広島空港(三原市本郷町)が10月29日、開港30年を迎えました。正確には「広島空港の本郷町移転30年」というべきでしょう。そして、この地域に空港が移転したことが広島の衰退の一因ということは良く地元では言われています。

広島空港HPより

◆元々は広島市内にあったが手狭で豊田郡本郷町へ移転

広島空港は、元々は広島市西区観音地区(天満川と太田川放水路に挟まれた)にありました。この旧広島空港は国管理の空港で、1961年に完成しました。32年間にわたり、広島の空の玄関として機能してきました。しかし、滑走路が短く、ジャンボジェット機が離着陸できない、また航空需要に離発着数の供給が追い付かないということから、新しい空港が1980年代に模索され、結局、豊田郡本郷町(市町村合併を経た現在は三原市本郷町)に1993年に移転しました。

当時、滑走路は南北に伸びており、北側は広島市西区の市街地で、とてもではないが土地買収すれば高い費用が掛かります。さりとて、瀬戸内海を埋め立てて滑走路を広げれば環境破壊との批判はまぬかれません。そうしたことから、地価の安い地域、それも、県内の当時の自民党大物政治家が関係する地域に移転されたという経緯があります。

西区観音地区の旧広島空港は、広島西飛行場と改称され、県の管理する空港に格下げされました。宮崎線や鹿児島線など短距離の路線に使用されてきました。

筆者が広島県庁に入庁した当時の2000年頃の広島では、
広島県=広島空港(本郷町だけに本県の空港機能を集約)
広島市=広島西飛行場も維持して、羽田線も復活させ、東京への本市の利便性を維持したい、
という対立構図がありました。

広島南道路建設のために滑走路を短縮せざるを得なくなりました。西飛行場の機能を維持・拡充したい広島市は南道路をトンネル方式にして滑走路を維持する方向を模索しました。しかし、2004年に橋梁方式での道路建設に県と市が合意。そのため、滑走路の短縮を余儀なくされました。そして、県自体が、空港運営からの撤退を表明。広島市はなおも広島市営の空港化を目指します。

しかし、広島市の秋葉市長の政権末期の2011年3月議会で広島西飛行場を市営空港にする条例案が当時は市長野党だった自民党主流派などの反対多数で市議会で否決されてしまいました。この結果、空港として使える展望がなくなり、2012年に県営のヘリポートになりました。

◆アクセスが課題「広島空港」こと「三原(本郷、白市)空港」

しかし、現広島空港は、正直、広島空港というよりは三原空港ないし、本郷空港、または白市空港(東広島市内の最寄り駅の名前より)と呼んだ方が適切な空港です。

移転当初から、広島空港へのアクセスは重大な課題とされてきました。例えば、九州の中枢都市の福岡空港は博多駅から地下鉄でたった二駅です。一方、広島空港は広島駅からクルマやリムジンバスで45-50分、広島バスセンター(広島県庁や平和公園近く)から55分くらいです。また、鉄道によるアクセスも不便で、最寄りの在来線の山陽線白市駅からバスで15分かかります。マイカーでも空港内の駐車場は全て有料で、無料の駐車場が広がる岡山空港と対照的です。

なお、二葉山トンネル含む高速5号線が開通すれば広島駅―広島空港は38分に短縮されますが、そもそも供用時期が2029年に延期されているうえ、度重なるトラブルでいつ完成するかも分からない状態です。また5号線が完成したとしても、当然、道路交通の泣き所として渋滞による速度低下のリスクは大きく鉄道に定時制では劣ります。

過去にはアクセスのための鉄道も計画されました。JRに県などが打診をしてきたものの、むざむざ自社の新幹線が飛行機に客を奪われる結果になる空港アクセス鉄道をJRがつくるわけがありません。まだ、JRが国鉄であれば、国の指示で、アクセス鉄道を造らせるという手もあったでしょう。しかし、現実にはJRは民間企業です。県内でも芸備線の廃止まで検討しており、空港のために新線をつくるどころではないのは火を見るよりも明らかです。そんなものをJRが作ったらそれこそ、JR西日本幹部が株主から背任罪で告発されかねません。

そこで、広島県自身が独自にアクセスの鉄道を造る計画も検討はされたものの、2006年に凍結されています。

◆東京アクセスの主役から転落!

こうした中で、広島西飛行場から東京へのアクセスの主役を奪ったはずの広島空港も主役を新幹線に奪われていきます。すなわち、2002年度に広島-東京の旅客シェアは航空機 vs 新幹線で62% vs 38%だったのが2008年度には50% vs 50%になり、さらに2016年度には37.3% vs 62.7%となり、現在では新幹線が圧倒しています。

おまけに2012年には強力なライバルとして(岩国基地拡張強化の見返りの側面が強いが)岩国基地を民間に開放した岩国錦帯橋空港が開港しています。同空港は岩国駅から2.5kmです。それこそ、体力に多少の自身がある方なら岩国駅で降りて、歩きながら市内の観光を楽しみつつ、途中の商店街のレストランで食事・休憩をして搭乗、という楽しみ方もできますし、筆者も暇とお金さえあればやってみたいと思っています。もちろん、条件付きですが空港の駐車場も無料です。

かつては西飛行場=旧広島空港が存在意義を問われたのですが、いまや、移転先の広島空港自体が存在意義を問われかねない瀬戸際にあります。

◆交通の在り方について県民的な議論を!

そもそも、何で、こんなに広島市から遠い空港なのか? それをいまさら言っても仕方がありませんが、現実には、新幹線や岩国錦帯橋空港の方が東京へ行くには便利です。海外へいくにしても、広島空港は中途半端です。筆者自身も広島に在住するようになってからの三度の海外旅行(2004年のベルギー、2007年のノルウェー、2009年の韓国)では、広島空港ではなく関西空港しか使ったことはありません。本当は、広島市安佐北区あたりに空港を造ればいいという話もあったし、今となってはその方が良かったと筆者も思うのですが残念ながら今となっては後の祭りです。

もうひとつ、「1990年代に強行された広島市外への移転」が広島衰退の一因となったものとしては、広島大学が広島市から東広島へ移ったことがよく地元では挙げられます。しかし、広島大学については、2023年度から法学部が広島市中区に戻っています。広島市中区には地裁、家裁だけでなく、高裁もあり、それこそ、法学部生の生きた教材がそこにはありますから再移転は正解でしょう。少しでも広島の衰退に歯止めがかかることを願います。

しかし、大学の再移転はできても、空港(の移転)は本当に頭の痛い負の遺産となっています。

もちろん、広島県や広島市だけで解決できる問題でもないでしょう。国全体の交通政策の課題でもあります。しかし、まずは広島県民が交通の在り方についてもっと議論を深めていくことが重要だし、湯崎英彦知事も、県議ももっと、議論を促していくべきではないでしょうか?

例えば、ドライバーなど人材不足の今、
・(高速5号線二葉山トンネルを含め)「三原(本郷、白市)」空港へのアクセスへの投資
・県内各地から広島市への公共交通を維持・充実(バスも鉄道も)させる
のどちらに重点を置いた方が良いか?
ということも問われます。

筆者なら後者に重点を置いた方が良いと考えます。そもそも、冷静に考えて、海外や東京の方が観光をするにしても広島駅で降りて広島市が軸になる時代が今後も続くだろうし、広島県民にとっても、広島市へのアクセス充実・維持をした方がトータルでは生活や仕事の上でも実利があると思われるからです。

「県民によく考えられると困る」政治家も中にはいらっしゃるかもしれませんが、広島県が人口流出全国ワーストワンを二年連続で続ける中、きちんとした議論は避けて通れないのではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

厚生労働省の分析によると、2022年度に介護で働き始めた人が離職した人を下回り、就労者は前年度から1.6%減となったそうです。

岸田総理は2021年の総裁選や衆院選で介護や保育などのケア労働者の賃金アップを公約。2022年2月から3%の賃上げが実施されました。しかしながら、それは焼け石に水だったことが明らかになりました。

◆求職者がバッティングする他業種で「インフレ手当」出る中でショボすぎた岸田賃上げ

2022年度は他の業界も含む平均で2.28%の賃上げとなっています。しかも、国費投入は2022年度途中までで、10月以降は事業者判断で介護報酬に上乗せする形になっています。これでは、現場に十分に賃上げは行き渡りません。

さらに言えば、流通や飲食、食品など、女性労働者が多くて介護業界と比較的求職者がバッティングする分野に絞ってみると、「インフレ手当」などの形で手当てを出す企業も多くありました。中でもイオンさんなどは2022年度後半にパート時給7%アップを発表しています。もちろん、いわゆる主婦(主夫)の労働者で130万円の壁の中で就業時間を減らす人もおられるでしょうが、一方で、介護などから引き抜きということも増えるわけです。同じ収入確保なら短い労働時間で済む方に流れるのは当然です。

