対米従属で暴走する岸田総理への忖度か?! 「はだしのゲン」そして「第五福竜丸」を強行削除する広島市教育委員会の腐朽 さとうしゅういち

度々ご報告している通り、広島県教育長は腐りきっていますが、広島市教育委員会も暴走が止まりません。

ひとつは、「はだしのゲン」を小学生の平和教育の教材から削除するということです。

もうひとつは、同じように中学生の平和教育の教材から「第五福竜丸」を削除するということです。

 
故・中沢啓治さん(写真右、2011年8月6日撮影)

◆はだしのゲン削除強行

はだしのゲンは故・中沢啓治さんの不朽の名作です。現状では、広島市では小学校三年生の平和教材として使われています。これに対して、広島市教委は削除をすることを決定してしまいました。これに対して、被爆者団体からは相次いで削除に対して抗議の声が上がりました。

広島市教委も、結局、被爆者団体に対して、子どもたちがいつでも読めるようにするという趣旨の回答をせざるを得ない状況に追い込まれました。しかし、平和教材から削除されたのは残念です。

他人の池の鯉を盗むシーンについても、戦争というものが人々の暮らしを壊してしまうということをよく伝えていると思います。そのあたりは、きちんと先生が説明すれば、子どもたちが誤解するということはないと思います。

◆「はだしのゲン」削除は、教育委員会の暴走だった

平和教材の変更は、有識者による改訂会議を経てされた、とされています。しかし、真相は違うようです。日本共産党の近松議員は「有識者の改訂会議の議事録を読んだだけでは、はだしのゲンを削除する理由はみあたらない」と質問(13:21から)。しかし、13:50からの当局は、「教育委員会職務権限で決めた」と答弁しています。有識者の議論ではなく、当局が一方的に提案し、一方的に決めたのです。

◆第五福竜丸抜きには反核平和運動の歴史は語れぬ

1954年3月1日にアメリカが太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で多数の船舶や地元住民がヒバク。特に第五福竜丸の乗組員の久保山愛吉さんが亡くなったことで当時の日本人に衝撃を与えました。杉並区の主婦らの運動を契機に原水爆禁止運動が盛り上がり、1955年8月6日の第一回原水爆禁世界大会につながっていきます。

もちろん、ヒバクしたのは第五福竜丸だけではなく、高知県など多くの漁船がヒバクしました。そして、地元住民も多数ヒバクしました。従って、この水爆実験を第五福竜丸事件と呼んでしまうのは筆者にはためらわれますし、反核平和運動でも「ビキニデー」という言い方をします。だが、だからといって、第五福竜丸を削除してしまっては、反核平和運動の歴史の流れが意味不明になってしまいます。たとえは不適切かもしれませんが徳川家康の名前を知らないで江戸時代の歴史を学ぶのと同じような話です。

◆第五福竜丸も有識者会議とは全く相容れぬ

筆者の友人が入手した「第2回平和教育プログラム改訂会議 構成員発言内容概要」(2021年2月19日)の会議録には、次のような発言が載っています。この発言内容と、「削除」は、まったく相容れないのではないでしょうか。

▼中学校長の発言
「第五福竜丸の部分なのですが、単に被爆したということだけが載っています。さらに、指導案の方にも、被爆した、としか書かれていません。生徒にとっては、そんなことがあったのかということがピンとくるのか、こないのか、よくわからないところがあります。そこで、当時の船の記録が残っていると思うのですが、指導案の方にも、そういった資料を少しでも載せておけば、授業される先生方にとってよいのかなと思います。もちろん、本文に入ればよいのですが、難しいのであれば、補助資料として指導資料の方に載せておいてほしいと思います」

▼事務局説明(中学校)
「ありがとうございます。検討します」

▼(名前・肩書は黒塗り)
「第五福竜丸のことは歴史的に見ると他のいろいろなことに影響を及ばしたことなので、そういったことも入れながら、ということも検討していただきたいと思います」

このようなやりとりの結果が、なぜ「削除」という結論になるのでしょうか。さっぱりわかりません。

◆対米従属で暴走・迷走する総理への忖度か?

筆者は、市教委はどうも、地元選出の岸田総理に忖度しているのではないか?と思ってしまいます。実際に、知事の湯崎さんも市長の松井さんも地元選出の総理には忖度しまくりの雰囲気がビンビンに伝わってくるからです。

いま、地元選出の岸田総理の暴走・迷走が全国の皆様にご迷惑をおかけしています。このことを心からお詫び申し上げます。ロシアのウクライナ侵略に悪乗りした軍事費倍増・そのための大増税への暴走。そして、安全保障環境が危ないと言いながら有事に標的になりかねない原発は増やすという。低すぎる食料自給率にもほとんど無策。そんな迷走。

地元・広島でのG7サミットを目前に控えた岸田総理。アメリカの下請けをすることで、いわば「名誉白人」扱いしてもらっていい気になっているだけのようにも思えます。この点では、イランなどとの外交もそれなりに重視していた安倍晋三さんよりも酷いのです。

増やした軍事費で買った武器も実際には、アメリカに指揮権が実質的にはあるという有様。こうした中で、広島湾では、初めて、アメリカ軍の大型艦を使った大規模な米日共同軍事演習が行われました。

そのタイミングでの「はだしのゲン」「第五福竜丸」削除です。アメリカに都合が悪いことを削ろうというのではないか?

しかし、もし、筆者の危惧するような忖度だとしたら、逆に、その意図とは逆に、「はだしのゲン」や「第五福竜丸」に注目を集めてしまったのではないかとも思うのです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

官製談合発覚で疑惑のデパート化する広島県教育委員会へ筆者らが申し入れ!「君、平川教育長に振り回され、討ち死にすることなかれ」 さとうしゅういち

「文春砲」を契機に、ご出身地・京都のNPO法人「パンゲア」との官製談合事件が発覚。ご自身が外部の弁護士に依頼した調査でも、地方自治法違反、官製談合防止法違反が認定された広島県の平川理恵・教育長。

その後、大阪の「キャリアリンク」や、児童文学評論家の赤木かん子さんとの不適切な取引など、疑惑のデパート状態となっていました。
※参照記事 http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=45815

その平川教育長は、2月21日(火)、部下の当時課長級だった職員を不適切な契約に関与したとして戒告処分としました。そして、ご自身は給料3割を2か月返納することを表明し、教育長を続投することを表明しました。
 
◆図書館リニューアル、違法性はないが図書館の自由に関する宣言違反だ

この日、県教委が公表した内部調査結果では、県立学校の図書館リニューアル事業の指導を依頼している児童文学評論家の赤木かん子氏(東京)との取引に「違法性はない」と結論付けました。

ただ、赤木さんが関わった15校で、改装に伴い11万冊余りの蔵書を廃棄しています。

高校の先生などからは、廃棄した図書の代わりに小学生向けの赤木氏の著書を購入させられたなどといった不満の声が出ています。それはそうです。高校生が利用する図書館で、小学生向けの本を入れられても困ります。

赤木さんとの契約は、表面上は、法律違反では無いのかもしれません。しかし、全ての図書館の基礎となる「図書館の自由に関する宣言」には違反しています。

第1の2の(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。

まさに、県教委という組織、あるいは教育長とその腹心の圧力や干渉によって県立学校の学校図書館の図書館としての在り方を覆したわけです。

「人手がいなくて学校図書館自体のメンテナンスが進んでいない。傷んだ本も放置されていた。だから、図書館のリニューアルは必要だった」と教育長を擁護する方もおられます。

しかし、それなら、学校司書を例えば正規雇用で充実させるなどすれば良いのではないでしょうか?パンゲア、キャリアリンク、赤木かん子さんなど、県外にお金を渡すよりも、学校司書という形で県内に雇用を増やした方が、全国ワーストワンを記録し続ける広島の人口流出阻止にも資するわけです。

◆春闘の一環で教育委員会に申し入れ

2月24日、筆者らは、「ヒロシマ地域総行動」の一環として、広島県教委にも申し入れを行いました。このヒロシマ地域総行動は、毎年2月下旬くらいのこの時期、筆者も所属する広島県労連を含む県内の労働組合や市民団体などがいわゆる「春闘」の一環として、街頭で労働者・市民にアピールしたり、役所や企業、経営者団体と交渉したりするものです。

筆者は、この日は、「県教委『官製談合疑惑』をただす市民の会」の今谷賢二さんらと一緒に、県教委に向かいました。

県庁OBとして、平川教育長の横暴が許せないからです。もう一つは、平川教育長のまるで後醍醐帝のような横暴に振り回されている現場の先生や県教委の職員の皆様のことも、心配だからです。

対応されたのは、広島県教育委員会事務局管理部総務課秘書広報室長でした。

筆者らが2月24日に広島県教委に提出した申し入れ書
 
県教委の入っているビルの案内板

まず、教職員組合の方からは「少人数学級を早く拡大してほしい。広島県はいまや全国に後れをおっている」「先生の負担が増えないよう、ICT専門スタッフを拡充してほしい」「病休、介護休、産育休で教育に穴が開くことがないよう、代員を迅速に配置してほしい」などの切実な要望が出されました。

また、受験生の娘を抱える女性団体の方は「県立高校を安易に統廃合するのではなく、地元で安心して学べるよう存続を。」と訴えました。

筆者は、教育長の不正について要望。

「パンゲアの問題では不適切な契約に関与したとして部下が処分されたが、これは平川教育長の名前でされている。一番問題な人の名前でされている。」

「高校の先生がこの間、盗撮などで何人か懲戒免職になっているが、これも平川教育長の名前で処分されている。しかし、こんな問題を起こした人から処分されても締まらないのではないか?」

「赤木かん子さんとの取引は違法ではないと、県教委の報告書では言っておられる。しかし、11万冊も図書を廃棄させ、かわりに赤木かん子さんの本を買わせるとは、図書館の自由に関する宣言には違反している。違法でなければ何をしてもいいというわけではなかろう。」

