斎藤元彦知事の不信任決議・失職に伴う兵庫県の出直し知事選挙は11月17日執行され、斎藤知事が返り咲きました。序盤では、立憲民主党や国民民主党、連合兵庫、県内の多くの市町長に推された前尼崎市長の稲村和美さんに大きくリードされていましたが、猛追、そして劇的な逆転勝ちとなりました。

当選 斎藤元彦 無所属前  1,113,911
   稲村和美 無所属新   976,637
   清水貴之 無所属新   258,388
   大沢芳清 無所属新    73,862
   立花孝志 無所属新    19,180
   福本しげゆき 無所属新  12,721
   木島ひろつぐ 無所属新  9,114

斎藤元彦さんは1977年神戸市須磨区生まれ。東京大学経済学部ご卒業後総務省を経て、大阪府の財政課長などを歴任。2021年の知事選挙で当時の上司だった吉村洋文大阪府知事=大阪維新の会代表=に命じられる形で立候補し、自民党(現在は裏金問題で離党・無所属)西村康稔元経産相ら自民代議士にも応援され、元副知事や共産党推薦候補を下して初当選しました。現在手掛けている目玉政策としては、県立大学の県民向け完全無償化が挙げられます。

しかし、2024年3月、渡瀬元県民局長(当時)が斎藤知事によるパワハラや、物品の「おねだり」疑惑、片山安孝副知事らが中心となった信用金庫への補助金をタイガース・バファローズ優勝パレードにキックバックさせた疑惑など県政私物化を告発する文書を県議やマスコミに送付。これに対して斎藤知事らは、公益通報者保護法に基づいて第三者に任せることをせずに、自分たちで「犯人捜し」をしてしまいました。そして、すでに再就職先も決まっていた渡瀬元局長の退職を取り消したうえに、内部調査だけで「懲戒処分」にしてしまいました。こうした中で、パレード担当課長が自死。さらに、百条委員会で証人尋問される前に渡瀬元局長自身も自死したとされています。

その後、9月に県議会は斎藤知事の不信任案を86対0の全会一致で可決。斎藤知事は、9月30日、失職し、出直し選挙となりました。こうした中で、前尼崎市長の稲村和美さんや、維新の参院議員だった清水貴之さん、共産党系の医師の大沢芳清さんらが対抗馬として手を上げましたが、稲村さんが優勢と言われる状況が10月中旬にはありました。

しかし、ネット上ではいつの間にか「斎藤知事は公務員の既得権益に切り込もうとしてクーデターを起こされて引きずりおろされた」という「神話」が広がっていきました。これを選挙の終盤には旧統一協会が機関紙「世界日報」で取り上げるなどし、斎藤候補を援護射撃しました。

兵庫県知事選 「告発はクーデター」説バズり“パワハラ知事”斎藤元彦氏、逆転か

◆NHKではなくデモクラシーをぶっ壊す「立花孝志」さん

特に、知事選挙の候補者の一人・立花孝志さん(無所属ですが、NHK党党首)は、渡瀬元県民局長が「10人の女性職員と不倫をしていた」さらには「10人と不同意性交していた」などと、後でご自身も根拠薄弱と認めるデマを堂々と政見放送やポスターなどで拡散していました。さらに、百条委員会の奥谷委員長の自宅兼事務所にも選挙演説と称して大勢で押しかけ、奥谷委員長は母親を避難させる事態になっています。また、立花候補が煽った誹謗中傷を背景に、同じく百条委員会で活躍していた竹内英明県議が辞職に追い込まれるという異常事態が起きています。

口から出まかせのようなことを繰り返し、注目を浴びた立花候補。斎藤候補は、自らの手を汚すことなく、対抗馬を引きずり落とすことができました。両者の間に面識はない、ということですが、両者をつなぐ大物がいた可能性もあります。

ともかく、立花候補が「NHK党で10人候補を出す」などと大ぼらを吹いたおかげで、兵庫県選管は公営掲示板を急遽増設し、空振りに終わりました。これだけでも、県費と労働力(ただでさえ人手不足なのに)、木材の無駄遣いで、大迷惑です。

また、今後、立花候補のようなことをするものが出ないよう、公選法による規制が厳しくなる恐れもある。結果として行政の選挙運動への介入も強まりかねない。立花候補はNHKをぶっ壊すどころか「デモクラシーをぶっ壊す」男です。

◆稲村陣営も『反斎藤』まとめられず失速

一方、対抗馬の稲村さんも、急激に失速した感は否めません。今回の選挙の大義名分は、「自分についての告発文書が出たら第三者機関に任せずに自分で犯人捜しをしてしまう組織のトップは失格」ということです。政策うんぬんではないのです。そこを押さえておく必要がある。稲村さんは、「斎藤候補は組織のトップ失格」だという人の票をまとめる必要があった。その点が、今回は弱かったように思えます。その結果、求心力が低下していった。

保守の方の中には『稲村さんは外国人参政権を推進していた左翼だから支持できない』という人が現れました。他方でいわゆる左派やリベラルの中には『稲村さんは維新でもやらなかったような保育園廃止をガンガンやるなど新自由主義者だ』という声も強くなってきました。

出口調査では、れいわ支持層の半数も斎藤候補に流れました。これは、稲村さんの新自由主義的な部分を嫌った可能性がある。アンチ新自由主義が一番の判断基準の人が多いから、維新の清水さんもダメ、最近れいわ攻撃を強めている共産党の大沢さんにもいれたくない。消去法で斎藤君と言う人も多かったのかもしれません。それが正しい選択だったかは別として、です。むろん、『さとうしゅういち後援会』の兵庫県内の会員は稲村さん支持で、選挙を手伝うなどさせていただきました。ただ、れいわ支持者全体の動きにはなりませんでした。

とにかく、呉越同舟で反斎藤ということでまとまる絵柄を出せればよかったのだが、それがなかった時点で斎藤候補に付け入るスキができました。

筆者の個人的な稲村さんについての政策的な評価は、小池百合子氏と蓮舫氏を足して二で割った感じです。だから保守からは左に見えるし、リベラルからはネオリベに見える。戦略を間違うと意外と票がのびなくなるのです。  

なお、東京の場合は、一定年齢以下のインテリの共働き夫婦が小池岩盤支持層で、石丸氏(大金持ち及び若いシングル男性が支持基盤)もそこは食い込めず勝てなかったのです。この層は国政では立憲、都政は小池ファースト、経済政策はネオリベだけど子育て支援は推進で選択的夫婦別姓やLGBT関係は推進という感じの方が多いような印象があります。原発問題についてはまあまあ脱原発寄りで環境重視。しかし、その層は兵庫県内では薄かった。そのことも、『兵庫の石丸』ともいえる斎藤候補に有利に働いたとみられます。

とにかく、告発文書が出た時点で、自分で犯人探しをしてしまう人は首長としてアウト。この一点での選挙にできなかったのが稲村さん陣営の最大の敗因です。あとは横綱相撲を取りすぎた、言い方を変えれば、戦術レベルでガバガバ過ぎたという情報が入っています。男子大学生にマイク納めのマイクを握らせているのを動画中継で拝見し、コロナ感染の後遺症でふらふらしていた筆者は椅子から崩れ落ちました。もともと、稲村さんは、市民派の白井文市長(どちらかといえば日本共産党に近かった)が二期連続務めた後、後継者としてわりと楽な選挙で3回当選しています。周囲にも油断があったかもしれません。

◆そもそも「公務員の既得権益」とは何ですか?

今回、斎藤知事は「公務員の既得権益を打倒する正義の味方」として持ち上げられました。しかし、そもそも「公務員の既得権益」とは何か?

近頃の公務員は、労働条件で言っても昔と比べてもキツイ面も多いのです。例えば、モンスターカスタマー(住民)も多い。例えば、名札を名字だけに等の対応もせざるをえない状況が広島市役所でも起きています

実は、公務員の労働環境がきつい状況は10年くらい前からありました。

2011年、筆者は広島県庁を退職しましたが、その後、後輩たちの状況は急速に悪化していたのです。2014年の広島土砂災害の直後、あるイベントの場で『私たち公務員だって大変ですよ!』と、後輩の女性正規職員からガツンと指摘されました。後輩諸君の労働条件がそんなに厳しいのか、と驚いたのをおぼえています。その後も、最近、広島県でも、他の都道府県でも、20代、30代の職員の退職が増えています

そもそも、公務労働者とは労働基本権が制限される代わりに、人事院勧告で給料・労働条件が決まるものです。

人事院が民間企業の労働条件を調査し、それをもとに決めるのです。そして、各都道府県にも国からそれを通知し、各自治体もそれをもとに人事委員会勧告を出し、議会の議決を経て決まるのです。従って、高すぎもしなければ低すぎもしない、と言えます。政治家は、こういう仕組みをきちんと市民に知らせるのも仕事です。

公務労働者が労働基本権を制限されたり、政治活動を制限されたりしていることをいいことに、叩きまくるのは禁じ手です。これは、別に斎藤候補だけでなく、尼崎市長時代に職員のボーナスを削りまくった稲村候補、あるいは「元祖・公務員叩き」の維新の参院議員だった清水候補にも申し上げたいことです。

公務労働者が安心して働けなければ、防災や教育、福祉と言った住民の暮らしに不可欠なサービスが成り立ちません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島県の産廃行政は〈穴だらけ〉どころか〈穴だけ〉ではないでしょうか?

 

11月15日に行われた控訴審の口頭弁論。原告団のSNSより

11月11日、広島県は、三原市と竹原市の水源地のど真ん中に許可している〈三原本郷産廃処分場=JAB協同組合=〉から基準値の7.5倍のBOD(Biochemical Oxygen Demand=生物化学的酸素要求量)が検出されたとして、同協同組合に警告の行政処分を行いました。

一応、同組合は、操業を一旦停止して対策を立てるとのことです。しかし、これまでも同組合は2023年夏以降、何度も県から〈警告〉や〈指導〉を受けていました。業者がその場しのぎの対策にもなっていない対策を行い、県も〈それでよし〉とし、また汚染水が流出する。その繰り返しです。こうした中、産廃処分場許可取り消しを求める住民裁判の第4回口頭弁論が11月15日、行われました。

◆県が裁判を引き延ばす間に汚染が広がる

そもそも、2023年7月には、住民が県を相手取って、産廃処分場の許可取り消しを求める裁判で県は敗訴しました。産廃処分場の許可取り消しを命じられています。普通なら、ここで判決を受け入れるものですが、湯崎英彦県知事はこれを控訴。さらに、広島高裁での控訴審では県は、業者を裁判に県側で補助参加させ、県が業者と一体となって、県民に敵対しています。県が裁判を引き延ばしている間に、汚染がどんどん広がる。これが実態です。

 

◆6割の田んぼで作付け断念!

