どうやら鹿砦社は反原連とは袂を分かったので、どうやって反原発というものを表現していくのか僕なりに悩んだ。しかしやはり自分が見たもので、なおかつ「心にとどめたい」事件については、記述を続けていこうと思う。

報告が遅れたが、昨年10月25日に福岡で行われた勉強会「玄海原発再稼働をSTOP!させるには」(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)に招いていただいたので、その様子をレポートする。

◆原発周辺の住民を抱き込んでいく九州電力と推進派

川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(2015年10月25日)

まず、川内原発建設反対連絡協議会の会長である鳥原良子さんが、
「原発2基による交付金と固定資産税など薩摩川内市における1・2号機による経済効果は30年間で約1700億円と試算し、定期点検による商店街の経済効果は、年間5億円にもなると商工会は述べている。市の財政は、原発による交付金財政比率は2%にも満たないのです。それなのに原発依存から抜けられない町作りをしている」と指摘。

また原発推進側が、工作を激しくしている姿も浮き彫りに。
「金にものを言わせて、ただで飲める飲み屋、タクシーもタダにするなど、九州電力と推進派は続々と、とくに原発周辺の住民を抱き込んでいきます。久見崎町の女性ふたりだけが反対運動に最後まで関わりましたが、地域の中で孤立させられて、しかも2人については、お互いの悪口を吹き込む工作をして、分断させました」

このほか、鳥原さんは貴重な証言をしているが、折々に触れて紹介していきたい(別にもったいぶっているわけではない。次から次へと「推進派」がアホなことをやってくれて、書くべきことがあふれているからだ)。

◆原発輸出に向かう東芝の墓穴

頭をバットで殴れたような衝撃が走ったのは、中国企業、つまり原発メーカーが輸出拡大を狙い、日本の複数の大手電機メーカーと極秘に接触、原発輸出での協力を打診していたという毎日新聞のトップニュースを見たからだ。

この報道は、12月30日の新聞だったが、年末で心も体も癒したいのに、実はとても不愉快な気分になった。こうした話が、新しい日中交流の場として、「日中企業家及び元政府高官対話(日中CEO等サミット)で行われたのも腹がたつ。そもそも、文化や産業のお互いの未来ある提携の場所ではなかったか。中国の原発メーカーが暗躍するために、この場が設定されたとするなら、政府は責任をとるべきだ。

「玄海原発再稼働をSTOPさせるには」(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会主催。2015年10月25日)

さて、話をもとに戻す。参加したメンバーの中に中国側として大手原発メーカーの2社のトップ、中国核工業集団の銭智民社長と国家電力投資集団の王炳華会長の姿があった。日本でのわずか数日の滞在期間の間にこの2人の「中国を原発まみれにしたい」経済人は、「海外での原発建設に力を貸してほしい」と日本の大手電機メーカーに原発輸出での協力を打診しまくっていたというから恐れ入る。

「電力投資集団の王会長は、電力大手のJパワー(電源開発)と日立、東芝も訪問していたと聞く。とくに東芝は不正会計で足下が危ういのに、原発メーカーの中国からのメッセンジャーと技術協力の話に応じているとは。1万人のリストラが断行される裏で、ふたたび〝悪夢のエネルギー〟の増幅を謀るとは、もはや天に唾するメーカーであり、福島の被災者にケンカを売る行為ですよね」(地方紙記者)

東芝よ! どこまでも悪魔に魂を売って口に糊するのか。全社員は、福島の原発被災者ひとりひとりに土下座して懺悔せよ。

さあ、そしてこの二つのふざけた中国の原発メーカーの動きは、〝悪魔の画策〟として注視していこう。そして、機会があれば、この九州での貴重な「脱原発の勉強」は、僕が九州で観光地を訪ねた記録とともに、ここで紹介していきたい。もんじゅの廃炉も検討されているようだが、これについても僕は追跡する。
「原発推進」の旗を、やつらが降ろすまで、僕のレポートは続くだろう。

(小林俊之)

2月25日発売!『NO NUKES voice』Vol.7!

山田は、2002年に住んでいた大阪の寝屋川近くで、男の子を監禁する事件を連発している。

「山田容疑者は窃盗、傷害、覚せい剤など前科8犯……山田が住んでいる自治会では、『あの人に近寄らないほうがいい』と囁かれたことがあります。理由は、気にいった大人のOLや中学の男の子を撮影して逃げる、ということが頻繁に起きたからですね」(寝屋川の住民)

このように男女どちらでも愛せる山田容疑者は、刑務所で何を思い、どんな恋人を探していたのだろうか。

過去、服役経験もある、前出の作家の影野氏がさらに解析する。「僕はこの事件を知ったとき、Y・Kという1人の人物を思い出しましたね。Y・Kは13年前、山田同様に刑務所に服役していました」彼は、懐かしそうに服役時代を振り返る。

「当時のY・Kの罪名は、少年への『過失傷害致死』です。彼は性的にはヘテロ(=異姓愛)のようでしたが、大人の女性より幼少女が好きで、中性的な少年も彼の性の対象となりました。しかも、幼児童に対しての虐待癖があるため、このときの懲役も少年を縛って窒息死させたものだったのです。Y・Kは12才より類犯に類犯を重ね、36才(服役中)に至るまでの人生のほとんどが塀の中でした。服役中も、そのころ爆発的人気だった『モーニング娘』の写真集を買って『昨日は燃えたよ』などと、自慰行為を自慢するかのように囁いてきたのが印象に残っています」

