安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告

「戦争推進法案」反対の人々は連日国会前を埋め尽くし、力の限り反対の声を上げたが、ファシズム自公政権によりこの最悪法は可決されてしまった。多くの人びとのさまざまな抵抗や闘いがあった。その中で9月16日夜に13名が一挙に逮捕されるという事件があった。現場にいた人の情報によると、逮捕は16日21時頃から22時頃まで断続的に行われたようだ。

そして、被逮捕者の中には本コラムで紹介してきた「学生ハンスト実行委員会」関係者3名が含まれることが、先日明らかになった。

◆「言いがかり逮捕」の後にやってくるあまりに不当な「ガサ入れ(家宅捜査)」

関係者と連絡を取り状況を整理してみると、機動隊がこの種のデモや集会でお得意とする「言いがかり逮捕」にほぼ間違いないことがわかった。さらに昨夜「学生ハンスト実行委員会」メンバーの数人が共同生活する場所に「明日ガサ入れ(警察による家宅捜査)が入りそうだ」との確度の高い情報を得た。でっち上げの公妨(公務執行妨害)でも家宅捜索を強制し、当たり前の権利である悪政への抗議活動を委縮させ、反対運動や抗議の分断を画策する権力のデタラメ極まる態度は過去にもこのコラムでも紹介したが、またしても同様の「不当ガサ入れ」が行われるという。

私はたまたま、東京に滞在していてこの報に接した。このコラムでも紹介した学生の仲間たちが行なっていた正当な「抗議活動」に対する悪辣極まる弾圧は許せない。そこで24日午前9時頃から「学生ハンスト実行委員会」関連の学生も居住する「りべるたん」と呼ばれる2階建ての住居に赴いた。1階は居間と台所、風呂、2階が共同スペースと寝室となっている「りべるたん」は、この時代にあってはなかなか珍しい空間だろう。個性豊かな居住者とさまざまな若者が集まるコミュニティーとなっているようだ。しかし若者のたまり場だけあり、2階の散らかり振りは半端ではない。

午前中から私同様、「危険情報」を聞きつけた人びとが集まっており、広くない居間は座る場所もないほどだ。

ガサ入れは朝一(早朝含む)の場合もあれば、午後3時頃のこともある。仕事に出かける人や大学に行く学生などの出入りが激しいが、常時一定人数以上の人が「万が一」に備え準備していた。とはいうものの、路地に面した窓は網戸のままだし、人の出入りが激しいからときに玄関の施錠を忘れることもある。今から考えれば「ちょっとのんびりした」待ち受け体制だったかもしれない。

正午を回り、午後1時を過ぎるとただ待っている我々もくたびれてきた。「3時を回ってこなかったら、今日はないでしょう」。そんな話をして、ただ待機していると眠気が襲ってくる。

◆捜査令状も見せずに突然、土足で家に入り込んできた総勢約20人の「暴力装置」たち!

目が覚めたのは午後2時頃だ。窓に面した細い通路に多数の「不審人物」が現れた。マスクをしている奴も多い。

「来たぞ!」誰が叫ぶでもなく声を上げる。私は玄関の施錠を確認に向かったが、そのときすでに「国家の暴力装置」数名は捜査令状を示すこともなく、網戸を開けて土足で家に飛び込んできた。私はそのうち1名から意図的かどうかわからないが、アゴを殴られた。「警察」と呼ばれる公営「暴力集団」は勝手に玄関の鍵を開錠しなだれ込んで来ようとする。玄関に立ち「令状を見せろ」と応じる住民や支持者と警察の間で激しいやり取りが続く。警察の行列の奥ではテレビカメラが回っている(後で判明したがテレビ朝日だった)。

警官押し入る(写真提供=藤倉善郎さん他)
警官押し入る(写真提供=藤倉善郎さん他)

「警察」と呼ばれる公営暴力集団は「令状」を見せろと要求しても全員に見せようとしない。「立会人を決めろ」と勝手な理屈を並べる。だいたい令状を示さずに居住空間に土足で上がり込み多数がなだれ込むなどという行為は完全な「住居侵入罪」だ。この夏、経産省前で3人が「建物にも入っていないのに」「建造物侵入」容疑で逮捕された(その後不起訴)が、今日の「公営暴力集団」の最初の犯罪は「住居侵入」若しくは「建造物侵入」さらに私に対する「特別公務員暴行陵虐罪」だ。

住人や支援者と警察のやりとりが激化し、新たな「言いがかり逮捕」の危険を感じたので、私は「公営暴力団」の指揮官に「こちらで話し合って立会人を決めるから、まずは外へ出て待て」と要請した。その間にも「公営暴力団」の実態を記録しようと、カメラを向ける人を、特に言葉も行為も乱暴な輩が階段上で押し倒し、押さえつけている(ちなみにその人は私同様フリーのジャーナリストだった!大間抜けな公安よ!)。

テレ朝が支援者を撮影する(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆「その場」に居合わせた責務として、私が「立会人」となった

「りべるたん」は20人以上はいたであろう「公営暴力集団」全員が入れるような広い場所ではない。暴力団は1階と2階を分けて調べるから「立会人」を2人出せという。ここで傍観していては何のために馳せ参じたのか意味がなくなるので、関係者の1名が1階の、私が2階の「立会人」になることとした。「立会人」を決めると他の家屋内部にいる人には外へ出るように命じられる。女性がカバンを持ち出す際には雑な手つきで下着まで物色してた。下衆な連中である。

その後ようやく令状が示された。「令状を撮影させろ」と要求するが「暴力団」は一切聞かない。仕方ないので1階の立会人が声を上げて内容を読み上げる。細かい記録がないが、被疑事実が実に笑わせてくれるものだった。

それはなんと「被疑者は背中で機動隊員の胸部を押して暴行した」とかいう内容だった。つまり、殴ってもいなければ、前向きで押したのでもない。「背中で機動隊の胸を押した」ことが「暴行」ってどういうことだ?

マスク軍団の侵入(写真提供=藤倉善郎さん他)
学生ハンスト実行委員会の学生たちが居住する「りべるたん」(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆バカげた捜査令状を錦の御旗に粛々と違法強権を発動し続ける辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補

あまりの馬鹿さ加減に私は捜査の指揮を執る警視庁公安部公安1課警部補の辻則夫に、「ちょっと待って、軽く体に触れるけど、これは確認のためだから。要するにこの被疑事実はこういう形で接触したということか」と私の背中を辻に押し付けてみた。

「この令状ではそういうことになっています」と辻は否認しない。

こんなバカな容疑があるか! 満員電車で毎日繰り返されるラッシュの何分の1にもならない体の接触しか「でっち上げられない」のか。もう少し偽造するならそれらしい「容疑」を偽造して持ってこいや!

