4月19日(水)、伊方原発運転差し止め広島裁判の第32回口頭弁論が広島地裁で行われました。

 

広島地裁

この裁判は、あの東電福島原発事故から5年に当たる2016年3月11日に広島市民らが、四国電力を相手取って伊方原発3号機の運転差し止めを求めて提訴しました。現在では広島県内だけでなく、伊方原発に近い愛媛県八幡浜市を含む全国各地から原告が加わっています。

この伊方原発運転差し止め裁判の「人証調べ」が始まりました。この人証調べとは、生身の人間が証言し、それが証拠となることです。虚偽答弁をすれば偽証罪に問われます。

この日は、原告でもある哲野イサクさん(戸籍名:伊奈道明さん)が避難計画について研究するwebジャーナリストとしての立場で証言しました。まずは、原告側弁護人による主尋問に答える形で哲野さんが伊方原発による避難計画について述べました。その内容は、避難計画の杜撰さを暴露するものでした。

◆広島市は国の指示待ち、県は指示要望も国はなしのつぶて

南海トラフ地震についての防災計画はもちろん、広島県も広島市もあります。ところが、伊方原発事故が発生した場合の避難計画は広島県も広島市もありません。もし伊方原発が過酷事故を起こせば、原子力規制庁の楽観的なシナリオでも広島市も4ミリシーベルト以上のヒバクを1週間ですることが読み取れます。

 

 

※また、瀬戸内海、太田川を伝って、汚染水が原爆ドームなど中心部はもちろん、安佐南区の長束・西原あたりまでさかのぼることが予想されます。実際に、このあたりまで海水が遡上しているので、当然、放射能も遡上するのは明らかです(筆者注)。

南海トラフ地震では広島市内は多くの場所で震度6弱と想定されますが、中区の全域や西区、南区などでは液状化が予想されます。液状化により道路なども寸断される可能性が高く、放射能(や放射能を含む海水)が襲ってきても避難は極めて困難です。

そうした中で、広島市は、哲野さんの問い合わせに対して避難計画はない、国の指示がなければ作成しない、というのです。

筆者の元職場である広島県は、市よりは少しマシだそうです。県は国に対して避難計画作成の指示をするように文書で要望をしているそうですがなしのつぶてのようです。

広島県の担当者は「県独自で避難計画を立てられないのか?」と問うた哲野さんに対して、「原発事故の避難計画を作成できるだけの人材も予算もノウハウもない」と回答しているそうです。

◆伊方周辺の原発事故避難計画、南海トラフ地震は全くリンクせず

では、原発事故が想定される地元の愛媛県はどうか?哲野さんは、愛媛県内と山口県上関町(上関原発計画があるが、実は伊方原発に近い)が対象となっている避難計画についても全く機能しない、と指摘します。

原発事故の避難計画は地元の伊方町のいわゆるPAZ地域、そしていわゆるUPZの伊方町、八幡浜市、大洲市、西予市、宇和島市、伊予市、内子町については策定されています。

しかし、この避難計画も南海トラフ地震とは全くリンクさせていません。他方で、南海トラフ地震の防災計画には伊方原発事故は想定されていない。要は、南海トラフ地震に続いて伊方原発事故が起きるというシナリオは想定外なのです。

さて、この避難計画によると、クルマ(自家用車)での避難を基本としつつ、クルマでの避難が困難な人については愛媛県バス協会がバスを提供して避難してもらうことになっています。

原子力防災対策 広域避難計画(愛媛県原子力情報)

名目上は、避難に必要な輸送力は確保しているように思えます。しかし、実際には、バスはいろいろなところで通常運行されています。原発事故が起きたからといって、すぐに路線バスや観光バスとして運行されているバスを避難用に回すのは机上の空論です。

そして、致命的なのは、時間軸がこの避難計画にはないことです。原発事故における避難は時間との戦いです。しかし、この避難計画には、その時間軸がない。これではもたもたしているうちに人々はヒバクしてしまいます。

そして、さらに致命的なのは、南海トラフ地震でインフラが壊滅することを想定していないことです。伊方町の国道197号線は、多くの区間で、斜面が片側または両側から迫っていたり、脇が崖だったりします。震度6強程度の揺れに見舞われれば多くの区間で土砂崩れ、がけ崩れによりずたずたになり、避難どころではなくなります。

また、佐田岬半島西部(三崎町)の人たちは、東側に原発がある以上、西へ向けて海経由で避難するしかありません。しかし、南海トラフ地震では、多くの港の設備が崩壊すると予想されています。そんな中で、船で避難するどころではありません。

また、南海トラフ地震が起きれば、避難計画で避難先とされている松山市でも家屋の倒壊などで8万人以上が避難を強いられる予測です。そういう中で原発による避難民を受け入れる余裕があるのでしょうか?

また、地震で負傷した伊方町民らを避難させるのにはどうすればいいのでしょうか? これも想定されていません。

この避難計画は、一応、国の原子力防災会議で承認はされていますが、ほとんど会議では審議されていません。

他方、アメリカでは、事故発生時の天候や時刻など様々な条件をきちんとシミュレーションして避難計画を立てることが義務付けられています。そうしたことを背景にニューヨーク州のロードアイランド電灯会社によるショアハム原発が避難計画をまともに立てられず、住民の反対運動もあって、いったん完成したものの、営業運転することなく廃炉に追い込まれています。

◆被告・四国電力弁護士の反対尋問、避難計画そのものの矛盾に言及できず

被告・四国電力の弁護士が、この後、哲野さんに反対尋問を行いました。しかし、その内容は、「哲野さんの著書に避難計画についてのものがあるのか?」とか「イギリスやフランスの避難計画はどうなっているのか?」などでした。

哲野さんの主張の根幹である避難計画が南海トラフ地震とリンクしておらず、全く機能しないことへの反論は全く聞くことができませんでした。

次回の口頭弁論は5月31日(水)11時からです。被告・四国電力社員への人証調べが行われます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)

月刊『紙の爆弾』2023年5月号

2021年11月、大阪市平野区の老人ホームにおいて一人で宿直勤務していた女性介護労働者(当時68)が、入居者の当時72歳の男性被疑者に金槌により惨殺される事件が発生しました。被疑者はその後、飛び降り自死したとみられます。後日、被疑者死亡で書類送検されています。

老人ホームで殺されたヘルパーの母 「介護現場の安全を」遺族が提訴

この女性介護労働者の娘さんら遺族がこのほど、老人ホームを経営する会社を訴えました。

筆者も現役介護福祉士として「介護現場で働く職員の安全確保に目が向くきっかけになれば」という娘さんと思いを心から共有します。

◆介護職員へのセクハラや暴力は〈不問同然〉の実態

いささか旧聞に属しますが、介護職員へのご利用者・ご家族からのハラスメントについては、連合系の労働組合の日本介護クラフトユニオンさんが、アンケートを実施し、2018年4月に公表しています。

https://www.nccu.gr.jp/torikumi/detail.php?SELECT_ID=201806250004

筆者は全労連系労働組合の幹部を拝命しておりますが、このように、介護労働者へのハラスメントについてまず実態把握をしようとされているクラフトユニオンさんには心から敬意を表します。

上記のアンケート結果によると、調査に回答した2411名中、74%の介護労働者が利用者やご家族からハラスメントを受けた、と回答されています。ハラスメントを受けた方の内4割がセクハラ、94%がパワハラを受けた経験があるというものです。

また、セクハラについて上司や同僚に相談したけれども状況が変わらなかったという方が48.5%もおられます。

パワハラについても、上司や同僚に相談しても状況が変わらなかったという方が43.5%もおられます。

相談しても変わらない。そんな深刻な状況が垣間見えます。皆様もご承知と思いますが、介護職員が入居者に暴力や暴言をすれば、もちろん、虐待になります。

しかし、逆に入居者から介護職員への暴力やセクハラは事実上、不問に付されてきたといってもいいのではないでしょうか?

