2月14日、滋賀医大附属病院前で、「滋賀医科大学小線源治療患者会」のメンバーが、雪の舞う寒い天候の中、「岡本圭生医師による治療の継続」を訴えて、のぼりや横断幕を掲げるマニフェスト(抗議活動)を敢行した。気温2度という、厳しい寒さの中、朝9時30分頃からメンバーは病院敷地の「外側」に集まり、下記写真のように病院に向けての示威行為を開始した。対象が病院だけに患者さんに迷惑が掛かってはならないので、音声を発することはしなかった。

 

 

 

9時45分頃、マスクをした職員らしき人物が現れた

9時45分頃、マスクをした職員らしき人物が病院の建物内から出てきて、様子を観察しだした。

この人物撮影していると「勝手にわたしの写真を撮らないでください」という。「あなたは国家公務員でしょ」と聞くと「そうですが、それが何か?」というので「職務中の国家公務員に肖像権はない」と伝えると、横にいたガードマンが「病院内での写真撮影は禁止です!」とまくしたてだした。「どこにそんな規則があるんですか。入院患者を見舞った家族や友人が一緒に写真を取ってはいけないのですか?」と切り返す。

職員がガードマンに下がるよう指示し、マスクをした職員は「私の写真のデータを消せ」とあたかも警察のような口の利き方をする。「そんな法的義務はない。不当要求には応じられない」と突っぱねるとやがて諦めて病院の建物に帰っていった。

 

10時10分、パトカーがやってきた

10時10分、病院が警察に通報したのであろう。パトカーがやってきた。

パトカーは緊急出動のパトランプは点灯していない。病院玄関前で数名の職員が「プラカードをつけた者がいたり、ああやってのぼりを上げたり妨害行為をしているんです」と警察官に申告している。

パトカーで病院にやってきた2名の警察官がスタンディングをしている「患者会」の皆さんのいる場所へやってきた。

しかし、患者会の誰も全く動じていない。どうしてか? この日の行動を計画したMさんは、「こうなるであろう」ことをあらかじめ予見して、先手を打っていたのだ。Mさんは早い時期に草津警察署に「道路使用許可」を申請し、許可を得ていたのだ。

「患者を患者とも思わぬ滋賀医大附属病院は、病院真近での直接行動を、嫌がるに違いない。スタンディングは何の違法行為でもないが、病院は必ず警察に通報するだろう。その時に道路使用許可を見せれば、警察も文句は言えまい」。

Mさんは市民運動の歴戦の闘士でもなく温厚な紳士だが、この読みは寸分なく的中した。事情を聴きに来た2名の警察官は滋賀医大附属病院最寄りのJR瀬田駅交番の巡査だった。道路許可を見せて納得した警察官は、「どうしてこの先生辞めはるんですか?」と「患者会」のメンバーに質問する。

「辞めるんじゃなくて病院が無理やり辞めさせようとしているから、わしら抗議してますんや。お巡りさんも男性やったら前立腺癌、他人事ちゃいまっせ。ここにおる者は岡本先生に命を救うてもろうた人ばかりです」

さらに警察官が「なんでそんな先生を辞めさそうとするんですか?」と「いい質問」をぶつけるので「さあ、それはわかりませんけど、一層こちらやなくて病院の中を捜査してもらえまへんか」と冗談交じりにお願いするメンバーに「いやちょっとそれは……」と困った表情を浮かべていた。

若い巡査は「いつも瀬田駅前でやってはるやつですよね」とこの問題への関心を口にしたので、メンバーが用意していた『紙の爆弾』3月号のグラビアを提供すると「ありがとうございます」と感謝されていた。

しばらくすると、別のパトカーがやってきた。滋賀医大附属病院は、正門の前が大津市と草津市の堺になっており、先に来た警察は大津市警察からの出動であったが、「患者会」メンバーがスタンディングを行っていた場所は草津市内であるので、草津警察がやってきたのだ。すでに道路使用許可を得ている「患者会」とりわけMさんは、ニコニコしながら「どうもどうも」と使用許可を提示し、穏やかな雰囲気で確認が行われた。わたしが「写真撮影をしてよいですか」と草津署の警察官に尋ねると「構いませんよ」とのことだった。

草津警察所の警察官に余裕の笑顔で警察に応対するMさん

草津警察も引き上げ、寒い中で皆さんひたすら立って抗議を続けていると、参加していた方のお一人が不調を訴えだした。実はこの日の抗議行動には、既に治療が終わった患者さんだけではなく、現在入院中の患者さんも数名参加していたのだ。そのうちのお一人が薄着過ぎたため低体温状態になってしまったのだ。脈をとってみると正常値だ。深刻な状態ではないだろうが、一刻も早く体を温めなければならない。メンバーが患者さんを病室に戻すべく車椅子を病院内にとりに行くと、病院職員がストレッチャーを用意してやってきた。その中の一人はわたしに「写真を撮るな」と迫った職員であったが、体調を悪くした患者さんへの彼の態度は(当たり前ではあるが)丁寧で、親切な対応であったことは記しておく。

入院中の患者さんも厳寒の中参加する病院前での抗議行動など、この国の歴史にあったであろうか。滋賀医大附属病院は、この日大きな衝撃に見舞われたに違いない。「患者会」の皆さんや「入院中の患者さん」までが、治療が受けられないかもしれない「待機患者さん」のために「命がけ」で闘っている。低体温で意識朦朧となりながらも厳寒の中で抗議に参加した「入院患者」さんの姿に直面して、あらためて、心が震える思いをさせられた。願わくば同じ人間として滋賀医大附属病院の皆さんにも「なにか」を感じてほしいものだ。

なお、滋賀医大附属病院問題については、Youtubeにも資料動画があるのでご覧いただきたい。


◎[参考動画]滋賀医大による癌治療の妨害: 岡本医師の妨害阻止に向けた闘い


◎[参考動画]癌患者の滋賀医大病院による治療妨害-阻止に向けて-


◎[参考動画]For Provisional Disposition to save patients(上記動画の英語編集版)


◎[参考動画]滋賀医科大学 倫理規定違反


◎[参考動画]滋賀医大診療予約停止

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

衝撃の『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!前立腺がん治療めぐり 滋賀医大病院 底なしの倫理欠如

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

2月7日滋賀医大附属病院で岡本圭生医師による小線源治療を希望する、患者さん7名と岡本医師が大津地裁に「病院による治療妨害の禁止」を求める仮処分の申し立てを行った。「治療しますよ」と意欲を明かしている医師と、「治療をしてくれ」と求める患者を病院が「妨害」すること自体が、聞いたことのない話であるが、相次ぐ要請や行動にも滋賀医大附属病院は、まっとうな反応を示さないことから、ついに関係者は「仮処分」に打って出た。「滋賀医科大学小線源治療患者会」は治療を希望する患者さん(待機患者)を支援すべく、この日13時から大津駅前で集会を行い、申し立ての時間に合わせ、大津地裁正面前まで申し立て患者を先頭に、約100名が行進した。

