◆新規制基準と耐震性能の問題

東京から最も近く、今年9月に再稼働が迫る東海第2の基準地震動は建設時点ではわずか275ガル、今では1009ガルである。しかし基礎から造り直したわけではない。もともとあった安全余裕を食い潰し、配管や支持構造物が壊れなければ良いなどとして、本来はあるべき裕度はまったくなくなっても「耐えられる」と、書類上で「評価」しているに過ぎない。

付け足したのは耐震補強のサポート類や梁の強化などだが、圧力容器を支える構造物や格納容器などは取り替えることもできない。

そのため、いびつな補強にならざるを得ず、かえって統1的な耐震安全性の観点からは後退したところもある。

比較的細い管や管台部分などは、大きな配管が揺れを抑える補強をしたため振動による応力が集中しやすくなった可能性もある。実際に発生する力に耐えられるかは、地震動の固有周期にも依存するため起きてみなければ分からない。机上の空論で1部を耐震補強をしてもダメなのだ。設計とはそういうものである。

1981年改定の新耐震基準法で建てたビルと、旧耐震を補強したビルでは、明らかに耐震強度は新耐震で建てたほうが優れている。

原発は全部、旧法で建てて新法になって補強した建物と同じだ。耐震性を要求する新規制基準は2012年の原子炉等規制法の改定で施行されているからである。それ以後に建てた原発や原子力施設などどこにも存在しない。原発の安全規制を強化してバックチェックではなくバックフィット(新基準に適合しなければ許可しない)をするならば、いったん全原発の許可を取り消し、新法で設計、建設しなければ認めないとすべきだ。耐震補強でよしとするならば震災前と何も変わらない。

◆「原子力防災」は崩壊している

原発が過酷事故を起こった際、原子力防災計画に基づき、住民は避難しなければならない。避難範囲は、国の防災対策指針に基づけば稼働中の原発で全交流電源喪失や冷却システムの全停止で原子力災害対策特別措置法第15条に基づき、原子力緊急事態解除宣言が出されたら5キロ圏内に設定されているPAZ*(予防的防護措置を準備する区域)の住民は、30キロ圏外に避難を開始するか、避難準備を開始することになっている。

同時にUPZ*については、屋内退避が発令される。その後、放射性物質の拡散が続き空間線量が一定水準以上になった場合、UPZにも避難指示が出される。

今回の地震でもし志賀原発で施設内緊急事態や全面緊急事態が宣言されるような災害になっていたら、PAZから避難を開始しなければならなかったが、周辺の道路の状況は深刻なものだった。

特に原発から北側と東側では、主要道路のほとんどが地震の影響で遮断されていた。志賀原発防災計画において最も重要な道路である「のと里山海道」は大きな被害を受けていた。金沢市から能登半島へ延びる道路は、至るところで道路が陥没して車が通れない状況になり、羽咋(はくい)市の柳田インターチェンジから、のと里山空港インターチェンジまでの上下線で通行止めになっている。

原子力防災に関しては、規制委は原子力防災対策指針を策定している。しかしこれは原子力事業者への規制基準にはなっていない。原子力防災も地域防災計画の1つとして、自治体が防災計画を作ることになっている。

しかし能登半島地震の実態は、指針の内容さえも機能しない現実を示している。

この事態について、山中伸介原子力規制委員長は次のように述べている。

「基本的に我々は基準を満たしていれば許可をいたしますけれども、稼働について何か我々が、その許可をするということはございませんし、防災基本計画を立てられるというのは、自治体と内閣府の連携によって立てていただくというのが基本的なところかというふうに思います」

「我々原子力規制委員会は、原子力災害の複合災害を受けたときにどうすべきかというのを科学的、技術的に助言をする、そういう組織であるというふうに理解をしておりますし、決して稼働を我々が何か許可をしたというわけではございませんし、自治体のサポートを、科学的、技術的に原子力について行うのが我々の務めだというふうに考えています」(1月2十4日記者会見議事録より)

原子力防災計画については、自治体と内閣府の原子力防災会議の責任であり規制委はサポートの立場でしかない。

新規制基準適合性審査が終わった後は防災計画が崩壊状態でも規制委は助言しかしない。法的不備を理由に差し止める権限さえない。しかし防災指針は規制委の責務である。その規制が実行不可能な状況に現在能登半島が置かれていることぐらいは理解できるだろう。

そのことをどのように感じているのか。特に、再稼働した原発の立地自治体は深刻に考えるべきだ。

*PAZ(Precautionary Action Zone:予防的防護措置を準備する区域)。実用発電用原子炉の施設において異常事象が発生した際、EAL(緊急時活動レベル)に基づいて、放射性物質放出の有無にかかわらず屋内退避、避難などの予防的防護措置が迅速に行えるように準備する区域をいう。

*UPZ(Urgent Protectionaction planning Zone:緊急時防護措置を準備する区域)。実用発電用原子炉の施設において異常事象が発生した際、OIL(運用上の介入レベル)及びEAL(緊急時活動レベル)に基づいて、住民等の緊急防護措置(避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用等)が迅速に行えるように準備する区域をいう。

◆大地動乱の時代に突入している

石橋克彦神戸大学名誉教授の提唱した「大地動乱の時代」は、1993年北海道南西沖地震(M7.8)に始まったと筆者は考える(1983年の日本海中部地震(M7.7)も含めば、1983年からということになる)。

2011年の東日本大震災を挟み、1993年2月7日能登半島沖の地震(M6.6)1995年兵庫県南部地震(M7.3)、2000年鳥取県西部地震(M7.3)、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2007年能登半島地震(M6.9)、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)、2008年岩手.宮城内陸地震(M7.2)、2016年熊本地震(M7.3)そして2024年1月1日の能登半島地震(M7.6)。

たった20年ほどの間に10回もの大地震が発生している。

これらは大平洋プレート、フィリピン海プレートからの巨大な力によりストレスが解放されて断層が動いた地震だが、能登や新潟では何度も繰り返し起きてきた。それだけ地震を起こすエネルギーが溜まっているところだ。

しかし動いていない断層も地下ではストレスが溜まっている。南海トラフ地震の切迫度は、これまで以上に高まっているとの指摘もある。歴史地震を見るとプレート境界巨大地震の前後に内陸地震が多発してきたのは事実だ。

2004年、2007年の中越、2008年の岩手.宮城内陸地震の4年ほど後に東日本太平洋沖地震が発生している。

2024年能登半島地震で、南海トラフ地震との相関を感じずにいられない。その前後には必ず、北陸地方から中国、四国、九州地方の内陸の地殻内地震が多発すると考えられる。特に、中央構造線は巨大な活断層で、これが動けば瀬戸内海を中心に甚大な被害を出す。その真ん中に伊方原発が建っている。

若狭湾の原発群も、甲楽城.浦底断層系、上林川断層、熊川断層等が活動したら、原発に深刻なダメージを与える。他にも、警固断層と玄海原発、日奈久断層と川内原発、宍道断層と島根原発など、原発の周囲には大きな断層がたくさんある。

今すぐにしなければならないことは、来るべき地震に備えて、今から「止める」「冷やす」「閉じ込める」対策を取ることである。地震や津波は止められない
が、原発は止めることができるのだから。(終わり)

本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

山崎久隆「大地動乱」と原発の危険な関係(全3回)
〈1〉2024年元日の能登半島地震と志賀原発
〈2〉あまりに楽観的に過ぎる原発の地震対策
〈3〉「原子力防災」は崩壊している