すでに、周辺の農業への影響は深刻です。日名内上地区の田は2024年春、250アールのうち157アール稲作付けを断念しました。ほぼ毎日農業用水の参考基準値のCOD(Chemical Oxygen Demand =化学的酸素要求量)が6mmg/リットルを超えています。6月からは100~300という数値が毎朝夕検出されています。三原市は川の上流の水を流す管をつけましたが、それは上部の少しの田にしか届きません。また、10月には三原側だけでなく、竹原側の川でも泡水が出ました。三原市、竹原市の農業はもちろん、パン作りやお酒造り、さらには漁業にも大きな影響が出かねません。湯崎英彦知事は、2024年度の県政の大きな柱として「広島の食材・料理のPR」を掲げています。しかし、穴だらけというより穴しかないような産廃行政をそのままにして、有効な施策になるのでしょうか?

これまでの主な流れは以下です。

2020年4月  広島県が三原本郷産廃処分場の設置を許可
      住民側、県に許可取り消しを求める住民訴訟、業者に操業しないよう求める仮処分

2022年秋  処分場操業開始

2023年初夏 処分場から汚染水流出発覚
   7月  広島地裁、県に許可取り消しを命じる判決。湯崎英彦知事は控訴。
          汚染水流出で県が業者を指導。業者は無視。
          業者による無視に対して「警告」
   8月  業者、井戸を真水で洗浄し検査に〈合格〉。警告解除。

2024年6月 三原市議会、水源の保全に関する条例を県内で初めて可決。
      不十分ながらも立ち入り調査や氏名公表などの権限が市に。 
  7月頃 汚染水がさらに激化(写真、筆者撮影)。
   8月 県、鉛が検出されたとして業者を〈指導〉
   9月 指導を解除
   10月 三原側だけでなく竹原側でも泡の立った水。
11月11日 BOD超過として県が業者を〈警告〉。
11月12日、住民が県に対して業者への厳しい行政処分を陳情。
11月15日 控訴審第四回口頭弁論。次回口頭弁論は1月17日(金)13時10分、その次は3月14日で調整中。

11月15日の裁判では県や業者からは特に新しい主張もなかったそうです。住民たちは病院や仕事、家族の介護などの算段をして裁判に臨んでいます。そして、裁判がのびればのびるほど、ゴミは流入してきます。最近ではフクシマの原発事故で汚染されたゴミも規制の甘い広島を目指している状況もあります。高裁の裁判官は、十分にまだ状況を把握されていない、というお話も弁護士からはうかがいましたが、しっかり把握した上で結論を出していただきたい。

また、業者はゴミに対して、即日覆土していません。立木を勝手に伐採し、埋めかけている。一トン土のうのようなフレコンバックをダンプからおろし、展開検査をせずにすぐ埋め立てている状況があります。現行法すら、全く守っていません。三原市には今夏作った条例により立ち入り調査を実施し、同時に排水口で水質検査をしていただきたいものです。

何度も繰り返す通り、広島県はとびぬけて産廃規制が全国でも緩い。こんな広島県が自主的に動くのを待っていては手遅れになりかねません。国の廃棄物処理法を改正し、全国一律で厳しく規制(要は甘すぎる広島以外に合わせる)ことも、参院選など次期国政選挙を前に議論していくべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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11月5日執行された米国大統領選挙でドナルド・トランプさん=共和・元職=がカマラ・ハリスさん=民主・新人=を破り、返り咲きました。

いわゆる激戦州でも思ったよりトランプさんがハリスさんに差をつけたな、と思いました。差がついた要因は、「イスラエルのネタニヤフ被疑者によるパレスチナ大虐殺・レバノン侵略」でしょう。

◆米国人の間にも反発広がるネタニヤフ被疑者の蛮行

アラブ系の有権者や、アラブ系でなくとも若者の間には、ネタニヤフ被疑者が「10・7」のハマス政権による越境攻撃を口実に、ガザなどパレスチナでの大虐殺を加速し、さらにレバノン侵略も進めていることに強い反発が起きています。広島でも、原爆ドーム前でFree Palestineのスタンディングを呼び掛けているのはユダヤ系米国人の30代の若者(広島市立大学の大学院生)です。

米国はドイツと並んで国際社会におけるイスラエルの最大の後ろ盾です。しかし、そんな米国でも若者がイスラエルに反発しているというのは、上記の原爆ドーム前の動きから、広島にいても感じました。そして、米国では若者ほど民主党支持が多く、年配者ほど共和党支持が多い傾向はあります。

◆やけくそでトランプさんへ流れた? パレスチナ虐殺反対派

ところが、今回、若者が民主党から離反。やけくそでトランプさんに投票してしまった人も多いようです。アラブ系の中でも、最後まで迷った挙句にトランプさんに投票した。そういうことが、いわゆる激戦州で、予想外にトランプさんが勝った背景にあるでしょう。

もちろん、トランプさんもバリバリの新イスラエル。前回の任期中、駐イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移すという暴挙を行っています。エルサレムはユダヤ教の聖地でもあるが、イスラム教の聖地でもあり、キリスト教の聖地でもあります。デリケートな問題があるから、日本も含む各国はテルアビブに大使館を置いているのです。それでも、トランプさんにアフリカ系も含む若者やアラブ系も結構投票してしまったわけです。

◆パレスチナ虐殺反対派の若者に横柄な態度が致命傷のハリスさん

わたしは、ハリスさんが、パレスチナ虐殺反対を叫んで抗議に来た若者たちに対して、横柄な態度を取ったニュース映像を見て、トランプさんの勝ちを確信しました。あんなことを言われたら、誰でもカチンと来ます。全米でパレスチナ虐殺反対派がトランプさんに雪崩を打ったのではないでしょうか。

確かに、一応、ハリスさんもネタニヤフに対して停戦合意は呼びかけてはいる。だけれども、武器はなんだかんだ言って送り続けているわけです。実効性を上げているとはいいがたい。その上で、無礼な発言。

筆者はトランプさんが良いと言っているのではありません。トランプさんは、前回の大統領選挙で敗けた後、支持者が連邦議会議事堂を襲撃する事件を止めなかった。クーデターを起こしかねない、そういう男です。

しかし、あまりにもハリスさんがパレスチナ問題を憂える若者たちの神経を逆なでしすぎた。彼らの数は少ないかもしれないが、接戦の激戦州でハリスさんに致命傷を与えるには十分な力を持っていたのです。

◆米国民主党政権と広島 原爆投下と広島への謝罪・反省なき和解

さて、今回の結果は、平和都市としての広島にはどういう影響を与えるのか?その前に、民主党政権と広島のかかわりを振り返っておきたい。 

広島に原爆を投下したのは米国民主党政権です。そもそも、伝統的に、民主党の方が、「人権派」ではあるが〈相手国を人権を尊重しない野蛮な連中とみなした〉場合には、むしろ共和党以上に武力でせん滅する。そういう傾向が強いのではないでしょうか? なお、共和党政権でもジョージ・ブッシュ・ジュニア(任期2001-2009)は、いわゆるネオコンであって、民主党の上記のような部分をパクっています。

民主党は現代でもLGBT推進でもありますが、それによって、中東一のLGBT推進国家でもあるイスラエルを持ち上げてしまうという弱点もあります。

そして、最近、米国民主党政権は広島・長崎に対する〈謝罪・反省なき和解〉を推進しています。すなわち、2016年にはオバマ大統領が来広しました。しかし、オバマは平和記念公園で〈死が空から舞い降りてきた〉という表現でまるで他人事のような挨拶をしました。そのオバマ政権ですが、ヒラリー・クリントン国務長官はネオコン的であり、アフガンやシリアへの空爆を推進したのです。

そして、2022年、G7広島サミット開催が決定すると、急激に広島では米国への忖度が強まりました。たぶん、トランプさんが大統領だったら、そこまで忖度にはならずに淡々と進めた可能性もあります。これは、エマニュエル駐日大使が、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花するなどの一定の「どぶ板」も奏功したと思われます。

広島市は、バイデン大統領に忖度してか、はだしのゲンや第五福竜丸を平和教材から削除。そして、過剰警備や法的根拠のない立ち入り禁止区域設定など、戒厳令のような状態を広島に敷きました。そして、広島市の松井市長はエマニュエル駐日大使の要求に応じて、パールハーバーと平和記念公園の姉妹協定を結んでしまいました。

米国は何も〈反省も謝罪もしていない〉のに姉妹協定。これは、広島が核兵器使用を許してしまったと受け取られかねません。ひいては、ロシアや中国などが核で威嚇することを後押ししかねません。重大な誤りです。

また、広島市の松井市長は2022年の平和記念式典からはロシアを招待していません。これも表向きは式典の円滑な実行の妨げになる恐れがあるから、ですが、実際には米国への忖度で間違いないでしょう。自分でやらかした核兵器使用を正当化するために広島を取り込む。これが民主党政権の姑息なところです。大統領がトランプさんに代わったことで、いい意味で広島が米国政府と距離を置く。これは悪いことではないでしょう。

◆中東停戦や米朝緩和、「有言実行」にさせよう

中東での停戦を当選前からトランプさんは実現すると明言しています。戦火が西岸地区やレバノンにも広がる中、公約をきちんと実行するように広島からも声を上げていきたい。

また、米朝首脳会談を実現した実績を強調し、朝鮮半島和平にも積極的です。これをうまく日本も生かしていけば朝鮮戦争の終戦、ひいては東アジアの平和、非核兵器地帯条約などにつながります。

中華民国の民進党政権に対しては、トランプさんはバイデン大統領よりは冷たいと見られますが、逆に言えば、下手に「台湾独立」で中華民国の民進党政府が暴走するリスクはこれで減ります。そもそも、米国も日本も中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府と認定しているわけです。そんな中で、自衛隊を送るだの、台湾有事に関連して日本が敵基地攻撃を行うだの、そもそも、あり得ない話です。しかし、バイデン政権下ではそういうことが煽られてきました。日本は引き続き、専守防衛を維持しつつ、外交努力を進めていくべきです。

もちろん、人権や環境の面でトランプさんはいろいろ問題があります。それについては、ここでは詳しくは触れません。ただ、民主党は民主党で、その人権とは、米国と旧白人帝国主義国家くらいの範囲の人権でしかない。例えばアフガニスタンやシリアの民衆は平気で殺すわけです。戦争は最大の人権侵害であり環境破壊です。

◆二大政党制は人類を平和にするのか?

