長打はあるが、守備はまるでダメ。拙守を連発し、5月7日に選手登録を抹消して二軍落ちし、調整している「問題助っ人」のホアン・フランシスコ(巨人)の傲慢なふるまいが話題になっている。

「ロッカールームから若手を締め出して音楽を大音量で聴いていた」「川相二軍監督が『グッドモーニング』と挨拶をしたら無視した」などなど、その破天荒な振る舞いには枚挙にいとまがないが「このところ、練習が終わると川崎の風俗街に直行しています」というから驚きだ。

◆「ジャパンのソープガールはいいぞ」と来日前に聞いて川崎通い

「なんでも来日する前に『ジャパンのソープガールはいいぞ』と前新のトロント・ブルージェイズで、日本に留学したことのある選手に聞いたらしい。練習が終わると、いちもくさんに川崎にタクシーで直行するので『あの熱心さが試合でも出てくれればいいのですが」とコーチ陣も頭を抱えている。

フランシスコは5試合で18打数3安打で打率は1割6分7厘、0本塁打で11三振、守備で2失策と、まるで役にたっていない。守備の下手さは折り紙つきで、2軍の試合でも不通のゴロを1塁手として処理するのに「おおっ」と観衆の歓声があがるほどだ。

「あんなにぶよぶよの身体で本当に野球ができるかどうかは、巨人はきちんと確認していない。中日は獲得を見送っていることだし、チーム編成の責任を問う声が出てきている今、ソープ三昧とはあきれるね」(スポーツ紙記者)

◆「あいつに川崎の風俗への案内をしたのは誰か?」と巨人内部では犯人探し

それにしても、フランシスコが遊び人だったとは、これもリサーチ不足というべきか。

「いや、アメリカではああいう明るくて破天荒な選手はモテるんですよ。遠征中に女とどこかドライブに出かけて練習をすっぽかしたこともブルージェイズ時代は頻繁にありましたね」(同)

巨人の内部では、「あいつに川崎の風俗への案内をしたのは誰か」と犯人探しが始まっているようだが、いまでは、海外旅行用に川崎の風俗ガイドも英語で案内がサイトに出ている時代。「二軍で調整されているのは、少し体重を絞ることと、守備のフォーメーションを覚えさせることだが、あいつはまったく覚える気がないようだ。まあ、夜は『ホームラン』をかっとばしているようだがね」(巨人関係者)

巨人では、阿倍と坂本が怪我から復調して戻ってきた上に、ファーストができる人材はひしめいている。一軍に呼ばれそうもない状況がフランシスコの風俗遊びに拍車をかけているのか。

「適当にプレイして遊んで帰国するでしょう。別に活躍しなくても契約金2000万円、年棒1億2000万円は減らされるわけがないですからね」(同)

いまだに「ドミニカに帰れ」と二軍の試合で言われる彼が、本気で野球をやる日は来るのだろうか。

◆外国人選手の獲得があまりに下手な読売ジャイアンツの時代遅れ

だいたいにおいて、もう旬がすぎた「キューバの怪人」、セペタを34歳の時点で獲得し、いきなり4番に据えるなど、もはやあいた口がふさがらない采配をした。

「キューバ政府とでも密約があったのかね。キューバでは英雄だろうが、しょせんはアマチュア。いきなり来日して打てるほど、プロは甘くないよ」(巨人関係者)

さらに、今年はホレダ、マイコラスなどが投手として健闘しているので、めずらしいほどのあたり年だといえる。ただ、アンダーソンがいるかぎり、フランシスコを使うのは、やはり無理がある。原監督は、フランシスコをサードとして起用するつもりらしいが、あの守備は中学生以下だ。エラーが続出するのが目に見えている。

僕は、外国人の助っ人は、「そんなすごいやつがどうしてアメリカで活躍できなかったのか」という風に感想を漏らすようなすごいやつをつれてくるのがスカウトの腕だと考えている。

たとえばアメリカでは通用しないが、いきなり日本に水が合うような、たとえばヤクルトのバレンティンのような選手。そうした発掘ができない球団は、これから生き残れないだろう。

札束でビンタしてメジャーリーガーを連れてきても、役にたたないことは歴史が証明している。それなのに、いまだにメジャーリーガーを連れてこようという巨人は、時代遅れの野球をしているのだ。

ともあれ、近く、プロ野球は「セ・パ交流戦」に入る。助っ人外国人がどれくらい活躍しているか、年棒と照らし合わせてビールを飲みながら観戦するのも、また一興かもしれない。

(小林俊之)

◎売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

4月22日昼、反原発をアピールする目的で首相官邸の屋上に小型の無人機、「ドローン」1機を落下させ、逮捕された影響は大きい。 全国で、公園や公共施設でドローンでの遊技が禁止されているようになり、法規制も検討されるようだ。「まじめに遊んでいる愛好家にはいい迷惑」の声も聞かれるが、「規制前にひと儲け」を企む連中がいる。

「いわゆる盗撮フリークですよ。真上にドローンを飛ばして、海の家から着替えシーンなどを撮影する。もちろん高性能カメラを装着しなくてはなりませんが、早くも九十九里浜では、あるチームが風向きの分析に興じているそうです。今年の夏は、海の家は軒並み、天井をつけなくてはなりませんね」(警察関係者)

カメラ搭載のドローンは、今や1万円前後で購入でき、メカに詳しくなくても、ロケーションさえ把握していれば、自在の場所にドローンを飛ばすことができる。

◆盗撮マニア向けのドローン撮影講習会も

「実は、報道されていませんが、盗撮マニアの間では、野外プレイを楽しみカップル向けに、真上からそのプレイを撮影する技術の講習会がマニア向けにあったようで、どんどん技術的には盗撮マニアの連中が腕を磨いています」(同)

実際に、そうした「盗撮マニア」向けのアダルトショップに行ってみるとドローンを使って女子高のテニス部の様子や、体育館をのぞき見したような映像、または、どう撮影したのか、女子小学生がプールで泳いでいるような映像も販売されています。彼らは、縦横無尽にドローンを動かして、撮影ポイントをなんとかして見つけて、エロい映像を切り取るプロなのだ。

「実は男女混浴で露天風呂を楽しむサークルがあって、ヌーディストたちがある温泉に集まっていたこともあったのだが、その情報すらも漏れていて、ドローンが入り込んで撮られたという話を聞いた」(都内スポーツショップ店員)

さて、女の露出があらゆる機会に増えるシーズンに入り、「ドローン」を使ってエロいシーンを撮るプランがそこかしこで練られているにちがいない。まあ彼らを追跡して捕まえようにも「ドローン」してしまって尻尾すらつかませないのだからやっかいだ。

◆「まさか空中にも警備が必要な時代が来るとは」と警備会社は大わらわ

警備会社は今、大わらわだ。実は福島第一原発で作業をしている人たちに聞くと「ドローンが原発の作業区域内にやってこないとも限らない」として、空中の警備をどうするか、東京電力や作業の請負い会社などが真剣に警備計画の見直しに入った。

