高市自維政権からの〝報復〞 公明党連立離脱の全真相

大山友樹(紙の爆弾2025年12月号掲載)

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1999年10月の連立発足以来、民主党政権の3年3カ月の期間を除いて21世紀の日本の政治を事実上、仕切ってきた自公連立政権が、10月10日に突然、公明党が自民党に3行半を突き付ける形で崩壊した。

衆参両院で過半数に満たない少数与党の自民党は、公明党に去られたことで、石破茂首相の辞任表明を受けて行なわれた総裁選で当選した高市早苗氏の総理就任の可能性が揺らいだため、急遽、国民民主党や日本維新の会に接触。最終的に「第2自民党」(馬場伸幸前代表)などと自称していた野党ならぬ“癒党”の維新との連立にこぎつけ、日本初の女性総理を首班とする高市自維連立政権が10月21日に発足した。

一方、自民党と袂を分かった公明党は、野党に軸足を移し政権離脱による存在感の低下をカバーしようと腐心している。だが、自維両党の連立条件に衆院比例区の定数削減が盛り込まれるなどしたことから、今後、衆院比例区に重点を置く公明党は高市政権による厳しい報復にさらされる可能性が高い。

それにしても、日本の政治にドラスティックな変化の季節を招いた今回の公明党の連立離脱。多くのメディアがその理由と背景を分析しているが、宗教団体・創価学会を母体とする公明党は、1970年に引き起こした言論出版妨害事件に対する厳しい社会的・政治的批判を受けて、創価学会との組織的な政教分離宣言を行なったものの、その実態はあくまでも政教一体の宗教政党である。右顧左眄する公明党の動静を分析するには、創価学会の意思・思惑の考察が不可欠で、政治的視座や政局がらみの報道だけでは正確性に欠ける。そこで本稿では、なぜ公明党と創価学会が突然、26年にわたって積み上げてきた自民党との連立から離脱したのか。その理由と背景について、対象の内部にある論理や構造・意味を、対象の立場や主観に寄り添って理解しようとする宗教研究のアプローチ手法である「内在的理解」に基づいて俯瞰してみたい。

◆連立離脱の〝前兆〞

唐突な印象を受ける今回の公明党の連立離脱だが、しかしその布石は石破茂首相が辞任を表明した9月7日にはすでに打たれていた。石破辞任表明を受けて記者会見した公明党の斉藤鉄夫代表が、「保守中道路線で、理念に合った方でなければ、連立政権を組むわけにはいかない」と発言。連立維持のための必要条件を示唆していたからだ。

斉藤発言の意図を公明党の元地方議員は、次のように解説する。

「一般に宗教団体には自らの教えを最善のものとする独善性があるが、とりわけ創価学会はその傾向が強い。したがって、もともと神社に対する忌避感があるが、靖国神社は軍国主義の精神的シンボルという性格を持つことから創価学会の忌避感は特に強い。というのも、創価学会の牧口常三郎初代会長と戸田城聖二代会長は、戦前、軍部政府が督戦のため推進した国民精神総動員の一環として配布された伊勢神宮の大麻(神札)に対する不敬罪と、治安維持法違反で逮捕・投獄され、牧口初代会長は獄死している。

牧口会長を獄死させた軍部政府の首脳らA級戦犯を合祀している靖国神社に、高市氏は総理・総裁になっても参拝を強行すると高言する右翼タカ派。それだけに高市氏だけは勘弁してくれというのが創価学会の本音。斉藤発言は、そうした公明党そして創価学会のメッセージだった」

だが自民党は高市氏を新総裁に選出。その結果、自公連立の雲行きはにわかに怪しくなる。

発端は10月4日の高市新総裁と公明党首脳の初顔合わせだった。石破・岸田・菅と、歴代の自公連立政権の首班との初顔合わせの際の公明党首脳らは、にこやかに新総裁を出迎え、最初の党首会談で直ちに連立合意書に署名するのが通例だった。しかし新総裁に選ばれた直後に、公明党本部にあいさつに出向いた高市新総裁を出迎えた斉藤代表らは、祝意もそこそこに、さっそく「私たちや党員、支持者の懸念事項を率直にぶつけた」(公明新聞10月5日付)のである。

ここにある「支持者」とは創価学会を意味する。その創価学会と公明党がぶつけた「懸念事項」とは「1、『政治とカネ』の問題。2、靖国参拝と歴史認識問題。3、外国人との共生」(同前)の3点。このうち「政治とカネ」の問題についての懸念を斉藤代表は、具体的にこう述べている。

「まず『政治とカネ』の問題にきちんとけじめをつけなければならない。与党が選挙で大敗した大きな原因の1つに(自民党の)不記載の問題がある。また、企業・団体献金の規制強化を進めることについても、政策協議の中で明確にしてほしいと申し上げた」(同前)

ここで斉藤代表は、昨年の衆院選、今夏の東京都議選・参院選に大敗した原因として自民党の裏金問題を指摘すると同時に、企業・団体献金の規制強化を求めている。その底意には「政治とカネ」の問題の放置は、選挙敗北の因という次元にとどまらず、公明党そして創価学会の政界進出の基本理念や存在意義の否定につながる深刻な問題だという危機意識が潜んでいる。

周知のように公明党は、創価学会文化部を前身とし、公明政治連盟を経て1964年に政党となるが、その「結党宣言」には次のようにある。

「王仏冥合・仏法民主主義を基本理念として、日本の政界を根本的に浄化し、議会制民主主義の基礎を確立し、深く大衆に根をおろして、大衆福祉の実現を図るものである。こうして、広く地球民族主義の立場から、世界に恒久平和機構を確立することを最大の目標として勇敢に戦うことを、国民の前に固く誓うものである」(『公明党50年の歩み』公明党機関紙委員会編)

「政界浄化」は、公明党そして創価学会の政界進出の原点ということだ。

またここにある「地球民族主義」や「恒久的世界平和」などの理念が、「懸念事項」の「靖国参拝と歴史認識」や「外国人との共生」と通底することは明らかである。その意味で、公明党ならびに創価学会は、政界進出の基本理念と存在意義をかけて高市新総裁との連立の可否に臨んでいたことが看取できる。

