「まったく……ろくな世の中じゃない」、「野党は情けないし、マスコミは頼りないし」。日本全国で、心あるひとびとが肩を落とす姿と、吐き出す嘆きが聞こえる。無理もないだろう。「合法的外国人奴隷労働法」(改正入管法)が、拙速に強行採決され、準備不足を政府も認める中、来年4月から施行するという。

見ているがいい。非人道的な労働環境で働かされる外国人労働者の激増は、政府や経団連どもがもが、腹黒く得ようとした「安価な労働力」ではなく「非人道的な外国人労働者の扱い」として必ずや社会問題化するだろう。

思いだそうとしたところで、あまりに悪法や、悪政が山積しているので、正直なところ、今年の初め頃、何が起きていたのかを正確に記憶だけでは再生ができない。それほどに散々な日常にあって、「本当のこと」、「真実に依拠した言論」、「権力者や社会的に認められている権威への抗議」をまとまって目にすることができる雑誌が極めて少なくなった。

『NO NUKES voice』 18号は、上記のような憤懣やるかたない言論状況に、どうにもこうにも腹の虫がおさまらない、真っ当な感覚を持つ読者諸氏に向けて、鹿砦社から最大級の「お歳暮」と評しても過言ではないだろう(購入していただく「お歳暮」というのはおかしな話ではあるが)。

 

孫崎 享さん(撮影=編集部)

◆孫崎享さんが語る日本「脱原発」化の条件

『戦後史の正体』で日米関係を中心に戦後の日本史を読み解いた、元外務官僚の孫崎享(うける)さんが外務諜報に長年かかわった経験から〈どうすれば日本は原発を止められるのか〉を語る。ベストセラーとなった『戦後史の正体』が世に出てから、孫崎さんはテレビ、新聞などに頻繁に登場していたが、最近ではその頻度が極端に少なくなっているように思える。孫崎さんの主張が時代遅れになったり、風化したから孫崎さんの登場が減っているのではない。時代やメディアが孫崎さんを「危険視」しているからではないだろうか。そうであれば『NO NUKES voice』 にこそご登場いただこうではないか。

◆小出裕章さんと樋口健二さんは東京五輪とリニア建設に反対する

小出裕章さんと樋口健二さんが同じイベントで、講演、対談なさった記録も「すっきり」読ませてもらえる。怒らない小出さんと、いつも怒っている(失礼!)樋口さん。しかしご両人ともが抱く、危機意識と怒りは年々増すばかりであることが、回りくどくない言葉から伝わるだろう。

樋口健二さんと小出裕章さん(撮影=編集部)

 

中川五郎さん(撮影=編集部)

◆鶴見俊輔の精神を受け継ぐフォークシンガー、中川五郎さん

中川五郎さんは、音楽を武器に「反・脱原発」戦線の先頭でひとびとを鼓舞する、貴重な存在だ。中川さんの楽曲もさることながら、インタビューで直接的な問題意識は原発問題社会問題に立ち向かうときの、普遍的な視点を示唆するものだ(とはいえ、中川さんの演じるライブを聞かれるに勝る迫力はなかろうが)。

◆鎌田慧さん、吉原毅さん、村上達也さん、おしどりマコ・ケンさんらが訴える東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会の熱気

東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会に集った、鎌田慧さん(ルポライター)、吉原毅さん(反自連会長・城南信用金庫顧問)、村上達也さん(東海村前村長)、おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ・ジャーナリスト)の発言は、「本当に東京が住めなくなる可能性が極めて高い」東海第二原発の危険性をそれぞれの立場から、強く訴える。

 

おしどりマコ・ケンさん(撮影=大宮浩平)

◆タブーなき連載陣ますます充実──冤罪被害者・山田悦子さん、行動する思想家・三上治さん、闘う舞踊家・板坂剛さん等々

連載「山田悦子が語る世界」、本号のテーマは「死刑と原発」だ。この夏オウム真理教関連の死刑確定囚13名に死刑が執行された。いまだに「被害者感情」や実体のない「犯罪の抑制効果」にのみ依拠して、「死刑」を存置する日本。この問題についての山田さんの論文には熱が入り、本号と次号で2回に分けての掲載となった。「死刑」を根源から考える貴重なテキストであり、国家や原発との関連が浮かびされてくる。

板坂剛さんの〈悪書追放キャンペーン 第一弾 百田尚樹とケント・ギルバードの「いい加減に目を覚まさんかい、日本人」〉は、板坂流似非文化人斬りが、ますます冴えわたっている。どうしてこんなしょうもない本が売れるのか?不思議な二人。その答えは二人ともが「嘘つき」の腰砕けだからだ。そのことをこれでもか、これでもか、と看破する。面白いぞ! 板坂さん! もっとやれ!

その他、鈴木博喜さんの〈福島県知事選挙”91%信任”の衝撃〉、伊達信夫さんの〈「避難指示」による避難の始まり〉など福島の事故当時、現在の報告が続く。

全国からの運動報告も盛りだくさんだ。

右を向いても、左を向いても「読むに値する雑誌がない」とお嘆きの皆さん!ここに心底「スッキリ」できる清涼剤がありますよ!『紙の爆弾』同様に、この時代他社では、絶対(といっていいだろう)出せない本音満載の『NO NUKES voice』 18号。お買い求めいただいて損はないことを保証いたします。

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

本日12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

2018年最後の『NO NUKES voice』が本日11日に発売される。発刊以来第18号。特集は「二〇一九年・日本〈脱原発〉の条件」だ。

うすらとぼけた、頓珍漢なひとびとは、利権の集積「2020東京五輪」に血眼をあげる、だけでは満足できず、「2025大阪万博」などと、半世紀前の焼きなおしまでに手を染めだした。大阪はその先に「IR」(つまり「カジノ」)誘致を狙っていることを明言し、理性も、将来への配慮も、財政計画といった何もかもが政策判断の「考慮事項」から排除されてしまった。

「将来? そんなことは知らん。儲けるのはいまでしょ! いま!」。どこかの予備校教師がタレントへの転身を果たすきっかけとなった、フレーズを真似るかのように、恥ずかしげもない本音が、誰はばかることなく横行する。「水道民営化」法案まで国会を通過し、いよいよこの島国の住民は、「最後の最後まで搾取される」段階に入ったといえよう。

◆中村敦夫さんから檄文をいただいた!

われわれは、あるいは、われわれの子孫は、「搾りかす」にされるしかないのか……。

そんなことはない! そしてそんなことを認めても、許してもならない!

そういう熱い思いを持った方々に、本号も登場していただいた。紹介の順番が不同だが、本誌への激励のメッセージを俳優であり、作家、かつては国会議員でもあった中村敦夫さんから頂いた。木枯し紋次郎では、「あっしにゃぁ関わりのねぇこってござんす」のきめセリフで、無頼漢を演じた中村さんからの檄文だ。

原爆と原発は、悪意に満ちた死神兄弟のようなもの。
世界の安全を喰い散らし、出張った腹をさらに突き出す。
『NO NUKES voice』よ。死神たちを放置してはならない。
平和を愛する人々の先頭に立ち、
言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ。

 

中村敦夫さんから頂いた『NO NUKES voice』への檄文

過分にして、この上なく有難い激励である。われわれは今号も含め全力で「反・脱原発」の声・言論を集め、編み上げた。しかし時代は、あたかも惰眠を貪っているいるように仮装され、真実のもとに泣くひとびとの声を伝えようとする意志は、ますます希薄になりつつあるようである。

つまり逆風が暴風雨と化し、一見将来に向かっての「展望」など、むなしい響きにしか過ぎない無力感を感じてしまいがちであるが、そうではないのだ。「死神たちを放置してはならない」この原点に返ればまた力が再生してくる。「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」この言葉を待っていた!

