治療継続を訴えるメッセージ

もし、あなたが、いずれかのがんと診断されていて、その部位の「がん治療に抜群の実績を上げている先生がいる」と聞いたら、どうなさるであろうか。「一度診てもらおう」と考えるのは、ごく自然だろう。だが、遠路はるばるその病院を訪ねたのに、肝心の担当医が、定年退職でもないのに「辞めさせられる」と聞かされたら、あなたはどう感じるであろうか。

そんな苦悩に直面している患者さんたちがいる。本通信で何度か紹介してきた「滋賀医大病院小線源治療講座」の閉鎖も問題である。患者会のメンバーは自主的に、あるいは患者会として全国各地でチラシ配り、署名活動を展開してきたが、12月23日(日)、24日(月)の両日は滋賀医大附属病院に近い、JR草津駅前で広報・署名活動が展開される。23日午前草津駅前に患者会のメンバー31名が集まり、11時から待機患者さんが窮状を訴えた。

待機患者の月原さん

◆待機患者・月原さんの訴え

「私は奈良県在住の月原と申します。私は今から16年前に父を亡くしました。前立腺がんが骨に転移ししたことが原因で約6年半の闘病生活を経ての死です。そのため私自身前立腺がんについては、常に意識して、早め早めの取り組みをすべく定期的なPSA検査を受けておりました。今年になりPSAの数値が上昇したので、8月に生検(細胞検査)を受けた結果、前立腺がんが見つかりました。その時のショックは今もよく記憶しております。すぐに治療方法について医師から説明がありましたが、いずれも再発に不安を覚えました。そこで家内と、再発のない治療方法をインターネットなどで探した結果、滋賀医大岡本圭生先生の小線源治療にたどり着きました。早速岡本先生にメールしたら、すぐに返事がきました。『紹介書や手術時のデータを揃えなさい』。すべてそろえた日に先生に連絡したら『10月11日に会いましょう』と、これまた即返信が来たのです。

とてもお忙しい方のはずなのに、このクイックアクション。なんと患者思いの温かい先生なのかと感動しました。無事岡本先生に会え次回は12月末に具体的な治療計画を相談することになっており、『よし、これで治療してもらえるぞ』と安堵していた矢先、『入院が来年7月以降になるので確約できない』という連絡が来ました。最初何を言われているのか、意味が分からなかったのですが、滋賀医大が来年12月で岡本先生の講座を閉鎖。それに先立ち7月以降の治療を停止する、ということを知らされ、『なぜ多くの待機患者が実在するのにどうして切り捨てるような措置ができるのか。国民の税金で経営されている、国立大学附属病院にそんな勝手が許されるのか。私は一気に奈落の底に突き落とされました。

署名に応じる方々

岡本先生と寄付講座の運営会社は7月以降の治療停止は、人道上・公益上反対されていると聞いています。岡本先生が病院におられ、治療希望患者がたくさんいるのにさせない。こんなこと国立大学附属病院としてありえないことではないでしょか。また病院側は不当かつ未経験の治療を行おうとした成田医師が「後任」と宣言しています。我々患者の命をどこまで軽視するのか、憤りを感じずにはおられません。

私は岡本先生の治療を受けたい。真の健康を取り戻したい。そして同じ病気で苦しむ方々に、同じ喜びを味わってほしいと強く思います。滋賀医大の関係者の方々、何が正しいのかを胸に手を当てて考えていただきたい。患者軽視の滋賀医大ではなく、患者ファーストの岡本先生が正しいことは誰の目にも明らかです。どうか私ども全国の待機患者に新たな希望を与えてください。切にお願い申し上げます」(待機患者の月原さん)

待機患者の横田さん

◆待機患者・横田さんの訴え

「彦根の横田と申しますよろしくお願いします。私の場合ことの発端は本年10月5日に大津の医療機関で前立腺肥大の状況がわかり、血液検査の腫瘍マーカー検査の結果98.0の異常値を通知されました。至急に総合病院泌尿器科で検査治療を行うことを指示されました。その後約1月にわたり彦根の医療機関で辛い検査の日々で、MRI、CT、骨シンチの検査と続き11月2日に担当医師から検査結果を通知されました。結果は悪性度も進行度も高い、高リスクの前立腺がんの確定診断であり、膀胱へ浸潤している可能性もあり、その場合は根治の期待はできない、というものでした。検査前から私の娘からの情報を得て、岡本医師の小線源療法を希望していましたが、私の症例からは、受けてもらえるかどうかは岡本医師の判断による、とのことで、祈る思いで滋賀医大を受診しました。

11月5日診察当日岡本医師からは治療に関しては正面から受けていただきました。しかし残念なことに現医療体制に期限が決められている掲示を見て驚き、岡本医師からは「掲示してあるとおりです」というようなことを言われたのみです。治療の方針はトリモダリティー。トリモダリティーとは高リスクの場合に行われている治療法で、ホルモン治療、放射線内照射、放射線外照射を併用するもの、の明言があり当日からホルモン治療を開始していただきました。その日前までは骨への転移の恐怖感から仕事中も含め、起きている間は「死への不安」で押し潰されそうな毎日を過ごしていましたが、その日からは転移の可能性が低減されたことや、何よりも先生から『私であれば治すことができる』と言っていただきましたので心の状態は病気発覚前の状態に戻り、10月は発熱などで仕事も休みがちでしたが、それも解消しました。岡本先生を信頼し、根治の希望を託し任せるしかないと思いました。次回受診日は2月ですがその後の治療計画は白紙ですし、確実なものは何もありません。こんな状況で、現治療体制の継続を切望し、自分にできることを開始しようと患者会の署名活動を行ってきています。職場や地域の方から200人ほどの賛同署名を頂いております。どのような状況になろうとも、岡本先生に最後まで治療を受けることを望んでいます」(待機患者の横田さん)

待機患者の訴えの後、メンバーは5グループに分かれ、チラシ配り、署名活動を開始した。午前中は穏やかな天候に恵まれ、総計1216枚のチラシを配布し、419筆の署名が集まった。この日の活動には東京、名古屋、四国などからも患者会のメンバー31人が参加した。

署名する親子

◆利他で貫かれた「患者会」の活動

一方、患者会メンバーの中には、街頭活動には参加できないが、裁判などに使われる情報の整理や加工、運動方針の議論、待機患者さんとの相談窓口など、個々人の個性を活かした活動が展開されている。患者会メンバーには医師、エンジニア、元官僚や現役の大学教員、自営業とバックボーンはそれぞれだ。

しかし、治療を受けて前立腺がんを克服した患者さんたちが、待機患者さんにも治療の機会を確保しよう、自分が享受した、前立腺がん完治の喜びを「知らない誰かとも」共有したい。まったく私利がなく、利他に貫かれているのが「患者会」の特徴だろう。無私の活動に頭の下がる思いだ。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

集合した患者会メンバー

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

現在発売中の『紙の爆弾』1月号の中に、ジャーナリスト山口正紀氏による、〈がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作〉が掲載されている。滋賀医大では前立腺がんの患者に、小線源治療を用いて治療する岡本圭成医師が、ハイリスクの前立腺患者にも、もともとがんの転移がなければ、施術後ほとん再発をしない、極めて卓越した実績を上げる治療を行っている。