万が一、原発の建屋に、危険な薬品を積んだドローンが飛んでこないとは、誰も言い切れないのだ。

果たして、法律の整備が追いつくだろうか。

たとえば、5月19日の中日新聞にはこんな記事が出ていた。
—–※—–※—–※—–※—–
ドローン規制条例を検討 サミット前提に知事 [中日新聞]
鈴木英敬知事は18日、志摩・賢島での開催を目指す2016年の主要国首脳会議(サミット)に関連し、賢島を含めた伊勢志摩国立公園の指定区域で小型無人機(ドローン)の使用や飛行を規制する罰則付きの条例を検討するよう庁内に指示したことを明らかにした。県内開催が決まった場合に制定する。県庁で記者団に述べた。
県サミット誘致推進プロジェクトチームなどによると、伊勢志摩国立公園は自然公園法が適用されるが、同法は景観や希少な動植物の保護が主眼で、ドローンの規制は困難。そこで要人の移動や宿泊、会議の出席などが想定される場所やルートを県が独自の条例で指定し、規制する。
鈴木知事は「(ドローンの法規制を検討している)国に呼応し、要人警護では万全を期したい」と強調。条例はサミット開催前後の期間も含んで適用する時限的な制定とし、年内にも県議会へ提出する意向を示した。同チームによると、ドローンの規制をめぐっては、軽井沢へのサミット誘致を目指す長野県の阿部守一知事も時限的な規制を検討する考えを示している。(相馬敬)
—–※—–※—–※—–※—–

まあ、サミットでドローンによるテロなどが起きたら大問題だ。「こんなところで五輪をやっている場合か」という議論にもなりかねない。

◆松本清張の小説世界もドローンがあれば実現できる『十万分の一の偶然』

昔、松本清張の小説『十万分の一の偶然』では、スクープ写真を撮りたいがために、走るトラックにラジコンでヘリコプターをトラックすれすれに飛ばす、というカメラマンが描かれたことがあるが、それは、確かに「痕跡がないので事故と呼ばざるを得ない」という状態を作った。今、ドローンはうまく使えば殺人すらも遠隔操作でできそうなほど(煙突から毒をまくなど)だが、ミステリー小説顔負けになるほど、この玩具は進歩したのだ。

ある面では、こうしたテクノロジーが進化するのは「戦争のせい」だ。グーグルアースがここまで発展したのだって、インターネットがここまで発展したのも、戦争の副産物だ。だが、戦争によって発展してきたものが、戦争に使われてはならない。ここは1つ、人類は知恵を集めて、ドローンを、なんとか人類が役にたつ方向、たとえば事故で閉じ込められた被災者に食料を渡すなど、でつかわれることを切に望むものである。

(小林俊之)

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる
◎見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告
◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

5月10日に「プリズム」が製作した舞台公演「心のプリズムvol.Ⅵ~闇をときなす音色~」を観劇した。場所は新宿のシアター・ミラクル。満員だった。

実は、この安奈音々氏がプロディースする劇は、「ダンス」のパフォーマンスが優れているといい意味で評判だったので、気になっていたが、日程が合わず、ようやく5月に観劇できた。

◆実力のある劇団俳優たちの舞台迫力

「演劇」については、もはや実力のある俳優だらけで疑う余地がない。劇団の俳優たちは、厳しい演出家のもと、実に拷問のような訓練を受けている。だからしばしば、劇団の公演のあとにテレビドラマを見ると「こんな学芸会みたいなドラマを本気で流しているのか」と唖然としてしまうことになる。

ちなみに、ストーリーとしては、リーダーが死んで、劇団が存続するか否かの時期に、女優のひとりがガンになるという暗い設定ながら、それを吹き飛ばすがごとく緻密に構成されたミュージカルで、その闇に覆われそうなストーリーの舞台を、音楽や踊りで明転させている。

また、ひとつ見所をあげれば、全員がマイケル・ジャクソンの曲で踊るシーンも、大智そあが社交ダンスを展開するシーンも捨てがたいが、やはり剣舞の迫力だろう。こういってはなんだが、まだ剣舞を楽しめる空間があったのか、というより、「まだ剣舞をしたがる若者がいたのか」というのが正直な感想だ。

千秋楽「プリズム」公演「闇をときなす音色」より

◆劇団には若者たちの熱いエネルギーが満ちている

劇団といえば、「貧しい生活」が代名詞だ。僕は日活芸術学院にいて、シナリオの勉強に明け暮れていた。撮影所の連中とよく一緒に飲食したがとにかく彼ら劇団員は、肉体労働に明け暮れていた。

しかしながら「夢を食べる」がごとく将来に成功するためには、「いつかきっと」ががんばるエネルゲンだ。今もなお劇団員を見るとドキドキする。

劇団員が「果たして…俺はものになるのだろうか」と揺れる心を描いた秀逸な作品は、ドラマでは中村雅俊の『俺たちの祭』で、何回も深夜の再放送で見たが、そう、あれこそが劇団の生活で、飲食すらままならず、友だちの家に転がり込んで「ご飯にしょうゆをかけて食べる」などというのはザラだ。

「若者は我慢が足りない」と言われる。「ゆとり世代」「さとり世代」とも言う。だがこと劇団に限っては、今もなお、若者たちには熱いエネルギーに満ちていると思う。

残念ながら、自分が青春をすごした「日活芸術学院」は、すでに2013年廃校となり、映像コースは城西国際大学に引き継がれることになったようだ。なんと城西大学! 僕は高校が城西大学附属川越高校だから、とても不思議な縁を感じる。

高校時代にも、授業を抜けだして、さまざまな演劇を観にでかけた。そんなことばかりやっているから、成績がいいわけがないのだが、実に楽しい思い出だ。

宇崎竜堂が音楽を担当し、町田義人が歌った「ロックオペラ・サロメ」や坂本龍一が演出した劇も観たが、やはり劇団四季や宝塚は別格で、一度は観てみるべきだと思う。また、実は「オズの魔法使い」も榊原郁恵や早見優や、本田美奈子などが演じてきたが、一度は観るべきだろう。今は宮本亜門が演出しているようだが。

◆筒井康隆や江戸川乱歩の作品は今こそ演劇化すべき

今、昔の演劇の脚本が見直されているという。シェイクスピアや、オスカー・ワイルドや、日本では寺山修二、つかこうへいなども見直されている。「今更なにを言っているんだ、そんなの基礎知識じゃないか」と嘆くなかれ。若者は黒沢明も、小津安二郎も木下恵介も知らない。

今、自分が演劇化すべきと思う作品はたくさんあると思うが、筒井康隆や江戸川乱歩などはどうだろうか。江戸川乱歩などは逝去50年という節目で、タイムリーだ。さまざまなイベントが行われており、旬だと思う。

話をもとに戻せば、どうしてテレビドラマは、演劇のようにリハーサルを重視しないのだろうか。自分もテレビの制作にいたので、ドラマの現場を知っているが、多忙なタレントや歌手も集まっているので簡単に本読みをして、立ち位置を確認して、あとはよろしく、うまく撮ってねというスタイルだ。こんなものが世界に通用していくわけがない。もしも演劇というものを真剣に考えるなら、政府よ! 劇団に補助金を申請させよ。フランスなど優秀な映画監督や舞台監督がいるとなれば「作品に使ってください」と惜しみなく金を投資するではないか。

