◆1988年のハンセン証言

1986年4月26日、史上最悪の原発事故、チェルノブイリ事故が起きた。事故で31人が死亡、13万5000人の住民が避難を余儀なくされた。この事故から2年後の1988年6月23日、アメリカ上院エネルギー委員会の公聴会において、NASA所属のジェームズ・ハンセンが「最近の異常気象、とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」と発言した。

同年アメリカは1930年代以来の大干ばつに見舞われ、熱波が各地を襲い、山火事が多発していた。ハンセンはこの異常気象の原因がCO2の人為排出だと示唆したのである。この証言を行ったハンセンは後に地球温暖化防止のため原発を推進するようオバマ大統領に提言を行い、以後も原発を積極的に支持する発言を続けている人物である。この公聴会の議長をつとめた上院議員のティモシー・ワースは過去の気象記録で最高気温が記録された日を開催日に選び、当日は委員会の冷房を切っていたという。

ワースは後に、「地球温暖化の問題に乗っかる必要がある。たとえ地球温暖化の理論が間違っていても経済.環境政策の点では我々は正しいことをしているのだ」と述べている。ともあれ、このハンセン証言を契機に雑誌やTV放送などのメディアを通して、地球温暖化についての認識が1気に広まった。

温暖化=「気候危機」論の広がり1989年3月、オランダのハーグで「環境サミット」が開かれ、「温暖化防止への国際協力」を盛り込んだ「ハーグ宣言」が採択された。この会議は従来環境問題にはさほど熱心でなかったフランスが急遽オランダ、ノルウェーと共同で開催したものである。

フランスの独走が目立ったこの会議について、科学史家の米本正平氏は以下のように指摘している。

「フランスは政府主導で原発を進めてきた、欧州で唯一の国である。ところが86年のチェルノブイリ原発事故以降、ドイツなど他国の環境保護派から批判の矢面に立たされてきた。それをここで、電力供給の75%が原発という自国のエネルギー供給の状態を逆手にとり、二酸化炭素排出量が大きい、石炭火力発電を主力とする他欧州諸国をにらみつける形で、地球温暖化問題を軸に一気に新しい課題でヘゲモニーをとろうとした、と考えるのがいちばん妥当であろう。」(『地球環境問題とは何か』岩波書店、1994年)

日本原子力研究開発機構のHPは、このハーグでの会議は「地球温暖化防止対策に第1歩を踏み出す画期的な会議」だったと書いている。

イギリスのサッチャー首相は1989年11月にニューヨークで開かれた国連総会で、CO2を削減して人為的地球温暖化を阻止すべきだとスピーチし、世界の首脳に先駆けて地球温暖化問題を国際社会でアピールした。当時サッチャー政権は炭鉱労働組合の弱体化を図るとともに石炭火力から原子力への切り替えを目論んでいた。サッチャーは退任後立場を変え、地球寒冷化の方が温暖化よりもはるかに害が大きく、科学が歪曲されていると著書で主張している。

一方、1988年6月に開催されたトロント.サミットで地球温暖化問題の重要性が指摘され、その声明に基づいて同年11月に国際連合気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設立された。IPCCはこれまで6回報告書を出している。2022年4月に発表された第6次評価報告書第3作業部会報告書には「原子力は、低炭素エネルギーを大規模に供給することができる」と書かれており、発電時CO2を出さない原発が「気候危機」対策として有効であることが示唆されている。

◆結び

CO2の増加により地球が温暖化するという学説はすでに19世紀に発表されていた。しかしCO2温暖化説の提唱者アレニウスは地球温暖化を「危機」ではなく「恵み」と認識しており、宮沢賢治もそうした認識に基づく作品を書いていた。そして1970年代までは地球寒冷化説の方が優勢であり、地球温暖化が社会の主要関心事となることはなかった。

転機となったのは1979年の「チャーニー報告」である。スリーマイル島原発事故の起きたこの年、米政府は米国アカデミーに気候に対する人為起源CO2の影響について諮問を求め、同アカデミーはCO2の人為排出が地球の気温上昇を招き、それが気候に大幅な変化をもたらすとする報告書を出した。

さらにチェルノブイリ原発事故の2年後、1988年のハンセン証言を契機に地球温暖化が社会的な関心を集め、各種機関による地球温暖化対策が本格的に進められるに至った。「気候危機」論を世界に広める上で大きな役割を果たしたのが、原発大国フランスと、サッチャー政権のもとで炭坑労組潰しと石炭火力から原発への転換を進めていたイギリスである。2011年の福島原発事故後、いくつかの国が脱原発を決め、他の国々も原発推進に慎重姿勢を取った。しかし、グレタ・トゥーンベリが気候ストライキを始め気候運動が世界的な盛り上がりを見せる中、EUはタクソノミーに原発を含めることを決定し、韓国は脱原発を撤回、フランス、日本が相次いで原発の積極推進に回帰した。

このように、「気候危機」論は原発推進を目論む勢力によって提唱され、以後一貫して原発を推進する役割を果たしてきたのである。

「気候危機」論のもう1つの大きな推進力は、金融商品としてのCO2により利潤を得る国際金融資本であることは本誌2023年夏号の拙稿「『気候危機』論についての一考察」で述べた。

いずれにせよ、「気候危機」論はその生い立ちからして原発推進と不可分の関係にある。したがって、私たち市民は「気候危機」論の動向について常に警戒感をもって注視していかなければならない。(終わり)

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▼「気候危機」関連年表

1760年代  イギリスで産業革命起こる
1896年   スヴァンテ・アレニウス、CO2の地球温暖化効果を指摘する論文を発表
1906年   アレニウス『宇宙の成立』を発表、CO2の地球温暖化効果を一般向けに解説
1932年   宮澤賢治『グスコーブドリの伝記』発表
1979年 3月 スリーマイル島原発事故
1979年 7月 米国アカデミー「21世紀半ばに二酸化炭素(CO2)濃度は倍になり、
      気温は3±1.5℃(1.5-4.5℃)上昇する」とする「チャーニー報告」を公表
1986年 4月 チェルノブイリ原発事故
1988年 6月 アメリカ上院公聴会にてジェームズ・ハンセンが「最近の異常気象、
      とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」と証言
1988年 6月 トロント・サミット開催
1988年 11月 国際連合気候変動に関する政府間パネル(IPCC)発足
1989年 3月 ハーグで環境サミット開催、「温暖化防止への国際協力」を盛り込んだ
      「ハーグ宣言」を採択
   11月 英サッチャー首相、国連総会で
      「CO2を削減して人為的地球温暖化を阻止すべき」とスピーチ
1991年   ソ連崩壊
1992年 6月 ブラジルで地球サミット開催、「気候変動枠組条約」採択
1995年   第1回気候変動枠組条約締約国会議(COP1)開催
1997年   COP3開催、「京都議定書」採択、排出量取引制度創設
2001年   IPCC第3次評価報告書を発表、マイケル.マン作成のホッケースティック曲線を採用
2002年   サッチャー元首相、地球温暖化を否定する著書『Statecraft』を発表
2005年   EU、世界で初めて「排出量取引制度(EU-ETS)」を開始
2006年   アル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』公開
      (ゴアは翌年ノーベル平和賞を受賞)
2007年   英国裁判所で『不都合な真実』には誇張があるため
      学校内での上映に際しては注釈を付すよう命じる判決
2008年   ハンセン、地球温暖化防止のため原発を推進するようオバマ大統領に提言
2009年11月 クライメートゲート事件(マンのホッケースティック曲線は捏造であるとの疑惑が浮上
      英国下院は「問題なし」とする調査結果を公表)
2011年 3月 福島原発事故
2011年 7月 ドイツ、脱原発を決定
2015年   COP21開催、「パリ協定」締結
2017年   韓国、脱原発を決定
2018年   グレタ・トゥーンベリ、気候ストライキを開始
2021年 8月 IPCC第6次評価報告書を発表、
      人間の活動により温暖化が起きていることは「疑う余地がない」と断定
2021年11月 仏マクロン大統領、原発新設再開を宣言
2022年   EU、タクソノミーに原発を含めることを決定
2022年   韓国、脱原発を撤回し原発推進に回帰
2023年 5月 日本、国会でGX推進法を可決、成立

