コロナ騒動が続く中、特定の職業に対する「差別意識」をあらわにする人が増えている。しかも、そういった人たちの多くは、自分が正義のつもりでいるからおぞましい。ここまでに明らかになった実例をみてみよう。

◆風俗嬢を「性的搾取」されていると決めつける人々

まず、風俗嬢は、酷い職業差別にさらされていることが今回改めて鮮明になった。きっかけは、芸人・岡村隆史氏がラジオで「コロナで生活が苦しくなったかわいい子が風俗嬢をやるはずなので、楽しみ」という趣旨の発言をして、大バッシングにさらされたことだった。

岡村氏の発言は内容的に下品だから、批判されても仕方ない。しかし、それよりはるかに酷いのが、岡村氏を批判する人たちの多くが風俗嬢のことを「性的搾取」されている存在であるかのように平然と言い放っていることだ。たとえば、「コロナで生活が苦しくなった女の子が性的搾取をされるのを期待する岡村は、汚らわしい」というように。

こういう人たちは風俗嬢に対し、「性的搾取」をされている存在だと決めつけることが失礼だということに気づいていないのだ。

また、緊急事態宣言が発令されて以来、パチンコ店に対する差別意識を抱く人が世間に多いことも浮き彫りになった。都道府県知事の休業要請に従わず、営業を続けていた少数のパチンコ店は店名を公表されたばかりか、マスコミでも悪質な業者にように報じられ、ネット上などで世間の人々の批判にもさらされた。

感染が拡大しないように国民みんなで我慢しようという考え方は必ずしも間違っていないが、しかし、パチンコ店の経営者や従業員たちにも生活がある。満足な補償もしてもらえてないのに、世間の人たちから「休業して当たり前」と決めつけられ、休業しなければ、モラルのない悪徳業者とみなされて批判されるのは、パチンコ店に対して差別意識を持つ人が多いからに他ならない。

◆タクシー運転手は感染リスクを避けることも許されない?

医療従事者たちについても、差別に苦しんでいるという意見がマスコミなどで伝えられている。コロナパニックの最前線で、感染のリスクに怯えながら必死に働いているにも関わらず、「医療従事者はコロナに感染している恐れがある」としてタクシーに乗車拒否をされるなどの酷い差別に遭っているというのだ。

こうした報道が浮き彫りにしたのが、むしろタクシー運転者たちへの差別だろう。医療従事者たちが救命のために必死に働いているのと同じように、タクシー運転手たちもコロナの感染リスクにさらされつつ、公共交通機関の担い手として働いている。タクシー運転手にも生活があるし、養うべき家族もいる。コロナ感染者を一人でも乗せれば、休業に追い込まれるリスクもある。

著名人たちも、タクシーの「医療従事者の乗車拒否」を批判したが…(左はスポーツ報知4月16日配信記事、右は同21日配信記事)

医療従事者が差別されてよいわけはないが、タクシー運転者が医療従事者に対し、「コロナに感染しているリスクが高い」と考え、乗車拒否したとしても、それを差別だと言えるだろうか。それを差別だと決めつける人こそ、タクシー運転手に対する差別意識があることを告白しているに等しい。

他のどの職場よりも感染リスクが高い職場で働く医療従事者が、タクシーに乗車拒否されない環境をつくるのであれば、政府や自治体がタクシー会社に対し、医療従事者の専用車両をもうけるなどの協力を要請し、引き受けた会社に助成金を出すなどするのが筋だろう。

コロナ騒動が続く中、今後もこのよう職業差別は次々に顕在化すると思われる。粛々とウォッチしたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

月刊『紙の爆弾』2020年6月号 【特集】続「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

H・G・ウエルズ原作の「宇宙戦争」は、火星人の地球侵略を描いた名作である。2008年にスピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で再映画化されたので、みなさんも記憶にあるかもしれない。


◎[参考動画]宇宙戦争 The War of the Worlds(1953年)予告編

圧倒的な火力(熱線)と弾丸をはね返すシールドの力で、宇宙人(エイリアン)が人類を圧倒する。どうやらエイリアンたちは、人類の遺体を培養し、食糧化しようとしているらしい。地球が植民地化される? だが、なぜかその圧倒的な力が威力をうしなう。人類の反撃を遮断していた三脚歩行機械「トライポッド」のシールドがもろくなり、エイリアンたちが苦しみはじめる。

やがて、地球のウイルスへの抗体を持っていなかったエイリアンたちは、感染死してしまう。人類のながい歴史(抗体)が地球を護ることになったのだ。

侵略者が感染死するいっぽうで、原住民が未知のウイルスで滅亡ないしは感染で疲弊する。その果てに、隆盛をほこった政治権力が斃れる。文明が未知の感染病に侵されるほうが、歴史のなかでは圧倒的に大きい。そして皮肉なことに、人類は集団感染によって変革をせまられ、再生して繁栄するのだ。人間の社会を変えるのは、じつは進歩的な思想や革命理論ではなかった。


◎[参考動画]宇宙戦争 The War of the Worlds(2005年)予告編

◆集団感染戦略の陥穽

まずは人体(社会集団)の進化の道すじを、感染と集団免疫から解説しておこう。
インフルエンザでも風疹でもいい。ある感染症に対して、人間集団の大半が免疫を持っている場合、集団感染が起きないので免疫を持っていない人を保護(感染しない)する。これが集団免疫の効果である。

風疹や水疱瘡など幼時に体験するものについては、ほぼ一生にわたって免疫がはたらく。おそらく2歳から3歳児におきる感染であれば、ほとんど記憶にないのではないだろうか。中年をこえて発症した場合、かなり重篤なものになる(筆者の弟が40歳のときに体験)。

インフルのつらい記憶は、誰にでもあると思う。熱が体中の間接をだるくさせ、喉と言わず気管支と言わず、激しい熱と悪寒におそわれる。じつはインフルエンザ(流行性感冒)の抗体は1年も続かず、毎年の集団的なワクチン投与および集団感染(数日から一週間で快復)が流行を防いでいるのだ。

したがって、集団免疫を戦略として採用した場合、感染ピークを低く抑えることでパンデミックは抑制できる。これは今回、ヨーロッパを中心に採られた防疫戦略である。急激なピークとなっても、かならず終息期が来るという考え方である。