2018年は、総体として決して好ましい年ではなかった。語るに値する、勝利や前進があったのかと自問すれば、そうではなかった、と結論付けざるを得ないだろう。畢竟そんなものだ。半世紀以上も地道に「反核」、「反・脱原発」を訴えてきた、先人たちは、みなこのように敗北街道を歩んできた(でも、決して諦めずに)のだ。

大きな地図の上では劣勢でも、局地戦では勝利を続けているひとびとがいる。今号はそういった方々にもご登場いただいた。表紙を飾るミュージシャン、中川五郎さんの躍動する姿は、本誌の表紙としては異例といえるが、期せずして中村敦夫さんの檄文に答えるバランスとなった。

「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」中村さんの要請をこう言い換えよう。

「言論による反撃の矢を尽きることなく死神どもに、われわれは浴びせ続ける!」と。

『NO NUKES voice』第18号は本日発売だ。締まりのない時代に、全編超硬派記事のみで構成する「反・脱原発」雑誌は、携帯カイロよりもあなたの体を熱くするだろう。


『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

以下の文章、主要部分は、『NO NUKES voice』16号に掲載した内容と重複するが、日々「東京五輪」めく日常の異常さに耐え切れないので、お読みになっていない方にも知っていただきたく、ここに再度内容を改め掲載する。

もとより近代オリンピックはスポーツの祭典ではあるが、同時に国威発揚の道具として利用されてきた。さらに「アマチュア規定」(オリンピックにはプロスポーツ選手は参加できない)の撤廃により、1988年のソウル五輪からプロのアスリートが参加するようになり、雪崩打つように商業的な側面が肥大化した。いまや五輪はイベント会社やゼネコン、広告代理店にとっての一大収入源と化している。2020年東京五輪は、安倍や新聞広告がどうほざこうが、明らかに「巨大な商業イベント」である。

現在IOCはスポンサーを「ワールドワイドオリンピックパートナー」、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」の三つのカテゴリーに分けている。「ワールドワイドオリンピックパートナー」は「TOPパートナー(もしくはTOP)」とも呼ばれ、直接IOCと契約をしている企業で、基本一業種一企業とされている。年額数十億円のスポンサー代のほかに、当初契約料(かなりの高額であることが想像されるが、確定的な額は不明)を支払い、世界中でオリンピックのロゴやエンブレムを使用することが許される。ちなみにトヨタは10年で1000億円の契約を結んだと報じられているので、単年度あたり100億円という巨額を投じていることになる。現在下記の13社がTOPである。

コカ・コーラなどはおなじみのロゴだが、念のために社名を紹介しておくと、Atos、Alibaba、Bridgestone、Dow、GE、OMEGA、Panasonic、P&G、SAMSUNG、TOYOTA、Visaだ。かつてはこのなかに「マクドナルド」の名前があったが、世界体な経営不振で撤退したようだ。一業種一企業というが、サムソンとパソニックはともに家電を作っている。

「TOP」と異なり、「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」は開催されるオリンピック組織委員会との契約し、国内に限りロゴやエンブレム、その他イベントの共催や参加が認められる。スポンサー代、使用諸権限とも「ゴールドパートナー」が「オフィシャルパートナー」より上位だ。「ゴールドパートナー」には、

の15社の名前があるが、問題なのは「オフィシャルパートナー」である。

最終列にある「読売新聞」、「朝日新聞」、「NIKKEI」、「毎日新聞」の名前を見落とすわけにはゆかない。全国紙のうち実に四紙が「東京オリンピックオフィシャルパートナー」という呼称の「スポンサー」になっているのだ。産経新聞は広告費を捻出する余裕がなかったのであろうか。いや、

スポンサーの位置づけの中では最下位だが、「オフィシャルサポーター」の中に「北海道新聞」とともに、「産経新聞」の名前が確認できる。つまりすべての全国紙と北海道新聞は公式に東京五輪のスポンサー契約を結んでいるのだ。

わざわざ金を払い、スポンサー契約を結んだイベント(東京五輪)の問題を指摘する記事を書く新聞があるだろうか。批判することができるだろうか。さらには「読売新聞」は「日本テレビ系列」、「朝日新聞」は「テレビ朝日系列」、「毎日新聞」は「TBS系列」、産経新聞は「FNN系列」のテレビ局群が連なる。大手新聞、テレビ局がすべてスポンサーになってしまい、東京五輪に関しての「正確な」情報が得られる保証がどこにもない。そんな状態の中で「東京五輪翼賛報道」が毎日流布されているのである。

東京五輪組織委員会はスポンサー収入の詳細を公表していない。しかし、上記の金額とスポンサー企業数からすれば、東京五輪のスポンサー収入が1000億円を下回ることは、まずないだろう。短絡的ではなるが、日本に関係のない大企業がいくら金を出そうが、それはよしとしよう。しかし日本企業で10億、100億という金を「広告費」の名目で「五輪スポンサー代」に払っている企業は薄汚い。経費で計上すれば法人税課税の対象にならないじゃないか。ちゃんと法人税を納めろ。

その中に全国紙5社と北海道新聞も含まれる「異常事態」は、何度でも強調する必要があろう。東京五輪は、財政潤沢な東京都、日本国で開催されるわけではないのだ。安倍は大好きな海外旅行(外遊というらしい)に出かけるたびに、気前よく数億、数十億、あるいはそれ以上の経済支援や借款を約束して帰ってくるが、日本の財政は破綻寸前だ。それに、東日本大震災、わけても福島第一原発事故はいまだに収束のめどもつかず、「原子力非常事態宣言」は発令されたまま。忘れかかっているが、わたしたちは「非常事態宣言」の中毎日生活している。

人類史上例のない大惨事から、まだ立ち直れていない原発事故現場から250キロの東京で、オリンピックに興じるのは正気の沙汰だろうか。私はどう考えても、根本的に順番が間違っているとしか思えない。緩慢な病魔に侵されているひとびとが確実に増加している現実を隠蔽し、「食べて応援」を連呼し、少しでも危険性に言及すれば「風評被害」と叩きまくる。チェルノブイリ事故の後、日本では放射性物質に汚染した食物の輸入規制を強めた。基準を超えた食物は産地に送り返した。と言ったって、ロシアのキエフ産の農作物などではなく、主としてドイツやイタリアからの輸入品だった。

この差はなんなのだ。どうして庶民は、平然と汚染食品を食っていられるのだ?避難者は、公然と20ミリシーベルト被爆する地域に送り返されるのか?それは全国紙を中心とする報道機関が、こぞって東京五輪のスポンサーになるほど、ジャーナリズムなどという言葉は忘却し、もっぱら営利企業化してしまっているからだ。彼らはもう「事実」や「真実」を伝えてくれる存在ではない。そのことを全国紙すべてが東京五輪のスポンサーになっている現実が物語る。恥ずかしくはないのか? 全国紙の諸君? 戦前・戦中同様、そんなにも権力のお先棒を担ぎたくて、仕方ないのか? 日本人はどこまでいっても救いがたく愚かなのか。

全国紙や大マスコミの社員ではなくとも、個々人が同様の「歪な加担」に乗じていないか、点検が必要なようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

◆民法典施行120年の節目と民法の泰斗、我妻栄

本年2018年は、日本の民法典が1898年(明治31年)に施行されてからちょうど120年の節目に当たる。昨年には長年の懸案であった債権法の大改正も行われ、法曹関係者にとどまらず今は民法が注目されているといえよう。

 

我妻栄=東大名誉教授(1897年4月1日-1973年10月21日)我妻栄記念館HPより

ところで、日本の民法の歴史上、避けて通れない人物の一人が、本日の主人公、我妻栄(わがつま さかえ)である。

我妻は1897年、山形県は米沢の生まれで、旧第一高等学校から東京帝国大学(現東京大学)法学部に進む。高校、大学の同級生にはかの岸信介がおり、岸と我妻は帝大の首席を争った仲であった。後に1960年に岸内閣が新日米安保条約批准を強行した際、岸内閣の退陣を促す文書を公表している。

現在の民法学説の大多数は我妻理論の延長にあるといっても過言ではなく、各種判例に与えた影響も大きい。特に我妻が一粒社より刊行した教科書「民法」(後に勁草書房より復刊)は、コンパクトにまとまりつつ非常に有用であることから「ダットサン民法」(小型だがパワフルであるという意味)と異名をとり、今なお大学の講義や司法試験の教科書として広く使われている。指導した門下にも有泉亨、川島武宜、加藤一郎、星野英一ら優れた研究者を多数輩出している。

