安倍官邸親衛隊の最右翼、木原稔議員が総理補佐官に就任した政治的意味

◆陰険な言論統制と強烈な官僚統制

派閥順送りの閣僚人事は無能大臣を生み出し、国政の停滞をもたらすに違いない。今井絵里子内閣府政務官や小泉進次郎環境相ら若手の「育成」登用も、政権の人気浮揚効果とともに政局がらみであることで、今回の改造人事の内実は明らかだ。しかし国会答弁で詰まるような大臣がいても、それは無視して必要な法案が通ればよい。政局が水面下で展開しようと、審議と実効性のある施策が実施されればよい。それよりも問題なのは、国民に負託されない実権者たちが、この国の道筋を「勝手に」つくってしまうことではないだろうか。

閣僚のほかに、官邸人事も刷新された。じつは議員たちがなりたがる大臣や政務官よりも、官邸人事のほうが政権にとっては重要なのだ。補佐官、内閣特別顧問といった肩書の総理のスタッフこそが省庁に指示を出し、人事権をもって霞が関を統制・支配しているのだから。いわば安倍総理の代理人として、親衛隊として暗躍しているのが官邸スタッフなのだ。

かつて、北村滋内閣情報官(警察庁出身)はメディアから「日本のアイヒマン」と呼ばれてきた。その北村滋は今回、国家安全保障局長および内閣特別顧問となった。これまでどおり、安倍政権の情報統制や政敵のプライベート情報を調査する「情報将校」としての役割をつよめるのは必至であろう。

ただし、アイヒマンという表現は必ずしも当たっていない。親衛隊将校アドルフ・アイヒマンは、ユダヤ人虐殺を行なった収容所行政や囚人輸送に大きな役割をはたしたが、かれが虐殺を立案したわけではない。戦後、南米で潜伏中を摘発され、裁判にかけられたときに、アンナ・ハーレントが彼のことを、どこにでもいる普通の人物が虐殺に手を染めたと、ファシズムにとりこまれる人間の凡庸さを論評したもので、そもそもアイヒマンは情報将校ではないし、北村滋を内閣情報官に任命したのは民主党・野田政権である。

◆危険な総理補佐官

木原稔総理補佐官

それはさておき、今回この欄で取り上げるのは、北村滋のような理論肌の官僚出身者ではない。もっと強引に辣腕を振るいかねない、危険な総理補佐官である。その人物の名は、木原稔。熊本県第1区選出の衆議院議員だ。

ご記憶にあるだろうか。2015年に自民党「文化芸術懇話会」(文化人と政治家が参加)において、作家の百田尚樹が「沖縄のふたつの新聞(沖縄タイムス・琉球新報)はつぶさなアカン」と発言したことを。この懇話会の代表をつとめたのが、木原稔総理補佐官(衆議院議員)なのである。

ほかにも出席者から、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」との声が上がった懇話会である。内閣官房長官の菅義偉すらも、懇話会での「マスコミを懲らしめる」といった発言について「報じられたことが事実だとすれば、どう考えても非常識だと思う。国民の審判を受けて国会に来た人は、自らの発言に責任を持つべきだ」と会見で述べている。この懇談会での報道圧力発言の責任を問われて、木原が党の青年部長を更迭されたのは言うまでもない。


◎[参考動画]【日いづる国より】木原稔、安倍晋三を支える決意[桜H25/1/18](SakuraSoTV 2013/1/18公開)

同じ2015年の沖縄全戦没者追悼式で、安倍総理に怒号が浴びせられたとき、木原は「主催者は沖縄県である」「たくさんの式典や集会を見ているから分かるが、明らかに動員されていた」「そういったことが式典の異様な雰囲気になった原因ではないか」と、ヤジを飛ばしたのは県の動員による参列者であると示唆している。

主催した県側は「動員などはあり得ない」と反論したが、主催者の一人である県議会議長の喜納昌春に「いくら何でもひどすぎる。ゆゆしき発言で、悲しくなる」「自民党に沖縄のことを何も知らない議員がいることが問題。末期的だ」と批判されたのは記憶に新しい。

青年部長を更迭ののち、木原は三か月で党の文部科学部会長に就任する。問題児ながら40代のはたらき盛り。期待の中堅政治家であることに変わりはなかった。

しかるに2017年には「子どもたちを戦争に送るな」という教育は偏向教育であり、特定のイデオロギーだと主張している。それに関連して、自民党のホームページに学校の教員情報を投稿できるフォームを設置したのも、自民党文部科学部会の会長・木原稔議員だったのだ。そのフォームには「学校教育における政治的中立性についての実態調査」とあった。そして、こう呼びかけていたのだ。

『教育現場の中には「教育の政治的中立はありえない」、あるいは「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です。』

『学校現場における主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがあり、高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております。』

そし木原のツイートがこうだ。

『「子供たちを戦場に送るな」というのは、政治的中立を逸脱している。そんな発言をした「先生方」は自民党に報告してほしい。』と。一時的にとはいえ、自民党のホームページが密告を奨励するサイトと化したのだ。自民党および木原に批判が殺到したのは言うまでもない。


◎[参考動画]【木原稔・稲田朋美】地方に漲る力と絆、伝統と創造の会の役割[桜H26/5/16](SakuraSoTV2014/5/16公開)

ようするに、この男は極右政治家なのである。その意味では、官僚出身の総理補佐官とは違って、国民の負託を受けた独自の活動(行き過ぎ)をおこなう危険性がある。木原稔にはこれらの「前科」があることを確認しておこう。

現在、総理補佐官は官僚出身の今井尚哉と長谷川榮一(経産省)、建設官僚出身の和泉洋人、政治家は薗浦健太郎、秋葉賢也、そして木原稔の6人である。かれらが安倍総理の「分身」として暗躍するとき、官邸主導・一極支配の構造はいやがうえにも強化されるのだ。

国民に負託されていない官僚出身者は言動が慎重だとされるが、この総理補佐官の中には官僚出身でも極めて危険な人物もまぎれている。次回は「影の総理」とまで言われる人物を紹介することにしよう。


◎[参考動画]木原みのる財務副大臣 国政報告 アベノミクスの実績 麻生さんの話も(seikei-jpn2019/2/12公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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高齢・無能・暴力団だけではない 改造内閣の「不倫閣僚」たち

順送り人事ゆえに、およそ職務に不適格な高齢閣僚、暴力団との関係が深い反社閣僚、あるいは小泉進次郎の「転向」にみられる政局含みと。ここまで第4次安倍改造内閣の閣僚たちを紹介してきた。ものごとには、いろどりというものがある。今回はその、いろどりを色事で飾ってくれた閣僚たちの物語だ。

◆菅原一秀経産大臣の「愛人」遍歴

菅原一秀経産大臣

週刊誌で「愛人を練馬区議にした」と騒がれているのが、菅原一秀経産大臣である。菅原一秀氏といえば「保育園落ちた。日本死ね」というブログ問題の国会質疑で「匿名だよ、匿名」とヤジを飛ばしたことで名を知られる。経済産業副大臣時代には「政治経済事情視察」として国会を休み、当時の「愛人」とハワイ旅行に出かけていたことが「週刊文春」に暴露された。

菅原氏はバツイチなので、この「愛人」という呼称がふさわしいかどうかはさておき、今回新たに元秘書との関係が「週刊新潮」に暴かれたのだ。「不倫」の尻ぬぐいに、その元秘書を政治家にしたというのが記事のインパクトだ。その秘書は14年間ものあいだ菅原の政策秘書を務めた50代の女性で、昨年の補欠選挙でみごとに当選。今年の統一地方選挙でも上位当選をはたした。と、ここまで書けば本人を特定出来るのがネット社会の怖さである。

「週刊新潮」の記事では、菅原大臣の事務所での暴虐さも暴かれている。秘書たちは朝6時の街頭演説から、夜の11時までブラック勤務を強制されているという。

クルマの運転でも、ちょっとでもミスをすれば怒鳴られる。「このハゲー!」で政界を去った(選挙で落選)豊田真由子元議員の言動が暴露されたとき、「つぎは菅原だ」と囁かれたのが、これらの秘書に対する言動だったという。

2007年には秘書に党支部へのカンパ(毎月15万円)を強要したとも報じられた(菅原氏はカンパの強制性のみを否定)。高校時代(早稲田実業)に甲子園に出場と選挙公報に書いたものの、じっさいには補欠としてスタンドから観戦していた虚偽記載。

女性への言動の酷さは、何度も週刊誌を騒がせたものだ。前述のハワイ行きの愛人に「女は25歳以下がいい。25歳以上は女じゃない」「子どもを産んだら女じゃない」などモラル・ハラスメントしたと2016年6月に週刊文春が報じている。ということは、区議になった元美人秘書は30代から政策秘書(キャリアと能力が必須)を務めていたのだから、女としては扱ってもらえなかったことになる。

