「おい、田所! ○○はもうダメらしい」
「ダメってどういう意味ですか。きのう卒業したばかりでしょ?」
「ビルから飛び降りて今病院に収容されている。親御さんから連絡があったらしい」

同じ部署に勤務する先輩からこの言葉を聞いた瞬間に「しまった!迂闊だった」と後悔した。自分の体温が急速に下がるのがわかった。

○○さんは涼しげな表情をしているが、声はNHKのアナウンサーも務まりそうな学生で、彼女が1回生の時から言葉を交わしていた。

大学は卒業式前から入学式後のゴールデンウィークまでが、多忙を極める。わたしが当時配属されていた部署も同様であった。卒業式前の数日は両手で電話の受話器を抱えて会話をすることもあるほどだった。

ただし、そんな多忙が年中続くわけではなく、繁忙期が過ぎれば、比較的仕事の時間は自分でコントロールできた。1日の半分近くを学生との会話に費やしたり、引っ越しする留学生の手伝いに出かけることも珍しくはなかった。わたしの仕事場は狭い部屋ではあったが、一応の応接セットがあり、気が向いた教職員や、学生が訪れてはよもやま話や、悩みを語る場所でもあった。講義の空き時間に、もっぱら昼寝の場所として訪れる学生もいた。学生の話が深刻なときは、他人に聞かれてはまずいので場所を移す。そんな常連のひとりに○○さんがいた。

彼女は頻繁にわたしの仕事場にやってくるので、いつのころからか、持参したマグカップをわたしの仕事場に置いていた(そんな学生は彼女以外にも数名いた)。

○○さんは卒業式の前日、わたしが文字通り飛び回っている最中に、部屋にやってきて、何かを話したそうにしてた。わたしは別の場所から呼び出しがかかっていて、部屋を出る直前だった。たしか、「これ持って帰ります」と聞いたように記憶する。わたしは「急ぐのかい。少し待っとけよ」と言い残して階段を駆け下りた。要件を処理して部屋に戻ったのは半時間後くらいだったろうか。もう○○さんの姿はなかった。その後も息つく暇もない忙しさに追われ、○○さんのことに思いを巡らす余裕はなかった。

あのとき、彼女は単なる卒業という別離ではなく、違う「別れ」の意味をわたしに理解してほしくて、「これ持って帰ります」と言葉をかけたのだ。彼女が入院している病院に見舞いに訪れる前から、そのことには気づき、自分の鈍感さを責めた。仕事の忙しさに、目の前の「命」の危機に気が付かなかった自分。その兆候を充分すぎるほどしっていて、幾度も主治医と相談していたはずのわたしが、どうして、○○さんからのサインを受け止められなかったのか。

あれは何年前だったろうか。ちょうど、松任谷由実のこの曲がラジオから流れていた。

○○さんを車に乗せて下宿まで送ったときにもこの曲は流れていた。「春よ、か…」○○さんはつぶやいた。「春の真っ最中だろうが、大学生は」と不用意な言葉を発したわたしに、○○さんは「田所さん。人生に『春』ってありましたか」といつもにもまして真剣なまなざしが向けられた。「こんなおっさんにあるわけなかろうが」と胡麻化したが、○○さんの視線はまだわたしから離れなかった。

彼女は悩みに悩んでいた。わたしの力では到底解決できない、重たい運命を○○さんは背負っていた。根本をどうにもできないのだから、わたしは表面だけでもなんとかできないものかと、それなりに考えた。○○さんと語った時間も少なくはない。

でも最後に○○さんがわたしにたいして発した、一番大切なシグナルをわたしは受容できなかった。「人間失格だな」とすら思った。が、「そんなに力があるわけでもないよな」とも言い訳した。

「花が散った」と思った。

悔恨の情は今でも忘れられない。わたしと同じような経験をした方々(周辺諸条件は違えども)は、言い出せないがゆえに、語らえないけれども、少なくないに違いない。

この私的経験にはなんの教訓もない。無理やり意味を付与すれば、人生には時として、「どうにもならない」ことがあるのだ、ということくらいか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

明日発売!月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

毎年、大晦日にはその年を回顧して、偏狭ながらわたしなりの総括を行う。ここ数年定例行事になっている。貴重な機会を頂いている光栄に、まず感謝せねばらならない。今年、この原稿は12月の中旬には骨子を完成しておくつもりであった。しかし、なかなか頭の中で〈核〉を見つけることができぬまま、あっというまに年末を迎えてしまった。

つまり、容易に総括が可能な1年ではなかったというのが結論だ。言い訳のようであるが、国内・国際ニュースから鹿砦社がかかわった諸事件やイベント、さらにはわたし個人が直面した出来事までをひとまとまりにして論じることが、ますます困難になってきている。

◆日替わりで登場する「姑息」な連中の跳梁跋扈は例年通りだが、
 どうしてここまで見え透いた、悪辣な嘘を平然と口にできるのか?

小情況に見受けられる、人間の「姑息さ」(狡さ)と、逆に「偉大さ」は相も変わらずである。どうしてここまで見え透いた、悪辣な嘘を平然と口にできるのか、と日替わりで登場する「姑息」な連中の跳梁跋扈は例年通りだ。見えやすいところでは、安倍晋三をはじめとする政権中枢に巣くう政治家どものレベルの低さと悪辣さは、昨年とさして比がない(ということは毎年この国の政治には欺瞞と虚構が堆積され、そこに『利息』としての副作用も上積みされている)。

あえて指摘すれば首相や大臣が明らかな虚偽発言や政治資金に関する不正に手を染めても、辞任や解任をされることがほぼなくなった事実は、特筆されるべきだろう。その背景には迫力の欠如が著しい、野党の体たらくと、権力監視機能をみずから放棄したマスコミの大罪。そして議会制民主主義の制度疲労(小選挙区制の弊害)及び、国民の決定的な政治・社会問題への無関心(その誘因たる、「政治無関心大衆」を作り出そうとした、教育行政、労働行政、マスコミ、腐敗した労組などが設定した「目標の結実」)も度外視はできない。そんな中、今年15名の死刑が執行された、冷厳な事実は忘れられてはならない。

◆末期資本主義に最も相応しい人物 ── ドナルド・トランプと安倍晋三

世界は、有り体な「力学」や政治学では説明がつかない時代に突入したようだ。トランプという大富豪が大統領に就任して、米国の政策立案プロセスは(それに対する評価は別にして)大きな変化を余儀なくされた。長官の去就が相次ぎ名前を覚えるのにも苦労するほどだ。ある意味では末期資本主義(新自由主義や新保守主義とも呼ばれる)に最も相応しい人物が、米国大統領として、米国の利益を口にしながら、その実、企業利益を最も重視して、朝令暮改を繰り返していると見るのが妥当かもしれない(そのような人物評価は安倍晋三にも当てはまるだろう)。

朝鮮の金正恩と急接近したのも、旧来の外交ダイナミクスからは想定され得るアクションではなかった。朝鮮半島の和平などトランプの主眼にはなかろう。どうすれば遅滞なく大企業、なかんずく多国籍企業の収益が最大化できるか。その為に中国が近く直面する国内の大混乱を予見できる人間であれば、朝鮮半島に担保を築いておくことは誰でも思いつくことだろう。

◆中国の矛盾と理性ある欧州という幻想

貧困層までスマートフォン決済が行き渡った中国は、経済的にゆるぎない大国にはなったが、この国では法律が機能しているとは言い難い面を持つ。力ずく、数の勢いで抑え込んでいる貧困問題、わけても農村の疲弊や、民族問題(チベット・ウイグル・内モンゴル)は、沿岸部の富裕層がいかに増えようとも、そんなところに処方箋はない。貧困層でもスマートフォンを持っているのは、中国では政変を多数経験した歴史から、通貨への信頼が薄いのと、国家が国民を管理する手っ取り早い手段である2つの理由からだろう。

