平和都市・広島の玄関口の広島駅。北側の新幹線口側の地区は東区に属し、二葉の里地区と呼ばれ、2018年に広島テレビ本社や広島県警広島東警察署が中区方面から移転するなど、再開発が先行して進みました。

他方で、広島駅南口では2020年3月31日で広島駅ビルASSEが閉館。2025年度完成を目指して新駅ビルが完成予定です。広島電鉄が直接JR広島駅に乗り入れる構造になり、大変便利になります。しかし、この広島駅周辺の再開発事業のうち、「このまま湯崎英彦・広島県知事と松井一実・広島市長による独裁のような形で進めていいのか?」という事業があります。

一つは、広島駅南側のエールエールA館に広島市中央図書館を移転させる事業です。これらの事業に関する補正予算や(不動産取得のための)債務負担行為が、現在開会中の広島県議会と広島市議会の定例会でそれぞれ審議されています。

もう一つは、広島県立広島病院の老朽化を機会に湯崎知事が広島駅北口(新幹線口)に計画している巨大病院です。

議会では知事や市長の与党が圧倒的に多いことから、知事や市長が言うとおりのままの案でこれらの事業が進むことは確実です。今回は、「中央図書館」について取り上げます。

中区の中央公園にある中央図書館

◆本当に駅前で良かったのか? 新中央図書館
 
広島駅南口のエールエールA館(1999年竣工)。第三セクターの広島駅南口開発株式会社(以下、南口開発)が所有し、賃料で運営しています。

このA館には主に福屋デパートが入っています。しかし、営業不振からテナントが撤退。2023年8月31日限りで6-9階のテナントが撤退しています。

テナントが消えれば南口開発の経営は悪化します。そのテナントが消えた空間を市が買い取って老朽化していた中区の中央公園にある中央図書館を入れるというものです。

人を駅前に集め「にぎわい」を創出する。これが、松井市長の口癖です。2022年12月に事実上A館移転を決めた時、市側は「にぎわいづくりだけが目的ではない」と答弁していますが、「にぎわづくり」が重点だということです。

しかし、そもそも、「図書館」と「にぎわい」というのは相反するものです。広島市立の図書館はほかに、各区民文化センターとセットで中区、東区、南区、西区、安佐南区、安佐北区、安芸区、佐伯区に存在します。それらの図書館はもちろん、交通の便は悪くはないが、よくよく注意すると、例えば地域の大型スーパーなどからは少し離れた場所にあります。

それはそうです。本を読んで落ち着いて勉強するのが図書館なのだから。新中央図書館が予定されるエールエール館の周辺には、カラオケボックスや接待を伴う飲食店など(それ自体が悪いとは言いませんが)図書館とは相性が悪い施設が多くあります。

驚くべきことに、松井市長は、当初は、子ども図書館までセットでこのにぎやか、裏を返せば騒がしい場所に移そうとしていたのです。幸い、市民の猛反対で子ども図書館の移転は阻止されました。

◆コストの安さだけで測って良いのか? 文化行政

 

エールエールA館

松井市長は、現在地で図書館を建て替えるよりは、エールエールA館に移動した方が、コストが安い、と主張しておられました。しかし、そもそも、文化行政というものをコストで測りすぎるのはおかしな話です。それこそ、文楽への補助金を削ろうとした大阪維新の橋下徹知事(当時)と同じ発想です。

そもそも、広島市の中央図書館を名乗る以上はむしろ平和行政とセットであるべきだ。平和公園に比較的近い現在地がふさわしいのではないでしょうか?

広島市が行った市民へのアンケート調査でも、現在地での建て替えが多数を占めました。また広島市議会でも2022年度予算の市議会での議決にあたっては、「エールエールA館への移転ありきではない」ことを求める付帯決議が採択されるなどしています。

にもかかわらず、市長は、エールエールA館への移転へ突き進み、既成事実を積み重ねています。

◆広島の〈森友〉疑惑?! 市による買取り価格が9か月で暴騰

さらに、松井市長が主張される唯一といってもいい利点であるコストの面でも、雲行きが怪しくなってきました

市長が2022年12月の時点で発表された案では、図書館移転のためのA館フロアの買取り費用は57億円とのことでした。これは、南口開発側の不動産鑑定人による価格でした。ところが、2023年9月議会に提案された補正予算案・債務負担行為案によると、買取り価格は約72億円。約25%も跳ね上がっていました。これは広島市側の鑑定結果が72億円だったからというものです。売り手の南口開発が高値を吹っかけ、買い手の広島市が値引きを交渉するというのが常識です。ところがそうはなっていない。

南口開発は、そもそも市役所の「えらい人」たちの再就職先です。市役所の先輩たちが苦しい時に市が忖度して高めの買取り価格で助け舟を出した。「広島の森友事件」と思われても仕方がない状況です。

ちなみに、現在地で図書館を建て替えた際のコストは、市によると113.5億円。一方で、A館移転の場合は不動産取得費だけで72億円かかります。

ちなみに、こども図書館移転問題を考える市民の会という市民団体による以下のような分析もありますのでご紹介します。

https://twitter.com/kodomoHiroshima/status/1702894238483288082

上記によると、A館への移転だと総コストは2023年9月の市長案によると121.5億円。現在地建て替えの113.5億円のほうが有利になっています。維持費もA館移転は1.2億円/年で、建替は1億円/年とのことです。耐用年数もA館への移転では40年ですが、建替すれば60年持ちます。

筆者は、文化行政についてコストを測りすぎることは問題だという立場ですが、コストの面でも市長が突き進む道は有利とはいえません。

◆市長が大好きな「にぎわい」、広島市民・県民に元気があってこそ

図書館の問題でもそうですが、松井市長は、口を開けば「にぎわいづくり」とおっしゃいます。そのために、国の支援も得ながら、駅前周辺を含む大型事業を進めておられます。

◎参考 https://www.chugoku-np.co.jp/stp/Edit/saikaihatsu-map/

上記は、民間のものもおおくふくまれますが、一方でそれに伴い道路の整備などが必要なケースも出ています。いずれにしても、広島の街の在り方をどうするか、という観点が抜けているように思えるのです。
いまや、かつては再開発だったが、いまとなっては既存のビルであるエールエールA館でさえも苦戦しているのです。あるいは、比較的新しいそごう新館も閉館するという有様です。

こうした、苦戦の背景には、広島市民はもちろん、福山市や三次市、呉市など県内の他の街から広島に来る人たちの購買力低下が挙げられます。そして、深刻な人口流出があります。

そういう中で、大きな施設を作っても、にぎわいを本当に取り戻せるのでしょうか? 疑わしいものがあります。まずは、県とも連携して、広島市民・県民の暮らしに元気を取り戻すことが大事ではないでしょうか?

◆広島の今後を左右する大型箱物は住民投票も

今後も、箱物の老朽化で、今回の中央図書館や、県が主導する巨大病院のような案件は出てきます。広島の街の在り方を今後、大きく左右します。広島市長や知事の任期は4年ですが、大型箱物は今後何十年と広島に存在します。

そうであるならば、市民的・県民的な議論を経たうえで、設置場所などを住民投票で決める。さらに、設計なども例えば、市民・県民による討論会を経る。こうしたことが必要ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

広島県知事の湯崎英彦さん。平和記念式典での挨拶はそれなりに素晴らしい。県政については詳しく事情をご存じ一部の左翼の方でもすっかり湯崎さんに心酔しておられた方もいらっしゃいます。だが、特に4期目に入り、暴走ぶりは目に余るものがあります。

そして、その弊害がいま、噴出しています。知事が独断で決めたような肝いり事業、そして、肝いり人事の失敗は明らかになりつつあります。そして、それにもかかわらず、ストップがかからない。ここが問題です。特に、「教育」ではそれが目に余ります。米山隆一元新潟県知事の言葉をお借りすれば「万辞に値する」状況です。

◆知事肝いり、平川教育長の醜態

何度もお伝えしていますが、平川理恵・教育長は湯崎知事が2018年に一本釣りしてきた方です。当初は、マスコミも平川教育長を改革者として天まで持ち上げていました。

しかし、現実には、人員不足で苦しんでいる現場をさらに振り回した挙句、京都や大阪の企業・NPO、東京の作家など、お友達のお金儲けのための事業をわざわざつくる(官製談合事件)など、お粗末なものでした。挙句の果てに、ご自身の疑惑調査のために県費で弁護士に大金を支払う始末です。

そもそも、人脈をお金儲けのために使うのは当然である経済界の思考のままのリクルート出身の平川氏を教育長に任命し、数々の不祥事が明らかになった今も罷免しない湯崎知事の責任は重大です。ここまでくると罷免できないのはなにか後ろ暗い理由が知事にあるのではないか?と疑ってしまうほどです。

 

公立大学法人 叡啓大学(日の丸が前に立っているビル)

◆叡啓大学定員割れ

知事肝いり事業の一つが、公立大学法人叡啓大学です。広島駅近くに2021年度に開設されました。同大学は廃校になった私立大学を「居抜き」する形で「22世紀型大学」としてスタートしました。しかし、2023年、設置3年目で入学希望者が定員を割ってしまいました。また、留学生も伸びず、予 定に届きませんでした。

広島県は全国でも最悪クラスの人口流出県です。そもそも、私立大学が廃校になるような状況で、新たに大学をつくっても、その轍を踏むのは目に見えていました。

留学生受け入れと言っても、いまや、世界中に競争相手の大学が多くあります。日本で一定程度、世界の中で地位が確立しているのは東大と京大くらいです。しかも、ご承知の通り、東大も京大も昔に比べればずいぶんとランクは落ちています。そんな状況で留学生を目当てにしても成功しないのは当たり前です。

こうした中、兵庫県が既存の県立大学に 3 年以上住んでいる兵庫県民を対象に大学院まで所得制限なしで完全 無償化をすると発表しました。もちろん、兵庫県の斉藤知事は維新の吉村大阪府知事の元腹心で、新自由主義的な方です。それでも、広島県のように新しい大学をわざわざつくるよりはマシです。

◆中高一貫・叡智学園、いじめ被害者が転校

瀬戸内海に浮かぶ大崎上島には、やはり知事と平川教育長の肝いりで、中高一貫の叡智学園が2019年度から開校しました。グローバルな人材を育てる!という触れ込みでした。

ところが、開口早々、いじめ事件が発生しました。新品の下着を被せられるというひどい事件です。そして、なんと、被害者の方が転校に追い込まれたというのです。

平川教育長は、ハラスメントを許さないということを就任当初おっしゃっていたのにこの有様。しかも、転校したのは被害者。グローバルどころか、日本的な結末です。

そもそも、グローバルな人材育成を公立学校でやるのが妥当なのか? 理念自体は立派だが、それは私立学校か、あるいは国策として国立でやるべき範疇ではないのか?そもそも、グローバルな人材を育成したら、県費で育成した人材が広島から出て行ってしまいますけど、それでいいのでしょうか?

