◆高速炉と軽水炉との違い

高速炉の燃料が1般の原発の燃料とどう違うのか。軽水炉の燃料から取り出すことができるプルトニウムは、核分裂性すなわち核兵器として使えるプルトニウムは239、241だが、核分裂性ではないプルトニウム238、240、242が3割以上含まれる。言い換えるならば、プルトニウムの純度が悪い。核爆発装置を作ることは出来るし、ナガサキ型原爆を作ることも可能だが、現代ではプルトニウムの核分裂を起爆剤に核融合により威力を発揮する核融合爆弾すなわち水爆が主流だ。

この水爆の起爆剤を作る場合、不純物の多いプルトニウムは不純物の発する中性子により早期爆発を引き起こしたり、中性子を吸収して逆に核爆発威力(収量という)を減衰させたり、発散する放射線が強すぎて周囲の回路や材料を劣化させたり、取扱者を被曝させるなど問題が多い。

しかし高速炉ブランケット燃料から取り出せるプルトニウムは不純物がほとんどない98%程度の純度である。これは原爆開発初期から存在する黒鉛炉と高速炉でしか製造できないので、フランスのラプソディ高速実験炉から取り出したプルトニウムがムルロワ環礁の地下核実験(1996年)に使用されたとき、世界中の核兵器関係者が注目したのである。

この核実験には米国エネルギー省も立ち会ったといわれている。米国が所有しない高純度プルトニウムによる核実験であった。フランスは高速炉から得た兵器級プルトニウムで400発の核兵器を製造したという。

日本が最初に導入した英国製の原発は、東海村で現在廃炉・解体中の東海原発だが、これは黒鉛炉だった。そのため英国と日本との取り決めで、使用済燃料は全量英国に返還し、日本には残されなかった。これは黒鉛炉の燃料から高純度のプルトニウムが生産できるからである。英国は黒鉛炉を使って核兵器開発を進めていたが、日本からのプルトニウムも使っていたといわれている。

核兵器生産に使える原子炉はもう1つ、重水炉がある。これは中性子を減速する材料に重水を使い、水で冷却する構造だが、プルトニウム239の純度を高く保つ運転が可能だ。実際にインドが核兵器用プルトニウムを生産したのはカナダから導入した重水炉からだ。

日本には重水炉も存在した。現在廃炉・解体中の「ふげん」がそうである。「ふげん」の使用済燃料は東海再処理工場で再処理されたが、1般の軽水炉のプルトニウムと混ぜて取り出すことになったため、核兵器級の純度を持つことはなかった。重水炉は「ふげん」しか存在しなかったし、黒鉛炉は東海原発しか存在しなかった。いずれも日米原子力協力協定による原子力開発が進められる過程で、以後は全部米国製軽水炉が採用されることになった。これは日本の核武装を阻止するためである。

これらの共通項は「プルトニウム239の高い純度」である。軽水炉でもまったくできないことはないが、そのためには断続的に運転を停止し頻繁に燃料を交換する必要がある。この燃料交換サイクルがわかれば、燃料から取り出されるプルトニウムの純度が推測できる。北朝鮮の原子炉の運転間隔が米国などの重要な衛星情報になっているのはこれが理由だ。

IAEAが日本の原発を常時監視しているが、その目的も核兵器開発を阻止するためである。そのため原子炉内には常に監視カメラが取り付けられており、運転時も停止時も止められることなく監視し続けている。主に使用済燃料プールの燃料体が計画外で取り出されていないか、あるいは運転間隔が不自然ではないかなどを監視しているとされる(「保障措置上の監視」という)。

◆核兵器開発を止めさせよう

日本の現状は、米国による東アジアの覇権を維持するために、日本にも「応分の負担を求める」として、防衛費を倍増させ、米国の兵器を爆買いさせてきた。これがアジアの緊張を高めていることは紛れもない事実である。

これに加え、日本の核武装の隠れもない姿勢は、核拡散も加速する恐れが出てきている。

北朝鮮が核兵器体系を高度化するためのミサイル実験を繰り返す中で、韓国にも危機感が高まり、プルトニウムを抽出する再処理を志向し始めている。韓国には重水炉もあるので、高純度プルトニウムを生産することも十分可能だ。

日本を筆頭に核なき世界に逆行する現状を転換しなければ、いずれ核軍拡競争がアジアで始まる。

日本が核武装を放棄するには、原子力政策、とりわけ再処理政策を放棄するほかはない。電力需要にまったく寄与しないばかりか、巨額の費用が投じられ、その分、電気代に跳ね返る再処理事業には、巨額の税金も投入されている。

環境を汚染し、核のごみを拡散させるだけの再処理工場を廃止させることから始めよう。

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論
〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関西電力

能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。

地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。南海トラフ巨大地震が起これば、連動して、各地の断層が動くとも考えられます。地震多発国に、原発はあってはなりません。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、原発推進法(「GX束ね法」)の実態化のために、「原発・再エネの最大限活用」を進めるとする第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関電は、本年5月、原子力規制委員会から高浜3、4号機の20年間運転延長の認可を得ました。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。

◆使用済み核燃料の乾式貯蔵が孕む2つの問題

ところで、原発を動かすと使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

ところが、乾式貯蔵には2つの問題があります。一つは、乾式貯蔵に移すことによって出来たプールの空間に、高放射線、高発熱の新しい使用済み核燃料を入れた場合、そのプールが崩壊すれば、大惨事に至ることです。

もう一つは、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場がないことです。関電や政府は、行き場として青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の目の再処理工場完成延期を発表しました。再処理工場が完成する見通しはありませんから、使用済み核燃料は行き場を失ったことになります。危険極まりなく、行き場もない使用済み核燃料の発生源・原発は全廃しなければなりません。

自公政権が、数を頼んで成立させた「原発推進法(GX束ね法)」は、関連法の整備が必要であるため、60年運転に関わる部分などは未だ施行されていません。完全施行は来年6月といわれています。脱原発を求める市民の行動が拡大すれば、骨抜きに出来、実行不能に追い込むことも出来ます。今が私たちの正念場です。目に見え、耳に聞こえる行動に起ちましょう!