「今の教育長のやっていることは後醍醐帝と一緒だ。現場を振り回しているだけで現場の先生もあなた方県教委の職員もしんどいのではないか?あなた方も、後醍醐帝に振り回された挙句、討ち死にした新田義貞や楠木正成のようにならないか、わたしは、県庁OBとして心配している。」
などと申し上げました。

元教員でもあり、教職員組合幹部を長年務められた今谷さんからも、
「教育長に不満があるから、それなりに責任ある立場の人から週刊誌などにリークがあるのではないか?」
「教育行政とはいったいどういうあるべきものか?ここに立ち返るべきだ。教育行政とは、現場が教育をやりやすいように、条件を整備していくことではないのか?上から教育の内容についてあれこれ指図をするものではないはずだ。」
「指導主事が何十人もいるのに、わざわざ外部の講師ばかり呼んでくるのもおかしいのではないか?士気が低下するのではないか?」
と畳みかけました。

また、今谷さんからは、今年から県立高校入試に導入された「自己表現」についても、
「プレゼンテーションを入試でやらせるのが、15歳という発達段階にあったものなのか?18歳の大学生がやっているからといって15歳でそれも入試の評価対象としてやらせるのは違うと思う。」
と苦言を呈し、筆者からも、
「広島の学校では、【寒い日でもジャンパーを着てくるな】という教育をずっとやっていたと先日ニュースで知りびっくりしている。そんな教育をずっと受けてきた子どもたちにいきなり、アメリカンなプレゼンテーションをさせる、というのは無理があるのではないか?」
と訴えました。

室長も、終始恐縮をされていました。

◆これで教育長を放免してはいけない

残念ながら、教育長も知事も、一連の事件についてこれで幕引きを図ろうとしています。本来ならば、教育長自ら同じビルの県警に自首すべき案件です。あるいは、知事が教育長を罷免した上で刑事告発するべき案件です。

また、自民、公明、立憲、国民などのいわゆる知事与党の県議も、表面上は教育長を批判しながらも、教育長の退陣までは求めていません。他の自治体では、教育長に問責決議を出した例もあります。(発議第四号 徳山順子教育長に対する問責決議について

だが、広島県議会ではそういう動きも見られません。

今後とも、筆者は、「現代広島の後醍醐帝」と化した平川教育長の退陣と事件の全容解明を求めていきます。そして、知事の湯崎英彦さんによる任命責任を追及していきます。

その上で、教育行政の在り方を、現場に上からあれこれ弄りまわすのではなく、現場がやりやすいように支援していくものに切り替えるよう提言していきます。また、県議選2023で当選した場合には、当然、議会で上記の方向でがんばっていきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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月刊『紙の爆弾』2023年3月号

一蓮托生? 広島・平川理恵県教育長と湯崎英彦知事の暴走が止まらない! 湯崎知事は「現代広島の後醍醐帝」か? さとうしゅういち

ご自身が懇意にしておられたNPO法人「パンゲア」への委託契約を巡り地方自治法違反、官製談合防止法違反が、県教委が外部に委託した弁護士による調査(以下、外部調査と略します)で明らかになった平川理恵・広島県教育長。

 
広島県教育委員会

平川教育長を巡ってはその後も、ご自宅にご自身が懇意にしておられた大阪の女性会社社長を宿泊させるなど、疑惑が噴出しています。そして、2022年12月21日、市民団体「県教委『官製談合疑惑』をただす市民の会」により広島地検に告発されました。しかしながら、平川教育長は2023年2月14日現在、居座っておられます。

◆調査結果を全面公開せず、3000万円近く県費投入

おまけに平川教育長は、弁護士による調査の内容も全面公開はしていません。県費を使って行ったにもかかわらずです。「公文書とは政府や官庁、地方公共団体の公務員が職務上作成した文書であるから今回の調査は公文書ではない」という理屈は成り立ちますが、県民感覚からはかけはなれています。

現在は、その県費を使った調査に3000万円近くかかったことが報道され、県議会でも、これまで知事や教育長を持ち上げてきた自民多数派や立憲民主党系の会派の議員からも批判されています。

◆お友達により教育行政私物化の限り

「市民の会」の今谷賢二さんによると、違法と認定された事業は今年度も契約が続いているそうです。しかも、外部調査は、100万円以下の契約は対象外でした。

情報公開で今谷さんが入手した資料でこれまで文春で取り上げられていない事業ではオンラインで問題のNPO法人を講師とした協議会があるそうです。これについては、県教委で協議して事業の方向が議論され事業化するならこの法人との間で随意契約に近い形でやる、という仕組みができているようにうかがわれるそうです。

福山市中心の公立学校図書館のリニューアルについても、パンゲアとは別の教育長のお友達が一手に引き受けているそうです。

教員に対する研修も、せっかく指導主事が公務員として県教委に多数いるのに、民間企業に委託して県費を使用しておられます。まさに、平川教育長とそのお友達が広島の教育行政を私物化しておられます。

◆非正規教員の正規化は「予算がない」と拒否

一方で、広島県内には県教委管轄で1000人以上、公立学校の非正規教員がおられます。そのために、授業が成り立たない学校も少なくありません。この非正規教員の正規化については、一部の保守系の議員からも正規化を求める声が上がっています。しかし、その質問に対して平川教育長の答弁は「予算がない」という木で鼻を括るものです。

お友達に仕事をさせるためには湯水のように県費を使うのに、子どもたちの教育環境を整えるために非正規の先生を正規にすることには県費がないという。平川教育長のこれまでやってこられた「改革」とは一体何なのでしょうか?

◆超権威主義の広島で高校入試にアメリカンな「自己表現」導入で混乱

平川教育長は、2023年の県立高校入試から「自己表現」を導入しました。自己表現は,「広島県の15歳の生徒に身に付けさせたい力」である「自己を認識し,自分の人生を選択し,表現することができる力」がどのくらい身に付いているかをみるために実施されるそうです。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/jikohyougen-mokuji.html

しかし、そもそも、これまで、入試を受ける中学生も、テストする先生=大人も、権威主義的な教育を受けて権威主義的な風土の中で育ってきたのです。

 
2023年1月25日、広島市に大雪が降った日(写真、筆者の自宅近く)

つい最近も、2023年1月25日、広島市に大雪が降った日にジャンパーを制服の上に着て登校した市立中学生にジャンパーを着てくるな、と先生が指導。その生徒はジャンパーを脱いで下校して翌日発熱するという事件が起きました。

結局、2月になって制服の上に上着を着るなというルールは見直されました。だが、そもそも、子どもに熱を出させるようでは何のためのルールかさっぱりわかりません。しかし、ルールを漫然と疑問に思わない雰囲気の中で、大人も子どもも育ってきたのです。平川教育長はアメリカンな教育を理想としておられるようですが、現状の日本にいきなり導入しても混乱を招くだけです。

まずは、「ジャンパーを着てくるな」事件のようなことが起きないようになり、ルールもみんなで見直そう、という気風にしていく方が先でしょう。入試に自己表現など、そもそもなじまないと筆者は考えますが、広島や日本の社会の権威主義がもっと解消してから導入の是非を検討しても遅くないのではないでしょうか?

◆一蓮托生? 必死で教育長を庇う知事

そもそもこんな教育長を任命したのは知事の湯崎英彦さんです。教育長と言えば、普通は県教委からの内部昇格か、1990年代末から広島でも慣例化していた文科省からのいわゆる「天下り」かが「慣例」です。

それが良いかどうかは別として、それをあえて破って、民間校長だった平川さんをわざわざ神奈川県から連れてきたのは湯崎さんです。その意味では任命責任は重いのです。

その湯崎さんは、2月13日の広島県議会2月定例会で外部調査経費について「必要な費用だった」と答弁しました。さらに、2021年に平川教育長を再任した判断についても「間違っていなかった」と開き直っておられます。

そもそも、平川教育長が「あんなこと」をしなければ不要な費用です。湯崎さんはどこまで教育長を庇うつもりなのでしょうか?非正規の先生を正規にするのについては「予算がない」と教育長が拒否しておられたのはなんだったのでしょうか?
否、庇わなければご自身にも任命責任が問われるからそれだけ必死になるのでしょう。まさに一蓮托生です。

◆「建武の新政」後醍醐帝にそっくりの両者、甘やかす自公・立憲の県議たち

それにしても、平川教育長・湯崎知事の両者を見て思い出すのは、「建武の新政」で悪名高い(?)後醍醐帝です。後醍醐帝は政策的には時代を先取りしすぎた(逆に言えば足利幕府も模倣した政策も多い)とされています。人事面では、宋の皇帝独裁を模倣し、摂関や幕府は廃止。通常は形式的な帝による役人(公武両方)の人事権をフル行使し、光厳帝の人事をすべてキャンセルした。両者により混乱を招いた。1991年の東大入試の日本史でも、腹心の北畠親房にさえ神皇正統記で強く批判されたことが紹介されています。

平川教育長は日本、それも全国でも最も保守的な部類の広島の風土に唐突なアメリカンな政策、例えば高校入試の自己表現などをいきなり導入した。一方で、人事権をフル行使した点も両者は後醍醐帝に似ている。湯崎さんは平川教育長を任命し、平川教育長は、自分のお友達に委託する事業ばかりにご執心で、指導主事など既存の仕組みを軽んじておられます。

そして、そんな「現代広島の後醍醐帝」ともいえる教育長や知事を甘やかしてきたのが自民、公明、立憲などの「知事与党」県議たちです。今頃になって、統一地方選が近いからかどうかわかりませんが、知事や教育長を批判しても、しらけます。北畠親房ですら、神皇正統記で後醍醐帝を批判しているのですから。しかし、北畠親房も後醍醐帝の生前にはちゃっかり取り入って、出世栄達しており、呆れたものです。

