季節2022年夏号刊行にあたって 季節編集委員会

6月に入りました。もうじき暑い季節がやって来ます。

被災された方々、意に反し故郷を離れざるを得なかった方々、また脱(反)原発運動に関わる皆様には大変な季節です。

さて、前号より『NO NUKES voice』を改題、全面リニューアルし『季節』として再出発いたしました。多くの皆様方にご支援いただき、まずまずの船出でした。ありがとうございました。

本誌は(2014年8月の旧『NO NUKES voice』)創刊から8年近くが経ちました。同時に2011年3・11から11年余りが経ちました。

前号でも触れ繰り返しになりますが、2014年の創刊のころ鹿砦社はイケイケの時で、本誌の前身『NO NUKES voice』も、僭越な言い方ですが、いわば勢いで創刊いたしました。

しかし、創刊したのはいいとしても、以後1号たりとも黒字にならず赤字を重ね、加えて昨今の新型コロナ禍による打撃は想定以上に大きく昨年末には廃刊の危機に追い込まれました。そうした情況下、小出裕章さん、樋口英明さん、井戸謙一さんらの物心両面にわたるご支援と叱咤激励は、私たちに勇気を与え奮起せざるをえない闘志を惹起させました。
 
改題・リニューアルした『季節』の前途は荒海です。しかし私たちは、被災された方々、故郷を追われた皆様方に寄り添い(皆様のご苦労に比べればなんのことはありません)、なにがなんでも寄稿者や読者の皆様方と共に乗り切ってまいります! あらためて、今後ともよろしくお願い申し上げます。定期購読(前倒し更新、複数年)、書籍や本誌バックナンバーなどの直販、取材活動を支える賛助会員などでご支援ください。

一時は弱気になっていましたが、あらためて本誌を継続させる決意を表明させていただきます。

末筆ながら、コロナ禍長期化と、予想される猛暑、皆様方のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年6月
季節編集委員会代表兼編集長 小島 卓
株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号(NO NUKES voice改題 通巻32号)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

《ご報告》対藤井正美控訴審、4月15日、「控訴理由書」を大阪高裁(第3民事部)に提出しました! 心血を注いで書き上げたものです。第1回弁論は6月の見込み! 鹿砦社(控訴人/一審原告)代表 松岡利康

藤井正美は、「しばき隊/カウンター」の中心人物として鹿砦社に入り込み3年間在籍しました。この間、労働契約に基づく「職務専念義務」を無視し勤務時間中に、私や社員に分からないように仕事をしている振りをして、鹿砦社の業務とは無関係のツイッターとメールを異常かつ膨大に発信しました。その数、ツイッターだけで約2万! メールも数多く、とりわけ近畿大学はじめ団体・企業に対して「取材」に名を借り「鹿砦社」の名を騙った恫喝メールを送り付けました。そうしたことから、常識的に考えて責任を追及されるべきでしょう。

また、本件訴訟は「カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)」とも絡み、藤井はその隠蔽活動にも尽力しました。

こうしたことに対し、鹿砦社は放ってはおけず給与返還、損害賠償を求め大阪地裁に提訴しました。しかし、大阪地裁第16民事部・本田能久裁判長(先般、冤罪被害者・青木恵子さんの国賠訴訟で国の責任を認めなかった判決を出したことで話題となった)は本年2月24日、原告鹿砦社の請求を全部棄却し、逆に反訴した藤井正美に対する名誉毀損とプライバシー侵害を認め鹿砦社に10万円の賠償金+弁護士費用1万円を課す判決を下しました。

当然鹿砦社は3月7日、大阪高裁(第3民事部)に控訴しました。その「控訴理由書」を4月15日提出したのです。これには心血を注ぎ27ページにも及ぶ長文となりました。一審判決の判決文に沿って一つひとつ丁寧に検証し、一つひとつに批判・反論を加え誤判と結論付けました。本控訴審は、代理人弁護士を立てず、私たちの主張がダイレクトに裁判官に伝わるように本人訴訟の形を採りました。なので「控訴理由書」も、これまでの対しばき隊関連訴訟を見てきた方々のご意見も反映させ私が執筆いたしました。前日夜まで推敲、修正、加筆を加え、現時点では最善のものになったと思っています。

画像の左が藤井正美。上部に野間の推奨コメントがある。松岡ら鹿砦社の関係者は、この画像を見て強い衝撃を受けた
藤井が発信したツイッターの一部

◆私たちの生きる社会の〈常識〉から逸脱した藤井正美の行為と、これを容認した大阪地裁の誤判

私たちの生きる社会は畢竟〈常識〉によって成り立っています。藤井正美が行った異常な行為は〈常識〉からかけ離れています。法律を司る者も、法律以前に〈常識〉がなければ虚妄です。ところが本件一審判決は、ことごとく〈常識〉に反し、現実からかけ離れた文集です。原告鹿砦社は、あくまでも私たちの生きる社会の〈常識〉に基づき一審判決の誤りを指摘し、控訴審に妥当な判断を求めるものです。

「釈迦に説法」かもしれませんが、そもそも裁判の意味とは、一切の予断と偏見なく証拠と法律に基づき事実関係を客観的に精査し公平・公正に審理し裁くことにあることは言うまでもありません。裁判所の存在理由(レゾン・デートル)はそこにあります。

