、マイクを持っての挨拶では6分間に渡るスピーチをメモなど用意せず、一度もとちることなく20年間の自身の想いを語り続けた立派な挨拶だった。この後、テンカウントゴングに送られリングを去った。62戦29勝(10KO)31敗2分。

引退テンカウントゴングを聴いた笹谷淳、スピーチも貫禄があった

◆第6試合 バンタム級3回戦

兵庫志門(テツ/1996.4.4兵庫県出身/ 53.2kg)11戦4勝(1KO)5敗2分
VS
中島隆徳(GET OVER/2005.4.8愛知県出身/ 52.75kg)6戦2勝(1KO)3敗1分
引分け 0-0
主審:加賀見淳
副審:鈴木30-30. 高谷30-30. 前田30-30

◆第5試合 ミドル級3回戦

夏空(NK/1999.7.24大阪府出身/ 72.4kg)3戦3勝(1KO)
VS
TOMO・JANJIRA(JANJIRA/1992.1.12京都府出身/ 72.25kg)1戦1敗
勝者:夏空 / TKO 2R 0:40 / カウント中のレフェリーストップ
主審:高谷秀幸

◆第4試合 55.0kg契約3回戦

野村リトル知生(TEAM Aimhigh/1999.1.4愛知県出身/ 54.6kg)3戦2勝1敗
VS
田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 54.85kg)2戦2敗
勝者:野村リトル知生 / 判定2-0
主審:鈴木義和        
副審:亀川29-29. 前田30-27. 高谷30-28

◆第3試合 ライト級3回戦

青山遼(神武館/1999.2.5埼玉県出身/ 61.05kg)3戦3敗
VS
津田宗弥(クロスポイント吉祥寺/1980.1.8神奈川県出身/ 60.75kg)1戦1勝(1KO)
勝者:津田宗弥 / KO 2R 1:15 / 3ノックダウン
主審:加賀見淳

◆第2試合 52.0kg契約3回戦

滑飛レオン(テツ/2006.12.23岡山県出身/ 52.0kg)4戦3勝(2KO)1敗
VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 51.85kg)1戦1敗
勝者:滑飛レオン / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木30-25. 高谷30-25. 加賀見30-25

◆第1試合 ウェルター級3回戦

吉瀧光(KINGLEO/1993.7.11富山県出身/ 66.25kg)6戦1勝(1KO)2敗3分
VS
健吾(BIG MOOSE/199310.10千葉県出身/ 66.3kg)1戦1勝
勝者:健吾 / 判定0-2
主審:亀川明史
副審:鈴木29-29. 高谷28-30. 加賀見28-30

《取材戦記》

マッチメイク一つ一つにドラマ造りが見えるNKBシリーズ戦。連続出場で2連続ノックアウト(TKO)勝利した片島聡志の新たなマッチメイクに繋がりそうである。

剱田昌弘はチャンピオンとしての自覚が芽生えたか、縺れ合ったり転ばしに行ったりではあるがパンチや蹴りに圧力も優って来た感じがあった。負け越し戦績はやがて逆転に進むだろう、とは言い切れないが、勝率が上がることを期待したい。

次回、日本キックボクシング連盟興行「野獣シリーズ」は6月17日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

片島聡志を囲んだ陣営勝利のポーズ

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

月刊『紙の爆弾』2023年5月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B00BZ6IWE4/

「レフェリー、リー・チャンゴン~!」とリングアナウンサーにコールされ、文字にしてもカタカナ書きの方が馴染んだ響きである。昭和40年代にTBSテレビで放映されたキックボクシングの隆盛時代に、現在とは比べられないほどのレフェリーの威厳があったその姿と名前が全国に広まったのも事実でした。

「荒れる試合は俺が裁く」を貫いた李昌坤レフェリー(1981年5月19日)

ノックダウンからファイトを促す李昌坤レフェリー(1982年11月19日)

◆導かれた運命

昭和の名レフェリー、李昌坤(リ・チャンゴン/1942年6月20日東京都目黒区出身)は在日韓国人として永く活躍し、日本名は岩本信次郎。軽快なフットワークと適確な判断で試合を裁き続けた。

1966年(昭和41年)6月にレフェリーとしてデビューして以来、野口修氏が興したキックボクシングの表も裏も知り尽くし、1990年(平成2年)に第23回プロスポーツ大賞「功労賞」を受賞している人物である。

李昌坤氏は中学2年生の時、たまたま近所にあったボクシングの野口ジムに遊びに行くようになったのが格闘技との最初の出会いだった。当時は厚木基地や新橋駅前などで「ベビーボクシング」なるお祭りイベントが開催されていて、気が強いガキ大将だった李昌坤氏は中学生クラスの“ハビー級”として参加。試合後にはお菓子を貰っていたという。

そんな運命でジムに通い続け、高校三年生になるとプロボクシング4回戦でデビュー、新人王の準々決勝まで進んだが、腰を痛めて止む無く現役を断念した。

◆昭和のキックボクシング、レフェリーとして参加

高校卒業後は近所の板金屋で働きながら、野口ジムのトレーナーをしていたが、1966年1月(昭和41年)、野口進会長の長男・修氏が日本キックボクシング協会を設立された際、李昌坤氏はレフェリーとして導かれた。それまでは日本名を使っていたが、日本vsタイの試合に韓国人としてレフェリングすることで国際色豊かにしようという協会の思惑で、本名・李昌坤として参加することになった。

翌年2月26日、TBSがキックボクシング中継を始め、創生期からブームとなったスター沢村忠の多くの試合を中心に、首都圏の他、地方興行を転々としながらレフェリーとしてリングに上がり続けた。

名勝負として今も語り継がれる富山勝治vs花形満戦、富山勝治vs稲毛忠治戦や、後には藤原敏男の試合も裁いた経験を持ち、竹山晴友が活躍した昭和60年代でもメインレフェリーとして裁いていた。

富山勝治の試合担当は多かった李昌坤レフェリー(1983年11月12日)

勝者・富山勝治の手を挙げる李昌坤レフェリー(1983年11月12日)

長いレフェリー生活の中では多くのエピソードを持つ李昌坤氏。

「確か甲府での試合で、沢村が真空飛びヒザ蹴りを出したら、相手がロープまでふっとんで一番上のロープが切れてしまったんですよ!」といった忘れ得ぬ思い出や、更には自身に災難が降り掛かることもあった。空振りした沢村の蹴りが横腹に入り、悶絶の危機も何とか凌いだレフェリング。これが一番痛い思い出で、試合後の控室に沢村がやって来て、「リーさん身体大丈夫? ゴメンね!」とは沢村らしい気遣いがあって嬉しかったが、一週間ほどまともには動けなかったという。

テレビ放送が打ち切りになり、興行も不定期になってきた昭和50年代後半、多くの業界関係者が撤退していったが、李昌坤氏はそんな時代もレフェリーを辞めなかった。

それは「俺が試合を裁く。俺が判定を下す!」というレフェリーとしてのプライドを人一倍持って日本系レフェリーのほとんどを厳しく指導し、レフェリングの基礎を作ったことを無駄にせず、次の時代へ繋ぐ責任を感じていた。

キックボクシング創設以来、10年以上務めた功労者が表彰、李昌坤氏もその一人(1985年11月22日)

時代が流れた昭和60年代、勝者・向山鉄也の手を挙げる李昌坤レフェリー(1985年11月22日)

◆存在感に陰り

李昌坤氏から教わったレフェリーは皆フットワークが軽く、

「ファッションモデルみたいな動き」という批判的な関係者も居た中、時代の流れは徐々に李昌坤氏にとって窮屈な世界となっていった。ムエタイ崇拝者が増え、レフェリングもムエタイ式に移行してきた点から、各ジムからレフェリーに求められる裁き方の認識が変わって来たのだった。

首相撲でのブレイクアウトの早さ、崩しでの縺れ倒れ行く選手を支えない、軽く当たったパンチでのスリップやプッシュ気味でのノックダウン扱いなど、昔ながらのレフェリングが受け入れ難くなる傾向があった。名レフェリーたる存在が敬遠されがちになると、次第に出番が少なくなっていく中の1996年2月9日、最後の花道を作ってくれたのは士道館主催興行だった。最後のレフェリングとなったフェザー級5回戦、室崎剛将(東金)vs松田敬(目黒)戦の後、「李昌坤引退セレモニー」が執り行われた。李昌坤氏はリング上で奥さんと華やかなチマチョゴリ(韓国の民族衣装)を纏った三人の娘さんに囲まれ、最後のリングに華を添えた引退セレモニーだった。

李昌坤氏は「これで終わりなんだなと思った時、寂しさより、ここまでやって来れたんだなという思いの方が強かった。引退式をやって貰って本当にけじめがついたよ!」と語る。

時代とともに昔のレフェリーが一人ずつ消え、元々所属した日本系野口プロモーションの最後のレフェリングとしての締め括れた安堵感があったようである。

「本当に陰の人でしたね。沢山の名勝負を裁いて来たのにね!」とはキックボクシング創始者、野口修夫人・和子さんの当時の語り。

[左]試合直前の注意勧告する李昌坤レフェリー(1992年9月19日)/[右]最後のリングに上がる李昌坤レフェリー、裁いた試合は3000試合以上(1996年2月9日)

引退セレモニーで観衆の声援に応える李昌坤レフェリー(1996年2月9日)