Y・Kは、大人になりきらない少年少女を愛すバイセクシャルだったようだ。

「Y・Kは大人のオンナには、まったく興味がないようでした。少女か、いまだ男になりきっていない中性的な少年が性の対象だといってました。今回の寝屋川の事件と、どことなく似てませんか」

実際、Y・Kはどんな男だったのか。その風貌や、受刑生活を影野氏に訊いてみた。
「そうですね。Y・Kはガリガリに痩せ細り、腹には胃潰瘍の手術痕が生々しい。なんとも、不気味な男でした。同性愛者でもあると認定された彼は、夜間独居での生活を余儀なくされていました。1人で舎房に還えるとき、ニヤニヤと笑う顔が異常性愛者特有のように思えましたね。刑務所で罪を償うという状況下であれば、山田も刑務所で手紙だけが唯一の心のよりどころであり、同時に名前をロンダリングして出所したときに暮らしやすくするつもりだったのかもしれません」

世間を震撼させた山田浩二容疑者が、獄中結婚や養子縁組による「名前と過去の犯罪歴のロンダリング」をしていた形跡が明らかになる。

同時に、なぜ中学1年生が連日、夜中に遊び歩いているかについて、社会評論家や教育評論家が侃々諤々の議論を重ねており、この事件がきっかけで「寝屋川近郊では、大人たちが防犯パトロールを強化して、子供の夜遊びを注意する体制ができた」きっかけができたという。

大阪の警察関係者が語ってくれた。
「この事件のポイントは、中学生たちが山田の誘いに簡単に乗ってしまったこと。つまり、まったく無警戒に変質者が中学生に声をかけることができたという事実に焦点を当てて事件を考え直さなければいけない」

いっぽうで、「結婚をして、名前を変える」とすぐに社会に「潜伏」できるというシステムも問題なのではないだろうか。

「そうした意味では、マイナンバー制度がもしかして第二の山田の登場を防ぐかもしれません。名前を変えてもナンバーで犯罪歴がわかりますからね。だとしても亡くなった中学生にとっては、制度の確立が遅すぎましたけどね」(同)

今もなお、中学生たちの死体遺棄現場には花束が山のように置かれている。最後に、山田の足取りを追った影野氏が感慨深げに語る。

「寝屋川の現場に行きましたが、犯人の山田が辿ったであろう道を歩くたびに、感慨にふけったものです。山田は何を思い、何がしたかったのだろうか。ただ、殺害目的のためだけに、2人を連れまわしたのだろうかと。そして、山田は遺体遺棄した日に、養父と何を語ったのだろうか。今生の別れとでも思ったのだろうか。裏切っていると分かっていても、自らの欲望を抑圧することができない山田容疑者も、私が刑務所で出会った受刑者と同じで、更生の道は難しいのかもしれません」

投稿された手記には、「今まで自分は32年間の人生の中で、たくさんの人の期待を裏切ってきました」と綴っている。

このとき書いた殊勝な手記は、彼の本心だったのだろうか。現在、山田は『完全黙秘』のため、『接見禁止』(=面会、読書、手紙の初受信などのすべてが禁止される)を余儀なくされている。だが、裁判が進み、事件の概要が明らかにされたとき、山田容疑者が何を語るか注目したい。(了)

寝屋川中一男女殺害事件容疑者山田浩二が手記を投稿していた受刑者の同人雑誌『獄同塾通信』(現『獄同塾友会』)

(小林俊之+影野臣直) ※取材協力『獄同塾友会』

◎忘れられた衝撃事件の真相──寝屋川中1男女殺害事件容疑者の意外な手記(上)

◎小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

昨年8月、大阪の寝屋川市で中学1年生の平田奈津美さん(13)、星野凌斗(りょうと)くん(12)の2人が殺害され、遺体で見つかった事件は衝撃的だった。ちょうどお盆にあたる2015年8月12日に、平田さんと星野くんが行方不明となり、周囲は騒然とした。調べから、2人が寝屋川のコンビニに一緒にいたことが判明。お互い行動を共にしていたと推測された。だが、翌13日の深夜には高槻市の物流センターの駐車場で、粘着テープにまかれた平田さんが遺体で発見され事件は進展した。そして、事件発生から8日後の21日に、近くに住む山田浩二(45)が容疑者として逮捕された。

その後、残念ながら星野くんも、大阪府柏原の山林で遺体として発見されている。大阪地検は山田浩二容疑者を、平田さんに対する殺人罪で起訴した。平田さんの死体遺棄容疑については、遺棄した時点で平田さんが死亡していたことをさらに詳しく立証する必要があると判断し、現在(2015年12月1日)は処分保留としている。

前科もあり、出所後は福島原発で除染作業をしていたこともあるという、契約作業員・山田浩二容疑者の闇は深い。中学時代、窃盗、傷害などさまざまな犯罪に手を染めていた山田は、過去には覚醒剤の売人などの前科もあるという。

しかも服役中に何度も名前を変えた山田(金、渡利、柴原、岸本)は、塀の中からの『手紙』により女性との交際を求めていた節がうかがえる。刑務所事情に詳しく、獄中の受刑者の更生と社会復帰を支援する同人雑誌『獄同塾友会』の編集長を務めている作家の影野臣直氏が語る。影野氏もこの事件に興味をもち、現場への取材などを敢行している。

寝屋川中一男女殺害事件容疑者山田浩二が手記を投稿していた受刑者の同人雑誌『獄同塾通信』(現『獄同塾友会』)