まあでも、今の若者の演劇を観ていれば、しっかりしているので安心する。自分もいつか、ブロードウェイの芝居を観てみたい。明日の生活すらも保証されない。厳しい競争原理から生まれた演出と演技。そこにはびこるのは日本ならではの「なあなあの芸能界」の風習とかけ離れた、「磨かれた実力」によるスキルが演技に反映された芸術空間にちがいないのだから。

「心のプリズムVOl6.闇をときなす音色」

(小林俊之)

◎アイドル撮影会は「先物買い」──1対1の激写体験で「至福の境地」!
◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
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なにごとも体験と思うが、多忙でなかなか体験できなかったひとつに「アイドル撮影会」がある。4月18日、かねてより「腰高」「美脚」のアイドル、大智そあちゃんの撮影会に行ってみた。

「撮影会」は、1時間近くもアイドルを独占でき、今や大盛況となっている。今は、アイドルとのつきあいかたとして重要なのが、「アイドルの、自分だけの表情を撮影してアルバムを作る」というスタイルであり、デビューしたばかりの新人とて、「ファンミーティング」ないしは「撮影会」にて、少しずつ、ファンを増やしていけるのだ。

◆元バレリーナの大智そあちゃんは「今、タンゴにはまっています」

とりわけ、ダンサーとしての大智さんは、体が柔らかく、元バレリーナの特性を生かして、片足をあげたバレエポーズや、鍛えた体幹を利してのポーズなど、さまざまな要求にこたえてくれた。

アイドルライターは語る。

「僕はアイドル養成スクールも取材しますが、長時間、体をカメラマンの要求にこたえることができる体力づくりがものすごい重要なテーマになっています。スポーツジムと契約しているアイドルたちもいますよ」

大智さんもスレンダーなボディを維持しているが、「今、タンゴにはまっています」と言う。

そういえば、筆者は池袋の某スポーツジムに某有名アイドルグループを見たが、こっそり仲がいいジムのスタッフに「あれはアイドルグループの××か?」と聞くと、こっそりと「見たことは口外しないでくださいね」と釘をさされた。

まあ、今のアイドルは踊って歌って、長時間の撮影にも耐えないとならないので、体力が必要なのだろうな、と思う。

感じたのは、「長い間、撮影していないと、カメラを扱うのに勘が狂ってくる」という点だ。今時のカメラの性能はかなり高くなっており、まちがっても露出オーバーやアンダー、もしくは、シンクロしていなく、ピンぼけしたりはしない。だが、好みのモデルと会っていて心臓がドキドキしていたりすると、なんともうまくショットが決まらないのだ。

現実として、今は秋葉原のソフマップや、スタジオでは、アイドルたちの撮影会はもはや百花繚乱。スタジオを運営している戸高光男氏は語る。

「ありがたいことに、アイドルの撮影会で、今年の7月末まで予定は埋まっていますよ。逆に、箱(スタジオ)はもう都内で抑えるのが難しくなってきているのではないでしょうか。料金もどんどん格安になっていきますし、これからはかなり競争が激しくなっていくでしょうね」

◆アイドルと1対1になり、好みのポーズが撮影できる至福の時間

さて、50分におよぶ撮影は、汗だくになったが、なんとか終えてさまざまなポーズの「お気に入りショット」を撮影することができた。

こうして自分で体験してみると、「アイドルと1対1になり、なおかつ好みのポーズが撮ってもらえる」というにはなかなかに至福の時間だろう。

今、ロリータアイドルの撮影会で、「抱っこ撮影」が問題となっているようだが、そんなのは論外だ。一部のルールを守らない人たちのおかげで、全体が批判されては困る。

かつて、90年代に何度めかのレースクィーンが出てきたときに、筆者はライターとして鈴鹿サーキットや筑波サーキットに乗り込み、鈴木史華や須之内美帆などのスターをリアルタイムで撮影&インタビューした。

基本的に気が合うスタッフたちと一緒だったので、楽しいロケツアーだったが、外でレースクィーンを撮影していると、私たちスタッフの横から、後ろから、あるいは私たちの前をさえぎるようにして、一般のファンが撮影を始めるので「すみません、目線が動くのでどいていただけますか」と、ファンに叫ばなくてはならなかった。もちろん、ファンだから撮影するなとは言えない。

そうしてファンは「撮影したがるもの」なのだ、ということがいやというほどわかってきた。

◆アイドル撮影会は「先物買い」感覚

アイドル撮影会を始めた人たちは、そんなファン心理をよくわかっていたと思う。ソフマップでよくアイドルがDVDや写真集の発売に引っかけて、撮影会を行うが、常に人であふれかえっている。

撮影会の様子をニコニコ動画などで中継したほうがいいと思うが、そうなるとハプニングが起きたときに困るから、難しいだろうなと思う。

いずれにせよ、ファンとアイドルが近くなる、という点で撮影会はとても有益だ。筆者は、「AKB48」の初期を知っているが、撮影会でなかなか人が集まらずに、大島優子や前田敦子が自ら秋葉原の街頭に出て、チラシを配っていたのを覚えている。つまり、現時点で、スターの卵で初々しいかもしれないが、将来的に「大スター」になるかもしれない、という点で、アイドル撮影会は「先物買い」をしている感覚になるのである。

好みのモデルがいたら、ぜひ撮影会に出かけてみていただきたい。その至福の時間に、あなたは幸福を感じるにちがいない。

(小林俊之)

 

大智そあちゃん(ピンキーガール撮影会より)

大智そあちゃんは、新宿シアターミラクルで5月8日から10日まで
「Anna Produce心のプリズム vol.6 闇をときなす音色」
という舞台に出演予定だ。(企画・制作 プリズム)

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5月3日、横浜の「みなとみらい公園」で3万人を集めて行われた「5・3憲法集会」に行ってきた。公園内にブースが出ており、反原発で知られる活動団体「たんぽぽ舎」の横で、僭越ながら、鹿砦社の反原発マガジン「NO NUKES voice」や月刊「紙の爆弾」などの販売のお手伝いを微力ながらさせていただいた。

したがって、耳に入ってくる大江健三郎や落合恵子、香山リカなどのスピーチは断片的にしか聞こえず、残念だったが、それでもなお、「平和」と「命の尊厳」を基本に、日本国憲法を守り、活かすということ。そして、集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対する、というスタンスは、賛同すべきものだ。

もちろん、ひとりのジャーナリストとして、改憲を含めて憲法について踏み込んだ答えを今、出すのは早計だと考えている。鹿砦社において、憲法について語る有能で知己をもつ先輩はたくさんいるし、ここで僕が叫んでも若さゆえに誰も聞く耳をもたないと思うので、声高に「憲法を守れ」と一席ぶつもりはない。ただ、僕は僕の経験の中で憲法を語ろう。

5月3日、横浜「みなとみらい公園」での「5・3憲法集会」にはおよそ3万人の人々が集まった

◆天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負ふ(憲法第99条)

まず、小学校3年生のときに、わりとリベラルな担任の教師のS氏は「日本には憲法九条があるから、戦争を絶対にしないのである」と何度も繰り返し言っていたのを強く覚えている。その説明は、もはや叫びに近かった。

