世界で唯一、広島にだけあった乗り物「スカイレール」が2024年4月30日、26年の歴史に幕を閉じました。

 

「スカイレール」は神戸製鋼所と三菱重工が開発した、モノレールのような軌道に小さなゴンドラを吊り下げて運行する乗り物でした。

1998年8月、積水ハウスなどが開発した約2200世帯、人口7700人の「住宅団地スカイレールみどり坂」のみどり中央駅とみどり口駅(JR山陽線瀬野駅)の1.3km、高低差130mを5分、片道170円で結んでいました。山陽線を通じての通勤客はもちろん、小中学生も登下校の手段として使っていました。

特徴としては、悪天候に強いことがあげられます。西日本大水害2018では被災地に向かうボランティアを輸送するなど活躍していました。また、1998年の運輸白書でも、今後の活躍が期待されていました。

しかし、利用者数が低迷し、赤字が累積する一方でした。それでも、地域の交通手段として貴重であれば、行政の補助などで存続もあり得たでしょう。しかしながら、世界で唯一ということで、部品業者にとってはマーケットが極めて小さい=商売にならない=ということで、部品業者が撤退してしまい、設備の更新が困難になったことが決定だったようです。

2024年3月からは、すでに電気バスが先行して運行しており、瀬野駅までの交通手段となるそうです。確かに、スーパーにも寄るなど、バスの方が便利です。ただ、運賃はバスの方が200円と、スカイレールより高くなっています。

 

筆者は4月28日にスカイレールに乗車しました。この日は、夜勤明けで、かなり眠かったのです。しかし、翌日29日は雨だということで、それなら、今日のうちに行ってみようと思ったのです。

ちなみに安芸区は、筆者の妻の実家もあります。広島市西区の勤務先から自転車で東区の自宅に帰宅した筆者は、妻と二人で、自宅の最寄りの広島駅から山陽線に乗り、瀬野駅へ向かいました。そして瀬野駅で降りると、接続しているスカイレールの「みどり口駅」に向かいました。

このスカイレールはICOCAなどICカードが使えません。この点が不便と感じました。一々、切符を買わないといけないのです。その切符を買うのに並んでいる人がたくさんおられました。

時刻表を見ると15分おきにしか運行していません。前の人が切符を買っているうちに発車時刻が過ぎてしまい、がっかりしてしまいました。それでも気を取り直して、改札に向かいました。切符のQRコードを機械にかざすのがスカイレールの改札方法です。改札を過ぎて階段を上がると、なんと、次から次へとゴンドラが登場していました。混雑しているときには臨時便を運行する。これがスカイレールなのです。

筆者たちがゴンドラに乗り込むと、すぐに出発しました。グーンと上に上がっていく感じがしました。たしかに、ゴンドラからの眺めは最高でした。

「みどり中央駅」で降りると、周囲は瀟洒な住宅街でした。「きれいな家が多いね」と妻も感想を述べました。

みどり中央駅の近くには電気バスの車庫もありました。ただ、駅の周りには商業施設などはなく、たしかにこの点は不便だな、と感じました。みどり中央口駅には町の地図もあり「スカイレールタウンみどり坂」と、文字通り、スカイレールがこの街の象徴だったことを強く感じました。

広島県内もご多分に漏れず、高い場所にある団地の交通手段の確保が焦眉の急となっています。バスは運転手不足。アストラムラインのような軌道系交通の駅までは距離がある。一方で、高齢化の中で、住民の皆様の車の運転が困難になってきている。八方ふさがりの状況もありました。無人運転ができていたスカイレールは、これからを担う交通システムになった可能性もあったのでしょうが、残念ながら、この路線だけだったために、部品業者が撤退してしまったのが痛かったということでしょう。

いずれにせよ、住民の移動の権利を保障するため、今後も県民的な議論を進めるとともに、国にも地方交通の維持へ向けて財源などの面でのバックアップをお願いしたいものです。
 
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年5月号

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5月12日(日)、「西成青い空カンパ」で久々の企画を催します。

今回は、福島県浜通りで進む「福島イノベーション・コースト構想を監視する会」の和田央子(なかこ)さんをお招きし、「福島イノベーションコースト構想が進める惨事便乗型の軍事ビジネス」と題した講演会を大阪・浪速区の「ピースクラブ」で開催いたします。

私は2019年、この構想が進む浪江町請戸地区を訪れました。請戸地区は津波に根こそぎ流さられ、広大な更地と化しており、そこに何やら大きな工場、建物が建てられていました。当時、構想の全貌まではわかりせんでしたが、神戸の震災で焼け野原になった長田地区で行われた「復興」が、結局住民のためではなく、土建屋を肥え太らすものになったのではないかとみていた私は、請戸地区で進む「復興」もゼネコン、大企業が儲けるものになるだろうと考えました。同じことは、3・11以降、仲間と支援してきた福島県飯舘村の復興でも良く見てきたからです。

次々とハコモノが建設され進む飯舘村の復興には、あの原発メーカーである三菱や東芝が関わっていました。原発を動かしては儲け、壊して(壊れて)しまってからもまた儲けようという連中については、一昨年逝去された飯舘村前田地区の元区長・長谷川健一さんが著書「原発にふるさとを奪われて」に、こう書かれています。

「原発事故で多大な損害を受けた村が、原発で禄を食(は)んできた彼らの世話になる理由などないからです。そもそも彼らは抗議をする相手なのであって、世話になるパートナーではないのです」

この言葉を肝に銘じなければなりません。

またそのあとになりますが、小さな反原発の学習会で、浪江町から関西に移住してきた方が、寂しそうに、「私の故郷が大変なことになっています。国や推進派は原発が壊れても平気です。またそこで儲けようと考えてます」というような趣旨の発言をされました。

「私が前に訪れたあの場所だ……」

そして私はその実態を更に知りたいと,昨年7月、今野寿美雄さんの案内でその場所を見てきました。人が寄り付けなくなってしまった場所で、膨大な税金を使った国家的プロジェクトが、なぜかひっそりと進行しているような気がしました。

その全貌は、飯舘村の復興と同様に、決して元そこに住んでいた住民のためではないことはハッキリ見てとれました。そればかりか、政府の軍備拡大路線、戦争のできる国にしようという動きを後押しするような内容ではないでしょうか? それは原発事故のために、泣く泣く故郷を追われた人たちを更に苦しめるようなものではないでしょうか。

そこで今回、「福島イノベーションコースト構想を監視する会」の和田さんに、浜通りで進む国家的プロジェクトが何を狙っているのかなどをお聞きしたいと思います。一人でも多くの皆様に、福島県の浜通りで何が行われているか、ぜひ知って頂きたいと思います。

なお、終了後は、集い処はなに場所を移し、和田さんを囲んで親睦会を開催いたします。アカリトバリの演奏もあるかも……。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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《5月のことば》五月のやわらかい風とあたたかい緑に……(鹿砦社カレンダー2024より。龍一郎揮毫)

