私たちは2016年春先から「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「M君リンチ事件」)に関わり続けてまいりました。早いものでもう5年が経とうとしています。

 

2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!!

そうして昨年からその「検証と総括」の作業に努めてまいり、これはきちんと一冊にまとめ形のあるものとして残すことにしていました。こういう事件が再び起きないようにとの願いを込めてのことです。

想起すれば、5年近く前に本件が持ち込まれ、この被害者M君のリンチ直後の写真を見、リンチの最中の録音を聴いた際に、素朴に「これは酷い」と感じ、加えて被害者M君はリンチ後1年余りも、わずかな友人・知人を除いて孤立無援の状態にあったことも聞き、少なくとも人道上放置はできないと思い、本件に関わり続けて来ました。若い大学院生が、これだけの凄絶な集団リンチを加えられ、藁をも摑む気持ちで助けを求めているのに突き放すことは、私の性格からして到底できません。爾来、昨年広島原爆投下75年に際し被爆二世をカミングアウトした田所敏夫をキャップとして取材班と支援会を発足させ、微力ながら被害者救済・支援と真相究明に携わってきました。この選択は間違ってはいなかったと今でも思っています。

当初、M君に話を聞き、提供された資料を解読し、「今の成熟した民主社会の社会運動内に、いまだにこうした野蛮な暴力がはびこっているのか」と驚きました。しばらくは半信半疑で取材を進めましたが、仮にM君の話がデマや虚偽であったならばすぐに撤退するつもりでした。

リンチの加害者とされる李信恵ら5人には一面識もありませんでしたので、私怨や遺恨などありません。

しかし、取材を進めるうちに、いろいろな事実が判ってきました。李信恵という人が、この国の「反差別」運動の象徴的な人物として名が有ることは知っていましたが、こういう事件に多かれ少なかれ関わっていることに驚きました。ちょうど極右・ネトウヨ勢力によるヘイトスピーチ華やかりし頃で、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」制定も企図される頃でした。

「反差別」の錦の御旗を立て、極右・ネトウヨ勢力の跳梁跋扈を阻止しヘイトスピーチに反対するという大義名分の蔭で、このような悲惨な事件が起きていたことに驚きました。

かつて、私たちの世代は、反体制運動における「内ゲバ」や「連合赤軍事件」を知っています。これらにより一時は盛り上がった学生運動や反戦運動、社会運動が解体(自壊)していった歴史を見て来ています。実は私自身、早朝ビラ撒き中に対立勢力に襲われ激しい暴行を受け病院送りにされ5日ほど入院した経験があり、また、ジャーナリストの山口正紀さんも、M君の訴訟で大阪高裁に提出した「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』に収録)の中で、やはり学生時代に暴行を受けたことを記述されています。山口さんは重篤なガンで闘病中ながら、今回その「意見書」も含め長大な渾身の論考として寄稿いただきました。

M君リンチ事件の被害者支援と真相究明に関わり始めた当初、「この問題は奥が深いな」と感じたのが正直のところです。やはりその予想通りでした。

 

リンチ直後の被害者大学院生M君

M君リンチ事件関係では、関連の訴訟も含め5件の民事訴訟が争われました。M君が野間易通による暴言の数々を訴えた訴訟(M君勝訴)、M君が李信恵らリンチに連座した5人を訴えた訴訟(M君勝訴)、鹿砦社が李信恵による暴言を訴えた訴訟(鹿砦社勝訴)、そして李信恵がこの反訴として鹿砦社を訴えた訴訟(一審鹿砦社敗訴→これから控訴審)、それに「カウンター/しばき隊」の中心メンバーにして元鹿砦社社員を訴えた訴訟(係争中)です。上記3件、判決内容や賠償金額などに不満はあるものの当方(M君、鹿砦社)の勝訴で確定しています。神原弁護士は「正義は勝つ!」などと全てみずからの側の勝訴と嘯いていますが事実ではありません。

ちなみに「正義は勝つ!」というのであれば、神原弁護士が事務局長を務める『週刊金曜日』植村隆社長の訴訟では、確定判決で負けてしまったことをどのように言い訳なさるのでしょうか? 世の中、必ずしも「正義」が勝つとは限りません。ここに悲劇があったり喜劇があったり不条理があったりします。殊に、裁判所における「正義」はえてして市民感覚とは異なります。

ついでながら、植村社長は、一昨年(2019年)、鹿砦社創業50周年記念の集いにお越しいただきご挨拶賜りました。また、社長就任後に会食も共にしたこともあります。最近も「上京されたらご連絡ください」とお誘いを受けていますが、神原弁護士との関係に配慮し、あえて連絡をしないでいます。『週刊金曜日』今週号(2月5日発売)に『暴力・暴言型社会運動の終焉』の1ページ広告が掲載される予定です。

こうして、この5年間のM君リンチ事件に関わってきた「検証と総括」作業を進め書籍の編集過程にあった中で、突如起きたのが、M君リンチ事件にも連座した伊藤大介による暴行傷害事件です(昨年11月25日午前1時30分頃)。前日24日、今般判決のあった訴訟の本人(証人)尋問が終わり、深酔いし、複数で極右活動家・荒巻靖彦を呼び出し暴行に及んだところ、無抵抗だったM君とは違い逆襲に遭い刃物で刺され、双方負傷した事件です。この事件は、伊藤らが仕掛けたものですが、6年前のM君リンチ事件と同じパターン(裁判が終わり酔って相手を呼び出し暴行に及ぶ)です。「歴史は繰り返す」とはよく言ったものです。これが現在の「反差別」運動というのであれば、あまりに悲しいです。