「なぜなら、山田は少なくとも3度、『獄同塾友会』に投稿してきます。といっても、12年前(2003年)に刑務所内での同人誌としては異例の2000部もの発行部数を誇った、塾友会の前身である『獄同塾通信』でのことですがね。投稿のたびに、彼は名前を渡利だったり岸本だったり改姓していますが、明らかに最初の投稿で、女性や同じ境遇にいる方たちとの文通を求めているように思えます」

山田の手記は獄同塾通信の15号(2003年6月15日発行)、16号(同年9月15日発行)、17号(同年12月15日発行)に掲載されている。15号では渡利浩二で、16、17号では岸本浩二と改名している。なぜ、名前が頻繁に変わったのだろう。

「結婚や養子縁組によって名前や本籍地を変えれば、前科がいくつあってもブラックな履歴は残らないといわれています。だから、ローンなども組めるようです。まぁ、山田の場合は車で移動するので名前や住所などを変えていなければ、交通違反などで捕まったときに面倒なことになります。そのため、薬物で逮捕された履歴を消さなくてはならない。違反だけでなくとも、警察に職質されたとき、クスリの前科がある者はすぐ尿検査を促されます。そうしたことを避けたかったのではないでしょうか」(前出・影野氏)

影野氏が指摘した手記は、初代編集長を務めていた大場知子編集長の時代に投稿されたものだ。

たとえば『渡利浩二名義』の獄同塾通信15号のタイトルは、『未だ見ぬ悠紀へ』とあり、こんなことが書かれている。

「起訴事件が5件有りなので5~6年と少しを務めることになりそうです(涙)。考えただけでゾッとしますが、今は自分なりに反省しています腹を括っています。
……(中略)……
還暦を過ぎた両親には、少し遅くなったけど親孝行をしてやりたい、するなら今しかないですから。また、1日も早く運命の女性と出会い結ばれて、遠いどこかで『早よ、生んでくれやぁ!』と叫んでいる未だ見ぬ子供をこの世に誕生させてやりたいです。これでも、子供の名前は決めているんです。……以下、省略」

影野氏が続ける。
「もちろん、手紙の原本などは残っていないが、本文中では贖罪の箇所が多くみられます。文面は普通の青年のそれであり、中学生を誘い込んで殺すような残虐性は本文中からは見いだせません。むしろ、結婚願望というか、子をなして普通の生活への憧憬を感じますね」(続く)

(小林俊之+影野臣直)? ※取材協力『獄同塾友会』

◎小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

昨年末、鬼怒川温泉に行ってきた。理由は昨秋9月10日に記録的な豪雨を記録し、鬼怒川の下流の堤防が決壊し、濁流が民家に流れ込み、不幸にも死者を出したからだ。僕は、こうした天災や事故が起きた観光地には極力行くようにしている。お悔やみの意味もあるし、「すいている」という事情もあるが、なによりもどうせ遊ぶのなら、誰かに感謝されたいとひとりの人間として率直に思う。

川治温泉の風景

今回、お世話になった鬼怒川の旅館(正確には川治温泉の旅館)は、もう集客に懸命で、上野と越谷から往復のバスを無料でだしていたほど。来年、50歳になる僕にはありがたいサービスだ。東武の特急「スペーシアきぬがわ」はかなり乗り心地がいいと、鉄道博士のO社員に聞いていたが、乗り換えの心配がいらないし、往復の交通費が無料とは感激だ。

案の定、休暇にはならず、あちらこちらに話を聞いて回る取材となり、まったく休まらないが、得てきた情報は公開する。まずこのコメントを紹介する。

「氾濫した打撃はそんなに宿泊客の激減にはつながっていないと思いますが、今年は暖冬なのが参りますよね。雪の景色を露天風呂で楽しみたいお客さまが、このシーズンは多く押し寄せますから。このあたりは、地熱で雪がとけてしまうから、雪見の露天風呂は、ここいらでは売りのひとつだから、雪が降らないのは少し残念ではあります」(ベテランの旅館店員)

帰る日に雪が降ってきた

皮肉なことに、帰る日に雪が降ってきた。朝にチェックアウトして出るときに、「この雪を見ながら露天風呂に入りたかった」とつぶやき、おごそかに降る雪をうらめしく見ていると、旅館店員が話しかけてくる。

「この雪はすぐにやみますよ。むしろ今日が来られる日だったら、バスが遅れる可能性だってあります。まあ、この暖冬をうらみますよ」

日光関連で残念なニュースがある。「日光さる軍団」のポスターやチケットなどをデザインしたアートディレクターの男性が、「デザイン料の一部しか受け取っていない」と訴訟を起こしたのだ。男性は、「おさるランド」にデザインの使用差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。

鬼怒川の濁流

この話が複雑なのは、おさる軍団の女性社員が、「おさるランド」のアイキャッチとなっているかわいいキャラクターを描いたことだ。おさるランド側に言わせると、「自社の社員が描いたキャラクターをデザイナーが加工しただけで、著作権はこちらにある」という主張になり、両者の言い分は平行線だ。これは、東京五輪に続く「第2のエンブレム問題」として注目していきたい。

記者会見に行ってみたが、「おさるランドは、客が入っており、儲かっている。払わない理由がわからない」とデザイナー氏が主張していた。行く末を見守りたいと思う。

話を鬼怒川の観光に戻すと、倒産している旅館が鬼怒川には相次いでおり、旅館の後継者もなかなか希望者がいないようだ。

「NHKが日光を舞台にしたドラマでも作ってくれないと無理。来年の『真田丸』は関係なさそうだしねえ。あなた、鬼怒川温泉を舞台したドラマでも作ってくれませんか」と旅館の店員は言う。