もちろん、憲法は国の、政府のものであり、国民は基本的には追従する立場だ。どんな法律の入門書にも、たとえば行政書士の受験参考書にもそう書いてある。

憲法99条の条文はこうだ。

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

つまり99条には、大臣や国会議員や裁判官に対して「憲法を尊重せよ」という義務が定められているのだ。ここで留意すべきは、国民にはこの義務を課していないということになる。つまり99条は国民ではなく、国家権力の担い手に「憲法を尊重し、 擁護せよ」と命令しているのだ。だから憲法の基本原理である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを遵守すべきは、一次的には国家権力だ。

だから「原発推進」は、たとえば僕に言わせれば「国民主権」に反している。大間原発ひとつとってみても、あれだけ反対者がいるのに建設が始まろうとしている。そう、誰か登壇者がいみじくも語ったが、私たちは実は「憲法」を使いこなしていない。

それなのに現政府は、改憲だと言い出しているから目も当てられない。今、憲法は戦後最大の危機にあると言ってもいいすぎではない。もはやうだるような5月の暑さの中で、たくさんの人がこの集会に集まった背景には、「私たちの憲法が危ない」という危機感が現前としてあるように思う。

多くの人は脱原発社会で、平等な社会をめざし、貧困・格差の是正を求めている。もちろん僕もそうだ。それなのに、私たちの声は、たとえば国会の議場には届かない。

◆見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う

4月の地方統一地方選挙で、全国規模で考えれば「無投票当選」が300人以上出たという。だれしもが政治家になりたがらないのだ。民主主義が崩壊の危機にある。

このままでは「5人も殺しましたが、悔い改めてこれから政治の世界でがんばります」「ヤクザですが、市民のために頑張ります」という御仁が出てきても、理論的にはおかしくはない。基本的には、禁治産者でない限り、年齢さえクリアしていれば選挙には誰でも出れる。もちろん日本国籍があって供託金を払えればの話だ。

「このままでは、三権が少なくとも崩壊するね。まあ日本を動かしているのは行政府でも司法府、立法府でもなく、官僚なんだけどさ」と、全国紙の記者がつぶやいた。その通りだと思う。

自民党はごらんのとおりのていたらく。野党ももう機能しない。

たとえば民主党は、東京の千代田区の選挙で区議の定数が25もありながら、ひとりしか出せないていたらくだ。 そのひとりの候補者でさえ、連日のように海江田元代表がそこかしこに応援に来ていた。過保護にもほどがあるし、民主党も地に堕ちた。

さて見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う。政府は完全にはきちがえている。

たとえば私が住むさいたま市北区も無投票で候補者は全員が当選だ。ところが人口は1万4000人を超えている。1万4000人の行政を、たとえば無投票の候補者に全面的にゆだねてしまっていいのだろうか。

話を「5.3憲法集会」に戻せば、実に多くの方が鹿砦社やたんぽぽ舎の書籍を買い上げてくださった。心より御礼したい。

脱原発社会の実現を目指す市民ネットワーク「たんぽぽ舎」のブース

◆安倍政権の人権感覚は「オウム真理教」以下

閑話休題。なぜ「みなとみらい公園」でこの憲法集会は行われたのだろうか。聞けば毎年、いくつかの団体がバラバラに行っていたのが、今年は「政府が憲法改正などと言い出したから」、合同で行ったのだという。

問題の根っこは、みんなつながっている。米軍基地の普天間基地から辺野古への移設に反対している人たちが船上で海保に暴力に遭っている。 これも日本政府の傲慢だ。

僕はオウム真理教が大嫌いだ。歴史から抹殺したくなるような事件をいくつも起こしてきた連中だ。だが麻原という男は、ひとつだけ的を得ることをあるセミナーで言った。

「数が多いほうが正しい。こんなバカな話はない」

そう思う。

麻原でさえ、到達した事実に、安倍某という首相は気がついていない。

現在の政権の人権感覚のなさ、盲目ぶりは、僕に言わせれば「オウム真理教」以下のしろものである。なぜ「憲法集会」は、みなとみらい公園で行われたのだろうか。横浜は世界へと通じる船の玄関口だ。戦争も原発も、貧困も、差別の問題も、もはやグローバルに論じるべきだ。だからこそ、みなとみらい公園で憲法集会が開催されたのではないか。そんな気がするのだが考えすぎであろうか。

(小林俊之)

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』話題の6月号発売開始!

 

「731部隊展覧会実行委員会/新宿区婦人問題を考える会」が主催する「731部隊を検証する 4.11公開学習会」に行ってきた。講師は、「731部隊」の研究では第一人者である、慶應義塾大学名誉教授の松村高夫氏だ。

たとえば文部科学省は、昨年1月、教科書検定基準を改定し、近現代史では、「政府の統一的な見解、または最高裁判所の判例が存在する場合には、それらにもとづいた記述がされていること」としたが、731部隊について記述した教科書は「政府見解と異なる」として検定意見をつけられる恐れがある。

なぜなら、731部隊は人体実験を行い、細菌兵器を開発、製造し、多くの中国人や朝鮮人、モンゴル人を殺してきた。だが、日本政府の見解は異なるからだ。2012年には、服部議員が国会で質問主意書を出したが、「731部隊は、防疫給水活動をしていたの であり、人体実験や細菌戦を行った資料はなく、事実と認めらない」と答弁した。日本政府は、ずっとこうした見解を崩していない。

だが、中国・黒竜江省で731部隊跡を世界文化遺産に登録する準備が進められているが、もしユネスコで登録の 議論が深まり、登録が実現して世界の注目を浴びるようになったら、果たして日本政府は外圧に負けずに、同じ回答を維持できるのだろうか。

◆731部隊当事者から聞き取りを行った「フェル・レポート」の存在

「731部隊」研究の第一人者、松村高夫=慶應義塾大学名誉教授

そうしたことを踏まえての松村名誉教授の講義は、当時の731部隊の関係者から聞き取りを行った「フェル・ レポート」や「ヒル・レポート」にも言及した。たとえば、「フェル・レポート」にはこう記述がある。「炭疽菌」についての記述だ。

『野外試験の完全な細部の記述と図表がある。ほとんどのばあい人間は杭に縛りつけられ、ヘルメットとよろいで保護されていた。地上で固定で爆発するもの、あるいは飛行機から投下された時限起爆装置のついたものなど、各種の爆弾が実験された。雲状の濃度や粒子のサイズについては測定がなされず、気象のデータについてもかなり雑である。日本は炭疽の野外試験に不満足だった。しかし、ある試験では15人の実験材料のうち、6人が爆発の傷が原因で死亡し、4人が爆弾の破片で感染した(4人のうち3人が死亡した)。より動力の大きい爆弾(「宇治」)を使った別の実験では、10人のうち6人の血液中に菌の存在が確認され、このうち4人は呼吸器からの感染と考えられた。この4人全員が死亡した。だが、これら4人は、 いっせいに爆発した9個の爆弾との至近距離はわずか25メートルであった。』(『<論争>731部隊』(松村高夫著)より。

