◆高速炉と軽水炉との違い

高速炉の燃料が1般の原発の燃料とどう違うのか。軽水炉の燃料から取り出すことができるプルトニウムは、核分裂性すなわち核兵器として使えるプルトニウムは239、241だが、核分裂性ではないプルトニウム238、240、242が3割以上含まれる。言い換えるならば、プルトニウムの純度が悪い。核爆発装置を作ることは出来るし、ナガサキ型原爆を作ることも可能だが、現代ではプルトニウムの核分裂を起爆剤に核融合により威力を発揮する核融合爆弾すなわち水爆が主流だ。

この水爆の起爆剤を作る場合、不純物の多いプルトニウムは不純物の発する中性子により早期爆発を引き起こしたり、中性子を吸収して逆に核爆発威力(収量という)を減衰させたり、発散する放射線が強すぎて周囲の回路や材料を劣化させたり、取扱者を被曝させるなど問題が多い。

しかし高速炉ブランケット燃料から取り出せるプルトニウムは不純物がほとんどない98%程度の純度である。これは原爆開発初期から存在する黒鉛炉と高速炉でしか製造できないので、フランスのラプソディ高速実験炉から取り出したプルトニウムがムルロワ環礁の地下核実験(1996年)に使用されたとき、世界中の核兵器関係者が注目したのである。

この核実験には米国エネルギー省も立ち会ったといわれている。米国が所有しない高純度プルトニウムによる核実験であった。フランスは高速炉から得た兵器級プルトニウムで400発の核兵器を製造したという。

日本が最初に導入した英国製の原発は、東海村で現在廃炉・解体中の東海原発だが、これは黒鉛炉だった。そのため英国と日本との取り決めで、使用済燃料は全量英国に返還し、日本には残されなかった。これは黒鉛炉の燃料から高純度のプルトニウムが生産できるからである。英国は黒鉛炉を使って核兵器開発を進めていたが、日本からのプルトニウムも使っていたといわれている。

核兵器生産に使える原子炉はもう1つ、重水炉がある。これは中性子を減速する材料に重水を使い、水で冷却する構造だが、プルトニウム239の純度を高く保つ運転が可能だ。実際にインドが核兵器用プルトニウムを生産したのはカナダから導入した重水炉からだ。

日本には重水炉も存在した。現在廃炉・解体中の「ふげん」がそうである。「ふげん」の使用済燃料は東海再処理工場で再処理されたが、1般の軽水炉のプルトニウムと混ぜて取り出すことになったため、核兵器級の純度を持つことはなかった。重水炉は「ふげん」しか存在しなかったし、黒鉛炉は東海原発しか存在しなかった。いずれも日米原子力協力協定による原子力開発が進められる過程で、以後は全部米国製軽水炉が採用されることになった。これは日本の核武装を阻止するためである。

これらの共通項は「プルトニウム239の高い純度」である。軽水炉でもまったくできないことはないが、そのためには断続的に運転を停止し頻繁に燃料を交換する必要がある。この燃料交換サイクルがわかれば、燃料から取り出されるプルトニウムの純度が推測できる。北朝鮮の原子炉の運転間隔が米国などの重要な衛星情報になっているのはこれが理由だ。

IAEAが日本の原発を常時監視しているが、その目的も核兵器開発を阻止するためである。そのため原子炉内には常に監視カメラが取り付けられており、運転時も停止時も止められることなく監視し続けている。主に使用済燃料プールの燃料体が計画外で取り出されていないか、あるいは運転間隔が不自然ではないかなどを監視しているとされる(「保障措置上の監視」という)。

◆核兵器開発を止めさせよう

日本の現状は、米国による東アジアの覇権を維持するために、日本にも「応分の負担を求める」として、防衛費を倍増させ、米国の兵器を爆買いさせてきた。これがアジアの緊張を高めていることは紛れもない事実である。

これに加え、日本の核武装の隠れもない姿勢は、核拡散も加速する恐れが出てきている。

北朝鮮が核兵器体系を高度化するためのミサイル実験を繰り返す中で、韓国にも危機感が高まり、プルトニウムを抽出する再処理を志向し始めている。韓国には重水炉もあるので、高純度プルトニウムを生産することも十分可能だ。

日本を筆頭に核なき世界に逆行する現状を転換しなければ、いずれ核軍拡競争がアジアで始まる。

日本が核武装を放棄するには、原子力政策、とりわけ再処理政策を放棄するほかはない。電力需要にまったく寄与しないばかりか、巨額の費用が投じられ、その分、電気代に跳ね返る再処理事業には、巨額の税金も投入されている。

環境を汚染し、核のごみを拡散させるだけの再処理工場を廃止させることから始めよう。

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論
〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
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『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関西電力

能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。

地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。南海トラフ巨大地震が起これば、連動して、各地の断層が動くとも考えられます。地震多発国に、原発はあってはなりません。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、原発推進法(「GX束ね法」)の実態化のために、「原発・再エネの最大限活用」を進めるとする第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関電は、本年5月、原子力規制委員会から高浜3、4号機の20年間運転延長の認可を得ました。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。

◆使用済み核燃料の乾式貯蔵が孕む2つの問題

ところで、原発を動かすと使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

ところが、乾式貯蔵には2つの問題があります。一つは、乾式貯蔵に移すことによって出来たプールの空間に、高放射線、高発熱の新しい使用済み核燃料を入れた場合、そのプールが崩壊すれば、大惨事に至ることです。

もう一つは、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場がないことです。関電や政府は、行き場として青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の目の再処理工場完成延期を発表しました。再処理工場が完成する見通しはありませんから、使用済み核燃料は行き場を失ったことになります。危険極まりなく、行き場もない使用済み核燃料の発生源・原発は全廃しなければなりません。

自公政権が、数を頼んで成立させた「原発推進法(GX束ね法)」は、関連法の整備が必要であるため、60年運転に関わる部分などは未だ施行されていません。完全施行は来年6月といわれています。脱原発を求める市民の行動が拡大すれば、骨抜きに出来、実行不能に追い込むことも出来ます。今が私たちの正念場です。目に見え、耳に聞こえる行動に起ちましょう!

※第118回「老朽原発うごかすな!実行委員会」実務担当者会議案内より抜粋転載

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

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オウムに殺されかけながらもカルトとの闘いを続ける滝本太郎弁護士、我が国を代表する現代フランス文学研究家・堀茂樹慶應義塾大学名誉教授、フェミニズム研究の第一線で闘う千田有紀武蔵大学教授、ご存知作家森奈津子らを中心として多様な言論・主張をまとめた『LJBT異論』が9月28日に発売の運びとなりました。ぜひご予約を!