様々な疑問点があったのですが、当時も今も知事に批判的な県議もほとんどいない中、ほぼフリーパスで通ってしまいました。

こんな学校をつくるくらいなら、広島県内では全国同様、正規の先生が足りずに困っているのだから、正規の先生を増やすなどすべきではなかったでしょうか?

「叡智学園や叡啓大学を廃校にし、談合や浪費に明け暮れる平川教育長をクビにして浮いたお金を一般校や小規模校のためにまわすべし」(60代女性)というご意見は正論です。

◆ショボすぎる給食業者支援策

一方、こうした中、既報の通り、給食会社「ホーユー」破綻で広島県立・広島市立高校でも給食が停止し、大混乱となっています。

同社社長の複数のマスコミへのコメントが事実とすれば、広島では給食の落札価格は全国相場の半分だった、とのことです。同社は県などに単価の引き上げを求めたそうですが、けんもほろろな対応だったそうです。

なお、「物価高騰に伴う支援制度を利用すればよかったではないか?」という指摘もありますが県の支援制度を紹介されたそうですが、これは使い物になりません。一食当たり30円の補助です。卵価格を筆頭に原材料がまさに暴騰し、労働者の賃金も引き上げなければならない中で、30円くらい補助されても雀の涙です。従業員に係る負担が増えるだけです。

抜本的に単価を引き上げるとともに、労働者も生活できるような賃金を保障するなど入札制度改革(公契約条例も含めて)をすべきです。そもそも、なんでもかんでも民間委託が正しかったのか?そこの検証が必要です。

◆あきらめず、現知事・無投票県議への対抗馬を ── ヒロシマ庶民革命をいまこそ

こうした 暴走する湯崎知事(と平川教育長)の特に教育行政。県議会もチェック機能を失っている中でどうすればいいのか?

すでに、平川教育長については住民有志が訴訟で無駄遣いをしたお金を県に返すよう求めています。

また、給食停止騒ぎは県議会も直撃しました。なんと県議会も「ホーユー」の運営だったそうです。「ホーユー事件」で自分たちの昼食が消えたことで、議員たちの目も覚めれば、と思います。ガツンと声を上げていくしかない。

その上で、今の湯崎知事の県政を根本から変えることです。知事への庶民派の対抗馬をつくること。そして、県議選でも無投票の選挙区に現職への庶民派の対抗馬を出すことです。

筆者は2025年11月の広島県知事選挙へ向け、「あなたの手に政治を取り戻し、広島の水と食べ物、福祉・介護・医療、教育、住まい、交通、そして働くあなたを守る「ヒロシマ庶民革命」」を呼び掛けています。県民や現場で苦しむ人々を苦しめる湯崎英彦知事と平川理恵教育長から、広島県政を取り戻す。そのために、広島県知事選に手を上げたい方、また広島県議選に手を上げたい方は筆者までご連絡いただければ幸いです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

広島市は9月21日、開会中の広島市議会・9月定例会の一般質問に答える形で「米国政府の原爆投下責任を棚上げする」ことを表明しました。

広島市の松井市長は、G7広島サミット終了後間もない2023年6月29日、議会にかけることもなく、米国政府(ジョー・バイデン大統領、エマニュエル駐日大使)との間で平和記念公園とパールハーバーの姉妹協定を締結してしまいました。このことへの中村孝江議員(安佐南区・日本共産党)による疑問に担当局長が答えたものです。

「原爆投下に関わる米国の責任の議論を現時点で棚上げし、まずは核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会の機運醸成を図っていくために締結した」というのが市の答弁の要旨です。

◆「核使用を繰り返してはならない」どころか「核兵器禁止」が市民社会の趨勢!

「市民社会の機運醸成を図っていく」というのがいかにももっともらしい答弁です。しかし、そもそも、世界の市民社会の大勢は、核兵器の使用を繰り返さないどころか、核兵器の禁止こそ人類が進むべき唯一の道であるという認識の核兵器禁止条約(2017年7月7日採択、2021年1月22日発効)に賛同しているのです。NGOが働きかけてできた条約と言っても過言ではないし、日本など核の傘にある国の多くの市民、自治体なども同条約に賛成しています。そのことを背景に、92か国が同条約に既に署名し、68か国が批准しています。

また、先方の地元自治体のホノルル市は、平和首長会議に参加しています。平和都市首長会議は核兵器禁止条約の推進を求める署名活動を実施しています。 

「まずは核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会の機運醸成を図っていくために締結した」とは何を寝ぼけたことを広島市は言っているのでしょうか?

問題なのは自治体を含む市民社会ではなく、核兵器を使ったことへの反省のない米国政府であり、また核兵器による威嚇を放棄しない米国以外も含む核保有国の為政者です。そして、その反省のない米国政府と姉妹協定を広島市が締結してしまったことが問題なのです。

◆G7広島サミット契機にアメリカ忖度進む

しかし、広島市は決して寝ぼけているわけではないでしょう。むしろ、世界の趨勢は認識しつつも、G7を契機にアメリカのバイデン大統領に忖度していると言わざるを得ません。

まず、広島市では「はだしのゲン」が小学校の教材から、また、第五福竜丸/ビキニ水爆実験が中学校の教材から削除されました。これらについては、通常あるべき市教委内部での議論がすっ飛ばされていることが明らかになっています。はだしのゲンの削除については、一定程度マスコミも批判をしています。しかし、第五福竜丸/ビキニ水爆実験の削除も同様に大問題です。第五福竜丸に触れないで反核・平和について学ぼうとするということは、例えば、徳川家康と彼がやったことを知らないで、江戸時代の歴史を学ぼうとするような間が抜けた話です。また、高校の教材でも、日米の和解を重視するような内容に改変されました。全体としてアメリカに忖度したものと言わざるを得ない。

この問題については様々な論客が様々な検証をしていますが、正直、そんなに難しい話ではないと思います。大筋としては「G7で広島にお見えになるバイデン大統領のお目を汚すようなものは、なくしておこう」という忖度ではないでしょうか?そうでないと、様々な内部での議論をすっ飛ばしての教材の改変ということはあり得ません。

その延長に、「ロシアの核威嚇は怪しからんけど、アメリカなど西側は核を防衛のために持って良いですよ。」という趣旨のG7広島サミットでの「広島ビジョン」があるのではないでしょうか?

さらに、その延長線上に、6月29日の松井市長とエマニュエル駐日米国大使による平和記念公園=広島市とパールハーバー=米国政府の姉妹協定があるわけです。

世界で最初の核兵器使用である米国政府による原爆投下は免責しておかないと、広島ビジョンも正当化できない。そう、岸田総理ら日本政府は考えているでしょう。そして、今までは建前は核兵器を絶対に許さない、という姿勢だった広島市にも日本政府の言うことを聞かせる必要があったわけです。

◆広島市による「米国責任」棚上げで露中朝印パなども図に乗る

だが、世界最初の核兵器の被害者・広島市が米国政府による原爆投下責任を棚上げしてしまったら、ロシアや中国、朝鮮、インド、パキスタン、イスラエルの核軍拡や核使用へのハードルが下がることになるのではないでしょうか?

「実際に使用したアメリカでさえ棚上げしてもらっている。俺たちが威嚇するくらい、何が悪い」とプーチン大統領や習近平国家主席や金正恩総書記やモディ首相やネタニヤフ首相が開き直ったら、広島市はどう責任を取れるのでしょうか?

日清戦争から広島は大日本帝国陸軍の軍都として侵略の拠点となりました。しかし、原爆投下による惨禍、そして日本国憲法の制定、平和記念都市建設法制定のための住民投票を経て、広島は平和都市・ヒロシマとなったはずだった。アジアへの加害責任の反省は不十分で栗原貞子らに批判はされたし、原発製造企業などに支えられた発展であったのも間違いない。それでも、平和都市であったのは間違いない。しかし、G7広島サミットを経て、アメリカの核戦略にお墨付きを与えるHIROSIMAに成り下がろうとしています。さらには、そのことで、他の核保有国や核を保有しようとする国の為政者も図に乗らせかねない有様です。

◆元をたどれば姉妹協定、そしてG7サミットがまずかった

やはり、広島市と米国政府が直接組む平和記念公園とパールハーバーの「姉妹協定」はまずかったと言わざるを得ません(写真、広島市と米国政府の姉妹協定を批判する筆者発行の「広島瀬戸内新聞7月号」)。そして、元をたどれば、5月のG7広島サミットを契機に、こういうことになってしまったのです。

岸田総理はある意味、安倍晋三さん以上に名誉白人志向ともいえます。安倍晋三さんは、政治的には権威主義的なイメージが強い反面、例えばイランや中国などとの関係も意外と重視していました。しかし、岸田総理は、リベラルなイメージとは裏腹に、いわば旧白人帝国主義国家におだてられていい気になっているだけではないか?

もっと踏み込んでいえば、民主主義の名のもとに、日本に核兵器を使ったアメリカに、安倍さん以上にべったりではないのか?

