2023年10月22日執行の宮城県議会議員選挙で村井嘉浩知事の与党(自民+公明)が後退し、公認では過半数割れしました。

自民 24(-6)
公明 4(+1)
立憲 10(+1)
共産 5(±0)
維新2(+2)
無所属 14(+3)

宮城県議選は定数59。無所属で自民党系の方もおられるので、最終的には過半数を確保の見込みですが、それでも「知事与党」(本来こういう言い方はおかしいのですが)としては議席減です。格闘技に喩えれば「KO負け」とまでいかずとも「判定負け」というべきところでしょう。

なお、宮城でも自民党や岸田総理への批判も強いということはうかがっています。ただし、国政選挙でも地方選挙でも候補者として闘った経験のある筆者から見て、地方選挙の場合、そこまで中央の情勢が響くとは思えません。

地方議員選挙では、組織がガチガチの公明党や一部ベテラン自民議員を除くと、ローカルな風の方をうまく取り込んだ候補者が票を伸ばす、というのを感じます。

今回は、やはり村井知事への逆風というのが結構あったと思われます。特に維新は、自民党の後退に乗じて議席を増やした形ではないでしょうか?実際に、維新の当選者二人は仙台市内の選挙区で自民現職を打倒する形で当選されています。村井知事に批判的な保守層で、維新に投票された方も多いのではないでしょうか?

この場合、維新が大阪で新自由主義であるとかそういうことはあまり考慮されていないと思われます。ただ、立憲や共産にも投票をちゅうちょした「知事に批判的な保守層」が維新に投票した可能性が考えられます。

村井嘉浩知事は、2005年初当選の現在5期目です。

・東北労災病院(仙台市青葉区)が県立精神医療センター(名取市)と合築されて富谷市に移転。
・県立がんセンター(名取市)は仙台赤十字病院(仙台市太白区)と統合し、名取市に移転。
という病院の統廃合計画を推進しておられます。

この結果、仙台市から2つの大きな病院がなくなることになります。これは、特に仙台市長を筆頭に、仙台市民の大きな反発を招いています。

ちなみに仙台市内の二つの区、すなわち青葉区、泉区で自民党現職が維新新人に打倒される結果になっています。

◆維新顔負け!コンセッション方式での水道民営化も全国初の強行

村井知事は、ここまで、2022年度からの水道民営化を全国初で強行しました。フランス系ヴェオリア・ジェネッツを中心とする企業にコンセッション方式で20年間の水道事業の運営を譲渡しています。

維新顔負けの新自由主義「過激派」です。2021年7月の県議会での議案採決においても知事与党の自民党からも棄権者が二人出ました。コンセッション導入から数年は能力のある職員がいて、企業の業務が適正かを監督できるし、災害時には現場で対応することもできますが、20年後には県側にノウハウを持つ職員は消えている可能性が高いのです。その時になって何かあっても遅いのです。こうした懸念から、採決自体はきわどいものになったのです。

ちなみに、コンセッション方式については維新=松井一郎・大阪市長(当時)でさえも断念し、業務の一部の民間委託にとどめています。

◆チリの独裁者兼ネオリベのパイオニア=ピノチェトとそっくり

独裁的な手法で新自由主義過激派と言えば、歴史上、思い出される人物がいます。チリの独裁者・故アウグストゥス・ピノチェト元被告人(1915-2006,大統領在任1974-1990)です。

米国CIAの手先だったピノチェトは1973年9月11日、合法的に選ばれた左派のアジェンデ政権をクーデターで打倒。アジェンデ派を虐殺。独裁を敷く一方で、経済政策面では村井知事や湯崎知事のような新自由主義政策を進めました。いや、ピノチェトこそが現実に新自由主義のパイオニアと言えるでしょう。1973年と言えば、まだ新自由主義を主要国で初めて導入した英国のサッチャー首相すら登場していません。米国のレーガン大統領や日本の中曽根首相はもっと後です。

その結果、一時は「チリの奇跡」と言われる成長を成し遂げたとされていますが実際には、チリの特産品である銅の国際価格の上昇という幸運に恵まれたことが大きかったのです。

しかも、通算での平均の経済成長率は、クーデター前のチリの平均経済成長率を下回るという有様でした。

村井知事は弾圧こそしてはいませんが(日本国憲法のもとで、できませんが)県民の声を無視して暴走し、全国の新自由主義を走るという意味ではピノチェトそっくりです。

その村井知事の大親友が、我らが広島県の湯崎英彦知事です。湯崎知事は2009年11月に初当選。湯崎知事も、1300-1400億円をかけて県病院やJR病院をなくして、新巨大病院を作る構想を強行しようとしています。経営に問題がない公立病院を潰すというのは、全国にも例がないそうです。湯崎知事はある意味、維新はもちろん、村井知事も真っ青のネオリベ政治家です。

さらに、農業ジーンバンクを一方的に廃止するなど、県民の声を聴かずに新自由主義政策を進めています。

村井知事と湯崎知事は、「宮城・広島両県知事会議」を毎年のように開催されています。

ガッチリ握手する村井・宮城県知事と湯崎・広島県知事

令和4年度 宮城・広島両県知事会議を開催しました – 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)

宮城・広島両県知事会議を開催しました(平成27年5月25日)

もちろん、広島県と宮城県は共通点もたくさんあります。地方の中枢都市であること、人口規模や産業構造が似ていることなどです。広島カープと東北楽天ゴールデンイーグルスという地域に愛されている球団もあります。札仙広福と呼ばれる中で、仙台と広島はやや苦戦をしているという点も共通します。

そういう中で連携をしていくこと自体には異論はありません。しかし、問題は両者がまるで歩調をそろえるように全国の自治体でも突出したネオリベ政策を進めていること。そして、県民の意見を聴かずに暴走していることです。

今回の宮城県議会議員選挙で村井知事の与党が後退したのはその点では県民の良識が発揮されたというべきでしょう。

◆2025年秋、宮城でも広島でも知事選挙!同時「庶民革命」で両知事にストップを!

そして、2025年秋、広島県でも宮城県でも両知事選挙が実施されます。県民を無視して暴走する両知事にストップをかけるチャンスです。

宮城県民の手に宮城県を村井知事から取り戻す「庶民革命」については、宮城県民の皆様にお任せします。

筆者と広島瀬戸内新聞は「我こそは庶民派広島県知事」に、「我こそは庶民派広島県議」に、という方のご連絡をお待ちしております。「ヒロシマ庶民革命」を断行し、暴走する湯崎英彦知事から広島をあなたの手に取りもどしましょう!