◆70代後半、80代だらけの「新人職員」

筆者の皮膚感覚とも今回の分析結果は合致します。介護福祉士として現場で働く筆者の周囲でも、介護労働者で「70代後半の新人(未経験)」職員、「80代の新人(経験はあるが)」職員という例がざらにあります。繰り返しますが、新入居者ではありません。新人職員が70代、80代なのです。他方で、20代の新人職員という方になかなかお会いすることはとくに広島ではありません。日本人最年少が今年48歳の筆者自身、という状況も珍しくありません。

「人間、年齢ではない。個人個人を見ないといけない。」

それはそうなのです。そうなのですが、そうはいっても70代で未経験の方ともなると、傍目で拝見していても仕事のペースについてこられるのが明らかにしんどそうでした。

経験者の方でも、年配の方に夜勤をしていただいたこともあるが、相当しんどそうでした。特に、夜中の体格が大きい方の排泄ケアなどは特に難しいのです。翌朝、体格が大きい方の便失禁などがそのままになっていることもありますが、責める気も起きませんでした。

便がまるで化石のようにこびり付いた入居者様の背中の便を敵部隊に見立てて思わず「張遼! 張遼!」とつぶやきながら流すのが筆者の日課のようになっていた時期もありました。三国志のゲームで魏の名将の張遼は異常に防御力が高く設定されており、敵に回すと部隊を全滅させるのが非常に困難なことから、ついついつぶやいてしまったものです。

さらに困難なのは、皮膚が弱った状態の方の便失禁が放置された状態です。下手にこすれば皮膚が切れて出血になりかねません。また、血液をサラサラにする薬を服用されている方も多いので、出血すれば止めるのが大変です。従って、仕方がなく、シャワーで流すという対応になります。だからといって、ここで年配職員を責めてもどうしようもない。こういう状況を造った政府に責任があります。 

そして、人手が足りないために、70代職員が「辞意」を表明するたびに、職場に不安が走ります。若い人が来るような職場ではないからです。

まず、そもそも、広島の場合は、東京などに高い給料を求めて若い人が流出してしまいます。その中でも介護業界の給料が低ければ若い人が来ないのは当然です。その上で、外国人労働者(特定技能)も、いったん広島に来ても、東京の給料が高いことに気づき、東京の大手法人に転職してしまいます。

◆悲惨な訪問介護、当事者が国賠訴訟

さて、筆者は主に、入所系サービス=施設で仕事をしておりますが、訪問介護ではもっと事態は深刻です。訪問介護では、移動時間や待機時間、キャンセルされた時間を労働時間に算入しない労働基準法違反が常態化しています。実は、それをなくそうという事業所もあるのですが、今度は提供をお断りすることになっています。
結局、業者が労働基準法を守ろうとしても守れない制度に日本の介護保険はなっているのです。

これに対して、こんな介護保険は違法であるとして、ホームヘルパー国賠訴訟をホームヘルパー3人が提起しました。日本の裁判では、法制度そのものの変更だけを求められるような仕組みになっていないので、損害賠償請求という形にはなっていますが、国に制度改革を迫る提訴内容です。一審の東京地裁では不当判決、そして控訴審は2023年10月25日に結審し、24年2月2日に判決が言い渡される予定です。

※引き続き、公正な判決を求めて署名を呼び掛けています。ご協力をお願いします。
 https://chng.it/7wTCpX8ZrK

◆非常事態に新卒公務員下回る「6000円」賃上げ 岸田総理はなめている!

さて、こんな非常事態に対して、岸田総理は何をやっているのでしょうか? 2023年度はご承知の通りさらに物価が上昇しています。連合は来年の春闘で5%の賃上げを要求する見込みです。特に最近の連合は芳野会長のもと、自民党にすり寄り、賃上げでも最初から会社が呑むような要求しかしません。ですから5%というのは最低限です。

だが、岸田政権=武見厚労大臣は介護労働者に対して、来年2月からの6000円の賃上げしか打ち出していません。6000円。筆者はがっくりきました。しかもこれは平均値であって多くの介護労働者はこれを下回ります。

別の見方をしましょう。2023年度の人事院勧告で公務員の大卒初任給は11000円、高卒で12000円アップとなりました。人事院勧告については様々な批判はありますが、公務員の初任給は世間一般の動向を調査し、反映させているものであることは押さえておきたいものです。ですから、公務員の賃上げが高すぎるということはありません。「大阪維新」のような無責任な政治家に騙されてはいけません。それを大前提としたうえで、その公務員初任給の増え方よりも介護労働者の給料の増え方が半分程度(中央値で見ればおそらく半額以下)とは何事でしょうか?!岸田総理も武見厚労大臣も介護労働者を舐めています。

◆男尊女卑+新自由主義の極北としての「やりがい搾取」も限界に

もともと、介護・保育などケア労働は女性の仕事として、政府も社会も軽く評価していました。

政府によるセーフティーネットの制度設計全体を見渡しても、

1.家庭内のケア労働は女性に主に担わせる
2.労働市場でも女性は低賃金に抑え込み、家計補助の役目を主に担わせる。

1986年の男女雇用機会均等法施行後も建前とは裏腹にこうした男女性別役割分担のあり方が続いていました。どちらにしても、女性の仕事だから軽んじる、ということです。

それでも、実は2000年の介護保険法の施行前は、筆者が住んでいた東京23区でもホームヘルパーは公務員でしたし、広島市では公社職員でした。それが介護保険導入で、民間企業の利潤追求の場となる。さらに小泉政権以降の緊縮財政で報酬が抑え込まれました。依然として根強い昭和からの男尊女卑と平成の新自由主義のダブルパンチを受けた介護現場が崩壊するのは時間の問題でした。

それでもこれまでなんとか持ちこたえたのは、一部のベテラン労働者の「使命感」だったように思えます。筆者は広島県庁職員時代の2000年代前半、介護保険事業者の指導をさせていただきました。当時は、まだ、現場労働者の皆様から強い使命感を感じ、それに筆者も感動したものでした。

だが、もはや、現場は限界です。そのころのベテラン職員の方も高齢化しています。若い人は外国人も含めて地方の現場には就職されません。

◆もはや抜本的な賃上げしか「血路」はない

6000円などという賃上げではショボすぎます。せめて一桁多い金額を直ちに引き上げるべきである。武器の爆買いや訳の分からない中抜きばかりの事業には気前よく使う自民党政権。政治判断で引き上げはただちにできることです。もはや抜本的な賃上げ以外の活路、いえ、血路はない。血路と申し上げたのは、もはや非常事態をしのぐにはこれしかない、そうしないと本当に日本が壊れる、という意味です。

もちろん、賃上げを行う場合、きちんと現場労働者に直接入るようなやり方でしなければなりません。現状では、処遇改善の仕組みは、極論すれば経営者がどう差配しようが勝手な状況があります。また、ケアマネなどが対象外という問題もあり、そうなると職種間での対立ということもあります。経営者判断で介護職員以外への分配も出来ますが今度は経営者側の持ち出しにもなります。

また、かつては、上記のように23区も公務員という形で、広島市も公社職員という形でホームヘルパーを雇っていたのですから、異常な不足が続くいまこそ、公務員ヘルパーの復活を検討すべきです。実はその方が経営者による利潤追求がないぶん、コストも抑えられます。

また、全体として、女性に家庭内も含めてケア労働を過剰に押し付け、一方で、女性の労働への対価を低く抑え込んできた今までの社会・経済の在り方を抜本的に見直すという視点も必要です。岸田総理が130万円の壁の撤廃と称して第3号被保険者制度の廃止をもくろんでいます。現状の女性の労働への対価を低く抑え、なおかつ女性に依然として家事育児介護負担が重い状態を維持したままで第3号被保険者廃止だけを先行すれば、当然、ネット上でも皆様が懸念しておられるように大変なことになります。こうした文脈からも、きちんとケア労働の評価を引き上げていくことが重要です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

筆者は10月16日、日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区、いわゆる呉製鉄所が9月を以て廃止となったことを受け、呉市民の皆様に取材をしました。

今回の取材では様々な世代の方に製鉄所廃止への受け止めや思いを自由に語っていただくことを主眼としています。筆者なりの考え方もありますが、基本的に聞き手に徹することにしています。

呉製鉄所の跡地利用問題ではいろいろな政治家がいろいろな提案をされています。病院船の基地、エネルギー基地、防災拠点……。ただ、やはり、一番大事なのは市民の思いではないのか?そういう考えから、取材に向かいました。

◆製鉄所の跡地利用、現時点では具体的に進む条件なく

写真左が谷本さん、右が筆者

最初に取材に伺ったのは谷本誠一・元市議です。今春の呉市議選では惜敗しましたが現在もあきらめずに政治活動を続けておられます。(写真左が谷本さん、右が筆者)

谷本元市議は、「多くの政治家が提案しているような案の実現は難しいだろう。解体後に更地にしたところで国が買い取ってくれるような話でないと、日本製鉄も乗りづらいのではないか?中央政府の官僚が本気で動くような案がでない会議理、実現は難しいのではないか?」と指摘。

