今年は辰年です。辰年には大きな事件が起きると言われています。76年のロッキード事件も88年のリクルート事件も辰年でした。

そして元旦には能登大震災が起きました。亡くなった方々に哀悼の意を表すると共に、一日も速い復興を願っています。

それにしても心痛むのは過疎化した能登の光景です。見捨てられ置き去りにされたような光景は能登ばかりではありません。こうした「冷たい政治」を何としても変えなければならない。その思いで、今回の寄稿をさせて頂きます。

◆「日米統合」の下、国民の財産が米国に売られている

この間、貴誌への投稿で、日米統合の問題を何回かに渡って述べてきた。それは、日本の財産、日本国民の財産を米国に売るものとして進んでいる。

先の投稿では、法廃止問題を取り上げ、国の財産、国民の財産である日本の通信インフラが米国に売られようとしていることを述べた。

その内容を再度確認すれば、NTT法は、「日本電信電話公社」を米国の要求に応じて民営化(株式会社化)する時に、電信電話事業の公共性を維持するために定めた法律であり、そのため、そこには「国による株式の3分ノ1保有」「外資規制」「総務省による経営計画や人事の承認」などの規定があること。したがって、これを撤廃しなければ、米国企業に売却することも売却後に、米国外資が自分の意のままに、これを経営することができない。だからNTT法を廃止するということだ。

NTT法には又、「固定電話をユニバーサルサービスとして全国一律に提供する」という規定があり、離島や過疎地でも低価格でサービスを保証することが義務化されている。

これが如何に大事なものであるかは、今回の能登大震災を見ても分かる。今回のような大災害では、固定電話によるサービスが多いに役立ったことは想像に難くない。 

しかしNTT法を廃止すれば、それもなくなる。その代わりに移動電話でサービスを保証するというが、経営権を握った米国企業がそうしたサービスを保証するとは思えない。

岸田内閣はこうした国民の貴重な財産までも米国に売ろうとしているばかりではなく、日本国民が保有する2000兆円もの金融資産をも米国に売ろうとしている。

昨年6月の骨太方針で岸田首相は、「資産運用立国」を掲げたが、12月13日には、それを具体化した「資産運用立国実現プラン」なるものを発表した。

それによれば、「日本のメガバンク3社や大手証券会社に運用力の向上と企業統治の改善に向けた計画の公表」を求め、「海外の資産運用会社が進出しやすいように英語で行政手続きができる『資産運用特区』を創設する」、「機関投資家に新興運用会社の活用を要請する」などとなっている。

この資産運用会社が米国の会社であることは、岸田首相がニューヨークで米国の金融関係者を前に「資産運用特区創設」とこれへの参入を要請したことを見ても明らかだ。

その具体化として岸田政権は、12月に220兆円もの世界最大の年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用会社を拡大するという方針も打ち出している。

そればかりではない。岸田政権は、国家予算の立案執行まで米国ファンドにやらせようとしている。

今、岸田政権は、様々な政策執行で「基金」方式を導入している。卓越大学創設の「教育基金」、原発維持の「GX推進基金」、「中小企業イノベーション創出推進基金」などなど、今や基金は50事業にもなるという。

昨年12月、岸田政権は関係省庁にその運営を広告大手、民間シンクタンク、人材派遣会社など民間企業に委ねる通達を出したが、その民間企業が米国外資系や米国の意を汲んだ企業であることは言うまでもない。

国家経営で最も重要な予算の立案執行の多くを米国外資が握るようになれば、日米統合は決定的に進み、日本は最早、国とは言えない「国」になってしまう。

◆米国外資による企業支配、そして経済のバブル化

岸田政権の「資産運用」政策で注目すべきは、「企業統治の改善」が強調されていることである。それは「企業は株主のもの」だとする米国式の「企業統治」を意味し、米国外資が日本の企業の経営に介入し、終局的には、その経営権を握るものとなる。

昨年1月から日本の株価が急上昇している。それを主導しているのは米国外資である。そして彼らは「物言う株主」として日本の企業の人事や経営にまで口を出すようになっている。

昨年5月からの株主総会シーズンに、彼らは、現経営陣の退陣要求と社外取り締まり役の導入を提案した。その多くは否決されたが、今年の株主総会では、その攻防がいっそう激しくなると予想されている。

米国は自国のファンドや資産運用会社を使って、日本企業を支配しようとしているのだ。

そして、そのために米国の「投資助言会社」までが動いている。彼らは、取り締まり役に女性がいるか、温暖化対策を進めているかなどを判断基準にして、米国ファンドの投資の助言をするという。その中には日本的な「株の相互持ち合い」解消の基準もある。

日本の「株の相互持ち合い」は元来、外部からの株式買い占めに対抗するための「日本式」対応策であった。米国は、これを解体しようとしているということだ。

米国外資は日本の企業支配を進めながら日本経済をバブル化している。

今年1月の連休明けの9日、東京証券市場ではバブル期1990年3月以来の最高値3万3763円を記録し、その後も高値を更新しつつある。まさに米国外資による日本経済のバブル化。しかし、それは30年前に破裂したバブル経済の再演であり破裂は必至だ。

確かに、2000兆円ものカネを注ぎ込めば、しばらくは、株式相場は活性化しバブル化するだろう。しかし、バブルは必ず破裂するのが経済法則であり、30数年前に現実に起こったことである。

その破綻後、米国が要求してきた構造改革、その新自由主義改革によって、「失われた30年」になり、格差拡大し、多くの地方が衰退し、国民の多くが貧困化に追いやられた。

これを又やるのか。米国外資は頃合を見て売り逃げする。残るのは紙屑なのであり、国民の生活に責任をもつべき政府がやることではないだろう。

◆根強い、抵抗勢力の存在

こうした政策に対して、日本の経済界、自民党内部にも強い抵抗があるのは当然である。

NTT法廃止の動きで甘利プロジェクトチームが最終報告でこれまで「25年まで」としたのを「25年をメドに」とし、来年8月の国会で「研究成果の公表義務」を撤廃するという一部改正、迂回案を提案したのも、自民党や総務省の中にある「抵抗勢力」の存在を念頭において、彼らとの衝突を避けながら、あくまでも廃止を実現するということだ。

この1月、トヨタは御三家と言われるトヨタ自動織機、アイシン、デンソーなど持ち株会社への出資を10%削減することを発表した。それは今後、株主総会などで「株の相互持ち合い」が問題視されることを見越した対応策であろう。

それは、他の日本の企業も分かっており、それぞれ対抗策を打ち立てている。それは、日本の企業の多くが「抵抗勢力」であることを示している。

こうした「抵抗」はクラウドをめぐっても起きている。

今日、デジタル化なくして社会の発展はないと言われる中、データを集積利用するクラウドは決定的に重要である。しかし日本のクラウドは、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクルなど米IT大手4社が70%のシェアを占めている。

岸田内閣は、各自治体にクラウド導入を25年までに行うよう通達を出したが、それに対し、地域の自治体から「重要な個人情報を他国企業のクラウドで保管する状態でいいのか」「サイバー攻撃やデータ流出時の対応に懸念がある」「米企業が撤退した場合、どうするのか」、又、米国の「クラウド法」との関係で、米国政府の要求があれば、クラウド企業はそのデータを政府に提出しなければならないということへの懸念の声があがった。

クラウドを巡って上がる懸念の声は地方にも「抵抗勢力」があることを示している。

◆米国の焦りと政界再編策動

「抵抗勢力」の存在、それは米中新冷戦の最前線に立たされることへの「抵抗」、「日米統合」への「抵抗」が根本にある。これまで私が述べてきた「抵抗」は、直近の岸田政権の政策に対する「抵抗」を私なりに示したものだが、それは自民党や企業、自治体にとって具体的で身近な切迫した「抵抗」となっているということだ。

そういう中で、米国は何としても「日米統合」をやり抜かねばならない。

何故か、それは米国の覇権回復戦略で日本の米国への統合が決定的だからだ。

米国は米中新冷戦を掲げ、日本をその最前線に立たせるために日米統合を進めているが、その肝心の米国覇権がますます弱化している。

イスラエルのガザでの虐殺蛮行を見て、世界では人権や法の支配を掲げながらイスラエルの蛮行を承認する米国、米国覇権への非難の声が高まっている。またウクライナでのゼレンスキー政権の敗勢も明らかになってきた。こうした中で、グローバルサウスを始め世界の多くの国々が非米・離米の姿勢を強め、それが時代の流れになってきているのだ。

この流れに日本が合流すれば、米国覇権は最終的に崩壊する。米国としては何としても日本を統合しなければならない。

その期限は25年。軍事費倍増も25年までであり、クラウド導入も25年、NTT法廃止も25年をメドに、である。

そのためには、日本の経済界、地方を後ろ盾にした自民党内の「抵抗勢力」を何とかしなくてはならない。

自民党の献金問題での地検特捜部の動きは、その反映ではないだろうか。

54年の「造船疑惑」を契機に「大悪を暴く」として発足した地検特捜部の背景に米国があることは政界では常識である。

それが岸田政権を瓦解させ自民党を解体させるかのような動きをしている。米国は「日米統合」に「抵抗」する勢力を排除し、「統合」を促進するための「政界再編」「政治改革」を狙っているのだと思う。

◆米国主導ではなく日本国民主導の政治改革、自主的な政権樹立を

米国主導の政界再編、政治改革ではなく、これと真っ向から対決し、日本のための、日本国民のための日本国民主導の政界再編、真の政治改革が求められている。それは単に岸田政権批判、自民党政治批判に止まるだけでなく、対米追随、米国覇権追随ではない日本の自主的な政権樹立を視野に入れた戦いでなければならないと思う。

