2023年9月1日、広島市中区に本社のある給食会社「ホーユー」(資本金1000万円、従業員586人うち正社員78人、パート508人[2020年現在]、代表取締役社長=山浦芳樹さん)が経営破綻し、広島県立・市立高校の寮の給食はもちろん、全国の警察や自衛隊などの給食も停止し、大混乱が広がっています。全国150の同社の受託先の施設の内半数で供給が止まっています。

9月5日に、広島市立沼田高校や広島県立三次高校など8校の寮での給食がいきなり停止。会社とも連絡が取れない状態になったと報道がありました。高校の先生たちがスーパーに行き、生徒の食事を確保する事態となりました。

会社のホームページによると、同社は1994年設立。地元広島はもちろん、東は岩手、西は鹿児島に至る全国各地で事業を展開しておられます。保育園・幼稚園や学校、そして県庁(一部テレビ局では神奈川県庁の地方機関の食堂が映し出されていた)や警察や自衛隊などの社会人向けの食堂の運営、筆者の勤務先のような老人ホームでの給食、病院での給食などを幅広く手掛けておられます。

複数の報道によると、同社は近いうちに破産手続きに入るそうです。

◆すぐに人が辞めていく給食業界

同社については、地元では、すぐに人が辞めていくという評判もありました。ただ、これは同社だけの問題ではありません。筆者の勤務先の老人ホーム(以下、弊社)の食堂も、弊社とは別会社が運営する形を取っています。しかし、すぐに人が辞めていき、メンバーが固定されるようなことはあまりありません。結局、弊社の介護職員も時々、食堂の運営会社と兼務する形で調理に従事するようなありさまです。

朝食と昼食と夕食を調理する人を全て確保するというのは相当に難しいです。朝食を調理し、昼間は休んで夕食の調理にまた出てくる、というシフトをこなしておられた方も見受けられましたが、すぐに辞められました。それはそうです。筆者も同様のシフトになったら、精神的にも身体的にもしんどくて、リタイアしているでしょう。

そうなると、会社も一定程度、給料を上げていかないといけなくなる。これが、ホーユーさんも含む最近の状況だったと推測されます。

◆物価高騰・給料アップに追いつかぬ単価?

ところが、ホーユーさんが多く引き受けておられるのは公立の学校や県庁、警察、自衛隊などの公共関係の食堂の運営です。

こういうところは、一年に一回の入札です。従って、食材が高騰したから、パート従業員の給料を上げないと辞められてしまうからという理由で条件を変更してもらうことは困難です。

もちろん、「そんなことはわかって、落札していたのだから、その経営判断が問題だろう」というご意見もあるでしょう。

あるいは「労働者を低賃金でこき使ってまで、落札していたのはいかがなものか?」というご意見も伺います。

しかし、現に、原価割れで運営会社が倒産してしまったわけです。そういう単価で委託していた、そういう状況を生み出す制度そのものが問題ではないでしょうか? 国ならば岸田総理ら政府や国会議員の皆様、自治体なら首長や議員の問題でもあります。

◆大手ゼネコン・天下り企業には価格変更=値上げに応じている

しかし、冷静に考えると、行政はゼネコン大手や天下り会社に対しては平気で「価格変更=値上げ」に応じています。

筆者の住んでいる広島市や広島県に当てはめても以下のことが言えます。

広島高速5号線二葉山トンネルでは、何度も追加予算を投入し、当初予算を大幅にオーバーしています。また、広島市中央図書館の駅前エールエールA館(市役所OBの天下り先でもある第三セクターが所有)への移転では当初議会や市民に説明した基本計画で65億円だった予算が72億円に膨れ上がっています。

こういうことが平気で出来るのに、給食会社相手には値上げに応じないという構造も見えます。

結局のところ、大手ゼネコンや市役所OBの天下り先の会社には甘くても、中小企業には厳くけんもほろろ。そういう行政・政治のありようが問題ではないでしょうか?

あるいは、広島県教育委員会で言えば、平川理恵・教育長のお友達には儲けさせる。そんなお金があるくらいなら、原価が賄えて労働者が生活できるような値段で給食の委託契約をしてあげればよかったのではないか? そんな疑問は尽きません。

◆「給食のおばちゃん」叩きの果てに

日本で新自由主義が加速し始めた1990年代ころ、「給食のおばちゃんの分際で、年収500万円も取るなど怪しからん」という意見が幅を利かせ始めたのを記憶しています。マスコミが煽り、政治家(当時は日本共産党と新社会党以外のほぼ全員)は労働者叩きで溜飲を下げてもらったのです。

そして、民間企業への委託が加速。ホーユーさんもそういう時期(1994年)に創業され、そして事業を拡大されたようです。しかし、今度はその民間企業からのサービスを買い叩く、という構造が定着。現在に至っています。行政が民間を買い叩き、民間企業は労働者を低賃金・ブラックな条件で働かせる。そんな悪循環が、この20年くらい加速してきたのです。

そもそも、給食調理員というのも、例えばシングルマザーなどの安定した雇用の受け皿となっていました。政策的な意味もあったのです。それを低賃金・ブラックな労働に置き換えたことで、子どもの貧困の悪化などにもつながっているのです。 こうしたことについて、政治家やマスコミは猛省すべきです。

岸田総理は2030年までに最低賃金を1500円にする、などとおっしゃっています。しかし、2030年代まで待っていては多くの労働者は生活が成り立たず、「香典」となってしまいます。さらには、様々なサービスが労働力不足で崩壊することも予想されます。総理は、ご自身の選挙区を震源地とする「給食ストップ」事件について早急に政府としても分析し、対策を取るべきです。例えば、物価高騰状況に対応した入札制度の改革、労働者が十分に暮らしていける単価の確保などです。

また、「高い武器ばかりアメリカから買って、自衛隊員のメシがない」という状況を招いたことも反省していただきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

昨年7月の原子力規制委員会の認可以降、トンネルを掘り進めて今年6月に完成、8月24日に東京電力福島第一原発「汚染水」の海洋放出が始まりました。マスコミは「処理水」と呼んで、中国だけが反対しているかのように強調し、放出されるトリチウムの量をフランスの再処理施設から出るなどと比較して、事態を矮小化する報道を続けています。

 

9月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

これは汚染水海洋放出の実態を隠すと同時に、日本国内の反対の声をもかき消しています。しばらくすれば、そんな報道すら消えるかもしれません。ただし、鈴木達治長崎大学教授は「処理水の中にはまだ放射性物質が入っており純粋なトリチウム水とは違うもの」と語っています。ちなみに、農林水産省の発表によれば、今年1-6月期「農林水産物・食品 輸出額 国・地域別」は、中国(1位)、香港(2位)・台湾・韓国が前年同期比10%~20%増だったのに対し、アメリカ(3位)は−7.9%(6月は−11.0%)。気になるところです。

本誌9月号では海洋放出の目的が、原子力政策の維持であると指摘しました。「もし福島のトリチウムを海に流してはいけないということになれば、使用済み核燃料の再処理工場の運転もできなくなり、日本の原子力は根本から崩壊する」と小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教が解き明かしています。海洋放出に向け「原子力マフィアの総元締め」IAEAのラファエル・グロッシ事務局長が、日本政府の代弁人を担い、各国を渡り歩いた理由もここにあるものと思われます。 

前号で登場の「全国有志医師の会」藤沢明徳代表が、6月に「一般社団法人ワクチン問題研究会」を設立し、8月にはホームページを公開(https://jsvrc.jp/)、本誌発売の9月7日に記者会見を開きます。「コロナワクチン惨禍は全世界規模の人体実験」とし、会見の理由を「ワクチン後遺症の患者さんの記者会見に対する医師側の正面からの意思表明」と語っています。会見の模様はHPでも公開予定とのこと。本誌インタビュー記事では、WHO(世界保健機関)を内部で批判してきた専門家らによる組織WHC(世界保健評議会)にも触れています。WHOについては、来年5月の総会に向けて「パンデミック条約」の策定を目指していることにも注意が必要です。同条約は、WHOの「緊急事態宣言」により、各国の憲法を超えて、WHOの決定を優先するという内容。事実上、国家が主権をWHOに預けるものです。