※               ※               ※

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、ジェンダー論争、巨大利権の行方』
女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著
 

A5判 164ページ(本文160ページ+カラーグラビア4ページ) 
   定価990円(税込み)  
   紙の爆弾10月号増刊 9月28日発売

 

【内容】
1: [対談] 堀茂樹×滝本太郎 世界を席捲する新たなカルト=「性自認」思想の現在
2: 千田有紀 フェミニズムの再生を求めて
3: 井上恵子 東京大学三浦俊彦教授の記事に対する東京大学関係教員有志声明の批判──その問題点
4: 杉島幸生 『トランスジェンダーになりたい少女たち』から考える
5: キャロライン・ノーマ オーストラリアにおけるジェンダーイデオロギーから子供たちを救おうとする私の妹の闘い
6: 滝本太郎 LGBT理解増進法について
7: 滝本太郎 前提として知っておきたいこと
8: 滝本太郎 2つの考え方の図
9: 三浦俊彦 LGBT支援のための前提条件
10: 森奈津子 男性器つき女性を誕生させたい政治家たち
11: 滝本太郎 性自認主義の進展──特例法について司法の状況
12: 玉置祐道 女性スペースの管理と法律の現状と問題点
13: 益田早苗 LGBTQ当事者の子育て:子どもの安定した生活と最善の利益を守る
14: 郡司真子 学校で危ない性教育?
15: 滝本太郎 性自認至上主義は、カルト的な思想運動である
16: 斉藤佳苗 『LGBT問題を考える』を出版して

 

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000752

◆洋上風力発電をめぐる収賄事件

昨年9月27日、自民党の再生エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長である秋本真利衆議院議員が、洋上風力発電をめぐる収賄容疑で起訴された(自民党を離党)。

すでに贈賄により起訴された「日本風力開発」の塚脇正幸前社長の便宜を図る国会質問の見返りに、前社長から計7,286万円の賄賂を受け取った。

例えば2022年2月17日、秋本議員は国会で公募基準の見直し(運転開始の時期を評価するなど)を求めた。同年10月27日、秋本議員の質問に沿った「新公募基準」が公開されると、その翌日、前社長から1,000万円を受領したという。

このような収賄をめぐる秋本氏の疑惑には、再エネ議連の顧問で秋本氏が「おやじ」と呼んでいた菅義偉前首相、「兄貴」と呼んでいた河野太郎衆議院議員(現デジタル相)、さらに当時、経産相だった萩生田光1氏の関与も疑われる(「赤旗」日曜版2023年8月27日号)。

まず2021年12月24日、秋田県や千葉県の洋上風力発電の公募(いわゆる第1ラウンド)で、三菱商事を中心とする企業連合がすべて落札して「日本風力開発」などは失注した。

これについて菅前首相は入札の報告に来た経産省のエネルギー庁長官・保坂伸氏を長時間にわたり詰問した(前掲「赤旗」)。

また、萩生田元経産相は2022年1月7日、「他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みを検討しようと思っている」と記者会見で発言した。秋本氏の質問(2月17日)以前に入札の「仕組み」見直しを言及しているのである。そして萩生田氏は3月18日、入札の評価基準を見直すため、第2ラウンドの入札の締め切りを延長すると表明した(前掲「赤旗」)。

さらに河野氏は、「新公募基準」の公表について、同日(10月27日)ツイッター(現X)で「秋本真利代議士や柴山昌彦代議士(再エネ議連会長)のファイン・プレー」と賞賛した(前掲「赤旗」)。

秋本氏が事務局長を務める自民党再エネ議連には100名を超える議員が名を連ねているが、これらの議員の動きにも疑いの目を向けなければならない。GX基本方針に群がる企業・政治家2020年9月、菅前首相は所信表明演説で「2050年までに国内の温室効果ガス排出などを実質ゼロにする」と宣言した。そして、政府は昨年2月、 「GX(脱炭素)に関する基本方針」として、今後10年間に150兆円、そのうち再エネ拡大に20兆円を支出する、とした。このような巨額の資金に企業が群がり、その企業から政治家が甘い汁を吸う。

秋本氏は自民党内で原発の再稼働には反対して、「脱炭素」を推進するため、再エネ発電(特に洋上風力発電)普及を目指すべきだと唱えてきた(秋本真利『自民党発!「原発のない国へ」宣言2050年カーボンニュートラル実現に向けて』東京新聞2020年)。「脱原発派」(共産党なども含む)にも根強い「再エネ100%」という主張が秋本氏に活躍の場を与え、収賄につながった。

◆洋上風力発電そのものへの疑問

しかし、洋上風力発電そのものへの疑問をマスコミは取り上げない。また、「脱原発」を唱える人々の反応にも鈍い。例えば大島堅一・龍谷大学教授は次のように述べる。

「洋上風力発電は脱炭素社会を目指す上で主力電源となる可能性を秘めている。(中略)この事件だけをもって普及がストップするのも問題だ。事件と洋上風力発電推進は別物と考えるべきだろう」(2023年9月8日付け京都新聞)

しかし、本当に「事件と洋上風力発電推進は別物」なのか。脱炭素政策の根拠とされるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書については、これまで世界各国の科学者から様々な批判や異論が提起されてきたが、特に注目されるのが2019年に発表された「世界気候宣言──気候危機は存在しない」(以下「宣言」 )である。

シンクタンクのクリンテル(CLINTEL= Climate Intelligence)が集約し、今年1月現在60以上の国・地域の1800名以上の科学者が署名している。

日本でも田中博・元筑波大教授(気象学・大気科学専攻)ら6名が加わっている。

「自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす」 「地球温暖化は自然災害を増大させてはいない」などというものである(近藤邦明HP「World Climate Declaration『世界気候宣言』をどう読むか」)。

昨年8月にはノーベル物理学賞(2022年)を受賞したジョン・F・クラウザー博士もこの宣言に署名したことがインターネット上では話題になった。

しかし「気候危機」を煽る日本のマスメディアはこの「宣言」を全く取り上げない。

「人為的CO2温暖化説」 「気候変動」が疑わしいとすれば、 「脱炭素」政策自体が無意味である。また仮に「脱炭素」が必要だとしても、洋上風力発電については巨大な風車製作、設置工事、バックアップの火力発電の建設(出力変動が激しいため)などを含めれば、CO2(化石燃料)削減になるかも疑わしい。

しかも、洋上という常に潮風に吹かれ、台風という短期的に極めて厳しい負荷のかかる環境下では、劣化が激しく発電コストは著しく上昇することになる(近藤邦明HP「エネルギー問題・脱炭素社会について考える③」)。事実、「福島復興事業」として東京大学や新日鉄などが参加して鳴り物入りで建設した福島県の浮体式洋上風力発電のうち、世界最大級の直径167㍍の風車は2018年十月に撤去が決まった。設備利用率が3%止まりで不具合が頻発したためだという(2019年3月15日付け日本経済新聞)。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋号(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