※第118回「老朽原発うごかすな!実行委員会」実務担当者会議案内より抜粋転載

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆洋上風力発電をめぐる収賄事件

昨年9月27日、自民党の再生エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長である秋本真利衆議院議員が、洋上風力発電をめぐる収賄容疑で起訴された(自民党を離党)。

すでに贈賄により起訴された「日本風力開発」の塚脇正幸前社長の便宜を図る国会質問の見返りに、前社長から計7,286万円の賄賂を受け取った。

例えば2022年2月17日、秋本議員は国会で公募基準の見直し(運転開始の時期を評価するなど)を求めた。同年10月27日、秋本議員の質問に沿った「新公募基準」が公開されると、その翌日、前社長から1,000万円を受領したという。

このような収賄をめぐる秋本氏の疑惑には、再エネ議連の顧問で秋本氏が「おやじ」と呼んでいた菅義偉前首相、「兄貴」と呼んでいた河野太郎衆議院議員(現デジタル相)、さらに当時、経産相だった萩生田光1氏の関与も疑われる(「赤旗」日曜版2023年8月27日号)。

まず2021年12月24日、秋田県や千葉県の洋上風力発電の公募(いわゆる第1ラウンド)で、三菱商事を中心とする企業連合がすべて落札して「日本風力開発」などは失注した。

これについて菅前首相は入札の報告に来た経産省のエネルギー庁長官・保坂伸氏を長時間にわたり詰問した(前掲「赤旗」)。

また、萩生田元経産相は2022年1月7日、「他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みを検討しようと思っている」と記者会見で発言した。秋本氏の質問(2月17日)以前に入札の「仕組み」見直しを言及しているのである。そして萩生田氏は3月18日、入札の評価基準を見直すため、第2ラウンドの入札の締め切りを延長すると表明した(前掲「赤旗」)。

さらに河野氏は、「新公募基準」の公表について、同日(10月27日)ツイッター(現X)で「秋本真利代議士や柴山昌彦代議士(再エネ議連会長)のファイン・プレー」と賞賛した(前掲「赤旗」)。

秋本氏が事務局長を務める自民党再エネ議連には100名を超える議員が名を連ねているが、これらの議員の動きにも疑いの目を向けなければならない。GX基本方針に群がる企業・政治家2020年9月、菅前首相は所信表明演説で「2050年までに国内の温室効果ガス排出などを実質ゼロにする」と宣言した。そして、政府は昨年2月、 「GX(脱炭素)に関する基本方針」として、今後10年間に150兆円、そのうち再エネ拡大に20兆円を支出する、とした。このような巨額の資金に企業が群がり、その企業から政治家が甘い汁を吸う。

秋本氏は自民党内で原発の再稼働には反対して、「脱炭素」を推進するため、再エネ発電(特に洋上風力発電)普及を目指すべきだと唱えてきた(秋本真利『自民党発!「原発のない国へ」宣言2050年カーボンニュートラル実現に向けて』東京新聞2020年)。「脱原発派」(共産党なども含む)にも根強い「再エネ100%」という主張が秋本氏に活躍の場を与え、収賄につながった。

◆洋上風力発電そのものへの疑問

しかし、洋上風力発電そのものへの疑問をマスコミは取り上げない。また、「脱原発」を唱える人々の反応にも鈍い。例えば大島堅一・龍谷大学教授は次のように述べる。

「洋上風力発電は脱炭素社会を目指す上で主力電源となる可能性を秘めている。(中略)この事件だけをもって普及がストップするのも問題だ。事件と洋上風力発電推進は別物と考えるべきだろう」(2023年9月8日付け京都新聞)

しかし、本当に「事件と洋上風力発電推進は別物」なのか。脱炭素政策の根拠とされるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書については、これまで世界各国の科学者から様々な批判や異論が提起されてきたが、特に注目されるのが2019年に発表された「世界気候宣言──気候危機は存在しない」(以下「宣言」 )である。

シンクタンクのクリンテル(CLINTEL= Climate Intelligence)が集約し、今年1月現在60以上の国・地域の1800名以上の科学者が署名している。

日本でも田中博・元筑波大教授(気象学・大気科学専攻)ら6名が加わっている。

「自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす」 「地球温暖化は自然災害を増大させてはいない」などというものである(近藤邦明HP「World Climate Declaration『世界気候宣言』をどう読むか」)。

昨年8月にはノーベル物理学賞(2022年)を受賞したジョン・F・クラウザー博士もこの宣言に署名したことがインターネット上では話題になった。

しかし「気候危機」を煽る日本のマスメディアはこの「宣言」を全く取り上げない。

「人為的CO2温暖化説」 「気候変動」が疑わしいとすれば、 「脱炭素」政策自体が無意味である。また仮に「脱炭素」が必要だとしても、洋上風力発電については巨大な風車製作、設置工事、バックアップの火力発電の建設(出力変動が激しいため)などを含めれば、CO2(化石燃料)削減になるかも疑わしい。

しかも、洋上という常に潮風に吹かれ、台風という短期的に極めて厳しい負荷のかかる環境下では、劣化が激しく発電コストは著しく上昇することになる(近藤邦明HP「エネルギー問題・脱炭素社会について考える③」)。事実、「福島復興事業」として東京大学や新日鉄などが参加して鳴り物入りで建設した福島県の浮体式洋上風力発電のうち、世界最大級の直径167㍍の風車は2018年十月に撤去が決まった。設備利用率が3%止まりで不具合が頻発したためだという(2019年3月15日付け日本経済新聞)。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋号(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆何の利点もない「核燃料サイクル政策」

使用済燃料再処理・廃炉推進機構によると、日本原燃が建設中の再処理工場の建設費について、約4,000億円増額の約15.1兆円に達した。変動した要因は、新規制基準対応に係る検討、円安やインフレなどの経済指標などの反映、規制への対応や安定操業について追加対策を行ったこと、核燃料税などの税負担の反映などとしている。

また、敷地内に建設中のMOX燃料加工工場についても約200億円増の約2・43兆円となった。6月21日に発表した。

再処理事業は、膨大な放射性廃棄物を生み出す。これがどれほどのものかを知る方法がある。福島第一原発の現状を直視することだ。

現在、福島第一原発では、デブリと呼ばれる放射性廃棄物の取り扱いをめぐり極めて困難な状況が生じている。これをわずか1グラム取り出す計画すら、何年も停滞し続けている。デブリとは溶けた核燃料が制御棒や構造物やコンクリート材と混じり合って生じた高放射性物質の塊で、使用済燃料を再処理して生成される高レベル放射性廃棄物とプルトニウムとウランを混ぜたような存在だ。

