憲法アンケートに被災地訪問 ── れいわ新選組 広島でのメーデーのとりくみ さとうしゅういち

◆今年は筆者にとっても新しいこころみ

5月1日はメーデーです。筆者は自慢ではありませんが日本広しといえども、筆者ほど幅広い系統のメーデーに参加した経験がある人間はいないと自負しています。筆者は県庁マン時代には「連合」系自治労広島県職員連合労働組合の支部役員として、連合系のメーデーによく参加しました。5月1日ではなく、前倒しで29日あたりの休日または祝日開催、基本的には家族連れで参加するお祭り、というのが広島でも連合系メーデーの特徴です。ただし、コロナでお祭り要素は、ここ3年は消えています。

他方で県庁マン末期の2008-2010年には、就職氷河期世代を中心とする独立系メーデーを広島でも主催しておりました。大きな組合や既成政党が女性を中心とするケア労働者、非正規労働者の利益を代弁できているとはとてもではないが思えなかったからです。この「生存のためのメーデーINひろしま」5月1日の翌日に開催していました。そして、新幹線に飛び乗って東京で開催される「自由と生存のメーデー」に参加するのがこの2008-2010年の筆者のGWのスケジュールでした。

一方で筆者は外国のメーデーにも参加しています。2007年、15年前のノルウェーのメーデーに筆者は参加しています。このときは、女性警察官労働者がトロンボーンでインターナショナルを演奏。筆者はただひとり、日本語で「たて、うえたるものよー」と歌い、沿道から注目されまくっていました。日本でもかつては警察労働者の組合があり、日本社会党で活動していた警察労働者もいたそうですが、いわゆる逆コースで警察労働者、防衛労働者、海保労働者、消防労働者、刑務・入管労働者らは団結権すら奪われています。そのことは歴史的な事実としては存じていましたが、ノルウェーでメーデーに参加されている警察労働者を拝見して、そのことを実感しました。

筆者は2011年、河井案里さんと対決するために県庁を退職。当時は東日本大震災・福島原発事故により、左派・リベラルの間でも「貧困問題はどうでもいい。反原発が最優先」という雰囲気がひろがり、独立系メーデーの運動が組み立てられなくなりました。筆者は全労連系、ときに全労協系のメーデーにも参加しつつ、あたらしい労働運動の流れを模索していました。しかし、2022年。れいわ新選組のみなさまと、あたらしい形でのメーデーへの関わり方をスタートさせました。

以下にその取り組みをご紹介します。県労連系の広島県中央メーデーに参加しつつ、政党として独自の取り組みもさせていただきました。
1.メーデーへの参加
2.メーデー会場ちかくでの憲法アンケート
3.西日本大水害2018被災地訪問
以下にご紹介します。

◆メーデーを前に独自の街頭宣伝

第93回広島県中央メーデーを前にさとうしゅういちは、NHK広島近くでも街頭演説。5月4日(水)13時からPARCO前での『山本太郎と桜を見る会』のご案内を行いました。あわせてメーデーに当たって『この20~30年給料がずっと上がってこなかった日本』の状況にたいして『ガツン、と財政出動』で『あなたの給料を引き上げ、あなたの負担を減らす』れいわ新選組の政策をご紹介しました。

メーデーを前に『この2、30年給料がずっと上がってこなかった日本』だからこそ『ガツン、と財政出動』で『あなたの給料を引き上げ、あなたの負担を減らす』

立憲さん、共産さんとの大きな違いは河井事件にあえて触れないことです。お金をかけずにボランティアで政治活動を組み立てていることはご紹介します。しかし、「河井案里さんから金をもらった誰某市議を打倒する!」などと叫んでも、その誰某市議の知名度を上げてしまい、筆者がやりたい政権批判や自分や所属政党の政策を紹介する時間が削られるだけで時間の無駄と感じています。


◎[参考動画]さとうしゅういち IN NHK広島ちかく

◆メーデー会場参加隊と憲法アンケート隊で同時多発行動

筆者自身は、第93回広島県中央メーデーに参加しました。フラワーフェスティバルの準備がすすむ、平和公園南側の噴水からデモがスタートしました。そして、会場のハノーバー庭園にいきました。今年はコロナで全員によるシュプレヒコールはなく、主催者のコールのあと、ハリセンのようにしたプラカードを叩いて音を出しました。

写真は友人が所属する郵政産業労働者ユニオンさんののぼりです。すこしまえ、全労連系の郵政産業労働組合と全労協系のユニオンが統合してできました。同ユニオンは労働契約法20条にもとづき、非正規差別をなくす裁判闘争を展開されています。メーデーの内容についてはマスコミで報道されているような各地でのものと同様ですのでここでは詳しくは触れません。

一方でチーム広島の皆様は、28日の竹原に続き、メーデー会場の入り口付近で『憲法アンケート』を実施しました。れいわ新選組チーム広島のメンバーが中心となり、自民党や維新、国民が進める憲法改悪を阻止するための活動をスタートさせています。https://twitter.com/reiwakaikensosi

[写真左]友人が所属する郵政産業労働者ユニオンさんののぼり/[写真右]メーデー会場の入り口付近で『憲法アンケート』を実施

◆近年の繰り返される水害の被災地を回る

筆者はメーデーの午後は広島市安佐南区祇園出張所前と古市橋駅前で街頭宣伝しました。

安佐南区は2018年の西日本大水害2018では被害は安佐北区や安芸区にくらべると小さかったのですが、2014年の広島土砂災害では北東部の八木・梅林地区や南部の山本で壊滅的な被害が出た地域がありました。2021年8月にも山本や上安で大被害が出ましたが、過去の水害の教訓で早めの避難が徹底していたこともあり、犠牲者は出なかったのは不幸中の幸いです。

『この20~30年給料がずっと上がってこなかった日本』の状況にたいして『ガツン、と財政出動』で『あなたの給料を引き上げ、あなたの負担を減らす』れいわ新選組の政策を紹介。

それとともに、「世界で最初の戦争被爆地」で「最近、大きな水害に見舞われている」この広島からこそ、「軍事より災害救援・復旧復興」「核兵器も原発もない世界」を打ち出していきたい、と表明。

日本は災害救助隊で国際貢献するとともに、核兵器禁止条約にせめてオブザーバー参加をすること、また、原発なき脱炭素・エネルギーの安全保障で先頭にたつべきこと、そのための財政出動もさとうしゅういちとれいわ新選組は、ガツンと打ち出している、と訴えました。

社会福祉協議会のふれあいセンター

筆者はそのあと、西日本大水害2018の大きな被災地のひとつである安佐北区の東部を回らせていただきました。この地域は西日本大水害2018の際に県内で最も早い時間帯に壊滅的な被害が伝えられました。他方で、地元の議員の機転で、県内でもいちはやく、7月9日には、社会福祉協議会のふれあいセンターにボランティアセンターが開設されました。ボランティアが自身の都合にあわせて活動しやすい環境も整っていたのが思い出されます。

この地域の災害時に土砂がひどかった県道沿いを中心に一軒一軒ご様子をうかがいました。災害時に活躍された地方議員などにもご挨拶させていただきました。災害時の機転のきかせかたについてご教示いただき、勉強になりました。この議員は広島土砂災害2014で安佐南区にボランティアに参加したときに感じた問題点を是正するような形でボランティアセンターを立ち上げたそうです。ボランティアはのべ8000人、うちリピーターが3000人。その裏には地域のリーダーでもある地方議員の存在がありました。彼は保守系で政策はちがう部分もありますが、毎回上位当選されるだけのものはあるのだな、と唸らされました。国会では当時は自由党参院議員だったれいわ新選組の山本太郎代表が奮闘して、重機などの資材を被災地におくることなどを提案したのを思い出しました。

参議院というのは、政権選択の衆議院とはちがいます。イデオロギー云々をこえて、じっくり現場を踏まえた議論をするような院にしていきたいものです。筆者はその観点からも今後とも県内の被災地を重点的に回らせていただきます。災害時やその後にこそ、普段みのがされてきたような社会の弱点も見えてくるからでもあります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

5・15事件90年、翼賛選挙・「近代の超克」80年 ── 繰り返される「戦中」にどう対抗するか さとうしゅういち

2022年は沖縄返還50年ですが、もっと遡ると、日本の近代史における「黒歴史」ともいえる事件から90年、そして80年となります。5・15事件から90年。そしていわゆる翼賛選挙、そして京大助教授らによる「近代の超克」から80年です。そして、軍部を「日本維新の会」(維新)や安倍晋三さんら自民党右派に、立憲政友会系を岸田総理ら自民党主流派に、立憲民政党系を立憲民主党に、京大助教授らを一時期の成功体験から卒業できない企業や広島県内の大手労働組合に置き換えると、まさに、いま、戦中が繰り返されているということが言えると思うのです。

◆5・15事件90年 政党の腐敗を追い風に昔は軍部・今は維新の人気が高まる

まず、5・15事件から90年。満州事変の翌年の1932年5月15日。海軍の青年将校が犬養毅総理を「問答無用!」と暗殺。政党政治はここで終了しました。しかし、政党政治の腐敗の不満から軍部への国民の期待が高まる中で、被疑者への甘い処分をもとめる民意が高揚。被疑者は軽い罰しか科せられず、1936年の2・26事件へとつながっていきます。既成政党のだらしなさへの憤りのいきおいあまって、「維新」への期待が高まってしまう。維新が少々の不祥事をやっても維新の支持率は下がらない。そういう現在の状況に似ていませんか?

◆翼賛選挙80年 軍国主義者が「革新」と持ち上げられる状況、現在に酷似

そして、今年はいわゆる翼賛選挙80年です。1942年4月執行の衆院選は、いわゆる翼賛選挙と呼ばれました。大政翼賛会系の候補には選挙資金が陸軍の機密費から出る、大政翼賛会に批判的な候補は政府により選挙妨害をうける。こういう選挙でした。当時はユダヤ人への今風にいえばヘイトスピーチで有名な四王天延孝中将ら、軍国主義者が「革新的」と持ち上げられて大量得票しました。これは、「維新」や「安倍晋三さん」がとくに若者から「革新的」とみなされている状況に似ていませんか?