◆暴力・ハラスメントの野放しは介護現場の荒廃へ

上記のアンケートでもセクハラで19%、パワハラで22。8%の方が誰にも相談しなかったと答えておられ、「誰に相談しても解決しないから」「認知症の周辺症状だから」と回答しておられます。

特に年配女性労働者の中には【そういうものだ】と我慢してしまう方が多いように筆者の経験上、感じます。しかし、我慢している場合ではありません。

現状のように、安全確保もしてもらえず、給料アップも不十分では、外国人も含む若い人も介護の仕事につこうとしなくなる。このままでは現場は崩壊してしまいます。

なお、すぐ利用者にキレてしまう人ならそういう場所で平気で仕事をできるかもしれません。だが、その場合はお年寄りや障がい者に対する虐待が続発するでしょう。いや、すでにそうなっているような施設も見受けられ、恐ろしいものがあります。

◆無策の延長線上に今回の惨劇

そもそも、暴力やセクハラ傾向があるお年寄りも、たとえ認知症があったとしても無差別ではなく現実には、弱そうな相手を狙っていると感じることも多々あります。例えば露骨に入浴では女性に介助してもらわないと嫌だという男性入居者もおられます。そうした時に「そういうものだ」ということで、何も対策を講じないのはいかがなものでしょうか? その延長線上に今回の事件があったのではないでしょうか?

今回の事件では、
・3日前に他の入居者に暴行・傷害。
・その10日前には別の職員に椅子を投げる

また、最近の72歳は、例えばゲームばかりやっていて引きこもっているような若者と比べても遜色ないくらい腕力がまだある方も多いのです。そういう人が認知症の周辺症状としても、暴走すればシャレにならない。他の入居者の命にかかわる場合もあります。

事業者=会社側は十分に危険を予見できたはずだと思います。

だとすれば、例えば夜勤をワンオペではなく複数体制にするなどの対応が必要だったのではないでしょうか?労働者の安全、そして他の入居者の安全。両方を守る義務が会社にはあり、それを怠っていたと言っても仕方がない状況があるのです。

◆配置基準の緩和どころか増員こそ必要

この原稿を書いている間にも広島県内三原市では、(主として、精神障がい者の方向けの施設とみられますが)グループホームで71歳の男性入所者が他の入居者を殺害するという事件が発生してしまいました。

はっきり申し上げます。現実問題として、他の利用者や職員の安全に対する脅威になるお年寄りや障害者がおられることを前提に体制を整備すべきではないでしょうか?

もちろん、絶対にお年寄りや障がい者に対して虐待になってはいけません。虐待を避けつつ、安全を守るにはどうすべきか?

基本的には、お年寄り・障がい者に丁寧に対応するしかない。こちらがイライラすると、利用者の暴走も加速するからです。

厚生労働省も以下のようなマニュアルを三菱総研に委託して作成しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

ところが、マニュアルのように丁寧に対応するためには、今回の事件現場となった老人ホームのようないわゆるワンオペ夜勤では無理です。

筆者の地元・広島選出の岸田総理はDX(デジタルトランスフォーメーション)を口実に、介護職員の配置基準を減らそうとしています。しかし、そうなれば、丁寧な利用者への対応は難しくなります。あなたのやっていることは、まったくあるべき方向とあべこべです。

筆者が幹部を拝命している広島自治労連が結集する「全労連」では、以下の署名も呼びかけております。

こんな低賃金では働き続けられません! ケア労働者の大幅賃上げと職員配置基準の引き上げをしてください

https://chng.it/JmqqtWSQ5K

賃上げとともに

「2.職員配置基準を改善すること
1)「ワンオペ夜勤」の改善など、利用者の安心・安全の確保と労働法令が遵守できるだけの職員が正規職員で配置できるように、職員配置基準を抜本的に改善すること。」

を要求しています。ぜひともご協力をお願い申し上げます。

また、筆者自身も広島県議会内で介護現場出身の初の議員としてこの問題について全力で取り組んで参る覚悟です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年5月号

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

2023年4月9日、統一地方選挙・広島県議会議員選挙が執行されました。

筆者はあの河井案里さんの地盤だった安佐南区で無所属・れいわ新選組推薦で立候補しました。

2673票、9人中8位という結果で及びませんでした。

広島県議選 広島市安佐南区選挙区
定員 5 有権者数 193,624 投票率 34.16%

当 灰岡 香奈 自民 現 39歳 12,782(19.9%)
当 栗原 俊二 公明 現 63歳 11,128(17.3%)
当 竹原 哲  自民 現 49歳  8,938(13.9%)
当 鷹広 純   無 現 48歳  8,191(12.8%)推薦:立民・国民県連・社民
当 藤井 敏子 共産 新 69歳  6,672(10.4%)
  前田 康治 自民 現 57歳  6,157(9.6%)
  小田 康治 維新 新 47歳  5,246(8.2%)
  佐藤 周一  無 新 47歳  2,673(4.2%)推薦:れいわ
  伊藤 守   無 新 47歳  2,356(3.7%)

改めて、ご支援をいただきました皆様、ご協力をいただきました皆様にお礼申し上げます(インターネットでのお礼は公選法で認められていますが、これをプリントアウトすると違反になりますので、ご注意ください)。

筆者は、2022年の5月、参院選広島から県議選安佐南区への転出を決定。その後、参院選2022終了後、無所属で県議選への準備を進めて参りました。12月にれいわ新選組の推薦を頂きました。

◆広島が大好きだからこそ、広島の現状を憂える

 

広陵高校出身の担任の先生にカープを叩き込まれた小学校時代。そして、安佐南区が主要な舞台となった井伏鱒二の「黒い雨」に感激した高校時代。そして、安佐南区の長束小学校のネットでの平和学習を進められていた先生や生徒さん、大学の先生との交流。そして大学卒業後は国家公務員と県庁を受かって県庁を迷わず選んだ筆者。採用面接では「広島が好きだから県庁を選びます」と申し上げました。

県庁時代には、しかし、おひとりおひとりが大事にされているか疑問に思いだしました。組織やお金、過去の成功体験に囚われた広島の政治をリニューアルしないといけない。そういう思いで、2011年、県議選安佐南区で立候補。4278票で及ばず、3年間政治活動を続けるも限界を感じ、東京へ戻りました。

だが、2014年8月20日、広島土砂災害2014の一報に、「広島をなんとかせにゃあいけまあ」という思いで、広島へ帰りました。そしてボランティア活動に奔走。広島に貢献したいと介護の仕事を開始し、政治活動を再開しました。

だが、組織やお金、過去の成功体験に囚われた政治が続く中で、広島の現状はいかがでしょうか? ひとりひとりが大切にされていると言えるでしょうか? 平和都市に恥ずかしくない、政治・行政と言えるでしょうか?

そんな思いが強まる一方で、2021年、河井案里さんの当選無効による参院選広島再選挙に立候補しました。

◆広島の現状は人口流出ワーストワン2年連続

筆者の勤務先の介護施設でも外国人労働者もすぐ辞めて東京へ向かうという危機的な状況。

広島駅周辺などへの投資は県や市は熱心でも、安佐南区などの防災工事や道路の補修は進まず。

教育長は思い付きの改革を進めた挙句に、官製談合事件。現場の先生は非正規ばかり。

学校のプールなど補修が追い付かない。

水源地のど真ん中に産廃処分場が許可されてしまう

筆者自身が県議選立候補の為に県庁を去ってから、特にこの2~3年の広島の政治・行政の状況は悪化する一方です。このままでは、いけない、という思いからふたたび、立ち上がりました。お金や組織、過去の成功体験に囚われた政治をなんとかせにゃあいけまあ。

「県政をガツンとリニューアル」「広島とあなたを守る大改革」

をスローガンに、
ケア労働者などを中心に広島で働くあなたのお給料大幅アップ。
非正規の使い捨てを止める。
介護する人もされる人も笑顔の広島県。
産廃から水や食料を守る。
地域食材のオーガニック無料の給食導入で農家支援。
国保料大幅引き下げ、子ども医療費無料化18歳までの拡大。
総理の暴走・迷走を広島から止める。
などを全力で訴えました。

◆かつてなく多くの方にご支援いただく

筆者が立候補した過去2回の選挙、すなわち県議選2011、参院選広島再選挙2021では、選挙カーの上の筆者の隣には運転手しかいない、という状態がほとんどでした。

しかし、今回は、多くの方にご支援をいただきました。れいわ新選組チーム広島の皆様にはさとうしゅういち後援会員という形で、スタッフを担っていただきました。これまで、筆者が自分でやらなければいけなかった、事務的なことも多くをしていただき、体制としては雲泥の差でした。

また、選挙直前の決起集会では大島九州男参院議員、そして選挙期間中も、竹村かつし・下関市議、「次次期参院議員」の辻恵弁護士、大学の先輩でもある高井たかし・れいわ新選組幹事長が次々と応援にかけつけてくださいました。