この事件もあり、編集途上のところ、すでに原稿が届き編集も終わっていたものを中心に急遽まとめ発行したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』です。

これまでのM君リンチ事件に関する本は、M君対李信恵らとの訴訟のポイント、ポイントで発行されてきましたが、今回は関連訴訟(対李信恵第2訴訟)の判決直後の発行となりました。

一審判決は、残念な結果になりましたが、控訴審で、心機一転捲土重来を期します。一審判決には決定的な間違いが散見されます。一つ目についた箇所を挙げれば、当該の書籍にて取材した者のインタビューを記しているにも関わらず、その者に取材して確認していないなどと判断(誤判)していたり杜撰なものです。

李信恵は鹿砦社取材班の取材や書籍、「デジタル鹿砦社通信」などの記事で「苦しめられた」などと申し述べていますが、本件での最大の被害者は、言うまでもなくM君です。裁判所は、リンチ直後のM君の顔写真をしかと見よ! 1時間にもわたる凄絶なリンチの阿鼻叫喚を聴け! いまだにPTSDに苦しむM君の心身共にわたる苦しみに比べれば、さほどのことはないと言わねばなりません。

昨年11・24の本人尋問で、リンチ直後のM君の画像を李信恵に見せ、「これを見てあなたは人間としてどう思いますか?」と問い質す松岡。李信恵は沈黙を通した(赤木夏・画)

私たちの闘いはこれからも続きます。確かに一審は負け(今のところは)賠償金を背負うことになりましたが、M君がリンチによって負った傷に比べれば大したことはありません。

今後とも、更なるご支援をお願い申し上げます。M君訴訟では皆様方のカンパにより訴訟費用をまかないましたが、鹿砦社訴訟では自弁ですので、『紙の爆弾』や多種多様な書籍などを買ってご支援ください。

ちなみに、M君訴訟のカンパの約6割は在日コリアンの方々で、その他、情報収集や取材などにもご協力いただきました。これは明かしてもいいかと思いますが、第4弾書籍『カウンターと暴力の病理』でリンチの最中のCDを付けようとしたところ、これも「私に任せてください」と在日の方が韓国でプレスしてくださいました。さすがに日本国内ではやれませんから。そうした方々のご協力で、これまでやって来ましたが、これに報いるためにも私たちは挫折するわけにはいきません。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08VBH5W48/

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裁判期日が終わる→仲間と飲みに行く→散々飲んで気が大きくなる→気に入らない人間を呼び出す→暴行に及ぶ。

 

2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』明日4日発売!!

この定型式にどこかで既視感はないだろうか。鹿砦社がこれまで出版した「M君リンチ事件」に関する5冊の書籍をお読みいただいている方であれば、瞬時に気がつくことだろう。

そうだ。「M君リンチ事件」発生時とまったく同じ展開で、またしても暴行事件が発生したのだ。この日は、鹿砦社対李信恵第2訴訟の本人(証人)尋問の日だった。これが終わり、事件発生前には李信恵と、のちに逮捕される伊藤大介が、飲食を共にしている写真が、李信恵発信のツイッター、フェイスブックにより確認できる。時刻は11月24日18:30頃だ。

その後、日付が変わった25日深夜1時30分頃、この間、かなり飲み食いしたのだろうか、伊藤は酔った勢いで、極右活動家荒巻靖彦を呼びだした。どのようないきさつでもみあいになったのかまではわからないが、新聞報道によれば伊藤らが荒巻に殴り掛かり、荒巻は逆襲、刃物を持っており伊藤はその刃物によって、全治1週間の怪我をさせられている(一方荒巻は伊藤に顔面を殴る蹴るされており、左手小指を骨折している)。場所は大阪市北区堂山町。監視カメラが張り巡らされ、人目の多い場所でもある。怪我をした伊藤、もしくは周囲にいた人物が110番通報をした模様で、駆け付けた警察官に荒巻は現行犯逮捕されている。

 

リンチ直後の被害者大学院生M君

刑事事件については、推定無罪を適用すべきだと、われわれは考えるので、荒巻並びに、伊藤の処分についての詳述は避ける(荒巻は罰金刑で、伊藤はこれから傷害容疑で公判にかかる模様である)。

しかしながら、伊藤自らが「しばき隊」であると公言しているので「しばき隊」特有の行動については本文の中で詳述した。「しばき隊」の人間は、どうしてこのように「混乱必至」な行為に及ぶのであろうか。暴力を振るい暴言を虚偽発信し、これを繰り返す「しばき隊」の行動パターン、とりわけこの日伊藤が事件に手を染める前の様子から、詳しいレポートをお届けする。取材班は法廷内の傍聴席でも伊藤らを包囲し(おそらく伊藤らはその存在には気づかなかったであろう)、注意深く伊藤の行動をも観察していたのだ!