ウエスタン村は、債権でもめており、実質的に破綻している。今もなお、倒産におびえて年寄りが旅館を運営、その姿に未来はない。

それでも、と僕は思う。実は鬼怒川温泉は、川の氾濫から台地が変形し、温泉が湧いたという説もある。「災い転じて」福という観光地になるように祈る。(小林俊之)

◎流行語大賞トップテン入りで波にのる「とにかく明るい安村」のウラ事情
◎小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

『2015ユーキャン新語・流行語大賞』(現代用語の基礎知識選)を逃したものの、トップテン入り。初の著書で、とにかく明るい安村が例の「全裸に見えそうな危険なポーズ」を撮った写真を集めた『安心してください、はいてますよ。』(とにかく明るい安村著・竹書房)に東京都の教育委員会から“イエローカード”が出そうだという情報が業界を駆け巡った。

とにかく明るい安村『安心してください、はいてますよ。 』(竹書房2015年11月30日)

「安心なんかできねーよ。小学生が全裸で公園でマネしてるって通報があったって話が都の教育委員会の間で出まわったんです。それであの安村が『教育界に睨まれていた』って情報が流行語大賞の直後に出まわりました」(芸能ジャーナリスト)
この本を巡って、小学生が学校でポーズをマネして脱ぎだしているというのは事実だ。都内の小学校教師は語る。

「授業にならない。体育の着替えなどで必ず『大丈夫です、はいてますよ』と脱ぎ出す生徒がいれば、クラスメイトの体操着を脱がせて『大丈夫ではありませんね。はいていません』などとちょっかいを出すいたずらが流行しています」

「安村の本が教育委員会に目をつけられているかも」という話の端緒はいくつかあるが、都市伝説かもしれない話として「ある父兄が東京都の教育委員会に安村の本を持ち込み、『これはちょっと子供の教育によろしくないのではないでしょうか』と、ほぼ全裸に見えるカットを教育委員会関係者に見せつつ語ったことがあげられる。

「安村の著書がお上、とりわけ教育関係者にうんぬんという話は、僕も知り合いの刑事から半信半疑で聞きました。こんなの、よくあるライバル出版社の揚げ足とりですよ。だれか、安村の本の利権を版元にとられておもしろくなかったか、あるいは安村がここまでブレイクしておもしろくないと思っている御仁か。いずれにせよひがみから始まった嫌がらせが、教育委員会への筋違いなタレコミになったにちがいありませんよ。よくある話です」(全国紙社会部記者)

バカバカしい噂がかけめぐっているが、とくに発売禁止の兆しはないと出版事情に詳しい猪野雅彦弁護士は言う。
「まあ、べつに全裸を奨励しているわけでもない。ネガキャンを展開するのはいいけど、逆効果だよね。でも売れれば勝ちじゃないのかな」

果たして、もっと売れて「安心してしまう」のは仕掛けた吉本興業と版元ばかり也となるや否か。(小林俊之)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
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「脱原発」×「反戦」の共同戦線総力誌『NO NUKES voice(ノーニュークスヴォイス)』第6号!

 

外国人が同国人を安心させてぼったくりするのは「同胞ぼったくり」なんて呼ばれている。
「韓国人や中国人が同胞をだますのが多いですね。たとえば、『私が出資しているから大丈夫』とか『観光ガイドにはない裏情報で長い間、日本にいる僕しか知らない』として、ぼったくり店にぶちこむ。出てきた客に文句を言われる前に姿を消す」と韓国人キャッチ。

影野臣直氏氏。20歳の頃、大学生ながら歌舞伎町でぼったくりを始める

◆歌舞伎町の「食物連鎖」

こうした「ぼったくり」は、歌舞伎町ならではの「食物連鎖」だと影野氏は指摘する。

「ホステスがホストに金をつぎこむ。そしてホストが遊んでぼったくりに遭う。ぼったくりで儲けた男の連中がホステスにつぎこむ、という風に回転する。私は、ぼったくりが減らないひとつの原因はキャッチが増えたことによると考えています。昔は脱サラで一攫千金を夢見てキャッチになりたがる人がたくさんいたんですが、最近は、ほかの業界で使いものにならなくなった連中にくわえて、半グレのような不良が『ひとまずキャッチでもやるか』と気軽に入ってくるようになった。僕らがぼったくりをしていた時代はそれが本業なのでもう少し人情もあったものです。客が数十万円を払ってショックを受けているところへ、私たちも立場があるから、せめて泣き半にして、半分にしましょう。30万なら15万に、という人情があった。それに比べるといまのぼったくりは、すぐ暴力をふるってしまい、まるで余裕がないのです。それが、まるで弱肉強食の『食物連鎖』、キャッチの声のかけかたも強引になる。それで警察がさらにきつくマークする」

不良少年たちが安易にキャッチになることが確かに増えた。歌舞伎町では、未成年との淫行をガイドする連中も増えているという。

◆事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる

今年6月10日、歌舞伎町交番に「ぼったくり被害に遭った」と駆け込んできた客を警察が保護し、新宿署へ搬送、そして加害者側の店員を取り調べた。この手の弁護士に強いぼったくり側の弁護士が登場しても警察は怯まなくなっている。