間もなく頭打ちになる中国経済が、下降線をたどり始めたら、途端に国内矛盾は爆発するだろう。同国にあっては、この島国のように国民の意思や感情は骨抜きにされ、悪政に不感症ではない。世界はそのことを知っている。

欧州があたかも人類の先進的な理性を持つかのように語るひとびとが多いが、私は違和感を持つ。たしかに歴史的な蓄積により人権意識や、民主主義の概念を強く意識する人々が多いのは事実だろう。しかし、国家とはつまるところ暴力の独占体である。EUから英国が離脱するのは、「国家が国家たり得なければ納得しない」本質の現れであり、国境に出入国管理所を置かないEU諸国にしたところで、国家が包含する本質的な暴力性や、矛盾から自由ではありえないのだ。その証拠に世界の人権大国のように称されるドイツにも2011年まで徴兵制が存在したし、ドイツは現在もNATOに加盟しシリアへの派兵も行っている事実を示すことができる。

世界中のひとびとが、毎日何時間もスマートフォンの液晶を指で撫でる行為によって標準化されたように見える。情報処理速度が向上することへの無警戒さと、通信速度の高速化は、人間から思考・感情・体感を奪う。その成果(弊害)をもう十分すぎるほどわたしたちは目にしている。

◆2019年、あらゆる確かさはますます揺らぐ

2019年、あらゆる確かさはますます揺らぐ。不安定さは膨大な不毛な情報と、これまた不毛な各種イベントで隠し通うそうとされるだろう。

だが抵抗の手段はある。

超高速情報があふれるかのように誤解される日常にあって、立ち止まり、一人になってみるのだ。幻想としての濁流の中で立ち止まり、情報の濁流の川上を眺めてみるのだ。きっと思いがけない何かが見つかるに違いない。散々な時代だ。散々な2018年だった。希望や期待は語るまい。だが断言しよう。可能性はあると。

本年もデジタル鹿砦社通信をご愛読いただきまして誠にありがとうございました。来るべき年が、皆様に幸多き年でありますように祈念いたします。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

新年1月7日発売!月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

治療継続を訴えるメッセージ

もし、あなたが、いずれかのがんと診断されていて、その部位の「がん治療に抜群の実績を上げている先生がいる」と聞いたら、どうなさるであろうか。「一度診てもらおう」と考えるのは、ごく自然だろう。だが、遠路はるばるその病院を訪ねたのに、肝心の担当医が、定年退職でもないのに「辞めさせられる」と聞かされたら、あなたはどう感じるであろうか。

そんな苦悩に直面している患者さんたちがいる。本通信で何度か紹介してきた「滋賀医大病院小線源治療講座」の閉鎖も問題である。患者会のメンバーは自主的に、あるいは患者会として全国各地でチラシ配り、署名活動を展開してきたが、12月23日(日)、24日(月)の両日は滋賀医大附属病院に近い、JR草津駅前で広報・署名活動が展開される。23日午前草津駅前に患者会のメンバー31名が集まり、11時から待機患者さんが窮状を訴えた。

待機患者の月原さん

◆待機患者・月原さんの訴え

「私は奈良県在住の月原と申します。私は今から16年前に父を亡くしました。前立腺がんが骨に転移ししたことが原因で約6年半の闘病生活を経ての死です。そのため私自身前立腺がんについては、常に意識して、早め早めの取り組みをすべく定期的なPSA検査を受けておりました。今年になりPSAの数値が上昇したので、8月に生検(細胞検査)を受けた結果、前立腺がんが見つかりました。その時のショックは今もよく記憶しております。すぐに治療方法について医師から説明がありましたが、いずれも再発に不安を覚えました。そこで家内と、再発のない治療方法をインターネットなどで探した結果、滋賀医大岡本圭生先生の小線源治療にたどり着きました。早速岡本先生にメールしたら、すぐに返事がきました。『紹介書や手術時のデータを揃えなさい』。すべてそろえた日に先生に連絡したら『10月11日に会いましょう』と、これまた即返信が来たのです。

とてもお忙しい方のはずなのに、このクイックアクション。なんと患者思いの温かい先生なのかと感動しました。無事岡本先生に会え次回は12月末に具体的な治療計画を相談することになっており、『よし、これで治療してもらえるぞ』と安堵していた矢先、『入院が来年7月以降になるので確約できない』という連絡が来ました。最初何を言われているのか、意味が分からなかったのですが、滋賀医大が来年12月で岡本先生の講座を閉鎖。それに先立ち7月以降の治療を停止する、ということを知らされ、『なぜ多くの待機患者が実在するのにどうして切り捨てるような措置ができるのか。国民の税金で経営されている、国立大学附属病院にそんな勝手が許されるのか。私は一気に奈落の底に突き落とされました。

署名に応じる方々

岡本先生と寄付講座の運営会社は7月以降の治療停止は、人道上・公益上反対されていると聞いています。岡本先生が病院におられ、治療希望患者がたくさんいるのにさせない。こんなこと国立大学附属病院としてありえないことではないでしょか。また病院側は不当かつ未経験の治療を行おうとした成田医師が「後任」と宣言しています。我々患者の命をどこまで軽視するのか、憤りを感じずにはおられません。

私は岡本先生の治療を受けたい。真の健康を取り戻したい。そして同じ病気で苦しむ方々に、同じ喜びを味わってほしいと強く思います。滋賀医大の関係者の方々、何が正しいのかを胸に手を当てて考えていただきたい。患者軽視の滋賀医大ではなく、患者ファーストの岡本先生が正しいことは誰の目にも明らかです。どうか私ども全国の待機患者に新たな希望を与えてください。切にお願い申し上げます」(待機患者の月原さん)

待機患者の横田さん

◆待機患者・横田さんの訴え

「彦根の横田と申しますよろしくお願いします。私の場合ことの発端は本年10月5日に大津の医療機関で前立腺肥大の状況がわかり、血液検査の腫瘍マーカー検査の結果98.0の異常値を通知されました。至急に総合病院泌尿器科で検査治療を行うことを指示されました。その後約1月にわたり彦根の医療機関で辛い検査の日々で、MRI、CT、骨シンチの検査と続き11月2日に担当医師から検査結果を通知されました。結果は悪性度も進行度も高い、高リスクの前立腺がんの確定診断であり、膀胱へ浸潤している可能性もあり、その場合は根治の期待はできない、というものでした。検査前から私の娘からの情報を得て、岡本医師の小線源療法を希望していましたが、私の症例からは、受けてもらえるかどうかは岡本医師の判断による、とのことで、祈る思いで滋賀医大を受診しました。

11月5日診察当日岡本医師からは治療に関しては正面から受けていただきました。しかし残念なことに現医療体制に期限が決められている掲示を見て驚き、岡本医師からは「掲示してあるとおりです」というようなことを言われたのみです。治療の方針はトリモダリティー。トリモダリティーとは高リスクの場合に行われている治療法で、ホルモン治療、放射線内照射、放射線外照射を併用するもの、の明言があり当日からホルモン治療を開始していただきました。その日前までは骨への転移の恐怖感から仕事中も含め、起きている間は「死への不安」で押し潰されそうな毎日を過ごしていましたが、その日からは転移の可能性が低減されたことや、何よりも先生から『私であれば治すことができる』と言っていただきましたので心の状態は病気発覚前の状態に戻り、10月は発熱などで仕事も休みがちでしたが、それも解消しました。岡本先生を信頼し、根治の希望を託し任せるしかないと思いました。次回受診日は2月ですがその後の治療計画は白紙ですし、確実なものは何もありません。こんな状況で、現治療体制の継続を切望し、自分にできることを開始しようと患者会の署名活動を行ってきています。職場や地域の方から200人ほどの賛同署名を頂いております。どのような状況になろうとも、岡本先生に最後まで治療を受けることを望んでいます」(待機患者の横田さん)