 

 

弁護団長の井戸謙一弁護士

仮処分の申し立て終了後、滋賀教育会館で記者会見が行われた。冒頭、弁護団長の井戸謙一弁護士が仮処分申し立ての内容について説明と解説を行った。

「1時50分に大津地裁に仮処分申請を申し立て、受理されましたのでご報告させていただきます。『癌治療を受けさせて仮処分事件』というペーパーについて説明いたします。冒頭に『癌治療を受けさせて』というのは、私がこのペーパーを書くときに、なにかひとことで本質を現す言葉がないかなと考え、思いついた言葉です。申し立ての皆さんや他の弁護士の了承を得ているわけではございません。

この事件の申立人は滋賀医大附属病院小線源治療講座において、岡本医師の治療を待機中の難治性高リスク前立腺癌患者7名の方、北海道から広島まで広範囲に広がっております。そして岡本圭生特任教授の8名であります。相手方は国立大学法人滋賀医科大学です。何を求めているか、申し立ての趣旨を読み上げます。

債務者(滋賀医大附属病院)は債権者岡本圭生に対し、2019年7月1日から同年12月31日までの間において、債権者岡本圭生が滋賀医大附属病院において債権者患者7名ほか債権者岡本圭生が前立腺癌小線源治療の適応があると判断し、その同意を得た患者に対し、前立腺癌小線源治療の施術をすることを妨害してはならない。「妨害の禁止」を求めています。これが第一項。第二項は、債務者は、債権者患者7名に対し、2019年7月1日から同年12月31日までの間において、同債権者からが、滋賀医大附属病院において債権者岡本圭生から前立腺癌小線源治療を受けることを妨害してはならない。こちらも「妨害の禁止」を求めています」

その後細部にわたり、申し立ての理由について詳しい説明があった。なかでも、前立腺癌には摘出、外部照射、小線源治療、ホルモン療法などがあるが、その成績(完治率)において、小線源治療及び、小線源治療と外照射ホルモン治療を組み合わせた「トリモダリティー」療法が非常に優れた治療成績を残していることが、国際的にも確認されていることが解説された。そして岡本医師が開発した「岡本メソッド」は術後5年の非再発率が96.5%。ほとんど再発がない実績を上げていることが紹介された。井戸弁護士は、配布資料の中に参考資料が添えられており、その中には、滋賀医大附属病院が作った冊子があり「岡本メソッド」の紹介があることに言及し、「『小線源療法について全国トップクラスの施設として日本中及び海外から患者が訪れるのが小線源治療チームである』と書いています。また『トリモダリティーという方法で治療の有効性を高め、5年経過後のPSAにもとづく非再発率という根治率を恕数値は96.3%にも上がる』と書いてあります。そして『2人(岡本医師と河野医師)の治療を受けた、全国各地の患者さんからは、感謝を伝える声が絶えず届く』と滋賀医大附属病院が、岡本医師、「岡本メソッド」を高く評価して宣伝してきたわけです。ところが小線源講座を12月31日で閉鎖をするという決定を滋賀医大はしており、最後の半年は小線源治療をしてはならないという決定をしております」と病院側の決定的矛盾を具体的に指摘した。そのあと、法的に債権者(患者7名と岡本医師)には法的に「治療を受ける権利がある」ことが解説された。

井戸弁護士は、本申し立てが、「小線源講座閉鎖問題」についての問題にはあえて触れず、仮に講座が閉鎖されるにしても、最低11月まで患者さんには治療を受ける権利、岡本医師には治療の権利がある(12月ではなく11月としたのは経過観察に1月を要するため)ことの確認を求めるものであることが説明された。さらに、岡本医師には滋賀医大との雇用契約上の権利(医師としての自律、独立して診察、治療に当たる権利(プロフェッショナルオートノミー)小線源治療学講座特任教授として、小線源治療の教育研究にあたる権利がある、旨の解説があった。

最後に本件申し立ての特徴として、(1)多くの人の命がかかっているまさに人道上の問題であること(2)緊急性―早期の決定が必要であること(3)このような理不尽な取り扱いが、滋賀県を代表する滋賀医大附属病院でおこっていることを明示した。解説の最後に井戸弁護士は、「実は昨日私の事務所に青森の女性から電話がかかってきました。ご主人が44歳で非常に高いPSA値を宣告された。どうしても岡本先生に治療してほしいと。岡本先生につないで欲しいと、そういう依頼でした。実情をお話しすると、電話の先で、その女性は泣き崩れんばかりでした。高リスクの前立腺癌を宣告された方が、どれだけ不安な思いになるのか。その中で岡本医師の治療に最後の望みを繋ぐのかという思いを電話で直接お聞きして、身の引き締まる思いをしました。『たくさんそういう方がおられるんだ』、ということを胸に刻みながらこの訴えを闘ってゆきたいと思います。報道機関の皆さんにはこの事件の問題を正確に把握していただいて、正確な報道をお願いいたします」と決意を表明した。

 

続いて申し立て患者さんが見解を述べた、全員のコメントをご紹介することはできないので、ここでは岡山の木村さん、北海道の平林さんのお話を詳細する(木村さん、平林さんのコメントは司会の石川賢治弁護士が代読した)。

「私は昨年、倉敷成人病センターで前立腺癌との確定診断を受けました。癌の状況は、ハイリスクであると告知を受けました。そのときに倉敷成人病センターの医師から今後の治療法の提案はありましたが、結局のところ提案された内容で治療したとしても治るかどうかは何とも言えない、それほど癌が進行している状況であると説明されました。私は、がんの可能性があると知ったときからインターネットなどで情報を集めており、ハイリスクの前立腺癌でも治療できる医師が滋賀医科大学の岡本先生であるということを知っていました。そこで私は、藁にもすがる思いで岡本先生をの診察を受けることにしました。初診のとき岡本先生は、「患者を救いたいんだ」、「なんとかしたいんだ、助けたいんだ」、「私ならあなたの癌を治せます」と力強く言って下さりました。私は本当に心を打たれました。倉敷成人病センターの医師に岡本先生への紹介状を書いてもらったとき、「もう知らないから勝手にしなさい」ということを言われました。よって私はもう岡本先生に治療してもらう以外に助かる方法はありません。またいずれにせよ、超高リスクの私の前立腺癌は、岡本先生にしか治せないのです。

