感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制(高橋清隆)/静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか(横田一)『紙の爆弾』最新号の注目記事

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

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◆感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制
 取材・文◎高橋清隆

 
 

感染症対策を口実に、我々の言論が監視・弾圧されるおそれがある。
 
岸田文雄内閣が6月に閣議決定を目指す「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(以下「行動計画」)改定案には、国が「科学的知見に基づく」一元的な情報発信を行なうだけでなく、偽・誤情報のモニタリングやSNS事業者に対策を要請できる内容が盛り込まれている。

新型コロナワクチン接種推進のため、内閣府が人気ユーチューバーに3200万円を支出していたことが発覚したばかり。同行動計画の偽情報対策の中身と背景を探る。

 コロナを受けた改定案パブコメに19万件
 
ゴールデンウィークのさなか、内閣官房の実施する意見募集(パブリックコメント)への応募を呼び掛ける投稿がX(旧ツイッター)上に盛んに飛び交った。「行動計画」改定案に言論統制を思わせる記述があるからだ。近現代史研究家の林千勝氏らがこれを問題視し、応募を提唱。5月3日には中部日本放送(CBC)が日本新聞協会加盟社で唯一報道し、にわかに知られるところとなった。

募集期間は行政手続法で30日以上と定められているが、なぜか2週間。しかも、予定の立て込んでいる人が多いゴールデンウィーク中にぶつけてきた。投稿フォームの不具合や計画書の疑問点について電話で聞こうとしても、休日のため「本日の業務は終了しました」のアナウンスが流れるだけ。それでも締め切りの5月7日18時までに、約19万件の応募があった。

「行動計画」は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもので、2013年に策定された。感染症危機が発生した場合にはこれを参考に基本的対処方針が策定される。新型コロナ騒動を受けて、岸田文雄内閣が7年ぶりの抜本的改定を目指す。

今回の「行動計画」改定案は、223ページに倍増。対策項目も6から13になり、船長や機長に乗船・搭乗の拒否権限を与えることや、「プレパンデミックワクチン」の開発・生産要請、火葬体制の整備まで盛り込まれている。

概要として「平時の準備の充実」「対策項目の拡充と横断的視点の設定」「幅広い感染症と柔軟かつ機動的対策」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「実効性確保のための取組」の5点を挙げ、具体的な取り組みを「準備期」「初動期」「対応期」の3つの期間に分けて記述している。

 政府の「偽・誤情報対策」その1 ── また税金で広報?

13項目のうち「④情報提供・共有、リスクコミュニケーション」には、準備期の対応として「偽・誤情報に関する啓発」がある。

〈国は、感染症危機下において、偽・誤情報の流布、さらにSNS等によって増幅されるインフォデミックの問題が生じ得ることから、AI(人工知能)技術の進展・普及状況等も踏まえつつ、国民等のメディアや情報に関するリテラシーの向上が図られるように、各種媒体を活用した偽・誤情報に関する啓発を行う。(総務省、文部科学省、厚生労働省、関係省庁)〉

この章には「各種媒体を利用し」「利用可能なあらゆる情報媒体を整備・活用し」など、さまざまなメディアを駆使する旨がうたわれている。ここで連想するのが、有名人を活用したテレビやインターネットなどでのなりふり構わないワクチン広報だ。サッカー日本代表の森保一監督や歌手のさだまさしらの誠実そうなせりふが繰り返しお茶の間に流れた。

内閣府から3200万円がユーチューバーに流れていたことは冒頭に触れた。人気ユーチューバーのはじめしゃちょーは河野太郎ワクチン担当相(当時)をインタビューし、「アメリカで2億回打ってるんですけど、ワクチンで死んでる人は1人もいない」との発言が広く流布された。こちらの方が偽情報ではないか。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n78971adb9bf2

◆静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか
 取材・文◎横田 一

 
 

勝平太前知事の辞職に伴う静岡県知事選(5月9日告示・26日投開票)は、JR東海が県内でトンネル工事を始めようとしているリニア問題が最大の争点だった。3年前は「大井川の水と南アルプスの環境を守る」と訴えた川勝氏が自民支援の岩井茂樹・元参院議員に約30万票の差をつけて圧勝、3選を果たした後もJR東海や国交省と対峙し、トンネル工事を認めてこなかった。しかし4月3日に突然辞意を表明したことで、新知事が川勝路線を引き継ぐのか否かが注目されることになった。与野党激突の構図にもなった県知事選挙の結果は立憲民主と国民民主が推薦する鈴木康友・前浜松市長が、自民党が推薦する元副知事の大村慎一氏を破って初当選。岸田政権にさらなる打撃を与えることになったのだ。

 取り返しがつかないのは、失言ではなく
 トンネル工事による「水枯れ」

川勝知事の辞意表明は、メディアの“言葉狩り”が発端だった。新人職員への訓示で「県庁というのは別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり物を作ったりとかと違って、基本的に皆さんは頭脳・知性の高い方たち」と述べた部分だけを切り取り、「職業差別とも捉えられかねない」と報じたことが引き金だったからだ。

一週間後の4月10日に辞職届を提出した川勝知事は、同日の定例会見でこう反論した。「職業差別というのは悪なのです。人を弾劾することができる言葉です」

「区別と差別とは違う。ジャーナリストの仕事と私の仕事は違います。どちらが上か下かというのはない。『そういう意味で申し上げた』といっても『職業差別だと捉えられかねない』というふうに報道されたとたん、『職業差別』という言葉をもって、特に第一次産業に対する差別だと広がった。しかも農水大臣までが強い憤りを感じられるということで本当に驚いた」

そこで会見終了後、川勝知事を追いかけて「デッチ上げ報道に屈するのか」と声かけ質問をしたが、エレベーターに乗り込んだ川勝知事は無言のままだった。

メディアによる川勝知事への集中砲火に対応すべく、「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」共同代表の林克氏は昨年7月から「川勝平太がんばれキャンペーン」を始めており、今回の辞職をこう残念がっていた。

「川勝さんは本当に、地場の農業の振興に奮闘してきた方だと思う。ただ非常にサービス精神が旺盛で、目の前の人を持ち上げるために、いろいろな比喩を使ったのかというふうに思う」

「農家の水不足、トンネル工事で大量の水が出てしまうおそれを川勝知事はちゃんとわかっている。かつて丹那盆地は非常に豊かな水田だった。丹那トンネル(後述)を掘ったら水が抜けてしまって、そこで田んぼが出来なくなってしまった経緯があった」

目の前にいる新人職員へのリップサービスで川勝知事は誤解を招く失言をしたものの、大井川流域の農家のために奮闘してきた姿こそ実態に違いない。静岡県で再出馬を求める署名活動が行なわれたのは、このためだ。

そんな川勝知事と共通点を持つのが、子ども関連予算を2倍以上にして10年連続人口増を達成した前明石市長の泉房穂氏だ。両者とも、失言はするものの住民のために奮闘し、言葉狩りをするメディアの標的になった。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n1642ec6bab0f

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年7月号

『紙の爆弾』2024年 7月号

植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制
大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの
「食料・農業・農村基本法」改悪「食料自給率」を捨てた農水省の愚 高野孟
感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制 高橋清隆
ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか 青柳貞一郎
国会答弁もアメリカ製AI利用に マイクロソフトに乗っ取られた日本政府のAI構想 浜田和幸
送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ! 広瀬隆
静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか 横田一
自衛隊指揮権を米軍に委譲 日米一体化きわまる中で“日本人”を問い直す 木村三浩
公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由 足立昌勝
本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 浅野健一
米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
続・失言バカ政治家の傾向と対策 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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LGBT犯罪録 かなざわシャブのま事件──金沢レインボープライド事務局長が覚醒剤で逮捕〈1〉森 奈津子

