《大学異論42》同志社大学・大麻所持者再逮捕報道の不可解

私は同志社の関係者ではないが、同志社が事件を起こし続けるので取り上げざるを得ない。過日こんなニュースを目にした。

「大学なら警察こないと…」同志社大図書館に大麻持ち込み容疑、卒業生を逮捕 (産経新聞2015年8月31日付)

同志社大学(京都市上京区)今出川キャンパスの図書館で大麻を所持していたとして、京都府警上京署は31日、大麻取締法違反の疑いで、奈良県橿原市内に住む無職の男(25)=窃盗未遂罪で起訴=を再逮捕した。同署によると「吸う目的で持っていた」と容疑を認めているという。
再逮捕容疑は、8月6日午後6時10分ごろ、同キャンパスの図書館で大麻草1袋を所持していたとしている。
同署によると、男が他人のかばんを物色するなど不審な行動をしているのを持ち主の男子学生が見つけ、報告を受けた大学関係者が同署に通報。駆けつけた署員が、男のズボンから大麻を見つけたという。
男は同志社大の卒業生。「大学なら警察官が入ってこないと思った」と供述しているという。

◆「何も盗っていない」被疑者を大学職員はなぜ警察に通報したのか?

この記事は不可思議だ。8月6日に同志社大学図書館で「他人のかばんを物色するなど不審な行動をしている」男を学生が職員に通報し、「何も盗っていないのに」職員が警察に通報をしている。この程度の事で大学職員が警察に通報するものだろうか。この記事通りだとすれば同志社大学職員の感覚はもはや「警察国家」の構成員と言わねばならない。

さらに理解しがたいのは「不審な行動」で通報された男性は「窃盗未遂」で起訴されているが、「8月6日午後6時10分ごろ大麻草1袋」を所持していたことが確認されていることだ。8月6日逮捕時に男性は上京警察で詳細な身体検査を受けて「大麻草1袋所持」が確認されているのであれば、即「大麻取締法」違反でなぜ警察は送検しなかったのか。8月31日になっての再逮捕はいかにも不自然だ。「窃盗未遂」と「大麻取締法違反」では後者の方が明らかに量刑も重いにもかかわらず、逮捕直後には「大麻取締法」違反では起訴されていない。

◆あまりに不可解なので同志社大学広報課に問い合わせてみたら……

不明な点があまりにも多いので、9月4日午前、同志社大学広報課に問い合わせた。

「この事件は産経新聞のみで報じられており(上述の通り)不可思議な点が多いが承知しているか」と聞くと、広報課のハタブ氏は「事件があったことは承知しているが詳細は把握していないので内部で情報を収集する」と約束してくれた。後刻再度問い合わせると広報課の高阪氏が電話に出たので、私は再度「当該被疑者は他人の持ち物を『物色』している(つまり何も取っていない)だけで大学が警察に通報したということか」と質問すると「詳細が分からないので学生支援課に確認します」としばらく電話を保留にされた後、最終的に庶務係長秋田氏に電話が回された。秋田氏によると「自分の鞄から何かを抜き取ろうとした男を発見したので、学生がその男を捕まえて図書館のカウンターに連れてきた」そうだ。「そこで学生と連れてこられた男性に職員が聞き取りを行ったあとに、上京署(110番)へ通報した模様だ」ということだ。

つまり、被疑者はこの時点で「物色する」行為は認定されているものの「何も盗んではいない」のだ。それにもかかわらず図書館の職員は警察に通報をしている。

この取材の中で複数の同志社大学職員に尋ねた。「大学の中では意図的、あるいはそうでなくとも、置き引きや窃盗に該当する事案は多数起こる。図書館から本を無断で持ち帰る人間もいれば、大学の施設・設備に故意で損傷を負わす学生もいる。でも、そのような時に大学が『警察』に解決を求めるだろうか。しかも、今回のケースでは『被疑者』とされる人物は何も盗んでいない。大麻を所持していたのは、たまたま逮捕されたから発覚した付帯的な事実だ。こんな軽いトラブルで『警察』に通報するのは大学として妥当な行為だろうか、『大学の自治』を自ら放棄してはいまいか」

この問に関して名前は挙げないが、ある職員の方は「詳細はわからないが、新聞報道の通りだとすると大学が警察に軽々しく通報するのは『大学の自治』の放棄にあたると言われても仕方ない」と回答された。

◆「大学自治」の大原則が崩壊しつつある

「大学内で起きた問題は大学内で解決する」

これは私の苗字と同じ故人、同志社大学で学友会委員長と京都府学連委員長だった田所伴樹氏が同志社大学学内で、共産党系の学生たちから瀕死のリンチを受け生死の境をさまよった時、入院先の病院で口にした言葉だ。どれほど酷い仕打ちを受けても「大学内の問題は大学内で解決する」この極めて高い哲学を、被害者である田所氏は弱冠22歳にして「学生」として提起した。

かえりみて、今回の同志社大学当局の判断はどうであろうか。複数の職員の方々に取材したが皆さん「現場で何があったか詳細はわかりませんが」と口を濁す。

私は「分からなければ調べて教えて下さい」とお願いするけれども、彼らはその状況を外部に伝えることが禁じられているのか、あるいは調べる熱意がないのか、あいまいで実態が分からない。

◆被疑者以上におかしいのは同志社大学側ではないか?

いいか。こうやって破局への行進は、またしても歩を進めるのだ。誰も悪くない、誰も解らない、誰も責任を取らない。「疑わしい行動をした人間が悪いんじゃないか。それに彼は大麻も持っていたし・・・」との心中の言い訳が聞こえてきそうだ。

違う。断じて違う。学内で暴力事件が起り危機的な状況になっても、学生を守り通すのが大学職員の仕事だ。極端に言えば「学生を支援し守ること」以外に本質的な大学職員の仕事などない。経理も総務も学部事務室も全て学生を支援するために準備された部署だ。

「時代錯誤だ」という批判が既に頭の中で聞こえる。でも私は自分の考え方が間違っているとは全く思わない。

勘違いしているのはこの時代、そして「戦争推進法案」に賛成する学長を引きずりおろす気さえないこの大学のありさまだ。

いささか飛躍が過ぎると思われるかもしれないが、産経新聞の報道が正しければ、被疑者が語った「大学なら警察官が入ってこないと思った」との感覚が被疑者の行為・目的を度外視しても、よほど真っ当な原則に立脚しているように思える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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同志社「良心」の凋落──育鵬社採択を「適切」と開き直る同志社香里中学滝教頭

 

転落は減速を知らない。本コラムで既に取り上げてきた育鵬社の教科書を同志社大学の付属校である同志社香里中学が採択することを決めた。以下やや長いが内容が重要であるのでこのニュースを報じた『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日)の全文を引用する。

同志社香里中学(大阪府寝屋川市)は、2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書として、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択した。大阪府が8月28日発表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の元幹部らが執筆に加わっている育鵬社の教科書は、歴史に関する記述について議論もあり、一部の地域では採択やり直しを求める要請なども出ている。育鵬社によると、私立学校の16年度教科書採択状況はまだ全て出そろっていないが、キリスト教系の学校で同社の教科書採択が決まったのは、同志社香里中が初めてだという。

同志社香里中はこれまで、歴史と公民の教科書は帝国書院のものを使用してきた。16年度に、新たに育鵬社の教科書を使用する生徒は240人。滝英次教頭は、「教科書採択の年(である今年)に、教科、また学校として、文科省の検定教科書の中から、いろんな議論を踏まえた上で慎重に選定した」と話している。

育鵬社の教科書『新しい日本の歴史』と『新しいみんなの公民』は、元つくる会
のメンバーらによる日本教育再生機構が組織した「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)の関係者らが執筆・監修している。育鵬社は、フジサンケイグループの出版社である扶桑社の教科書出版部門を独立させた出版社で、扶桑社時代を含め、中学校の歴史、公民の教科書が検定に合格し発行されるのは今回で4回目。一方、つくる会は自由社から独自に教科書を出している。

