◆先進イメージの渋谷区政と博報堂人脈 ── 信じがたい副区長の暴言

東京都渋谷区。わたしが世田谷区在住の幼少期は、よく、親に渋谷に連れて行ってもらったのを鮮明に覚えています。その後、大学時代の前半も渋谷は通学路に当たり、よく大学の駒場キャンパスから渋谷のカラオケまで友人と歩いたりしたものでした。

渋谷区は、いわゆる無所属市民派を標ぼうする長谷部健区長が3期目を務めておられます。同性パートナーシップ条例を全国に先駆けてつくり、長谷部区長支持の区議会会派は男性3、女性5という構成です。長谷部区政は、うっかりすると、ジェンダー平等・多様性尊重の素晴らしい区政に見えてしまいます。

ところが、その長谷部区長が任命した沢田伸副区長が、国民民主党の桑水流弓紀子議員を侮辱するコメントを庁内のチャットでしてしまい、8月8日、辞任しました。
長谷部区長の博報堂時代の元上司で、意識高い系で有名な沢田副区長。行政のIT化などで、マスコミに度々登場。いわば、天まで持ち上げられて意気軒高でしたが、突然の失脚となりました。有頂天になったということはあるでしょうが、それにしても酷い言動でした。

◆野宿者追い出し、女性トイレ削減……長谷部区政の冷酷さ 「女性野宿者惨殺」の背景にも?

実は、渋谷区では、野宿者を公園から追い出し、真冬の路頭に放り出す。そして公園は大手企業が儲ける場所に変えるという事業を強行しています。このときは、筆者が国政で支持するれいわ新選組の山本太郎も国会で取り上げました。

しかし、結局、長谷部区政は聞く耳を持ちませんでした。沢田副区長は、そうした区政の責任者であり、「行政が儲けて、住民の税負担を減らす、子育てなどのサービスを充実させる」ということで、マスコミでもご自身の政策を自画自賛しておられました。しかし、そもそも、行政は儲けるためのものではない。儲からなくても住民のためにやるべきことは、住民の声を聴き、議会で議論して、条例や予算という形にしてもらった上で実施する。そういうものでしょう。儲けのために生存権を脅かしてしまっては、本末転倒です。

そうした中、地域の清掃ボランティアをしていた男性区民が、バス停で夜を過ごしていた広島出身の野宿者の女性を邪魔者扱いして惨殺(起訴事実は傷害致死)した上、自らも保釈期間中、自死するという事件が起きています。長谷部区政が醸し出した「野宿者に厳しい」雰囲気が、この男性の凶行と自死を招いたと言えないでしょうか?もちろん、第一義的には、被告人の男性が悪いのですが、被告人も長谷部区長が醸成したいわゆるネオリベ的雰囲気にのまれたのではないでしょうか?

長谷部区政は、もうひとりの副区長や区長与党会派の議員候補に女性を登用するなど、「成功者の女性」を持ち上げる一方で、格差拡大の中で苦しんでいる女性には冷たかったのではないでしょうか?あるいはそういうメッセージを区民に発していたのではないでしょうか?

長谷部区政は、公共の女性トイレを減らすということも進めていました。もちろん、いわゆる多目的トイレを増やすのは結構なのですが、それに伴って女性用トイレを減らしてしまってはこれまた本末転倒です。

◆女性区議の正論に逆切れ?

桑水流区議は、2023年春の統一地方選挙では、女性用トイレを減らす長谷部区政を批判する演説もして当選しておられました。筆者は国民民主党を全く支持しませんけれども、桑水流区議の御主張はもっともだと思います。ただ、そんな桑水流区議は、沢田副区長からは「うざく」思えたのかもしれません。

意識高い系(?)の男性にありがちな傾向として、自分が気に入った女性は神輿として持ち上げるのだけど、自分に意見する女性の意見を必死で抑え込もうとする、ということがあるのも否定はできません。ひょっとしたらそういう部分が今回出てしまったのでしょうか?

◆広島の湯崎県政とリクルート人脈 ── 長谷部区政とそっくり?

実は、渋谷区の長谷部区政については、広島県民も他山の石とせねばなりません。広島県の湯崎英彦知事は、長谷部区長や沢田副区長と似たタイプの平川理恵教育長を初の女性教育長として任命した。長谷部区長・沢田副区長が博報堂なら、平川教育長は、リクルートご出身。いわゆる意識高い系、広告系という意味で、非常に共通する点がありました。

平川教育長についても、マスコミが一時期は「改革の旗手」として、沢田副区長同様、天まで持ち上げました。

ところが、実際には、平川教育長は、ご承知の通り、官製談合事件を引き起こしてしまいました。しかし、平川氏は自主的な給料返上だけを行い、いわゆる懲戒処分は全く受けていません。特別職には懲戒処分はないといえばそれまでです。しかし、そうなであるならば、法律に基づいて、知事が罷免するという手があります。だが、湯崎知事はそれもせず、平川氏を野放しにしています。

平川氏は、京都や大阪のお友達企業や法人、あるいは東京の友人に県教委の仕事を丸投げする一方で、県教委管轄だけで1000人以上いる非正規の先生の待遇改善については「予算がない」とけんもほろろに却下しました。

また、湯崎知事ご自身は、三原市本郷町の産業廃棄物処分場問題では、広島地裁で許可取り消しを命じられています。8月現在も現に汚染水が流出し続けているのに高裁に控訴し、住民に敵対しています。住民たちは、川の水を使えずに、田んぼが干上がるなどの死活問題に直面していますが、湯崎知事は知らんふりです。

湯崎知事は、8・6の平和記念式典での挨拶はそれなりに良いし、それでごまかされてしまっている左派の方も特に県外では多いのですが、上記のように、県政の中身はボロボロです。

渋谷区の長谷部区長と広島県の湯崎知事。そっくりではないのか? いや、沢田副区長を自発的とはいえ、退陣させた分だけ、長谷部区長の方がましかもしれません。しかも、長谷部区長の場合は、自民や公明や共産が野党として存在し、緊張関係が議会との間にあるのが幸いしています。広島の場合は、ほとんどオール与党である。広島の方が渋谷より始末に悪いでしょう。

◆長谷部区長と湯崎知事、実は接点 「想定している事業のイメージはない」事業

渋谷区の長谷部区政と広島の湯崎県政。実は接点があります。湯崎知事が肝いりで進めている「ひろしまサンドボックス」なる事業にNTT西日本やソフトバンクとともに、渋谷区が参加しています。渋谷の熱量と知名度を生かすということです。

「ひろしまサンドボックス」とは、広島に知識や人材を集積するために2018年から3年間で10億円をかけて行われた事業です。とにかく、失敗を恐れずに事業アイデアを出そう、ということです。

ガッチリ握手する長谷部渋谷区長と湯崎広島県知事。やはり類は友を呼ぶのか。(2018年5月25日付け日経BP総合研究所HP山田雅子氏執筆リポートより)

ただ、2021年、2022年と広島県は人口流出が過去最悪となりました。「ひろしまサンドボックス」も含めて、効果があったと言えるのでしょうか? 湯崎知事もひろしまサンドボックスについては、「想定している事業のイメージもない。」などとおっしゃっているものです。

ひろしまサンドボックスのノートを拝見すると、県内の女性若手起業家らがそれなりの情報発信はされています。それはそれでいいのです。彼女らは彼女らでどんどんやりたいことをされればいいでしょう。そういう場はあっていいけれども、わざわざ行政が大金を投入してお膳立てをしなくてもそういう活動をする人はどんどん自主的に活動するでしょうし、筆者が存じ上げる範囲でも実際にしておられます。

そして、行政・政治が何をすべきか、といえば、「ひろしまサンドボックス」とは、違うのではないでしょうか?

今となっては全国に遅れをとっている子育て支援策を充実させる。非正規の先生をきちんと正規にして、若者に地元にとどまってもらう。県が地元企業への発注単価を適正に上げる。また、国とも連携して農業に戸別所得保障をきちんとする。あるいは、国保料の均等割りを廃止し、子育て世代の起業家のお子さんから保険料を取るのを止める。こうしたことをやっていく方が実効性はあるのではないのか?という感想しかありません。

そして、何度もご報告している三原本郷産廃処分場問題。このままでは汚染水が流域の農業や食品工業、醸造業、漁業に大打撃ですよ。知事にはそちらをきちんと対応していただきたい。

カッコだけはつけるけど、中身はない。そんな湯崎県政。長谷部区政との連携は似た者同士でお似合いかもしれません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

広島県三原市本郷町の三原・竹原市民の水源地のど真ん中に湯崎英彦・広島県知事が2020年4月に設置を許可してしまったJAB協同組合の産廃処分場。2022年9月から稼働してしまいました。それから9か月しか経過していない2023年6月、国の基準値を上回る汚染水流出が発覚しました。6月29日に県東部厚生環境事務所が操業を止めるよう行政指導しました。

◆狭まる知事包囲網、渋々業者に「警告」

また、その直後の2023年7月4日には、広島地裁の吉岡茂之裁判長(権力寄りの判決が多いことで有名)さえも、湯崎英彦知事に対して産廃処分場の許可取り消しを命じる判決を下しました。判決内容は、「知事の判断の過程に看過しがたい過誤・欠落があった」というもので、いい加減な井戸水や農業用水の取水口付近の調査が指弾されました。言うなれば県が「失神KO負け」を喫したのです。

しかし、業者は県の指導を無視し、7月8日まで産廃の搬入を強行しました。湯崎英彦知事は行政指導を一方で無視されるという形で業者にすっかり舐められていました。しかし、湯崎知事はにもかかわらず、14日(金)処分場の許可取り消しを命じた地裁判決を不服として広島高裁に控訴してしまいました。

一方で、原告住民らは判決直後から、三原市や竹原市の執行部・議会への働きかけへ猛ダッシュ。このことを背景に三原市議会は県による控訴という暴挙があった14日(金)、産廃処分場の許可取り消しを求める「水源の保全に関する意見書」を全会一致で可決しました。