2024年6月5日、LGBT当事者の間に衝撃が走った。LGBT団体「金沢レインボープライド」の事務局長が覚醒剤使用と所持で逮捕・起訴されていたことが、報道で明らかになったのだ。
性的少数者の交流拠点で覚醒剤、事務局長だった男「20年前に友人に勧められ始めた」/読売新聞2024年06月05日 15時38分
以下、読売新聞の記事(https://www.yomiuri.co.jp/national/20240605-OYT1T50061/)を引用する。
性的少数者の交流拠点で覚醒剤、事務局長だった男「20年前に友人に勧められ始めた」 性的少数者の交流拠点「かなざわにじのま」(金沢市池田町)を運営する一般社団法人「金沢レインボープライド」の元事務局長(50)(石川県白山市)が3月下旬、同交流拠点で覚醒剤を使用したなどとして、覚醒剤取締法違反で金沢地裁に起訴されていたことがわかった。 金沢地裁(野村充裁判官)で4日に初公判が開かれ、元事務局長は起訴事実を認めた。検察側は懲役2年を求刑し、弁護側は執行猶予付きの判決を求めて即日結審した。判決は11日。 起訴状などによると、元事務局長は3月28日、勤務先の「かなざわにじのま」で、注射器を用いて覚醒剤を使用し、翌29日に金沢市内の駐車場で覚醒剤2・11グラムなどを所持していたとされる。 被告人質問で、元事務局長は「約20年前に友人に勧められ(覚醒剤の使用を)始め、断薬期間もあったが月1、2回の頻度で使用していた」と説明。検察側は「使用量が少ないとは言えず、常習性も高い」と指弾した。 同社団法人は、性的少数者への正しい理解を深めてもらうため、企業や教育機関で講演などを行ったり、自治体へ政策提言をしたりしている。同法人の松中権・共同代表は取材に対し「知らなかったので驚いた」と話した。
なんで20年前からシャブやってた五十男が実名報道されないんだよ! しかも、この「元事務局長」は、逮捕時には「現事務局長」ですよね? ガチの団体幹部ですよね? それって、「LGBTに配慮」ですかっ?──等のツッコミは置いておいて、とりあえず、読売新聞の勇気ある報道には敬意を表したい。というのも、今やLGBT団体は強大な圧力団体と化しているからだ。 マスコミとしては、下手にLGBT団体幹部の犯罪を報道し、「LGBT差別だ! ヘイトだ!」の大合唱でネットリンチされてはたまらないというのが、本音だろう。LGBT活動家と共闘するしばき隊系活動家による集団いやがらせの標的にされても、厄介だ。あるいは、今後はLGBT活動家に取材を拒否されてしまうかもしれない。 大手マスコミ各社は、日頃から、ニュース提供者としてLGBT活動家には大変お世話になっている。取材に応じてくれるLGBT当事者を苦労して探さなくとも、LGBT活動家がLGBTの代表者ヅラして、顔出し名前出しで取材に応じてくれるのだ。つまり、「取材相手はLGBT活動家、もしくは彼らが紹介するシンパLGBTのみ」という現実は、マスコミの大いなる怠慢の結果である。
ハード系ゲイ雑誌「G-men」元編集長・冨田格氏は、これが大スキャンダルであることを指摘
「ゲイ」ではなく「ホモ・オカマ」を自称する月清氏は、LGBT活動家が支持者以外の当事者を排除している事実に言及
「ゲイのリアル」を知る一般のゲイ当事者による身も蓋もない指摘
LGBT活動家の排他的で差別的な面を知る男性同性愛者は、一貫して辛辣
そして、さらにここでは、大きな問題が生じている。実は、LGBT活動家は大抵は共産党、立憲民主党、社民党の党員もしくはシンパゆえ、LGBT活動家をネタ提供者にすると、シャレにならない偏向報道になり、LGBT当事者から「我々はそんなこと(例/同性婚法制化、企業でのLGBT研修、自治体でのレインボーフラッグ掲揚)など望んでいない!」とブーイングの嵐となる。テレビと新聞でしかLGBTを知らない地方のお年寄りならだませるかもしれないが、ネットではたびたびLGBT当事者が報道批判を展開、大手マスコミのLGBT報道のメッキがどんどんはがれているのが現状だ。 そもそも、この覚醒剤事件は本来ならば、金沢レインボープライド事務局長が逮捕された時点で、報道されるべきではなかったか? 二ヶ月以上のタイムラグは、マスコミがそれまで、そろいもそろってだんまりだったということでもある。 なにしろ、金沢レインボープライドの代表・松中権氏は、LGBT活動家では大物中の大物。活動家事情に疎い異性愛者の皆様には、「松中氏を漫画『鬼滅の刃』の十二鬼月にたとえれば、上弦の壱ぐらいの実力者かつ権力者」とご説明すれば、大抵はご納得いただける。 「鬼滅の刃」をご存じない方には、「敵の鬼には『十二鬼月』という、特に強い12人の鬼がいて、それぞれ6人ずつ『上弦の鬼』『下弦の鬼』に分かれており、上弦のほうが階級が上。上弦の鬼・下弦の鬼にはまた『壱・弐・参・肆・伍・陸』の番号が振られており、数字が若いほうが階級が上」とさらにご説明しなくてはならないのだが。 ちなみに、私の推し鬼は、美しく病的な少年の姿の下弦の伍・累クンです ── って、どうでもいいことですね。すみません。(つづく)
実はLGBT活動家の薬物に対する甘さは、今に始まったことではない

◎森奈津子 LGBT犯罪録 かなざわシャブのま事件  ── 金沢レインボープライド事務局長が覚醒剤で逮捕
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50290
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50306
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50381
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51912
〈5〉https://www.rokusaisha.com/wp/?p=52094

▼森 奈津子(もり・なつこ) 作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。 Xアカウント https://x.com/MORI_Natsuko 森奈津子 LGBTトピック https://x.com/morinatsu_LGBT
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無罪判決の出た「プレサンス事件」の国賠 再び下手を打ってしまった大阪地検特捜部 尾﨑美代子

2019年末、東証一部上場企業の大手不動産会社「プレサンスコーポレーション」の山岸忍元社長が「業務上横領」で逮捕・起訴された事件で、山岸さんはその後一審で無罪を勝ち取った。

 
6月11日のテレビ報道

地検特捜部は控訴しなかったため、判決はそのまま決まった。その後、山岸さんが提訴した国賠訴訟が山場を迎えている。

事件については「日本の冤罪」シリーズで今後紹介したい。一代で大企業を築いた山岸さんはこの事件で248日間不当に囚われら、自身の子供のような会社を手放す羽目になった。山岸さんは、逮捕時より一貫して否認していた。しかし、山岸さんの前に逮捕されていた部下のKさんと関連不動産会社社長のYさんが「山岸さんも(横領に)関与していた」と供述したため、山岸さんも逮捕となった。

「なんじゃ、こりゃ」と思っただろう山岸さん。それもそのはず、飛ぶ鳥落とす勢いのプレサンスは当時で5年先までのマンション建設予定の土地を確保していた。そのため、わざわざ「横領」してまで、難しい土地を購入する必要などなかったのだ。ではなぜ山岸さんは逮捕されたのか。前述したが、KとYが「山岸さんも関与していた」と嘘の供述をしたからだ。

しかも、ゴーンさんの国外逃亡劇があった時で、山岸さんの保釈はなかなか認められなかった。山岸さんが当時で最高額の保釈金を積んだとしても、まだまだ金はあるから、ゴーンさんのように逃亡するのではないか、あるいはKとYを金で買収するのではないかと懸念されたのだ。