育鵬社の教科書については、日本国憲法が連合軍総司令部(GHQ)に強要されたものだとする、いわゆる「押し付け憲法論」に沿った内容になっていることや、太平洋戦争の沖縄戦における住民の集団自決について、日本軍の強制性についての記述を避けているなど、さまざまな指摘がある。

一方、育鵬社の教科書の編集会議座長である伊藤隆・東京大学名誉教授(歴史)、川上和久・明治学院大学教授(公民)は、広報誌『育鵬社通信 虹』(2015年4月号)での共同メッセージで、「戦後70年の間には、教育の世界にも不毛なイデオロギーが持ち込まれた時期がありました。こうした一面的な物の見方を排し、生徒が真に学ぶ意欲を高め、多面的・多角的思考ができる人材となり、自らの郷土に貢献し、ひいては世界で活躍できるようになることを願い編集しました」などと述べている。『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日) (※文字強調は引用者)

学校法人同志社には系列の中学校として「同志社中学校」、「同志社女子中学校」、「同志社国際中学校」があるが、その中で今のところ「同志社香里中学」だけが育鵬社の教科書採択を決めたようだ。

◆「教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」と開き直る滝教頭

そこで上記記事に登場する同志社香里中学の滝教頭に電話で実情を聞いてみた。私が育鵬社の教科書には多くの問題や史実の誤りがあり、キリスト教系の学校の教科書と皇国史観は相いれないのではないか」と問うと「教科書選定は学校内で適切に行われた。文科省の検定を通った教科書の内容を精査し決定した」という。

「この教科書採択にあたり校内の社会の先生などから反対はなかったのか」の質問には「それは学校内のことなのでお答えできません」とかなり強気で答える。

「昨年までは帝国出版の教科書を利用されていたが、育鵬社の教科書とは内容に大きな差がある。育鵬社の教科書がキリスト教系、しかも新島襄が開いた学校で採択されることを問題と思わないか」と聞くと、[太字→]「不適当とは思わない。教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」[←太字]と逆に開き直られてしまった。滝教頭にはとりつくしまもない。問い合わせや講義の電話対応に手慣れている。この学校に民主的なプロセスなど無いだろうと想像させるに十分な「失礼」な応対だった。

◆幸福の科学学園と並んだ同志社香里──育鵬社教科書を採択した私立中の顔ぶれ

今年は4年に1度の次年以降使用する教科書を中学校が選定する年にあたる。大阪市をはじめ都立の中高一貫校など公立校でも育鵬社教科書の採択が進行している。じわじわと歴史修正主義の水位は上がってくるばかりだ。

それにしても、「あの」同志社系列中学での採択は驚嘆に値する。ちなみに前回(2011年)の採択時、私立中学で育鵬社の教科書を採択したのは以下の学校である。

《歴史》(12校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、樹徳、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、開星、岡山学芸館清秀、岡山理科大附属

《公民》 (11校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、清風、開星、岡山学芸館清秀

私立学校は各々の建学の精神に基づいて教育方針を決めればよい。だから「幸福の科学学園」が育鵬社の教科書を使うのは別に驚くに値しないし、独自の教育理念を持つ麗澤や、神道を建学の精神にしている皇学館といった学校が採択の中心であったのはむしろ自然である。しかし他の学校は(こういっては失礼だが)清風を除いてそれほど際立った存在の学校ではない。

このラインナップの中には、有名総合大学の付属中学の名前はない。国学院は多くの系列校を持っているが、採択したのは栃木だけだ。その中に今回「同志社香里」の名称が名誉にも加わるのだ。

◆同志社が「リベラリズム」を捨て「翼賛学校法人」へ独走する時代

学長村田晃嗣が衆議院特別委員会公聴会で「戦争推進法案」賛成を表明した大学を中心とするこの学校法人は、先人が築いてきた「リベラリズム」の歴史を完全に捨て去り、大手有名私学の中では「翼賛学校法人」として独走している。

系列中学の「同志社中学校」では村田の国会発言後、いち早く辞任を求める声明を出すなど良心的な教職員の方々が頑張っている。今日の電話取材に応じてくれた同志社中学の先生は「正直びっくりしました。同志社中学ではそのような動きはありませんし、考えられません。全く酷い時代ですね」とため息を漏らしていた。

「同志社香里中学校」の蛮行は、キリスト教系学校として「全国初」の最悪選択を行った恥ずべき学校として歴史に名を残すだろう。教育機関が「確信的」に犯した罪は金輪際消えることがない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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有名スポーツ選手たちが乱発する「愛国発言」処世術

こんな言い方をすると、また叱られるのを承知であえて言う。

橋本聖子

「高いレベルで活躍したスポーツ選手は社会的発言を慎重に」と。自転車、スケートで五輪に出まくった橋本聖子は自民党から出て既に当選4回。日本スケート連盟の会長にもなり、もう古参政治家の風格だし、同じスケート出身では堀井学も知らない間にちゃっかり自民党議員に収まっている。元巨人投手の堀内恒夫も現役の自民党国会議員だとご存知の方はどれくらいいるだろうか。「やわらちゃん」こと谷亮子は小沢が天下を取ると見間違えたに違いない。「民主党」から当選したが、こんなことになるのが分かっていれば最初から自民党から出ていただろう。

与党政治家でなくとも、「語り部」となって恥ずかしくも恐ろしい発言を行う元スポーツ選手には毎度がっかりさせられる。スポーツ選手として一流を極めた人には頭脳明晰な人が少なくないことは知っている。だがその知名度や頭脳はほとんど「時の権力」に収斂されて行ってしまい利用される。ご本人たちもそれを問題とは感じない。

◆暗い本性がにじみ出る為末大

為末大

語り部として、最近その暗い本性をあからさまにし出して来た人間に為末大がいる。為末は元400mハードルの選手だった。世界選手権で2大会連続銅メダルを獲得し、日本人としては卓越した競技者だった。現役中から陸上選手としては口数の多い方だったが、最近為末のツイッターには下記のようなやり取りがある。

「左翼思想とは、自己中心的で自己陶酔して優越感に浸る幼稚な人間が陥る病気らしいですからねw「自分は凄くてお前らは駄目なんだ」という他者を蔑む意識があるから、馬鹿にし蔑む他者を「国家」「権力」に転化して反国家、反権力の左翼思想に傾倒するらしい」

これはある人物が為末に向けて投げかけた言葉だ。これに対して為末は以下のように答えている。

「確かにいい年をこいたおっさんが何かに傾倒して自己陶酔するのはみっともないかもしれないですね 」、「なるほど自分は凄くてお前らはダメなんだという他者を蔑む意識があるとだめですよね」とコメントしている。

また、「政治家と話をするとそんな悪代官みたいな人なんてそうそういないと気づくし、中国人と話をするとそんなに日本嫌いの人ばっかりでもないとわかるし、障害者と話をするといいやつもいればやなやつもいるということがわかる。友達の幅を持つことがバランスを保つ上で大事」と大所高所からご説を仰せられるが、個人で会って「悪代官」ズラをして話す政治家などよほどのアホであり、政治家の評価は彼らがどのような政策を実行したか、しようとしているかで判断されるべきだという基本的な評価基準を為末は理解していない。また自民党政治家の連中は次期選挙の比例区候補として為末の名を挙げていることだろう。これらのコメントから分かるのは、為末は多くの与党政治家と接触していることと、「左翼嫌い」であることだ。最近は目出度くも「バンキシャ」を始めとする低俗テレビ番組へ「コメンテーター」としての出演も多いらしい。

為末は正直な告白もしている。

「僕は未だに国と呼ばれるものが一体なんなのかがわからない。人なのか土地なのか組織のことなのか価値観のことなのか」と。これは本音だろう。だが大々的に社会的な発言を行うのならば、「国」の本質について回答が出なくとも、自分の中で考えに考え抜いてから言葉にすべきだ。「国」や「国家」をどう考えるかの参考書はいくらでもあるのだから。