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『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆何の利点もない「核燃料サイクル政策」

使用済燃料再処理・廃炉推進機構によると、日本原燃が建設中の再処理工場の建設費について、約4,000億円増額の約15.1兆円に達した。変動した要因は、新規制基準対応に係る検討、円安やインフレなどの経済指標などの反映、規制への対応や安定操業について追加対策を行ったこと、核燃料税などの税負担の反映などとしている。

また、敷地内に建設中のMOX燃料加工工場についても約200億円増の約2・43兆円となった。6月21日に発表した。

再処理事業は、膨大な放射性廃棄物を生み出す。これがどれほどのものかを知る方法がある。福島第一原発の現状を直視することだ。

現在、福島第一原発では、デブリと呼ばれる放射性廃棄物の取り扱いをめぐり極めて困難な状況が生じている。これをわずか1グラム取り出す計画すら、何年も停滞し続けている。デブリとは溶けた核燃料が制御棒や構造物やコンクリート材と混じり合って生じた高放射性物質の塊で、使用済燃料を再処理して生成される高レベル放射性廃棄物とプルトニウムとウランを混ぜたような存在だ。

デブリの取り扱いができないのだから、再処理工場で事故が起きた際に流出する可能性がある高レベル放射性廃棄物も手に負えないことは自明である。

東海再処理工場では、こうした高レベル放射性廃棄物が液体で372立方メートルも存在し、そのほかガラス固化体も354本貯蔵している。地震や津波などの災害、航空機落下などの事故や軍事攻撃を受けた場合のリスクは巨大だ。毎年数百億円もの規模で維持管理、廃止措置費用がかかっている。

これらは税金でまかなわれている。このような再処理事業を、一体何のために行ってきたのか、そしてさらに巨大な六ヶ所村再処理工場も建設中で、いずれ稼働することになっている。そのために「再処理拠出金(以前は引当金)」が徴収されている。事実上の税金であり、もちろん電気料金に付加されて徴収されている。概ね核燃料1グラム当たり700円程度である。100万キロワット級原発で1基あたり30トンほどの燃料が装荷されているから、単純計算で210億円である。

しかしこの程度の費用で済むとは考えられない。実際には遙かに大きな費用がかかる。再処理工場の稼働率が極めて低いことも考慮するならば、足りない分は税金を使って補填するしかない。

現状では残される廃棄物、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体やそれ以外の高レベル放射性廃棄物である燃料パーツ類などの金属残渣、そのほかにも除染により生じた廃棄物など、高い放射線を出す廃棄物類は、どのように処理・処分するのかも決まっていない。

◆今や隠さなくなった「核武装」のための原子力

原子力開発を巡っては、震災以前までは「平和利用」の名の下で「日本は核武装するとの謂れなき中傷」や「謂れのない国際的な疑惑」といった反論が席巻していた。震災後、原子力開発に急ブレーキがかかったところから、まるで開き直ったかのように政治家などから次々に「原子力をやめてしまったら国防上大きな問題を引き起こす」「潜在的核兵器開発能力が失われる」などと主張するものが現れる。つまり 「疑惑」でも「中傷」でもなく、明確に核武装を志向して実施されてきた核開発が厳然と存在したことを意味する。

開き直ったかのような「核武装オプション論」は、アジア諸国を強烈に刺激する。2013年、韓国では以前からくすぶっていた米国のダブルスタンダードへの反発が顕著になる。日米原子力協定において核武装国以外で唯1認めた「核燃料サイクル政策」についての懸念である。

再処理工場はプルトニウムを取り出すためには欠かせない施設だ。世界中で核兵器国以外で保有している国はない。日本が東海村に東海再処理工場を建設し始めた頃に、ジミー・カーター大統領(当時)が待ったをかけた。日米原子力協定においては核燃料はもとより、軽水炉についても米国から導入し、米国の技術で造られたものである。米国はこれに制限をつけており、平和利用以外の目的で利用しようとしたら差し止める権利を留保している。

事実上、米国の許可がなければ原発の建設も運転も、再処理工場の建設もできない。カーターは東海再処理工場の運転を差し止めようとした。これに猛烈に抵抗したのが日本政府である。様々な条件を受け入れながらも、再処理事業を実現することだけに固執し続けた。結果、1977年から1999年まで運転を続け、合計1140トンの使用済燃料の再処理を行い、その後の六ヶ所再処理工場計画も米国に認めさせている。

韓国は2014年に改訂された米韓原子力協力協定でオバマ大統領に対してウラン濃縮と再処理を認めさせようとした。結果は失敗に終わるが、これは日本の原子力政策に強く影響を受けたものであることは確かだろう。

中核施設は高速炉の再処理工場ここまでは軽水炉、日本で1般的な原発である沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉(合わせて軽水炉という)の燃料再処理について触れてきたが、過去に、そして今も日本が重要視しているのは高速炉の燃料再処理技術である。

現在、廃炉作業中の高速「増殖」原型炉「もんじゅ」は、1995年に発生したナトリウム火災事故に起因し、計画が頓挫したまま震災後の2016年に廃炉が決定した。運転した期間はわずか4ヶ月たらずだった。掛かった費用は本体建設だけで1兆2000億円、今後も約4000億円かけて廃炉にする計画だ。

この高速炉、原子力基本計画上の位置づけは「次世代炉」であり、言い換えるならばプルトニウムを消費しながら生産することが目的の原子炉だ。軽水炉の燃料を再処理して取り出したプルトニウムを高速炉の炉心燃料として装荷し、 周囲に「ブランケット燃料」(毛布のように炉心を覆うことからついた名称)に中性子を照射してプルトニウムを生産する。このプルトニウムをまた高速炉の燃料として使用すれば、1種の「循環」ができることから、核燃料のリサイクルが出来るとしていた。

実際には高速炉燃料のうち、炉心燃料の再処理は極めて困難であり、現実にはブランケット燃料の再処理だけが実用化される見通しだった。そのためにリサイクル燃料試験施設(RETF)という再処理施設を東海村に建設中だ。

RETFは高速炉のブランケット燃料からプルトニウムを取り出す再処理の技術開発を目的に計画され、約817億円を投じて2000年に地上6階、地下2階の建物を造った。しかし「もんじゅ」が廃炉になった今、建物だけが存在し中身である再処理設備は取り付けられていない。

三菱重工業が米国から提供された技術で製造することになっているが、使うあてのないものをさらに巨額の費用を投じて造る理由がないため、がらんどうのまま建物だけが建っている異常な状況である。

もちろん、国は諦めていないから、こうした中途半端な中断状態でも設備建設を続行する計画だ。というのは、ブランケット燃料体は「もんじゅ」だけでなく、茨城県大洗町にある高速増殖実験炉「常陽」にも残されている。これらを再処理することが当面の目的とされている。