このように、広島地裁はもちろん、三原市議会も「知事を包囲」する中、さすがの県も19日(水)に基準値を下回るまで操業を止めるよう求める「警告」を行いました。

◆周辺では基準の5~6倍の汚染も県は「警告解除」し、再稼働容認

さらに27日(木)には竹原市議会も県に対して厳正な対処を求める「産業廃棄物処理施設設置業者に対する行政処分に関する意見書」を可決しました。地元の議会が揃って業者への対応がぬるい県に業を煮やした形です。

こうして、地元住民や三原・竹原両市議会による知事包囲網が築かれる中で、県は28日(金)、驚くべき発表を行いました。なんと、業者に対する警告を解除し、操業再開を認めてしまいました。

稼働が再開された処分場。原告団共同代表・岡田和樹様のSNSより

JAB協同組合の改善報告書を県が受け取り、県による調査でも水質の改善が見られた、というのが表向きの理由です。JAB協同組合は、「汚染水は排水管にたまった腐葉土や小動物が原因で、排水管の掃除をして小動物の浸入を防ぐようにしたので大丈夫」という趣旨の報告書を提出しています。

しかし、原告団共同代表の岡田和樹さんは、「抜き打ちの検査前に、6台の散水車の出入りを連日確認。「検査井戸に真水を入れて成分を薄めるのが産廃業界では一般的だ。JABも検査前に、薄めているのだろう。」と複数の産廃業者関係者から聞いていた。事実とすれば調査の捏造である。その結果をもとに県が判断したとすれば、県の監督責任も欠落していたことになる。」と憤慨しておられますが当然です。

県は汚染の被害にあっている住民を置き去りにしてしまいました。「(梅雨明け以降、)雨がふらず、川が泡や異臭で汚染されて水が取れない。穂が出る時に水が取れないと米ができん。」と直下の米作住民は救済を求めておられます。

実際、警告解除の28日、住民が処分場周辺で調査したところ、基準値の5~6倍もの汚染水が出ています。小動物や腐葉土を取り除いた(これすら、これまでのJAB協同組合の言動からして全幅の信頼はおけない)からと言って、ちっとも改善していないのです。

しかし、県はそのことへの対策もせず、敷地内の井戸の調査などの結果だけで警告を解除してしまったのです。これでは竹原市議会が求めた「厳正な対処」どころか、「大甘な対処」です。

産業廃棄物処理施設設置者に対する行政処分に関する意見書(案)

◆「知事に舐められない県民」に!提言コーナーから意見を送ろう!

四期目に入り、産廃問題に限らず、広島県民ではなく、特定企業の利益になるような判断・政策が目立つ湯崎英彦・広島県知事。筆者も最初の選挙(2009年11月)で彼に期待して一票を投じた県民、また、湯崎知事の元部下(県庁職員)として情けない思いは強まるばかりです。

皆様。広島県の湯崎知事にガツンと声を送りましょう!湯崎知事が県民をなめ切っているのであれば知事に舐められない県民になりましょう!

以下は、例文です。

◎簡単な例

広島県知事 湯崎英彦様

三原市本郷産廃処分場に対する設置許可を取り消してください。
お手盛りではないきちんとした水質調査を行い、水質の改善をしてください。
業者から土地を買い上げ、水源を守ってください。
環境配慮条例や水源地保全条例などを制定し、全国一緩い産廃規制を強化してください。

◎長文の例

広島県知事 湯崎英彦様

三原市本郷産廃処分場に対する警告を7月28日、貴職は解除されました。

しかし、貴職が本来すべきは、裁判での控訴を取り下げて産廃処分場の設置許可を取り消すことです。そして、処分場の土地を買い取り、原状回復を測ることです。

また、7月4日付の裁判の判決では、行政寄りの判断をされることも多い吉岡茂之裁判長すら、貴職の許可の意思決定過程に看過しがたい過誤・欠落があると断じておられます。

また、当該事業者・JAB協同組合は、県の6月29日付の行政指導さえも無視しており、貴職をなめ切っています。

井戸の数値が基準値を下回ったと言いますが、産廃処分場から見た川下では泡が出ており、米作農家が困っています。井戸については直前に水を注げば数値がクリア出来てしまいます。

いい加減な調査で許可をし、裁判で厳しく断罪された貴職。これ以上、恥の上塗りをしないでください。

産廃問題は対処が遅れれば遅れるほど被害は拡大し、回復に時間がかかります。

香川県の豊島では、1978年から産廃持ち込みが始まり、1990年にようやく警察が動きました。2000年に公害調停を経て政治決着しましたが、そこから23年たった今も汚染は抜けません。

手遅れになる前に、操業を止めさせ、土地を買い上げてください。

岐阜県御嵩町の産廃問題では業者が最終的に県に土地を無償寄附して解決しています。しかし、今回の産廃処分場の場合は、業者側のいい加減な調査結果が元とは言え、貴職がそれをスルーして許可をし、稼働も始まってしまっています。

行政処分の不利益変更は困難なものがあり、土地を買い上げるのが妥当と考えます。

また、本県は産廃規制が全国一緩く、安定型処分場は北海道についで多くなっています。

今回の産廃処分場も群馬や長野からゴミが流入しています。

本県だけが規制が緩い状況を放置すれば、全国から、いや下手をすれば世界から広島にゴミが集まり、広島は日本の、いや世界のゴミ捨て場になりかねません。

環境配慮条例や水源地保全条例などを早急に議会に提案してください。

◎主な送り先
県政提言メール(県への御意見) https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/19/1171540420003.html
郵便 〒730-8511 広島市中区基町10-52 広島県総務局広報課 県政提言コーナー 宛
電話 082-513-2378  ファックス 050-3156-3485

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年8月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

◆冷戦時代以来の逆流の中で迎える

78年目の原爆の日は、(核をなくし、戦争を止めることに対する)冷戦時代以来の逆流の中で迎えました。

第一に、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、軍拡競争の気風が世界に広まり、日本の岸田総理も『安倍晋三さんでさえしなかった』軍拡に暴走しています。

第二に、G7広島サミットで、核兵器禁止条約にも核兵器廃絶にも触れず、2000年のNPT再検討会議での核兵器廃絶への明確な約束や、核兵器先制不使用にも触れない「広島ビジョン」が採択されてから最初の原爆の日となりました。また、ゼレンスキー大統領の途中参加で、ほとんどサミットがウクライナ戦争を支援する会議となってしまい、被爆地が戦争支援に悪用されてしまいました。この間、広島市長がパールハーバーとの姉妹協定へ暴走、またサミットを前にして『はだしのゲン』が削除されるなど、アメリカへの忖度ではないかとみられる『事件』が続発しています。

第三に、広島選出の岸田総理が、気候変動対策・GXと称して老朽原発存続を支援する自称・GX法を強行。高浜原発が再稼働されました。さらに、原発維持で核のゴミが増える見通しであることを背景に、中国電力と関西電力が広島からわずか82kmの上関に核のゴミ=死の灰の中間貯蔵施設という名の事実上の永久のゴミ捨て場をつくることを発表しました。

筆者は、8月4日から5日は、原水禁国民会議系の「被爆78周年原水爆禁止世界大会」に参加しました。筆者は、日本共産党を支持していた時期も含めて広島県原水禁の個人会員として一貫して原水禁国民会議系の大会に参加してきました。今年の大会の中で筆者が学習したことをご紹介します。

◆大会に寄せられたメッセージ、立憲・泉さんに脱力

8月4日、開会総会が開催されました。代表や来賓の挨拶、被爆者による被爆証言などが続きます。

開会総会を前に筆者が受付で渡された資料の後ろの方には、各政党を含む各界関係者からのメッセージが寄せられていました。この中でも、立憲民主党の泉健太代表からのお言葉には脱力してしまいました。「『広島ビジョン』を歓迎」という泉代表のお言葉が目に入り、筆者は椅子からずり落ちそうになりました。

広島ビジョンは、冒頭にもご紹介した通り、核兵器廃絶には触れない。西側の核兵器保有は評価する。そういう代物です。そんなものを歓迎とは、どうなっているのか? 泉さんは立憲民主党を滅ぼす気なのか?! がっくりです。

まだ連合の芳野友子会長の方が「『核兵器のない世界』の実現に向けた具体的な道筋は示されず、核抑止を事実上肯定したことは残念でなりません。」と、マシに見えてしまいます。

さらに、れいわ新選組の櫛渕万里共同代表は、「……落胆を通り越して怒りを覚えるものでした。核抑止力を正当化するという、まさに、被爆地、被爆者を冒涜する文言だったからです。」とバッサリと「広島ビジョン」を斬っています。

各政党を含む各界関係者からのメッセージ

◆北東アジア非核地帯で安全保障環境改善し、日本も核兵器禁止条約に

 

8月5日午前中は「平和と核廃絶Ⅰ 世界の核兵器廃絶に向けて」に参加

8月5日の午前中は「平和と核廃絶Ⅰ 世界の核兵器廃絶に向けて」に参加しました。

ピースデポの湯浅一郎さんは、「米ソ冷戦で相互不信の悪循環で核軍拡が進んだ。冷戦が終わると核軍縮が進み冷戦末期と比べると核兵器は7万発から12000発に5分の1になっている。」指摘。「軍事力による安全保障のジレンマ」が典型的に示されている、としました。

「軍事力による安全保障のジレンマ」とは相互に軍拡すれば結果として際限のない軍拡競争を繰り返す悪循環にはまりこむことです。

現在はロシアのウクライナ侵攻がそういう構図を引き起こしています。

一方で、湯浅さんは核兵器禁止条約とNPTという2つのトラックが並走する新たなステージに入った、と希望も示しました。

核兵器禁止条約は核兵器を禁止し非合法化する初の条約です。

そして核兵器禁止条約が始まった今こそ、東北アジア非核地帯条約をと訴えました。

東北アジアには朝鮮半島の分断と中国の海洋進出による米中対立という2つの対立構造があり、日本はこれを「厳しい安全保障環境」だとして核兵器禁止条約に反対している。

しかし、そうであるならば、東北アジア非核地帯をつくることで安全保障環境の改善に踏み出すべきだと湯浅さんは強調します。

北東アジア非核地帯構想は朝鮮戦争集結とともに朝鮮半島と日本に対して米中ロが消極的安全保証(核攻撃をしない)をすることで北東アジアの緊張緩和をしていくことです。

これにより朝鮮半島2国と日本も核兵器禁止条約に入りやすくなります。

◆核放棄が最も早い保有国は英国か?

