矢島祥子医師不審死から14年目にして語られた事実 ── 遺族や私たちは、あの日祥子さんに何がおこったか、その真相を知りたい! 尾崎美代子

11月12日(日)、大阪市大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」の4階ホールで「矢島祥子と共に歩む会」が開催された。この会は、女医の矢島祥子(さちこ)さんが、2009年11月13日、当時勤務していた黒川診療所(西成区)から行方不明となり、16日午前0時過ぎに木津川千本松の渡船場で水死体で発見された事件から、毎年開催され、今年で14回目だ。

「矢島祥子と共に歩む会」の様子。元刑事の飛松氏や祥子さんの元同僚、大阪日日新聞記者大山氏、青木恵子さん、フジテレビディレクターの方の他、祥子さんの地元群馬で支援活動を始めた方など多数の方が発言された

祥子さんが殺害されたと推測される14日には、黒川診療所のある鶴見橋商店街で遺族、支援者らが情報を求めてチラシ配りを行う。今月号は「矢島さんの無念」と題して支援者の植田敏明さんが書かれた。内容は非常に衝撃的で、植田さんがどれだけ勇気を奮って告発したか、そして植田さんの祥子さんの死の真相をどうしても知りたいとの思いがひしひし伝わる内容だ。ぜひ読んで頂きたい(文末に転載)。

矢島祥子(さちこ)さんは2009年11月、34歳の若さで亡くなった。祥子さんの遺影の前には祥子医師に助けられ、支援を続け、今年亡くなった塩野さんの遺影が

チラシを読み、私は「ああ、やっぱり、そういうことがあったのか」と思った。というのも、2009年といえば、奈良県大和郡山市で「山本病院事件」があったからだ。医療法人雄山会・山本病院(山本文夫は院長と理事長を兼任していた)は、入院させた生活保護者や野宿者に不要な検査や治療を行うことで、診療報酬の不正請求を繰り返していた。更に患者に不必要な手術を行い、手術代を詐取したり、揚げ句患者を死亡させた。

以前より内部告発があったこの件で、2009年6月21日、奈良県警は「生活保護受給者の診療報酬を不正に受給した疑いが強まった」として詐欺容疑で同病院と山本理事長の自宅等を家宅捜索、その後山本理事長らを逮捕した。その後、再逮捕が繰り返され、山本理事長らには実刑判決が言い渡された。なお、同じく逮捕された執刀医で患者の元主治医は、留置場で持病を悪化させ死亡。遺族は警察の処遇が原因だとその後訴えを起こした。

捜査の過程で、山本病院へ送り込まれた患者の6~7割は大阪市内等から送り込まれていたことが判明した。しかし、祥子さんの兄・敏さんによれば、山本病院に患者を送り込んだ大阪市内の病院について、捜査などは全く行われていないとのことだ。山本病院に送り込まれたのは生活保護者だけではない。NHK奈良支局取材班の「病院ビジネスの闇 過剰医療、不正請求、生活保護制度の悪用」(宝島出版社)には、市内の公園、路上等から野宿者を集めに来る「コトリバス」(乞食を取りに来るバス)の実態も描かれていた。

奈良の山本病院へ患者を送り込んだ、市内のいわゆる福祉病院(生活保護者や野宿者を専門に入院させる、別名「行路病院」とも呼ばれる)の実態は、私も実際この目で見ていた。当時、店のお客さんや知り合いが入院すると、見舞いなどで良く訪れていたからだ。私は祥子さんと違って、医療関係者ではないため、治療などが適切かどうかはわからないが、患者を治そうという普通の病院でないことは明白だった。

例えば、入院するまで不通に歩けたお客さんがオムツを充てられ、自力でトイレに行かないために、足腰などをどんどん弱めていく。看護師が患者に寄り添い、時間をかけてトイレに連れていく、そんな時間も手もかけていられないのだろう。

福祉病院は、数か月いると、別の同様の病院にタライ回しにされる。そこでまた一から検査などを受け、そこの病院を儲けさせるためだが、先のお客さんが次に回された京橋の病院は、私が見舞いに行くと驚いていた。生活保護者の患者に見舞いに来る人がいるとは思っていなかったのだろう。

冬場で暖房が効き、窓が締め切られているためか、病院に入った途端ぷうんと尿便の匂いがした。廊下の長椅子に座っている40代の患者含め、ほとんどの患者がオムツを充てられているのだ。病室も同様にぷうんと匂う。神経質な彼は匂いが気になり「飯を食う気になれない」とこぼしていた。一月後見舞うと、私の顔を忘れるくらい認知症が進行していた。

また別の客は、転院ごとにどんどん酷い病院に回され、最後の病院では病室では面会できないと言われ、寒い玄関でわずかな時間の面会を許された。病室で患者がどんな状態に置かれているか知られたくないのだろう。生活保護費ぎりぎりで入所できる西成の老人ホームで、入所者がベッドのふちに手を縛られていたことが発覚したのも、この頃だ。

キリスト教者の祥子さんは、日曜日のミサのあと、自分の患者を見舞うことがよくあったという。そんな中、福祉病院の実態を見て「患者さんのためにならない」と考えたのであろう。亡くなる少し前の10月14日、祥子さんは、釜ヶ崎で行われたフィールドワークのあとの報告会で「貧困ビジネス、生活保護者への医療過剰状態」などを問題視する報告を行っていたそうだ。

また、患者さんにセカンドオピニオンをして貰うようアドバイスしたり、担当医師に適切な治療方針を要望するメモを渡したりもしていたそうだ。そんな祥子さんの存在は、患者からむしり取れるだけむしり取りたい病院にとっては、相当煙たい、邪魔な存在だったであろう。実際、ある病院の事務局長からは「二度と来るな」と釘をさすように名刺を渡されたこともあったという。

◆「祥子さんの無念」

もちろん、私は、そんな病院関係者が、祥子さんの事件に直接かかわっていたと考えるのではない。布川事件の冤罪犠牲者であり、数年前からこの事件に関わっていた桜井昌司さん(8月23日逝去)が、祥子さんの事件を「逆えん罪」と命名した。

冤罪は、警察、検察が、桜井さんら冤罪犠牲者が犯人ではない証拠、証言などを隠して「えん罪」を作る。一方で祥子さんの場合は、西成警察署から事件である証拠が隠され早々と「自殺」と決めつけられた。

医師である両親が、祥子さんの遺体の首の赤いひも状の圧迫痕や頭頂部のコブ(血流がある生活状態でのみできる)をみつけたこと、行方不明後、祥子さんの部屋が開いていたこと、鍵が冷蔵庫の上に置かれていたこと、更には部屋中の指紋が拭き取られていたこと、警察の現場検証では祥子さんの指紋さえ検出されなかったことなど不振な点が多数あることから、遺族らは再捜査を要求、2012年8月22日、遺族が提出した「殺人・死体遺棄事件」としての告訴状が受理され、再捜査が行われることとなった。

今回の前田さんの原稿には、祥子さんが勤務していた黒川診療所所長とのやりとりが詳細に記されている。植田さんが所属していた団体と共に活動していた大阪府保険医協会の関係者から聞いた話では、「ふだん冷静な黒川医師が、矢島祥子さんの県が話題になると、突然手も身体もがたがた震えだして止まらなくなる」ことがあったという。がたがた震えだす……。

そう、1995年、動燃(動力炉・核燃料開発事業団、現在の日本原子力研究開発機構(「JAEA」)で起こった高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故のあと、事故を調査していた西村成生職員が「自殺」した事件があった。前日、会見に出席した職員が自殺したことで、当時、マスコミや原発に反対する人たちなどの間で、盛り上がっていた動燃批判、日本の原発政策への批判は、一挙に沈静化、その後、もんじゅは更に多額の税金を投入されながら、ほぼ稼働しないまま、2016年の廃炉決定まで延命を続けていくことになった。

「夫は自殺ではない、殺された」と、妻のトシ子さんが動燃関係者らを訴えた裁判で、証人尋問にたった動燃の幹部の男性は、原告弁護人の質問に身体をがたがた震えだした。「あなた、震えていますね」「はい、震えています」との記述が裁判記録に残されている。それは殺害の可能性が高い「不審死」を、「自殺」を必死で偽らざるをを得ない人たちの、恐れや苦悩の表れではないか。

