鹿砦社創業(1969年)メンバーで生き残りの一人、前田和男さんが新著を出版されました! ぜひご購読をお願いいたします! 鹿砦社代表 松岡利康

前田和男さんは鹿砦社創業に関わり、最初の出版『マルクス主義軍事論』などの編集をされました。最近では『続・全共闘白書』も編纂されています。

その前田さんが新著『昭和街場のはやり歌──戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと』を上梓、A5判、300ページの大著です。

『マルクス主義軍事論』から『昭和街場のはやり歌』へ ── 現在の鹿砦社も硬派(社会問題書)から軟派(芸能本)まで同じ位相で出版しています。

とりいそぎ、三波春夫と美空ひばりの項目の一部を紹介しておきます。なお、ご注文の際には松岡の紹介とお書き添えください。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

前田和男さんの新著『昭和街場のはやり歌 ── 戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと』

【緊急報告!】『週刊金曜日』植村隆社長による、再三にわたる鹿砦社に対する村八分、排除の論理の行使に断固抗議します! 言論の多様性をみずから棄て教条主義的に森奈津子編『人権と利権』を「差別本」扱いすることの危険性 鹿砦社代表 松岡利康

『週刊金曜日』発行人にして株式会社金曜日社長の植村隆氏がまたしても鹿砦社に対し執拗に“決別宣言”し、鹿砦社の出版活動を非難されています。

植村社長は、同誌最新号1435号(8月4日/11日合併号)に「さようなら、鹿砦社! 長い付き合いに感謝」なる、人を食ったようなコラムを掲載され、言葉は表向き丁寧で、まさに“真綿で首を絞め”ようとするかのような表現で、あらためて森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』を「差別本」として規定して詰り、この本を製作・発行した鹿砦社の広告を、今後掲載しないことを内外に公言し、まさに鹿砦社を「ヘイト出版社」扱いし排除、出版メディアの世界において村八分に努めています。まるで『週刊金曜日』は良い雑誌、これを発行する株式会社金曜日は良い出版社で、一方鹿砦社の本『人権と利権』は「差別本」であり鹿砦社は悪い出版社であるかのような口ぶりで、それを判断するのは『金曜日』でありボスの植村社長と言わんばかりです。実際にこう触れ回っている徒輩もいます。

植村社長のコラムが掲載された『週刊金曜日』1435号(2023年8/4、8/11合併号)
問題となった広告 『金曜日』1450号(6月16日号)

この際、植村社長が基にするのが同社の2019年6月20日制定の「『週刊金曜日』広告掲載基準(内規)」なるもので、ここに記載された「差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれがあるもの」は「掲載できません」としています。さらには「本誌の編集方針に合致しない企業は掲載しない」とも記載されています。

制定の日付からして、これは植村氏が社長就任してから制定されたものと推察できます。これに基づき、何をもって「差別」とするかの規定、基準を明らかにもせず(『金曜日』と植村社長が「差別」と言えば「差別」?)、『人権や利権』を「差別本」、鹿砦社を「ヘイト出版社」とするのでしょうか? その「内規」で教条主義的に「差別本」「ヘイト出版社」と判断されてはたまったものではありません。そういう「内規」というものは〈死んだ教条〉ではなく、〈生きた現実〉の中で、その時々で検討され改善されていくものではないでしょうか。『金曜日』の体質としてよくいわれるのは教条主義的ということですが、まさに〈左翼教条主義〉といえるでしょう。

人の世には、人それぞれ多様な意見や生き方があります。私たちは多様な言論を尊重し最大限それらを汲んで雑誌や書籍を編集・発行しているつもりです。『金曜日』や植村社長はこのことを自ら否定し、異論を排除せんとしています。異論や多様な言論を主張する私たち鹿砦社を、いわゆる「リベラル」「左派」界隈において村八分にしようとしています。排除はやめろ! 村八分はやめろ! 

植村隆社長(2019年12月7日の鹿砦社50周年の集いにて)

◆鹿砦社の広告をめぐる問題

長いこと(創業54年)出版社をやっていれば広告が問題となることは何度かありました。いい機会ですので、2件ほど挙げてみます。

一つは、古い話ですが、鹿砦社第二次黄金時代(第一次は1969年の創業から70年代前半、第三次は2010年代前半)の1995年、毎日新聞との訴訟です。別掲の記事の上部の広告ですが、毎日新聞に念願の全面広告を出すことになり、代金(内金)300万円も代理店を通じ支払い、版下も送り、東京本社版、大阪本社版ともに日程も決まっていたのに、その数日前にドタキャンになりました。これも毎日新聞の内規に触れ「品位を汚す」ということでした。やむなく東京地裁に提訴、高裁まで争いましたが、結果は敗訴。勝ち負けの問題ではなく、異議申し立てが目的の提訴でした。

『週刊現代』2018年5月15/12日合併号 この左上の広告が毎日新聞社により掲載拒否された

もうひとつは、『金曜日』です。これは鹿砦社の広告の掲載日が、偶然に映画監督・原一男とSEALDs奥田愛基との対談の号とバッティングし、これに原一男監督が激怒、当時の北村肇社長を何度も呼び出し理不尽な抗議を行い、すでに病に冒されていた北村社長の死期を早める結果となりました。われわれの世代にとってカリスマだった原監督が実は器の小さい人間だったことがわかり私(たち)を落胆させました。

この件では、鹿砦社になんの非もありません。また、『金曜日』についても、広告掲載の号を前週か次週にするなどの工夫はしたほうがよかったかもしれませんが、それは結果論で『金曜日』にも非はありません。原監督の子どもじみた“抗議”こそ批判されるべきでしょう。

『週刊金曜日』1100号(2016年8月19日号)

そして、今回の問題、これは『金曜日』が鹿砦社の広告をしっかりチェックせず掲載したことが問題ではなく、広告主の鹿砦社や、くだんの本の編者・森奈津子になんの打診もなく、Colabo仁藤代表や取り巻きらの抗議にあわてふためき、安易にColabo仁藤代表に謝罪し、さらには、あろうことかイエローカードを飛び越して一気にレッドカードへ、今後の鹿砦社の広告を掲載しないことを決定したことが問題ではないでしょうか。

今よく使われる言葉に「多様性」という言葉がありますが、これはどこの世界でも尊重されねばなりません。「釈迦に説法」かもしれませんが、多様な言論は、創刊30年、本多勝一という著名な記者になよって設立された『週刊金曜日』こそが大事にすべきではないんじゃないですか? 『金曜日』に比べ歴史が浅い創刊18年の『紙の爆弾』は、松岡利康と中川志大という無名の二流編集者によって創刊されましたが、そんな私たちに“説教”されるようではダメですよね。

◆私たちの危惧

『週刊金曜日』やブックレット/書籍などの出版物と、『紙の爆弾』をはじめとする鹿砦社の出版物の読者は重なっている部分があります。かつて北村肇さんに聞いた話ですが、『金曜日』の読者は、①共産党支持者、②社民党支持者、③無党派の3つに分けられるとのことです。このうち①共産党支持者が「極左」とする鹿砦社の出版物を支持するわけはありませんから、②の社民党支持の一部と③の無党派の方々が『紙の爆弾』や鹿砦社出版物の読者と重なると思われます。

この意味で、植村社長による、このかんの再三にわたる鹿砦社非難は、とりわけ無党派の方々へ鹿砦社があたかも「ヘイト出版社」であるかのような強い印象を与え、打撃が大きいです。

さらには、寄稿者や著者も『金曜日』と重なっている方々もおられます。『金曜日』の編集者や関係者が、『紙の爆弾』、反原発情報誌『季節』の寄稿者らに、本件のことをたずねられたら、どう答えるのか? 多様な言論を自ら棄てた人たちの物言いがみものです。

鹿砦社は創業50数年、独立独歩、自律した小出版社として、芸能から社会問題までの中で大手メディアが報じない領域の出版物を数多く世に送り出してきました。今20年遅れで大手メディアが取り組んでいるジャニー喜多川未成年性虐待問題も、文春報道・訴訟の以前の95年から取り組んでいます(なので英BBC放送は逸早く鹿砦社に連絡してきたわけで私たちは多くの書籍や資料を提供したわけです)。また、「名誉毀損」に名を借りた逮捕・勾留によって壊滅的打撃を被ったこともありました。しかし、それでも挫けず這い上がってきました。

『週刊金曜日』というカリスマ雑誌のトップに詰られると、『金曜日』と重なる無党派の読者や寄稿者の方々にマイナスイメージを与え、これこそ名誉毀損で被害も決して小さくありません。

昨今よくいわれる、マジョリティ、マイノリティの物差しで言えば、『金曜日』は圧倒的にマジョリティであり、鹿砦社は遙かにマイノリティです。しかし、真理が常にマジョリティに在るのではなく、時にマイノリティに在ることもあります。この点、心ある読者や寄稿者、著者の皆様方のご判断に委ねたいと思います。

◆『金曜日』は他人を詰る前に自らを律せよ! 脚下照顧、内部矛盾を解消してこそ他人を批判できる!