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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岸田首相は4月訪米し米議会で、「米国が築いてきた国際秩序は新たな挑戦を受け、自由と民主主義が世界中で脅威にさらされている」と述べ、「日本国民は自由の存続を確かなものにするために米国とともにある。自由、民主主義、法の支配を守る。これは日本の国益だ。……これらの価値を守ることは世界中の未来世代のための大義であり、利益でもある」とし、日本がグローバル・パートナーとして米国とともにその価値観にもとづく国際秩序を守っていく決意を述べた。

はたして米国の「自由、民主主義、法の支配を守る」価値観にもとづく国際秩序を守ることが日本の国益なのだろうか。

今日、世界において「自由と民主主義」の価値観で国を否定し覇権をおこなっていくということが通じなくなっている。ウクライナ戦争もロシアはNATOの東方拡張政策に反対し、祖国とロシアの価値観を守る戦いとして位置づけているゆえに勝利していっている。パレスチナ人民のイスラエル占領に反対し国の主権確立をめざす戦いもかならず勝利していくだろう。そして、アジアでは米国の対中新冷戦も国を守り発展させようとする中国人民により破綻するのは明白だ。

ロシアと中国、イスラム圏だけでなく、インド、ブラジル、南アフリカなどもBRICSや上海機構に結束し、米国の古い覇権的秩序に代わる新しい反覇権多極化秩序の確立をめざしている。この流れにASEAN諸国、アフリカ諸国、中南米諸国が合流している。

そのなかで岸田首相だけが「米国は独りではない、日本というパートナーがいる。共に『自由と民主主義』の価値観にもとづく国際秩序を守っていこう」としたのだ。それは時代の潮流に逆行するものであり、米覇権秩序が崩壊することは避けることができない。

にもかかわらず岸田首相の米国の国際秩序を守ろうとするという覚悟は、あくまで日本が米国を盟主として仰ぎ従い、世界の反覇権勢力に敵対していこうとするものだ。結局、米国のいうがままに日本が利用され使い捨てられていくのではと思う。

「日米同盟の新時代」で米国のもとの統合がすすめられれば、日本の政治、軍事、経済、教育文化と地方のすべての領域にわたって米国に統合し米国式におこなうことが強制され、日本という国が名実ともになくなってしまう。

また、今回の日米会談で統合作戦司令部の発足が決められたように、日本は米軍の指揮のもとで「自由と民主主義」を掲げた米国覇権の軍事外交作戦に動員されていくようになる。かつて日本軍国主義が侵略と戦争の道を突き進んで滅んだとしたら、現在、米国覇権の汚らわしい番犬、駒として世界の自国第一主義の潮流に飲み込まれ滅亡する道を歩んでいるといえよう。

その結果、国民はどうなるのか。中国との戦争で戦禍を蒙るだけではないか。国民にとって戦争を絶対望んでいないし、米国のもとに日本が統合されることを望んでいない。平和で豊かで生きがいある生活をもたらす自分たちの国であってほしいと思っているのではないか。

なぜ日本が米国に統合されていき、米軍の尖兵になるのか?

 

赤木志郎(あかぎ・しろう)さん

それは、先に引用した岸田首相が「自由、民主主義、法の支配を守る。これは日本の国益だ」と述べているように、米国の「自由と民主主義」を日本の国益の上においているからだ。いいかえれば、日本は植民地でも傀儡国家でもないが、無条件降伏した国家として日本の上に戦勝国である米国が君臨しているからだ。そしてそこには、米国に従うことによって自己の利益を得ようとする日本の勢力がいる。侵略戦争をおこなってきた旧支配層は他国を隷従させたので自己が従属してもなんとも思わない。そして、米国の覇権にすすんで加担することなる。単なるかいらい売国勢力ではなく従米覇権勢力ともいうべきか。地検特捜部が米国の指示で動く部署だとしたら、財務省や外務省が従属覇権勢力の巣窟と考えれば分かりやすいかもしれない。

しかし、今や戦後日本を占領し日本を従属させてきた時と異なり、米国の力は著しく弱化している。歴代自民党の首相をはじめ多くの政治家、学者、マスコミは「自由と民主主義が日本の国益」「米国の国益が日本の国益だ」と言ってきたが、今回の岸田首相の発言にたいしては大手マスコミでも必ずしも全面賛成ではなく、疑問を呈している。

米国の力が弱化したもとで日本が「同盟者」として先頭に立って頑張りますよというのが岸田首相の言い分だが、実際は米国の尖兵として肉を切られ骨を切られるまで使い捨てられることを甘い言葉で強要されているのだ。もともと米国の国益が日本の国益になりえないが、米国の国益を日本の国益とするその乖離、軋轢、矛盾が耐えられないほど大きいなものになっている。

もはや日本国民にとって米国の国益が日本の国益ではない。日本の国益はあくまで日本国民の利益を守ることであり、日本を米国に統合し米国の尖兵となって対中戦争をおこなうことではない。

日本国民の利益を守る真の国益を擁護するために、「日米同盟新時代」を掲げた米統合と戦争策動に反対する闘いを起こしていくことが問われているのではないかと思っている。

▼赤木志郎(あかぎ・しろう)さん
大阪市立大学法学部中退。高校生の時は民青、大学生のときに社学同。70年赤軍派としてハイジャックで朝鮮に渡る。以来、平壌市に滞在。現在、「アジアの内の日本の会」会員

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5月12日、大阪・大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」4階ホールに於いて和田央子(なかこ)さん(「福島イノベーションコースト構想」を監視する会)の講演会を開催しました。和田さんのパワーポイントのタイトルは「福島イノベーション・コーストとは被害者置き去りの復興政策と軍民共用産業拠点化」。前日神戸で学習会がありましたが、遠い明石市や三木市からも仲間がかけつけて下さいました。ご参集くださった皆様、どうもありがとうございました。

和田央子さん(写真提供=末田一秀はんげんぱつ新聞編集長)

◆国家的ビッグ・プロジェクトなのにヒッソリ・コッソリ進められる理由

 

和田さんと菅野さん(写真提供=Eiji Etoh)

福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)とは、ホームページによれば「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域などの産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです」とあります。

具体的に進めていきたい主要プロジェクトには、①廃炉 ②ロボット・ドローン ③エネルギー・環境・リサイクル ④農林水産業 ⑤医療関係 ⑥航空宇宙など6部門があり、それらを浜通り地域の15市町村で、税制を優遇させたり、リノベ推進機構の強力な後押しで、多くの企業を進出させていこうというものです。

例えばドローンなどはすでにバンバン飛行訓練させている訳です。参加者からは、「だったら、能登半島地震で被害にあった奥能登の孤立した村の人たちにペットボトルでも持っていかんかい!」と怒りの声があがりました。

私は、イノベ構想が進む浪江町請戸地区には2019年初めて訪れました。請戸地区は津波被害にあい、家屋のほとんどが流され、広大な更地が広がっていました。そこにぽつん、ぽつんと大きな建物が建っていましたが、当時はまだ何が起きているかはしりませんでした。

しかし、イノベ構想はそれ以前から着々と進んでいたようです。のちに、浪江町から関西に「避難」してきた方から「私たちの故郷はもう壊されています」と聞かされました。それがきっかけで、浜通りで何がおきているかを更に知りたくて、昨年7月今野寿美雄さんの案内して頂き、イノベ構想が進むさまをこの目で確かめてきました。「何をやっているんだ!これは!」。それが最初の感想でした。

イノベ構想という国家的なビッグプロジェクトは、街がなくなり、人気がなくなった場所でヒッソリ・コッソリ行われていました。表面的には「震災と原発事故で多大な被害を受けた福島のため」「早く廃炉をやるため」「街を活性化させよう」と威勢の良い、聞こえのいい理由をつけています。

しかし、それらは全て口実、言い訳で、実態はまったく真逆をいく内容です。福島の被災者や世間の皆さんによほど知られたくない、関心を持ってほしくないのでしょう。つまり、そこで行われているのは、私たちにとって良くないこと、知られたらまずいことなのでしょう。