「可能性があるとすれば、市の中心部にある自衛隊が製鉄所の跡地に移動し、自衛隊の跡地を住宅などにする程度だろうが、自衛隊側にメリットがなければ実現は難しい」との見立てでした。

呉市中心部の20代の市民は、「跡地利用はなかなか結論を出すのが難しいのでは?議論を盛り上げるにしても、解体に10年以上あるので、盛り上げのタイミングが難しい。」と指摘。

「跡地利用であるとすれば宇宙産業のようなものだろう。しかし、当面、産業振興策で跡地を当てにするようなやり方は難しいだろう。10年後には自分も年を取っている。待っていられない。産業振興については例えば、地元出身の若い人が、小規模でもいいからネットワークを作り、それを活かした起業を地元に帰ってするとか、そういうことの積み重ねが良いのではないのか?」と、跡地利用については、産業振興への過度の期待を戒めるご意見でした。

いずれにせよ、呉製鉄所跡地を産業振興に直ちに結びつけるような条件はないと感じました。

呉市史を手に筆者に説明される藤川清明さん(右)

◆日本・広島の野球興隆の地・旧呉工廠

呉駅前で印鑑会社を経営されている藤川清明さんは「製鉄所の廃止はショックだし、残念、一方で感慨深い」とのことです。

藤川さんは祖父の住田喜作さんが弟とともに製鉄所の前身の呉工廠水雷部で魚雷製造に携わっておられました。

「日清戦争中の1895年から第二次世界大戦直前の1940年の45年間、職工として勤め上げ、その間、仕事を頑張って海軍から東京での研修、さらには英国への留学もさせてもらった」とのことです。

旧海軍呉工廠は、大まかに言って造船を行う部門と、大砲や魚雷など兵器を作る部門(その中には鉄をつくる部門もあった)があり、喜作さんは兵器をつくる部門で仕事をされ、その場所は空襲で焼けた後、戦後には製鉄所になったからです。

また、戦前の呉工廠ではクラブ活動が盛んだったとのことです。野球部も工廠の各部門に5つもあったそうです。喜作さんが実は、工場内で野球を普及する中心だったとのことです。そして、喜作さんは従業員の子どもさんの間にも少年野球を普及させたとのことです。

タイガースの「代打ワシ」で有名な藤村冨美男。ミスターホークスの名投手・鶴岡一人。また、ジャイアンツで活躍し、引退後は、アンチ読売に燃えてカープやスワローズ、ライオンズの基礎を作った名遊撃手・広岡達朗らを呉は輩出しています。

喜作さんのような存在は、あまり表には出てこなかった歴史ですが、呉市史にそうした喜作さんの活躍が出ているそうです。

◆呉工廠~空襲~製鉄所を知りつくす佐藤康則さん

筆者ら広島瀬戸内新聞取材班にパワポで講義される佐藤康則さん

そして、呉工廠の学徒動員の生存者である佐藤康則さんにもお話を伺うことができました。(以下、同姓の筆者自身との混同を避けるため、康則さんと表記します。)

康則さんに造船所や製鉄所を見下ろすルートでご説明をいただいた後、ご自宅でパワーポイントによるお話を伺いました。

康則さんは、戦前からご家族で呉工廠を見下ろす場所に住んでおられました。呉第二中学校時代に動員され、3年生の時、1945年6月22日の空襲を体験したそうです。

1945年6月22日、海軍呉工廠に米軍のB29が「最初は蚊のような感じ」で現れ(小さな機影とブーンという音)たが、それがだんだん、「エンジンを4つ持った大型のB29」であることがわかったと康則さんは振り返ります。

B29は写真の赤の点線で囲んだ場所をピンポイントで攻撃

B29は右の写真の赤の点線で囲んだ場所をピンポイントで攻撃。このため、工場近くの康則さんの自宅も焼け残ったそうです。

康則さんは「大砲などを作っている部署は破壊しつつ、造船を行う部署は米軍が戦後に使うつもりだったのでは?」と推測しています。

康則さんは防空壕に避難して助かりました。小1時間続いた空襲が終わった後、外へ出てみると、女子挺身隊員が避難していた防空壕が水没してしまい、多数の隊員が溺れてしまいました。教官の指示で、ダメだろうと思いつつも女子挺身隊員らを引き上げて人工呼吸をしたが、もちろん、ほとんど助からなかったそうです。そして遺体は、トラックからはみ出て足が垂れ下がっていたのが印象に残ったそうです。

一方、そのころ、康則さんのお父さんはフィリピンの第103海軍工作所に赴任後、行方不明になりました。

フィリピンを攻め落とした日本軍は米軍基地をそのまま接収して、海軍工作所をつくりました。しかし、1944年12月に米軍の反攻により、逃避を余儀なくされました。だが、康則さんのお父さんは怪我をして山岳地帯でおそらく亡くなったのだろうとのことです。康則さん自身も戦後、何度も遺骨収集に行かれたそうです。

そうしたことから康則さんは、戦後は進学を勧められるも辞退し、英国軍でバイトをしたそうです。とかく、進駐軍と言えば米軍と決めつけがちです。しかし、呉は英国軍の管轄だったのです。康則さんは中学時代に学んだ英語を活かしてイギリス軍で5年間バイトした後、第二種大型免許を取得。日新製鋼に入社し、定年まで勤め上げられました。

退職後もパソコンの職業訓練を受け、その経験を活かし、92歳の現在もご自分でパワーポイントを使ったご講演をされるなど大活躍です。

康則さんには、製鉄所のみならず、旧海軍工廠全体を山の上からご説明いただいております。

戦艦大和も造った造船部門は当時を基本的に残したまま石川島播磨重工業を経由してジャパンマリンユナイテッドの造船所になっています。

戦前・戦中に兵器やその材料の鉄を作っていた区域は6月22日の空襲で完全に破壊されました。そこに1951年、日新製鋼が誘致され、2023年9月まで稼働していました。現在、解体作業が始まっています。

そこで、康則さんはずっと働いておられたわけです。英軍バイト時代を除き、戦中・戦後を通じて同じところで働いておられたわけです。正に生き字引です。康則さん、ありがとうございました。

[左]ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の造船所。[中央]解体作業が始まった日新製鋼跡地。[右]佐藤康則さん(右)と筆者

筆者

この日は取材終了後、呉駅前でれいわ新選組・チーム広島の皆様とともに街宣を行いました。

筆者は外遊中の広島県の湯崎知事について「日本酒やカキの売り込みにフランスに行っているというが、三原産廃処分場から出ている汚染水は川や海へ流れ込む。これを放置していては意味がないのではないか?」と指摘。

また、「最近の湯崎さんは、県民の声を全く聴かないで大型事業を進めている。平川理恵教育長は、非正規の先生の待遇改善などを放置してお友達の企業やNPO、赤木かん子さんらを儲けさせてきた。」

「知事は、新たに大学を造ったが定員割れを起こしている。こんなことなら兵庫県のように既存の県立大学の学費を無料にした方が良かった」と批判。

「知事や教育長が好き放題している広島県政をあなたの手に取りもどすヒロシマ庶民革命を!」などとボルテージを上げました。

一方で「地方の庶民に最も優しい政策を打ち出しているのがれいわ新選組だ。国政では応援している。」と紹介しました。

また、パレスチナ情勢に関して「ハマスの行動は国際人道法に違反しているが根本にはイスラエルによる入植など、これまでのパレスチナへの侵略がある。まずは戦闘を止め、人道危機を回避すること、イスラエルに侵略を止めさせることだ。」

「欧米はイスラエルべったりで、イスラエルのネタニヤフ首相の暴走を加速してしまっているが、日本がこういう時に欧米にブレーキをかけないといけない。」
とボルテージを上げました。

広島瀬戸内新聞は呉製鉄所廃止を受けて呉市民の皆様に取材をさせていただいています。

090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp までご意見や情報をお寄せください。

あらゆる世代のいろいろな方のあらゆる角度からのご意見や情報をお待ちしております。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

2023年10月22日執行の宮城県議会議員選挙で村井嘉浩知事の与党(自民+公明)が後退し、公認では過半数割れしました。

自民 24(-6)
公明 4(+1)
立憲 10(+1)
共産 5(±0)
維新2(+2)
無所属 14(+3)

宮城県議選は定数59。無所属で自民党系の方もおられるので、最終的には過半数を確保の見込みですが、それでも「知事与党」(本来こういう言い方はおかしいのですが)としては議席減です。格闘技に喩えれば「KO負け」とまでいかずとも「判定負け」というべきところでしょう。

なお、宮城でも自民党や岸田総理への批判も強いということはうかがっています。ただし、国政選挙でも地方選挙でも候補者として闘った経験のある筆者から見て、地方選挙の場合、そこまで中央の情勢が響くとは思えません。

地方議員選挙では、組織がガチガチの公明党や一部ベテラン自民議員を除くと、ローカルな風の方をうまく取り込んだ候補者が票を伸ばす、というのを感じます。

今回は、やはり村井知事への逆風というのが結構あったと思われます。特に維新は、自民党の後退に乗じて議席を増やした形ではないでしょうか?実際に、維新の当選者二人は仙台市内の選挙区で自民現職を打倒する形で当選されています。村井知事に批判的な保守層で、維新に投票された方も多いのではないでしょうか?

