『紙の爆弾』2025年 8・9月号に寄せて

中川志大(『紙の爆弾』編集長)

東京都議選、そして参院選前の重要な時期にマスコミを席巻した元TOKIO国分太一の騒動。本誌校了時点で、彼が何をしたのかは明らかになっていないものの、これを「スピン」と見る声が相次いでいます。別のニュースを大々的に流すことで、権力にとって不都合な事態から大衆の関心を逸らせる「スピン報道」を疑う指摘がしばしばみられるようになりました。その点で、今月号で政治経済学者・植草一秀氏が解説する「令和の米騒動」の本質を隠す小泉進次郎農水相の“三文芝居”、そのどさくさ紛れの年金制度改悪、「103万円の壁」と「106万円の沼」、かき消されつつある企業・団体献金禁止と消費税減税。問題から目を逸らさない姿勢が求められます。また、そこに本誌の役割も見出しています。

今月号では、「遺伝子組換え米でつくる、飲む新型ワクチン」こと「ムコライス」について解説を試みました。問題は、これ自体に潜むmRNAワクチンと同様の危険性はもとより、コロナ・パンデミックを機に(ひょっとするとそれ以前から)日本人がかけられてしまった「ワクチンを打たないと病気になる」という洗脳です。そもそも製薬会社が“薬”よりも“ワクチン”の開発に積極的であるのはビジネス上の理由です。記事ではその点から、現代社会における医療の現実に迫るとともに、本来的に人間に備わっている免疫システムについても確認しています。

ところで、6月20日の「中身は言えない」ことを言っただけの日本テレビ社長会見。犯罪行為である「24時間テレビ」寄付金着服で会見を開かないところから、アリバイづくりの目的が明らか。都議選後の石丸伸二氏の会見で、ネット配信カメラをひたすら記者に向ける様子が話題になったものの、フジテレビも含めて取材者に批判的な反応を視聴者から引き出す狙いとして、やっていることは同じではないかと思われます。もちろん、メディア側が対抗策を持っていないことも問題です。

本誌発売日は参院選期間中。まともな論点が提示されるかが問題であるものの、この間、財務省のあり方を含めて「税」に注目が集まっているのは、悪い流れではないと思います。石破茂首相の「2万円選挙買収」は、受け取る人が自民党に投票すれば「買収」が成立する、という指摘があり、これが正解でしょう。

7月号で採り上げた「日本航空123便墜落」の真相究明を続ける青山透子氏インタビューには、“多方面”から大きな反響をいただきました。本誌記事は、参院選を前に青山氏や遺族の吉備素子さんへの言論妨害といえる佐藤正久・自民党参院議員の国会質疑に反論する形で、青山氏の活動の一側面を紹介したものです。7月4日発売の新刊『日航123便墜落事件 四十年の真実』(河出書房新社)が発売。本誌記事が同書を読むきっかけになれば幸いですし、青山氏の著作を読んだ方が、本誌を手に取るきっかけになれば幸いです。

さらに今月号では、5年前の7月18日に命を落とした俳優・三浦春馬の“不審死”について、究明活動を続けるファンの声を集めました。ほか、広島県の水を汚染する産廃処分場問題、米価格をさらに上昇させる“農薬”、そして権力の不正に大して“非開示”を許さない「情報公開制度」の“画期的判例”など、本誌でしか読めないレポートを多数お届けします。『紙の爆弾』は、全国書店で発売中ですので、ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2025年 8・9月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年7月7日発売

「令和の米騒動」の正体 その裏で進む複数の危険事態 植草一秀
日本に野党はあるのか 自民党が権力を握り続けた「日本型民主主義」の真相 田中良昭
“投資の神様”ウォーレン・バフェットの光と闇 浜田和幸
攻撃開始後に政権支持率上昇 イスラエルが「イラン戦争」を始めた理由 広岡裕児
「ワクチンを打たないと病気になる」という洗脳 コメで作った新型ワクチン「ムコライス」とは何か 早見慶子
芸能・広告界の虚構の営業戦略「清純派女優」の終焉 片岡亮
民主主義国家における「秘密」とは何か「スパイ防止法」と憲法九条 足立昌勝
「横田空域」「米軍司令部移転」「PFAS」東京都の米軍基地問題を衝く 木村三浩
「行政の不法を隠す非開示は許されない」情報公開制度の壁を取り払う画期的判決 青木泰
5年を経ても抗議を続ける理由 三浦春馬“不審死”の真相究明活動 三川和成
三原本郷産廃処分場「産廃フリーパス」という広島県の惨状 さとうしゅういち
国内農業を守るためにすべきこと 米価格と農薬の語られざる関係 平宮康弘
ジャニーズ、スターダスト、そして松山千春「反省」しない芸能人と芸能プロ 本誌芸能取材班
亡国「自罠党」を葬り去るために 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 南馬込実母焼殺事件 片岡健
「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧から二十年 松岡利康