◎連絡先 090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使は10月13日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、その中で10月11日にBS-TBSで放送された「報道1930」で、ジャーナリストの重信メイ氏が出演したことを問題視した。


◎[参考動画]イスラエル「総攻撃に移行する」“天井のない監獄”の現状は?【10月11日 TBS-BS 報道1930】|TBS NEWS DIG

重信メイ氏は、国際テロ組織、日本赤軍を率いた重信房子・元最高幹部の娘である。それゆえコーヘン氏は、メイ氏の番組出演が「市民を暗殺しても構わない」というメッセージを送ることになると主張。「殺人者やテロリストの一族」に発言の場を与えるべきではない、などと話した。

だが、これをウクライナ戦争の現状に例えてみれば、コーヘン氏の主張は珍妙極まりないものになる。現在、複数の日本人がウクライナ戦争および近隣国に「義勇兵」「医療スタッフ」「ボランティア」として参加しているが、誰がかれらを「テロリスト」と呼ぶだろうか?

イスラエルは、1936年のパレスチナ独立戦争を受けたピール委員会裁定(イスラエルはパレスチナの15%を国土とする)いらい、入植地を拡大することでアラブ人を隔離地に追いやってきた、いわば侵略国家なのである。ヨルダン川西岸・ガザ地区を隔離し、いわば「21世紀のアパルトヘイト政策」を行なっているのが、イスラエルなのである。

ロシアのクリミア併合、ドンバス併合が明らかに侵略戦争・領土分割であるとしたら、イスラエルのパレスチナ侵攻も、まちがいなく侵略戦争・領土併呑である。いまわれわれは、人間的な尊厳をかけてロシアと戦うウクライナ人を、英雄的だとすら称賛する。侵略者が占領地のロシア化、強制連行、殺戮やレイプを重ねるがゆえに、ウクライナ人の悲惨な現実に支援を惜しまない。

ロシアの侵略行為を許すならば、東ヨーロッパ(旧ソ連圏)全体が、あるいは極東がプーチンの専制支配に蹂躙される可能性があるからだ。パレスチナで起きていることも、侵略という本質は同じである。


◎[参考動画]イスラエルとパレスチナ双方の大使が都内で会見 互いに非難(2023年10月14日)

◆重信房子のハーグ事件への関与は立証されていない

日本赤軍はPFLP(パレスチナ民族解放戦線)の支援組織として、いわば公募ボランティアから出発し、のちに軍事作戦に従うことになるが、いわば義勇兵的な参加形態であった。

重信房子個人で言えば、ハーグ事件(オランダのフランス大使館襲撃・人質事件)の共同共謀正犯として起訴されたが、事実関係は公判でも明らかにされていない。ライラ・ハリド、カルロス(この事件の主導者)も、重信の関与を否定している。
コーヘン駐日大使は、リッダ事件にも言及している。

「私が尊敬するTBSのニュースで、50年前にイスラエル人を殺害した、重信の娘にインタビューしているのを見た。重信の娘は、日本のテレビでコメンテーターをしていた。これは何だ?」

日本赤軍(当時は赤軍派)は1972年5月、イスラエル・テルアビブのリッダ空港(現ベングリオン空港)で約100人を死傷させた銃乱射事件を起こしている。この点を念頭に置いた発言だが、じつはこの事件は民間人の死者の大半が、イスラエル兵の銃射撃だったことも明らかになっている。

すなわち、当初は管制室を襲撃するはずだったものが、警備のイスラエル兵と銃撃戦になり、民間人を巻き込んだ惨劇となったのだ。そしてこの作戦はPFLPが立案し、奥平剛士と安田安之、岡本公三が「パトリック・アルグレロ隊」(名称の由来は、70年にPFLPの作戦で殉死したニカラグア人)として参加したものだ(重信房子『革命の季節』『戦士たちの記録』幻冬舎刊参照)。当時の重信房子はPFLPの広報部の仕事を手伝っていて、作戦そのものに関与していない。


◎[参考動画]重信房子(元・日本赤軍) 第17回反戦・反貧困・反差別共同行動 in 京都での挨拶(2023年10月15日)

◆ハマスを生み出したのは、イスラエルである

コーヘン駐日大使への我々からのメッセージとして、あえてイスラエルをテロ国家と規定しよう。

なぜならば、遠因がイギリスの二枚舌外交(パレスチナにアラブ国家とユダヤ人国家を約束)にあるとはいえ、入植地の一方的な拡大と、自国民保護の名目で軍事占領、殺戮と隔離政策を推し進めてきたのが、イスラエルにほかならないからだ。
かつてのPFLPの抵抗も、現在のハマスの軍事行動も、イスラエルの侵略に原因があるのだ。

すでに75年にわたって、殺戮と蹂躙、血の報復が行われてきたパレスチナで、イスラエルはガザ地区への地上軍事侵攻、すなわちジェノサイドサイド(大量虐殺による民族浄化)に出ようとしている。そしてわれわれ日本人にとって、パレスチナ紛争はよくわからない問題である。

誰かに訊いてみるといい。パレスチナ紛争が侵略戦争であり、自分の住む家をうしなった難民問題であることを、どれほどの日本人が知っているだろうか。宗教紛争だと思い込んでいる日本人も少なくないはずだ。それゆえに、パレスチナ問題を熟知している重信房子、メイ母娘が解説につとめることが、いまの日本には必要なのだ。


◎[参考動画]【オプエドLIVE】重信メイ【緊迫の中東 戦火の根源を探る】(2023年10月18日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

10月も半ばを過ぎ、日ごとに肌寒くなってまいりました。

 

本日発売 尾﨑美代子著『日本の冤罪』

さて、このたび小社は『日本の冤罪』を刊行しました。著者の尾﨑美代子さんは、労働者の町・大阪釜ヶ崎に根づき、小さな食堂を営みながら、かねてからの自身の追求課題として冤罪事件の取材を続け、月刊『紙の爆弾』を舞台に継続してレポートを発表してきました。それらに補強取材を行い最近の経過を加え一冊の単行本『日本の冤罪』としてまとめ上梓されました。「日本の冤罪」の連載は毎号『紙の爆弾』の基幹企画として複数のライターによって現在も継続しています。それだけ世の中に冤罪が多いということですが……。

尾﨑さんのレポートは、連載開始以来好評で多くの読者から書籍化することが望まれてきました。特に本書の完成を待たずに8月に亡くなられた「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんはそうで、本書での対談は、まさに〝遺言〟ともいえる貴重なものです。

そのように本書は、机上で教条主義的スコラ的に「事件」を組み立てるのではなく、法律の専門家でも学者でもなく、日々労働者と共に在る一人の市民として時間を見つけては四方八方冤罪被害者の元を訪ね、冤罪被害者と家族・関係者に寄り添って取材を続け、生きた記録として書き綴ってあります。「冤罪」問題を扱った類書は少なからずありますが、その点が類書と根本的に異なるところです。

何卒、本書を紐解いていただき、知人や友人、メディア関係者の方々に薦められご紹介の労を執っていただきたくお願い申し上げます。

株式会社 鹿砦社
代表取締役
松岡利康

日本の冤罪
尾﨑美代子=著
四六判 256ページ カバー装 定価1760円(税込み)

「平凡な生活を送っている市民が、いつ、警察に連行され、無実の罪を科せられるかわからない。
今の日本に住む私たちは、実はそういう社会に生きている。」
(井戸謙一/弁護士・元裁判官)

労働者の町、大阪・釜ヶ崎に根づき小さな居酒屋を営みながら取り組んだ、
生きた冤罪事件のレポート!