「知事与党」として散々知事や教育長を甘やかして、今頃になって批判するポーズをとる自公立国の県議と北畠親房は、うり二つです。統一地方選で厳しい審判が必要です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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月刊『紙の爆弾』2023年3月号

今年こそ、分断修復へガツンと賃上げ! 野党・労組は総理に後れを取るな!  さとうしゅういち

筆者の自宅のある広島1区選出の岸田総理は年頭記者会見で「異次元の少子化対策」と並び「賃上げ」に意欲を示しました。一方で、厚生労働省によると2022年11月の実質賃金は前年同月比で3.8%減少でした。物価の大幅上昇に賃金が追い付いていません。これまで、特に2010年代くらいまでは賃金が上がらなくても、物価が上がらないデフレだったためになんとかなった人も、これではたまりません。例えば、20万円給料があった人が実質的に7600円も減ったら、大変です。賃金の大幅引き上げは必須です。

◆「実質賃金大幅減が成果」の総理の「賃上げ」、信用できぬ

総理の言葉に対して突っ込みたいこともたくさんあります。総理は確かに昨年、例えば介護労働者の給料アップを実行はしました。だが、その中身たるやたったの3%です。このところの物価上昇でそれは打ち消されています。他業種がインフレ手当を出すなどの中で、「人員確保効果」は全くと言っていいほど期待できません。
それどころか、筆者の勤務先でも、外国人労働者が広島から東京の介護施設へ流出しています。

また、カナダや豪州へ日本人が流出していることも2022年末は報道されました。

そもそも、総理の就任時の公約は賃金アップによる経済底上げです。そして「所得倍増」のはずでした。それがいつの間にか「資産所得倍増」になり、さらには「アメリカの武器会社の所得(?)倍増」に変質しています。

「去年、公約を実現できなかった男」が、今年またやります、と張り切っても素直に「はい、そうですか」とは言えません。

 
グラフ、筆者が所属する労働組合・広島県労連の2023新春街宣で配布したティッシュより

◆総理に先行されてしまう労働組合も情けない

しかしながら、総理にいわばメインの公約として「賃上げ」を言わせてしまう労働組合側も情けないものがあります。労働組合の役員の一人として、忸怩たる思いです。

人々の暮らしを守るための財政出動(福祉や教育の充実、公共投資、税や社会保険料負担軽減など)は政府=総理のメインの仕事です。しかし、賃上げそのものは基本的には労使交渉で決めるのが筋というものです。労働者はストを背景に闘うわけです。例えば、イギリスでは看護師でさえも史上初のストライキを行っています。翻って日本。地元の広島でも最大手のマツダの労働組合は、ベースアップは断念したという。最初から要求もしないでどうするのでしょうか?

日本の場合は自民党政治が、非正規労働を増やす政策を取り続けたこと、そして労働組合が自民党側の工作で力をそがれたこともあって、ここ20-30年、いわゆる失敗国家以外では唯一と言っていいほど、賃金が上がらない国に日本はなってしまいました。

こうしたことを背景に、安倍政権時代も含めてここ数年、自民党の総理が賃上げを「主唱」する構造になっています。

現在の日本は(労使交渉以外の)政治的な力が加わって労働者の給料が抑え込まれてきた時代が長かった以上、逆に政治的な力も借りて是正するのは「あり」だと考えます。

◆野党側も「労働者」の視点が不足した21世紀

これまで労働者の賃金が上がって来なかった背景として指摘したいのが、ここ20-30年の野党が、「市民」という視点は強くても「労働者」という視点が弱くなっていたことです。こうしたことを背景に「市民」のためのサービスは、子育てを中心に大昔に比べればそうはいっても充実してきました。しかし、その内実は、賃金の低い労働者に支えられております。非正規公務員。そして、介護などケア労働者。制度の運営の原理も介護保険にせよ、保育にせよ、昔に比べて市場原理主義です。そうなると当然、労働者の賃金も低く抑え込まれます。公務分野の賃金が低いことは、民間にも波及していきます。

大資本の政治部隊である自民党がこうした労働者の使い捨て、市場原理主義を進めてきたのは当然です。だが、野党も日本共産党など一部をのぞいてあまりにもこれらの問題に無頓着すぎました。各自治体での保育園はじめとするサービスの民営化条例などは、共産党などを除く多数で可決されてきたし、野党系と言われる首長のもとでさえも進められてきたのも歴史的事実です。

◆子ども支援など一定の前進も緊縮が敗着〈旧民主党政権〉

なお、リーマンショック以降くらいの野党(民主、社民は一時期与党だった時期もありますが)は、セーフティーネット充実に重点を置いていました。これ自体は間違いではありません。

昭和後期の日本ではセーフティ-ネットが家族主義であり、企業主義であったのは事実です。具体的には正社員であるお父さんがいる夫婦二人子ども二人の家庭が社会保障や教育などの仕組みを設計する上でのモデルとなっていました。そのモデルから外れた場合に非常に悲惨なことになりかねない欠点がありました。

それは、我々就職氷河期を中心に非正規労働者が増えてきた中でリーマンショックが襲ってきた2008-2009年ごろになってようやく大きく注目されるようになりました。

あの局面では、ひとまず、セーフティーネットを個人に適用していく方向に変えていく。そのことは絶対に必要だったし、筆者自身もそういう思いで、反貧困などの活動に参加していたのを記憶しています。一定程度の成果があったのも事実です。安倍総理、岸田総理がポーズではありますが、昔の自民党なら全く相手にしなかっただろう学費負担軽減に乗り出したのも、厚労省がコロナを受けて生活保護を受けやすくしたのも、民主党政権時の取り組みの延長線上にあったとは言えます。

他方で、民主党政権は痛恨の敗着をやってしまいました。2011年の東日本大震災の復興財源を増税とともに公務員給料カットでねん出したことです。公務員給料カットは与党だった民主党への反感を強め、民主党政権の崩壊を早めました。また、震災復興を理由に、民主党は介護労働者待遇改善を自民党以上にはしませんでした。そもそも、震災復興は設備投資と一緒だから、全額国債ないしお金を刷る、でよかったのです。これらの民主党の政策の結果、労働者全体の賃金も抑え込まれ、安倍晋三さん再登場の遠因になってしまいました。

◆政治的に困難な「賃上げなきセーフティーネット充実」

労働者の給料が異常に低すぎる状態のままでは、これ以上のセーフティーネット充実が難しいと感じています。 

第一に、現物給付のセーフティーネットを担う公務労働者の給料が低すぎれば担い手が確保できなくなるからです。 例えば、筆者が知るいわゆる左派系の活動家でもある公務労働者でさえも、生活保護者をうらやんでしまう方もおられます。その方も伺えば、非正規で低賃金です。「これはダメだ、と絶望して辞めていく人も多い」(広島県北部の市議)状態です。

第二に、人々の賃金が低すぎると、分断が広がるということが挙げられます。例えば低賃金で結婚も難しかった筆者の同世代の就職氷河期世代の中には、「最近は子どもへの支援ばかり優先されている」という不満の声も多くあります。また、いわゆる少子化対策(子どもへの支援は必要だが、少子化解消そのものを政策目標にすべきかどうかという議論は別途あります。) とやらが、万が一成功しても、成人後の賃金がこんなにひどいと、生まれた子どもも将来に希望が持てないでしょう。

◆賃上げなくして年金アップなし

なお、世論調査などで、年配者が一部野党の支持層には多いという指摘もあります。また実際に、野党支持者で、賃上げがインフレ加速、年金生活者の生活圧迫になることを危惧される方も筆者は存じています。

しかし、実際問題、仕組み上、賃金が上がらないと年金も上がりません。生活保護基準についても同様です。各野党もそこはきちんと支持者を説得していただきたいのです。

そうしないと、高齢者や生活保護受給者を攻撃して、現役世代に溜飲を下げてもらう傾向の強い「維新」に足をすくわれかねません。年金や生活保護を引き下げて低すぎる賃金に合わせるようなイメージを醸し出し、現役世代に溜飲を下げてもらう「維新」に対して野党(れいわ、共産、社民など。立憲は最近怪しいが)は「低すぎる賃金を上げる」方向で徹底的に闘うべきです。

◆総理との差別化は「賃上げへの熱心さ」で

また、岸田総理が賃上げを打ち出す中で、立憲や共産など既存野党は選択的夫婦別姓や同性婚などいわゆるジェンダー問題に訴えの力点が行き過ぎているように思えます。もちろん、筆者もそれらを軽視するわけではありません。筆者自身も戸籍上は妻の姓にしており、結婚時には様々な不便も感じました。

ただし、少なくとも筆者の同僚の女性労働者にとっても賃上げの方が切実な関心事項のようです。選択的夫婦別姓推進を訴えたからといって、彼女らの野党への支持が高まるとは思えません。

野党は与党・総理との差別化を打ち出そうというのはわかります。それならば、賃上げを「口先だけ」でも出してきた岸田総理に対して、昨年2022年も彼がやるといっておきながら十分にやらなかったことをきちんと指摘。「野党側こそ賃上げに熱心である」ということで差別化すべきです。

◆「労働貴族」は大問題だが「労働運動」は今こそ必要

かつて、野党が労働組合に選挙運動を依存しすぎてきたことは各野党の独自の足腰を弱めました。特に広島の場合は、武器や原発製造の大手企業の労働組合に旧民主党系が依存してきたために、自民党との政策の違いが中央におけるそれよりも分かりにくくなっています。また、労働組合の推薦を得ながら公務労働者の賃下げに賛成するなど、労働者の票を食い逃げしてきたいわゆる「労働貴族」系政治家の問題もあります。

こうしたことを背景に、「労働貴族」(系政治家)を嫌う勢い余って、「労働運動」ひいては「労働者の権利」そのものも軽視する方も少なくない。お気持ちはわからなくはないが、そこは踏みとどまりたいところです。