デブリの取り扱いができないのだから、再処理工場で事故が起きた際に流出する可能性がある高レベル放射性廃棄物も手に負えないことは自明である。

東海再処理工場では、こうした高レベル放射性廃棄物が液体で372立方メートルも存在し、そのほかガラス固化体も354本貯蔵している。地震や津波などの災害、航空機落下などの事故や軍事攻撃を受けた場合のリスクは巨大だ。毎年数百億円もの規模で維持管理、廃止措置費用がかかっている。

これらは税金でまかなわれている。このような再処理事業を、一体何のために行ってきたのか、そしてさらに巨大な六ヶ所村再処理工場も建設中で、いずれ稼働することになっている。そのために「再処理拠出金(以前は引当金)」が徴収されている。事実上の税金であり、もちろん電気料金に付加されて徴収されている。概ね核燃料1グラム当たり700円程度である。100万キロワット級原発で1基あたり30トンほどの燃料が装荷されているから、単純計算で210億円である。

しかしこの程度の費用で済むとは考えられない。実際には遙かに大きな費用がかかる。再処理工場の稼働率が極めて低いことも考慮するならば、足りない分は税金を使って補填するしかない。

現状では残される廃棄物、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体やそれ以外の高レベル放射性廃棄物である燃料パーツ類などの金属残渣、そのほかにも除染により生じた廃棄物など、高い放射線を出す廃棄物類は、どのように処理・処分するのかも決まっていない。

◆今や隠さなくなった「核武装」のための原子力

原子力開発を巡っては、震災以前までは「平和利用」の名の下で「日本は核武装するとの謂れなき中傷」や「謂れのない国際的な疑惑」といった反論が席巻していた。震災後、原子力開発に急ブレーキがかかったところから、まるで開き直ったかのように政治家などから次々に「原子力をやめてしまったら国防上大きな問題を引き起こす」「潜在的核兵器開発能力が失われる」などと主張するものが現れる。つまり 「疑惑」でも「中傷」でもなく、明確に核武装を志向して実施されてきた核開発が厳然と存在したことを意味する。

開き直ったかのような「核武装オプション論」は、アジア諸国を強烈に刺激する。2013年、韓国では以前からくすぶっていた米国のダブルスタンダードへの反発が顕著になる。日米原子力協定において核武装国以外で唯1認めた「核燃料サイクル政策」についての懸念である。

再処理工場はプルトニウムを取り出すためには欠かせない施設だ。世界中で核兵器国以外で保有している国はない。日本が東海村に東海再処理工場を建設し始めた頃に、ジミー・カーター大統領(当時)が待ったをかけた。日米原子力協定においては核燃料はもとより、軽水炉についても米国から導入し、米国の技術で造られたものである。米国はこれに制限をつけており、平和利用以外の目的で利用しようとしたら差し止める権利を留保している。

事実上、米国の許可がなければ原発の建設も運転も、再処理工場の建設もできない。カーターは東海再処理工場の運転を差し止めようとした。これに猛烈に抵抗したのが日本政府である。様々な条件を受け入れながらも、再処理事業を実現することだけに固執し続けた。結果、1977年から1999年まで運転を続け、合計1140トンの使用済燃料の再処理を行い、その後の六ヶ所再処理工場計画も米国に認めさせている。

韓国は2014年に改訂された米韓原子力協力協定でオバマ大統領に対してウラン濃縮と再処理を認めさせようとした。結果は失敗に終わるが、これは日本の原子力政策に強く影響を受けたものであることは確かだろう。

中核施設は高速炉の再処理工場ここまでは軽水炉、日本で1般的な原発である沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉(合わせて軽水炉という)の燃料再処理について触れてきたが、過去に、そして今も日本が重要視しているのは高速炉の燃料再処理技術である。

現在、廃炉作業中の高速「増殖」原型炉「もんじゅ」は、1995年に発生したナトリウム火災事故に起因し、計画が頓挫したまま震災後の2016年に廃炉が決定した。運転した期間はわずか4ヶ月たらずだった。掛かった費用は本体建設だけで1兆2000億円、今後も約4000億円かけて廃炉にする計画だ。

この高速炉、原子力基本計画上の位置づけは「次世代炉」であり、言い換えるならばプルトニウムを消費しながら生産することが目的の原子炉だ。軽水炉の燃料を再処理して取り出したプルトニウムを高速炉の炉心燃料として装荷し、 周囲に「ブランケット燃料」(毛布のように炉心を覆うことからついた名称)に中性子を照射してプルトニウムを生産する。このプルトニウムをまた高速炉の燃料として使用すれば、1種の「循環」ができることから、核燃料のリサイクルが出来るとしていた。

実際には高速炉燃料のうち、炉心燃料の再処理は極めて困難であり、現実にはブランケット燃料の再処理だけが実用化される見通しだった。そのためにリサイクル燃料試験施設(RETF)という再処理施設を東海村に建設中だ。

RETFは高速炉のブランケット燃料からプルトニウムを取り出す再処理の技術開発を目的に計画され、約817億円を投じて2000年に地上6階、地下2階の建物を造った。しかし「もんじゅ」が廃炉になった今、建物だけが存在し中身である再処理設備は取り付けられていない。

三菱重工業が米国から提供された技術で製造することになっているが、使うあてのないものをさらに巨額の費用を投じて造る理由がないため、がらんどうのまま建物だけが建っている異常な状況である。

もちろん、国は諦めていないから、こうした中途半端な中断状態でも設備建設を続行する計画だ。というのは、ブランケット燃料体は「もんじゅ」だけでなく、茨城県大洗町にある高速増殖実験炉「常陽」にも残されている。これらを再処理することが当面の目的とされている。

「核開発に反対する物理研究者の会」が旧動燃、現在の原子力研究開発機構から1994年に得た情報によると、「大洗にある常陽において同位体純度99.4%の兵器級プルトニウムを22㎏生産し『もんじゅ』において同位体純度97.5%の兵器級プルトニウムを62㎏生産し、合計84㎏の兵器級プルトニウムを動燃は所有している」。