机上で教条主義的に「事件」を組み立てるのではなく、
冤罪事件の現場に駆け付け、冤罪被害者や家族に寄り添い、
月刊『紙の爆弾』を舞台に長年地道に追究してきた、
数々の冤罪事件の〈中間総括〉!

8月に亡くなった「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんが死の直前に語った
貴重な〈遺言〉ともいうべき対談も収める!

【主な内容】
井戸謙一(弁護士/元裁判官) 弱者に寄り添い、底辺の実相を伝える
《対談》桜井昌司×尾﨑美代子 「布川事件」冤罪被害者と語る冤罪裁判のこれから

[採り上げた事件]
湖東記念病院事件/東住吉事件/布川事件/日野町事件/
泉大津コンビニ窃盗事件/長生園不明金事件/神戸質店事件/姫路花田郵便局強盗事件/
滋賀バラバラ殺人事件/鈴鹿殺人事件/築地公妨でっち上げ事件/京都俳優放火殺人事件/
京都高校教師痴漢事件/東金女児殺害事件/高知白バイ事件/名張毒ぶどう酒事件

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。


◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/
◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

すっかり秋めいてまいりました。

このたび小社は28年にわたるジャニーズ問題(創業者ジャニー喜多川による未成年性虐待と事務所の横暴など)追及の〈集大成〉として『ジャニーズ帝国 60年の興亡』を刊行いたしました。

 

鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』

本書は私たちにとって感慨深いものがあります。今から28年も前の1995年、ジャニーズ事務所から出版差し止めを申し立てられて以来、私たちは3度の出版差し止めにも屈せずジャニーズ問題を告発し続けてまいりました。

このかんのジャニーズ問題のヒートアップには驚くばかりですが、ずっと悲観的な想いでいたところ28年にわたる執念が実ったことだけは確かです。「蟻が象を倒すこともある」「針の一穴がダムを決壊させる」と嘯いてまいりましたが、現実のものとなりました。

現在、すべてと言っていいほどのマスメディアが日々ジャニーズ問題に狂奔していますが、「死人に口なし」で、なぜもっと早い時期、少なくとも『週刊文春』訴訟でジャニー喜多川の未成年性虐待が認定され最高裁で確定した時点からでも取り組むべきだったと思います。文春以前と以後、さらにジャニー喜多川が存命中と死後では、取材や記事の値打ちに天地雲泥の差があります。

毀誉褒貶はあるかと思いますが、まずは私たちの闘いの記録でもある本書をご覧になり、取材の参考にされたり、またご意見、ご批判などお寄せください。こういう記録書は他にはないことだけは確かであり、手前味噌ながら、これだけでも価値があると自負いたします。

まずは『ジャニーズ帝国 60年の興亡』刊行のご挨拶にて失礼いたします。

株式会社鹿砦社 
代表取締役
松岡利康

【主な内容】
Ⅰ 苦境に立たされるジャニーズ
  2023年はジャニーズ帝国崩壊の歴史的一年となった!
  文春以前(1990年代後半)の鹿砦社のジャニーズ告発出版
  文春vsジャニーズ裁判の記録(当時の記事復刻)
 [資料 国会議事録]国会で論議されたジャニーズの児童虐待

Ⅱ ジャニーズ60年史 その誕生、栄華、そして……
1 ジャニーズ・フォーリーブス時代 1958-1978
2 たのきん・少年隊・光GENJI時代 1979-1992
3 SMAP時代前期 1993-2003
4 SMAP時代後期 2004-2008
5 嵐・SMAPツートップ時代 2009-2014
6 世代交代、そしてジュリー時代へ 2015-2019
7 揺らぎ始めたジャニーズ 2020-2023

10月23日発売 鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』A5判 320ページ 定価1980円(税込み)

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315290/

広島県の湯崎英彦知事は広島カープがレギュラーシーズンで苦手としていたベイスターズを打倒したCSファーストステージ(14日、15日)で県内が盛り上がっていた10月13日から17日の日程で、フランスを訪問しました。ワインの即売会でカキや日本酒を売り込む、ということでした。

 

湯崎英彦広島県知事の2023年度外遊

それにしても、今年はやけに、知事はたくさん外国に行かれています。それもそのはずです。今回で6か所目の外遊だからです。

湯崎知事は、4月と8月に観光PRで台湾へ行かれています。また7月には友好連携先のハワイ、そしてNPT第一回準備会合のためウィーンへ。6月には英国に政務と公務を兼ねて訪問。そして、今回の訪仏に加え、今後、米国訪問も予定されているとのことです。

核兵器廃絶のためのNPT準備会合出席は、核兵器廃絶のためであって費用対効果を云々する性質のものではないでしょう。しかし、観光PRなり、商品のセールスに知事がわざわざ向かうことにどれだけの効果があるのでしょうか?今は、円安で渡航費も膨らんでいる折です。これまでに3000万円を使っています。

◆県民の声を聴かなくなった知事 外国ばかり行ってどうする?!

また、そもそも、知事は外務大臣ではありません。海外へ行く前に、知事として県民の声をもっと聴くことに時間を充てられたらいかがでしょうか? いま、湯崎知事の県政、そして知事が進める政策には、住民の声や社会的ニーズが全く反映されていないためにうまくいっていないのでは?と思われることがたくさんあります。
そもそも、知事は一期目(2009~2013)には【湯崎英彦の宝さがし】と銘打って、県内全市町を回って住民と対話を直接されていました。あのころの知事の産業政策にはそれなりに地に足についたものがあったように記憶しています。

また、福山市鞆の浦で地域を二分していた、埋め立て架橋問題では、賛成・反対両派の住民の対話集会を実施。『渋滞をなくす』という共通目標を達成するためにどうすればいいか、合意形成に務められました。

その結果、景観を壊す鞆の浦埋め立てではなく、山側にトンネルを掘って通過交通を捌く方向に落ち着いたのです。

筆者も、一期目にされたような対話重視の県政を期待して2009年の湯崎さんの最初の選挙では湯崎さんに一票を投じました。しかし、今となっては『湯崎英彦!俺の一票を返せ』とは言わぬが『打倒するしかない』という気持ちでいっぱいです。
以下に湯崎さんが早急に県民の声を聴くべき課題を目につくだけでも挙げます。

◆三原産廃問題、放置したままではカキにも日本酒にも打撃

 

原告団共同代表の岡田和樹様SNSより

三原市では湯崎知事が許可し、2022年秋から稼働を開始した本郷産廃処分場(JAB協同組合)から2023年6月以降、BODなどが基準値を上回る汚染水が流出。2023年10月現在も日中こそ流出は止まっていますが、早朝や夜間にはまだ出続けています。