今年は逸早く夏が訪れた感がします。

おだやかで平和な季節です。

しかし、目を外に向けると、いまだに戦火は収まりません。

ウクライナ、パレスチナ・ガザ……

ところで、さすがに全米を揺るがしたベトナム反戦運動の歴史を持つアメリカでは、学生運動が拡大しつつあります。

その口火を切ったのはコロンビア大学。

われわれの世代には懐かしい大学名です。

そう、映画『いちご白書』の舞台になった大学です。これは1968年の同大学の学生運動をモチーフにした映画です。

映画は1970年6月米国封切り、日本では同年秋に公開されました。懐かしいな
あ。

さほどヒットしなかったとのことで、私は郷里の映画館で観た記憶がありますが、あまり観客は入っていなかった記憶があります。

主題歌は、バフィ・セントメリーの「サークル・ゲーム」ですが、こちらもあまりヒットしませんでした。

私はどちらも当時から知っていましたけどね。

映画も主題歌も、今また視聴したいものです。

日本では、のちに(1975年)旧姓・荒井由実が作りフォークデュオ「バンバン」が歌ってヒットした「『いちご白書』をもう一度」の名を出せば思い出される方も多いかと思います。むしろこちらのほうが有名で、この曲がヒットしたことで映画「いちご白書」も知られるようになったのではないでしょうか。

反戦運動は、コロンビア大学が口火を切り全米に拡がりつつあります。さらにはフランスにも飛び火したとのニュースを目にしました。日本では?

われわれの「いちご白書」を語ろう! 闘争勝利!

(松岡利康)

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◆はじめに

3月31日掲載の「戦後日本の革命 in ピョンヤン②」の結語にこう書いた。

「もしトラ」の逆利用で米国依存の生存方式から目覚め、自己を取り戻すチャンスに変える時、戦後日本の革命成就も夢ではない時に来ている。ピョンヤンにあってこれが夢でないことを祈りながら「戦後日本の革命inピョンヤン」発信を続けたいと思う。

ところが4月10日からの岸田国賓訪米・日米首脳会談は、これと真逆の道を日本に強要するもので、愚かにも岸田首相は破滅に向かう米国覇権と運命を共にすることを誓約した。

日刊ゲンダイは「米国に差し出す自衛隊」の大見出しの批判記事、朝日の「天声人語」は「日本の安全保障が米国と一体化していくことがいかに危険なものか」と危惧を示すなどリベラル系のマスコミは一様に「懸念」を示した。

ここにもいまや「米国についていけば何とかなる」時代ではないことが大方の共通認識になりつつあることが現れているように思う。でも単に「危惧」や「懸念」だけでは米国の強要に抗うのは難しいし非力なことはこれまでの教訓だ。ならば日本の安保防衛はどうあるべきかなど対米一辺倒ではない日本の進路に関する対案、対策がなければならない。

それは別途、考えるとして、今回は「米国についていけば……」という戦後日本の生存方式の究極、その極地とも言える“「無理心中」誓約の岸田・国賓訪米”、そこから見えてくる多極化世界での米覇権の新たな形について考えてみたい。

それは戦後日本の革命のために「もしトラ」の逆利用を考える上でも重要なことだと思う。

◆「日本の魂を伝える演説じゃない」と言った安倍ファミリー岩田明子

今回の日米首脳会談に関するマスコミ報道にはかなりの差があったことが特徴かも知れない。4月12日付け読売朝刊はバイデン政権の広報紙みたいなものだから1面トップは当然ながら、全紙面にわたって日米首脳会談を取り上げた。しかし朝日の1面トップ記事は「政治改革委を設置」、その記事に次ぐ左半面に掲載という扱いで日米首脳会談を取り上げ、読売に比べれば他の面での扱いも地味なものだった。

面白いのはフジ産経グループだ。読売系の日本TV「深層ニュース」や毎日系のTBS「1930」が連日、岸田訪米関連を取り上げたが、フジTV「プライムニュース」で取り上げたのは4月12日たった一日だけ、それも番組の前半だけで後半は韓国総選挙「与党完敗」の報道という扱い、しかも首脳会談での合意内容には触れずに「岸田首相“演説”にこめた決意」を評価、論じるといったもので、それはそれでとても興味深いものだった。

ゲスト評者のデーブ・スペクター氏は米議会「岸田首相“演説”にこめた決意」に触れながら「こんなに親米的な人がいるんだと(米議員達も)驚いただろう」と岸田演説の「親米ぶり」を揶揄した。

 

米議会での岸田首相“無理心中”誓約演説

さらに興味深いのは安倍ファミリーと言われる元NHK解説主幹、いまはフリー・ジャーナリストの岩田明子氏の「岸田演説」評価だ。

岸田首相の演説原稿が大統領演説も手がけるという米国人スピーチライターの手によるものということを取り上げながら、それとの比較で2015年の安倍首相は日本人ライターと相談しながら米議会演説を仕上げたこと、また当時のキャロライン・ケネディ駐日米大使が演説原稿を事前に「ちょっと見せてほしい」と言ってきたのを断ったというエピソードまで紹介しながら岸田演説をもっと痛烈に揶揄した。その一つは「アメリカのやってほしいことの羅列」であること、そして決定打は「(米国人の書いたものだから)日本の魂を伝えるものにはならないですよね」とまで言い切った。

これはフジTVが彼らの口を通じて自分の立場を表明したものと思われる。米国に追随しながら日本の軍事大国化実現を企図するという安倍元首相と同様、「軍国主義的自主派」の立場を代弁するような番組の作り方だったように思われる。同盟強化を迫るにしてもバイデンよりトランプ式の「もっと日本主体で、もっと積極的にやれ」が性に合うのだろう。

◆アーミテージ・ナイ報告「日米同盟、より深い統合へ」の筋書き通り

 

アーミテージ・ナイ報告

日米首脳会談に先立つ4月4日、いわゆる「アーミテージ・ナイ報告書」が公表された。これは米政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」が超党派の有識者による日米同盟への提言として発表したものだが、共和党系のリチャ-ド・アーミテージ元国務副長官、民主党系のジョセフ・ナイ元国防次官補が中心となってまとめたもので通称「アーミテージ・ナイ報告書」と呼ばれるものだ。これで6度目の提言だが前回までの外交、安保政策提言はほぼ日本政府によって実現されてきた、いわゆる「ジャパン・ハンドラー」による強い影響力を持つ報告書だ。

今回の報告書は、台頭する中国の抑止を念頭に「より統合された同盟関係への移行」を提唱したものだと読売新聞(4月5日付け)は伝えた。

今回の日米首脳会談での合意事項、岸田首相の演説などは、このアーミテージ・ナイ報告「日米同盟、より深い統合へ」の筋書き通りだと言える。

米議会演説で岸田首相は、「今の私たちは平和には“理解”以上のものが必要だ」としながら「“覚悟”が必要なのです」とまず「平和への日本の覚悟」を強調した。

その「覚悟」の内容は報告書にある「日米同盟、より深い統合へ」実現の覚悟だ。

まず「この世界は米国が引き続き国際問題において中心的な役割を果たし続けることを必要としています」との前提に立ったうえで、「ほぼ独力で国際秩序を維持してきた米国に、そのような希望をひとり双肩に担うことがいかなる重荷であるのか私は理解しています」との苦境にある米国の現状に理解を示した。