そして、そもそも、「ハリスかトランプ」しかない事実上選択肢がない、二大政党とは本当に人類を平和にするのでしょうか?そのことを強く問いたい。日本の衆院選でも、二大政党以外が大きく躍進しました。人々の価値観が多様化する中で、いかに、民主的に物事を進めていくか。どういう仕組みにしていけばいいのか?そのことも皆様と一緒にこの広島から考え、また提案をしていきたいと思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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第50回衆院選は2024年10月27日執行され、自民党(247議席→190議席)と公明党(32議席→24議席)の与党は政権を失った2009年衆院選以来の惨敗を喫しました。野党第一党の立憲民主党(98議席→148議席)は躍進したが第一党まではいかず、国民民主党が4倍増の28議席、れいわ新選組が3倍増の9議席で躍進。参政党(1→3議席)や日本保守党(0→3議席)も議席を確保しました。他方、野党でも維新(44→38議席)と共産党(10→8議席)が議席を減らしました。「多党化」が進みました。
 
◆石破さんブレブレ、「明智光秀の12日天下」最短記録更新へ

石破茂総理は、10月1日総理に就任。9日に衆議院を解散しました。しかし、自民党・公明党両党で過半数を大きく割り込む大惨敗となりました。自公で圧倒的多数を占めてきた政権のスキームはこれで終了しました。今後、水面下でいろいろな形での連立工作が飛び交うことでしょう。

明智光秀は6月2日に信長を討ち取って天下人になりましたが13日に山崎の戦いで秀吉に打倒され、12日天下に終わりました。また、藤原道兼も4月27日関白になって5月8日に病死しました。石破総理は、この二人の最短記録を事実上更新したことになります。

こうなったのは、石破さんがブレたからです。はっきり言って、自民党は圧勝のチャンスでした。すなわち、衆院を解散する前に一定程度、国会で議論をし、自らが批判してきた故安倍晋三さんと正反対のイメージを打ち出せばよかった。ところが、石破さんは9月30日、まだ総理になる前から、10月9日解散を明言してしまった。総理になる前から解散を明言するのは越権行為です。憲法違反です。

また、そもそも、憲法7条があるから解散できるというのは憲法解釈としてはおかしい。憲法69条に基づき、内閣不信任案が可決されるとか、総理の目玉政策が否決される場合に解散するなら分かる。あるいは新たな増税をする前に信を問う意味で解散するなら分かります。いわゆる代表なくして課税なしと言うことです。だが、そういう状況ではない。この時点で、石破さんは大きく無党派層に失望されました。

また、最初からいわゆる裏金議員を厳しく処分し、無党派層を取りに行けばよかった。そうすれば、野党は手も足も出なかったでしょう。ところが何を考えたのか石破さんは、最初は裏金議員を全員公認すると言ってしまった。幅広い国民の反発を受けて慌てて裏金議員を非公認とした。これにより、一時持ち直したかと思われた。

だが、直前の総裁選で健闘した高市早苗さんを支持する自民党支持者が国民民主党や日本保守党に流れる動きがみられた。これに慌てたのか、自民党執行部は裏金議員を取り込もうとしたのか、2000万円を送った。これが発覚し、さらに炎上しました。ブレブレの石破自民党。大敗は当然でした。

◆広島県内小選挙区は与党の4勝2敗、インディー系候補も健闘

広島県内では前回の2021衆院選では与党の6勝1敗でした。今回は、選挙区が人口減少に伴い6議席に減りました。以下、県内でも広島都市圏の1-4区について振り返ります。

広島1区では岸田前総理が圧勝。ただし、前回は約8割の得票率で野党候補に供託金回収も許さない「失神KO勝ち」でしたが、今回は5割強まで得票率を減らしています。また完全無所属のインディー系候補も3.1%と健闘しました(写真、1区で立候補された方々)。

▼広島1区
岸田文雄 自民前 100,740(52.4%)当選
平本 浩一立憲新 46,493(24.2%)
山田 肇 維新新 26,849(14.0%)
中原 剛 共産新 12,225(6.4%)
産原 稔文 無新 5,995(3.1%)

広島2区は前職の平口さんが当選しましたが、得票率は5割を切りました。前回は、自民vs立憲(野党統一)の対決でしたが、比例復活を許さないダブルスコアの圧勝でした。そして、今回は野党が乱立。ところが、急造の国民民主党新人に比例復活を許しています。

▼広島2区
平口 洋 自民前  82,443(45.0%)当選
福田 玄 国民新  61,679(33.6%)比例当選
金城 政孝 維新新 21,846(11.9%)
岡田 博美 共産新 17,354(9.5%)

広島3区は、公明前職の斉藤鉄夫国交大臣が再選されましたが、急造の立憲新人に14000票差まで追い上げられ、比例復活を許しました。また、インディー系候補の玉田憲勲医師が1万票を超える大善戦でした(写真、玉田ドクター(左)と筆者)。

▼広島3区
斉藤 鉄夫 公明前 86,654(47.2%) 当選
東 克哉  立憲新 71,952(39.2%) 比例当選
高見 篤己 共産新 14,128(7.7%)
玉田 憲勲 無所新 10,751(5.9%)

広島4区は、旧広島4区から海田町、府中町、坂町が1区へ、安芸区が3区へ移行した上で、旧5区とほぼ合体した選挙区です。呉市と言う古くからの工業都市と東広島市と言う新しい産業・大学都市があります。

旧4区の東広島市を地盤とする維新の空本誠喜さんが旧5区の呉市が地盤の自民の寺田稔さんを振り切って辛勝しました。前回、4区で比例復活の空本さんは維新色を消して反自民票を一手に引き受ける戦略に徹しました(写真下、維新イメージの緑色ではなく寺田さんの赤に対抗した青ベースのポスターで反自民色を強めた空本さんのポスター)。

それが奏功し、民主党在籍時代に旧4区で2009年に中川秀直さんを打倒して以来の小選挙区当選です。寺田さんも比例復活しました。

▼広島4区
空本 誠喜 維新前 93,707(50.6%)
寺田 稔  自民前 91,653(49.4%)

◆中国ブロックで議席に届かぬも、県内得票倍増近いれいわ新選組

筆者は、今回の衆院選では「広島と政治をあなたに取りもどし、広島とあなたを守る庶民革命」をめざす「無所属・庶民派保守」の立場から、「地方の庶民に優しい」政治勢力として「れいわ新選組」を応援しました。

広島県内の比例代表得票数は以下です。

自民  342,216 31.9% 中国ブロック 5議席
立憲  207,928 19.4% 中国ブロック 3議席
国民  129,471 12.1% 中国ブロック 1議席
公明  127,717 11.9% 中国ブロック 1議席
維新  86,855  8.1%
れいわ 66,166     6.2%
共産  53,521  5.0%
参政  34,987  3.3%
社民  24,834     2.3%

広島県内でもれいわ新選組は日本共産党を上回る得票をしました。正直、日本共産党さんと比べれば県内のれいわ新選組は専従職員もいない素人集団です。だがその素人集団が共産党を上回り、あの公明党や、大手企業労組もついている国民民主党半分以上を得票したのは驚くべきことです。

また、正直、街宣車も人口が多い広島市北部を全く回らないなど、今思えば戦術上の反省点も多くあります。正直、こんなに健闘するならもっと、やり方があったかな、とも思うのですが、致し方ないことです。

小選挙区で候補者を出していれば選挙はがきも出せるし、宣伝効果もあったでしょう。ただ、筆者自身も「中国ブロックは議席獲得が困難。だが参院選2025へ向けて地盤の防衛は絶対必要」という思いでした。同党には次回以降に反省点も踏まえながら県内でもベストを尽くしていただきたいものです。

今回、有権者の反応はどうだったか? 筆者の感触では、安佐南区では2023年4月の筆者自身がれいわ新選組推薦で立候補した県議選の2倍くらい、チラシの受け取りは良かったです。実際、安佐南区ではれいわ新選組の得票が6000票を超え、筆者の県議選での得票の2673票の2倍以上となりました。

投票率も県議選の34.16%から今回衆院選は45.71%ともちろん上がっているのですが、得票率自体も、筆者の4.04%から今回のれいわ新選組の6.9%へと上昇しています。しかも筆者の得票には自民党や維新の支持層の方の得票も相当加わっていたことも加味すれば政党としての得票率上昇度合いはそれ以上とも言えます

自民 25127 (28.5%)
立民 17374 (19.7%)
国民 12482 (14.2%)
公明 10584 (12.0%)
維新  6892 (7.8%)
れいわ 6066 (6.9%)
共産  4772 (5.4%)
参政  3206 (3.6%)
社民  1653 (1.9%)

◆与党自滅型選挙 ── 投票率が下がって与党惨敗

今回の衆院選の特徴は投票率が下がって与党惨敗、ということです。よく、「与党を倒すためには投票率を上げよう」という意見をうかがうことがあります。ただ、「投票率が高ければ与党不利」というのは、「常に真」なのか?筆者は疑問に思ってきました。「与党支持者が投票に行かない結果として、野党が勝つ」ケースもあるのではないか?ということです。今回はまさにそのパターンでした。

もちろん、野党に行った方もおられる。ただ、その野党でも、比例代表では国民民主党、れいわ新選組、参政党、保守党と言った少数政党に行った方が多いのではないか?一方で小選挙区では、仕方なく立憲民主党という方も多かったというところでしょう。

◆難しい立憲・国民のかじ取り

立憲民主党は今回、あくまで「敵失」での躍進であることを肝に銘じるべきです。そこを間違えて有頂天に乗れば、またまた旧民主党政権の二の舞になりかねない。
国民民主党の場合は「積極財政」かつ「右派より」と言うスタンスがとくに高市早苗さんを支持していたような層にウケました。ただ、安易に緊縮財政寄りともみられる石破総理や、旧民主党時代に大増税を決めて「悪夢の民主党政権」と自民党に攻撃される材料を造った野田さん率いる立憲と安易に連立を組めば、失望に変わるでしょう。れいわ新選組も山本太郎個人商店からの脱却が求められます。

◆れいわ新選組 山本太郎個人商店型からの脱却

れいわ新選組も躍進はしましたが、反省点はあります。終盤には、山本太郎が大石あきこ共同代表を応援する動画がネット上で批判されるなどの問題は起きました。
山本太郎が公示前と開票直後にぶっ倒れる事件も起きた。山本太郎の負担が過重になり、手が回らないことが多くなっている。そういう状況もあります。今後、増えた議員で山本太郎の仕事を分担し、組織だって仕事をしていく体制づくりが肝要でしょう。

◆日本共産党 スターリン主義の脱却なくして党再生なし

日本共産党は、裏金問題を「赤旗」で暴くなどの功績はあった。しかし、終わってみれば議席を減らし、国民民主党、れいわ新選組にも抜かれる惨敗です。

同党は、2016年から2021年までの野党共闘で立憲に忖度して、オリジナリティを失っていたようにも見えます。そして、今度は、その反動のように、志位和夫議長・田村智子委員長が気に入らない者はすぐ除名・除籍されるなどの「粛清の嵐」となっています。こんな政党に若者が入ろうとするでしょうか?答えは否、です。平和運動や労働運動では共産党員の真面目な方もたくさん存じています。同党の没落の道連れで平和運動や労働運動が衰退することは避けなければならない。いわゆる共産党系と世間では言われる全労連系の労組の幹部もさせていただいっている筆者はそう考えています。

◆多党化、小選挙区比例代表並立制=政治改革1993の限界露呈

現代日本では人々の価値観も課題も多様化しています。その傾向は加速することはあれ、止まることはない。そうした中で、二大政党制を目指すという小選挙区比例代表並立制はもはや時代に適合しないのではないでしょうか?