そして、事件発生後しばらくの沈黙期間をおいて発表された伊藤擁護を企図したC.R.A.C.と「のりこえねっと」の「声明」の筋違いについても、徹底的に分析を行なった。どうして「しばき隊」は同じ間違いを繰り返すのか? どのような思考回路がそれを誘引するのか? 心理学専門家の意見も参考に、「しばき隊」のメンタリティー分析にも是非ご注目を!

『暴力・暴言型社会運動の終焉』には各方面からご寄稿も頂いた。ご自身が被害者となり、その後一時期はかなり熱心に「しばき隊」との言論戦(といってもかなり楽しそうではあったが)を繰り広げた合田夏樹さん。LGBT問題で「しばき隊」に絡まれ、仕方なく応戦した(今もしている)作家の森奈津子さん。このお二人は直接「しばき隊」と言論戦や法廷戦を闘われた方でもあるので、経験談を中心に原稿を書いていただいた。特に合田さんは直接に伊藤大介から脅迫を受けている。

 

尾﨑美代子さんには、「反原連」時代から連中が包含した根深い問題点を、体験と考察を元に分析していただいている。M君とも親しく、「反原連」の問題を知り尽くした尾﨑さんは、当初カウンター活動に参加を試みたこともあったが、やがてそのヘゲモニーが「しばき隊」に握られるようになることを察すると、手を引いたという。慧眼の持ち主はこの問題をどのように総括するのであろうか。

昨日の本通信でお伝えしたように、「M君リンチ事件」ならびに鹿砦社が李信恵を訴えた事件は、すべて司法記者クラブの手で握りつぶされた(記者会見開催を拒否された)。この問題については、フリーライターで大手新聞の「押し紙」問題に詳しい黒薮哲哉さんが、論考を寄せてくださった。

元読売新聞記者の山口正紀さんは、「M君リンチ事件」裁判における一審から控訴審、上告審までの判決の不当性について、精緻かつ長大な分析を頂いた。山口さんは「M君リンチ事件」裁判控訴審に「意見書」を提出いただいたこともあり、本事件に対して司法が果たした(果しえなかった)役割について、厳しい分析を展開してくださった。

 

松岡は「平気で嘘をつく人たち」と、黒薮さんとの合作で「危険なイデオローグ‐師岡康子弁護士」を執筆。そして「M君」自身が「リンチ事件から六年──私の総括」を寄稿した。

このように紹介すると総花的で、散漫なムック本(紙の爆弾増刊号)のようにお感じになる向きもあるかもしれないが、そうではない。現場からのレポートと、直接関係者の体験談、客観的な立場からの観察ならびに分析、2021年における「反差別」と「反差別運動」についての問題提起や方針を示したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』である。この本は、編集部が筆者に編集方針を伝え、それに沿うように原稿を依頼していない。完全に自由で制約のないご意見を異なる立場の方々から頂いた。その結果われわれが幸いであったのは、当初の予想以上に問題の本質に多角的な接近を実現することができたことである。

コロナ禍の中で、大切な問題が埋もれてしまいがちな日常にあり、しかしながら決して度外視することのできない人類の大命題に直接取り組んだ『暴力・暴言型社会運動の終焉』はどなたにとっても、示唆に富む内容であることをお約束する。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

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〈差別〉に反対し〈暴力〉を嫌悪する、すべての読者の皆さん!鹿砦社特別取材班が「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「M君リンチ事件」)の取材を開始し最初の出版物『ヘイトと暴力の連鎖』を出版したのが2016年7月。もちろん取材は出版前に開始したので、われわれがこの問題にかかわり、まもなく5年を迎える。

 

『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!!

「M君リンチ事件」は単に、ある集団内で発生した、偶発的な事件ではなかったことがのちに判明する。有田芳生参議院議員筆頭に、師岡康子、神原元、上瀧浩子ら弁護士。中沢けい、岸政彦、金明秀ら大学教員・研究者。安田浩一、西岡研介、朴順梨、秋山理央などフリーの発信者。そして中立を装い、事件を仲裁するように見せかけながら「M君」を地獄に突き落とした「コリアNGOセンター」の幹部ら。

数え上げればきりのないほどの著名人が寄ってたかって、事件隠蔽とM君に対するセカンドリンチと村八分に奔走した。「事件隠蔽加担者」は上記個人だけではなく、すべての大手マスコミ(~関係者)も参加して悪辣極まるものであった。

本通信をきょう読んでおられる方の中に、M君が「しばき隊」の実権者、野間易通を名誉毀損による損害賠償を求める裁判で訴え、勝訴した事実をご存知の方はどれくらいいるだろうか。M君は提訴の際、大阪地裁で勝訴した際、いずれも司法記者クラブ(大阪地裁・高裁の中にある記者クラブ)に記者会見の開催を申し入れたが、一度も実現したことがない。あれこれ理由にならない言い訳を並べたが、結局大手マスコミの記者連中は「M君リンチ事件」を闇に葬ろうとする勢力に加担したのであり、上記隠蔽加担者らと同等もしくは重い役割を進んで背負った。

松岡と裁判前に喫茶店で「偶然の遭遇」をしたという李信恵の虚偽のツイート

だから、本来であればテレビや新聞で大々的と言わぬまでも、報じられて当然のこのニュースが、事件発生後マスメディアで取り上げられることはなかったし、その事実に居座って、事件に関係した連中は、ついぞ反省をすることはなかった。M君と加害者が対峙した証人調べの際に、口頭で謝罪を述べた者はいたが、その後の行動を見れば到底反省したとはいえない。