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
【最終回】「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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西日本新聞 4月と10月に「押し紙」を増やす変則的な手口【YouTube配信9】

黒薮哲哉

「4・10増減」(よんじゅう・そうげん)と呼ばれる変則的な「押し紙」の手口がある。4月と10月に「押し紙」を増やす販売政策である。なぜ、4月と10月なのか。

結論を先に言えば、4月と10月のABC部数が、折込広告の設定枚数(折込定数)を決めるための有力なデータになるからだ。4月の数値は、6月から11月の折込定数に反映し、10月の数値は、12月から翌年の5月までの折込定数に反映する。新聞社は、それを知っているから「4・10増減」に走るのである。

西日本新聞の元販売店主(長崎県)が起こした「押し紙」裁判は、「4・10増減」が争点になった。裁判の中で、西日本新聞社が、全販売店の実売部数や残紙の程度を把握していたことを示す内部資料の存在が明らかになった。それにもかかわらず第一審で裁判所は、西日本新聞の「押し紙」政策を認定しなかった。7月3日には、控訴審の判決がある。

一目瞭然の「押し紙」政策の存在が客観的に立証されていながら、新聞社に軍配を上げ続ける裁判官の姿勢。

これは、裁判官が有する人を裁くただならぬ特権を悪用しているのではないか?

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年6月22日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

西日本新聞押し紙訴訟 控訴審判決を前にして

江上武幸(弁護士)

7月3日(木)午後1時25分の西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決の言渡期日が迫ってきました。既報のとおり、福岡地裁判決は前年の4月1日に東京高裁・東京地裁・札幌地裁から転勤してきたいわゆる「東京組」と呼ばれる3人の裁判官達による判決でしたので、敗訴判決が出る可能性はある程度予期せざるを得ませんでした。

しかし、この裁判では、西日本新聞社が原告販売店に毎年4月と10月に前月より200部も多い部数を供給し続けていること、その目的は、原告の押し紙の仕入代金の赤字を補填するために折込広告部数算定の基礎となるABC部数を大きくするためであること、つまり、押し紙政策を続けるために西日本新聞社が主導して折込広告料の不正取得(詐欺行為)を行わせていたことが明らかでした。

また、押し紙を行っている新聞社は、西日本新聞社に限らず押し紙の責任を販売店に押し付けるために、販売店の実配数は知らないし知り得ないと主張します。しかしこの点についても、西日本新聞社は販売店の実配数を把握しており、毎月、実売部数を記載した部数表を作成し、外部に知れないように本社で厳重に管理している事実を認めました。

この裁判は販売店が勝訴する条件が充分に揃った裁判でしたので、敗訴判決を聞いた瞬間、東京組の裁判官3名を福岡に派遣した最高裁事務総局の、新聞社の押し紙敗訴判決は出させないという強い意志を感じました。

* 福岡地裁判決の問題点については、5月25日に投稿した「控訴準備書面(全文)」をご覧ください。

福岡高裁の裁判官達が九州モンロー主義が支配した時代にみられた「最高裁なにするものぞ」という気概に満ちた判決をくだしてくれるかどうか、皆様と共に期待しながら待ちたいと思います。

なお、近時、司法試験合格者の裁判官希望者が少なくなっており、若い裁判官の中途退官も増えていると聞いています。外部からはこれらの情報はなかなか知ることはできませんが、幸い、岡口基一元裁判官がフェイスブックで裁判の独立と裁判官の果たすべき役割について積極的に発信しておられますので、それらの様子を伺い知ることができています。

裁判所内部からも岡口元裁判官と同じ危機意識をもった人たちの動きが表面化してくれることを期待しています。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年6月16日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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「いのちかがやく」大阪・関西万博で、下請け労働者のいのちが切り捨てられようとしている

6月22日(日)、大国町「ピースクラブ」で開催の原口剛神戸大教授の「釜ヶ崎で考える」反-万博論にお集まりの皆様、お疲れ様でした。

冒頭、主催として何故万博が始まった今、この問題を取り上げるかを少し話させて頂きました。

今回の大阪・関西万博、開幕前予測していた以上の酷い問題が噴出している。中でも釜ヶ崎に関わる者として見逃せないのが工事費用未払い問題。アンゴラ館に続き、ドイツ、セビリア、ルーマニア、そして6月20日最新情報では中国パビリオンでも。中国パビリオンの電気工事を請け負った二次下請け会社社長は、5月に結成された「被害者の会」(万博工事未払い問題被害者の会)の代表と会見し、「国家プロジェクトで未払いがまかり通るのは恐ろしい」と語った。なお、アンゴラ館で未払い状態の5次下請けの業者の下にはひとり親方の業者さんもいる。数か月家賃が払えない人もいるという。