これを再処理してプルトニウムを抽出すれば、ただちに30発以上の核兵器を作ることができる。そしてこれを抽出する施設がRETFである。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆現在の核兵器状況

2024年、米、露、英、仏、中、インド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、およびイスラエルの9カ国は、合計で約1万2,121発の核兵器を保有しており、そのうち9,585発が運用可能と考えられている。

そのうち約3,904発の弾頭が運用部隊に配備されており、約2,100発は高度な運用警戒態勢に置かれているとされる。これは前年度より約100発増加している(ストックホルム国際平和研究所2024イヤーブックより)。

現在は、2009年4月プラハでの演説でバラク・オバマ米大統領(当時)の提唱した 「核なき世界」とは対局的に、冷戦構造の再構築とともに核戦力の拡大が続いている。

◆核開発が止まらないのは核武装のため

結論から述べると、日本で原子力開発とりわけ核燃料サイクル政策を維持し続ける大きな理由は、核武装技術を維持し取得するためである。

政府は原子力を「平和利用」と称し、エネルギー政策に利活用するとしている。しかし電源開発に位置付けるだけならば、核燃料サイクル政策を推進する理由はない。世界中で核燃料サイクルを所有して稼働させているのは米英仏ロシア中国に限られ、それ以外には存在しない。すべて核武装国でありそれらの核兵器開発を維持存続させるために核燃料サイクル(これらの国々にとっては核兵器サイクルに他ならない)を保有している。

原発を導入しようとした時代、1950年代からすでに、日本では核兵器開発に向けた技術開発を推し進める体制を作り上げてきた。

当時は、原子力開発は核兵器開発と同義であり、原子力開発を目指す国は必ず自国の核兵器開発を行う目的で導入した。

世界中でウラン濃縮、高速炉開発(高純度プルトニウム生産に必須)、再処理施設建設が模索され、一部は実現した。しかし核兵器の拡散が世界の平和に対する重大な脅威になるとの考えが主流になり、核拡散防止条約や核兵器開発技術の移転禁止を定めたロンドンガイドラインの制定などを通じて核兵器開発技術の非核国への移転禁止が大きな課題になった。

きっかけの1つが、カナダから重水炉を導入して1974年に核実験を成功させたインドの存在がある。インドは中国の核兵器開発に対抗するために核兵器開発を行い成功させた。その中国は旧ソ連に対抗するために核兵器開発を行った。その中国から技術を導入してパキスタンが核兵器を開発したが、これもインドへの対抗からである。

こうしたドミノ倒しのように、対立国が優位性を保つ、またはギャップを埋めようと核兵器開発を進めることは、核拡散防止条約があっても止められなかった。

4度の中東戦争を通じてイスラエルが核兵器を開発したのは、アラブ諸国への対抗だったが、これを支援したのはフランスと米国である。

そのイスラエルに対抗して核兵器開発を進めているのがイランである。印パ、中ソなども、それぞれが自国の影響力を維持、強化しようとする帝国主義的発想から、同盟関係にある国に秘密裏に核兵器技術を移転していたのである。

核拡散防止条約では、条約発効前に核兵器を保有していた米ソ英仏中に 「核兵器を保有し続ける権利」があるとされ、その後は条約内で核兵器開発はできなくなる。さらに条約に加盟していないインドの核兵器開発に衝撃を受け、ロンドンガイドラインの制定により核兵器転用可能技術の制限が決められた。

しかし日本周辺を見渡せば、米国への対抗姿勢から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核拡散防止条約から脱退して核兵器開発を進め、これに対抗して韓国でも核兵器保有論が高まっている。

「核なき世界」を志向し、ノーベル平和賞をもらったオバマ大統領による 「成果」は、その影響力を失うとともに崩れ去ろうとしている。

次期大統領を狙うドナルド・トランプは、前政権時代にすでに核の拡散も厭わない姿勢を示し、日韓が核武装してもかまわないとの立場だ。米国内や共和党がそうした考えに同調しているとは思わないが、例えば中国や北朝鮮の核の脅威や軍事的脅威を強調し続ければ、対抗手段としての核兵器保有議論は、今以上に無視し得ない影響力を持つことになる。

福島第一原発の事故以来、脱原発の世論が台頭する中でも核兵器を開発するために原子力技術を保有し続けようとする勢力には、絶好の国際状況であることは間違いないであろう。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆原発推進派の暴論

工夫を施して石炭火力発電の二酸化炭素排出量をLNG火力発電並みにし、日本の総発電量の3割以上を石炭火力発電に委ね、残り7割弱をLNG火力発電と水力発電等で賄えば、原発と大規模再エネ発電システムを廃止できると思います。とはいえ、現状、水力発電の発電量を増やすのは困難です。2030年度の日本の総消費電力量が年間1200T~1300TWhくらいになるようであれば、原発と大規模再エネ発電システムを容易に廃止できません。

僕は、そのような場面では、テレビを消せばよいと考えますが、政治家や政府官僚たちは、そのように考えないでしょう。現実に、彼らは、原発を稼働することなくCN(カーボン・ニュートラル)とやらを実現できるとしても、将来のべらぼうな電力需要を想定して、原発の建設と再稼働を推進しています。

2021年9月21日、自民党総裁選の真最中に、山本拓前衆院議員が、文科省国立研究開発法人傘下の低炭素社会戦略センター(以下「LCS」と呼びます)の提案書に、「2050年のIT関連消費電力は、2016年の年間41TWhの4000倍以上、年間17万6200TWhになる」との予想が記載されていると述べ、2050年の電力需要を賄うための具体的計画を示せとの公開質問を、当時の小泉進次郎環境大臣に送り付けました。しかし、[表2]を見ればあきらかですが、2021年度の日本の総発電量は1033TWhで、LCSが論じた17万6200TWhの約170分の1です。LCSの予想は荒唐無稽というしかありません。

[表2]日本の総発電量と発電種別割合(2016年度と2021年度)