さらに、途中、地元の大物弁護士らも応援にかけつけてくださいました。

古市橋駅前での出発式 竹村かつし下関市議の応援演説

◆「さとうさんは今回、行けるでしょう」という下馬評の落とし穴

 

農村部でも訴える筆者

今回の選挙では、「さとうさんは今回、行けるでしょう。」という下馬評が、あちこちから聞かれました。根拠としては、そうはいっても、参院選広島再選挙にも立候補していて知名度は高いこと、長年、地域を回っていたことです。「今回はいける」というのが敵味方問わず出てくるのは当然。他陣営の調査でも筆者が当選圏内ということが漏れてきました。

しかし、これがいけないのです。筆者が支持をお願いした方々に対して他候補が「さとうさんは大丈夫だからうちへ」というお願いをしていった、という情報を多数得ています。

そして、見る見るうちに、支持は削られ、蓋を開けてみれば、他陣営の事前予測等の3分の1程度の票になっていた、というわけです。

◆共産党の局地的突風的追い風

日本共産党は、全国的には松竹信幸さん除名問題などで、惨敗しました。しかし、広島では、河井事件の余波がまだ残っており、それが共産党への追い風となりました。また、被爆地ということで、総理の暴走に不安を感じる層が、共産党というそうはいっても看板の古いところに流れた感があります。実際に、筆者を支持してくださっていた方の中でも相当、共産党の藤井候補に票が流れた感じはします。

◆相手候補が筆者の主張に寄せる場面も

 

2014年の土砂災害被災地で訴える筆者

今回、途中で、相手候補者が主張をわたしの主張に寄せてくる場面もありました。

教育長に甘い姿勢だった立憲推薦の現職も、マスコミなどのアンケートには教育長更迭すべし、と回答するようになりました。与党現職女性は、熱心に非正規教員の問題を取り上げるようになりました。与野党候補の論戦をリードする形にはなったと自負しています。

◆既成政党以外で選挙を回す集団が広島に出現

今回はれいわ新選組ボランティアの皆様に、あくまで、さとうしゅういち後援会で活動していただくという形ですが、大変お世話になりました。後援会事務局長は普通のサラリーマンですが、最大限、できることをしていただいたと思います。

旧来の組織型政党や団体とは違う形で、市民が個人として参加し、選挙を回すという集団が現れたことは広島の政治史上、画期的なことです。

世襲か、高級官僚か、公明党か、共産党か、いわゆる労働貴族か。そういう人しか、事実上、県議や国会議員になれないような広島の状況をリニューアルしたい。

今後とも、筆者は、労働組合役員などの活動を通じて、労働者の待遇改善や、介護サービス、教育現場の改善などの先頭に地域で立っていきながら、政治活動も続けます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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広島高裁は3月29日、水源地ど真ん中の産廃処分場を容認してしまいました。

三原の本郷産廃処分場はJAB協同組合が経営。三原市と竹原市の水源地ど真ん中にあります。2018年4月に計画が持ち上がりました。住民の皆様は当然、猛烈な反対運動を展開し、三原市議会でも竹原市議会でも全会一致で反対決議が採択されました。しかし、広島県(知事・湯崎英彦さん)は、この処分場を許可してしまいました。そして、2020年5月から工事が始まっています。

これに対して、住民は広島県に対しては許可の取り消しの行政訴訟、そして事業者に対しては工事の差し止めを求める仮処分申請を提起しています。

2021年3月に広島地裁は工事差し止めを認めましたが、事業者が異議を申し立てました。そして、地裁は2022年6月に業者の異議を認めて、産廃処分場の稼働を容認してしまいます。それに対して住民が高裁に抗告していました。

◆群馬や長野からゴミが広島へ流入

差し止めを求めている原告のお話によると、今現在、高崎ナンバーや松本ナンバーの車が大量に入ってきているそうです。

「高い日本の高速道路料金を払ってまで群馬や長野から来ているゴミって何ですか? よほど危ないものなのではないのですか?」と原告の一人は語気を強めておられます。

そのゴミは、「ほとんど、開封して検査している様子もなく、そのまま重機で埋め立てられている」ようです。

広島は全国でも産業廃棄物処分場が多くあります。特に、安定型処分場は二番目に多くなっています。この安定型というのが曲者で、シートすら敷かずに建前は、安全なゴミを搬入するはずなのですが、現実には危険物も運び込まれ、何か起きない限り、ほとんど検査もされない。いい加減な運用になっているのは、皆様もご存じと思います。その安定型処分場が広島では多いのです。それは、広島に他の都道府県のような水道水源保護条例や環境配慮条例がないからです。かくて、規制が緩い広島を目指して日本中からゴミが集まっているのです。

 

◆まさかの不当決定 「伊方原発」に続いて「やられた!」

2023年3月29日、桜が満開の中、裁判所の前で、「満開の桜のような決定があるといいね」と原告や支持者の筆者らは雑談していました。しかし、決定が言い渡される14時過ぎ。険しい表情で若手弁護士が法廷から出てきます。

「不当決定」

筆者も頭の中が真っ白になり、その時の状況をよく覚えていません。

実は、筆者は選挙準備などで時間がなくて目撃できていませんが、3月24日(金)には、同じ高裁が伊方原発広島裁判の運転差し止め仮処分を却下しています。それに続いて「やられた」感でいっぱいでした。

そうした中、弁護団の山田延廣弁護士が、決定を受けて、コメントしておられました。

「みなさまの運動は正義にかなった運動。行政や裁判所までがそれを認めないとは。裁判所や行政の決定に屈せずに里山や水を守るために闘っていこう」などと呼びかけました。

原告や支持者は差し止め絶対阻止をシュプレヒコールを上げて決意表明しました。


◎[参考動画]不当決定 本郷産廃処分場差止ならず 2023年3月29日 広島高裁

◆「水は鉛直にしか染み込まない?!」常識外の決定

ざっくり申し上げると、裁判所は、
・有害物質が付着・混入して処分場に運び込まれる恐れ
・それらが処分場の外に染み出す恐れ
については認めました。

ところが、処分場と井戸の距離が700mあって、高低差が60mしかないことを理由に、「井戸水に有害物質が入る」恐れがあることは、住民側に立証責任がある、としました。

裁判官は、「水は鉛直にしかしみ込まない」といういわば、常識外の決定をしました。

たとえば、介護現場や子育てを経験していればわかることですが、尿を漏らした場合、そこだけではなくて、オムツに広範囲に尿が広がりますよね?筆者は呆れてしまいました。

弁護士も「負けた気がしない」といっておられました。原告代表の方も「高齢者は、先が短いから汚染された水を飲まなくてもいいかもしれない。だけど、子どもや孫はそうはいかない。だから頑張る。」という趣旨の決意を表明されました。

◆水道水源保護条例や環境配慮条例の制定に全力

裁判闘争と並行して、立法も大事です。今の裁判所は残念ながら、行政に対しては、法律で明確に禁じていないことを禁じない判決しか出しません。そうした中では、明文で、行政に対して、産業廃棄物処分場などを許可する際に、環境に配慮することを義務付ける条例が必要です。他の自治体ではすでに制定されているところも多い「水道水源保護条例」や広島弁護士会も提言している「環境配慮条例」などです。原告の皆様もそうした条例の制定運動もされています。

筆者の地元・安佐南区でも上安産廃処分場が外資に買収されて巨大化しています。さらに、同処分場の盛り土が崩落していたことも発覚しています。産廃処分場規制は喫緊の課題です。筆者も広島県議会においての条例制定に全力を尽くす所存です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2023年3月26日、統一地方選挙の広島市長選挙が告示されました。広島市長選挙に立候補されたのは以下の3人の方々です。

 

 

無所属で自民、公明、連合広島が推薦し、立憲民主党などの議員も支援する現職の松井一実さん。無所属で新人のSF作家、大山宏さん。そして日本共産党公認の高見あつみさんです。

◆参院選広島再選挙でのライバル・大山候補

筆者は、今回の市長選挙では、大山宏さんを応援しています。大山さんと筆者はかつて、「ライバル」の関係でした。

筆者は、2021年4月25日執行の河井案里さんの当選無効に伴う、参院選広島再選挙に立候補。20848票で6人中3位でした。その同じ選挙に大山宏さんも立候補し、13363票を獲得して5位でした。