この場合、維新が大阪で新自由主義であるとかそういうことはあまり考慮されていないと思われます。ただ、立憲や共産にも投票をちゅうちょした「知事に批判的な保守層」が維新に投票した可能性が考えられます。

村井嘉浩知事は、2005年初当選の現在5期目です。

・東北労災病院(仙台市青葉区)が県立精神医療センター(名取市)と合築されて富谷市に移転。
・県立がんセンター(名取市)は仙台赤十字病院(仙台市太白区)と統合し、名取市に移転。
という病院の統廃合計画を推進しておられます。

この結果、仙台市から2つの大きな病院がなくなることになります。これは、特に仙台市長を筆頭に、仙台市民の大きな反発を招いています。

ちなみに仙台市内の二つの区、すなわち青葉区、泉区で自民党現職が維新新人に打倒される結果になっています。

◆維新顔負け!コンセッション方式での水道民営化も全国初の強行

村井知事は、ここまで、2022年度からの水道民営化を全国初で強行しました。フランス系ヴェオリア・ジェネッツを中心とする企業にコンセッション方式で20年間の水道事業の運営を譲渡しています。

維新顔負けの新自由主義「過激派」です。2021年7月の県議会での議案採決においても知事与党の自民党からも棄権者が二人出ました。コンセッション導入から数年は能力のある職員がいて、企業の業務が適正かを監督できるし、災害時には現場で対応することもできますが、20年後には県側にノウハウを持つ職員は消えている可能性が高いのです。その時になって何かあっても遅いのです。こうした懸念から、採決自体はきわどいものになったのです。

ちなみに、コンセッション方式については維新=松井一郎・大阪市長(当時)でさえも断念し、業務の一部の民間委託にとどめています。

◆チリの独裁者兼ネオリベのパイオニア=ピノチェトとそっくり

独裁的な手法で新自由主義過激派と言えば、歴史上、思い出される人物がいます。チリの独裁者・故アウグストゥス・ピノチェト元被告人(1915-2006,大統領在任1974-1990)です。

米国CIAの手先だったピノチェトは1973年9月11日、合法的に選ばれた左派のアジェンデ政権をクーデターで打倒。アジェンデ派を虐殺。独裁を敷く一方で、経済政策面では村井知事や湯崎知事のような新自由主義政策を進めました。いや、ピノチェトこそが現実に新自由主義のパイオニアと言えるでしょう。1973年と言えば、まだ新自由主義を主要国で初めて導入した英国のサッチャー首相すら登場していません。米国のレーガン大統領や日本の中曽根首相はもっと後です。

その結果、一時は「チリの奇跡」と言われる成長を成し遂げたとされていますが実際には、チリの特産品である銅の国際価格の上昇という幸運に恵まれたことが大きかったのです。

しかも、通算での平均の経済成長率は、クーデター前のチリの平均経済成長率を下回るという有様でした。

村井知事は弾圧こそしてはいませんが(日本国憲法のもとで、できませんが)県民の声を無視して暴走し、全国の新自由主義を走るという意味ではピノチェトそっくりです。

その村井知事の大親友が、我らが広島県の湯崎英彦知事です。湯崎知事は2009年11月に初当選。湯崎知事も、1300-1400億円をかけて県病院やJR病院をなくして、新巨大病院を作る構想を強行しようとしています。経営に問題がない公立病院を潰すというのは、全国にも例がないそうです。湯崎知事はある意味、維新はもちろん、村井知事も真っ青のネオリベ政治家です。

さらに、農業ジーンバンクを一方的に廃止するなど、県民の声を聴かずに新自由主義政策を進めています。

村井知事と湯崎知事は、「宮城・広島両県知事会議」を毎年のように開催されています。

ガッチリ握手する村井・宮城県知事と湯崎・広島県知事

令和4年度 宮城・広島両県知事会議を開催しました – 宮城県公式ウェブサイト (pref.miyagi.jp)

宮城・広島両県知事会議を開催しました(平成27年5月25日)

もちろん、広島県と宮城県は共通点もたくさんあります。地方の中枢都市であること、人口規模や産業構造が似ていることなどです。広島カープと東北楽天ゴールデンイーグルスという地域に愛されている球団もあります。札仙広福と呼ばれる中で、仙台と広島はやや苦戦をしているという点も共通します。

そういう中で連携をしていくこと自体には異論はありません。しかし、問題は両者がまるで歩調をそろえるように全国の自治体でも突出したネオリベ政策を進めていること。そして、県民の意見を聴かずに暴走していることです。

今回の宮城県議会議員選挙で村井知事の与党が後退したのはその点では県民の良識が発揮されたというべきでしょう。

◆2025年秋、宮城でも広島でも知事選挙!同時「庶民革命」で両知事にストップを!

そして、2025年秋、広島県でも宮城県でも両知事選挙が実施されます。県民を無視して暴走する両知事にストップをかけるチャンスです。

宮城県民の手に宮城県を村井知事から取り戻す「庶民革命」については、宮城県民の皆様にお任せします。

筆者と広島瀬戸内新聞は「我こそは庶民派広島県知事」に、「我こそは庶民派広島県議」に、という方のご連絡をお待ちしております。「ヒロシマ庶民革命」を断行し、暴走する湯崎英彦知事から広島をあなたの手に取りもどしましょう!

◎連絡先 090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

広島県の湯崎英彦知事は広島カープがレギュラーシーズンで苦手としていたベイスターズを打倒したCSファーストステージ(14日、15日)で県内が盛り上がっていた10月13日から17日の日程で、フランスを訪問しました。ワインの即売会でカキや日本酒を売り込む、ということでした。

 

湯崎英彦広島県知事の2023年度外遊

それにしても、今年はやけに、知事はたくさん外国に行かれています。それもそのはずです。今回で6か所目の外遊だからです。

湯崎知事は、4月と8月に観光PRで台湾へ行かれています。また7月には友好連携先のハワイ、そしてNPT第一回準備会合のためウィーンへ。6月には英国に政務と公務を兼ねて訪問。そして、今回の訪仏に加え、今後、米国訪問も予定されているとのことです。

核兵器廃絶のためのNPT準備会合出席は、核兵器廃絶のためであって費用対効果を云々する性質のものではないでしょう。しかし、観光PRなり、商品のセールスに知事がわざわざ向かうことにどれだけの効果があるのでしょうか?今は、円安で渡航費も膨らんでいる折です。これまでに3000万円を使っています。

◆県民の声を聴かなくなった知事 外国ばかり行ってどうする?!

また、そもそも、知事は外務大臣ではありません。海外へ行く前に、知事として県民の声をもっと聴くことに時間を充てられたらいかがでしょうか? いま、湯崎知事の県政、そして知事が進める政策には、住民の声や社会的ニーズが全く反映されていないためにうまくいっていないのでは?と思われることがたくさんあります。
そもそも、知事は一期目(2009~2013)には【湯崎英彦の宝さがし】と銘打って、県内全市町を回って住民と対話を直接されていました。あのころの知事の産業政策にはそれなりに地に足についたものがあったように記憶しています。

また、福山市鞆の浦で地域を二分していた、埋め立て架橋問題では、賛成・反対両派の住民の対話集会を実施。『渋滞をなくす』という共通目標を達成するためにどうすればいいか、合意形成に務められました。

その結果、景観を壊す鞆の浦埋め立てではなく、山側にトンネルを掘って通過交通を捌く方向に落ち着いたのです。

筆者も、一期目にされたような対話重視の県政を期待して2009年の湯崎さんの最初の選挙では湯崎さんに一票を投じました。しかし、今となっては『湯崎英彦!俺の一票を返せ』とは言わぬが『打倒するしかない』という気持ちでいっぱいです。
以下に湯崎さんが早急に県民の声を聴くべき課題を目につくだけでも挙げます。

◆三原産廃問題、放置したままではカキにも日本酒にも打撃

 

原告団共同代表の岡田和樹様SNSより

三原市では湯崎知事が許可し、2022年秋から稼働を開始した本郷産廃処分場(JAB協同組合)から2023年6月以降、BODなどが基準値を上回る汚染水が流出。2023年10月現在も日中こそ流出は止まっていますが、早朝や夜間にはまだ出続けています。

周辺住民は田んぼに水を引くこともままならず、苦しんでいます。そして、この間、7月4日には、広島地裁は知事に対して産廃処分場への設置許可を取り消すよう命じています。しかし、知事は、控訴した上で、汚染水に何の実効性ある対策も取ろうとしないばかりか、住民たちの面会要請も無視しています。

知事! このまま汚染水が川や海に流れ込み続けば日本酒やカキにも悪影響が出ますよ?! 知事は、フランスに日本酒やカキの売り込みに行く前に、三原市民にお会いになり、現状把握をされるべきです。

 

湯崎知事が肝いりで進めている県病院

◆住民無視で暴走する県病院廃止

湯崎知事が肝いりで進めている県病院や中電病院、JR病院を廃止して新巨大病院を建設する構想。1300~1400億円かかるというのに試算根拠は不明です。そもそも、計画段階で県病院が地元から消えてしまう南区や、宇品港経由で県病院を利用してきた島しょ部の住民の意見を聞いた形跡もありません。一方的な説明会をしたうえで、補正予算案を知事に批判的な議員が少ないことをいいことにごり押ししました。

◆県庁から徒歩圏内でも課題山積

県庁から徒歩圏内でも課題は山積しています。県庁から北東へ徒歩ですぐの公立大学法人・叡啓大学も知事肝いり事業。入学者が定員割れするという惨状です。つくるだけつくっておいて、放置でいいのですか?きちんとチェックされないのですか?