待機患者の訴えの後、メンバーは5グループに分かれ、チラシ配り、署名活動を開始した。午前中は穏やかな天候に恵まれ、総計1216枚のチラシを配布し、419筆の署名が集まった。この日の活動には東京、名古屋、四国などからも患者会のメンバー31人が参加した。

署名する親子

◆利他で貫かれた「患者会」の活動

一方、患者会メンバーの中には、街頭活動には参加できないが、裁判などに使われる情報の整理や加工、運動方針の議論、待機患者さんとの相談窓口など、個々人の個性を活かした活動が展開されている。患者会メンバーには医師、エンジニア、元官僚や現役の大学教員、自営業とバックボーンはそれぞれだ。

しかし、治療を受けて前立腺がんを克服した患者さんたちが、待機患者さんにも治療の機会を確保しよう、自分が享受した、前立腺がん完治の喜びを「知らない誰かとも」共有したい。まったく私利がなく、利他に貫かれているのが「患者会」の特徴だろう。無私の活動に頭の下がる思いだ。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

集合した患者会メンバー

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◎滋賀医大病院の岡本医師“追放”をめぐる『紙の爆弾』山口正紀レポートの衝撃(2018年12月13日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

現在発売中の『紙の爆弾』1月号の中に、ジャーナリスト山口正紀氏による、〈がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作〉が掲載されている。滋賀医大では前立腺がんの患者に、小線源治療を用いて治療する岡本圭成医師が、ハイリスクの前立腺患者にも、もともとがんの転移がなければ、施術後ほとん再発をしない、極めて卓越した実績を上げる治療を行っている。

ところが、滋賀医大は岡本医師の治療を来年(2019年)6月で打ち切り、12月には岡本医師を滋賀医大から“追放”することを宣言している。どうして、極めて卓越した治療実績を持つ岡本医師を“追放”しようとしているのか? その理由と背景は『紙の爆弾』1月号の山口氏のレポートを是非お読みいただきい。

チラシ配り、著名活動に立ち上がった患者会のメンバー

他方、既に岡本医師の治療を受けた患者さんたちで構成される「滋賀医科大学 小線源治療患者会」のメンバーは滋賀医大の地元や東京、名古屋、京都、大阪、奈良など全国各地で「岡本医師による治療の継続」を求めるチラシ配りや署名活動に、自主的に立ち上がった。

というのは、岡本医師に治療を受けた患者さんたちは全国から滋賀医大にやってきており、北海道から沖縄にまで患者さんが散らばっているからだ。現在岡本医師の診断を受けている患者さんの7割以上は県外からの患者さんだという。

患者のAさんは兵庫県在住だが、これまで何度も滋賀医大最寄り駅であるJR瀬田駅にチラシ配りに出向いている。わざわざ瀬田駅でのチラシ配り、署名活動に参加するために長野県から駆け付ける患者さんもいる。名古屋でチラシ配り、署名活動を行っているBさんは「治療実績が優秀な岡本先生の治療を、多くの方に受けて頂きたいと思います。名古屋にも患者さんはたくさんおり、来年の6月以降治療が受けられるかどうかわからない方もいます。『人の命』がかかっているのに、それを切り捨てようとする滋賀医大の姿勢は許せません」と語る。

草津駅前での署名活動

ちなみにBさんはこれまでチラシ配りや署名活動の経験は一切ないそうだ。「患者会」のメンバーは滋賀医大で起こっていることの本質を少しでも伝えたいと、全力で奮闘しているが朝日新聞など一部を除いてマスメディアの扱いは決して大きくない。

そして、ついに滋賀医大で、「さらに深刻な事態が発生した」、と患者会のメンバーから連絡が入った。法廷で係争中の案件につき、ここではこれ以上詳しく触れないが、「人の命」にかかわる深刻な問題が滋賀医大では、さらに進行している。

あまり知られていないが前立腺がんは、男性であれば肺がんや胃がんと同様の確率で発症する病だ。誰にとっても他人事ではない。しかし治療の方法がある。治療できる医師がいる。そうであればどうして患者を救うために、その術式の普及を促進しないのだろうか。逆に難治性の患者でもほとんど再発させない、実績を持つ岡本医師をどうして排除しようとするのか?滋賀医大は「命」にかかわるこの問題に、正面から回答する義務があろう。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作

「まったく……ろくな世の中じゃない」、「野党は情けないし、マスコミは頼りないし」。日本全国で、心あるひとびとが肩を落とす姿と、吐き出す嘆きが聞こえる。無理もないだろう。「合法的外国人奴隷労働法」(改正入管法)が、拙速に強行採決され、準備不足を政府も認める中、来年4月から施行するという。

見ているがいい。非人道的な労働環境で働かされる外国人労働者の激増は、政府や経団連どもがもが、腹黒く得ようとした「安価な労働力」ではなく「非人道的な外国人労働者の扱い」として必ずや社会問題化するだろう。

思いだそうとしたところで、あまりに悪法や、悪政が山積しているので、正直なところ、今年の初め頃、何が起きていたのかを正確に記憶だけでは再生ができない。それほどに散々な日常にあって、「本当のこと」、「真実に依拠した言論」、「権力者や社会的に認められている権威への抗議」をまとまって目にすることができる雑誌が極めて少なくなった。

『NO NUKES voice』 18号は、上記のような憤懣やるかたない言論状況に、どうにもこうにも腹の虫がおさまらない、真っ当な感覚を持つ読者諸氏に向けて、鹿砦社から最大級の「お歳暮」と評しても過言ではないだろう(購入していただく「お歳暮」というのはおかしな話ではあるが)。

 

孫崎 享さん(撮影=編集部)

◆孫崎享さんが語る日本「脱原発」化の条件

『戦後史の正体』で日米関係を中心に戦後の日本史を読み解いた、元外務官僚の孫崎享(うける)さんが外務諜報に長年かかわった経験から〈どうすれば日本は原発を止められるのか〉を語る。ベストセラーとなった『戦後史の正体』が世に出てから、孫崎さんはテレビ、新聞などに頻繁に登場していたが、最近ではその頻度が極端に少なくなっているように思える。孫崎さんの主張が時代遅れになったり、風化したから孫崎さんの登場が減っているのではない。時代やメディアが孫崎さんを「危険視」しているからではないだろうか。そうであれば『NO NUKES voice』 にこそご登場いただこうではないか。

◆小出裕章さんと樋口健二さんは東京五輪とリニア建設に反対する

小出裕章さんと樋口健二さんが同じイベントで、講演、対談なさった記録も「すっきり」読ませてもらえる。怒らない小出さんと、いつも怒っている(失礼!)樋口さん。しかしご両人ともが抱く、危機意識と怒りは年々増すばかりであることが、回りくどくない言葉から伝わるだろう。

樋口健二さんと小出裕章さん(撮影=編集部)

 

中川五郎さん(撮影=編集部)

◆鶴見俊輔の精神を受け継ぐフォークシンガー、中川五郎さん

中川五郎さんは、音楽を武器に「反・脱原発」戦線の先頭でひとびとを鼓舞する、貴重な存在だ。中川さんの楽曲もさることながら、インタビューで直接的な問題意識は原発問題社会問題に立ち向かうときの、普遍的な視点を示唆するものだ(とはいえ、中川さんの演じるライブを聞かれるに勝る迫力はなかろうが)。

◆鎌田慧さん、吉原毅さん、村上達也さん、おしどりマコ・ケンさんらが訴える東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会の熱気

東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会に集った、鎌田慧さん(ルポライター)、吉原毅さん(反自連会長・城南信用金庫顧問)、村上達也さん(東海村前村長)、おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ・ジャーナリスト)の発言は、「本当に東京が住めなくなる可能性が極めて高い」東海第二原発の危険性をそれぞれの立場から、強く訴える。