「核開発に反対する物理研究者の会」が旧動燃、現在の原子力研究開発機構から1994年に得た情報によると、「大洗にある常陽において同位体純度99.4%の兵器級プルトニウムを22㎏生産し『もんじゅ』において同位体純度97.5%の兵器級プルトニウムを62㎏生産し、合計84㎏の兵器級プルトニウムを動燃は所有している」。

これを再処理してプルトニウムを抽出すれば、ただちに30発以上の核兵器を作ることができる。そしてこれを抽出する施設がRETFである。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


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◆1時間お話するのに、5時間かけて来て下さるつもりだった徳田靖之弁護士に感謝感激

9月14日の徳田弁護士講演会に参加された皆様、お疲れ様です。東京、広島、和歌山からの方々や差様々な活動をされている方々など多くの参加者に集まっていただきました。

徳田弁護士のお話の前に私が少し話させていただきました。講演会前にあるアクシデントが起きましたが、結果、それは徳田弁護士ら飯塚事件弁護団が飯塚事件をいかに多くの方々に伝えたいかがわかるエピソードとなったということについてです。

講演会開催のきっかけは、映画「正義の行方」を見て、飯塚事件をもっと知りたいと考えたからでした。


◎[参考動画]映画『正義の行方』本予告

6月5日、飯塚事件の第二次再審の結果が福岡地裁で下されました。青木恵子さんが現地に駆けつけるというので、徳田弁護士に講演依頼を頼んでおきました。徳田弁護士はすぐに快諾してくださり、日程は9月14日と決まりました。

その後、私が徳田弁護士にチラシを送るなど連絡をしておりました。チラシには夜6時半開演と記していたので、当然、徳田弁護士はその日大阪で泊まるだろうと考え、ホテルも予約しました。が、そのことを私は徳田弁護士には伝えていませんでした。青木さんから徳田弁護士には「交通費など経費はちゃんとお支払いします」と伝えて貰っていたので、そこには謝礼、ホテル代も含んでいますよと勝手に考えていました。いや、私たちはこれまでどんな集会、講演会をやるときも必ず交通費、謝礼、ホテル代を払ってきました。それは当然と考えてきました。

先週になって徳田弁護士に「講演のお時間はどのくらいとりましょうか」とメールをしますと、徳田弁護士から「8時41分の新幹線が最終となりますので、約1時間ですね」と返事がきました。「えっ?帰られるの?」。

嫌な予感がないことはなかった……。青木さんが徳田弁護士に「交通費など実行委で出します」と伝えた際、「交通費なんかいりません」といわれたそうです。そう、徳田弁護士は手弁当で来られるつもりだったのです。その場合、帰れるなら帰ろうと思われたのでしょうか? あとでお聞きすると翌日15日も地元で用事があるということで、14日中に帰っておきたかったのかもしれません。結果として「ではお言葉に甘えさせていただきます」と連絡があり、宿泊することになりほっとしたのですが。それにしても、約1時間お話するためだけに、4~5時間かけて九州から来ようとされていたとは……。(実際は5時間かかってました)。

私からは、そんないきさつがあったことと、お話にも質疑応答にもたっぷり時間をとれるため、参加者の皆さんもしっかりお話をお聞きし、飯塚事件をさらに広めていきましょうと訴えました。

当日の講演内容は、書き起こししてまたご紹介いたします。

◆冤罪「みどり荘事件」

徳田弁護士をお呼びするにあたって、徳田弁護士のこれまでのご活動などを調べました。そこに「正義の行方」に一緒に出ている岩田務弁護士とともに闘った冤罪「みどり荘事件」というのがありました。どんな事件かと読み進めていくと、「あっ、この事件だったのか?」とハタと気づくことがありました。

20年以上前ですが、冤罪事件の専門書みたいな本に、ある事件で、検察が提出した証拠の中に犯人のものとされる毛髪があり、それは「15・6センチのロン毛の金髪」だったが、逮捕された男性の毛髪はパンチパーマの短髪だったという事件がありました。私はそれを読み「おいおい、ロン毛の金髪とパンチパーマってどれだけ違うねん。」と突っ込んでいましたが、その後、それがどんな事件だったかは忘れていたのです。

改めてこの事件を調べると、男性には一審で無期懲役が下されましたが、控訴審では無罪となりました。たしか、パンチパーマの件では男性が通っていた理髪店の大将が証人で出廷し、「こんなバリカンでこう刈っている」と事細かに証言し、いかに絶対15・6センチになることはない」と証言し、いかに出鱈目な証拠であるかを明らかにしていました。

一審で無期懲役だった原因としてほかにも多々あるのですが、徳田弁護士ら弁護団は、接見を通じて男性ときちんと信頼関係を築くことができなかったこともあると猛省し、二審に必死で取り組むのです。

そして、最終弁論の日を迎えます。

「最終弁論で、弁論の結びとなる『結語』は徳田弁護士が行った。徳田弁護士は、第一審から弁護についた者として自ら担当を願い出て、誰にも相談することなくひとりで『結語』を書き上げていた。その内容は、自らの第一審での弁護活動を痛烈に自己批判するものであった」。

「徳田弁護士が弁論を終えると、2時間にわたる弁護側の最終弁論を静かに聞いていた傍聴席から大きな拍手が沸き起こった。永松裁判長は、『静かにしなさい』と拍手を制止した。そして、『こんな立派な弁論に対して失礼でしょう』と付け加えた」とあります。

その後、裁判長は男性に無罪を言い渡したのです。詳細は「みどり荘事件」で検索を!

◆12月1日には神戸で徳田弁護士による「菊池事件」の講演会が開催!

徳田弁護士は別の記事で「誰にでも間違いはある」と話されています。昨日もそんなお話をしました。重要なのは、間違いについて、なぜそうなってしまったかをきっちり反省し、次につなげていくことではないでしょうか。

徳田弁護士は青木さんに「主催される方々は、冤罪事件に詳しく、いろんな活動を支援している」と聞いていたそうで、「ちょっと緊張して来ました」とおっしゃってました。それでも「本当に来てよかった」と、なんども言っておられました。

6月5日の不当決定以降、即時抗告の準備などもあり、こうした講演会は14日が初めてだったそうです。親睦会では美味しそうに芋焼酎をロックで飲まれ、周囲の方と楽しくおしゃべりをしておりました。

なお、12月1日、神戸市教育会館で徳田弁護士による「菊池事件」の講演会が開催されるそうです。私も駆けつける予定です。皆さん、会場でお会いしましょう!!