SNSでは「貯金してなかったあんたが悪い」という人もいる。でも問題はそこではない。

「そんなことで文句いうな」「引き受けたあんたらが悪い」と言う人たちもいる。あげく「万博見に来た人たちを笑顔にさせて。そんな笑顔見たら満足だろ」という方も。

いやいやいや、何言ってるんですか? 笑顔見てもメシ食えんから。笑顔ナンボ見ても1980円の古古古古米さえ買えませんよ。

もともとゼネコンがやらない仕事(そこには大きな理由があった)、工期が迫ってる、開幕を延期しないと決めた吉村知事はテレビで「絶対開幕に間に合わせますっ」と豪語し、万博協会も必死で下請け業者に「やってくれ」と頼みこんだ。「だったらやってやろうじゃないか」と、引き受けた業者はそれこそ昼夜問わず働いた。

そんな人たちに未払い、しかも頼み混んだ吉村や協会が解決に取り組まない。あげく、万博来た人たちの笑顔見たら満足でしょう、とは。

協会はユスリカの大量発生やレジオネラ属菌にはすぐに対策本部作ったのに、未払い問題は放置したまま。下請け業者、作業員はユスリカ以下ですか?

そして始まった原口さんトークショー(詳しい内容は仲間が動画にしてくれます。楽しみに待ってください)、休憩を挟んでの質疑応答。何とそこで「被害者の会」の方が発言。会場に来てくれたことに驚き!

私も疑問に思っていたことを聞いた。「なぜ、建設許可証を持たない、建築実務のない業者が入札に入れたのか?」「なぜ建築実務のない広告代理店が関われたのか?」

「被害者の会」の方は必死で答えてくれた。そこには、この万博で維新のお気に入り、維新のお仲間を儲けさせるために、中抜きしやすくするために、従来労働者を守っていたはずの法律というか入札する際の基準を変えていたという余りにえげつない実態が……。

しかも圧倒的に多いのは中国系の業者だ。ここで、原口さんが「中国系の業者と中国の人たちを分けて考えないといけませんね」と注意を! 確かにそうです。

例えば打合せで図面がわずか2枚のペーパーしかないとか。どんな資材を使うかもわからない。そんなことだから、一旦やった仕事にクレームがつきまくり。当然だ。どうやって欲しいか注文する図面が2枚しかないのだから。いくらベテランの業者でもうまくいくはずがない。さっき、ゼネコンがこのタイプのパビリオン建設を断ったのは、こんなところにも理由があったのだ。そのくせ、「守秘義務がありますよ」だの「口外しないように」とどんどん罰則を強めてくる。

この実態を今後広めて行かねば……。下は「被害者の会」の方の投稿です。フォローして応援しましょう!

https://www.facebook.com/share/p/16Nq1BfnuK

【追記】 6月23日、「被害者の会」は大阪府に要望書を提出。その後府庁で会見を開いた。参加した業者の話では、ルーマニア、ドイツ、セルビアの3パビリオンで計約2億3700万が支払われていないとのこと。また被害者は、作業員とその家族を含めると約1000人にも及ぶという。会は未払い金の一時的立て替え、建設許可証なく工事に参入した業者名の公表などを要望、6月27日までに回答するよう求めた。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

梓加依・著『広島の追憶』が広島市読書感想文コンクールの課題図書に選定!

鹿砦社代表 松岡利康

著者の梓さんとは古くから細く長い付き合いになります。娘さんが一時当社で働いたこともあります。

かつて長崎青海の名で『豊かさの扉の向う側』という本を初めて出版、1992年のことです。30年以上も前になります。それが偶然に書店で教育委員会の方の目に留まり、それで講演会に招かれ、その後、ある国立大学の講師の職に就くまでになりました。

長崎生まれ、広島育ち、戦後の被爆地の様子を見て育ち、その体験から何冊か本を出されています。本書『広島の追憶』もそうです。

もともとは高卒で大阪に就職で出てきて結婚、図書館でアルバイトをしながら平凡な生活を送っていました。

もう30年年以上も前、兵庫県川西市が汚職で問題になり、主婦の方々が立ち上がり「あしたを開く女性の会」を結成、2人が選挙に出馬、2人とも見事当選、それを記録しようと知り合いました。現在、『季節』編集長の小島卓君が丸ごと編集し『主婦の手づくり選挙入門』を出版しました。いい本で、今でも役立つと思いますが、残念ながら絶版です。会も分裂し、今はないと思います。議員のうちお一人の方が交通事故に遭ったとのニュースに接したことを思い出します。

その後、向学心に富む梓さんは、某大学で通信教育を受け学位を取得、それから神戸大学大学院に進み修士課程を修了されています。

これを機会に、一人でも多くの子ども、いや大人にも読まれることを望みます。

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315258/

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梓加依・著『広島の追憶』(鹿砦社 2023年)

