月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは8・9月合併号(7月5日刊行)の注目記事2本の一部を紹介します。

◆学歴詐称・事前運動疑惑・裏金自民援護 東京都知事選で露呈した小池都政の正体
 取材・文◎横田一(ゲリラジャーナリスト)

 

 

東京都知事選(7月7日投開票)が6月20日に告示され、三選を目指す小池百合子知事と蓮舫前参院議員の実質的な一騎打ちとなったが、戦う姿勢は対照的。「反自民党・非小池都政」を掲げて神宮外苑再開発を争点とする“攻め”の蓮舫氏に対して、小池氏は出馬会見も開かずに第一声の街頭演説さえ行なわない“逃げ”に徹した。

19日、翌日(告示日)の小池氏の予定が明らかになると、報道関係者に驚きが広がった。10時半に新宿区の選挙事務所で出発式をするだけで、街頭演説はなし。「現職知事として公務に取り組みながらの活動になります」とも強調していた。現職の第一声を有権者が聞くことができないという前代未聞のスタートとなったのだ。

一方、挑戦者の蓮舫氏は11時過ぎから中野駅前で第一声。応援弁士には立憲民主党の枝野幸男前代表、辻元清美代表代行、長妻昭政調会長がそろい踏みする通常のスタイルで臨んだ。初日から有力2候補の違いが際立った。

小池氏の出馬表明も前代未聞だった。蓮舫氏の電撃的出馬表明(5月27日)で後れを取った小池氏が6月12日、都議会本会議で三選出馬表明をした後、囲み取材に応じたが、学歴詐称関連質問がテレビ朝日の島田直樹記者に遮られて質疑応答が打ち切られるという異例の事態となった。

誰もが蓮舫氏と同様、「小池氏も出馬会見を開いて質疑応答をするに違いない」と思っていたのに、代表質問だけの短時間の囲み取材で終わらせてしまったのだ。

歴史に残る珍問答が行なわれたのは12日14時半すぎ。本会議終了後に都議会各派への挨拶を終えた小池知事が本庁舎との連絡通路に現れると、囲み取材に入る前に小池氏は立ち並ぶテレビカメラを指差して「いまリアル(生中継)でやっているのはどこ?」と聞いてカメラ目線をまず確認。

続いて幹事社(代表質問役)の島田記者が政策発表の時期などについて連続質問した後、フリーの佐藤章氏が「昨日、お世話になられた朝堂院大覚(ちょうどういんだいかく)さんが……」と学歴詐称問題について質問し始めたとたん、再び島田記者が「すいません、代表(質問)で。知事、まずお願いします」と割り込んで佐藤氏の質問権を奪取。そして「いつも勝負服のカラーで緑色の服を着られるが、本日はそういった服を着られていませんが、何か服に対する思いは?」と聞いたのだ。

すると、小池知事は笑顔を浮かべながら「今は公務をしっかりしておりますので、それはそれでメリハリをつけた対応をしていきたいと思っています」と答えて突然、囲み取材を打ち切り、立ち去り始めたのである。すぐに記者団から抗議の声が上がる中、追いかけながら私は「カイロ大卒と書くのか。自民党の支援を受けるのか。確認団体(方式での支援)、萩生田(光一都連会長)さんと相談したのですか」などと声を張り上げたが、小池氏は一瞬視線を向けただけで、無言のまま立ち去った。

この後、現場では質問を遮った島田記者に抗議が殺到。「口裏を合わせて代表(質問をする記者)だけ質問させようとしていたのではないか」「もう一回、囲み取材をやり直して下さい。テレ朝で質問を独占したのだから」などと問い質し、再度の囲み取材開催を迫った。これに対して島田記者は「私ももっと質問できるものだと思っていた。幹事社と相談する」と回答。

そこで「今すぐ知事と交渉して、ここに連れて来てください。滅茶苦茶な会見をした責任をとってください」と囲み取材の再設定を要望したが、実現することはなかった。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nc52321500d83

◆WHOの公衆衛生全体主義を許すな!「パンデミック条約反対」日比谷公園2万人集会
 取材・文◎高橋清隆(反ジャーナリスト)

 

 

世界保健機関(WHO)総会で「パンデミック条約」と国際保健規則(IHR)改定案の採決を目前に控えた5月31日、両案などに反対する「WHOから命をまもる国民運動大決起集会」が東京の日比谷公園で開かれ、2万人が気勢を上げた。野外音楽堂では近代史研究家の林千勝氏ら8人が基調講演した後、池田利恵日野市議の音頭で出陣。「WHOの公衆衛生全体主義を許すな」などとシュプレヒコールを上げながら、銀座までデモ行進した。

しかし、IHR改定案は詐欺的手法で採択され、パンデミック条約は交渉期限が延長された。これが目指すのは〝世界統一政府〞である。覚醒した国民がどれだけ増えるかが問われている。

 林・柳澤両氏ら識者が不服従を誓う

集会の主催は「WHOから命をまもる国民運動」と「一般社団法人ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン」(WCHJ)。デモ行進の起点は厚生労働省前、終点近くにはレプリコンワクチン(mRNAワクチン)の製造元となるMeiji Seikaファルマがある。

はじめに「WHOから命をまもる国民運動」共同代表でもある林氏が開会宣言。「われわれは全体主義を排除する。自由と勇気を胸に、世界の人々と手をつなぎ、日本を取り戻す。5月31日を新たな日本の独立記念日としようではありませんか」と呼び掛けた。
 
WCHJ代表で医師の柳澤厚生氏は、「WHOが何をしたかといえば、日本政府を操ってワクチンを打ち、多くの被害者を作ってきた。皆がだまされた。国の言うことに間違いはないと思った」と指摘。新型コロナワクチンの副反応による死亡者が、従来のインフルエンザワクチン死亡者の100倍以上であることを挙げ、「今、僕はこのワクチンを医者として打つことはできない」と訴えた。

「国民運動」共同代表でノンフィクション作家の河添恵子氏は開口一番、「政府、WHO、厚労省全て悪魔だと考えてください」と問い掛けた。「私たちは不服従を貫きます」と宣言すると、大きな拍手を浴びた。「今、生きるか死ぬかの闘い。ユースレスイーター(無駄飯食い)はワクチンで死んでもらうというのが、彼らの考え。その手足となっているのが日本政府。絶対許してはなりません」と続けた。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nbfb6eaa264cd

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年8・9月合併号

『紙の爆弾』2024年 8・9月合併号

科学者は誰も信じていない CO2温暖化説の嘘ともたらされる被害 広瀬隆
植草一秀解説 米国債を売れば50兆円利益と円安是正 米官業「日本政府支配」
災害や感染症を利用し地方自治を破壊 地方自治法“戦前回帰”の大改悪 足立昌勝
WHOの公衆衛生全体主義を許すな!「パンデミック条約反対」日比谷公園2万人集会 高橋清隆
本当にワクチンを打つべきなのか? ウィルス「不存在」をめぐる科学的議論 神山徹
学歴詐称・事前運動疑惑、裏金自民援護 東京都知事選で露呈した小池都政の正体 横田一
フィリピン元大統領報道次官が訴える日比米安全保障の罠と日本との連帯 木村三浩
モディ政治の光と影 グローバル・サウスの盟主・インドの実相 浜田和幸
日本もパレスチナ国家承認を拒否 ガザ停戦を阻む米欧大国と日本の「論理」 広岡裕児
重信房子さんに聞く世界と日本の学生運動が証明するパレスチナ抵抗の正当性 浅野健一
政権交代に向け見極めるべきもの いま日本政治の転換を迫る負と正の力 小西隆裕
「岸田続投だけはありえない」「裏金国会」がもたらした自民党内の暗闘 山田厚俊
「社会貢献活動」法人設立の目的 ジュリー前社長が離さないジャニーズ最大利権
被害額は昨年から倍増 オンライン詐欺の実態と“野放し”の理由 片岡亮
世界史の終わりとハードボールド・ワンダラランド 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 特別編 西成女医変死事件 尾﨑美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0D8PP3BNK/

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

今月号で特集した「二酸化炭素温暖化犯人説の嘘」。これ自体は、ほとんどの科学者が「嘘」だと認識しており、関連書籍もすでに多数出ています。なかでも広瀬隆氏の本誌解説は、裏付けとなる歴史的・科学的証拠とともに、私たちが考えるうえで必要な要素を、短い紙幅でまとめたものですが、最も重要なポイントのひとつが、「それでもなぜ、多くの人がいまだ嘘を信じているのか」です。

その点において本誌記事で注目すべきは、広瀬氏の解説が、環境破壊や公害を止めるための訴えだということです。さらに、この嘘は、日本を支えてきた中小企業の優秀な労働者を追い詰めていることも指摘しています。

※本誌記事でも一部を引用した広瀬氏の講演資料パンフレット(オールカラー・六四頁)が「地球温暖化は嘘」が一部500円(送料無料)で入手可能です。郵便振替で口座名「広瀬隆文庫」口座番号00160-8-588281。注文部数と住所、氏名等を明記。

グレタさんの活躍で、「脱炭素」において、岸田首相やグローバル企業と“リベラル”で、言っていることが同じになりました。それはリベラルの勝利なのか。ここにもSDGsの罠があります。

また、こちらも今月号で特集したインドでは、生体認証・国民監視IDシステム「アドハー」は、日本のNECの技術を基盤にしているそうで、各国の注目と称賛を集めています。そのわりに日本のマイナンバーはあの体たらくなのは、あえてのことかと疑問視しています。記事では浜田和幸氏が、インドの内情とともに、BRICSの現状、報じられない世界勢力図についても解説しています。

前号の《後編》として、政治経済学者の植草一秀氏が、自民党・民主党に限らず、日本のほとんどの歴代政権が米国の支配をあえて受け入れてきた歴史を明らかにしました。それは戦争だけでなく、消費税増税・法人税減税にもはっきりとつながっています。今の日本を考えるうえで、大前提となる情報です。

前出・広瀬氏も「第一歩を間違えれば、その後は全てが誤り」と述べています。まさに「必読」です。なお、「日本のウクライナ化」ということは、各所で言及されていますが、これは日本が「巻き込まれる」のではなく、「自ら突っ込んで行っている」ということを、認識する必要があります。すでに10年以上前から、その動きが始まっていることも、植草氏は指摘しています。

MV「コロンブス」の炎上騒動。文化的な生活を営む類人猿の家にズカズカと乗り込み、満足すると崩壊したバベルの塔(「猿の惑星」の自由の女神像)に“気づかず”去っていく、というのが大まかな流れで、歌詞とあわせて意図した表現だったのだろうし、言いたいことはわからなくもありません。

それより気になるのは、本人たちがほとんど説明もせず映像を取り下げたこと。表現を読みとってもらえない絶望よりも、炎上は織り込み済みで、「やっぱり何も見ていないじゃないか」という嘲笑のように、私には見えます。もっとも、そこにはバックのコカ・コーラ社の存在もあると思われ、炎上させた側も含めて、一連の経緯に今の時代の軽薄さを感じます。

今月号では、いわゆるポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)を利用したコンサルティング・ビジネスについても解説。あわせてお読みください。

ほか、「パンデミック条約反対」日比谷公園2万人集会レポートとパンデ条約の現況、ウィルスの「存在」と「不存在」を問う科学界の議論、パレスチナ国家承認をめぐる各国の立場と、日本でも勃興しつつある反戦学生運動、さらに小池百合子・東京都知事の分析は、都知事選を終えても記憶すべき保存版です。