◆戦争のできる国と人づくりを進めるイノベ構想

大震災と原発事故を経験した被災者は、原発は原爆と双子であること、原発を推進することは、戦争への道をひた進むことであること、原発を止めなければいけないことを、身を持って体験されました。しかし、福島の浜通りで起こっていることは、そうした被災者や日本だけではなく、世界の平和を願い、核廃絶、全ての原発を廃炉へと願う人たちの思いに、逆光するものです。

「被災した福島を復興させよう」と謳いながら、軍民一体となって軍事産業、核開発、そして戦争のできうる国と、戦争で闘え、他国の人たちを殺戮できる子どもたちを作ろうともしています。
 
それを明らかにすることが起こりました。先日訪米した岸田首相は、イノベ構想の司令塔とされる「福島国際研究教育機構」(エフレイ・浪江町)と米国パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)と覚書を結ぶ確認をしてきました。

PNNLは、広島、長崎に投下された原爆を研究・製造したマンハッタン計画につながるものです。なぜ、3.11以前に広島、長崎の甚大な原爆被害にあった私たちが、再度、その首謀者とともに歩んでいく必要があるのでしょう。和田さんはこうした日米が進めるエフレイとPNNLの連携強化について「マンハッタン計画とのかかわりを考えれば、PNNLとの連携は日本が核兵器を肯定する。あり得ない。台湾や中国との戦争を想定するアメリカが日本を巻き込みたいだけだ」と懸念を示しています。

福島イノベーション・コースト構想については、これだけでは説明がたりません。和田央子さんのお話の10分の1も説明出来ていません。私もまだまだ学習する必要があります。皆さんもぜひ、被災地の福島で何が起こっているかを知ってください!

なお、「西成青い空カンパ」では久々の講演会でしたが、遠い福島から和田央子さんをお招き出来て、本当によかったです。

これからもイノベ構想を注視していきましょう。イノベ構想に騙されないぞ!!

講演会後はなで行われた親睦会で(写真提供=Eiji Etoh)

和田央子さんを囲んで(写真提供=とばりあかりさん)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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尾﨑美代子著『日本の冤罪』

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1994年10月、広島県内各地でアジア競技大会が開催されました。あれから、今年で30年になります。

あのアジア大会を前に、平岡敬・広島市長(当時)は、地元テレビ局社長という経済界ご出身ながらも、初めて1991年8月6日の平和宣言で、先の大戦についての加害責任に言及しました。

広島は原爆と言う意味では米国の被害者ですが、一方で、広島の陸軍・呉の海軍が近隣への軍事侵攻の先鋒を担った歴史があります。日中戦争はもちろんのこと、東南アジアでも、マニラの戦いなどで多くの現地の方を殺害しており、とてもではないが「西洋からの解放に協力した」などと胸を張れる状況ではありませんでした。

 

それらの歴史的事実を踏まえた平和宣言に当時、筆者は感動したものでした。謝るべきは謝る。その上で、訴えるべきは訴える。それが今後の平和都市・ヒロシマの在り方だと思ったし、今もその考え方は変わりません。もちろん、平岡氏は経済界ご出身の政治家で「内政面」で必ずしも全面的に支持できるものではありませんが、それでも筆者が尊敬する政治家の一人ではあります。

アジア大会開催中は「一国一館運動」といって、一つの公民館が一つの大会参加国を応援する運動も行われました。その後の長野五輪等にそれは引き継がれました。もちろん、このアジア大会へ向けた過大な設備投資が広島市や広島県の財政を悪化させたのも事実です。その後始末のために、全国以上に、特に広島県政において、新自由主義的な政策が強行されることになったのも事実です。

ただ、それを割り引いても、対等なパートナーとしてアジアを重視するという当時の広島県政、市政のスタンスは筆者的には評価できるものでした。

ところが、そのヒロシマが最近、急速に米国に忖度するHIROSHIMAに変質しています。そのことが、筆者は残念でなりません。

◆安倍晋三さんより酷い! 岸田総理の「米国忖度」

岸田総理は4月前半、訪米し、米議会で演説を行いました。マスコミなどでも報道の通り、米国の議員たちは大歓迎しました。それはそうです。何しろ、米国従属どころか、米国に忖度して、日本国を米国様に差し出しますよ、という内容なのですから。かつての日本の自民党政権は、米国に従属しつつも、面従腹背的なところもあった。安倍晋三さんでも、今にして思えば、岸田さんほどはひどくなかった、と痛感します。

岸田総理は、G7広島サミット以降、特に暴走が酷いものがあります。はっきり申し上げると、岸田総理は、名誉白人扱いされて舞い上がっているのではないでしょうか?もちろん、今は、インド系のスナク英国首相などもいて、米国も独仏英も白人国家とは言えないのですが、少なくとも「旧白人帝国主義国家」とは言えるでしょう。戦前は植民地だったカナダを除けば列強とも言われた。その国々と同列だということに酔っているだけではないのか?もはや、産業面で、中華人民共和国はもちろん、韓国や台湾(中華民国)にも逆転され、「振り向けば朝鮮」という状態です。そうした中で、名誉白人であることでプライドを保っているのではないか?そんな疑念がぬぐえないのです。

総理は2023年5月、G7広島サミットをご自身の選挙区である広島1区で開催。米国など西側の核兵器は防衛用核兵器だとして、正当化する「広島ビジョン」を起草しました。そこには、核兵器の先制不使用すら盛り込まれていなかったのです。いきなり廃絶は無理にせよ、先制不使用で核戦争のリスクをぐっと下げることくらいなぜ提案しないのか?情けない、の一言です。

◆原爆正当化の国会議員に「遺憾の意」さえ出せず

今回の訪米の前には、イスラエルによるガザ虐殺を正当化する文脈で「ヒロシマ・ナガサキのようにしなければならない」と暴言を吐いた米国の国会議員がおられました。その議員も当然、岸田演説を聞いていたはずです。演説の中で、暴言への遺憾の意くらい表明できなかったのか?この点も情けない限りです。

◆G7広島サミットを記念する施設建設、米国式腐敗をはびこらせる湯崎県知事

 

原爆資料館の北側で建設中のG7広島サミット記念施設と筆者

原爆資料館の北側には、ご覧のような施設が建設中です。これは、G7広島サミットを記念する施設ということです。

しかし、G7広島サミットとは、この広島において世界で最初に核攻撃をおこなった米国の核保有は正当化するしろものです。そして、日本を除くG7と、途中でいわば「乱入」してきたゼレンスキーも含めてイスラエルによるガザ虐殺を当初は全面支持してしまったのです。いわば、ガザ虐殺応援団サミットという、広島にとっては黒歴史のサミットです。そのG7広島サミットを持ち上げるとは?!