 

8月5日午後は「被爆78周年原水爆禁止世界大会・国際シンポジウム 核兵器廃絶に向けた道筋を描く」に参加

8月5日午後は、「被爆78周年原水爆禁止世界大会・国際シンポジウム 核兵器廃絶に向けた道筋を描く」に参加しました。

広島市の秋葉前市長は、広島ビジョンに核兵器廃絶も被爆者も核兵器禁止条約もない、と厳しく批判。その上で、そもそも、1945年8月10日に当時の日本政府が原爆投下に抗議したけれども、抗議はその一回だけで、原爆投下の責任者で、東京大空襲で有名なカーチス・ルメイ大将に勲章まで与えてしまう始末で、日本政府にはそもそも核を批判するという発想がないと指摘しました。

イギリスの平和運動CNDは、まず、イギリスが自分から核を手放すことをめざしているそうです。スコットランドが独立(連合王国から離脱)すれば、イギリスの核の主力である潜水艦の基地はスコットランドにあるのでイギリスは核兵器を失います。

一方で、スコットランドの人たちの多くは核を手放すことを望んでいますので、スコットランド独立はイギリスという核保有国が消滅することを意味するそうです。時々ニュースで出てくるスコットランド独立運動というのはこういう意味もあることを確認しました。

韓国の『参与連帯』の方は、G7広島サミットで日韓首脳が韓国人慰霊碑を一緒に参拝して(日本政府がお詫びの姿勢を堅持した)のはよいが、手放しでは歓迎できない、と日米韓の核共同体に「日本による韓国へのお詫び」が使われていることに懸念。

また、そもそも、米韓が軍事演習をストップしていた時期は、朝鮮も核実験やミサイル発射を中断していたということに注目すべき、朝鮮戦争の終戦が大事だ、とおっしゃいました。普段のニュースを見る際も、「北朝鮮怪しからん」一辺倒ではなく、「米韓の威嚇と朝鮮のミサイル発射は裏表だ」ということを押さえておきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

2023年の8月6日。78回目の原爆の日です。この日は、日曜日で、快晴でした。

 

平和記念公園

筆者は、自宅前からバスで広島市中区の平和記念公園近くの終点まで乗車。ただ、疲労しきっていたため乗り過ごして運転手さんにたたき起こされる不覚を取りました。

気を取り直して、平和公園へ向かうと、原爆ドーム前では左派の集会を機動隊が取り囲み、その周りから右派の方々が大声で挑発されているのを拝見しました。左派がうるさいとおっしゃる右派の方々ですが、右派のアジテーションの方が音量は大きかったようにも見えました。右派の弁士は「左派に対抗しなければいけないからだ。」と弁解されていたのが印象に残ります。

◆手荷物検査を経て入場 G7で過剰警備常態化?

原爆ドームの脇を抜けると「自民解体」というプラカードを置いている男性がおられました。

そして、平和記念公園に入り、平和記念式典会場へ向かいました。

2019年以前、すなわちコロナ前に今年から規模を回復させた平和記念式典。しかし、安倍晋三さん暗殺事件、岸田総理暗殺未遂などが相次ぐ中で手荷物検査も行われるようになりました。なるべくなら、人々の不満が高まらないような適切な政治を心掛けていただきたいものですが、現実に襲撃事件が起きている状況があるのも事実です。

とはいえ、G7広島サミットを契機に過剰警備・過剰規制に慣らされてしまうのも怖いものがあります。また、警察車両はわかるのですが、なぜか消防車がたくさん止まっていました。まさか、爆弾テロによる火災にでも備えていたのでしょうか?

[左]「自民解体」というプラカード[中央]多数の消防車が並ぶ[右]「警備・手荷物検査にご協力ください」というプラカード

◆広島市長の平和宣言 核抑止否定は良いが「平和文化」とは?

黙とう後、今年で就任後13回目となる松井一実・広島市長が平和宣言を読み上げました。

松井市長の平和宣言は秋葉忠利前市長時代よりも長いのが特徴です。これは、東京から当初は落下傘的に戻ってこられた松井市長が、被爆者らから意見をつのり、その意見を盛り込むようにしたことがあります。松井市長は初期には311福島原発事故を受けて、エネルギー政策の転換を求めるなど、国に対してガツンと物申す面もありましたが、そういう面は最近、薄れています。

松井市長は、G7広島サミットでの広島ビジョンについて事実関係に触れたうえで、「しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか。」と核抑止論を批判。その上で平和文化の重要性を強調しました。

それはそれでいいのですが、松井市長と言えば、どうしても中央図書館をデパートの上層階に移す計画など、文化をあまり大事にしないイメージがあります。ご自身の市政の足元を見つめなおしていただきたいものです。

◆子どもたちの「平和への誓い」最も拍手大きく

子どもたちの平和への誓い。今年も小学六年生二人が読み上げました。すべてのあいさつの中で最も拍手が大きく、かつ長いのはこの「平和への誓い」です。河井事件や深刻な県内の産業廃棄物問題などを背景に他の挨拶している大人の政治家たちへの広島県民の根強い不信感をも感じました。

◆岸田総理、まったく内容が頭に入ってこない

岸田総理の挨拶。正直、全く内容が頭に入ってきませんでした。周りの人の中には総理の挨拶終了を待たずに立ち上がって帰られる方も数人いらっしゃいました。

筆者は筆者で岸田さんの顔を拝見してついうっかり、「勘弁してくださいよ、増税」と思わず言葉が出てしまいましたが、誰にも咎められませんでした。

◆広島県知事 総理を目の前に核抑止論を厳しく批判は良いが、「本業」を真面目に!

岸田総理を目の前に、「核抑止論者は核抑止論が破綻したとき、全人類の命、地球上のすべての命に対して責任を負えるのか」と問い、「核兵器は存在する限り、人類滅亡の可能性をはらんでいるのがまぎれもない現実。その可能性をゼロにするためには、廃絶しかないのが現実なのです」と強く訴えました。毎回の平和記念式典で核抑止論者は厳しく批判する湯崎知事。それはそれでいいのですが、今年に限っては、筆者は複雑な思いです。

特に三原・本郷町の産業廃棄物処理場問題では、知事が許可した処分場から汚染水が出ています。田んぼに水が引けずに困窮している県民がいますが、県は再稼働を容認し、困っている県民には何もしていません。そんなふうに湯崎知事が「本業」をおろそかにしていると、湯崎知事がおっしゃる正論まで、説得力を持たなくなってしまうのではないか、と懸念されます。

 

「反戦タイガース」を名乗る男性が、「六甲おろし」を「原発下ろし」に変えた替え歌を披露

◆中満国連事務次長 さすがの演説

中満泉・国連事務次長は、事務総長自ら出席された年を除き、ほぼ毎年、近年では平和記念式典に参加されます。核兵器禁止条約にも触れられ、100点満点の演説でした。国際公務員を目指される日本人の多くが実は女性。中満さんはそうした優秀な日本人女性の代表的な方でもあります。

ただ、一方で、日本という国があまりにも若い女性にとっては魅力に欠けるから、国際公務員を目指される方も多いということもあるかと思います。広島自体が若い女性を中心に人口流出が多い中で、筆者は複雑な思いで、中満さんによる演説を聞かせていただいています。

◆中国電力前で汚染水放出・核のゴミ持ち込み・岸田自称GXにNO

その後、筆者は、中国電力前で【8.6ヒロシマ平和へのつどい】主催の集会に合流しました。福島の汚染水海洋放出ノーの訴え。そして、上関に核のゴミ=死の灰の貯蔵施設をつくろうとする中国電力と関西電力の暴挙への怒りの声。そして、岸田政権の自称GXによる、老朽原発再稼働にNOの声。

この日は日曜日でしたが怒りの声が上がりました。そうした中で、「反戦タイガース」を名乗る男性が、「六甲おろし」を「原発下ろし」に変えた替え歌を披露し、一座を和ませました。

◆原爆小頭症をご存じですか?

午後は、8.6ヒロシマ平和の夕べに参加。平尾直政さんのご講演が最も印象に残りました。

平尾さんはきのこ会(原爆小頭症被爆者と家族の会)事務局長、でRCC社員を長年務め、現在は大学院生でもいらっしゃいます。

 

原爆小頭症とは?