◆引き金は「萩生田光一幹事長代行」

しかし自民党なかんずく高市氏の周辺にこうした公明党・創価学会の覚悟を理解する人物はおらず、むしろ公明党が自らの政治理念と対極にある解釈改憲や軍拡を推し進めた小泉・安倍・菅政権などに追随してきたこともあって、しょせん「下駄の雪」である公明党は、なんだかんだいってもついてくると軽視し、タカをくくっていたきらいがある。そうした公明党、そして創価学会を舐め切った態度が表面化したのが、10月7日の党首会談を前に行なわれた自民党の新執行部人事だった。

両者の関係悪化に火に油を注ぐ形となったこの執行部人事が、公明党の連立離脱を決定的なものとしたことは明らかだ。

というのも高市氏は総裁選での論功行賞として、派閥解消に反して唯一存続した麻生派の領袖である麻生太郎元首相を1年ぶりに副総裁に就任させたが、麻生氏は“大の創価学会・公明党嫌い”で知られる人物である。前回の副総裁時代の2023年9月24日に福岡市内で行なわれた講演では、岸田政権が22年の暮れに敵基地攻撃能力の保有を明記した安保関連三文書を閣議決定した際に、公明党が専守防衛の観点から反対したことに言及しつつ、「山口(那津男代表)」「石井(啓一幹事長)」「北側(一雄副代表)」と公明党首脳を呼び捨てにしつつ、公明党と「その裏にいる創価学会」を「ガン」呼ばわりした。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n79cfa0b335a5

精神科医・野田正彰先生の『過ぎし日の映え 続社会と精神のゆらぎから』を刊行

鹿砦社代表 松岡利康

師走も押し迫り寒さも厳しくなり、世情は慌ただしくなってまいりました。皆様、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

さて、このたび小社では、わが国を代表する精神科医・野田正彰先生の『過ぎし日の映え 続 社会と精神のゆらぎから』を刊行いたしました。去る8月に同じく野田先生の『流行精神病の時代』を刊行し各方面から好評を博し、短期間に2冊立て続けての出版となります。

本書は、著者の故郷の地元紙、高知新聞の長期連載「高知が若かったころ」の後半部分にあたり、前半部分は『社会と精神のゆらぎから』というタイトルで講談社から刊行されています。その続編という恰好ですが、前半とは全く異なる構成と内容で独立した書籍となっています。

その多くの文章はペレストロイカ後のロシアやバルト海沿岸諸国などを歩き続けた記録となっており、そこで旅しながら考えた、人間社会への深い考察になっています。

何卒ご一読いただき、ぜひ、紹介、書評などお願い申し上げます。

いよいよ2025年も押し迫ってまいりました。慌ただしいさなかでの出版ですが、著者の深い思索の一端をご理解いただければ幸いに存じます。

『過ぎし日の映え 続 社会と精神のゆらぎから』https://www.amazon.co.jp/dp/4846315959

冤罪を作る検察官は恥を知れ!

尾﨑美代子

再審(裁判のやりなおし)を請求する時には新たな証拠が必要と言われている。それを再審を請求する側が必死で探して、新たな鑑定書を作成したり、そのために再現実験行うだけで大変な時間、経費を要する訳だが、今年7月18日、36年ぶりに再審無罪を勝ち取った前川彰司さんの「福井女子中学生殺害事件では「そんな証拠どこにあったんだい」という証拠が出てきたのだ。

この事件は、事件当日「血のついた前川を見た」などの証言が多数あり、前川さんが逮捕された。複数の関係者の供述をあわせるために使われたのが、当時流行っていたテレビ番組「夜のヒットスタジオ」でアンルイスと吉川晃司が繰り広げた超卑猥なパフォーマンスだった。

「六本木心中」を歌うアンルイスの後ろに吉川晃司が回り腰を激しく打ちつけるというパフォーマンス。20歳そこそこの関係者が刺激を受けて「いやらしいな」と言い合っていたところに先輩から電話がきて、車で先輩の所に行くと、そこに血を付けた前川が来た……というストーリーだった。

弁護団は再審の控訴趣意書で、車のダッシュボードに前川が付けたという血痕は、関係者の証言のように唾で拭いた位で消えない、必ずルミノール反応が出るはずなどの実験を行い、結果を新たな証拠として出していた。私もその趣意書を何度も読んでいた。

ところがだ。再審開始の決定書の冒頭に突然でてきたのが、「夜のヒットスタジオ」やらアンルイスやら吉川晃司だった。おいおいおい……私は慌てたね。何なんだよ、おい! 実は血の付いた前川を見たと証言したキーマンの男性が「いやらしいな」と言ってたパフォーマンスは事件当日の放映ではなく、翌週だったのだ。

その証拠を警察、検察はとっくの昔から知っていた。つまり、再審で無罪を勝ち取るには、検察が持っている全ての証拠を明らかにしなくてはならないのだ。それを必死で隠そうとする検察。こんな連中とその検察を統括する法務省、法制審に再審法を任せていては、冤罪犠牲者は絶対に救済されない。

そもそもだが、冤罪を必死で作る仕事をしてて、あんたら恥ずかしくないか。嫁や子供、親に「オレ、こんな仕事してるんだ。カッコいいだろ」と言えるか??

そういえば、これまで冤罪作ってきて、その後「栄転」したのはいいが、その先でパワハラやらセクハラやら、不祥事やらかしている元検察官を、数人知ってるぞ。埼玉愛犬家連続殺人事件で風間博子さんに死刑判決を下した岩橋義明検事は、電車のドアにわざとカバンを挟み、運行を妨害したとして厳重注意処分を受けた。

千葉県東金女児殺害事件で知的障害を持つ勝木涼君を「金子さん、金子さん」となつかせ、有罪にし、「栄転」先の栃木県では更に今市事件で、当時日本語の不慣れな、台湾出身の勝又拓哉さんに、暴行を振るったりして犯人にした金子達也検事は、その後赴任した福岡で、部下の女性に不適切な発言をして減給の懲戒処分をうけた。

また不祥事ではないが、和歌山カレー事件で、林眞須美さんの夫の健治さんに「眞須美にヒ素を盛られたと証言してくれ」と頼み込んだ大阪地検特捜部の小寺哲夫検事は、なんと関西生コンに対して妨害したり、告発・告訴を続けてきた大阪広域生コン側の弁護人になっている。悪はいつまでも悪のままだ。本当に恥を知れ!!