M君支援と事件関連書籍の出版を進めるうちに、李信恵をはじめ多数の人物が鹿砦社を誹謗中傷し始めた。ただし、われわれは出版を重ねるにあたり、事実関係は徹底的調査し尽くし、関連人物への取材も可能な限り直接行ってきたので、誹謗中傷に熱を上げるものどもは、具体的な批判ができない。幼稚な表現で罵詈雑言を浴びせるか、連中お得意の「ありもしない事実」をでっちあげそれを拡散させる、という卑怯な手法が用いられた。

今日、振り返って痛感することの一つに、「Twitterは人を壊す」ことが挙げられる。限られた文字数に感情の発露と、偽りの「繋がり」や「絆」を求める行動は、エスカレートすることが多く、本件以外にも数々の災禍を引き起こしてきた。李信恵は鹿砦社に対して再現するのも憚られるような、幼稚で下劣な言葉を用いて、幾度も鹿砦社を攻撃してきた。当初われわれは顧問弁護士を通じて、「そのような書き込みを止めるように」警告したが、それでも李信恵のわれわれに対する罵倒は止まらなかった。致し方なく鹿砦社は李信恵に対して名誉毀損による損害賠償を求めた民事訴訟を提起し、裁判所は李信恵の不法行為を認め、われわれは全面勝訴した。

さて、それではどうしてこの時期にわれわれが「2021年最初の爆弾」を投下しなければならないのか。理由は明快である。われわれが取材、出版を続ける中で懸念していた「M君リンチ事件」のような暴力事件の再来──それが現実のものとなってしまったからだ! しかも鹿砦社と李信恵の裁判が行なわれたその翌日未明に!

 

リンチ直後の被害者大学院生M君

大阪地裁では鹿砦社が全面勝利した(李信恵が全面敗訴した)裁判の最終盤で李信恵側から「反訴」の意向が示された。しかし裁判長はそれを認めなかったために、仕方なく李信恵は別の裁判を提起し鹿砦社に550万円の支払いと、あろうことか「出版の差し止め」を求めてきていた。2020年11月24日。大阪地裁では、原告・被告双方の本人(証人)尋問が行われていた。その模様についてはすでに本通信でお伝えしてあるのでご参照頂きたい。

事件はその日の裁判終了後に発生した(正確には日付が変わり25日午前1時30分頃)。裁判中には傍聴席にその姿があった「カウンター」の中心メンバー・伊藤大介が極右活動家・荒巻靖彦を深夜電話で呼び出し、双方負傷。伊藤が110番通報したことで荒巻は「殺人未遂」の現行犯で逮捕された。だが,衝撃はほどなくやってきた。伊藤大介が12月6日大阪府警に傷害容疑で逮捕されたのである。

われわれは、この事件発生直後から綿密な取材を開始し本年1月末か2月初頭の出版を目標に、正月返上で準備を進めてきた。しかし 『暴力・暴言型社会運動の終焉』出版については、本日まで完全部外秘とし、ごく一部の人間しかその情報を知りえなかったはずである。販売促進の観点からは、発売日が決まっていれば早い時期から広告を出したり、周知活動を行うのが定石であるが、われわれはあえてそうはしなかった。

 

 

連中はすでにカルト化している。というのがわれわれの見立てである。しかもその中には複数の弁護士もいる。連中が『暴力・暴言型社会運動の終焉』出版に対して出版差止めの仮処分を打たない保証はない(仮処分とは通常の裁判と異なり、緊急性を要する判断を裁判所に求めるものである。通常出版物の仮処分による「出版差止め」は元原稿(ゲラ)などの直接証拠がなければ認められることはないが、上記の通り民事訴訟の中で李信恵は「出版差止め」を求めている。われわれは記事内容には確実に自信を持っているが、それでもどんな主張を展開してくるのかわからないのが連中だからである)。

そうだ! 敵に隙を与えないためには、読者諸氏にも本日までお知らせすることができなかった。そういった理由であるので無礼をなにとぞお赦しいただきたい。書籍の内容? 下記の案内をご覧ください。鹿砦社(メールsales@rokusaisha.com、ファックス、HP)、もしくはアマゾン、書店などで、今すぐご予約を!

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

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 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『NO NUKES voice』Vol.26発行にあたって

本年は年頭から新型コロナに振り回された一年でした。いまだにとどまるところを知らない勢いです。

こうした中で、3・11から10年近く経ち必死で生きる福島現地の方々、意に反し故郷を遠く離れて暮らしておられる方々らの存在が忘れられようとしています。

今こそ Look back in anger ! (怒りを込めて振り返れ!) Don’t forget Fukushima ! と叫びたい気持ちです。皆様方には、なんとしてもこの師走を乗り切り無事に年を越していただきたいと願っています。

さて、本誌今号では、お馴染みの小出裕章さん、水戸喜世子さんに加え、かの歴史的な大飯原発再稼働差止め判決を下された樋口英明元裁判官の座談会を実現させることができました。くだんの判決同様、歴史的な座談会といえるでしょう。

「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の流出である」(2014年5月21日、大飯原発再稼働差止め判決より。裁判長は樋口英明さん。本誌創刊号に判決要旨を掲載)

歴史に残る名判決です。本誌はこの精神を継承いたします。

皆様方、良い新年をお迎えください。そして3・11 10周年を共に笑顔で迎えましょう!