 
中島岳志編集員辞退の言 『週刊金曜日』1453号(2023年7月7日号)

長年『金曜日』の編集委員を務めてこられた中島岳志氏が、時を同じくして編集委員を辞退されました。鹿砦社の問題とは直接関係はないとは思いますが、まずは『金曜日』は自らの足元や内部を反省し改善することが先決ではないでしょうか。

中島氏は「保守派」を自認されていますが、多数いる編集委員の中で『金曜日』でこの立場を堅持することは大変です。「リベラル」、あるいは「左派」を自称する人たちが多い『金曜日』の編集委員の中では調整役として中島氏の存在は貴重だったと思われます。

そうした中島氏がいなくなり、一時は親密だった鹿砦社を排除した『金曜日』がますます「しばき隊」化し、偏狭化していくことが懸念されます。他人の家の中のことにあれこれ口出すわけではありませんが……。

偶然かもしれませんが、鹿砦社広告掲載拒否、中島岳志編集委員辞退は、『金曜日』の今後の行方にとってターニング・ポイントになるかもしれません。

◆「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)について植村社長の見解を問う!

2016年以来、私たち鹿砦社が、会社の業績に影響があることを承知で関わってきた事件が、「しばき隊リンチ事件」ともいわれる「カウンター大学院生リンチ事件」です。事件から来年で10年が経とうとしています。激しいリンチを受けたM君はいまだにPTSDに苦しんでいます。

私と植村社長に共通するのは、「慰安婦訴訟」の植村社長の代理人と、「大学院生リンチ事件」関係訴訟の加害者側代理人に神原元弁護士が中心的に関わっていることでしょうか。神原元弁護士は大学院生M君リンチ事件を「でっちあげ」と強弁していますが、2014年師走に大阪北新地で、李信恵ら5人によって集団リンチが行われたことは厳とした事実であり、これは一連の訴訟の最後になって大阪高裁がリンチがあったこと、李信恵らが連座し、被害者の大学院生が瀕死の重傷を負っているのに放置して立ち去ったこと等を認定し、訴訟の骨格ともいえるこの部分が鹿砦社の逆転勝訴となりました。

被害者の大学院生(その後博士課程修了)の訴訟も併せ、被害の程度からすると遙かに低額の賠償金を加害者5人のうち2人に課しながらも「勝訴」とはいえ決して納得のいくものではありませんでしたし、裁判所は、決して被害者や市民の側に立って判断しないことを、あらためて思い知りましたが、このことは「慰安婦訴訟」で敗訴が確定した植村社長なら同じ想いを持たれることでしょう。

私見ながら、植村社長の「慰安婦訴訟」も、この大学院生リンチ事件に関する一連の訴訟も、黒薮哲哉氏が指摘されるように「報告事件」(詳しくは生田暉雄元大阪高裁判事著『最高裁に「安保法」意見判決を出させる方法』を参照してください)だと思っています。

『金曜日』や植村社長が「人権」を口にするのであれば、神原弁護士はじめリンチ事件(と、この隠蔽)に直接、間接に関わった人たちが『金曜日』の誌面に何人も登場していること、一時は毎回鹿砦社の『金曜日』広告には、一連のリンチ事件関係書(6点)の広告を出広していたことなどから、この事件について植村社長の見解をぜひお聞かせいただきたいと要請し拙稿を閉じたいと思います。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
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《8月のことば》忘却 人間生まれてきたら…… 鹿砦社代表 松岡利康

《8月のことば》忘却 人間生まれてきたら…… (鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

猛暑8月です。

人には「忘却」してもいいことと、そうでないことがあります。

8月といえば「忘却」してはならないのがヒロシマ、ナガサキです。

私たちにとって反戦の原点です。

昨年から続くウクライナ戦争の激化、泥沼化……それは“対岸の火事”ではなく、いつ日本に飛び火するかわかりません

人類史上初めて人間の頭上に落とされた原爆の惨状……決して「忘却」してはなりません。

軍靴の音が聞こえてきそうな時代の予感が強くなる今、あらためてヒロシマ、ナガサキに想いを馳せたい──。

この国は、世界で唯一の被爆国です。

アメリカはこの国に原爆を落とした国です。

日本は唯一の被爆国として、アメリカに従属するのではなく、そのことをもっと強くアメリカに、世界に訴え平和の騎士となるべきでしょう。

若い頃に体得した反戦の意志を、先が短くなった人生、このまま持続して死んでいきたいと思う昨今です。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年8月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

満身創痍の50年余 ──7月12日にあたって 鹿砦社代表 松岡利康

本年も7月12日がやって来ました。鹿砦社にとっても私個人にとっても重要なメモリアルデーでした。事件があった2005年の7・12から早18年が経ちました。再来年で20年となります。会社にとっては壊滅的打撃を被りましたし、また私にとっても人生最大の苦難でした。毎年この日を迎えると、「よくぞ生き延びてきたな」と、いささか感傷的になると共に、まだこの世界でやることが残っていると思います。いい機会ですので、われわれの会社・鹿砦社の社史を簡単に振り返ってみましょう。

◆創業の頃

当社の創業は1969年(昭和44年)、70年安保を前にして国内のみならず世界中が騒然としていた時代です。沖縄はまだ米国領、ベトナムでは戦争が続いていました。最初の出版は、マルクス経済学者、中村丈夫編『マルクス主義軍事論』、時代を象徴するような本です。鹿砦社という社名も中村丈夫先生が命名されました。「鹿砦」とは、辞書を紐解けば鹿の角などで作った「山城」、今で言えば「バリケード」(死語?)ということですが、敵の攻撃や理不尽なことに対してはバリケードをこしらえ徹底抗戦せよ、という意だと解釈しています。

その後、『ブハーリン裁判』『クロンシュタット叛乱』『マフノ叛乱軍史』『左翼エスエル戦闘史』(これらは風塵社で復刊されています)等々、ロシア革命の捉え返しを中心として革命の意味を問い直す出版を続けます。当時関係した方々はほとんど亡くなられていますが、『続・全共闘白書』を編纂された前田和男さんは今でも生き残り老戦士として頑張っておられます。この頃はまだ私は入社しておらず熱心な一読者でした。一読者が、読んでいた本の版元の代表になるとは皮肉なものです。

しかし時代が70年代、80年代と推移するにつれ、こうした本も売れなくなり経営も厳しくなっていきます。

最初の出版『マルクス主義軍事論』とその広告

◆私が経営を引き継いでから

そうした中、80年代後半に私が経営を引き継ぎ、しばらくはそうした路線を踏襲していましたが、やはりにっちもさっちもいかなくなり、ちょっとした縁で一気に芸能暴露本路線へ転換、一時はこれが成功し「暴露本出版社」として世間に名を挙げます。これが性に合ったのか芸能路線は、いわゆる暴露本のみならず今に至るまで継続しています。それまでの鹿砦社をご存知の方には驚かれましたが、私にとってはロシア革命も芸能も等価とみなしています。

今、社会的に問題となっているジャニー喜多川未成年性的虐待問題も、『週刊文春』がキャンペーン始める以前の90年代半ばからパイオニア的に相次いで出版しています。なので、今春突如日本で報道され大きなインパクトを与えた英国BBCのドキュメントも最初当社に問い合わせがあり、簡単なレクチャーと当時の多くの書籍・資料を送り協力した次第です。現在多くの日本のマスメディアが20年遅れで採り上げていますが、こうしたマスメディアの態度が性的虐待の被害を広めたといえます。遅いです! 私たちは少部数ながらどんどん出版を世に訴えていたのですから。その後、唯一、採り上げたのが『週刊文春』でした。

また、芸能暴露本と同時並行的に継続していた社会問題書もラジカルに出版を続け、あまり知られていませんが出版差し止め5度、遂には代表の私が「名誉毀損」に名を借りて逮捕されるという前代未聞の事件になります(2005年)。捜査は取次3社(トーハン、日販、旧大阪屋)や製本所、倉庫会社はじめ取引先など広範囲に及び、特に取次3社は検察の求めに軽々に応じ販売資料を提出するという愚を犯しました。平素は「言論・出版の自由」を叫びながらこの体たらく、頑と拒否してほしかったところです。いや、拒否すべきでした。