しかし一審判決は事実関係のごく初歩的な精査もなさず、一審原告である鹿砦社が提出した数々の証拠を意図的に無視したとしか考えられません。それに対して一審被告藤井正美(代理人・神原元弁護士)の主張を過大かつ恣意的に評価しています。双方の主張と証拠を公平・公正に審理したとは到底言えない粗雑な判断です。

鹿砦社のリンチ関連本で有名になった、ITOKENこと伊藤健一郎(当時立命館大学大学院生)が作成し藤井と配布を画策したリンチ隠蔽の内部文書「声かけリスト」
同上「説明テンプレ」

◆鹿砦社に対する予断と悪意に満ちた一審判決は破棄されるべきです

一審判決は、被告藤井正美に不利なことには全部目をつむり、原告鹿砦社の主張のうち、藤井を勝訴させるにあたり、裁判所として都合の悪い部分や、きちんと説明できないことは無視して、鹿砦社を敗訴に持ち込む。そういう極めて恣意的な、鹿砦社に対する予断と悪意に満ちた不当判決だというのが、控訴人(一審原告)鹿砦社の見解です。

よって、一審判決は全面的に取り消され、あるいは変更されるべきであり、高等裁判所は、控訴人鹿砦社の主張を認め、被控訴人藤井正美への損害賠償が認められるべきです。

今後悪しき判例として残さないために、控訴審にあたり大阪高等裁判所は、一審判決のような誤判ではなく、藤井に対して〈社会の常識〉に照らした判断を下すべきです。

そうでなければ、裁判所が労働契約に基づいた「職務専念義務」を蔑ろにし藤井の不法行為を容認することになり、社会的にも、また藤井本人に対しても良い影響を与えません。かつて前例を見ない異常な不法行為には厳しい判断を藤井に課さないと、「裁判所が容認したから」と他社でも同様のことを繰り返しかねません。司法は、藤井が行った不法行為を決して容認してはならないのです。

さらに、昨今のSNSの拡大により、今後も本件と同種・同類の事件が起きることが予期されます。実際起きていて、例えば大阪国税局の職員は、勤務時間内にスマホで株取引を行い、懲戒処分を受け退職に追い込まれています。

そんな中、一審判決のような非常識な判断が確定すれば、裁判所が不法行為を容認することになり、この国が長年培ってきた社会規範が崩壊するでしょう。いくらなんでも、これは絶対避けなければなりません。

そうとすれば、本件は、単に鹿砦社と藤井正美間の雇用問題に留まらず、公益に係る問題であり、極めて公共性のある問題なのです。

よって、〈社会の常識〉から乖離した非常識な判断を下した一審判決のような〈ゼロ回答〉は変更されるべきであり、鹿砦社の見解を汲み常識的な社会規範に基づいた判断を求めるものです。鹿砦社が主張していることは常識的でシンプルです。

本件訴訟は、広く多くの人たちが注目しています。大阪高裁は、誰が見ても納得できる判断を下すべきです。

私たちは、これまでのリンチ被害者M君による対李信恵らリンチ加害者に対する訴訟、同じく野間易通に対する名誉毀損訴訟、また鹿砦社と李信恵間の訴訟同様、本件訴訟の帰趨について、今後も機を見て「控訴理由書」や判決文の公開と分析、これに対する意見などを全て報告していく所存です。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

50年前の記憶 1972年2月1日の出来事 鹿砦社代表 松岡利康

50年前の今頃、私は同志社大学の学費値上げ阻止闘争のバリケードの中にいた。それは、それまでに盛り上がった学園闘争などに比べると小さなものではあったが、私たちにとっては全身全霊を懸けた〈決戦〉だった。

 
全学無期限封鎖に入ったことを知らせる立て看板

決戦は2月1日だったが、1月13日の全学学生大会で無期限封鎖を決議し、来るべき決戦に備え意志統一し緊張感のある日々だった。

少なくとも私は、この50年間、時にだらけたり時に絶望したり、いろいろなことがあったが、その闘いを貫徹できた矜持を持って生きてきたつもりだ。

学費闘争、あるいはその前後の沖縄─三里塚闘争、連合赤軍事件については、先般発行し現在発売中の『抵抗と絶望の狭間──一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾増刊)に長く拙い文章を綴り、詳しくはこちらをご覧いただきたいが、想起すれば、いまだに頭の中が錯綜する。連合赤軍事件が表面化したのも、逮捕され獄中に在ったさなかだった。

60年代後半から始まった全国学園闘争の波も引き、前年71年の沖縄─三里塚闘争も多数の逮捕者を出し、喧伝された「激動の70年代」も出鼻を挫かれた恰好だ。しかし、このことは上記書でも強調しているが、71年の闘いは地味で霞んでいるように思われているが、決してそうではなく、現在に比べれば、遙かに盛り上がったことを、あらためて申し述べておきたい。

全国の私立大学、また国立大学の学費大幅値上げに対する抗議と抵抗も一定の盛り上がりを見せたが、いつのまにか萎え、最後まで闘いを持続していたのは、さほどなかった。

しかし、ここを何としても体を張って阻止しなければ、学費値上げはどんどん拡大するという認識だったが、これが当たったことは、その後の私立、国公立問わず学費値上げの事実を見れば歴然だろう。信じがたいかもしれないが、当時国立大学の学費は年間1万2千円、つまりひと月千円であるが、物価の水準も上っているとはいえ、その50倍ほどになっている。