◎[関連記事]徳田靖之さん 弁護士/辺境の声なき声 酌み続け(川名壮志)(2024年1月配信日本記者クラブHP)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

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月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは10月号(9月7日刊行)の注目記事を紹介します。

◆日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威
 取材・文◎青柳貞一郎

 

 

 米国で明かされた「検閲産業複合体」の存在

国境なき記者団が毎年発表する国別「報道の自由度ランキング2024」で日本は70位。戦争中のウクライナ(61位)にも劣ります。

一方、米国は55位。米国は憲法修正第1条に「言論の自由」が保証されているはずですが、2017年にオバマ大統領は、国家授権法(NDAA)に従って、米国にとって都合の悪い情報を選択・排除する連邦機関を作り、「Global engagement center(GEC。Engagement=関与)」と無難な名称を付けて、主に自国民を対象にしたプロパガンダ戦争に利用するため稼働させました。

それ以降、CNNやワシントンポスト、NYタイムズといった米国大手メディアはGECの検閲通りの情報発信をするようになり、これらのニュースを「権威」として受け売りする日本のメディアも(情報の真偽と関係なく)そのまま垂れ流すことになります。

米国でX(旧ツイッター)の検閲状況について詳細に報告したジャーナリストのマット・タイビ氏は、このGECやFBI、国土安全保障省などと政府が援助するシンクタンク、スタンフォード・インターネット・オブザバトリーなどの中立に見える非政府組織、大学、民間ファクトチェッカー会社などが統合的にフェイスブック、X、グーグル、ユーチューブなどのソーシャルメディア・プラットフォームを提供する民間企業に対する検閲を行なっており、検閲される企業側も一般の投稿を削除する役割を持つため、それら全てを民衆(社会)の意見や見解をコントロールする機能を持っているとして、「検閲産業複合体」(Censorship industrial complex)という名称で紹介しました。

この複合体は、豊富な資金を元に政府や権力者側にとって都合が悪いとされる情報を検閲・削除するとともに、民衆が信ずるべき“情報”を作成・拡散させる機能も持つとされます。

2023年3月9日、米国下院「連邦政府の武器化に関する特別小委員会」で証言した環境活動家でジャーナリストのマイケル・シェレンバーガー氏は、政府機関、学術機関、非政府組織などの拡大ネットワークがCOVIDの起源、ワクチン、バイデン親子のビジネス取引に関するメール問題、気候変動、再生可能エネルギーなどに関する問題について2016年から2022年の間に米国市民を積極的に検閲していた実態を、56ページに及ぶレポートで報告しました。

その中で彼は、世界対テロ戦争中に米軍が開発した、確立された心理操作の方法と、人工知能を含むコンピュータサイエンスのツールを組み合わせて、政府が「ファクトチェック」を装い検閲を行なっていると指摘しています。

そして検閲産業複合体はジャーナリストやソーシャルメディアに対して「正確な情報は偽情報」であり、「有効な仮説は陰謀論」であり、「検閲を強化することで報道が正確になる」と信じ込ませてきました。

 日本にも導入される検閲産業複合体

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n9c22237c5644

▼青柳貞一郎(あおやぎ・ていいちろう)
医師。医療・軍事ジャーナリスト。東京医科大学名誉教授。温暖化とコロナに流されない市民の会代表。ブログ https://blog.goo.ne.jp/rakitarou

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

『紙の爆弾』2024年 10月号

『さらば日大!』和田秀樹医師が暴く日本大学と「医学部」「医師界」の闇
旭川女子中学生凍死事件 再調査委員会が隠した社会の病巣 山田寿彦
安倍・岸田軍拡43兆円の無駄遣い 隠蔽主義の「カルト集団」防衛省・自衛隊 清谷信一
日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威 青柳貞一郎
広島市の妨害を民衆が打破 平和記念式典「反戦集会」 浅野健一
“勝ち目”のあるうちに退いた 岸田文雄首相「退陣表明」の裏側 山田厚俊
僚支配・憲法無視・米国追従 「能動的サイバー防御」とは何か 足立昌勝
国民より先に米国に“退職報告”していた岸田首相 
ウクライナの侵攻を「越境攻撃」と呼ぶ欺瞞 木村三浩
兵庫県知事パワハラ疑惑は「維新的」政治家の成れの果て 吉富有治
大屋根リング・会場周辺で“実測” 灼熱の大阪・関西万博 横田一
米大統領選の隠れた争点 日本製鉄のUSスチール買収計画 浜田和幸
子宮頸がんワクチンを打ってはいけない理由 「ワクチン添加物」という“毒” 神山徹
IOCの体質こそ根本原因 パリ五輪ボクシング“染色体問題”の本質 片岡亮
“性加害”補償進まぬウラで 旧ジャニーズと離脱組「TOBE」の明暗
地獄の黙示録1984+40 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 52 プレサンス元社長事件 尾崎美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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ごく普通の日常生活を送っていた人が、ある日とつぜん殺人罪で逮捕されることがある。彼と彼の家族の人生は大きく狂わされてしまう。

8月28日 大阪地裁は、羽曳野路上殺人事件で逮捕・起訴された山本孝さんに懲役20年を求刑して結審した。6月に裁判員裁判がはじまった際、弁護団長の伊賀興一弁護士は、審理が長期に及ぶこと、証人が非常に多いことなど前代未聞の裁判だと述べていた。私は結局一回しか傍聴できなかったが、最終弁論要旨を読むと、これで山本さんに有罪判決が出せるのか? と驚くばかりだ。

被害者は山本さんの隣に住む女性と愛人関係にある男性Aさんだった。隣人女性と山本さんは垣根の塀の上に置いた植木鉢を巡り、ちょっとしたトラブルをおこしていた。しかし、その際、Aさんが間に入り上手く収めてくれたため、山本さんは当初Aさんに悪い印象は抱いてなかった。

一方の女性も、その件が大きなトラブルとは考えていなかったようだ。事件後警察の事情聴取で、Aさんが抱えていたであろうトラブルについていくつか話していたが山本さんとの件は話していなかった。しかし警察に「ちょっとしたことでもいいから、他にないですか?」と聞かれたため、女性は山本さんとの件を話した。そして警察は山本さんを犯人と見立てていくが、山本さんを犯人と決めつけるあまり、ほかの者が犯人である可能性について捜査してこなかった。

しかし、捜査しても山本さんを犯人とする決定的な証拠はでてこない。それから3年……、新たに捜査主任になった森本氏のもと、山本さん以外に犯人となる者がいないか、いわゆる「つぶしの捜査」を行うこととなった。対象者が誰かは不明だが、事件から3年が経過していることもあり、対象者が協力的ではなく、警察は思うように事情聴取できなかったという。そして、事件から4年後、山本さんを犯人とする直接証拠がないまま、山本さんを逮捕した。