2020年12月11日 『NO NUKES voice』編集委員会

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.26 《総力特集》2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を

『NO NUKES voice』Vol.26
紙の爆弾2021年1月号増刊
2020年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 2021年・大震災から10年
今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

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《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
樋口英明さん(元裁判官)
水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
[司会]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)

[インタビュー]なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
被ばく労働の実態を掘り起こす

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
どの言葉を使うかから洗脳が始まってる件。「ALPS処理水」編

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発災害の実相を何も語り継がない  「伝承館」という空疎な空間

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈10〉 避難者の多様性を確認する(前編)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈20〉五輪翼賛プロパガンダの正体と終焉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
東電福島第一原発の汚染水「海洋放出」に反対する

[報告]松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志
ふたたび、さらば反原連! 反原連の「活動休止」について

[対談]富岡幸一郎さん(鎌倉文学館館長)×板坂剛さん(作家・舞踊家)
《対談》三島死後五〇年、核と大衆の今

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が放射能汚染水の海洋投棄と原発の解体、
再処理工場の稼働と放射性廃棄物の地層処分に反対する理由

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述家)
中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
やがてかなしき政権交代

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
誑かされる大地・北海道
人類の大地を「糞垂れ島」畜生道に変えてしまった“穢れ倭人”は地獄に堕ちろ!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈10〉人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
原発反対行動が復活! コロナ下でも全国で努力!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
《伊方原発》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《高浜・美浜》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《規制委・環境省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京電力》佐々木敏彦さん(環境ネット福寿草)
《東海第二》小張佐恵子さん(彫刻家、いばらき未来会議、福島応援プロジェクト茨城事務局長)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表)
《福島第一》片岡輝美さん(これ以上海を汚すな!市民会議)
《地層処分》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関西電力》老朽原発うごかすな!実行委員会

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!


◎鹿砦社HP http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000645

◆北海道の「核廃棄物」動乱

 

本日発売! 月刊『紙の爆弾』2021年1月号!

横田一は北海道寿都町の「核のごみ処分場反対住民の反転攻勢」をレポートする。反対派「町民の会」の講演会に、小泉純一郎元総理が講演者として来町。その講演会に「勉強のために」参加するはずだった片岡町長はドタキャンしたのだった。

11月13日には臨時町議会で、住民投票条例の審議と採決が行われ、賛成と反対が4対4。議長採決で否決された。反対派住民と町長・町議会の対話は閉ざされたのである。住民の意見を聞かない行政には、地方自治体法違反の可能性が高いと、横田は指摘する。

ところで、問題なのは鈴木直道北海道知事の動向である。コロナ防疫については早期に緊急事態宣言を発し、親分にあたる菅義偉のGoToキャンペーンにも異を唱えるなど、硬骨漢ぶりを発揮している若き鈴木知事も、この問題では弱腰である。法政大学の後輩で、菅義偉に太いパイプを持っているのだから、もっと存在感を発揮して欲しいものだ。町レベルでは町長リコールの動きも活発だという。今後も横田のリポートに注視したい。

◆ポンコツ答弁の「影」を暴け!

喉頭がんによって喋る力を失った浅野健一は、しかし健在である。菅義偉総理のポンコツ答弁をささえる、背後で動かす「影」を実名報道せよ! というものだ。

浅野は詳細に記者会見、およびぶら下がり取材(菅の官邸はこれを記者会見というらしい!)を検証しているが、国会答弁でのポンコツぶりは国民を唖然とさせるものだった。

およそそれは、必要な予習をしてこなかったばかりか、宿題を忘れた劣等生が困り果て、優等生(秘書官)のメモで答弁するという珍無類の光景だった。さんざん指摘してきたとおり、安倍晋三ほどの演説力(関係のないことを、延々と喋る能力=じつは、これが政治家の真骨頂である)がない菅総理において、秘書官の機敏な動きは不可欠なのである。サブタイトルの「自助で国会答弁できない菅首相」とは、言いえて妙である。

「学術会議などでの菅首相の国会での答弁は見ていて哀れだ。活舌も悪く、安倍前首相のほうがまともに感じられるほどだ」(記事中)。まったく同感である。

菅総理の秘書官は、新田章文という筆頭秘書官(菅事務所)のほかは、いまだ氏名不詳であるという。この「影」を暴くことこそ、われわれの当面の任務ではないだろうか。

◆注目のレポート記事

現地ルポは、西谷文和の「中村哲さん殺害から一年 なぜアフガニスタンの戦争は終わらないのか」である。中村哲の思い出のいっぽうで、変わらないアフガン。いや、ますます罪のない子供たちに犠牲を強いるアフガンの現実。憤りと涙なくしては読めない。

黒薮哲也の「日本禁煙学会が関与した巨額訴訟の行方」は興味ぶかく読めた。団地の住民が、タバコの副流煙で損害賠償を提訴した事件のレポートだ。筆者も十数年前にタバコをやめ、マンション暮らしゆえにベランダでの喫煙で隣人と軋轢があった(話し合いで解決)。集合住宅での喫煙・副流煙問題は当事者(喫煙者にも、非喫煙者にも)には深刻な問題だ。