◆「現役労働者」政治家として他野党にも奮起を促す

 
筆者の政治活動ポスター

筆者は、今後とも、特に地方、それも広島の賃金引き上げを軸に労働運動、政治活動両面で注力します。現役労働者でもある筆者が労働者の賃金大幅アップに注力することで、他の野党政治家も危機感を持って取り組んでいただければ、広島での野党の伸びにつながるでしょう。ひいては武器倍増やそのための増税などで暴走する地元選出の総理の暴走にブレーキをかける一助になると期待しています。

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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年3月号

世界のヒバクシャと連帯する1月27日のネバダ・デー、伊方原発広島裁判仮処分抗告審が結審 さとうしゅういち

◆核実験場廃止、世界のヒバクシャと連帯で座り込み

1月27日はネバダ・デーです。1951年1月27日、アメリカのネバダ州で核実験場が「オープン」してしまいました。その後、1992年までに928回もの核実験が行われたとされています。アメリカでも実は多くの方がヒバクされているのです。ある意味、アメリカこそが世界最初で最大の被爆国(自国の核実験による)といってもいいでしょう。

33周年にあたる1984年1月27日、 実験場の偏西風の風下(東側)に当たるユタ州シーダー市の「シティズンズ・コール」(ジャネットゴードン代表)の呼びかけで、全米各地で反核集会が開催されました。

この運動がイギリス・カナダ・マーシャル諸島などへも広がり、 広島県原水禁もこの日、核実験全面禁止を求める国際連帯行動として、 原爆慰霊碑前で座り込みを行いました。

 
広島県原水禁代表委員で元衆院議員の金子哲夫さん

その後、この日は「ネバダ・デー・国際共同行動日」として世界で取り組まれるようになり、以降、広島では毎年のように座り込み行動を続けています。

この日も12時15分から筆者も含む広島県原水禁のメンバーが原爆慰霊碑前で座り込みを開始しました。

広島県原水禁代表委員で元衆院議員の金子哲夫さんから、上記のようなネバダ・デーについての説明をいただきました。

昨年2022年は、新型コロナ・オミクロン株の感染爆発で中止になった座り込みですが、2年ぶりに復活しました。

参加者は
・ネバダを始めすべての核実験場の閉鎖
・核兵器保有国と核の傘の下の国の核兵器禁止条約参加
・北東アジアの非核地帯化・非核三原則の法制化
を求め、
・ロシアによる核使用・威嚇は絶対に許さず
・世界のヒバクシャと連帯するとともに、岸田政権の原発再稼働・新増設も許さない、
趣旨のアピールを採択しました。

◆伊方原発運転差し止め仮処分 パワポのプレゼン競争で結審

筆者はこの後、伊方原発運転差し止めを求める裁判の原告として、広島高裁に移動しました。伊方原発広島裁判は、2016年3月11日に提訴。その後、筆者(当初は応援団)も含む原告312人に膨れ上がりました。本裁判の方はまだ広島地裁で続いています。「裁判中に原発事故が起きてはいけない」ので、運転差し止めの仮処分を住民側はこの間、何度も申し立てています。

広島高裁では、原告側が、運転差し止めの仮処分を求めて抗告中です。2017年12月13日に広島高裁で一度、運転差し止めの仮処分が下されています。しかし、四国電力が異議を申し立てし、2018年9月25日に四国電力の異議を認めた高裁が運転差し止め却下を決定してしまいました。

2020年3月11日に原告側は新たな仮処分を申し立て。しかし、2021年11月4日に産廃処分場裁判などでも権力寄りで悪名高い吉岡裁判長により仮処分は却下されてしまいました。そこで18日に原告側は即時抗告を高裁にしていました。そして、2023年1月27日に第一回審尋でそのまま結審、ということになりました。

この日の審尋では、抗告人(我々原告)側弁護人→相手方(四国電力)側弁護人の順にパワーポイントで主張を展開しました。脇由紀裁判長と陪席の男性裁判官2名も、高い場所から平場?に降りて、スクリーンに映った両者の主張を我々原告、被告=四国電力の「えらい人」たちと一緒に見ておられました。

原告側は、伊方原発訴訟最高裁判決を根拠として、被告=相手方の四電に審査基準が安全かどうかの立証責任があるという主張を展開しました。

「原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものであるが、行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び科断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認される。」

これが、1992年の最高裁判決の要旨です。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54276

他方、被告=相手方の四国電力側は、地震動の危険性は加速度だけではない、また、伊方原発の下の地盤は周辺のそれより硬い、ということを必死で主張されていました。ただ、南海トラフ地震でも181ガルしか揺れない、という四国電力側の想定は素人目に見てもあまりにも楽観的なように思えました。そもそも、普通の工場などよりもさらに厳しく「絶対に事故を起こさない」ことを求められている原発にしてはあまり楽観的な態度に見えました。ただ一方で、「普通の工場並みでも良いじゃない?」と思ってしまっている人にはそれなりに説得性があるようにも思えました。

 
伊方原発運転差し止めを求める裁判の報告会

筆者は原発関係の裁判はもちろん、労働裁判も含めて裁判の傍聴経験は多数あります。しかし、今日は、はじめて、「パワポでプレゼン」という裁判を傍聴しました。非常に新鮮でした。ただ、裁判長の反応があっさりしすぎてちょっと不安になりました。ただし、判決内容と裁判長の裁判中の対応は必ずしも比例しないということもプレゼンした河合弘之弁護人から伺いました。

この日、応援にかけつけた原発を止めた「あの」樋口英明元裁判官(写真左端)も実は、「あの」裁判の訴訟指揮では原告に対してもかなり素っ気なかったそうです。そのことをうかがって、少し安心しました。

伊方原発広島裁判の運転差し止めの仮処分の可否は3月24日、言い渡されます。ご承知の通り、地元広島の岸田総理がフクシマの処理もめどが立たぬ中、原発推進へと暴走し、全国の皆様には大変ご迷惑をおかけしております。総理の選挙区の有権者の一人として、吉報を3月24日にお届けすることで、多少の「罪滅ぼし」ができることを願っております。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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官僚出身・ネオリベ広島市長の暴走が止まらない! 中央図書館移転問題で市民の声を完全無視! さとうしゅういち

広島と言えば平和都市。政治はまあ、まともなのだろう──。そんなイメージの方が地元の事情をあまりご存じない方は多かったと思います。〈あの〉河井案里さんの事件が起きるまでは。

たしかに、秋葉忠利前市長までは、上記のイメージも的外れではないと思います。市議会は正直、政策よりはしがらみが強く、自民党が強い。ただ、市長については、渡辺市長の一期4年を除き、非自民系でそれなりの方が選ばれてきました。それで、バランスが取れていました。

選ばれた市長も、
浜井信三 市役所出身           1947-1955,1959-1967
渡辺忠雄 弁護士・代議士出身(自民党系) 1955-1959
山田節男 参院議員出身(社会、民社推薦) 1967-1975
荒木 武 県議出身(旧民社党出身)    1975-1991
平岡 敬 経済界・ジャーナリスト出身   1991-1999
秋葉忠利 学者・代議士出身        1999-2011

と、この規模の都市にしては珍しく、純粋な中央官僚出身の市長は出ていませんでした。しかし、2011年の市長選挙で、民選になって初めて、中央官僚出身の市長が選ばれたのです。

その松井市長の暴走が3期目も終わりになろうという今、止まりません。

中央図書館を駅前の商業施設に移転しようというのです。国際平和文化都市と名乗る割にこれはないだろう、という声が市民から多く上がっています。他方で、市長選となれば松井市長がまた、どうせ圧勝だろう、というのが下馬評です。

◆こども図書館も中央図書館も駅前に移転!?

松井市長は、2021年、突然、広島市中区の中央公園(平和公園から旧市民球場を挟んで北側)にあるこども図書館と中央図書館を、南区の広島駅前の商業ビルのエールエールA館に移転する計画を発表。

こども図書館は1980年に現在の建物になり、老朽化が進んでいたことから再整備の対象になっていたのは事実です。しかし、商業施設、それも、例えば大人向けの接待を伴う飲食店などもある場所の近くにあるこの場所に子どもたちだけで来てもらうのはまずいのは明らかでした。

また、そもそも、飲食店などが上にあるために、火災や浸水、あるいはネズミなどにより本がダメになるリスクも高くなります。

さらに、本というのは皆様もご存じと思いますが、意外と重い。本当に本を置いて、建物が耐えられるものなのか?そうした懸念もあります。

◆「移転ありき」ではない対応を議会も求めた

様々な懸念から、市民はもちろん、市議会でも反対の声が高まりました。2022年2月議会では、移転計画推進のための予算だけを削った2022年度予算案への修正案が共産党などから出され、自民党系の第二、第三会派もこれに賛成。ただ、公明党、自民党多数派、そして立憲民主党系会派の反対で修正案が否決された経緯があります。立憲民主党というのは、自民党の一部議員よりも、地方自治については「悪い」ことが残念ですが明らかになりました。

結局、2022年度予算案では「3案を比較検討できる詳細な資料を作り、関係者に丁寧に説明し、理解してもらった上で、移転先などを決定する」という付帯決議が行われて、当局の原案通り可決となりました。

「移転ありき」ではない対応を議会も求めたのです。

◆こども図書館は現在地に建て替えに変更、中央図書館もパブコメは「現在地」が多数

その後、2022年9月、広島市当局は、世論に押される形でこども図書館については、移転を断念。現在地での存続方針を固めました。

他方で、中央図書館については、パブリックコメントを実施しました。そのパブリックコメントでは、現在地での再整備を求める声が、エールエールA館への移転を求める声の4.8倍にも達しました。