6回目にようやく保釈された山岸さん、さらに優秀な弁護士を集め裁判の準備を進める。詳細は省くが、次々に出てきた証拠はすべて山岸さんを無罪とするものだった。「なんじゃこりゃ」と山岸さんが思ったかどうかわからん。

 
6月11日のテレビ報道

弁護団が力をいれたのが、大阪地検特捜部の検察官がKとYを取り調べた際の録音録画の反訳(書き起こし)だ。

膨大な反訳を業者に依頼せず、弁護団自身で行った。その結果、大阪地検特捜部の検察官のとんでもない実態が明らかになった。脅し、脅し、机バン、気休め、小さな飴、利恫喝、脅しなどが繰り返され、KもYも結果として「山岸さん関与」を認める供述をしてしまったというわけだ。

今日大阪地裁の法廷に出廷したのは、Kを取り調べた検察官だ。

この検察官とのやりとりは本当にみたかった。でも裁判終了後の山岸さんらの会見をみてると、Kさんを取り調べた大阪地検特捜部・田淵大輔検事は、相変わらずいい加減な証言をしていたみたいだ。

裁判に出席した西弁護士のⅩ

 
山岸忍氏の著書『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』(文藝春秋社)

田淵検事の取り調べ内容とこのプレサンス事件のもうひとつの肝は、今回大失態を起こした大阪地検特捜部は、10数年前にも、村木厚子さんの事件で同じような大実態を犯しているということだ。郵便不正・厚生労働省元局長事件とも呼ばれる事件で、大阪地検特捜部は村木さんを逮捕・起訴したが、一審で無罪判決が下されている。

しかもこの事件では、特捜部の担当検事が裁判の証拠書類のフロッピーディスク(懐かしい響き)の文字を書き換え、証拠の改ざんをはかっていた。それが、その後ばれ、改ざんした検事はもとより、彼を庇っていた上司の検察官も逮捕されるという一大不祥事件に発展していた。

担当検事、上司らはその件で検察官としての政治生命は絶たれたが、当時もその大事件の真っただ中にいて、今回の山岸さんの事件にも関わっていた検事がいる。その人物こそが、山岸さんを取り調べた検事、組織内で「チーママ」と呼ばれ、バカラで飲ませる店でしか飲まないという山口智子検事だ。

そう、山岸さんが最初に任意の取り調べに呼ばれた際、「社長! いらっしゃーい!」とにこやかに迎えた女検事だ。今日は書かないが、この山口検事が村木事件でどのような役割を果たしたかを知ると、プレサンス事件での彼女の動きに何か味わい深いものを感じてしまう。いつまでもチーママな山口検事。実は彼女は山岸さんと同じ同志社出身らしい。特捜部の安っぽい脳みその持ち主の上層部が「ここは山口を当てれば山岸も落ちるだろう」と安易に考えていたのだろう。ところが、そうはいかなかった。私がこの事件で取材した西愛礼弁護士によれば、山岸さんは本当に嘘がつけない人なのだ。だから……。

という訳で、話はかわりますが、先日再審請求に棄却が下された「飯塚事件」をもっと知ろうと徳田弁護士を大阪にお招きする計画を進めています。現在、関係者と「調整中」(小池百合子っぽいね)。8月頭の土曜日になる予定。頭の隅っこにそっとメモしててね。


◎[参考動画]【特捜部の「取り調べ映像」独自入手】「検察ナメんなよ」怒鳴り続けた検事 強引な捜査で『冤罪』 証言を強引に引き出す特捜部の実態 21億円の巨額横領(カンテレ「newsランナー」2024年6月11日放送)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

政治経済学者・植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制 大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの 『紙の爆弾』最新号の注目記事

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

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植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制
大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの

本誌5月号で昨年来の急激な円安、物価高、そして株高が示す日本の実態を解き明かした政治経済学者・植草一秀氏に、岸田文雄自公政権の経済政策が指し示す近未来について、再び話を聞いた。(構成・文責/編集部)

 
 

◆実質賃金が低下し続ける根本的原因

まず、大幅な円安と株高が毎日のように取り沙汰された2024年上半期の日本経済を振り返ってみましょう。5月16日に今年1~3月期(第1四半期)のGDP(国内総生産)統計が発表され、前期比で0.5%、年率で2.0%のマイナス成長となりました。

コロナ・パンデミックで落ち込んだGDPが、ようやくその前の水準を回復したのが昨年4~6月(562.6兆円)。しかし、続く7~9月から再び落ち込み前期比マイナス0.9%(558.0兆円)。10~12月期はゼロ成長で、今年1~3月期は再びマイナス0.5%です。

米国では、四半期で2度連続マイナス成長になると「景気後退」と表現します。ですから日本経済は、「昨年後半から景気後退の局面に移行している」と言って差し支えない状態です。

特に問題なのが国内需要で、昨年第2四半期の4~6月以降、マイナス0.6%、マイナス0.7%、マイナス0.2%、マイナス0.2%と、4四半期連続でマイナス成長が続いています。株価が上がったことで好調なイメージがあっても、実態は非常に悪いのです。

さらに物価の指標(GDPデフレーター)では、昨年度はプラス4.1%と、物価が激しく上昇しています。

こうした中で、実質賃金指数の伸び率は、今年3月がマイナス2.5%。2022年4月から24カ月連続のマイナスです。これは統計比較ができるようになってからの最長記録です。

3年前の2021年5月の実質賃金はプラス3.1%で、同年秋(10月4日)に岸田文雄政権が発足して以降、実質賃金指数はつるべ落としのようにマイナスが続いているわけです。

その大きな要因は、インフレの進行です。

5月号で指摘したことですが、1995年以降の28年間で5回だけ実質賃金が小幅に増えたことがあります。この5回は全て、物価が下がった年でした。日本において実質賃金を左右するのは物価であり、一部企業で賃上げがあっても、インフレにより物価がそれ以上に上がれば、差し引きで計算される実質賃金は減り続けていきます。
ならば、岸田首相が叫ぶべきは「賃上げ」ではなく、「インフレ抑止」であることは明白です。

日銀が「デフレからの脱却」を目指し2%のインフレターゲットを導入したのが2013年1月。そして、特にこの2~3年、インフレ率は日銀の目標値を大きく超えて4%も上昇しました。ある意味で、今の状況は日銀が目論んだ姿です。そもそもインフレ誘導の淵源をたどると、企業の賃金コストを減らすために提案された政策なのです。

現在の状況で賃上げを行なった会社のほとんどが大企業です。中小・零細企業は賃上げができないので、物価上昇分だけまるまる賃金が減少します。より一層、大企業とその他で格差が拡大しているわけです。

一方、株価を見ると、今年は日経平均が史上最高値を更新。4月22日に4万1087円を記録して、次は5万円突破が視野に入ります。

このように株価が大幅上昇した背景として、3つの要因を挙げることができます。

第1は、株価の指標から見て相対的に日本の株が割安だということ。日本企業の株の利回りは6~7%で、国債の利回り(1%)に比べると高い。利回りが高いということは、価格が安いということです。

第2は企業収益が拡大していること。日経平均採用銘柄の225社で、今年3月期の利益が予想ベースで前年比11%増。また、「マザーズ銘柄」「グロース企業」と呼ばれる新興成長企業でも、2024年3月期で56%増益という状況にあります。

第3は円安で、外国の資金が日本企業株式の取得に向かっています。

これらからわかることは、上昇する株価が反映しているのはあくまで企業利益だということです。政治の世界では株価上昇=景気好調の宣伝が盛んになされますが、株価と景気は別物で、企業収益を反映する株価は上昇していますが、冒頭で見たとおり、経済全体は超低迷が続いているのです。