 

おしどりマコ・ケンさん(撮影=大宮浩平)

◆タブーなき連載陣ますます充実──冤罪被害者・山田悦子さん、行動する思想家・三上治さん、闘う舞踊家・板坂剛さん等々

連載「山田悦子が語る世界」、本号のテーマは「死刑と原発」だ。この夏オウム真理教関連の死刑確定囚13名に死刑が執行された。いまだに「被害者感情」や実体のない「犯罪の抑制効果」にのみ依拠して、「死刑」を存置する日本。この問題についての山田さんの論文には熱が入り、本号と次号で2回に分けての掲載となった。「死刑」を根源から考える貴重なテキストであり、国家や原発との関連が浮かびされてくる。

板坂剛さんの〈悪書追放キャンペーン 第一弾 百田尚樹とケント・ギルバードの「いい加減に目を覚まさんかい、日本人」〉は、板坂流似非文化人斬りが、ますます冴えわたっている。どうしてこんなしょうもない本が売れるのか?不思議な二人。その答えは二人ともが「嘘つき」の腰砕けだからだ。そのことをこれでもか、これでもか、と看破する。面白いぞ! 板坂さん! もっとやれ!

その他、鈴木博喜さんの〈福島県知事選挙”91%信任”の衝撃〉、伊達信夫さんの〈「避難指示」による避難の始まり〉など福島の事故当時、現在の報告が続く。

全国からの運動報告も盛りだくさんだ。

右を向いても、左を向いても「読むに値する雑誌がない」とお嘆きの皆さん!ここに心底「スッキリ」できる清涼剤がありますよ!『紙の爆弾』同様に、この時代他社では、絶対(といっていいだろう)出せない本音満載の『NO NUKES voice』 18号。お買い求めいただいて損はないことを保証いたします。

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

本日12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

2018年最後の『NO NUKES voice』が本日11日に発売される。発刊以来第18号。特集は「二〇一九年・日本〈脱原発〉の条件」だ。

うすらとぼけた、頓珍漢なひとびとは、利権の集積「2020東京五輪」に血眼をあげる、だけでは満足できず、「2025大阪万博」などと、半世紀前の焼きなおしまでに手を染めだした。大阪はその先に「IR」(つまり「カジノ」)誘致を狙っていることを明言し、理性も、将来への配慮も、財政計画といった何もかもが政策判断の「考慮事項」から排除されてしまった。

「将来? そんなことは知らん。儲けるのはいまでしょ! いま!」。どこかの予備校教師がタレントへの転身を果たすきっかけとなった、フレーズを真似るかのように、恥ずかしげもない本音が、誰はばかることなく横行する。「水道民営化」法案まで国会を通過し、いよいよこの島国の住民は、「最後の最後まで搾取される」段階に入ったといえよう。

◆中村敦夫さんから檄文をいただいた!

われわれは、あるいは、われわれの子孫は、「搾りかす」にされるしかないのか……。

そんなことはない! そしてそんなことを認めても、許してもならない!

そういう熱い思いを持った方々に、本号も登場していただいた。紹介の順番が不同だが、本誌への激励のメッセージを俳優であり、作家、かつては国会議員でもあった中村敦夫さんから頂いた。木枯し紋次郎では、「あっしにゃぁ関わりのねぇこってござんす」のきめセリフで、無頼漢を演じた中村さんからの檄文だ。

原爆と原発は、悪意に満ちた死神兄弟のようなもの。
世界の安全を喰い散らし、出張った腹をさらに突き出す。
『NO NUKES voice』よ。死神たちを放置してはならない。
平和を愛する人々の先頭に立ち、
言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ。

 

中村敦夫さんから頂いた『NO NUKES voice』への檄文

過分にして、この上なく有難い激励である。われわれは今号も含め全力で「反・脱原発」の声・言論を集め、編み上げた。しかし時代は、あたかも惰眠を貪っているいるように仮装され、真実のもとに泣くひとびとの声を伝えようとする意志は、ますます希薄になりつつあるようである。

つまり逆風が暴風雨と化し、一見将来に向かっての「展望」など、むなしい響きにしか過ぎない無力感を感じてしまいがちであるが、そうではないのだ。「死神たちを放置してはならない」この原点に返ればまた力が再生してくる。「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」この言葉を待っていた!

2018年は、総体として決して好ましい年ではなかった。語るに値する、勝利や前進があったのかと自問すれば、そうではなかった、と結論付けざるを得ないだろう。畢竟そんなものだ。半世紀以上も地道に「反核」、「反・脱原発」を訴えてきた、先人たちは、みなこのように敗北街道を歩んできた(でも、決して諦めずに)のだ。

大きな地図の上では劣勢でも、局地戦では勝利を続けているひとびとがいる。今号はそういった方々にもご登場いただいた。表紙を飾るミュージシャン、中川五郎さんの躍動する姿は、本誌の表紙としては異例といえるが、期せずして中村敦夫さんの檄文に答えるバランスとなった。

「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」中村さんの要請をこう言い換えよう。

「言論による反撃の矢を尽きることなく死神どもに、われわれは浴びせ続ける!」と。

『NO NUKES voice』第18号は本日発売だ。締まりのない時代に、全編超硬派記事のみで構成する「反・脱原発」雑誌は、携帯カイロよりもあなたの体を熱くするだろう。


『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

以下の文章、主要部分は、『NO NUKES voice』16号に掲載した内容と重複するが、日々「東京五輪」めく日常の異常さに耐え切れないので、お読みになっていない方にも知っていただきたく、ここに再度内容を改め掲載する。

もとより近代オリンピックはスポーツの祭典ではあるが、同時に国威発揚の道具として利用されてきた。さらに「アマチュア規定」(オリンピックにはプロスポーツ選手は参加できない)の撤廃により、1988年のソウル五輪からプロのアスリートが参加するようになり、雪崩打つように商業的な側面が肥大化した。いまや五輪はイベント会社やゼネコン、広告代理店にとっての一大収入源と化している。2020年東京五輪は、安倍や新聞広告がどうほざこうが、明らかに「巨大な商業イベント」である。

現在IOCはスポンサーを「ワールドワイドオリンピックパートナー」、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」の三つのカテゴリーに分けている。「ワールドワイドオリンピックパートナー」は「TOPパートナー(もしくはTOP)」とも呼ばれ、直接IOCと契約をしている企業で、基本一業種一企業とされている。年額数十億円のスポンサー代のほかに、当初契約料(かなりの高額であることが想像されるが、確定的な額は不明)を支払い、世界中でオリンピックのロゴやエンブレムを使用することが許される。ちなみにトヨタは10年で1000億円の契約を結んだと報じられているので、単年度あたり100億円という巨額を投じていることになる。現在下記の13社がTOPである。

コカ・コーラなどはおなじみのロゴだが、念のために社名を紹介しておくと、Atos、Alibaba、Bridgestone、Dow、GE、OMEGA、Panasonic、P&G、SAMSUNG、TOYOTA、Visaだ。かつてはこのなかに「マクドナルド」の名前があったが、世界体な経営不振で撤退したようだ。一業種一企業というが、サムソンとパソニックはともに家電を作っている。

「TOP」と異なり、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」は開催されるオリンピック組織委員会との契約し、国内に限りロゴやエンブレム、その他イベントの共催や参加が認められる。スポンサー代、使用諸権限とも「ゴールドパートナー」が「オフィシャルパートナー」より上位だ。「ゴールドパートナー」には、

の15社の名前があるが、問題なのは「オフィシャルパートナー」である。

最終列にある「読売新聞」、「朝日新聞」、「NIKKEI」、「毎日新聞」の名前を見落とすわけにはゆかない。全国紙のうち実に四紙が「東京オリンピックオフィシャルパートナー」という呼称の「スポンサー」になっているのだ。産経新聞は広告費を捻出する余裕がなかったのであろうか。いや、