そのうえで「米国は助けもなくたったひとりで国際秩序を守ることを強いられる理由はありません」として「日本が最も近い米国の同盟国としての役割をどれほど真剣に受けとめているかを知っていただきたい」との「最も近い同盟国・日本の決意」のほどを述べた。

そして最後に「信念という絆で結ばれ、私は日本の堅固な同盟と不朽の友好をここに誓います」と決意遂行の「覚悟」を米議会で誓約した。

このアーミテージ・ナイ報告書が超党派の手になるものとあったように、バイデンの国賓として行った岸田首相の米議会での誓約は「もしトラ」でトランプ政権になってもそのまま実行される「日米同盟、より深い統合へ」だと思われる。

事実、米議会での岸田演説実現の根回しをしたとされるトランプ政権時代に駐日大使だったウィリアム・ハガティ上院議員(共和党)は、最近トランプとも話し合ったとしながら、日米同盟をトランプも重要だと考えていると読売のインタビューに答えている。

◆自衛隊の統合作戦司令部新設+在日米軍にインド太平洋軍の指揮統制機能付与

 

統合作戦司令部

「日米同盟、より深い統合へ」の基本は対中対決のための日米軍事同盟の強化だ。その基本中の基本が、自衛隊に統合作戦司令部を設置し、これを有事には在日米軍司令部が関与できる作戦指揮体系を整えたことだ。

一言でいえば、自衛隊に戦争作戦を立案、指揮する「総参謀部」ができるということ、自衛隊が戦争を行う軍隊になる体制が整うこと、日本が戦争を行える国になること、更にはそれが米軍の指揮下で行われることになるということだ。

ことの始まりは、2022年末に閣議決定された安保3文書、すなわち国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3文書改訂だ。国家安全保障戦略改訂で「敵基地攻撃能力保有」が決定され、これに伴って防衛力整備計画に「統合司令部」設置が決められた。

従来の専守防衛の自衛隊ではシビリアン・コントロール(文民統制)下で最高司令官は内閣総理大臣、首相であり、これを補佐する機構として自衛隊統合幕僚監部(陸海空幕僚長を統合幕僚長がまとめる)があったが陸海空3軍を指揮統制する機能がなかった。これは専守防衛の自衛隊では領空侵犯は空自が、領海侵犯の対潜水艦監視などは海自がそれぞれやればことは済んだからだろう。ところが「敵基地攻撃能力保有」が認められ、有事、戦争事態に備えるためには三軍の総合作戦指揮、統制が必要になることから設けられたのが「統合司令部」だ。もちろんそんなことは公然と語られることはない。

‘22年末改訂の「安保3文書」、防衛力整備計画では、この統合司令部に米インド太平洋軍の将官が常駐することが決められた。これは敵基地攻撃のためには「軍事偵察衛星など圧倒的な米軍の情報網に頼らざるを得ない」からなどとされているからだ。

この統合司令部が今回の日米首脳会談を前にして「統合作戦司令部」という「作戦」、すなわち戦争作戦のための司令部であることを明確にした。

また安保3文書に明記された「統合司令部に米インド太平洋軍の将官が常駐」体制は在日米軍司令部に一定の指揮統制権を付与し、自衛隊の統合作戦司令部との直接的連携を可能にする形にした。一言でいって有事には在日米軍が自衛隊を指揮できる体制を整えた。従来は、ハワイにあるインド太平洋軍司令部にしかなかった指揮統制権限の一部を在日米軍司令部に付与する形でそれを可能にした。(3月25日の読売新聞報道による)

こうした有事の自衛隊に対する米軍の指揮体制が日米首脳会談を前に用意周到に整えられたのだと言える。

米国笹川平和財団のジェームス・ショフ氏は「米側が(作戦実行の)大部分の資産を持っている。特定の任務で決定を下す際、米の意向が強まるとの日本側の懸念があることは明らか」と有事においては自衛隊の統合作戦司令部が在日米軍司令部の指揮統制に服することにならざるをえないことを認めている。韓国では朝鮮半島有事の作戦指揮権は在韓米軍司令官の指揮に韓国軍が従う体制になっている。日本では自衛隊と米軍は指揮権が形式上は別々だが実質的には有事には自衛隊が米軍の指揮に従うことにならざるを得ないだろう。

自衛隊の統合作戦司令部は今年度末までに自衛隊法が改正されて正式に発足する。

「日米同盟、より深い統合へ」、それは対中軍事対決という米覇権秩序維持のための戦争ができる国へと日本が変わるということを意味する。言葉を換えれば、日本が米国の対中・代理戦争国家になるということだ。

◆「ハブ&スポーク」式同盟から「格子状」同盟に ── 多極世界での米覇権の形

 

「ハブ&スポーク」同盟から「格子状」同盟へ

日米首脳会談に先立つ4月4日、エマニュエル駐日米大使が今回の首脳会談が「一つの時代が終わり、新たな時代が始まる日米関係の重大な変容を示すものとなる」と「ウォールストリート・ジャーナル」寄稿文で述べた。

その重大な変容とは「時代にそぐわない“ハブ&スポーク”式同盟を“格子状”の同盟構造に変換する取組だ」と定式化された。

“ハブ&スポーク”式同盟とは、自転車の車輪の中心部のハブ、そのハブにつながる無数のスポークが車輪を支える構造に譬えた同盟構造を指す。ハブ、中心に米国があってその中心から伸びるスポークで各国がつながるという、いわば米一極覇権下での同盟関係を指す。

“格子状”同盟とは図式(掲載)を見ればわかるように「日米同盟」を中心にAUKUS(米英豪)、クアッド(米日豪印)、日米韓、日米比といった同盟国、同志国関係が格子状に重なるような同盟構造に変わるということだ。

なぜ米国の同盟構造、いわば米国の覇権支配の構造が変わるのか?