全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年8・9月合併号

『紙の爆弾』2024年 8・9月合併号

科学者は誰も信じていない CO2温暖化説の嘘ともたらされる被害 広瀬隆
植草一秀解説 米国債を売れば50兆円利益と円安是正 米官業「日本政府支配」
災害や感染症を利用し地方自治を破壊 地方自治法“戦前回帰”の大改悪 足立昌勝
WHOの公衆衛生全体主義を許すな!「パンデミック条約反対」日比谷公園2万人集会 高橋清隆
本当にワクチンを打つべきなのか? ウィルス「不存在」をめぐる科学的議論 神山徹
学歴詐称・事前運動疑惑、裏金自民援護 東京都知事選で露呈した小池都政の正体 横田一
フィリピン元大統領報道次官が訴える日比米安全保障の罠と日本との連帯 木村三浩
モディ政治の光と影 グローバル・サウスの盟主・インドの実相 浜田和幸
日本もパレスチナ国家承認を拒否 ガザ停戦を阻む米欧大国と日本の「論理」 広岡裕児
重信房子さんに聞く世界と日本の学生運動が証明するパレスチナ抵抗の正当性 浅野健一
政権交代に向け見極めるべきもの いま日本政治の転換を迫る負と正の力 小西隆裕
「岸田続投だけはありえない」「裏金国会」がもたらした自民党内の暗闘 山田厚俊
「社会貢献活動」法人設立の目的 ジュリー前社長が離さないジャニーズ最大利権
被害額は昨年から倍増 オンライン詐欺の実態と“野放し”の理由 片岡亮
世界史の終わりとハードボールド・ワンダラランド 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 特別編 西成女医変死事件 尾﨑美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
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まけへんで!! 今月の西宮冷蔵◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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雨が降ったり止んだりの金沢市・いしかわ四高記念公園に約1100人が集まった。集会では、志賀原発訴訟弁護団長・岩瀬正明さん、ルポライター・鎌田聡さんほか、各地で反原発を闘う皆さんが次々と発言され、非常に充実した内容であった。

◆北野さんと塚本さん

話はちょっとそれるが、私が何より嬉しかったのは、5月の連休に珠洲原発の予定地を案内して頂いたり、なぜ原発建設を凍結に追い込んだのかのお話をお聞きした北野進さん(元石川県議、珠洲市議)の嬉しそうなお顔が見れたことだ。集会前も、会場のあちこちを走り回り、知った方々に挨拶してまわる北野さん。私は思わず1枚写真を撮らせてもらう。

「北野さん、何か嬉しそうですね」

「そりゃ嬉しいですよ。こんなにたくさんの人が、全国から集まって……」といいながら、またあちこち回ってらした。

北野進さんと北野さんの著書『珠洲原発・阻止へのあゆみ』の一節

もうひとつ感動したのは、伝説の人にお逢いできたことだ。最初はわからなかった。「能登からの発言」である男性がマイクの前に立った時、会場から「まことさん」などと声がかかっていた。「誰やろう?」とタイムテーブルを見ると「塚本真如(珠洲市高屋町円龍寺住職)」とある。

私が金沢に来る電車内でも読んでいた北野さんの著書『珠洲原発・阻止へのあゆみ』(七つ森書館)に書いてあった人だ!。ちょうど雨が酷くなり、取材用のICレコーダーが濡れては困るので、私は、ステージ脇のテントに入らせて貰っていた。私が「あっ、この方か?」と思った瞬間、近くにいた北野さんが「そう! その人ですよ」というような顔をされた。

珠洲市高屋町天龍寺住職の塚本真如さんと6.30金沢集会のスケジュール

◆珠洲の人たちは「原発はいらない」と思っていた

あれは、1989年の珠洲市長選に、前年に珠洲に来たばかりの29歳の北野さんが出馬することになった。それまでのいきさつはまた何かで書かせて貰うが、結果、現職当選となったものの、北野さんともう一人の反現職派候補の得票数を合わせると現職の得票数を440票上回っていた。それほど珠洲の人たちは「原発はいらない」と思っていたということだ。

それまでは多くの住民が、「地域で世話になった」「お父さんがあの人に投票してというから」などの理由で投票してきた。しかし、原発建設を止めるには誰に投票したら良いか、自分で考え決めなくてはならない。「これまでAさんに投票してきたが、Aさんは原発に賛成なのか?反対なのか?」と皆が考えだした。

市長選で、珠洲市民はの多くは原発はいらないと示したのに、その後、関電が建設予定地の調査に始めた。「何やってるんだ、関電!」。住民たちは身体を張って闘い調査を止めさせた。つまり市長選で市長にはなれなかったが、北野さんの出馬は、住民に大きな変化をもたらせたということだ。

それから2年後の1991年、石川県議選があった。詳細は省くが、北野さんらの仲間はまた悩んだ。市長と県議では立場が違う。県議選を闘うか、闘うなら誰を擁立するかの会議が続く。北野さんを推す人もいるのだが……。なかなか決まらない。

そんな時、高屋町(寺家地区と並び珠洲原発の建設が予定されていた地域)のお寺のご住職で、反原発運動の中心的人物だった塚本真如(まこと)さんが、会議中の部屋から北野さんを外に連れ出し、こう言った。

「おれはあんたにもう一回市長選をやってもらいたいと思っているから県議の候補者には推してこなかった。あんたはどう思う?」

北野さんはこう答えた。

「僕もこれまでのいきさつからして、もう一回はなんかの選挙に出なきゃならんと思ってます。ここで県議選を闘わなかったら3年後の市長選もないですよ。3年後はもっといい人を探すとして、県議選でやりましょう」。

北野さんは出馬し、革新系で初めての県議となった。もちろん塚本さん始め、北野さんの仲間の皆さんの力がなくては無理なのだが、何というか、北野さんのこの政治的決断力、判断力には驚かされるばかりだ。

北野進さん

◆次に止めるのは志賀原発だ!

北野進さんおっかけ記事みたいになって申し訳ないが、30日の集会全体に「珠洲原発建設を止めてくれてありがとう」みたいな感じが溢れてて感動した。もちろん、それで終わってはいけない。次に止めるのは志賀原発だ!

「志賀原発訴訟弁護団長」の岩淵正明弁護士が明らかにしていたように、元旦の能登半島地震では志賀原発の3つの欠陥が明らかになった。

1つ目は、地震に対する完全確保が全くされてなかったということ。地震で150キロにおよぶ長大な活断層などが一瞬のうちに連動して動いたが、北陸電力も規制委員会もこれを全く予測できていなかった。

2つ目は、地震による隆起に対する対策がとられていなかったこと。4メートルもの隆起が能登半島の北部で発生した。明治以来最大規模といわれている。今後予想される志賀原発沖合の活断層が連動して動けば、志賀原発そのものが隆起して傾くことが予想される。しかし、北陸電力も規制委員会も全く対策をとっていない。

3つ目は、原発事故が起ったら住民は逃げられないということがわかったことだ。能登半島には11路線の主要な幹線道路があるが、うち7路線が地崩れ、陥没、隆起して通行できなくなった。原発事故がおこった場合5キロ圏内の人はただちに避難しろといわれているが、どうやって避難できるのか。30キロ圏内の人は、屋内待機となっているが、退避する家屋が倒壊してしまった。

さらに30キロ圏内だけに限っても、8か所もの集落が孤立したことがあきらかになった。外に連絡もとれず、逃げ出せず、長いところで1週間も続いた。避難計画など絵に描いた餅だ。

この3つの欠陥が明らかになった今、志賀原発はもう廃炉しかない!そのことを確認した6・30の全国集会だった!
 

「のとじょ」(原発いらない 能登の女たち)の方々の発言に感動。泣いてしまいました(写真=二木洋子さんのFacebookから)

最後に北野進さんの呼びかけ!

「6.30 さよなら!志賀原発全国集会」で皆さんは金沢まで来られたが、次に来るときにはぜひ能登半島に来てください。原発の建設予定地の海底がものすごく隆起している。私はそれをこの目で確認した。ここに原発が建っていたら……。その恐ろしさ、こんなところに原発を建てようという人間の愚かさを、その目でしっかり見て下さい!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

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◆元「ワーキングマザー」入所者の「小池批判」

まず、東京の若い女性の方は、お気を悪くしてもかまわないので読んでいただきたい。

筆者の勤務先の高齢者施設でニュースの時間。都知事選のニュースで小池百合子候補が無痛分娩や保育完全無料化、私立高校無償化などの子育て支援の実績や公約を訴える様子が映された。

すると、利用者の女性が、「なにをぜいたくな。うちらのころはそんなのありゃせんかったで。それでも、わたしはずっと働いてきたんよ。」とおっしゃった。

まあ、進歩を否定したら身もふたもない、というのも正論です。しかし、これも「女性の声」なのです。

他方で、やたらに高齢者を叩いて溜飲を下げるという言説がマスコミにもあふれています。これは、わたしも違和感を覚えています。

◆時代の転換点

筆者は、2011年~2013年、広島市で男女共同参画審議会の委員もさせていただきました。また、全国各地で女性候補者の応援にかけつけてきました。ジェンダー解消という観点からです。旧態依然とした、広島の地元政治に最も異議を申してきた人間であると自負もしています。

しかし、東京都知事選挙2024を巡る情勢を拝見し、男女共同参画行政なり、ジェンダー解消を求める市民活動も一つの転換点に来ている、と感じます。東京の一定年齢以下のエリート女性から、地方、庶民に比重を移していくべきではないか?という感覚です。

◆小池氏を圧倒的に支持する30代のエリート女性

マスコミの世論調査では、小池氏は女性で支持が厚く、特に30代女性では鉄板どころか、劣化ウラン装甲並みです。

例えば、東京の勝ち組の子育て世代は、いまや、8年間の小池百合子政権で非常に優遇されているのも事実です。人物像としては、東大、京大、早慶などをご卒業され、大手企業や外資などに勤務され、夫婦共働きと言う女性です。

「選挙巧者」の小池知事。選挙対策でこの層を大事にしてきたというべきでしょう。まさに、現代東京の政治家を代表する「横綱」です。

一方で、この層には極論すれば自民党に対しては「田舎のセクハラオヤジ・パワハラオヤジ」のイメージがあり、大変自民党のイメージはよろしくない傾向がある。次期衆院選ではむしろこの層は立憲民主党に投票する人が多いでしょう。それは同時に実施された国選選挙に関する世論調査でも見て取れます。

しかし、都知事選では小池氏が自民党に支援されていることで、この層が小池氏から逃げるかと思いきや、むしろ小池氏を支持している状況がある。それは、裏金自民のマイナスイメージを打ち消すくらい「利益誘導」をやってきたからでしょう。
例えば、高校無償化。名門私立と言われる「開成」や「麻布」、「桜蔭」や「渋渋」も都民は安く行ける。そりゃあ、喜びます。

いまや、成田悠輔さん、高松ななさん、ら若手論客を中心にマスコミでは、「日本は子育て支援は手薄で、高齢者は優遇されている」論が強い。これは本当でしょうか?

少なくとも「小池百合子政権の元での東京」ではその構図は崩れています。

◆疲弊する教育・子育て現場労働者、加速する小池都政

一方で、学校現場では、先生方は長時間労働に疲弊している。スクールカウンセラーなど非正規公務員は低賃金で切り捨てられています。

子育て支援を叫び、実際に実施をしながら、勤務先の校長先生にも生徒にも人気のスクールカウンセラーを切り捨てる。

これが小池都政です。現場労働者の犠牲の上に、勝ち組子育て世代がサービスを享受しているのです。

◆スクールカウンセラーに冷たい小池都政──組合側のアンケート結果より

都内公立学校のスクールカウンセラーが4年で大量に雇止めになった事件。これについて、組合側が都知事選各候補者にアンケートを送り、2日20時現在、小池百合子、蓮舫、清水国明、田母神俊雄候補から回答がありました。

◎心理職ユニオン東京都知事選立候補者に東京都スクールカウンセラーの問題について聞いてみた

東京公務公共一般労働組合心理職一般支部(心理職ユニオン)は雇止め被害者の復職や、制度の改善について要望。現在回答を寄せた候補のうち、小池候補は、組合側の四項目の要望にことごとく賛同できないないし後ろ向きな検討中、としています。

組合側の要望・質問は以下です。
1.雇止め撤回
2,5年を超えて雇用継続を
3,スクールカウンセラーは勤務実績を考慮した採用をすべき
4,残業代を払うべき
これに対して各候補は以下のように回答しています。
小池百合子候補=1、3に「賛同できない」
2,検討中。(公募はしている、というが、実際には、評判の良い人も落とされているのに逃げている。)
4,既に支払われているという認識
(実際は十分払われていないから問題なのですが?!)