これだけとってみても、日本政府は嘘つきだ。731部隊はガチンコで人体実験をしているではないか。これは、 「細菌戦に従事してきた日本の重要な医学者」に聞き取りをしたレポートなのである。

松村名誉教授は語る。

「細菌散布による犠牲者は、8地域で死者数合計1万694人が認定されています。いまだに被害者数をはじめ、731部隊と細菌戦の実態が明らかにならないのは、資料の隠匿にも起因しています。公開された関連資料には、ソ連のハバロフスク裁判 (1949年)の「公判書類」、アメリカの戦後1945~47年の4次の報告書、(特にフェルとヒルの報告書が重要)、中国の『細菌戦と毒ガス戦』(1989年)などがあるが、肝心の日本が資料を公開していないのです」

◆731部隊の石井四郎軍医にも尋問している「ヒル・レポート」

「731部隊」を率いた軍医、石井四郎にも尋問した「ヒル・レポート」にはこうある。

『倉沢の病理標本は、ハルビンから石川太刀雄によって1943年に持ってこられた。それは、約5000の人間の事例からの標本から成っている。そのうちの400だけが研究に適した標本である。ハルビンで解剖された人間の事例の総数は、岡本耕造博士によれば、1945年に1000以下であった。この数は石川博士が日本に帰ってきたときのハルビンに現存していた数より約200多い。最初に提出された標本目録の結果からして、多くの標本が提出されていないことが明らかであった。しかしながら、最初提出されたよりも著しく多い標本の追加的コレクションを入手するには、多少催促をするだけでよかった。』

「ヒル・レポート」によれば、様々な疾病毎の事例数と研究に適した標本の事例数は、850の記録事例があったが、401例が適した標本であり、317例は標本がない。これは岡本博士の説明によるものであり、彼は500を越えない事例が石川博士によりハルビンからもってこられたことに疑いをもっている、とのことだ。

「最初に提出された標本目録の結果からして、多くの標本が提出されていないことが明らかであった」の部分に はあきれる。石井四郎軍医は、「アメリカにすべての資料を提出」することで戦犯を逃れ、命ごいをしたにもかかわらず、まだ何かを隠そうとしていたのだ。

「731部隊の戦犯」たちよ! 僕はこの戦犯たちを決して許さない。もしも許したときに、国家がまた戦争に突入したような「暴発」が始まるとも限らないのだから。政府よ!「731部隊」の戦犯が何をしたか明らかにせよ。そのことが最大の「反戦」である。

(小林俊之)


[参考動画]731細菌戦部隊と現在(1)松村高夫=慶應義塾大学名誉教授(2014年3月31日公開)

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「Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説5 メディアの洗脳から覚めた皆さんへ」(関暁夫著・竹書房) ?の登場は、実に衝撃だった。

そう、「書籍の来るべき未来」を追及する僕にとっては3つの意味で衝撃だった。まずひとつめ。

『Mr.都市伝説 関暁夫の都市伝説5』(関暁夫著・竹書房)

◆まるでYouTubeを見ているような感覚になるほどAR動画が満載

この「都市伝説」は、1万円札に織り込まれた暗号やフリーメイソンなどの陰謀などを展開してヒットを生んでいるのだが、この「5」については、AR動画がいくつものページに織り込まれて、動画を楽しめる構成になっている。つまり、動画を見るためのシールにスマートフォンをかざせば、簡単に動画が始まり、まさにYouTubeを見ている感覚になる。そのシールが随所に織り込まれているのだ。

ということは、この本は「動画を楽しむための導入キー」として機能しているということである。この本の虜になった何人かの読者に聞いたが「動画は見たが、本はあまり読まなかった」という。ということは、書籍の将来への方向性として「動画を楽しみたい人のためのマスターキー」たるものとして書籍が存在し、人たちが求めていくかもしれない、ということだ。もしもそうなら、芸能人の水着も、それから幽霊の写真も、これからは「AR動画つき」として本が売られていき、「動画が主で、文字が従」となる可能性が大きくあることを示す。

◆書籍が「パーティグッズ」として人気アイテムになるならば

ふたつめは、これもまた肉眼で見て驚いたが、この書籍を開いて、スマートフォンで怖い動画を見せる、という行為をキャバクラで見たときも驚いた。見たことはないが、パーティや合コンでの「つかみ」として男が自慢げに見せている人もいるだろう。

もし、書籍が「パーティグッズ」として人気アイテムになるならば、いい傾向なのではないかと思う。「読む」書籍としてはもはや日本については二人にひとりは年に一冊も読まない時代だからだ。

◆マイクロソフトからクレームが入るほど壮絶な陰謀説

話を「都市伝説」に戻すが、じつはマイクロソフトの陰謀を関氏が語りすぎて、マイクロソフトからクレームが入っているという。これは3つめの衝撃だ。 関氏は、テレビ番組でビルゲイツの財団が関わっている事業の一つであるワクチンについて触れ、そこで恐るべき陰謀説を語りだした。

「ビル・ゲイツは、ワクチン事業の裏で、密かに世界人口をコントロールしようとしている」という、壮絶な陰謀説を披露したのだ。これがマイクロソフトの逆鱗に触れたようだ。

◆「都市伝説」のルーツ「消えるヒッチハイカー」

「都市伝説」は、発祥がアメリカとされる。81年に流行した「消えるヒッチハイカー」はそれなりに衝撃的だった。

こんな内容だ。

(類話1) スパーダンバーグに住むひとりの男が、ある夜、家へ帰る途中、ひとりの女が道端を歩いているのを見た。彼は車を停めて「送りましょうか」と言った。彼女は、3マイルほど先の兄の所へ行くところだと言った。彼は「助手席へどうぞ」と言ったが、彼女は後ろのシートに座ると言った。途中、しばらく話をしたが、やがて彼女はおとなしくなってしまった。彼はその兄の家まで車を走らせた。その兄のことは彼も知っていたのだ。そこに着き、彼女を降ろそうと車を停め、後ろを振り向くと、そこには誰もいなかった。彼は妙に思い、その家へ行ってその兄に言った。「おまえさんに会うという女を乗せたんだけど、ここに着いたら消えちまってたよ」。その兄はまったく驚いた様子もなくこう言った。「その子は2年前に死んだ妹だよ。彼女を道で拾ったのは君で7人目さ。でも、妹はまだここまで本当にやってきたことはないよ」(http://roanoke.web.fc2.com/foreign/Vanishing_Hitchhiker.htm

◆都市伝説とは「みんなの間で語られているが、真実かどうか分別がつかないもの」

つまり、「都市伝説」とは、あえて定義すれば「みんなの間で語られているが、真実かどうか分別がつかないもの」ということだ。誰も知らない話は都市伝説にはならない。だから日本では「口裂け女」は都市伝説だ。いい女が寝てくれた。先に帰ったが、鏡にルージュで「エイズの世界へようこそ」と書いてあった。これが90年に流行した有名な「エイズ・メアリー」という都市伝説だ。都市伝説がひとり歩きしていくとき、語り部としては誰が浮上するだろう。