私立大学にしても、現在年間100万円ほどにまで膨れている。私が入学した1970年、入学金3万円、施設費3万円、学費6万5千円、計12万5千円だったが、こちらも10倍ほどに上っている。

しかし、68年の中央大学では学費値上げの白紙撤回を勝ち取っている。私たちは、これを見て、学費値上げは必ず阻止できると信じ、身を粉にして闘った。つまり、私たちが「革命的敗北主義」「敗北における勝利」の信念のもと先頭になって闘いを貫徹すれば、たとえ私たちが一時的に敗北したとしても、必ずや私たちの闘いに触発された学友が続くであろうと信じてやまなかった(が、時代はもう変わっていて、逆に運動は脆弱化し、その中から政治ゴロや簒奪者らの介入や跳梁を許すことになった)。

弾圧を報じる京都新聞72年2月1日夕刊

あれからあと数日で50年になろうとしている。──

2月1日に、かつての学生会館(今は取り壊され寒梅館となっている)前に結集し、この50年に各自どのように生きてきたか語り合いたい。私の人望のなさのせいで何人集まるか判らないが、人数の問題ではない、あの闘いを共に貫徹した誇りを甦らそうではないか!

蛇足ながら、1969年に創業した鹿砦社は、その前日の72年1月31日に設立(株式会社化)している。この時のメンバーは『日本読書新聞』(現在廃刊)にいた天野洋一(故人)、前田和男(『続 全共闘白書』編集人)らである。

◎2月1日当日の概要は別途掲載の案内をご覧ください。締め切りは過ぎていますが、参加希望の方は今からでも私にご一報ください。(松岡利康)

2・1学費決戦50周年の集い案内

《9月のことば》満月に 君を想う 鹿砦社代表 松岡利康

《9月のことば》満月に 君を想う(鹿砦社カレンダー2021より/龍一郎・揮毫)

9月になりました──。

私事ながら、今月私は70歳になります。すでに黄泉の国に旅立った友人や、若い頃に出会い、今はどうしているか気になる人も少なからずいます。

あいつ、こいつ、あの人、この人……想い出とともに懐かしい顔が過(よ)ぎります。

いろいろな人たちに迷惑をかけて私は生きてきました。これから老い支度に入ります。後先さほど長くはありません。同世代ですでに亡くなった人もいるのに、これまで生き長らえてきたのが不思議です。

コロナ禍で思ったように身動きできず、故郷の友人はじめ会いたい人にも会いに行けず満月に想いをいたすしかありませんが。残りわずかとなったわが人生、これからもダメなことはダメと言い続ける、恥じない生き方をしたいと思っています。(松岡利康)

【管理人よりのお知らせ】
9月よりこの「デジタル鹿砦社通信」も新たな寄稿者を迎え、これまで以上に読み応えのあるものになると思います。新たな寄稿者は、森奈津子、黒薮哲哉、さとうしゅういち各氏です。ご期待ください!

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

反原発雑誌『NO NUKES voice』28号 発行にあたって 鹿砦社代表 松岡利康

わが国唯一の反原発雑誌『NO NUKES voice』28号が明日6月11日(金)に全国の書店で発売になります。

 
『NO NUKES voice』Vol.28 《総力特集》〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉

同誌も、次号で7年になります。創刊は2014年8月でした。速いものです。まだまだ認知度も低く、採算点にも達していませんが、われわれはたとえ「便所紙」を使ってでも発行を継続する決意です。現在発行部数は1万部(実売ではない!)ですが、何としてでもこれを維持していければ、と念じています。

われわれにバックはいません。われわれのスポンサーは読者の皆様方です! 定期購読(直接鹿砦社、最寄りの書店、富士山マガジンサービスなどに)で『NO NUKES voice』の発行継続を支えてください!

今号から、伝説となりつつある大飯原発、高浜原発の運転差止や再稼働差止の判決(決定)を下された樋口英明さんも「応援団」に加わっていただきました。他にも小出裕章さんらが「応援団」として支えてくださっています。

※以下、《巻頭言》NO NUKES voice Vol.28 発行にあたってを転載します。

 世の中には、私たち常人には絶対にかなわない高潔な人たちがおられます。本誌を創刊して以来もうすぐ七年になりますが、この過程でそうした人たちに少なからず出会ってきました。小出裕章さん、脱原発経産省前テントの渕上太郎さん(故人)、元裁判官で弁護士の井戸謙一さん……お名前を出したらキリがありませんので、これぐらいにしておきますが、最近知り合った方では元裁判官の樋口英明さんです。

 樋口さんは、ご存知の通り福井地裁裁判長時代の2014年に大飯原発3、4号機の運転差止判決、次いで翌2015年に高浜原発3、4号機の再稼働差止仮処分決定を下したことで有名です。ほとんどの裁判官は、国の路線に反する、こうした判断を出せば、その人生に大きな不利益を蒙ることに怯み住民敗訴の判断をするのに、みずからの意志と信念を貫く――心から尊敬いたします。

 本誌vol.26で、その樋口さんと、小出裕章さん、水戸喜世子さんとの鼎談は、労働者の町=大阪・釜ヶ崎で小さな食堂を営みながら反原発や冤罪問題などに取り組む尾﨑美代子さんの企画で実現したものです。尾﨑さんの活動も私たちには真似できませんが、くだんの鼎談は、現在の反(脱)原発運動の現況や今後の指針を示す画期的なものでした。