そもそも、この小選挙区比例代表並立制は1993年-94年に政治腐敗をなくすという趣旨の政治改革で導入されたものです。その政治改革によってできた制度の下で「裏金」事件が起きているわけです。

当初の目的を全く果たしていない「政治改革」。石破総理も野田立憲代表もそのとき「政治改革」を進めた新党で活躍された方です。潔く、あなた方が導入した仕組みの機能不全を認めていただきたい。

政治腐敗をなくすとともに、多様な民意を反映する選挙制度・政治資金制度に。「政治改革1993-94」から30周年の今、真の政治改革を求めたい。これは党派を超えて取り組むべきことです。

筆者はすでにノルウェー式比例代表制度を軸とした選挙の衆院への導入と、政策活動費の廃止、企業団体献金の禁止などを提案しています。また、今回激戦となった東京15区など一部の選挙区で市民有志により実施された選挙期間中の公開討論会を昔のように選管主催で行うことも提案しています。
 
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2024年10月27日執行の第50回衆院選は、各マスコミの世論調査によると、
1.内閣支持率が低迷。28%という調査も。
2.自民党は、単独では過半数に届かない可能性。特に比例代表での落ち込みが大きい。
3.これまで衆院選で議席を確保していた政党(自民、公明、立憲、維新、国民、共産、れいわ、社民)に加えて、参政党、日本保守党などが議席を確保する見込み。
4.日本共産党については微増と半減でマスコミにより判断が分かれる。
といったところです。

◆自民党「高市」派が保守党や国民民主党へ?

ネット上では、高市早苗さんの支持者を名乗る自民党員の方が、自民党でも石破総理に総裁選で投票した自民候補や比例区での自民党への投票を拒絶するポストが目立ちます。

高市さんは、経済的には財政出動。一方で政治的なイデオロギーは選択的夫婦別姓制度反対など、保守的です。そんな高市さん支持者が「国民民主党」や「日本保守党」に流れているケースが多い。「国民民主党」の玉木代表は選択的夫婦別姓制度賛成ですが、外交タカ派、積極財政で高市さんとは共通する。「日本保守党」は、ほぼ高市さんと政策が一致します。

むろん、高市さん自身は「自分は総裁選で自分に投票しなかった方も含めて応援に回っている」と「火消し」に必死です。しかし、支持者は、今の石破さんや、ましてや新自由主義者の小泉進次郎さんとは一緒にやれない、という雰囲気がかなり強いということでしょう。

こうしたことが、自民党が比例区で伸び悩む原因ではないでしょうか?

◆ブレてしまい、高市派も無党派も失う石破さん 明智光秀・藤原道兼の最短記録更新か?

石破総理は、10月1日に総理になり、9日に衆院を解散。わずか9日で「天下人」を手放しました。ちなみに石破さんが好きな戦国武将・明智光秀は6月2日に主君・信長を打倒し、13日に秀吉に山崎の戦いで打倒されます。明智光秀の天下人期間は12日間。もう一人、大河ドラマの主人公道長の兄・藤原道兼は4月27日に関白になり、5月8日に病死。

石破さんは明智光秀や藤原道兼の最短記録を更新しかねません。

この理由としては、最初はいわゆる裏金議員に甘い対応を発表した後、世論の反発を受けて「非公認」にした、という「ブレ」があげられます。結果として、高市派の有権者からも、クリーンさを重視する無党派からも支持を失ってしまったのです。こんなことなら、最初から厳しい処分をしておけば、無党派からの支持はつなぎとめられたでしょうに。

◆斎藤元彦元知事暴走で維新ボロボロ?

日本維新の会は公示前議席を減らすと予測されています。これは、維新が主導して擁立した斎藤元彦元兵庫県知事(9月19日不信任案可決、30日自動失職)の暴走が大きく響いています。斎藤君が暴走すればするほど維新の票が減る。そんな構図になってしまっています。

 

広島2区で立候補された方々。西広島駅付近で筆者撮影。2021年衆院選での自民vs立憲の一騎打ちが今回2024年衆院選では自民vs国民vs共産vs維新に

なお、最近の維新は、橋下徹さんのころのような「緊縮財政」一辺倒ではありません。公務員叩きも当時ほどではない。むしろ、財政出動で、教育無償化など子育て世代支援に力を入れています。他方で、高齢者はぶっ叩くイメージで、若手・中堅に溜飲を下げてもらうスタンスです。これは、国民民主党も共通する部分です。維新が減ることで、国民民主党に一定の票が流れているのでしょう。また、「なんとなく改革を期待して維新」という人が立憲に流れていることも考えられます。

◆野党共闘は事実上崩壊

一方、いわゆる立憲野党側は、2016年参院選以降の市民連合が呼びかけ、立憲・共産を軸とした野党共闘は事実上崩壊してしまいました。特定秘密保護法や集団的自衛権(いわゆる安保法制)などで暴走する安倍晋三さんを「共通の敵」とするものでした。

2016年参院選、17年衆院選、19年参院選までは一定の成果を上げた野党共闘。しかし、安倍晋三さんと言う「共通の敵」が2020年に退陣、そして2022年には暗殺され、消滅した。2021年の衆院選や22年の参院選では、岸田総理に代わった中で、立憲、共産両党は大敗を喫しました。

立憲では、「共産との共闘が比例区で票が伸びない原因になった」と言う議論が連合幹部を中心に噴出。共産党も態度を硬化させ、2024年衆院選では多くの選挙区で候補を出しています。広島県内では、1~6区のうち4区を除く5選挙区で候補者を擁立。ここに立共共闘は完全に崩壊しています。

◆敵失で「棚ぼた」立憲 除名・除籍による士気低下の影響次第の共産

立憲民主党については、そんなに比例で支持が伸びている感じもしない。ただ、自民党があまりにグダグダなのでお灸をすえる票が、消極的に流れている感はあります。それ以上でもそれ以下でもありません。

日本共産党は、自民党の腐敗がクローズアップされるときには強いはずですが、他方で、最近はちょっとでも志位和夫議長や田村智子委員長の気に食わないことを言うと「除籍」されます。この「除籍」というのは、「除名」のように、複雑な手続きが必要ないのでカジュアルに異分子排除に最近は特に多用されています。

野党共闘の中で、共産党内でも自由な議論があるように見えた時期もありました。しかし、今は、そのころ、執行部を突き上げていた側の若手が大量に除籍されています。また、年配者でも野党共闘を推進していた側の幹部が失脚するなどの事例も、筆者の身近でも伝え聞いています。除籍された若手の具体例としては福岡市長候補でもあった『紙屋高雪』さん、また福岡県議候補だった『すなかわあやね』さんらが挙げられます。こうした粛清による党勢低下がどこまで影響するか? マスコミ各社も測りかねているようです。

◆考え方も課題も多様化する時代にそぐわない二大政党制

そもそも二大政党制とは、英国の19世紀の保守党vs自由党、20世紀の保守党vs労働党など、価値観や利害が二分されていたような時代の遺物です。

しかし、現代社会はもっと状況は複雑です。ライフスタイルも多様化している。いろいろな価値観の人が共存していかないといけないが二大政党では十分にそれを代弁できない。

さらに、経済格差、さらには貧困がこの25年拡大してしまったことが、さらに状況を複雑にしています。例えば、ジェンダー平等といっても、東京の一定年齢以下の高学歴・高収入女性と、地方や都会でも氷河期世代の非正規労働者の女性では直面する課題も違うし、場合によっては衝突するケースもある。あるいは、公務員労働者でも正規と非正規ではずいぶん状況が違う。

ただ、全般的に見れば、まだまだ、日本は男尊女卑でもある。そういう中で、経済格差・貧困問題を解決しつつ、多様性をいかに尊重するか?議論をきちんとしていく必要があるでしょう。

国際情勢を見ても、冷戦崩壊後久しいものがあります。そして、冷戦崩壊後25年経過した今、一人勝ちだったはずの米国を筆頭とするG7の権威も落ちてきています。もっと言えば、いわゆる大航海時代以来の旧白人帝国主義諸国の優位は崩壊しています。

そして、2023年の「10.7」以降、イスラエル首相・ネタニヤフ被疑者の暴走が止まるところをしりません。依然としてネタニヤフ被疑者に甘い姿勢の米独などへの不信感がグローバルサウスにも、そして、日本人の一般市民の間にも広がっています。また、大陸が離れている米国やロシアだけを相手にすればいい欧州とは違い、日本は中国・ロシアとどう付き合うかが問われる。

 

広島1区で立候補された皆さん

少なくとも、G7に追従という選択肢は今後あり得ません。問題はその距離を置く方向とスピードです。

正直、岸田前総理は、結局、今までもっとも旧白人帝国主義国べったりの総理だったように思えて残念です。人権面でハト派と言われる反面、それが災いしてか、安倍晋三さんのように中国やロシア、その他米国と関係が悪い国とも一定程度親しくするという観念が薄いようにも思えます。G7広島サミットについても『名誉白人』扱いで舞い上がっていたように思えてなりません。

むろん、G7の権威低下で人権や環境などの価値も道連れで損なわれる懸念はある。ただ、それについては、米国のように軍事力でぶん殴って押し付けるのではなく、市民運動・労働運動や、例えば広島市が会長の平和首長会議など自治体の横の連携で進めていくべきだと思います。

◆比較第一党が総理を取り、課題ごとにあう政党と連携を

筆者はここで提案があります。衆院選後は、基本的には比較第一党が総理を取るべきです。自民党が議席数で一番なら石破さんが続投すればいい。

少数与党でも、きちんと政策を進めることはできます。課題ごとに別々の政党と組めばよい。

例えば防災省。日本は災害超大国です。今年は能登半島では元日に大震災、秋のお彼岸に大水害とダブルパンチです。こういうことは今後も頻発が予想されるし、自治体では対応しきれません。仕組みを改めるしかない。被災者生活再建、復旧復興に国が責任を持つことを明確化すべきだ。それとともに、国際貢献もこの分野で進めるべきです。その防災省設置は山本太郎が一番、石破総理以外では先頭に立って提案してきました。それこそ曲論ですが、石破総理―山本防災大臣という局面もあってもいいと思います。

また、米国はいまだに核兵器使用を謝罪も反省もしていません。実を言うと、高市早苗さんを支持するような右派の方でも、米国政府は謝るべきだ、という人もおられます。米国がきちんと原爆投下を謝罪も反省もしていないことをこれ以上放置すると、他の核保有国の威嚇なり核軍拡なりを批判しにくくなります。米国政府に一定の謝罪なり反省なりを求める動きと言うのも左右を超えてやればいいと思う。

もちろん、いわゆる立憲野党は、岸田前総理の置き土産である無謀な軍拡とか、原発推進とかは国会で厳しく追及し、関連法案を阻止すればいいのです。

◆改めて1993-94年の「政治改革」総括と選挙・政治資金制度再改革を

また、そもそも、政治改革の名のもとに小選挙区比例代表並立制という仕組みを1994年に導入し、二大政党にもっていこうとしたのが間違いだったのではないか?結局、裏金問題もなくならない。そして、政治は機能不全。散々だったではありませんか?