私には、病後療養中の妻と障害を持つ長男がいます。このうえ、合併症に苦しんだり、癌の再発におびえる生活を送ることは私には耐えられません。ましてや、本来であれば岡本先生の治療を受ける期間が残されているのに病院側が何の理由もなく治療を打ち切ったことについて全く納得することができません。以上のとおりの状況ですので、私の命が助かるかどうかは今回の仮処分の結果にかかっています。このため、覚悟を決めて仮処分の申立人となることと致しました。何卒よろしくお願いいたします」(岡山県 木村さんのコメント)

「私は、昨年8月に前立腺癌の宣告を受けました。難治性高リスクの前立腺癌でした。北海道の病院では、全摘出手術か外照射の放射線、どちらかの治療を選択してほしいと言われました。いずれも再発する可能性はかなり高く7割以上の確率で再発するかもしれないが、それより残りの3割の確率にかけ治療しましょうと言われました。その言葉を聞いたとき、私の癌は完治が望めないのだな、あと何年生きられるのだろうか、そんな思いが何度も頭をよぎりました。そして、やっとの思いで岡本圭生先生にたどりつきました。岡本先生にしか出来ない治療があること、さらに「転移さえなければ、私が治療すれば治るでしょう、過去同じような病状の方はすべて治っています」と力強く言って頂いた時の、生きる希望と喜びは今も忘れません。しかし、いま、その治療が打ち切られようとしているのです。治療を途中で打ち切られる気持ちは、「死を宣告されたような気持ち」です。「生きる権利を一方的に奪われた気持ち」です。非人道的な病院側の理由で岡本医師の治療を打ち切ろうとする行為は、患者の命を切り捨てることであり、許されてはならないと思います。このようなことが断じてあって良いわけがありません。

どうか、私たち患者の命を奪うようなことをしないで頂きたい。滋賀医大にはこのことを強く言いたいと思いますし、メディアの皆様がたもしっかりと滋賀医大を監視していただくようお願いします」(北海道 北林さんのコメント)

 

岡本圭生医師

次いで岡本圭生医師が次のように語った。

「滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座 特任教授の岡本圭生と申します。私自身は、これまで14年間にわたり、滋賀県だけでなく、全国から私を頼って来院してくださった1100例を超える前立腺癌患者の方々に対して小線源治療という特殊な放射線治療をおこなってまいりました。今回の滋賀医大附属病院と、その院長が強行しようとしている平成31年7月以降の私の小線源施術を禁止する行為は、ここにおられる7名方々の生命をも脅かし、患者の最善の利益に反するものであります。また同時に患者を診察し、治療する立場である私の医師としての権利を侵害するものです。医師には、その職業倫理を実践し、すべての患者と人々に質の高い医療を提供し、自らの専門的判断を自由に行使できる地位が保障されることが不可欠でであると思います。私と同じ医師であり医師の集まりであり、医療機関である滋賀医大附属病院とその院長が、私の医師とし職業倫理と使命に対する侵害行為を行っていることは、絶対に許されないことだと考えます。今回、私の治療を待つ患者の方々の要請と、弁護団の要請により申し立て人に名前を連ねることを決意しました。その理由は、人道主義の立場から申し立てをおこした患者の方々の命を何としても守らねばならないと考えるからです。私はこれまで自らの職や命をなげうってでも患者の人権と人命を尊重し守ることを実践してまいりました。すなはち、患者の方々への人道主義を最優先してきたつもりです。今後もこれまで同様不退転の気持ちで医道を追及する所存です。是非、裁判所、メディアの皆様におかれても適切なご判断をお願いするしだいです。ありがとうございました」

次いで質疑に移った。

テレビ局、新聞社、通信社からの質問が相次いだ。質疑は多岐にわたったので割愛するがある記者の質問を最後に紹介しておく。
「資料によると『岡本メソッド』に比類する術式が日本に存在しないことはわかったが、世界的に同様の術式はあるのか」

これに対する岡本医師の回答は、「ない」であった。つまり世界に比類ない「前立腺癌制圧術」と呼んでも過言ではない、術式がどういうわけか「無きもの」にされようとしている。この状態を目の当たりにして、何も感じないのであれば、医師やジャーナリストは即刻仕事を辞めるべきであろう。

 

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!「前立腺がん治療めぐり滋賀医大病院 底なしの倫理欠如」他

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

「のぞき」、「隠し撮り」は犯罪とされる。それはそうだろう。見てほしいと思わない姿や、他人から勝手に撮影されることは不愉快なことだ(世に「露出狂」という性癖の方がいるが、そういう方は、他人に「みられる」こと、「びっくりさせること」に快感を感じているのであり、「露出狂」の方も「のぞき」や「隠し撮り」は歓迎しないのではないか、とあくまでも推測ではあるが想像する)。

「のぞき」も「隠し撮り」もこっそり行うのが原則だろう。「のぞく」あるいは「隠し撮る」相手にばれてしまったら、怒られるか、逃げられるかしてしまうのだから。その点まったく褒められた行為ではないけれども、まだ「のぞき」や「隠し撮り」には「やましさ」や「慎ましさ」の片鱗が感じられる。翻って以下のメッセージを読者諸氏はどう受け止められるだろうか。

東京、大阪の電車に乗ると年中「テロ特別警戒中」のアナウンスが流れる。あれがけったくそ悪くて、いつも腹が立っていたのだが、先日東京の地下鉄内でこの広告を目にした。

 

「強くなれ、Tokyo」。

「東京メトロは、犯罪などのリスクを想定し、駅のセキュリティ対策を進めています。セキュリティーカメラを駅構内へ増設し。車両内での運用も今秋から開始。」

ただでも監視カメラだらけの「監視(のぞき)」カメラがそこここに設置されているのに、さらに駅にも増設し車内まで撮影するという。地下鉄に乗ったら撮影されることを、東京メトロは広告ではなく利用者一人一人にその可否を問うべきじゃないのか。地下鉄に乗るひとのなかには、あまり人には言いたくない理由で、あるいは知られたくない行き先に行くひともいるだろう。そういう「自由」を侵害されたうえ、勝手に撮影されなければならない法的根拠はあるのだろうか。しかもこの広告には「Go beyond 2020」と訳の分からない英語が書かれている。訳は分からないが「2020」が東京五輪を指すであろうことは間違いない。

東京にお住いの皆さんや通勤通学されている皆さんは、もう日常になっているのでそうはお感じにならないかもしれないが、東京がどんどん監視強化されてゆき、都心が表面上一見「きれい」に変化してゆく様子をここ30年ほど、わたしは薄気味悪く感じており、とくに21世紀に入ってからその勢いは加速度を増しているように思う。だいたい「強くなれ、Tokyo」はそれを読んでいるかもしれない乗客を対象としたメッセージで「もっと監視しますよ」と宣言しているにほかならない。