◎[参考記事]冤罪被害者の救済、遠のく? 元裁判官63人・学者135人が危機感(2025年12月7日付け朝日新聞)

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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政治献金のグレーゾーンとマスコミ癒着 高市早苗首相のマネーロンダリング疑惑

黒薮哲哉(紙の爆弾2025年12月号掲載)

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◆300万円の〝還付金〞

議席の数合わせの論理に翻弄された末、日本初の女性首相の座を射止めた高市早苗衆院議員。公明党の斉藤鉄夫代表が、政治資金収支報告書の記載漏れなど「政治と金」の問題を突きつけて自民党と決別したことを発端として、政争が拡大した。高市氏の傲慢な態度に業を煮やした斉藤代表は、高市政権ではこの問題に正面から切り込めないと判断し、26年にわたる連立を解消したとされる。

ところがワイドショーをはじめとする日本のメディアは、「政治と金」の問題よりも、むしろ政界再編をめぐる政党や派閥のかけひきをクローズアップした。

「政治と金」のグレーゾーンとは何か? 高市首相の政治資金問題を知り尽くす人物が東京都江東区にいる。『最高裁の暗い闇』(鹿砦社)などの著書を持つ志岐武彦氏である。志岐氏は2017年2月、高市氏が政治資金を巧みに動かして「資金洗浄」すなわちマネーロンダリングを行なったとして刑事告発した。

当時、彼女は第三次安倍晋三内閣の下で総務大臣を務めており、「総務大臣によるマネロン」に筆者は好奇心を刺激され、取材目的もあって告発人に名を連ねた。志岐氏が疑問視したのは、政治献金の還付金制度を利用して金銭を捻出する手口である。

有権者が政治献金を行なった場合、確定申告の際に税務署で所定の手続きを踏めば、一定割合の金銭が還付される。還付の割合は献金額のおおよそ30%(厳密には、寄附額から2000円を差し引いた金額の30%)で、積極的に政治献金をすることで政治参加の意識を促すことを狙いとしたのが、この優遇措置だ。

ただし、これは誰に対しても無条件に適用されるわけではなく、除外されるケースもある。租税特別措置法41条18・1は「寄附をした者に特別の利益が及ぶと認められる」場合、優遇措置の対象外とすると定めている。志岐氏はこの点に着目し、高市氏の行為が還付金を受けるための要件を満たさないと判断して刑事告発に踏み切ったのである。

2017年2月4日、志岐氏と筆者は連名で告発状を奈良地方検察庁に提出した。告発状では、高市議員が2012年12月25日、自らが代表を務める自民党奈良県第2選挙支部(以下、第2支部)に1000万円を寄付し、その後、確定申告の際に税務署で「寄付金(税額)控除のための書類」(タイトル写真)を作成し、約300万円の還付を受けたことを指摘した。

形式上、この1000万円は高市氏が自ら調達した資金とされている。しかし、政治資金収支報告書を精査すると、その寄付行為の約1カ月前にあたる11月20日に、第2支部が高市氏個人に対して「寄付金」と称して1000万円を支出していたことが判明する。

つまり、①第2支部が高市議員に1000万円を寄付し、今度は逆に②高市議員個人が同じ額の金を再び第2支部へ戻し、同時に寄付者・高市早苗として③約300万円の還付金を受け取った構図が浮かび上がる。

資金を循環させるだけで、庶民の手取り年収に匹敵する額の還付金を得ていたのだ。この1000万円の“源流”をさかのぼるとさらに興味深い事実が見える。第2支部が高市氏に1000万円を寄付した同じ日、自民党本部が第2支部へ「選挙費用」として1300万円を送付していたのだ。

これら一連の金の流れは、第2支部が作成した2012年度の政治資金収支報告書で確認できる。ただし、自民党本部から第2支部へあてた1300万円と、第2支部から高市氏が受け取った1000万円が同一の金である確証はない。重要なのは、高市氏が資金を循環させることで約300万円の還付金を生み出した事実である。これは租税特別措置法41条18・1が禁じる「寄附をした者に特別の利益が及ぶ」ケースに該当する可能性がある。志岐氏はこの点に着目して告発に踏み切ったのだ。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n80aa03ce4915

米国政府系の反共謀略組織・NEDからラテンアメリカ諸国の市民団体やメディアに63億円

黒薮哲哉

全米民主主義基金(National Endowment for Democracy=NED)から、2024年度、4,100万ドル(約63億~65億円)の資金がラテンアメリカ諸国の親米勢力(市民運動体やメディア)に支払われていることが分かった。支援対象となったプロジェクトの数は262。対象国は16カ国である。

NEDのウェブサイトは、支援の理由について次のように述べている。

ラテンアメリカとカリブ地域では、権威主義が広がりつつあり、指導者たちは民主的な制度を弱めて権力を固めている。

NEDは、キューバ、ニカラグア、ベネズエラのように強い権威主義体制が続く国々に特に注目している。

こうした国々でNEDは、現地の団体と協力し、政権の独裁的な性質についての理解を深め、市民が独立した情報を得られるよう支援し、反民主的なプロパガンダに対抗する。

厳しい弾圧がある中でも、活動家たちは平和的で民主的な改革を進めるという強い意志を持ち続けている。

NEDは、米国政府系の反共謀略組織で、他国の「民主化」を支援するための組織である。今年、ノーベル平和賞を受賞したベネズエラの反政府活動家で、同国への軍事介入を米国に要請しているマリア・マチャドも、NEDに深く連座してきたことが判明している。

NEDの手口は共通している。メディアを使って「親米」と「反共」で世論を誘導し、一種の混乱状態をつくった後にクーデターを試みる手口である。

しかし、ニカラグアでもベネズエラでも失敗している。日本にもNEDから資金援助を受けている人物がいるという情報もあるが、詳細については分からない。

《関連記事》
トランプ政権がUSAIA傘下の全米民主主義基金(NED)への資金提供を再開(2025.05.14)
USAID傘下の全米民主主義基金(NED)が、3月5日、行政機関と政府高官を相手に提訴、「予算を違法に保留している」(2025.03.12)
国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサーは米国政府系の基金NED(2024.06.07)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年12月01日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

12月13日~19日、大阪十三「シアターセブン」で中村明監督の映画「生きし」の上映が開催されます!