と内心あきれたが、ここでキレてはいけない。やがて「家荒らし」が始まった。2階には4人の若手を中心とした体格は良いが、人相の悪い連中が上がってきた。私はそこで「弁護士に相談したいことがあるので電話をしたい」と告げた。すると人相の悪い中年男は「それは出来ない」という。「法的根拠は」と聞くと「どの法律のどこに書いてあるというものではないが、私たちはそうしている」となめた口をきく。「何言ってるんだ法的根拠がなければ、通信・交通の自由制限できないだろう」と追及すると、指揮官辻則夫がやってきて「過去の最高判例で捜査中は弁護士に電話をかける制限をしても良いというものがある。それに従って捜査をすすめている」という。怪しい。実に怪しい。

「いつのどの裁判での判決だ?」と聞くと「そこまでは覚えていない、あとで調べてください」と開き直る。「馬鹿言うな。判例を根拠にするなら最低限事件名と何年の判決かくらいは開示できなければ信用できないだろう」と追及するが、出まかせを並べて逃げようとする。因みに「ガサ入れ」後、知り合いの弁護士に「そんな判例聞いたことあるか」と連絡し調べてもらったが、「そのような判例はない」との回答を得た。

だとすれば警視庁公安部公安一課長警部補辻則夫をはじめとして、複数の「暴力団」が語っていたことは完全に「嘘」ではないか!

私はさらに難問をぶつけた。「私はここの住人ではない。ここへ来たのも初めてだ。立会人として今外出している居住者に対しては、一定の責任がある。仮に捜査後に令状と関係ない私物がなくなっていた場合、あなたたちは関係なく、立ち会った私が責任を問われる、つまり「民事上」の債務者とされる恐れがある。だからその対策を弁護士と相談したいのだ『警察は民事不介入』だろ。それでも私の電話を阻止するのか」と別の指揮官を問い詰めると、奴は「自分の一存では判断できないから相談してくる」と言い残し、その場を去ったが、行方をくらませ二度と姿を現さなかった。

真ん中の男が辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補(写真提供=藤倉善郎さん他)

◆「機動隊に背中を寄りかからせて」逮捕されたとする被疑者の立件などありえない!

令状によると「機動隊に背中を寄りかからせて」逮捕されたとする被疑者(否逮捕被害者)の立件なんてできるはずがない。しかもこの無茶苦茶ガサと公営暴力団「警察」のやりたい放題と、「判例がある」との明らかな虚偽による弁護士との連絡妨害。正確に数えるといったいいくつの違法行為が積み重なることだろうか。

戦争に反対する真っ当な若者のたちの意思を国家権力は「暴力」と「虚構」で押さえつけようとする。

この島国で進行している無法狼藉をいやというほど思い知らされた。

他方、住民をはじめとする学生や支援者の態度は実に立派だった。不法行為や乱暴狼藉にひるむことなく、的確な批判と抗議を貫いていた。

どちらに非があるかは語るまでもない。不当逮捕された関係者は即刻解放されるべきだ。不当逮捕、不当捜査断乎糾弾!!

弁護士への電話連絡を押さえつける辻則夫=警視庁公安部公安1課警部補(写真提供=藤倉善郎さん他)

★学生ハンスト実行委員会 ? ?twitter Facebook Blog
学生ハンスト実行委員会:9.16国会前弾圧に対する抗議声明(レイバーネット2015年09月21日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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恩師への手紙──80年代愛知の高校時代、退学を思い止まらせてくれたO先生へ

O先生

ご無沙汰しております。ひどい暑さが続いていますが先生はいかがお過ごしでしょうか。

何年前になるのか、もう記憶は曖昧ですが名古屋駅近くの「銀座ライオン」で昼間から痛飲しましたね。半分アル中の私が先生に「土曜日なら昼からでも飲めるでしょ」とゴリ押しして散々ビールを煽った挙句、夕刻には駅の裏手の安居酒屋に移動してそこでも相当飲んだはずです。

あれは寒い季節でしたね。私は昔の職場の先輩で亡くなった方の「形見」に頂いた重たい皮のジャンパーを着ていましたから。でも酩酊してなにがどうなったのやら……。日帰りで帰宅するつもりが、もうこうなったらとことん飲もう!となりビジネスホテルに宿 を取り、その部屋で改めて先生と飲みなおそうとしたところ、フロントの人間が「宿泊者以外は部屋に入ったら困る」と言い出しましたね。

私はどこにもそんな断り書きが書いていないし、数時間部屋で大人しく歓談するだけなのにおかしいじゃないかと抗議すると、フロントの男が大声を上げて脅迫じみた言葉を投げかけてきたので、携帯電話から110番をかけて警察を呼びましたね。先生は私が警察やホテルの男とかなり荒い物腰でやりあっている間、何も言わずに横にいてくださりました。記憶はおぼろげですが、警察が来てから「しばらく部屋で歓談するだけだから認めろ」を飲ませたように思います。買っておいたウイスキーをチビチビやりながらとりとめのない話をしたのではなかっ たでしょうか。

先生はホテルに着く前か、その後か不確かですが私が先輩の「形見」である皮のジャンパーを失ったことを心配して「大事な人の形見だったんじゃないの」と何度も聞いて下さいました。私にとって先輩の「形見」は大切でしたが、他にも複数「形見」を貰っていたこともあり(それよりも気持ちよく先生と一緒に飲んでいたので)「形見の心配はいりませんよ」と言った記憶があります。

思い返せばそれ以前にも高校卒業後、先生とは何度もご一緒させて頂きましたね。卒業式の直後にはS君(音信不通です)と一緒に先生の車で奈良へ1泊旅行に連れて行って頂きました。

大曽根の安居酒屋で飲んだ時はご自宅から自転車で来られましたね。以前よりずっと若々しく健康そうな先生の姿に驚きました。先生は私より15年上のはずですが、もうその頃私の頭髪は生え際の後退と頭頂部の薄毛が進行していましたから、「外見では年齢が逆転している」と私は羨ましがり、非情(!)な先生は「これは可哀想だね」と何の遠慮なく本音を仰いました。

今だから言えることですが、思い起こせば高校時代からO先生は「先生」でありながら、私の側からは「友達」のような思いもありました。博学で私の知りたいことには何でも即答して下さる先生。読むべき本をいつもアドバイスして下さる先生。早稲田の政経から明治の大学院で藤田省三に師事した先生は愛知県の高校教師の中では間違いなく屈指の知識人でした。そして先生には品格がありました。私が何年たっても追いつけない知的品格です。覚えていらっしゃるでしょう。あの監獄のような高校で共にそのありようを批判しながら時に私は「先生は職員会議に参加できるのだからもっと闘ってください」と難問を押し付けたことを。私ははっきり記憶しています。そんなとき先生は視線を横に反らして、眼鏡を右手の中指で触りながら「…疲れた……」とよく仰っていましたね。私はそんな先生に内心少し不満もありました。「もっと闘ってくれよな」と。それは教師である先生に対しての感情ではなく、誠に身勝手乍ら「同志的」立場からの不満のようなものでした。それすらを私は平気で先生に語っていましたね。たちの悪い生徒でした。

でも、誰に伝える訳ではなく、今日はっきりと私は再確認しておきます。あの地獄の3年間、O先生の存在がなかったら私はどうなっていたことか。先生よりかなり性格の激しい私は、本気で退学を決意した時期がありました。母親は理解してくれましたが、父親は反対でした。父親の反対があろうとも先生があの地獄にいらっしゃらなければ、私は退学していたと思います。退学では済まずもっと別の行動に走っていたかもしれません。

私は3カ月前に50になりました。50ですよ!50!。先生は65ですか!最初にお会いしたのは私が15で先生が30くらいではなかったでしょうか。時間の経過は残酷ですね。でも15だった私は50になっても、何も変わっていませんよ(体のあちこち年齢以上のガタが来ていますが)。