鹿砦社弾圧を報じる朝日新聞(大阪本社版)2005年7月12日朝刊

結局6カ月余り勾留され有罪判決(懲役1年2カ月、執行猶予4年)と600万円ほどの高額賠償金を課せられ(刑事、民事とも最高裁で確定)、会社は壊滅的打撃を被ります。ちなみに、これまで1億円を越す訴訟費用(賠償金含む)を使いました。

それでも読者や取引先、ライターの皆様方のご支援で奇跡的に復活し、事件前の水準を遙か凌駕する売上を上げるに至ります。べつに自慢するわけではありませんが…。一方当時本件を指揮した神戸地検特別刑事部長は別件の証拠隠滅で逮捕、失脚し、また刑事告訴し高額訴訟を提起した遊技機(パチンコ/パチスロ)メーカー創業者社長は政府高官への贈収賄容疑で海外で逮捕、遂には自らが作り育てた会社からも放逐されます。「鹿砦社の祟りか、松岡の呪いか」と揶揄される所以です。

◆新型コロナ来襲! 再び苦境に

そうして新型コロナ禍──またまたどん底に落とされました。手持ち資金数千万円をあっというまに溶かし、さらに新たな負債を積み上げながらも、ここでも読者、取引先、ライターの皆様方のご支援で、ようやく苦境を脱しつつあります。当社は土壇場に強いといわれますが、さすがに齢70を越すと、体にも心臓にもよくありません。

前述の「名誉毀損」弾圧事件の直前に月刊『紙の爆弾』を創刊しましたが、モットーは「タブーなき言論」です。創刊時には「ペンのテロリスト」と自称していました。

最近では『紙の爆弾』の増刊号で森奈津子=編『人権と利権--「多様性」と排他性』を発行いたしました。「顰蹙は金を出してでも買え」とは幻冬舎・見城徹社長の名言ですが、本書も四方八方から顰蹙を買い、あっというまに完売です。「炎上商法」を意識したわけではありません。

2019年、創業50周年を皆様方に祝っていただき、年が明けたら新型コロナ襲来です。コロナが来なければ、左団扇で後進に道を譲り勇退していたでしょうが、コロナによる(だけでもありませんが)打撃で背負った負債を消していくために、まだまだ「老人力」でもって奮闘しなければならないようです。昔風に言えば「闘争勝利!」です。

当面の目標は再来年(2025年)の月刊『紙の爆弾』創刊20周年ですが、満身創痍の50年余の社史を想起するに、冒頭に記したように、よくもここまで生き延びてきたものだと、あらためて感傷的になります。

7月12日、運命的な逮捕から18年が経ちました。いろいろあった鹿砦社の歴史の一端を紹介させていただきました。

歴史の彼方に忘却されつつある〈7・12〉のことを想起いただければ幸いです。

(松岡利康)

10周年に、大学の後輩で書家の龍一郎が贈ってくれた書
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年7月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

【緊急報告!】さらば、『金曜日』! 鹿砦社代表 松岡利康

「私はあなたの意見には反対だ。 だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」(ヴォルテール)

『週刊金曜日』6月16日号掲載広告問題続報 ── たった1冊の本の広告で10数年続いた鹿砦社広告掲載を打ち切り! 

創業50年余の苦闘の歴史で培った〈タブーなき言論〉に立脚し、芸能から社会問題まで左右硬軟織り交ぜて多種多様に出版するという鹿砦社の出版スタンスが理解されず、左翼教条主義に凝り固まった『金曜日』を乗り越え、月刊『紙の爆弾』はじめ多種多様な出版をさらに推し進めます! 株式会社 鹿砦社代表 松岡利康

6月29日付けの本通信に関連しますが、『週刊金曜日』6月16日号掲載の鹿砦社広告(別掲)ついての続報です。

7月7日に『週刊金曜日』発行人兼株式会社金曜日社長の植村隆氏が鹿砦社本社を訪れ、10数年続いた鹿砦社広告を今後は打ち切ることを告げられました。6月16日号が最後の鹿砦社広告となりました。

『週刊金曜日』6月16日号掲載鹿砦社広告

◆『週刊金曜日』への広告掲載について

問題とされる、5月23日発売の『人権と利権──「多様性」と排他性』(紙の爆弾6月増刊号)は、総じて評価も高く、発売直後から売行きは快調です。元々フォロワーが多い編者の森奈津子さんがTwitterで積極的に発信されたことで、発売直後Amazonから700冊余の発注があり、その後在庫切れの状態が続くや、私たちの意に反しAmazonでは2倍以上の高値を付けて出品されているほどです。

ところが、発売後1カ月近く沈黙していたColabo仁藤夢乃代表が6月19日突然、その表紙とグラビアに対し言い掛かりをつけてきました。Colabo問題について言及した須田慎一郎さんと森奈津子さんの対談に対してはまったく批判も言及もしていませんが、せっかくならそこまで批判、言及していただきたかったものです。

仁藤夢乃Colabo代表の6月19日付けツイート

この仁藤代表のツイートを合図に、仁藤代表とつながりの強いColabo弁護団・太田啓子弁護士や影書房らが先頭になりColabo支持者らによって、対談者の一人、加賀奈々恵(ななえ)埼玉県富士見市議に対してネットリンチをするに至り炎上した感があります。

さすがに、こうしたことで長年の有力な支援者がColaboへのカンパを停止するに至ったといいます。加賀市議は、その直後コロナに罹り療養されていますが、彼女への激しいバッシングを私に向けるために6月23日付けの「緊急アピール!」を発信した次第です。

Colabo支持者、特に影書房や太田啓子弁護士らによる加賀市議に対するネットリンチを植村社長はどう思われるか、あらためて明らかにされたい。

さらに『週刊金曜日』6月16日号に掲載した鹿砦社広告の4分の1のスペースにすぎない『人権と利権』の部分に対しクレームが殺到し、あろうことか『金曜日』の植村隆社長(慰安婦訴訟の代理人かつ事務局長はColabo弁護団の一人でもある神原元弁護士)が、広告主や編者を飛び越して、編集長ともども仁藤代表を訪ね謝罪しています。株式会社対株式会社間の取引に於いて、商習慣上、道義上、信義上、長年有料広告を出広してきた鹿砦社を先に訪問し協議するのが筋でしょう。順序が逆です。植村社長はビジネス経験が皆無の中、社長職に就かれたことで世事に疎い方のようです。

世事に疎いといえば、植村氏が『金曜日』の社長に就任された直後、鹿砦社は歓迎の食事会を東京ドームホテルの高級日本料理店の個室で準備しながらも、待てど暮らせど現われず、来られたのは約束の時間から40分ほど後でした。お店の方も料理の準備があり渋い表情をされていました。常識的にこれはない!さらには、私たちが友好の気持ちを込めて歓迎会を催したのですから当然料金は私たち鹿砦社が全額支払うべきで、そのつもりだったのですが、何を思われたのか、割り勘にしてくれと言われ、とんだ大恥をかきました。ビジネス上の常識がわからない人とは付き合えないな、と思った次第です。

ここで、ちょっとした行き違いがあったことを申し述べておきます。

6月23日(金)夕方、植村社長からお電話があり、『人権と利権』が載った広告で抗議が殺到し困っているという主旨でした。午後にもあったそうですが、私は神戸にちょっと大事な取材に行っており、帰社してから2度目の電話で話しました。この際、植村社長は、「謝罪文を出す」旨言われたということでした。私にこの記憶がなく、おそらく「言われた」というのであれば言われたのでしょうが、私は取材から戻って疲れていたこと、来客中だったこと、あるいはまさかすぐに謝罪文を出すとは商習慣上も道義上も信義上も思ってもみなかったことなどで、それを聞き逃がしていたかもしれません。

週が明けた6月27日(火)午後15時29分、私のほうから植村社長に、
「せっかくおみえになるのですから、議論を密なものにするために、
(1)どこがどう問題なのか具体的にご指摘ください。事前に(前々日ぐらい前までに)メールで送ってください。
(2)抗議のメールやファックス等をお示しください。当日コピーをご準備いただければ幸いです。」
とメールしました。植村社長が当地に来られて諸々「議論」するのかと思い込んでいましたので、(1)のような文言となったのです。

すると、同日18時19分に植村社長から、
「メールありがとうございます。
お電話で先日説明しました通り、『週刊金曜日』6月30日号『おわびの社告』を出します。本日、同号が刷り上りましたので、『おわび』の部分のコピーを添付で送らせていただきます。」
との返信メールが届きました。