「2020東京五輪」と題目を唱えれば、土地の不正払い下げは見逃されるし、ボランティアと称する無償労働供与も半強制できる。Dで始まる広告代理店を隠れ蓑にした政府の別働諜報機関は、既に笑いが止まらないほど利益を上げているだろう。天皇の「はとこ」である竹田恆和東京五輪招致委員長は、収賄容疑で起訴されているが、そのことはどういうわけかあまり話題にはならない。「監視カメラ」をどれほど増やしても「贈収賄犯」は見つけられないということか。

 

極端すぎるかもしれないが、檻のない監獄で死活しているようにわたしたちは監視されている。新幹線で東京駅に着くと乗り換え改札口には以前から監視カメラがあった。

いつのころからか知らないけれども、渡り鳥の一群が電線で集団休憩をしているほどに、「これでもか」と「監視カメラ」が設置されている。

カメラの解析度は飛躍的に向上しているし、撮影可能な角度も100数十度はあるのだから、こんなにも監視カメラを並べる必要が果たしてあるのだろうか。

わたしが神経質すぎるのか、Tokyoが「監視したい」欲望のほうが強烈なのか。新幹線改札口天井の監視カメラの列は、刑務所よりも密度が濃く設置されている。

誰が望んで東京五輪は招致されたのだったろう。何が本当の目的で東京五輪は準備されているのだろう。

「強くなれ、Tokyo」

この脅迫的な一語の中にその本質の一端を見る。再度、東京五輪に絶対反対の意を表明する。これ以上加害者に加担してはならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

参加者はメッセージや訴えの方法を工夫していた(2019年1月12日草津駅前集会)

 

滋賀医大小線源治療患者会による草津駅前集会とデモ行進は長蛇の列に(2019年1月12日)

本コラムでたびたびお伝えしてきた、滋賀医大附属病院問題で、近く大きな動きがある。消息筋によると岡本医師による治療を希望する、高リスク前立腺がんに罹患した患者数名と岡本医師がともに、滋賀地裁に「滋賀医大附属病院による『治療妨害』」の撤回をもとめ2月7日仮処分の申し立てを行う。

滋賀医大附属病院は、6月末で岡本医師の治療停止、12月には実質上の追放を宣言しているが、「岡本メソッド」と呼ばれる岡本医師の前立腺がん治療は高リスク前立腺癌でも再発率が5%以下という卓越した結果を残していることから、いまでも全国から岡本医師の治療を希望する患者さんが滋賀医大附属病院には「診察の申し込み」を行っているが、そのほとんどは窓口で門前払いされているという。また現在岡本医師の診察を受けていても、6月末までに手術の予定が間に合わない患者さんもいる。患者の一人は「岡本先生でしか私の前立腺癌の治療はできないと思います。その機会を奪われることは私の命が奪われることと同じです」と訴えている。

 

岡本圭生医師

岡本医師は「目の前にいる私に治療できる患者さんを治療しないことは、人道的に許されません。私が希望するのは『患者さんを治療させよ』ということだけです」と語る。

滋賀医大附属病院をめぐっては、昨年の8月1日に、岡本医師の治療を受けられると思っていたら、泌尿器科の医師による手術が画策されていたことがのちにわかり、心身の損害賠償を求め、4名の患者さんが原告となり民事訴訟が提起されているほか、昨年11月16日には病院のホームページや院内の掲示物に書かれた内容に事実と異なる点がある、として岡本医師が仮処分を申し立てた。

さらに、今年に入って岡本医師の手術を受けた患者さんに対するQOL調査に、本来あってはならない氏名欄が設けられていただけではなく、氏名が当該患者さんではない何者かによって記入されたり、質問への回答が改竄されていた事実が判明。次いで実に1000名に上る患者さんのカルテが不正に閲覧されていたことなどが、次々に明るみになっている(この不正閲覧には院長、泌尿器科医師のほとんど、事務職員もかかわっている)。これら連続する不祥事に対して滋賀医大附属病院は1月31日になり、同病院のホームページに、

との見解を発表したが、当の松末吉隆院長が「不正閲覧」を行っていた本人であるので、このように何の証拠も、検証もされていない文章では説得力がない。

泌尿器科外来で診察を待つ患者さんに聞いたところ「問題があるのは知っていますよ。でもいまさら滋賀でほかの病院に行けないからねぇ。滋賀県の病院は滋賀医大の先生が多いから転院しようにもねぇ」と困った表情で本音を語っていた。

仮処分申し立ての詳細はまだ不明であるが、患者と医師が「治療をさせろ」と裁判所に判断を仰ぐのは、極めて稀な事態であることは間違いないだろう。医師や病院は患者さんがそのような属性の人であれ、目の前の患者に対して(物理的に治療が無理な場合などを除けば)「治療拒否」はできないはずだ。そもそも治療希望者を追い返す国立病院など存在が許されるのであろうか。仮処分の詳細は明らかになり次第、本コラムで引き続きご紹介する。

滋賀医大小線源治療患者会による草津駅前集会(2019年1月12日)

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

事故による被害者が減ることに異議はない。だからといって、そのために「今までもあったこと」がことさら新たな現象のように演出され、加害者が重罪を課されることを称揚するのは、いかがなものであろうかと思う。「煽り運転」についての議論である。


◎[参考動画]【報ステ】あおり運転で殺人罪認定 懲役16年(ANNnewsCH 2019/01/25公開)

◆「煽り運転」はいまに始まったことではない

まず、車を運転する方であれば、多くの方がご経験であろうが、高速道路や車線の多い道路を走行していると、自分が運転している車の車種(大型あるいは高価そうな車か、おとなしい庶民に人気のある車か)で、周囲、あるいは後方から追い抜きをかけてくる車の態度が明らかに違う。わたしは、これまで10台ほどの自家用車を保持したことがあったけれども、庶民性の高い(おとなしそうな)車であればあるほど、ほかの車からは軽く見られ、いわゆる「煽り運転」を受ける傾向があると感じている。

事故寸前の乱暴な運転に遭遇したのは、いずれも後方からの無理な追い抜きや、割り込みだ。そんなとき、次の赤信号で停止した乱暴な運転をする車に、やわら運転席から降りて歩み寄り、その車の運転席のガラスをノックすると、10中8、9、運転手は、腰を抜かしかけ、平謝りに頭を下げる。まさかわたしのような「紳士(!)」が運転していたなどとは思わなかったのであろう。このように運転者には車種により運転態度を変える習性が一定程度あり、この傾向はわたしの知るところ、30年前から変わらない。

なにを言いたいのかといえば、「煽り運転」は最近マスコミや警察が、頻繁に使うので、この時代に起き始めた新たな焦眉の問題のようにとらえられているけれども、呼称こそなかったものの、昔から同様の現象はあったということである。