そう思えば、G7広島サミットの結末は見えていたと言わざるを得ません。

 

◆サミットに評価・期待してしまった自民から共産 問われる既成政党の政治センス 
 軍都・廣島から平和都市・ヒロシマへ。そしてサミットを経て、米国忖度のHIROSHIMAへ!

所詮は旧白人帝国主義国家(1945年当時、まだ事実上英国植民地だったカナダは別として)の集まりに過ぎないのがG7ではないでしょうか?それを開いてしまった時点で、広島の歴史的な誤りは決定づけられました。

2023年4月執行の広島県議選では、自民から共産に至る、全ての既成政党の県議が、マスコミや市民団体のアンケートに対して「サミット(開催・誘致)」を「評価・期待」すると言う趣旨の回答をしてしまいました。そして、筆者・さとうしゅういちのみが、あの選挙の候補者では、ほぼ唯一、はっきりとサミット誘致を評価せず、期待せず、のスタンスを掲げていました(写真、「広島瀬戸内新聞」6月号)。(なお、今回の質問をされた日本共産党の中村市議は、サミットに対しては「政治ショーに過ぎない」などと批判的なスタンスの回答をされていました。党内でも見解が分かれているところです。)

 

共産党県議はさすがに広島ビジョン発表の後は、批判に転じましたが、立憲民主党に至っては泉さんが原水爆禁止世界大会へのメッセージでも広島ビジョンを賛美する有様です。広島サミットを評価・期待してしまった、自民から共産に至るすべての既成政党系県議におかれては猛省を求めます。

その上で、きちんとアメリカ政府には謝罪すべきは謝罪していただくよう動くべきです。

今回、広島市の松井市長ご自身ではなく、局長に答弁させたところに、市長の姑息さを感じます。おそらくは、自身が前面に出ずに、部下に答弁をさせるという、「観測気球」的な部分もあるのでしょう。いまこそ、きちんと声を上げて、松井市長に軌道修正を迫りたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区、いわゆる呉製鉄所が9月14日、72年の歴史に幕を下ろしました。既に2021年秋に高炉での生産は停止しており、この日、最後の製品を出荷しました。


◎[参考動画]【日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区】出荷終了 全設備を停止(2023年9月15日広島テレビ)

呉市は特に日露戦争以降、第二次世界大戦までは大日本帝国海軍の軍港都市として栄えました。人口では一時は広島に迫る勢いもありました。皆様もよくご存じの戦艦・大和の母港でもあります。その大和をつくった旧海軍工廠も呉大空襲で大きな被害を受けます。

◆製鉄所は「一応」平和都市としての再出発の象徴

そして、呉は旧軍港市転換法(軍転法)により、一応、平和都市として再出発をします。一応、というのは、戦後も結局、海上自衛隊の呉基地がおかれ、特に2001年の911テロ後のアフガニスタン戦争には、後方支援とはいえ、呉からも補給艦がインド洋に出撃した歴史的な事実があるからです。

旧軍港市転換法は、大日本帝国憲法下の日本において軍港を有していた呉、佐世保、横須賀、舞鶴の「旧軍港四市」を平和産業港湾都市に転換する事により、平和日本実現の理想達成に寄与する事を目的として制定された法律(特別都市建設法)で、軍転法とも呼ばれました。1950年4月に国会可決された後、特定の自治体に対象を限定した法律を作る際には住民投票が必要、という日本国憲法第95条の規定により、各市で住民投票を実施しました。

今でこそ、「特区」制度があり、故・安倍晋三さんら権力者のさじ加減にも左右されていましたが、きちんと法律の形で住民投票を経るというのが「特区」のあるべき本来の姿であることは確認しておきたいものです。その「一応」平和都市の呉の目玉は、旧海軍工廠跡地に誘致した製鉄所でした。

◆1975年頂点に転落、呉と広島の経済

広島県は、1975年に一人当たり県民所得が全国でNO3になりました。いわゆる重厚長大産業を軸に広島が栄えていた時期です。同時に、カープが初優勝し、新幹線もこの年、広島も通るようになったことなどもあって、一番わいた時期でした。


◎[参考動画]1975年 広島カープ初優勝の瞬間(TBSラジオ)

そのころ、県内第三の都市である旧呉市とその後合併された地域を併せた人口は30万人を超えていました。ところが、いわゆる円高不況が襲った1985年頃から人口は右肩下がりの一方で、現在は20万人強まで激減しています。工業から観光都市への転換なども図っているのですが、なかなかうまくいかない状況がありました。2005年には平成の大合併が行われ、旧音戸町、倉橋町、蒲刈町、安浦町、豊浜町、豊町を吸収しました。しかし、吸収された地域は、役所が支所に降格されて不便になるなどの悪影響もあって衰退。

他方で、吸収合併によって旧呉市が栄えているかと言えばそういうこともなく、若い人は旧呉市を飛び越えて、広島市、あるいはさらには東京などに行ってしまう状況があります。実際、筆者の勤務先の介護施設でも呉市出身のご利用者はたくさんおられますが、「息子や娘、孫は東京にいて時々しか見舞いに来られない」という方が多いのです。観光で旧各町の特徴を活かせているかと言えばそういう感じでもなく、むしろ、呉市としてまとまってしまった結果、特徴が失われてしまい、魅力が低下しているようにも思えるのです。

◆広島市民としても呉には踏ん張ってほしい

そこに、呉昭和高校の廃校なども追い打ちをかけ、さらに今回の製鉄所の廃止も大打撃となっています。製鉄所の社員だった人の9割は再就職が決まったとも伝えられています。今の人手不足のご時世です。近隣の東広島市や安芸郡、広島市などへ行けば求人はたくさんあります。1980年代のリストラの時ほどの失業問題はないかもしれない。ただ、今後、若い人がますます流出するのは間違いありません。今の状況だと、筆者が住む広島市に人が来るというよりは、広島市内の大学などを経由して、東京やあるいは海外へ流出する若い方が多いでしょう。そうなると、呉から買い物や遊びに来る人の減少などを通じて、広島市中心部にも大きな打撃になります。ある程度、呉市にも踏ん張ってもらわないといけない。

ただ、このまま、130ヘクタール、マツダスタジアム36個分の土地が浮いたままであることは損失です。もちろん、今の製鉄所解体までには10年かかるそうです。従って、より良い跡地利用策をそれなりにじっくり考える時間はあります。

◆寺田稔議員は病院船誘致というけれど……

 

寺田稔衆院議員と地元自民党県議によるチラシ

バブル経済までなら、テーマパークという手もあったが、テーマパーク自体が呉市で一時期行われて失敗しています。呉ポートピアランドで、既存の廿日市市のナタリーランドと共倒れになり、114億円の負債を残すという有様でした。おそらく、2030年代にそんなテーマパークが採算に合うとも思わない。

また、地元の寺田稔衆院議員と地元自民党県議は、別紙のようなチラシ(写真:筆者の友人宅にポスティングされていたチラシ)を全戸配布しているそうです。すなわち、病院船の拠点に製鉄所跡をする、というのです。ただ、病院船を政府も検討はしているのですが、医療スタッフの確保が現実的には難しいのです。ただでさえ、人手不足の医療業界。正確に言えば、仕事のきつさに給料が見合っていない医療業界。病院船に医療スタッフを確保する余地がどこにあるというのでしょうか?新自由主義が抜けきらないどころかむしろ安倍晋三さんよりも加速しつつある岸田政権では無理でしょう。

一部の市民の間で噂としてささやかれているのは、武器工場です。事実上の先制攻撃も辞さない岸田軍拡の中で、国有の武器工場も可能にする軍需産業支援法が今年できています。総理の地元である広島県内で、しかも大きな土地が空いたということでそのモデルケースという可能性はなきにしもあらず、です。

しかし、旧軍港市転換法(軍転法)で呉は一応、平和都市として再出発したはずです。また、「武器ばかり買っても」「作っても」意味はありません。そもそも、今の日本では近隣で戦争が起きたとたんに食料でもエネルギーでも「詰み」になってしまいます。全力を挙げて、死に物狂いで戦争を止める。そういう外交でないといけない。また、先日は、近隣の江田島に駐屯する自衛隊の給食が「ホーユー」に委託されていたために、同社の破綻で大混乱になってしまいました。岸田総理には武器をつくる前に、自衛隊員の食事をなんとかしろ、と申し上げたい。

◆筆者の案は「再生可能エネルギー」ないし「食料生産」基地

筆者の案は「再生可能エネルギー」の基地ないし「食料生産」の基地です。

2030年代には、今よりもさらに日本は食料やエネルギー事情が苦しくなるのは目に見えています。今までは、日本は食料やエネルギーは金を出して買える状況がありました。ところが、そうではなくなってきた。食料を買う外貨を稼ぐような付加価値の高い産業を育成しておけば良かった、それならば、食料やエネルギーは軽視しても構わないという話も、1990年代~2010年代くらいには横行していました。しかし、ここまで人口が多い国で食料やエネルギーの自給率が低い国というのは他には存在しません。

エネルギーについていえば原発は核のゴミ問題で2030年代には大変なことになっているし、それまでにまた福島のような原発震災の可能性もある。南海トラフだけではなく、伊方原発や島根原発、川内原発などの近傍にも大きな活断層はあります。再生可能エネルギーと蓄電池、スマートグリッドの組み合わせ、という方向しかないと考えられます。

再生可能エネルギーの生産については他の場所でもできるので、港という利点を生かすなら蓄電池の工場とか、あるいは、今後の技術の進歩も踏まえたタンパク質系を軸とした食料生産工場というのが妥当と筆者は考えています。昔は、田んぼや海を埋め立てて食料生産の場を減らしつつ、重化学工業を盛んにしていったわけですが、今は時代状況に合わせてその逆をやればいいのです。

◆民主的議論を経た住民投票で跡地活用策決定を

ともあれ、旧軍港都市転換法という市民の総意で出来た法律で呉市は再出発し、製鉄所もできています。その趣旨と歴史的な経緯を踏まえた跡地利用策であるべきと考えます。10年という解体期間があります。歴史的な転換期にあると考えれば、民主的な議論を経て住民投票でこの製鉄所跡地の利用策を考えるべきでしょう。

そして民間だけでも呉市だけでも、有効な利用策は明らかに無理です。県や国の支援、もっと踏み込んでいえば国の直轄事業でやるべきでしょう。「国の事業を持ってくるしかない。広島の地元財界で新しいことをガンガンやれる人はいない」(県内の企業経営者)「県も市もそこまで力量はない」(元呉市職員)というのが本当のところだと筆者も実感します。

なお、安倍晋三さんや広島県の平川教育長らのような、中途半端に政治家のお友達の民間企業に中抜きさせるような新自由主義政策ではだめです。できれば「軍転法」を活かしたまま「旧重厚長大都市転換法」のような、呉市のような全国の元重厚長大産業都市を円滑に転換させるための特別法をつくったらどうか?