ただし、この翼賛選挙を前に、腐っている、古くさいと指弾された既成政党、それも立憲政友会(立ち位置が今の自民党に近かった)よりはリベラルとされた立憲民政党(立ち位置が今の立憲民主党に近かった)も結局大政翼賛会に参加していたことも確認しておかなければいけません。

◆自民党と「国民ファースト維新の会」による「大政翼賛会」が迫っている

現代では、大政翼賛会一本に収斂されるまではひどくない、と思われるかもしれません。しかし、現代では擬似的な二大政党による翼賛体制がいままさに、構築されようとしているのではないでしょうか?自民党と補完勢力、いわゆる「ゆ党」による擬似二大政党制が起きようとしているのではないでしょうか?

すでに、衆院選2021で、連合の芳野会長は野党共闘を解体するほうへ、解体するほうへと動きました。こうした中で連合を基盤とする国民民主党は予算に賛成して事実上の与党に。一方で、国民民主党は参院選京都選挙区で維新と共闘をしています。

このままだと、参院選後にも、たとえば国民民主党、小池ファースト、吉村維新が合併した新自由主義政党、改憲推進政党「国民ファースト維新の会」誕生の公算が大きいでしょう。維新の支持層も連合の組合員も大手企業中堅以上のサラリーマンが多いという点で重なっています。維新が公務員を叩いてきたことで連合にも維新への反発はあります。しかし、公務員の組合が推薦した立憲民主党でも、公務員ボーナスカットには賛成してしまいました。「まあ、維新でもいいか」と思ってしまう組合員もすくなくないと思います。従って「国民ファースト維新の会」実現への障壁はそう高くはないでしょう。

◆野党第一党や組合がふがいない広島、平和都市なのに大政翼賛会化の先頭

一方で、立憲民主党も広島をふくむいくつかの選挙区では国民民主党と野合しています。広島はこのままでは、まさに、自民党の高級官僚出身世襲現職と、立憲・国民の野合にかつがれた元タレント新人による、「与党と補完勢力による独占」になりかねない情勢です。というか、そもそも、広島は、自民党と野党を自称した補完勢力による2議席独占がずっと続いていたといっても過言ではありません。

広島では野党といっても、原発や武器製造の大手企業の組合だのみなのが立憲民主党さんです。自民党系の知事でさえ進める脱炭素に懸念を表明したり、原発に対するスタンスを曖昧にしたりする参院議員がおられるのが広島の立憲民主党さんです。自民党官僚市長の提案する議案に、自民党系の一部の会派の議員以上に賛成してネオリベ市政を支えているのが立憲民主党の市議の皆様です。そして、再選挙2021で筆者が立候補した際、「俺の地域に出入りするな」と脅してこられた党員がおられるのが広島の立憲民主党さんです。中央の立憲民主党からも想像がつかぬような「補完勢力」ぶりです。広島のこのような大政翼賛会ぶりは、日本の大政翼賛会化を先取りしているといえるでしょう。

◆「近代の超克」と大差ないお笑い「日本すごい」

さらに翼賛選挙の年に「近代の超克」というスローガンが、当時の京都大学の哲学科の助教授らから出され、人々にウケていたことにも言及しなければなりません。「近代の超克」は、大ざっぱに申し上げると「日本は近代のチャンピオンである米英などを乗り越えた!」という趣旨の言説です。確かに、第一次世界大戦を契機に西洋の没落ということも言われてはいました。しかし、一方で、アメリカと日本の国力の差は歴然としたものがありました。日本はアメリカを乗り越えたどころか、コテンパンにやっつけられてしまうのです。この悲劇は日露戦争で勝利したことの成功体験から卒業できていないこととも関係あるのでしょう。

いま、日本は、また大いなる勘違いを繰り返そうとしています。「日本すごい」です。そのすごいはずの日本ですが、いまや、介護用手袋もマレーシアの企業に勉強にいかないと作れません。ひとりあたりGDP購買力平価では、韓国や台湾などに抜かれました。いわゆる失敗国家をのぞけば唯一といっていいほど、この30年間で給料が上がっていません。男尊女卑や報道の自由度の低下もさんたんたるものがあります。

広島県内でも結局、原発製造をふくむ重厚長大産業でひとりあたり県民所得(GDP)が全国3位だった1975年ころの成功体験から、企業ももちろん、行政、与野党の大多数も卒業できず、今日に至っています。

◆街頭や挨拶回りでも実感する大政翼賛会化

筆者は参院選を前に県内全域の有権者の皆様と対話しています。また、れいわ新選組チーム広島は街頭で憲法についてのアンケートにとりくんでいます(写真)。

 

その中で「いま、まさに、戦中が繰り返されている」と強く感じています。ありていに申し上げれば、筆者に対して男性有権者の方からは、「維新から立候補したほうがいいのでは?」とのお言葉をいただき、女性有権者の方からは、「自民から立候補したほうがいいのでは?」とのお言葉をいただく機会も以前より劇的に増えています。

また、れいわ新選組チーム広島による憲法についてのアンケートでも、「ロシアやコロナがこわいから憲法を変えたほうがいい」という趣旨のご回答がめだちます。一方で自民党の改憲案については、ご存じない方がほとんど、という状況があります。かくたる根拠はないが、なんとなく、ながされていく。これも実は戦中の日本に酷似しているといえるでしょう。

◆まずは冷静に考えていただくことだ

しかし、ここで陥ってはいけないのは、有権者を見下すような議論です。「改憲すればコロナ対策は安心」「ウクライナは核兵器をもっていないからロシアにやられた。だから日本はもつべき」などの有権者の思考回路もきちんと分析する必要がある。その上で有権者の皆様に以下のことを考えていただくことではないでしょうか?

自民党や補完勢力がいうような緊急事態条項で総理に権限を集中させる形で憲法を変えたらコロナ対策がうまくいくのか?

ソバや小麦などをウクライナとロシアで多くをつくっている中で、国内でろくにつくれない日本が軍備だけ増やして意味があるのか?

ウクライナ以外にも大国に対抗して核兵器を持ち出す国が次々現れたら核戦争のリスクは増えるのでは?

今までの原発製造ふくむ重厚長大産業に過度に期待する産業政策で広島の将来は大丈夫なのか?

正直、現時点の広島では、頭ごなしに正論をぶっても反感だけがのこると感じます。まずは冷静に考えていただく。そういう作業の積み重ねがいまは大事なように思います。

こういう二大政党による大政翼賛会化の背景には小選挙区制もあります。筆者は小選挙区制の廃止も公約していますが、まずは、いまのピンチを切り抜けないといけません。

もちろん、筆者としても、参院選立候補へ向けた準備は続けますが、他方で広島県選挙区において、自民党と補完勢力による独占をふせぐため、最大限の努力もしていまいります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

れいわ新選組チーム広島と共に、西日本大水害2018最大の被災地・坂町と唯一合併拒否の竹原市を呉線で街宣紀行 さとうしゅういち

筆者とれいわ新選組チーム広島は4月28日、安芸郡坂町と竹原市を街頭宣伝や挨拶回りしました。移動は行きは呉線でおこないました。

発災後半年以上経過した2019年1月12日に筆者がボランティアにうかがった際の様子

安芸郡坂町は西日本大水害2018では最大の被災地のひとつとなりました。とくにこの日うかがった小屋浦地区では、災害発生から半年以上たっても、土砂が広島市安芸区や安佐北区の被災地の直後の状態並にまだ堆積しており、息をのんだのを記憶しています。

さて、この日はまず、早朝、坂町役場前で街宣。れいわ新選組は、国家公務員給与の引き下げに反対し、現場公務員は非正規を正規にすることもふくめてふやす方針です。いま、立憲民主党さんさえも給与の引き下げに賛成し、連合も芳野会長が報道されているように労働者の味方とは正反対の状況です。

筆者は、演説では立憲批判は避けつつ、公務労働者の皆様が安心して町民のための仕事ができる環境を整える政策はれいわが一番である、などと訴えました。

続いて、呉線で小屋浦地区へ移動しました。バスも検討したのですが、なにぶん本数が少ないので(右の写真の時刻表)断念しました。

小屋浦地区の街宣ではさとうしゅういちとれいわ新選組の「何があっても心配するな。そんな国をあなたと一緒につくりたい」政治姿勢を紹介。

「ガツンと財政出動」で「コロナの前から厳しくコロナが追い打ちをかけ、さらにロシアのウクライナ侵攻による輸入物価高騰でおいこまれているあなたの暮らしを底上げする」「内外の災害に対応する災害救助隊の創設」や「減らしすぎた自治体現場の公務員をふやして危機管理を強化するとともに雇用をふやす」政策、また「安くて追い出されない住宅」で災害にあっても心配ない国を、などとうったえました。

さらに、大水害となった川沿いのお宅を一軒ずつ訪問しました。「4年前の水害でボランティア活動にうかがいました。その後、どんな様子か気になりおじゃましております。」とご挨拶をさせていただきました。


◎[参考動画]小屋浦駅前での街宣の様子の動画

写真中央は筆者。左が2018大水害、右が明治大水害の石碑

「災害が原因でスーパーの機能を果たしていたJAが撤退して買い物難民が増えている。移動販売だのみだ。」など、一定程度復旧が進んだかに見えた中でも多くの課題が発生していることをうかがいました。

ある程度上流にある小屋浦公園には、明治時代の水害と今回の西日本大水害2018の水害の石碑が並んでいました。

100年前の教訓を生かしきれなかった地元の皆様の痛恨の思いがよくつたわってきました。

◆少なすぎる呉線の普通電車、やはり市場原理主義ではない交通政策を!