自身のお店でインタビューを受ける焼き肉屋のオヤジ、李昌坤氏(1996年2月15日)

◆昔ながらの頑固レフェリーからの助言

李昌坤氏は、業界の中心的存在だった目黒ジムの選手に「目黒ジムには沢山強い選手が居て、練習が他のジムより充実しているんだから、試合で引分けなら実質は負けと同様なんだぞ!」と厳しい指摘を言われたこともあったという。また、「地方の選手には冷たく、反則ではないのに、“今度やったら減点取るぞ”とか言われて、だからリー・チャンゴンは嫌いだ!」という批判も聞かれるのは毅然としたレフェリングを行なうが故の嫌われ文句だろう。

後輩への指導では「レフェリーやジャッジ担当で、もしミスっても毅然と振舞って自分の裁定に自信持て!」と言うなどの忠告もあって、他団体のレフェリーでも「李昌坤さんのレフェリングはかなり意識していましたね!」という話は多い。

またレフェリーの振舞いや運営の不備など、他のスタッフが気付かなくとも李昌坤さんは気付いて動くという点は熟練者の視野の広さがあった。

「観衆の中で雑談はするな。必要以上に会場内をうろつかず待機場所に居ろ。裁いている試合に対し、同じ位置に3秒以上立ち止まるな。テレビカメラ側に極力立つな。身だしなみに気をつけろ!」といった振る舞いには、元々はプロボクシングから受けた指導が基礎となったものだった。古い体質ではあったが、威厳ある李昌坤氏ならではの存在感だった。

李昌坤氏は若い頃、板金屋やトラック運転手なども経験したが、後に目黒ジム近くで焼き肉屋「大昌苑」を経営。レフェリー引退後も継続し、かつての野口プロモーション関係者が集まることも多い賑やかさを見せて、良きキックボクシング時代を語り合う穏やかな晩年を過ごしていた。お客さんからの注文を語気強く受け応え、かつてのレフェリーの面影があったが、その接客は気さくで常連客が多い焼き肉屋のオヤジであった。

(取材は1996年2月当時のナイタイスポーツで取材したものと、後々に何度も大昌苑を訪れて李昌坤氏にお聞きしたエピソードを参考にしています。)

◎堀田春樹の格闘群雄伝 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=88

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

注目のタイトルマッチは浅井春香が引分けで2度目の防衛。

◎GODDESS OF VICTORY / 3月26日(日)GENスポーツパレス 16:30~19:56
主催:エスジム、ミネルヴァ実行委員会 / 認定:NJKF

接近戦では浅井春香が首相撲からヒザ蹴りやパンチがヒット

岩上哲明記者試合レポート(一部編集含む)

◆第13試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ3回戦

選手権者.浅井春香(Kick Box/ 55.2kg)
        vs
挑戦者5位.MARIA(PCK大崎/TeamRing/ 55.0kg) 
引分け 0-1
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:多賀谷28-30. 竹村29-29. 井川29-29

試合前、MARIAは「絶対に勝ちます。シンプルイズベスト!」と王座奪取への熱い気持ちをコメント。

試合は第1ラウンド中盤から挑戦者MARIAのストレートパンチがヒットをしたのを切っ掛けに動き出す。チャンピオン浅井春香も返しのパンチや首相撲に持ち込むと、MARIAは首を捻られ一瞬苦痛の表情が出たが難無く攻勢を仕掛ける。

第2ラウンドもMARIAは重いパンチに浅井は首相撲からのヒザ蹴りで勢いを止めに掛かる。浅井のセコンド陣から「打ち合いに行け!」と指示が出てもMARIAのパンチに警戒しているせいか、打ち合いに持ち込めない。

第3ラウンド、浅井はMARIAのパンチを打たせないように首相撲を仕掛けるが、MARIAは掻い潜ってストレートを炸裂。浅井はクリンチに逃げ、最後はお互い首相撲からのヒザ蹴りを仕掛け合って終了。浅井は2連続引分け防衛。

パンチで打ち合う圧力はMARIAが上回った

試合後、浅井春香は「こんなものです、すみません!」と反省の弁を述べながらも、再戦があるならば「次はスッキリ勝ちます!」と語り、セコンドに付いていた鴇稔之会長から、「浅井は肩を痛めていて本調子ではなく、よくドローに持ち込んだ。」と健闘を称えていた。

一方のMARIAは奪取できなかった悔しさを見せながらも再戦必至と考えており、「次は絶対勝ちます!」と互いが必勝を誓っていた。

引分け防衛の浅井春香と王座奪取成らずのMARIA、明暗分かれた瞬間

◆女子フェザー級3回戦(2分制)KAEDEの2.75kgオーバーで中止

ミネルヴァ・スーパーバンタム級1位.KAEDE(LEGEND/ 59.9kg)
        vs
同級9位.寺西美緒(GET OVER/ 56.9kg)

中島稔倫会長は「寺西が試合出来ないのは残念です。今日はメインイベント出場の両選手を研究すると思います。」とコメント、寺西選手は「どちらかの選手に早いうちに挑戦することになると思います。そして王者になります!」と前向きなコメントだった。

◆第12試合 女子54.5kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級2位.IMARI(LEGEND/ 53.4kg)
        vs
NAO・YK(YK/ 53.5kg)
勝者:IMARI / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:中山30-28. 竹村30-28. 井川29-28

当初の高橋アリスに代わり、引退するIMARIの対戦相手となったNAO・YK。初回、IMARIは左右のパンチを決め、NAOは首相撲で優位に立とうと圧力を掛ける。

第2ラウンドにはIMARIのパンチに対し、NAOもミドルキック、首相撲で自分の流れを掴もうとするが、IMARIが首相撲でも優位に立つ展開。

最終第3ラウンド、IMARIの左右のストレートからのミドルキックが決まるなど優勢が続く。NAOは首相撲や蹴りで対抗するも、IMARIの攻勢を崩せず終了。

IMARIの左ミドルキックがヒット、攻勢を維持してラストファイトを勝利で飾る

試合後はIMARIの引退セレモニーが行われ、マイクで感謝の言葉を述べた後、10カウントゴングが鳴り響いた。IMARIは涙ぐむ表情を見せながらも最後は笑顔でリングを下りた。「いい試合でしたよ。」と声をかけると、「ありがとうございます!」と笑顔で明るく返事をしていた。スッキリした表情だった。

引退セレモニーでの挨拶で次第に涙ぐみながら仲間へ感謝を述べたIMARI

◆第11試合 女子ピン級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級4位.世莉JSK(治政館/ 44.85kg)vs 同級5位.斎藤千種(白山/ 45.25kg)
勝者:斎藤千種 / 判定0-2
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:中山28-30. 多賀谷28-30. 井川29-29

昨年10月16日、斎藤千種の左ストレート貰った世莉がバランス崩してマットにヒザを着いたところへ斎藤のヒザ蹴りが顔面に入り、世莉JSKは試合続行不可能。当初の斎藤千種のTKO勝利は後日、反則打として失格負けと変更。世莉JSKの反則勝ちとなっていた。

再戦となった今回、初回から両者はパンチを繰り出していく。世莉JSKはやや動きが鈍く、斉藤千種が優勢な展開。第2ラウンドも斉藤の攻勢は続くが、世莉は打ち合いに応じるも、斉藤の左右の伸びがあるミドルキックに苦戦。

最終第3ラウンド、世莉はミドルキックで斉藤を追い込めそうな状況も流れを活かせず、斉藤はミドルキックとパンチで世莉の反撃を防ぎながら攻勢を仕掛けるも試合終了。

試合後、世莉は悔し涙を流していた。セコンドに就いた祥子JSKからは、「世莉は前に行くことが出来なかった。まだ十代ですし、今が底でこれから上がるだけ!」と気持ちを切り替えた様子。友人と会話をして落ち着いた世莉選手に労いの言葉をかけると「ありがとうございます!」と応えてくれた。

斎藤千種のハイキックがヒット、再戦は慎重に攻めて判定勝利を掴む

◆第10試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ライトフライ級6位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/ 49.1→48.98kg)
        vs
YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/ 48.8kg)
引分け 1-0
主審:竹村光一
副審:センチャイ29-29. 多賀谷29-29. 井川30-29

初回、紗耶香は得意のパンチで主導権を握りにかかる。YORIKOは組んでヒザ蹴りで出ると、紗耶香も合わせていく展開。

第2ラウンドも紗耶香がパンチで仕掛け、YURIKOは首相撲からのヒザ蹴りで打開しようとするが、紗耶香のパンチの猛攻を防げず、ラウンド終了間際に紗耶香の右ストレートで尻餅をつくがゴングに救われた。

最終第3ラウンド、YORIKOはミドルキックと首相撲でのヒザ蹴りを主体に攻撃の数を増やしていく。紗耶香はパンチ主体で終始進めていくが、YURIKOの蹴りが的確に決まり、勢いが止まることがしばしば。最後は両者共に首相撲からのヒザ蹴りで終了。

紗耶香とYURIKOのパンチの交錯、パンチではやや紗耶香が優った

◆第9試合 女子46.0kg契約3回戦(2分制)

上真(ROAD MMA/ 45.8kg)vs AZU(DANGER/ 46.0kg)
勝者:上真 / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-28)

◆第8試合 女子44.0kg契約3回戦(2分制)

AIKO(AX/ 43.55kg)vs Honoka(健心塾/ 43.55kg)
勝者:AIKO / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-29)