米国が25年までに「日米統合」の基礎を固めようとするなら、24年は、それを見越した闘いの年にしなければならない。

その主体は主権者である日本国民である。

勿論、米国主導の「改革」に対し、経済界や自民党などにも根強い「抵抗勢力」があることは事実である。しかし、それは、あくまでも「抵抗」に過ぎない。だからこそ日本国民が主体になって、日本のための、日本国民のための「改革」を主導し、選挙を通じて自主的な政権を樹立しなければならないし、それが出来る時代だと思う。

それは米国覇権が失墜し世界の大部分の国々が離米・反米を模索し始めているという時代の流れに合致するものだからであり、日本人であれば誰もが、米国の下に統合され、国とはいえない国にされるようなことを望まないからだ。

 

魚本公博さん

その戦いは左右の違いを乗り越え、党派の違いを乗り越えた日本という国、民族という自らのアイデンティティをどう守るのかという戦いになる。

左右の垣根、党派の垣根を越え、たとえ自民党であっても、大企業であっても、日本というアイデンティティを基礎にして国民が変革主体になり、すべての抵抗勢力を合流させ、日本のための、日本国民のための政治を実現する。

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24年は辰年の中でも甲辰の年だそうだ。甲辰には暗きを暴き出すという意味があって、甲辰の年にはこれまでの悪が暴き出され変革が起きるのだとか。24年はそういう闘いの年になる。私たちも老骨の身だが、この闘いに少しでも寄与したいと思っている。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

昨年12月24日、大阪ピースクラブで「冤罪と司法を考える集い」が開催された。そこでの井戸謙一弁護士のお話を全4回に分けて紹介する。

井戸謙一さん(ぴのさん撮影)

◆湖東記念病院事件の西山美香さんの場合

無実の人が自白することはいくらでもあるのです。湖東記念病院事件の西山美香さんもそうですけれども、(刑事裁判官は)なかなか無実の人間が自白するという事の想像力がないのですね。被疑者が置かれた立場、毎日毎日長時間の取り調べを受けて、脅されたりすかされたり、色んな利益供与を受けたりして、もう精神をずたずたにされて、そして、認めてしまう。そういう被疑者が置かれた過酷な立場に対する理解がない。あるいはそれを中々想像できない。

だから嘘の自白をするという事がありうるんだということ、否認すれば、私は嘘の自白をしましたという風に主張すれば、本当にそうかもしれないという思いで被疑者や被告人の弁解を聞かなければいけないわけですが、そういう姿勢が非常に乏しい。

湖東事件の西山さんの自白を、裁判所がどういう風に判断したかという所を抜き書きすると、なかなか興味深いです。有罪だと言った最初の確定審の大津地裁の一審では、「男性の気を引きたいというだけの理由で虚偽の殺人を告白する事は通常考えられない」と書かれている。非常に表面的な所だけですよね。美香さんはその取り調べ刑事が好きになって、彼に気に入られたい、期待に応えたいという気持ちで、刑事の言う通りの自白をしたわけですけれども、そこだけを抽象的にとらまえて男性の気を引きたいというだけの理由で虚偽の殺人を告白する事は通常考えられないとしました。

そして控訴審の大阪高裁は、「自白は被告人自身が自ら進んで供述したものであって、自発性が高く、その内容も極めて詳細かつ具体的であって信用性が高い」としました。

これはそうなんです、結局その好きになった刑事に気に入られたいという事で自分から進んで供述してるわけなので自発性が高いのはその通りです。しかし、内容が極めて詳細かつ具体的であるというのは、それは警察官の作文能力を示しているだけに過ぎないのです。警察官は自分が作った自白調書を信用性があるという風に裁判所に判断してもらいたいですから、想像であっても具体的かつ詳細に書きます。そういう形式的なところでしか判断していない。

これに対して再審開始決定をした大阪高裁の再審開始決定では、「亡くなった人の死亡への請求人の関与の有無、程度、アラームが鳴り続けたのかどうか、人工呼吸器の管をはずしたのか、はずれたのか等、多数の点で目まぐるしく自白内容が変遷している、この変遷状況のみを取り上げてもその中から真の体験に基づく供述を選別するのは困難である」としている。

これはその自白がどういう風に変遷していったかという事を、裁判官は後付けしてるわけで、これは本当に体験した人間による自白の変遷なのか、それとも捜査側から色々な知恵を与えられたり、あるいは捜査の状況と合うように誘導されて作られた変遷なのか、そういう観点で自白の変遷を見ている。結局この変遷状況だけでも信用できないという風に言ってるわけです。

その自白の内容を具体的にみてますよね。再審無罪判決では「この自白内容は合理的理由なく大幅に変遷している上、自白供述は死亡に至る際のこの亡くなった方の表情変化の点で医学的知見と矛盾する不合理な内容でもあるから本件自白供述の信用性には重大な疑義がある」とした。

亡くなった方が人工呼吸器抜かれてだんだん苦しくなるわけですが、美香さんの自白調書では、その時、目が白目をむいて、口をハグハグさせて非常に苦しそうな表情をしました、で、約2分か3分そういう状態が続いて亡くなりましたという風になっている。

だけど医学的に調べたら、患者さんは既には半年間植物状態で大脳が死んでいたので苦しみを感じない。だから苦しそうに口をハグハグして白目をむいたということは医学的にあり得ないのですね。だから、それは彼女の想像であるか、あるいは取調官からこうだったんじゃないかと誘導されたのかもしれない。だけど医学的・客観的な事実からはあり得ない事実だという事で自白は信用できない。だから、自白だけを見るのではなくて、その周辺の証拠も含めて自白が信用できるのかどうかという事を確定再審無罪判決は検討しているわけです。

だから、その自白が信用できるかどうかをどの局面で見るのか、どういう観点で見るのかで、その評価が180度違うわけです。これはもう本当に裁判官の姿勢ひとつです。裁判官に本当に真実に迫ろうという姿勢があるのか、あるいは「検事が言うてる事やから間違いないだろう」というような姿勢で臨むのかによって全然違う、そういう意味でその裁判官の責任は非常に重いと思います。

◆再審法改正運動

もう1つは、裁判官は「無難な結論に収めたい」という、そういう動機がはたらくということです。例えば、どの裁判でも原発運転の差し止めというのは棄却されてるのに、そういう中で運転の差し止めを認めると、「あの裁判官は変わった奴だ」と裁判所の部内で見られるわけです。だから、そういうのは出来るだけ避けたい、無難な結論にしたいということになっていく。

それは自分自身の人事上の問題とか給与だとか人事とかポスト、そういう事から無難な処遇を受けるためには、無難な判決をしたいという、そういう動機が多かれ少なかれあります。

そうするとやっぱり再審が難しいのは、確定審で一審3人、高裁3人、最高裁5人と合計11人の裁判官が有罪だと判断してるわけです。しかもその中には有名な著名裁判官、著名な刑事裁判官が何人も含まれている。その人たちの出した有罪判決が間違いだというのは、(世間一般ではそうじゃなくても)裁判所の部内ではえらい思い切った特異な判決、特異な判断だという風に見られてしまう。そういう風に部内で周りから評価されるのは避けたいという心理がはたらく。

これは裁判官の保身ですけれども、自分たちに課せられてる職責をどう考えるのかという事で当然批判されるべきものですが、人間というのは弱い面があるからどうしてもそういう側面があるという事は否定はできない。

では、冤罪被害者を救うため、あるいは出さない為にはどうすれば良いのかと言うと、やはり再審問題、それから冤罪問題で個別の冤罪事件に対する社会的関心が高まるという事は何よりも絶対必要です。

今、再審法改正運動が非常に高まりをみせています、日弁連も特別対策本部を作って、各政党に働きかけているし、全国の地方自治体で再審法改正の決議がどんどん上がっています。今は再審法改正の絶好の好機ですけれども、これは単に再審法改正できればいい、そのために良い状況だというのだけではなくて、これをきっかけに日本の刑事司法、冤罪がたくさん生み出されているこの日本の刑事司法に対する問題意識、市民の問題意識を高める、市民にそういう市民庶民に問題意識を持ってもらうという事が、非常に大事だと思います。

裁判官にとって、この事件は再審開始をする、あるいは再審で無罪判決をする事こそが無難な結論だという風に思えば、心理的ハードルはいっぺんに下がるわけです。そういう意味ではAさんが無実だというだけじゃなくて、何が問題になっているのか、この問題でこういう風に考えるのが当たり前だろうという社会的認識を広めるのが非常に大事です。

私は袴田事件は完全に無罪になると思ってますけど、あの味噌に漬けられた衣類に(血痕の)赤みが残っていた。でもそんなに長期にわたって味噌漬けされた衣類に赤みが残るはずがないやないかというのは非常にわかりやすい常識的な感覚ですよね。それに基づいて再審開始が確定したわけです。

これに対して、一年以上味噌の中に置いてても赤みは残るんだという風な判断を裁判所がするというのは、それこそ突飛な判断、変な判断だという事になる。むしろそんなに一年以上も味噌に漬けられていたはずがないというのが無難な判断です。だから「そういう判断の方が無難なんだ」という社会的認識として作れば裁判官はハードルなく無罪判決というものを下す事ができる。