「飲食店がこれまでバカのひとつ覚えみたいに『民事不介入』を振りかざして調子にのっていたからです。いくら民事不介入といっても、事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる(逮捕できる)。これは借金の取り立て、地上げの立ち退き、どんな民事上の事件でも、いきすぎた行為には恐喝等で、事件送致できますし、これは僕らが逮捕された時代からあまり高圧的な態度で相手を畏怖させたり暴力行為、また「飲み代を払え」と強く請求することは犯罪となります。私自身も強盗と恐喝2件で逮捕されたのですからね。これまで逮捕された店側の人間は、略式起訴で罰金50万円以下程度だったところ今後は正式な起訴(地裁での公判請求)もありうるので、そうなれば店員は20日間の検事勾留もついて身柄拘束されるでしょう」

これまで「文句があるなら警察に行きましょう」と自ら客を連れて交番前に行き、警察が対応しないことを嬉々として見せつけていた連中がいたが、これだけ警察が本気になると交番前のパフォーマンスもできなくなる。

こうなるとキャッチは立場がますます弱くなり、最近は「4000円ぽっきりだというなら証拠に一筆書いてくれ」とスマートフォンで顔を撮影されることもあるという。

「ただ、こうなると店側もまた新しい抜け道を探すでしょう。警察にもメンツがありますから街頭の防犯カメラでキャッチと客のやりとりを無断で録音したり、客を装って店内に潜入する囮捜査など、不当捜査があるかもしいれませんし、泥沼のいたちごっこになる可能性もあります」と影野氏。

苦しいキャッチはさらに悪質化。「私に前金を払ってください。追加一切なし」といって、客から路上で料金を受け取り店に紹介。店側は後に「金をもらってない」と再請求するケースもある。

「あまりに極端なぼったくりが頻発すると、今後は条例を強化した改正もありうるでしょう。たとえば料金表について営業許可を申請する際に東京都公安委員会に届け出る仕組みとか。国家権力が店の営業にも関与するようになると、歌舞伎町の飲食店は成立しなくなりますよ」(影野氏)

今日もまた、歌舞伎町では多くのキャッチが「4000円ぽっきり」などと客に声をかけているが、その動向は歌舞伎町の治安に直結している。

◆警察監視強化で歌舞伎町から池袋、上野、錦糸町にシフトするぼったくり店

10月上旬、ある土曜に歌舞伎町を歩いていると、まったくキャッチを見かけなくなった。見かけるのは、居酒屋のユニフォームを着て「3000円で飲み放題、いかがですか」と声をかけている“合法な声かけ”の店員たちだけ。

歌舞伎町のスナックのバーテンが言う。
「もう、キャッチをしていると、すぐに二人組で赤いベストを着た警官が『やめなさい』と止めに入る。常に見張られているのです。歌舞伎町でぼったくりは難しくなったと思います」

そして、クラブ店員が言う。
「10月上旬に、警官たちがぼったくり店やキャッチを徹底にパトロールした。『このままだと摘発されるぞ』と。それで、逮捕されては叶わないと、ぼったくり店はあわてて池袋、上野、錦糸町などに散ったのです」。 [完]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
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《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!

11月25日発売開始!『NO NUKES voice』第6号!

ここのところ、「ソープやデリヘルが歌舞伎町で激減している」と聞くが、歌舞伎町の最新流行では「ギャルの手こきサービス」がある。

「風俗のメッカだった歌舞伎町も、時代の流れで性風俗が減退。客もハードなエロスが求めなくなった。ただ、手軽な20分1500円の“手コキ”は大流行。AVルームに現役の女子大生や仕事を終えたOLが大量に働いていて、相場3000円程度でやっているんですが、現役の女子大生ですとか言って10万円以上の値段で案内したこともある。これは事前に値段交渉で提示するので絶対に揉めません。これこそメディアが報じない『隠れたプチぼったくり』なんですよ」

ぼったくりに遭わない方法は「キャッチを無視するしかない」という。

一方、「ガールキャッチ」も最近、復活しつつある。6月、歌舞伎町のキャバクラ店「LUMINE」で、22歳のホステスが逮捕。容疑は2015年3月11日の深夜、20代の男性会社員2人に「料理は何を頼んでも3000円。時間も無制限」と紹介しておいて、実際にはテーブルチャージ代7万円を請求するぼったくり。

男性2人は1時間超の飲食で24万円を請求され、全額支払った。一説には同店の背後には中国系のマフィアがいたとされるが、女性が客を誘う「ガールキャッチ」は過去、歌舞伎町で横行していた手口だ。

◆「ガールキャッチ」の元祖、影野臣直氏が嘆く「にわかぼったくり店」の跋扈

ぼったくりを始めた頃の影野臣直氏(撮影/渡辺克己)