周辺住民は田んぼに水を引くこともままならず、苦しんでいます。そして、この間、7月4日には、広島地裁は知事に対して産廃処分場への設置許可を取り消すよう命じています。しかし、知事は、控訴した上で、汚染水に何の実効性ある対策も取ろうとしないばかりか、住民たちの面会要請も無視しています。

知事! このまま汚染水が川や海に流れ込み続けば日本酒やカキにも悪影響が出ますよ?! 知事は、フランスに日本酒やカキの売り込みに行く前に、三原市民にお会いになり、現状把握をされるべきです。

 

湯崎知事が肝いりで進めている県病院

◆住民無視で暴走する県病院廃止

湯崎知事が肝いりで進めている県病院や中電病院、JR病院を廃止して新巨大病院を建設する構想。1300~1400億円かかるというのに試算根拠は不明です。そもそも、計画段階で県病院が地元から消えてしまう南区や、宇品港経由で県病院を利用してきた島しょ部の住民の意見を聞いた形跡もありません。一方的な説明会をしたうえで、補正予算案を知事に批判的な議員が少ないことをいいことにごり押ししました。

◆県庁から徒歩圏内でも課題山積

県庁から徒歩圏内でも課題は山積しています。県庁から北東へ徒歩ですぐの公立大学法人・叡啓大学も知事肝いり事業。入学者が定員割れするという惨状です。つくるだけつくっておいて、放置でいいのですか?きちんとチェックされないのですか?

高速道路5号線二葉山トンネル問題。県庁から歩いても30分程度の東区二葉の里がトンネルのスタート地点です。工期が2028年度まで延長する上、予算もまた30億円増額の1289億円に。シールドマシンも何度も壊れ、遅々として工事が進まず、工事現場の真上ではひび割れなどの被害も続いています。「住民を犠牲にして工事を進めることはない」と約束したのが湯崎知事でした。いったいどうなっているのですか?

また、県庁から徒歩圏内の小学校で、プールが壊れて、バスで他の学校へプールの授業を受けに行くという学校もあります。小学校は市教委の管轄とはいえ、財政支援などの面で県ができることもあるでしょう。

湯崎知事。フランスに行っている時間があるなら、県庁周辺を歩いて県民の声を聞かれたらいかがでしょうか?

◆県民をなめている湯崎知事・岸田総理から政治を取り戻すヒロシマ庶民革命を!

広島県選出の岸田総理についても、「外遊が多い一方で、庶民の声を全く聴かないのでは?」と、全国の皆様から批判が出ています。大変悔しいことです。広島県民が知事や総理と言った政治家に完全に舐められています。広島県民の手に政治を取り戻すことが今こそ大事ではないでしょうか?

筆者は我こそは庶民派広島県知事に、我こそは庶民派広島県議に、という方のご連絡をお待ちしております。ヒロシマ庶民革命で知事から広島の政治・行政をあなたの手に取りもどしましょう!

連絡先 090-3171-4437、hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

本稿は2022年12月18日大阪市で行われた「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西発足31周年の集い」の記念講演「福島第一原発事故から11年 今 伝えたいこと」の講演データです。一部再構成した上で、前編、後編の2回に分けて掲載します。

 

◆はじめに

2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故から早くも11年の月日が過ぎ(講演当時)、福島市で妻と二人の避難生活です。当時62歳の私も74歳を迎えました。この11年という時間は、私の人生ではどう捉えたら良いのか思いもつきません。あまりにも人生を考える上で想像を超えるものがあり、予期せぬ人生の一コマですから、これまでの人生の7分の1を費やしてしまったことになります。

(2011年当時は)人生の区切りの60歳を迎え、シニアライフプランをもって農業に復帰し、時代に即応した新しい農家経営の改善に取り組んだばかりでした。何代にもわたって村民の手で培ってきた平和な美しい飯舘村は放射能汚染によって避難・追放となり、コミュニティは崩壊しました。村民は引裂かれ、暮らしの根底を崩壊され、恒常的に安定して暮らす生活権を喪失したのです。

◆事実上の強制避難、高かった初期被曝

 

事故後、計画的避難とはいえ事実は強制避難だった。人生をかけて作り上げてきたものが全て壊され、一からのやり直しを強いられました。

飯舘村民の避難は、避難指示が事故から一か月以上も遅れたことで、避難先が見つからずに長く高放射線量下の村内に居住していて確実に高い放射線被曝を被ったはずです。

しかし、避難に当たっては、スクリ-ニングもなされず、線量検査もされなかったのは何故なのか。国・県の災害対応のマニュアルには記されていたはずです。

11年を経過した今では計測も出来ないし、行動記録も曖昧になってきているから判定は難しいと言うことになるのでは納得がいきません。しっかりした回答が欲しい。

◆何百年も続く汚染と住民の苦悩~原発事故の現実を伝えるべき

飯舘村では村の80%の除染ができておらず、山も川も放射能汚染はそのままで、野山の恵みである山菜もキノコも後何百年と食べることも出来ないという。まだまだ住民は苦悩しながら生きていかなくてはならない。

必ず原発事故が起こればこうなるのだという、この現実を日本国民は知り、後々の代まで伝えるべきです。

今の飯舘村は、8割近くの人が避難先で暮らしているのは何故か。生業の目途が立たないばかりではなく、事故前のような暮らしが出来ないからです。国・県による外からの移住政策ばかりがアピ-ルされていて、既存の住民の生活再建施策が乏しいからであると感じています。

◆「風評」はまやかし、「放射能汚染は健康に影響せず安全」とどうして言えるのか

「風評」という言語は、政治・行政が作り上げた戯言で、多額の公費を費やして如何にも安全だとアピ-ルし、国民を安心させ黙らせようとするまやかしの手法、全く本末転倒です。被災地では放射能による長期的汚染の被害が実在しているのですから。

 

ましてや国も東電も事故の責任を取る姿勢もないし、原陪審のいう慰謝料等の賠償金を支払うことで済まそうとしているように取れる。

たばこの煙が健康に影響するとして行政罰が科されるのに、なぜ放射能汚染は健康に影響しない安全な物と言えるのか、私たち被災者には到底理解できない。

いくつかの裁判の例を見るに、司法の場でも明らかにされないのかと思うときに、このままいくと私たちは棄民にされるのではと危惧しています。(つづく)

▼菅野 哲(かんの ひろし)
1948年、戦後開拓入植者の長男として飯舘村で生まれる。福島県立相馬高校卒。家業の農業に従事後、飯舘村森林組合に就職。1969年、飯舘村役場に奉職。2009年、定年退職後、農業に復帰。2011年3月、原発事故により福島市に85歳の母と妻の家族3人で避難生活。2014年7月、長谷川健一団長と共に「原発被害糾弾 飯舘村民救済申立団」を立ち上げ、副団長として「申立の趣旨」文案にかかわり、組織化につとめる。2019年7月、「飯舘村民救済申立団」解散。現在は公益社団法人相馬広域シルバー人材センター理事長。報徳会相馬理事。主著に『〈全村避難〉を生きる:生存・生活権を破壊した福島第一原発「過酷」事故』(言叢社2020年)。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

