G7広島サミットから1年が経過した2024年5月19日、広島県の湯崎英彦知事が原爆資料館北側に建設していたG7広島サミット記念コーナーが完成しました。

しかし、この日、サミットに参加し、「核のない世界を目指す」と原爆資料館で記帳したバイデン大統領が14日に三度目の未臨界核実験を強行していたことが発覚。原爆資料館の「平和監視時計」が記念コーナー会館とほぼ同時刻にリセットされてしまいました(撮影は核実験実施後8日後の早朝)。

[左]原爆資料館北側にできたG7広島サミット記念コーナー/[右]原爆資料館の「平和監視時計」(撮影は核実験実施後8日後の早朝)

世界で最初に戦争で被爆した広島は、いまや、世界で最初で最後に核兵器を使った上に、ろくに反省も謝罪もしない米国に完全に舐められています。

結論から申し上げます。広島市長と広島県知事、そして爆心地選出の代議士としての岸田総理は核実験に抗議するとともに、世界で最初で最後に核兵器を使った米国に謝罪と反省を要求すべきです。

松井市長や湯崎知事は、平和宣言やあいさつでそのことに言及すべきです。

◆米国に譲歩を重ねた上にこけにされた広島

そもそも、G7広島サミット自体が、広島が大幅に譲歩したものと言って良いのではないでしょうか?同サミットで採択された「広島ビジョン」自体が、核兵器禁止条約はおろか、核兵器による先制攻撃禁止にすら言及せず、ロシアのによる核威嚇は批判しつつも、米国による核攻撃は批判すらせず、それどころか、米国の核保有を防衛目的と正当化するしろものでした。

それでも核兵器のない世界につながれば、ということで、湯崎英彦知事も松井市長ももろ手を挙げてサミットに期待してしまいました。そして、広島市の平和教材から「はだしのゲン」や「第五福竜丸」を削除するなど米国に忖度する動きも強めました。

また、広島市はサミット後には米国政府からの要求を受け入れ、平和公園とパールハーバーの姉妹協定を締結しました。繰り返しますが、原爆投下=世界で最初の核兵器使用=の加害者で今まで反省も謝罪もない米国政府と広島市が組む、と言うこと自体、屈辱的な譲歩ではないでしょうか?

また、サミット直前の広島県議選2023では、本社社主・さとうしゅういち以外の県議候補は自民から共産まで、ほぼ全員がマスコミや市民団体の候補アンケートに対して「G7広島サミットに期待する」「G7広島サミット誘致を評価する」などと回答してしまいました。さとうしゅういちは、もちろん「期待しない」「評価しない」と回答しました。

そもそも、G7サミット自体が米英仏独伊といった旧白人帝国主義国ともいえる国々で構成されています。そうした会議に何を期待するのでしょうか?しかし、藁をもつかむ思いで期待してしまった方々も多い。だが、残念ながら、広島は米国に譲歩に譲歩を重ねた上、いわば、コケにされたのです。

◆最初で最後に「核」を使った米国の謝罪・反省無くして露中朝批判に説得力なし

2024年現在、世界で最初で最後に核兵器を使った国は米国です。最初に広島、最後に長崎です。

これは動かせない歴史的事実です。しかし、その米国は核兵器使用について反省も謝罪もしていません。その米国を広島市は平和式典に呼んでいます。一方で、広島市の松井市長はロシアが核で威嚇したことを理由に、2022年から三年連続で平和式典から排除しています。この対応は説明がつくのでしょうか? あるいは、朝鮮や中国の軍拡への批判がどれだけ、説得力を持つでしょうか?

米国内や日本国内ならともかく、グローバルサウス諸国の人たちを説得できるように思えません。

また、日本国政府が原爆への謝罪や反省を要求してこなかったことは米国政府にとり「成功体験」になってしまったのではないでしょうか?

そのこと背景に、米国政府は例えばイラク戦争などの侵略戦争を行っているのではないか?

あるいは、イスラエルによるパレスチナ虐殺を全面的に応援するなどしているのではないでしょうか?

ちなみに大日本帝国政府は1945年8月10日に米国政府に対して原爆投下について国際法違反だと抗議しています。しかし、日本国になってからはそういうことはまったくしていません。司法で言えば地裁レベルでNHK朝ドラ「虎に翼」のモデルで有名になった三淵嘉子・東京地裁判事(当時)が1963年に「原爆投下は国際法違反」という判決を出してはいます。しかし、それが政府の政策を変えることにはなっていません。

◆“We American never repeat wrongs “言わせずに8.6に米国政府呼ぶ意味なし

もちろん、今まで、広島市の平和行政、あるいは一部の例外は除いて平和運動団体などの先輩方も被爆者の「自分たちと同じ思いをする人を二度と出したくない」という思いを原点に米国政府への謝罪や反省はぐっとこらえて来られました。それはそれで当時の状況から「あり」だったと思いますし、被爆者でもない筆者があれこれ申し上げる筋合いのものでもありません。

しかし、最近の米国政府の増長ぶりは目に余ります。結果論ですが、長年にわたり、米国政府に対して謝罪や反省要求が弱かったことが響いていますし、松井市長や湯崎知事のすり寄りがそれに拍車をかけてしまったのではないでしょうか?

“We American never repeat wrongs“
(我々米国人はあやまちは繰り返しません)

8月6日にどうせ米国を招くなら、これくらいのことを原爆慰霊碑の前で米国政府の代表に8月6日に言わせようではありませんか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

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タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号お得)。

ここでは6月号の注目記事2本の一部を紹介します。

◆「大阪カジノIR」の真のリスク 水原一平事件の語られざる本質
 取材・文◎片岡 亮(ジャーナリスト)

 

 

2021年11月のある日、名古屋市の中心部に位置する高級ホテルのロビー。シャンデリアに照らされた大理石の床を歩いていたイベントプロデューサーを名乗る40代後半の男が、待ち合わせした女性に見せたのは、当時就任したばかりの岸田文雄首相とのツーショットだった。

高価そうなスーツや腕時計を身に着けた派手な外見とは裏腹に、男の詳しい経歴は不明で、インターネットにも会社名や本人の名前は見つからない。今どき特異な人物だが、自信に満ちた態度でバッグから何枚もの写真を取り出しながら、首相のみならず、今上天皇や著名な実業家、芸能タレントなどとの親交を自慢した。

「ビジネスは信用が大事ですよ。僕はホームページを作ったり、フェイスブックに写真を載せたりといった薄っぺらいことはしません。でも、首相が会ってくれるのは、僕自身に信用があるからです」

誰に対しても同じセリフを口にしているのだろう。そんな男が売り込んだのは、自らが開発に関わったという仮想通貨Lだ。

「今は、価値はありません。でも、この通貨が未来を切り拓くカギです。ほかの通貨とは別次元で、革命的な技術があります。私たちは先駆者で、社会に革命を起こす存在となります。ただの投資なら、こうして一人ひとりと会ったりしません。未来を一緒に作る仲間を集めているからです」

女性は男とのやりとりを録音しており、こうしたセリフが残っていた。

その二カ月後、60円でスタートした仮想通貨Lは、翌月に516円になり、40万円分を買った女性は300万円以上で換金できた。しかし、その後は価値が下落。0.2円前後を推移するまでになり、仮想通貨全体の7割を占める「一年以内の短命」のひとつになったと思われた。

しかし、今年1月31日から少し値動きが見られた。利益を得られるほどではないが、購入者が出てきたのである。同時に、先の男が肩書きを「芸能プロ社長」に変え、再びLを勧め歩くようになった。

3月、男が主催者となって愛知県内で行なわれたショーイベントは、かなり奇妙なものだった。ろくに告知もされないまま、まったく無名のラップグループや歌手が、まるで人気アーティストのように紹介されて歌やダンスを披露。MC役の男性は「盛り上がってますかぁ!」と叫び、出演者の交代の合間には、職業不詳の高齢の男女集団がマイク前に並んでコーナー紹介をしていた。

およそ900名収容の会場の7割ほどを埋めた客層は、とても音楽や演出にマッチしない中高年が主体。いかにも慣れない様子で手拍子しつつ、MCの誘導に素直に従って立ち上がったり、両手を挙げたりしていた。実は彼らこそ、無料招待された仮想通貨Lの購入者たちだった。