さて、次は竹原に13時集合で街宣です。ところが、筆者は、小屋浦の地元の方との話に夢中になっていて、11時9分小屋浦発の普通電車に乗り遅れてしまいました。

次の普通電車は12時9分です。これでは大遅刻です。

仕方なく、坂までいちどバックして、改札を出て、入りなおし、そこから11時45分発快速で広へ。広で乗り換え13時7分に竹原入りし、支持者の皆様と合流しました。

呉線の広島ー呉は、日中が快速ばかりで普通電車が一時間に一本は少なすぎます。小屋浦とか快速通過駅の人は不便です。本数を増やした方が利用者も増えるでしょう。

もちろんJR西日本だけの責任ではありません。JR西日本は民間企業である以上、極端な話、『赤字だから廃止』と言われたらお手上げです。

しかし、公共性を鉄道に求める以上は、市場原理とのギャップを埋める必要があります。欧州のような上下分離方式(線路は国や自治体が持ち運行を民間がやる)の導入などが必要だと思います。活動の中できちんと国政で取り上げるべき課題が見えてきます。

◆県内唯一の合併拒否市の竹原でも街宣・憲法アンケート

さて、竹原入りした筆者は駅から少し歩いた竹原市役所・ゆめタウン竹原付近で街頭演説を行いました。


◎[参考動画]竹原市役所・ゆめタウン竹原付近で街頭演説

竹原市は県内86市町村が23に激減したいわゆる平成の大合併において、県内の市では唯一、合併を選びませんでした。

一方で、竹原市は瀬戸内海気候が極端な地域で、北海道以外では、日本でも一番雨が少ない部類の地域です。しかし、西日本大水害2018では大きな被害をうけ、道路や橋などの復旧もずれにずれこみ、3年以上かかったそうです。

昨年の参院選再選挙2021でうかがった竹原駅のセブンイレブンで昼食を買おうとしたら、閉店しており、腰を抜かしました。筆者は空腹を極めていたため、少々古い言葉を使うなら「ガチョーン」という気持ちでした。しかし、これが現実なのでしょう。新型コロナによる竹原の主要産業である観光への打撃も大きかったことを痛感しました。

竹原市役所・ゆめタウン竹原付近では筆者が、れいわ新選組の政策をご紹介する街頭演説をおこない、また、チーム広島の皆様は憲法についてのアンケートを行いました。

筆者は、市役所の皆様にむけては、竹原市が県内の市では唯一合併せずに独自のまちづくりをされていることに敬意を表しました。合併した自治体ではたしかに市役所も駅前もきれいになったが、合併された地域で人口の急減が止まらないなど問題がおおい、と指摘。そのうえで、「地方分権」と称して合併をさせた上で、財源や人の手当てをせずに仕事だけ丸投げしたこの2,30年の政治を改めたい、職員の皆様が市民のために安心して仕事ができるように、不足している公務員は非正規を正規にすることも含めてふやす、公務員という形で人が来たら地域にも活気が出る、などと力をこめました。

竹原・三原の市議会で反対の決議が可決されているのに許可されている産業廃棄物処分場問題についても言及。「日本の安定型処分場はざるのようなものだ。新規のものは禁じる法律をつくるべきだ。」などと訴えました。

[写真右]閉店した竹原駅のセブンイレブン。[中央と右]れいわ新選組チーム広島が行った憲法アンケート

一方、れいわ新選組チーム広島の皆様は、ゆめタウン竹原に買い物で出入りされる皆様に憲法アンケートを実施しました。多くの皆様は、自民党がやろうとしている憲法「改正」の中身は把握しておられないようです。その中で、国民民主党や「維新」などが、自民党以上に拙速に改憲を突撃隊的にあおり立てている状況もあります。

筆者も、「自民党が安全保障をきちんとやらないから他の政党でやってほしい」という人が維新に期待している状況を街頭で感じています。しかし、その安全保障の中身も問題です。食料をほとんど自前でつくれない、原発という弱点だらけの日本が軍備だけ増やしてどうするのか?という基本的な問題意識も維新などからはすっぽり抜け落ちていますが、勢いだけはあります。

今夏の参院選で自公はもちろん、維新・国民を躍進させないようにしつつ、ガツンと庶民のくらしを重視するれいわ、共産、社民、立憲良識派を増やしていく。その上で、冷静な議論をするよう呼びかけていくしか当面はないと感じます。

◆独自のまちづくりに奮闘する竹原市民

街宣終了後は、竹原の街並み保存地区を堪能しました。竹原の旧市街は重要伝統的建造物保存地区に選定されています。NHKの朝ドラ「マッサン」で有名になった竹鶴酒造などもあります。一行は古民家を利用した喫茶店で休息しました。店主もふくめ、合併をしなかったぶん、独自のまちづくりに奮闘されている気概が街中からつたわってきました。

竹原の旧市街

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

れいわ新選組の街頭宣伝を行ってわかった「最も広島県らしい街」呉の市民意識に変化あり! 「昭和までの成功体験」からの脱却の機運 さとうしゅういち

広島県呉市は広島県南部の沿岸部の中核市に指定されている中規模都市です。広島市から呉市まではバスでも電車でも約40分。人口は21万2597人です。その呉市は、いろいろな意味で「最も広島県らしい」街です。

◆軍事都市から重厚長大産業へ、しかし、海外派兵再び

第一に、明治時代から第二次世界大戦敗戦までは軍事都市として栄え、戦後、すなわち昭和の中期から後期は重厚長大産業で成功したという点です。広島市は日清戦争のときは、天皇や総理大臣、帝国議会が置かれた首都であり、原爆投下の時点では第二総軍の司令部がおかれ、陸軍の西日本の中枢でした。いっぽうで、呉市はその港としての条件をいかして、海軍最大の拠点となり、戦艦大和が出撃したことでも有名です。

戦後は旧軍港都市転換法を日本国憲法に規定された住民投票で可決。造船や鉄鋼、原発製造などの重厚長大を軸とした産業都市として栄えました。いっぽうで、海上自衛隊もおかれ、2001年のアフガンや2004年のイラクの戦争にも後方支援とはいえ派兵されています。広島市と広島市に包囲されている安芸郡海田町は陸上自衛隊があり、イラク戦争後方支援に派兵されました。

◆1975年の「成功体験」を卒業できぬうちに衰退

第二に、過去の成功体験からの卒業ないし転換ができないうちに人口の流出や既存産業の衰退で苦しんでいる点です。広島県は、1975年、一人あたりの県民所得が日本で第三位に躍進しました。ちょうど、重厚長大産業による日本の経済成長が頂点に達した直後であり、地元の球団・広島カープが山本浩二や衣笠祥雄らの活躍でセ・リーグ初優勝した年でもあります。一定年齢以上の県民にはこのときの「成功体験」が忘れられない傾向があるのも仕方がありません。

呉駅前

これは与党の支持者については、腐敗した議員を腐敗していると分かっていて投票し続けることにもつながります。現実に河井案里さんから最高金額をもらった県議(略式起訴され、辞職)は呉市の選出でした。

一方で、野党側にも原発製造ふくむ重厚長大産業労組の影響が強くあります。新しい経済をどう構想していくか? そういう力強い議論をどの既存の政党からも出てこないのも、過去になまじ成功体験があるからです。

また、保守だけでなく、いわゆる左派・リベラルの側にも、若手へのマウンティングの気風を根強く感じます。

しかし、そうこうするうちにも、2021年の広島県の人口転出超過は7159人と都道府県で最多となっています。とくに呉市は、2020年の国勢調査では5年前とくらべて13960人減少で中国地方の自治体ではワースト1です。呉駅前(写真)も2013年にそごうが閉店したあと、閑散としています。さらに、2021年には、日本製鉄(昔は日新製鋼、吸収合併された)の高炉閉鎖や原発製造企業の衰退、さらには高校の廃校問題などが追い打ちをかけています。

◆「地方分権」という名目の新自由主義の弊害

第三に、「地方分権」という名による新自由主義の弊害をこうむっている点です。総務省は、市町村合併をすすめ、そこに、国や都道府県の仕事を十分な財源や人の移譲もないまま丸投げしました。とくに、藤田雄山前知事(故人)は総務省のいいなりで市町村合併を推進。県内で86あった市町村を23市町に減らすとともに、県の仕事を市町に丸投げしました。

呉市も呉市・音戸町・倉橋町・蒲刈町・安浦町・豊浜町・豊町と7つの市町をひとつにまとめました。しかし、「合併により、島嶼部の旧町を中心に埋没し、かえって活力が低下した」(県内の自治体相手の事業もてがける会社経営者)のです。また、新型コロナ、そして、西日本大水害2018などへの対応にも支障をきたしています。とくに、吸収合併された地域を中心に事態は悪化しています。

こうした呉市ですが、他の広島県内同様、政治的に非常に保守的です。呉市を中心とする広島5区は2009年の民主党旋風時以外は自民党(宮沢派→岸田派=宏池会)議員の圧勝です。なお、2009年に当選した民主党議員は宮沢喜一元総理の秘書を務めていたという特殊事情がありました。

◆呉で初めてのれいわ新選組街頭宣伝 市民の意識の変化を実感

こんな呉市ですが、2022年参院選を前に、れいわ新選組チーム広島は4月5日(火)呉市において、初めての街頭宣伝を行いました。筆者が記憶する限りでは、2019年のれいわ新選組結成以降、広島市や福山市では山本太郎代表による大規模集会や街頭演説を行っていますし、東広島市と廿日市市では、衆院選2021で街宣車を回しています。しかし、呉市では初めてです。一方で、参院選再選挙2021はもちろん、それ以前も何度も筆者は個人としては街頭演説をしています。

今回は、朝の始業時間前に呉市役所前、そして9時30分からは呉駅前で街頭宣伝を行いました。市役所前では出勤してこられる職員にメンバーがれいわ新選組のチラシをお渡しし、筆者が演説するという形をとりました。

筆者は公務員をふやす、非正規は正規にしていく、公務員ボーナス引き下げには反対、地方に十分な財源を保障など、れいわ新選組の政策を紹介。「れいわ新選組こそ、市役所職員の皆様が安心して市民のために仕事をできるような政策であると自信をもってお薦めできる。」と断言。

また、重厚長大産業の衰退に対しては「食料安全保障や原発なきエネルギー安全保障、グリーンニューディール政策にれいわ新選組はガツンと投資をする。呉でいえば、重厚長大産業の跡地で食料生産やエネルギー生産をする方向も考えられる。」と提案。一方で、「県庁マンのころとくらべて介護の現場は仕事の割に給料がひくすぎる。介護や保育の給料10万up実現に公務員の皆様もご協力を!」「奨学金チャラ、教育費タダで若い人に元気を!」などとかつての仲間に力をこめて訴えました。