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◆冤罪はきょうも続いている

 

尾﨑美代子『日本の冤罪』(鹿砦社)10月23日発売

警察に「逮捕する!」といわれ、手錠をかけられる。最近あるのかどうか知らないが「刑事ドラマ」は二世代ほど前には人気番組だった。しかしあの番組群は、警察権力に迎合し過ぎた。やりたい放題な拳銃の発砲や警察権力の過剰な暴力を英雄化・美化して視聴者の感覚を鈍化させる作用を担っていた。

そういったエンターテインメントで描かれる、警察の正義性や、苦闘、あるいはヒューマンドラマの裏面に「作り物」ではない現実として、冤罪は悲しい旋律を奏でながら現在進行形、きょうも続いている。

冤罪とは事件・事故の加害者ではないのに、まずは警察に加害者と決めつけられ、ほどなく、被疑者と呼称を変えられ(かつては「被疑者」とも呼ばれず氏名呼び捨てであった)、警察発表に従いマスコミが「こいつが犯人だ」、「こいつは劣悪非道な人間だ」と散々喧伝され、最悪の場合、無期懲役や死刑が言い渡された犠牲者を示す単語である。そこには司法の暴走・暴虐・組織防衛の力学が必ず働く。

◆著者は大阪市西成区の飲食店「はな」のママ

『日本の冤罪』著者の尾﨑美代子さんは、大阪市西成区に飲食店「はな」を経営する女性だ。西成といえば「釜ヶ崎」。「釜ヶ崎」はご存知の通り、日雇労働者が多く暮らす地域だ。著者は「どこにそんなエネルギーと発想が蓄えられているのか」と驚嘆させられる情熱の持ち主である。その情熱が『日本の冤罪』で二つ結実した。

一つ目は布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)と著者の対談だ。この対談はおそらく桜井さんが遺された最後のまとまった意見表明だろう。二つ目は冤罪事件解決、原発訴訟や福島原発事故被害者救済の裁判など広範な分野で最先頭に立ち、闘う井戸謙一弁護士からの寄稿「弱者に寄り添い 底辺の実相を伝える」である。桜井さん井戸弁護士お二人の力添えが『日本の冤罪』の価値をより高めていることは間違いない。

本書に推薦文を寄稿してくれた井戸謙一弁護士(左)と著者

◆16の事件の冤罪犠牲者たち

『日本の冤罪』には16の事件、18本の取材報告が収録されている。殺人事件から1万円の窃盗そして痴漢事件まで。「事件の軽重にかかわらず幅広く冤罪は作られる」ことを知るために、本書が有益であることを著者は意識したであろうか。さらにこれまで一度として報道されたことのない「京都俳優放火殺人事件」まで取材・執筆の幅が広がっていることが数ある冤罪関連書籍の中で本書を際立たせるのだ。読者は驚かれるかもしれないがと「京都俳優放火殺人事件」の冤罪犠牲者は現在も獄中に囚われたままだ。

著者の冤罪事件取材の方法は独特だ。対談した桜井さんや他の冤罪犠牲者から「こんな事件がある、冤罪だ」と紹介を受け、当該事件の冤罪犠牲者や、弁護士、関係者に取材に赴く(冤罪犠牲者が獄中に居れば手紙を書く)。多くの場合取材のきっかけに冤罪犠牲者の紹介や、要請があり、それが次の事件取材へと繋がる。

『日本の冤罪』筆者の主たる生業は執筆ではない。著者は20年続く飲食店「はな」の店主である。つまり著者は少なくとも「二足の草鞋」を履いているのであるが、それだけではない。「はな」はしばしば勉強会、講演、音楽ライブの会場として地域だけではなく全国から人が集まる場所として機能する。仕切るのはいつも著者、でも必ずたくさんの人が手伝ってくれるという。

冤罪の犯罪性を市井の視点から解き明かし、その射程を未だに誰もが触れぬ領域にまで広げていった。本書のエッセンスと価値はそこにある。

◆取材者の洞察力

 

布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)。本書収録の対談が桜井さんによる生前最後の意見表明となった

ひとつだけ『日本の冤罪』手に取る未来の読者に警告しておこう。冤罪取材は事実の確認作業が第一歩だが、その先にどんな恣意が隠されていたのかを洞察するのは取材者の洞察力に委ねられる。

さらには事件を文章化するにあたってはときに、凄惨な事件を描写しなければ全様を説明し尽くせない。冤罪を解き明かすには取材者が事件の全体像に踏み込む勇気が求められるわけだ。著者はどんな事件であっても全容を納得することなしには、文章を書いていない。冤罪の犯罪性同様、事件のむごたらしさも描かれていることを心して、読者は本書を手にしてほしい。

なお、著者は故桜井さんに「尾﨑さん、あの事件も書いてよ」と言われている冤罪事件をかなりの数抱えている。その取材が終わるまでは、桜井さんにお別れはできないという。ということは、冤罪事件がある限り、著者が桜井さんに「さようなら」を言える日は来ないのかもしれない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

「県病院問題を考える会」(代表代行・有田優子広島市議)の第一回学習会が10月9日(月)、広島南区民文化センターで行われ、福島みずほ参院議員が「地域の病院をみんなの力で残す」と題して講演しました。

広島県の湯崎知事が、地元住民の声も聴かず、積算根拠も不明確なまま、県病院(広島市南区)を含む病院の統廃合と巨大病院(広島駅新幹線口に予定)建設案を9月県議会に提出し、保守の一部と共産党は反対したものの、可決されてしまった中で行われました。

福島議員と筆者は大学の先輩・後輩です。福島議員がわたしの大学3年の1997年秋にOGとして母校に講演に来られたとき以来、半世紀以上交流させていただいています

福島議員は、全国を回り、公立病院の統廃合問題について情報を収集しておられます。また、厚生労働省や総務省に直接見解を問いただしておられます。

 

福島みずほ参院議員と筆者

◆社会保障費カットの流れは確かだが

福島議員は、講演の中で、まず、現在、社会保障費とくに医療費抑制と防衛費増大及び、防衛力増強のための積立金計上とセットで進んでいる、また、長年にわたって医療費抑制が進められ、病床数は28年間で36万床減少し、自治体病院は147減少、ICUは444か所減り、保健所は個所数を45%削減するなどの流れがある、と説明。そして2019年には424,のちに436病院を再編統廃合の対象として名指しして撤回していない、2021年には改悪医療法成立で消費税を使って病床削減を行っていると指摘。 

また、公立病院を独立行政法人化した場合、意思決定の迅速化や経営の黒字化、規模拡大によるコスト削減などのメリットはあるが、他方で、不採算部門が切り捨てられる、非公務員化で職員の離職が増える、その結果、人員不足、過重労働になる、議会によるチェック機能が低下するなどの問題点があると専門家への聞き取りを踏まえて指摘。