ところが、新型コロナの感染力は予想を超えていた。数万単位の感染は予想外だったであろう。ピークを迎える前に、脆弱な医療が崩壊してしまったのだ。ウイルスは変異することで、第二波、第三波のパンデミックが発生する。すでに新型コロナの場合はS型とL型に派生しているという。この先、本当にパンデミックは終息するのだろうか。歴史をたどってみよう。

◆ローマ帝国を崩壊させた感染症

リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ主演の「グラディエーター」に登場するマルクス・アウレリウス・アントニヌス(配役はリチャード・ハリス)は、ローマ五賢帝のひとり。哲学的な学識にすぐれた皇帝だった。しかしそのいっぽうで、映画でも描かれたようにパルティア戦争をはじめとする戦役にも従事し、キリスト教も迫害した。そして彼の名は「アントニヌスの疫病」でも知られている。


◎[参考動画]グラディエーター(字幕版)予告編

この疫病は「激しい嘔吐で内臓が震え、血を吐き、目から火が出る。身体は衰弱し、足はふらつき、耳が遠くなり、盲目になる」と歴史家が記録しているように、天然痘だったとされる(ペスト説もある)。賢帝アントニヌスみずからも、この病に斃れた。ローマでは毎日2000人が死に、3分の1の人口が失われたという。爾後、古代ローマ帝国は衰亡へとむかう。

東西神聖帝国の東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌスの時代には、大規模なペスト感染が発生している。毎日1万人が亡くなり、最終的には人口の4割が失われたとされている。このペストの記録は古く、紀元前3世紀にはマケドニアのアレクサンドロス大王が、地中海の覇権を争っていたティルスを攻撃した際に、ペストで死亡した兵士が着ていた服を泉に投げ入れたところ、数日のうちに敵兵数千人が倒れて勝利したという。

死の舞踏(The Dance of Death)

◆黒死病が近世をもたらした

中世ヨーロッパの黒死病(ペスト)は数次の大感染によって、人口の四分の一ないしは三分の一が命を落としたとされている(2,500万人説が有力)。後期十字軍が連れ帰ったクマネズミに寄生するノミが、その感染源だった。やはり侵略(防衛)戦争が原因だったのだ。

そして宿主のクマネズミを駆除するはずの猫が、中世ヨーロッパにはいなかったのだ。悪魔の使いとして黒猫への迫害がはげしく、食物連鎖の社会システムが崩壊していたのである。いうまでもなく黒猫を迫害したのは、魔女狩りとともにカトリック権力によって煽られた狂信的な民間運動である。

1346年(コンスタンチノープル)から1351年(モスクワ)にかけて足掛け6年、この黒死病はヨーロッパで猛威をふるった。フィレンツェにおける流行の様子は『デカメロン』(ボッカチオ)にくわしく描かれている。ヨーロッパ各地の教会には「死の舞踏」と言われる黒死病の壁画が描かれている。

当時のヨーロッパは、イギリスとフランスの百年戦争のさなかであり、戦局に大きな影響を与えた。フランスではジャックリーの乱(1358年)、イギリスではワット・タイラーの乱(1381年)など、農民叛乱の背景となった。疫病と農民の叛乱は教会権力の崩壊、荘園と農奴制の崩壊につながり、これらの社会変動の中から、人間性の解放を求めるルネサンス(文芸復興)の動きが活発となっていく。やがてドイツ農民戦争、宗教改革へと結実していくのは、16世紀のことである。人類史の劇的な変化には、感染病が色濃く影響しているのだ。

(この連載は不定期掲載です。次回は感染病の南米進出など)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など。

最新刊!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

◆あまりにも低い検査率

わが国の新型コロナ罹患者は、4月末現在で感染者が13000人ほど、死者は400人未満にとどまっているという。ヨーロッパ諸国はのきなみ10数万から20万人の感染者数(スペイン22万人・イタリア19万人・フランス15万人・イギリス14万人など)、死者もそれぞれ2万人を超えている。アメリカは88万人が感染し、5万人が死亡している。ピークを越えたとされている中国では、8万人の感染者と死者が約5000人である。台湾と韓国は、ほぼ収束したとされている。

全世界の罹患者 (4月25日)
感染者数 2,790,986
死亡者数  195,920
回復者数  781,382
※回復者は80%前後。死亡率は地域でバラツキがあるものの、おおむね7%。

日本の死亡率は2.8%である。これをもって政府は、日本の感染数および医療は持ちこたえていると誇る。ネトウヨは「ニッポンすごい」の合唱である。本当にそうなのだろうか?

先進諸国と比べて感染者で一桁、死者数では二桁も低い数字を解説するにあたり、ネットでは「日本人は冷静な行動、自粛と自宅待機をしている」とか「BCGや種痘の接種率が高かったので」「ラテン系はハグをするから感染率が高い」だとか、はては「安倍総理の手腕」などと意味不明の説明が行なわれたりする。これら根拠のない説明はともかく、数字自体がそもそも事実なのだろうか。

たとえば死亡者数だけを分析して、千葉大学の研究グループは以下のとおり検証している。

「各国の人口1億人当たりの死亡者数データを機械学習で解析した。その結果、世界の多くの国で感染拡大の30日後には1日当たりの死亡者数は一定となることが明らかになった。さらに重要なことに、西洋におけるその推定値はアジア地域の100倍程度の著しい差が見られた。地域差の原因が遺伝的要因によるものか環境的な要因によるものかは明らかではない。」(査読前論文公開サイト「Preprints」)

PCR(Polymerase Chain Reaction=ポリメラーゼ連鎖反応)検査の数量との比較でなければ、死亡率が検出できないのは小学生レベルの算数で分かる話だ。千葉大学の研究グループが「明らか」に出来なかったことを、ここで明らかにしていこう。

そもそもPCR検査の件数と感染者数でしか、感染率は検出できない。日本が「不必要なPCR検査は行わない」ことで、医療現場の負担を軽減して医療崩壊を防いできたことは、われわれも知らされている。その代償として、国民を感染症に晒しっぱなしにしてきたのだ。その結果、必要な感染経路の把握ができず、緊急事態を叫べども外出をやめない非発症感染者が蔓延しているのではないだろうか。

それにしても、街頭で簡易検査(ドライブスルー)を受けられる韓国にくらべて、いかにも煩雑ではないか。下の表は少し前のものになるが、日本と韓国、イタリアのPCR検査数である。おどろくほど低い検査数である。じつはここに、日本の死亡者数の低さが隠されているのだ。