僕は、自民党の党員ではないですし、党友でもありません。自民党総裁選の結果など僕にはどうでもよいことです。とはいえ、山本拓前衆院議員の公開質問に、自民党の他の国会議員がどう反応するか、興味がありました。案の定ですが、自民党の国会議員の知的水準は低いですね。2050年のIT関連消費電力量が2021年の日本の総消費電力量の約170倍になるという、LCSの荒唐無稽な予想に疑問を感じた自民党の国会議員は、いなかったように思います。

(小泉進次郎環境大臣は、総裁選で核燃料サイクルからの撤退を表明した河野太郎候補を支持していました。他方、自民党総合エネルギー戦略調査会会長代理を務める山本拓前衆院議員は、原発推進派議員の筆頭で、河野太郎候補を敵視しています。山本拓前衆院議員の公開質問は、総裁選下の河野=小泉陣営に打撃を与えたかもしれません)

LCSは、データセンターの消費電力をとりわけ重視しています。LCSは、調査対象をデータセンターに限定した提案書を別途作成し、開示しています。LCSの別途提案書を読んでみましたが、今からはじめれば、2030年頃までにデータセンターの消費電力を事実上「ゼロ」にできるということを、LCSはまったく知らないですね。『季節』2024年夏・秋号と『季節』2024年冬号、『季節』2024年春号に記載したバイナリー発電は、データセンターの消費電力を事実上「ゼロ」にするアイディアのひとつです。

庶民の領域に、学者や研究者が思い浮かばない、様々なアイディアがあります。僕の、データセンターの消費電力を事実上「ゼロ」にするアイディアは、そのひとつだと思います。庶民の様々なアイディアを寄せ集めれば、様々な環境問題や社会問題を解決できると考えますが、傲慢で頭の悪い政治家たちが庶民のアイディアを受け入れるとは考えにくいですね。政治家や政府官僚にとって、原発の建設と再稼働は政治目的です。彼らは、政治目的を達成するために、「データセンターの消費電力をゼロにできてもPEVの消費電力はゼロにできない」などと言いながら、原発の建設と再稼働を推進するでしょう。

つまるところ、僕たちは、原発反対運動の下で、あるいは環境問題やエネルギー問題を解決することを通して、統治体制、あるいは社会の仕組みをつくり変えることを考えざるをえません。

『季節』2024年夏・秋号の鎌田慧さんと柳田真さんの対談を読んで、公害反対運動は地域闘争になる、全国展開はむずかしい、ということ知りました。とはいえ、おそらく全学連世代や全共闘世代ではないということもあって、僕には「全国」へのこだわりがありません。全国展開がむずかしいのであれば、運動の下で目指す新たな社会の仕組みを「自由自治」にすればよいだけです。

(余談ですが、今の若い人たちは僕に似ています。僕は富山県在住者ですが、若い人たちは、都会に遊びに行くときは、東京や大阪よりソウルやプサン、上海や大連を選ぶ場合が多いですね。そのほうが、交通費が安いですから。言葉の壁は、スマホの自動翻訳機能を使えば何とかなるらしい)

◆LPG(プロパンガス)火力発電の可能性

LPG(プロパンガス)火力発電は、主に企業の自家発電や予備発電で使われています。燃料費が軽油より多少割高なため、ディーゼル発電ほど多用されていないのですが、クリーンな火力発電なので、人口密集地等で使われています。

LPG火力発電には電気出力1000kW以上のものもありますが、電気出力50k~100kW前後のものが多く使われているようです。電気出力50k~100kW前後のコンパクトなLPG火力発電の機材は、値段がさほど高くありません。日本の家庭の電力需要は、1世帯当たり年間1kWhが目安です。能登地方の世帯数は約2万5000世帯なので、電気出力50k~100kW前後のLPG火力発電を能登地方の各地に計300~400台設置すれば、被災された能登地方の人々の生活、そして能登地方の復興に役立つでしょう。

(日本政府や石川県が、能登地方の各地にLPG火力発電を設置しないのはなぜだと思いますね。困ったことに、国会で能登地方にLPG火力発電を設置しろという衆院議員や参院議員が与党にも野党にもいません。日本という国は、右や左の政治家、国家公務員や地方公務員の頭が悪すぎます!)

日本は、かなり深刻な少子高齢化期に突入しています。年齢65歳以上の人口が半数以上の限界集落に小学校はないですし、保育所や病院さえない場合があります。限界集落を抱えている市区町村は、少子高齢化に苦慮しています。LPG火力発電の燃料費=プロパンガス代は、軽油等より少し高い程度で、さほど高額ではありません。しかも、軽油はおおむね半年以内に消費する必要がありますが、プロパンガスは、極論になりますが、半永久的に保管できます。そのため、アメリカや中国のような国土の広い国では、ディーゼル発電よりLPG火力発電を多用しています。

僕は、全国約2万の限界集落に、それぞれ電気出力50k~100kW前後のLPG火力発電を設置して、各世帯に無償で電力を配電すればよいと考えます。お金はあまりかかりません。全国約2万の限界集落が、地域のLPG火力発電で電力を賄うことが、全国各市区町村が自前で電力を賄うことにつながり、それにより電力資本の支配から離脱すれば、「自由自治」が可能になると考えます。ちなみに、LPG火力発電に太陽光発電を組み合わせることができます。バイナリー発電を外付けすることもできます。都会では、銭湯のボイラーに、バイナリー発電を外付けできます(海岸に近い集落の場合、海水をバイナリー発電の冷却水にすればよいでしょう。中山間地域の集落や都会の銭湯の場合、地下水をバイナリー発電の冷却水にすればよい)。(おわり)

◎平宮康広 石炭火力発電の可能性(全3回連載)
〈1〉「脱炭素」よりも「安全性」を重視する、当たり前のエネルギー政策を取り戻すために 
〈2〉温排水問題を解決するバイナリー発電を活用する
〈3〉LPG火力発電等の活用で各自治体が電力資本の支配から離脱し、「自由自治」を獲得する日

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年馬生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

日本原燃は、8月23日、核燃料再処理工場(青森県)の完成目標を2026年度内に変更するとした、27回目の完成延期を表明しました。これを受けて、関西電力(関電)の森望社長は、9月5日、杉本達治福井県知事と面談し、関電の原発でたまり続けている使用済み核燃料の県外搬出に向けた「ロードマップ」(昨年10月発表)を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べました。またも、原発全廃を求める多くの人々の心情を蹂躙する、白々しい詭弁です。