1999年2月、新聞に「梅酒一杯15万円」の見出しで報道された「元祖ぼったくり事件」の逮捕者で、その後は「元ぼったくりの帝王」として作家になった影野臣直氏は「ガールキャッチ」を始めた元祖だ。美女を路上に立たせて「安く飲めますよ」と男性にしなだれかかり、そのまま彼女が客の相手をする。この「ぼったくり」の原型を作った人物だけに、現在のぼったくり事情にも精通している希有な人物だ。
「ゲリラぼったくりとは、聞こえがいいけど、私に言わせれば『ぼったくり』の美学も知らない『にわかぼったくり店』ですよ。ほかの場所からブラリとやってきて、1、2ヶ月で稼いではほかの盛り場に移るということをやっている。彼等は、客を踏みつけるように根こそぎ金を奪う。私たちがやっていた時代は、ぼったくった相手に、『せめてもの店からのプレゼントです』とヘネシーを一本プレゼントしたり、客の懐具合を見て適度なぼったくりをしていました。歌舞伎町には昔から私以前にも連綿とぼったくり業者がいたんです。ぼったくり条例は、『明確な料金の義務化』と『乱暴な言論や暴力による料金不当取り立ての禁止』をうたっていますが、値段表なんて、たとえば店内を赤い照明にして、細かい赤い文字で書けば読めませんし、料金取り立ても、やんわりと『遊んだ分は払って下さいよ』と丁重に請求すれば条例に触れない。キャッチと聞いた値段とは違う、という主張も店としては『そんなキャッチは知らない』と言い張ればいいだけで、抜け道はいくらでもあるんですよ。客は払わないと無銭飲食になるわけですしね。そもそも『飲食業』で登録していれば一定の値段をつけますが『サービス業』の登録店は、どんな値段をつけてもOKという仕組みがあります。そういうこともあって警察も民事不介入だったんです。『ぼったくり防止条例』もザル法だったので、成功例を見た半グレたちが、『みかじめ』さえ払えば堂々と営業できる歌舞伎町でぼったくりを始めました。だからこそ、ゲリラぼったくりの飲食店が増えたのでしょう」

◆現役ガールキャッチ女性の告白──「人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」

風林会館の前にいた現役のガールキャッチ女性に話を聞いた。24歳で、鹿児島出身の真鍋かおり似。彼女は、ガールキャッチだが女性客を捕まえるのがうまい。

カップルを狙って、「彼女の前でかっこつけそうな男」をバーに連れて行くのだが、相方の女性の服装を褒めるなどして親しくなり、信用させる。ときには「前に会ったことある」とウソをついて近寄るという。

まずはこのカップルをしこたま飲ませて泥酔させ、数十万円を支払う伝票にサインさせる。2人を別の部屋に分けて彼には「彼女が支払いはあなただと言った」と言い、彼女には「彼が支払いはあなたからもらえと言った」と言い、二重に金をとるひどいこともやるという。

「1年くらい前は、居眠りをする薬をビールに入れて泥酔させて、ATMまで客を連れて行って、金を引き出させたこともある」と女性。ぼったくりに関して、罪悪感はないのか。

「歌舞伎町に来て、そんな警戒もせず安く飲めると考えるほうがおかしいでしょ。それに、こうして勉強になった方がいいんです。人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」[つづく]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる [近日掲載]

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鳴り物入りで、英ワールドカップの日本代表の活躍を受けて開幕した感のある今年の「ジャパンラグビートップリーグ」。初日に続いて「集客」が2日目もぱっとしない。試合はつまらなく、天気も駄目ダメだったが、この悪しきムードを一掃したのは、「秩父宮」に登場した意外な「大和撫子」だった。

◆「五郎丸効果」で関係者は盛り上がっているものの……

五郎丸歩(ヤマハ発動機)の「五郎丸ポーズ」が流行語大賞をとり、ラグビー日本代表メンバーはテレビ番組、CMに雑誌にと引っ張りだこ。ラグビーの大ブレイクがやってきたと思いきや、なんと11月13日に行われた開幕戦の「パナソニックーサントリー戦」で前年の8月の開幕戦より370人少ない、1万792人の観客数で責任問題となっているのが「ジャパンラグビートップリーグ2015-2016」 。ここではラグビー関係者が観客をかき集めるのに奔走している。

初日を終えると「ジャパンラグビートップリーグ」の関係者たちは、出場する東芝やリコーの関係者のみならず、マスコミ相手に急遽「来てください」と緊急コール。ホームページには、磯山さやかが初戦を観た「楽しかったです」との感想のツイッターと前出・人気ラガーの五郎丸のつぶやきを並列で掲載するなど痛いほど必死に集客をPRしている。

2日目、秩父宮ラグビー場で行われた「リコーブラックラムズ VS NTTコミュニケーションズシャイニングアークス」(午前11時40分開始)と「東芝ブレイブルーパス VS クボタスピアーズ」(午後2時開始)は、雨がぱらつく中、少しずつ観客が集まってきて、スタンドの半分強をなんとかして埋めた。

「それでも、マスコミは押し寄せました。記者は25人、カメラマンは30人以上。こんなにマスコミが押しかけたのはちょっと記憶がありません。平尾誠二(現神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督兼任ゼネラルマネージャー)が率いた全日本が1991年にワールドカップで初勝利して以来かも」(ラグビー雑誌記者)

◆「記念観戦」の一見客がほとんどだった

しかし試合は「リコー VS NTTコミュ」は、39-12でNTTが勝利し、「東芝-クボタ」のマッチは47-3と一方的で、ダブルヘッダーにもかかわらず後半は2試合とも負けているためかバックスも守備で走らず、やや気が抜けた雰囲気がスタンドを支配。2試合目の「東芝 VS クボタ」戦では日本代表のキャプテンで、東芝でフランカーを務めるリーチ・マイケルが最初のトライを決めた前半が終わると「雨も強いし、もういい」とばかりに多くの人が席をたった。つまり「記念観戦」の一見客がほとんどだったのだ。

「休みなのに観戦しろと言われたので来た」(20代の東芝社員)、「派遣社員ですが、昨夜に上司から頼まれたので応援に来ました」(30代リコー派遣社員)という、「人数合わせ」の観客ばかりの中、西側スタンドで「GO! GO! スピアーズ!」と黄色い声をあげて男性客の視線を集めたのは、「スピアーズ」のチアガールたちだ。

