横浜副流煙裁判の本人尋問が2月9日に横浜地裁で行われた。筆者は、これまで何度も尋問を傍聴したことがあるが、この日の尋問は恐らくブラックユーモアとして記憶に刻まれるだろう。(事件の概要は、後述)

問題の場面は、日本禁煙学会の作田学理事長(医師)が、証人席に付いているときに起きた。作田医師の弁護人は、藤井敦子さんと酒井久男さんによる「作田外来」(日本赤十字センター内)への「潜入取材」を取り上げた。2019年7月のことである。

潜入取材の目的は、藤井さんにとっては情報収集である。4518万円の損害賠償を求められたわけだから、その原因を作った作田医師についての情報を集める必要があった。そこで藤井さんは、作田医師による診断書交付の実態を自分の眼で確認するために、酒井さんに付き添って「作田外来」を訪れたのである。診断書交付の様子を確認する必要があった。新聞社やテレビ局に40年勤務しても出来ない取材を、普通の主婦が自分の判断で簡単にやってのけたのである。

たまたま酒井さんには、衣類の繊維に対するアレルギーがあり、藤井敦子さんの目的とも合致したので、2人で東京都渋谷区の日本赤十字センターへ向かったのである。

この件は、筆者が『禁煙ファシズム』の中で暴露したので、作田氏らはこの本を通じて、入念な情報収集が行われていたことを知った可能性が高い。

 

作田医師の証言に抗議している酒井久男さん

◆作田医師、「ニコチン検査」に応じず

9日の尋問で、藤井さんと酒井さんの行動について作田医師は、次のような趣旨の証言をした……。

胡散臭い人間だと思った。二人が診察室をでたあと煙草の臭いを感じたので、職員に二人の後を追わせた。構内放送もしてもらったが2人は見つからなかった。

傍聴席の酒井さんは、仰天したように目を大きく見開いてあたりを見回した。唇が震えていたが言葉はでなかった。筆者は、酒井さんが喫煙者だと疑われているのだと思った。ところが作田医師が、原告席の藤井さんを指さして、喫煙者とは「あなただ」と断言したのだ。

作田医師の代理人は、藤井さんに対して、藤井さんが喫煙者かどうかを調べる検査(唾液にニコチンが含まれているか否かを調べる検査)を要求した。藤井さんは即座に検査に応じると言ったが、作田医師の側が検査を実施することはなかった。閉廷後に藤井さんが再度検査を求めたが、やはり応じることなく法廷を去った。

後日、酒井さんはSNSで呟いた。

「俺、食い逃げかよ?」

◆被告のA夫は出廷せず、診断書も未提出

被告のA夫は、9日の尋問に出廷しなかった。(A娘とA妻については、もともと尋問の予定がなかった)A夫は尋問の対象になっていたが、前回の弁論準備で代理人が、A夫が体調不良なので出廷できない旨を報告していた。裁判官は出廷が不可能であることを示す診断書を提出するように求めた。

しかし、弁護士は診断書を提出しなかった。車椅子で生活しており、外出できる状態ではないという。裁判官もそれを認め、結局、A夫の尋問は実現しなかった。25年の喫煙歴がありながら、作田医師から「受動喫煙症」の診断書交付を受け、それを根拠に高額訴訟を起こしたわけだから、藤井家としてはA夫から直接事情を聞きたかったはずだが、尋問そのものが実現しなかった。

※長期喫煙者が禁煙した後、煙草に対するアレルギー症状を呈することはよくある。しかし、長期の喫煙が人体に悪影響を及ぼしている可能性が高い。25年の喫煙歴がある患者を「受動喫煙症」と診断するには無理がある。

 

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

◆『禁煙ファシズム』を厳しく批判

藤井敦子さんに対する尋問の中で、被告弁護士がメディア黒書と『禁煙ファシズム』を批判する場面もあった。報道目的で裁判を起こしたのではないかと言うのだった。これに対して藤井さんは、「海外のメディアにも接している。上質なジャーナリズムに情報を提供しただけ」と答えた。

被告代理人が問題視した『禁煙ファシズム』の記述は、前訴の途中で藤井さんが、代理人を解任して本人訴訟に切り替えることを決め、筆者が支援の意思を表明した箇所である。

本人訴訟には興味があった。弁護士の大半は、早期の事件解決という観点から、事件を拡大することを嫌うが、本人訴訟になれば事件を拡大できる。裁判をジャーナリズムの土俵に乗せて、世間に訴えることもできる。裁判の進行に合わせて裁判書面をインターネットで公開することで、裁判の舞台を全国へ広げることができる。それは新しい司法ジャーナリズムの方法だった。それを実践してみたいとわたしは思った。

作田医師の弁護士には、こうしたジャーナリズムの手法が異常に感じられるのだろうが、現在の司法界の不透明な状況を見る限りでは必要な措置である。裁判の提訴と判決しか報じないジャーナリズムの方が未熟なのである。

媒体を「紙」から「電子」に切り替えても、「電子」の利点を最大限に利用しなければまったく意味がない。「電子」では、PDFなどで裁判資料の公開ができる。ウィキリークスのように。

横浜副流煙事件の「反訴」は、4月に結審する予定だ。

【横浜副流煙裁判の概要】

2017年11月、横浜市青葉区のすすき野団地に住むAさん一家(夫、妻、娘)は、階下のマンションに住む藤井将登(ミュージシャン)さんに対して、煙草の煙で「受動喫煙症」になったとして、約4500万円の損害賠償を求める裁判を起こした。しかし、将登さんの喫煙場所は、防音構造になった「音楽室」に限られており、煙は外にもれない。しかも、煙草の本数も1日に2、3本程度だった。横浜地裁はA家の訴えを棄却した。しかも、作田医師の医師法20条(患者を診察せずに診断書を交付する行為の禁止)違反を認定した。東京高裁でも将登さんは勝訴した。

判決が確定した後、将登さんと妻の敦子さんは、前訴そのものが「訴権の濫用」にあたるとして、約1000万円の支払いを求める反スラップ裁判を起こした。作田医師は、前訴の原告ではないが、少なくとも5通の意見書を提出するなど、裁判を全面的に支援した。そもそも作田医師が医師法20条を犯してまで診断書を交付しなければ、前訴は提起できなかった。こうした観点から、藤井夫妻は、反スラップ裁判の被告としてA家の3人と作田医師を提訴したのである。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年3月号