今回のレポートでは、日本禁煙学会の理事長が関与した杜撰な提訴に、裁判所が被告(喫煙者)と原告の被害に関連性なしと判決。それを受けて、被告側が訴訟による被害を反訴したものだ。隣人訴訟に圧力団体が関与した例として、今後の展開が注目される。

近藤真彦への不倫処分と紅白私物化の、ジャニーズ事務所の実態を暴露するのは、本誌芸能取材班。NHK「あさイチ」とジャニーズの関係(ネックは視聴率)が興味ぶかい。

◆拙稿、朝田理論の検証について

手前みそだが、紙爆9月号の「士農工商ルポライター稼業」について、わたしの意見を掲載していただいたので紹介しよう。

本通信(11月12日および11月17日)では、井上清の『部落の歴史と解放理論』の検証、とりわけ部落差別の三位一体論(部落差別の存在・地域差別・職業差別)の妥当性を論じてみた。

歴史検証としては、井上清の論考が果たした役割が大きく、その検証が今日的にふさわしいからだ。

紙爆1月号の記事では、黒薮哲哉さんの12月号の論考に対する見解、および解放同盟の朝田善之助さんの「朝田理論」を検証してみた。

論点はいくつかあるが、まずは現在の日本社会が差別社会かどうか、差別の存否から議論しなければならないであろうこと。そのうえで、差別かどうかは部落民が決めるという朝田理論の時代性、糾弾権の問題などである。このあたりは、本通信の松岡利康の経験的な見解も併せてお読みいただきたい。時代とともに。解放同盟も変っているはずなのだから。

いずれの拙論においても、結婚差別が現代に残された最も深刻で、かつ「解消」という新たな問題をはらんだものと考えている。鹿砦社が解放同盟中央本部と議論する過程で、この論点をともに検証したいと考えている。それが70年代の苛烈な部落解放運動を、その末端で支持・共闘してきた者としての役割だと考えるからである。
ほかにも興味を惹かれる記事満載、買って損はしない「紙爆」年末号である。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

『紙の爆弾』12月号、11月7日発売!菅首相は「令和のヒトラー」

月刊『紙の爆弾』12月号が本日発売になりました。このかん『紙の爆弾』は、執拗な自公政権追及で部数を伸ばしてきました。今月号もさらに鋭く追及の矢を放ちます。小さくても存在感のある雑誌を自認する『紙の爆弾』ですが、号を重ね創刊15年余り経ちました。『紙の爆弾』は、ご存知のように創刊直後に「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧を食らいました。この壊滅的危機を皆様方のご支援で乗り切り現在に至っているわけですが、「ペシャンコにされてもへこたれないぞ」という気概は衰えていないつもりです。

また、本誌の継続的企画として冤罪問題があります。今月号は、労働者の町・釜ケ崎に根づき、仲間と共に不正を追及している尾崎美代子さんが「神戸質店事件」を採り上げています。詳しくは記事をお読みいただきたいですが、一審無罪が、新たな証拠もないのに控訴審でなんと無期懲役に、そして最高裁もこれを追認し確定しています。怖い裁判です。

さらに、先月号から始まった「士農工商ルポライター稼業」についての検証作業、今月号も6ページを割き行っています。今月号は松岡に加え黒藪哲哉さんに寄稿いただきました。本誌を紐解いてお読みいただきたいですが、誤解しないでいただきたいのは、私たちは解放同盟と敵対するものではなく、共同作業として〈差別とは何か?〉について公開で議論していく中から問題の在り処を探究する所存だということです。幸いに解放同盟の方も寛容の心を持って対応していただいています。半年、1年と議論をしていく過程で問題の〈本質〉を抉り出し、ゆくゆくは共同声明としてまとめたいと願っています。

「士農工商ルポライター稼業」問題も継続的に議論検証していきます!

◎このコロナ禍で、当社も売上減を余儀なくされています。この機会に定期購読で本誌を支えてください。1年分(12号)=6600円を郵便振替(01100-9-48334 口座名=株式会社鹿砦社)でご送金ください。1号お得です。今、お申し込みくだされば、特製ブックカバーに加え、魂の書家・龍一郎揮毫の「2021鹿砦社カレンダー」を贈呈いたします。

本日11月7日発売!『紙の爆弾』12月号!

◎『紙の爆弾』12月号 https://www.kaminobakudan.com/

現代史の端境期〈1970年〉とはどのような時代だったのでしょうか。個人的には、この年、私は大学に入学し、九州・熊本から京都に出て来ました。大学に入る、まさにその直前、大阪万博が開幕し、「よど号」ハイジャック事件が起こりました。70年安保の年ですが、前年の安保決戦で新左翼勢力は敗北し、全般的に「カンパニア闘争」に終始したといわれます(が、それでもかなりの数の学生や反戦労働者が逮捕されました。今だったら「武装闘争」の部類でしょう)。