スポンサーの位置づけの中では最下位だが、「オフィシャルサポーター」の中に「北海道新聞」とともに、「産経新聞」の名前が確認できる。つまりすべての全国紙と北海道新聞は公式に東京五輪のスポンサー契約を結んでいるのだ。

わざわざ金を払い、スポンサー契約を結んだイベント(東京五輪)の問題を指摘する記事を書く新聞があるだろうか。批判することができるだろうか。さらには「読売新聞」は「日本テレビ系列」、「朝日新聞」は「テレビ朝日系列」、「毎日新聞」は「TBS系列」、産経新聞は「FNN系列」のテレビ局群が連なる。大手新聞、テレビ局がすべてスポンサーになってしまい、東京五輪に関しての「正確な」情報が得られる保証がどこにもない。そんな状態の中で「東京五輪翼賛報道」が毎日流布されているのである。

東京五輪組織委員会はスポンサー収入の詳細を公表していない。しかし、上記の金額とスポンサー企業数からすれば、東京五輪のスポンサー収入が1000億円を下回ることは、まずないだろう。短絡的ではなるが、日本に関係のない大企業がいくら金を出そうが、それはよしとしよう。しかし日本企業で10億、100億という金を「広告費」の名目で「五輪スポンサー代」に払っている企業は薄汚い。経費で計上すれば法人税課税の対象にならないじゃないか。ちゃんと法人税を納めろ。

その中に全国紙5社と北海道新聞も含まれる「異常事態」は、何度でも強調する必要があろう。東京五輪は、財政潤沢な東京都、日本国で開催されるわけではないのだ。安倍は大好きな海外旅行(外遊というらしい)に出かけるたびに、気前よく数億、数十億、あるいはそれ以上の経済支援や借款を約束して帰ってくるが、日本の財政は破綻寸前だ。それに、東日本大震災、わけても福島第一原発事故はいまだに収束のめどもつかず、「原子力非常事態宣言」は発令されたまま。忘れかかっているが、わたしたちは「非常事態宣言」の中毎日生活している。

人類史上例のない大惨事から、まだ立ち直れていない原発事故現場から250キロの東京で、オリンピックに興じるのは正気の沙汰だろうか。私はどう考えても、根本的に順番が間違っているとしか思えない。緩慢な病魔に侵されているひとびとが確実に増加している現実を隠蔽し、「食べて応援」を連呼し、少しでも危険性に言及すれば「風評被害」と叩きまくる。チェルノブイリ事故の後、日本では放射性物質に汚染した食物の輸入規制を強めた。基準を超えた食物は産地に送り返した。と言ったって、ロシアのキエフ産の農作物などではなく、主としてドイツやイタリアからの輸入品だった。

この差はなんなのだ。どうして庶民は、平然と汚染食品を食っていられるのだ?避難者は、公然と20ミリシーベルト被爆する地域に送り返されるのか?それは全国紙を中心とする報道機関が、こぞって東京五輪のスポンサーになるほど、ジャーナリズムなどという言葉は忘却し、もっぱら営利企業化してしまっているからだ。彼らはもう「事実」や「真実」を伝えてくれる存在ではない。そのことを全国紙すべてが東京五輪のスポンサーになっている現実が物語る。恥ずかしくはないのか? 全国紙の諸君? 戦前・戦中同様、そんなにも権力のお先棒を担ぎたくて、仕方ないのか? 日本人はどこまでいっても救いがたく愚かなのか。

全国紙や大マスコミの社員ではなくとも、個々人が同様の「歪な加担」に乗じていないか、点検が必要なようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

患者さんの訴え

◆集会には120名超が集結

11月27日13:10から大津地裁で、4名の原告が滋賀医科大学医学部附属病院、泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を訴えた裁判(事件番号平成30わ第381号)の第二回期日が開かれた。この裁判についてはこれまでも2回報告しているので、背景にお詳しくない方は、そちらをご覧いただきたい。

正午から大津駅前で、患者会による集会が開かれた。患者会員数は、既に900名を超えているが、この日は120名以上のひとびとが大津駅前を埋めた。司会者は既に治療を終えらた患者さんであるが、この日の集会では、患者会のアドバイザーとして活躍していながら、ご自身も8月に癌が見つかり、現在闘病中の山口正紀さんから寄せられたメッセージを司会の方が読み上げた。やや長文になるが、初めてこの事件に接する方には参考になるので山口さんからのメッセージ全文をご紹介する。

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◆山口正紀さんからのメッセージ

滋賀医大病院による人権侵害の責任を問い、患者切り捨てと闘う裁判の第2回口頭弁論報告集会に各地から参加された皆様、患者会アドバイザーとして皆さんの闘いに参加させていただいているジャーナリストの山口正紀です。10月9日の第1回弁論の集会で少しお話させていただきましたが、9月初めに「ステージⅣの肺がん」が見つかって治療に専念せざるを得なくなり、本日の弁論、集会に参加できず、ほんとうに残念に思っています。

患者会は、発足からわずか半年で900人を超える大きな集まりになったとのこと。どれほど多くの前立腺がん患者が、岡本圭生先生の小線源治療に生きる希望を見出し、その講座継続を願っているかを物語る数字だと思います。しかし、滋賀医大病院泌尿器科の河内医師や松末院長たちは、そんな患者の皆さんの切実な思いなどまったく想像もできないのでしょう。この裁判でも、不必要・不適切な、治療とも呼べない人権侵害行為で原告の方々、多くの患者さんに重大な被害を与えたことを謝罪もせず、それどころか、患者さんを救った岡本先生を病院から追放しようと躍起になっています。
昨年末、病院のホームページに掲載された「講座閉鎖」の告知を読んで、本当にびっくりし、あきれ果てました。「小線源外来の終了後は、泌尿器科において、標準的な小線源治療の開始を予定している」と言うのです。

しかし、この「標準的治療」とは、いったいどんな治療なのでしょうか。小線源治療には高度な知識と熟練した技術を要しますが、それを一度もやったことがない成田医師らが、そのことを患者には黙ったまま、手術をする。そういう患者を無視した行為を「標準的な治療」と言っているのです。これは、まさに岡本先生が医師の良心にかけ、勇気をもって未然に防いだ患者のモルモット化を、今度は病院公認でおおっぴらにやろうとするものです。しかも病院の告知は、岡本先生の外来を閉鎖した後、「患者さんのご希望に沿って本院泌尿器科で経過観察する」と言っています。どこまで患者をバカにすれば済むのでしょうか。患者を実験台にしようと企み、それがばれても被害者に謝罪もせず、それどころかその悪事を未然に防いだ岡本先生を追放する。そんな医師にあるまじき連中に「経過観察」を任せるような患者がいる、とでも思っているのでしょうか。心底、患者をバカにした告知ではありませんか。

これまで、大学病院当局のパワーハラスメントの中で、がまんを余儀なくされてきた岡本先生が11月16日、ついに堪忍袋の緒が切れて、病院による名誉毀損と闘う仮処分を申し立てられました。その記者会見の様子が、デジタル鹿砦社通信に載っています。待機患者として参加された東京の山口淳さんの話には、ほんとうに心を打たれます。〈がん告知後の悪夢の中で、ようやくたどりついた岡本先生の外来が閉鎖されようとしている。不安いっぱいの中で送ったメールに岡本先生からメールが返ってきて、先生の診察を受けることができた。けれども来年、ほんとうに手術を受けることができるかどうか。もしかしたら、また死を覚悟しなければいけない状態に舞い戻るかもしれない。もし、岡本先生の講座を廃止する非情な措置が取られたら、我々の生きようとする希望が失われてしまう〉山口淳さんはこう訴えられました。