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◆裁判を起こされて何もしなければ、同様のスラップ裁判が起きる可能性がある

田所 結局高裁勝訴で藤井さんは上告なさらなかったのですね。

 

黒薮哲哉さん

黒薮 そうです。原告被告双方上告しませんでした。

田所 あの裁判は確定しましたが、逆に藤井さんが原告になり裁判を提訴されていると伺っています。

黒薮 藤井さんが被告の裁判をやっていた時から、もし勝つことが出来たら損害賠償請求をやりましょう、と話はしていました。その理由はこのような裁判を起こされて何もしなければ、同様のスラップ裁判が次々と起きる可能性があると考えたからです。ですから藤井さんにけじめはしっかりつけましょうと話はしていました。ただ裁判のことですので勝訴できる確信はありませんでした。幸いに横浜地裁と東京高裁で勝訴したので、前訴が終わった後、藤井さんが元被告を不当訴訟(訴権の濫用)で提訴に踏み切った訳です。

◆日赤病院のウェブサイトから作田氏の名前が消えた理由

田所 現在横浜地裁で係争中ですが、黒薮さんの情報によれば、展開は藤井さん有利に進行していると。

黒薮 訴権の濫用を認定させるハードルは非常に高いですから予断は許しませんが、いい方向へ展開していると思います。というのは藤井さんが日本赤十字病院を何度も取材して情報を引き出していたからです。どういう経緯で作田氏の関与した事件が起こったのかを追及しました。最初はあまり相手にされなかったようですが、裁判の判決が確定した後に、藤井さんらが作田氏を刑事告発して受理されたころから態度が変わりました。横浜地検は「不起訴」と判断したのですが、検察審査会が「不起訴不当」の判断を出したことが日赤を動かしたようです。日赤病院は、藤井さんに協力するようになったのです。

田所 検察審査会で「起訴相当」の判断が出るのは相当珍しいことですね。

黒薮 めったにありません。日赤病院は作田氏の診断書の作成プロセスを藤井さんの現代理人にしっかり説明をしました。しかも説明した内容について「事実に間違いありません」と記した書面に捺印したのです。作田氏にとっては非常に不利な情報が裁判所に開示されたわけです。日赤病院のような大きな病院では、診断書を交付するための基本的な方向性が定められており、それに沿って交付手続きをしなければなりません。ところが作田氏が横浜地裁に弁護士を通じて出した診断書は日赤病院が定める公式の手続きを取っていませんでした。

作田医師は、診断書をコピーして院外へ持ち出していました。これは日赤病院にとっても問題です。2019年11月に横浜地裁判決が原告・藤井将登さんを勝訴させた翌年の3月末、作田氏は日赤を除籍になりました。

田所 定年ではない?

黒薮 そこはわかりません。定年で辞めたのか、自主的に辞めたのか、日赤病院が除籍にしたのかはわかりませんが、日赤病院のウェブサイトから作田氏の名前が消えました。日赤病院が一つけじめをつけた可能性が高いと思います。

 

田所敏夫さん

◆4500万円請求の不自然

田所 それで藤井さんが損害賠償請求に踏み切った。被告は誰ですか。

黒薮 被告は作田医師と藤井さんを提訴した元原告。前訴を起こしたA家のお父さん、お母さん、娘さんです。ただA家の人たちが本当に物事を理解して裁判を起こしたのかのかどうかはわかりません。周りから「やりましょう」と言われて裁判をした可能性もあります。横浜地裁も、喫煙者の撲滅という政策目的で起こされた裁判である可能性を認定しています。

田所 その可能性のほうが高いと感じます。25年喫煙歴のある人が団地の斜め下の住民に4500万円の請求を求める裁判を起こすとは、印紙代だけでも相当かかりますから不自然ですね。私怨や思い込みだけではない可能性を感じます。

黒薮 横浜地裁の判決言い渡しには作田医師が姿をみせました。その理由はやはり「家の中でタバコを吸っても罰を受けるのだ」という判例が欲しかったのでしょう。その判例さえあれば家の中でタバコを吸っている人を、次々に裁判にかけることができる、という頭があったのだと思います。喫煙者を社会から容赦なく撲滅するための判例がほしかったのでしょう。(つづく)

◎遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫
〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後 
〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか? 
〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGs”の欺瞞
〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的

▼黒薮哲哉(くろやぶ てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学 消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY007)

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年3月号

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この記事は、毎日新聞・網干大津勝浦店の元販売店主が販売局員の個人口座に金を入金した事件の続報である。1月25日付けのデジタル鹿砦社通信で筆者は、『毎日新聞販売店、元店主が内部告発、「担当員の個人口座へ入金を命じられた」、総額420万円、エスカレートする優越的地位の濫用』と題する記事(以下「第1稿」と記す)を掲載した。

タイトルが示すように元販売店主が、「押し紙」を含む新聞の卸代金を販売局員の個人口座に入金するように命じられたとする内容である。元販売店主による内部告発だ。

「押し紙」の回収風景。本稿とは関係ありません。

これに対して毎日新聞東京本社の社長室は、筆者がコメントを求めたのに対して、「調査中であり、社内で適切に対応していきます」と回答した。

その後、筆者は不透明な入金を裏付ける別のデータを入手した。と、いうよりも筆者が、第1稿を公表した際に見落としていたデータがあったのだ。本稿では、新たに分かった店主による入金の年月日と入金額を補足しておこう。

金銭の振り込みを命じた毎日新聞社の人物は、第1稿で言及したのと同じ山田幸雄(仮名)担当員である。既に述べたように筆者は、1月5日に現在は毎日新聞・東京本社に在籍している山田担当に対して電話で、次の3点を確認した。