つまり、イベント自体は収益を得るためのものではないということだ。イベントを手伝った関係者はこう言った。

「本業である仮想通貨の収益の節税対策らしいです。グレーゾーンな収益なので、マネーロンダリングにしているそうですよ。タレントに高いギャラを払ったことにしたり、チケットが全部売れたことにしたりしています」

刷られてもいないチケットは額面が1枚5万円。900人で満員としたなら4500万円となる。

そして、仮想通貨Lの問題は、その売り文句にある。男は「将来、カジノが合法化される時に、オンラインカジノでもLを使って遊べるようにするので何百倍もの価値を持つ。それまで静かに黙って持っておいてほしい」と購入者に説明していたのだ。

2016年にIR(統合型リゾート)推進法、いわゆる「カジノ法」が成立し、国家事業となった。だからこそ、首相との写真も営業の武器になったわけだ。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n883499cc6a7f

◆日本の冤罪〈50〉北方事件 たった一人の支援者が明かす「連続殺人事件」の深層
 取材・文◎片岡 健(ジャーナリスト)

 

 

1980年代に佐賀県で起きた「北方(きたがた)事件」は、3人の女性を殺害した嫌疑をかけられた男性が裁判で検察に死刑を求刑されながら、無罪が確定した重大な冤罪事件だ。公判では、警察のとんでもない違法捜査も判明している。

だが、重大性のわりに、冤罪事件としてはあまり有名ではなく、「犯人が捕まっていない未解決事件」として語られることが多い。無罪が確定した男性が公の場で冤罪被害の経験をほとんど語ってこなかったためだ。

この特異な冤罪事件について、「警察は面子のため、無実の人を死刑台に送ろうとしたのです。本当に恐ろしいことです」と証言する人がいる。

事件の舞台となった北方町(現・武雄市)で町議を7期務めた田崎以公夫さん(92歳)だ。田崎さんは男性の「たった一人の支援者」として奔走し、男性を冤罪から救った人で、事件の一部始終を知る人でもある。

今回は田崎さんの証言に基づき、「北方事件」の顛末を紹介したい。この事件の深層を知れば、世の中には、まだ知られていない酷い冤罪があることを改めて実感していただけると思う。

 時効成立直前の「劇的な逮捕」だったが……

佐賀県の中央部に位置する旧北方町は、人口が1万人に満たない小さな町だった。ここであっと驚く大事件が起きたのは35年ほど前に遡る。

「林に白い服を来た女性の死体が捨てられているのですが……」

1989年1月27日夕方、そんな110番通報をしたのは佐賀県内の夫婦だった。夫婦は、JR佐世保線北方駅から2キロ余りの山道脇で仏壇に供える花を摘んでいた際、北方町内の雑木林に横たわる女性の遺体を見つけたのだった。

所轄の佐賀県警大町署(現・白石署)の捜査員たちが現地に臨場すると、事案は想像よりはるかに重大だった。雑木林から女性の遺体が、ほかにも2体見つかったのだ。連続殺人事件とみた佐賀県警は、ただちに大町署に150人態勢の捜査本部を設置した。

そして翌々日までに3人の被害者は全員、失踪していた近隣の女性だと判明したが、ある奇妙な共通点があった。

①藤瀬澄子さん 武雄町(現・武雄市)の料亭従業員。87年7月8日(水)の夜に同僚との外食後に失踪。失踪時48歳。

②中島清美さん 北方町の主婦。88年12月7日(水)夜にミニバレーの練習に出かけ失踪。失踪時50歳。

③吉野タツ代さん 北方町の会社員。89年1月25日(水)夜に自宅から外出後に失踪。失踪時37歳。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nb6176caaa94c

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

『紙の爆弾』2024年 6月号

岸田訪米の能天気は害悪だ!アメリカが狙うアジアの一兆ドル海洋資源
次期戦闘機の第三国輸出解禁 日本を「兵器産業国家」にする公明・創価学会の“貢献”
【特集】隠蔽される「健康被害」

TSMCが熊本の水を殺す半導体工場のPFAS汚染
がんを引き起こし脳の働きを阻害する遺伝子組換え食品によるこれだけの危険
小林製薬「紅麹問題」で少なくとも言えること
開業延期」ではなく「計画中止」を リニア新幹線「電磁波と白血病」
「議員も記者も排除」で答弁拒否率76% 小池百合子 暴かれた“女帝”の虚像
裏金事件でも自民党で“岸田降ろし”が起きない理由
「大阪カジノIR」の真のリスク 水原一平事件の語られざる本質
一水会50年は、対米自立実現の橋頭堡である
事業者に従業員を監視・排除させる日本版DBS法案の違憲性
“制裁ありき”の駄文判決 岡口基一判事弾劾裁判「多数決で罷免」の異常
ジュリー前社長が手放さないジャニーズファンクラブ巨額の行方
失言バカ政治家の傾向と対策
改憲派2社以外も“軍拡肯定”2025年度中学教科書 防衛省の広報誌化
シリーズ 日本の冤罪50 北方事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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連休中に木寺一孝監督の「正義の行方」を観た。映画は1992年福岡県飯塚市で起きた女児2人の殺害事件(飯塚事件)をめぐって、2006年の死刑決定からわずか2年後に死刑執行された久間三千年さんの妻と弁護団、久間さんを取り調べた当時の警察官、事件を追ってきた地元の西日本新聞の記者たち、三者が事件を振り返りそれぞれ語っていく。

元刑事たちが、カメラの前で堂々と語っていることには結構驚いた。再審請求審で「久間さんは本当に犯人だったのか?」との疑念がふつふつ沸いてるなか「いや、俺たちがやったことは間違いないばい」と訴えなければとの思いもあるのだろう、どの刑事も堂々としている。しかし、何人かの刑事は取材を頑なに断ったという。

西日本新聞は、当時、警察の会見を鵜呑みして「重要参考人浮かぶ」などといち早く久間さん犯人説をスクープしてきた。当時の刑事事件のサブキャップ傍示(かたみ)文昭さんは「一審、二審から腑に落ちないというか、久間が本当に犯人なのか」との思いもあったため、死刑が確定して「ホッとした」という。

徳田靖之弁護士と岩田務弁護士は、死刑確定後、すぐに久間さんに再審を依頼されていたが準備が遅れていた。その間に突然死刑が執行されたことで、取り返しのつかないことをしてしまったと悔やみに悔やみ、再審無罪に向けた必死の取り組みの中で、久間さんが犯人ではなかった可能性を次々と明らかにしていく。

徳田弁護士(左)と岩田弁護士(右)

久間さんの早すぎる死刑執行に元刑事・飯野和明さんも「ほかの死刑囚がまだなのに、久間早かったなあ。率直な気持ちでした」と述べている。久間さんのあまりに早すぎた死刑執行が「自分たちの記事は正しかったのか」と疑念を持つきっかけとなった傍示さんだが、再審請求審には「死刑執行後に再審開始はありえないだろう」と冷めた目でみていた。2014年、再審請求は棄却されたが、裁判所は久間さんを犯人と断定したDNA型鑑定の証拠価値を事実上却下した。

久間さんの鑑定と同じ手法で行われていた足利事件の菅家さんのDNA型鑑定は既に誤っていたとして、菅家さんに無罪判決が下されている。しかし、そのとき久間さんは既に死刑執行されていた。何かを隠すためだったのではないかと疑われるのも当然だ。 

疑念をふつふつと募らせていた西日本新聞の傍示さんは、2017年編集局長に就任、同じ時期スクープ記事を書いた宮崎さんは社会部長に。「この二人ならできるんじゃないか」と傍示さんは飯塚事件の検証キャンペーンを企画する。宮崎さんを中心に、しかし、実際の取材はこの事件に全く関わっていない記者にさせようと、中島さんという編集委員と中原記者を抜擢。

木寺監督はあるインタビューで「観る側に全てをわかってもらう必要はなく、ギリギリわかるところまで情報量を抑え、ジェットコースターのように息もつかせない展開にしよう」と目標を掲げた、と話している。確かに、158分があっという間、なんならもう一回乗ってみたいという感じ。