一気に「おわびの社告」を『週刊金曜日』6月30日を掲載することを聞き逃していて、同誌6月30日号に「おわびの社告」が掲載するとあり驚いた次第です。

そして、もっと驚いたのは、仁藤代表と植村社長の2ショット画像が仁藤代表のツイッターに掲載され、仁藤代表の“勝利宣言”ともいえる一文が27日夜に発信されていたことです。これは知らず、翌28日、ある方が教えてくれて知った次第です。当初から、広告主の鹿砦社とは話し合うつもりはなかったのですね。本社訪問は善後策を話し合うのではなく、広告掲載打ち切り(取引停止)を伝えに来られたということでしょうか。

[左]『週刊金曜日』6月30日号掲載「おわび」。[右]Colabo仁藤夢乃代表の『週刊金曜日』に関する6月27日付けツイート

とはいえ、植村社長が、電話一本、メール一本で通告するのではなく、わざわざ東京から関西の鹿砦社本社を訪問され誠意を示さたことには敬意を表します。

植村社長は、前社長の北村肇さん(故人。私と同学年)の指名で社長に就任されたと認識していますが、北村さんと私との合意で開始した『金曜日』への広告出広が、こういう形で今後なくなるというのは遺憾です。広告出広をどちらから持ち掛けたか、確たる記憶がありませんが、定期購読者が減ったり200万部の超ベストセラー『買ってはいけない』で得た“備蓄米”(資本蓄積)も底が見えてきたような時期でしたので、北村さんからの提案だったのではないかと思います。そうでないと、私から敷居の高い『金曜日』に広告を出させていただくという話にはならないでしょう。

北村さんは、『サンデー毎日』編集長時代、「芸能界のドン」といわれたバーニングプロダクションと、この創業者社長・周防郁雄追及キャンペーンを張り、『週刊文春』の告発以前の1990年代半ばからジャニーズ事務所と、この創業者社長・ジャニー喜多川の未成年性的虐待を追及してきた私たち鹿砦社のスタンスを理解され、学年も同期ということもあり懇意にさせていただきました。つまり、お互いに芸能界のメディア・タブーを追及したことへの共感です。

そうして、死期が近づいていた頃、私が上京した折、長く時間を割いていただき、これが生前お会いした最後となりました。北村さんからは「私がいなくなっても『金曜日』をこれからもよろしく」と言われ、「勿論です。広告もこれまで通り続けます」と返したことを覚えています。

北村さん、御意に添えないことになりましたよ。『金曜日』にはもう広告を出せず残念でなりません。

『金曜日』前社長・北村肇さん(故人)

◆『人権と利権』への評価と誤読・誤解

本書『人権と利権』は、ちょうど「LGBT理解増進法案」の国会審議に入る時期とも重なり、永田町界隈ではよく読まれていたようです。このことにより、編者の森奈津子さんが突然、参議院内閣委員会参考人質疑前日朝に電話で依頼があり参考人として呼ばれ発言しています(この評価についてはここでは述べません)。

そういうことが複合的に次々と起こり話題を呼んでいて、結果売上に貢献したようで皮肉なものです。

さて、植村社長が仰るように果たして『人権と利権』は「差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれのあるもの」でしょうか? 私はそう思いません。各々の世界でそれなりの経験も名もある何人もの方の力を借りて一所懸命作った本をそう詰(なじ)られると力が抜けます。

私や森さん、その他の対談者、寄稿者らは、きのうきょう出てきた編集者や作家、研究者、ジャーナリストではありませんから、「差別」や「プライバシーの侵害」のイロハぐらいは周知しています。私は1970年代、狭山裁判が盛り上がり、同時に糾弾闘争や八鹿(ようか)高校事件以来差別問題については私なりに長年思慮してきました。八鹿高校事件では私の大学の先輩が暴行を受けたことで尚更です。

また、グラビアページで仁藤代表の顔写真を撮影し掲載したことを「肖像権の侵害」だとおっしゃっていますが、これは(仁藤代表のような)著名人や公人は、自らが大衆の強い関心の対象となる結果として、必然的にその人格、日常生活、日々の行動等を含めた全人格的な事項がマスメディアや大衆等による紹介、批判、論評等の対象をなることを免れませんから、そして表現の自由や言論・出版の自由が優先し、それを「肖像権」の名の下に拒絶、統制したりすることが許されない場合がありえます。これには確立した判例もありますが、おそらく植村社長が過去に在籍した朝日新聞でも、あるいはAERAや他社の週刊誌なども、そうした考えを元に、時に隠し撮りを行ったりし、紙面での写真掲載をなされていると思われます。そうでないと、写真一枚一枚被写体の人に許諾を取らないといけなくなります。無名の市井人ならいざしらず著名人や公人にとっては受忍の範囲内です。『人権と利権』に限らず、これまでこうした取材やグラビア、本文構成など行ってきました。植村社長にはお見せしましたが、ある本では、東電の勝俣会長が早朝、孫と自宅周辺を散歩しているところを隠し撮りし直撃取材を行っています。こうした取材はどこの雑誌も行っています。植村社長のような海千山千の新聞記者を経験された方が何を仰ってるんですかね。

思い返せば、これまで創業50年余の鹿砦社(関連会社のエスエル出版会含め)が出版した書籍・雑誌は年間100点として(50年余の社史の中で前半はさほど多くありませんでしたので)単純計算で3千点ほどになるでしょうか。そのうち『人権と利権』のように私が直接的に手がけた本もそれなりの数になります。芸能から社会問題まで、まさに多種多様、玉石混交で、内容的に良い本もあれば、そうでない本もありました。それでいいんじゃないでしょうか。忘れている本はほとんどなく、一冊一冊に想い出があります。出版差し止め(5回!)や訴訟になった本も何点かありますが、それがどうしたというのでしょうか。『金曜日』も敗訴した事件もありました。植村社長自身も、いわゆる慰安婦訴訟では敗訴が最高裁で確定していますよね。来社された際に対李信恵訴訟で敗訴したことを仰っていたので一応記しておきます。裁判所(官)と市民感覚が乖離する現今の司法にあって、敗訴は恥ずべきことではありません。

長年多くの訴訟を争いましたが、時に裁判所は市民感覚とずれている場合が往々にしてあり、裁判所の判断がすべて正しいとはいえず、冤罪や「報告事件」(植村社長、ご存知ですか?)もあります。18年前のちょうど今頃の7月12日に「名誉毀損」容疑で私が逮捕された際の対象の『アルゼ王国はスキャンダルの総合商社』という本もありました。一時ある大学の非常勤講師を拝命され、学生全員にこれを配布し後日意見を聞いたところ、問題はないという意見がほとんどでしたが、裁判所では刑事で懲役1年2カ月(執行猶予付き)の有罪、民事では賠償金600万円の判決が下され確定しました。

『人権と利権』が特段問題になるとは思えません。

本書について、ある方は次のようなメールを送ってこられました。

「わたしは、『人権と利権』はLGBT問題を提起した優れた本だと考えています。
 もちろん全ての発言や記述に同意するということではありませんが、ひとそれぞれに異なった読後感や受け止め方があるわけですから、細部にまで強いこだわりを持てば、出版企画そのものが成立しなくなります。多様な言論を尊重するのが、鹿砦社のスタンスですから、今回の企画も何の問題もないと思います。」
 
こういう評価もあるのですから、一方的に自身の価値観=左翼教条主義で「差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれのあるもの」と本書『人権と利権』を断じられることには賛同できません。『週刊金曜日』という雑誌、植村隆という言論人は、そんなに度量が浅かったのでしょうか!? 太っ腹だった北村さんとは大違いです。

一昨年末の『抵抗と挫折の狭間──一九七一年から連合赤軍へ』(『人権と利権』と同じ「紙の爆弾増刊」)以来久し振りに企画から原稿や対談を依頼し、一時は失明の危機にあった目の疾患をおして編集実務まで関わり、多くの方々の力を借りて完成させることができました。売行きも快調、多くの方々の評価も悪くない中で、皆様方には素直に受け入れていただき、その上で喧々諤々議論して欲しかったところです。

言論人、出版人であれば誰でも知っているヴォルテールの有名な言葉、「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」を、あらためて『金曜日』と植村社長に捧げます。今回の『金曜日』の処置〈排除の論理〉は、ヴォルテールの精神に反し、今後禍根を残すことでしょう。

後日、問題箇所を書面で送っていただけるということですのでお待ちしたいと思います。

◆『人権と利権』出版の経緯

以下、本書を出版するに至る経緯を申し述べます。

① 昨年11月、対藤井正美訴訟(藤井は元鹿砦社社員でカウンター/しばき隊の中心的活動家。ここでは詳しく述べませんが、本通信バックナンバーや大学院生リンチ事件関連書を参照してください)が終結し、すべてのM君リンチ事件関係の訴訟が終わり、ホッとしていたところに、M君リンチの加害者側に立って弁護した神原元弁護士らが元ゲームクリエーター暇空茜(仮名)さんに対し、有名になった「リーガル・ハラスメント」だとして訴訟を起こしたと記者会見、「Colaboと仁藤夢乃さんを支える会」が結成され、その賛同人に李信恵、辛淑玉、北原みのりらМ君リンチ事件加害者とこれに連がる者たちが名を連ねていることで自然と注目しました。