高速道路5号線二葉山トンネル問題。県庁から歩いても30分程度の東区二葉の里がトンネルのスタート地点です。工期が2028年度まで延長する上、予算もまた30億円増額の1289億円に。シールドマシンも何度も壊れ、遅々として工事が進まず、工事現場の真上ではひび割れなどの被害も続いています。「住民を犠牲にして工事を進めることはない」と約束したのが湯崎知事でした。いったいどうなっているのですか?

また、県庁から徒歩圏内の小学校で、プールが壊れて、バスで他の学校へプールの授業を受けに行くという学校もあります。小学校は市教委の管轄とはいえ、財政支援などの面で県ができることもあるでしょう。

湯崎知事。フランスに行っている時間があるなら、県庁周辺を歩いて県民の声を聞かれたらいかがでしょうか?

◆県民をなめている湯崎知事・岸田総理から政治を取り戻すヒロシマ庶民革命を!

広島県選出の岸田総理についても、「外遊が多い一方で、庶民の声を全く聴かないのでは?」と、全国の皆様から批判が出ています。大変悔しいことです。広島県民が知事や総理と言った政治家に完全に舐められています。広島県民の手に政治を取り戻すことが今こそ大事ではないでしょうか?

筆者は我こそは庶民派広島県知事に、我こそは庶民派広島県議に、という方のご連絡をお待ちしております。ヒロシマ庶民革命で知事から広島の政治・行政をあなたの手に取りもどしましょう!

連絡先 090-3171-4437、hiroseto2004@yahoo.co.jp

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

「県病院問題を考える会」(代表代行・有田優子広島市議)の第一回学習会が10月9日(月)、広島南区民文化センターで行われ、福島みずほ参院議員が「地域の病院をみんなの力で残す」と題して講演しました。

広島県の湯崎知事が、地元住民の声も聴かず、積算根拠も不明確なまま、県病院(広島市南区)を含む病院の統廃合と巨大病院(広島駅新幹線口に予定)建設案を9月県議会に提出し、保守の一部と共産党は反対したものの、可決されてしまった中で行われました。

福島議員と筆者は大学の先輩・後輩です。福島議員がわたしの大学3年の1997年秋にOGとして母校に講演に来られたとき以来、半世紀以上交流させていただいています

福島議員は、全国を回り、公立病院の統廃合問題について情報を収集しておられます。また、厚生労働省や総務省に直接見解を問いただしておられます。

 

福島みずほ参院議員と筆者

◆社会保障費カットの流れは確かだが

福島議員は、講演の中で、まず、現在、社会保障費とくに医療費抑制と防衛費増大及び、防衛力増強のための積立金計上とセットで進んでいる、また、長年にわたって医療費抑制が進められ、病床数は28年間で36万床減少し、自治体病院は147減少、ICUは444か所減り、保健所は個所数を45%削減するなどの流れがある、と説明。そして2019年には424,のちに436病院を再編統廃合の対象として名指しして撤回していない、2021年には改悪医療法成立で消費税を使って病床削減を行っていると指摘。 

また、公立病院を独立行政法人化した場合、意思決定の迅速化や経営の黒字化、規模拡大によるコスト削減などのメリットはあるが、他方で、不採算部門が切り捨てられる、非公務員化で職員の離職が増える、その結果、人員不足、過重労働になる、議会によるチェック機能が低下するなどの問題点があると専門家への聞き取りを踏まえて指摘。

◆一方的な公的病院廃止の流れでもない

福島議員は、一方で、以下のように一方的に公的病院統廃合が進む情勢ではないことを強調しました。

1、総務省や厚労省は再編リストをつくってはいるが、自分が問いただしたところ、各都道府県に病院を統廃合しろという指示・命令をしているわけではない。国としては、都道府県に対応は任せるが、『統廃合するなら、国がお金は出すよ』というスタンス。強制はしないともいえるし、卑怯ともいえる。

2、他の都道府県では、病院統廃合の事業規模は50億円程度だ。広島県の1300億円~1400億円というのは異常。しかも、国(総務省・厚労省)による再編のリストにも入っていない。また、「(広島の新病院がめざす)1000床にならないと、良い医師の採用ができないということはないのか?」という問いに対して、厚労省は「そんなことはない」という回答をしている。広島県病院は他の地域の再編対象共違い、赤字で成り立たないというわけでもない。それが、他地域との大きな違いだ。

3、民意で病院統廃合をひっくり返すことは可能。徳島県では国立病院機構徳島病院の統廃合を県選出の国会議員への働きかけで阻止した。一時期、県立病院の独法化が検討されていた滋賀県では世論を受けて一応革新系の三日月知事が県立維持を打ち出した。青森県でも県病院と市民病院の統廃合へ前知事が市の意見も聞かずに突っ走っていた。しかし、自民系同士の交代ですが宮下知事に知事がかわったことで、防災対策の面などからも再検討されることになり、暴走にブレーキがかかっている。兵庫県の三田市では病院統廃合撤回を争点に現職市長を無名サラリーマンが打倒。そのほかにも市長の交代で公立病院統廃合を阻止している。

◆涙を誘う「県病院がないと生きていけない」 地元有権者からの手紙

 

有田優子広島市議

南区選出の有田優子市議から新人議員としての議会報告がありました。2歳の時に難病を宣告されて県病院に入院した経験を持ちます。また、衆院選、市議選と選挙活動をする中で、「県病院がないと生きていけない」という地元有権者の声をうかがい、どうしてもその声を政治に届けたいと決意しました。2023年春の市議選でも主に県病院の廃止反対を訴え、所属政党である社民党の基礎票を大きく上回る得票を得ました。

有田市議は広島市議会でも一般質問で30分間のうち10分間を県病院問題に割いたそうです。

県の所轄とはいえ、市民の命にかかわること。しかし、市の答弁は「県の動向を注視する」という主体性のないけんもほろろなものでした。有田市議は今も雨の日も土日も朝から県病院前電停近くに立って街頭演説をして県病院を残せと訴えています。

県病院問題を考える会の黒川事務局次長は「県は独立行政法人化を2025年4月にはしてしまおうとしている。県の責任逃れだ。また、JR西日本から土地を買うために県は180億円もの県費を出すつもりだ。税金の使い道としてどうなのか。経理の透明性はどうなのか。追及していかなければいけない。」と訴え、署名活動や学習会などへの引き続きの取り組みをお願いしました。

滝谷事務局長から最後のあいさつに代えて、「県病院がなければ生きていけない」と有田市議に声をかけてきた方で、現在は県病院に入院中、という方からのお手紙を代読し、有田市議に伝達、出席者の涙を誘いました。

◆浮き彫りになった湯崎知事の異常性、打倒するしかない

福島議員の講演で明らかになったことがあります。それは 別に赤字というわけでもない公立病院を潰すのに1300億~1400億円をかけるということです。こんな例は全国でも他にないということを知り、筆者も質疑応答の中で、「他の問題でも暴走が続く湯崎知事。彼は国以上に新自由主義を進める確信犯だ。広島県民の未来のためにも湯崎知事を打倒するより他ない。」と発言させていただきました。

確かに、国政レベルで医療費抑制の流れはあるし、軍拡を口実にそれが加速する恐れもある。それを阻止するのは総理の地元選挙区有権者としての責任でもあると思います。その上で、広島県の場合は国が名指しをしてもいない県病院を潰そうとしているわけです。

湯崎英彦・広島県知事の突出した異常な新自由主義、庶民斬り捨て政治を正していこうではありませんか。筆者は引き続き、暴走する湯崎知事から広島県政を県民の手に取りもどすヒロシマ庶民革命を呼び掛けています。我こそは広島県知事に!広島県議に!という方のご連絡をお待ちしております。 

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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

広島駅の南北でいま、大規模な再開発が進んでいます。その中で、広島県知事・湯崎英彦さんと広島市長・松井一実さんの暴走が目立ちます。松井市長の暴走は、以前ご紹介した中央図書館の『エールエールA館移転』問題です。