そんな我妻の最晩年の仕事が、「原子力損害の賠償に関する法律」いわゆる「原子力賠償法」に関わる仕事であったのだ。

◆我妻栄と原子力賠償法

1955年、原子力基本法が制定され翌1956年にはこれに基づき原子力委員会が設置され、正力松太郎が初代委員長に就任する。日本の原子力開発の始まりである。「悪夢の始まり」と言い換えても良いだろう。1958年、原子力委員会は原子力災害補償専門部会を設置し、この部会長に我妻が就任する。

小柳春一郎は、我妻就任の経緯を次のように分析している。一つは、原子力委員会の委員の一人であった経済学者有沢広巳(東京大学名誉教授)の働きかけがあったことで、もう一つは、企業の無過失責任と国家補償への我妻の関心である。「資本主義、経済発展と法」は我妻の生涯の研究対象であり、このような関心もまたその延長にあったといえる。さておき、在任中の我妻の発言をいくつか拾ってみる。

「国家が責任をとる根拠論は別として,最後は必ずみなければならないのではないか。即ち被害者の泣寝入りは避けなければならない。」

「被害者に泣寝入りさせることはない。私企業に許可するということが定められた以上,そこには,国家が責任を持つということが暗々裡に認められたものと思う。最初から委員会に諮問されたならば,私企業にはやらせるべきではないという結論が出たかも知れない。現実には或る程度規定事実において私企業を保護するように聞こえるのはやむを得ない」(1959年7月、部会内での発言)

このように、我妻はもし原子力事故が起きた場合、事業者の責任を一定に限定しつつ、それを超える分については国が被害者に補償すべきであると考えていた。その考え方は1959年12月12日の原子力委員会宛(当時の委員長は中曽根康弘)への答申にも表れている。

「我妻答申」と呼ばれる同答申は、次のように述べている。

「政府が諸般事情を考慮してわが国においてこれを育成しよう とする政策を決定した以上、万全の措置を講じて損害の発生を防止するに努めるべきことはもちろんであるが、それと同時に万一事故を生じた場合には、 原子力事業者に重い責任を負わせて被害者に十分な補償をえさせて、いやしくも泣き寝入りにさせることのないようにするとともに、原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないように、適当な措置を講ずることが必要である。」としたうえで、

「第一に、原子力事業者は、その事業の経営によって生じた損害については、いわゆる責に帰すべき事由の存在しない場合にも賠償責任を負うべきである」

「第二に、原子力事業を営むにあたっては、一定金額までの供託をするかまたは責任保険契約を締結する等の損害賠償措置を具備することを条件とすべきである。」

「第三に、損害賠償措置によってカバーしえない損害を生じた場合には国家補償をなすべきである。」との答申を出した。

なお、この答申については、大蔵省(当時)が態度を「保留」したことが付記されている。

[参考資料]我妻栄「原子力二法の構想と問題点」(ジュリストNo.236=1961年10月15日)

※上記全文は有斐閣HP下記リンクを参照のこと
http://www.yuhikaku.co.jp/static_files/shinsai/jurist/J0236006.pdf

 
当時の岸内閣は、この「我妻答申」をほぼ踏襲する形で原子力賠償法案を国会に提出したが、翌年の安保闘争によって審議未了に終わり、翌1961年に原子力賠償法は成立した。結果、原子力賠償法は原子力事故の際には企業の過失の有無を問わず無限責任を負わせつつ、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは」責任を免れる(3条1項)という条項が盛り込まれた。

時は流れて現在、原発事故の被害者たちはそれこそ「泣き寝入り」を強いられようとしている。その被害回復は到底なされていないどころか、危険な放射能汚染地域に被害者を「送り返す」ことでごまかされつつある。

また、今なお福島第一原発からは放射能が漏れ出し続け、一向に収束をみる気配がない。今後の原子力行政は、現在の被害者の一刻も早い救済と、将来の原子力事故の確実な防止(そのためには原発の全廃以外の選択肢はあり得ない)を目指すべきである。

これらのことを考える上で、過去の原子力行政、とりわけ関連法制成立過程の検証は必要であろう。

なお、原子力開発という大きなリスクを伴うものについて、我妻もついに答えを見出すことができなかったようで、原子力賠償法に関連する資料を自ら整理し、後進に託して遺していたという。

◎参考文献 小柳春一郎『原子力賠償制度の成立と展開』(2015年、日本評論社刊)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/6917.html

▼丸尾晴彦(まるお・はるひこ)

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

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『NO NUKES voice』vol.17
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被曝・復興・事故収束
安倍五輪政権と〈福島〉の真実

[グラビア]サン・チャイルド/浪江町長選「希望の牧場」吉沢正巳さん抗いの軌跡
(写真=鈴木博喜さん)

[特別寄稿]吉原 毅さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 会長)
広瀬さん、それは誤解です!

[特別寄稿]木村 結さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 事務局次長)
原自連は原発ゼロのために闘います

[追悼]編集部 志の人・納谷正基さんを悼む 

[報告]高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?

[講演]蓮池 透さん(元東京電力社員/元北朝鮮による拉致被害者「家族会」事務局長)
東京電力は原発を運転する資格も余力もない

[講演]菊地洋一さん(元GE技術者)
伝説の原発プラント技術者が語る「私が原発に反対する理由」

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈14〉
東京五輪は二一世紀のインパール作戦である〈2〉

[講演]井戸川克隆さん(元双葉町町長)
西日本の首長は福島から何を学んだか

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
希望の牧場・希望の政治 吉沢正巳さんが浪江町長選で問うたこと

[報告]佐藤幸子さん(福島診療所建設委員会代表)
広島・長崎で考えた〈福島のいのち〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈1〉その始まり

[書評]黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)   
セミの命も短くて……

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマ

[報告]横山茂彦さん(著述業・雑誌編集者)
われわれは三年前に3・11原発事故を「警告」していた!
環境保全をうったえる自転車ツーリング【東京―札幌間】波瀾万丈の顛末

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
『不・正論』9月号を糺す!

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
政府がそんなに強行したけりゃ 
民族自滅の祭典・2020東京国際ウランピックをゼネストで歓迎しようぜ!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
首都圏の原発=東海第二原発の再稼働を止めよう

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
原発事故 次も日本(福島のお寺の張り紙)
二度目の原発大惨事を防ぐ・東海第二を止めるチャンス

《福島》春木正美さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去について・第二弾

《原電》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
日本原電は、社会的倫理の欠落した最低の会社だ!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
核分裂「湯沸し装置」をやめよう
~とうとう東海第二設置許可を認可する規制委、第五次「エネ計」で原発推進する経産省~

《地方自治》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長、杉並区議会議員)
全国自治体議員・市民の連携で安倍政権の原発推進に歯止めを!

《福井》木原壯林さん(「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」)
原発の現状と将来に関わる公開質問状を 高浜町長、おおい町長、美浜町長に提出

《島根》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発3号機の適合性審査申請に対する了解回答は撤回すべきだ!