それまでColaboについては、その活動舞台が東京だったこともあり、詳しくは知らなかったのですが、私なりに調べたら1千万円単位の大金(補助金)が毎年どんどん入っていることに驚きました(問題になった2021年度は2600万円。22年度は4000万円余とされますが、この会計問題は不明)。他のボランティア団体やグループは、自己負担で慎ましくやっているところがほとんどで、なんでColaboや、Colaboと連携する「ぱっぷす」「若草プロジェクト」「BONDプロジェクト」ら一部の団体だけが優遇されるのか、疑問を覚えました。

また、ちょうどコロナで猶予されていた国税の納税に四苦八苦し(零細企業の鹿砦社の規模で毎月最低150万円、時に250万円納付)、これがあと1回でようやく終わりに近づいていたところで、苦しんで税金を払ったのに、一方で簡単に公金を手にし杜撰な使途と管理をしていることに怒りさえ覚えました。暇空さんが公金の使い道に疑問を持ち、この住民監査請求を行ったことは理解できました。おそらく神原弁護士や李信恵らが関わっていなければ注目することもなかったかもしれません。

② 年が明けると「LGBT理解増進法」の成立がリアリティを帯びて来ました。LGBT問題と同法について、Colabo同様、それまでほとんど真剣に考えてきませんでしたし、同法の内容にも無知でした。今でもまだ十分に理解しえていないところがありますが、「性の多様性」「マイノリティの人権」などの美名に惑わされ、この裏を知るにつけ、疑問は沸くばかりでした。ここでも利権が発生しています。ColaboにしろLGBTにしろ裏では利権だらけではないか。この法律が利権団体の集まり「LGBT法連合会」+野党案で成立すれば、世の中、大変なことになると思いました。加えて、中核派の区議が反対した東京杉並区のように地方・地域行政では先行してLGBT条例がどんどん成立したり利権団体が侵食しつつあり、公教育への進出や女性トイレの廃止などの現実も知りました。果たしてこれでいいのか? まだコロナで落ち込んだ会社立て直しに四苦八苦しているさなかでしたが、疑問がどんどん煮詰まり居ても立ってもおれませんでした。

「LGBT理解増進法」は、利権団体の集まり「LGBT法連合会」、超党派の国会議員の集まり「LGBT議員連盟」(岩屋毅会長=自民党、稲田朋美副会長=自民党)らが右、左関係なく蠢き、国民的な議論も合意もなく短期間の審議で通ろうとしていました。岸田首相の側近の失言や首相謝罪、駐日米大使のプッシュなどで「LGBT法連合会」などはみずからが盛り込んだ法案で、首相側近の失言と首相謝罪をいいことに与党も抱き込み国民にあまり知られる前に成立させたかったとさえいわれています。

③ この「LGBT理解増進法」の野党案は「LGBT法連合会」の意向を100%丸飲みした「性自認至上主義」(トランスジェンダリズム)に基づく極端なもので、これまでの日本の文化や規範などを全否定し、女性トイレの廃止(ジェンダーレストイレへ)、女子更衣室、女湯の問題など女性・女児の人権、安心・安全を保障せず、さらに男女の肉体的性差を顧みず同等に争わせる女子スポーツの問題……こうした問題を曖昧なまま成立されようとしていました。この私の疑問は、最近意見を明らかにされた白井聡、倉田真由美らと似ていて、人間考えることは同じだと思いました。

結局、自民、公明、維新、国民4党の「与党案」が成立しました。議員連盟がどう動き幹部の岩屋、稲田議員らがどちらに投票したかは不明です。「性自認至上主義」に歯止めを掛けたことには一定の評価ができるかもしれませんが、上記したように短期間に決めるべきではなかったと今でも思っています。しかし「野党案」と「与党案」の2択しかなく、もっと時間を取り議論を尽くし女性・女児の不安を払拭し内容豊かなものにすべきだったのではないでしょうか。政治的妥協で2択しかない中で「与党案」が成立してしまいました。今後は、この「与党案」を元に成立した法律をどう改善していくべきか、もっと広く周知させ国民的議論を尽くすべきだと考えます。女性トイレにしろ更衣室にしろ女子スポーツにしろ身近な問題なのですから。少なくとも『人権と利権』は、そのために賛否はあれど問題提起したと自己評価しています。

④ 本年初めからColabo問題とLGBT問題が切迫化してきつつある中で、こうした問題に真正面から取り組んだ本もほとんでないことから、本年2月から動き出しました。当初、企画から寄稿、対談の交渉まで私が行い、『季節』春号校了後からは同誌編集者のK君にも手伝ってもらい、さらに「虎の威」を借りようと、著名な作家でLGBT問題にも詳しく、これまで多少の面識があった森奈津子さんにも参画いただき「編者」として協力していただきました。森さんとは、これまで小さな仕事しかやってもらってはおらず、さほど親しい付き合いでもなく、丸々一冊やってもらうのは『人権と利権』が最初でした。

私たちは手当たり次第に対談や寄稿の依頼を行い、年度末の慌ただしい時期もあったりして、ことごとく断られました。こうした中で、Colabo問題を追及していた須田慎一郎さんが対談を承諾され、そうこうしているところで必死に女性・女児の人権、安心・安全、女性トイレ廃止などの問題を訴えていた加賀奈々恵市議の動画を偶然見て感銘を受け当たってみたところOKをいただきました。

さらに、三浦俊彦東大教授が寄稿を、橋本久美元豊島区議が対談を引き受けてくださいました。

他にも入ってほしかった方もいますが、欲を言えば切りがありません。森さんはじめ皆さん方に、頑張っていただき「短期間でよくやった」と自己評価しています。

以上が、私が『人権と利権』を出版するに至る経緯です。ともかく、前記したようにColabo問題が社会問題化し「LGBT理解増進法」が成立しようということに対して問題提起することが目的でしたし、たとえ不十分ではあったにせよ、少なくともそれは果たすことができたと、認識しています。

⑤ 『人権と利権』の対談等を開始した当初、「LGBT理解増進法案」は「連合会+野党案」が脚光を浴び、与党や議員連盟もこれに乗り決まるのかと思っていました。それは「性自認至上主義」(トランスジェンダリズム)そのもので到底支持できるものではありませんでした。

野党3党(立憲、共産、社民)がなぜ「性自認至上主義」(トランスジェンダリズム)に毒され、これ以外の案を出せなかったのか、理解できません。野党がもっと女性の意見を聞き、これを法案に反映させていたならば、もっと支持を得たでしょうが、そうではなくLGBT利権団体の主張を100%丸飲みしてしまったところも問題です。マスメディア総体、なかんずく『金曜日』や植村社長らも「LGBT当事者」と表現されますが、私から見れば「LGBT利権団体」としか思えません。「LGBT当事者」といえば森さんらもそうで、他にもたくさんいますが、「LGBT利権団体」の一部エリートが無名無数の「LGBT当事者」の声や想いを代表しているとは言い難いと私は思います。

さすがにこれではいかんだろうと出てきたのが、のちに決まる与党+維新・国民案です。このあたりは政治的思惑も入り乱れて、複雑で、すんなりと理解できません。ここにも私たち国民総体の理解がなされない一因があるようです。

先の国会で「LGBT理解増進法」が成立した事実は事実として認め、今後国民的な議論を尽くし、より良い法律に改変、豊富化されていくことを望みます。この場合でも、一部団体への利権は排していかなければなりません。

◆とりあえずのまとめとして──

長く書き連ねてまいりました。そろそろまとめに入りましょうか。

『人権と利権』に於いて私たちは、これまで〈聖域〉とされメディア・タブーとなっていたColaboとLGBTの問題に触れ、時に厳しい批判を行っています。私たちは「攻撃」(「ヒラ社長が行く)など行っておらず、あくまでも批判、公正な論評を行ったつもりです。それを「攻撃」と詰られれば、何とも言えませんが、『週刊金曜日』や書籍・ブックレットなどで丸ごと反論していただくことを望みます。

『週刊金曜日』7月7日掲載「ヒラ社長が行く」

植村社長らは、ColaboやLGBTが絶対善として思い込み、これらをちょっとでも批判することは許さない、たとえ小さな広告でも許さない ── まるで言論統制です(広告も言論です)。