植田氏は最後にこう書いている。「矢島祥子さんが亡くなられてから早、14年がたった。ご家族はいうまでもなく、多数の方々が祥子さんの死の真相究明のための活動をしてきた。だが、矢島祥子さんが勤務していた診療所の所長であり、直属の上司であった黒川渡氏が、この事件解決のために十分な協力をしてきた、とは思えない。矢島祥子医師は、当初黒川医師の「社会的弱者のための医療」、という志を慕って西成に来た。黒川所長のもとで勤め始めた。黒川所長には、そんな祥子さんと家族のためにも口をひらく責任があるはずだ。」

そう、遺族も私たちも、あの日、祥子さんの身に何が起きたのか、その背景には何があるのかを知りたいだけだ。

植田敏明さんが書かれた「矢島さんの無念」(表面)
植田敏明さんが書かれた「矢島さんの無念」(裏面)

◎矢島祥子先生と時間を共有する集い https://www.facebook.com/daisukisatchan?locale=ja_JP

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。近著に『日本の冤罪』(鹿砦社)
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾崎美代子『日本の冤罪』


ピョンヤンから感じる時代の風〈34〉中国「一帯一路」をどう見るか 小西隆裕

◆一帯一路「国際協力フォーラム」

去る10月17日と18日、中国の北京で第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが開かれた。

10年前、習近平主席の提唱でつくられたこの巨大経済圏構想「一帯一路」には、現在、国連加盟国193カ国中約8割の152カ国が参加しており、今回のフォーラムには、20カ国の首脳が登壇した。

だが、2017年、第一回フォーラムの時は、29カ国、2019年、第二回フォーラムでは、38カ国の首脳が参加していた。

それに比べ、今回の首脳参加が減り、特に欧州からの首脳の参加がハンガリーのビクトル・オルガン首相一人だけだったのは事実だ。

これをもって、米欧側は、中国の力の減退を騒ぎ立てている。

◆一帯一路の評価で決定的に欠けていること

一帯一路に対する上記の米欧側の評価には決定的に欠けていることがあるように思われる。

それは、2017年、2019年から2023年、この数年の間には、2019年、米国が中国に対して仕掛けた「米中新冷戦」があったという事実だ。

この「新冷戦」で米国は、全世界に向け、中国に対する包囲を呼びかけた。

クァッド(米、日、印、豪)による包囲、広範な「民主主義陣営」による中国をはじめとする一握りの「専制主義陣営」に対する包囲、その他にも包囲は、ネットや最先端技術など、「経済安保」の広範な領域にまで及んだ。

問題は、こうした包囲の結果がどうなったかだ。

今回開かれた第3回国際協力サミットフォーラムで最も注目すべきは、このことだったのではないだろうか。

だが、残念ながら、日本の大手メディアにあっては、こうした視点からの今回のフォーラムについての分析が何もなかったように思う。

◆「フォーラム」で何が明らかになったか

確かに今回の「フォーラム」への欧州各国からの参加はなかった。

しかし、アジア、アフリカ、中南米、南太平洋地域などいわゆる「グローバルサウス」の国々から、140余りの国々、30余りの国際機関の代表が参加した。

これは、米国によって仕掛けられた中国に対する包囲網が完全に破れていること、すなわち「米中新冷戦」がすでに大きく破綻しているということを見ることができるのではないだろうか。

一方、この一帯一路に対して、米欧側は、「債務の罠」だとの攻撃を強め、一帯一路に基づく中国の援助により途上国、グローバルサウスの国々が借金漬けに陥り、借金の形に中国に隷属化されていっているというキャンペーンを強めている。

実際、これが事実無根の誹謗中傷ではなく、こうした現実があるのは事実のようだ。

今回の「フォーラム」でも習近平主席自身、鉄道や道路建設など大規模投資中心から小規模事業投資優先、人への投資へと援助のあり方の転換を打ち出し、環境問題やきめ細かい支援を重視する姿勢を明らかにしたという。

この発言が単に米欧側の覇権の競争相手、中国に対する「債務の罠」攻撃をかわすための虚言なのか、それとも真に途上国への支援のあり方の改善を考えてのものなのかは、これからの「一帯一路」の進展がどうなるか、その現実によって判定されるのではないかと思う。

その上で、重要なことは、この開発援助こそが、米欧による援助と中国による援助を分ける決定的な違いになっているということだ。

米欧が新自由主義経済の見地から、経済自由化の法整備を強調し、市場メカニズムが貫徹されれば自ずと経済成長が実現されるというカネを出さない「援助」なのに対し、中国による援助が成長の起動力として大規模プロジェクトの必要性を痛感している途上国の要求に応えるカネを出す援助になっているということだ。

ユーラシア全土にわたる広域開発計画で、一帯一路の双方で交通、通信、エネルギー等のインフラの接続などの開発構想を提示しているのなどは、その一例だ。

今日、中国の一帯一路が「シルクロード経済ベルト」(一帯)、「21世紀海上シルクロード」(一路)の枠を超え、アフリカ、中南米、南太平洋地域にまで広がって行っているのには理由があり、この辺に「米中新冷戦」による中国包囲網が完全に破綻した要因があると言えるのではないだろうか。

小西隆裕さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼小西隆裕(こにし・たかひろ)さん
1944年7月28日生。東京大学(医)入学。東京大学医学部共闘会議議長。共産同赤軍派。1970年によど号赤軍として渡朝。現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』

消費税財源の補助金当て込んだ湯崎英彦・県知事の「独裁」続く ── 広島県病院移転・統合問題 さとうしゅういち

広島県立広島病院(県病院)やJR広島病院など広島都市圏の病院を再編し、広島市東区二葉の里地区に新しい巨大病院を建設する広島県の計画で、広島県の湯崎知事は10月27日、建設予定地の取得に向けた売買契約をJR西日本と交わしました。

 
JR広島病院

建設予定地はJR広島病院の建物や駐車場がある約2万6千平方メートルで、JR西日本が所有しています。購入費181億円で契約を結び、土地の引き渡しと代金支払いは2025年4月を予定しています。

◆やる気なし!ガラガラの会場で自称「説明会」

また、県は10月29日、筆者も含む東区民にほとんど周知作業らしいこともしないまま、説明会を強行。出席した有田優子・広島市議によると会場はガラガラでした。有田市議が参加人数を質問したところ、人数すら県は把握していなかったそうです。まったく、説明をやる気が感じられません。今年の夏、高速5号線二葉山トンネルの工事を再開した直前にも、ほとんどの住民がボイコットする中で説明会と称するイベントを行っています。

こうした「説明会」と称するものを行ったとして、事業を独裁的に進めていくのが、湯崎知事の最近の手法として定着しています。

◆県民の意見を聴かずに健全経営の病院潰し

さて、度々お伝えしていますように、県病院廃止→新巨大病院計画は矛盾だらけです。

第一に、県病院もJR広島病院も、総務省による再編の対象になっていません。県病院については、他の都道府県の公的病院のような経営破綻状態にあるわけでもありません。それをわざわざ潰すのはどういうことか?