筆者は「元県庁マン」であり、職員の皆様と同じ労働組合で長年、役員もさせていただいています。筆者をご存じの職員も多く、チラシの受け取りも上々でした。実は、れいわ新選組のチラシの受け取りは役所の前では非常に良いのです。その傾向が呉市でもあてはまりました。

買い物客や通院のお年寄りが多い駅前では、消費税廃止やガソリン税ゼロ、国保料減免などの負担軽減策を訴えるとともに、食料安全保障にも力点をおきました。「ロシアやウクライナで蕎麦の半数以上を生産している状況だ。国内でつくれるようにしないと、お好み焼きも食べられなくなる。」と指摘。農業だけでなく、漁業や畜産もふくめた食料生産者へのコストの保障を訴えました。

◎参考動画 呉駅前での街頭演説の様子
https://www.facebook.com/satoh.shuichi/posts/10227473667486248

「さとうさんが演説しているのを見て立ち寄った。れいわ新選組のポスターを家に張りたい」と申し出られる女性。

「(あなたは)堂々と自分の考えを述べている。はじめて、サムライをみた。民主党がなにもしてくれなかったからまた世論の支持は自民党に戻ったが、自民党の暴走は困る。がんばってほしい。」という男性。

様々な激励をいただきました。2021年、高炉の閉鎖や原発製造企業の衰退、高校の廃校問題などで呉は大きく揺れました。そうした中で、呉市民や市役所職員の皆様の「地域の将来への危機感」を強く感じました。

今後とも皆様と対話をかさねながら、「財政出動であなたの暮らしを立て直す」短期の政策、そして、「食料安全保障や原発なきエネルギー安全保障に投資」し「重厚長大産業中心」から卒業するグリーンニューディール政策、もちろん、核兵器をなくし、外交で緊張緩和を進めていく筆者やれいわ新選組のビジョンをこの呉市でもガツンと訴えていく覚悟です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!
『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

チェルノブイリデーは存廃に揺れる芸備線の始発に乗って広島県北部を街宣紀行 さとうしゅういち

4月26日はチェルノブイリ(現・チェルノービリ)原発の大事故から36年です。筆者はこの日、島根原発の再稼働問題で揺れる広島県北部に街宣や挨拶回りにうかがいました。広島県北部はこのほか、直近ではJR芸備線の存廃問題で揺れています。JR西日本は先日、芸備線をふくむ地方路線のコストパフォーマンスを発表。芸備線も区間による程度の差はあれ、大赤字と公表されています。こうした中で筆者は芸備線始発で自宅最寄りの矢賀駅(広島市東区)から三次駅まで移動しました。

始発列車は気動車の2両編成。5時43分、矢賀駅を出発しました。当初は、始発とあって、筆者以外にはあまり人が乗っていませんでした。

 

◆河井事件の「余震」おさまらぬ安佐北区

列車は矢賀を出ると、戸坂(へさか)、そして、先日補欠選挙があった安芸矢口へと進みます。安芸矢口からは安佐北区です。安芸矢口駅は西日本大水害2018で壊滅的な被害にあった地域です。筆者はこの地域でボランティア活動に従事。熱中症でぶっ倒れ、伊藤昭善市議に手厚くお世話をしていただきました。その伊藤市議が河井夫妻からお金をもらい、現在も裁判で争っておられます。この状況に筆者は、筆舌に尽くしがたいほど困惑しています。

補選のほうは、筆者が支援した原田よしこさんは、健闘したものの4位。当選は保守系無所属のお二人、という結果になりました。支持者同士の人脈がかさなる共産党候補と合わせればトップ当選になる状況でもあり、ちょっと悔やまれます。

▼安佐北区補選開票結果 2022年4月24日執行
山下 まさひろ 6335 保守系無所属 立憲森本参院議員支援
三宅 あきみつ 4322 保守系無所属 自民主流・一部立憲市議支援
清水 てい子  3996 日本共産党
原田 よしこ  3737 市民派無所属 一部立憲衆院候補・筆者(れいわ)支援
正木 あつし  1657 無所属 元リコールされた県議
かとう万蔵   1205 無所属元職  
大田 清     587 無所属 安芸区でも立候補

さて、芸備線は単線ですので、結構すれ違いで時間を消費します。

広島方面下り列車とすれ違っている様子です。芸備線は広島方面が下り、三次・新見方面が上りです。大都市の広島から山岳地帯に向かうのに上り列車というのも変な感じはうけますが、東京にちかいほうが上り、と決まっているのだから仕方がありません。

◆安佐北区北部は農村地帯

安佐北区北部はもう、大都市とは思えないような農村地帯です。太田川の支流の三篠川流域にあたります。このあたりも西日本大水害2018では鉄橋が流されるなど大きな被害を受けました。

このあたりでは、県の北部の高校に通う制服姿の若い方がパラパラと乗車してこられますがやはり、まだまだ早い時間帯とあって、乗客は少なめです。

広島県は実をいうと、伝統的には、北へいけばいくほど米所です。古代は北部のほうに、出雲と連動するような形で文明が栄えたといわれています。

◆安芸高田市からは江の川流域に

列車は井原市を過ぎると安芸高田市に入ります。ここからは広島県北部。日本海に注ぐ江の川流域にはいります。西日本大水害2018では江の川上流の広島県に降った大雨は時間が経ってから島根県を直撃。大被害をもたらしました。ここからも、水田が続きます。

 

◆毛利元就ゆかりの「吉田口」からは女子高校生多数乗車

 

そして安芸高田市の中心部に近い吉田口駅は25年前の大河ドラマの主人公「毛利元就」の本拠地のすぐ近くです。またJ1のサンフレッチェ広島の練習場もこの安芸高田市にあります。

この吉田口駅では女子高校生多数が乗車してこられました。三次市内の県立高校の制服です。このあたりから、芸備線で通学されている方も多いようです。この区間は100円を稼ぐのに600円近くかかると、JR西日本は試算しています。

しかし、通学手段ということを考えればこの区間を廃止するのは暴論もいいところでしょう。そもそも、移動の権利を保障するということであれば、赤字だから廃止する、というのはおかしい。さりとて、現にJRという民間会社が運営している。

そうであるならば、欧州でやっているような線路など「下」は国や県が保有し、列車の運行など運営をJRがやる「上下分離方式」で存続を図るのがおとしどころではないかと思いました。そして、行き先の地域ではそういう内容も演説に含めよう、と高校生の姿を拝見して考えました。

ちなみに、この安芸高田市もご多分に漏れず、高田郡全ての町を合併してできた市です。具体的には吉田町、八千代町、高宮町、美登里町、甲田町、向原町です。
安芸高田市では当時は県議だった児玉市長が克行受刑者からお金をもらったとして辞職。その後、若い石丸市長が出直し選挙で当選していますが、議会多数派との対立で苦労しておられます。

◆三次駅前はきれいになったが閑散

列車は安芸高田市から三次市へと入ります。やはり、水田が続きます。途中の駅でも続々と高校生が乗ってこられました。そして、7時半ころ、列車は終点の三次駅に到着しました。

三次駅前は筆者が県庁マンとしてこの地に勤務していた2002―2005年度ころにくらべると再開発でこぎれいな感じになっていました。しかし、人通り、車通りとも閑散としていました。三次市の人口も合併された地域を中心に大きく減少していたこと影響は明らかです。

 

わたしは、この日は、まず、三次市役所前で街頭演説。「合併で職員を減らした上に、さらに国や都道府県の仕事を丸投げした地方分権」の弊害を指摘。
「職員の皆様が市民のために安心して仕事ができるよう、減らしすぎた公務員は非正規を正規にするなども含めてふやしていく」
「公務員という形で増えれば地域に若者もやってきて活気が出る」
「食料の安全保障のため、農業だけでなく畜産業など食料を生産する人に所得とコストの保障をがつんと財政出動でおこなう。」
「地方に手厚い政策は、全ての政党の中でれいわ新選組こそ一番、参院選広島にエントリーを検討している人の中ではさとうしゅういちこそ一番だと確信している。」
などと力をこめながら登庁してこられる職員の皆様にビラをお渡ししました。

一方で「介護や保育などの給料が仕事のわりにひくすぎることに気づいたのはこの地で介護保険行政に携わっていた時代のこと。職員の皆様にもぜひ、介護、保育現場の公務員並への給料アップにご協力を」などと懇願しました。


◎[参考動画]さとうしゅういち 介護福祉士・元県庁マンIN三次市役所前 ガツンと財政出動で公務員が安心して市民のために仕事ができる政治/チェルノブイリ(チェルノービリ)原発事故から36年

幹部職員の方からも「がんばってください」と激励をいただきました。また、この日はチェルノブイリデーでした。この三次市は脱原発をはじめて広島の運動に本格的に採用した森瀧市郎先生の故郷でもあります。

筆者はそのことも紹介しつつ、「ロシアのウクライナ侵攻で原発こそ人類の安全保障の弱点とわかった。原発は廃止を。」「中国電力は先週の日曜日=17日に太陽光発電の電気が余って却って停電をおこすおそれがあるとして出力調整をした。」ことに言及。「やるべきことは、島根原発2号機の再稼働ではない。スマートグリッドや蓄電池の整備などに投資をすること。廃炉を世界に先んじてビジネスとして確立することだ。」などと力をこめました。

三次駅前では芸備線の存廃問題に言及。「上下分離方式」で存続を図るべきだということ。そもそも、地方を衰退させるようなこの20―30年の政策を改めるべきだ、などとボルテージを上げました。

この日はまるで天佑のように市役所前と駅前での演説中は雨が気にならない程度に弱まっていました。しかし、その後は再び大雨になりました。それでも予告していた場所での演説は決行。

◆庄原へは芸備線の本数が少ないためクルマで移動

 