尾﨑美代子

12月13日から十三の「シアターセブン」で中村明監督の映画「生きし」の連続上映がはじまります。毎日監督とどなたかのアフタートークがありますが、12月15日(月)中村監督とのアフタートークで、私も一緒にお話させて頂きます。映画を見にきてください。

1993年におきた「埼玉愛犬家連続殺人事件」をモチーフに、当時報道番組のデイレクターをしていた中村明さんが作った映画です。

「愛犬家」の周辺で次々と関係者が行方不明になる、しかし殺害の証拠がない。のちに殺人で逮捕されたブリーダーの関根元(元死刑囚、2017年東京拘置所で病死、享年75歳)が「ボディを透明にする」と、徹底的に遺体を損壊し、サイコロステーキ状に切り刻み、燃やしたり、川などに捨てたからだ。

事件が何をきっかけに発覚したか?実は遺体を運んだりして事件を手伝わされた部下の男Aが、別件で逮捕された自身の妻を救出したいがために、警察、検察に告白したことからわかりました。その後Aも逮捕されますが、留置場で、妻や元妻に合わせてもらい、2人きりの密室でなんと性行為を行ったなどと裁判で証言して話題になりました。Aは出所後事件の全貌を書いた本を出版しました。私もすぐに買って読みましたが、その後誰かにあげました。まさか、今その本が10倍ほどの値段がついているとは……。(その時点では凄い内容だと信じていましたが、その後虚偽の部分があることが明らかになっています)

映画「生きし」は、事件そのものを追うのではなく、あくまでもその事件をモチーフとした内容です。関根と一緒に逮捕され、関根同様に死刑囚となった元妻・風間博子さんと、実の母親、そして娘の関係、無実を訴える風間さんと支援者らの交流などを描いています。

私が、風間さんが冤罪を主張し、現在3度目の再審(裁判のやり直し)を請求していることを知ったのは約1年前です。当初「風間も共犯だ」と訴えたAは、裁判で「風間さんは殺害に関わってない」「なぜ死刑囚になるんだ」と証言しています。

また風間さんを支援する田口佐智子さんが、別の記事でこんなコメントを寄せてらっしゃいます。「モデルの風間博子さんの交通許可を得て文通しています。事件の立件に問題があり、何の物的証拠もない死刑判決です。再審請求中。」

死刑囚となったら、親族以外なかなか面会が叶わないなか、田口さんのような支援者がおられ、大変心強いことです。しかし、この事件、私も三度目の再審請求が行われていることを知りませんでした。これをきっかけに、この冤罪事件自体へも関心を持っていただけたら幸いです。

再審法改正問題がいよいよ正念場を迎えようとしている昨今、私は、この事件と様々な点で非常に似ている和歌山カレー事件との類似点、そして再審がどのように難しいかなどについて、お話させてもらいたいと考えております。

アフタートークでは毎日違う方が登場致します。詳細や時間などはホームページでご確認ください。

みなさま、劇場でお会いしましょう!

◎「生きし」HP https://ikisi-movie.com/

◎「シアターセブン」HP https://nanageitheater7.sboticket.net/top?type=title

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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総力で年末危機を突破し、唯一の脱(反)原発雑誌『季節』の発行継続、鹿砦社の言論・出版活動継続に圧倒的なご支援を!

 私たちは『季節』の旗を守りたい! 
『季節』を脱(反)原発言論の強固な拠点にしたい! 

『季節』編集長 小島卓 鹿砦社代表 松岡利康

『季節』を愛し、また鹿砦社の言論・出版活動を支持される皆様!

『季節』2025冬号をお届けいたします。実際に寄稿や取材にご協力賜った皆様方、熱心な読者の皆様方、本誌『季節』は創刊10年(いわば“親誌”の『紙の爆弾』は20年)を経過し、発行継続困難な情況に直面しています。今号も発行が危ぶまれましたが、何とか発行に漕ぎ着けました。コロナ禍以降は、毎号発行が困難な中で、『紙の爆弾』もそうですが、心ある方々のご支援を仰ぎ資金を工面しつつ一号一号発行してきました。

私たち鹿砦社は、時代の転換点・1969年の創業以来半世紀余り、当初は時代を反映し裏切られたロシア革命史、また知られざる革命運動史(左翼エスエル、クロンシュタット叛乱、マフの運動など)、社会運動史の発掘に努め、80年代後半、松岡が経営を引き継いでからは社会問題全般、ジャニーズ問題(一昨年の英国BBCによるジャニー喜多川告発には、数年前から水面下で秘密裡に協力)などの芸能関係にまでウイングを拡げ(このことで前経営者からは「俺の顔にクソを塗った」と非難されました)、さらには2005年の親誌『紙の爆弾』創刊以来20年間、「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧(実際に松岡が逮捕、長期勾留されています)にも屈することなく、〈タブーなき言論〉の旗を掲げ続けてきました。

そうして、『紙の爆弾』が軌道に乗り経営が安定した2014年、本誌前身の『NO NUKES voice』(31号より『季節』に改題)を創刊し、常に一号一号3・11で被災、原発事故で被ばくされた方々に寄り添い発行を続け、この継続を図るために苦闘してきました。この年末がノルかソルかの正念場です!

本誌のみならず『紙の爆弾』も、あるいは当社の出版物全般もそうですが、コロナ禍を大きな契機として出版業界の情況が大きく変わり、これまでのやり方ではやって行けないことを実感させられました。しかし、いくつか新たな試行錯誤をしながらも、私たちがいまだに苦境から抜け出せずにいるのは、その本質と、想像以上の深度に気づくことができず、よって方途を見失い、具体的な出版企画に結びつけることができないからだと認識はしています。この5年間、突破口を探し模索と試行錯誤を続けています。皆様方に妙案があれば、ぜひお寄せください。

本誌『季節』も、『紙の爆弾』も、幾多の苦難(この最たるものは「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧)を乗り越え本誌は昨年10周年、『紙の爆弾』は本年4月で20周年に至り、多くの皆様方に祝っていただき、また厳しい叱咤激励も受けました。多くの雑誌が権力のポチと化し、『季節』や『紙爆』のようにタブーを恐れない雑誌がなくなったからでしょう。以後私たちは、次の10年に向けて歩み始めていますが、遺憾ながらなかなか苦境を打開できずにいます。

そうは言っても、師走に入り、ノルかソルかの勝負所、ここを断固突破しなくてはなりません! 先に発行し送付した『紙の爆弾』の定期購読者、会員の皆様方らにも申し上げましたが、断固突破する決意ですので、ぜひ皆様方のご支援をお願い申し上げます。そして、年を越し、東日本大震災から15年の来年3・11には新たな『季節』を発行し共に迎えようではありませんか!