ところで少し気がかりなことがあります。

最近また考えが行き詰まり、今年に入って何回か先生にお電話差し上げたのですが、毎回留守録に繋がるか、直ぐに切られてしまいました。私の電話番号はご存知ですよね。

今日もかなり煮詰まってしまい、ご教示を頂きたいと思い、先生の最近のご活躍を確認すべくネットで「OKJM」と検索しました。春日井建さん門下で、既に歌人の世界では名をはせている先生。特に春日井さんの活動を追った文章は多くの人から高い評価を得ていましたが、その中に不可思議な言葉がありました。

「今年(2014年)の2月27日に交通事故で急逝したOKJM」

嘘でしょ。嘘でしょ。嘘でしょ。

嘘に決まっています。私は先生に何度かお伝えしましたよね「自転車で16キロも走るのは健康にはいいでしょうが、年齢と車の危険を考えてくださいよね」と。

だからこのメールには「あれはちょっとした間違いでした。心配かけて申し訳ありませんでした」とご返信頂けますよね。

今、こんな時代になってしまって私は先生にしか相談・議論できないことをたくさん抱えています。先生に一方的に頼るつもりは勿論ありません。先生のご意見を伺いたいのです。最近少しですが文章を書いて生活をしています。その辺りのアドバイスもいただければと思います。私には恩師と呼べる先生は一人しかいません。

ほら、先生が「社会科準備室」で現代短歌を教えてくださったから、私はSK大学に就 職した翌年に岡井隆さんをホストに塚本邦夫、道浦母道子などそうそうたる顔ぶれの「連続対談」を企画できたのですよ。先生はわざわざ京都まで何回も聞きに来てくださいましたよね。岡井さんが歌会始の選者に就任したことについて「天皇制は権威主義以外の何物でもない!」と私もびっくりするような鋭い質問を投げかけてくださいましたよね。岡井さんはたじたじでしたが「O君と話すのは久しぶりですが」と先生のことをご存知でしたね。

新設高校という地獄の職場からM商業、Z高校、A高校と「人間並み」の職場に移られてから先生の表情も穏やかさが際立つようになった記憶があります。そういえば中国や外国へもあの当時夏季休暇には旅行されていましたね。先生は愛妻家で実は見かけによらず子煩悩だということは、高校時代一度ご自宅に伺った際、お子さんに向けた日頃見たこともない笑顔から気が付いていましたよ。

一見家庭や子供より文学や詩歌に傾倒しそうな振る舞いをしていている先生、実は家庭を一番大事にする「お父さん」だったんだ、と高校生ながらに安心した記憶があります(この辺りの感想自体が失礼ですね 。先生を「友達」と感じている証拠です)。

2000年4月にSK大学にお越し頂き、その後も折に触れお会い頂き、いつも飲んでいましたね。先生は禁煙なさって暫く経っていたけれども、私が飲みながら煙草を吸うと、無言で私の口元を眺めているので「吸いたいんじゃないですか?」と切り出すと「1本だけいいかな?普段は全く吸いたいとは感じないんだけど」と遠慮がちにセブンスターを美味そうに吸っていらっしゃいました。

こんな思い出話をしたくてメールをしたのではないのです。教えて頂きたいことが山積です。そこにさきほどの気にかかる「不思議な言葉」を目にしたので、本音を言えば少し心配しております。

もう、お仕事は定年退職なさったでしょうが、酷暑が続きますのでお返事はご無理の無い時で結構です。一番最近電話でお話ししたのは2年くらい前でした。先生と原発問題でひとしきり盛り上がって「フェースブックを始めようと思っているんだ」と仰っていましたね。飯田哲也の評価について議論しましたね。私はこんな人間だから実名でインターネットに登場することはできませんが、先生への情報提供位であれば少しは出来るかもしれません。

くれぐれもご自愛くださいますように。ご返信いつまでもお待ちしております。

2015年9月
田所敏夫

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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ネット上の「猫優位現象」──なぜツイッターユーザーには猫好きが多いのか?

犬と猫を比べると実際に飼育されている数は犬が猫を圧倒している。でもツイッターの画面は猫であふれている。なぜなのだろうか。猫の画像だけでなく、「ねこ」をハンドルネームの一部に使っている方も多い。試しに新たなアカウントで「neko」が使えるものを探してみても簡潔な名前で使用可能なものはまず見当たらない。

「猫」がお好きな方は、純粋な「猫」愛玩家からかなり社会的な発言をなさる方々まで幅広く、「反原発」、「反戦争」を主張される方の中にも猫画像を時に取り入れたり、猫好きの方々が多い。


◎[参考動画]人が入っているような猫

◆ネット上で平和の象徴は「鳩」じゃなくて「猫」!

何故かしら「鳩」は平和の象徴のように言われているが、今日Twitterの中では「猫」こそが平和と癒しの象徴と言っても過言ではないだろう。

Twitterに限らずネット上では「猫」が「犬」を圧倒しているようだ。Googleで「犬」を検索すると88,000,000件がヒットするが「猫」で検索すると187,000,000件が表示される。「猫」は「犬」に2倍以上の差をつけてネット上を席巻していることになる。ちなみに各国語で「犬」と「猫」を検索エンジンにかけた際のヒット数を下記に示す。

中国(百度) ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?犬=39,400,000   ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?猫=19,500,000
韓国(NAVER) ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?犬=165,000,000   ? ? ? ? ? ? ? ? ?猫=11,900,000
イタリア(Google)(yahoo) ? ? ? ? ? ? ? ? ? 犬=700,000,000   ? ? ? ? ? ? ? ? ?猫=34,500,000
英語(Google)(yahoo) ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ?犬=1,300,000,000   ? ? ? ? ? ? ? ?猫=1,970,000,000

このように言語により傾向は様々なので世界的にネット上で「猫」が「犬」を圧倒しているということではないようだ。それにしても上記の数字と比較で日本語使用者及び日本のネット上では「猫支配」が顕著だといえよう。このような数字を示した国は他にない(ここには掲載しなかったが仏語では「犬」=chien、「猫」=chatであるが、chat内にはいわゆる「おしゃべり」を含むサイトが多く見受けられたことから比較対象としては妥当ではないと考え外した。ちなみに仏語の犬=16,100,000で、猫=439,000,000である)。

ネット上の「猫優位現象」について私が調べたところ、「これだ!」と言う明確な分析はまだ見つかっていない。ちなみに中国や韓国では猫を愛玩用として飼うことはあるが日本程一般的ではないことから、「犬」優位の説明がつくだろう。イタリアと英語圏の現象にを解説するだけの知識を私は持ち合わせない。

Twitterを私は利用していないけれども、頻繁に利用している知人に聞くとやはり「猫」関連のハンドルネームや猫の画像、動画は頻繁に目にするという見解で一致している。情報技術の先端の中で表出してきた日本独自の「猫優位現象」。これを解読すれば本が1冊書けるかもしれない。


◎[参考動画]おやつちょうだい!可愛い猫のおねだり

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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戦争構造と内面の自由

戦争へ進む脈々とした流れの一断章、「戦争推進法案」が参議院本会議で可決され成立した。この間、湧き上がる戦争反対世論に水をかけないように、そして私も心の底からこの最悪法の成立には反対だったから、拙くも小さい声ではあったが、私なりの意思を表明し続けた。

多くの反対の声を無視してあえなく、最悪法は成立してしまった。これでいよいよこの島国がいつ戦争に参加しても国内法的には不思議ではない状態が整った。来るところまで来た。