また、「昔からわからないことを素直に聞く度に相手に鬱陶しいと言われて、それが辛くて小学校中学校ぐらいは黙っていたけれど、大人になって試しに言ってみたら今度は逆に褒められてあの時と何が違ったんだろうと考えている」とある。

「大人になって試しに」言ってみた為末は小中学校時代の無名な生徒ではなく、マスメディアにとって「商品価値」がある人間に変わったからだ、と言う簡単な理由もわかっていないようだ。為末ではなく一般の市民が同僚や先輩に同じ問を投げかけても、それは「鬱陶しがられる」ことだと言う洞察力が為末にはない。

◆外国人力士の台頭を「蒙古襲来」と語った舞の海

舞の海

為末ばかりを叩いたが、これは如何なものかと思われる元スポーツ選手の発言は枚挙にいとまがない。

例えば『週刊金曜日』によれば、舞の海が改憲推進団体主催の集会でこんな発言をしたという。
「元相撲取りの舞の海は4月29日の改憲を進める団体が開いた『昭和の日をお祝いする集い』で、『昭和天皇と大相撲』と題し“記念講演”をした舞の海秀平氏が『外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えないが、蒙古襲来だ。外国人力士を排除したらいいと言う人がいる』と語ると、参加者から拍手が湧いた。“日の丸”旗を手にした男性が『頑張れよ』と叫び、会場は排外主義的空気が顕著になった。さらに舞の海氏が『天覧相撲の再開が必要だ。日本に天皇がいたからこそ、大相撲は生き延びてこられた。天皇という大きな懐の中で生かされていると感じる。皇室の安泰を』と結ぶと、大拍手が起こっていた」。(週刊金曜日記事より)

おいおい舞の海、このセリフ横綱以下モンゴルを始めとする外国人力士の前でも発言できるのか?

スマートなアスリートは発言も慎重だ。為末や舞の海とは逆に。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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快挙は国会前デモだけじゃない!──6日目124時間を越えた学生ハンスト闘争

〈学生ハンスト実行委員会9月1日付Facebookより〉

8月27日14時から「安保関連法案を阻止し、安倍政権打倒」を訴えてハンストに決起した学生達の闘いが開始から121時間(9月1日15時現在)を経過してもまだ続いている。8月中旬までの猛暑がうそのように東京は朝晩「寒い」と感じるほど温度が下がることがある。あいにく雨天も多く寒暖の差が激しい条件の中、学生達はまだ闘い続けている。災害時など行方不明者の生死を分けるのは事故後72時間といわれている。120時間超のハンストが如何に激烈な行動か想像いただけるだろう。

寒さは普通に生活していても体力を奪うが、水分とスポーツドリンク、わずかの塩以外、一切固形物を口にしないという方針での「ハンガーストライキ」。学生達の体力消耗と疲労はすでに「限界状態」(学生達の健康状態を管理している医師)に達している。学生達はただ黙して、座っているのではない。毎日何度も集会を開き彼らの訴えを語っている。


◎[参考動画]「安保法案阻止」学生ハンスト6日目・二人の思い(2015年9月1日レイバーネットTV公開)

◆ハンスト続行の最中に井田敬さんが極限状態で語ってくれたこと

8月30日国会に12万人が集結した際には、ハンストの場所を国会議事堂前に移し、そこで彼らも集会に参加した。内外多くのメディアからの取材があり、彼らが配布するビラはほとんどの人が快く受け取ってくれるという。特に中国のテレビ局は現場からの生中継も行ったそうだ。

しかし、体力には限界がある。彼らは大丈夫だろうか。そこで、1日午前ハンスト参加学生の井田敬さんに電話で取材した。井田さんによると彼らが本当に極限状態であることが伝わって来る。

「ハンスト参加学生のうち1名が昨日医師から『生命の危険がある』と警告されたために、開始から101時間で本人の希望に反する形になりましたが終了させました。また、もう1名も昨夜から体調不良を訴えていましたが、今朝医師から『きわめて危険』と判断され、開始から113時間で終了させました」

「私も数日前から医師には『いつ何が起きても不思議ではない』状態と言われていますが、何とか頑張っています。反応が鈍くなったり、疲労もありますが、それにもまして、私達の訴えを一人でも多くの人々に伝えたいとの気持ちがあります。30日には本当にものすごい数の人たちが国会を包囲しました。私は7月15日委員会で強行採決された日にも国会に来ていたのですが、比較にならない熱気でした。とても意義深かったと思います」

「でも、大切なことは国会を包囲した、あの『熱気』を家庭や職場、学校に持ち帰って、そこで広めていくことだと思います。そのために残った二人で頑張ってさらに訴えを広めたいと思います」

◆なぜ安保法案に反対し、ハンストを行っているのか?─いま一度、彼らの宣言を読んでほしい

そう語ってくれた井田さんからは彼らの訴えを「是非読んでほしいです」との要望があったので、以下に全文引用する。

私たちはなぜ安保法案に反対し、ハンストを行うか (学生ハンスト実行委員会)

私たちの安保関連法案に対する考えと、ハンスト戦術の持つ政治的な意義について以下のように述べておきたいと思います。是非ご一読ください。

安保体制への私たちの評価

まず安保法案の是非を論じるにあたって、その不可欠な前提をなす戦後安保体制に対する評価は避けて通ることができません。

植民地争奪戦としての第二次世界大戦終結後、朝鮮戦争を始めとした米ソ冷戦構造において日本は東アジアでの「防共の砦」の一員となり、1951年、日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)を締結しました。かかる条約はアメリカとの実質的な軍事同盟として、日本の緩やかな武装化をともないつつ軍事的牽制を基軸とした東・東南アジアの「秩序」を形成してきたと言えます。しかし、この条約に基づく「秩序」は、アメリカ主導の侵略戦争に日本が加担することで成立した欺瞞的な平和であったと言わざるを得ない、と私たちは考えます。

例えば朝鮮戦争においては、日本はGHQ公認の下で兵器製造・輸出を媒介とした「朝鮮特需」といわれる利潤を一方的に享受し、経済発展を遂げました。また他方で1960年代には、ベトナム戦争において、主に沖縄に米軍出撃拠点としての役割を強制するなど積極的な兵站支援を行ってきました。もちろん上記代理戦争の相手方たるソ連を支持できるものではありませんが、日米安保体制下の「平和」や「豊かさ」は他地域の民衆に犠牲を強いることで成り立ってきたことは否定しえない事実です。

そして冷戦終焉後、21世紀に入った現在も、イラク戦争に見られるような「対テロ戦争」を名目とした非対称戦争を主導する根拠として安保体制が機能していますし、国内でも、沖縄に在日米軍基地の74パーセントが押し付けられていることから考えると、日米安保体制の本質は変化していないといえるのではないでしょうか。私たちはそのような戦後体制を変革する必要があると考えています。

安保法案と安倍政権

しかし、安倍政権が押し進める安保法案は、この戦後体制を改善するどころか悪質に転換し、日本の軍事大国化を志向するものです。独力で覇権を維持できなくなってきたアメリカは、日本にさらなる軍事的貢献を要請してきており、日本は今回の法案によって自衛隊の海外派兵を含む直接的な戦争支援を可能にしようとしています。

アメリカが遂行している「対テロ戦争」や他国への軍事介入は、集団安全保障を名目に多国籍企業の利益を擁護するものとして、米ソ冷戦終結以前の「集団的自衛権」に基づいた戦争と比しても、その本質に変わりありません。