大山さんは、選挙費用はこのとき、供託金を除いてたったの10万円しか使いませんでした。手製のポスターを公営掲示板に張って歩くだけ。演説もなし。そんな選挙でした。大山さんは、彼なりに金で票を買った河井案里さんへの対抗軸を示したのです。しかし、失礼ながら筆者も「そうはいっても、選挙カーは回して、主張を県民に届ける必要はある」と考えていました。

その後も、衆院選2021広島3区(6人中4位3559票)、東広島市長選挙(5606票、2人中2位、ただし、得票率15%と健闘)と徹底して金をかけない選挙に挑まれた大山さん。彼には脱帽しました。徹底した彼の根性には、筆者も脱帽したのです。

◆筆者が県議選立候補を前に支援を要請

筆者は、広島市長選と同時に行われる広島県議選に案里さんの地盤である広島市安佐南区選挙区での立候補を無所属・れいわ新選組推薦で予定しています。2022年秋、ライバルでもあった大山さんにも、ご支援をお願いしました。大山さんは衆院選2021では安佐南区で2000票以上を獲得されており、筆者の勝利には大山さんとの連携は不可欠だったからです。それから、交流がはじまりました。

◆県議選東広島選挙区から広島市長選挙へ転進

当初、大山さんは県議選・東広島選挙区での立候補を予定されていました。しかし、広島市長選挙で市民団体が候補者擁立を断念。無投票の恐れも出てきました。そうした中で、大山さんが急遽、広島市長選挙に転進するとともに、県議選東広島選挙区では、配偶者の大山はるえさんが立候補することになりました。

その後、共産党が公認候補を擁立しました。しかし、失礼ながら、共産党の濃い支持層以外から得票することはこれまでの歴史から考えても難しいことは想像つきます。現職の松井さんは市政の中身は芳しくありません。

けれども選挙だけは上手な方です。松井さんに勝つのは誰が出ても難しい。しかし、対抗馬の合計で得票数を伸ばすことで松井さんの得票率を下げられれば、市政に緊張感をもたらすことになります。

◆市長選挙でもコピー用紙のポスターを張って歩くのみ

大山さんは、広島市長選挙でもお金をかけないことは徹底しています。参院選広島再選挙と変わらず、トラックで回って、コピー用紙のポスターを張って歩くのみです。

わたしは、告示日の26日10時、大山さんと広島城北東の公園でお会いしました。

◆街宣は筆者が「応援演説」の形で担当

筆者が立候補予定の県議選は3月31日告示です。したがって、30日までは、「大山候補への応援演説」という形で街宣を安佐南区各地で担当することにしました。筆者が、大山陣営の運動員という形で腕章をし、筆者のハンドマイクに選挙運動用拡声器の標記をかぶせ、街頭演説用の旗も筆者が持って、各地を回ることにしました。候補者にはポスターを張りに専念していただくことにしました。

 

 

以下は筆者の応援演説の概要です。

「広島県の人口流出は二年連続全国ワーストワンだ。なぜそうなったか?」

「広島ではお金がある人、組織がある人しか選挙に受かってこなかったからではないのか?その結果、政治が市民・県民のニーズとかけはなれ、若い人から流出していく結果になっているのではないか?」

「現職市長の松井さんは駅前開発には熱心だが、安佐南区の道路はボロボロの個所も多い。広島土砂災害2014の被災地で、防災工事がまだ完了していない地域も少なくない。安佐南区は広島では珍しく人口が増えている。人口が増えている地域に投資をせずに、駅前ばかりに熱中するのは一市民として疑問だ。」

「松井さんは、法的な根拠もつくらずに、学童保育の有料化を強行したり、アンケート結果を無視して図書館移転を強行しようとしたりしている。」

「広島市は特養が不足しているが民間がどこも手を上げないという。それならば、公営でやるべきだろう。しかし、松井さんは手をこまねいているだけだ。さとうしゅういちは大山市長と県市連携で公営の特養をやるよう提案する。」

「はだしのゲンや第五福竜丸の記述も、松井さんが任命した教育長率いる市教委の暴走で削除された。アメリカへの忖度ではないのか?広島市政がこんなことではG7サミットで核廃絶への成果を出すなど無理。岸田さんも本気にならない。」

「安佐南区は河井事件の震源地だ。とくにこの安佐南区の皆さんがお金を徹底的につかわない大山宏を支持していただくことが、汚名返上につながる。」

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2022年の広島県の転出超過(人口流出)は9207人で、2年連続で全国最悪となりました。

1月30日に総務省が発表した人口移動報告によると広島県の転出入の内訳は、他都道府県への転出者数が5万4924人(2021年比2373人増)でした。他方で他都道府県からの転入者数が4万5717人(2021年比325人増)でした。

 

広島県庁

外国人を統計に含めた2014年以降では9年連続の転出超過となっています。全国ワーストワンは2019年と2021年に続いて3回目です。

転出超過の9207人の内訳は日本人6044人、外国人3163人で、年代別では20~24歳が4014人、25~29歳が2046人となり、20歳代が全体の66%を占めています。この20代の流出は兵庫県に次いで2番目の人数です。

広島県内23市町で転出超過(人口流出)となったのは、広島市(2522人)、福山市(2404人)など19市町です。広島市は政令指定都市の中では神戸市(3174人)に次ぐワースト2の人口流出となりました。広島県内での転入超過はまだ、ベッドタウンとしての発展も続いている廿日市市(238人)など4市町にとどまりまっています。

◆外国人も国内他県へ流出

広島県は日本人、外国人ともに国内の他の都道府県への転出が多いのが特徴です。

一方で、外国から広島県に対しては1万31人の転入超過です。このことをとらえて知事の湯崎英彦さんは、「社会動態全体をみたものとは言えない」としています。だが、それでも、外国人が3163人も他の都道府県に流出してしまっているのです。実際、筆者の勤務先でも、広島に来たばかりの外国人労働者が一年もたたずに辞めて東京の介護施設へ転職するケースが多くなっています。

◆「給料の安さ」と「アップデートの遅れ」の無限ループに陥った広島

筆者は、2022年の人口流出2年連続全国最悪という結果は、予想していました。これまでの現知事や教育長の政治、そしていわゆるオール与党体制で知事をチェックできなかった現職県議らのいい加減な政治の結果、と一言で斬ってしまえば簡単です。

だが、もう少し、要素を分けて考えてみましょう。若者が他都道府県に流出してしまう要素としては一言でいえば「給料の安さ」(経済面)があるでしょう。

もう一つは、「アップデートの遅れ」です。地域社会のアップデートが遅れているということは、若者にとって、特に暮らしにくい社会であるということです。

一方で、給料の安さで若者が流出することにより、若者の比率が下がり、若者の意見が反映されず、アップデートが遅れるという面もあります。そして余計に若者が定着せず、アップデートが遅れるということです。

筆者は、2000年に広島県庁職員として東京からUターンして23年。この23年間、広島では、上記のような「給料の安さ」「アップデートの遅れ」の無限ループが発生しているように痛感します。

◆若者減少を招いた公務員削減

広島県は、たびたびご紹介しているように、00年代にそれまで86あった市町村を23に減らしました。市町への権限移譲をするということで、県庁職員は採用を一時は年間ゼロにするという形で削減。他方で、市町も仕事は増えたのですが「合併で効率化しただろう」ということでこちらも削減。結果として大幅に公務員は減りました。

公務員新規採用は若者の雇用の大きな受け皿です。しかし、過剰な公務員削減の上、「生首は切れない」以上、新規採用は減らすしかない。そういう中で、若者も地域から激減していきました。特に、合併された旧市町村ではひどいものがありました。
 
◆過去の成功体験卒業できずアップデート遅れ

一方、筆者が選挙運動などで県内をお邪魔して痛感するのは、「1975年頃の成功体験」から卒業できていないということです。この1975年というのは筆者が生まれた年であり、カープが山本浩二、衣笠、外木場らの活躍で初優勝し、県民一人当たりの所得が全国3番目になって栄華を誇った時代です。広島が製鉄をはじめ、原発製造も含む重厚長大産業で栄えた時代です。現代は、たとえ工業製品であってもソフトウエア部分が製造コストの7割を占めるとも言われています。また、サービス業の割合も高まっています。一方で、直近では食料やエネルギーの安全保障が重要になっています。いずれにせよ、重厚長大が栄華を誇った時代の成功体験に胡坐をかいている場合ではないのです。