①電話の相手が、毎日新聞社販売局に所属している山田幸雄氏であること。

②山田氏が大阪本社に在籍した時代に、網干大津勝原店を担当した時期があること。

③網干大津勝浦店の元店主(内部告発者)に面識があること。

◆支払いの年月日と金額

新たに分かった金の振り込み年月日と金額は次の通りである。

※資料との整合性を優先して、日付けは例外的に元号で表記する。読者の混乱を避けるために西洋歴も()に記した。

・平成30年12月03日:900,000円(2018年)
・平成31年01月04日:800.000円(2019年)
・平成31年02月04日:800,000円(2019年)
・平成31年03月05日:1,453,090円(2019年)
(以上の裏付けは、西兵庫信用金庫の預金通帳等による)

・令和02年02月05日:895,382円(2020年)
(以上の裏付けは、西兵庫信用金庫の取扱票等による)

今回、明らかになった山田担当への入金額は、約485万円である。前回の記事で紹介した額の総計は、約420万円だった。現時点で判明しているだけでも、約900万円のグレーな資金が発生したことになる。

本稿で紹介した5件のケースでは、金が振り込まれた時期がいずれも月の初旬になっていることに着目してほしい。販売店が前月の新聞代金の集金を完了する時期と重なる。読者から店主が集金した購読料を、山田担当の個人口座に振り込んだ構図になる。

当時、元店主は深刻な「押し紙」で苦しんでおり、担当員から「自分の口座に金を振り込めば、便宜を図る」という意味のことを言われたと話している。つまり新聞代金の一部を個人口座に振り込めば、「押し紙」を含む新聞代金の支払いを免除すると言うニュアンスである。店主が不透明な金を振り込んだ動機と、店主が直面していた「押し紙」問題が整合している。

◆Twitter上で「担当員が納金立て替えて」

ネット上では、この問題に関するTwitterによる投稿も現れた。たとえば、「元店主」というアカウント名の次の投稿である。

面白いなぁ。
担当員が納金立て替えてて、その返済の可能性は? 最後の方、金額が2万とか5万とかしょぼくなってるのは返済に窮していく感じするけど。続報楽しみ。

この問題に関する「元店主」というアカウント名によるTwitter投稿

「裏金」の目的は、店主の説明によると、「押し紙」を軽減してもらうためであり、Twitterの「元店主」の推論は、「押し紙」代金を払うための担当員への借金の返済である。

一方、山田担当は、この件について「記憶にない」と話している。(1月5日の電話)。

しかし、元店主が西兵庫信用金庫の口座から、「やまだゆきお」名義の口座に多額の資金を振り込み続けた記録があり、金銭が移動したこと自体は公式の書面上では紛れない事実である。筆者は、さらに取材を進める。(つづく)

「押し紙」の回収風景。本稿とは関係ありません。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

月刊『紙の爆弾』2023年3月号

東京都江東区にある高層マンションに楽天モバイルが通信基地局を設置する計画が浮上して、住民の一部から健康被害に対する不安の声があがっている。問題になっているマンションが立地しているコミュニティーは東京湾に近く、海の輝きが空に反射して白光を放っているかのような、明るく近代的なイメージがある。何棟もの高層ビルがそびえている。都心にも近く、住環境としては申し分がない。その生活圏へ楽天モバイルが事業を拡大してきたのである。

同じような問題が全国各地で起きている。電磁波問題は化学物質による汚染とならぶ新世代公害の代表格にほかならない。正体が透明で認識が難しい。

さまざまな形状の携帯電話基地局

筆者は2005年から通信基地局からの電磁波問題を取材しているが、今回、楽天が設置を計画している基地局は、マンションのエントランスの「天井内」に設置するタイプのものである。従って外部からは目視できない。

同じようなタイプの基地局設置は、大阪市浪速区など他の地域にある高層マンションでも問題になったことがある。浪速区のケースでは理事会の総会で却下された。電磁波による人体影響を懸念する住民の声が強かったからである。理事会が住民の安全を賃料収入に優先した結果にほかならない。

ちなみに浪速区の件では、楽天モバイルは建物の屋上にも基地局を設置する計画を打診していた。

楽天モバイルは2023年度のうちに基地局の数を全国で6万基超にする計画を立てている。それにともない筆者のところに、「トラブル相談」が殺到している。大半のケースは解決しているが、和歌山県や千葉県の市川市では、一部住民の反対を押し切って基地局設置を強行した経緯がある。

他の電話会社も各地でトラブルを起こしており、KDDIのケースでは、住民が裁判所へ調停を申し立てる事態にもなっている。

◆電磁波による人体影響の何が問題なのか

携帯電話やスマホには、おもにマイクロ波(ミリ波を含む)と呼ばれる帯域の電磁波が使われる。マイクロ波による人体影響をどう評価するのかという問題の答えは、専門家により、あるいは筆者のような取材者によりかなり異なる。

かつて電磁波・放射線はエネルギーが高いガンマ線やエックス線などには遺伝子毒性があるが、エネルギーが低い電線などから漏れるものは安全だと考えられていた。しかし、現在では、電磁波・放射線のエネルギーの大小にはかかわりなく人体影響があるとする説が欧米で有力になっている。

筆者が最も懸念しているのは、マイクロ波の持つ遺伝子毒性である。遺伝子を傷つけて癌を発症させる要因のひとつになる可能性である。「電磁波過敏症」の人が一定の割合で存在することは紛れない事実だが、その中に心因性のものがかなり含まれている可能性も否定できない。基地局の直近に住んでも、頭痛や吐き気など知覚できる症状が現れていない人も多いからだ。

従ってマイクロ波の危険性を評価するためには、心因的な要素を排除した客観的な動物実験や疫学調査の結果を検討する必要がある。とりわけ疫学調査は、人間を対象としたデータの科学的な分析であるから信頼度が高い。医学的な根拠よりも優先するのが世界の常識となっている。

◆ブラジルの疫学調査、基地局に近いほど癌による死亡率が高い

2011年、ブラジルのミナス・メソディスト大学のドーテ教授らは、携帯基地局から住居までの距離と発癌リスクの関係を検証する大規模な疫学調査の結果を公表した。調査対象は、ベロオリゾンテ市。この地域で1996年から2006年の間に癌で死亡した7191人を対象として、それぞれの自宅と直近の基地局の距離を測定し統計としてまとめたのである。(一部、癌死亡者の統計が若干欠落している年がある)その結果、基地局に近い住居に住んでいた人ほど癌による死亡率が高いことが分かった。