当然です。市当局は、こども(主には中高生)向けの機能を移転後の中央図書館にも持たせるとしています。しかし、現在の中央図書館には無料の駐輪場がある一方、エールエールA館周辺には無料の駐輪場はありません。有料の駐輪場なら建物内にもありますが、周辺の買い物や通勤客の利用も多く、満車のことも多いのです。さらに、中高生にとって、高々100円でも負担は重くなり、利用率が低下の恐れがあります。

◆麻生さんの真似?!「理解が得られた」と「移転強行」を一方的に宣言

しかし、2023年1月12日、松井市長は、「理解は得られた」などとして中央図書館のエールエールA館への移転に着手することを一方的に宣言しました。誰のどのような「理解」が具体的に得られたかもさっぱりわからない記者会見でした。

まさに暴走です。直前に、麻生太郎さんが「防衛費倍増のための増税に国民の理解が得られた」と発言していました。世論調査では防衛費増税に反対が圧倒的多数にもかかわらずです。従って、筆者は一瞬、「松井市長は麻生さんの真似でもしたのか?」と思ってしまいました。

◆市民団体は、撤回求め申し入れ

一方、広島市内ではこの問題を考える団体が、主なものだけでも8つできています。最近ではこれらの団体が連携して行動しています。1月13日、広島市長宛に、エールエールA館への移転を撤回するとともに、納得のえられる形での図書館の再整備を求める申し入れを行いました。今後も8団体は、共同で街頭宣伝などを実施、世論を高めながら、市に翻意を促していきます。

[図]撤回を求める8団体によるチラシ こども図書館移転問題を考える市民の会Twitterより

◆「選挙だけは上手」な現市長、打倒は困難?市議選で反市長派をどこまで伸ばせるか?

他にも、この2023年度から放課後児童クラブ(学童保育の広島における名称)を有料化するなど、こどもに冷たい政策を取っておられます。こうした中、広島市長選挙は統一地方選挙2023の一環として3月26日告示、4月9日執行で行われます。このままいけば、市長選挙で松井市長を打倒することが、暴走を止める一番の手っ取り早い方法です。ただし、有力な対抗馬は1月13日現在、野党系にせよ、反市長派系にせよ、おられません。

広島の立憲民主党は残念ながら、こと市政・県政については、一部の保守議員よりも「反市民・反県民・反労働者」的でさえあります。自民主流、公明と並んで松井市長の有力な支持政党になり、野党共闘など夢のまた夢です。

他方、保守系で現市長や現知事と距離がある地方議員も、河井案里さんの事件に連座した人が多く、身動きがとりづらい状況です。市民団体で、有名人を候補にという動きもありましたが、極めて厳しい状況です。

松井市長自身、地域のいろいろなイベントに、カジュアルな格好で一参加者で顔を出されるなどして、いわゆるどぶ板で顔は売れています。偉ぶって長話をするという政治家にありがちな悪い癖もない。筆者もある場所ですぐ前の席にポロシャツで座っておられる市長を目撃、「選挙だけは上手だな」と呆れたことがあります。

もう一つは、「市長暴走容認派」の市議を市議選で打倒するという手もあります。市長与党が議会で過半数を失えば、松井市長とて、暴走はこれ以上できないからです。筆者は、政治家としてはこれまで、広島県政、国政について候補者を経験している一方、広島市政についてはさほどは詳しくはありません。ただ、一市民としては、統一地方選挙を挟んで、この問題から目が離せません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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非正規公務員の期待を裏切る会計年度任用職員制度 ── 今年度末にも「3年で雇止め」で公共サービス崩壊の危機 さとうしゅういち

総務省によると、非正規の地方公務員は2020年時点で約69万4000人でした。うち74.5%を女性が占めていました。2020年までの15年間で非正規は1.5倍に増加。他方で、正規は1割減り約276万人となりました。ちょうど、正規が減った分、非正規で穴を埋めた形です。そして、特にDV被害者支援、児童虐待、生活困窮者の相談など、近年ニーズが増えてきた専門性の高い業務を非正規の女性に任せているケースが目立ちます。最近、登場した職種ではスクールカウンセラー(SC)も9割以上が非正規で、会計年度任用職員です。広島県の場合、SCには昇給もありません。

公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)の調べでは、2021年度の非正規公務員のうち、4割が150万円未満、半数が200万円未満、8割が250万円未満の年収です。また非正規公務員の3分の1が、主たる家計維持者でありながら、うち4割が年収200万円未満の人です。なお、フルタイムで働いている「会計年度任用職員」についても6割が250万円未満の年収です。

◆「法の谷間」にあった非正規公務員

さて、非正規公務員は、2019年度までは多くが、非常勤特別職公務員、臨時的任用職員、非常勤一般職員のどれかの形で働いていました。しかし、実際には、恒常的に欠員が出ても、臨時的任用職員という形が続くなどしていました。ずっと臨時的任用職員がそこにいる、というのは、あまりに不明瞭ですが、それが常態化しているのが現実でした。

非常勤特別職も、本来特別職とは首長とか知事とか、審議会の委員とか、そういう人たちを前提とした種別です。ところが、普通の公務労働者がそういう状態に置かれ、法の保護が薄い状態でした。

そして、年収は低く、期末手当(いわゆるボーナス)は出ませんでした。また、民間のような労働基準法も適用されなければ、正規公務員のような手厚い保護もない。まさに、法の谷間におかれていたのです。

ある時期まではそれこそ、非正規の公務労働者が、労働裁判を起こしても絶対勝てない、という状況がありました。筆者自身も、2006年から2011年にかけて、ある非正規の公務関係労働者の雇止め裁判を支援。一審は不当判決でした。

ところが、山梨県内の自治体で、首長によるパワハラを受けた上に雇止めになった女性非正規公務員が「人格権侵害」を訴えて勝訴したころから流れは変わります。筆者が応援した裁判も2010年3月に高裁で逆転勝訴し、2011年1月に確定しました。

◆公務員バッシングと行政需要増大の狭間で非正規公務員急増

しかし、一方で、当時躍進した「大阪維新の会」が公務員バッシングを展開。民主党政権も公務員人件費の抑制を公約とした。そこで、非正規公務員を増やして、行政サービスへの需要の増大に対応する、という状況が2010年代も続いたのです。

確かに、昔に比べればそうはいっても、DV・性暴力被害者、子育て支援や児童虐待への対応、生活困窮者などのサービスはそれなりに充実しています。しかし、そこで働く労働者の労働条件は劣化する一方になっています。

非正規公務員は増え、正規公務員も責任が集中し、大変。非正規公務員からは、「自分は人を支援する立場なのに自分自身が明日をも知れぬ身なんて」というぼやきが新聞等でも報道されるようになりました。

そして、2010年代には広島県でも他の都道府県でも大きな災害が続発します。こうした時に、非正規公務員ばかりで十分に対応できなかったというケースも見られました。

安倍政権時代からはコロナショックの一時期を除き、労働市場が全般に人手不足です。非正規公務員は労働条件が悪すぎて、人が定着せず、安定的な行政サービスの供給が難しいという状況も危惧されるようになりました。

◆「会計年度任用職員制度」導入も労働者の期待裏切る

こうした中で、当局側も重い腰を上げます。それが2020年4月スタートの会計年度任用職員制度です。これまでの低賃金、不安定雇用に悩んでいた労働者でも期待された方は多かったように思います。

会計年度任用職員により、いわゆるボーナスも支給されるようになりました。昇給の制度も各自治体が一定程度整備するようになりました。

一方で、この制度では、1年おきに契約を更新しなおすことには変わりはありません。また、自治体によっては、「ボーナスの分だけ基本給を削る」「それまでフルタイムの臨時職員だったところ、30分労働時間を短縮して会計年度任用職員制度を適用しないようにする」などのせこい対応を取るところも少なくありませんでした。

◆「3年雇止め」で崩壊しかねない現場

そして、最大の問題が迫っています。それが「3年雇止め」です。公募なしでの3年を超えての継続の任用はしないというのが多くの自治体での制度設計です(千葉県の医療専門職では5年という例もあるが)。これが、会計年度任用職員制度です。すなわち、多くの自治体で任用期間が3年に達すると、公募に応募して再度試験を受けるなどしないといけないのです。

以下は会計年度任用職員当事者の方のtweetです。

「今日来年度の雇用の話があり、更新希望なら履歴書とハローワークの紹介状を総務課に提出してと言われた。また学歴職歴志望動機を書くの? ちなみに別な会計年度さんは辞める。理由はフルタイムでこの低賃金はない。とても長い目で見て働けないと。また優秀な人材が離れていく #会計年度任用職員¥」

例えば、専門性が高い仕事だから、高い給料で雇う、という場合なら3年の任期というのもありかもしれません。

しかし、専門性の高い仕事を安い給料しか出さずに有期雇用でやらせる。これではばかばかしくてやめていく人も多いでしょう。その結果何が起きるか?

例えば、経験の浅い新人が、DV被害、子どもの虐待や学校でのいじめ被害、生活困窮者支援など、高い専門性を必要とする仕事で困難事例を受けることになる。その結果、その新人職員は潰れてしまうことになりかねません。

他にも、会計年度任用職員が多い職種として看護師があります。千葉県の場合、看護師の会計年度任用職員は正規の7割程度の給料です。それでいて5年で公募するということです。これではばかばかしくて、民間病院や介護施設などに流出してしまいかねません。公的医療現場の人手不足も深刻化させかねません。

◆いまこそ非「労働貴族」の労働運動を!