ネタばれになったらすまないが、ちょっと身震いするシーンを2つ紹介する。

福岡県警・山方(やまがた)泰輔捜査一課長(当時)の無謀な捜査手法が良く表れているシーンだ。逮捕後も一貫して否認を続ける久間さん、一方、二度目のDNA型鑑定は「久間さんのものではない」となった。

 

山方泰輔捜査一課帳(当時)。犯人を追う夢を見てうなされたのか、足を柱にぶつけ生爪が剥がれた

そこで、山方一課長は、ある仕掛けを企てる。実は飯塚市では3年前にも近くで女児アイ子ちゃんが行方不明になっている。その時アイ子ちゃんに最後に会ったのが近所の久間さんだったということで久間さんが疑われた。久間さんは当時、仕事を辞めて家事、子育て、外で働く奥さんの送り迎えなどやっていた。そんな久間さんを「昼間からぶらぶらして」と警察は偏見の目でみていたのではないか。

そこで3年前のアイ子ちゃん事件も久間がやったに違いないと、久間さんをDNA型鑑定と並ぶもうひとつの科学捜査、ポリグラフ(ウソ発見器)にかける。「アイ子ちゃんはどこにいる?」みたいな質問を続けるうち、ある場所で針が激しく動いたという(山方捜査一課長が指でぽーんと針を飛ばしたに違いない)。

警察は「ここに何かある?」と捜索を開始。駆り出された捜査員らは「長時間かかるだろう」と昼飯を持参して山に入ったが、捜査開始からわずか25分でアイ子ちゃんの赤いジャンパーがみつかる。

西日本新聞の宮崎さん「5、6年も置かれていたのに、なぜそんなにきれいな状態で見つかるのかと不思議だった」。

そりゃ、そうだ。袴田事件でみそ漬けにされた衣類と同様、警察がそっと置いてたからだ。現場の雑木林は数キロにわたる広さだが、近くにいた作業員は「捜査員がきてすぐロープが張られた」という。

山方捜査一課長が「ジャンパーはあの辺に置いて。すぐわかるように周囲を囲ってくれたらよかばい」と指示したのだろう。あまりにおそまつだ。

もう1つの戦慄が走る場面。編集局長傍示さんの指示で検証取材にあたる中島さん、中原さんは、女児2人が連れ去られたとされる三叉路で、久間さんの乗っている車と同じ車を見たという目撃証人を必死で探す。

約1年なかなか探せずにいる時、ふらりと寄った喫茶店で、店主に男性の写真をみせる。すると店主が「その人ならつい最近までうちの2階におったよ」という。奇跡だ。そしてその男性に会えることに。

何十年も前の事件、しかも殺人で死刑執行までされた事件で、当時の自分の証言を取材したいといわれ、相手はやんわり拒否するか、覚えてないというのでは……と思っていたら、男性はすんなりと取材に応じてくれた。

中島さんが「なぜ一瞬のことなのに、車種を正確に覚えていたか?」と聞くと、男性は「次にその車を買おうと考えてたから」と答える。それは警察での供述調書にも、法廷の証人尋問でも出ていなかった話だ。なるほどと納得する中島さん。そしてここから更に驚く展開が……。

「何か警察に供述を誘導されたこととかありますか?」と聞いたときだ。「ああ、警官に、車のナンバーに1、6、9があっただろうと何度も言われた」。そして「1は2つあっただろう」とも。久間さんのナンバーは「6112」。2と9が間違っているが、男性が刑事に何度も何度も言われたため、何十年間も記憶していた数字だ。恐ろしい。きっちり久間さんへ誘導しているではないか。

ラストのシーン、元西日本新聞でスクープを書いた宮崎さんが三叉路に立ちながらこう話す。「ペンを持ったお巡りさんになるなとよく言われるんですけど……ペンを持ったお巡りさんでした。死ぬ前に一個何かお願いを聞いてくれるなら、あの朝、何があったのか、巻き戻してみせて欲しい。どっかのカメラが、これが本当だって、30年間巻き戻して」

この三叉路から女児二人がいなくなったことから事件は始まった。昨年11月28日ここで女児らを最後に見たという女性は「目撃したのは別の日だった。警察から強要された」と証言した

西日本新聞の当時のサブキャップ傍示さん、スクープを書いた宮崎記者は、自分たちがどうこの事件を取材してきたか、それは正しかったのかどうかを必死に検証してきた。しかし、久間さんはもう殺された。国と警察と検察と裁判所に。そしてマスコミに。

5月22日の袴田さん裁判後の記者会見、翌日の西山美香さんの国賠後の記者会見に参加した青木恵子さんが「本当につまらない質問ばかりだった」と嘆いていた。私らが暑い中、1時間前から傍聴券の抽選に並んでいるのに、開廷ぎりぎりに法廷に入ってくる一階の記者クラブの記者たち、「涼しいフロアにいましたから」みたいな顔でカーディガン羽織ってたりする。みなさんも「ペンを持ったお巡りさん」なのか?

ということで青木さんが6月5日飯塚事件再審の決定が出る福岡地裁に行くことになり、徳田弁護士、岩田弁護士に拙著『日本の冤罪』をお渡しするというので、昨日会って渡してきた。

もう一度言おう。久間さんはもう殺された。

冤罪被害者の青木恵子さん


◎[参考動画]「飯塚事件」死刑が執行されたいまも多くの謎/映画『正義の行方』予告編(2024/02/05)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

ジャニー喜多川やカウアン君やデヴィ夫人のそれぞれの言動は、それぞれの必然性に基づいて行われたもので、驚嘆するほどの事象ではない。

驚くべきは7月23日に報道された国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の人たちが、この件に関して調査のために来日し、さらにジャニーズ事務所も「再発防止特別チーム」を結成して真相を究明しようとしているというニュースだ。

 

在りし日のジャニー喜多川

再発防止って「加害者」がとっくに死んでいるのに何で再発防止のチェックが必要なのって聞きたいよね。国連もそんなことに人と時間を費やすなら、原発事故の再発防止のためのチェック機関を作ってほしい。

折しもアメリカではスリーマイル島事故後の初の新規原発がジョージア州で営業運転を開始するという。世界中で権力者のやりたい放題による災厄が多くの人民を苦しめている時に、死んだ人間のセクハラ疑惑なんか追求している場合じゃないだろう。

事故が起こらなくても原発で働く作業員は皆被曝していると、定期的に作業員の健康診断を行っていた医師が言っていた。その医師に対して電力会社の社員は診断の結果を絶対にマスコミには知られないようにと忠告したという。また、退職した作業員が1年後に白血病で死んだという話もよく聞かされたそうであるが、そういう事例のチェックは全く行われなかった。

日本の公的機関がそこまでやるとは期待もしていないが、それをやるのが国連ではないかと思う。

無名の作業員たちの生死にかかわる被害より、未成年のお尻の穴の被害の方が大事だろうかと問いたい。

お尻の穴と言えば、先頃鹿砦社から発行されたムック本。『人権と利権』の中で、少々気になる記述があったので書き添えておきたいと思う。

同書は大変に好評で売り切れ間近と聞いているが、編著者の森奈津子さんというバイ・セクシャルの女性と加賀奈々恵さんという埼玉県富士見市議の都の対談。

その中で森さんの次の発言に、つい首をかしげてしまった。

「松岡さんは、やっぱり女性スペースにトランス女性も入れるべきだとおっしゃっているんですけれど、ああいうゲイの方って、ゲイオンリーのイベント、例えばエッチなショーがあったり、あるいはゲイの方々が出会って性的な行為に及ぶハッテン場など、そういうところに『”体が女性のトランス男性”の皆様もどうぞ入ってきてください』とはおっしゃらないんですよね」

(注・ここに記されている「松岡さん」とは、一般社団法人フェアの代表理事の松岡宗嗣という人のことで、鹿砦社の社長、松岡利康とは関係ありません)