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本稿は『季節』2023年冬号掲載(2023年12月11日発売号)掲載の「『気候危機』論の起源を検証する」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎原田弘三 「気候危機」論の起源を検証する[全3回]
〈1〉CO2増加による気温上昇は、本当に「地球の危機」なのか
〈2〉転機となった「チャーニー報告」
〈3〉「気候危機」論はその生い立ちからして原発推進と不可分の関係にある

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

◆温暖化説に基づいた物語『グスコーブドリの伝記』

宮沢賢治(1896-1933)が1932年に発表した童話『グスコーブドリの伝記』は、CO2温暖化説に基づいた物語である。主人公ブドリは、生まれ育った農村が冷害に苦しむのを目の当たりにし、火山を噴火させCO2を噴出させて温暖化を起こすことを考えつく。しかし火山を人工的に噴火させる作戦を実行するにはチームの最後の1人が犠牲にならなければならない。ブドリは進んでその役を担い自らが犠牲となって火山からCO2を噴出させ、その結果起きた温暖化によって村は冷害から救われる、というのがこの物語のあらすじである。

1970年代までは寒冷化説が主流生態学者、吉良竜夫が1971年に著した『生態学からみた自然』(河出書房新社)には、CO2温暖化説が以下のように紹介されている。

「氷期のCO2生因説をとるプラスは、いまの燃料消費の増加が持続するとすれば、30年後の21世紀初めには、大気中のCO2濃度が50%高くなり、地表気温は2度上がるだろうという。……いまより2度高温というと、BC5000年ごろの縄文時代中期がそれで、そのころの貝塚の分布から推定した海面の位置は、現在より10mほど高く、関東平野のおく深くまで東京湾が侵入していた。こんなことが起こっては大変で、世界のおもな都市は全部水没してしまう。炭酸ガス危機説とよぶゆえんである。」

この記述から、この頃までにCO2増加による温暖化を「危機」とみなす学説が唱えられていたことがわかる。

しかし吉良は同書の中で続けて以下のように書いている。

「じつは、人間のCO2放出による地球の気温上昇の問題は、現時点ではかなり影がうすれている。というのは、大気汚染、とくに自動車排気が原因で、微小な凝結核が世界の大気中に激増したために、雨をもたらす過冷却状態の雲が少なくなり、その結果、微氷晶からなる安定した雲がふえて降水量を少なくし、またふえた雲の反射や微粒子の吸収によって、地表にとどく太陽輻射量をへらしているらしいことが、問題とされはじめたからである。現にここ数年は、世界各地で気温の低下と降水量の減少が注目されており、アメリカでは豪雨・豪雪がへり、霧雨やほこりのような雪がふえているという。」

つまり、1970年代初頭までにCO2増加による気温上昇を「危機」とみなす学説が一定唱えられていたが、それは決してメジャーではなく、1971年当時はむしろ衰退傾向にあったのである。

実際、1970年代には『冷えていく地球』(根本順吉著、家の光協会、1974年)、『ウェザー.マシーン気候変動と氷河期』(N.コールダー著、原田朗訳、みすず書房、1974年)、『氷河時代-人類の未来はどうなるか』(鈴木秀夫著、講談社、1975年)、『大氷河期-日本人は生き残れるか』(日下実男著、朝日ソノラマ、1976年)など、氷河期の到来による「危機」を示唆する書籍が相次いで出版されていた。

◆転機となった「チャーニー報告」

1979年3月28日、米ペンシルバニア州のスリーマイル島原発で重大事故が発生した。2号機がメルトダウンを起こし、放射性物質を含む水蒸気が外部に漏れ出したため、14万4000人の住民が避難する事態となった。この事故の起きた1979年、米国大統領行政府科学技術政策局は全米科学アカデミーに対し、「気候に対する人為起源CO2の影響」について諮問を求めた。マサチューセッツ工科大学のジュール・グレゴリー・チャーニー教授を座長とする臨時調査委員会がこれに答えた学術報告をまとめ、7月に「チャーニー報告」と呼ばれる報告書を公表する。

この報告書は「21世紀半ばに二酸化炭素(CO2)濃度は2倍になり、気温は3±1.5℃(1.5-4.5℃)上昇する」という予測を示した。そして報告書は以下のように結論付ける。

「大気中のCO2濃度が実際に2倍になり、大気と海洋の中間層がおおよその熱平衡に達するのに十分な長さのままである場合、地球の気温は3℃程度の変化が起こり、これらが地域の気候パターンの大幅な変化を伴うと推定される。」

この報告書は「地域の気候パターンの大幅な変化」という漠然とした表現ながら、温暖化を否定的にとらえる視点に立っている。温暖化の弊害を指摘する学説は以前から存在していたが、このチャーニー報告は一国の権威ある学術機関が温暖化を「危機」と見る視点を打ち出したという点で、画期的なものであった。(つづく)

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▼「気候危機」関連年表

1760年代  イギリスで産業革命起こる
1896年   スヴァンテ・アレニウス、CO2の地球温暖化効果を指摘する論文を発表
1906年   アレニウス『宇宙の成立』を発表、CO2の地球温暖化効果を一般向けに解説
1932年   宮澤賢治『グスコーブドリの伝記』発表
1979年 3月 スリーマイル島原発事故
1979年 7月 米国アカデミー「21世紀半ばに二酸化炭素(CO2)濃度は倍になり、
      気温は3±1.5℃(1.5-4.5℃)上昇する」とする「チャーニー報告」を公表
1986年 4月 チェルノブイリ原発事故
1988年 6月 アメリカ上院公聴会にてジェームズ・ハンセンが「最近の異常気象、
      とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」と証言
1988年 6月 トロント・サミット開催
1988年 11月 国際連合気候変動に関する政府間パネル(IPCC)発足
1989年 3月 ハーグで環境サミット開催、「温暖化防止への国際協力」を盛り込んだ
      「ハーグ宣言」を採択
   11月 英サッチャー首相、国連総会で
      「CO2を削減して人為的地球温暖化を阻止すべき」とスピーチ
1991年   ソ連崩壊
1992年 6月 ブラジルで地球サミット開催、「気候変動枠組条約」採択
1995年   第1回気候変動枠組条約締約国会議(COP1)開催
1997年   COP3開催、「京都議定書」採択、排出量取引制度創設
2001年   IPCC第3次評価報告書を発表、マイケル.マン作成のホッケースティック曲線を採用
2002年   サッチャー元首相、地球温暖化を否定する著書『Statecraft』を発表
2005年   EU、世界で初めて「排出量取引制度(EU-ETS)」を開始
2006年   アル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』公開
      (ゴアは翌年ノーベル平和賞を受賞)
2007年   英国裁判所で『不都合な真実』には誇張があるため
      学校内での上映に際しては注釈を付すよう命じる判決
2008年   ハンセン、地球温暖化防止のため原発を推進するようオバマ大統領に提言
2009年11月 クライメートゲート事件(マンのホッケースティック曲線は捏造であるとの疑惑が浮上
      英国下院は「問題なし」とする調査結果を公表)
2011年 3月 福島原発事故
2011年 7月 ドイツ、脱原発を決定
2015年   COP21開催、「パリ協定」締結
2017年   韓国、脱原発を決定
2018年   グレタ・トゥーンベリ、気候ストライキを開始
2021年 8月 IPCC第6次評価報告書を発表、
      人間の活動により温暖化が起きていることは「疑う余地がない」と断定
2021年11月 仏マクロン大統領、原発新設再開を宣言
2022年   EU、タクソノミーに原発を含めることを決定
2022年   韓国、脱原発を撤回し原発推進に回帰
2023年 5月 日本、国会でGX推進法を可決、成立

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本稿は『季節』2023年冬号掲載(2023年12月11日発売号)掲載の「『気候危機』論の起源を検証する」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎原田弘三 「気候危機」論の起源を検証する[全3回]
〈1〉CO2増加による気温上昇は、本当に「地球の危機」なのか
〈2〉転機となった「チャーニー報告」