検査数の比較(日本・韓国・イタリア)

◆国民に検査を受けさせないのが方針だったのか

われわれは自覚症状があった場合、開業医から保健所への打診が行なわれ、保健所の判断で新型コロナ受診相談窓口 (帰国者・接触者電話相談センター)に行き、PCR検査を受けることで、はじめて感染指定医療機関等にかかれることになる。軽度では入院できず、代替え施設(ホテルなど)で一時観察になったのが今週(4月末)のことだ。もちろんすべての自治体ではない。

参考までに、東京都福祉保健局の案内を図示しておこう。

入院の手続き

なかなか検査までもたどりつけない。ましてや自宅待機で「重篤化を待つ」ストレスに晒されるのだ。

PCR検査を行なわないことで感染率が低くなり、必要な医療がもたらされなかったという指摘がある。低くしたのは「感染率」だけではない。病死した人たちの死亡原因から、新型コロナウイルスが「排除」されているのではないか。

たとえば路上突然死(変死)者が、検査をしてみると陽性だったという事実。亡くなられた女優岡江久美子(放射線治療と癌手術を経験)も早期に検査していれば、重篤になる前に治療が可能だったという。検査を受けられないまま、手遅れになる人も少なくないという。

PCR検査が行われてこなかった原因は、それでは何なのだろうか? 

政治アナリストの田崎史郎によれば、厚労省の医系技官たちが事務次官以下の「上司」指示を聞かずに検査システムを変更しなかったという。国立感染研に居たことのある岡田晴恵教授によると、感染研の幹部がデータを独占する縄張り意識により、検査の拡大を阻止している、という。

安倍総理の危機管理・初動の悪さはもはや明白だが、官僚の中枢が動かない縄張り意識でPCR検査をさせなかったのであれば、その病根こそ抉(えぐ)り出さなければならない。

肺炎の死亡者数

◆年間10万人の肺炎死

右の表を見ていただきたい。わが国の肺炎による死亡者数の推移である。1917年以降の急上昇は、いうまでもなくスペイン風邪の猛威によるものだ。肺結核が克服されて、戦後は死亡原因として低い曲線をえがいてきた。ところが2011年になると、1位の悪性新生物(がん)、2位の心疾患につぐ第3位の死亡原因となった。その背景にあるのはインフルなどの流行性感冒による感染症である。

今回も言われているが、喫煙が肺の抵抗力(免疫)を阻害し、ウイルスの増殖をもたらすとされる。気管から肺にかけて、ウイルスが感染しやすい部位がニコチンと煙に晒されているのだから、あまりにも当然の成り行きである。喫煙は中毒性の生活習慣、つまり「病気」なのだから、このさい愛煙家諸氏はその「主義(=ニコチン受容体による、アセチルコリン発生の快楽と覚醒感→心地よいひらめき」を変えられたほうがいい。これは余談か。

◆コロナ隠し?

そしてこの肺炎死が年間10万人におよんでいることを考えると、いま肺炎で死亡した人のPCR検査が行われてしかるべきであろう。なぜならば、この時期に死亡している肺炎患者の多くが、小型コロナウイルスによるものである可能性が高いからだ。

おそらく2月~4月の肺炎患者の死亡数は2万人を下らないだろう(詳細な数字は、来年発表される「国民動態調査」を待たねばならない)。あるいは例年をこえて、3万~4万の死亡例が出ているかもしれない。年間では飛び跳ねるように、肺炎死が上昇しているかもしれない。

そうすると、肺炎による死亡者数の50%が感染症系(例年比)であれば、インフルよりも死亡率の高い新型コロナウイルスによる死者は、欧米並みということになるはずだ。

したがって、日本人の免疫耐性がとくに素晴らしいのではなく、日本の医療システムが頑健なのでもなく、現状でコロナウイルスによる死亡者が少ないのは、単にPCR検査を避けている、だけということになるのだ。

そしてこのまま、新型コロナウイルスによる死亡者数を意識的にか、死因を隠蔽し続けるならば、わが国民は外出自粛などせずにクラスターをくり返し、取り返しがつかない事態になると警告しておこう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

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《5月のことば》貧しき者には五月のさわやかな風とやわらかい緑がある(鹿砦社カレンダー2020より/龍一郎・揮毫)

5月に入り、今年は、コロナ、コロナで3分の1が過ぎました。

コロナの勢いは止まることはなく、今後の日本社会の行方はどうなるのでしょうか?

未曾有の不況到来は必至であり、社会的にも負の影響が懸念されます。

こんな中で、常識的に見てオリンピックなどできないでしょう。

元々、世界に向かって大嘘をついて招致を獲得した呪われたオリンピックですから、もうやめましょう。

それよりも明日銭(あしたがね)に困っておられる方々(私たちも売上減少に直面していますが、今のところは明日銭に困るところまでは落ちてはいません)への救済に全力投球し、同時にコロナ終息後の経済対策を真剣に考えるべきでしょう。与野党問わず、政治に携わる人たちになにか真剣さが感じられません。

私たちのホームグラウンド=甲子園界隈は、高校野球が中止になり、プロ野球も開幕の目処がつかず街は死んでいます。全国どこででも見られる風景です。

5月、本来ならさわやかな季節ですが、今年は違いました。

しかし、私たちはこれまで幾多の困難を乗り越えてきました。苦しいことは何度もありました。この前代未聞の国難も、きっと乗り越えることができると信じています。

さわやかな風、やわらかな緑 ── 頑張るしかありません。

月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

◆安倍首相の緊急事態宣言後の経営難……

キックボクシングに限らず、多くの競技が先行き未定の興行中止や延期となり、ジムが自粛休業された所属選手は試合出場を目指して、今は出来る範囲でひたすら身体が鈍らないように自己練習に明け暮れる日々。

自粛休業も、賃貸で経営するジムは家賃・光熱費が大きな負担となってくるので、経営難に陥るジムも出てくることが懸念されています。

昭和50年代後半のキックボクシング低迷期、国内で興行予定が立たない団体と各ジムは、香港でのキックボクシングブームに乗って選手の遠征試合を重ねました。また時代を問わず、選手個人はタイへ修行に出掛け、たとえタイの田舎の無名なリングでも勧められれば臨んで出場していました。でも現在は、タイに入国も労働許可証を持った者のみと制限されている上、どこの国にも遠征することも難しい現状です。