例えば中東「イスラム国」への掃討戦は、有志連合の集団的自衛権の発露として行われていますが、20世紀に行われた帝国主義国による中東の人工的分割の生んだ矛盾を温存し、クルド人をはじめ抑圧された民族の抵抗を圧殺する役割を果たしています。「イスラム国」が悪辣な体質を有しているとはいえ、現状の「集団的自衛権」がさらなる戦争の火種を生んでいる側面は否定できません。今回の安保法案はそうした戦争に日本が直接に参加することで支配的な地位を獲得しようとするものであり、上記のような戦争の性質に鑑みれば非難せざるを得ません。

また対内的には閣議決定による集団的自衛権の合憲化と軌を一にして、日米合同の戦争のために、沖縄へさらに米軍基地・自衛隊基地を押し付けようとしています。2014年の沖縄県内の各種選挙において辺野古新基地反対派が軒並み勝利したにも関わらず、政府が新基地建設工事を強行しようとしている現状は、最低限の議会制民主主義のルールすらも否定するものと言わざるを得ません。

さらに安保法案の制定を目指して行われた安倍政権下での数々の立法と「解釈改憲」(特定秘密保護法の制定・集団的自衛権の閣議決定に基づく合憲化)は、おおよそ立憲主義を無視しており、安保法案はまさにそうした立憲主義破壊の集大成と言わざるを得ません。安倍政権がこういった違憲立法を行うことは、アメリカなどが主導する侵略戦争に一主体として参加していこうとする意志の表れであると私たちは考えます。

上記の理由から、私たちは安保法案の制定に反対し、これを阻止するために行動します。

ハンスト戦術について

安保法案に反対する私たちがなぜハンガーストライキという戦術を採用し、これからいかなる戦略をもって安倍政権に反対していくのか、以下に述べたいと思います。

現在、衆参両院の議席の過半数は自民党と公明党に保有されています。政府与党は選挙の結果を以て彼らの安保政策は「民主的に」支持されていると主張していますが、はたしてこれは正しいのでしょうか。選挙による選任は、政策の白紙委任を意味しません。選挙で多数派の得票を得たからと言って、自由に政治的決定を行っていいわけはありません。

しかし、政府与党は多数派の威力によって強行的に安保法案を通そうとしています。この局面において、ただ間接的な手法で抗議するだけでは法案成立を阻止できないと、私たちは考えます。

そもそも民主主義とは全員参加の意思を決定するプロセスで、多数派の専制を防ぎ、少数派を見捨てることがあってはなりません。議会の多数決だけで物事を決めることは民主主義の否定と言うべきでしょう。そして、現在、反対派の意見は見捨てられ、強行的に法案が成立されようとしています。すなわち、民主主義が機能していないからこそ私たちは直接的に民意を反映させようと試みる必要に迫られています。

代議制だけでは、民主主義を機能させるには不十分です。直接行動は民主主義を機能させるうえで絶対に不可欠なのです。

私たちは今回、こういった危機的局面においてハンガーストライキという手法を使って安倍政権に抗議します。私たちは無駄に身体を傷つけ命を粗末にしたいわけではありません。ハンスト中は医師についてもらい、体調管理をしていただきます。確かに行動に伴うリスクは低くはありません。しかし、私たちはこういったリスクを冒してでも訴えたいことがあります。戦争とは、自分が命を落とすと同時に他者を殺すことです。戦争に反対するとは単に自分が命を落としたくないという表現であるだけでなく、他者を殺すことを拒否するという宣言でもあります。今現在、この瞬間にも世界中で武力紛争は続いており、犠牲者は増え続けています。数えきれないほどの難民が日々命を脅かされながら生きています。このような世界で、いま私たちはこういった戦争への加担を準備するのか、それとも戦争を止めるために行動するかの選択を迫られています。ハンスト実行委員会は殺すことの拒否、人殺しによる繁栄の拒否をハンガーストライキという形で明確に示していきます。

私たちはかかる見解に基づいて、8月27日よりハンガーストライキに突入します。

学生ハンスト実行委員会
ブログ ? ? ? ? http://blogs.yahoo.co.jp/hansutojitsu
Facebook ?https://www.facebook.com/Hungst.co.jp

もう十分に闘った。学生達のハンスト闘争は「勝利」だった。もう何時終結しても胸を張れる。彼らの体を賭した行動に再度最大級の賞賛と敬意を伝え、そして、無力な私は頭を下げたい。


◎[参考動画]「安保法案成立阻止 安倍政権打倒」学生の無期限ハンスト(2015年8月27日レイバーネットTV公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎8.27反安倍ハンストの大きな意味──開始直後の学生4人に決起理由を聞いてみた!
◎橋下「維新の党」離党の茶番──マスコミが取り上げなければ橋下は終わる
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!

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橋下「維新の党」離党の茶番──マスコミが取り上げなければ橋下は終わる

〈橋下徹公式HPトップより〉

橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事が7月27日、「維新の党」を離党する意向を明らかにした。

ほら見たことか。

橋下の行動は容易に予想が出来ていた。数日前に地方選挙を控えた候補者が「維新の党」から出ると連絡してきたので、「当選したいのであれば、その選択は絶対にやめるべし、橋下の名前は近く『維新』から消えるだろう」と警告した直後だった。政治部記者でもない私が、なぜそのように予想できたのか。

◆橋下はマスコミに取り上げられなければ政治生命が持たないことを熟知している

答えは簡単だ。橋下は、おおよそ半年以上メディアに大きく取り上げられないと、自分の政治生命がもたない、「タレント政治家」だということを自覚しているからだ。注目を浴びるためであればテーマは何でも構わない。大阪都構想で敗北し、任期満了で市長、政界から引退すると語ったとき、私は市長を辞めたら、大臣の椅子確保の裏約束を取り付けて自民に鞍替えし、来年の参院選に出るだろう、と予想していた。だが橋下はそこまで我慢できなかったようだ。

世間は「戦争推進法案」についての報道であふれている。もう在阪のメディアでも「かつてのように橋下でレートが取れる時代じゃない」と見切りをつけ、扱いは大幅に減っていた。

橋下にとって、なにが我慢ならぬかといえば「自分に注目が集まらない」ことほど許せないことはない。

市長辞任再選挙の茶番までは、マスコミもかろうじて取り上げ、話題になった(させた)ろうが、都構想もダメ、咲州庁舎処分もダメ、自身が選んだ教育長はセクハラで退職(その後天下り)、職員に訴えられた裁判は敗訴続き・・・八方塞がりで、

「あかん、弾切れや・・・(大阪弁はしゃべれないものの橋下の内心)」

と、意気消沈していたところ、中央で、柿沢未途や松野頼久が民主らとの共闘を模索している。「これだ!」と目を付けた橋下は「内紛をしている場合ではない」とコメントしながら離党(!)を決意したのだ。そうだ、そうだ。橋下よ、お前の言い分は正しい。「内紛」の原因になったのは自分自身なのだから離党するのだろう。うん。これで橋下が維新の中で内紛の原因になることはなくなるだろう。

◆政策以外の行動原理は終始一貫している橋下

タレント政治家、橋下は全く信用に値しないけれども、彼の行動だけに限れば、実は結構一貫している。「いつでも威張っている」、「差別発言をしても許されると考えている」、「約束を守らない」、「気に入らないと投げ出す」、「不都合は他人に責任を押し付ける」。「平気で前言を翻す」。

なかなかどうして、一貫した行動性の持ち主だ。ただし行動原理一貫性に「政策」が含まれることは金輪際なかった。

読者諸氏は注目なさる必要はない。そうでなくとも奴は必ずまた「奇をてらった」形で、自らの存在をアッピールする行動をとり皆さんの前に現れることを予想しておく。

◆5月17日に「政治家引退」を表明したはずなのだが……

ただこの一言だけは覚えておいて頂きたい。本年5月17日大阪都構想の住民投票で敗れた時に橋本は「(12月の)市長任期後は政治家はやりません。政治家は僕の人生で終了です」と語ったことを。