ところが、滋賀医大は岡本医師の治療を来年(2019年)6月で打ち切り、12月には岡本医師を滋賀医大から“追放”することを宣言している。どうして、極めて卓越した治療実績を持つ岡本医師を“追放”しようとしているのか? その理由と背景は『紙の爆弾』1月号の山口氏のレポートを是非お読みいただきい。

チラシ配り、著名活動に立ち上がった患者会のメンバー

他方、既に岡本医師の治療を受けた患者さんたちで構成される「滋賀医科大学 小線源治療患者会」のメンバーは滋賀医大の地元や東京、名古屋、京都、大阪、奈良など全国各地で「岡本医師による治療の継続」を求めるチラシ配りや署名活動に、自主的に立ち上がった。

というのは、岡本医師に治療を受けた患者さんたちは全国から滋賀医大にやってきており、北海道から沖縄にまで患者さんが散らばっているからだ。現在岡本医師の診断を受けている患者さんの7割以上は県外からの患者さんだという。

患者のAさんは兵庫県在住だが、これまで何度も滋賀医大最寄り駅であるJR瀬田駅にチラシ配りに出向いている。わざわざ瀬田駅でのチラシ配り、署名活動に参加するために長野県から駆け付ける患者さんもいる。名古屋でチラシ配り、署名活動を行っているBさんは「治療実績が優秀な岡本先生の治療を、多くの方に受けて頂きたいと思います。名古屋にも患者さんはたくさんおり、来年の6月以降治療が受けられるかどうかわからない方もいます。『人の命』がかかっているのに、それを切り捨てようとする滋賀医大の姿勢は許せません」と語る。

草津駅前での署名活動

ちなみにBさんはこれまでチラシ配りや署名活動の経験は一切ないそうだ。「患者会」のメンバーは滋賀医大で起こっていることの本質を少しでも伝えたいと、全力で奮闘しているが朝日新聞など一部を除いてマスメディアの扱いは決して大きくない。

そして、ついに滋賀医大で、「さらに深刻な事態が発生した」、と患者会のメンバーから連絡が入った。法廷で係争中の案件につき、ここではこれ以上詳しく触れないが、「人の命」にかかわる深刻な問題が滋賀医大では、さらに進行している。

あまり知られていないが前立腺がんは、男性であれば肺がんや胃がんと同様の確率で発症する病だ。誰にとっても他人事ではない。しかし治療の方法がある。治療できる医師がいる。そうであればどうして患者を救うために、その術式の普及を促進しないのだろうか。逆に難治性の患者でもほとんど再発させない、実績を持つ岡本医師をどうして排除しようとするのか?滋賀医大は「命」にかかわるこの問題に、正面から回答する義務があろう。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
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兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作

患者さんの訴え

◆集会には120名超が集結

11月27日13:10から大津地裁で、4名の原告が滋賀医科大学医学部附属病院、泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を訴えた裁判(事件番号平成30わ第381号)の第二回期日が開かれた。この裁判についてはこれまでも2回報告しているので、背景にお詳しくない方は、そちらをご覧いただきたい。

正午から大津駅前で、患者会による集会が開かれた。患者会員数は、既に900名を超えているが、この日は120名以上のひとびとが大津駅前を埋めた。司会者は既に治療を終えらた患者さんであるが、この日の集会では、患者会のアドバイザーとして活躍していながら、ご自身も8月に癌が見つかり、現在闘病中の山口正紀さんから寄せられたメッセージを司会の方が読み上げた。やや長文になるが、初めてこの事件に接する方には参考になるので山口さんからのメッセージ全文をご紹介する。

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◆山口正紀さんからのメッセージ

滋賀医大病院による人権侵害の責任を問い、患者切り捨てと闘う裁判の第2回口頭弁論報告集会に各地から参加された皆様、患者会アドバイザーとして皆さんの闘いに参加させていただいているジャーナリストの山口正紀です。10月9日の第1回弁論の集会で少しお話させていただきましたが、9月初めに「ステージⅣの肺がん」が見つかって治療に専念せざるを得なくなり、本日の弁論、集会に参加できず、ほんとうに残念に思っています。

患者会は、発足からわずか半年で900人を超える大きな集まりになったとのこと。どれほど多くの前立腺がん患者が、岡本圭生先生の小線源治療に生きる希望を見出し、その講座継続を願っているかを物語る数字だと思います。しかし、滋賀医大病院泌尿器科の河内医師や松末院長たちは、そんな患者の皆さんの切実な思いなどまったく想像もできないのでしょう。この裁判でも、不必要・不適切な、治療とも呼べない人権侵害行為で原告の方々、多くの患者さんに重大な被害を与えたことを謝罪もせず、それどころか、患者さんを救った岡本先生を病院から追放しようと躍起になっています。
昨年末、病院のホームページに掲載された「講座閉鎖」の告知を読んで、本当にびっくりし、あきれ果てました。「小線源外来の終了後は、泌尿器科において、標準的な小線源治療の開始を予定している」と言うのです。

しかし、この「標準的治療」とは、いったいどんな治療なのでしょうか。小線源治療には高度な知識と熟練した技術を要しますが、それを一度もやったことがない成田医師らが、そのことを患者には黙ったまま、手術をする。そういう患者を無視した行為を「標準的な治療」と言っているのです。これは、まさに岡本先生が医師の良心にかけ、勇気をもって未然に防いだ患者のモルモット化を、今度は病院公認でおおっぴらにやろうとするものです。しかも病院の告知は、岡本先生の外来を閉鎖した後、「患者さんのご希望に沿って本院泌尿器科で経過観察する」と言っています。どこまで患者をバカにすれば済むのでしょうか。患者を実験台にしようと企み、それがばれても被害者に謝罪もせず、それどころかその悪事を未然に防いだ岡本先生を追放する。そんな医師にあるまじき連中に「経過観察」を任せるような患者がいる、とでも思っているのでしょうか。心底、患者をバカにした告知ではありませんか。

これまで、大学病院当局のパワーハラスメントの中で、がまんを余儀なくされてきた岡本先生が11月16日、ついに堪忍袋の緒が切れて、病院による名誉毀損と闘う仮処分を申し立てられました。その記者会見の様子が、デジタル鹿砦社通信に載っています。待機患者として参加された東京の山口淳さんの話には、ほんとうに心を打たれます。〈がん告知後の悪夢の中で、ようやくたどりついた岡本先生の外来が閉鎖されようとしている。不安いっぱいの中で送ったメールに岡本先生からメールが返ってきて、先生の診察を受けることができた。けれども来年、ほんとうに手術を受けることができるかどうか。もしかしたら、また死を覚悟しなければいけない状態に舞い戻るかもしれない。もし、岡本先生の講座を廃止する非情な措置が取られたら、我々の生きようとする希望が失われてしまう〉山口淳さんはこう訴えられました。

いま、ステージⅣの肺がん治療に取り組み始めたばかりの私にとっても、この訴えは100%、切実に共有できます。私もこの間、生き延びるための治療を求めて不安な日々を送ってきました。こんな患者の皆さんの痛切な思いを、滋賀医大病院泌尿器科の医師や病院長、学長は、なぜわからないのでしょうか。わかろうとしないのでしょうか。先日、地元の滋賀県をはじめ、名古屋や東京など全国各地で患者会の皆さんによる街頭での訴えや署名活動が始まった、とのことです。いま滋賀医大病院で起きている患者切り捨て、暴力的な「岡本医師追放工作」の実態を一人でも多くの市民に知らせる。それが、大学と病院当局に反省を迫り、小線源講座の継続を実現するための最も近道だと思います。この裁判もその重要な一環です。