図書紹介 〈広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれぞれの物語〉
広島瀬戸内新聞ニュース 2024年12月21日

2023年鹿砦社から刊行
被団協ノーベル平和賞受賞、
被爆80周年になろうとしているいまこそ。
https://www.amazon.co.jp/d/4846315258/
https://www.rokusaisha.com/wp/?p=48020

1944年にナガサキに生まれ、小学校から高校までヒロシマで過ごした著者による「明日へと生きる若い人たち」への物語です。著者は「長崎青海」というペンネームで鹿砦社から松岡社長の編集で「豊かさの扉の向こう側」という本というより小冊子を著したことを契機に、大学非常勤講師や家裁の調停委員なども務めることになり、一念発起。図書館のアルバイト職員から大学に入学して司書資格を取得、修士課程も修了したという努力家でもあります。今回、30年ぶりに松岡社長の編集でまた本書を出されることになったそうです。

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本書は、『はだしのゲン』など従来の本と比べれば具体的な被爆シーンなどはなく、ソフトな描き方ではありますが、人が次々と亡くなっていくという恐怖、そして、それが自分自身もそうなるかもしれないとずっと背負い続ける恐怖。これらをリアルに描き出すことに成功しています。はだしのゲンなど従来の本は大事にしつつ、本書も広げていきたい。

被爆から78年たった今となっては、大人も広島でこういうことがあったことを、頭では勉強していても、きちんと認識している人は少ないと思われるからです。

それも広島においてさえも、です。和也君や裕君の家だったと思われる場所周辺(下写真=広島市南区的場町)。でも原爆からの復興で建てられた建物はもちろん、その後建て替えられたモダンなビルもまた壊され、ポストモダンな高層建築物がニョキニョキとそびえています。ついつい忘れてしまうことがある。だけど、忘れてはいけないことがある。筆者自身には子どもはいませんが、その分、周りの大人に伝えていきたいと思います。

筆者も登場! 楾大樹『改訂版 茶番選挙 仁義なき候補者選考』が提起する広島・日本の政治の課題

さとうしゅういち

参院選広島(改選数2)2019における河井案里さんの当選無効に伴い実施された参院選広島再選挙2021。

◆政治家に舐められない有権者

筆者・さとうしゅういちも立候補しましたが、今でも「この人が立候補していれば俺は出なかったのに」と悔しがっています。その「この人」とは「檻の中のライオン」で有名な広島市海田町出身の弁護士・楾大樹先生です。

楾先生は、為政者(政治家・公務員)をライオンに、憲法を檻に例え、有権者は「ライオンが檻から出て歩き回らないよう監視していかなければならない」と説いておられます。著書「檻の中のライオン」はベストセラーとなり入試などにも出題されています。楾先生は全国1100か所以上で講演されています。

為政者(政治家)が有権者を舐め切っている今の日本。そんな中で政治家に舐められない有権者を造る「主権者教育」が大事です。広島が生んだ「主権者教育」のレジェンドが楾先生です。

◆仁義なき候補者選考 楾―宮口事件!

楾先生は、2020年の前半には旧立憲民主党の公認候補に内定。仕事をセーブしてスタンバイしておられました。ところが、結果として楾先生ははしごを外され、立憲広島の事実上の最高権力者の森本しんじ参院議員の秘書の妻である宮口治子さんが立候補。自民党候補や筆者らを破り、当選されます。

ところが、その宮口さんも、参院選広島2025を前にして、立憲広島の候補者を森本しんじさんに一本化することに伴い、2025年1月離党に追い込まれました。さらに、6月10日には参院選そのものに無所属で出ることも含めて見送りました。

◆「佐藤周一? メッセージ来てるけど無視してる」事件

楾先生は2024年春に「茶番選挙 仁義なき候補者選考」を出版しました。その後、宮口さんも上記の通り、立憲広島=森本しんじ参院議員から使い捨てにされるという事件が発生しています。そうしたことも含めて改訂しています。
その中で、筆者もかなり登場しています。
34ページにはこんなくだりがあります。

楾 「自分が出たいってフェイスブックに書いている人がいますが」
福知「ああ、佐藤周一?メッセージ来てるけど無視してる」

これは、2021年1月21日に案里さんに有罪判決が出た1週間後、楾先生が福知基弘・県議会議員=当時は立憲民主党広島県連幹事長=に選挙へ向けて呼び出された時の一幕です。楾先生もこの時はまさか、自分がはしごを外されるとはおもってもなかったのです。