2016年には、舛添要一辞職後の東京都知事選挙に立候補が噂された民進党蓮舫代表代行が「五輪に反対で、『日本人に帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた』と自らのブログに書いている。そのような方を選ぶ都民はいない」と発言するが、後日「蓮舫氏のブログではなく、ネットで流れていた情報だった」と釈明している。あまりにも言動が軽く酷すぎる経産大臣が、国会質問で野党の標的になるのは必至だろう。

◆今井絵理子内閣政務官 あぶない男性遍歴の肉食系女子が政務官に

もうひとり、順送り人事のなかでは小泉進次郎環境相とともに、若手の起用となったのが今井絵理子内閣政務官(参院当選1回・35歳)である。沖縄アクターズスクールの出身で、アイドルグループSPEEDの元メンバー。離婚した175R(イナゴライダー)のSHOGOとの間に一子があるシングルマザーで、2009年には「ベストマザー賞」を受けている。

『週刊新潮』2017年8月3日号

ところが、ベストマザーは政治家転身後に不倫を犯す。2017年7月に「週刊新潮」自民党神戸市議員の橋本健氏との不倫疑惑を報じたのだ。今井氏は疑惑を否定しているが、橋本氏が「おおむね事実」と認め、「私が積極的に交際を迫ろうとした」「私自身の婚姻関係は破綻しているが、認識の甘さで軽率な行為をとってしまったと反省している」とコメントした。

橋本氏は妻子持ちであり、メディアは「略奪不倫」と報じたものだ。息子に聴覚障害があることから、SPEEDの復活をのぞむ声や政治家としての活躍を期待されたものの、愛人とホテルに3泊するという下半身交際をしていたのである。今井氏はホテルに宿泊したことは認めつつ、「深夜まで一緒に(講演)原稿を書いていた」と言い訳をしたという。ちなみに、橋本氏はその後、政務活動費の架空請求が明らかになり、神戸地検に詐欺罪で起訴された。2018年10月に懲役1年6月執行猶予4年の有罪判決が確定している。

だが、今井氏の「不都合な男性関係」はこれが初めてではない。参院選挙の出馬表明直後に一つ屋根の下で同居する事実婚男性がいることが週刊誌に報じられていたのだ。報道を受けて本人も「将来を見据えて交際している男性がいます」と同居男性の存在を認めていた。交際相手は沖縄の同級生で初恋の相手だという。実母とひとり息子と4人で一軒家で暮らしていたのだから、事実婚といっていいいだろう。事実婚相手は今井の所有する車を運転するなど、その姿は家族同然だった。今井の自宅近くにある児童デイサービスで送迎車の運転などして働いていたという

ここまでならば、シングルマザーを支えるかつての初恋相手という美しい話なのだが、それだけで終わらなかった。なんと、今井の事実婚相手に逮捕歴があったのだ。報道によると「彼は1年前に風営法と児童福祉法違反で那覇署に逮捕されている。未成年と知りながら中学生を雇い、客の男性にみだらな行為をさせていた。沖縄にいられなくなり、今井が東京に呼び寄せて仕事先まで紹介したらしい」という。そして事実婚相手は、自民党からの出馬が決まると身辺整理のために「捨てられた」のである。ここまで見てくると、恋多きオンナというよりも肉食系女子といった印象がつよい。

裏では「順送り、お友だち人事」と酷評される今回の改造内閣のおもてむきの評価は「育成内閣」だそうだ。しかし、今井氏起用に限っていえば、安倍総理は育成する素材を見誤っているというべきであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
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続々湧き出す第4次改造安倍政権の新閣僚スキャンダル 政治家と暴力団の切っても切れない関係

反社会勢力、すなわち暴力団と政治家の関係は、集票とカネ(利権)という政治の根幹にかかわるゆえに、本質的に切れないものである。

第4次安倍第2次改造内閣(首相官邸HPより)

「いい人だけ付き合ってるだけじゃあ選挙落ちちゃうんですよね」
これはたびたび引用することになるが、2016年1月に辞任した甘利明社会保障・税一体改革担当大臣の辞任会見での発言である。URへの口利きのあっせん利得として、事務所(秘書)が建設会社から1200万円を受け取っていた責任をとって、辞任した一件だ。この「いい人だけ」の裏側には「悪い人と付き合う」が含意され、そこにはパーティ券の購入や資金援助、ブラックな人脈との付き合いが政治家の本質だと暗喩されている。

それがただの暗喩ではないことを、今回の改造内閣はわれわれに明示している。すでに派閥均衡(ただし反主流派は除外)の順送り人事であるがゆえに、70歳をこえた老害政治家や、とうてい大臣の任にたえない新閣僚を本欄で紹介してきた。9月18日の記事参照

◆経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく

今回は単に能力がないだけではなく、暴力団と密接な付き合いがある新閣僚を紹介することにしよう。しかし、それを単なるスキャンダルとして突き出すつもりはない。反社会勢力というレッテルも暴力団という概念も、警察官僚が作り出した法律用語にすぎず、かならずしも実態を反映していないからだ。

たとえば警察官のなかに圧倒的に性犯罪が多いのは、抑圧された階級組織に特有の病理である。だからといって警察官が全員性犯罪者とはいえないし、警察組織を犯罪組織とみなすこともできない。ヤクザ(任侠)組織も同様に、犯罪を是認している組織は存在しない。建前だけとはいえ、任侠道はまっとうな人の道を説いている。ヤクザに暴力事犯が多いのはケンカのプロという側面からある意味当然だが、それはカタギ(一般市民)に迷惑をかけてはいけないという組織の規律に担保されている。そして経済のグレーな部分を担う経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく。それは政治家とヤクザの関係の本質なのである。

だが大臣となった以上、警察官僚が決めつける反社会勢力との密接交際は許されないことになる。いわば本質と建前のあいだで、政治家は集票力とカネを大臣職と引き換えに返上するシステムになっているのだ。したがって本来はスキャンダルではないはずのものが、閣僚になることでマスコミの標的にされることになる。甘利氏が言うとおり、政治家は矛盾した存在なのだ。そんな新閣僚が、今回の改造内閣でも浮上してきた。

◆田中和徳復興大臣 よく調べてみると、無能だった

「産経新聞」2011年10月22日ウェブ配信から引用しよう。復興大臣に就任した田中和徳氏(70歳)である。※引用の肩書は当時。

田中和徳復興大臣

【自民党の田中和徳(かずのり)元財務副大臣(62)の政治団体が、平成18年に開催した政治資金パーティーで、指定暴力団稲川会系組長が取締役を務める企業にパーティー券を販売し、40万円を受領していたことが21日、産経新聞の調べで分かった。パー券販売は財務副大臣在任中で、暴力団側から政治家側への直接の資金提供が判明するのは極めて異例。暴力団排除条例が全国の自治体で制定されるなど「暴排」の動きが加速する中、国会議員と暴力団側の関係が発覚した。政治資金収支報告書や関係者によると、パー券を購入していたのは東京都品川区に本社を構える企業。設立は昭和62年で、法人登記では「日用品雑貨の販売」「金銭貸付業」などとなっている。捜査関係者によると、同社は暴力団のフロント企業として認定されているという。稲川会系組長は、設立当初は代表取締役を務めていたが、平成4年からは取締役に就任。同社が長年にわたって暴力団の影響下にあり、資金源となっていたことがうかがえる。】(2011年10月22日付け産経新聞

すでに8年前の件でもあり、本来ならば問題視すべきではないことかもしれない。しかし暴力団との結びつきを暴露されるということは、ある意味で無能の証明でもある。そしてこの人物が大臣不適格なのは、あまりにも職務に不勉強であるからだ。9月12日に、田中復興大臣は福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事と会談している。

ところが、この会談では官僚のペーパーを棒読みするばかりだった。記者会見でも避難者の住宅問題などには何も答えられなかった。取材者や県職員からは資質を疑問視する声が上がったという。

「民の声新聞」発行人の鈴木博喜氏は、退出する田中大臣に「自主避難者追い出し訴訟議案」(国家公務人宿舎に入居している避難者5世帯が被告になる)について「福島県が福島県民を訴えるなんて事が良いと思いますか?」と尋ねたが、「いや、これはちょっと私も……」と、しどろもどろの返答なのである。鈴木氏の記事から引用させていただく。

【事務方が「新幹線の時間がありますから」と制する中、筆者は「大臣の所管する話ですよ」、「勉強不足ですよ」と続けた。田中大臣は小さな声で「勉強不足って言われても……」とつぶやきながら会見場を後にした。】(2019年9月13日付け民の声新聞)