次の図は、癌による死亡者の住居から基地局までの距離を示したものである。

ブラジルの疫学調査をまとめた図表

7191人の癌死亡者のうち、3569人が基地局から100メートル以内に集中している。基地局から離れれば、離れるほど癌による死亡率は下がる。

ドイツには、医師たちが1993年から2004年までナイラ市で行った疫学調査のデータがある。調査を公平に実施するために特定の団体から資金提供は受けなかった。調査対象は、調査期間中に住所を変更しなかった約1000人の医療機関への通院患者である。基地局は93年に最初のものが設置され、その後、97年に他社の局が加わった。合計で2局である。

実験の対象患者を基地局から400メートル以内に住むグループ(仮にA地区)と、400メートルより外に住むグループ(仮にB地区)に分けた。そして2つの地区における発癌の情況を比較した。

最初の5年については、癌の発症率に大きな差がなかった。しかし、99年から04年の5年間でA地区の住民の発癌率が、B地区に比べて3.38倍になった。しかも、発癌の年齢もA地区の方が低年齢になった。たとえば乳癌の平均発症率は、A地区が50.8歳で、B地区は69.9歳だった。

さらにイスラエルでも、類似した疫学調査が行われ、同じような傾向が示された。これらの疫学調査が行われたのは、5Gよりもはるかにエネルギーの低い電磁波が使われていた時代である。電磁波のエネルギーが高くなれば、それに連動して人体影響も顕著になるという確証はないが、紫外線よりもエックス線が、エックス線よりもガンマ線の方がより危険度を増す事実から察すると、5Gの電磁波は旧世代の携帯電話に使われた電磁波よりもはるかに高いリスクをはらんでいる。

ちなみに現在では、基地局の数が増えすぎて、この種の疫学調査は実施そのものが困難になっている。

◆心臓に悪性腫瘍が増えたことを示す「明確な証拠」

ラットを使った動物実験でも、マイクロ波による発がん性は裏付けられている。たとえば2018年、アメリカの国立環境衛生科学研究所は、NTP(米国国家毒性プログラム)の最終報告を行い、動物実験でマイクロ波と癌の関係が明白になったと発表した。

最終報告によると、動物実験の期間である2年間に、オスのラットの心臓に悪性腫瘍が増えたことを示す「明確な証拠」が得られたという。一方、マイクロ波を放射しなかった実験群のラットに心臓の腫瘍は発生しなかった。

NTPは10年に渡る長期プロジェクトで、予算も3000万ドル。最大級の国家プロジェクトである。

同じ年に、イタリアでも同じような動物実験の結果が発表されている。米国の実験は、おもに携帯電話末端からのマイクロ波を想定したもので、イタリアの実験は、基地局からのマイクロ波を想定した実験である。いずれも人体への影響(発癌性)があると結論付けた。

◆規制値の国際比較

こうした欧米の動きを反映しているかのように、たとえば欧州評議会はマイクロ波の安全基準を厳しく設定している。日本の総務省が定めている規制値よりも、1万倍も厳しい数値になっている。次に示すのが数値の国際比較である。

・日本: 1000 μW/c㎡
・スイス: 9.5μW/c㎡
・欧州評議会: 0.1μW/c㎡、(勧告値)

総務省の規制値は1990年に制定されたもので、その後の疫学調査や動物実験を正しく反映していない。検証は行ったが、「安全」として改訂していない。現時点で医学的な根拠が解明されていないから、欧米なみに厳しく規制する必要はないという考えに立っている。その背景にどのような力が働いているのかは分からない。

◆「予防原則」が最優先

東京都江東区で浮上している楽天モバイルの基地局問題を放置することは、住民を人間モルモットにすることに等しい。5Gのマイクロ波による人体影響があるかどうかを判断するためには、少なくとも10年の観察を要する。長期にわたり5Gマイクロ波を浴び続けたとき、人体がどうなるかを示すデータはまだ十分に存在していない。

と、なれば過去の疫学調査や動物実験の結果を尊重して、リスクを回避するのが正しい選択肢なのである。個々の住民がその権利を持っている。「予防原則」を優先すべきなのである。楽天モバイルは、それを尊重しなければならない。

◆楽天モバイルへ質問状

筆者は、楽天モバイルの広報部へ次の質問状を送付した。また、電話で真摯に回答するように求めた。

質問項目は次の5点。

1,基地局の設置に反対者がいるのに工事を進めるのか?

2,健康被害が出た場合、貴社は補償するのか?

3,今後、新しい入居者に対して電磁波のリスクを説明するのか?

4,電磁波の「非熱作用」についての楽天の見解

5,楽天から政界関係者に対して、過去に政治献金の類いを贈ったことはあるか。

◆楽天からの回答

楽天モバイルからの回答は次の通りである。

お世話になっております。楽天モバイル広報部でございます。
ご質問の件、以下の通り回答申し上げます。

1,基地局の設置に反対者がいるのに工事を進めるのか?
2,健康被害が出た場合は貴社は補償するのか?
3,今後、新しい入居者に対して電磁波のリスクを説明するのか?
4,電磁波の「非熱作用」についての楽天の見解

1~4への回答:
個別の基地局に関する回答は差し控えます。

5,楽天から政界関係者に対して、過去に政治献金の類いを贈ったことはあるか。

5への回答:
回答は差し控えます。

以上、ご確認の程、よろしくお願いいたします。

楽天モバイル広報部

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

2023年を展望という大上段な気分ではなく、現状確認とこれからの方向性を探るために、一度黒薮哲哉さんとじっくり時間をかけて直接お話がしたい、と昨年後半から感じていた。1月20日私の希望は実現した。3時間半にわたって休憩をはさむことなく、「横浜副流煙事件裁判」、「押し紙」、「中南米情勢」など各論から「ジャーナリズム」の課題や新自由主義の諸問題まで話題は広がった。3時間半あれば深くはないにせよ一応語り尽くすことはできるだろう、との計算はわたしのミスだった。時間が圧倒的に足りなかったのだ。だぶん黒薮さんも同様にお感じではないだろうか。

いずれにせよ、以下は黒薮さんにわたしが伺う形を基本とした、2023年1月における「現状確認」と「方向性」の模索である。お忙しい中時間を割いていただき、原稿の校正にも快く応じてくださった黒薮さんに感謝するとともに、この対談(インタビュー?)が、読者のみなさんにとって何らかの示唆となれば、幸いである。(田所敏夫)

◆横浜副流煙事件裁判 ── なぜ原告の訴えは棄却されたのか?