◆一方的な公的病院廃止の流れでもない

福島議員は、一方で、以下のように一方的に公的病院統廃合が進む情勢ではないことを強調しました。

1、総務省や厚労省は再編リストをつくってはいるが、自分が問いただしたところ、各都道府県に病院を統廃合しろという指示・命令をしているわけではない。国としては、都道府県に対応は任せるが、『統廃合するなら、国がお金は出すよ』というスタンス。強制はしないともいえるし、卑怯ともいえる。

2、他の都道府県では、病院統廃合の事業規模は50億円程度だ。広島県の1300億円~1400億円というのは異常。しかも、国(総務省・厚労省)による再編のリストにも入っていない。また、「(広島の新病院がめざす)1000床にならないと、良い医師の採用ができないということはないのか?」という問いに対して、厚労省は「そんなことはない」という回答をしている。広島県病院は他の地域の再編対象共違い、赤字で成り立たないというわけでもない。それが、他地域との大きな違いだ。

3、民意で病院統廃合をひっくり返すことは可能。徳島県では国立病院機構徳島病院の統廃合を県選出の国会議員への働きかけで阻止した。一時期、県立病院の独法化が検討されていた滋賀県では世論を受けて一応革新系の三日月知事が県立維持を打ち出した。青森県でも県病院と市民病院の統廃合へ前知事が市の意見も聞かずに突っ走っていた。しかし、自民系同士の交代ですが宮下知事に知事がかわったことで、防災対策の面などからも再検討されることになり、暴走にブレーキがかかっている。兵庫県の三田市では病院統廃合撤回を争点に現職市長を無名サラリーマンが打倒。そのほかにも市長の交代で公立病院統廃合を阻止している。

◆涙を誘う「県病院がないと生きていけない」 地元有権者からの手紙

 

有田優子広島市議

南区選出の有田優子市議から新人議員としての議会報告がありました。2歳の時に難病を宣告されて県病院に入院した経験を持ちます。また、衆院選、市議選と選挙活動をする中で、「県病院がないと生きていけない」という地元有権者の声をうかがい、どうしてもその声を政治に届けたいと決意しました。2023年春の市議選でも主に県病院の廃止反対を訴え、所属政党である社民党の基礎票を大きく上回る得票を得ました。

有田市議は広島市議会でも一般質問で30分間のうち10分間を県病院問題に割いたそうです。

県の所轄とはいえ、市民の命にかかわること。しかし、市の答弁は「県の動向を注視する」という主体性のないけんもほろろなものでした。有田市議は今も雨の日も土日も朝から県病院前電停近くに立って街頭演説をして県病院を残せと訴えています。

県病院問題を考える会の黒川事務局次長は「県は独立行政法人化を2025年4月にはしてしまおうとしている。県の責任逃れだ。また、JR西日本から土地を買うために県は180億円もの県費を出すつもりだ。税金の使い道としてどうなのか。経理の透明性はどうなのか。追及していかなければいけない。」と訴え、署名活動や学習会などへの引き続きの取り組みをお願いしました。

滝谷事務局長から最後のあいさつに代えて、「県病院がなければ生きていけない」と有田市議に声をかけてきた方で、現在は県病院に入院中、という方からのお手紙を代読し、有田市議に伝達、出席者の涙を誘いました。

◆浮き彫りになった湯崎知事の異常性、打倒するしかない

福島議員の講演で明らかになったことがあります。それは 別に赤字というわけでもない公立病院を潰すのに1300億~1400億円をかけるということです。こんな例は全国でも他にないということを知り、筆者も質疑応答の中で、「他の問題でも暴走が続く湯崎知事。彼は国以上に新自由主義を進める確信犯だ。広島県民の未来のためにも湯崎知事を打倒するより他ない。」と発言させていただきました。

確かに、国政レベルで医療費抑制の流れはあるし、軍拡を口実にそれが加速する恐れもある。それを阻止するのは総理の地元選挙区有権者としての責任でもあると思います。その上で、広島県の場合は国が名指しをしてもいない県病院を潰そうとしているわけです。

湯崎英彦・広島県知事の突出した異常な新自由主義、庶民斬り捨て政治を正していこうではありませんか。筆者は引き続き、暴走する湯崎知事から広島県政を県民の手に取りもどすヒロシマ庶民革命を呼び掛けています。我こそは広島県知事に!広島県議に!という方のご連絡をお待ちしております。 

◎連絡先 090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

最近のマスコミ紙面を賑わせているのは「汚染水放出」「ビッグモーター」「ジャニーズ問題」「風力発電汚職」などである。その一つ一つは、それぞれの問題がありSNS上でも論議されている。しかし何か的はずれの感を否めない。

今、米国は衰退する覇権回復のために米中新冷戦を掲げ、日本をその最前線に立たせるために日本を米国の下に統合する「日米統合」を異常なほどの早さで進めている。

このことを見なければ物事の本質が見えてこないのではないか。米国とその追随勢力は何を狙っているのか。今回は最近の各「事件」を読み解きながらそれを探っていきたいと思う。

◆風力開発収賄事件 ── 米国の狙い、「日本のエネルギー自立は許さない」

先ず、地検特捜部が動いた「風力開発収賄事件」から見ていきたい。地検特捜部は米国の機関というのは常識であり、そうであれば、そこに米国が何を問題視し、何を狙っているのかが分かるからだ。

この事件は、秋本衆院議員が、洋上風力の用地入札を巡って、その入札基準をこれまでの「価格」から「早さ」に替えるように国会質問などで要求したことが、「日本風力開発」に便宜を図った収賄事件であるとして摘発されたものである。

「日本風力開発」の坂脇社長の「自前のエネルギーが日本の安全保障を支える。風力が日本にとっての石油になる」との言葉は日本の国益にもかなった正しい見解だと思う。それ故23年3月に、国交省、経済産業省も評価基準を「安さ」から「早さ」に変更している。

風力発電は脱原発であり、米国は、「それは許さない」ということだ。

何故か? 日本はエネルギーでは米国に依存している。石油もさることながら、原子力も濃縮ウランは米国が供給している。米国は日本のエネルギーを支配することで日本を従属化しているのであり、日本のエネルギー自立を絶対に許さない。それは70年代に田中角首相が「自主資源外交」を唱え、ロッキード事件で失脚させられたことでも明らかだ。

風力発電では中国が世界の先端を走っており、風車などの設備も安価なものが世界を席巻している。日本で風力発電を進めれば、中国との関係が深くなる可能性は高い。

米国は、これを警戒しているのではないか。

米中新冷戦で日本をその最前線に立て中国と対決させようとしている米国にとって、日本が「自前のエネルギー」開発を進めて、「エネルギー自立」を図ることなど許せないことであり、ましてや中国との関係を深くすることなど、わずかな兆候でも許せないことなのだ。