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

◆はじめに ── 原発推進の口実に

今日「気候変動」あるいは「気候危機」という言葉を耳にしない日はない。多くのメディアや識者は産業革命以来の人為的CO2排出による温暖化が地球環境に危機を招くと説いている。しかし、温暖化が地球環境の危機として広く認識されるようになったのはそれほど古いことではない。筆者自身の体験に即して言えば、筆者が学生時代を過ごした1970年代には地球温暖化をメディアが報じることはなかった。しかしその後、地球の温暖化が急速に喧伝され、今日「気候危機」への対策が国際社会の共通課題とされているのである。

「気候危機」は私たち脱原発を目指す者にとって見過ごせないテーマである。なぜなら、それが原発推進の口実となっているからである。直近では岸田政権が「気候危機」対策としてのGX(グリーントランスフォーメーション)の名のもとに原発推進法制を成立させたことが記憶に新しい。

そこで「気候危機」論はいつ誰によって唱えられ、どのように広まってきたのか、振り返ってみたい。

◆CO2説を最初に唱えた科学者スヴァンテ・アレニウス

 

スヴァンテ・アレニウス(1859-1927)

大気中のCO2増加により地球が温暖化する可能性を最初に指摘したのはスウェーデンの科学者スヴァンテ・アレニウス(1859-1927)である。

彼は1896年に発表した論文の中で科学者として初めて、空気中のCO2の量の変化が温室効果によって気温に影響を与えるという考え方を示した。彼はまた一般向けの著書『宇宙の成立』(1906年)の中で、石炭などの大量消費によって今後大気中のCO2濃度が増加すること、CO2濃度が増えれば気温が上昇する可能性があることを述べた。

「空気中の二酸化炭素の量が現在の割合の半分に低下すると、気温は4度低下する。1/4に減少すると、気温が8度下がる。一方、空気中の二酸化炭素の割合が2倍になると、地表の温度が4度上昇する。二酸化炭素が4倍に増えると、気温は8度上昇する。」

このようにアレニウスはCO2の増加が地球を温暖化する可能性を指摘したが、彼は今日の気候危機論者のようにそれを地球環境の危機とは考えていなかった。彼は『宇宙の成立』の別の部分で以下のように書いている。

「地球に蓄えられた石炭が、未来のことも考えずに今の世代に浪費されているという嘆きをよく耳にするし、私たちは火山の噴火による生命や財産のすさまじい破壊に怯えている。ここでは、他のすべての場合と同様に、善と悪が混在しているという考えに一種の慰めを見出だせるかもしれない。大気中の二酸化炭素の割合の増加の影響により、特に寒い地域に関しては、地球が現在よりもはるかに豊かな作物を生み出し、人類の急速な繁栄のために、より平等でより良い気候の時代を享受することが期待できるかもしれない。」

つまり、アレニウスはCO2による地球温暖化により寒い地域が過ごしやすくなり作物生産が豊かになるため、地球温暖化は人類にとって好ましいものと見ていたのである。(つづく)

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▼「気候危機」関連年表

1760年代  イギリスで産業革命起こる
1896年   スヴァンテ・アレニウス、CO2の地球温暖化効果を指摘する論文を発表
1906年   アレニウス『宇宙の成立』を発表、CO2の地球温暖化効果を一般向けに解説
1932年   宮澤賢治『グスコーブドリの伝記』発表
1979年 3月 スリーマイル島原発事故
1979年 7月 米国アカデミー「21世紀半ばに二酸化炭素(CO2)濃度は倍になり、
      気温は3±1.5℃(1.5-4.5℃)上昇する」とする「チャーニー報告」を公表
1986年 4月 チェルノブイリ原発事故
1988年 6月 アメリカ上院公聴会にてジェームズ・ハンセンが「最近の異常気象、
      とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」と証言
1988年 6月 トロント・サミット開催
1988年 11月 国際連合気候変動に関する政府間パネル(IPCC)発足
1989年 3月 ハーグで環境サミット開催、「温暖化防止への国際協力」を盛り込んだ
      「ハーグ宣言」を採択
   11月 英サッチャー首相、国連総会で
      「CO2を削減して人為的地球温暖化を阻止すべき」とスピーチ
1991年   ソ連崩壊
1992年 6月 ブラジルで地球サミット開催、「気候変動枠組条約」採択
1995年   第1回気候変動枠組条約締約国会議(COP1)開催
1997年   COP3開催、「京都議定書」採択、排出量取引制度創設
2001年   IPCC第3次評価報告書を発表、マイケル.マン作成のホッケースティック曲線を採用
2002年   サッチャー元首相、地球温暖化を否定する著書『Statecraft』を発表
2005年   EU、世界で初めて「排出量取引制度(EU-ETS)」を開始
2006年   アル・ゴアのドキュメンタリー映画『不都合な真実』公開
      (ゴアは翌年ノーベル平和賞を受賞)
2007年   英国裁判所で『不都合な真実』には誇張があるため
      学校内での上映に際しては注釈を付すよう命じる判決
2008年   ハンセン、地球温暖化防止のため原発を推進するようオバマ大統領に提言
2009年11月 クライメートゲート事件(マンのホッケースティック曲線は捏造であるとの疑惑が浮上
      英国下院は「問題なし」とする調査結果を公表)
2011年 3月 福島原発事故
2011年 7月 ドイツ、脱原発を決定
2015年   COP21開催、「パリ協定」締結
2017年   韓国、脱原発を決定
2018年   グレタ・トゥーンベリ、気候ストライキを開始
2021年 8月 IPCC第6次評価報告書を発表、
      人間の活動により温暖化が起きていることは「疑う余地がない」と断定
2021年11月 仏マクロン大統領、原発新設再開を宣言
2022年   EU、タクソノミーに原発を含めることを決定
2022年   韓国、脱原発を撤回し原発推進に回帰
2023年 5月 日本、国会でGX推進法を可決、成立

──────────────────────────────────────────────────

本稿は『季節』2023年冬号掲載(2023年12月11日発売号)掲載の「『気候危機』論の起源を検証する」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

◆「GX脱炭素電源法」の問題点

2022年12月、岸田文雄政権の「脱炭素」の司令塔であるGX(グリーン・トランスインフォメーション)実行会議は原発を推進する基本方針をまとめた。

基本方針には、
①次世代原発の開発・建設
②既設原発の再稼働
③原発の寿命延長(60年超)
④核燃料サイクルの推進
などが盛り込まれた。

原発再稼働だけでなく、新規原発建設や老朽原発の60年超運転まで推進しようとしている。

2023年3月30日、政府はこれらの原発推進策を束ねた「GX電源法案」を提出した(すでに国会で成立した)。このように政府は福島原発事故後の「原発を可能な限り低減する」を基本とした政策から「原発の最大限活用」に舵を切った。

2011年3月11日、東日本大震災が起き、福島第一原発は三基の原子炉がメルトダウン、あわや「東日本壊滅」の危機を体験した。放射能汚染により今も数万人が避難生活を強いられていることなど、まるでないかのように「脱炭素」のため、原発新設、老朽原発運転延長を進める。

大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた樋口英明・元福井地裁裁判長は裁判官退任後、「原発は間違いなく、わが国で最も重要な問題である。原発事故が起きればすべては水泡に帰すからである。止めるのは論理の帰結。地球温暖化どころの話ではない」(2021年3月、大阪での講演レジュメ)と述べる。

「CO2説」は根拠が薄弱であるが、原発事故による放射能汚染は確実に生命を、未来を奪う。「地震大国・日本」では次の原発事故が迫っている。老朽原発の60年超運転などを認める「GX脱炭素電源法」は断じて認められない。

◆おわりに

日本政府による「脱炭素」のためEVを推進する政策の問題点を述べてきた。

「CO2説」は科学的根拠が薄弱である。従って「脱炭素」を口実に巨額の補助金を用いてEVを進めることは無意味である。また「CO2説」の是非をさておいてもEVはCO2削減には役立たない。一方、1台のEVの蓄電量は家1軒の約1週間分の電力に相当する。急増する電力需要をまかない、しかも「脱炭素」を旗印にすれば「原発の最大限活用」した方策はない。