勉強不足だと思えば、その場で詳しく聞けばよいだけの話だ。質問の要旨をメモにとって、事務方に調べさせればよいのだ。それすらもできない大臣は、必要ないのではないか。

◆武田良太国家公安委員会委員長 さすがに暴力団からカネをもらったのはマズいだろう

武田良太国家公安委員会

つぎに「朝日新聞」(2019年9月13日付け週刊朝日)から引用しよう。
【2010年11月に公表された、武田氏の政治資金管理団体「武田良太政経研究会」の収支報告書によると、09年4月に開かれた政治資金パーティー代として、東京都のA社が50万円を献金している。また、11年11月公表の収支報告書では、A社の実質的な代表であるI氏が10年4月の政治資金パーティー代として70万円を支払っている。実は、このI氏、警察当局が指定暴力団山口組系の組員ではないかと当局からマークされ、裁判で素性が明かされた人物だった。
 08年12月、東京地裁で開かれた刑事事件の法廷。上場会社E社の創業者のH氏が、暴力団関係者に脅迫され、金銭を要求された恐喝未遂事件の裁判で、被害者として証言に立ったが、本誌が入手した裁判資料によると、I氏についての以下のような記述があった。
弁護士 E社はA社と業務提携なさいましたよね?
H氏   はい
弁護士 Iさんが元暴力団の構成員だというのもご存じですよね?
H氏   知りませんでした。はじめは
弁護士 知った後、あなたはどういう対応を取りましたか?
H氏   契約の解除に動きました
 ここで出てくる、「Iさん」こそ、武田氏に多額の献金をした人物と同一なのだ。】

政治家と暴力団の蜜月は、集票とカネ(利権)にかかわる本質的なものだと、わたしは冒頭で定義した。しかし、大臣は国政の責任を負う存在である。ましてや、警察機構を統括する国家公安委員長が、過去のこととはいえ暴力団から政治資金パーティーの代金を受け取っていたのである。

武田氏は13日の記者会見で「個別の報道には答えを差し控えたいが、政治資金は法令に基づき適切に処理されている」と説明した。もはや論評は不要であろう。警察庁を所轄する大臣が、適切に処理されていれば暴力団から献金を受けても良いと明言したのだ。

◆組長と仲良く写真を撮っていた竹本直一IT担当大臣 

最後は本欄ですでに、ハンコ文化を大切にする新IT担当大臣として紹介した竹本直一氏(78歳)である。同じく「朝日新聞」からだ。

山口組幹部だった男性と竹本直一氏(2018年8月撮影)

【閣僚名簿で「グレーな交友」を疑われたのが、科学技術担当相に起用された衆院当選8回の竹本直一氏(78)。SNSに、18年8月、花火を見物している竹本氏と記念写真に一緒に写っている角刈りの男性の姿がある。指定暴力団山口組系組幹部だったX氏である。同年3月に、竹本氏の後援会が開催した新年賀詞交歓会のパーティーで、X氏と岸田氏が親しそうに写真に納まっている写真が、写真週刊誌「フライデー」にも掲載された。
「X氏は長く幹部である組の顧問を最近までやっていたようだ。昔から、資金力豊富だと有名だった。岸田氏や竹本氏との写真は、箔(はく)をつけるために撮ったのでしょうね」(捜査関係者)そして、宏池会所属のある議員はこう話す。
「(フライデーに写真が出た時から)竹本氏は相手が暴力団関係者であることがわかっていたはず。岸田会長も、あの報道には激怒していましたよ。なぜ、竹本氏はSNSの写真を削除させなかったのか? こんなわきの甘さでは、大臣が長く務まるとは思えないですね」(2019年9月13日 週刊朝日)】

よくわかった。この人(IT政策担当大臣)はハンコをこよなく愛しているが、パソコンはたぶん自分で使えないのだろう。ホームページが「なぜかロックされている」のは既報のとおり、SNSも自分で管理できないから暴力団組長との記念写真を削除できなかったのであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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安倍総理が小泉進次郎を環境相に迎えた本当の理由は何か?

小泉進次郎の環境相兼原子力防災担当相への就任。それを仕掛けたのは、菅義偉および田崎史郎だった。月刊「文藝春秋」9月号の「令和の日本政治を語ろう」というキャッチで、小泉進次郎と菅義偉の初対談が12頁にわたって掲載された。


◎[参考動画]環境相に小泉進次郎氏 第4次安倍再改造内閣が発足(共同通信2019/9/11公開)

◆進次郎を誘った菅官房長官の狙いは明らかだ

その中で菅氏は「進次郎という政治家をずっと見ていて感じるのが、何かをやろうという意思を常に持っているというところ」さらに「改憲は自民党の党是です」と迫ると、進次郎氏も「改憲にはもちろん賛成です」と応じる。田崎氏が「九月には内閣改造、自民党役員人事が控えています。進次郎さんはもう閣僚になっていい?」と振れば、菅氏は「私はいいと思います」と言明している。この記事は小泉進次郎を閣僚に登用する宣言だったのだ。

そして滝川クリステルとの結婚報告を、首相官邸で行なうという政治の私物化を堂々とマスコミに披露した。マスコミもそれを批判するどころか、まるで芸能人扱いだった。

ご存じのとおり小泉進次郎は無派閥で、どちらかといえば石破茂に近いとされてきた。というのも自民党農林部会で活動し、内閣府政務官として農業および地方創生で石破茂の活動を補佐してきた。のみならず、安倍総理と石破氏が総裁を争った党内選挙では、公然と石破氏への投票を明らかにしてきたからだ。ナショナリズムと個人的感情、そして独裁的な手法で政治を切りまわす安倍総理に、小泉進次郎も危険なものを感じていたからにほかならない。そして父純一郎の反原発政策を、基本的には引き継いでいるとされる。

進次郎を誘った菅官房長官の狙いは明らかだ。参院選挙で与党改憲勢力が3分の1を割り込み、自民党も議席を減らしている。消費税増税でさらに景気が冷え込み、アジア外交の行き詰まりから、安倍政権が死に体になるのは目に見えている。そこで話題づくりのために、国民的に人気のある小泉進次郎の閣僚起用ということになったわけだが、狙いはそれだけではない。あらゆる政治家は、ナンバーツーの存在を許さない。独裁的な政治家であればあるほど、政敵になりそうな政治家を潰しにかかるのだ。これまで一匹狼的に、いや孤高の立場から政治をコメントし、国民がその言動を注目している小泉進次郎人気を取り込み、しかし政治的な試練を与えることで「育成する」と称しながら、そのじつ潰しにかかっているのが菅官房長官および安倍総理の本当の思惑なのだ。

◆意地悪な人事だった

たとえばアメーバニュースの座談会で、ジャーナリストの堀潤氏は「(小泉氏の入閣が)意地悪な人事だった」と述べている「2020年にはオリンピックがあり、韓国もそうだが諸外国から日本の原発に関する注目度が高まっていく。政府は『アンダー・コントロール』と言っているが、その時に差配を振るうのが小泉さんだ。加えて、以前に比べて環境に対するブランド力は上がっている。その2点を踏まえて『やれるもんならやってみな』という思惑も見え隠れする」と言うのである。

いっぽうで、元日経新聞記者の鈴木涼美氏は「首相候補といわれている小泉さんを無傷で置いておくために環境大臣にしたのでは」と指摘した。「環境省は常駐の記者がいないくらいニュースに乏しいところだった。ニュースにならないということは安全ということだ」という。

ネットニュースのスマートフラッシュの記事によれば、進次郎氏を長年取材する政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、こう指摘する。

「安倍(晋三)首相が、進次郎氏に環境相を打診したのには、“嫁いびり” というか、試練を与え、政権批判を封じ込めるという意図がある。父・純一郎氏は原発に反対。その整合性は取れるのでしょうか」と。父の小泉純一郎氏は「(原発の廃止に)大いに期待していると」記者会見で語気をつよめた。


◎[参考動画]「自然エネで発展できる国に」息子・進次郎に要望(ANNnewsCH 2019/9/15公開)

◆嫁いびりという見方も

初出張は、前任者の“お詫び行脚”だった。小泉進次郎氏は、就任翌日(9月12日)に福島県を訪問している。前任の原田義昭衆院議員が、福島第一原発の汚染水について、「海洋放出しかない」と発言したことを謝罪したのだ。

「この発言によって、お怒りになった方、またたいへん苦しい思いをされた方にまず会って、自分なりの気持ちをお伝えしたいと思った」というものだ。

原田氏の発言については、科学的な所見をふまえたものという評価もある(高橋洋一嘉悦大学教授・現代ビジネス)。高橋教授によれば、被災者に寄り添うだけでは汚染水問題解決しないということになる。

「環境相は、いまや発信力だけではなく、調整力や結果も問われる難しいポストになってしまった。大臣になって “逃げ” の発言が多くなれば、失望が広がりかねません」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏、スマートフラッシュ)という見方もある。そして厳しい意見もある。

「前任の原田氏が、あえて批判の的になることを覚悟して『海洋放出』というボールを投げた。ところが、進次郎氏はじっくり考えずに動いた。世界の事例から考えても、処理水は希釈し、海洋投棄しても何ら問題はない。進次郎氏はその可能性をつぶしたのではないか。進次郎氏は、自らの発信力を『風評被害払拭』に向けるべきだ。寄り添っているフリだけ巧みにしているようでは、今後が心許ない」(ジャーナリストの有本香氏、夕刊フジ「以読制毒」)。これで安倍政権が、単に小泉人気を取り込んだだけではなく、閣僚人事が熾烈な「政局」であることを見ておく必要があるだろう。