実は、筆者はこのころは広島3区市民連合の幹事も務めており、福知さんとはよくお会いしていました。ダメならダメと言ってくれればよかったのですが……。

◆「宮口さんは具体的な政策が分かる人じゃないから」事件

そして、時は流れて2024年12月5日。宮口さんが公認を外された報道の直後の筆者の記事も引用してくださっています。

「もう一つの角度で申し上げれば、結局、女性は捨てゴマ扱いか、と言う疑念である。
 なぜこんなことを申し上げるのは以下の理由。2021年の再選挙では私・#さとうしゅういち も立候補した。この際に感じた『立憲広島サイドの宮口候補への認識』を今でも思い出すからである。
 わたしは、あの時、4月8日の告示直前まで、野党系候補の一本化をという広島3区市民連合幹部の要望を受けて『伊方原発を含む原発即時ゼロ』を条件として一本化する(私がおりる)ことを宮口陣営にメールで打診した。すると、立憲広島の県議からお電話をいただいた。
 立憲広島の県議は『宮口さんは具体的な政策が分かる人ではないから』とおっしゃった。結局、交渉を断念し、わたしも立候補する。
 宮口さんが政策が分かる人かどうかは私には何とも言えない。
 問題は『立憲広島自身が『政策が分かる人じゃない』と認識している人を担いでいる』ことだ。有権者をバカにしているし、女性をバカにしている。
 そして、今回、結局なんだかんだ言って、男性の森本真治さんで一本化した。それが答え、というふうに私には見える。」

そして、25年1月20日に宮口さんは離党します。その時の筆者のSNS投稿も楾先生は引用してくださっています。

重要なことなので、何度も繰り返します。

「これは、筆者が、2021年4月の再選挙の直前に、宮口陣営=立憲広島の方から伺ったお言葉です。
 もう、告示が迫ろうかと言う四月上旬のことです。
 わたしは、広島3区市民連合幹部から『どうか、宮口さんとの一本化をしてほしい』と要請を頂いていました。ただ、政策も何もなしに一本化では、これは、自民党を批判できなくなる。そう考え、宮口さんサイドに話し合いをお願いするメールをお送りしました。 具体的には『伊方原発を即時廃炉を含む原発ゼロ』でわたしが降りて宮口さんを支援するということを考えていたのです。そのメールに対してお電話をいただきました。
 宮口さんが政策が分かるかどうか、実際のところは本人ではないからわかりません。問題は、そういう認識で当時の立憲広島が宮口さんを楾大樹先生のはしごを外してまで擁立したことです。
 これはダメだ、と思い、わたしは予定通り立候補した。
 『具体的に政策が分かる人ではないから』という認識で選挙をしていた立憲民主党さん。楾大樹先生に対しても失礼ですし、宮口さんに対しても失礼です。
 宮口さんが立憲民主党に残っても居場所がない、と記者会見で仰っていましたが、筆者はこの結果は予想していました。
 2024年12月に森本真治議員で一本化することが決まった後、そうはいっても何らかの形で宮口さんの処遇を党が考えるとの期待をご本人も持っておられたようなSNS投稿はされていました。宮口さんの支持者の中にもそれを期待する向きもありました。
 しかし、立憲広島の幹部の本音が、『宮口さんは具体的に政策が分かる人ではないから』である以上、宮口さんに居場所がなくなるのは時間の問題でした。女性を軽視するにもほどがあるとも言えます。
 公正で透明な候補者選考が今後もとめられます。これが立憲民主党内部でも、野党共闘においてもすべきではないのか?
 予備選挙とまでいわずとも公開討論会は開くべきではないのか?これは、筆者も何度も2021年の再選挙の前に、各政党も回ってお話しをしました。しかし、結局そういう取り組みもされず。後味の悪い結果を招きました。」

筆者は実際、例えば2021年2月22日にも公開討論会を開催するよう、立憲、共産、社民、新社会及びれいわの各党や市民連合、他の野党系での立候補を考えておられる方宛てにお送りしました。当時お名前が挙がっていた郷原信郎先生にもSNSでやりとりしましたが、郷原先生からははっきりと「自分は出ない」という趣旨のご回答をいただいています。

◆具体的な政策が分からないのはどっちだ?!

さて、宮口さんは、通常国会2025の重要法案の一つである「給特法」改定案にれいわや共産とともに反対しました。給特法は公立学校の先生に給料の4%を上乗せするだけで「定額働かせ放題」にする法律で、先生方の極悪な労働環境の原因となっています。今回の改定では上乗せする手当てを10%に上げることになっています。しかし、主務教諭制度の導入などはわずかな給料の差で重い責任を主務教諭に負わせるなど、さらなる現場崩壊につながりかねない中身になっています。なにより労働時間をきちんと管理するのは、やはり残業代をきちんと払うことからです。宮口さんは賛成した利権を離党していますが、反対票を投じました。

漫然と、政府案に賛成してしまった森本しんじ参院議員他立憲の議員らとどちらが「具体的な政策が分からない」のでしょうか?