経済が生み出した果実(=利益)は労働と資本に分配されます。資本の取り分が増えるほど、株価は上がります。しかし、実質労働賃金が減少し続けているように、労働者の取り分がどんどん減っています。株価の上昇は経済の好調さを示すものではなく、労働者が踏みつけにされていることの表れだと考えていいでしょう。

◆小泉内閣から始まった売国政策

アベノミクスの3つの柱は、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」でした。この3つのうちの核心は成長戦略です。

しかし、誰のための成長かということが重要で、真相は「大資本の利益の成長戦略」であり、「労働者の不利益の成長戦略」だったのです。結局、「大資本が栄えて民が滅ぶ」という流れが生み出されてきたことがわかります。

またアベノミクスの成長戦略には、後述する法人税減税や、経済特区という新たな利権も含まれます。ほかにも農業や医療の自由化、労働規制の撤廃というように、大資本の利益を拡張させるための様々な規制改革が次々に遂行されてきたのです。
このことは、安倍内閣が国民を騙してTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を推進したことにも表れています。安倍晋三氏が率いた自民党は2012年末の総選挙で「TPP断固反対」と大書きしたポスターを貼りめぐらせましたが、政権奪取した選挙から3カ月も経たぬタイミングでTPP交渉参加を決め、発効に向けて突進しました。
その流れの元は、2001年に発足した小泉純一郎内閣にあります。新自由主義経済政策の旗を掲げた小泉内閣の規制改革で最も象徴的なのが、派遣労働の範囲拡大でした。

この小泉政権で政権中枢に加わった竹中平蔵氏(元経財相・金融相・総務相)は、2003年に政府によるりそな銀行乗っ取りを主導した後に郵政民営化担当相に横滑りし、2005年~06年に郵政民営化を強行しました。

彼らの裏にいたのは米国です。竹中氏は法人税減税を主張し始めた張本人の一人ですが、これは米国の巨大資本が日本で払う税金を減らすためにやらせた側面が強いのです。

後述しますが、米国を中心に、いわゆる「ワンワールド」や「ニューワールドオーダー(新世界秩序)」といった、グローバル資本による世界市場統一に向けての大きな運動が進められています。その一環として、市場原理主義を日本に埋め込み、巨大資本の利益を極大化する戦略が2001年以降に始動し、現在に至ってもどんどん拡大されています。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n9b222db7a856

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自衛隊指揮権を米軍に委譲 日米一体化きわまる中で“日本人”を問い直す 木村三浩
公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由 足立昌勝
本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 浅野健一
米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
続・失言バカ政治家の傾向と対策 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?〈後編〉 板坂 剛(作家・舞踊家)

◆神聖な偶像がなぜ必要なのか?

かって親しくしていた宗教関係者の女性がしきりに「神は実在する」と口走っていた。「実在」という言葉が引っかかって、どうしてもこの女性との関係を持続出来なかった。

「宇宙人は実在する」とか「UFOは実在する」と言われればまだ納得しようという気分になれたかもしれないのだが……

しかし、「神は実在する」と言われても、目撃情報が全くないのだから判断することは出来ない。彼女はこうも言った。

「立派な建築物は優秀な設計者がいるから創られる。人間の体も同様で優れた創造者の設計でこれほど見事に完成されたのよ。その創造者が神なのですよ」

こういう理屈はジャーナリズムの世界では、裏づけが取れていない空論として排除される。が、宗教の世界、とりわけキリスト教の信者の間では、空論も正論として認められているようである。前述した私の交際相手の女性も生粋のクリスチャンだった。

ただ最近のキリスト教系の新団体では「神が実在するというのは間違いで、神は人それぞれの心の中にある神聖な領域への憧れの結晶です」と言い切る指導者もいらっしゃるようだ。これまでその種の映画や小説の中で用いられた「神の声を聞いた」等という表現も、「それは自分の内なる神聖に美化された自分の声を聞いた」ということらしい。

そういう言い方をしてくれれば、何となく理解出来る。また、宗教に救いを求める人々の気持ちも判らないではないと思える。そして、その気持ちは、UFO=宇宙人が実在すると信じたい人々のこだわりに通じるものがあるような気がするのである。

UFOが神と異なるのは、目撃情報がやたらに多いという点だが、人間が生存する次元を超えた「物体」に対して精神的に執着したいという人心を惑わすところは同じ。「執着したい」はやがて「帰依したい」となる。

UFOは当初、宇宙からの脅威という不安材料を与えて大衆を結束させる目的で設定されたが、やがてマニアックな人々の意識に導かれ、多くの人々のロマンの対象となっている。

神もまた権力者が支配の口実にして、神の意向が自分の意向であるかのようなプロパガンダを用いた末に、布教活動と商業と時には武力行使をセットにした事実上の侵略を可能にしたという意味で、統治の強力な要(かなめ)であった。

もちろん現在の形骸化した宗教では、教会は結婚式場として若いカップルを祝福する最適なスペースを提供しているわけで、神は1応幸福を求める人々の心の支えとして機能していることになる。

UFOも神も謎めいた一種の偶像として大衆的には定着していると言えるだろう。それもまた害のない帰依ではないかと思う。

では害のある帰依とは何か? 私はそれが松本人志やジャニー喜多川を独裁者の如く崇拝した支持者たちの異常な心理であると思う。

ファンには罪はない。誰が誰を好きになろうが、それは自由だ。また独裁者タイプの人は多くのファンを獲得する以前に、自分は特別な人間であり、偶像として人並みではない扱いを受けるべき大人物であるという自覚と自信を抱いているのも事実。その人たちが放つ特異なオーラは、庶民の目から見れば「神がかった人物」とも「宇宙人」とも見えるかもしれない。

スピリチュアルな世界にはまった人から見れば、なおさらである。足立区の中華料理店で出会った若者の言葉は彼なりの真実であったと言うべきだろう。

彼にも罪はない。彼を含めて鋭敏な感性の持ち主たちが望んでいたのは、偶像を発見する歓びであっただろう。その結果、彼等彼女たちに有害な事象が生じたとしても、それは自己責任というものと思えるが、まあそれにしても、パーティーで初めて会った若い女性に、アルコールが入った上でだとしても「俺の子供産めや」なんてよく言えるよナァ。やっぱりあの男、もしかしたら宇宙人かって、思いたくなる時もある。

そして、あの男。広末涼子とのW不倫で名を売ったカリスマ・シェフ。あいつも東スポの記者に向かって「うらやましいでしょう」と言ったそうだ。このカリスマの特権意識・優生思考。確かにうらやましい。

神も宇宙人もカリスマも所詮大衆の劣性思考に支えられて存在していると考えれば、いつか「うらやましい」が、「うらめしい」に転換することもあるという話である。

◆地震津波は神の怒りか?

能登半島で地震があった。北陸電力も原子力規制委員会も認めていなかった断層が見つかったって……。これをクリスチャンやスピリチュアル・マニアの方々は、何故「神の怒り」「宇宙人からの警告」と声高に叫ばないのだろうか? 