私も引き続き、皆さんの闘いに参加したい、そんな思いから、鹿砦社から出ている『紙の爆弾』という月刊誌の2019年1月号に、「がん患者の命綱を断ち切る暴挙」という8ページの記事を書きました。この問題の背景と本質、患者会と岡本先生の闘いの意義について、わかりやすく書いたつもりです。12月7日ごろには、書店に並ぶと思います。定価600円です。ぜひ書店でお買い求めいただき、今後の地域や街頭での訴え、署名活動などでこの問題を市民に説明する際の参考に使っていただければ、と思います。また皆さんと一緒に、口頭弁論当日の大津駅前集会や、裁判報告集会に参加できる日が来るよう、頑張って治療に励みます。皆さんは、闘う相手が病気だけでなくてたいへんだと思いますが、滋賀医大病院の悪事と闘いながら、お体にも十分気をつけてください。「裁判勝利・小線源講座継続」に向けて、ともにがんばりましょう。

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山形県から駆け付けた患者の家族

◆山形県から駆け付けた参加者も

続いて、岡本圭生医師の治療を待つ「待機患者」さんと、原告の方からそれぞれスピーチがあった。既に治療を終えた患者の中には「これからは待機患者さんを救うのが一番の目標です」と語った方がおられ、多くの方が同意されていた。前回もこの集会を取材したが、今回は女性の姿も目立った。患者をご家族に持つ方々だ。その中には、山形県から駆け付けたご家族の姿もあった。

◆弁論進行の様子

13時近くになり、患者会のメンバーは大津地裁に集合した。法廷の傍聴席は55席しかない。多くの方が傍聴することができず、閉廷後に開かれる記者会見会場に移動した。傍聴席が満席になり、原告側には原告二人と弁護団、被告席には被告側弁護士2名がそろい、西岡繁靖裁判長が開廷を告げた。

西岡裁判長は被告側から提出された準備書面1を確認し、甲号証(原告側証拠)の取り調べ(確認)を行った。被告側から「文書送付嘱託の申し出」が法廷に提出されたので、西岡裁判長は「その必要性等、あるいはどういう文章か概略ご説明頂けますか」と被告代理人に問うたところ、岡田弁護士は「本日遅れまして申し訳ございません。文書送付嘱託の申し出をさせていただきました。診療録の送付嘱託の申し立てでございます。既に甲号証で正本として出されてはいますが、本件につきましては訴状でもかなり詳しく診療経過等について、説明をされていますので、診療経過を全部確認するという意味において、診療録の送付嘱託をお願いしたい次第であります」と述べた。

西岡裁判長は原告弁護団に意向を確認した。井戸弁護士は「裁判所が送付嘱託の判断をされることは、『然るべく』、ですけれども、病院がそれに応じるとなれば、ご本人の同意を求めてこられる。それについてはご本人たちが同意するか、しないかは、『然るべく』と。代理人としてはそれに関与しない」と判断を述べた。

西岡裁判長は「ご本人の同意はご本人が判断されることなので、裁判所も関与できる話でもありませんし、被告代理人も関与できない、というお話でした。『然るべく』ということなので、裁判所としては採用いたします」と述べた。さらに「今回の被告の主張を大雑把に要約すると、平成27年以降、岡本医師の指導の下で、被告らが診療にあたる。要するにチーム医療としてやる、という体制でやっていたけれども、平成27年12月に、今回のご主張によると、岡本医師が被告の指導を実施しないという懸念が生じたと、いうところでその体制を見直しをして、岡本医師に患者さんを担当してもらうようになった。そういうご主張なんですね」と被告側に確認し、被告代理人は頷いた。そして「裁判所としては進行協議でご相談できればと思っております。双方お願いしていいですか」と原告被告双方の弁護団に尋ねた。

双方が合意し、別室での「進行協議」が行われることになり、この日の弁論は終結しそうになったところ、井戸弁護士発言を求めた。「準備書面1を出されて、証拠は出されていないのですが。例えば4ページの下から5、6行目。私もまったく知らなかったのですが、『外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は』、云々と書かれていますね。こういうものは裏付け資料が出せるのであればと思うのですが、無いのでしょうか」と被告弁護団に尋ねた。被告側は「その点は出したいと思います」と回答した。

井戸弁護士の質問を補強する形で西岡裁判長は「いまのご質問は一例ということで、今回被告のご主張を精査していただいて、取り寄せで確認しなければいけない物は、取り寄せしていただいたらと思いますが、被告側の手元にあるものは、早いうちに出してもらえますか」と注文をつけた。被告側は「了解です」答えた。

ここでこの日の弁論は終了し、傍聴者は記者会見が行われる別会場に移動し、原告被告双方の弁護団は、別室で「進行協議」に移った。数十分後記者会見会場に弁護団が到着し、井戸弁護団長が、この日弁論ならびに進行協議について以下の通り解説した。

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裁判の解説をする井戸弁護士

◆井戸弁護団長による解説

「11月21日付けで被告から準備書面1が提出されました。こちらの訴状への反論です。何を認めて何を認めないのか。そして被告としてどういう主張をするかが書かれたものです。今後これに対して原告側が再反論をしてゆきますが、どういう内容のものなのかを報告させていただきます。特徴を述べると、『小線源治療・岡本メッソドに対する誹謗』、それから『事実のごまかし』そして『開き直り、責任転嫁』そう評価できると思います。

小線源治療については、合併症の問題、完治率など含めて優れた治療方法であると、我々は主張してたわけですが、それを否定してきています。『治療成績が他のものと変わらない』、『周囲への被ばくとか排尿障害などでメリットがある』、『外照射療法に比べて、小線源療法は体に傷をつける問題もある。近年は小線源療法は減少傾向にある』ということを主張しています。その中でも岡本メッソドについては、標準的な小線源療法よりも、高い線量を加えるのですけども、『線量を上げれば合併症のリスクが増すんだ。岡本メッソドの評価については様々な意見がある』と書いています。これが岡本メッソドに対する『誹謗』ですね。

それから事実関係としては、『ごまかし』があると思います。成田医師が自分が小線源療をしようということで、23人の患者さんを抱えていたわけですが、23人の患者さんについても、『成田医師が術者として確定していたわけではない』、『実際に小線源療をするのは確定していなかったんだ』、『岡本先生とチームとしてやろうとしていたので、ひょっとしたら岡本先生がやったかもしれない』と。これは『事実のごまかし』だと思います。

そして『成田医師が施術をしていたとしても、危険性はなかったんだ』という主張をしています。これは『開き直り』だと思います。たしかに小線源治療は未経験だったけれども、4人の原告の皆さんは1番目にする予定の患者さんじゃなかったわけです。だから『原告の皆さんにする時には精通を経ていた。初めてではない』ということを言っています(笑)。

法廷でも私が質問したことですが、「外科系学会社会保険連合においては、小線源治療は云々」という主張をされています。これには何の根拠も示されていないので、『根拠の証拠を出せ』と言ったわけです。また『成田医師は前立腺癌治療については豊富な経験を有していた。それから岡本医師の治療に麻酔担当として5件以上関与して教育を受けていた』この辺りは岡本先生の説明と違うのではないかと思います。