『人権と利権』という本が『週刊金曜日』という、権威あるオールド左翼雑誌によって事実上「ヘイト本」「差別本」認定され、編者の森奈津子さんも「ヘイト本作家」、鹿砦社も「ヘイト出版社」の汚名を着せられました。遺憾なことです。逆の評価もありますから救われますが、定期購読1万人(植村社長談)の影響力ある老舗雑誌にそう認定されたのですから、影響は決して小さくありません。「ヘイト出版社」には「ヘイト出版社」の意地があります。不当な〈排除の論理〉に抗し、創業50年余の苦難の歴史で培ってきた意志を持って、私たちは私たちの道を突き進み汚名を払い除けねばなりません。

さて、編者の森奈津子さんについて少し触れておきます。

森さんといつ出会ったか記憶にありませんが、2018年に「デジタル鹿砦社通信」にて6回インタビュー記事を掲載していますので、この前だと思います。その後、「デジタル鹿砦社通信」に11回連載し、これは『人権と利権』に再録されています。また、大学院生リンチ事件関連本『暴力・暴言型社会運動の終焉』に9ページほど寄稿いただいています。『人権と利権』まではそれぐらいですで、『人権と利権』が当社では初めてのまとまった仕事になります。

森さんもみずからカミングアウトされていますが、森さんのお連れ合いは難病で森さんが24時間介護をやっておられることと、森さん自身乳がんで片方の乳房を切除していながら、このような困難な情況にも負けず頑張っておられます。しかし、森さんの言論活動をよく思わない一部の者が、こうしたことを揶揄し非難しているツイートを見かけます(特に共産党党員、及び同党支持者)。「人権」を嘯くなら、これはいただけませんし、即刻やめるべきです。

昨今亡くなりましたが、現在、鈴木邦男氏は、右左関係なく評価されています。私たちが氏の代表作『がんばれ!新左翼──「わが敵・わが友」過激派再起へのエール』(1989年)を出版した頃は、(特に新左翼周辺から)かなりバッシングされました。理解者や味方はほとんどいませんでした(リベラル/左派系で理解者といえば遠藤誠弁護士、筑紫哲也、田原総一朗氏ぐらいでしょうか。遠藤、筑紫氏は故人)。ちょっと似たケースです。

『人権と利権』、そしてこの編者・森さんは、しばき隊系は無論、いわゆる「リベラル」「左派」「野党」系からもバッシングの嵐にありますが、いつか「リベラル」「左派」「野党」系の方々の中から理解される日が来るものと信じています。今でも一部理解されている方はいますがごく少数です。

最後にもうひと言──。「顰蹙は金を出してでも買え」とは、カリスマ編集者の幻冬舎・見城徹社長の有名な言葉ですが、『人権と利権』がオールド左翼雑誌と左翼教条主義者らに「顰蹙」を買ったのであれば、まさに言いえて妙だといえるでしょう。(本文中、一部を除いて敬称略)

※読者の皆様へ。長い文章となりました。一所懸命書きました。最後までお読みくださり有り難うございました。事実誤認の箇所など発見されましたらご指摘ください。また、誹謗中傷ではなく、前向きなご意見、ご批判もお寄せください。

送り先:matsuoka@rokusaisha.com ファックス 0798(49)5309 です。

植村社長へ。7月7日の面談で、6月23日のような記憶違いや誤認などがございましたら、ご指摘ください。
 
株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

《7月のことば》人生に無駄なものなどなにひとつない 鹿砦社代表 松岡利康

《7月のことば》人生に無駄なものなどなにひとつない(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

今年も半分が過ぎ折り返しました。速い速い!
今月の言葉は一番好評で、これでみたびの登場です。
私たち一人ひとりの人生で成功もあれば失敗もあります。栄光も挫折もあります。
成功や栄光ばかりの人は一人もいないでしょう。
しかし、失敗や挫折は決して「無駄」なことではありません。
いや、失敗や挫折の中にこそ次の成功や栄光の種が潜んでいます。

偉そうに、かく言う私も失敗と挫折の繰り返しでした。
その都度、みなさんに心配と迷惑をかけてばかりで助けられました。
再起不能と言われたことも何度もあります。

しっかり反省や教訓化しているとは言えませんが、これも与えられた試練だなと思い頑張ってきました。コロナ前は、もう失敗することもなく後進に道を譲れるなと思っていましたが、そうはいきませんでした。よもやのコロナ来襲と転落、正直苦しかったですが、皆様方のご支援でなんとか耐えれました。
この経験は「無駄」だったとは思いません。

私も齢70を越え、これからどれだけ仕事をできるかどうかわかりませんが、コロナ来襲による打撃を決して「無駄」にせず、もうひと踏ん張りするつもりです。

これを書いた書家・龍一郎は、「ゲルニカ事件」(関心のある方は調べてください)という挫折を経験して今があります。

「人生に無駄なものなどなにひとつない」── なかなか言いえて妙です。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年7月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

【緊急報告!】『週刊金曜日』6月16日号掲載の鹿砦社広告について──『金曜日』への筋違いの抗議に抗議し、一方的に「おわび」文を掲載した『金曜日』のメディアとしての自律性と主体性の喪失を批判します! 鹿砦社代表 松岡利康

『週刊金曜日』6月16日号に掲載した小社広告(別掲①)について、広告を出広した鹿砦社に抗議するのではなく、『金曜日』に抗議が殺到し困ったと同誌発行人(社長)の植村隆氏(別掲②)から先週末の6月23日にお電話がありました。何を抗議したのか分かりませんが『金曜日』に抗議した人たちに抗議します。文句があるなら広告元の鹿砦社に言え!

①『週刊金曜日』6月16日号に掲載した小社広告
②『週刊金曜日』発行人兼社長の植村隆氏(2019年12月7日、鹿砦社創業50周年の集いにて)

さて植村社長、来週(つまり6月26日~30日の週)に小社を訪問したいということでした。どこの中小企業でもそうでしょうが(『金曜日』は違う?)、月末は支払いなどで慌ただしく月明け(7月第1週)にしていただきました。

なので、商取引の常識においても、あるいは道義上、信義上、植村社長と話し合うまでは、本件を伏せておき発言も控えておくつもりでした。

しかし、植村社長は小社を差し置いて先行的にColabo仁藤夢乃代表を訪問し一方的に謝罪し「おわび」文(別掲③)を同誌6月30日号に掲載されたということです。これを植村社長から聞いたわけではなく、仁藤代表のSNS(別掲④)で知りました。まずは、商習慣上、あるいは道義上、信義上、まずは長年の取引先で出広元の小社と協議すべきではなかったのではないでしょうか。

[左]③『週刊金曜日』6月30日号に掲載されたという植村隆発行人兼社長による「おわび」文。[右]④Colabo仁藤夢乃代表のSNS(2023年6月27日付)

『金曜日』には前発行人(社長)の北村肇さん(故人)の時代から10年以上にわたり広告を出広してきました。北村さんとは同期(1970年大学入学)で、世代が同じということもあり妙にウマが合い懇意にさせていただきました。亡くなる直前には上京した私のために無理を押して長い時間を割いていただきました。当地(兵庫県西宮市)での講演や市民向けのゼミなどにも複数回お越しいただきました。

今、『金曜日』には小社以外に有料広告は入っていません(見過ごしであればご指摘ください)。「広告に依存しない」と言っておられるようですが、「依存」するもなにも広告が入らないのですから、やせ我慢でそう言っているにすぎません。

当事者(広告主)である小社と話し合う前に一方的に、Colabo仁藤代表に勝手に謝罪し「おわび」文を掲載することは道義上、信義上、いかがなものでしょうか?

月が明けて植村社長と協議し、本件についてあらためてご報告いたしますが、とりあえず本日の報告は手短にとどめておきます。

広告の上部に記しているように私たちの出版活動のモットーは「タブーなき言論」です。これを基本に創業から50年余り出版活動に勤しんでまいりました。本年創刊18年を迎えた月刊『紙の爆弾』もその具体的な営為です。『金曜日』には及ばないかもしれませんが、長年多くの読者に支えられてきました。ですから、2005年の「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧で壊滅的打撃を受けた際も、また近年新型コロナで苦境に落とされた際も、少なからずの方々にご支援いただき「命拾い」(ある方の言葉)することができました。

また、『金曜日』と重なる読者もおられます。なので一方的に「差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれのあるもの」(「おわび」文より。内規にもあるそうです)と断じられると小社への信用を毀損することにもなりかねません。おわかりですか?