地球とて宇宙全体の無限の広がりの中では、ちっぽけな天体に過ぎない。そこでくり広げられる人間の様々な愚行から生じる問題(領土問題・環境問題・ワクチン禍・LGBT・差別・利権 etc)に、神がいつまでも沈黙を守るはずはないとは考えられないのか。

人智を超えた力を見出すのが宗教であり、精神世界であると思うのだが……。

かつて神戸に在住していたクリスチャンの知人が、個人的な事情で東京に転居した。その直後に阪神大震災が起こり、知人が住んでいた家は半壊したという。

その際の知人のコメントは、「神が私をお守り下さった」

自分の身を護るだけの信仰だったのかと問いたい。

本稿は『季節』2024年春号(2024年03月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した記事の後編です。

板坂 剛 松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?(全2回)
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=49986
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=49990

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』

ヒロシマでイスラエル人母親に国籍を偽らせるネタニヤフ政権と極右政党の大罪 さとうしゅういち

◆イスラエル人母親がとっさについた嘘「I am from England」

5月末の広島の平和記念公園。筆者の友人は以下のような光景を目撃しました。

「Where are you from?」

 

白人とみられる家族連れに日本人が何気なく質問しました。ここまでは、平和公園ではよくある光景です。

すると、お母さんが、
「England」
と答えました。

ところが、小学生以下の年齢とみられる小さな娘さんは、
「Israe! Israel!」
とはしゃいでいたそうです。

当然、このご家族は、イスラエルから来られたのでしょう。しかし、お母さんは、旅行先の現地人である日本人にどこから来たか問われて、とっさにうそをついてしまったのです。

「イスラエル人である」と名乗ることが恥ずかしい。そのように、お母さんは思ってしまったのでしょう。

◆虐殺続行で旗色が悪くなるばかりのイスラエル

その原因は、何か?言わずもがなです。首相・ベンヤミン・ネタニヤフ被疑者によるガザでの大虐殺以外に考えられません。6月3日現在、停戦交渉が行われる一方で、相変わらずイスラエルは攻撃と言う名の虐殺を続けています。

むろん、5月7日には、原爆ドーム前で「STOP GENOCIDE」の横断幕を持って立っていた若者が、イスラエル支持と見られる外国人の年配女性に横断幕を強奪される、という事件も起きています。その時に比べても、イスラエルの「政治的な旗色」は悪くなっています。

イスラエル首相のネタニヤフ被疑者と国防相のガラント被疑者については、5月20日、ICC(国際刑事司法裁判所)が逮捕状を請求。このまま認められれば、例えばネタニヤフ被疑者が来日した場合はネタニヤフ被疑者を日本の警察は逮捕しなければいけません。実際に逮捕されることはないにせよ、ICC加盟国への外交ができなくなるという時点で、同被疑者は厳しい立場に追い込まれます。

また、国連機関でもある5月24日にはICJ(国際司法裁判所)がイスラエルに対してラファ攻撃を止めるよう命令しています。これについては、日本の上川外相でさえも履行をイスラエルに求めています。

また、スペインやノルウェー、アイルランドと言った西側諸国にもパレスチナ自治政府をパレスチナ国として承認する動きが広がっています。ネタニヤフ被疑者は追い詰められています。

◆ネタニヤフ被疑者への「天祐」?だった戦闘激化もさすがにヤバい状況に

ネタニヤフ被疑者は、2023年10月7日のガザを実効支配するハマス政権による軍事作戦※以降、「ハマスを相手にせず」という対応を取ってきました。これは、日中戦争で当時の大日本帝国の近衛文麿首相が「蒋介石を相手とせず」と、友好国ドイツによるトラウトマン工作などの和平仲介工作をも拒絶。結果として、日本を破滅させたのにも似た状況でした。

また、ネタニヤフ被疑者自身、実は、国内でも被疑者・被告人です。すなわち、同被疑者は、日本で言えば故・安倍晋三さんと似たようなことをしたとして、汚職の罪で起訴されています。妻のサラ・ネタニヤフ元被告人については、安倍昭恵さんと似たようなことをしたとして罰金刑が確定しています。

こうした中で、ネタニヤフ被疑者は、日本のような行政権力に忖度する司法に改悪する「改革」を強行しようとしていましたが、イスラエル民衆の激しい抵抗にあっていました。そうした中で、戦闘の激化はネタニヤフ被疑者にとっては「天祐」だったのかもしれません。しかし、ここへきて、急速に外交面で旗色が悪くなっています。さすがのネタニヤフ被疑者もまずい、と思っているのでしょう。

◆「大日本帝国軍部」化するイスラエル極右が自国民に恥をかかせる

ところが、停戦については、ネタニヤフ被疑者の与党になっている極右政党が反対しています。現時点では、内閣を離脱して政権を崩壊させる、とまで言って脅しています。戦前・戦中の大日本帝国において、軍部が「軍部大臣現役武官制」を盾に「海軍大臣を引き上げる」「陸軍大臣を引き上げる」などと脅して、倒閣運動をしていたことを思い起こさせます。

むろん、ネタニヤフ被疑者自身が、汚職事件で、自らが率いる与党の議席数が足りないので、極右勢力の協力が欠かせない状況になっています。現時点では虐殺が止まるかどうかは、極右勢力にかかっていると言えます。

極右勢力が増長すればするほど、停戦、否、虐殺停止は遅れます。その結果、ヒロシマを、日本を訪れるイスラエル人は肩身が狭くなる一方です。

「愛国心はならず者の最後の逃げ場」というサミュエル・ジョンソンの言葉は言い得て、妙です。

「自国民に肩身の狭い思いをさせて、何が右翼だ?!何が愛国だ?!」

筆者は、イスラエルの極右勢力の方々に対して強い憤りを感じます。

イスラエルの方々が、嘘をつかずに外国へ行けるようになる。そのためには、イスラエル国民がネタニヤフ被疑者を打倒することである。それによって行われる総選挙では、ぜひともネタニヤフ被疑者の政党(リクード)と極右を大敗させ、少なくとも、パレスチナ側との話し合いをする政府をつくることです。

ガザでの虐殺、そしてそれ以外のパレスチナでのイスラエルによる侵略が止まり、パレレスチナの人々に平穏な生活が戻ること。そして、イスラエル国民、世界中のユダヤ人の皆様も肩身の狭い思いをせずに生きていけることを心から希望します。

“Israeli people, You had better overthrow Netanyahu and ultra nationalist to protect your life and future”

イスラエルの皆様!ネタニヤフと極右を打倒し、あなたの命と未来をまもったほうがいいですよ。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

M君暴行事件を「なかったこと」にする動きが顕著に ── 本当に事件は無かったのか?〈1〉 事実の凝視 黒薮哲哉

カウンター運動の市民運動体が、2014年12月の深夜に大阪市の北新地で起こした暴力事件は、メディア黒書で報じてきたこともあって、読者の記憶に残っているのではないか。内輪のもめごとが高じて、暴力沙汰に発展した事件である。

暴力の標的になったのは、大学院生M君である。全治3カ月の重傷を負い、トラウマにも悩まされて、生活に支障を来たすようになる。M君を精神鑑定した精神科医で作家の野田正彰氏も、鑑定書の中で事件がM君に及ぼした負の影響に言及している。

[左]有田芳生議員による2013年7月12日付ツイッター書き込み [右]暴力の標的になった大学院生M君。全治3カ月の重傷を負った(高島章弁護士によるツイッター書き込み)

市民運動体は、広義にしばき隊と呼ばれている。しばき隊のメンバーとM君、あるいは事件後にM君を支援するようになった鹿砦社との間で、これまで数々の裁判が争われてきた。

2024年になってからも、新しい裁判が提起された。しばき隊のE氏が作家の森奈津子氏と鹿砦社に対して、110万円の損害賠償を求める名誉毀損裁判を起こしたのだ。E氏は、M君に対して40分に渡り殴る蹴るの暴行を加えた人物である。