原爆小頭症は胎児として近距離被爆した方で、被爆が原因で、知的障害やその他の症状が発生した方です。広島で48人、長崎で15人いらっしゃったそうです。意外に少ないと思われる方もおられるでしょうが、そもそも、近距離でお母さんが被爆した場合、即死してしまう場合が多いので、数としてはこれくらいだそうです。しかし、数が少ないがゆえに、実態が伝わらず、当事者や親御さんが苦しんでこられたのです。被爆二世と勘違いされることもあったそうです。

旧ABCC(現・放射線影響研究所)は、原爆小頭症の存在を把握していたが表沙汰にしてきませんでした。戦後二十年、救いの手が差し伸べられず、成育不良は栄養失調ということにされて原爆症に認定されない状態が続いてきたのです。

そして、1965年に親たちが集まり、きのこ会が発足しました。会の名前には親たちの強い思いがあったそうです。きのこ雲の下で生まれた小さな命だがきのこのように元気に育ってほしい。というものです。

会の目標は
1.原爆症認定。
2.終身補償
3.核兵器廃絶
で、1と2が一定程度実現した現在では、核兵器の廃絶が一番の目標です。

原爆小頭症会員は2023年7月末で11人おられます。(厚労省によると当事者は12人です。一人の未加入の方は個人情報保護法により会としてアクセスできない状況です)

きのこ会をジャーナリスト3人が支えたそうで、その一人は、昭和帝に『原爆についてどう思うか』聞いた中国新聞の秋信記者です。親たちは1966年、分裂した平和運動やマスコミの報道に傷ついていた中で、ジャーナリスト3人が窓口になり「盾」になったものです。

原爆小頭症児には地域の厳しい目が向けられてきました。幼女がいたずらをされそうになった事件があった際には、根拠のないうわさで犯人扱いさたそうです。また、善意で縁談を持ち込んだ人に対して、お断りしたところ、「お宅は贅沢言えないでしょう」と言われて傷つく、ということも起きています。

平尾さんは「原爆投下はアメリカがやった。しかし、原爆小頭症の子供と家族に「冷たいまなざし」を向けたのは悪気のない周囲の人たち-私達だ。」と指摘しました。

ヨシカズさんという男性のケースでは、50歳で人工透析により入院し、そのころ、母親も母親は脳梗塞に倒れ入院。母親の願いは息子と一緒に暮らすことでしたが、ヨシカズさんは1998年に死去。納骨を終えた日に母親も死去し、生前に夢はかないませんでした。

2013年67歳で亡くなった女性の場合、戦後すぐに、母親も兄も出て行ってしまい、家族がバラバラになりました。この女性は瀬戸内海の島で父親と二人くらしで、父親が亡くなってから家がゴミ屋敷状態になっていました。

兄が施設入居を薦めるも島の暮らしになれていたので結局、拒んだそうです。お父さんは生前、娘について「自分より早く死んでほしい。」とこぼしておられたそうです。それは娘の将来を心配してのことで重苦しさが伝わってきます。こういうことを繰り返させないためにも核兵器は廃絶しなければならない。それがきのこ会の今の目標だそうです。

最後に平尾さんは「ローソクはいつか燃え尽きるがほかのローソクに火を移せば燃え続ける。わたしはその別のローソクになりたい」と決意を表明し、大きな拍手を浴びました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

8.6を控えた広島にとんでもないニュースが飛び込んできました。

広島市中区に本店のある中国電力が8月1日、山口県上関町の原発予定地の敷地の一部に原発から出た『死の灰』(核のゴミ)の中間貯蔵施設を建設することが可能か、調査するということが各社により報道されました。そして、中国電力は2日に上関町役場を訪問し、関西電力と共同でこの中間貯蔵施設をつくるための調査開始を通告しました。


◎[参考動画]山口県上関町に使用済み核燃料中間貯蔵施設建設を提案 中国電力 会見(テレビ山口)

 

広島市中区の中国電力本店(筆者撮影)

◆上関原発建設は311と住民の力でストップ中

上関町には原発計画が持ち上がって40年余りです。中国電力は上関町の本土側南部の沿岸部を埋め立て、原発をつくる計画です。

しかし、上関町内でも祝島の漁民は反対派が圧倒的に多くなっています。この祝島島民の会を中心とする皆様の反対運動により、計画は進んでいません。また、町長選挙や町議選では賛成派 vs 反対派の得票の比率はほぼ3:2ですが、2003年の県議選で反対派の議員が当選したり、国政選挙でも原発反対を掲げた平岡秀夫さんが2023衆院補選で健闘したりするなどしています。

こうした中、東電福島原発事故があった2011年以降は埋め立て工事が中断しています。中国電力の原子炉設置許可申請に対して10年以上、原子力規制員会は審査会を開いていませんし、今後も開かれる予定がありません。最近では、中国電力側が『祝島島民の会』を訴えるいわゆるスラップ訴訟を提起するなどしています。中国電力側の焦りも垣間見えます。

そもそも、東京電力管内と違い、中国電力管内は、電力の需給には一定の余裕もあります。従って、新規原発建設自体には中国電力単体では大義名分は薄いのです。正直、島根原発すら不要です。

(※なお、筆者は、もちろん、東京電力管内でも例えばスマートグリッドの推進、蓄電技術の推進などで、原発がいらない状態を実現することは可能とみています。東電管内の電力需給のひっ迫は3.11以降12年間の日本政府の無策のつけです。)

◆岸田政権の自称GX法が引き金か?

こうした中で、原発ではなく、中間貯蔵施設の話が持ち上がりました。第一に、前述のとおり、上関原発をつくれる見込みがほぼまったくないからです。

その上で、第二に、安倍政権時になかった要素として以下のようなことも考えられます。すなわち岸田政権による自称GX法で島根原発由来の核のゴミが増える可能性です。いまのところ、中国電力に原発は島根原発しかありません。1号機は2015年4月30日に法的には廃炉(もちろん、現在も廃炉作業中)、2号機が再稼働へ知事のゴーサインも出て向けて準備中、3号機が建設中です。したがって、中間貯蔵施設には当面は島根原発の死の灰=核のゴミが運び込まれることになります。

岸田政権は、2023年の通常国会において、自称GX(グリーントランスフォーメーション)法を強行しました。気候変動対策と称して、実際には60年超の原発も運転可能にする、そのために公費を投入するというものです。これにより、島根原発の運転期間も延長する。そうなると、当然、死の灰・核のゴミも増えます。島根原発内の死の灰の中間貯蔵をしているプールも満杯になってしまう。だから、中国電力としては、原発建設に苦戦している上関に死の灰=核のゴミを押しつけてしまえ、ということなのでしょう。

また、共同で中間貯蔵施設計画を進めている関西電力は美浜原発など福井県に多数の原発を抱えています。したがって、岸田政権の政策転換でさらに死の灰=核のゴミは増え、にっちもさっちもいかなくなります。そこで、原発建設の見込みがなくなった上関に関西電力も目を付けた、ということでしょう。

第三に、過去の経緯から「上関町の原発推進派を納得させるため、ほぼ実現が不可能な上関原発にかわる「地域振興策」(という名のばらまき)の大義名分を中国電力としても得たい。そこで関西電力からも死の灰=核のゴミを受け入れる中間貯蔵施設が進められた」(上関町の事情に詳しい『原発はごめんだヒロシマ市民の会』の木原省治さんによる3日(木)の中国電力前での演説要旨)ということです。

◆最終処分も決まらぬ死の灰

しかし、そもそも、死の灰=核のゴミの最終処分自体が決まっていません。日本は活断層もたくさんあります。正直、安全な場所などどこにもない。そもそも、死の灰=核のゴミが安全なレベルに放射線の発生が提言する何十万年か後に日本政府というものが存在するか、否、人類そのものが今の形で存在するかどうかも怪しいでしょう。

日本政府はいわゆる核燃サイクルを試みてきました。すなわち、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、それをウランと混ぜてMOX燃料として再利用する計画です。だが、フランスに頼んで作ってもらったMOX燃料は、ウラン燃料と比べてもはるかに高価です。日本が独自に青森県六ヶ所村に建設中の再処理施設もいまだ稼働していません。あまりにも高コストなのです。結局、六ケ所村に半永久的に死の灰・核のゴミが山積みになりかねない。それを避けるには、各地に中間処理施設をつくる必要がある、というのがいわゆる原子力村側の言い分です。

しかし、最終処分が決まらない以上、各地に分散したところで、そこが中途半端な形で半永久的な処分場になりかねない。これはこれで危険すぎます。正直、死の灰・核のゴミは発生した場所で、国が責任をもって最終的に保管するのが現時点では最もリスクが低いのではないでしょうか。国が国策で推進しておきながら、電力会社に席に責任を押し付けるのはいかがなものかと思います。

◆『山口に核のゴミ』=旧民主党がブラックジョーク的に提言も真面目な議論はなし

山口県内では、死の灰・核のゴミの中間貯蔵については真面目な議論はなんらされていません。ただし、2014年2月の旧民主党(現・立憲民主党)の党大会で、核のゴミの最終処分場は安倍総理(当時の地元)である山口県にすればいいという趣旨の提言を決めました。しかし、世論の批判により撤回しました。あくまで、当時、絶頂期にあった安倍晋三さんへの当てつけとして、守勢に立たされていた野党によるブラックジョークの域は出ていません。

◆中電・関電に上関中間貯蔵施設NO、地元選出の総理に自称GX法撤回の声を!

 

左が中国電力の吉岡様、右が上関原発止めよう広島ネットワークの溝田さん。奥がマスコミ陣。筆者撮影

山口県はたしかに安倍晋三さんを輩出しましたが、しかし、核のゴミをさらに増やすような自称GXを決めたのは広島の岸田さんです。今回は、広島が山口にご迷惑をおかけしています。この8月6日へ向けた広島に住むものとして、すべきことは中国電力に対しては中間貯蔵施設を上関につくるなどと言う暴挙は止めること、上関原発絡みでのスラップ訴訟は止めること、そして島根原発の再稼働を止めることを求めていくことです。そして、平和記念式典にも出席される岸田総理に対してはガツンと自称GX撤回を求めることです。

8月3日には『上関原発止めよう広島ネットワーク』が中国電力に申し入れを行いました。

また8月6日には市民団体が毎年恒例ですが中国電力前へデモを行います。筆者も、最大限、こうした動きに連帯・参加していきます。

それとともに、原発は電力会社任せではなく国が国有化で責任をもって廃止すべきこと、また、早急に送電網の公営化とスマートグリッド、蓄電技術の普及に国が責任をもって投資し、原発が不要な状態を東電管内の真冬や真夏の繁忙期でも実現することを改めて主張します。

被爆地・広島の周辺の瀬戸内地方が、何度もご報告しているように産業廃棄物のゴミ箱になろうとしている上に、今度は死の灰=核のゴミのゴミ箱になろうとしている2023年の8.6。筆者も含めて正念場です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)


〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2023年夏号
NO NUKES voice改題 通巻36号 紙の爆弾 2023年7月増刊

《グラビア》原発建設を止め続けてきた山口県・上関の41年(写真=木原省治
      大阪から高浜原発まで歩く13日間230Kmリレーデモ(写真=須藤光男

野田正彰(精神病理学者)
《コラム》原子炉との深夜の対話

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《コラム》核のゴミを過疎地に押し付ける心の貧しさ

樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》司法の危機 南海トラフ地震181ガル問題の重要性
《インタビュー》最高裁がやっていることは「憲法違反」だ 元裁判官樋口氏の静かな怒り

菅 直人(元内閣総理大臣)
《アピール》GX法に断固反対を表明した菅直人元首相の反対討論全文

鮫島 浩(ジャーナリスト)
《講演》マイノリティたちの多数派をつくる
 原発事故の被害者たちが孤立しないために

コリン・コバヤシ(ジャーナリスト)
《講演》福島12年後 ── 原発大回帰に抗して【前編】
 アトミック・マフィアと原子力ムラ

下本節子(「ビキニ被ばく訴訟」原告団長)
《報告》魚は調べたけれど、自分は調べられなかった
 一九五四年の「ビキニ水爆被ばく」を私たちが提訴した理由

木原省治(上関原発反対運動)
《報告》唯一の「新設」計画地、上関原発建設反対運動の41年

伊藤延由(飯舘村「いいたてふぁーむ」元管理人)
《報告》飯舘村のセシウム汚染を測り続けて
 300年の歳月を要する復興とは?