筆者が地元・広島で幹部を拝命している自治労連では、総務大臣に会計年度任用職員制度の改善を求める署名運動をネットでも行っています。

【要求項目】

〈1〉安心して働き続けられる制度にするため、任用期限の上限を撤廃してください。当面、再度の任用にあたって非公募とし、制限を設けないようにしてください。

〈2〉「会計年度任用職員」の賃金を大幅に引上げ、一時金(期末・勤勉手当相当額)、諸手当を改善してください。休暇制度(有給の病気休暇)など処遇を改善してください。

〈3〉処遇改善のため、法改正の提案と予算措置を行ってください。

こうした、署名運動と並行して、各自治体での労働組合の運動も大事です。広島市の場合は、そうはいっても、非正規の多い職場で自治労連系の組合が組織されています。そのことを背景に一定の賃上げを勝ち取っています。

一方で、広島県外の友人が住んでいる自治体では、連合系自治労の組合はあるが、非正規のアップは要求していないというということです。今年の12月議会に提案される職員給与条例の改定案でも非正規についてはまったくのゼロ回答ということです。そもそも、組合が要求しないことには当局も取り組まないのです。

連合の芳野会長や、公務員労組の推薦を受けながら公務員給料カットに賛成するような議員はいわば「労働貴族」です。この実態については、以下の筆者も登場する本に詳しいです。

しかし、真面目に非正規公務員の問題に取り組む組合は絶対に必要であり、そのことは、いまこそ声を大にして申し上げるものです。

それとともに、筆者自身も含む「公務員以外の市民」も、自分たちの暮らしの安全・安心を担う行政サービスが、いま存続の危機であることに刮目(かつもく)しなければならないのです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号
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2023年こそ、新自由主義・岸田暴走政治への対抗軸を地方から さとうしゅういち

◆積年の新自由主義の弊害が噴出

2022年は、日本国全体でも広島県内でもこの20-30年間の新自由主義の弊害が噴出した年でした。

この20-30年。日本国内では賃金をほとんど上げない。超大金持ち・超大手企業の負担は減らす。国は地方への財政政出を絞る。正規公務員は削減し、非正規ばかりにしていく。公共サービスは民営化というよりも一部の中抜き企業が私物化していく。こうした政治が続いてきました。

その結果、日本は、1993年頃の一人当たり名目GDPは世界2位から、2021年には27位に後退しています。

日本の賃金は低すぎる、ということで、外国人労働者も日本を敬遠。とくに、広島などの地方からまずは東京などへ、という流れが起きています。さらには、日本人でもカナダやオーストラリアへ出稼ぎに行くという人も出ています。

もちろん、他国でも新自由主義政治は一定程度行われてきました。しかし、日本は度が過ぎます。

広島県内でも、2000年代の市町村合併で正規公務員を大きく減らした周辺部から衰退が激しく、人口流出全国ワーストワンが固定化して久しいものがあります。

また、公務員削減で、コロナ対応や水害対応にも支障が出ています。現場の疲弊も深刻です。

◆「小泉的」新自由主義と「安倍的」腐敗のハイブリッドという「最悪」の状態

岸田政権の特徴としては、小泉純一郎さんや、立憲民主党でも少なくない議員にみられる「新自由主義」と安倍晋三さんのもとで進んだ「腐敗」のハイブリッドの「最悪」の政権です。

新自由主義と言っても、小泉純一郎さんが総理だったころ(2001-2006)は、まだクリーンさを追求していたイメージがあります。筆者はこのころ現役の広島県庁職員でした。この時代は地方交付税が絞られ、さらなる地方の衰退を準備した時期です。他方、公務員倫理自体は前後と比べると一番引き締まった時代であったと記憶しています。

この小泉時代は、旧大蔵省の不祥事も教訓に公務員倫理規程や大臣規範も整備された直後でした。おかげで、昔のような裁量行政に伴う腐敗も、2013年以降の故・安倍晋三さんや、広島県教育長の平川理恵さんらにみられるような「身内優遇」の腐敗も、筆者が広島県庁職員として仕事している上ではあまり見聞しなかったと記憶しています。

 
小泉時代に合併で新三次市になったが衰退が止まらない三次駅前

もちろん、小泉さんの新自由主義、とりわけ、市町村合併の推進と地方交付税の削減は当時、筆者が赴任していた広島県北部や東部を衰退させたのは明らかです。これについては当時の広島県知事の故・藤田雄山が、全国でもトップランナーで国の方針を取り入れたこともあるのですが、筆者は今でも、小泉さんへの憤りは感じています。

さらに、この時代に中抜きで「有名」な竹中平蔵さんや、お友達優遇を引き起こした安倍晋三さんらを小泉さんが取り立てたことは、とくに2012年末の安倍晋三さん再登板以降に禍根を残しています。

岸田総理は、小泉さんの新自由主義と安倍さんの腐敗のハイブリッドの路線を突き進んでいます。これが国政でも県政でも起きています。

たとえば、広島県教育長の平川さんは、県教委管轄の公立学校だけで1000人以上の非正規の教員がいて、授業を回すのにも支障が出ています。その上で、平川教育長と懇意の京都のNPO法人をめぐる官製談合、さらには大阪のコンサルタンツ会社との癒着が次々と明らかになっています。まさに、新自由主義と腐敗のハイブリッドです。

◆新自由主義からの脱却&所得倍増は何処へ 

そもそも岸田総理は2021年秋に「新自由主義脱却」「所得倍増」を掲げて登場したはずでした。我々、介護現場労働者も岸田さんが給料をアップしてくれると聞いて、少しは期待してしまいました。

ところが、蓋を開けてみると、介護の給料アップはたったの3%です。物価上昇の中では他業種では従業員にインフレ手当などを出しているところもあります。そうしたことを加味すれば、焼け石に水どころか、改善にすらなっていません。さらに、国費投入も10月からは打ち切られ、介護報酬、すなわち保険料やお年寄りの負担となります。

「所得倍増」もいつのまにか「資産所得倍増」にすり替わっていました。まさに、新自由主義へのバックラッシュ(逆流)です。平たく言えば、「正当な賃金を払わずに、株価だけを上げるような会社」の株を買う人ばかりが得をする。これは、この20-30年続いてきた日本経済の在り方でした。これを脱却するどころか、加速しようとするのが岸田総理です。

◆軍拡・増税・原発推進へ故・安倍晋三さんも真っ青の暴走加速の岸田総理

なんでも閣議決定で決める。国会を開かない。そんな安倍晋三さんの暴走ぶりは彼が暗殺され「国葬」されたからといって絶対に忘れてはいけません。

しかし、いまや、岸田総理は安倍晋三さんも真っ青になりそうな暴走を加速しています。暗殺された安倍晋三さんの国葬を早々と決めてしまったことは、暴走加速のターニングポイントでした。

 
岸田総理の旧統一協会との関係を認めた市議との二連ポスター。筆者の勤務先近くで筆者撮影

そして、「岸田暴走2022」は武器倍増とそのための増税、さらには原発推進です。

12月16日、岸田総理は、ロシアのウクライナ侵略を悪用して軍備倍増の「安保三文書」を閣議決定しました。それもトマホークミサイルの購入など、アメリカの旧型武器の在庫引き受けによる反撃能力という名の「先制攻撃能力」です。従来の専守防衛も逸脱する根本的な方針転換です。

その方針転換を国会での議論も開かずに閣議で勝手に決めてしまいました。そのための増税についても、勝手に突っ走っています。

日本の軍備倍増は、アジアの緊張も高めます。総理の「看板政策」であるはずの「核廃絶」も自ら遠のかせる愚行です。また、はるかに国力が日本より上の中国との軍拡競争になれば、先に倒れるのは明らかに日本です。

支持率も低下している中で、蛮勇をふるうことで、求心力を回復しようとしているようにも見えます。

さらに、岸田総理は、安倍晋三さんでさえ、「脱原発依存」と言ってきたのを大幅に後退させ、老朽原発再稼働、そして新増設解禁へ突き進んでいます。この方針についてはGX会議という閣議でさえない会議で勝手に正式決定してしまいました。

◆総理の地元・広島からこそ対抗軸を

このように新自由主義の弊害が明らかになる一方で、総理が脱線・暴走している中で、国政選挙は、総理が7条解散を強行しない限り、当面はない状況です。

だからこそ、地元・広島からガツンと総理の政治、すなわち、新自由主義の復活、そして軍備倍増・原発推進などに対抗する政治勢力や議員を2023年の統一地方選挙で増やしていくことが必要です。総理とて、地元でどういう政治状況になっているかは気になるはずです。地元の有権者が「これはまずい」と総理に思わせることが大事です。

残念ながら、現状では、広島市議会も県議会も自民党・公明党が圧倒的多数です。立憲民主党・国民民主党も中央に比べても武器・原発推進労組などの「労働貴族」色が濃く、総理への牽制は期待できません。広島は世界最初の戦争被爆地であり、平和都市と言われます。しかし、現実には総理のおひざ元である広島市中心部に近づけば近づくほど「保守色」が強いのが実際の政治状況です。旧統一協会との関係が取りざたされる議員も多数おられますし、旧統一協会と関係を断つ、という決議が否決されてしまう異常な状況です。しかし、希望がないわけではありません。

◆広島県庄原市議会の二つの素晴らしい意見書 新自由主義と岸田軍拡に反撃

 
庄原市役所、参院選2022に向けた遊説中に筆者撮影

希望は、広島県北部に存在します。広島県の北東に位置する庄原市議会が2022年12月定例会で二つの素晴らしい意見書を可決しました。これらは地方自治法第99条に基づくものです。

「防衛予算の倍増を決定した政府方針の撤回を求める意見書」

「会計年度任用職員の処遇改善に向けた法改正と雇用安定を求める意見書」
です。

前者の意見書は10対4で可決されました。

意見書は、

「国際情勢の急激な変動が発生したとしても、この変化に対応する国の意志決定は、主権者である国民に十分説明し、その理解を得ることが前提であり、このことは民主主義国家として当然のことである。」

とし、

「今、日本の防衛費増額が差し迫ったものであるならば、政府はまずその根拠を明確に提示しなければならない。岸田首相は、戦闘機やミサイルを購入する費用だと断言したが、その武器等の増量が必要となる理由も全く説明されていない。」

と指摘。その上で

「現在、日本の防衛費はすでに世界第9位の規模であり、2%に増額するとなれば、米国、中国に続く第3位にもなる。また、日本は米軍に国土の多くと費用を提供しており、さらなる防衛予算の倍増は全く必要性がないと言える。」