他方、交通事故には「厳罰主義」が一定の効果を発揮することは統計も証明していて、飲酒運転の厳罰化により、飲酒運転が原因の死亡事故は激減している。交通事故による死者が1万人を下回った大きな要因は飲酒運転の厳罰化にあることは明らかであろう。それは結構なのではあるが、「煽り運転」があたかも今日的社会の最重大事件のように報道される姿勢には、疑問を投げかけざるを得ない。

◆火事や交通事故は「速報」に値するテレビニュースなのか

もちろん被害者の方が気の毒であることに異存はない。しかしながら、テレビニュースに詳しい知人によると、民放の夕方6時の全国ニュース(当然生放送)では、最近「速報」として交通事故(死亡事故でなくとも)や、火事が放送されることが増えているという。

交通事故にしろ、火事にしろ、被害を被った方はお気の毒だ。けれどもその現象がどれほど社会性をもって全国にニュースで報道されるべき性質のものであるかどうか、にわたしは疑問を抱くのである。

ひらたく言えば、交通事故や火事は、悪意によらずとも過失や、防ぎようのない原因によりにより一定割合で必ず起きる。これは自明である。他方、社会構造や、大人数の意図的な行為により引き起こされる災禍、犯罪、被害はその広がりや事件の病根が現代社会に根差しているのであるから、個別の事故よりも社会性や影響が大きく、解析や背景を明らかにする価値を有する。

◆メディアは権力犯罪や構造的な社会不条理を解き明かせ

厚労省の「毎月勤労統計」が不適切に行われていた事件や、安倍晋三が内緒で米国から山ほど要りもしない武器を購入していた事件、東京五輪の招致委員長が金銭疑惑で起訴された事件などには、多くのひとびとがに(直観はしないかもしれないが)関係する事件であり、しかも権力による意図的な行為なのであるから、個別の交通事故や火事と比較することが、実は前提から話にならないほど差があるのだ。

しかしながら、テレビだけでなく新聞も、ネットニュースも組織的な権力の問題や犯罪と、個別の事故を同等(あるいは個別の事故のほうが価値において優越しているかのように)に扱ってしまうので、世の中では倒錯が生じてしまう。交通事故や火事は努力によればまだ減らすことはできるだろうが、ゼロにはできない。人間の行為には必ずミスや間違いが伴うし、機械には必ず故障(コンピューターにも誤動作が)付き物だからだ。

そういった自明性を前提にすれば、交通事故に過剰な焦点を当てることよりも、権力犯罪や構造的な社会不条理を解き明かすことにこそ、時間やエネルギーはメディアにおいても、個人においても費やされるべきであって、そこから離れることは、権力者や組織的犯罪者の思うつぼである。「報道されることのないもの」の中にある真実や重要性を認識することは難しいが、大切な営為であると思う。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

女子テニス全豪オープンで大坂なおみ選手が優勝した。昨年の全米オープンでは日本人として●●●●●●初めて優勝したのに続き四大大会二連勝で、世界ランキング1位に昇りつめた(大坂選手のお父さんはハイチ出身の方で、ハイチでも「ハイチ系日本国籍の大坂選手が優勝して豪州でのハイチの認知が広まるのではないか」と報道されている)。卓球の張本智和選手は若干15歳で世界的な活躍を見せている。陸上短距離ではケンブリッジ飛鳥、サニブラウン両選手が400mリレーのメンバーで活躍し、野球界もカタカナの名前を目にすることは珍しくはなくなった。

なにが言いたいかといえば、「日本人」という概念が確実に変化を見せているということである。かつて大相撲で高見山が活躍していた時代に「高見山は髪が黒いからいいけど白人や欧米人が入ってきたらどうするんだ」とテレビ放送で言い放った解説者がいた。大相撲も一応の「外国人枠」を設けているが、番付表を見ればわかる通り、外国出身力士なしには上位の取り組みは組めない。国技だのなんだのといっても、実体的な国際化はすでに目の前で進行している。


◎[参考動画]カップヌードルCM 「謹賀新年 金がほしいねん 篇」/ 錦織圭・大坂なおみ(日清食品グループ 2018/12/31公開)

◆カタカナ姓名のアスリートたち

日本代表として、カタカナの姓名を持つ褐色の肌をしたアスリートが、競技後のインタビューに流暢な日本語で(あるいは英語で)答える様子を目にすると、気持ちが楽になる。日本国内にいながら「日本」から解放されたような気分になる。彼や彼女が関西弁であったらば、余計にうれしくなる。どう見てもネイティブアフリカンのアスリートが「日本代表」として活躍する。

悪いことではない。1936年のベルリン五輪マラソンで優勝した孫基禎選手と3位になった南昇竜選手はいずれも、日本帝国主義植民地時代の朝鮮半島の選手である。今でも記録のうえでは「日本人メダリスト」として刻まれている痛ましさと、本格的に「多民族化」してきた「日本人」のありようは極めて対照的だ。

世界には200ほどの国があるのに、近隣諸国との友好関係も築けない外交無能な政府とは異なり、「日本人」のかたちは変化する。都市部へ出かけると制服を着た中高生の顔の中に、アジア系ではない多彩なルーツを簡単に見つけることができる。タガログ語を話す団地住民の姿は、もうまったくこの国で違和感がなくなった。


◎[参考動画]グランドファイナル2018 男子シングルス 決勝 張本智和vs林高遠(テレビ東京 2018/12/16公開)

◆アフリカ系、中東系、アジア系の日本人がますます増える

彼ら・彼女らのお父さん・お母さんがどうして日本へやってきたのかについてまで、思いを巡らせれば、必ずしも幸せな理由ばかりではない。まだ日本が経済大国だった頃の「日本」を目指してやってきた方がほとんどであろう。しかし、いまやアフリカ系、中東系、アジア系の日本人がますます増える。「日本書紀」の神話や天皇制、君が代、日の丸と大坂なおみ選手や張本智和選手(両親は中国出身)は、どう無理をしても釣りあわない。国威発揚や「大和魂」の復権に利用されるスポーツの世界で「日本語を話せない日本人」や「褐色のアスリート」の活躍は、当人の意識にかかわらず、スポーツが纏わされる宿命の政治性を否が応でも粉砕してしまう。

「どんな脳みそをしているのか」覗いてみたい衝動に駆られる、ファナティックな国粋主義一色の月刊誌の平積みを書店で目にするにつけ、世界を見ず内向きな自慰行為的言論の横行にげんなりさせられるたびに、そうはいっても大坂なおみ選手や張本智和選手、サニブラウンやケンブリッジ飛鳥選手の存在をありがたく思う。思考が前には決して進まない国粋主義者たちは彼らの存在・活躍をどう感じるだろうか。多様な出自のアスリートにはしかしながら、政治的ななにものも背負ってくれというつもりはない。自由に発言し、思うとおりに活躍をしてくれればよいだけだ。