◆よく似ている安倍総理と進次郎氏

それにしても、安倍総理と小泉進次郎氏はよく似ている。国民への好感度は、明快なしゃべり方、演説の能力によるものだ。演説の能力とは、同時に質問をかわして自分勝手な演説でそれを答弁に代える詭弁的な能力でもある。言葉の軽さと言い換えてもいいだろう。

難しいとされた日朝交渉に、当時官房副長官として登場した安倍氏は、自民党のプリンスとして国民的な期待感のなかで総理まで登りつめた。ちょうど20年前の安倍氏と、現在の小泉氏の姿はかさなって見える。政治家になる前史からたどってみたい。

その人の学歴を云々するのが、やや下品な批評であることを承知で解説しておくべきであろう。ふたりとも出身校は一流とはいえない。

安倍晋三氏は小学校から大学まで三菱財閥系の成蹊学園で、東大や慶応をめざした様子はない。東大法学部からキャリア組で警視庁入りし、のちに警察庁の審議官までのぼりつめた超エリートの平沢勝栄が家庭教師についても、晋三氏はお坊ちゃんが行く一貫校卒だったのから、その学力は推して知るべし。しかし、キャリアを積むためにアメリカに語学留学し、語学学校をへて南カリフォルニア大学に留学。神戸製鋼に入社し、ニューヨーク事務所、東京本社でビジネスキャリアを積んだ。南カリフォルニア大学はスポーツで有名だが、アメリカの最難関校とされている名門だ。その後、外務大臣を務めていた父晋太郎氏の秘書官になる。

小泉進次郎氏も、小学校から関東学院である。関東学院大学といえば、一時ラグビー部(春口監督)が大学選手権を連覇するなどの有名校(のちに大麻栽培の生活事故で凋落)だが、学力的にはトホホである。かつては赤軍派の拠点校として有名だった。東大闘争の安田講堂死守戦では、社学同の籠城部隊の主力だったという。横須賀にちかい六浦キャンパスは環境がいいといえばいいが、横浜から遠すぎる。小泉氏も安倍氏と同様に、国内でのトホホな学歴を、アイビーリーグの名門コロンビア大学に留学することで克服した。その後、ロンドンタビストック人間関係研究所配下の戦略国際問題研究所非常勤研究員をへて、父純一郎氏の私設秘書を務める。

◆安倍・小泉両家に共通する選挙基盤をささえてきた「黒歴史」

だが、ふたりが似ているのは、学歴やその後のキャリアアップだけではない。安倍・小泉両家ともに、反社会勢力との密接な関係で選挙地盤を築いてきた、隠された歴史があるのだ。

小泉家においては、横須賀一家がその選挙基盤をささえてきた「黒歴史」がある。横須賀一家とは稲川会の中核組織であり、現在も八代目の金澤伸幸が会長補佐を務めている名門だ。小泉純一郎を支援していたのは五代目にあたる石井隆匡、すなわち二代目稲川会会長、その人である。石井会長は竹下登にたいする皇民党の「褒め殺し」を止めたことで知られる。北祥産業というフロント企業を経営し、政商として自民党を操った。

三里塚闘争の「話合い」も北小産業で行なわれた。その石井会長の子分に浜田幸一元衆院議員、事実上の兄弟分に金丸信元自民党副総裁がいる。石井会長は金丸信と竹下登に「裏総理」と呼ばれ、赤坂の東急ホテルで会合するときには、若き日の小沢一郎がボディガードよろしくラウンジの入り口に立っていたという。

いっぽう、安倍家も小泉家におとらずヤクザと親しい歴史を持っている。地元の合田一家とは長らく、選挙協力の関係にあったという(地元関係者)。そして安倍晋三自身が、やはり対立陣営への選挙妨害などで特別危険指定暴力団の工藤會と密接交際をかさねていたのは、昨年8月の本欄および「誰も書かなかったヤクザのタブー」(タケナカシゲル著、鹿砦社ライブラリー)にくわしい。

かような相似性を持っているがゆえに、安倍総理の側からは小泉進次郎を手玉に取るのはたやすいことであろう。進次郎氏のほうもまた、安倍総理の成功に自分をかさねて政治家としてのキャリアアップの図を描き、シンパであった石破氏を見限ったのであろう。今回の入閣がキャリアアップにつながるのか、それとも安倍総理に潰されるのか、最大の興味をもって見守りたいものだ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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タケナカシゲル『誰も書けなかったヤクザのタブー』
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奇人変人総集合の第4次安倍改造内閣で国民が払う重いツケ

第4次安倍改造内閣の閣僚が酷すぎる。誰が大臣になっても政治は変わらないというのは一つの真理だが、失政の多くは閣僚個人を通じて行われるものであって、そのツケはすべて国民が背負い込むことになる。どれくらい酷い政治家ばかりなのか。紹介をかねて、その言動をあばいていこう。

◆竹本直一特命担当大臣(78歳)──このIT大臣はパソコン使えるのか?

竹本直一内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)

元サイバーセキュリティ担当大臣で「PCを使ったことがない」「オリンピック憲章は知らない」「パラピック(パラリンピックのこと)」と国民を驚かせたのは桜田義孝(五輪担当)だが、所信表明に近い改造後の発言は、その大臣の資質を自己暴露するものだ。今回、IT政策担当大臣に抜擢されたのは、竹本直一氏(78歳)である。78歳と高齢なのは、内閣が派閥均衡(ただし主流派のみで、石破派など反主流派は排除)と順送りの起用の結果だ。竹本氏も政務官や副大臣を歴任し、今回晴れて大臣就任となったわけだ。IT担当相のほか、科学技術政策担当、宇宙政策担当、クールジャパン戦略担当、知財戦略担当の特命担当大臣として初入閣である。

ところが、いやある意味で当然というべきか、早々からトンデモ事態が明かになって物議をかもしている。なんと、自らのホームページがロックされ閲覧できない状態になっているのだ。ご本人は「なぜロックされているのか、原因はわからない」という。その後、竹本氏は自身の公式ツイッターで、「ドメインを管理している会社からロックがかけられた状態になっており、復旧作業を進めている」などと説明している。

そしてもうひとつ、記者会見で突然「行政手続きのデジタル化と書面に押印する日本古来のハンコ文化の両立を目指す」と言い始めたのだ。役所をはじめとする事務手続きでハンコが必要となる煩雑さに関して、これまでにも議論が沸き起こっていたが、デジタル化を推進するはずの大臣がこんなことを言いはじめたのだ。ハンコ文化は中国・朝鮮から渡ってきたもので、それを「日本古来の」と言いなすのも見識が問われるというものだ。そして問題なのは、竹本氏がハンコ議連の会長であることだ。これは業界の利害をのみ突き出した、利益誘導ではないのか。いや、そもそも桜田元大臣といい、竹本大臣といい、高齢でとてもITに向いていない人材を、最先端技術の要職に登用しなければならないところに、安倍政権の末期的な姿がある。

◆北村誠吾地方創生・規制改革担当大臣──職務をわかっていない老害大臣

北村誠吾地方創生・規制改革担当大臣(同氏HPより)

30年以上にわたって、地元住民(建設地の地権者)が反対している石木ダム(長崎県川棚町)について「誰かが犠牲にならなければならない」と、強制収容を匂わせた大臣もいる。大規模ダムなどという昭和の遺物に執着する、まさに老害といういうしかない。

その人物は72歳という高齢で地方創生・規制改革担当大臣に就任した、北村誠吾氏である。ちなみに、地元住民は治水対策としては水道管の漏水など、生活に直結したものを優先してほしいと訴える。

9月7日にはダムに反対する集会に150人ほどが集まり、「土地の強制収用はさせない」とする宣言文を採択した。宣言文は9日に県知事あてに提出する予定。参加者は集会後、のぼりなどを掲げて市街を練り歩き「ダムは要らない。皆で止めよう」と声を上げた。北村氏は就任会見では「大臣の仕事については、これから勉強していきたい」と、準備ができていないところを自己暴露したが、官邸への呼び出しが当日にならないとわからない組閣の常とはいえ、あまりにも安易な順送り起用とはいえないだろうか。

◆衛藤晟一一億総活躍担当大臣──日本会議と現政権の直接の窓口役

衛藤晟一一億総活躍担当大臣(同氏HPより)

改造政権はポンコツであるとともに、トンデモ極右政権でもある。一億総活躍担当相として入閣した衛藤晟一氏(71歳)がその最右翼といわれている。1947年生まれで、学生時代は三派全学連・全共闘の時代とかさなる。衛藤氏は大分大学で「九州学生自治会連絡協議会」(のちに全国組織)を結成し、打倒全学連運動の先頭に立ったという。生長の家の活動家でもあった。大分市議、県議をへて衆議院議員(現在は参議院)と、官僚出身ではなくベタに党人派としてのキャリアを積んできたわけだが、その極右思想は一貫している。日本会議国会議員懇談会の幹事長をつとめ、日本会議と現政権の直接の窓口役となっている。