筆者は、有権者が名簿をいじれるノルウェー式比例代表をベースとした衆院の選挙制度改革を提案しています。また、政治資金については、企業団体献金禁止はもちろんのこと、それこそ、デジタル化ですべてのお金の流れが分かるようにすれば良いのです。

そうなると、例えば、自民党は分裂して高市さんが保守党と新党をつくる、小泉進次郎さんが維新と新党をつくる。石破さんは野田さんら立憲右派と新党をつくる。立憲左派+共産党、れいわなどもそれなりの勢力を持つ。そうなるかもしれないが、第一党になった勢力が総理を取って、課題ごとにあう政党と組む、で良いでしょう。

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統一教会のオカルト洗脳で「脳死」させられたニッポン 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 53 茨城上申書殺人事件 片岡健

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広島県教委の平川理恵前教育長(在任、2018年4月~2024年3月)らによる官製談合事件で、住民らの告発を受けて捜査していた広島地検は8月、平川被疑者を証拠不十分として不起訴処分にする一方、直接事務を担当していた当時の課長を略式起訴し、課長は50万円の罰金を納付しました。

この事件は、平川氏の故郷の京都が本部で平川氏と親交のあった『NPO法人パンゲア』のために平川氏が事実上、県費で仕事を作ってあげた、というものです。2022年8月、「文春砲」ですっぱ抜かれました。

確かに、直接的に平川氏が指示した証拠はないものの、平川氏のために仕事をつくって当たり前、と言う状況が当時の県教委にはありました。

◆市民団体の不服申し立ては当然

当然、10月1日、市民団体「県教委官製談合疑惑をただす市民の会」は、「平川氏が教育長でなければ事件は起きなかった」として、検察審査会に不服申し立てを行いました。検察審査会が二度【起訴相当】の議決を行えば、平川氏は「強制起訴」されます。

だいたい、「大阪城を造ったのは誰か?」と問われて「大工さん」と答える人はまずいないでしょう。「豊臣秀吉」と答えるのが普通です。では「パンゲアのために仕事を作ってあげたのは誰か?」と問われれば「平川さん」と答えるのが普通でしょう。その普通が通用しないのが広島県警であり、広島地検です。真面目にやっていただきたい。

◆持ち上げる東京マスコミ、反省のない平川氏

 

2024年9月30日配信『AERA』

一方で、解せないのは、教育長退任後の平川氏を東京のマスコミが持ち上げまくっていることです。

例えば『AERA』は「平川理恵さんが語る広島の「タイムマシンで未来見る」教育改革 米・ビジネスハイスクール視察や不登校支援センター設置も」で、平川氏の自慢話を一方的に垂れ流しています。

官製談合事件についてこの記事の中で平川氏は「見方の問題だと思います。(最終出勤日の)3月29日の前日に250人が送別会を開いてくれました。教育関係者に限るということで、現場の先生や教育委員会の方が来てくれました。いろんな見方があると思います。でも私はこの来てくれた250人の皆さんが答えだと思っています」とまったく反省がありません。

上司の送別会ですから、少々上司が嫌な奴でも参加するのは、当然でしょうに。筆者も県庁時代、嫌な上司がいなかったと言えばうそになります。それでも職場の送別会には参加しました。当たり前のことです。その上司だって、「俺のためにみんな来てくれた」とは思っていないでしょう。

同記事のヤフー版のコメントでは「いろいろな改革に取り組んだのは良いかもしれない。だが、広島の教育で何か良くなったものはあるのだろうか。あまり良い話を聞かない。現場の意見を聞かなすぎたんじゃないか」など『AERA』と平川氏への批判が噴出していますが当然です。

おそらく、一部の東京のマスコミを主導するインテリの方々には以下のようなステレオタイプな考え方があるのではないか?

「腐った田舎者に、東京の進歩的な女性がいじめられている」

実際に、筆者も東京で大学卒業まで過ごしたのでわかるのですが、思想的に左翼だから共産党、社会党に投票していたわけではなく「自民党は田舎臭くてダサいから共産党、社会党」程度の考え方の方も結構おられました。そういう方や、そういう方々をマーケットとするマスコミが、石丸伸二さんとかが出てくると「田舎の老害をぶっ叩く」「田舎の老害にいじめられた若者」イメージで持ち上げてしまい、結果として石丸さんが都知事選挙で160万票も取ってしまう(それも、野党系から票を奪う形で)のはわかる気がします。

しかし、平川氏がやったことは所詮は「広島の公教育の米国化」です。米国の公教育も決して褒められたものではないでしょう。例えば、米国大統領選挙もついこの間まではトランプvsバイデンなどという不毛な対決構図でした。こんなことになるのも、米国の教育がもたらした米国の有権者の意識の問題もかなり大きいのではないか?日本も大概だが、有権者としての教育に米国も失敗していると言わざるを得ません。その米国に倣った教育改革をこれ以上広島でされたらさらにひどいことになりかねなかった。
 
◆任命責任重大な湯崎知事、「法令違反は改革の副作用」と開き直り

そして大問題なのは平川氏を任命した湯崎英彦知事です。広島県内にも女性の校長先生などいらっしゃいます。あるいは教育で全国でも有名な広島大学にも女性の教授は当然おられます。社会教育で活躍している医師や弁護士などいくらでも優秀な人材はいます。「女性教育長」が平川氏である必要はどこにもなかったのです。

そんな平川氏は散々、広島の教育をかき回した挙句、刑事責任は部下に押し付け、東京で好き放題、自慢話。そしてそもそも、こんな方を「一本釣り」で任命した湯崎知事の責任は重大です。その湯崎知事は、2024年2月、「法令違反は改革の副作用」などといって、公然と法令違反を是認しています。こんな知事でいいのでしょうか?!

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立憲民主党代表選挙(9月23日)、そして自民党総裁選挙(9月27日)が終わりました。終わってみれば、立憲民主党は野田佳彦さん、そして自民党は石破茂さんと「旧新進党OB」が二大政党トップとなりました。

石破さんは、自民党では初の他政党所属経験のある首相になります。

◆1993-94年の政治改革でメジャーデビューした石破・高市・野田・枝野氏

野田さんが決選投票で破った枝野幸男さん、石破さんが破った高市早苗さんも含めて、1993年の「政治改革解散」で注目を浴びた「若手・新人」議員です。いずれも現行の小選挙区比例代表並立制を軸とした「政治改革」の元祖・小沢一郎さんが党首だった政党(新進党か旧民主党)に所属経験がある方です。

1993年の状況をおさらいすると、1980年代末から90年代初めの日本の政治を牛耳っていた金丸信(故人)らによる汚職事件が相次ぐ中で政治改革が叫ばれました。

こうした中で「政治に金がかかるのは中選挙区制のせいだ。また、これからは、政策論争中心の政治にしないといけない。そのためには政党本位の選挙制度にしないといけない」という理屈で小選挙区比例代表並立制を、という議論になりました。

さらに、政党交付金制度が導入され、並行して二大政党に所属していないと国会議員に当選するのはおろか立候補も難しい制度設計とされました。1993年6月に政治改革法案の不成立の責任を問うて野党が提出した内閣不信任案に小沢一郎さんやその側近だった石破さんも含む一部自民党議員も賛成し成立。衆院解散総選挙の結果、自民党が過半数を大きく割り込み、細川政権が成立。1994年に上記のような内容の政治改革法案が成立しました。

しかし、今回の二大政党の党首選挙を拝見すると、30年前に行われたこの政治改革自体が制度疲労をおこしているといわざるを得ません。

◆自民党内の多様性可視化される

自民党総裁選挙では、自民党にもいろいろな考えの方がおられるのが可視化されました。このうち、小泉進次郎さんは親父さんの二番煎じの極端な新自由主義&緊縮財政主義です。解雇規制緩和が小泉さんの目玉でしたが、解雇規制が日本は主要国の中で厳しいとは言えない、と高市早苗さんらに反論され「炎上」。失速しました。

実際、米国は別として日本より解雇規制が緩いとされる北欧などはそのかわり行き届いた福祉や教育=大きな政府があるわけです。今の日本でそこまでの大きな政府を実現する土壌はないし、小泉さん自体が財務省寄りで緊縮財政です。労働者を路頭に放り出した挙句、福祉や教育への予算も不十分なら、大混乱になる。高市さんらの反論は当然です。

高市早苗さんは激しく追い上げた。積極財政であることは筆者も注目しました。この点は小泉進次郎さんよりは評価できる。しかし、高市さんが露骨に靖国参拝を掲げたことは、党内選挙とは言え、「韓国、ひいては米国との関係を悪化させ、日本を孤立させかねない」という不安が自民党員の方の中でも広がったのだろうと推測されます。このために、あと一歩、石破さんに及ばなかったのでしょう。

さて、石破さんが金融所得課税などを主張していたために、石破当選で株価が下がったと言われています。ただ、日本の場合、超大金持ちへの課税は米国さえより甘い実態がある。金融所得課税はどこかでやらないといけません。むろん、その場合でも、米国の利下げなどの動向を見ながら、利上げには当面慎重にするなどの手綱さばきは必要でしょう。慌てて利上げを日本がしなくても米国が下げれば金利差は縮小し、過度な円安→これ以上の物価上昇には歯止めがかかると思われます。