一言でいってバイデン式の対中新冷戦戦略が失敗、破綻したからだ。

バイデンは世界を米国を中心とする民主主義陣営と専制主義陣営の二つに分断し、専制主義陣営とする中国を民主主義陣営の包囲網で孤立圧殺する方法で崩れゆく自己の覇権回復戦略とした。

ところがウクライナへのロシアの先制的軍事行動で対中に加え対ロという二正面作戦を強いられ、さらにはこれにガザでのイスラエル対ハマスを軸とする中東戦争という三正面作戦までが加わって右往左往するばかりで為す術を知らずの醜態を世界に見せることになった。

ウクライナ戦争ではロシア制裁に引き入れようとしたグローバルサウス諸国が反旗を翻し、イスラエルのガザ虐殺を見た世界はイスラエル支持をやめない米国の「自由と民主主義」「人権・人道主義」の欺瞞性をハッキリ見た。この連載で何度も述べた「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)の終わり」を世界の誰もが眼にするようになった。

それは米一極支配の終わり、米中心の「G7先進国」がリードする国際秩序の崩壊をもたらした。一極世界から多極世界へ、これが時代の趨勢となった。

これに対処するという“格子状”同盟構造は先に挙げた岸田演説に即して見ればわかりやすい。

まず「この世界は米国が引き続き国際問題において中心的な役割を果たし続けることを必要とする」との前提に立ち、しかしながら「ほぼ独力で国際秩序を維持してきた米国に、そのような希望をひとり双肩に担うことがいかなる重荷であるのか」、つまり米国が中心になって独力で国際秩序を維持できなくなったという時代環境の変化を認める。つまり米一極中心の“ハブ&スポーク”式同盟では国際秩序を維持できなくなったとの時代認識に立つ。

このような時代認識に立てば「米国は助けもなくたったひとりで国際秩序を守ることを強いられる理由はありません」、だから「日本が最も近い米国の同盟国としての役割を」果たすこと、つまり「日米同盟」を中心に“格子状”の多角的な同盟関係、同志国関係を再編成、形成しながら米国中心の覇権秩序を建て直していく。

いまエマニュエルの言う“格子状”同盟への再編渦中にある。

今回の日米首脳会談では、日本と「AUKUS」との連携が新たに強調されるようになった。元来、日本はインド太平洋地域では「クアッド」、米日豪印4ヶ国同盟基軸に行く予定だったが、インドがロシア制裁もやらず中国との軍事対決も避けグローバルサウスの盟主まで自称するようになって、あまり対中対決で当てにならなくなった。そこで元来、対中対決の米英豪・アングロサクソン白人連合である「AUKUS」に無理矢理日本を引き込むことにしたのだろう。

また今回、日米比首脳会談も持たれたが、「ASEAN」の中では親米色の強いフィリピン・マルコス政権をアジアでインドに代わる対中対決「同志国」に取り込もうというのが米国の心算だろう。岸田訪米を前に米太平洋軍陸軍司令官が「インド太平洋地域に中距離ミサイルを配備する」計画があることを語ったが、米国が対中対決線とする日本列島から沖縄、台湾、フィリッピンを結ぶ「第一列島線」への配備を念頭に置いたものだ。すでに日本列島には自衛隊のスタンドオフミサイル部隊という名の「中距離ミサイル部隊」が新設されたので、フィリッピンへの地上配備型中距離ミサイルを念頭に置いたものだろう。米比合同軍事訓練に自衛隊を参加させることもこの3ヶ国首脳会談で決められ、日米比同盟構造もいま形成途上にある。

日米韓同盟はすでに昨年のキャンプデービッド3ヶ国首脳会談で基本形はつくられた。

いま着々と日米中心の“格子状”同盟構造が再構築されつつあるが、これは世界の米一極支配破綻を受け、多極化した世界で米覇権を回復するための必死のあがきだと言えるだろう。

◆“格子状”同盟の未来は暗い、「無理心中」はバカげてる

米国によるこの“格子状”同盟は対中対決のためのものではあるが、「決して中国封じ込め」のためのものではなく「中国を正しく(世界に)関与させる」ためのものだとトーンは落ち、かつての「専制主義・中国を民主主義陣営が封じ込め孤立させる」などという威勢のいい声をあげる力はもう米国にはない。

“格子状”同盟の雲行きも怪しい。韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権与党が総選挙で大敗、レームダック状態の尹大統領が主導した日韓関係改善-日米韓同盟強化にも暗雲が立ちこめている。

AUKUSへの日本の参加と日米比「同盟」もどこまでうまくいくかわかったものじゃない。

なのに岸田首相のように米国人ライターの書いた演説に踊って「日米同盟、より深い統合へ」と進み、統合作戦司令部と在日米軍司令部との合体で対中・代理戦争国への道をひたすら進むなら、それこそ日本には米国と無理心中、破滅の道しかない。

なぜなら一極世界から多極世界への移行は、日本のマスコミが言うような「覇権の一極から多極への移行」ではなく、「あらゆる覇権主義、大国主義から脱する世界への転換」を意味しており、米国覇権の復活の道はもはやないだろう。大国である中国やロシアもそれをじゅうぶん理解しており、だからこそかつて植民地支配に苦しんだグローバルサウス諸国もいまだ植民地支配の反省の言葉のない米国や「G7先進国」よりも中ロに接近しているのだ。

今後、おそらく多くの日本国民、日本の政財界、言論界、防衛関係者らも多大の懸念を持って“「無理心中」誓約の岸田・国賓訪米”後の日本の政治がどこに行くのか、注視していくものと思う。

だから私も「戦後日本の革命 in ピョンヤン」で警鐘を発信し続けていくが、重要なことは「米国についていけば何とかなる」に代わる生存方式を見つけ明らかにすることだ。そんな「戦後日本の革命」についても考えていきたいと思う。

若林盛亮さん

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がこの4月からnoteで一部公開・購読可能となりました。

記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号お得)。

ここでは5月号掲載の記事3本の一部を公開します。

◆政治経済学者・植草一秀が読み解く 株価高騰の裏で何が起きているのか
 

 

 

3月4日に日経平均株価が初めて4万円を超え、岸田文雄首相は「日本経済が動き出していると市場が評価」と歓迎してみせた。しかし、3月下旬にも1ドル=約151円と円安は止まらず、物価高が私たちの生活を圧迫し続けている。「今の株高」が示す日本の状況を、昨年末に『資本主義の断末魔』(ビジネス社)を上梓した政治経済学者の植草一秀氏が語る。(構成・文責/編集部)

 日本経済は27年間停滞したまま

日経平均株価について、私は2022年末の時点で、3万6000円を突破すると予測しました。当時は信じる人がいませんでしたが、今年2月22日に史上最高値を34年ぶりに更新し3万9098円に、3月4日には4万円突破という動きを見せています。

日本の株価上昇の要因は3つ挙げられます。1つ目は、日本の株価が割安であること。2つ目は、企業利益が増加傾向にあること。3つ目は、大幅な円安です。たとえばマクドナルドのビッグマックの価格で、日本は米国の半値。まるでバーゲンセールであり、これは株価にも当てはまります。

1つ目の割安な株価については、日経平均で1株あたりの純利益を株価で割った、株の「益利回り」は6%強で、驚くほど高い利回りになっています。一方、長期国債(10年)の金利はまだ非常に低く、最近上がってきたといっても0.8%程度。両者を比べると、株の利回りが圧倒的に高い。株が買われ、株価が上昇するのはおかしいことではありません。

株価が上昇すると、「経済政策がうまくいっている証拠」と政治家は喧伝しますが、株高をもって日本経済が順調であるとか、経済が成長しているとは必ずしもいえません。株式はあくまで企業利益だけを反映するものです。

実際、日本経済全体は、1995年から現在に至るまで、全く成長していません。1995年以降の国内総生産(GDP)をドル換算した推移を見ると、日本は1995年を100とすれば2022年は76。27年前に比べて4分の3に縮小しています。同じ期間に米国経済は3.3倍に拡大し、中国に至っては24.5倍。つまり、世界を見ると日本経済だけが成長できずに4半世紀以上も停滞を続けてきたのです。