 
広島県立広島病院(県病院)

第二に、県病院の地元の住民の意見をほとんど聞かずに計画を決めています。地元の患者を見放しています。また、江田島市などから船で県病院に来ている患者も不便になってしまいます。

◆独立行政法人化で人材流出、医療崩壊の恐れも

第三に、新巨大病院を県立ではなく独立行政法人にしています。独立行政法人にしてしまうと、県知事や議会は関与できない独立採算制になってしまいます。

第四に、にもかかわらず、湯崎知事は高度医療をこの新巨大病院にやらせようとしています。高度医療はどうしても赤字になりやすい。他方で知事は県立をやめて独立採算制にしてしまうので赤字を県が穴埋めすることが難しくなります。そうなれば、最悪の場合、経営が破綻ということも考えられます。高度医療もダメ、一般的な医療もダメ、という共倒れ状態になりかねません。

第五に、県立病院から独立行政法人になることで医師や看護師の待遇が悪くなる可能性が高い。そういう中で新病院に残りたいという職員は15%という組合側のアンケート結果もあります。

現実に、「子供を養っていくには将来不安」という理由で、県病院をすでに退職することを決め、県外の給料の高いところに移るという方もおられるそうです。今や若手女性を中心にカナダやオーストラリアに行く時代。人材流出の結果、スタッフが不足し、崩壊しかねない。人材流出で病院が崩壊する恐れがあります。

◆移転でむしろ強まる災害・渋滞リスク

第六に、新病院の予定地の東区二葉の里は交通渋滞が今でも激しいことです。筆者もバスで帰宅するより徒歩の方が早いと思えるような渋滞に良く巻き込まれます。新病院ができれば外来患者の車でさらに渋滞は激化し、さらに救急車の走行も困難になります。助かる命も助からなくなりかねない。

第七に、今の県病院の位置は津波のリスクがあるとされており、だから広島駅北口に移すのだ、と県は言っています。しかし、津波による水没のリスクであれば、広島駅周辺も同程度のリスクがあります。土砂災害のリスクについては新病院予定地の方がむしろ土砂災害警戒区域が敷地近くに迫っています。

いずれにせよ、このままでは何のために巨大病院を作ったのか分からなくなります。全国的に見ても公的な病院再編の事業規模は50億円程度ですが、広島県は1300-1400億円と桁が二つ違います。結局は、「JR病院を消費税で救済するだけはないか?」という疑念がぬぐえません。

◆労働組合と議会はチェック機能果たさず

さて、こんなふうに経営者=知事が暴走するとき、労働組合は職員の立場で、県議会が県民の立場で歯止めになるべきです。しかし、現実には労働組合(自治労県職連合)は知事による基本計画を呑んでしまったそうです。筆者は組合OBとして、後輩たちのふがいなさに情けない思いです。労働組合は、労働者と患者=県民を新自由主義独裁者の知事に売り渡したといっても過言ではないでしょう。

広島県議会でも労働組合を基盤とする立憲民主党の県議も含めて知事の案に賛成してしまいました。他方で、一部の保守系の特に女性議員の方がこの問題では頑張っておられます。

 
社民党の皆様と街宣を行う筆者

◆消費税を財源のご乱行、止めるチャンスはある

そして、こんなずさんな事業の財源は消費税です。こんなことに使うくらいなら消費税を減税・廃止し、庶民の暮らしを楽にしていただきたいものです。

他県では青森県では(同じ自民党系とはいえ若い方に)知事が交代して計画が修正される、三田市でオール与党の市長が無名のサラリーマンに打倒されています。宮城県議選で知事与党が敗北するなどしています。広島も今後、どうなるかはわかりません。

街頭活動では「県病院は残してほしいけど、もう決まったのでしょ?」というご反応もあります。

しかし、筆者は他県の例をご紹介して、「まだまだ諦めてはいけない」ということを申し上げ、それにより相手の方の反応も「じゃあ、署名しておこう」と変わることも経験しています。

県病院問題を考える会(代表代行・有田優子市議)では、超党派で署名活動や学習会、関係者への要請活動などに力を入れています。

当面は第二回学習会が予定されています。第一回は福島瑞穂参院議員が講師でしたが、第二回では広島県庁の担当者をお招きし、意見交流を図ります。

◎県病院問題を考える会 第二回学習会
12月16日(土)14時-16時 (13時開場)
東区民文化センター 3F大会議室
・講師 広島大学大学院 先進理工系科学研究科 早坂康隆先生 
演題 瀬戸内・広島の自然災害と安全問題~日本列島の成り立ちから~ 
・広島県庁担当者との意見交換
広島県医療機能強化推進課長 渡部滋 様
連絡先 県病院問題を考える会 広島市南区翠町1丁目10-27
TEL 082-250-3155 / FAX 082-250-3157

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

『日本の冤罪』に込めた想い 尾﨑美代子

2019年秋より鹿砦社『紙の爆弾』で始まった新シリーズ「日本の冤罪」に、私が取材・執筆していた記事が、続報含め計18本となり、このたび一冊の本にまとめていただきました。まずは鹿砦社の代表・松岡利康氏はじめ編集部、関係者の皆さまに御礼と感謝を申し上げます。ありがとうございました。なお、「あの事件は入っていないか?」などと言われますが、鹿砦社『紙の爆弾』ではほかの著名なライターの皆さまが、狭山事件、袴田事件はじめ多くの冤罪事件を執筆され、現在43本の事件が掲載されています。そちらも併せてお読みください。

本書に収められた原稿は『紙の爆弾』に掲載された原稿に修正、加筆を加えた内容となっております。その作業が終わり、「はじめに」を書いていた時、とつぜん桜井昌司さんの訃報が入りました。本当に突然でした。「獄友」青木恵子さん、西山美香さんは、岡山刑務所に服役中の男性に面会に行った帰りに、メールで知ったそうです。

写真右から袴田秀子さん(袴田巌さんの姉)、青木惠子さん(東住吉事件の冤罪犠牲者)、西山美香さん(湖東記念病院事件の冤罪犠牲者)。青木さんと西山さんは和歌山刑務所で一緒の工場で働いていた。2019年3月2日、東京都内の甲南大学東京キャンパスで結成された「冤罪犠牲者の会」総会後の交流会にて。(筆者撮影)

私が桜井さんと最後にお会いしたのが、この本に掲載された「対談」をおこなった2月28日でした。本書を出版するにあたり、「尾﨑さん、誰かと対談したら?」と言われ、一番に考えたのが桜井さんでした。私は冤罪事件を知る以前に、なぜか凶悪事件に強い関心がありました。今でもそうです。なぜかというと、人間生まれながらに「ワル」や「凶悪犯」はいないと思うので、おぎゃあと普通に生まれた赤ちゃんがその後、社会や政治にもまれるなかで、「犯罪」を犯すに至ったのではないかと考えたからです。もちろん本人の資質、環境もあるでしょうが。様々な凶悪事件をみていくと意外に「冤罪」が多いことを知り、えん罪事件にも関心を持つようになりました。しかし、2016年、桜井さんという実際の冤罪被害者にお会いして以降、さらに冤罪事件に関心を強めたのです。そう考えると、桜井さんがこの本を作るきっかけを作ってくださったのです。

 
布川事件冤罪犠牲者桜井晶司さん(本年8月23日にご逝去)。本書収録の対談が桜井さんによる生前最後の意見表明となった

その桜井さん、すでに体調が良くないと知っていたので、「会えますかな」とメールすると「28日の午前中ならいいよ」と返事をいただきました。場所は、いつも私たちが講演会や上映会などでお世話になっている大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」です。9時の待ち合わせ時間前に「もう着いているよ」とメールが入り、私は急いで一階の喫茶店「キジムナー」に向かいました。モーニングサービスのお客様が何人かおられましたので、4階のホールに移動することことになりました。4階に向かうエレベーターを待っていると、桜井さんが「痛てて」と前かがみになりました。私が「大丈夫ですか?」と声をかけると「オレのことは気にするな」と少し怒った口調でいわれました。2月末、幸い、ぽかぽか日和り、窓際の丸テーブルに並んで座り対談が始まりました。実は私ははこれまで桜井さんへのインタビューは何回も行っています。記事は「デジタル鹿砦社通信」に掲載されています。ぜひ、検索してお読みください。
 
「桜井さん、今日はインタビューじゃなくて対談ですよ」と私は確認し、「これ、途中で聞いてくださいね」と「①尾﨑さんはなぜ冤罪に興味持ったの?」「②冤罪を取材して何を考えましたか?」などと書いたメモをお見せしました。「わかってるよ。そんなこといわなくても」とまたちょっと怒ったような口調。まずは前日の日野町事件の裁判について2人で話し、その後話が止まったので、「桜井さん、この質問①聞いてくれますか?」と言ったところ「いや、ここもう少し膨らましたほうがいいよ」と話を続けてくれたりしました。

本当に体調はよくなかったのでしょう。途中、椅子を並べて、それをソファ代わりにして横になりながら、しかし、読んでもらえばわかりますが、非常に貴重、そして楽しい対談ができました。