◎[参考動画]日本を代表するスプリンター!ケンブリッジ飛鳥(TBS Yeahhh!2019/01/22公開)

◆外的要因が「くにのかたち」を変えていく

芸能界(言論界にも)には外国出身者なのに、ほどほどの日本人以上に「日本好き」を演じて稼いでいる連中がいるらしい。それも自由といえば自由ではあるが、一部庶民のレベルの低いファシズム感情に上乗りし、稼ぐという節操のなさは、状況が変わればたちまち、己の身にブーメランとなって返ってくるだろう。親日家は否定しないし、するつもりもないが月刊『Hanada』や『Will』に登場する人物は、出身の如何を問わず信用ならない人物である。

日帝本国人(普通の日本人)は、なかなか自らの力と思想で悪しき「日本人」を解体することができずにいたが、やはりここでも「くにのかたち」を変えるのは外的要因ということであろうか。まことになさけのないない話ではあるが、ありがたい変化はすでに目の前で躍動している。


◎[参考動画]【日本陸上選手権】男子200m決勝 サニブラウン2冠達成(NHK 2017/06/2公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

「嘘つきは泥棒の始まり」。言い古された故事であるが、今日的には「高級官僚は泥棒の始まり」と言い換えないといけないようだ。厚労省による「毎月勤労統計調査」が2004年から不適切に実施されていたことが判明。同調査は雇用保険などの支給額に直結することから、不正に低い額しか受け取ることのできなかったひとびとが数えきれないほど存在することが判明した。

あれは何年前だったろうか。年金記録5000万件の紛失事件が旧社会保険庁によって引き起こされていたことが分かり、看板が社会保険機構にかけ変わったけれども、いまだに「消えた年金記録」(2007年2月16日以降)の全貌は明らかになっていない。


◎[参考動画]安倍 消えた年金が再燃「ギブアップすることは絶対あってはならない」(2020 summer 2015/06/17公開)

◆「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」

そういえば、つい最近も「私や妻が関係していたということになれば、私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と盗人猛々しく、言い放った安倍晋三が陰に陽に関与した森友学園問題では、やはり公文書の改竄が行われていたが、責任者(本当は犯人と呼びたい)佐川宣寿国税庁長官は「懲戒免職」ではなく「退職」で逃げ切り、高額の退職金を手に入れている。この事件では近畿財務局のまじめな職員が自死するという悲劇を生んでいるが、権力者にとっては末端兵隊の命や内心などは、関心の範疇にはないのである。


◎[参考動画]総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい(kokikokiya 2017/05/05公開)

◆安倍がどのような交渉をしようとも「北方領土」は返還されない

かつて、「2島返還」と言ったら「とんでもない!」と大方の自民党議員は大反発していたくせに、「平和条約」(?)締結を目指す安倍は「4島返還は現実的ではない。2島返還で交渉する」とのたまっている。本通信で過去何度か、この件については触れたが再度断言する。安倍がどのような交渉をしようとも「北方領土」は返還されない。唯一の禁じ手はアンダーテーブルでの金での交渉だろうが、これまで既に莫大な経済協力をロシアとの間に結んできた安倍としては、いくら、機密費を持ち出したところで「島を買い返す」余裕はないだろう。

中国の経済成長率が前年比6.6%だったと報じられた。これもおそらく相当水増しされた数字だろう。「世界の工場」だった中国の時代はとうに終わり、中国の経済成長は急激な下降側面に入っている。インフレと農村を核とする地方との貧困格差は、やがて大きな混乱局面を迎えることが必至だろう。


◎[参考動画]父の墓前で誓い 安倍総理が日ロ関係進展を強調(ANNnewsCH 2019/01/06公開)

◆小泉純一郎と竹中平蔵の「新自由主義」から生まれた「毎月勤労統計調査」の歪み

というわけで、お偉い官僚は嘘をつくことが習慣化しているようだ。役人の仕事は法律に従い、しこしこと書類づくりに励むことだと思っていたが、2004年から「毎月勤労統計調査」は、急に不適切な調査方法に変わっている。さて、2004年とはどんな年だった、どんな時代だったろうか。そののちに安倍晋三という大災害を生み出すことになる、「新自由主義」の旗頭、小泉純一郎が、竹中平蔵とともに、めったやたらと「規制緩和」の名のもとに大資本の自由度を無原則に広げていた時代じゃないか!


◎[参考動画]竹中元大臣「責任ある試算を」郵政民営化見直しで(ANNnewsCH 2009/10/25公開)

おそらくは、あの頃から(もっと昔からもあったろうが)、公文書の改竄や、調査の手抜きなどが、横行しだしていたのではないか。「新自由主義」の要請にこたえるためには、現実を曲げないことにはつじつまがあわないのだから。

けれども「新自由主義」が横行しだした1990年代から、この国はどのような状態を辿ってきたのだろうか。消費税が導入される。3%から5%さらに8%から今年はついに10%へ上がる。消費税は「社会保障目的税」と言われているが、消費税がなかった時代に比して社会保障が10倍充実した実感はどこにもない。

かつては特定業種に限定されていた、派遣労働が、「雇用の多様化」の美名のもと、これまた2004年に、港湾運送、建設、警備、医療以外の全職域に解禁される。派遣労働者の激増により、同一労働同一賃金の原則は完全に崩壊し、今や非正規雇用の労働者が約4割に達している(その上前を「パソナ」の竹中平蔵がはねているのだ)。

つまり官僚が書類を偽造することによって、「新自由主義」という資本主義末期の社会矛盾を、なんとかごまかせないかと、悪あがきする。しかし、そんなものは絆創膏程度の役にも立たないから、良くも悪くも「官僚主義」の崩壊を誘因する。かくして、いにしえの多くの賢人が予想した通り、資本主義も官僚主義も終焉を迎えるのだ。


◎[参考動画]【麻生太郎閣下】分かりやすい官僚操縦法(2011年2月19日福岡市にて)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

滋賀医大小線源治療患者会のメンバーが1月16日、厚生労働省を訪れ、滋賀医大附属病院泌尿器科の医師らが中心となり、約1000名にのぼる患者カルテの不正閲覧が行われていた‟事件“についての対応を申し入れた。

松末吉隆=滋賀医大附属病院院長(同病院のホームページより)