隣の庄原市も含めて、旧知の自営業者や地方議員などへの挨拶回りも行いました。なお、庄原市への移動は支持者の方の車でさせていただきました。三次から先は芸備線の本数が少ないからです。やはり、この区間では本数が少ないから利用者が少ない、という悪循環も感じます。上下分離方式で備後庄原までは最悪でも維持していただきたいものです。

この庄原市議会は、3月議会では島根原発2号機再稼働反対の決議を出しています。他方で、前市長がバイオマス事業で市に大損を与えた問題では、住民が市長に対して市が損害賠償請求するよう市にもとめた裁判で勝訴しました。にもかかわらず、控訴する議案を市議会がわたしの来訪の前日に可決するという信じられない事件も起きています。いつまで、前市長を議会の多数派はかばいつづけるのでしょうか?島根原発の再稼働反対の決議のことで庄原市議会を街頭演説で褒めたわたしは、ちょっと裏切られた気分でした。

大雨で交通が乱れるおそれが出てきた15時に今度はバスでこの地から引き上げました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

「食」で地元に貢献20年、フードバンク共同代表の大学教授が選挙に初挑戦する広島市議補選第2ラウンド さとうしゅういち

広島市では、河井事件で辞職した市議の穴を埋める補欠選挙が相次いでいます。第一ラウンドは安芸区で行われ、定数1に4人が立候補。自民主流派の推す元市職員が圧勝。自民党主流会派に入会しました。第二ラウンドは安佐北区で4月15日告示、24日執行で行われます。定数2に以下の7人が立候補します。

無所属新人の会社社長山下正寛さん(45)、無所属新人の大学教授原田佳子さん(69)、共産党新人の党県委員清水貞子さん(75)、無所属新人の会社社長三宅朗充さん(56)、無所属新人の元県議正木篤さん(71)、無所属元職の酒店経営加藤万蔵さん(76)、無所属新人のオンライン学習塾経営大田清さん(49)です。

このうち、大田さんは第一ラウンドの安芸区補選につづく挑戦。正木さんは、2011年に県議に当選も無免許運転が発覚。2年以上も議席に居座ったあげく、2013年にリコールされました。その後も何度か選挙に立候補され、「一定の票」は得ています。

◆「過疎化」に相次ぐ水害が追い打ち

安佐北区は広島市の最北端に位置します。人口は可部線の可部駅を中心とする可部地区と芸備線沿線の高陽地区のニュータウンに集中しています。

他方で、冬には雪が多いときには数十センチも積もるような山岳地帯も抱えています。1990年代など、一時期は人口が20万人に迫るか、という勢いを見せていた安佐北区ですが、最近ではニュータウンで高齢化が進行。また、年配者は介護や医療のサービスが受けやすく買い物も便利な広島市の旧市街に回帰。いわゆる子育て世帯も南の安佐南区の方が便利ということで、そちらに新居を構える方も多く、過疎化が進んでいます。そこへ広島土砂災害2014,西日本大水害2018が追い打ちをかけました(写真は西日本大水害2018での安佐北区口田地区の被災現場)。筆者もボランティア活動中に倒れ、伊藤昭善市議に救護をいただいた思い出があります。その伊藤市議が河井事件でお金をもらい、現在は辞職せずに裁判闘争をされているのには筆者も文章ではとてもではないが表現できぬ複雑な想いです。

◆立憲民主党、連続不戦敗で野党支持者はカオス状況

今回の補欠選挙では、野党第一党の立憲民主党は候補を出していません。市議補選の第一ラウンドである安芸区に続く不戦敗です。これでは、とくに野党を支持している有権者は選びようがないのも事実でしょう。共産党の候補も出ておられます。

しかし、複数区で支持政党以外の公認候補に投票というのは難しい。そして、本選挙でライバルにもなるし、参院選ではライバルの足腰を補強する結果になるからです。立憲民主党幹部も、現職市議は別の保守系無所属候補、森本・宮口両参議院議員もさらに別の保守系無所属候補を消極的に推すというカオス状況です。党利党略以前に自分たちが、一定のアンチ自民票を得て、議席を防衛できさえすればいい。自分の政党でもライバルにもなる議員が生まれるのはのぞまない。

一方で、自民党は自由に保守系無所属候補を立候補させておいて、あとから追加公認したり自民党会派に入れたり。なぜ、広島で野党が弱く、与党が強いか。その背景のひとつを今回、かいまみました。

◆筆者は長年「食」で地域貢献の原田候補を応援

過疎化、災害に政治腐敗。地域課題が山積する中で、生活に困っている人も、コロナの前から増え、コロナが追い打ちをかけている状況は安佐北区も例外ではありません。そんな安佐北区でフードバンクの活動に長年携わり、困窮者への食料供給や食育に力を入れてきた大学教授です。

さて、なぜ、筆者は原田候補を応援するのか?

広島県、とくに広島市内の政治や選挙はこれまで政策の議論がおきざりにされてきました。国会、県議会、市議会ともその傾向は強く、選挙結果の大勢は政策の議論よりも、組織(力)で決まってしまっていました。

また、与野党関係なく、新規に政治に参画しようとする人に冷たい傾向を感じてきました。その結果、県議選では無投票、という選挙区も多数出る始末です。

一方で、こうした「組織本位」の広島の政治文化への反発の勢いあまって、「若ければ誰でもよい」的な流れも市民の間に一定程度強まったのも理解できます。

こうした流れを県議選安佐南区や参院選2019における河井案里さんや、そして、彼女のバックともいわれる安倍晋三さんらがうまくつかんだとみられます。しかし、その結果が大買収事件でした。

世襲や高級官僚「ばかり」だった広島与党本流にも、いわゆる「労働貴族」の影響がつよい野党にも、もちろん、「まったく新しい」を偽装していた案里さんにも、不足していた要素を大幅に広島の政界に補充し、広島の政治をリニューアルすることが、国政、地方関係なく大事ではないでしょうか?

今、原田よしこさんのような、長年、地道に一つの課題にじっくりと取り組んで来られた方を政治に送ることもその具体策のひとつである。そのように筆者は確信しています。

コロナの前から厳しく、コロナが追い打ちをかけ、さらに戦争による食料危機などがトドメをさしかねない庶民のくらし。フードバンクに取り組んで来られた原田さんの力がいまこそ、広島に必要ではないでしょうか。


◎[参考動画]原田よしこ候補の公式チャンネル

◆初々しい原田候補の出発式

原田候補は告示のわずか1ヶ月前に立候補を決断しました。困窮者への食料配給作業を続ける傍らでの選挙準備を拝見し、頭が下がる思いです。

15日、可部3丁目の事務所で出発式が行われました。無所属の女性広島市議、立憲民主党衆院候補、国政地方とも立候補経験のある筆者(れいわ新選組所属)を除けば、いわゆる素人の方ばかりです。それがいいのです。初々しさを醸し出していました。筆者ふくむ政党関係者も、挨拶などで、でしゃばることなく、一般市民と同じように候補の話をうかがい、そして黙々と地味な作業に徹しました。

原田候補も時々原稿に目をおとしながら緊張してしゃべっておられましたが、フレッシュな感じがしました。

子育て世帯向けには学校給食保護者負担ゼロ。

そして、高齢者に元気を!

安佐北区が2014、2018と大きな水害に見舞われたことに関連し、気候変動対策にも触れました。

そして政治を分かりやすく語ることで、クリーンな政治を、と訴えました。


◎[参考動画]筆者撮影の動画

◎原田よしこ候補の政策とプロフィール https://haradayoshiko.net/ 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

ウクライナ戦闘の長期化で勢いづく不穏な「金正恩主義」 一刻も早い停戦を! さとうしゅういち

ロシアのウクライナ侵攻による戦闘は長期化しています。最近ではキーウ(キエフ)周辺からロシア軍が後退する一方で、東部の2州での戦闘が激化していると伝えられています。

◆広島でも反戦運動の反面、核武装論も勢いづく

こうした中で広島市でも、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する行動が行われています。4月10日には、若者たちの3日程度前の呼びかけにより、原爆ドーム前に多くの人が集まりました。

一方で安倍晋三さんや「維新」による「核共有論」なども物議を醸しました。「核共有論」については、自民党でさえも、正式な党の見解として否定をしています。しかし、最近、「金正恩主義」とでもいうべき主張が街頭で接する有権者の方からも目立つようになりました。

この4月10日も、別の場所で街宣をしたあと、原爆ドーム前にかけつけようとした筆者に対して、以下のような主張をしつこくされる方がいらっしゃいました。「これからはアメリカには頼れないから、日本が独自に核武装して自衛するしかない。」ということです。

これは、そのまんま、朝鮮の金正恩総書記の主張です。金正恩総書記の主張は大まかにいえば、以下のようなものです。

「アメリカにやられないようにするには、我々は核兵器で対抗するしかない。」

アメリカをロシアや中国に入れ替えれば、この「おっさん」の主張とまったく同じになります。

4月10日、若者たちの呼びかけにより、原爆ドーム前に多くの人が集まりました

◆イラク戦争で加速した「金正恩主義」

冷戦崩壊でソビエトや中国の後ろ盾がなくなった以上は、アメリカにやられないようにするには、核兵器をもつしかない。そう金正恩総書記が考えるのも思考回路として「わからなくはない。」

実際、2003年のイラク戦争は、アメリカはイラクに大量破壊兵器がないにも関わらず、「ある」と決めつけて攻撃しました。金正恩総書記の父の金正日が「イラクは核兵器がないからアメリカにやられた」と考えたとしても不思議ではありません。実際、イラク戦争後に朝鮮は核兵器開発を加速させているのは皆様もご存じのとおりです。

◆「5大国はまとも」という国連・NPTの建前と実態のかい離

アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス。この5大国は第二次世界大戦の主たる戦勝国であることを背景に、国連安全保障理事会の常任理事国となっています。また、1968年に発足し、1995年無期限延長が決まったNPT(核拡散防止条約)で核兵器の保有を既得権として認められた国でもあります。両方のことには明らかに密接な関係があるといえます。

この五大国は「ある程度はまとも」だから、拒否権や核兵器の保有といった大きな力をもたせておいてもよかろう。また、大国同士なら、いわゆる核抑止力もはたらくだろう。

上記のような建前で、20世紀後半の国際秩序は動いていた、といって間違いないでしょう。5大国以外の国でとくに北半球の国は多くがアメリカかソビエトかにつき、どちらかの核の傘に入りました。