電力は利便性が高く、簡単な装置を用いて熱エネルギー、力学的エネルギー、光エネルギーなどに変換できる(近藤 同前)。しかしEVはエネルギー効率が悪く、火力発電による化石燃料を浪費する。電力という大変便利で貴重なエネルギーは大切に使わねばならない。

確かに資源枯渇は迫っているが、松久実は「毎年1%ずつ資源の使用量を減少すれば、永遠に100年分の可採残存資源を維持できる」(松久実『縮小社会への道』2012年日刊工業新聞社)と述べている。

人口減少が進む日本では今後、電力需要を減らしていけるし、原発を廃絶しても電力は十分足りる。ところがEVは電力需要を急増させ、脱成長や縮小社会とは正反対に経済成長を目指すことにつながる。

原発の60年超運転や新規原発建設を阻止するには、EVに対する補助金や減税を撤廃して、EVの普及を止めなければならない。(終わり)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎大今 歩 電気自動車(EV)は原発で走る[全3回]
〈1〉EVで本当にCO2は減らせるのか?
〈2〉EV推進に不可欠な電力需要増大 
〈3〉電力需要を急増させるEV政策は、脱成長や縮小社会の未来志向に逆行する

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

◆EV推進の意図

2022年1月、日本自動車工業会の豊田章男会長はEVによる自動車の買い替え促進が自動車の出荷額や雇用を増やし、経済の循環につながるとして、政府と実現に向けた政策を議論するとアピールした(上岡直見『自動車の社会的費用・再考』2022年緑風出版)。

ガソリン車では買い替え需要が見込みにくい。そこでガソリン車を廃止して、一斉にEVに切り替えることによって、ユーザーに買い替えさせることを目論んでいる。先行する欧米の自動車メーカーにも同様の意図があると思われる。買い替えによって販売を促進できるというわけだ。「CO2説」の背景にはこのような欧米の自動車業界の思惑が見え隠れする。

また、「政府との政策議論」とは、後発の日本の自動車メーカーがEV化に乗り遅れないよう政府による補助金や減税の拡大などの後押しの要求に他ならない。

現在も「脱炭素」を口実にEVや燃料電池車の購入者に対して多額の補助金が交付されている。例えばEVである日産リーフSの小売価格は302万円であるが、CEV(クリーンエネルギー自動車)の直接補助金により38.8万円が支払われ、エコカー減税が4.9万円提供されている(上岡直見『自動車の社会的費用・再考)。豊田氏は補助金や減税のさらなる拡大により、高価なEVの販売を促進したいのである。

1月26日、豊田氏はトヨタ自動車の会長となり、新社長に佐藤恒治氏が就任した。佐藤氏は2月の記者会見で「EVファーストの発想で事業のあり方を大きく変えていく」と断言した。

このようにトヨタは買い替え需要を見込んで補助金や減税目当てにEVに大きく舵を切った。前述の通り、EVはCO2を減らさない。「脱炭素」に役立たないにもかかわらず、自動車メーカーを優遇する多額の補助金や減税の拡大の是非が問われればならない。

◆EV推進に伴う電力需要の急増

EVは多量の充電を必要とする。2020年12月資源エネルギー庁は2050年発電電力量を約1.3~1.5兆Kwhと推測した。これは2018年の発電電力量より約3割~5割多い水準である(橘川武郎『災後日本の電力業 歴史的転換点をこえて』2021年名古屋大学出版会)。

今後、日本では急速に人口減少が進むのに電力供給増加を目指す原因の1つがEVの普及である。EVの生産拡大による電力供給の必要について、前述の豊田章男氏は2020年12月17日、オンライン記者会見で次のように述べる。

「乗用車400万台を全てEV化したらどういう状況になるのか。夏の電力使用のピークの時に発電能力を10~15%を増やさないといけません。原発でプラス10基、火力発電であればプラス20基必要な規模です」
「1台のEVの蓄電量は家1軒の1週間分の電力に相当します」
(加藤康子『EV(電気自動車)推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』2021年ワニブックス)。

このように豊田氏は全EV化は原発や火力発電の大幅な増設が必要と警鐘を鳴らす。政府は「脱炭素」という題目を繰り返しながら、電力供給の急増を明確にしないが、全てをEV化したら原発全面活用が避けられないという事実を暴露した発言は興味深かった。

「脱炭素」のための電気自動車なのに豊田氏が再エネ発電の増設を求めなかったのは、太陽光や風力発電はエネルギー密度が薄くて電力供給が不安定なため、使いものにならないことを知っているからだと思われる。

EVを太陽光発電の蓄電池代わりに使用できるという意見があるが、「大型バスの屋根全面に太陽光パネルを貼って得られる電力は原付1台分」(上岡直見『「走る原発」エコカー 危ない水素社会』2015年コモンズ)という。自宅の屋根にソーラーパネルを貼ってもEVの普通車の充電はとても無理である。また、普通の生活をしているのは昼働き、夕方帰宅してから充電するので、日没後は発電しない太陽光は全く役に立たない。

日産のEV「リーフ」のウェブサイトには「電力供給に余裕のある夜間に充電を行い、電力需要が高まる昼間に貯めた電力を実際の走行や家庭の電力に活用」とある(同前)。「夜間に電力が余る」という前提こそ、原子力発電に密接に関連している。太陽光発電は夜間に発電しないし、火力発電は出力調整ができるので夜間に「電力を余らせる」必要はない(同前)。

結局、原発がEVに最も親和性が強いのである。(つづく)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

3月17日(日)、ドーンセンターで開催された「汚染水を海に流すな! 関西集会」に参加してきた。

講師は様々な反原発関係の裁判の弁護人を務める海渡雄一弁護士。今日はほかにもドーンセンターだけでも様々な催しがあったにも関わらず会場は満席だった。汚染水問題を関西で論じることがあまりないからかもしれない。

海渡弁護士のお話のテーマは「ALPS処理汚染水海洋放出差止訴訟の論点と今後の取組」というものだった。汚染水だけだと、メディアに掲載してもらいにくいため、あえて「ALPS処理」の汚染水としたようだ。これだけでも大変だが、汚染水の海洋放出に対して訴訟を起こさなくてはと考えてはいたが、重要なのは誰が原告になるかで、弁護団らは汚染水放出で一番被害を受けるだろう漁師の方が原告になってもらわなければ…と考えていたようだ。確かに。しかし、当初はなかなか名乗りを上げてくれる漁師の方がいなかったようだ。福島では3・11以降、非常に強い情報統制化におかれている。かつては「鼻血が出ました」と言った井戸川克隆元双葉町長が、ものすごいバッシングを受けた。それを題材にした漫画「美味しん坊」の作者・雁屋哲氏とその周辺のメディアの方は未だに干されたままだという。

「モノをいえなくされてる」。福島の住民が悪い訳ではない。それほど強い同調圧力があるということだ。

 

 

新地町の漁師・小野春雄さん(『季節』2023年秋号より)

そんななか、汚染水の海洋放出では、なんと新地町の漁師・小野春雄さんが原告になると名乗りをあげ、しかも裁判では実名で意見陳述をされたという(原告になった方の中には、それで誹謗中傷されたりすることを恐れ、匿名を希望する人もいるという。鼻血問題のバッシング騒動をみれば、それも致し方ないことと思う)。小野さんの意見陳述全文も海渡弁護士から今日、報告された。小野さんには私も鹿砦社の反原発季刊誌『季節』で取材させていただいている。ぜひ読んで頂きたい。

今日の報告はいずれまたしたいが、ここで言いたいのは別のことだ。海渡弁護士の講演後、質疑応答が行われた。どこでもだが、最初の一人はなかなかでない。ようやく一人質問者が出るとその後何人かが質問してくれる。今日もそうして数人が質問した。ある女性が最近、れいわ新撰組の山本太郎氏の反原発の動画を見ているが……と切り出し、それは「あっているだろうか」という質問のなかで、浪江町を撮ったドキュメンタリー映画「津島」も見たと発言した。