「ゲイは女性の体には興味がないので、いくら心が男性だと言っても体が女性の人が入って来られては困る、ということなんですね」

「一方では、ゲイをハッテン場に体が女性のトランス男性を入れないのに、女性にばかり強制をして、おかしいなと思うんです」

筆者は今は亡き『噂の真相』の岡留安則編集長の紹介で、かつて同性愛者に対する差別反対運動のリーダーとして一世を風靡していた「オカマの東郷健」が発行する『ザ・ゲイ』という雑誌の編集を受けおったことがあり、その関係で全国のゲイバーやハッテン場となった映画館を取材したことがあった。

そこでも目撃したことは、ゲイバーにも女性客が度々訪れるという事実、もちろん体が女性のトランス男性もお見えになっていた。

また、ハッテン場として有名なポルノ映画館では女装した男性が大モテで、の周囲には常に大勢のファンが群がっていた。男装した女性に関しても同様。

また、男性とのカップルで女性客も入れる映画館では自分の彼女を全裸にして性交までする男性もいたが、2人の周囲には男たちがスクリーンに背を向けて羨望の眼差しで男女のプレイを鑑賞し、2人が帰る時には「ありがとね。また来てね」と声をかける御仁にもいた。

つまり、彼等の中には本当は女性の方が好きなのに相手に恵まれず、風俗に行く金もないので仕方なくハッテン場に身を寄せている人も多くいるということである。
こういう人たちがトランス男性やトランス女性の参入を拒むということは考えられない。

女性が単独で入場することは許されない映画館も確かにあるが、それは映画館側が警察の介入を恐れてバリアーをはっているだけのことで、そこにたむろするゲイたちが女性を排除してるわけではない。

ハッテン場に集う人たちを統1された理念と美意識で結ばれた集合体だと思ったら大間違いなのだ。このへんは正確に把握してないと、同好諸氏に足元をすくわれる危険がありますのでご注意下さい。

それにしても純粋なハッテン場とも言えるジャニーズ事務所が、はたしてジュニアたちにとって有害な場所だったのか。歴史の査定を待つ他はないが、今なおジャニーズジュニアに熱い声援を送り続けている女性たちの姿に、どうしても原発再稼働を阻止するだけの民意を表明出来ずに流されてしまう大衆の「嫌なことは忘れる」「醜いことから目を背ける」集団心理が重なって見えるのはどうしたものだろうか。

8月4日の国連メンバーによる記者会見では、原発事故の被害者の方々についてのコメントもあったことを忘れなく。

愚か……という言葉を使いたくはない。1970年に「天皇陛下万歳」と叫んで自決した三島由紀夫の気持ちが判る。それがパロディーであるのなら、幾らでも叫んでいいだろう。ジャニーズよ、永遠なれ、と。

結局それは滅びの美学なのかもしれない。確かに男が皆ゲイになったら、その民族は滅びるしかないのだから。

笑える。

板坂 剛 ジャニーズよ 永遠なれ(全3回)
〈1〉死して尚、放たれる威光
〈2〉「性加害」という表現への疑問
〈3〉真に許されない愚かしさとは

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

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筆者は5月11日、広島県府中市で「男女共同参画について思うこと」と題して講演させていただきました。

筆者も一員であるひろしま女性大学福山校同窓会の総会記念講演としてさせていただいたものです。

講演する筆者。ちょっと、硬くなってしまった

ひろしま女性大学は、1988年に設立された財団法人広島県女性会議が女性の地位の向上を目指して、開設したものです。2008年からは男性も含めて受講生が男女共同参画について学び,受講後に社会貢献や地域活動で活躍できるよう学んでいける「エソールひろしま大学」という名称に変わりました。また、財団法人の名称も2013年に広島県男女共同参画財団に変更されました。

筆者はひろしま女性大学の後身の「エソールひろしま大学」応用講座で2008年から2014年、そして、2018年と応用講座を受講させていただきました。かつては、広島校と福山校両方あったのですが、福山校は募集が停止されて久しくなっています。そして、同窓会活動も福山校については2024年度限りで解散ということを伺っております。

今回の参加者は、筆者以外は全員女性で、しかも、大先輩ばかりです。地域で与野党問わず地方議員をされていたり、労働組合の役員や会社を経営されていたり、とご活躍の皆様で、筆者のような若輩者がお話しするのも恐れ多いものがあります。また筆者自身、YouTubeの動画や、街頭演説には慣れていますが、この手の講演は意外と機会が少ないので緊張しました。

「皆様先輩方のご奮闘のおかげで、男女不平等については、随分改善した点は多くある。しかし、一方で、改善が進んでいない問題も多い。あるいは、ここ20年余りの新自由主義グローバリズムの流れなどにより、新たな問題が発生、あるいはいままであった問題が悪化している。わたしたち世代以下の中堅や若手の女性の方が困難に直面していることもあるので、そのことを中心にお話ししたい」と、今回お話ししたいことの趣旨をご紹介しました。

また、自己紹介では「県庁採用試験の面接のため、東京での筆記試験合格後に広島に行き、広島市民球場脇のそごうに行ったらジャイアンツの応援グッズばかりだったのでブチ切れて面接で『広島なのだから地元をもっと応援といけないとおもいます』と生意気を申し上げた」ことをご紹介しました。

その上で、非正規公務員の問題、わたしが勤めている介護現場の問題、そして、広島と東京の行政の問題点を挙げさせていただきました。

◆専門性高い女性を非正規で使い捨て、行政が崩壊の危機

非正規公務員の問題については、以下のことをお話ししました。

従来から法の谷間におかれていたこと。しかし、改善のための制度と期待された会計年度任用職員制度(2000年度開始)により、問題がむしろ悪化した面がある。例えば3~4年で雇止めされるという問題が起きてしまった。

例えば東京都では16年連続勤務してきたスクールカウンセラーが斬られている。わたしたちがピンチになったときにお世話になる行政を担う基幹的な労働者が、専門性が高いにも関わらず女性で非正規が多いという構造的な問題を指摘しました。

また、正規職員が雇止めをちらつかせてハラスメント、と言うことも横行している実態などを、労働組合の役員の経験からお話しさせていただきました。

これらの問題の背景として1990年代後半からの新自由主義グローバリズムで正規職員が減らされる一方で、実際には地方分権や人々のニーズの多様化、複雑化で仕事は増えるため、それを非正規で埋めた、ということをご紹介しました。一方で、正規職員もストレスが実は大きくなり、庄原市では正規職員も採用する脇から辞めていきニュースにもなったことなどをご紹介しました。

◆やりがい搾取も限界 介護の社会化は何処へ?

介護現場については、2002年にわたしが県庁の介護保険担当として雪深い県北部の介護事業所を指導させていただいた時、現場の方の熱意にうたれる一方で監査資料として給料を見せていただき「うわ! 低い! こんなことで日本は大丈夫なのか?!」と衝撃を受け、それが今、現実化している、と振り返りました。

具体例として介護福祉士としていまは現場で働いているが、3人体制でなければいけないのに2人体制が恒常化し、しかも、二人ともピンチヒッターの派遣とアルバイトいう場合もあるということ、春闘2024で他業種の賃上げに介護は後れを取り、さらに新年度から人が辞めていることなどをご紹介しました。

「1990年代に女性運動の先輩方が介護の社会化を叫んで介護保険ができた。しかし、そこで働く労働者は多くが女性で低賃金におかれた。介護の社会化は何処へ行ってしまったのだ?」と問題提起しました。

また、埼玉県ふじみ野市で、渡辺宏被告人が要介護者の母親が亡くなった直後に逆キレしてドクターや介護関係者らを猟銃で殺傷した事件に言及。「渡辺氏の予備軍のようなご家族もおられ、ひやひやすることも多い。こういうハラスメントは介護や医療関係者はやられ損、という声を同僚からもよく聞く。事件が起きたふじみ野市では「地域の医療と介護を守る条例」をつくった。ぜひ、ケア労働者を守ることにも皆様のご協力をいただきたい」とお願いしました。