私はこの「約束」を橋下は必ず反故にすると見立てている。

また、橋下だけでなく「維新」にありもしない幻想を抱いていた方々もそろそろこの現象にお気づきになって頂きたい。橋下は知事時代に退職金減額して、いかにも「経費節減」を実践しているかのパフォーマンスには気を配っていたけれども、要りもしないSPを付けた経費は税金からの出費だ。また知事時代、市長の現在を通して、首長としての給与を貰いながら、どれだけ自分の政治活動に時間と金を費やしたことか。

市長、知事などには出勤時間や政治活動の制約はないものの、公務員であることに変わりない。滋賀県の嘉田前知事が「日本未来の党」代表に就任した際は「知事の仕事と兼務できないだろう!」との県議会で批判と議決を経て党代表を辞任した。はて、嘉田氏には認められず、橋下氏には何故全くおとがめがなかったのだろう。

本人だけでなく、テレビを通じてあるいは選挙を通じて、「なんとなく」橋下を支えてきた人々にも責任の一端はある。もうやめよう。こんなわがまま坊やに付き合うのは。

と、ここまで書いたら橋下と一緒に維新を離党する!と宣言した松井知事が「もう一度大阪都構想を掲げて知事選で闘う!」と言い出した。橋下のコバンザメ松井はあまりにも小者なので(見かけはヤクザ風の強面だが)無視してきたが、「一事不再理」の原則を知らないのだろう。厳格に言えば条例に「一時不再理」は適用されないけれども、橋下が「都構想敗北、引退宣言」をした時点でこの話は終わっていたはずだ。

私があれこれ例を挙げるまでもなく、維新一派の妄想性がまた明らかになった。


◎[参考動画]【都構想否決】橋下徹政界引退を表明 ノーカット 第一部(Zipang News Watch2015年5月17日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎8.27反安倍ハンストの大きな意味──開始直後の学生4人に決起理由を聞いてみた!
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

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8.27反安倍ハンストの大きな意味──開始直後の学生4人に決起理由を聞いてみた!

8月18日の記事でご紹介した通り、27日14時から「安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会」によるハンガーストライキが始まった。参議院議員会館近くでハンストに突入した学生4名だが、ハンスト開始直後には全国紙をはじめ、多くのマスコミや支援の学生、労働者など80名近くが集まった。そこで早速ハンスト闘争に決起した4名の学生に、「なぜハンスト闘争に立ち上ったのか」を電話で伺った。

ハンストを決行した4人の大学生(ハンスト実行委員会ツイッターより)
◆各々がやれることをやるべきだ(井田敬さん)

井田敬(上智大学2年)さんは「7月15日衆議院特別委員会採決、16日衆議院本会議通過というスケジュールの中、限定的条件のもとのハンストです。これだけで何かが変えられるとは思わないけれども、各々がやれることをやるべきだと思いハンスト参加を決意しました」と語ってくれた。

◆戦場に連れて行かれるのは私たち若者だ(木本将太郎さん)

木本将太郎(早稲田大学1年)さんは「安保法制反対、安倍政権打倒のためにハンスト参加を決めました」と極めてシンプルに決意の理由を語る。「解釈改憲で集団的自衛権が認められてしまい、『何でもあり』の状況になっています。同時代の人々に呼びかけたい。日本で若者は大変苦しい状況におかれています。大学に進学する人の中には奨学金を借りている人が多数いますが、奨学金の返済に困っている人は凄まじい数です。また、たとえ就職できたとしても、労働条件が劣悪なブラック企業は数知れずあります。安保法案が仮に成立すれば、戦場に連れて行かれるのは私達若者です」と危機感を訴える。

◆沖縄の犠牲で成り立つ日本のありように行動で意見を示したい(元木大介さん)

元木大介(専修大学4年)さんは「僕には自衛隊員の友達がいます。彼は『安保法案』に反対しています。彼が自衛隊に入った理由は3・11で自衛隊が災害時に救援活動を行っていたことに共鳴してのことでした。『安保法案』が成立すれば私の友人は、戦場に行かなければいけないかも知れなくなる。彼は戦争をしたくて自衛隊に入ったわけではないし、私も彼に戦場へは行って欲しくない。日本のありよう、とくに世界の中での日本の立場を考えてハンスト参加を決めました。また、今の日本は沖縄の犠牲があって(辺野古基地建設問題など)成り立っていると思いますが、いい加減にやめるべきだと思います。『安保法案』を何としても阻止したいと思います。仮にこの法案が成立すれば、またしても沖縄が一番の被害にあうのは明らかでしょう。この法案を審議しているのは主として『おじいちゃん連中』ですが、彼らは一切若者の意見は聞かないですね。『安保法案』が成立しても、『おじいちゃん連中』には関係ないですからね。だから行動で意見を示します」と述べた。

◆安倍政権への反対を直接的な方法で訴えたい(嶋根健二さん)

最後に嶋根健二(専修大学4年)さんにお話しを伺った。「安倍政権の安保法制審議は、違憲である『解釈改憲』をもとにしたものです。許せません。私は沖縄辺野古の運動に関わっていますが『戦後70年理想の平和』という概念は、沖縄や朝鮮を犠牲にして日本の平和を成り立たせていた「利権をもとにした平和」だと思います。このことも安倍政権に訴えたいですね。より直接的な方法で示せないかと考え、ハンストに参加することにしました」

◆体を張った4人の問題提起に賛同と連帯の意を送る!

まだハンストを始めて数時間なので皆さん元気にあふれていた。しかし40代くらい男が「安保法制賛成じゃ!」などと大声を上げて彼らに迫ってきて、一時は制止する警察官との間で数分のもみ合いになったという。「無期限ハンスト」を掲げて決起した学生達。個々が誠に見事な行動理由を語ってくれた。酷暑からややましな季節になったとはいえ「ハンスト」による体力の消耗は著しい。だが、それを支える人々の応援があれば彼らは確実に勇気づけられ、士気も高まる。彼らの決起に再び大いなる賛同と、連帯の意を送る。このハンストは様々な意味で大きな意味を持つだろう。運動の在り方へ投じられた、体を張った問題提起でもあると思う。

学生ハンスト実行委員会

[Facebook] https://www.facebook.com/Hungst.co.jp
[ブログ] http://blogs.yahoo.co.jp/hansutojitsu

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎決起する若者たち──8月27日、4人の学生が安倍退陣を求めてハンスト闘争へ!
◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?
◎「不逮捕特権」を持つ国会議員は「体を張って」安保法案を阻止できる!
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

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相模原でも「犠牲のシステム」!──米軍施設爆発火災の赤裸々な日米「従属」同盟

8月24日午前0時50分頃、相模原市の米軍関連施設「相模総合補給廠」で起きた爆発火災事故──。事故直後の報道によれば、「米軍側の規制のため警察や消防は出火現場に近づけず」現場近くに消防車と救急車が計13台が出動したものの放水活動さえできなかったという。その後の経過情報に関しても、24日13時時点では詳細な情報が見当たらない。


◎[参考動画]相模原市米軍基地爆発(2015年8月24日mo si氏公開)


◎[参考動画]相模原・米陸軍総合補給廠で爆発火災(神奈川新聞@カナロコ2015年08月24日公開)

そこで相模原市消防署へ電話取材を行った。同消防署総務課の吉平(よしひら)氏が対応をしてくれた。

・怪我人はいないか
・相模原消防署による消火活動は行われたのか
・鎮火したか
・事故の検証は消防や警察が行うのか

を尋ねた。吉平氏によると「怪我人の報告は入っていない。詳細はわからないが相模原消防署による消火活動は行われた。現在は鎮火したと思われる。出火原因の検証などは火災現場が米軍敷地内なので、消防・警察ではなく米軍が行うことになる」そうだ。

