安芸高田市長の石丸伸二さん。突然、再選出馬をせずに、東京都知事選挙に立候補する、と表明しました。東京中心の日本を地方分散で変えるとのこと。筆者もびっくりしましたが、広島県内では驚きの声が広がっています。


◎[参考動画]広島 安芸高田市の石丸市長 都知事選へ出馬を表明「東京を変えて日本を変える」(TOKYO MX news 2024/05/17)

 

安芸高田市ホームページ

安芸高田市は、広島県北部に位置します。筆者の住む広島市からは、公共交通では芸備線か国道54号線経由のバスが便利です。筆者も、この安芸高田市内の病院兼高齢者施設で仕事を3年間させていただいた元在勤者です。元々は高田郡だったのですが、平成の大合併で安芸高田市となりました。戦国大名・毛利元就の本拠地・郡山城は旧吉田町内にあります。広島市中心部からはバスが便利です。また、Jリーグのサンフレッチェ広島の本拠地があるなど、スポーツの街としても知られています。

さて、市長の石丸伸二さんは今年、41歳。安佐南区にある県立祇園北高校を経て京都大学をご卒業後、東京三菱UFJ銀行へ。2020年、河井案里さんが当選無効になった公選法違反事件に連座して当時の安芸高田市長が引責辞任。それに伴い行われた安芸高田市長選挙で、当選が確実視されていた元副市長を破って初当選されました。

地元生まれとはいえ、政治経験が全くない石丸さん。市議会で居眠りをしている議員に「恥を知れ」などと発言をしたことで、一躍有名になりました。議会との対立を面白おかしく市の公式YouTubeで発信。自治体のサイトとしては全国一のアクセスを誇るようになりました。

しかし、議会との対立から、全国公募で選んだ副市長の人事がご破算になる、また、目玉施策の一つの無印良品の道の駅への誘致も議会の反対でご破算になる、という事態が起きています。

ネット上には石丸さんのファンの方も根強くおられます。そうした方からすれば「頭の固いおじいさん、おばあさんの議員が悪い」ということになります。

ただ、地方自治の実際を知る筆者からすれば、「もうちょっと、政策実現のために、反対派を切り崩すなどなぜしなかったのか?結果として面白おかしくはなっているが、どうなのか?」という疑問があります。

相手を意固地にすれば、ネット動画としては面白いのですが、妥協もなければ前には進みません。

また、そもそも、市長就任早々、いきなり、全国から副市長を公募、というのもいかがなものか? 確かに、広島県北部の権威主義的な政治風土は筆者も良く存じています。しかし、優秀な若手・中堅も庁内にはいます。そういう人を、登用した方がよかったのではないか?

石丸さんは政治経験がないからこそ、地元の優秀な人を大事にすべきではなかったか?

確かに、副市長人事を巡る対立も、面白おかしい動画にはなったが、それでよかったのか?疑問は尽きません。

◆ご出身高校の近所では散々な評価も、遠い県沿岸部では高評価?

広島市安佐南区。石丸さんが高校時代を過ごした場所です。その近所の方に5月17日、筆者は取材しました。

「彼は何考えとるのじゃ。安芸高田市もまとめられないものが東京へ行くなんて」。
「政治をおもちゃにしている」
「東京へ行ったら若い者が味方してくれると思い込んだのだろうが」。
「石丸氏はアメリカかぶれすぎる。地元の若い者をまず大事にすべきだった。」

などなど。もちろん、判断されるのは都民ですけど、安芸高田市以外ではあるが同じ広島3区、それもご自身の出身高校がある近くでの石丸さんへの風当たりは非常に強いです。

一方、安芸高田市から距離が離れている沿岸部の呉市では、広島瀬戸内新聞のA記者によると、石丸さんの評判はいいようです。やはり、距離が遠くなって、石丸さんの人となりが知られていない地区で評判がよくなっている状況があります。

◆小池VS石丸 グローバリスト対決では現職有利では?

いきなり広島の小さな自治体の首長から日本最大の自治体の長に挑む。石丸さんのその胆力には敬意を表したい。しかし、残念ながら、苦戦は免れまい、と筆者は感じます。

なぜか? 小池知事と石丸さんの違いはわかりにくいからです。

どちらも、いわばグローバリスト、アメリカンポストモダニストです。アメリカかぶれなのです。それなら現職の小池さんが有利になってしまうでしょう。

◆湯崎英彦知事の小型版                   

石丸さんに対しては、広島県知事待望論もネット上にはあります。しかしながら、広島県政の主要課題について、湯崎知事と石丸さんの違いはほとんどみられません。ズバリ申し上げれば、外部の企業、外部のお気に入り人材重視という点では違いが見当たらないのです。両者ともアメリカかぶれのポストモダニスト。違いがないなら、現職の湯崎さんが圧倒的に有利です。

湯崎知事は、平川教育長を登用し、平川氏は官製談合事件やお友達の赤木かん子さん優遇事件などを起こしています。また、女性副知事には、ご自身の高校・大学・経産省の後輩を充てています。県病院廃止・巨大病院建設を進める健康福祉局長には中央官僚の若手女性を充てています。他方、石丸さんも、副市長人事でご自分が全国公募で選んだお気に入りの方を、議会の反発を買って失敗しています。

そして、広島県の場合は、安芸高田市という狭い範囲よりはそれなりに優秀な人材や企業が県内に揃っています。安芸高田市政以上に県政では湯崎・石丸的な外部優遇より、地元で地道に頑張っている中堅・若手とか、企業を応援した方が良いのです。

また、湯崎知事が強行する三原本郷産廃処分場稼働継続や、県病院潰し・1300-1400億円の巨大病院、平川前教育長を庇う姿勢などにきちんと石丸さんが湯崎知事との違いを出せるかと言えば疑問です。

もちろん、石丸さんがガチガチに硬直化しきった地域の政治文化に突撃して、かき回したということは言えると思うし、歴史の一コマではあったと思う。ただ、石丸さんに長居されたらたまったものではありません。地味に地元で頑張っている中堅や若手、企業の力を活かせるようなリーダーが必要だと思いますし、筆者が広島県知事に就任すればそうします。

筆者が思うには、ここ20年の日本の悲劇は、森元総理的なコチコチの老害と、小泉・竹中・湯崎・小池・石丸的なグローバリストの挟み撃ちで、地域で地道に頑張っている中堅、若手や企業が割を食ってきたことだとも思います。  

◆勝ち目のない東京都知事選挙より県内・三原市長選挙に立候補はいかがか ── 百歩譲った筆者の提言

ここまで、ネガティブなことを石丸伸二さんに申し上げてきました。石丸さんは支持できない。しかし、批判ばかりで対案がないと言われたくもないので、百歩譲って、以下のことを石丸さんに進言します。

何か実績を上げるおつもりなら今夏、実施される県内・三原市長選挙に立候補されたらどうか?この三原市も4年前に、当時の天満市長が河井事件に連座して辞任しました。新たに岡田現市長が選ばれました。この三原市は、水源地のど真ん中に湯崎英彦知事が許可した三原本郷産廃処分場があり、汚染水を垂れ流しています。そこで、石丸さんが立候補し、「三原本郷産廃処分場即時停止」を訴えれば、当選確実ではないでしょうか?

当選したらもちろん、極めて厳しく産廃を規制する条例を作る。そして、同処分場を廃止に追い込むのです。極論すれば、とりあえず、産廃処分場を止めてくれるなら、新自由主義は議会や市民世論による修正で対応する。それくらい、三原の産廃は酷い問題なのだから。石丸さんは、同じ広島県内である三原でもそれなりに、知名度はあるだろうから。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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1994年10月、広島県内各地でアジア競技大会が開催されました。あれから、今年で30年になります。

あのアジア大会を前に、平岡敬・広島市長(当時)は、地元テレビ局社長という経済界ご出身ながらも、初めて1991年8月6日の平和宣言で、先の大戦についての加害責任に言及しました。

広島は原爆と言う意味では米国の被害者ですが、一方で、広島の陸軍・呉の海軍が近隣への軍事侵攻の先鋒を担った歴史があります。日中戦争はもちろんのこと、東南アジアでも、マニラの戦いなどで多くの現地の方を殺害しており、とてもではないが「西洋からの解放に協力した」などと胸を張れる状況ではありませんでした。

 