大阪万博

「よど号」ハイジャック事件

また、同時に、水俣病闘争や反公害闘争が、それまでになく盛り上がってきた年でもありました。

いわゆる「内ゲバ」も、中核派が革マル派学生を殺し、革マル側も報復し、以後、血で血を洗う中核vs革マル戦争が始まった年です。

そうして、11月25日、作家・三島由紀夫が市谷・防衛庁に立てこもり決起し自決します。

6・23安保自動延長に抗議するデモ

三島由紀夫蹶起

私は私で、これまで見たことのない人たちと出会い、カルチャーショックを受けました。京都の大学に入らなければ、また違った人生だったことでしょう。

こうしたこともあり、本誌は、東京で発行される出版物と違い、同志社色の濃いものになっています。私の人脈から同大OB4人(中川、高橋、若林、中島)に寄稿いただきましたが、これだけでも東京発のものとは色合いが違っています。

昨年、『一九六九年 混沌と狂騒の時代』を出し、『一九七〇年~』は、この流れにありますが、『一九六九年~』よりも40数ページ増えていて、想像以上に苦戦しました。

私自身の体験や見知ったことを基に企画を立案しましたが、1970年の雰囲気を醸し出していると自負します。一人でも多くの方にお読みいただきたい、渾身の一冊です。発行部数も9700部と、この種の出版物としては多い部数です。今すぐ書店に走ってください!

渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)、本日11月2日発売!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

月刊『紙の爆弾』11月号が本日7日発売となりました。

本誌9月号での昼間たかし氏の記事中に記された「士農工商ルポライター稼業」という言葉が「差別を助長する」との部落解放同盟からの指摘について、今月号から検証記事の連載を開始しました。

今回は簡単な経過説明、解放同盟からの通知文、これに対する私たち(松岡、本誌編集長・中川、昼間)の現時点の見解(9月15日の面談に持参)を掲載しました。

解放同盟とは、公開の議論として検証することで一致、しばらくの間、第三者、本誌や解放同盟周辺の人たちによる検証記事を掲載していくことになりました。

この問題について、皆様方のご意見をお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年11月号より

月刊『紙の爆弾』2020年11月号より

タブーなき月刊『紙の爆弾』2020年11月号 本日発売!【特集】安倍政治という「負の遺産」他

◆43年ぶりに蘇った記憶

『ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯』……。

何十年も前に見たテレビ番組のタイトルを突然、思い出した。中学か高校のころNHKで見た記憶があるが、いつだったろう。そのタイトルとラストシーンの衝撃をいまだに忘れない。 

気になってインターネットで調べてみると、1974年にアメリカで制作されたテレビ映画だった。NHKの記録を確認すると、1977年8月30日(土)20時(再)と表示されている。再放送なのだが、おそらく私が観たのは、この日だったろう。

◎[参考動画]Jena Louisiana

 
それにしても、40年以上も前に1回だけ観たテレビ番組のタイトルや、ラストシーンを鮮明に覚えているのは不思議だ。当時高校2年生だった私は、それほど強烈に感情を動かされたのに違いない。

1962年当時、110歳だった黒人女性がインタビューを受け回想するという構成だ。黒人の苦難の歴史と同時代に生きた個人史が交錯するような演出だったと思うのだが、さすがにテレビで一度きり観ただけなのでほとんど覚えていない。ただひとつ鮮明に覚えているのは、ラストシーンである。 

当時のアメリカは、バスなどの交通機関には白人専用席があったし、公共の場所の水飲み場も白人専用のものがあった。黒人が白人専用の水を飲む運動がおこり逮捕者も死者も出るほど緊迫していた。日本の公園にもよくある、石かコンクリートの土台の上についているミニ噴水型の水飲み場である。

ラストで主人公のジェーンは、焦点となっていた屋外の水飲み場(裁判所の庭)に水を飲みに行く。

黒人の知人たちが、裁判所敷地と路面の境界あたりでとどまり、ジェーンを見送る。彼女はひとり、杖を突きながら、ヨロヨロ、ふらふらと一歩、また一歩と水飲み場に近づいていく。

建物前では白人たちが大勢その姿を見守り、銃を手にした警察官のような人もいる。

建物の入り口に近い場所にあるWhite Onlyと書かれた水飲み場にたどり着くと、じっと見ている白人を一瞥して、ジェーンはそっと口を近づけて一口水を飲む。

そして踵を返し、来た時と同じように杖をつきながらヨロヨロとゆっくりと去っていく……。
 
いま思い出しても心を揺り動かされる場面だが、43年もの間、頭の中から完全に消え去っていた。ところが、一気に記憶がよみがえる「事件」が起きたのだ。

◆白人専用の「鹿児島県政記者クラブ(清潮会)」

その事件は、7月28日に起きた。

『カメラを止めるな! 7月28日(前編)』(塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見をめぐる県政記者クラブ「青潮会」とフリーランスとの戦いをスマホのカメラで撮り続けたドキュメンタリー)


◎[参考動画]カメラを止めるな! 7月28日(前編)

1時間56分ころから、早回しで20~30分が見どころだ。

編集なしの生々しい動画は、記者クラブはジャーナリスト集団というよりも、権力機構・統治機構の一部であることを示している。

この動画を見た私は、日本特有の「記者クラブ制度」が、日本社会を相当ゆがめているとの思いを新たにした。

中央官庁や地方自治体の庁舎や機関には、記者クラブというものがある。新聞社や放送局の記者たちがつくった任意団体であり法人格のある団体ではない。

その記者クラブが、一等地の建物に広いオフィスを無償で開設し、行政からの情報を独占的に得て、権力者が望む内容を報道するのがメインになっている。かつては電話代やファックス代その他もただ(つまり税金使用)だった。