また、石破さんの政策では「気象庁の予算拡充」も注目されます。また、鉄道オタクであることから、芸備線を含む地方交通政策についても注目したい。他方で、消費税増税論者でもあり、この点が野田さんに近い。下手をすると大政翼賛会的な消費増税の危険もあります。

一方、立憲民主党代表になった野田佳彦さん。元総理の今も駅前で1人ででも立ってビラを配っておられるのは正直、頭が下がる。ご自身の選挙は強いと思います。
しかし、彼が野党全体への支持を高められるかといえば、疑問が大きいのです。やはり、2012年に当時の野党だった自公と合意した消費税増税と、セットでの緊縮財政のイメージが強すぎるのです。大震災の復興財源のために現場公務員の給料を減らしたり正規公務員数を減らしたりしたのはまずかった。その後相次いだ災害や感染症への対応で現場が苦労することになりましたし、住民サービスの持続性にも暗雲を投げかけています。野田さんには、ご自身がやったことの反省と総括を最低限お願いしたい。

◆切り捨てられる民意・抑圧される党内民主主義

ともかく、現代にはいろいろな政策課題があり、立憲の支持者も自民の支持者も価値観も多様化しています。いまの小選挙区比例代表制度かつ、政党幹部が財布のひもや公認権を事実上独裁的に握る制度での二大政党が本当に人々のニーズに合致するのでしょうか? 事実上大きな影響を持つ政党が二つでは、やはり、切り捨てられてしまう民意が大きくなってしまいます。

また、広島県内でも、河井案里さん失職に伴う参院選広島再選挙2021の立憲の候補者に内定していた楾大樹先生が、はしごを外されるという事件も発生しています(茶番選挙―仁義なき候補者選考)より。その後も、衆院選2021で一回敗けただけの広島都市圏の立憲候補3人が、事実上クビになっています。これは、政党幹部の独裁を可能とする現行の選挙制度の欠陥ではないでしょうか?

さらに、同じ野党の日本共産党でも本やネットで田村智子さん、志位和夫さんと違う意見を言っただけで、除名・除籍される事件が続発しています。最近では「ごはん論法」考案で有名な紙屋高雪さんが、同党から除籍され、福岡市議団スタッフからもいきなりクビになっています。

また、大阪など関西では「維新」の公認や推薦というだけで、候補者個人の政策や人柄があまり吟味されないまま、爆発的に支持されてしまう現象が最近までありました。斉藤元彦・兵庫県知事による数々のご乱行を巡る混乱も招いています。

それなりの数の政党が存在し、なおかつ枠に入りきらないような無所属の候補も当選できるような選挙制度の設計がやはり望ましいと考えます。政策テーマごとに、政党の組み合わせが違ってもいいのです。

◆選管主催でガチバトルの公開討論会実施を

なお、自民党総裁選挙のガチバトルの公開討論会は自民党を支持しない筆者が見てもそれなりに面白かったです。これを国政・地方選挙で選管主催やったらどうかと思います。そうすれば金を持っている人が有利とかそういうこともなくなるでしょう。

というか、「政治改革」の前は、選管主催で合同立会演説会を公会堂とかでやっていました。政治の面白さが後退しているのです。今後、選挙管理委員会の前候補参加の主催討論会を各公民館で実施、ネットでも配信するなどしていけばいいでしょう。都知事選で悪用され、物議をかもしたポスター公営掲示板よりもよほど有権者に判断材料を提供することになるでしょう。

繰り返します。石破茂さん、高市早苗さん、野田佳彦さんらが注目された1993年総選挙後に行われた政治改革1994。裏金も含めて、本当の改革になっていたのか? そのことを与野党ともに検証すべきときではないのか? 30年たって、むしろ政治が劣化しているとすれば、制度を疑うことも必要ではないでしょうか?

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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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兵庫県知事で筆者の同一大学同一学部の後輩の斎藤元彦君。パワハラやおねだりなど数々のご乱行。そしてそれらについての告発を「嘘八百」と決めつけたことが、渡瀬元県民局長、そして阪神・オリックス優勝パレード担当課長の命が失われるという、取り返しのつかない事態を招きました。8月30日、9月6日には百条委員会でご本人が尋問を受けるという事態になりました。

◆出直し知事選挙「やる気満々」の斎藤君に腰を抜かす

9月19日、兵庫県議会により、前代未聞の全会一致での不信任案可決を受けました。そして、26日、斎藤君は記者会見し、県議会は解散せずに失職し、出直し知事選挙に立候補すると表明しました。筆者はこれにはびっくりしました。筆者はてっきり「斎藤君は、議会を解散し、延命を図る」のかと思いこんでいました。筆者の知り合いの兵庫県議も、解散の可能性が高いとして、選挙に備える覚悟を決めていました。

斎藤君は知事選挙になればほぼ、勝ち目はないと、いうのが客観的な見方でしょう。例えば2021年の横浜市長選挙では、与党(当時の菅総理)からも、野党からも見放された林文子・横浜市長が、当選した野党共闘候補や自民推薦候補、さらには落下傘の田中康夫さんをも下回る得票で大惨敗したくらいの結果が予想されます。

そうであるならば、議会を解し、40日以内に行われる県議選のあと、不信任案再可決(今度は過半数で可決)となるまでは知事に居座る。冬のボーナスや退職金もまんまと頂く。合理的に考えるとこのシナリオしかありえません。

すこし、奇策を混ぜるなら、議会を解散した上で、自分も辞職し、斎藤君自身が県議選に殴り込むのです。定数が多い選挙区なら可能性はある。そうすれば、県議として、斎藤君は「安定した身分」をしばらくは享受することになるのではないか?
ところが、斎藤君の出した答えは「失職・知事選再出馬」でした。なお、不信任案可決との場合は失職と辞職、両方選べます。辞職の場合は、斎藤君が当選した場合は残りの任期、すなわち一年足らずと言うことになります。これは、自己都合で退職、という意味合いもあるのでしょう。失職は「県民によりクビになった」ということで、斎藤君が当選した場合は四年の任期が与えられます。雇用保険の失業給付で会社都合退職の方が労働者に有利になるのに似てなくもありません。

実際には、辞職を選ぶ場合はそのまま引退と言うケースが多いです。例えば安藤忠恕・宮崎県知事(故人)は官製談合事件で不信任案可決となり、2006年12月4日辞職。その4日後、逮捕され有罪判決を受け、上告中の2010年に亡くなられました。安藤さんの場合は、現実問題、逮捕が迫っていることを自覚し、逮捕で選挙運動どころではないことを見越してお辞めになったのでしょう。

◆大義も勝機もないはずの出直し選挙

失職を選んだということは、出直し知事選挙で当選する可能性が高いと踏んでいるということです。

それでは斎藤君に「勝機」はあるのか?

失職したケースで出直し選挙に挑んで勝った人としては田中康夫・長野県知事がいます。田中知事の場合は確かに既成政党の多くを敵に回したものの、当時、長野県では結構大きな勢力を誇っていた日本共産党が支援に回ったこと。マスコミも田中県政を評価する論調だったことなどがあり、大差での再選となりました。

その時とはあまりにも状況が違います。田中知事の時は「脱ダム」などの争点となりましたが、今回の場合は、斎藤知事や片山副知事らによる一連の「ご乱行」が問われます。阪神・オリックス優勝パレード担当課長、そして渡瀬・西播磨県民局長が自死に追い込まれたという結果は取り返しがつくものではありません。

渡瀬さんの告発文書で告発されたことについて十分な調査もせずに「嘘八百」と決めつけてしまい、さらに、利害関係者である藤原弁護士(百条委員会で証人尋問された)による内部調査だけをうのみにして懲戒処分としてしまった。まさに、公益通報者保護法違反です。

また、斎藤知事の腹心(俗にいう牛タン倶楽部)の片山副知事(当時、7月31日付で「退職」)や小橋理事(当時、現在は降格)は、警察でもないのに「がさ入れ」を強行。片山副知事は必要な決裁も取らずに渡瀬さんの退職願を受理しない、とその場で本人に申し渡してしまいました。

また、「維新」の掘井けんじ代議士(近畿比例、地盤は加古川市など)は街頭演説で渡瀬さんの個人情報を有権者にべらべらしゃべってしまうという事件を起こしました。個人情報を斎藤知事、片山副知事、小橋理事(いずれも当時)ら誰かが漏らさなければ起きえない事態で、これも重大な犯罪です。

こんな中で斎藤君の立候補に大義もなければ勝機もない。通常で考えればそうなります。

◆「孤軍奮闘」イメージと「既成政党自滅」で若年層中心に善戦も

しかし、筆者は一抹の不安を感じています。

斎藤君は26日の会見の中で「一人で選挙をやる」ということを繰り返していました。これがウケる可能性はあるかもしれません。既成政党への不信感も強い中で、現職であっても一人で闘う姿に心を打たれる人は出るかもしれない。斎藤知事が嘘をついていなければという前提はありますが、高校生から激励の手紙を受け取ったという。これは、石丸伸二さんが東京都知事選挙で、主にインテリの若い男性に特にバカ受けしたのに似ているようにも思えます。 

いま、地方選挙では政策などが全くいい加減な人でも無所属・無党派と言うだけで結構な票を取る現象が結構起きています。この傾向は政党が自己反省し体質を改善しない限り続くでしょう。

出直し選挙に向けては、自民が独自候補を模索し、公明、立憲が自民に同調の構えだそうです。

共産は無所属新人の医師を推薦。維新も独自候補を模索。

そういう中で、反斎藤票が割れ、政党への反感の受け皿に斎藤君がなるかもしれないのです。

おりしも、9月25日、神戸地裁で民商による共産党県議候補だった東郷ゆう子さんが不当解雇された事実が認定されるという労働裁判の判決が出ました

筆者は労働者が救済されることは大歓迎します。他の全労連系の労働組合幹部の多くの仲間とは違い、筆者は日本共産党を支持しておりませんので、堂々と、判決を歓迎すると言明しています。ただ、これは兵庫県内においては間違いなく、反斎藤側に打撃になるでしょう。党内で年配者が若手にハラスメントする有様は、斎藤知事と瓜二つではないか? だから筆者は常々、「立憲や共産と言った野党はスターリン主義をやめて人を大事にすべき、と口を諫言してきたのですが言わぬことはない、です。

もちろん、おそらく自民党が出す候補が最有力にはなるでしょうが、自民党自体は決して評判は芳しくありません。維新は維新で斎藤知事の製造物責任があります。独自候補を出すことで余計に批判を浴びることも予想されます。