山崎隆敏(元越前市議)
《報告》原発GX法と福井の原発
 稲田朋美議員らを当選させた原発立地県の責任

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山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点

原田弘三(翻訳者)
《報告》「気候危機」論についての一考察

井筒和幸(映画監督)×板坂 剛(作家)
《対談》戦後日本の大衆心理【後編】

細谷修平(美術・メディア研究者)
《映画評》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈3〉
 わすれてはならない技術者とその思想 ──『Winny』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、僕らが思案していること

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
《報告》亡国三題噺
 ~近頃“邪班(ジャパン)”に逸(はや)るもの
  三重水素、原発企業犯罪、それから人工痴能~

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
《報告》山田悦子の語る世界〈20〉
 グローバリズムとインターナショナリズムの考察

再稼働阻止全国ネットワーク
原発の全力推進・再稼働に怒る全国の行動!
福島、茨城、東京、浜岡、志賀、関西、九州、全国各地から

《福島》古川好子(原発事故避難者)
福島県富岡町広報紙、福島第一廃炉情報誌、共に現地の危険性が過小に伝えられ……
事故の検証と今後の日本の方向を望んでいるのは被害者で避難者です!
《東電汚染水》佐内 朱(たんぽぽ舎ボランティア)
電力需給予備率見通し3.0%は間違い! 経産省と東電は石油火力電力七・六%分を隠している! 汚染水の海洋放出すべきでない! ── 4・5東電本店合同抗議に参加して
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
運動も常に情報を受信してすぐに発信することが大事
4月5日定例の日本原電本店行動のできごと
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
中電が越えなければならない「適合性審査」と「行政指導」
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」事務局)
団結小屋からメッセージ付き風船を10年余飛ばし続けて
《高浜原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「関電本店~高浜原発230kmリレーデモ」に延べ900人、
「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」に320人が結集
《川内原発》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会)
「川内原発1・2号機の九電による特別点検を検証した分科会」まるで九州電力が書いた報告書のよう
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
原発延命策を強硬する山中原子力規制委員会委員長・片山規制庁長官
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『3・11 大津波の対策を邪魔した男たち』(島崎邦彦・青志社)

反原発川柳(乱鬼龍選)

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食料危機と言えば、つい最近までは、戦前の「娘身売り」とか、戦中~戦後すぐの戦況悪化・敗戦に伴うもの、くらいのイメージを持たれていた方も多いのではないでしょうか?

筆者の父親(広島県福山市生まれ)はぎりぎり戦前(対米英戦争開戦前)生まれで、小学生時代くらいまで、結構厳しかったようなことは聞いています。母親(福島県出身)は団塊の世代末期で、そこまで厳しい状況は聞いていませんが、同級生の中にそれなりの割合で厳しい暮らしの家庭もあったと聞いています。

ただ、今の60歳以下の人の圧倒的多数はそうはいっても、日本が栄えていた時代しか経験していないわけです。

食うに困ると言っても、例えばシングルマザーのご家庭、またお父さんの会社がつぶれたとか、「運が悪い人」に限定されていたイメージがあります。いわゆる企業内福祉の恩恵が健在でした。もちろん、当時の仕組みと表裏一体の男尊女卑、性別役割分業固定化の問題は現在にも悪影響を及ぼしており、もちろん決して軽視できませんが、そのころはそれでも「一億総中流」と言われたことをご記憶の方も多いでしょう。

◆1990年代後半から貧困進むもまだ物価低く

雲行きが怪しくなったのは、1990年代半ばくらいからです。まず、1994年頃から女子から就職難に直面したのを筆者も記憶しています。東大さえも、女子の先輩が就職に苦戦する状況を目の当たりにし筆者は「このままでは21世紀には大変なことになる。」と直感したのを記憶しています。

就職氷河期世代が社会人になった1990年代後半、さらには小泉純一郎さんや当時の広島県知事が正規労働者を公務・民間問わず減らしまくった2000年代になると、非正規で生活が苦しいという人たちが筆者の同世代でも多くあらわれるようになりました。それでも、00年代は、物価が非常に安かった上、親がまだそれなりに豊かな人も多く、親に援助してもらいながら、低価格の食料品・消耗品で食いつなぐ、という人も結構おられました。しかし、そうした縁を持たない人の中から「おにぎりが食べたい」と餓死した男性など、貧困問題が深刻化していました。

民主党政権は、貧困の広がりに危機感を持った多くの有権者に支えられ、2007年参院選、2009年衆院選と圧勝し、政権交代を実現しました。ところが、ご承知の通り、すぐに失望を招き、安倍晋三さんに政権を奪還されてしまいます。安倍時代、金融緩和は行われたものの、非正規労働者ばかりを増やす流れにはストップがかからず、また人々の懐を潤す形での財政出動もなかった(ロシアやアメリカ、お友達にはばらまいたが)ため、多くの労働者の賃金は改善しませんでした。

◆低賃金と物価高の併存で危機が一挙に中間層まで

そうこうするうちに、日本経済は、国際的な比較で地盤沈下が進行。このことを背景に円安が進み(短期的には金利差が理由ですが、中長期には日本の地盤沈下が円安を固定化)し、ロシアのウクライナ侵攻も背景に物価上昇は留まるところを知らないのはご承知の通りです。

また、1980年代後半から1990年代前半の円高を背景に「日本は、食料は海外から買えばいい」という甘い考えが広がっていました。食料安全保障が全く顧みられてきませんでした。歴代政権の緊縮財政もその傾向に拍車をかけました。このため、輸入食料価格が上昇したからといって、国内供給がすぐには増えない状況に現在あります。

そして、コロナ禍による多くの御家庭での減収がこの3年ほど深刻になりました。その後も、いわゆる中間層のご家庭でも、収入が伸びていません。正社員でも物価高で実質的な可処分所得が減少する。住宅ローンはそうはいっても固定で払わないといけない。そういう中で、子どもの食事にしわ寄せが行く状況が生じています。

広島市はまだですが、全国の各自治体では給食の無料化がようやく進みつつあります。しかし、夏休みは給食がありません。そこで、子どもたちにとっての食料危機が深刻化しています。もちろん、自治体によっては、学童保育でも宅配弁当を活用するなどして、昼食を提供する動きも出ています。ただし、広島市はまだです。

◆子ども食堂がいよいよ地元でもスタート

1960年代以降ではおそらく最悪ともいえる状況の中、広島市・安佐南区祇園でも「子ども食堂」が7月2日、いよいよスタートしました。

子ども食堂は、2012年頃から広がり始めました。現在では、子どもはもちろん、大人も含む地域の住民に栄養バランスの取れた食事はもちろん、居場所を提供するものとして、いまや全国に広がっています。2022年秋現在で、7731か所あるとされています。

今回スタートしたのは「子ども食堂 キッズ☆庵」。

「シェアリンク広島」が協力し、鉄板焼き居酒屋・じゅげむ(広島市安佐南区祇園2-2-2)で行われました。

シェアリンク広島 https://sites.google.com/view/share-link

次回は8月5日(土)12時~14時ですが、以降は第一日曜日の12時に開催される予定です。連絡先はシェアリンク広島代表の井原さん(080-4553-4454)。

メニューはお好み焼きです。料金は小学生100円、中・高校生 200円、大人 300円です。

また、シェアリンク広島が毎月第四日曜日に西区大芝集会所で行っている物資提供会とも共通した取り組みも行っています。具体的には、パンやお好み焼きソース、もみじ饅頭の配布なども行っています。子ども向けのゲームコーナーやカラオケ、生活お困り相談コーナーも開設しました。

この日は、シェアリンク広島だけでなく、「じゅげむ」の普段からのお客様もボランティアとして参加されました。正直、宣伝が十分はできていませんでした。それでも、大人も含めて10人以上の方が2時間余りの開催時間中にお見えになりました。カラオケのマイクを握って楽しんでおられるお子さんもおられました。生活お困り相談については本社社主・さとうしゅういちが担当させていただきました。

コロナで閉じこもりがちになった高齢者のことなど、ご相談をいただきました。一人で抱え込まずに、ご相談いただければ、少しでも考えるヒントはご提供できるかもしれません。お気軽にご相談ください。

「じゅげむ」店主の池脇律子さんは「今後、課題も多くある中、ゆっくりとしたペースで、少しでも多くの子供さんを始め、皆さんにお集まり頂ける場としての「きっず庵」を目指して頑張ります」と意気込みを語っておられました。ただし、8月は5日(土)に開催します。


子ども食堂 きっず☆庵
8月5日(土) 12時~14時
場所 鉄板居酒屋 じゅげむ
広島市安佐南区祇園2-2-2(古市橋駅から南へ徒歩5分)
メニュー ミニお好み焼き弁当
小学生 100円 中高校生 200円 大人 300円

駐車場はないので、クルマでご来場の場合はコインパーキングなどをご利用ください。
この他、カラオケ、お困りごと相談があります。お気軽にお立ち寄りください。

また、広島市北部ではフードバンクあいあいねっと様が、食料配布を月二回程度行っております。
こちらでも食料配布と同時にお困りごと相談などをされています。
https://aiainet.org/