蓮舫候補=1~4すべてに賛同。
清水候補=1~3に賛同。4も肯定的な検討中。
田母神俊雄候補=1、3、4に賛同。2は検討中(段階的制度設計)。

◆東京一極集中と地方へのゴミの押し付けに依存した東京の「豊かさ」

また、小泉・竹中政権以来、どんどん、東京に広島を含む地方の富は移転されていきました。

他方で、昔から、東京を含む関東の産業廃棄物はバンバン広島などに来ているわけです。もちろん、湯崎英彦広島県知事や石丸伸二・安芸高田市長(当時)が日本一緩い広島の産廃規制を放置してきた問題はあります。それにしてもです。

原発にしても、そもそもは東京など大都市の電力不足を補うためのものでした。いま、福島の放射性廃棄物を含むゴミが三原本郷産廃処分場にも来るのではないか、と言う話にもなっています。

東京のインテリの間には「田舎のために東京のお金が吸い取られている」という論調も強くありました。しかし、大手企業の地方工場の利益は東京本社が吸い上げています。そして、上記のような地方への東京による負担の押し付け。このことを無視して地方や地方の年配者を見下すような、東京のエリートの発言を拝見すると一人の東京出身者としてげんなりします。

◆70代以上単身女性が半数以上働いている国ニッポン

そもそも、日本の高齢者は70代でも半分以上働いています。
これは諸外国でも異常なことです。特に単身女性の方にその傾向は強くあります。
コンビニ。工場。土木現場。介護職員。ありとあらゆる現場には、外国人とともに高齢女性の方が多くおられます。というか、最近は円安を背景に外国人が伸び悩んで、日本人の高齢女性が目立つ感じもします。

夫がいることを前提に、女性が賃金を抑えられていた時代があった。それで、単身女性の賃金収入は低く、老後も年金が低い状態にあるわけです。そして直近では男性高齢者も最近は孫育て、アルバイトに忙しい方が増えています。

そして、今後、就職氷河期世代においては、男性も非正規雇用が多いため、現在の単身女性高齢者の惨状が男性にもこの小池政権的な政治が続けば広がるのは間違いありません。

もちろん、例えば、中央省庁→地方自治体の幹部という出世をされる方も30代、40代の女性に結構おられます。あるいは、畝本新検事総長も含めて、要職に女性が多くなっていること。これ自体は、大変結構なことです。長期的にはジェンダー解消につながっていく効果はある。

しかし、同時に、それは多くの先輩方の努力の上で現在があるということでもある。ただ、どうも、若手の女性の方の間には「虎に翼」を最近見るまでそうした歴史をご存じなかった、という方も多かったようです。

そして、いまなお、保育や介護、非正規公務員など女性の割合が大きい現場労働者の大きな犠牲があります。

そして、ご紹介したように、東京に富を集中させ、核を含む東京のゴミを地方に押し付けてきたことで、豊かさが成り立っている。

残念ながら、東大、京大、早稲田、慶応等を優秀な成績でご卒業され、仕事をバリバリされ、お子様を名門校に送っている昨今の女性の方でも、こういうことはわかっていただけていないことはよくわかります。その層に、特に小池氏はウケています。

一方で、「パワハラオヤジ」イメージの強い自民のステルスな組織の支援もガッチリ得ている。ということでしょう。

◆地方の男女共同参画行政も「地元重視」へ転機

地方自治体でも最近は女性の副知事や副市長を任命するのは当たり前になってはいます。これも良いことです。とくに副知事だと中央省庁の東大卒の女性を持ってくる、が定番です。

女性副知事は良いことなのですが、では、東京のエリート女性を持ってきて、それで、地方の庶民の女性の状況が改善するか、といえば、なかなか難しいでしょう。
島根県の丸山知事は高卒の県庁たたき上げの女性を副知事に今年度から任命されました。高卒から60歳まで農業から教育まで、あらゆる県内の部署を回られた方です。これこそが、これから必要な「男女平等施策」の一つではないでしょうか?

東大に女性を増やすという案もあるけど、それだと間に合わないし、今の東大の教育を受けても、これまでの男性エリート同様に地方なり現場なりを見下すような女性が増えるばかりではないかと危惧します。

地方においては、学歴関係なく、地元で地道に頑張って来られた優秀な女性がたくさんおられます。

そういう方をきちんと光を当ててポストにつけた方がいいと思う。上野千鶴子先生のご講演を聞くのも悪くはないけど、むしろ、地道に地方で頑張って来られた方が意思決定過程に参画するようにするのが良いと思う。

地方の庶民の女性は、東京から落下傘的にやってきたエリートと、地元の「年配男性中心」の狭間で、意思決定過程への参加が疎外されてきたからです。

◎関連記事「地元で地味に頑張る若手・中堅世代の女性」を大事にし、「メイク ヒロシマ グレート アゲイン」 筆者が県東部女性議員ら前に講演 

広島では特に、湯崎英彦知事が「東京(関東)の女性」を重視しています。平川前教育長は女性民間校長を神奈川から一本釣り。副知事には、東大・経産省の後輩の女性。医療行政担当に局長には厚労省から若手女性。

しかし、平川教育長が暴走し、医療行政では、厚労省出身の若手女性の局長の元、1300~1400億円をかけた巨大病院計画が暴走しています。

◆東京でもエリート重視から庶民・現場に比重を

他方で、東京においても、先ほどご紹介したように、女性でも高齢単身女性、また非正規公務員など大変である。男性でも特に就職氷河期世代以降、大変なことになる。都庁の真下では、いわゆる典型的なホームレス以外の方が次々と食糧支援に並んでいる。

小池氏、蓮舫氏とも、東京のインテリ女性の代表としてやってこられた政治家です。女性が意思決定過程に少なかった時代にはこのタイプの政治家は絶対に必要だった。

ただ、東京の一定年代以下のエリート女性に関しては、小池知事の今回の公約である「無痛分娩」「保育無料化」が実施されれば、一定程度、欧米などにも追いついたという判断ができると思います。

これからは、東京でも地方でもこれまで使い捨てにされてきた現場労働者、そして地方の庶民、こちらに光を当てていく段階ではないでしょうか?

◆「庶民の蓮舫」と「地方の石丸」

蓮舫氏が今回、非正規公務員の待遇改善や中小企業対策として公契約条例を提起したのは、庶民に光を当てる、と言う意味でこの部分について応援しています。ただ、かつて、立憲民主党にせよ、蓮舫氏にせよ、新自由主義的だったのが響いて、なかなか、本来票を得るべきところに伸びきれていない感はある。

筆者自身もくどいようですが、立憲民主党は好きになれません。それでも、路線転換は支持したい。今後、蓮舫氏の路線転換が立憲全体に広がるか?注視していきたい。野党で最も地方に優しい経済政策なのはれいわ新選組ですが、今回の都知事選では山本太郎が「静観」しているのも理解はできます。

※ただし、小池と石丸はありえない、という街頭演説をして結果として蓮舫に援護射撃。この線で今回は良いと思います。

今回、石丸氏は「地方」に光を当てたという「功績」はある。石丸氏の「地方がつぶれたら東京もダメになる」という持論に対して全く異論はありません。こんなことは、筆者がもう何十年も前から申し上げてきたことではあります。

石丸氏が本気であるなら、安芸高田市長時代に例えば、産廃規制を強化するとかすべきだったとは思います。今後は石丸氏が本気であるなら、安芸高田市長時代の「老害叩き」パフォーマンスに頼るのではなく、地方と都会の格差是正を軸としてぶれない姿勢で行くべきです。従来の彼の姿勢のままだと、橋下徹さん的な方向に行きかねないと危惧しています。

なお、田母神閣下こと、田母神俊雄候補は、スクールカウンセラー問題では、労働者寄りの見解を示しています。さしずめ、フランス総選挙で躍進した国民連合に近いと思います。今後、若手で田母神候補の後を継ぐような人が出た場合、国民連合みたいな感じでバカ受けする可能性はあると思います。

◆国政野党が対抗軸をはっきりさせよ

蓮舫、石丸のどちらかが当選となればこれは大事件だ。事件だけれども、「勝ち組子育て世代」と「既得権自民」をがっちり抑えた小池に勝つのはフランスみたいに決選投票制度でもないと難しいでしょう。

難しいけれども、最後まで「小池打倒!」をあきらめるわけにはいかない。「庶民」軸で蓮舫、「地方」軸で石丸が伸び、蓮舫一位、石丸二位、小池三位に持っていければ万々歳。4月の衆院15区補選では小池系候補がマスコミ予想を下回る惨敗もしています。ふたを開けてみないとわからないでしょう。

また、日本全体を変えるには、国政です。国政で野党勢力が東京中心から舵を切り、地方と東京の格差是正を重視するような方向に行くのが望ましいと考えます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 
 取材・文◎浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

 

 

安倍晋三元首相より危険な対米隷従の軍国主義者・岸田文雄首相は今年4月1日の関係閣僚会議で、有事の際の自衛隊や海上保安庁による使用に備えて整備する「特定利用空港・港湾」に、北海道や沖縄など7道県の計16カ所を選び、今年度に整備を始めると決めた。国民保護や戦闘機の離着陸訓練の拠点とするため滑走路延長や港の岸壁整備を促進する。初年度は予算計370億円を充てる。

国家安全保障戦略など軍事三文書(2022年12月16日閣議決定)に記した「公共インフラ整備・機能強化」に基づくもので、文書には「有事の際の展開などを目的とした円滑な利用・配備」という記述がある。整備費は2023年度から5年間で総額約43兆円を投じる軍事費とは別枠で、24年度以降、国交省予算に計上する。

政府は「自衛隊・海上保安庁とインフラ管理者は、国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合又は航空機や艦船の安全を確保する上で緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く)であって、当該施設を利用する合理的な必要があると認められるときには、民生利用に配慮しつつ、緊密に連携しながら、自衛隊・海上保安庁が柔軟かつ迅速に施設を利用できるよう努める」と説明している。

しかし実態は、対中侵略戦争と第二次朝鮮戦争を企む米国の「拡大抑止」戦略に沿って、自衛隊などが有事に使用することを前提に国が改修や整備をする「国家総動員体制」作りの一環だ。指定されたのは那覇空港・宮崎空港・長崎空港・福江空港(五島つばき空港)・北九州空港の5空港と、石垣港・博多港・高知港・須崎港・宿毛(すくも)湾港・高松港・室蘭港・釧路港・留萌(るもい)港・苫小牧港・石狩湾新港の11の港。

南西諸島防衛を想定して九州・沖縄が半数近い7カ所に上った。自衛隊部隊が多数配置されている北海道では5港が選ばれた。これまで目立った軍事要塞化がなかった四国でも4港が指定され、物資補給に活用される見通しだ。

林芳正官房長官は4月1日の記者会見で、「抑止力や対処力を高め、日本への攻撃の可能性を低下させ、国民の安全につながる」と述べた。

 県民に知らされなかった高松港の軍事利用指定

私は香川県高松市生まれで、高校を卒業するまで暮らした。高松港は1988年に瀬戸大橋が完成するまで宇高連絡船が就航していた四国の海の玄関口で、本州や離島との海上交通の要衝として経済・物流の中心を担ってきた。

なぜ高松港が軍事拠点に選ばれたのか不思議だった。5月14・15日、高松で県の担当部局・県議・市民団体を取材した。

香川県民が高松港の軍事拠点指定の動きを知ったのは昨年11月だった。四国新聞(岸田派・三代目世襲の平井卓也衆院議員一族が所有)が同20日、県管理の高松港が「特定重要拠点空港・港湾」(昨年12月18日の関係閣僚会議で「特定利用空港・港湾」と言い換え)の候補地になっていると報道した。

国土交通省出身の池田豊人香川県知事は県民や県議会の意見も聞かず、11月20日の定例記者会見で「制度の内容を確認し、できる協力はしていきたい」と表明。池田知事はこの会見で、10月23日、内閣府・国交省・防衛省の担当者が香川県を訪問し、指定候補とするという説明があったと明らかにした。知事部局は国から打診があったことを4週間も隠していたのだ。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n6fd38a7e22b8

◆日本の冤罪〈51〉大川原化工機事件 経済安保法成立とともに起きた公安警察の暴走
 取材・文◎山村勇気(フリーライター)

 

 

