黒薮哲哉
「香害」や化学物質過敏症の危険性を訴え、「被害者」への配慮を社会に求めている市民団体「カナリア・ネットワーク全国」(共同代表・青山和子、深谷桂子)が、文化放送が8月5日に放送したYouTubeラジオ番組に抗議し、その後、番組が削除された問題で、新たな事実が判明した。
カナリア・ネットワーク全国は、BPO(放送倫理・番組向上機構)に対しても申立書を送付した。さらに、同団体だけではなく、日本消費者連盟なども8月10日に文化放送に抗議していたことが分かった。
文化放送が8月5日に放送した「香害」に関するラジオ番組は、YouTubeでも視聴できるようになっていたが、現在はアクセスできなくなっている。カナリア・ネットワーク全国は、番組で「香害」について話した村中璃子医師の見解に誤りがあり、海外における「香害」の実態などが過小評価され、事実に反する内容が放送されたと主張している。
結果として、市民団体からの抗議の後に、一つのラジオ番組が削除されたことになる。
こうした動きを受け、横浜副流煙事件の被告の家族である藤井敦子さんが、文化放送に申し入れを行った。



申入書では、「香害」をめぐる主張には疑似科学的な側面があるとの見解を示し、その根拠として、藤井さんの夫が副流煙の発生源であるとして提訴された事件(請求額4518万円、藤井さん側が勝訴)で明らかになった具体的な事実を紹介している。
例えば、被告である夫が不在だったときにも、同じマンションに住む原告家族3人が煙の臭いを訴えていたという事実である。これは原告側の日誌から、時系列的にも確認されている。
また、この裁判では、日本禁煙学会の作田学医師が、「受動喫煙症」を訴えていた原告について、本人を診察することなく「受動喫煙症」とする診断書を交付していたことも明らかになった。さらに、原告の一人には長い喫煙歴があったことも判明している。
こうした診断基準について、横浜地裁は次のように認定している。
「その基準(日本禁煙学会の『受動喫煙の分類と診断基準』)が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。(認定事実(4)ア)」
こうした複数の事実に基づき、藤井さんは、「香害」をめぐる主張には疑似科学的な側面があると主張している。
◆「香害」をめぐるアンケートの非科学的側面
なお、この問題に関して、やはり「香害」を訴えている日本消費者連盟のウェブサイトには、次のような記述がある。
私共は、「香害」問題に取り組んでいる市民団体です。2017年夏に、市民から香害被害の声を募る「香害110番」を行って以来、香害の解決を求めて、省庁との交渉を続けております。2020年には、9000人以上からの回答を得た香害アンケート結果を発表。香害被害者の約20%が、通学や通勤・就労に支障を来たしているという深刻な現状を明らかにしました。2022年には、香りを長持ちさせるマイクロカプセル等の徐放技術を日用品に使用しないことをメーカー等に求める署名活動を行うなど、香害をなくすために様々な活動を行ってまいりました。( 出典 https://nishoren.net/cuj-25274 )
このアンケートの具体的な調査方法が不明なため断言はできないが、「香害」の被害を把握するために実施されたアンケートの中には、調査方法の妥当性について検討を要するものもかなりある。
例えば、ある市民団体が実施したアンケートでは、「香害」に取り組むネットワークにも調査票を送り、その活動の参加者も回答する形式になっていた。その結果、極めて高い「有症率」が示された。
吐き気や頭痛などの症状や不快感は、「香害」以外のさまざまな要因によっても日常的に生じ得る。そのため、自己申告によるアンケート結果から、「香害」と症状との因果関係までを判断する際には慎重さが求められる。
[参考記事]禁煙ファシズムに審判、横浜・副流煙裁判で被告の藤井さんが完全勝訴、日本禁煙学会理事長・作田学医師の医師法20条違反(無診察で診断書を作成する行為の禁止)を認定
※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年9月1日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
https://www.kokusyo.jp/%e5%8c%96%e5%ad%a6%e7%89%a9%e8%b3%aa%e9%81%8e%e6%95%8f%e7%97%87/19898/
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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