それらの歴史的事実を踏まえた平和宣言に当時、筆者は感動したものでした。謝るべきは謝る。その上で、訴えるべきは訴える。それが今後の平和都市・ヒロシマの在り方だと思ったし、今もその考え方は変わりません。もちろん、平岡氏は経済界ご出身の政治家で「内政面」で必ずしも全面的に支持できるものではありませんが、それでも筆者が尊敬する政治家の一人ではあります。

アジア大会開催中は「一国一館運動」といって、一つの公民館が一つの大会参加国を応援する運動も行われました。その後の長野五輪等にそれは引き継がれました。もちろん、このアジア大会へ向けた過大な設備投資が広島市や広島県の財政を悪化させたのも事実です。その後始末のために、全国以上に、特に広島県政において、新自由主義的な政策が強行されることになったのも事実です。

ただ、それを割り引いても、対等なパートナーとしてアジアを重視するという当時の広島県政、市政のスタンスは筆者的には評価できるものでした。

ところが、そのヒロシマが最近、急速に米国に忖度するHIROSHIMAに変質しています。そのことが、筆者は残念でなりません。

◆安倍晋三さんより酷い! 岸田総理の「米国忖度」

岸田総理は4月前半、訪米し、米議会で演説を行いました。マスコミなどでも報道の通り、米国の議員たちは大歓迎しました。それはそうです。何しろ、米国従属どころか、米国に忖度して、日本国を米国様に差し出しますよ、という内容なのですから。かつての日本の自民党政権は、米国に従属しつつも、面従腹背的なところもあった。安倍晋三さんでも、今にして思えば、岸田さんほどはひどくなかった、と痛感します。

岸田総理は、G7広島サミット以降、特に暴走が酷いものがあります。はっきり申し上げると、岸田総理は、名誉白人扱いされて舞い上がっているのではないでしょうか?もちろん、今は、インド系のスナク英国首相などもいて、米国も独仏英も白人国家とは言えないのですが、少なくとも「旧白人帝国主義国家」とは言えるでしょう。戦前は植民地だったカナダを除けば列強とも言われた。その国々と同列だということに酔っているだけではないのか?もはや、産業面で、中華人民共和国はもちろん、韓国や台湾(中華民国)にも逆転され、「振り向けば朝鮮」という状態です。そうした中で、名誉白人であることでプライドを保っているのではないか?そんな疑念がぬぐえないのです。

総理は2023年5月、G7広島サミットをご自身の選挙区である広島1区で開催。米国など西側の核兵器は防衛用核兵器だとして、正当化する「広島ビジョン」を起草しました。そこには、核兵器の先制不使用すら盛り込まれていなかったのです。いきなり廃絶は無理にせよ、先制不使用で核戦争のリスクをぐっと下げることくらいなぜ提案しないのか?情けない、の一言です。

◆原爆正当化の国会議員に「遺憾の意」さえ出せず

今回の訪米の前には、イスラエルによるガザ虐殺を正当化する文脈で「ヒロシマ・ナガサキのようにしなければならない」と暴言を吐いた米国の国会議員がおられました。その議員も当然、岸田演説を聞いていたはずです。演説の中で、暴言への遺憾の意くらい表明できなかったのか?この点も情けない限りです。

◆G7広島サミットを記念する施設建設、米国式腐敗をはびこらせる湯崎県知事

 

原爆資料館の北側で建設中のG7広島サミット記念施設と筆者

原爆資料館の北側には、ご覧のような施設が建設中です。これは、G7広島サミットを記念する施設ということです。

しかし、G7広島サミットとは、この広島において世界で最初に核攻撃をおこなった米国の核保有は正当化するしろものです。そして、日本を除くG7と、途中でいわば「乱入」してきたゼレンスキーも含めてイスラエルによるガザ虐殺を当初は全面支持してしまったのです。いわば、ガザ虐殺応援団サミットという、広島にとっては黒歴史のサミットです。そのG7広島サミットを持ち上げるとは?!

その上、この場所は原爆資料館のすぐ北側です。修学旅行で原爆資料館に来られた小中高生はこの場所でよく休憩しておられました。その場所も奪ってしまうのが湯崎英彦知事です。

その湯崎知事ですが「内政」面でも米国型の腐敗を広島に持ち込んでしまいました。日本の政治の腐敗もたいがいですが、米国の腐敗も実は一段と酷いものがあります。試験を受かった官僚よりも政治家や政治家が任命した公務員が強い。その政治家のお友達が利権をあさる構造はむしろ日本よりも酷いかもしれません。米国が戦争国家であることとそれは深く関係しています。

湯崎知事が任命した平川前教育長は、まさにその典型です。平川前教育長は、ご自身のご友人のNPOパンゲアのために県費で仕事を造ったり、東京のご友人の赤木かん子をぼろ儲けさせたりするなどしたとして、合計で1億500万円を返すように住民訴訟を起こされています。また、広島地検に官製談合防止法違反、地方自治法違反の被疑事実で告発され、正式に被疑者となっています。そんな平川前教育長の法令違反を湯崎知事は「改革の副作用」と持ち上げています。平川前教育長のやったことは、米国型の腐敗であり、湯崎知事もそうした米国型の腐敗に汚染された知事である、ということです。

業者が賄賂を政治家に渡す「お代官様」「越後屋、お主も悪よのう」的な、旧来の日本的な(?)腐敗はわかりやすいが、こうした米国型の腐敗はわかりにくいのかもしれません。しかし、放置していけば、日本を大きくダメにしていくでしょう。

◆反省無き米国と姉妹協定、いよいよ始動の松井市長

そして、松井一實広島市長。原爆投下の反省も謝罪もない米国政府と、平和記念公園―パールハーバーの姉妹協定を結んでしまいました。そして、その協定が予算化され、この4月から若者のパールハーバー視察などの形で始動しています。

日本政府は、裁判内容が適切かどうかは別として東京裁判で戦争責任者が処罰されています。また、対アジア諸国と言う意味では、いわゆる、「国策を誤り戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって諸国民に多大の損害と苦痛を与えたことを反省し、謝罪を表明する」村山談話をアジア大会の翌念にもあたる1995年に発表しています。その村山談話はその後の自民党内閣にも引き継がれています。

しかし、米国政府は、原爆についてまったく、反省や謝罪はありません。そもそも、世界最強の暴力装置ともいえる米国政府にそれを強制させる主体がなかったとも言えます。

もちろん、広島市の平和行政としては米国政府にことさらに謝罪や反省は求めず「もう誰にも同じ思いをさせたくない」というスタンスを前面に、国際的な支持を取り付ける戦略を取ってきました。それは平和行政としては一概に誤りとは言えないと思います。しかし、露骨に原爆を今でも正当化する国会議員も抱え、政府自体も謝罪や反省もない政府を相手に姉妹協定とは、違和感しかありません。しかも、議会で批准に準ずる手続きもとることもなく、市長のほぼ独断でされたわけです。仲よくするから良いじゃないか、というのもおかしなことです。

すでに自治体レベルで広島市とホノルル市とは姉妹都市協定があり、ホノルル市は平和首長会議にも参加いただいているわけです。地方行政における平和行政の王道は、平和首長会議を軸に各都市が各国政府を突き上げていくということではないでしょうか?

この協定は5年おきに更新期限が来ます。米国政府が原爆についての反省や謝罪などをしない限り、次回は更新しない方向で検討すべきでしょう。

◆広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が虐殺にあっているのに……

そして、広島アジア大会に参加したパレスチナの市民が今、イスラエルによる大虐殺にあっています。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻はすぐに批判した広島市長は、今回のガザ虐殺についてはだんまりです。

市議会はそれでも停戦を求める決議をしました。だが、肝心の市長がだんまり。米国への忖度ではないか、と疑われても仕方はありません。

◆戦前戦中の廣島から戦後のヒロシマ、そして米国忖度のHIROSHIMAへ

明治から第二次世界大戦敗戦までの戦前戦中は「廣島市」は軍都として、アジアへの出兵の拠点となりました。日清戦争では明治帝、伊藤博文首相、帝国議会が広島に来て、広島は臨時首都となりました。第二次世界大戦敗戦直前には第二総軍がおかれ、本土決戦に備え、大日本帝国の西半分を指揮する司令部がおかれたのです。

敗戦後は、日本国憲法施行を経て、同憲法第95条に基づき、住民投票を経て1949年7月、広島平和記念都市建設法が制定されました。平和都市ヒロシマとして再出発したのです。

しかし、2023年のG7広島サミットにより、広島は米国に忖度するHIROSHIMAとして、米国の核戦略正当化に利用されるようになっているのではないか?また、内政面でも湯崎知事に代表されるように、県民のためではなく、知事のお友達中心の政治になっているのではないか?