◆楾大樹先生がれいわ新選組から立候補へ

こうした中で、6月8日、楾大樹先生がれいわ新選組から参院選広島県選挙区で立候補へ向けて最終調整しているというニュースが飛び込んできました。

広島県選挙区は繰り返しますが定数2。過去30年の参院選ではずっと自民党と新自由主義的な色彩が強い野党第一党で独占してきました。維新や共産などが候補を立てても、比例代表のためのアリバイの感も強く、特に最近では箸にも棒にも掛からぬ状況がありました。そして、その二大政党が湯崎英彦知事や松井一實市長らの長期政権を支えています。

こうした中で、県民には諦めが広がり、衆院選2024では全国最悪の投票率となる一方で、人口流出も4年連続全国最悪です。

緊張感のない、有権者を舐め切っている県知事や二大政党の国会議員。ここに「政治家に舐められない有権者をつくる」主権者教育のレジェンドである楾大樹先生がくさびを打ち込めるかどうか。

参院選広島県選挙区はがぜん面白くなってきました。

さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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6月22日(日)原口剛氏講演 ── 釜ヶ崎から考える「反万博論」にお集りを! 大阪・関西万博の何が問題かをとことん考えてみよう!!

尾﨑美代子

大阪・関西万博だが、開幕前に予想していた以上の問題が噴出している。中でも釜ヶ崎に関わる者として気になるのは下請け業者への工事費未払い問題だ。アンゴラパビリオンを請け負った5次下請けの業者には約4300万が支払われないままだ。その下はひとり親方の業者だ。すぐに支払いがないとメシも食えないぞ。アンゴラのほかにもネパール、マルタ館も未払いだそうだ。もとは業者が集まらない中、「どうにかして、助けて」と呼び掛けていたくせに、国も大阪府・市、そして万博協会もしらんぷりだ。余りに無責任ではないか! 

「今回の万博は酷いが70年万博は良かった」という人もいる。しかし、それは大間違い!万博や五輪などメガイベントはずっと労働者を犠牲にしてきたのだった。

2019年1月5日西成区民センターで開催した「日本一人情のある街、西成が無くなる!?」、私も進行をさせて頂いたシンポジウムのコーナーで、島和博さん(大阪市立大人権問題研究センター)がこう話していた。

「一番大事なのは、釜ヶ崎は行政によって作られてきたということです。証拠ははっきりあります。70年大阪万博の前に、大阪府の労働局が『労働者を送ってくれ』とお願いをだした。その結果として大量の若い労働者が西日本を中心に釜に集められた。釜ヶ崎は国家によってつくられた。そうして作られた労働者が『もういらない』といわれている。これは絶対おかしい。普通の企業なら大問題になり、闘争が起こります。センターの撤去に象徴されているのは端的にこれは首切りです。釜の場合、個々の労働契約は個々に結んではいませんがね。『必要だから釜ヶ崎に来てね』といわれ集められたのに、今度は『もう必要なくなったから野たれ死んでね』といわれている、それの象徴的なあらわれがセンターの撤去です。『お前らが来い言うて釜ヶ崎に働きに来たのだから、死ぬまで面倒みろよ』ということでしょう。最盛期には約3万人の日雇い労働者が働いていた。国が呼び寄せた。それをさんざん安くこきつかって、『もういらないからどっかに消えて』という。あるいはせいぜいよくて3畳一間の福祉マンションに囲い込んで飼い殺しにする。普通の労働現場では『新しい機械入れたから、あんたは首や』などとは絶対できないが、釜ヶ崎では言えている。そこのところをぜひ皆さんには理解してほしいなと思います。」

そして22日、お話をされる原口さんも、70年万博当時も大量の労働者が犠牲になったと話されている。70年万博の工事では、尻無川水門事故で11名が生き埋め死亡、会場造成工事で17人が死亡、開幕後も万博関連事業の一環である地下鉄天神橋筋六丁目の建設工事では、ガス爆発で79名死亡、420名重軽傷の犠牲を出すなど、多くの労働者が犠牲になっている。

今回も万博だけを見ていてはわからない。万博開幕と同時に工事が始まったIR・カジノ事業の建設工事など、その前後に関連事業がやまほど行われる。それもすべて私たちの税金、そして、そこでどんだけ労働者が犠牲になることかわからない。 
そう、「70年万博は良かったのに……」ではないのだ。

そして万博などメガイベント開催と共に強化される差別と排除、釜ヶ崎でも露骨に進んでいる。

「万博は社会的弱者を排除する装置として機能しているのだ」

「万博の何が問題なのか?」

開催されている今だからこそ、みんなでとことん考えてみよう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

同志社大学・此春寮先輩の前田良典さんが著書『野の人』を出版

鹿砦社代表 松岡利康

私たちの尊敬する先輩の前田良典(1962年度生)さんが、おそらくその人生において最初で最後の著書『野の人』を出版されることになり、僭越ながら編集・制作・発行を任せていただくことになりました。目次と前田さんの抱負は別記をご参照ください。