今月号では、ジャーナリスト・堤未果氏がマイナンバーカードの危険性と、中国に限らず世界各国で現出しつつある「デジタル監視社会」を解説。マイナ保険証については、持たない人に向けて「資格確認書」を交付、有効期限を5年に延ばしたものの、一方で資格確認書を利用した場合、医療機関での窓口負担が割高になるペナルティが政府で検討されているといいます。前号ではワクチン接種に次ぎ、マイナカードの旗振り役を務める河野太郎デジタル相の“本質”に迫りましたが、政府がその先に見据える「デジタル社会」とは何なのかを考える必要があります。

そんな自公政権に迎合し、馬場伸幸代表が自ら「第2自民党」を公言した維新。大阪・開催万博、そして大阪カジノの実態については本誌記事をお読みください。万博・カジノとともに、維新の「地盤沈下」が始まっています。そのほか「木原事件」をめぐる報道管制など、多彩なレポートをお届けする『紙の爆弾』は全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2023年10月号
ジャーナリスト・堤未果が語る 危険な「マイナカード」とデジタル監視社会
万博・カジノが“共倒れ”に「地盤沈下」する維新
大阪・関西万博は延期&会場変更するしかない
岸田訪米に同行した“影の総理”「木原事件」報道管制の大問題
目指すは「国家によるサイバー攻撃」 経済安保法の危険な蠢動
際限なき「軍事同盟」拡大路線 米国ネオコンが仕切る日本・NATOパートナー宣言
ロシア・ウクライナ問題に便乗「NATO東京事務所」構想が示す岸田凡愚政権
それでも岸田文雄を降ろせない“安倍派”迷走と自民党弱体化
ビッグモーター事件で露呈した日本社会の劣化
芸能界“一〇〇〇億円企業”の錬金術 ジャニーズ性加害問題の“元凶”
2024パリ大会が改めて浮き彫りに 東京五輪汚職の根本原因
自民党議員の収賄疑惑 利権化する「洋上風力発電」
アベ暗殺の地政学——米国の極東「新冷戦」戦略のもと統一教会は「粛清」対象となった
シリーズ 日本の冤罪42 米原汚水タンク殺人事件
「週刊金曜日」書籍広告排除事件にみる「左派」言論の落日

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

日本では、特に1994年の日経連が「新時代の日本的経営」という方針を出してから、非正規雇用が激増。労働者の実質賃金は、それ以降、四半世紀以上にわたって、ほとんど上がらないという異常事態になりました。これは、世界的に見ても日本以外ではいわゆる失敗国家(失礼ながら国名を挙げると内戦が続いているシリアやリビア、ソマリアなど)でしか見られない現象です。

しかし、このために、最近では外国人労働者の行先としても日本の人気は落ち、日本人でも若い女性の介護や保育労働者が流出するなどしています。また、介護の現場では、人手不足の反面、サービスの質の低下もみられます。製造業やITなどでは、技術者の海外への流出も深刻です。まさに日本はボロボロです。労働者の給料含む労働環境の改善は急務です。

一方で、労働条件が日本で良くならないことの背景には労働者がこの数十年間、おとなしすぎたということもあるのではないでしょうか?しかし、そんな状況にも変化が見られたのが2023年の夏です。

◆潮目を変えるか? そごう・西武 大手百貨店の61年ぶりスト

「そごう・西武」では、親会社のセブンアンドアイが外資系投資会社への売却を計画。これによる雇用維持への不安が労働者に広がり、そごう・西武ユニオンは7月にストライキ権を確立するための投票を実施。その結果、9割以上の組合員がストライキに賛成しました。組合は、経営者とストライキを背景に交渉しましたが、8月末、交渉は決裂。8月31日、大手百貨店では1962年以来、61年ぶりのストとなりました。

ストライキは日本国憲法第28条で保障された団体行動権です。

第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

今後の動向は予断を許しませんが、労働者が自分たちを守るためには、ストライキという手段もある、ということを示したことの歴史的な意義は大きいのではないでしょうか?

もともと、組合員が納める組合費はストライキをやった時に入らなくなる給料を保障するための資金だったのです。しかし、1960年代後半くらいから会社と組合が協調路線になり、ストライキをやらなくなってきたという歴史的な経過があります。そして、1990年代以降は、ついに日経連(今の経団連)側がやりたい放題しはじめたのです。

また、企業再編に便乗(?)して、どさくさ紛れに労働者の労働条件を(過剰に)切り下げることもまかり通ってきました。そうした状況への反撃に今回なったのではないでしょうか?

報道を拝見する限り、思ったより、一般市民の方が割とストライキに好意的なコメントをされていました。ストライキ実施以前は割とネガティブなコメントもあったが、実施後は、応援するようなコメントも多い印象があります。

なにより、多くの労働者にとり、よい教科書になったのではないでしょうか? 

今後、例えば介護や保育など、仕事の割に給料が低すぎる、そのことも背景に様々な問題が起きている職場でこういうストライキという憲法で保障された手段もあるということは、一定程度認識されたのではないかと思います。

◆環境省元女性官僚、過労退職で損害賠償求め国を提訴

環境省では、若手女性キャリア官僚が、月135時間の残業をさせられ、2019年2月に精神疾患を発症。同11月に公務災害認定を申し立て、2020年2月に退職しました。そして2021年6月、ようやく公務災害に認定されました。この女性元官僚は、2022年6月に国を相手取って損害賠償を求めて民事調停を申し立てましたが、国が応じなかったため、やむなく2023年7月27日、国を提訴したものです。

この元女性官僚は「今回の提訴によって議論が生まれることで、働く人を大切にして、一緒に働いていくという意識の醸成があってほしいと思います。今まで涙を呑んできた先輩、同期、後輩の少しでも希望になればと思っています」と記者会見で述べたそうです。

最近では東大生も含めて若者が官僚になることを敬遠する傾向にあります。この傾向が行き過ぎれば、日本国としての政策立案能力の低下にもつながりかねません。また、精神疾患は労災認定がされにくい実態があります。今回の裁判は、精神疾患について軽視しないようにしていく取り組みでもあります。

◆20年以上務めた司書をいきなりクビ!埼玉県狭山市の暴挙に抗議!

 

[署名]司書の復職で図書館のさらなる充実・発展を求めます(change.org)

埼玉県狭山市では、2023年3月末、市立中央図書館の司書を20年以上勤めた人も含めて全員解雇し、公募しました。臨時職員時代も含めて20年以上、毎年契約更新されてきたということはそれだけ優秀さが認められてきたということです。それを全員解雇する。その結果、例えば、子どもに対する読み聞かせなど、今まで地域の子どもたちにされてきたサービスも低下してしまいました。これに対して、図書館の充実と司書の雇用継承を求める会が司書の復職を求めて署名を呼び掛けています。QRコードからできます。趣旨をご理解の上、ご協力をお願いします。

地方公務員の29%、112万人が非正規で、特に身近な市区町村では40%と、民間平均の36%も上回っています。そして、高度の専門知識を持った人たちも多く、非正規公務員として働いています。そういう人たちをそもそも非正規で使い捨てにするということが間違いですが、現実には正規公務員を減らしすぎた結果そうなっています。

民間のように労働契約法による保護はない。さりとて、正規公務員のような手厚い保護もない。これが非正規公務員の実態です。

2020年度から「会計年度任用職員」制度が導入され、ボーナスの支給などもされるようになりました。しかし、今度は、「会計年度任用職員は3年たったら自動更新をやめ、ゼロから公募」という自治体が続出。狭山市も例外ではありませんでした。