今回取り上げるのは湯崎知事の暴走です。湯崎知事は、広島県立広島病院、JR広島病院、中電病院、広島がん高精度放射線治療センターなどの機能を集約した1000床規模の巨大な新拠点病院建設を計画しています。

こうした中、広島県議会9月定例会は10月2日、212億円の補正予算案を可決しました。この補正予算案には、新拠点病院建設へ向けた予算も含まれています。もちろん、今回の補正予算案で可決されたのは病院建設へ向けた費用のほんの一部です。湯崎知事がすでに発表している基本計画によれば1300-1400億円の総事業費がかかるということです。

[左]広島県立広島病院(いわゆる「県病院」)。[右]JR広島病院。いずれも筆者撮影

◆試算根拠不明、議決に値しないボロボロの議案に賛成した国政与党と立憲

今回の補正予算案に賛成したのは自民党の多数派、公明党、立憲民主党などの県議です。逆に、自民党少数派(自民党広志会)など保守の一部と日本共産党は反対に回りました。広志会の女性県議は反対討論で総事業費の試算根拠が全く示されていないと指摘。これでは賛否の判断のしようがないと切り捨てました。日本共産党も、県病院周辺住民の合意が得られていないことなどから、反対に回りました。

他方で、立憲民主党所属のある県議は「まだまだ見通しが立っていないことや課題も多いことから今後も様々な角度で引き続き議論が必要」と認めながらも、賛成に回ってしまいました。そんなに課題があるなら、知事に顔を洗って出直してもらうべきだったのではないでしょうか? こんな議案に賛成してしまったことについて、立憲広島は恥を知るべきです。

◆『独裁』で突進してきた湯崎知事さえも早くも『逃げ』の態勢

湯崎知事は予算が可決された翌3日の定例会見で「病院の統合も含めた長期的な計画なので、事業や財務の計画には当然さまざまなリスクがある。物価のほか医療制度や技術も変化していくので、常に計画をアップデートして、発表していきたい」とおっしゃいました。

湯崎知事自身も早くも、逃げの態勢に入ったと言わざるを得ません。さまざまなリスク……すなわち、この病院計画案がボロボロであると知事自身が認めたようなものです。『常にアップデートして発表』といえば、いかにも柔軟そうで聞こえはいい。しかし、そもそも、県病院や中電病院など廃止される病院の周辺住民の合意をきちんとり、病院を作るうえで必要な様々なことを住民の意見も聞いて詰めていれば、こんな発言は出てきません。

ここまで湯崎知事の事実上の『独裁』で生煮えの計画をつくる。そんな計画に基づいて、補正予算案を出してしまう。そして、問題点が噴出すれば「常にアップデートします」と聞こえの良い言葉で逃げる羽目になったのではありませんか? そんな知事のいい加減な仕事ぶりにあきれ果てました。

◆リスク・疑問点だらけの計画

知事もお認めになった通り、この病院の計画にはリスクや疑問点が多すぎます。

第一に、新拠点病院はJR広島病院がある地区にできるから、JR広島病院を再利用するかと言えばそうではありません。JR広島病院は新しい建物になって10年もたっていないのに、解体して立体駐車場にするという。あまりにももったいない、と言わざるを得ません。

第二に、この広島駅北口地区は渋滞が慢性化しています。とくに朝夕の通勤時間帯やマツダスタジアムでカープの試合がある前後は酷い渋滞で、歩いた方が早いことがよくあります。筆者と妻が外食をして帰るとき、妻はバスで、筆者は自転車で帰りますが、筆者の方が圧倒的に早く家に到着し、筆者の帰宅を喜ぶ犬の写真を妻に送る余裕があるありさまです。そんな状況で、救急車がうまく病院に到着できるのでしょうか? 外来の患者さんも円滑に来院できるのでしょうか? 命に係わる一刻を争う時にこれはまずいと思われますが、筆者の友人が県の担当部局に問い合わせた時も納得できる回答は得られていません。

第三に、県立広島病院の現在地だと南海トラフ地震の津波のリスクがあると県は主張しますが、広島駅北口とて大差はないのではないでしょうか? 地震動についてはむしろ広島駅北口の方が強いというデータもあります。そもそも、現在地に津波で救急車が到着できないなら、広島駅新幹線口にも到着はできないでしょう。むしろ、何か所かに病院を分散しておいた方が災害時のリスク分散になり良いのではないか?

第四に、新拠点病院では過疎地で医療に従事する若手医師を育成するという。しかし、広島駅という県内でももっとも煌びやかな地域(東京にはもちろん及びませんが)に来たがる若い先生方が、そもそも過疎地に赴任したがるか疑問です。

第五に、県病院の医療スタッフは現在のところ公務員=広島県職員ですが、移転後は独立行政法人になります。この際、身分の不安定化から、今いる医師も、バカバカしくなって、もっと都会の給料が高い病院に流出する危険があるのではないでしょうか?そうなると、湯崎さんが掲げる高度医療の提供も画餅に帰すことになります。また、独立採算制になれば、儲け主義にも結局なりかねません。

第六にそもそも、県病院周辺の住民、あるいは同じく新病院に統合が予定されている舟入市民病院の小児救急周辺の住民の納得は得られていません。県病院が近いから、舟入市民病院が近いから、ということで、医療ケアが必要なご家族を抱える方が家を購入しているケースも多いのです。

◆病院の存続を求める市民団体

こうした中、県立広島病院の存続を求める市民団体「県病院問題を考える会」が3日、県庁で記者会見しました。黒川冨秋事務局次長は、「県病院は長く県民に親しまれてきた病院だ。新しい病院が出来ても地元の人はタクシーなどで通院しなければならず、病気の人には負担が大きい」「県病院を残して今までどおりの医療体制を維持するべきだ」と訴えました。 
その上で、「古い病院を壊すだけではいいものにはならない。お金の使いかたを充実させてほしい」と述べ、湯崎知事が新病院でやるとしている若手医師の育成については広島大学病院との連携を通じて図るべきと指摘しました。『県病院問題を考える会』の連絡先は以下です。 

〒734-0005 広島市南区翠町1丁目10番27号 
電話 082-250-3155 FAX 082-250-3157

ここまでこの問題で独裁的に猪突猛進してきた当の湯崎知事が『柔軟に見直す』と明言せざるを得ない状況です。あきらめずに知事をしっかり監視していきましょう。 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

1944年にナガサキに生まれ、小学校から高校までヒロシマで過ごした著者による「明日へと生きる若い人たち」への物語です。著者は「長崎青海」というペンネームで鹿砦社から松岡社長の編集で「豊かさの扉の向こう側」という本というより小冊子を著したことを契機に、大学非常勤講師や家裁の調停委員なども務めることになり、一念発起。図書館のアルバイト職員から大学に入学して司書資格を取得、修士課程も修了したという努力家でもあります。今回、30年ぶりに松岡社長の編集でまた本書を出されることになったそうです。

◆仲良し小6・4人組を次々襲う悲劇をリアルに描く

 

梓 加依『広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』(鹿砦社)四六判、上製カバー装、本文192ページ+巻頭カラー4ページ、定価1650円(税込み)10月12日発売

原爆投下から12年がたった広島での由美子、和也、進、裕の小学校6年生4人組とその後を描く物語です。

運動能力の高い和也、勉強抜群の進、そして歌がうまい裕。この中で由美子だけは長崎生まれ、大阪経由で広島に引っ越してきたという経歴の持ち主です。絵がうまく、国語は得意だけど、算数は不得手。体が弱く、イントネーションが関西弁だったために、クラスでもからかわれ、進、裕は由美子を庇うけれども、和也は由美子をからかう側という展開があるところまで続きます。しかし、他のクラスの男子が由美子を筆頭にクラスの女子にちょっかいを出してきたのに和也が反撃してヒーローになるという事件を契機に変わってきます。

中学進学を前に、夏休みに四人が将来を話し合う。広大付属(湯崎英彦・広島県知事を輩出するなど現在もトップ進学校)中を志望する進。音大を将来志望するために市外の中学を志望する裕。公立中から卒業後に八百屋を継ぎたい和也。思いもかけず先生から受験を勧められた由美子。

その後、悲劇が次々と襲う。まず、原爆症で和也のお父さんが夏休みの終わりに亡くなり、中学卒業後には家業の八百屋を継ぐという計画が崩れてしまいます。小学校卒業後は八百屋をたたみ、おばさん(広島県廿日市市)の大きな店を継ぐために大学まで行くことになるという怒涛の展開。

ついで、裕が白血病で入院。さらに、由美子によく絵を教えてくれた担任の上内先生も入院。年明けに二人とも亡くなってしまいます。さらに、進の二番目のお母さん(もちろん、被爆者でお父さんの再婚相手)も妊娠したまま自死するという事件が起きてしまう。進はこのため、おばあちゃんの家に行くため広島を離れることになります。