すると海渡弁護士は「会場に浪江から関西に避難している方がいますので、その方に聞いてみましょう」と、私の前に座っていた浪江から兵庫に移住した菅野みずえさんに振った。突然のことであるにも関わらず、菅野さんの発言はいつも通り本当に涙が出る位素晴らしかった。映画「津島」は私も仲間と自主上映会を行った。その時も菅野さんは会場にきてくれて、今日と同じように警告を発してくれた。

津島は菅野さんの家がある地域で帰還困難区域に指定されている。なので、そこに出入りする場合は防護服やマスクを着けなければならない。しかし、映画に出演する村の人たちはそうしていない。出演している人たちはみな、菅野さんの知り合いだし、彼らが話していることは事実だ。しかし、帰還困難区域で映画を撮る際、防護服、マスクなどを着けさせなかった製作者の意図するものは何なのか?と菅野さんはいつも疑問を呈している。いや、疑問を呈するというような甘いものではない。「被ばくに一切触れられてないんですよ」と声を荒げる。

ここで思い出すのは、かつておしどりマコさんが話していたことだ。原発推進派は原発反対論者にも「先生凄いですね。一度お話を聞かせて下さい」と近寄ってくるそうだ。何を話したかわからないが、一度推進派と話した方々は、原発に反対するにしても「被ばく問題」を避けたり、地元に戻って復興を頑張ろうなどに変わっていくというようなことだ。

3・11以降、その誘いに乗って、原発反対でないにしても被ばくを言わない、ことさら問題にしない反原発の方が増えてきた。詳細は言わないが、地元で自ら線量を測って頑張っている人たちや、地元に戻って復興を考えている人たちを称賛する人たちだ。もちろん私は福島に戻って頑張ろうとする人たちを非難している訳ではない。が、だとしても、戻って生活する人たちに被ばくの危険性はありますよと伝えていくのが福島の人に寄り添う支援者ではないか。

菅野さんも仰っていた。誰だってふるさとに帰りたい。でもそのためには村のほとんどを覆う森林を除染しなくてはならない。それを担うのは誰ですか?そして高齢者が村に戻られても、すぐに介護の問題などが生じる。線量の高い汚染地に、遠くからヘルパーさんなど介護する人を呼び寄せて良いのですか?と。

とつぜん意見を求められたにもかかわらず、菅野みずえさんはいつも切々と、「これ以上無用な被ばくをさせていいのですか?」と訴えられる。海渡弁護士のお話もとても重要な話だったが、この菅野みずえさんの話が頭から離れない。先日、汚染水の海洋放出現場でも、驚くようなずさんな作業で多くの作業員が無用な被ばくを強いられたことが明らかになったではないか。どこまで多くの人たちに無用な被ばくを強いるのか?反原発問題で被ばく問題を口にしない人たちを、私は絶対信用しない。

なお、菅野みずえさんの影響で気になりだしたことに浪江町の沿岸部、津波で家屋や田畑が流された請戸地区周辺で進む「イノベーション・コースト構想」だ。昨年、そこを今野さんに案内して頂いた。一体、国は原発推進派は、そして原発で儲けた連中は、そこで何をしようとしているのか? その問題について5月連休明け、「イノベーション・コースト構想を監視する会」の和田央子さんをお招きして講演会を開催します。詳細は追ってご連絡致します。ぜひご参加ください。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

世界最初の核攻撃の爆心地・広島一区の岸田総理は、自称「GX法」により、3.11以降、安倍政権すら維持してきた脱原発依存路線を転換しました。関西電力高浜原発など老朽原発の再稼働を推進し、核のゴミを増やし、上関に中国電力と共同で中間貯蔵施設という名の実は半永久的な貯蔵施設という形で押し付けようとしています。

一方で、福島原発事故の緊急事態宣言は継続中で、デブリ取り出しすらできていません。さらに2024年元日、能登半島大震災が発生。北陸電力志賀原発は、3.11以降は止まっていたこともあって、大事故には至りませんでしたが、油の流出やモニタリングポストの停止など、多くのトラブルが報告されています。その上、避難経路となるべき能登半島の道路が寸断されるなど、もし原発事故があれば避難どころではない現実も示されました。

また、大震災そのものが、複数の活断層の連動で起きています。今までは5km以上離れている断層は連動しない、と国もしてきたのですが、それが崩れた形です。日本全国の原発の安全審査がやり直し、というよりもことごとく、真面目に規制委員会が審査すれば、アウトになる可能性が高いと思われます。にもかかわらず、中国電力は広島から二番目に近い島根原発再稼働を8月にも強行しようとしています。
そうした中で、13年目の3.11を広島も迎えました。

◆島根原発再稼働を許さない! 集会開催

3月10日(日)にはフクシマを忘れない!さようなら原発 ヒロシマ集会が、広島弁護士会館で開催されました。

主催者を代表して山田延廣弁護士は、

「未だ故郷に戻れず、原発の廃炉も進まないのに岸田政権はGX法で原発を再開しようとしている。能登半島大震災で志賀原発の油流出事故が起きた」

「自民党への巨額の献金が再稼働に影響している。お金に影響される政治でいいのか?」

「島根原発の再稼働を目指しているが、いくら避難計画を立てても能登半島のように道路が寸断されたら機能しない」

「フクシマ原発問題は全国の問題。上関の中間貯蔵施設を作ろうとしている。しかし、世論は再稼働賛成が増えている。一方できちんと損害賠償するように求める裁判が闘われている。寄り添うというのはそういう闘いを一緒にやっていくということだ」

 

福島原発告訴団の武藤類子団長がビデオメッセージ

処理汚染水の海洋投棄が進む福島からは福島原発告訴団の武藤類子団長がビデオメッセージ。

裁判では、最高裁の草野耕一裁判官が任命される前に経営していた事務所が東電と利害関係が深かったということで、裁判から外れてもらうよう求めています。武藤さんは、「被害者は権力を持たない市民。中立としての裁判所に期待している」などと、思いを述べられました。

◆島根原発2号機の再稼働を止めよう!

ついで、広島と同じ中国電力管内の島根原発2号機の再稼働を止めよう!と「島根原発3号機差止訴訟原告団」事務局の芦原康江さん(元松江市議)が報告。以下は、芦原さんのお話しの概要です。

「この国は原発事故を忘れようとしているのか?」と問いかけました。そして、「広島にとって原発事故はよそ事ではない。島根原発で事故が起きたら17万人を広島が受け入れることになる。また、福島では島根―広島に相当する160km圏内でも風向きによっては、土壌で10万ベクレル/kgの汚染が起きている」

広島県選出でもある岸田総理が強行した脱炭素電源法=GX法は地球温暖化対策と称して衰退する原子力業界に救いの手を差し伸べていると指摘しました。

3.11福島原発事故を教訓に原子炉等規制法で運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の延長を認めていました。

ところが、それを撤廃してしまったのです。これは、例えば35年稼働している島根原発2号機を5年程度稼働しても採算に合わないからです。

全国知事会も、地方公共団体にきちんと説明しろ、事故が起きた場合には国は被災者への賠償も含め、責任を以って対処すること、という内容に全国知事会提言を2023年8月19日に出しています。しかし、住民の立場からすれば事故が起きた時点でたまったものではないのですから、「もっと踏み込んで住民に寄り添うべき」と芦原さんは知事会を批判しました。

◆避難計画に実効性なし! 明らかになった能登半島大震災

そうして忘れたころに災害が起きたのです。能登半島地震です。M7.6,最大震度7240人が亡くなり、5575棟が全半壊した大震災。志賀原発も震源域のすぐそばにありましたが、不幸中の幸いは福島原発事故以降、運転が停止したままだったことです。放射能漏れなど重大事態にはならなかったが、油漏れを含めて影響は無視できない状態です。

そして、何より、「避難計画」に実行性がないことが暴露されてしまいました。

・多くの家屋が倒壊で屋内退避も不可能。
・道路も液状化や土砂崩れなど寸断で避難が困難。最大24地区3345人が孤立。30km圏内では8地区400人が8日間孤立。さらに21の放射線防護施設のうち、6施設で損傷や異常が発生。
・断水は21施設すべてで発生した。原発事故の場合に支援がいる住民を守る機能が果たせなかった恐れがある。
・また、能登半島大震災では、北陸電力が96kmまでしか連動しないとした活断層の活動は150kmも連動してしまった。これは北電が悪いのではなく、5kmより離れていたら連動しないという国の基準に問題がある。

全ての原発の安全性、信頼性が失われている状態だということです。

◆審査に合格しても安全ではない

そうした中で、島根原発を再稼働させて良いのでしょうか?