「無罪」と「無実」は似て異なる

「逮捕したことは国賠法上、違法である」──。軍事転用が可能な機器を国に無許可で輸出したとして、警視庁公安部が2020年3月11日に大川原化工機(横浜市)の社長ら3人を逮捕した事件について、東京地裁は昨年12月27日、逮捕は違法だったとの判決を下した。

この裁判は、無実の罪を晴らすために大川原化工機が国と東京都を相手取って起こした国賠訴訟だ。起訴についても判決は「必要な捜査を尽くすことなく行われた」と指弾し、約1億6200万円の損害賠償の支払いを国と都に命じた。ところが、今年1月、国と都はこの判決を不服として控訴した。恥の上塗りというほかない。

「無罪」と「無実」は、似ているが異なるものだ。「無罪」とは、法的には罪に問えないということ。たとえ真犯人であっても、それを証明することができなければ「無罪」となる。一方、「無実」とは、そもそも犯人ではないということ。したがって必然的に罪には問えない。

事件の取材をしていると、ときどき無罪判決の裁判に出会う。そんなとき、現場の捜査員が「無罪だけど無実じゃないんだ」と言って悔しがる姿も目にしてきた。しかし「大川原化工機事件」は、無実の市民を捜査機関が意図的に犯罪者に仕立て上げた冤罪事件だった。

同社社長ら3人は、外為法違反の罪で逮捕・起訴されたが、実は、その後に刑事裁判は行なわれなかった。裁判が始まる前に検察が起訴を取り消したためだ。そもそも無実の人を起訴してしまったことに気づいたのだ(被疑者死亡などにより、やむを得ず公訴棄却になることはあるが、起訴の「取り消し」は極めて珍しい)。

しかし、取り消せば済む問題ではない。「ごめん」で許される話ではないのだが、警察も検察も起訴を取り消したことで謝罪すらしていない。

だからこそ大川原正明社長は「せめて謝ってほしい」との思いで、国と都を提訴し、国賠訴訟として裁判で争ってきた。そして今般、判決で捜査の違法性を認められたのだから、警察と検察は速やかに謝罪し、再発防止に努めるべきなのだ。

今回の国賠訴訟の判決をもう少し詳しく見てみると、特に警察について、必要な捜査を尽くさなかったのみならず、「偽計を用いた取り調べ」をし、「原告を欺罔(ぎもう)して供述調書に署名指印させた」(判決文)ことも認定している。

ここまでくると、もはや警察による犯罪行為である。そこで大川原化工機は、国賠訴訟とは別に、取り調べを担当した捜査員2人を警視庁捜査二課に虚偽有印公文書作成・同行使の罪で刑事告発もしている。

判決でここまで踏み込まれているのだから、国と都が控訴したことはどう考えても悪手である。今後、判決が確定するまで(高裁まで争うのか、最高裁まで争うのかわからないがいずれの場合も年単位で時間を費やす)、警視庁と東京地検を批判する報道は出続けるだろう。そのたびに警視庁と東京地検のレピュテーション(信用)は棄損され続ける。これまた恥の上塗りだ。真面目に働くほかの多くの捜査員にとって迷惑極まりない。

繰り返すが、警察と検察がとるべき最善の策は、今回の判決を真摯に受け止め謝罪し、再発防止策を打ち出すことだ。過ちを認めなければ真の再発防止策も打てないではないか。この期に及んでも警察と検察は、捜査に携わった者の名誉や立場を守ろうとしているとしか思えない。いかにして警視庁が冤罪事件を作り上げていったか、本稿でそれを振り返る。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nc6cff37b407f

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◆ピョンヤンの大使館街 ──「アジアひとりぼっち」の日本

ピョンヤンは大同江をはさんで西ピョンヤンと東ピョンヤンに区分されるが、東ピョンヤンの広大な一角には諸外国の大使館街がある。早くから外交関係を持つロシアや中国は都心部の西ピョンヤンに独自に大使館を持ち、大きな敷地には大使館員子女のための学校、大使館員アパートなど諸施設まである。

 

ASEAN(東南アジア諸国連合)の旗

東ピョンヤンの大使館街に一歩足を踏み入れるとすぐ左手にフィリピンとカンボジアの大使館が並び道路を挟んで右手にベトナム大使館、まずアジアのこの三つが並んでいる。庭にはそれぞれの国旗と共にASEAN旗、この2本の旗が翻っている。それは「自分たちは東南アジア諸国連合-アジアなのだ」と誇り高く自己主張しているように見える。

周知のようにASEANは主権尊重、内政不干渉、紛争の対話による解決を憲章に謳い、この憲章に従って成員国への軍事的威嚇や制裁など力の行使の否定、覇権主義的行動排除の脱覇権地域共同体だ。

ASEAN成員国はじめアジア諸国はみな朝鮮と外交関係を持っているが、大使館がないのは日本だけ。例外的にミャンマーはある事件を契機にいま国交途絶はしているが元来、外交関係にあった国だ。

ピョンヤンの大使館街から見れば、「太平洋ひとりぼっち」ヨットの堀江謙一さんにならえば“「アジアひとりぼっち」の日本”という構図が浮かび上がる。

それは日本にいれば決して感じることのない光景だろう。でもピョンヤンから見れば「アジアひとりぼっち」というのが日本の置かれた位置だという厳然たる事実もあるのだ。

これが「アナザーサイド of 日本」、いや現在の日本のアジアでの位置、日本では目に見えにくい「本当の位置」を雄弁に物語っているのではないかと私は思う。

それはどういうことなのだろう?

◆戦後も「アジアの外の日本」は変わらなかった

敗戦でアメリカには頭を下げたが、アジアには頭を下げなかった日本。これが戦後日本のアジアでの立ち位置を決めた。

明治の近代初期に朝鮮の革命家・金玉均(キムオクキュン)などを助けた福沢諭吉だが、福沢は彼らの「維新革命」失敗を見て、アジア東方の友人に日本のような近代化「維新」断行のできる志士は出ないと結論を下し「脱亜入欧」を唱えた。

それは「アジア東方の悪友を謝絶する」、「西洋の良友と進退を共にし、西洋人の接する風に従ってアジアに処す」というものだった。以後のわが国は欧米帝国主義列強の列に入り、「西洋人の接する風に従って」アジアを植民地支配の対象とする「大日本帝国」として登場、この時からわが国は「アジアの外の日本」になった。

「アジアの外の日本」、それはアジアに頭を下げなかったことで戦後も変わらなかった。

わが国は「アジアで唯一のG7成員国」、欧米と並ぶ「先進国の一員」だということを多くの日本人が誇りと思ってきた。それは戦後、日本は日米安保基軸の下で「軍事は米国に任せ日本は経済に注力する」吉田ドクトリン路線で「軍国主義をやらず平和的経済発展を成し遂げ先進国隊列に入った」とされる「誇り」から来るものだろう。

でも「G7成員国」ということ、それは戦後も「脱亜入欧」、帝国主義列強の列から離れなかった、「アジアの外の日本」であり続けたことを意味し、決して胸を張れることではないと思う。

「軍事は米国にませる」だけではすまなくなった戦後日本の大きな転機を迎えている今日、そのことがますます明確になりつつある。

今年初めのある事件はこのことを考えさせるものだ。

県立公園、群馬の森にある朝鮮人追悼碑「記憶 反省 そして友好」は、群馬県により行政代執行という形で強制撤去された。理由は、日韓、日朝友好の象徴であるべきものが「政治的対立を生むものになっている」からというのが山本一太知事の説明だった。

元徴用工への賠償金支払いなど歴史認識問題が日韓政府間対立の原因になったことを念頭に置いたものだろう。朝鮮への植民地支配の根拠となった韓国併合条約を当時の国際法上は合法とし、慰安婦や徴用工への賠償問題は日韓条約締結時に解決済みという日本政府の立場を代弁するものだ。

山本一太・群馬県知事が言うような朝鮮人追悼碑自体に日韓間の政治的対立の原因があるのではない、歴史認識問題で「アジアに頭を下げない」、「アジアの外の日本」にこそ両国間の根深い対立の原因がある。


◎[参考動画]「群馬の森」朝鮮人追悼碑が撤去に 「記憶 反省 友好」の思いはどこへ【報道特集】(TBS 2024/02/18)

この「アジアの外の日本」を後押しするのが米国だ。朝鮮人追悼碑のような日韓間の政治的対立を生むような歴史認識問題を排除して日米韓軍事同盟強化による対中国、対朝鮮対決の軍事包囲網完成を急いでいるのが米国だ。

昨年、韓国の尹錫悦(ユンソクヨル)大統領が元徴用工への賠償金を日本企業に代わって韓国の財団が立て替えるという形で韓国国民の反発を無視してでも日本政府に譲歩した。結果、日韓政府関係は好転、日韓首脳会談開催にこぎつけたことは周知の事実だ。

日韓首脳会談決定直後、いち早く日韓正常化の動きを歓迎する米政府が「“核の傘”日米韓協議体」創設を日韓に打診していることを読売新聞は一面トップで伝えた。

歴史認識問題を日韓関係の「政治的対立を生むものにするな」というのは他ならぬ米国の要求だということだ。

アジアにおける米覇権秩序のお陰をこうむって海外権益を拡大する「アジアの外の日本」、敗戦後もアジアに頭を下げずアメリカだけに頭を下げることによって、戦前同様の「脱亜入欧」覇権主義を日米基軸・対米従属という形で継続してきたわが国、これが戦後日本の「米国についていけば何とかなる」生存方式となって今日に至っている。しかしこの「アジアの外の日本」はいま大きな軋(きし)みを生じだしている。

4月の岸田首相の国賓訪米、米議会での演説、日米首脳会談での合意事項、またそれ以降の「新しい戦前」への急傾斜と言われる最近の事象はそれをひしひしと感じさせるものだ。

◆日仏共同軍事訓練合意とニューカレドニア暴動を考える

国賓訪米を終えた5月、岸田首相はフランスを訪問、自衛隊と仏軍の共同訓練をしやすくする「円滑化協定」締結に合意した。なぜ自衛隊と仏軍の共同訓練なのか? 「インド太平洋地域の平和と安定に貢献」のためだということだ。

なんでフランスがインド太平洋地域に利害と関心を持つのか? 

岸田訪仏から約2週間後に起きたニューカレドニアでの暴動でその理由の一端がわかる。

暴動の原因は仏マクロン政権がニューカレドニアの選挙で仏系住民の投票権拡大のための憲法改正を企てたことだ。先住民カナク人には独立気運が高まっているが、他方でフランス人の殖民化を進めるフランス政府の選挙制度改変施策によって増加一途の仏系住民にカナク人の発言権を押さえられ独立が遠のくことへの反発から暴動に発展した。現在もカナク人若者による道路封鎖など抗議行動が続いている。仏国内でもこの憲法改正を見送るべきだとの声が上がっている。


◎[参考動画]ニューカレドニアに非常事態宣言 暴動激化で4人死亡(テレ東BIZ 2024年5月16日)

恥ずかしながら私は今回の暴動でニューカレドニアがいまもフランスの植民地だったことを知った。

日本では西南太平洋、メラネシアに属する「天国に一番近い島」だとか観光名所として知られているニューカレドニアだが、いまなお「仏領」、すなわちフランスの植民地ということはあまり知られていない。

調べてみると、鉱物資源が豊富で、特に電気自動車のバッテリーに欠かせないニッケル生産量ではかつては世界一、いまは三位を誇るという。他にクロム、鉄鋼、マンガン、金、銀、鉛の埋蔵が豊富な島なのだ。仏政府にとっては自分の「海外領土」、植民地としておいしい資源豊富な島、だから独立を要求するカナク人の声を抑えたい。それがマクロンをして今回の仏系住民に投票権を拡大する憲法改正を急がせたのだろう。

フランスはいまもこの地域における「植民地帝国」である。南インド洋にはレユニオン、マイヨットなど、そして南太平洋にはニューカレドニア、仏領ポリネシアなど「海外領土」が広く散在する。この植民地群の存在によってフランスはこの地域を含めた自国の排他的経済水域(EEZ)において米国に次ぐ世界第二位の地位にある。フランスはこの広大な水域でポリネシアに太平洋管区司令官、ニューカレドニアに軍高等司令官を置き軍事行動も自由に行っている。