◆原点に返ったストリート練習

選手によっては感染拡大前から危機を感じて地方の実家に帰省する選手もいたようです。 そこでロードワークや近所の公園でダッシュの走り込み等の基礎トレーニングをして、そんな練習風景を見た地元の小中学生が興味を示し、勿論、密集・密接を避けながら一緒に練習に参加して、思わぬコミュニケーションとキックボクシングの知名度アップにも繋がっている話がありました。

首都圏で自粛生活をするしかない選手も大半ですが、選手同士が公園や路地でキックミットを持ち合い、交替で蹴りの練習をするというジム設備を持てなかった時代のような原点に返っている話も聴かせて頂きました。

ストリートジムのイメージ画像(昔の実際の練習風景)(1981年12月27日撮影)

この新型コロナウイルスによる影響により、選手らはまた必ず近いうちに興行が再開されると信じ、ひたすら自分との闘いとなって、諸々の生活事情も重なって心折れて気持ちが引退に傾くか、怪我の回復と筋力アップに力を注ぐチャンスと考えた、何でもプラスに捉えるようにする心の持ち方が、今後の人生に大きく影響していくでしょう。

そんな今、ジムに於いてトレーニングを実践、それを撮影し、インターネット等で一般会員練習生に配信し、テレワーク型指導でトレーニングを促すジムもあるようで、今の時代にあった工夫も活かされているようです。

プロ野球やサッカーも開催が延期されていますが、格闘技においてはタイでよくある王宮前広場での興行のように、屋外で開催されれば密閉だけは避けられるので、屋内より開催され易いかもしれません。プロレスやキックボクシング創生期は、かつて駐車場や空き地を借りての興行も多く、「雲行き怪しい中、客席に席番貼り付ける作業しながら雨降らないこと祈りつつ、何とか乗り切った!」というある会長も居ましたが、そんな時代も懐かしいものです。

無観客となっても外部へ配信も出来る時代(2017年7月2日撮影)※スクリーンはイメージ

◆タイの現状

日本は規制が緩過ぎで感染者が増えている状況に対し、タイは下降線の様子です。
タイは実質軍事政権で、こういう緊急事態の際には統制がしっかり取れて、感染者がタイ全土で1日30人程まで下がり、当初の100人超えた頃から日毎に減っている模様。タイの非常事態宣言は4月30日まで規制が掛かっており、夜間は完全な外出禁止令が発令中、見つかれば逮捕されます。その後の延期は今のところ発表されていない様子(4月20日現在)。

多くのムエタイ選手やトレーナーは、田舎に帰省し農作業して、それが専門誌のFacebookに掲載されたりもしている模様で、山中慎介や佐藤洋太と対戦した元・WBC世界スーパーフライ級チャンピオン.スリヤン・ソー・ルンウィサイや、2年前、梅野源治の挑戦を退けた当時のルンピニー系ライト級チャンピオン.クラーブダム・ソー・ピヤックウタイもその話題の人です。

タイ社会がいろいろと厳しくなり、政府の支援金を受けられず、失望して自殺したというニュースもあるといいます。

タイの王宮前広場での観衆、密集・密接だが密閉だけは避けられている(2000年12月5日撮影)

◆中止・延期と目途が立たない再開見込み

日本は緊急事態宣言が発令され、プロボクシングも5月31日まで興行中止・延期が決定。更に後楽園ホールは政府の緊急事態宣言による要請で5月6日まで休館となり、その間に予定されたイベントは全て中止。

キックボクシング興行は無観客試合も自粛となり、3月末までは強行された興行も、今はどこも開催中止や延期に陥っています。

ジャパンキックボクシング協会は5月10日に後楽園ホールで予定された興行も中止決定。4月24日から、その5月10日枠に延期したREBELSも興行中止決定。

6月に入ると14日に後楽園ホールに於いて予定されるニュージャパンキックボクシング連盟興行、6月20日の日本キックボクシング連盟(NKB)興行、6月21日の市原臨海体育館でのジャパンキックボクシング協会興行等は今のところ、開催予定としていますが、まだ新型コロナウイルス感染影響の下降も終息も見込めないと判断する団体と各プロモーターは多く、今後も政府の要請によって6月以降も影響が出ることが予想されます。終息に2年は掛かるという専門家の話が事実とすれば経済への影響も懸念されるところ、今更遅いですが、タイのような迅速な対応が安倍首相と政府に求められています。

もう少し密接を避ければ開放的で暴動も避けられそう(2000年12月5日撮影)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

◆中国と東南アジアからやってきた不潔なマスク

べつにヘイト右翼のように、中国や東南アジアを落としめるつもりはない。いまさら、1世帯あたり2枚というショボい国民支援をけなすつもりもない。サイズが小さすぎるとか、洗うと縮むなどとあげつらうつもりもない。

が、あまりにも問題が多すぎる。

たとえば、アベノマスクを受注した大手商社(古い言葉でいえば独占資本)は、国内供給をうながすのではなく、海外発注で巨額の利ザヤを稼いでいたのだ。受注額91億円のうち、利益は何十億あったのだろうかと勘ぐりたくなる。それだけではない。政府の予算そのものにも疑惑があるのだ。

しかもそのマスクに、大量の不良品(先行配布200万枚のうち、7800枚)が混入していたのは、マスコミ報道で周知のとおり。いや、いまのマスコミに安倍政権の失政を大上段から批判する魂はないだろう。

なぜならば、24億円というコロナ報道に関する対策費、つまりマスコミやネットでの批判を封じる予算が、政府の対策費に計上されているからだ。これらの予算がマスコミ報道の調査統制、および広告費として使用されるのは明白だ。

それはともかく、マスクにカビや変色、髪の毛、虫などが混入していたというのだ。感染予防の衛生用品が不潔きわまりないものだったのである。いったい何のためにアベノマスクは生産され、配布されようとしているのか?