◆沖縄であろうと首都圏であろうと、米軍基地内に手出しができない日本政府

196ヘクタールという広い敷地ながら、相模原市の住宅街に隣接する場所に位置する米軍施設内での火災(爆発?)にしては、あまりにも情報や報道が少なすぎる。そして周辺住民は不安で不安で仕方がないのではないだろうか。原因が公表されなければ、今後また同様な、いやそれ以上の火災や爆発が起こるのではないか、と心配になるのは自然な心理だ。(2015年8月24日付朝日新聞

事故原因の検証や究明が日本の行政機関によって行われないことは、相模原消防署に電話取材する前から解りきっていたが、敢えて質問をぶつけてみた。沖縄であろうが、本州であろうが米軍基地は米軍基地。その敷地内で火災や事故、爆発や核兵器の誤爆があっても、日本政府は何の手出しも出来はしないし、多くの事実が隠される。

◆日本の私有地でも米軍ヘリが墜落した現場を日本の警察は捜査できない

基地の中だけではない。2004年8月13日沖縄国際大学という明白な日本の私有地に米軍ヘリが墜落した時でさえ、初期消火以外、日本の警察は捜査に手を出す事すら許されなかった。(2015年8月14日付琉球新報

世の関心は、辺野古の基地建設問題だけに関心が集中しがちな傾向が見られる。相模原米軍基地爆発事件が示すことは、言わずもがな「米軍基地内は日本の治外法権」であるばかりでなく、周辺住民に危険が及ぶ可能性がある事故が発生しても、その実態や情報すら、日本の行政機関(いわんやマスメディア)は掴むことが出来ないという現実だ。

こういった米国と日本の関係を「主従関係」という。

日本政府は米国を「同盟関係」の国だというが、それは明らかな誤りだ。米国内で米国行政機関が強制的に立ち入ることができない「日本政府」が占有する場所は、日本大使館と日本領事館だけだ。日本は「軍隊」は持っていない(防衛省見解)から米国に日本軍基地が存在する根拠はないが、「対等な日米関係」というならば、この島国が差し出しているのと同等、もしくは等価の土地提供を日本政府は米国に行うべきだ。「対等」とはそういう実践があって初めて使える言葉だろう。しかしそのような要求は過去になされた実績はないし、未来においてもほぼ可能性はゼロに近いだろう。

◆最も身近な「戦争」の破片は米軍基地の中に眠っている

米軍基地などこの島国のどこにも必要ない。

「集団的自衛権反対」、「戦争推進法案反対」、「戦争反対」であれば、その延長戦上に「日米安保破棄」が自然に浮かび上がって来るはずだ。最も身近な「戦争」の破片は米軍基地の中に眠っている。

嘉手納基地やキャンプハンセンなど無数の基地を抱える沖縄。かつては「基地がないと経済が成り立たない」という理屈が人々を押さえつけていたけれども、美しい海・自然という人間の手では創造することが出来ない貴重な天然資源が、観光業だけで充分沖縄が自立できることを証明し、今や「基地がなければ・・・」などと言う人はごく少数派となった。

◆基地も原発も「止めるメリット」は「存在を許すメリット」よりも大きい

やってみればわかる。やらないだけだが「原発廃炉」も全く構造は同じだ。

基地があることを認めていた人たちは「経済的」理由のみによって基地の存在を肯定していた。「経済的」なうまみが無くなれば、基地は騒音を毎日振りまき、航空機やヘリコプター落下の危険性をはらむ厄介者。そして米国が戦争を起こすたびにいつ標的にされてもおかしくない存在だ。これほど危険なものはない。ただの邪魔者だ。

原発だって「再稼働したら町が活性化した」というタクシー運転手のコメントなどを新聞は紹介しているけれども、彼らには福島第一原発事故が起こったことの記憶がないのだろうか。川内原発では早速の動作トラブルが起きている。事故が怖くないのか。いつまでも「経済」、「経済」と言っているうちに事故は必ずまた起こる。目の前のちょっとした「経済」と多額の補助金中毒になった人たちは住家を失う。

馬鹿げたことはもう止めよう。原発を廃炉にしたって誰もいなくなるわけではない。「廃炉作業」が待っている。「廃炉作業」は2,3ヵ月で終わるものではない。でも廃炉にすれば永遠に「原発事故の脅威」から抜け出すことが出来る。

基地も原発も同じだ。止められる。止めるメリットは存在するメリットと比較にならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎原発・基地・戦争=「犠牲のシステム」を解体せよ!「NO NUKES voice」05号発売!
◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎『火垂るの墓』から考える──住み慣れた街に戦火が襲い、家族を失うということ

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愛国者たちはなぜ「対米売国」血脈の安倍政権にNOと言えないのか?

「お盆休戦」が明け「戦争推進法案」の参議院での審議が再開された。その中でこの法案群だけでなく、米国による日本支配の本質を看破した質問が行われた。質問者は山本太郎議員。8月19日の参議院特別委員会で岸田外相、中谷防衛相を相手に、「TPP、特定秘密保護法、武器輸出三原則の廃止、集団的自衛権発動、原発再稼働」の全てが「アーミテージ・ナイ・レポート」によるものである事を指摘し、「これだけ宗主国様に尽くしておいて、盗聴までされて、それが他の国々で共有されていて、間抜けとしか言いようがない。いつまで没落ま近な大国のコバンザメを続けるのかっていうことですよ、いつ植民地を止めるんだ、と言う話ですよ!」と言い放った。


◎[参考動画]2015年8月19日参議院安保法制特別委員会での山本太郎参院議員による一般質疑【午前と午後=約31分】

山本太郎「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表(2015年8月19日参議院)

私は国家を信用しない。あらゆる国家を信用しない。「もっとも幸いな場合でも国家は災いである」という先人の言葉に長年共感を抱く人間だ。だから「理想の国家」はおろか「よりましな国家」にすら期待はしていない。でも私が移住でもしなければ、死ぬまで暮らす事になるこの島国を支配する「国家」は、完全な「思考停止」に陥っている。「もっとも幸いな場合」の真逆、「もっとも不幸かつ無能な国家」により、災禍を強いられ、更には戦争まで強要されようとしている。

◎[参考資料]「今回の安保法案は、第3次アーミテージ・ナイ・レポートの完コピだ!」2015年08月20日(山本太郎HPより)

自民党や維新の連中は「自主憲法」を制定し、「普通の国」になって、核兵器を持ち国連安保理入りをしたかったんじゃなかったのか。日の丸を振って、天皇陛下万歳で時代錯誤な「富国強兵」を再度夢見ていたんじゃないのか。アジアを蔑視して、中国・朝鮮を仮想敵国に仕立て上げ、隙あらばまたぞろ「祖国防衛」を錦の御旗に100年前の繰り返し、「侵略戦争」がしたかったんじゃないのか。

しかし、私が想像する政権与党の腹の中とは裏腹に、彼らは完全に米国の「奴隷」としてのみ国民を騙し、その財産資産、安全までを差し出していることをこの答弁は余すことなく暴いている。与党席からのヤジは皆無だ。何故か?指摘されている事柄が事実ばかりだからだ。

このような「無思考植民地状態」を強化しようとする政権に、保守や右翼と言う立場の方々は怒りを覚えないのだろうか。実は私にとって政治や、国家などはどうでもよい。本音を語れば考えたくもない対象だ。でも「国を愛する」人々にはそういうわけにはいかないだろう。「売国奴」という言葉がある。嫌いな言葉の一つだが、「アメリカの要請」を安全保障(戦争推進)法案が必要になった理由の1つとして答弁を続ける安倍をはじめとした岸田や中谷の頭の中はどうなっているのだ。こいつら以上の「売国奴」がいるだろうか。

◎[参考資料]「政府が集団的自衛権行使容認のよりどころとする砂川判決こそ、米国からの指示だった!」2015年08月20日(山本太郎HPより)

◆安倍一族が受け継ぐ「米国の間諜」という血脈

安倍の祖父、岸信介は満州国で辣腕を振るい、対米戦争時にも重要な役割果たした、商工大臣であったことは良く知られている。岸は学生時代にはマルクスにも目を通していたらしいが、今ある思い付きがふと頭をよぎった。