その上、この場所は原爆資料館のすぐ北側です。修学旅行で原爆資料館に来られた小中高生はこの場所でよく休憩しておられました。その場所も奪ってしまうのが湯崎英彦知事です。

その湯崎知事ですが「内政」面でも米国型の腐敗を広島に持ち込んでしまいました。日本の政治の腐敗もたいがいですが、米国の腐敗も実は一段と酷いものがあります。試験を受かった官僚よりも政治家や政治家が任命した公務員が強い。その政治家のお友達が利権をあさる構造はむしろ日本よりも酷いかもしれません。米国が戦争国家であることとそれは深く関係しています。

湯崎知事が任命した平川前教育長は、まさにその典型です。平川前教育長は、ご自身のご友人のNPOパンゲアのために県費で仕事を造ったり、東京のご友人の赤木かん子をぼろ儲けさせたりするなどしたとして、合計で1億500万円を返すように住民訴訟を起こされています。また、広島地検に官製談合防止法違反、地方自治法違反の被疑事実で告発され、正式に被疑者となっています。そんな平川前教育長の法令違反を湯崎知事は「改革の副作用」と持ち上げています。平川前教育長のやったことは、米国型の腐敗であり、湯崎知事もそうした米国型の腐敗に汚染された知事である、ということです。

業者が賄賂を政治家に渡す「お代官様」「越後屋、お主も悪よのう」的な、旧来の日本的な(?)腐敗はわかりやすいが、こうした米国型の腐敗はわかりにくいのかもしれません。しかし、放置していけば、日本を大きくダメにしていくでしょう。

◆反省無き米国と姉妹協定、いよいよ始動の松井市長

そして、松井一實広島市長。原爆投下の反省も謝罪もない米国政府と、平和記念公園―パールハーバーの姉妹協定を結んでしまいました。そして、その協定が予算化され、この4月から若者のパールハーバー視察などの形で始動しています。

日本政府は、裁判内容が適切かどうかは別として東京裁判で戦争責任者が処罰されています。また、対アジア諸国と言う意味では、いわゆる、「国策を誤り戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって諸国民に多大の損害と苦痛を与えたことを反省し、謝罪を表明する」村山談話をアジア大会の翌念にもあたる1995年に発表しています。その村山談話はその後の自民党内閣にも引き継がれています。

しかし、米国政府は、原爆についてまったく、反省や謝罪はありません。そもそも、世界最強の暴力装置ともいえる米国政府にそれを強制させる主体がなかったとも言えます。

もちろん、広島市の平和行政としては米国政府にことさらに謝罪や反省は求めず「もう誰にも同じ思いをさせたくない」というスタンスを前面に、国際的な支持を取り付ける戦略を取ってきました。それは平和行政としては一概に誤りとは言えないと思います。しかし、露骨に原爆を今でも正当化する国会議員も抱え、政府自体も謝罪や反省もない政府を相手に姉妹協定とは、違和感しかありません。しかも、議会で批准に準ずる手続きもとることもなく、市長のほぼ独断でされたわけです。仲よくするから良いじゃないか、というのもおかしなことです。

すでに自治体レベルで広島市とホノルル市とは姉妹都市協定があり、ホノルル市は平和首長会議にも参加いただいているわけです。地方行政における平和行政の王道は、平和首長会議を軸に各都市が各国政府を突き上げていくということではないでしょうか?

この協定は5年おきに更新期限が来ます。米国政府が原爆についての反省や謝罪などをしない限り、次回は更新しない方向で検討すべきでしょう。

◆広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が虐殺にあっているのに……

そして、広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が今、イスラエルによる大虐殺にあっています。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻はすぐに批判した広島市長は、今回のガザ虐殺についてはだんまりです。

市議会はそれでも停戦を求める決議をしました。だが、肝心の市長がだんまり。米国への忖度ではないか、と疑われても仕方はありません。

◆戦前戦中の廣島から戦後のヒロシマ、そして米国忖度のHIROSHIMAへ

明治から第二次世界大戦敗戦までの戦前戦中は「廣島市」は軍都として、アジアへの出兵の拠点となりました。日清戦争では明治帝、伊藤博文首相、帝国議会が広島に来て、広島は臨時首都となりました。第二次世界大戦敗戦直前には第二総軍がおかれ、本土決戦に備え、大日本帝国の西半分を指揮する司令部がおかれたのです。

敗戦後は、日本国憲法施行を経て、同憲法第95条に基づき、住民投票を経て1949年7月、広島平和記念都市建設法が制定されました。平和都市ヒロシマとして再出発したのです。

しかし、2023年のG7広島サミットにより、広島は米国に忖度するHIROSHIMAとして、米国の核戦略正当化に利用されるようになっているのではないか?また、内政面でも湯崎知事に代表されるように、県民のためではなく、知事のお友達中心の政治になっているのではないか?

◆庶民革命で市民・県民の手に広島を取りもどそう

アジア大会から30年。ますます、おかしな方向へ向かっている広島。ただ、「はだしのゲン」に登場する政治家・鮫島伝次郎のような広島の政治文化の本質が表れているだけかもしれない。

そうなのだろうけれども、そうだと簡単にあきらめるわけにはいかない。広島の政治を、暴走する総理、知事、市長から市民、県民の手に取りもどす。それしかまずはない。

筆者はあきらめずに「ヒロシマ庶民革命」を呼びかけ続けるものです。

広島瀬戸内新聞とさとうしゅういちは「あなたの手に広島を取り戻し広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を呼び掛けています。 「我こそは庶民派の政治家に!」(首長、地方議員、国会議員)、また庶民派の政治家とともに広島を取り戻したいというあなたからのご連絡や記事のご投稿をお待ちしております。
電話番号 090-3171-4437 メール hiroseto2004@yahoo.co.jp

また、さとうしゅういちの政治活動としてのヒロシマ庶民革命に対するご寄付もお待ちしております(日本国籍の方に限る)。
・郵便振替口座 01330-0-49219 さとうしゅういちネット
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

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◆津波対策と地盤変状対策は現実に即しているのか

志賀原発では、「能登半島北方沖(石川県想定波源)」と「能登半島西方沖の海底地すべり」による津波の組み合わせを「基準津波」の根拠として選定している。

押し波には基準津波7.1メートルに対して敷地高さ11メートル、防潮堤の高さ4メートルで、合わせて15メートルの高さまで対応できるとしている。

冷却用海水の取り込みは海底トンネルを使って敷地内のピットに送られ最上部は敷地内で防水板により15メートルまでの高さに耐えられるように造られている。内部溢水は15メートルを超えなければ起こらない。

一方、津波は押し波だけでなく引き波もある。基準津波による最低水位はマイナス4.0メートルとして、さらにそれより2.2メートル低い位置に取水口を設けている。

今回の地震では4メートル以上の隆起が確認され、輪島市や珠洲市では海面が下がり海岸線が最大250メートル後退した。

もし、志賀原発において同等以上の隆起が発生した場合、海水トンネルは破壊され、取水口も露出し、海水取り込みができなくなる可能性が高い。

これで、どの程度まで冷却が可能だろうか。海水ポンプによる冷却は使用済燃料プールも、残留熱除去系統も、非常用ディーゼル発電機も、すべてこれに頼っている。特定重大事故等対処施設での発電機は何を冷却材にしているのか明らかにされていないが、海水であれば同じ問題になる。

別途「可搬型代替海水ポンプ(大容量ポンプ車)」も配備しているが、取水場所はピットである。4メートル以上隆起したら結果的に取水不能になる。

淡水貯水槽や1部空冷の発電機や電源車はあるものの、これでいつまでもつのか、今回のように国道など主要道路は地震や津波で使用不可能になり、大規模な救援は1ヶ月以上も止まることを前提として考えなければならない。

◆地震評価は現実に即しているのか

基準地震動は現在1000ガルで申請されている。これは「笹波沖断層帯による地震」および「福浦断層による地震」を想定した評価を行ったという。

現在の基準地震動は「笹波沖断層帯による地震」のみで600ガルだ。また、「震源を特定せず策定する地震動」については2004年の北海道留萌支庁南部地震の観測記録に基づく地震動を考慮しているという。

今回発生した能登半島地震で活動した断層系については十分に考慮されていない。
今回の地震は、現段階では3つないしそれ以上のセグメント(断層区分)が同時または連続的に活動したと分析されている。

志賀原発の地震想定に含まれている「笹波沖(ささなみおき)断層帯」「富来川(とぎがわ)南岸断層」も今回活動した可能性があるが、北陸電力はこの断層系と今回地震を起こした3つの断層系、猿山沖セグメント、輪島沖セグメント、珠洲沖セグメントの連動について否定していた。