そもそも、「3年でクビ」にしなければならない、という法的根拠はどこにもありません。これは、労働組合が総務省に確認させています。専門性の高い仕事の公務員を3年でクビにしていたら、福祉や教育、防災など住民サービスも低下します。

また、公務員に人材が集まらなくなってしまいます。本紙も、非正規教員含む非正規公務員の抜本的な待遇改善、希望する人への常勤化を求めます。

 

[署名]ホームヘルパーの待遇を上げて日本の介護を守ろう(change.org)

◆ホームヘルパーの待遇改善で日本の介護を守ろう

筆者も介護福祉士として仕事をしています。利用者ではなく、職員、それも新人職員が70代という状況があります。その介護業界の中でもホームヘルパーは、特に高齢化が進んでいます。これは、待機時間や移動時間、キャンセルになった場合も労働時間なのに、給料が出ないという労働基準法違反の状態が横行しているからです。そしてその根本には介護報酬が低すぎることがあります。

こうした中、ホームヘルパー3人が東京地裁に国を相手取って、介護保険制度の改善を求めて損害賠償訴訟を2020年11月、起こしました。(日本の法体系上、制度改善のみを求める裁判はできない)。

2022年11月、東京地裁では不当判決が出ましたが、原告労働者は東京高裁に控訴。この夏も7月24日の第三回口頭弁論など、裁判闘争を頑張っています。どうか、公正な判決を求める署名にご協力ください。

◆お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください

労働相談 秘密厳守 お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください。

広島自治労連 *電話 082-243-9240 *FAX 082-243-9241  
*Eメール hjrouren@urban.ne.jp
(さとうも役員をさせていただいており、さとうまでご連絡いただいても構いません)
広島県労連 労働相談センター 解雇・賃金残業代未払い・ハラスメント なんでも相談 082-262-2099

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

私は、これまで数回に渡る本連載への投稿で地方問題を取り上げ、岸田政権の地方政策は、地方自治を解体し、地方地域を米国に差し出し日米統合を進めるものであること、これに対して「生活の砦」である地域を守る地域第一主義が台頭するのは必然であり、この力で「日本を変える」ことが問われていることを述べて来た。

こうした中、兵庫県三田(さんだ)市で「三田市長選の衝撃」と言われる出来事が起きた。それはまさに「地域から国を変える」動きとしてある。今回は、このことをもって、日米統合一体化に対し、地域第一主義で闘う重要性について、意見を述べさせて頂く。

◆影の立役者、泉房穂

「三田市長選の衝撃」というのは、7月23日開票の兵庫県三田市の市長選で、元銀行員でまったく無名であった田村克也氏(57歳)が自民、公明、立憲、国民の推薦を受け3選を目指して圧勝すると思われていた現職の森哲男氏(71歳)を破って当選したことである。

選挙の争点は三田市民病院を隣の神戸市の済々会兵庫病院と再編統合問題であり、これに反対する市民団体の公募に田村氏が応募して立候補し、氏は病院統合の白紙撤回を掲げて選挙戦を闘い、それが支持され当選した。

その影の立役者は、明石市の前市長、泉房穂氏である。

三田市は神戸市の北辺にあり、明石市の隣に位置する。その明石市で市民に寄り添う市政を実施し絶大な人気を誇る泉氏が駆けつけ「明石で出来たことは三田でも出来る。市民が主人公」と訴えた。

とりわけ効果絶大だったのが泉氏と田村氏が並んだ選挙ポスター。それを配布すると市民が続々と受け取ったそうである。そればかりか、選挙事務所には多くの市民が駆けつけ、1万5000枚のポスターも2日間で貼り終えたという。

大手マスコミの報道はなかったが、SNSメディアで大きな話題に。SAMEJIMATIMESなどは、「泉流の脱政党の『市民の勝利』」と解説していた。

明石市も他の例に漏れず「人口減」「税収赤字」「駅前の衰退」などの問題を抱えていたが、

泉氏は「弱者に寄り添う政治」「市民のための政治」を掲げ、そのための具体策で「5つの無償化」などを実行した結果、明石市は、中核都市人口増加率No.1、全国戻りたい街ランキングNo.1になった。

泉さんは、4月に任期満了で市長を辞めたが、「明石から日本を変える」と次を見据えている。2025年に兵庫県知事選、神戸市長選があり、この年の参院選が衆院とのダブル選挙になると予想し、それまで全国の自治体にアドバイスしながら支持者を広げ、「25年決戦」で勝利することを考えていると言う。

まさに、「三田市長選の衝撃」は、その第一歩となる衝撃的な出来事であった。

◆統合の行き着く先

この選挙の争点であった病院統合、こうした統合は全国各地で行われている。それは効率第一の新自由主義改革である。

それを大規模にやっているのが維新である。維新は病院の統合だけでなく、小中学校の統合、市大と府大の統合、市と府の水道事業の統合、文化施設の統合などを行っている。

維新の統合政策が問題なのは、こうして統合したものを民営化するという所にある。維新はすでに関空業務の民営化、市営地下鉄の民営化を実施しており、吉村知事は熱心な水道民営化論者である。

民営化が問題なのは、自治体がもつ各種の自治体業務の運営権を民間業者に譲渡するコンセッション方式などを考案したのは米国企業であり、結局、この民営化は、自治体を米国企業に譲渡し米国に売り渡すものになるからである。

それは大阪IR(カジノ)の例を見ても明らかだ。大阪IRは、米国のカジノ運営会社「MGMリゾーツ」がオリックスなどが出資する「IR株式会社」を前面に立てて運営する。

カジノは万博、観光インバウンドと共に維新が大阪の成長戦略とする「エンターテインメント都市 ”OSAKA”」の中に位置づけられている。それは大阪のラスベガス化であり、そこに大阪の真の発展はない。

維新は「改革」政党として人気を得ているが、その本質は大阪を米国企業に運営させるということである。勿論、それを露骨には出さない。IRの例を見ても分かるように表向きは「日本」の企業である。しかし、それを裏で繰るのは米国企業、米国であり、それは大阪のさらなる新自由主義化であり米国化だということをしっかりと見ておかなければならない。

泉さんは、維新のような「改革」ではなく「弱者に寄り添う」「市民のための」改革を目指している。そういう改革こそ人々が望む本当の改革だと思う。

◆統合、その最大の問題は日米統合にある

三田市長選での争点が病院統合であったように、今、統合は時代のトレンドの様相を呈している。しかし様々な統合が言われる中で、最大の問題は、日米統合、すなわち米国の下に日本を完全に組み込む日米統合一体化である。

米国は今、対中新冷戦を打ち出し、日本をその最前線にするために日米統合を躍起になって進めている。

前回の投稿「日米経済の統合、その異常なまでの進展」で述べたように、日米統合は、今、現実に軍事面、経済面で異常なまでの速さと深さで進んでいる。そして、地方地域も米国の下に統合されようとしている。

その手段は、IT・デジタルである。デジタル化において決定的で生命線とされるのはデータである。それ故、データ主権が言われる。しかし、日本はこれを自ら放棄している。

デジタル庁もGAFAMのプラットフォームを使い、地方では、米国IT大手のセンチュリアが手がける「全国共通プラットフォーム」が使われる。こうなれば、地方地域のデータは米国に掌握される。

その上で、地方地域を米国企業が直接、掌握管理することが進んでいる。

以前の投稿で明らかにしたことだが、総務省がIT人材を民間の人材派遣会社と協力して行う方針を打ち出したこととか、統一地方選の低調さをもって「地方議会の活性化」として関連会社員、公務員の議員兼務を禁じている条項をなくして兼務を容認する案や「首長のいない自治体の容認までが取り沙汰されているのも、そのための布石だと見ることが出来る。

すなわち日本の地方自治を解体し地方地域を米国が直接、掌握管理する。こうして地方地域を米国の下に統合する。こうなれば地方から日本は変えられてしまう。

◆地方から日本を変える戦いとして

泉さんは「明石から日本を変える」と言う。それは「地方から日本を変える」ということであり、米国と日本政府による「地方から国を変える」戦略に真っ向から対決するものになるし、そうならなければならないと思う。