◆抵抗と闘いはこれから始まる

では、もう抵抗は無意味なのだろうか。そんなことはない。むしろ本当の抵抗と闘いはこれから始まる(それは幾重にも重層的な個々人内面の本質的覚醒を必要とする困難な戦いではあるが)。これまでのように集会やデモで同じ思いを共有する「仲間」とともに戦列を組むという形でだけではなく、その根底は個々人の心の奥から発せられるべきものとなるだろう。なぜならいくら最悪法が成立しようとも、心の中、つまり「内的領域の自由」に法の力は及ばない。個々の意志さえあれば「内的領域の自由」は国家からはるか離れたところで相変わらず闘い続けることが可能だからだ。

たしかに法律は私たちの日常を束縛する。国家による身勝手な施策、それが1パーセントの合理性もなく非人道的「戦争」であろうと「合法化」し、本来極めて単純に正当であるはずの「殺すな、殺したくない、殺されたくない」という態度が「反国家」化され、やがて「非合法化」されてゆくだろう。

もちろんこれからも戦争に抗うあらゆる有形の抵抗は引き続き有効であり必要だ。だが、ここでひとまず振り返ってみよう。私たちは「戦争推進法案」成立により、また外堀を一つ埋められた。危機はいよいよ目前だ。しかしながらこの明確な危機ラインに到達するまでに、権力は脈々と巧妙な土台建築に取り掛かっていて、外枠は既に完成していた。現実を直視すれば「すでに私たちは敗北の中」にあったのだ。

◆今後の日本社会は「穏やかな獄中の日常」になる

「戦争構造」というべきこの建築物の基礎は1992年に開始されたPKOへの自衛隊参加から可視的な形で始まっていた。もっとも建築計画の発案は1955年の保守合同、自民党発足にまで遡らなければならないし、それ以前に敗戦後も戦犯「天皇」を国民の裁きにより処罰・根絶やしにできなかったことまで勘案する必要もあろう。

1999年成立の「国旗国歌法」は不可視的な分野、つまり個々人の内面を侵食する巧妙な媒介となって、やがて今日の総反動体制確立へ突き進む重大な役割を担った。歴史修正主義、偏狭なナショナリズムの幾何級数的高まりは「国歌国旗」が法制化されたことによりさらに勢いを増し「戦争構造」建立の追い風となった。2006年の教育基本法改悪で国家は合法的な「愛国心教育」の権利を手に入れ、不可視的な戦争構造=差別・排外主義を助長する決定的な鍵を握った。

そして2014年7月1日の「解釈改憲」で「戦争構造」は可視的な「棟上げ」を終える。残りは構造物の付加的部分と屋根を乗っければ完成という段階まで建築は進んでいた。そして改憲を経ずとも「戦争推進法案」成立で「戦争構造」建築は完成をみた。ほの暗いこの建築物の中に私たちの生活は幽閉されることになる。今後の社会は「穏やかな獄中の日常」と呼んでも過言ではないかもしれない。

自衛隊員の退職がこれから相次ぐだろう。欠員の補給に防衛省が窮することは明白だ。

◆「内面の自由」だけは絶対に放棄してはならない

そこで、ご推測の通り「徴兵制」がやって来る。

既に防衛大臣中谷が明かしている通り、防衛省は「企業向け2年間の研修コース」という名の実質的徴兵制を準備し終えている。2年間も研修のために自衛隊に社員を出す会社があるだろうか。「2年間の自衛隊研修」は、現在韓国における平均徴兵期間より長い(韓国の徴兵期間は陸軍・海兵隊で21か月、海軍23か月、空軍でようやく24か月)。軍人になって帰ってきた社員にまた最初から業務知識を教育する不合理性を考えれば、社員供出により見返りが期待できる軍需関連企業(三菱、日立、東芝など)以外にこんな制度を利用する会社はないだろう。

それでも足らない兵站の補給は、日本学生支援機構から奨学金を借りていて返済に窮する若年層に向けられるだろう。「研修」という名の徴兵制。これも21世紀型ファシズム戦時体制の特徴かもしれない。意味を収奪され・置き換えられたことば「研修」の実態は「徴兵制」だと読み解かなければならない。「平和を守る」をキャッチコピーにした自衛隊の募集ポスターはかなり昔からあるが、この場合の「平和」も「戦争」と置換しないと真意を見失う。

暗澹たる現実ばかりを紹介しているが、私がもっとも強く訴えたいのは「内面の自由」を絶対に放棄してはならない、ということだ。渋谷でも銀座でも梅田でも難波でも八丁堀でも国際通りでも、見かけは何変わらず自由に人々が行き交っていたし、今日だってそうだ。しばらくの間、近未来もその姿に変わりはないだろう。でも行き交う人たちの内面はこの30年ほどで随分劇的に変化してきてはいないだろうか。

◆「戦争構造」という建築物の住人に相応しい国民(臣民)の育成

消費と快楽の為に与えられる「情報」操作により、外見は変わらなくとも個々人の内面の自由は相当無意識に縮んできてはいまいか。「戦争構造」という建築物の住人に相応しい国民(臣民)の育成も同時に完成を見ようとしている、と考えるのは穿ち過ぎか。

「また」、と言われるかもしれないが、あえて指摘すれば「戦争推進法案」反対運動の中にすら、「内面の自由」を失い、あるいは理解できない人たちの姿があった。

まずは、「内面の自由」を固く守り、その領域をひとりひとりが広げてゆくことがこの悲しい時代にあっては肝要ではないかと思う。いささか悲観的に聞こえるかもしれないけれども、そうではない。状況は救いがたく殺伐としている。絶望的ですらある。でも「内面の自由」を保持してさえいれば、多様な反撃は必ず可能だ。未来や可能性は運動体の中だけにあるのではない。あなたの心の中にあるのだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「戦争法案」阻止で街頭の前衛に躍り出た若者たちが「安保闘争」を越える時
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる

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[総力特集]安倍晋三の核心!
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首が飛んでも動いてみせるわ──野党の本気が死中に活をみいだす

横断歩道より(2015年9月16日)

9月17日午後4時半
参議院平和安全法制特別委員会で「戦争法案」が強行採決された。
「やるだろう」「やられるだろう」は、織り込み済みではあった。
しかし、奴らの謀略は予定より1日遅れている。

我々は負けてはいない。
明日、野党議員が全身全霊で決起すれば、
展開は開かれる。

国会前正面道路入口付近(2015年9月16日)
国会への道々(2015年9月16日)


◎[参考動画]安保法案、参院委可決 採決強行に国会外でも抗議の声(共同通信社 2015年9月17日公開)


◎[参考動画]国会前デモ、これまでの動き 過熱する「NO」 大きなうねり(TBS News-i 2015年9月17日公開)


◎[参考動画]国会前ではデモ隊などから怒りの声(TBS News-i 2015年9月17日公開


◎[参考動画]国会前に新たにデモ隊など到着、81歳女性も(TBS News-i 2015年9月17日公開)


◎[参考動画]雨の国会周辺で響く、老若男女の「廃案」コール(テレビ朝日 ANNnews CH 2015年9月17日公開)


◎[参考動画]安保法案:採決強行 全国で抗議の声(毎日新聞2015年9月17日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「戦争法案」阻止で街頭の前衛に躍り出た若者たちが「安保闘争」を越える時
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?
◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心

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「戦争法案」阻止で街頭の前衛に躍り出た若者たちが「安保闘争」を越える時