なお、この3つのセグメント、合計96キロが動く可能性があることは以前から想定していた。しかし北陸電力は原発から離れていることで安全性に問題はないと判断し評価対象には含めていなかった。

3つまたはそれ以上のセグメントが連動して活動したことは、その南側にある富来川南岸断層から眉丈山(びじょうざん)第2断層や邑知潟(おうちがた)断層帯までの区域においても、複数の断層が連動して活動する可能性が高まったと考えられる。この区域の真ん中に志賀原発がある。

◆志賀原発の耐震評価の実態

新規制基準以降、原発の地震対策は強化されていると考えるならば楽観的に過ぎる。2007年3月25日の能登半島地震(M6.9)では、旧耐震設計審査指針のもとでS1は375ガル、S2は490ガルとして設計された原発で観測された揺れは最大711ガルだった。

この時も1、2号機は停止していた。今回同様、使用済み燃料プールから溢水したが、燃料の冷却は継続されており、重大事故には至らなかった。しかし女川原発に次いで基準地震動を超える揺れに襲われた2例目の原発として大きな問題となった。

兵庫県南部地震による震災を契機に、耐震設計審査指針が過小であるとの批判が高まり、2006年9月に28年ぶりに抜本改訂された。この改訂には志賀原発2号機差し止めの金沢地裁判決(井戸謙一裁判長)が大きく影響している。

当時の原子力安全.保安院は既設の原子力施設についても新指針に適合するかどうかバックチェックを行うよう指示を出した。電力会社等は、活断層調査などを実施して2008年3月に中間評価結果を保安院に報告した。

志賀原発では、それまで認めていなかった活断層を追加認定した結果、基準地震動が600ガルに引き上げられた。

その後の福島第一原発事故を受けて、新規制基準適合性審査の申請で、2014年には2号機で基準地震動を1000ガルに引き上げると申請している。

こうした経緯を知らなければ、今回の地震では約399.3ガルの揺れに対して基準地震動は十分余裕があるから安全と思ってしまうかもしれない。

基準地震動を引き上げたから安全性も高まるのかというと、そうとは言えない。

建設前の地震想定が現実から乖離してきたため、基準となる揺れの大きさが過小評価されてきた。結果的に基準地震動を2.7倍も引き上げざるを得なかった。これは志賀原発に限った話ではない。日本中すべての原発、原子力施設で同様の事態が起きている。そのため耐震補強を行っているが、建屋など取り替えられないところなどでは、安全余裕を食い潰しているに過ぎない。(つづく)

山崎久隆「大地動乱」と原発の危険な関係(全3回)
〈1〉2024年元日の能登半島地震と志賀原発
〈2〉あまりに楽観的に過ぎる原発の地震対策

本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

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タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号お得)。

ここでは6月号の注目記事2本の一部を紹介します。

◆岸田訪米の能天気は害悪だ! アメリカが狙うアジアの1兆ドル海洋資源
 取材・文◎浜田和幸(国際政治経済学者、元参議院議員)

 

 

 岸田「忖度演説」をよそに米中駆け引きの新展開

4月に国賓待遇で訪米した岸田文雄首相は同11日、米議会上下両院合同会議において「未来に向けて~我々のグローバルパートナーシップ~」と題して演説を行ないました。この演説はロナルド・レーガン元大統領のスピーチライターからのアドバイスを基に、国際秩序維持への米国の貢献を讃えつつ、民主・共和両党の分断を助長しないように配慮したもの。

岸田首相は幼少期にニューヨークの公立小学校に通った当時の思い出に触れながら、日本と米国が「最も親しいトモダチとして、世界の未来を創造する責任を分担して果たしていきたい」と訴えました。これまでの米国の指導力を称賛し、引き続き米国が国際問題で中心的役割を果たすように呼び掛けたものです。

とはいえ、これでは岸田カラーが印象に残らないどころか、「アメリカ頼み」の感はぬぐえません。11月の大統領選挙を念頭に、米国内の分裂や分断にはあえて目を向けないようにし、日米両国がAI・量子・半導体・バイオテクノロジー・グリーンエネルギーなど次世代を切り開く最新技術の発展において協力する可能性に焦点を当てることに腐心しただけでした。

注視すべきは、こうした分野で米国は中国との連携にも関心を寄せているということです。

というのも、同じ頃に中国を訪問していたイエレン財務長官は「中国と米国で世界を2分すればいい」との大胆な提案を繰り広げていました。日本はあくまで「捨て駒」としか見なされてはいないのです。

バイデン大統領は岸田首相や「ボンボン」の愛称で知られるフィリピンのマルコス・ジュニア大統領をワシントンに招き、中国包囲網の形成に力を注ぐ姿勢を見せてはいました。とはいえ、アメリカの本音はあくまで自国の産業最優先。中国の脅威をことさらに煽ることで、米国製の武器を日本やフィリピンに大量に売りつけることにあることは疑いの余地がありません。

日本では関心を呼びませんでしたが、ワシントンでの日米比3カ国首脳会談の直前には、アメリカのレモンド商務長官一行がフィリピンの首都マニラを訪問し、同国周辺の海洋資源開発のためのファンドを立ち上げることを明らかにしています。

実は、フィリピン沖合の天然ガスや石油などの資源には、中国も日本も前々から大きな関心を寄せてきました。アメリカ政府はこうした資源を中国や日本の資金と技術で開発し、自国のエネルギー企業の利権に直結するように働きかけているのです。

しかし残念ながら、岸田首相にとっては、フィリピンの資源を巡るアメリカと中国の駆け引きは関心外の模様で、情報収集のアンテナが向けられていないことが歴然としました。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nda41dedeaeff

◆TSMCが熊本の水を殺す 半導体工場がもたらすPFAS汚染 
 取材・文◎本誌編集部(【特集】隠蔽される「健康被害」より)

 

 

 なぜ半導体工場はアジアに集中するのか

コンピュータやスマートフォン、家電から車まで、多岐に渡る製品に必要な「産業のコメ」と呼ばれる半導体が、世界で深刻な供給不足に陥っているといわれてすでに久しい。

そうした状況下、「世界最大のファウンドリ(半導体委託製造メーカー)」であるTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県菊陽町に進出し、第1工場が竣工。2月24日に開催された開所式には齋藤健経済産業大臣や蒲島郁夫熊本県知事(当時)らが出席した。隣接地には2027年の稼働開始を目指し、第2工場の建設も決定されている。

地元では新駅や高速鉄道建設も計画され、「食堂のパートの時給が3000円」「3000万円の庭付き一戸建てが6000万円に爆上がり」といった景気のいい報道が続き、「空前の半導体バブル」ともてはやされている。

ただし、冷静になって考えれば、いくつかの大きな疑問がわく。

まず、半導体製造が、それほど重要で雇用を生み出し、利益をもたらす産業であるなら、なぜ欧米ではなく中国・台湾・韓国、そして日本に集中するのか、ということだ。

国・地域別に見た場合、半導体の生産能力は、トップの台湾が21.6%、韓国が20.9%、日本が16.0%、中国が13.9%(IC Insights、19年)。実に72%をこれらアジアの国・地域が占めている。米国は12.8%でも、欧州は全体で5.8%にすぎない。欧州は1990年代、世界の半導体産業の44%を占めていたとされる。米国も同時期は37%だった。

半導体製造の主要地は、なぜアジアに移動したのか。その大きな原因が、半導体工場に勤務する労働者を襲った健康被害だといわれる。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n474afde43b23