対談中、「日本人が愚民だよ、愚民」。そんな言葉が桜井さんの口から何度もでてきました。それを言いすぎたと思ったのか、「いいんだよ。おれはもうすぐ死ぬんだから」と、投げ捨てるように言いました。そういわれ、ドキッとしてしまったことを今でも鮮明に覚えています。しかし、今考えるとそれは、「愚民のみんな、もっとがんばれよ」と私たちを叱咤激励する言葉だったのではないでしょうか。

対談中、袴田巌さんの再審については「200%勝つよ」と宣言していた桜井さん。そして袴田さんは元ボクサーだったから、常に対戦相手の目をまっすぐに見る。だから警察、検察、そして死刑判決(死)ともまともに向き合ってしまい、結果、精神を壊されてしまったのだと話されました。そして「自分は逃げていたから」とも……。

桜井さんと筆者

以前のインタビューで私が「桜井さんは無期懲役ですが、いつか出れると考えていましたか?」と質問したことがありました。その時も「ばかなこというな!一生でれないと覚悟を決めてたよ」とまたまた怒られることがありました。だからおかれた場所(刑務所)で1日1日を精一杯生きようと考えたそうです。その後、同じ千葉刑務所に服役していた石川一雄さんが仮釈放されたので、「自分たちももしかして」と思うようになったそうです。

桜井さんが「200%勝つよ」と言っていた袴田巌さんへの再審(裁判のやり直し)が10月27日始まりました。なんと、検察は未だに「犯人は袴田」と主張し、有罪立証するために、審理はまだまだ続き、判決が出るのは来年だそうです。しかも、これほど重大な事件の再審であるにも関わらず、狭い法廷で傍聴できた一般の方はごくわずか、午前11時から始まった裁判で、心身喪失で出廷できない巌さんに代わって、姉の秀子さんが「巌は無罪です」と主張したそうです。しかし、これだけの裁判なのに、午後2時台の情報番組は全く報じることはありませんでした。


◎[参考動画]「弟は無実」闘い続けて50余年 姉の思い 袴田巌さんのやり直し裁判10月27日から(テレビ静岡ニュース 2023/10/24)

傍聴できなかった鴨志田由美弁護士が、法廷の外で姉の秀子さんとハグしたら、とても痩せておられたとFacebookで報告していました。いつもにこやかな秀子さんの表情からは、そんなにお痩せになっていたとは、とても想像できませんでした。桜井さんが生きていたら、法廷から出てきた秀子さんに「もう少しだよ」と声をかけハグし、鴨志田弁護士と同じよう心配されたことでしょう。「秀子さん、ちゃんと食べないとダメだよ」なんて言ったかもしれません。ああ、そんなことを考えたら、桜井さん逝去の知らせを受けて初めて涙がこぼれてきました。

全国を飛び回っていた桜井さんですが、金聖雄大監督の「オレの記念日」に何度も出てくる大国町ピースクラブでの思い出は大きかったようです。なぜなら講演会、上映会のあと必ず懇親会、親睦会、交流会と称した飲み会があったからです。2021年桜井昌司著「俺の上には空がある 広い空が」の出版記念パーティーの翌日、桜井さんから「大阪の人たちに会えて良かったよ。ありがとう、尾﨑さん」というメールが届きました。京都、奈良、神戸、そして大阪……桜井さんにとっては楽しく飲み、語り、ハグしあう皆さんすべてが「大阪の人」なのです。もう飲んで冗談言ってハグすることができない……「大阪の私たち」は本当に残念でなりません。それでもさようならはいいません。

桜井さんが「尾﨑さん、あの人も取材してよ」と言われた冤罪事件のほか、日本には冤罪事件で犠牲になり、声もあげれずにいる人たちがやまほどいるからです。「日本の冤罪」を読み、ぜひその実情に目を向けてください。よろしくお願いいたします。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子『日本の冤罪』(鹿砦社)


原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点〈4〉原発推進で日本は滅びる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』2023年夏号(2023年6月11日発売号)掲載の「原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

◆原発の運転延長は重大事故を準備する行為

「脱炭素電源法案」による原発の運転期間再延長を含めた「利活用推進の趣旨」は「安定電源の確保」が理由だという。そうすると、これから起きることは、原発をなるべく止めずに使う方式を導入することになる。

最初に行われるのは、定期検査期間の短縮と定期検査間の延長だ。まず、定期検査項目を絞り込み、現在90日程度で行っている検査を30日未満で終わらせる。さらに定期検査の間隔も、現在13カ月程度のところ、最長24カ月まで延ばす計画がある。これらは経産省が進める原発の稼働率向上対策としてすでに検討されていることだ。[*1]

[*1]定期検査の間隔については法令上、3つの区分(13カ月以内、18カ月以内、24カ月以内)が規定されている。現在は全部13ヵ月以内と区分されているが、これを変更して24カ月運転を目指そうとしている。

その次には、出力調整も視野に入る。現在運転している原発は、フル出力運転をすることが最も経済的とされている。しかしこれは、運転期間が最長60年に限られているからで、これが事実上無制限(上限が定められていない以上、無制限というしかない)となれば、電気出力を電力需要に合わせて変動させても経済性を確保できることになる。

加圧水型軽水炉は、最大50%までの出力調整運転が可能とされており、沸騰水型軽水炉でも75%まで下げられるとされる。

これに加えて所内単独運転[*2]が可能な原発ならば、事実上ゼロ出力から100%まで可変可能だ。

[*2]所内単独運転とは、原発が送電線のトラブルなどで送電線と切り離されたときに、原子炉を停止せずに原発の冷却ポンプなどの構内負荷にだけ電気を供給する状態を指す。発電に使わない蒸気はタービンバイパスを通じて復水器に送られる。所内単独運転は非常時の運転であり、タービン建屋温度上昇など問題が多い。運転制限時間は15分程度とされている。また、原発の所内単独運転では、負荷は通常の定格出力の5~10%である。

そうまでして原発を活用する場合、想定されるのは過酷事故の発生確率の上昇だ。

福島第一原発事故の教訓など、法律の条文の飾り程度にしか考えていない原発漬けの議員と官僚によって、再び過酷事故がどこかで起きる。

西日本の原発で起きれば、日本列島全域が「風下地帯」になるだろう。福島第一原発事故では75%の放射能は海に出て陸域の汚染は25%の放射能によるものだったが、西日本の原発は、偏西風が日本列島を縦断している時に過酷事故が発生したら、100%近くの放射能が日本中に降り注ぐことにもなりかねない。そうなってから悔やんでも遅いことだけは誰もが理解できることだ。

◆原発推進で日本は滅びる

多くの裁判では原発事故に対する国および東電の責任は、明確にされていない。

国が行ってきた原発推進に対しては、最高裁判所も責任を認めようとしなかった。地裁ではいくつもの優れた判決が出されているときに、国の方針に従うだけの最高裁の姿勢と呼応して、裁判で差し止められた原発の再稼働を促進しようとするのが、この国の行政だ。

電気事業法改訂の一つに司法が差し止めなどの決定を行った際に、上級審で取り消された場合は、その決定や判決がなかったものとして、停止していた期間を原発の運転期間の延長に組み込めるとする規定が盛り込まれている。これは司法権に対する介入であり許されない。

電力の安定供給を実現するのに必要なのは、いまある火力設備を更新し、無駄な廃熱を出さないシステムに変換することでエネルギーを有効活用することだ。地域温水供給で熱源としての利用を可能にすれば、火力の出力を3分の2に減らしても、いまより電力などのエネルギー回収効率は高まる。特に大都市はこうしたシステムと蓄電システムとの組み合わせで自然エネルギーの不安定な分を補うこともできる。

また、主に廃熱として捨てられる「未利用エネルギー」(下水道廃熱や工場廃
熱や冷暖房廃熱)を回収すれば、都市廃熱による環境悪化(ヒートアイランドやそれに起因する都市型豪雨災害)を低減できるし、しなければならない。(完)