患者会が厚労省へ提出した文章には、
《先日、滋賀医大附属病院での、泌尿器科 河内明宏教授の指示のもとに施行されたFACT-P と呼ばれるQOL調査に関してさまざまな不正について貴省に調査を要請したところです。
その後、FACT-P問題とは別に、滋賀医大附属病院院長をはじめ、多数の泌尿器科医師、そして事務職員による、約1000名に上る患者カルテの不正閲覧があった、との情報をわれわれの担当医である岡本圭生医師から通報を受けました。(注:太文字筆者)(中略)法律にも抵触する行為であり、早急に、調査を頂き、その結果をご回答頂きたいと思います。》
と記述されている。

厚労省記者クラブで開かれた記者会見では、滋賀医大附属病院の院長、10名の泌尿器科医師、さらには事務職員までが、カルテの不正閲覧を行っていた事実がの詳細が、患者会メンバーから明らかにされた。

患者会からは、担当医である岡本圭生医師が、2018年11月29日に患者とは無関係な者による「カルテ不正閲覧」の事実を同病院の公益通報窓口に通報したが、同日から泌尿器科医師らによる「不正閲覧」が確認できる範囲で止まっている「不思議な現象」も報告された。公益通報がなされた日を境に「不正カルテ閲覧」が「突如行われなくなった」のは偶然であろうか。院長から事務職員までが手を染めた「カルテ不正閲覧」は、組織ぐるみで隠ぺいを図ろうとされている可能性が排除できないだろ。このような組織的な、カルテ不正閲覧は極めて悪質であるばかりか、懲役を含む刑罰の対象になる場合さえある。

記者会見での患者会のメンバー

安江博さん

消費者庁のガイドラインで、公益通報には基本20日に、通報者への対応が明記されている。しかし、11月29日の公益通報から20日経過しても、通報者(岡本医師)へ公益通報窓口からの回答はなかったことから、岡本医師は厚労省へ公益通報を行い、被害者である患者会へも「カルテ不正閲覧」の事実を伝達したという。

会見の席で安江博さんは「問題が起きているわけでもないのに、顔を見たこともない、まったく関係のない院長がカルテを不正閲覧しているのは、『人権侵害』以外の何物でもない。とんでもない行為だ。個人的意見だが、滋賀医大附属病院の対応如何では、将来的に刑事告訴も検討することになるかもしれない」と、強い怒りをあらわにした。

石井裕通(ひろみち)さん

石井さんは「業務に関係ない人が私のカルテを見たということを聞いております。非常に憤って、とんでもないことだと思っています。滋賀医大附属病院は経営理念の中に『患者との信頼関係を大切にする』と謳っていますが、現実には全く逆の患者を裏切る行為を続けている。なぜこういった不正が行われるのか。その背景も含め厚労省には調査をお願いしたいと切に思います」と述べた。

「岡本先生の小線源の治療を受けた約1000人の患者、ほとんどすべての人が閲覧されています。病院側の意図を感じます。医局(泌尿器科)12人のうち10人が、手分けをして見たような印象がある。FACTのこともそうだし、今回のこともそうですが、われわれ患者は『丸太棒』と同じなんです。(注:太文字筆者)無機質な『丸太棒』のように、人権を認めていない。だからこういうことをする。我々を軽視しています。患者会が病院に質問などをしても、ほとんど回答されません。無視です」と牧野さんは語った。

牧野一浡(かずおき)さん

会見後牧野さんに質問したところ「滋賀医大附属病院のホームページには『患者らによる』という言葉があります。あれがすべてを物語っていますね。人権無視です」と言われていた。

QOL調査の改竄についで、1000名に上る患者カルテの不正閲覧。しかも院長を含む組織的な「不正閲覧」は、法律上も倫理上も決して許されるものではない。
ここまで不正行為を重ねている滋賀医大附属病院は、厚労省の指導を待つことなく、しかるべきアクションを速やかに行うべきことは言を俟たないが、果たして自浄作用は期待できるであろうか。

自身も不正閲覧を行った松末吉隆院長の責任が強く問われる。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

集会前様子

人があふれる集会

1月12日滋賀医大小線源治療患者会による「岡本圭生医師の治療継続と待機患者から治療の機会を奪うな」を訴える集会とデモ行進がJR草津駅周辺で行われた。12時30分、駅東口広場で集会がはじまった。

司会の宮野さんが、集会とデモ行進の趣旨を説明した。
「私たちは滋賀医科大学附属病院で、前立腺がんの小線源治療を受けた患者と、未だ治療の予定すら立っていない患者とその家族です。滋賀医科大学附属病院には高リスクの前立腺がんでも 95%以上完治させることができる、岡本圭生医師がおられます。岡本医師に命を救ってほしいと願う患者が今日もこのデモ行進に東北は山形、北陸は石川、中国は山口、四国は高知、全国各地から参加しています。ところが滋賀医大附属病院は今年の 6月で岡本医師の治療を止め、12月には病院から追い出そうとしています。

山形県からご家族4名での参加者

みなさん! この「命に直結する問題」に是非、注目してください。私たちは救われる命が、見捨てられるこの現実を 断じて許しません。 市民の皆さん。どうかご支援のほどよろしくお願い申し上げます」

そのあと、岡本医師の治療を希望しながら、大学側によりその機会が奪われるかもしれない2名の待機患者さんが訴えを行った。

その後デモ行進に移った。草津市は人口約13万人の地方都市であるが、草津駅周辺には商店街やショッピングモールが集中する。デモ行進は2列縦隊で目測200mほどの長さに及ぶ。

組織動員もない中、しかも自分の要求や利益を求めるのではなく、既に治療を終えた患者さんたちが中心となり、「救える命を救え」との主張で集会、デモが行なわれたことが、この国の歴史上あったであろうか。

待機患者さんの訴え「完治の望みを岡本先生に託したい」のメッセージ

「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の治療を継続せよ!」
「待機患者から治療の機会を奪うな!」
「滋賀医科大学附属病院は良心を取り戻せ!」
「滋賀医科大学附属病院の理不尽な対応は許さないぞ!」
「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の受診受付を拒否するな!」
「待機患者の治療を受ける権利を奪うな!」
「待機患者に岡本医師の手術をうけさせろ!」
「がん患者の生きる権利を奪うな!」

デモ隊は長蛇の列に

東京の都心や大阪のように、無数の人が行き交うわけではないが(だからこそ余計に)シュプレヒコールの声が周辺のビルやマンションに文字通り「こだま」する

デモが終盤に入ると、コールの内容もさらに、強い意志を感じさせるものに変わる。

「滋賀医科大学附属病院は待機患者を見捨てるな!」
「滋賀医科大学附属病院は岡本医師の治療を継続せよ!」
「命を軽視する病院は許さないぞ!」
「われわれは闘うぞ!」
「勝利するまで闘うぞ!」
「われわれは待機患者を見捨てないぞ!」