「日本会議の生みの親」とも呼ばれる村上正邦元参議院幹事長はインタビューでこう発言している。

「もし安倍さんが日本会議の言い分を尊重しようとしているなら、衛藤晟一を大臣にしているはずですよ。だけど、入閣させてないということは、そういうことですよ。日本会議の象徴は、稲田(朋美・防衛相)じゃない。稲田だとみんな言うが、衛藤ですよ」(「週刊ポスト」2016年9月2日号/小学館)。自衛隊の国防軍化、原発賛成、死刑制度賛成、夫婦別姓反対、女系天皇反対と、極右政治家としての基本政策はもちろん、婚外子の差別を是正する「婚外子の相続分規定改正案」に、自民党の党議拘束に反して賛成票を投じなかった筋金入りの超保守なのである。

◆お友だち起用の萩生田光一文科大臣──安倍氏・加計氏と3人でバーベキュー

衛藤氏よりもさらに極右で、しかも安倍総理にベッタリの役どころを演じると思われるのが、文部科学大臣に就任した萩生田光一氏だ。萩生氏の議員会館事務所には、なんと教育勅語が掲げられているという。

文科相としての起用には伏線がある。それは2013年には自民党の「教科書検定の在り方特別部会」の主査に就任していることだ。同部会は「自虐史観に立つなど、多くの教科書に問題となる記述がある」と教科書会社の社長や編集責任者を呼び出し、南京事件や慰安婦問題、竹島などの領土問題、原発稼働の是非などに関する教科書の記述について聞き取りをおこない、圧力をかけたこともある。

2007年には、日本会議の設立10周年大会にメッセージを送り、「行き過ぎたジェンダーフリー教育、過激な性教育」対策では日本会議の識者の先生方の後押しもいただき、党内でも問題を喚起し、ジェンダーの暴走をくい止め、正しい男女共同参画社会へと路線を変更する事ができました」などと自慢げに報告している。それよりも萩生田氏の最大の問題点は、安倍総理の「お友だち利権」であろう。

第一次安倍政権いらい、安倍総理は仲間内を大事にして、いわば上級国民ともいうべき階層を代表する政治運営に奔走してきた。大企業の法人税の軽減による「経済の活性化」という、およそ消費重視の内需拡大の経済発展ではなく、一部の資本家と上層社会が儲かる仕組みをつくってきた。

羽生田氏と安倍・家計

そしてもうひとつが、お友だち優遇の行動である。羽生田氏は選挙に落ちた「浪人時代」に、加計学園系の千葉科学大学の客員教授に就任しているが、2017年に内閣官房副長官として「教授就任前に加計氏とは付き合いはなかった」と国会答弁している。ところが、2013年ごろの写真として安倍氏・加計氏と3人でバーベキューをしている写真が暴露されたのだ。そこから「嘘つき政治家」と称されるようになったのだ。平気で嘘をつくような人物を、お友だちだからといって教育にたずさわる文部科学大臣にしてもいいのか。

反安倍から官邸での結婚報告と、安倍政権へのすり寄りに転じた小泉進次郎の環境相就任。元SPEEDの今井絵里子が当選一回ながら内閣府政務官に就任するなど、話題に事欠かない第4次改造安倍内閣。長くなりそうなので、この記事は続編を期待してほしい。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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安倍「国益毀損」外交から進次郎・滝クリ結婚異常報道、ジャニーズ、N国、吉本まで、同時多発で権力を撃ち続ける月刊『紙の爆弾』10月号、本日発売!

 
創業50周年 タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』10月号本日発売!

巻頭は「安倍外交の『国益毀損』」(横田一)である。国益というと、国の利害あるいは国家としての損益と解釈しがちだが、国民経済という観点から発されるのが正しい。たとい一時的な他国への譲歩や妥協で、見た目には「国益」を損していると見えても、他国との国際協調によって自国の国民経済が安定・発展すれば、それは「国益」に反しているとはいえない。

これとまったく逆の意味で、安倍政権の対韓外交は、おおきく国益を損なうものと言うしかないのだ。今回、山本太郎の試算では6兆円の経済的な損失(輸出総額)が生じたという。とりわけその目的が、参院選時の政治的パフォーマンスとして、あるいは感情的に行われたものならば、まさに政治の私物化がもたらす、最悪の「国益毀損」である。

安倍外交による損失は経済だけではない。「日本の暴走が韓国GSOMIA破棄を招いた」(高嶋信欣)は、外交的な損失にもかかわらず、ひたすら反韓キャンペーンに走る安倍政権の姿を喝破する。その姿は「感情的民主主義」であると。

◆やはり小泉進次郎がキーマン

今号も政界再編の分析が誌面をうめる。
「与野党それぞれの『地殻変動』進次郎“ポスト安倍”へ、立憲・国民合流の“その先は”」(朝霞唯夫)。
「首相『アンダーコントロール』デマに加担 進次郎・滝クリ結婚マスコミ報道の異常」(浅野健一)。

このうち、浅野氏は滝川クリステルの所属事務所フォニックスに対して、質問状を送っている。小泉進次郎にも取材を申し入れたという。こういう行動力こそ、浅野氏ならではのものだ。その内容は、私的な結婚を官邸に出向いて報告した件である。事前に菅氏をつうじて連絡が行っていたのか? 安倍総理が原発事故を「アンダーコントロール」状態で東京に影響がないと公言したことについて。この件での沈黙には連帯責任が生じる。フランス警察が竹田恆和JOC会長が捜査し辞任した件、である。8月25日現在、両氏からの返答はない。

「『N国』とは何なのか『ワン・イッシュー政党』の素顔」(藤倉善郎)は、同党のネトウヨ的な素顔を暴いている。同党の「私人逮捕」の実態がすさまじい。

インタビューでは、渡辺てる子(れいわ新撰組新人立候補者・シングルマザーで元派遣労働者)を小林蓮実がレポート。このシリーズで、れいわの素顔も明らかになる。つづきが楽しみだ。

◆ジャニーズ圧力問題と吉本“反社”問題

「ジャニーズ『圧力問題』で滝沢秀明に“追い風”」は芸能取材班によるもの。ジャニーズ事務所の子会社の社長である滝沢氏に、相対的にいい環境が生まれているとのこと。吉本騒動も元の鞘に収まりそうな昨今、滝沢氏のうごきに注目だ。
その吉本騒動だが「吉本興業“反社”問題で得をしたのは誰か」(片岡亮)は、問題の本質を「反社」との付き合いとしつつも、吉本興業の6000人いるというタレントの無契約問題に誌面を割いている。フリーランスの弱い立場とともに、スポットライトを当てるべき問題だろう。

◆「元『S』(スパイ)が語る警察『偽造調書作成』の手口」の圧巻!

「元『S』(スパイ)が語る警察『偽造調書作成』の手口」(林克明)が圧巻だ。公安警察が左翼組織にS(情報協力者)工作をするのは、よく知られている。ここで紹介されているのは、生活安全課(覚せい剤や風俗産業などを管轄)の刑事によるS工作だ。おどろくべきことに、覚せい剤の取り締まりで囮捜査を行うことだ。ようするに、犯罪を教唆しているのと同じなのだ。

◆東海第二原発『いばらぎ原発県民投票』で暴かれる原発の玉砕主義

「東海第二原発を問う『いばらぎ原発県民投票』」(島村玄)では、原発の玉砕主義が暴かれている。危険性を無視した稼働延長、採算無視の再稼働である。3月に「県民投票の会」が発足し、14万筆の署名を目標に活動をつづけているという。

◆「遺骨がカネになる? 『残骨灰』をめぐる論点」

「遺骨がカネになる? 『残骨灰』をめぐる論点」(杉田研人)は、ちょっショッキングだ。違背に混ざっている金や銀、パラジウムなどを採取するのが目的で、業者が争奪しているというのだ。死んでもカネの対象にされるとは、人間の業には深いものがある。

◆「公判廷の『手錠・腰縄』は違法である」

司法では朗報だ。「日本司法の人権無視に画期的判決 公判廷の『手錠・腰縄』は違法である」(足立昌勝)。ご存知ない方のために言っておくと、裁判の時は手錠も腰縄も解かれるが、入退廷時に傍聴席から手錠・腰縄を隠してくれないことが争点だったのだ。判決が出るまで、被告といえども推定無罪である。

◆“国旗・国歌”で洗脳する文科省・新たなる臣民教育

「文科省により雁字搦め“国旗・国歌”の洗脳教育」(永野厚男)は、日の丸・君が代教育の現場強要を批判する。前号につづいて、各教科書会社の教科書を悲観検討する。駆け足になったが、議論を呼ぶ内容の記事満載の「紙の爆弾」ぜひお読みください。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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「週刊ポスト」謝罪文 韓国人の半分は憤怒調節困難の精神病だからと「断韓」煽る

まずは謝罪文(「週刊ポスト9月13日号掲載の特集について」「2019.09.02 19:00 NEWポストセブン)からご紹介しよう。

週刊ポスト9月13日号掲載の特集『韓国なんて要らない!』は、混迷する日韓関係について様々な観点からシミュレーションしたものですが、多くのご意見、ご批判をいただきました。なかでも、『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』記事に関しては、韓国で発表・報道された論文を基にしたものとはいえ、誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました。お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります。(『週刊ポスト』編集部)

