◆利権構造への警戒

前回、よど号メンバーのリーダー・小西隆裕氏による、新型コロナウイルスに触れ、「収束の先行」という出口戦略を主張する論文をきっかけに議論があったことをお伝えした。そして、検査数の増加は可能であり、PCR検査自体に問題はないということを確認。そこで今回はまず、前回少々触れた日本医師会会長に関し、2020年6月に交代したことをおさえておく。

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◆日本医師会の会長交代

6月27日、日本医師会会長選の投開票がおこなわれ、安倍晋三との関係が深かった横倉義武氏を破り、副会長だった中川俊男氏が会長に就任した。彼は、「国民の健康と命を守るためならどんな圧力にも決して負けない、堂々と物をいえる新しい日本医師会に変えていこうと思っている」「政府にいいづらいこともはっきり申し上げていく」と語っている。そして中川会長は最近でも、検査拡大・熱中症対策・重傷者の増加に関する危機感などを伝えている。ただし、彼が改革推進派と単純にはいえず、『Asagei Biz』の記事によれば、医療業界の利益を優先するのだという。

◆製薬会社の得る巨額の利益

さて、次に新型コロナウイルス関連の利権構造として、さまざまな意見が散見される。富士フイルム富山化学の「アビガン」についても当初は利権構造の影響で使えないという憶測も呼び、承認を迫る世論が高まった。安倍晋三首相は「5月中の承認を目指す」と明言し、経産省も同様のスタンス。しかし、官邸が期待した「極めて高い有効性」は示されず、臨床試験(治験)は9月までかかる見通しだ。

また、厚労省は副作用を懸念し、日本医師会も「アビガン」の推奨に釘を刺す。その他に関しては、日医工「デカドロン」「フサン」、帝人ファーマ「オルベスコ」、抗マラリア薬「メフロキン」など、さまざまな治療薬の名があげられてきたが、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「特効薬は現時点でなく、今後も存在しない可能性がある」と述べている。

いっぽうワクチンについて政府は、秋にも接種の基本方針を策定しようとしている。優先的に接種する対象を、医療従事者や高齢者以外にどこまで含めるかが議論されているのだ。国内ではアンジェスのDNAワクチン「AG0301-COVID19」が治験を開始したほか、塩野義製薬やKMバイオロジクス、第一三共、IDファーマ、田辺三菱製薬なども開発に取り組む。ただし、世界のワクチン製造には利権が絡むといわれる。

『ConsumerNet.JP』によれば、「2020年7月31日、米ファイザーが新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに日本で6000万人分(1人2回接種で1億2000万回分)のワクチンの供給を受けることで同社と合意したとのプレスリリースが報道されました。まだ見ぬワクチンについて、日本政府とファイザー社との間でどのような契約がなされたのかその中身は不明です。報道によれば、米政府は7月22日、製薬大手のファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテックから、1億回分のワクチンを約20億ドル(約2100億円)で取得する契約を結んだと報道されています。1人当たり約40ドル(約4200円)」「ワクチンは数十億人分が必要とされており、製薬各社は巨額の利益を上げることになります」とのこと。

中国ではワクチンの緊急投与が開始された。ワクチンに関しては近年、さまざまな意見が散見される。科学の正確な面は社会に生かされるべきだが、いずれにせよ私たちは動向を注視し、必要な際には声をあげねばならないだろう。

◆利権構造にまみれやすい背景

また、コロナの影響下でも、さまざまな政策と関連しながら新たな予算が組まれる。『紙の爆弾』本誌でも、電通に関する記事が寄稿されていたが、筆者も電通や凸版印刷、広告制作会社などの広告やウェブ、新たな事業や長年にわたる事業の推進に関する仕事などに携わったことが幾度かある。その際、やはり新たな政策が打ち出されて予算が組まれるとなれば、オリンピックでもカジノでもなんでも、いち早く社内にチームが結成され、報道前に議論が始まるのだ。このようななかから、一般社団法人を介して経産省や総務省から電通に再委託がなされたり、場合によっては委託先の民間企業によってサクラが使われたりしたことなどが問題として、ようやく最近、取り上げられるようになった。新たな予算が組まれたら、これまで同様、慎重にみていく必要があるだろう。

話を前回に戻すと、PCR検査や研究に関しても、NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は、「厚労省─感染研─保健所・地方衛生研究所、さらに専門家会議という『感染症ムラ』」の存在に警鐘を鳴らす(『東京保険医協会』)『Foresight(Yahoo!Japanニュース)『AERAdot.』

近年私が実感していることは、「この社会には利権構造にまみれやすい背景がある」ということだ。「御恩と奉公」のような関係性、そしてそれが安定した際のスムーズさ、保守的・固定的な関係性の誤った「安全・安心」。人間関係の固定化を避け、「コミュニティ・クラッシャー」扱いされる人へのシンパシーのある筆者としては、常に違和感を抱いている。

いずれにせよ、新型コロナウイルスの報道に関しては、原発などとも同様、自ら情報を収集し、考え、判断する必要があるだろう。さまざまな意見が乱れるなか筆者は、それをしたかった。日々報道が積み重ねられるなかではあるが、ともに考え続けていければと思う。

次回以降は、任意と強制、医療従事者の感染、問題の深刻度、併発と原発被害との比較、対策と公衆衛生学、情報開示、補償と財政などについて引き続き、触れたい。そして、原発、台風、コロナなどの問題を総合的に考えた際、導き出される人類の次の生き方についてまで、書き進めていきたいと考えている。

▼小林 蓮実(こばやし はすみ)

フリーライター、労働・女性運動等アクティビスト。月刊『紙の爆弾』9月号「ドキュメンタリー映画『友達やめた。』 ─多様性の受容の前にある互いの理解の尊さと困難」、『現代用語の基礎知識 増刊NEWS版』に「従軍慰安婦問題」「嫌韓と親韓」など。