いよいよ「戦争推進法案」の参議院における審議が佳境に入った。ここへきてこの最悪法の阻止に立ち上がる人びとが全国で激増している。

60年、70年安保闘争の画像や映像も散見されるようになってきた。「壮大なるゼロ」と往時は自省を込めてか、表現されもした「安保闘争」。私は結果的には敗北したが故に「日米安全保障条約」が改訂、延長されてしまったけれども、あの闘争自体が無意味なものであったとは全く思わない。


◎[参考動画]1960年安保闘争(rosamour909 2010年05月12日公開)

結果は勿論重要だが、あの時代あらゆる力を結集し学生、労働者が闘ったことは、その場にいた人のみならず、実体験のない世代にも、そのエッセンスは受け継がれている。

時代が異なる。だから抗議行動の形態はずいぶん変化はしている。60年代、70年代は言わば「政治の季節」であり、学生がデモや政治集会を開くのは当たり前の風景だったのだから。

ひるがえり今日の大学は学生管理機構とも言い換えるべきほどの弾圧組織に成り果てた。立て看板は禁止、あるいは許可制で、学内での集会は届け出制という姿がおおかたの大学の有り様だ。

大学は学生が政治的、社会的問題に目を向けて、行動することを警戒し憎悪している。

非政治性こそがあるべき姿だとの暗黙が支配し、それに疑問を抱き、打ち破ろうとする教職員は圧倒的少数派だ。

ここに、本来学問の教育・研究をその責務とする大学の「裏切り」と「社会的背任」がある。悪の本質は「戦争推進法案」成立を企む安倍を中心とした反動政権にあることは間違いないけれども、大学だってこんな時代を招致した下支え機関として充分指弾されるべき役割を担ってきた。

でもそんな寒々とした今日だって学生は街頭に姿を現しはじめた。政治初心者が大半を構成する学生たちには大いなる活躍を期待する。主催団体の如何を問わず、遠慮することはない。怒りを!怒りをぶつけるがよい。

あれこれ御託を並べても、未来ある若者の前で老兵はありもしない未来を獲得出来る道理はない。

◆ようやく若返った「前衛」

闘いには、最先頭に位置する「前衛」その後ろから最前列を押す多数の「中衛」、そして体力的には若者にはかなわない年配者が後ろからの敵を睨む「後衛」がある。

本来闘いの隊列は自然にそのような形態を構成するのだが、長きにわたりデモや集会には若者が圧倒的に不足していて、「前衛」の平均年齢が60歳から70歳という光景が長く続いた。

あれでは勝てはしない。だいたい最前列には気力も体力も充実した連中が陣取らないと全体の高揚がない。仕方なく前衛に押し出された高齢の方々、心意気だけは20代のままだが、体力の衰えには勝てはしない。

新しく生まれた団体であろうが、各大学のサークルだろうが、この時代には珍しい政治に敏感な学生だろうが、この際関係ない。敵は若者を戦場に送りたがっている安倍自公政権だ。「戦争推進法案」の他にも、この政権は庶民にとって「何一つ」有難い政策を行ってはいない。

言い切ろう。安倍は絶対悪である!

街頭に躍り出た若者よ、未来を開くのは君たちだ。お行儀よく、おとなしく自重する必要など微塵もない。多彩な発想と行動で安倍を打倒しよう。遠慮していて赤紙が届いた時に後悔しても、泣くのは君と君を愛する人たちだ。


◎[参考動画]国会前、市民ら結集 安保法案反対で集会(共同通信社2015年09月14日公開)


◎[参考動画]安保法案 最大のヤマ場に「反対の声」各地から(TBS News-i 2015年9月16日公開)


◎[参考動画]TBS NEWS23 安保法案反対の声:国会前・横浜・名古屋・京都・広島(LunaticEclipseAnpo2 2015年9月16日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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金曜で潮目は変わる!──「戦争法案」阻止でいま野党がすべきあの手この手

「国会の中で我々は少数だ。皆さんの声が法案成立を阻む力になる」民主党の岡田代表が過日、「戦争推進法案」反対集会で参加者に向かって語りかけた。社交辞令としてはそうだろうけども、腰を据えて「何が何でも」この悪法を阻止する、という当事者としての覚悟がこの言葉の中にはない。

◆「内閣不信任案」だけじゃない──与党の横暴に見合った最大限の抵抗を野党は徹底的に行うべき

中央公聴会、地方公聴会で2日間は時間を使わざるを得ないが、その後与党は、大急ぎで委員会強行採決を図ろうとするだろう。最短で17日といったあたりか。委員会採決に持ち込まれたら、野党議員は衆議院委員会時のような「茶番」は見せてほしくない。少なくとも与党の横暴に見合った、正しい最大限の抵抗(それは採決をさせないか、否決に持ち込む行動を意味する)を行うべきだ。

野党は「内閣不信任案」の提出を視野に入れているという。当たり前だろう。技術的なタイミングもあろうが、当然「内閣不信任」は問われるべきだ。それ以外にも「憲法を現実に合わせる努力をしなければならない」と発言した中谷防衛大臣や、答弁内容を二転三転させた岸田外務大臣の「問責決議」、これまでの政府見解を見事に無視した答弁を続けている横畠裕介内閣法制局長官の罷免要求、などは仮に委員会を法案が通過しても参議院本会議で審議に持ち込むべきだ。

◆採決が19日からの5連休後にずれ込めば、潮目は変わる

参議院本会議での採決を仮に18日中に行うことが出来なければ、情勢の変化が現実味を帯びてくる。5連休中は会社や学校が休みなので、日中も人が集まりやすいだろう。国会周辺は9月14日も5万人近い抗議の人々であふれた、と報道されているが、抗議活動がさらに高まり、霞が関、永田町を人民が占拠する事態になれば、連休明けの採決は容易ではなくなる。

かといって、与党がこの法案成立を諦めるはずはない。自民党議員の中には「せっかく政権を取り戻し、美味しい汁を吸っているのに、どうして次の選挙で確実に不利になることにばかり執心するのか」と内心苦々しく思っている新人議員も多いだろう。その通りだ。

民主党政権の「ドアホ」、とりわけ大飯原発再稼働を行った野田(もうこの名前と存在は忘れられつつある)。勝てる道理のない自爆的解散に打って出たあの男以上の自滅行為に猛進しているのが安倍だ。御用マスコミに支えられ、何があろうと盤石と思っているかもしれないが、それは慢心というものだ。

◆安倍政権の蒙昧は国民の愚かさをはるかに凌駕する!