フランスはこの海域に核戦力配備の原子力潜水艦を常時運航させている。フランスの保有する核弾頭は280発、そのうち240発は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)とされており、フランスの原潜はインド太平洋地域の核抑止力、核威嚇の機能を果たしている。今回の日仏共同軍事訓練「円滑化協定」合意はこうした背景下でなされたものだ。

日仏政府が「インド太平洋の平和と安定に貢献」目的で共同軍事訓練を行う目的は主として対中対決にある。

近年、中国と太平洋島嶼(とうしょ)諸国との関係拡大にこの地域を支配してきた米国は神経をとがらせており、日本を押し立ててこれら島嶼諸国の切り崩しを図るための会議をやらせた。しかし会議に参加した首脳は少なく、ほとんどが外相クラスを送るという「おつきあい」程度の低調なものに終わった。

こうした事態の展開に焦りを募らせているのが米国だ。そんな米国がこの地域に利害関係を持つフランスを巻き込もうとするのは当然だろう。岸田政権はそのお先棒を担いで仏政府と共同軍事訓練を行うための「円滑化協定」を合意したのだ。

新たな日仏政府の軍事協力強化、それは「国際秩序の変更を迫る修正主義勢力」中国に対する米国の新冷戦戦略の一環であることは明確だ。

米国はじめ「G7先進国」グループはかつての帝国主義列強諸国、どの国も自分の植民地主義に対し反省する気はない。それを「パックス・アメリカーナ」と形を変えていまも続けるのが覇権国家の生存方式、宿命だから当然だろう。

ゆえにかつて植民地支配に苦しめられたグローバルサウスと呼ばれる発展途上諸国はG7から離れていく。いまは「G7・先進国」依存の旧弊を脱し脱覇権、主権尊重、内政不干渉に理解を示す中ロに接近、自身もまた各大陸別の地域共同体やBRICsなど独自の国際協力機構を通じ、自主独立傾向を強めていっている。

フランスとの関係では西アフリカのニジェールで若手将校たちによるクーデターで生まれた新政権は駐屯仏軍を追い出した。同様にチャドやブルキナファッソでも反仏政権が誕生した。このようにウクライナやガザ以外の地域でもG7は孤立を深めている。

いまやもういくらあがいても米国の主導する現代版植民地主義の「G7」覇権国際秩序は崩壊の瀬戸際に立たされている。あがけばあがくほどその瓦解速度を早めていくだろう。

◆欧州まで総動員の「中国征伐」、まるで幕末の長州征伐戦争

1960年代中葉、ボブ・ディランは次のように歌った。

線は引かれ コースは決められ
遅い者が つぎには速くなる
いまが 過去になるように 
秩序は 急速にうすれつつある
いまの一番は あとでびりっかすになる
とにかく時代は 変わりつつあるんだから


◎[参考動画]Bob Dylan – The Times They Are A-Changin’ | 時代は変る(1964年)(Sony Music Japan)

若きボブ・ディランを押しも押されもしないプロテスト・シンガーにした”The Times They Are a-Changin'”(時代は変わる)の歌詞の一節だ。当時、「ならあっちに行ってやる」の私の心、「戦後日本はおかしい」に強く共鳴する歌だった。ボブ・ディランが大好きになった歌でもある。

60年前の歌詞「いまの一番は あとでびりっかすになる」、それはいま「衰退一途の覇権帝国・米国のことを歌ったもの」と言ってもちっともおかしくない。

「いまトラ」の言われる中、ある番組で小谷哲男・明海大学教授(アメリカ政治専門)はこう語った。

「トランプは“ウクライナはゼッタイ勝てない、自分が大統領になったらすぐに戦争を終わらせる。そして対中国に力を集中する”と語っている」と。

「対中国に力を集中する」というトランプのこの発言は、いま中国、ウクライナ、ガザの3正面作戦を強いられ為す術のない米国の苦境を物語るものだ。この苦境脱出の戦略が「対中国に力を集中する」だ。

このことと関連して言えば、最近、欧州諸国がインド太平洋地域への対中対決のための軍事的進出を強化する方向で動いている。

 

欧州まで総動員の『中国征伐』

6月1日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)の会合でフランス国防相は仏領ニューカレドニアを念頭に「太平洋に海外領土を持つフランスは太平洋国家」だと発言したが、この4月に仏海軍のフリゲート艦がフィリピンの南シナ海で米軍と比軍の合同演習に初めて参加、今後は日米比首脳会談での合意に基づき自衛隊もこれに加わる。これに先立ち仏海軍は米軍、オーストラリア軍との合同演習にも参加している。

シャングリラ対話ではオランダ国防相は同国軍のフリゲート艦が台湾海峡を通過したことを表明、元来、台湾海峡通過は非公表が常だったが異例の公表に踏み切った。それは中国にその対決意思を見せつけたということだ。オランダもかつてアジアの植民地帝国だった国だ。

欧州各国による艦艇や航空機のインド太平洋への派遣は活発化の一途をたどっている。

英国は2021年からインド太平洋に常駐させている哨戒艇二隻に加え、今年からは沿岸即応部隊(LRG)、海兵隊を中心に揚陸部隊を初めて展開するという上陸攻撃の実戦部隊派遣をデモンストレーションした。

さらに独仏やスペインの空軍は今夏、戦闘機などを合同で派遣し、日本や豪州、インドとの訓練を予定している。

このように米国は対中対決の軍事包囲網形成をインド太平洋地域に欧州各国の軍事資産を総動員してまでも急いでいる、「中国征伐」のために。

これは私の勝手な推量だが、こうした事態の進展は徳川幕府「ご瓦解」の発端となった長州征伐、幕長戦争を彷彿させる。

 

西洋式軍装に身を包んだ幕府軍(1865年)

幕府側は西国諸藩から征長軍を募り二度の幕長戦争を敢行したが、第二次征長戦争で15万の幕府軍がわずか数千の長州軍に惨敗を喫した。長州防衛、倒幕の意気盛んな長州軍と寄せ集めの幕府軍とでは志気の上でも格段の差があった。

また、大村益次郎の兵制改革による武士団に加えての高杉晋作率いる奇兵隊はじめ「国民軍」の軽装歩兵の重い鎧をまとった幕府軍に対する優位性、また旧式ゲベール銃の幕府軍に対する精密長射程のライフル式スナイドル銃の「国民軍」に対しては武装の上でも「幕府軍」はもはや敵ではなかった。

幕長戦争から類推すれば、インド太平洋地域の日米安保、日米韓、日米比、クアッド(Quad)、AUKUSなどにさらに欧州NATO各国まで加えた寄せ集めの米覇権帝国「幕府軍」は束になっても中国はびくともしないだろう。

志気の上では「祖国防衛」の意気高い中国と「祖国防衛」とは縁遠い「覇権秩序維持」、既得権防衛の打算で動く「寄せ集め」軍では全く相手にならないだろう。また武装の側面でも米「幕府軍」は中国軍に劣る。射程500~5,500kmクラスの中距離ミサル保有量では中国軍に及ばず、質的に見ても中国軍の「空母キラー」地対艦ミサイル、変速軌道を描く極超音速ミサイルなど最新鋭ミサイルは米「幕府軍」にはない。

長州征伐・幕長戦争が徳川幕府「ご瓦解」の前兆になったが、この欧州まで総動員の「中国征伐」企図は、それ自体が米覇権帝国「幕府ご瓦解」の前兆であると私は思う。

◆戦後日本の革命は脱G7・「アジアの内の日本」

「ウクライナはゼッタイ(ロシアに)勝てない」と断言するトランプ(バイデンも内心、そう思っている)だが、だからといって「中国には勝てる」という打算があるわけではない、いや全く自信がないというのが真実だろう。でも「中国征伐」はやらなければならない。「中国、ロシアは国際秩序変更を迫る危険な修正主義勢力」であり、さらにグローバルサウスもこれに同調して事態はますます悪化、「じり貧」一方だ。これを放置することは戦後世界に生き残った現代版植民地主義、「米覇権秩序」・G7主導の国際秩序の瓦解を意味し、それは帝国主義的覇権主義の終局的「死刑宣告」を意味するからだ。

いまや「新しい戦前」のわが国だが、戦後のこれまでは米国による数々の「征伐戦争」への本格参加はない。「憲法9条平和国家」日本の看板は汚れているとはいえアジア諸国からはそれほど危険視されない根拠になっている。また他のグローバルサウス諸国にも日本への警戒心はさほどない。中国、ロシアもまだ「様子見」状態を維持している。これが米国の数々の征伐戦争に手を汚してきた他のG7諸国とわが国の決定的違いだ。

しかしながら米覇権秩序・G7秩序の「ご瓦解」を前に勝ち目のない「中国征伐」戦争への本格参加、ウクライナのように対中代理戦争までやらされてまで無理心中覇権に付き合うのか否か、いまわが国はまさに瀬戸際に立たされている。

いまなら遅くはないはずだ。

いまこそ決断の時、「戦後日本の革命」の時! 「なんであの時、あんなバカなことをやったのか!」と後の世代に糾弾されないためにも、いまが決断の時であると思う。

戦後日本の革命、その基本課題は日米基軸からの転換だが、それは日本が覇権国家であることをやめるという意思表示でもある。その側面から見れば、明治の大日本帝国以来の「脱亜入欧」からの脱却、戦後の今日、それは「脱G7」、「アジアの外の日本」から「アジアの内の日本」への大きな歴史的転換だと言える。

以上のことが、「ピョンヤンから感じる時代の風」に吹かれていま切実に私が思い、かつ半世紀前、共に闘った同世代と何よりも未来を託す日本の若者たちに訴えたいことだ。


◎[参考動画]パレスチナの解放訴え 東大生ら500人が反イスラエルデモ(ANN 2024年5月17日)

いま「ガザ大虐殺」に異を唱え、米主導のG7・覇権主義への疑問が広がり、大学生たちをはじめ若者が新しい闘いを展開している。

希望はある。

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

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2024年7月7日執行の東京都知事選挙では、前安芸高田市長の石丸伸二さんが「小池百合子VS蓮舫」の(日本の女性政治家だけでなく現代の東京を代表する政治家)いわば「横綱対決」に割って入り、台風の目となっています。

◆期待していた人も「東京へ行くのは残念」、コミュニケーション不足指摘の声も多く

さて、この石丸伸二さん。地元・安芸高田市を含む広島都市圏での評判はどうなのでしょうか? 筆者は、安芸高田市内に本社を置く病院や高齢者施設を運営する企業に2011年から3年間、勤務したことがある「元在勤者」です。また、石丸氏の出身高校の地元である地域を政治活動上の地盤としています。そうした人的ネットワークを活かし、電話や対面、SNSメッセージなどで取材を行いました。

正直、ポジティブな意見は、安芸高田市を含む広島3区では、リアルでもあまり、うかがわないのです。ただ、若手の市役所職員や教員の間には、石丸さんを惜しむ声もあったそうです。

他方で、安芸高田市から少し離れた呉市とか、県東部では、石丸さんに期待する声も結構あります。

ただ、石丸さんに期待している人でも、

「もっと安芸高田市で頑張ってくれたらいいのに。」

「広島県内で頑張ればいいのに、東京なんか行って何を考えているのだ?」

というご意見が多くなっています。

また、

「石丸さんはお勉強ができるけれども、地元の人たちは振り回されるだけだったのではないか?」(安芸高田市出身、広島市在住の70代男性)

「最後まで、地元の人とすれ違いになってしまったのではないか?」(石丸さんの出身高校近くで店を開く60代女性)

など、石丸さんのコミュニケーション不足を指摘する声も多く上がっています。

◆台風時にトライアスロン参加を優先し、安芸高田市を不在にしていた市長 ── 地道に頑張っている「同年代」から「嫌いになった」の声も

一方で、石丸さんに対して批判的な声も多くあります。一つは、安芸高田市内で農業を営み、消防団の元分団長もされた40代男性の声です。石丸さんとは同年代。故郷(ふるさと)のために地道に頑張っておられる方です。

2022年9月、西日本に台風14号が接近しました。この時、石丸市長(当時)は千葉県へトライアスロン競技に参加するために安芸高田市を不在にしていたのです。そのことを後に議会でとがめられると、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」と開き直られたのが石丸さんです。