 樋口さんには、今号に於いてもご登場いただき、さらには巻末の「応援団」にも名を連ねていただきましたが、巻末「応援団」の錚々たる顔ぶれに本誌の、雑誌としての主張や雰囲気が垣間見れると思います。

 ありていな物言いですが、頑固な志を持って頑張っておられる方々ばかりです。本誌は、こうした方々と強い絆を持ち、さらに日々各地で粘り強い運動を持続されている無名・無数の方々と共に、どのような困難にあっても継続していく決意を固める者です。

「豊かな国土とそこに国民が根を下して生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」(大飯原発運転差止判決より)

2021年6月
NO NUKES voice 編集委員会

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『NO NUKES voice』Vol.28
紙の爆弾2021年7月号増刊 2021年6月11日発行

[グラビア]「樋口理論」で闘う最強布陣の「宗教者核燃裁判」に注目を!
コロナ禍の反原発闘争

総力特集 〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉


[対談]神田香織さん(講談師)×高橋哲哉さん(哲学者)
福島と原発 「犠牲のシステム」を終わらせる

[報告]宗教者核燃裁判原告団
「樋口理論」で闘う宗教者核燃裁判
中嶌哲演さん(原告団共同代表/福井県小浜市・明通寺住職)
井戸謙一さん(弁護士/弁護団団長)
片岡輝美さん(原告/日本基督教団若松栄町教会会員)
河合弘之さん(弁護士/弁護団団長)
樋口英明さん(元裁判官/元福井地裁裁判長)
大河内秀人さん(原告団 東京事務所/浄土宗見樹院住職)

[インタビュー]もず唱平さん(作詞家)
地球と世界はまったくちがう

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
タンクの敷地って本当にないの? 矛盾山積の「処理水」問題

[報告]牧野淳一郎さん(神戸大学大学院教授)
早野龍五東大名誉教授の「科学的」が孕む欺瞞と隠蔽

[報告]植松青児さん(「東電前アクション」「原発どうする!たまウォーク」メンバー)
反原連の運動を乗り越えるために〈前編〉

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
内堀雅雄福島県知事はなぜ、県民を裏切りつづけるのか

[報告]森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)
「処理水」「風評」「自主避難」〈言い換え話法〉──言論を手放さない

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈12〉
避難者の多様性を確認する(その2)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈21〉
翼賛プロパガンダの完成型としての東京五輪

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
文明の転換点として捉える、五輪、原発、コロナ

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
暴走する原子力行政

[報告]平宮康広さん(元技術者)
放射性廃棄物問題の考察〈前編〉

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
新・悪書追放シリーズ 第二弾
ケント・ギルバート著『日米開戦「最後」の真実』

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
五輪とコロナと汚染水の嘘

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈12〉
免田栄さんの死に際して思う日本司法の罪(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
コロナ下でも自粛・萎縮せず-原発NO! 北海道から九州まで全国各地の闘い・方向
《北海道》瀬尾英幸さん(泊原発現地在住)
《東北電力》須田 剛さん(みやぎ脱原発・風の会)
《福島》宗形修一さん(シネマブロス)
《茨城》披田信一郎さん(東海第二原発の再稼働を止める会・差止め訴訟原告世話人)
《東京電力》小山芳樹さん(たんぽぽ舎ボランティア)、柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表)
《関西電力》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《四国電力》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》杉原 洋さん(ストップ川内原発 ! 3・11鹿児島実行委員会事務局長)
《トリチウム》柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表/再稼働阻止全国ネットワーク)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク、経産省前テントひろば)
《反原発自治体》けしば誠一さん(杉並区議/反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)

[反原発川柳]乱鬼龍さん選
「反原発川柳」のコーナーを新設し多くの皆さんの積極的な投句を募集します

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

【報告】対李信恵訴訟控訴審(大阪高裁第2民事部)、3月22日、「控訴理由書」を提出! 同時に、法曹、言論関係者など31名による「公平、公正、慎重な審理を求める要請書」も提出、逆転勝訴に向け私たちは最後まで諦めない! 第1回弁論は5月25日(火)午前10時から 鹿砦社代表 松岡利康

わが国の反差別運動に重大な汚点を残した「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)関連の訴訟で似非反差別主義者・李信恵が鹿砦社を名誉毀損で訴えた裁判で、1月28日、大阪地裁(池上尚子裁判長)は、あろうことか、鹿砦社に165万円の賠償金とブログ「デジタル鹿砦社通信」の記事の削除を命じました。

 
リンチ直後の被害者M君。リンチがいかに凄惨だったから判る

私たち鹿砦社は、深夜に1時間に渡る凄絶なリンチを受けつつも、治療費はじめ当時なんの補償もなされず、それどころかセカンド・リンチと村八分を加えられていた大学院生M君への救済・支援と真相究明に携わってきました。それは、6冊に及ぶ出版物(紙の爆弾増刊)として結実し、少なからずの方々から高い評価を受けてきました。

事件が起きたのは2014年師走、大阪屈指の繁華街・北新地です。李信恵ら現場にいた加害者5人はじめ関係者らの隠蔽活動により事件が表面化することはありませんでした。私たちに事件の内容が告げられたのは、事件発生から一年余り経った2016年3月でした。

リンチ直後の被害者M君の顔写真を見て、さらにM君が必死で録音したリンチの最中の音声データを聴き仰天しました。

渡された資料にも目を通し、M君への救済・支援と真相究明の取材を開始しました。国会議員、研究者、弁護士ら多くの著名人が、事件を知りながら隠蔽に加担し、背後に不思議な闇があることを感じさせられました。調べれば調べるほど、その闇は深いと思いました。