《表紙》『原子力明るい未来のエネルギー』 紆余曲折を経て 今は文字盤だけが倉庫に眠る(絵=鈴木邦弘)

季節2025年冬号
『NO NUKES voice』改題 通巻44号
紙の爆弾2026年1月増刊
2025年12月11日発行
定価770円(税込み)

《グラビア》キオクとキロク(鈴木邦弘

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《報告》生命体の世界と原子核の世界

樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》未来の人々から裁かれないために

井戸謙一(311子ども甲状腺がん裁判弁護団長)
《報告》311子ども甲状腺がん裁判にご支援を

《特集》福島の汚染土と汚染水の行方

山川剛史(東京新聞編集委員)
《報告》被災地の現実はどれほど報道と違うのか

鈴木邦弘(絵本作家/イラストレーター)
《報告》キオクとキロク

まさのあつこ(ジャーナリスト)
《報告》汚染土政策の変遷 「最終処分」から「復興再生利用」

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
《報告》放射能汚染土の核心的問題

平井 玄(新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)
《報告》放射能のない新宿「御苑」をコモンズに
 
門馬好春(「三〇年中間貯蔵施設地権者会」会長)
《報告》中間貯蔵施設の汚染土の行方

菅野みずえ(「ALPS処理汚染水差止訴訟」原告)
《報告》ALPS処理汚染水を海に流すな

吉澤正巳(「希望の牧場・よしざわ」代表)
《インタビュー》原発事故の暴虐に「いのち」を対峙
 被爆した牛たちを飼い続けて闘う

水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
《インタビュー》『3・11の彼方から』を読む

村田三郎(医師)
《インタビュー》弱者の側に立ち、反核・反原発を闘う《後編》

末田一秀(『はんげんぱつ新聞』編集長)
《講演》エネルギー基本計画 暮らしへの影響

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》柏崎刈羽原発の再稼働に異議あり!!

後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《報告》原発の技術的特性と裁判の論理〔2〕

古居みずえ(映画監督)
《報告》パレスチナと福島に通い続けて
             
森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
《報告》福島から広島へ 「核被害者の権利宣言2025」が灯した希望と連帯

木村三浩(一水会代表)×板坂 剛(作家/舞踊家)
《対談》民族派と左翼の融合は可能か《前編》

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、我々の置かれた場所から

原田弘三(翻訳者)
《報告》「脱炭素」の不都合な真実

再稼働阻止全国ネットワーク
《報告》危険な東海第二原発を阻止!
 「原発依存社会」へと暴走する高市政権を批判する!
 瀬尾英幸(北海道泊村在住)
 志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
 けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 藤岡彰弘(廃原発watchers能登・富山)
 木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

《反原発川柳》乱鬼龍

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新聞社の世論調査は本当に信用できるのか ── 収益構造から読み解く支持率報道の裏側

黒薮哲哉

新聞各社が発表する内閣支持率は、政治状況の判断材料として大きな影響力を持つ。しかしその数字は本当に信頼できるのだろうか。高市内閣をめぐっては、批判が強まっているにもかかわらず支持率が上昇するという不可解な傾向が続く。本記事では、世論調査そのものを直接否定するのではなく、新聞社の収益構造──とりわけ「押し紙」による莫大な利益──に着目することで、世論調査の数字が客観的かつ中立なデータとして扱えるのかを検証していく。

日本のメディアが定期的に公表している世論調査に、正確な裏付けはあるのだろうか。10月に新聞各社が公表した高市内閣の支持率は次の通りである。

朝日新聞 68%
産経新聞 75.4%
毎日新聞 65%
日経新聞 74%
読売新聞 71%
共同通信 64.4%

ところがその後、台湾をめぐる発言で国内外から激しい反発を受けたにもかかわらず、支持率は高くなる傾向があるようだ。たとえば11月16日付の毎日新聞は、支持率が69%になったと報じている。国民の約7割は高市内閣を支持しているというのだ。

当然、これらの数字が高市内閣の方向性を支持しているとなれば、強引に日本の右傾化を推し進める根拠になる。世界から批判の的になっている高市首相にとっては、願ってもない数字である。

が、肝心の数字に根拠はあるのだろうか。

この記事では、新聞社の収益構造の観点から数字の信ぴょう性を検証してみよう。数字そのものが信用できないことについては、次の記事を参考にしてほしい。世論動向を推測する目的に最も合致した国政選挙の比例区における各党の得票率と、メディアが公表する数字に整合性がない点を指摘した記事である。

【参考記事】中央紙の年間の「押し紙」収入420億円から850億円──内閣支持率82%? マスコミ世論調査を疑う背景と根拠

◆新聞社の収益構造から見る信ぴょう性

メディアの性質を解析するときに、最も重要な項目のひとつは、だれがメディア企業を運営するための資金の提供者なのかという点である。資金源が枯渇すると、メディア企業が成り立たなくなるからだ。

「押し紙」と呼ばれる新聞がある。これはごく簡単にいえば、新聞社が新聞販売店に対してノルマとして買い取りを強制する新聞のことである。たとえば3000部を3000人の読者に配達している販売店に4000部の新聞を搬入すれば、1000部が過剰になる。新聞の破損を想定して若干の予備紙を必要とするものの、ほぼ1000部がノルマである。この部数が「押し紙」といわれるものである。

改めて言うまでもなく、販売店は「押し紙」の代金を新聞社に納金しなければならない。

※厳密な定義については別にあるがここでは言及しない。

この「押し紙」により、後述するように新聞社は莫大な利益を上げているのだが、「押し紙」は独禁法で禁止されている。ところがおかしなことに、行政機関も裁判所も「押し紙」を容認している。取り締まりの対象にはなっていない。