裁判では、Aさんが抱える様々なトラブルが明らかにされた。詳細は省くが、それは山本さんと女性が抱えていた「ちょっとしたトラブル」をはるかに超える深刻なトラブルだった。しかし、捜査側はそれらのトラブルについて、きちんと捜査せずに山本さんを起訴してしまったため、裁判では山本さんをむりやり犯人とするため多くの証人を作り法廷に出廷させてきた、ということだ。

証言者の中には、アバターの専門家までいる。「アバター? 映画『アバター』は面白かったけどな……」と思いながら最終弁論を読む進めるが、そもそもアバター云々はDNA型鑑定やルミノール反応などと違って、科学的捜査方法としての地位は確立されていない。それでもアバターの専門家に必死で証言させる検察……。

犯行現場近くの車のドライブレコーダーに残った映像からは、Aさんが背後から刃物で心臓を一突きされ殺害されていることがわかっている(検察は映像に映っている犯人の背恰好が山本さんと似ているとしている)。最終弁論によれば、「殺害方法は、Aさんと正面からすれ違って、本人確認したのち、隠し持っていた刃物を片手でスムーズに取り出し、被害者の背後から刃物を横向きに肋骨と平行になるようにして肋骨と肋骨の間から心臓を狙って約12センチの深さに達するほどの相当の力で心臓を一突きだけで殺害するというものであった」。

このとき、心臓を狙うけれども返り血がかからないような部位を素早く引き抜いて出血を抑えた刺し方をするなどの高度の医学的知識を、「スーパー勤務」の山本さんにはないだろう。さらに、そのような職業軍人なみの犯行を短時間で実行したのち、何食わぬ顔で家に戻り、出る前同様娘と居間でテレビを見て、いつも通り酒を飲んでいることなどできるだろうか。

ただ、残念なことだが、山本さんには犯人と疑われてしまう理由があった。それは警察の取り調べを受けた際、ちょっとした「うそ」をついてしまったことだ。事件の直前、自宅で娘とテレビを見ながら酒を飲んでいた山本さんは、Aさんの車が駐車場に着いた音を聞き、家から表に出た。駐車場から愛人宅に向かうAさんを監視するためだ。

というのも、Aさんも駐車場から愛人宅へ行く際、山本さんの家近くでタバコの吸い殻をポイ捨てすることなどがあり、そうさせないよう監視していたのだ。しかし、5分経ってもAさんが車から降りてこないために、山本さんは家に戻った。そして奥さんに「どうしたの?」と聞かれた山本さんは、散歩に行ってきたと「嘘」をついてしまった。これにも訳がある。山本さんの奥さんが、山本さんが隣人女性やAさんのふるまいをいちいち気にすることを嫌がっていたのだ。なので、山本さんは散歩と「うそ」をついてしまったのだった。

私は裁判を傍聴したのち、「日本の冤罪」を山本さんに送った。手紙を添えて……。返事はしばらくこなかった。拘置所に面会に通う青木恵子さんから、山本さんは手紙を書くのが苦手と言っていたと聞いた。(そうか、仕方ないか)と思っていたが、裁判が結審した数日後、返事が届いた。

裁判が終わりほっとしたのと、判決がどうなるか不安だという内容だった。そして……可愛い娘が2人います。名前は〇と〇です。早く会いたいですとも綴られていた。普通のお父さんの言葉だった。繰り返すが、そんな人が、職業軍人の訓練を受けたような殺害方法で人を殺せるだろうか?

ほかにも私が『日本の冤罪』で執筆しただけでも、「布川事件」「神戸質店殺人事件」「滋賀県バラバラ殺人事件」「東住吉事件」「湖東記念病院事件」「千葉県東金女児殺人事件」、そして本日9月14日(土)の講演会で徳田弁護士にお話ししていただく「飯塚事件」も……。多くの人たちが警察、検察、裁判所によって大きく人生を狂わされた。

◎[関連記事]徳田靖之さん 弁護士/辺境の声なき声 酌み続け(川名壮志)(2024年1月配信日本記者クラブHP)https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/35295

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

筆者は2024年9月6日、広島弁護士会館で行われた基礎経済科学研究所の秋季研究集会で「広島県における産業廃棄物問題と地域経済・社会への悪影響」と題して発表しました。

発表する筆者(右)

◆広島県の産業廃棄物問題 

広島県の産業廃棄物処分場の数は、2021年、全国で3番目。北海道の289、愛知の94に続く76か所です。特にいわゆる『安定型処分場』では54か所で2番目となっています。

「安定型産業廃棄物最終処分場」(以下「安定型処分場」)とは、性質が化学的に安定しているとされる廃プラスチック類、金属くず、ガラス陶磁器くず、ゴムくず、がれき類などの産業廃棄物(一般的には「安定5品目」で2006年10月1日からは、一定の基準を満たした石綿含有産業廃棄物も追加されています)を処分する最終処分場です。

処分場の構造は、「しゃ水工」と言われる「埋立処分場内の汚水の処分場外地中への浸出を制御するための工作物」を敷設しない素堀の穴です。簡単に言えば、シートすら敷かなくてよいのです。そして、処分場からの浸出水に対する処理も法令上は不要です。従って、有害物質を含む廃棄物が埋立処分された場合、有害物質が施設外に流出することになります。この安定型処分場は1980年代~1990年代に全国各地で問題となりました。日弁連はすでに安定型処分場の新規設置を禁止することも提言しています。安定型処分場を巡る問題の代表例としては香川県の豊島事件があげられます。

安定型といいながら、実際には車のシュレッダーダストなど有害物質が含まれるゴミが持ち込まれました。公害調停を経て、2024年現在も後始末が続いています。

こうしたことを背景に全国各地で住民や地元自治体による反対運動が起き、水道水源保護条例、環境配慮条例など表現は多様ですが規制する条例が制定されています。

これは、現行の廃掃法では、書類などの要件さえ整っていれば産業廃棄物処分場の設置を許可せざるを得ないからです。

そうした中、本県では、独自に規制する条例がつい最近まで県も市町も制定していませんでした。また、規制の運用でも他都道府県では抜き打ち検査が常識なのに、広島県ではそれもやっていません。そして、業者による展開検査もろくに行われていない状況があります。他都道府県が規制を強化する中で広島県だけ規制が緩いことで、全国から広島に産廃が流入しています。後述する三原本郷産廃処分場には、群馬や長野などのナンバーのトラックが入ってきています。