また、その時の成功体験を持っている年配者の方が、若手を押さえつけてしまう社会の雰囲気もあります。これは別に自民党など与党だけでなく、自称野党第一党やその支持基盤の労働組合にも根強く感じます。筆者は、全国でとくに女性議員の応援に回りましたが、広島の政治の政策不在ぶりは群を抜いていました。あの河井案里さんの事件も起きるべくして起きたのです。

その延長線上に、たとえば、「産業廃棄物への規制が全国一緩い」「県による子ども医療費補助の対象が小学校就学前までに限られる」などの旧態依然たる政治になっています。

◆改革を装った知事や教育長も混乱招いただけ

一方、現知事の湯崎英彦さんには、筆者も2009年の初登場の時は期待してしまいました。IT企業ご出身ということで、「古臭い広島をアップデートしてくれるのではないか?」と考えた筆者も一票を湯崎英彦さんに投票しました。

 

高速道路5号線二葉山トンネル

しかし、湯崎さんが期待に応えてくれたのは住民参加で「鞆の浦埋め立て架橋」問題で、埋め立て架橋を取りやめて山側トンネルに変更するプロセスまででした。高速道路5号線二葉山トンネル問題では「住民を犠牲にしてまで工事することはない」と言いながらトラブル多発。それに対して湯崎さんは木で鼻を括る対応です。

また、湯崎さんが一本釣りしてきた平川理恵教育長は、学校現場で教員が不足し、非正規だらけで授業も回らない学校が多いのに、「予算がない」と非正規教員の正規化を拒否。一方で、県外のご自分のお友達のNPOや会社に県費を流し、地方自治法違反や官製談合防止法違反の容疑で告発されています。

◆「守旧派」と「ネオリベ派」の最悪のハイブリッドで広島衰退に拍車

総合すると、以下のようなことが言えます。

広島の指導層守旧派Aグループ=成功体験から卒業できていない古いタイプの役人や議員、一部大手組合幹部(いわゆる労働貴族)。旧来のモデルに基づいた開発を進め、若手を押さえつけてきた。建武の新政における北畠親房らに相当。

広島の指導層ネオリベ派Bグループ=「旧弊打破」に見えた湯崎知事や平川教育長。また、若者を非正規という形で疎外したまま、県外にお金を流し、県の衰退に拍車。建武の新政における後醍醐帝に相当。

そして、Aグループが主導してきた高速道路二葉山トンネルなどにBグループの知事は待ったをかけない。

Bグループのネオリベ派の知事や教育長の暴走に対しては、Aグループの守旧派もこれまでまったくチェックをしなかった(だから官製談合事件が起きた。)。

※関連記事 http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=45764

その結果として、社会風土は権威主義、経済政策はネオリベという最悪のハイブリッドになった。広島から若者が流出するのも当然です。

◆給料アップとアップデートの好循環を

これを脱却するには、逆に言えば、給料アップと社会のアップデートの好循環をつくるしかありません。

経済面では、
・教育長がやっているような怪しげな?外部委託を止め、正規公務員をふやし、県内定住の若者をふやす。
・農業など食料生産に携わる人に所得補償やコスト補償を行い、若者定住と食料自給率向上を図る。
が現実的に行政が直接的に関与できるやり方でしょう。また、
・使途が決まらない空きビル、空き工場用地などについて、若者に利用方法を任せるのも、手です。こうしたことで、若者に定着してもらうことは地域に刺激になり、アップデートにつながります。

政治面からのアップデートの加速については、今の現職の議員を総入れ替えするくらいの勢いの判断を有権者できれば展望が大きく開けるでしょう。ただ、現実問題としては、例えば、有権者として賢くなる教育を子ども時代からする、くらいのことを粘り強く続けるしかないとも考えています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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度々ご報告している通り、広島県教育長は腐りきっていますが、広島市教育委員会も暴走が止まりません。

ひとつは、「はだしのゲン」を小学生の平和教育の教材から削除するということです。

もうひとつは、同じように中学生の平和教育の教材から「第五福竜丸」を削除するということです。

 

故・中沢啓治さん(写真右、2011年8月6日撮影)

◆はだしのゲン削除強行

はだしのゲンは故・中沢啓治さんの不朽の名作です。現状では、広島市では小学校三年生の平和教材として使われています。これに対して、広島市教委は削除をすることを決定してしまいました。これに対して、被爆者団体からは相次いで削除に対して抗議の声が上がりました。

広島市教委も、結局、被爆者団体に対して、子どもたちがいつでも読めるようにするという趣旨の回答をせざるを得ない状況に追い込まれました。しかし、平和教材から削除されたのは残念です。

他人の池の鯉を盗むシーンについても、戦争というものが人々の暮らしを壊してしまうということをよく伝えていると思います。そのあたりは、きちんと先生が説明すれば、子どもたちが誤解するということはないと思います。

◆「はだしのゲン」削除は、教育委員会の暴走だった

平和教材の変更は、有識者による改訂会議を経てされた、とされています。しかし、真相は違うようです。日本共産党の近松議員は「有識者の改訂会議の議事録を読んだだけでは、はだしのゲンを削除する理由はみあたらない」と質問(13:21から)。しかし、13:50からの当局は、「教育委員会職務権限で決めた」と答弁しています。有識者の議論ではなく、当局が一方的に提案し、一方的に決めたのです。

◆第五福竜丸抜きには反核平和運動の歴史は語れぬ

1954年3月1日にアメリカが太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で多数の船舶や地元住民がヒバク。特に第五福竜丸の乗組員の久保山愛吉さんが亡くなったことで当時の日本人に衝撃を与えました。杉並区の主婦らの運動を契機に原水爆禁止運動が盛り上がり、1955年8月6日の第一回原水爆禁世界大会につながっていきます。

もちろん、ヒバクしたのは第五福竜丸だけではなく、高知県など多くの漁船がヒバクしました。そして、地元住民も多数ヒバクしました。従って、この水爆実験を第五福竜丸事件と呼んでしまうのは筆者にはためらわれますし、反核平和運動でも「ビキニデー」という言い方をします。だが、だからといって、第五福竜丸を削除してしまっては、反核平和運動の歴史の流れが意味不明になってしまいます。たとえは不適切かもしれませんが徳川家康の名前を知らないで江戸時代の歴史を学ぶのと同じような話です。

◆第五福竜丸も有識者会議とは全く相容れぬ

筆者の友人が入手した「第2回平和教育プログラム改訂会議 構成員発言内容概要」(2021年2月19日)の会議録には、次のような発言が載っています。この発言内容と、「削除」は、まったく相容れないのではないでしょうか。

▼中学校長の発言
「第五福竜丸の部分なのですが、単に被爆したということだけが載っています。さらに、指導案の方にも、被爆した、としか書かれていません。生徒にとっては、そんなことがあったのかということがピンとくるのか、こないのか、よくわからないところがあります。そこで、当時の船の記録が残っていると思うのですが、指導案の方にも、そういった資料を少しでも載せておけば、授業される先生方にとってよいのかなと思います。もちろん、本文に入ればよいのですが、難しいのであれば、補助資料として指導資料の方に載せておいてほしいと思います」

▼事務局説明(中学校)
「ありがとうございます。検討します」

▼(名前・肩書は黒塗り)
「第五福竜丸のことは歴史的に見ると他のいろいろなことに影響を及ばしたことなので、そういったことも入れながら、ということも検討していただきたいと思います」

このようなやりとりの結果が、なぜ「削除」という結論になるのでしょうか。さっぱりわかりません。

◆対米従属で暴走・迷走する総理への忖度か?

筆者は、市教委はどうも、地元選出の岸田総理に忖度しているのではないか?と思ってしまいます。実際に、知事の湯崎さんも市長の松井さんも地元選出の総理には忖度しまくりの雰囲気がビンビンに伝わってくるからです。

いま、地元選出の岸田総理の暴走・迷走が全国の皆様にご迷惑をおかけしています。このことを心からお詫び申し上げます。ロシアのウクライナ侵略に悪乗りした軍事費倍増・そのための大増税への暴走。そして、安全保障環境が危ないと言いながら有事に標的になりかねない原発は増やすという。低すぎる食料自給率にもほとんど無策。そんな迷走。

地元・広島でのG7サミットを目前に控えた岸田総理。アメリカの下請けをすることで、いわば「名誉白人」扱いしてもらっていい気になっているだけのようにも思えます。この点では、イランなどとの外交もそれなりに重視していた安倍晋三さんよりも酷いのです。

増やした軍事費で買った武器も実際には、アメリカに指揮権が実質的にはあるという有様。こうした中で、広島湾では、初めて、アメリカ軍の大型艦を使った大規模な米日共同軍事演習が行われました。

そのタイミングでの「はだしのゲン」「第五福竜丸」削除です。アメリカに都合が悪いことを削ろうというのではないか?