地域の衰退は歯止めが掛からない状況である。産業は衰退し少子高齢化が進み、基礎自治体である市町村の中でも弱小自治体は、存亡の危機に直面している。その上、岸田政権による軍事費増大政策のための増税、物価高騰が国民生活を直撃する中で「生活の砦」である地域を守る志向は切実になっており、それは全国的なものになっている。

今や、それは左右のイデオロギーの違いや党派の違いを乗り越えた、地域を自己のアイデンティティとして、これを守ろうという地域第一主義の要求になっている。

地域を守る志向、地域第一主義は、米国による日米統合一体化に反対し日本を守ろうとする意識と結びつくし、そうなってこそ、より広範で力強いものになる。

泉さんが、日米統合一体化に反対しているかどうかは分からない。しかし市民主体、弱者に寄り添う政治を目指せば、必然的に、そうならずにはおかないだろう。

泉さんが想定する「25年決戦」の勝利を大いに期待している。

そのためには、地域の力を如何に結集するかである。私が、これまで地域第一主義として評価してきた、「れいわ」や「共同性の復活」を訴える杉並区の岸本聡子さんの運動、反維新で「住民自治を取り戻す」ことを掲げる「アップデートおおさか」の谷口真由美さん、北野妙子さんのなどとの連携、全国各地で無数に起きている地域を守る運動との連携も当然視野に入っているだろう。

 

魚本公博さん

そればかりではない。維新の馬場代表が「今後、自民が『改革派』と『守旧派』に分裂すれば改革派と合流する」と述べているが、そうであれば、この「守旧派」とも手を組むべきではないだろうか。

地域で生き残りを掛けて地域振興を必死で行っている人たちは多い。今、地方銀行が中心になって地域を振興させる地域商社が注目されているが、こうした動きなどとも連携し地域の力「地元力」を総結集していけば、それこそ日本を変える大きな政治勢力になると思う。

日米統合一体化を阻止し、米中新冷戦、対中対決戦の最前線としての日本の代理戦争国家化を阻止することが何よりも問われている今、「三田市長選の衝撃」を現出した泉房穂氏の運動が発展することを願っている。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

8月24日に福島原発の汚染水を海に放出し始めたのち、中国から激しい批判の声が上がっている。これに対して、外務省は9月1日に反論を発表した。中国の主張を「科学的根拠に基づかないものだ」と決めつけ、国際原子力委員会(IAEA)のお墨付きがあるので、安全性に問題はないという趣旨である。

マスコミはALPSを通過する水を「処理水」と表現するなど国策に寄り添った方向で報道を続けている。テレビは連日のように福島沖で捕獲させる魚介類をPRしている。「汚染水」という言葉は絶対に使わない。売れない魚を学校給食で使う案も出始めているらしい。

政府や東電、それにマスコミの主張は、「規制値を遵守しているから絶対に安全」だというものである。しかし、この考え方は、放射線や化学物質の安全性には「閾値」がないことを隠している。

「閾値とは、ある値が所定の水準を超えると特定の変化が生じたり判定・区別が変わったりする、という場合の『所定の水準』『数値的な境目』『境界線となる値』を意味する語である」(Weblio)

放射線の人体影響に閾値がないことについて、岡山大学の津田敏秀教授は次のように指摘している。

(日本では)「100ミリシーベルト以下ではがんが増加しない」ことになってしまっている。2013年5月27日付けで出された「国連特別報告者の報告の誤りに対する日本政府の修正」と題された日本国政府代表部の文書にも、「広島と長崎のデータに基づき、放射線被ばくによる健康への影響は、100ミリシーベルト以下の水準であれば、他の原因による影響よりも顕著ではない、もしくは存在しないと信じられている」と記されている。これは100ミリシーベルトの放射線被ばくが、発がんの「閾値(しきい値)」のように考えられていることを意味する。

よく知られていることだが、国際X線およびラジウム防護委員会IXRPは1949年に、放射線被ばくによる癌の発生に閾値はないことを結論づけ、この結論は現在に至るまで変えられていない。(『医学的根拠とは何か』津田敏秀著、岩波書店)

◆マイクロ波の規制値もでたらめ

汚染水の規制値に限らず、日本の総務省が設けている公害に関連した規制値は、科学的な根拠に乏しいことが多い。それがよく分かる例としては、スマホの通信に使われるマイクロ波の規制値(電波防護指針)がある。

スマホの通信基地局から放出させるマイクロ波の規制値の国際比較は次にようになっている。

日本:1000μW/c㎡
国際非電離放射線防護委員会:900μW/c㎡
中国:40μW/c㎡
欧州評議会:0.1μW/c㎡

マイクロ波は、エックス線やガンマ線と同じ放射線(電磁波)の仲間である。前者はエネルギーが弱く、後者はエネルギーが強いという違いはあるが、現在では、エネルギーの大小にかかわらず、放射線には遺伝子毒性があるというのが、欧州での主要な考え方である。実際、欧州評議会は、日本の規制値よりも1万倍も厳しい数値を設定している。ここにも「閾値」はないという考えに基づいている。あるいは極めて微量でも、放射線による人体影響があるという考えである。
 
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、電磁波の工業利用の促進を目指している団体である。それゆえに規制を緩やかにしているのだ。日本の総務省は、マイクロ波の規制値を国際非電離放射線防護委員会よりもさらに緩くして、電話会社に基地局の設置を奨励している。住民から苦情がでると電話会社は、「規制値を守っていますから絶対に安全です」と原発とまったく同じ抗弁をする。そして強引に基地局の稼働を始める。筆者には2つの光景が重なって見える。

福島原発の汚染水をめぐる「安全宣言」の原型は、実は携帯電話の基地局問題の中で使い古されているのである。「安全と思う」ことと、「客観的に安全」であることは区別しなければならない。両者を混同すると世論誘導に乗ってしまう。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

8月29日、広島県の平川理恵教育長に対して、県に「NPO法人パンゲア」を巡る官製談合で生じた損失2600万円、外部調査にかかった弁護士費用3000万円、2021年度に教育長が使ったタクシー代100万円の合計5700万円を返すよう住民が求めて提訴した裁判の第一回口頭弁論が広島地方裁判所で行われました。

平川教育長については2022年8月、「文春砲」で教育長が個人的に親しい京都のNPO法人「パンゲア」が受注した事業(合計2600万円)における官製談合疑惑が暴露されました。その後、県教委が雇った弁護士による外部調査で、地方自治法違反、官製談合防止法違反が認定されました。ところが、この弁護士による調査でも3000万円という常識外の支出が行われ、批判を浴びました。さらに、平川教育長は、2021年度だけで100万円、2018年度からの4年間では合計700万円のタクシー代を使用していました。

今回の裁判ではパンゲアとの官製談合事件で生じた被害2645万8685円、弁護士費用3000万円、そして2021年度分のタクシー代100万円が対象です。

平川教育長は2023年2月、課長級職員を戒告処分とするとともに、自身は給料自主返納30%を2か月しただけで、幕引きを図っています。任命した湯崎英彦県知事も平川教育長を罷免するなどの形で責任を果たそうとせず、議会もまた、追及を止めてしまっています。

◆現場は努力しているのに、教育長は…… 高校教師でもある原告の怒りの陳述

この日の裁判では、原告を代表して県立高校の元教諭で現在も非常勤の教員として働いている望月照己さん(下段写真 左から二人目)が意見陳述を行いました。

望月さんは「文春の記事を見て驚くとともに唖然とした」と回想。

「非常勤講師も含めたすべての教職員は年二回、各学校で広島県教育関係職員倫理要綱に基づき研修を受け、法令遵守や公務員倫理の確立と職務の執行に対する県民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図ること」「公務に対する県民の信頼を確保すること」を口が酸っぱくなるほど言われ続けているから、です。