森社長は、美浜町、おおい町、高浜町も訪れ、同様な面談を行っています。関電が倫理のかけらでも持ち合わせる企業であろうとするなら、2021年の約束(下記参照)を完全履行し、直ちに老朽原発を停止するのが当然です

関電は1996年に「使用済み核燃料は福井県外に搬出する」と、当時の福井県知事に約束しました。青森県の再処理工場が稼働すれば、青森県に搬出できると楽観しての約束でした。

しかし、1997年に予定されていた再処理工場の稼働は、延期を重ね、未だに稼働の見通しは立っていません。そのため、関電は「福井県外に中間貯蔵地を探す」という約束の反古を繰り返しています。

2021年、関電は、福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」と約束しましたが、未だに候補地を見出すことはできていません。老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働への福井県知事の承認を得るための空約束でした

切羽詰まった関電は、昨年6月、使用済み燃料の一部(約200トン)を、電気事業連合会が行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出す計画を示し、「県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としました。しかし、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料の5%程度で、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。

さらに、関電は中国電力と結託して、昨年8月、唐突に中間貯蔵地建設のための調査を上関町に申し入れました。原発建設に反対する住民の心情を逆なでにし、希少な瀬戸内海の生態系を破壊し、漁民のなりわいを奪おうとするものです。関電の原発電気を消費したことも作ったこともない上関や森県に、交付金をチラつかせて、中間貯蔵を押し付けることがあってはなりません。

関電は、このように「何の成算もなく空約束し、約束を反古にしても、その口を拭うために小手先の策を弄した詭弁でさらに人々を欺く企業」です

使用済み核燃料の行き場に関して、福井県から説明を求められた関電は、昨年10月10日、「使用済み核燃料に関するロードマップ」を発表しましたが、これによって、関電の使用済み核燃料をめぐる情勢は一転しました。このロードマップで、関電は、再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけていますが、いずれも実現の可能性はない「絵に描いた餅」です。

それでも、関電は「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵への布石をしました。関電の燃料プールは3~6年後に満杯になって、原発を停止せざるを得なくなるため、プールに空きを作ろうとする詭弁です。福井県知事は、わずか3日後にこれを容認しました。「原発の運転継続ありき」の出来レースです。

関電は、本年2月8日、福井県内にある全ての原発の敷地内に使用済み核燃料を一時保管するための「乾式貯蔵施設」を設置する計画に対する了解を求めて、福井県、美浜町、おおい町、高浜町に事前了解願を提出しました。来年の着工を目指すとし、高浜原発で最大32基(使用済み核燃料768体分:2027年の運用予定)、大飯原発で最大23基(同552体:2030年の運用予定)、美浜原発で最大10基(同210体:2030年の運用予定)の計65基(1530体)のキャスクを有する乾式貯蔵施設を計画しています。

この事前了解願に関して、福井県は3月15日、設置に向けて国に審査を申請することを了承し、関電は同日、原子力規制委員会に審査を申請しました。使用済み核燃料の福井県内「乾式貯蔵」を許してはなりません。

何としても、関電と福井県に2021年の約束を履行させ、全ての老朽原発を廃炉に追い込みましょう!

2024年9月6日記

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆石炭火力発電の概要と改良

熱で水を蒸気にし、蒸気でタービンを回し、タービンの回転で発電機を回す発電システムを汽力発電と呼んでいます。原発は汽力発電のひとつで、石炭火力発電も汽力発電のひとつです。石炭火力発電は、亜臨界圧石炭火力発電と、超臨界圧石炭火力発電や超々臨界圧石炭火力発電に二分できます。日本の石炭火力発電の大多数が、超々臨界圧石炭火力発電です。

水は、水温が100℃以上なると蒸気になりますが、高圧下では、沸点が上がります。とはいえ、圧力を上げれば上げるほど、水の沸点が上がる、というわけではありません。具体的な説明は割愛しますが、物理学者が臨界温度と呼ぶ上限があります。水の臨界温度は374℃で、水が臨界温度になる圧力は22.1MPa(22.1Mパスカル)=約218気圧です。

亜臨界圧石炭火力発電で使用するボイラーは400℃、超臨界圧石炭火力発電や超々臨界圧石炭火力発電で使用するボイラーは600℃の高温に耐えます。亜臨界圧石炭火力発電の場合、水蒸気の温度は臨界温度以下で、超臨界圧石炭火力発電や超々臨界圧石炭火力発電の場合、水蒸気の温度は臨界温度以上です。

日本の超々臨界圧石炭火力発電は、24MPa以上の圧力下で水を沸騰させていますが、諸外国では、ボイラーが割安で、水蒸気の空冷が容易な亜臨界圧石炭火力発電が多く、20MPa以下の圧力下で水を沸騰させています。歴史的に、軽水炉型原発は空冷式汽力発電で、亜臨界圧石炭火力発電と同じですね。

軽水炉型原発の原子炉の耐性は1000~1200℃ですが、BWRは20MPa以下の圧力下で水を沸騰させています(もっとも、原子力カルト教団の信徒たちは、わけのわからない研究や実験をして、PWRの1次冷却水の水温を超々臨界圧石炭火力発電の水蒸気並にしようとしているみたいですけど!)。

超々臨界圧石炭火力発電の熱効率は42~44%です。経産省や電力資本にも石炭火力発電を擁護する人たちがいるらしく、彼らは石炭火力発電にガスコンバインドや燃料電池を組み合わせて熱効率を50~55%にしようとしています。

しかし、それくらいのことで、石炭火力発電の割合を減らすかゼロにし、LNG火力発電の割合を増やすという「政治」の流れに歯止めをかけることはできないでしょう。しかし、発電量を減らしてよければ、石炭火力発電の二酸化炭素排出量をLNG火力発電並みにすることはおそらく可能で、やってみる価値があるかもしれません(ちなみに、原発の熱効率は35%前後です)。

超々臨界圧石炭火力発電は、かなり高価な石炭=瀝青炭等を微粉化してボイラーで燃やします。ボイラーの耐性が高いので、微粉化した石炭=微粉炭を多量に燃やし、熱を大きくして水の沸点を上げることができます。超々臨界圧石炭火力発電は、蒸気の温度を臨界温度以上にしてタービンを回します。タービンを回した高温の水蒸気は、冷却水=海水で復水します。