前田良典さんと言っても、一般的には無名に近いですが、1960年代、60年安保と70年安保の、いわゆる<二つの安保闘争>の端境期の時代の同志社大学の学生運動を支えた方です。

四六判、240ページほどで、非売品ですが、ご希望の方には郵送料プラスカンパ程度で私のほうから送らせていただきますので、お知らせください。8月末から9月頃の完成予定です。

【追記】前田さんや私、それに、かの藤本敏夫さんがいた寮は此春寮(ししゅんりょう)と言って、定員20数名の小さな寮です。同志社大学今出川キャンパスの近く、相国寺の裏に今でも在ります。

寮母の砂野(いさの)文枝さんは母親の代から寮母を勤め、学徒出陣を見送ったことで極めて反戦意識の強い方で、デモの日に寮にいたら叱られたほどです。

画像は、寮母さんの退職を視野に入れて刊行された寮誌『プロテスト群像――此春寮三〇年史』(1977年刊、B5変形判、306ページ,上製,箱入り)です。砂野さんは本書刊行を見届け1979年3月に退職されました。(松岡利康)

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関係者OB・OGの方々へ近日発刊のお知らせ

エゾフクロウ

前田良典小論選集
『野の人』(同大此春寮30年史のその後) 
                    

今までに後輩から何度か要請されても、私は「大義いなぁ」とその気にならなかったのですが今回改めての此春寮後輩からの要請で本を発刊することになりました。今まで「紙つぶて」のように出して来た私のバラバラの文章をつながるように後輩たちが何とか直して編集してくれて出版の運びになりました。これまでの文章には70年以降身辺に起きることへの対処と同時に「69年」への無念と不遜ながら原因と責任を書いて来ました。出版に当たってはそれを追悼文に集約しました。ここで私の根拠・拠点はやはり同大此春寮・同大学友会であり京都地方「地域労組(反帝労組)」だと改めて噛み締めました。90年頃までのものは引っ越しで捨てたりパソコンを買い替えてなくなっていましたが、辛うじてフロッピーやCDやUSBメモリーを掘り返したりしたら時代評論や歴史を含めると350頁どころか1000頁を超える文章を書いていました。それを350頁くらいに選定しました。田所追悼は既に発刊済ですので、内容は①藤本(同大)・大森(市大)・堂山(同大)・バラ均(京大)追悼②同大ブント③此春寮④東北大震災⑤書評⑥歴史です。

本のタイトル「野の人」は序文からの採用で9月頃出版です。       
(非売品・出版費と送料へのカンパ自由・拒否も可)
(カンパ振込用の「野の人」刊行会の口座は以下の通り)  
(京都中央信用金庫百万遍支店(010)総合 1083146 前田良典 です) 

2025年6月11日 前田良典

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野の人 目次   

(序)野の人 「前田良典小論選集」作成にあたり                  
第一章 追悼集
① 藤本敏夫氏 個と共同 (2003年)
② 大森昌也氏 追悼(2016年)
③ 堂山道生氏 思い出ボロボロ (2021年)
④ 中島・望月・片山氏 同志社の先輩達(2024年)
⑤ 境毅氏 ばら均さん追悼(1)(2)(2024年)

第二章 同志社ブント記
① 同志社大学学生運動私記(1960年代の記憶)(2003年)
② 同志社ブント黎明期(2011年)
③ 1969年ブントに何があったのか(2019年)

第三章 同志社此春寮(砂野寮母と寮生)
① 砂野ママ葬送一周年(2011年)
② 同志社リベラル(2013年)
③ 深草墓参(2013年)
④ 此春寮OB会で思い出すこと(2014年)
⑤ 館山君への手紙1、2、3 

第四章 書評
① 吉本「マチウ書試論」について(2003年)
② 私達は前近代を活きている(デカルト・スピノザ)1、2(2019)
③ 斎藤幸平「人新世」について(2021年)
④ 上間陽子「海をあげる」書評(2021年)
⑤ 柄谷行人「力と交換様式について」(2023年)

第五章 時代論評
① 時代は回る (2010年)
② 3,11大地震・津波・原発被災(2011年)
③ 南相馬への旅(2012年)
④ 「反原連運動(しばき隊)はスピリチュアル運動か(2015)
⑤ 「慰安婦と非正規労働」問題(2016)
⑥ 原発・沖縄・天皇・障碍者(2016)
⑦ 年頭にあたって(2017)
⑧ 安倍総理が国難である(2017)
⑨ 2018年年頭の思い(2018)
⑩ 「2018年お金と政治の流れ」(2018)
⑪ 擬態国家の頓挫1,2(2022)ウ古代史のこと(2014)
⑫ 小林古代史は単なる夢物語か(2016
⑬ 長州政治は「闇討ち」と「神隠し」の連続である(2016)
⑭ 「明治六年の政変」=近代日本の骨格(2018)
⑮ 藤原さんへ1.2(2020)