賃金統計でも、日本の1人あたりの実質賃金は、1996年~2023年で17%減少。世帯所得の中央値も、1994年から2019年までの25年間で、505万円から374万円へと約130万円も減少しています。OECD(経済協力開発機構)が発表する各国の平均賃金(購買力平価ベースでの賃金所得)で、1995年に日本はG5(先進5カ国)で第3位でした。それが現在ではG5と韓国を含めても第6位。つまり、経済も賃金も大幅に悪化した中で、企業利益を反映する指標だけが良くなっているのです。

財務省発表の法人企業統計を見ても、第2次安倍政権時の2012年から2017年の5年間だけで、法人企業の当期純利益は2.3倍に拡大しました。

経済活動の結果として生まれる果実は資本と労働に分配されますが、資本側の取り分が拡大し、労働側の取り分が減少したということです。つまり、労働者の賃金減少という犠牲の上に企業の利益が拡大し、株価が上がっているというのが現在の図式です。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nbbda18076349

◆血税を使ってJR東海と地域の崩壊を招く 破綻寸前の「アベ友利権」 
 取材・文◎横田 一(ジャーナリスト)

 

 

「JR東海の破綻リスク」まで指摘されるリニア中央新幹線を巡っては、事業主体のJR東海が品川―名古屋間の開業を、当初目標の2027年から34年以降に延期することを発表。一方、計画反対の急先鋒をつとめてきた川勝平太・静岡県知事は“不適切発言”を巡り4月10日に辞職願を提出した。

ただし気になるのは、昨年頃からインターネットを中心に、川勝知事を批判する記事が急増していたことだ。

その主たる発信源は“変節記者”と呼びたくなる雑誌『静岡人』編集長の小林一哉氏で、大手出版社のネットメディア・現代ビジネス、プレジデントオンライン、東洋経済オンラインに頻繁に登場、南アルプスのトンネル工事着工を認めない川勝知事に対して集中砲火を浴びせ続けている。

そんな中で「2匹目のどじょう」を狙うかのように川勝知事批判を始めたのが、元プレジデント編集長の小倉健一氏(イトモス研究所所長)。古巣のプレジデントオンラインだけでなく、現代ビジネスやWiLLオンラインにも記事が掲載されるようになった。

そこからは、リニア計画を進めるJR東海が拍手喝采を送りそうな小林氏や小倉氏の記事を、名だたる経済メディアが積極的に掲載する思惑が透けて見えてくる。広告収入が期待できる大企業に寄り添った商業(タイアップ)路線を突き進んでいるのではないかと疑いたくなってしまうのだ。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n31f71eaf8607

◆民間人・企業を狙う「国家管理」 「経済安保」新法案の危険な中身
 取材・文◎足立昌勝(救援連絡センター代表/関東学院大学名誉教授)

 

 

3月19日の衆議院本会議で、所管の高市早苗経済安保担当相が、経済安保法の第2弾にあたる「重要経済安保情報保護活用法案」の趣旨説明を行なった。今後は2022年に成立した経済安保法と同様に、内閣委員会に付託され、審議が続くことになる。

この法案の正式名称は、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」といい、経済安保法が成立した時から第2弾として予定されていた。「経済活動の担い手が民間事業者であることに留意しつつ、官民の情報共有を可能にする仕組みが必要」と、法案の観点が説明されているが、その内容は、重要経済安保情報を“秘密”と指定し、漏洩や不正取得を罰することで、情報漏洩のリスクに万全を期するというもの。いわば経済情報秘密保護法である(本稿ではこの名称を用いる)。

日本には2013年からすでに特定秘密保護法が存在し、防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズムの防止の4項目が“秘密”と指定されてきた。その指定件数は年々増加し、指定が始まった14年の382件から1年ごとに約20~70件が追加され、23年は751件。10年間でほぼ倍増している。

このように国家秘密は増加傾向にあり、国民の監視からどんどんと離れている。この現状において、さらに経済情報秘密保護法を成立させることにより、経済面での秘密指定が行なわれていけば、世界経済における自由競争も阻害することになる。

政府は安全保障の確保のため必要だと言う。しかし、経済の国家管理という意味で、今から50年くらい前に頻繁に言われていた「国家独占資本主義」の再来といえるだろう。

 曖昧すぎる対象

この法案は、特定秘密保護法と一体をなし、「特定秘密保護法の経済安保版」といわれている。「法律案の概要」によれば、まず政府保有の経済安全保障上重要な情報として特定秘密があり、それに加えて重要経済安保情報が挙げられている。その具体例として、「サイバー脅威・対策等に関する情報」が採り上げられている。

形の上では、特定秘密保護法と一致しているように見られるが、今回の法案の最大の特徴は、後に述べる「重要経済基盤毀損活動」の適性評価につき、その調査を内閣総理大臣の任務としていることである。適性評価対象者の選別は、時の内閣の意向が反映されることになり、国家的色彩が強まることは明白だ。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n75d002134539

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年5月号

『紙の爆弾』2024年5月号

政治経済学者・植草一秀が読み解く株価高騰の裏で何が起きているのか
裏金脱税事件を機に問う自公連立政権“税”をめぐる闇
市教委が黒塗りにした「旭川女子中学生いじめ凍死事件」の深層
“反川勝知事”報道急増の不可思議 破綻寸前の「アベ友利権」リニア中央新幹線計画
「活断層を隠蔽して造られた」能登・志賀原発 36年前の内部告発
ロシア「多極化フォーラム」に130カ国参加 世界の現実から日本は取り残されるな
プーチン大統領の「新恋人」が司るロシア「情報戦略」の実態
ついに党員にも見限られた岸田文雄首相と自民党の“延命策”
“メディア不信”の行く末「大谷ハラスメント」で得をするのは誰か
民間人・企業を狙う「国家管理」「経済安保」新法案の危険な中身
日朝正常化の好機を逸した岸田政権 サッカー日朝戦取材記
“嵐復活”の目論見外れジャニーズ・吉本興業とテレビ局の関係
1924米国「排日移民法」から100年 ナメられっぱなしの日米外交史
「ハラスメント」は全て録音・ネット公開「一億総告発社会」という現代
シリーズ 日本の冤罪49 千葉小学校講師猥褻事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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8月6日の広島平和記念式典。2023年はG7広島サミットの余韻もあってか、111の国と地域の代表が参列しました。

◆ロシア排除、イスラエルは招待のダブスタ

2022年からロシア・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を理由に主催者の広島市(市長・松井一實さん)は、プーチン大統領のロシアとプーチン大統領の盟友・ルカシェンコ大統領が事実上の独裁を続けるベラルーシへの招待を見送っています。このほど、2024年度もロシア・ベラルーシ両国への招待を見送ることを広島市は明らかにしています。

一方で、2023年の「10.7」以降、ガザ地区でパレスチナ人を虐殺し続けるイスラエルについては「ハマスとイスラエルの戦闘について評価が定まっていない」としてイスラエルへの招待を継続することとしています。