この元分団長は、以下のように発言されています。
 

「みなさんのお住いの行政組織図(機構図)を見ていただくとわかるように、消防本部の上をたどると市長がトップになっていると思います。

市長は消防機関の長を通じて指揮監督を行う立場にあるのです。これにはもちろん消防団も含まれます。

災害出動、それも「過去に例がないほどの大型台風」ともなれば最悪人命に関わることは簡単に想像できるでしょう。

市民の命と財産を守るためとはいえ、消防職団員にも命の危険がある災害出動を命令しなければならない立場というのは私には想像もつきません。

そんな立場にある人間が、ただただ詰問された議員に反省の弁もなく、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」

信じられない発言です。前もって指示をだしているから大丈夫?あなたは市民の命を財産を守る立場にいるのではないですか?人の命の重さを全く感じさせない言動は吐き気を催します。

大規模災害が想定される場合、消防団員は防災センターに詰めて出動命令を待つこともあるでしょう。

消防団員は非常勤特別職の地方公務員とされていますが、普通にサラリーマンだったり、農家だったり鳶職人だったりします。分団長は階級があるとはいえ、分団員に出動命令(お願い)する立場です。

そんな人たちに災害対応させておいて、自分はプライベートでトライアスロン? まったく、全然理解できません。万が一、そんな時に自分の所属する分団員が災害対応によって落命したとしたら、絶対に、絶対に納得できません。許せません。」

 

安芸高田市に隣接する広島市北部の安佐南区沼田町吉山。台風14号で大きな被害が出た(2023年5月筆者撮影)

◎[引用元]「私は、こうして石丸伸二さんを嫌いになりました。」(seijiさんの2024年6月23日付note) 

まったくそのとおりです。消防団員は非常勤特別職の地方公務員ですが、いわば雀の涙の報酬でやっているボランティアです。確かに、トップが不在だったら機能しない行政機構はまずい。しかし、一方で、では、トップが台風接近中だというのに、行き先も告げずに自治体を不在にするのもいかがなものか?
 
この台風14号では、安芸高田市に隣接する広島市北部でも大きな被害が出ています。この地区ではがけ崩れ寸前になっているような場所もあったのです。ただ、幸い、死傷者がでるようなことがなかったのが不幸中の幸いでした。

また、同じく当時広島県北部の建設会社の支社に勤務していた男性によると、

「あの時の安芸高田市高宮エリアに現場があったが、道が刳れるような被害だったし、現場詰め所が流されるところだった。

自分は免除だったけど上の人は非常呼集されたぐらいだ。だから、(石丸さんのことは)最初から信用していない。」

と証言しています。


◎[参考動画]最高傑作!石丸市長 10手先を読む戦略がトライアスロン(取材不足 2024年6月1日)

◆市議会・新聞批判に県議批判まで 広報「あきたかた」の異常

安芸高田市民の60代の女性は安芸高田市の広報「あきたかた」が異常だ、と呆れておられます。

実際に拝見してみると、異常さが分かります。市議会や地元新聞と石丸市長が対立しているのは筆者ら市外の人間もよくわかっています。わかっていますが、わざわざ、税金を使った市の広報紙で地元新聞を名指しで批判するのはいかがなものか?
 
さらに、石丸市長は市民に県政について伝える、と称して、地元選出の玉重県議にインタビューを申し入れ、断られたそうです。そこで、この広報紙には、

「一方で、県議は市長選への立候補を表明した人物を紹介して回っているという情報が届きました。自身の政治活動を優先し、市民への説明責任を劣後させる状況となっています。」

と県議を批判しています。

安芸高田市の広報「あきたかた」の誌面

しかし、県政について伝えるのは、県議自らが、議会報告なり、ご自身の街頭演説なり、すればいいことです。県議の仕事が足りない、有権者が判断すれば、次の選挙でその県議を有権者が打倒すれば良いだけのことです。

行政の広報紙で特定の県議などを批判するのは、おかしい。石丸氏は、「政治屋を一掃する」と言っておられますが、行政とご自身の政治活動を混同する政治屋はご自身ではないのか? 反省していただきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは7月号の注目記事2本の一部を紹介します。

◆送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ!
 ◎広瀬 隆(作家)

 

 

「リニア新幹線の超危険プロジェクト」と銘打った作家・広瀬隆氏の全6回のユーチューブ動画から、今月号では、リニアと原発の一体性を明かした「⑥電力消費激増と原発再稼働(最終回)」を編集し、紹介する。本誌6月号では⑤の電磁波問題を採り上げたが、そこでも広瀬氏が強調していたとおり、最も重要なことは、「リニアが開業延期されても、JR東海の失敗と断念を待っていてはいけない。今すぐ工事をやめさせ、自然破壊を止める」ということだ。動画にはより詳細なデータが満載なので、あわせてご覧いただきたい。(構成・文責/編集部)

 3・11直後の火事場泥棒

リニアをめぐる不条理に枚挙の暇はありません。まず、そもそも計画の進め方が不条理でした。リニア中央新幹線計画の公式の最終答申が出されたのは2011年4月21日です。この日の1カ月ほど前、3月11日に東日本大震災が起こり、東京電力福島第一原発の原子炉が次々と爆発しました。日本破局の大惨事の最中です。
 
そのどさくさに紛れて計画を審議する国土交通省交通政策審議会の中央新幹線小委員会(委員長=家田均東京大学教授)は最終答申案をまとめ、「南アルプスルート」「超電導リニア方式」でのリニア中央新幹線の建設を明記・公表したのです。

もちろん、リニアのプロジェクトは以前からあって、宮崎県では実験線を敷設しています。その際、JR東海は何と言ってこれを進めてきたか?「東海道新幹線の東京―大阪間の輸送能力が限界に近い。バイパス(迂回路)としてリニア中央新幹線を敷設する必要がある」と表明したのです。

自動車ならばバイパス道路は必要ですが、鉄道のバイパスなど、全世界でも例がありません。JR東海はそんな非常識なことを公言したのです。しかもJR東海は御用学者の東大教授たちを連れてきて答申案をまとめながら、国交省鉄道局によるパブリックコメント、いわゆる世論の意見公募を求めました。その結果が2011年5月12日に報告されたのですが、当時は東日本大震災から2カ月後で、「JR東海が言うように中央新幹線を早期に整備すべきだ」を支持した人はわずか106人。対して「リニアに反対、または計画を中止、または再検討とすべき」という人は648人と、パブコメの97%がリニア建設に反対しました。ところが5月26日には整備計画が決定され、営業および建設主体にJR東海が指名されました。

続いて6月7日にはJR東海が中間駅の候補地案を公表して、勝手に話を進めていきます。震災と原発事故の大惨事で日本中があたふたしているその間にJR東海はリニア建設を決定した。まさに火事場泥棒です。

JR東海と行政が住民に初めて説明会を開いたのは計画発表から2年が経った2013年5月。住民にとっては寝耳に水でした。
 
そもそも国交省が環境アセスメント(環境影響評価)なしに計画を決めること自体が、国の法律に違反しています。なぜこんな無理が通るかというと、JR東海が裏で地元の利権者を懐柔したからです。なにしろ巨大なトンネル工事ですから、事業者や建設業者は儲かります。

でも、本当に地元に多大な利益があるのか? 中間駅の建設費5900億円は地元負担が前提です。しかも、リニアの多くの乗客は東京と名古屋の大都市間を迅速に往復するのが多数派ですから、中間駅で降りる客などほとんどいない。つまり中間駅にはほとんど利益をもたらしません。

リニア新幹線は時速500キロという高速走行が売りです。だから、可能な限りまっすぐトンネルを掘るという工事です。しかし、これは自然界から見れば無謀です。しかも、路線の8割がトンネルで外の景色はほとんど見えない。誰がそんな不愉快な鉄道に乗りたいですか? 電磁波まで浴びせられる列車にまともな人は乗りません。

このままではまずいということで、リニア建設に反対する人たちは2016年5月に「ストップ・リニア!訴訟団」を結成しました。そして、「国交省の認可は行政庁の裁量権の範囲を超えている。住民無視の国法違反だ」として行政訴訟を起こしています。

ちなみに2010年12月、中国の新幹線走行実験では、日本の川崎重工業製の従来の新幹線車両をベースにした「和諧号」が、486キロという驚異的な時速を記録しました。リニアの最高時速は500キロの予定ですが、日本企業がつくった「和諧号」が時速486キロを出した時点で、高速鉄道がリニアでなければならない理由・動機はとうの昔に吹き飛びました。

 岐阜県では東濃ウラン鉱山の悪夢再び

岐阜県では、寝ていた子が叩き起こされるような事件が起こっています。

同県内の停車予定駅である中津川には東濃(とうのう)ウラン鉱山(閉山措置中)があります。2003年4月、この近くの可児市の東海環状自動車道トンネル掘削土の処分場から流れ出た酸性汚染水によって、木曽川水系の一級河川である久々利川の水系で、マスやアマゴといった魚が約1000匹も死ぬという事件が起こりました。

この一帯は瑞浪市と御嵩町と土岐市にまたがって東濃ウラン鉱床が分布しています。東濃のウランは岡山県の人形峠と並んで原子力産業にとって最も重要な鉱床です。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n71fc4fb5a95f

◆ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか
 取材・文◎青柳貞一郎(医師・軍事ジャーナリスト)

 

 

 ウクライナ代理戦争の総力戦

軍事や戦術はリアリズムに基づいており、大手メディアが作り上げた物語(ナラティブ)に沿って、ウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻を一方的な善悪の物語で論ずると、ロシアの優勢やイスラエルの失敗が「悪の勝利」でしか語られなくなってしまいます。

本来紛争には双方に言い分(正義)があり、武力を伴う戦争は外交の一手段にすぎません。客観的な事実の積み上げで双方が譲歩できる終結(off ramp strategy=出口戦略)を探ることが、国際政治の基本なのです。

これから論じる内容を理解するうえで、共有したい前提があります。それは約60年前のベトナム戦争が、米欧西側陣営と当時のソ連を中心とする社会主義陣営の代理戦争であったのと同様、今回のウクライナ戦争は同じ資本主義を標榜する米欧を中心とする「グローバリズム陣営」と、ロシア・中国・BRICS諸国など「グローバルサウス」と呼ばれる「多極主義陣営」の代理戦争であるという認識です。

両者の線引きは、ウクライナ戦争が開始された時にロシアに対する経済制裁に加わった国とそうでない国で分けられるとみて差し支えないでしょう。そして、戦争自体は西側諸国全体の経済と、ロシア及びロシアに協力する国々全体の経済をバックにした総力戦(対称戦争)となっています。

NATO(北大西洋条約機構)諸国は東西冷戦終了後、主な戦力を自分たちの兵力・経済力よりも弱い国や武装勢力(テロ組織)に向け(いわゆる「非対称戦」)、軍の態様もそれに適合するよう変化させてきました。ロシア軍も実はアフガン戦争、チェチェン紛争、シリア内戦への介入を経て大規模な総力戦から非対称戦に改めてきたといえます。

しかしウクライナでは、それとは勝手が異なる結果になりました。

 激変した戦術・用兵思想

2022年2月24日、ウクライナからの独立を主張するドネツク・ルガンスク両共和国の保全、ウクライナの非軍事化・非ナチ化を目標とした、ロシアが「特別軍事作戦(SMO)」と呼ぶ侵攻が開始されました。

しばらくの間は、ウクライナとロシア両軍の戦闘団単位の大きな戦闘が行なわれることはなく、戦術としてはロシアが大兵力を用い、ウクライナは小規模兵力単位でゲリラ戦的な戦いを挑む非対称戦であったといえます。

ロシアの犠牲が最も大きかった時期はこの緒戦であり、ウクライナに供与された西側諸国の精巧な武器でロシアの戦闘車両が次々と破壊されました。

双方の犠牲が多大になり、核を用いた大戦争への発展も危惧された開戦1カ月後の3月末、トルコやイスラエルの仲介で休戦合意がまとめられてロシア・ウクライナ双方が合意に達します。しかし、当時のウクライナ軍の善戦に加え、今後の経済制裁などの総合効果で「勝利」を期待した米欧諸国は、一度成立した和平合意を潰しました。