M君は、李信恵ら加害者5人と、しばき隊リーダー野間易通を訴え(2つの裁判です)、対野間訴訟では全面勝訴を勝ち取りました。しかし加害者5人を相手取った裁判では、満足のいく金額の判決は得られませんでしたが判決は確定しました(内容に不満は残りましたが勝訴であることには間違いありません)。

M君へのセカンドリンチの一部
 
M君へのセカンドリンチの一部

その関連が今回の訴訟でしたが、一審大阪地裁は、李信恵の主張を認め鹿砦社に165万円の賠償金とブログ記事削除を命じたのです。

人道的立場からリンチの被害者を救済・支援しようとしてきた私たち鹿砦社が、加害者のリーダー的立場の者から訴えられ賠償金を食らうというアイロニ-―この不当判決に私たちは控訴し徹底抗戦することにしました。

日頃「反差別」「人権」を叫ぶ者が、1時間にも及び凄惨なリンチを加え、被害者M君を師走の寒空の下に放置し立ち去った。加害者及び周辺人物は事件後、一時は「謝罪」の意を表わしたもののこれを覆し、被害者M君へのセカンド・リンチと村八分を行い、事件をなかったことにすべく隠蔽を図りました。

 
M君へのセカンドリンチの一部

私たちは、ほとんどの関係者が取材を拒否したり、逃げたり、沈黙するという困難な情況の中で、鹿砦社50年の歴史でも特筆しうるほど地を這うような取材を行いました。幸いにも、心ある在日の方々の協力を得て、どんどん驚くような情報が寄せられました。あまりのディープゆえに“握っている情報”もあります(いつでもぶちまける用意があります)。M君の訴訟費用は広くカンパを募り浄財を寄せていただきましたが、その3分の2は在日の方々でしたし、第4弾本に付けたリンチの音声データを「私に任せてください」と海外でプレスしてくださったのも在日の方でした。あまりに凄惨な音声ですから国内ではプレスできず困っていたところです。

私たちがこのリンチ事件に携わってちょうど5年が経ちました。このままでは終われません! ここで退いたら、言葉の本来の意味での社会正義に反する蛮行を行った徒輩が笑うだけです。血の一滴、涙の一滴が涸れ果てるまで闘います!

彼ら・彼女らは一切反省していません。その証左として、M君のリンチの現場にいた者(伊藤大介)が、再び暴行傷害事件を起しています。私たちはこれまで再三再四、しっかり反省、教訓化しないと、同種の事件は繰り返されるだろうと警鐘を鳴らしてきたのに、です(詳しくは最新刊『暴力・暴言型社会運動の終焉』をご一読ください)。

私たちは、控訴審において、軽々な審理を阻止せんと、代理人も元大阪高裁裁判官のベテラン弁護士を招き、さらには法曹、言論関係者を中心として急遽声を挙げていただいた方々31名が「公平、公正、慎重な審理を求める要請書」に名を連ねていただきました。これも「控訴理由書」と共に原本を大阪高裁に提出いたしました。以下、その一部の方の名を記載いたします(順不同、敬称略)。

大口昭彦(弁護士)はじめ弁護士5名、足立昌勝(関東学院大学名誉教授)、矢谷暢一郎(心理学者/元ニューヨーク州立工科大学教授)、野田正彰(精神医、作家/元関西学院大学教授)、本山美彦(京都大学名誉教授)、寺脇研(元文科相キャリア/大学教員)、平野貞夫(元参議院議員)、玉城満(前沖縄県議員)、高野孟(ジャーナリスト)、揖斐憲(サイゾー代表)、森奈津子(作家)、天木直人(外交評論家/元駐レバノン国特命全権大使)、山口正紀(ジャーナリスト/元読売新聞記者)、黒薮哲哉(フリーランスライター)、板坂剛(作家)、山田洋一(人民新聞編集長)、マッド・アマノ(パロディ作家)、飛松五男(行政書士/元兵庫県警刑事)、水戸喜世子(救援連絡センター初代事務局長)ほか。

*今後、本件については適宜報告してまいります。

『暴力・暴言型社会運動の終焉』

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『NO NUKES voice』Vol.27発行にあたって

2011年3・11東日本大震災‐福島第1原発事故から10年が経ちました。長いようで速かった10年でした。

3・11後、私たちは本誌の前に書籍を数点出しましたが、福島の復旧・復興と共に、福島の想いをわがものとして福島現地からの生きた報告を中心に定期的に発行していこうという決意で後先顧みず本誌を創刊しました。3・11から3年半が経った2014年8月のことでした。

これ以前に、震災後の2011年暮れから福島を忘れないという決意で、魂の書家・龍一郎の力を借りて「鹿砦社カレンダー」を制作し、(当社、たんぽぽ舎への)本誌や『紙の爆弾』の定期購読者、ライターや書店の方々らに無料頒布してまいりました。好評で、当初1,000部から始め現在は1,500部、来年版は1,700部の予定です(内容は毎月1日の「デジタル鹿砦社通信」をご覧ください)。