だから単にAさんが無実だというだけではなくて、何が問題になっていて、この問題ではこういう風に市民の感覚、庶民の感覚ではこういう風に考えるのが当たり前だろうという、そういう認識を社会に広げる事が非常に大事だという風に思います。それと同時に、やはり日本の刑事司法が抱える諸問題について社会的認識を高めるという事が大事です。(つづく)


◎[参考動画]冤罪と司法を考える集い(大国町ピースクラブ)/たぬき御膳のたぬキャス(2023.12.24)

◎井戸謙一《講演》「冤罪」はなぜ生まれるか 元裁判官の経験から
〈1〉80年代、刑事裁判の変質 
〈2〉青法協問題と日本会議 
〈3〉湖東記念病院事件の西山美香さんの場合 
〈4〉代用監獄、弁護士立ち合い、人質司法という問題 

 

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

2023年11月29日、参院選広島2019で当選無効となった河井案里さんを当選させる目的での買収の罪で実刑判決を受け、服役していた夫の克行さんが栃木県内の刑務所から仮釈放されました。


◎[参考動画]河井克行元法務大臣が仮釈放/刑務所内の生活態度を考慮か|河井事件

安倍派・二階派の裏金疑獄事件。そして、筆者の中高大の先輩でもある柿沢未途代議士による江東区長選挙での違法有料広告・買収被疑事件。そして、北陸大震災に羽田飛行機事故。海外でも打ち続くガザ虐殺という情勢の中、すっかり忘れ去られた感はあります。

広島県内においても、むしろ、不祥事と言えば広島県教育長の平川理恵さんの方が実害を県民に今も与え続けています。また、地元選出の岸田総理の迷走でご迷惑をおかけしているのも事実です。

しかしながら、そうはいってもこの河井事件は絶対に風化させてはなりません。筆者自身も案里さんの当選無効に伴う参院選広島再選挙に立候補しました。国・地方問わず、政策論争本位の選挙にすることを訴えました。それにより、総理や首長ら行政へのチェック機能を働かせる。ことにつながると確信しています。

◆安倍晋三さんが真犯人だったのに忖度した検察

2023年になって、克行さんが、買収の資金源を示したとみられるメモの存在が明らかになりました。2019年当時の総理・安倍晋三さんや、幹事長の二階俊博さん、そして「すがっち」こと後の総理となる官房長官の菅義偉さんがお金を出していたのです。要は、安倍さんが個人的に恨んでいた自民党現職を打倒するために、以前から国政に野心があった案里さんを担いだ、ということです。むろん、案里さんには国政への野心があったのも事実で、筆者も、案里さん自身の県議としての地盤の安佐南区以外の会合でよく彼女とかち合いました。

筆者は、河井事件でお金をもらった保守系の議員とも、事件以前からそれなりに懇意にさせていただいています。それが原因で、とくに日本共産党の諸氏からは、いぶかられていることも以前、ご紹介しました。しかし、庶民のための政策を実現しようとすれば、立憲民主党でさえ、いや、立憲民主党広島こそが自民党以上に湯崎知事や松井市長べったりの中で、少しでも知事や市長に批判的な保守系の皆様ともお話をすることは必須です。

そうした保守系の方のお話しでは「安倍が真犯人に決まっとろうが」ということでした。中には、安倍さんが暗殺されたことに言及し「天罰よ」と吐き捨てられる方もおられたのが印象的です。

ともかく、安倍派に強制捜査をするなら、河井事件について安倍晋三さんがご存命のうちにすべきでした。今となっては、故人しかご存じないようなことも多くあり、解明には限界があります。また、安倍さん自身にとっても、結果論ですが、検察の捜査対象にならなかったのは最悪の結果を招きました。もし、河井事件で逮捕でもされていれば、山上徹也被告人に暗殺されることも起きなかったでしょう。

◆強引な捜査に検察うのみ司法、後味悪く

この事件では、検察は、克行さんを有罪にするために、お金をもらった議員に対して「先生は起訴しない」「克行を悪者にする」ともちかけ、買収の認識があったことを認めさせ、それを証拠に案里さん・克行さんを逮捕、起訴しました。

もちろん、自分だけが助かろうとした議員・元議員に対しては政治家としての仁義はどこに、というそしりは免れますまい。ご自身が無罪であると確信するのであれば、検察の誘導に乗らず、その旨主張する。たとえ逮捕されても徹底抗戦する。それが筋というものです。

しかし、だからといって、検察の誘導尋問が正当化されるわけではありません。日弁連は2023年8月に、検察の対応を批判。さらに最高検も取り調べが不適切だったと認定しています。

また、石橋竜史市議らについては、ご本人によるといわゆる誘導尋問はありませんでしたが、供述調書はほとんど検察の作文だったそうです。そして、裁判においては、検察は一方的に石橋議員に被買収の認識があったかのような主張を展開しました。過去、石橋議員が手伝った国会議員の選挙運動でもお金(車上運動員の合法的な報酬1万5千円/日)が発生したことはありませんでした。それにもかかわらず、広島地裁も高裁も検察の主張を一方的に認めてしまいました。

当選祝いと称したお金を強引にねじ込んできた克行さんから受け取ってしまったことは決して褒められることではありませんが、買収として石橋議員まで立件してしまうのはいかがなものか?野球で言えば、捕手が生還した走者に本塁上で「追いタッチ」をしたような感じであり、有罪にはできないのでは?と感じています。しかし、残念ながら、今の日本の司法ではそうではないのです。

別の起訴された元議員も検察に対して「あいつら、自分を法律と思っている」と筆者に吐き捨てられました。

この検察の暴走問題については、例えば、日本共産党の諸氏も、戦前に小林多喜二が権力に惨殺されるなどしているわけですから、きちんと取り組んでいただきたい。ただ、現実には、「非市長与党」「非知事与党」票を分け合うライバルでもある議員が、検察に沈められたが有利という思惑があるのでしょうか。残念です。

筆者自身は保守系の方とお話しする際には「自分は日本共産党の諸君とは違う。保守系の方が不当逮捕された場合でもきちんと人権を守る真の人権派だ。」と申し上げています。

◆地方議員へのお金配り禁止の法的根拠をつくろう

そもそも、こんなややこしい事件を防止するためには、国会議員による地方議員へのお金配りを禁止すべきです。現在では、国会議員が地方議員の政治団体に寄付=政治献金を行うことは禁止されていません。

ただ、地方自治体と国の利害や意見は必ずしも一致しません。例えば核兵器禁止条約などは、広島市は推進、国は反対です。そうした時に国会議員から地方議員がお金をもらうのは、地方議会が国にガツンと物申すことを困難にします。

ともかく、最初から、国会議員による地方議員へのお金配りを法律で禁止すれば、地方議員も断りやすくなります。筆者が広島県知事(または広島市長)になった場合、国会議員による地方議員へのお金配りを禁止する条例案を県議会(または広島市議会)に提出し、議員のご判断を仰ぎます。

◆わかりづらい日本の公職選挙法、見直しを

もうひとつは、別に克行さん、案里さんを擁護するわけではないが、日本の公職選挙法があまりにも複雑怪奇すぎるということです。これは、戦前の治安維持法の残骸が公職選挙法ということと関係があります。

選挙が告示、公示されるまでは政治活動としてできることが、告示・公示されるとできなくなるということが多くあります。例えば戸別訪問は、期間中になると禁止されます。買収を防ぐ、というのがその趣旨ですが、意味が分かりません。それこそ、この規定があっても、克行さんのように「買収をする人はする」のですから。むしろ、こうした規定は、いまとなっては、一般市民を選挙から遠ざけ、既成政党などプロの既得権益を護持しようという狙いがあるのではないでしょうか?

◆お金のかからない選挙制度でガチバトルの政策論争を

参院選広島2019で河井案里さんが立候補した選挙では、それこそ、案里さんのビラで街が洪水のようになることがありました。ずいぶんとお金をかけたことでしょう。それでいいのでしょうか?

そもそも、自民党政権は政治にお金がかかることを言い訳に、政党助成金に加え、企業団体献金を残してきた。

そして、今回のような裏金事件を起こしたのです。裏金を作った議員の中には、「政治にお金がかかる」といいつつ、実は、自分の生活費に使っていた方もおられるのではないでしょうか?

そもそも、お金や組織で左右されてしまうような現行の選挙制度はおかしい。それこそ、諸外国でもされているように各地の公民館やネットを含むテレビなどにおける「ガチバトル」の公開討論会を選挙期間中もガンガン行い、それを見て有権者に決めてもらう。それでいいのではないでしょうか?