◆「イスラエルを招待するな」と筆者も時々参加の市民団体

 

これについて、原爆ドーム前で10.7以降、虐殺停止を求めてスタンディングを継続する「広島パレスチナともしび連帯共同体」は、4月19日夕方、広島市に対して、イスラエルの政府代表を招かないように要求しました。

筆者は、広島パレスチナともしび連帯共同体の皆様に敬意を表しています。時々、会社帰りに活動にも参加させていただいています(写真、筆者撮影)。イスラエルによるガザ虐殺即時停止という要求も筆者は当然共有しています。イスラエル首相のネタニヤフ被告人は、日中戦争時の日本に喩えれば「蒋介石を相手にせず」と言い放ち、戦争の泥沼化を進めた近衛文麿に相当するでしょう。その罪は誠に重い。

また、イスラエルのパレスチナ虐殺に対して停止決議も広島市議会はしばらく出せず、停止決議を出した今も松井市長は具体的なアクションに乗り出そうとしていません。そのことについて、同団体は抗議されてきましたし、そのこと自体は支持しています。

だが筆者は、今回の同団体による「イスラエル排除」の要求については賛同できません。

◆米国追従の中央政府からも党派運動からも距離を置いてこそ本領発揮、「広島市の平和行政」

結論から申し上げると、筆者の考えは以下です。

「8月6日の平和記念式典にはイスラエルもロシアもベラルーシも招待すれば良い。」

なぜか? そもそも、世界中で最近、戦闘状態になっていた国はロシア・ベラルーシ・イスラエル以外にもいくらでもあります。例えば、エチオピアでは、2020年―2022年、政府軍と地方政党が衝突し、双方が虐殺を行っています。だが、2022年の平和記念式典にエチオピアにも当然、招待状は行っています。

そもそも、広島に人類史上初の核攻撃を実施し、なおかつ未だに反省も謝罪もない米国政府も招待され、最近では毎年のように参加しています。あるいは、米韓軍事演習への対抗という部分はあるにせよ、ミサイル実験をバンバンやっている朝鮮も招待状は送るけど、来ない、というパターンです。一方、中華人民共和国は日本が原爆など被害ばかりを強調して加害への反省が不十分という理由で、欠席が続いています。

いずれにしても、広島市の平和行政が「すべての核兵器に反対」し、「全人類の平和を願う」立場ですべての国と地域に招待状を送ってきた2021年以前の状態で良かったと思います。日本国政府のいわば対米従属とも距離を置く。他方で、特定の国へのアンチを含む党派的な運動でもない。それが被爆地ヒロシマ・ナガサキの平和行政の意義だと思うのです。

◆G7広島サミットは反対だが、平和記念式典とは違う

筆者は、例えば「米帝国主義粉砕!」「シオニスト打倒!」と主張される運動そのものを否定はしません。市民運動なり党派運動なりそう主張されるのは大いに結構です。筆者自身もG7広島サミットには反対でした。

米国を中心とする旧白人帝国主義国家が新自由主義グローバリズムを推進するのがG7サミットだからです。日本共産党の県議候補さえ「G7サミットに期待する・評価する」と市民団体やマスコミのアンケートに回答する中、筆者は「期待しない」ときっぱり回答しました。

これは結果論ですが、途中、「乱入」してきたウクライナのゼレンスキー大統領も含めて、G7広島サミットに集った首脳たちは、イスラエルを当初は全面支持し、ネタニヤフをつけあがらせ、虐殺を後押しした「パレスチナ虐殺応援団」に他ならないのです。

この点はバイデン大統領やオバマ元大統領のような「ポリコレ系」の首脳もトランプ元大統領やイタリアのメローニ首相のような「アンチポリコレ?派」も変わらない。人権と言っても、前者がアフリカ系も含む欧米人のための人権、後者が自国人のため人権であって、究極的には中東なり東アジアなりの民衆のことなど眼中にないでしょう。そんな人たちが集まっても、そうなる未来は見えていました。

しかし、平和記念式典は、G7サミットとは違う。純粋に、原爆犠牲者を悼み、核兵器廃絶と世界恒久平和を願うということであり、すべての国と地域を招き、全人類に普遍的に発信していくということに意義があります。

◆市民団体が岸田政権・松井市長と同じ轍を踏まぬように

もちろん、繰り返しますが、筆者は、米帝国主義怪しからん、イスラエルのシオニストが怪しからん、などと主張する運動を否定はしません。しかし、そうした党派的な運動を平和行政に持ち込んでしまえば、あの国はダメ、この国はダメにだんだんなってくる。平和記念式典の値打ちそのもの自体が暴落してしまいます。

ロシア・ベラルーシ排除自体は、結局、安倍晋三さん以上の米国追従で名誉白人扱いされて舞い上がっている岸田政権のいわば党派的な運動に忖度して広島市が決めたことでしょう。しかし、市民団体が広島市に「イスラエルを呼ぶな」と要求することも、「違う」と思うのです。むしろ、松井市長と同じような誤りを市民団体の皆様が犯しつつあるのではないか?そう申し上げる次第です。

「平和記念式典そのものは、すべての国と地域を呼べば良い。」このことを繰り返したいとおもいます。

4月19日現在、イスラエルによるパレスチナ大虐殺は、イスラエルとイランによるミサイルやドローンの撃ちあいに飛び火しています。もちろん、シリアのイラン大使館を空爆するという暴挙を行ったイスラエルに主な責任がありますが、とはいえ、なんとか収束をしていかないといけない。こんなときだからこそ、米国のバイデン大統領にもロシアのプーチン大統領にも中国の習近平国家主席にも朝鮮の金正恩総書記にも、イスラエルのネタニヤフ首相にもイランのライースィー大統領にも平和記念式典ご出席いただきたいと思います。広島市として招待状を出したうえで、出席する、しないは先方の都合です。

繰り返します。「平和記念式典そのものは、すべての国と地域を呼べばよい!」

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年5月号

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◆「2024能登半島地震」発生

2024年1月1日16時10分、北緯37.5度、東経137.2度、深さ16キロを震源とするマグニチュード(以下M)7.6の地震が発生した。1889年以来の記録では石川県で最大だった。

地震と共に津波も発生し、最大波高は輪島港で1.2メートルと記録された。しかし地震と同時に数秒で隆起し4メートルを超える高さになったことから、験潮場(けんちょうじょう)の機能は停止してしまった。

東大地震研などの現地調査では、志賀町で4メートルを超える津波の遡上が確認されている。記録上は対岸である新潟県上越市で5.8メートルを観測している。

津波は北海道から長崎県対馬まで日本海全域で確認された。

◆志賀原発の現状

地震は石川県志賀町にある北陸電力志賀原発に重大な影響を与えた。震源から65キロほど離れている志賀原発では、震度5強程度の揺れに遭遇したとされる。
「1号機原子炉建屋地下2階震度5強、3成分合成399.3ガル、水平方向336.4ガル、上下方向329.9ガル」としている。