つまり、原発同様、石炭火力発電も海に温排水を放出します。温排水とは別に「排水」も放出します。石炭には、重金属類やフッ素等が混ざっています。石炭を燃やした後、それらを別の水で取り除きます。その後、その別の水=排水を海に放出します。僕なりに調べてみたのですが、石炭火力発電の「排水」をろ過する日本の技術はかなり高度です。

また石炭火力発電は、煙突から多量の煙を放出して大気を汚染しますが、煙からSOxやNOx、その他を取り除く日本の技術も高いです。アメリカやヨーロッパよりかなり高い。日本の石炭火力発電の環境問題は、二酸化炭素排出量と温排水に限定してよいと考えます。

石炭火力発電の温排水でバイナリー発電を行うことができます。バイナリー発電で使用する熱媒体は、代替フロンやペンタン、アンモニア等になると考えますが、温度差はおそらく50~60℃程度です。僕の試算では、バイナリー発電は石炭火力発電の発電量を約1割増やし、温排水問題を解決します。

(バイナリー発電については、『季節』2024年夏・秋号と『季節』2024年冬号、『季節』2024年春号で説明します。関心のある方はご一読ください。ちなみに、1割増は少ないかもしれないですが、バイナリー発電の機材は既存の石炭火力発電に外付けできて、温排水問題も解決します。熱効率50~55%の石炭火力発電を新たに建設するより安くて環境にいいですよ!)

石炭火力発電にバイナリー発電を組み合わせた発電システムの運用経験を十分積み重ねた後、石炭の消費量を減らして石炭火力発電側の発電量を減らし、バイナリー発電側の発電量を増やす方向でシステムを組み直せば、二酸化炭素排出量をLNG火力発電並みにできると考えます。安価な石炭を使い、燃焼速度を遅くして石炭の消費量を削減することもできそうです。燃焼速度が遅ければ遅いほど、二酸化炭素排出量が低減し、またSOx等の排出量も低減します。

(石炭火力発電の発電量とバイナリー発電の発電量をどう調整するかが、課題になりそうですね。とりあえず、発電の総量を2~3割減らして二酸化炭素排出量をLNG火力発電並みにする、でよいのでは、と思いますけど)

ところで、評論家の広瀬隆さんは、たんぽぽ舎での講演で、「プロに任せておきなさい。素人は黙っていなさい」といったようですが、石炭火力発電のプロはバイナリー発電を知りません。彼らは、バイナリー発電をバカにするかもしれません。僕は、素人が大いに発言しなければならない、と考えます(素人の発言に勘違いはあるでしょうけど、玄人の発言にも勘違いがありますよ。素人も玄人も、後で訂正すればよいではないですか。「過ちを改めるに、はばかることなかれ」です)。(つづく)

◎平宮康広 石炭火力発電の可能性(全3回連載)
〈1〉「脱炭素」よりも「安全性」を重視する、当たり前のエネルギー政策を取り戻すために 
〈2〉温排水問題を解決するバイナリー発電を活用する
〈3〉

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年馬生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆はじめに

2016年、パリで開催されたCOP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で、地球の平均気温の上昇幅を1.5℃にするという努力目標が提示あるいは発効され、2020年に菅前首相がCN(カーボン・ニュートラル)なるものを宣言し、2021年にグラスゴーで開催されたCOP26に出席した岸田首相が、帰国後、GX(グリーン・トランスフォーメーション)なるものを言い出します。

そして2023年12月、『季節』2024年夏・秋号で原田弘三さんが詳しく述べておられますが、ドバイで開催されたCOP28で、「世界の原発の設備容量を2050年までに3倍にする」というアメリカの提案に、日本を含む25カ国が賛同しました。

平たく言えば、地球の平均気温の上昇幅を1.5℃にするために、多量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電等を減らして原発を増やすというアメリカの提案に、日本を含む25カ国が賛同し、そして太陽光や風力、地熱等(以下「再エネ」と呼びます)による発電が原発の発電を補填する発電に成り下がりました。

日本では、原発に反対する識者の多くが、再エネによる発電は原発の発電を代替する発電であると考えているように思います。しかし、本年(2024年)から、日本政府は、二酸化炭素排出量の削減を大義名分にして、大規模再エネ発電システムと原発を同列化しています。

『季節』2024年夏・秋号で、大今歩さんが指摘していますが、原子力市民委員会座長の大島堅一さんのような人も含めて、原発に反対する識者の多くが、もはや再エネ発電システムが原発反対の旗印にならないという現実に、目を背けている。識者たちは、勇気を出して、原発反対運動が、場合によっては再エネ発電システムを否定し、石炭火力発電を擁護しなければならない場面がある、そのような難しい運動になってしまった、と認識しなければならないでしょう。

ちなみに、安全性という点では、原発や再エネ発電システムより石炭火力発電のほうが断然優れています。それについては、いくらでも強調できます。本年1月1日に能登半島地震が勃発した場面で、七尾市の石炭火力発電が稼働していて、壊れましたが、僕が知る限り、七尾市の住民に何らかの被害が及んだ場面はありません。

とはいえ、安全性を強調するだけでは、政府や電力資本が推進する原発の建設と再稼働、および大規模再エネ発電システムの建設と闘うことができません。石炭火力発電の弱点を克服するアイディア、そして大規模再エネ発電システムを凌駕するアイディアを出す必要があると考えます。

◆火力発電の二酸化炭素排出量のちがい、および日本の総発電量と発電種別割合

[表1]は、亜臨界圧石炭火力と超々臨界圧石炭火力、LNG火力とガスコンバインドLNG火力、石油火力による発電の1kWhあたりの二酸化炭素排出量をまとめた表です。

[表1]亜臨界圧石炭火力と超々臨界圧石炭火力、LNG火力とガスコンバインドLNG火力、石油火力による発電の1kWhあたりの二酸化炭素排出量

日本政府は、CN(カーボン・ニュートラル)とやらを実現するために、原子力と再エネ等による発電量の割合を増やし、石炭火力による発電量の割合を減らす、あるいはゼロにしようとしています。とはいえ、LNG(天然ガス)火力による発電量の割合を減らそうとしていません。むしろ増やそうとしています。