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

『紙の爆弾』2024年 6月号

岸田訪米の能天気は害悪だ!アメリカが狙うアジアの一兆ドル海洋資源
次期戦闘機の第三国輸出解禁 日本を「兵器産業国家」にする公明・創価学会の“貢献”

【特集】隠蔽される「健康被害」
TSMCが熊本の水を殺す半導体工場のPFAS汚染
がんを引き起こし脳の働きを阻害する遺伝子組換え食品によるこれだけの危険
小林製薬「紅麹問題」で少なくとも言えること
開業延期」ではなく「計画中止」を リニア新幹線「電磁波と白血病」

「議員も記者も排除」で答弁拒否率76% 小池百合子 暴かれた“女帝”の虚像
裏金事件でも自民党で“岸田降ろし”が起きない理由
「大阪カジノIR」の真のリスク 水原一平事件の語られざる本質
一水会50年は、対米自立実現の橋頭堡である
事業者に従業員を監視・排除させる日本版DBS法案の違憲性
“制裁ありき”の駄文判決 岡口基一判事弾劾裁判「多数決で罷免」の異常
ジュリー前社長が手放さないジャニーズファンクラブ巨額の行方
失言バカ政治家の傾向と対策
改憲派2社以外も“軍拡肯定”2025年度中学教科書 防衛省の広報誌化
シリーズ 日本の冤罪50 北方事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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連休の5月3、4日、石川県の能登半島に行ってきました。ボランティアでなくて申し訳ないが、石川県の珠洲市(すずし)で30年もの間、住民の皆さんと原発建設の反対運動を闘い、2003年ついに計画を凍結に追い込んだ(凍結が解凍出来ないから結果中止)元石川県議・元珠洲市議で現在「志賀原発を廃炉へ!訴訟」の原告団長・北野進さんにお話を聞くためにです。北野さんからお聞きしたお話などはまたなにかの機会に紹介出来ればと思います。

 

『季節』2024年春号 表紙は関西電力が珠洲原発の立地可能性調査を予定していた区域にある高屋漁港の状況。1月1日の地震後、2メートルほどの隆起を指し示す北野進さん

もうひとつの目的は、珠洲市で原発建設が予定されていた高屋(たかや)と寺家(じげ)地区が地震でどのような被害を受けたか、さらには鹿砦社発行の反原発季刊雑誌『季節』39号(2024年3月発売号)の表紙及びグラビアで北野さんが指し示していた珠洲原発建設予定地の海底の隆起状況などを、この目で確認したかったからです。

現地に住んでいない私にとって「海底が隆起した」と言われても(凄いなとは思うものの)見た目ではなかなかわかりにくかったのですが、実際の現場で、「尾崎さん、ココは以前は海だったんですよ。それが今は隆起して海面からでてるんですよ」と説明され、自分でもそこを普通に歩いていると、「ここは海底なんだ」と不思議な気持ちになりました。

もともと能登半島の歴史を調べると、地震などで隆起、隆起を繰り返し、今の半島が形成されています。それでも今いる住民は海底が隆起したのを見るのは初めてで、住民は最初見たとき、潮が引いて海底が見えていると考えたそうです。そして「では、大きな津波が来るのか」と心配していたところ、それが海底の地盤の隆起とわかったそうです。光にあたるとどんどん白くなるそうです。

珠洲の狼煙から輪島方面にかけて150キロもの長い間隆起し、幸運なことに志賀源波の少し手前で止まっていたといいます。一番高いところでは4メートルも隆起したそうです(ちなみに福井県では過去に5メートル隆起した箇所があるそうです)。周辺の人々は一晩にして目の前の光景がかわったことになります。それだけ激しく強く力が働いたということです。恐ろしいことです。珠洲に原発が建設されていたら……元旦の大地震で珠洲市、能登半島、石川県どころか関西一園が壊滅していたでしょう。

珠洲市寺家地区で原発の建設予定地にカメラを向ける北野さん。先端の白い建物は「ランプの宿」

北野さんが指差す岩近くまで海だった。元旦の地震で海底の地盤が歩けるようになった

北野さんが指差すあたりまで隆起した

本当に本当に珠洲市の皆さん始め、周辺の原発反対を訴える方々の闘いのお陰です。ということで、珠洲の皆さんの闘いを知ろうと北野さんに連絡しました。正直、私は珠洲という地域で昔、原発建設を止めた人たちがいるらしい程度の知識しか持ち合わせていませんでした。多忙な北野さんにあわせて急遽珠洲行きがきまったので、慌てて関連記事、資料などを読み込んでいきました。

2日間に渡ったのは、前日金沢まで入らないと取材は無理とわかったからです。珠洲市には国鉄高速バスが通ってますが、震災前3往復あったものが現在は1往復のみ。朝7時15分に金沢駅を出発し、珠洲市役所、終点未知の駅「すずなり館」に着くのが11時過ぎ。帰りは3時ジャストがあり、それに乗ると金沢から大阪に戻れるということで、3日は扇町公園の憲法集会でチラシまきをして、すぐに金沢へ向かいました。

7時15分金沢駅発のバスに乗ると、隣に座った70代の女性も珠洲へ行くとのことで、いろんなお話を伺いました。女性の家は海岸から100メートル位のところにあり、津波被害にあいました。女性はちょうど輪島の親戚宅にいて津波の難は逃れました。近くで亡くなった方もいたそうです。

能登半島では昨年も一昨年も震度5弱、6弱の地震がおこり、女性の家でもあちこち損傷したため、少しづつ直し、最後に床を直してもらう業者に予約をいれていたところだそうです。しかし、今回の地震で津波被害に遭い、家はぐしゃぐしゃになったそうです。震災後、女性は富山の親戚宅に住みながら、ときおり珠洲に用事に来るそうです。

「今日は家に荷物を取りにいくのですか?」とお聞きしたところ、「違うの。役所で家を解体してもらう手続きですよ。もう住めない。荷物も取り出せない。荷物というのは入れる家があって持ちだせる。持ってきたいものはあるけどね。家に帰っても目をつむって置いてくるの」。

目をつむって置いてくる……辛すぎます。(5日の夕方のニュースで珠洲市での家の公費解体の受付のようすを放送していました。先月30日時点で申請数は1万279棟、うち解体が完了した家は全体の1%の129棟だそうです。朝会った女性には帰りのバスでもお会いしましたが、なかなか手続きが進まないと嘆いておりました)。
 

珠洲市内、原発建設予定地近くで多くの家屋が倒壊、半壊していた。連休で片付け作業に来る方々の姿もチラホラ

北野さんの家で2時間ほどお話をお聞きし、そのあと原発建設予定地だった寺家地区と高屋地区を案内してもらいました。2つの地域は近くだと思っていましたが、ずいぶん離れています。もし原発が出来ていたら「柏崎刈羽原発」のように「高屋寺家原発」と呼ばれていたかもしれません。

また道路も陥没したり、マンホールが隆起していたり、崖くずれの大きな石がどーんとあったりして移動に時間を取られ、ゆっくり回ってみるには時間が足りませんでした。それでもどのようにして珠洲の皆さんが闘い、原発の建設をやめさせてきたかの貴重なお話はたっぷり聞いてまいりました。記事を楽しみにお待ちください。

北野進さんと著書『珠洲原発・阻止へのあゆみ―選挙を闘いぬいて』(七つ森書館 2005年)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『季節』2024年春号 表紙は関西電力が珠洲原発の立地可能性調査を予定していた区域にある高屋漁港の状況。1月1日の地震後、2メートルほどの隆起を指し示す北野進さん

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本稿は、携帯電話基地局から放射させる電磁波をめぐる電話会社と住民のトラブルに焦点を当てた連載の後編である。前編では、電磁波による人体影響を科学的な観点から説明した。電磁波に関するフェイクニュースの氾濫を踏まえたうえで、電磁波の何が問題なのかを指摘した。