安倍は今年に入ってからだけでも、実にテレビ地上波に単独で9回も出演している。ネット番組への出演も入れればその数は数えきれない。「公正・中立」を電波法で定められているテレビ局のこの行為はどう見ても偏向・破廉恥としか表現しようがない。ニュース番組などで頼まなくても独占的テレビ出演が確保されているのに、NHKはいうに及ばず、民放テレビ局までが「さあ、さあ安倍総理様、どうぞお気兼ねなく、思う御分自説をお話しください」とばかりに「大ぼら」吹きに公共の電波を提供する。日本テレビ・フジテレビ系列テレビ局の罪は限りなく深い(安倍が出演したのはこの両局系列のみで、TBS、テレビ朝日系列への単独出演は今のところない)。

それでも、破格の「延命治療」を施してもらって株価はどうなった? 年金原資をどんどん放り込んで一時的な上昇を見せたけれども、そんなもの長続きはしない。もう「アベノミクス」という、あの欺瞞語だって聞かれなくなったじゃないか。

この島国の大半の国民は愚かだ。非常に愚かだ。しかし安倍政権の蒙昧は国民の愚かさをはるかに凌駕する。

[図]第23回参議院議員通常選挙の結果(2013年7月21日=Wikipedia)

◆参議院の与野党差が28議席だということ

現時点では参議院通過を「あらゆる手立て」で阻止することが重要だ。それは可能である。その手段を一つだけ示唆しよう。参議院の総議席数は242だ。そのうち自公が135で野党が107だ。野党の中にも自公同様の主張の党も混ざっているので単純な加減ではないけれども、与野党の差は28だ。(第23回参議院議員通常選挙の結果=Wikipedia)

これが逆転すれば当然与党案は否決される。採決の際に与党議員のうち14人が立場を変えれば同数となる。でも、それは今のところ現実的ではない。

例えばだ。自民党の中で急に集団インフルエンザが流行し議員本人が本会議に出席できなければどうなるだろうか。40人がインフルエンザに感染し、起き上がれなければ、採決では「委任」はできないから欠席理由は関係なく否決だ。理由はインフルエンザでも、交通事故でも不良に絡まれて怪我をしても、二日酔いでも、身内の不幸でも、自宅の床上浸水でも、ぎっくり腰でも関係ない。

そんなことは通常起こりそうなことではないけれども、農業用水のような小さな河川が氾濫し、誰も予想しなかった大水害が起きたことをつい先ごろ私たちは経験している。世の中何が起こるかわからない。その気になれば何が起きても不思議ではない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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「戦争法案」断固阻止!──沖縄「祖国復帰斗争碑」に学ぶ「反戦」の哲学

「戦争推進法案」の参議院での審議が正念場をむかえている。与野党の議員数で単純に天秤にかければ、この最悪法案が可決されてしまうことは自明であるけれども、それを傍観しているわけにはいかない。

◆法制化された制約は私たちの生活や行動をいやおうなしに束縛する

私は政治が嫌いだ。でも、政治は私(たち)を常に拘束し、逃してくれることはない。だから、私にとって政治は嫌いな対象であっても無視することができない。私にかかわらないでくれ、政治は政治の好きな人たちで勝手に決めて、戦争も、紛争も決めた連中が、出向いて殺し合いなり、どつきあいなりしてくれ、と念じるけれどもそうはゆかない。振り払おうとしても法制化された制約は私たちの生活や行動を束縛する。

狡猾で無責任な政治家どもは、想像すらできない惨状を人びとにもたらす「戦争」に、この島国を誘引しようと熱をあげる。許せない。絶対に許せない。

憲法論、法律論の初歩すら通じない首相をはじめとする閣僚に、理解や対話による解決を求めるのは全く非現実的である。彼らは明確に私たち(この島国に住む住民だけでなく、戦争を望まない世界の人々に向かって)の敵である。

◆沖縄本島最北端、辺戸岬に立つ「祖国復帰斗争碑」碑文に学べ

あれこれ反撃を試みようと少ない知識での抵抗を試みていたが、私の無知を張り倒し、思いっきり叱られるような骨太の「反戦」哲学を示す記念碑の存在を思い出した。それは沖縄にある「祖国復帰斗争碑」だ。沖縄旅行のガイドブックなどを調べたがこの碑を紹介しているものはあるが、碑文の紹介を私は見つけられていない。文末に碑文の全文を紹介する。

沖縄本島辺戸岬に立つ「祖国復帰斗争碑」

沖縄本島最北端の辺戸(へど)岬に立っているこの碑に刻まれた血のにじむようなことばは、2015年9月、私たちが今、何を考え行動すべきかの示唆を与えてくれる。「NO NUKES voice 第5号」は「福島―沖縄犠牲のシステム」が特集で、表紙には「NO WAR! NO NUKES!」の文字が躍る。反戦・反原発から沖縄差別を徹底的に掘り下げる特集号だ。

鹿砦社は自慢ではないが、権威に媚びを売るような軟派ではない。

「戦争推進法案」審議闘争に「デジタル鹿砦社通信」は全力を傾注し、その斗いに微力ながら加わることを宣言する。沖縄、福島、を忘れずに「戦争推進法案」を断固粉砕する決意を表明する。

全国のそして全世界の友人へ贈る

吹き渡る風の音に耳を傾けよ。権力に抗し復帰をなし遂げた大衆の乾杯の声だ。打ち寄せる波濤の響きを聞け。戦争を拒み平和と人間解放を闘う大衆の雄叫びだ。

“鉄の暴風”やみ平和のおとずれを信じた沖縄県民は、米軍占領に引き続き、一九五二年四月二八日サンフランシスコ「平和」条約第三条により、屈辱的な米国支配の鉄鎖に繋がれた。米国の支配は傲慢で県民の自由と人権を蹂躙した。祖国日本は海の彼方に遠く、沖縄県民の声は空しく消えた。われわれの闘いは蟷螂の斧に擬された。

しかし独立と平和を闘う世界の人々との連帯であることを信じ、全国民に呼びかけ、全世界の人々に訴えた。

見よ、平和にたたずまう宜名真の里から、二七度線を断つ小舟は船出し、舷々相寄り勝利を誓う大海上大会に発展したのだ。今踏まえている土こそ、辺土区民の真心によって成る沖天の大焚火の大地なのだ。一九七二年五月一五日、沖縄の祖国復帰は実現した。しかし県民の平和への願いは叶えられず、日米国家権力の恣意のまま軍事強化に逆用された。

しかるが故にこの碑は、喜びを表明するためにあるのでもなく、ましてや勝利を記念するためにあるのでもない。

闘いをふり返り、大衆が信じ合い、自らの力を確め合い、決意を新たにし合うためにこそあり、人類が永遠に生存し、生きとし生けるものが自然の攝理の下に生きながらえ得るために警鐘を鳴らさんとしてある。(赤字強調引用者)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?
◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
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[総力特集]安倍晋三の核心!
体調悪化、原発回帰、カルト宗教、対米追従、芸能人脈、癒着企業の深層と真相

孫正義の商いは顧客軽視がヒド過ぎる!──Y!mobile錯誤対応のカオス

携帯電話(PHSを含む)の機種変更や新規契約手続きは年々煩雑さを増している。担当者の業務知識と手際にもよるのだろうけども、下手をすると半日仕事になる。あんなに時間をかけて仕事をしていて作業効率は上がらないし、売り上げにも良い影響はないのではないかと想像していたが、また呆れる事態に直面した。

私はスマートフォンを使っていない。旧来型の電話機能だけを持つ機種を利用している。使用頻度が高いためか、個体差はあるが携帯電話はバッテリーの機能が低下したり、不都合が生じることをこれまで何回か経験してきた。その都度、故障の際には無料で修理が受けられるサービス(月額500円ほど)に加入しているので、余分に修繕費用を支払うことなしに部品交換などの対応を受けてきた。

『孫正義の焦燥』(大西孝弘著:日経BP社2015年6月22日)

◆Y!mobile(旧willcom)顧客対応のカオスにはまって

ところが先日加入しているPHSの請求書に不可思議な点を発見した。私は2年前の5月8日に当時willcom(現在はY!mobile)のPHSを契約した。当時「10分までならば何回どこへ通話しても無料」という料金体系に惹かれたためだ。ところが使用していたPHSは数か月すると充電の際に、手が触れられないほどの熱を持つようになった。明らかな異常だから購入した店舗へ機器を持参し修理の依頼をした。このPHSも通常使用時の故障の際には無料で修理を受けられるサービスに加入していたので、修理の間は代替機をもらい2週間ほどで「修理が出来た」と連絡があったので店舗に赴いた。ちなみにその日は2013年10月21日である。