裁判の争点になっている請求の内容については、鹿砦社の松岡利康社長の筆による次の記事を参考にしてほしい。

本稿では、暴力事件そのものに関する評論に言及したい。事実とは異なる主張が独り歩きしているきらいがあるからだ。最新の裁判の中で、E氏側(代理人は、自由法曹団常任幹事の神原元弁護士)が、そもそも「リンチ事件」は発生していないと主張しているのだ。鹿砦社や森氏が指摘している「リンチ事件」は、単なる喧嘩だったというである。

「リンチ事件」はなかったという主張は、神原弁護士がしばき隊関連の他の裁判の中でも展開してきた主張なので驚きはなかったが、最近、わたしは個人的に「南京事件は無かった」と主張する人と話す機会があったこともあり、重大な事実を堂々と否定する風潮について考えるようになっていた。

日本軍による戦争犯罪を歪曲するメンタリティーと、神原弁護士らのメンタリティーが重なって、わたしは考え込んでしまった。ちなみに神原弁護士は、みずからもしばき隊のメンバーであることをツイッターで公表している。【下写真】

神原元弁護士による2015年2月26日付ツイッター書き込み

自由法曹団といえば、日本を代表する人権擁護団体である。そのメンバーには、わたしが尊敬する弁護士らが多数含まれている。その自由法曹団の常任幹事を神原弁護士で務めている事実と、神原氏がしばき隊を擁護している事実が、整合しない。自由法曹団に敬意を表している多くの人々が、わたしと同じ違和感を持っているのではないか。

もっとも「リンチ事件」をどう定義するかにより、「リンチ事件」はなかったという主張が成立する可能性もあるが、少なくともM君が40分に渡って暴行を受け、現場に居合わせた李信恵ら数人の隊員が、Mを救済しなかったことは紛れもない事実である。また、李信恵がM君の襟を掴んだことも紛争当事者の間で争いのない事実として認定されている。

E氏がM君を暴行する際の録音も残っている。この録音は、身の危険を感じたM君が録音したものである。暴行する際の音や、E氏による罵倒も記録されている。暴行を受けた直後のM君の顔写真も、暴力の凄まじさを物語っている。

◆事件の隠蔽工作

この事件が単なる小さな喧嘩であれば、事件後、組織的に事件の隠蔽工作がおこなわれることもなかったはずだ。事件の隠蔽工作については、複数の裏付けがあるが、代表的なものとしては、神原弁護士と同様にしばき隊の支援者である師岡康子弁護士が知人に充てたメールがある。

事件が起きた2014年12月は、折しもヘイトスピーチ規制法の成立が秒読みに入っていた時期である。当然、しばき隊による事件が報道されていれば、国会での動きにも変化が生じた可能性があった。

とりわけM君がE氏らに対して刑事告訴に踏み切った場合、ジャーナリズムの話題として浮上する可能性もあった。そこで事件の隠蔽に走ったのが師岡弁護士だった。みずからの知人でもあり、M君とも面識のあるCさんに次のようなメールを発信したのである。

「今日はひさしぶりにゆっくり話せてうれしかったです。ヘイト・スピーチ規制法制化の具体的な内容について、Cさんほど真剣に取り組んでいる人はなかなかいません。これからもいろいろ協力してぜひ国で、地方で実現させていきましょう。

しかし、その取り組みが日本ではじめて具体化するチャンスを、今日の話の告訴が行われれば、その人(M君)は自らの手でつぶすことになりかねません。」

「その人は、今は怒りで自分のやろうとしていることの客観的な意味が見えないかもしれませんが、これからずっと一生、反レイシズム運動の破壊者、運動の中心を担ってきた人たちを権力に売った人、法制化のチャンスをつぶした人という重い批判を背負いつづけることになります。」

「Cさんは、運動内部での解決が想定できないと言っていましたが、私は全部の事情を詳しくは知りませんが、聞いている限りでは双方の謝罪や治療費支払いなどによる和解が妥当な解決だと思います。Cさんは前、運動内部での争いを解決する機関が必要だと言っていましたが、まさに今回はそのようなケースだと思います。コリアンNGOセンターの人たちが調整してくれるとよいのですが、無理なら他の適任者がいないでしょうか。今日も言いましたが、私でよければ、その人を説得しに行きますが、まったく見知らぬ私より、双方の友人であるCさんが心から説得するのが、一番の解決策のように思えます。どうそ考えてみてください。私ができることは何でもやります」

師岡弁護士は、Eによる暴行を、日本の反差別運動にも影響を及ぼしかねない重大な事件として捉えているのである。引用した書簡を検証するだけでも、北新地での事件が単なる街角の喧嘩ではなかったことが十分に推測できる。

実際、この事件は数多くの著名人の耳にも入っているようだ。(つづく)

本稿は黒薮哲哉氏のHP『MEDIA KOKUSHO』(2024年6月1日号)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『紙の爆弾』2024年7月号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

5月号に続いての登場となった政治経済学者の植草一秀氏は、本誌や著書『資本主義の断末魔』(ビジネス社)で「WPS」に警鐘を鳴らしています。すでに巨大企業や権力者への資本の集中は行きすぎるまでに進み、資本主義そのものが破綻に向かっている現在、展開されている「断末魔のビジネスモデル」を指し、その筆頭が「W=War(戦争)」。今月号は目次に目を通していただければわかる通り、またタイトルに銘打っていないものでも、「戦争」につながる話題が多くを占めました。残りの「P」「S」については、本誌や著書をお読みください。

その中でも特に、民間施設(港湾・空港)の軍事拠点化には、最大限に注目する必要を感じています。生活の中に戦闘機や軍艦が現れてもそれが日常であり、人々が“映える”とばかりSNSにアップする時代がそこまで来ています。「今からでも止めなければならない」ということは、あらゆる問題において強調すべきことです。

国会での審議を経ずに、様々なことが決定されています。また国会で審議されても、憲法違反の法律が成立しています。法律や政策に限らず、JR東海が乗客の利便性どころか自社の経営すらかなぐり捨てて進めるリニア新幹線や、カジノのための大阪・関西万博がそうであるように、その計画が経済的・科学的・論理的に破綻しているとしても、止まる理由にはなりません。

なおリニアについては、その首謀者だったJR東海の葛西敬之元名誉会長や、昵懇だった安倍晋三元首相が2年前に相次いで亡くなっても、なぜ計画見直しとならないのか。その背景に、今月号で迫っています。

6月号では半導体工場によるPFAS汚染をはじめ「健康被害」を特集。そこで採り上げた小林製薬の「紅麹」問題は、コロナワクチンによる健康被害が注目されるようになった中、免疫づくりに有効な発酵食品の危機として捉える見方が少なからずあります。

続いて、猶予期間が五月末で終了した改正食品衛生法も、食と健康の危機につながる問題です。漬物を販売するのに専用の調理場など基準が厳格化、農家や飲食店の“手作り”が食べられなくなるものです。工場でロボットにより製造された食品しか口にできなくなる、そんな時代の到来も想起してしまいます。

「食料危機」という言葉は、すでに一般化。今国会で可決・成立が目指されている「食料・農業・農村基本法」改正案では「食料安全保障」なる怪しげな言葉まで使用されています。本誌記事で執筆者の高野孟氏が、「食料をめぐる本源的な問題」について、重要な指摘をしています。

7月号ではスポーツ界の話題も採り上げました。この事例に限らず、目立って問題のある人物が放逐された後にどうなるかというのは、注視する必要があると思っています。また米国マイクロソフト頼みの日本政府「デジタル・ニッポン」構想の危険性、ワクチン強制接種と政府宣伝以外の情報を統制する「新型インフルエンザ等政府行動計画」、大川原加工機冤罪事件と経済安保法の密接関係など、必読のレポートを満載してお届けします。