現在の基準地震動は水平600ガル、上下405ガル。今回の地震ではそれを下回っていたとされる。しかし1部の周波数域では超過していたことが、その後の調査で明らかになった。

1号機で最大957ガルを観測し、基準地震動を元にした想定値を39ガル上回っていた。2号機も25ガル上回る871ガルだった。今後基準地震動を1000ガルに引き上げる予定とされるが、それでも十分とは思えない。

志賀原発1号機は54万キロワットのBWR(沸騰水型炉)、2号機は135.8万キロワットのABWR(改良型沸騰水型軽水炉)で、どちらも運転停止中。炉心に燃料はなく、危険は使用済燃料を貯蔵しているプールだ。現在は冷却が続いており、ポンプも稼働しているが地震の際一時停止している。

原発には外部電源が3系統5回線あり、そのうち2号機に接続されている50万ボルト1系統2回線は停止した。原因は変圧器の絶縁に使う油の配管が損傷したための油漏れ。1号機側の起動変圧器も油漏れで遮断した。火災が起きていないのに噴霧消火設備の起動及び放圧板が動作したことも確認されており、その原因は油圧の変化による誤作動ではないかと推定されている。

変圧器の油漏れは、1号機側で3600リットル、2号機側で3500リットルと発表されたが、5日になって2号機では19800リットル漏れていたと上方修正された。変圧器の復旧見通しは立っていない。したがってこれら回線も回復できない。

2号機の電源は27.5万ボルトの1回線で受電している。1号機は6.6万ボルトの1系統1回線で受電している。

6台の非常用ディーゼル発電機は1台が点検停止中。後日起動試験を行ったところさらにもう1台が停止した。

別に高圧電源車が1台、その他の電源車も7台待機しているという。

プール水は、地震発生時のスロッシングにより1部が漏えいしたが水位は保たれている。その量と放射能は、1号機が95リットルで合計17100ベクレル、2号機で約326リットルで含まれる放射能量は約4600ベクレル。北陸電力によれば外部への漏えいは確認されておらず、放射能の影響はないという。

その他の影響として、海岸に設置された「物揚場(ものあげば)」の埋立部の舗装コンクリートで沈下が発生し段差ができていた。

1号機放水槽及び1号機補機冷却排水連絡槽防潮壁の基礎の沈下が発生していた。これは津波対策として設置された鋼製防潮壁の基礎部分で地震の影響により数センチメートル程度沈下していた。

1号機高圧電源車使用箇所付近の道路に数センチメートル程度の段差が発生していた。(つづく)

本稿は『季節』2024年春号掲載(2024年3月11日発売号)掲載の「「大地動乱」と原発の危険な関係」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWTPSB9F/

去る4月21日午後、『人権と利権』編著者で「紙の爆弾」「デジタル鹿砦社通信」寄稿者の作家・森奈津子さんに対して殺害予告がSNSにてなされました。文中では「564」「始末します」「透明にする」など殺害するという意味の隠語を使っていますが、かえって不気味さを感じさせます。殺害予告は同時に滝本太郎弁護士にもなされています。両氏とも所轄の警察に相談しているとのことです。

当社としては、当然ながら著者を守るという観点から、断固弾劾するものです。

一部証拠をアップしておきますが、いくら意見が異なるからといって、こういう恫喝はいかなる理由があっても許せません。

◎殺害予告 https://twitter.com/ys5120230930433

翌22日は、「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)の主たる暴行犯・エル金こと金良平との期日(東京地裁立川支部。今回は非公開の電話会議。森さんと鹿砦社が被告。相手方代理人は神原元弁護士)、翌々日23日は森さんが共闘する「女性スペースを守る会」関係の訴訟(横浜地裁。森さんは支援者として傍聴。本件も相手方弁護士は神原元弁護士)の弁論が予定されていました。どちらの訴訟とも相手方はカウンター・しばき隊界隈の人物です。

これまでの経緯から推察するに殺害予告をしたのはカウンター・しばき隊に近いLGBT関係者(自称「保守オカマ」)と見なされますが、エル金こと金良平のケースもありますので、あえて公にし警鐘を鳴らす意味で皆様方にお知らせしておきます。大学院生リンチ事件では、加害者らの周辺の者たちによってSNSで激しい罵詈雑言が被害者に浴びられましたが、言葉だけでなく実際に物理的暴力が振るわれましたので、これを見てきた私たちとしては多大な危惧を覚え、事前抑制の意味でも皆様方に警鐘を鳴らすものです。

2件の訴訟の代理人を務める神原弁護士は、この事態をどう考えられるのでしょうか? 誰が見てもやってはいけない行為ですので、厳しく叱責していただきたいものです。こんなことをやっていれば、神原弁護士が往々にして嘯く「正義」が泣こうというものです。

まずは訴訟の当事者、また著者を守るべき出版社として満腔の怒りを込めて抗議しておきます。

以上

2024年4月24日 
株式会社鹿砦社 代表 
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
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出し遅れの告発に水をさすつもりはない。むしろ拍手喝采したい気持ちである。「そんなに嫌だったら何故その時に言わなかったのか」というデヴィ夫人の逆ギレ的批判もまた大いに結構。

 

在りし日のジャニー喜多川

死して尚、賛否両論渦巻くのは天才の証明であると言えるだろう。ジャニー喜多川は天才であったと確認しておきたい。むろん天才が常に正しいとは誰も思ってはいないという前提があっての話であるが。

天才とは時代の常識を覆すことで存在の意義を誇示する人間であり、狂人と紙一重とよく評されるように危険人物である例は枚挙にいとまがない。

彼(彼女)の人生は、正常な市民生活を営むという選択とは無縁である。異常性愛お手のもの。W不倫なんてまだまだ甘い。トリプル不倫か、いっそ無差別不倫でも行けそうな気迫をむき出しにして、モラリストと対立することになる。

ジャニー喜多川の場合、従来の完全無欠なヒーローとは違った新種の《あまり強そうではない、つまり強靭な体力と精神力を見せつけない、要するに女性的、あるいは中性的な、優しさを内に秘めた》美男子像を大量に輩出することで、昭和の後半から日本の大衆にリアルな感動を提供し続けた。その功績は決して過小に評価してはならないだろう。

彼等ジャニーズ事務所出身の俳優兼歌手たちがいなかったら、日本の芸能界から生み出される映画やテレビドラマ、音楽シーンは随分と淋しいものになっていたとは思う。

むろん彼等のうちの誰一人も「桃太郎侍」を演じることは出来なかったし、演じても以前にチラ見したテレビドラマ『華麗なる一族』の木村拓哉も(はるか以前にやはりテレビドラマとして放映された同作品で、同じ役を演じた加山雄三と比べてしまうと)私の目には全くサマになっていなかった。

しかし、その割に原作者の山崎豊子はベタ褒めだったし、女性ファンには好評だったと聞く。そこには性別と世代の違いから生じる美意識の混乱という他はない現象が表れている。ひと口に言えばアイドルの多様化。