◆クボタ「スピアーズ」のチアリーダーは質が高い……

ちょうど踊りの練習をしていたのだが、これが売店でごった返す空間で行っていたため、いっせいに男性客に取り囲まれる。

「撮影しないでください」とスタッフが注意してまわる。
「じゃあ、こんな目立つところでやらなくても」という声もある中、
「実は『スピアーズ』のチアリーダーは質が高くて、ファンがついているメンバーがいるほどなんですよ。僕も実はチアリーダー目当てに来ました」(男性客)というラグビー関係者が涙ぐみそうな人も。

それでも、初心者でもわかるように、「今のプレイはノックオンです。ボールを○○選手が落としたために反則となります」などプレイのひとつひとつに電光掲示でリプレイが出て、解説のアナウンスがついたり、ファンサービスで試合前にプレゼントを選手が観客席に投げ入れるなどして、集客への工夫が感じられた。

「03年からリーグがあるが、チームで実力差がありすぎる。少なくとも実力を均衡にしないといけない」(前出・ラグビー雑誌記者)との声も。

一番盛り上がるのが「チアリーダー」では情けない。2019年のワールドカップに向けてさらなる充実が求められるラグビー界の現状と課題がかいま見えた秩父宮だった。

(小林俊之)

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昔から歌舞伎町を知る飲食店の経営者に聞くと「最近のぼったくりは暴力団追放の流れと無関係ではない」という。

「もともと歌舞伎町には縁もゆかりもない不良連中が突然やってきては短期間で稼いで売り抜ける「ゲリラぼったくり」が多い」という。セノーテもそのひとつだった。これは大手を振って暴力団が仕切っていた頃はなかった現象だった。

「いまの歌舞伎町でのヤクザは他からの侵出にうるさくなくなった。酒と少々の金を持って挨拶されたら、その後にどんなひどい営業をしていても黙っているし、あいさつに来ない者を脅しに行くこともなくなっている」と経営者。

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

◆「セノーテ」のベテランキャッチが語るぼったくりの世界

ぼったくり店「セノーテ」のキャッチをやっていた山崎哲夫(仮名)はこの世界でのベテラン。30年以上もキャッチを続けている。

「昔は店の前に店員を立たせて『いらっしゃいませ』と通行人に呼びかける通称『ポーター』だったんですよ。でも、2006年にいわゆる『新風営法』ができて、客引きが禁じられ、独立したキャッチになったんです。俺らはいま店とは直接関係ない立場。客がキャッチに3000円ぽっきり飲み放題と聞いたと騒いでも、店側はそれは知らないと言い張ることになっている。ときどき店がキャッチを主犯に仕立てようとすることもあるけどね」

セントラルロードに立ち尽くし、客が望むならストリップ、キャバレー、カラオケ店、裏ビデオ店……。どこでも連れて行くのが山崎氏の仕事だ。たとえ1円の利益にもならなくても、客に信用されるために道案内をすることもある。

「ストリップ劇場はとり半(50%)、キャバクラは30%前後」
客を紹介すれば見返りに店からキックバックを受け取る。キャッチのがんばりに、店側も応えようとする。多くのぼったくり店は、キャッチが入れた客の売上げによって歩合を支給する。もし新人のキャッチの場合、だいたいは、売上げの2割前後とされる。

売上だけではない。入れた客の本数(人数)に賞金をつける店も多い。5本入れたらいくら、10本入れたら何万円など……。今や稼げないキャッチでも、1日2万円前後。稼ぐキャッチは1ヶ月で200万円以上の収入を手にするのだという。

◆不景気と『半グレ』進出で増えてきた悪質ぼったくり店

山崎氏はバブルの時代も歌舞伎町で稼いだ。オールバックで、一見してキャバレーの支配人風。こぎれいなグレーのスーツを着た男性は上品な顔つきだ。そんな人物でも悪質なぼったくり店に客を紹介したのは、近年の不景気のせいもあるという。
「セノーテを始めた経営者のTは、もともと池袋でやっていた水商売の業者。開店にあたっては資金のスポンサーを集めていました。その中で中国人の事業家から開店資金を引っ張っていた。そこで僕らキャッチにも連絡がきて、当初はぼったくりをやるということは聞いていなかったけど、すぐにそっち系だというのが分かった。僕らはぼったくりだから仕事を断るということはしたくないけど、昔より仕事は少ないからこれは仕方ない」

ゲリラぼったくり店は基本、公安委員会に必要な届け出を出していないことが多いという。許可が出ていない状態で2、3ヶ月で一気に稼いですぐ消えることもあるという。最近は『半グレ』と呼ばれる不良連中の進出も増えたという。

「揉めた客には路地裏で取り囲んだり、警察が呼べないようにうまくやっていた。でも、そういう連中のせいで、今の歌舞伎町は青パト(行政がパトロール用に巡回させている警備車)もかなり増えて、『キャッチはすべて違法です』という放送も流れるようになった。いまは何度めかのぼったくりブームだと思いますが、本来は『ゲリラぼったくり』があると困るのは我々。窮屈になっている」

山崎は、酔って『おい、きれいな姉ちゃんがいる店を紹介しろ』『ちゃんと案内しろよコラ』という傲慢な態度の客にはあえて「ぼったくり店」に案内する意地悪もあるという。

「態度が悪い客に、ぼったくりだったと文句を言われたら、『もう一度、案内させてください。チャンスをください』と懇願して、2軒目のぼったくり店に案内したこともあります。その客だけで10万円近くキックバックがあった」
この非情なキャッチの話は続く。