◆庶民革命で市民・県民の手に広島を取りもどそう

アジア大会から30年。ますます、おかしな方向へ向かっている広島。ただ、「はだしのゲン」に登場する政治家・鮫島伝次郎のような広島の政治文化の本質が表れているだけかもしれない。

そうなのだろうけれども、そうだと簡単にあきらめるわけにはいかない。広島の政治を、暴走する総理、知事、市長から市民、県民の手に取りもどす。それしかまずはない。

筆者はあきらめずに「ヒロシマ庶民革命」を呼びかけ続けるものです。

広島瀬戸内新聞とさとうしゅういちは「あなたの手に広島を取り戻し広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を呼び掛けています。 「我こそは庶民派の政治家に!」(首長、地方議員、国会議員)、また庶民派の政治家とともに広島を取り戻したいというあなたからのご連絡や記事のご投稿をお待ちしております。
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元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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世界で唯一、広島にだけあった乗り物「スカイレール」が2024年4月30日、26年の歴史に幕を閉じました。

 

「スカイレール」は神戸製鋼所と三菱重工が開発した、モノレールのような軌道に小さなゴンドラを吊り下げて運行する乗り物でした。

1998年8月、積水ハウスなどが開発した約2200世帯、人口7700人の「住宅団地スカイレールみどり坂」のみどり中央駅とみどり口駅(JR山陽線瀬野駅)の1.3km、高低差130mを5分、片道170円で結んでいました。山陽線を通じての通勤客はもちろん、小中学生も登下校の手段として使っていました。

特徴としては、悪天候に強いことがあげられます。西日本大水害2018では被災地に向かうボランティアを輸送するなど活躍していました。また、1998年の運輸白書でも、今後の活躍が期待されていました。

しかし、利用者数が低迷し、赤字が累積する一方でした。それでも、地域の交通手段として貴重であれば、行政の補助などで存続もあり得たでしょう。しかしながら、世界で唯一ということで、部品業者にとってはマーケットが極めて小さい=商売にならない=ということで、部品業者が撤退してしまい、設備の更新が困難になったことが決定だったようです。

2024年3月からは、すでに電気バスが先行して運行しており、瀬野駅までの交通手段となるそうです。確かに、スーパーにも寄るなど、バスの方が便利です。ただ、運賃はバスの方が200円と、スカイレールより高くなっています。

 

筆者は4月28日にスカイレールに乗車しました。この日は、夜勤明けで、かなり眠かったのです。しかし、翌日29日は雨だということで、それなら、今日のうちに行ってみようと思ったのです。

ちなみに安芸区は、筆者の妻の実家もあります。広島市西区の勤務先から自転車で東区の自宅に帰宅した筆者は、妻と二人で、自宅の最寄りの広島駅から山陽線に乗り、瀬野駅へ向かいました。そして瀬野駅で降りると、接続しているスカイレールの「みどり口駅」に向かいました。

このスカイレールはICOCAなどICカードが使えません。この点が不便と感じました。一々、切符を買わないといけないのです。その切符を買うのに並んでいる人がたくさんおられました。

時刻表を見ると15分おきにしか運行していません。前の人が切符を買っているうちに発車時刻が過ぎてしまい、がっかりしてしまいました。それでも気を取り直して、改札に向かいました。切符のQRコードを機械にかざすのがスカイレールの改札方法です。改札を過ぎて階段を上がると、なんと、次から次へとゴンドラが登場していました。混雑しているときには臨時便を運行する。これがスカイレールなのです。

筆者たちがゴンドラに乗り込むと、すぐに出発しました。グーンと上に上がっていく感じがしました。たしかに、ゴンドラからの眺めは最高でした。

「みどり中央駅」で降りると、周囲は瀟洒な住宅街でした。「きれいな家が多いね」と妻も感想を述べました。

みどり中央駅の近くには電気バスの車庫もありました。ただ、駅の周りには商業施設などはなく、たしかにこの点は不便だな、と感じました。みどり中央口駅には町の地図もあり「スカイレールタウンみどり坂」と、文字通り、スカイレールがこの街の象徴だったことを強く感じました。

広島県内もご多分に漏れず、高い場所にある団地の交通手段の確保が焦眉の急となっています。バスは運転手不足。アストラムラインのような軌道系交通の駅までは距離がある。一方で、高齢化の中で、住民の皆様の車の運転が困難になってきている。八方ふさがりの状況もありました。無人運転ができていたスカイレールは、これからを担う交通システムになった可能性もあったのでしょうが、残念ながら、この路線だけだったために、部品業者が撤退してしまったのが痛かったということでしょう。

いずれにせよ、住民の移動の権利を保障するため、今後も県民的な議論を進めるとともに、国にも地方交通の維持へ向けて財源などの面でのバックアップをお願いしたいものです。
 
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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8月6日の広島平和記念式典。2023年はG7広島サミットの余韻もあってか、111の国と地域の代表が参列しました。

◆ロシア排除、イスラエルは招待のダブスタ

2022年からロシア・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を理由に主催者の広島市(市長・松井一實さん)は、プーチン大統領のロシアとプーチン大統領の盟友・ルカシェンコ大統領が事実上の独裁を続けるベラルーシへの招待を見送っています。このほど、2024年度もロシア・ベラルーシ両国への招待を見送ることを広島市は明らかにしています。

一方で、2023年の「10.7」以降、ガザ地区でパレスチナ人を虐殺し続けるイスラエルについては「ハマスとイスラエルの戦闘について評価が定まっていない」としてイスラエルへの招待を継続することとしています。

◆「イスラエルを招待するな」と筆者も時々参加の市民団体

 

これについて、原爆ドーム前で10.7以降、虐殺停止を求めてスタンディングを継続する「広島パレスチナともしび連帯共同体」は、4月19日夕方、広島市に対して、イスラエルの政府代表を招かないように要求しました。

筆者は、広島パレスチナともしび連帯共同体の皆様に敬意を表しています。時々、会社帰りに活動にも参加させていただいています(写真、筆者撮影)。イスラエルによるガザ虐殺即時停止という要求も筆者は当然共有しています。イスラエル首相のネタニヤフ被告人は、日中戦争時の日本に喩えれば「蒋介石を相手にせず」と言い放ち、戦争の泥沼化を進めた近衛文麿に相当するでしょう。その罪は誠に重い。

また、イスラエルのパレスチナ虐殺に対して停止決議も広島市議会はしばらく出せず、停止決議を出した今も松井市長は具体的なアクションに乗り出そうとしていません。そのことについて、同団体は抗議されてきましたし、そのこと自体は支持しています。

だが筆者は、今回の同団体による「イスラエル排除」の要求については賛同できません。

◆米国追従の中央政府からも党派運動からも距離を置いてこそ本領発揮、「広島市の平和行政」

結論から申し上げると、筆者の考えは以下です。

「8月6日の平和記念式典にはイスラエルもロシアもベラルーシも招待すれば良い。」

なぜか? そもそも、世界中で最近、戦闘状態になっていた国はロシア・ベラルーシ・イスラエル以外にもいくらでもあります。例えば、エチオピアでは、2020年―2022年、政府軍と地方政党が衝突し、双方が虐殺を行っています。だが、2022年の平和記念式典にエチオピアにも当然、招待状は行っています。

そもそも、広島に人類史上初の核攻撃を実施し、なおかつ未だに反省も謝罪もない米国政府も招待され、最近では毎年のように参加しています。あるいは、米韓軍事演習への対抗という部分はあるにせよ、ミサイル実験をバンバンやっている朝鮮も招待状は送るけど、来ない、というパターンです。一方、中華人民共和国は日本が原爆など被害ばかりを強調して加害への反省が不十分という理由で、欠席が続いています。

いずれにしても、広島市の平和行政が「すべての核兵器に反対」し、「全人類の平和を願う」立場ですべての国と地域に招待状を送ってきた2021年以前の状態で良かったと思います。日本国政府のいわば対米従属とも距離を置く。他方で、特定の国へのアンチを含む党派的な運動でもない。それが被爆地ヒロシマ・ナガサキの平和行政の意義だと思うのです。

◆G7広島サミットは反対だが、平和記念式典とは違う

筆者は、例えば「米帝国主義粉砕!」「シオニスト打倒!」と主張される運動そのものを否定はしません。市民運動なり党派運動なりそう主張されるのは大いに結構です。筆者自身もG7広島サミットには反対でした。