ただ、筆者の上記の考えを実現するには、国の中央レベルでの政権交代が最低必要ですし、新自由主義が酷すぎる広島県知事、呉市長の交代もおそらく必要でしょう。新しい産業への投資に積極的な財政出動をしつつ、専守防衛と平和外交という基本を維持できる勢力への政権交代です。これがなかなか難しいが、10年という期間の間に不可能とは思えません。その意味からもきちんとした議論を地元で行い、呉市民投票ないし広島県民投票を経ての活用策決定を望みます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

2023年9月11日は、アメリカでの同時多発テロ事件から22年。このテロを悪用してアメリカはアフガニスタン、ついでイラクを攻撃。アメリカこそ、核兵器は使わなかったものの、劣化ウラン弾やバンカーバスターなどを使用し、多くの罪のない市民も殺戮しました。そして、もうひとつ、忘れてはいけないのが50年前の1973年9月11日にチリで行ったアメリカ自身による「911テロ」です。

アメリカCIAの手先であったアウグスト・ピノチェト元被告人は、民主的に選ばれたチリのアジェンデ政権を打倒し、多数のアジェンデ支持派を虐殺しました。他方で、日本で言えば竹中平蔵さんや広島県の湯崎英彦知事・平川理恵教育長が進めているような「新自由主義」政治を世界に先駆けて1970年代から実践しました。銅山を除く多くの公営事業を民営化。一時的には「チリの奇跡」と言われたのですが、実際にはGDP成長率の平均値3.7%は、クーデター以前の平均値3.86%を下回ってしまいました。格差も拡大し、今は左派政権が後始末に追われています。

二つのテロの記念日に、筆者は、湯崎英彦知事の新自由主義と岸田総理の原発推進に抗議する行動を行いました。

◆社民党市議とコラボで暴走・湯崎英彦知事を批判

 

県立広島病院

この日の朝は、広島市南区の県立広島病院=県病院周辺で、湯崎県政を批判するチラシを配布。そうこうするうちに、社民党の有田優子市議が、定例の朝の街宣を電停前の空間で行うために見えられました。

有田市議は2023年4月の統一地方選挙の市議選で南区から立候補。湯崎英彦知事が強引に推進する県病院やJR病院、中電病院、舟入病院小児救急などを統合する新病院構想を厳しく批判し、社民党の基礎票を大きく上回る得票で当選されました。

9月8日(金)に湯崎知事が病院の基本構想を発表してから最初の週明けです。1300-1400億円かかかるというこの構想。先端医療や過疎地で働く医師の育成など、夢のような機能を持たせるという。

しかし、本当に湯崎知事が言う通り、新病院に過疎地で働くような若い医師が来るのでしょうか? 広島駅近くという都会を好むタイプの方が過疎地で働くというイメージはない。また、新病院は公立ではなく独法です。先端医療と言っても待遇が不安定化する中で腕の良い医師が来るのかどうか? また、築10年もたっていないJR病院を駐車場に変えるのももったいない。疑問は尽きません。

 

社民党の有田優子市議と筆者

有田市議は出勤途中の病院の医療労働者などに対して、「県病院の統廃合計画。意見を聞いた上で計画をつくるべき。今回も湯崎英彦知事が勝手に発表しているだけで何も本当は決まっていない。あきらめてはいけない。」と訴えました。

マイクを渡された筆者はこの日が、チリで起きた911クーデターから50年だと紹介。ピノチェトの新自由主義独裁政治の概要を説明した上で、

「知事の湯崎さんは、ピノチェトのような虐殺はしていないが、県民の言うことを全く聞かないという意味ではピノチェトとそっくりだ。その上で、ピノチェトが国民向けサービスをカットしたように、湯崎知事も農業ジーンバンクや県立高校をろくに住民の声も聴かずに潰した。ピノチェト同様、削ってはいけないコストを削り、ホーユーのような業者に給食を委託して大騒動になっている。」

「三原の産業廃棄物の問題でもすでに汚染水が出ているのに裁判所の判決や住民の声を無視し動かない。企業ベッタリだ。この地域では県病院の問題でも声を聴かずに暴走し、大変なことになりかねない。」

「わたしは東区民で県病院を潰してできる新病院は近いけど、歓迎はできない。東区は渋滞が常にひどく、救急車をさばききれるか不安だ。」

と湯崎知事の新自由主義政策を激しく批判し、定例県議会を前に湯崎知事へのチェックをするよう県民に呼びかけました。

◆伊方原発のある佐田岬半島の岩盤はひび割れだらけ

筆者はこの後、自転車で中区の広島地裁に移動し、伊方原発広島裁判の口頭弁論に原告として参加しました。

この日は構造地質学、岩石学、岩石年代学者の早坂康隆さんが原告側証人として証言しました。伊方原発のすぐ北側600mの海底にある中央構造線は危険な活断層であること。そして、伊方原発のある佐田岬半島は、岩盤がひび割れだらけの「ダメージゾーン」だと早坂さんは証言しました。四国電力は、「地震を起こすのは伊方原発8km北方の活断層」「伊方原発は岩盤の上にあるから安全だ」と主張してきたのですが、それを覆すものです。

要は、中央構造線自体が、1億年程度活動している日本を大きく分ける壮大なプレートの境界で、いわゆる中央構造線から南側の外帯はかなり南の海上に浮かんでいたそうです。そして、現在では中央構造線を境に伊予灘は沈降するハーフグラーベン構造をしているのですが、中央構造線の南側もそうした地殻変動の力を受けて岩盤が傷んでいるのです。

大浜寿美裁判長は、早坂さんや、早坂さんに質問した原告・被告双方の弁護士に対して細かく発言内容について確認をされていたのが印象的でした。

 

伊方原発広島裁判口頭弁論後の報告会

また、裁判終了後、弁護士会館で早坂さんが出席しての報告会がありました。早坂さんは40年前から伊方原発に関心を持って、伊方原発近くの中央構造線について研究をされておられます。山口地裁岩国支部での裁判にも証人として出廷経験があります。

広島大学で早坂さんは、50年前に提起された伊方原発1号機の許可取り消しを住民が求めた裁判で、裁判所命令での鑑定である越生鑑定書(裁判長交代でなかったことに)を補佐した小島先生の「三波川帯」についての最終講義に感銘を受けられたそうです。越生鑑定書はこんな岩盤がひび割れだらけの場所に伊方原発許可した国に怒りを向けていたそうです。つまり、40年以上前にすでに今回の早坂さんの法廷での証言と同趣旨のものが、裁判所に提出されていたのです。

早坂さんはその後、大学―大学院と古い時代の石の研究に熱中されたそうです。安佐北区では姶良カルデラの火山灰を発見したそうです。花粉分析で天気や季節も分かったそうです。細かいことがわかるのがこの分野の研究の面白さということです。「裁判を闘っている人には失礼だが楽しんで研究」されているそうです。

次回は10月4日(水) 13時半から原告本人尋問です。

 

9月5日から閉鎖中の裁判所の食堂

◆裁判所の食堂も「ホーユー」でした

この日は、裁判所の食堂で昼食にしようと思ったのですが、写真の通り、9月5日から閉鎖中でした。

経営破綻したホーユーがこの裁判所の食堂も運営していたためです。労働者にろくに連絡していないこの会社は大問題です。ですが、他方で、経営が成り立つはずもない価格で県は県内の多くの高校の食堂や議会の食堂を委託していたのです。一定の価格を下回っても失格にするような制度にしていなかった。そんなネオリベ県政に改めて怒りを覚えました。

◆昼休み時間帯に岸田総理の事務所に申し入れ

裁判が昼休みの時間帯、筆者は友人二人とともに、岸田文雄衆院議員事務所に「フクシマ処理汚染水の海洋放出の中止および上関中間貯蔵施設建設を含む原子力政策の抜本的転換を求める要望書」を提出しました。女性スタッフが一人で事務所番をされていたので、あまり突っ込んだやり取りにはなりませんでした。それでも、この日は福山市で市民運動の仲間が処理汚染水放出反対の街宣を実施。また、「韓日市民行進」の皆様が国会前に到着し、請願行動をされました。9月11日という同じ日に、東京と広島、同時多発で総理の核政策に抗議の声を上げることができました。

 2023年9月11日 

衆議院議員 岸田文雄様

衆議院広島県第1区 有権者有志
連絡先 佐藤 周一 
hiroseto2004@yahoo.co.jp
090-3171-4437

フクシマ処理汚染水の海洋放出の中止および
上関中間貯蔵施設建設を含む原子力政策の抜本的転換を求める要望書

内閣総理大臣としての貴職と東京電力は2023年8月24日から東電福島第一原発におけるALPS処理水(処理汚染水)の放出を開始しました。貴職はご自身の政治活動用ポスターで「地域の声で新たな日本へ」で選挙区である広島1区の有権者に呼びかけられています。

しかしながら、福島の漁業者の皆様も納得していない中で福島原発からの処理汚染水を放出した結果、9月8日には差止め裁判が起こされています。「地域の声」を活かすというなら、処理汚染水の海洋放出は中止してください。

そもそも、核燃料に直接触れた水を放出しているのは世界広し、といえども日本だけです。トリチウムだけでなく半減期が100年にも及ぶような他の核種もあり、「ただちには影響」がないにせよ、処理汚染水の放出が長期に渡れば食物連鎖による濃縮は十分に考えられます。

そして、今回の放出には中国だけでなく、マーシャル諸島など過去に大国の核実験で被害を受けた太平洋の島国の議会からも反対の声が上がっています。被爆地、それも爆心地である広島1区を選挙区とする総理が核実験による被爆経験がある国の意見を無下にして良いのでしょうか?