最新! 月刊『紙の爆弾』2020年10月号【特集】さらば、安倍晋三

先日、ある死刑被告人に面会取材するために東京拘置所を訪ねたところ、不可解な出来事があった。施設に入る際、待機していた職員に「弁護士か否か」を確認され、「違う」と答えたら、「新型コロナウイルス対策の検温に協力して欲しい」と求められたのだ。

このご時世、もちろん検温には応じたが、疑問が残った。刑事施設はどこも平時から、弁護士の面会については、手荷物検査を免除したり、面会時間を長くしたりと、様々な点で一般の面会と扱いが異なるが、それらはすべて被収容者の権利擁護のためだと理解できる。しかし、新型コロナウイルス対策の検温について、弁護士とその他の来訪者を区別する必要は何かあるだろうか?

その職員は、「上から、そうするように言われたんです……弁護士の方は、弁護士会で徹底するそうです」と説明したが、ますます意味がわからない。弁護士会が所属弁護士に対し、新型コロナウイルスに感染しないことや、感染した場合に拘置所や刑務所で感染を拡大させないことを徹底できるはずがないからだ。

実際、他地区の弁護士によると、東京拘置所以外の刑事施設では、弁護士もその他の来訪者同様、入場前に検温をされている例もあるという。

◆弁護士に対する検査は「入場後」に行っていた……

そこで、なぜ、弁護士には入場前の検温を要請しないのかについて、東京拘置所に正式に取材を申し入れた。すると、総務部の職員から電話で次のような回答があった。

「弁護士の方については、拘置所内にある弁護士専用の待合室に入ってから、サーモグラフィーカメラで検査させてもらっています。そのうえで必要があれば、検温もさせてもらっています。ただ、このような対策を始めてから、弁護士の方が検温で発熱が確認された例はありません。一般の方は、発熱が確認された方がこれまでに1人いて、入場をお断りしましたが」

入場前の検温が弁護士だけは免除されている東京拘置所

東京拘置所は元々、弁護士とそれ以外の来訪者では、面会の受付窓口も待合室も別々になっている。それゆえに検温をする場所も違うということのようだ。ただ、弁護士だけは検温をせず、拘置所の建物内に入れていることに変わりはなく、それが新型コロナウイルス対策として適切と言えるかは疑問だ。

では、もしも今後、弁護士が専用の待合室に入ってからの検査で発熱が確認されることがあったらどうするのか? その点も質問したところ、その総務部の職員の回答は歯切れが悪かった。

「実際にそうなってみないとわかりませんが……その場合、入場をお断りするというより、入場しないようにお願いすることになるかもしれません。あくまでお願いベースだと思います」

拘置所や刑務所は現在のコロナ禍において、クラスターの発生が最も恐れられている場所の1つだ。しかし一方で弁護士の面会については、下手に制限すれば、弁護士や被収容者から反発され、面倒な事態になりかねない。この総務部の職員の話しぶりからは、東京拘置所がそのあたりのバランスに苦慮している様子が窺えた。

実際問題、全国各地の刑事施設で職員や被収容者が新型コロナウイルスに感染したというニュースがぽつぽつと報じられている。他ならぬ東京拘置所でもすでに被収容者の感染例が確認されている。「弁護士も入場前に検温しておけばよかった」という事態にならないように願いたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第11話・筒井郷太編(画・塚原洋一/笠倉出版社)がネットショップで配信中。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

昨年、団体分裂によって設立されたジャパンキックボクシング協会。代表は長江国政氏でしたが、満1周年となった5月1日付けで小泉猛氏に交代されています。

NAGAE ISMと銘打たれた今回の興行。2年ほど前から神経性の病で歩行困難になり、闘病を続ける長江国政氏に勝利の報告を届けなければならない治政館ジム勢の戦い。そして当協会の今後の浮上を懸けた戦いでもある。

さらにコロナウィルス蔓延で、7月からプロボクシングの興行も無観客で徐々に再開されて以降、キックボクシングでも無観客や客席を半分以下に減らしての開催が始まりました。

正月明けから7ヶ月ぶりとなった当協会興行。ソーシャルディスタンスを保っての興行で、なかなか厳しい状況が続いているキックボクシング55年目の夏です。

選手皆が復帰戦のような立場の中、閉鎖された藤本ジムからRIKIXへ移籍したHIROYUKIは6月、他興行に出場しており、勘の鈍りは少なかったかもしれなません。

メインイベンター馬渡亮太は不完全燃焼に終わる。今後の出場で本領発揮を期待したい。

◎NAGAE ISM / 8月16日(日)後楽園ホール開場17:00 開始18:00
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

馬渡はアグレッシブに攻めるも、今少し距離が足りない

◆第8試合 56.0kg契約 5回戦

馬渡亮太(前・JKAバンタム級C/治政館/56.0kg)
    VS
ダウサコン・モー・タッサナイ(元・ラジャダムナン系スーパーフライ級3位/タイ/55.45kg)
引分け0-0 / 主審:椎名利一
副審:仲49-49. 和田49-49. 桜井49-49

ムエタイのリズムが続く両者のパンチ、ヒジ、ヒザの時折強いヒットを見せるも相手を弱らせるに至らない。馬渡の方がパンチ蹴りの手数が多いが、首相撲の展開に移るとダウサコンがやや上手を行き、互いの決定打が無い展開が続く。日本での試合、決め手が無ければ引分けになるのが何となく読める中、ジャッジ三者とも49-49ながら、各ラウンドの三者の採点が揃わない展開が続く終了となった(4Rだけ2者ダウサコン、1者馬渡)。  