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年8月号

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

袴田事件では、被告人側にとって非常に厳しい再審請求が認められたにも関わらず、検察がまだ有罪立証に固執し、世論の批判を浴びています。

※[参考]再審-冤罪袴田事件-検察は有罪立証せずに速やかな無罪判決のために審理に協力してください

そうした中、その検察が広島を揺るがしたあの河井事件でも暴走していることが明らかになりました。

参院選広島2019で、あの河井案里さん(2021年に当選無効が確定)陣営が多数の地方議員や首長などにお金をばらまいた河井事件。案里さんと夫の克行被告は逮捕・起訴されそれぞれ有罪が確定。他方でお金をもらった方々はいったん不起訴となりました。

しかし、これに疑問を持った市民が検察審査会に審査を申し立て、その結果、2022年1月28日、35人が起訴相当になりました。これを受けて東京地検特捜部は再捜査を開始し、県議や市議ら多数が起訴されました。体調不良の一人を除く25人の方は検察の言い分を認めて略式起訴を受け入れました。

一方で渡辺典子県議(安佐北区)、佐藤一直前県議(中区、県議選2023を前に引退)、石橋竜史市議(安佐南区)、木戸経康前市議(安佐北区、引退)ら9人が正式裁判で徹底抗戦を選ばれた政治家もおられます。

こうした中、木戸前市議の弁護人が供述を誘導するような尋問があったと暴露し、音声データもある、としました。そこで、木戸前議員は、自分が話した内容と供述調書が違うことに不信感を抱き、任意の事情聴取の録音をするようになったそうです。2020年4月、まだ河井案里・克行両被疑者が逮捕されていない段階で、検察は木戸前議員からも任意で事情聴取。検事は「先生には議員を続けてほしい」「認めれば不起訴」など、事実上の司法取引をもちかけるような内容の尋問を行いました。そして、木戸前議員がお金をもらった時に(買収資金かどうか)「考える暇もなかった」と回答した際に、これを調書には載せませんでした。その上で、事情聴取の一部だけをカメラで撮影。検事「調書にある通りですね」木戸前議員「はい」など、検事に都合がいい場面だけが撮影されました。

そして、皆様もご存じの通り、この事件では当初は河井案里・克行両被疑者と両人の一部秘書(車上運動員への買収事件などに関して)だけが当時は逮捕・起訴されていました。

ところが、当然、「買収を認めた方が捕まらないのはおかしいじゃないか?!」という県民の声が巻き起こり、再捜査、そして、木戸前議員ら起訴、ということになりました。

◆有罪判決が相次ぐ中で問われる検察側の主張の正当性

検察側の誘導疑惑については、7月21日、まず読売新聞がスクープ。その後、地元の中国新聞や他紙やNHKも追随報道という形になりました。前日20日には、河井克行被告からお金をもらった買収の罪で渡辺県議に有罪判決、さらにスクープが出た21日には石橋市議に有罪判決が出るという状況の中で、検察側の主張の正当性が問われます。

そもそも、まず、公選法違反事件では司法取引は認められていません。ですから司法取引を持ち掛けること自体が違法な操作です。そして、日本国憲法38条にある通り、自白は唯一の証拠足りえません。その上で、「認めれば不起訴」というのは裏を返せば「認めなければ起訴」という脅迫とも言えます。従って、検事が行った誘導尋問への木戸前議員らの供述は証拠とはなりえません。

日本国憲法第三十八条

何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

なお、現在、係争中の方々の中で、石橋市議に対しては誘導尋問がなかったと石橋市議本人が認めています。石橋市議は、克行受刑者が持参したお金は買収資金ではなかったと、一貫して主張しています。そして、広島地裁による有罪判決に対して石橋市議は全く納得していません。

そして、石橋市議以外の他の議員・前議員は、誘導尋問があったとしています。

◆政治資金収支報告書にお金を記載させなかったのは検察だった!

この事件では多くの議員が河井陣営からのお金の流れを政治資金収支報告書に記載しませんでした。このことを、検察は、「買収」と認識していたから、としています。しかし、政治献金を政治資金収支報告書に記載しなかったのはあくまで政治資金規正法違反です。また、贈与を雑所得として申告しなかったのであれば、所得税法違反であり、どちらにせよ、公職選挙法とは直接は関係ありません。

正式裁判で争っている一人の佐藤一直前県議(以下、時々地元の有権者がされている同姓の筆者との混同を避けるため、一直さんとします。)。2007年に初当選。ずっと政党の推薦なしの無所属を貫いてこられました。4期つとめました。県議選2023を前に引退しています。一直さん本人によると、別に河井事件があったから引退したわけではありません。湯崎知事や平川教育長など執行部に対して厳しい姿勢で臨まれる、広島県議会では貴重な存在でした。選挙の手法は、後援会組織などには頼らず、政党からお金ももらわず、政策・政治姿勢本位のもので、この点は、見上げたものだと感じていました。また、伝統的にアンチ知事でもあった案里さんとの関係は良好で、別に克行受刑者がお金を渡さなくても、案里さんを支援した、と筆者は感じています。

そして、一直さんは7月12日に意見陳述書を提出しています。

検察側は、一直さんの公判でも政治資金収支報告書に克行受刑者からもらったお金を記載しなかったことを「買収資金だったと認識していた」根拠としています。ところが、そもそも、収支報告書に記載するな、と言ったのはなんと検察だったそうです。

「先程から検察が主張する「収支報告書を提出していない」ことですが、取り調べの時から、収支報告書をその後に提出することを我々議員は、検察に頑なに止められていましたが、それを理由に買収だと主張するからだと、今わかりました。」と一直さんは陳述書で語っています。

政治資金収支報告書に受け取ったお金を記載して提出するのを押さえておいて、あとで「お前、提出していないから被買収の認識があったのだろう」と追及する検察。こんなことを許せば恐ろしいことになります。

◆国会議員が地方議員に金を渡すことを禁じる立法を

議員たちが克行受刑者らからお金をもらったこと自体は決して褒められた話ではありません。政治倫理上、「李下に冠を正さず」だからです。また、地方議会は住民の立場に立ってガツンと国にも物申すべき場合があるからです。例えば、日本政府は核兵器禁止条約そのものに反対ですが、広島市議会では全会一致で核兵器禁止条約に入るよう、政府に求めています。地方議員が国会議員にお金をもらってしまえば、その舌鋒が緩む恐れがあります。

一方で、現行法では国会議員が地方議員に政治献金をすること自体は禁止されていません。多くの方が勘違いされていますし、マスコミ報道でもお金をもらった=即犯罪=という風潮があります。これは事実誤認です。筆者は、国会議員が選挙区内の地方議員に金を渡すこと自体を禁じる法律をつくるべき、と考えています。

今回の河井事件のような公選法上、疑惑を招くようなケースを予防するとともに、国会議員による地方議員への支配を防ぐためでもあります。それに先駆けて、広島県議会がそういう条例をつくるべき、と考えています。

ちなみに、前出の佐藤一直さんも、国会議員が地方議員にお金を配ることを禁止する法律をつくるべき、というスタンスです。

「やはり多くの方々が勘違いされている原因としては、お金のやり取りが許されていいはずがないと思っているから、マスコミもそう思っているからだと思います。だからこそ、私は個人的に誰からも受け取らないスタンスでやっていましたし、一般の人に渡したらいけないのと同様に、政治家同士でも禁止にする法律を作るべきだと思っています。」

◆改めて日本の検察・司法改革へ本腰を

袴田事件をはじめ、日本の検察による冤罪事件は後を絶ちません。多くの人は、そのたびに「検察は怪しからん」とは言う。だけれども、この問題を自分事としてとらえる人は存外少ないのではないでしょうか。

前出の佐藤一直さんも「そんな検察の、「監禁のような取り調べ」や、「司法取引のような自白強要」など、日本の検察の問題点も、この立場になって初めて気付くことができました。」と陳述書で述べておられます。それも致し方ないことです。

取り調べの際、諸外国のような弁護士同席を認めるなど、制度の改善を筆者も改めて強く要求するものです。

また、検察が起訴してしまえば、ほとんどが有罪となってしまう日本の司法の在り方。さらに、起訴されたらいかにも罪人のように報道してしまうマスコミ。そうしたことが繰り返されぬよう、司法へのチェックという目線をマスコミにも改めて強くお願いするものです。

筆者は、現在正式裁判で争っておられる皆様とは、政策や政治姿勢が異なる場合も多い。しかし、検察の強引な捜査は認められません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年8月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

ブラジルのルーラ大統領が、先般のG7広島サミット(5月19日~21日)にいわゆるグローバルサウスの代表として出席しました。

同大統領は「核兵器の非人道的な結果はあまりにも深刻で、 核抑止 に伴うリスクは大きすぎる」と核兵器禁止条約を批准する意向も示しました。世界でも11位とも言われる経済大国でかつて核開発をしたこともある国のトップが核兵器禁止条約を批准すると言ったことは、G7広島サミットにおける唯一といっていいほどの政治的な目に見える成果ではないでしょうか?

ルーラ大統領の出身政党は「労働者党」です。ルーラ大統領は2022年に行われた大統領選挙でボルソナロ大統領から政権を奪還しました。現在、実質最低賃金の引き上げ、児童手当の給付などに尽力しています。

いま、日本において、一番必要とされるのは、名実ともに「労働者党」のような政治勢力ではないでしょうか?