そして『少なくとも数例は岡本先生に立ち会ってもらい指導を受ける予定であった』、これが極めつけだと思うんですが『小線源治療は前立腺の生検(細胞採取検査)と同じようなものだ』と(会場から「えー」の声)。『成田は生検の豊富な経験がある』。組織をちょっと採る『生検』と、シードを綿密に埋め込む小線源治療が同じようなものだという主張をしています。

23人の方の治療が中止になったのは、岡本先生と協働してチームでやる予定だったのに、2015年12月の末に岡本先生が『成田医師を指導しない懸念が生じたので、成田医師を術者とする小線源治療は中止になったんだ』という説明で、説明を岡本先生に転嫁する内容です。『実際には適切な時期に説明していたと考えられる』と主張しています。『現実に1例目の患者には説明しました』と言っていますが、これは成田医師が説明したわけではなく、放射線科の医師が説明したと聞いています。

河内医師については、『岡本先生に指導させて成田医師に小線源治療の経験を積ませようとしただけだ』、『成田医師が未経験の医師だと説明しないように、成田医師と謀議することはしていない。だから河内医師にも責任はない』そういう内容です。

そういう『誹謗』『ごまかし』『責任転嫁』という特徴がありますので、これに対する反論については、根拠なしに主張している部分には、こちらからまず質問しようと思っています。専門用語で求釈明(釈明を求める)といいますが、それに対する回答を得て、それを踏まえて全面的な反論をしようと考えています。

次回期日は2月26日11:00からです。その間12月7日までに質問事項、求釈明事項を私どもは提出します。それに対する回答が1月末です。それを踏まえて次回期日前に全面的な再反論をする予定です。

そのあとの進行協議で裁判所は「この事件は岡本先生がキーマンだと」。滋賀医大泌尿器科において、どのような体制で成田医師を術者とする小線源治療をしていたのかが、この事件のポイントになるので、被告側はご本人ですからわかりますが、原告側は患者ですから内部のことはわからない。

したがって、岡本医師がどうしてもキーマンになるので、「岡本医師抜きでこの訴訟を遂行していくのは、困難なのではないか」というのが裁判所からの意向でした。岡本医師を原告でもなく、被告でもないんですが、準当事者のような立場でこの訴訟に入って来てもらえないか。そのための法律的な方策を考えたい、とうのが裁判所の意向でした。

訴訟告知補助参加という形で、原告、被告ではないのですが、この訴訟に岡本先生も利害があるから、『参加人』としてこの訴訟に来てもらって、岡本先生(あるいは代理人)の主張を法廷でしていただく、あるいは岡本先生から証拠を出していただく。そういう形で進められないかという話でした。我々も考えていなかったし、被告側の弁護団も考えていなくて、びっくりしたんですけれど、裁判所が積極的に出てきてこの事件の真実を早期に掴みたいという、非常に積極的な姿勢の表れだと、我々は評価しました。ただ法律的な問題もありますので、被告側が賛成するのかしないのかを早期に回答を頂き、さらに検討する形になりました。法律的なテクニカルな問題があり、法廷では相談しにくかったので、別の場を設けたということでした。裁判所の問題意識は正当だと思いますし、原告側としてはその方向で前向きに対応していきたいと思っています」

─────────────────────────────────────────────

その後、原告の2人と、治療を待つ患者さんご本人と、待機患者さんから寄せられたメッセージが代読された。

被告側が提出した準備書面1は、井戸弁護士が強調した通り、「誹謗」・「ごまかし」・「責任転嫁」に満ちていると、原告弁護団は評価している。一方予想外の展開で裁判所(裁判官)が岡本医師を「参加人」として訴訟に入ることを求めてきたのは、弁護団が作成した精緻な訴状と、被告側弁護団の提出した、粗雑な内容の準備書面1の格差が主たる原因であろう。しかしチラシ配り・署名活動などにも力を入れ、また毎回期日のたびに、多数の人が集会を開き、傍聴席を毎回埋め尽くしてきた「患者会」の方々の活動・熱意が裁判所を動かしだした、と考えても不思議ではないだろう。

※なお、下記URLに患者会関連記事が掲載されている。
https://www.asahi.com/articles/ASLCV7SR3LCVUBQU01F.html

集会風景

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月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

 

仮処分申し立てを説明する竹下育男弁護士(右)と岡本圭生医師(左)

11月16日、滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座岡本圭生(けいせい)特任教授が、滋賀医科大学を相手に仮処分の申し立てを行った。18時30分から滋賀会館で記者会見が開かれた。会見では冒頭弁護団から仮処分申し立ての内容について詳細な説明があった。

岡本医師が申し立てた内容は、

[1] 債務者(注:滋賀医科大学)は,債権者(注:岡本医師)に対し,債務者のホームページ中の医学部附属病院の「病院からのお知らせ」欄に掲載した「新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録1記載のコメントを全部削除せよ。

[2] 債務者は,債権者に対し,債務者のホームページ中の泌尿器科学講座「お知らせ」欄に掲載した「当講座医師に関する新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録2記載のコメントを全部削除せよ。

[3] 債務者は,債権者に対し,債務者医学部附属病院内の所定の掲示場所に掲示した「滋賀医科大学泌尿器科学講座医師に関する新聞報道について」と題する別紙請求コメント目録2記載のコメントと同一内容の文書を撤去せよ。

の3点である。新聞記事報道に対して滋賀医科大学が反論した文章の中に、事実と異なる記載があり、それにより岡本医師の名誉が毀損されているためその書き込みを削除せよ、また同内容で病院内に掲示されているものを撤去せよとの申し立てである。

一見、この仮処分申し立ては、「単なる文章の削除要求」のようにとらえられるかもしれないが、岡本医師の投げかけている問題意識の根本はそれだけだはない。弁護団の説明ののち岡本医師自身が、以下の見解を述べた。

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岡本圭生医師

◆岡本圭生医師の見解

滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座特任教授の岡本圭生と申します。今回、私が滋賀医科大学に対して申し立てをおこした背景をご説明いたします私自身は、これまで14年間にわたり、滋賀県だけでなく、全国から来院された1000例を超える前立腺癌患者の方々に対して小線源治療という特殊な放射線治療をおこなってまいりました。

2015年から滋賀医科大学では私を特任教授とする寄付講座である小線源治療学講座が設置されました。その時期に今回問題となっている事件が発生いたしました。この事件についてわかりやすく説明させていただきます。

2015年、滋賀医科大学泌尿器科において、泌尿器科教授の指示により実際の患者に対して小線源治療の経験がない、という事実を患者に説明すること無く、いきなり治療の執刀を行うという患者の人権を無視した計画が20名あまりの患者さんに対して企てられました。
具体的には、実際の小線源治療について未経験であり、過去10年間でたった一症例の見学経験しかない泌尿器科准教授が患者さんの同意を得ることなく、いきなり小線源治療をおこなうことが計画され、私は当日の手術に立ち会うよう、泌尿器科教授から要求されました。

さらに私は、当該患者の方々を診察することも接触することも説明することも、泌尿器科教授から禁じられていました。これは、あとに述べるように現在滋賀医科大学が主張している、「私と泌尿器科が協力して小線源治療を行う予定であった」という説明では つじつまの合わない非常に異常な状況といえます。さらに、私はこの計画が実行直前まで進んでいた2015年12月当時、泌尿器科教授と準教授から 「患者が治らずともそれは私(岡本)の責任にしないから最初から手術を準教授にさせろという」要求を繰り返し受けておりました。