くだんの『人権と利権』は、これまでメディアタブーとされてきた「Colabo」「LGBT」に対してタブーなしに採り上げ思い切った誌面づくりをいたしました。しばき隊界隈で飛び交う誹謗中傷や汚い言葉は排し、真正面から問題に向き合い公正な論評に努めたつもりです。私たちなりに自信を持って世に送り、左右問わず多方面の方々にお読みいただき大きな反響があり多くの方々のご賛同も得ることができました。

かつて『金曜日』には、「大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)関係の出版物の広告を発行ごとに掲載させていただきました。そうした際に、『金曜日』編集部から咎められることも掲載拒否されることもありませんでした。さすがに『金曜日』、度量があることに感心した次第です。

ところが『金曜日』とあろうものが、今回は一体どうしたんですか!? あまりにも偏狭、北村肇さんも草葉の陰で泣いてますよ! メディアとしての自律性や主体性があれば、尚急に一方に謝罪するのではなく、意を尽くし公正に判断すべきではなかったでしょうか。

月末の慌ただしいさなか、こんなことに時間を割いている場合ではないのでしょうが、黙っているわけにはいかず一言呈させていただいた次第です。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

【緊急アピール!!】森奈津子=編『人権と利権 ──「多様性」と排他性』について、対談者の加賀奈々恵・埼玉富士見市議に対するバッシングを即刻やめよ! 鹿砦社代表 松岡利康

上記『人権と利権』は5月23日発売以来話題を呼び圧倒的な勢いで売れています。ちょうど、いわゆる「LGBT理解増進法案」が国会に上程され審議に入るということもあったかと思いますが永田町界隈でもよく読まれていたようです(このこともあってか編者の森奈津子さんは参議院に参考人として呼ばれています。この件では賛否ありますが、ここでは触れません)。発売直後にAmazonから700冊余りの注文が来、これが捌けると在庫がなくなりAmazonでは古書業者が高値で出品し定価の倍近くになっているほどです。

こうした情況に不快感を覚えたのか、発売から1カ月近くにもなって突然Colabo仁藤夢乃代表が、同書(特に表紙、グラビア)を非難し、そしていつものように彼女の周辺から、対談者の一人で、「女性に対する暴力を想起させる表紙」について「謝罪」した加賀奈々恵さんに誹謗中傷が集中しています。甚だ遺憾であり怒りを禁じえません。私たちは断固加賀さんを守り共に在り続けます。全国でも特にLGBT化が進む埼玉県で、覚悟を決め、女性・女児の人権、安心・安全のために、たった一人でLGBT化(具体的には公衆トイレから女性トイレをなくし「ジェンダーレストイレ」化)に異を唱えた加賀さんの志に連帯します! 加賀さんのツイッター(およびyoutube)にアップされた意を決した加賀さんの凛々しさを見よ!


◎[参考動画]加賀ななえ【政策の変遷について/埼玉県LGBT条例基本計画パブリックコメントについて】(2023年2月26日)

当然私たちとしては理不尽な攻撃に対して最後まで加賀さんを見放さず守ることは言うまでもありません。当社への抗議は今のところファックスが1枚来ているだけです。

ここで、表紙について少し説明させていただきます。

【1】仁藤代表が仰るような、Colaboのバスの画像を「切り刻まれ」たというのは全くの誤認です。バスは、取材班メンバーが4月末に駐車場を突き止めそこに赴いて撮影したものでネットから採ったものでもありません。その写真をグラビアと共に、表紙のバックに使っています。本文で記事に採り上げているからです。そのどこがいけないのでしょうか? バスに「肖像権」があるのでしょうか? 私たちが昨年そのバスに傷つけたというツイートもありましたが、昨年私たちの取材班は動いておらず悪質なデマです。

現地に赴くということは、基本的に当社がよくやっている手法で今に始まったことではありませんし、当社に限らず他社の週刊誌などでもよくやっている初歩的な取材方法です。鹿砦社として最近では東電の幹部、原発事故の関係者や「大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)関係者を直撃したりしています。

【2】バスの前のガラスが割れているのは、LGBTの象徴であるレインボーのガラスが割れている様子で、特段意味はないです。見る人によって受け取り方はいろいろあるとは思います。決して「女性に対する暴力を想起させる表紙」を目論んだわけではありませんが、加賀さんがそう感じられたのであれば残念です。男目線と女目線では感じ方が異なるのかもしれません。「派手目に」やればやったでアレコレ言われ、また綺麗に大人しくやれば目立ちませんし、むずかしいところではあります。

【3】本書は月刊『紙の爆弾』という雑誌の増刊号ですが、雑誌は決められた発売日を1日も遅らせることはできず、今回は特に「緊急出版」ということでかなりタイトなスケジュールでした。『紙の爆弾』など他の雑誌も同様にタイトですが、多人数が寄稿したりするので、表紙のチェックについて『紙の爆弾』は編集長1人の独断で、他の雑誌も2~3人がチェックするだけです。寄稿者全員に回していれば取次搬入日に間に合わなくなります。例えば『世界』という雑誌がありますが、寄稿者全員がチェックするわけでないことは当然です。その表紙にも好き嫌いはあるでしょうが。加賀さんバッシングに加担している太田啓子弁護士は、実は鹿砦社発行の反原発雑誌旧『NO NUKES voice』(誌名変更し現在『季節』)に座談会で登場されたことがありますが、太田弁護士に事前に表紙を見せたことはありません。

【4】今回は5月18日に取次搬入で、23日に発売でした。加賀さんら寄稿者・対談者らには18日発送、19日か20日に届きご覧になったと思います。逆に言えば、それまで加賀さんに表紙をご覧いただくことはありませんでした。また、他の方々の原稿の内容も、いたずらに別の方々に見せることはできませんから見本が届くまでは知る由もありません。

【5】表紙、グラビア、他の方々の対談や寄稿の内容については、5月19日 or 20日に見本をご覧になるまで加賀さんは一切ご存知なかったし、一切の責任は鹿砦社にありますので、誹謗中傷や文句があれば鹿砦社の私松岡にお願いいたします。お名前、ご連絡先などを明記の上、メールmatsuoka@rokusaisha.comかファックス0798-49-5309にてお送りください。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

もう少し言わせてください。加賀さんを誹謗中傷する人たちは仁藤代表はじめ果たして『人権と利権』の内容をよく読んだ上で批判しているのでしょうか? 「言論には言論で」というではありませんか。仁藤代表は著書も多く反論本を出版できる環境も能力もあるのですから、きちんと反論されたらいかがでしょうか。Colaboに繋がる人たちに「大学院生リンチ事件」(しばき隊リンチ事件)に直接・間接的に関わった人たちもいます。ここでも私たちは地を這うような取材/調査を元に6冊の本にまとめ出版しましたが、1冊も反論本はありませんでした。

最近鹿砦社に対し「ヘイト出版社」、本書編者・森奈津子さんに対し「差別者」と詰っている者がいます(杉並から差別をなくす会・谷口岳)。本書において私は、
「こうした風潮に異を唱える者に対しては『差別者』『レイシスト』『ヘイター』などと口汚い悪罵を浴びせ、謝罪と沈黙を強いる。本書出版後、当社や森奈津子、あるいは対談者らに対して、そうした悪罵が投げつけられるかもしれない」
と“予言”していますが、現実化しつつあるのは極めて遺憾です。

尚、本書についての私の問題意識、なぜ本書を出版するに至ったのかなどについては本書巻末の「解題」において申し述べていますのでぜひご一読いただきたく望みます。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

ジャニー喜多川による未成年性虐待問題に蠢く人たち ── 20年遅れで報じて恥じないマスメディアのご都合主義と、大学院生リンチ事件加害者側人脈の政治利用主義 鹿砦社代表 松岡利康

『ジャニーズ帝国崩壊』とは四半世紀も前に鹿砦社が出版した書籍のタイトルである(本多圭・著、1997年)。本年3月に放映された英国BBC放送が制作したドキュメント『PREDATOR』以降、まさに堰を切ったかのように、ジャニー喜多川による性加害の証言、批判、そしてジャニーが創設し、今やわが国屈指の芸能プロダクション・ジャニーズ事務所に対する批判が溢れ返っている。ここ半世紀余り権勢を誇ったジャニーズ帝国が、今まさに「崩壊」するかのようである。

 
在りし日のジャニー喜多川

わが鹿砦社は1995年、『SMAP大研究』出版差し止め以降、対抗上、告発系、スキャンダル系の出版物を陸続と世に送ってきた。『週刊文春』がジュニアの告白を中心にキャンペーンを張る以前からであるが、私たち以前にも北公次・著『光るGENJIへ』はじめジャニー喜多川未成年性加害について多数の告発本を出した「データハウス」を嚆矢としつつも、同社はしばらくしてジャニー告発系の出版をやめている(これは同社の名誉のために付言しておくが、決してジャニーズ事務所などからの圧力や懐柔があったからではない)。ここでも何冊かの企画・製作に関わったとする人物らが、『SMAP大研究』出版差し止めに対し裁判闘争に打って出た鹿砦社に企画を持ち込んできた。