「原爆を落とされた広島は、今まで由美子が想像もしなかった悲しみの街だった」という叙述。その前後に、今までは「ナイト」として由美子をかばってきた裕が亡くなり、同じく「ナイト」だった進が広島から出ていく。そういう状況で和也が由美子の(3人目の)「ナイトになってやる」というところで、小学校生活は終わります。

◆「なんで、こんとに人が死ぬん?」「ヒロシマじゃから」そして「私は死なない!」

由美子は広島市内でも名門とされる進学校の女子中高・N学園に見事に合格し、進学。江波(現中区南部)に引っ越し、和也と一年に一度、夏に会います。

長崎生まれながら、大阪で育ち、他の三人に比べれば広島を良く知らない由美子は和也に、「なんで、こんとに人が死ぬん?」と質問し和也は、「ヒロシマじゃから」と答えます。

物語中で描写されているように、それなりに街が復興している状況にある戦後12年。カープの本拠地、旧広島市民球場もこの年の7月完成しています。そんな状況でも、次々と原爆の影響で子どもも大人も亡くなっていく。子どもも、クラスの友達や先生が亡くなっていく中で、いつ、自分が原爆症を発症してもおかしくない。悲しみだけでなく、自分事である。そういう状況におかれていた。そのことが強く伝わってくるセリフです。

いつしか、高3を迎えた二人。由美子は広島大学を志望し、和也は野球の名門・広商から大阪の有名私大への推薦入学が決まります。それまで二人で毎夏、亡き裕の家を訪ねていましたが、裕のお母さんの申し出で、それもこの年で終わり。

しかし、今度は由美子自身の体調が悪化してしまいます。実は、幼いころに入院経験があり、「18歳まで生きられるかどうか」と宣告されていた由美子。由美子自身が長崎生まれでお母さんは被爆したが由美子は佐世保にいたから被爆していないというのが表向きでした。だが、和也は由美子のお母さんから重大な告白を聞き出してしまう。原爆を受けていることを隠さないといけないのか。差別されないといけないのか。和也の憤りが伝わってきます。和也を見送った後の由美子の「私は死なない!」という決意は泣かせます。

由美子は結局受験せず。和也は大阪の私大へ進学。そして、18歳を超えて19歳になった夏。由美子は通信制の大学、それも和也と同じ大学へ行くことが思いもかけず、決まりますが、また入院してしまいます。そうした中で、和也が帰省して入院中の由美子に再会し、瀬戸内海の島に行って由美子からの手紙に改めて目を通し、「元気になれよ、風になんかなってどこかへ行くなよ」とつぶやき、ハーモニカを吹き始めたところで物語は終わります。

◆大人にこそ読んでほしい

「戦後80年に届く日が来た。でも、地球から核の脅威はなくならない。戦争もなくならない。風よ、届けてほしい。被爆地ヒロシマから世界中の子どもたちへ。この80年前の物語が、子どもたちの未来、いいえ、近い将来の物語にならないように。」

筆者もその思いを心から共有しました。まさにそれぞれの人生のある一人一人が、放射能によって命を奪われていく悲惨さ。被爆しているというと差別される理不尽さ。そのリアルを伝えていく必要があります。

それとともに、この本は、子どもたちだけでなく、特にこれから将来、各国を指導していくことになる若手政治家ら大人にも読んでいただきたいものだと痛感しました。この本の著者も「世界中のおとなたちへのお願いです。どぞ、これからも放射能によって子どもたちを死へと向かわせないでください。おとなの責任を子どもたちに背負わせないでください。」とあとがきで述べておられます。

本書は、『はだしのゲン』など従来の本と比べれば具体的な被爆シーンなどはなく、ソフトな描き方ではありますが、人が次々と亡くなっていくという恐怖、そして、それが自分自身もそうなるかもしれないとずっと背負い続ける恐怖。これらをリアルに描き出すことに成功しています。はだしのゲンなど従来の本は大事にしつつ、本書も広げていきたい。

被爆から78年たった今となっては、大人も広島でこういうことがあったことを、頭では勉強していても、きちんと認識している人は少ないと思われるからです。

それも広島においてさえも、です。和也君や裕君の家だったと思われる場所周辺(下写真=広島市南区的場町)。でも原爆からの復興で建てられた建物はもちろん、その後建て替えられたモダンなビルもまた壊され、ポストモダンな高層建築物がニョキニョキとそびえています。ついつい忘れてしまうことがある。だけど、忘れてはいけないことがある。筆者自身には子どもはいませんが、その分、周りの大人に伝えていきたいと思います。

和也君や裕君の家だったと思われる場所周辺(広島市南区的場町で筆者撮影)

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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

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広島県議会は10月2日閉会の9月定例議会で「二葉山トンネル」(1.5km)を含む広島高速道路5号線(4.0km)の変更案を可決しました。

変更案の概要は、広島高速道路公社(広島県と広島市の折半出資)が事業主体の高速道路5号線について、
・完成時期は2028年度、供用時期は2029年度に先送りする
・総費用を30億円アップの1289億円とする
というものです。


◎[参考動画]広島高速5号線 事業費30億円増 完成も計画より4年遅れ(RCC NEWS DIG 2023/09/15)

◆費用便益比は『1』に限りなく近く『首の皮一枚』

 

高速道路5号線の工事現場。高架部分は完成も奥のトンネルが完成のめど立たず。広島市東区の筆者の自宅近くで筆者撮影

道路などの公共事業を行う際、費用便益分析、俗にいうコスパの分析を行います。費用で便益を割った比率である費用便益比が1を超えればその事業はやった方が良い、1を割ればやらないほうが良いという結論になります。今回の総費用のアップを込みにした場合、高速道路5号線は「ギリギリやった方がいい」事業ということに転落します。しかも、今後、例えば今夏も二度起きたようなシールドマシン故障などが起きて工期が延びるなどして、費用がさらにかさめば、コスパが悪くて『やらないほうがいい』事業になってしまいます。

◆広島空港への定時性確保も、岩国錦帯橋空港ができた今となっては……

もちろん、広島市中心部者ら広島空港へ車で向かう際、渋滞で定時性が確保できない現状はあります。『空港アクセスの定時性確保』は、高速道路5号線建設の大義名分でした。だが、そもそも、広島空港の場所が広島から50km以上も東という遠方で近くに駅もないのです。

同じように札仙広福と呼ばれる福岡市の福岡空港は博多駅から地下鉄で二駅ですから広島空港の不便さは明らかです。しかも、山岳地帯に位置するため、霧などによる欠航も起きやすい。これでは東京に行く時でも新幹線を使うか、広島から電車で40分の岩国駅から徒歩でも行ける岩国錦帯橋空港=米軍岩国基地を使った方がましです。

※参考 https://www.iwakuni-airport.jp/

◆シールドマシンの故障相次ぎ、遅々として進まぬ工事

必要性に疑問派が高まる中で、高速道路5号線のうち、二葉山トンネルの工事は2018年9月からシールド工法で開始しました。しかし、直後の2018年12月にシールドマシンが故障し、工事が中断しています。その後、2019年5月に工事は再開されました。しかし、その後もトラブル続きで、工期が再々延長された2022年7月12日時点でもトンネルの半分程度しか完成していない有様です。また、トンネルの上の東区牛田東地区で地盤の隆起や、それにともなう住宅や構造物のゆがみ、亀裂などが発生しました。

その後、2023年6月末、公社側(広島県と広島市)は、住民側のほとんどがボイコットする中で一方的に説明会(と称するイベント)を行って工事を再開。しかし、8月上旬、9月上旬の2度にわたってシールドマシンが故障する散々な状態です。そこで、今回、工期を2028年度まで延長。予算も30億円アップさせたという案配です。

◆本当に完成するのか?! いら立ち募るばかり

しかし、こんな状態で本当に完成するのか? 心もとないものがあります。

そもそも、このトンネルは1999年に都市計画決定されました。だが、東区福田・馬木地区のトンネル工事で地盤沈下が起きて工事が中止になったことから、二葉山トンネルの地元でも反対運動が盛り上がりました。そして2012年に地盤沈下のリスクが小さいとされるシールド工法に変更。湯崎英彦・広島県知事も「住民を犠牲にして工事を進めることはない」と住民に頭を下げに来られたのです。しかし、ご覧の有様です。

地盤隆起の被害がない地域の住民もいら立ちが募るばかりです。

「いつになったら完成するのか?」

東区の広島駅北口近くに住む50代男性はいらだちを募らせます。同じく東区に居住する筆者自身も、現在トンネルを掘り進んでいる個所からは少し距離があって、被害はないものの、自宅近くで行われている高速道路5号線関連の工事の影響で渋滞が激化。日常生活で迷惑をこうむっています。出勤の時、かなり余裕をもって出たはずなのに、渋滞でバスが全然来ず、ぎりぎりになるなどの事態も頻繁に発生します。

いつまで、この状況が続くのか?勘弁してほしいものです。潔くあきらめるならあきらめる。やるにしても、このままではそのうちまたマシンの故障でコストがかさみ、費用便益比が1を割り込むことも予想されます。完成の見通しがつく工事方法を検討すべきでしょう。正直、シールド工法がダメなら、まだナトム工法の方がまし、という意見の専門家もおられます。

※関連記事:予算超過、工期延長、地盤沈下……「問題のデパート」二葉山トンネル建設をめぐる広島県知事・市長らの無責任に住民の怒り爆発

◆そもそも疑問が多すぎる事業

そもそも、この高速道路5号線事業自体に多くの疑問があります。この事業では、以前にも工事の遅れにともない、工期の延長と予算増額が行われています。そのどさくさにまぎれて、広島から南の呉方面へ高速5号線をつなぐ道も計画に追加で盛り込まれています。いったい、これは何ですか?