このかん、野党の質問に答えるかたちで、その一端が明らかになりつつある。いままでに判っている商社の受注額と生産国は、以下のとおりだ。

興和株式会社           約54.8億円
伊藤忠商事株式会社        約28.5億円
株式会社マツオカコーポレーション  約7.6億円
※政府関係者によれば他に2社?(4月21日朝日新聞報)厚労省は4社と回答。
生産国は、中国・ミャンマー・ベトナム(23日厚労省)


◎[参考動画]虫”や“カビ”……総理肝いり「布マスク」不良品(ANN 2020/04/22)

冒頭にヘイトまがいの見出しを立てたのは、生産国を批判したいからではない。諸外国および日本政府が海外からの流入をシャットアウトし、経済グローバリズムによる感染を防止しているにもかかわらず、わが独占資本(大手商社)は安価な生産国をもとめて暗躍したばかりか、大量の不良品まじりのマスクを調達してきたのだ。

というのも、これまでにも全世界のマスク供給の80%を占めてきた中国では、コロナ感染拡大を受けて2万8000社以上が、医療分野に新規参入しているというのだ(日経新聞電子版2020年4月17日)。大手商社の駐在員が、これら3万社に近い新規参入の安価なマスクを発注したのは、想像にかたくない。

いま中国は、マスク外交ともいうべき大量のマスクを防疫用に寄付することで、諸外国との関係を「一帯一路」の経済戦略に乗り出している。そのこと自体は、経済大国としての役割をはたすという意味で、感染防疫および世界経済への貢献とみなすことはできるだろう。しかしながら、それに乗っかるかたちで、おそらくタダ同然で中国の新参企業にマスクを大量発注し、不良品を自国民に供給する独占資本の罪は大きい。

しかも上記の厚生労働省発表の商社いがいにも、すくなくとも1社もしくは2社が受注した可能性があるのだ。その企業は朝日新聞などの誤報(政府関係者のウソ)でなければ、明らかにできない企業である可能性がある。たとえばこれ推測だが、麻生財閥など安倍政権につらなる「お友だち企業」であるかもしれない。森友や加計学園など、これまでお友だち優遇をもっぱらとしてきた安倍政権において、それらの疑惑を明らかにする必要がある。

◆使途不明金がある?

予算の実行にも疑惑がある。いま判明しているカネの動きは、以下のとおりである。

安倍総理「200億円程度」→調達予算は338億円(総額466億円-発送費128億円)-91億(商社の受注費)=247億円(使途不明)

どうやら、使途不明金があるようなのだ。その額はじつに247億円。何か事業予算を立てるごとに、そのための調査費や関連費用が発生する。ある意味では必要経費として存在するのはいいだろう。しかし今回は、国家国民の火急の危機ではないのか? これ以上、推論で記事を書いてもあまり得られるところはないが、5月中旬にひらかれる国会の予算委員会で、この問題が集中審議されることを期待したい。アベノマスク疑惑を解明せよ。


◎[参考動画]自粛どう徹底? 総理が「10のポイント」呼びかけ(ANN 2020/04/22)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

最新刊!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

◆ここまで危機管理に弱いとは

感染症という速度のある災禍に、あまりにも脆弱な政権の体質が露呈した。いうまでもなく、安倍官邸政治のあまりにもトホホな不作為についてである。

安倍総理という人間は国会演説、桜を見る会やオリンピックパフォーマンスなど、晴れの舞台ではそこそこ絵になるが、危機にさいしてはからっきしお坊ちゃん体質が露呈してしまう。にもかかわらず、その漂流的な政権運営を是正するスタッフが、人材に事欠いているありさまなのだ。

とくに菅はずしとでもいうべき、菅義偉官房長官の存在を無視するかのような政権運営が目立っている。安倍独裁の主柱である菅義偉をはずすことで、みずから孤立を深めてしまっているのだ。そしてこのコロナ政局ともいうべき政権運営のなかで、コロナ対策同様に出口が見えない永田町の現実がある。

安倍総理が全国一斉休校要請を発表したとき、休校に慎重だった菅長官は決定を直前まで知らされていなかったという。次期総理候補と噂される菅を遠ざけた代わりに、安倍がコロナ対策の中心に据えたのは元経産官僚の西村康稔コロナ担当相、元財務官僚の加藤勝信厚労相、元経産官僚の佐伯耕三(アベノマスク発案者)、今井補佐官、そして財務省の太田充・主計局長であった。つまりイエスマンの官僚出身者たち、現役官僚たちなのだ。

「側近や官僚の思いつきだけでなく、もっといろんな人の意見を聴かなければ」と語るのは、お茶の間の安倍応援団というべき田崎史郎である。思いつきの制作が当たらない、後手に回ってしまっている現状を批判してのことだ。

上記の全国一斉休校は、鈴木直道北海道知事の緊急事態宣言が、鮮烈な印象を国民に与えたことが背景にある。いわば鈴木知事のイメージに乗っかるかたちで、安倍総理がパフォーマンスとして宣言したものだ。この発案者は今井補佐官ら、官邸の側近だったという。

皮肉なことに、鈴木都知事の庇護者(法政大学夜間部出身で、北海道知事選の実質的な選対責任者)である菅義偉には、なんの相談もなかったのは前述したとおりだ。「菅はずし」の、もうひとつの原因がここにある。

筆者の私見では、将来の総理候補といわれてきた小泉進次郎が内容のなさを環境相として露呈させたいっぽうで、自民党の若手のホープとして浮上したのが、この鈴木知事である。菅同様に苦学のすえに政治家となり、絶望的な夕張市の財政を立て直した「日本一給料の安い地方自治体首長」の力量は知られるところだ。政権降板後の安倍総理が院政を敷くにあたり、いちばん気になるのが、菅――鈴木ラインなのだ。

政権および自民党の主柱として、おおらかに全体をフォローするのではなく、ナンバー2を許さない独裁者の器量の小ささが、政権末期において晒されたかたちだ。

◆30万円から一律10万円への迷走

公明党の山口那津男代表が「政権離脱もやむなし」と、安倍総理に直談判することで、所得低減世帯への30万円給付は、一転して一律10万円となった。いったん閣議決定(公明党の官僚も賛成)した議案が、再決議でひるがえされたのである。公明党が政権離脱することで、参院の与党多数支配が揺らぎかねない安倍政権は、一も二もなく公明党(創価学会)の圧力に従うしかなかったのだ。