米国を中心とする旧白人帝国主義国家が新自由主義グローバリズムを推進するのがG7サミットだからです。日本共産党の県議候補さえ「G7サミットに期待する・評価する」と市民団体やマスコミのアンケートに回答する中、筆者は「期待しない」ときっぱり回答しました。

これは結果論ですが、途中、「乱入」してきたウクライナのゼレンスキー大統領も含めて、G7広島サミットに集った首脳たちは、イスラエルを当初は全面支持し、ネタニヤフをつけあがらせ、虐殺を後押しした「パレスチナ虐殺応援団」に他ならないのです。

この点はバイデン大統領やオバマ元大統領のような「ポリコレ系」の首脳もトランプ元大統領やイタリアのメローニ首相のような「アンチポリコレ?派」も変わらない。人権と言っても、前者がアフリカ系も含む欧米人のための人権、後者が自国人のため人権であって、究極的には中東なり東アジアなりの民衆のことなど眼中にないでしょう。そんな人たちが集まっても、そうなる未来は見えていました。

しかし、平和記念式典は、G7サミットとは違う。純粋に、原爆犠牲者を悼み、核兵器廃絶と世界恒久平和を願うということであり、すべての国と地域を招き、全人類に普遍的に発信していくということに意義があります。

◆市民団体が岸田政権・松井市長と同じ轍を踏まぬように

もちろん、繰り返しますが、筆者は、米帝国主義怪しからん、イスラエルのシオニストが怪しからん、などと主張する運動を否定はしません。しかし、そうした党派的な運動を平和行政に持ち込んでしまえば、あの国はダメ、この国はダメにだんだんなってくる。平和記念式典の値打ちそのもの自体が暴落してしまいます。

ロシア・ベラルーシ排除自体は、結局、安倍晋三さん以上の米国追従で名誉白人扱いされて舞い上がっている岸田政権のいわば党派的な運動に忖度して広島市が決めたことでしょう。しかし、市民団体が広島市に「イスラエルを呼ぶな」と要求することも、「違う」と思うのです。むしろ、松井市長と同じような誤りを市民団体の皆様が犯しつつあるのではないか?そう申し上げる次第です。

「平和記念式典そのものは、すべての国と地域を呼べば良い。」このことを繰り返したいとおもいます。

4月19日現在、イスラエルによるパレスチナ大虐殺は、イスラエルとイランによるミサイルやドローンの撃ちあいに飛び火しています。もちろん、シリアのイラン大使館を空爆するという暴挙を行ったイスラエルに主な責任がありますが、とはいえ、なんとか収束をしていかないといけない。こんなときだからこそ、米国のバイデン大統領にもロシアのプーチン大統領にも中国の習近平国家主席にも朝鮮の金正恩総書記にも、イスラエルのネタニヤフ首相にもイランのライースィー大統領にも平和記念式典ご出席いただきたいと思います。広島市として招待状を出したうえで、出席する、しないは先方の都合です。

繰り返します。「平和記念式典そのものは、すべての国と地域を呼べばよい!」

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2024年4月17日23時14分頃、緊急地震速報が広島県内でも鳴り響き、呉市や江田島市、府中町などで最大震度4を観測しました。宇和島市付近の豊後水道の深さ39kmを震源にM6.6の地震が発生、愛媛県や高知県では最大震度6弱となり、建物や道路にも被害が出ています。ユーラシアプレートに潜り込むフィリピン海プレートの内部で起きたとみられます。今回とほぼ同じ震源で、同じ規模の地震が1968年にも発生しています。

筆者の勤務先の介護施設では筆者の上司が夜勤に当たっていましたが、ちょうど、利用者様のオムツ交換の途中だったそうです。「慌てて、オムツを閉じて避難に備えた」と上司は、翌18日朝、出勤してきた筆者に語りました。

◆今回と同タイプで大規模な地震、30年以内に40%の確率!

政府の地震本部のホームページによると、安芸灘から伊予灘、豊後水道にかけては、今回と同様のタイプで、今回より大きなM6.7からM7.4の地震が数十年おきに発生しています。

1649年、1686年、1857年、1905年には安芸灘や伊予灘でM7以上の地震が発生し、広島でも大きな被害が出ています。最近では2001年の芸予地震(M6.7、県内最大震度6弱)、2014年の伊予灘地震(県内最大震度5強)が記憶に新しいところです。今後30年以内に、今回より大きな地震(M6.7以上)が起きる確率は40%となっています。

◆伊方原発ヒヤリ!

もし、今回のタイプでM7.4程度の地震が今回より北の愛媛県伊方町の直下で起きていれば、能登半島大震災における志賀原発(休止中)のようなトラブルが稼働中の伊方原発で起きた可能性もあります。志賀原発の場合は、原発が停止して久しく、核燃料の温度も低下していましたので、電源の機能が大幅に低下していますが、大事に至っていません。しかし、同じようなトラブルでも稼働中であれば、大きな事故につながりかねません。ヒヤリとさせられました。

もし、大きな事故が伊方原発で発生すれば、瀬戸内海を伝わって放射性物質が広島市にも押し寄せ、潮の流れによって安佐南区南部の太田川あたりまで来る可能性があります。沿岸だけでなく、内陸にお住いの方にとっても他人事ではありません。岸田総理が進める老朽原発運転強行政策。ご勘弁いただきたい。

 

南区と中区の境の上柳橋)

◆平地=中心市街地も山地=団地も孤立集落に

今回のタイプの地震で、さらに震源が北にずれて広島市に近く、規模が大きくなれば、2001年の芸予地震を上回る被害が出た可能性があります。

南区、中区、西区のいわゆるデルタ地帯は川により分断され、事実上、島に分かれています。筆者も東区の自宅から西区の勤務先には、4本の橋を渡らないといけません。大震災となれば、橋が通行不能になったり、そこまでひどくなくても橋がボトルネックになり大渋滞になったりするおそれがあります。

西区、東区、安芸区、佐伯区、安佐南区、安佐北区などの山地にある団地では、出入りする道路が能登半島大震災のような土砂災害で寸断される。結果として、広島中が孤立集落になる恐れがあります。

一方、今回のようなタイプの地震とは別に、広島都市圏の周辺の地表には五日市断層、己斐断層、岩国断層帯、安芸灘断層群など多くの活断層(地震本部ホームページ)が存在します。これらが2024年元日に発生したM7.6の能登半島大震災のような感じで連動すれば、それこそ、能登半島大震災それ以上の大震災になる可能性もあります。

◆「広島大震災」に備え、巨大病院集約より各「島」に「最後の砦」公立病院を!

 

広島都市圏周辺の地表には五日市断層、己斐断層、岩国断層帯、安芸灘断層群など多くの活断層がある(地図上の線、地震本部ホームページより)

広島県の湯崎英彦知事はこうした中、広島市南区の県立広島病院や中区の中電病院、舟入病院小児救急、東区のJR広島病院を統廃合し、広島駅北口=エキキタに巨大病院を造ろうとしています。

また、その病院は県直営ではなく、行政責任が中途半端な独立行政法人です。ちなみに、広島市民病院も独立行政法人化されてしまっており、コロナ時の病床確保に実は支障があったそうです。

さて、広島には外国人観光客も多く来られる。カープやサンフレッチェの試合がある日には相手チームのファンも含めて多くの方が来られる。大震災になれば、大混乱は確実です。交通マヒを考えれば、エキキタ巨大病院への集約はリスクでしかありません。

そうした中で、「各島に一個」くらいは、行政が責任をもって、災害時にもケガをした人や体調を崩した人を手当てできる病院があった方が良いのではないでしょうか?

ちなみに、能登半島大震災で被害が甚大だった珠洲市、輪島市、穴水町、能登町のいわゆる奥能登の人口は6万程度。石川県が病院の統廃合を検討していましたが、遅れていました。公立病院が残っていたのは不幸中の幸いでした。広島の各島には奥能登以上の人が存在しています。エキキタ巨大病院への集約はトンデモとして、むしろ、各島に50億円程度をかけて行政直営のそれなりの救急機能を持った病院を残すべきではないでしょうか?