実を言うと、大昔は、日本でも、選管主催の合同個人演説会という形で、ガチバトルの公開討論会に近いものは行われていたのです。いつのまにか、それがなくなったのです。現在、日本の供託金は世界的に見ても異常に高くなっています。これは売名目的の候補者を防ぐため、と言われていますが、公開討論会で決めるなら、それこそ、ふざけた立候補者はその時点ではじかれるわけです。

◆政治改革より「野党共闘」優先させた野党

参院選広島再選挙の際、例えば、この合同個人演説会を復活させ、ガチバトルの論争本位の選挙にできれば、お金中心の政治・選挙からの脱却につなげられたのに、それができなかったのは残念です。それこそ、市民がそういうことを選管に要求すれば可能ではなかったか。

しかるに、既存野党も政治改革ではなく、選挙に勝つことのみを目的としてしまった。志が低いと申し上げざるを得ない。例えば、日本共産党の諸氏も、結局は野党共闘さえすればいい、論に傾き、政治・選挙の中身そのものはおろそかになっていたのではないでしょうか?立憲民主党広島に至っては、「具体的な政策が分かる人ではない」と党幹部も認めた人物を候補者に担いだのですから、何をかいわんや、です。

◆検察と司法の癒着打破、保守系の皆様も一致して取り組めれば

河井事件では、広島の多くの保守系の政治家が検察に起訴されました。検察の強引の捜査の被害に遭った議員。そしてその支持者の皆様。日本の検察、そして裁判所というのがいかにひどいかお分かりになったと思います。

これを機会に、検察と司法の癒着した今の状況を打破する動きに、広島の保守系の皆様もご協力いただければ、幸甚の至りです。
 
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

不思議でたまらないことがある。

今から29年前の1995年1月17日、阪神淡路大震災がおこった。私は大阪の黒門市場当たりにいて、時間があったので、3日目から被災地に入った。南港から船が出てたが、問い合わせたら満席だったので、電車で甲子園口まで行き、あとは凸凹道を皆さんと歩いた。

トボトボ数時間歩いて、当時テレビで良くでていた中学校へ。被災した住民の中でリーダーシップ取れる人が頭になって回ってたような避難所。

自衛隊が簡易風呂場を作ってくれ、被災した方々が3日ぶりに風呂に浸かって喜んでいた。ボランティア組織とかまだきちんとしてなくて、一人で行った私は、「あっ、食事がきたね。配るの手伝おうか」みたいに勝手に動いてた。

リーダーの方に「ボランティアの方、寝るのは○○の教室使って。本部に毛布取りにきて」といわれ、毛布と段ボール貰って指定の教室にはいり、被災した老夫婦の隣で寝た。翌日起きたら、近くに棺桶が置いてあった。

翌日は送られてきた支援物資の衣類の仕分け、今でこそ洗濯済のもの、とくに下着は新品を、が普通だが、当時は信じられない位何でも送られてきた。花嫁衣装やドレス、着古された制服、どこで着るねんという派手なスーツ……。

一番困ったのはトイレ。学校内のトイレが使えなかったのか、グランドにテント張って、中に長い溝が掘ってあり、衝立もなく、並んでそこでやった。私は流石にしにくいし、どっちみち数日で一旦戻り、また行くを繰り返してたから、余り食事を摂らないようにしていた。

あれから29年経ったし、その間、何度も地震を経験している。あの年がボランティア元年と言われたように、そのあとボランティアも組織的に行われるようになった。先に書いたように、支援物資のやり方など大幅に改善された面もある。

ただ、今回の能登地震の報道を見ると、29年前と同じではないかと思える光景や、被災者の声がある。冷たい木の床に段ボールやら布団を敷いている光景、「水が出ないんです」とトイレが流せないと訴える被災者、挙げ句「食べ物がありません」という声……。日本の政府はこの間何やってたねん?

「道路が寸断され、被災地に入れません」って言うけど、おらが故郷新潟県中越沖地震では、孤立した山古志村には、ヘリが物資を運び、空中から村に落としたやんか?

なぜ、前の震災から学ばないの? 全てとは言わないが、今回は特にそう感じる。

極寒の中、建物の下敷きや生き埋めになった家族に救出の手が届かず、おとんが「頑張れよ」と握っていた、家族の手が次々と冷たくなっていったんだと。どんな地獄だよ。

とりとめのないことをツラツラ書いてみたが、大勢の被災者が地獄見ている一方で、原発再確認について聞かれたにも関わらず、応えられず、ただニヤつく岸田や、こんな時に「万博の成功を!」とかいうてる吉村や松本人志や……。気色悪すぎる。涙しかない。簡易トイレや自家発電設備、そんなに高額か? 

これだけ地震が起こる日本の各自治体で、なぜ準備が出来ないのか?

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

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◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

昨年12月24日、大阪ピースクラブで「冤罪と司法を考える集い」が開催された。そこでの井戸謙一弁護士のお話を全4回に分けて紹介する。

井戸謙一さん(ぴのさん撮影)

◆戦前と人的な切断ができてない ── 青法協問題と日本会議

もうひとつは、戦前と人的な切断ができてないという事です、戦前の「おいコラ警察」。天皇の下、人々を弾圧していた警察官がそのまま戦後も警察の幹部になっていった。特高警察の一部は公職追放されましたけど、しばらくしたらまた戻ってきたので人的に切れてない。

そして裁判所は一切、戦争責任を取らなかった。だから戦前その天皇の名の下に裁判をして、治安維持法に基づいて人々を処罰していた裁判官がそのまま戦後も裁判官になって、中で要職に就いていく。するとそういう権力的な裁判官の発想というものが次の世代にも引き継がれていくと事が現にありました。

1970年頃、司法反動という大問題があって、ご存じの方もおられるかもしれませんが、当時その新憲法下に基づいて憲法に基づく裁判をしようという事で、がんばっていた青年法律家協会(青法協)の中に裁判官部会というのがあって約300人の裁判官がいました(協会自体は学者とか弁護士も含んでいるのですけれど)。ここに「脱会しろ」という裁判所からの圧力がかかり、民主的な裁判官が再任拒否という事で首を切られたりして大問題になりました。

これを推進したのが、石田和外(いしだ・かずと)という最高裁長官。この人は戦前からの裁判官で司法省の人事課長までやった人ですが、この人が最高裁裁判官を辞めた後に何をしたかというと、元号法制化(実現)国民会議初代議長でした。この元号法制化国民会議が、そのまま名前を変えたのが今の日本会議です(1997年に「日本を守る会」と合同し「日本会議」となった)。完全に右翼団体なんですね。ここの初代議長をしたのがその石田和外元最高裁長官なのです。こういう人が戦後の裁判所でずっと実権を握ってきて民主的な裁判官をずっと排除し、弾圧してきたという事が、今の裁判官の世界にも大きな影響を与えているという歴史的な背景があるという事も知っていただければと思います。

◆なぜ被告人の訴えが裁判官に届かないのか

では、こういう冤罪を出してしまう裁判官の責任ですけれども、もう少し分析的に考えると、なぜ被告人の訴えが裁判官に届かないのか? 検事の言い分をそのまま採用してしまうのか? 

ひとつは、裁判官は両方の当事者から全く等距離で公平でなければいけないのですけれども、心理的にはどうしても検察官と近くなるという事があります。ひとつの刑事部のひとつの係の立ち合い検事は固定されているので、どの事件も同じ検事がします。だから裁判官と検事はまったく同じ人間がその係の事件を全部やる。

一方で、弁護人は事件ごとに違います。そういう意味で、検事と弁護人では、裁判官との接触の時間がまったく違う。弁護人はそうそう簡単に裁判官室に行けませんよね、裁判官室に行こうと思ったら、「裁判官と面会したい」と書記官に声をかけてから、裁判官室に迎え入れられる事もあるし、裁判官が書記官室まで出てくる事もあります。

一方、検事は多くの場合、平気で裁判官室の中へ入っていきます。毎日一緒に仕事をしているから、書記官とも顔見知りです。それだけ物理的時間的にも多くの時間を共有している。

それからやはり裁判官と検事は役割は違うけれども、協力して治安維持を担っているという意識が、刑事裁判官の中にだんだん作られてくる。裁判をすると、否認して「私はやってません」という事件は一定の割合でありますし、その多くの事件は、本当はやってるけれどもやってないという人もいる。否認事件の中でも、そういう事件が多い。

しかし、中には本当にやってない人がいるわけです。だから否認事件の中で本当にやってない事件を見極めなくてはいけないのです。けれども、多くは否認していても有罪で決着するので、裁判官は「検事が起訴した事件はまず間違いないだろう」という意識を持ってしまう。刑事裁判官の経験が長ければ長いほど、そういう意識を持ってしまう。そうすると否認している被告人がいた時に、「こいつ、本当はやってんのにやってないと言うてるだけじゃないか」と、最初から色眼鏡で見てしまうという傾向になります。(つづく)


◎[参考動画]冤罪と司法を考える集い(大国町ピースクラブ)/たぬき御膳のたぬキャス(2023.12.24)

◎井戸謙一《講演》「冤罪」はなぜ生まれるか 元裁判官の経験から
〈1〉80年代、刑事裁判の変質 
〈2〉青法協問題と日本会議 
〈3〉湖東記念病院事件の西山美香さんの場合 
〈4〉代用監獄、弁護士立ち合い、人質司法という問題 
 

 

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広島県の湯崎英彦知事は県立広島病院(県病院)やJR広島病院、中電病院、市立舟入病院の小児救急などを統廃合し、広島駅新幹線口近くに1000床規模の巨大病院を設置する計画を進めています。

2023年9月定例議会では、JR西日本から土地を買い取る(債務負担行為)案を提出し、一部保守系会派や共産党が反対したものの、可決されてしまいました。

しかし、本当にこの計画は大丈夫なのか?様々な角度から県民の不安や疑問は解消するばかりか高まる一方です。2025年度には湯崎英彦知事が県病院を独立行政法人化してしまおうともくろんでいます。こうした中で、2024年は知事の暴走を止めるための正念場になります。

こうした中、「県病院問題を考える会」第二回学習会が2023年12月16日、広島市東区民文化センターで開催されました。第一回は、県病院がある南区での開催、今回は移転先となる東区での開催となりました。

◆災害危険度、広島駅も現在地もさほど変わらず

まず、今回は目玉として、地質学者の早坂康隆先生(広島大学大学院)の講演「瀬戸内・広島の自然災害と安全問題 日本列島の成り立ちから~」が行われました。

早坂先生は、伊方原発広島裁判でも原告側証人としてご活躍いただいております。

 