広島市中心部からわざわざ北の方へ向かってそれから広島市の南の呉へ向かうという物好きな人がどれだけいるのでしょうか?距離が延びれば、それこそ、CO2排出量も増加します。全く意味不明な事業です。

◆施工業者が県・市を舐め、県・市が県民・市民を舐める構図

施工業者が県・市を舐め、知事・市長が県民・市民を舐め切っている。そんな構図が二葉山トンネルなど高速道路5号線を巡る問題でも見受けられます。

ひとつは、もちろん、産廃問題でも見られるように、湯崎英彦・広島県知事が完全に県民をなめ切っているということです。過去の知事選挙で湯崎さんが圧勝しまくり、県議選でも知事に批判的な議員がほとんど出てこないようでは当然と言えば当然です。

もうひとつは、今の広島県庁にも市役所にもトンネル技術がわかるような専門家の職員がいないということです。筆者が広島県庁に在職した00年代、当時の藤田雄山知事はとにかく職員の採用を極限まで減らし、人を育てるということも一切やりませんでした。市町村合併をどんどんすすめて、そこに仕事を丸投げするから、県には人はいらない、という考え方でした。しかし、現実には、2014年、2018年と大きな災害も発生する、今回のような二葉山トンネルのようなトラブルも発生する、そんな現実があるのです。今の広島県庁は、施工業者に完全に舐められています。

◆あきらめずに湯崎知事を監視し、空港アクセスについて総合的・県民的な議論を

この問題でも、あきらめてしまえば、湯崎知事の思うつぼです。彼は、確かに2012年に「住民を犠牲にして工事を進めることはない」と断言したのです。その言葉に責任を持たせようではありませんか?

そして、次の知事選挙や県議選のときでもまだ、二葉山トンネルは完成していない可能性も高い。筆者は、きちんとトンネルについての技術面の課題も含めた情報公開をすべきと考えます。また、広島空港と空港へのアクセスの在り方(新幹線や岩国錦帯橋空港との役割分担)について県民的な議論を促すべきです。その上で、住民投票で高速道路5号線の在り方を決めることを提案したいと思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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既報の通り、広島市中区の給食会社「ホーユー」が9月初めに経営破綻し、広島県内の高校の寮の給食はもちろん、全国の警察や自衛隊、裁判所などの食堂も停止し大混乱になりました。ホーユーは破産の手続きを開始しています。


◎[参考動画]【給食停止】ホーユー他社と比べて明らかに低価格を提示していた(HOME広島ニュース 2023/09/08)

その後、広島県内では西条農業高校と西城紫水高校の2つの高校については、新しい業者との契約により、給食再開のめどが立ちました(2023年9月27日現在)。

一方で、他の高校については、ホーユーが各校の調理場に残した大型冷蔵庫の撤去のめどが立たず、そのことが給食再開の妨げになっていました。しかし、ホーユーの破産管財人との話し合いで移動のめどはついたそうです。

◆ホーユーの40分の1以下で落札した業者が過去に!

こうした中、新たな事実が発覚しました。ホーユーが2022年度から3年間1500万円で給食事業を受託していた西条農業高校。わたしの義父の出身校でもあるのですが、同校の給食を別の会社が2019年度から2021年度の3年間、なんとたった36万円で受託していたというのです。ホーユーの40分の1以下という目の玉が飛び出るような安い価格でした。

ちなみに、ホーユーは三次高校など4校をまとめて1800万円で受託しています。4校に一人づつ調理員を置いたとして、一校あたり3年間で450万円。一年間で150万円。これも朝昼晩の食事を提供するには安すぎます。朝昼晩、おそらく合計で6時間くらいは労働する調理員。長期休暇を除いて300日稼働としても、1800時間。これでは、最低賃金を割ってしまいます。しかも、経費は給料以外にも光熱水費もかかわるわけです。とんでもない低価格だったのは事実です。

しかし、この三次高校など4校におけるホーユーとくらべても12分の1以下という安さです。報道によると同社は広島県内での実績作りのため落札し、赤字は他の事業で穴埋めした。また、予定価格を大幅に下回るような価格で入札した場合、広島県の制度がどう機能するか、すなわち広島県・県教委がどういう反応をするかを試したかったという趣旨のコメントをされているようです。広島県も舐められたものです。

◆県は被害者面できるのか?!

「給食停止騒動」の発端となった三次高校など4校の場合について、平川理恵教育長や知事与党の県議らは「ホーユーが悪い。県(県教委)も被害者」というニュアンスで発言をしておられました。

とある知事与党の県議は「ホーユーが『べらぼうに安い』価格で落札したのがいけない」と筆者に繰り返しておられました。

「しかし、そんな安い値段で契約したのは県(実務的には県教委、各高校)ですよね?」と筆者が食い下がっても、県には責任がない、という趣旨のことを繰り返されるばかりで取り付く島もありませんでした。

しかし、県は、それこそホーユーより『べらぼうに安い』価格で西条農業高校においては、ホーユーとは別の会社と契約をしていたのです。そして、県議会もそういう状況を是として毎年、湯崎英彦知事が提案した予算案を可決し、決算を認定してきたわけです。

それでよく被害者面ができるな、と筆者は呆れてモノも言えません。

直接的に生徒に迷惑をかけたのはホーユーであるのは事実です。労働者にも給料が行き渡っているという状況でもない。対労働者という意味でもホーユーは加害者だ。しかし、県(湯崎英彦知事、平川教育長、そして議会)もホーユーや、ホーユーよりはるかに安い価格で入札した業者と契約しているのだから、言葉は悪いですが、共同共謀正犯の加害者ではないですか? そう申し上げたいのです。県内の70代の自営業者も『あれはどうみても業者が気の毒だった』とおっしゃいます。

◆やはり最低制限価格制度でないとだめだ

なお、2019年度―2021年度の西条農業高校の給食が36万円で落札された「事件」の際には一応、問題がないかどうか調査はしたそうです。三次など4高校の給食をホーユーが1800万円で落札した時も同様に調査しました。広島県の場合、予定価格の70%を割った場合には調査を行う『低価格入札調査制度』を取っています。しかし、問題なし、ということで、契約をしてしまったのです。調査に当たった県職員=筆者の元同僚の諸君には「君たちの目は節穴か?!」と一喝したい。しかし、西条農業高校の36万円「事件」のあと、一応、同校では価格以外の要素も入札に加味する総合評価落札方式を導入しました。やはり「36万円」は余りに安すぎるということはわかっていたからです。

しかし、それでも不十分でした。一定価格を下回ったら失格にする。そうした「最低制限価格制度」にしないと、結局、ホーユーや、ホーユーの前に西条農業高校で36万円で入札した業者のようなことが起きる。最低制限価格制度にしないということは、県がホーユーのようなことが起きてもかまわないと考えているということです。

筆者が仮に広島県知事であれば最低制限価格制度の導入、さらには公契約条例を断行したいと考えています。また、そもそも、給食調理を外部委託し、さらにそのコストを引き下げてきたことを問題としなければなりません。今回の事件は公共の縮小が招いたのです。財源など、それこそ、この間、問題となってきた平川理恵・県教育長による県外のお友達のNPO法人・企業や赤木かん子氏への異常な優遇を止めれば良いのです。


◎[参考動画]【リストを調査】公立小図書館の「必備図書」にある著書が1割を占める 専門家は「特定の著者に偏ることには疑問がある」(2023/03/14 HOME広島ニュース)

◆もっと「食」に重きを置く日本、広島へ議論深めよ

岸田総理におかれても、ホーユー破産で自衛隊の食堂が止まったことに危機感を感じていただきたい。高いミサイルばかり買ってメシがない、など全くシャレになっていません。犠牲者の多くが戦病死という名の餓死者だった第二次世界大戦の教訓も全く生きていないと言わざるを得ません。

また、一方で、食材費の値上がりというホーユー倒産の引き金については、これは日本の30%台、広島の21%という異常な食料自給率の低さも背景にあります。コスト削減のあまり食を軽視してきた日本、そして広島の政治の在り方。このことも国民的、県民的に議論を深めていかなければならないのではないでしょうか?


◎[参考動画]広島瀬戸内新聞ニュース号外9月27日号 ホーユーの40分の1以下で給食を落札した業者がいた!(2023/09/27 さとうしゅういち)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

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