◆第7試合 女子46.5kg契約3回戦(2分制)

ねこ太(とらの子レスリングクラブ/ 46.3kg)vs aimi-(DANGER/ 45.7kg)
勝者:ねこ太 / 判定2-0(29-29. 30-29. 30-29)

◆第6試合 女子フェザー級3回戦(2分制)

小倉えりか(DAIKEN THREE TREE/ 57.0kg)vs 谷岡菜穂子(GRABS/ 56.9kg)
勝者:小倉えりか / TKO 1R 1:42

静かな展開でスタート。互いに牽制しあう攻防の中で、小倉えりかのローキックを谷岡菜穂子はブロックする際、左膝の内側で受け、バランスを崩しそのまま倒れレフェリーストップ。谷岡はそのまま担架で運ばれた。小倉のローキックをカットした際に、左膝内側付近が陥没した様子。

小倉は試合前からリラックスしていた。セコンドは「勝算はある。必ず勝つ。」と強いコメントがあった。

試合後に小倉からは「勝ちは勝ち。フェザー級でもぜひS-1トーナメントを開催して欲しいです!」と熱望。小倉えりかの言葉には、フェザー級、そして女子キックボクシングを盛り上げたいという熱い気持ちが伝わっていた。

アクシデント的ながら小倉えりかがTKO勝利、谷岡菜穂子は左膝負傷で立てず

◆第5試合 S-1女子48.0kg契約3回戦(2分制)

Marina(健心塾/ 47.5kg)vs Nao(AX/ 47.6kg)
勝者:Nao / 判定0-3(28-30. 27-30. 27-30)

◆第4試合 マチュア女子52.0kg契約2回戦(2分制)

堀田優月(闘神塾/ 50.0kg)vs 松田沙和奈(拳之会/ 50.9kg)
勝者:堀田優月 / KO 1R 0:33

堀田優月は、開始早々にパンチで猛攻、松田沙和奈も返していくが、堀田は左ストレートを決めノックダウンを奪う。松田は立ち上がり反撃するも、再び左ストレートでノックダウンを喫し2ノックダウン制による堀田のノックアウト勝利。
試合後、堀田選手は嬉しそうな顔で「ありがとうございます。爽快でした!」と語り、堀田選手のお父さんも「まだ中学生ですけど!」と話しながらも勝利に喜びの様子だった。

左ストレートで2度のノックダウンを奪って快勝した堀田優月

◆第3試合 女子フライ級3回戦(2分制)

MIKU(K-CRONY/ 50.7kg)vs HIMEKA(LEGEND/ 50.7kg)
勝者:HIMEKA / 判定0-3(28-30. 29-30. 28-30)

◆第2試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)

響子JSK(治政館/ 52.1kg/6oz)vs 珠璃(闘神塾/ 54.1→53.45kg/8oz)
引分け 0-1(28-28. 28-28. 27-28/珠璃が1.29kgオーバーで減点2含む、グローブハンディー有)

終始、珠璃がパンチで押し気味な展開。響子JSKは蹴りや首相撲で流れを変えようとするが上手くいかず。ドローで終了。

響子は「相手の減点があったから引き分けだったけど、勝たなくてはいけない試合だった。」と反省のコメントを述べていた。

珠璃は押し気味の展開も減点があって引分け、響子は蹴りで出るも優れず

◆プロ第1試合 女子40.0kg契約3回戦(2分制)

沙緒里(ワイルドシーサー前橋関根/ 40.0kg)vs 江口紗季(笹羅/ 36.7kg)
勝者:江口紗季 / 判定0-3(27-30. 27-30. 28-30)

他、プロ試合前にオープニングファイト アマチュア女子4試合有

《岩上哲明取材観戦記》

今回の興行は、第1試合から最終メインイベントまで全選手、関係者全員が興行を成功させようという強い気持ちが感じられました。メインイベントのミネルヴァ・スーパーバンタム級タイトルマッチはドローになりましたが、再戦を観たいという気持ちになり、IMARU選手の引退試合は寂しさより、「第二の人生」を応援したくなるような感情になり、ピン級のランキング戦では再戦の上、先週のジャパンキックボクシング協会興行で新王者になった撫子選手の刺激を受けたのか、両者から勝利への意気込みが伝わってきました。

アマチュア試合の堀田選手はプロ本戦の興行でもなかなか観れない鮮やかなノックアウト決着で会場を沸かせました。

興行が盛り上がるための要因の一つである「ドラマ」が各々の試合に出ていたのは良かったと思います。この興行にはNJKFのランカーであるTAKUYA選手や名古屋のGETOVERのTAKERU選手など多くの男子選手が来場していて、セコンド業務などをこなしながら何かを得ていったことでしょう。

《堀田春樹取材戦記》

浅井春香は2回連続の引分け防衛。昨年5月の初防衛では、鴇稔之会長からの教訓「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」と語った浅井春香。名門・目黒ジムから引き継がれた教えは、勝利での完全防衛の仕切り直しへ再度持ち越された感じです。

しかし、タイトルマッチで3回戦は差が付き難く、女子でも5回戦が必要とも思えました。

しかしプロボクシングでも女子は2分制で、日本タイトル戦でも6回戦とかなり短めで、打撃格闘技においては安全面の考慮がまだ未知数で難しいようでもあります。

前回記事で、次回ジャパンキックボクシング協会(JKA)興行は5月14日(日)市原臨海体育館と書きましたが、正しくは一週遅れの5月21日(日)に市原臨海体育館で開催されます。大変失礼致しました。

当初、5月14日の開催予定だった武田幸三氏の「CHALLENGER」5月興行は中止となっています。

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)本興行は当初の予定どおり4月16日(日)に後楽園ホールに於いて「NJKF 2023.2nd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2023年4月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXCMXQK3/

2022年、年間表彰式が第1試合前にリング上で行なわれました。

最優秀選手賞:馬渡亮太(治政館)5戦5勝(3KO)
技能賞:藤原乃愛(ROCK ON)
KO賞:馬渡亮太(治政館)
殊勲賞:睦雅(ビクトリー)
精鋭賞:内田雅之(KICKBOX)
男子新人賞:正哉(誠真)
女子新人賞:藤原乃愛(ROCKON)
優秀選手賞:永澤サムエル聖光(ビクトリー)4戦4勝(1KO)
藤原乃愛(ROCKON)6戦5勝(2KO)1分
年間最高試合賞:9月18日、馬渡亮太(治政館)vsガン・エスジム(タイ)

年間表彰式に登場、左から正哉、藤原乃愛、馬渡亮太、永澤サムエル聖光、睦雅

◎KICK insist 15 / 3月19日(日)新宿フェイス
主催:(株)VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA) 

岩上哲明記者試合レポート(一部編集含む)

【第2部】18:00~20:11

◆第7試合 62.5kg契約5回戦

WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン.永澤サムエル聖光(ビクトリー/1989.11.10埼玉県出身/ 62.5kg)
       VS
ペットプーパン・ソー・サクナリン(元・タイ国ムエサヤーム・スーパーフェザー級Champ/タイ/ 61.7kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / KO 1R 2:48
主審:少白竜

前日計量ではコンディション調整が上手くいった様子でリラックス状態が続いていた永澤サムエル聖光。試合当日も順調で「勝ちますよ」と頼もしいコメントを残していた。

永澤はセコンドの指示通りローキックとパンチで上下に技を散らしていく。ペットプーパンは様子を見ながらミドルキックを放つ。このまま第1ラウンドが終わるかと思われた終盤に、永澤の右ストレートがペットプーパンのボディーにヒットすると、悶絶の10カウントアウト、永澤はタイ遠征した2月2日のラジャダムナンスタジアムでの敗戦を払拭するようなノックアウト勝利に満足していた様子。

ボディーへ牽制右ストレートを打ち込む永澤サムエル聖光、KOはこの後

永澤サムエル聖光の今度は強いボディーブローでペットプーパンを悶絶のKO

◆第6試合 ジャパンキック協会ライト級王座決定戦5回戦

1位.睦雅(ビクトリー/1996.6.26東京都出身/ 61.23kg)
        VS
2位.内田雅之(KICK BOX /1977.12.26神奈川県出身/ 61.23kg)
勝者:睦雅(王座獲得) / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜50-42. 仲50-42. 中山50-42

前日計量では、睦雅選手は体重調整が上手くいったこともあり笑みを浮かべ、内田選手も「調子いいよ」とコメントをして計量パスした。

睦雅が攻勢を維持、タフな内田雅之を追い詰める

新チャンピオンとなった睦雅、永澤サムエル聖光を追い越せるか

試合は、睦雅はローキック、内田はパンチで主導権を取ろうと試みている様子。第1ラウンド終了時に睦雅の右ストレートが決まり、内田はノックダウンを喫したが、第2ラウンドに入ってもダメージを引き摺らずにパンチ主体で睦雅を切り崩しにかかる。睦雅は冷静にローキックで勢いを止め、逆にパンチを決めていく。

第3ラウンドには内田は得意のパンチで劣勢を打開しようとするが、睦雅のパンチとローキックに阻止され、睦雅は左右のストレートでこの試合2度目のノックダウンを奪う。

第4ラウンド、睦雅は内田をコーナーに追い詰めていき、離れてはローキックで更なるダメージを負わせる。内田は鼻血を流しながらも、隙をみてパンチを繰り出す。

最終ラウンド、後がない内田は得意のパンチで打ち合いに持ち込もうとするが、逆に睦雅の右ストレートを貰い、この試合3度目のノックダウンを喫する。睦雅の攻勢は続くが、内田はタフネスぶりを発揮し耐え凌いだが、睦雅の大差判定勝利となった。