◆三原本郷産廃処分場 ── 汚染水流出、県は深刻化するまで放置プレイ

2018年4月、広島県三原市と竹原市の水源地のど真ん中にJAB協同組合による安定型処分場設置計画が持ち上がりました。

計画地 広島県三原市本郷町南方字観音平22179番地1 外関係地域 広島県三原市本郷南方 / 広島県竹原市新庄町
埋立面積 9万7,499㎡(マツダスタジアム約10個分)
埋立容量 112万6,000立方メートル(2~10t車両30台/日程度・160立方メートル/日)
国道2号から搬入
廃水計画 雨水・浸透水は調整池を経由後、自然流下で椋原川と日名内川に排水する
主な産廃排出場所 県内5割、県外5割(岡山、島根、大阪、京都、岐阜、愛知、静岡)

三原市でも竹原市でも住民が猛烈な反対運動を起こし、三原市議会では2019年10月、竹原市議会でも2020年の2月に反対の請願が全会一致で可決されました。

しかし、広島県の湯崎英彦知事は2020年、産廃処分場を許可してしまいました。住民側は、許可が下りるとほぼ直ちに広島地裁に産廃処分場許可取り消しを県に求める住民訴訟、また業者を相手取って産廃処分場の稼働を差し止める仮処分申請を行いました。2021年に住民側による稼働差止の仮処分申請が通ったものの、業者JAB協同組合が異議申し立て。紆余曲折を経て2022年6月までに広島地裁が認めてしまいました。2022年秋から産廃の持ち込み・投棄が始まりました。

2023年6月。三原本郷産廃処分場から異臭を伴った汚染水が流出していることが発覚しました。これを受けて県もようやく重い腰を上げ、産廃処分場内の井戸でBODが基準値を超過していたとして7月に警告を業者に行いました。しかし、井戸水の数値が元に戻ったとして、すぐに解除してしまいました。業者は、再検査時には井戸を真水で洗浄していたそうです。

仮に洗浄して薄まった水を検査しているのであれば、有害物の実態を把握するすべもありません。その後も、住民側の目視や簡易検査でも汚染水は明らかに出ているにもかかわらず、県も市も動かず、いわば「放置プレイ」が続いていました。県は調査も住民救済もしようとしなかったのです。

そのため、米作りをあきらめる農家も出てきました。他方で、広島地裁は2023年7月4日、広島県知事の許可の判断過程に看過しがたい過誤があったとして、産廃処分場許可を取り消すよう知事に命じる判決を下しました。しかし、湯崎英彦知事は判決を控訴しました。広島高裁における控訴審では、湯崎知事は、産廃業者JAB協同組合を被告側で補助参加させています。湯崎英彦知事は業者と一体となって県民に敵対しています。

こうした中で、住民の要求を受けて三原市当局は重い腰を上げて水源の保護に関する条例を制定しました。ただし、内容的にはパブコメでも寄せられた住民の意見が十分には反映されないものでした。市民の頑張りで委員会では市民側の修正案が可決されましたが、本会議では当局案が可決されてしまいました。

県が放置プレイを続ける中で、2024年夏、さらなる汚染水が発覚。筆者がうかがった7月21日には硫黄臭が漂い、妙なしょっぱい味がする水が流れていました。さすがに、これと前後して広島県警も動き、県も業者に対して指導を行いました。その理由は鉛の濃度が上回ったから、というものです。しかし、県の発表する文書では硫黄臭がするなどの状況は無視されています。現在の本郷処分場の汚染状況については、「廃掃法で規定されている場内の観測井戸のみ検査を行う」として、調整池や場外に排水されている汚水や河川の異常な泡や臭気、濁りについては検査や処置がなされない状況にあります。

なお、9月4日には、県は指導を解除し、処分場の操業を認めてしまいました。全くやる気なしと言うことです。こうした状況に現地の住民は8月末、国=環境省にも直訴をしています。環境省の職員も「広島県はこれでいいといっているのか?!」と驚いておられたようです。

さらに、産廃処分場下流の水田について、農協が玄米中の重金属検査を実施することを決定しました。

米が汚染されている可能性があるという異常事態です。それにもかかわらず、県は産廃処分場の操業を認めてしまっています。救われないのは農家です。


◎[参考動画]お米が植えられぬ三原本郷産廃、周辺のコメ重金属検査(広島瀬戸内新聞ニュース)

◆福島原発事故による放射性廃棄物流入の疑い

また、福島原発事故による放射性廃棄物が流入している疑いもあります。湯崎英彦知事は3.11当初の2012年、国よりも放射性物質の厳しい基準を打ち出していました。しかし、それを担保する厳しい検査などはなかった。そして、2013年11月に再選された後、基準を緩めてしまった。

広島県は産廃行政の運用は緩く、他都道府県では常識の抜き打ち検査などもされていません。こうした中で、産廃が流入し放題になっている恐れがあります。

◆上安産廃処分場 ── 不適切盛り土発覚、グローバル企業が買収

上安産廃処分場(https://equisenv.co.jp/facility/)は、上記JAB協同組合が1990年代末に設置したものです。その後、外資系グローバル企業エクイスが買収し、大幅拡張して現在に至っています。埋立容量2,146,901立方メートル 埋立面積114,601㎡

同社は福島県飯館村と上記広島市安佐南区上安に巨大な産廃処分場を所有。540億円もの投資を行っています。この上安産廃処分場は実は、地番を変えるなどのセコイ手法で保安林を勝手に伐採した上に、不適切な盛り土を行った上にできています。この上安産廃処分場については、前出の三原本郷産廃処分場問題が持ち上がった際、JAB協同組合について調べるために三原市民が独自に調査に行きました。その際に、汚染水が流出していることが発覚。広島市などに報告した経緯があります。

それまでは、広島市の行政はこの上安処分場について放置プレイだったのです。排水については一応是正の対応は取られたことになってはいます。しかし、不適切な盛り土の上である以上、いつ大雨災害で熱海のようなことになるかわからない状況です。なお、産廃処分場の設置許可は広島市内については政令市たる市当局が担当しています。一方、盛り土の規制は県が担当していたため、連携が取れていなかったという問題も指摘されています。

◆人口流出3年連続ワーストワンに追い打ち

広島県は2021年から3年連続で人口流出(転出超過)ワーストワンです。元々、広島県民は、18歳や22歳で大学進学や就職のために東京などへ行く傾向は強くあります。若い時は東京の有名大学や有名企業を目指す。ただ、30代、40代、50代で、「ゆったり子育てをしたい」とか「農業をしながらITや工芸などの自営業をしたい」などの思いで戻って来られる方も多くおられます。そのバランスで、コロナ禍前まではそこまでの人口流出にはなっていませんでした。しかし、いまや、10代20代だけではなく、男性の50代や70代以上を除くほぼすべての年齢階層、性別で転出超過になっています。

もちろん、広島県の産業構造として、特に若い女性に人気のIT関連の産業が弱いなどの問題はあります。しかし、Uターン組の不安要素にこの産廃問題がなっていることも無視はできないのではないでしょうか? 表立って口には出さなくとも、産廃が流入し放題の故郷に誰が帰りたいでしょうか? そんな故郷なら、「少々しんどくても東京でいいや」と思う人も多いのではないでしょうか?