いつの時代にも色々なタイプのアイドルがいてそれぞれの好みにあったファンが、彼(彼女)を追いかけてはいた。ただ多様化と言って悪いならバラエティーに富だ大量のアイドル群を増産し続けたのがジャニーズ事務所であることは認めなければならない。

ある時、電車の中で2人の女性が語り合っていたのを思い出す。20代の後半と思われる女性が、熱っぽく語っていた。

「私の青春は嵐だったわ」

嵐の何たるかを知らなかった私は、彼女の青春は嵐のように荒れ狂い、乱れまくっていたのだろうかと想像したのだが、実は違っていた。

彼女の話相手であった年配の女性が次のように語ったのだ。

「そうねえ。私の青春は田原俊彦だったわね」

突出したアイドルがファンの青春に忘れられぬ感情的な発作の痕跡を残すのはよくある話だが、何世代にも渡って青春の通過儀礼を司るアイドルが同じ出所から生み出されたという実績を「伝統芸能」と称されるべきだと考えるのは私だけではないだろう。前時代から伝統芸能の大先輩として国家にまで認知されている歌舞伎もまた男色文化の典型であり、長らく歌舞伎座の2階の客席は「ハッテン場」と称されるゲイの交流場所として知られていた。

今回のジャニー喜多川による「性加害」問題等、歌舞伎の世界では日常茶飯事だったであろうと想像がつく。(つづく)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315290/

2024年4月17日23時14分頃、緊急地震速報が広島県内でも鳴り響き、呉市や江田島市、府中町などで最大震度4を観測しました。宇和島市付近の豊後水道の深さ39kmを震源にM6.6の地震が発生、愛媛県や高知県では最大震度6弱となり、建物や道路にも被害が出ています。ユーラシアプレートに潜り込むフィリピン海プレートの内部で起きたとみられます。今回とほぼ同じ震源で、同じ規模の地震が1968年にも発生しています。

筆者の勤務先の介護施設では筆者の上司が夜勤に当たっていましたが、ちょうど、利用者様のオムツ交換の途中だったそうです。「慌てて、オムツを閉じて避難に備えた」と上司は、翌18日朝、出勤してきた筆者に語りました。

◆今回と同タイプで大規模な地震、30年以内に40%の確率!

政府の地震本部のホームページによると、安芸灘から伊予灘、豊後水道にかけては、今回と同様のタイプで、今回より大きなM6.7からM7.4の地震が数十年おきに発生しています。

1649年、1686年、1857年、1905年には安芸灘や伊予灘でM7以上の地震が発生し、広島でも大きな被害が出ています。最近では2001年の芸予地震(M6.7、県内最大震度6弱)、2014年の伊予灘地震(県内最大震度5強)が記憶に新しいところです。今後30年以内に、今回より大きな地震(M6.7以上)が起きる確率は40%となっています。

◆伊方原発ヒヤリ!

もし、今回のタイプでM7.4程度の地震が今回より北の愛媛県伊方町の直下で起きていれば、能登半島大震災における志賀原発(休止中)のようなトラブルが稼働中の伊方原発で起きた可能性もあります。志賀原発の場合は、原発が停止して久しく、核燃料の温度も低下していましたので、電源の機能が大幅に低下していますが、大事に至っていません。しかし、同じようなトラブルでも稼働中であれば、大きな事故につながりかねません。ヒヤリとさせられました。

もし、大きな事故が伊方原発で発生すれば、瀬戸内海を伝わって放射性物質が広島市にも押し寄せ、潮の流れによって安佐南区南部の太田川あたりまで来る可能性があります。沿岸だけでなく、内陸にお住いの方にとっても他人事ではありません。岸田総理が進める老朽原発運転強行政策。ご勘弁いただきたい。

 

南区と中区の境の上柳橋)

◆平地=中心市街地も山地=団地も孤立集落に

今回のタイプの地震で、さらに震源が北にずれて広島市に近く、規模が大きくなれば、2001年の芸予地震を上回る被害が出た可能性があります。

南区、中区、西区のいわゆるデルタ地帯は川により分断され、事実上、島に分かれています。筆者も東区の自宅から西区の勤務先には、4本の橋を渡らないといけません。大震災となれば、橋が通行不能になったり、そこまでひどくなくても橋がボトルネックになり大渋滞になったりするおそれがあります。

西区、東区、安芸区、佐伯区、安佐南区、安佐北区などの山地にある団地では、出入りする道路が能登半島大震災のような土砂災害で寸断される。結果として、広島中が孤立集落になる恐れがあります。

一方、今回のようなタイプの地震とは別に、広島都市圏の周辺の地表には五日市断層、己斐断層、岩国断層帯、安芸灘断層群など多くの活断層(地震本部ホームページ)が存在します。これらが2024年元日に発生したM7.6の能登半島大震災のような感じで連動すれば、それこそ、能登半島大震災それ以上の大震災になる可能性もあります。

◆「広島大震災」に備え、巨大病院集約より各「島」に「最後の砦」公立病院を!

 

広島都市圏周辺の地表には五日市断層、己斐断層、岩国断層帯、安芸灘断層群など多くの活断層がある(地図上の線、地震本部ホームページより)

広島県の湯崎英彦知事はこうした中、広島市南区の県立広島病院や中区の中電病院、舟入病院小児救急、東区のJR広島病院を統廃合し、広島駅北口=エキキタに巨大病院を造ろうとしています。

また、その病院は県直営ではなく、行政責任が中途半端な独立行政法人です。ちなみに、広島市民病院も独立行政法人化されてしまっており、コロナ時の病床確保に実は支障があったそうです。

さて、広島には外国人観光客も多く来られる。カープやサンフレッチェの試合がある日には相手チームのファンも含めて多くの方が来られる。大震災になれば、大混乱は確実です。交通マヒを考えれば、エキキタ巨大病院への集約はリスクでしかありません。

そうした中で、「各島に一個」くらいは、行政が責任をもって、災害時にもケガをした人や体調を崩した人を手当てできる病院があった方が良いのではないでしょうか?

ちなみに、能登半島大震災で被害が甚大だった珠洲市、輪島市、穴水町、能登町のいわゆる奥能登の人口は6万程度。石川県が病院の統廃合を検討していましたが、遅れていました。公立病院が残っていたのは不幸中の幸いでした。広島の各島には奥能登以上の人が存在しています。エキキタ巨大病院への集約はトンデモとして、むしろ、各島に50億円程度をかけて行政直営のそれなりの救急機能を持った病院を残すべきではないでしょうか?

◆南海トラフ「ばかり」に気を取られると足をすくわれる

確かに、南海トラフ地震は起きれば破壊力が大きいし、和歌山県や徳島県、高知県、あるいは三重県や愛知県、静岡県といった近畿、四国、東海の沿岸部にとっては大きな脅威です。

しかし、他方で、広島の場合は、南海トラフを意識しすぎて、17日の豊後水道地震タイプで震源が北にずれた規模が大きな地震か、広島周辺に密集する活断層による直下型地震の脅威を見逃してしまうのが怖いのではないか、と筆者は考えています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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