修理が完了した機器は充電されていなかったので、とり敢えず家に持ち帰り充電を始めた。記憶が定かではないがその最初の充電時か、あるいは次の日の充電時に、またしても最初発生したのと同様機器が触れないほどの高温になる症状が起こった。充電を放置しておけば火災になる懸念もあるほどの熱さだったので、仕方なく再度店舗へ機器を持参し、状態の説明をした。店舗の担当者はそこで充電を試してみたところ、私の申告通りの不具合が発生することを確認し、「この機器では再度お客様にご迷惑をおかけする可能性がありますので、操作性は違いますが違う機種へ無料で変更は如何でしょうか」と提案してきた。

私は暇人だが、willcomの店舗は自宅からかなりの遠距離であり、何度も足を運ぶのは面倒だったので、店舗担当者からの提案を受入れ購入したものとは別の機種へ無料で交換してもらった(はずであった)。これが2013年10月23日だった。

最初の契約時に機器の料金は2年の割賦で契約していた。購入が2013年5月だから今年の5月で支払いは終了するはずだった。ところが6月、7月の請求書にも機器代金の割賦代金が依然記載されている。これはおかしいだろうと思い、購入した販売店へ電話をかけ問い合わせたが「電話でのお問い合わせには『個人情報』の観点から答えられない。直接どこでも良いのでY!mobileの店に行くか、問い合わせ番号で確認してくれ」という答えが返ってきた。

Y!mobileのPHSは使い方によっては非常に安価だが、この会社の接客システムはどう間違えても「まとも」とは言い難い。現在私は月額1500円を払い、国内であればほぼすべての電話番号に時間制限なくかけ放題のプランに加入しているが、指示された「問い合わせ番号」への通話は有料なのだ。機器の操作方法や料金の問い合わせなど携帯電話(PHS)を使っていれば問い合わせる必要が生じるのは当たり前だと思うのだが、店舗に赴かない限り「無料」で一切の問い合わせを行うことが出来ない。こんな不親切な対応があるだろうか。

◆声が枯れるほど徒労が続く契約確認プロセス

しかも、私が機器を購入した店舗の担当者は電話での問い合わせの際に「どこでも良いので」Y!mobileの店へ行けと私に指示したので、最近開店した自宅近くの営業所へ行ったところ「細かい契約の内容は販売した店でないと解らないのでそちらへ行ってください」と店員が言う。おいおい、加入者の情報くらい繋がっている会社のコンピューターで解るんじゃないのか? でなければ、購入店から遠隔地でのトラブルには対応出来ないというのか。私が「会社が一元化して情報を把握していないのか」と聞くと担当者は渋々どこかへ電話をかけだした。

電話をかけた先はY!mobileの情報が集まるセンターだったようで、そこには私の契約日その他の記録が残っていた(当たり前だが)。それによると、私は2013年5月8日に初めての契約を結び、機器は2年の割賦となっていたが、10月21日修理から返還された日に「同型だが新たな」機器をもう1台新規に購入して割賦払いの契約をしたことになっているという。

話がややこしいが、私は動作不良の為に機器を修理に出した。それを受け取りに行った日に「同じ機種をもう1台」新規購入したという記録で、その日から新規の機種分の割賦料金も併せてが引き落とされていたことが判明した。「そんなあほな!」と思わず声を挙げてしまった。1つの電話番号に2台のPHS電話機(しかも同型機)を契約する人間がいるだろうか。利用者にとって何のメリットもないそのような契約を、この「口うるさい」私が受諾するはずがない。旧willcomの事務手続きミスであることは明らかだから、そこで「返金」の手続きをしてくれと要請したが、やはり「契約した店でないと対応が出来ない」と担当者は言う。この会社は同じ社名を名乗っていても同一のサービス を受けられることがない、「類稀(たぐいまれ)」な会社だ。仕方なしに購入した店へ向かった。

その店でまず驚かされたのは「契約書のコピーをお持ちください。弊社は契約書を保管しておりません」と担当者が発言したことだ。「え!なんで契約書を保管しないの?」と聞くと「個人情報保護の観点から」との説明だが、そんなあほな話があるだろうか。契約者には契約書の保管を義務付けるが、Y!mobileは顧客と契約を交わしたらその日のうちに「契約書」をシュレッダーにかけるのだそうだ。なら何のための契約書なのだろう。双方に主張の違いが生じた時に(今回の私のケースもそうだ)会社が契約書を保管していなければ議論にならないじゃないか。そう指摘すると「ではこの壁を契約書ズラーっと並べろと仰るんですか」と突っかかって来る。接客態度も悪ければ、 頭もよろしくない。

私は自宅近くの店舗で受けた説明を再度繰り返し「どう考えてもそちらの入力か処理ミスだから今すぐ返金の手続きを取ってくれ」と再度要請した。ところがまたパソコンに向かってカチャカチャやり始めた兄ちゃんは一向に事情を理解しない。それどころか横の人間が、ろくに調べもしないのに「こういう間違えはありえませんので」と無根拠に断定口調でこちらに非があるような言葉を投げかけてくる。

20分ほど待っただろうか。パソコンを叩いていた人間がようやく事情を理解し始めて「どこかにおかしいところがあるみたいですね」と言い始めた。「どこか」じゃなくて明確に2013年10月21日、修理が終わった機器を引き取りに来た日に「新たな機器を購入している」とする記録がおかしいだろ、と説明し彼らを納得させるのに3時間を要した。

最後に当日店舗にいた人間達では判断を出来ないので、「上司に調べさせ電話で連絡いたします」という言葉を聞く頃には私の声は嗄れていた。

◆顧客無視の「個人情報保護法」曲解も孫流か?

これだけ情報通信技術が行き渡っているのに「個人情報保護法」の誤った理解、いや、この法案自体の誤謬は「契約書」が「個人情報に該当するからその日のうちにシュレッダーにかける」という尋常ならざる業務手順を生んでいる。契約書を残さなくてもコンピューターの中には当然氏名、生年月日、住所などの情報は記録されるだろうから「契約書」をシュレッダーにかける意味は全くない。子供でも分かりそうな簡単な理屈がこの会社(いやこの社会か)では通用しなくなっている。

私は交わしてもいない割賦契約を証明するために「契約書」のコピー(2013年10月21日付)を持ってこいと言われた。ちょっと待ってくれ。交わしていない契約の「契約書」などあるはずがないだろう。無いものを証明することは出来ない。自社のミスを解決するために会社は保管しない「契約書」の保管義務を契約者のみに負われば、私のように「無い契約」の証明など契約者の側からは出来はしない。

携帯電話販売店の求人広告をいたるところで見かける。日々変化するサービス内容や会社の方針に低賃金労働者は苦しめられていることは想像に難くない。しかしだからといって明らかな過払いを2年余り利用者に押し付けておいて、あの対応はないだろう。私的には「もうこれ以上機能の開発や機器の新規発売は要らないから、簡潔、確実な仕事をしてくれ」と孫正義に直訴したくなる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい

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「軍事漫談家」井上和彦の下衆い動画が教えてくれた世間「ネトウヨ化」の病巣