◎原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点[全4回]
〈1〉福島の反省も教訓も存在しない
〈2〉原発は電力の安定供給に役立たない
〈3〉原子力産業振興法と化した原子力基本法
〈4〉原発推進で日本は滅びる

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

龍一郎揮毫

ガザ虐殺を止めろ! 原爆ドーム前でも行動相次ぐ NO WAR NO KISHIDA 11・3ヒロシマ憲法集会2023 さとうしゅういち

パレスチナ・ガザ地区では、イスラエルの総理・ベンヤミン・ネタニヤフ被告人※による攻撃で子どもを中心に多数の犠牲者が出ています。こうした中、広島でもネタニヤフ被告人に対してガザでの虐殺を止めるよう要求する行動が行われています。

(※イスラエルの現総理のベンヤミン・ネタニヤフ被告人は、日本の総理だった故・安倍晋三さんとほぼ同じようなことをやって、イスラエル警察に送検され、検察に起訴され、現職総理のまま被告人になっています。妻のサラ被告人も日本の安倍昭恵さんとほぼ同じことをやったとして罰金刑が確定しています。ネタニヤフ被告人は安倍さんと違い、野党共闘に打倒されましたがすぐに返り咲き、イスラエルの司法を日本の司法のように総理=行政府に忖度する司法に改悪しようとしています。)

このうち、11月3日の文化の日=日本国憲法公布記念日には原爆ドーム前でNO WAR NO KISHIDA 11・3ヒロシマ憲法集会2023が行われました。

 
広島市立大学准教授の田浪亜央江さん

各界のアピールの中では、広島市立大学准教授の田浪亜央江さんが中東研究者として発言。

「なんでこれまでもっとガザについて発信してこなかったのか? 後悔している」と振り返りました。

「かろうじてアメリカとは一線を画して中東アラブ諸国との関係を維持してきた日本が安倍政権下で特にイスラエルとの関係強化を図り軍事協力を進めてきた。その日本の責任は本当に大きい。日本のこの間のイスラエルとの軍事協力強化その動きは世界的に見ても突出している。」

「安倍政権で武器輸出3原則が変更され、原則自由、紛争当時国のみは除外するということで日本政府はイスラエルを紛争当事国と認めなかった。しかし今少なくとも、日本政府の立場に立っても今こうやって日々ガザの虐殺を進行しているイスラエルが紛争当事国でないわけはない。」と指摘。

「今私たちがすぐできることとしてイスラエルと日本の軍事協力をすぐに辞めさせることだ。自衛隊とイスラエルはもうすでに軍事協力共同研究を進めてきている。是非この場を借りてこのことを訴えたい。」と強調しました。

田浪さんたちは、毎日17時半、原爆ドーム前でガザ虐殺を止めろとスタンディングを行っておられます。じっと立ってくださるのでも構わないということです。夕方、広島市都心部に来られる方はちょっとでも良いのでのぞいてくださると幸いです。連絡先 tanami1012@yahoo.co.jp 

◆イスラエル=侵略者という原点

たしかに、ハマス政権(2006年のパレスチナ総選挙で勝利している)が、10月7日、ガザに対しては主に封鎖・武力行使、ヨルダン川西岸に対しては主にユダヤ人の入植という形で侵略を続けているイスラエルへの「反撃」を行いました。ただ、この「反撃」は民間人の拉致などを含むもので、国際人道法違反です。東京裁判に当てはめればいわゆるC級戦犯です。国際人道法は、侵略・攻撃側だけでなく、防衛側も守らなければならないものです。例えば、第二次世界大戦において、先に手を出した日本への米国の自衛権はあるが、東京大空襲や原爆投下は国際人道法に反します。ただ、世界最強の国・米国を裁けるような力を持った主体がないというだけです。

ところで、イスラエル自体が1948年の第一次中東戦争以降、とくに1967年のヨルダン川西岸やガザも含めた広範囲を侵略した第三次中東戦争以降、ずっとパレスチナ人を侵略してきました。そして、米国の仲介でパレスチナにおけるイスラエルとパレスチナの「二国家並立」で合意した1993年のオスロ合意以降も、イスラエルは約束を守りませんでした。特に、シャロン元首相が聖地訪問を強行してムスリムを挑発した2000年以降のイスラエルのやったことは酷すぎた。ヨルダン川西岸にはユダヤ人入植を続け、ガザは天井のない監獄状態に置かれてきた。そして、断続的に戦闘が行われ、多くの場合はイスラエルによるパレスチナ人への一方的な殺戮となった。上記の状況がある中で、ハマス政権による反撃が行われたわけです。

イスラエルがこの75年間ないし56年間やってきたことはいわば「平和に対する罪」であり「戦争犯罪」です。もちろん国際人道法にも反しています。東京裁判に当てはめれば、いわゆるA級戦犯、B級戦犯、C級戦犯すべてを含んでいるのが、これまでにイスラエル政府がやってきたことです。

◆G7広島、イスラエル全面支持の「こんな人たち」を集めた黒歴史だった

にもかかわらず、特にハマス政権による「反撃」当初は、米英仏独伊加といった日本以外のG7首脳は一致団結して一方的にイスラエルに与しました。言うなれば旧白人帝国主義国家の醜悪な面を嫌というほど見せつけられました。

ウクライナのゼレンスキー大統領もイスラエルを全面支持してしまいました。ウクライナについていえば、残念の一言です。侵略者イスラエルを一方的に支持したことに一片の正義もない。そして、ロシアに対する「ウクライナ防衛」という大義名分を自ら投げ捨ててしまいました。ゼレンスキー大統領は調子に乗ったのか、最近の「反転攻勢」が上手くいかずに焦っているのか、どちらかわかりませんが、ともかく、自分で自分の首を絞めてしまいました。これで、グローバルサウス諸国の中には、ウクライナーロシア戦争について「白人同士で勝手にやっておけ」という本音になってしまった国も多いのではないかと思います。ゼレンスキー大統領が支持を失うのは自業自得としても、巻き添えを食うウクライナ国民にとってはこのことは悲劇ではないでしょうか。

筆者は改めて「こんな人たち」(米英仏独伊加首脳+ゼレンスキー)を広島に集めたG7広島サミットは、広島にとって「黒歴史」だった、ということを改めて強く確信しました。

さらにこんなサミットの誘致を「評価」したり「期待」したりしてしまった、特に左派野党の政治家たちには反省していただきたいものです。

◆日本も米国の「最初は煽って後から梯子外し」にご注意!

さて、当初、米国は「ハマスは純粋な悪」(バイデン大統領)などと言ってイスラエルを煽りました。それにも支えられてネタニヤフ被告人が調子に乗って虐殺しまくっている面は否定できません。だがその後、国際的なイスラエル批判の世論を見て、だんだん、米国も一時戦闘停止などを言いだすようになりました。これをイスラエル側から見ればある種の梯子外しとも言えます。もちろん、米国でさえも距離を置かざるをえないこんな大虐殺を引き起こしたネタニヤフの自業自得ではあります。それでも、日本にとってはこれを他山の石としなければなりません。

米国の高官やマスコミは、2022年ころから2023年の前半くらいに、特に「台湾有事」を煽り立てました。それに呼応して麻生太郎さんらが「台湾(中華民国)とともに戦う覚悟」などと勢いづきました。

だが、そもそも、米国も日本も中華人民共和国が中国を代表する政府だ、と認めています。台湾を中華人民共和国軍が武力攻撃するような事態は絶対に避けなければならない。中華人民共和国とて、台湾=中華民国=の半導体には大きく依存しています。

しかし、万が一起きたとしても、日本に少なくとも武力で手出しをする権利は全くありません。「日本の安全保障に関わるから」程度で出兵したのならロシアのプーチン大統領によるウクライナへの自称「特別軍事作戦」と変わりません。日本はプーチンに対するのと同様の非難を米国以外のほとんどの国から浴びかねません。そして、「侵略者」の汚名を着た日本は中華人民共和国軍に「侵略への反撃」と称した攻撃の口実を与えてしまいます。そうなると、米国は米国で「俺たちは知らない」と米軍をグアムあたりに退避させることもあり得ます。下手をすれば南西諸島は中国軍の「日本による侵略への反撃」と称したミサイル攻撃にさらされます。またも沖縄は中央政府の捨て石にされる。本土に住む我々も、食料やエネルギーが止まり、下手をすれば日本が経済制裁の対象にでもなったら餓死よりほかなくなります。