全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年7月号

『紙の爆弾』2024年 7月号

植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制 大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの
「食料・農業・農村基本法」改悪「食料自給率」を捨てた農水省の愚 高野孟
感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制 高橋清隆
ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか 青柳貞一郎
国会答弁もアメリカ製AI利用に マイクロソフトに乗っ取られた日本政府のAI構想 浜田和幸
送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ! 広瀬隆
静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか 横田一
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公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
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本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 浅野健一
米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
続・失言バカ政治家の傾向と対策 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気

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福岡地裁の「不当決定」 飯塚事件の再審開始は認められなかった 尾﨑美代子

飯塚事件の再審開始は認められなかった。女児2人が何故殺害されたかはわからぬまま。

1992年、福岡県飯塚市で女児2人が通学途中何者かに連れ去られ遺体で発見された。この「飯塚事件」で久間三千年さんが逮捕・起訴され裁判で死刑が確定。わずか2年で死刑が執行された(執行時久間さんは70歳)。遺族が裁判のやり直しを求めていた第二次再審請求で、5日午前10時福岡地裁は再審開始を認めないという不当決定を下した。

久間三千年さんの遺族が裁判やり直しを求めた第二次再審請求を、福岡地裁は5日認めなかった(撮影=青木恵子さん)

今回新たな証拠となっているのは2点。1つは、久間さんではない若い男性が、車に女児2人を乗せているのを目撃したという木村泰治さんの証言だ。木村さんは、第二次再審請求を提訴した3年前の7月の記者会見に顔出し・実名で出席し、事件当日、飯塚市の八木山バイパスを走行中に白い軽自動車とすれ違った。その際、車の後部座席に幼い女児が2人乗っていたのを見たと証言した。

一瞬誘拐ではないかと疑ったが、2人で乗っているので違うだろうと考えたという。「うら悲しそうな顔をしていた」女児の顔が印象に残ったと語っていた。白い車を運転していたのは丸刈りで色白、30歳代の若い男で、眼鏡をかけ恰幅の良い久間さんとはまったくの別人。夜のニュースで女児2人が行方不明になっていることを知り警察に通報。

しかし、警察が木村さんを訪ねてきたのは数日後、それもたった一人の警察官がやってきて、木村さんの話をメモ帳に書き込んでいたという。しかし、その後、警察からの連絡は全くなかった。

報告集会で。左端でマイクを持つ男性が、事件当日女児2人を乗せた白い車を見たと証言した木村さん(撮影=青木恵子さん)

もう一つの新証拠は、事件当日、女児2人を三叉路で見たという女性の証言だった。女性は実は、女児を見たのは別の日だったが、警官に「その日(事件当日)に違いない」としつこく言われ、そのような間違った調書を作られてしまったと証言した。当時20代の女性はその後関東に引っ越したらしい。過去に警察でそのような調書を取られていたことを忘れていたかもしれない。

しかし、何かの拍子で久間さんに死刑判決が下され、しかもあっという間に死刑が執行されたことを知り、自分の曖昧な供述が久間さんを死刑にしてしまったのではないかと自分を責めていた。そして遺族が久間さんは無罪であると訴え、弁護士と共に再審を闘っていることを知り、2018年弁護士事務所に連絡をしてきたという。
三叉路で女児を見たのは事件当日でなかったという女性の証言は、これまで検察の書いてきたストーリーを覆すとともに、弁護団が気になっていた問題が解決したという。判決では、女児2人が失踪した現場を三叉路近くと特定していた。同じ頃、久間さんが乗っていた紺色のワゴン車と似た車を見たという証人もいた(5月21日掲載の「正義の行方」の記事で、西日本新聞が探し出した男性)。

女児らの遺留品が見つかった現場でも似た車が目撃されていた。そこからこれと似た車を持つ久間さんが疑われたのだった。しかし、もとの「事件当日三叉路で女児らを見た」との証言が間違っており、別の日であるならば、当日、女児らは三叉路近くで失踪したというストーリーは全く違ってくるのだ。

しかもこの証言で、弁護団はそれまで抱えていた矛盾を解決することができたという。それは、事件当日、三叉路近くにはほかにも数人の人がいたが、女性以外に女児らを見た人は誰もいなかったことだ。その問題・矛盾が解決できたということだ。

判決で女児2人が何者かに連れ去られたとされた三叉路。しかし、今回新たな証言で、ここではない可能性が強まったのに……(撮影=青木恵子さん)

第二次再審請求で新証拠として出されたのは以上の2つだが、この事件、調べれば調べるほど、1から10までいい加減、ずさんな捜査だったことがわかる。なぜこんなことになったのか?

飯塚市ではこの事件の3年前にも女児が失踪した事件が発生し未解決のままだった。そこに飯塚事件が発生し、福岡県警は一層世間の非難に晒される。今回はどうしても犯人逮捕にこぎつけたい。その思いは理解できる。そこで福岡県警は、3年前の事件でも犯人視された久間さんに目をつけたのではないか。

警察が出してくる証拠のどれもが、久間さんを犯人と決めつけたものだ。例えば、女児らの遺留品がみつかった近くの峠で久間さんの車と似た車(紺色のワゴン車)を見たと証言した男性の話。すれ違いざまの一瞬の出来事なのに、その車について、①やや古い型、紺色、②トヨタ、ニッサンではない、③ホイルキャップの中に黒いライン、④車体にラインが入っていない、⑤窓ガラスにフィルムを貼っていた、⑥後部タイヤがダブルタイヤ、⑦ラインは入っていない、などの情報のほかに、目撃した人物についてもめちゃくちゃ詳しい。そんなことってある?

特に車に「ラインが入ってない」については、先日、甲南大学で講演をお聞きした厳島行男教授は「普通ないものをなかなかないと報告することはない」という。なぜ男性はそんな供述をしたのか? 

じつは久間さんの乗っていた車の標準の仕様だとラインが入っているのだが、久間さんはそれを剥いでいた。男性の供述をとる前に、警察が久間さんの車を確認しラインがないことを確認していた。そして男性の供述を取る際「目撃した車にラインは入っていたか?」とわざわざ聞いたのだろう。本当にずさん過ぎる。

 
午後から支援者に案内され、事件に関係する様々な場所を訪れた青木恵子さん。女児らの遺留品が見つかった場所近くに作られたお地蔵さんに手を合わせてきた(撮影=青木恵子さん)

これも桜井昌司さんが良く言っていた「歪んだ正義」によるものだろう。警察、検察はこの事件を解決したいと考えている。できれば3年前の事件も……。そのため、久間さんをターゲットにして、久間さんだけを決めつけ、捜査を続けてきた。

だから、木村さんが不審車を見たと通報したが、木村さんの話を聞いて白い車、丸刈りの若い男を捜査することはなかった。捜査して白い車に乗る、丸刈りの若い男を探せて、その結果「ええ、あの日は僕の子どもと友達の2人が学校に遅れそうなので送ったのですが」と間違いであるとわかったら、それはそれで良いではないか。

冤罪の陰には必ず真犯人がわからないまま放置された遺族がいる。「うら悲しそうな目をしていた」女児らの遺族は、今、どう思っているだろうか?

そんなとき、今日午前中から、地裁前の写真などを送ってくれた青木さんから午後に支援者に案内してもらった現地の写真が届く。そのなかに、女児の遺体が置かれていた場所の近くに置かれたお地蔵さんの写真があった。

「うら悲しそうな目をしていた」女児らはどんなに怖くてつらかっただろうか。 そう考えて、初めて涙がこぼれてきた。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?〈前編〉 板坂 剛(作家・舞踊家)

◆「あいつは宇宙人だ」と若者が叫んだ!