そして、「平川教育長は親密な業者であるパンゲアの関係者を教育行政に算入させるため会食をしたり、業務委託契約を結んだりしているため、明らかにこの倫理要綱に違反している」と指摘しました。

学校現場では、修学旅行の業者を決める際は複数の業者から企画案や見積もりなどの資料提供を受けて公平に検討して決め、決して飲食などともにしないように気を付けていますし、鉛筆一本でも無駄にしないよう毎日努力しているのです。

それなのに、平川教育長はパンゲアとの契約代金の妥当性を検証するためとして東京の弁護士に3000万円を支払う。

そしてタクシー代も県民感覚からずれています。

望月さんは「教育長は自分が使ったお金が税金だということが分かっているのか?」と指弾。

「わたしたち教職員がこのような無駄遣いをすると即、懲戒免職。にもかかわらず、平川教育長は、課長級職員に戒告処分をしながら、自分は何の処分も受けず、自らの給料2か月分を30%返納するだけで済ませている」と怒りをあらわにしました。

そして、物価高の中で節約している中で、この問題を黙ってみているわけにはいかない、住民監査請求も起こしたが却下された、そこで住民訴訟に踏み切ったという事情を理解の上、裁判長には(平川教育長への)厳正な判断をお願いしたい、と結びました。

◆お友達のお金儲けばかり、何の責任も取らぬ教育長

口頭弁論で原告代理人の山田延廣弁護士(写真左端)は、「この事件を放置してはいけない。県の行政のためではなく友人の利益のための事業だった。また、平川教育長は赤木かん子さんに図書館のリニューアルを依頼したが、新たに購入した図書の1割が赤木さんの著書だった。お友達のお金儲けのためにやっている」と批判。

そして、「教育長は何の責任もとっていない。教育委員会内では教育長にネガティブな情報を上げないことになっていた。そういう風に職員をしてしまったのも教育長の平素の対応に問題があるからだ。」と指弾。

また、県議会議長も「平川氏を止めさせると知事が傷つく(から調査を止める)」という始末だ、と議会の腐敗も指摘しました。

そして「「自分でやったことは自分で責任を取りなさい」「自分のことばかりではなくみんなのことも考えなさい」などと学校では教育しているが、教育長がこれでは先生や生徒たちに示しがつかない」と嘆きました。

◆本来は被害者なのに教育長を庇う県

今回は、広島県が本当は教育長に金を勝手に使われた被害者であるにもかかわらず、県が教育長を庇う立場で弁護士を送り込んでいます(補助参加)。

教育長と利益が相反する以上、これ自体、常識的にはおかしな話ですが、現行では認められているのでその枠で住民も闘うしかありません。

その県は、
1,お金を支出したのは教育長ではなく、戒告処分を受けた課長級職員だから教育長にお金を返す義務はない
2,そもそも、お金を支出した人も特定されていない。
と開き直り、住民の請求を棄却するよう求めています。

これに対して山田弁護士は「平川教育長の名前でパンゲアと契約している。契約があって支出がある。平川教育長に責任がないということはありえない。また、お金を支出した人が特定されないというのは、そもそも、県がその戒告処分を受けた会計担当職員の氏名等を公表しないからだ。県は横綱相撲を取ってほしい」と苦言を呈しました。

◆検察も重い腰を上げ、一年生県議も動き出す

さて、原告の一人の今谷賢二さんによると、検察もようやく、最近動きを見せているそうです。

すなわち、今谷さんらによる刑事での告発状を受理するための話し合いを近日中に行いたいと電話もあったそうです。

また、県議会では日本共産党以外の自民、公明、立憲などの知事与党会派は教育長の疑惑を葬り去りたかったそうですが、当選一回の保守系県議が文教委員会で言葉を選びつつも、赤木かん子さんによる図書館のリニューアル問題や官製談合疑惑について質問をする場面もあるそうです。筆者も有権者との対話で実感していますが、自民党代議士や市議を熱心に支持されているような方でも「平川は怪しからん」怒っている方が多いです。そういう有権者の突き上げがあるのではないか?と今谷さんは指摘します。

◆「平川独裁」は終焉の兆しも厳しい教育行政再建の道

また、県教委内部でも、赤木かん子さんは今年の事業からは外されており、正式な形ではないが、「平川独裁」は終焉に向かっているようです。

ただ一方で、教育委員会幹部に、財務系の職員が派遣されています。この方々は、会計処理は得意でも、教育のことは全く分かっていません。そもそも、今の県教育行政の問題は、現場の先生や子どもをバックアップするロジスティクスをしっかりやるべき教育委員会が、教育の中身を差配し、現場を振り回してきたことにあります。その是正も含めた教育行政の再建の道はなお険しいと筆者は感じています。しかし、まずは第一歩です。

県教委や市教委のパソコン納入を巡る談合事件では、公取が業者にお金を県・市に返すよう命じています。これは別の住民グループの奮闘が背景にあります。この日の裁判報告集会にはその住民グループの方もお見えになって激励をいただきました。

この民事裁判や検察への突き上げ、それ以外の政治闘争も含めて、広島の教育を立て直すことをあきらめてはいけん。その決意を強くしました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

《9月のことば》がらがらぽん(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

自民党が政権与党になって11年が過ぎようとしている。
国民は幸せになっているだろうか。
国民は決して戦争を望んではいない。
国民が望んでいることは争いが起こらぬように政治家が話し合うことであろう。
日本の政治家が争いを起こさないように誰と何処で話し合いをしているのかわからない。
そのためなら国民は資金を出し惜しみをしないだろう。
ところが日本の政治家はどうだ。
あそこの国が攻めてくるぞ。日本が侵略されるぞ。ミサイルが飛んでくるぞ。
核爆弾が撃ち込まれるぞ。等々。不安と危機を煽り立てるだけじゃないか。
そして。戦う武器が必要だ。ミサイルを買おう。戦艦を買おう。
暴力には暴力で!戦う覚悟はあるか!と勇ましいことをいう政治家が出てきた。
こんな政治は「がらがらぽん」だ。国民を幸せにする政治を創るんだ!

今夏の超猛暑とコロナ襲来後の苦境脱出にくたくたになった私に代わり、龍一郎が上記のように書き送ってくれた。

9月かあ~、今年も3分の2が過ぎ、逆に言えば、あと3分の1を残すのみだ。

今年の秋もなにかと慌しいですが、せっかく皆様方のご支援で上向いてきましたので、愚直に頑張って乗り切るしかありません。闘争勝利!

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

◆私のLike A-Rolling Stone ── 転石苔むさず

時は日本が高度経済成長邁進中、1964年の「ならあっちに行ってやる」!─ 長髪高校生17歳の無謀な決心に始まる私のLike A-Rolling Stone「京都青春記」は、1970年3月のよど号ハイジャック闘争を前にした「革命家になる」決意文 ─「(たとえ死んでも)大きな愛の中で断じて生き抜く」をその結論とした。76歳まで生かされた2023年現在はピョンヤンでその「続編」を生きている。

Like A-Rolling Stone ─ ボブ・ディランの歌詞は、「転石」人生に落ちた女、かつては羽振りのよかった高慢ちきな女の零落ぶりを“How does it feel?”「いまの気分はどうだい?」と皮肉り嘲笑する言葉が並ぶが、私の「京都青春記」はその「転石」とはちょっと意味が異なる。

あっちにぶつかり、こっちに転がることによって「転石苔むさず」─「戦後日本はおかしい」の思いは錆び付くことなく一皮、二皮むけながら「戦後日本は革命すべき」へと一歩また一歩、前へ前へと進むことができた。