広告で煽った、特集のタイトルは「『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない」である。そして記事のサブ見出しには「禁断のシミュレーション」「日韓両国のメリット・デメリットを徹底調査」とある。

つまり国交を断ったさいに顕われるメリットとデメリットを、さまざまな面から調査するというものだ。

具体的には「人や物の行き来が多い国同士では、経済的、文化的な損失も生まれることになる。ただ、そうした損失やリスクは、どれほどのものなのか。誠意を持って韓国と付き合おうとする際につきまとう膨大なコストと、ここで一度、冷静に天秤に掛けて比べてみたい。」(本文リードより)というものだ。

『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』と題した記事がつづく。内容は韓国人研究者の論文を紹介しつつ、それに無批判に乗っかることで韓国人は精神病であると断じている。これに対して、小学館で執筆する作家や評論家たちが「断筆宣言」を突きつけることで、上掲の「謝罪文」となったのである。

作家たちの批判を掲げておこう。

「わたし、深沢潮は、週刊ポストにて、作家たちのA to Zという、作家仲間6人でリレーエッセイを執筆しています。しかしながら、このたびの記事が差別扇動であることが見過ごせず、リレーエッセイをお休みすることにしました。すでに原稿を渡してある分については掲載されると思いますが、以降は、深沢潮は、抜けさせていただきます。ほかの執筆陣の皆様には了解を得ています」(深沢潮)。深沢氏は両親が在日韓国人である。

「ポスト見本誌見て唖然とした。持ち回りとはいえ連載持ってるのが恥ずかしい。表紙や新聞広告に酷い見出し踊らせてるけど、日本には韓国人や韓国にルーツある人もいっぱいいるんだよ。子供だっているんだよ。中吊り広告やコンビニでこれ見たらどういう気持ちになると思ってんだよ? ふざけんなよ」「今週の記事は精神疾患当事者への偏見を煽るようなものもあってまじクソオブクソ。てかこれもう立派なヘイトスピーチ、差別扇動だろ」(葉真中顕)。

評論家の内田樹氏は「この雑誌に自分の名前を掲げて文章を寄せた人は、この雑誌が目指す未来の実現に賛同しているとみなされることを覚悟した方がいいです」「というわけで僕は今後小学館の仕事はしないことにしました」とツィートに投稿している。

在日韓国人である作家の柳美里氏も「『週刊ポスト』の『10人に一人は要治療 怒りを抑制できない 韓国人という病理』という見出しは、人種差別と憎悪を煽るヘイトスピーチです。 韓国籍を有するわたし、わたしの家族、親族、10人います。 10人のうち一人は、治療が必要?」「日本で暮らす韓国・朝鮮籍の子どもたち、日本国籍を有しているが朝鮮半島にルーツを持つ人たちが、この新聞広告を目にして何を感じるか、想像してみなかったのだろうか? 想像出来ても、少数だから売れ行きには響かないと考えたのか? 売れれば、いいのか、何をしても」と、怒りを隠さない。

しかし、問題は単なるヘイトではない。出版社が版元の週刊誌とはいえ、報道機関が日韓両国の断行を煽っているのだ。「WiLL」や「正論」など右派オピニオン誌がやるのならまだしも、報道性の高い週刊誌がこれをやったところに問題がある。「断韓」とはすなわち、韓国との国家的な関係を断つことにほかならない。もっと言えば、断行は戦争の前提であり、戦争を煽っているということになるのだ。報道機関が間接的とはいえ、戦争を煽ってしまったのだ。

メディアは政治権力を批判し、言論をもって世論を喚起するところに成立根拠がある。その報道の根本理念を忘れて、安倍政権の偏狭な外交政策に迎合し、政治権力の補完物に成り下がりつつある。これはひとり「週刊ポスト」だけではない。何でもいいから、売れればよいという傾向が強まっている。紙媒体の危機が背景にある。

◆紙媒体の低迷が生む、偏狭なポピュリズム

昨年、LGBTをヘイトクライムした「新潮45」が廃刊になった。かつては中瀬ゆかり編集長のもと、中年・壮年の男性層をターゲットに「読ませる雑誌」「納得させる雑誌」として、一世を風靡したこともあった。わたしも愛読者のひとりだった。ところが、中高年男性へのメッセージのテーマを見失って以降は、極右的な内容なら売れるとばかりに、無内容に右旋回してしまったのだ。その挙句が、「正論」や「諸君」(廃刊)の右派論壇誌に連なる極右的な中身になってしまった。それこれも、紙媒体が売れないからである。

週刊誌では“文春砲”と称される「週刊文春」が、往時の70万部から30万部に低減、「週刊新潮」も横並びだという。「週刊ポスト」とともに“ヘアヌード”で部数を競い合ってきた「週刊現代」は、いまや老人雑誌とでもいうべき惨状を呈している。最新号の目次を引いてみよう。

大人気特集第5弾  病院で死ぬのは、こんなに不幸/大事な遺産を親戚に横取りされない遺言書の「書き方」「書かせ方」/ちゃんとした外国人に聞いた 日本と韓国「どっちが正しい、どっちがまとも?」/消費税10%であなたと日本経済に起きること/飲まなきゃよかった、と後悔することになる薬/死んでからわかる、あなたの値打ち/井上陽水『傘がない』を、英語で何と訳しますか/お元気ですか?田村正和さん 財津一郎さんほか/尾野真千子 撮り下ろし
(8月30日号)

とほほ、である。部数減を「おとなの週刊現代」発行で糊塗するありさまだ。数年前に、やはり「週刊ポスト」とともに「死ぬまでセックス特集」を競い合った勢いもすでに褪せ、死に方や遺書の書き方が特集のメインなのである。ライバル誌だけに「週刊ポスト」も似たようなものだ。

週刊ポスト9月13日号
菅が二階と麻生を蹴落とした!「アベノカジノ」3兆円利権争奪戦
[潜入ルポ]アマゾン絶望倉庫/手術は成功したのに体調も気分もすぐれない…… それ、「術後うつ」「退院うつ」かも

9月6日号
死に至る「しこり」と放っておいて大丈夫な「しこり」の見分け方・あなたも老親も「ボケる前」に済ませておく手続き(23)

8月30日号
“老人ホームGメン”が教える「優れた特養[特別養護老人ホーム]」の選び方&入り方

菅官房長官のカジノ暗躍を暴露するなど、骨っぽいところも見せてはいるが、基本的に老人雑誌の記事である。

この「とほほ」状態の誌面を活性化するには、嫌韓から反韓へ、そして断韓へと最後の一線を踏み越えたのが、まさに今号の「謝罪」なのである。紙媒体への広告出稿が激減し、部数も低減するという危機的な状態のなかで、しかしだからこそ政治権力を批判する骨太なオピニオンを送り出す。かつて総合雑誌と週刊誌がメディアの王者だったことを思い起こし、原点に立ち返ってもらいたいものだ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
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「このままではダメだろう」 日韓問題で石破茂が安倍政権に苦言

安倍政権に忖度するマスコミが文在寅(ムンジェイン)政権を批判するなか、ようやく自民党内部から安倍批判が出てきた。例によって、党内非主流派ながら党員に人気の高い石破茂議員である。

朝日新聞のウェブサイト(9月1日付)から引用しよう。

【自民党の石破茂・元幹事長率いる石破派(水月会)は1日、神奈川県小田原市で会合を開いた。石破氏は記者団の取材に応じ、泥沼化する日韓関係の悪化に触れ、安倍政権の対応ぶりを念頭に、「『しばらくこのままでいくしかないね』という考えがずいぶんと広がっている」と指摘。「地域の平和と安定に決して寄与しない」と述べた】

だれもが「出口がない」と感じている日韓関係である。だれも打開の必要を述べていない中で、政治家としては当然の発言であろう。本欄で何度か指摘したとおり、安倍政権の事実上の禁輸措置に始まった日韓関係の泥沼化は、文政権の崩壊を意図したものである。しかるに、米CIAではあるまいし、安倍政権に韓国の政権を倒す工作力があるわけではない。ただひたすら、頑なに対韓外交を硬直化させるばかりだ。

◆韓国叩きに熱中するメディアの危険性

そんな安倍政権の態度を忖度するマスメディアは、文在寅大統領が法相に就けようとするチョ・ググ氏のスキャンダルを報じることに熱中している。このスキャンダル隠しが韓国政府によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄だと断じる報道もある。いまや、一億総嫌韓とでもいうべき報道がなされている。

問題にされているのは歴史問題なのである。いかに韓国の歴史教育が偏向していようと、史実をねじまげて歴史教育がなされているわけではない。大日本帝国による韓国併合という植民地支配の事実を変えられない以上、わが国は永遠に侵略国であり宗主国なのである。そうであればこそ、わが国は香港におけるイギリスのように、宗主国としてのふるまい、すなわち謝罪と誠意をもって両国関係を築かなければならないのだ。台湾に対しては、結果的にそのようになっているではないか。
さらに石橋氏の語るところを聴こう。安倍総理の口からは、けっして聞かれることのない内容だ。