本誌は、まだまだ採算には乗りませんが、何度も繰り返し申し述べているように、たとえ「便所紙」を使ってでも継続する決意です。

この10年にはいろいろなことがありました。私たちにとって最もショックだったのは、本誌の精神的支柱だった納谷正基さんが急逝されたことです。納谷さんは、お連れ合いが広島被爆二世で若くして亡くなり、その遺志を全うするために、生業の高校生進路指導と、この宣伝媒体のFM放送(仙台)を行っておられ、なんとこの場を使い原発問題を語っておられました。少なからずのバッシングがあったということですが、我関せずで持続しておられました。“志の頑固者”です。本誌の趣旨をも理解され2号目から連載を続けてくださり、毎号100冊を買い取り、学校やFM視聴者らに配布しておられました。

その納谷氏も3年近く前に亡くなられ、娘さんが遺志を引き継ぎ、放送枠を半減させたりして頑張ってこられましたが、矢も底を尽き、この2月、3・11から10年を前にして終了となりました。このかん、どんどんスポンサーは離れ、最後まで支えてくれたのは関東学院大学だけだったということです(あえて名を出させていただきました)。本誌は、そうした納谷さんの遺志を継続することを、あらためて誓います。納谷さんの言葉(警鐘)を1つだけ挙げておきます。──

「あなたにはこの国に浮かび上がる地獄絵が、見えますか?」

この10年の活動で、原発なしでも日本の社会や私たちの生活はやっていけることがわかりました。もうひと踏ん張り、ふた踏ん張りし続け、この国から原発がなくなるまで私たちは次の10年に向けて歩み続けなければなりません。本誌は小さな存在ですが、志を持って反(脱)原発運動や地域闘争に頑張っておられる皆様方の、ささやかな精神的拠点となっていければ、と願っています。

2021年3月
NO NUKES voice 編集委員会

『NO NUKES voice』Vol.27
3月11日発売開始 『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道
私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

2・4『暴力・暴言型社会運動の終焉 ── 検証 カウンター大学院生リンチ事件』(紙の爆弾3月号増刊)発行と、1・28対李信恵第2訴訟不当判決について 鹿砦社代表 松岡利康

私たちは2016年春先から「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「M君リンチ事件」)に関わり続けてまいりました。早いものでもう5年が経とうとしています。

 
2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』2月4日発売!!

そうして昨年からその「検証と総括」の作業に努めてまいり、これはきちんと一冊にまとめ形のあるものとして残すことにしていました。こういう事件が再び起きないようにとの願いを込めてのことです。

想起すれば、5年近く前に本件が持ち込まれ、この被害者M君のリンチ直後の写真を見、リンチの最中の録音を聴いた際に、素朴に「これは酷い」と感じ、加えて被害者M君はリンチ後1年余りも、わずかな友人・知人を除いて孤立無援の状態にあったことも聞き、少なくとも人道上放置はできないと思い、本件に関わり続けて来ました。若い大学院生が、これだけの凄絶な集団リンチを加えられ、藁をも摑む気持ちで助けを求めているのに突き放すことは、私の性格からして到底できません。爾来、昨年広島原爆投下75年に際し被爆二世をカミングアウトした田所敏夫をキャップとして取材班と支援会を発足させ、微力ながら被害者救済・支援と真相究明に携わってきました。この選択は間違ってはいなかったと今でも思っています。

当初、M君に話を聞き、提供された資料を解読し、「今の成熟した民主社会の社会運動内に、いまだにこうした野蛮な暴力がはびこっているのか」と驚きました。しばらくは半信半疑で取材を進めましたが、仮にM君の話がデマや虚偽であったならばすぐに撤退するつもりでした。

リンチの加害者とされる李信恵ら5人には一面識もありませんでしたので、私怨や遺恨などありません。

しかし、取材を進めるうちに、いろいろな事実が判ってきました。李信恵という人が、この国の「反差別」運動の象徴的な人物として名が有ることは知っていましたが、こういう事件に多かれ少なかれ関わっていることに驚きました。ちょうど極右・ネトウヨ勢力によるヘイトスピーチ華やかりし頃で、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」制定も企図される頃でした。

「反差別」の錦の御旗を立て、極右・ネトウヨ勢力の跳梁跋扈を阻止しヘイトスピーチに反対するという大義名分の蔭で、このような悲惨な事件が起きていたことに驚きました。

かつて、私たちの世代は、反体制運動における「内ゲバ」や「連合赤軍事件」を知っています。これらにより一時は盛り上がった学生運動や反戦運動、社会運動が解体(自壊)していった歴史を見て来ています。実は私自身、早朝ビラ撒き中に対立勢力に襲われ激しい暴行を受け病院送りにされ5日ほど入院した経験があり、また、ジャーナリストの山口正紀さんも、M君の訴訟で大阪高裁に提出した「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』に収録)の中で、やはり学生時代に暴行を受けたことを記述されています。山口さんは重篤なガンで闘病中ながら、今回その「意見書」も含め長大な渾身の論考として寄稿いただきました。

M君リンチ事件の被害者支援と真相究明に関わり始めた当初、「この問題は奥が深いな」と感じたのが正直のところです。やはりその予想通りでした。

 
リンチ直後の被害者大学院生M君

M君リンチ事件関係では、関連の訴訟も含め5件の民事訴訟が争われました。M君が野間易通による暴言の数々を訴えた訴訟(M君勝訴)、M君が李信恵らリンチに連座した5人を訴えた訴訟(M君勝訴)、鹿砦社が李信恵による暴言を訴えた訴訟(鹿砦社勝訴)、そして李信恵がこの反訴として鹿砦社を訴えた訴訟(一審鹿砦社敗訴→これから控訴審)、それに「カウンター/しばき隊」の中心メンバーにして元鹿砦社社員を訴えた訴訟(係争中)です。上記3件、判決内容や賠償金額などに不満はあるものの当方(M君、鹿砦社)の勝訴で確定しています。神原弁護士は「正義は勝つ!」などと全てみずからの側の勝訴と嘯いていますが事実ではありません。