飛びヒザ蹴りを幾度か見せた馬渡、ボディに炸裂は効果有りか

距離が掴めない中での馬渡のハイキック、巧みにかわすダウサコン

◆第7試合 52.5kg契約 5回戦

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/52.4kg)
    VS
HIROYUKI(前・日本バンタム級チャンピオン/RIKIX/52.5kg)
勝者:HIROYUKI / KO 3R 2:11 / 主審:仲俊光

両者は5年前に対戦し、HIROYUKIが判定勝利。若さとここ最近の勢いでHIROYUKIがスピードで優り調子を上げていく。石川の組みついてのヒザ蹴りを許さない距離から右フックで第1ラウンドにノックダウンを奪い、第3ラウンドにも蹴りからのパンチがヒットしてノックダウンに繋げ、石川は何とか立ち上がるも足下がおぼつかず、レフェリーがテンカウントを数え、HIROYUKIが余裕のノックアウト勝利を飾った。

HIROYUKIの右ハイキックが石川直樹の頬にヒット

HIROYUKIの攻めが冴える。石川直樹はリズムを掴めない

蹴りからパンチをヒットさせ、ノックアウトに繋げたHIROYUKI

◆第6試合 67.0kg契約3回戦

JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(治政館/66.7kg)
    VS
ジャックチャイ・ノーナクシンジム(元・ラジャダムナン系バンタム級6位/タイ/66.1kg)
勝者:ジャックチャイ / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-30. 和田28-30. 仲29-30

蹴りから首相撲の距離に移るとジャックチャイが主導権支配。モトヤスックのパンチと蹴りは連打が少なく、接近した瞬間にモトヤスックの額にヒジ打ちをヒットさせるジャックチャイ。元ムエタイランカーのテクニックにもう一歩及ばなかったモトヤスック。

ジャックチャイが巧みに自分の距離を保った

◆第5試合 57.5kg契約3回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(ビクトリー/57.5kg)
    VS
NJKFフェザー級1位.小田武司(拳之会/57.5kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:33 / 主審:椎名利一

左ジャブで小田の出方をコントロールする瀧澤。ミドルキック、ヒジ打ちで次第に瀧澤ペースが勢いづいていく。第2ラウンド、瀧澤はヒジ打ちで小田の額をカットして、レフェリーが様子を見て止め、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

ベテラン瀧澤博人の右ハイキックで若い小田武司を攻める

◆第4試合 67.25kg契約3回戦

JKAウェルター級1位.政斗(治政館/67.25kg)
    VS
NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/67.0kg)
勝者:政斗 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:椎名30-28. 桜井30-29. 仲30-28

政斗が打ち合いの中、右ヒジ打ちで稲葉の額をヒットさせ、勢い増していき政斗が判定勝利。

稲葉裕哉と政斗のパンチの交錯

◆第3試合 女子ピン級3回戦(2分制)

女子(ミネルヴァ)ピン級1位.祥子JSK(治政館/45.1kg)
    VS
同級3位.TOMOMI(TEAM FOREST/45.1kg)
勝者:TOMOMI / 判定0-3 (28-29. 28-30. 29-30)

◆第2試合 50.0kg契約3回戦

空明(治政館/49.9kg)vs谷津晴之(新興ムエタイ49.7kg)
勝者:谷津晴之 / 判定0-3 (28-30. 28-29. 29-30)

◆第1試合 56.0kg契約3回戦

義由亜JSK(治政館/55.6kg)vs姉川良(REON Fighting Sports/55.4kg)
勝者:義由亜 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-27)

《取材戦記》

半年ぶりに後楽園ホールに訪れると、当日計量の午前10時より外で報道陣も含めたコロナ抗体検査が行われ、開場時には靴裏の消毒、センサーによる体温測定が行われていました。リングサイドカメラマンはマスクをした上、フェイスシールドを義務付けられ、ファインダーが覗き難かった。フェイスシールドがカメラと擦れあって傷付くとより靄が掛かって見え難くなったが、これは扱い方が悪かったのかもしれない。

注意喚起の上ではあるが、観衆が声を出さないのは異様な光景でした。客席数を半分に減らした上に空席も目立ったので、かなり静かだった。笑いの起こる野次が懐かしい。

団体や主催者、会場によって規制の違いや、今後のコロナ蔓延拡大によっては状況が違ってくるでしょう。選手の戦いの場に、これ以上の中止自粛が続かないことを祈りたいものです。

1席ずつ空けてのソーシャルディスタンス、満席になる日はいつか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

◆再検査というからには、重篤個所があるのでは?

安倍総理の7時間半に及び検診が、永田町をゆるがせた。憶測を呼んでいるのは、検査の事実を公然とテレビに晒したことである。

総理官邸は「休み明けの体調管理に万全を期すため夏期休暇を利用しての日帰り検診」だと発表しているが、安倍総理は約2カ月前の6月13日にも同院を訪れ、このときは6時間にあわって人間ドックを受診。今回の検診について病院側は「6月の追加検査」と説明している。しかし永田町では「やはり体調が悪化しており、それで重篤個所を再検査したのではないか」という憶測が飛び交っている。

それというのも、8月4日発売の「FLASH」が、「安倍晋三首相 永田町を奔る“7月6日吐血”情報」というタイトルで体調問題を報道しているからだ。

8月4日発売の「FLASH」誌面

同誌は7月6日の首相動静に、小池百合子都知事と面談を終えた11時14分から16時34分、今井尚哉首相補佐官らが執務室に入るまでの約5時間強。総理に空白の時間があったとして、この間に吐血したのではないかという情報が永田町に流れていると解説している。安倍首相が抱えている持病の潰瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変、あるいは治療のために服用しているとされるステロイド系の薬剤による影響を指摘していた。