今回のガザ戦争拡大における米国によるイスラエルを「最初は煽って後から梯子外し」について、日本人は刮目しておく必要があります。

日本国憲法9条とはまさに手を出して自滅しないようにする安全装置である。9条がありながら、台湾有事という名の中国の内戦にのめりこみ滅亡、などというバカげたことにならないよう、日本政府をチェックしなければなりません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

《BOOK REVIEW》尾﨑美代子著『日本の冤罪』── 伝えようとする思いの強さに感銘を受ける 大阪・西成の居酒屋ママの冤罪ルポタージュ 評者=片岡 健

報道や執筆が本職ではないのに、伝えようとする思いの強さが職業ジャーナリストを上回るような文章を書く人は少なくない。『日本の冤罪』の著者である尾﨑美代子さんもその一人だ。

 
尾﨑美代子著『日本の冤罪』

尾﨑さんは普段、大阪・西成でフリースペースを兼ねた居酒屋『集い処はな』を営みつつ、日雇い労働者や失業者の支援、脱原発活動に取り組んでいる。私が最初に会ったのは和歌山カレー事件関係の集まりの場だったが、気さくな感じで声をかけてもらい、いつのまにか親しくなった。この間、尾﨑さんは当欄や月刊誌『紙の爆弾』で労働者の人権問題や脱原発、冤罪事件に関する記事を書くようになったが、私はいつも尾﨑さんの記事に感銘を受けていた。伝えようとする思いの強さが常に溢れているからだ。

本書は、そんな尾﨑さんが独自に取材、執筆した16の冤罪事件に関する計18本の記事をもとに編まれたものだ。伝えようとする思いの強さは本書でも健在で、それはたとえば次のような部分に現れている。

湖東記念病院事件の項

滋賀県警と山本刑事は刑事責任をきちんととり、美香さんに謝罪せよ。検察、裁判所も目を覚ませ。
 そして、一日も早く西山美香さんに無罪判決を!(45ページ)

日野町事件の項

裁判所には、阪原さんのこの悲痛な訴えが届かなかったのか。一日でも早く阪原さんと遺族に、再審無罪を言い渡せ!(107ページ)

名張毒ぶどう酒事件の項

人の心を持った鹿野裁判長には、(引用者注:故・奥西勝さんの妹で、再審請求人の)岡美代子さんに一刻も早く再審無罪を言い渡していただきたい(251ページ)

一読しておわかりの通り、何の迷いもなく取材対象である冤罪犠牲者やその関係者の思いを共有し、真っすぐな言葉で雪冤の実現を訴えている。だからこそ、この冤罪を何とかしたいという尾﨑さんの本気の思いが読み手に届く。本当は中立ではないのに、損得勘定や保身から中立を装ったような記事ばかり書いている職業ジャーナリストでは絶対書けない文章だ。

本書の冒頭には、先日亡くなった布川事件の冤罪犠牲者・桜井昌司さんとの対談をまとめた記事も収録されている。これを読むと、がんに冒されながら、亡くなる直前まで冤罪仲間たちを救おうと全国各地を飛び回っていた桜井さんが尾崎さんに心を開いて言葉を発しているのがわかる。それも尾崎さんの冤罪事件や冤罪犠牲者への向き合い方が桜井さんに信頼されているからだろう。

報道や執筆を職業としている人が自分の姿勢を見直すために読んでみると良い本だと思う。

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。著作に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ─冤罪死刑囚八人の書画集─』など。

[著者略歴]尾﨑美代子(おざき・みよこ)1958年、新潟県生まれ。中央大学中退。大学生時代の80年代、山谷(東京)の日雇労働者、野宿者問題の支援に関わる。90年代初頭大阪に移住して以降は、同じく日雇労働者の町・釜ヶ崎に住みながら、フリースペースを兼ねた飲食店「集い処はな」を経営。釜ヶ崎で知り合った仲間たちと、3・11以後福島支援、反原発運動を始め、講演会、上映会、支援ライブなどを続ける。その傍ら、かつてより関心のあった冤罪事件の取材・執筆活動を続ける。


伊方原発広島裁判大詰め、2024年6月頃結審へ さとうしゅういち

四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めて、筆者自身も含む広島県民を中心とした住民が2016年3月11日に広島地裁に提訴した伊方原発広島裁判は大詰めを迎えています。

いま、地元を選挙区とする岸田総理がグリーントランスフォーメーション、脱炭素と自称して、原発推進に舵を切っています。3.11のフクシマ以降、民主党政権後半から安倍政権にかけて曲がりなりにも継承されていた脱原発ないし(自民党のマニフェストにも小さくですが記載されていた)脱原発依存も反故にされました。

また、総理の政策転換も背景に関西電力が高浜原発などの運転を再開。そこで発生した核のゴミを上関に押し付けようともくろみ、上関原発建設のめどが立たずに苦しんでいる中国電力と利害が一致。上関への中間貯蔵施設を計画し、この夏の短期間で町長にのませてしまいました。そうした中で、本裁判は終盤を迎え、2024年6月頃、結審になろうとしています。

本裁判のここまでの大まかな経過をおさらいしますと、以下のようになります。

◆同時進行の運転差し止め仮処分を高裁はいったん認めるも覆る

 

2016年3月11日の提訴と同時進行で原告=住民側が仮処分を申し立てました。これは、本裁判の判決を待っていたら、その間に伊方原発が事故を起こしてしまう危険があるからです。

紆余曲折を経て、2017年12月13日、広島高裁がいったんは仮処分を認めました。しかしながら、四国電力から異議が申し立てられ、2018年9月25日に四国電力の異議を認める形で運転差止が却下されました。そして、我々原告=住民側が新たに申し立てた仮処分申請も2021年11月4日、吉岡裁判長により却下されてしまいました。その後、我々は広島高裁に抗告しましたが、2023年3月24日、脇由紀裁判長により仮処分の申し立てはが却下されてしまいました。

◆これまで41回の口頭弁論

2023年11月1日現在、41回の口頭弁論が行われました。

2023年9月11日の第38回口頭弁論では、元広島大学准教授で地質学者の早坂康隆さんが原告側の証人として証言。四国電力が伊方原発は岩盤の上にあるから大丈夫という趣旨の主張をこれまでしている中で、早坂さんは伊方原発のすぐ北側600mの海底にある中央構造線は危険な活断層であることや伊方原発がある佐田岬半島は、ダメージゾーンにありひび割れだらけであることを暴露しました。

 
東日本の広い地域が、放射性廃棄物と同等の放射能汚染に覆われている(写真の黄色以上に濃い色の点が該当)

2023年10月4日の第39回口頭弁論では原告側証人尋問として、福島第一原発事故による避難者である鴨下美和さんと久保山康代さんが証言しました。鴨下さんは2022年12月14日に意見陳述をする予定でしたが、直前に被告の四国電力からの要求で裁判所が陳述を認めなかったという「事件」がありました。夫婦で放射性物質も扱う仕事をしていた鴨下さん。東日本の広い地域が、放射性廃棄物と同等の放射能汚染に覆われているという趣旨の指摘を行いました。

また、国の避難指示区域外からの自主避難のために賠償金は出ず、大変過酷な避難生活になったこと。先に避難した鴨下さんに対して、夫はいわきに残りましたが国の避難指示が無かったこともあり、『いわきは汚染などしていない、全く問題がない』と信じている周囲の人たちの中で、罵声を浴び、孤立したこと、若い人の突然死に二度も立ち会ったことから憔悴し、二年後に避難したことなどを回想。『願わくは、私たちのような思いをする人が、二度と出ないように。これ以上、原発によって国土が汚染され、人々の暮らしが歪められないように。祈りを込めて、私は、伊方原発の再稼働に反対します。』と結びました。