《伊方》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
二〇一八年九月原発のない未来へ 伊方原発再稼働反対全国集会

《玄海》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会)
原発は止め、放射性廃棄物は人から離し測定して監視し地下に埋めても修復できる体制を

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『言論の飛礫(つぶて)─不屈のコラム』(鎌田慧・同時代社)

『NO NUKES voice』vol.17
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GW4GYDC/

「この人でなければできない」領分や仕事がある。大きな組織ではそういったことはありえない。仮に孫正義が居なくなってもソフトバンクが急にガタガタになることはないし、カルロス・ゴーンが居なくなったって日産は潰れはしない。逆に小さな組織では往々にして「この人でなければ」できない業務がある。町工場の熟練技術技術者は、長い経験によって培われるものであるし、中小企業の経営者が運転資金をどうするかには、人脈や独自の方法に負うところが大きい。

これが「話者」や「物書き」となれば、より「代理」で埋め合わせが効かなくなるのは当然である(もっとも、誰が話しても同じようなコメントしか語らない自・他称「専門家」や「学者」であればいくらでも代替人は見つかるが)。『NO NUKES voice』2号から11回に渡り〈反原発に向けた想いを 次世代に継いでいきたい〉の連載をご担当頂いていた納谷正基さん(高校生進学情報番組『ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)が8月17日にご逝去された。

志の人・納谷正基さんを悼む(『NO NUKES voice』17号より)

『NO NUKES voice』編集長の小島卓をはじめ、編集部、そして鹿砦社代表松岡利康と『紙の爆弾』編集長の中川志大も、納谷さんの訃報には言葉がなかった。『NO NUKES voice』を発刊から通読していただいている読者の方にはわれわれが途方に暮れる理由がご理解頂けよう。納谷さんは40年にわたり高校生への進路指導を中心にラジオ番組のパーソナリティーとしても活躍されてきた方だった。ご伴侶が広島原爆の被爆2世で、若くして亡くなり、それ以降「反核」に対する納谷さんの劇熱は揺らぎのないものとなった。

本誌に寄せて頂く文章は、日ごろから高校生を相手に語り部をなさっている、納谷さんらしく、読みやすいけれども、強烈な意志と情熱と怒りに溢れていた。鹿砦社との縁が出来てから納谷さんは、鹿砦社を破格の扱いで評価していただいていた。『ラジオ・キャンパス』に松岡は一度、中川が出演させていただいた回数は数えきれない。納谷さんは「私の夢は東北6県の全高校の図書館に『紙の爆弾』をおかせることです」とまでラジオで明言して下さったほどだ。鹿砦社は「叩かれる」ことは日常だが、ここまで評価をしてくださる方は極めて少ない。

だからわれわれは落胆しているのか。違う。鹿砦社を評価していただいたから、納谷さんのご逝去に言葉がないのではない。高校生に通じる言葉を持った劇熱の反核・反原発話者を失ったことの重大さに、われわれは、呆然としているのだ。納谷さんの生きざまから紡ぎ出される言葉を、真似ることができる人間はいない。なぜなら納谷さんの人生は、誰もの人生がそうであるように、他者のそれとは違う、といったレベルではなく、比較しうる人物がいない未倒地に、恐れることなく踏み出してゆく「冒険」の連続だったからだ。そしてその「冒険」を成就させる戦略と見識眼、なによりも人間力を納谷さんは持っていた。

優しく怖い人だった。『NO NUKES voice』の中から納谷さんの連載が消える。この喪失感は正直埋めがたい。

◆伊達信夫さんが徹底検証する「東電原発事故避難」

しかし、わたしたちは読者の皆さんにわたしたちが持ちうる力を総結集して、紙面を編集し、毎号途切れず、そして新しい閃きのきっかけを提供する義務を負っていると自覚する。納谷さんのご逝去とたまたま時期が重なったが、本号から新たな連載が2つスタートする。伊達信夫さんの「《徹底検証》東電原発事故避難 これまでと現在」と、山田悦子さんによる「山田悦子が語る世界」だ。

伊達さんは今号本文の中で「本稿の目的は原発事故の原因や経過を明らかにすることが中心ではない(略)。原発事故発生直後に、避難指示がどのように出されたのか確認をしながら、避難はどのように始まったのかを明らかにすることである」と連載の目的を示されている。

事故直後は原発に関する多くの書籍が書店に並んだ。時の経過とともにその数は漸減した。事故そのものは現在も進行中だ。その原因についての論考はこれまでも多くの方々から分析していただいてきたが、伊達さんの「避難」に焦点をおくレポートもまた、貴重な資料となることは間違いない。

伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在(『NO NUKES voice』17号より)

◆山田悦子さんが語る世界──「冤罪被害者」から「法哲学研究者」へ

 

山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマより(『NO NUKES voice』17号より)

山田悦子さんには今号の連載開始に先立ち、既に15号からご登場いただいていた。「甲山事件冤罪被害者」として山田さんは有名だが、わたしは山田さんに「冤罪被害者」との肩書ではなくご本人の許諾が得られれば、「法哲学研究者」と紹介したい(ご本人はこの申し出を辞退されている)。
「山田悦子が語る世界」では、様々な古典文献を引用しながら硬質な論考が展開される。もちろんこのような境地に至らしめた理由として、冤罪事件の被害者としての山田さんの経験が揺るぎないものであることは明らかではあるが、あえて強調すれば同様の冤罪被害を経験したからといって、山田さんのように誰もが思弁を深めるものではない。反・脱原発には多様な視点があっていいだろう。

亡くなった納谷さんの後継者はいない。後継者ではなく、まったく異なる経験と、視点から伊達さんと山田さんが加わってくださり、『NO NUKES voice』は今号も全力で編纂した。読者の皆さんからのご意見、ご指導を期待する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

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『NO NUKES voice』vol.17
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被曝・復興・事故収束
安倍五輪政権と〈福島〉の真実

[グラビア]サン・チャイルド/浪江町長選「希望の牧場」吉沢正巳さん抗いの軌跡
(写真=鈴木博喜さん)

[特別寄稿]吉原 毅さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 会長)
広瀬さん、それは誤解です!

[特別寄稿]木村 結さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 事務局次長)
原自連は原発ゼロのために闘います

[追悼]編集部 志の人・納谷正基さんを悼む 

[報告]高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?

[講演]蓮池 透さん(元東京電力社員/元北朝鮮による拉致被害者「家族会」事務局長)
東京電力は原発を運転する資格も余力もない

[講演]菊地洋一さん(元GE技術者)
伝説の原発プラント技術者が語る「私が原発に反対する理由」

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈14〉
東京五輪は二一世紀のインパール作戦である〈2〉

[講演]井戸川克隆さん(元双葉町町長)
西日本の首長は福島から何を学んだか

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
希望の牧場・希望の政治 吉沢正巳さんが浪江町長選で問うたこと

[報告]佐藤幸子さん(福島診療所建設委員会代表)
広島・長崎で考えた〈福島のいのち〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈1〉その始まり

[書評]黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)   
セミの命も短くて……

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマ

[報告]横山茂彦さん(著述業・雑誌編集者)
われわれは三年前に3・11原発事故を「警告」していた!
環境保全をうったえる自転車ツーリング【東京―札幌間】波瀾万丈の顛末

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
『不・正論』9月号を糺す!

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
政府がそんなに強行したけりゃ 
民族自滅の祭典・2020東京国際ウランピックをゼネストで歓迎しようぜ!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
首都圏の原発=東海第二原発の再稼働を止めよう

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
原発事故 次も日本(福島のお寺の張り紙)
二度目の原発大惨事を防ぐ・東海第二を止めるチャンス

《福島》春木正美さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去について・第二弾

《原電》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
日本原電は、社会的倫理の欠落した最低の会社だ!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
核分裂「湯沸し装置」をやめよう
~とうとう東海第二設置許可を認可する規制委、第五次「エネ計」で原発推進する経産省~

《地方自治》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長、杉並区議会議員)
全国自治体議員・市民の連携で安倍政権の原発推進に歯止めを!

《福井》木原壯林さん(「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」)
原発の現状と将来に関わる公開質問状を 高浜町長、おおい町長、美浜町長に提出

《島根》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発3号機の適合性審査申請に対する了解回答は撤回すべきだ!