ちなみに「正義は勝つ!」というのであれば、神原弁護士が事務局長を務める『週刊金曜日』植村隆社長の訴訟では、確定判決で負けてしまったことをどのように言い訳なさるのでしょうか? 世の中、必ずしも「正義」が勝つとは限りません。ここに悲劇があったり喜劇があったり不条理があったりします。殊に、裁判所における「正義」はえてして市民感覚とは異なります。

ついでながら、植村社長は、一昨年(2019年)、鹿砦社創業50周年記念の集いにお越しいただきご挨拶賜りました。また、社長就任後に会食も共にしたこともあります。最近も「上京されたらご連絡ください」とお誘いを受けていますが、神原弁護士との関係に配慮し、あえて連絡をしないでいます。『週刊金曜日』今週号(2月5日発売)に『暴力・暴言型社会運動の終焉』の1ページ広告が掲載される予定です。

こうして、この5年間のM君リンチ事件に関わってきた「検証と総括」作業を進め書籍の編集過程にあった中で、突如起きたのが、M君リンチ事件にも連座した伊藤大介による暴行傷害事件です(昨年11月25日午前1時30分頃)。前日24日、今般判決のあった訴訟の本人(証人)尋問が終わり、深酔いし、複数で極右活動家・荒巻靖彦を呼び出し暴行に及んだところ、無抵抗だったM君とは違い逆襲に遭い刃物で刺され、双方負傷した事件です。この事件は、伊藤らが仕掛けたものですが、6年前のM君リンチ事件と同じパターン(裁判が終わり酔って相手を呼び出し暴行に及ぶ)です。「歴史は繰り返す」とはよく言ったものです。これが現在の「反差別」運動というのであれば、あまりに悲しいです。

この事件もあり、編集途上のところ、すでに原稿が届き編集も終わっていたものを中心に急遽まとめ発行したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』です。

これまでのM君リンチ事件に関する本は、M君対李信恵らとの訴訟のポイント、ポイントで発行されてきましたが、今回は関連訴訟(対李信恵第2訴訟)の判決直後の発行となりました。

一審判決は、残念な結果になりましたが、控訴審で、心機一転捲土重来を期します。一審判決には決定的な間違いが散見されます。一つ目についた箇所を挙げれば、当該の書籍にて取材した者のインタビューを記しているにも関わらず、その者に取材して確認していないなどと判断(誤判)していたり杜撰なものです。

李信恵は鹿砦社取材班の取材や書籍、「デジタル鹿砦社通信」などの記事で「苦しめられた」などと申し述べていますが、本件での最大の被害者は、言うまでもなくM君です。裁判所は、リンチ直後のM君の顔写真をしかと見よ! 1時間にもわたる凄絶なリンチの阿鼻叫喚を聴け! いまだにPTSDに苦しむM君の心身共にわたる苦しみに比べれば、さほどのことはないと言わねばなりません。

昨年11・24の本人尋問で、リンチ直後のM君の画像を李信恵に見せ、「これを見てあなたは人間としてどう思いますか?」と問い質す松岡。李信恵は沈黙を通した(赤木夏・画)

私たちの闘いはこれからも続きます。確かに一審は負け(今のところは)賠償金を背負うことになりましたが、M君がリンチによって負った傷に比べれば大したことはありません。

今後とも、更なるご支援をお願い申し上げます。M君訴訟では皆様方のカンパにより訴訟費用をまかないましたが、鹿砦社訴訟では自弁ですので、『紙の爆弾』や多種多様な書籍などを買ってご支援ください。

ちなみに、M君訴訟のカンパの約6割は在日コリアンの方々で、その他、情報収集や取材などにもご協力いただきました。これは明かしてもいいかと思いますが、第4弾書籍『カウンターと暴力の病理』でリンチの最中のCDを付けようとしたところ、これも「私に任せてください」と在日の方が韓国でプレスしてくださいました。さすがに日本国内ではやれませんから。そうした方々のご協力で、これまでやって来ましたが、これに報いるためにも私たちは挫折するわけにはいきません。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

《緊急出版》鹿砦社が明日投下する“紙の爆弾”『暴力・暴言型社会運動の終焉』 その“爆薬”の中身はこれだ!! 鹿砦社特別取材班

裁判期日が終わる→仲間と飲みに行く→散々飲んで気が大きくなる→気に入らない人間を呼び出す→暴行に及ぶ。

 
2021年鹿砦社が最初に投下する爆弾!『暴力・暴言型社会運動の終焉』明日4日発売!!