同10月11日の第40回証人尋問は原告側の野津厚さん(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、 港湾空港技術研究所領域長)の証人尋問の続きで、被告四国電力側による反対尋問が行われました。伊方原発が南海トラフ巨大地震の想定震源域のほぼ北西端に位置していることはよく知られていますが、四国電力は、「M9南海トラフ巨大地震が伊方原発敷地直下約41kmの地点を震源または強震動生成域として発生しても最大地震動は181ガルである。」と主張しています。

野津さんは、強震動地震学の専門家として、2011年のM9東北地方太平洋沖地震によって発生した地震波の研究から、南海トラフ巨大地震のようなプレート間地震では、致命的な地震波(キラーパルス)は一辺が数十kmのような大きな断層面(SMGA)から平均的に襲来すると考えるよりも、一辺が数kmのような小さい断層面(SPGA)から襲来すると考えた方が、実際の観測記録とよく一致するとして、キラーパルスの発生源はSPGAと想定しています。そして、野津さんはもっとも強力なSPGAを伊方原発に近いところに配置し、強震動計算を行ったところ、最大地震動は約1900ガル、地震波の最大速度が秒速約138cmという結果を得ました。なお、この計算では、伊方原発敷地は非常に強固な岩盤の上に立地しており、地震波の増幅特性はほとんどないものとして想定していますが、それでも、伊方原発の基準地震動650ガルの約3倍に相当します。

同11月1日(水)、第41回口頭弁論では、原告側の高島武雄さん(熱工学の専門家。元小山高専教授)への水蒸気爆発をテーマとしての証人尋問が行われました。福島原発事故の時、溶融炉心が原子炉建屋内のコンクリート構造に反応して水素が発生し(「MCCI」)、水素爆発が発生しました。

四国電力は水素爆発の防止策として、こともあろうに原子炉容器の底部(キャビティ)に水を張ることにしました。これだと溶けた炉心は水の中に落ち、なるほどコンクリート構造に接触しませんからMCCIは起こらず、水素爆発のリスクは大幅に軽減されます。しかし1000度以上に溶けた炉心が水に触れたとたん大規模な水蒸気爆発は起こらないのかという重大な疑問が起こります。常識的には水蒸気爆発の危険があると考えるのが普通です。しかし四電は「起こらない」と断言します。原子力規制委員会でこの問題の審査が行われた際、委員長の更田豊志さん(=当時)が「水蒸気爆発は起こらないと決意しなければ、なかなか水は張れませんね」と意味不明のコメントをしておられます。

「水張り」で大規模水蒸気爆発は起こらない、とする四電の主張の根拠は、過去に行われた国際的な研究や解析(経済開発協力機構=OECD のトロイ装置やクロトス装置を使った研究、欧州委員会のファロ研究、韓国原子力公社のコテルス研究など)から導いた結論です。ところが、肝心要のOECD の「セレナ研究」の結果を全く無視しているのが大きな特徴です。そのセレナ研究では「実際の原子炉内で大規模な水蒸気爆発が起こらないという確実な証拠がない以上、水蒸気爆発は起こると考えておくべき」という趣旨の結論を導いているのです。

◆今後の予定

今後は、以下のような予定です。

11月29日(水)10時半~、被告・四国電力側証人の金折裕司さん(山口大学 理工学研究科 教授)に対する『活断層』をテーマとした証人尋問が行われます。

12月18日(月)13時半~原告側証人の原告 伊藤正雄さん(原告団副団長)/証人 渡辺美和さんに対する証人尋問が行われます。

2024年1月22日(金) 13時半~ 原告側証人の原告 森本道人さん/原告 福島敦子さんに対する証人尋問が行われます。福島さんは2022年1月19日の第26回口頭弁論でも意見陳述をされています。南相馬市から京都へ避難した福島さん。この意見陳述では『福島市の避難所では「死ぬときは死ぬのだ」があいさつだった避難所の生活は忘れられなかった』『娘は「フクシマゲンパツ」とあだ名をされたこともあった。その日その日を精一杯「生きる」ことで過ぎていった』などと振り返っておられたことが筆者も昨日のことのように思い出されます。

なお、予定は変更の可能性もあります。
直近に原告団のホームページをチェックしていただければ幸いです。
https://saiban.hiroshima-net.org/

広島選出の岸田総理が全国の皆様にいろいろご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げますともに、伊方原発ストップ、また上関中間貯蔵阻止という結果をお届けできるよう、筆者も奮闘して参ります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点〈3〉原子力産業振興法と化した原子力基本法 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』2023年夏号(2023年6月11日発売号)掲載の「原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

◆原子力産業振興法と化した原子力基本法

改訂原子力基本法は、その趣旨が大きく変わった。原子力基本法は原子力開発利用の基本方針を定めており、原子力関連法の根拠法になっていることから、「原子力の憲法」とされてきた。特に「自主」「民主」「公開」の原子力平和利用三原則は学術会議により提唱されたものを取り入れた。原子力基本法に基づき原子力利用の目的や基本方針、原子力委員会及び原子力規制委員会の設置と役割を規定している。

原子力基本法の改定趣旨(法律の改訂についての法律案要綱)では「電気の安定供給の確保、我が国における脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進及びエネルギーの供給に係る自律性の向上に資する」ことが推進の理由だとしている。

そのうえで原発を60年を超えて運転できる期間を定め、それに基づいた運転延長を申請する根拠法として電気事業法の改訂を行うのだが「原子炉を運転することが、我が国において、脱炭素社会の実現に向けた発電事業における非化石エネルギー源の利用の促進を図りつつ、電気の安定供給を確保することに資する」ためと趣旨を記述した。

原発を再び推進する理由を「エネルギー安定供給、自律性の向上に資する」としているが、嘘である。大規模集中型の電源である原発の事故やトラブルは電力供給に大規模で長期的影響を与えることは福島第一原発事故や、その後の地震でも繰り返し示されたことだ。

また、ウラン燃料は100%輸入に依存しており国産エネルギー源ではない。地域紛争の影響を強く受けるのは石油と変わらない。

加えて国の責務としてさまざまな施策を実施するとし、国が直接税金を投入することにも道を開く規定を設けている。それを原子力基本法で行うのは、法律の趣旨を1切無視する暴挙としかいいようがない。

◆審査で劣化は発見できない

改訂法では、炉規法で30年を超える原発の劣化評価を規定することで、むしろ安全規制は強化されるとしている。しかしすでにこれまでも30年を超える原発に対して10年ごとの劣化評価が「高経年化技術評価」として行われてきた。これを法律に格上げするのだが、実際には検査体制などは変わらない。従来の制度の延長線上であり新しい制度というわけではない。

運転期間を延長する電気事業法で認められてしまうと、規制委の権限で廃炉とすることはできない。運転許可を出さない場合は、何年でも何回でも、規制委に対して審査を受審することができてしまう。これは現在の40年ないし20年の延長に対しては、日時を切って期限を過ぎれば廃炉になることに対する大幅な規制緩和である。

劣化に対する審査はいまでも欠陥が見えている。圧力容器の劣化は予測に基づく評価が現実に合わなくなっているし、今年1月に発生した高浜4号機の制御棒落下事故は、関電は数カ月前に特別点検を行ったところが破損しており、これを誰も見つけていない。

そもそも検査の範囲はごく限られたところだけで、そこから外れた劣化に対しては無力である。もちろん未知なる劣化を審査により見つけることなど不可能であり、事故が起きてから発見される。このような事態を避けるために、一定の年限で退場させる現在の規定は理に適ったものであり、それを廃してしまう合理性はない。

◆「運転停止期間の除外」にも合理性がない

電気事業法に運転期間の延長に関する認可が移管されたことで延長申請は、行政処分、行政指導、裁判所による仮処分命令、その他事業者が予見しがたい事由によって運転停止を行っていた期間を運転期間から除外し後付けできるとしている。

これは電力会社の利益を確保するための制度。震災後の法令改訂により原発が稼働できなくなったことによる損失を補填するためだ。

原発が老朽化すれば、事故を起こす危険性が高まることは自明だ。即ち、住民の安全と電力の利益を天秤に掛けて電力会社を優先することを法制化する。東電福島第一原発事故は原発の運転を優先して地震津波対策を先送りしたことが原因の一つである。それがまた再現されようとしている。(つづく)

◎原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点[全4回]
〈1〉福島の反省も教訓も存在しない
〈2〉原発は電力の安定供給に役立たない
〈3〉原子力産業振興法と化した原子力基本法

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

龍一郎揮毫

岸田総理の選挙区内・海田町長選挙でびっくり仰天!「三バンなし」43歳新人が自民推薦現職に番狂わせの「KO勝ち」! さとうしゅういち

◆「三バンなし」新人が自民推薦現職破る!