以下はお話しの概要です。

日本列島は、プレートの運動により、大陸から別れたが、比較的若い岩石が多い。その中で、広島の地質は白亜紀の花崗岩が多い。ただし、広島土砂災害2014で崩れたのはジュラ紀付加体というものだった。そもそも、降水量が限度を超えると斜面があれば地質と無関係にどこでも崩れる。

また、地震はM7.3クラスならどこでも起きえるというのが最新の研究である。

火山災害については、鹿児島の姶良カルデラの大噴火で広島でもかつて45cmくらいは火山灰が積もったことがある。そして、2mmも火山灰が積もれば停電する。

津波については、山口県の周防大島では16mという津波が近世の記録に残っている。ただ、周防大島などの島々にブロックされて、津波は広島ではさほどではなく、1854年の安政南海地震でも鞆の浦で1mという記録がある程度だ。

以上の内容から、広島県病院がある現在地も、県が「より災害危険度が少ない」と主張する移転先の東区新幹線口周辺も、災害危険度としてはそう変わらないことが理解できました。

◆独法化に疑問を呈する住民に当局は「有識者の検討会が進めた」の一点張り

その後、参加者と広島県健康福祉局政策監の石村康宏様と課長の渡部滋様という県庁の幹部職員お二人との意見交換会が行われました。

住民の間では「独立行政法人化で県が県民の健康をまもる責任を放棄するのではないか」という懸念が高まっています。これに対して、県側は「有識者の検討会で、県直営(公営企業法全部適用)、独立行政法人、指定管理者制度のうち、独立行政法人が優れているという結果になった」から、の一点張りでした。

しかし、広島県とほぼおなじ面積で、地理条件も似ている兵庫県では、阪神淡路大震災の教訓から、行政が命令できる直営病院を8か所つくっています。また、広島市では先に市民病院を独法化してしまいました。そのために、コロナ禍では、コロナ専用病床を迅速に確保できずに苦労したそうです。

中長期の計画については、確かに独立行政法人でも県知事や議会が関与することはできますが、危機管理という意味では直営が優れているから、兵庫県はそうしているのです。

◆島しょ部住民切り捨て、移転先の渋滞……疑問続出で時間切れ

「中区(中電病院の地元)や南区(県病院の地元)の急性期医療を切り捨てようとしているのではないか?」という懸念に対して県側は「区によっては病院がなくなるところはあるが、県全体で医療体制を維持していきたい」との回答でした。

これに対して、子どもが島しょ部に在住の市民からは「島しょ部の人にとっては、船で広島港から県病院に行くのが便利。島しょ部の出産を控えた女性にとって、県病院が今の位置に無くなるのは困る」と反論がありました。

また、新巨大病院が計画されている東区の広島駅新幹線口から筆者の自宅周辺は慢性的に渋滞が深刻です。これに対して県側は「現時点では新幹線口西側の交差点は渋滞が発生しやすいが、他の交差点は大丈夫」と回答しました。

しかし、広島駅には、今後も巨大な駅ビルが建設中です。これが完成すれば広島駅周辺の渋滞が悪化する恐れがあります。

孫が舟入市民病院にかかっているという佐伯区内在住の女性は、「舟入病院の小児救急も新病院に行く予定だ。その場合、救急車が渋滞で病院に入れなかったらどうする?救急車の通行と渋滞のシミュレーションを早くすべき。それをしないで計画を進めるべきではない」という怒りの声を上げました。

また、この女性は「そもそも、県知事は高度医療をこの新巨大病院でやるというが、それは国の仕事ではないのか?知事は県立安芸津病院の耐震化を先送りすると議会で答弁しているが、この耐震化こそ先にやるべきではないか?」とたたみかけました。

県当局は「この病院のもう一つの狙いは東京などに遍在する若手医師を広島県内に引き寄せることだ。」と答弁しましたが、「医師の偏在の解消も国の仕事ではないのか?」とこの女性は食い下がりました。

そうこうするうちに、制限時間いっぱいになってしまいました。

◆疑問点山積のまま事業強行は許されぬ

この他にも、広島駅近くに住む50代の男性は「巨大な駅ビルができれば、新病院へのドクターヘリの着陸が困難になるが大丈夫か?」ということを質問したかった、と言っておられました。

筆者も「また、本当に足りないのは、地域医療のしんどいところを担う医師。豪華な機械があるところに引き寄せられるような若手医師の人物像と、しんどいところを担う医師の人物像はたぶん重ならないだろう。地域医療のしんどいところを担う医師など医療従事者、介護従事者の労働環境、安全対策をしないと難しいのではないか?」「そもそも、医師でなくても、広島からどんどん若者は出て行く。そこを何とかしないと難しいのではないか?」ということをお伺いしたかったのですが、残念ながら時間切れとなってしまいました。

これだけの疑問が噴出し、県議会でも最終的には議案に賛成してしまう議員の中からも疑問が噴出する中でこの新病院計画を暴走するのはもってのほかではないでしょうか? そのことを痛感しました。

幸い、広島県当局の幹部職員の方は、次回は平日に意見交換にお越しいただけるそうです。ぜひ、しっかり、県民の意見を聴いて、それこそ、計画を場合によってはゼロベースで戻すことも検討いただくよう、知事に進言いただきたい。

そして、広島県民の皆様には、
〈2024年こそ、暴走する湯崎知事から、広島を取り戻そう。〉
〈広島県民の命、健康を守るため、ひとりひとりが知事になめられない県民になろう。〉

こうした、「ヒロシマ庶民革命」を改めて呼びかけさせていただく次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

昨年12月24日、大阪ピースクラブで「冤罪と司法を考える集い」が開催された。そこでの井戸謙一弁護士のお話を全4回に分けて紹介する。

◆裁判官の立場から冤罪問題を考える

こんにちは、紹介いただきました井戸謙一です。色んな集会でお話させていただく機会がありますけど、今日のこの雰囲気はもう独特ですね(会場から笑い)。庶民のパワーというか、ごめんなさい、失礼な言い方かも知れないけれど、普段は「市民の方々」という風に声かけるんですけど、ここはなんか庶民のパワーが満ち溢れているという感じで、さすが大阪南部という風に思いました。私自身も堺の出身ですので非常に懐かしい思いをしてます。

井戸謙一さん(ぴのさん撮影)

今日のこの集まりは、尾﨑さんから「出版の記念パーティをするから12月24日空いてますか?」と言われたので、「ハイハイ、空いてますよ」と言っただけで、行くとも何も言ってなかったと思うんですが(会場から笑い)、その後お出会いしたらチラシを渡されて、「こういう予定でやります」と見たら「井戸謙一弁護士の講演」となってまして、さすが、尾﨑さんのこの強引さがですね、やっぱこの本にも結実したのではないかなという風に思いました。

30分時間をいただいているので、何のお話をしようかと思ったのですが、冤罪問題について(本日)お話しされる方はおられると思うんですけど、やはり私でないと話せない事、すなわち裁判官の立場からどう見るかという事をお話します。

昨日もNHKで深夜、良い番組をやっていましたけれど、警察や検察の問題ももちろんあります。しかしやっぱり最後は裁判官の問題だと思うんですね。では、私の経験も踏まえて、裁判官の立場からどういう風に考えるかという事をちょっとお話させて頂ければという風に思いました。

◆無罪だと思っていながら有罪判決を書いたこと

私は、1979年に神戸地裁に任官し、神戸地裁からスタートして裁判官を32年間しました。ほとんどは民事事件だったんですけれど、若い頃は刑事事件もやっていました。神戸で2年、山梨県の甲府で2年、刑事事件をやっていますので、関西と関東の刑事事件の両方を経験しています。

無罪判決は2件書きました、1件は、皆さん覚えておられるかもしれませんが、「神戸祭り事件」という、暴走族が神戸祭りの時に新聞記者を車で轢いて殺したという殺人事件で、これは無罪判決で確定しました。

もうひとつは、当時、部落解放同盟が窓口一本化ということでずっと行政と間で揉めていた中で、公務員に怪我をさせたという事件で、無罪判決を下したこともあります。

一方で、無罪だと思っていながら有罪判決を書いたという事があります。袴田事件の一審の熊本裁判官が、自分は無罪だと思ったけれども、あとの2人に反対されて死刑判決を書いてしまった、それを亡くなられるまで一生悔やんでおられました。

◆大阪と東京の差異 ── 1980年代の刑事裁判の変質

私の事件は、公職選挙法違反、選挙の時の買収の事件でした。私は、この人の言っている事をどうしても嘘だと思えなくて、無罪を主張しました。しかし、あとの2人が有罪だという意見だったので、やむをえず有罪判決を書いたという、そういう苦い思い出があります。

若い判事補が、最初に刑事事件などに関わるかと言うと、逮捕状や勾留状といった令状なんですね。私は、大阪と東京と両方経験してますが、大阪は、裁判官の仕事というのは、捜査を抑制する事だと言われ、10件の勾留請求があったら1件は勾留却下する。それぐらいの割合で却下しないと裁判官の役割を果たしたことにならないと、そういう風に先輩から言われて、それを実行しようと思ってそれなりに努力してました。

ところが東京に行くと全く違うんですね。東京で若い判事補は全国に配属されるのですけれど、1年目に4カ月間東京地裁で研修しろと言われて東京地裁に行くと、もちろん令状も担当します。勾留請求10日間の身柄を拘束しますという勾留請求が来る。直接指導する先輩裁判官から「どうするの? 勾留するのか、却下するのか?」と聞かれる。