約1時間半に及びデモ行進は草津駅西口で終了した。 

その後南草津駅前の市民プラザに場所を移して、患者会が開催された。患者会の立ち上げに尽力し、現在はご自身も肺がんと闘病中の患者会アドバイザーである、山口正紀さんからの挨拶があった。

参加者はメッセージや訴えの方法を工夫していた

ご自身も肺がんの治療中にもかかわらず東京から駆け付けたジャーナリストの山口正紀さん

「きょうは寒い中に皆さん本当にお疲れさまでした。私は沿道から取材していて『こんなデモは初めてだな』と思いました。運動に慣れた方のデモはたくさん取材してきましたが、きょうのように一つ一つのシュプレヒコールが『心の叫び』としか言いようがない訴えを1時間半近くにわたって皆さんが続けられた姿を、ずっとそばで拝見していて、私自身も肺がんを宣告されて治療していますが大変勇気を与えられ、感銘しました」と感想を語った。続いて本事件の本質と経緯に、さらに今後の課題や展望について分かり易く解説を行った。

その後この日のデモについての反省点や課題、さらには患者会の活動全体への活発な議論が交わされた。

約2時間にわたる会合の最後に司会の小山さんが「それでは最後にシュプレヒコールで締めくくりましょう」と発言したので驚いた。というのは、終了間際にわたしは参加者に全員に「きょう初めてデモ行進に参加した人挙手してください」と尋ねたところ、数えきれない手が上がり数えきれなかったので、質問を変えた。「これまでデモ行進に参加した経験のある人は挙手してください」と聞いたところ挙手した人は10名であった(集会参加者の10分の1に満たない)からだ。

小山さんの「頑張ろう!」に呼応して、参加者は多くの声をあげた

患者会によると、この日のデモ参加予定人数は130名であったそうだが、最終的に参加した人数は181名だった。患者会にとってデモ行進は初体験であったが、参加者の上げ続けたシュプレヒコールは、反響に反響を重ね、噂が噂をよび、距離的にも遠くない滋賀医大附属病院へも伝わることだろう。

最後に記しておかなければならない。この日のデモは事前に滋賀県政記者クラブに詳細を伝達していたにもかかわらず、マスコミの取材は、某全国紙1紙を除き皆無であった。

「命の問題」よりも、時間を割かなければならない問題が滋賀県のマスメディア関係者には山積しているようである。どこかが、完全に歪んではいないか。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

1月9日、滋賀医科大学小線源治療患者会の皆さんが文科省と、厚生労働省を訪れ、“FACT-P(Functional Assessment of Cancer Therapy – Prostate)”と呼ばれるQOL(Quality of life=術後の生活の質)調査が、滋賀医科大学附属病院により不適切に実施された問題についての申し入れを行った。申し入れ文書は、下記に掲載した通りである。

FACT-P案件申し入れ文書(1~2頁)

FACT-P案件申し入れ文書(3~4頁)

午前11時から行われた文科省への申し入れでは、高等教育局医学教育課大学病院支援室長補佐の早川慶氏が申し入れに応じ、患者会の説明を聞いた後「諸法令、関係省と協議しながら対応する」と述べた。

午後2時からは厚労省医政局総務課企画法令係長、松下有宇(ゆう)氏と医政局総務課課長補佐渡邊周介氏が患者会の申し入れに対応した。

患者会のメンバーは、
・カルテが担当医師ではなく、事務職員のにより削除されていること
・“FACT-P”は国際的なQOL調査で実施の際には、患者への説明と同意が義務付けられているが、それらがなかったこと
・本来調査票にはあってはならない「氏名」記入欄が設けられていたこと
・氏名記入欄があるだけでも問題だが、少なくとも23名の患者さんの調査票に、本人以外が氏名を書き込まれていること
・FACT調査の版権を持っている米国のFACT機構に患者会が質問をしたところ、「FACT機構の考えを回答する。滋賀医大附属病院は確かにFACT調査利用の認証を受けているが、FACT調査はこの調査表使用の前提条件として説明と同意を得ることを前提としている。このことは全世界共通としている。患者への説明と同意を取らず、氏名を特定できる方法で調査を実施していたことは機構としては想定外のことである」と回答があったこと
・滋賀医大附属病院の本件への対応が極めて、不適切であること
などを説明した。

申し入れ内容を説明する奥村謙一郎さん

患者会メンバーが最後に「本件については具体的にどのような対応をしていただけるか」と質問したところ、渡邊氏は「医療法は非常に難しい面もあるので、細かく精査したうえでどのように対応するかきめる」と答えた。「対応の内容が決まったら教えてほしい」との要請を渡邊氏は拒否しなかった。

続いて15時30分から厚労省記者クラブで記者会見が開かれた。厚労省担当者に行ったのと同内容の説明の後、質疑に移ると、「カルテの改竄は刑事事件に相当するが、刑事告発の意思はないか」、「患者会が望むのは賠償か」、「その後病院との間でやりとりはあるか」など質問が相次いだ。

とくに、参加した患者さんの1名がご自身のカルテを持参しており、氏名記入欄に誰の目にも明らかな筆跡の違う名前が書きこまれていることを示すと、テレビ局の記者は驚いた様子であった。

1月9日の記者会見には、約15社が参加していたが、同日のうちに共同通信が、記事を配信。その後ネットニュースやテレビ番組でも記者会見の模様は取り上げられた。

病院の姿勢を強く糾弾する安江博さん

裏とり(証拠固め)をしなければ、デリケートな問題は報道しないマスコミも、ここまでの証拠を見せつけられたら報道に踏み切らざるを得なかったということであろう。報道によれば滋賀医科大学附属病院は「記者会見の内容を承知しておらず、コメントは控える」と回答しているそうだ。

コメントはできないだろう。明らかな不正行為なのだから。

滋賀医科大附属病院の院長並びに、経営陣はもうそろそろ、世間では筋の通らない屁理屈をこねまわすことはやめるべきだ。同病院でこのようないい加減なことをする医師や職員は少数だ。泌尿器科が発生源の数々のトラブルは、滋賀医科大附属病院に勤務する、優秀かつ親切な多くの医師や医療関係者にとっての侮辱ではないか。

さらに、消息筋から滋賀医科大附属病院については、「FACT-P調査の問題をはるかに凌駕する大スキャンダルが発生している」との情報もある。ここしばらく滋賀医科大附属病院から目が離せない。

このように滋賀医科大附属病院泌尿器科の不祥事が続く中、患者会は明日1月12日(土)小線源講座の岡本医師の治療継続と、待機患者の治療の機会を守ることを訴えるデモをJR草津駅で13時から予定している。患者会によれば近畿はもとより、東京、四国、山形、新潟など全国から患者さんや待機患者さんが集結するという。

記者会見に臨んだ患者会のメンバー

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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