◆教育水準高く、県内で地道に頑張ってきた地元女性にもっと機会を

続いて、広島県の行政について問題を指摘しました。広島県の男女平等度は全国では20位前後です。最近では女性の幹部も増えてきました。

これについては、「よく見ると、副知事は知事の同一高校同一大学、同じ経産省の後輩。前教育長も県外のお友達ばかり優遇している」と指摘しました。

「広島は全国一、教育の男女平等度は高い。優秀な地元の女性がたくさんおられるのだから地元から選べばよかったのではないか?結局、広島の行政は東京からばかり人を連れてきて、地元の中堅、若手を大事にしない。島根県知事は、42年間、県庁一筋の高卒の女性を副知事にした。こっちのほうが夢はあって良いと思う。地味に地元で頑張ってきた中堅、若手の女性を大事にしたら広島はよくなるのでは?」と知事をバッサリ切りました。

これは、冒頭の自己紹介で「広島市民球場脇のそごうではジャイアンツの応援グッズばかりだったのでブチ切れて面接で『広島なのだから地元をもっと応援といけないとおもいます』と生意気を申し上げた」ことを伏線としています。

◆庶民の女性に冷たい筆者の事実上の故郷・東京

その上で、筆者は、自分自身が小学校から大学まで過ごした東京について「女性が知事を務め、市区町長にも女性が少なくない。様々な指標は進んでいるように見える。しかし、本当に東京は、特に庶民の女性にとって幸せと言えるのか?」という点も問題提起をさせていただきました。

その実例として、湯崎知事ともご懇意の長谷部健・渋谷区政を挙げました。同性パートナーシップは進むなど進歩的に見えるが、長谷部区長の会社員時代の元上司でもある副区長が女性議員について、庁内で聞くに堪えない暴言を吐くという事件を起こし、副区長は辞任したものの、区長は任命責任も取っていないこと。野宿者に冷たい行政を渋谷区が取る中で、コロナ失職していた大林さんと言う女性が、バス停で野宿中に近所の資産家の息子に惨殺され、被疑者も自死するという悲惨な事件も起きるなど、庶民の女性を筆頭に弱者には冷たいのではないか?これは、この20年余りの新自由主義グローバリズムとも大きく関係している、確かに地方のような古臭さはないが、他方で庶民の女性に生きづらい社会になっている、と指摘しました。

◎[参考記事]暴走する「意識高い系」ネオリベ政治の身内贔屓 長谷部健渋谷「博報堂」区政と湯崎英彦広島「リクルート」県政の共通点と意外な接点 

◆教育水準が高い広島の女性、一つ転べば「メーク ヒロシマ グレート アゲイン」

さて、広島県の教育の男女平等度は日本一高いのですが、経済は40位。そして広島県の人口流出は全国でもワーストワンが三年連続続いています。

そのことについて、「広島の教育水準の男女平等度が全国一高いのは良いことで、上手くいかせない(現状は政治や行政、経済が追い付いていない)と活躍機会を求めて県外への人口流出になる」が、「上手くいかせればそれこそ、『メーク ヒロシマ グレート アゲイン』だ」と指摘させていただきました。

また、私の国政レベルでの持論の「ケアが大事になってくるこれから、東大入試や地元で言えば広島大学の入試に家庭科を導入すれば良い。むろん、工学部の一部など例外的に極端に少ない学科で、女性が潰されないために一定の枠を確保するのも良いと思うが、女性枠を無理に作るよりは家庭科が入試科目になる方が女性の合格者は増えるのでは? 将来の日本の政治家の考え方も変わってくるのでは? あと、今は東大にいわゆるケア系は看護学科があるが、もっと保育とか介護系の学部を造るなどしたらいいのでは?」という問題提起もさせていただきました。

わたしのお話しを聞いていただいた諸先輩方からは、
「自分の若い時の熱意を思い出す。頑張らないといけないと思った」
「若い人の問題もよくわかった。どうやってつながっていけばいいのか?」
などのご意見やご感想をいただきました。

今回は、こんな機会を与えていただき、ひろしま女性大学の先輩の皆様には感謝申し上げます。

筆者にとり、連合広島時代の先輩にもあたるK先輩には開催へ向けて大変調整に奔走していただきました。

また、国政与党に属する地方議員でもいらっしゃるO先輩には発表資料の編集などで、お世話になりました。お礼申し上げます。今後も先輩方にご指導をいただきながら頑張っていきたいと思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

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タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号お得)。

ここでは6月号の注目記事3本の一部を紹介します。

◆「議員も記者も排除」で答弁拒否率76% 小池百合子暴かれた”女帝”の虚像
 取材・文◎横田 一(ジャーナリスト)

 

 

女性初の総理大臣への道が再び見えてきた瞬間、学歴詐称疑惑を報じた“文春砲”が直撃、知事三選すら危うくなった――。目まぐるしく展開する“小池劇場”が再び開幕していた。

過去最低の内閣支持率にあえぐ岸田文雄首相と入れ替わるかのように、小池百合子都知事のメディア露出度が急増。国会議員でもないのに上川陽子・外務大臣と並ぶ「女性初の総理大臣候補」と持ち上げられ、電撃辞任して衆院東京15区補選(4月28日投開票)に出馬が取り沙汰されるなど、国政復帰の可能性も囁かれた。

「絵空事ではなさそうだ」と印象づける朝日新聞の記事が出たのが3月12日。八王子市長選(1月21日投開票)から間もない夜に自民党都連会長の萩生田光一氏と小池知事が会食し、「小池氏に対し、今夏の都知事選で3選を目指す場合は支援、また古巣の自民党に復党を望めば、後押しする考えも示したという」という関係者のコメントを報じたのだ。

八王子市が選挙区(衆院東京24区)の萩生田氏が小池知事に感謝したくなる心情は、市長選を取材した記者ならすぐにわかる。本来なら陣頭指揮をとる役割を担っている地元選出の衆院議員で、しかも自民党幹部なのに、裏金事件で表に出ることを控えざるを得なかったからだ。

今回の市長選は三期務めた現職から新人への継承という一戦にもかかわらず、萩生田氏は候補者と街宣車に乗ることは一度もなく、室内に支援者を集め支持をひっそりと訴えるだけだった。

ただし高市早苗大臣を応援弁士として呼んだ1月16日の個人演説会では、冒頭で挨拶。東京地検に対してこんな“勝利宣言”を発していた。

「ワイドショーを観ていると、だんだん私が(裏金事件の)真ん中にいる(聴衆から笑い)。『大丈夫か』と街の中で皆が話していたのだろうと思いますが、そういう問題ではなくて、『修正をきちんとする』ということになっておりますので、東京地検に連れて行かれることはございません」

それでも世間の批判を気にしてか、街頭演説で同じような訴えを堂々とすることはなかった。

そうした萩生田氏の代役を務めたのが小池知事だった。投開票日の2日前に現地入り、街宣車上で自公推薦の新人・初宿和夫候補と並んで支持を呼びかけた。世論調査では、元都民ファ都議の滝田泰彦候補(立民・共産・社民などが支持)にリードを許していたが、最終盤で初宿氏の逆転勝利を呼び込む原動力となったのだ。

政治とカネの問題で逆風にさらされる自民党に小池知事が助け舟を出したのは、八王子市長選だけではなかった。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n9e7d84b5819b

◆自創協力で次期戦闘機の第三国輸出解禁へ 日本を「兵器産業国家」にする創価学会・公明党
 取材・文◎柿田睦夫(ジャーナリスト)

 

 

「私どもは、池田先生のご遺訓・ご指導を命に刻み……日々、前進してまいりたい」

昨年11月18日、この四半世紀にわたる「自公政権」の生みの親でもある池田大作・創価学会名誉会長死去を公表するにあたり、原田稔同会長が談話を発表してそう述べた。

池田氏は創価学会名誉会長、SGI(創価学会インタナショナル)会長であるだけでなく、「本会の永遠の師匠」(会憲・会則第三条)という存在である。その「遺訓」は「命に刻む」ほど重いものなのだ。

池田氏の主張の中心に、常に据えられていたのが「平和」だった。実際、その説話や著書(とされるもの)には「平和」の語が頻繁に登場する。創価学会員にとって「精神の正史」である小説『新・人間革命』(聖教新聞社)の冒頭には、こうある。