この一族は代々「間諜(かんちょう)」ではないのか。

間諜というのは解りやすく言えば「スパイ」だ。諜報機関の優れたスパイはどのような組織にも入り込み、その中で指導的な役割まで果たしてゆく。革命や政変が起これば、元所属していた諜報機関を見切ってでも、潜りこんでいる組織の中で生き延び、また新たな間諜としての役割を帯びる。あのロシア革命だって帝政ロシアのスパイがそのまま革命を乗り切り生涯を全うしているじゃないか。

岸=安倍ラインは100年来米国のスパイではないのか。そう考えると連中の行動が全て綺麗に整理して並べることが出来る。

◆建国以来、他国を侵略し、富を奪い続ける米国

米国というのはその時の政権が打ち出す政策を「額面通り」に受け取ってはいけないややこしい性質を持つ。この文章の最初に登場した「アーミテージ」は共和党政権時代の国務長官だが、民主党オバマ政権下でも実力は変わらない。「人権外交」と言う耳触りの良い政策を掲げたジミー・カーターやニクソン政権時代に国務長官を勤め、ベトナム戦争時代から暗躍を続けるヘンリー・キッシンジャーが未だに政権に影響力を持つ、魑魅魍魎の溢れる国だ。大統領がオバマあろうが、ブッシュであろうが、ケネディーであろうが、実は大きな意味はなく彼らは単なる「象徴」に過ぎない。

多国籍企業との結託により、確立された利権、それも時には戦争すら引き起こすほどの財力と政治力が絡み合い暗闘と妥協を続けているのが米国政治の実態だ。4年に一度行われる大統領選挙は、壮大な「お祭り」であって、政策の本質的な転換や米国の「覇権主義破棄」を標榜する候補者など間違っても大統領に就任できないシステムだ。

米国は建国以来常に国内外で侵略を続けることにより国力を維持し強化を図ってきた国だ。僅か200年余りの歴史の中で「侵略して奪い儲け」ないと国が立ち行かない形を作り上げてしまった。

要するに「泥棒国家」なのだ。

「泥棒」という行為はどの国家にも通底する性質ではあるが、特にその色が濃く、それを除けばあとはハリウッドのエンターテインメント位しか残る物はない、というのが米国の本質だと私は考える。

そんな米国への追従はもう十分に果たしていると思うが、まだ足らないらしい。
「間諜」一族の暗躍はどこまで続くのだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎決起する若者たち──8月27日、4人の学生が安倍退陣を求めてハンスト闘争へ!
◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心

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フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる

「育鵬社」と目にしてもこの会社の性質をすぐに理解出来る人は少ないだろう。一方「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)という名前はある程度の年齢の方なら耳にしたことがあるのではないだろうか。「つくる会」は1996年に藤岡信勝や西尾幹二が中心となり結成された「自虐史観を見直す」教科書を広めることを目的とした団体だった。西部邁、小林よしのりや大月隆寛なども名を列ね「歴史改竄」の一大運動として様々な出版物を発行した。

当時書店に行けば「つくる会」による「教科書が教えない歴史」や西尾の「国民の歴史」が平積みにされており「これはヤバイ時代になったぞ」と嫌な気分を感じた事を思い出す。

◆「つくる会」とフジサンケイ「育鵬社」の対立

「つくる会」は念願の歴史と公民の教科書を作成し2001年に文科省の検定にも合格し「新しい歴史教科書」と「新しい公民教科書」が誕生した。しかし派手なパフォーマンスと関連書籍の売れ行きの割には教育現場での採択が進まず1%にも満たなかったため、「つくる会」を全面バックアップしていたフジ・サンケイグループは独自に「育鵬社」という新たな出版社を立ち上げそこから「新しい日本の歴史」、「新しいみんなの公民」を出版し始める。

「つくる会」内部では発足当初より彼らが口汚く罵る「左翼の内ゲバ」以上の「内紛」続きで立ち上げメンバーの西尾幹二をはじめ、小林よしのり、西部邁ら多数が途中で会を離脱した。また会長職を巡っての紛争が絶えることなく離脱者が後を絶たなかった。そんな内部事情に直面し「こりゃアカンわ」とフジ・サンケイグループは判断したのだろうか「育鵬社」から実質的には「つくる会」が作成した「新しい歴史教科書」、「新しい公民教科書」とほぼ同じ内容で「新しい日本の歴史」、「新しいみんなの公民」を世に出した。

でも「つくる会」としては面白いはずがない。「著作権は『つくる会』にあり」と「育鵬社」との間で何度か折衝がもたれたものの「育鵬社」は折れなかった。

「つくる会」のHPには「育鵬社盗作問題の交渉及び全経過」というタグがあり両者がどのように交渉を行ってきたが細かく紹介されている。

その冒頭で〈「つくる会」は昨年10月以来、育鵬社による大規模な著作権侵害問題を、話し合いで解決すべく、先方との書簡のやりとりと3回の正式交渉を行ってきました。しかし、その努力の甲斐もなく、先方は「つくる会」の善意に基づく全ての提案を拒否し、交渉は決裂いたしました。従って、問題の解決は基本的には司法の手にゆだねられることになりました。〉と両者が決裂したことを認めている。

◆国家や地域社会のために生徒がどのように「ご奉公」するかを教える教科書

育鵬社「中学 新しいみんなの公民」

まあそのへんは勝手にやってくれというところだが、問題は「育鵬社」の歴史、公民の教科書の採択がどんどん進行していることだ。「つくる会」も未だに教科書を発行しているが、こちらの方は相変わらず低迷している。しかし「つくる会」にせよ「育鵬社」にせよ書かれている内容には大差ない。「育鵬社」は歴史教科書の特徴として「わが国の歴史の大きな流れを、世界の歴史を背景に、各時代の特色を踏まえて理解させ、わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てます」と書いている通り、この教科書は「皇国史観」を基に構成されている。この猛暑の中いちいち問題点を指摘していると確実に熱中症で倒れる代物だ。公民教科書も同様に「持続可能な社会をつくるために、家族、地域社会、国家、国際社会の中の自分として、集団の中でどのような役割を担えるのかを考えられます」と「個人」ではなく国家や地域社会のために生徒がどのように「ご奉公」するかを教える内容だ。

「つくる会」、「育鵬社」の教科書は東京都杉並区などがいち早く採択し、大問題になったが、来年度からは都立の中高一貫校での採択も決まった(「『つくる会』系教科書採択 都教委、中高一貫など32校」2015年7月23日付朝日新聞)。また大阪府でも四條畷市、河内長野市が、神奈川では藤沢市が採択を決めている。さらに8月には大阪市でも育鵬社教科書の採択が決まってしまった(「大阪市教委、育鵬社の歴史教科書採択 来春から使用」2015年8月5日付朝日新聞)。かねてよりこの教科書を応援していた橋下の念願成就。関西ファシズムは学校によって更に邁進させられる。

◆偏向教科書採択による「皇民化」政策

自民党「〈中学教科書7社の比較調査〉新教育基本法が示す愛国心道徳心を育む教科書を子供たちへ」

教育界への国家の介入は怒涛の勢いだ。下は幼稚園から上は大学まであらゆる教育機関に管理の強化と末端の教員の裁量剥奪、そして教育指導要領や偏向教科書採択による「皇民化」政策がなだれ込んでいる。そしてそれは明確に自民党や教育再生会議、文科省の意図に沿うものだ。自民党は「〈中学教科書7社の比較調査〉新教育基本法が示す愛国心道徳心を育む教科書を子供たちへ」(義家弘介衆議院議員のHP内のPDF=現在文部科学委員会筆頭理事・地方創生特別委員会委員)と銘打ったパンフレットを作成しており、その中で「育鵬社」「教育出版社」「清水書院」「自由社」「帝国書院」「東京書籍」「日本文教出版社」の7社を取り上げ、