田所 藤井さんの事件についてあらためてお伺いいたします。横浜副流煙事件裁判は、藤井さんが提訴されて一年目くらいから黒薮さんは取材を始められ、藤井さんが元の代理人を解任された後、黒薮さんも加わっての本人訴訟に切り替わったのですね。

黒薮 厳密にいえば藤井さんがご自分の判断で元の弁護士を解任し、ご自分で書証の準備をされていました。それをチェックしてほしいと要請があったので読んでいる中で、これは支援しようと私も思い立ち支援に加わりました。最初に取材した時は、支援に加わるつもりはなかったのですが。

田所 そうですか。そして結論は地裁判決で完全勝利のうえ、診断書を書いたとされる作田学医師の行為が医師法20条違反との判断を得られました。高裁でも原告の訴えが完全に棄却され、藤井さんが勝訴が確定したわけですね。

 

黒薮哲哉さん

黒薮 そうです。

田所 事件についての裁判所の判断は、極めて妥当だと思いますが、この事件は多様な問題を含んでいるように思います。「禁煙ファシズム」や「スラップ訴訟」の側面もありますし、映画化で焦点化された「化学物質過敏症」の問題にも関わります。

黒薮 この事件について知った時、最初に感じたのは訴訟自体がおかしいということです。約4500万円を藤井さんは請求されていたわけで、これは一般に言われている「スラップ訴訟」だと感じました。厳密にいえば「スラップ訴訟」は住民運動などに対する大企業による訴訟を指しますが、日本では広く「不当な訴訟」と理解されています。それが問題だと思ったのが藤井さんを支援した理由の一つです。また禁煙ファシズムの問題も感じました。

田所 その時点でこの事件が映画化されることは予想されましたか。

黒薮 映画になることは予想はしなかったです。ただ、最初藤井さんにお会いした時に書籍にまとめるべき重いテーマだと思いました。藤井さんにも、書籍にすれば広く訴えることができますよ、と伝えました。


◎[参考動画]映画 [窓] MADO 予告篇

 

田所敏夫さん

◆スラップ訴訟の後ろに宗教団体?

田所 この事件で原告を支えたのは日本禁煙学会とその理事長である作田学氏ですか。

黒薮 日本禁煙学会は、原告を組織的に支援したということは否定していますが、作田氏は5本も意見書を裁判に書面を出しています。意見書などですね。一般的に専門家に意見書を書いてもらうには1通につき30万円位かかると言われています。そうすると常識的には個人が負担するには過重ですよね。ですから何らかの組織が原告支援に関わった可能性は高いと思います。

田所 聞き及ぶところによると何某教の方々と仲のいいかたがただと伺いました。

黒薮 そうですね。

田所 藤井さんも、田所の認識と同じだ、とおっしゃっています。

黒薮 私もそうだと思います。本当のところはね。

田所 「宗教と政治」が昨年大きな問題になりました。もしも宗教がスラップ訴訟の後ろにいることが事実であれば、大変なことですね。

黒薮 宗教団体、とくに新興宗教の人たちは自制心なしに感情に任せて行動してしまう人が多いです。そのような流れが背景のひとつにはあったと思います。(つづく)

◎遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫
〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後 
〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか? 
〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGs”の欺瞞
〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的

▼黒薮哲哉(くろやぶ てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学 消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY007)

毎日新聞・網干大津勝原店(姫路市)の元店主から、筆者が入手した預金通帳や「取扱票」を調べたところ、元店主から毎日新聞社の担当員の個人口座に繰り返し金銭が振り込まれていることが判明した。金銭どのような性質のものなのかは現時点では不明だが、この販売店は昨年の12月に、「押し紙」が原因で廃業に追い込まれており、金額の中に「押し紙」により発生した金額が含まれていた可能性もある。

元店主は、次のように話している。

「山田幸雄(仮名)担当から個人口座への金銭の振り込みを命じられました。『押し紙』代金の支払いに窮しており、指定された個人口座に新聞代金を振り込めば、特別な取り計らいをすると言われました」

筆者は、毎日新聞・東京本社の山田担当に電話で事実関係を確認した。まず、本人が毎日新聞社販売局に所属している山田幸雄氏であることを確認した。次に山田氏が大阪本社に在籍した時代に、網干大津勝原店を担当した時期があることを確認した。さらに元店主と面識があることを確認した。

しかし、山田氏は元店主による告発内容については、「記憶にない」と話している。

「毎日新聞」の「押し紙」(ビニール包装分)、折込チラシ(新聞包装分)。いずれも秘密裡に廃棄されている

◆総額約420万円の内訳明細

元店主が山田担当の個人口座に送金した日付と金額は次の通りである。

※記録性を優先して預金通用が採用している元号で表示する。

平成30年4月10日:200,000
平成30年6月7日: 100,000
平成30年7月2日: 550,000
平成30年7月23日: 80,000
平成30年9月3日: 900,000
平成30年10月1日:900,000
平成30年11月1日:900,000

令和2年1月17日: 50,000
令和2年2月6日: 20,000
令和2年2月17日: 300,000
令和2年3月6日: 90,000
令和2年4月7日: 50,000
令和2年5月19日: 50,000

平成30年度(2018年)の合計は、363万円である。また令和2年度(2020年度)の合計は、56万円である。総計で419万円が山田担当の個人口座に振り込まれたことになる。

個人口座への振り込みを裏付ける資料の一部。取扱票

◆里井義昇弁護士が新聞代金・約3,900万円を請求

既に述べたように元店主は昨年12月に販売店の改廃に追い込まれた。その際に、毎日新聞社から、里井義昇弁護士(さやか法律事務所)を通じて、3,915万5,469円を請求された。請求の中身は、里井弁護士によると、「未払新聞販売代金」である。仮に元店主が山田担当の個人口座に振り込んだ金額に、「押し紙」で発生した卸代金が含まれていたとすれば、里井弁護士が行った約3,900万円の請求にも問題がある。