携帯電話基地局から放射させるマイクロ波の何が問題なのか?〈前編〉

◆楽天モバイル、天井裏に基地局を設置

 

大宮ファーストプレイスタワー

JR大宮駅(さいたま市)の周辺には、商業施設やマンションが立ち並ぶ。その一角に空を背に聳える大宮ファーストプレイスタワーがある。25階の高層マンションである。戸数は179戸。

2023年の秋、楽天モバイルは、この集合住宅の管理組合に対して、建物内に5Gの基地局を設置する案を打診してきた。賃料は、最初は月額3万円を提示し、後日、4万円に改めた。設置場所は、1階ロビーの天井裏である。

天井裏に基地局を設置する手法について、わたしはかねてから違和感を感じていた。このタイプの基地局の存在をわたしが知ったのは2年ほど前だった。やはり楽天モバイルの基地局で、大阪市の住民から相談があったのが発端だった。その後、何人かの住民が同じタイプの基地局について、わたしに相談してきた。

楽天モバイルが管理組合に提出した基地局の位置と電磁波の照射方向を示すイメージ図によると、照射範囲は1階のロビーになっている。注意書は、次のように記述している。

「今回の電波対策はスポットでのアンテナ設置の為、局所的なサービスとなり、マンション全体への電波対策ではない」

楽天側が提示した基地局の設置場所を示す資料

4月5日、わたしは現地を取材したが、1階は平日ということもあり利用者はほとんどいなかった。ソファーは設置してあるが、生活空間というよりも住民の「通路点」に近い。その空間を限定的に5Gのエリアにする理由が理解できなかった。

念のために楽天モバイルの担当者に電話で、基地局が網羅する範囲について確認したところやはり、1階のロビーが5Gの対象だという。基地局を屋根裏に隠して、建物の外もカバー範囲になっているのではないかと考えて、楽天モバイルの担当者に電話でこの点を問い合わせてみたが、この推測も否定された。マンションのロビーが照射範囲なのだという。

さらに楽天モバイルの広報部にも同じ問い合わせをしてみたが、回答はなかった。

◆住民の生存権よりも電話会社に配慮

大宮ファーストプレイスタワーの基地局問題では、もうひとつ疑問点がある。

基地局の設置を許可するか否かはマンションの管理組合が決める。その際、総会を開いて採決を取らなければならない。建物の形状を変える場合、住民定数の4分の3の承諾を得なければならない。ただし、管理組合の規約に定数を2分の1とする条項があれば、規約を優先することもできる。

大宮ファーストプレイスタワーの管理組合は、2023年12月24日に、臨時総会を開き、基地局の設置を可決した。賛成者は4分の3に満たなかったが、2分の1には達していたので、設置が承認されたかたちとなった。

これまでわたしが取材したケースでは、基地局設置の賛否を4分の3で採決して、計画が中止になったケースが何件もある。ところが最近は2分の1の採決が採用されるケースが増えている。電磁波(低周波音を含む)に対して繊細な住民がいれば、住民の生存権を優先しなければならないが、なぜか管理組合が基地局を設置する方向で積極的に動くことが多い。
 
基地局が稼働した後、住民のAさんが体調不良を訴えた。頭痛、胸痛、耳痛、目がチカチカするなどの症状などが現れたという。基地局からのマイクロ波を直接受けているわけではないが、基地局を設置すると相対的に生活空間の電磁波は強くなる。電磁波に過敏な体質の人には影響が現れる。

楽天モバイルは、管理組合が基地局の撤去を決議した場合は、無料で応じるとしているが、Aさんには、それまで体調不良を我慢するか、他の場所に引っ越すかの選択肢がない。

◆三菱地所が介在、ソフトバンクが事業を推進

 

ライブタワー武蔵浦和

さいたま市南区でも基地局の設置をめぐるトラブルが起きている。トラブルの現場は、JR埼京線の武蔵浦和駅に隣接した商業施設にある38階のタワーマンションである。ライブタワー武蔵浦和という名称だ。

このケースには、なぜか三菱地所が関与している。三菱地所がライブタワー武蔵浦和を管理しているわけではないが、問題の発端はこの不動産大手である。

発端は、2022年の秋だった。三菱地所は、ライブタワー武蔵浦和に対して、共有部数に基地局を設置する案を打診してきた。それを受けて管理組合(理事長は自由法曹団系の東京法律事務所の弁護士)は、設置の方向で検討し始めた。基地局を設置する電話会社は、ソフトバンクと楽天モバイルである。ただし、楽天モバイルは途中で計画を中止した。

このケースで特徴的なのは、大手の不動産会社が基地局の設置場所を探して、電話会社に仲介する役割を担った事実である。わたしが知る限り、マンションの管理会社が電話会社に基地局の設置を打診してトラブルになった例はあるが、第三者の不動産大手が介在した例はない。三菱地所は、今後、こうした仲介がビジネスとして成立すると見込んでいる可能性が高い。住民にとっては迷惑な話である。

この集合住宅に住むBさんは、管理組合の理事会に対して計画の白紙撤回を求め続けている。電磁波による人体影響を受けやすい体質なので、基地局が稼働した場合の体調の変化を心配しているのだ。しかし、4月25日の時点では、設置の方向で話が進んでいる。採決は臨時総会で行われるという。

わたしは三菱地所、ソフトバンク、それに管理組合の理事長に書面でいくつかの質問を送付した。三者に共通した質問のひとつに電磁波の安全性に関するものがある。次の質問である。

「総務省が設置しているマイクロ波の規制値は、1000μW/c㎡(マイクロワット・パー・平方センチメートル)となっており、たとえば欧州評議会の0.1μW/c㎡に比べて、1万倍も緩やかに設定されています。1000μW/c㎡でマイクロ波による人体影響がないと考える科学的な根拠を教えてください。」

三者とも揃って回答を拒否した。かつては日本弁護士連合会も、基地局問題を重大視して集会を開催するなどしていたが、現在は沈黙している。マイクロ波による人体影響が認められないことが分かった結果、この問題を回避するようになったというのであれば理解できるが、欧州では以前にも増してマイクロ波の遺伝子毒性が問題になっている。5Gの推進をペンディングにしている自治体もある。

日本には電波通信網の普及という国策があるにしても、どこかで歯止めをかけなければ、人類は高いリスクを背負うことになる。住民の健康よりも企業の利益を優先することがあってはならない。住居を台無しにしてはいけない。

黒薮哲哉 携帯電話基地局から放射させるマイクロ波の何が問題なのか?
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=49690
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=49765

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
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黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

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2003年1月16日、京都市下京区の俳優の平野義幸さんの自宅で火災が発生し平野さんと内縁関係にあった女性が焼死しました。その後、平野さんは放火・殺人罪で逮捕・起訴されました。

 

平野義幸さん

平野さんは1992年から大地義幸の名前で俳優活動を始め、「新・仁義なき戦い」「荒ぶる魂」などに出演していました。しかし、火災事故が起こる数年前、平野さんは、妻、親友だった菅原文太さんの息子さん、先輩俳優らを立て続けに亡くし自暴自棄になっていました。そんな時、平野さんが再び俳優業をやれるよう背中を押してくれたのが焼死した女性でした。「恩人を殺せる訳がない」。平野さんは一貫して無実を訴えています。

しかし、京都地裁は平野さんに懲役15年を言い渡した。15年と短かったのは、裁判官の中に平野さんは無実と主張した人がいたのではと、当時の弁護団は述べていましたが、その後大阪高裁は「平野さんが反省してないから」と無期懲役を言い渡しました。その後最高裁で刑が確定、平野さんは現在徳島刑務所に服役しています。