「いいんじゃない、若林君はぜんぜん悪くないよ」のOKに始まり、「簡単じゃないからいいんじゃないですか」の仁奈さん、「ジュッパチ─山崎博昭の死」の衝撃と日本の音楽界を革命する「裸のラリーズ」水谷孝・中村武志、「学生運動の野次馬」脱皮、「革命家の卵」からの孵化に苦闘中の私が「あなたの色はきっと輝く」を互いに競い合えた「よきライバル」、「俳優の卵」菫(すみれ)ちゃん……多くの幸運な出会いがそれを可能にしてくれた。

「ロックと革命in京都 1964─1970」を書きながら曲折多い「京都の青春」を共にしてくれた人たちへの想いを新たにしたが、いまそれを書き終えて「京都青春記」恩人たちには心からの「ありがとう」! を改めて述べたいと思う。

そして「転石」途上の転換期に唐突な「さよなら」で恩人に不義理を重ねた私の「京都の青春」、ただただ自分のことで精いっぱいだった未熟さを省(かえり)みる、そして「だから私はこの道を歩み続ける責任がある」! この瀬戸内寂聴さんのお言葉を噛みしめ肝に銘じたい。

また「京都の青春」最大の幸運は、あの学生運動の高揚期に出会えたこと、でもそれは敗北と未遂に終わった、だからこそその苦い教訓を糧に「この道を歩み続ける」決意を新たにしている。

そして決意を新たにしながら、「若林、おまえいったい誰のために革命やってるんや?」の問いかけで私の蒙を啓(ひら)いてくれた「京都青春記」以降の「革命家になる」人生最大の恩人、田宮高麿 ── 彼のことをここでは書けなかったが、それは「1970年 ── 端境期の時代」(鹿砦社)をご参照いただくことにして、ここに故人を心から悼みながら最大級の感謝を田宮高麿に捧げたい。


◎[参考動画]Bob Dylan – Like A Rolling Stone

 

Dylan & Suze

◆「絵に描いたような青春」??

私の「京都青春記」を読んで「まるで絵に描いたような青春ですね」と感想をくれた人がいる。

たしかに「革命と音楽と恋」─絵のような花の青春! そう見えるかもしれない。

あれから50余年の年輪を重ねた今だからこそ「若い頃の感情やその意味を穏やかに振り返ることができる」、でも「京都の青春」渦中にあるとき、私の心中はまったく穏やかでなかった。「あっち」には行ったものの「目標がわからない」「自分のものがない」「未来が見えない」暗中模索の時期、私にはある意味「暗闇まっただ中の時代」というのが当時の私の実感だ。

「二十歳、それが人生で最も美しい季節だとは誰にも言わせない」! このポール・ニザンの言葉そのままの青春だったと思う。これは何も私だけじゃないだろうが……。

ついでにいえば恩人にはなぜか女性が多い。「もてたんですね」と言う人もいるが、それもちょっと違う。

あの頃の女性には長髪人間は見るからに「ヤバイ男性」、そんな「お付き合い対象外」の私にいわゆる男女交際、普通のデートなどできるわけがない。にもかかわらず私の恩人に女性が多いのは当時の時代状況と関係していると思う。

「アメリカに追いつき追い越せ」の戦後日本で男性には活躍の機会が広がったけれど、女性は相変わらず「結婚して家庭に入る」── 職場は結婚するまでの腰かけ、料理に裁縫、お花にお茶の稽古事といった「花嫁修業」が若い女性に「望まれる人生」ルートだった時代だった。男は「モーレツ社員の会社人間」! 女は家庭を守る「良妻賢母」! そんな時代風潮に抗し男より早く自我に目覚め自立志向を強める女性が出てくるような時代でもあった。少数ではあれそんな女性には「ならあっちに行ってやる」の私とは奇妙な「魂の親近性」があったと思う。

 

平塚らいてうと雑誌『青鞜』

OKはボーヴォワール、仁奈さんは平塚らいてうや樋口一葉を敬愛し、菫ちゃんには演劇があった。彼女らはある意味、覚醒は私より一歩進んでた女性たち、だから「私の師」とも言えるような存在でもあった。

そういう存在は、男性には水谷孝、中村武志しかいなかった、ただそれだけのことだ。

そういう彼女ら彼らと出会えたこと、震えるような魂の刺激を受け、多くを学べたことは本当に幸運だったと思う。

◆「自分の国」を話せない日本人

小中高校生の頃、「尊敬する人物を書きなさい」というアンケートが私は苦手だった。そう言われても頭に浮かぶ人物が私にはなかったからだ。適当に誰かの名前を書くには書いたが、自分は何にも知らないんやといつもちょっと自分が嫌になった。いま考えれば、それは単なる無知じゃなく、私には尊敬することの「基準」というものがわからなかったのだ。画家のゴッホやモジリアニが好きだ、憧れだというのはあっても、それは「尊敬する人物」とはちょっと違う。

「天皇陛下万歳」の日本から「アメリカ万歳」の日本に激変した敗戦直後の日本では大人たちも自分の価値観が混乱するのも当たり前だった時代だ。「二度と戦争をやってはいけない」「軍国主義はもうまっぴらだ」と子供に言えても、「これだ」という自分のもの、日本に根ざした信念や信条、道徳や倫理を子供に教えられる大人はほとんどいなかった。当然、子供の私には何を尊敬し、何を誇りにするのか、わかるはずがなかった。

いまも日本人は外国に行って、他の国の人間と比べて自分の国のことを話せない、話さない、ただ他人の「お国自慢」を聞いてるだけ、とよく言われる。それは戦後日本のアイデンティティ、誇りというものが相変わらず曖昧模糊状態にあることの反映ではないかと思う。

‘70年代後半の頃、フランスに行ったとき「シノワ(中国人)か?」と声をかけてきたアフリカやアラブ系の若者に「ジャポネ(日本人)だ」と答えたら、「ホンダ、スズキ tres bien(素晴らしい)」! と彼らは親指を立てた。でも私はちっとも嬉しくなかった。「それがどうだっていうの?」、「それだけ?」と苦笑いせざるをえなかった。

朝鮮に来て初めて革命博物館に見学に行った時のことだ。抗日武装闘争館を見て回ったとき、講師の女性は日本の若者に「日本人民も日本軍国主義者の犠牲者じゃないですか」と言った。この言葉には外交辞令でもない真実味はあったが、私はどこかで何かひっかかった。素直に「そうです」とは言えなかった。

「中国人捕虜刺殺要領」を授業中に得々と生徒に語った教師は根っからの軍国主義者でもない「民主主義教育のリーダー」だった日本人だ。反日ゲリラの中国人捕虜を「日本の敵」と信じたからこそ躊躇なく刺殺できた日本人だ。当時の多くの日本兵士がそうだったのだろう。大人になって、つらい戦場では従軍慰安婦と過ごす慰安所での時間が唯一の楽しみだったという老人の話も聞いた。これを戦後世代が一概に非難することはできない、果たして自分たちに戦前世代を非難する資格があるのだろうか?