◆汚染水放出問題 ── 米国の狙い、「日本と中国の対決を煽る」

内外の反対を押し切って福島原発で溶解したデブリを冷却した汚染水の海洋投棄が始まった。その結果は安全であるという「処理水安全」キャンペーンが張られている。

しかし放水は、廃炉まで続けなくてはならず、政府が言う、30~40年でなど政府自身も信じておらず、世界の専門家は200年、数百年は掛かるだろうと見ている。それまでの安全性を一体どうやって保証すると言うのか。無責任も甚だしい妄言だとしか言いようがない。

その安全性はIAEAが保証していると言うが、IAEAとは米国の核覇権体制であるNPT体制のための機関であり、実質、米国の機関である。

そのお墨付きで行った汚染水放出強行は米国の後押しで行ったということであり、そうであれば米国は何故、今、汚染水放出を強行させたのかを考えなければならない。他の方法は幾らでもあり、内外の専門家も貯蔵を継続し、その間に安全な他の方法を採用すればよいといっているのに、何故、今、それを強行させたのか。

これも米中新冷戦の下で米国は日本を対中対決の最前線に立たせようとしているという関係の中でこそ見えてくる。

即ち、対中対決のためには中国敵視の雰囲気を高めなくてはならず、そのために汚染水問題をもって、それを煽るということだ。

中国は汚染水放出に反対し、それを強行すれば、相応の措置を取ると明言してきた。だから放出強行に対して中国が日本の海産物輸入禁止などの措置を取ることは当然予想されていたことであり、それを利用して反中国キャンペーンを行うことは既定のスケジュールだったということだ。

汚染水問題では、政府の見解以外は全て「偽情報」とし、マスコミもこれに従えという報道管制が敷かれている。そこでは「汚染水」と呼ぶこと自体が偽情報であり、中国が汚染水放出の停止を要求し日本の海産物の全面禁輸措置をとったことも偽情報によるものとされている。

この戦前を髣髴させる大本営報道の渦の中で、汚染水放出に反対したり疑問を抱くことは非国民にされかねない状況になっており、対中対決の雰囲気が煽られている。

「処理水安全」キャンペーンは、そのためのものだということである。

その上で、「汚染水安全」は、米国の核戦略の上からも絶対必要なものであることを見ておかなければならない。

米国の核戦略は、原発と結びついている。原発稼動の過程で出るプルトニウムが核兵器の原料になるからである。そして原発からは必然的に汚染水が出るのであり、これを海洋放棄するしかない。その「安全性」はIAEAという米国の機関が「保証」するという自分で自分の正当性を「保証」するものでしかない。

米国が核覇権を維持するためには原発がなくてはならず、「汚染水放出は安全」でなければならないのであり、そのためにも「処理水安全」キャンペーンが張られているのだ。

さらには「汚染水は安全」は米中新冷戦で日本を最前線に立て核の共有化という「核武装」させるために桎梏となる日本人の核アレルギーを弱化圧殺するためのものになるということも見ておかなければならない。

今、米国は、日本を対中対決の最前線に立たせ、敵基地攻撃能力を保有させ、それに核を搭載する核の共同保有を狙っている。そこでネックになるのが被爆国日本の核アレルギーである。そこで「汚染水は安全」から「原発は安全」にすることで日本人の核アレルギーを弱化させ解体していく。そして日本人に核戦争の覚悟をさせる。

それは、米軍が指揮権をもつ核の共同保有の覚悟、米軍の指揮によって日本が核の戦場にされるといいうことであり。米国覇権のためにウクライナのような米国の代理戦争、それも核代理戦争をやらされるということである。

◆ビッグモーターとジャニーズ ── 米国の狙い、「日本的システム」は解体する

日本の自動車業界では中古車市場が独特の地位を占めている。日本車は高品質で中古品でも海外で人気があり、多くの輸出が行われている。自動車業界もこれに目を付けて新車を中古車として売るなどしており、これは米国の神経を逆なでする実質ダンピングになっている。

自動車を所有すれば自動車保険に入らなければならない。保険会社にとって自動車保険は大きな市場。そこで損保各社が中古車販売会社に出向して、その保険を取る。そのために中古車会社が意図的に自動車に傷をつけたものも賠償する。そうした持ちつ持たれつの関係を破壊する。それは米国保険のこの分野への進出を図るものになる。

日本的システムの破壊は、日米統合のために不可欠だ。「ビッグモーター」問題で経済産業省が動き「社長の辞任だけでは済まない」と息巻いている背後には米国がある。

今、日本では米国ファンドが「もの言う株主」として様々な業界で、米国式の株主主体の会社にせよと要求しているが、日本的システムもその標的にされている。そうした関連の中で、「ビッグモーター」問題があるということを見なければならないと思う。

一方、ジャニーズ問題は、久しい以前から様々なメディアに取り上げられて来た。それが今になって、世界のメディアも取り上げる大事件、日本のテレビ業界、マスコミ、広告企業も巻き込む大事件として連日のように報道されている。

その報道ぶりに、「何故、今になって」との声も聞くが日米統合のためという観点から見れば、その疑問も解ける。

今ジャニーズは社名を「SMILE-UP」に変更し、タレントと個別にエージェント契約を結ぶ形式を基本にした経営を行う、内部通報制度を改革するなどの方針を打ち出している。

それは、米国式経営だということではないか。

日本の場合、芸能会社が強く、それにテレビ界、マスコミ界が関与して、強固な「芸能村」を形成してきた。この封建的とも言える日本的なシステムを解体し、米国が日本の芸能界や芸能村を指揮し管理する、そうした狙いがあるのではないか。

確かに古めかしい日本的システムを解体することは必要である。しかしそれを壊して米国が日本の芸能界、芸能村を取り仕切るということになってはなるまい。

問われているのは、芸能人や関係者が主体的に時代に合った新しい日本のシステムを作っていくことだと思う。

◆日米統合一体化を促進する「資産運用特区」

9月22日に岸田首相がニューヨークで講演し、「資産運用特区」を創設して、ここに外資を呼び込むという政策を発表した。

岸田首相は、これまでもNISA(小額投資非課税制度)の拡充、恒久化に取り組んできたと述べながら、今後さらに「資産運用の高度化を進め、新規参入を促進し、資産運用特区を始めとした各種の規制緩和を通じて運用能力の高い海外人材の受け入れを積極化する」と表明した。

要するに日米統合一体化を促進し、日本国民の2000兆円もの資産を外資に開放するということである。

その講演では「英語のみで行政対応を完結できるようにする」とある。90年代に規制緩和を要求してきた米国に対し、「これじゃあ、日本語も障害になると言われかねない」と笑い話し的に語られたが、今や笑い話しではなくなったということである。

岸田首相は「日本独自のビジネスルールの是正」にも言及している。上で述べたような「中古車市場」「芸能村」などのルールも日本独自のビジネスルールであって、それをなくして日本を外資が自由に闊歩するような「外資天国」にして、一体どうしようと言うのか。

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魚本公博さん

米中新冷戦で日本を対中国対決の最前線に立たせる、そのために日本の全てを米国に統合する。そこから見てこそ、物事の本質が浮き彫りになる。それは日本国民の財産を米国に売り渡し、ひいては日本の国土を米国の代理戦争、核代理戦争の場に提供するところにまで至るものとしてある。