筆者は介護福祉士として広島県安芸郡海田町(かいたちょう)でも仕事をしております。2023年11月5日執行の海田町長選挙は、びっくり仰天の結果になりました。

岸田総理の選挙区内で、新人でほとんど支持団体や組織もない竹野内けいすけさんがなんと自民党推薦で3期目を狙う現職を1000票以上の大差で破る結果になりました。地盤、看板、カバンのいわゆる「三バン」があまりない候補が現職に勝った。ボクシングで言えば挑戦者が二度目の防衛を狙う王者に番狂わせのKO勝ちというところです。

海田町長選挙開票結果      投票率 38.29%
竹野内けいすけ 無所属新人       5133
西田祐三    無所属現職(自民推薦) 4035


◎[参考動画]広島・海田町長選 首相のお膝元で自民推薦の現職敗退 影響は?(広島テレビニュース 2023/11/06)

 
竹野内けいすけさん(右)と筆者(左)

◆広島市に包囲された「豊かな町」

海田町は、人口約3万人。筆者が住む広島市に包囲されるような地形になっています。2003年に広島市との合併協定に調印するも2004年に住民投票で撤回されました。背景には陸上自衛隊駐屯地や同じ安芸郡内府中町(ただし広島市により同じ安芸郡なのに分断されている。)に本社を置くマツダの関連工場が多くあるために財政が豊かであること、瀬野川と湧き水を利用した上水道が独自にあり、太田川を水源とする広島市と合併してしまうと、水道代が暴騰することが懸念されることなどがありました。

海田町は面積が狭いが、それだけにコンパクトな街の構造で、非常に暮らしやすい町と言われています。2022年には合計特殊出生率が1.86と日本全国平均はもちろん、先進国では出生率が高い部類のアメリカよりも高くなっています。同町は豊かな財源を活かしつつ、県内では子育て支援は充実している部類に入っています。

◆広島市職員を辞めて退路を断った竹野内さん

竹野内けいすけさんは今年43歳。海田町の筆者の勤務先のご近所で小さな建設会社をご両親が営むご家庭に育ちました。広島大学付属高校・大阪大学ご卒業後、京都市職員、そして広島市職員を20年間、務められました。2023年8月31日に広島市役所を退職して退路を断ち、3期目を目指す現職に挑むことを決意されました。

広島市役所と言っても、海田町自体が広島市に包囲されているような地形ですから、海田町から広島市役所に務める人も多いですし、逆に海田町役場に広島市から通う人もたくさんおられます。そして、竹野内さんご自身は町民として海田でずっと暮らしておられるわけですので、その点、不安がありません。

ちょうど筆者が、2011年1月31日に広島県庁を退職し、4月の広島県議選に挑んだことが昨日のことのように思い出されました。

ただ、地方選挙の特徴として、例えば海田町なら海田高校、そして大学も広島大学など地元出身の方が有利なものです。例えば、高校、大学とも県外の筆者はその点は不利ですし、竹野内さんの場合も、やや不利な点は否めないと思い、心配していました。

◆「エライ人」暴走に歯止めを掛けてほしいと

海田町議会では現町長の問責決議案が毎年のように可決されています。やはり、町民的な合意形成が不十分なまま、物事を進めていく現町長の在り方には筆者も危機感を持っていました。また、広島県内を全体的に見ても、住民の意見を十分に聞かずに、首長や教育長など「エライ人」だけで物事を進めてしまう状況が目立ちます。その結果、後からいろいろな問題が噴出するなどしています。

そうした中で、町民との対話集会を開くことを公約するなど、対話重視の町政への転換を訴えている竹野内さんに筆者も期待したものです。

 
手作り感満載。竹野内さんの選挙カー

◆手作り感満載の選挙カー

10月31日の告示日、竹野内さんの出発式は9時半からでした。ご両親の会社を兼ねた自宅を事務所とし、その玄関先に椅子を少数並べたものでした。現職はもちろん、国会議員、県議会議員、近隣首長など多数の応援を得た組織選挙です。

竹野内さんは、出発式を待たずに8時半過ぎに七つ道具を選管から受け取るとすぐに自宅兼会社の駐車場から選挙カーを発進させました。

なんと、竹野内さん自らが、脚立に載って、選挙カーの除幕を行う有様でした。筆者もお手伝いさせていただきましたが、間近に拝見した選挙カーの看板はまさに手作りそのものでした。正直、大丈夫かなと思いましたが、まあ、町長選挙は5日だし、国政や県政に何度か立候補し、他人の選挙参謀も務めた筆者の経験からしても5日くらいは大丈夫だろうと感じました。あまりお金をかけないという姿勢も大変好感しました。

◆ギリギリで差し切れれば御の字と思ったが

正直、相手はいくら評判が悪いとはいえ、現職で知名度は抜群。若い竹野内さんへの期待は日に日に高まってはいるが、なかなか厳しいだろうと思っていました。

最後にぎりぎりで差し切って、例えば100票差以内の勝利というのが筆者の想定する最も良いシナリオでした。

しかし、冒頭にもご紹介したとおり、なんと1000票以上の差をつけて、現職を破ってしまったのです。

投開票の翌朝=6日朝、筆者はいつもどおり出勤する前にお祝いの言葉を申し上げに竹野内さんの事務所に伺いました。親御さんによると、「本人もこの結果には驚いている」ということです。筆者も35%くらい竹野内さんが勝つ確率はあるが、勝っても僅差だと思っていたので驚きました。高齢者の中でも「若い人に任せないといけない」という声が確かに日に日に高まっているとは伺っていましたがまさかここまでの結果とは?!

◆「世代交代」「対話重視への転換」への期待を自民党の組織力で抑えきれず

今回の選挙を総括すると「若手への期待」「もっと対話を重視する行政への転換への期待」を「自民党の組織力」が抑え込むことができなかったということです。国政選挙と違って自民党の不人気が直接的に現職落選につながったかどうかはわかりません。ただ、新人への期待の流れを押しとどめるほどの組織力はいまの自民党広島県連にもないというところではないでしょうか?

本当に自民党が強かったら、竹野内さんのように支持団体が全くない状態から現職に挑んだ方が勝つのは難しかったでしょう。間違いなく自民党の弱体化は岸田総理の選挙区でも起きているのでしょう。

ただ、正直、「残念ながら」現時点では、いくらなんでも広島1区(中区、東区、南区、府中町、海田町、坂町)での岸田総理の落選につながるほどのことはないようにも思います。

◆自民は総理地元でも沈没中だが野党もパッとしない

ただ、他方で、露骨に野党が推薦したらたぶん、「いまの岸田さん、自民党に失望」「現町長に失望した」保守層の取り込みが難しかったでしょう。結果論ですが、支持団体がない、完全無所属での立候補が奏功したのではないでしょうか?

実際に、同時に執行された町議補選(改選数2)では29歳、39歳の無所属新人が当選しました。正直、筆者の海田町在住の同僚たちも「なぜ、この人たちがここまで票を伸ばして受かったのか?よくわからない。」という声が多数でした。

また、唯一の政党公認の共産党元職は補選候補者の中では抜群の知名度を生かせませんでした。次点にもならず4位に終わりました

自民党・岸田総理は目下、地元でも沈没中だが、野党も今一つ、ということが読み取れます。

◆海田町政の今後に注目

ともかく、まずは竹野内さんが公約通り、対話を重視する町政運営をきちんとやるかどうか?

まずは、街づくりの計画策定へ対話を進めていかれるそうです。筆者は隣の広島市民であり、海田町民ではありませんが、同じ広島都市圏の住民として、また広島県民として、注目していきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号