《伊方》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
二〇一八年九月原発のない未来へ 伊方原発再稼働反対全国集会

《玄海》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会)
原発は止め、放射性廃棄物は人から離し測定して監視し地下に埋めても修復できる体制を

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『言論の飛礫(つぶて)─不屈のコラム』(鎌田慧・同時代社)

『NO NUKES voice』vol.17
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GW4GYDC/

 

函館市HPより

 

函館市HPより

9月6日北海道を大地震が襲った。295万世帯が停電し、泊原発は緊急停止した。現地の様子を調べようと各自治体のホームページを閲覧していると、函館市のホームページに驚かされる文字があった。

そうだった。函館市は大間原発の建設停止を求めて、前代未聞、市が国や電源開発を提訴し、建設の差し止めを求める訴訟が提起されている。同訴訟の弁護団に加わっている井戸謙一弁護士は「初めてのケースですので、どういう審議になるかわかりませんが、画期的な提訴だと思います」と東京地裁で語ってくれていた。

提訴に至る考え方を説明した工藤壽樹函館市長の説明が、簡潔でわかりやすい。

このような姿勢が、住民の生命財産を守る責任者としては、至極原則的な考え方であろう。しかしながら、多くの都道府県や知町村長は、ごく原則的な判断もできずに、住民を危険に直面させている。

函館市HPより

◆吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬さん、それは誤解です!」

そんな中、本日9月11日、『NO NUKES voice』17号が発売される。「フクシマを忘れることなく多角的に」の編集方針に揺らぎはない。

本号巻頭では前号16号で広瀬隆さんが展開した「原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)」への問題提起に対する吉原毅さん(原自連会長)からの対論的論考「広瀬さん、それは誤解です!」を特別寄稿として掲載させていただいた。メガソーラー等の自然エネルギーへの過度の依拠の危険性を指摘した広瀬隆さんに、城南信用金庫理事長時代から「反原発」に様々な取り組みをしてこられた吉原さんが「誤解を解く」解説を丁寧に展開されている。加えて木村結さん(原自連事務局次長)にも吉原さんの論をさらに補強する論考「原自連は原発ゼロのために闘います」をご寄稿いただいた。

吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬隆さん、それは誤解です!」(『NO NUKES voice』17号より)

◆高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」は読んでいると少し重たい気分にさせられるかもしれない。畢竟特効薬などなく、わたしたち個人が考え、行動する以外に回答はないのかもしれない。

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」(『NO NUKES voice』17号より)

◆蓮池透さんと菊池洋一さん──二人の元当事者が語る「原発の終わらせ方」

 

蓮池透さん(『NO NUKES voice』17号より)

蓮池透さんは、拉致被害者の家族であり、東京電力の社員であった21世紀初頭日本を取り巻いた政治事件の中心に、偶然にも居合わせた人物だ。蓮池さんは東電を定年前に退職した。3・11以来東電には様々な怒りを感じておられる。蓮池さんご自身福島第一原発の3号機と4号機に勤務していたご経験の持ち主で、今回初めて明かされるような驚くべき杜撰な現状が語られる。「東京電力は原発を運転する資格も余力もない」は故吉田昌郎所長とも親しかった蓮池さんのお話は必読だ。

菊池洋一さんは元GE技術者の立場から、やはり原発建設がいかに、問題を孕んでいたのか、を解説してくださっている。簡潔に言えば「いい加減」なのである。しかしながら菊池さんのお話からも、現場の技術責任者でなければ知り得ない、驚愕の事実がいくつも暴露される。

 

菊池洋一さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆本間龍さん「東京五輪は二一世紀のインパール作戦である」〈2〉

本間龍さんの連載「原発プロパガンダとは何か?」は今回も東京五輪の問題を鋭くえぐり出している。「国民総動員」の様相を見せだした「ボランティア」と称する「無償労働」の問題と意義を今回も徹底的に解析していただいた。「反・脱原発と東京五輪は相容れない」編集部の代弁をしていただいた。

◆何度でも福島の声を──井戸川克隆さん(元双葉町町長)、吉沢正巳さん(希望の牧場)

元双葉町町長の井戸川克隆さんの「西日本の首長は福島から何を学んだか」は鹿児島県知事三田園をはじめとする西日本、とりわけ原発立地現地行政責任者に対して、匕首を突きつけるような、厳しい内容だろう。冒頭ご紹介した函館市との対比が極めて不幸な形で鮮明になろう。

「吉沢正巳さんが浪江町長選挙で問うたこと」は「希望の牧場」で奮闘し続ける吉沢さんからの、吉沢さんらしい問題提起だ。行動のひと吉沢さんは浪江町長選挙に出馬した。浪江役場前には「おかえりなさい、ふるさと浪江町へ」の横断幕が掲げられてる。対して、吉沢さんは「除染してもサヨナラ浪江町」の看板を掲げる。この一見対立していそうで、不和解のように見えるメッセージを吉沢さんは「どちらも正しい」と語る。そのことの意味は?吉沢さんが闘った町長選はどのようなマニフェストだったのか?

希望の牧場・吉沢正巳さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆佐藤幸子さんの広島・長崎報告と伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在

「広島・長崎で考えた〈福島の命〉」は事故発生直後から、対政府交渉などの先頭に立ち続けてきた佐藤幸子さんの広島・長崎訪問記である。被災者の間に生じる(生じさせられる)軋轢を乗り越えて、お子さんの成長を確認しながら広島と長崎に原爆投下日にその身をおく、福島原発事故被災者。70余年の時をたがえて交わる被災者と、被災地のあいだには何が生じたのだろうか。

伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在(その1)では、事故後の避難で何が問題だったのかの実証的な指摘が詳細に分析される。7年が経過して、記憶もおぼろげになりがちな事故の進行と非難の実態が、時系列で再度明らかにされる。

佐藤幸子さんの広島・長崎報告(『NO NUKES voice』17号より)

 

黒田節子さんが書評した『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』(三一書房2018年6月)

◆黒田節子さんによる書評『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』

『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』(三一書房)を解説的に紹介してくださるのは黒田節子さんだ。

「首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由」を山崎久隆さんが解説する。ここで事故が起きたら東京は壊滅する=日本は終わる。それでも東海第二原発を再稼働する道を選ぶべきであろうか。

「セミの命も短くて…」は三上治さんのが経産省前テント村で生活するうちに、四季の移ろいに敏感になった、三上さんの体験記だ。ビルとコンクリートだらけの、霞が関の地にだって季節の変化はある。当たり前のようで、重要な「気づき」を三上さんが語る。

「赤ちゃんの未来は、人間の未来――国家無答責とフクシマ」(山田悦子が語る世界〈1〉)は本号から連載を担当していただく山田悦子さんによる論考である。「国家無答責」の概念は国家としての日本を理解するうえで欠くことができない重要な概念だ。山田さんは長年の研究で独自の「法哲学」を確立された。次号以降も本質に迫るテーマを解説していただく。

横山茂彦さんの「われわれは震災の三年前に、3・11事故を『警告』 していた!」は雑誌編集者にして、多彩な著作を持つ横山さんを中心に、東京から札幌まで1500キロを自転車で走りながら、原発に申し入れ書を提出するなどの行動が行われていた報告である。横山さんの多彩な興味範囲と行動力にはひたすら驚かされるばかりだが、このような人がいるのは、誠に心強い。

◆板坂剛さんと佐藤雅彦さん

 

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」(『NO NUKES voice』17号より)

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」は、芸風が安定してきた板坂による、例によって「右派月刊誌」へのおちょくりである。大いに笑っていただけるだろう(闘いにユーモアは必須だ!)。

佐藤雅彦さんの「政府がそんなに強硬したけりゃ民族自滅の祭典2020東京国際被爆祭をゼネストで歓迎しようぜ!」。佐藤さんの原稿はいつも下地になる資料が膨大にあり、事実や史実を示したうえで、最後に「佐藤流」のひねりで「一本」を取る。「板坂流」とは異なり、読者にも解読力が求められるが、内容はこれまたユーモアに満ちた批判である。

その他全国各地の運動報告や読者からのご意見も掲載し、本号も全力で編纂した。
地震・大雨・酷暑と自然災害が連続したこの数カ月。大震災列島の未来は〈原発なき社会〉の実現なくしてはじまらない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

本日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

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『NO NUKES voice』vol.17
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被曝・復興・事故収束
安倍五輪政権と〈福島〉の真実

[グラビア]サン・チャイルド/浪江町長選「希望の牧場」吉沢正巳さん抗いの軌跡
(写真=鈴木博喜さん)

[特別寄稿]吉原 毅さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 会長)
広瀬さん、それは誤解です!

[特別寄稿]木村 結さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 事務局次長)
原自連は原発ゼロのために闘います

[追悼]編集部 志の人・納谷正基さんを悼む 

[報告]高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?