処理汚染水については、モルタル固化や本格的な大型タンクでの保管などの手段を議論しなおしてください。

また、廃炉の在り方も現行のデブリを取り出す方針の是非も含めて議論しなおしてください。

なお、一部中国人によるとみられる過剰な抗議活動は問題ですが、過剰反応しても問題解決にはなりません。威力業務妨害罪などで捜査すべきは捜査するとして、日本は自分自身の課題解決を冷静に考えていくべきです。

また、上関町では、中国電力と関西電力が共同で核のゴミの中間貯蔵施設の調査を8月2日に表明し、上関町長は議会の議決もなしに調査を受け入れました。しかし、周辺自治体の首長からは懸念の声が上がっています。現在、核のゴミの最終処理のやり方も決まっておらず、中間貯蔵は最終貯蔵になりかねません。また、輸送にともなう事故のリスクは上関町だけにとどまらず広島県内も含む周辺自治体に及びます。核物質を拡散することがそもそもリスクです。

そもそも、貴職が制定した自称・GX法により、関西電力が高浜原発など老朽原発を再稼働したことにより、核のゴミが増える見通しとなったことが、自称・中間貯蔵施設計画の背景にあります。そもそも、原発も温排水などの問題があり、本当のGXにはなりません。

貴職におかれては自称・GX法を撤回するとともに、再生可能エネルギー、スマートグリッド、蓄電池など、真のGXへ方向をすべきです。

また、国が国策として原発を推進してきた以上、問題解決を小さな自治体と電力会社に任せずに、国が責任を持つべきです。

よって、以下、要望します。

要望事項

1、東京電力福島第一原発の処理汚染水の海洋放出を中止してください。
2、汚染水を発生させてしまう現状の廃炉方針を根本から見直してください。見直しの期間に発生する汚染水については大型タンクなどで保管し、放出を避けてください。
3、海や魚の放射性物質による汚染状況については、長期にわたりお手盛りでない方法で調査し、公表してください。
4、中国の禁輸に伴う十分な補償を福島だけなく北海道など全国の漁業者に行ってください。
5、核のゴミを増やす自称「GX法」による原発推進政策を撤回してください。
原発は推進した国が責任をもって廃炉し、再生可能エネルギー、蓄電池、スマートグリッドに国として重点を置いてください。
6、広島から82kmしかない上関町への関西電力・中国電力による核のゴミの「中間貯蔵施設」については、上関町だけでなく、影響を受ける地域の住民・首長の声を聴いて対応してください。
7、一部中国人による過剰な抗議活動によるとみられる過剰反応せず、日本自身の課題解決を優先してください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

河井案里さんが当選無効となり、筆者もその再選挙に立候補した参院選広島2019を舞台とした河井夫妻による大買収事件。中国新聞の9月8日付けの報道によると、黒幕はやっぱりこの方でした。そう、故・安倍晋三さんです。

2023年9月8日付け中国新聞

◆「安倍さんから」はリップサービスではなかった!

9月8日、中国新聞が河井克行受刑者の「総理2800、すがっち500、幹事長3300、甘利100」というメモを2020年1月に検察が押収していたことを報道しました。安倍晋三さんら当時の自民党幹部が現金を河井夫妻側に提供していた、ということです。

買収資金の出どころは、政党交付金を原資とする河井案里さん陣営への1.5億円の振り込みなのかどうか、ということも論議を呼びました。しかし、その1.5億円ではなく、現金を政府・自民党幹部からもらった上で、それを買収資金に充てていたことが明らかになったのです。

筆者の知り合いにも「安倍さんから」と言われてお金をもらってしまった議員(その後辞職し、不起訴)もいます。その「安倍さんから」というのはリップサービスではなかったことの傍証に、このメモはなります。

おさらいしますと、参院選広島2019では、改選数2の自民党現職の溝手顕正さん、野党系現職(立憲、国民、社民推薦)の森本しんじさんに対し、自民党が執行部主導で元県議の河井案里さんを擁立しました。案里さんは元々、ご本人も国政への野望は強く、県議としての選挙区であった安佐南区以外でもよく筆者(参院議員か知事を念頭に政治活動をしている)とイベントなどで鉢合わせしました。そのことにも便乗して安倍晋三さんが、個人的なうらみのある溝手さんを落としにかかったというのが地元での大方の見方でした。従って、安倍さんらがお金を克行受刑者に渡したことは全く不思議ではありません。

安倍さんの狙い通り、案里さんが当選し、溝手さんが落選。しかし、ご承知の通り、案里さんは夫の克行受刑者とともに逮捕、有罪となり、当選無効になったわけです。

◆安倍晋三さん暗殺でやっと出てきた?

しかし、なぜ、今頃になって、そんなメモがあったことが明らかになったのでしょうか?もちろん、中国新聞記者の金権腐敗打破へ向けた粘り強い努力があったのは事実です。

しかし、一方で、「安倍晋三さんが亡くなった今だから出せた。」のではないかという疑念がぬぐえないのです。家宅捜索があった2020年1月はまだ安倍晋三さんが現役の総理でした。そして、案里さんが猶予付き有罪判決を2021年1月に受けそれを受け入れて翌月当選無効になった時も、2021年6月に克行受刑者に地裁で実刑判決が出た段階では前総理とは言え、まだ隠然たる影響力を党内で持っていました。

当時は、安倍晋三さんへの忖度が検察にも働いていたのではないか?検察は、安倍晋三さんをお金の原資提供の容疑で調べるべきだったのにしなかったのです。

そして、むしろ、当初は不起訴となったお金を受け取った地方議員らの起訴へエネルギーを割くことになります。2022年1月28日に多くの議員が検察審査会(不起訴処分を不満とする多くの市民の申し立てを受けて)により「起訴相当」になります。この時点でも安倍さんはまだご存命で、もちろん、絶大な影響力をお持ちでした。

◆不自然だった河井夫妻の「潔さ」

もうひとつ、疑問点がありました。河井夫妻が意外とあっさり議員を辞めたことです。2021年初の時点では、正直、案里さんも、克行受刑者も、たとえ地裁で有罪になっても、控訴して、それこそ、最高裁で有罪が確定するまで議員でいて給料をもらい続けるのではないか?という予測が当時は強かったのです。ところが、あっさりと、両者は判決を受け入れたのです。

これは、裁判が長引けば、上記のメモに書かれていたような安倍晋三さんに都合が悪い「余計なこと」を案里さんや克行受刑者もしゃべってしまうリスクがあったからではないのか?

そこで、安倍晋三さんの影響力が強かった自民党中央サイドから「いい加減にしとけよ」という圧力が河井夫妻にあった可能性は否定できません。夫妻の不自然な「潔さ」はその傍証です。

◆検察の忖度が安倍さんの命を奪う皮肉な結果

しかしながら、安倍晋三さんが亡くなられた今となっては、検証は難しくなってしまいました。検察は、2020年1月当時、名前がメモに上がった安倍さんらから事情を聴くことはしませんでした。なぜ、安倍さんの生前に、安倍さんを追及しなかったのでしょうか?イスラエルと比較しても日本の検察の異常さは明らかです。

イスラエルでは、安倍晋三さん同様に政治を私物化していたネタニヤフ被告人が現職総理のまま起訴されています。妻のサラ元受刑者も安倍昭恵さんと似たことをしていましたが、有罪になり、罰金を払っています。

なお、ネタニヤフ被告人はいったん、野党共闘に打倒されましたが、政権を奪還後、イスラエルの司法を、日本のように行政に忖度するようなものに改革しようとしています。日本の司法が悪いお手本になっています。

それはそれとして、日本では憲法上、国務大臣の訴追は総理の同意なしには無理です。安倍さんが自分の起訴に同意することはあり得ませんが、起訴する構えを見せるべきだったのではないか?あるいはひょっとしたら、さすがの日本国民も怒りが爆発し、安倍さんは総理退陣に追い込まれ、退陣後に検察は安倍さんを逮捕できたかもしれません。いずれにせよ悔やまれます。

正直、安倍さんが国葬なんてされる対象ではなかったことがさらに明らかになったでしょう。いや、そもそも、むろん、検察が本気を出して安倍さんを逮捕していれば、山上被告人に暗殺されることもなかったでしょう。安倍さんは刑務所の中の可能性もあるし、出所していても選挙の応援演説なんて誰も頼まないでしょう。

今回の安倍さんが黒幕だったという趣旨の報道を受けて、お金を克行受刑者にもらって辞職した元議員は「悪いことばかりして結局天罰が下ったのではないか?」と吐き捨てました。

◆検察の「暴走」と「不作為」

既報の通り、検察は対地方議員ではこの事件で暴走しました。

当初、検察は、「先生を起訴することはないから」と議員に対して「お金のわいろ性を認める」供述を誘導したのです。また、克行受刑者の裁判に当該議員が証人として出廷するときも、検察に都合のよい証言するよう、口裏合わせをしていたのです。

しかし、お金をもらった側が不起訴になったことに、当然、市民の不満が高まり、検察審査会に申し立てが行われ、起訴相当の議決が出ます。検察もそれを受けて議員を起訴したわけですが、議員は議員で怒るのも当然です。

もちろん、信念があるなら、克行受刑者を起訴するための検察の捜査の段階で、わいろ性を否定する答弁をしておくべきだったということは言えます。自分だけ助かって、克行受刑者を陥れることに検察と共謀したという批判ももちろんあります。こうした議員たちの行動はお金をもらったことも含めて決して褒められたものではありません。だが、検察のやり方は強引でした。