「平和ほど、尊きものはない。平和ほど、幸福なものはない」

さらに、「核兵器および一切の軍備を地球上から消滅させ、一切の戦争を廃絶する」とも書いている。

池田氏は核兵器だけでなく、一切の軍備を消滅させることこそが「平和」なのだと説く。創価学会と公明党は、この「池田遺訓」にどう向き合ってきたのか――。

開会中の通常国会で、「防衛装備移転3原則」をめぐる重要な政策変更があった。日英伊3国が共同開発する次期戦闘機の第三国輸出解禁である。「兵器産業国家」への始動というべきものだ。これを、国会決議抜きに自公両党の“密室会議”で決めた。

ちなみに「防衛装備」とは「武器」のことで、「移転」とは「輸出」のこと。安倍晋三自公政権がそう言い換えた。安倍氏が得意とした目くらましの手法である。

かつてこの国には「武器輸出三原則」があり、武器の輸出は原則全面禁止だった。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n97b6256833da

◆事業者に従業員を監視・排除させる日本版DBS法案の違憲性
 取材・文◎足立昌勝(救援連絡センター代表)

 

 

対象事業者に従業員らの性犯罪歴の確認を義務づける「日本版DBS」法案について自民党内の意見がまとまらず、国会提出が遅れていたものの、3月19日に閣議決定されて、衆議院に送付された(5月9日に衆議院で審議入り)。昨年9月5日に有識者会議からの報告書がまとめられても、自民党内の異論百出により成案化が遅れていたのである(1月号を参照)。

法案の正式名称は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案」というが、内容から判断すれば、職業選択の自由を定めた日本国憲法に違反する「特定性犯罪者排除法案」といっても過言ではない。

 日本版DBS法案の仕組み

性暴力が児童に与える影響が多大なものであることは、異論のないところである。そこで政府は、教員や教育・保育従事者等が特定性犯罪を過去に行なった事実があるか否かに関する情報を、国が学校設置者や当該教育保育事業者等に提供する仕組みを設け、それらの者を教育現場等から排除することを目指し、法案を作成した。

まず法案では、教育や保育等を提供する事業者は、子どもとの関係において、

①児童を指導するなど非対称の力関係があるなかで支配的・優越的立場に立つ支配性
②時間単位のものを含めて児童と生活をともにするなどして児童に対し継続的に密接な人間関係を持つ継続性
③親等の監視が届かない状況の下で預かり養護等をするものであり他者の目に触れにくい状況を作り出すことが容易である閉鎖性

という三要件を持ち、その現場では性犯罪や性暴力が発生する基盤があるとされる。

この三要件により、法案における事業・業務の範囲が定められた。自民党の要望を受け入れて、範囲を大幅に拡張した形だ。子どもたちが通う稽古事、習字教室や将棋教室は、すべてこれに含まれるものと思われる。

これらの事業において、業務従事者による児童への性犯罪・性暴力を防止しなければならないのは当然だ。しかし、その防止義務を事業者に課すことには、明らかに無理がある。国民の相互監視の一形態といえるのではないか。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/ndd097058ed36

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

『紙の爆弾』2024年 6月号

岸田訪米の能天気は害悪だ!アメリカが狙うアジアの一兆ドル海洋資源
次期戦闘機の第三国輸出解禁 日本を「兵器産業国家」にする公明・創価学会の“貢献”
【特集】隠蔽される「健康被害」

TSMCが熊本の水を殺す半導体工場のPFAS汚染
がんを引き起こし脳の働きを阻害する遺伝子組換え食品によるこれだけの危険
小林製薬「紅麹問題」で少なくとも言えること
開業延期」ではなく「計画中止」を リニア新幹線「電磁波と白血病」
「議員も記者も排除」で答弁拒否率76% 小池百合子 暴かれた“女帝”の虚像
裏金事件でも自民党で“岸田降ろし”が起きない理由
「大阪カジノIR」の真のリスク 水原一平事件の語られざる本質
一水会50年は、対米自立実現の橋頭堡である
事業者に従業員を監視・排除させる日本版DBS法案の違憲性
“制裁ありき”の駄文判決 岡口基一判事弾劾裁判「多数決で罷免」の異常
ジュリー前社長が手放さないジャニーズファンクラブ巨額の行方
失言バカ政治家の傾向と対策
改憲派2社以外も“軍拡肯定”2025年度中学教科書 防衛省の広報誌化
シリーズ 日本の冤罪50 北方事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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◆日米首脳会談のキーワード

去る4月10日、岸田訪米に際しての日米首脳会談、そこでのキーワードは、「日米同盟新時代」と「グローバルパートナー」だった。

実際、このキーワードに先の首脳会談の意味が凝縮されている。そこで問われるのは、その意味だ。

それについて、岸田訪米を前にして、4月4日、同じ日に、米駐日大使ラーム・イスラエル・エマニュエル、そして元米国務副長官リチャード・アーミテージと政治学者ジョセフ・ナイが発表した二つの提言が重要だと思う。

前者は、まず、米国による同盟のあり方の転換について言っている。ハブ&スポーク状の同盟から格子状の同盟への転換、すなわち、米一極を中心に各国が自転車の車輪状に結集した同盟から、AUKUS、日米韓、日米比などの同盟が重層的、複合的に重なり合ってつくられる格子状の同盟への転換であり、その中心には格子が重なり合う日米の同盟が位置するようになると言うことだ。

後者は、日米の統合について言っているのだが、それがこの間深まってきたのを評価しながら、これからは、それが同盟としての統合に深められる必要があることについて言っている。言い換えれば、日米同盟新時代の同盟にふさわしい日米の統合をと言うことなのだろう。

◆在日米軍司令部との連携・指揮の統合

この提言を前後して発表された陸海空三自衛隊を統括する統合作戦司令部の来春新設と米インド太平洋軍司令部の権限の一部が移譲される在日米軍司令部との連携・指揮の統合は、先の提言が何を意味するか、その重大さを証左するものだ。

戦後、日本の防衛はその盾となる自衛隊と矛の役割を果たす米軍の役割分担によっていた。しかしこれからは、日米は攻守をともにするようになり、その領域も日本を超え、インド太平洋全域に広がると言うことだ。

ここには、「日米同盟新時代」が持つ意味が示されており、これまでの「パートナー」から「グローバルパートナー」への転換が何を意味するかが示されている。

それは、一言で言って、あの日本の歴史始まって以来のもっとも悲惨な戦争の総括に基づく戦後そのものの終焉だと言うことができる。それは、不戦の憲法に基づき、非戦非核を国是とした日本のあり方そのものがその根本からが変わると言うことを意味している。

◆「異例の大厚遇」への代価

先の岸田訪米に際しての、米国の国賓待遇での大歓待を岸田政権による「安保防衛費大増額」へのご褒美だと言っていた人がいたが、「異例の大厚遇」への代価はそんなものではすまない。

この計り知れない代価を背負って、「日米同盟新時代」との闘いは開始されることになる。その最初の大事業がこれから行われることになる解散総選挙になるのではないか。

来るべき総選挙を日本と日本国民の命運を危機にさらす先の「日米合意」を一度の国会審議もなく敢行した岸田政権、自民党政権を弾劾し、懲罰する総選挙にするところから、「日米同盟新時代」「グローバルパートナー」との闘いは開始されなければならないだろう。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆原発推進派と反対派が共有する「ふるさとをどうするか」問題

先日取材した石川県珠洲市の元県議、元市議の北野進さんの著書『珠洲原発・阻止への歩み 選挙を闘いぬいて』を読み始めた。

取材中、北野さんは何度か「えっとあれは何だったかな」と書類を探そうとしていたが、私は時間がもったいないので「いいですよ、あとで本を読んで確認しますから」と言っていた。本には、住民運動と並行して、市長選、知事選、県議などの選挙を闘い続け、ついに原発建設を凍結に追い込んだ29年間の歴史がたっぷりと書かれていた。

北野進さんと著書『珠洲原発阻止へのあゆみ―選挙を闘いぬいて』(七つ森書館 2005年)

珠洲市は原発建設を凍結に追い込んだ2013年の翌年、市政60年をむかえ、記念事業として作成された「珠洲市勢要覧2004」の中の「珠洲市の歩み」には珠洲原発建設問題の記述は一切ないのだという。いくら敗北したとはいえ、それはないだろうよ、と考え、北野さんは闘いの歴史を、推進派の動きもなるべく忠実にして、この本を書かれたという。