しかし、もし、筆者の危惧するような忖度だとしたら、逆に、その意図とは逆に、「はだしのゲン」や「第五福竜丸」に注目を集めてしまったのではないかとも思うのです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「文春砲」を契機に、ご出身地・京都のNPO法人「パンゲア」との官製談合事件が発覚。ご自身が外部の弁護士に依頼した調査でも、地方自治法違反、官製談合防止法違反が認定された広島県の平川理恵・教育長。

その後、大阪の「キャリアリンク」や、児童文学評論家の赤木かん子さんとの不適切な取引など、疑惑のデパート状態となっていました。
※参照記事 http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=45815

その平川教育長は、2月21日(火)、部下の当時課長級だった職員を不適切な契約に関与したとして戒告処分としました。そして、ご自身は給料3割を2か月返納することを表明し、教育長を続投することを表明しました。
 
◆図書館リニューアル、違法性はないが図書館の自由に関する宣言違反だ

この日、県教委が公表した内部調査結果では、県立学校の図書館リニューアル事業の指導を依頼している児童文学評論家の赤木かん子氏(東京)との取引に「違法性はない」と結論付けました。

ただ、赤木さんが関わった15校で、改装に伴い11万冊余りの蔵書を廃棄しています。

高校の先生などからは、廃棄した図書の代わりに小学生向けの赤木氏の著書を購入させられたなどといった不満の声が出ています。それはそうです。高校生が利用する図書館で、小学生向けの本を入れられても困ります。

赤木さんとの契約は、表面上は、法律違反では無いのかもしれません。しかし、全ての図書館の基礎となる「図書館の自由に関する宣言」には違反しています。

第1の2の(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。

まさに、県教委という組織、あるいは教育長とその腹心の圧力や干渉によって県立学校の学校図書館の図書館としての在り方を覆したわけです。

「人手がいなくて学校図書館自体のメンテナンスが進んでいない。傷んだ本も放置されていた。だから、図書館のリニューアルは必要だった」と教育長を擁護する方もおられます。

しかし、それなら、学校司書を例えば正規雇用で充実させるなどすれば良いのではないでしょうか?パンゲア、キャリアリンク、赤木かん子さんなど、県外にお金を渡すよりも、学校司書という形で県内に雇用を増やした方が、全国ワーストワンを記録し続ける広島の人口流出阻止にも資するわけです。

◆春闘の一環で教育委員会に申し入れ

2月24日、筆者らは、「ヒロシマ地域総行動」の一環として、広島県教委にも申し入れを行いました。このヒロシマ地域総行動は、毎年2月下旬くらいのこの時期、筆者も所属する広島県労連を含む県内の労働組合や市民団体などがいわゆる「春闘」の一環として、街頭で労働者・市民にアピールしたり、役所や企業、経営者団体と交渉したりするものです。

筆者は、この日は、「県教委『官製談合疑惑』をただす市民の会」の今谷賢二さんらと一緒に、県教委に向かいました。

県庁OBとして、平川教育長の横暴が許せないからです。もう一つは、平川教育長のまるで後醍醐帝のような横暴に振り回されている現場の先生や県教委の職員の皆様のことも、心配だからです。

対応されたのは、広島県教育委員会事務局管理部総務課秘書広報室長でした。

筆者らが2月24日に広島県教委に提出した申し入れ書

 

県教委の入っているビルの案内板

まず、教職員組合の方からは「少人数学級を早く拡大してほしい。広島県はいまや全国に後れをおっている」「先生の負担が増えないよう、ICT専門スタッフを拡充してほしい」「病休、介護休、産育休で教育に穴が開くことがないよう、代員を迅速に配置してほしい」などの切実な要望が出されました。

また、受験生の娘を抱える女性団体の方は「県立高校を安易に統廃合するのではなく、地元で安心して学べるよう存続を。」と訴えました。

筆者は、教育長の不正について要望。

「パンゲアの問題では不適切な契約に関与したとして部下が処分されたが、これは平川教育長の名前でされている。一番問題な人の名前でされている。」

「高校の先生がこの間、盗撮などで何人か懲戒免職になっているが、これも平川教育長の名前で処分されている。しかし、こんな問題を起こした人から処分されても締まらないのではないか?」

「赤木かん子さんとの取引は違法ではないと、県教委の報告書では言っておられる。しかし、11万冊も図書を廃棄させ、かわりに赤木かん子さんの本を買わせるとは、図書館の自由に関する宣言には違反している。違法でなければ何をしてもいいというわけではなかろう。」

「今の教育長のやっていることは後醍醐帝と一緒だ。現場を振り回しているだけで現場の先生もあなた方県教委の職員もしんどいのではないか?あなた方も、後醍醐帝に振り回された挙句、討ち死にした新田義貞や楠木正成のようにならないか、わたしは、県庁OBとして心配している。」
などと申し上げました。

元教員でもあり、教職員組合幹部を長年務められた今谷さんからも、
「教育長に不満があるから、それなりに責任ある立場の人から週刊誌などにリークがあるのではないか?」
「教育行政とはいったいどういうあるべきものか?ここに立ち返るべきだ。教育行政とは、現場が教育をやりやすいように、条件を整備していくことではないのか?上から教育の内容についてあれこれ指図をするものではないはずだ。」
「指導主事が何十人もいるのに、わざわざ外部の講師ばかり呼んでくるのもおかしいのではないか?士気が低下するのではないか?」
と畳みかけました。

また、今谷さんからは、今年から県立高校入試に導入された「自己表現」についても、
「プレゼンテーションを入試でやらせるのが、15歳という発達段階にあったものなのか?18歳の大学生がやっているからといって15歳でそれも入試の評価対象としてやらせるのは違うと思う。」
と苦言を呈し、筆者からも、
「広島の学校では、【寒い日でもジャンパーを着てくるな】という教育をずっとやっていたと先日ニュースで知りびっくりしている。そんな教育をずっと受けてきた子どもたちにいきなり、アメリカンなプレゼンテーションをさせる、というのは無理があるのではないか?」
と訴えました。

室長も、終始恐縮をされていました。

◆これで教育長を放免してはいけない

残念ながら、教育長も知事も、一連の事件についてこれで幕引きを図ろうとしています。本来ならば、教育長自ら同じビルの県警に自首すべき案件です。あるいは、知事が教育長を罷免した上で刑事告発するべき案件です。

また、自民、公明、立憲、国民などのいわゆる知事与党の県議も、表面上は教育長を批判しながらも、教育長の退陣までは求めていません。他の自治体では、教育長に問責決議を出した例もあります。(発議第四号 徳山順子教育長に対する問責決議について

だが、広島県議会ではそういう動きも見られません。

今後とも、筆者は、「現代広島の後醍醐帝」と化した平川教育長の退陣と事件の全容解明を求めていきます。そして、知事の湯崎英彦さんによる任命責任を追及していきます。

その上で、教育行政の在り方を、現場に上からあれこれ弄りまわすのではなく、現場がやりやすいように支援していくものに切り替えるよう提言していきます。また、県議選2023で当選した場合には、当然、議会で上記の方向でがんばっていきます。

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ご自身が懇意にしておられたNPO法人「パンゲア」への委託契約を巡り地方自治法違反、官製談合防止法違反が、県教委が外部に委託した弁護士による調査(以下、外部調査と略します)で明らかになった平川理恵・広島県教育長。

 

広島県教育委員会

平川教育長を巡ってはその後も、ご自宅にご自身が懇意にしておられた大阪の女性会社社長を宿泊させるなど、疑惑が噴出しています。そして、2022年12月21日、市民団体「県教委『官製談合疑惑』をただす市民の会」により広島地検に告発されました。しかしながら、平川教育長は2023年2月14日現在、居座っておられます。

◆調査結果を全面公開せず、3000万円近く県費投入

おまけに平川教育長は、弁護士による調査の内容も全面公開はしていません。県費を使って行ったにもかかわらずです。「公文書とは政府や官庁、地方公共団体の公務員が職務上作成した文書であるから今回の調査は公文書ではない」という理屈は成り立ちますが、県民感覚からはかけはなれています。