◆南海トラフ「ばかり」に気を取られると足をすくわれる

確かに、南海トラフ地震は起きれば破壊力が大きいし、和歌山県や徳島県、高知県、あるいは三重県や愛知県、静岡県といった近畿、四国、東海の沿岸部にとっては大きな脅威です。

しかし、他方で、広島の場合は、南海トラフを意識しすぎて、17日の豊後水道地震タイプで震源が北にずれた規模が大きな地震か、広島周辺に密集する活断層による直下型地震の脅威を見逃してしまうのが怖いのではないか、と筆者は考えています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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筆者も候補者として当事者になった 参院選広島再選挙2021​(2021年4月8日告示、25日執行)の告示から2024年4月で3年が経ちました。あの選挙は、大買収事件で有罪が確定した河井案里さんの当選無効に伴い行われました。結果としては、野党第一党の立憲民主党の候補が当選し、「野党共闘の勝利」とされました。しかし、あれから3年、日本の政治、広島の政治は良くなったのでしょうか?むしろあの時より悪化しているのではないでしょうか?

裏金問題に象徴される与党の腐敗は相変わらず。さりとて野党も敵失を活かせぬ状況が続いています。政治に庶民ほどおきざりにされている状況が続いています。

こうした状況から、「あなたの手に政治を取り戻し広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命」を広島瀬戸内新聞と筆者は呼びかけ続けている次第です。

 

楾大樹(はんどう たいき)『茶番選挙 仁義なき候補者選考』(あけび書房)1320円(1200円+税)

この参院選広島再選挙2021については、実は、事前に立憲民主党から声がかかっていたにも関わらず、いわば、立憲民主党にはしごを外された方がおられます。

筆者の地元でもある広島市安佐南区在住の弁護士・楾大樹(はんどう たいき)先生です。その楾先生が、参院選広島再選挙2021の舞台裏をすっぱ抜いた「問題作」がこのほど出版されました。

『茶番選挙 仁義なき候補者選考』(あけび書房)です。

はしがき
1 私の来た道~弁護士から社会活動家へ
2 初めての立候補打診
3 2回目の立候補打診
4 2022年参院選
5 だまっとれん
6 候補者選考のあり方
あとがき

楾先生はわたしと同じ1975年広島県生まれ。中央大学法学部法律学科ご卒業後、2004年広島弁護士会登録。著書に『檻の中のライオン 憲法がわかる46のおはなし』『けんぽう絵本 おりとライオン』『憲法紙芝居 檻の中のライオン』『檻を壊すライオン 時事問題で学ぶ憲法』(いずれも、かもがわ出版)があります。

本書でも紹介されている通り、2016年以降、『檻の中のライオン』憲法講演活動を全都道府県で展開中です。広島瀬戸内新聞でも2023年に二度、楾先生の講演会を開催しております。

楾先生は2013年に96条改憲を目指す安倍政権の暴走を目の当たりにして危機感を抱くようになります。そして、為政者をライオンに、憲法を為政者が好き勝手しないように規制する檻に喩えた、『檻の中のライオン』という本に思いをまとめ、全国で講演されています。

 

『檻の中のライオン』憲法講演活動(広島瀬戸内新聞2023年10月号より)

◆声をかけてきたのは立憲民主党だったのに

そうした楾先生に立憲民主党が目を付けたのはあの河井事件が起きた2019年の参院選を控えた時期でした。この参院選2019の広島県選挙区では国民民主党所属の無所属現職で、立憲民主党推薦の森本しんじさん、そして、自民党新人の河井案里さんが、自民党現職の溝手顕正さんらを破って当選したのです。

国民民主党所属の森本さんでは自民党に2議席独占を許しかねない、と考えた旧立憲民主党が楾先生に立候補を打診したのです。しかし、その話は楾先生がご自身の講演活動を優先し、断られて立ち消えになりました。

その後、案里さんが逮捕され、再選挙が想定されるようになってから再び旧立憲民主党サイドから楾先生に声がかかったのです。

◆はしごを外された楾先生

だが、2020年秋に立憲民主党が国民民主党と合流。その後、楾先生に全く連絡がない状態が続いたのです。仕事をなるべく入れないようにしてきた楾先生。案里さんが2021年2月に当選無効になってからもなかなか連絡はなかったのです。

ようやく、再選挙の告示も近い時期に面接が行われた。しかし、雰囲気は良いものではなく、その後3月中旬になって突如、宮口治子さんという、失礼ながら当時の広島県内では「誰?」という方が候補者になられたのです。そして、その宮口さんが実は候補者選考を主導した森本しんじ参院議員の秘書の配偶者でいらっしゃったのです。

森本議員と、再選挙で選ばれた議員は、2025年の参院選でバッティングします。従って、コントロールが効かない人が候補になっては困るという動機が森本議員には存在します。利害関係者が、候補者選考を主導する。

「政党による国会議員の候補者選考自体が茶番」であればデモクラシーなど存在しないも同然ではないでしょうか?そのことを鋭く問題提起していると感じました。
そして、2022年の参院選を前に、楾先生は候補者の公募に応募しますが、もちろん、不合格となります。

◆密室ではない候補者選考のあり方を

一部の現職議員が密室で決めるのでは、結局、マトリョ-シカのように、自分の地位を脅かさない小粒な議員ばかりを選ぶようになっていく。予備選挙をやって白黒つける。人を大切にする。そして、誰が議員にふさわしいか、選ぶ持つ目を持てるような「主権者教育」をきちんとやる。こうしたことを、楾先生は最後に提起されています。

◆野党も庶民革命で「政治を県民によって取りもどされる対象」だ!

筆者自身もこの選挙に立候補するに際して、とある野党第一党党員から「選挙に出るなら縁を切る。俺の地域に二度と出入りするな!!」などとまるで戦国大名か何かのような罵詈雑言のお電話をいただきました。しかし、その方のご自宅がある地区が選挙後に大洪水になった際、わたしはボランティアに伺いました。その方はバツの悪そうな顔をしておられました。

また、野党第一党候補の方に対してわたしは、ギリギリまで1本化を模索はしていました。その条件として「伊方原発即時廃炉」含む「即時原発ゼロ」を同候補側に提示。しかし、同候補陣営幹部の野党第一党地方議員は「候補者は具体的な政策がわかる人じゃないから」との返答。自分たちでバカにしている人を候補に担ぐ。これこそ、女性蔑視も良いところです。

それはともかく、自公の国政与党だけでなく、野党第一党である立憲民主党さんも「県民の手に政治を取り戻す」庶民革命において、「県民により政治を取り戻される」対象物であるということだと思います。

民主的な候補者選び、予備選なり候補者同士の公開討論会など、オープンな選挙にしていかないと、政治は一部の「えらい人」のもののままです。

もう一つ疑問は日本最古の左派野党=日本共産党さんも簡単に野党第一党候補に乗ってしまったことです。結局、同党も庶民の味方と言いながら実際には一部幹部の意向で政党本来の政策とかけ離れた人を推したのではないか?無理が通れば道理が引っ込む。こうした無理が同党内部での矛盾の増大、また、それを押さえつけようとする田村智子委員長による党所属県議らへのパワハラ問題にもつながっているのではないでしょうか? 4月7日執行の福山市議選で共産党は惨敗(議席数3→2、得票数10828→7476)しましたが、不思議な結果ではありません。

もちろん、従前どおり、広島瀬戸内新聞とさとうしゅういちは、県民を無視し、新自由主義路線を暴走する広島県知事・湯崎英彦さんを打倒するとともに、湯崎英彦知事から広島を県民の手に取りもどす「ヒロシマ庶民革命」を呼びかけて参ります。

与野党の支持者の方も当然、一県民、一個人として「広島を県民の手に取りもどす」という庶民革命の趣旨にご賛同いただける方とはご一緒させていただく方針に揺るぎはありません。筆者は、上記の方向性を共有する方であれば、政党支持なしの方はもちろん、れいわ、立憲、共産、社民と言った野党の支持者の皆様、そして、自民や維新系でも湯崎英彦知事に批判的、あるいは是々非々の皆様とも懇意にさせていただいています。

しかし、それはそれとして、特に現行選挙制度では事実上100%政党選挙である国政選挙の政党の候補者選考過程にも厳しくチェックをしていく目を持っていただきたいと、県民の皆様に呼びかけるものです。

◇     ◇     ◇      ◇     ◇

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#三原本郷産廃処分場問題」で揺れる三原市。2020年に同処分場を広島県の湯崎英彦知事が許可しました。

 

岡田和樹様SNSより

同処分場は2022年秋に稼働を始め、23年夏には汚染水が流出。広島地裁が23年7月には処分場許可取り消しを命じたにもかかわらず、湯崎英彦知事が控訴。その後も汚染水流出や、法律で義務付けられている展開検査もしないままの搬入、はたまた、住民の土地への「侵略」が続いているにもかかわらず、放置プレイ状態です。