北野さんのお話で感動したのは、原発建設を凍結に追い込んだのち、反対運動を闘った仲間らと「勝った!勝った!」と言わないようにしようと話し合ったということだ。

原発賛成あるいは推進してきた人たちにもいろんな思いがある。原発建設を心から望んで推進していたのは、それで稼げる一部の人たちだ。多くの人たちは年々過疎化が進む「おらがふるさと」をどうにかしたいとの思いから「原発ばなし」に乗っていった。

原発以外で過疎化を防ぐ手立てがあれば、そっちを必死で進めるだろう。川口勉監督のドキュメンタリー映画「彼らの原発」(2017年製作)で美浜町の方が最後につぶやいた、原発がだめというのなら「ほかのものをもってきてくれ」という言葉が忘れられないが、それと同じ。

これからは一緒に故郷を良くしていこうと手を組まなければならないからだ。北野さんはこう言った。

「当時推進派と反対派のわだかまりは、孫の代まで残るかと心配されてましたが、その後信じられないくらい早い段階でなくなっていきました。」

これには感動した。

珠洲原発の建設予定地だった地区。今年元日の能登半島大地震で地盤が北野さんが指差すあたりまで隆起した

◆「玄関あけたらすぐ建屋」の志賀原発を止める裁判に注目を!

あと、志賀原発建設までの闘いのお話も伺った。「珠洲原発は止めれたが志賀原発はなぜ建設されたの?」という人もいるが、志賀原発反対運動も非常に熾烈に闘われてきた。その結果、超危険な志賀原発ができた。

志賀原発の危険性は活断層などもあるが、志賀原発が、海→道路→志賀原発の玄関、そして「玄関あけたらすぐ建屋」の極狭物件になっていることも超危険ではないか。

イラストで説明すると、北陸電力はまずA、B地区の用地を買収しようとしたが、B地区の土地所有者の強い抵抗で買収出来なかった。そのため、予定地をA、C地区に変更したが、C地区の土地所有者の強い抵抗で買収出来なかった。そこで北陸電力は「狭くてもA地区に原発建ててやる」と「ゆっくり不動産」もビックリの極狭物件を建てた。

 

全国でも異例の県道のそばに建設された志賀原発。かつては1、2号機の姿を県道からしっかり確認することができた。今は防潮堤の上に頭を出すだけとなった(北野さんのブログより)https://blog.goo.ne.jp/11kitano22/e/621fdd4f882be0bc4367acb9ec3986de

「テロリストの皆さん、いらっしゃい」みたいな門構え。「志賀原発は県道からすぐ原発がみえるんです。テロ対策なんかできませんよね。そういうところは全国にないですよ」(北野さん)。

ふつうは「Cゲートから不審者侵入」「ピーピーピー」と屈強な警備員がさすまた持ってすっとんでくるが、その時すでにテロリストは建屋の玄関をタッチしましたけど……みたいな。確かに建設当時はテロ問題に喧しくなかったんだろうが。

そう、この志賀原発を廃炉への裁判、原告団長は北野さんだ! 裁判の行方に注目していこう!

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『季節』2024年春号 表紙は関西電力が珠洲原発の立地可能性調査を予定していた区域にある高屋漁港の状況。1月1日の地震後、2メートルほどの隆起を指し示す北野進さん

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

龍一郎揮毫

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安芸高田市長の石丸伸二さん。突然、再選出馬をせずに、東京都知事選挙に立候補する、と表明しました。東京中心の日本を地方分散で変えるとのこと。筆者もびっくりしましたが、広島県内では驚きの声が広がっています。


◎[参考動画]広島 安芸高田市の石丸市長 都知事選へ出馬を表明「東京を変えて日本を変える」(TOKYO MX news 2024/05/17)

 

安芸高田市ホームページ

安芸高田市は、広島県北部に位置します。筆者の住む広島市からは、公共交通では芸備線か国道54号線経由のバスが便利です。筆者も、この安芸高田市内の病院兼高齢者施設で仕事を3年間させていただいた元在勤者です。元々は高田郡だったのですが、平成の大合併で安芸高田市となりました。戦国大名・毛利元就の本拠地・郡山城は旧吉田町内にあります。広島市中心部からはバスが便利です。また、Jリーグのサンフレッチェ広島の本拠地があるなど、スポーツの街としても知られています。

さて、市長の石丸伸二さんは今年、41歳。安佐南区にある県立祇園北高校を経て京都大学をご卒業後、東京三菱UFJ銀行へ。2020年、河井案里さんが当選無効になった公選法違反事件に連座して当時の安芸高田市長が引責辞任。それに伴い行われた安芸高田市長選挙で、当選が確実視されていた元副市長を破って初当選されました。

地元生まれとはいえ、政治経験が全くない石丸さん。市議会で居眠りをしている議員に「恥を知れ」などと発言をしたことで、一躍有名になりました。議会との対立を面白おかしく市の公式YouTubeで発信。自治体のサイトとしては全国一のアクセスを誇るようになりました。

しかし、議会との対立から、全国公募で選んだ副市長の人事がご破算になる、また、目玉施策の一つの無印良品の道の駅への誘致も議会の反対でご破算になる、という事態が起きています。

ネット上には石丸さんのファンの方も根強くおられます。そうした方からすれば「頭の固いおじいさん、おばあさんの議員が悪い」ということになります。

ただ、地方自治の実際を知る筆者からすれば、「もうちょっと、政策実現のために、反対派を切り崩すなどなぜしなかったのか?結果として面白おかしくはなっているが、どうなのか?」という疑問があります。

相手を意固地にすれば、ネット動画としては面白いのですが、妥協もなければ前には進みません。

また、そもそも、市長就任早々、いきなり、全国から副市長を公募、というのもいかがなものか? 確かに、広島県北部の権威主義的な政治風土は筆者も良く存じています。しかし、優秀な若手・中堅も庁内にはいます。そういう人を、登用した方がよかったのではないか?

石丸さんは政治経験がないからこそ、地元の優秀な人を大事にすべきではなかったか?

確かに、副市長人事を巡る対立も、面白おかしい動画にはなったが、それでよかったのか?疑問は尽きません。

◆ご出身高校の近所では散々な評価も、遠い県沿岸部では高評価?

広島市安佐南区。石丸さんが高校時代を過ごした場所です。その近所の方に5月17日、筆者は取材しました。

「彼は何考えとるのじゃ。安芸高田市もまとめられないものが東京へ行くなんて」。
「政治をおもちゃにしている」
「東京へ行ったら若い者が味方してくれると思い込んだのだろうが」。
「石丸氏はアメリカかぶれすぎる。地元の若い者をまず大事にすべきだった。」

などなど。もちろん、判断されるのは都民ですけど、安芸高田市以外ではあるが同じ広島3区、それもご自身の出身高校がある近くでの石丸さんへの風当たりは非常に強いです。

一方、安芸高田市から距離が離れている沿岸部の呉市では、広島瀬戸内新聞のA記者によると、石丸さんの評判はいいようです。やはり、距離が遠くなって、石丸さんの人となりが知られていない地区で評判がよくなっている状況があります。

◆小池VS石丸 グローバリスト対決では現職有利では?