◆「押し紙」の実態と規模

全国にはどの程度の「押し紙」があるのだろうか。「押し紙」の量を裏付けるデータは、これまで度々明らかになっている。たとえば2004年に毎日新聞の内部資料が社外へ流出し、その中で販売店に搬入される新聞の約36%が「押し紙」であることが判明した。

内部資料をもとに試算した「押し紙」による販売収入は、年間で約295億円になる。詳細については、次の記事を参考にされたい。

【参考記事】国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に

朝日新聞の「押し紙」の実態も明らかになっている。たとえば2014年に同社が実施した調査によると、「押し紙」率は次の通りである。

・「朝刊・夕刊のセット版」:29%
・「朝刊単独版」:25%

これらの数字が判明したのは、やはり内部資料が外部へ流出したことが原因である。

読売新聞や産経新聞の場合は、この種の内部資料が外部へ漏れたことはないが、これまで新聞販売店が繰り返し「押し紙」による損害賠償を求める裁判を起こしてきた関係で、かなり「押し紙」の実態が明らかになっている。

メディア黒書が行った裁判の取材によると、読売新聞と産経新聞の場合は、おおむね3割から4割が「押し紙」である。

◆中央紙が得ている収入規模

「押し紙」による新聞社の不正な販売収入は、想像以上に巨額である。2025年8月時点で、中央紙(朝日・毎日・読売・産経・日経)の発行部数は約1180万部とされている。

このうち「押し紙」の割合を20%と仮定すると、約236万部になる。新聞1部あたりの卸価格を月額1500円(すべて朝刊単独版と仮定)とすれば、1か月あたりの「押し紙」販売収入は約35億4000万円、年間では約424億8000万円にのぼる。

もし「押し紙」率が40%に達すれば、年間収入は約850億円にもなる。販売店に対して様々な補助金を支出しているとは言え莫大な「純利益」を得ている。

しかも、この試算は控えめな前提条件に基づく。「朝・夕刊」セット版の場合、卸価格が2000円程度に上がるため、収入はさらに増加する。筆者の試算に誇張はないといえる。

◆「押し紙」が広告収入にも影響

しかし、「押し紙」制度の大罪はこれだけではない。

「押し紙」により新聞の公称部数(ABC部数)は水増しされる。その結果、何が起こるのか? 答えは簡単で、紙面広告の媒体価値が上昇することである。それにより広告収入も増える原理になっている。

逆説的に言えば、新聞社は、ABC部数をかさ上げするために、販売店に対して補助金を支出してまで、「押し紙」を買い取らせているのである。

このような手口は、一種のマネーロンダリングではないか?

もっとも最近は、新聞の公称部数に「押し紙」が含まれていることが公けになってきたこともあって、紙面広告の価格交渉で部数の大小が重視されなくなっている側面はあるが、少なくとも広告価格を設定するときの基礎資料になっていることは議論の余地がない。

◆公権力機関はなぜ、「押し紙」を取り締まられないのか

既に述べたように、「押し紙」は独禁法に違反しており取り締まりの対象になる。それを立証するための資料の存在も明らかになっている。が、公権力はこの問題だけは絶対に踏み込まない。弱小な地方紙にメスが入ったことはあるが、中央紙の場合は逆に公権力が「押し紙」制度を保護しているのが実態だ。

なぜ、公権力機関は新聞社を保護するのだろうか。

それは「押し紙」の汚点を把握しておけば、それを新聞社との取引材料として使うメディアコントロールが可能になるからだ。世論誘導に利用できるからに他ならない。

メディアコントロールは、経済のアキレス腱を握ることで可能になる。この原理は、実は戦前・戦中から変わっていない。戦前・戦中、政府は新聞用紙の配給制度を逆手にとって新聞をプロパガンダ機関に変質させたのである。今はそれが「押し紙」の黙認に変わっているに過ぎない。

2025年、高市政権の下でも同じ構図が構築されている。新聞社の世論調査が嘘だとする確証はないが、少なくとも新聞社の収益構造を検証する限りでは、信頼できる数字でない。

ちなみに高市首相は、新聞業界から政治献金を受けていた経緯がある。次の記事を参考にされたい。

【参考記事】高市早苗の政治献金とマネーロンダリングに関する全記事

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年11月22日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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『紙の爆弾』1月号に寄せて

中川志大 『紙の爆弾』編集長

1月号では、孫崎享・元外務省国際情報局長が高市早苗首相の「台湾有事発言」を分析。すでに日中関係の悪化による経済への影響が各所で顕在化していますが、それにとどまらない本当の「高市リスク」について解説しています。それは、2021年末の安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」発言と比較するとわかりやすく、両者の違いは現役の首相であるかだけではありません。高市首相の「右翼的ポピュリスト」思想にもとどまらない、今の高市政権そのものが持つ危険性が、孫崎氏の論考から見えてきます。

そもそも、繰り返し強調される「中国の脅威」とは何か。日本国内では、まるで中国がいきなり暴走を始めたかに受け止められていますが、そのタイミングをみれば、アメリカの対中戦略の変化が発端であることがわかります。だとすれば高市発言は、米中対立が次の段階に移行する予兆ととらえることが可能です。そうした現状にあって、果たして日本政府に対中戦略と呼べるものがあるのか大いに疑問で、ひたすらアメリカに追従することしか考えていないように見えます。その先に見えるのが、「日本のウクライナ化」です。ロシア・ウクライナ情勢について前号では東郷和彦・元外務省欧亜局長が、日本でほとんど報道されない欧州各国首脳の過激発言を紹介、ウクライナ情勢の現在と今後の展開について解説しました。そこで見えてきたのが欧米発のプロパガンダにまる乗りする日本の姿で、こと台湾情勢においてはさらなる危機を招くことが懸念されます。

孫崎氏は「目先の一手」に終始する高市政権の対外姿勢を指摘していますが、それは、事実に基づかない発言で“犬笛”を吹きジャーナリスト・西谷文和氏を攻撃しながら、西谷氏の質問状に答えない藤田文武・維新共同代表の言動にも通じます。橋下徹元代表ならば、もう少し考えて話していたのでは。自維まるごと、代を重ねるごとに劣化する、というのは、現代日本の政治に根本的な要因があるように思います。