以降鹿砦社は、平本純也『ジャニーズのすべて』(全3巻)、原吾一『二丁目のジャニーズ』(全3巻)、本多圭『ジャニーズ帝国崩壊』、豊川誕『ひとりぼっちの旅立ち』、鹿砦社編集部『ジャニーズの欲望──アイドル資本主義の戦略と構造』『ジャニーズの憂鬱──アイドル帝国の危機』『ジャニーズの躓き──壊れ始めた少年愛ビジネス』、伊藤彩子『ジャニーズ・プロファイリング──犯罪心理捜査』などが文春のキャンペーンまでに出版し、ささやかながら世に警鐘を鳴らし続けた。

この間に、社会的に大きな話題となった、いわゆる「おっかけマップ」シリーズがあり、このシリーズのうち『ジャニーズ・ゴールドマップ』(事前差し止めのため未刊)、『ジャニーズおっかけマップ・スペシャル』が出版差し止めとなり、最高裁まで争われた。むしろ、こちらのほうは大きく報じられたが、告発系の書籍のほうは、私たちの広報力不足のため、残念ながら、さほど話題にはならなかった。

そうして、対ジャニーズ訴訟がほぼ収束するのを前後して文春のキャンペーンと訴訟が始まったのである。

今、これらの書籍を、あらためて紐解くと、当時の、そして今に至る私たちの“奇妙な情熱”が想起される。その後も細々ながら告発系、スキャンダル系の出版を続けてきた。いまだ集計していないが、数十点にものぼる。その中の一つ『ジャニーズの憂鬱』では関連会社まで調査していて、現ジャニーズ事務所代表取締役・藤島ジュリー景子は、98年の時点で、このうち4社で取締役に就き、「ジャニーズ・エンタテイメント」では代表取締役を務めていることが、あらためて判った。

文春告発以前の鹿砦社のジャニーズ告発本の一部。左から平本純也『ジャニーズのすべて』(1996年)、本多圭『ジャニーズ帝国崩壊』(1997年)、伊藤彩子『ジャニーズ・プロファイリング ── 犯罪心理捜査』(1999年)
若き日の藤島ジュリー景子(右)と、古参の幹部ながら藤島メリー泰子から放逐された飯島三智(みち)

そうした調査、取材、編集、出版の経験により、メディアの中心・東京から遠く離れ、現在のマスメディアの狂騒状態を冷静かつ客観的に見てくると、今では違和感を覚えるし、マスメディアのご都合主義には呆れ果てる。当時は一切といっていいほど(『噂の眞相』や、その後告発に踏み切った文春など一部を除いて)全く無視した。それでいて、今頃になって「猫も杓子も」状態である。私たちの警鐘を無視し、未成年性的虐待を放置してきた大手メディアの責任は重大であり、取材・編集・製作に関わった記者・スタッフらの矜持こそが、まずもって強く問われるのではないだろうか?

ところで、ジュリー社長の動画での「謝罪」の翌々日の朝日新聞は社説で「ジャニーズ謝罪 これで幕引き許されぬ」と激しく批判している。いわく、
「多くの未成年が長期にわたって重大な人権侵害にさらされていた可能性のある深刻な事態である。広く大衆を相手に影響力の大きい事業を手がけてきたジャニーズ事務所には、ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ。」

同 5月16日掲載「社説」

うむうむ、なるほど。文春の告発キャンペーンと訴訟、それに至る私たち、データハウス、『噂の眞相』などの相次ぐスキャンダル暴露や告発──朝日(及びマスメディア)は、これらに真摯に耳を傾けて来たのか!? 「ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべき」なのは、20年も放置してきた朝日新聞(及びマスメディア)だ。文春裁判でジャニー喜多川による未成年性加害が明らかにされながら(文春や小なりと雖も鹿砦社らわずかなメディア以外に)放置していた間にも性加害がなされていたことへの「ひときわ重い社会的責任が課せられていることを改めて自覚すべきだ」。今になって、あたかも知りませんでした、初めて知りましたなどというような姿勢こそ、まずは改めるべきだ。「これで幕引き許されぬ」!? この言葉は、ジャニーズ事務所と共に朝日新聞(及びマスメディア)に鋭く問われている。

◆「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる団体の正体と政治利用主義を断罪する!

ジャニー喜多川による未成年性虐待と事務所追及がメディアで沸騰しつつあるさなか、「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる正体不明の団体が突如現われ署名活動を開始した。記者会見に登場した「ジャニオタ」と称する2人、単なる素人のジャニーズファンではできそうにもない手際の良さ、賛同人に名を連ねた“いつもの人たち”などから、純然たるファンによる団体ではなく、なんらかの政治的目的、つまり政治利用主義に基づくものである匂いがする。記者会見に出た2人については、すでに氏素性が判明しジャニーズファンでないことも明らかになっている。


◎[参考動画]ジャニーズファン記者会見"ファンやめずに…"/1.6万人抗議署名に事務所が返答(2023年5月12日)

賛同人に名を連ねた人たち、仁藤夢乃、北原みのり、李信恵、辛淑玉らの名を見るだけでも、なんらかの政治的目的があることが判る。

仁藤夢乃は、この問題に関わるより前にColabo問題(つまりいまだにすっきりしない公金の使途についてもっときちんとすべきだ)に真摯に向き合うべきだし、北原みのりは草津温泉の冤罪事件や大学院生リンチ事件などに謝罪、釈明すべきだろう。李信恵は大学院生リンチ事件の大阪高裁判決で判示された、リンチに連座した「道義的責任」について責を果たすべきだし、この姉貴分の辛淑玉も大学院生リンチ事件に対して血の通った人間としての誠実な対応が待たれる。こうしたことなくして、いくら死んだ人間の責任や事務所の対応を批判してもダメである。

「PENLIGHTジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」の賛同人

それから、素朴な疑問として、仁藤夢乃のグループがこぞって、「PENLIGHT」に名を連ね関わっているのはなぜだろうか? 彼女ら4人が、これまでジャニーズ問題について言及したか? なにかしら邪な目論見を感じざるをえない。例えば、彼女らの要求の一つに「第三者委員会の設置」があるが、あわよくば自分らがその委員に収まろうとでもしているのか、といった邪推さえ浮かんでくる。

私たちは上記したように四半世紀に渡りジャニー喜多川の未成年性虐待、ジャニーズ事務所の諸問題などについて、一冊一冊は小さな部数だが、こつこつと多くの書籍、雑誌で言及、批判してきた。この誇りぐらいはある。バカはバカなりに四半世紀も続けてくれば、それなりに得る所はあろうというものだ。(松岡利康)

【追記】
5月26日、ジャニーズ事務所は再犯防止のために社外取締役を任命すると共に「心のケア相談窓口」の設置を発表した。後者のメンバーに林眞琴弁護士(元検事総長)がいる。この林弁護士は、Colabo理事でもある奥田知志牧師が理事長を務めるNPO法人「抱樸(ほうぼく)」が運営する「希望のまちプロジェクト」の「応援団」に名を連ねている。繋がっている!

PENLIGHTが第三者委員会に入り込もうとしているのではないかとの話もあながち馬鹿にできないようだ。なにやら信憑性が出てきたような感がある。注視していく必要がありそうだ。

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月刊『紙の爆弾』2023年6月号

《6月のことば》人生 旅の途中 夢の中 鹿砦社代表 松岡利康

《6月のことば》人生 旅の途中 夢の中(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

6月になりました。── 時の経つのは速いです。今年も5カ月が過ぎました。GWが明けてからも、あっというまに6月になりました。

短期間でもこの調子ですが、物心がついて1960年代、70年代、80年代、90年代……あっというまでした。

齢70を過ぎ、私の人生も黄昏期に入ったと感じていましたが、龍一郎が言うように、まだまだ「人生旅の途中」の気持ちで、初発の「夢」を求め果たして行きたいと思います。

まずはコロナ禍でガタガタになった会社を建て直し(かなり回復基調)、まだまだ果たせていない仕事をやり切りたい。

コロナ禍で2年遅れましたが、当面は2年後の『紙の爆弾』創刊─出版弾圧20周年を一里塚として目指し失地回復に努めます。

「人生」という「旅の途中」にはこれまでいろいろなことがありました。これからもひと山、ふた山、み山あるかと思いますが、「夢」を求め続けて行きたいと思う昨今です。

(松岡利康)

月刊『紙の爆弾』2023年6月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)