「僕自身は風営法が改正された直後の1991年に客の進路をふさいだという微細なことでヨンパチ(警察署で48時間勾留)を2度くらったことがあり、それで罰金を払ったことがあります。風営法違反で5万円の罰金は痛かったですが、長くやっていてもその程度」

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

◆ここぞとばかりに高い金を払う外国人観光客もいいカモ

外国人観光客もターゲットだ。韓国人や中国人の観光客にも声をかけるという。
「外国人はポールダンスをする店に引き入れることが多いです。追加料金を払えば女性を連れ出して『抜き』もできるんですが、観光客はここぞとばかりに高い金を払うのでいいカモです。だいたい、こっちには韓国人や中国人の仲介人もいますから、もはやなんでもあり。歌舞伎町には14歳の少年キャッチもいますよ」

キャッチになりたいという若者がやってくることもあると山崎。
「やりたいやつがいたら、30~40%の手数料をとってやらせます。成績が上がらないやつはダメでも内情を知ることになるので、暴力団とか身近なところで働かせて飼い殺しにするんですよ。ただ、今のキャッチになりたい若者は、『いつか歌舞伎町で店をもちたい』とか『こうしてのしあがる』というビジョンも野望もない。『ガソリンスタンドの仕事がおもしろくない』『営業の仕事はもう嫌』という『デモしか』キャッチしかいないような気がします」

中には山崎よりベテラン、40年以上もキャッチをしているおばあさんもいるという。
「彼女は通称マリアって呼ばれていて、伝説の人です。誰にもでもつきまとう。相手がヤクザだろうが警官だろうが気にしない。店を案内させたら天才的なうまさで、前に摘発されたときは裁判で『私はマリア様だと呼ばれている。ぼったくり店に案内するわけがない』と叫んだそうですよ」[つづく]

(小林俊之+影野臣直)

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法外の御代51万円を請求した「CLUB Cenote(セノーテ)」事件は、ぼったくり取り締まりの大きな引き金となった。事件のすさまじさはその金額だけでない。被害者がぼったくり店で働かせられ、恐怖のあまり富士山麓の樹海まで逃走するという衝撃の事件だったのだ。

2014年12月、大手居酒屋に勤務していた32歳の男性は、歌舞伎町でひとり酒を飲んで締めのラーメンを食べ、帰宅しようと歩いていたところだった。

そこへ現れたのが客引き。「1時間4000円ですよ」と声をかけ、男性は給料を受け取ったばかりとあって懐に現金約20万円があったため「気が大きくなっていた」と入店した。時間は深夜4時だった。

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

◆目が覚めたら、体格のいい従業員ら数名に囲まれ、監禁状態へ

入店すると、店員に勧められた1万円のシャンパンを注文してしまったが、このときすでに酔いは深く30分で居眠りをしてしまった。気付いたら、時間は正午になっていた。持っていた現金は見当たらず、この暗い店内にいた記憶も曖昧。そこにいたのは体格のいい従業員ら数名で「お客さん、51万円になります」と請求。驚いた男性が「そんな払えない」と断ると、男性を取り囲み、「金を払わなかったら帰れねえぞ」などと声を荒らげ、腹を殴り、「だったら、うちで働いて返すしかねえんだ」と威圧。監禁状態に陥り、勤務先の出勤時間も過ぎてしまった。

それまで無遅刻無欠勤だった男性には、心配した同僚から携帯電話に連絡があったが、従業員に「会社を辞めると言え」と強要され、退職を申し出た。

◆新宿区から富士山麓の樹海まで走って逃走したその距離70キロ

男性はその後、この店の職員寮だとする中野区の住居に引っ越しをさせられた。夜からはトイレ掃除や客引きを命じられたが、翌朝8時に寮に戻った男性は着替えてすぐに逃走。動揺して警察へ行くことより「富士山まで逃げれば追ってこないだろう」と思う一心だった。

到着したのは神奈川県山北町のJR東山北駅、ひたすら歩いて静岡県御殿場市に入ったが、持ち金もなく疲れ果てて座り込んでしまった。そこを静岡県警の警察官が通りがかって保護されたのだ。男性がいたのは山中で、追い詰められた人間の行動がいかに奇特なものになるかが分かった。新宿区からの逃走距離は70キロにも及んだのだ。

今年2月、警視庁は店の従業員ら5名を逮捕。「ぼったくりではない」と5人とも容疑を否認していたが、同店はオープンした昨年11月当初から高額請求などの相談が51件寄せられていた。「セノーテ」という名前は実は同じ場所で別の人間がやっていた名前で、そのまま同じ名前で営業をしていた。そのため、前の常連客も被害に遭っていたようだ。

◆セノーテのような事件は毎晩、起こっている

ぼったくり被害の情報サイトを運営する青島克行弁護士は「店側は自分から裁判を起こして請求額をとったりすることができないのを分かっていて、当日のうちにできる限り金を取りたいと思っているから過激な行動に出る」と説明する。

一方、客については「理屈では自分が正しいと分かっていても、店側の言いがかりや威圧が続くと、本当に自分が正しいのか分からなくなる。反論する気持ちも萎え、言いなりになる以外の選択肢がなくなっていく」という。

セノーテのような事件は毎晩、起こっている。法曹関係者は「とにかく店から出るのが一番。その場で金を払うのではなく、相手を刺激しないよう下手に出ながら交番に連れて行くことが大切。もしも店に交番に行くことを止められたら、何度でも『お願いです、交番に行かせてください』と懇願すること」と呼びかけているが、セノーテの極端にひどいケースのおかげで歌舞伎町への取り締まりは強硬策がとられ始めている。[つづく]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影小林俊之)

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