N党・立花孝志代表の名誉毀損逮捕。パチスロメーカー告発書籍等の出版を理由とした2005年の鹿砦社代表逮捕・長期勾留事件は、名誉毀損の判断は権力・体制側のさじ加減であるとしても、出版物の記載内容(表現)を理由にしながら「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」を認定した異常なものでした。松岡代表が否認を貫き、それゆえに約200日に及ぶ長期勾留に至ったのに対し、立花氏が早々に罪を認めたなど両事件の展開には違いがあるものの、本誌記事が指摘する内容は、日本の刑事司法を考えるうえで間違いなく重要なテーマです。

ほか今月号では、現地取材・本人取材を通して田久保眞紀・前伊東市長への「メディア総たたき」の真相に迫りました。また“極右の台頭”ばかりが報道される裏で躍進を見せる「欧州左派」と、失速する「日本の左派」の違いを解説。さらに、このところ死亡事故が相次いでいるにもかかわらず、大きく取り上げられない日本ボクシング界の闇にメスを入れました。『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年1月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年12月7日発売

「台湾有事発言」は序章にすぎない 日本を襲う高市リスク 孫崎享
高市首相に食い込んだ米巨大投資ファンド 浜田和幸
日本だけ“真逆”の「令状主義」立花孝志逮捕事件が明かす刑事司法の異常 たかさん
藤田文武維新共同代表「犬笛吹いて逃亡」の責任を追及する 西谷文和
欧州左翼“復活”の時代に 日本の左派が見失った「果たすべき役割」広岡裕児
デマゴーグが闊歩する風土(上)日本的「和」の真相 中尾茂夫
国民を監視し情報を遮断する統制強化装置「スパイ防止法」の正体 足立昌勝
犯罪を裁く司法の犯罪 警察、検察、そして「裁判所の裏ガネ」青山みつお
動物実験を代替する? ヒト臓器チップとは何か 早見慶子
「日露相互理解協力章」受章 日露民間外交がもたらす「国益」 木村三浩
「JBC」トップに高まる退陣要求 ボクシング連続死亡事故の報道されない闇 片岡亮
メガソーラー計画は本当に止まったのか? 田久保眞紀前伊東市長総たたきの真意 高橋清隆
保護者を“カスハラ”扱いする都教委ガイドライン 永野厚男
原発亡国論 佐藤雅彦
食・農と生活を再生する「海洋深層水」の可能性 平宮康広

連載

例の現場【新連載】
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
ニッポン崩壊の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖【新連載】

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司法の独立・裁判官の独立について〈2〉アメリカによる日本の司法破壊

江上武幸(弁護士 福岡・佐賀押し紙弁護団)

戦後80年にわたって日本がアメリカの事実上の支配下におかれてきたことは、ネット情報により国民に広く知れわたるようになりました。前回述べたとおり、司法の世界(裁判所・検察庁)もアメリカ支配のもとにおかれてきました。

*元外交官孫崎享氏の『アメリカに潰された政治家たち』(河出文庫)をご一読ください。

*グーグルで「日米合同委員会」・「年次改革要望書」を検索して下さい。

日米合同委員会は、在日米軍将校と中央省庁の官僚とで構成する政治家抜きの秘密会議です。日本側参加者の肩書をみると、軍事・外交・防衛問題のみならず立法・司法・行政の国政全般について継続的に協議が行われていることがわかります。

日米合同委員会は月2回程度開催されているとのことで、これまでの開催数は2000回におよぶとの指摘もあります。

そこでの協議内容は、国会に報告されることも国民に公表されることもありません。

* グーグルで「日米合同委員会議事録公開訴訟」を検索ください。

日本のエリート官僚は、戦前は天皇支配のために、戦後はアメリカ支配のために生涯を捧げているといっても過言ではありません。日米合同委員会に各省庁を代表して出席できる地位につくことが官僚としての出世コースの最終ゴールであると考えて日常業務に従事しているとしても不思議ではありません。

大臣や国会議員が短い期間で国政の場から退場していくのに比べると、各省庁の官僚は大学卒業後、定年退官まで人生のすべてをかけて国政の中枢に座り続けるのですから、国を動かしているのは自分たち官僚であると自負するのもあながち無理からぬことかもしれません。しかも、在職中「つつがなく」上司の指示・命令に従って業務を遂行すれば、出世につながり、職を辞したあとは優雅な天下り生活が待っています。

しかし、国家権力が最終的に帰着するところは、最大の暴力装置である軍隊であることは歴史の証明するところです。アメリカの支配下におかれている我が国においては、国家権力は最終的には駐留米軍と自衛隊に帰属します。この点は、冷静に見ておく必要があります。自衛隊の文民統制も究極においては絵に描いた餅になることが必至です。

近時、自衛隊は陸・海・空を問わず米軍との共同訓練を拡大しています。実際に戦争が始まった場合、自衛隊が米軍の指揮下にはいることは避けられません。共同訓練の積み重ねによって、自衛隊員があたかも世界最大の核保有国であるアメリカの軍隊の一員であるかのように錯覚し、米軍に先んじて無謀な軍事行動に出る可能性も否定できません。

防衛大学生が入学直後、大量に退学している情報がネット上散見されます。退学の理由はともかくとして、早々に防衛大学での生活をあきらめ退学を選択した学生達と違い、残った学生は軍事大国としての復活を目指す思想に染まりやすいのではないかと懸念します。

日々、猛烈な軍事訓練に耐えてきた防衛大学卒業の自衛隊幹部が、文民統制という名で上位に立つ同世代の一般大学卒業の文官を内心で軽くみたとして不思議ではありません。

防大生の職業軍人としての自尊心・おごりたかぶりの萌芽は、戦前の帝国陸・海軍人の姿をみるまでもなく、制服姿で靖国神社の参道を行進する姿をみれば容易に想像がつきます。

災害時に被災者を救護した経験のある自衛隊員はともかく、日夜、日本の防衛のためということで人殺しのために厳しい訓練に耐えている血気盛んな若者が、いつしか世界最強の米軍と共に戦場に立つ日が来ることを夢見たとしても不思議ではありません。

◆最高裁と検察庁中枢のアメリカ支配

次に、年次改革要望書は、アメリカ政府の日本政府に対する規制緩和や市場開放を求める要望事項(実際は命令に等しい)を記載した文書です。日本政府はこれを受けて関係省庁の官僚に検討と実行を指示し、官僚は進捗状況をアメリカに定期的に報告する仕組みになっています。鳩山民主党政権時代にいったん終了しますが、その後も形を変えて継続しています。