「この事件は却下しようと思います」と言うと、その部の一番偉い部総括判事の所へ連れていかれるんですね。部総括判事は「君、この事件を勾留却下すると聞いたけれどほんまか?」、「ほんま?」かて関西弁では言いませんけど(会場から笑い)、聞かれるわけです。

そして「どうしてだ?」と。「これこれこういう事で勾留要件はないと思います」というと「いや、こんなものはこういう風に考えるのが当たり前だ」という事で押さえつけられる。

もちろん、決めるのは担当裁判官ですから、(部総括判事の意見を)はねのけて勾留却下する事も可能ですが、若いぺーぺーの判事補には、大ベテランの部総括判事の意見を押し切って勾留却下するのは非常に難しい。そういう事で、検事が請求してきた勾留を裁判官はその通り認めるのが当たり前だという感覚を身につけさせられるんですね。

一方で当時、大阪は違っていたのですけれど、そういう東京式のやり方が1980年代にどんどん全国を席巻していきます。1989年に平野龍一という刑事訴訟法の大学者が、その時点で「日本の刑事裁判はもう絶望的だ」ということを言われた。刑事裁判というのはもう、裁判官が有罪か無罪かを決める場では無くなっている。検事が起訴してきたことにお墨付きを与える場になってしまっているという事を言われていました。

その後かなり時間が経過して、裁判員裁判なども始まって少しは変わってきたかも知れないけれども、基本的に変化はないのではないかと私は思っています。

◆日本の刑事司法の構造的問題 ──「当事者主義」の問題点

では、「日本の刑事司法の構造的問題はどこからきているのか?」という話をします。戦前の古い話になりますけど、第二次世界大戦前はドイツの法律に則って「職権主義」で裁判官が刑事裁判を自分の職権、権限でどんどん進めるというやり方でした。

警察や検事が集めてきた証拠は全部裁判所に引き取る。裁判官は全部の記録を見て、裁判を自分の職権で進める。そういう職権主義のもとに治安維持法違反だという事で、社会主義者だけではなくて、民主主義者や政府に抵抗するような人間をどんどんしょっ引いて治安維持法違反で処罰をした。裁判官がそういう事をしたわけです。

で、戦後はそれが見直されて、もっと民主的な刑事裁判にしなきゃいけないという事で、アメリカ式のやり方が導入された。それが「当事者主義」です。当事者主義というのは、裁判官は先入観を持ってはいけない。法廷で出された証拠だけで判断しなければいけない。検事は有罪だと主張する、弁護人は無罪だと主張する、それぞれが主張を裏付ける証拠を裁判に提出する。裁判官はその証拠だけを見て判断する、それが当事者主義なんですね。

「起訴状一本主義」とも言って、裁判官は裁判が始まるまでは起訴状しか見てはいけない。それ以外は一切、何も見てはいけないという仕組みです。今の日本の刑事裁判でもそうです、これは一見、公平で確かに真実を究明するのに良さそうな手続きのようにみえるのですけれど、致命的な誤りがあった。というのは、訴訟法上は、検事側と弁護人側は対等なのですが、実際の力には圧倒的な差があるわけです。まず警察が捜査して、色んな証拠は捜索差押えでごっそりと持っていく。何十人という捜査員をひとつの事件に担当させる事もできるし、膨大な予算をかけることもできる。

一方、弁護人は、そのあとで被疑者から依頼をされて、その事件の事を調べだすわけですが、重要な証拠は全部警察に持っていかれているし、人的にもたいていは弁護士が1人か2人でやるわけです。お金もない、貧しい人の場合は弁護料も払えない事もいくらでもあるわけで、力に圧倒的な差がある。

ほとんどの証拠は検事側が持っているのに、検事は有罪だと考え、それを裏付ける証拠だけ裁判所に提出すればいい。検事が持っている証拠の中には、被告人を無罪だと裏付ける証拠はいっぱいあるかも知れない。おそらくそういう事が多いと思うのだけれど、それらを提出する義務がない。圧倒的に検事が有利なんですね。

だから当事者主義というのを形式だけ持ってきたのです。裁判所に証拠を提出することを「証拠開示」といいますが、弁護側が検事側に検事の手持ち証拠を見せろと言う権利を認めるべきだと、これが今の再審法改正の大きなテーマなのですが、弁護側に証拠開示の権利を規定しなかった。検事は法律で義務付けられていないようなものをしませんという主義で、弁護人が手持ち証拠を見せろと言っても検事は見せないわけです。裁判官もそんな事は法律に書かれてないから検事にも命じない。その圧倒的な力の差がそのまま刑事裁判で是正されることなく、ほぼ今日まできてるわけです。

一般の刑事裁判は、それでも証拠開示の権利っていうのが裁判員制度が入った時に少し作られたんですけど、再審についてはそれがまったく無い。だから今でも検事の手元に無罪を裏付けるような証拠があってもそれは容易なことで出てこない、そういう不正義が今でもまかり通っている、これが戦後の刑事訴訟法を作った時の大きな問題で、それが未だに後を引いてる、問題解決できていないという事です。(つづく)


◎[参考動画]冤罪と司法を考える集い(大国町ピースクラブ)/たぬき御膳のたぬキャス(2023.12.24)

◎井戸謙一《講演》「冤罪」はなぜ生まれるか 元裁判官の経験から
〈1〉80年代、刑事裁判の変質 
〈2〉青法協問題と日本会議 
〈3〉湖東記念病院事件の西山美香さんの場合 
〈4〉代用監獄、弁護士立ち合い、人質司法という問題 

 

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以下は2018年11月にわたしが書いた原稿である。お笑いタレント(わたしは一度も面白いと思ったことはないけども)「ダウンタウン」への私見である。

このほど「ダウンタウン」の松本人志が芸能活動の休止を発表した。松本は「関西万博アンバサダー」であったが「アンバサダー」降板の可能性も高いといわれている。

いずれにしても、「まったく面白くないお笑いタレント」の頂上に君臨している感のある松本の芸能活動休止は、それにとどまらない意味を持つだろう。 

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 
東京のサル真似しかできない大阪万博ファシズムと笑えない吉本芸人たちの無様
(2018年11月27日掲載)
 
◆ダウンタウン・吉本のお家芸「行政の太鼓持ち」

11月23日深夜、新たな「税金の無駄遣い」の決定をうけ、「ダウンタウン」の2人が下記のようにコメントしたそうだ。

〈ダウンタウンの浜田雅功(55)、松本人志(55)は2017年から大阪万博誘致アンバサダーを務めている。大阪・御堂筋で開催される大イベント「御堂筋ランウェイ」に2年連続で出演するなど、万博誘致を懸命にPR。今回の開催地決定で、2年間の努力が実を結んだ。2人はこの日、所属事務所を通じてコメント。

松本「素晴らしい! 皆さまの地道な努力の結果だと思います。ダウンタウンは何もしておりません 特に浜田(笑)」
浜田「素晴らしい! 皆さまの地道な努力の結果だと思います。ダウンタウンは何もしておりません 特に松本(笑)」〉(2018年11月24日付けサンケイスポーツ)

行政のお先棒を担ぐような役回りを平然とこなす神経は、実によくわかる。「ダウンタウン」にはデビュー以来一度として「笑い」をもらったことがない。彼らの芸は、誰かを貶める、あるいは威張るか迎合する。パターンはいつも同じだ。生前横山やすしに「漫才師やから何をしゃべってもいいねんけれども、笑いの中に『良質な笑い』と『悪質な笑い』があるわけだ。あんたら二人は『悪質な笑い』やねん。テレビ出るような漫才とちゃうやんか。お父さんけなしたり、自分らは新しいネタやと思うてるかもしれんけど、正味こんなんイモのネタやんか」と看破された本質は、1982年からなんらかわっていない。


◎[参考動画]1982年末の『ザ・テレビ演芸』(制作=テレビ朝日)

明石家さんま、北野武、ダウンタウン、とんねるず、ウッチャンナンチャンなど「全然おもしろくないお笑いタレント」が師匠ズラをして、より小物のひな壇芸人しか育たない。岡八郎や花木京、人生行路が生きていたら、かれらもおそらく「大阪万博」に乗っかるだろう。でもダウンタウンほどの破廉恥さは見せないに違いない。横山やすしが、言いえて妙なダウンタウンの本質を突いている。岡八郎や花木京は腹巻をして吉本新喜劇の舞台に登場して、誰を見下げるわけでなく「え?なに」の一言で観客から笑いが取れた。所詮芸人としてのレベルが違いすぎるのだろう。

西川きよしは大阪万博を決定を喜ぶコメントを発している。国会議員もそつなくこなし、順風満帆の西川きよしらしい態度だ。ここが西川きよしと横山やすしのまったく違うところだろう。横山やすしのような人格は、仮にトラブルやアルコール依存症がなかったとしても、今日のような「管理社会」では受け入れられるキャラクターではなかっただろう。

漫才ブームまで、関西の漫才が全国区で放送されることはそうあることではなく、吉本興業が東京に進出しても、当初は苦戦を強いられていた。大阪のどぎつい笑いは東京では受け入れらにくかったのだ。しかし、マーケットは広げたい。吉本興業を中心とするお笑い芸人が選択したのは、笑い質の転換である。東京を中心とする全国で通じる、視聴者に迎合した笑い。そこに彼らはターゲットを合わせてゆく。