それは「時代が誰を選ぶか」という話となってくるが、関氏については、もはやあまりにもレジェンドとして存在が大きくなりすぎ、「それは裏がとれているのか」というわけがわからない方向に読者の関心が向かってしまうのだろうと思う。
いずれにせよ「6」が楽しみだ。いつ出るのか知らないが、それはおそらく、「書籍」の将来を示す可能性に満ちているのだから。

(小林俊之)

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◎「書籍のPDF化」を拒み、本作りを殺す──経産省の「電子書籍化」国策利権

3月22日、ウィズ新宿にて開催された西里扶甬子(にしさと・ふゆこ)さんの講演「証言で辿る731部隊の最後」 に行ってきた。

今現在、「731部隊展実行委員会」では、「731部隊映像コンテスト」の出品作品を集めており、その「事前学習会」という位置づけの学習会だ。731部隊の直接的な関係者がどんどん亡くなっていく中で、直接、部隊の生き残りや被害者遺族の声を聞いた西里さんの取材資料は極めて貴重だ。

西里扶甬子『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(草の根出版会2002年5月)

731部隊とは、正式名称を「関東軍防疫給水本部」という。1932年に陸軍軍医学校に「防疫研究室」を設立。中国・背蔭河に「東郷部隊」を設置し、小規模な人体実験を開始した。38年、ハルビン郊外に細菌の研究・製造・実験のための巨大な秘密施設が建設された。これが満州第731部隊本部だ。日本の憲兵隊は抗日戦士らを捉え、裁判にかけることをせずに、特移級として731部隊に送り込んだ。そして3千人もの中国人・ロシア人、朝鮮人、モンゴル人などを使って細菌・凍傷・毒ガスなどの実験を行い、全員を殺害。これらの実験を担ったのが、石井四郎を中心とする軍医だ。

西里さんは海外メディアの日本取材のコーディネーターで、インタビュアー、ディレクターだ。2001年からドイツテレビ協会(ZDF)東京支局のプロデューサーを務め、現在は契約プロデューサーだ。著書として「生物部隊731」、翻訳本として「七三一部隊の生物兵器とアメリカ」をリリースしている。

西里さんはとりわけ、「医学的、軍事的、歴史的、専門分野に属さないドラマチックな場面を切り取って紹介したい」と、731部隊の基本的な知識を展開した上で、部隊長の石井四郎の娘に取材したときの内容や、石井四郎が脱出・帰国したときの経緯などを解説してくれた。

◆石井四郎は「保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」

興味深い点は、石井四郎の長女、石井春海さんの証言で、731部隊の資料をすべてアメリカ側に渡したとされるが、「ずいぶんあとになって父がひとりのこらず戦犯にならないように部下たちを全部助けるのが条件だったって。研究情報も80%しか渡していない」と春海さんが話していた事実だ。

それでは、「なんのために石井は資料を残したのだろうか。残りの20%はどうなっているのだろうか」と私は質問した。

「アメリカに対して交渉のカードを残したのでしょう。今もどこかに残りの資料があるはずですが、これこそもっとも危険なものだと私は考えます」と西里さんは話した。この「20%の残りの資料は何か」で1つ小説が成り立ちそうだ。

今もなお、731部隊の問題が語られるのは、「当時、多くの中国人やモンゴル人などを殺戮した戦犯たちが今も裁かれていない」という点が注目される。ところが、「なぜ戦犯たちが裁かれないのか」という点は、今ひとつ忘れさられようとしている。そう、石井四郎が「部下も含めて自分や家族の保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」からだ。

◆「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」

西里扶甬子(にしさと・ふゆこ) =北海道札幌市生まれ。北海道大学英米文学科卒業後、北海道放送アナウンサー室入社。報道部を経てオーストラリア放送(ABC)へ転職。メルボルンからの日本向け短波放送(ラジオ・オーストラリア)のアナウンサー・翻訳者として3年間勤務。1977年に帰国、海外メディアのコーディネーター、インタビューアー、プロデューサーとして活動し、2001年からはドイツテレビ協会(ZDF)東京支局の契約プロデューサー。主著に『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(2002年5月草の根出版会)など。

春海さんはこう証言している。

「父は関東軍の山田乙三司令官や竹田の宮様と話しあって、特殊部隊なので、一人も残さず引き上げさせたいと粘ったそうです。それで先に帰って態勢を整えろと言われた.私たちが山口県の先崎で船に着いたのが(終戦の年の)8月31日で、その2日前に父は自家用機で羽田か厚木に着陸したはずです。9月は、東京の若松町の自宅にいました。私たちも一緒でした。陸軍省の幹部と打ち合わせをやっていました。復員してくる人たちと本当に密室で会っていました。マッカーサーが厚木に降りたときに『ジェネラル石井はどこだ』と聞いた。それは、マッカーサーは非常に科学的なかたで、石井に聞きたいことがあるということだったのに、側近が誤解して、石井が巣鴨に拘置されるとたいへんだということで、服部参謀など陸軍省が父を隠したわけなの。加茂にも確かいましたね。日本特殊工業の宮本さんの東北沢のお宅にもいたと思います。何カ所か移ったと思います。その間の根回しは服部参謀がやっていました」

ここに出てくる「日本特殊工業」とは731部隊の施設の施行をしていた会社で、戦後、急遽、飛行機で日本に戻ってきた石井を当時、社長だった宮本がかくまったというのが、多くの人が指摘するところだ。

西里さんは、石井専用機が熊谷飛行場に着いたときに、その機体を発見し、飛行機から羅針盤を抜き取っていた松本征一パイロットの証言もとっている。

松本さんによると「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」とのこと。つまりこの実験部隊は、戦略的にも重要だったのだ。

◆証言多数の731部隊「実験殺戮」が「なかった」ことになっている戦後70年

さらに、未来にわたって責められる事実として、石井四郎は、多くの人を実験で殺戮しつつも、自らはとっとと帰国していたのだ。そして慧眼をもつ石井は、ソ連よりもアメリカが世界の中枢になっていくことを見越して、アメリカに資料を渡す。

この講演の参加者は語る。

「吐き気がするような話だね。政府は今もなお、731部隊が防疫給水のための部隊で、誰も殺戮していないと主張している。まさにヒトラーのユダヤ殺害に匹敵する悪業なのに、石井は誰にも裁かれず、731部隊などもうなかったかのようなムードだ」

戦後70年がたち、「戦争」を証言する人はつぎつぎと亡くなっている。しかし旧日本軍よ、政府よ! 731部隊は「なかった」ではすまない。

従軍慰安婦とはちがって、こちらは山のような証拠があるのだから。

(小林俊之)

《参考動画》 西里扶甬子「731部隊,原爆,ABCC,そして福島~科学者の倫理を問う」
(立命館国際平和交流セミナー=2014年8月4日広島)※2014年8月6日三輪祐児氏公開

《参考資料》 西里扶甬子「731部隊の秘密を追って 奉天捕虜収容所で何があったか?60 年後に判ったこと?(PDF)」 (POW研究会調査レポート)

◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して
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話題の対論本!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』

 

 