平野さんには、同じ放火殺人で娘を焼死させたとして逮捕された東住吉事件の冤罪犠牲者・青木恵子さん(その後再審で無罪が確定、国賠で一部勝訴)が定期的に面会に訪れています。筆者も青木さんを通じて平野さんを知り手紙のやりとりなどを行っています。

そして現在、青木さん、平野さんの無実を晴らすために、現在青木さん、映像ジャーナリストの二村昌弘さん、そして原審を担当した堀和幸弁護士(京都弁護士会)らとともに再審に向けた準備を進めており、その第一歩として、以下の実験を行う予定です。

警察、検察は、当時ストーブはついてなかったが(極寒の京都でそんなことがあるでしょうか?)、平野さんが女性を焼死させるため灯油をまき、火をつけたと主張。一方、平野さんは2階のストーブ近くに灯油がこぼれていたため危険だと思い、1階に灯油を拭くタオルなどを取りにいったが、その間に2階で何らかの原因で火災が発生、女性が焼死したと主張した。

火災発生時、平野さんは必死で女性を救助しようとし、自身も火傷を負っています。しかし、2階は既に火の海で救助出来ず、その後表にでて周囲に救助を求めました。平野さんが燃え盛る家に入ろうとするので「このままではヨシ君(平野さん)が危ない」と近所の人たちが平野さんに膝カックン(膝の後ろを押してひざまずかせる)して止めていたことも確認されています。

今回行う予定の実験と、そのための2つの情報提供を堀弁護士が訴えています。多くの皆様に読んで頂き、情報提供にご協力をお願いしたいと存じます。どうぞ宜しくお願い致します。 

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【情報提供のお願い】

 

シャープ石油ストーブ「HSR-24L」取扱説明書

平野義幸さんの再審請求を担当している弁護士の堀和幸です。前回に続いてのお願いで恐縮ですが、2点、情報提供していただきたいことがあり投稿させていただきました。

【1】シャープ製・石油ストーブ提供のお願い

平野さんが放火したとされた部屋には石油ストーブがありました。この石油ストーブが、再審請求する際に大きな役割を果たすと考えているのですが、残念ながら現物はすでに廃棄されています。もし同型の石油ストーブをお持ちで、不要だという方がいらっしゃいましたら、ご提供いただきたいと考えております。

「シャープ製 石油ストーブ/型番:HSR-24L」
(2000年販売開始、2007年に製造打ち切り)

【2】石油ストーブの構造に詳しい技術者の方を探しています

もう一点は、このシャープ製の石油ストーブの設計、製造に関わっていた技術者の方を探しています。石油ストーブの構造や「対震自動消火装置」についてぜひお話を伺いたいことがあります。現在、シャープは石油ストーブの製造を行っていないため、技術的な問い合わせに対応できないと言われています。もし該当する技術者の方がいらっしゃいましたらご連絡いただけると幸いです。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

4月11日に米国議会上下両院合同会議で「日本は控えめな同盟国から、強くコミットした同盟国へと自らを変革してきた」「日本はすでに、米国と肩を組んで共に立ち上がっている。米国は独りではない。日本は米国と共にある」などと演説した岸田文雄首相。米国の“覇権”に非西側陣営はもちろん米国内からも疑問が呈されるなか、それでも日本は支えるから、心配せずにそのまま邁進してほしい、という“心中宣言”です。

であれば、日本のメディアが繰り返し報道した「十数回のスタンディングオベーション」はどういう意味だったのか。とくに、イスラエルと同国を支援する米国政府に対する抗議の声は全米で高まり、政府や企業が時に弾圧と呼べる手段でそれを抑圧しています。議場にいた議員たちも、米国が永遠に“唯一超大国”ではいられず、そのことが自らの首を締めつつあることを認識しているはず……そう考えると背筋に冷たいものが走りますが、岸田首相やその取り巻きは議場の反応に大満足したようでした。

しかし、そもそも議場はどういう状態だったのか。そして、岸田首相の演説原稿はどのように作られたのか。日本のメディアが報じなかった実際のところを、今月号で元外務大臣政務官の浜田和幸氏が明かしています。

同時に指摘するのが、米国が日本を踏み台にして狙うアジアの利権です。詳細は記事をお読みいただければと思いますが、少なくとも米国にとって日本は「肩を組んで共に立ち上がる」存在ではないようです。

今月号では、大谷翔平通訳・水原一平事件の背景にみられる国際的なカジノ・ネットワークやヒューマン・トラフィック(人身取引)ネットワークについて指摘。WHO(世界保健機関)やコロナワクチン(mRNAワクチン)に象徴される「医療」、日本も参入する「兵器」も含めて、それら国際ネットワークの“市場規模”の大きさに驚愕するところです。そして現状を凝視すると、むしろ政界や官公庁は、その下にかしずく存在に見えてきます。

特集では、半導体製造の必需品として工場からの漏洩の可能性が指摘されるPFAS、身の回りの電子機器から発生する電磁波、食物・作物の遺伝子組み換えなどによる「健康被害」を考えました。またコロナワクチンの危険性が周知されつつあるなかで起きた「紅麹」問題にも、独自の視点で解説を試みました。それらはいずれも、人命を利権化する行為といえます。「利権」であって「経済」ではない点も、強調したいと思います。また事態は日本国内にとどまるものでもありません。

4月号で自民党裏金事件における「検察捜査の穴」を指摘した郷原信郎弁護士が、上脇博之・神戸学院大学教授とともに、丸川珠代参議院議員と清和政策研究会代表で会計責任者の松本淳一郎氏を政治資金規正法違反等で3月28日に東京地検に告発。同法の問題点を知る郷原弁護士だけに、その後の展開が注目されるところです。

一方、裏金事件で政権と自民党の支持率が低下しても、議員は逃れ、その間にも自創強力で第三国への戦闘機輸出、重要経済安保情報保護活用法(前号参照)、日本版DBS、改正NTT法など、日本の国としてのかたちを変えるいくつもの法やルールの成立・改悪が進んでいます。それぞれ問題を把握するとともに、その裏にある仕組みにも迫らなければなりません。

ほか、もの言う裁判官・岡口基一判事を「罷免」とした弾劾裁判の内実をはじめ、小池百合子東京都知事の“虚像”、ジャニーズ巨額収益の行方など、5月号も多様なテーマに斬り込んでいます。全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

『紙の爆弾』2024年 6月号

岸田訪米の能天気は害悪だ!アメリカが狙うアジアの一兆ドル海洋資源
次期戦闘機の第三国輸出解禁 日本を「兵器産業国家」にする公明・創価学会の“貢献”

【特集】隠蔽される「健康被害」
TSMCが熊本の水を殺す半導体工場のPFAS汚染
がんを引き起こし脳の働きを阻害する遺伝子組換え食品によるこれだけの危険
小林製薬「紅麹問題」で少なくとも言えること
「開業延期」ではなく「計画中止」を リニア新幹線「電磁波と白血病」

「議員も記者も排除」で答弁拒否率76% 小池百合子 暴かれた“女帝”の虚像
裏金事件でも自民党で“岸田降ろし”が起きない理由
「大阪カジノIR」の真のリスク 水原一平事件の語られざる本質
一水会50年は、対米自立実現の橋頭堡である
事業者に従業員を監視・排除させる日本版DBS法案の違憲性
“制裁ありき”の駄文判決 岡口基一判事弾劾裁判「多数決で罷免」の異常
ジュリー前社長が手放さないジャニーズファンクラブ巨額の行方
失言バカ政治家の傾向と対策
改憲派2社以外も“軍拡肯定”2025年度中学教科書 防衛省の広報誌化
シリーズ 日本の冤罪50 北方事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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