いきなり広島の小さな自治体の首長から日本最大の自治体の長に挑む。石丸さんのその胆力には敬意を表したい。しかし、残念ながら、苦戦は免れまい、と筆者は感じます。

なぜか? 小池知事と石丸さんの違いはわかりにくいからです。

どちらも、いわばグローバリスト、アメリカンポストモダニストです。アメリカかぶれなのです。それなら現職の小池さんが有利になってしまうでしょう。

◆湯崎英彦知事の小型版                   

石丸さんに対しては、広島県知事待望論もネット上にはあります。しかしながら、広島県政の主要課題について、湯崎知事と石丸さんの違いはほとんどみられません。ズバリ申し上げれば、外部の企業、外部のお気に入り人材重視という点では違いが見当たらないのです。両者ともアメリカかぶれのポストモダニスト。違いがないなら、現職の湯崎さんが圧倒的に有利です。

湯崎知事は、平川教育長を登用し、平川氏は官製談合事件やお友達の赤木かん子さん優遇事件などを起こしています。また、女性副知事には、ご自身の高校・大学・経産省の後輩を充てています。県病院廃止・巨大病院建設を進める健康福祉局長には中央官僚の若手女性を充てています。他方、石丸さんも、副市長人事でご自分が全国公募で選んだお気に入りの方を、議会の反発を買って失敗しています。

そして、広島県の場合は、安芸高田市という狭い範囲よりはそれなりに優秀な人材や企業が県内に揃っています。安芸高田市政以上に県政では湯崎・石丸的な外部優遇より、地元で地道に頑張っている中堅・若手とか、企業を応援した方が良いのです。

また、湯崎知事が強行する三原本郷産廃処分場稼働継続や、県病院潰し・1300-1400億円の巨大病院、平川前教育長を庇う姿勢などにきちんと石丸さんが湯崎知事との違いを出せるかと言えば疑問です。

もちろん、石丸さんがガチガチに硬直化しきった地域の政治文化に突撃して、かき回したということは言えると思うし、歴史の一コマではあったと思う。ただ、石丸さんに長居されたらたまったものではありません。地味に地元で頑張っている中堅や若手、企業の力を活かせるようなリーダーが必要だと思いますし、筆者が広島県知事に就任すればそうします。

筆者が思うには、ここ20年の日本の悲劇は、森元総理的なコチコチの老害と、小泉・竹中・湯崎・小池・石丸的なグローバリストの挟み撃ちで、地域で地道に頑張っている中堅、若手や企業が割を食ってきたことだとも思います。  

◆勝ち目のない東京都知事選挙より県内・三原市長選挙に立候補はいかがか ── 百歩譲った筆者の提言

ここまで、ネガティブなことを石丸伸二さんに申し上げてきました。石丸さんは支持できない。しかし、批判ばかりで対案がないと言われたくもないので、百歩譲って、以下のことを石丸さんに進言します。

何か実績を上げるおつもりなら今夏、実施される県内・三原市長選挙に立候補されたらどうか?この三原市も4年前に、当時の天満市長が河井事件に連座して辞任しました。新たに岡田現市長が選ばれました。この三原市は、水源地のど真ん中に湯崎英彦知事が許可した三原本郷産廃処分場があり、汚染水を垂れ流しています。そこで、石丸さんが立候補し、「三原本郷産廃処分場即時停止」を訴えれば、当選確実ではないでしょうか?

当選したらもちろん、極めて厳しく産廃を規制する条例を作る。そして、同処分場を廃止に追い込むのです。極論すれば、とりあえず、産廃処分場を止めてくれるなら、新自由主義は議会や市民世論による修正で対応する。それくらい、三原の産廃は酷い問題なのだから。石丸さんは、同じ広島県内である三原でもそれなりに、知名度はあるだろうから。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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カウアンオカモトという青年の登場によって「性加害」という表現が爆発的に広まったと思う。

彼の証言によれば、しかるべき場所で喜多川氏から「マッサージしてあげる」と言われて、素直にその好意に応じたところ、マッサージする手が上半身から次第に下半身に、そして下腹部の性器にまで達したということなのであるが……。

 

在りし日のジャニー喜多川

しかし、その先がはっきりしない。マッサージの延長行為の末に、カウアン君の性器はしかるべき反応を示したのか、それとも無反応であったのか。もしこの問題が裁判で争われるとすれば、そこが肝であると思われる。

ただ、どちらにせよ、私にはそれが「性加害」と言えるほどの事態であったとは、残念ながら思えない。無理矢理しかるべきでない場所に引きずり込まれて、暴力的に衣服を剥がされてレイプされたというわけではない。

それを「性加害」と言い切ってしまうと、刑法上の犯罪行為であるというイメージを、聞く者の耳に与えてしまう。

さらに不思議なのは、カウアン君がジャニー喜多川の性癖を知らずに、ジャニーズ事務所の合宿所のようなスペースで想定外の行為を強いられて傷ついたという証言をしていることである。

はっきり言って耳を疑う証言である。ジャニーズ事務所でその種のいかがわしい行為が行われているという醜聞は、国民的常識とまでは言わないが、1970年代後半にはもう少なくとも私の周囲には知らない者はいなかった。

ジャニーズ事務所に所属するタレントのファンの間でさえ、その噂は公然と囁かれていた。郷ひろみのファンだった女性は、私に向かって「それが芸のこやしになっているんだから、それでいいんじゃないんですか」と言い切った。彼女の表情から不快感は全く感じられず、むしろ必要枠として評価したいという気持ちが伝わってきた。

そこまで広まった噂の真相をカウアン君が知らずにジャニーズ事務所に身を寄せたとしたら、あまりにも無防備であったと言わなければならない。「自己責任」という嫌な言葉が口をついて出そうにもなる。

今回の騒動に関して「僕には楽しい思い出しか残っていない」と田原俊彦が語っていたそうだが、タレント志望のジュニアの多くもジャニー喜多川の愛玩物となることを覚悟して(あるいは甘受するつもりで)その場に身を置いたと思われる。そこを通らなければ、デビューさせて貰えなかったそうだから。

解散してしまったSMAPの木村拓哉と中居正広はジュニアの時代に在学していた都立代々木高校で、周囲が心配するほどの犬猿の仲であったという。かなり遠くからでもお互いの存在に気づくと、しばらくの間にらみ合っていたというほど険悪な関係であったと、当時同校に在学していた女子高校生が語っていた。2人の不仲の原因が、ジャニー喜多川の寵愛を競う争いであったことは明らかだったという。

その話も、後に2人がSMAPというグループのメンバーとしてデヴューすることになった途端に和解してしまうと「個人的な感情を棄てて仕事に徹する……さすがプロだ」という美談にすり替わってしまったようだが。

SMAP時代の木村拓哉と中居正広

概してジャニタレファンは、鷹揚で包容力に富んでいる。木村拓哉が工藤静香と結婚するというニュースが流れた時、彼のファンの多くは「何であんなヤンキーと一緒になるの!」と激しい怒りを露わにしたが、それでもファンであることをやめようとはしなかった。

カウアン君の突然の告発にも動じる気配はない。逆にカウアン君のことを「被害妄想っていうか、被害者意識が過剰なのよね。かわいそうな人ね」と同情したり、「ああいう人はジャニーズでは例外でしょう」と完全に自分の意識から排除したりする。

その反面、カウアン君を「日本の恥」と切り棄てたデヴィ夫人に対しては「お前こそ。日本の恥だ」「お前だって。元は高級売春婦じゃねえか」「地位と名誉が欲しくて、色仕掛けで某国の大統領夫人にまで成り上がったくせに」と、何もそこまでいと言いたくなるほどの悪罵を投げつける。「吐いた唾は飲まんとけよ」という映画『仁義なき戦い』の名ゼリフを彷彿とさせる言い草ではないか……

しかし、「日本の恥」というデヴィ夫人の表現を、必ずしも不適切だと私は思わない。カウアンは今まで恥ずかしくてとても言えなかった心の傷をジャーナリスト相手に堂々と公表し、ついに国連にまでその「性加害」問題が取り上げられるに至った。

それは確かに「日本の恥」を世界に晒す行為であると言えるだろう。だが、「恥をかけ、とことん恥をかけ」というアントニオ猪木の警句を実践したと解釈すれば、勇気ある行動と言えなくもない。

昭和のプロレスの悪役の如く、未だにマスコミに重宝されているデヴィ夫人としては、憎まれ役は自分の本領と自覚しているに違いない。「日本の恥」という表現は、意地悪な悪女が純朴な青年をイジメている演出に沿ったものであるに違いない。むろん彼女自身の演出である。

そして、ラストシーンは、闇の奥に潜んだまま鬼籍に入ったジャニー喜多川を、死後世界史に稀代の変人として名を連ねることになると、筆者は予想するのである。
そしていつか、彼の名声と共に「性加害」という言葉も軽い恋愛感情を示す表現になっているのではないかと思う。(つづく)

板坂 剛 ジャニーズよ 永遠なれ(全3回)
〈1〉死して尚、放たれる威光
〈2〉「性加害」という表現への疑問

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

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