島根原発は1号機が1980年に稼働開始し、2015年にすでに廃炉になっています。今焦点となっているのは2号機。1989年2月に運転を開始しています。2021年9月新規制基準に合格し、22年6月2日に島根県知事が再稼働容認を表明しています。2024年8月に再稼働を行う予定です。3号機はまだ稼働しておらず、新基準審査継続中です。

しかし、2号機は審査に合格しても安全ではないのです。基準地震動は820ガルのままです。1000ガルを超える地震動が頻繁に現実には起きているからです。火山噴火についても、近隣の三瓶山や大山の最大規模の噴火は想定していません。更田元規制委員長自身が「新基準に適合しても100寺ベクレルを超える放射性物質の放出を起こす事故の可能性」を否定していません。

こうした中で、2号機運転差し止め仮処分申し立てを芦原さんらは2023年3月10日に広島高裁松江支部に起こしています。中国電力は過小な地震動しか想定していない、というのが原告側の主張です。島根でも、直近の宍道断層だけでなく、鳥取県沖の断層も含めて連動する可能性はあります。

中国電力側は、宍道断層と鳥取県沖の断層は国の5kmより1km遠い6km離れているから大丈夫、というセコイ主張をしていました。しかし、今回の能登半島大震災でそれは否定されています。

また、三瓶山や大山が噴火しているときに事故が起きれば、事故処理のためのアクセスが困難になります。非常用電源を動かすにしてもフィルターが必要になります。そのフィルターを火山灰が降り続く中でどう運ぶのでしょうか?

さらに、県都・松江市にある島根原発で事故が起きれば、46万人が避難することになります。そのうち5万人は高齢者や障がい者などの要支援者で全国最多でです。都会でなおかつ高齢化が進んでいる地域の島根原発。事故が起きれば広島県には17万人が避難してきます。

すでに、どこにどう避難するかは決まっているのですが、広島県などの受け入れ先の住民には全くその説明はありません。

5km以内の住民には敷地境界で5マイクロシーベルト/時が10分以上継続して避難指示が出されるので、核燃料が溶け出しているような状態です。そもそも大震災が起きれば道路も寸断していますから直ぐに避難できず被曝する人が続出するでしょう。

※[筆者注]ちなみに福島原発事故の場合は、皆様もご承知の通り、沿岸部では津波で壊滅的な大被害だったのですが、少し内陸では、能登半島大震災との地震動の性質の違いもあって構造物への被害はさほどではなかった。内陸の東北自動車道が健在で、そこから枝分かれした道路もそこまでの被害はなかったのは不幸中の幸いでした。だから、関東や関西に比較的早く避難した・できた人も多かった。ただ、そのために、避難の困難性が注目されることはなかったとも言えます。

また、5km-30kmの人については500マイクロシーベルト/時の放射線量を記録したらら直ちに退避ということだが、2時間すれば年間の上限に達してしまいます。被ばくすることが前提の計画になってしまいます。

屋内退避をしろ、と国は言いますが木造家屋では被ばくを防ぐ効果は50%しかない。そして、屋内退避中に医療や介護を受けられる計画にもなっていません。そして、施設や病院にいる人は受け入れ先が決まるまで待機となりますが医療ケア対応の車両がたくさん必要になります。

能登半島大震災の時は被災地の人口は10万強ですが島根の場合は46万ですからこの点でも厳しい。しかも、職員の健康や生命を守る対策も不明です。

そして多くの人が車で避難することになりますが、車のスクリーニングもザルです。クルマの汚染がヨウ素剤服用の基準の6倍以下ならフリーパス、基準値を超えれば除染はしますが、乗っている住民は代表者のみ検査。そして、スクリーニングそのものがフル稼働しても164時間かかりそれだけで大渋滞です。

そしてそもそも、避難計画は原子力災害対策指針に基づくものであって、内閣府も避難計画の実行性を全く確認していないのです。

なお、能登半島大震災を受けて、全国の市民団体で原子力規制庁や内閣府に原子力災害対策指針の見直しを求めると、「災害対策は自治体の責任であって自分たちの責任ではない」という趣旨の開き直りをされたそうです。

要は、いい加減な被ばく防護しかせず、災害により住民が酷い被ばくをしても自治体に責任を押し付けるのが国の原子力災害対策であり、それをもとにした避難計画には実効性がかけます。IAEAの求める第5層の防護段階がかけています。

また、核燃料サイクルも破綻しており、だからこそ、上関に予定されている中間貯蔵施設も最終処分場になってしまうのではないか?と指摘しました。

これ以上核のゴミを増やさないためにもリスクだらけの島根原発2号機の再稼働、運転延長は認めてはいけないのです。

◆日本一規制が緩い広島の産廃行政、遠方から放射性廃棄物流入の恐れ

岡田和樹さんからは、上関原発と中間貯蔵施設問題、また産廃問題について報告がありました。岡田さんは、上関原発に反対する運動に参加する一方で、地元の三原市では本郷産業廃棄物処理場の問題に住民の先頭に立って取り組んでおられます。

祝島島民の会に対するスラップ訴訟は、この裁判は、原発建設の埋立予定地付近で漁業をしている祝島の漁船が、中国電力が行おうとしている海上ボーリング調査を妨害しているとして、その排除を求めた裁判です。これに対して島民の会は、祝島の漁民は漁業権に対する補償を受けておらず埋立工事は違法であること、海上ボーリング調査は埋立工事とは直接関係のない調査であること、上関原発の建設は事実上完全に破綻しており中国電力の請求は権利の濫用であることなどを主張して争っています。

「中国電力のお客様でもありこの国の主権者でもあるのはわたしたちだ」と岡田さんは強調されました。

また、岡田さんは、産廃問題にも言及。広島県内の産廃処分場は全国3番目に多く、安定型では2番目です。三原市の本郷産廃処分場だけでなく、広島市内や福山市内の産廃処分場でも汚染水が流出。そして、関東など遠方からもどんどん産廃が広島に入ってきています。そして、現状の産廃行政では、それら遠方の産廃の中に放射性廃棄物が紛れ込んでも全く分からないということです。

三原市では水源保護条例へ向けて動きが詰めの段階に入っています。東広島市や竹原市、尾道市でも続く動きが出ています。

「行政が被害を受ける住民の立場に立ってほしい」。そのために自治体に条例を、と岡田さんは強調されました。

最後に岡田さんは「上関中間貯蔵施設」に反対する立場から「芦原さんらがいらっしゃる前で申し上げるのは心苦しいが、核のゴミは発生場所で保管するしかない。だからこそ、核のゴミを発生させる島根原発再稼働は止めさせなければいけない」と述べられました。

◆3.11を忘れた? 追悼の半旗掲揚を止めた? 中国電力

 

3.11当日、中国電力本店前で抗議

翌11日の3.11当日には、島根原発再稼働の強行をもくろみ、また関西電力と共同で核のゴミの自称「中間」貯蔵施設を上関に造ろうとしている中国電力本店前で「上関原発止めよう!広島ネットワーク」呼びかけで抗議の街宣と署名提出が行われました。

木原省治さんが代表してスピーチ。「311なのに、半旗を掲げないのはいかがなものか?もう忘れてしまったのか?」と疑問を呈しました。

その上で、今もデブリの取り出しさえできていない東日本大震災。そして、モニタリングポストが壊れ、道路の寸断で原発事故だった場合に避難どころではないことが明らかになった能登半島大震災の教訓は、島根原発再稼働はすべきでないということだがなぜ生かせないのか?