戦後の日本人はアメリカには頭を下げたけれど、アジアには頭を下げないまま今日まで来た。言葉を換えれば、上述の教師のように「中国人捕虜刺殺と戦後民主主義はイコールで結ばれている」! 極論かもしれないが、これが戦後日本ではなかったのか? 北ベトナム爆撃に向かう米軍機B52が沖縄の基地を出撃拠点にしたのもそういう戦後日本の反映だ。

それはアメリカの価値観(連合国史観とも言われるが)でしかあの戦争を総括しなかったからではないのかと思う。自分の頭で考えた「戦争の反省」、自分の教訓というものがないまま他人の歴史観の受け売りで戦後日本は出発し、“なんとなく平和と民主主義”的な国として曖昧模糊なまま今日まですごしてきたのではないだろうか。

かつて「自存自衛の戦争」論、「米英の理不尽な経済制裁の圧迫包囲網による自滅から自分の国を守る戦争だった」が持論だった安倍元首相は、戦後70周年に米国で行った演説時、「当時の(米英中心の)国際秩序に挑戦した」ことを米国会で反省し、今後の日本は「国際秩序維持に積極的に貢献する」ことを誓い、持論を翻した。「愛国」を売り物にした「右翼」政治家すらこの体たらくだ。

戦後の日本人は自分を知らない、自分がわからない日本人になってしまった。自分がわからないから、自分のこと、自分の国のことを話せない。

私の場合、戦後日本への疑問から「ならあっちに行ってやる」以来のLike A-Rolling Stone青春として極端な形で現象したが、いまの日本人も根っこのところでは大して変わらないと思う。

私が何を言いたいのかといえば、「戦後日本はおかしい」はいまも変わらないし、日本人としてのアイデンティティを確立するためにも「戦後日本の革命」はいまも課題として残り続けているのではないかということだ。

◆「戦後日本の革命」── それはアイデンティティ確立の革命

この連載を始めるに当たって「序文」的に私はこう書いた。

“ウクライナ事態を経ていま時代は激動期に入っている。戦後日本の「常識」、「米国についていけばなんとかなる」、その基にある米国中心の覇権国際秩序は音を立てて崩れだしている。この現実を前にして否応なしに日本はどの道を進むのか? その選択、決心が問われている。それは思うに私たちの世代が敗北と未遂に終わった「戦後日本の革命」の継続、完成が問われているということだ。”

いま「戦後日本はおかしい」は極限にまで来ているように思う。

私は安保防衛問題を自分の研究課題にしているが、いまの日本はかつての「ベトナム反戦」どころじゃない、タモリの言った「新しい戦前」と言われる事態にまで来ている。

その「新しい戦前」の正体は、一言でいって「対中・代理“核”戦争国化」だ。これについては『紙の爆弾』やデジタル鹿砦社通信にいくつか書いたので、こちらを参照いただければと思う。ここは結論的に述べるにとどめたい。

ウクライナ支援を呼びかけたG7広島サミットは、逆にグローバルサウスと呼ばれる発展途上諸国の離反を招き、G7の孤立ぶりを世界に知らしめた。「G7が世界をリードする」時代は終わったのだ。

「核廃絶」を表看板に掲げ、G7各国首脳の原爆資料館参観まで演出したが、採択された「広島ビジョン」は核抑止力強化を謳った。この延長にある8月の岸田首相訪米、日米韓首脳・キャンプデービッド会談では「NATO並みの核使用に関する協議体」として日米韓“核”協議体創設が何らかの形で合意されるだろう。そして反撃能力(敵基地攻撃能力)保有の目玉として新設された陸自の「スタンドオフミサイル(「敵の射程外から撃てる」中距離ミサイル)部隊」への核搭載を可能にする「核共有」の道が開かれるだろう。

 

「核の傘」日米韓で協議体創設、対北抑止力を強化……米が打診(2023年3月8日付け読売新聞)

対中対決の核抑止力強化策としては、米国は自分が撃てば自国が核報復攻撃で甚大な被害をこうむるICBM(大陸間弾道ミサイル)を使うつもりはない、日本列島から届く戦術核ミサイルで代替する腹だ。それの具体化が「核の傘を貸す」、「核共有」に基づく陸自・中距離ミサイル部隊の「核武装化」、つまり日本の対中・代理“核”戦争国化だ。

当然、戦後日本の「決意」、非戦非核の国是は放棄させられる、それが「盟主」米国の「同盟義務履行」の求めだから日本政府は拒否できない。この求めに応じて日本の第一級「安保防衛問題専門家」と言われる人物は「日本の最大の弱点は核に対する無知だ」とまで言うようになった。

ここは政治を論じる場ではない。でも「戦後日本はおかしい」はここまで来ているということだけは訴えたい。ウクライナ戦争で中ロ二正面作戦を強いられ、ますます窮地に陥った米国の焦りは、対中対決最前線とされる日本に対する苛酷な要求として今後、露骨な形で現れてくるだろう。

いまは「覇権帝国の米国についていけばなんとかなる時代じゃない」どころか「覇権破綻の米国と無理心中するのか否か」というところまで来ている。

いま日本はどの道を進むべきか? 「戦後日本の革命」は現実問題として問われてくる! 

自身の運命の自己決定権─自分の運命は自分で決める、自分の頭で考え自分の道を自分の力で開く! 

それは戦後日本の曖昧模糊となったアイデンティティの再確立の道でもあると思う。(完)

このことが「ロックと革命」、「京都青春記」の続編、「ピョンヤン編」を生きる私がかつて共に闘った同世代、そしてこれからの日本に生きる若い人たちに訴えたいことだ。

《若林盛亮》ロックと革命 in 京都 1964-1970
〈01〉ビートルズ「抱きしめたい」17歳の革命
〈02〉「しあんくれ~る」-ニーナ・シモンの取り持つ奇妙な出会い
〈03〉仁奈(にな)詩手帖 ─「跳んでみたいな」共同行動
〈04〉10・8羽田闘争「山﨑博昭の死」の衝撃
〈05〉裸のラリーズ、それは「ジュッパチの衝撃」の化学融合
〈06〉裸のラリーズ ”yodo-go-a-go-go”── 愛することと信じることは……
〈07〉“インターナショナル“+”True Colors”= あなたの色はきっと輝く
〈08〉“ウェスカー‘68”「スミレの花咲く頃」→東大安田講堂死守戦「自己犠牲という花は美しい」
〈09〉孵化の時 ── 獄中は「革命の学校」、最後の京都は“Fields Of Gold”
〈10〉「端境期の時代」挑戦の赤軍派 ──「長髪よ、さらば」よど号赤軍「革命家になる」
〈11=最終回〉連載を終えるに当たってあと一言、いや二言、三言……

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

デジタル鹿砦社通信の小島卓編集長から、『情況』8月発売号の紹介をしてみてはいかが、というお誘いをいただきました。ありがたくお受けしたいと思います。

過日、『情況』第6期にご注目を、という記事をアップしたことがあります。おかげさまで、第6期『情況』誌は3号をかさね、11月発売号が出れば晴れて「3号雑誌」(勢いよく刊行したものの、3回で休刊)の誹りをまぬがれるわけです。読者の皆さまのご購読、ご支援に感謝いたします。

◆新しい論壇誌のスタイル

 

変革のための総合誌『情況』2023年夏号[第6期3号]【特集】音楽

さて、新左翼系の老舗雑誌と『情況』は呼ばれてきました。しかし、新左翼そのものが衰退、解体している昨今、その存続意義はあるのかという問いが生まれます。
じじつ、新左翼的な記事はほとんどなくなり(かつては、三里塚闘争や安保闘争、狭山闘争などが誌面を埋めた)、唯一果敢に闘われている沖縄反基地闘争(辺野古基地反対運動)も、新左翼特有の実力闘争ではなく、不服従の抗議闘争というのが実態だと思います。

運動誌・理論(学術)誌・オピニオン誌と、3つの性格を併せ持ってきた『情況』ですが、いまも有効なのはおそらく研究者にとっての論文発表の場、なのではないでしょうか。全国の大学図書館に70冊ほど、しかし岩波の『思想』、青土社の『現代思想』には遠く及びません。そして何よりも、学術誌は売れないのです。

もうひとつはオピニオン誌(論壇誌)としての性格で、第5期はここに比重を置いてきました。できればワンテーマこそが、クオリティマガジンとしてのステータスを高めるものになるはずですが、編集部をオープンにした結果、ごった煮の雑誌となったわけです。あれもこれも載せてくれと、ぶ厚い雑誌になりました。

雑誌というものは雑なものの集合体、いろんなファクターを入れた大船ですから、それはそれでいいのですが、いまひとつテーマの掘り下げに苦しんできたのが実態でした。

新しい編集部(第6期・塩野谷編集長)は、ヘンに背伸びをせず(難しいテーマを抱え込まず)、身近なテーマを掘り下げるところに特長があります。創刊号は「宗教」、2号目は「動物」、今回は「音楽」でした。