◆古臭い集権政治の再現でしかない大阪地域ファシズム

地方分権だなんかといいながら、政治の世界で起こっていることも同様だ。石原慎太郎や、神奈川で先に火が付いた地域ファシズムを、大阪は橋下徹によって後追いする。何も新しくない。橋下が主張したのは「ヒト・モノ・カネを大阪に集め」との古臭い、集権政治の再現に過ぎない。その延長線上に愚の骨頂もいいところの「大阪万博」などを発想し、「東京五輪」の5年後に開催するなど、半世紀前の利権構造を同じようにたどっているだけだ。

こういう、的外れで体たらくな行政を許しているから、大阪の文化的地盤沈下には際限がないのだ。大阪と東京にはかつて、対立意識や概念が存在した。しかし今やそんなものはどこにもない。大阪人の計算高さを東京の企業も内面化し、東京人の「ええかっこっしい」を大阪人も恥じることなく真似ている。笑わせてくれる芸人の出現を求めるのが無理な文化状況は、そうやって形成されているのだ。

なにが「万国博覧会」だ。馬鹿もたいがいにしろ! まだ海外旅行が夢の世界で、「外国」が庶民にとっては、実際の距離以上に遠かった1970年と、ネットに向かえば瞬時に世界と対話できる、LCCを利用すれば数万円で地球の裏側に行ける時代の違いくらいは、誰にでもわかるだろう。

いや違った。その違いすら分からないから、きょうもダウンタウンが偉そうに、面白くもない姿をさらしているのだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

携帯電話基地の設置をめぐる町長と住民のトラブルで、宮城県の簡易裁判所が前代未聞の暴挙に走った。発端は、今年の6月である。筆者のもとに、宮城県丸森町のAさん(男性)から、自宅の直近10数メートルの地点に楽天モバイルと丸森町が、町有地に基地局を設置したので相談に乗ってほしいと連絡があった。

 

携帯電話基地局

基地局からは、高周波のマイクロ波が途切れることなく放射され、近隣住民に健康上の被害を及ぼすリスクがある。とりわけマイクロ波の遺伝子毒性が指摘されていて、たとえばIARC(国際がん研究機構)は、2011年にマイクロ波に発がん性がある可能性を認定している。

ドイツやブラジルで実施された基地局と発がんの関係を調べる疫学調査によると、基地局周辺では癌の発症率が相対的に高い(3倍程度)ことが判明している。

Aさんは、町当局や弁護士に相談するなど孤軍奮闘していたが、結局、有効な解決策はみつからなかった。そこで裁判所に民事調停を申し立て、メディアで事件を公にする決心をしたのだ。民事調停の「相手方」は、楽天モバイルの矢澤俊介社長か丸森町の保科郷雄町長ということになる。

そこでAさんは、より身近な人物である保科郷雄町長を「相手方」として、10月2日に民事調停申立書を大河原簡易裁判所(管轄は仙台地裁)に提出した。

保科郷雄町長(出典:丸森町のウエブサイト)

通常、民事調停申立書が提出されると裁判所は調停の日程を決めて、「申立人」と「相手方」の双方へ通知する。ところがいつまでたっても、Aさんのもとには通知が届かない。

10月30日になってAさんのもとに、大河原簡易裁判所の山本久美子書記官から、照合書と題する書面が届いた。そこには3つの問い合わせ事項が記されていた。

1. 本件はいかなる法的根拠に基づく請求なのか
2.(基地局)を設置したのは楽天なのに、何故、土地を賃借した自治体(首町個人)を相手方とするのか。
3. 相手方について、住所は役場住所を記しておきながら、相手方を自治体ではなく自治体の首長個人としている理由

「1」の質問はともかくとして、「2」「3」の質問は、司法関係者とは思えないばかげた質問である。会社を提訴する場合に、社長名を明記するのと同じ原理である。

「1」についてAさんは、日本政府も署名しているリオ宣言などで明記されている予防原則に基づいた民事調停であると回答した。

【予防原則】予防原則(よぼうげんそく)とは、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす仮説上の恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。1990年頃から欧米を中心に取り入れられてきた概念であるが、「疑わしいものはすべて禁止」といった極論に理解される場合もあり、行政機関などはこの言葉の使用に慎重である。(ウィキペディア)

Aさんが大河原簡易裁判所に回答してからひと月になる11月29日、Aさんの宅に「事件終了通知」と題する書面が届いた。山本久美子書記官名で「頭書の事件は、令和5年11月29日、調停しないものとして、終了しました」と記されていた。印紙も返還された。

Aさんに送付された事件終了通知

民事調停や訴訟を受理しない場合、通常は不備がある箇所を書記官が指摘したうえで、受理する方向で指導する。しかし、Aさんのケースでは、そのプロセスが踏まれていない。調停のテーマが裁判所が毛嫌いしているタブーであるから、却下したとしか思えない。

◎却下された申立書の全文
 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/01/Rakumaru.pdf

12月末に筆者は、電話で山本書記官に却下の理由を問い合わせた。しかし、自分で回答する代わりに、仙台地裁の総務担当者に問い合わせるように指示してきた。そこでわたしは、仙台地裁の総務に問い合わせた。総務の回答は、「お答えできない」とのことだった。しかし、繰り返し回答を求めると、大河原簡易裁判所の山本書記官に問い合わせるように指示した。

筆者からの2度目の問い合わせを受けて、山本書記官も「回答しない」と繰り返した。

「上司の指示か?」
「裁判官はだれだ?」
「自分の意思で、却下を決めたのか?」

山本書記官は、当事者以外には回答できないと答えた。そして一方的に電話を切った。その後、Aさんが山本書記官に電話で問い合わせたところ、民事調停法13条を根拠にした却下であることが分かった。

【民事調停法】調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。

しかし、具体的に何を根拠として調停委員会がAさんの調停申立を却下したのかは分からない。裁判所が司法の役割を完全に放棄したとしか言いようがない 。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

昨年2023年はロシアとウクライナの戦争の終結の見込みも立たない中、「10.7」(ガザ・ハマス政権によるこれまでのイスラエルによる侵略への反撃)を契機にガザ地区におけるイスラエルによる大虐殺が始まってしまいました。イスラエルの閣僚が、ガザ地区への核使用を辞さないと発言。肝を冷やしました。

一方で、広島県選出の岸田総理率いる日本政府は、11月の核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加すらしませんでした。

こうした中で、平和都市としての広島の役目はますます重要になる「はず」です。もちろん、行政であるがゆえに限界はあります。それでも、戦後、平和都市として再出発して以降、〈建前〉ではあっても、世界最初の戦争被爆都市として、広島市は日本政府とは一線を画したスタンス、すなわち、「もう、誰にもあのような思いをさせたくない」というスタンスを取り、平和行政を展開してきました。そして、基本的にはすべての国に8月6日の平和記念式典への参加を呼び掛けてきたはずでした。

ところが、その「平和都市ヒロシマ」が、G7広島サミットの開催が決まった2022年5月23日以降、岸田総理、そして湯崎英彦知事と松井一実市長により、急速に「米国忖度都市 HIROSHIMA」に変質をしているように、筆者も1人の広島市民・広島県民としてひしひしと感じます。具体的には以下のような事象が挙げられます。

◆2022年8・6平和記念式典からロシア「だけ」除外

広島市は2022年8月6日の平和記念式典ではロシア政府を招待しませんでした。ウクライナ侵攻を受けてのことです。しかし、広島市はそもそも、広島に原爆を投下し、その反省が全くない米国はもちろん、核実験やミサイル発射を繰り返す朝鮮(金正日・金正恩政府)も招待していますし、パレスチナ人への侵略や虐殺を75年間続けてきたイスラエルももちろん招待していました。なぜ、ロシアだけ招待しなかったのか。冷静に考えると疑問です。今にして思えば、このころから、平和都市から米国忖度都市への広島の変質が露骨になってきました。

◆平和教材から「はだしのゲン」「第五福竜丸」削除

そして、市長の教育への権限が法改正で強まる中、広島市教委は2023年度の広島市の小学校の平和教材から「はだしのゲン」を、中学校の教材からは「第五福竜丸」を削除しています。「第五福竜丸」を知らずに世界的な核兵器禁止運動を語るなど、徳川家康を知らないで江戸幕府の歴史を語るのと同じナンセンスなことです。タイミング的には明らかに、「サミットで来広されるバイデン大統領のお目を汚さぬよう、邪魔なものは隠す」ということが見え見えです。

◆原爆投下の反省無き米国政府との姉妹協定

さらに、追い打ちをかけるように、松井市長は2023年6月末、原爆投下を反省していない米国政府(エマニュエル駐日大使)を相手方に「平和公園とパールハーバーの姉妹協定」を締結してしまいました。ホノルル市との交流を強めるのはホノルル市が自治体であり、核兵器禁止条約を推進する平和首長会議のメンバーですからもちろん大賛成です。しかし、いまだに原爆投下を反省していない米国政府との関係は慎重になるべきです。

松井市長はしかも、5月のサミット期間中に米側から打診を受けながら、市議会や市民に相談もなく、一方的に話を進めてしまいました。そして、11月末にはパールハーバーを訪問し、既成事実化を進めています。

◆「広島ビジョン」、ゼレンスキー「乱入」、法的根拠なき「戒厳令」……「黒歴史」のG7サミット

そして、2023年5月に開催されたG7広島サミットです

 

広島駅前に現れた栃木県警の警察労働者の皆様)