◆第5試合 58.0kg契約3回戦

WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 58.05→58.0kg)
       VS
スアノーイ・シッソー(元・タイ国イサーン地区スーパーバンタム級Champ/タイ/ 57.5kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定3-0
主審:桜井一秀
副審:椎名30-28. 仲30-28. 少白竜30-28

初回、滝澤は上下に蹴り分け、スアノーイは様子を見るスタイル。ラウンド終盤になると、スアノーイの鋭いパンチが飛んでくるが、滝澤は上手くかわしてヒットさせず。

第2ラウンド、滝澤も蹴り主体で出て、ガードが空いたスアノーイのボディーに右ストレートを決め、更に果敢に攻めるがノックダウンまでは奪えず。

第3ラウンド、滝澤のボディー攻撃は的確に決まるが、スアノーイは変則的なガードで距離をとりダメージを受けない体勢。滝澤が攻勢を維持して判定勝利。

瀧澤博人が巧みにスアノーイをロープ際へ追い詰め、ローキックヒット

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)アトム級(102LBS)挑戦者決定戦3回戦(2分制)

1位.祥子JSK(治政館/ 46.15kg)vs4位.ほのか(KANALOA/ 46.2kg)
引分け 1-0 /
主審:中山宏美
副審:椎名28-28. 桜井29-29. 少白竜29-28.
延長戦は三者とも9-10で、ほのかが挑戦権獲得。公式記録は引分け=ミネルヴァ実行委員会が公認。

初回、ほのかの首相撲とパンチの連打で祥子はペースを掴めず打たれる場面があった。

第2ラウンド、祥子は流れを変えようとミドルキックを繰り出すが、ほのかの接近戦にペースを掴めず、ほのかは的確なパンチで主導権を支配。
第3ラウンド、後がない祥子は打ち合いでほのかを青コーナーに追い込み、右フックを決めてノックダウンを奪う。ほのかは立ち上がり、打ち合いに持ち込むが終了。引分け裁定で挑戦者を決める延長戦に入った。

ほのかは終始、接近戦に持ち込み、右ストレートやヒザ蹴りを決めていく。祥子も打ち返すも手数で追いつかず、ほのかが延長戦を制した。

祥子JSKとほのかの攻防、際どくもほのかが挑戦権獲得

◆第3試合 フライ級3回戦

JKAフライ級2位.西原茉生(治政館/ 50.7kg)vs花澤一成(市原/ 50.8kg)
負傷引分け / TD 1R 0:28
主審:仲俊光

開始早々、打ち合いになり、早い展開で盛り上がっていた中、花澤一成が倒れる。西原茉生の右ストレートのカウンターが決まったと見えたが、TKO裁定は審議の上、偶然のバッティングと訂正。規定により負傷引分けとなった。立てない花澤は担架で控室に運ばれた。

試合後、西原選手からは「パンチが決まったかと思ったが、ビデオを見たら頭が当たっていた感じですね」と語り、「しかし、KO勝ちのイメージが出来たのは収穫です。再試合が組まれれば倒します!」と応えてくれた。

◆第2試合 ウェルター級3回戦

我謝真人(E.D.O/ 66.67kg)vs鈴木凱斗(KICK BOX/ 66.67kg)
勝者:我謝真人 / KO 1R 2:30 / 3ノックダウン
主審:少白竜

◆第1試合 ライト級3回戦

岡田彬宏(ラジャサクレック/ 61.15kg)vs来輝(BOMスポーツ沖縄/ 60.65kg)
勝者:岡田彬宏 / TKO 2R 3:00(終了ゴング同時の見極め)
岡田の右ヒジ打ちが来輝の右眉付近をカット。ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。
主審:椎名利一

【第1部】14:00~16:30

◆第7試合 女子(ミネルヴァ)ピン級(100LBS)タイトルマッチ3回戦

チャンピオン.藤原乃愛(ROCK ON/2005.1.6神奈川県出身/ 45.3kg)
      VS
挑戦者同級1位.撫子(GRABS/2000.7.7札幌市出身/ 44.6kg)
勝者:撫子 / 判定0-3 / 撫子が王座奪取、藤原乃愛は初防衛成らず
主審:中山宏美
副審:椎名28-29. 仲29-30. 桜井29-30

撫子が接近戦でのヒザ蹴りで藤原乃愛を苦しめた作戦勝ち

前日計量では、両者共に1回でパス、藤原選手は「ギリ(ギリ)JKファイターです。世界を目指していますので、防衛は当たり前です!」と王者の風格を見せた。撫子選手は「藤原選手とは3度目(過去1敗1分)で、3度目の正直で勝って北海道にベルトを持ち帰ります!」とコメント。

「藤原乃愛が防衛する」という声が多かったが、試合が始まると、撫子は藤原乃愛得意の蹴り技を封じる間合いを作り始めていく。撫子は首相撲からのヒザ蹴り、至近距離からのパンチで攻勢を仕掛ける。藤原は得意技を出す展開が少なく、少しずつ焦りが見えて来た。第2ラウンドも撫子は接近戦を仕掛ける。藤原は前蹴りで距離を取り、撫子の仕掛けを切り崩しに行くが、撫子はかわして接近戦に持ち込み、首相撲から顔面へのヒザ蹴り、パンチで追い込む。

最終第3ラウンドも撫子の接近戦は継続。藤原やセコンド陣は撫子の組み技に「反則だ」と声を出して主張するなど、今までと違う雰囲気になる。観客からも「藤原は心が折れ掛かっている」と心配する声が挙がっていた。藤原もブレイク後に得意の蹴りを仕掛けるがペースが掴めず終了。撫子がポイント的には僅差ながら主導権を奪った流れの判定勝利。

試合後、撫子は「ベルトを北海道に持ち帰れて嬉しい!」と語り、佐藤友則会長も「作戦勝ちです。撫子がしっかりと作戦を実行してくれました!」と両者、関係者共に奪取の喜びを爆発させていた。一方の藤原選手はノーコメント。代わりにセコンドが「今回はセコンドが悪かったです。乃愛には申し訳なかった!」と悔しさを交えてコメントしていた。いつもはインタビューに明るく応じてくれる藤原選手や関係者が悔し涙を流しているのを観て、「これが勝負の世界だ」ということを改めて認識させられました。

◆第6試合 72.6kg契約3回戦

JKAミドル級チャンピオン.光成(ROCK ON/ 72.5kg)
        VS
スーパーボーイ・ルークプラパーツ(タイ/ 71.1kg)
勝者:スーパーボーイ / TKO 2R 1:17
主審:少白竜

前日計量をパスをした光成選手は「セミファイナルですが、いい試合を見せます!」とコメント。当日もリラックスしていた表情。

初回はお互いに探り合いの蹴りの間合いで静かな展開だったが、スーパーボーイのヒジ攻撃が鋭く決まると、光成はアウトスタイルで自分の距離を取りパンチを繰り出す。

第2ラウンド、光成は得意なパンチを的確に入れていき、スーパーボーイもパンチ、ヒジ打ちを単発ながら入れていく。接近戦になり、スーパーボーイの右ヒジ打ちが光成の右眉間をカット。大きく出血はしなかったものの、再び首相撲中に右ヒジ打ちを今度は左眉上額に受け出血し、2ヶ所の負傷でドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。

試合後の光成選手のセコンドは「アンラッキーだっただけ。よく戦っていたよ!」とコメント。光成選手は「そう言っていただければ嬉しいです。次回頑張ります!」と応えた。光成選手は眉間付近を2ヶ所カットで、それぞれ6針縫った様子。

パンチと蹴りで動きは良かった光成、接近戦は要注意の中で切られてしまった

◆第5試合 52.0kg契約3回戦

JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/ 52.0kg)
        VS
宮坂桂介(ノーナクシン東京/ 52.0kg)
勝者:細田昇吾 / 判定2-1
主審:仲俊光
副審:椎名30-29. 中山29-30. 少白竜30-29

初回、細田昇吾はパンチを主体に攻めるが、宮坂は細田に距離を取らせないように蹴りで離しに掛かっていく展開。両者とも決め手に欠くが、細田が僅差2-1判定勝利。

◆第4試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級1位.政斗(治政館/ 66.5kg)vs同級2位.正哉(誠真/ 66.67kg)
勝者:正哉 / 判定0-2
主審:桜井一秀
副審:仲29-29. 中山29-30. 少白竜29-30

両者共に互角な展開でミドルキック、ローキック、パンチを互いに決めていく。攻撃の的確さで正哉がやや優勢の僅差で判定勝利。

◆第3試合 59.0kg契約3回戦

JKAフェザー級1位.櫓木淳平(ビクトリー/ 58.8kg)
        VS
ナロンチャイ・シンコウムエタイジム(元・ルンピニー系フライ級6位/タイ/ 59.15→59.05→59.0kg)
引分け 1-0
主審:椎名利一
副審:桜井28-28. 仲28-28. 少白竜28-27