吐血という以上、上部消化器官系(胃・十二指腸)からのもので、持病の潰瘍性大腸炎とは考えにくい。下部消化器系で起きた潰瘍や癌細胞は、大腸から肝臓や胆のう、胃と十二指腸、すい臓、最後は肺に転移するとされている。そこで上記の「瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変」が推測されたわけである。

じつは2015年8月にも「週刊文春」が「安倍首相の『吐血』証言の衝撃」という記事を掲載したことがある。ホテルの客室で会食中に安倍首相が吐血し、今井尚哉秘書官が慌てて慶応大病院の医師を呼び出し、診察を受けたという記事を掲載したのだ。このとき安倍事務所は「週刊文春」発売の翌日に、文藝春秋に記事の撤回と訂正を求める抗議文書を送っている。

しかるに、今回はそのような抗議も打消しの言動もない。

総理と長時間にわたって面談(国会対策と後継者問題か)した麻生太郎副総理は、例によって「あなた、147日間も連続勤務したことある? ないよね。だったらわからないだろうが、それだけ長く勤務をつづければ、体調もおかしくなるということだ」などと逆質問し、菅義偉も例によって「わたしは連日お会いしているが、淡々と職務に専念をしている。まったく問題ないと思っている」と木で鼻をくくるような返答であった。

だがしかし、車列をつらねて慶応病院を訪れ、あたかも国民にアピールするような行動に出たのはなぜか?

◆なぜ秘匿しなかったのか? 政治家の病気は命取りの「常識」

ふつうなら、ひそかに官邸を脱出し、極秘に診療をうける方法もあったはずだ。たとえば国家緊急事態(戦争や内乱時)には自宅からオートバイ(タンデム)で官邸に、渋滞中の首都高を急行する「総理緊急送迎」も実行に移されるはずだ(複数回の演習済み)。その場合は、複数のダミーを走らせてテロの標的にならないようにするという。

外に向かっては自衛隊の総司令官であり、内に向かっては警察の治安出動を命令・指示しうる行政の長であればこそ、国家権力の中心軸としての警護・隠密化がもとめられるのだ。

それは通常、病気においても変わるところがないはずだ。一般に政治家は病気の噂を嫌い、かりに病気が事実であった場合も隠蔽するものである。

かつて池田隼人総理は、在職中に癌に罹患した。池田派の側近議員らが癌であることをひた隠し通した上で、任期を残して退陣する演出を行ったのである。すなわち、東京オリンピック閉会式翌日の10月25日に退陣を表明し、自民党11月9日の議員総会にて佐藤栄作を後継総裁として指名したのだ。後継総裁選びを、退陣予定の総裁の指名で行なった、戦前・戦後を通じて最初のケースであった。池田は翌1965年8月13日に死去した。享年65。

◆予定調和の禅譲劇を準備している

「今後のことは検査結果次第でしょう。何もなければ、少し休息を取って英気を養い、仕事を続けられる。一方、これ以上は体調が持たない、となれば、今月24日に在職日数が単独で歴代最長となるのを待っての退陣もある。その場合は麻生財務相が後継ということで、15日に2人が私邸で会った際に話し合ったのではないかとみられている。しかし、総裁選になれば、解散総選挙を見据えて世論の人気の高い石破元幹事長が勝つ可能性もある。安倍首相は、それだけは絶対に阻止したいのでしょうが……」(日刊ゲンダイ、8月19日)

まさに、この推測が的を得ているのではないか。

第一次政権の二の舞を踏みたくない。みじめな退陣劇だけは避けたいという、予定調和の禅譲劇を準備しているのではないだろうか。

2007年7月29日の参院選で自公過半数割れの大惨敗を喫し、党内から退陣要求が出るも、安倍総理はこれを拒否した。8月27日に内閣改造し、9月10日に臨時国会で所信表明をしたものの、代表質問の予定だった同12日に、突如として退陣を表明した。官邸の側近など事前に相談することもなく、突然の決断だったという。もうそのときは、病状の悪化で身体が動かず、政治的にも死に体だったのはいうまでもない。もう二度と、この人に政界復帰の目はないとまで言われたものだ。

◆危機管理に疲れ、いよいよ政権を投げ出す

今回、政権中枢(麻生・菅)の反応はともかく、安倍総理の側近である甘利明氏までもが、公共の電波で「強制的に休ませなければならない」と、健康不安説を助長させるようなことをわざわざ強調している。長期政権の記録を達成した以上、もう辞めたいのではないか。

新型コロナ対応で感染拡大に歯止めがきかず、経済の立て直しも成果を出せない。今年4~6月のGDPが年率マイナス27.8%(速報値)になり、戦後最悪を記録したことが発表された。いまや異次元の金融緩和や大規模な財政出動で株価を支えてきたため、安倍総理に打つ手は残されていない。景気浮揚のために一縷の望みをかけてきた東京五輪は、中止になる可能性が高い。もはや投げ出したい、それが安倍総理の真意なのかもしれない。


◎[参考動画]麻生大臣「健康管理も仕事」診察受けた安倍総理に(ANN 2020/08/18)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】 新型コロナ 安倍「無策」の理由

◆東京都医師会の尾崎治夫会長の「法的拘束力もつ休業要請」

新型コロナウイルス感染拡大の中、一般市民からも野党からも「国会を召集しろ」という声が高まっている。

もっともな要求だが、そこには落とし穴もある。

7月30日、東京都医師会の尾崎治夫会長は、法的拘束力のある補償付き休業「要請」が必要だと発表し、話題を呼んでいる。法的拘束力のある要請とは実質「命令」だ。

テレビはこの発言を好意的に取り上げ、賛同する世論もあるが、”コロナファシズム注意報”を発令したい。


◎[参考動画]都医師会 PCR検査1400カ所に「抑える最後のチャンス」(FNNプライムオンライン)