現在は、その県費を使った調査に3000万円近くかかったことが報道され、県議会でも、これまで知事や教育長を持ち上げてきた自民多数派や立憲民主党系の会派の議員からも批判されています。

◆お友達により教育行政私物化の限り

「市民の会」の今谷賢二さんによると、違法と認定された事業は今年度も契約が続いているそうです。しかも、外部調査は、100万円以下の契約は対象外でした。

情報公開で今谷さんが入手した資料でこれまで文春で取り上げられていない事業ではオンラインで問題のNPO法人を講師とした協議会があるそうです。これについては、県教委で協議して事業の方向が議論され事業化するならこの法人との間で随意契約に近い形でやる、という仕組みができているようにうかがわれるそうです。

福山市中心の公立学校図書館のリニューアルについても、パンゲアとは別の教育長のお友達が一手に引き受けているそうです。

教員に対する研修も、せっかく指導主事が公務員として県教委に多数いるのに、民間企業に委託して県費を使用しておられます。まさに、平川教育長とそのお友達が広島の教育行政を私物化しておられます。

◆非正規教員の正規化は「予算がない」と拒否

一方で、広島県内には県教委管轄で1000人以上、公立学校の非正規教員がおられます。そのために、授業が成り立たない学校も少なくありません。この非正規教員の正規化については、一部の保守系の議員からも正規化を求める声が上がっています。しかし、その質問に対して平川教育長の答弁は「予算がない」という木で鼻を括るものです。

お友達に仕事をさせるためには湯水のように県費を使うのに、子どもたちの教育環境を整えるために非正規の先生を正規にすることには県費がないという。平川教育長のこれまでやってこられた「改革」とは一体何なのでしょうか?

◆超権威主義の広島で高校入試にアメリカンな「自己表現」導入で混乱

平川教育長は、2023年の県立高校入試から「自己表現」を導入しました。自己表現は,「広島県の15歳の生徒に身に付けさせたい力」である「自己を認識し,自分の人生を選択し,表現することができる力」がどのくらい身に付いているかをみるために実施されるそうです。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/jikohyougen-mokuji.html

しかし、そもそも、これまで、入試を受ける中学生も、テストする先生=大人も、権威主義的な教育を受けて権威主義的な風土の中で育ってきたのです。

 

2023年1月25日、広島市に大雪が降った日(写真、筆者の自宅近く)

つい最近も、2023年1月25日、広島市に大雪が降った日にジャンパーを制服の上に着て登校した市立中学生にジャンパーを着てくるな、と先生が指導。その生徒はジャンパーを脱いで下校して翌日発熱するという事件が起きました。

結局、2月になって制服の上に上着を着るなというルールは見直されました。だが、そもそも、子どもに熱を出させるようでは何のためのルールかさっぱりわかりません。しかし、ルールを漫然と疑問に思わない雰囲気の中で、大人も子どもも育ってきたのです。平川教育長はアメリカンな教育を理想としておられるようですが、現状の日本にいきなり導入しても混乱を招くだけです。

まずは、「ジャンパーを着てくるな」事件のようなことが起きないようになり、ルールもみんなで見直そう、という気風にしていく方が先でしょう。入試に自己表現など、そもそもなじまないと筆者は考えますが、広島や日本の社会の権威主義がもっと解消してから導入の是非を検討しても遅くないのではないでしょうか?

◆一蓮托生? 必死で教育長を庇う知事

そもそもこんな教育長を任命したのは知事の湯崎英彦さんです。教育長と言えば、普通は県教委からの内部昇格か、1990年代末から広島でも慣例化していた文科省からのいわゆる「天下り」かが「慣例」です。

それが良いかどうかは別として、それをあえて破って、民間校長だった平川さんをわざわざ神奈川県から連れてきたのは湯崎さんです。その意味では任命責任は重いのです。

その湯崎さんは、2月13日の広島県議会2月定例会で外部調査経費について「必要な費用だった」と答弁しました。さらに、2021年に平川教育長を再任した判断についても「間違っていなかった」と開き直っておられます。

そもそも、平川教育長が「あんなこと」をしなければ不要な費用です。湯崎さんはどこまで教育長を庇うつもりなのでしょうか?非正規の先生を正規にするのについては「予算がない」と教育長が拒否しておられたのはなんだったのでしょうか?
否、庇わなければご自身にも任命責任が問われるからそれだけ必死になるのでしょう。まさに一蓮托生です。

◆「建武の新政」後醍醐帝にそっくりの両者、甘やかす自公・立憲の県議たち

それにしても、平川教育長・湯崎知事の両者を見て思い出すのは、「建武の新政」で悪名高い(?)後醍醐帝です。後醍醐帝は政策的には時代を先取りしすぎた(逆に言えば足利幕府も模倣した政策も多い)とされています。人事面では、宋の皇帝独裁を模倣し、摂関や幕府は廃止。通常は形式的な帝による役人(公武両方)の人事権をフル行使し、光厳帝の人事をすべてキャンセルした。両者により混乱を招いた。1991年の東大入試の日本史でも、腹心の北畠親房にさえ神皇正統記で強く批判されたことが紹介されています。

平川教育長は日本、それも全国でも最も保守的な部類の広島の風土に唐突なアメリカンな政策、例えば高校入試の自己表現などをいきなり導入した。一方で、人事権をフル行使した点も両者は後醍醐帝に似ている。湯崎さんは平川教育長を任命し、平川教育長は、自分のお友達に委託する事業ばかりにご執心で、指導主事など既存の仕組みを軽んじておられます。

そして、そんな「現代広島の後醍醐帝」ともいえる教育長や知事を甘やかしてきたのが自民、公明、立憲などの「知事与党」県議たちです。今頃になって、統一地方選が近いからかどうかわかりませんが、知事や教育長を批判しても、しらけます。北畠親房ですら、神皇正統記で後醍醐帝を批判しているのですから。しかし、北畠親房も後醍醐帝の生前にはちゃっかり取り入って、出世栄達しており、呆れたものです。

「知事与党」として散々知事や教育長を甘やかして、今頃になって批判するポーズをとる自公立国の県議と北畠親房は、うり二つです。統一地方選で厳しい審判が必要です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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月刊『紙の爆弾』2023年3月号

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筆者の自宅のある広島1区選出の岸田総理は年頭記者会見で「異次元の少子化対策」と並び「賃上げ」に意欲を示しました。一方で、厚生労働省によると2022年11月の実質賃金は前年同月比で3.8%減少でした。物価の大幅上昇に賃金が追い付いていません。これまで、特に2010年代くらいまでは賃金が上がらなくても、物価が上がらないデフレだったためになんとかなった人も、これではたまりません。例えば、20万円給料があった人が実質的に7600円も減ったら、大変です。賃金の大幅引き上げは必須です。

◆「実質賃金大幅減が成果」の総理の「賃上げ」、信用できぬ

総理の言葉に対して突っ込みたいこともたくさんあります。総理は確かに昨年、例えば介護労働者の給料アップを実行はしました。だが、その中身たるやたったの3%です。このところの物価上昇でそれは打ち消されています。他業種がインフレ手当を出すなどの中で、「人員確保効果」は全くと言っていいほど期待できません。
それどころか、筆者の勤務先でも、外国人労働者が広島から東京の介護施設へ流出しています。

また、カナダや豪州へ日本人が流出していることも2022年末は報道されました。

そもそも、総理の就任時の公約は賃金アップによる経済底上げです。そして「所得倍増」のはずでした。それがいつの間にか「資産所得倍増」になり、さらには「アメリカの武器会社の所得(?)倍増」に変質しています。

「去年、公約を実現できなかった男」が、今年またやります、と張り切っても素直に「はい、そうですか」とは言えません。

 

グラフ、筆者が所属する労働組合・広島県労連の2023新春街宣で配布したティッシュより

◆総理に先行されてしまう労働組合も情けない

しかしながら、総理にいわばメインの公約として「賃上げ」を言わせてしまう労働組合側も情けないものがあります。労働組合の役員の一人として、忸怩たる思いです。

人々の暮らしを守るための財政出動(福祉や教育の充実、公共投資、税や社会保険料負担軽減など)は政府=総理のメインの仕事です。しかし、賃上げそのものは基本的には労使交渉で決めるのが筋というものです。労働者はストを背景に闘うわけです。例えば、イギリスでは看護師でさえも史上初のストライキを行っています。翻って日本。地元の広島でも最大手のマツダの労働組合は、ベースアップは断念したという。最初から要求もしないでどうするのでしょうか?