実際に、三原本郷産廃処分場近くでも、Uターンをあきらめた人が出ているということです。三原本郷産廃処分場は氷山の一角です。筆者も、妻の親の実家がある地域で農業でもやろうかな、と考えたことがあります。しかし、「あそこは産廃処分場があるから農業を始めるのは止めた方がいいよ」と親族から止められました。

◆ゴミは流入、ヒトは流出から卒業を!

歴史的な経緯から、大昔から広島の産廃行政は緩いことで有名でした。昔はそれで済んだのかもしれません。しかし、いまは、他の都道府県が産廃処分場の設置について独自の条例などで規制をする。廃掃法の運用についても抜き打ち検査など厳しくするなどしています。広島県だけが、その中で取り残されていれば、広島に産廃が流入するのは当然です。

広島県は「広島料理や食材のPR」を2024年度の県政の大きな柱としています。それは結構なことですが、足元の水を悪質な産廃から守れないのに、食材のPRだけしてどうするのか? 問われます。

三原本郷産廃処分場については、
・県は汚染水の実態を調査し、被害を救済する。
・県は控訴を取り下げ、産廃処分場の設置許可を取り消す
・県が処分場の土地を買い取り、原状回復する。とともに、再発を防止するため、
・他都道府県に倣った水源保護条例を制定する。といった対応が今後必要です。

他県の方からは、
「なぜ、平和都市広島がこんなことになっているのか?!」
「なぜ、広島がこんな形で外資に狙われているのか?」
などとご質問をいただきました。  

筆者は、
「端的に言って県も市も、広島の政治が腐りきっているからです」
「国政の与党はもちろん、野党でも与党以上に知事や市長とずぶずぶのところがある始末だ」
「湯崎英彦知事も軸足は日本人と言うよりはほとんど米国人で外資ズブズブの方。素晴らしいのは平和宣言だけ」
「県民もカープやサンフレに夢中なのはいいけど、投票率が全国でも40位台と低いのはいかがなものか?」
とお答えするしかありませんでした。それ以上でもそれ以下でもないからです。
 
前日には平岡敬・元広島市長が「広島が広島でなくなっている」と市政の腐敗について糾弾されました。
 
わたしは「いかに、広島が腐っているか、よーく皆さんお分かりになったと思います。わたしはカープが好きだし、広島は心から愛していますが、政治が腐りきっているという意味では、広島を心から憎んでいます」とお話しをしました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆現在の核兵器状況

2024年、米、露、英、仏、中、インド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、およびイスラエルの9カ国は、合計で約1万2,121発の核兵器を保有しており、そのうち9,585発が運用可能と考えられている。

そのうち約3,904発の弾頭が運用部隊に配備されており、約2,100発は高度な運用警戒態勢に置かれているとされる。これは前年度より約100発増加している(ストックホルム国際平和研究所2024イヤーブックより)。

現在は、2009年4月プラハでの演説でバラク・オバマ米大統領(当時)の提唱した 「核なき世界」とは対局的に、冷戦構造の再構築とともに核戦力の拡大が続いている。

◆核開発が止まらないのは核武装のため

結論から述べると、日本で原子力開発とりわけ核燃料サイクル政策を維持し続ける大きな理由は、核武装技術を維持し取得するためである。

政府は原子力を「平和利用」と称し、エネルギー政策に利活用するとしている。しかし電源開発に位置付けるだけならば、核燃料サイクル政策を推進する理由はない。世界中で核燃料サイクルを所有して稼働させているのは米英仏ロシア中国に限られ、それ以外には存在しない。すべて核武装国でありそれらの核兵器開発を維持存続させるために核燃料サイクル(これらの国々にとっては核兵器サイクルに他ならない)を保有している。

原発を導入しようとした時代、1950年代からすでに、日本では核兵器開発に向けた技術開発を推し進める体制を作り上げてきた。

当時は、原子力開発は核兵器開発と同義であり、原子力開発を目指す国は必ず自国の核兵器開発を行う目的で導入した。

世界中でウラン濃縮、高速炉開発(高純度プルトニウム生産に必須)、再処理施設建設が模索され、一部は実現した。しかし核兵器の拡散が世界の平和に対する重大な脅威になるとの考えが主流になり、核拡散防止条約や核兵器開発技術の移転禁止を定めたロンドンガイドラインの制定などを通じて核兵器開発技術の非核国への移転禁止が大きな課題になった。

きっかけの1つが、カナダから重水炉を導入して1974年に核実験を成功させたインドの存在がある。インドは中国の核兵器開発に対抗するために核兵器開発を行い成功させた。その中国は旧ソ連に対抗するために核兵器開発を行った。その中国から技術を導入してパキスタンが核兵器を開発したが、これもインドへの対抗からである。

こうしたドミノ倒しのように、対立国が優位性を保つ、またはギャップを埋めようと核兵器開発を進めることは、核拡散防止条約があっても止められなかった。

4度の中東戦争を通じてイスラエルが核兵器を開発したのは、アラブ諸国への対抗だったが、これを支援したのはフランスと米国である。

そのイスラエルに対抗して核兵器開発を進めているのがイランである。印パ、中ソなども、それぞれが自国の影響力を維持、強化しようとする帝国主義的発想から、同盟関係にある国に秘密裏に核兵器技術を移転していたのである。

核拡散防止条約では、条約発効前に核兵器を保有していた米ソ英仏中に 「核兵器を保有し続ける権利」があるとされ、その後は条約内で核兵器開発はできなくなる。さらに条約に加盟していないインドの核兵器開発に衝撃を受け、ロンドンガイドラインの制定により核兵器転用可能技術の制限が決められた。

しかし日本周辺を見渡せば、米国への対抗姿勢から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核拡散防止条約から脱退して核兵器開発を進め、これに対抗して韓国でも核兵器保有論が高まっている。

「核なき世界」を志向し、ノーベル平和賞をもらったオバマ大統領による 「成果」は、その影響力を失うとともに崩れ去ろうとしている。

次期大統領を狙うドナルド・トランプは、前政権時代にすでに核の拡散も厭わない姿勢を示し、日韓が核武装してもかまわないとの立場だ。米国内や共和党がそうした考えに同調しているとは思わないが、例えば中国や北朝鮮の核の脅威や軍事的脅威を強調し続ければ、対抗手段としての核兵器保有議論は、今以上に無視し得ない影響力を持つことになる。

福島第一原発の事故以来、脱原発の世論が台頭する中でも核兵器を開発するために原子力技術を保有し続けようとする勢力には、絶好の国際状況であることは間違いないであろう。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

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