◆自民党憲法草案の緊急事態条項に悪用の恐れ

そもそも、コロナ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律)は、今年3月13日に可決し翌14日に施行されたばかり。
 
民主党政権時代に成立したインフルエンザ特措法の一部を変えたものである。具体的には、改正前の「新型インフルエンザ等」の定義の改正。法の対象に新型コロナウイルス感染症を追加した。

最大の問題点は、内閣総理大臣が必要と認めれば、緊急事態宣言することができ、権力の集中、市民の自由と人権が強く制限される危険があることだ。
 
これまでの安倍政権は、憲法を守らず、法律に違反し、国会で虚偽答弁を繰り返し、政権に忖度した役人も公文書を改ざん破棄するなどを繰り返してきた。

したがって、今度の新特措法を破ったり強引に拡大解釈してもなんの不思議もない。過去の事実を見る限り、こちらの可能性の方が高いとみなければならない。

もっとも心配なのは、憲法に緊急事態を盛り込む地ならし、ないし布石にしようと政府・自民党は目論んでいる疑いがあることだ。

2012年、自民党は憲法改正憲草案に「緊急事態条項」を盛り込んだ。これは緊急事態と内閣総理大臣が判断すれば、国会機能を停止し、政府が決める政令が法律と同等の効力を持つ。

行政の独裁になり、緊急事態の期間延長も可能という。その危険性ゆえにナチスの全権委任法のようだと批判がある。まさに日本を文明国から野蛮国に転落させる憲法草案といえるだろう。

新型コロナウイルスが問題になり始めた1月30日の二階派の会合で、自民党の伊吹文明元衆院議長が、「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と述べた事実は見逃せない。

人々の不安とストレスに乗じて「法的拘束力を持つ休業」を安易に取り入れた特措法の再改正をすれば、強権的抑圧体制が進むおそれがある。

これは上からの抑圧だが、もっと恐ろしいのが下からの圧力ではないか。

◆権力の弾圧と下からのファシズム──サンドイッチ規制

前述した自民党の伊吹文明氏が言う、憲法の緊急事態条項にコロナ危機を連動させる野望は、上からの民衆弾圧の思想だ。

一方、全体主義的な空気を一般人が下から煽り立てる危険も現実にある。

前回、緊急事態宣言が発出された日のテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』を思い出す。その日のうちに緊急事態宣言発出か、という緊張した日の朝だった。

出演していたジャーナリストの青木理氏は、緊急事態宣言を出せ、政府に強力な権限を持たせよ、という空気が一般人の中にあることについて「非常によろしくない、非常によろしくない」と繰り返し警告していた。

それに対し、テレビ朝日社員のコメンテーターである玉川徹氏が、「上からでなく下から声が上がってきたのは非常にいいこと」という趣旨の発言を、青木氏のコメントに対応するかたちで繰り返した。

自粛警察、自粛ポリス、マスク警察などを見れば明らかだろう。

国家権力が直接的な強権を発動するのではなく、下から人権や私権の制限および権力の強化を求める機運が高まった時こそ、全体主義が暴走しやすい。

自由を求める少数の人々は、国家権力と民衆の間に挟まれるサンドイッチの具になる。デモ隊の左右を機動隊んが挟み込む規制を”サンドイッチ規制”と呼ぶ。それを立体的にしたようなイメージである。

国会を召集するのは当然としても、安易に「コロナ特措法」の強化に対しては、最大限の警戒を持つべきだ。

◆プラスマイナスで総合的に判断を

そうはいっても、これ以上感染が拡大したらどうするのか? 爆発的に増えたらどうするのか? という意見もあるだろう。その一方で、自由や人権が奪われ、権力が肥大化する恐れがある。

両者をプラスマイナスで考え、より深刻なマイナスを除去する方向で判断するしかないだろう。つまり、どちらがより日本社会に打撃を与えるかの判断が必要ではないだろうか。

コロナウイルスは必ず終息する(100%ではないが)が、いちど強権的システムを構築してしまえば、抑圧体制を容易に終息させることはできない。コロナ終息後も時の権力や支配者たちは、そのシステムを維持するだろう。

そうなれば、ステイホーム、Go to などの号令に従って尻尾を振る飼い犬のような生活が長期間続くことを覚悟しなければならないのだ。

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

◎目次概要◎https://www.kaminobakudan.com/

誰もがいくばくの不安や、気持ち悪さを共有しているであろう、珍しい光景。それもこの国だけではなく、ほぼ世界すべての国を覆いつくしているCOVID-19(新型コロナウイルス)。

「緊急事態宣言」と、大仰な「戒厳令」もどきが発せられたとき、報道機関は一色に染まり、この疫病への恐怖と備えを煽り立てたのではなかったか。あれは、たった数か月前の光景だった。為政者の愚は使い物にならないマスクの配布に象徴的であった。安倍が「無能」あるいは「有害」であることを、ようやくひとびとが理解したことだけが、この惨禍の副産物か。

いま、ふたたび(いや、あの頃をはるかに凌ぐ)感染者が日々激増している。「接触する人の数を8割減らしてください」と連呼していた声は、どこからも聞こえない。それどころか、国は感染対策をきょう時点で、まったくといってよいほどおこなっていない。毎日感染者は激増するだろう。そして都市部から順に医療は崩壊する。COVID-19(新型コロナウイルス)による死者は春先に比べて、少ないようではあるが、医療機関内の混乱とひっ迫に変わりはない。