実際、元店主は同店には大量の「押し紙」があったと話している。「押し紙」を排除してほしかったから、担当員の個人口座に金銭を振り込んだのである。

「押し紙」の程度については、現在、発証数などを過去にさかのぼって調査しているので、詳細が判明した段階で公表する。

◆背景に新聞社の優越的な地位
 
新聞社の系統を問わず、販売店主が担当員の個人口座に金を振り込まされたという話は、しばしば耳にしてきた。昔は、「担当員になればすぐに家が建つ」と言われた。店主が担当員を接待するのは当たり前になっている。網干大津勝浦店の店主も新聞社の担当員らを姫路市の魚町で接待することがあったという。

今回、筆者が得た預金通称など内部資料により、金銭の流れについての裏付けが得られた。

新聞社の販売店に対する優越的地位の濫用はここまでエスカレートしているのである。

【毎日新聞・社長室のコメント】
 調査中であり、社内で適切に対応していきます。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

デジタル鹿砦社通信(1月14日付け)で紹介したYouTube番組に、SNS上で波紋が広がっている。ニューソク通信が配信した須田慎一郎さんの下記インタビュー番組である。既にアクセス数は、10万件を超えた。


◎[参考動画]内部告発で医療界に激震!!安易な診断書交付が悲劇を生む!!化学物質過敏症の深い闇!!横浜副流煙裁判との共通点とは…?

配信直後からSNS上で、出演者に対する批判が広がった。それ自体は、議論を活性化するという観点から歓迎すべき現象だが、ツィートの内容が事実からかけ離れたものがある。わたしに対する批判のひとつに、「取材不足」という叱咤があった。化学物質過敏症がなにかを理解していないというのだ。

 

◆「その他のご質問に関しましては、回答を控えさせて頂きます」

この番組は、化学物質過敏症の専門医である宮田幹夫医師による診断書交付に科学的根拠が乏しいという主張を、舩越典子医師が展開したものである。患者の希望に応じて、宮田医師が診断書を交付している節があるという告発である。

告発の根拠となったのは、宮田医師が舩越医師に送付した書簡だった。そこには舩越医師が宮田医師に紹介した患者についてのコメントが記されている。患者が精神疾患なのか、それとも化学物質過敏症なのか診断できないのに、「エイヤア」の精神で診断書を交付した経緯を宮田医師が自ら記している。舩越医師はそれを医師としての重大な過ちと受け止めたのである。

既に述べたように、SNS上で炎上しているわたしに対する批判のひとつに「取材不足」という指摘がある。わたしが宮田医師や他の専門医を取材していないという批判である。たとえば網代太郎氏の次のツイートだ。

黒薮氏は、おそらく宮田医師へ取材していない。他のMCS専門家へも取材していないであろう。舩越医師一人の見解を検証もせずに、たれ流している。
彼が、自称ジャーナリストに過ぎないことは、以前から分かっていることであるが。

 

わたしは11月30日(2022年)に、宮田医師に対して書面で質問状を送付した。それに先立って取材を申し込んだが、宮田医師に応じる意思がないことが分かったので、書面での質問状送付に切り替えたのである。質問事項に関しては、プライバシーにかかわることが含まれているので公表しないが、回答(鹿砦社のファックスで受診)は極めて単純なものだった。次のような文面である。

 この度は取材のお申し込みを頂き、ありがとうございました。
 お問い合わせのありました化学物資過敏症の診断基準については、1999年に米国国立衛生研究所主催のアトランタ会議において、専門家により化学物質過敏症の合意事項が設けられております。こちらをご確認頂ければと思います。
 その他のご質問に関しましては、回答を控えさせて頂きます。
 ご理解頂きますように宜しくお願い申し上げます。

網代氏は、わたしが宮田医師以外の専門医を取材していないと述べているが、これも事実ではない。たとえば数年前に内田義之医師に対するインタビューを「ビジネスジャーナル」に掲載している。

※黒薮哲哉「芳香剤や建材等の化学物質過敏症、急増で社会問題化か…日常生活に支障で退職の例も」(2018年5月11日付け「ビジネスジャーナル」)

内田医師は、次のように日本の診断基準を批判している。

私は、日本も米国の診断基準を採用すべきだと考えています。グローバルにデータを比較するという意味でも、日本の診断基準は問題があります。これでは化学物質過敏症の実態を、ほかの国と比較することはできません。ですから専門家が議論して、新たに診断基準を決めるべきでしょう。これは国の役割であると考えます。

化学物質過敏症に罹患した患者の声については、別の機会に紹介しよう。

◆ツィッターの社会病理

ちなみに網代氏は、毎日新聞の元記者である。この問題についてわたしや舩越医師を批判するツイートを多数発信している。

投稿者は頭に閃いたことをそのまま発信してしまう傾向がある。新聞記事を執筆する際には、十分な裏付けを取るが、ツイッターとなると網代氏のような中央紙の記者経験者でも、安易に言葉を発信する傾向があるようだ。

余談になるが、わたしはツイッターの「中毒」になった人達を何人も見てきた。その中には政治家や弁護士、大学教授なども含まれている。若者もいれば、高齢者もいる。軽薄な言葉を吐き散らしていて、言葉に対する感性の鈍さを見せ付けられた。

◎[過去記事リンク]禁煙ファシズム http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=114

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

YouTube配信サイトであるニューソク通信は、1月8日、診断書の不正交付をめぐる問題をクローズアップした。タイトルは、「内部告発で医療界に激震!! 安易な診断書交付が悲劇を生む!! 化学物質過敏症の深い闇!! 横浜副流煙裁判との共通点とは…?」。

番組のキャスターはジャーナリストの須田慎一郎さんで、出演者は舩越典子(典子エンジェルクリニック、大阪府堺市)医師と筆者(黒薮)の2名だった。

周知のように横浜副流煙裁判では、日本禁煙学会の作田学医師が原告のために交付した診断書が問題になった。客観的な事実とは異なる所見が記された診断書が争点のひとつに浮上した。しかも、その診断書を根拠に、被告に対して原告が4500万円を請求したのである。