[講演]蓮池 透さん(元東京電力社員/元北朝鮮による拉致被害者「家族会」事務局長)
東京電力は原発を運転する資格も余力もない

[講演]菊地洋一さん(元GE技術者)
伝説の原発プラント技術者が語る「私が原発に反対する理由」

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈14〉
東京五輪は二一世紀のインパール作戦である〈2〉

[講演]井戸川克隆さん(元双葉町町長)
西日本の首長は福島から何を学んだか

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
希望の牧場・希望の政治 吉沢正巳さんが浪江町長選で問うたこと

[報告]佐藤幸子さん(福島診療所建設委員会代表)
広島・長崎で考えた〈福島のいのち〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈1〉その始まり

[書評]黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)   
セミの命も短くて……

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマ

[報告]横山茂彦さん(著述業・雑誌編集者)
われわれは三年前に3・11原発事故を「警告」していた!
環境保全をうったえる自転車ツーリング【東京―札幌間】波瀾万丈の顛末

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
『不・正論』9月号を糺す!

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
政府がそんなに強行したけりゃ 
民族自滅の祭典・2020東京国際ウランピックをゼネストで歓迎しようぜ!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
首都圏の原発=東海第二原発の再稼働を止めよう

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
原発事故 次も日本(福島のお寺の張り紙)
二度目の原発大惨事を防ぐ・東海第二を止めるチャンス

《福島》春木正美さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去について・第二弾

《原電》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
日本原電は、社会的倫理の欠落した最低の会社だ!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
核分裂「湯沸し装置」をやめよう
~とうとう東海第二設置許可を認可する規制委、第五次「エネ計」で原発推進する経産省~

《地方自治》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長、杉並区議会議員)
全国自治体議員・市民の連携で安倍政権の原発推進に歯止めを!

《福井》木原壯林さん(「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」)
原発の現状と将来に関わる公開質問状を 高浜町長、おおい町長、美浜町長に提出

《島根》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発3号機の適合性審査申請に対する了解回答は撤回すべきだ!

《伊方》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
二〇一八年九月原発のない未来へ 伊方原発再稼働反対全国集会

《玄海》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会)
原発は止め、放射性廃棄物は人から離し測定して監視し地下に埋めても修復できる体制を

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『言論の飛礫(つぶて)─不屈のコラム』(鎌田慧・同時代社)

『NO NUKES voice』vol.17
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GW4GYDC/

◆馴染みの街のサン・チャイルド──大阪・茨木市

 

Kenji Yanobe Supporters club(2018-04-16)より

阪急電鉄南茨木駅。まことに個人的ながら、この駅名には懐かしさが付きまとう。大学時代の2年間と、就職しての数年をわたしは南茨木駅が至近の(といっても駅まで徒歩で30分近くあった)アパートで過ごした。理由は新築の2LDKが格安家賃で、大学へはバイクで通えば20分ほどの距離だったからだ。

南茨木から転居後も、毎日のように利用していたスーパーマーケットで殺人事件が起こったり、モノレールが南進したりとときどきニュースは耳にしていたが、このたび無視できない情報を教えて頂いた。南茨木の駅前にはヤノベケンジ氏が作ったSun Child(サン・チャイルド)が設置されているそうだ。

姿はご覧の通りで、茨木市のホームページによれば、〈Sun Child(サン・チャイルド)は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災から再生、復興していく人々の心に大きな夢と希望と勇気を与えるモニュメントとして制作されました。 高さ6.2mに及ぶこどもの像は、未来に向かって足を踏み出す姿を表現しています。傷つきながらも未来をしっかりと見つめ、力強く生き抜こうという再生へのメッセージがこめられています〉とのことである。茨木市の説明はうなずける。

◆福島市でのサン・チャイルド設置は「風評被害を助長する」?

ところがまったく同じSun Child(サン・チャイルド)が福島ではどういう訳か撤去されることになったという。

〈福島市が教育文化施設「こむこむ」前に設置した立像「サン・チャイルド」の表現に一部から批判が寄せられていた問題で、市は28日、作品を撤去すると発表した。木幡浩市長は記者会見で「賛否が分かれる作品を『復興の象徴』として設置し続けることは困難と判断した」と述べ、謝罪した。展示が始まった今月上旬から、交流サイト(SNS)などで、立像が防護服姿であることや、線量計を模した胸のカウンターが「000」となっていることが「風評被害を助長する」「非科学的」との批判が集中。作品の表現を評価する声もあり、市の対応が注目されていた。〉
※[引用元]「『サン・チャイルド』撤去へ 福島市長謝罪、設置継続は困難」(2018年8月29日付福島民友)

その理由の一端として、同記事では
〈市は18日から「こむこむ」の来場者に対し、立像についての意向調査を実施。27日までに110件の回答があり、設置に「反対・移設」が75人と、「存続」22人を大きく上回った。市へのメールや電話も否定的な意見が多かった。アンケートには「防護服がないと生活できないとの印象を与える」「子ども向けの施設に設置するのは問題」など撤去を求める意見の一方で、「災害の教訓になる」「勇気や元気が伝わる」などの意見があった。〉と説明されている。

『NO NUKES voice』Vol.17より(写真=鈴木博喜)

福島第一原発事故にかんするマスコミ報道については、つねに「水増しされていないか、不当に減じられてはいまいか」、「事実が隠蔽されていないか」、「虚構ではないか」、「恣意的な報道ではないか」を念頭に情報を分析しなければならない。そしてマスメディアのそういった姿勢に加えて、福島現地で暮らす方々がすがりたい「安全神話」という虚構が、ひとびとの思考を歪めていないか、をも考慮に入れなければならないことをこのニュースは物語っている。

◆何度でも問う! 福島2011原発事故と東京2020復興五輪 

 

『NO NUKES voice』Vol.17 より(写真=鈴木博喜)

大風呂敷が広げられている。「東京2020」という人道的犯罪と断じても不足ない、フクシマ隠蔽のための大風呂敷が。この大風呂敷は穴だらけだ。開会式の入場券が30万円以上もする「商業イベント」のために、11万人をタダ働きさせようとしている。災害ボランティアや非営利事業ではないのに、どうして「タダ働き」が堂々と進行しようとしているのか。文科省はついに、「東京2020」期間中、大学などに「授業や定期試験しないよう」通知を出した。21世紀型の「学徒動員」は前時の大戦とは順序を変えて、強制される。

新聞に「東京2020」に対する批判記事があるだろうか。不当な土地の払い下げ問題や、新国立競技場建設に絡む問題などが指摘されているか? 原発問題では鋭い筆鋒を見せた東京新聞はどうだ? まさか、開催地が「東京」だからという馬鹿げた理由が筆を鈍らせる理由にはなってはいまいな。

◆安心したい、忘れたい気持ちは痛いほどわかる。が、しかし……

福島から避難されて来られた方々は「福島県内のニュースでは被曝の実態が県外よりさらに報道が少ない」と異口同音に語られる。被曝問題だけではなく、「復興」を邪魔する奴はとんでもない!との無言圧力があるという。

一面無理からぬことではあろう。汚染地に住み続ける方々にとって、毎日「被曝の危険」を頭においていたら仕事や勉強ができないだろう。危機意識や怒りは(一部の強固な意志の持ち主を除いて)、当事者にとってそれほど長期間持続できるものではない。

その心理は理解するが、冷厳な科学的事実は、われわれがどう考えようと、念じようと変化することはない。国民総出で願ったら、放射性核種の半減期が短くなり、被曝被害が激減するのであれば、わたしも喜んでその輪に入ろう。

だが残念ながらそんな観念的な話ではない。あくまでも自然科学・放射線防御学や医学が今日までに到達している結果として、現在の福島は永続的な居住の「安全」が保障される場所ではないのだ(わたしはこのことを幾分かは、自分の内面を削りながら発言しているつもりである)。

安心したい、不安は忘れたい気持ちは痛いほどわかる。しかし、その気持ちが一体2011年3月11日に何を引き起こしたのか、を再考する障害となってはいないか。

南茨木駅は被災地ではなく、福島は被災地だからSun Child(サン・チャイルド)にたいする感覚が違うかもしれない。もし、そうであれば被害者であるはずの、福島のひとびとの感覚はゆがめられている。