テレビ番組、商業新聞からネットの世界まで右派が占領する番組や誌面は腐るほど増殖している。テレビ局勤務の知人は20年来の付き合いだが、数年前から政治や社会の話が通じにくくなっている。いい年をして(年をとったからか)どんどん思考が右傾化しており、最近では世間話をするのも憚られるので、私から彼に連絡を取ることはなくなった。同様の話は身近な人からもしばしば耳にする。「若いころはあんな奴じゃなかったのに。今では田母神俊雄みたいなことをブログに書いている」と評されるテレビ界の人間は少なくないようだ。

大メディアが総右旋回しているのだから、自由闊達(言い換えれば「好き放題」)の言論が飛び交うネットの中では、さらにえげつない情報発信主や番組が乱立している。

◆右派のネット動画をあえて観る「苦行」

人間は仕事上の理由や、自身の知識吸収の必要性を感じなければ、おのれと正反対の意見、いやおのれの主張が嘲笑されたり唾棄される番組を長時間視聴したり読み続けることを選択はしないのではないだろうか。情報収集のため内容をかいつまんでチェックすることぐらいはするけれども、1時間も2時間もダラダラ嘘八百を放言し続ける番組を毎回視聴し続けるのは、精神衛生によろしくない。簡単に言えば「あほらしくて」見ていられない。

私自身もネットで放送されている「右派」の番組を、これまで何度か視聴したことはある。彼らの論点がどこにあるのか。それを知っておかなければ反論ができないだろう、が視聴の理由だった。「チャンネル桜」と名乗る番組を開始から終了まで何度か観たが、視聴の間に溜まるフラストレーションといったら半端ではなかった。ただ収穫はあった。結果的に彼らの主張は番組を何度も観る必要がなかったことが分かったからだ。「論理ではなく感情で、事実はなく希望で彼らの歴史観や世界観は構成されている」ことが理解できた。よって限られた人生の貴重な時間をこれ以上「苦行」のために浪費したくはないし、するつもりもない。

と思っていたが、芸能ニュースに絡めながら「戦争推進法案」を援護したり、反対する市民をボロクソにこき下ろしている「松本佳子のにちよる」というニコニコ動画で配信されている番組の内容があまりにも酷いから一度視聴してみてくれないか、という読者からのリクエストを頂いた。

ニコニコ動画の番組を視聴するためには(番組によるのかもしれないが)、会員登録をしなければいけない。何度か会員登録をしようと試みたのだがうまくいかない。「あなたは『反日』思想の持ち主のため入会できません」のエラーメッセージが返って来る(勿論冗談)。したがって「松本佳子のにちよる」を今のところ視聴できてはいない。直近の番組タイトルは『ショック堀北真希の結婚!!』『軍事漫談家・井上和彦の戦後70年談話』となっている。番組の司会は「チャンネル桜」で何度も顔を見たことがある田母神ガールズの「色希(しき)」だ。

◆「軍事漫談家・井上和彦」はただの「バカ右翼」

雰囲気や評判が怪しいからといって、番組のタイトルだけで内容を決めつけてはいけない。だいたい私は「ショック」であるはずの「堀北真希」という人物さえ知らない人間なのだから。でも「軍事漫談家・井上和彦」の名は過去どこかで目にしたことがある。

井上は今のところWikipediaにとりあげられてはいない。そこまで社会的に影響のある人物とは認知されていないということだろうか。

そこで本人のホームページと幾つかあるYoutubeの映像で井上の主張を聞いてみた。1963年生まれで法政大学社会学部出身の井上は「専門は、軍事・安全保障・外交問題・近現代史。テレビ番組のコメンテーター・キャスターを務めるほか書籍・オピニオン誌の執筆を行う。テレビ番組では歯に衣着せぬ爆裂本音トークで 難解な軍事問題などを分かりやすく解説する。

『たかじんのそこまで言って委員会』(讀賣テレビ)では 「軍事漫談家」の異名を持ち、同番組をはじめとして「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「かんさい情報ネットten!」(讀賣テレビ)など出演番組多数。また「日本文化チャンネル桜」の「防人の道 今日の自衛隊」のキャスターのほか、航空自衛隊幹部学校講師、東北大学大学院非常勤講師、商社シンクタンク部門の主席アナリストも務める。平成25年より「国民の自衛官」(フジサンケイグループ主催、産経新聞社主管、防衛省協力)の選考委員」とホームページ内で自己紹介をしている。

本人は「どうだ!偉いだろう!」と思って記載したのかもしれないが、私に言わせれば被疑者が罪状を自白しているに等しい。とくに関西ファシズムを牽引した「たかじんのそこまで言って委員会」出演を中心としたテレビ、ネット番組の出演歴はその主張を明らかに示している。こやつは単なる「バカ右翼」だ。

◆井上の軍事論が漫談そのものだから「軍事漫談家」ということはよくわかった

貴重な人生の時間を割きたくはないが、1つ位はその証拠を示さねばならないだろう。

これは「チャンネル桜」に出演した際の井上だ。「米中対話」のニュースを取り上げたと思ったら、「中国が納得していない」と勝手な解釈をして「これでいいんです!こういう対話をしてほしい!」と言い放つ。意味わからないなぁ、私には。ああ、そうか。何が何でも「中国」=悪にしないと「軍事漫談家」はつとまらないか。

また、「自衛隊とフィリピン軍の共同訓練」を持ち上げるは「中国が脅威ではないって言うやつが国会にもいるけども頭がおかしいの」だの「馬鹿な奴が原発反対だとか根拠のないこと言ってんの」とのたまう、果ては「沖縄戦追悼式典70周年」を取り上げたニュース紹介の中で翁長雄志知事が安倍政権批判のコメントを読み上げたことに言及し「あなた(翁長知事)が非常に限られた空間の中で作られた、民意と称する『米軍の普天間移設』を論じているけど、日本とアメリカが決めたこと。言ってみれば社長と社長が決めたこと。それを言ってみれば課長クラスの知事が『止めてくれ』って、何言ってるんだて」と言い放つ。真面目に聞いていると、私自身が恥ずかしくなるほどの「沖縄差別」を堂々と展開する。

要するに無茶苦茶なのだ。「中国は脅威」とこの番組で言い放ちながら、別の番組では「中国なんて全然恐くない。武器は全部コピーなんですよ。武器製造の技術が高いのは自動車を作る技術のある国。だから日本の武器は一流です。武器商品市に行くと中国人が写真撮ってるんですよ。中国の武器は全部外側からコピーで作るんです」と仰せになる。

どっちなんだ!と真顔で井上に迫ってはいけない。井上は「軍事漫談家」なのだ。漫談に食って掛かるのは無粋に過ぎる。

芸能ニュースと「右派ネタ」を取り上げる「松本佳子のにちよる」、実は画期的な番組ではないか、と私は内心期待をするようになっている。人畜無害な芸能ニュースと声高に叫ばれる好戦・右派的言動。じつは双方とも「漫談」の域を出ない、ということを井上がその肩書きによって主張し証明してくれているからだ。

問題は「漫談」を真に受けてしまう人々の側だろう。この番組に限らず、大小メディアは「情報商品」として「芸能ニュース」も「戦争」も「原発」も「マイナンバー」も一蓮托生に垂れ流す。あれは「報道」ではなかったのだ。「漫談」と呼ぶのが相応しいということを井上は教えてくれている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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