いま、ステージⅣの肺がん治療に取り組み始めたばかりの私にとっても、この訴えは100%、切実に共有できます。私もこの間、生き延びるための治療を求めて不安な日々を送ってきました。こんな患者の皆さんの痛切な思いを、滋賀医大病院泌尿器科の医師や病院長、学長は、なぜわからないのでしょうか。わかろうとしないのでしょうか。先日、地元の滋賀県をはじめ、名古屋や東京など全国各地で患者会の皆さんによる街頭での訴えや署名活動が始まった、とのことです。いま滋賀医大病院で起きている患者切り捨て、暴力的な「岡本医師追放工作」の実態を一人でも多くの市民に知らせる。それが、大学と病院当局に反省を迫り、小線源講座の継続を実現するための最も近道だと思います。この裁判もその重要な一環です。

私も引き続き、皆さんの闘いに参加したい、そんな思いから、鹿砦社から出ている『紙の爆弾』という月刊誌の2019年1月号に、「がん患者の命綱を断ち切る暴挙」という8ページの記事を書きました。この問題の背景と本質、患者会と岡本先生の闘いの意義について、わかりやすく書いたつもりです。12月7日ごろには、書店に並ぶと思います。定価600円です。ぜひ書店でお買い求めいただき、今後の地域や街頭での訴え、署名活動などでこの問題を市民に説明する際の参考に使っていただければ、と思います。また皆さんと一緒に、口頭弁論当日の大津駅前集会や、裁判報告集会に参加できる日が来るよう、頑張って治療に励みます。皆さんは、闘う相手が病気だけでなくてたいへんだと思いますが、滋賀医大病院の悪事と闘いながら、お体にも十分気をつけてください。「裁判勝利・小線源講座継続」に向けて、ともにがんばりましょう。

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山形県から駆け付けた患者の家族

◆山形県から駆け付けた参加者も

続いて、岡本圭生医師の治療を待つ「待機患者」さんと、原告の方からそれぞれスピーチがあった。既に治療を終えた患者の中には「これからは待機患者さんを救うのが一番の目標です」と語った方がおられ、多くの方が同意されていた。前回もこの集会を取材したが、今回は女性の姿も目立った。患者をご家族に持つ方々だ。その中には、山形県から駆け付けたご家族の姿もあった。

◆弁論進行の様子

13時近くになり、患者会のメンバーは大津地裁に集合した。法廷の傍聴席は55席しかない。多くの方が傍聴することができず、閉廷後に開かれる記者会見会場に移動した。傍聴席が満席になり、原告側には原告二人と弁護団、被告席には被告側弁護士2名がそろい、西岡繁靖裁判長が開廷を告げた。

西岡裁判長は被告側から提出された準備書面1を確認し、甲号証(原告側証拠)の取り調べ(確認)を行った。被告側から「文書送付嘱託の申し出」が法廷に提出されたので、西岡裁判長は「その必要性等、あるいはどういう文章か概略ご説明頂けますか」と被告代理人に問うたところ、岡田弁護士は「本日遅れまして申し訳ございません。文書送付嘱託の申し出をさせていただきました。診療録の送付嘱託の申し立てでございます。既に甲号証で正本として出されてはいますが、本件につきましては訴状でもかなり詳しく診療経過等について、説明をされていますので、診療経過を全部確認するという意味において、診療録の送付嘱託をお願いしたい次第であります」と述べた。

西岡裁判長は原告弁護団に意向を確認した。井戸弁護士は「裁判所が送付嘱託の判断をされることは、『然るべく』、ですけれども、病院がそれに応じるとなれば、ご本人の同意を求めてこられる。それについてはご本人たちが同意するか、しないかは、『然るべく』と。代理人としてはそれに関与しない」と判断を述べた。

西岡裁判長は「ご本人の同意はご本人が判断されることなので、裁判所も関与できる話でもありませんし、被告代理人も関与できない、というお話でした。『然るべく』ということなので、裁判所としては採用いたします」と述べた。さらに「今回の被告の主張を大雑把に要約すると、平成27年以降、岡本医師の指導の下で、被告らが診療にあたる。要するにチーム医療としてやる、という体制でやっていたけれども、平成27年12月に、今回のご主張によると、岡本医師が被告の指導を実施しないという懸念が生じたと、いうところでその体制を見直しをして、岡本医師に患者さんを担当してもらうようになった。そういうご主張なんですね」と被告側に確認し、被告代理人は頷いた。そして「裁判所としては進行協議でご相談できればと思っております。双方お願いしていいですか」と原告被告双方の弁護団に尋ねた。

双方が合意し、別室での「進行協議」が行われることになり、この日の弁論は終結しそうになったところ、井戸弁護士発言を求めた。「準備書面1を出されて、証拠は出されていないのですが。例えば4ページの下から5、6行目。私もまったく知らなかったのですが、『外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は』、云々と書かれていますね。こういうものは裏付け資料が出せるのであればと思うのですが、無いのでしょうか」と被告弁護団に尋ねた。被告側は「その点は出したいと思います」と回答した。

井戸弁護士の質問を補強する形で西岡裁判長は「いまのご質問は一例ということで、今回被告のご主張を精査していただいて、取り寄せで確認しなければいけない物は、取り寄せしていただいたらと思いますが、被告側の手元にあるものは、早いうちに出してもらえますか」と注文をつけた。被告側は「了解です」答えた。

ここでこの日の弁論は終了し、傍聴者は記者会見が行われる別会場に移動し、原告被告双方の弁護団は、別室で「進行協議」に移った。数十分後記者会見会場に弁護団が到着し、井戸弁護団長が、この日弁論ならびに進行協議について以下の通り解説した。

─────────────────────────────────────────────

裁判の解説をする井戸弁護士

◆井戸弁護団長による解説

「11月21日付けで被告から準備書面1が提出されました。こちらの訴状への反論です。何を認めて何を認めないのか。そして被告としてどういう主張をするかが書かれたものです。今後これに対して原告側が再反論をしてゆきますが、どういう内容のものなのかを報告させていただきます。特徴を述べると、『小線源治療・岡本メッソドに対する誹謗』、それから『事実のごまかし』そして『開き直り、責任転嫁』そう評価できると思います。

小線源治療については、合併症の問題、完治率など含めて優れた治療方法であると、我々は主張してたわけですが、それを否定してきています。『治療成績が他のものと変わらない』、『周囲への被ばくとか排尿障害などでメリットがある』、『外照射療法に比べて、小線源療法は体に傷をつける問題もある。近年は小線源療法は減少傾向にある』ということを主張しています。その中でも岡本メッソドについては、標準的な小線源療法よりも、高い線量を加えるのですけども、『線量を上げれば合併症のリスクが増すんだ。岡本メッソドの評価については様々な意見がある』と書いています。これが岡本メッソドに対する『誹謗』ですね。

それから事実関係としては、『ごまかし』があると思います。成田医師が自分が小線源療をしようということで、23人の患者さんを抱えていたわけですが、23人の患者さんについても、『成田医師が術者として確定していたわけではない』、『実際に小線源療をするのは確定していなかったんだ』、『岡本先生とチームとしてやろうとしていたので、ひょっとしたら岡本先生がやったかもしれない』と。これは『事実のごまかし』だと思います。

そして『成田医師が施術をしていたとしても、危険性はなかったんだ』という主張をしています。これは『開き直り』だと思います。たしかに小線源治療は未経験だったけれども、4人の原告の皆さんは1番目にする予定の患者さんじゃなかったわけです。だから『原告の皆さんにする時には精通を経ていた。初めてではない』ということを言っています(笑)。

法廷でも私が質問したことですが、「外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は云々」という主張をされています。これには何の根拠も示されていないので、『根拠の証拠を出せ』と言ったわけです。また『成田医師は前立腺癌治療については豊富な経験を有していた。それから岡本医師の治療に麻酔担当として5件以上関与して教育を受けていた』この辺りは岡本先生の説明と違うのではないかと思います。