また、当初からわいろ性を認めなかった議員に対しては、お金を政治資金収支報告書に載せないように求めた。そして、そのことを今度はやり玉に挙げて「政治資金収支報告書に載せてないからわいろの認識があった」と主張する。そんなだまし討ちを検察はしています。そして、裁判所も検察の言うことうのみです。

起訴されて、地裁では有罪判決を受け、高裁に上告中のある現職議員は筆者に対して「検察の前では人権がないことがよく分かった。」と憤慨していました。

一方で、当時の安倍総理に対しては忖度していたのです。暴走と不作為。これが検察の問題です。

◆暴走する岸田総理や県知事・市長を救う効果も

さらにうがった見方をすれば、今頃になってこんな情報が出てきたことは、安倍さんが悪であることを今頃になって印象付けて、岸田総理を相対的に持ち上げる、政治的な効果もあるのです。岸田総理がマイナンバーカード問題なども含めてピンチだからこそ、「安倍さんは悪だった」ということで目をそらすことができます。

もうひとつは、今回の事件で起訴された市議や県議の多くが、市議会では松井一実市長、県議会では湯崎英彦知事に批判的な保守系の議員が多かったことです。広島では新自由主義で暴走する市長や知事に対して、立憲民主党の方がべったりの地方議員ばかりです。そして、自民党・保守系の方がむしろ中には批判的な議員もそれなりにおられるという皮肉な状況があります。

例えば中央図書館の強引な移転には、共産党と並んで保守でも克行受刑者からお金をもらった議員が反対している場合が多かったのです。そうした中で、市長や知事に批判的な人が打撃を受けたことで、市長や知事の暴走が加速している感があります。もし、事件がなければ、共産党+一部の保守という構図で暴走を止められた課題もあったかもしれない。しかし、共産党もお金をもらった人とは絶対に組めません。結果として市長や知事の思い通りの展開になります。

いずれにせよ、検察の動きは、結局、総理、知事、市長という時の権力者のためになっている。そのことが、河井事件で改めて見えてきたことではないでしょうか?

袴田事件でも明らかになった検察や司法の在り方の問題。改革は一朝一夕にはいきません。しかし、常に疑いの目を向けていく。このことが大事ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

2023年9月1日、広島市中区に本社のある給食会社「ホーユー」(資本金1000万円、従業員586人うち正社員78人、パート508人[2020年現在]、代表取締役社長=山浦芳樹さん)が経営破綻し、広島県立・市立高校の寮の給食はもちろん、全国の警察や自衛隊などの給食も停止し、大混乱が広がっています。全国150の同社の受託先の施設の内半数で供給が止まっています。

9月5日に、広島市立沼田高校や広島県立三次高校など8校の寮での給食がいきなり停止。会社とも連絡が取れない状態になったと報道がありました。高校の先生たちがスーパーに行き、生徒の食事を確保する事態となりました。

会社のホームページによると、同社は1994年設立。地元広島はもちろん、東は岩手、西は鹿児島に至る全国各地で事業を展開しておられます。保育園・幼稚園や学校、そして県庁(一部テレビ局では神奈川県庁の地方機関の食堂が映し出されていた)や警察や自衛隊などの社会人向けの食堂の運営、筆者の勤務先のような老人ホームでの給食、病院での給食などを幅広く手掛けておられます。

複数の報道によると、同社は近いうちに破産手続きに入るそうです。

◆すぐに人が辞めていく給食業界

同社については、地元では、すぐに人が辞めていくという評判もありました。ただ、これは同社だけの問題ではありません。筆者の勤務先の老人ホーム(以下、弊社)の食堂も、弊社とは別会社が運営する形を取っています。しかし、すぐに人が辞めていき、メンバーが固定されるようなことはあまりありません。結局、弊社の介護職員も時々、食堂の運営会社と兼務する形で調理に従事するようなありさまです。

朝食と昼食と夕食を調理する人を全て確保するというのは相当に難しいです。朝食を調理し、昼間は休んで夕食の調理にまた出てくる、というシフトをこなしておられた方も見受けられましたが、すぐに辞められました。それはそうです。筆者も同様のシフトになったら、精神的にも身体的にもしんどくて、リタイアしているでしょう。

そうなると、会社も一定程度、給料を上げていかないといけなくなる。これが、ホーユーさんも含む最近の状況だったと推測されます。

◆物価高騰・給料アップに追いつかぬ単価?

ところが、ホーユーさんが多く引き受けておられるのは公立の学校や県庁、警察、自衛隊などの公共関係の食堂の運営です。

こういうところは、一年に一回の入札です。従って、食材が高騰したから、パート従業員の給料を上げないと辞められてしまうからという理由で条件を変更してもらうことは困難です。

もちろん、「そんなことはわかって、落札していたのだから、その経営判断が問題だろう」というご意見もあるでしょう。

あるいは「労働者を低賃金でこき使ってまで、落札していたのはいかがなものか?」というご意見も伺います。

しかし、現に、原価割れで運営会社が倒産してしまったわけです。そういう単価で委託していた、そういう状況を生み出す制度そのものが問題ではないでしょうか? 国ならば岸田総理ら政府や国会議員の皆様、自治体なら首長や議員の問題でもあります。

◆大手ゼネコン・天下り企業には価格変更=値上げに応じている

しかし、冷静に考えると、行政はゼネコン大手や天下り会社に対しては平気で「価格変更=値上げ」に応じています。

筆者の住んでいる広島市や広島県に当てはめても以下のことが言えます。

広島高速5号線二葉山トンネルでは、何度も追加予算を投入し、当初予算を大幅にオーバーしています。また、広島市中央図書館の駅前エールエールA館(市役所OBの天下り先でもある第三セクターが所有)への移転では当初議会や市民に説明した基本計画で65億円だった予算が72億円に膨れ上がっています。

こういうことが平気で出来るのに、給食会社相手には値上げに応じないという構造も見えます。

結局のところ、大手ゼネコンや市役所OBの天下り先の会社には甘くても、中小企業には厳くけんもほろろ。そういう行政・政治のありようが問題ではないでしょうか?

あるいは、広島県教育委員会で言えば、平川理恵・教育長のお友達には儲けさせる。そんなお金があるくらいなら、原価が賄えて労働者が生活できるような値段で給食の委託契約をしてあげればよかったのではないか? そんな疑問は尽きません。

◆「給食のおばちゃん」叩きの果てに

日本で新自由主義が加速し始めた1990年代ころ、「給食のおばちゃんの分際で、年収500万円も取るなど怪しからん」という意見が幅を利かせ始めたのを記憶しています。マスコミが煽り、政治家(当時は日本共産党と新社会党以外のほぼ全員)は労働者叩きで溜飲を下げてもらったのです。

そして、民間企業への委託が加速。ホーユーさんもそういう時期(1994年)に創業され、そして事業を拡大されたようです。しかし、今度はその民間企業からのサービスを買い叩く、という構造が定着。現在に至っています。行政が民間を買い叩き、民間企業は労働者を低賃金・ブラックな条件で働かせる。そんな悪循環が、この20年くらい加速してきたのです。

そもそも、給食調理員というのも、例えばシングルマザーなどの安定した雇用の受け皿となっていました。政策的な意味もあったのです。それを低賃金・ブラックな労働に置き換えたことで、子どもの貧困の悪化などにもつながっているのです。 こうしたことについて、政治家やマスコミは猛省すべきです。

岸田総理は2030年までに最低賃金を1500円にする、などとおっしゃっています。しかし、2030年代まで待っていては多くの労働者は生活が成り立たず、「香典」となってしまいます。さらには、様々なサービスが労働力不足で崩壊することも予想されます。総理は、ご自身の選挙区を震源地とする「給食ストップ」事件について早急に政府としても分析し、対策を取るべきです。例えば、物価高騰状況に対応した入札制度の改革、労働者が十分に暮らしていける単価の確保などです。

また、「高い武器ばかりアメリカから買って、自衛隊員のメシがない」という状況を招いたことも反省していただきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

日本では、特に1994年の日経連が「新時代の日本的経営」という方針を出してから、非正規雇用が激増。労働者の実質賃金は、それ以降、四半世紀以上にわたって、ほとんど上がらないという異常事態になりました。これは、世界的に見ても日本以外ではいわゆる失敗国家(失礼ながら国名を挙げると内戦が続いているシリアやリビア、ソマリアなど)でしか見られない現象です。

しかし、このために、最近では外国人労働者の行先としても日本の人気は落ち、日本人でも若い女性の介護や保育労働者が流出するなどしています。また、介護の現場では、人手不足の反面、サービスの質の低下もみられます。製造業やITなどでは、技術者の海外への流出も深刻です。まさに日本はボロボロです。労働者の給料含む労働環境の改善は急務です。

一方で、労働条件が日本で良くならないことの背景には労働者がこの数十年間、おとなしすぎたということもあるのではないでしょうか?しかし、そんな状況にも変化が見られたのが2023年の夏です。

◆潮目を変えるか? そごう・西武 大手百貨店の61年ぶりスト

「そごう・西武」では、親会社のセブンアンドアイが外資系投資会社への売却を計画。これによる雇用維持への不安が労働者に広がり、そごう・西武ユニオンは7月にストライキ権を確立するための投票を実施。その結果、9割以上の組合員がストライキに賛成しました。組合は、経営者とストライキを背景に交渉しましたが、8月末、交渉は決裂。8月31日、大手百貨店では1962年以来、61年ぶりのストとなりました。

ストライキは日本国憲法第28条で保障された団体行動権です。

第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

今後の動向は予断を許しませんが、労働者が自分たちを守るためには、ストライキという手段もある、ということを示したことの歴史的な意義は大きいのではないでしょうか?

もともと、組合員が納める組合費はストライキをやった時に入らなくなる給料を保障するための資金だったのです。しかし、1960年代後半くらいから会社と組合が協調路線になり、ストライキをやらなくなってきたという歴史的な経過があります。そして、1990年代以降は、ついに日経連(今の経団連)側がやりたい放題しはじめたのです。

また、企業再編に便乗(?)して、どさくさ紛れに労働者の労働条件を(過剰に)切り下げることもまかり通ってきました。そうした状況への反撃に今回なったのではないでしょうか?