初回、櫓木淳平はローキックで攻勢を保つもガードが下がったところ、ナロンチャイの左ストレートでノックダウン。フラッシュ気味で効いていないが、第2ラウンド以降へ長引くとスタミナが切れてきたナロンチャイにボディー主体に攻めて挽回するが、初回のノックダウンが響いて引分け。

◆第2試合 ライト級3回戦

JKAライト級5位.林瑞紀(治政館/ 61.23kg)
        VS
JKイノベーション・ライト級4位.井上竜太(HEARDWORKER/ 61.0kg)
勝者:林瑞紀 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-26)

◆第1試合 フェザー級3回戦

隼也JSK(治政館/ 56.9kg)vs石川智崇(KICK BOX/ 56.9kg)
勝者:石川智崇 / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

王座奪取した撫子の“なでしこポーズ”

《岩上哲明記者観戦記》

【第1部】
まずは藤原選手の敗戦について、敗戦要因はいくつかあるが、簡単に2つだけ挙げると、一つは、「藤原乃愛」が徹底的に研究をされていたことから生まれた「得意技封じ」という我々が忘れかけている戦略にハマってしまったことである。そして、撫子側に「北海道へベルトを持ち帰る」というドラマにもなるようなテーマが藤原選手の「世界を狙う」を上回ったことだと思われる。しかし、これで1勝1敗1分けのイーブンであり、リターンマッチになるかどうか分からないが、時間がかかっても再戦の実現を期待したい。

セミファイナルは「ヒジ攻撃の怖さ」を改めて思い知らされたと言えよう。光成選手はこの経験を次に活かして欲しい。

【第2部】
永澤サムエル聖光選手はこの興行をしっかり締めてくれたと思う。団体のエースとしての自覚も伝わり、興行全体を意識するメインイベントの戦い方をかなり覚えてきたと言えよう。そして、ライト級王座決定戦では、「巡ってきたチャンス」と「二団体王者になるチャンス」というお互いがテーマをぶつけ合う試合だった。KO決着は見れなかったが、内田選手の粘りは新王者になった睦雅選手にとっていい手本になったと思う。

判定決着が多かったが、それぞれのセミファイナル、メインイベントが盛り上がったことで、興行として良かったと思う。改めて思ったことは、「勝利」は、選手、セコンド、ジムを含めた関係者が三位一体になることで得ることが出来ることである。そして、観客の皆様は、そのことを知ることで、キックボクシングの試合の視点が変わり、新境地で楽しめることが出来るだろう。

《堀田春樹取材戦記》

ライト級王座決定戦は、上り調子の睦雅と老練なテクニックを持つ内田雅之の拮抗した競り合いが見所だったが、睦雅の若さが優った展開。ノックダウンを計3度喫し、最後はレフェリーに止められるかと思ったが、5回戦を耐え持ち堪えた内田雅之の底力が見られた試合だった。再度王座挑戦権が回って来るかは難しいが、また応援したくなるベテランである。

藤原乃愛の王座陥落はキックボクサーとして初めてのどん底かもしれないが、多くの名チャンピオンも通って来た道で、同様に這い上がって来るだろう。18歳(ギリギリ高校生、年度末まで)としても春から大学生、人生これからである。

次回、ジャパンキックボクシング協会興行は5月14日(日)に市原臨海体育館で開催されます。新日本キック離脱後はコロナ禍を経て、初めてとなります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

3月7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

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今回のメインイベンター大田拓真は、2019年11月30日にS-1ジャパン55kg級トーナメント覇者となり、2021年9月19日、波賀宙也に判定勝利して以来のNJKF本興行出場。コロナ禍の影響で中止に至ったタイトル挑戦もあり、他には「KNOCK OUT」や「Krush」などへの出場もあって、NJKF出場は久しぶりという感がありました。

◎NJKF 2023 1st / 2月26日(日)後楽園ホール17:30~20:35
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF

(戦績は主催者発表にこの日の結果を加えたものです。試合レポートは岩上哲明記者)

WBCムエタイの世界タイトルを狙いたい旨を明かした大田拓真

◆第10試合 フェザー級3回戦

大田拓真(新興ムエタイ/ 1999.6.21神奈川県出身/57.1kg)31戦22勝(5KO)7敗2分
      VS
大翔(WSR・F荒川/1998.5.21鹿児島県出身/ 57.15kg)15戦9勝(5KO)6敗
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:竹村30-29. 少白竜30-28. 椎名30-28

大田拓真は前・WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン(第7代/防衛1度)
大翔は現WMC日本フェザー級チャンピオン(第5代)

初回、大田拓真のハイキックでスタート。大翔も切れ味があるミドルキックで反撃。基本に忠実な戦いをする二人だが、終盤に大田拓真のパンチが決まるもノックダウンまでは至らず。

第2ラウンド、両者とも切れがいい蹴りを繰り出すが単発で終わることが多く、大田拓真が大翔の攻撃に合わせる展開が続く。大田拓真の右ストレートが決まり、大翔はフラッシュダウンですぐに立ち上がり、ノックダウンポイントを取らせなかった。

最終第3ラウンド、大翔のヒジ打ちを大田拓真はクリンチでかわしていく。更に大田拓真はカウンターのヒザ蹴りとパンチで大翔の攻撃を防ぎ、主導権を譲らず終了。

大田拓真は試合後「あのフラッシュダウンはノックダウンかと思いましたが、勝てることが出来ましたのでよかったです」とコメント、「次回も頑張ります!」と笑顔で応えてくれました。

フラッシュダウンではあるが、大翔に尻餅をつかせた大田拓真の右ストレート

多発した大田拓真の右ミドルキックが大翔にヒット

◆第9試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級5位.龍旺(Bombo Freely/2002.1.20茨城県出身/58.75kg)6戦5勝(2KO)1分 
      VS
同級7位.史門(東京町田金子/2000.9.1神奈川県出身/ 58.9kg)5戦4勝(2KO)1分 
引分け 1-0
主審:中山宏美
副審:竹村28-28. 少白竜28-27. 多賀谷28-28

関係者の多くが注目しているカード。初回、史門は果敢に攻めていき、龍旺はガードをしながら隙を突いて攻める展開。龍旺の右ストレートで史門は一瞬グラつくも互角の展開が続く。

第2ラウンド中盤には、史門がいきなりの左ストレートカウンターがクリーンヒットし、龍旺は思わずノックダウンする。ダメージは少なく龍旺はすぐ立ち上がるが、焦りのせいかパンチが大振りがち。史門は冷静に対処し、龍旺は首相撲で切り崩し、ラスト3秒で史門に右ストレートを決めるがノックダウンを奪えず。
第3ラウンド、スタミナが切れ始めた史門に龍旺は首相撲を主体に攻撃をしていくが、史門はクリンチワークで龍旺のペースを握らせない。龍旺の攻勢が続くもノックダウンを奪えず判定は引分け。

試合後 龍旺は自身に対してだろうか悔しそうな表情。一方の史門も「悔しい」とのコメントをしていたが、上位相手だったことや次に繋がるという言葉を聞き、「次は勝ちます!」と応えました。

前進する龍旺に史門の左ストレートがカウンターでヒットし、ノックダウンを奪う

接近戦で龍旺がバックヒジ打ちを返すが惜しくも当たりは浅かった

攻勢続けた龍旺もノックダウンが響いて引分け

積極果敢だったTAKUYAに攻勢に転じた山浦俊一の右ミドルキック

◆第8試合 61.0kg契約3回戦

山浦俊一(新興ムエタイ/1995.10.5神奈川県出身/60.95kg)
31戦17勝(3KO)12敗2分 
      VS
NJKFライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/1993.12.31茨城県出身/60.75kg)
12戦7勝4敗1分 
勝者:山浦俊一 / 判定2-0
主審:椎名利一
副審:中山29-28. 少白竜29-28. 多賀谷29-29

山浦俊一は前・WBCムエタイ日本スーパーフェザー級チャンピオン(第8代/防衛1度)

試合前にTAKUYAは「山浦選手はキャリアは上ですが、気持ちで負けず、KO勝ちを狙います!」とコメント。

試合開始早々にTAKUYAはバリエーションある蹴りで仕掛ける。一方の山浦俊一はローキックで主導権を掴もうとする。手数が多いTAKUYAに対して山浦は巧みにブロックをしていく。

第2ラウンドも同様にローキックを続ける山浦とTAKUYAはアウトスタイルで攻撃を仕掛ける。TAKUYAはアグレッシブだが、山浦は有効打を打たせない。

最終第3ラウンド、山浦のローキックでダメージが出てきたTAKUYAだが、手数を減らさずパンチを中心に攻勢を仕掛ける。山浦の首相撲で揺さぶられるが、TAKUYAは耐え切り打ち合いに持ち込む。試合終了のゴングが鳴り、山浦はガックリと頭を落とし、TAKUYAは勝ちを確信して腕を挙げるが、山浦の僅差判定勝利。

試合後 TAKUYAは「負けてしまってすみません!」とコメント。王者相手に互角近い戦いをしていたことを伝えると、笑顔になり「次回は必ず勝ちますので応援に来てください!」と応えました。

TAKUYAの飛びヒザ蹴りを前蹴りで止める山浦俊一

第2ラウンドまでは採点が割れていた中、第3ラウンドを支配して辛勝の山浦俊一

◆第7試合 バンタム級3回戦

NJKFバンタム級3位.嵐(キング/2005.4.26東京都出身/53.1kg)9戦7勝(2KO)1敗1分
      VS
NKBバンタム級5位.佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/53.4kg)19戦6勝12敗1分 
勝者:嵐 / TKO 1R 2:51 / カウント中のレフェリーストップ
主審:竹村光一