【「これが(解決のための)考えだと言える人はいないと思う。それほど厳しい、複雑な、難しい状況にある」と説明。「日本と朝鮮半島はずっと関係が悪かったわけではない。長い歴史をみたとき、本当に修復不可能だと、努力を放棄していいんだろうか」と強調した。石破氏自身もこの数カ月、日本と朝鮮半島の歴史について勉強しているといい、「(歴史を)知ったうえで相手と相対するのと、知らないで相対するのはまったく違う」と語った】(前出朝日新聞ウェブサイト

◆歴史認識は「教養」である

歴史認識は立場によって、多面的な評価があって当然である。たとえばスポーツに例えてみよう。日本のスポーツの歴史の中で、野球の盛況は他のスポーツの低迷を招いたといえる。テニス関係者は「野球に人材を取られることで、かつての栄光の時代は終わった」と、イギリスから輸入された時期の全盛期を懐かしむ。

かつて、大学ラグビー全盛時代に見向きもされなかったサッカーは、Jリーグの勃興とともにナンバーワンフットボールの地位を築いた。ラグビー人気の柱だった早明両校の低迷とともに、ラグビー関係者は「サッカーに食われた」と、その惨状を嘆いたものだ。視点を変えることで、歴史の評価は多面的となる。したがって、日韓併合が韓国の近代化をうながしたという評価は、その裏側に他民族による支配・植民地化という、韓国・朝鮮にとっては屈辱の歴史を併せ持っているのである。この歴史観のギャップは、何度かの謝罪では済まない歴史の重みとしてのしかかっているのだ。さらに石破氏のいうところを、ブログから紹介しておこう。

【韓国政府によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄により、日韓関係は問題解決の見込みの全く立たない状態に陥ってしまいましたが、日本にも、韓国にも、「このままでよいはずがない、何とか解決して、かつての小渕恵三総理・金大中大統領時代のような良好な関係を取り戻したい」と思っている人は少なからずいるはずです。
 防衛庁長官在任中、アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)でシンガポールを訪問し、リ・クアンユー首相(当時)と会談した際、親日家の同首相は日星安全保障協力の重要性について語った後、私に「ところで貴大臣は日本がシンガポールを占領した時のことをどれほど知っているか」と尋ねました。歴史の教科書程度の知識しか持っていなかった私に対し、同首相は少し悲しそうな表情で「更に学んでもらいたい」と述べました。意外に思うとともに、自分の不勉強を恥じたことでした】

ようするに、歴史認識というのは「知識」であり「教養」なのである。政治的な言辞を都合よく使い分ける才にばかり長けた、安倍晋三総理に「知識」と「教養」をもとめるほうが無理というものだが、この男の怖いところはその時の感情で政治を動かしてしまうことだ。いまこの瞬間にも危惧されるのは「間違って戦争を始めてしまう怖れ」である。そんな安倍総理よりもはるかに合理的な改憲派で、軍事オタクでタカ派的とすら見られている石破茂氏の、はるかに常識的な歴史認識こそ、自民党の良心といえるのではないだろうか。


◎[参考動画]軍事マニアと呼ばれても「安全保障」にこだわる(朝日新聞社2018/1/4公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

横浜IR誘致計画の背後に菅義偉官房長官 安倍「トランプの腰ぎんちゃく政策」で、横浜が荒廃する

突然、横浜市(林文子市長)がIR(カジノをふくむ統合型リゾート計画)誘致を発表した。林市長は市議会に誘致に関連する約2億6000万円の補正予算案を提出し、2020年代後半の開業を目指す考えだという。IRをめぐっては大阪府、大阪市、和歌山県、長崎県が誘致を進める方針を表明しているが、首都圏では横浜市が初めてだ。

横浜市のIR誘致は、横浜港の山下ふ頭を再開発する計画の中で議論されてきた。そのなかで林文子市長は、この2年あまり一貫して慎重に検討する姿勢を示してきた。知事選挙のときも「カジノは白紙」の公約だった。ところが、ここにきて「積極的に誘致」と、君子豹変したわけだ。その豹変の裏側には何があるのだろうか?

◆港運協会が反対を表明

その日のうちに、横浜港運協会は絶対反対を表明した。藤木幸夫会長は「大きく顔に泥を塗られた。俺一人になっても反対する」「私は命をかけている」「反対のためなら、もうおとなしくはしていない」と記者会見で発言し、絶対反対の意思をしめした。

地元のFMラジオ局の社長や横浜スタジアムの会長を務める藤木氏は、政財界にも顔が広く、“ハマのドン”と呼ばれている人物だ。もともと林市長の後援者でもあり、横浜自民党にも大きな影響力を持っている。その藤木氏が態度を硬化させたことで、林市長が掲げたカジノ構想は早々に大きな壁にぶつかったことになる。市民の間にも治安悪化やギャンブル依存症の増加に対する懸念も根強く、はやくも市民団体が市庁舎に押し掛けるなど、反発が全面化している。

気になるのは日本政府のうごきである。カジノ構想自体は20年以上前から具体的に検討されてきたが、安倍政権になってから本格化した。そしてトランプ政権の登場によって具体化したのだ。そこには、ある人物の暗躍があった。

◆仕掛人は菅官房長官だった

2014年の夏、永田町からほど近いホテル内の日本料理屋で、数人の政界関係者による会合が催されている。その日の座の主役は、2012年12月いらい安倍内閣において官房長官を担い続ける菅義偉氏だった(「週刊新潮」)。

その場にいた政界関係者によれば、雑談の流れの中で「統合型リゾート整備推進法案(カジノ法案)」の話になったという。
「やっぱり、候補地はお台場が有力なんですかね」
という政界関係者の問いに、菅氏は顔色を変えずに応じた。
「お台場はダメだよ。何しろ土地が狭すぎる」
それではどこが適地なのか。沖縄か、大阪か? そんな場の雰囲気を察したように菅氏はこう言ったのだ。
「横浜ならできるんだよ」

この時点において、横浜を候補地としてあげる声がないわけではなかった。しかし、それはごく一部で囁かれているに過ぎず、あくまでダークホースの扱いだった。そんな中で現職の官房長官の口から、自らの地盤でもある「横浜」の二文字が語られたわけだ。

じつは、横浜IR立候補に反対を表明した藤木会長は、菅官房長官の有力な支持者でもあった。自民党神奈川県連の幹部はこう語る。
「(菅氏が政治家となった横浜市議選で)藤木幸夫さんは、“あいつ(菅氏)を勝たせる”と言って相当応援していた。藤木さんはいろんな会社をもっていて、その下に大勢の従業員がいる。そんな彼らは“藤木軍団”と呼ばれていて、選挙の半年前くらいから動いてくれる。菅の最初の選挙の時は藤木さんの側近が入っていたはず。ただ、藤木軍団は選挙事務所には来ず、独自に動く。それを選挙事務所は把握していないし、報告も受けない」

別動隊として動くというのだ。奥ゆかしいのか、それとも独自の力で議員を支配しているのか。いずれにしても、選挙こそ議員の泣きどころであるのを知っているのだ。その意味では、林市長も藤木会長の怒りには圧力を感じることだろう。

市議に当選した後も、菅氏と藤木氏の関係は続いた。ある横浜市議が語る。
「ある時、藤木さんに会食に誘われた。無所属だった私を自民党に入れようとしたようで、会食の席で藤木さんから“信頼できるヤツ”として菅さんを紹介されたんです」
「国会議員になってからも、菅さんは藤木さんに頭が上がらないようだった。携帯に電話がかかってくると、“会長!”と言っていた」(永田町関係者)という。そしてその藤木会長も、菅の横浜カジノ誘致には積極的だったのだ。菅の横浜誘致構想に藤木が賛意をしめすと、マスコミはこぞって「ハマのドンがカジノ誘致にうごく」と報じたものだ。

その藤木会長が、「おれの顔に泥を塗らせたやつがいる。安倍総理の腰ぎんちゃく(菅官房長官)だ。そして安倍総理は、トランプ大統領の腰ぎんちゃくだ」と、真っ向から反旗をひるがえした、いや堂々と正論を述べたのだ。おもて向きは「ギャンブル依存症を勉強すると、たいへんなことになるのがわかった」「港湾労働者たちが、おカネも食べるものもなく、黙って働いて築いてきた場所を、ゴロゴロ(ギャンブル)の場にするなんて、とんでもない」と、林市長の態度の変化に憤っている。じつは、カジノ資本による横浜占拠への危機感、そしてアメリカの日本買いへの危機感が、藤木会長を動かしたといわれている。

◆安倍政権のトランプ追従政策がその根源だ

今回の横浜市の発表に合わせて、アメリカのギャンブル企業(経営者は強力なトランプ支持者)が大阪構想からの撤退と、横浜誘致計画への参入を表明した(発表は同日であった!)。ここにこそ、今回の事態の本質が顕われているといえよう。カジノは賭博であり違法行為であるとか、眠たいことを言っているのではない。今回の計画はアメリカの横浜買いであり、安倍政権のトランプ追随の副産物なのだ。

藤木会長が言うとおり「ギャンブルは五秒で高額な財産をうしないかねない」危険な遊びである。パチンコのように数百円、千円単位で遊ぶものでもない。いや、パチンコですら、ギャンブル依存として街金から多重債務になる依存症患者が出ている。これらギャンブル依存症によって成立する国家財源を、はたして健全といえるだろうか?