「復興」や「絆」もいいだろう。その前に現実的な健康被害まで度外視されるほどに、被災地のひとびとの思考が誘導されているのだとすれば、責められるべきは、それを画策した連中だ。でも福島(福島だけではなく全て)のひとびとには忘れないでほしい。「被害を受けるのはあなた自身であるかもしれない」ことを。サン・チャイルドに罪はない。

『NO NUKES voice』17号が明日発売される。サン・チャイルドのようにわかりやすい出来事だけでなく、原発の根源悪を抉り出そうとわたしたちは尽力している。お手に取っていただければ幸いだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

明日9月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

 

2018年7月22日付け福井新聞より

7月22日の京都新聞は1面トップで〈「原発テロ備え大型巡視船 海保、来年度から福井に2隻配備〉の大見出しで、以下のように報じている。〈原発のテロ対策を目的に、海上保安庁が2019年度から順次、15基の原発が集中立地する福井県に大型巡視船2隻を配備することが21日、関係者への取材で分かった。東京電力柏崎刈羽(新潟県)、中国電力島根(島根県)といった原発での有事にも対応可能で、日本海側の要にする。今後、同規模の巡視船を全国に展開してゆく方針。〉だそうである。(注:太文字は筆者)

◆国際的には笑いものになりかねない頓珍漢

こういう政策を日本語で「愚策」または「頓珍漢」という。まず巡視船が「原発での有事にも対応可能」ではないことは、柏崎刈羽原発の事故や、言わずと知れた福島第一原発事故で明らかだ。原発での有事=事故が起これば、海上保安庁の巡視船など、一切役には立たない。原子炉に直結しない部分で火災が起きたときも、海上保安庁ましてや、大型巡視船はなんの役にもたたない。そもそも「原発テロ」と、問題を設定しているけれども人間の意志とは無関係に、機械の故障や、地震、津波などで大災害が起こることをわたしたちは経験しているだろうが。2011年3月11日福島県沖に大型巡視船が、待機していたらあの事故は防げたのか? 防げずとも少しは被害の程度をマシにできたというのか?

 

海上保安庁のPL型巡視船艇。PL型(Patrol Vessel Large)とは700トン型以上の大型巡視船。ヘリ甲板を設けた巡視船が増えつつある(海上保安庁HP)

大型巡視船を若狭湾に浮かべて、誰(なに)から原発を「守る」つもりなのだろうか。韓国か、朝鮮か、中国か? あるいは遠い国から船に乗ってくるどこかの「国際テロ」集団からか。いくら猛暑日が続いていて、正常な思考が難しくなっているからと言って、冗談や、寝言は家の中だけにしておいてもらわないと困る。こういう間抜けなことをしていると必ず国際的には笑いものになるだろう。その前に海上保安庁は税金で活動しているのだから、納税者は「いいかげんにしろ」と責任追及をしなければならない。

◆若狭湾にICBMが飛んで来たら、海保の巡視船は「迎撃」できるというのか?

原発事故のシナリオは無数に想定ができる。その中に「意図的な人為破壊」もないわけではない。遠くの国から原発をターゲットにミサイルを撃ち込まれたら、瞬時に原発は破壊され、大惨事になるだろう。仮にそのようなことが起こった場合に、若狭湾に展開する大型巡視船は、何かの役にたつのだろうか? たとえば、ロシアから、あるいは米国からICBMが飛んで来たら、海保の巡視船は「迎撃」できるというのであろうか。

「米国からICBMがとんでくるはずがない」といぶかられる方がいるに違いないから、その可能性がゼロではないことを示しておこう。日本と米国が「日米原子力協定」を締結しており、7月17日に自動延長された。1988年に発効したこの協定は米国が日本の原子力(核)開発を黙認する代わりに、監視する役目を担っている。自動延長はしたものの、今後は半年まえのいずれかからの申し出により、同協定は破棄することが可能となった。そして自動延長に際して、米国は日本が保有するプルトニウムについて、憂慮の念を表明している。

日本がいま貯めこんでいるプルトニウムの量はどれくらいであろうか。核兵器弾頭換算で約4000発の弾頭を作ることができる、と言われる47トンである。日本には人工衛星打ち上げに見せかけた「ミサイル」技術が確立されている。プルトニウムさえあれば、それを「核兵器化」する技術は専門家によると、さほど高度なものではないという。

◆「日本の核武装が危ない」という発想が国際社会で生まれる可能性

トランプ大統領は保護主義に走り、日本からの自動車輸入に25%の関税をかけるという。自動車産業や、これに繋がる関連企業にとっては一大事である。TPPにも入らないし、こんな話は「想定外」だったに違いない。また別の想定外だって私たちは目にしたばかりだ。双方絶対に譲れない「天敵」の如く反発を続けてきた朝鮮と米国の首脳会談がシンガポールで実現したのは、つい先月のことだ。昨年の今頃だれが「米朝首脳会談」を予想できただろうか。

米国は明確に日本が保有するプルトニウムに懸念を示している。朝鮮との首脳会談を実現させたトランプの脳の中で、「日本の核武装が危ない」との発想が生まれない保証がどこにあるだろうか。

諸悪の根源は、事故を起こせば人間の手には負えないし、事故を起こさなくとも運転すれば無毒化に10万年以上かかる、膨大な放射性汚染物質を生みださざるを得ない原発の存在そのものだ。「若狭湾に大型巡視船を2隻浮かべたら安全ですよ」といわれて、「ああそうか」と納得するような国民性では、早晩この国は破滅するだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

 

2018年7月12日付け日刊スポーツ

◆本質とまるで正反対な2020年「復興五輪」

〈2020年東京五輪・パラリンピック調整会議が12日午前、都内で行われ、東京五輪聖火リレーの出発地点を福島とし、開始日は20年3月26日と決定した。大会組織委員会の森喜朗会長が提案し、小池百合子都知事、鈴木俊一五輪相ら関係団体のトップが集まる同会議で了承された。〉(2018年7月12日付け日刊スポーツ)

そうだ。こう来るだろうと予想した通りだ。2020年東京五輪はその本質と正反対に「復興五輪」と、まったく虚偽の謳い文句で持ち上げられている。7月12日の新聞各紙の見出しには「トリチウム汚染水海へ」の文字がある。(2018年7月12日付けNHK)

 

2018年7月12日付けNHK

福島第一原発敷地内に溜まりにたまった汚染水の処分方法がないから、「希釈して海に流す」と東京電力はいよいよ本格的に準備をはじめるようだ。希釈したって毒物には変わりはない。希釈したら毒性が問題なくなるようなレベルの汚染水だったら、わざわざ山ほどの貯蔵タンクを敷地内に無計画にどんどん建てて、保管する必要はなかったではないか。

世界初の原発4機爆発を引き起こした「東京電力」でさえ、「汚染水は海には流せない」と判断したから貯蔵タンクに保管していたのだろうが。危険物質は既に膨大な量が海や地下水に流れ出している。貯蔵タンクに保管されている汚染水よりもその総量は多いかもしれない(正確に測定で出来ないので断言はできないが)。行政が測定するとほとんど「基準値以下」か「検出基準以下」の値しか出てこない。そんな馬鹿なことがあるか。

原発4基が爆発して、そこから放出された放射性核種の量が、「健康に問題ない」のであれば、どうして病院のレントゲン撮影室の前には「妊娠の可能性のある方は申し出てください」と書かれているのだろうか。甲状腺がんは通常、100万人あたり1~3人が発症の割合とされるが、福島県を中心に既に200人以上の発症が確認されている。誰が見たって、事故との因果関係は明らかであるが、一部の科学者や専門家に言わせると「スクリーニングを丁寧に行ったからだ」(普通行わないほど多くの子供の検査を行ったから発症がわかった)と、素人が呆れるような稚拙な嘘を平然と口にする。「福島県内の医療機関はすべて福島県立医大の支配下にあり、自由に診断もできない」と多くの医療関係者が嘆いている。医師が抑圧されていたら、まともな診察や治療が行えないじゃないか。