計量時にはNJKFとNKBの交流戦として、両選手ともに「団体の代表としてKO勝ちします」と語り、二冠王者の羅向選手が今回の興行の注目カードの一つとしてコメント。

両選手ともに小刻みで切れのいい蹴りとパンチの攻防で観客の目を引き始めていく中、嵐の飛びヒザ蹴りから左右のボディブローが佐藤勇士の右脇腹に決まる。たまらずノックダウンした佐藤勇士、立ち上がるも同じ個所に嵐の左右のパンチを貰い悶絶しながらノックダウン、そのままレフェリーストップで終了。

試合後、嵐は「左右のボディーへのパンチは偶然でしたが、飛びヒザ蹴りは狙っていました!」と笑顔で語り、「次もKOで勝ちます!」と力強いコメントをくれました。

嵐のボディーブローが佐藤勇士にヒットしてTKO勝利を導く

◆第6試合 80.0kg契約3回戦 (計量失格の佐野克海に減点1&グローブハンディー有)

NJKFスーパーウェルター級2位.佐野克海(拳之会/80.25kg/2001.4.11岡山県出身/80.25kg)
17戦9勝(4KO)6敗2分
      VS
ジェット・ペットマニーイーグル(1996.10.4タイ国出身/80.0kg)
67戦53勝(14KO)11敗3分
勝者:ジェット・ペットマニーイーグル / TKO 3R 1:57
主審:少白竜

開始から佐野克海はパンチのラッシュでKOを狙いにいくが、ジェットは首相撲で勢いを止め、ヒザ蹴りとヒジ打ちを入れていく。

第2ラウンドには佐野はスタミナが切れ気味で、ジェットの首相撲に掴まると首相撲の対応がし切れず、ジェットのヒザ蹴りとヒジ攻撃を貰う回数が増えていく。

最終第3ラウンド、佐野は中盤にジェットの首相撲からのヒザ攻撃でノックダウンし、立ち上がるもコーナーに追い詰められ、更にヒザ蹴りを貰い、2度目のノックダウンを喫したところでレフェリーストップ。

◆第5試合 60.0kg契約3回戦

コウキ・バーテックスジム(VERTEX/1997.9.20栃木県出身/58.85kg)8戦4勝3敗1分
      VS
Ryu(クローバー/1990.1.14茨城県出身/58.65kg)3戦2勝(1KO)1敗
勝者:コウキ・バーテックスジム / 判定3-0 (29-27. 29-27. 29-28)

コウキは第1ラウンドを通じて休まず攻撃をし、第2ラウンド開始早々に右ストレートでノックダウンを奪う。Ryuは3ラウンド目にようやく自分のペースを掴み、ラスト30秒にコウキの顔面にパンチをヒットさせるも巻き返しには至らず終了。

◆第4試合 スーパーバンタム級3回戦

島人租根(キング/1997.5.8沖縄県出身/55.0kg)4戦2勝2敗
      VS
大岩竜世(KANALOA/2000.7.10岐阜県出身/55.0kg)3戦2勝1敗
勝者:大岩竜世 / 判定0-3 (28-29. 29-30. 28-29)

オーソドックスな島人租根に対抗して変則的な仕掛けとローキックで攻める大岩竜世。第3ラウンド、ローキックでダメージが大きくなった島人の動きが鈍り、大岩が優勢を維持して判定勝利。

◆第3試合 フライ級3回戦

愁斗(Bombo Freely/2001.11.24茨城県出身/50.75kg)4戦2勝2分
      VS
甲斐喜羅(ビクトリー/2005.9.27埼玉県出身/50.45kg)3戦2勝1分
引分け 0-0 / 三者とも29-29

愁斗はパンチ、キックを多く繰り出し、甲斐喜羅は3戦目と思えないぐらい冷静な対応。アグレッシブで愁斗、技術で甲斐が優ったが、差は付き難い展開で試合終了。

◆第2試合 アマチュア ヘビー級2回戦(90秒制) 

髙木明彦(湘南龍拳1969.2.18大阪府出身)vs福田久嗣(ZERO/1980.5.5栃木県出身)
勝者:福田久嗣 / 判定0-2 (19-20. 19-19. 19-20)

初回は高木明彦の攻勢が目立つも、第2ラウンドには福田久嗣が打ち合いに持ち込むと高木をノックダウン寸前まで追い込んだ。

◆第1試合 アマチュア 60.0kg契約2回戦(90秒制)

アニマルタケ王(D-BLAZE/1983.2.2大阪府出身/59.65kg)
      VS
篠原まむし(矢場町BASE/1975.6.18岐阜県出身/57.5kg)
勝者:アニマルタケ王 / TKO 2R 0:47

アニマルタケ王はアマチュアらしからぬ攻勢で1ラウンド目にヒザ蹴りでノックダウンを奪い、第2ラウンド目では右ストレートでノックダウンを奪い、カウント中のレフェリーストップによるTKO勝ち。

《岩上哲明記者レポート》

二冠王者の羅向選手や元王者などから「第7試合(嵐vs佐藤勇史)や第9試合(龍旺vs史門)はKOが期待できるのでお勧めです!」という声が興行前日に挙がっていました。一番印象に残った嵐選手がダウンを奪った飛びヒザ蹴りからボディーへの左右ストレートは、往年の光本成三選手(目黒→G1)が当時の王者、越川豊選手を追い込んだ飛びヒザ蹴りからのヒザ蹴りを彷彿させるものでした。

セミファイナル龍旺vs史門戦とメインイベント大田拓真vs大翔戦は勝利への意地が感じられ、KOは無かったものの良い試合でした。今回はタイトル絡みは無かったものの、次回以降の興行で組まれると予想します。

また、リングを下りると礼儀正しく、今後応援したいと思わせる選手が増えているような印象があり、団体、各ジムで引き続きサポートをいろいろな角度で強化をしていくことが躍進への道ができるのではと思った興行でした。(岩上哲明)

《取材戦記》

年明け最初の興行として、NJKFは長らく毎年2月がスタートとなっていますが、“新春”とは言い難く、今年はタイトルマッチも無ければ年間表彰式も無い静けさがありました。

近年は地方興行やDUEL興行が充実し、13回に上る年間興行に今年のタイトルマッチ絡みの躍進に期待したいものです。(堀田春樹)

NJKF興行は3月26日(日)にGENスポーツパレスで女子中心の興行「GODDESS OF VICTORY」が16時30分より開催。

4月16日(日)は後楽園ホールで17時30分より本興行「NJKF 2023.2nd」が開催。

4月30日(日)には岡山コンベンションセンターにて13時30分より拳之会興行「NJKF 2023 west 2nd」が開催予定です。
  
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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3年4ヶ月ぶりに新日本キックボクシング協会興行で行われたラジャダムナンスタジアム王座挑戦はまたも惜敗。

◎MAGNUM.57 / 2月19日(日)後楽園ホール17:33~21:03
主催:伊原プロモーション
認定:新日本キックボクシング協会、ラジャダムナンスタジアム
(下記より公式戦の試合順。試合レポートは岩上哲明記者)

◆第10試合 タイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級タイトルマッチ 5回戦

勝者=チャンピオン.ジョーム・パランチャイ(タイ/19歳/ 60.8kg)
      vs
敗者=同級10位.重森陽太(伊原稲城/1995.6.11東京都出身/ 60.7kg)
判定3-0
主審:ジラシン・シララッタナサクン(タイ)
副審:ポンメート・チャスラック(タイ)49-48.
   チャルーン・プラヤサップ(タイ)49-48.
           椎名利一(日本)49-48.
スーパーバイザー:チョークタナパット・パッタナパックディー(タイ)

第1ラウンド、ジョームは右ミドルキック、重森陽太は前蹴りでジョームの距離をとらせないと同時に、太腿を蹴ることで軸足を崩し、攻撃力を削りに来ていた。ラウンド終了後に重森の右脛から出血があったが、試合に影響は無さそうだった。

第2ラウンド、重森は左ミドルキックで攻めていくが、ジョームは合わせてパンチを繰り出し圧力を掛け始める。至近距離で互いにヒジ打ちを出していくが、重森から余裕が無くなってきた様子。

第3ラウンド、ジョームは重森のボディーにストレートパンチを的確に叩き込み、重森のスタミナを削る作戦に出てきた様子。重森はボディブローを貰いながらも、首相撲では互角に対応し、パンチやヒザ蹴りをヒットさせるが、ジョームのボディブローのヒット数が多くなる。

ジョーム・パランチャイのボディーブローが重森陽太にヒット

重森陽太のハイキックも浅かったがジョーム・パランチャイにヒット

第4ラウンド、ジョームはこのラウンドで重森を倒しに掛かるかのような左右のパンチやミドルキック、ヒザ蹴りを混ぜながら攻めていく。重森はカウンターのヒザ蹴りで対応していくが、左右のストレートを貰い動きが止まってしまう。体勢を立て直すも、明らかにジョームの優勢のラウンドになる。

第5ラウンド、ポイントで有利と思ったか、ジョームはセーブしながらも鋭いボディブローを主体に重森に圧力を掛け続ける。重森は手数足数を増やし、時折ジョームにクリーンヒットするも単発で流れを変えれず試合終了。ジョーム・パランチャイが判定勝利で防衛。