医療が、医療として成立するためには、医師・患者間の誠実な信頼関係が存在することが絶対条件・前提条件となります。患者さんは目の前の医師が自分にとって最善を考えてくれるということで医療を託すわけです。一方、医師は目の前の患者さんに対して最善を尽くそうという姿勢をもっていること これが医療の大前提であります。この前提が壊され、意図的に人権侵害や患者を欺く行為が医療として計画され実行されることが許されるなら、それは医療ではなく、傷害行為と呼ぶべきものです。

私はこの計画が患者の人権を侵害するものであり、危険であるとして学長に進言しました。このことを受けて当時学長はこの計画を「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」とみずから宣言し、泌尿器科の計画を中止されました。そして学長と院長からの依頼により2016年1月以降、泌尿器科の当該患者を私が診察治療することとなりました。そして当時学長は「2016年以降小線源治療に泌尿器科は一切関わらせない」と宣言されました。

こういった動かしがたい事実があるにも関わらず、現在滋賀医科大学では、泌尿器科の小線源治療計画を「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」と自ら宣言し、中止させた学長までが 変節し、「私が非協力的であったために今回の諸問題がおこった」との事実と異なる虚偽の記載をホームページ上に掲載しています。これらの記載は「私が組織内の決定に従わず、患者の診療にも協力しない医師であるとの誤った評価を招き、私自身の名誉を著しく毀損すると考え、削除を求める仮処分申し立てを行いました。

現在滋賀医科大学は泌尿器科が医療の名の下におこなった患者さんの命を危険にさらし、人権を踏みにじった蛮行を組織ぐるみで隠蔽、もみ消すためになりふりを構わない行動をとっています。この問題を告発し、正そうとした私を大学から追放するために寄付講座をそもそも2017年年末で閉鎖しようともくろんでいました。しかし、2017年年末既に多くの待機患者が存在することから本学は講座の延長をしぶしぶ認めました。

しかしながら今をもってもなお寄付講座を2019年12月で閉鎖をし、それに先立つ来年の7月から私の小線源治療を停止すると宣言しています。このことが断行されますと私にしか治せない全国から頼って来院される難治性高リスクの前立腺癌患者さんたちの命が危機にさらされ命が見捨てられることになります。

国立大学附属病院の存在理由と公益は患者ファーストの医療を実践することにありはずです。全国から頼って来院される前立腺癌患者を切り捨てることは、患者ファーストと公益に反する行為です。医療の現場が患者ファーストの理念を失い、保身や組織優先の医療を行うのであれば、それは、権限・権力を有する医師による医療の私物化に他なりません。

2015年に私が泌尿器科の医療行為を止めようとしたのは このようなことが許されれば患者さんの同意なしに、患者さんの命が危険にさらされると判断したことが第一の理由です。

第二の理由は、故意かつ意図的に説明義務違反を犯し、患者の人権を踏みにじることが医療の名の元に秘密裏に行われることが、許されるのであれば、患者と医師の信頼関係によってのみ成立する医療というシステムそのものが破壊されるという非常に強い危機感を抱いたからであります。

私のとった行為が組織の命令に背くものであったとしても、私は誤った組織の命令よりも患者の命を守り、人権を守ることを優先する覚悟であり、このことに今も変わりはございません。

その理由を最後に述べさせていただいて、私の締めくくりとさせていただきます。 医師には医の国際倫理綱領として「ジュネーブ宣言」、「ヘルシンキ宣言」というものがございます。これは第二次大戦後すぐに採択された医師の倫理綱領であります。それによればわれわれ「医療者はどんなときも目の前に患者さんの最善のためにだけ行動せよ」という綱領であります。

さらにこの綱領には副文があります。そこには「目の前に患者さんの最善を実行するための障碍として時に、国家権力や組織の圧力を受けることがあろうが決してその圧力に屈してはならない」と記載されています。

このことが、私が命に代えてもやり抜こうとしたことの本質であります。 

つまり私は医の国際倫理綱領は組織の命令より優先されると考えています。私の判断と行動が医師として是か非か 判断いただければ幸いです。本日はありがとうございました。

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つまり、滋賀医科大学のホームページや病院内に掲載された文章はもちろん問題であるが、その新聞記事が書かれる原因となった、泌尿器科小線源療法未経験医師による、患者への説明義務違反を経て、施術が実行されそうになった事件が根本にある。

岡本医師が学長に危険性を伝えたため、学長は「コンプライアンスと倫理的な観点からも憂慮すべき」と判断。施術は止まったが、岡本医師から学長への警鐘がなければ、泌尿器科小線源療法未経験医師が患者に施術を行っていた可能性が高い。

会見には既に岡本医師の治療を受け、完治した神戸の柴山さんと、これから岡本医師の治療を受けようとしている東京の山口さんが参加し、経験を話した。

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岡本医師の治療を受け完治した経験を語る柴山さん

◆神戸の柴山さんのお話

私は2015年8月、58歳のときに前立腺癌の宣告を受けました。PSAが49超高リスクの前立腺癌と診断されました。地元の病院では「前立腺の全摘出手術は既に無理な状態、しかも根治は到底無理である」と宣告されました。その病院ではホルモン治療しかないと言われ、途方に暮れて「もう人生も終わりか」と絶望の淵におりました。

そんな折たまたま書籍から岡本先生のことを知り、メールで相談させていただきましたところ、とてもやさしいお言葉で「すぐに来なさい」と返信がありました。その後ホルモン治療、小線源治療、外部照射を組み合わせた、トリモダリティーという治療を施していただきました。そして今年の9月、最後の外部照射の治療から2年経過して岡本先生の受診をしたところ「完治確定です。もうこれで大丈夫です。再発もしません」という診断を頂きました。私や家族にとって夢のようなことでした。奇跡と言っても過言ではありません。

罹患当初は「このまま死ぬかもしれない」というよりも「もう遠くなく死ぬだろう」と思っておりました。当時84歳だった私の父よりも「先に逝くだろう」と思っておりました。この時は人生最大の絶望でしたが、「完治確定」を頂いた際は人生最大の喜びを味わったことになりました。私の状況は超高リスク前立腺癌でしたので、岡本先生でなければ完治はあり得なかったと思います。今まさに当時の私と同じような状況で絶望のどん底にいらっしゃるであろう、患者さんには是非岡本先生を紹介して差し上げ、この感動を味わって頂きたいと思っています。

私が岡本先生に出会ってよかったと思う点は一言でいえば「患者ファースト」を徹底されている点です。その1つ目、岡本先生はメールアドレスを公開されておられます。来る者は拒まずとの姿勢を貫かれていること。

2つ目は安心感です。初診の際に「超高リスク前立腺癌であっても95%以上完治する」とのお言葉で、私自身や家族が絶望のどん底から、安心感に変わりました。またその後安心感は、完治確定まで継続しました。

3つ目は当初より岡本先生から、「このような治療を行い、マーカーがこのように変化し、こうなれば完治です」という計画をお聞きしておりました。結果は全くその通りになりました。少し違ったのは予定より早く完治が確定したことです。