仮に誘致が実現すれば、同市の試算ではインバウンドをふくむ訪問者数は年間2000万人を上まわり、区域内での消費額は4500億円以上。さらに建設時に7500億円、運営時には年間6300億円を超える地域経済への波及効果が見込まれ、最大で1200億円の増収が期待できるという。しかしこれは取らぬ狸の皮算用というほかない。たとえばラスベガスのように、アメリカの富と享楽を代表する都市は、きわめて限られた娯楽都市にすぎない。

筆者もマカオやフィリピンのセブ島などのカジノを体験したことはあるが、貧困地域に世界の金持ちを集めるコロニアリズムの残滓である。ベガスには遠く及ばない。横浜の経済規模でも中途半端なものしか出来ないであろう。韓国ではすでに十カ所の海外客向け、1カ所の国民向けのカジノを持っているが、収益は微々たるものだという。ラスベガス級のものを計画すれば、横浜市全体を享楽都市化するしかないだろう。現在の計画では山下埠頭のみだが、みらい地区や山下公園、元町にも近接している。カネをすり減らしたギャンブル依存者たちが、これらファミリーリゾートやカップルの聖地で犯罪をおかすことも考えられないではないのだ。

なお、の3つの枠を競うのは現在、横浜市、和歌山県、大阪府と市、長崎県の4カ所。このほかにも北海道、東京都、千葉市、愛知県などが誘致を検討しているという。林市長は将来の財源のためにカジノを誘致したいという。しかし国の未来、子供たちの将来を、ギャンブルとアメリカに売り渡す愚策こそ、覆えされなければならない。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
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日韓はもはや敵対国関係に どう収拾するつもりだ安倍晋三!

◆安全保障レベルでも手切れの日韓

ついに韓国文政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると宣言した(8月22日)。この措置によって、わが国は対北朝鮮のミサイル情報が得られなくなる可能性がある。日韓は安全保障レベルでも、同盟国・友好国ではなくなったのである。いまや両国の観光産業は疲弊し、民間交流も途絶えがちだ。どうしてこんなことになったのか?

相手が「反日と反共」「容共と反日」の「分断国家」とはいえ、そうであるがゆえに揉めれば泥沼化するのはわかっていたはずだ。張本人は安倍晋三、そのひとである。安倍晋三の脅してみたい「感情」から発した韓国イジメが、いよいよわが国の安全をおびやかすところまでやってきたのだ。この男に国政をまかせたままでいいのだろうか?

もちろん最大の原因は、大統領が代わるたびに前大統領が殺されるか投獄されるという、ひとつの国家のなかに「保守反共」と「容共親北」政権が入れ替わり、反日という国是を統治原理にする韓国に起因するものだ。それはしかし、日帝支配36年の「恨」が生んだ二重の分断国家なのである。いわば大日本帝国の侵略行為がつくった国であり、その国民性なのである。


◎[参考動画]韓国 GSOMIA破棄を発表(ANNnewsCH 2019/8/22公開)

◆「謝罪」をもって、宗主国としての「権威」をしめせ!

たとえば自由をもとめる動乱を余儀なくされている香港の民衆は、ユニオンジャックを掲げて民主化をもとめている。かくあるべきはずの宗主国の「権威」と「正義」が、朝鮮半島においては「反日」エネルギーとしてしか横溢していないのだ。そんな韓国国民の「反日」と「恨」をも了解の上で、日本の民間人たちは「友好関係」を築こうとしてきた。その多くは中高生であり、民間ボランティアである。そしてビジネスマンたちだった。

ところが、わが安倍総理においては韓国の政権交代の展望も政治工作もないまま、事実上の「禁輸措置」をもって経済戦争に突入してしまったのである。落としどころもない、その意味では無策の経済戦争である。たとえば朴槿恵政権時には、二階幹事長が独自の政治外交をして従軍慰安婦問題への「謝罪」を約するなど、まだしもチャンネルが確保されていた。ところが安倍政権には、まったく何もないのだ。


◎[参考動画]河野大臣が談話「見誤った対応 断固抗議」(ANNnewsCH 2019/8/22公開)

◆韓国はふたつの国家である

ソウル発の時事電によると、韓国の調査機関リアルメーターが8月7日に発表した世論調査では、8月24日に期限を迎える日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、延長せずに「破棄すべきだ」との回答が47.7%に達し、反対の39.3%を上回っていたという。

調査によると、文在寅大統領を支える革新系の与党「共に民主党」の支持者のうち、破棄賛成が70.8%、反対15.6%。一方、保守系の最大野党「自由韓国党」支持者では賛成14.6%、反対76.5%で、与野党の支持者の間で延長の是非をめぐる意識のずれが鮮明になっていた。このように韓国はふたつの国家なのである。そうであればこそ、安倍総理は文政権を倒すために今回の「禁輸措置」に踏み切ったのであろう。だが、それを担保するものは何なのか?


◎[参考動画][NEWS IN-DEPTH] Korea withdraws from GSOMIA amid trade tensions with Japan(ARIRANG NEWS 2019/8/22公開)

◆何だって報復手段になるのだ

世耕弘成経産相は22日の閣議後の記者会見で、日本が対韓輸出管理を厳格化したことへの事実上の対抗措置として、韓国政府が日本産食品などの放射性物質の検査強化を発表したことについて、「(日本の措置は安全保障上)国際的に認められた措置であり、他の分野に波及させるのは好ましくない」と述べ、韓国側を批判したという。現在の情勢の下では、ほとんど寝言にしか聞こえないコメントだ。

これほど政治をわかっていない人物が、経産大臣を務めているのだ。小学校の学級会ではあるまいし、このかんの徴用工→禁輸措置(ホワイト国除外)→WTO提訴およびGSOMIA破棄、そして放射税物質の検査強化という、一連の流れが読めないのなら政治家失格である。国家と国家が外交戦を展開しているのに、「それは本題とは違うんだ」とか、そもそも成り立つはずがないではないか。そればかりではない。

◆ふたたび文化鎖国への道

韓国のミスコリア運営本部は8月5日、11月に日本で開かれる国際コンテスト「ミス・インターナショナル世界大会」への不参加を発表している。「日本の『経済報復』に対して全国民が不買運動などを行っている時期に、日本で開かれる大会に参加することはできない」という理由だ。

主催する国際文化協会(東京)によると、世界大会は日本企業の協賛で行われ、韓国代表も毎年参加していた。大会期間中に日本国内の観光ツアーや文化体験なども含まれており、韓国のミスコリア運営本部は「日本文化や日本ブランドの広報役を義務的に行うことになる」ことも不参加の理由に挙げたという。つまり韓国は、ふたたびの文化鎖国に踏み切ろうというのだ。軍事的な手段に至っていないとはいえ、(経済)戦争なのだから何でもする。いまや可能な範囲で、総力戦が始まっているのだ。

「日本外し」の動きはスポーツ分野にも及ぶ。ソウル市は10月に予定する「ソウルマラソン大会」の協賛企業から、スポーツ用品大手ミズノの韓国法人の除外を決定したと発表。市は決定理由を「市民感情を考慮した」などとする。市によると、大会ではミズノが提供する大会記念Tシャツが参加者に配布される予定だったという。このうえ韓国が、本気で東京オリンピックをボイコットしたら、安倍晋三の名は外交をわかっていなかった無能宰相として名をとどめるであろう。


◎[参考動画]South Korea-Japan trade war tensions flare(South China Morning Post 2019/08/21公開)

◆戦争と核武装を廃棄させ、南北統一をリードせよ

左派政権であれ右派政権であれ、韓国人の本音は日本を圧倒したいのだ。そうであれば、核熱戦争を回避する南北統一でわが国を圧倒させてやればいいではないか。それが極東戦争の回避につながり、朝鮮半島の非核化を実現するのであれば、宗主国としての度量をしめすことになるはずだ。

すでに文在寅大統領は「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追い付くことができる」「経済強国として新しい未来を開いていく」と発言している(8月5日)。韓国でも現実離れしているとして真意を疑う見方が強いとはいえ、「日本経済が韓国よりも優位にあるのは経済規模と内需市場だ」「今回のことで平和経済が切実であることを再確認できた」と率直に述べ、いわばわが国を範としながら南北統一を展望しているのだ。宗主国として、手を差し延べればいいではないか。圧倒されればいいではないか。

何の展望もなく、腹立ちまぎれに経済戦争を仕掛けて、その落としどころもわからない。それがわが安倍政権なのだ。この事態を「子どもっぽすぎる」(山本太郎)というのは、至極当然のことである。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
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