と結論づけています。

1.国民不在の防衛費増額の閣議決定を撤回すること。

2.国の進路を決定するような重大な政策変更は国民の意志を尊重すること。

を強く求めています。

後者の会計年度任用職員の処遇改善に向けた法改正と雇用安定を求める意見書では、

1.短時間勤務の会計年度任用職員の勤勉手当支給制限に関する規定の見直し(地方自治法第203条の2、第204条の改正)を行い、短時間の会計年度任用職員にも勤勉手 当を支給できるようにすること。

2.各自治体における会計年度任用職員等の処遇改善促進に向け、必要な財源の確保に ついて特段の配慮を行うこと。

3.会計年度任用職員の雇用安定をはかるため、任期の定めのない短時間勤務職員制度 の導入について検討を行うこと。

を求めています。

こちらの決議は全会一致。新自由主義政治のもとで激増した非正規公務員の待遇改善という形で新自由主義に異議を申し立てています。

庄原市もまた、合併以降、衰退が激しいところです。

「正規公務員が減らされた中で、正規も非正規も疲弊している。会計年度任用職員の中には【だめだこりゃ】と一年で辞めていく人も多い。このままでは行政サービスが確保できなくなる。」

意見書を提案した中心的な庄原市議は筆者に対して地域の将来に危機感をあらわにしておられました。

◆まだ衰退実感がない? 広島市民の皆様も危機感を!

確かに、地方の課題を議論するのが地方選挙の本来の在り方です。しかし、地方自治法99条に基づき、国に物申すのも地方議会の役目です。また、知事会や市町村長会を通じて物申すもの首長の仕事です。

中央が新自由主義を是正する気がなく、また、軍拡などで暴走する以上、きちんと地方から物申すことが必要です。とりわけ、今回は総理のおひざ元の広島県議会、広島市長、広島市議会の選挙が実施されます。ガツンと総理に物申す政治家を一人でも多くすることが、中央政府の軌道修正にもつながります。

なお、広島市周辺は、庄原市などに比べるとまだ衰退の度合いは軽いかもしれません。そのために危機感が高まりにくい、ということはあります。しかし、周辺部の衰退で、広島市中心部に買い物に来る人が減り、お店が次々と潰れている実態もあります。

そして、何より、このままでは地元から岸田総理を輩出した広島市民・県民(特に筆者を含む一区の住民)が大恥をかきます。広島市及びその周辺のまだ衰退がひどくない地域の皆様にも危機感を持っていただきたい。そのことも改めて申し上げる次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年2月号

2023年も原爆供養塔前からスタート 核兵器ゼロ・戦争ゼロ・原発ゼロをめざして さとうしゅういち

筆者は、広島県庁職員を辞して、大物広島県議だった河井案里さんに挑んで敗れた2011年の翌2012年以降、元旦はいつも、原爆供養塔前に集合し、はだしで黙とう、平和公園内の原爆慰霊碑を巡って献花する「元旦はだし供養」に参加しています。大学時代に政治家を志して以来の核兵器ゼロ・戦争ゼロ・原発ゼロという筆者の政治活動の原点を新年に当たって再確認する意味合いもあります。

今年2023年も、2022年と同じ毎回参加のNHK記者も含む6人という少人数ですが決行しました。この中には、筆者の家の前を通り、工事が難航してトラブル続きの高速道路二葉山トンネルに関する市民運動に取り組む方などもおられ、「少数精鋭」の活動となりました。

 
筆者の元職場である広島県庁

◆「被疑者教育長」が居座る広島県庁経由で現地へ

筆者は、岸田総理の地元の広島1区(中区、東区、南区)の東区に住んでいます。平和都市といいながら、超保守王国で、筆者自身も、昨年の参院選再選挙での得票率は自分が住んでいる東区では隣接する安佐南区(3区)と府中町(4区)と比べても大きく低迷しています。

筆者は1月1日早朝、その東区の自宅をバスで出発し、中区の筆者の元職場である県庁前にあるバスの終点で降車しました。

奥の県庁東館には広島県教育委員会も入っています。そのトップは教育長の平川理恵さんです。平川教育長が親しくしていた故郷・京都のNPOと県教委の契約が官製談合防止法違反、地方自治法違反であることが外部の調査で認定されています。

さらに、別の大阪の親しい女性社長のコンサルタント会社とも問題が発覚。そして、京都のNPOとの件については市民団体から告発されています。平川教育長はいわば「被疑者」です。

しかし、平川教育長は1月1日現在、辞任の気配もなく、知事の湯崎英彦さんも彼女を罷免しようとしません。県議会も一部の議員を除き、厳しい追及の動きはありません。いったい、何か、彼女を庇わないといけない別の後ろめたい理由があるのではないか?

故・安倍晋三さんの政権の下で、財務省の佐川宣寿局長(当時)の隠ぺい工作のために赤木俊夫さんが命を自ら断っています。最悪の場合、そのようなことが、広島県庁で起きないように、県民や県議会の監視、あるいは労働組合などによるチェックが必要ではないでしょうか?

一方、平川教育長は、県内の公立学校で1000人以上非正規の先生がおられるのに、正規化については「予算がない」と放置です。湯崎知事・平川教育長の新自由主義とも厳しく対決していかねばならない。その思いを強くしました。

◆原爆ドーム前、G7首脳見学予定も広島の「西側国家ベッタリ化」心配

 
初日の出に赤く染まった原爆ドーム

原爆ドームもまた初日の出に赤く染まっていました。今年は、G7サミットが5月に開催されます。各国首脳に原爆ドームも当然、見学していただくことになるでしょう。被爆の実相を世界の首脳に伝えるということ自体は否定しません。だが、現実問題として、ロシアvsウクライナの戦争もさることながら、それ以外でも、西側「民主主義国家」vs中国に、多くの途上国も米中の間で複雑な動きをするという状況があります。そういう中で、広島が西側「民主主義」国家とべったり、という方向へ進むことを危惧します。その兆候は、昨年の平和祈念式にロシアを招待しなかったことです。たしかに、ロシアのウクライナ侵略はけしからん。しかし、アメリカは、そもそも広島を核攻撃した加害者ですし、イスラエルのパレスチナ虐殺、サウジアラビアのイエメン空爆なども問われなければならないでしょう。国家間の対立は超えて、核の悲惨さを訴え、核兵器ゼロを訴えるというのが自治体としての広島の立ち位置であるべきでしょう。

なお、反グローバリズムの立場から「バイデンも岸田総理も広島に来るな」的な左翼のスタンスもあり、筆者個人としてはそのスタンスに近いし、そういう立場の言論も県民の間で大いに展開されるべきと思います。

それはそれとして、自治体としての広島(県・市)としてはどうあるべきかと言えば、国家同士の対立をいったん脇においたスタンスではないかと思うのです。バイデン大統領にもプーチン大統領にも習近平主席にもムハンマド皇太子にもネタニヤフ首相にも金正恩総書記にも来ていただくのが自治体としての広島県・市のスタンスであるべきでしょう。

◆6人で決行 元旦はだし供養

原爆供養塔に到着すると、市民活動家の女性が先に到着しておられました。彼女は、先般、高速道路二葉山トンネル問題でテレビに映っておられました。最終的に毎回参加されているNHK記者を含む6人に増えました。

原爆供養塔に献花。そして、8時15分、チャイムが鳴り、黙とうしました。


◎[動画]元旦はだし供養 原爆供養塔

 
韓国人原爆犠牲者の慰霊碑に参拝

続いて、韓国人原爆犠牲者の慰霊碑に参拝。新年から朝鮮(金正恩総書記)がミサイルを発射したというニュースが流れています。しかし、実際には、韓国も、30日にロケットを打ち上げて、日本でも謎の光ということで通報が相次ぐ騒ぎが起きています。こういうエスカレーションは、朝鮮戦争が正式に終結していないからこそ起きることです。

そもそも、朝鮮のミサイルの狙いは日本ではなく、アメリカを交渉に引っ張り出すのが目的です。植民地支配をしていた日本は、韓国人被爆者が発生する原因をつくり、また、南北分断に一定の責任がある。岸田総理は武器倍増ではなく、過去の歴史的な経緯を押さえたうえで、関係各国及び、国連(米軍にお墨付きを与えている)に朝鮮戦争終結を働きかけるべきだ。ましてや、武器倍増で緊張のエスカレーションに加担しつつ、原発を増やしてミサイルの標的を増やすような岸田総理の愚行は止めないといけない。そういう思いで参拝しました。

◆地域での慰霊祭は難しく

ついで、川内村の「義勇隊の碑」、ついで、広島二中=現広島観音高校=慰霊碑へ向かいました。川内村は現在、安佐南区に属しています。今は、マンションや住宅が林立する中に、広島菜やホウレンソウを栽培する農家も多少残っているという感じです。義勇隊に参加して爆心地近くに来ていた川内村の男性がほぼ全滅。戦後しばらくは人口バランス的に女性が多い村として知られ、そういう中で、広島菜が女性中心の産業として発展してきた経緯もあります。

いまや、被爆当時を知る方も少なくなり、地域で行われる慰霊祭も存続が困難になっています。他方で、広島二中の慰霊祭については、後輩の生徒たちが引き継いでいるため、体制を維持できているということです。

地域の自発的な活動はどの分野でもなかなか存続が困難な状況があります。それは平和の分野でも変わりがないということを改めて痛感しました。

[左]川内村の「義勇隊の碑」。[右]広島二中(現広島観音高校)の慰霊碑

◆安佐南区の神社で初詣後、事務所近くの駅でご挨拶

 
祇園の安神社

筆者は、その後、バスでれいわ新選組推薦で県議選に立候補を予定している安佐南区に移動。祇園の安神社に初詣しました。この神社は、わたしが、この安佐南区で河井案里さんに挑んで以来、毎年参拝しています。