◆非正規労働者4割、奨学金地獄 ──「労働者虐待」政治

日本のこの20~30年はまさに「労働者虐待」政治でした。ご承知の通り、この20~30年、日本の労働者の給料は全くと言って良いほど上がっていませんでした。ここ1、2年、名目での給料はアップされたが、物価上昇に追いついていません。非正規労働者も全体の4割を占めています。民間だけでなく、公務員でも同様の割合で非正規労働者が多くおられます。地方自治体でいえば62万人に達します。

そして、若手労働者の多くが奨学金という名の借金を抱えて苦しんでおられます。こういう状況では、結婚どころではないという人も多い。低賃金や悪い労働条件を放置する、すなわち労働者虐待を続けたことで、労働者の生活困難が生じるのは憲法25条にも反することです。そして、それ以外の弊害も出ています。

◆広島、日本から人口流出

一つは、広島、日本からの人口流出です。例えば、筆者が勤務する介護現場でも、外国人労働者が広島から東京へ流出する現象があります。さらに、最近では日本からカナダやオーストラリアへ日本人が流出する流れも起きています。

人々の暮らしを支える分野から労働者がいなくなるという恐ろしい状況です。下手をすれば、この広島だってゴーストタウンになってしまうのではないか?そういう恐怖心さえ覚えます。

◆介護・保育 ── 「やりがい搾取」でついに「土俵を割って」しまった労働者たち

もう一つはサービスの質の低下です。少し前までは介護や保育など、悪い労働条件でも仕事の「やりがい」から我慢してきた労働者が多かったのです。ところが、最近では、あまりの悪すぎる労働条件にバカバカしくなって手を抜くような現象も、筆者自身が見聞きすることもあります。

筆者自身も前日の夜勤者が利用者様の便失禁を放置しているのに遭遇することがありました。背中まで広がりまるで化石のようにガチガチに固まった便を風呂場でいわば「削り落とす」のに苦労することも一回や二回ではありませんでした。

また、寝返りを打てない利用者様については、きちんと体位交換(スタッフが介助しての寝返り)を2時間くらい置きにしないといけません。それもしていないために、尻や大腿部に褥瘡、すなわち、皮膚に黒い大穴が空き、そのことを背景に入院に至ったケースもあります。これらは不適切介護です。

ただ、傍から拝見していると、最低賃金ギリギリと言うあまりに安い給料で、しかもそれに見合わないきつさのために、これまで我慢していた労働者が「土俵を割ってしまった」感じを受けました。

保育現場では「これまで評判が悪くなかった」保育士が虐待や不適切保育をしてしまうケースも良く報道されています。介護現場からの類推にはなりますが、「ああ、土俵を割ってしまったのだろうなあ」と思いました。

労働者にきちんと対価を払い、適切な人員を確保しないと、「土俵を割る」労働者が続出し、お年寄りや子どもが大変な目にあいます。一方で、労働者もきちんと仕事をするという構図をつくっていく必要があります。  

◆公務 ── 非正規に高度な業務も限界に

自治体は、いまや、会計年度任用職員など、非正規公務員に高度な仕事をさせています。いや、専門性の高い仕事ほど、逆に非正規が多いとさえ感じます。

国家公務員でも、厚生労働省関係は、ハローワークを先頭に特に人々の深刻な悩みに応えないといけない部署がおおくあります。しかし、厚生労働省こそ一番のブラック企業ではないか?と思えるほど、非正規職員が多くおられます。

しかし、それでは、応募する人がだんだん少なくなります。そして、住民・国民サービスの低下につながります。

国も自治体も「これからは少子化で人口が減るから」という理由で公務員を減らしてきました。だが、実際には子育て支援や、格差拡大も背景にした人々の悩みの増大で行政需要は増えています。そこで、非正規公務員を増やしてしのいできました。それも限界に来ています。

◆現役労働者の賃金低迷が年金受給者や地域の飲食店も直撃

さらに、現役労働者の賃金低迷は、年金受給者もマクロスライドによる年金引き下げという形で直撃しています。

また、労働者の懐が厳しいことを背景に、飲食店も厳しくなっています。そこへコロナが直撃したというのが2020年~22年の状況でした。

あるいは、ちょっとした余裕が地域の労働者からなくなっているために、いわゆるニッチ(隙間)産業への需要が低下しています。

◆労働者に余裕ないため子育て支援も焼け石に水

例えば、いわゆる子育て支援施策が、人間関係の悪い職場では、子どもがいる人と子どもがいない、あるいは、子育てが終わった人の間での対立につながっています。しかし、人間関係の悪いことも、賃金・労働条件が悪いことに起因しています。

そもそも、若手労働者の多くが奨学金という名の借金に苦しんでいるのだから、多少の子育て支援など焼け石に水です。

◆「労働者に打撃」与える政策ばかりの総理

こんな中、岸田総理は、「異次元の少子化対策」の財源として社会保険料アップを打ち出しています。しかし、この保険料アップは給料アップを阻害します。若手労働者にとり、打撃でしかありません。

さらに児童手当の為に扶養控除を廃止する方向です。これによって所得税が大幅増税になる労働者が出ます。正直、総理はどこを見ているのか?

このように、今の政治は、現役労働者を全くと言って良いほど政治で顧みていません。政治の力でなんとかできるはずの公務分野でも政府与党と親しい一部大手企業による中抜きばかりで、実際に仕事をしている労働者や中小企業にお金が回っていません。

介護や保育労働者の給料についても、総理は2022年度こそアップしてくれましたが、雀の涙です。そして、2023年度は激しい物価高騰にも関わらず、何もしていません。それどころか、軍事費増加の為に社会保障費のカットをしようとしています。

◆マスコミにも変化

しかし、マスコミにも変化が表れています。5月24日には、NHK総合テレビの朝番組「あさイチ」が会計年度任用職員含む非正規労働者の問題を取り上げました

筆者がかつて所属した「自治労」や現在幹部を拝命しております「自治労連」なども「相談先」として紹介されました。労働組合の意義についても紹介されるようになったことは歓迎すべき変化です。これまでは、「維新」を筆頭に公務員、労働者をぶっ叩くような人たちがマスコミ、特に在版マスコミで持ち上げられてきたことを考えれば雲泥の差です。

今後は、例えば日本の公務員労働者が労働基本権を制限されていること。そのことは、いわゆる先進国を含めて多くの諸外国と比べても異例であること。こうしたことも取り上げていただきたいものです。

 

5月14日、原爆ドーム前で行われたG7サミットに反対する市民集会に参加した筆者

◆あとは「政治」だ!

マスコミが変わりつつある今、課題はやはりなんといっても、政治が変わるかどうかです。公務員の非正規化を進めてきた与党の自民、公明はもちろん、公務員バッシングで票を稼いできた維新は大問題です。しかし、いわゆる既存野党のみなさんも、サービス増強には熱心でもそれを提供する労働者の労働条件についてはあまり関心を払っていなかったように思えます。また、いわゆる野党共闘を背景に日本共産党さんあたりでも、以前のような鋭さがなく寂しいものがあります。

さらに、連合の芳野会長が権力者に阿るばかりの姿勢を見せているため、労働組合全体の印象も悪くなってしまった面もあります。そのことが、また、野党もそれを避けて、労働条件よりもそれ以外のいわゆるポリコレ案件に注力してしまう面もあるのだろうと推測されます。

また、広島の場合は、平和運動は得意でも、労働運動が弱め、という傾向はありました。しかし、戦前に人々の暮らしが厳しくなる中で、満州事変や日中戦争、第二次世界大戦を歓迎してしまった流れがあったことを想起しようではありませんか。

まず、これまでの「労働者虐待」政治をストップし、現役労働者の労働条件を改善し、人々の暮らしを守っていくことが大事です。そしてそういう方向の政治家・政治勢力を伸ばしていく必要がある。特に若者労働者の流出を中心に人口流出が止まらぬ広島において、それは大事ではないでしょうか?

筆者は、その先頭に立ち続ける覚悟です。

もちろん、これまでも、筆者も微力ながら、非正規労働者の皆様の裁判闘争の支援や労働相談にも取り組んで参りました。それと並行して、政治活動も車の両輪で進めていきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

既報の通り、2023年7月4日、広島地裁の吉岡茂之裁判長は、広島県の湯崎英彦知事に対して、三原市本郷町にJAB協同組合が設置した「安定型」産廃処分場の許可を取り消すよう命じました。吉岡裁判長は、産廃処分場の事前審査のプロセスで法律に基づいて調査すべき井戸や川の農業用水取水口を調査しないなど、知事が許可を判断するプロセスに「看過しがたい過誤・欠落」があると断罪。湯崎知事に産廃処分場の許可を取り消すよう命令しました。

◆コンプライアンス意識麻痺「重症」の湯崎知事

しかし、湯崎知事は14日、控訴しました。「法令に則り適正に審査したものと考えており、容認しがたい」という紋切り型の理由です。他方で湯崎知事は「地域住民の皆様の生活環境への影響に対する懸念は重く受け止めており、引き続き、廃棄物処理法に基づき最終処分場への監視指導を徹底してまいります」とコメントしました。

だが、そもそも、事業者が出してきたいい加減な井戸や農業用水の調査をうのみにするという違法行為があったわけです。そのことの認識が知事にも担当課の幹部職員にもないのであればコンプライアンス意識麻痺の「重症」です。そうでなければ県民をなめ切っています。ひょっとすると、その両方なのかもしれません。

◆いい加減な業者、「是正」に手間取るうちに汚染は広がる!

