さとうしゅういち
◆瀬戸内海に潜む“起爆点” しまなみ海道沖巨大活断層
産総研は2025年冬、しまなみ海道沖合に海底巨大海底断層が存在することを突き止め、26年5月末に公表しました。その位置は、しまなみ海道の島々を形成した沈降帯の延長線上にあります。瀬戸内海は、沈降(リフト)+横ずれ断層の複合地形であり、巨大断層が存在しない方が不自然です。

この海底断層が破壊すれば、瀬戸内海全域の地殻の力関係が変化し、“連動型地震の第一段階”が始まる可能性があります。連動型地震とは、能登半島で2024年正月に起きた大震災が典型例です。地震発生の初期に動いた活断層からやや遠い活断層や、方向が違う断層も動いて大被害になりました。広島市や広島県の防災計画や都市計画も抜本的な見直しが必要です。
◆第一段階:海底巨大断層(M7.5~最悪の場合8.0)
しまなみ海道巨大断層は、今治で終わりません。地形的に見れば、高縄半島、周防大島、柳井沖、上関へと連続して伸びています。能登半島の教訓を踏まえれば、断層は地形に沿って連鎖破壊する。
瀬戸内海の巨大断層はM7.5~8.0に達し、上関に予定されている核のゴミ貯蔵施設を含む沿岸都市を直撃する可能性があります。
●想定震度 広島市:震度5弱~6弱呉・東広島:震度6弱尾道・三原:震度6弱今治:震度6強
※連動が西側に広がれば松山・柳井・上関など震度6弱も
●津波到達時間 今治・尾道:数分 呉:5~10分 広島:10~15分
南海トラフのような「3時間の猶予」は存在しません。
●想定被害 「海底の上下変位による局所津波」「しまなみ海道の橋脚損傷」「広島湾沿岸で液状化」「港湾機能の低下」(広島港・呉港・松山港) ※大きな揺れや津波が上関町に計画中の核のゴミ中間貯蔵施設直撃も
◆第二段階:安芸灘断層帯(M7.2)
海底断層の破壊で力関係が変わった場合、最も誘発されやすいのが安芸灘断層帯です。
●想定震度 広島市:震度6弱呉市:震度6強江田島:震度6強
●津波到達時間 呉:数分 江田島:数分 広島:10分前後
●想定被害 呉市の斜面住宅地で大規模崩壊/江田島の液状化/広島湾の護岸損傷/しまなみ海道の橋梁が再度揺れ、損傷が拡大
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◆第三段階:広島湾‐岩国沖断層帯(M7.4~7.5)
安芸灘断層帯がのほかに懸念されるのは広島湾‐岩国沖断層帯です。
●想定震度 広島市:震度6弱~6強特に中区・西区・南区・安佐南区で震度6強。
●津波到達時間 宇品・出島:数分 南区沿岸:数分 廿日市:5~10分
●想定被害 都心部の老朽ビル倒壊/橋梁・高架の損傷/南区の液状化/安佐南区の造成地崩壊/JR山陽本線・呉線の長期不通/しまなみ海道の複数橋梁が通行不能
◆五日市断層・己斐断層への飛び火も
能登半島大震災では、その後も、周辺の断層への「飛び火」的な地震が相次いでいます。広島に当てはめれば、五日市断層や己斐断層への飛び火も危険だ。一部のセグメントだけがM6級で破壊しても、その直上の広島市街地にとっては“都市直下型本震”となります。断層の部分破壊こそ、広島が最も警戒すべき地震シナリオです。
◆瀬戸内海の津波は“数分で来る”
南海トラフのような外洋型巨大地震では、津波到達まで2~3時間の猶予がある。しかし瀬戸内海はまったく違う。
①震源が近い ②海が狭い ③波が反射・増幅 ④海底断層の上下変位が直接沿岸に作用
そのため、津波は最短で数分、長くても10~20分で到達する。揺れたらすぐ逃げる――これが瀬戸内海の防災常識である。
◆瀬戸内海は“陸の隆起/海の沈降”を繰り返してきた 「日本のムー大陸」瓜生島伝説
瀬戸内海の地形は、断層の連動による上下動の履歴そのものである。①島が持ち上がる(隆起) ②海底が沈む(沈降) ③海岸線が変わる ④津波が発生するなど、能登半島地震で見られた現象は、瀬戸内海でも繰り返されていました。
大分には「日本のムー大陸」といわれる瓜生島沈没伝説があります。①島が沈む ②津波が襲う ③海岸線が変わる……これらは、能登半島地震の沈降現象と酷似しています。瀬戸内海は沈降帯であり、島が沈むことは自然です。
◆室町以前の地方での地震は“記録に残らない”
瀬戸内海の巨大地震は、中央政府=朝廷・幕府で記録されず、多くが文書として残りません。記録される地震の多くは、畿内・鎌倉のものが中心です。地方武士団は災害記録を残さないし、水軍文化圏は口承中心です。一方で、海岸線の変化は伝説化しやすい。瓜生島沈没は、失われた瀬戸内地震史の数少ない痕跡である。
◆結び すぐ逃げる防災を
瀬戸内海の津波は、南海トラフとは違う。揺れたらすぐ逃げる。数分で来る津波に備える。連動型広島大震災を想定する。これが、瀬戸内海沿岸に生きる私たちが持つべき新しい防災常識である。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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