しかも、ロシアが首都キエフ近郊から撤退した後に発見された多数の市民の遺体を「ロシアによる虐殺」として「ロシア悪玉説」を叫び、徹底抗戦が主導されます。

ロシアは一度撤退した後、東部・南部戦線を構築しなおし、9月には予備役の部分動員をかけて兵力増強を図ります。この時期からロシアは戦時経済体制に移行し、非対称戦から総力戦として、経済も24時間体制で砲弾や軍備生産に切り替え、戦術も変更されていきます。

以下に、この2年間で変化・確認された戦術・用兵思想の例を挙げます。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n301e7bc5aa8d

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年7月号

『紙の爆弾』2024年 7月号

植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制
大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの
「食料・農業・農村基本法」改悪「食料自給率」を捨てた農水省の愚 高野孟
感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制 高橋清隆
ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか 青柳貞一郎
国会答弁もアメリカ製AI利用に マイクロソフトに乗っ取られた日本政府のAI構想 浜田和幸
送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ! 広瀬隆
静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか 横田一
自衛隊指揮権を米軍に委譲 日米一体化きわまる中で“日本人”を問い直す 木村三浩
公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由 足立昌勝
本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 浅野健一
米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
続・失言バカ政治家の傾向と対策 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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東京都知事選挙では、予想外の石丸伸二さんの善戦が伝えられる前は、「小池百合子VS蓮舫」の女性対決とも言われていました。また、男性ではもっと有力候補とされる石丸伸二さんも急進的なLGBT推進派でもいらっしゃいます。

安芸高田市長時代には、マイノリティーへの配慮も理由に婚活事業を廃止しておられます。新自由主義とマイノリティー配慮の交差点が婚活事業廃止ともいえます。ともかく、女性二人と石丸氏が知事選挙の有力候補になる東京都が日本の中では、「進歩的」であるのは間違いありません。

◆「政治」の男女格差は東京が最小、子育て支援も充実

実際に都道府県別の「政治」のジェンダー格差は東京が最小とされています。ちなみに、「教育」は我が広島県が、「行政」は片山前知事や平井知事のご努力で鳥取県が最小です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240410/k10014416491000.html

「経済」は沖縄県が最小ですが、これは失業率が高く、男性が貧しいという、途上国にありがちな実態が反映されており、注意が必要です。また、神奈川や千葉、埼玉、兵庫あたりだと、「政治」の男女格差は小さいが、「経済」格差は大きいのです。これは、大都市近郊で40年近く前から市議や県議等に市民運動経由でインテリ家庭の専業主婦の方が議員になられる構造があったからです。従ってデータの読み方には注意が必要です。

上記のことを留保した上で、確かにそれでも、東京は進んでいると言えます。「小池百合子政権」のもとで、子育て支援策は日本一であるのも間違いはありません。そうしたことも背景に最近では、若い世代では夫婦ともに外資大手で共稼ぎとか、当たり前になっています。 

◆本当に東京は幸せなのか?「大林さん惨殺事件」の渋谷区

ではそれで、万々歳と言えるのでしょうか? ちょっと違うのではないか? 「勝ち組の女性」には日本一良いかもしれないが、そうではない女性にはどうなのか? 極端かもしれないが、三つの「例」を挙げます。

一つは渋谷区のバス停での大林さん惨殺事件です。

2020年11月16日、広島出身の大林さんと言う女性が、渋谷区内のバス停で野宿をしていたところ、近所の資産家の息子でもある男性に惨殺されるという事件が発生しました。そして、この男性も、逮捕後、保釈中の自死と言う形で「獄死」するという二人の命が失われる悲惨な事件となりました。

この渋谷区長は博報堂出身でLGBT推進派としても有名な長谷部健さん。区長与党の会派は女性議員が8人中5人。バリバリのジェンダー平等に見えた。しかし、一方で、野宿者を公園から追い出し、ナイキに開発させるということも進めていた。

また、長谷部区長の博報堂時代の上司は副区長としてDX行政などでマスコミに天まで持ち上げられていたが、国民民主党の女性区議に対して、「豚呼ばわり」する事件を起こし、辞任しました。また長谷部区長も任命責任は取らない、としました。
ちなみに、この長谷部区長と親しく、連携事業をやっているのが湯崎英彦・広島県知事です。

なお、長谷部区長は、都内首長による小池百合子知事への出馬要請の動きには加わっておられません。背景には、小池知事のバックの電通と、長谷部区長の出身の博報堂の競合がある、とみるべきでしょう。

新自由主義者同士でも喧嘩があるのは不思議ではなく、2010年に湯崎英彦知事が当時は大阪府知事の橋下徹さんと育休を巡り、大喧嘩になったのは有名です。

ちなみに、「渋谷区で石丸氏がトップ」と言う情報もありますが、分かる気はします。新自由主義兼LGBT推進と言う長谷部区長を選んだ渋谷区民が石丸氏に流れてもおかしくはないからです。

とにかく、新自由主義を進めつつのジェンダー平等。これが東京の主流の特徴です。そこでは、確かに、勝ち組とか、権力者(長谷部区長ら)に都合がよい女性には良いかもしれない。

しかし、権力者に都合が悪い女性(豚呼ばわり事件の国民民主党区議など)や、庶民の女性には冷酷な面があることも見落とせないわけです。大林さん惨殺の背景に、そういう雰囲気があったのではないかとは言えます。被疑者の男性が裁判の結果を待たずに自死したのも、いかにも新自由主義的な結末です。

◆サービス充実の裏で非正規は使い捨て

もう一つは何度か取り上げている小池政権による「スクールカウンセラー」(SC)の雇止めです。校長先生や保護者の評判がいいSCまで雇止め。そして、公募に応募させ、試験を受けさせたうえで不合格。子どもたちにも衝撃が走っています。

結局、子育て支援と言いながら、子どもに関わる労働者は使い捨て。それも非正規で、ということだ。蓮舫候補が、専門職非正規公務員の正規化を掲げているが、その公約自体は大賛成だ。

(※わたしは、立憲民主党そのものに対しては広島県政での知事ベッタリや、楾先生梯子外し事件を含めて厳しい見方をしているし、蓮舫氏には小池氏とあまり変わらない新自由主義グローバリストだった過去を反省していただきたい。)

◆就職氷河期の女性にも冷たい雰囲気

そして、三番目は、あくまでX上で紹介された民間企業での事例です。ある企業に、氷河期世代の女性が応募してこられました。それなりの有名大学卒業で、ITのスキルもあるのだが、就職氷河期にぶちあたって、非正規の時期も長かった。また、出産に伴い、退職していた時期もあった。

面接官側の30代の男性中間管理職は、「え、なぜ、出産で、退職しないといけないのですか? うちなんか、俺も保育園の送り迎えや家事をやって、妻と共稼ぎですけど。出産で辞めたということは能力がないのでは?」などという趣旨の採用に後ろ向きの発言をし、スレ主の女性管理職にたしなめられたそうです。

いまの30代くらいなら、たしかに小池百合子政権による手厚い支援もあるし、夫である男性の意識もだいぶ違います。しかし、少し前、すなわち10年近く前までは「保育園不足」が言われていました。また、縦の物も横にしないような男性も少なくなかった時代です。やむなく、退職と言う女性もまだ多かったことを知らない若手中間管理職が、氷河期世代の女性の応募者に対応しているのです。その結果、氷河期世代の女性が疎外されるということも起きています。

また、氷河期世代の場合は結婚していないというか、できなかった人も男女問わず多いのです。子育て重視の一方で、そういう人たちが疎外される可能性も今後懸念されます。

◆勝ち組女性で圧倒的な支持の小池氏に対抗するには?

小池氏は、30代の女性で圧倒的な支持があるという。あれだけ子育て世帯にばらまけば、特に勝ち組の30代女性での支持は鉄板どころか劣化ウラン装甲並みになるのはやむを得ません。

しかし、では、40代、50代の女性はどうでしょうか? さらに年配の女性はどうでしょうか?特に非正規雇用で使い捨てにされる女性はどうか? 高齢でも低年金などで働かざるを得ない人もいまや男女問わず多いのです。

人生は子ども時代だけではない。そういう意味で蓮舫氏が、「非正規労働者」に着目したのは良い。

もちろん、過去の蓮舫氏や立憲民主党の新自由主義的姿勢がブーメランで突き刺さってしまうのも事実です。広島県民である筆者は「立憲民主党さん! 広島では自民党の一部議員以上に、湯崎知事ベッタリなのですが?」と突っ込みを入れたいくらいです。

それでも、蓮舫氏・立憲民主党は「非正規労働者」に光を当てる姿勢をブレさせるべきではない。他方で、「若者」にばかり拘り過ぎると、他の年代を取りこぼすことにもなりかねず、もったいないでしょう。

「非正規労働者」は若者だけにあらず、氷河期世代もいれば、高齢者(いわゆるバブル世代もだんだん高齢者に突入しつつある)もいる。また、今となっては厳しいのは非正規だけではもはやありません。正社員でも食料配布に並ぶ時代です。

このままの情勢だと、そうした人たちが小池氏に行かなくても例えば威勢がいい石丸氏に賭けてみよう、ということになるかもしれません。

昔、大阪で、非正規労働者が橋下さんに結構期待したことが思い出されます。筆者はそれを懸念しています。非正規の若者に光をあてたのは良かったので、今後、幅広い世代の現場を地味に支える労働者をおきざりにしない、そういう雰囲気を醸し出せるかどうか。都知事選の終盤を左右するでしょうし、今後の日本社会も左右するでしょう。


◎[参考動画]首都決戦始まる!スウェーデン並みの予算規模「巨大都市東京」の“2重の長”都知事が持つ絶大な権力とは…【サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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筆者は、広島県福山市に1975年11月12日に生まれたあと、3週間ほどで東京へ両親とともに移動。大学卒業までを東京で過ごしました。東京は事実上の故郷です。その東京での都知事選挙が6月20日告示されました。

現職の小池百合子さん(自民、公明、国民都連、都民ファースト、連合東京支援)に20年間参院議員を務めた蓮舫さん(立憲、共産、社民支援)、そして筆者の現在の地元の広島県内から殴り込んだ前安芸高田市長・石丸伸二さん、現在は災害ボランティア活動で活躍するタレントの清水国明さん、10年ぶりに都知事選に挑む田母神閣下こと田母神俊雄さんらが挑む構図になった。また、ある政治団体が広告目的で立候補者数の過半数を占める候補を擁立しています。

告示日の前日の小池・蓮舫・石丸・田母神の4人の公開討論会や、これまでの各候補のご主張などを総合的に拝見し、以下のような感想を筆者は抱いています。

今回の都知事選挙の経済政策的な対立軸は以下にあるではないか?と考えます。

「新自由主義グローバリズムを進めつつ、都民サービス充実」を重視する小池都政の路線(平成を象徴する路線)
 vs
「新自由主義グローバリズムを見直しつつ、サービス提供に従事する人・地元中小企業に配慮」する路線

◆「東京一極集中」の富を原資とした小池都政の「豊かなサービス」

最近の都知事は基本的に全国で最も豊かな財政をバックに、大型開発を含む「サービス充実」の道を驀進してきました。21世紀に入り、特に小泉・竹中政権(2001-2006)以降、東京の大手企業に富が集中するような政治が進められてきました。他の地方自治体が四苦八苦する中で、東京都は豊かな税収をバックに、子育て支援や大型開発をやるだけの余裕がありました。

小池知事は、国会議員時代は、いわば新自由主義グローバリストの「青年将校」でした。日本新党、新進党→自由党(小沢一郎さん)→保守党(二階さん)→自民党(小泉さん)と所属する政党や政治の師匠を変えてきました。その時その時の師匠は、各時点で最も新自由主義グローバリズムを進める方でした。その時その時で、自民党本流よりも右から新自由主義グローバリズムを煽ってきたのです。

なお、小沢一郎さんは、30年前はまさに、海外派兵推進(そのために、アジア諸国にはきちんと謝る)&新自由主義のチャンピオンでしたが、のちに民主党内で横路グループと組んだ際に、大幅に社民主義寄りに路線を修正しています。(※若い方の中にはそのことをご存じない方もおられるので、念のため注記しておきます。)