「音楽」は鹿砦社通信でもたびたび取り上げられていますが、時代性とテーマをその中にふくんでいます。プロテストソングを80人以上のアンケートで実施、特集の記事も20本と多彩なものになっています。政治と音楽(芸術)というテーマそれ自体、メッセージや音楽性の相関、扇動性、快楽といったかなり広い論軸を持っているものです。

その意味で、政治的なテーマや経済論評、政治経済の提言や批評がやや有効性をうしなっている(論壇誌で残存しているのは『文藝春秋』『世界』『中央公論』ほどしかない)現状では、人間にとって切実な「動物=食物」「音楽=日常に接する音」から人間を掘り下げる。これはなかなか良い手法だと思います。次号は「メンタルヘルス」だそうで、やはり切実なテーマだなと思います。

◆鹿砦社の広告について

ところで、『情況』は鹿砦社様の広告を表3(巻末)に定期掲載しています。『週刊金曜日』が当該者(団体)の抗議で、鹿砦社の広告を拒否した契機となった『人権と利権』も掲載しています。当然のことです。ご出稿いただいていることに、あらためて感謝するものです。

明らかに差別や人権侵害を目的とした刊行物でないかぎり、その表現や主張に、結果として差別的な内容・人権侵害的な内容が含まれていたとしても、誌上で批判・反批判をするべきです。そこにこそ、イデオロギー闘争としての「反差別」「人権擁護」が成立すると考えるからです。

したがって、今回の『週刊金曜日』の措置は、ファシストの焚書行為に相当するものと、わたしは考えます。『人権と利権』は運動内部に存在する「利権」を暴き出し、健全な反差別運動の発展をめざす視点から編集されていると、一読してわかるものです。

内容に誤りがあり、あるいは不十分であると考えるならば、批判の論攷を書けば良いのであって、人の眼に触れさせないのは矛盾の隠ぺい、自由な批判を抑圧するものにほかなりません。

『情況』も、昨年の4月刊で「キャンセルカルチャー特集」を組みました。2021年の呉座勇一さん(日本中世史・『応仁の乱』が50万部のベストセラー)のツイッターアカウントをめぐり、女性蔑視とするネット上の論争が起きた件をめぐり、執筆者から「情況の不買運動」を呼びかける論攷も掲載しました。

反差別運動の基本は、現代社会が資本主義の景気循環において相対的過剰人口を生み出し、そこにレイシズムの歴史的ファクター(差別意識)が結合することで、差別を再生産する社会であること。この基本認識があれば、差別を排除するのではなく俎上にあげて、分析・批判することを通じて、差別意識を変革していくことが求められるのです。

差別は個人・組織が起こすものですが、差別社会にこそ原因があることを忘れるならば、差別者のキャンセル、排除によって変革を放棄し、結果的に差別を温存することになります。すなわち『週刊金曜日』の今回の措置(広告拒否)こそが、差別を温存・助長するものにほかならないのです。

◆共産同首都圏委の逃亡

「排除」といえば、本通信でも何度か取り上げてきた、共産同首都圏委のウクライナ帝間戦争論について、8月発売号の「ウクライナ戦争論争」(本誌特別解説班)で結論を書きました。

首都圏委は人づてに聞いたところ「横山と論争をしないことに組織決定した」というのです。「排除」いや「逃亡」です。もう笑うしかありませんが、かれらは書き散らした論旨改ざん(論文不正)、誤読・誤記、引用文献の版元の間違いなど、恥ずかしいばかりの誤報の後始末もしないままなのです。そこでわれわれが彼らに代わって、訂正とお詫びを誌面に書きました(苦笑)。

また、新たな論敵として労働者共産党(元赤軍派の松平直彦氏が代表)の批判も全面展開しています。同世代の元活動家、研究者たちから「メチャメチャ面白い」の連絡をいただいています。

紹介と論軸の提起が長くなりました。今後とも、鹿砦社の出版物とともに『情況』をよろしくお願いいたします。(筆者敬白)

変革のための総合誌『情況』2023年夏号[第6期3号]【特集】音楽

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模索舎 https://mosakusha.com/?p=6153 

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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東京電力福島第一原発事故から12年が経過した。岸田文雄政権は、それまでの「原発依存からの脱却」の方針を捨て、原発推進へと大きく舵を切った。原発の安全神話により過酷事故が起きた「福島の教訓」を忘れた暴挙といわざるを得ない。このままでは将来に大きな禍根を残すだろう。

政府は今国会で原子炉等規制法(炉規法)や電気事業法(電事法)を改正する予定だ。(※5月31日、炉規法、電事法、原子力基本法など5法を一括して改正すら「GX脱炭素電源法」が参院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主の各党の賛成多数で可決、成立した。)

そのうちの最も大きな変更点は、現在最長60年とされている原発の運転年数を事実上無制限化する「原発延命政策」である。これは老朽炉を酷使するだけであり、およそ政策とさえ呼べない乱暴なものだ。しかも、その運転延長年数には「長期運転停止期間」と、世界にも例のない不定形の延長期間を持ち込もうとしている。

◆唐突に原発推進が目玉政策に

「GX実行会議」で原発の新増設や運転期間延長など政策大転換を決定したのは昨年12月22日。

「エネルギーの安定供給と気候変動対策」を名目とするが、その根拠は極めて薄弱。原子力に依存する産業界や原子力ムラへの貢献が最大の理由だ。

国の将来を左右するエネルギー政策の大転換を、非民主的な方法で決めるプロセスにも正当性はない。政府自ら作り出した「エネルギー危機」を理由とするマッチポンプ式でもある。

そして次世代型原発の開発や建設との実現性のない構想を加えて、あたかも「安全な原発による推進」であるかの偽装までしている。2011年の東京電力福島第一原発事故後の「可能な限り原発依存度を低減する」との方針は、事実上放棄された。

この政策は、内閣府の「GX実行会議」という場で決められた。GXとは、「グリーン・トランスフォーメーション」のことだという。

「過去、幾度となく安定供給の危機に見舞われてきた我が国にとって、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する、戦後における産業・エネルギー政策の大転換を意味する」と、GXは説明されている( 「GX実現に向けた基本方針」より)。

これがどうして原発推進に姿を変えるのか。原発がクリーンエネルギーなど「3・11」以前の安全神話時代の妄想でしかない。

福島第一原発事故で広大な地域が汚染され最大16万4千人余が避難を余儀なくされた。今も傷は癒えず、 「震災関連死」と呼ばれる犠牲は増え続けている。なかったかのような議論の進め方は、あまりにも酷い。

首相が原発政策転換の意思を示したのは8月末、経産省が原子力小委員会などで報告書を急造し、4カ月後のGX会議で方針が決まる。このドタバタの動きは、昨年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーコストが急上昇し、世界的に原発を再評価する動きが始まった時期に付合し、機会を逃すなとばかり原子力推進派が原発活用政策をねじ込み、GX会議に押し込んだのだ。

GX会議には電力会社や既存の大企業の代表者が中心で構成されており、議論は非公開。不透明極まりない。すでに進行している電力自由のもとで電力市場で競争にさらされる日本の電力会社は、いまさら原発の新増設に投資することは難しい。

さらに、次世代と銘打った原発は、すでにフランスのアレバ社が建設を進めていたが、1基あたり1兆円を超える巨額の建設費と困難な建設工事で、政府が推進方針を示しても進まない状況が続いている。日本で同様の次世代原発を導入しようとしても同じ困難に直面することは明らかだ。

このような「エネルギー危機」は自然エネルギーシステムを中心にした分散型のシステムの開発や電源システム改革で、十分まかなえるものだ。

結局、電力会社にとって最も有利な、既存の原発をできる限り使い続ける方針が政策の本命とみて間違いない。(つづく)

本稿は『季節』2023年春号(2023年3月11日発売号)掲載の「『原発政策大転換』の本命 60年超えの運転延長は認められない」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ── 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
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