僕は原発の専門家ではないし、ジャーナリストとしてピタリ、と「原発についての問題」をマークしているわけではないが、どう見ても原発は再稼働すべきではない、と考えている。そんな中で、高浜原発再稼働を差し止める決定を福井地裁がしたのは大きな出来事だと考えている。(福井地裁仮処分決定の要旨全文=朝日新聞2015年4月14日)

そして、原発については諸先輩たちが鹿砦社の月刊誌「紙の爆弾」や季刊「NO NUKES VOICE」にも書いているし、このブログでも展開しているので、とくに言うべきことは見あたらなかったが、久しぶりに「救われた」ニュースを見たので、あえて原発について書こう。

そう、まずはスタンスを決める。「原発推進者はすべて処刑せよ」と叫んでみよう。あなたに叫べとは言わない。僕は僕の中で、「原発推進者はすべて処刑せよ」と何度も叫んでいる。

鹿砦社は、松岡社長が「ペンのテロリスト」であり続けると宣言している。その端くれである僕も、少しではあるが原発推進に抵抗しよう。

◆2009年頃、東京電力は「電力自由化阻止」の執念でマスコミ各社を接待攻めにしていた

身近な話では、週刊誌のデスクをしている知人が「電力自由化をなんとか阻止すべく」、何度も東京電力に接待を受けていたのを思い出す。それは、おそらく2009年ごろの話で、当時のデスク氏は「今になってみると、何を懐柔してきたのかはようやく意味がわかる」と語る。

要するに、太陽光などで一般の人たちや企業が発電を始め、エネルギーを買い取るようになるケースは避けたいと、いう執念にも近い、電力会社の懇願だ。エネルギー買い取りは、電力会社をまちがいなく消耗させる。だがそうした「懐柔」はむなしく、来年の4月から電力会社を選べるようになる。もう東電の一方的な料金設定や、原発再稼働にイライラしなくてもすむのだ。再生エネルギーについては、詳しいライターの方がたくさんおられるので自分が注目している「震災直後」の部分に触れる。本題だ。

◆震災直後、年収2000万円超の社外取締役や監査役は誰一人、東電本店に出社しなかった

まず、「3.11の直後」の東電に何回も記者会見に行ったが、あの場所では、ガンマだの、シータだの難しい数字が並ぶ放射能拡散の可能性についてのデータを手渡され、まるで大学の理化学部の講義のような会見が繰り返されていた。同時に、原子力保安院でも似たような説明がなされていたが、各マスコミは、理科系の記者を配置して「はたして東電の広報が何を言っているのか」を読みとく作業に僕たちは腐心した。そう、翻訳者が必要な事態で、東電の人たちは、どう見ても日本語で話しをしているようには感じなかったのだ。

震災直後、東電本店の記者会見場で、確か3月12日の午後3時すぎに、あくびが出るような数字の説明が続くなか、記者のうち誰かが「これ、爆発だよね」と後ろのほうで声に出した。今思えば、あれこそが1号機原子炉建屋が水素爆発した瞬間だった。吉田所長(当時)が2号機、3号機の弁と準備開始を指示、まさに命がけのハンドリングを開始して、18時25分に政府は20キロ圏内に対して、ようやく退避の指示を出した。

確か「爆発」という言い方は、東電も保安院もしていない。「爆発」という言葉を使わず、東電や保安院は数字の説明だけで逃げようとしていたのである。

さまざまなジャーナリストやルポライターが、原発についてあらゆる角度で語っている。核をどう処理するのか、アメリカとの原子力協定をどうするのか、あるいは原発とメディア、そしてエネルギーミックスについて……。だが、僕自身は、焦点を当てるべきは、「3月11日から15日まで何が起こり、私たちは何について無抵抗で、何について抵抗のしようがあったのか」だと思う。むろん、自分自身が東電の「極めて理科系チックな説明」に翻弄されたのも「震災直後」にこだわる一助になっているが、我々は「原発事故をハンドリングできなかった」ことを、素直に認めるべきではないだろうか。

さらに、このとき、年収2000万円を超える「名ばかり社外取締役」や「監査役」などもたくさんいたが、誰一人、この非常時に出社していない。それどころか、後に「年間に10日も出社していない」ことが判明していくのだ。

◆事故当時の東電社長、清水は天下り先から報酬を得ながら入社3か月間、出社してしなかった

このときに東電の社長だった清水は、後に民間会社に天下るが、知るかぎりでは入社3ヶ月は会社に顔を出していない。きちんと給料は出ていたのを、取材で確かめてあるし、出社すべき初日に僕は朝から張り込んでいたが来る気配はない。
清水が住んでいる赤坂の高級マンションにも行ったが、優に1億円を超える豪華さだった。常にこのマンションでは震災に備えて1ヶ月ぶんの食料が備蓄されていた。こいつら東電のお偉いがたは、つくづく一般市民とはかけ離れた存在なのだなと思う。

水素爆発が起きたにもかかわらず、東電本店では、東電の役員たちに夜になると1個3000円以上もする仕出し弁当が運びこまれていたのを見た。しかも地下から運ばせるから確信犯だ。要するに彼らは貴族であり「庶民に電気をくれてやっている」という感覚なのだろう。

仮に、東電の下請けであっても、けっこうな高給だ。僕は東電系の工事会社で警備をしたことがあるが、ただたんに「工事に違反がないように見張る」東電のOB(ここでは保安員と呼んでいた)に日当3万円も払っていたのだ。まさに「神様、仏様、東電様」で、東電こそが電力のヒエラルヒーの王様なのだ。

◆どう考えても事故当時の東電役員たちはことごとく処刑されるべきである

そして僕が何よりも福島原発について書くときにはばかれるのが、「なんだよ、東京にいて原発記事を書いて。君たちは福島に住んでからモノを書きなよ!」という現地の被災した人の叫びが耳に残っているからだ。

たとえば、僕が交流しているA氏などは、58歳だが「なんとか原発を再稼働させない方法を探す」と宣言して、会社を退社して、家族の反対を押し切り、福島大学に入り直した。もし震災と原発事故がなければ、彼は65歳まで勤めただろう。この一点とってみても、原発事故は人の生活を、人生を、家族を破壊した。

一時期、事故の渦中に現場から東電が「撤退する」と言ったとか言わないとか、くだらないレベルの論争があった。だが「撤退すべき」なのは原発建設そのものであったのだ。しつこいようだが繰り返す。

「原発推進者」はことごとく処刑せよ!

「原発」はエネルギーの問題だろうか。ちがう。命の問題だ。もし原発を推進しても許される者が、かろうじていたなら、あの事故を経験し、事故処理をハンドリングした吉田所長だと思うが、すでに亡くなった。だが生きていて仮にリンチされても原発を「俺が保証する。原発を再稼働せよ」とは言わないだろう。あの事故直後のことはまた機会があればレポートしたい。もう一度言う。

「原発推進者」はことごとくすべて処刑せよ!

(小林俊之)

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる
◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して

より深層へ!横議横行の『NO NUKES Voice』第3号!