広島ビジョンはご承知の通り、ロシアの核威嚇は非難しつつ、西側の核は正当化するダブルスタンダードでした。さらに、途中からはウクライナのゼレンスキー大統領が「乱入」し、ゼレンスキーへの軍事支援一色になってしまいました。

また、このサミットでは中国包囲網も目的となっていました。しかし、米国は、この地域で戦争になっても、最悪、米軍を後方へ逃がすことができますが、日本列島を逃がすことはできない。広島は過去、中国侵略の拠点の軍都「廣島」でしたが、今度は米国に忖度して対中関係を緊張させる場としての「HIROSHIMA」になってしまったわけです。

さらに、サミットに来た米英仏独伊加は、「10・7」直後に、イスラエルを全面支持してしまいました。ゼレンスキーもロシアによる侵略被害国なのにパレスチナへの侵略者・イスラエルを全面支持してしまいました。まさに結果論ですが「ガザ大虐殺応援団サミット」になってしまいました。

そして、サミット期間中は、大量の警察労働者が全国から動員され、戒厳令さながらの有様になりました。

しかし、例えば宮島への入島規制などは、実際には「お願い」にすぎず、法的根拠は全くなかったのです。中国非難の論拠となっている「法の支配」などどこ吹く風です。

さらに、影響は8.6の平和記念式典にも及びました。サミットの「戒厳令」状態がまだ継続しているような錯覚に襲われました。

◆恥ずかしすぎる湯崎英彦県知事による「サミット記念常設展示施設」

湯崎英彦・広島県知事が会長のサミット県民会議は平和公園内にサミットを記念する常設の展示施設をつくろうとしています

しかし、上記の通り、イスラエル応援団サミットと化してしまったサミットをわざわざ記念するような施設をつくるのは、恥ずかしいのでやめていただきたいものです。12月現在、折からの人手不足で、入札不調ということです。このままやめてほしいものです。

◆「ガザ停戦要求」で全国に後れをとるどころか、「市長教育勅語騒動」で醜態

ガザ大虐殺については、12月19日、県議会はイスラエル・パレスチナの武力闘争の平和的解決を求める決議停戦を求める決議を出しました

広島市は、しかし、松井市長も市議会も、明確な停戦を求めるメッセージを出していません。目の前の虐殺を止めろと言わないで何のための平和都市なのでしょうか?

全国的には、長野県や新潟市、静岡市、京都市、北九州市など、少なくない県や政令市の議会がガザ即時停戦を求める決議や意見書を可決しています。しかし、平和都市広島市の議会や首長の動きは鈍い。爆心地から遠い県北部の三次市議会と東部の福山市議会で停戦を求める決議が可決されただけです。(https://twitter.com/miraisyakai/status/1737798320024920399/photo/1

それどころか、〈広島市長が現行憲法の主権在民を否定する教育勅語で新人職員に研修〉〈今後も使用し続ける〉という恥ずかしいニュースでお騒がせした始末です

◆原爆資料館〈めでたさも中くらいなり超満員〉

G7広島サミット以降、原爆資料館入館者は増えています。あまりにも増えすぎて待ち時間が長くなっており、ネット予約など、システムの改善を進めているところです。サミットでとくに海外の方の広島への注目は高まっています。それは結構なことだし、これを機会に原爆資料館で勉強していただくのは素晴らしいことです。
しかしながら、上記にご紹介したような「平和都市ヒロシマ」が変質していく中で素直には喜べません。

もちろん、現場労働者への負担も増加。松井市長が5月に突然、開館時間延長を決めた時はてんてこ舞いだったと、筆者が役員を務める労働組合の組合員である原爆資料館労働者からご報告をいただいております。

きちんとしたメッセージを出していかないと、段々には世界からも失望されるのではないでしょうか?

◆「お上に逆らわぬ」広島政治が「変質」の根底に

支持率が低下してもなかなか倒れない広島1区選出の岸田総理。その国政における暴走・迷走を止めることはもちろん必要です。しかし、他方で、今となっては、中央の国政のことや世界のことをあれこれ言っても、広島の政治が上記のような惨状であることを放置していては、全く、説得力がありません。

広島は、日清戦争で、(明治帝・伊藤博文総理・帝国議会が所在する)臨時首都となって以降、軍都廣島となりました。大日本帝国政府により中枢性を与えられました。しかし、そのことを背景に世界で最初の戦争被爆都市となりました。(広島が軍都だからと言って、多数の文民を巻き込む原爆投下は許されませんが。)

戦後は日本国憲法の下、平和都市として再出発する一方で、屈指の自民党王国でもありました。池田勇人ら宏池会を中心とする自民党政権の下での高度経済成長で筆者が誕生した1975年には一人当たり県民所得ベスト3に入り、同年には広島カープも初優勝。

これら、過去のある種の〈成功体験〉から、「お上のやること」に逆らわない気風が強くある。それこそ、〈はだしのゲン〉に出てくる政治家・鮫島伝次郎のように、その時々の〈お上の方針〉に手のひら返しのように従うという体質が強いのが広島の政治です。それが現在の広島の「変質」の背景にあると、筆者は実感しています。

正直、筆者も他の都道府県の選挙などの応援にかけつけることも多くありますが、広島に帰ってくるたびに、地元のデモクラシーの不在ぶり、言い換えれば権威主義的な風土に嘆息してきました。

それでも、これまでは、被爆者が一定数おられたこと、戦後、〈自民推薦で中央官僚〉以外の人物が広島市長だったことで一定のバランスを保っていました。市議選や県議選、衆院比例では自民系に投票しても、市長選挙では非自民・非官僚系に投票する方々が一定数おられたのです。だが、2011年に〈自民推薦の中央官僚〉松井市長が誕生以降、そのバランスは急激に崩れてしまいました。

◆ヒロシマ庶民革命で市民の手に政治を取り戻すのが平和都市再生の第一歩

しかし、もうそろそろ、広島市民・県民が自分たちの手に政治を、広島を取り戻す動きをつくっていくべき時ではないでしょうか?筆者と広島瀬戸内新聞が「あなたの手に広島を取り戻し、広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を呼び掛けるゆえんです。引き続き、広島から「我こそは庶民派政治家」にという方からのご連絡をお待ちしております。

連絡先 hiroseto2004@yahoo.co.jp  090-3171-4437

◆一市民が立ち上がり「ガザ即時停戦を求める決議」を要望

こうした中、現実に政治に対してたとえ個人でも動いている若手市民もおられます。12月7日付で、筆者の若手支持者の方が、1人の市民として、(別に筆者の指示とかそういうこともなく、あくまで自発的に)イスラエルによるガザ市民のジェノサイドを止めさせ、即時停戦を求める決議を求める要望書を広島市議会に提出しました。

筆者は、ご本人から「会期中にどうやったら議員に届くようにできるのですか?」と伺ったので「各会派用のポストが市議会棟の一階にありますよ」ということを申し上げただけです。このことを筆者が「広島瀬戸内新聞」(写真)で地域の皆様にご紹介したところ、自民党支持者の方も含めて「そうですね!」と同意してくださいました。

以下はその要望書です。

広島市議会議員の皆様、どうか、平和都市の議会としての仕事をしてください。

広島市議会議員のみなさんへ

こんにちは。私は広島市在住の市民です。

広島市議会議員の皆さん、イスラエルによるガザ市民のジェノサイドを止めさせ、イスラエルに即時停戦を求める決議を出してください。

広島市はこの夏、G7サミット開催都市としてG7各国の首脳を受け入れ世界に平和のメッセージを発信しました。

しかし今また平和が損なわれイスラエル政府により罪のないパレスチナの人たちが虐殺されています。イスラエル政府へアメリカ政府がミサイルなどの武器を供与し140億ドルもの支援をしています。またイギリス、フランス、ドイツ、イタリアもアメリカと共にイスラエルへの結束した支持を表明しました

こうしたG7各国のイスラエル支持のもと、毎日多くの乳児、幼児、こどもを含むガザの人たちが無差別に殺され、住宅や病院、学校でさえも爆撃対象となり多くの被害がもたらされています。これは戦争と呼べるものでさえなく、無差別で人道を無視した「大量虐殺」です。

日本政府はイスラエル支持の共同声明には加わっていないものの、10月16日の国連安全保障理事会で、ロシアが提出した停戦決議案には反対に回りました

G7議長国として平和のメッセージを発信したはずの日本は広島はいったい何をしているのでしょう?

私は大変失望しています。

皆さん平和都市広島の政治家は、今すぐガザのジェノサイドを止めさせ、イスラエルに即時停戦を求める決議書、日本政府に停戦に向け具体的なリーダーシップをとるよう求める意見書を出すべきです。

今目の前で起こっているこの大量虐殺を止めるための声を上げずに、どうして「平和都市」を名乗ることができるのでしょうか?

この令和5年第6回12月定例会の会期中にぜひ決議書と意見書を出してください。
よろしくお願いいたします。

ご参考までに東京都清瀬市、北海道旭川市、静岡市、静岡県焼津市、横浜市、茨城県かすみがうら市、神奈川県座間市ではすでに停戦を求める決議や意見書が出されています。

12月7日
広島市東区民 ○○○

広島瀬戸内新聞

◆はだしのゲン上映会も相次ぐ

また、この間、広島市教委が平和教材から削除した「はだしのゲン」の実写版ビデオの上映会が、危機感を抱いた市民により頻繁に開催されるようになりました。「はだしのゲン」ビデオは広島市の映像文化ライブラリーで借りることができます

こうした上映会も今後、筆者らでも検討していきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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