そういう中で、斎藤君が結果として一位になる、ということは既成政党側が油断すればあり得るのではないか? 東京都知事選挙で石丸伸二さんがバカ受けした現象を軽視すべきではありません。

ただ、石丸伸二さんが兵庫県知事選挙に突如殴り込めば、また状況は変わるでしょう。反既成政党票が割れて斎藤君に不利な展開になるでしょう。まさかの石丸知事誕生まではいかないまでも、アンチ既成政党票を石丸さんに食われると斎藤君の苦戦は免れないでしょう。

◆「斎藤事件再発防止」こそが争点だ

ともかく、斎藤君には、反省がない。内部告発に対する対処を決定的に誤った、公益通報つぶし、さらには維新のほりいけんじ代議士への情報漏洩などは刑事事件ものです。阪神・オリックス優勝パレードへの公金流用も信金関係者の証言も出てきて全容が明らかになってきた。これも解明されれば刑事責任は免れない。

斎藤君は次の任期で、県立大学無償化などの「若者への投資をやりたい」と会見で繰り返していました。

だが、くどいようですが、問題になっているのは政策ではなく斎藤知事とそのお仲間のコンプライアンスです。

どうしたら、人が二人も亡くなるような事件の再発が防げるか?それが大きな争点であるべきです。兵庫県内各政党は斎藤君の土俵=政策に乗ってはいけません。「若者への投資」も、新しい知事の下で、知事や小橋理事らの「独裁」ではなく、きちんと県民ニーズを踏まえて推進すべきです。

同時に、公益通報つぶしを許さない体制の整備は、県警の裏金問題の隠ぺいが起きているわが広島県、鹿児島県警本部長の不祥事隠しが起きている鹿児島県など全国の自治体です。そして公益通報者保護法の改正は国政の大きな課題ではないでしょうか? 来るべき衆院選の争点の一つにしても良いと思うくらいです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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イスラエル軍元兵士が語る『平和』 ダニーネフセタイさん講演会が9月18日(水)、広島市東区民文化センターで広島瀬戸内新聞が主催して行われました。


◎[参考動画]「武力で平和は生まれない」 元イスラエル軍兵士が広島で語る「平和」(広テレ!NEWS 2024年9月18日)

◆「武力で平和は生まれない」 元イスラエル軍兵士が広島で語る「平和」

 

ダニーネフセタイさん

ダニーネフセタイさんは1957年生まれの今年67歳。ダニーさんは、2008年にイスラエル軍が子どもを多く殺したことで、イスラエルがやっていることがおかしいと気付いたそうです。

ダニーさんの祖父母はそれぞれポーランド、ドイツから1920年代にイスラエルに移住。しかし、自分以外の親戚はホロコーストにあったそうです。しかし、イスラエルに移住したことでバランスが崩れてしまった。

「パレスチナでは英国が独立させる際に当初はユダヤ人・パレスチナ人が半々に土地を分割するはずだったのが実際にはユダヤ人が75%、パレスチナ人が25%になってしまった。パレスチナ人が面白くないのは当然。」

「ユダヤ人がパレスチナ人の土地を奪う。家に火をつける。車を壊す。そういうことが毎日のようにガザではなく表向きは安定しているように伝えられているヨルダン川西岸でも起きている」

と、紹介しました。

そして、なぜ、こういうことになるかといえば、

「イスラエルの文科省が認めている地図ではガザ地区との境界は書いてあるがヨルダン川西岸もゴラン高原も自国だ。子どもたちは毎日そういう地図を見る。歪んだ教育が戦争を肯定する人間を生み出している」

とダニーさんは指摘しました。

高校卒業後、イスラエルでは18歳になると男女問わず徴兵されます。ダニーさんは高校卒業後、空軍に所属しました。

しかし、今となっては「パイロットにならないで良かった」と振り返ります。

「パイロットになった友人もいるが、そういう友人は『ここに爆弾を落としてきなさい』と命令されたらその通り落としてくる。それによって多くの人を殺していても」

からです。

「ナイフを使って街中で人を殺せばかっこいいということにはならない。戦闘機で何百人も人を殺せばかっこいいとなってしまう。」

「軍隊は、以下のことで成り立っている。①自分たちを善、相手側を悪と差別すること。②殺人を正当化するほどまでに上官の命令に従うことが徹底している(普通の会社ではそういうことはない。) ③物事を解決することは話し合いではなく、武力で解決する。イスラエルはパレスチナのことをイスラエル軍にすべてを任せているから解決しない。」

と指摘します。

「イスラエル軍は1000万円の爆弾でガザを攻撃し、安全だとするが、ガザは5000円で出来るロケット弾で対抗する。結局、軍事費はうなぎ上りになってしまう。」

「イスラエルはフェンスをつくってガザを封鎖してしまった。」

「10.7以降、イスラエルの若者がガザに行く支援物資を止めてしまう。戦争は普通の人を鬼にしてしまう。」

「イスラエル軍は、力で抑えることで安全神話をつくってきた。しかし、そのたびにそれは崩れてきた。」

「イスラエルは、西岸地区でもパレスチナ人を勝手に逮捕してきた。」

◆「テロリスト」と決めつけず、対話を!

ダニーさんは、

「ハマスはテロ組織ではない。一応選挙で選ばれていた。テロという職業はない。自分の目的を達成するためにテロをやっている。」

と指摘。

「1946年当時、ユダヤ人のリーダーの後のベギン首相がイギリス軍司令部を爆破するというテロを行った。のちにベギン首相はエジプトとの和平で1979年にノーベル平和賞をもらった。1948年にイスラエルは独立したためにイギリスに逮捕されず、その後首相になった。」

という事実を紹介しました。

そして、

「テロリストと決めつけたら話ができなくなる。しかし、長年戦争をしていたイスラエルは実際にエジプトと和平し、その後はエジプトに平気で観光に行くようになった。」

「ガザとイスラエルの対立は数千年もあるから対話は無理だという人もいるかもしれない。しかし、50年前は検問所などもなかった。1998年にはガザ市とテルアビブ市は姉妹協定も結んでいる。和平をしようとすればできないことはない。」

と強調しました。

◆イスラエルはこのままではPTSDで持たない

イスラエルはガザを2008年に大規模に攻撃し子どもがたくさん殺した。その時に生き残った子どもが2023年、イスラエルを攻撃した。また、ハマスの指導者を暗殺したが、イランは報復すると宣言。イスラエル国民はおびえている。殺された人だけでなく、殺した人もPTSDなどと言う形で被害を受ける。

ダニーさんは

「戦争の時代に生まれた犠牲者でもあるが、政治家の間違った判断の犠牲者であり、間違ったプロパガンダの犠牲者でもある」

と指摘しました。

◆(核)抑止力ってあるのか?

ダニーさんは、「(核)抑止力」に疑問を呈しました。

「中学生がナイフを「抑止力のため」と持ち込んだら先生が認めるか?」
「岡山が攻めてくることに備えて「広島軍」をつくりますか?」

と問いかけました。

また、

「ロシアもイスラエルも核兵器を持っているが、ウクライナはモスクワまで攻撃しているしハマスもイスラエルを攻撃した。」

と核抑止力に疑問を呈しました。

◆戦争をベースにする歴史教科書

ダニーさんは歴史教科書が戦争をベースに記述していることも問題視しました。

「今、ロシアとウクライナは戦争していますが、欧州の51か国中2か国だともいえる。イタリアではいつもどおりピザを食べている。ただ、そんなことは教科書には載らない。」

「大昔でも、戦争をしていない国の方が多かった。戦争を止められないなら、戦争をしている国の方が多くなる。」

と指摘しました。

◆戦争・軍事こそ最大の環境破壊

「戦争はいつかおわる。ヘビースモーカーは余命2週間と知らされたらすぐにやめる。戦争も、気候変動で東京も上海もNYもガザもテルアビブも大変なことになる。そうなれば戦争どころではなくなる。」

「ただ、それを待っていたら、太平洋の島から沈むし、ガザでも人が死んでしまう。今から、平和のため、環境のために私ならがんばる。」

「戦車も戦闘機も燃費が悪い。F35戦闘機は1時間飛ぶと5600リットル燃料、すなわちクルマ1800台分の燃料を消費する。戦争をしなくても練習しているだけでも、どんどん環境を破壊する。戦争は最大の環境破壊だ。」

と指摘しました。

ダニーさんの講演を受けて活発な議論が行われました。

参加者からは

「イスラエルの状況や市民の方々の当たり前を知る機会を与えていただき、ありがとうございました。なぜあの様な状況が起きるのか疑問に思っておりましたが、日本に於ける二次大戦時の市民の方々の思いの推定も含め、認識を新たにさせて貰いました。良く見て、良く聞いて、良く話すことの重要性、夫婦や家庭でも同じだなぁ、と痛感しました。
 今後とも、このような上質な知識を得る機会を提供いただくようお願い致します。」

「戦争がもたらすこと戦争で何が起こっているかを伝えようという熱意、わかりやすく伝えたいという思いを強く感じました。おそらく、悲しみ怒りなど、持ちながら希望を伝えたいという思いを感じました。」

などの感想を戴きました。


◎[参考動画]イスラエル軍元兵士が語る『平和』IN広島 ダニーネフセタイさん講演会 広島瀬戸内新聞ニュース(2024年9月18日)

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筆者は2024年9月6日、広島弁護士会館で行われた基礎経済科学研究所の秋季研究集会で「広島県における産業廃棄物問題と地域経済・社会への悪影響」と題して発表しました。

発表する筆者(右)

◆広島県の産業廃棄物問題 

広島県の産業廃棄物処分場の数は、2021年、全国で3番目。北海道の289、愛知の94に続く76か所です。特にいわゆる『安定型処分場』では54か所で2番目となっています。

「安定型産業廃棄物最終処分場」(以下「安定型処分場」)とは、性質が化学的に安定しているとされる廃プラスチック類、金属くず、ガラス陶磁器くず、ゴムくず、がれき類などの産業廃棄物(一般的には「安定5品目」で2006年10月1日からは、一定の基準を満たした石綿含有産業廃棄物も追加されています)を処分する最終処分場です。

処分場の構造は、「しゃ水工」と言われる「埋立処分場内の汚水の処分場外地中への浸出を制御するための工作物」を敷設しない素堀の穴です。簡単に言えば、シートすら敷かなくてよいのです。そして、処分場からの浸出水に対する処理も法令上は不要です。従って、有害物質を含む廃棄物が埋立処分された場合、有害物質が施設外に流出することになります。この安定型処分場は1980年代~1990年代に全国各地で問題となりました。日弁連はすでに安定型処分場の新規設置を禁止することも提言しています。安定型処分場を巡る問題の代表例としては香川県の豊島事件があげられます。