もう遠い昔の話だが、たまたま独りで立ち寄った足立区の中華料理店で、店内に設置されたテレビの画面に突然松本人志の姿が現れた時、私より先に食事をすませてビールを飲んでいた若い男が叫んだ。

「あいつは宇宙人だ」

驚いて彼の方を見ると、目が合った私に向かって、また同じトーンの声が発せられた。

「あいつは宇宙人なんだよ。判るんだ、俺には」

そう言われてテレビの画面に見入ると、大写しになった松本人志の顔は、バルタン星人とまでは言わないが、確かに地球上の生態系から生まれた人間のものとは思えない奇怪な形相を呈していた。

十数分後、私の隣の席に移動してきたその若い男は、自分はあるスピリチュアルな団体に属して「人類の中には、実は他の星のシステムから地球に来た訪問者が潜んでいる」と教えられ、ネイティブな地球人と宇宙人のまま人間に化身した生物と識別する能力を身につけることが出来たという。

「そんな馬鹿な」と反論しなかったのは、論より証拠、松本人志の顔が宇宙人にしか見えなかったからである。

若い男はこうも言った。

「あいつ(松本人志)はきっと大物になるよ。お笑い芸人として第一人者になるだろうな」

当時の松本人志はまだ第一人者にはほど遠い存在だったのではないかと(お笑いの世界には無知な私だが)思っていた。そんな人材をいきなり「きっと大物になる」と評されても納得は出来なかったが、今はあの時の彼の見立ては正しかったと思うしかない。

あの時以降、地球上に宇宙人が既に棲みついているという説もちらほらと耳にすることがある。人間の皮をかぶった彼等は大変優秀で、どの分野でもトップに立つ実力者になるとも聞いた。

肯定も否定も出来なかったが、いつか松本人志が自作自演したにもかかわらず、全く不評で興業的にも大失敗だったというワケの判らないSM映画(『R100』)を観た時、なるほど宇宙人ならこういうモノを創るだろうと思った。

監督として彼自身が試写室で完成された作品を鑑賞し、同席していたスタッフや映画評論家らしき人物が「もうダメ」と棄てゼリフを残して退席した後も、一人で興奮状態に陥っている場面が、彼の正体を表現していると思える作品だったのだ。好意的に解釈しても「天才の自爆」悪く言えば「単なる独りよがり」でしかなく、はっきり言って駄作である。

『R100』(監督=松本人志/製作=吉本興業/2013年10月5日公開)より

 
『R100』(監督=松本人志/製作=吉本興業/2013年10月5日公開)より

特にSM映画という前宣伝に煽られたその種のマニア諸氏には、さぞ期待外れであっただろう。主役のパッとしない男性がスタイル抜群の半裸の美女に暴力的に虐げられる場面もあることはあったが、恐らく松本人志にはマゾヒストとしての素質は皆無に等しいと思わせるほど、どの場面もつまらな過ぎた。

更に後半SM映画ならぬSF映画的な展開になると殆どの観客は試写室の場面での映画評論家らしい人物のように「もうダメ」と言い棄てて退席したくなったことと思われる。(ちなみにこの人物の最後のセリフは「(こんな映画)公開すんなよ」であったと記憶する)

しかし、私はむしろ後半のSFもどきのあり得ないシュール・レアリズムに、宇宙人的なセンスを感じて少しばかり感動した。たかがお笑い芸人が、もしかしたら宇宙人かという荒唐無稽な妄想を抱かせる……。スピリチュアルの世界は奥深いと言わなければならない。

◆宇宙人が心配する地球の惨禍
 
ここで話を持ち出すのは却って信憑性を欠くことになると思うが、敢えて書く。あの福島原発の事故の前後、原発附近の上空にUFOが頻繁に出没したというニュースを覚えてる人はいらっしゃるだろうか。

当然フェイク・ニュースとして扱われてしまったようだが、UFOキャッチャー(ゲームの達人ではない)を自認する知人が、確かに原発事故の際、異常な数のUFOが出現したのは事実だと自信を持って語っていた。

また彼はUFOに乗って地球にやって来る宇宙人の多くは、将来地球の住人になるつもりでその時のために下見に来ていると断言していた。従って宇宙人が地球人を攻撃することはなく、むしろ平和に共存する方法を模索しているのだという。

そういうわけで地球上で地震や戦争等の惨禍が起きた際には、心配した宇宙人がUFOに乗って現場を視察することになっているらしい。珍説と笑って黙殺すべきかもしれない。

しかしここ数年、海外で戦争が続発している状態の中でUFOに関する話題がまたチラホラとメディアの片隅に登場しているが、その出所が大半アメリカであるところが気になる。なにしろ謀略が大好物の国である。周期的に大衆の不安をかきたて抑止力(軍事力)を強化する伝統的な国策は建国以来のもので、決して自分たちに危害を与える存在ではなかった北米大陸の原住民を凶暴な「土人」と決めつけて虐げ、社会から排除した。

1960年代、テレビで放映されていたアメリカの西部劇で、白人のガンマンたちが「土人」という言葉を口にするのを何度も聞いた。もちろん邦訳の吹き替えで、実際に俳優が何と言っていたかは判らない。ただストーリーの展開と彼等がそのセリフを口にした時の表情から、相当に差別的な発言があったのだろうと想像出来る。

当時、名画と称された西部劇の劇場用映画の中で、白人が乗った駅馬車が「インディアン」の集団に襲撃され、駆けつけた騎兵隊に救出されるという場面が、そのままテレビにも流用され、何度となく放映されたのを記憶している。

元々先住民であったにもかかわらず「インディアン」は盗賊、白人の開拓者はロマンチスト、騎兵隊は正義の味方と公的に定められているような構成だった。こういう常識が大衆に浸透している国だから、UFOも地球人類に対する潜在的驚異と位置づけて世界中の人々に緊張感を与えようとするのだろう。

数々のUFO目撃談、どうもアメリカの自作自演のような気がしてならない。そう考えると原発事故の際に出現した多数のUFOは、当時福島沖に展開していた米空母ドナルド・レーガンから発進した偵察用のドローンではないかと疑いたくもなる。東日本大震災当時は、一般の市民にとって「ドローンって何?」という程度の認識しかなかったと思うが、米軍ではとっくに兵器として活用することを前提にした開発研究が行われていたはずである。

ただ原発の上空に現れたUFOが、地球上の惨禍を心配して飛来した宇宙人の運航する物体であるという説も私は棄てきれない。そっちの方が気持ちが安らぐのだ。

地球人が醜い争いに没頭したり、自然災害に苦しんでる様子を観察していると思うと、いつか地球人になって生きて行こうという彼等の意欲を損なうには忍びないという自制心が働くではないか。

そして思う。宇宙人だのUFOだのという観念的事実が、たとえ完全な夢想だとしても、そこにはアメリカ軍とその背後にいる産軍共同体の思惑とは真逆に、不安がいっぱいの現実からの救済を求める民衆の願望を感じるのである。(つづく)

本稿は『季節』2024年春号(2024年03月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した記事の前編です。

▼板坂 剛(いたさか・ごう)
作家、舞踊家。1948年福岡県生まれ、山口県育ち。日本大学芸術学部在学中に全共闘運動に参画。鹿砦社より『三島由紀夫と1970年』(2010年、鈴木邦男との共著)、『三島由紀夫と全共闘の時代』(2013年)、『三島由紀夫は、なぜ昭和天皇を殺さなかったのか』(2017年)、『思い出そう! 1968年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』(紙の爆弾2018年12月号増刊)等多数。

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』