「週刊ポスト」(5月1日号)によれば、「総理はもともと国民に一律10万円給付を考えていた。しかし、側近の今井補佐官や財務省の太田充・主計局長らが『効果がない』と反対し、総理は持論を押し通せずに一世帯30万円の給付案で落ち着いた」(安倍側近議員)という。この太田主計局長は言うまでもなく、森友事件の改ざん問題が発覚した当時の理財局長である。自殺した赤木俊夫さんの手記では、その発言が「詭弁を通り越した虚偽答弁」などと名指しされている。いわば総理を忖度して出世した官僚である。いわゆる小才の利いた官僚の進言に乗って、紆余曲折を余儀なくされているのが、いまの安倍政権なのである。

そしてこの過程で、求心力をうしなったもうひとりの政治家がいる。次期総理候補とされる岸田文雄政調会長である。もともと大物感のない岸田にとって、満を持して発表した30万円給付がくつがえされたのは大きな痛手である。二階幹事長が突如として「一律10万円」を唱えたことで、政調会長の権威すらゆらいだ。

それではポスト安倍はどうなるのだろうか。ここまで失政が続いても、おそらく安倍政権は任期をまっとうするだろう。政権待望論がある石破茂には、自民党離党の経歴があり、そもそも議会政治における「力」である「数」が足りない。

安倍総理の選挙での圧倒的なつよさ、まるで相手を催眠術にでもかけるかのような「演説力」は、橋下徹や山本太郎などのいわゆるポピュリズム系の政治家にはない安定力をみせる。質疑において感情的になる弱点はあるものの、長ったらしく内容のない演説で聴くものを酔わせるのは、その著書「美しい国へ」(文春新書=安倍の演説をライターが記述)に秘密がある。その謡うような、独特の演説のリズムなのだ。

いずれにしても、一連の過程で自民党に人材がないことが明白になった。ここ数年、この欄でも政権に批判的なジャーナリズムにおいても「安倍政権の終わりの始まり」が論じられてきた。自民党の人材のなさを考えるに、来年の任期延長まで見えてしまいそうなコロナ政局である。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

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いまだ終息が見通せない新型コロナウイルスの感染拡大。39人の陽性者が確認されている福島県で、多くの人が口にする言葉がある。

「あの時と似ている」

あの時、とは未曽有の大震災と大津波、原発事故が起きた2011年の事だ。誰もが思い出す9年前。しかし、良く話を聴くと相違点も見えてくる。何が似ていて何が似ていないのか。

原発事故で放射性物質が拡散されて来年で10年。福島の保護者たちは、再び〝見えない敵〟からわが子を守らなければならなくなった(福島県立博物館で撮影)

◆原発事故でまき散らされた放射性物質と同じだね……

福島駅近くのラーメン店。日曜の昼下がりだというのに店内は閑散としていた。男性店主は店先で日向ぼっこをしている。周囲の居酒屋やカラオケ店は軒並み、休業中。店主は苦笑いを浮かべながら話した。

「福島は車社会だから、日曜日だからと言っても、もともと決して人通りが多いわけじゃ無い。でも、今はさらに人が歩いていなくてガラガラ。売り上げ? 4分の1に減ってしまったよ。緊急事態宣言が出されてから一気に人通りが減ったね」

男性店主は言う。「目に見えない物への恐ろしさという意味では原発事故でまき散らされた放射性物質と同じだね。でも、今回の方がより恐ろしい気がするなあ。放射線はすぐに健康状態に変化は現れないけれど、コロナは命にかかわるからね。有名人も亡くなったし……」

◆今年の高校1年生たちは、2011年に卒園式や入学式が出来なかった世代

県立高校の入学式が行われた今月8日、中通りのある高校では、新入生の母親が複雑な表情を浮かべていた。

「難しいですよね。今を大事にするべきかどうか……。学校に行かれないのはかわいそうだなという気もするし、通学する事で拡がってしまってはいけないし。もっと単純な事を言えば、娘が家で毎日ぐうたらしているのもどうかという想いもあります」

実は、今年の高校1年生たちは、2011年に卒園式や入学式が出来なかった世代。「だから余計に、高校の入学式くらいは予定通りにさせてあげたかったという想いがあるんですよ」と母親は言った。

「子どもによっては卒園式が無くなってしまったりしましたからね。うちの子は日程をずらしてやってもらいましたけど。まさか9年経ってこういう事になるなんて考えもしませんでした」。

◆「再び選択を迫られている親」のいら立ち

そして、あの時の「選択」に想いを馳せた。表情も口調も、それまでより一段と険しくなった。そこには「再び選択を迫られている親」のいら立ちのようなものが表れていた。

「逃げるのか残るのか。私たちは原発事故後に選択を迫られました。毎日、そればかりを考えながら生活をしていました。それで結果として中通りでの生活を選びました。あの時も様々な情報が流れて、子を持つ親の間でも意見が分かれて。食べ物に関しても、『検査しているのだから大丈夫』と思いたい自分がいる。あの頃のように、また子どもを学校に行かせるかどうかの選択を迫られるのですね。でも、学校はやっているのにうちの子だけ通わせないで家に居させるというのも……」

小学校の入学式では、ほとんどの新入生たちがマスク姿。被曝リスクも感染リスクも〝風評〟や〝大げさ〟では無い。出来る防護を各自がするしか無い(福島市内の小学校で撮影)

◆ウイルスにも放射性物質にも色が付いていたら良いのにね……

福島市内の理髪店で働く女性は「ウイルスにも放射性物質にも色が付いていたら良いのにね。真っ赤に見えるとかさ。そうすれば感染や被曝のリスクから遠ざかる事が出来るのに……」と苦笑した。

別の女性は「放射線は線量計で数値として可視化出来るからまだ良かった。線源から子どもを遠ざける事が出来ました。でも、ウイルスの存在は数値化出来ません。モニタリングポストでも分からない。だから余計に防ぎようが無くて怖いです」と表情を曇らせた。

同じようで違う〝目に見えない物への恐怖〟はいつまで続くのか。放射線防護への意識が高い人ほど新型コロナウイルスへの意識も高く、既に疲弊しているように映る。

◆10年目に繰り返される「子どもをどう守るのか?」

そんな苦悩をよそに、福島県が毎日のように発しているメッセージがある。感染者が新たに判明した際に開かれる記者会見。最近では、もはや早口での棒読みにすらなってしまっている言葉にこそ、内堀県政の方向性が透けて見える。