ちなみに、広島市民の初詣の定番は厳島神社か、護国神社です。しかし、護国神社に筆者は参拝しません。護国神社とは、戦前、戦争を推進した靖国神社の自治体版だからです。広島が戦前、アジア侵略の拠点となった時代の遺物でもあるからです。特に、地元の岸田総理が武器倍増に突き進むいまだからこそ、護国神社は避けたいのです。

その後、筆者の事務所近くの中筋駅前で、看板を立てて、新年のご挨拶をさせていただきました。「明けましておめでとうございます」とお声がけしながら、時に紙ベースの「広島瀬戸内新聞」をお渡ししました。

筆者も12年間、活動してきただけあり、多くの地元有権者、とくに年配の方ほど、筆者のことをご存じのようです。政策、政治姿勢をよくご存じの方も多い地域では、マイクを通じて話すより、個別の双方向の対話を重視していきたいと考えています。この点は、昨年の参院選再選挙とはやや趣を異にします。

 
筆者の事務所近くの中筋駅前で新年のご挨拶

特に、地方選挙を前にした活動です。筆者の政策・政治姿勢を具体的に県政に落とし込んでいくには、県内の実情を踏まえないといけない。それには、双方向の対話が一番重要だからです。

その上で、
「新自由主義を脱却し、県民の暮らしを立て直す」
「旧統一協会・利権まみれの広島の政治を平和都市にふさわしいものにリニューアルする」
「岸田総理の暴走に地元・広島から待ったをかける」
という軸はぶれずに頑張る所存です。引き続きご協力を伏してお願い申し上げる次第です。

◎カンパ先
郵便振替口座 01330-0-49219 さとうしゅういちネット
広島銀行本店(店番001) 普通 口座番号3783741 さとうしゅういちネット

ただし、ご寄付頂けるのは日本国籍の方、そして一人年間150万円以下に制限されます。また、
・年間5万円を超えてご寄付頂いた方
・筆者への寄附による所得税の控除を受けられたい方
については、法の定めるところにより、政治資金収支報告書等で筆者からご住所・ご氏名・ご職業を広島県選挙管理委員会に報告させていただきます。何卒ご了承ください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2024年大幅改悪は先送りされたものの、矛盾がますます深刻化する介護保険制度 さとうしゅういち

介護保険制度の見直しをめぐり、厚生労働省の社会保障審議会は12月19日、2024年度の改正に向けた意見書を大筋で了承しました。利用者負担の原則2割への大幅負担増と「要介護1、2を介護保険から外す」給付の大幅カットについて、結論を先送りしました。

他方で、利用者負担割合が2割となる対象者を拡大するなどの一部の項目について、「遅くとも来夏までに結論」を出すよう要望しており、厚生労働省は2023年の年明け以降も議論を継続するそうです。

◆「ヤングケアラー爆増」の危機はひとまず回避

当初、財務省などは、厚生労働省に圧力をかけ、
・利用者負担は原則2割にする
・要介護1、2の訪問・通所系サービスは介護保険から外す。
・ケアプラン作成は有料化
などをもくろんでいました。

利用者負担原則2割が実施されれば、多くの人がサービスを受けることが無理になります。

実を言えば、「デイサービスへ親を通わせているが現状でも負担は大きい」(親がデイサービスを利用している関東地方の女性)「妻が利用しているが、やはり負担は重い」(県内の70代男性)という声も強くあるのです。それが、2割負担となれば、余計利用しにくくなるのは当然です。

その結果何が起きるか? ご家族を介護している人の負担が増えます。特に、懸念されるのがいわゆるヤングケアラーの増加です。

家族の中で「主軸」で働いている父母世代(要介護の祖父母から見れば子ども)は仕事が忙しいため、学生とか、新社会人くらいの子ども世代(要介護の祖父母から見れば孫)への負担が重くなることが想定されます。

昔は、介護は「嫁」の仕事とされ、夫の父母の面倒も、妻が見るのが当たり前、という男尊女卑の時代がありました。その上、要介護の父母が亡くなったら、介護を任せていた妻を捨てて不倫相手の若い女性と再婚、という酷い夫も少なからずいたのも事実です。介護保険制度のおかげで、そうした嫁の負担が軽減され、女性の社会的活躍が後押しされ、男尊女卑の解消につながっていったのも事実です。

介護保険制度が後退すればどうなるか?先進国の中ではまだまだ男尊女卑が強いとはいえ、昔に比べると改善される中で、さすがに母親=嫁に押し付けるということは難しい。しかし、そのかわり孫世代に負担が重くなる、ということが想定されます。

筆者も利用者のお孫さんで、よく見舞いに来られている方を拝見することもあります。当人は、責任感をもってがんばっておられるのもよくわかります。それでも、ご本人がおかれた客観的な状況から「大学生なら勉強、新社会人なら仕事をおぼえることを優先された方がいいのではないか」という思いが口から出かかることもあります。後々、学業や仕事に支障が出るなどを通じてご本人の、さらには、社会全体の損失にもなることが懸念されます。今回の改悪回避でそうしたヤングケアラーの爆増は、とりあえず、回避できたのかもしれません。

◆お金持ちには利用料負担割合増加より保険料引き上げ・増税を

こうした中、負担割合を二割に引き上げる人の範囲を増やす議論は続くそうです。そもそも、保険給付割合で差をつけるというのは筋が悪い議論と感じます。もし、お金持ちに負担をいただきたいなら、税金をしっかり負担していただく方がよいと思います。負担割合が異なる人がいるために、現場の事務処理も煩雑化しています。元の一割負担で統一して、お金持ちの保険料率や所得税負担率を引き上げる、という方向の改革を望みます。

◆総理支持率低迷と署名運動が「大幅改悪」撤回の原動力

2021衆院選で与党が3分の2を超え(これにより、反対する野党が参院で粘っていても、衆院で再可決されれば介護保険改悪案は成立してしまう。)2022年参院選でも自民党が圧勝する中で、上記のような財務省がもくろむ案が法案になってしまえば、阻止するのは極めて困難な客観的な情勢もありました。

しかし、安倍晋三さん暗殺を契機に旧統一協会問題が噴出し、岸田総理の支持率は暴落しました。これにより、介護保険大幅改悪はやりにくくなったのは事実です。

ただ、総理支持率暴落だけでは、改悪は阻止できなかったという思いも筆者はあります。

例えば、軍事費倍増とそのための増税は、総理は「支持率が低迷しているからこそ、蛮勇を見せつけて求心力を高めてやろう」と暴走した面が否めません。実際、歴史を振り返っても内政の失敗をごまかすために、対外的に緊張を高めようとした為政者は古今東西枚挙にいとまがありません。

やはり、今回の介護保険大幅改悪の断念の背景には、署名運動もあったのは間違いありません。認知症家族の会など、ご家族を介護する当事者の方が中心に署名運動を展開。「これを強行したら統一地方選2023は持たない」ということを自民党側も感じたのでしょう。

また、軍事費はまだ「国家の専管事項」という理屈もあり得ますが、介護保険に関しては市町村が保険者です。統一地方選では重要な争点になってしまうからです。

総理が暴走を加速する軍事費倍増・増税問題、あるいは原発の問題ではそれはそれで、きちんと野党がまとまって対抗軸を打ち出さないと反対の世論も盛り上がらないし、むしろ支持率低迷の中で総理の暴走は加速するだけにも思えます。

◆現場労働者の待遇改善、サービスの安定供給……課題は山積

そして、もうひとつ、強調しなければいけないのは、現場労働者の待遇改善などは、この改悪の先送りに関係なく、まったく進んでいないということです。要は、今でも矛盾だらけの介護保険制度が、せいぜい、これ以上悪くなるのが防がれただけの話です。

岸田総理は、介護労働者の給料アップを公約しました。ふたを開ければ3%。しかも、必ずしも、労働者の手元に来るとは限らない仕組みでした。その上、10月からは国費投入ではなく、介護報酬に上乗せすることを事業者=経営者が申請しないと給料アップにならない仕組みです。要は、給料アップがお年寄りの負担増になるし、事業者の事務負担増にもなってしまうということです。

こうした中で、広島の介護現場からは外国人労働者がより高い給料を求めて東京へ流出しています。

※参照=広島の外国人労働者が流出する理由 「労組代表」の筆者の説明で納得の町幹部

こうした経過をみれば、どうあがいても、実際のところ現在の介護保険の枠の中で、現場労働者の待遇改善を十分に行い、人手を確保するのは無理と言わざるを得ません。

また、コロナのもとで、一時的な利用者の急減が、経営に打撃を与え、事業者が倒産。お年寄りが路頭に迷うという事態も生じています。費用は保険で出し、介護報酬は国が決めるが、あとのことは市場原理任せ、という介護保険制度でサービスの安定供給ができるのか?という問題もつきつけられています。

※参照=介護事業所の倒産が過去最多! 市場原理でサービスの安定供給は確保できない! 

◆介護保険の限界認識し、対抗軸を!

結局のところ、当面は思い切った財政出動を行いつつ、介護は基本的には税で賄うという、欧州では一般的な方向での改革に向かうしかないのではないでしょうか?その場合は、現在は異常に甘すぎる超大金持ちへの課税を強化するなどの方向が、格差が広がってしまった現代日本ではふさわしいでしょう。

介護保険改悪阻止だけでなく、むしろ、その限界を認識し、市場原理に寄らない方向、例えば(特に広島のような労働力が流出する地方圏では)公務員として人手を確保して、責任をもって自治体が介護を供給する、などの方向性を野党側、あるいは労働側は打ち出し、自民、維新や資本側に対抗するべきです。

筆者も、統一地方選2023へ向け、暴走を加速する岸田総理の地元・広島でその先頭に立ちます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年冬号(NO NUKES voice改題 通巻34号)