もちろん、実際にはヒヤリとする場面もありました。たとえばアメリカは朝鮮戦争で核兵器を使おうとしました。また、キューバ危機は有名です。その他にも核兵器という刀の柄に手を掛けたことは、何度かあったことが明らかになっています。実際のところは、たまたま、核戦争が幸運にも起きなかっただけかもしれません。ただ、核兵器の実戦使用は、ヒロシマ、ナガサキにおけるアメリカ。そして、アルジェリア独立戦争における実験と称したフランス軍による使用。これでとどまっているのも事実です。核兵器使用に反対する世論が大きいこと。それを考慮する程度の合理性は5大国の為政者にあったこと。これも事実でしょう。

他方で、冷戦時代、核は使わなくても、集団的自衛権と称した侵略も米ソ双方やっていました。そして、核兵器を独占する5大国への不満もつねにありました。「君たちは非核兵器国の安全を保障してくれるのか?」と。

◆イラク戦争契機に建前と実態のかい離拡大、そして「金正恩主義」の勃興

こうした建前と実態のかい離は、21世紀に入ると拡大していきました。911テロ後、アフガニスタンを侵略したアメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュ被疑者はさらにイラクに先制攻撃。これは「大量破壊兵器がある疑い」で一方的に行ったものでした。そして、多くの市民が犠牲になりましたが、大量破壊兵器はありませんでした。「共犯者」の英国首相・トニー・ブレア被疑者は謝罪して政界を引退したものの、ブッシュ被疑者はまったく謝罪もせず補償もされませんでした。そして、中東は荒れ、ISが興隆。ISの鎮圧に手こずった米英は、結局、ロシアによる手荒なシリア空爆作戦を黙認することになります。このことで、プーチンが勢いづいた面は否定できないでしょう。そして、ロシアのウクライナ侵攻です。

そんなこんなで大国の信用は地に墜ちています。そうしたなかで、金正恩主義ともいえる考え方が日本をふくむ世界各地に広がるのも支持はしませんが「理解」はできます。

◆反米・反グローバリズムの一部に食い込む金正恩主義

また、反米主義・反グローバリズムの考え方の皆様の一部にも「金正恩主義」がくいこんでいる感じがします。街頭などリアルでも、筆者の食料安全保障強化や脱原発は支持しつつ、核武装して自衛するべき、という方に遭遇する頻度も以前に比べて増えています。アメリカへの反発の勢いあまって、という感じも受けます。もちろん、過剰なグローバリズムは脱却するべきでしょう。しかし、「金正恩主義」で大丈夫なのでしょうか?

◆収拾がつかなくなる金正恩主義

では、全ての国が「(核兵器をもつ)大国から防衛するために核兵器をもつ」などと言い出したらどうなるでしょうか?

おそらく、大混乱になるでしょう。日本だけがNPT/国連の例外だ、などということを納得する人はいないでしょう。「日本がもつなら俺も」と言い出す。実際に、過去にはアルゼンチンや南アフリカ共和国なども核兵器を開発していました。それを非核地帯条約加入にともない、放棄しているのです。昔のアルゼンチンや南アフリカ共和国のようなことを多くの国がやりだしたらどうなるか?合理的でない指導者が核のボタンをもつ確率もあがる。そして、おそらく、核兵器を使ってしまう国も出てくる。一度使われてしまえば、使用への心理的なハードルが下がる。そして、気がつけば地球滅亡、になりかねません。やはり、核兵器は禁止しかない。5大国も朝鮮などの小さな国も持たないようにしないといけないのです。

◆加害国であった過去 日本は忘れず核兵器禁止条約推進を

そもそも、日本が独自に核武装しようとすれば、国連憲章の敵国条項に抵触します。日本は袋叩きにあうこと必定です。日本は第二次世界大戦の敗戦国であり、アジアへの加害国です。そのことを忘れて独自に核武装など、袋だたき必定です。いわゆる反米や反グローバリズムは構わないのですが、日本が加害国であることを忘れて頂いては困ります。

日本の近隣にはASEAN・東南アジア諸国連合があります。すべて核兵器禁止条約に署名しています。あのミャンマーでさえです。最近では連携して米中両方にモノを言うようになっています。

NPT体制は核兵器廃絶を進めるものではありません。しかし、取りあえず、野球でいえばファウルボールでゲームセットを逃れるイメージで捉えれば良いでしょう。その上で、緊張緩和を、ランナーをコツコツ貯めていくイメージで進めていくべきです。

日本はとりあえず、核兵器禁止条約の締約国会議が6月にあるのですから、ぜひ、参加するべきでしょう。そうなると岸田総理の人気も上がって、参院選で広島の野党は筆者も含めて苦戦はまぬかれませんが、それはそれで仕方がないことです。党利党略ではなく、日本があるべき方向にすすむことが大事なのですから。

◆ウクライナ 1秒でも早い停戦を!

戦闘が長引けば長引くほど、核兵器をふくむ、力で問題を解決しようという考えが広がっていきます。正直、冷戦崩壊後、アメリカが調子にのりすぎて新自由主義グローバリズムで暴走した反動で、アメリカべったりの文脈の力の論理は、かつてほどは力がないかもしれない。

しかし、「金正恩主義」ともいえる「大国に対抗するために核武装」という考えは勢いづく恐れが日本国内はもちろん、世界でもありえます。わたしが街頭でお会いした「おっさん」のような方が一般市民の立場で発言する程度なら、笑い話でまだ済むかもしれない。しかし、朝鮮以外でも、国家の為政者が暴走して核を持ち出すようになってからでは手遅れです。あらゆる手段で1秒でも早くとりあえず、戦闘を停止することが大事です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!

広島の政治は北部から変わる? 庄原市議会、島根原発2号機の再稼働に反対する決議可決! さとうしゅういち

筆者が住んでいる広島市から最も近い原発は四国電力伊方原発です。同原発3号機の運転差し止めをもとめる裁判を筆者も含めた住民が広島地裁に起こしており、運転差し止め仮処分決定が出たことがありますが、直近の申し立ては残念ながら、却下され、再稼働されています。

一方、広島県北部の住民にとって、最も近い原発は島根県松江市の中国電力島根原発です。松江市は全国で唯一原発がある県都です。

事故が起きた場合は直接の影響がすぐにはなくとも、島根県東部の避難民を広島県北部で受け入れることになります。島根原発1号機は2017年から2045年までの廃炉作業中、3号機は新設ですが稼働の見込みが現在はなく、2号機の再稼働が焦点となっています。

こうした中で、松江市は再稼働を了解してしまいました。島根県知事も近いうちに周辺自治体などの意見を聴いて是非を決める予定です。

その広島県庄原市議会では、島根原発の再稼働に反対する決議が3月23日の市議会本会議において、11対8で可決されました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

発議第2号

島根原子力発電所2号機の再稼働に反対する決議上記の議案を、庄原市議会会議規則第14条第2項の規定により、別紙のとおり提出する。

令和4年3月23日 庄原市議会議長様
提出者 総務常任委員会委員長 赤木忠德

(提案理由)島根原子力発電所2号機の再稼働については、安全性の確保や避難計画の実効性に関する課題が山積している。住民の命と安全の保証がないままに、原子力発電所を再稼働することに反対するものである。

島根原子力発電所2号機の再稼働に反対する決議

昨年9月、原子力規制委員会は島根原子力発電所2号機が新規制基準に適合していることを示す審査書を決定した。今年2月、松江市は再稼働の可否に関する事前了解権に基づき、再稼働同意を表明した。同じく事前了解権を持つ島根県も、県議会や周辺自治体の意見を聞いた上で、再稼働の可否について判断する見込みである。

原子力規制委員会は、原子炉等の設計を審査するための新規制基準は原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのものであり、これを満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではないとしている。また、広島県と島根県が締結した原子力災害時等における広域避難に関する協定及び島根県が作成した原子力災害に備えた島根県広域避難計画において、本市は松江市八雲地区から6,810人の避難者を受け入れることになっている。この避難計画は、自力での避難が難しい人への支援や、自然災害で避難経路が使用できない際の対応、避難所での新型コロナウイルス感染症対策など、実効性に関する課題が山積している。

島根原子力発電所2号機が再稼働され、重大事故が起きれば、その被害は計り知れないものとなる。何よりも重視しなければならないのは、住民の命と安全である。その保証がないままに、原子力発電所を再稼働すべきではない。よって、本市議会は、島根原子力発電所2号機の再稼働に反対するものである。

以上、決議する。

令和4年3月23日 広島県庄原市議会

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆筆者の赴任中からは想像ができぬ反原発決議

庄原市は広島県の北東部にある山間部の自治体です。2002年度から4年間、筆者はこの地域の市町村や介護施設や病院の指導にあたらせていただきました。

2005年に旧庄原市と比婆郡東城町、西城町、比和町、高野町、口和町、甲奴郡総領町が合併して新庄原市となりました。総人口は当時の43,519人から現在は33,218人に激減しています。

正直、失礼ながら筆者が仕事をさせていただいた時代には庄原市議会がこういう決議をするようなことは想像もできませんでした。

祖母が庄原市出身という60代男性も「色々と問題が多かった地域。だからこそ、余計に驚きと喜びを感じる。」とおっしゃいました。

今だから申し上げますが、わたしの在任中、合併される前のある自治体では以下のような惨状でした。

夫が町長で妻が町議兼介護事業者のトップ。妻が経営する介護事業所への利用をことわりづらいような雰囲気の中で町民に利用を勧誘。この影響でこの町の介護保険利用が爆発状態となり、パンク寸前に。その結果、国から「適正化」を求められたのです。どうしようかと悩んでいたら、合併となり、同町は消滅。正直、筆者はほっとしました。一方で、吸収合併された地域の衰退は目立ったのは「いたしかゆし」でした。