そうして、東京への富の集中に加担した上で、2016年、小池さんは都知事に転進されたのです。その小池百合子知事は、今回の都知事選挙でも無痛分娩補助や第一子からの保育料無料化などを掲げています。

おおざっぱに言えば、新自由主義グローバリズムで東京に集中した富を子育て世帯を中心にばらまいていく、というのが「小池モデル」と言えるでしょう。これは東京だからできること。広島では新自由主義グローバリズムの下で富も人口も流出していますのでこれはとうてい不可能なモデルです。

この小池モデルの問題は、一つは、地方との格差の拡大です。しかし、これは、小池さんが主に小泉政権の目玉閣僚として在籍した国会と霞が関がつくった問題です。その是正は、国政に委ねられるべきでしょう。

国が大幅な再分配強化政策、例えば、大金持ちの資産所得への課税強化、儲かっている大手企業への適切な課税を行う。その一方で、農業など第一次産業の所得保障・価格保障や、地方における公共交通や医療など公共サービスの維持への投資などでしょう。

あるいは、ドイツを見習った中央省庁の地方への移転も、文化庁の京都移転以外でもガンガン進める(官僚の国会答弁はオンラインも可能にするなどいくらでも工夫は出来るだろう)くらいしないと解決は難しいでしょう。

石丸伸二さんが当初言っておられたような「東京を壊す」では、東京都民も広島など地方の住民も不幸せになり、日本全体が壊れて終り、になりかねません。

◆小池知事の大罪 ── 国政・都政通じて非正規増加の先頭に立ってきた「女帝」

もう一つの小池モデルの問題は、現場労働者が割を食ってきた、という点です。

1990年代以降、子育てや高齢化、さらには格差の拡大の中で、人々の悩みは複雑化、多様化しています。介護の問題一つをとっても、いわゆる老老介護から、いまはヤングケアラー・若者ケアラー、ビジネスケアラー、老障介護……。そうした中で、行政需要も爆増しています。もちろん、ITやAIの活用で削減できる手間もあるのはあるのですが、しかし、IT化が進めば、窓口がリアルだけだった時代より人々が気軽に相談に来る(それが悪いこととは言えない)など仕事を増やす面もあるのです。

一方で、小池さんが先頭に立って国政で進めてきた新自由主義グローバリズムの中で、労働者虐待政治とでもいうべき政治が進んできた。民間では日経連(当時)の「新時代の日本的経営」により、非正規雇用が増大。日本の大手企業は新機軸を打ち出すよりも、非正規を増やすことで、コストをカットする方向に走ってしまい、競争力を低下させて現在に至っています。

一方、公共分野では、正規公務員を減らしていく路線が強行されました。広島県の場合は市町村合併を口実に公務員削減が強行されました。それは実際には東京においても、変わりません。行政需要が増えているのに正規公務員を減らしたので、非正規公務員を増やすという結果になります。

特に専門性が高い分野の公務員、すなわちスクールカウンセラーや図書館司書、女性相談員、介護や福祉、医療など幅広い分野で非正規公務員が多くなっています。

◆小池都政の冷酷 ── スクールカウンセラー(SC)大量雇止め 

2020年度からは非正規公務員の待遇を改善すると称して「会計年度任用職員」制度が導入され、退職金やボーナスが支給されるという触れ込みでした。ところが、現実には、いままでは、毎年更新されていたのが3年、4年で雇止めというケースも発生しています。

すなわち、現職の方も一度全員クビになり、公募に応募しないといけないということになったのです。総務省は実際にはそれは義務ではない、と言っています。しかし、各自治体はそういう制度の運用の仕方をしてしまっています。

東京都でもこの2024年3月末、公立学校のスクールカウンセラー(SC)が大量に雇止めされるという事件が起きました。勤務先の校長や先生方、生徒らの評価も良いSCも大量に首になり、大混乱です。こんな状況を招いたA級戦犯は小池知事その人に他なりません。

もちろん、小池の都政の無痛分娩補助や保育園無料化は筆者も大賛成です。しかし、財政が豊かであるなら、それこそ、SCを短時間正規公務員にするとか「も」すべきではないでしょうか?

◆「勝ち組」子育て世帯には良いけれど、「若者」含むサービス提供労働者には冷たい「小池モデル」

総じて、小池都政は、「勝ち組」ないし「中の上」より上の子育て世帯にとってはありがたい都政です。米国や中国の外資、東京都との癒着が指摘される三井不動産など超大手企業などに勤務する夫婦共働き世帯。あるいは、都庁などの正規公務員の夫婦共働き世帯。このあたりまでは、小池都政の恩恵は大きいかもしれません。小池都政が、グローバリストと「連合」の連立政権である以上、そうなるといえばそうかもしれません。

しかし、現場で必死に低賃金・重労働で、介護や福祉、保育、教育などを支える労働者にとっては、小池都政は冷たいとあまりも冷たいと言わざるを得ない。非正規公務員の就職氷河期世代の中には、結婚をあきらめてしまった方も多い。その結果としての出生率「0.99」です。

また、子どもたちにとっても、身近に見る大人である学校や保育園の先生、SCの方々が希望を持てない働き方だったら将来に希望を持てるでしょうか? 貧困対策も不十分です。民間団体の食糧支援に長蛇の列ができるという東京。決して「豊か」とはいえません。

しかも、そこに並んでいるのは、大昔のような野宿者とか失業者が並んでいるイメージとは全く違う。いまや、ごく普通の会社員とか、子育て世帯とか、そういう方が並ぶようになっているのです。

いわゆる子育て支援単体だけは、全国でも異常に充実している東京。しかし、他のことが相対的におろそかになってはいないか? 特に、現場で低賃金・重労働の若者を中心とする労働者に冷たすぎたことのつけが出ていないか?

その結果として、将来の行政サービスの安定的な供給、社会の持続性に赤信号がともっていないか?そのことは、いわゆる「勝ち組」や大手企業正社員・正規公務員共働きなど「中の上」の皆様にもご理解いただきたいのです。

◆蓮舫候補は過去の新自由主義路線の猛省を!

筆者は、蓮舫さんには何度かお会いしたことはあります。同じ候補者を応援するために事務所や広島の街頭に来られた蓮舫氏と握手(最近ではグータッチ)もさせていただいたことはあります。

ただ、蓮舫さんのこれまでの路線は、小池知事に近い「新自由主義グローバリスト」であるという認識です。それも、小池知事のような主体的なそれではなく、立憲民主党に多い「無自覚な新自由主義グローバリスト」ではないか、という思いが強い。

蓮舫氏のようなリベラル派でも新自由主義を進めてしまった人は多くおられるし、広島県政、市政では、それこそ新自由主義の知事や市長を国政ではリベラルと言われる政党の方が持ち上げて、広島維新の会や一部自民党議員などの方がやや距離を置いているありさまです。

そして、そもそも、立憲民主党におられる皆様も小池氏が「排除します」と言うまでは『希望の党』に行く気満々だったことも筆者は忘れていません。この点は、反省していただきたい。

また、立憲民主党さんについては、筆者の盟友である楾大樹先生の梯子を外したという事件のイメージが強く好きになれません。(※詳しくは「茶番選挙 仁義なき候補者選考」をご参照ください。)

◆蓮舫候補の公約=「非正規公務員の順次正規化」「公契約条例」には大賛成

それでも、蓮舫さんの今回の公約に注目したい点はある。一つは「非正規公務員の順次正規化」です。これについては大賛成です。うまく、労働組合の話も聞きながら、制度設計を進めていただきたい。

インターネットでは「公務員試験を受けない者を正規にするのは何事か?!」と蓮舫氏へのアンチのコメントも多くあります。しかし、公務員試験を受けて行政職のえらい人になった人が、では、非正規公務員がしている仕事をできるのでしょうか?

現実に他府県では、災害の時、非正規公務員の方は招集に応じる義務はないので行政職のえらい人だけで災害弱者に対応しますが、えらい人が訳が分からず右往左往してしまった、ということも起きています。現に非正規公務員として働いている専門職の方を優先的に、正規への採用試験(社会人枠)を受けていただく、など制度設計はいろいろしようがあります。今は、役所も昔のような新卒一括採用ではもはやないのですから。

また、蓮舫氏が掲げている「公契約条例」、すなわち、若者がきちんと暮らしていけるように給料をアップすることを都庁の取引先の企業に義務付ける条例も良いと思います。都が、中小企業からきちんとした価格で財やサービス(公共工事も含む)を購入し、企業が若者にきちんとした給料を払う。そういう好循環をつくるべきです。

ここ20~30年、あまりにも行政に関する議論はコストカットに偏りすぎました。経済循環と言う視点が疎かにされたのも大問題です。ただ、これについても、蓮舫氏を含む立憲民主党さんは猛省していただきたい。一時期は自民党以上に、コストカットにこだわったのが民主党~立憲民主党の流れですから。

ただし、過度に「若者」を強調するのもどうかと思う。「中堅世代、シニア世代も含めて現場で働いている人が虐待されている状態であるのを救う。それにより、持続可能で子どもたちも機能が持てる東京を造る」くらいの感じのことをうまく強調された方が良いとは思います。

◆石丸伸二候補は「遅れてやってきた小池」=グローバリストの「青年将校」

さて、前安芸高田市長の石丸伸二さんも都知事選挙に立候補。それなりの支持を集めているというデータもあります。

石丸さんは当初は「東京を壊すことで東京と地方の格差を是正する」という方向性を強く打ち出しておられました。ただ、19日の共同記者会見を拝聴する限り、それはさすがに引っ込めたようです。そのかわり、「政治屋の一掃」ということを掲げられました。ただ、これも注意しないといけない。新自由主義政治家が、人気取りのためにこういうことを言いだすケースが過去に多かったからです。

90年代~00年代は「公務員を打倒」が人気取りのメインでしたが、最近では、「政治家の打倒」「老害の打倒」がウケる傾向があります。そのメインは議員定数の削減です。

石丸さんは安芸高田市長時代に議員定数の半減案を提出し、否決されたことがあります。しかし、現実には定数を減らすと有利になるのは、政策能力がなくても地盤だけは強い、いわゆる腐った議員のほうです。

まともな議員で地盤が弱い人は定数が減ると落選してしまう。そういう傾向があります。もし、都議会で定数を半減したりすればどうなるか? おそらく、地盤が固い議員だけが当選してしまう。政策能力があって志がある人が入り込もうにも、当選は難しくなるでしょう。

そうすると、ますます議会構成は固定化される。議会構成が固定化されるということは意思決定過程、分配が固定化されるということであり、ひいては階層が固定化、格差が拡大するということです。

また、議員は本来、行政をチェックする機能があります。それを減らすということは、行政へのチェック機能を減らすということです。供託金の廃止、大幅引き下げとかで庶民が参入しやすくするという改革なら賛成できますが、石丸さんのような議員定数半減、ではますます庶民から政治は遠のきます。

また、石丸伸二さんが広島県内で大問題となっている産廃処分場問題について、率先して規制に乗り出したということは寡聞にして知りません。この点でも、石丸さんが庶民の味方だと思っている方は認識を改めていただきたい。

むしろ石丸さんは「老害叩き」で溜飲を下げてもらって票を取り、新自由主義グローバリズムを煽る青年将校だと思います。小池氏以上に危険な面もある。ただ、石丸さんが立候補したことで新自由主義グローバリズム票が小池氏から削られ、蓮舫氏が有利になることもあり得るとは思います。

◆「平成」「ポストモダン」が終わるか?

小池百合子さんは、ある意味「平成」を代表するカメレオンな政治家だとも言えます。

グローバリズムを進めつつ、いわゆるジェンダー平等や子育て支援単体は推進。しかし、現場労働者は使い捨て。関東大震災で虐殺された朝鮮人慰霊祭への式辞は中止する一方で、米中などの超大金持ちにはゴマをする。新自由主義グローバリズムとある種の多様性尊重、一方でタカ派路線の組み合わせ。

そうした「平成」「ポストモダン」が終わるかどうか。それが注目される都知事選挙だと思います。


◎[参考動画]玉川徹、都知事選の候補者を直接取材…なぜ立候補?現職との違いは? それぞれの主張【羽鳥慎一モーニングショー】(ANN 2024年6月19日)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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