たった数か月前の「緊急事態」すら発した人間も、発せられた人間も、あの時のことを忘れてしまったのか。そこまで人間の頭脳は、「記憶」機能を失なったのか。

数か月前を想起できないのであれば、75年前を肉感的な事実として、想像したり、それについて思索を巡らすことなど、望むべくもないのだろうか。

残念ながらわたしの体は、それを許さない。

あの日、広島市内で直撃を受けながら生き永らえ、50歳過ぎに癌で急逝した叔父から聞いた、あまたの逸話。その叔父だけではなく同様にあらかじめ寿命が決まっていたかのように、50過ぎに次々と急逝していった叔父たち。そして高齢とはいえ、100万人に1人の確率でしか発症しない、といわれている珍しい癌に昨年罹患した母。担当医に「被爆との関係が考えられますか?」と聞いたが、「それはわかりません」とのお答えだった。それはそうだろう。お医者さんが簡単に因果関係を断言できるわけではない。

不可思議なのだ。長寿の家系……

ついにその足音はわたし自身に向かっても聞こえてきた。

長寿の家系であったはずの、母方でどうして「癌」が多発するのか。科学的因果関係などこの際関係ないのだ。わたしの記憶には生まれるはるか昔、経験はしていないものの、広島の空に沸き上がった巨大なキノコ雲と、その下で燃え上がった町や、焼かれたたんぱく質の匂いが現実に経験したかのようにように刻み込まれている。

人間はどんどん愚かになってはいないだろうか。記憶や想像力を失ってはいないか。

8月の空は悲しい。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年8月号【特集第4弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

◆このままでは、民族滅亡の危機か

全国の感染者がデイリー1000人を越え、とくにウイルス感染の「密集・密接」が顕著な大都市東京において、いよいよ460人越えの感染者数となった(7月31日)。医療崩壊を怖れるあまり、PCR検査にハードルを課してきた厚労省官僚(医系技官)および国立感染研のテリトリー主義の結果、日本はいよいよウイルス禍のなかで滅亡のきざしを経験しつつある。

このまま加速度的に感染者数が増加するようだと、太平洋戦争のような万骨枯れる事態にもなりかねない。4月の超過死亡率は例年通りだったが、法医学学会のアンケートで保健所と感染研が死後のPCR検査を拒否している実態で触れたとおり、厚労省官僚はウイルス禍による死因を隠している可能性が高いのだ。いずれにしても東京のみならず、大都市圏および沖縄のような観光地においても感染者数は増加の一途である。

◆なぜ観光キャンペーンを中止できないのか

にもかかわらず、わが安倍総理は国会審議および記者会見から逃亡し、半休出勤というチキンハートぶりを顕わにしている。それだけならば、危機管理にからっきし弱い宰相のみじめな姿を見るだけですむのに、余計なことをしでかす。

無為無策をかこちながら、安倍政権は反対意見を押し切って「Go To トラベルキャンペーン」を強行したのである。そして政府の新型コロナウイルス対策分科会では、キャンペーンへの疑義が出されたにもかかわらず、政府は議題にもしなかったという(7月31日)。

いったん決めてしまった政策を変更できない。それは日本が戦前にたどった道を彷彿とさせる。戦争への道を変更できなかった戦前の日本を支配したのは、統帥権を梃子にした軍部の政治支配であり、それをささえる国民の愛国心の熱狂であった。

しかし今日、日本の政界を支配してしまったのはカネによる業界利権、そのもとでの政策の捻じ曲げ。すなわち利権による政治の私物化にほかならない。きわめて私的な理由で、政策変更ができなくなっているのだ。

◆観光業界のドン

「週刊文春」によると、この「Go To トラベルキャンペーン」の推進者である二階俊博自民党幹事長をはじめとする自民党の観光立国調査会の役職者37人が、旅行関連業者(ツーリズム産業共同提案体)から4200万円もの政治献金を受け取っていることがわかっている。

つまり、こういうことだ。国民をウイルス禍にさらす旅行キャンペーン(旅行費の35%補助、15%のクーポン支給)は、旅行業界からの政治献金(限りなく賄賂に近い)への見返りだということなのである。

この「観光立国調査会」という組織は、二階幹事長が最高顧問を務め、会長は二階氏の最側近で知られる林幹雄幹事長代理、事務局長は二階氏と同じ和歌山県選出の鶴保庸介参院議員である。

そして実際に「Go To トラベルキャンペーン」の事業を1895億円で受託したのが、上述の「ツーリズム産業共同提案体」なる団体である。自民党議員に4200万円を寄付したのも、じつはこの団体を構成する観光関連の14団体なのだ。

そもそも二階幹事長は観光立国調査会の最高顧問を務めるばかりか、全国旅行業協会(ANTA)の会長でもある。この全国旅行業協会が、上述した観光関連14団体の中枢を構成するのはいうまでもない。二階幹事長はいわば、旅行業界のドンなのである。またもや利権政治、国民の生命を危機に晒しながら利権を追及するという、超の付く政商ぶりを発揮していると言わざるをえない。

週刊文春の記事から引用しておこう。

「(ツーリズム産業共同提案体)は全国5500社の旅行業者を傘下に収める組織で、そこのトップである二階氏はいわば、”観光族議員”のドン。3月2日にANTAをはじめとする業界関係者が自民党の『観光立国調査会』で、観光業者の経営支援や観光需要の喚起策などを要望したのですが、これに調査会の最高顧問を務める二階氏が『政府に対して、ほとんど命令に近い形で要望したい』と応じた。ここからGo To構想が始まったのです」(自民党関係者)

これこそ、政治の私物化にほかならない。

◆即刻「Go To トラベルキャンペーン」をやめ、全国の旅館とホテルをコロナ待機施設に転用せよ

わたしは政権批判のために、二階幹事長の政治の私物化をやり玉に挙げているのではない。感染者が増加しているさなか、1兆7000万円の使い方を間違っていると、そう言わざるをえないではないか。