日本の場合は自民党政治が、非正規労働を増やす政策を取り続けたこと、そして労働組合が自民党側の工作で力をそがれたこともあって、ここ20-30年、いわゆる失敗国家以外では唯一と言っていいほど、賃金が上がらない国に日本はなってしまいました。

こうしたことを背景に、安倍政権時代も含めてここ数年、自民党の総理が賃上げを「主唱」する構造になっています。

現在の日本は(労使交渉以外の)政治的な力が加わって労働者の給料が抑え込まれてきた時代が長かった以上、逆に政治的な力も借りて是正するのは「あり」だと考えます。

◆野党側も「労働者」の視点が不足した21世紀

これまで労働者の賃金が上がって来なかった背景として指摘したいのが、ここ20-30年の野党が、「市民」という視点は強くても「労働者」という視点が弱くなっていたことです。こうしたことを背景に「市民」のためのサービスは、子育てを中心に大昔に比べればそうはいっても充実してきました。しかし、その内実は、賃金の低い労働者に支えられております。非正規公務員。そして、介護などケア労働者。制度の運営の原理も介護保険にせよ、保育にせよ、昔に比べて市場原理主義です。そうなると当然、労働者の賃金も低く抑え込まれます。公務分野の賃金が低いことは、民間にも波及していきます。

大資本の政治部隊である自民党がこうした労働者の使い捨て、市場原理主義を進めてきたのは当然です。だが、野党も日本共産党など一部をのぞいてあまりにもこれらの問題に無頓着すぎました。各自治体での保育園はじめとするサービスの民営化条例などは、共産党などを除く多数で可決されてきたし、野党系と言われる首長のもとでさえも進められてきたのも歴史的事実です。

◆子ども支援など一定の前進も緊縮が敗着〈旧民主党政権〉

なお、リーマンショック以降くらいの野党(民主、社民は一時期与党だった時期もありますが)は、セーフティーネット充実に重点を置いていました。これ自体は間違いではありません。

昭和後期の日本ではセーフティ-ネットが家族主義であり、企業主義であったのは事実です。具体的には正社員であるお父さんがいる夫婦二人子ども二人の家庭が社会保障や教育などの仕組みを設計する上でのモデルとなっていました。そのモデルから外れた場合に非常に悲惨なことになりかねない欠点がありました。

それは、我々就職氷河期を中心に非正規労働者が増えてきた中でリーマンショックが襲ってきた2008-2009年ごろになってようやく大きく注目されるようになりました。

あの局面では、ひとまず、セーフティーネットを個人に適用していく方向に変えていく。そのことは絶対に必要だったし、筆者自身もそういう思いで、反貧困などの活動に参加していたのを記憶しています。一定程度の成果があったのも事実です。安倍総理、岸田総理がポーズではありますが、昔の自民党なら全く相手にしなかっただろう学費負担軽減に乗り出したのも、厚労省がコロナを受けて生活保護を受けやすくしたのも、民主党政権時の取り組みの延長線上にあったとは言えます。

他方で、民主党政権は痛恨の敗着をやってしまいました。2011年の東日本大震災の復興財源を増税とともに公務員給料カットでねん出したことです。公務員給料カットは与党だった民主党への反感を強め、民主党政権の崩壊を早めました。また、震災復興を理由に、民主党は介護労働者待遇改善を自民党以上にはしませんでした。そもそも、震災復興は設備投資と一緒だから、全額国債ないしお金を刷る、でよかったのです。これらの民主党の政策の結果、労働者全体の賃金も抑え込まれ、安倍晋三さん再登場の遠因になってしまいました。

◆政治的に困難な「賃上げなきセーフティーネット充実」

労働者の給料が異常に低すぎる状態のままでは、これ以上のセーフティーネット充実が難しいと感じています。 

第一に、現物給付のセーフティーネットを担う公務労働者の給料が低すぎれば担い手が確保できなくなるからです。 例えば、筆者が知るいわゆる左派系の活動家でもある公務労働者でさえも、生活保護者をうらやんでしまう方もおられます。その方も伺えば、非正規で低賃金です。「これはダメだ、と絶望して辞めていく人も多い」(広島県北部の市議)状態です。

第二に、人々の賃金が低すぎると、分断が広がるということが挙げられます。例えば低賃金で結婚も難しかった筆者の同世代の就職氷河期世代の中には、「最近は子どもへの支援ばかり優先されている」という不満の声も多くあります。また、いわゆる少子化対策(子どもへの支援は必要だが、少子化解消そのものを政策目標にすべきかどうかという議論は別途あります。) とやらが、万が一成功しても、成人後の賃金がこんなにひどいと、生まれた子どもも将来に希望が持てないでしょう。

◆賃上げなくして年金アップなし

なお、世論調査などで、年配者が一部野党の支持層には多いという指摘もあります。また実際に、野党支持者で、賃上げがインフレ加速、年金生活者の生活圧迫になることを危惧される方も筆者は存じています。

しかし、実際問題、仕組み上、賃金が上がらないと年金も上がりません。生活保護基準についても同様です。各野党もそこはきちんと支持者を説得していただきたいのです。

そうしないと、高齢者や生活保護受給者を攻撃して、現役世代に溜飲を下げてもらう傾向の強い「維新」に足をすくわれかねません。年金や生活保護を引き下げて低すぎる賃金に合わせるようなイメージを醸し出し、現役世代に溜飲を下げてもらう「維新」に対して野党(れいわ、共産、社民など。立憲は最近怪しいが)は「低すぎる賃金を上げる」方向で徹底的に闘うべきです。

◆総理との差別化は「賃上げへの熱心さ」で

また、岸田総理が賃上げを打ち出す中で、立憲や共産など既存野党は選択的夫婦別姓や同性婚などいわゆるジェンダー問題に訴えの力点が行き過ぎているように思えます。もちろん、筆者もそれらを軽視するわけではありません。筆者自身も戸籍上は妻の姓にしており、結婚時には様々な不便も感じました。

ただし、少なくとも筆者の同僚の女性労働者にとっても賃上げの方が切実な関心事項のようです。選択的夫婦別姓推進を訴えたからといって、彼女らの野党への支持が高まるとは思えません。

野党は与党・総理との差別化を打ち出そうというのはわかります。それならば、賃上げを「口先だけ」でも出してきた岸田総理に対して、昨年2022年も彼がやるといっておきながら十分にやらなかったことをきちんと指摘。「野党側こそ賃上げに熱心である」ということで差別化すべきです。

◆「労働貴族」は大問題だが「労働運動」は今こそ必要

かつて、野党が労働組合に選挙運動を依存しすぎてきたことは各野党の独自の足腰を弱めました。特に広島の場合は、武器や原発製造の大手企業の労働組合に旧民主党系が依存してきたために、自民党との政策の違いが中央におけるそれよりも分かりにくくなっています。また、労働組合の推薦を得ながら公務労働者の賃下げに賛成するなど、労働者の票を食い逃げしてきたいわゆる「労働貴族」系政治家の問題もあります。

こうしたことを背景に、「労働貴族」(系政治家)を嫌う勢い余って、「労働運動」ひいては「労働者の権利」そのものも軽視する方も少なくない。お気持ちはわからなくはないが、そこは踏みとどまりたいところです。

◆「現役労働者」政治家として他野党にも奮起を促す

 

筆者の政治活動ポスター

筆者は、今後とも、特に地方、それも広島の賃金引き上げを軸に労働運動、政治活動両面で注力します。現役労働者でもある筆者が労働者の賃金大幅アップに注力することで、他の野党政治家も危機感を持って取り組んでいただければ、広島での野党の伸びにつながるでしょう。ひいては武器倍増やそのための増税などで暴走する地元選出の総理の暴走にブレーキをかける一助になると期待しています。

◎筆者の政治活動へのカンパ先
郵便振替口座 01330-0-49219 さとうしゅういちネット
広島銀行本店(店番001) 普通 口座番号3783741 さとうしゅういちネット

ただし、ご寄付頂けるのは日本国籍の方、そして一人年間150万円以下に制限されます。また、
・年間5万円を超えてご寄付頂いた方
・筆者への寄附による所得税の控除を受けられたい方については、法の定めるところにより、政治資金収支報告書等で筆者からご住所・ご氏名・ご職業を広島県選挙管理委員会に報告させていただきます。何卒ご了承ください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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