この裁判では、宮田幹夫・北里大学名誉教授(そよ風クリニック)も、原告のために診断書を交付していた。それは「化学物質過敏症」の病名を付したものであった。

この診断書自体に何か問題があるわけではないが、昨年の暮れごろから、舩越典子医師が、宮田医師の診断書交付行為そのものを疑問視する声を上げた。

「化学物質過敏症」の病名を付した診断書を容易に交付しているというのである。筆者も、このような宮田医師に対する評価は、取材先でよく聞いていた。

「宮田先生のところへ行けば、診断書を交付してもれる」
 と、言うのである。

◆そよ風クリニックへ患者を送れ

発端は、舩越医師の外来を受診した女性患者だった。舩越医師は、問診や眼球の動きをみる検査などを実施した。検査結果の評価については、外部の専門家にも相談した。その上で化学物質過敏症とは診断しなかった。それでも念のために患者を宮田医師に紹介した。宮田医師はこの患者を診察して、化学物質過敏症の病名を付した診断書を交付した。

患者に対する所見は医師によって異なるのが普通だから、最初、舩越医師は宮田医師による診断を疑問視することはなかった。ただ、宮田医師が実施した検査の結果を知りたいと思ったという。

ところがその後、宮田医師が舩越医師に対して書簡を送付し、その中で前出の患者について、精神疾患か化学物質過敏症かを判断できないまま、「化学物質過敏症」の病名を付した診断書を交付した旨を伝えてきたのである。しかも、今後、舩越医師が化学物質過敏症の診断に迷う時は、患者を自分のクリニックへ送るように言ってきたのである。検査結果は添付されていなかった。

昨年末、筆者は現場に足を運びそよ風クリニックを確認した。左の建物の2階がクリニックで、右の1階がコインランドリー

◆顔出し・実名による内部告発
 
わたしは、横浜副流煙裁判(反訴)の原告・藤井敦子さんを通じて舩越医師と面識を得た。藤井さんは、不正な診断書交付により被害を受けたこともあって、この診断書の不正交付には敏感だった。そこでニューソク通信にネタを持ち込んだ。

ニューソク通信は、宮田医師の診断書交付をテーマとしたYouTubeを制作することを決めた。最初は筆者がひとりで津田信一郎さんのインタビューを受ける予定になっていた。と、いうのも舩越医師が顔出し・実名による内部告発を嫌ったからだ。

しかし、藤井さんが、実名で告発するように舩越医師に強く勧めた。それに応じて、舩越医師がカメラの前で実名を名乗り、事件の詳細を語ることを決意したのである。

◆日本の言論の自由度

いつの時代からか、メディアに登場する際には、顔と実名を隠すのが半ば当たり前になってしまった。ドキュメンタリーの原則が無くなっていた。その悪しき影響をわたしも受けていたのか、最初、舩越医師の名前を匿名にすることに疑問をさしはさむことはなかった。

しかし、冷静に考えてみると、特別な事情がある場合は別として、実名で顔をだして内部告発するのが常識なのである。何も悪いことはしていないうえに、他人を批判するときは、自身の責任を伴うからだ。

ちなみに横浜副流煙裁判(反訴)の原告・藤井夫妻は最初から実名主義を貫いている。それが功を奏して、裁判を通じて禁煙ファシズムに対する批判はどんどん拡散している。強い説得力を発揮している。

舩越医師が藤井さんとコンタクトを取れたのも、実名を名乗り素顔を出していたからにほかならない。こんな当たり前のことが困難に張っている背景に、日本の言論の自由度が現れていないか。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

ウィキリークスの創立者で著名なジャーナリストであるジュリアン・アサンジの動静は、日本ではほとんど報じられていない。皆無ではないにしても、新聞・テレビはこの話題をなるべく避ける方向で一致している。

アサンジが直面している人権侵害の重さと、ジャーナリズムに対する公権力による露骨な言論糾弾という事件の性質からすれば、同業者として表舞台へ押し上げなければならないテーマであるはずなのに、地球の裏側で起こっているもめごと程度の扱いにしかしていない。その程度の認識しか持ち合わせていない。

メディア関係者にとっては我が身の問題なのだが。

 

「だれにも知る権利、質問する権利、権力に抗する権利がある」(写真出典:Defend Assange Campaign)

ウィキリークスは、インターネットの時代に新しいジャーナリズムのモデルを構築した。内部告発を受け付け、その情報を検証した上で、内部告発者に危害が及ばないように配慮した上で、問題を公にする。ニューヨークタイムズ(米国)、ル・モンド(仏)、エルパイス(西)などの大手メディアと連携しているので、ウィキリークスがリークした情報は地球規模で拡散する。

CIAの元局員のエドワード・ジョセフ・スノーデンが持ち出した内部資料なども、ウィキリークス経由で広がったのである。西側の公権力機関にとっては、ウィキリークスは大きな脅威である。

ジュリアン・アサンジは、ウィキリークスを柱とした華々しいジャーナリズム活動を展開していた。たとえば2009年には、ケニアの虐殺事件をスクープしてアムネスティ・インターナショナル国際メディア賞を受賞した。2010年には、米国の雑誌『タイム』が、読者が決める「パーソン・オブ・ザ・イヤー」の第1にランクされた。

ちなみにインターネットという媒体は、報道の裏付け資料を記事と一緒に紹介できるメリットがある。それにより記事の裏付けを読者に示すことができる。それを読んで読者は考察を深める。これこそが最新のジャーナリズムの恩恵にほかならない。

このような機能は、紙媒体ではない。その意味では、インターネットの時代がアサンジを生みだしたと言っても過言ではない。

なお、アサンジはコンピュータに入り込んで情報を盗み取るハッカーだという誤解があるが、ハッキングに及んだのは高校生の頃である。知的好奇心に駆られたのが原因とされている。後年、彼が設立するウィキリークスの活動とは無関係だ。

◆アサンジに対する弾圧、スェーデンから米国へ

しかし、アサンジのジャーナリズムが国境を越えて脚光を浴びてくると、水面下でさまざまな策略が練られるようになった。とはいえ、テロリストでもない人間をそう簡単に逮捕できるわけではない。西側諸国が大上段に掲げている民主主義や言論の自由の旗の下では、暴力に訴えることはできない。そこで西側の公権力機関が行使したのは、別件によるでっち上げの逮捕だった。