・我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を前提に、国際社会に生きる観点から記述されているか
・古事記・日本書紀など神話・伝承を通して、当時の人々の信仰やものの見方に気付かせる
・国旗国歌の尊重について具体的場面を例示しているか
・自衛隊と日米安保が果たしている役割は記述されているか

等の項目を挙げ、数値化して各社教科書の内容を評価している。そしてどの項目でも「育鵬社」は満点を得ている。同様に満点を得ているのは「つくる会」教科書を出している「自由社」だけだ。

「つくる会」が教科書を作成する過程で「歴史の専門家」がほとんど関わっていないことが問題視された。史実を知らずしかし歴史については「一家言」を持った「歴史改竄主義者」がたむろして作成されたのが「つくる会」(自由社)の歴史教科書だったわけで、史実を知らずに個人の思い込みや思想で無責任に歴史教科書を作ろうとしたので、当然のごとく「内紛」が勃発し、会の発足当時から名を連ねていた連中がどんどん離散してゆくことになった。

思想運動ではなく義務教育で行われる授業の教材をこのような「無責任」な連中が記述した教科書に任せてはならない。「育鵬社」「自由社」の教科書執筆陣はこの極端なまでに偏向した教科書で学んだ生徒が将来不利益を被っても、その責任を取ることなどあり得ない。生徒の多数はやがて大学受験を経験するだろうが、センター試験はともかく、私立大学の日本史の試験ではこれらの教科書で教えられている内容が回答としては「不正解」に該当する事が起こりうる。また海外留学を考えた際に論述式の歴史問題が出題され「育鵬社」「自由社」の教科書に忠実な記述をすれば、多くの国で「不合格」とされるだろう。

戦争推進法案審議の中で安倍はしきりに「絶対」「断じて」を連発するようになっている。官僚が書いた答弁書を読む時はそうでもないが、紙を見ないで答弁する時には同じ言葉を繰り返したり、どう考えても論理矛盾でしかない回答を繰り返すことが極めて多い。そんな時に「絶対」「断じて」を連発する。人間の行動に「絶対」なものなどあるわけがないという基礎的な行動学がこの男にはわかっていない。戦争推進法案で「日本は益々平和になる」と安倍は言う。馬鹿かおまえは。

戦争を一刻も早く引き起こそうとする安倍は戦争の惨禍に国民が巻き込まれ嘆いた時にそれこそ「絶対」に反省や謝罪、ましてや責任を取ることなどない。こんな連中が採択を推し進める教科書など「戦争準備の道具」と同義だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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決起する若者たち──8月27日、4人の学生が安倍退陣を求めてハンスト闘争へ!

「お盆休戦」とも言われる凪(なぎ)状態の「戦争推進法案」審議が間もなく再開するだろう。それを見越して8月14日「安倍談話」が発表された。

内容は「空疎」の一言に尽きる。「反省」や「侵略」を言葉として盛り込んではいるが主語がない。「戦争推進法案」への反対が高まる中、これ以上の反対世論盛り上がりを何より警戒したのだろう。安倍は敢えて本音は封印した。だが、こんなちゃちな「言葉遊び」に騙されてはならない。15日には私費とはいえ玉串料を靖国参拝に納めた姑息な行動、そして「お盆休戦」後に国会審議で語られる言葉こそが安倍の本音だ。

反対運動の盛り上がりも勢いを増している。これまで街頭行動で姿が少なかった若者もついに街へ足を運びだした。その中で学生による注目すべき「抗議行動」が予定されている情報を得た。以下やや長いが、その「声明文」全文を引用する。

安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会

声明文

私たち「安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会」は、安全保障関連法案の審議即時停止と安倍政権退陣を求めて、8月27日より無期限ハンガーストライキを開始することをここに宣言します。
安全保障関連法案(以下、安保法案)は多数の批判と抗議を押し切って7月16日に衆議院を通過し、現在参議院で審議中です。憲法上のいわゆる「60日ルール」を含めても今国会での法案の成立は確実と言われています。

安保法案で法制化される集団的自衛権はアメリカなどの同盟国が主導する軍事行動に日本が直接参加することを許すもので、「戦争法案」としての本質は明らかです。戦後日本はアメリカと日米安保という実質的な軍事同盟を結び、東アジアにおける軍事的緊張関係の一端を担ってきましたが、安保法案の制定がかかる緊張をエスカレートさせる危険は目に見えており、先の大戦への反省を無視した愚かな行為です。またこの法案は国内の多くの憲法学者が指摘するように明白な違憲立法であり、法学上のクーデターというべきものです。まさしく安保法案は世界の民衆を分断し戦争を準備する、本来的に民衆に敵対する法律です。一切の正当性もなく、拒絶する以外にはありません。

では法案成立を阻止し、戦争を止めるために私たちは何をするべきなのでしょうか。
私たちは自らの生活に代えてでも安倍政権の戦争準備を拒否し、世界中のあらゆる戦争に加担することを拒否するという姿勢を直接行動によって示していくべきだと考えます。現在の沖縄・辺野古での反基地運動が、自らの平和を希求すると共に、基地を通じて世界の民衆が殺害されていくことを実力で拒否しているのと同様に。
私たちによるハンガーストライキは、戦争によって犠牲になりうるあらゆる人々と協力し、戦争への動員・協力を共に拒否するよう呼びかける直接行動の一過程です。そのために私たちは生命をかける覚悟でたたかいます。安保法案審議停止・安倍政権退陣に向けて共に行動しましょう!

【呼びかけ人】(ハンスト実行者は井田、元木、嶋根、木本の4名)

井田敬(上智大学2年) 元木大介(専修大学4年) 嶋根健二(専修大学4年)
木本将太郎(早稲田大学1年) 安井遼太郎(慶應大学3年) 土田元哉(慶應大学2年)
梶原康生(専修大学3年) 手塚(東京福祉大学) 坂田圭太(立正大学3年)
徳山陽一(都立産技高専5年) 匿名希望(高校2年)

本名を明かし、堂々と「無期限ハンスト」を行うというこの学生達に私は最大級の賞賛と連帯の意を表明する。彼らはいかなる「運動体」にも属さない個人の集まりだ。原発事故以降、多人数を集めるようになった運動の主催者の中には、参加者にあれこれ細かい「規制」を設けて、彼らの言う「一般人」以外を排除する団体がいくつか見られる。

◆「決起」の方法は幾らでもある

集会やデモ参加者の数がいくら増そうとも、その「質」が高まらなければ敵にとって脅威とはなりえない。この場合の「質」とは抗議対象への冷徹かつ非妥協な「怒り」の高まりであり、それに相応しい「行動」を意味する。したがって運動の継続性は勿論重要ではあるけれども、それと同時に参加者の意識の高まりと、多彩な参加者を受け入れることがまず前提として必要だ。まかり間違っても特定の団体や個人を名指しして「排除」するような運動方針が採用されてはならない。「排除の論理」は敵=国家権力にのみ向けられるべきであって、参加者への「排除」意思表明は運動体自体が硬直化、党派化してゆくことだと主催者は気が付かねばならない。「排除の論理」が破綻と敗北しか招かないことは、過去の歴史が余すところなく証明している。

そのような問題も散見される中、この猛暑の中、学生達がハンストに決起する。この行動は新鮮な問題提起と、政府に対しても無視のできない激烈な行動になることは間違いない。

1000人の指揮された統一行動よりも、一人の「個の意思」に立脚した決意が状況を切り開くことを私は経験として知っている。「安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会」を私は直接知らないし取材もしていない。この「声明文」を読むだけで彼らの「腹の括り方」が伝わって来る。

街頭行動へ既に参加されている皆さんが彼らを応援し、またそれぞれの方法で「行動」を展開されることを切に希望する。「決起」の方法は幾らでもある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心
◎「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい

 

 

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