そこに書かれた要望事項は、建築基準法・独占禁止法・著作権法・労働者派遣法などの基本法の改正や郵政民営化・法曹人口の大幅増加などの具体的かつ詳細で、広範にわたっています。

司法にもアメリカ支配が及んでいることは、米軍立川基地違憲判決(伊達判決)を最高裁判決で取消すための方策を田中耕太郎最高裁長官とアメリカ大使が密談で決めたことを紹介したとおりです。

* 検察庁については、戦後、GHQによる東京地検特捜部の誕生秘話を検索ください。

* 歴史に仮という言葉が許されるならば、当初予定されていた田中二郎氏が最高裁長官に指名されておれば、我が国の司法の歴史はもっと違ったものになっていたことでしょう(岡口基一元裁判官のSNSでの発言)。

司法の独立と裁判官の独立を守るのは裁判官の責任だけではありません。検察官・弁護士を含む法曹三者全体の責任です。

最高裁と検察庁の中枢はアメリカ支配を積極的に受け入れてきた戦前の司法官僚とその後継者たちによって占められてきました。従って、アメリカが裁判所・検察庁については、直接間接に影響力を及ばすことは可能です。

ちなみに、京都大学法学部卒業で検事になった同期の友人は、「就任して6年目に将来同期の誰がどの程度まで出世するかが分かるようになった。」と述懐してくれました。裁判官の世界も同じです。

しかし、弁護士の場合、単位弁護士会と日本弁護士連合会の会長は会員の選挙によって選ばれますし、そもそも民間組織であるためアメリカの支配はおよびません。

弁護士は治安維持法に基づく検察局・裁判所による思想弾圧事件を弁護してきた戦前の歴史から、新憲法のもとで認められた三権分立・司法の独立・裁判官の独立を守ることの重要性を最も強く感じていました。

新憲法施行に伴い「司法研修所」が設置され、司法研修所を卒業するときに裁判官・検事・弁護士のいずれかの道を選択する制度に変わりました。

司法研修所の2年間の生活で法曹の卵たちは法曹三者の一体感を醸成してきました。私達世代は、裁判官・検察官・弁護士の立場の違いを超えて、司法の独立・裁判官の独立を一致協力して擁護しようとする気持ちは同じでした。しかし、アメリカの支配を甘んじて受け入れた戦前の裁判官・検察官は、戦後の司法研修所で培われた次世代の法曹三者の一体感を理解することも尊重することもできませんでした。

石田最高裁長官らによる青法協所属裁判官の脱会工作や再任拒否、修習生の任官拒否による思想統制については、結局、外部の日本弁護士連合会が中心になって反対するほかありませんでした。

1969年 定期総会 司法権の独立に関する宣言
1970年 臨時総会 平賀・福島裁判官に対する訴追委員会決定に関する決議
1971年 臨時総会 裁判官の再任拒否に関する決議
1971年 臨時総会 司法修習生の罷免に関する決議
1971年 定期総会 司法の独立に関する宣言
1972年 定期総会 裁判官の再任・新任拒否に関する決議
1973年 定期総会 最高裁判所裁判官の任命に関する決議
1973年 臨時総会 裁判官の再・新任に関する決議
1975年 定期総会 司法研修所弁護教官の選任および新任拒否に関する決議
1976年 定期総会 司法研修所における法曹教育に関する決議
1977年 定期総会 裁判官新任拒否に関する決議
1978年 定期総会 裁判官新任拒否に関する決議
1979年 定期総会 裁判官新任拒否に関する決議

最高裁の裁判官の思想統制に真っ向から反対する弁護士や日本弁護士会の存在がアメリカや最高裁にとって目障りだったことは疑いようがありません。

アメリカは1997年の年次改革要望書に「日本政府は、1998年(平成10年)4月1日から、最高裁判所の司法研修所の修習生受け入れ数を年間1500人以上に増やすことによって、日本弁護士の数を大幅に増やすべきである。」と記載しました。

翌1998年の要望書には「日本政府は、最高裁判所司法研修所の修習生受け入れ数を可及的速やかに、遅くとも2000年(平成12年)4月1日以降に入所する修習生クラスから年間1500名以上に増やすべきである。」と記載しました。

1999年の要望書には「日本政府はできる限り速やかに、しかし遅くとも2001年(平成13年)4月1日に開始される研修までに、最高裁判所司法研修所による修習生の受け入れ数を年間2000名以上に増やす必要がある。」と記載しました。

2000年の要望書には「米国は、自由民主党司法制度調査会が2000年5月に提言した目標(ある一定期間内にフランスのレベルに到達する)のように、弁護士数をある一定数、大幅に増加させることをもとめる。」と記載しました。

(注):フランスのレベルとは、年間3000人程度の数を意味します。

アメリカ政府が日本政府に司法試験合格者の大幅増員を求めた背景には、日本の弁護士の経済的・社会的地位の低下、裁判官・検察官に対する弁護士の相対的地位の低下、ひいては日本弁護士連合会の政治的影響力の低下を実現する意図が隠されていたと考えざるを得ません。

法曹人口の増大と法科大学院の導入が完全な失敗であったことは誰の目にも明らかになっています。しかし、日本の司法の破壊を目的としたアメリカにとっては大成功だと評価することが出来ます。郵政民営化の成功体験と同じです。

◆法科大学院導入と法曹人口増員が日本の司法をいかに破壊してきたか

次回の投稿は、法科大学院の導入と法曹人口の増員が日本の司法をいかに破壊しているか、その現状を個人的感想を交えて述べさせていただきたいと思います。

(追記)現在の司法の状態をどのように立て直していけば良いのか考えると気が遠くなります。なお、参考のために以下の動画と書籍をご覧頂ければ幸いです。

れいわ新選組の山本太郎氏の参議院文教委員会における質疑(2019年6月18日開催)
「アメリカ様の要求通りは、学問の世界も?
」(ユーチューブ動画)

◎前法務大臣河井克行氏著「司法の崩壊-新任弁護士の大量発生が日本を蝕む」(PHP研究社刊)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年10月12日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

◎「司法の独立・裁判官の独立」について〈1〉

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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