「県民の皆様にとっては不安や恐れの気持ちがあろうかと思いますが、原発事故による風評に苦しめられている福島県民だからこそ、新型コロナウイルスの陽性となった方やその関係者に対する差別や偏見は、なさらないよう切に願います」

もちろん、感染してしまった人への中傷や攻撃は許されるものでは無い。どれだけ用心していても感染してしまう事もあろう。しかし、それと「原発事故後の風評」とは全く異なる。

福島県の内堀雅雄知事は、〝風評〟の名の下に放射能汚染の現実から目を逸らし続け、「もはや問題無いのに」と避難者切り捨てを着々と進めている。それを混同するあたり、「群馬訴訟」の控訴審で、「低線量被ばくは放射線による健康被害が懸念されるレベルのものではないにもかかわらず、平成24年(2012年)1月以降の時期において居住に適さない危険な区域であるというに等しく、自主的避難等対象区域に居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となるものであって、容認できない」と避難指示区域外からの避難継続の相当性を否定してみせた国と同じだ。

子どもをどう守るのか。原発事故から10年目に突入した福島は、再びあの頃と同じ課題に直面している。そして、行政が子どもたちを積極的に守ろうとしているように見えないのもまた、あの時と同じだ。

県保健福祉部の幹部は「迅速で正確な情報発信に努めるので、県民の皆さんも正しく理解していただきたい」と話す。福島市保健所の担当者も「過剰に不安を抱かず、正しく恐れていただきたい」と市民に求める。これも、あの時と同じ。県や市町村、そしてアドバイザーと呼ばれる専門家が不安の鎮静化に力を注いでいるのも原発事故後の構図と重なる。そして、高校生たちが求める県立高校の休校は実現していない。

ある県議は「県政は狂ってるよ。内堀知事では県民は守られないと、そろそろ気付いて欲しい」と語気を強めた。「あの頃と同じ」とため息交じりに振り返るのは、これで終わりにしたい。

今なお進行形の放射能汚染。福島ではこれにコロナ禍が新たに加わった(二本松駅前で撮影)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)

神奈川県横須賀市生まれ、48歳。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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アルベール・カミュの『ペスト』が全世界で読まれているという(日本でも4月までに100万部の累計販売)。NHK(100分で読む名著)でも『ペスト』が紹介されたように、今回の新型コロナウイルスを機会に、人類と感染症の関係が捉え直されようとしているようだ。

カミュはペストを人間の逃れがたい不条理(運命)と措定したが、そこに人間社会が生き生きと描かれていることに気づかされる。じっさいに天変地異や疫病はつねに人間社会の在りようを浮かび上がらせ、社会システムの変容をもとめる。それは古代・中世においては宗教であり、近代においては戦争と革命。現代においては、社会インフラの変革ではないだろうか。

在宅テレワークはそのひとつであり、サラリーマンにとって慢性的な苦痛だった混雑通勤そのものが、いまや不合理なものとして見直されている。通勤用のスポーツ自転車が売れているという。サイクリストとしては、幹線道路の左端に刻印された自転車走行マークこそ、人類の未来への道であると宣言しておこう。

それはともかく、人類史はたびかさなる感染症との戦い、あるいは共存共栄の歴史であった。日本史に引き付けていえば、本欄「天皇制はどこからやって来たのか」で扱ってきた古代天皇制権力(奈良王朝)こそ、感染症(天然痘)による産物であった。

奈良・東大寺の大仏(盧舎那仏)

◆天然痘がもたらした、古代仏教国家

文献史料では「瘡いでてみまかる者、身焼かれ、打たれ、くだかるるが如し」(日本書紀)が天然痘の初出である。この「瘡いで」は「かさぶたができた」であり、腫物が「あばた」となる意である。死ぬ者には腫物ができて、高熱がその身を焼く。そしてのたうちまわり、最期は身を砕かれるのだ。

敏達帝(推古女帝の夫)の崩御は、この天然痘が原因だとされている。不比等の子・藤原の四兄弟=藤原武智麻呂(南家開祖)、藤原房前(北家開祖)、藤原宇合(藤原式家開祖)、藤原麻呂(藤原京家開祖)も天然痘に斃れている。この疫病の流行こそが、聖武帝による奈良の大仏(盧舎那仏)および国分寺・国分尼寺の建立へとつながるのだ。したがって古代仏教国家のモチーフは、仏教の修行・勧進による病魔の退散だったといえるだろう。

何度かの流行をかさね、やがて天然痘は誰でもかかる疾病となった。平安時代の女性(紫式部や清少納言)に「あばた」が散見され、源実朝、豊臣秀頼などの歴史上の有名人物の顔に「あばた」があったのは、もはや天然痘が免疫化をともなう国民的な病だったことの証しであろう。

天然痘の被害を伝えるアステカの絵(1585年)

種痘という免疫療法によって、人類が天然痘を克服するのは18世紀に至ってからであった。記憶にあるだろうか? ウイルスを付けたY字型の二又針で上腕を焼かれた記憶は、いまも鮮明だ。日本における根絶は1955年、世界では1977年のソマリア青年の発症記録が最後とされている。人間に感染する感染症で、人類が根絶できた唯一の例である。

いまや、共存するかのごとき各種のインフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、急性呼吸器症候群(SARS-COVID-2)、マラリア、結核、AIDS、デング熱、水痘・帯状疱疹、単純疱疹、手足口病、等々。いずれもウイルスによる、細胞乗っ取り行為である。ウイルス自体は細胞を持たないことから、生物ではないとの医学者の見解もある。生きて(感染細胞を増殖させて)はいるが、生物の要件を充たさないとの否定的な知見であろう。変異細胞から新生物になるという点では、がん細胞も生き物ということになろうか。こちらは人類の変異・進化の要件でもあるという。ウイルスはいずれも、自然の中に生息していたものが、変異と環境変化で人間社会に入ってきたものだとされている。

17世紀欧州でペスト大流行の際、フランスの医師が考案したと言われる「くちばしマスク」と革手袋、長コート着用による感染防御服(1656年)

◆感染症で社会が壊れ、再生される

さて、ウイルス感染が人類の歴史を変えるというのが、じつは本稿の命題である。盗賊まがいの十字軍遠征がペスト(黒死病)をもたらし、教会権力の崩壊とともに宗教改革(マルチン・ルターら)の誘因となったのは史実である。