この定型式にどこかで既視感はないだろうか。鹿砦社がこれまで出版した「M君リンチ事件」に関する5冊の書籍をお読みいただいている方であれば、瞬時に気がつくことだろう。

そうだ。「M君リンチ事件」発生時とまったく同じ展開で、またしても暴行事件が発生したのだ。この日は、鹿砦社対李信恵第2訴訟の本人(証人)尋問の日だった。これが終わり、事件発生前には李信恵と、のちに逮捕される伊藤大介が、飲食を共にしている写真が、李信恵発信のツイッター、フェイスブックにより確認できる。時刻は11月24日18:30頃だ。

その後、日付が変わった25日深夜1時30分頃、この間、かなり飲み食いしたのだろうか、伊藤は酔った勢いで、極右活動家荒巻靖彦を呼びだした。どのようないきさつでもみあいになったのかまではわからないが、新聞報道によれば伊藤らが荒巻に殴り掛かり、荒巻は逆襲、刃物を持っており伊藤はその刃物によって、全治1週間の怪我をさせられている(一方荒巻は伊藤に顔面を殴る蹴るされており、左手小指を骨折している)。場所は大阪市北区堂山町。監視カメラが張り巡らされ、人目の多い場所でもある。怪我をした伊藤、もしくは周囲にいた人物が110番通報をした模様で、駆け付けた警察官に荒巻は現行犯逮捕されている。

 
リンチ直後の被害者大学院生M君

刑事事件については、推定無罪を適用すべきだと、われわれは考えるので、荒巻並びに、伊藤の処分についての詳述は避ける(荒巻は罰金刑で、伊藤はこれから傷害容疑で公判にかかる模様である)。

しかしながら、伊藤自らが「しばき隊」であると公言しているので「しばき隊」特有の行動については本文の中で詳述した。「しばき隊」の人間は、どうしてこのように「混乱必至」な行為に及ぶのであろうか。暴力を振るい暴言を虚偽発信し、これを繰り返す「しばき隊」の行動パターン、とりわけこの日伊藤が事件に手を染める前の様子から、詳しいレポートをお届けする。取材班は法廷内の傍聴席でも伊藤らを包囲し(おそらく伊藤らはその存在には気づかなかったであろう)、注意深く伊藤の行動をも観察していたのだ!

そして、事件発生後しばらくの沈黙期間をおいて発表された伊藤擁護を企図したC.R.A.C.と「のりこえねっと」の「声明」の筋違いについても、徹底的に分析を行なった。どうして「しばき隊」は同じ間違いを繰り返すのか? どのような思考回路がそれを誘引するのか? 心理学専門家の意見も参考に、「しばき隊」のメンタリティー分析にも是非ご注目を!

『暴力・暴言型社会運動の終焉』には各方面からご寄稿も頂いた。ご自身が被害者となり、その後一時期はかなり熱心に「しばき隊」との言論戦(といってもかなり楽しそうではあったが)を繰り広げた合田夏樹さん。LGBT問題で「しばき隊」に絡まれ、仕方なく応戦した(今もしている)作家の森奈津子さん。このお二人は直接「しばき隊」と言論戦や法廷戦を闘われた方でもあるので、経験談を中心に原稿を書いていただいた。特に合田さんは直接に伊藤大介から脅迫を受けている。

 

尾﨑美代子さんには、「反原連」時代から連中が包含した根深い問題点を、体験と考察を元に分析していただいている。M君とも親しく、「反原連」の問題を知り尽くした尾﨑さんは、当初カウンター活動に参加を試みたこともあったが、やがてそのヘゲモニーが「しばき隊」に握られるようになることを察すると、手を引いたという。慧眼の持ち主はこの問題をどのように総括するのであろうか。

昨日の本通信でお伝えしたように、「M君リンチ事件」ならびに鹿砦社が李信恵を訴えた事件は、すべて司法記者クラブの手で握りつぶされた(記者会見開催を拒否された)。この問題については、フリーライターで大手新聞の「押し紙」問題に詳しい黒薮哲哉さんが、論考を寄せてくださった。

元読売新聞記者の山口正紀さんは、「M君リンチ事件」裁判における一審から控訴審、上告審までの判決の不当性について、精緻かつ長大な分析を頂いた。山口さんは「M君リンチ事件」裁判控訴審に「意見書」を提出いただいたこともあり、本事件に対して司法が果たした(果しえなかった)役割について、厳しい分析を展開してくださった。

 

松岡は「平気で嘘をつく人たち」と、黒薮さんとの合作で「危険なイデオローグ‐師岡康子弁護士」を執筆。そして「M君」自身が「リンチ事件から六年──私の総括」を寄稿した。

このように紹介すると総花的で、散漫なムック本(紙の爆弾増刊号)のようにお感じになる向きもあるかもしれないが、そうではない。現場からのレポートと、直接関係者の体験談、客観的な立場からの観察ならびに分析、2021年における「反差別」と「反差別運動」についての問題提起や方針を示したのが『暴力・暴言型社会運動の終焉』である。この本は、編集部が筆者に編集方針を伝え、それに沿うように原稿を依頼していない。完全に自由で制約のないご意見を異なる立場の方々から頂いた。その結果われわれが幸いであったのは、当初の予想以上に問題の本質に多角的な接近を実現することができたことである。

コロナ禍の中で、大切な問題が埋もれてしまいがちな日常にあり、しかしながら決して度外視することのできない人類の大命題に直接取り組んだ『暴力・暴言型社会運動の終焉』はどなたにとっても、示唆に富む内容であることをお約束する。

◆皆様方へのお願い!◆

M君リンチ事件、及び本件訴訟判決についてご意見(「デジタル鹿砦社通信」や次回本に掲載)、あるいは裁判所(大阪高裁)への「意見書」(今回の『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載の山口正紀さんのような)を執筆いただけるような方がおられましたら松岡までメール(matsuoka@rokusaisha.com)にてご連絡お願いいたします。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62