2010年、まずスェーデンの刑事警察が、アサンジに対する逮捕状を交付した。そして国際指名手配の手続きを取った。スェーデンで2人の女性に対して性的暴行を犯した容疑である。アサンジは、女性たちとの性的関係は認めたが、それは合法的なものであると主張した。

この年の12月にイギリスのロンドン警察庁は、スェーデンの要請に従ってアサンジを逮捕した。翌年には裁判が始まり、イギリスの最高裁は、2012年6月、アサンジをスェーデンへ移送することを決めた。

これに対してアサンジは、ロンドンにあるエクアドル大使館に駆け込んだ。大使館への亡命であった。当時、エクアドル大統領が、左派のラファエル・コレアであたっことが、亡命が認められた要因だと思われる。エクアドル本国への移送は不可能だったので、アセンジは数年にわたり建物内部に留まったのである。

メキシコへの亡命受け入れを提案しているメキシコのロペス・オブラドール大統領(写真出典:Defend Assange Campaign)

しかし、エクアドル大統領が交代した後の2019年、イギリス警察がアサンジを逮捕した。大使館へ踏み込んだのである。大使館も承知の上だった。

アサンジの逮捕を受けて、米国の司法省は機密情報漏洩などの罪でアサンジを起訴し、イギリスに対してアサンジの移送を求めた。スェーデンはアサンジの捜査を打ち切ったので、以後、アサンジの事件は、米国による移送要求を柱とした構図に変わったのである。

ちなみに、スェーデンはアサンジを国際指名手配をした段階で、身柄を拘束した後、米国に引き渡す計画だったのではないかとの推測もある。

かりにアサンジが米国で裁判にかけられた場合、禁錮175年の判決を受ける可能性がある。

イギリスの裁判所は、アサンジの米国への移送を認めるかどうかの審理に入った。審理は紆余曲折したが、最終的に2022年6月に、内務大臣の承認により移送が決まった。アサンジは、現在、欧州人権裁判所へ上訴している。

◆ノー天気な日本の新聞・テレビ
 
アサンジの救出運動は、欧米で広がっている。2022年11月28日には、ニューヨークタイムス(米)、ガーディアン(英)、シュピーゲル(独)、ルモンド(仏)、パイス(西)が、アセンジの起訴を取り下げるように求めた共同声明を発表した。いずれもウィキリークスと共闘関係にあったメディアである。出版は犯罪ではなく、このような前例を作ってはいけないとする主旨である。

言論弾圧といえば、旧ソ連のイメージが付きまとうが、西側諸国でもメディアに対する弾圧が行われているのである。それに最も鈍感なのは、日本の新聞・テレビではないか。自分たちは、「自由社会」で言論の自由を謳歌していると勘違いしている。もっと広い視野で世界を見るべきだろう。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

昨年の11月に総務省が公開した2021年度の政治資金収支報告書によると、新聞業界は政界に対して、総額で598万円の政治献金を行った。献金元は、新聞販売店の同業組合である日本新聞販売協会(日販協)の政治連盟である。さすがに日本新聞協会が政治献金を支出するわけにはいかないので、パートナーの日販協が献金元になっているのである。

わたしが知る限り、献金が始まったのは1990年代の初頭である。当時は、元NHKの水野清議員や、元日経新聞の中川秀直議員らに献金していた。

2021年度の献金先は、延べ103人の政治家(政治団体)である。献金先が100件を超えたのは、同年の秋に衆院選が実施されたことが影響している。実際、献金先の政治家の大半は衆院選の候補者だった。

献金先の候補者が所属する政党の大半は自民党だった。公明党の候補と立憲民主党の候補も若干含まれていた。

次に示すのが献金の実態である。(掲載の都合上、2つの表に分割して表示した)

セミナー料金等

寄付金1

◆自民党安倍派へ64万円

献金の実態について、何点か特徴を指摘しておこう。
 
最も献金額が多いのは、清和政策研究会(現在は安倍派)に対するものである。64万円である。清和政策研究会は「保守本流」、「親米」、「タカ派」、「復古主義」などのキーワードで特徴づけられる自民党の派閥である。前会長は、改めて言うまでもなく、故安倍晋三首相だった。

高市早苗議員に対して、セミナ料―16万円と寄付5万円の総計21万円を献金している。また、中川雅治議員に22万円、柴山昌彦議員に25万円の献金を実施している。

日販協による献金の支出で最も特徴的なのは、小遣い程度の金額(5万円)を多人数の政治家にばら撒いていることである。このばら撒きスタイルは昔から一貫して変わらない。

◆政治献金と引き換えに「押し紙」政策の黙認

献金の目的は、わたしの推測になるが次の4点である。

 ①新聞に対する軽減税率の適用措置継続
 ②新聞に対する再販制度の継続
 ③NIE(教育の中に新聞を運動)の支援
 ④「押し紙」政策の放置

いずれも新聞社経営に直接かかわる問題である。消費税は、「押し紙」にも課せられるので軽減税率の適用措置の継続は、大量の「押し紙」を抱えている新聞業界にとっては不可欠である。

【参考記事】新聞に対する軽減税率によるメリット、読売が年間56億円、朝日が38億円の試算、公権力機関との癒着の温床に

また、再販制度は、新聞販売店を新聞社の下部組織としてコントロールする上で重要な制度である。再販制度が撤廃されて販売店相互が自由競争を展開すれば、販売網が崩壊するからだ。

NIEは、若年層に向けた新聞の有力なPR手段となっている。NIEが実を結び、現在の学習指導要綱(小・中・高校)には、授業での新聞の使用が明記されている。新聞を卓越した「名文」と位置づけて使用する。

さらに献金により、独禁法違反の「押し紙」の取り締まりを回避することで、新聞社が莫大な利益を得る構図がある。次の記事を参考にしてほしい。

【参考記事】「押し紙」を排除した場合、毎日新聞の販売収入は年間で259億円減、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算 

ここにあげた①から④の殺生権を政府などの公権力機関が握った場合、新聞ジャーナリズムに負の影響が生じることは言うまでもない。日本の新聞が政府広報の域をほとんど出ない最大の理由である。

新聞業界から政界への政治献金の提供は、両者の癒着関係を物語っている。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年冬号(NO NUKES voice改題 通巻34号)

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