現在、入院および療養中の感染者は8000人を超えているのだ。このまま毎日1000人を超える感染者が出るとしたら、数千単位で準備しているという病床は足りなくなる。病院への入院調整が、医療現場にたいへんな煩雑をもたらしているという(東京都医師会会長の会見)。心ある自民党員は、党の統制を怖れずに意見を言うべきである。1兆7000万円もの「Go To トラベルキャンペーン」費用を、政府はただちに待機用宿泊費に転用し、第二波パンデミックに備えるべきであると。


◎[参考動画]GoToトラベル「一旦中止を」野党と専門家が論戦 尾身氏は人の動きを見直す提言の可能性に言及

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

《8月のことば》八月の空は悲しい(鹿砦社カレンダー2020より/龍一郎・揮毫)

まずは、稀にみる豪雨被害に遭われた皆様方に心よりお見舞い申し上げます。同時に、本年はじめからの新型コロナに感染された皆様にも、一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

8月、私も龍一郎と同じ想いです。

ちょうど50年前の1970年8月6日、大学生として初めての夏、帰省の途中、ヒロシマに降り立ち、広島大学の寮に泊めていただき、慰霊のアクションを行ったことが甦ってきます。戦後25年の夏でした。

それから50年── 本年2020年は戦後75年を迎えます。このまま戦後100年を迎えたいものです。生きて迎えられるかはわかりませんが……。

龍一郎も私も、ささやかながら反戦の声を挙げ、多くの人たちの声が大きくなり、憲法改悪を阻止してきましたし社会の反動化に抗して来ました。

老いてますます盛んとはいきませんが、反戦の志を持続していきたいと、あらためて決意するものです。

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◆従軍慰安婦像と土下座彫像

コロナ禍のなかで、世界が閉ざされようとしている。

水際防疫である検疫・入国禁止措置だけではない、政治的な相互鎖国が始まっているのだ。米中は「スパイの拠点」として、相互に領事館(テキサス州ヒューストン・四川省成都)の閉鎖を命じ、事実上の準交戦体制に入った。

韓国・平昌(ピョンチャン)市につくられた「永遠の贖罪」像

いっぽう、米朝対話・朝鮮南北対話は遠のき、日韓関係もまた「決定的な影響を受ける」(菅義偉官房長官)事態となっている。この「決定的な」事態を生起させようとしているのは、平昌(ピョンチャン)市の韓国自生植物園につくられた「永遠の贖罪」像である。従軍慰安婦を象徴する少女像に、ひざまずいているのが安倍晋三総理であるという。

植物園は「安倍首相が植民地支配と慰安婦問題について謝罪を避けていることを刻印し、反省を求める作品」としている。

そのいっぽうで、個人的にこれを作った園長のキム氏は、一部メディアの取材に「安倍首相を特定してつくったものではなく、謝罪する立場にある全ての男性を象徴したものだ。少女の父親である可能性もある」と話しているという。このコメントはおそらく、内外からの議論噴出・賛否の声が大きくなったことへの対応であろう。土下座像の近影をみると、どう見ても安倍総理の面影・姿勢であることは印象は否定できない。デフォルメされたものではない、きわめて写実的につくられた彫刻なのである。

◆日本政府の無策が泥沼化をまねいた

いずれにしても、冷え込んだ日韓関係がさらに深刻な状態になるのは必至だ。

というのも、この8月4日には徴用工裁判で凍結された日本企業資産が公示を終えて「現金化」されるからだ。これが実施されれば、韓国における日本企業のまともな企業活動は不可能となる。さらには軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の契約更新も控えている。

ところが、もはや泥沼と化した日韓関係にもかかわらず、日本政府は「(土下座像は)国際儀礼上、許されるものではない」(菅官房長官)とコメントするだけで、何ら手を打とうとしない。

そもそも慰安婦少女像は民間で作られたものであり、韓国政府に「国際儀礼」をもとめても始まらない。民間人の政治表現であるがゆえにこそ、特使を派遣して韓国社会に直接うったえ、日本の立場を理解させる外交上の努力が必要なのだ。外交当局・韓国政府のみならず、韓国市民との対話を通じて「日本の謝罪の真意」あるいは「日本の誠意」を表明することこそ、日本政府が責任をもって行なうのでなければならない。

にもかかわらず、安倍政権は「不快感」を表明するだけで、何ら行動を起こそうとしないのだ。元来、きわめて政治的な韓国の司法において、世論に働きかけるより他に方法はない。司法判断を文政権にせまることで、三権分立を掘り崩そうとする安倍政権の対応が滑稽に見えてしまう。

文政権になって、初めて首脳会談が行なわれたのは一昨年の5月、日中韓サミットの付随的な会談だった。50分の首脳会談ののち、ワーキングランチが約1時間、形式的な「日韓関係を未来志向で発展させていくことを確認し」たにすぎなかった。

昨年12月の会談も安倍総理の訪中のさいに行なわれた付随的なもので、わずか45分という短さだった。通訳を通しての会談であれば、実質的な会話は半分以下、それぞれが10分程度の発言となる。事前の事務方協議がある会談とはいえ、じつに無内容な会談となったのである。

しかも「日韓両国はお互いに重要な隣国同士であり、北朝鮮問題をはじめとする安全保障にかかわる問題について、日韓、日米韓の連携は極めて重要だ」「この重要な日韓関係を改善したい」(安倍総理)。これにたいして「直接会い、正直な対話を交わすことが重要だ。両国がひざを交えて知恵を出し、解決方法を早く導き出すことを望む」(文大統領)という聞こえの良い共同記者会見の中身が、継続されることはなかった。