理由は、[表1]を見ればあきらかです。発電量が同じ場合、LNG火力発電の二酸化炭素排出量が石炭火力発電の半分以下なるからです。ちなみに、LPG(プロパンガス)火力発電の二酸化炭素排出量は、LNG火力発電より少ないです。原発や太陽光発電も二酸化炭素を排出するようですが、排出量は火力発電の10~20分の1以下です。

[表2]は、電気事業連合会が開示した、2016年度と2021年度(COP21があった年度とCOP23があった年度)の、日本の総発電量と発電種別割合をまとめた表です。

[表2]日本の総発電量と発電種別割合(2016年度と2021年度)

総発電量が年間1000TWh(1000兆Wh)以上というのは、多すぎますね。日本の総消費電力量は、総発電量の9割未満であると考えますが、私たちの省エネ、あるいは節電努力はまだまだ足りない、という気もします。他方、原子力の割合は2%と7%で、それくらいの発電量でしたら、他の発電システムで補填できます。原発を稼働する必要はありません。

しかし、日本政府と電力資本は、原発の建設と再稼働に邁進しています(多額の電気代と税金を使って!)。そして大規模再エネ発電システムの建設と稼働も推進しています。経産省や電力資本に巣くう原子力カルト教団の信徒たちは、「石炭火力発電のせいで地球が温暖化している、石炭火力発電を減らし、原発と大規模再エネ発電システムを増やさなければならない」などと言います。彼らは、原発と大規模再エネ発電システム、LNG火力発電を増やせば、日本の総発電量の約3割を占める石炭火力発電の発電量をゼロにできるとさえ考えているように思います。(つづく)

◎平宮康広 石炭火力発電の可能性(全3回連載)
〈1〉「脱炭素」よりも「安全性」を重視する、当たり前のエネルギー政策を取り戻すために

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年馬生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

〈Ⅲ〉「脱炭素」を名目に原発再稼働

これまでみたように「脱炭素」の切札として主力電源化を目指す太陽光発電など再エネ発電は不安定(水力発電などは除く)であり、火力発電の補完が必要で低効率な電力である。

そのため政府や電力会社は「脱炭素」を名目に原発の活用を急ぐ。太陽光など再エネ発電に比べて安定的に電力を供給できるためである。第6次基本計画でも原発は現在総発電量の6%(2019年)を占めるにすぎないのに、これを20~22%と3倍強増やす現行目標を維持している。

◆原発廃絶こそ最も緊急を要する課題

しかし私たちは2011年、福島原発事故を経験した。事故が起きれば周辺の住民は故郷を追われる。使用済み核燃料の処分方法も決まっていない。そして地震列島・日本では次の原発事故が迫っている。原発の即時廃絶こそが最も緊急を要する課題である。しかし原発廃絶の大きな壁になっているのが「脱炭素」である。

前述の通り、野党を含めて「脱炭素」が「挙国一致」の目標となっている。共産党などは老朽火力発電廃絶とともに「原発ゼロ」を掲げ、再エネ発電推進を訴えるが、「脱炭素」のためには未熟で不安定な再エネ発電を補うために原発再稼働や新増設が必要と唱える政府や電力会社の主張を許してしまう。

◆「脱炭素」を名目に補助金

また、原発の経済性が悪化している点を指摘しても「脱炭素」がその根拠を崩してしまう。例えば、大島堅1龍谷大学教授は「安全対策により原子力発電の経済性は悪化し、競争力を失っている」として「国家による原発延命策は許されない」とする(「原発の本当のコストを評価する」『世界』2019年7月号」)。

4月27日、杉本達治福井県知事は高浜・美浜の老朽原発について再稼働を認めた。その背景は政府が4月6日「脱炭素」を名目に40年超原発1基当たり最大215億円を交付することを決定したことである(2021年4月28日付け毎日新聞)。

原発は経済性が失われたても「脱炭素」を口実にした補助金により再稼働や新増設が続く。「CO2説」やそれによる「気候危機」を否定しない限り、再エネ発電とともに原発が必要という政府の主張や補助金による延命策を止められない。

〈Ⅳ〉原発廃絶・縮小社会の実現を

第6次エネルギー基本計画は「2030年度CO2 46%削減」のため、再エネ発電を現在の約2倍、原発を現在の約3倍に発電量を増大しようというものである。

しかし「CO2説」は科学的根拠が曖昧で、「気候危機」はデータの裏付けに乏しい。そして何よりも問題なのはこのような科学的根拠に乏しい「CO2説」に基づいて原発や再エネ発電(主に太陽光や風力)を著しく増やそうという点である。

特に原発は一旦事故を起こしたら取り返しがつかない。地震列島・日本では次の原発事故が迫っている。即時廃止が差し迫った課題である。にもかかわらず、「脱炭素」を名目に政府は再稼働を進める。また、再エネ発電は「自然エネルギー発電」ともいうが、実際には「自然破壊エネルギー」である。その上、不安定かつ非効率でCO2を減らせるかどうかも疑わしい。「脱炭素」を名目に原発や再エネ発電を増やしてはならない。

政府・経産省が「脱炭素」を名目に再エネ発電や原発再稼働を推進するのはデジタル化やEV(電気自動車)の普及に伴う電力需要をまかない、GDPを増大させるためである。「環境破壊」や「資源枯渇」を止めなければならないことに議論の余地はない。

しかし、そのためには再エネ発電や原発再稼働ではなく、電力に過度に依存する社会を見直し、天然ガス、石炭、石油などの使用を徐々に減らして経済成長をマイナスにするしかないのである。そのことは今後」人口減少の著しい日本では十分可能である。

本稿は『NO NUKES voice』(現・季節)30号(2021年12月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。文中での全国の原発に関する記述は、2021年当時の状況であること、あらかじめご了承ください。

◎「脱炭素」その狙いは原発再稼働 ──「第6次エネルギー基本計画」を問う
前編〉原因と結果を取り違えたCO2説
後編〉原発廃絶・縮小社会の実現を http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50965

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/
◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

« 次の記事を読む前の記事を読む »