4つ目はホルモン治療を受けましたが、ホルモン治療は患者の体にダメージがあります。岡本先生のホルモン治療は極力短期間しか行いません。患者ファーストの現れだと思います。私は幸運にも岡本先生と巡り会い、素晴らしい治療を受けただけですが、岡本先生がここに至るには血のにじむような努力があってのものとお聞きしております。そのため患者が安心して治療が受けられるのです。私も治療中のQOLは大変良く、ジョギングや登山を続けられ、仕事も治療中を除いて通常通り休まずに続けられ現在に至っております。

最後に癌患者を助けるために努力を惜しまない岡本先生の治療継続を心から希望いたします。岡本先生の治療は他の医師の治療と比較して、群を抜く非再発率と根治率であることはいうまでもありません。現実に岡本先生を紹介したい人が私の周りにもおります。しかし患者を軽視した現在の滋賀医科大学では、それもできません。岡本先生にしか助けられない命を、大学の一部の人間が、その権威を使って私利私欲や都合によってその望みを断ち切ることが人道上許されてよいわけはありません。現在大学の一部の人間が権威を盾にして倫理違反を犯した医師を処分せずに居座らせています。

かたや、患者を不当な医療から救済し病院と患者を危機から救った岡本先生にパワハラを与え、さらに組織から除外しようとしていることは絶対に許されるべきではなりません。現在の滋賀医科大学は組織の保身のために奔走しているとしか見えません。是非とも岡本先生の治療継続を懇願する次第です。

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治療を待つ山口さん

◆東京の山口さんのお話

「青天の霹靂」ということばがありますね。そういう経験を3か月前にしました。65歳検診を8月に行きまして、検査の翌日にいきなりその検査機関から電話が自宅にありまして「あなたのPSAは87です。直ぐに病院に行って下さい」という知らせが来ました。私にとって87という意味が全く分かりませんでした。電話の向こうでとても慌てている様子がありましたので、これはやばい状態だろうなということはわかりました。

ただし痛みも何もないんですね。日常生活に全く変わりはない。これはどんな病気なのだろうかと。逆に慌てました。検診先に行き紹介状を書いてもらおうとしましたが、どこに行ったらいいかわからない。私はネットで調べました。ロボット手術、ダビンチ手術をやっている病院が近くにありまして、そこで細胞検査を受けました。ところがそのお医者さんは「5年生存率は70%」というんです。「でも切ってさっぱりしましょう」といったんですね。床屋かなという感じです。

しかも「転移してても切りますよ私は」というのです。ネットで調べるとそういうのはあまりない。先ほどの方がおっしゃりましたが、ホルモン治療をするわけですが、そのお医者さんは「切る」と言ったので益々信頼がおけなくなりました。

その話を聞いて私は夜寝ることができなくなりました。5年生存率70%ということは、死亡率が30%あるわけです。3分の1は死んでしまうわけです。ルシアンルーレットがありますね。あれだって6分の1ですが、私の賭けは、そこに2発の銃弾が装填されているのと同じことなわけです。そんな賭けに乗ることを私は到底できないです。

ということで食欲もなくなり4キロ痩せました。それが10月初旬です。悪夢から逃れられないような状況になりました。そこでまた必死でネットを探したところ、滋賀医大岡本先生の記事にたどり着いたんです。96%再発しないという記事です。

ところがその直後岡本先生が訴訟事件に巻き込まれている、という記事を目にしまして、本当にこの先生にかかることができるのかな、とまた厳しい精神状態に追い込まれました。岡本先生にメールを送ったのですけど、返事が来るかどうかはわからない。ところがメールが先生から来たんです。私は本当にほっとしました。先週ついに先生の初診を受けることができたのです。精神的にもおかしくなりそうな状況だったのですが、食欲も戻って、精神状態も普通の状況に戻ることができました。

例えば来年7月で先生の手術ができなくなると、私が実際に受けることができるかどうか、非常にあやふやな位置にいるんです。再び元の治療、ロボット手術を受けるかと言うと、死を覚悟しなければいけない状況に舞い戻るわけです。

こういった患者さんはたくさんいるわけで、滋賀医大には全国から来ているわけです。癌の最大の脅威は何かというと、転移と再発です。私も転移の検査を受けて結果が出るまではドキドキでしたね。発狂しそうになるくらいでした。転移はなく安心しましたが。

でも岡本先生治療を受けてようやく、再発しない状態になるわけです。ここで滋賀医大が岡本先生の講座を閉鎖する非情な措置が行われるのであれば、我々の生きようとする希望が失われるわけです。こういった状況に対して、是非滋賀医大の非情なありかたを世論に知らしめていただきたい、と心から願っております。

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以上、岡本医師及び、患者さんの重たい言葉に、余計な言葉は付け足さない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

滋賀医大付属病院小線源講座の患者さんら4名が、同病院泌尿器科の河内明宏科長と、成田充弘医師を相手取り440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした件については、これまで報告してきた。

そして本日11月16日、滋賀医大付属病院小線源講座の岡本圭生特任教授が、滋賀医科大学を相手取り、仮処分を大津地裁に申し立てることがわかった。岡本特任教授が仮処分を申し立てる内容の詳細はまだ明らかではないが、本日18時から記者会見が開かれ、そこで代理人と本人から説明が行われる。

 

11月12日付けビジネスジャーナル

岡本医師については、11月12日付けビジネスジャーナルで「増加する男性の前立腺癌、再発率わずか2%の画期的治療法『岡本メソッド』」にインタビューが掲載されたばかりだった。

岡本医師による小線源療法については、ビジネスジャーナルの記事に詳しいのでご参照頂きたいが、注目すべきは現役の医師も以下のように絶賛している治療法である点だ。同インタビューから引用する。

岡本教授の治療を受けられた方は、どのように感じているのか。1100名を超える治療を受けた患者さんのなかから、大分県立病院小児科部長の大野拓郎氏に患者さんとして、また専門家の立場からお話を聞きました。

―― 先生に前立腺がんが発見されたのは、いつだったのでしょか。

大野 私は今、53歳ですが、2年前に簡易人間ドックを受けた際に、PSAの値が高いことがわかりました。その後すぐに細胞検査を受け前立腺がんと判明しました。

―― 医師としてご自身の前立腺がん治療にあたり、どのような観点で治療法を選択されましたか。

大野 まず根治性の高い(再発リスクの低い)ものを考えました。私はがんの広がりはなかったのですが、組織型(がんの悪性度)が悪かったので、高リスクとして治療を受ける必要があると判断しました。ダビンチ手術(支援ロボットを利用した手術)を勧める医師もいましたが、仕事をしていますので、仕事に影響が出る後遺症・合併症は困ります。その他の治療法も調べましたが、私が考える芳しい成績ではないなと思い、岡本教授の治療を見つけ、治療成績が傑出していることから、お願いすることにしました。

―― いつ施術を受けたのでしょうか。

大野 2017年の2月です。

―― 手術後の経過はいかがでしょうか。

大野 夜間頻尿が数カ月続き服薬していましたが、半年くらいでなくなりました。今はまったく支障がありません。前立腺がん治療のあとには、排尿関連の合併症が多いのですが、何も感じないで生活しています。