◆地域の将来への危機感と新住民の流入効果も

筆者がこの地域を去った後、庄原市では様々な問題もおきました。そのひとつが、バイオマス疑獄です。

当時の滝口季彦市長が2008~2009年ころ、バイオマス事業を推進。しかし、委託された事業者があまりにもずさんで事業が進む見込みがないことが、発覚。事業者は刑事責任を問われ、市は国からの補助金2億3,800万円を返還することになりました。このことに対して市政をただしていこうという住民運動が高揚。庄原市に対して市長個人に補助金返還分を賠償請求するよう命じる判決が2022年3月、出たものです。

一方で、東電福島第一原発事故のあとあたりから、とくに若い女性がこの地域にも移住するようになりました。

2017年の市議選では一人の若手女性が徒手空拳で挑み、惜敗。しかし、2021年の市議選ではなんと二人の新人の無所属の女性議員が誕生。共産党にも女性議員が誕生したこともあり、20人中4人が女性議員ということになりました。日本全国でまだまだ女性議員ゼロの自治体もあることを考えるとこれは大きな変化です。

庄原市議会HP

なお、県北部では女性議員が最近、顕著にふえています。このあたりのことについては今後、詳しく取材して稿を改めていきたいとおもいます。

社民党や共産党のベテラン男性議員も奮闘したし、新人の無所属の女性議員も奮闘した。そうした中で、「原発再稼働に反対」する議員が多数となったそうです。

もちろん、議会内には、当面のエネルギー需要をどうするのだ?という考え方から決議に反対した議員もいらっしゃったのも事実です。しかし、多数は再稼働に反対したのです。

まとめると、地域の将来への危機感、そして新住民の流入。こうしたことも、最近の市政の変化の背景にあるようです。

◆本当に深刻なのは「成功体験」脱却できぬ広島市など南部かも

他方で、筆者が住んでいる広島市。広島県内で最大都市ですが、議員も市民もいまひとつ、危機感が薄いようにも思えます。「伊方原発の再稼働反対」決議を広島市議会が出すかといえば、それは「現時点ではあり得ないだろうな」というのが筆者の実感です。

なんだかんだで、「原発製造企業を軸とした重厚長大産業のおかげで、1975年ころにひとりあたり県民所得3位」となり、「カープが初優勝」した、あの時代の「成功体験」が忘れられない方が多いというのは否定できません。また、中国電力の本店もあるというのも大きい。しかし、だからこそ、めげることなく、従来の「成功体験」への対抗軸を、ガツンと打ち出していかなければならないという決意を改めて表明します。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!

県庁ぐるみの自民党応援はいままでスルーしておきながら、野党の休日ビラくばりは逮捕・有罪という不公平! さとうしゅういち

◆行政の民主的運営に必要な公務員の地位を利用した選挙運動の禁止

公務員の地位を利用した選挙運動は禁止されています。公職選挙法の第136条の2は以下のように公務員による選挙運動を禁止しています。国家公務員法や地方公務員法においても、公務員の政治活動を制限する同様の趣旨の規定があります。

(公務員等の地位利用による選挙運動の禁止)

第百三十六条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、その地位を利用して選挙運動をすることができない。
一 国若しくは地方公共団体の公務員又は特定独立行政法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員
二 沖縄振興開発金融公庫の役員又は職員(以下「公庫の役職員」という。)

2 前項各号に掲げる者が公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持し、若しくはこれに反対する目的をもつてする次の各号に掲げる行為又は公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)である同項各号に掲げる者が公職の候補者として推薦され、若しくは支持される目的をもつてする次の各号に掲げる行為は、同項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。
一 その地位を利用して、公職の候補者の推薦に関与し、若しくは関与することを援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
二 その地位を利用して、投票の周旋勧誘、演説会の開催その他の選挙運動の企画に関与し、その企画の実施について指示し、若しくは指導し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
三 その地位を利用して、第百九十九条の五第一項に規定する後援団体を結成し、その結成の準備に関与し、同項に規定する後援団体の構成員となることを勧誘し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
四 その地位を利用して、新聞その他の刊行物を発行し、文書図画を掲示し、若しくは頒布し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
五 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを申しいで、又は約束した者に対し、その代償として、その職務の執行に当たり、当該申しいで、又は約束した者に係る利益を供与し、又は供与することを約束すること。

公務員がたとえば部下や出入りの業者に、特定の政党や候補者の支持をよびかけたら、部下や業者は逆らいづらいのは当然です。結果として行政機構が特定の政党・政治家と一体化することになりかねない。それこそ、現在の中国や朝鮮、あるいは、民主化前のメキシコ(制度的革命党の事実上の独裁)のようになりかねません。

逆に戦前の日本では政権交代のたびに警察のトップが交代させられ、選挙で与党が野党を弾圧する(選挙干渉)ことも常態化していました。このことが政党政治への不信、さらには軍部の台頭につながった暗い歴史があります。

上記の規定はそうしたことを防ぎ、行政の民主的運営を確保するためのものです。また、公務員が上司の圧力にさらされないためのものです。

筆者は広島県庁マンとして2011年まで勤務していました。広島県は、とくに最大都市の広島市の中心部に近づけば近づくほど岸田総理の影響が強い超保守王国です。ですが、広島県庁内では、少なくともこの上記の規定に違反するようなことは、筆者が見聞する限りではありませんでした。

◆衆院選2021契機に発覚した山口県庁の「組織犯罪」

ところが、お隣の山口県では、県庁が県庁ぐるみで自民党を応援することが少なくとも20年以上常態化していたのです。今回のことが発覚した発端は衆院選2021で副知事だった小松一彦被疑者が、部下に山口3区の林芳正外相の後援会入会を勧誘したことでした。小松被疑者は略式起訴され辞職に追い込まれました。

その後、小松元被告人は、部下に政治資金パーティーの会費1万円を振り込むようによびかけていました。呼びかけていたというふうに報道はされていますが、人事権を持っている副知事の言っていることを部長や課長が断れるでしょうか? 普通は断れません。そして、小松元被告人は県庁生え抜き。ご自身の課長や部長時代も同じように呼びかけられていたので、自分もそうした、というわけです。

しかし、選挙があるたびに、各都道府県には上記の公選法の条文を抜粋した文章が総務省から送られ、全職員に回覧される「はず」です。「はず」というのは、筆者が勤務していた広島県庁はそうだったということです。

◎[参考資料]衆議院議員総選挙における地方公務員の服務規律の確保について
https://www.soumu.go.jp/main_content/000510576.pdf

上記は衆院選2017のものですが、選挙があるたびに、県庁マン時代の筆者も目にしていました。

まさか、小松元被告も上記の文章をご存知ないとは言わせませんよ。周りがやっていたから、では済まされない。

ある意味、河井案里さんからお金をもらった人よりも言い逃れができない犯罪です。河井事件の「収賄」議員の場合は、「政治献金をもらった」という弁解も可能です(ただし、認められるかは別問題。)。だが、今回は「ど真ん中」の公選法136条の2違反です。

◆逃げ切りはかる村岡知事

さて、今回の事件は県庁ぐるみです。副知事がここまで大々的にやっていることを知事が知らないというのはあり得ない話です。知事は総務省ご出身。公務員の服務規律に関する文書を全都道府県に出す側で18年間やってこられた方です。筆者の同一大学同一学部の先輩にあたり、広島市では秋葉忠利市長の下で財政課長もされています。秋葉市長は、広島市役所の特定の議員と職員の結びつきなど、常態化していた役所内の規律の乱れを正していました。
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a11100/profile/g-profile.html

そういう秋葉市長のもとでも要職を務めた村岡知事。今回のような不祥事はふせがないといけないお立場です。2014年以来、8年間も知事をされていて何をやっていたのか?

その村岡知事は、本年2月、再選されたばかりです。自民、公明の推薦を受けて、共産、社民、れいわが推す新人に「圧勝」しました。

山口市の60代女性有権者は、「知事は、コロナ対策と称してまったく選挙運動をしなかった。選挙を盛り上げないセコイ戦法をとった。盛り上がると県庁の不祥事がクローズアップされたと思う。県民も県民。知事を批判する声があまりあがってこない。」と悔しがりました。

山口県は市町村長全員が自民党員という異常な状態です。旧ソビエトや現在の中国や朝鮮とまではいかずとも、20数年前までのメキシコやインドネシアが「事実上の独裁」だった時代にほぼ近いように思えます。

ともあれ、村岡知事はただちに退陣し、公選法違反に関与していた幹部級職員も総入れ替え。本来ならそれくらいの荒療治が必要です。

◆問われる検察・警察の怠慢

しかし、これまで、検察や警察も何をやっていたのか?! 20年以上も県庁ぐるみでこういうことをやっていたのは気づかないはずはありません。公選法違反は親告罪でもなんでもない。事件化しようとおもえばいつでもできたはずです。検察・警察も説明責任をはたすべきでしょう。

自民党というより「安倍王国」山口で安倍晋三さんに忖度していたと批判されても仕方がないでしょう。

◆休日の野党のビラくばりは逮捕・有罪の不条理

いっぽうで、休日に野党のビラを配っていた国家公務員が逮捕・起訴されるという事件も日本ではおきています。

欧米諸国では、そもそも、休日に公務員が政治活動をすることは自由な場合が多いのです。これは、労働者の権利が欧米諸国では日本よりあるということです。筆者はノルウェーを訪問した際に公務員であるところの公立大学の教授が市議をやっている例に遭遇しました。(日本の国公立大学の教授は独立法人化によって現在は公務員ではありません。)。クロアチアでは格闘家で警官のミルコ・クロコップが現職のまま国会議員に当選。日本でも「ミルコ、社民党から立候補!」と東京スポーツ(広島では九州スポーツですが)が報道した例があります。

「職務上の地位を利用」ということが、日本ではとくに拡大解釈されて、とくに野党を弾圧することに悪用されています。

このうち、当時係長だった堀越さんという係長級の国家公務員労働者が日本共産党のビラのポスティングで逮捕された事件は逆転無罪になっています。
http://www.san-tama.com/topics/140
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-08/2012120801_01_1.html