安定型といいながら、実際には車のシュレッダーダストなど有害物質が含まれるゴミが持ち込まれました。公害調停を経て、2024年現在も後始末が続いています。

こうしたことを背景に全国各地で住民や地元自治体による反対運動が起き、水道水源保護条例、環境配慮条例など表現は多様ですが規制する条例が制定されています。

これは、現行の廃掃法では、書類などの要件さえ整っていれば産業廃棄物処分場の設置を許可せざるを得ないからです。

そうした中、本県では、独自に規制する条例がつい最近まで県も市町も制定していませんでした。また、規制の運用でも他都道府県では抜き打ち検査が常識なのに、広島県ではそれもやっていません。そして、業者による展開検査もろくに行われていない状況があります。他都道府県が規制を強化する中で広島県だけ規制が緩いことで、全国から広島に産廃が流入しています。後述する三原本郷産廃処分場には、群馬や長野などのナンバーのトラックが入ってきています。

◆三原本郷産廃処分場 ── 汚染水流出、県は深刻化するまで放置プレイ

2018年4月、広島県三原市と竹原市の水源地のど真ん中にJAB協同組合による安定型処分場設置計画が持ち上がりました。

計画地 広島県三原市本郷町南方字観音平22179番地1 外関係地域 広島県三原市本郷南方 / 広島県竹原市新庄町
埋立面積 9万7,499㎡(マツダスタジアム約10個分)
埋立容量 112万6,000立方メートル(2~10t車両30台/日程度・160立方メートル/日)
国道2号から搬入
廃水計画 雨水・浸透水は調整池を経由後、自然流下で椋原川と日名内川に排水する
主な産廃排出場所 県内5割、県外5割(岡山、島根、大阪、京都、岐阜、愛知、静岡)

三原市でも竹原市でも住民が猛烈な反対運動を起こし、三原市議会では2019年10月、竹原市議会でも2020年の2月に反対の請願が全会一致で可決されました。

しかし、広島県の湯崎英彦知事は2020年、産廃処分場を許可してしまいました。住民側は、許可が下りるとほぼ直ちに広島地裁に産廃処分場許可取り消しを県に求める住民訴訟、また業者を相手取って産廃処分場の稼働を差し止める仮処分申請を行いました。2021年に住民側による稼働差止の仮処分申請が通ったものの、業者JAB協同組合が異議申し立て。紆余曲折を経て2022年6月までに広島地裁が認めてしまいました。2022年秋から産廃の持ち込み・投棄が始まりました。

2023年6月。三原本郷産廃処分場から異臭を伴った汚染水が流出していることが発覚しました。これを受けて県もようやく重い腰を上げ、産廃処分場内の井戸でBODが基準値を超過していたとして7月に警告を業者に行いました。しかし、井戸水の数値が元に戻ったとして、すぐに解除してしまいました。業者は、再検査時には井戸を真水で洗浄していたそうです。

仮に洗浄して薄まった水を検査しているのであれば、有害物の実態を把握するすべもありません。その後も、住民側の目視や簡易検査でも汚染水は明らかに出ているにもかかわらず、県も市も動かず、いわば「放置プレイ」が続いていました。県は調査も住民救済もしようとしなかったのです。

そのため、米作りをあきらめる農家も出てきました。他方で、広島地裁は2023年7月4日、広島県知事の許可の判断過程に看過しがたい過誤があったとして、産廃処分場許可を取り消すよう知事に命じる判決を下しました。しかし、湯崎英彦知事は判決を控訴しました。広島高裁における控訴審では、湯崎知事は、産廃業者JAB協同組合を被告側で補助参加させています。湯崎英彦知事は業者と一体となって県民に敵対しています。

こうした中で、住民の要求を受けて三原市当局は重い腰を上げて水源の保護に関する条例を制定しました。ただし、内容的にはパブコメでも寄せられた住民の意見が十分には反映されないものでした。市民の頑張りで委員会では市民側の修正案が可決されましたが、本会議では当局案が可決されてしまいました。

県が放置プレイを続ける中で、2024年夏、さらなる汚染水が発覚。筆者がうかがった7月21日には硫黄臭が漂い、妙なしょっぱい味がする水が流れていました。さすがに、これと前後して広島県警も動き、県も業者に対して指導を行いました。その理由は鉛の濃度が上回ったから、というものです。しかし、県の発表する文書では硫黄臭がするなどの状況は無視されています。現在の本郷処分場の汚染状況については、「廃掃法で規定されている場内の観測井戸のみ検査を行う」として、調整池や場外に排水されている汚水や河川の異常な泡や臭気、濁りについては検査や処置がなされない状況にあります。

なお、9月4日には、県は指導を解除し、処分場の操業を認めてしまいました。全くやる気なしと言うことです。こうした状況に現地の住民は8月末、国=環境省にも直訴をしています。環境省の職員も「広島県はこれでいいといっているのか?!」と驚いておられたようです。

さらに、産廃処分場下流の水田について、農協が玄米中の重金属検査を実施することを決定しました。

米が汚染されている可能性があるという異常事態です。それにもかかわらず、県は産廃処分場の操業を認めてしまっています。救われないのは農家です。


◎[参考動画]お米が植えられぬ三原本郷産廃、周辺のコメ重金属検査(広島瀬戸内新聞ニュース)

◆福島原発事故による放射性廃棄物流入の疑い

また、福島原発事故による放射性廃棄物が流入している疑いもあります。湯崎英彦知事は3.11当初の2012年、国よりも放射性物質の厳しい基準を打ち出していました。しかし、それを担保する厳しい検査などはなかった。そして、2013年11月に再選された後、基準を緩めてしまった。

広島県は産廃行政の運用は緩く、他都道府県では常識の抜き打ち検査などもされていません。こうした中で、産廃が流入し放題になっている恐れがあります。

◆上安産廃処分場 ── 不適切盛り土発覚、グローバル企業が買収

上安産廃処分場(https://equisenv.co.jp/facility/)は、上記JAB協同組合が1990年代末に設置したものです。その後、外資系グローバル企業エクイスが買収し、大幅拡張して現在に至っています。埋立容量2,146,901立方メートル 埋立面積114,601㎡

同社は福島県飯館村と上記広島市安佐南区上安に巨大な産廃処分場を所有。540億円もの投資を行っています。この上安産廃処分場は実は、地番を変えるなどのセコイ手法で保安林を勝手に伐採した上に、不適切な盛り土を行った上にできています。この上安産廃処分場については、前出の三原本郷産廃処分場問題が持ち上がった際、JAB協同組合について調べるために三原市民が独自に調査に行きました。その際に、汚染水が流出していることが発覚。広島市などに報告した経緯があります。

それまでは、広島市の行政はこの上安処分場について放置プレイだったのです。排水については一応是正の対応は取られたことになってはいます。しかし、不適切な盛り土の上である以上、いつ大雨災害で熱海のようなことになるかわからない状況です。なお、産廃処分場の設置許可は広島市内については政令市たる市当局が担当しています。一方、盛り土の規制は県が担当していたため、連携が取れていなかったという問題も指摘されています。

◆人口流出3年連続ワーストワンに追い打ち

広島県は2021年から3年連続で人口流出(転出超過)ワーストワンです。元々、広島県民は、18歳や22歳で大学進学や就職のために東京などへ行く傾向は強くあります。若い時は東京の有名大学や有名企業を目指す。ただ、30代、40代、50代で、「ゆったり子育てをしたい」とか「農業をしながらITや工芸などの自営業をしたい」などの思いで戻って来られる方も多くおられます。そのバランスで、コロナ禍前まではそこまでの人口流出にはなっていませんでした。しかし、いまや、10代20代だけではなく、男性の50代や70代以上を除くほぼすべての年齢階層、性別で転出超過になっています。

もちろん、広島県の産業構造として、特に若い女性に人気のIT関連の産業が弱いなどの問題はあります。しかし、Uターン組の不安要素にこの産廃問題がなっていることも無視はできないのではないでしょうか? 表立って口には出さなくとも、産廃が流入し放題の故郷に誰が帰りたいでしょうか? そんな故郷なら、「少々しんどくても東京でいいや」と思う人も多いのではないでしょうか?

実際に、三原本郷産廃処分場近くでも、Uターンをあきらめた人が出ているということです。三原本郷産廃処分場は氷山の一角です。筆者も、妻の親の実家がある地域で農業でもやろうかな、と考えたことがあります。しかし、「あそこは産廃処分場があるから農業を始めるのは止めた方がいいよ」と親族から止められました。

◆ゴミは流入、ヒトは流出から卒業を!

歴史的な経緯から、大昔から広島の産廃行政は緩いことで有名でした。昔はそれで済んだのかもしれません。しかし、いまは、他の都道府県が産廃処分場の設置について独自の条例などで規制をする。廃掃法の運用についても抜き打ち検査など厳しくするなどしています。広島県だけが、その中で取り残されていれば、広島に産廃が流入するのは当然です。

広島県は「広島料理や食材のPR」を2024年度の県政の大きな柱としています。それは結構なことですが、足元の水を悪質な産廃から守れないのに、食材のPRだけしてどうするのか? 問われます。

三原本郷産廃処分場については、
・県は汚染水の実態を調査し、被害を救済する。
・県は控訴を取り下げ、産廃処分場の設置許可を取り消す
・県が処分場の土地を買い取り、原状回復する。とともに、再発を防止するため、
・他都道府県に倣った水源保護条例を制定する。といった対応が今後必要です。

他県の方からは、
「なぜ、平和都市広島がこんなことになっているのか?!」
「なぜ、広島がこんな形で外資に狙われているのか?」
などとご質問をいただきました。  

筆者は、
「端的に言って県も市も、広島の政治が腐りきっているからです」
「国政の与党はもちろん、野党でも与党以上に知事や市長とずぶずぶのところがある始末だ」
「湯崎英彦知事も軸足は日本人と言うよりはほとんど米国人で外資ズブズブの方。素晴らしいのは平和宣言だけ」
「県民もカープやサンフレに夢中なのはいいけど、投票率が全国でも40位台と低いのはいかがなものか?」
とお答えするしかありませんでした。それ以上でもそれ以下でもないからです。
 
前日には平岡敬・元広島市長が「広島が広島でなくなっている」と市政の腐敗について糾弾されました。
 
わたしは「いかに、広島が腐っているか、よーく皆さんお分かりになったと思います。わたしはカープが好きだし、広島は心から愛していますが、政治が腐りきっているという意味では、広島を心から憎んでいます」とお話しをしました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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