―― 専門家の立場から「岡本メソッド」をどのように評価なさりますか。

大野 私は先天性小児心疾患が専門です。その手術のレベルを考えたときに、病院によって差が出てきます。それは事実ですが我々としては「どこで受けても同じ結果が出る」のが一番望ましい。医療においての再現性を考えたときに一番大事なことだと思います。前立腺がんの治療を見たときに、岡本教授の技術が広がっていく、全国で根付いていくことが理想的だと思います。色々調べましたが、岡本教授の施術は「神のレベル」に近いといえます。しかも報告からは合併症が少ないようです。尿漏れなどは日常生活でも大変不便です。それが少ないのと、根治性、機能面においても非常に高いと思います。

―― 岡本教授のお人柄についてはいかがでしょうか。

大野 岡本教授と話をしていて、「この方は信頼できる」と感じたのは、徹底して患者の方向を向いていらっしゃることです。医療界には別の方向を向いている動きも感じますが、岡本教授は「きちっと根治する治療をする。そのための小線源療法、そして外照射を合わせたトリモダリティ」を考えておられるなと強く感じ、信頼できると思いました。大事なのは「患者さんにとって何が一番良いのか(Patient first)」ですね。その実践ができているという点でも信頼できる先生だと私は思います。私の知り合いで同じ病気になった人がいれば、躊躇なく「岡本先生に治療してもらってはどうか」と勧めます。(引用以上)

4名が泌尿器科の医師を提訴し、岡本医師も仮処分を申し立てる、滋賀医大では何が起こっているのであろうか。記者会見の様子は近日中にご報告する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

 

大津駅前の集会に集まった「患者会」の皆さん(写真提供=「患者会」の皆さん)

10月9日13時10分から大津地裁で、4名の原告が滋賀医大付属病院、泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)裁判の第一回口頭弁論が開かれた。

大津駅前で12時から本年6月に結成された「滋賀医大 前立腺癌小線源治療患者会」の集会がある、と聞いていたので大津駅前に11時ころ到着すると、早くも患者会のメンバーが集合し始めていた。12時には参加者が80名を超え、その時間比較的静かな大津駅前を行き交う人々の注目を浴びていた。

集会では患者会のアドバイザーである元読売新聞記者の山口正紀さんが冒頭に発言し、「病院は患者に謝罪すべきなのに、患者の命を救った岡本先生を病院から追い出そうとしている。どうしてこんなことが考えられるのか」と問題点を整理しながら滋賀医大付属病院の姿勢を強く糾弾した。引き続き原告の男性や複数の患者会メンバーが発言をした。

◆医療機関による「説明義務違反」

問題の中心は、小線源治療の第一人者である岡本圭生医師の治療を受けようとした23名の患者たちが、その意に反して、岡本医師の治療を受けられず、しかも小線源治療の経験がない成田医師が、小線源治療を行うという暴挙の直前に岡本医師の学長への直訴により、かろうじて難を逃れた「説明義務違反」である。

医療機関による「説明義務違反」は患者による治療の選択権を奪うだけではなく、場合によっては生命にかかわる重大な問題だ。患者には当然説明を受ける権利があるが、これまで個々の患者の問い合わせや、説明の要請、患者会による問い合わせに対しても病院側は「HPに出ている通り」、「内容は裁判であきらかにしてゆく」と誠実さの欠如した回答しか返答していない。

 

大津地裁前で参加者に説明をする山口正紀さん(写真提供=「患者会」の皆さん)

◆発足後4か月で800名を超えた患者会

患者会のメンバーは発足後4か月で既に800名を超えており、いかに岡本医師による小線源療法への信頼が厚いか、また滋賀医科大学への怒りが大きいか、この人数が雄弁に物語る。「同じ医師の治療を受けた」以外に何の共通点も持たない人々が、短時間でこのように集結することはそうそうあるものではない。病気の性質上患者会のメンバーは中高年の男性であるが、皆さん紳士的な方ばかりだ。

山口さんも指摘されていたが「病気と闘いながら、病院とも闘わなければいけない」ことなど、患者の誰も望んではいないだろう。しかしそこまでの事態を引き起こした、河内、成田両医師及び、滋賀医大付属病院の責任は重大である。

◆井戸謙一弁護団長の発言

55席の傍聴席は満員となり、傍聴できなかった患者会のメンバーやご家族も多数見受けられた。定刻通りに西岡繁靖裁判長は開廷を宣言した。被告側は答弁書を提出しただけで、この日は代理人も出廷していなかった。

冒頭、井戸謙一弁護団長が発言を求め、

「この事件は医師の説明義務違反による損害賠償事件でよくある類型だと思います、しかし本件は一般の事件と異なることをご理解いただきたと思います。だからこそ、これだけたくさんの傍聴人が詰めかけているのです。1つは多くの説明義務違反事件はインフォームドコンセント認識不足の医師による、過失や杜撰な説明により、医療上のミスを行ってしまった。個別、1回切り起こるものです。

 

井戸謙一弁護団長(筆者撮影)

 それに対して本件は故意に、組織的にしかも長期間にわたって、23人もの患者に対して行われた事件であることが1つです。それからこの事件が国立滋賀医科大学付属病院という、滋賀県を代表する基幹病院を舞台として行われ、被告の2人は当時も、現在も泌尿器科の教授、准教授という要職にある医師であるということであります。本件において未経験者による小線源治療は水際で差し止められ、重篤な被害の発生を防ぐことはできましたが、この問題で患者側が病院に説明を求めても、病院からはまともな説明もなく、患者らは謝罪も受けておりません。よって原告らは本件提訴に至ったものであります。
 この事件の本質は、患者の利益よりも、自己の権力あるいは利益を優先するいまの医師の世界の体質にあると考えます。この問題をあいまいに済ませてしまえば、将来にわたって同様のことが繰り返されることが危惧されます。繰り返された場合ことが医療であるために、重篤な被害を与えることがあります。原告らは請求事実を説明義務違反に絞りました。個別には小線源治療の前段階における不適切な処置などもあるのですが、訴訟の迅速な進行のために争点を絞ったものであります。したがって裁判所に置かれては迅速な進行に努めていただき、早期の判決をお願いしたと考えております」と述べた。

そのあと原告代表の男性が意見陳述を行いこの日の弁論は終了した。次回期日が11月27日13時10分である。

閉廷後、滋賀県弁護士会館に場所を移して、記者会見が行われた。傍聴席には入れなかったメンバーのために、この日の法廷で何が行われたかを、井戸弁護士が説明した。記者会見であきらかになったことは、被告側による答弁書には、迅速な訴訟の進行に向けての誠意が感じられないこと。法廷戦術上被告は医師2名に絞ったが、病院にも当然責任はあると、原告も弁護団も考えていること、などである。

患者の会のメンバーや滋賀医大付属病院関係者に取材する中で、予想をしなかった事実に突き当たった。当初訴状を読んだり、記者会見で質問するなどする中で、この問題は、あくまで滋賀医大付属病院、泌尿器科が震源であり、原因である事件であると、わたしは認識していたが、どうやら(たしかにその基本的構図に間違いはないが)さらに大きな背景と、思惑が関係しているようである。その実態については、今後も取材を進め、明確になった時点で読者にご紹介してゆく。

◎[関連記事]田所敏夫「滋賀医科大学附属病院泌尿器科の背信行為 『小線源患者の会』が損害賠償請求」(2018年8月2日公開)

◎滋賀医科大学前立腺癌小線源治療患者会のホームページはこちらです。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