そして『少なくとも数例は岡本先生に立ち会ってもらい指導を受ける予定であった』、これが極めつけだと思うんですが『小線源治療は前立腺の生検(細胞採取検査)と同じようなものだ』と(会場から「えー」の声)。『成田は生検の豊富な経験がある』。組織をちょっと採る『生検』と、シードを綿密に埋め込む小線源治療が同じようなものだという主張をしています。

23人の方の治療が中止になったのは、岡本先生と協働してチームでやる予定だったのに、2015年12月の末に岡本先生が『成田医師を指導しない懸念が生じたので、成田医師を術者とする小線源治療は中止になったんだ』という説明で、説明を岡本先生に転嫁する内容です。『実際には適切な時期に説明していたと考えられる』と主張しています。『現実に1例目の患者には説明しました』と言っていますが、これは成田医師が説明したわけではなく、放射線科の医師が説明したと聞いています。

河内医師については、『岡本先生に指導させて成田医師に小線源治療の経験を積ませようとしただけだ』、『成田医師が未経験の医師だと説明しないように、成田医師と謀議することはしていない。だから河内医師にも責任はない』そういう内容です。

そういう『誹謗』『ごまかし』『責任転嫁』という特徴がありますので、これに対する反論については、根拠なしに主張している部分には、こちらからまず質問しようと思っています。専門用語で求釈明(釈明を求める)といいますが、それに対する回答を得て、それを踏まえて全面的な反論をしようと考えています。

次回期日は2月26日11:00からです。その間12月7日までに質問事項、求釈明事項を私どもは提出します。それに対する回答が1月末です。それを踏まえて次回期日前に全面的な再反論をする予定です。

そのあとの進行協議で裁判所は「この事件は岡本先生がキーマンだと」。滋賀医大泌尿器科において、どのような体制で成田医師を術者とする小線源治療をしていたのかが、この事件のポイントになるので、被告側はご本人ですからわかりますが、原告側は患者ですから内部のことはわからない。

したがって、岡本医師がどうしてもキーマンになるので、「岡本医師抜きでこの訴訟を遂行していくのは、困難なのではないか」というのが裁判所からの意向でした。岡本医師を原告でもなく、被告でもないんですが、準当事者のような立場でこの訴訟に入って来てもらえないか。そのための法律的な方策を考えたい、とうのが裁判所の意向でした。

訴訟告知補助参加という形で、原告、被告ではないのですが、この訴訟に岡本先生も利害があるから、『参加人』としてこの訴訟に来てもらって、岡本先生(あるいは代理人)の主張を法廷でしていただく、あるいは岡本先生から証拠を出していただく。そういう形で進められないかという話でした。我々も考えていなかったし、被告側の弁護団も考えていなくて、びっくりしたんですけれど、裁判所が積極的に出てきてこの事件の真実を早期に掴みたいという、非常に積極的な姿勢の表れだと、我々は評価しました。ただ法律的な問題もありますので、被告側が賛成するのかしないのかを早期に回答を頂き、さらに検討する形になりました。法律的なテクニカルな問題があり、法廷では相談しにくかったので、別の場を設けたということでした。裁判所の問題意識は正当だと思いますし、原告側としてはその方向で前向きに対応していきたいと思っています」

─────────────────────────────────────────────

その後、原告の2人と、治療を待つ患者さんご本人と、待機患者さんから寄せられたメッセージが代読された。

被告側が提出した準備書面1は、井戸弁護士が強調した通り、「誹謗」・「ごまかし」・「責任転嫁」に満ちていると、原告弁護団は評価している。一方予想外の展開で裁判所(裁判官)が岡本医師を「参加人」として訴訟に入ることを求めてきたのは、弁護団が作成した精緻な訴状と、被告側弁護団の提出した、粗雑な内容の準備書面1の格差が主たる原因であろう。しかしチラシ配り・署名活動などにも力を入れ、また毎回期日のたびに、多数の人が集会を開き、傍聴席を毎回埋め尽くしてきた「患者会」の方々の活動・熱意が裁判所を動かしだした、と考えても不思議ではないだろう。

※なお、下記URLに患者会関連記事が掲載されている。
https://www.asahi.com/articles/ASLCV7SR3LCVUBQU01F.html

集会風景

《関連記事》
◎滋賀医科大学に仮処分の申し立てを行った岡本圭生医師の記者会見詳報(2018年11月18日)
◎《スクープ》スーパードクター岡本医師、滋賀医大を相手に仮処分申し立てへ!(2018年11月16日)
◎滋賀医科大学附属病院泌尿器科2名の医師を提訴した「説明義務違反事件」第1回弁論開かれる(2018年10月12日)
◎滋賀医科大学附属病院泌尿器科の背信行為 「小線源患者の会」が損害賠償請求(2018年8月2日)

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月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

 

◆ダウンタウン・吉本のお家芸「行政の太鼓持ち」

11月23日深夜、新たな「税金の無駄遣い」の決定をうけ、「ダウンタウン」の2人が下記のようにコメントしたそうだ。

〈ダウンタウンの浜田雅功(55)、松本人志(55)は2017年から大阪万博誘致アンバサダーを務めている。大阪・御堂筋で開催される大イベント「御堂筋ランウェイ」に2年連続で出演するなど、万博誘致を懸命にPR。今回の開催地決定で、2年間の努力が実を結んだ。2人はこの日、所属事務所を通じてコメント。
松本「素晴らしい! 皆さまの地道な努力の結果だと思います。ダウンタウンは何もしておりません 特に浜田(笑)」
浜田「素晴らしい! 皆さまの地道な努力の結果だと思います。ダウンタウンは何もしておりません 特に松本(笑)」〉(2018年11月24日付けサンケイスポーツ)

行政のお先棒を担ぐような役回りを平然とこなす神経は、実によくわかる。「ダウンタウン」にはデビュー以来一度として「笑い」をもらったことがない。彼らの芸は、誰かを貶める、あるいは威張るか迎合する。パターンはいつも同じだ。生前横山やすしに「漫才師やから何をしゃべってもいいねんけれども、笑いの中に『良質な笑い』と『悪質な笑い』があるわけだ。あんたら二人は『悪質な笑い』やねん。テレビ出るような漫才とちゃうやんか。お父さんけなしたり、自分らは新しいネタやと思うてるかもしれんけど、正味こんなんイモのネタやんか」と看破された本質は、1982年からなんらかわっていない。


◎[参考動画]1982年末の『ザ・テレビ演芸』(制作=テレビ朝日)

明石家さんま、北野武、ダウンタウン、とんねるず、ウッチャンナンチャンなど「全然おもしろくないお笑いタレント」が師匠ズラをして、より小物のひな壇芸人しか育たない。岡八郎や花木京、人生行路が生きていたら、かれらもおそらく「大阪万博」に乗っかるだろう。でもダウンタウンほどの破廉恥さは見せないに違いない。横山やすしが、言いえて妙なダウンタウンの本質を突いている。岡八郎や花木京は腹巻をして吉本新喜劇の舞台に登場して、誰を見下げるわけでなく「え?なに」の一言で観客から笑いが取れた。所詮芸人としてのレベルが違いすぎるのだろう。

西川きよしは大阪万博を決定を喜ぶコメントを発している。国会議員もそつなくこなし、順風満帆の西川きよしらしい態度だ。ここが西川きよしと横山やすしのまったく違うところだろう。横山やすしのような人格は、仮にトラブルやアルコール依存症がなかったとしても、今日のような「管理社会」では受け入れられるキャラクターではなかっただろう。

漫才ブームまで、関西の漫才が全国区で放送されることはそうあることではなく、吉本興業が東京に進出しても、当初は苦戦を強いられていた。大阪のどぎつい笑いは東京では受け入れらにくかったのだ。しかし、マーケットは広げたい。吉本興業を中心とするお笑い芸人が選択したのは、笑い質の転換である。東京を中心とする全国で通じる、視聴者に迎合した笑い。そこに彼らはターゲットを合わせてゆく。