編集後記に付して

新聞特殊指定に関する情報公開期限を延長、公取委が通知

黒薮哲哉

2025年4月21日付けで筆者が公正取引委員会へ申し立てた新聞特殊指定に関する情報公開請求に対して、同委員会は、5月27日付けで「開示決定等の期限の延長について(通知)」と題する文書を筆者宛てに送付した。延長の期間は、開示請求があった日から60日以内である。延長の理由は、「行政文書の精査及び開示の可否の検討に時間を要するため」としている。

通知文書の全文は次の通りである。

開示決定等の期限の延長について(通知)
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2025/06/IMG_0001.pdf

◆公取委と新聞協会はなぜ、1999年の新聞特殊指定で「押し紙」政策を加勢する改定を行ったのか

メディア黒書で繰り返し報じてきたように、公正取引委員会は1999年7月に新聞特殊指定を改定した。その発端は、1977年に公取委が北國新聞に対して「押し紙」の排除勧告を行うと同時に、日本新聞協会に対しても、「押し紙」の事象が確認できる旨を申し入れたことである。

これを受けて公取委と新聞協会は、解決の方向性で協議を重ねた。しかし、その果実として改定された1999年の新聞特殊指定は、かえって新聞社の「押し紙」政策を加勢する内容になっていた。

そこで筆者は、両者がどのような話し合いを重ねたのかを検証するために、情報公開請求を行ったのだ。

この件については、次のYouTubeでも解説している。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年6月3日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

特区民泊が増え続ける西成区、大丈夫か?

尾﨑美代子

大阪市内に増え続ける特区民泊、なかでも西成区は突出して多い。ほかに中央区、浪速区も多く、それぞれ1000件を超えている。確かに、ここ数年、ちょっとした道路に面して建設される多くの建物が民泊だ。全体的に日本家屋っぽい造り、入口にのれん、猫の額ほどの庭に、これまた日本っぽい樹木が植えられている。

しかし、民泊の名前が微妙だ。明らかに日本人がつけた名前ではない。知らない感じも使われている。実際、6割が中国人経営だそうで、香港、台湾を含めると8割にも上るそうだ。中には移住する人も。

ひとつき程前、毎日通うスーパー近くの小路に大きめなキャリーバッグをゴロゴロ転がした白人系のインバウンド客が10人ほどで入っていくのを目撃。「おいおい、どこいくんだよ。行き止まりじゃないのか?戻って来いよ」とのんびり見てたのだが……。

先日、そのスーパーに行ったついでに小路に入ってみた。写真は出さないが、古い一般住宅の間に民泊、また民泊。空き地もあるが、ここにも民泊が出来るのだろうか?この小路を突き抜け、左に曲がると、民泊ブランド「住一」が手掛けた一棟建て民泊が10数件立ち「住一VILLA花園町」もある。

このように、民泊名に日本では使われない文字が入っているのも特徴だ

それにしても、近隣住民の皆様はなんとも思わないのか? いや、中国人、外国人が危ないというのではない。ただ、ゴミを放置、昼夜構わず、キャリーバッグごろごろ、入室方法がわからず、隣の家にピンポンで「どーやってはいるのですか?」と尋ねるとか、様々な苦情も報道されている。「民泊建設反対」の声をあげる地域もあるほどだ。さきごろ、大阪市が売り払った土地に、14階建て200室以上もの部屋を有する民泊が建設済みで、まもなく運営されようとしているとの報道が。この規模の民泊なら、実質ホテルといってもいいくらい。しかし、ホテルや旅館より縛りが緩いため、さまざまな問題が起こるのではと近隣住民からは反対の声もあがっている。

こうした背景について、安倍政権時の2015年に「経営管理ビザ」を規制緩和したことがきっかけではないかとのことだ。

※編集部:2015年4月1日施行の入管法により、それまで「投資・経営」ビザと呼ばれていたものが「経営・管理」ビザに変更された。この改正により、外国資本との結びつきに関する要件がなくなり、国内資本企業の経営・管理を行う外国人にも「経営・管理」ビザが付与されるようになった。
※[参考]外国人経営者の在留資格基準の明確化について(出入国在留管理庁)
 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html

いずれにしても、今後、何らかの規制が必要なのではないか? いや、「もう、これだけ出来てるのだから、もうおせえよ」なのか。

しかし、この小路の住民は大変やなあ。誰も文句言わないのかな?と見てたら、小路入口の店舗が維新の会のメンバーのご実家だった。関係あるのか、ないかは定かではない。

◎[参考動画]テレビ大阪ニュース【急増する民泊と中国人】大阪を飲み込むチャイナマネー…500万円で日本に住める!?「経営管理ビザ」の実態とは?

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/