報道を拝見する限り、思ったより、一般市民の方が割とストライキに好意的なコメントをされていました。ストライキ実施以前は割とネガティブなコメントもあったが、実施後は、応援するようなコメントも多い印象があります。

なにより、多くの労働者にとり、よい教科書になったのではないでしょうか? 

今後、例えば介護や保育など、仕事の割に給料が低すぎる、そのことも背景に様々な問題が起きている職場でこういうストライキという憲法で保障された手段もあるということは、一定程度認識されたのではないかと思います。

◆環境省元女性官僚、過労退職で損害賠償求め国を提訴

環境省では、若手女性キャリア官僚が、月135時間の残業をさせられ、2019年2月に精神疾患を発症。同11月に公務災害認定を申し立て、2020年2月に退職しました。そして2021年6月、ようやく公務災害に認定されました。この女性元官僚は、2022年6月に国を相手取って損害賠償を求めて民事調停を申し立てましたが、国が応じなかったため、やむなく2023年7月27日、国を提訴したものです。

この元女性官僚は「今回の提訴によって議論が生まれることで、働く人を大切にして、一緒に働いていくという意識の醸成があってほしいと思います。今まで涙を呑んできた先輩、同期、後輩の少しでも希望になればと思っています」と記者会見で述べたそうです。

最近では東大生も含めて若者が官僚になることを敬遠する傾向にあります。この傾向が行き過ぎれば、日本国としての政策立案能力の低下にもつながりかねません。また、精神疾患は労災認定がされにくい実態があります。今回の裁判は、精神疾患について軽視しないようにしていく取り組みでもあります。

◆20年以上務めた司書をいきなりクビ!埼玉県狭山市の暴挙に抗議!

 

[署名]司書の復職で図書館のさらなる充実・発展を求めます(change.org)

埼玉県狭山市では、2023年3月末、市立中央図書館の司書を20年以上勤めた人も含めて全員解雇し、公募しました。臨時職員時代も含めて20年以上、毎年契約更新されてきたということはそれだけ優秀さが認められてきたということです。それを全員解雇する。その結果、例えば、子どもに対する読み聞かせなど、今まで地域の子どもたちにされてきたサービスも低下してしまいました。これに対して、図書館の充実と司書の雇用継承を求める会が司書の復職を求めて署名を呼び掛けています。QRコードからできます。趣旨をご理解の上、ご協力をお願いします。

地方公務員の29%、112万人が非正規で、特に身近な市区町村では40%と、民間平均の36%も上回っています。そして、高度の専門知識を持った人たちも多く、非正規公務員として働いています。そういう人たちをそもそも非正規で使い捨てにするということが間違いですが、現実には正規公務員を減らしすぎた結果そうなっています。

民間のように労働契約法による保護はない。さりとて、正規公務員のような手厚い保護もない。これが非正規公務員の実態です。

2020年度から「会計年度任用職員」制度が導入され、ボーナスの支給などもされるようになりました。しかし、今度は、「会計年度任用職員は3年たったら自動更新をやめ、ゼロから公募」という自治体が続出。狭山市も例外ではありませんでした。

そもそも、「3年でクビ」にしなければならない、という法的根拠はどこにもありません。これは、労働組合が総務省に確認させています。専門性の高い仕事の公務員を3年でクビにしていたら、福祉や教育、防災など住民サービスも低下します。

また、公務員に人材が集まらなくなってしまいます。本紙も、非正規教員含む非正規公務員の抜本的な待遇改善、希望する人への常勤化を求めます。

 

[署名]ホームヘルパーの待遇を上げて日本の介護を守ろう(change.org)

◆ホームヘルパーの待遇改善で日本の介護を守ろう

筆者も介護福祉士として仕事をしています。利用者ではなく、職員、それも新人職員が70代という状況があります。その介護業界の中でもホームヘルパーは、特に高齢化が進んでいます。これは、待機時間や移動時間、キャンセルになった場合も労働時間なのに、給料が出ないという労働基準法違反の状態が横行しているからです。そしてその根本には介護報酬が低すぎることがあります。

こうした中、ホームヘルパー3人が東京地裁に国を相手取って、介護保険制度の改善を求めて損害賠償訴訟を2020年11月、起こしました。(日本の法体系上、制度改善のみを求める裁判はできない)。

2022年11月、東京地裁では不当判決が出ましたが、原告労働者は東京高裁に控訴。この夏も7月24日の第三回口頭弁論など、裁判闘争を頑張っています。どうか、公正な判決を求める署名にご協力ください。

◆お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください

労働相談 秘密厳守 お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください。

広島自治労連 *電話 082-243-9240 *FAX 082-243-9241  
*Eメール hjrouren@urban.ne.jp
(さとうも役員をさせていただいており、さとうまでご連絡いただいても構いません)
広島県労連 労働相談センター 解雇・賃金残業代未払い・ハラスメント なんでも相談 082-262-2099

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

8月29日、広島県の平川理恵教育長に対して、県に「NPO法人パンゲア」を巡る官製談合で生じた損失2600万円、外部調査にかかった弁護士費用3000万円、2021年度に教育長が使ったタクシー代100万円の合計5700万円を返すよう住民が求めて提訴した裁判の第一回口頭弁論が広島地方裁判所で行われました。

平川教育長については2022年8月、「文春砲」で教育長が個人的に親しい京都のNPO法人「パンゲア」が受注した事業(合計2600万円)における官製談合疑惑が暴露されました。その後、県教委が雇った弁護士による外部調査で、地方自治法違反、官製談合防止法違反が認定されました。ところが、この弁護士による調査でも3000万円という常識外の支出が行われ、批判を浴びました。さらに、平川教育長は、2021年度だけで100万円、2018年度からの4年間では合計700万円のタクシー代を使用していました。

今回の裁判ではパンゲアとの官製談合事件で生じた被害2645万8685円、弁護士費用3000万円、そして2021年度分のタクシー代100万円が対象です。

平川教育長は2023年2月、課長級職員を戒告処分とするとともに、自身は給料自主返納30%を2か月しただけで、幕引きを図っています。任命した湯崎英彦県知事も平川教育長を罷免するなどの形で責任を果たそうとせず、議会もまた、追及を止めてしまっています。

◆現場は努力しているのに、教育長は…… 高校教師でもある原告の怒りの陳述

この日の裁判では、原告を代表して県立高校の元教諭で現在も非常勤の教員として働いている望月照己さん(下段写真 左から二人目)が意見陳述を行いました。

望月さんは「文春の記事を見て驚くとともに唖然とした」と回想。

「非常勤講師も含めたすべての教職員は年二回、各学校で広島県教育関係職員倫理要綱に基づき研修を受け、法令遵守や公務員倫理の確立と職務の執行に対する県民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図ること」「公務に対する県民の信頼を確保すること」を口が酸っぱくなるほど言われ続けているから、です。

そして、「平川教育長は親密な業者であるパンゲアの関係者を教育行政に算入させるため会食をしたり、業務委託契約を結んだりしているため、明らかにこの倫理要綱に違反している」と指摘しました。

学校現場では、修学旅行の業者を決める際は複数の業者から企画案や見積もりなどの資料提供を受けて公平に検討して決め、決して飲食などともにしないように気を付けていますし、鉛筆一本でも無駄にしないよう毎日努力しているのです。

それなのに、平川教育長はパンゲアとの契約代金の妥当性を検証するためとして東京の弁護士に3000万円を支払う。

そしてタクシー代も県民感覚からずれています。

望月さんは「教育長は自分が使ったお金が税金だということが分かっているのか?」と指弾。

「わたしたち教職員がこのような無駄遣いをすると即、懲戒免職。にもかかわらず、平川教育長は、課長級職員に戒告処分をしながら、自分は何の処分も受けず、自らの給料2か月分を30%返納するだけで済ませている」と怒りをあらわにしました。

そして、物価高の中で節約している中で、この問題を黙ってみているわけにはいかない、住民監査請求も起こしたが却下された、そこで住民訴訟に踏み切ったという事情を理解の上、裁判長には(平川教育長への)厳正な判断をお願いしたい、と結びました。

◆お友達のお金儲けばかり、何の責任も取らぬ教育長

口頭弁論で原告代理人の山田延廣弁護士(写真左端)は、「この事件を放置してはいけない。県の行政のためではなく友人の利益のための事業だった。また、平川教育長は赤木かん子さんに図書館のリニューアルを依頼したが、新たに購入した図書の1割が赤木さんの著書だった。お友達のお金儲けのためにやっている」と批判。

そして、「教育長は何の責任もとっていない。教育委員会内では教育長にネガティブな情報を上げないことになっていた。そういう風に職員をしてしまったのも教育長の平素の対応に問題があるからだ。」と指弾。

また、県議会議長も「平川氏を止めさせると知事が傷つく(から調査を止める)」という始末だ、と議会の腐敗も指摘しました。

そして「「自分でやったことは自分で責任を取りなさい」「自分のことばかりではなくみんなのことも考えなさい」などと学校では教育しているが、教育長がこれでは先生や生徒たちに示しがつかない」と嘆きました。

◆本来は被害者なのに教育長を庇う県

今回は、広島県が本当は教育長に金を勝手に使われた被害者であるにもかかわらず、県が教育長を庇う立場で弁護士を送り込んでいます(補助参加)。

教育長と利益が相反する以上、これ自体、常識的にはおかしな話ですが、現行では認められているのでその枠で住民も闘うしかありません。

その県は、
1,お金を支出したのは教育長ではなく、戒告処分を受けた課長級職員だから教育長にお金を返す義務はない
2,そもそも、お金を支出した人も特定されていない。
と開き直り、住民の請求を棄却するよう求めています。

これに対して山田弁護士は「平川教育長の名前でパンゲアと契約している。契約があって支出がある。平川教育長に責任がないということはありえない。また、お金を支出した人が特定されないというのは、そもそも、県がその戒告処分を受けた会計担当職員の氏名等を公表しないからだ。県は横綱相撲を取ってほしい」と苦言を呈しました。