既報の通り、この産廃処分場は、2018年に計画が持ち上がりました。予定地が三原市民の8割の水源地のど真ん中であることから、住民や地元の三原・竹原の市議会も反対。しかし、広島県は2020年4月に処分場の設置を許可してしまいました。

そこで7月に住民が県を相手取って産廃処分場許可取り消しを求める行政裁判を起こしました。また同時にJAB協同組合に対しては産廃搬入停止の仮処分申請を行いました。しかし、いったん認められた仮処分申請が、2022年6月にひっくり返されてしまい、9月に処分場の操業がスタート。2023年6月、ついに処分場から汚染水が流出してしまいました。

6月29日には汚染水が県の調査でも国の基準値を超えていることが確定。県東部厚生環境事務所から操業を止めるよう指導を受けましたが、7月8日にも産廃を運び込んでいます。

JAB協同組合が安佐南区上安で既に運営している処分場(2016年、2020年に広島市が拡張許可、2021年に外資系企業に所有権は売却)では、「熱海」(熱海市伊豆山土石流災害。2021年7月3日発生。死者28人、建物被害136棟、避難者約580人)の3倍の不適切な盛り土が真下にあることが発覚。広島市が安全対策のために公費支出を強いられています。

 

知事の控訴後、新たな個所からも汚染水が検出された(原告共同代表、岡田和樹様のSNSより)

上記のようないい加減な業者にそもそも「是正」が通じるのでしょうか?「是正」できないでいる間にも、待ったなしで汚染は広がります。現に原告住民の調べでも、知事の控訴後にも新たな個所から汚染水が検出されています。

こういう問題は解決着手に遅れれば遅れるほど、問題は深刻化します。香川県の豊島事件が一番の教訓です。1978年に産業廃棄物処分場の事業許可が出てから無茶苦茶な産廃の持ち込みが続きました。1990年にようやく警察が動きますが、産廃そのものは放置。その後2000年に公害調停という形で一応の決着をみましたが、それから23年たった今も汚染は残っているそうです。ぬるいことを行政が言っている間に、処理コストは膨らむのです。

本郷産廃処分場問題はまだ稼働がはじまったばかりです。豊島のようになる前に、許可を取り消すべきでしょう。

◆三原市議会が許可取り消しを求める意見書を全会一致で可決

こうした中、知事への「包囲網」も着々とせばまっています。湯崎知事が本郷産廃処分場の許可取り消しを命令した広島地裁判決を控訴した同じ7月14日(金)、産廃処分場の地元の三原市議会は全会一致(23対0)で県に対して、産廃処分場の許可取り消しを求める「水源の保全に関する意見書」を可決しました。

三原市議会は、県が許可を出す前に、全会一致で産廃処分場反対決議を出しています。三原市民の8割の水源のど真ん中の処分場ですから、当然です。しかし、一般的に日本人は「お上」が決めた既成事実に弱いとされています。そうした常識を三原市議会は打破しました。

この画期的な決議の背景には原告・住民が7月4日(火)の判決後に間髪入れずに三原市議会や市長を含め、関係各方面に働きかけたことがあります。

市議会が市民に寄りそう中で、県民をなめ切って、相変わらず産廃業者に阿る湯崎知事。しかし、知事に対する包囲網は着々と狭まっています。

また、原告団は、控訴から週が明けた18日(火)、早速、広島県廃棄物対策課に抗議しています。改めて、産廃処分場の許可を取り消すとともに、「産廃処分場の土地を県が買い上げ」、県が水源の保全に責任を持つことを求めました。

◆「鞆の浦埋め立て架橋」撤回の湯崎知事に戻れぬなら退場あるのみ

湯崎知事は、2009年の就任直後に、長年懸案となっていた福山市の名勝・鞆の浦の埋め立て架橋問題で賛成派と反対派の間に入って対話を開始。結局、埋め立てではなく、山側トンネルで通過交通を捌くというところを落としどころに、鞆の浦の景観を守りました。あのときの湯崎さんに戻ってほしい。筆者もそういうふうにしてくれると湯崎さんに期待したから最初の選挙では湯崎英彦の名前を投票用紙に書いたのです。

むろん、あのときは、前任者のエラーの是正だったからやりやすいのでしょう。今回の産廃処分場問題は、湯崎知事自身のエラーです。表面的には産廃担当職員のエラーであるにしても、根本的には他の都道府県が産廃規制を強化し、諸外国も輸入規制を強化する中で、緩い規制を放置してきた知事のエラーです。そのことを認めたくないのかもしれません。これが多選の弊害というものなのでしょう。他のことでも「一方的に決めて一方的に後から説明」という木で鼻を括る対応が目立つ湯崎知事。このままでは、ご退場いただくしかないでしょう。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

地元住民や地元市議会の反対も押し切って三原市の水源地のど真ん中に広島県(湯崎英彦知事)が許可してしまったJAB協同組合が経営する本郷産廃処分場。2022年9月から一部操業してしまいました。そして6月には住民側調査で基準越えの汚染水も確認されました。

◆断罪された広島県の「穴だけ」産廃行政

その産廃処分場の設置許可取り消しを住民らが湯崎知事に求めていた裁判で7月4日(火)広島地裁の吉岡茂之裁判長は知事に対して許可取り消しを命じる判決を言い渡しました。おさらいしますと、法によれば調査しないといけない処分場近くの井戸を調査せず、また農業用水に使われている川への影響調査も不十分なことが「県知事の判断の過程に看過しがたい過誤・欠落がある」と指摘しました。「ザル」というよりも「穴だけ」の行政が断罪されました。

◆原告の要請受け、県も重い腰

原告住民側は4日の判決後、県庁を訪問。広島県(湯崎英彦知事)に対して判決を受け入れて産廃処分場設置許可を取り消すとともに、操業を今すぐ止めさせること、排水の水質検査をすることなどを要求しました。

その際、廃棄物対策課長にも汚染水の匂いをかいでいただくとともに、産廃処分場の様子を撮影したビデオを視聴していただきました。そして、7日(金)には、廃棄物対策課長が住民側に回答。それによると、国の基準を上回る排水が県の検査でも出たため、6月29日に県の東部厚生環境事務所が産廃搬入停止を行政指導していたとのことです。県の内部ですでに29日にやっていたことを、4日の時点で本庁の課長が把握していなかったというのもちょっと呆れた話ではあります。情けないことではありますが、一応、県としてやっと重い腰をあげたということです。

 

産廃搬入の様子(原告団共同代表の岡田和樹さんのフェースブックより)

◆行政指導無視し、産廃の搬入

しかしながら、原告団共同代表の岡田和樹さんによると、7月8日(土)も、産廃の搬入は続きました。(右写真)。この日の午前中に県が電話で午後に立ち入り検査をする旨伝えたところ、県職員が行ったときにはゴミはすべて土で覆われていたそうです。まさに、業者は完全に県をなめています。

◆安佐南区上安でも広島市民に大迷惑をかけた事業者

産廃処分場を運営するJAB協同組合は東京に本社があります。広島の政治を仕切っている宏池会系の議員がこの組合のトップを務めたこともあります。このJAB協同組合は1993年に広島市安佐南区上安に産廃処分場を設置。やはり国の基準を上回る汚染水を流出させるなどの問題を起こし、指導を受けました。さらに、その近隣に熱海土石流(2021年)の三倍もの不適切な盛り土が1998年ころまでに行われていました。

その「犯人」は不明とされています。しかし、そんなことをする動機や能力がある主体は周辺ではJAB協同組合しかない、と地元住民はいいます。

そして、同組合は2016年、2020年にその不適切な盛り土の上に産廃処分場を拡張。所有権を外資系企業に売却しています。

外資系企業は盛り土のことはしらなかったと主張。また、盛り土の大部分が所有者不明のため、広島市は、とりあえず3000万円を負担し、緊急に安全対策工事を行うことを7月7日(金)、発表しています。

もちろん、盛り土を不問にしたうえ、市に情報共有しなかった県、十分に確認しなかった市にも問題はありますが、JAB協同組合が金儲けの為なら何でもあり、のような開発を続けていた企業体質も問われます。

◆産廃業者に舐められる湯崎県知事、しゃんとせい!

広島県の湯崎知事は、11日の記者会見で「排水についてはきちんと是正して、基準内に収まるようにしないといけないし、住民にも説明していきたい」と述べています。しかし、上記にみられるように、当該の産廃業者は、県の指導を無視していますし、安佐南区・上安の処分場でも見られるように反省が見られません。是正とか説明とか、そんな生ぬるい言葉が通用するような相手ではありません。 

◆間髪入れず、住民ら「処分場の土地買い上げ」など知事に要請

こうした状況の中、原告住民も迅速に行動しておられます。原告団は11日、湯崎知事に対して判決に従って改めて処分場許可の取り消しをするよう求めました。

 

さらに、処分場の土地を県が買い上げることで水源の保全をするよう求めています。そして、水質汚染の原因究明と水質の改善、さらには環境手続条例の制定を求めています。

土地の買い上げについては、判決後最初の週末で、原告側内部で話し合い、要望事項として決めたものです。

岐阜県御嵩町の産廃問題では、最終的に処分場の土地を業者が県に無償寄附するという決着となりました。ただ、今回の広島・本郷産廃処分場の場合、県が違法とは言え、許可を出してしまい、それにより、業者も操業してしまったという既成事実があります。なかなか、無償寄附しろと言われても業者は同意しないでしょう。残念ながら買い上げと言うのが一定の落としどころではないか。筆者そう考えます。その際、県知事や知事をチェックできなかった県議らの給料を連帯責任でカットして一部を充てる、引退した元議員には自主的なカンパ(引退していれば公選法上の問題はない)を求めるというのも一案ではあると考えます。

◆県知事に舐められる議会、そして県民

県民を代表して知事をチェックすべき議会もほとんど機能していません。そもそも、議会が機能していれば、議員提案でも、産廃処分場を厳しく規制する条例を出して可決していたでしょう。4期目に入った湯崎英彦知事も議会を完全に舐めています。だから、JAB協同組合のような問題のある事業者の処分場を水源地ど真ん中に許可するという愚行が起きる。もちろん、知事は、県民も舐めていると言わざるを得ない。地元住民が猛反対して三原市議会、竹原市議会が全会一致で反対決議を出したものを平気で許可したことにそれは現れています。

最近の知事は、農業ジーンバンク廃止も一方的に決めて一方的に説明、病院統廃合問題も一方的に案を決めて、一方的に説明など、木で鼻を括る対応が目立ちます。
こうした構造を打破しなければならない。産廃問題はとくに、待ったなしです。原告住民の行動に敬意を表します。

 

◆知事に控訴断念求める署名を!

現在、インターネット上でも知事に法令順守の産廃行政にするとともに、控訴断念を求める署名運動が起きています。知事が業者に行政指導を無視された状態で、控訴して許可を取り消さない、という判断を知事がすればますます、知事は産廃業者に舐められる。それを県民が許せば、ますます知事は県民をなめてしまう。そんな悪循環を止めましょう。右のQRコードからもご賛同いただけます。

【賛同いただきたい要望事項】

1.広島県行政として、法令遵守に立ち返り、県民の信頼回復に努めること。
2.控訴せず、直ちに許可取り消し処分を行うこと。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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