もし、あなたが、いずれかのがんと診断されていて、その部位の「がん治療に抜群の実績を上げている先生がいる」と聞いたら、どうなさるであろうか。「一度診てもらおう」と考えるのは、ごく自然だろう。だが、遠路はるばるその病院を訪ねたのに、肝心の担当医や術法が、事前に期待していたものと違ったと「あとになって」知ったらあなたはどう感じるだろうか。

8月1日、4名の患者及びその遺族が、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り、440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)。13時に予定されていた提訴前には大津地裁付近に一部原告や支援者65名と弁護団が集まり、猛暑の中大津地裁玄関前まで井戸謙一弁護団長を先頭に“怒りの行進”を敢行した。

8月1日、猛暑の中大津地裁玄関前まで井戸謙一弁護団長を先頭に“怒りの行進”

◆前立腺がんの治療法「岡本メソッド」

ことの発端は滋賀医大附属病院の岡本圭生医師らが開発した「岡本メソッド」とも呼ばれる、前立腺がん治療に極めて効果の高い「小線源治療」に起因する。前立腺がんの治療法には、前立腺全摘出、放射線外照療法、放射線組織内照射療法、ホルモン療法などがある。岡本医師は低線量のヨウ素125を前立腺に埋め込み留置する永久挿入密封小線源療法を確立し、多数の患者に施術してきた。

これまでの実施件数は1000件を超えているが、注目を浴びるのは、がんで最も恐れられる再発の割合が卓越して低いことだ。前立腺がんは「低リスク」、「中間リスク」、「高リスク」と分類されるが、岡本メソッドの治療を受けた患者の5年後のPSA非再発率(がんが再発しない確率は、「低リスク」で98.3%、「中間リスク」で96.9%、「高リスク」でも96,3%と、極めて優れた結果を残している。素人感覚で言えば「ほとんど再発しない」と安心できる数字と言えよう。

評判は評判をよび、岡本医師のもとには全国から救いの手を求めて患者が殺到したのも頷ける。原告ならびにその遺族は、いずれも2015年に前立腺がんの罹患が判明し、滋賀医大附属病院泌尿器科を受診した方々だ。それぞれ事情は異なるものの、いずれの方々も岡本医師の治療を期待して、滋賀医大附属病院に足を運んだが、診察に当たったのは岡本医師ではなく、成田医師であった。

◆患者たちは「モルモット」だったのか?

しかしながら成田医師も岡本医師の指導のもと「小線源治療」の実績のある医師であろう、あるいは、岡本医師の指示を仰いでいるであろうと考え通院を続けていた患者たちは、のちにあっけにとられることになる。

岡本医師による「小線源療法」は2015年1月に放射線医薬品会社「日本メジフィジックス」(NMP社)の寄付(年間2000万円)を受けて、「小線源治療学講座」が開設されており、岡本医師の治療を受けるためには「小線源療学講座外来」が窓口であり、泌尿器外来では「小線源療法」を受診することはできなくなっていたのだ。しかしそのような内情を一般外来患者が知る由もない。

社会通念に照らせば、岡本医師の受診を希望する、もしくは「小線源療法」を希望する患者は「小線源療学講座外来」に案内されるべきであるが、そうではない事例が複数発生した。

23名の患者は泌尿器科で成田医師の治療を受診し続けたが、のちに

① 成田医師は「小線源療法」の未経験者であり、「小線源療法」についての特別な訓練を受けたこともないこと、

② 滋賀医大附属病院では2015年春ころから、「小線源療学講座法」とは別に泌尿器科でも「小線源療法」を実施する計画をたてて、同病院に「小線源療法」を希望して来院した患者のうち、紹介状に「小線源治療学講座」や岡本医師の特定記載がなかったものを「小線源治療学講座」に回さないで、泌尿器外来で診察。それ以外にも「小線源療法」が適切であると判断した患者も「小線源治療学講座」に回さず、同年末までに原告を含み23名の患者について、泌尿器科において成田医師が、「小線源療法」を実施する具体的計画を立てたこと、

③ ところが成田医師は外科手術、特にロボット手術が専門であり、「小線源療法」は未経験であったこと、

④ その計画をしった岡本医師が滋賀医大学長に直訴し、その結果2016年1月、病院長の指示で23名の主治医が成田医師から岡本医師に変更されたこと、

が判明する。

ここへきて患者たちは自分たちが「モルモット」にされようとしていた現実を知ることになる。成田医師も「小線源療法」の専門家か、もしくは岡本医師の指導を受けているかと思い込んでいたら、まったくそうではなく、無謀にも成田医師は経験のない「小線源療法」を実施しようと計画。それを知った岡本医師が危険性に気づき学長に直訴した結果、無謀な施術だけは回避されたが、患者たちが失った回復の機会や、不要な治療による副作用そしてなによりも同病院泌尿器科への不信感は現在も患者たちを苦しめている。

◆「小線源療法」ではなく「ホルモン療法」だった

記者会見に臨んだ原告のひとりは、「私が望んだのは『小線源療法』だったが、私が受けたのはホルモン療法だった。1年に渡るホルモン療法のために不眠や、体に力が入らないなど様々な副作用に苦しみ、今後心筋梗塞や脳血栓の可能性が高まったと言われている。成田医師からは彼が『小線源療法』の経験がないことを聞いたことがなかった。『この施術は未経験です』と言われて『はいそうですか』という患者はいないだろう。河内医師は泌尿器科には『小線源療法』の経験がないのに23名の患者を囲い込みを行った。患者は『自分の病気を治してほしい』と思って病院にいく。にもかかわらずその施術では素人同然の医師にされかけていたと知って驚愕した。肉体的精神的に大きなダメージを受けた。患者が医師を信頼することなしに医療は成立しないだろう。真っ当な関係が成立するように訴えたい」と語った。

思いを語る原告男性の胸には“PATIENTS FIRST”。滋賀医科大学小線源治療患者会の缶バッチが

弁護団長の井戸弁護士は、この提訴の意義について「23名の怒りと憤りを強く感じている。背景には医療界の『古い体質』があるのではないか。どう考えても『患者第一』に考えているとは思えない事件だ。医療界の『古い体質』を放置せず、日本の医療界があるべき方向に向かうきっかけになれば」と語った。

患者会代表幹事の奥野謙一郎さん(左)と井戸謙一弁護団長(右)

7月30日付けの朝日新聞でこの問題が掲載された。すると滋賀医大附属病院はHP

 

 

と全面対抗の姿勢を打ち出している。すくなくとも訴状をよみ、関係者の話を聞いた限りでは塩田浩平学長のコメントは、開き直りにしか聞こえない。滋賀医大附属病院全体が問題だらけの病院であると原告は指弾しているわけではない。あくまでも泌尿器科の不誠実かつ患者に対する背信行為を問題にしているのだ。

滋賀医大附属病院泌尿器科受付前に掲げられている担当表

この問題では6月に「滋賀医大小線源患者の会」が発足し、わずか1月余りで会員数は600名を超えている。それほどに岡本医師の功績や彼への信頼が厚い証拠であろう。ところが滋賀医大附属病院は2019年に現在特任教授である岡本医師の首切りまで画策している。前述の通り「小線源療法」は前立腺内にヨウ素125を埋め込むので、当然経過観察が必要だ。しかし、安心・信頼して経過観察を任すことのできる医師の存在まで滋賀医大附属病院は患者から奪ってしまおうと画策しているのだ。
患者の怒りと不安は至極当然であろう。

引き続きこの問題は注視してゆく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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