また、上関中間貯蔵施設もつくるべきではないということを繰り返し訴えました。また、国は原発のリプレースではない新設はしないといっているのに中国電力はなぜ、純粋な新規原発である上関原発計画を維持し、埋め立て免許を申請しているのか?と疑問を呈しました。

その上で、上関原発計画は42年間も住民を分断している。これ以上住民をいじめないでほしいと中国電力にお願いしました。

 

藤井純子さんが島根原発再稼働に反対する署名を中国電力に提出。横断幕中央付近の人物が筆者

最後に、溝田一成さんが代表して中国電力に対して後記申し入れを行い、また、藤井純子さんからは、島根原発再稼働に反対する署名が提出されました。

なお、中電は毎年玄関前に国旗の半旗を掲げていたけど、なぜか今年はなかった。それで、それを木原さんが中電社員に問いただしたら、回答不能に陥ったそうです。ところが、なぜか私たちの街宣終了後の15時15分頃に急に半旗を掲げ始めたそうです。

国旗への賛否はともかく、半旗を忘れたということは、3.11が中国電力の皆様の頭からも消えているということに他なりません。そうした中で、のど元過ぎれば熱さ忘れる、で島根原発再稼働や上関中間貯蔵施設をやられたのではたまったものではありません。

引き続き、総理の地元の有権者としても声を上げ続けたいものです。

中国電力株式会社
代表取締役社長 中川賢剛 様

「島根原発2号機の再稼働」中止等を求める311声明

2011年3月11日に福島原発事故が発生しました。今日で13年目になります。しかしながら、未だ事故は収束しておらず放射性物質を放出し続けています。現在も福島県の人びとの命や生活を脅かし、貴重な森林や河川も汚染され続けています。除染ができたと宣言しても放射能値はまだまだ高く、帰還する人は少ない状態です。原子炉の廃炉作業は遅々とし進まず到底廃炉などできそうにありません。また、たまり続ける放射能汚染水の放出では、世界の人々の懸念をよそに海洋排出が続けられています。こんなことはすべきではありません。

今年1月1日に発生した能登半島地震は、石川県の「志賀原発」事故を発生させる寸前の規模でした。また2月26日には、愛媛県の「伊方原発」のすぐ近くでマグニチュード5.1の地震が発生しました。日本列島は今も地震活動期にあります。

しかし、中国電力は、地元住民による反対の声を無視して、島根原発2号機の再稼働を8月に行う姿勢を変えていません。そもそも中国電力は、島根原発近くにある活断層の存在の隠蔽、点検漏れ、虚偽報告などの不祥事を繰り返しています。

また、上関町での原発建設計画も断念しておらず、突然昨年8月に「使用済み核燃料の中間貯蔵施設」建設計画を発表しました。

私たちは、福島原発事故から教訓を学び、危険で放射性廃棄物の処分・処理ができそうにない原子力の利用はやめにして、原子力以外のエネルギー源で発電すべきだと考えます。中国電力に、下記3点の実行を要請します。

=要請3項目=
1、島根原発2号機の再稼働を中止すること
2、「上関原発」建設計画を白紙撤回すること
3、「中間貯蔵施設」建設計画を白紙撤回すること

2024年3月11日
上関原発止めよう!広島ネットワーク

                      
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

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《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
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《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
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◆阪神淡路大震災後の新長田駅 ── なぜここに「小川」なのか?

29年前の1995年1月17日に発災した阪神淡路大震災のあと、私は神戸のあちこちに支援に入った。最初は避難所に、そのうち様々な理由から街中の公園や空地にテントを張り避難している人たちに支援物資を届けるようになった。

 

新長田駅周辺に流れる「小川」

火災で街を消失させた長田を訪れたのは震災からひと月後だった。その間何度か雨が降ったのに、焼け野原になった街にはまだ煙の臭いが漂っていた。

それから神戸は何度も訪れていたが、その長田を訪れたのは数年前だ。新長田駅に降り、いかにも復興のために建設されたような「アスタくにづか1番館」というビルに入る「神戸映画資料館」の上映会に行ったときだ。一緒に行った知人が、駅の反対側に冷麺の有名な店があるというので、上映前に寄り、そのあと街を散策した。

在日の人たちが多数住んでいたその街には、私の知人男性も、両親とケミカルシューズの工場を営んでいた。震災前の街は、メディアなどでしか知らなかったが、街は「復興」の名のもと劇的に様変わりしていた。

あるビルの前に小さな「小川」が流れていた。小川と言うより、その一角だけを流れる「小川」。火災の際、消火機能をもつ小川ではない。復興で乱立して建てられたビル群をおしゃれに演出するように流れる短い小川を見て、私はふと違和感を覚えた。長田の町におしゃれな小川が似合わないというのではない。でもなぜここに「小川」なのか?

◆3・11後の飯舘村 ── 村営復興住宅と三菱総合研究所

それと似た違和感を、私は、3・11以降、仲間と支援してきた福島県飯舘村でも感じた。飯舘村の面積は大阪市とほぼ同じ面積でそこに20の行政区があった。震災後作られた「いいだてまでいな復興計画」(「までいな」とは村の方言で「丁寧に」「心を込めて」を意味する)では、当時帰還困難区域だった長泥地区を除く19の行政区全体で計画が進む予定だった。

しかし、2013年9月、安倍晋三首相(当時)がIOC総会で「汚染水は制御されている」という嘘のプレゼンテーションを行い、2020東京五輪の招致に成功して以降、大幅な変更を余儀なくされた。村の中心にある「深谷地区」が復興拠点に選ばれ、村の復興はそこを集中的に進めることとなった。

なぜ深谷地区か? 深谷地区には村で唯一の幹線道路が通っており、復興はその道路上に「ハコモノ」を並べる形で進んだ。コロナ感染拡大などのため1年延期で開催となった東京五輪、注目を浴びる聖火リレーで飯舘村の走者は、幹線道路脇に建てられた「ふれ愛館」と道の駅「までい館」の間を走ることとなった。

前述したが、飯舘村の面積はほぼ大阪市と同じ。そのふれあい館からまでい館の距離は短く、大阪市内で例えれば心斎橋駅から難波駅までの1区間だ。その間を走者が走り、世界中から来日したメディアがその姿を追うだろう。道路脇に建てられたハコモノが全世界に披露され、世界中に「福島は、飯舘村は復興した」とアピールできたであろう。しかし、安倍政権のこの思惑は実質失敗に終わったのだが。

2019年、私は深谷地区を再び訪れ、までい館の裏に建設・整備された村営復興住宅を見に行った。赤、青、黄のカラフルな、まるでおとぎの国に出てくるような家々……。私はそこでも強烈な違和感を感じた。飯舘村の人にこんなにカラフルでかわいいい家が似合わないというのではない。しかし、こんな家は村に戻る人たちが住みたいだろうか?あるいは住みやすいのであろうか?
※飯舘村深谷地区に建設された復興住宅 https://twitter.com/i/status/1117912386554384386

じつは、飯舘村の復興計画には、原発メーカーの三菱の系列の大手コンサルタント会社・三菱総合研究所が事務局で関わっている。そう考えると、までい館裏に建てられた復興住宅が、三菱所員が都内の一等地、空調の効いたこじゃれた設計事務所で「線をひいた」みたいな復興計画だということが良くわかる。

そこには膨大な復興予算がつぎ込まれ金の一部は当然、三菱総合研究所にも流れていく。ちなみに飯舘村と共同で進むメガソーラーに関わるのは、同じく原発メーカーの東芝だ。一昨年亡くなった飯舘村の元前田地区区長の長谷川健一さんが著書「原発にふるさとを奪われて」に書いていたように、「原発事故で多大な損害を受けた村が、原発で禄を食(は)んできた彼らの世話になる理由などないからです。そもそも彼らは抗議をする相手なのであって、世話になるパートナーではないのです」。