4月7日午後6時30分から、鹿砦社が主催しての『月刊「紙の爆弾」創刊10周年記念の集い』が東京・水道橋のたんぽぽ舎で催された。一般の読者の方も参加し、90人を超える参加者たちで会場は熱気にあふれていた。

中川志大「紙の爆弾」編集長

中川志大「紙の爆弾」編集長

冒頭、この10年をふりかえって中川志大編集長がこう話した。

「創刊から一貫して約束していることは、『自粛をしない』ということです。松岡社長の逮捕が創刊直後(2005年7月12日)にあり、さまざまな方に助けていただいてやめるにやめられなくなりました。助けていただいた方に感謝していますし、これからも雑誌の方向性として『自粛していかない』というスタンスをとりたいと思います」

◆「コンビニに置いてもらえるように部数増を!」(ミサオ・レッドウルフさん)

また、この日のメインゲストである反原発活動家のミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)は、反原発活動の現状をつぶさに語る。とりわけ、出版関係者が多いからか、「メディアと運動論」という話になっていく。

ミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)

ミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)

「インターネットの使いかたがこれから大切になってきます。みんながメディアになれるので、誹謗中傷だけしている人もいれば、まっとうな意見もある。これからネットは改革しだいでテレビや新聞を超えるメディアになっていく可能性があります。使いかたしだいでは、おもしろいと思うのです。自分たちでは、何もできないことがある。みんなで声をあげていくことが大切なのです。一番、大切なのは『意志の力』です。それと、いつも思うのは、新聞などで選挙前に『どの党を支持していますか』と聞く世論調査を止めてほしい。あれこそ誘導だと思います。あれで(多勢に無勢と)諦めて選挙に行かないという人が増えていると思います」

また「NHKはダメだ、などメディアをひとくくりにしてはいけないと思う。大手の新聞記者なども隙間を縫ってなんとか反原発について書こうとしている人もいる」とした。さらに『紙の爆弾』については「なんとかコンビニエンスストアに置いてもらえるように部数増を」とエールを飛ばしてくれ、喝采が起きた。

◆「事件を乗り越えて、鹿砦社も『紙の爆弾』もむしろ元気になった」(松岡利康社長)

松岡利康鹿砦社社長

この日、鹿砦社の苦境を支えた業界人や弁護士、ライター、印刷業者などたくさんの心ある方が集まっていたが挨拶にたった松岡利康社長は、

「私が逮捕されるという事件がなければ、今『紙の爆弾』はなかったかもしれない。あの事件を乗り越えて、鹿砦社も『紙の爆弾』もむしろ元気になった。今『紙の爆弾』から派生している反原発雑誌『NO NUKES voice』も一層の充実を図っていきたい。あんな事件を起こして、なおかつ再稼働させようというのは常識外だし、子供を安心してプールで泳がせることもできない事態にしてはいけない』と気を吐いた。

また、レッドウルフさんの講演が終わってから、鹿砦社を支えた人たち、鈴木邦男さんや、元赤軍派議長の塩見孝也さん、ライターの板坂剛さんや星野陽平さんなどが次々とスピーチを述べていた。

◆10年前の7月12日──「これは不当逮捕だ」と直感した

鹿砦社を支える人たちに囲まれつつも、僕は2005年7月12日を思い出していた。

「松岡社長が逮捕されたみたいよ」と、テレビのニュースを見て妻が僕に伝えたのは午前10時を少し回ったくらいだった。

いくつか原稿を受注していたので、中川編集長にあわてて電話したが、あとで聞くと検察が東京支社に来ていたせいか、なかなか繋がらず、ようやく11時30分頃、「大丈夫ですか」と聞くと「ありがとうございます。とりあえず状況が把握できていないのであらためてお伝えします」という答えが返ってきた。

様々な情報をかき集めると、パチンコ会社のアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)、プロ野球チーム・阪神タイガースの元職員を中傷したというのが容疑の内容で、名誉毀損で逮捕された、という。

憲法21条には「表現の自由」が定められており、日本ほど言論の自由が保障される国家はないと信じてきた僕は、少なくとも直感的に「これは不当逮捕だ」と感じた。『紙の爆弾』が創刊された頃、メディアの訴訟は名誉毀損で基準が300万円となっており、これもメディアが萎縮する原因となっていた。僕自身は、「なんでも書いていい」というスタンスの『紙の爆弾』に、濁流の中に立てた旗のごとく佇む「孤立性と強さ」を感じていた。その姿は、「今が潮時」とさっさと休刊した『噂の真相』とは対称的だった。ただし、僕自身は、何度も『噂の真相』を引き継ぎたいと岡留氏に談判していたが。

その『噂の真相』の岡留編集長も(すでにリタイヤしていたが)「これは不当逮捕である」と松岡社長の逮捕時にテレビでコメントを出した。

◆「戦う意志の集積」としての言論メディアへと変貌していった『紙の爆弾』

1審の神戸地裁は松岡社長に「懲役1年2カ月、執行猶予4年」の有罪判決を言い渡している。松岡社長側は「この裁判は無罪でなければ意味がない」として直ちに控訴した。

こうした間『紙の爆弾』は単なる「タブーなきスキャンダルマガジン」ではなく「鹿砦社として戦う意志の集積」としての言論メディアへと変貌を遂げていった。

逮捕直後、「いつギャラが出るかわかりませんよ」と中川編集長はライターたちに告げた。鹿砦社は経営的にも煮詰まり、いつ再び前進するかわからぬ暗礁に乗り上げたのだ。このとき「それでもかまわない」とした人たちが、今、鹿砦社を支える人たちとなった。

僕自身も「ギャラなんかいつでもかまいませんよ」と返答した。払ってもらうにこしたことはないのでやせ我慢だ。ただ、「このままわけがわからない権力なるものに負ける」ということは、今後も言論が制限される可能性を示す。鹿砦社の戦いは、他人ごとではなかったのだ。もちろん、僕は中川編集長や松岡社長ほどの苦労は浴びていないが。

◆「人を嵌めようとすると自らも嵌められる」(松岡利康社長)

「ふざけるなよ。鹿砦社とかかわってとんでもない目にあったよ」と吹聴するふざけた輩もいた。今、思えばこのとき去っていった人たちは、業界そのものから軒並み姿を消した。そんなものだろうと思う。

「雨天の友」こそ、味方としてそばに置くべきなのだ。そしてあの逮捕は「本物」を洗い出したのだ。

あの2005年7月12日に松岡利康社長を取り調べた大坪弘道 は、後に大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件において、懲戒免職となり、大阪地裁は大坪に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡している。また、手錠をかけた宮本健志(たけし)・徳島地検次席検事 は深夜に酔っ払って市民の車を蹴り戒告処分を受けた。

鹿砦社を追い詰めたかに見える悪徳パチンコ業者のユニバーサルエンタテイメント(旧アルゼ)はフィリピンのカジノにおける賄賂問題でFBIの追及を受けている

松岡社長は「人をはめようとすると自らもはめられる」と語る。因果応報とは、彼らのためにあるような言葉だ。

鹿砦社は事件を乗り越えて「蘇生」したのだ。その象徴が、『紙の爆弾』なのである。(小林俊之)

◎『噂の眞相』から『紙の爆弾』へと連なる反権力とスキャンダリズムの現在

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して

自粛しない、潰されない──「紙の爆弾」創刊10周年号発売中!

 

 

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