そもそも、広島県の産廃行政は全国でも最も甘く、いまや、日本中からゴミが広島を目指して集まってきています。三原だけでなく福山や安佐南区上安でも汚染水流出など問題が続発し、東広島市安芸津町にも大型処分場が計画されています。

一方、一番住民に身近な自治体である三原市も市議会は同処分場の設置に反対する決議を全会一致で行うなどしています。他方で、三原市当局は産廃業者に対して適切な注意や指導を行わず、また、被害を受けている住民の救済もしていません。これは、法的根拠となる条例がないということもあります。

行政、明確な法的根拠がないと動かない。これが常です。過去には、例えば、マンション建築を巡り法的根拠が明確でないのに、事業を妨害したとして当時の市長が損害賠償を業者から請求され、確定したという事案もあります。行政が慎重になるのもわからないではない。

そこで、行政が事業者を指導し、また被害を防ぎ、住民を救済するための法的根拠となる水源保護条例をつくれ、と市民が声を上げ、2024年春、ついにその方向で市が動き始めました。そして市民から意見を募集しています(4月19日まで)。尾道市やPFAS問題が深刻な東広島市でも同様の動きが出ています。実効性のある「水源を守る条例」が三原市で出来れば、「産廃激甘」の広島県全体への波及が期待できます。

なお、「パブリックコメントに係る事案に利害関係を有する個人及び法人その他の団体」ということであれば、三原市民以外の方も意見を述べる資格が広くあります。

例えば、三原の八天堂のパンは広島市内や東京でも販売されています。三原市の水質汚染は広島県内、さらには全国にも影響があります。広島県の湯崎英彦知事は、2024年度の県政の大きな柱の一つとして広島の食材や広島料理のPRを掲げ、予算もつけています。しかし、「産廃無策」が続けば、そうした県政の施策も無に帰してしまいます。本来は、県が始末をつけるべきことですが、県にやる気がないなら、市にまずやらせていくしかありません。

本郷産廃処分場許可取り消し裁判の共同代表・岡田和樹さんは、

ポイントは、水の汚染と言う公害や環境破壊、住民側の被害に対して、三原市行政がちゃんと汚染原因を規制し、監視できるようにすることです。特に本郷処分場の汚染問題では、河川や森林の管轄が三原市であるにもかかわらず、汚染をしている産廃業者に対して、三原市は業者に対する注意、指導、改善、住民救済いずれもしていません。そして、業者による産廃操業が終われば、汚染された調整池の管理は三原市が受け持つことになります。残念ながら、三原市になんの手立てもないし、行政判断で動く気も有りません。

だからこそ水源保全条例で三原市のしなければならないことを明確化し、被害を受ける私たちの水、暮らし、いのちを守れるように条例の中身に私たちの想いを出来るだけ入れて実効性のあるものにしなければなりません。汚染するような可能性のある計画を未然に抑止、規制する事ができるように条例で縛らなければなりません。皆さんは水道や田畑、井戸、漁業、飲食を通じて必ず水に関わると思います。それぞれの立場からどうしてほしいか書いていただけるといいと思います。

と呼びかけています。

https://www.city.mihara.hiroshima.jp/soshiki/18/168078.html

意見書の提出方法と提出先は以下

所定の意見書に住所、名前、連絡先と意見を記入して、次の方法で提出。

(1)直接提出   生活環境課(市役所本庁舎3階)又は各支所地域振興課
(2)郵  便   〒723-8601 三原市港町三丁目5番1号 三原市生活環境課宛て
(3)ファックス  0848-64-4103 三原市生活環境課宛て
(4)Eメール   seikatsukankyo@city.mihara.hiroshima.jp
(5)専用フォーム https://logoform.jp/form/UQ6D/542064
 ※ 電話での意見の受付は行いません。

◇     ◇     ◇      ◇     ◇

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広島市議会2月定例会は26日、2024年度予算案などを可決し、閉会しました。

◆サンフレ本拠地移転と齟齬をきたすアストラム延伸

このうち、2024年度予算案のアストラムライン延伸については反対討論が相次ぎました。

この計画は、アストラムラインを安佐南区の広域公園前から、佐伯区の五月が丘団地、そしてトンネルで山をくぐって西区の西広島駅へ、とつなぐものです。

広島市が過半数を出資する第三セクター「広島高速交通」のアストラムラインは広域公園を会場とする1994年の広島アジア大会を前に、同年8月20日に本通りから中区の城北駅、東区の不動院前駅、安佐南区の大町駅などを経由して広域公園前までの区間が開通しました。その後、1999年に環状化する計画も出ました。

しかし、これらは採算性の問題から、秋葉忠利前市長のもと、2007年にはアストラムライン延伸ではなく、広電やバスなどの既存交通機関の活用を優先させる方針に転じました。2011年に松井一實市長に政権交代した後、2014年に、都心部での延伸は事業廃止する一方、2015年には西広島駅までの延伸のみを事業化することが決定。当初は一日15000人の利用を見込んでいました。しかし、現在の見込みは9100人です。

安佐南区の日本共産党の中村孝江議員や、中区の無所属の門田佳子議員(保守系無所属議員の後継で1年前初当選)からは以下のような討論が出されました。

第一に、輸送人員の見込みは、市が昔計画していた15000人から9100人まで減っていること。

第二に、せっかく延伸しても、自転車置き場や車による送迎コーナーがないと利用しにくいのですが、それが市の案には考慮されていない。

第三に、現実問題、西風新都方面の団地から都心部にはバスの方が乗り換えもなく、便利という現実もある。机上ではアストラムラインが2分所要時間は短いが、そうなれば乗り換えなしの方が良いに決まっている。

予算案そのものは結果として賛成多数で可決となりましたが、上記の反対討論はきちんと市長も受け止めるべきです。

広島市内でも高齢社会化の中で、公共交通の確保は大事です。国や県の支援も必要です。他方で、その方法、また、利用しやすい公共交通の在り方。これをきちんと議論しないまま、そして、国や県の十分な支援が見込めない中で突き進んだ場合には(自治体は国と違い、お金を刷ることができませんから)大変なことになります。

 

サンフレッチェ広島の本拠地であるサッカースタジアムのエディオンピースウイング広島

広島都市圏全体の交通の在り方、ひいては広島県内全体の交通や地域づくりの在り方をきちんと市民的、県民的にもっと議論すべきではないのか?場合によっては住民投票も活用すべきではないのか?そのように感じました。

輸送人員の減少が見込まれる。これは当たり前の話です。サンフレッチェ広島の本拠地であるサッカースタジアムが安佐南区から中区のエディオンピースウイング広島(写真)に移ったことも大きな影響があるでしょう。サッカースタジアムについてはいろいろ議論がありました。

しかし、現在地に移転した以上は以下のことは想定できます。

1.アストラムラインの利用者が激減する。

2.一方、広島駅から歩いて行けるサッカースタジアムということで、サンフレッチェ広島の対戦相手のチームのサポーターも多く広島駅経由で来られる。

1.については、アストラムラインの見直しを市に迫る。

2.の要素は広島駅周辺の混雑激化を通じて、県が広島駅北口に計画している新巨大病院(湯崎病院)に見直しを迫る。

ことになるでしょう。

今一度、サッカースタジアムが移転した後の状態を前提に、アストラムラインの延伸の是非、県病院含む病院のエキキタへの統合の是非、これらをきちんと再論議する必要があるのではないでしょうか?

繰り返しますが、サッカースタジアムの移転で状況は変わった。人の流れも変わった。前と同じことをしていたらあちこちでほころびが出る。そういうことも含めて、市民投票、県民投票も視野に入れた議論は必要ではないでしょうか?

◆中央図書館の移転費用も青天井

松井市長が進める、中区の中央公園にある中央図書館の駅前のエールエールA館への移転費用も青天井です。ついに、96億円という見込みだった費用が、131億円に膨れ上がってしまいました。これに加えて、浅野文庫や広島文学を展示する施設を旧市長公舎の跡地に建設予定で、37億円かかります。ついに、現在地で建て替えた場合の予想経費の120億円を上回ってしまいました。

これでも、本日の議会最終日で賛成多数で2024年度予算は可決されてしまいました。しかし、これももう一度議論し、場合によっては住民投票にかけることも大事ではないでしょうか?

広島市の中央図書館の移転費膨張 当初計画から35億円増の131億円(中国新聞デジタル)Yahooニュース

とにかく、住民の声を無視して進めた計画のほころびが出ています。今必要なのは市民的、県民的な「広島をどうするか」という議論ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆告発状受理、正式に被疑者に!