前日計量では両選手ともに今回のタイトルマッチ実現に嬉しさを語り、日本のファンへムエタイの素晴らしさを伝えるとコメント。ファイタータイプのジョームに初挑戦である重森陽太のテクニックが通じるかどうかが試合のポイントになると思われた。

防衛したジョームはリング上で「有難うございました!」とコメント。控室に戻ってきたジョームは支援者から祝福され、リング上とは違う安堵感を見せ笑顔で会釈をしてくれました。重森陽太は出血した医務室で右脛の治療を受けていた様子。

重森陽太が前蹴りでジョーム・パランチャイの接近を阻止

明暗が分かれた両者の表情、ジョーム・パランチャイの勝利

◆第9試合 WKBA世界62kg級王座決定戦 5回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/ 61.9kg)
      vs
ラット・シットムアンチャイ(元・ルンピニー系フェザー級6位/タイ/ 60.0kg)
勝者:髙橋亨汰(王座獲得) / TKO 2R 0:39
主審:少白竜

試合開始早々に右フックをヒットさせる高橋亨汰。ラットはバランスを崩すが立て直し、右飛び回し蹴りで威嚇する。高橋の猛攻にキャリアでかわすラット、しかし、高橋の左のショートパンチを貰ってノックダウンを喫する。ラットはすぐに立ち上がり逆襲し、パンチの連打で高橋をフラッシュダウンまで追い込む。
第2ラウンド、高橋の猛攻は続き、ラットも打ち合いに応じるが、高橋の右ストレートで態勢が沈んだところに高橋が左の縦ヒジ打ちでラットの頭部にヒットさせノックダウンを奪う。ラットは立ち上がるも、前頭部からおびただしい出血。ドクターの勧告を受入れレフェリーが試合ストップして終了。

前日計量の会見で高橋は会長などに感謝の言葉を述べながら「チャンスを掴みたい!」と意欲が伝わる。ラットも「勝ちたい。経験(長年の)もありベルトは巻く!」と意気込みを語っていた。

試合後、控室でチャンピオンベルトを肩に掛けた高橋選手は「キレイにヒジが決まって嬉しいです。次もヒジ打ち有りで戦いたい!」と応えていた。

高橋亨汰がハイキックでラットに威嚇

ラットを流血させた高橋亨汰の左ヒジ打ちがヒット

◆第8試合 第2代WKBA日本バンタム級王座決定戦 5回戦

2021年10月17日に泰史(伊原)との王座決定戦に判定勝利した初代チャンピオン.佐野佑馬(創心會)は都合により欠場で王座返上。

NJKFバンタム級チャンピオン.志賀将大(エス/ 53.15kg)
      vs
No-Ri-(前・TENKAICHIバンタム級Champ/ワイルドシーサーコザ/ 53.4kg)
勝者:志賀将大(王座獲得) / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜50-45. 宮沢50-46. 仲50-46

初回から志賀将大は冷静にミドルキックを中心に攻め、No-Ri-(=ノーリー)は押され気味ながら、変則的なリズムでキックやパンチを仕掛けていく。
第2ラウンド以降も志賀は首相撲に持ち込むが、No-Ri-は付き合わず後ろを向いてかわしていく。組まれたら後ろを向くことが多くレフェリーから注意を受ける。志賀は執拗に首相撲を仕掛けヒザ蹴りに入るなど自分のペースに持ち込もうとするが、No-Ri-に阻まれる。

最終ラウンドに入ると、志賀は首相撲からのヒザ蹴りでは倒せないことや、ポイントで有利な状況でアウトスタイルに切り替えた様子。No-Ri-はバックハンドや胴回し蹴りで逆転を狙うが単発で終わってしまい終了。志賀将大が大差判定勝利で王座獲得となった。

試合前にNo-Ri-選手から「身体にハンディーがある人達のために沖縄にベルトを持ち帰り勇気を与えたい!」とコメントがあり、急遽決まった試合でありながら、地元で興行が中止になった悔しさをぶつけたいという気持ちが伝わってきました。
志賀選手はリング上で感謝の言葉を述べていたが、試合には満足はしていなかった表情で、観客の「セコンド陣の指示が噛み合えばダウンは奪えたかもなあ!」という声が聞こえましたが、この試合を象徴するものでしょう。

志賀将大は離れても接近戦でも攻勢を見せ、ミドルキックでNo-Ri-を攻める

NJKFから乗り込んだ志賀将大の戴冠、今後の防衛戦に期待

◆第7試合 57.0kg契約3回戦

木下竜輔(伊原/ 56.7kg)vs 湯本剣二郎(Kick Life/ 56.85kg)
勝者:湯本剣二郎 / KO 2R 3:00
主審:仲俊光

第1ラウンド、木下竜輔は鋭いローキックを主体に攻め、湯本剣二郎はパンチで追い詰めようとするが、木下のローキックでなかなか距離が掴めない様子。

第2ラウンド、湯本はローキックのダメージが蓄積している様子だが小刻みに攻めていく。残り数秒で湯本の右フックが木下のテンプルにクリーンヒットし、前のめりにノックダウン。木下は立ち上がるもファイティングポーズがとれずカウントアウトされた。

◆第6試合 58.5kg契約3回戦

ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.35kg)
      vs
WKAムエタイ世界フェザー級チャンピオン.国崇(=藤原国崇/拳之会/ 58.25kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:仲29-28. 少白竜30-29. 勝本30-29

ジョニー・オリベイラのタフさと国崇のテクニックの競い合いが予想された試合。初回、ジョニーのパンチがヒットすると国崇も返し、パンチの打ち合いで盛り上がる場面が見られた。

第2ラウンドもジョニーは的確に攻めていく。国崇はやりづらそうな表情を醸し出し、第3ラウンドには、ジョニーの攻勢に国崇はヒジで打開を図ろうと試みるが、ジョニーは蹴りで国崇の間合いを取らせず終了。

◆第5試合 58.5kg3回戦

仁琉丸(富山ウルブズスクワッド/ 58.65→58.35kg)vs 小林勇人(伊原/ 58.2kg)
勝者:小林勇人 / TKO 1R 2:18
主審:椎名利一

第1ラウンド、小林勇人の鋭い蹴りが会場を沸かし、仁球丸はバックハンドブローで牽制。2分過ぎて、仁球丸のガードが下がったところを小林が強烈な右ストレートをヒット。仁球丸は身体が吹っ飛ぶように受け身が取れないノックダウン。ほぼ失神状態になり、レフェリーはノーカウントでストップをかけて終了。仁琉丸は担架で運ばれた。

◆78.0kg契約3回戦=中止

マルコEX斗吾(伊原/ 78.6kg)vs 江原陸人(GODSIDE/ 負傷欠場)は中止により、引退したマルコEX斗吾出場によるエキシビジョンマッチ2回戦(90秒制)を披露。

斗吾選手は現役さながらの動きで、現役復帰の可能性を聞いてみると、「それはないです!」と笑顔で否定していました。

◆第4試合 51.0kg契約3回戦(2分制)

オン・ドラム(伊原/ 50.85kg)vs 青木繭(SHINE沖縄/ 50.65 kg)
勝者:青木繭 / 判定0-3 (27-30. 26-30. 27-30)

◆第3試合 フェザー級2回戦

吴嘉浩(=ゴガコウ/伊原/ 56.85kg)vs 古山和樹(エス/ 56.4kg)
勝者:吴嘉浩 / 判定3-0 (19-18. 19-18. 19-18)

◆第2試合 女子アマチュア34.0kg契約2回戦(90秒制)

西田永愛(伊原/ 33.8kg)vs 菊池柚葉(笹羅/ 33.4kg)
引分け 三者三様 (19-20. 20-19. 19-19)

◆第1試合 52.0kg契約2回戦

渡邊匠成(伊原/ 51.7kg)vs 今吉勇樹(K-style/ 51.8kg)
勝者:渡邊匠成 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)

日本で激戦を制したジョーム・パランチャイ

《取材戦記》

本場タイでは権威失墜が叫ばれる二大殿堂スタジアムも、この日行われたラジャダムナンスタジアム王座を懸けた戦いは、やはりまだまだ最高峰の重みが感じられるものだった。タイからスタジアム公認審判団とスーパーバイザーが招聘されれば、タイのジョーム・パランチャイも決して気を抜けない本気で倒しに来る真剣さがあった。

採点がジャッジ三者とも49-48ではあるが、プロボクシング式のような各ラウンドが独立した採点基準ではないのは、ムエタイに精通する人なら理解出来るでしょう。

2019年10月20日にラジャダムナンスタジアム・バンタム級王座に挑戦し、引分けで逃した当時の江幡睦は、「倒しきれなかった、それに尽きると思います。ひとつのノックダウンでも奪わなければ、ラジャダムナンのベルトは獲れないということです!」と殿堂の壁の厚さを語っていたとおり、重森陽太ももうちょっと優勢に進めていても48-48か、或いは49-48は変わらなかったかもしれない。この1点差を乗り越えるにはもうちょっとながらも、もっと大きな壁が存在するのでしょう。

次に期待されるのは高橋亨汰になるかもしれない。そのステップとなった今回のヒジ打ちによる豪快TKOはインパクトがあるものでした。(堀田春樹)