残念で残酷至極だが、福島を中心とした汚染はいまだに「すぐ逃げなければならない」レベルから下がってはいない。そこに汚染水の海への放出が加わればさらに環境は汚れる。

◆猛暑の中、汚泥をスコップですくい上げる時の重さ

なにも解決も改善もしていないじゃないか。西日本を襲った豪雨の被害は目に見えやすいので、その惨状が一葉の写真であれ、映像であれ目にすれば容易に被害の深刻さが理解される。あの惨状を目にして「直ちに健康に影響はない」という人はさすがに居ないだろう。

西日本の豪雨による被災者の皆さんは、猛暑の中激烈な日々を過ごしておられる。スコップで水を含んだドロをすくい上げるときの重さは、経験したことのある人には、簡単に理解されるだろう。その作業を避難所で寝起きしながら、猛暑の下続ける負荷はいかばかりか。

かたや、福島を中心とする放射性核種による汚染地域では、その汚れや危険性が目に見えない。目に見えないだけではなく、危険性を知らせようとしない(隠蔽しよう)とする巨大な力が、国ぐるみで綿密に準備され、即実行されている。その最大の隠蔽工作が「2020東京五輪」である。「オリンピックが政治そのもの」であることは、冬に開催された平昌五輪で朝鮮が参加を表明し、女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成され、その後に南北首脳会談が板門店で実現、さらに電光石火で6月にはシンガポールで米朝首脳会談まで実現させた、ダイナミズムが記憶には新しい。

行く末は明瞭ではないが、ほとんどの人が予想さえしなかった米朝首脳会談の実現は、歓迎すべき出来事であり、それが「オリンピックの政治性」によって誘引されたのだとしたら、オリンピックの政治性は評価に値する。しかし多くの場合、オリンピックの政治性は「和平」や「融和」ではなく、国威発揚や国内問題の封印のために力を発する。1969年の東京五輪、モスクワ五輪やロスアンジェルス五輪、北京五輪には濃厚にその側面が表出していたし、古いところではミュンヘン五輪では選手が政治的文脈で殺される事件も起きている。

「2020東京五輪」は資本主義最終末期・人口減にあえぐ、日本の権力中枢が、国家破綻の引き金にもなりかねない「福島第一原発事故」隠蔽と、嘘っぱちに紛れた虚飾の美辞麗句で一儲けを企む金の亡者との結託により開催が目論まれる、反人民的、打史上比類ない悪意に基づく悪行集合体である。

東京でオリンピックを開催したら、それがどうして「復興」と関係があるのか。まずはこんな単純極まりない問いを、少し頭を冷やして考えれば、その欺瞞性は理性ある人には理解できるはずだ。聖火リレーの出発点か通過点か知らないけれども、そんなことを画策する者どもは、福島の人々の本質的被害から目を逸らさせようとする極悪人ばかりである、と私は断じる。

「2020東京五輪」は人倫的犯罪である。私は断固反対するし、「2020東京五輪」のスポンサー、待ちのぞむマスコミ、何気なく乗せられる庶民に対して、明確に異議を明らかにする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』8月号!

『NO NUKES voice Vol.16』明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

18日午前8時前。机上に置いた携帯電話が、警戒音を鳴らしだしたのは、揺れが起きて数秒後だった。ということは、震源が近いはずだ。小刻みな横揺れは安普請をきしませ、大きな音を立てたが、揺れ自体の長さは10数秒であっただろう。


◎[参考動画]【速報】大阪府北部で震度6弱(ANNnewsCH 18/06/18)

関西は「阪神淡路大震災」を例に出すまでもなく、活断層がいくつも確認されている。18日の地震は高槻市、茨木市に大きな被害をもたらした。この地域では震度1から2の地震が比較的頻繁に起こる地帯で、「有馬-高槻断層帯」のほぼ真上にあたるが、ここ数百年「有馬-高槻断層帯」での大きな地震の記録はない。

有馬-高槻断層帯

しかし一昨年の熊本地震の例が示す通り、内陸の断層による地震は、近隣の断層を刺激する。不幸にも震度7を2回経験した熊本地震発生の際に、私は最初の地震が「これが前震にならなければよいが」と書いた。気になる予感は的中してしまった。2016年4月14日の震度7に続き、2日後の16日にも再び震度7の揺れに熊本は襲われた。

気象庁は「今後1週間おなじ程度の揺れに注意するように」と、紋切り型の注意勧告を行っているようだ。そんなことは素人にでもわかる。行政による「地震予知」は現実に、何の役にも立たないことを、私たちはここ20年ほどのあいだに何度も学んだ。また、時々こっそりと(具合が悪いからだろうか)発表される情報の総体は「日本列島に地震を心配しなくてもよい場所はない」ことを結果的に示している。近いところでは千葉県周辺での「スロースリップ」現象(通常よりもプレートが早く動く現象)が発表され、実際に千葉県や群馬県では小さな規模の地震が頻繁に起きている。幸いこの地域での内陸直下型大地震はいまのとこと起きてはいない。

しかし、当該地域に住まい、お勤めの方々には充分に警戒されることをお勧めする。18日朝、大阪で発生した地震のマグニチュードは5.9だ。「阪神淡路大震災」は7.3、「東日本大震災」は、9.0、「熊本地震」は7.3だ。

地震の総体を理解するためには、マグニチュードが大きな意味を持つが、被害や災害を理解するためには、マグニチュード(地震のエネルギー)よりも、実際にどれほど「揺れたか」(震度)が重要である。津波が来なければ、海底を震源とする、マグニチュード8や9の地震でも、生活に何の影響も支障もない。逆に直下の浅い震源では、マグニチュード6以下の地震でも、今回のように被害が出る。なによりも避けがたく不具合なことは、人口密集地での地震は、そうでない地域に比べて甚大な被害を出すという事実だ。

18日の地震でブロック塀の倒壊や電柱の傾き、数件の火災、エレベータ内の閉じ込めや電車の停止は報じられているが、大規模な家屋倒壊は、いまのところ報告されていない。しかし既に複数の犠牲者が出ている。そしてインターネットではテレビ映像が視聴可能となり、繰り返し被害状況や交通機関の運行状態を伝える。その報道順位に、日ごろテレビを見ない私は、発見があった。テレビ映像はまず、地震による被害と交通機関の運行状況をつたえあと、「原子力発電所の状況」を繰り返し報じている。今回の地震による福井県の震度は3程度だ。にもかかわらず、優先順位の第一に「原子力発電所の状況」を繰り返し伝えるのは、テレビ局も「原発が地震に弱い」ことを自覚していることの証拠だろう。

活断層が縦横に走り、海底には巨大な地震と津波を引き起こすプレート境界が横たわる日本で原発を動かす条件は存在しない(2013年1月4日付赤旗より)

ただし、大都市で電車が止まり、停電が起き、水道管が破裂すればテレビは競って、その情報を映像付きで放送するが、「原子力発電所の状況」に、異常が起きたときにはどうだろうか。解説は不要だ。7年前を思い起こせばいい。「手遅れ」になっても「大丈夫」、「ただちに健康に影響のでるものではない」と、たった7年前に「騙した」台詞を、何の痛痒も感じずに垂れ流すに違いない。

地震は予防できない。そして、18日の地震がまたしても不幸にして「前震」であったとしても、「本震」を止めることはできない。万が一そうであれば、大阪を中心とする、関西在住の住民の皆さんはどうすればよいのか? それこそを政府は指し示すべき出だろう?「1週間程度はおなじ程度の揺れに気をつけろ」と言われても、古い家屋に住んでいる人はどのように「注意」すればよいというのだ?

首相官邸に「対策室」ができようと、自衛隊が災害派遣されようと、地震の被害を減ずる程度の予想を立てる力と智慧を人間は持たない。その前提ですべての取りうる対策は前提を立てるべきではないのか。素人でも発案可能なことはある。最悪の終末を相当高い確率で生じせしめる、全国の「原子力発電所」を即時停止、廃炉にすること。震度5以上の揺れが大都市で発生したら、その後数日間は個人の判断で「防災休暇」をとることができる制度を創設すること。暫時人口密集地域を解消すること…。

実現可能性よりも、「生き残るための必要条件」を優先するべきだ。と私は考える。

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

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