そのようなことを決して許してはならない。今、日本には様々な問題が山積している。しかし、それを正すのは日本、日本人でなければならず、決して米国やそれに追随する者たちであってはならない。

今ほど、日本人としての主体的な対応が求められている時はないと思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

広島駅の南北でいま、大規模な再開発が進んでいます。その中で、広島県知事・湯崎英彦さんと広島市長・松井一実さんの暴走が目立ちます。松井市長の暴走は、以前ご紹介した中央図書館の『エールエールA館移転』問題です。

今回取り上げるのは湯崎知事の暴走です。湯崎知事は、広島県立広島病院、JR広島病院、中電病院、広島がん高精度放射線治療センターなどの機能を集約した1000床規模の巨大な新拠点病院建設を計画しています。

こうした中、広島県議会9月定例会は10月2日、212億円の補正予算案を可決しました。この補正予算案には、新拠点病院建設へ向けた予算も含まれています。もちろん、今回の補正予算案で可決されたのは病院建設へ向けた費用のほんの一部です。湯崎知事がすでに発表している基本計画によれば1300-1400億円の総事業費がかかるということです。

[左]広島県立広島病院(いわゆる「県病院」)。[右]JR広島病院。いずれも筆者撮影

◆試算根拠不明、議決に値しないボロボロの議案に賛成した国政与党と立憲

今回の補正予算案に賛成したのは自民党の多数派、公明党、立憲民主党などの県議です。逆に、自民党少数派(自民党広志会)など保守の一部と日本共産党は反対に回りました。広志会の女性県議は反対討論で総事業費の試算根拠が全く示されていないと指摘。これでは賛否の判断のしようがないと切り捨てました。日本共産党も、県病院周辺住民の合意が得られていないことなどから、反対に回りました。

他方で、立憲民主党所属のある県議は「まだまだ見通しが立っていないことや課題も多いことから今後も様々な角度で引き続き議論が必要」と認めながらも、賛成に回ってしまいました。そんなに課題があるなら、知事に顔を洗って出直してもらうべきだったのではないでしょうか? こんな議案に賛成してしまったことについて、立憲広島は恥を知るべきです。

◆『独裁』で突進してきた湯崎知事さえも早くも『逃げ』の態勢

湯崎知事は予算が可決された翌3日の定例会見で「病院の統合も含めた長期的な計画なので、事業や財務の計画には当然さまざまなリスクがある。物価のほか医療制度や技術も変化していくので、常に計画をアップデートして、発表していきたい」とおっしゃいました。

湯崎知事自身も早くも、逃げの態勢に入ったと言わざるを得ません。さまざまなリスク……すなわち、この病院計画案がボロボロであると知事自身が認めたようなものです。『常にアップデートして発表』といえば、いかにも柔軟そうで聞こえはいい。しかし、そもそも、県病院や中電病院など廃止される病院の周辺住民の合意をきちんとり、病院を作るうえで必要な様々なことを住民の意見も聞いて詰めていれば、こんな発言は出てきません。

ここまで湯崎知事の事実上の『独裁』で生煮えの計画をつくる。そんな計画に基づいて、補正予算案を出してしまう。そして、問題点が噴出すれば「常にアップデートします」と聞こえの良い言葉で逃げる羽目になったのではありませんか? そんな知事のいい加減な仕事ぶりにあきれ果てました。

◆リスク・疑問点だらけの計画

知事もお認めになった通り、この病院の計画にはリスクや疑問点が多すぎます。

第一に、新拠点病院はJR広島病院がある地区にできるから、JR広島病院を再利用するかと言えばそうではありません。JR広島病院は新しい建物になって10年もたっていないのに、解体して立体駐車場にするという。あまりにももったいない、と言わざるを得ません。

第二に、この広島駅北口地区は渋滞が慢性化しています。とくに朝夕の通勤時間帯やマツダスタジアムでカープの試合がある前後は酷い渋滞で、歩いた方が早いことがよくあります。筆者と妻が外食をして帰るとき、妻はバスで、筆者は自転車で帰りますが、筆者の方が圧倒的に早く家に到着し、筆者の帰宅を喜ぶ犬の写真を妻に送る余裕があるありさまです。そんな状況で、救急車がうまく病院に到着できるのでしょうか? 外来の患者さんも円滑に来院できるのでしょうか? 命に係わる一刻を争う時にこれはまずいと思われますが、筆者の友人が県の担当部局に問い合わせた時も納得できる回答は得られていません。

第三に、県立広島病院の現在地だと南海トラフ地震の津波のリスクがあると県は主張しますが、広島駅北口とて大差はないのではないでしょうか? 地震動についてはむしろ広島駅北口の方が強いというデータもあります。そもそも、現在地に津波で救急車が到着できないなら、広島駅新幹線口にも到着はできないでしょう。むしろ、何か所かに病院を分散しておいた方が災害時のリスク分散になり良いのではないか?

第四に、新拠点病院では過疎地で医療に従事する若手医師を育成するという。しかし、広島駅という県内でももっとも煌びやかな地域(東京にはもちろん及びませんが)に来たがる若い先生方が、そもそも過疎地に赴任したがるか疑問です。

第五に、県病院の医療スタッフは現在のところ公務員=広島県職員ですが、移転後は独立行政法人になります。この際、身分の不安定化から、今いる医師も、バカバカしくなって、もっと都会の給料が高い病院に流出する危険があるのではないでしょうか?そうなると、湯崎さんが掲げる高度医療の提供も画餅に帰すことになります。また、独立採算制になれば、儲け主義にも結局なりかねません。

第六にそもそも、県病院周辺の住民、あるいは同じく新病院に統合が予定されている舟入市民病院の小児救急周辺の住民の納得は得られていません。県病院が近いから、舟入市民病院が近いから、ということで、医療ケアが必要なご家族を抱える方が家を購入しているケースも多いのです。

◆病院の存続を求める市民団体

こうした中、県立広島病院の存続を求める市民団体「県病院問題を考える会」が3日、県庁で記者会見しました。黒川冨秋事務局次長は、「県病院は長く県民に親しまれてきた病院だ。新しい病院が出来ても地元の人はタクシーなどで通院しなければならず、病気の人には負担が大きい」「県病院を残して今までどおりの医療体制を維持するべきだ」と訴えました。 
その上で、「古い病院を壊すだけではいいものにはならない。お金の使いかたを充実させてほしい」と述べ、湯崎知事が新病院でやるとしている若手医師の育成については広島大学病院との連携を通じて図るべきと指摘しました。『県病院問題を考える会』の連絡先は以下です。 

〒734-0005 広島市南区翠町1丁目10番27号 
電話 082-250-3155 FAX 082-250-3157

ここまでこの問題で独裁的に猪突猛進してきた当の湯崎知事が『柔軟に見直す』と明言せざるを得ない状況です。あきらめずに知事をしっかり監視していきましょう。 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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