まだ最高峰への通過点ながらWKBA王座獲得した高橋亨汰

《岩上哲明記者レポート》

今回の興行は新日本キックボクシング協会の底力を感じさせるものでした。KO決着した試合はそれぞれ内容は違いますが、どれもがインパクトが強く、キックボクシングの凄み、そして観客が求めているものを示してくれたものだったと思います。

メインイベントのラジャダムナンタイトルマッチは、前評判では「重森陽太はファイタータイプのジョーム・パランチャイにKO負けするのでは?」という声が割とありましたが、テクニックとタフさで僅差の判定に持ち込んだ重森選手は、次回の挑戦に期待が出来そうなものでした。重森選手に強いて苦言を言えば、前日計量後の記者会見で「ムエタイを見せる!」ではなく「勝って王者になる」と勝利への意気込みを語って欲しかったところです。ジョーム選手と同じことをコメントしたことで、試合前に勝利が重森選手との距離を少しとってしまったかもしれないでしょう。

高橋亨汰選手はリングに上がった時に「王者になる」雰囲気が出ていました。重森選手と同じ階級ではあっても、カラーも違い、団体のエースとした活躍しそうな予感をさせてくれました。今後も左ヒジを武器に盛り上げてくれることを期待したいものです。

デビュー戦で豪快なKOを決めた小林勇人選手やキャリア差に怯むことなくKO勝ちした湯本剣二郎選手のような有望な若手選手も出てきており、次回興行も期待出来そうです。(岩上哲明)

◎新日本キックボクシング協会の次回興行は、4月23日(日)に後楽園ホールでMAGNUM.32が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

今回は年齢層の幅広い、ヤング対決と中年対決の存在感示したタイトルマッチ。カズ・ジャンジラと杉山空が戴冠。

WPMF世界王座獲得経験者同士のベテラン対決は片島聡志が一瞬のハイキックでテクニシャン藤原あらしを倒しました。

◎野獣シリーズvol.1 / 2月18日(土)後楽園ホール17:30~20:20
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第9試合 第16代NKBウェルター級王座決定戦 5回戦

3位.笹谷淳(team COMRADE/1975.3.17東京都出身/ 66.6kg)
62戦29勝(10KO)31敗2分
      VS
4位.カズ・ジャンジラ(ジャンジラ/1987.9.2東京都出身/ 66.4kg)
41戦20勝(4KO)16敗5分
勝者:カズ・ジャンジラ / 判定3-0
主審:前田仁
副審:亀川47-50. 鈴木47-50. 高谷47-50
※各戦績はこの日の結果を加えています。

笹谷淳vsカズ・ジャンジラ、ヒジ打ちと左ストレートの交錯

飛びヒザ蹴りを見せたカズ・ジャンジラ

47歳と35歳の戦い。両者は過去2020年10月10日に対戦し、カズ・ジャンジラが僅差ながら判定勝利している。

初回、ローキック中心にパンチを合わせて出ていく笹谷淳。第2ラウンドには組み合う接近戦が増え、カズの圧力が徐々に増していく中、第3ラウンドにはカズの左フックがヒットして完全に主導権を奪う。

笹谷は下がり気味の展開でも打ち返し、カウンターのヒジ打ちも返すが、カズの手数と前進は衰えず、計4度の飛びヒザ蹴りも見せたが、ノックダウンに至るヒットは見られず判定まで縺れ込んだ。採点は3ラウンド以降全て、カズが支配した流れでジャッジ三者とも50-47が付いた採点。カズ・ジャンジラが新チャンピオン。

◆第8試合 第8代NKBフライ級王座決定戦 5回戦

1位.龍太郎(真門/2000.12.25大阪府出身/ 50.6kg)11戦4勝(1KO)6敗1分
      VS
2位.杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/ 50.65kg)7戦4勝1敗2分
勝者:杉山空 / 判定0-2
主審:加賀見淳
副審:高谷49-50. 鈴木49-49. 前田47-50

22歳と18歳の戦いは、初回から蹴りの主導権争いから首相撲に移ると杉山の崩しが優勢な流れを作り、前蹴りから繋ぐ技が上回った杉山空が主導権を維持した流れで勝利を導き、新チャンピオン。

王座に就いて「これからがスタート」と言うとおり、団体枠を越えたトップスターへ進まねばならない。

幾つかの飛び技など大技も見せた杉山空

前蹴りが効果的だった杉山空

片島聡志の右ハイキックがヒットした直後、藤原あらしが倒れかかる直前

◆第7試合 54.0kg契約 5回戦

藤原あらし
(元・WPMF世界スーパーバンタム級Champ/バンゲリングベイ/1978.12.22和歌山県出身/ 53.8kg)
98戦63勝(41KO)24敗11分

      VS
片島聡志
(元・WPMF世界スーパーフライ級Champ/KickLife/1990.10.19大分県出身/ 53.95kg)
52戦27勝(KO数は不明)20敗5分

勝者:片島聡志 / TKO 2R 2:55
主審:亀川明史        

藤原あらしは昨年12月24日に続いて連続出場。

則武知宏(テツ)をKOしたムエタイ技でしぶとさを見せるか注目の中、初回、両者の蹴りからパンチでの様子見。

第2ラウンド終盤、それまでの落ち着いた流れから片島のいきなりの右ハイキックで藤原あらしのアゴにヒットするとバッタリ倒れ、ノーカウントでレフェリーストップ、そのまま担架で運ばれるも、後に控室で意識はしっかり回復した様子。

ノックアウトした瞬間の片島聡志

勝利した片島聡志と陣営

◆第6試合 59.0kg契約3回戦

NKBフェザー級4位.矢吹翔太(team BRAVE FIST/1986.8.2沖縄県出身/ 58.85kg)
14戦10勝3敗1分
      VS
KEIGO(BIG MOOSE/1984.4.10千葉県出身/ 58.75kg)20戦7勝8敗5分
勝者:矢吹翔太
主審:高谷秀幸 / 判定3-0
副審:加賀見30-29. 前田30-29. 亀川30-28

蹴りから組み合って首相撲に持ち込んだ矢吹翔太のヒザ蹴りがKEIGOのスタミナを奪い僅差ながら判定勝利。

ノックアウトした右ストレートカウンターの小清水涼太

◆第5試合 62.5kg契約3回戦

蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 62.45kg)5戦3勝(3KO)1敗1NC
      VS
小清水涼太(KINGLEO/1999.3.30富山県出身/ 62.1kg)4戦3勝(2KO)1敗
勝者:小清水涼太 / TKO 1R 1:05 /
主審:鈴木義和

蹴り合いから接近した中での小清水涼太の右フックカウンター一発で倒すとカウント中のレフェリーストップ。蘭賀大介はマットに頭を打ち付けたか、担架で運ばれる衝撃の結末となった。

◆第4試合 バンタム級3回戦

シャーク・ハタ(=秦文也/テツ/1987.10.20大阪府出身/ 52.9kg)6戦3勝2敗1分
      VS
田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 53.45kg)1戦1敗
勝者:シャーク・ハタ / 判定2-0 (30-27. 30-28. 29-29)

◆第3試合 バンタム級3回戦

橋本悠正(KATANA/1997.4.21福島県出身/ 53.5kg)3戦2敗1分
      VS
香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 53.2kg)1戦1勝
勝者:香村一吹 / 判定0-3
主審:前田仁        
副審:亀川27-30. 加賀美27-30. 高谷27-30

◆第2試合 フェザー級3回戦

堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 56.7kg)2戦2勝
      VS
KATSUHIKO(KAGAYAKI/1975.11.13新潟県出身/56.9kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:堀井幸輝 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆第1試合 ライト級3回戦

青山遼(神武館/1999.2.5埼玉県出身/ 60.65kg)2戦2敗
      VS
猪ノ川海(大塚道場/2005.9.3茨城県出身/ 60.35kg)1戦1勝(1KO)
勝者:猪ノ川海 / TKO 1R 1:47 / カウント中のレフェリーストップ

チャンピオンベルトを巻いて感慨無量のカズ・ジャンジラ

《取材戦記》

47歳で王座挑戦となった笹谷淳。敗れたが、これが最後の挑戦となるかは微妙。チャンピンとなったカズ・ジャンジラが「穴なので!」と挑戦者を募るとおりの狙い易さはあるだろう。

NKBフライ級タイトル戦は、2010年4月24日以来、ほぼ13年ぶりの開催。選手層の薄さが原因だが、活気が増してきた日本キックボクシング連盟に於いて、NKB全階級で定期的(期限内)にタイトルマッチを活性化させることが、この連盟の基盤となる部分かと思います。現在は極力高額の賞金トーナメントの方が盛り上がるとも言える時代の流れかもしれませんが。

片島聡志は昨年9月25日にNJKF興行で波賀宙也(立川KBA)に3ラウンド制判定負けしいているが、そこから原点のムエタイスタイルに返った戦略が今回活かされたか、藤原あらしの首相撲に持ち込まない流れで勝機を見出しました。

古き昭和の頑固気質を持つ渡邉ジムから令和の新星、この日まだ15歳の高校一年生、香村一吹がデビュー戦を判定勝利で飾りました。決して昭和の練習法という時代錯誤ではないが、渡邉会長の孫のような世代の存在は、周囲に可愛がられながら期待に応えられるか。

次回、日本キックボクシング連盟興行「野獣シリーズvol.2」は4月17日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

新チャンピオン誕生の杉山空と陣営

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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