 

◆古臭い集権政治の再現でしかない大阪地域ファシズム

地方分権だなんかといいながら、政治の世界で起こっていることも同様だ。石原慎太郎や、神奈川で先に火が付いた地域ファシズムを、大阪は橋下徹によって後追いする。何も新しくない。橋下が主張したのは「ヒト・モノ・カネを大阪に集め」との古臭い、集権政治の再現に過ぎない。その延長線上に愚の骨頂もいいところの「大阪万博」などを発想し、「東京五輪」の5年後に開催するなど、半世紀前の利権構造を同じようにたどっているだけだ。

こういう、的外れで体たらくな行政を許しているから、大阪の文化的地盤沈下には際限がないのだ。大阪と東京にはかつて、対立意識や概念が存在した。しかし今やそんなものはどこにもない。大阪人の計算高さを東京の企業も内面化し、東京人の「ええかっこっしい」を大阪人も恥じることなく真似ている。笑わせてくれる芸人の出現を求めるのが無理な文化状況は、そうやって形成されているのだ。

なにが「万国博覧会」だ。馬鹿もたいがいにしろ! まだ海外旅行が夢の世界で、「外国」が庶民にとっては、実際の距離以上に遠かった1970年と、ネットに向かえば瞬時に世界と対話できる、LCCを利用すれば数万円で地球の裏側に行ける時代の違いくらいは、誰にでもわかるだろう。

いや違った。その違いすら分からないから、きょうもダウンタウンが偉そうに、面白くもない姿をさらしているのだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『ダウンタウン 浜ちゃん松ちゃんごっつええ話』

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

 

2018年11月19日付け朝日新聞

〈防衛省は「宇宙部隊」を新たに設ける方針を固めた。部隊は「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)と呼ばれる人工衛星やロケットの残骸のほか、他国の不審な衛星などを監視。陸海空の各自衛隊が統合運用する。2022年度をめどに設置する予定で、政府が来月改定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」にも新設が明記される。19日、複数の政府関係者が明らかにした。防衛大綱では陸海空に加え、サイバーや宇宙、電磁波など新たな領域の防衛力強化を打ち出す。「宇宙部隊」の新設はその柱の一つになる。〉(2018年11月19日付け朝日新聞)

1966年、突如毎週地球を襲う「怪獣」が登場し、全国各地を破壊しまくりだした。「科学捜索隊」は「怪獣」に対抗するために、毎週奮闘したが、最後まで一度として「怪獣」を倒すことはできなかった。いわば仮面ライダーにおける「ショッカーの戦闘員」のような役回りしか演じることができなかったわけだ。

「怪獣」には人間の力では勝てない。そこで「ウルトラマン」の出番となる。持ち時間が3分しかないウルトラマンはカラータイマーが青から赤に変わり、警告音が鳴り出すまでは必殺技「スペシウム光線」を怪獣にぶつけはしない。当時人気だったプロレスで、アントニオ猪木が散々痛めつけられながら、最後に「卍固め」や「コブラツイスト」でギブアップで勝ち切る。あるいはジャイアント馬場の「16文キック」(時に「32文人間ロケット砲」)、ジャンボ鶴田の「ジャンピングニーパッド」に匹敵するのが「スペシウム光線」だ。

「どうして最初からウルトラマンはスペシウム光線を出さないのか」は聞いてならない質問だった。禁句というやつだ。アントニオ猪木や、ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、デストロイヤー……必殺技を持つレスラーに「どうして最初から必殺技を出さないのか」を大人ですらが誰も議論しなかったように、見る側の慎み、あるいは、作り手と見る者の間に「次回も同様のストーリが確約される」担保として、黙約は成立していた。

まことに牧歌的な時代だったと振り返るしかないが、21世紀がはじまって、もうすぐ5分の1に手が届こうかという今日になって、自衛隊は冗談ではなく「宇宙部隊」の創設を決めたそうだ。真面目に批判するとバカバカしすぎるから、この素っ頓狂は徹底して揶揄させてもらおう。

「宇宙のごみ」を掃除するのなら「宇宙清掃隊」でいいんじゃないか? 他国の不審な動きは既に山ほど打ち上げられている人工衛星で10センチ単位まで監視ができる。GPSは携帯電話やカーナビに搭載され、民生利用されているが、あれのもっと精度が高い軍事技術を自衛隊が持っていないはずがない。「他国の不審な衛星」の動きだって同様に監視できる。

では、なんのために「宇宙部隊」は創設されるのか。それは最上級の国家機密で、閲覧可能者もごく少数に限られているけれども、ついに地球外生物の存在が確認され、数年後には地球を襲うことが確実視されているからだ! 地球外生物の存在! 怪獣だ! しかも奴らは極めて狂暴で、人類滅亡を計画しているとの情報まで入っている。どうする? 人類の危機だ! ウルトラマンでの「科学捜査隊」同様の地球防衛部隊の設立が、喫緊の課題となったのだ。ちなみに「科学捜索隊」は国際的な組織の日本支部であった(いわば対怪獣戦における「多国籍部隊」である)けど、自衛隊の「宇宙部隊」は日本単独の部隊だ(個別的自衛権の行使か?)。国際連携なしに、地球が守れるのか? 全国各地の都市はもちろん、都心にも毎週日曜日の19:00になると必ず「怪獣」がやってきて大暴れする19:00は日没で暗いことが多いが、画面の中はほとんど昼間であることなどを問題にしてはいけない。

日本(だけ)の平和を守るために「宇宙部隊」は創設されるのだ。そして日頃は宇宙空間で「お掃除」をしながら、敵の動向を見守る。ところで自衛隊には宇宙へ行く手段や技術がないがどうする?これはいい質問だ。この日のために長年に渡り、本性を隠していた種子島の連中がいよいよ脚光を浴びる。「人工衛星と称したミサイル打ち上げ」を重ねてきたJAXA(宇宙航空研究開発機構)である。JAXAは「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法」で規定されている組織であるが、同法には、以下の記載がある。

第四章 雑則(主務大臣の要求)

第二十四条 主務大臣は、次に掲げる場合には、機構に対し、必要な措置をとることを求めることができる。

 宇宙の開発及び利用に関する条約その他の国際約束を我が国が誠実に履行するため必要があると認めるとき。

 関係行政機関の要請を受けて、我が国の国際協力の推進若しくは国際的な平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるとき又は緊急の必要があると認めるとき。》

つまり「怪獣」が地球の平和を脅かすことになれば、主務大臣はJAXAに「要求」(すなはち自衛隊が創設する「宇宙部隊」への協力)することが法的にも可能であり、既に内々にその「要求」はJAXAに伝えられているのであおる(でなければ、宇宙に行くこともできない自衛隊が宇宙で活動できるはずがない)。

さて、問題は「宇宙部隊」を創設したはよいが、肝心の「怪獣」を倒すことができるかどうかという、死活問題をどう直視するかである。過去の経験則からすれば、人類はウルトラマン(あるいはそれに続く「ウルトラセブン」、「帰ってきたウルトラマン」らのウルトラ一族)によってのみ危機を脱しているのであり、「科学捜索隊」や「地球防衛軍」は名称こそ勇ましいものの、怪獣に壊滅的なダメージ与えたことはない。

それどころか、ウルトラマンだって、最終回にはゼットンに倒されてしまったではないか。ウルトラマンがゼットンに倒された最終回から、ウルトラセブン放送開始まで、当時の子供たちはどれほど心細い毎日を送ったことか。

どうせ何の役にもたたない「宇宙部隊」を創設するより、ウルトラマンがどこにいるかを探す方が賢明だろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

11月21日発売開始!板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

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