第一次大戦の終焉はロシア革命によってではなく、スペイン風邪(スペインは中立国であったために、情報統制がなかったので、情報の発信源としてスペイン風邪なる呼称が生まれた)の猛威によるものであった。一説には5000万人の死者、1億人という説もある。アメリカでは、パンデミックの初年に平均寿命が12歳になったという。近年の研究では、スペイン風邪はH1N1亜型インフルエンザウイルスによるものと判明している。

黒死病が宗教改革をもたらし、西欧における印刷技術や火薬の発明(じつは中国が源流)によって近世の扉がひらかれる。スペイン風邪によって戦争が終息し、戦間期革命をもたらす。それでは、今回の未曾有の感染力をもった新型コロナは、われわれにどんな変革をもたらすのであろうか。

さしあたり我々は、通勤をしない在宅ワークを手にしつつある。感染源である電車通勤の代わりに、自転車通勤という方法を手にしている。そして経済のまわし方も、ベーシックインカムという試みを現実のものにするかもしれない。未曾有の疫病パンデミックによって、従来型の資本主義と経済政策が行き詰ったとき、本気で取り組むべきテーマがそこにある。いっしょに考えていきましょう。(この連載は不定期掲載です。次回は疫病と侵略者など)


◎[参考動画]【今から100年前のスイス】2万5千人の死者を出したインフルエンザの大流行(SWI swissinfo.ch)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など。

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◆中小企業支援・生活給付金は6.3兆円と予算総額108兆円の0.58%に過ぎない!

「戦後最大の経済危機」に対して「かつてない、世界的にも最大級の経済対策をとりまとめ」と豪語、いや「やっているフリ」をくり返す安倍政権の、新型コロナウイルス不況への経済対策の全貌が明らかになりつつある。やはり「やっているフリ」のようだ。


◎[参考動画]現金給付が柱 過去最大108兆円の緊急経済対策(ANNnewsCH 2020/04/08)

もともと通常予算(昨年末に決定)であるのに加えて、総額108兆円の内訳は税金(固定資産税や社会保険料)の支払い猶予分の26兆円のほか、新型コロナ対策では、収束後の観光振興などの一般財政なのである。

そもそも、真水の支援金はどのくらいなのだろう。いわゆる直接給付である。個人事業主に最大100万円、中小企業(資本金10億円以下)に最大200万円(決算書で5%以上の減収)の支援金が2兆3176億円。そして、当初は一律10万円とされていた個人給付は、住民税免除の低所得世帯にかぎり30万円。予算総額で、わずか4兆206億円となりそうだ(児童一人にたいして1万円をふくむ)。安倍の言う108兆円の経済支援は、まったくの嘘だったのである。国民を直接支援するのは、下限で4兆円、上限で6.3兆円なのだ。

その世帯給付金も1月以前の月収比の半減が条件であって、生活保護世帯よりも低収入でなければ支給されない。具体的に住民税免除世帯の数字を挙げておこう。収入が低ければ住民税が免除される、従来からの仕組みである。

[表]世帯構成別住民税免除世帯の年収と月収

月収8万円以下の単身者、21万余円で4人家族がふつうに生活できるとは思えないが、今回の世帯給付はわずか30万円なのである。これではそもそも、生活保護世帯に向けた支援ではないか。しかも2月~6月のいずれかで、それまでの月収から50%に減っていなければ要件を充たさないというのだ。

◆現実性のない1000万世帯給付

菅義偉官房長官は「5000世帯のうち、1000世帯を想定している」というが、絶対にありえない想定だ。不定期のアルバイト(フリーター)で、たとえば筆者の友人にもいるが、料理店の皿洗い(時給1000円)で月収16万円(8時間労働×20日)のケースのみ、これに該当するかもしれない。そんな世帯が1000万世帯もあるとは到底思えない。しかも自己申告制なのである。不正受給がないように申請を審議する、そんな煩雑な作業がこの外出禁止要請のなかで行なえるというのだろうか。給付は具体的にいつなのか。けっきょく、われわれ納税者が手にできるのは、安倍総理の肝いりの2枚の布製マスクということになりそうだ。

すくなくとも我が家では、4月末納付の固定資産税の支払い延期を決めた。外出禁止(要請)で仕事が動かない日々、この欄の読者諸賢におかれても、税金の不払いを検討されたい。法律用語でいえば、“同時不履行の抗弁権”(相手が支払うべき義務を履行しない=給付金を寄こさない。なので、その原資たる税金の支払いを拒否する)である。

◆内部留保460兆円を抱える大企業に、不況対策支援?

そのいっぽうで、政府は新型コロナの影響を受けた大企業に対し、日本政策投資銀行の「特定投資業務」を活用する形で1000億円程度の出資する案を検討しているというのだ。

思い起こしてほしい。わが国の大企業は安倍政権の法人減税や円安政策によって、460兆円もの内部留保(過去最高)を抱えているのだ。月収8万円の単身者(フリーター)が日々の生活に苦しみ、月収21万円余の4人家族がおそらく教育において子供の貧困にあえいでいるいっぽうで、大企業には惜しみなく投資するというのだ。資本家と株主など富める者を富ませ(株価の高騰を誇る)、フリーターなど貧しい者は生活苦を舐めさせる(雇用率を誇る)、これこそ安倍政権の経済政策が達成したものにほかならない。いままた、危機に際して貧富の格差を拡大させようというのだ。

ドイツではフリーランス(英語教師)が、申請後2日で60万円(5000ユーロ)の支援金が得られたという記事を目にする。ドイツでは従業員5人までの小企業、個人事業主に対して105万円、10人までの小企業で175万円を3カ月間支援している。もともと国民が支払ってきた税金の使い方なのだから、ある意味では当然の支援といえる。おそらくドイツ経済は、感染病収束とともに復活するであろう。

大企業が内部留保を持っているから、経済は好況なのではない。国庫にカネがあるから国が豊かなのでもない。経済の好況とは現実に消費が行なわれ、おカネが市場を回るかどうかなのだ。個人消費が経済全体の60~70%を占める、現代消費社会の経済原理をいまだに理解できない財務官僚および安倍政権の経済政策において、日本経済は泥沼に足を踏み入れようとしている。


◎[参考動画]【緊急事態宣言前夜】政府対策108兆円のカラクリ れいわ新選組代表 山本太郎(れいわ新選組2020年4月6日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

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