◆「原発を動かしては儲け、原発を壊しては儲けているハイエナ」のような連中

3月6日、ある男性が「復興はビジネスだ」と訴えた動画がX(旧Twitter)に投稿、250万回近く再生されている。ぜひ見て欲しい。この方は高山俊吉弁護士。現在も続くウクライナとロシアの戦争について話しているのだが、先の飯舘村の例を見ればわかるように、同じことが原発事故にも言えるのではないか。
※高山俊吉弁護士が「復興はビジネスだ」と訴えた動画
https://x.com/necoakachan/status/1765286053693231595?s=20

しかも、「復興」を被災した人たちのためともいわず、露骨に「金儲けのため」といわんばかりの計画が進んでいるのが、浪江町の請戸地区周辺だ。この地区は、地震で津波が押し寄せ、ほとんどの家屋などが流され、一面広大な更地になった。私が初めて訪れた2018年には、周辺に大きな工場がいくつも見えたが、それが何の工場なのか、どのような計画が進行しているのかはわからなかった。

2019年請戸地区を訪れた際には更地のあちこちに大きな工場が建てられていたが……

同じ場所を昨年、今野寿美雄さんの案内で訪れた。今野さんのお話から、ここには様々な工場が誘致されているということだ。中には、飯舘村の復興に関わり大いに儲けた原発メーカー、あるいは全国の原発で労働者に被ばく労働を強い、儲け続けるゼネコンなどが関わっているということだ。

まさに「原発を動かしては儲け、原発を壊しては儲けているハイエナ」のような連中が集まってきているのだ。

今年元旦に発生した能登半島事件でも同じことが起こるだろう。金沢在住の知人から、能登半島には、数戸の古い家屋が点在する過疎地が多数あると聞いた。その知人が呟いていた。

「能登半島に現在残っている過疎地の年寄りの排除が出来た後ににやってくるのがリゾートなのか原発なのか廃棄物処理場なのか軍事基地なのかわからないがよく見ておく事にする」。                 

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

本年1月1日夕刻、石川県能登地方を中心に強い地震が発生、本稿執筆時点で死者240名を超え、避難者は1万4000名以上。またしても地震による大きな被害が生じています。1995年の阪神大震災以降、日本は地震の頻発期に突入し北海道から九州まで広範囲で震度7が記録されています。震災列島です。各地で大地震に被災された方々は言い尽くせぬ苦難に直面されてきました。

それでもわれわれは、2011年3月11日を特別な日として記憶すべきです。地震や津波により甚大な被害が生じたのみならず、国・電力会社が「絶対に苛酷事故は起こさない」と言い張っていた原発で、4機が爆発する人類史上未体験の大事故が発生した日だからです。

地震を含め自然界には「想定外」の事態が起こり得るし、自然の力を「想定する」力など人間には「ない」ことが証明された。そのことこそが教訓化されるべきでした。しかし、東日本大震災から13年、阪神大震災から29年を経ても、真っ当な教訓化は不充分です。

能登地方に生じている被災状況を鑑みれば、大地震発生後の救助・救援対策に限っても日本政府の対応が進歩しているのか、大きな疑問です。地震発生後1月以上経過しても、高齢者が極寒の中、学校の体育館の床に段ボールを敷いただけで寝起きしています。

阪神大震災以降、数々大地震の経験から、何を学んだのか。東日本壊滅=日本の終焉を、偶然により回避した福島第一原発事故は「地震国日本に原発を建てることができる場所はない」事実を示しました。ところが日本政府・電力会社は厚顔無恥にも詭弁を重ね、原発運転期間を40年から60年に引き延ばしたのみならず、新しい原発の増設にまで言及しはじめました。

本誌は繰り返し原発の根源的危険性を指摘してきましたが、本年1月1日に発生した能登地方の地震では、なんと地盤が最大4メートル隆起して、海が陸地化した地域が広大に生れました。「地盤が隆起し海が陸になる」場所に住宅は言うに及ばず、高層ビル・地下鉄・いわんや原発を建設しようと考える人がいるでしょうか。

本号では3・11前、2006年に金沢地裁で志賀原発運転停止命令の判決を下した元裁判官(現弁護士)の井戸謙1氏と3・11後、福井地裁で大飯原発運転停止を命じる判決を下した元裁判官、樋口英明氏、そして小出裕章氏にご寄稿いただきました。

きょうと同じ明日がくる保証はありません。猶予はない、と考えるべきです。原発を廃絶しなければ、この国の破滅は必至です。

2024年3月
季節編集委員会

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆はじめに

菅義偉前首相は2020年10月の所信表明演説でCO2など温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。その後、日本政府は自動車産業においては電動化し、2030年代半ばにはガソリン車の新車販売を廃止するという方針を打ち出している。

電気自動車(EV)は確かに走行中はほとんどCO2を発生しない。だから「人為的CO2温暖化説」に基づいて欧米諸国はEVを強力に推進する。EVは2020年には726万台(新車の9.5%)生産され、21年に比べて7割増大した(2023年4月9日付け京都新聞)という。日本の自動車メーカーは出遅れているが、EV化を急ぐ。

しかし、そもそもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが主張する「人為的CO2温暖化説」は正しいのか。また、電気自動車(EV)はCO2削減に役立つのか、さらにEV化に伴う大幅な電力需要の増大が岸田政権の打ち出す「原発の最大限活用」につながっている問題点について考えたい。

◆「人為的CO2温暖化説」に科学的根拠があるか

前述の「実質ゼロ宣言」を受けて2021年11月、衆参両院も全会一致で「気候非常事態宣言」を採択。「1日も早い脱炭素社会の実現をめざす」とした。「脱炭素」の根拠はIPCCの「人為的CO2温暖化説」(以降CO2説)であるが、これに対して科学者の中には「科学的根拠が薄弱なまま政治的に引き回されている」(小出裕章『隠される原子力・核の真実』)などの意見が根強い。

確かに19世紀後半以降、温暖化の傾向は見られ(150年間で1度程度の上昇)、CO2は増大している。しかし、地球はこれまで温暖化と寒冷化を繰り返してきた。そして気温の高い時、CO2の濃度は高い。その理由は、温暖化により海洋に溶けていたCO2が大気中に放出される結果、CO2が増大するのである。「CO2説」は原因と結果を取り違えている(近藤邦明『温暖化の虚像』電子書籍)。

そして、「気候変動」についても十分な検証が必要である。温暖化による「台風の巨大化」について、池田清彦は「気象庁のデータを全部調べてみたが、日本では台風の数は傾向として徐々に減っているし、大きさも小さくなっているし、被害総額も昔の方がうんと大きかった」(池田清彦『環境問題の嘘 令和版』2020年MdN新書)と述べる。

このように「CO2説」は科学的根拠が薄弱な上、「気候変動」も統計による事実と異なっている。しかし、「脱炭素」を名目にEVに多額の補助金、減税が注がれている。そして、日本政府が「脱炭素」の根拠とするIPCCの提言の最大の問題点は、化石燃料に代わる「クリーンエネルギー」として、再エネ発電と共に原発を推奨していることである。

◆EVでCO2は減らせない

「CO2」説の是非はさておいて、EV化によってCO2は減らせるのか。確かにEVは走行中はCO2を出さないが、充電する電源は、77%が化石燃料を用いた火力発電である。(2018年度資源エネルギー庁)。

ガソリンエンジン車のエネルギー効率(燃料の燃焼熱のうち、自動車駆動に利用できるエネルギー)は20%台である。

一方、EVに火力発電による電力を充電して使用する場合、火力発電のエネルギー効率を35%として送電や車載リチウムイオン電池に対する充電・放電損失を考慮すると、やはり20%となり、ガソリン車と同程度となる。

しかしEVに搭載するリチウムイオン電池の重量は日産のEV「リーフ」では300kg以上もある。EVの重量はガソリン車よりも30%程度重いため、火力発電所で投入される化石燃料は30%程度多くなる。

また、リチウムイオン電池の製造には大量の電力が必要なことなどを総合的に判断すると、ガソリン車よりもEVの方がCO2放出量は多くなる(近藤邦明『工業文明の持続可能性について』2023年)。

このようにEVは「脱炭素」を名目に推進されているにもかかわらず、かえってCO2放出量を増やしてしまう。(つづく)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
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 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

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 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
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《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
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能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

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