広島地検は3月11日までに広島県内の住民が平川理恵・教育長を官製談合防止法違反などの疑いで告発していた告発状を正式に受理しました。これにより、平川氏は広島地検の捜査対象と言う意味で正式に「被疑者」となります。

もちろん、被疑者・被告人は推定無罪です。しかしながら、すでに、平川氏は自らが依頼した外部の弁護士による調査により、京都のご自身のご親友のNPO法人「パンゲア」への業務委託などで、「官製談合防止法違反」「地方自治法違反」があった、と指摘されています。

一方、平川氏は2023年8月に始まった住民裁判で、官製談合による県費の無駄遣い及び、高額なタクシー代、そして高額な弁護士への費用を返還するよう訴えられています。

広島瀬戸内新聞2023年9月号外

法律的に言えば、平川氏は何の処分も受けていません。特別職公務員にはそもそも懲戒という仕組みがない。2023年2月に平川氏が給与の自主返納をしただけです。あとは、知事による罷免しかない。

こうした状況で、任期満了まで教育長を続けられる平川氏には呆れてしまいます。まさに鉄面皮を超えて劣化ウラン※面皮と言う状況です。

(※ウラン鉱石から核燃料を取り出した後に残った劣化ウランは非常に硬い性質を持っている。1991年の湾岸戦争において鉄より硬く、劣化ウランを使用した米軍の戦車が鉄でできていたイラク軍のT72戦車を撃破したことで有名。しかし、飛び散った劣化ウランの粉塵が、周辺の住民や米軍兵士の健康にも悪影響を与えているとされている。)

◆広島・日本の教育を前に進めたのではないか、と自負している?

こうした中、3月22日、平川氏は県民をさらに呆れさせました。平川氏は退任前最後の記者会見で「広島・日本の教育を前に進めたのではないか、と自負している」と言い切ったのです。一方で、告発状受理については「お答えできない」と逃げました

「この中で平川氏は、2期6年の任期中に取り組んだ公立高校の入試改革や不登校対策、それに探求的な学習の導入について「365日24時間、どうやったら広島の教育が良くなるかを考え続けてきた。広島県、あるいは日本の教育を前に進められたのではないかと自負している」と振り返りました。」

平川氏は一生懸命だったのは事実でしょう。しかし、教育を前に進めたというより、脱線させた、というのが事実ではないでしょうか。脱線したまま、あさっての方向に進んでいるというべきでしょう。

◆アメリカン・ポストモダンな腐敗と日本の古臭さの悪いハイブリッド

平川氏は、ただただ、アメリカン・ポストモダニズム的なものに飛びついて、それを取り入れることが進歩だと思い込んでいる。1990年代後半あたりの日本企業の経営者、新自由主義政治家によくあるパターンです。実は、それこそが時代遅れなのではないでしょうか?

そして、正直、平川氏が「私自身が任期中の評価をするのは難しいが、教育というのは今成果が出るものではなく、何十年後かに子どもたちが答えを出してくれるものだと思っている」というのも責任逃れにも見えてしまいます。

例えば、高校入試。2023年の入試から改革が行われました。今までは一般入試と推薦入試で行っていたのですが、推薦入試を廃止。そしてアメリカンな「自己表現」を導入したのです。これまで学力重視の一般入試と、部活などで実績がある生徒向けの推薦入試でバランスを取っていたのが崩れ、生徒や保護者、中学校の先生らにも不評です。そして、「自己表現」とはどうすればいいのか? どう採点すればいいのか? 生徒も保護者も、高校の先生も苦慮したのです。

そもそも、日本の文化とアメリカの文化は違う。その中で、いきなりアメリカンな自己表現とやらを導入するのは無理がある。その上で、アメリカの教育が良いかと言えばまったくそんなことはない。日本の政治の腐敗ぶりは大概ですが、アメリカのポストモダンの政治だって、バイデンVSトランプと言うどうしようもない不毛な大統領選挙ではないですか?アメリカの教育を受けたアメリカの有権者がそういう構図にしたのではないですか?

平川氏の行政手法である、お仲間優遇というのは実は、アメリカ直輸入なのです。平川氏ご親友のNPOや企業とか、赤木かん子さんら平川氏の「意識高い系」のお仲間で物事を決めていく。これはアメリカでは普通のことです。

かつての日本の疑獄事件みたいに賄賂をやり取りするよりも、高級官僚と企業の幹部がいわば回転ドアのように行き来して利益誘導する。従来の日本の天下りどころではありません。そうした中で、戦争国家と言われるアメリカができています。

平川的なことを進めて行けば、アメリカンな腐敗と日本・広島の権威主義をハイブリッドした無茶苦茶なことになりかねません。というか、もうなっています。国土が広く、資源が豊富なアメリカだからまだ政治が腐っていても持ちこたえていますが、日本はそうはいきません。

◆新教育長は「フロント」に徹せよ!

さて、新年度からの教育長には、文部科学省課長の篠田智志さんが県議会に人事案が提案され、2月26日に議会で全会一を以って可決されました。篠田新教育長には以下のことを申し上げたい。

戦前の臣民を育てる教育を止め、戦後は、日本国憲法の下で市民が市民を教育する制度に変わりました。すなわち、アメリカに倣った教育委員会制度が導入されました。当初は、教育委員会は公選制がとられたものの、イデオロギー対立などで混乱したということもあり、任命制に変わりました。その後、安倍政権の下では、事務方のトップである教育長が教育委員会の委員長も兼ねること制度改正。教育長の権限は強大になりました。しかし、あるべき公教育の基本は変わりません。

プロ野球に例えれば市民、県民がオーナーで、生徒が選手、先生がコーチ、校長が監督、そして教育委員会は球団フロントのようなものです。教育長の権限が以前より強大化したとはいえ、所詮は球団社長の立ち位置であり、オーナーでもなければ主役でもない。選手の個々のプレイに口を出したり、監督の采配に口を出したりするのがおかしいのです。カープの新井監督のお名前は広島県民ならだれもが存じています。しかし、球団社長のお名前はすぐには出てきません。それでいいのです。フロント=教育長は現場がやりやすいように支援する黒子で良いのです。

例えば、県内では県教委管轄だけで1000人以上、非正規の先生がおられます。非正規の先生も大変だし、正規の先生も疲弊する。非正規を正規の先生に変えていくことでそういう状況を変えていく。平川教育長は「予算がない」と言っておられたのですが、何十億もかけてグローバルエリート中高「叡智学園」をつくったのだから、お金がないわけがない。使い方の問題です。

◆「万辞に値する」湯崎英彦知事の「任命責任」

さて、安倍政権の制度「改革」自体に問題があるが、それを「悪用」した平川「被疑者」教育長、何より任命した湯崎知事には大きな責任があります。とりわけ、湯崎知事は、2月に平川教育長の続投がないことを決めた際、「法令違反は改革の副作用」と言って、平川教育長を庇ったのです。

そもそも、県は平川教育長にお金を無駄遣いされた「被害者」のはずです。平川教育長を警察・検察に告発したり、平川教育長に無駄遣いしたお金の返金を命じたりするのは知事の仕事ではないでしょうか?

住民が平川「被疑者」教育長を刑事告発したり、返金を求める裁判を起こしたりしなければいけないのが本来おかしいのです。知事が動かないから、住民が自腹を切って動かないといけなくなる。それどころか、県は、平川「被疑者」教育長を庇う立場で住民訴訟に参加しているわけです。

湯崎英彦知事は、ある意味、類は友を呼ぶということで、平川氏を、2018年度に神奈川県の民間校長から一本釣りしたのでしょう。いずれにせよ、湯崎知事の任命責任は、その後に平川氏を罷免するなどしなかったことも含め、「万辞に値する」と言わざるを得ません。

もちろん、今まで、湯崎県政を十分チェックできなかった県議会、そして湯崎知事と平川教育長を持ち上げてきたマスコミの責任も重いと言わざるを得ません。
筆者も平川教育長の逃げ切りを許さない。そして腐敗しきった湯崎知事から広島を取り戻す。その動きを強めていく決意です。

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元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆呉市議会、共社両党以外は期待の声強く

防衛省は3月4日、2023年秋に閉鎖された日本製鉄所瀬戸内製鉄所呉地区=旧呉製鉄所の跡地を会社側から一括購入し、「複合防衛拠点」を整備する案を広島県と呉市に説明しました。3月11日には呉市議会全員協議会でその案を説明しました。

 

広島瀬戸内新聞呉支局・A記者が傍聴し、入手した資料

防衛省は、
▼装備品(=武器など=)の維持整備、製造基盤
▼防災拠点と陸海部隊の活動基盤
▼港湾機能
の3つを整備する方針を説明。

広島瀬戸内新聞のA記者によると、「協議会は約1時間で会派順に質疑がありました。共産党2名と社民1名は防衛拠点に反対、あとの全会派の議員は賛成でした。「明るいニュース」、「率直に好意的」、「人や物が増える」、「経済プラス」、「経済波及」など、聞こえの良い言葉ばかりを並べておられました。(軍事施設を受け入れることへの)危機意識を全く持ち合わせてないことに衝撃でした」とのことです。

確かに、旧呉製鉄所の跡地は、何かに再利用しようとすれば、建物の解体などに10年はかかると言われています。地元でも、正直、利用方法に苦慮していたところです。それを、防衛省が一括購入してくれれば少なくとも面倒なことは考えなくていい。

しかし、それで本当に良いのでしょうか? 歴史を踏まえて、考える必要があるのではないでしょうか?