◆不可逆的なモニュメント

2015年8月、韓国・西大門刑務所の跡地で頭を垂れる鳩山友紀夫元総理

それにしても、従軍慰安婦問題は「不可逆的に解決」したはずである。その結果、新たに完成したのは、安倍総理をかたどった「非可逆的なモニュメント」だった。

前政権を訴追ないしは殺す韓国を相手にした交渉において、そもそも「解決」など望むべくもなかったのだ。

それがたとい国際条約法上あるいは国際慣習上、不思議な事態であっても、韓国の世論が日本の謝罪をみとめないかぎり、けっして歴史観の一致はありえないのだ。

したがって、今後は金色の安倍晋三像にひたすら謝罪してもらい、足りない分は安倍総理自身が韓国の国民との対話をつうじて、その真意を理解してもらうほかない。安倍総理に「謝罪の真意」があれば、という仮定になるとしても、元総理・鳩山友紀夫氏がかつて中国、韓国において、頭を垂れたように。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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◆新型コロナ禍とよど号LIFE

先日、11人程度でオンライン会議をおこなった。東京は1カ所に9名程度が集まっていたが、オンライン参加が私を含めて2名いたということだ。会議の内容は、以前ここでもご紹介したように、よど号メンバーの支援に関するもの。会議は毎月おこなっているが、私たちは50周年を機に、イベントを開催しようとしている。

そこで、リーダーの小西隆裕さんが書いた論文を輪読し、感想や意見を交換。いずれここに掲載されるかもしれないが、新型コロナウイルスに触れた内容で、「収束の先行」という出口戦略を主張するものだ。それに対し、さまざまな意見が出て興味深かったので、改めてコロナに対する戦略を考えてみたい。

右から小西隆裕さん、若林盛亮さん、赤木志郎さん

◆各国における実現可能なPCR検査数

まず意見としてあったのは、「収束の先行」の困難。そこでやはり、休業などに対する補償の重要性について確認された。次に出されたのが、検査数に関する問題だ。PCR検査に関しては、たとえば『東洋経済ONLINE』でもまとめられているが、人数は7月12日時点で累計46万6,738名、この日の新規は1,838名で、1日の最高は9日の1万1,505名だろう。件数は6月28日時点で累計65万5,822件、この日の新規は3,452件だ。東京都では7月12日時点で累計11万3,458名、10日の新規は1,367名で、1日の最高は8日の3,302名だろう。

それに対し、中国では、『NHK』によれば、6月22日までに「延べ9,000万人分の検査を行」い、「検査態勢を強化した結果、1日に最大370万人余りの検査を行えるようになったと強調し」ているという。また、韓国でも、『朝鮮日報』によれば、7月「13日0時現在で累計で140万8312人が武漢コロナウイルス感染症の検査を受け」たという。無症状の患者が多いなかで「収束の先行」をかんがみれば、検査数の増加は可能であり、すべきということになるだろう。

これに関し、日本医師会による検査反対の意向があったのではないかという意見が出された。『日医 on-line』によれば、3月18日の定例記者会見で横倉義武会長は、「『現在、わが国では医療提供体制の見直しで病床数の抑制が求められているが、今後もこのような事態に備えて入院医療体制に余裕を持たせておくことが必要である』との見解を示した」とある。ただし、釜萢敏常任理事は、「医師がPCR検査を必要と判断したにもかかわらず、検査に結び付かなかった不適切と考えられる事例が生じていることを受けて」「新型コロナウイルスに関する『帰国者・接触者相談センター』への相談件数(2月1日~3月13日)が全国で18万4,533件あり、そのうち『帰国者・接触者外来』の受診につながったのは7,861人、PCR検査の実施に至ったのは5,734件であったことを報告。『相談から検査につながったのは3.1%であり、やはりこの数は少ない』と指摘」とのことだ。

つまり、無駄な入院患者の急増によって医療体制が崩壊するという意見は多く聞かれたが、検査自体を否定するものではないのかもしれない。また、偽陰性の問題もよく主張されていたが、日本疫学会の『新型コロナウイルス関連情報特設サイト』によれば、「PCR検査自体の問題ではなく、検体採取部位におけるウイルス量(RNAコピー数)の問題である」そうだ。

さらに、『Care Net』では、

・偽陰性率は感染1日目が100%(95%CI:100~100%)であり、4日目が67%(95%CI:27~94%)と5日目(COVID-19の典型的な発症日)まで減少した。・発症日(感染5日目)の偽陰性率は38%(95%CI:18?65%)であった。

・感染8日目(発症から3日目)の偽陰性率は20%(95%CI:12~30%)と最低となり、その後、9日目(21%、95%CI:13~31%)から再び増加し、21日目に66%(95%CI:54~77%)となった。

とのことだ。

※上記写真はまぽ (S-cait)さんによる写真ACからの画像

◆新型コロナ禍の利権構造

そのほかにも、当日の会議では、利権構造を疑う意見が出された。新型コロナウイルス関連の利権について調べていると、さまざまなコンテンツにたどり着く。次回は、この利権構造、任意と強制、医療従事者の感染、問題の深刻度、併発と原発被害との比較、対策と公衆衛生学、情報開示、補償と財政などについて引き続き、触れたい。そして、原発、台風、コロナなどの問題を総合的に考えた際、導き出される人類の次の生き方についてまで、書き進めていきたいと考えている。

▼小林 蓮実(こばやし はすみ)
フリーライター、労働・女性運動等アクティビスト。月刊『紙の爆弾』8月号特集第4弾「『新型コロナ危機』と安倍失政」「セックスワーカーを含む すべての人の尊厳を守れ 『SWASH』代表 要友紀子氏インタビュー」、『現代用語の基礎知識 増刊NEWS版』に「従軍慰安婦問題」「嫌韓と親韓」ほか。

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〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

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