クラブ付きの職員もいるが、それは各クラブが所属する行政の職員であり公務員である。まったく法的根拠のない構成員がちがつくった「内規」により記者クラブは運営されている。このような記者クラブにより”大本営発表”がいま現在も続いているのだ。

法的根拠なく白人(記者クラブ)が牛耳る記者会見からは、有色人種(一般人、SNS等で報道する人、フリーランス)を排除している。言ってみればアパルトヘイト(人種隔離政策)だから、私は『ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯』を思い起こした。

鹿児島県政記者クラブ(清潮会)への参加と質問権を求めてきた中心人物が、フリーランスの有村眞由美氏である。福島原発事故後から、鹿児島県知事の記者会見参加を記者クラブに申請しはじめ、足掛け10年にもわたり記者クラブに働きかけてきた。

そのかいあって、途中で記者会見出席は許されるようになった。

◆源泉徴収票を提出すれば白人専用の水道で水を飲んでもいいetc

とはいっても「オブザーバー参加で質問は禁止」ということであった。そのほか清潮会(鹿児島県政記者クラブ)が規約なるものを作成し、記者会見参加を望む外部の人間に内規を強要してきた。
 
一つ条件をクリアすれば、次の課題を設定する、というやり方である。

・源泉徴収票を提出すれば水飲み場を使える(会見室に入室できる)。
・提出しても源泉徴収票に印鑑がなければ水飲み場使用はできない(普通、源泉徴収票には印鑑はない)
・水道の蛇口をひねって水を出すのは許可するが、飲んではいけない(会見室に入場はできるが質問は禁止)。

なお、今回の記者会見前日、質問可能と記者クラブは連絡してきたが、様々な条件が課せられているという。
 
このような10年間を経て、今年7月の鹿児島県知事選で当選した塩田康一知事の就任記者会見に参加しようと有村氏は鹿児島にとび、冒頭のように会見室前の人間バリケードによって入室を阻まれたのだ。

ジェーン・ピットマンは最後に一口水を飲むことができたが、有森眞由美はまだ渇きをいやせていない。

ちなみに、7月28日は、記者クラブのオープン化ないし廃止を求めるジャーナリスト3人(畠山理仁・寺澤有・三宅勝久)が有村氏に同行した。

◆記者クラブは災害級の被害
 
記者クラブをめぐる新聞社やテレビ局社員とフリーランスの攻防とアメリカの人種差別を描いたテレビ映画を比較するのは、強引だと思う人もいるであろう。

確かに、奴隷として人権を奪われ、解放後も恒常的な暴力・差別・弾圧にさらされている黒人の状況とは違う。記者クラブをめぐって、非クラブ員がリンチで殺されてもいない。

だが、属性の違いによって一部の人たちが権力を握り利益を独占し、それ以外の人々を排除するシステムは共通する。いや、むしろアパルトヘイト(隔離政策)が記者クラブ制度の根幹にあると認識しない限り、問題は解決しない。

今年5月25日、全米どころか全世界を揺り動かした、警察官によるるジャージ・フロイト虐殺事件が起きたときでさへ、私は古いテレビ映画のことをまったく思い出さず、「7・28鹿児島県政記者クラブ人間バリケード事件」を動画で目の当たりにしたとき、43年ぶりに記憶が蘇った。それを素直に文章に書き留めているだけである。

記者クラブは災害レベルであり、日本ピープルにとって「禍」である事実を今こそ認識すべきではないか。

政治・経済・社会など各分野の問題を追及することはもちろん大切だが、様々な問題を伝える土台(報道)が土砂崩れを起こし、災害が起きていることを認識するほうが先決かもしれない。

そこで、10年にわたり記者クラブとの攻防を続けているフリーランスの有森眞由美氏に依頼し、下記の講演会を開催することにした。

7月28日、鹿児島県知事の就任記者会見参加をこばまれた有村眞由美氏(ジャーナリスト寺澤有氏のYouTubeより)

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■講演情報
『記者クラブ禍』~記者クラブとフリーランスの10年戦争
講師:有村眞由美氏(フリーランス)

日時:2020年8月22日(土)
13:30開場 14:00開始 16:30終了
場所:文京アカデミー「学習室」(文京シビックセンター地下1階)
東京都文京区春日1丁目16番21号
https://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civiccenter/civic.html
交通:東京メトロ 丸の内線・南北線 後楽園駅 徒歩1分
   都営地下鉄 三田線・大江戸線 春日駅 徒歩1分
   JR総武線 水道橋駅(東口) 徒歩10分
資料代:500円

【申し込み】30名限定
氏名と「8月22日参加」と書いて下記のメールアドレスに送信してください。
kusanomi@notnet.jp
【参加にあたってのお願い】
◎受付で氏名と連絡先を確認してください。
◎会場入りするときは手洗いをお願いします。(消毒ジェルも用意します)
◎参加者はマスク使用をお願いします。
◎発熱している方や体調の悪い方は、今回は参加をご遠慮ください。

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▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

◎目次概要◎https://www.kaminobakudan.com/

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