◆検察も重い腰を上げ、一年生県議も動き出す

さて、原告の一人の今谷賢二さんによると、検察もようやく、最近動きを見せているそうです。

すなわち、今谷さんらによる刑事での告発状を受理するための話し合いを近日中に行いたいと電話もあったそうです。

また、県議会では日本共産党以外の自民、公明、立憲などの知事与党会派は教育長の疑惑を葬り去りたかったそうですが、当選一回の保守系県議が文教委員会で言葉を選びつつも、赤木かん子さんによる図書館のリニューアル問題や官製談合疑惑について質問をする場面もあるそうです。筆者も有権者との対話で実感していますが、自民党代議士や市議を熱心に支持されているような方でも「平川は怪しからん」怒っている方が多いです。そういう有権者の突き上げがあるのではないか?と今谷さんは指摘します。

◆「平川独裁」は終焉の兆しも厳しい教育行政再建の道

また、県教委内部でも、赤木かん子さんは今年の事業からは外されており、正式な形ではないが、「平川独裁」は終焉に向かっているようです。

ただ一方で、教育委員会幹部に、財務系の職員が派遣されています。この方々は、会計処理は得意でも、教育のことは全く分かっていません。そもそも、今の県教育行政の問題は、現場の先生や子どもをバックアップするロジスティクスをしっかりやるべき教育委員会が、教育の中身を差配し、現場を振り回してきたことにあります。その是正も含めた教育行政の再建の道はなお険しいと筆者は感じています。しかし、まずは第一歩です。

県教委や市教委のパソコン納入を巡る談合事件では、公取が業者にお金を県・市に返すよう命じています。これは別の住民グループの奮闘が背景にあります。この日の裁判報告集会にはその住民グループの方もお見えになって激励をいただきました。

この民事裁判や検察への突き上げ、それ以外の政治闘争も含めて、広島の教育を立て直すことをあきらめてはいけん。その決意を強くしました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

8月後半、西日本と東日本、双方で「原発の後始末」で重大な動きがありました。ひとつは、上関町が、核のゴミ=死の灰の貯蔵施設建設へ向けた調査を受け入れ。福島では原発事故の汚染処理水の海洋放出です。

◆上関町は核のゴミ=死の灰 自称「中間貯蔵」へ調査受け入れ

8月18日、上関町の西町長は中国電力に対して、同社と関西電力の共同で核のゴミを自称「中間貯蔵」する施設の建設へ向けた調査を受け入れてしまいました。8月2日に申し入れを受けてからわずか半月余りというスピード決定でした。

岸田政権が強行した自称GX法により関西電力・高浜原発など老朽原発の再稼働が進み、関西電力の死の灰=核のゴミがにっちもさっちもいかなくなることを背景に起きた出来事です。

核のゴミ=死の灰の最終的な行方は全く決まっておらず、今後も決まる可能性はほとんどありません。従って、もし上関町が受け入れてしまえば、中間貯蔵どころか、半永久的に貯蔵されてしまうことは確実です。


◎[参考動画]原発問題で揺れる 瀬戸内海“最後の楽園”上関町【news23】|TBS NEWS DIG

◆フクシマ汚染処理水、海洋放出強行

一方、8月21日、岸田総理は福島を訪問したあと、なぜか、東京に戻って全漁連の会長と会談し、会長も反対姿勢を崩さない中で、東電福島第一原発事故による汚染処理水の海洋放出を伝達し、24日から開始。「数十年に渡ろうとも全責任を持って対応する」と総理は啖呵を切りました。


◎[参考動画]処理水の放出決定 福島県内の漁業関係者は憤りあらわに「納得していないのにおかしい」|TBS NEWS DIG

◆「科学的に安全」と言われた原発が事故を起こしたのに

汚染処理水については、IAEAは国際的な基準に合致していると言ってはいます。しかし、別にIAEAが何か責任を持ってくれるわけではありません。そもそも、2011年の3.11以前、政府も東電もマスコミも「日本の原発は科学的に安全。チェルノブイリ原発のようなことは起きない」と宣伝してきました。従って、汚染処理水の問題で「安全です」と言われても、「安心しろ」というのが無理な話です。

また、岸田総理は数十年にわたろうとも全責任を持って対応する、と言われていますが、総理の任期なんて、安倍晋三さんでさえも8年しか勤めていません。30年後、40年後、人生百年時代ですから、ご存命であったとしても国会議員は辞めておられる可能性が高い。どうやって、責任を取る、というのでしょうか?その時何かあっても「ワシはもう議員でないから知らん」と言われても困ります。あまりにも軽すぎる言葉の使用法がまた、信用を失わせます。

◆モルタル固化などの代案もある 原発事故の後始末は総合的にもっと議論を

なお、汚染処理水をどうすればいいのか?という点については、代案がすでに提案されています

モルタルで固化し、今よりもしっかりしたタンクで保管するという案です。もちろん、これは、地元・福島県双葉町などの同意が必要になってきます。また、もっと言えば、無理にデブリを取り出したりする必要があるのかどうか?強烈な放射線で機械でさえも故障するリスクが高い状況で、将来にわたってできるのかどうか?もっと総合的な議論をすべきではないでしょうか?

◆上関・核のゴミ受け入れ、元自民党代議士の岩国市長も懸念表明

そして、上関町の核のごみの受け入れに対して、21日、岩国市の福田良彦市長も懸念を表明されました。福田市長は、元自民党代議士のご出身です。2008年に岩国基地への艦載機移駐反対派の井原勝介市長を打倒して初当選され、現在4期目です。そんな福田市長でも「近隣自治体とすれば、やはり市民の中にも多くの不安や懸念があることは事実。そういった中での今回の調査、また調査の先には具体的に建設ということになるのかもしれないが、市民、また近隣の方々の安心安全がしっかりと担保されていない、説明が尽くされていないという状況の中では、今回の一連の受け止めについては率直に賛成とは言えない、これが私の考え」とコメントされました。

当然です。岩国市役所までは上関の想定される核のゴミ=死の灰受け入れ予定地からわずか45kmです。上関町だけで、この問題の可否を決める、ということ自体がそもそもの誤りです。

例えば、危険極まりない核のゴミを中国電力島根原発や関西電力高浜原発・美浜原発などからどうやって運搬するというのか? 船は船で、リスクがあります。瀬戸内海では現状でも船の事故は非常に多い。海自の輸送艦「おおすみ」と漁船の衝突事故は記憶に新しいですし、今年に入ってからも山口県沖で護衛艦の座礁事故が起きています。他方で、道路での輸送は交通事故の危険性も高い。海であろうが陸であろうが、岩国市はもちろん、場合によっては筆者の住む広島市も含めて取り返しのつかないことになりかねません。

フクシマの海洋放出に関しては、総理はそうはいっても表に出てきましたが、ご自身の地元(小選挙区=広島、比例区=中国ブロック)に重大な被害が及びかねない上関の問題では何もリーダーシップを取ろうともしない。

◆地域を衰えさせてきた歴代自民党政権

なお、上関町長ら推進派の「上関の持続可能な発展に、可能性がほぼ消えた原発建設に変わる核のゴミが必要」という話も全く筋が通りません。

現実には、原発関係の交付金を受け取ってきた上関町も人口流出で衰えています。他方で、創意工夫で踏みとどまっている自治体もあります。そもそも、原発や核のゴミ受け入れに頼らないといけないように地方を衰えさせてきた自民党政権の経済政策が誤りです。

◆やはり、岸田・自称GX法で老朽原発再開が大問題

岸田総理は、気候変動対策などを大義名分に、自称GX法=老朽原発延命法、原子力村税金投入延命法=を2023年通常国会で強行しました。国民の間でも電気代の値上がりなども背景に「まあ、原発はあるのだから使った方がいいかな」という風潮が広がっています。3.11も、のど元過ぎれば熱さ忘れる、です。

しかし、現実には、汚染処理水問題のように福島原発事故の後始末さえ全くできず、「原子力緊急事態宣言」中です。その上で、核のゴミ=死の灰が増えて、にっちもさっちもいかなくなりつつあるのです。

これ以上核のゴミを増やさないこと。そして、福島のような事故を起こさせないこと。そのためには、やはり原発は止めることです。

再生可能エネルギーについては、九州電力などでは余っていて出力制限をしている状況です。その上で、原発を動かし、4-6月期は過去最高益を出している電力会社はおかしい。

従って、蓄電やスマートグリッドを進めていけば、再生可能エネルギーとの組み合わせで、原発にも旧型石炭火力発電にも頼らずに済む、電力料金も高くせずに済みます。

ただ、根本的には、電力会社よりも原発を国策として進めてきた国の責任が重いのです。GX法を廃止し、原発も国が責任をもって廃止する。蓄電やスマートグリッドにもガツンと財政出動する。そういう方向を示すべきです。

 

筆者勤務先近くの総理の政治活動ポスター

◆ポスターと正反対の政治 「広島の恥」総理を図に乗らせまい

岸田総理は「地域の声で新たな日本へ 所得向上 少子化対策 安全・安心」とおっしゃる。だが、実際には、フクシマの汚染処理水問題では地域の声を軽視し、安心を踏みにじる、上関のような時は国の責任を放棄して地域に対応を丸投げする卑怯な政治です。

そして、原発推進という破綻した「古い日本」を維持するわけです。まさに、実態と真反対のポスターであり、「広島の恥」ではないでしょうか?

総理は恥を知れ、と申し上げたい。残念ながら、前回2021年衆院選では総理は、対立候補に供託金回収さえさせない圧勝ぶりでした。こんな風に圧勝させてしまったことで、岸田総理も図に乗ってしまったということも言えると思います。

広島は平和都市といいながら、実際には爆心地に近いほど保守色が強く総理が強い。そんな状況ですが、次期衆院選こそ、総理をヒヤリとさせ、軌道修正を迫る結果にしなくてはならないと痛感しています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

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