『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!
昨晩開票された新潟県知事選は脱原発をめぐる候補者の姿勢があいまいにされたことで残念な結果となったが、昨日に続き本日発売の脱原発雑誌『NO NUKES voice』16号の怒涛の内容を紹介する。
特集は「明治一五〇年と東京五輪が福島を殺す」である(その内容は昨日の本通信でお伝えした)。読者諸氏の目にはやや物騒にうつるかもしれないが、私たちは「当たり障り」のない雑誌を創ろうとは、微塵も考えていない。事実が、真実が悪意に基づくものであれば、それを「悪意」と言うことに躊躇はない。
◆二木啓孝さんが語る三里塚闘争と3・11以後の生き方
真実は幾重もの事実により構築される。今号も多様な方面の方々にご登場いただいた。90年代のオウム真理教事件報道の際、流行語「ああいえば上祐」の発案者とされるジャーナリストの二木啓孝さんに3・11の衝撃と共に「三里塚闘争とメディアの現場」を回顧していただいた。大学入学から、学生運動、わけても三里塚闘争の中で目覚めた二木さんは、メディアの現場に転身し、現在は千葉県の鴨川で農業に従事されている。その二木さんが3・11で受けた衝撃や反原発への見通しを語っている。楽観に陥らない視点は、さすが元・日刊ゲンダイニュース編集部長らしい。
◆尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」
尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」より
尾崎美代子さんは、飯舘村に昨年に続き足を運び、詳しいレポートを寄せてくださっている。「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」である。尾崎さんは普段、大阪市西成区で「集い処はな」の店主で、美味しく安い食事を提供するのにお忙しいが、そのお仕事の間を縫っての飯舘村からの詳細なレポートは、「一割にも満たない帰還率」、「菅野村長の『ハコモノ』の目的」、「放射線管理区域レベルの地域に子どもたちを通わせていいの?」、「放射線セシウムを組み込んだ村の自然循環サイクル」、「高齢者だからと、放射線を吸い込ませ、営農させていいのか?」、「期間困難区域・長沼地区で進む仰天計画 旗振り役は田中俊一前原子力規制委員長?」、「和解案を拒否する東電」。中見出しを列挙しただけでも飯舘村に襲い掛かっている理不尽と謀略が明らかになるが、本文ではさらに詳しい事実や数字が紹介されている。
◆槇田きこりさんが語る88年8月8日八ヶ岳〈いのちの祭り〉から30年の物語
「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三十年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」は『NO NUKES voice』でのこれまでの記事とは少し趣の異なる「楽しい思い出」の記憶と言っても差し支えないだろう。1988年に行われた『NO NUKES ONE LOVE いのちの祭り』を槇田きこりさんが回顧する。
いくつもの詩(うた)が紹介されて、まだ目にすることができた「ヒッピー文化」がエッセンスとなり花開いたイベント。たしか本誌編集長もあの場所にいたはずだ。80年代はどうしようもない時代だったけれども、それでも、こんなイベントに若者が集まっていたと思い返すと、隔世の感がある。
槇田きこりさん「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」より
◆大西ゆみさんの「3・11福島を忘れないロンドン集会」報告
英国暮らしが長かった大西ゆみさんには「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国―3・11福島を忘れないロンドン集会」を報告していただいた。
大西ゆみさん「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 3・11福島を忘れないロンドン集会」より
◆巨石巡礼写真家・須田郡司さんによる飯舘村・山津見神社周辺「聖地と巨石と放射能」
グラビアを担当していただいた須田郡司さんは「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」では被写体に向かう道すがら須田さんが考えたこと、感じたことが述べられる。無言の写真に息を吹きこむ、短文ながら重たい内容である。
須田郡司さん「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」より
◆大学生・川村里子さんの報告「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」
川村里子さん「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」より
「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」は下北半島に同行した大学生、川村里子さんによるレポートだ。中道雅史さんの案内で原発や再処理工場、新たな原発建設予定地のひしめく下北半島をめぐりながら、川村さんが中嶌さんや中道さんに質問を投げかける。下北半島よりもさらに原発の密集する「若狭」に住む中嶌さんの目に、下北半島の様子はどのように映ったのであろうか。若狭との相違と相似から、原発立地地域への実態が、また浮き彫りになる。
◆山田悦子さんのインタビュー「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」
「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」は、『NO NUKES voice』15号に「『人間の尊厳』としての脱原発」を寄稿していただいた、甲山事件冤罪被害者の山田悦子さんに編集部がお話を伺った。
いっけん原発問題とあまり関係なさそうなテーマのように思われるかもしれないが、山田さんのお話の中には、原発問題に向けた貴重な示唆と指針が示されている。国(司法)と20年以上闘ってこられた経験は、脱原発で私たちが国や大資本と闘う際に、是非参考とさせていただくべきエッセンスに満ちている。
◆山口正紀さんの論考「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」
「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」は元読売新聞記記者でジャーナリスト、山口正紀さんの論考だ。急展開から紆余曲折(外交上双方の牽制)がありながらもどうやら実現しそうな「米朝首脳会談」。しかし、その結果の如何を問わず、日本では〈壊憲〉策動が止まらない。公文書の偽造、虚偽答弁など、すでに内閣がいくつも吹っ飛んでいなければおかしい状況でも、なお胡坐をかき続る安倍政権。その本質的な危険性〈壊憲〉=〈改憲〉の目論見を山口さんは、余すところなく明らかにし、糾合する。脱原発と〈壊憲〉=〈改憲〉策動は切り離すことのできない重大課題だ。
三上治さんは「『セクハラ罪はない』という罪はある」とわかりやすいタイトルだが、シモーヌ・ヴェイユとM・フーコーを援用して状況を撃つ。
山崎久隆さんの報告「株主総会と原発輸出―原子力企業に今求められるものは何か」、温品惇一さんの報告「福島でパンフレット『受けてください甲状腺検査』四千部配りました」、佐藤雅彦さんの「三屠物語―民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末」、そしてお堅い本誌にありながら、毎号読者ならず編集者も楽しませてくれる板坂剛さんの「月刊雑誌『WiLLs』5月号を糺(ただ)す」。心配なのは毎回対象雑誌を変えて頂いているが、その源泉が尽きないか……である。今号も絶好調だ。
その他全国からの活動報告も、さらに充実。より精鋭化し、かつウイングを広げる『NO NUKES voice』16号、自信を持ってお勧めする。
『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す 6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)
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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す
[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ
[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉
[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である
[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する
[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年
飯舘村「ハコモノ復興」の現実
[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語
[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国
3・11福島を忘れないロンドン集会
[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能
飯舘村・山津見神社周辺を歩く
[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して
[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか
[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を
[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある
[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か
[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました
[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末
[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!
[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる
《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
東海第二原発は市民運動で止められる可能性
首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……
《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去を許さない!
私たちの「知る権利」を奪わないで!
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
東海第二原発の運転延長を認めるのか?
核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな
《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう
《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
再度、新潟県知事選挙を勝ち取る
《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題
《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求
《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!
《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!
《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!
《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語
《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。