◆軍港として栄えた明治から敗戦まで

呉は、空軍がない時代に、敵の船が入りにくい守りやすい場所にありなおかつ大陸に近いということで若き日の東郷平八郎元帥が調査。軍港として選ばれ、鎮守府がおかれました。その後、呉は日清戦争、日露戦争と海軍の出撃拠点になりました。戦争のたびに街は拡大。その後、大正のワシントン軍縮会議や昭和初期のロンドン軍縮会議には軍縮により職工がリストラされるということも起きています。

しかし、1931年の満州事変で一挙に賑わいを呉は取り戻し、第二次世界大戦敗戦直前には人口が40万人に達し、広島市に肉薄したこともありました。

◆焼け野原になった「軍港・呉」、住民投票で「平和産業港湾都市」へ

しかし、第二次世界大戦末期の1945年6月から7月、数度の呉空襲で呉市は海軍工廠も市街地も焼け野原になりました。筆者ら広島瀬戸内新聞取材班が2023年10月16日に取材にうかがった佐藤康則さんは当時中3で動員されていた海軍工廠への空襲、2月25日に取材に伺った堀隆治さんは当時5歳で市街地の自宅で空襲に遭われています。

その後、建前はいわゆる旧軍港市転換法により、舞鶴、横須賀、佐世保とともに平和産業港湾都市として再出発することになります。後に高度成長を実現した総理となる池田勇人代議士の尽力も大きかった。軽武装で、経済成長優先。その路線を形作った法律でした。

同法は国有財産の市への移譲など、現代の特区に似た仕組みです。ただ、加計学園問題などで時の権力に恣意的に悪用された現代の特区とは違うのは住民投票を経たことです。憲法95条の規定により住民投票を各市で経て成立しました。呉市では以下の結果でした。

◆74年前の圧倒的民意を覆し、軍港都市に逆戻り

74年前に住民投票で呉市民の有権者の絶対多数の同意で、平和港湾都市に転換した呉。だが、防衛省の案は、いわば、旧海軍呉工廠を復活させるものです。軍港都市に呉を戻すということです。

「昭和~平成期」にも呉には海上自衛隊がありました。しかし、その自衛隊はあくまで、「専守防衛」の自衛隊です。それに付け加えて国際貢献とか、復興支援と称して、アフガニスタン戦争への後方支援での派兵などはありましたが、あくまで主たる任務は「専守防衛」です。

ところが、岸田総理のいわゆる「安保三文書」により、「敵基地攻撃も辞さない令和の自衛隊」になってしまいました。その大型拠点が来るとなれば、旧軍港市転換法の廃止が必要ではないでしょうか?それに伴う、住民投票が必要です。きわめてそれだけ大きな転換を市議会で説明しただけで通してよいのでしょうか?

◆メリット=経済効果の過大評価、リスク=台湾有事時の被害の過小評価は禁物

 

防衛省らが旧呉製鉄所の軍事拠点化構想を説明するのを前に、市役所前で抗議する市民グループの皆様(3月11日、広島瀬戸内新聞呉支局A記者撮影)

そもそも、戦前の海軍工廠ほどの雇用は現代の複合防衛拠点では望めないでしょう。戦前の海軍工廠は、それこそありとあらゆる工業製品を作っていてそこでの雇用もすごかった。しかし、現代の産業構造ではそういう効果は望めない。メリットを過大評価すべきではない。

その上で、この複合防衛拠点は、いわゆる台湾有事を口実とした岸田政権の大軍拡の一環であるということを押さえておく必要があります。従って、呉が「複合防衛拠点」となった場合のリスクを考えるべきです。例えば、「台湾有事」の際、「日本にも中華人民共和国がミサイル攻撃をしてくるかもしれない。」ということを理由に日本政府が中華人民共和国に敵基地攻撃をしてしまった場合どうなるか?

中華人民共和国は「日本による侵略」とこれをみなし、日本攻撃の口実とするでしょう。その場合には、呉も報復攻撃の対象になります。1945年の呉空襲の悲劇を繰り返すのは明らかです。

◆日台両者への米の援軍怪しく、選択肢は衝突回避のみ

その場合に、米軍が日本や台湾=中華民国に加勢してくれるかどうかは怪しいものがあります。そもそも、台湾有事とは、中国における国民党(蒋介石)軍vs共産党(毛沢東)軍のいわゆる国共内戦の延長です。あくまで中国の国内で平和的に解決すべき問題です。米国政府でさえも、法的には中華人民共和国(中国共産党)が中国を代表する唯一の政府である、としています。米国も中華民国(台湾)に対してはせいぜい、いわゆる台湾関係法により、武器を援助する程度のかかわり方しかしないのは明らかです。

白人国家のウクライナに対しても武器を支援するだけ、それも最近は尻込み気味なのに、アジア人のそれもアメリカが認めた国家ですらない台湾に対して軍隊を送ってまで防衛するなど現実にはない。ちょっと冷静に考えればわかることです。アメリカ軍はどうするかといえばヤバいと思ったら「避難」するのです。中華人民共和国としてもアメリカとは直接対決を避けるため、自衛隊基地に攻撃を絞るという手を取る可能性も高い。

日本の米軍基地を中国が攻撃するというのも、一部の台湾有事介入ノリノリの右派の方々のある種の「希望的観測」ではないのか?

実際に、沖縄の米軍基地にある米軍機は今や常駐ではなくローテーションで世界を回る方式になっており、いつでも逃げられる体制なのです。辺野古の問題はもちろん大事ですが、今、沖縄ではそれよりも、対中国戦争の自衛隊の攻撃能力の基地になる方が平和運動的にも大きな課題になっているそうです。

もちろん、中華人民共和国の経済も台湾(中華民国)産の半導体に大きく依存しており軍事的に勝っても大損害であり、戦争をわざわざ仕掛ける動機に乏しい。当の台湾の与党・民進党ですら露骨な独立を主張することは努めて抑制しています。怖いのは、行き違いからの偶発的衝突でしょう。

大体、台湾=中華民国だって、尖閣諸島の領有権を主張しています。日本が援軍を出したからと言って、台湾=中華民国が尖閣諸島領有権をあきらめてくれるとも思えません。その面でも、台湾有事で日本が中華人民共和国と闘うメリットはどこにもないのです。

とりあえず、日本としては、外交努力により衝突が起きないよう努力していくしかないのです。日本が戦闘に直接巻き込まれなくても、食料や半導体が止まればその時点で日本経済はアウトなのですから。

 

3月11日、市民グループの皆様が呉市長に申し入れた文書

◆軍港復活よりは国営食料生産工場を!

呉の製鉄所跡地の活用策は、そもそも、民間企業は21世紀の産業構造では望めない。国の事業しかほぼ選択肢がないのは事実です。しかし、それが、旧軍港の復活であっていいのか? よくよく議論すべきです。

なお、もちろん、現実問題として、経済効果に期待する人々に対して、製鉄所の跡地利用の対案をお示しすることも、平和港湾都市である現状を維持したい市民にとり必要ではあります。

筆者個人としてはAI・ICTなど最新鋭の技術を活かした国営の食料生産工場はどうか?と思っています。すなわち、防衛省ではなく、農林水産省に買い取ってもらうのです。野菜工場や魚の養殖などを軸とすればどうでしょうか?

戦後、日本は、工業を増強しつつ農業を潰してきた。今、食料が、一時期よりは庶民にとっても手に入りにくくなっています。そもそも、戦争になったら戦闘に直接巻き込まれなくても食料不足で日本は詰みです。食料生産を復活させるというのも手ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年4月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

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