他方で宇治橋さんという厚労省課長補佐級の方が起訴された事件では罰金10万円という不当な判決が確定しています。

両者への司法の判断の違いをうんだのはなにか? 「係長級だと職務権限がないが、課長補佐級だとある。」ということです。

ありがとうございます! まったく意味不明です。係長級であろうが、課長補佐級であろうが、休日のポスティングに職務権限など関係ありません。

なお、一方で連合系の労働組合で民主党(現立憲民主党)の議員を応援した場合では、ここまでの「弾圧」はありません。筆者が現役の県庁マン時代は、組合が強い自治体の場合は、組合による事実上の政党支持の強制も問題と感じていました。

そして、その広島でもそうですが、(立憲)民主党が組合とともに自公と同じ候補者を知事選や市長選で推薦している実態もあります。管理職は自民党の、非管理職は組合の、それぞれ「領分」という構図が見えます。

こうした構図をまた検察や警察、司法も温存してきたと言えるでしょう。連合さん、民主党→民進党→立憲民主党さんも積極的にはこの構図を変えようとはしていないように見えます。(このことについては、鹿砦社刊行の「労働貴族」に詳しいです。)

日本の検察・司法は、上記判決が確定してから10年。山口県のような「ど真ん中」の「違法」をスルーしておいて、「職務上の地位」などまったく無関係なことを処罰する法解釈を変えていないのです。あまりにも、不公平な(自民党有利)法解釈がまかり通っていたのです。山口県庁の事件を契機にこうした構造を変えていかなければなりません。

◆「維新」による「公務員バッシング」への利用にも警戒

他方で「維新」が今回の事件を利用してさらなる地方切り捨て、公務員バッシングに悪用してくることにも警戒したいものです。「維新」も大阪市役所の不祥事を利用して最初は勢力を拡大しました。そして、市長に提言した校長を処分するなど、全体主義的な政治を進めています。「山口県庁」が、「村社会」なら「大阪市役所」は「ポストモダンなファシズム」です。「村社会」でも「ポストモダンなファシズム」でもない、民主的な地方行政の運営があるべき姿です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

一般職公務員のボーナスカットよりも、非正規公務員や介護・保育などの給料アップを通じて、なによりいまは「経済の底上げ」を! さとうしゅういち

国家公務員給与引き下げ法案が今国会に提出されています。一般職、特別職(大臣や議員など)ともにボーナスが0.15ヶ月引き下げられる内容です。このままだと与党や維新の賛成で成立するとみられます。

◆制約されている日本の公務労働者の労働三権

そもそも、公務員の給料の決まりかたはどうなのでしょうか? 日本の公務労働者は労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)が制約されています。多くの分野の公務労働者はそうはいってもかつて筆者が所属した「自治労」や筆者の祖母が生前所属していた「日教組」などの労働組合(職員団体)に加入はできます(団結権)。皇室労働者にも「宮内庁職員組合」という労働組合はあり、天皇が(組合主催の文化祭に和歌を寄せるという形で)「参加」する唯一の労働組合です。しかし、いずれにせよ、団体交渉権や争議権は制約されています。

さらに、防衛労働者、警察労働者、海保労働者、法務教官労働者、消防労働者には組合さえありません。これは、諸外国からみると異常なことです。わたしはノルウェーのメーデーに参加した経験があります。このとき、インターナショナルを女性警察官が演奏して、それにあわせて参加者が歌っていました。そのとき、わたしがただ一人日本語でインターナショナルを歌って注目を浴びたので鮮明に記憶しています。実は戦後すぐは、警察労働者にも労働組合はみとめられていたのですが、いわゆる逆コースで禁止されてしまったのです。

◆代償としての人事院制度・人事委員会制度

こうした公務労働者の労働三権の制約の代償として、人事院制度・人事委員会制度(都道府県、政令指定都市、特別区)があります。

まず、人事院や人事委員会が民間企業の給料を調査します。それをもとに、人事院勧告・人事委員会勧告を出します。2021年の場合、人事院勧告は8月10日に内閣に提出されています。(https://www.jinji.go.jp/kankoku/r3/r3_top.html

そして、国が勧告についての取り扱いを閣議決定します。そして、地方自治体には、事務次官通知が送られます。

こうした手続きを経て、内閣は給与法の改正案を国会に、知事や市町村長は給与条例案を議会に提出します。

これらの案が可決されれば、民間企業に準じた給料アップが実施されます。ただし、自治体によっては、勧告どおりにならないケースもあります。筆者が勤務する広島県もそうでした。広島県では1990年代、あの河井案里さんの師匠にあたる男性大物県議がゼネコンの実質的なオーナーでもあり、「天皇」と恐れられるほど君臨していました。その「天皇」が1990年代に必要性の薄い大型事業を大学の後輩でもある当時の知事に強行させた結果、広島県は1990年代末には貯金が底を尽きました。その穴を埋めるために、職員の給料がターゲットにされました。人事委員会勧告が完全実施された場合に比べて3%~7%カットされたこともありました。

このように、自民党の身勝手なつけを労働者が払わされるケースは全国でありました。

また、東日本大震災のときには、民主党政権は復興財源捻出のため、公務員給料をカットしました。しかし、災害対策で激務を強いられた上に給料をカットされた公務労働者の怨嗟の声は高まりました。公務労働者のかなりの部分は民主党やのちの立憲民主党の支持基盤である労働組合の組合員です。そうした公務労働者も離反したことが、民主党政権崩壊、その後も組合員の票を自民党にとられて立憲民主党が苦戦する背景になっています。

◆コロナ災害という非常事態を考慮せよ

たしかに、コロナ災害で民間企業のボーナスは減っています。貰えればありがたい。そんな会社もあります。筆者の勤務先に至っては、ボーナスなんて存在しません。それはそれとして、平均すれば0.15ヶ月分下げるべき。それは、一見、正しいように見えます。

しかし、今回のとくに民間のボーナス減少はコロナという大災害によるイレギュラーなものと見なすべきでしょう。人事院勧告は、そもそも、民間の平均を算出するものだから、仕方がないとして、政府が人事院勧告をそのまま鵜呑みにしてよいのでしょうか?

もちろん、民間労働者のコロナ災害にともなう大幅な収入減は、国が補償するべきです。その上で、公務員の給料も一般職については、引き下げを回避すべきではないでしょうか? 現場公務員、とくに、公立病院関係者や保健所関係者はこの2年間はまるで野戦のような労働環境でした。その上にボーナス減少では士気の低下につながりかねません。

また、もし、今回の給与法改悪のように、公務員の給料を減らせば、災害によるイレギュラーな給料の低下がレギュラーなものとして定着してしまいかねません。

岸田政権の給料アップ方針自体はショボい。しかし、給料を引き上げるという方向性は正しいと思います。日本はいまや、非正規ばかりふやし、いわゆる失敗国家(内戦などで崩壊状態の国)以外では唯一といっていいほど給料が上がらない異常な国です。もちろん、給料引き上げは労働組合の仕事ですが、現状の組合、とくに連合にはそれは望むべくもありません。総理に給料アップで先行されて悔しい思いをして組合が奮起、というのが現実的なシナリオに思えます。

こうした中で、今回の国家公務員一般職員の給料引き下げは労働者の大幅な給料アップという、総理の方針実現にもマイナスです。地方公務員にも波及し、民間企業にも波及するでしょう。労働条件を「公務員準拠」にしている企業も多いからです。ただでさえ、ロシアとウクライナの戦争の影響で輸入物価が上昇して人々の暮らしが直撃されている中でさらに悲惨なことになりかねません。そして、岸田政権が掲げる「賃上げによる経済の底上げ」そのものも難しくなかってしまいます。

かつて、人事委員会勧告を無視して広島県は職員の給料カットを強行したことがありました。逆に今回は「コロナ災害」や「労働者の賃金アップを政府総がかりで実現することをきめている」という状況を踏まえて、「ボーナスカット」勧告を無視するという「政策判断」も「あり」ではないでしょうか?

◆財政出動でガツンと非正規も介護・保育も給料アップを

いま、やるべきは、財政出動ですべての人の暮らしを下支えすることです。正規公務員の給料引き下げで溜飲を下げてもらう場合ではありません。

もちろん、公務員でも教員ふくめて正規と非正規の格差は深刻です。とくに女性が多い部署にみられることですが、専門性が高い仕事ほど、非正規で使い捨てという場合がおおくあります。

2020年度からは、地方公務員にも、会計年度任用職員ができています。ボーナスも支給されるようになりました。しかし、これでも「基本給を下げてボーナスを支給」など、運用が不十分な実態があり、大幅な改善が必要です。さらに、労働時間を少し短縮することで会計年度任用職員ではなく、「パート」扱いで、同じ仕事をさせながら、労働条件を会計年度任用職員より低く押さえるセコい自治体も少なくありません。「維新」の「本拠地」の大阪では部署によってはほとんどが派遣社員というケースもあります。これでは、労働者の給料は低い上に、派遣会社が儲かるだけで市民の負担はむしろアップしかねません。

とにかく、そもそも非正規の労働条件が低すぎるのが問題であり、この20-30年正規公務員をへらしすぎたのが問題なのです。

介護など家庭の事情がある人は短時間正規公務員でよいのです。

また、たしかに、介護や保育と比べると、お役人の給料は仕事の割には高いのも事実です。筆者自身がかつては県庁マンとして働き、いまは民間で介護福祉士として働いているのだから、それはよくわかります。維新の議員などより、そのことは百万倍わかっているつもりです。

しかし、そもそも、介護や保育の労働条件が低すぎるのが大問題なのです。一般職公務員の給料は据え置いて、財政出動により、ガツンと我々、介護や保育などケア労働者の給料をアップしてください。総理、維新のような「低いほうに合わせる」格差是正ではなく、筆者やれいわ新選組が提言してきた「高いほうに合わせる」格差是正をお願いします。

◎【参考】大石あきこ議員のTwitter https://twitter.com/oishiakiko/status/1501423247987863557

私は一般職給与法に方に断固反対の立場から、また特別職給与法並びに育休法には賛成の立場から討論を行います。

一般職給与法について、先ほども申し上げましたけれども反対です。

今政府が行うべきは、自らが「骨太の方針2021」において謳った「賃上げを通じた経済の底上げ」を文字通り行うべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!